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高橋参考人 御説明申し上げます。
この問題は、たしか一昨年あたりからこの資源
調査会で取り上げまして調べるようにということでございまして、その中に環境エネルギー小
委員会をつくりまして、私が
委員長になって調べたものでございます。
御
承知のように、いろいろな燃料を燃やしますと、大気の中に大気汚染、たとえば二酸化硫黄が出ます。また熱が出るわけでございますから、その辺の温度が上がるわけでございます。そのために、大気汚染でございますと健康に害がある、熱が出ますと温度は上がりますので、そのために周りにいろいろな影響を及ぼすわけでございます。それが小さい場合には余り問題がございませんけれ
ども、大きくなってまいりますとわれわれの生活にいろいろな影響を及ぼしますので、どれくらいのエネルギーを使ったならばどの程度の影響があらわれるだろうかということを見積もっておくことは、将来のエネルギーや何かを
考える場合にも重要な問題であろうかと思うわけでございます。
これをやりますのにはいろいろなやり方がございます。できれば毎日毎日の状況を正確に調べて、それを積み上げて出すのが一番理想的でございますけれ
ども、ここではもうちょっとマクロに見まして、平均的な状態を調べて、それで大体の数字を出したわけでございます。
話の内容は、たとえば煙突から二酸化硫黄が出るわけでございます。それが風によって流されて広がっていくわけでございますが、その模様を個個の日でございますと風に乗って流れていく状況で調べるわけです。しかし、一年を平均いたしますと、風は南の風も吹けば北の風も吹くということで、それが周りに広がっていくわけであります。それを拡散という概念で取り上げてみます。それからまた、上がりました二酸化硫黄は大気の上空まで行くわけでございませんで、大体下層の千メートルぐらいの間にたまるわけでございます。また二酸化硫黄で出ましたものは、太陽の光あるいは雨などによりまして減っていく、こういったようなことがございます。これを
一つの式にまとめまして、どれくらいの二酸化硫黄が出たならばどの程度の濃度に達するか、そういうのを式で計算したわけでございます。
まず初めに、一点の状況について調べてみたわけでございます。これを調べるためには拡散の係数だとかあるいはどれくらいの割合で減るとか、そういう係数を知る必要がございますが、これにつきましては従来の
研究をもとにして調べたわけでございます。熱につきましても大体同じようなやり方をするわけでございます。
次に、ここで問題になりますことは、どれくらいの二酸化硫黄の濃度になったならば健康に害があるか、そういうようなこと、また温度の場合に何度ぐらい上がったならばいろいろな影響が出てくるだろうか、こういう問題がございます。
二酸化硫黄につきましては、環境庁の一応の基準がございまして、一日平均で〇・〇四PPm、これぐらいになりますと健康に害が出るので、その程度が環境の基準、そういうことになっております。ここではマクロに取り扱っておりますので、年平均を問題にするわけです。それで勘定をいたしますと、これははっきりした数字がまだ出ているわけではございませんけれ
ども、大体において日々の場合に比べてよりもう少しきつくなりまして、〇・〇二PPm、この程度が一応の基準であろうか、そういう数字が出ております。それをもとにいたします。
それから気温につきましては、実は余りはっきりしたことがわかっていないのでございますが、ただ年平均で気温が一度上がりますとある程度の影響が出てくることは
考えられるわけでございます。これにつきましてははっきりしたことは私もちょっと申し上げかねるのですけれ
ども、ただ一度温度が変わりますと、毎日毎日でありますと一度ならばそう大したことはないのでございますが、年平均で一度上がりますと、ちょっといい例はございませんけれ
ども、たとえば米の生産などを見てみますと、月平均で一度変わりますと米の収量が二〇%ぐらい変わるといったような数字もございます。そこで一応一度という条件をつけます。その場合、一カ所で熱を出しますと熱が四方に広がってまいりますので、熱源にごく近いところでは非常に温度が上がりあるいは汚染が強くなりますけれ
ども、真ん中のところは一応目をつぶりまして中心から一キロぐらいのところでは、いま言ったような汚染の、あるいは環境基準と申しましょうか、そういうものを超えないという条件をつけて勘定するわけでございます。そうしますと、どれくらいの熱を使ったならば環境基準がそれくらいになるかということが計算できるわけでございます。それをもとにしてまず計算したわけでございます。
そして、これを計算しましたものは、
理論的に出したものでございますけれ
ども、一応これを
観測のデータからチェックしたいということがございます。それにつきましては、二酸化硫黄につきましてはある程度
観測が行われておりますので、それをもとにいたしまして関東南部の状況を調べたわけでございます。そして
先ほどのような仮定で計算したものと比較してみたわけでございます。その場合、
先ほどのは熱源を点としたわけでございますが、関東南部の場合には一カ所にあるわけでなくて何カ所かに分散しているわけでございます。そういうことを
考えに入れて比較してみますと、おおむね計算値とけたは合うわけでございます。
熱につきましては、余りはっきりしたデータはございませんけれ
ども、都市でありますとエネルギーをたくさん使いますので温度は上がるわけでございます。その状況につきましてはある程度わかっておりますので、そういうようなことと比較してみますと、熱の場合につきましてもそうけた外れではないということがわかります。
そこで、一点の場合がわかりましたので、今度はそれをもとにいたしまして全国に何カ所かそういった熱を出すところを置いてみるわけでございます。そうしてその場合、点がエネルギーを出す熱源と申しましょうか、この距離をいろいろ変えてみるわけでございます。そうしますと、距離を遠くして、したがって日本全国でのエネルギーの発生点を少なくいたしますと、
先ほどの一キロでの環境基準が効きまして使えるエネルギーというのはそれほど大きくはなりません。それを小さくしてまいりますとだんだん大きくなりまして、あるところにだんだんまとまっていくわけです。それで計算してみますと、熱の場合と汚染の場合では違うのでございます。
汚染の場合でございますと、大体
昭和四十八年の材料をもとにして計算したのでございますが、それで申しますと、平均いたしまして四十八年度ころにおける日本のエネルギーの消費の約二・七倍程度たきますと
先ほど申しましたような環境基準に達するという結果になったわけでございます。
次に熱について調べてみますと、それよりは少し条件がよいと申しましょうか、三倍から四倍、四程度くらいという結果が出たわけでございます。この結果はある意味で申しますとマクロに見たものでございまして、いろいろの点でまだ不十分な点がございます。
その
一つの点は、
先ほど温度に関しましては一度までは許すという条件をつけましたが、これが一度でなければならないという制限は特にはっきりとした理由がございません。あるいは二度でもよろしいかと思います。ただ一度ととりましたのは、一度がいわばラウンドナンバーと申しましょうか、その程度上がりますと影響が出てくることが
考えられますので、わりあいシビアな条件で勘定したものでございます。
また熱の場合につきましては、確かに温度が上がったりいたしますといろいろな影響が出てまいりまして、温度が上がれば米の生産なんかはむしろいい方向に向かうというようなこともございますが、冷たい寒流にすんでおりますような魚でございますと悪い影響が出るというようなところで、これはいいか悪いかにつきましてはなかなかいろいろ問題がございましてその辺はっきりしておりませんけれ
ども、一応ここで勘定いたしましたのは周りへの影響は余り変えないという
考え方でこういう数字を設定したものでございます。
二酸化硫黄につきましては、大体環境庁で決められた基準をもとにしておりますので、そう大きな違いはないかとは思いますけれ
ども、アメリカあたりでございますと〇…〇三PPm、五割ぐらい大きく見ておりますので、こういった点も
考え方によってはまだ問題が残っているのではないかというような感じもいたします。それからもう
一つは、二酸化硫黄の場合でございますと、脱硫装置をつけますと減ってまいりますので、それによっても変わってくる
可能性はございます。
しかし、ともかくも、こうして勘定してみますと、案外現在の日本のエネルギーというものは環境汚染から見ますとかなり多量に使っている傾向がございますので、やはり一応この際、こういつた問題を注意しておく必要があるだろう、そういうことで、資源
調査会でこれをとりまとめて報告を出したわけでございます。
ただ、この数字につきましては、いまも申しましたように、まだまだいろいろ検討すべき点がございます。また、私はその辺
専門でございませんから素人
考えで申しますが、これをエネルギー政策の面に応用するにつきましては、やはりもうちょっといろいろ検討しまして、いろいろの面から
考えてみる必要があるかとは思いますけれ
ども、しかしやはり、こういった問題は、将来の日本の経済や何かのことも
考えまして、ぜひ調べておく必要があるのではないかと思っているわけでございます。
なお、これを調べるにつきましては、ある程度
観測網もできてきてはおりますけれ
ども、まだいろいろ不十分な点がございます。たとえば、この問題を
考えてくる場合に、混合層と申しましょうか、
先ほど千メートルくらいまでまじると申しましたが、それが気象条件によって実はいろいろ違ってくるわけでございます。その高層
観測というものは
気象庁で十何カ所かございますけれ
ども、それは主に海岸地方でございまして、内陸地方にはまだ不十分である、そういう点もございます。それから、汚染の
観測につきましても、いろいろ環境が問題になっておりますので大都会の周りなどにはかなりございますけれ
ども、むしろ汚染の少ないところには余りない状態でございます。しかし、こういう問題をやっていく場合には、汚染の強いところではなくて、汚染の少ないところの状態もよくつかまえていかないといけないということで、やはりそういった方面の
観測も何カ所か増していく必要があって、それをもとにして今後
調査していく必要があるのではないか、そう
考えているわけでございます。
簡単でございますが、
調査報告の概要でございます。