○原田説明員 国土地理院は戦前、その前身でありました陸軍参謀本部陸地測量部と言われた
時代から、時期的には明治以来、全国に水平の位置を決めます基準点になる三角点、それから高さの位置の基準になります水準点を多数
設置しておりまして、これらを明治
時代には全国をカバーする測量を行い、その後高さの方の水準測量に関しましては、これまでに全国測量が五回繰り返し行われ、水平の方の位置を決めます三角測量は、幾多の大地震を経験し、地殻に激烈な変動が起こりました
地域には、地震直後にローカルな復旧測量を行っております。
そういうわけで、その水平の位置をあらわす三角点、高さをあらわします水準点、そういったもののいわばわれわれに引き継がれた財産を戦後国土地理院は継承し、戦前に比べてきめの細かい測量を繰り返し行う
方針をとりまして、新しい測量と過去の測量結果を比較すれば、わが国の水平変動、上下の変動がかなり詳しくわかるという体制になっております。そして、
地震予知計画が発足しましてから、このことが
地震予知の非常に基礎的な
資料になるというぐあいに了解されてきているわけでございます。
そして、
地震予知計画が発足しましてからは、
先ほど述べました高さを決めます水準測量、そのうちの高精度の一等水準測量は、全国国道沿いに二万キロメートル、水準点の数にしまして一万点を五年周期で改測するということが昭和四十五年よりともかく軌道に乗ることになりました。それによって多くの大地の上下変動を追跡することができました。また、
地盤沈下地帯では、さらに激しく毎年あるいは半年おきにその上下の変動を決めます水準測量が繰り返し行われ、たとえば新潟地方では、新潟の
地盤沈下でその種の測量が行われたことにより、これは新潟地震の後の
研究でございますが、前兆と思われる水準測量による地殻の異常隆起という現象もつかまえております。
水平の方の変動を追います仕事といたしましては、一等三角測量が明治に一回、それから戦後一回終わりまして、その後〇・五回、前後二・五回の一等三角測量が行われたわけでございます。一等三角点は三百点ございまして、点と点との間の距離は約四十五キロメートルございます。そしてこの解析の結果、非常に大規模なスケールで
日本列島が地殻変動を起こしている、それと大地震との間には非常に密接な関連があるということがわかりました。しかし、それと同時に、点間の距離が四十五キロメートルである一等三角測量ではいかにも網の目が粗過ぎる、
地震予知をさらに詳しくするにはもっと網の目の細かい三角網によらなければいけないということがわかりました。
そこで、昭和四十九年以来一等三角測量にかえまして、全国六千点から成る一、二等三角点を特に一次測地基準点網といたしまして、これを五カ年間で繰り返しはかるという基本
方針を立てました。そして毎年、五年周期と申しますと、一年間に千二百点の観測をしなければなりませんが、いますぐにその千二百点という
ラインに到達しますためには、われわれのマンパワー並びに仕事を一部請け負います民間測量
会社の技術、 マンパワー、そういったものの関係がありまして、目下年を経るごとにこの
予算の量は急カーブを描いて向上しておる
段階でございます。
そして、それらのことをすべて総括いたしまして、国土地理院が行っておりますこの種の測量によります
地震予知は何と申しましても年単位、一年というのはおこがましゅうございまして、五年とか十年とかさらに二十年とか三十年とか非常に粗いタィムスケールではございますが、地震の予知にかなり貢献していると思われます。しかしながら、それはあくまでも長期、中期という言葉で表現されるような
地震予知への貢献でございまして、きょうとかあすとか二日とかというような短い時間スケールの短期予知になりますと、われわれの手段はどうしても繰り返しの観測であり、かつそれがあるタイム・インターバルを置いての仕事でございますので、なかなか短期予知には不向きであると
考えられる面がございます。
しかしながら、国土地理院の持っている技術で短期予知に貢献できるところはないかとわれわれの中で
考えてみましたが、たとえば駿河湾でございますと、駿河湾の両岸に検潮所をつくり、その検潮所の潮位差をとりますが、こういったものを自動的にとれるような仕組みを
考える、そういうような手段が短期予知に有効ではなかろうか。また、近年非常な勢いで発達しつつあります光の波を使って距離をはかる光波測量によりますところの測定をたとえば駿河湾をまたぐような二地点間で行い、理想を言えばそれを毎日観測することによりましてその長さの刻々の変化を知れば、短期の予知に有効ではなかろうかとか、いろいろなことがわれわれの役所の中で検討されております。そして、そのような
考えは測地学審議会
地震予知特別
委員会に諮りましたり、また、
地震予知連絡会の中の下部組織であります
先ほど申しました特定
地域部会あるいは東海
地域部会に
考えを述べることにより、他省庁のお
考えとも融和を図りまして、より一層わが国土地理院でも短期予知に貢献できるような仕組みをこれから精力的に
考えていきたいと思っております。場所を駿河湾だけに限りますと、その種の測量を、その種の計器を購入し、また技術
開発を行いやることになるとしますと、維持費とかそういったことはさておきまして、ごく粗っぽい見積もりで三億円ぐらいの額ではないか、そのように
考えております。