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松本(忠)
委員 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました
国有鉄道運賃法及び
日本国有鉄道法の一部を改正する
法律案に対して、加藤六月君外四名
提出の修正案並びに修正
部分を除く原案について反対の討論を行います。
反対討論を申し述べる前に一言申し上げます。
公明党は、
国鉄二法についてはあくまで慎重審議すべきことを前々から主張し続けてまいりました。本法についても前国会会期末に継続審議すること自体に反対したのですが、賛成多数で採決され、本臨時国会において継続審議が行われているわけであります。
本
委員会の法案審議は火曜日、金曜日の二日間をこれに当て、水曜日は国政一般の審議に当てることを原則といたしております。去る六日もこの点を特にわが党が強く主張したわけであります。また、連合審査会も、わが党要求の物特
委員会以下八
委員会中物特
委員会のみの申し入れがあり、形式的な連合審査会で終わりました。なお、地方公聴会、現地調査、
参考人の意見聴取等々、わが党が強く要求したにもかかわらずついに開催されず、われわれの要求する慎重審議がついに踏みにじられたのであります。この点まことに遺憾に思うものであります。
それでは、反対討論を申し述べます。
破局寸前の経営状態に陥った
国鉄をどのように立て直すか、この問題は国民が重大な関心を持って見守っているのであります。それは、
国鉄再建計画の内容と
再建の成否いかんが国民生活とわが国経済に重大な影響を及ぼすからであります。したがって、
国鉄の
再建計画は単なる
収支的
均衡策であったり一時的な
赤字穴埋め政策であってはならないのは当然のことであります。そうした観点から見ますと、今回の政府提案の
国鉄再建案は、その認識を欠いたきわめてあいまいなものと言わざるを得ません。
以下、何点かについて反対の理由を申し述べます。
反対する第一の理由は、今回の大幅な
運賃値上げを柱とした政府の
再建案は、最も重要な物価への影響を全く配慮せず行われていることであります。
政府の
再建要綱によれば、五十一年並びに五十二
年度において
国鉄の
収支の
均衡を図るとしていますが、これは明らかに五十二年においても今回同様の大幅な
運賃値上げを前提としているということであり、これは
再建のめどのない一方的な穴埋め策であり、まさに暴挙であると断ぜざるを得ません。さらに、また、これまでの審議を通じて明らかにされたことは、五十三年においてもまた数%の
値上げを政府は画策しているのであります。そうなると、政府は四十九年から五十三年まで連続して五年間の
運賃並びに料金の
値上げを行うことになり、五年間の引き上げ幅は、たとえば東京−大阪間の新幹線に例をとると、四十八年は四千百三十円であったものが、今回の
値上げにより八千三百円と二倍になり、さらに五十二年の
値上げを五〇%とすれば一万二千四百五十円、実に四十八年の
運賃、料金の三倍になるのであります。さらに五十三年に数%の
値上げを実施すると、その
値上げ幅は大変なものになります。
こうした連続大幅な
値上げが直接国民生活に大きな負担を押しつけ、物価上昇に拍車をかけることはきわめて明白であることは国民が周知のとおりであります。もはや三木内閣が掲げた物価公約は破棄されたと言うべきであります。いまやインフレ再燃に政府みずからが拍車をかけていると言っても過言ではありますまい。ロッキード汚職に取り組む三木内閣の姿勢が国民の政治不信を招いている現在、ますます国民をして政治不信を強めることになるでありましょう。物価安定に期待を寄せる国民を裏切るこの三木内閣の責任はきわめて重大であります。わが党は、政府の
国鉄再建案に基づくこの
値上げ法案に強く反対するものであります。
第二の反対の理由は、国民のための
国鉄という認識を欠いた政府の
再建案では、とうてい
国鉄の本質とそのあり方を踏まえた
国鉄再建とはならないということであります。
国鉄が今日のような膨大な
赤字を抱えるに至った主な
原因は、借入金依存の投資計画を強要し、膨大な
借金を
国鉄に背負わせてきた歴代政府の
国鉄補助対策の欠如にほかなりません。国民のための
国鉄という
考えに立って十分な援助を行ってきたならば、
国鉄にこれほどの
借金を抱えさせることはなかったはずであります。
国鉄がこの十年間政府から
補助を受けたのはわずか九千億円
程度にすぎません。その一方では、道路には十九兆円の投資が行われているのであります。このことを
考え合わせれば、政府が
国鉄をいかに冷遇してきたか、また、その反面
独立採算制を盾にして国民に
運賃値上げを強要してきたかがわかるのであります。今回の政府の
再建案は、過去の
借金の一部たな上げを行う一方で、依然として投資財源を借入金依存で賄うよう強いております。
国鉄財政を窮地に追いやろうとしているのであります。
わが党は先ごろ
国鉄赤字の根本にメスを入れた
再建策を発表いたしましたが、過去債務のたな上げや
鉄道などの基盤施設に係る工事費を国庫負担とすべきだと提言しましたのは、国民のための
国鉄という認識に立つからであります。政府がこうした認識を持たない限り、われわれは政府の
再建案を評価することは絶対にできないのであります。
反対の第三の理由は、政府の
再建案は
国鉄の構造的な
赤字に対する具体的施策が皆無に等しいからであります。
国鉄の構造
赤字の主たるものは、モータリゼーションの波をまともにこうむった
貨物問題であります。いま
一つは、政治路線とも言うべき地方
赤字線問題であります。
国鉄の
再建は、すでに
国鉄という
公共企業体として、その一事業の範囲内では解決できる問題でないことは周知のことであります。たとえばエネルギー問題、環境・公害
対策、労働力不足など、交通経済が現実に抱える諸問題の解決が個々の交通事業が単独では解決できないのと同様に、
国鉄財政の
再建はそうした社会的、経済的諸問題と整合性を図らなければなし得ないのは当然であります。特に
貨物輸送の問題は、総合的な交通政策の確立がなされなければその解決は不可能であります。
わが党は早くから
総合交通政策の策定を図るよう政府に要求し、また、政府もその必要性を認めていたはずであります。しかし、今日に至るまで政策立案を行おうとしていないのは全く怠慢としか言いようがありません。
総合交通政策との関連を持たない
国鉄再建案が
国鉄の
再建の名に値しないのは当然であります。
また、政府は、
国鉄経営が危機に瀕した現在でも、五十一
年度において三十二線区、千三百五十二キロに及ぶ
赤字線の建設を進めようとしています。この総延長路線は東京−熊本間に相当し、そのほとんどが運行と同時に膨大な
赤字を出す完全な
赤字線であります。これが
国鉄の
財政をさらに悪化させるものであることは明白であります。この点についてもわが党は、
赤字線の建設は当分の間中止すべきであり、建設の根拠となる
鉄道敷設法は、現在の経済、国土
整備・開発等に適応したものではないので早急に改正するよう要求してきたのであります。
四十五年当時、わが党議員の質問に答えて、当時の
佐藤総理が
鉄道敷設法の改正を
検討することを示唆しながら、田中列島改造内閣以後何らこの問題の改善がなされず今日に至っているのであります。
いずれにせよ、このような
国鉄再建にとって最も重要な構造
赤字に対する解決策を欠いた
国鉄再建案をわれわれは絶対に認めることはできないのであります。
反対する第四の理由は、
国鉄の
再建は労使の協力と協調が必要であるにもかかわらず、その労使間にひびを入れる強引な人員削減を進めようとしているからであります。
政府は、
国鉄再建要綱の中で、
昭和五十五年までに五万人の人員削減を行うとしておりますが、これは
国鉄再建と矛盾するものであります。五万人といえば、現在の
国鉄職員の一二%にもなり、これだけの人員を減らすためには、地方閑散線の
廃止、
貨物輸送の縮小、安全・保安業務の縮小などが当然必要となるはずであります。しかし、そうした
国鉄の事業規模や安全
対策上重要な問題の
検討は、
合理化案決定に際し全く行われていないばかりでなく、このような大量の人員削減という、
国鉄の労使間にとって重要な課題が一方的に提起されているのであります。それは、労使の協力が
国鉄再建に不可欠であることを
考えれば、政府のこうした一方的な
合理化案は、まさにそうした労使間の協調体制を政府みずから破壊しようとするものと言わざるを得ません。
かつて、第一次
国鉄再建十カ年計画が十一万人削減という実現不可能な
合理化案を作成し、その結果、マル生運動による労使間の不毛の対立と職場の荒廃を引き起こしたことは周知のとおりであります。
国鉄の
再建を真剣に
考えるならば、再び労使の対立を生み、ひいては
国鉄の
再建の道を内部から崩壊させるおそれのある
合理化案は撤回すべきであります。
第五に、
国鉄の
再建に当たって、
国鉄の
企業努力の姿勢がまことに不明確であるということであります。
国鉄に対する親方日の丸という国民の批判は依然としてあり、今日、その批判にこたえ、
国鉄が
企業の
努力によって
赤字解消を図ってきた事実をわれわれは知りません。国民の貴重な公共財を預る
国鉄当局が国民の期待にこたえて実施した
対策は皆無と言っても言い過ぎではありません。政府が
国鉄再建案を
提出する前に、国民に対し
国鉄として
再建への姿勢を示すことこそ大切であり、その
努力を怠っている
国鉄当局の姿勢は怠慢の一語に尽きると言うべきであります。
また、同時に、
国鉄の経営の自主性を抑制している法的制約があることも事実であることを十分認識すべきであります。
国鉄の
企業努力をより一層強めるために、政府は、
国鉄の関連事業への投資範囲を制約している
国鉄法第六条を改正し、事業範囲の拡大を図るべきであります。
国鉄の
再建に対する
国鉄当局の
企業努力の欠如、また、
国鉄の自主経営を束縛している法的規制を緩和しようとしない政府には、もはや
国鉄再建を語る資格がないとさえ言わざるを得ないのであります。
最後に、わが党は、
国鉄の経営の現状は重大なる事態に直面をしているとの認識に立ち、去る十月六日、
国鉄再建対策案を発表いたしました。その内容は、
国鉄の役割りと位置づけを明確にした
総合交通政策を改めて確立すること、
国鉄労使関係の改善を図るための条件つきスト権の付与、
国鉄の
企業努力の強化、
国鉄は国民共有の財産という立場から国庫
補助の強化を行うこと、また、
貨物対策の充実などを主な柱としております。いたずらに
運賃値上げに依存する政府案とは本質的に異なったものとなっています。
しかし、
国鉄再建は国民的課題であり、そのための
再建策は国民の十分なコンセンサスが得られるよう積極的な
努力をすべきであります。国民のための
国鉄をつくろうとするならば、与野党一致で賛同できる
国鉄再建計画をつくる必要があると思います。わが党もそのための協力は決して惜しむものではありません。
政府は、国民に過大な負担を強いる今回の
運賃値上げ案を撤回し、改めて全党一致で
国鉄の立て直しに協力できる
国鉄再建案を策定すべきであります。
このことを強く申し上げまして、公明党を代表し、反対の討論を終わります。(拍手)