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1976-10-14 第78回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十四日(木曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 中村 重光君    理事 小沢 一郎君 理事 加藤 陽三君    理事 佐々木義武君 理事 宮崎 茂一君    理事 石野 久男君 理事 八木  昇君    理事 瀬崎 博義君       木野 晴夫君    松永  光君       山原健二郎君    近江巳記夫君       小宮 武喜君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田 正男君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     小山  実君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君         気象庁長官   有住 直介君  委員外出席者         国立防災科学技         術センター所長 大平 成人君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 仲村 英一君         資源エネルギー         庁長官官房参事         官       安楽 隆二君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   宮野 美宏君         自治省税務局府         県税課長    川俣 芳郎君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力安全性  確保防災科学技術及び原子力船むつに関する  問題等)      ————◇—————
  2. 中村重光

    中村委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 大臣にお尋ねいたしますが、大臣は先般、閣議の後で記者会見をなさって、その席上で官民懇談会構想というものをお述べになられたようでございますが、その基本的な構想といいますか、そういうものはどういうものであるか、ひとつこの際、お聞かせ願いたい。
  4. 前田正男

    前田国務大臣 いまのお話のことにつきましては、実は去る七月に総理大臣の私的な諮問機関でありました原子力行政懇談会が「原子力行政体制改革強化に関する意見」というものをまとめられまして、主として原子力安全委員会設置あるいは規制一貫化だとか、こういうようなことを提言されたところであります。それに伴いまして原子力開発利用の問題について、いろいろと基本的な考え方について国民コンセンサスを得る必要があると思っておりまして、この点についてはまた自由民主党においても一つ提言が行われておるわけでございます。  したがって、原子力開発については安全性確保ということが一番前提でありますから、この行政懇談会の言われております安全委員会設置、これはことしの一月にできました安全局とともに、また安全の研究をふやしておる現状等にかんがみまして、ぜひこれを実現しなければいかぬと思って五十二年度の予算概算要求科学技術庁から要望しておるところでございます。  しかし、そのつくりますに伴いまして、残りました行政機構をどうするかという問題とか、あるいはまた原子力推進関係の諸施策をどういうふうにやっていくか、こういうことがこの安全委員会分離に伴いまして起こってくることでございますし、また、前から原子力開発利用についていろいろと再検討その他十分な国民理解を得るような努力が必要ではないかというふうなことが言われておりましたので、この機会各界のいろいろな経験の豊かな方たちの貴重な御意見を承ることがいいんじゃないかと思いまして、主として原子力開発の基本的な構想について、私が中心になりまして皆さん方からの御意見を承る場をつくっていきたい、こう思いまして、第一回の会合は十月二十一日に開催する予定でおります。そしてメンバー方たちは、原子力委員の方が相当入っておりますけれども、いまのところ原子力委員の方を入れて十三人の方の御了解を得てあるわけでございますが、あとお二人ばかりは御旅行中でございますので、お帰りになりましたところで御了解を得まして、約十五人ぐらいの方の  あるいはもう少し加わることがあるかもわかりませんが、一応十五人前後というところで出発をしてみたい、こういう考えでおるわけでございます。
  5. 石野久男

    石野委員 原子力推進についての基本構想について各界意見を求めたい、そして大体十五人でつくる構想だと言いますが、その十五人の方々というのはどういう方々であるのか。そういう十五人の方々選定——これはもともと大臣諮問機関のようなものなんでしょうか、それとも何か行政的な一応の法的根拠を持つようなものなのかということが一つと、それから、そういう中に入れるメンバーは、理解があるといってもわかりませんから、どういうところからどういう人を入れるのかということについての大臣構想をひとつ聞かしていただきたい。
  6. 前田正男

    前田国務大臣 これは私的な諮問機関でも何でもありませんで、要するに私がお世話さしていただきまして、こういう方たちの御意見を承る場をつくっていきたい、こういうことでございます。  そのメンバーにつきましては、主として原子力委員長代理井上さんに御相談いたしたわけでございますけれども、井上さんの御意見といたしましては、従来原子力委員会がいろいろと相談をしてまいりましたその代表的な関係方々にお集まり願うことが一番いいのではないだろうか、原子力関係の方に御相談するのが一番いいのではないかということでございまして、ちょっとメンバーを読ませていただきますけれども、電力関係の方といたしまして、芦原義重さん、この方は関西電力の会長でございます。それから有沢広巳さん、これは日本原子力産業会議会長でございます。石原周夫さん、これは原子力委員会核燃料サイクル問題懇談会の座長でございます。井上五郎さん、御承知のとおり原子力委員会委員長代理でございます。大堀弘さん、これは前の電源開発株式会社の総裁でございます。茅誠司さん、これは日本学術振興会会長でございます。木川田一隆さん、これは東京電力株式会社会長でございます。吹田徳雄さん、これは原子力委員会委員でございます。土光敏夫さん、経済団体連合会会長でございます。中山素平さん、エネルギー総合推進委員会委員長でございます。新関欽哉さん、原子力委員会委員でございます。松根宗一さん、経済団体連合会エネルギー対策委員長でございます。向坊隆さん、原子力委員。そのほかにいま予定をしてお願いをしておるのは、稲葉秀三さん、新型動力炉開発部会部会長でございます。それからもう一人は向坂正男さん、これは日本エネルギー経済研究所理事長、このお二人を交渉中でございます。
  7. 石野久男

    石野委員 これは全く大臣の私的な相談相手をする懇談会のようでございますが、原子力開発推進という問題は、「むつ」の問題以来、その基本的な構想としてもう一度行政見直しから開発優先というような考え方でなくいこうじゃないか、一応「むつ」問題が出たときにそういうようなコンセンサスが、野党と与党との間にも、あるいは政府との間にも、できていたというふうに私は思っているのです。大臣が今度新しくその職につきまして、開発推進検討をしようというときに選ばれる懇談会メンバーが、いまのお話によりますと、ほとんどこれは開発推進に積極的な方々で、特に電力会社の方を中心としておる。それからまた学界等とか言われましても、ほとんど経団連等と関連もあり、私の見るところでは、もうここでは原子力行政見直しよりも積極的に開発推進ということを進めていこうという方々ばかりのようです。  むしろ、この際、原子力について非常に熱心には考えておるが、一つ問題があるのじゃないかという問題提起をしておる側の人々を入れないと、原子力行政というのはまた片肺の運営になってしまって、各地におけるところの原子力問題でトラブルを起こしている地域住民等意見というものは、ここでは全然入ってこないというような見方を私はします。もう少し前田大臣はそういう問題には目が通っているように私は思っていましたけれども、そういうことは全然考慮にありませんですか。
  8. 前田正男

    前田国務大臣 いや、そのことは考慮しておりまして、それについては、実はそういうことを含めました総理大臣の私的な諮問機関がありまして、そこにはお話しのとおりの各界の方が、あるいはまた地方の方も入られまして意見を出しておられるわけでございます。私たちは、その意見を受けてこれを具体化するのにいろいろと、御承知のとおり現在のところ、ダウンストリームの問題であるとかあるいは国の責任の問題であるとか、こういうふうな問題がございまして、今度はそういうことを実際にやっている方たちにこの行政懇談会の方から出てきました意見をどういうふうに具体化するかというのが今度の主な目的でございます。  いま石野さんのお話のような性格のものをもしつくるとするならば、この原子力行政懇談会を改組するか、あるいはまたこれはこれで置いておいて、別に総理大臣私的諮問機関として広い範囲の御意見を求めるようなものをつくるかしなければならぬわけだと思いますけれども、私たちは、この総理大臣私的諮問機関である原子力行政懇談会のところへ各界の御意見が反映されて出てきましたものを実現していく。それについて、まず第一に、科学技術庁としては、その御意見に従って原子力安全委員会設置予算を該算要求する、こういうふうなことをいたしておりまして、その意見を実際に担当しておる方たちにどういうようにしてこれから実現していったらいいか、そういう基本構想を今度の場合のものはまとめるためのものでございます。もちろん、これは総理大臣にも御報告するし、各関係官庁にも報告するし、また、党を初め関係の方にも御報告しまして、いまお話しのような各界意見を反映したようなところでまたそれについて御批判を受ける、こういう考え方であって、今度はそういう広い意味の御意見を反映した意見をまとめていくというよりか、こういう原子力安全委員会というものを広い意味で、いろいろと出た懇談会意見をどういうふうに実際に推進する人が実現していくべきであるか、そういう構想をまとめていこう、主に原子力関係してきた担当方たちの御意見を聞いてまとめていこう、こういうことでございまして、石野さんのおっしゃっている趣旨と今度の趣旨はちょっと違うわけでございます。
  9. 石野久男

    石野委員 原子力開発推進に対する基本構想ということですから、やはり原子炉なりあるいは原子力開発に対する行政機構的な問題が一つと、それから科学的な側面における問題点と両側面があると思います。その両面にかかわる問題が、言うなれば皆さんの方からする関係トップクラス人たちを集めて一層強い姿勢を示すということに利用されるのではないだろうか、こういうふうに私は理解いたしました。しかし、実際に問題の起きる地域住民理解、いわゆる原子力基本法民主公開という側面がどうもやはり足りないのじゃないかということが大きなネックになっておる。そのことは、原子力船むつ」の問題でもうすでにはっきりとつかんでいらっしゃると私は思いましたので、せっかくこういう懇談会ができればそういうようなことに対する問題をどういうふうに取り扱うのかなと思いました。しかし、大臣の話はそうじゃないんだそうです。  それにしましても、問題は、いま機能的なものと機構的なものと両側面をしっかりとつかまないと、原子力はなかなか住民理解を得てスムーズに進まないだろう、こういうように思います。とにかく、これは大臣が私的に設けるものでございましょうから、われわれとかく言うだけのなにはありませんけれども、しかし、そのことは十分注意してもらわなければいけないだろうと私は思います。
  10. 前田正男

    前田国務大臣 御意見のとおりに、私たちも十分に注意していきたいと思っておりますが、今度の問題は、たとえば安全の委員会をつくるということになりましても、安全委員会というのは御承知のとおり審議をする委員会でございますから、行政事務は局があり研究をいたしておりますけれども、しかし、やはり最近の問題は、この安全問題一つとりましても、そういう局と研究だけじゃなしに、ダウンストリームの問題なんかについてもっとしっかり検討しなければいかぬじゃないかという内外に世論もございまして、実際に担当する諸君に、こういう行政懇談会で出てきました安全を重視してやれという、これは各界意見が入っておられますし、また地方意見も入っておりますが、そういうことを実際に担当する側の方でどういうように構想をまとめていくか、こういうためのものでございますから、そういう点は石野さんの御注意を受けて、できるだけ実務担当するトップクラス諸君にひとつよく考えてもらいまして、これをどういうふうに実現していったらいいか、そういう基本構想についてなるべく忌憚のない意見を述べてもらって、そしてそれをわれわれの行政の参考にしていきたい、こう思っておるわけでございます。
  11. 石野久男

    石野委員 いずれにしても、懇談会大臣が自分の意思をまとめるために必要なものとしてつくられるのでしょうが、その点の運用について、特に民主公開というようなものが原子力行政の中には非常に欠けている、こう私は思っておりますから、そういうものをこの懇談会が十分に取り上げられるように望みたいと思う。しかし、メンバーを見ますとそれはなかなか期待薄なようですね。逆に開発優先推進という形になってしまうのじゃないかという危惧を持っているということだけ申し上げておきたいと思う。  そこで、すでに行政懇等が勧告ですか、総理に対して報告もしております中に、原子力委員会をどういうようにするかという問題があり、原子力安全委員会構想も出ておるわけですが、やはり原子力委員会を二つに割って、早急に原子力安全委員会設置することが必要だという意見が出ておると思います。しかし、政府はそれをどういうふうに扱われるのか、また、与党との間にずいぶん問題もあるように聞いておりますが、早急にそれを設置する意思があるのか。また、来年度予算の中にそのことを具体化するだけのなにを持っておるのかどうか、この際、お聞きしたいと思います。
  12. 前田正男

    前田国務大臣 早急に実施するということでございますし、政府は尊重するということですから、すでに原子力委員会におきましてもその安全委員会設置するということをもう決定いたしまして、そして科学技術庁から正式に五十二年度の概算要求の中に原子力安全委員会設置したいということで大蔵省にも提出しておりまして、このことについてはわれわれの党の中におきましても一応了承しておるわけでございます。  ただ問題は、やはり安全委員会分離しただけで、それじゃ原子力懇談会の提唱された意見が十分に実現できるかというと、そうじゃないのじゃないか。ここの問題にもありますように、規制一貫化の問題とか、あるいはそれに対する対応策として推進していくところの各機関がどういうように考えていくかとか、こういうような問題点が実は残っておりますので、そういう委員会分離して設置するということはすでに決めておりますけれども、それに伴います今後の問題は一体どうするかということを基本的に実務担当トップクラスの方の御意見を承りまして、これをひとつ原子力行政担当する科学技術庁としても施策に反映していきたい。  しかし、これは科学技術庁だけの所管の問題ではございませんで、通産省とかその他各省にわたる問題もあると思いますけれども、一応原子力安全委員会分離するということを予算要求いたしました科学技術庁がそういう構想をまとめて、そして政府部内の関係の方面に諮っていくのが責任じゃないかと思いまして、一応私の方で原子力安全委員会分離に伴うその後の、この行政懇談会の要望されたような事項を実現していく方向について具体案をまとめていきたい、こういうのが今度の懇談会構想でございます。  いまお話がありましたように、原子力安全委員会はすでにつくるということで予算要求をしておるわけでございまして、いずれこれは国会の御審議を願わなければならぬ事項でございます。ぜひひとつ国会の方におきましても御賛成を賜りたい、こう思っておるわけでございます。
  13. 石野久男

    石野委員 この原子力安全委員会の問題についていま一つお聞きしておきたいのですが、行政懇がいろいろな要請をして、それに応じて政府安全委員会設置するということの意思決定をしておる。当然これは法案を提出するということになるのでございましょうが、法案提出についての準備とそれの進捗の状況はどういうふうであるかということも、本委員会としては非常に関心を持っているところです。いま政府はどの程度までそのことについての準備を進めておられるのか、この際、お伺いしたいと思います。
  14. 山野正登

    山野政府委員 行政懇提言をいかに具体化していくかということにつきましては、内閣に原子力行政体制改革強化推進連絡会議というものを設けまして、副長官会議を主宰して今後この具体化についての検討を進めていくということになっております。したがいまして、私どもといたしましても、この行政懇趣旨をできるだけ尊重していくという方針に基づきまして、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、この安全委員会の創設あるいは事務局における安全規制強化といったような具体策検討しておる段階でございますが、これらはまだ各省庁において事務的な検討をしておる段階でございまして、いずれ各省庁の成案が得られますれば、これを先ほど申し上げました連絡会議に持ち寄って相談を進めていくということになろうかと思いまして、現在細かい詰めを行っておる段階でございます。
  15. 石野久男

    石野委員 科学技術庁としては、この委員会ができれば主管官庁のようなことになるのだろうと思いますけれども、おおよその構想を持たれておるのだろうか。聞くところによると、この安全委員会をつくれば、当然のこととしてチェックの仕方がダブった形でダブルチェックをその内容とするというようなことがあって、科学技術庁自身は、現行法を一部改正することによって間に合わせようという考え方があったのだということも聞いているわけですよ。しかし、それではまずいということで、提言に従うような分離方針を出していくということになりますと、やはりこの安全委員会設置することについての基本的な考え方ががっちりと科学技術庁にできていませんと、法案の骨子というものはなかなか詰めにくいのじゃないか、こういうふうに思います。     〔委員長退席八木委員長代理着席〕  大臣、そういう世間に伝わっているように、原子力安全委員会設置するに当たって、科学技術庁自身が持っておられる現行法の一部修正でいいのじゃないかという考え方をお持ちのままそういうものに入り込んでは、これはなかなか趣旨が徹底しないと思いますけれども、そういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  16. 前田正男

    前田国務大臣 そういうことはお話しのとおりでございますから、この行政懇の言われておりますことをなるべく実現するようにわれわれはやっていかなければならぬのじゃないか、こう思います。安全委員会設置に伴う構想は、すでに概算要求に出ておりますように、大体九人ぐらいの委員でやりたいという一応の案を出しておりますが、まだこれは各省とも詰めなければなりません。一応科学技術庁としての案を出しておりますし、それに伴う大体の考え方科学技術庁としてまとめておりますけれども、各省相談しなければなりません。しかし、いまお話しのように、行政懇意見というものをなるべく実現していくのには、単に設置するだけでなしに、ダブルチェックの問題、いろいろの問題がございますから、それを今後どういうふうに行政機構に反映するか、あるいは推進母体に反映するかというようなこともこれからの検討事項じゃないか、こう思っておるわけです。なるべく私たち行政懇談会の結論に沿うように善処していきたい、こう考えておるわけでございます。
  17. 石野久男

    石野委員 これは「むつ」の問題を軸にしまして、原子力行政が非常に開発優先側面が強かったために出てきた欠陥だという批判当局者自身にもあるいは一般にももう一つの常識としてできておるのですから一当然原子力行政についてはこのとうとい経験を生かすことが常に当局、特に政府の中になければいけないと思うのです。しかし、全体としまして、石油ショック以来、代替エネルギー原子力だということで、一時はそういう反省があったやに見えますけれども、その後の原子力行政を見ておりますと、どうもそれは見せかけのようなものであって、実質的にはそういうことを抜きにして開発開発へという傾向が見られるように思います。  大臣が就任して早々に放射性廃棄物対策というものについて、従来からそれは検討なさっていたことだと思いますけれども、一つ構想ができたということが言われており、また記者会見などでもいろいろな発表をなさっておられます。この廃棄物処理の問題というのは、実際の処理自体も問題がありますし、原子力産業が果たして経済的にペイするかどうかの問題に関連して非常に重要な内容も持っておると思うのです。放射性廃棄物対策の基本的な問題をどういうところに置いておるのか、そういうことについてひとつ。
  18. 前田正男

    前田国務大臣 この重要性にかんがみまして、原子力委員会として十月八日に対策方針決定したわけでございます。特に高レベル処分につきましては国が最終責任を負うというような相当重要な内容を持ったものをいろいろと検討しておった経過もありますけれども、この機会にひとつ決めた方がいいのじゃないかということで原子力委員会として決定をしたわけでございまして、詳細は局長から説明します。
  19. 伊原義徳

    伊原政府委員 放射性廃棄物対策につきましては、これは非常に重要な問題である、原子力開発利用推進を図る上での不可欠の課題であるということは、大方の御認識をいただいておる問題でございますので、原子力委員会といたしましては、昨年七月に放射性廃棄物対策技術専門部会設置いたしまして、なおその前に環境安全専門部会でもいろいろ検討しておったわけでございますが、それを受けましてこの技術専門部会でいろいろと技術的な検討を行い、かつ、関係各界の御意見も十分伺いました上で、特に処理処分体制を整備しなければいけない、それから国と民間との協力の分担のあり方についてはっきりさせなければいけない、こういうことで、十月八日に基本的な考え方を御決定いただいたわけでございます。  その概要は、まず原子力施設において発生いたしますいわゆる低レベル放射性固体廃棄物の問題につきましては、これは当面、原子力事業者施設内での保管で十分対応できると考えられるわけでございますけれども、今後発生量が非常に増大してまいるものでもございますので、最終的な処分といたしまして海洋処分及び陸地処分、この両方の組み合わせを考えるということでこの関係研究開発実証試験を十分行う、こういう考え方でございます。これを進める体制といたしまして近く原子力環境整備センターというものが発足するという見通しになっておりますので、官民協力してこの問題を解決してまいりたいと思います。  それからいま一つ使用済み燃料の再処理施設で発生いたしますいわゆる高レベル廃棄物でございますが、これはまだ日本にはないわけでございますけれども、動燃事業団の再処理工場がいわゆるホット運転を開始いたしますと、その時期から出てまいるわけでございます。これは当分の間は慎重な配慮のもとに施設内で保管をいたすわけでございますけれども、当初、液体状で出てまいりますものを永久処分に適した形に固化をするという問題もあるわけでございます。そこで、そういう処理の問題と永久処分の問題の二つにつきまして、基本的な考えといたしまして、処理は再処理事業者が責任を持って行う、処分は最終的に国が責任を負う、こういう考え方で整理をいたしております。ただし、その場合にも、処分に必要な経費はやはり発生者負担の原則ははっきり確立する、こういう考えでございます。なお、このためには研究開発実証試験が必要でございますので、その関係も今後十分充実してまいりたいと考えておる次第でございます。
  20. 石野久男

    石野委員 現状を見ておりますと、廃棄物処理対策なり処分対策というものがまだ明確に確立されていない間に、その処理の対象になる廃棄物が非常にたくさん各地に出てくるという現状であることは、もう私が言わなくても皆さんおわかりのとおりなのです。そこで、各地におけるところの廃棄物の処理は、各発生元である電力会社がすべて安全に保管するということについての対策、それからまた、各電力会社の稼働率がどんどん進めば進むほどそういうものはたくさん出てまいりましょうから、そういうことに対する安全保管の見通しの問題等について、政府は自信がありますか。
  21. 伊原義徳

    伊原政府委員 とりあえずの原子力施設内での保管については、現在のところまだ十分余裕がございますし、さらにはその周辺に対する影響が絶対にないようにいろいろ手も打っておりますので、そういう意味では、とりあえずのところは、これは地元で周辺の環境に影響を与えるような問題が発生することはないと考えております。
  22. 石野久男

    石野委員 とりあえずはないと言われることは、絶対に安全だということともちょっと違うと思うのですが、そのようなお考えを持つについて、各発生元である事業所、発生会社等に対して政府は特にどういうことを注意されるお考えでございますか。     〔八木委員長代理退席、委員長着席〕
  23. 伊原義徳

    伊原政府委員 この問題につきましては、一般的にその技術の開発をいたしますことと、取り扱いの基準等を定めますこと等があることのほかに、個々の施設についての規制というものが必要でありますが、これにつきましては、施設の許可から工事の段階等におきまして十分な監督をいたして安全な施設をつくらせるということのほかに、保安規定等におきましてこの管理の確実な遂行を十分に行わせるということで実施をいたしております。そういう観点からいたしまして、私どもといたしましてはこの施設における保管には問題はないと考えておる次第でございます。
  24. 石野久男

    石野委員 原子力については、いままでの例で見ますと、事故なり故障なりが起きましたときに、一般の人々、周辺の人々に対して一番不安感を与えているのは、それの上部に対する連絡なり通報がいつも怠られているということ、それがしばしば具体的に事実となってはっきりしてきているということだと思うのです。炉自体の機構的なものからくる問題についての解明をひとつ徹底的にやらなければならぬことがありますが、同時に、運転なり運営の過程で出るそういう事故や故障を一般に周知徹底させるということをことさらに恐れているというようなことのために、隠蔽している、情報をなるべく外へ漏らさないようにしようという構えが、原子力に対する一般の不安感を増大させている大きな原因になっていると私は思うのです。保管管理の問題では、具体的にそのものを保管管理する以外に、そういう一般への不安感を増大させるような、隠れた形で処理するということをもう少しなくさなければ、開発推進の問題もうまくいきませんし、それから安全性の問題に対してもやはりはっきりした対策は立ってこないだろう、こう思うのです。そういう点がどうもやはり政府は欠けているのではないかというように私は思いますけれども、この廃棄物処理の問題について、そういう問題をどういう側面からうまく埋めていくかということは全然考えていませんか。
  25. 伊原義徳

    伊原政府委員 先生の御質問の御趣旨が、事故などがあったときに通報あるいは一般への周知が十分ではないのではないかという御指摘であるといたしますれば、これは私ども、この実態を少し説明させていただきますと、法律に基づきます事故の報告という義務が原子力施設設置者にあるわけでございますが、現状におきましては、法律に基づくよりも非常に軽微な例が非常に多いわけでございます。そういう軽微なものにつきまして、これは法律上は特に報告の必要はないものにつきましても、実際の運用といたしましては、私どもといたしましてはそれはすべて実質上報告をしていただくということにいたしております。また、そういった軽微なものにつきましても、報道機関への連絡、発表はいたしておるわけでございます。  そういうことで、運用上一公開と申しますか、周知徹底というのは十分実施いたしておるわけでございますので、そういう観点からして、いろいろ不安があるというふうなことは万々一ないと思いますし、もしそういうことがあるとすれば、今後さらにそういう考え方を徹底させていきたいと考えておる次第でございます。
  26. 石野久男

    石野委員 廃棄物対策について、経費は発生者負担ということだそうですか、特に長期にわたって保管をしなければならない。保管の責任は国がとるけれども、その経費はということになりますと、長期にわたる保管のための経費というものをどのところの機関、民間が負担するか。たとえば、何百年も何万年もというような保管をしなければならないような、いわゆるプルトニウムだとか何かというような非常に半減期の長いものなどの保管というようなものについての経費負担等についても民間でというようなことなのですか。
  27. 伊原義徳

    伊原政府委員 民間と国との責任の接点と申しますか、ある時点で民間が保管しておりますものを国が受け取る時期が当然あるわけでございます。その時点におきまして、それ以後のいわゆる永久処分に必要な経費を国がいただくという考え方でございますが、その計算の仕方をどうするか、これは先生御指摘のようになかなかむずかしい問題が含まれておると思います。ただ、この考え方はわが国だけではございませんで、諸外国の例を見ましてもやはりそういう考え方で、その引き取る時点において、それ以後に必要な経費を考えましてそれを徴収するというような考え方でございますので、諸外国の例も十分参考にいたしまして、さらに今後の事態の発展等を考えまして、合理的な処理をいたしてまいりたいと考えております。
  28. 石野久男

    石野委員 経費の問題についてどういうふうに見るかということは、ある一定の時点ということだそうですからそれは検討してもらうとしても、低レベルにしても高レベルにしても中レベルにしても、処理処分の問題ではそれぞれまだ技術的に確立されていないものが非常に多いと思います。当面、高レベルのものの処理処分についてどういうような考え方を持っておるのか、また見通しはどうなのか、まず高レベルのものからお考えを聞かせていただきたいと思います。
  29. 伊原義徳

    伊原政府委員 再処理工場から出てまいりますいわゆる高レベル廃棄物は、当初液体の形でございますので、これは数年間タンク貯蔵をいたすわけでございます。その間に崩壊熱が発生いたしますのを冷却しながら保管するわけでございますが、ある時期を経ますと、これを固化するということが可能になってまいります。液体状で置きますよりも固体状にいたしました方が周辺への影響が格段と少なくて済むわけでございますので、固化をいたすわけでございます。この方法も、世界的にいろいろな方法が開発されております。わが国におきましても、そのいろいろな方法の中の一番適当なものを選びまして、これはかなり先になるかと思いますが、これを実施することを考えております。これは再処理事業者が行うということで整理いたしております。もちろん、この技術の開発と実証は、国の関係機関が十分その開発はいたさなければならないと考えております。  固化をいたしましてある程度貯蔵いたしますと、永久処分が可能な時期になるわけでございます。したがいまして、その時点で永久処分場に運ぶということが次に起こると考えられます。この永久処分場におきます永久処分、これは国の責任で実施するということで考えておりますが、永久処分の方法につきましては、世界的にもいろいろな可能性が追求されておりまして、いわゆる地層処分というものが今後行われることになると考えられるわけでございます。この地層処分につきまして、わが国におきましても、わが国の国情に合った地層処分の方法を今後開発し、さらに実施をしてまいる考えでございます。
  30. 石野久男

    石野委員 そういうわが国の現状にかんがみてということについてですが、いまのところは一定の見通しはお持ちになっておられるのでしょうか。そしてまた、その地点というのはどういうふうなところをおよそ考えられるのか、そういう点はどうですか。
  31. 伊原義徳

    伊原政府委員 この実施につきましては、技術開発実証試験を伴うものでございます。そういうことでございますので、原子力委員会の基本方針におきましても、今後の技術の進展等において適宜見直すということで、その時点時点の実態に合った考え方でまいりたいと考えておりますが、現在その試験研究計画あるいは実証計画の大綱につきましては、先ほど申し上げましたように、放射性廃棄物対策技術専門部会であるお考えをいただいておりますので、これらを今後十分検討いたしまして、実施に移してまいりたいと考えております。
  32. 石野久男

    石野委員 そういうことが具体的に実りのあるものになってくるような時点は、大体どのくらいの時日を必要としますか。
  33. 伊原義徳

    伊原政府委員 たとえば低レベル放射性廃棄物につきましては、昭和五十年代の中ごろ、もう少し詳しく申し上げますと、海洋処分につきましては、昭和五十三年度ごろから数年をかけて実証試験をする、陸地処分につきましては五十年代中ごろから実証試験をする、こういう考え方でございます。この実証試験が終了いたしまして、十分その安全性が確認された段階で本格的な処分を行うという考え方でございます。  それから、高レベル放射性廃棄物につきましては、今後三年ないし五年の間に処分方法の方向づけを行いまして、昭和六十年代にこの実証試験を開始する、こういう考え方でございます。
  34. 石野久男

    石野委員 これは後々のことでもございますが、その間の廃棄物の発生量皆さんのは、そこでは再処理工場が正常運転をしておるということを前提にしてそういうことになるのだろうと思いますが、いずれにいたしましても、原発が各地で稼働しておる、あるいはまたアイソトープなどの利用が至るところで行われておるということになりますと、それぞれの地点から低、高レベルのものが相当量出してくると思います。そういうものと、この処理あるいは処分のものとが同時並行的に進まなければいけないだろうと思いますが、わが国で地層処分をするような適当な場所は、現在大体見当がついているのですか、どうなんですか。
  35. 伊原義徳

    伊原政府委員 地層処分の問題につきましては、世界的に申しましても、岩塩層あるいは花崗岩層、玄武岩層、粘土層、そういったものにつきまして、各国それぞれ国情に応じていろいろの考え方のもとに調査をいたしておる段階でございます。わが国におきましても、わが国の国情に合いました地層を調査いたしまして、そこで十分な実証試験をするということが必要であると考えております。
  36. 石野久男

    石野委員 必要であることはわかっているのだが、わが国でもそういう適切な地層があるのかどうなのかということなんです。
  37. 伊原義徳

    伊原政府委員 先ほど申し上げました処分の方法の方向づけというのが、そういうわが国に適した地層処分の適地を見つけて、その処分の方法を開発、実証するということでございますので、私どもといたしましては今後その方向で努力をいたしたいと考えております。
  38. 石野久男

    石野委員 私がいま聞いているのは、とにかく処理処分をしなくちゃならない放射性廃棄物は日ごと日ごとに累積していくわけですよ。それに対して対策を立てることもわかります。ところが、最終的には、固化された高レベルのものは地層処分をするんだということになれば、わが国のどこでそれをやるのか。国内ではいろいろ検討を加えるけれども、そういうところはないんだ、それで国外へ持っていくんだというようなことなのか。国内にあるとすればどういうところなのかということを、その見通しもないままやりますと、それこそこれはトイレのないマンションをつくるようなものと同じになってしまいますからね。そういう見通しがあるのかどうかということを聞いておる。
  39. 伊原義徳

    伊原政府委員 特に廃棄物の中でも高レベル放射性廃棄物が、先生御指摘のように問題かと思いますが、この高レベルの廃棄物は量が非常に少ないものでございまして、大体百万キロワットの原子力発電所を一年動かしまして出てまいりますものは、最終的な量といたしましては二立米から三立米と言われております。そういうことでもございますので、高レベルにつきましては量が非常に少ないということで、どんどんこれが累積してという問題は、むしろ低レベルの問題であろうかと思います。  しかしながら、この高レベルの廃棄物の処分は、世界的にもいろいろ重要問題として研究されておるわけでございますので、私どもといたしましては、世界各国の情報も十分入手いたしまして、その知見、技術も取り入れた上で、十分わが国の事情に適した処分をいたす所存でございますが、技術的には、この地層処分の問題というのは大体見通しがついておるというのが、世界的な専門家間の意見でございます。
  40. 石野久男

    石野委員 回りくどいことを言わなくて、私の聞いているのは、別に高レベルのものが低レベルのようにたくさん出てくるというようなことを言っているのと違うのですよ。高レベルのものは量は少なくても、しかし危険性は強いわけですし、長期にわたるものなんだから、やはりどこだってこれを重要視しているわけなんです。したがって、それを技術的に処理処分する方法がはっきり確立されているといま局長は言うけれども、この問題についてはまだまだ問題が非常に大きいわけですよ。しかも、それをどこへ格納するのか、どこへ保管するのかという問題がどこでも問題になっておるわけです。わが国でたとえば地層処分するのであれば、地層処分するような目安はついているのかどうか。ないならないでいいのですよ。私は別にないものを無理にあると言ってもらいたいということで聞いているわけじゃないんだから、見通しがあるならあると言ってほしいし、それはないけれどもこれから何とかするんだということなら、そういうことがはっきりすればそれでいいのですよ。
  41. 伊原義徳

    伊原政府委員 地層処分の方法、場所につきまして、現時点におきましてどこの地点ということが決定しておるわけではございません。したがいまして、今後わが国の適地を調査し、そこで実証試験を積み重ねていく必要がございます。
  42. 石野久男

    石野委員 適地を見つけ出すというようなことを言われますけれども、適地がなければ結局処理したところへ置いておくということにもなるわけですよ。それで、ビルをつくってその中へ保管するのかどうか知りませんけれども、とにかくいずれにしても、原子力問題については、エネルギー発生という問題では人類に対して非常に有用な効果を出していますけれども、そこから出てくる廃棄物は人類の生活に非常に危険なんだということで、問題が起きているわけなんです。したがって、私どもは、この問題のいわゆる後処理として処理処分という問題をどこでどういうふうにするかということか問題なわけなんです。あるいは海底に深く沈めてしまうというようなことも一時考えられたけれども、それもなかなかいろいろまた問題が出てくる。結局は岩塩層の中に入れてしまった方がいいだろうとか、いろいろなことがありますけれども、しかし、日本のように地震が多くて、ここはいいなと思うところがやはり地震の巣であったりしていたのでは困っちゃうわけですからね。そういう見通しがないままに幾ら対策があるとかなんとか言っても、安心感が出てこないでしょう。だから、そういう意味で、あなた方がいま廃棄物に対する処理処分をやるについては技術的な開発はこうします、最終的にはこういうところにこういうふうにするのですというようなところをはっきり言えば、一般の人々はその時点では少なくとも安心感が得られる。ところが、どこを探してみてもいまのところはそういう適地はなさそうだ、これから検討するんだというようなことでは、どうするのだろうかという不安が出てくるのじゃないですか。そこのところをはっきりしてほしいということですよ。
  43. 伊原義徳

    伊原政府委員 高レベル廃棄処分につきましては、先ほども御説明申し上げましたように、国際的にも協力をいたしまして、これが適切な処分が可能であるという地層処分実証試験を共同で行おうという動きが現在出ておるわけでございます。そのような国際的な情勢も踏まえまして、わが国におきましてもそれらの知見なり実証の結果を十分活用いたしまして、国内において適地を選定いたすということは十分できると考えております。
  44. 石野久男

    石野委員 いずれにしても、いまのところは見通しはないのだというようなことが大体わかります。いまから一生懸命探すのだということのようですから、やはりそういう時点であるならば、余り危険なものをどんどんつくり出すような開発問題を考えなければいかぬだろうというふうに私は思いますので、しっかりひとつ一般の国民が安心して、ああいいんだなというふうになるような答えを早く出してくださいよ。私たちの心配しているのは放射能そのものを心配しておるのではないので、放射能がわれわれの体にくっついてくるということを、被曝することを心配しているのです。それがなければ、どんなことをやられたって構いやしませんけれども、そこに不安感があればだれも安心してあなた方の意見についてきませんよ。  被曝の問題ですが、現実に原子炉がどんどん開発されていく、そこで労働者が働いてエネルギーをつくり出している、そういう問題について、現場で働いておる労働者の中にもだんだんと被曝の線量が多くなってきているというようなことで、当面一番直接的な関係を持っている電気労働者の諸君から、何とか労働者の被曝線量が少なくなるようにということの要請がしばしば政府に対しても行われている。私もさきの国会予算なんかでも聞きましたが、電労連の橋本会長が十三万三千人の労働者を代表して原発の被曝低減方について申し入れを行われた。実際に皆さんの把握している労働者の被曝現状というものはどういう状態なのですか。最近の状況はどういうふうになっているか、その点をひとつ説明してください。
  45. 伊原義徳

    伊原政府委員 原子力発電所の事業従事者の被曝状況につきましては、たとえば昭和五十年度の被曝の実績で申し上げますと、従業員の数は約一万六千人でございます。平均の被曝の線量が年間〇・一二レムとなっております。したがいまして、この従業者と平均被曝線量との積と申しますか、総被曝の線量は、いわゆる人レムで申し上げまして約五千人レムとなっております。
  46. 石野久男

    石野委員 この人レムは逐年ふえていきます。したがって、そういうことをどういうふうにしてなくするかということでは、かねがね電労連の方も要請をしておるし、皆さんの方も電気事業者に対していろいろな指示をしていると思いますけれども、当面、人レムを減らすための対策、そういうものをどういうようにしているかということをひとつお聞かせ願いたいのです。  ちょっとその前に、大体五千人レムというような被曝の状況ですが、その中で、事業所に働いている労働者と、それからいろいろな関係で下請の方々が入りますが、その下請労働者の被曝線量の実態あるいは比というものはどういうふうになっているかもひとつ。
  47. 伊原義徳

    伊原政府委員 先ほどの五十年度の被曝実績で申し上げますと、社員に対します平均被曝線量が年間〇・三レム、請負につきましても〇・三一レムとなっております。これにつきましては、従来からほぼ似た傾向かと思われますが、最近は社員数の増加よりも請負の増加が少し多いということがございますために、平均被曝線量につきまして、従来は社員の平均被曝線量が請負を上回っておりましたが、最近はいまのようにほぼ同じあるいはわずかばかり請負が上回る発電所も出てまいってきております。ただ、この〇・三一と申しますのは、いずれにいたしましても許容被曝線量に比べますと非常に低いところに抑えられておるというのが現状でございます。  それから、先ほどのこの被曝線量の低減化についてどういう対策を立てておるかという御質問でございますが、現在作業の自動化、遠隔化あるいは作業に対する遮蔽の改善といったものを推進しておるわけでございまして、さらに基本的には設計の当初からこの辺の配慮もいたしまして新しい発電所を建設するというふうなことも、当然配慮いたさなければならないと考えております。そういうことで将来にわたって長期的に被曝の低減化に努力してまいりたい、こう考えております。
  48. 石野久男

    石野委員 問題は二つになっておりますけれども、最初の本工員と下請労働者との比が漸次下請労働者の被曝線量がふえてき、人レムの面でも非常に大きくなっている。ここでは私は持ち時間の関係で余り細かく言えませんけれども、下請の労働者の被曝線量が多くなってきていることについては、労務管理の問題あるいは放射線に対するやはり警戒をすべきいわゆる作業管理、そういうような問題があるのだということを常に指摘してきています。特に、それを管理するために被曝手帳を皆各労働者が持っておる。この被曝手帳を完全に管理するということによってやはり下請労働者の放射能に対する警戒心を高めさせるようにしていきませんと、これは作業を進めようとする事業者の意欲だけで進めていったのでは、しまいには原子力産業労働者というものの確保すらできなくなってくるのじゃないか。最後には原子力技術者までもなくなってしまうという危険性がもう見え透いているように思われます。そういう意味でこの被曝手帳の管理監督という問題をしっかりやらなければいけないと思いますが、これについてどういうような対策をとっておりますか。それからまた、この労働者の被曝について、労働省の方がおいでになっていると思いますけれども、労働省から私は資料をいただいておるのです。数字を細かく申しませんけれども、科学技術庁や通産省あたりで出している労働者の被曝の現状とそれから労働省が出しているのと数字の上ではどうもやはり労働省の方が少ないのですね。それはなぜだと聞くと、労働省は保健所等を通ずるものだけしかよう掌握していない、こういうことのようです。それならそのようなことになるのは無理はないと思うのですが、労働省が労働者の健康管理あるいは作業管理、労務管理というようなことをやるについては、ただ保健所を通じて管理するということだけでは、これはもうほとんどなっていないと思うのです。  そういう点について、これでいいのかどうかという問題についてもひとつ労働省の意見も聞きたい。それから科学技術庁の方でも、あるいは通産からもおいでいただいていると思いますが、通産省の諸君が直接労働者の被曝管理、被曝を何とかして少なくしようとするための対策をどういうふうにしているのかを、それぞれの立場でひとつお話を聞かしてもらいたい。
  49. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいま先生御指摘のように、労務管理が非常に重要であるというのは、まさに私どももその観点からいろいろ事態の改善を図らなければいけないと考えておるところでございます。さらに、従業員の教育も十分徹底いたしまして、できる限り作業条件の改善による被曝量の減少というものを図ってまいらなければいけないわけでございます。たとえば被曝手帳の管理にいたしましても、いろいろ技術を改善いたしまして、自動読み取りの技術を導入するとか、あるいは手帳の管理のシステムを合理化する、こういうふうなことを各発電所で、それぞれ技術的にもいろいろ横の連絡もとりながら改善を図っておる次第でございます。
  50. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先ほど先生御指摘の被曝数値に差があるというようなことでございますが、これは私ども労働省では、統計としましては、第一線の労働基準監督署に提出された定期の健康診断の結果報告に基づきまして作成いたしたものでありまして、そのために対象の方々が法令に基づきまして電離放射線に関します定期の健康診断の受診者であるというような点、これは管理区域に立ち入った者全部ではないというようなことと、それからまた、定期の修理等、非常に短期に作業した方々についても含まれておらないというようなところにあろうかと思っております。  ただ、この被曝の管理につきましては、原発関係の事業所につきましては、私どもはかねてから重点といたしまして、定期的に監督を行っておりまして、その被曝の状況を確かめるということを中心にいたしまして、その他の法令違反の有無について厳重なチェックを行っておるところでございます。また、この監督等に際しまして、特に多くの被曝を受けた者につきましては、十分の管理を行うように指導をするというような措置を進めておりますけれども、今後とも被曝線量の基準の遵守等の放射線障害の予防上の必要な事項につきましては、関係行政機関とも連絡をいたしまして手落ちのないようにいたしていきたい、こういうふうに考えております。
  51. 武田康

    ○武田政府委員 通産省といたしましても、作業被曝の低減対策につきましては、非常に大切な問題と認識しておりまして、そういう観点から原子力発電所の作業者の被曝低減のために補修作業の自動化とか、あるいは遠隔化、また遮蔽等の被曝防止対策、さらに作業者の教育、訓練などにつきまして、今後とも科技庁などと御協力しながら、現地事業所を十分指導していくつもりでございます。  なお、先ほど伊原局長からも設計の段階からの改善というようなお話もございましたが、私どもといたしましても自動化、遠隔化等によります保守点検作業の的確化、あるいは機器の信頼性の向上というような問題を踏まえまして、設計、原子力発電所の改良標準化というような勉強を進めておりまして、こういった勉強の成果が出ますと、自動化、遠隔化等によります保守点検作業の的確化等を通じまして、作業者の被曝低減にも役立つというふうに考えている次第でございます。
  52. 石野久男

    石野委員 労働者の被曝低減については、炉そのものの設計変更までも必要になってきている時点ですから、これは通産省が科学技術庁などとの話し合いの中で、積極的にそういうような指示、指導をする必要があると私は思うのです。それにも増して、現状では労働者の被曝線量が漸次ふえていくということの心配が多い。そうなりますと、通産省が現場監督をしている以上に、労働省が労働者の健康管理、被曝線量低減の積極的な対策をとらなければならない任務があるように私は思うのです。いまのお話では、労働省が定期的に被曝状況の調査を事業所から聴取しているということですけれども、先ほど来質問もいたしておりますように、実際には下請に働いている労働者というのは、案外に放射能被曝の危険性というものはわかったようでわからない。わからないうちにそういう状況の中にどんどん入り込んでいっているのが実情なんです。そして、その時点で直接の障害を身に感じなければ、被曝しておっても知らぬ顔して出てくる、こういう実情ですから、先ほど通産省からお話のあったような教育の問題も非常に大事ですが、それは通産省の教育よりも、むしろ労働省がもっと積極的にそういう労働者教育というものをしていく必要があるし、それから現場に入ったときに調査する調査の仕方が一つあると思うのです。通産省や科学技術庁はむしろ推進の側に立っておりますけれども、労働省の方は労働者の健康管理、保護という立場で向かわなければならないだろう。そうなりますと、ただ定期報告を聞くというようなことだけではこれはとてもだめなんで、むしろ立入権などというものも確立することによって管理監督を十分にする必要があるのではないか、こういうように思いますけれども、労働省はどういうふうに考えますか。
  53. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先生おっしゃいましたような立ち入りによりまして実際の監督を強化いたしておるわけでございまして、そういう中で放射線業務従業者の被曝の管理という項目、これは被曝の線量の測定でありますとか、労働者への周知だとか、記録の保存というような項目でございますが、それにつきまして事業者の義務として明確に定められておりますので、それに基づきます実施状況を監督いたしまして、実施状況を確認するというようなことを徹底してまいっているところでございます。
  54. 石野久男

    石野委員 これはとにかく労働省がもう少し労務者の健康管理の立場からも、放射線被曝の実態をつかむ必要があると思います。もう数字の上でもすでに差があるのですから、少ないのですからね。非常に怠慢ですよ。この点は労働省のしっかりしたあなた方の考え方をもう一遍示しておいてもらいたいと思う。これは後で答弁をもらいます。  それから、労働者の被曝の問題について、特に労働者の被曝は、一般人の被曝よりもはるかに重くてもよろしいのだというようなことで、一般の約百倍くらいのものを許容量として認めておりますが、電労連なんかでも強く要求されておりますように、従事員の被曝線量を一般人と同様のプライオリティーで扱うべきだ、こういう要請がございますが、科学技術庁あるいは通産省あたりでは、こういう問題をどういうふうにお考えになっておりますか。
  55. 伊原義徳

    伊原政府委員 個人に対します被曝について、これがどういう影響があるかということにつきましては、御高承のとおり、国際放射線防護委員会で基本的な考え方が決められております。その考え方は、放射線作業と申しますか、放射線を扱う専門の人間は十分な管理ができるという前提がございますので、そういう意味で、たとえば年間五レムというような数字が決まっておるわけでございますが、一般公衆につきましては必ずしもそういう管理が十分行えないという前提もございまして、それの十分の一というものが一つ規制の値になっておるわけでございます。  したがいまして、こういうふうに国際的に確立されております考え方がわが国の法規でも取り入れられておりますので、その考え方のもとに規制を行うわけでございますが、ただ、実際問題といたしましては、放射線の被曝は低いにこしたことはないわけでございますから、合理的に達成される限り低くという考え方のもとに実際の運用を図っていくということかと存じております。
  56. 宮野美宏

    ○宮野説明員 職業性疾病に対します、特に電離放射線というようなものにつきましては、特別の電離放射線障害防止規則を設けてやっておるところでございますけれども、私どもの基準行政の最重点といたしまして、職業性疾病対策要綱というものをつくりまして、基礎の研究から予防、治療、それから職場復帰というようなものを一貫した行政体制をとるということで本年初めから出発をいたしておりまして、そういう中で規則に盛られたようなものにつきましては、総力を挙げて厳重な監督、指導をするということにいたしておるわけでございまして、先ほども申しましたようなその中で示されております管理区域の立入者につきましても、一月ごとに一度、あるいまた三月ごとの分をその被曝線量というものを記録しなさい、また、その記録したものを労働者に周知しなさいというような項目がございますので、それについてなお一層徹底した監督を実施してまいりたいというふうに考えております。
  57. 石野久男

    石野委員 いま原子力の放射線取り扱い、あるいはまた原子力そのものについての従事しておるいろいろな労働者の被曝線量の許容率というものを一般人よりも高くしているのは、管理ができるからだという局長の答弁ですけれども、しかし、体に放射線を受けた場合、その障害はそこで働いている人も一般の人も同じなんですよ。ただ管理が行き届くからというようなことだけで高い率になっているということは、これは解せないという疑問が労働者の中から出てくるのはあたりまえなんですよ。そしてそのことについて国際的にもそうだからもう考えませんというような態度は、私は、日本における原子力開発の上から言ったってよくないと思うのです。現場の労働者からも要求のあることだし、われわれが考えてもそれは当然考えなければならぬことなんだが、世界的にはこういうことになっているからそうなんですと、そういうことでもう一応の問題の処理が終わったという考え方であると、これは私はまずいと思いますが、大臣、どういうふうに考えますか。
  58. 前田正男

    前田国務大臣 おっしゃる点はもっともなところがございますけれども、これは何といっても世界的な関係のあることでございますから、その方ともよく関連して調査をいたしまして、しかし、御要望の点ももっともなところもあるように思いますので、十分に検討していきたい、こう思っているわけでございます。
  59. 石野久男

    石野委員 これは、ここの答弁が即そのまま具体的な検討課題として取り扱われないと困るのですよ。事実上そういう問題を課題として原子力委員会なり何なりでしっかり検討する用意がございますか。
  60. 前田正男

    前田国務大臣 御要望でございますので、十分にひとつ検討していきたいと思いますけれども、世界的な問題、日本もその中に入っておるわけでございますから、やはり世界的なものとも関連しながらひとつ検討していく、こういうことにいたしたいと思います。
  61. 石野久男

    石野委員 原子力の問題は、いろいろな意味において内容は重大なんです。代替エネルギーとしての原子力をどういうように扱うかという生産側面から来る問題と、それから放射能が人類の健康にかかわる問題として来るマイナス面の処理をどうするかということ、それをわれわれ真剣に考えなければなりませんけれども、政府のやり方というのは依然として開発推進側面に傾いていると思います。むしろ、そこで働いておる労働者なり周辺の人々の不安感をもっとなくするような施策を先行させることによってわが国の原子力行政というものが進むことが大事なのだろう、そういうように思うのです。  私は、一般に言われているように原子力が本当に代替エネルギーとして十分な役割りを果たし得るかどうか、エネルギー発生ということそれ自体では相当な実績を持っておりますけれども、安全性の問題についてはなかなか一般の支持を得られないというような実情にあるし、また経営自体につきましても、コスト計算の上でも問題があるのだと思うのです。原子力発電のコストを計算するのには、どうしても廃棄物処理を含めた、燃料サイクル全体を含めたコストをひとつ考えないとだめだと思うのです。そのような意味からして、日本におけるところの原子力はアメリカの軽水炉を主としておりますから、アメリカにおけるところの実績というものをわれわれは参考にしていくことが非常に大切だと思います。さきに私は、原子力発電の利用率の問題を提起したことがございますが、最近のアメリカなどの資料によりましても、原子力発電炉の利用率というのはどうしても七〇−六〇のところは行かないで、五五%ないし五四%のところに低迷しているというのがアメリカの実情ですね。日本の原子力の利用度というものは、全体を含めていい傾向にあるのですか、どうなんですか。
  62. 武田康

    ○武田政府委員 最近の日本の原子力発電所の稼働率につきましては、四十八年度には六七%、四十九年度五五%、五十年度には四八%と、日本では実は一昨年、昨年の間で下がってきております。これは一部原子力発電所等が臨時点検などのためにとまりましたり、あるいは故障とかトラブルによりまして稼働率が計画よりも下がったということによるものでございます。同時に、ささいな故障でも、慎重を期しまして炉を停止して、所要の点検あるいは改善を行っているというようなことにもよるものでございます。それらの故障、トラブルに対します措置等が昨年末までにほぼ完了いたしましたので、実はことしの一月からは稼働率が先ほど申し上げました数字に比べて向上してまいりました。数字を申し上げますと、ことしの一月から三月にかけましては六八%でございまして、四月から六月にかけて七二%、七月から九月にかけましてやはり七二%、それぞれ端数がございますけれども、そういったように現段階では初期の七〇%程度のものに回復してきておりまして、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、いままで出ました故障、トラブルに対する措置の完了等によりまして今後ともできるだけいい運転状態を続けていくようなことを期待しているのが現状でございます。
  63. 石野久男

    石野委員 私は時間がもうあと五分しかありませんから多く申しませんけれども、ある炉が一定の時期においては非常に高い稼働率なり利用率を示すことがあります。しかし、アメリカでの利用率対運転年数を見てみますると、もうどんなことがあっても、試運転をやりましてから五年ないし六、七年のころから利用率はぐっと下がってしまうんですよ。日本の発電炉は、まだ稼働して初期のものはある程度利用率はいいんです。けれども年代を加えてくると決してよくはないので、だんだん下がってくるのが実情ですね。中には全くゼロというのも出ているわけです。ですから、いまのような数字は一時的に見られても、それは恒久的な対策を立てる参考にはならないだろうと私は思っております。  しかし、もうきょうは時間がありませんから、その問題は申しませんけれども、ただやはりここで参考までに、私はアメリカのAECが出しておりますいわゆる設計容量やあるいは総発電量、平均利用率等をコメイ氏が累計しました数字、それをずっと見てまいりますと、一九七六年度に大体四十五の発電所——ここに私はただ参考までに表だけ配っておきますから、これちょっと配ってください。この表をごらんになるとわかりますように、四十五の発電所で七六年、七四年、七三年と三年出ておりますが、一九七六年度の実情は平均しますと五四・九%、五五%程度の利用率で果たして採算が成り立っていくのだろうかというような、こういう心配をいたします。同時にまた、利用率の運転の状況を、これをずっと総括しまして図の第一、こういうようなもので見ればおわかりになりますように、AECが最初に出しましたモデル、それをこれはコメイ氏がいろいろ問題にしたり何かしまして改訂したのですが、そのコメイ氏の改訂したAECのモデル、それからこれは別にマーゲンとリンデフのモデルによって出ておる数字、それからコメイ氏が出しておるここでの年数の表をずっとごらんになるとおわかりになりますように、非常に利用率は悪いですよね。こういうようなもので今後原子力が代賛エネルギーとして果たして役に立つのだろうかどうかという問題がございます。この問題は、ひとつ他日もう一遍論議させていただきたいと思います。  いずれにしましても原子力問題については、もっと利用率の側面住民に対する被曝の問題や労働者に対する被曝の問題、それらを含めて安全性確立の問題をもう少し真剣に考えていかないといけないだろうというように思いまするので、大臣はせっかく大臣就任早々にいろいろな構想の発表があります。けれども、安全性確保する政策確立のために、余り開発促進の側面だけに偏らないようにお願いしたいと思います。同時に、きょうはおいでの労働省の方には、労働者の被曝線量を低減させるための管理監督を厳しくしてやってもらいたいということをお願いして、最後に大臣と労働省の意見だけちょっとお聞きして、私の質問を終わります。
  64. 前田正男

    前田国務大臣 さっきの御答弁でも申し上げましたとおり、今度の懇談会の主なねらいは、石野さんがおっしゃっておられますように、行政懇安全性確保するために安全委員会をつくろうということに伴ってわれわれはどういうふうに処理していくかということでありますから、実際問題として安全性強化するために、それを実際に担当している実務方たちに今後の構想を練ってもらおう、こういうことでございますから、ひとつ推進のためにやるということじゃなしに、安全委員会を設けるに伴いまして、それに対してどういうふうに実務担当人たちが今後の行政問題あるいは推進体制検討していくか、こういうことでございます。その点は、石野さんのお考えと同じように安全性をまず確保する、こういうことでこれから進めていくつもりでございますから、ひとつ御了解を願いたいと思っておるわけでございます。
  65. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先生おっしゃいますような被曝線量の基準の遵守等、今後関係機関とも連絡の上、より一層厳重な監督をしてまいりたいというふうに思っております。
  66. 中村重光

    中村委員長 次は瀬崎博義君。
  67. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、原子力行政の問題と、それから防災科学技術の問題について質問をいたします。  五十二年度の科学技術庁概算要求の中で原子力安全委員会設置が提起されておりますけれども、政府としてはこれをいつから発足させようとしているわけですか。
  68. 前田正男

    前田国務大臣 五十二年度の概算要求ですでに要望しておりますので、五十二年度の予算で実現いたしまして、予算の御承認と、それから法律の御承認を得なければなりませんけれども、十月から発足することでございます。
  69. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうすると、政府としてはあくまで来年度に具体化するということを前提にかかっているんだと、こう理解しておいていいわけですね。
  70. 前田正男

    前田国務大臣 そのとおりでございます。
  71. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第一に、事務局科学技術庁の機構の中に置こうとしているのか、それとも安全委員会の機構に専属する、いわゆる公取型にしようと思っているのか、一体どちらですか。
  72. 前田正男

    前田国務大臣 これは行政懇談会でいろいろと利害得失について検討されたんですが、当面は科学技術庁原子力安全局を利用する、こういうことに行政懇の結論が出ておりますので、それに従ってやっていくつもりでございます。
  73. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは第二の問題として、その安全局をつくるときに、じゃ安全委員会を将来つくろうという構想があったのか、それとも後からこの安全委員会というものは出てきたのか、どっちなんですか。
  74. 山野正登

    山野政府委員 原子力安全局が発足をしました当時は、まだ行政懇において御検討を進めておられた段階でございまして、私どもは行政懇のいずれ出るであろう結論は結論といたしまして、早急に安全規制についての責任体制の明確化を図って、安全規制行政強化を行う必要があるという趣旨で、将来安全委員会構想が出るという予測なしに独自に原子力安全局というものの創設をお願いし、本年一月に発足したということでございます。
  75. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 だとすれば、安全委員会をつくっても、たとえ原子力安全局がその事務局担当するにしても、当然その安全局の方も中身を変えていかないと委員会をつくっても意味がありませんね。そういうことも考えているわけですか。
  76. 山野正登

    山野政府委員 原子力安全委員会が発足しまして、原子力安全局がこの事務局になりますと、当然事務局機能を果たすための要員の確保というものが必要なわけでございまして、そのような方向で行きたいと考えております。
  77. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういうことと同時に、安全委員会の自主性、独立性というものが保障されないと、安全局がくわえて振り回しているようでは何にもならないですね。いまの原子力委員会の姿を思えば大体見当がつくのですが、その点にまで考えが及んでいるのですか。
  78. 山野正登

    山野政府委員 先生御指摘の問題は、原子力安全委員会の掌務が各省間にわたって、中立性を保つべきであるという御趣旨かと存じますが、その点は行政懇の結論でもそのように提言されておるわけでございまして、私どもは、将来この安全局事務局をいたしましても、中立性が保てますように、たとえば関係省庁のこの事務局機能への協力参加といったふうなことをお願いいたしまして、その中立性を確保していきたいというふうに考えております。
  79. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第三の問題として、依然として安全審査、安全チェックを書類審査だけでやっていこうとしているのか、それとも委員会に実地検査までできるような権限、体制を持たせていこうと考えているのか。どっちですか。
  80. 伊原義徳

    伊原政府委員 先生の御指摘の点は、その安全委員会が発足するに伴って、従来のたとえば安全審査のやり方を変えるのかどうかという御質問かといたしますと、私どもといたしましては、その安全委員会ができることによって自動的に安全審査のやり方が変わるということでは必ずしもないと考えております。  ただ、その問題とは別にいたしまして、この安全審査がより的確に行われるべきであるということで、常にその改善を図るということは必要でございますので、その方向で今後とも努力していただくことになると思うわけでございます。
  81. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第四の問題として、現在通産省とか運輸省の権限で行っております。たとえば電気事業法や船舶安全法に基づく実施設計の安全審査、それから各種の検査については、このつくられるであろう安全委員会ダブルチェックをしていくようにするのですか。
  82. 山野正登

    山野政府委員 端的に申し上げればダブルチェックをする形になると思いますが、各行政レベル安全規制のあり方というものにつきましては、内閣に原子力行政体制改革強化推進連絡会議というものを設けまして、その場で現在詰めておる段階でございまして、その仕上がりを待ちまして具体的な手順、手続といったふうなものを決めてまいりたいと考えております。
  83. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで、長官にちょっとお尋ねしたいのですが、「技術と人間」の十月号の中で、この中には私のももちろん載っているのですが、前田大臣はこうおっしゃっていますね。「安全について強力な体制を作るということなら、それ以外の方も強力な体制を作らざるをえない。」「原子力安全委員会を作るならば、その残りの原子力委員会科学技術庁、通産省の各原子力関係の仕事をなるべく一本化して、強力に行政を進めていった方がいい」さて、この方の準備だとか作業は現在どうなっていますか。
  84. 前田正男

    前田国務大臣 そういう問題についても、原子力安全懇談会から、一貫性を保って出せというふうな御意見が出ております。また、われわれの党の方からも、安全委員会分離するならば、ひとつ強力な行政体制を整えたらいいじゃないかという意見も出ておるわけであります。  そこで、さっきちょっと申し上げましたように、原子力安全委員会設置に伴って安全を強化していくということに伴いまして、これは審査ばかりを強化しても本当の安全が保てるわけではありませんから、そういう行政をどういうふうに処理していくかということについて、これから私たちとして考え方を練っていかなければならぬわけですけれども、これに実際にタッチしておられるところの原子力安全委員——原子力安全委員ではなく、まだ現在は原子力委員ですけれども、原子力委員の方とかそれからそれらに関する各種の、いままで原子力委員会の問題について御協力を願った方たちに対して、一応意見を求めまして、そしてひとつこれを具体化することについて検討していきたいというのが、先ほど申し上げました基本問題に関する懇談会を開いていこうと、こういうことでございます。
  85. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局いまの話でわかることは、最初安全局、これでもどうもというので、今度は安全委員会、まあ小出しに看板だけふやしていっておりますね。ところが中身の方は、実権を握る事務局は同じ科学技術庁の中、科学技術庁長官のもとに置かれて実務をやっていく、安全審査のやり方は変わりませんと、こうおっしゃっておる。結局、転んでもただでは起きぬという態度がよくあらわれている。むしろ、安全委員会という看板をまた一つふやすのをいいことにして、この際、開発推進の方を推し進めていきたいという感じを私は強く受けたのですね。こういう点では、いま国民だとかあるいは専門家、識者の望んでいる原子力安全委員会とは、そんな開発推進の隠れみのではない。この点については大体予算の要求の仕方もずさんですね。渋い大蔵省がこれで認めるなら、これは政府ぐるみが、まあかっこうだけつけておけ、それでごまかせよと言っているようにしか思えないのでありますし、これで予算がつくのかどうか、私は興味を持って、と言うと失礼かもしれないけれども、見守るわけです。それによって政府が本当に原子力行政を改める意思があるのかどうかということもわかると思うのです。  次に、防災科学技術の問題に入りたいと思います。  私は二度にわたりましで、十七号台風による集中豪雨の被災地であります岐阜、愛知を訪れました。本当に悲惨な状況に胸の痛みを禁じ得なかったのであります。現地の人々からは、洪水対策、それから災害救助対策の手抜かりに対する怒りの声もまことに強かったのであります。が、同時に、例の長良川の安八町における決壊以前に、すでに岐阜市内であるとか大垣市内では団地ごとどっぷり水につかってしまっているというところも多々出ているわけですね。決してあの堤防決壊だけが浸水の原因ではなかった。そういう中で、住民方々は、たとえば千ミリメートルをはるかに超すような集中豪雨とか、あるいは災害の節囲、程度について、その予報がもっと早く的確に出されておったら、避難準備も前からして、そこそこの家財道員も運び出したであろう、事実上水が来てから命からがら逃げ出したというふうな状況であった、こういうことで防災科学技術行政のおくれといいますか、不備に対する批判と怒りの声もずいぶん多かったのであります。そこで私もこの問題を取り上げさせてもらっているわけであります。  そこで、これは気象庁の長官にお尋ねしたいのでありますが、私は気象庁が怠慢だなどとはちっとも考えておりませんし、むしろ、気象庁のすべての研究者、技術者、職員の皆さんの昼夜を分かたぬ努力には心から敬意を表しておるのでありますが、そういうことを前提にしての話です。  先般、内閣委員会で、わが党の中路議員が質問したのに、岩田次長が答えられております。何が気象庁の基本的な使命かと申しますと、やはり国民のサービス、と申しますのは災害の防止であろうかと思います。この立場、視点から見て、この十七号台風とその集中豪雨の結果に対して気象庁が基本的な使命を果たしたと考えていらっしゃるのか、不十分な面があったと考えていらっしゃるのか。不十分だとするとどういう点が不十分なのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  86. 有住直介

    ○有住政府委員 十七号台風の被害につきましては、私たちも大変心を痛めております。また、先生から一生懸命やっておられるというお話を聞きまして、ありがたい言葉だと思っております。  現在、どういうシステムでやっているかということをちょっと触れさしていただきますと、現在は大型の、日本で一番大きいと思われます計算機を入れまして、それを使いましてデータを非常に有効に使い、数値予報などをやりまして、従来よりもメッシュといいますか、計算を細かくした計算をやりまして、雨量予想図というようなのも現在つくるようになりまして、それをもとにして大雨が降る可能性がある、あるいはどの地方にどのくらいの雨量があるおそれがあるというふうな予報を事前に出しまして、その後、今度全国にございます二十カ所のレーダーで観測いたしまして、雨の雷雲、その他のくあいを監視して、——それでは不十分でございますといいますのは、レーダーだけでは雨量と確実に結びつきませんので、雨量を知るために地域観測網というものを展開しつつあるわけでございまして、その地域観測網で得られました観測は、自動的に観測いたしまして、毎時自動的に中枢に送られまして、それらを整理した後、観測毎正時の後約二十分までには現地の地方気象台の予報官の手元に届くようになっております。それを予報官は見まして、雨が降るおそれがあるという時点で準備をいたしまして、レーダーの情報を見、そして現実に雨が降り出すというようなことになってきますと、できるだけ早く注意報、警報というものを出しまして、皆さまにお知らせしている。必要ならばそれをもってその防災に大いに役立てていただきたいというふうに考えてやっておるわけでございます。  御質問の十七号台風のときに十分であったかということでございますが、われわれとしては精いっぱいやったというふうに思っているわけでございます。予報官も非常にがんばっておりますが、やはり技術的にはどうしても先の予報でございますので、雨が降って総量がどのくらいになるだろうということを予想いたしまして、注意報なり警報を出すということでございますので、現時点の技術では、現段階としてはやむを得ないという、非常に私どもの方としては心苦しいことでございますが、そう思っているわけでございます。  それに対して、今後十分であるか、どういうふうに考えているかということでございますけれども、現在その地域気象観測網も展開の途中でございますので、それの整備を現在も進めているというのが現状でございまして、さらに、よい警報、注意報を的確に出すように持っていきたいということで努力しておるわけでございます。
  87. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、気象の方は素人なんでよくわからないのですが、十七号台風による豪雨予報で、たとえば兵庫、岡山、香川の各県に対しては、いわゆる降り始めてからの総雨量は何ミリメートルに達する見込みといいます総降雨量予報というのですか、そういうものを出していらっしゃるのですが、岐阜については今後どれくらい降るだろうということだけのことで、総雨量が幾らになる見込みということは全然発表しておりませんね。なぜ気象台によってこういう違いが起こってくるのでしょうか。
  88. 有住直介

    ○有住政府委員 発表の出し方ということに関しましては、大体模範文といいますか、そういう凡例がございまして、それにのっとって出すようなふうにやっておるのでございますけれども、その場合は、やはりこれから降るという雨量を言ったということで、総雨量も大体わかっていただけるというような感覚で出されたのではないかと思われますが、これはまた後でその辺の事情は詳しく調べたいと思います。
  89. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほども申しておりますように、繰り返して言いますが、決して気象庁の業務怠慢という意味で申し上げるのではないけれども、たとえば兵庫の例をとりますと、九日の三時五十分の予報では、総雨量は百五十ないし二百ミリぐらいに達するおそれがありますとなっておりますね。これが翌十日の一時十分になりますと、総雨量は二百ないし三百ミリ、所により三百ないし四百ミリとなって、同じ日の十時になりますと、総雨量は三百ないし四百、所により五百ミリとなっております。翌日の十一日の九時になりますと、降り始めてからの総雨量は五百ないし六百、所によっては八百ミリメートル、こうなってくるのですね。わずか二日か三日のことなんですが、最初の予報と比べてみますと、後の方は四倍ぐらいに総雨量がふくれ上がるわけですね。だから、現在の技術水準ではやむを得ないと言われたのですが、果たしてこういう状況では実用に供し得る総雨量予想なのかどうか、私たち疑問を持つのですが、現在の総雨量予想というのはどの程度に国民の側から見れば信頼を置いたらよいものなのか、その点ひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  90. 有住直介

    ○有住政府委員 今度の場合も総雨量で千ミリ超えまして、年間雨量に届くような雨量が降りまして、こういう雨量が降るということを事前に予測するということは、大変申しわけない言い方ですけれども、いまの技術では非常に困難なのでございます。ですけれども、困難だからということだけでなく、われわれとしては、その辺についても今後的確な予想を出せるよう研究その他努力していきたい、そういうように思っております。
  91. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いまのお話は科学者としては率直なお話をされておるのだと思うのですね。気象関係のように相当な歴史と伝統があって、しかも体制がある場合でも、きわめて困難な予報の分野というものが残されておる。昨日来地震の方の予知問題が大変な問題になっておる。この方はきわめて体制等が不備だというわけですから、よほど力を入れないと、地震関係などの予知は追いつかないということの反証にもなるかと思うのですね。  そこで、今度の集中豪雨の原因の一つにもなっております台風十七号の進路について、気象庁のいろいろな努力にもかかわらず進路予報が大分はずれまして、鹿児島の西南海上で長時間停滞するという事態になりました。必ずしも正確とは言えなかったと思うのです。この台風の発生の発見とその後の実況把握を日本にあります各地の気象レーダーで把握するまでの間はどのようにして現在行っていらっしゃるのですか。
  92. 有住直介

    ○有住政府委員 洋上はるか南方で発生するわけでございますけれども、その時点におきましては、陸上では探知できませんので、主に洋上にあります船からのデータが送られてまいりますが、これもちょうど台風のそばにいるということはめったにございませんし、いたら危険なのでございます。ですから、いま非常に頼りになりますのは、ノアと申しますアメリカの気象衛星が一日二回日本の上にちょうど回ってまいりますので、そのデータを使います。これは雲の写真が写るわけでございまして、雲の状態から台風の位置なり大きさなりなどが見当づけられるということで非常に有効に使われております。日本に近くなりますとレーダーその他で押さえるということをやっております。
  93. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 現在一日二回くらいのノアで果たして刻々の台風の情報がとれるのかどうか。やはり気象観測機等の観測も重要な要素になっておるのではないですか。
  94. 有住直介

    ○有住政府委員 これは米軍が観測いたしておりまして、洋上はるかかなたのときには回数は少ないのですが、近づいてきた、あるいは台風が非常に発達し始めた段階で一日に三回ないし四回くらい観測をいたしまして、そのデータが目の大きさそれから位置等を送ってまいります。これも非常に役に立っております。
  95. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 高度に発達した国々といいましょうか、一般用語で言えば先進諸国で、外国のしかも軍隊の観測機を頼りにしなければこういう重要な台風の気象観測ができないというふうな国はわが国以外にもあるんでしょうか。
  96. 有住直介

    ○有住政府委員 台風偵察飛行とわれわれ申しておりますが、現在行われているものは四発のジェットの非常に大型の飛行機でございます。ですから、こういうものを持っておる国というのはかなりの強国以外はないのではないか。ですから、台風に突っ込んで観測するような偵察飛行というのはアメリカ以外については詳しくは私存じないのでございます。  ちょっとつけ加えさせていただきますと、気象庁といたしましていろいろ検討いたしまして、その結果実は衛星の観測というのは非常に役に立つものですから、静止気象衛星計画というのを四十九年度以来進めまして科学技術庁その他関係省庁の御協力をいただきまして来年の七月には打ち上げるという運びになっております。この静止気象衛星と申しますのは、赤道百四十度、日本から一番近いところの赤道上に上げまして、そこから常時地球を見て監視する。これをやりますと、台風の動きその他も三時間ごと、必要があれば毎時間、衛星から見ました気温の分布と雲の分布というものが送られてまいりまして、その両方を組み合わせることによりまして雲の分布、それから積乱雲であるか層雲であるかそういう雲の種類、それから雲の移動から見ました風向、風速、そういうものがわかるようになりますので、これは経済的に申しましても大型の飛行機観測よりも効率的に行えるということで、気象庁といたしましてはこの静止気象衛星計画というものに力を入れて現在も進行しているわけでございます。これが入りますと毎時の台風の位置もわかりますので、今度の十七号台風のときは、停滞し始めたという状態が数時間後にわかったようなわけでございますけれども、今度の場合ですと、それよりはかなり早く状態がわかる。したがって、予報にも役立つであろう、そういうふうに私ども考えているわけでございます。
  97. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 もちろん、気象衛星の打ち上げについてはこの科学技術の委員会でも論議になったこともありますし、それが正しく運用されるならばわれわれも大変喜ばしいことだと思っているから推進にやぶさかではないのです。問題はすべてがそれで解決するかどうかということになると思うのです。「時の動き」の六月号、この中で長官は率直にこうおっしゃっていますね。「いつも集中豪雨には悩まされてる」と、先ほども現在の技術水準では非常に困難だ、こういうふうにおっしゃっておるわけなんであります。  そこで、気象庁としては集中豪雨監視体制強化ということも挙げている。その中身としては先ほどすでにもう御説明いただきましたから私改めて問いませんが、地域気象観測網というのですかアメダスとかよく聞くシステムだと思うのです。そのアメダスの実施についての気象庁のパンフレットを見ておりますとこういうことが書いてあります。「居住地域の拡大など国土の開発が進むにつれて、気象災害の形態も著しく変ってきており、従来より規模の小さい気象現象に関する情報の提供が強く要望されてきております。気象庁では、この社会の要望に対処すべく、新しい観測体制の整備」こうおっしゃっているのですね。ここで「従来より規模の小さい気象現象」とは一体何を指していらっしゃるのか、それをひとつお答えをいただきたいと思います。
  98. 有住直介

    ○有住政府委員 従来ですと、たとえば低気圧、高気圧、そういうものを基準にいたしまして解析をし予報していたというのが昔のやり方でございます。低気圧の大きさというものは大体スケールにいたしまして千キロから二千キロというような、大きいものでは三千キロぐらいの大きさのスケールなんでございます。そういうスケールでは、集中豪雨を予測することは非常にむずかしゅうございまするので、それより——集中豪雨の場合はどのくらいの大きさかと申しますと、大体二十キロから数十キロぐらいという大きさでございます。そういう現象をこれからもよく観測をしてつかまえていきたいというふうな考え方をしたわけでございます。雷雲の中でセルというものがございますが、そういうセルによりましては小さいものもございますけれども、これは非常に短寿命でございまして、そこまで予報するということは現時点ではほとんど不可能に近い。まあこれはまだ研究は続けておりますけれども、非常にむずかしい。現段階で業務的に結びつけられるものは、数十キロ程度のいわゆる雷、雷雲のかたまりとして移動をしてきて大雨を降らせるもの、そういう現象をつかまえていきたい、そういうふうに考えたわけでございます。
  99. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局われわれ素人側の理解でいけば、アメダスというのは無人化された末端観測点のデータを電電公社の電話回線を利用して大型コンピューターに直接集めてくる。それを整理して、そのデータを今度は逆に予報官に配っていく、こういうことではないかと思うのですね。結果的には観測の無人化とそれから予報データのコンピューター化というふうに思うのですが、およそそういうことでいいのかどうかということと、それから確かにこれは利点も大きいと思うのです。こういうものがなかったら予報は前進しないと思うのですが、しかし、現にこれが使われていて、先ほど言われたように集中豪雨の予報はきわめて技術的に困難、こうおっしゃるわけなんです。そうなってくると、このアメダスが導入されたからといって、本当に集中豪雨の予報が的確に出せるのかどうか、私たちとして不安になってくるのですが、果たしてこれは万能薬なんでしょうか。
  100. 有住直介

    ○有住政府委員 まあ万能薬というわけにもいかないと思いますが、現段階お話をいたしますと、日本全国で約千百カ所の地点につきましては雨のデータが入るようになりまして……(瀬崎委員「余り細かい話はいい」と呼ぶ)実は申し上げたいのは、現在雨だけが主力になっておるわけでございます。雨のほかに気温と風向、風速、日照、そういうものも観測する施設を現在ふやそうということで努力しているわけでございます。その千百カ所のほかということではございませんが、千百カ所の中で雨だけというものにつきましては、雨のほかに、ほかの気温、風向、風速、日照というようなものも観測する、それで自動的にもらう。それをもらいますと、現時点のように雨だけで解析しているよりもさらによい解析ができて、予報には役立つであろうということを私どもは考えて努力しているわけでございます。  ただ、ではそれができたらもう百点かということになりますと、やはり百点ということは非常にむずかしゅうございます。と申しますのは、これは理論気象の中でも議論はされておりますけれども、どういう時点で雨が降り始めて、どういうふうに雨ができ始めるかというようなことになりますと、ある学者によりましては、偶然的な要素というのが非常に含まれているのではないかという考えも出されているわけでございまして、非常に規模の細かい現象になってまいりますと、現在の技術ではどこまで追求していけるか、追求はいたしますけれども、目的がどこまで達せられるかということについては、私どもも若干の疑問を持っているわけでございますけれども、しかし、百点にはいかなくても、できるだけ百点に近づけるように努力をしているというのも現状でございます。
  101. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その点は、科学技術会議のことし二月十九日の「国民生活に密着した研究開発目標に関する意見」ですか、一種の勧告のようなものだと思うのですが、この中でも相当具体的に指摘している面があるわけなんです。「現在豪雨の発生、予知に関する研究は、若干の大学、気象庁気象研究所及び主要気象台において行われているが、その状況は、必ずしも十分とは云えない。」特に、この中では理論的な面、基礎的な面での研究そのものがおくれているという指摘があるわけなんです。  この科学技術会議は、議長が総理大臣だったと思いますが、科学技術庁長官も事実上その代行役のような形で入っていらっしゃるし、計画局がこれの事務局をやっている。こういうふうな勧告が出て、では科学技術庁はこれをどういうふうに処理したのですか。
  102. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 先生御承知のように、科学技術会議総理大臣それから数大臣メンバーになつております諮問機関でございまして、科学技術会議から政府の方へ答申がございまして、それを受けまして各省にこの意見を送付してございます。それから、各省との関係では、この意見の成立する過程におきましていろいろ議論をいたしております。
  103. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 たとえば研究装置といいますか施設の面で、レーダー観測網というのは、先ほど長官からもお話があったように、これはやはりたとえアメダスが発達したとしても、研究には欠かせない式器になってくるんじゃないんですか。
  104. 有住直介

    ○有住政府委員 これはおっしゃるとおりでございまして、やはり観測点というものには限りがございますので、観測点のないところの雨の状態というものは面の状態でもってとらえるというのは、やはりレーダーが非常に有力な式器でございますので、さらに研究も進めるし、実用化についても検討するわけでございます。
  105. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そのレーダー観測網というのは、現在の研究のために十分整っていると見ていいわけなんですか。
  106. 有住直介

    ○有住政府委員 やはり科学というものは日進月歩いたしますので、新しく更新して設置するというようなものにつきましては、やはりその時点で検討いたした上で、経済的な面も考えて、最もよいものを設置していくというやり方をしておりまして、その日進月歩に応じたレーダーについての研究というものを、実は気象研究所というのが気象庁に付属機関としてございますので、そういうところで研究をしているというのが現状でございます。
  107. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 科学技術会議の方の指摘ではこう言っているのです。「一応全国を網羅する形で配置されているが、これは本来業務用観測網であり、ほとんど研究用には利用できない状態にある。」と、その不備を指摘しているわけなんです。いまの長官お話しだと、日進月歩だから、進歩したレーダーが生まれれば更新していけばよいというふうなお話なので、科学技術会議の指摘が当たっていないのか、あるいは気象庁の方が、科技庁を通じてこういう勧告が入っているはずなんですが、そういうものを無視していらっしゃるのか、どっちかだと思うのですが、これは一体どういうことになるんでしょう。
  108. 有住直介

    ○有住政府委員 ちょっと言葉足らずであったかと思いますが、実用的にも新しいものを使うということでございますから、気象研究所内では新しいレーダーというものにつきましての研究をやっております。たとえば現在のレーダーでは、全国のエコーを総合をして一緒にしてみたいというようなことが、いまのでは不十分でございますので、実はエコーを、ディジタル化と申しておりますが、エコーの黒白の強弱を数字化いたしまして、現在は丸い図で出てきておりますけれども、それを縦横のXY座標と申しますか、そういう座標に変換をいたしまして、かつ地形の、グラウンドエコーと言っておりますが、地面の反射が入っておりますとぐあいが悪いので、それを取り除くというようなことを実は研究しておりまして、将来のレーダーを有効に使う方向としては、この全国にございます二十カ所のレーダーエコーをディジタル化し、一つの図に総合をし、そしてそれをさらに予報的に利用していきたいという方向で研究所では研究をいたしております。
  109. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私がただしているのは、気象の研究面での行政がきちっと政府部内で意思統一されて推進されているかどうかということを聞いているわけなんです。科学技術会議の方の指摘は、つまり、現在あるレーダー網というのは、業務用であって、研究用には役立っていない、したがって、研究用のレーダー網が必要だ、こういうことが勧告されているわけなんです。果たしてこんなことは必要なのか必要じゃないのか。もし必要でないなら、科学技術会議自身がいいかげんなことを書いているということになる、余りこんなものにわれわれ神経使わない方がいい、こういうことになるんですね。そこはどっちなんですか。
  110. 有住直介

    ○有住政府委員 その研究といたしまして、私どもといたしましては、二十カ所に展開しているのは主として業務用ということでやっておりまして、もちろん研究もやっていないわけではなくて、観測者といたしましては、やはりみずからの研究によって研究もやっておりますけれども、やはり業務的ということが主たる目的に私どもなっておりますので、その研究内容によると思いますけれども、私いまその内容的なことをちょっとつまびらかにいたしませんので、はっきりしたことを申し上げられませんが、研究の目的、そういうものによりましては、あるいはそういうものも必要か、そういうふうにわれわれとしては考えられますが、ちょっとつまびらかにいたしませんので……。
  111. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 さらに引き続いて、同じく観測施設の面では、この科学技術会議の方は、「更に気象観測用の飛行機は一機もないのが現状である。」こういうことも不備の一つに挙げているわけですね。長官お話では、こういう観測機を持つのは日本では非常に困難なことだというようなお話なんですが、ここらでも意見は一致してこないということなんですね。これは科技庁の方に言いたいのです。せっかくこういうものができて連絡してあっても、気象庁の方はつまびらかにしていないとおっしゃっているわけですね。これは事実上無視されている、役立っていない、これははっきりしましたね。一体科学技術会議というのはどんな存在なんですか。
  112. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 私、これは大変厚いものでございまして、気象庁で無視されているというふうには考えていないのでございますけれども、大変細かな事項でございますので、実はこれは先生御存じのように、豪雨から強風から地震予知、あらゆることがみんな事細かに書いてございまして、これを作成いたしますには気象の専門家、それから気象庁の方々の御参加をいただいて作成をしておりますので、こういうふうになっておりますことにつきましては、担当のところではある程度御存じのことかと思っております。
  113. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは分厚いと言われますけれども、気象関係、ものの十ページもありませんよ。  さらに長官は、先ほど紹介されておりました「時の動き」の中で予報のむずかしさについて、「やはり地形でしょうね。狭いところに山あり谷あり平野ありで、非常に局地的な現象が起こりやすいんですね。」と述べていらっしゃる。同じくこの点では科学技術会議の方の勧告でも、「概括的に豪雨発生現象の説明ができるとしても、諌早豪雨や相生豪雨のように、極めて限られた局地に、なぜ豪雨が集中するかの説明はまだ十分できていない。」と述べて、地形の影響評価のむずかしさというものを指摘しているわけなんですね。こういう指摘にこたえるとすれば、私の素人考えかもしれませんが、第一線の重要な観測点とかあるいは測候所には必要な人員を配置して、人が有機的な観測を行う。それからまた、中央はもちろんでありますが、地方にも経験豊かな予報官とか研究者、技術者というものを十分配置することが大切ではないか。そうでなければ、このような地形の影響を強く受ける局地の気象現象というものを的確にはつかめないのではないか、研究していくにしてもその素材がそろわないのじゃないか、アメダスという自動記録だけでいけるのだろうか、こういう疑問を持つのですね。いかがでしょうか。
  114. 有住直介

    ○有住政府委員 山とか地形の影響でございますけれども、これを入れてそして的確ないわゆる予報を出すということは非常にむずかしいのでございますけれども、やはりこれはたとえば地面の傾斜地とか、その山の傾斜がどちらを向いている、そのときに風はどちらから吹いているという、そういうような現象を細かく解析して計算をする、それによって初めてその山の影響でどれくらいの雨が降るのかということが推定できるのではないかと思います。そういうことがやはり本質的な問題で、それにはそういう地形の影響等を入れて、計算機を使ったりしまして迅速にそういう有効な資料というものをつくり、それを情報として利用する、そういうのがオーソドックスな方法というふうにわれわれ考えておりまして、その方に進むに従がいまして、たとえばそのアメダスの展開にいたしましても、雨につきましては約十七キロメッシュ、気温、その他については二十一キロのメッシュで抑えていこう、そのためには雨だけではだめなので風向、風速、それから気温、そういうものも同時にとらなければいけない。そのために二十一キロメッシュについては気温、風向、風速、日照、そういうものも入れてデータを即時入手して計算機で処理して情報を得る、それによりまして初めて予報精度の高い有効な資料がつくられるであろう、そういうふうにわれわれは考えてその方向で進めているわけでございます。もちろん、それじゃそれで全く完全かと言われますと、私たちといたしましては、一つの努力目標としてそれにいま邁進いたしておりまして、やはり最新の施設で非常に新しい技術でございますので、最初から百点がとれるかどうかということにつきましては非常にむずかしい問題も多々あろうかと思いますけれども、とにかくその方向でわれわれとしては努力をしているところでございます。
  115. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 気象庁がいまやろうとしていることはそれでいいのですが、われわれが指摘したことについて、やはりそういうふうなことの重要性というものを認識するのかしないのか、この点のお答えがないのは非常に残念だと思うのです。時間の関係もありますので……。  なお、そういう局地的な気象現象の重要性は、防災との関係でもこの科学技術会議は指摘しているのです。「現在府県単位で行われている豪雨予報を、主要河川流域ごとに行い、洪水警報、水防活動と一体化したシステムを早急に開発する必要がある。」と提言しています。豪雨予報を主要河川ごとに行うことについては、これはどこがやるのか私もよくわからないのだけれども、一体どこでどの程度作業が進められているのですか。まず科技庁の方から……。
  116. 園山重道

    ○園山政府委員 御指摘の降雨と川の……(瀬崎委員「いや、豪雨予報を主要河川ごとに行うことですよ」と呼ぶ)豪雨予報を主要河川ごとに行うということになりますと、まず気象庁での今後の豪雨予報というもののあり方の問題であるかと思われます。そのためにもし研究が必要であるということになりまして、これに各方面の協力が必要であるということになりますれば、その体制考えなければいけないと思いますが、まず主要河川ごとに豪雨予報を行うということでございますれば、現在の気象庁の予報システムのあり方の問題であるかと考えます。
  117. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは気象庁の方で、いまのを受けてどうですか。
  118. 有住直介

    ○有住政府委員 主要河川についての豪雨ということでございますけれども、現在、大雨の警報あるいは大雨洪水警報というものは気象庁の所管事項としてやっておりまして、いわゆる全国に第一級河川という指定された河川がございますが、その河川につきましては建設省と気象庁との間で協力しながら、洪水関係ということがございますので、そういうものを含ませながらやっているというのが現状でございます。非常に細かいことになりますと、私もちょっと資料がございませんので何とも申し上げられませんが、そういうやり方でやっておるわけでございます。
  119. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 科学技術会議が指摘している意味での府県単位のものを主要河川ごとに行うということは、いまの気象庁の業務の今後の継続、発展で十分なんだというふうにわれわれは理解しておけばいいのですか、それとはまた別の分野としてこれは提起されておるのですか、どっちですか。
  120. 有住直介

    ○有住政府委員 それにつきましては、十分な資料も用意してございませんので、今後検討させていただきたいと思います。
  121. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 じゃ、これの事務局を所管している計画局は、どういう理解でこれを省庁の方に連絡しているのですか。
  122. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 ここに書いてございますことを私どもは一々担当省庁がどこだどこだというふうに全部仕分けをしておるわけではございません。まあ、書いてありますことから判断をいたしますのに、気象庁ないしは建設省がかんだ形でシステムをつくっていくということになるのではなかろうかと思っております。
  123. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ここに出されていることは、私も関係省庁に若干問い合わせした上で質問しているのだけれども、行われていない分野が指摘されているようですね。たとえば「洪水の発生伝播機構の解明」のために必要な研究項目として、「流域の雨水保留機構に関する研究」とか「流域の都市化や農用地造成に伴う流況変化予測に関する研究」あるいは「土地利用形態と水害危険度予測に関する研究」こういったものを挙げているわけです。また「防災対策」としては、「豪雨洪水警報と避難システムの開発に関する研究」これはいずれも緊急で、だれが考えてももっともな研究課題だと思うのですよ。こういうことがきちっと研究開発されていたら今度の災害でもずいぶん役立ったと思うのですが、結果的には事実上、岐阜の人々は自分の判断で水が目の前に来てから逃げ出したという現況ですね。こういうふうな研究テーマを科学技術会議に出すことによって一体何を政府は期待しているわけなんですか。一遍、大臣に聞いてみたいですね。
  124. 前田正男

    前田国務大臣 いまのことは、これを出すに当たりまして、関係各省庁と相談をしてそういうテーマ、意見を出しておるわけですから、現在やっておる官庁が十分にそのテーマを出すについて相談をしておるわけですから、自分の所管についてできるだけやってもらわなければいけませんが、同時に、そういう問題については、自分たちだけでやれないところは総合的な研究をやはりアプローチしていかなければいかぬのではないかということで、総合研究としてはやはり科技庁もこれに入りまして、防災センターとかその他あるいは必要なときには特調費を出してやっていくとかいうことも必要でしょうし、私の感じているのはそれだけではなしに、科学技術会議も、そういう意見を出したものは、一つのモデルケースみたいなものを自分たちでプロジェクトとして取り上げて、やはり各官庁でこなしていくようなことも今後はひとつ考えていかなければいかぬのではないか。そして、その意見を出すときに各官庁に期待をして出しておるし、各官庁もそれに従ってやっていくということでしょうけれども、しかし、それではなかなか促進ができない。いまのように具体的には災害に間に合わなかったじゃないかというような御意見もあるわけですから、だから、そういうふうなことが緊急に必要だとか重要な研究だ、こういうことになれば総合的な研究科学技術庁中心になってやるとか、あるいはまた場合によれば、科学技術会議自身がそういう問題についてプロジェクトチームをつくるとかというふうに、少し科学技術会議自身の活躍も考えなければならないのではないか。ただ各官庁の所管事務に任せておくというだけではなかなかスピード化が図りにくいのじゃないかというふうに私も考えておるわけでございます。
  125. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 まさにそういうことのために科技庁に直属の研究機関として防災センターがつくられているのではないかと思うのですね。だから、こういう研究テーマが果たして各省庁別の試験研究機関で行われ得るのかどうか、あるいは進行状況は一体どうなのか、そういうことの点検もやはり必要であろうし、また、どこの省庁でもできない一というのであれば、当然防災センターあたりがみずから研究に乗り出すということではないかと思うのですが、いまずっと指摘されてきた科学技術会議研究課題について、防災センターはどういう態度、立場をとっているのですか。
  126. 大平成人

    ○大平説明員 いまの御指摘の問題、いずれも非常に重要な問題でございまして、私ども非常な関心を持っている課題でございます。  そのうち、第一の雨水保留機構に関しては、私どもの経常研究の中で山地小流域の流出解析という課題に取り組んでおります。  それから、都市化あるいは土地利用の関係の問題は、各種の調査研究の中で考慮に入れて、また今後そういう方向に研究を発展させたいと計画しておるところでございます。  なお、避難体制につきましては、ただいまのところ私どもの研究課題には入っておりませんが、これも災害時の調査に逐次そういう避難体制あるいは情報伝達の問題も対象に含めようとしておるところでございます。
  127. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いまおっしゃった山地小流域の流出に関する研究ですが、これは房総半島の浦白川ですか、ああいうところで一カ所やっているだけで、全国的に果たして応用が効くという性質のものなのですか。本来は、各地それぞれ地質的にも地形的にも違うわけなんですから、もっとやらなければならない研究ではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  128. 大平成人

    ○大平説明員 御指摘のとおり、まさに一つの小流域のデータだけでは全国に適用するにはきわめて不十分であることは申すまでもございません。しかしながら、私どもの人員、能力、予算等の制限もございまして、まず手近な手ごろな、しかも結果のまとまりやすい代表的な流域について、この地域には第一次から第六次までの谷がございます。各次数ごとに洪水の流出時間、到達時間等を調査しまして、こういう流域ではこういう状態、それならば条件の違った他の流域にはどういうところが応用が効くか。たとえば都市化の進んだ場合にも逐次応用したいと計画しておるわけでございます。また、もっと大きな流域についても、これは建設省等のデータも十分ございますので、そういうものと突き合わせて逐次研究を発展させたいと計画しているその第一の段階でございます。
  129. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 アメダスが導入される前には、三十七年ごろまでですか、気象庁の方も事実上第一線の観測点の観測機器を人が直接観測されておったんですね、そういうことは必要だから。いま気象庁の方はやめていく方向だけれども、防災センターの方でそれと似たようなことをいまやりかけているというふうな感じを受けるのです。そこを私はさっき申し上げた。アメダスを導入してはいけないと言っているのではない。それはそれで大いに研究開発もしていただきたいけれども、せっかく過去やってきたこの気象庁の貴重な観測体制あるいはその経験技術、こういうものはそれはそれとして決してアメダスで置きかえ得ない重要な内容を含んでいるのではないかと私たち思うわけなんですね。いま防災センターが全国で十分やりたいとおっしゃるけれども、それじゃ直ちに全く別にそういう体制がとり得るか、これは困難だと思います。こういう点では気象庁あたりが過去に持っている経験あるいは体制、そういうものを生かすべきじゃないかと思うのですが、長官いかがですか。
  130. 有住直介

    ○有住政府委員 前の観測体制というのは、当時としてはそれが非常にいいということでやっていたわけでございますけれども、いまから見ると非常に不備でございますので新しい方向に変わった。たとえば観測所のデータが一日一回しか観測が行われてはいない。それがやはり場所によりましては一日一回しかやっていない。そういうようなデータではどうしても調査的にも観測的にもうまくない。それをアメダスでは一日に二十四回、少なくともデータとして即時に入ってくる。即時に入らない値としては、その一時間の間の値でも求めようと思えば求められるであろうというふうにわれわれは考えておりまして、いろいろの意味で格段の調査その他に有効に働いていくであろう。(瀬崎委員「それを有効ではないと私言っていませんよ」と呼ぶ)それにやはりいろいろな理論的な考え、そういうものを組み合わせることによりまして、従来よりももっと有効に使われるであろうというふうに考えておるわけでございます。
  131. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一方的にアメダスの効用ばかり宣伝されるのですが、われわれはその以前に持っていた気象庁の経験とかあるいは技術、体制、そういうものが今日生かされなければならないのではないか。過去、気象庁がやっていたような観測を、また別のところがいまやっているわけなんですから、そういう点をお聞きしているわけなんです。この点で全気象労働組合もことしの大会だったかでこういうふうな提言も行っているわけですよ。  真に国民に役立つ気象業務を前進させたいという意味で、要約してみますと、一つは、気象事業が気象学とそれに基づく気象技術などが科学の論理から離れてきて、政治と行政に支配されているのではないか。実用化技術、自動測定装置の開発のみが重視されて、地球物理学的な基礎観測や研究調査が軽視されているのではないか、ということを危惧した上で、第二に、きめ細かい地域に合ったサービスを基本にした業務を進めること。第三に、気象の全分野をカバーして、かつまた、基礎、応用の両面を含めて、本当に科学的な研究を進めること。第四に、経験豊富な後継技術者の育成に力を入れて、将来に対する不安をなくす。そのことによって、技術者の自発性、やる気というものを重視することが必要ではないか。  こういうことを強調されているわけですね。これは大いに耳を傾けるべき提言だと私は思っているのです。気象庁の全職場で研究者、技術者、全職員がやりがいを感ずるようにしていかないと、本当に気象業務も前進しないし研究開発も進まない。ごく一部の人々の考えだけで、ある分野だけが特別に進められて、過去やってきた蓄積、苦労というものは見捨てられて、果たしてこれでみんながやる気を起こすかどうか、この点を私考えるわけなんです。  このような、目的としては長官がおっしゃっていることと一緒だと私思う。国民に役立つような気象業務というのですから、内容が違ってくるのだと思う。目的が一緒なら、こういう提言も、たとえ労働組合から出ておっても、大いに耳を傾けるべきじゃないかと思うのです。いかがですか。
  132. 有住直介

    ○有住政府委員 ちょっと説明足らずの点もあったのでございますが、たとえばある観測所によりましては、従来やっていた観測が続行できないという事情で、たとえば委託というようなことで観測所を展開してございますが、そういうところにおきましては、社会の情勢も非常に変わってまいりましたり、いろいろなことがございまして、委託を引き受けてくれるところがなくなってきたというようなことも一つはございます。そういう方策に対しての問題点がございまして、新しい方向に移っていったということもございます。  それから、やる気の問題でございますけれども、私どもといたしましては、国民のために本当に役立つ情報を、われわれが科学者、技術者として十分に精いっぱいやって、これが役に立つのだというところでやりがいも起こりますし、現実に一部職員は警報その他の重要性を認識して、昼夜分かたずに一生懸命やっているということでございます。そういうことを踏まえまして、役に立ついいものを皆さんでやっていただく。  それから、技術につきましては、新しい技術に進むと同時に職員の技術も向上しながら、その技術の向上が有効な予報につながるということで努力していく、そういうふうにわれわれは考えているわけでございます。
  133. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 防災基本計画の中にも、「防災に関する科学技術の研究推進」のために「十分な研究要員の確保を必要」と述べているわけですね。さらに「研究環境の整備による要員の確保」を図れ、こう言っているわけなんです。そういう点では、研究者や技術者のやる気をなくすような一方的な人員削減とかあるいは配置転換、一般によく言われる合理化ですね、こういうことは、僕は、特に科学技術の分野の職場ではやるべきじゃないと思うのですね。これは全体の問題ですが、長官としても、防災を重視すると所信表明でもおっしゃったのですから、せめて防災基本計画に明言されていることだけでも政府が守っていくようにちゃんとやってほしいと思うのですが、どうでしょう。
  134. 前田正男

    前田国務大臣 そういうことは私たちも同感でございまして、科学技術庁は日本の将来に関することをやるわけですから、やはり必要な程度の人員の確保、待遇、環境の改善ということはぜひ必要なことだと思います。特にその中でも防災についてはおっしゃるとおりだと思うのですけれども、政府の一応の方針もありますので、政府方針政府方針として受け継いで、そのかわりに合理化の面がありました場合はそれに対して見合った増員をしていく、差し引きは増員をしていくというふうな形に科学技術、特に防災はやっていきたい。科学技術全般についてもそうお願いしたい。いままでも、この財政の苦しい中で、科学技術に関してはおかげさまで差し引き結局増員をしている、こういうような実績でございます。しかし、われわれも努力いたしますけれども、これはどうせ国会の承認事項でございますから、ぜひひとつ国会の先生方も御協力をお願いいたしたいと思っておるわけでございます。
  135. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 同じ科学研究分野でも防災に関係のある分野、気象もそうですね、これは主として研究環境が悪くなりやすいですね。僻地、山間あるいは船の上、そういう観測測定を要望されるわけです。それを全部合理化してしまったら、本当の意味で、先ほど全気象労働組合が提案しているような、真の意味での気象学とか地球物理学的に見たそういう理論の前進などについてもびっこになっていくと思う。そういう点も私たちは特に注意する必要があると思うのです。  特に、その点では有住長官もおっしゃっているでしょう。今年度の気象関係予算は全部で三百七十六億だ。人口一人当たりに直して三百五十数円、考えてみると安いものだ。今度災害が起こって、いま問題になっておるのは、千五百億の本来公共予備費にとっておくはずのものを全部災害に使うと言ったのはけしからぬとか、予備費がいいとか悪いとか別にして論議になるのです。そういう点から見れば、こういう防災の面には予算をつぎ込んでもちっとも惜しくない、こういうふうにひとつ大臣も気象庁の長官も所長も、全部お願いしたいと思います。  特に気象業務は、戦前は軍部もやっていました、よしあしは別にして。現在では研究面でも実際の予報の業務の面でも気象庁だけが頼り、これが第一。第二に、地方地域住民や自治体は、測候所とか地方気象台に言葉に言いあらわせないような親しみといいますか、親愛感を持っているわけです。自分たちの生活のよき相談相手でもあるわけなんですよ。第三に、今度研究者や技術者の方から見れば、いままで地道な、非常に苦労の多い観測、研究を重ねてきた。また、そういう点で国民のよき相談相手になってきたわけです。私は、そういうことに気象庁の職員の方々は誇りと生きがいを感じてこられたと思うのです。  そういう点では、科学技術の面で持っている気象庁の役割りと、もう一つ国民との関係、社会的な面で持っている気象庁の役割りと両方大切にしてほしい。簡単に測候所を廃止してみたり格下げしてみたりということが、ただ単に気象庁の職員の士気を阻喪させるだけではなしに、国民の側にもきわめて不信感というものを醸し出す。こういう点は今後の気象行政でちゃんと配慮していただけますか。
  136. 有住直介

    ○有住政府委員 先ほども申し上げましたように、私どもとしては適切な情報を適切にお流しするというのが非常に重要な仕事だということで、先生のおっしゃるように地元に対するサービスというものは、われわれもこれから十分心がけていきたいというふうに思っておりますけれども……(瀬崎委員「誇りある気象庁としてやってください」と呼ぶ)しかし、そのやり方といたしましては、いい情報をどういうふうに流すかということに尽きると思うのです。そのためには、たとえばどういうふうな人員配置が適当であるか、そういうこともやはりわれわれは十分考えておるわけでございます。  たとえば、観測にいたしましても、僻地で観測する人がいて、毎日非常に苦労して観測しておるとしましても、その人が別の適切な場所に行きまして、アメダスその他に関連した仕事で適切な情報をつくるという方に大いに働いた方がいいかということになりますと、私どもといたしましては、やはり技術の向上に伴って、適切なところで適切にその人の能力を十分に発揮していただく。  適切かどうかはわかりませんけれども、最近の近代技術が進む前は、たとえば温度の観測にいたしましても、職員が一々温度計をながめて、目の高さと水銀面の高さは平行にして観測するのだというようなことを非常に重要な技術指導として観測していたわけでございますけれども、そういうことではなくて、やはり新しい技術に応じた技術を習得しながら非常に有効な適切なものを出していく、それが本当の使命ではないかというふうに私ども考えているわけでございます。
  137. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、決して古い技術を保存してください、などと言っているんじゃないわけです。過去の生かすべき技術まで一方的な行政目的のために無視されることのないようにお願いしたい。気象庁というのは、きわめて誇り高い職場、官署であるという認識を持ってほしいということなんです。やり方はわれわれは関与するところではありませんが、少なくとも、一つは気象分野の科学技術の進歩に役立つということ、一つには国民のために役立つということ、この目的では職員の側と長官意見とに違いはないと思うのです。そういう点の気象庁の果たす役割りについての認識の一致はあると思うのですね。ある以上は、私はそこで何らかの合意と、やりがいのある職場にしていく方向というのは見出せると思うのです。これを最も基本的な問題としてお願いしているのですから、誤解のないようにお願いしたいと思います。  防災センターの行っております主要災害調査について、この主要災害調査の主要災害の基準というのはどういうところへ置いていらっしゃるのですか。これは所長にお答えいただきたい。
  138. 大平成人

    ○大平説明員 これはいわゆる激甚災害と似た言葉を使っておりますが、激甚災害とは必ずしも、一致する場合と一致しない場合とがございます。災害のときには各関係省庁それぞれの立場で調査を行われますが、私どもは私どもの立場で災害に関する資料収集をして、それを適時適切に発表し、関係機関国民方々に役立つということを目標に置いて、主として研究者を中心とする調査団を派遣いたします。その際、それぞれの都度の事情に応じて防災センター独自で主要災害というのを選定いたします。
  139. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうすると、特別な基準というものがどこかにつくってあって、それに当てはまったらどうということではなしに、その都度その都度必要性を検討していらっしゃる、そういうことですか。
  140. 大平成人

    ○大平説明員 おおむねそのとおりでございますが、書いた基準というようなものはございませんで、そのときの事情に応じてやる。ただ激甚災害でもなく、非常に小さな災害でありましてもこれが何か非常な特殊性を持っている、調査して記録に残すに値すると判断されるものは、小さいものでも取り上げるようにしております。
  141. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これが単なる資料といいますか、記録でもないように思いますのは、たとえばなんですが、主要災害調査十号、これは昭和五十年八月の北海道を襲った台風六号ですね。これの最後の方を見ますと、「災害を大きくした原因として、標高六〇〜七〇mの宅地造成地の影響があげられる。別荘地として宅地造成されたものであるが、造成地端の雨水排出に対する処置が全く成されていず、そのために発生したと思われる崩壊が数カ所で観察され、崩壊土砂が沢に流入して被害を大きくしたものと思われる。今後、このような災害は山地丘陵の開発に伴ってますます増加してくるものと思われ、造成地端の雨水排出に対する処置を義務づけるなどのなんらかの法的な規制が必要ではないかと考える。」つまり、行政措置も含めた一種のこれもやはり勧告ですね。  こういうものが出ておって、これが単に記録として本だなに眠っておったのでは、これは調査としては、危険を承知しておきながらその手を打たないわけですから、無責任のそしりを免れないと思うのです。一応こういうようなものが出た以上、行政措置に反映されなければならないと思うのですが、そこのところはどうなっていますか。
  142. 園山重道

    ○園山政府委員 ただいまの防災センターの行っております調査というものが、災害に対しまして調査の結果によりまして何らかの勧告を行うというたぐいの性格をもともと持っているものではないかと思っております。しかしながら、この調査結果につきましては、関係の方面にお送りしていると聞いておりますので、これをお送りしましたところが、率直な研究者が調査いたしました感想等につきまして、取り上げて何らかの施策をしてくださるということに発展すれば大変結構なことかと思っております。
  143. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そんな悠長な話で、貴重な国費を使ってどうなるのですか。防災センターとしてせっかくこういうふうなまとめをした以上、しかも研究者が直接やっていらっしゃいますね。その結果についでも果たして意見が取り入れられているか取り入れられていないのか、そういうことまで含めてのアフターケアも必要なんじゃないかと思いますが、そういう点がどうかということ。  それから、貴重な意見が出ていますよ。たとえば、これは第九号です。これを去年の八月十七日、台風五号の高知県の災害です。「具体的な防災対策を計画するにあたって、各地域における過去の資料から災害を調べ、その地域がどのような種類の災害を受け、その災害の様相がどのように変化して来たかを明らかにする必要がある。」これは、先ほど気象庁長官の、とにかく新しい技術ばかり応用することに対して科学者が出している警告ですね。やはり過去の資料というものは非常に重要だ。具体的な古文書的なものでも役に立つというふうな意味のことが後にも出ているのですよ。そういうことによって初めて真の防災計画は立てられる。こういうものがやはり真剣に生かされなければならないと私は思うのですね。所長としてもぜひ後の追跡をお願いしたいし、長官としても、こんないいことをやっておるのだから、これが直ちに行政改革に入れられるような処置を今後お願いしたいと思うのですが、お二人の答弁をお願いします。
  144. 前田正男

    前田国務大臣 いまのお話のようなことは、防災センターのことに限らず、科学技術関係からいろいろの勧告が出るのですけれども、それがなかなか行政に反映しにくいというのはいままでの欠点のように私は思います。しかし、特に各官庁が相談をしまして出しました、たとえば科学技術会議から出た意見とかこういうものがいろいろあるわけですから、これをひとつ行政に反映するような考え方を取り上げていかなければならぬのじゃないかと私も考えておるわけです。これは何とかひとつ、科学技術会議の運営の方にも関係あることかと思いますし、こういう防災センターその他からもいろいろな意見が出ておりますけれども、こういうものを行政に反映していくことについての検討を、結局各省にわたるものでありますから、主としてやはり科学技術会議が取り上げるのが一番いいのではないかと思いますけれども、少し運用の仕方を検討させてもらいたいと思っております。
  145. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 所長さんの答弁にあわせて、この間もちょっとお邪魔していろいろ聞いておりましたら、二人とか三人とか研究者の方が、自分の研究をしばらく横に置いておいてこういう調査に行っているのだということでしたね。本来好ましいこういう調査体制としてはどういうことを所長として希望していらっしゃるのですか。
  146. 大平成人

    ○大平説明員 先ほどのお尋ねに先にお答えいたします。  主要災害調査及びその他の調査研究の結果の行政当局その他への伝達につきましては、従来必ずしも十分でなかった面があるかと思いまして、これは申しわけないことだと思っております。今後、いま御指摘のような重要な事項についてはもっと積極的に各方面に伝達の方法を図るという工夫を講じたいと思っております。ただ、この結果は、主要災害調査報告というものはきわめて部数が少のうございますが、これの配付だけでとどまらず、一般向けの出版物「防災科学技術」あるいは毎年一回催しております国民一般を対象とする防災講演会等々に織り込んで、十分一般の方にも理解していただくという方法を従来も講じておりますが、今後ももっと力を入れたいと思っております。  特に御指摘の中で、過去のデータの集積、利用、活用ということは、災害という現象が土地の性癖に応じて起こる、起こりやすいところには重ねて起こる、また、過去の災害は将来の災害に一つの予告になるというような立場から非常に重視する必要があると思います。その意味で、この主要災害調査も単に新しく発生した災害の事後調査にとどまらず、過去に発生した災害のいわゆる追跡調査ということも今後心がけてまいりたいと思います。  御指摘の第二点の、こういう調査体制につきましては、中でもいろいろ改良の方法を講じ、本年から一部実行に移した点もございますが、今後とも、単に研究者だけでなく、総合的な意味でこれを観察できる者を加えたい。たとえば自然現象としての崩壊なり洪水なりその発生機構を調査するだけでなくて、その事件が起こっても必ずしも人身事故が出ない、死傷者が出ないという場合、また比較的小さな現象であっても死傷者が多数出る——今回の災害調査でもすでにそういう結果が出ておりますので、そういうものについて個々の死傷者の出た原因まで追及するためにはやはり個々の狭い分野の研究者だけではなくて、もう少し広い見地の者を、所内でも少ない人数でございますが極力動員いたし、また研究の傍らというのではなく、こういう調査業務に専念ずる者を逐次ふやしていきたいと希望がございまして、明年度も調査関係の係長一名の増員を要求しておるところでございます。
  147. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 最後に一つだけお伺いして終わりたいと思います。  それは、昨日も萩原地震予知連会長が、駿河湾地域にエネルギーが蓄積されてきていることは間違いなく、東海地震がいずれ起こるという点では研究者間の意見が一致している、こういうことでしたね。確かに、この予知自身をさらに精度の高いものにするということを大いに急がなければなりませんが、ここまで言われてくるとするならば、むしろ地震に対する防災対策で打てる手をすぐに打つかどうか、こういうことが政府に求められてくると思うのです。  もう時間が来ておりますので、一つだけ申し上げます。  特に国民世論で見ますと、すぐにも着手でき、かつ効果が大きい問題としては、災害に直面した場合の避難と安全対策見直しの声だと思うのです。しかも、これも皮肉なことに科学技術会議提言の中にあるわけなのですよ。「緊急避難の誘導システムなどは、いまだ確立されていない。」「緊急時における避難、誘導システムの開発に関する研究」を急がなければならない、こうなっているのです。この点ではやはり中央防災会議があるのですね。ただ、開催を見ますと、四十六年五月、四十八年七月、五十年八月、こういうふうなきわめて緩慢な状態でしか開かれておりません。私は、こうなった以上、緊急にまずこれが開かれるべきじゃないかと思うのです。これが一点。  それからもう一つは、やはり先ほどちょっと防災センターの所長が言われましたように、自然現象として見るだけでなしに、社会現象としてもこれはとらえる必要がある。こういうことの科学的根処が正しい救助システム、避難システム等をつくり出すと思います。これは科技庁の所管でできることですから、防災センターもあるのですから、いまから直ちにその研究に着手する、こういうことがあってしかるべきだと思うのです。この点のお答えをいただいて、私は終わりたいと思います。
  148. 前田正男

    前田国務大臣 いまおっしゃるとおりであって、私たちも議論としては盛んに予知の研究と観測、これをもっと精密にやって、ある程度場所とか時期がもう少しわかりやすくなるようにしてくれということは一つ問題点だと思っておりますけれども、しかし、それがわかってきた場合の予報的な情報の伝達とか、あるいは防災対策というような問題については、そういう観測とそれから研究をするグループとまた別のグループがなければならぬ。それが結局おっしゃるとおりの中央防災会議じゃないかと思うのです。中央防災会議を開きまして、しかしあれは常時開いておりませんから、そういう予知に伴う情報と防災に関する専門の部会か何か常設したものを設ける、防災会議を開催した結果そういうものを設けて対策考えていくということが必要じゃないか。  それに伴いまして、科学技術庁だけではないけれども、いまお話しの防災のシステム、そういうことをやらなければならぬ。これは、いまの予知のシステムとまた違うわけですから、そういうものも研究しなければならないのではないか。もちろん科学技術庁としても、そういうものはできなくても、科学技術庁の、現在の研究を調整する人間とか、あるいはまたそれに伴うところの必要な特別調整費とか、そういったものがございますから、できるだけのことはやらなければならぬかと思っていますけれども、しかし全体としては、きのうもちょっとお答えしたのですが、二つの考え方に分けてやらないと、その対処をする人が、たとえば防災の方になってきますと、厚生省とか消防庁とか食糧庁とか、そういうグループが皆入ってこないと防災問題はできませんし、予知と観測と研究の方のグループとちょっと違うグループを入れなければなりませんから、そういうことを私はひとつ整理して考えて、政府として一日も早く対策を実現するように話を進めていきたい、こう思っておるところであります。
  149. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一言だけ。もう少し具体的にひとつお願いしたいのですが、たとえば特調費がありますね、特別研究促進調整費、これは特別研究と緊急研究にも使いますね。ことしはまだ一つしかテーマが決まっていなかったと聞いているのです。せめて、この地震の予知と言っていいかどうか知りませんが、予知連会長のああいう話も出た。だから、最も手っ取り早い災害時の避難とか安全対策、こういうことについての科学的な研究にそれを支出する、こういうことだけでもここではっきり決めていただくわけにいかないのですか。
  150. 前田正男

    前田国務大臣 実はそういうふうな具体的な問題を、ある程度早急に対策考えたいと思っておるのですけれども、ただ特調費も、御承知のとおり科学技術庁が所管しておりますけれども、科学技術庁だけで決められない性質のものなんです。したがって、体制を早くつくりまして、そこでいまお話しのようなことは決めなければならぬ。ただ、科学技術庁だけで決められることなら、きょうにでもすぐ決めますけれども、特調費は御承知のように科学技術庁だけでは決められません。確かに、一日を争うことであるとは私たち考えておりますので、余り時間を遷延はさせないつもりでございますけれども、対策は決めたい、こう思っております。
  151. 中村重光

    中村委員長 午後二時十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時十七分休憩      ————◇—————     午後二時十分開議
  152. 中村重光

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  153. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず初めに、原子力行政懇談会の答申についてお伺いしたいと思います。  この答申を見ますと、政府に対して明五十二年度からの完全実施を迫っておるわけでございますが、政府としましてこの答申に対する基本姿勢をひとつ簡潔にお伺いしたいと思います。
  154. 前田正男

    前田国務大臣 これはぜひ尊重していきたいと思いまして、すでに安全委員会については五十二年度の予算要求をしておるわけでございます。その他の問題については、これに伴ってできております原子力行政体制改革強化推進連絡会議というものが内閣にありますが、そこでその他の問題についての調整をしておるのが現状でございます。
  155. 近江巳記夫

    ○近江委員 聞くところによりますと、自民党内におきましてこの答申に対して反対の意見が出ておるようでございますが、そういう点、政府としてはこの答申の実現のために具体的にどのように対処されるわけですか。
  156. 前田正男

    前田国務大臣 別に反対でありませんで、これは方向は同じなんです。ただ、こういうものを分離して安全委員会をつくるなら、その残りの体制をどうするかということを検討しないで、ただ急いで安全委員会をつくるというのはおかしいじゃないかという意見だけでありまして、安全委員会をつくっちゃいかぬという意見は自民党の中にございません。それで、そういう意見もございますし、また政府といたしましても、この安全委員会をつくることは、とりあえず安全重視ということからすぐ決めたわけでございますけれども、その他の問題はいま申しましたとおり行政連絡会議でいろいろと検討しております。  ただ、それだけではなしに、やはりこの問題は国の責任をどの程度までしっかりやっていけば安全が強化されていただろうか、特にダウンストリーム問題等についていろいろと内外にわたりまして議論がございますので、そういう基本的な問題についてもひとつ検討する必要があるのではないかということで、先ほどちょっと御説明しましたとおり、そういう基本構想についても検討をしなければならぬと思いまして、第一線で活躍しておられる方の御意見を承りましてひとつ検討していこうということでございます。
  157. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、安全委員会設置については政府としては自信があるわけですね。
  158. 前田正男

    前田国務大臣 そのとおりでございまして、もうすでに予算要求しておる次第でございます。
  159. 近江巳記夫

    ○近江委員 この答申で、原発設置の電調審決定の前に「環境審査報告書を作成し、」と、これは十二ページに載っておるわけですが、これを公表すべきことと、このようにしておるわけです。この趣旨に沿って、現在計画されております原発地点につきまして、電調審で決定済みのものも含めてすべて環境審査の報告書を公表すべきだと思うのですが、この点についてはいかがお考えですか。
  160. 山野正登

    山野政府委員 環境審査報告書につきましては、これは通産省所管でございますが、恐らく関係省庁すべて行政懇の結論は尊重していかれると思いますので、通産省の方で善処されると考えております。
  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 通産省の方で善処するということをおっしゃっていますが、当然原発の問題につきましては科学技術庁と通産省、両省がともに責任を持っておるということであって、通産省が決めるだろうと、そんな一方的に責任をかぶすというか、そういうことであってはいかぬと思うのです。科学技術庁としてはその点についてはやるわけですか、科学技術庁の腹が決まってないと推進できませんよ。
  162. 山野正登

    山野政府委員 私は、尊重してそのようにすべきであると考えますけれども、私どもの所掌外の問題でございますので、権限を越えまして私がここで右、左と申し上げることは適当でないと存じます。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣はどうお考えですか。
  164. 前田正男

    前田国務大臣 これは当然、総理の私的な諮問機関であって、各界の方がこれに参加されてできた懇談会でございまして、この意見取りまとめについてはある程度また関係官庁とも意見を聴取しておられるようでございますから、それはその意見を聴取したとおりに答申が出ていないこともあると思いますけれども、私は当然尊重されるべき、総理大臣も尊重すると言っておることですから、通産省も尊重される、私たちもこれを尊重して予算要求しておる、こういうことじゃないかと思います。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは両省がよく合意されていることだと思いまして通産省をちょっと呼んでおらなかったのですが、委員長にちょっとお願いします。通産省に私がこの質問を終わるまでできたらひとつ御出席いただきたい。いまの件につきましてその点をひとつお願いしたいと思います。後でもう一度通産省に聞きますから。
  166. 中村重光

    中村委員長 承知しました。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、こうした安全委員会設置をしていくというようなことになってきますと、これは当然設置法の関係等で法律提出ということになろうかと思うのですが、今日、原子力行政を見てまいりますと、私はやはり根本的に基本法から考えていく必要があるんじゃないかと思うわけです。というのは、今日問題になっております安全性の問題あるいは環境の問題ですね、こうした問題については、これは基本法においては何もうたわれておらないわけですね。やはりいま一番国民が問題視しておりますのはこの安全、環境という問題でございます。こういうことが基本法にうたわれておらない。一番法律を改正しなければならないのは私は基本法じゃないか、こう思うのですが、この点については改正されますか。
  168. 山野正登

    山野政府委員 御指摘の原子力基本法でございますが、現在、この原子力基本法下の原子力関係の法律体系で申し上げますと、この基本法を受けまして核原料物質、核燃料物質及び原子炉規制に関する法律、いわゆる規制法でございますが、この規制法の目的におきましても、「この法律は、原子力基本法の精神にのっとり、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の利用が平和の目的に限られ、かつ、これらの利用が計画的に行われることを確保し、あわせてこれらによる災害を防止して公共の安全を図るために、」というふうにうたわれておりまして、この体系においては、先生御指摘のように安全性確保ということは十分考えられておるわけでございますし、それからまた、この原子力基本法の中におきまして現在の原子力委員会設置がうたわれておるわけでございますが、この原子力委員会と申しますのも、先生御案内のとおり推進規制の両面をあわせ持った委員会でございまして、基本法が直ちに安全確保について全く考慮していないということにはならないと思います。  しかしながら、今後原子力安全委員会設置法を提案するに際しまして、これの関連法令の改正という点は当然私ども検討すべきだと思っておりますので、直ちにこの原子力基本法を改正するという結論が現在出ておるわけじゃございませんが、今後、先生の御質問の趣旨も頭に置きながら本法を改正するか改正しないか、検討してまいりたいと考えております。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 確かにこの基本法の中には、原子力委員会設置のところであるとか、いまおっしゃったそうしたことはあるわけです。あるけれども、大事な目的のところにおきまして、環境あるいは安全、こうした文言をやはり明示する必要があるんじゃないか、こう考えるわけですね。これは非常に大事なことだと思うのです。やはり何といっても基本の中に平和利用、また三原則とともにいわゆる安全、環境、こういうことは非常に大事だと思うのです。大臣はいかがお考えですか。
  170. 前田正男

    前田国務大臣 おっしゃるとおりにいろいろと検討をしなければならぬかと思いますけれども、何しろこれは一応議員立法のものでもありますし、各党皆さん方の御意見も拝聴していかなければならぬと思いますし、やはりいまおっしゃることは重要な検討事項ではないか、こういうように考えておる次第であります。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま、大臣局長もきわめて前向きの御発言があったわけですが、こういう議員立法ということにもかんがみまして、この原子力基本法の改正という問題につきまして、ひとつまた各党に、理事会等で一度まないたにのせていただきたい、こう思うのですが、委員長にこの点お願いしたいと思います。
  172. 中村重光

    中村委員長 理事会でお諮りいたしまして、そうした趣旨が生かされるように努力したいと思います。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 アメリカにおきまして、原子力発電所新設の一時中断が言われたわけでございますが、NRCが八月の十二日国内の原発新設を一時差しとめると発表したということが伝えられておるわけですが、その経緯、また差しとめの理由、差しとめ期間、また今後の見通し等に関するどういう報告を受けておられるか、簡潔にお答えいただきたいと思います。  また、わが国政府として、この問題についてどういうように受けとめておられるか、この見解をひとつお伺いしたいと思います。
  174. 伊原義徳

    伊原政府委員 先生の御指摘の問題は、去る七月二十一日に米国のコロンビア特別区控訴裁判所の下した判決、この二つの判決を受けまして、米国の原子力規制委員会が八月十三日に公表した措置のことであろうかと思いますが、この判決につきまして簡単に御説明申し上げます。  米国の天然資源保護協会というものがございます。それといま一つのグループが、二つの米国の原子力発電所につきまして、政府の許可処分を取り消すということを求めまして、訴訟を起こしておったわけでございます。控訴裁判所の判決といたしましては、この政府の許可処分検討不十分である、したがって差し戻す、こういう判決が出たわけでございます。  この判決を受けまして、米国の規制委員会といたしましては、とりあえずの措置といたしまして、九月三十日までに再処理と廃棄物の環境への影響についての再評価を行うということを一つ決めております。それからいま一つは、この再評価をもとといたしまして、本年十二月までに暫定的に規則の改正をする、したがってその規則の暫定的改正が行われるまでは新しい原子炉の建設の許可はいたさない、それからすでに建設の許可は受けておりましても、運転の許可という行為が米国では別にございますが、この運転認可で全出力の運転認可は行わない、これが二番目の措置でございます。それからなお、NRCの見解、米国原子力規制委員会の見解といたしましては、この判決はすでに行った許可行為を破棄せよという判決ではなくて、政府が所要の措置をとるということを期待して差し戻すものである、こういうふうに理解する、こういうことを言っております。  以上三点が規制委員会の声明の概要でございます。  そこで、日本の規制関係の問題とどう関係するかということでございますが、先生御高承のとおり、日本のこの関係の法体系は米国とやや違っております。したがいまして、米国の判決なり米国の行政委員会考え方がそのまま日本にすぐ敷き写されるということではないわけでございます。したがいまして、日本で直ちに新しい原子力発電所の設置の許可を一時保留するというふうな必要は、いまのところ私どもは考えていないわけでございます。  しかしながら、この判決がおりました理由の大きなものは、再処理と廃棄物の問題について十分に検討することが必要であるという考えがあるということでございまして、この事実はわが国においても米国と同様でございますので、その重要性を認識いたしまして、原子力委員会におきましても特に廃棄物対策につきまして先般その基本方針をお定めいただいたというふうなこともございまして、その関係はわが国といたしましても十分強力に対策を樹立、推進しなければいけないと考えております。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまお話がありましたように、アメリカにおきましても、使用済み核燃料の管理あるいは再処理に問題ありとして原発建設にブレーキをかけざるを得ない状態になっておるわけであります。わが国におきましては、廃棄物の処理等の問題につきましては、これは本当におくれておるわけでございまして、めども立っておらない、こういう現状からして、これは私は大問題だと思うのです。イギリスの王立環境汚染問題委員会も、放射性廃棄物の完全な処理処分の方法が確立するまで大規模な原子力発電所の建設をすべきでない、このように勧告もいたしておりますし、日本弁護士連合会におきましても、住民不在の現在の不安な安全管理の現状からして、原発建設は中止して、既設発電所の運転中止など抜本的に再検討すべきである、こういうように主張しておるわけでございます。原発のそうした安全行政あるいは廃棄物処理等のそうした対策が進まない反面、開発優先政府原子力政策に反対する声というものは着実に拡大しておるように私は思うわけでございます。  こういう点で、各国がこうした非常に慎重な態度をいまとっておるわけでございますが、わが国としてもこのままのこういう進み方をしておっていいのかどうかですね。これは重大な反省を迫られておると思うのです。具体的にひとつ大臣のそういう決意、あるいはまたどういう反省の具体的なものを持っておられるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  176. 前田正男

    前田国務大臣 この問題は、したがって、先ほどお答え申し上げましたとおり、こういうことに対してわが国にも重大な御意見がありまして、それが行政懇談会として意見が出されたことだと思います。したがって、私たちはそれに伴って安全委員会をつくるわけですが、しかし、その安全委員会というのは審査のためのものでありますから、安全の研究とか安全の局とかいうものが行政体制としてできておりますけれども、しかし、ここに大きな影響がありますのは、要するに再処理以降の問題が一番大きな問題だと思っておるわけでございます。  そこで、そういう問題に対しまして、国がどこまでこれから責任を持ってやっていくかということについて、これを推進されようとしておるところの関係のいろいろな団体とかいろいろの人、あるいは従来の関係者と基本的に構想を練っていきたい。いずれにいたしましても、こういうふうに内外にわたりましていろいろな意見が出ておることでございますから国が責任をもう少しとって、この再処理以降の問題については進めていかなければならぬのじゃないか。したがって、さきにも発表しましたとおり、高レベルの廃棄物の処分は国が責任を負うということにいたしたわけでありますけれども、そのほかにも、再処理以降の問題については全体にわたりまして国がもう少し責任をとる、そのとり方はいろいろとあると思いますが、そういうことについて基本的に意見を練っていかなければこれからの原子力の政策を遂行していくのはむずかしいのではないか、こういうのが実は懇談会基本構想の——それだけではありませんけれども、それが大きなおくれの一つでありまして、そういう方たちの御意見を承りながら私たちも万全の対策を確立していきたい、こう思っておるわけでございます。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう考え方はわかりますが、アメリカはそういうように新規の許可もしない、また原発をとめてまでそうした対策をとろうとしておるわけですよ。そういうことを考えておられるかどうかということをいま聞いておるわけです。
  178. 前田正男

    前田国務大臣 それは御承知のとおり、現在のところ私たちの法体系からいきますとそういうことではありませんので、やはりわれわれは法律体系に従って行政をやるわけでありますから、アメリカと同じようなわけにはいかないと思います。しかし、考えられておられること、重要性はわれわれも十分認識して、その対策を講じていかなければならぬのじゃないか、そういうことで慎重に善処していかなければならぬ、これはもう同じでございます。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし、それぐらいの強硬な措置といいますか、そういうことによって、廃棄物の処置の仕方等の対策あるいは安全対策、そうしたことは一層進むのじゃないかと思うのです。いままで廃棄物の問題等も何回も何回も本委員会でも議論されているわけですけれども、それは力を入れてやりますということだけであって、なかなか遅々として進まぬわけであります。そういう点から見ますと、やはりアメリカと同様のこれぐらいの手段をとって、そして全力を挙げてそうした廃棄物の問題あるいは安全性の問題、こういうところに力を入れていく必要があるのじゃないか。むしろそれの方が本当の意味での健全な推進になっていくんじゃないか、私はこう思うのですが、いかがですか。
  180. 前田正男

    前田国務大臣 さっきも申したとおり、われわれは法律に従った行政をしなければなりませんから、アメリカと同様なことはやれませんけれども、これが重要だということはよく認識しましたのでいままで何遍も私の方も実はそういうことをやかましく言うておるのですが、なかなかめどが立たなくて困っておるわけでございますから、ここは私たちといたしましてはまずトップクラスの方にお集まり願いまして構想を、どう考えているのか、どういふうにやっていくのか、また、それに対してわれわれ行政責任者としてはこういうふうに措置していきたいというふうなことをこの際めどをつけてみたい。おっしゃるとおりなかなか進みませんから、私もここでひとつめどをつけるためにトップクラスの方に集まってもらって、まず基本的な構想から決めていきたい、こう思っておるわけです。認識においては近江さんとわれわれと同じでございますけれども、ただアメリカとは法体系が違いますから、われわれは法体系に基づいて行政をやるわけですから、アメリカと同じ措置は講じられませんけれども、認識におきましては同じような考え方でございます。重要視しておりますので、この際、トップクラスに集まっていただいて基本方針のめどをひとつつけて、いままでのようにこういう問題はずるずると延び延びにならないようしたい、こういうのが今回の考え方でございます。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣がかわられてそういう決意をされ、いまよりも前進するかどうかは今後を見守らなければならぬわけでございますが、いずれにしても本当に口ばかりという感じがするわけですね。そういう点で本当にきちっとした具体策というものを一日も早くお出しになって、着実な前進をしていただきたいと思うのです。  それから、放射性廃棄物の問題でございますが、来年度からいわゆる海中への試験投棄を始めるというお話もあったわけでございますけれども、これはやはり予定どおりやるわけですか。
  182. 伊原義徳

    伊原政府委員 先ほど申し上げました原子力委員会放射性廃棄物対策に関する方針、十月八日御決定方針によりますと、直接海洋処分をいきなり行うということではございませんで、まず事前に影響を十分評価いたしました上で試験的な海洋処分に着手する、これは昭和五十三年ごろからというふうに考えられております。  その試験的な海洋処分をいたしまして、この結果を十分評価いたしまして、環境に与える影響が無視できるということを確認いたしました上で本格的な海洋処分を実施いたしたい、こう考えております。
  183. 近江巳記夫

    ○近江委員 この海洋処分ということは本当に慎重にやらないと、特に最近の経済水域二百海里の設定等の動きが国連の海洋法会議等でも非常に現実化してきているわけですね。そうなってきますと、沿岸漁業というものにつきましては、これは動物性たん白資源の本当に大事な場所でございますし、そういう点におきましては漁民にとりましてもきわめて不安を持っているわけですよ。だから、それはそういう予定かどうか知りませんが、これはひとつ慎重にやっていただきたいと思うのですね。その点はどうですか。
  184. 伊原義徳

    伊原政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、この問題はやはり下手をいたしますと非常に環境に対する影響がある可能性もございますし、そういうことからいたしまして、私どもは絶対環境に影響を与えない、こういうことで進めなければいけないと考えております。  さらに、国際的な動きといたしましても、国際海洋法の動きもございますほかに、海洋汚染防止条約の問題あるいはOECDの原子力機関海洋処分に関するいろいろな過去の経験なり将来の新しい海洋処分につきましての計画というふうなものもあるわけでございます。そういうものも十分踏まえました上で、本腰を入れて、安全確保を第一といたしまして、実証的に段階を経ながらこの問題を進めてまいりたいと考えております。
  185. 近江巳記夫

    ○近江委員 通産省では、第二次再処理工場と関連施設を一カ所に集めた核燃料再処理団地を建設する計画があるとかないとか聞いておるわけでございますが、これは科学技術庁としては十分な相談も受け、また、どの地点にそれを置くとか、そういう具体的な煮詰めはなさっているのですか。
  186. 山野正登

    山野政府委員 再処理体制につきましては、核燃料サイクル全般の問題につきまして核燃料サイクル問題懇談会と申しますものを委員会の中に設けまして、本年の春以降鋭意検討を続けてもらっておるわけでございますが、その中におきまして、御指摘のような再処理工場を単独に立地する場合、あるいは廃棄物等の処理等を含めましてニュークリアパークとして一緒に設置する場合等含めて今後検討していくということになっておりますので、御指摘の点は十分検討の対象に考えておるものであります。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは具体的に大体どの地点とか、そういうようなめどを立てておられるのですか。
  188. 山野正登

    山野政府委員 これは現在、今後の官民の分担等を含めまして具体的にどういう進め方をしていこうかということを検討しておる段階でございまして、本年の九月に中間報告をちょうだいをいたしておりますが、最終報告は来年の春ないし夏の間にちょうだいすることになっております。この報告を受けまして、民間におきましても必要な準備組織等をつくって具体的な準備に入ろうという運びでございまして、現在の時点で具体的にどこどこの地点に立地するといったふうなことは何も決まっておりません。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 最近福井県で、核燃料物資の価格に一定の税率をかけようという、そういう動きがあるわけでございますが、いままでの経過、それからまた、自治省としてはどういう見解をお持ちであるのか、簡潔にひとつお伺いしたいと思います。
  190. 川俣芳郎

    ○川俣説明員 福井県では、ただいまのお話のように核燃料税を創設したいということで、現在自治省の方に許可の申請をしてまいっております。  それで、福井県で創設をいたしたいとしております核燃料税の内容は、課税客体を発電用原子炉に挿入した核燃料にいたしております。また、課税標準はその挿入いたしました核燃料の価格とされております。納税義務者は、発電用原子炉施設者でございます。税率は核燃料価格の百分の五でございます。収入見込み額といたしましては、平年度で約十四億ということでございます。それで課税の期間は五年間ということで現在許可の申請が参っております。  法定外普通税につきましては、一般的にその税収入を確保できる見込みがあるということ、それからそれだけの歳入を必要とする特別の財政需要が必要であるということでございまして、これらの条件を満たしました場合には自治大臣といたしましては地方税法上許可をしなければならないということに相なっております。  それで、先ほども申し上げましたように、現在正式に福井県から許可の申請が出てまいっておりますが、事前協議の段階におきまして、各関係諸官庁との協議をいたしましておおむね問題がないということで、実は内諾をいたしておるような次第でございます。したがいまして、この正式の許可申請が出てまいっておりますものですから、さらに正式に各省庁とも協議をいたしまして、近く許可に相なるもの考えております。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、こうした核燃料税ということになってきますと、火力発電所のLNGであるとかそうしたことについても将来は考えていくわけですか。もしそういう申請が出てきたとした場合は、どういうお考えを持っておられるのですか。
  192. 川俣芳郎

    ○川俣説明員 福井県の場合におきましては、先ほど申し上げましたように、これらの法定外普通税を起こしまして、この歳入をもって充てるべき財政需要があるということを実は確認をいたしておるわけでございます。たとえば原子力安全対策費でございますとか、放射線監視事業対策費等合わせますと、十年間に約三百八十億弱の財政需要が見込まれるということでございまして、そういった点から財政需要もございますし、また、それに対応する歳入も得られるということで、すべきものと考えておるわけでございまして、お話のございました火力発電所等の問題につきましては、これはまさにケース・バイ・ケースでございまして、今後そのようなことが出てまいりましたならばその段階検討いたさなければならないと考えております。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣は、この問題についてはどういうように考えていますか。
  194. 前田正男

    前田国務大臣 これはやはり、いま自治省から説明のありましたとおり、福井県としては、原子力の問題、核問題等についての安全その他について特別の財政需要が必要でございますので、やはり収入の見込みがあるならば、まあ関係各官庁も内諾しているそうですけれども、賛成してやっていただき、正式に許可してもらいたい、こう思っております。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは非常に時間が短いので、いろいろな問題に多岐にまたがっておりますが、ひとつお聞きしたいのは、PCBの代替品のいわゆるアルキルナフタリン類、これは感圧紙等の溶剤に広く利用しておるわけでございますが、この愛知県の公害調査センターの測定結果を見ますと、非常にPCB代替品としてのいま申し上げたそうした汚染が進んでおるという報告がされておるわけですね。この代替品の汚染の問題については、政府としてはどのように考えておりますか。これは厚生省と科学技術庁と両方でお答え願いたいと思います。
  196. 園山重道

    ○園山政府委員 御指摘のPCB問題につきましては、御承知のとおり、問題になりました四十六年、七年のころに何件かの特別研究を特別研究促進調整費によって行っております。その中で、ただいま御指摘のPCB代替品の問題につきましては、四十七年に行いましたPCB等汚染防止に対処するための慢性毒性等、人の健康に及ぼす影響に関する特別研究ということで、厚生省、労働省等の御協力を得ましての研究が行われております。ここで行われました代替品の毒性に関する研究と申しますのは、ただいま御指摘のございました感圧紙について当時すでに代替品が出ておったということで、その毒性に関する研究が行われたと聞いております。  その研究の結果につきましては、代替品について、私まだ詳細に検討いたしておりませんけれども、一見いたしましたところ、それほど強い毒性等がある問題ではないような結論のように伺っております。その後、この問題につきまして詳細なフォローをいたしておるわけではございませんけれども、調査いたしましたところ、通産省の化学品安全課におきましてこの代替品に関する調査を行うべく五十二年度予算要求を行っておる、こう聞いております。  また、感圧紙のほかにも、御承知のとおりいろいろ絶縁体でございますとかその他あるわけでございます。これらにつきましては、現在、業界におきまして適切なものを探しておる段階であるというふうに聞いております。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 故紙などのいわゆる再生の工程で有機塩素系化合物を生み出していることがもう確実であるということが言われているのですね。これは厚生省もお見えになっているのですが、こういうことを放置しておっていいのですかどうですか。
  198. 仲村英一

    ○仲村説明員 食品衛生課長でございます。ちょっと所管が違いますので、申しわけございませんが……。  これらの物質についての安全性の問題につきましては、御承知のように化学物質に関する規制法というのは通産省と厚生省のいわゆる共管でございまして、それぞれの物質につきましては、難分解性でありますとか、生物内に濃縮されるかどうかという点、あるいは毒性の問題という観点から、特定化学物質に政令で指定いたしました後にいろいろの使用等についての規制が行われていることは御承知のとおりでございます。  いまおっしゃられましたような物質につきましては、環境汚染につきましては環境庁の方で、それから難分解性、生物内の濃縮の問題あるいは毒性の問題につきましては私どもの薬務局の方で並行して研究を進めている段階でございます。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう一度申し上げますと、アルキルナフタリン類ですね。これは商品名がKMCです。ジフェニルエタン類、SAS、こういうものがいま私が指摘しましたように有機塩素系の化合物を生み出しておる、こういうことでありまして、そうなってきますと、これはもう非常に心配な問題があるわけです。これはひとつ力を入れてよく調査をすべきだと思います。もう時間がありませんから、簡潔に決意をひとつ聞かせてください。
  200. 園山重道

    ○園山政府委員 御指摘ございましたので、十分調査していきたいと思います。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 調査をしてみるということは、科学技術庁としてはいわゆる研究調整費から出して、関係各省連携をして調査をするということですか。
  202. 園山重道

    ○園山政府委員 そういった取り組み方をすべきかどうかについてまず検討をいたしてみたいと思います。
  203. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは時間がありませんので、通産省が来ておられますから最後に一点だけ聞きます。  答申によりまして、原発設置の電調審決定の前に環境審査報告書を作成してこれを公表すべきだということを言っておるわけです。この趣旨に沿って現在計画されております原発指定について、電調審が決定済みのものも含めてすべて環境審査報告書を公表されるかどうか、これだけを最後にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  204. 武田康

    ○武田政府委員 先生の御指摘は、行政懇意見の中で、審査担当省庁環境審査の報告書をつくって公表する、それから環境審査報告につきましては電源開発基本計画決定前に公表する、その点についてどう考えるのかということであろうかと思いますけれども、私ども通産省といたしましては、現在も電源開発調整審議会に付議いたします場合には、原子力なり火力なりが周辺環境に与える影響について調べておりまして、電調審の場でいろいろ議論になる種をそろえているわけでございます。  行政懇の御意見につきましては、これは科学技術庁とも御相談しながら、その趣旨に沿うように行政の実体を必要な部分について変えていくという方向で、私どもその線に沿っていろいろ検討しているところでございますけれども、行政懇の一連の御意見を一括して行政の実行面に移していきたいというのが私どもの姿勢でございます。したがいまして、そういうような行政懇意見に沿ったもろもろの変更の一環といたしまして、御意見にございますようなことを実行していきたいと考えているわけでございます。
  205. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう終わりますが、ちょっと抽象的なあれなんですね。それはそれでいいですよ。要するに、電調審で決定済みのものもすべて含めて環境審査報告書を公表するかどうかということを聞いているのです。現在決定済みのものがあるでしょう。それについて公表するかということを言っているのです。
  206. 武田康

    ○武田政府委員 現在の段階で申し上げられますことは、今後行政懇の御意見の方向で行政の実体が整備されました時点以降、ここの御意見にあるようなことを実行するということでございまして、過去ずっといろいろな意味チェックはいたしてきておりますけれども、ここにお書きになったような意味環境審査報告というのを過去のものにつきましてまでさかのぼりまして全部やるかどうかという点につきましては、なかなかむずかしい点もあろうかと思いますが、そういった問題も含めまして、実際にこの行政懇の御意見趣旨に沿った改革を行いますときにどうしたらいいかというのをいま詰めているところでございます。
  207. 近江巳記夫

    ○近江委員 では終わります。
  208. 中村重光

    中村委員長 次は小宮武喜君。     〔委員長退席八木委員長代理着席
  209. 小宮武喜

    ○小宮委員 最初に大臣に質問しますが、この前国会で継続審議になっております日本原子力船開発事業団法の取り扱いについては、まずどのように考えておられるのか。
  210. 前田正男

    前田国務大臣 この法案は、わが国の原子力船開発機関で唯一のものでございますので、ぜひともひとつこの際、国会の御承認を得て成立させていただきたい、こう考えておるわけでございます。
  211. 小宮武喜

    ○小宮委員 ところで、政府は、この原子力船むつ」の修理港としてことしの二月十日に佐世保港に要請されてから八カ月を経過しているわけですが、その後の状況はどうなっておるのか。
  212. 前田正男

    前田国務大臣 これは現在、お願いをいたしました後、私の方も小沢政務次官を長とする使節団の派遣をいたしましていろいろと説明したり、あるいはまた説明書を提出したり、県からの質問書に回答書を提出したり、市町村において説明を行う等、できるだけ御理解を賜るように努力をしておるところでございまして、一日も早く地元の了解を得たい、こう考えておるわけでございます。
  213. 小宮武喜

    ○小宮委員 政府の方はえらい落ちついておるような感じを受けるわけですが、よほど地元の受け入れに自信があるのか。結局、いまの母港は来年の四月一五日までが期限というふうになっておりますが、それまでにこの問題の解決ができる見通しを持っておるのかどうか。
  214. 前田正男

    前田国務大臣 これはぜひひとつ御理解を賜って、この見通しができるようにお願いしたいと思っておるわけでございまして、県等でも検討委員会を設けられるというような話もございますし、そういうふうなことを通じましてぜひひとつ御理解を得て御了承していただきたい、そうして解決の見通しを立てたい。私たちとしては、ぜひこれができるようにお願いしたいと思っておる次第でございます。
  215. 小宮武喜

    ○小宮委員 もしノーとなった場合の対策考えておるのですか。
  216. 前田正男

    前田国務大臣 現在のところ、そういうことは全然考えておりませんで、御理解を得られるものと考えておるわけでございます。
  217. 小宮武喜

    ○小宮委員 全然考えておらないということはよほど自信があってのことだろうと思いますが、そう問屋がおろすかどうか、それはわかりませんよ。  それにしても、この際、私がはっきりさせたいことは、政府は、「むつ」がいわゆる漂流した際に、「むつ」の母港に入港させてもらうために、四十九年十月に四者協定に基づいてむつ市民と青森漁民に十三億七千八百万円の補償金が出されたと伺っておりますが、この補償金の性格はどういうものですか。また、その使途について説明を願いたい。
  218. 山野正登

    山野政府委員 御指摘の十三億七千八百万円の内訳から申し上げますと、一つは、むつ市におきます関連公共施設の整備でございまして、体育館の建設事業に対する助成といたしまして一億円、それから放送施設の整備事業に対する助成といたしまして七千万円支出いたしております。  それから、第二は漁業振興対策でございまして、これが十二億八百万円でございますが、内訳は、第一が陸奥湾の漁業振興事業に対する助成八億八百万円、第二がホタテ稚貝の減産等補償費一億円、第三が魚価安定対策及び漁業金融対策といたしまして三億円でございます。このうち、ホタテ稚貝の減産等補償費と申しますのは、四者協定が締結されました当時はこういった表現をいたしておったのでございますが、その後、地元とも協議をいたしまして、補償費というふうなことでは被害の実態の把握が非常にむずかしい、また、たとえ被害があったとしましても、その場合に被害額の見積もりというのが大変むずかしいわけでございますので、このホタテ稚貝の減産等補償費にかえまして、漁業協同組合の助成事業ということで一億円の支出をするというふうに変更いたしております。
  219. 小宮武喜

    ○小宮委員 ただいまの説明によりましても、これはむつ市民の公共施設整備費だとか漁業振興対策費として出されておるわけで、初めは、先ほども答弁がありましたように、補償金という名目もあったけれども、それはなくなって、これは漁業組合助成費ということに変わっておる。  そうしますと、この補償金の——補償金という名目がどうかという問題もありますけれども、いまの内容を聞けば、いわゆる「むつ」の放射線漏れによってホタテガイ養殖に直接的にも間接的にも被害はなかったというふうに理解しますが、いかがですか。
  220. 山野正登

    山野政府委員 原子力船むつ」が航行いたしまして、それによって漁網が切断されたとか、あるいは「むつ」の放射線漏れによって被害があったといったふうなことは全然ないかと存じます。ただ、先生がいま直接的にも間接的にもという表現をなさいましたが、「むつ」の出港、入港に対する反対運動等で、漁業者の方々が反対運動をするためにホタテ稚貝のめんどうが見られなかったといったふうなことで、何らかの被害があったかもしれないということはつけ加えておきます。ただ、これは確認いたしておりません。要するに、結論は原子力船むつ」によって直接の被害というものはなかったということは明確であると思います。
  221. 小宮武喜

    ○小宮委員 私の直接的、間接的被害というのは、たとえば放射線が漏れたことによってホタテガイの養殖が非常に悪くなったとか、あるいはホタテガイが今度は市場で価格が暴落したとかということを指しておるわけであって、答弁する方も何かやはり、私が聞いておるとどうも答弁がすっきりしないような感じがするのです。それは私も、この出された趣旨なりあるいは経緯なりは存じておりますけれども、私自身がはっきりさせたいというのは、いわゆる「むつ」の放射線漏れによってホタテガイの養殖が直接間接に損害を受けたのかということを質問したいのですが、なかなか答弁する方も、どうも何か明確な答弁が出ぬようですけれども、私自身はそういうふうに理解しておるということで、次の質問に入ります。  それから、この母港として施設費に、当時の金で四十億が投資されております。これはいまであったら相当の莫大な投資になるのでしょうけれども、この施設か——まあ母港の問題をいまどこでどう考えられておるのか知りませんけれども、これはこの前質問してもなかなか明確にされませんから。しかしながら、仮にこのむつ市が母港でなくなった場合にはこの施設はどうなるのか、あるいはむつ市に払い下げられるのかどうか、この点ひとつ明確にしてもらいたい。
  222. 山野正登

    山野政府委員 青森県にございますこの陸上付帯施設は、現在まで、当時の金にしまして約二十六億円の経費を投じまして建設したものでございますが、これらの施設につきましては、今後新しい定係港が決まり次第、この利用可能なものはできるだけ移転をいたしましてこれを再使用するというつもりでおります。
  223. 小宮武喜

    ○小宮委員 「むつ」問題は、時間の制約もございますので、これくらいで次に移ります。  次は、通産省にお伺いしますが、総合エネルギー調査会の昨年の答申によれば、わが国の原子力発電開発は、昭和六十年度に四千九百万キロワットの規模に持っていこうということになっておりますが、この答申は、現在の発電規模が六百六十万キロワットであることからかんがみてもきわめて早い開発テンポだと思います。しかし、これは石油資源の低廉かつ安定的な入手が困難であるという事態を考えればやむを得ない措置だとも思いますが、これが果たして可能かどうかということなんです。  すでに御存じのように、原発に対する反対運動も次第に活発化してまいりまして、当初はこの廃棄物の処理あるいは温排水の問題あたりから発展しまして、いまは政治問題にまで発展しておるというふうに私は見ております。すなわち、ことし六月、アメリカのカリフォルニア州における原発規制に関する住民投票の問題、わが国でも最近、日本弁護士連合会の原発の中止、抜本的な再検討を求める声明が発表されるなど、非常にこの原発の問題については事態は深刻になりつつあると思いますが、これに対する政府の所信並びに対応策について質問します。
  224. 武田康

    ○武田政府委員 先生御指摘のとおり、昨年八月の総合エネルギー調査会の答申によりますと、昭和六十年度におきます原子力発電規模を四千九百万キロワットと想定いたしております。その時点におきます全体のエネルギーバランスのうちで原子力エネルギーの占めるウエートというのが九、ちょっと端数を忘れてしまいましたが、一〇%弱でございます。  で、現状を申し上げますと、そのうちすでに稼働しておりますものが、先ほどの御指摘のとおり六百六十万キロワットでございますが、そのほかに、現に建設中のもの、それから電源開発調整審議会の議を経まして現在安全審査等にかかっているもの等を含めますと、概数でございますが、二千百万キロワットでございます。したがいまして、四千九百万キロワットと二千百万キロワットとの差額二千八百万キロワットを、これから十年間、昭和六十年までの間に開発しなければいけないわけでございまして、立地の問題その他、先生御指摘のございましたような諸問題を抱えておりますので、必ずしも容易なものではないということを私ども承知しているわけでございます。  しかしながら、エネルギーの多様化、将来の安定確保等の見地から、もちろん原子力でございますので、安全の確保環境の保全というものに万全を期するというのがベースでございますが、同時に、当該立地地点、地域社会の福祉の向上ということも含めまして、地域の理解と協力を得ながら、この四千九百万キロワットという目標を達成するために最大限の努力をしていきたいと思っているのが現状でございます。
  225. 小宮武喜

    ○小宮委員 現状の説明はございましたけれども、こういう事態になってどういうように考えておるのか、その対応策をどうするのかということをはっきり言ってもらわぬと、いまのような現状説明だけでは、それはすぐわかるわけですから。だからこれは通産大臣に言うのかどうか知りませんけれども、それならひとつ前田大臣から御答弁願いましょうか。
  226. 前田正男

    前田国務大臣 いまお話しのようなことでございますから、なるべくこれを実現するように最善の努力をしなければなりませんけれども、先ほど来お話がありますとおりに、現在までの原子力のやり方に対しまして内外からいろいろの問題点が指摘されております。そこで、私たちといたしましても、まず安全確保ということから、一応行政懇の答申を尊重しまして、安全委員会をつくるということですでに予算要求をしておるわけでございますけれども、それだけでは実際の問題は解決しません。特に再処理以降の問題に対するいろいろな国の責任という問題がありまして、それに伴って、先ほど来また問題になりましたように、アメリカの裁判とかいろいろな問題が出てきておりますので、こういう問題に対してはわれわれとしてもひとつはっきりした方針を立てなければ、これからの安全確保を優先した原子力開発というものは進みにくい。ところが、安全確保を優先した体制でなければ国民皆さん方の御理解を得ることはむずかしい。ただ委員会をつくりましても、これは審査する機関ですから審査することはもちろん厳重になりますけれども、審査が厳重になったからといって安全に原子力開発されるわけではありませんので、特に問題になっている再処理以降の問題——現在動いている炉につきましては安全研究費を御承知のとおり倍々と相当ふやしておりまして、現在の炉に対する安全研究というものは相当成果が上がってくると思いますけれども、どっちかといいますとおくれているのは再処理以降の問題でございますから、この問題についてはやはり国がある程度責任をもってやらざるを得ないとわれわれは考えておるわけでございます。  したがって、この問題については、先ほどちょっと申し上げましたとおり、実務担当の最高の、トップレベル方たちの御意見を承りまして、そうしてそういうことに対して政府としての方針を決めていかなければいけないのじゃないか。特に、科学技術庁原子力委員会の庶務をやっておるばかりじゃなしに、この安全委員会予算を要求しているのは科学技術庁でございますから、その後の体制をどうするかということで意見をまず科学技術庁がまとめまして、また、原子炉規制法等の関係責任科学技術庁は負っておるわけですから、そういう方面のこともありますので、まずわれわれの方で意見をまとめまして、これはもっとも科学技術庁だけではできませんから、総理府とか党あるいはよその官庁にもそういう構想で話をして、まず構想から固めていかなければいかぬのじゃないか。エネルギーの目標を達成するのに最善の努力を払うについては、そういう構想を固めて国民理解を得られるような体制をとらなければなかなか進みにくいのではないか、こう思っております。  先ほど来御説明いたしましたとおり、まずそういう構想を固める懇談を早急に開催して、それをもとにいたしまして具体的な策を政府としては樹立していかなければならぬ、そしてこの目標達成に努力したい、こう思っておるわけです。
  227. 小宮武喜

    ○小宮委員 通産当局から何か対応策についての答弁があればしてください。
  228. 武田康

    ○武田政府委員 先ほど申し上げましたように、原子力の安全確保環境の保全というのがベースでございまして、従来から審査、検査等を通じましてそれに努力してきたところでございますけれども、今後ともさらに一層審査体制、検査体制等を強化して安全確保環境保全に万全を期するところでございます。  それで、さらに原子力発電につきまして、安全性実証試験とか原子炉の改良標準化、これは点検作業等の遠隔化、自動化とか機器の信頼性の向上を図るための改良標準化でございますが、そういったものを促進いたしますし、温排水等に関します調査研究等も今後さらに拡充、推進していきたいと考えているわけでございます。  同時に、先ほど申し上げたことでございますけれども、地元周辺住民方々の御理解と御協力を得るためのものといたしましては、広報対策強化するあるいは電原関係三法に基づく立地促進対策交付金等の運用の改善等によりまして地元福祉対策の拡充に努めるということも目下考えておるところでございます。  それ以外に、原子力発電の開発、拡充と同時に、天然ウランから始まりまして廃棄物処理に至ります——もちろんリサイクルするものもございますけれども、発電と調和のとれました核燃料サイクルというものを確立していかなければいけないわけでございまして、そういった面につきましても今後さらに積極的に推進していきたいというのが通産省の考えております対策でございます。
  229. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほども申し上げましたように、以前は温排水の問題とか、放射能を含んだ産業廃棄物の問題とか、いろいろ問題はあったのだけれども、最近の反対運動の要素の中には、いわゆる論拠の中には、結局将来のエネルギー需要の予測が大き過ぎるのではないかということで、それほど原子力発電所を急テンポでつくる必要はないじゃないかということにつながっておるわけです。それから、石油ショック経験から、エネルギーを節約すれば原子力発電所の拡張に対してはもう少し縮減、規制できるのではないか。さらには、故障等で原発の稼働率が低下したので、初めの計算からすればコスト高になって、いわゆる採算性、経済性の問題にも問題があるのではないかという点。もう一つは、副産物のプルトニウムが核拡散につながるというような例がいろいろ挙げられて反対運動がなされておるわけですが、私がいま申し上げました四点、温排水と放射能を含んだ産業廃棄物の問題を除いた四点について通産当局の所見を聞きたい。
  230. 武田康

    ○武田政府委員 いま御指摘がございましたのは、ベースになるエネルギー需要想定が過大ではないか。第二に、節約によって対処すべきではないか、そうすれば開発規模を下げてもいいのではないか。第三点として、故障の関係その他で稼働率が下がれば採算性の問題も起こるのではなかろうか。第四点はプルトニウムの拡散の問題でございますが、先に第三点からちょっとお答えさせていただきます。  昭和四十八年、九年、五十年と三年間を通じまして、実は原子力発電所の中での機器の故障とかトラブル等を主原因にして稼働率が低下してきております。その状況をちょっと申し上げますと、昭和四十八年度には全部を平均して稼働率六七%だったのが、四十九年度には五五%になりまして、五十年度には四八%という状況になってしまいました。ただ、これらの原因は、いま申し上げましたように機器の故障、トラブル、それからアメリカで故障、トラブルが起こりました、日本にございます同系統の機器についての点検ということで、それぞれ炉を停止して対策をとってというようなことをしたのが主原因でございまして、そういった諸対策が昨年の終わりまでにほぼ完了いたしましたので、それに伴いまして、本年に入りましてからは、たとえばことしの四月から六月にかけまして七二%、七月から九月にかけましてもやはり同様七二%という調子で稼働率が回復してきております。  原子力発電の経済性、これは現在一番多いのが火力発電でございますので、それとよく対比されて検討されるわけでございますが、現在動いておるものにつきましては、大体原子力発電のコストは火力発電の半分ぐらいのもので、今後五、六年たちまして動くものにつきましても、それぞれ両方ともコストは上がりますが、なお火力発電に比べまして二、三割程度原子力の方が安い。ただ、そのときにある適正な稼働率、大体七〇%程度の稼働率を前提にいたしておりますので、稼働率が下がりますとその分だけコストが高くなるわけではございますが、少々の稼働率低下では、なお火力と対比して見劣りのしないコストが想定されているわけでございます。しかしながら、固定費の多い原子力発電につきましては、目標とする稼働率を十分維持しなければなりませんので、今後につきましても、先ほどのように一応諸トラブルに対する措置は終わっておりますが、稼働率の維持に努めていかなければいけないというのが私どもの考え方でございます。  それから第一点、第二点の、トータルの需要想定が過大ではないか、それからエネルギーの節約をもっとすれば原子力をそう開発しなくてもいいんではないかという点につきましては、ここにおります参事官からお答えさしていただきます。  第四点はまた後でやらせていただきます。
  231. 安楽隆二

    ○安楽説明員 先生御指摘の最初の二点についてお答えさせていただきます。  まず、エネルギー需要予測の問題でございますが、これにつきましては、総合エネルギー調査会の答申等に基づきまして、昨年十二月に総合エネルギー対策閣僚会議におきまして、今後十年間、五十年代の総合エネルギー政策の基本方向というものを決定したわけでございますが、その中で参考として、推進すべき数値といたしまして、昭和六十年度のエネルギー需要は、省エネルギー、節約を十分やった後で、石油換算で申しまして七・六億キロリットルのエネルギーが要るというふうに見込んでいるわけでございます。これはある程度の安全性と弾力性を織り込みまして、昭和五十年代を通じまして経済成長の方が大体年率六%程度というものを達成していくのに必要なエネルギー量というふうに考えられておるわけでございます。ただその場合に、GNPの伸びに対しまして省エネルギー努力によって少しでもエネルギーの需要を下げるという観点から、その両方の伸び率の比率をGNPに対するエネルギーの弾性値と呼んでおりますが、これを過去は一・一四、すなわちGNPが一伸びるときにエネルギーが一・一四というふうに伸びてきましたものを、省エネルギーをする結果、〇・九五というふうに弾性値を低くしてやっていこうというふうに見込んでおりまして、決してこれは過大なものではなく、今後五十年代六%程度の安定成長を達成していくためにはこれだけのエネルギー量の確保がぜひとも必要であるというふうに考えているわけでございます。  それから、先生御指摘の第二の点でございますが、エネルギーの消費節約の重要性でございますけれども、これは政府といたしましても十分認識しておりまして、今後のエネルギー需給の緩和は供給力の増強とともに需要面からの節約努力ということでやっていかなければならないということで、四十九年八月以降、内閣に資源とエネルギーを大切にする運動本部というものを設置いたしまして、ここにおいて各種の節約対策というものを推進しているわけでございますが、さらに非常に長期的な観点からも、昨年の十二月の、先ほど申しました閣僚会議決定の中で、いろいろな構造政策、将来の省エネルギー型の産業構造とか生活パターンを形成していくための構造政策をやっていくべきであるということを決定しまして、そして六十年度までの目標値といたしましては、エネルギー全体の九・四%、約一割近いものを省エネルギーで達成しようという一応の目標を考えているわけでございます。  こういったことを今後五十年代に達成いたすために、すでにたとえば開銀融資等によりまして省エネルギーの設備の導入の促進を図ったり、熱管理法の運用等によりまして工場部門におけるエネルギー管理の改善を進める、あるいは国民一般のエネルギー消費につきまして呼びかけ、広報活動等々の施策を通じまして国民の省エネルギー意識の盛り上がりということを実施してまいっておるわけでございますが、今後ともこれらの施策を各種の観点から一層充実して省エネルギー政策に取り組んでまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  232. 伊原義徳

    伊原政府委員 先ほどの先生の御質問、第四点のプルトニウムの拡散と申しますか軍事転用の防止の問題につきまして、私の担当でもございますのでちょっと御説明させていただきます。  御高承のとおり、わが国の原子力開発は、原子力基本法の精神に基づきまして平和利用に徹してまいったわけでございますが、幸い本年、核拡散防止条約の批准もいただきましたので、国際的にもわが国がその拡散防止ということについてはっきりした立場に立ったということになったわけでございます。これを受けまして、関係諸法規、さらには保障措置協定の批准、こういった問題を踏まえておるわけでございますので、私どもといたしましては、関係諸法規の整備を通じましてさらにこのプルトニウムの管理問題について厳重な規制の措置をとってまいりたいと考えております。
  233. 小宮武喜

    ○小宮委員 小さい問題はまた別途質問しますから。いずれにしましても原子力発電所の開発の問題は、好むと好まざるとにかかわらず私は少なくとも時代の趨勢だと思います。そういう立場から考えてまいりますと、わが国の原子力発電はその燃料を海外に依存しておるわけでありまして、しかも、近年その入手は石油以上に困難視されておるという現状だと伺っております。そこでまず、この原鉱石である天然ウランを見ても、いまのところはっきり確保できているのは六十年代の前半までだと言われております。しかも、世界的にも六十年代後半には供給不足が予想されております。したがって、わが国としても、このウラン鉱の自主開発考えなければならない時代に来ておるのではないかというふうに考えます。これを行わなければこの安定的な確保が非常にむずかしくなってくるということになりますので、その点、ウラン鉱の自主開発の問題についてはどのように考えておられるのか、答弁願いたい。
  234. 武田康

    ○武田政府委員 原子力発電のもとになりますウランにつきましては、先生御指摘のとおりでございますが、従来から長期契約等によりまして現在昭和六十年までの需要を賄うに十分足る量は一応確保しているわけでございます。ただ、それから先になりますと、いままでに確保したものでは不足になるという時期がしばらくして、何にも手を打たなければ参るわけでございまして、六十年代に入りまして以降引き続き従来のような長期契約等によります確保をさらに推進することが一方で必要でございますが、他方で、先生御指摘のような、わが国の企業等によります自主開発、つまり、海外探鉱をやりましてさらに開発をするという自主開発の促進が必要でございまして、現在私どもの通産省の諮問機関でございます総合エネルギー調査会の中に原子力部会というのがございますけれども、この原子力部会等で、自主開発体制、それから自主開発に携わるべき企業等に対する国としての助成の仕方等につきましていろいろ検討しているところでございますが、その成果を踏まえまして、今後六十年代以降、自主開発、長期契約等を含めた天然ウランの確保策をさらに推進していくというふうに考えておるところでございます。
  235. 小宮武喜

    ○小宮委員 反論は、ちょっと時間を急ぎますので、この次に譲ります。  次に、天然ウランの濃縮の問題についてですが、現在契約しているアメリカと欧州濃縮共同体との供給量だけでは、これまた六十年代の需要量を賄い切れないと言われておりまして、そこで、濃縮工場の増設計画を持っているアメリカに一応の期待はされますけれども、それもアメリカでは核燃料保証法の法律案の問題もありますし、これも必ずしも安定したものではないということで、わが国としてやはり自主開発体制の確立が必要ではないかというふうにも言われておりますが、この点についてのお考えはどうか。
  236. 山野正登

    山野政府委員 濃縮ウランの確保につきましては、先生御指摘のように非常に重要な問題でございますが、私どもの基本的考え方は、将来においてはできるだけ国内において濃縮ウランの入手、確保を図るという方向で考えておるわけでございまして、動力炉・核燃料開発事業団におきまして、過去数年間遠心分離法によるウラン濃縮の研究を進めておるわけでございます。この研究も相当程度進捗してまいりましたので、来年度以降パイロットプラントをつくりまして、国内における自立工場の建設の第一着手としまして、このパイロットプラントの稼働に入ろうという運びでございますが、さらに将来におきましては、このパイロットプラントの経験を生かしまして、国内に濃縮工場をつくっていこうと考えております。  ただ、将来にわたって安定的に供給を確保するという観点からは、この国内の自給体制に加えまして、海外の国際的な共同事業にも参加するということも一方に配慮する必要があろうかと思いまして、これはこれで米国あるいはオーストラリア等といろいろ相談をしているところでございます。
  237. 小宮武喜

    ○小宮委員 きょうはさらっと触れます。  第三には、使用済み燃料の再処理の問題がまたこれは大きな問題になっておりまして、五十三年度から稼働する動力炉・核燃料事業団の再処理工場は、大体七百万キロワットの発電所から出される使用済み燃料の再処理能力しかないと言われておりますが、しかしながら、現在委託しておるイギリス、フランスでも五十七年までの需要を賄うのが手いっぱいだということで、委託量をふやす余地は余りないのではないかということを言われておりまして、これまたわが国自身で第二処理工場をつくる必要性があるのではないかというように考えております。その点、いろいろ新聞にも構想が出ておるようですけれども、ここではっきりひとつ御答弁を願いたい。
  238. 山野正登

    山野政府委員 再処理につきましても、先生御指摘のとおりでございまして、国内に再処理体制を確立するということは急務になっておるわけでございます。動燃事業団の現在試験をいたしておりますウラン再処理工場も、できるだけ早く諸試験を終了しまして、恐らく五十三年度当初から商業運転に入り得るかと考えておりますが、これに続く第二再処理工場と申しますものも、これは現在、第二再処理工場をどういう形で進めるかということにつきましては、原子力委員会の中の核燃料サイクル問題懇談会の中で検討していただいておりますが、先般九月にちょうだいしました中間報告では、電力業界を中心にした民間が主体となってこの第二再処理工場を建設するというふうなことになっておりまして、私どもとしましては、官民協力してこの準備作業に入ろうと思っております。
  239. 小宮武喜

    ○小宮委員 通産省が先ごろまとめた昭和八十年度を目標年次とした長期行動計画によれば、目標年次の原子力発電規模を一億三千万キロワットと想定して、核燃料対策の緊急性を強調しながら、海外ウラン鉱の開発の促進、ウラン濃縮技術の自主開発、再処理工場の建設等々の構想が打ち出されているわけですが、しかし、今日の課題は、ただ必要性を強調するだけではなくて、それを今度は実現するために高度の外国技術、それには巨額の資金が必要でございますから、そういった意味での開発体制のあり方が基本的な問題になってくると思うのです。すでにイギリス、フランスでは国が中心となってやっておるし、西ドイツでは民間中心という体制が確立されて、核燃料サイクル対策に取り組んでおりますが、わが国も早急に体制を確立してこの核燃料対策推進すべきだと私は考えております。  したがって、いまの原子力発電所の問題につきまして、いろいろ問題はあるけれども、やはりわれわれは好むと好まざるとにかかわらず趨勢として取り組んでいかなければいかぬ。いくとすれば、いまのようなただ計画だけ立てても実際こういった問題が一緒に進んでいかなければ、やはり大きな禍根を残すことになるので、その点についてのひとつ所見を、通産省なりあるいは特に大臣からも求めて、私の質問を終わります。
  240. 前田正男

    前田国務大臣 全く同感でございまして、これはひとつ私たちも、先ほど来申しましたとおり、安全性確保ということでこれから国民理解を得ていきますためにも、核燃料サイクルというものが確立していなければ、安全性のある原子力の発電その他の推進にならぬじゃないか、こういう御意見でございます。したがって、私たちもその点については十分対処しなければならぬと考えております。  ただ、これは先ほど来お話がありましたように、相当問題点がありまして、しかもまた、最近の内外の要望では、民間に任すことは任すのですけれども、しかし、管理その他の責任はもっと国がとれというふうな意見が非常に多うございまして、そういうふうな点もどういうふうに処理していくかということで、実は、ちょっと繰り返すようですけれども、トップレベル方たちにお集まり願いまして、構想としての御理解を得て  まあ核燃料サイクルを確立せいということは前から何遍も言われているのですけれども、実は延び延びになっておるわけなんですが、そういうことを延び延びにできない現状じゃないかと私たちは思います。また、それができなければ、本当は安全性確保した原子力の発展というものに国民理解を得ることはむずかしいと思いますので、これは余り延び延びにできませんので、トップレベルの御理解を得て、方針を決めたらその線に沿って行政はひとつ強力に推進していかなければいかぬのじゃないか、こう考えておるわけでございます。
  241. 武田康

    ○武田政府委員 先ほど先生おっしゃいましたとおりでございまして、調和のとれました核燃料サイクルの確立、そのための体制、資金などの施策の確立というのがきわめて大切かつ緊急を要することでございます。そういう観点から通産省といたしましても、現在、先ほど申し上げました総合エネルギー調査原子力部会におきまして、そのための施策につきまして具体的検討を行っているところでございまして、実は先ほど先生から御指摘のございました一九九五年一億三千万キロワットというような、これは実は資源エネルギー庁内の私的な諮問機関でございます核燃料研究委員会で、核燃料サイクルの確立は非常に長期を要するものでございますから、一つの想定規模をベースにして、いろいろな角度から整合性のとれた資源の確保から廃棄物の処理までのサイクルを量的にも検討いたさなければいけないものでございます。そこで一つの想定数字としてつくったものでございますけれども、そういった量的な評価も、先ほど申し上げました原子力部会での検討の基礎データの一つといたしまして、先ほど先生からお話がございましたような具体的な体制、資金その他の具体的なつぎ込み方といったようなものの検討をいま進めているところでございまして、その結果がまとまりますれば、その線に沿いまして、先ほど先生から御指摘のございました調和のとれた核燃料サイクルの確立の具体化を図っていきたいというのが現在の私どもの立場でございます。
  242. 小宮武喜

    ○小宮委員 もう時間が来ましたので、ただいまの御答弁に対する再質問は次回に譲らせていただきまして、きょうはこれで質問を終わります。
  243. 八木昇

    八木委員長代理 次回は、来る二十日水曜日、午後一時理事会、一時十五分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十一分散会