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1976-05-06 第77回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月六日(木曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  五月四日     辞任         補欠選任      野田  哲君     神沢  浄君      喜屋武眞榮君     青島 幸男君  五月六日     辞任         補欠選任      大鷹 淑子君     熊谷太三郎君      宮崎 正雄君     石破 二朗君      岩間 正男君     沓脱タケ子君      上田耕一郎君     神谷信之助君   出席者は左のとおり。     委員長         八木 一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高田 浩運君                 山内 一郎君                 小野  明君                 森中 守義君                 桑名 義治君                 渡辺  武君                 木島 則夫君     委 員                 安孫子藤吉君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 熊谷太三郎君                 源田  実君                 坂野 重信君                 玉置 和郎君                 戸塚 進也君                 中村 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 最上  進君                 森下  泰君                 加瀬  完君                 片岡 勝治君                 神沢  浄君                 竹田 四郎君                 田  英夫君                 野々山一三君                目黒今朝次郎君                 矢田部 理君                 山崎  昇君                 相沢 武彦君                 太田 淳夫君                 矢追 秀彦君                 神谷信之助君                 沓脱タケ子君                 青島 幸男君    政府委員        大蔵政務次官   細川 護煕君        大蔵省主計局次        長        田中  敬君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    公述人        中央大学教授   丸尾 直美君        全国中小企業団        体中央会専務理        事        稲川 宮雄君        長野県知事    西澤権一郎君        立命館大学教授  加藤 睦夫君        日本労働組合評        議会企画局幹事  安恒 良一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十一年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  公聴会の問題は、昭和五十一年度予算についてであります。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわりませず、本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  それでは、議事の進め方につきまして申し上げますが、お手元にお配りいたしました名簿の順に従いまして、お一人約二十分の御意見をお述べいただきました後、委員の皆様から質疑がありました場合はお答えをお願いいたしたいと存じます。  それでは、丸尾公述人から御意見をお述べいただきたいと思います。丸尾公述人
  3. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 私に与えられましたテーマは経済動向であります。今回の予算関係させながら、日本経済動向から見まして、予算あるいは五カ年計画、さらには長期的な十年後の生活等々に見られる政府見通しなどにつきまして、私の考えを述べさせていただきたいと思います。  まず、日本経済、戦後最大の不況経験したわけですが、振り返ってみますと、今回の不況の当初の型は、非常に近年では珍しい供給面要因がきっかけになっていた、供給ボトルネックとそれに伴うコスト型の不況であった。言うまでもなく石油危機を契機としたわけですけれども、その後、四十九年に入ってきますと、特に後半から五十年になりますと、不況の型がコスト型から通常の需要不足型に転換していった。そして、特に五十年の春闘待ちのために非常に需要抑制政策的に引き延ばしてきた、そういう政策的な不況の性格がその後加わったというふうに見ることができます。つまり、コスト型あるいは供給ボトルネック型の不況から始まって需要不足型になり、さらにその需要不足型不況政策的な、人為的な政策でもってより長引かせた、その結果が非常に深刻な不況になってしまったと言うことができるのではないかと思います。  ですから、現時点での不況の形は依然として需要不足であるわけですけれども、幸い、海外の経済的な好況等に助けられまして景気回復見通しが出てきたわけです。この時点でさらに一層の刺激的な政策をとるのか、あるいはこのままでいいのか、非常に判断がむずかしいところであると思います。  景気動向は、大きな需要要因である個人消費民間投資政府支出、そして輸出入の関係からいくなら純輸出等によって決まることは御承知のとおりでありますけれども一つ見通しが非常にはっきりしませんのは個人消費動向であろうと思います。個人消費は、日本GNPの五〇数%を占める非常に大きな項目であるわけですが、この個人消費の大きさは、賃金等の諸所得動き、特に賃金動きと、それから移転所得社会保障関係等々の移転所得動き、それから減税等々の税金関係、そういうことによって影響されるわけです。政府見通しですと、二・七%名目で個人消費伸びることを予想しているわけです。個人消費が大体これくらい、あるいはそれを上回るぐらいに伸びますれば、私はことしの政府経済見通しはそんなに違ったものにはならない、大体五・六%という実質値成長率の前後で決まる可能性があると思います。  ただ、個人消費に関しましてかなり不安定な要因があると思われます。まず、日本の場合でも雇用者所得の比重が非常に高まってきまして、しかも雇用者所得自営業者所得等々をも決める傾向があります。そしてその雇用者所得春闘賃上げ率によってかなり基調を決められていくという傾向があるわけでして、そういう意味でこの春闘賃上げ率がどうなるかということが非常に注目されたわけですが、政府インプリシット賃上げ予測ですと、春闘賃上げ率に関しては九%台の上の方を考えていられたようですが、大体春闘賃上げ率大手平均で九%台に乗る、九・何%か、あるいは九%強に決まると見られているわけですが、中小企業等々これから決まってくるのを総平均しますと、恐らく九%ぐらいではなかろうかと思われます。  そこで若干政府インプリシット見通しと違うわけですが、それから、この春闘賃上げ率九%ぐらいから個人消費伸び率一三・七%が出てくるかどうかということが非常に問題になるわけです。これは先ほども言いましたように、需要を決める約半分ないしそれ以上の大きな要因でありますから、比較的わずかな差もGNP全体の実質伸び率に相当な影響を与えると思われます。  もう一つここで考慮しなければならないのは、今回減税がありませんでしたし、それから健康保険年金等々負担の増加があるわけです。そういうものをすべて計算に入れまして試算した結果が国税の労働組合等々から出されていますけれども所得層によってもちろん違いますけれども、大体、百五十万ぐらいの給与者の場合に九%の賃上げで八%ちょっとぐらいの実質ネット賃上げになると見られています。二百万円ぐらいの給与者ですと七・八%ぐらい。そこにどうしても一%ぐらいの開きが出てくるわけです。そうしますと、九%の春闘賃上げで八%ぐらいの税引き後ネット賃上げになる。  もちろん、実際の年間を通しての賃金増加というのは、春闘賃上げ率によって決まるのではなくて、現金給与総額の四割ほどを占める賞与及び時間外労働手当などの動向によって大きく影響をされるわけです。で、一つ期待は、定期給与以外の面での賃金伸びがかなり大きいと期待することであります。これをかなり大きく見込みまして、春闘賃上げ率税金引きで八%ぐらいになるのに対して、非常にほかのボーナス等々がこれから景気がちょっと回復してきてうんと伸びるということを想定すれば、そこでかなり賃金全体の伸びが大きくなるということになるわけです。これを仮に大きく見て時間外が一四%ぐらい伸びると、そうしますと、両者の加重平均年間賃金伸びが一〇%ぐらいになるという計算になります。  それに今度は、これは一人当たりですから、雇用労働者がどれくらい伸びるかというその分が加わります。これは単に足すと変なように見えますけれども、これは実際に平均賃金掛ける労働力を、それを時間変化率の形に直しますと足し算になりますから、労働力伸び率を足しますと、その労働力伸び率が、政府見通しですと労働力全体で〇・八%、雇用労働力が一%ぐらいと見ています。仮にこれを採用しますと、賃金全体の伸びが一一%ぐらいになるということなんです。ほかの所得も大体それに準じて伸びるということにしますと、後は消費性向がどうなるかということなんです。  要するに、可処分所得伸びに可処分所得消費性向伸び率を足したものが個人消費伸び率になるわけです。可処分所得が仮に一一%伸びることが可能ですと、消費性向がそこで一三・七%との差に見合うぐらい伸びてくれれば政府見通しの達成が可能になるということなんですが、そこに非常に不安定な要因があるということです。これも非常に単純な計算になります。先ほど言いましたように、可処分所得伸び率プラス消費性向伸び率がほぼ個人消費伸び率になるわけです。ここで言う消費性向伸び率というのは、たとえばいま一一%と一三・七%の差を見ますと二・六%ですけれども、これは数字で言う、たとえばいま消費性向が七七%あるとしますと、七七%が二・六%伸びるという意味じゃなくて、七七%の消費性向自体が二・六%伸びるということですね。ですからパーセントポイントでなくて、パーセントでもって二・六%伸びる。それくらい伸びれば先ほど言いましたような見通しが可能になるわけですが、そのことを可能にするには、一つ政策が場合によっては必要になるのではないかというふうに考えられます。  一つの楽観的な期待では、景気がよくなってくれば先行き見通しがよくなる。そうなると、労働省等々のモデルで見られますように、先行き期待感、あるいは先行き不安感というものが消費性向に非常に影響を与える。だから、先行き不安が少なくなれば自然に消費性向は高まってくる。そうすれば、個人消費伸び率も、可処分所得伸びる以上に消費性向伸び率分がプラスされてふえるわけです。そうすればすべてうまくいってしまう。ですから、初めのところからみんなそうなんですね、たとえば賃金外所得伸びも、景気がよくなれば時間外労働がふえるし、賞与がふえる。だから先ほど言いましたように、たとえば一四%というような伸び考えることもできるわけです。そして景気がよくなるという見通しが強まって、人々が楽観的なムードになってくれば、財布のひもが緩んで消費性向が高まる。そうなれば、すべてが順調にいって一三・七%の見通しが達成されるという可能性はあるわけです。  しかし、もしそれが狂いますと、先ほど言いました賃金外の四割ほどの所得伸びが、春闘賃上げ率並みに抑えられてしまう。しかも消費性向伸び期待できない。そうなりますと大変なことですね。名目的な個人消費伸びは、春闘賃上げ率と余り違わないということになってしまいますね。その可能性というのはまだ十分残されているということです。ですからその動向を少し見る必要がある。そしてこの四‐五で少し様子を見る。ただ、賃上げがはっきりわかっておりませんから非常にむずかしいのですけれども、五月になると、少し過去の経験から見て大体どうなるかという予想が五月の終わりぐらいになればわかってくると思うんです。そこでもし個人消費伸びが非常に期待どおりにならない、もしかして春闘賃上げ率並み個人消費がいってしまうなんということになれば、物価年間年度平均上昇率は、恐らく年度を通しての物価上昇率が八%とすれば、年平均はそれより多い九%ぐらいになってしまうでしょうから、大体消費者物価伸び率と同じぐらいになってしまうということですね。そうすると、実質消費伸びゼロということになってしまう。そういうことがないようにするためには、その五月の時点様子を見て、これはまずいということになりましたら、やはりそこで何か手を打つ必要があると思うんです。  技術的に見てこういうことが可能かどうかわからないわけですが、社会経済国民会議が提言しましたように、一つ賞与減税ということも考えられる。いま、すでに減税自体をすぐやるということはむずかしいでしょうけれども、六月の賞与に限って非常に有利な措置をとる。そうすれば、賞与が、本来なら十二月に払われる分も六月ごろに早く支払われる分も出てくる。そうして減税もある。そういう両方の効果が重なって、そこで少し消費が浮揚する。一たんここで景気が軌道にしっかり乗ってしまって、個人消費も堅調になれば、もう年末あたりにはそろそろ、どっちかというと、むしろ景気過熱になることを心配しなければならない段階になるかもしれない。ですから、その段階ではもう必要ないと思うのですけれども、その前期の段階で何か個人消費動向を非常に注意して、これを適正な伸びになるような政策措置考えておくことが必要じゃなかろうかと思います。  これは労働側としまして、非常に昨年、今年、引き続いて賃上率経営者ガイドゾーンに抑え込まれたという、そういう敗北感を持っているわけでして、しかも制度要求が全くといっていいほど通らないということで、二重の敗北感を持っているわけです。そういう労働側の、何といいますか、不満というものにもこたえるためにも何らかの措置をとる必要があります。それが特に個人消費適正成長にとって必要な場合には、そういう措置をとる重要な根拠になるのではないかと思います。いろいろあるのですけれども、とにかく時間がわずかですから、特に変わったことだけ申し上げます。  それから、今度の予算との関係で評価していいと思いますことは、財政の五カ年見通しを、強く要請されたためではありましょうけれども、とにかくつくることになったということ。これは中期予算制度といいますか、多年度予算制度への一つの前進であるわけです。  要するに、特に赤字公債などが出ます場合には、赤字公債というのは不況期に税収が減って、しかも支出増加が必要な場合、そういう場合には必要悪といいますか、やむを得ざるものであると思います。要するに、経済均衡を達成するために財政均衡をあえて行わざるを得ない。経済均衡財政均衡がどちらが大事かといいますと、経済均衡の方が優先であると思います。そうであるためには、財政均衡も一時的な不均衡はやむを得ないと思います。しかし、そういうことをルーズにやっていきますと、赤字が累積して公債が累積するわけです。ですから、多年度予算主義をとって、たとえば五カ年間なら五カ年間収支均等をさせるという、そういう方式をとる必要があるということはかなり昔から言われているわけです。そうして、いろいろな経済、福祉の面で合理的な政策をとっておりますスウェーデンでは、一九三八年からすでに日本がことしからやろうといま考えている五カ年度の多年度予算主義を採用しているわけです。そして、それを可能にするために、予算平衡化基金をつくって、好況期に蓄えておいて、不況期にそれを使うという平衡化基金をも創設しているわけです。そのときから比べますと大分おくれましたし、私もこういう制度をつくれということはずいぶん前から申し上げておるのですけれども、とにかくそういう制度に踏み切ったということは評価さるべきであると思いますし、この方式をもっと定着させて、五カ年の見通しをも、本当に実行するような信頼できる見通しにといいますか、計画にすることを期待したいと思います。  それから、もう一つ新しい制度として、公共事業予備費が導入されたということ。この予備費自体につきましては、国会の審議から届かないところで使われるおそれがある等々で、国会予算決定主義に反するという見方もあるわけです。現行のままでしたら、私若干問題があるのですけれども、こういう予備費をつくるということ自体に関しましては、景気変動平衡化という観点から見てよい試みであろうと思います。こういう公共事業予備費という発想も、スウェーデンでは一九三八年ごろ出ておりまして、戦後もずっとそういう予備費を計上しておいて不況期のとき使う方法をとっているわけです。  ただ、その使い方がいまのままですと確かに問題があるわけでして、何らかのチェック方法考えなければいけない。一つは、その予算予備費の内容をかなり明確に決めておく。そしてある程度優先順位も決めておいて、それを国会で先決しておくということ、そしてそのタイミングだけを行政府に任せるということにしなければならないと思います。それからもう一つは、北欧諸国でやっておりますように、その予備費使途と、それからその明細に関しまして労使構成労働市場委員会、いま日本言葉で言えば恐らく雇用調整委員会のようなものですね、そういう発想もいま出てきておりますけれども、そういったようなものを構成して、使途タイミングや明細についての、もちろん基本点国会で決めた後、実際の行使の段階で権限の一部をそういう委員会に委譲するという、そういう方式北欧の場合とっておるわけですけれども公共事業予備費を導入し、これからこれを常時蓄えておくし、それも額も大きくなるというようでしたら、何らかの、いま言ったような考え一つ考えですが、その使途をチェックする方式を同時に導入することが望ましいということを申し上げておきたいと思うわけです。  それから、今回の不況のとき、あるいは今回に限らず、毎回毎回非常に認識されてきていて実行されない問題ですけれども、とにかくタイミングがずれる、景気政策に対するタイミングがずれるという問題があるわけです。この問題に対処するためには、いろんな形の平衡化基金とか予備費をつくっておく。そしてこれは政府だけで十分でないならば、民間に対しても民間投資平衡化基金制度といったようなものを導入していくということを検討していいのではないかと思います。今回の場合もますますそういう必要が認識されたわけですが、恐らく次回の景気変動の場合にもタイミングがおくれると思うんです。これはまあ不況のときの対策でも、景気過熱を抑える対策でもそうですけれども、そのことはかなりわかっているわけですから、とにかく少し早過ぎると思うくらいに景気過熱抑制、あるいは不況の対応ということをするような方針を立てることが必要であろうと思うのです。そういう平衡化基金制度等によって半自動的に景気変動の波を小さくすると同時に、タイミングを早くする方式を十分に考慮すべきであろうと思います。  それでは、時間になってしまいましたものですから、物価動向でちょっと。  私は、物価は、景気回復期には過剰流動性処一理とか公共料金の引き上げについて十分な配慮をするということと、早目過熱を抑えることをすれば、景気回復期には、どちらかと言えば普通の通念とは逆ですけれども物価は安定化するという、そういう考えを持っています。これは過去の各国の経験によってかなり実証されていることです。そういうことから、物価上昇率が来年、前年度よりも小さくなるという点につきましては一応やれるという見通しを持っています。  どうも時間を超過しまして申しわけございません。(拍手)
  4. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ありがとうございました。     —————————————
  5. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 続いて稲川公述人にお願いいたします。稲川公述人
  6. 稲川宮雄

    公述人稲川宮雄君) 御紹介をいただきました稲川でございます。全国中小企業団体中央会専務理事でございます。  昭和五十一年度予算案を中心といたしまして、中小企業の立場から意見と希望を申し述べたいと存じます。  まず最初に、中小企業の現状と問題点につきまして簡略に申し上げたいと思います。  わが国中小企業特徴というものはいろいろあると思いますけれども、これを要約いたしますと、大体次の五点に集約されるのではないかと存じます。  その一つは、過小過多ということでございまして、規模が小さい、数が多いというのはこれはもう当然のことでありますけれども、特にわが国中小企業は、それが過度にわたっておるというところに問題がございまして、いろいろ対策を講ずる場合におきましても、この点を忘れることはできない点であろうと思います。  第二の点は、格差でございまして、大企業中小企業との間に、いわゆる企業規模間の格差が依然として非常に大きなものが存在しておるということでございまして、これは欧米先進諸国に比較いたしまして著しい特徴をなしておる点であると考えます。いわゆる二重構造と言われるものの一つを形成しているわけでございます。  第三の問題は、従属性が強いということでございまして、特にこれは下請企業に顕著にあらわれておるわけでございます。  第四の点は、経営基盤がきわめて脆弱であるということでございまして、たとえば資本の調達力におきましても、あるいは経営管理の面におきましても、あるいは技術力の点におきましても、あるいは情報の点におきましても、非常に経営基盤が弱い。ここに今日の中小企業の多くの問題がひそんでおるということでございます。  第五の特徴は、中小企業を取り巻いておりますところの環境がきわめて中小企業不利益であるということでございます。たとえば金融の面におきましても、あるいは税制の面におきましても、あるいは大企業との取引、あるいは大企業からいろいろ圧迫を受ける。そういうように、中小企業を取り巻いておりますところの経済的、社会的環境がきわめて中小企業不利益でございまして、基本法におきましては、「事業活動の不利の補正」という言葉がございますが、私どもは、むしろこれを広く環境の不利という言葉に置きかえておるのでございますが、以上申し上げましたような点におきまして、中小企業は非常な特徴を持っておるということでございます。  次に、最近の中小企業の景況をごく簡単に、私どもの把握しておる範囲内において御報告申し上げたいと思うのでございます。  長期にわたります総需要抑制ということを背景といたしまして、中小企業が非常な不況にあることは言うまでもないのでございますが、これは戦後最大のものであり、いわゆる未曽有の不況に呻吟しておるわけでございます。今回の不況の特色を中小企業側からながめてみますると、いろいろの点があると思いますけれども一つは、お金よりも仕事が欲しいという声が多いのでございまして、従来の不況でありますと、一番大きな問題は金融でございました。金融は今日においても問題がないわけではございませんけれども、しかし、金融を得ましても、それを使うむしろ道がない、お金よりも仕事が欲しい、こういう言葉によって表現せられておるのが今回の中小企業不況一つ特徴ではないかというように思うのであります。  で、雇用関係が従来中小企業におきましては非常に苦しいものでございまして、いわゆる労働力を確保するということが中小企業の一番大きな悩みでございましたが、その面におきましてはやや改善されておるといいますか、有利に展開しておるということも一つ特徴であろうかと思います。  要するに、中小企業は未曽有の不況でございまして、収益も軒並みに減少しておる、こういう状況でございまして、その一番端的なあらわれが倒産の多発でございます。五十年の一カ年におきまして、一万二千六百六件という戦後最大の倒産を記録したのもそのためであろうと思います。  しかしながら、今回のこの不況を見ますると、いろんな面におきまして中小企業はあらゆる点において最大のがんばりを見せてきたと言っていいのではないかと思います。また、政府の施策の面におきましても、いろいろの対策が講ぜられておりまして、先ほど申し上げましたように、金融の面におきましては政府の金融三機関に対しまする財投などもかなり支出されておりまして、問題がないわけではございませんけれども、従来よりは金融はかなり手厚く対策が講ぜられておるというように考えられております。また、元利の償還につきましても非常に苦しいのでありますけれども、ケース・バイ・ケースによりまして償還が延期されておるというようなことも、この不況対策といたしましては効果のある点ではないかと思います。また、特に雇用調整金制度ができまして、レイオフ等に対しましては雇用調整の交付金が支出されたということも従来にないことでございまして、こういう点におきましても、中小企業のこの苦境の打開、あるいは倒産の防止にかなり役立っておるのではないかと存じます。  また、中小企業自体におきましても、その経営面におきまして、かねてから近代化、高度化あるいは構造改善というものを各業種にわたって精力的に、集中的に行ってまいりました効果がある程度私はあらわれておるというふうに感ずるのでございまして、もしこういうことがなかったならば、今回の不況はさらに一層深刻であったと言わざるを得ないと思うのでございます。また、諸経費の節減なり、あるいは原材料管理の点におきましても、中小企業はかなりの努力をしてきた跡があるのでございまして、これらの点につきましては、本年度中小企業白書に詳しく述べられておるとおりであろうと思っております。  また、最近の景気につきましては、御案内のとおり、かなり明るさを取り戻してまいりました。アメリカを中心とする輸出貿易の伸びというものを背景といたしまして、たとえば乗用自動車でありますとか、あるいはテレビ等におきましてはかなり回復をしておりますし、あるいは一時非常に苦境を伝えられておりました建設、繊維等も、ややトンネルを出たのではないかというような点がございます。しかしながら、各業種間のばらつき、あるいは同じ業種の中におきましても企業の間におけるばらつきがかなり強いのが一つのまたやはり特徴でございまして、一方におきましては明るさを取り戻した、トンネルを出たと言いますけれども、中には依然としてきわめて暗いトンネルの中に沈滞しておる業種も少なくないのでございまして、特に一般の機械工業でありますとか、あるいは造船等は、いまなお非常な苦境にあるわけでございます。  そういうような関係でございますが、特にこの下請関係につきましても、最近はやや改善されてきておるという指標が出ておりますけれども、しかしながら、個別的に見まするとかなり問題がございまして、この下請関係におきましては、親企業の内製化が進んでおる。安定成長下でございますために経済伸びていかない。雇用しております従業員の対策も必要であるということから、外注に出さないで大企業が内製化の方へ入っていく、こういう傾向がかなり顕著でありまして、これが下請中小企業影響を与えているとか、あるいはまた、最近におきましては単価の切り下げ要求がかなり強く下請を圧迫しておるようでございます。親企業といたしましても、こういう安定成長下でありますので、いろいろ経営の改善に努力しなければならない。そのはね返りと申しますか、しわ寄せが下請へ参りまして、下請に対する条件の改定、つまり単価の引き下げというようなことが下請企業の大きな圧迫になっておるというのが最近の傾向でございまして、景気は全体といたしましてかなり明るさを取り戻したとはいうものの、中小企業におきましては、なおきわめて暗い面がたくさんに残されておるようでございます。  なお、最近の中小企業問題といたしまして重要な点といたしましては、変化変動が非常に激しいということ、それから安定経済成長のために、そのしわが中小企業に寄っておるということ、それから大企業等の進出が非常に激しいというようなこと、こういうことが最近における大きな中小企業の問題であろうと思いますが、時間の関係もございますので、この点を詳しく述べることは省略いたしまして、次に当面の問題となっております昭和五十一年度予算案中小企業対策との関係につきまして、若干意見を申し上げたいと存じます。  中小企業予算伸びを見ますると、各省関係のものを合計いたしまして千四百八十四億円、約千五百億円に上っておるのでありまして、前年の千二百七十億円に比較いたしますると一六・九%の増、約一七%の増でございまして、国の総予算一四・一%と比較いたしますると、その伸び率はやや高いところに置かれておるように思います。  その内容を考えますると、まず第一は小規模事業対策、いわゆる零細企業対策費でございますが、前年度の四百一億円から四百九十七億円、約四百億から五百億円へと二四%の増加を示しておる。特に、小企業経営改善資金の増額等が行われております。これは商工会議所あるいは商工会等を中心とするものでございまして、私ども中央会には余り関係のないものでございますけれども、小規模零細企業の立場なり現状から考えまして、こういう措置はまことに適切なものであるというように考えております。  それから、中小企業の高度化事業のための中小企業振興事業団の運営につきましてもいろいろ手当てが講ぜられておりまして、五百一億円から五百六十六億円、事業規模も二〇%以上の増加でございまして、その事業規模は二千八百六十九億円ということでございます。特に特別広域高度化事業、こういうものが新設されましたことは、かねてから中小企業界の希望でございまして、歓迎するところでございます。  また、金額は必ずしも多くございませんけれども、私ども関係しております中小企業の組織化、共同化に対しまする対策も、前年度の十二億円から十六億円、二五%の増加が示されております。私どもは、中小企業対策の基本は中小企業の組織化にあるというように考えておるのでありますが、その組織化対策も二五%という最高の伸びを示していただきましたということも歓迎するところでございます。  そのほか、政府関係の金融三機関に対しましては、財投といたしまして三兆円、約二〇%弱の増加が見込まれております。特に商工組合中央金庫に対しましては、出資五十億円の増額が組まれておるというようなこと、あるいは信用保険につきましても五十億円の保険基金と二百十億円の融資基金、合わせまして二百六十億円が組まれておるというようなことも大変結構であるというふうに考えております。  また、新しい試みといたしまして、金融は大きくございませんけれども、分野調整のために分野調整官を設置する、あるいはまた分野指導調査員を設置するというような対策も講ぜられておりまして、私どもはこれにもかなりの期待を持っておるわけでございます。  以上が今回組まれております予算中小企業との関係の主なものでございますけれども、この五十一年度予算案に対しまして、中小企業界といたしましての希望意見を若干申し上げたいと存じます。  中小企業対策は、わが国におきましては非常にたくさん講ぜられておりまして、その数におきましては、私どもといえども全部覚えることができないほどいろいろな対策が講ぜられておるのでございまして、そういう面におきましては、世界どこの国と比較いたしましても、これほど対策が数多く、かつきめ細かく行われている国は世界じゅうどこにもないのでございまして、その点におきましては、まさに私は世界無比であると言っても決して過言ではないと思うのでございます。  昨年の十一月に、初めて中小企業の国際シンポジウムを東京で開催されたのでございますけれども、その際におきましても、世界各国から出席いたしました人たちが、日本中小企業施策というものを高く評価しておったのでございます。特に、イギリスが今日非常に経済的に不況でありますのは、中小企業対策をおろそかにした結果ではないかというようなことさえ言われておるのでございまして、そういうような点、あるいは先ほども申し上げましたように、今回の不況におきましても、かなり金融その他の面におきまして、てこ入れを行っていただいておる。これが中小企業を支えてきたということを率直に私どもは評価したいと思うのでございます。  しからば、中小企業対策につきまして、中小企業がみんな満足しておるかといいますると、必ずしも満足してはいない。いないのみならず、はなはだ不満が多いのでございます。つまり、各施策はそれぞれいろいろやっていただいておりますけれども、国の中小企業関係予算というものがきわめて少ないというところに大変不満があるのでございまして、総論賛成各論反対という言葉がございますけれども中小企業関係予箕におきましては、各論は賛成でございますけれども、総論の方において賛成いたしかねるというのがみんなの気持ちでございます。  ということは、国の予算総額が二十四兆二千九百六十億円でございますが、その中で中小企業関係の千五百億円の予算というものを考えてみますると、〇・六%でございまして、よく間違えまして、中小企業予算は六%だと言う人があるのでありますけれども、とうてい六%まではいっていないのでありまして、〇・六%、一%にも及んでいないのでございます。中小企業の事業所数は五百八万でありまして、その比率は九九・四%でございます。従業者数は三千四十万人でございまして七八%を占めております。また、出荷額におきましては四九・一%、約半数は中小企業によって出荷をされておる。卸販売額は五六・五%であります。小売販売額におきましては七九・七%、約八割が中小独立の小売商によって販売されておるというように、わが国経済における中小企業の比重というものはきわめて高いと言わなければならないというふうに思うのでありますが、その予算が一%にも及ばないというのが現状でございます。  余談でございますけれども、本日の公聴会におきましても、五人の公述人をお呼びになりまして、そのうちに中小企業も一人加えていただいておるということは、それだけやはり中小企業というものを重く見ていただいておるという一つの例証ではないかと思うのでございますが、予算におきましては、そういうように一%にも及んでいない。これはもういろいろ財投の方でカバーしておるとか、あるいはこの対策だけがすべて中小企業のものではなくて、一般の予算中小企業に均てんするというような問題はあろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、これだけの比重を占めております中小企業に対しまする予算総額というものがきわめて少ないというところに私は問題があり、中小企業は必ずしも満足できないという原因がひそんでいるのではないかというように思うのでございます。  次の希望として申し上げたいと思いますことは、国の予算関係ではございませんけれども、地方の自治体の財政が非常に窮迫しておりますために、せっかく国で予算をつけていただきましても、それは府県庁の支出を前提として二分の一ずつで対策を講ずるというたてまえになっておりますために、せっかく国の予算も、地方へ参りますとこれが実施ができない、こういう問題がございます。これはすでに五十年度におきまして経験しておるところでございますので、これは国の予算直接の問題ではございませんけれども、この点を何とか考えていただきませんと、岡の予算も絵にかいたもちになって、いわゆる空振りに終わってしまうという深刻な問題があるということを特に指摘させていただきたいと存じます。  次の問題は、予算の速やかなる成立とその実行を中小企業は待ち望んでおるのでございまして、もはや予算も近く決まるものと思うのでございますけれども、ただ、予算が決まりましても、その施行が速やかでありませんと景気の回復には結びついてこないのでございますので、予算だけではなく、予算に関連いたしまするいろいろな法律、そういうものを速やかに決定していただきませんと、これは景気の回復には結びついてこないのではないかということを非常に憂えるのでございます。数字的にどの程度のおくれがくるかということを私は立証する資料を持ち合わせておりませんけれども中小企業の心理状態といたしまして、もしこの予算あるいはその関連法規等がおくれました場合には、心理的に非常な不況というものを感じまして、回復の立ち直りが遅くなるのではないかということを憂えておるのでございますので、そういう点につきましても、格別の御配慮をお願いしたいということが希望でございます。  以上が中小企業予算への問題でございますが、今後の中小企業施策へ、それではどういうことを要望するかという点を、時間がございませんので、ごく項目だけを若干申し上げておきたいと思うのでありますが、もちろん中小企業自身も経営の改善を図り、近代化を図っていかなければならないことは当然でございまして、変化の先取りであるとか、あるいは情報のキャッチであるとか、あるいは地域集約化であるとか、あるいは自己資本の充実、あるいは省資源・エネルギーの問題、特に社会的責任の充実、あるいは労使関係の改善、あるいは人材の開発、共同化、組織化、特にシステム化の充実というようなことが中小企業としては必要であると感じておるのでありますけれども、特に国会政府にお願いしたいと思いますことは、まず第一は官公需の推進でございます。  いま申し上げましたように、お金よりも仕事というのが今日の中小企業の切なる希望である点から考えましても、また、中小企業の出荷が全体の約半数に達しておるという点から考えましても、現在の官公需は二七、八%から三〇%まで伸びてまいりましたし、また本年度は三三%まで伸ばしてやろうという目標でございますけれども中小企業の現状から考えまして、さらに官公需の直接発注をお願いしたい。特に適格組合の活用でありますとか、分離発注でありますとか、あるいは銘柄指定の増加でありますとか、特にまた私どもは、この際、官公需を賄うための特別のひとつ機関を設置していただくというようなことが必要ではないかというように感じておるのでございます。  次の問題は分野調整問題でございまして、われわれは中小企業全国大会等におきましても分野法の制定を強くかつ長期にわたって要望しておるのでございまして、ぜひとも分野法の制定をお願いしたいのでございます。調整官の設置とか、あるいは調査員が置かれる予算がついておりますことは先ほど申し上げましたとおりでございますけれども、これも大いに活用していただきたい。それはしかし、単に製造業だけではなくて、大規模店につきましても、その他の点につきましても、あるいは下請問題につきましても、広くこの大企業中小企業との摩擦調整というようなところまでぜひ進んでいただきたいというのが私どもの希望でございます。  その他、今後の中小企業の施策といたしましてやっていただきたい点もいろいろあるのでございますけれども、大体、以上要点だけを申し上げまして、私の公述を終わりたいと存じます。ありがとうございました。(拍手)
  7. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ありがとうございました。     —————————————
  8. 八木一郎

    委員長八木一郎君) それでは、質疑のある方は公述人を指名して御発言を願います。  なお、質疑の通告が多数ございます。午前中に終わりたいと思いますので御協力を願います。
  9. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 お二人に一問ずつ簡単にお聞きをします。  丸尾公述人にまずお聞きをしますが、実質成長、これは個人支出が一三・七という政府見通しどおり伸びてきたら、大体五・六の前後ぐらいいくのじゃないかというお話でありました。これは、かつてわが党の総務会でも、経済企画庁の青木調整局長と私が激しくやり合いましたところでありますが、私は、実質経済成長を考えていくときには、就労人口の寄与率、それから生産性向上の寄与率、これはどうしても見落としてはならぬというふうに考えております。それだけに、就労人口ということになりますと、現在の完全失業者、これは政府の予測を超えております。経済見通しを私たちが総務会で了承したのは十二月でありました。それだけに、さらに、残業は大分回復しておりますが、残業もその予測を超えております。さらに、政府がどうしても算入できないもの、していないものにはパートタイマーがある。それに内職がある。この実態がなかなかつかめない。そしてレイオフも、私たちが社会労働委員会で雇用保険法の一部改正をしたときの予測をはるかに超えてレイオフの率が上がっております。こういうふうにしてまいりますと、実質経済成長率考えていくときの就労人口、いわゆる労働人口の寄与率というものは非常に落ちておるということなんです。  もう一つは、生産性向上の寄与率でありますが、私は、これを科学技術の方の進歩と、もう一つは資本投下の効率ということから考えておりまするが、御承知のように、科学技術の進歩というものはこれから余り望めない。また、資本投下の効率は、これは外部不経済要因が非常に多くなってきております。そういうことを考えましたときに、実質経済成長五・六というのは、これはあくまで政府・自民党の願望であるということを私は考えておるんです。それだけに、先生が御指摘になった消費支出が一三・七というものがいったときに五・六の実質経済成長はいくんだという、これだけで果たして見れるものかどうか、私は見れないという見解をいまとっております。この点をお聞きしたい。  それから、稲川公述人にお聞きしますが、ぼくはいま一番中小企業問題を恐れておるのは、三月期の一部、二部上場会社の決算を見て、あの決算の実質というものは私は紙背に徹するように見ております。それはなぜかといったら、この一部、二部上場会社の問題は、これは非常に内容的に悪いです。どうも表面糊塗しておる問題が非常に多い。たとえば株価の維持、これはやっぱりいま証券市場界では発行市場の率が非常に落ちております。二〇%台になっておる。そうして流通市場が非常に多くなっておる。流通市場というのは、言いかえれば、これは企業間の株の持ち合いであります。融通手形を発行しておるようなものであって、実質に自己資本を高めておるということにならない。これなんか一例でありまして、内容が非常に悪い。そうしたときに、従属性の強い中小企業ということを考えていけば、やがて上場会社というものが馬脚をあらわしてきたときに大変な混乱が起こるであろうという予測をしておる一人です。この点についての中央団体としてのお考え、これをお聞きをして私たちの今後の参考にしたいと、こう思いますので、その点をお聞かせ願いたいと、こう思います。
  10. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) ただいま御指摘がありましたことは、経済成長の供給面の御指摘であったと思います。要するに、経済成長は需要面と供給面と両方から決まるわけでございます。そして、不況期には短期的には成長率需要によって決まるというのが通常の考え方でございます。失業率があるとか、パートタイムがあるとかいうことは、それだけ供給余力が残っておるということであります。  それから、資本の効率が低いということは、資本の効率は資本効率の潜在値に稼働率をかけたものでございます。稼働率が上がれば結果的に上がるわけです。ですから、短期的には私はそれほど供給要因はお考えにならなくても、需要要因さえがっちりと伸びれば短期的には成長は可能だ。ただ、おっしゃられることは、長期的には五カ年計画とか、そういうことを考えます場合には非常に重要な問題になってくると思います。
  11. 稲川宮雄

    公述人稲川宮雄君) 玉置先生の私に対する御質問にお答えいたします。  上場会社の内容が非常に悪いかどうかという点につきましては、私ども必ずしも明確に把握いたしておりませんが、しかし、いま大企業におきましても自己資本比率というものは非常に悪い。これはもう外国に比べましても、中小企業だけではなく大企業も非常に悪いというのが実態でございますから、お話のように、馬脚をあらわすというような事態になりました場合には、真っ先にしわが中小企業に寄ることは、これはもう明白な事実でございまして、したがいまして、私どもは大企業中小企業の株を持ってもらうということは、一面においては大変いい面もありますけれども、これが行き過ぎるということは非常に危険であるということで、これは警戒していかなければなりませんし、また、独禁法等の面におきましてもそういう点は十分注意をしていかなければならない点であるというように考えております。
  12. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 自由民主党の戸塚でございますが、丸尾公述人にしぼって数点お尋ねいたしたいと思います。簡単に。  第一は、先生は賃金のあり方等につきまして非常な御見識で、かつての国会でもいろいろ述べていらっしゃるわけでございますが、今度の春闘等を見た場合に、あのようなストライキ、またはいろいろな、間近になりまして国民の生活というものが非常な混乱に陥ることを見ておりますと、何とかひとつうまい方法で毎年毎年の繰り返しのああいう形を是正できないものだろうか。同時に、働く側としてもやはり将来の賃金が非常に不安だという面もあります。そこで、具体的には中期的に、三年くらいでもいいから先を見通した形で、労使で年間を通じて話し合って安定的な賃金体系といいますか、そういう形のものを何か国でも指導すべきではないだろうかというような感じもいたすのでございますが、先生の御見識で、将来の賃金のあり方について、また春闘等のあり方について、こういうことについて御意見を伺いたいと思います。  次は、公共事業予備費については御賛意をいただいたわけでございますが、私個人としては、果たして公共事業が本年の予算でこれで経済動向に十分であろうかという疑問を持っております。ちなみに、うちの県では、静岡県でございますが、四十七年度公共事業予算と五十年度公共事業予算がちょうど一緒なんでございます。つまり、そこに三年間の差がございますから、実際には五〇%くらいしか仕事ができないというような状態の中で、もちろんそうした公共事業といっても、橋をかけるとか大企業だとかいうことばかりじゃなくて、やっぱり本当の住民福祉に関係のあるものもあるんですが、仕事も遅くなるし、経済にも非常に大きな影響がある。こういうことで、五十一年度はやや公共事業に留意はしておりますけれども、まだ予備費を含めても十分ではないと私は思っております。先生は、この五十一年度予算以降、公共事業を現在の経済動向にかんがみてもう少しふやすべきだとお考えでございましょうか、この程度が妥当だとお考えでございましょうか、お伺いいたします。  次に、経済動向における土地問題について、先生の御見解を簡単に伺っておきたいと思います。これは、最近土地というものの推移というものが経済に与える影響が非常に大きい、こういうことを純粋には心配して、一部には国債を発行して遊休の土地を買い上げたらどうだという意見もあります。また、土地の税制を何らかの形で緩和した方がいいのじゃないかという御意見もあるし、また反対の意見もあります。それだけ土地と経済という問題については非常に大きな影響があるのじゃないかと思っておりますが、先生としてはこの土地問題、どういうふうにお考えか。経済動向とのかかわり合い、そうして、もし問題ありとすれば、今年度中にもどんな手を打つことが妥当であるとお考えか、その点を伺います。  次に、一昨日総理府の調査で、物価が一けたにおさまったけれども、国民は一けたにおさまったような感じは余りしてなくて、実質的には何だかもっと物価が高いような感じがする。同時に、七五%の人が今後も、いまかあるいはそれ以上ぐらいに物価が上がるのではないかという心配をしておるという統計が発表されました。私どもも非常に大きな関心を持っておるわけでございますが、今年度物価抑制するといいますか、そういう国民的な気持ちというものが本当に一けたになったんだという感じを持たせるために最も国として留意しなけりゃならない物価対策について、先生のお考えを伺います。  最後に、財特法というのがいま国会で審議されております。私は、これは予算と全く不可分のものではないかと考えておるわけでございますが、まあ予算はともかくとして、新聞紙上では、今国会で財特法がどうなるかと、非常に国民的関心を集めているところでございます。そこで先生の、これは政治問題は抜きにしまして、全く学者さんとして広い視野からいろいろお考えになっていらっしゃる先生の御見解として、この財政特例法が今国会の中で成立するかしないかということが、日本経済に精神的、実質的にどのくらいの影響があるとお考えであるか。  以上についてお伺いいたします。
  13. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) ちょっと最後のところは経済学者の判断を超えているような感じがしますけれども、まず賃金の問題、春闘のあり方ですけれども、できることなら、確かにストライキなど少なくて、そして数年間の安定賃金が行われることができるような社会で、しかも、それが労働側に不利にならないというようなことが可能になれば、それは結構なことだと思います。  私、スウェーデンやイギリスを研究しておりますものですから、よく例に挙げるのですけれども、イギリスは御承知のように大分上げていますけれどもスウェーデンという国は早目早目に産業民主化とか労使の話し合いとか、いろいろやってきた国でありまして、非常に労使関係が安定しているわけです。一九七〇年前後にちょっと高級なサラリーマンや公務員がストライキをやった以外は、それほどストライキはないわけです。ここでは二年ないし三年の安定賃金制を実現しているわけです。ただし、それを行うためには、やはりそれだけの労働側に信頼がある政治が行われるということ、それから産業民主化、参加等が行われることが必要でありまして、そういうことができれば好ましいと思います。  それから同時に、賃金に対して制度要求がいま絡まってきております。この制度要求を処理する機構がないわけですが、これもイギリスは社会契約という方法を出しましたけれども北欧等では、社会契約と実質上同じようなことをやはり賃金協定の中に織り込んでやっているわけです。そういう制度要求をうまく処理して、賃上げを場合によっては自制を求める、そういう処理する機構、予算前に処理できるような機構をつくっておくことが必要だろうと思います。まあ、予算前社会契約会議とも言うべき——いま労働省が窓口になろうというようなことが新聞に出ておりましたけれども、そういったような発想でやっていく。それからいろんな意味で参加等がある程度進むことを前提としますと、いまおっしゃられたような春闘、より国民に混乱とか迷惑をもたらさない春闘というものが可能ではないかと思います。  それから公共事業費ですけれども、特に今回の場合、地方の場合必ずしも公共事業がスムーズにいけるような仕組みになっていないという点で、予算そのものよりも、地方政府公共事業費のスムーズな支出され方を考えなければならないと思います。私はどちらかといいますと、公共事業費よりも福祉優先の立場ということになっておりまして、やはりいまの段階日本としては、資金の流れがもう少し福祉と住宅に回ることが必要だというふうに考えておりまして、今回の場合も、実はことしではなくて去年の段階で、福祉年金中心に、それと関連する福祉関係支出をもう少し上げてよかったのではないかと思っております。  それから住宅関係は、まだまだ金の流れが非常に少ない。たとえば最近では、日本では銀行の貸出残高の中の六%台まで住宅に貸し出す分がふえてきましたけれども、先進国の場合でありますと、もっと高いですね。アメリカでもたしか二〇%台くらいいっておると思いますし、北欧などでも二〇から三〇%、不況の年などには、広い意味のデータを引きますと、五〇%ぐらい銀行から貸し出させている。そういう方面に支出がふえて、そういう支出の型に定着していく方がいいのではないか。そうなりますと、成長率は若干鈍化しますけれども、五、六%の成長率でいいのでしたら十分可能であると思います。  それから、先ほど物価の心配をされましたけれども一つは、そこで心配されることは、いま数年前と同じように過剰流動性がだんだんたまってくるおそれがあるわけです。過剰流動性は数年おくれて、しばらくたってから物価にはね返ってくると思いますから、早口の段階で処理しなければ後に影響していきますから、この金の流れをうまく処理すると同時に、その一部が住宅の方に流れる仕組みを考えることができないものかというように考えております。そうしますと、物価と住宅問題とが同時的に解決するのじゃないかという気がします。物価問題に関しましては、一つ気にかかりますのは、ことしの後半になって過剰流動性に対する処理をうまくやって、一九七二、三年のようなことをしないようにすることが必要だと思います。  それから先ほど言いましたように、ことしは賃金伸び率が、給与総額で見ましても、先ほど言いましたように一〇%から十数%でおさまるわけです。経済成長率さえうまく軌道に乗れば、実質経済成長率から労働力増加率を引いたものが国民経済全体の生産性ですから、賃金の上昇率と生産性の伸び率の差は近来に余りないほど小さくなるわけです。ですから、ほかの影響が少なければ、かなり物価は安定させることができるはずです。その辺のところをはっきりさせて、物価に対する安心感というのをある程度与える必要がある。安心感がないと、どうしても期待自体物価を上げるという傾向がいまありますから、そういう期待感をあおらないで安心させるということと、過剰流動性をうまく処理するということが一つ重要ではないかと思います。  土地問題に関しましては、やはりかなりオーソドックスなことですけれども、土地の売却による資本利得税と固定資産税というのをまともにやるということが、まず第一だと思います。これをまだまともにやっていないわけですね。たとえば私が比較的よく知っているスウェーデンの例を出しますと、土地を売ったときの税金が二年間以内でしたら、そのまま所得税に入ってしまうわけです。そして所得税の限界税率、高額の場合には八五%くらいいってしまいますから、八五%くらいは取られてしまうわけですね。日本の場合、そういうような点から比べますと非常に安いということ、固定資産税がかなりまともにかかるということです。その二つが、要するにむずかしいことは言わなくとも、まともに税金がかかれば、土地でもうけるとか、土地を持っていることによって利得するということが非常に少なくなってくる。そういうことが、政党がどうなっても変わらないことだということがわかってくれば、それだけでかなり土地が利得に使われたり投機に使われたりするということはなくなってくると思います。そのオーソドックスな政策がまず非常に重要であろうと思います。  それから財特法の問題は、それは景気動向等々で、まあ予算がどうなるかとか、財特法の問題とか、非常に不安要因ですから、経済的にはそれは早く解決した方がいいことだと思いますし、私の考え方は長期予算、多年度予算均衡主義でありまして、そして経済均衡財政均衡優先するという考えでもありますから、経済的にはそれはスムーズに行われた方がいいのではないかというような気持ちを持っています。
  14. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 丸尾公述人にお尋ねしたいと思いますが、世界の景気動向というものと日本景気動向というものが、今度の不況の場合には大変シンクロナイズされてきたところに世界不況の深さ、あるいは日本不況の深さというのが私は出てきていると思うんですが、恐らく今後も景気動向というのは世界的にシンクロナイズされていく方向というふうに見ていかなくちゃならないのではないだろうかというふうに考えるわけであります。  そこで、先生が個人消費動向を中心としてお述べになったということについては私も同感でありますし、非常に敬意を表するわけでありますけれども、ただ、政府景気回復政策というものを考えてみますと、最初は大変公共事業に力を入れたわけでありますけれども、この問題も結局地方財政問題というものが何ら解決していかないということで、思ったほどの成果というものは現在のところ上がってないように私は思うわけでありますが、そうした点で、最近はとにかく輸出ドライブをかけて、そしてその面から景気回復をしていこうというような考え方がきわめて強いように私は考えるわけでありますが、今後の経済というものを考えてみますと、そうした他力依存によるところの経済回復というようなことが、一体日本経済というものを安定成長の形に乗せていくかということになりますと、私、大変これは疑問でございます。そういう意味で、どうしても今後の日本経済の方向というのは、他力依存ではなくて、自主的に国内市場をまず中心に考えて、しかる後に私は輸出の問題、輸入の問題、貿易問題というものを考えていくべきではないかと、こういうふうに思うわけでありますが、そういう点について、今後の日本経済成長のあり方、その内容、こうしたものについてひとつお示しをいただきたいというのが第一点でございます。  それから、第二の物価動向でございますけれども、私は物価動向というのは大変不安定だというふうに思うわけです。いままでの物価動向というのは、不況前は卸売物価というものはほとんど上がらない。CPIの方が上がっていくことによって、日本物価動向というのは消費の面に非常に関連あったわけでありますが、どうもこれからの物価動向というのは、むしろ国内要因よりも国外要因、これがかなり強いのではないだろうかというふうに考えられます。  もちろん国内要因も、企業再編成によるところの人為的な価格のつり上げの問題があるでしょうし、あるいは最近は新価格体系という言葉が幾らか少なくなってまいりまして、経済企画庁長官と通産大臣ではこの点についてもかなり意見が現在のところは違っているようでありますけれども、これは一つの私は独占価格の問題だというふうに理解しているわけでありますが、もう一つは、やはり外国為替相場が国内の物価に大きな影響を与えているということもあるわけでありまして、この一‐三月におけるところの日銀のドルの買い支えというものはかなり多額に上っているというふうに思います。円の対ドルの価格を下げておくということは、これは国際競争力の面から、確かに円が高いより安い方が国際競争力がつくわけでありますけれども、そうしたことが私は国内の原材料価格というものをむしろ引き上げていく、そこに大企業の独占価格というものがさらにそれについて回るということになりますと、今後の物価というのは恐らく、いまでさえ卸売物価の値上がり率というものを見ますと私はかなり高いと思うんです。恐らく年率にしたならば九%あるいはそれ以上いっているかも現在わからないと思います。そういう面から考えますと、どうもことしの物価というものは、卸売価格を一つの起動力にしまして国内物価は引き上げていかれる、そういう感じがします。  金融の面から見ましても、最近のマネーサプライというのは非常に多くなっておりまして、どっちかというと金融はだぶつきぎみ、こういうところから、ともすれば、かつてのようなことは起こらないにいたしましても、そういう面からの価格つり上げというような面もこれはあるんじゃないだろうか。こういうふうに思いまして、特に卸売物価動向というものは今後かなり注意していかなくちゃいけないだろう。そのための方策をもっと政策的に考えていかなくちゃいかぬだろう。独禁法の問題、あるいは外国為替相場の問題、こういう面についてのお考えをひとつお伺いをしたいというふうに思います。  第三点は、先ほど戸塚君からは赤字国債、これは早く通せと、こういう御趣旨のようでありますけれども、私はむしろ——景気がある程度直ってきたということは、これは私も認めるところであります。そうしますと、本年の特例国債の額というもの、これが果たして適当であるかどうかということを考えてみますと、予算編成時と今日との段階を比べてみますと、私は赤字国債というものはもっと減らしていいんじゃないのか。もちろん、これは予算に計上された額をそのまま発行しなくちゃならぬというわけのものではありませんけれども、ただ、国民的に赤字国債を幾ら発行するかということはかなりこれはいろいろ疑問点があるわけであります。恐らく税の伸びというのはかなり多いのじゃないだろうか。去年、税の見込みが大変狂ったということで、私は政府自体もことしはかなり厳しく税収は見ているのじゃないか。そういう状態の中で、景気がこう回復してきたということになれば、税の伸びはかなり出てくるだろうというふうに考えますと、むしろ私は、赤字国債というものはいま予算に計上されている額をやっぱり減額をする。そして、赤字国債に対する国民の不安というのは確かにあるわけです。そういう意味でもう少しこれは見直して再検討する、そういう機会があった方がいいのではないだろうか、こういうふうに考えるわけでありますが、そうした点についてひとつ御教示を賜れば幸いだというふうに思うわけであります。  それから稲川さんにちょっと一問だけお尋ねしたいと思いますが、今度通産省の方が中小企業の業種転換法というものを出してくるだろう、まだ恐らく現実に提出はされてないと思いますけれども、出してくるだろうということで、中小企業というものが発展途上国からの追い上げというようなことから積極的に業種転換をしろと、その言っていることは私もわからぬわけではありませんけれども、実際には中小企業がそういうことが一体できるのかどうなのか。言っていることはいいんですけれども、それだけの余裕があるだろうか。大企業の場合には資金的な問題も、あるいは会社の組織的な問題からも、漸次転換というものはかなり可能だろうと思うんです。中小企業に私はそういうことはなかなかむずかしいだろう。これには相当多くの援助というものがないと、いまのような政府考えているような援助では私はとてもできないというふうに考えるわけでありますけれども、先ほどは何か余り積極的なようでもございませんでしたけれども、御賛成のような御意見でございましたけれども、もう少しこの点を、どういう点をどういうふうに画していけば転換法がいいのか、この辺では私大変疑問を持っているわけでありますが、この点について御教示をいただきたいと思います。  以上でございます。
  15. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) まず、第一点の日本景気回復が他人依存型、他国依存型でよいのかという点は、私実はきょうの公述で申し上げる予定にしていたことでして、御質問いただきまして、ちょうど私も申し上げたいところなんですけれどもGNP大国といわれて、非共産圏ではアメリカに次ぐ国であるわけです。しかも、成長で名を売っている国であるわけです。こういう国が世界の景気回復の主導性を持つということが非常に重要であると思います。それが結局アメリカに助けられたという形になったということは非常に残念だと思います。やはり、次回からは日本が自力で回復できるようにするということを期待したいと思いますし、しかもその自力が、でき得るならば鉄とセメント中心の公共事業よりも、福祉中心の形で回復したいということを期待したいと思います。  先ほどのところでちょっと関連しますけれども、どうも日本のやり方は企業の中でも国の中でも、景気を乗り切るのに中小企業とか社会的弱者、臨時雇いとかそういう社会的弱者を犠牲にして切り抜けるという傾向がありますけれども、国際的に見ましても、不景気のとき海外協力費は三・六%に伸び率が減ってしまうとか、輸入は容赦なく激減してしまうとか、それはやむを得ないことではありますけれども、どうもそういうときもやはり弱者を犠牲にするという感じがするわけです。そんなことは言っても、どこの国もできないじゃないかといいますけれども、先ほど言いましたスウェーデンの場合は、対外援助費、開発途上国援助費を毎年二五%ふやす、政府支出だけでGNPの一%を超えるまで、達するまで、海外の開発途上国援助費を二五%伸ばすという計画を立てて、それをずっとやって、去年実現してしまったわけですね。ですから、それは景気の波に関係なく二五%伸ばしてきたわけです。そういう心構えというのはもう少しあっていいのじゃないか。そういうことがやはり開発途上国に対する信頼度を高めるし、日本のように経済安全を重視する国にとっては必要ではないかと思います。ちょっとそれましたけれども、いずれにしましても他人に依存するとか、他人に押しつけるとか、都合がいいときは依存して、悪いときは、言葉は悪いが、押しつけるという、そういうことをもう少し改める必要があるのじゃないかということを考えます。  それから物価動向につきましては、おっしゃられるとおり、国外要因というのは非常に大きくなっております。日本消費者物価要因を式で説明しますと、賃金と生産性の上昇率との差額と、それから輸入物価の上昇率と、それから一年前、一期前の需給ギャップと、そういったようなところで大体説明できるわけですが、先ほど賃金と生産性上界率のギャップは非常に近年の中では小さいということを申し上げましたけれども、輸入物価影響力というものは大きくなっていますから、確かに楽観はできないということは言えると思います。  それからもう一つ卸売物価の問題ですね。卸売物価は、景気が回復過程でいつのときでも少しは上がります。先ほど景気上昇過程でむしろ物価は下がると言ったのは、消費者物価ですね、消費者物価に関してはいつでも近年、景気回復過程では上昇率は下がっています。ただ、卸売物価景気回復過程で少し上がっています。しかし、今回の場合上がり方が大きいということで、一年ぐらいおくれてこれがまた物価に響いてきますから、ことし消費者物価の方がかなり低いところへ下げてこないと、また来年上がる恐れが出てきますから、ことしの卸売物価が来年に影響するということを考えまして、ことしの終わりぐらいから来年にかけては、そろそろ需給関係からくる物価上昇を非常に警戒しなければならないというふうに思います。  それから、どうもこの卸売物価が上がるというのは、一つは海外要因と、それから寡占的な価格の影響が出てきたのではないかということは、私もそのとおりでして、そういう意味で独占対策というのはまだ終わった問題ではないし、これは本当に長期的に日本経済の体質を考えるならば、自由経済を守るという立場の人にとっても、むしろそういう人の方が重大な問題であるということを十分認識すべきであろうと思います。それなりの政策が必要であろうと思います。  それから赤字国債の問題は、確かに景気が対外要因に助けられまして、もしかしたら予想外に税収も伸びて、思うほどの赤字にならないで済むかもしれないということは言えると思います。しかしそれも、先ほど言いましたようにいろんな不安要因がありますものですから、この辺はまあ断定——経済学的にも、私ずいぶんそこはわかっているわけじゃないですけれども、どうもどちらとも断定はできないと思います。もし多少余裕が残りましたら、それこそ平衡化基金のようなものをこの機会につくるということ、そういうことに使う。そして五カ年度、多年度予算主義というものをこの機会にはっきりさせて、五年目に赤字がなくなるというよりも、五年間を通して赤字がなくなるというような、平均して赤字がなくなるというような、そういう多年度予算主義に移行するきっかけの財源にでも余裕が出たらこの機会にしていく。それと、先ほどの公共予備費も、使い方を先ほどのような形で民主的なものにして、それと一緒にして将来の景気変動の安定化の政策の出発点にする、そういうことにするのも一つ考えではなかろうかと思います。
  16. 稲川宮雄

    公述人稲川宮雄君) 私に御質問の点は、中小企業事業転換対策特別措置法というものが政府において用意されておるのでございますが、これに対してどういう考えを持っておるかということだと思います。  事業の転廃業ということにつきましては、従来、中小企業の中ではタブーとされておったものでございまして、そういうことを口にしても非難を受けるというほど、転廃業という言葉は使わないようにしておったのでございますが、中小企業基本法ができましたころから、もう基本法の中には事業転換という言葉が法文の中に出てくるというようなことでございまして、むしろ最近におきましては、中小企業の間におきましてもそういう法律を積極的につくってほしいと、こういう希望がかなり出ておるのでございます。  それはなぜかといいますと、転換がしたいわけではございませんけれども、転換せざるを得ないという経済情勢になってきた場合には国の方でいろいろな助成をしてほしいということでございまして、ただその転換というものが、強制的に転換しなければならぬということになりますとこれは大変反対いたしますけれども、転換するかしないかは全く本人の自由でございますから、転換したくない人は転換をしない、転換したい人には政府がいろいろな援助を与えてやろうと、こういう法律であれば何もこれに反対することはないのでございまして、われわれとしてはむしろそういう法律をつくっていただきまして、今日の国際情勢なり、あるいは需給構造の変化等によりまして、どうしてもこのままではやっていけない、そういう情勢は何も、今日は特に多いのでございますけれども、いつの世の中にもあることでございますので、そういう場合には積極的に援助をしていただきたい、こういうことでございます。  ただ、いま考えられておりますその内容、転換の、助成の内容が果たして十分であるかどうかという点につきましては意見がございまして、もう少し手厚いものにしてほしいということが中小企業の望みでございまして、たとえば政府関係機関から出されます融資につきましても、金利はたしか八%の予定であるというふうに聞いておりますけれども、そういうやむを得ず転換していく人に対する八%というものが果たして適当であるかどうか、もう少し安くしていただけないかというようなことが中小企業の間には一般にささやかれておる。あるいはまた、転換いたしまする場合には古い施設というものを処理しなければなりませんので、その古い施設の処理につきましては、中小企業振興事業団におきまして共同廃棄のいろいろ援助があるようでございますけれども、そういう点につきましても、もう少し手厚くしていただきたい。たとえば繊維におきましては、織機の買い上げというような制度があったのでございまして、そこまで充実していただけるかどうかは問題はあると思いますけれども、もう少し手厚くしていただきたいというような希望がございます。  しかし、転換そのものにつきましては、むしろ中小企業もこれから積極的に考えていかなければならないし、また果たしてそういうことができるかという御質問がございましたけれども、非常に困難ではございますけれども、過去におきましてもかなり積極的に転換をした実例がございまして、それはそれぞれやる人たちの覚悟、あるいはもっと共同の力というものを活用していけば、かなりスムーズにいけるのではないかというように考えております。  以上でございます。
  17. 森中守義

    ○森中守義君 稲川公述人に二、三点お尋ねいたします。  先ほどの公述の際に五つの希望が表明されましたね。こういったような希望が満たされることによって、果たして今日の中小企業が再生できるかどうか、私は大変疑問だと思う。つきましては、そういう観点からお尋ねするのですが、すでにでき上がっている中小企業団体組織法、それに中小企業基本法ですね、いわばこれらが今日の中小企業を保障しているということに法律的にはなっている。しかし、これは今日のように非常に激動期における状態の中に完全な対応ができるかどうか、私は疑問に思っております。したがって、これらは当然なこととして再検討、見直しの時期に来ていると私は思うのですが、その必要をお考えになるかどうか、第一点。  それから、いま一つの問題は、会社の認可に当たりまして資本の下限が全然ないのですね。あるのは額面五百円といういわば株価の最低下限だけが規定されていて、あともう何にもない。ですから、でき上がったと思ったらすぐつぶれてしまう。極端に言えば五十万円でも百万円でも会社組織ができるわけです。そういういわば極端な過小零細な企業ができては倒れ、できては倒れる。これが実は倒産の件数に月々算入されるわけです。しかし、そういったように零細な規模の資本で仕事を始める。運転資金というのが問題になるでありましょう。で、結果的に金融資本のえじきにされてしまうという、実はこういう状態だと思っております。そうなりますと、先ほど申し上げた組織法あるいは基本法、こういうものだけでなくて、商法にも手が及んでいかねばならぬ。  同時にまた、いま政府の方でもこの国会に出すかどうかという、こういう問題もありますが、先年来の問題である独禁法の改正、こういうものともかかわり合いを持ちながら、一連の法律の整備というものが大きな問題になっていると思うのですが、この点についてはどういうようにお考えになるのか。  いま一つは、先ほどお述べになりました五百八万社、三千四十万人、出荷率四八・九%、もう大変な国の経済の中枢をなしているわけですね。ところが、こういう相当数の企業の一体中堅とはどういうものを指すのか。それ以下のものはどうなるのか。つまり、私は中小企業投資育成株式会社法、これに基づくものは東京、名古屋、大阪、三つの地域しかない。ところが、五百八万社に及ぶものでこういう法定の機関の恩典を受けているものがさてどのくらいあるのか。言うなれば、こういうところはやや中堅優良社として成長するでありましょうが、そのような全くこういうものの恩典がない。恩典がないということは、恩典を与えるような正しい意味の育成強化のために当然こういうものは再考されてしかるべきであろう。こういうことをどういうようにお考えになるのか、これが第三点でございます。  いま一つ、中央会へのお尋ねでございますが、私は、いま一口に言うわが国中小企業というものは、先ほど申し上げたように金融資本のかっこうのえさになっているということが第一点と、自由経済の欠陥のすべてを網羅しているような気がしてなりません。それであるならば、一体団体組織法によって制定をされ、今日に至った中央会というものがどういう役割りを果たしてきたのか、かなり私は疑問があります。せっかく公述人としておいでになって、苦情を言うようで大変恐縮ですが、見方によりますと、政府及び今日の与党、これとの政策の調整あるいは経団連等の経済団体とのいわば政策調整、そういう機関に陥り過ぎているのじゃなかろうか。たとえば、中小企業庁を中小企業省に昇格させたらどうなのか、こういう議論がしばしば国会の中でもございますし、また関係者の中にもこういう声がある。残念ながら中央会が団体元締めとしまして省昇格にどういう実践活動をなさったのか、かつて私は聞いたことがない。こういうことが経団連、政府与党、こういうところのむしろ政策調整機関になっていて、果たして基盤の強化、育成指導のためにどういう役割りを果たされているのかきわめて疑問であります。  こういうような観点から、今日私は、先ほどお述べになりました幾つかの、たしか私は五つだと受り取りましたが、こういう希望が満たされることによって今日の中小企業が起死回生の手だてになるとは思いません。むしろ、いま述べましたような抜本的な背景、その沿革、こういうものがきちんと確立をされていきませんと、好況、不況、こういう波のまにまに揺れ動いていくのが今日の中小企業じゃないのか、こういうように考えております。一部苦情もあって大変恐縮ですが、どうぞお答えいただきたいと思います。
  18. 稲川宮雄

    公述人稲川宮雄君) 森中先生からのいろいろお尋ねでございますが、まずその中で、会社法の関係で下限が決められていない、額面五百円ということだけであるということでございますが、その五百円も実はノミナルでございまして、古いものを買収いたしまして、もっと低いものが実際は横行しておるというのが普通でございまして、十九万五千円という言葉がございますけれども、それ以下の会社も設立が自由にできるという点に倒産の一つの原因があるのではないかというお話でございました。  まことに同感でございます。しかし、倒産は会社だけではなく、個人企業においても倒産があるのでございまして、資本金が少ないから事業をやってはいけないというわけにはまいりませんので、それは私は会社法の責任だけではないと思うのでありますが、ただ別の角度から、そういう小さな会社を現在の会社法において認めるということ自体には問題はあろうかと存じます。つまり、資本が少ない会社を認めるから倒産が多いというのではなくて、そういう会社が会社法の中でできるということに問題があると存じますので、私どもといたしましては、会社の最低資本金は一株を幾らにするということとともに、最低資本金額をやはり限定すべきであると考えておるのでございますが、ただ、現在多数にございます、現在しております会社を全部その線に引き上げてしまうということは非常に抵抗が強いので、その点をどうするかということは問題でございますけれども、会社法におきまして最低資本金額を設ける必要があるということが私ども意見でございます。  それから、中小企業の中で投資育成会社を利用できるのはごく一握りではないか、そういう政策についてどう思うかということでございますが、私どももいまの投資育成会社が、言うならばエリート政策と申しますか、卒業生対策でございまして、一般の中小企業には手の届かないところにあるという点におきまして非常に不満でございまして、もう少しそのレベルを下げるということが必要であると思いますが、ただ最初から投資育成会社はそういう性格としてできておるものでございますから、いまの小規模零細企業まですべてこれを適用していくということはなかなか困難であると思いますが、現在ありますようなああいう条件というものはもう少しダウンいたしまして、広く中小企業が利用できるようにする必要はどうしてもあるというように考えております。  それから、現在の私ども中央会が政府とか与党あるいは経団連等との政策を、何と言いますか、調整する程度のものである、こういうことでございますが、何と申しましても私どもはやはり国なり政府からの助成金をいただいておりますので、正直に申し上げまして反政府的なそういうことはなかなかできかねる、これが正直な私どもの感じでございます。と言いまして、私どもは決して政府とか与党のおっしゃるとおりにはなっていない。なぜかと言いますと、われわれは中小企業の団体でございますから、中小企業の希望のあるところは、与党であろうと野党であろうと政府であろうと何であろうと、言いたいことは言わせていただくというのが私どもの立場でございまして、従来からそういう意味におきましては政府の御意見と違う運動を起こしてきたことも数多くございます。  たとえば、御指摘のありました中小企業省設置の問題でございますが、これらの問題につきましても、関係団体を糾合いたしまして、私どもが先頭に立ってその運動を従来展開してきたのでございます。特に私どもといたしましては、単に中小企業庁を省に昇格しろというかけ声だけではなくて、具体的にどういう点をどういうふうにすべきであるかということにつきましても、この検討会を設け、それぞれ専門の方にも来ていただきまして、その一つの案をつくっておるのでございます。ただ、先ほど私が希望として申し上げました中にそういう点は入っておりませんけれども、申しおくれましたけれども、私の申し上げましたことはこの予算に関連いたしまして、当面の中小企業対策として何を私どもは希望するかということを中心にして申し上げましたので、中小企業対策の基本的な問題につきましてはこれから漏れておりまして、いま御指摘のような点につきましては、これは基本的な問題として、いま申しました当面の問題以外に考えておるところでございます。  また、経団連等に対しましても、私どもはいろいろ経団連に自粛を申し入れたことはございますけれども、そういうところと政策協定などをしたというようなことはございません。あくまでも従来の経団連等のやり方につきましては非常に不満でございまして、たとえば分野調整等につきましても、自粛であるとおっしゃいますけれども、自粛でできるくらいならば今日の問題は起こっていないということでございまして、決して経団連等とは癒着はいたしておりませんということを申し上げまして、お答えにならぬかもしれませんけれども、お答えにかえさせていただきます。
  19. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 時間が大分追ってしまいましたが、通告された方は全部終了させていただきたいと思いますので、時間がしばらく延びることをお許し願いたいと思います。
  20. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 丸尾参考人に、時間がありませんので簡単に三点だけ質問いたします。  一つは、過剰流動性の問題でございますが、これはいろいろ議論が分かれておりまして、余り心配ないという人、非常に心配であるという人、大体二つありますが、先生は今後の大きな変化がない限り、どういうお立場をとるのか。仮に過剰流動性が起こる危険性がある場合は金融の引き締め、金融の問題ですね、金利の問題を含めてどういう対処をしたらいいのか、その点をお伺いしたいと思います。特に大幅ないわゆる赤字国債を抱えた財政でございますので、その点でどうなのか、これが第一点です。  第二番目は新価格体系、言われております新価格体系が、大和証券のリポートによりますと九割方もうでき上がっておる。要するに、石油の値上げはほぼ吸収が完了しておるという見方がございます。しかしまた一方、三菱銀行のリポートによりますと、まだ新価格体系が全部終わっていないような考え方に立っています。特に企業収益を考えた場合は、なお製品に一〇%のコストアップを考えなきゃならぬということがまとめとして言われているわけです。この新価格体系への移行という問題を先生はどうお考えになっておるのか。今後電力料金を初めとした、そういう製品にはね返るような公共料金等の値上げもこれから予想をされておりますので、その中でどうなっていくのか、この点をお伺いしたいと思います。  最後に、貿易の問題でございますが、いま確かに輸出が伸びてまいりました。これは結構なことでありますが、反面、輸入の価格が非常に上がっております。記憶が定かでございませんので、間違っていたらお許しをいただきたいのですが、昭和四十五年を一〇〇といたしますと、たしか二・一倍ぐらいに輸入価格はいま上がっているはずです。それに反して輸出の価格はそんなに伸びていない。大体六割ぐらいの伸びかと思いますが、そういうふうな状況の中において、果たして輸出をどんどんどんどん伸ばしていくだけで、これから諾外国の今度は反発も出てきましょうし、いまの特に輸入価格の大幅な上昇の割りには輸出価格は伸びていない。その点を国内でどういうふうにやっていったらいいのか、その三点をお伺いしたいと思います。
  21. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 過剰流動性の——私、金融関係、国際関係の方は専門家ではございませんけれども、私の感じでは、先ほど言いましたようにことしの、今年度で言いましたら後半ですね、後半までは私は心配はないと思うわけなんですけれども、後半になってさらに外貨もどんどん流入するようなことがありましたら、何らかの政策をとる必要があるのではないかと思います。いまのところどういう政策が一番いいか、ちょっと私もどれが一番いいということはわかりませんけれども、長期的には制度化して何か基金制度をつくって、過剰なものが一時自動的に凍結するような制度考える必要があると思いますけれども、短期的には何かそれを臨時的に行うようなことも緊急の場合には必要であると思いますけれども、通常の場合にはまだ金融政策でもって対処できると思います。ですから、後半になって金融政策に関してはかなり警戒が必要になると思います。  それから新価格体系は、恐らく企業の側からすれば高成長時代のパターンを頭に置きまして、それくらいの予想利潤があって投資に回される余裕があるという事態を考えますと、非常にまだ昔の時代に戻るような価格体系になっていないというふうに見えるでしょうけれども、しかし、価格体系が変わっていったと同時に、経済の基調あるいは国民所得の構成自体も大きく変わっていくわけです。何を基準として新価格体系を考えるかということについて、企業の見方というのは若干高成長時代に戻るようなことを頭に置いているような印象を私は持っております。  で、輸入価格と輸出価格の問題ですけれども、これも国際的な一つの新価格体系への移行でありまして、原料、材料、資源関係が相対的に高くなり、そして資本集約的なあるいは技術集約的な価格が相対的に先進国が不利になるというのは、これは一つの国際的な所得の再分配であって、ある程度やむを得ないと思うわけです。それに耐えれるようにするような国内的な均衡をやらざるを得ないと思います。ことしの賃金と生産性の関係等等から見ていきますと、この問題でそれほど当面事態が悪化する可能性はないと思います。長期的には確かに輸入、輸出価格が国際競争を維持し、しかも国際収支のバランスができるような計画をするために、長期的には賃金、生産性等に関してのより計画的な方向というものは必要になるかもしれないという感じを持っております。
  22. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、稲川公述人に簡単に二点お聞きしたいと思います。  先ほどお話の中で、低成長下でしわ寄せが中小企業に寄せられているというお話がありました。条件の改定等で中小企業が非常に苦況に陥っている点がある。単価の切り下げ等お話がありましたが、一時下請代金のおくれということが非常に問題になりました。やはりこの下請代金のおくれがありますと、それはコストアップになりまして経営を圧迫してまいりますが、現在その実情はどのような実情にあるのか、あるいは対策としてどのようにお考えになっているのか、これは第一点です。  第二点としましては、中小企業の方々いろいろとお話し合いに参りますと、よく歩積み両建ての問題があります。当委員会でもそのことにつきましてはいろいろと議論されておりますが、その点につきましての参考人は現状をどのようにつかまれているか、あるいはその対策としてどのようにお考えになっているか。  二点、簡単でございますが、お聞きしたいと思います。
  23. 稲川宮雄

    公述人稲川宮雄君) この低成長下におきまして、親企業が下請に対していろいろしわ寄せをしておるわけでございますが、その中で特に下請代金のおくれの現状はどうなっておるかということでございますが、ごく最近の傾向を見ますと、これは業種によって違いますから一律ではございませんが、大体下請状態は横ばい状態であるというように私どもは認識しておりますが、若干よくなった。若干と申しましても大きなパーセンテージを上げるほどではないのでございまして、これは中小企業庁でもお調べになっておるのでありますが、少しよくなってきておるという程度でございます。しかし、もともとが非常に悪いのでございますから、少しぐらいよくなっても、決してそれが中小企業経営改善に役立つというところまでば至らない。中小企業が働けど働けど自分の暮らしが楽にならないというのは、そういう点からきておるのではないかと思います。  したがいまして、私どもは下請代金支払い遅延等防止法という法律がせっかくあるのでございますから、この法律はいわゆるざる法と言われておりますけれども、私どもはざる法であるとは思っておりません。これがありますからまだ現在程度の状態が維持されておる。これがなければもっとひどい状態になると思いますから、決してざる法とは思いませんけれども、これをもう少し厳重に施行していただくだけではなくて、現在は納品をいたしましてから六十日以内に代金を支払うことになっておりますが、その支払いが手形でもよろしいということになっておるところに非常に問題がございますので、その手形が長期化しないように措置をしていただくということがどうしても必要でございます。場合によりましては、そういう点につきましても法制的な制度的な改正をやっていただくということが必要ではないかというように考えております。  それから、歩積み両建ての現状でございますが、これも若干改善されてきておるということは言われておりますけれども、しかし、現実は余り改善されたということは聞いておりません。したがいまして、これからはこの歩積み両建てというものを積極的に解消するようにしていただきたいのでありますけれども、よく言われますように、表の歩積み両建て——歩積み両建てと一口に言いますけれども、歩積みの方は手形割引などいたしましたときに一定の歩合を積み立てるものでございまして、ある程度は割り引かれる方も積み立てていった方がよろしい、全部使ってしまわないで少しは残して。それが一定の比率になりまして、これをそれ以上拘束されるということに問題がございますけれども、歩積みそのものはそれほど悪ではないと思っておるのでありますが、両建てというものはどうしても解消をしていただきたい。ただ、それが表のものだけではなくて、最近の言葉に、にらみ預金というのがございますが、銀行の方で両建てをしろと言わなくても、こちらの方でそれをしないとなかなかやってもらえないような顔をしてにらんでおるので、やむを得ずやるという、そういうものもあわせて征伐をしていただきませんと、ただ表のものだけでは解決はつかないという感じを持っております。
  24. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は最初に、丸尾公述人景気対策物価、インフレ問題との関連にしぼって三点ほど伺いたいと思うんです。  先ほど先生は、経済均衡を維持するためには財政の不均衡もやむを得ないという御趣旨の御公述があったわけでありますが、恐らくいまの政府もその立場に立っているかと思いまして、政府政策を見てみますと、昨年それからことし、もうすでに七兆円以上の赤字公債を発行して、そうして財源を賄いながら、特に国鉄の新幹線とか、あるいは高速道路だとか、あるいは本四架橋だとか、大型プロジェクト中心の公共事業費を大幅に組んでいるというのが実情であります。こういうようなやり方をとっていきますと、いま不況が深刻ですからインフレが顕在化しないという事態はあるにしても、やがてこれがインフレに発展していく可能性というのは十分あるのじゃないかと思うんです。特にそんなふうな財政政策をとりながらも、減産指導などをやって、そして価格の下支えをやっておる。特に新価格体系と称して、むしろ卸売物価の引き上げを促進させているというようなのが実情じゃないかというふうに思います。ですから、以前ならば不況、恐慌になれば物価は下がるというのが実情だったと思うんですけれども、一けた台に押さえたと言っておりますけれども、一〇%に近い消費者物価の上昇率、これは不況下には異常な状態だと思うんですね。高度成長の時代以上にこの不況下に消費者物価が上がっているという実情があらわれてきていると思うんです。  特に、先生は中期財政計画が必要だという趣旨のことをおっしゃいまして、スウェーデンの例などをお引きになって、このことによって社会福祉が促進されるというような御趣旨の御発言があったかと思いますが、わが国スウェーデンなどと違って、特に社会保障制度が著しく立ちおくれているという国だと思うんです。そういうような立場で大蔵省の発表しました財政収支試算を見てみますと、もうすでに先生も御承知のように五十三年度、五十四年度まで赤字公債を出そう、そうして大体昭和五十五年度末には赤字公債を含めての公債の総額は五十兆を超えるだろう、GNPの一五%以上になるのじゃないかというような試算になっているわけであります。こういうような中期財政計画を立てて、もし経済均衡を回復するんだから財政の不均衡もやむを得ないという立場でいかれますと、先ほども申しましたけれども、今後、好況になるに伴ってインフレーションというのが不可避的に起こってくるのじゃないかというふうに思われます。その点をどんなふうにお考えなのか、これがまず伺いたい第一点であります。  第二点は、それに関連しての景気対策のあり方でありますけれども、これは先生もおっしゃっておりましたように、私どもは大型プロジェクト中心の公共投資というようなもの、あるいはまた赤字公債などを発行してのインフレ促進政策というようなものではなくて、国民の生活安定を基本とした景気対策をやらなきやならぬじゃないだろうかというふうに考えます。  特に物価を安定させ、あるいは可能ならばこれを引き下げるということが、国民の実質的な購買力を高めて景気回復を着実なものにする一番有力な手段じゃないか。それからまた、大型プロジェクト中心ではなくして、国際的にも立ちおくれている住宅とか都市公園とか下水道整備とか、こういう生活関連施設を重点とした公共投資をやっていくことが必要じゃないか。特に中小企業等に対する官公需発注という問題との関連で言えば、鉄建公団などの工事は八五%くらいが資本金十億円以上の大企業にいっているというような実情でありまして、むしろ、生活関連施設を重点にしていけば中小企業への発注も非常に容易になるのじゃないかというふうに思います。それこれありまして、私はやはり赤字公債などの発行に依存する財政計画ではなくして、健全財政主義ということを貫いていく財政政策こそが景気の正常な回復のためにきわめて重要じゃないかというふうに思いますが、その点についてのお考えを伺いたい。  第三点は、以前は景気循環は大体十年に一回というふうに言われておりましたが、第二次世界大戦後は大体各国ともに三年か四年に一回くらいずつ恐慌もしくは不況が起こっておりまして、資本主義経済の不安定性が非常に大きくなったというふうに見られるわけでありますが、そういう事態のもとに、いま申しましたように財政の不均衡もやむを得ないというようなお立場でインフレ促進というようなことが起こってまいりますと、この経済の不安定性は一層激しくなるのじゃないか。少し景気が回復したらインフレがひどくなって、どうしてもこれは引き締め政策をとらざるを得ない。同時にまた、インフレの激化によって国民の生活も非常に圧迫されて、生産と消費の矛盾が激しくなるというような事態になるのじゃないかというふうに思いますが、今後の景気動向ですね、これについての見通しをお聞かせいただきたいと思うんです。  それから次に、稲川公述人に三点だけ伺いたいと思います。  先ほども御指摘がありましたが、中小企業対策費、本年度予算のわずかに〇・六%であります。これは去年もおととしも同じように〇・六%でありました。不況が戦後最大に深刻だというような事態のもとで、総予算に占める比重が依然として〇・六%、これはいまの中小企業が演じている国民経済における重要な役割りに比べてみれば異常というほど低いものだと私ども考えているわけでありますが、さて、この五十一年度予算中小企業対策費の中で、最大の重点を置かれているのが小企業経営改善資金制度であります。ところが、この実態をよく検討してみますと、商工会議所の推薦が必要だ、あるいはまた商工会議所の経営指導が半年以上なければ資金の融資を受けられないというようなことで、実際こういう資金を特に必要としている零細企業の立場から言いますと、商工会議所に縁のないという零細企業が非常に多いのですね。まさにそういう零細企業こそが資金を望んでいながら、この条件に合わないということで融資を受けられないというような実情にありますけれども、この点についてどういうふうにお考えか。  それから、第二点として伺いたいのは、いまの中小企業の実情を見てみますと、ただ単に景気変動で、非常に苦しいというだけではなくして、まさに中小企業は構造的な危機にいま襲われているというふうに私ども考えております。その要因一つは、大企業がどんどん中小企業分野に進出していっている。お豆腐屋さんの分野にヤクルトや森永が進出するとか、あるいはまたクリーニング屋さんの営業分野にエーデルワイス、この背後には大商社がいると言われておりますけれども、ダミーを使って大商社が進出する。さらにまた、韓国その他の周辺の諸国から安い賃金を利用した低コスト中小企業製品が入ってくるというようなことで、中小企業の存在そのものが根本から脅かされているというところにいまの特徴があるのじゃないかというふうに思うんです。  ところで、この分野規制の問題でありますが、政府の方は法律で規制するのはよくない、既存の法律で行政指導でやりたいという立場をとっております。申し上げるまでもなく、中小企業団体組織法に、大企業の進出の場合には中小企業と協議するということが書かれておりますが、これは大企業の進出を抑えるという立場よりも、むしろそれを前提条件として大企業中小企業との間の協議をやるというものであって、まず大企業が承認しなければ協議が成り立たないという性格のものだろうと思うんです。私はこういう事態ではどうしても法的な規制が必要じゃないか。特に、資本金三十億円以上くらいの大企業やそのダミーあるいは外資、こういうようなものの進出は原則的にこれは禁止する。それ以外のものについては許可制にして、適切な審議会などで十分検討して中小企業の分野を守るというような措置が必要じゃないかと思いますが、その点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思うんです。特に、国外からの競合商品の輸入ですね。伝統的工芸品産業などのように、大体近代化が無理だ、手工業で長い伝統的技術に根差してやっとその品質を保っているというようなものについては、そもそも自由化が無理なんであって、こういうものについてはやはり輸入制限措置ということをやるべきじゃないかというふうに思いますが、その点もあわせて伺いたい。  それから第三点、簡単に伺いたいんですが、いまは付加価値税制を導入するだろうという声が非常に強うございます。ヨーロッパなどですでに実施されておりまして、これが中小企業消費者に大きな被害を与えるものであるということは御存じかと思いますが、この点御賛成なのか御反対なのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  25. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 経済均衡優先という考えはとかく誤解を招くわけですけれども、これは本当に赤字が出ても、五年間なら五年間でその赤字によってふえた分の公債まで取り戻してしまうほど片方で黒字になれば全く問題ないわけですけれども、実際問題として、理屈からいって経済均衡優先でそのために短期的には財政赤字やむを得ないという議論は、経済学者の主流では大体当然のことと認められていながら、実際にはどうしても疑問が残るというのは、なかなか赤字のときはそういう議論になるけれども、後で余力が出てきたとき、たまたま選挙になって、もっと景気よくやらなくちゃいけないとか、あるいは政権がかわるとか、いろんなことでそのとおりにならないということが非常に大きいと思います。ですから、そういう制度的仕組みをきっちりつくる。そしてそれを非常に重要な公約として政府がやるという仕組みになれば、私はこの理論の正しさは否定できないと思っています。  それから、確かにおっしゃられましたように、今回の不況の回復過程、先ほど言いましたように不況回復過程というのは近年の日本あるいはアメリカ、イギリスなどを見ましても、むしろ消費物価上昇率に関しては最も小さくなるときなんです。過去の日本のパターンですと、景気回復過程で一番物価上昇率が低くなるときは四、五%まで一度戻ったのですけれども、それがことし、まあ今年度年度を通して八%ぐらいしか期待できないということは、三、四%従来よりは上に上がっているわけです。シフトしているわけです。これを石油後遺症のまだ残っているやむを得ない分だと見れば仕方ないかもしれませんけれども、確かにその不安、それだけ不安が残る。つまり、いままでのパターンを繰り返すと、景気回復過程で、ここでことしから来年にかけて物価上昇率が最も安定する。それから次の段階になるとまた需要圧力から物価が上がってくる、あるいは過剰流動性とかいろいろなことから上がってくるということになると、消費物価上昇率がどんどんまだ下がってくるのじゃなくて、このままのパターンでいくと、今年度消費物価上昇率の底になるおそれがあるわけですね。来年度はまた上がるという可能性が出てくるわけです。その点考えますと、何か物価に対して従来とは異なる政策が必要だろうということは言えると思います。  それから、国民生活安定という点に関しましては私も全く同意見でありまして、景気回復という、何かそういうことのために公共支出が必要だと、それが何か名目になって、福祉優先とか生活安定のために控えられていた公共プロジェクトががたがたっと出てくるというような感じがするわけです。それは必ずしも必然的ではないわけでして、そういうときにこそむしろ日本は先ほどおっしゃいましたように、福祉は一面では行き過ぎとか見直し論がありますけれども、しかし、基本的なたとえばナショナルミニマムのための年金とかそういった点におきまして、あるいは住宅等におきまして、公園とかそういうような、おっしゃられたようなことにつきましておくれていることは否定できないわけです。ですから、そういう不況のときには必ずしも公共大型プロジェクトでなくてはならないということはないわけです。むしろそういう機会にこそ福祉優先型の景気回復をして、それを機会に日本経済のパターンを、型を変えていく、そういう配慮が必要であったと思うのです。ことしの場合にも、あるいはむしろ去年の場合ですね、去年の予算の場合、そしてことしの予算と引き続いてそういう方向に行くことが好ましいかったかと思います。その点に関しましてはおっしゃるとおりであります。  そこで、ただ、だから健全財政がと言われる、その健全財政意味ですけれども、私の言う健全財政というのは、一年ごとの健全財政ではなくて、五年間なら五年間景気変動局面を通して健全財政が本当に守れれば私はまあそれはそれで問題ないと思っています。ただ、それを守られる可能性がないからこそいろいろ心配があるわけであって、その場合、選択としては、どうせ守れないから、やはり昔の考えかもしれないけれども、単年度の健全財政でいくべきだという考えと、いや本来ならば五年間なら五年間の多年度健全財政が合理的であるから、それを守らせるようにすべきだという両方考えが出てくると思いますけれども、私は、できたら後者の道をとれるような制度的仕組みと政治的信頼感を高めることが必要ではないかと思います。  それから、景気循環が短くなってきて不安定性が高まっているとおっしゃいましたけれども、確かに十年ぐらいの中期景気循環と、それからまた四、五年のキチンの波というのは昔からあることでして、別に四、五年おきのキチン波動というのが今度新しく出てきたわけではないわけでして、ただ石油ショックがあったりいろいろなことがあったりして、その前にはニクソンショックがあったりして非常に不安定、そういう政治的な面とか対外要因の不安定性が高まっているということは事実であります。そのためにこそ、先ほど申しましたようないろんな形での景気変動平衡化、あるいは何ですか、調整と言いますか、そういうような制度、特に基金制度的な発想をいろいろな面で取り入れることが必要ではなかろうかと思います。
  26. 稲川宮雄

    公述人稲川宮雄君) まず第一点でございますが、小企業経営改善資金融通制度のことにつきまして、商工会議所等が末端の零細小規模業者までは手が届きにくいのではないかということでございますが、確かに、商工会はその構成員が小規模中心でございますが、商工会議所はかなり高いところになっておりますから、その商工会議所が零細小規模まで手を届かせるということにはかなり問題があるだろうと思っておりますけれども、しかし、それには最近商工会議所も、大都市におきましては支部等を設置されまして、その支部を通じておやりになっておるとか、あるいは特に経営改善の指導員を全国で何千人という多数の人を置きまして、そういう人が手をとり足をとって指導いたしておりますから、かなり零細の点まで浸透していくのではないかというふうに思っております。この制度は商工会議所、商工会を中心にしておりまして、私どもの方に関与しておる問題でございませんから詳しくはございませんが、かなり小規模まで浸透いたしておるというように私どもも理解いたしております。  それから分野調整の問題でございますが、確かに御指摘のように、現在の団体組織法におきましては、商工組合をつくりまして、その商工組合の特別決議によって大企業と団体交渉をし、団体協約をするというたてまえになっておるのでございますが、しかし、それが協定ができない場合に、審議会等の議を経まして行政官庁が調整をするということになっておりますから、それはやはり行政官庁の調整の手は及ぶことになっておりますから、私どもは、その限りにおきましては別に、その前提として直接大企業と交渉しなければならぬというのが一つの前提でございますから、差し支えはないと思っておりますが、問題は、そういう商工組合をつくらなければならない、また、団体組織法によらなければ現在は他の制度ではそういうことができないというところに問題がございますので、いまの団体組織法だけでなく、もっと広くこれをしていただくとか、あるいはさらに別の基本的な法律をつくっていただきたいというのが私どもの一貫した希望でございます。  それから次は、伝統品産業等につきまして、自由化は無理であるから輸入制限措置が必要ではないか、こういう御指摘でございますが、中小企業者といたしましては、御指摘のようなことができるならば一番結構でございまして、双手を挙げて賛成をいたしたいし、またそういう希望が非常に強いのでございますが、ただ、今日の国際関係から申しまして、原材料等の輸入その他いろいろの関係がございまして、また、日本が余り輸入制限等を行いますと報復措置をとられるおそれがある。こういうことも言われておりまして、そういうような観点から、輸入制限は是非希望したいのでありますけれども、それの反作用というものがございまするし、また、やはり日本は貿易で立っていかなければならぬ国であるという点から申しますると、余り自分だけのことは言えないのではないかというので、非常なジレンマに陥っておる点でございますが、そういう点につきましては段階的な方法でやってもらうとか、あるいは原産地を表示してもらうとか、あるいは国内におきましても、もっと高級品、高度化の方へ進んで、そういうところと競合しないようないい物をもっとつくっていくというような方向で進むとかいうような方法をとらざるを得ないのではないかというように考えております。  それから付加価値税につきましては、これは記帳その他の事務がほとんど中小企業に寄せられてくるという問題がございまするし、また、最近の一般市場の状況におきましては、そういうものを中小企業消費者に転嫁することができない。中小企業、小売商がみずからこれを負担していかなければならぬというのがおそらく現実だろうと思いますから、この付加価値税につきましては一貫してわれわれは反対しておるのでございまして、仮に政府案でありましても、先ほどのお話のように何でも賛成するわけではございません。
  27. 木島則夫

    ○木島則夫君 民社党の木島でございます。  丸尾先生にお尋ねをしたいのでありますが、先生は一時から大学の講義がおありになるということでございます。ただ、私がお尋ねをしたかった項目だけを挙げさせていただいて、第三点目について伺いたいと思います。  一点目は、過剰流動性、今後の金融のあり方について伺いたかったのであります。  二点目は新価格体系を中心とした今後の物価動向について。  この質問に対しては他の委員もお触れになりましたので、私は割愛をいたします。  第三点、五十年度の国民の貯蓄高は、かつてその例を見ないほど高い率を示しております。これは一時的な現象として受けとめるべきか、日本経済に対する根本的な認識を改めた結果として受けとめるべきなのか。先ほどから問題になっております消費動向景気回復の大きな要因であるという観点から、先生はこれをどうとらえられるか、分析をなさるか。簡単で結構でございますから、第三点にのみ回答をいただきます。お願いをいたします。
  28. 丸尾直美

    公述人丸尾直美君) 私もちょっと新聞で、きのうでしたか、これを見まして、個人消費との関係で心配になっているんですけれども、確かに貯蓄の伸びが続くようですと消費性向がむしろ低下するわけですから、可処分所得伸び率消費伸び率との関係が、先ほどの予想ですと、消費性向が高まるから可処分所得が一一%でも個人消費伸び率が一三・七%になるという可能性は残されているということを申し上げたのですけれども、逆になってしまうわけですね。そういう意味で非常に注意しなければならないことです。これは消費に与える影響としましては、賃上げ伸び率のほんとに数%に相当するようなことさえ生じ得るわけですから、もしこういう傾向が続くとしましたら、先ほどのような減税以外にも、何か貯蓄をするようになる要因を考慮に入れて何らかの対策が必要だろうと思うんです。  私の基本的な考えを申しますと、日本個人貯蓄率、昨年はたしか二三%ぐらいだったと思いますけれども、一番多いときが二五%になっている。高成長期の一九六〇年代でも平均的に見ると一六、七%だったと思います。それがますます高くなってきたということは石油危機による不安が一つの原因でありますけれども、ずっとこういうことが続くというのは非常に異常であると思うんですね。一六、七%でも、世界の先進国の中で個人貯蓄率は最も高かった。それがますます高くなっていくと、これを政府が別に問題ないとして見ているとしたら非常に問題だと思うんです。  実は、私ちょっと気がついたのですけれども、国民生活審議会で出ました十年後の生活設計を見ますと、政府は、その時点でも個人貯蓄率が一九%台を想定しているわけですね、二〇%近い想定をしているわけです。十年後の世界でそれくらいの個人貯蓄率を想定するという発想というのは、現在の貯蓄形態を想定している。むしろ私の考えでは、長期的には、貯蓄のうちのかなりの部分である老後の貯蓄などは年金にかわっていく。年金が非常に充実してくる。ですから住宅政策が、先ほど言いましたようにもっと金融が借りやすくなる。そして非常に堅牢な家を建てて、長期ローンにして、そして相対的に低利で借りやすくなる。そうすれば住宅のために貯蓄する割合も若干むしろ減ってくる。それから病気のときの傷病手当等等すべてうまく社会保障がよくなっていけば、個人貯蓄は社会貯蓄にかわってくる。それは目減りをしない貯蓄だ。そういうふうなパターンを政府としては計画して、だから個人はそう不安に駆り立てられる必要はないというような、そういう方向にビジョンを出していく必要があると思うんですね。それが、十年後の生活などで見ましても、私自身審議会の委員でしたからちょっと言いにくいのですけれども、私自身はそれはまずいと思ったのですけれども、それでそう言いましたけれども、どうも、もう少しパターンを変えるという方向に政府の姿勢があらわれて、そういう世論をつくっていけば、日本の貯蓄がますます個人貯蓄率が高くなり、そしてそれはインフレによって目減りして、その目減りしたインフレ利得を企業が使って投資に回していくという、そういうことをこの辺で断ち切っていくことができるのじゃないか、そうすべきであると私は思っています。
  29. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 最後になりましたが、最上君。
  30. 最上進

    ○最上進君 時間がありませんので、稲川先生に率直にお伺いいたします。  先ほどの御説明の中でも、中小企業特徴の第二点といたしまして、いわゆる大企業中小企業格差というものが大き過ぎるという指摘があったわけでございます。私は中小企業の問題を論じますときに、大変いつも感じるわけでありますけれども、確かに中小企業についての定義というものが基本法の二条にあるわけでありますけれども、実際に中小企業とは一体何であるかということになりますと、地方の経済界を見てまいりますと、その中小企業と言われる企業群の中でも、たとえば資金力とかあるいは従業員数、規模などにかなり大きな企業格差というものが現実にあるということを私は感じざるを得ないわけであります。特に小規模企業の範囲におきましても、製造業においては二十人以下、商業やサービス業においては五人以下というふうに定義づけているわけでありますけれども、こうした従業員数というもの、あるいは中小企業のその定義づけの中にもあります資本額あるいは出資総額、従業員数、こういうような要素で一線が画されている。労働のその数と同時に、私はやはり労働の質とか、これからはやはり経営者の資格の問題というものが企業発展の成否に大きく関係をしてくるのではないかというふうに考えているわけであります。この点どのようにお考えになっておられるか、お伺いしたいと思います。  特に、今回御承知のとおりマル経融資制度、これは三千五百億計上されておりまして、私どもも大変評価をしておるわけでありますけれども中小企業の中でも比較的大きい方の中小企業に従来はどうも日が当てられてきたという批判があるわけでありますけれども、この点どのようにお感じになっておられるかお伺いしたいのであります。  次に、昭和四十九年度中小企業の財務構成、これは中小企業白書の中にも触れておりますけれども、この中小企業の財務構成を見てまいりますと、いわゆる大企業やアメリカの中小企業日本中小企業というものが一体どこが違っているか。その差異が大変著しく異なっておりますのは、いわゆる流動負債というものが圧倒的に日本中小企業に多いということであります。中でも、特に買い入れ債務というものが多いわけでありますけれども中小企業の資金調達につきましては、中小企業向けの金融というものを従来逐次拡充してまいったわけでありますけれども、この辺はどのようにお感じか、率直にひとつ御意見をお聞かせいただきたいと思うのであります。以上です。
  31. 稲川宮雄

    公述人稲川宮雄君) 大企業中小企業との格差がある、またその定義、中小企業基本法では定義と言わないで「範囲」という言葉を使っておるのでございますが、資本金とかあるいは従業員というもので線が引かれておるが、これに対してどう考えるかというお話でございます。アメリカの中小企業などにつきましては、そういう数量的な線で引かれておりまするもののほかに、中小企業の性格を加味いたしまして、そして定義という言葉を使っておるのでございますが、日本におきましてはそういう性格というものは全然入れないで、単に外形的な資本金とかあるいは従業員の数だけで中小企業の線を引いておるという点が違っておるのでございますが、私は先生も御指摘になりましたように、数字によって線を引かざるを得ないという点はあると思いますけれども、しかし、もう少し性格、中小企業というものの性質と申しますか、そういうものを加味した、単なる範囲ではなく、定義、デフィニションというものが必要ではないかということをかねてから思っておるのであります。たとえば、先ほど来もちょっとお話が出ましたような大企業のダミーのようなものも、資本金なりあるいは従業員さえ少なければそれは中小企業の範囲の中に入ってくるといういまの規定の仕方は少し不十分でありまして、やはりそういうものはアメリカのように除くというようにすることが必要ではないか。要するに、単なる数字だけではなくて性格をもう少し入れる。非常にそれはむずかしいことでございますけれども、現にアメリカにもそういう例がございますので、そういう方法考えることが必要であるというのが私の意見でございます。  それから、白書の中で財務構成がいろいろと述べられておりまして、流動負債が多い、あるいは買い入れ債務が多い、いわゆる企業間信用というものによって賄っている面が非常に多いのでございますが、私はその企業間信用というものによって中小企業がある程度金融を賄う役割りをしております反面に、またその企業間信用のために非常な影響を受けておりますので、できるだけそういう企業間信用というものはもっと圧縮をしていく。そして正常な金融によっていくということが適正であるというように考えております。
  32. 八木一郎

    委員長八木一郎君) それではこの程度で終わらせていただきます。大変おくらせて申しわけございませんでした。  稲川公述人には、長時間にわたり貴重な御意見を承りまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      —————・—————    午後一時三十五分開会
  33. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  この際、公述人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわりませず本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  それでは、議事の進め方につきまして申し上げますが、お手元にお配りいたしました名簿の順に従いまして、お一人約二十分の御意見をお述べ願いたいと存じます。公述人から御意見をお述べいただきました後、委員の皆様から質疑がありました場合はお答えをお願いいたしたいと存じます。  なお、西澤公述人は所用のため、三時に本委員会を退席されることになっておりますので、西澤公述人の御意見を承りました後、直ちに西澤公述人に質疑を行い、質疑を終え、引き続きお二人の公述人に移りたいと思います。西澤公述人
  34. 西澤権一郎

    公述人西澤権一郎君) 御紹介をいただきました長野県の知事、西澤でございます。  先生方には平素地方自治体の行財政はもちろんのこと、地方自治伸長、発展のために格別の御配慮をいただいておるところでございまして、この席をおかりいたしまして心からお礼を申し上げる次第でございます。なおまた本日は、地方行財政を中心にいたしまして公述の機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。  私は、地方財政を中心にいたしまして、まず当面の問題といいますか、要望といいますか、それを述べさせていただき、さらにまた将来の展望といいますか、基本問題といいますか、それを後に、二つに分けて述べさせていただきたいと思います。  まず、当面の問題でありますけれども、昨年度から本年度にかけまして、御案内のように地方自治体は未曽有の財政危機に直面をいたしておるところでございます。これに対しまして、国におかれて五十年度はすでにもろもろの処置を講ぜられましたし、さらに引き続きまして、五十一年度にも講ぜられようとしていろいろの施策を行っておられるところでございまして、私どもが要望をいたしました点から見ますというと、十分であるとは言い得ないと思いますけれども、それからまた一時しのぎといいますか、あるいは対症療法といいますか、そういう点がないでもないのでありますけれども、しかし、昨年度から本年度にかけてのもろもろの処置に対しましては、これを地方自治体の立場から評価をいたしたいと思います。  ただ、この際特にお願いをいたしたいことは、これは早く予算を成立させていただきたいということでございます。予算ということは、それに関連するところの法律ももちろんでありまして、これは一体のものでありますから、特に交付税法にまつわる法律等は、これは引き続いて成立をさせていただきたいということを特にお願いを申し上げます。  と申しますのは、ただいま暫定予算でありまして、暫定予算につきましてはまあいろいろな支障がございます。一、二の例を申し上げますというと、たとえば四月早々、交付税の概算交付というのがあるんでありますけれども、その概算交付が私どもの県におきましては、大体予定をいたしておりましたものより五十億少なく交付をされております。この予定をしたものより五十億少ないということ、これがもう金繰りに非常に支障を来しておるのでございます。その利子等の問題ももちろんありますけれども、しかし、一時借り入れをしてしのぐというその一借りも、各自治体が御承知のように限度がありまして、その限度を超えるというわけにはまいりません。で、私どもの県としては、五月の俸給支払いができるかどうかということ。実は二百五十億というのが限度でありまして、それを超えての一時借り入れということはできませんので、それまでに交付税のさらに追加交付がないというと大変支障を来すという、そういう状態でございます。そういう意味におきまして、予算の成立と同時に、それまでに、交付税等にまつわるといいますか、関係する法律というものもぜひ通していただきたいということでございます。  それからまた、景気浮揚の施策として、国におきまして特に公共事業等を積極的に施行するという施策をとられておるということ、これは大変結構であると思いますし、それからまた私どもも、それに順応をいたしまして積極的な予算を計上いたしてスタートをしようとしておるところでありますけれども、暫定予算でありますので、土木で申しますというと、一六%程度しか施行ができないということであります。しかもその内容はほとんど継続事業というようなことになりまして、新規の事業はストップということになっております。私はいつもたとえて言うんでありますけれども、スタートラインに立って「用意」という号令はかかったけれども、ピストルが鳴らないために飛び出すことができないというのがいまの状態であると。私の県のような積雪寒冷地帯は、春の日の長いときに仕事をするということ、これは仕事の上から言っても非常に能率的であり、いい仕事ができるということ。そういうことと、それからまた景気浮揚という点から考える波及効果というようなことを考えますというと、どうしても早く仕事に着手をしたいと。第一・四半期に五三%私のところでは発注をしたいという計画をいたしておりますけれども、それができないという状態にございますので、この予算と同時に関係法律を通していただきまして、早く本来の姿といいますか、それが発足できるようにお願いをいたしたいということが、これが当面の要求でございます。  なおまた、私、先ほど地方自治体は未曽有の困難であるというふうに申しましたけれども、昨年はもちろん大変困難をいたしまして国にいろいろな処置を講じてもらっておりますけれども、それにしてもなお恐らく三十数府県が赤字繰り越しになるというふうに思います。いままでは若干の繰り越しがあるというのが、二、三の府県を除きまして大体黒字決算でありまして、その繰り越しがあるし、それから御承知のように、半分は財政調整積立金というもの、法の定めるところにより財政調整積立金に積み立てをするということでありますから、言うなれば貯金を持っておって年越しをしたということになりますけれども、今度は大部分の都道府県が全部——全部といいますか、大部分の都道府県が貯金をほとんど払い下げてしまった、借金を背負ってそうして新しい年度に発足をした、こういうことになりますので、非常な違いであるというふうに思いますから、その辺のところもぜひ御配慮をいただきたいということで、これから後で申し述べたいと思いますけれども、そういう状態でございます。  それからなお当面の問題としてお願いをいたしたいのは、国もそうであるけれども、地方もやはりことしは借金政策であると、仕方ないということでありまして、これはやむを得ないと思いますけれども、その縁故債の消化というのがやっぱり支障を来さないように御配慮をいただきたい。これは自治、大蔵両省におきましてそれぞれ御相談をいただいておるということでありますけれども、このことも当面の問題としてお願いを申し上げたいと思います。  次に、第二点といいますか、基本的な問題といいますか、将来の問題につきまして申し述べたいと思います。  その一つは、交付税制度のあり方とも申すべきことであります。交付税につきましては、もちろん三二%という国の三税にリンクしてあること、これは御案内のとおりでありまして、しかもこれが四十二年以来据え置きであります。で、財政需要というものは非常にありましたけれども、三二%で推移できたということは、国の三税がもちろん伸びたということ、地方税も伸びたということ、それによってカバーできたということで三二%で推移をいたしたけれども、それが昨年以来がらりと情勢が変わったということであります。したがって、この際私どもは交付税というものを抜本的に見直していただくということにお願いをいたしたいというふうに思います。  それで、抜本ということは何かというと、率を引き上げるということ、これはもちろんそうでありますけれども、率を引き上げる一本でありましては、そのもとの三税が少ない場合には、幾ら率を引き上げてもそれはもう相当率を引き上げないというとカバーできないということになります。たとえばことし一兆三千七百億運用部資金から交付税特別会計へ借り入れておりますけれども、これを率に直すというと四三%ぐらいになるのでありますから、さらにそれを上げるということになりますから、率ということだけでなくて、三税にリンクするということが果たして適当であるかどうかということが問題になるんではなかろうかというふうに思います。知事会などでいろいろ検討をいたしておりますけれども、やっぱり三税にリンクするということだけでなく、国税全般にリンクするか、さらに、いま国債というものを発行いたしておりますが、国債には全然リンクしておらないということであるから、国債にもリンクしてやっぱり交付税制度というものを決めるべきではないか、そういうふうにも考えられますので、率を上げることと同時に、そのもとといいますか、それを直すというか、そういう問題があろうかというふうに思います。  それからさらにまた、交付税の基準財政需要額を算定する場合のその中を改める必要があるではないかというふうにも思われます。たとえば、いまのあの義務教育というのは、国庫負担法というのがありまして、二分の一は国庫負担でやる。しかし、高校の教員の方は全部交付税の基準財政需要額の中へ入っておる。ところが、いま高校教育を見ますというと、私の県におきましては九五%を超えて、ことしは九七%ぐらいもう入学するということになる。そうなればもうほとんど義務教育じゃないか。義務教育であったら二分の一やっぱり国庫負担制度というようなものを確立してもよろしいではないか。あるいは警察官も、国が半分出すということをやってもよろしいじゃないか。あるいは直轄の負担金というのは投資的経費の中へ入っているけれども、直轄の負担金、直轄事業というものの性質にかんがみて、やっぱり交付税の外へ出してもよろしいじゃないか。それから、ことしは景気浮揚策のために公共事業の裏負担というものを九五%、まあ道路は別でありますけれども、九五%見ておるという制度でありますから、それは九五%まで見るかどうかということはともかくとして、そういうものも改める必要があるんじゃないかということで、その交付税の中の洗い直しということもやっぱり必要ではないかということ等をあわせて、交付税の抜本対策というものをこの際講じていただく必要があるではないかというふうに思います。それが第一点であります。  なお、交付税については、いままで不交付団体であったものが交付団体の中に入ってきておるわけなんですね。たとえば神奈川県はもう昨年入りましたし、それからことしは愛知県ももう入ってくるだろうと。こういうところに持っていかれるということになりますと、やっぱりいままで交付を受けておったところがその影響を受けるということになります。で、沖繩が入ってきたときに若干トラブル等がありまして、そのときの知事であられた人たちもおられまして御承知をいただいておりますけれども、このときは大した額ではないけれどもそれでも若干トラブルがありました。しかし、まあもとが伸びていくんだからカバーできるじゃないかということでもって、半分、半々くらいでもって何か妥協をしたというか、調整をしたといういきさつもありますけれども、そういうこと等々もありまして、交付税の見直しということは、これは一つ申し上げたいと思います。  それから、地方税について一つ申し上げたいと思います。もっとも地方税についてはたくさんありますけれども、特に私がここでもって申し上げたいことは、これは法人事業税について外形課税について一つ申し上げたいと思います。  法人事業税というのは府県税の中心、大黒柱であります。いままではこれが順調に伸びてまいったのですから、だからこれは収益課税でもこれでよろしいというふうに言っておったのでありますけれども、それが昨年はもう逆転をいたしまして、前年よりも三〇%も落ち込んだという事態になりましたので、大変な事態になりましたから、これに対して外形課税というものをやっぱり取り入れるべきものである、事業税の性質というものはそうであると。国税というのは収益課税でもよろしいけれども、やはり地方税というのは、そこにあって地方住民のいろいろ世話になっておるし、地方住民のやっかいになっておる。まあ率直に卑近な例で言えば会費制度のようなものであって、大きな構えをしておるけれども、全然利益がないから、千円は均等割りで払うけれども、あとは払わないでもよろしいというその制度は、これは住民感情から言っても納得ができないし、それからもう一つは、やっぱり税の安定化というものから見ると、どうしても法人事業税の外形課税というものを大きく取り入れてもらう、こういうことにしていただきたいというふうに思います。  もちろん、いまも外形課税は一部取り入れてありますし、それからまた、外形課税といっても何が外形かということになりますとこれはいろいろ問題がありまして、それからまた、一時に全部外形課税に一〇〇%するというわけにもいかないと思いますけれども、外形課税としてふさわしいものについてはやっぱり外形課税的なものを取り入れていただく、そういうことに御配慮を願いたいというふうに思います。  それから、地方債の問題でありますけれども、これは先ほど私、縁故債の消化について当面の問題を申し上げましたけれども、いまやはり金利も高くなっておりますし、また、まちまちでありますし、それからやっぱりこれからはある程度、建設公債であってもどうもまたふえてまいると思いますし、縁故債等もふえてまいると思いますし、起債への依存度というのはどうしても余り減らないというふうに思います。そのために、それを消化するための地方団体の金融公庫というもの——いま公営企業金融公庫というものがありますけれども、これをさらに発展をさせて、地方団体の金融公庫というものを、この制度をぜひ実現をしていただきまして、公債の消化というものが円滑にいくように、しかも、全国的に差がなくて、そしてバランスのとれた消化ができるように、そういう意味においてその公庫の設置というものをお願いをいたしたいと思います。  それから、さらに超過負担の問題がございます。超過負担の問題というのは、これは十年も前から叫んでおる問題でありますけれども、そしてまた一部は解決をしておりますけれども、やはり新しい超過負担というものが生じておるのでありまして、これを解決をしていただきたいというふうに思います。  実は、地方自治六団体でいろいろ超過負担の集計をいたしましたところが、六千億余りという数字が出ました。で、これは地方自治体側についても少しわがままだというふうに批判を受けないでもないというふうに思いますけれども、自治、大蔵両省でもっていまやっておられることは単価差を直すと。単価が違うから単価を引き直すということだけでやっているけれども、単価差だけではないのでありまして、やはり超過負担の中には数量差というのもあります。数量の差もありますし、それから対象の差もあるわけですね。対象差というのもありますから、そういうものを含めて超過負担の解消を図っていただきたい。それには、自治、大蔵両省においていろいろ検討をしていただいておりますけれども、さらに地方自治体もその中に加わるなり、あるいはまた、第三者といいますか、そういう人も加わっていただきまして、そうしてこの超過負担の問題はどういうふうにあるべきかということをこの際方向づけをしていただくということを特にお願いをいたしたいと思います。  その他の問題といたしまして、気のついたことを一、二申し上げたいと思いますが、一つは、先ほど私が申しました予算の成立ということ、それから暫定予算で困難をしておるということ、早く予算を通していただきたいというふうに申し上げましたけれども、直接地方財政関係がないと言えばないけれども、いわゆる財特法の成立の問題であります。これがもし成立をしないということになるというと、国が歳入欠陥を来す、そのことがひいて地方自治体の財政運営に支障を来すのではないかという心配がございますので、財特法の成立というのも、あわせてといいますか、引き続いてといいますか、お願いをしたいということ、これが一つであります。  それからまた、もろもろの補助金等がありますけれども、零細補助金等は、これは地方自治体を信頼をする、もう地方自治体も相当成長して一人前になったんだから、余り国が細かいことにえらい何かむずかしいことを言わないで、メニュー方式とか、あるいは総合補助制度というようなものをひとつ確立をしていただきたい、補助金制度というものを改善をしていただきたいということが一つであります。  それから、国と地方の事務の再配分、これは前から言っておることでありますけれども、事務の再配分とあわせて財政問題にもタッチするわけでありますけれども、そういうこともこの際ひとつ御検討をいただきたいということを申し上げたいと思います。  その他、人件費の問題とか、いろいろございますけれども、たとえば人件費の問題にしても、地方財政の硬直化の原因は人件費にありというふうに言われますけれども、私はこれを否定はいたしません。否定はいたしませんけれども、しかし、人件費というものの中の、府県で言うならば義務教育の先生の俸給を払うとか、高校の先生の俸給を払うとか、あるいは警察官の俸給というのは、これは標準法とかあるいは政令に基づくものでありまして、私どもの自治体の首長の考え方ではどうにもならないというものが七五%から八%ぐらい占めておるわけですね。だから、それが人件費の硬直化だというふうに言われましても、それはラスパイレスでもって高いのは下げろということを言うけれども、それを下げただけでは人件費というものは解決をしない。で、私が先ほど申しましたように、やはり警察官とか、あるいは高校の先生なども義務教育みたいになるんだから、半分ぐらいは国が出すという制度を確立してもよろしいではないか、そういうことになると思います。  いろいろそういったような問題等もありますけれども、時間も過ぎましたので終わりたいと思いますけれども、以上、国に対してもろもろの要望等を申し上げましたけれども、しかし、自治体の自己努力といいますか、自分もやっぱりやらなければならないということ、これは当然なことでありまして、また、すでにやりつつあります。たとえばいま私申しました人件費について、私の県で言いましても、昨年の給与改定のときに職員の了解を得て一部を切り下げたということ、それから、新規採用というものをできるだけ見直そうということでもって、ことしは二百人ほどやめましたけれども、採用は八十一人であるというようなことでもって、できるだけ人件費の節約等、できるところは図っていこうということにいたしておりますし、そのほか、県自体もそうでありますけれども、やっぱり住民自体も、高度成長時代に自治体なりあるいは国に要望さえすればそれで実現をするという時代は去ったんだ、やはり自分も負担をしなければいけないという観念といいますか、そういう考え方に立たなければならないということで、これはやっぱり住民に対するところのPRといいますか、教育といいますか、そういうことも怠ってはいけない。要するに、地方自治体、これは、市町村、住民を含めて、府県ばかりでなくて、全体の地方自治体の自己努力ということもこれはやらなくてはいけない。そのことは私どももできるだけのことをいたしたいというふうに思います。  いずれにいたしましても、非常に難局に直面をいたしておるこういう時期でありまして、大変苦しいときでありますけれども、しかし私どもも、地方自治確立のために一生懸命努力を傾注をいたしたいと思いますので、どうぞ先生方におかれましても、何分この窮状を御了察をいただくと同時に、今後とも格別の御指導やら御支援をお願いを申し上げまして、大変まとまりませんけれども、私の陳述を終わりたいと思います。(拍手)
  35. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ありがとうございました。
  36. 八木一郎

    委員長八木一郎君) それでは、質疑のある方は順次御発言を願います。
  37. 石破二朗

    石破二朗君 西澤さんには長年にわたって地方自治のために御尽力に相なっておりまして、心から敬意を表する次第でありまするし、特にこの数年、困難な地方財政のもとで日夜御苦心になって、御苦労のほど、心から拝察し、特に敬意を表する次第であります。  お忙しいところ恐縮でありますけれども、二、三お伺いさせていただきますので、簡単でようございますから、お答えいただければ大変幸せに存じます。  地方交付税制度を抜本的に見直す時期に来ておるというお言葉がございましたが、自分も全くそのとおりと存じます。しかしながら、ひとつ御感想を伺いたいんですけれども、お互い人間、地方住民、これ、欲望には切りがありません。幾ら財源を豊富にし、地方住民のために便利を図りましても、欲望には際限がないものと私は心得るのでありますけれども、この欲望の方が際限がないとしますると、それにこたえるための行政事務、それに必要な財源というものも無限になるわけでありますが、一体、その辺をどうお考えになりますか。よく、諸外国の福祉等の進んでおることを挙げられまして、日本の社会資本なりあるいは社会福祉なりが非常におくれておることを指摘し、どうしてもあれに追いつかにゃいかぬということも言われておりますし、事実、その必要もあろうと思いますけれども、残念ながら日本の国は、近代化してからまだ百年ちょっとであります。この前の大戦争に大負けしてしまっております。無一文になってしまっております。とてもそう簡単に西欧先進国並みに追いつけるものじゃない。また、追いつこうとするとどうしても無理が出るんじゃないかと思うんでありますが、西澤公述人にはその辺、どういうふうにお考えになっておりますか。地方財源というものは一体、どのくらいあればいいものだと、基準財政需要額とかそういうものにこだわらぬで御感想を伺えれば大変幸せと思います。それが第一点であります。  それから第二点は、零細補助金の整理の問題をお話しになりましたが、全く私も西澤さんと同意見でありますが、さらにもう一歩進めまして、おたくの長野県に、交付税なり補助金で国からの国庫支出金が相当額毎年参っておると思いますけれども、仮にこれを全額長野県知事に自由に使わせるから勝手に使いなさいと、その使い道などについて会計検査院等であれこれ言いませんといった場合に、現在と、それからそういう長野県知事に一括一任する、自分の責任でやってみろと言った場合と、西澤公述人とされましてはどっちが気のきいた行政がやれると御判断になりますか、御意見を承りたいと思います。  仮に補助金を全廃しますれば、国の役人、地方の役人、恐らく半分ぐらいで私は済むんじゃないか。特に中央の役人は、まあ極端なことを言いますれば補助金を分けるためにあるのが、特に事業官庁におきましてはそういう感じがしてなりませんので、行政の簡素化、税負担の軽減を図る意味からしましても、一歩進んで補助金制度を全廃した方がむしろ地方自治、地方住民のためになるとお考えにならないかどうか、承りたいと思います。  さらに、教育の問題でありますけれども、まあ財政と行政、うらはらのものでございますから行政になりますけれども、お伺いしたいと思うんですけれども、教育は政治あるいは行政の中でも最も大事な仕事だろうと思います。全国都道府県知事、できれば——教育もいろいろあります、教育段階。せめて高等学校教育なら高等学校教育とか、小学校教育の人事権でありますとか、そういうものでも知事に権限を与えると。つまり教育委員会制度を廃止するという方が、知事とされてもやりがいがあるようにお考えになりはせぬかと思いますが、どうお考えになりますか。教育の中立性ということもあるいは委員会制度の根にあるかと思いますけれども、現に中央においては内閣が直轄して、別の独立権は持っておりません。地方だけに教育委員会を置かなければならぬという理由は私はなかろうと思いますが、御意見を拝聴いたしたいと思います。  さらにもう一点、これはまあ小さい問題ですけれども、地方公務員の給与が非常に高い。現にあるいは高いかもしれません。しかしながら、このよって来る原因は、恐らく全国の地方自治体の首長は、何とかして人件費は低く抑えたいと思っておるに違いないと思いますけれども、これがこう上がってきた理由はいろいろありますけれども、根本に、地方公務員の給与の決め方は国家公務員の給与なり、地域住民の民間の給与なり、さらに他の地方自治体の公務員の給料等を勘案して決めるようになっておるように覚えておりますが、そこに一つの原因があるんじゃないかと思います。といいますのは、富裕団体、特に例のギャンブルなどをやっていらっしゃる地方自治体におきましては、財政事情が非常に楽なので、まあそういうのが原因でありましょうか、給料がだんだん高くなります。そうしますと、隣の県で、隣の市で高いんだから今度はうちも上げいと、これも一つの理屈になろうと思うのでありますが、その辺をどうお考えでありますか。つまり、地方公務員の給与が高い、それには原因がある、それは地方公務員の給与の決め方それ自体に原因がある。地方自治のたてまえからしまするとあるいは望ましいことじゃないかもしれませんけれども、たとえば国家公務員の給与に準ずるとか、あるいは当該管内の民間給与に準ずるとか、はっきりした方が混乱しないもとではなかろうかと思うのでありますが、その辺の御意見を承りたいと思います。
  38. 西澤権一郎

    公述人西澤権一郎君) お答えいたします。  交付税をどの程度引き上げる、どの程度にすることが望ましいか、理想的かということでありますけれども、これはいろいろな条件がございまして、私は率を上げる問題か、あるいはまた三税でなくて、もっとリンクするもとを大きくするか、あるいは地方税とも関係があるということでありますけれども、総枠で申しまして、少なくとも一五%、これは総枠であります、交付税の率で言うのではありません。率であろうと、あるいはもとをどうしようと、少なくとも一五%ないし一七、八%くらいは交付税の総額が上がるような、そういう処置を講じていただかないというと、やっぱり財政需要には応じていくことはできないではないかというふうに考えております。  それから補助金制度の全廃ということは、これは理想としては私も同感でありますけれども、ただ、一気にそういうことをするということはこれは非常に困難も伴うと思いますし、また私のところでも、たしか、いまここへ確たる数字は持っておりませんけれども、国庫支出金というのは七百億から八百億ぐらいあると思います。それを全部とにかく一括してやるからということになるというと、交付税と同じことになるわけであります。それは理想としては、私は自治体がそれまで成長すれば結構だと思いますけれども、ただいまのところ、まだそれまでやることも現実問題としてはできないと思いますし、またやられて果たしてどうか、自信があるかというふうに言われますと、これは自信がありますと言い切る段階にはまだ至っておらないように思いますけれども、しかし、方向としては順次そういう方向に持っていっていただくということが望ましいというふうに思います。  それから教育の問題であります。教育委員会制度というものがございますけれども、この教育委員会制度というものはどうかということでありますが、御承知のように、かつては公選でありまして、しかも知事と折衝してできない場合には予算の提案権まであったけれども、今度は知事が推薦し、議会の承認を得て、そして教育委員を任命する、そういう制度に変わってきておるというこの制度を、私はただいまのところでは存続した方がよろしいというふうに思います。全部教育の問題を知事に任せるからということでなく、やっぱり教育委員会として、教育は大事であるという見地から、そういう専門家がやっぱり委員会制度というものによって知事といろいろ話をして、そうして進めていくということの方がよろしいと思います。予算の面を見ましても、これはどこの県も大体同じだと思いますけれども、教育委員会予算というのは三〇%前後を大体占めておるということでありまして、非常に大きな問題でありますので、これは公安委員等の制度もありますけれども、教育委員制度というものは、私はいまの制度はやっぱり廃止しない方が、将来はともかくとして、いまのところは廃止しない方がよろしいんではないかというふうに思います。  それから、給与が高いという問題につきまして、いままで人事委員会というのは、大体国家公務員に準じてということでもって勧告をしたので、形骸化したというか、そういうことでありますけれども、最近はやっぱり、最近はというか、昨年以来非常に変わってまいりまして、本気になったということになると、いままで本気にならなかったというようなことになって大変どうかと思いますけれども言葉は適当でないと思いますけれども、給与の実態はどう出るか、民間はどう出るか、それからまた県民感情はどうであるかということ等も加味いたしまして、そして給与会計はこのくらいにすべきである、そういう勧告をするようになってまいったというふうに思いますので、この考え方を、これを伸ばしていただくというか、そういうことがよろしいというふうに思います。やはり人事委員会が強力なものになって、実情に即したところの勧告、ということは、民間の給与、国家公務員の給与を参考にすることはもちろんでありますけれども民間の給与、さらにまた、できるならば県民の感情といいますか、そういうことまで全部含めて、そうしてこういうふうにあるべきという、そういう勧告をするように強力なものになっていただきたいというふうに思います。答えがぴったりいっておるかどうかわかりませんけれども、以上お答えいたします。
  39. 山崎昇

    ○山崎昇君 社会党の山崎ですが、二、三この機会にお聞きをしたいと思います。  先ほど西澤さんから、地方財政は未曽有の赤字だと、こういうお話でありました。私もそうだと思うんですが、一体この地方財政赤字は何が原因だとあなた思いますか。これは昨年から、一部ではありますが、自治省は盛んに人件費だけ取り出して、あたかもこれが赤字の原因であるかのごとき宣伝をいたしました。しかし私はそうでない。なぜならば、人事院勧告によってきちんとやっていると称される国家財政がこれだけの赤字になる。人件費が赤字の原因ではない。歳出の一部ではありますから配慮は必要かもしれませんが、原因ではない。それならば、一体地方財政の本当の赤字の原因は何なんだろうか。私は、残念でありますけれども、いまの政府・与党の経済政策なり政治姿勢のあり方にかかわってきている問題ではないだろうか。そういう意味で、あなたの、本当の地方財政赤字の原因は何かというのを、まあたくさん原因はあるでしょうが、詰めて一口でひとつお答えを願いたいと思うんです。  それから、第二番目に私が聞いておきたいのは、自治省が去年から盛んに指導助言という名前で人件費に介入してきました。きょうは短い時間でありますから多くのことを申し上げませんが、公務員の賃金は、いま国の場合には、四つの決め方になっておるわけです。それはもう知事は——あなた知事ですから御存じだと思う。国家公務員は人事院の勧告がある。都道府県と政令都市は人事委員会があって勧告をする。その他の市町村は、これは人事委員会がありませんから労使間で話を詰める以外に方法がない。さらに地方公営企業は、地方公営企業法によって団体交渉、協定で賃金を決めることになっている。それなら、日本賃金構造は、一つ民間の場合には団体交渉やあるいはストライキ等があって労使間で決める。それらはもちろん参考にしなきやなりませんが、最大の私らの問題は、この公務員賃金の性格が職務給という名前になっている。そこで職務給という名前であるならば、東京で行います言うならば税の仕事も、長野県で行う仕事も、北海道で行います仕事も、一緒でなきやならぬのですね、それに携わる者は。ただ仕事の量いかんによる、あるいは住んでおるところの生計費いかんによりましては多少の差はあるとしても、職務給というからには基本的に差があってはならぬから、国の人事院勧告等に準じていろいろ賃金が決められているんです。ただ、その場合にも、地方地方にいろいろな実情がありますから、今日までそこの職員組合とあなた方と交渉して賃金を決めてきた。ところが、自治省のようなやり方をいたしますと、この長年にわたります労使間に介入をしてくる。直接介入をして、労使間が不信感に陥るような方法になってきている。あるいはあなた方が今日まで決めたことを一方的に改めるということは、自分で自分のやったことを否定することになる。まかり間違えば自治体の否定につながりかねないような状況に私はいまなっていると思う。そういう意味で、この人件費の扱いそのものについて私は慎重でなければなりませんが、あなたは知事をずっとやっておられるようでありますから、一体この自治省の介入というものについてどうお考えになるのか。  それからさらに、自治省は何か知事や市町村長さん方がいろいろ組合と話をして自治省の言うとおりにならないというと、交付税で何かいろいろ締めつけるという話をずいぶん私ども聞きます。しかし、国会で質問いたしますというと、そんなことはいたしませんと、こう言う。一体、交付税によって人件費その他が締めつけられたような実態があるならば、その実態についてお知らせをいただきたいと思うんです。  それから次に、私お聞きをしておきたいのは、超過負担の問題でありますが、これはこの間、私この当委員会でやりました。その際に、去年の十二月に六団体で六千三百六十億円という超過負担があるということを明らかにいたしました。そこで私は、五十一年度予算案はきわめて少ない解消しかしておりません。そこで五十一年度で全部解消せいというのは無理かと思いますが、少なくとも五十二年度以降におきましては、まじめにこの六団体の調査に私はこたえてもらいたい。一体、政府がどういうところでどういうふうに調査するのか知らぬが、五、六百億円の解消で事足りたようなやり方というのは不当ではないかという趣旨の質問をしているわけでありますが、そこで私ども社会党としては、一連のこういう超過負担の問題等については、国とか地方自治体の代表とか、学識経験者等々で委員会を持って、適正に調査をしてこれらの問題を解消すべきでないかと思うんですが、そういう私ども考え方に、あなたはどういうふうにお考えになるのか、お聞かせいただきたいと思います。  それから第四番目に、交付税のお話がございました。御案内のとおり、五十一年度予算案では、従来包括算入あるいは投資的経費と称して、高校の増設等の費用は、これは基準財政需要額で見まして交付税でやっておりました。これがざっと一兆二千五百億円になるわけでありますが、これが今度全部交付税から外されまして、起債に回されているわけであります。これ一つ考えてみましても、交付税法の私は違反でないかと思っておるんですが、一体あなたは、政府の今度とりましたこの包括算入その他の一兆二千五百億円を起債に回したというやり方について、交付税法違反と私は思いますが、あなたのお考えを聞いておきたいと思うんです。  この問題につきましては、当時自治大臣から、地方交付税法六条の三については、二年間赤字が続いて、三年以上も赤字になるようであれば交付税率を改正しなければならぬと考えているという趣旨の答弁がありました。したがって、もう交付税率につきましては、来年以降もあの中期計画によりますと赤字だというんですから、当然これは私は改正しなきゃならぬものと思っておるんですが、この交付税のあり方をめぐって先ほどいろいろ細かなお話がございましたが、もう一度あなたのお考えをお聞きをしておきたい、こう思うんです。  本来なら、そのほか国と地方団体をめぐります幾つかの大きな問題があります、事務の再配分から始まりまして。それらはきょう時間ありませんから触れないことにいたしますが、当面するいま二、三の問題について、西澤さんの見解をひとつお示しいただければと、こう思います。
  40. 西澤権一郎

    公述人西澤権一郎君) お答えいたします。  地方自治体の赤字の原因は何かということでありますけれども、これはもちろん歳入欠陥が赤字の原因でございます。一口に歳入と申しましても、いままでは御案内のように、国が当初予算に交付税を予算化いたしますけれども、さらに国税の三税が伸びて、交付税がさらに追加をされたという、精算において追加をされた、あるいは途中において追加をされた、そういう事態で、いわゆる高度成長に支えられて相当伸びておったということであります。地方税も伸びておったということで、税も伸び、交付税も伸びたために、先ほど私が申しましたような、地方財政計画というものがあるけれども、それよりもさらに二兆ぐらいずつ大体上回っておって運営をされておったわけであります。それが地方財政計画よりもさらに歳入が下回るということが、これが最大の原因であります。  その赤字が出た場合に、地方財政計画を洗ってみるというと、いわゆる義務的な経費というようなものはどうしても削るわけにはいかないということで、その中に占める人件費というものは、これもまあ義務的な経費でありますので、したがって硬直化の原因は人件費であると。赤字の原因というのは、歳入が思うように入らなかったということが赤字の原因であると。しかし、財政硬直化の原因というものの中には義務的経費、すなわちこれは人件費が一番大きい問題でありますけれども、人件費というものが硬直化の原因であるというふうに私は思います。  もちろん人件費につきましても、私ども国家公務員よりも上回った処置をしてあることは、これはどこの自治体も多かれ少なかれやってあるというふうに思います。これは団体交渉の結果によりまして、人事委員会とも相談をいたしまして、これは勤務の実態等いろいろ国家公務員と違いますから、そういうものに報いるために、それからあるいはまた一五%の特昇というのがあるんです、特別に昇給をしてもよろしいと。しかし特昇といっても、特別な者だけピックアップするということでなく、やはりそれを均てん化するという、そういう意味においても、そういう財源もあるんだからということでもって、これは団体交渉の結果、給与を、いろんな三姫をするとか、まあいろんなことでもって、あるいは渡りをするとかということでもって上げておるということでありまして、これは国家公務員よりも上回っておる。これが要するにラスパイレスでもって上回っておると、こういうことになるけれども、だから国家公務員に全部一緒にしなければならないということは、やっぱり地方自治体、自治体で勤務の実態が違っておるから、全部一緒にするということは私はこれは正しくはないと思いますけれども、しかし私どもも、いままでは高度経済成長に支えられて、ルーズという言葉は適当でないと思いますけれども、とにかく組合の要望にこたえて、そして一生懸命働いてくれということでやった点はあると思います。  しかし昨年は、先ほど来私申し上げましたように、歳入が非常にがた落ちになりましたので、こういうときには、やはり県民感情もあるし、とにかく県としても、人件費が硬直化の原因になるからがまんしてくれということでもって組合にはがまんをしてもらっておりますので、これは人事委員会の勧告もありますし、それから組合との私どもの折衝もありまして、そして自治体、自治体でもって処置をすると。だから昨年は相当給与を引き下げた団体が多いと思いますけれども、これはまあ私は当然であるというふうに思います。そのかわり、またよくなったときには私どもとしてもできるだけのことをしてやりたいということでもって、自主性を発揮しつつ組合交渉をやっておるということでありまして、そういうふうに御承知をいただきたいというふうに思います。  それからこれに対して自治省というのは、それはラスパイレスが高いではないかというようないろいろなのはありましたし、それから各自治体に対してヒヤリングというか、君のところはどういうふうになっている、人件費はどのくらいな比率であるか、四十何%であるかとかと、いろいろなそういうことはありましたけれども、これをやらなければ交付税を削るということは、少なくも私のところにはございません。私はそういうことはまたあってはならないというふうに思います。交付税というのは法律が保障したところのものでありますから、それを自治省の考え方でもって削るということは、これは法か何かに保障をしてそのことが規定をしてある以外には、ただ自治省の行政的な考え方でもってやるということはこれは適当でないと思いますし、そういう事態は私のところにはないというふうに承知をいたしております。  それから超過負担の問題でありますけれども、これは私先ほど申しましたように、六千億余りというものが出ております。このごろ一このごろと言いますか、今回の予算といいますか、自治、大蔵両省でもっていろいろ検討をし、各省と折衝をして、そして解消するというのはそれはもうごくわずかなものであります。それはなぜそういう違いが起きたかというと、自治、大蔵の両省の間では、決めた単価が実現できておるかどうかという単価差だけをやっておる。単価だけではないのであると。これは単価はいいけれども、そのほかにももっと数量に、これだけの数量でなくて、同じような性質のものがもっとあるのだから、こちらの方にも適用しなければいけないというような数量差というものが出てくるわけなんです。その数量差というものを除外してある、そういう結果だというふうに思います。  それから対象差というものもあるわけで、数量ばかりでなくて、一つのものであったけれどもこれは全然もう超過負担の中へ入れないのだという考え方でなくて、やっぱり一連のものであれば、警察制度なんかの整備がありますけれども、一連のものはやっぱり超過負担の対象として見てもらいたいということが私どもの要望であります。  しかし、私どもの要望も、これはやっぱり自治省側から言えば、それは少し虫がよ過ぎるというものがないでもないというふうに私は思います。そういう意味において、自治、大蔵両省ばかりでなくて、地方自治六団体もその中へ入れる。できるならば公正な第三者といいますか、超過負担というものをどういうふうにすべきものかという学識経験者といいますか、そういう人たち等を入れた超過負担解消の委員会というか、仮にそういうようなものができて、そしてこうやることが正しい、地方自治体もこれだけはがまんをしなさい、しかし国もこれだけのことをやってあげなさいということでもって何かその調整ができる、しかもそれが一年にできないならば何年計画かでやる、そういうことができれば私は大変結構であるというふうに思います。  それから交付税の中に入れたもので、ことし二兆六千二百億のうちで、一兆三千七百億は交付税特別会計の方で借り入れるというか、その中には臨特もありますけれども。それから一兆二千五百億というのは、これは起債の特別処置でありまして、これは私が申しましたように、これに対する法律の方も成立さしていただきたいというのでありますが、御承知のように、二千億というのは国でもって将来元利めんどうを見るというのでありまして、これはもう私どもは見方によっては変形の交付税であるというふうに見ております。  それからあと二千五百億というのは、これは元利を補給をするというのでありますから、あるいはこれは交付税特別会計へ借り入れたものであるというふうに、性質はそう見てもよろしいというふうに思います。  そのほか、いままで公共事業等を返上いたしておったけれども、返上するということは景気浮揚にならないというのでもって、それを追い出して八千億というものを特別に見る、しかも、その利子は、市場の利子とそれから国の国家資金との差額だけは、利子は補てんをするということでもって、一兆二千五百億ありますけれども、このことは交付税法違反ではないかということでありますけれども、法律違反であるかどうかということは、私、この席でどうも申し上げる能力はございませんけれども、ただ、私はこうした窮状を打開をするというか救うというか、乗り切っていくためにはやむを得ざる処置ではなかろうか。当面の問題として対症療法的ではあるけれども、やむを得ざる処置ではなかろうかというふうに判断をいたします。これは私最初申し上げたとおりでございます、対症療法と申し上げたのは。一時的なことといいますか一時しのぎというか、対症療法的なことがないでもないということはそのことでありますけれども、しかし、これは国もやっぱり非常に困難をしておる事情、国も大変困難をしておるんだから、まあやむを得ないというふうに思います。  ただ、問題は、将来に残る問題でありまして、そうしたものについての返還というような問題が出てくるのでありますから、それに対して配慮をしていただきたいということは、これは地方自治体の一致したところの意見であるということを申し述べたいと思います。
  41. 加瀬完

    ○加瀬完君 端的に伺います。  地方財政の基本的欠陥は、財政計画と決算の大きな開きをそのままにして計算を進めていることに原因があるとはお思いになりませんか。  第二点は、完全な返還計画の裏づけのない地方債を主要財源としていくことは非常に危険ではないか。  第三は、地方財源の抜本的な見直しとして、所得税や住民税の総合課税方式を取り入れるお考えはございませんか。  第四は、交付税の算定基準となる単位費用の正確を期するために具体的な方法を講ずべきではないか。  第五点は、国、地方の財源再配分の必要を感じませんか。  第六は、今日の地方財政から見て公共事業が完全に引き受けられますか。もし引き受けるとすると、単独事業費が削減をされるという傾向にはなりませんか。  以上、六点をお伺いいたします。
  42. 西澤権一郎

    公述人西澤権一郎君) お答えをいたします。  地方財政計画というものがございますけれども、しかし、先ほども申しましたように、現実の地方自治体の財政運営といいますか、それを集計したものと国がつくった地方財政計画というものとは相当の乖離がございます。これは先ほど来申し上げましたように、四十一年ころから統計をとってみますというと、一兆五千億から二兆、あるいは二兆以上の乖離がございます。それは国も認めまして、内容的にいろいろありますけれども、大分接近はしてきておるというふうに思いまして、ことしなど一兆ぐらいは接近をして、国家予算と余り変わりはなかったんだけれども、国の予算の二十四兆に対して二十五兆というのでもって、それで人件費においても七千五百人くらいふやしたというようなこと等によって、だんだんに接近はしてきておるというふうに思いますけれども、とにかくいままでは地方財政計画をはるかに上回ったところの財政運営ができたということで、地方財政計画というものは、ちょっと言葉が悪いけれども、余り当てにしないというか、えらい目標にしないでもって、適当に歳入歳出でもってやっておったという状態でありますけれども、しかしこういう事態には、地方財政計画というものの乖離をなくするということにやっぱり努力をしていただくように私はお願いをしたいというふうに思います。  それから、起債が非常にかさむことになるけれども、これは将来その償還について非常に借金を払うために借金をしなくちゃならぬじゃないかという事態が生ずるおそれがあるではないかと言うけれども、そういう心配はあろうというふうに思います。それで、今回国においても、先ほど申しました一兆二千五百億については、これは建設公債以外のものであるけれども一つは交付税算定の中から公共事業を消化しやすいために追い出したというようなものの八千億、それから二千億は、とにかく借金はしてもよろしいけれども後のめんどうは国で見るということ、まあそういうこと等で順次めんどうは見てもらっておりますけれども、全部国にめんどうを見てもらったということにはならないのでありまして、したがいまして、私ども自治体としては、起債がかさむということはやっぱり財政硬直化の原因になるということになりまして、将来やっぱり臨時特例交付金とかそういったものによって特にこの起債の問題について処置をしてもらいたいということ、これは将来の問題として残るというふうに思います。私が先ほど対症療法と言ったのはそのことでありまして、いまは一時しのぎといいますか、そういうことでありますけれども、将来やはりそういう危険はあろうと思いますけれども、こういう問題については相当国においてめんどうを見てもらいたい、そういう気持ちを持っております。  それから、総合課税という問題でありますけれども、これは税の問題でありまして、ここでもって私が適当であるかどうかということを申し上げることは、総合課税というふうに言ってもいろいろありますので、これはここでもってはっきりした意見を申し述べることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、これは一つの問題としてやっぱり研究には値する問題であるということだけを申し上げたいと思います。  それから、交付税の中に占める単位費用というものについての問題でありますけれども、これは交付税というのは、御承知のように単位費用とそれから補正係数−補正でありまして、単位費用にウエートを置いた場合には補正係数というもの、補正は余りできないということ、単位費用に相当重きを置いて交付税を計算をされるというと標準団体は大体有利になりますけれども、単位費用を低くして、そして政治的にという、そういう言葉は使っていいかどうかわかりませんけれども、まあさじかげんといいますか、補正係数の方を多くするというと、標準団体等はとにかく不利になりますけれども、いずれにいたしましても、これはやっぱり逆算するよりほかにはないというふうに私は思うんです、言葉は悪いけれども。交付税の総額というものが決まっておるというと、これだけの仕事をするということになると、単位費用をこれだけに計算するか、あるいは単位費用をこれだけに計算してそして補正係数をこれだけに計算するという、そういうことよりほかにやりようがないというふうに思います。したがって、やっぱり交付税の総額をふやしていただくということでないと単位費用を上げるということにはならないというふうに思います。単位費用が実情に即しないものもあると思いますけれども、これはやっぱり逆算してそういうふうになるので、やむを得ないじゃないかというふうに私は思いますので、やっぱり交付税の総額を、先ほどの言葉にまた返るわけでありますけれども、総額を確保するということにやはりお力添えをいただきたいというか、そういうことにしていただきたいというふうに思います。  それから、再配分の問題でありますけれども、これは財源の再配分というものは事務の再配分というのと並行するわけでありまして、事務でも、国の委任事務と機関委任事務等であって整理をしてもらってよろしいものがたくさんあります。これは知事会においても特別委員会をつくりまして、この事務とこの事務はもう廃止してもよろしいではないか、あるいは国に返上してもよろしいではないか、あるいは国が地方自治体にもう委任事務でなくて固有事務として任してもよろしいではないかというのがいろいろできておりますけれども、そういうことによって、事務の再配分とそれに伴うところの財源の再配分といいますか、そういうものを伴ってこれは見直していただきたいというふうに思います。先ほど私ちょっと申しましたけれども、時間がありませんのでそのことを余り詳しく申しませんけれども、そういう資料がもう知事会においてもできておりまして、再配分ということが必要であるということは御指摘のとおりであるというふうに思います。  それから、公共事業につきましての受け入れでありますけれども、これは道路は財源が、もちろんガソリンに自動車関係の税がありますので、これは裏づけがありますし、あとは裏づけを九割五分、起債がもちろんその中に入って追い出してありますんですけれども、してありますので、公共事業の消化については、これは景気浮揚にも関係があるということでもって、当面は差し支えないと思います。ただ、先ほどの問題に返るんでありますけれども、それが起債で裏づけをしてあるから、将来それを返すというときに問題が起こるのではないか、負担がかかるのではないかという、そういう問題にまた循環してそこへいくと思いますけれども、当面、ことし公共事業を消化するということは、五%でよろしいのでありますから、これは消化はできるというふうに思います。  そのために単独事業が影響を受けるではないかということ、これは絶対ないとは言えないと思いますけれども、ことしの地方財政計画の中においては、単独事業についても公共事業と同じように伸びておりますので、一応、単独事業も関係がございませんという形の上にはなっております。しかし、私の県などは、そうは言ってもまた単年度赤字を出すということになると、後年度に非常に負担をかけることになるから、単独事業は当初予算においては低目に計上をしておけということでありますから、予算面から見ますというと、少なくとも私の県におきましては公共事業伸びほど単独事業は計上はいたしておりませんけれども、これは全然影響がないとは言えないけれども、しかし、相当の改善は図っておられるということと、もう一つは、いままで単独事業でやっておったことを公共事業の中へ取り入れてくれろということを国に要望いたしまして、ある程度成功したというか、認めてもらったものもあります。いままではこれはもう県単でやるべき、県の単独事業でやるべきことでもって、公共事業に取り入れるべき問題ではないというふうに言われたけれども、しかし、この道路の修理なら修理というもの、あるいは河川の修理なら修理というものは、これは一連の事業として、公共事業としてこれを取り入れてくださいと、しかも生活に関連があるんだからということでもって単独事業でやるべきものを公共事業の中に移したというものもこれはございます。これは建設省等の配慮によってそういうものはあります。そうするというと、たとえば四分の一補助であるということになるというと、十億円県単の費用を出すというと、公共事業ではあるけれども仕事としては四十億の仕事ができるという、そういう工夫というか、そういうようなこと等もいたしまして、そうしてやっていくということでありまして、県単に全然影響がないかというと、ございませんと言い切るわけにはいきませんけれども、大分緩和をしたというふうに考えております。
  43. 神谷信之助

    神谷信之助君 共産党の神谷でございます。  西澤公述人に四点お伺いしたいと思います。  まず第一の問題は、御承知のように、今日不況とインフレの中で県民の生活も大変な状況になってきているわけです。したがって、県民生活について責任をお持ちの知事さんとしては多くのやらなければならない課題をお持ちだと思います。ところが一方、御承知のように、地方財政がおっしゃるようなきわめて危機的な状況になってきておるわけです。したがって、なかなか御苦労が多いと思うんです。  私は、逆に、今日の不況とインフレの中でこそ一層自治体の方に財源を与えて、そうして県民の生活基盤を向上させる、そういう仕事がどんどんできるようにしてもらいたいというのが自治体の市長さん方の共通の願いじゃないかと思うんです。実際上、国が予算を決めましても、その予算が、実際現場で仕事をやるという段階になると、その七割は自治体がやるわけですから、これが本当に県民の生活にこたえられるような、それにぴったりと密着をしたような、そういう仕事が自由に自治体の中でやれるようにしてもらいたい。不況とインフレで生活の困難がひどければひどいほど、そういう御希望が強いだろうと思うんです。ですから、そういう意味から、見地から、今年度の、五十一年度の国家予算全体を、自治体の知事の立場からどうごらんになっておられるかという御見解を聞かしていただきたいというように思うんです。  政府の方は、御承知の景気浮揚対策としては、大企業、大プロジェクトチーム、そちらに投資をふやして、そうしてそれで景気浮揚を図ろうと言っているわけですが、私どもは、そうじゃなしに、生活関連の事業をどんどんふやす、あるいは農業や林業や畜産業、これらに投資をして、そうしてこれら農漁民の生活を高めることによって地方の税収も増高の方向をとり、そうして県なり自治体の財政自身もみずから確保できる、こういう方向がもっと望ましいと思うんです。そういう面から見ると、五十一年度予算というのは、非常にそういう皆さん方の御期待にこたえることになっていないんじゃないかというふうに私ども判断をしておるんですが、まず、この点についての西澤さんの御見解をお伺いしたい、こういうように思います、あるいはまた御要望があれば述べていただきたいと思います。  第二点は、御承知のように、戦後地方自治の制度が始まって三十年になります。これは憲法に地方自治の章がつくられる、そうして憲法の施行と同時に地方自治法が施行される、日本の民主主義の確立にとって非常に重要な柱の一つが地方自治だと思います。ところが、この戦後三十年の地方自治の歴史を見ますと、それ以後、たとえば公安委員会あるいは教育委員会の公選制度の廃止や、あるいは住民の直接請求についてのいろんな制限の拡大とか、その他いろんな面でこの自治権に対する侵害というのがどんどんと続いてきています。三十年の間に自治法の改正というのは百を超えるわけです。そのたびに自治権が侵害をされてきている。したがって、戦後三十年を迎えている今日、そういう侵害をされた自治権の復権と拡充こそが、いま、新しい民主日本へ向かって差し迫って重要になってきているんではないだろうか、ところが、自治体の財政が危機的な状態になりますと、必ず出てくるのがこの自治権に対するいろんな侵害であったわけです。これがいままでの歴史です。  今日の段階、いま地方制度調査会でもいろいろ議論をされてきていますが、そういう意味からも一層こういう、何といいますか、自治権に対する侵害の新しい形というのがいまもう議論の対象になってきています。今日まで長く地方自治の仕事に携わってこられた西澤さんの、この地方自治権の侵害の歴史、これに対する復権と拡充の問題についての御見解を第二番目にお聞きしたいと思います。  それから第三点は、交付税制度の問題です。先ほどからいろいろ話がありまして、今年度対策は対症療法的な一時しのぎの措置なんだからやむを得ないだろうというお考えでした。しかし、私は、今度のは交付税制度に重要な、これは重大な変更が加えられる。一般公共事業費やあるいは高校の新増設の経費など、交付税算定の基礎に入れておった部分を外してそれを起債にするわけですから、先ほどもおっしゃっていましたように、公共事業の返還などは自治体としてはできなくなってきます。返還をすれば起債措置をもらえない、こうなりますね。これをもし許しますと、三二%の交付税率をそのまま、あるいは二〇%にしても可能になります。それだけのやつをどんどん起債一に回して外してしまうということを許してしまう。これはもう交付税制度そのものを崩壊をさせるということにつながる危険がありはしないか。  あるいはまた、交付税交付金で来れば使途は自由でありますが、起債であればこれは使途は制限されます。したがって、先ほどおっしゃっているように、自治体の方の選択権が奪われるという状況になります。それだけ地方自治の権限、これが財政的にも縮小される。あるいは償還の問題は今後の問題だとおっしゃるけれども、交付税で来れば償還する必要はないわけですから、これ自身が重要な問題だ。  いままで地方財政の危機に対して政府の方でいろんな対策はあったけれども、今度のように、当然交付税の基礎に置かなきゃならぬものを外へ出してそうして三二%のつじつまを合わせるというような措置は、いままでかつてやられなかったことであります。こういう前例をつくりますと、今後ますます、あるいは財政危機が起こったときにはまたそういうことが起こり得る、こういう危険さえあるわけで、これはこの制度を認めること自身が私は今日の地方自治制度、あるいは交付税制度にとって重大な問題だと思うのですが、この辺についての御見解を再度お聞きをしたいと思います。  それから第四点は、地方債の問題ですが、先ほど、五十年度の縁故債については、まあ皆さん各自治体大変御苦労になって、一応は消化ができた状況になっておるように私どもも承っております。しかし、五十一年度になりますとますますこの縁故債の占める部分が大きくなってきます。しかも、一般の市中銀行の金利と、それから縁故債の金利とを見てみますと、昨年の金利の引き下げに伴う措置が縁故債の方はうんと少ないですね。ですから、それだけ金利負担というのが自治体財政に大きな影響を与えると、こういう危険が大きくなってきています。したがって、こういった問題について長野県での実情、あるいは知事会の方でお聞きになっている実情、こういった問題についてひとつ御存じであればお聞かせ願いたいと存じます。  以上四点についてお答えいただきたいと思います。
  44. 西澤権一郎

    公述人西澤権一郎君) お答えいたします。  こういう不況のときになればなるほど、住民の、特に社会福祉とか、あるいは生活関連の整備等の要望が多くなるではないかということは御指摘のとおりでございます。したがいまして、私どもは、ことしの予算編成に当たりましては、一つは単年度の収支の均衡を図っていこうということが一つであります。それから一つは、先ほど申しました公共事業の受け入れられやすいような、消化しやすいようなそういう制度を国がとられて、これが景気浮揚になり、その波及効果を期待をされておると。景気浮揚にはいろいろな方法があるけれども財政主導型の景気浮揚を図るというのがこれが国の考え方でありまして、これに順応したところの予算を計上したというのが、これが一つの特色であります。  もう一つの特色は、社会福祉、これは広い意味において生活、先ほど御指摘がありましたような生活関連事業というか、生活環境の整備といいますか、そういうことは少なくとも後退はさせないと。ほかのもので後退させたものはありますけれども、社会福祉、社会関連事業というものは後退をさせない、そういうのが三本の柱になって予算編成をいたしております。したがいまして、不況であればあるほど、やっぱり谷間の日の当たらないところにあえいでおる者、そういうところへ行政の手を差し伸べるということ、血を通わせるということが必要であるということを基本的な考え方にしております。  したがいまして、私は景気浮揚の公共事業というふうに申しましたけれども、この公共事業を無批判、無条件で受け入れるということはいたしておりません。これは厳重な選択をいたしまして、しかもその選択というのは、住民の生活に関連をするものを最重点に受け入れる、そのことは、これは公共事業の消化であり景気浮揚であるけれども、やっぱり一つの社会福祉であり環境の整備であると、こういう考え方でやって予算の執行をいたしておるのでありまして、不況だからといって社会福祉、社会保障、特にまあ困っておる人に対していろんなことをやることは、これは対症療法的で当然でありますれども、生活関連等に力を入れて財政運営をしていく、そういう考え方であるということを申し上げたいと思いますし、御承知をいただきたいと思います。  それから、戦後三十年を経て、自治体も年齢で言えば三十歳になって一人前になったということであるし、特にいわゆる帝国憲法のときには地方自治というものの規定はありませんでしたけれども、新しい憲法の中には、御案内のように地方自治ということも規定をされておるということでありまして、また私どもとしても、法律とか、あるいは憲法にそういう保障がしてあるからということだけでは、これは十分ではもちろんないのでありまして、住民の意識といいますか、そういったものが高揚してこないというと本当の地方自治の確立はないという考え方に立ちまして、住民の目覚めといいますか、地方自治の確立といいますか、そのことはやっぱり近代国家というもの、文化国家というか、近代国家というものは土台がしっかりしていなければだめなんだと、座りが安定しなければだめなんだと、その土台というものは地方自治が担当するんだという、自覚というか、自信といいますか、そういうものを持たなければならない、そういう観念でもって地方自治を運行いたしておりますし、住民に対してもそういうPRをいたしておるところでありまして、したがって、法律等の改正とかいろいろあったと思いますけれども、法律とかそういうものが仮にあったにいたしましても、住民の目覚めといいますか、それが一番の大事である、そういう基本的な観念に立って自治体行政を運営をしておるところでございます。  それから交付税につきまして、従来交付税の中でこれは基準財政需要額の中で算定をすべきものを外に追い出してしまって、そして起債等に振りかえたということは、これは交付税制度の破壊ではないか、もしこういうことが勝手にできるということになれば、交付税というものをこれはもっと、三二%を二〇%でも一七%にしてもそれはできるじゃないかという議論でございますけれども、それは理論的にはそういう議論が成り立つかとも思いますけれども、ただことしの問題は、交付税は三税に対する三二%の算定では三兆八千億ぐらいだと思いますけれども、それではなお不足であるからということで一兆三千七百億というものを交付税会計の中へ借り入れるというそういう処置を講じたと。もちろん無利子でありますけれども、将来返還の問題はありますけれども、交付税の総枠がふえたということでありますから、私は交付税制度の破壊であるということにはならないというふうに思います。むしろ公共事業を行い、さらに交付税制度というものも充実をしていくということ。しかし、まあことしの当面の問題としては、これは対症療法的ではあるけれども借り入れということよりほかにやむを得ないということでもってそういう制度を、従来も貸し借りはありましたけれども、それを大幅に行ったということでもって、これをもって交付税制度を破壊に導くところのものであるというふうには私は考えてはおらないのでありまして、それは総枠がふえておるということで、もし仮に率に換算をするとなれば、先ほども申しましたように四三%ぐらいにはなるというふうに思います。  さらに、先ほど申しました一兆二千五百億の起債の処置ですね。そのうちの二千億はこれは元利、国がめんどうを見るというもの、それから利子だけめんどうを見るというのが二千五百億、四千五百億を入れるということになるというと四七%近くになりますか、いまの計算でいきますというと。  ということになりますから、いまの制度でいいけれども、いまの制度を破壊するということでなくて、いまの制度では不十分であるから、それに一時的なものであるけれどもプラスをしたということで、しかも、公共事業等をやりやすくしたということでありますから、将来の問題は、これは先ほど申しましたように残らないでもないけれども、交付税制度を破壊したというふうに断定することは適当ではないように私は思います。  それから、地方債についての縁故債が非常に多くなるということ、これはもう償還が大変でありまして、私は先ほど公庫の問題もお話しをしましたし、あるいはそれぞれ地方自治体もシンジケート等をつくってこれを消化しようということでやっておりますけれども、ただ国庫資金とそれからいわゆる従来の言う縁故債との比率は大体四対六でもって、国庫資金が六で、御承知だと思いますけれども、縁故債が四であります。で、ことしは表面的には縁故債が非常にふえたように見えますけれども、しかし、利子補給の分というのをこれは国庫資金というふうに計算をしますと、そうするとやはり大体六対四になるというふうになって、従来の比率は大体維持されておるものというふうに私はただいまのところ承知をいたしております。
  45. 八木一郎

    委員長八木一郎君) どうもありがとうございました。(拍手)     —————————————
  46. 八木一郎

    委員長八木一郎君) それでは続いて、次は加藤公述人にお願いいたします。加藤公述人
  47. 加藤睦夫

    公述人(加藤睦夫君) 私、御紹介にあずかりました立命館大学で財政学をやっております加藤でございます。よろしくお願いいたします。  私のテーマは財政ということでありますが、これは言うまでもなく非常に広範囲にわたりますので、要約的に三点ないし四点ぐらいで私の考え方を申し述べさしていただきたいと思います。  まず第一点は、これは今年度予算の、十二月に予算につきまして編成方針が最終的に決定になりました、その編成方針に従って明らかでありますが、実はその編成方針の順序と少し逆になりますが、第一に不況対策予算の問題について申し上げたいと思うわけです。  御承知のように、この不況対策予算は必ずしも公共投資だけじゃなくて、減税、まあ減税にも企業減税と一般の減税と二通りあろうかと思うのですが、要するに減税政策と、それから社会保障を中心にいたしました政策と、大まかに言いまして、公共事業、公共投資だけじゃなくて、その三つの柱ぐらいが今日の世界の常識だろうと思うのですが、五十一年度予算はそれに対しまして非常に明確な性格を持っておる。といいますのは、公共事業中心ということで徹底した性格を不況対策の面では持っているわけであります。  これはちょっと数字を申しますと、公共事業予備費を入れますと前年度に対して二六.五%の増。予算全体は一四・一%の増でありますから、いろいろ細かいことは別にいたしまして、非常に大局的に言いまして、この公共事業あるいは公共投資の比重の大きさというものを知ることができるかと思うのです。  しかも、その公共事業の中身を見ますと、もちろんこれは一般に言われますところの社会資本の中でも一、産業基盤と私たちも普通呼んでいるわけですけれども、それだけではなくて、生活環境、下水道であるとか、それから住宅などの予算が組まれていることは事実でございますけれども、しかしそれはよく中身を考えてみますと、いま言いました二つの生活環境なり住宅予算というものは、実は国家予算がひとりだけで歩けない、そういう性質の公共投資である。つまり生活環境予算ですと、これは地方財政を通じましてほとんど行われますので、地方財政財政状態というものの中で行われる。政府はそれに対する補助金あるいは起債を認めていくということになるのですけれども、やるのは地方財政である。それから住宅予算の場合にも、これは公営住宅というものもありますけれども、その大半は一般の庶民のつまりふところにかかっているということでありまして、これについていろいろの考え方ができるわけですが、つまりこれはある程度ある意味で人のふんどしでやらざるを得ないという面がありまして、帰するところはその公共事業の中でも政府予算を中心としたものになっていることは争いがたいと思うわけです。  この数字をよく見ますと、まだ額は小さいのですけれども、やはりいわゆる大型プロジェクトと申すもの、それは何といいましても列島改造計画で、あるいはその前の、列島改造計画だけじゃなくて、あれは何と言いましたですか、経済計画の中でも出てくるあれにありますけれども、それが総需要抑制の中で二、三年の間繰り延べられていたものが復活した形としか受け取りようがないわけであります。今年度予算で出てくる額自体を見ますと、まだそれほど大きいということは言えない面もありますけれども、これは全体かなり長期の、しかも大量の継続事業であるということで、将来を考えますと、また大蔵省でお示しになりました中期財政計画、これは非常にちょっと読むのもむずかしい数字でありますけれども、トレンドから言いましてもこれはかなり重要な位置に育ってくることは間違いないかと思いますわけです。  そこで、このような大型プロジェクト、しかもそれが、いわゆる産業基盤中心の大型プロジェクトを中心に組み立てられた不況対策予算というものは、実は私はここで二つの問題をそれについて出してみたいと思うのですが、その一つは、これは大型プロジェクトというものは、特にこれは列島改造型で言いますと、これの前提になる経済計画というものがありまして、非常に何といいますか、国際的な関係でも楽観的な見通しのもとでつくられて、御承知のような素材型工業に中核を持ちます日本の産業構造がかなり飛躍的に発展してくるという、その前提でつくられたものであります。で、今日、ことしの予算でそのような形態の不況対策予算が出てきましたということは、このことをどう考えておるのか。つまり高度成長の反省ということが、これはいろんな言葉で言われるわけですけれども、一体こういう大型プロジェクトの復活ということで一体何が反省されて、その結果、同じ産業基盤にいたしましても、もう少し国民がそこらがわかるようなものになっていいのじゃないかということであります。つまり、高度成長方式というものが公共投資の面では変わっていないのじゃないかということがあります。  それから第二点に、これらの大型プロジェクトというものが、実はいま申しましたのは一つ基盤投資なんですけれども、他方では、非常に直面する問題といいますか、当面の問題としての有効需要の創出ということがあるわけですが、このような不況対策予算のつまり性質が、有効需要創出という面からいきますと、大変需要の及ぶところが一定の産業あるいは一定の企業、あるいは大企業に偏った効果しか持たないということになりはせぬかということであります。  そのことは、同じ公共事業というものを中央、地方を通じて見ますと、ここにかなり、つまり中央重点の形が、有効需要の面でも非常に限られた、しかもかえって産業構造その他を改編しなきゃならぬときに、その問題を、いままでの高度成長過程で発達してきた企業あるいは産業構造をそのまま維持し、延命するというような結果になりはしないかということで、したがって、この需要というものも国民全体との関係、あるいはもっと直接には中小企業などの関係でいきますと、非常にこれの効果というものがどれだけあるかということについて疑問を持たざるを得ないということを申し上げまして、これが第一点でございます。  それから第二点は、これも予算の編成方針の中ではっきり出ている問題でありますが、つまり不況対策と、他方でこれは行財政の新しい段階に相応するところの、一言で言いますと合理化ということであろうかと思うのですが、そこで、ここで二点か三点ほど問題を申し上げさせてもらいたいわけですが、その第一点は、これは一般行政費を厳に抑制するという、表現を使いますとそういう表現になっておるわけですが、これはまあ全体として非常に問題が具体的に話しにくい面がありますので、私はここでは人件費について考えてみたいと思うわけですが、つまり、この人件費は、単に公務員の給与ということだけでなくて、社会保障から、あるいはすべての公共事業にまで及ぶところの一つの行政のベースをなす問題だというふうにつかまえまして、それで申し上げるわけですが、ここで本年度予算では人件費のアップ分を五%というふうに計上いたしまして、それで予備費を他方で——これはアップ分で約二千億足らずだと思ったですが、他方で予備費を三千億取るということで、なっているわけであります。そのことは、さらに編成方針にも出てくるわけですが、総合予算主義を堅持するということで、つまりこれは補正を組まないことを目指すということであるわけですが、そういう中で考えますと、これはもちろんこの予算というものは、実際に給与が決まりますのは予算で決まっていくという、私はこの点は余り詳しく申し上げる自信はありませんけれども、ことではない。また独自の面があるわけですけれども、しかし、予算の態度としては五%にプラスアルファという、こういう態勢というものは、名目国民所得が一三%増大するという、それとの関係でどういう考えなのかということであります。先ほど言いましたように、これは単に給与問題という狭い意味じゃなくて、行政のベースとしての意味で私は言いたいわけですが、その点は、これはあるいはことしの実情から言いますと、御承知のように一けたということでおさまっているということに、春闘はこれは終わったわけじゃありませんけれども、いまの情勢はそういうことでありまして、民間賃金との比重といいますか、つり合いということからいきますと、この予算で出ている数字は大過なくいけそうでありますけれども、しかし、こんなことは何年も続けてできる、あるいは来年またこういうことでやれるような性質のものでは全くないということを申し上げておきたいわけです。  それから第二点は、一般行政費と並びまして社会保障関係、これから後でまた安恒さんの公述がございますので、私は簡単に申し上げるわけですが、ここではこういう認識になっているわけですね、つまり、日本の社会保障あるいはもう少し広く社会福祉を含めまして、制度的にはすでにヨーロッパの発達した資本主義の国のレベルに達している。しかし予算を見ますと、ヨーロッパレベルですと一般会計の三分の一が社会保障、広義の社会保障支出に充てられているわけですけれども日本ではとてもそこまでいっていない。二十数%を幾らも超えてないという実態でありますけれども、これは結局、たとえば老人で言いますと、年金の対象となる老人の数がまだそれほどでないんだというような事情で、同じ制度をとりましても、行く行くはヨーロッパレベルの支出がいまの制度は必要になる、そういう性質を持っておるんだということのようであります。このことは、実はことしの予算案を見ましても、大まかに見まして、公共事業に次いで、いわゆる社会保障関係費ということで約二二%前年増になっているわけですが、しかしこれを見ますと、いま申し上げましたような、基本的には制度改正というものは行わない、しかも将来の負担になるような制度改正を行わないということは、特に言葉の性質上、社会保障の面がかかわっていると思うんですけれども、にもかかわらず、二二%の増があったということ、計上せざるを得なくなったということは、これは実は対象となる老人人口が上向きといいますか、相当顕著にふえてきている結果なわけであります。  そこで、そういう事態の中で、先ほど言いました大蔵省の中期計画を見ますと、これは制度改正がなくても、一般会計の負担というものは、大まかに言いますと約三割、三分の一の比重に達するはずでありますけれども、中期計画はどのような計算で、あるいは計画でおられるか、よく細部はわかりませんけれども、とてもそういうことになっておらないわけです。いまちょっと数字が手元にないので省略いたしますけれども。ということは、実は今年度予算ではっきり出ているわけですが、つまり一般会計の負担というものをできるだけ抑制していって、それで社会保障部面での受益者負担を強化していくということとこれは非常なかかわり合いがあるであろうと思わざるを得ないわけで、したがって、ことしの予算を延長して考えられますところの中期計画を通して、このことをどういうふうに理解したらいいかということを考えますと、これは受益者負担の強化ということを非常に大きなウエートで考えているとしか思えない。それで、ことしの予算はそれのいわば幕開きだというようなことにどうもなってくるということで、大変これは不安でありますし、不安であるどころじゃなく、そういうことで、自由世界といいますか、資本主義世界といいますか、そこでGNP二位の、二番目の経済力を持つようになった日本財政というものがそのような社会保障の負担で済むかどうかという点につきましては、これは非常に現実性が乏しいのじゃないかということを言わざるを得ないわけです。以上が第二点です。  それから第三点は、一点、二点とかかわるわけですけれども、その両方の前提には、つまり、財政危機あるいは財政の直面する困難な実態をどう考えるかということがあるかと思うのですが、時間もございませんで、私の考えを簡単に申しますと、今日の財政危機、象徴的には国家予算で言いますと、七兆円あるいは六兆円の規模公債を発行せざるを得なくなるということで端的に示されます財政危機の、最大といいますか、基本的な原因、理由というものを考えますと、その第一は、何をおきましても、日本の税制がやはり高度成長の過程でやってきました税制、つまり、これはできるだけ税負担というものを軽くしていって成長の促進力にしていくということが言えるかと思うのですけれども、そのために、これはあえて言いますと、自由世界で最局のいわゆる資本蓄積の税制ということになっているわけです。これは西ドイツと相並ぶか、あるいは西ドイツを超えるというようなことでありまして、実は経済環境はもうすでに高度成長の条件というものを前提に考えるわけにはいかなくなっている、いろいろな面でそういうわけでありますけれども、にもかかわらず、税制はまだ基本的な転回を見せていないということであります。  ことしの予算案が、そのことにある意味で着目されているということは否定はいたしませんけれども、しかし、これを実際の数字で見ますと、たとえば悪名高い租税特別措置を中心にした税制改正によってどれだけの税が増収になるかと言いますと、大蔵省の計算によりますと百五十億円であるということであります。実際には、実情はどうかということを考えなければならぬわけですけれども、これはいろいろ数字のはじき方がありまして、まだ確かなところはわかりにくい点がありますけれども、御参考にちょっと私のごく概算を申し上げますと、いわゆる租税特別措置を中心にいたしました、狭義の租税特別措置ではなくて、実質的な意味でのそういうものが、法人課税のところでもって約二兆円、これは法人だけではなくて、個人課税のところでも決して見逃がすことのできないウエートを持っていると思うわけで、これが約二兆円。それに加えますに、世間では余り言わないのですけれども、私は償却制度というものが非常に重要な意味を持っておると思うのです。これは特別償却などのことを言うておるのじゃなくてであります。  ちょっとそこのところを説明いたしますと、ちょうどまた不景気のあれで、いわゆる昭和の世界大不況のあのころの日本税制は、いわゆる減価償却率という言葉で申しますとどのくらいだったかといいますと、要するに、償却資産を分母にしまして、年々の償却額を分子にしたというふうに大体考えていただければいいわけですけれども、実はここで正確な数字を持ってないのですけれども、もちろんこの席上で申しますので本筋において間違っていないと思いますが、二、三%ということなんですね。ところが、これが満州事変といいますか、それから太平洋戦争の過程の中で一二%になる。今日はどうかといいますと、一八からたしか二〇%になっているということで、今日の償却のスピードというものは、日本の太平洋戦争のときのあの軍事工業の育成政策に償却政策が最大の手段になった時期に比べましても、それの五割アップというのが実態であります。  これをことしのこの数字で見ますと、設備投資が減った減ったといいましても、これは自治省のあれですけれども、地方財政計画の後ろにあります数字でいきますと、二十二兆円の企業の設備投資が行われておるということであります。これから、まあ計算の仕方は略しますけれども、引っ張っていきましても、大体第二次大戦中の軍事工業育成と同じ程度にしても、おおむね二兆円の税収増がある。これは素人の計算でありますのであれですが、本質的には私は、数字の若干のあれは別としまして、そういうことが事実じゃないかと思うわけであります。くしくも、これは足しますと六兆円ということになって、国債発行額に、実は特例公債をオーバーして建設公債の分まで含んでしまうということであります。  私は、ここでは歳出の方のことは申し上げませんが、財政危機というものを考えます場合の第一の材料として、民主的な税制への追求が要るということを申し上げたいわけであります。そんなに税金を重くしたら企業は生産活動ができるかという御疑問につきましては、これは実は普通の税制で、資本主義経済がつくり上げてきた、まあ資本主義的に妥当な税制でこういうことであるということで、何もたくさん税金を取ればという意味では全然なくて、公平な税ということで、そういうことになろうかと思うのですが、私は端的に収入のところだけ申しましたのですけれども、そのようなものですね。つまり、実際に高度成長の中で企業の利潤がかなり大幅に減少したこと自体は否定すべくもありませんけれども、しかし、そういう中で税制は基本的にここ二十年間行われてきた。最近特に十年間で非常なピークに達しました高度成長税制というものを基本的には変えるところまでいってないところに、まず最大の原因があると言わざるを得ぬわけですが、そこで、その結果、つまり私の言います税財政、行財政の合理化措置によって歳出が抑制されましたにもかかわらず、御承知のように六、七兆円の公債の発行を余儀なくされたということでありまして、これは市中消化で大丈夫かというと、そういうことには全然ならぬわけであります。御承知のように、日本の金融の関係でいきますと、公債というのは割り当てであるということで、銀行なり企業の側が——銀行でありますけれども、そろばんをはじいて公債を引き受けているわけでも何でもないわけでありまして、それで、その結果、中央銀行はどうしてもそこに信用膨張の手段に訴えないとうまくいかなくなるという現実があるわけです。そのことが、御承知のように、一番大きな原因になって、昨年度に比べまして二〇%の過剰流動性の発生を見ているのが現在であります。これは狂乱物価のときの過剰流動性増加傾向と同じだということであります。  これにつきましてはもうこれ以上申しませんけれども、最後に、そういう中で、新税としての付加価値税が、これは言うまでもなく、といいますか、どこが考えておるかというふうにおっしゃられましても困るわけですけれども、問題になっているわけですが、しかし、この付加価値税は、第一に、現行税制の民主主義的な改変をおくらせることになることが第一ですね。もちろんこれは新税である。ECですと、売上税とか、そういうものはすでにあったものを改変したわけですけれども日本では新税であるということ。それから三番目に、これは消費税でありますけれども投資を非常に優遇する構造を持っている。それから最後に、日本中小企業がこのような複雑な記帳になじまない、だから中小企業に必要以上の煩瑣な手数をかけると一緒に、中小企業は首尾よくそれを消費者に転嫁できるという保証がないということで、大変むずかしい税である。原理的にこれが大衆負担だということは言うまでもなく、また、税制民主化をおくらせる実際の効果を持つしかないのが現状だと言わざるを得ぬということ。まだありますけれども、最後に、これは非常に日本の社会になじみがたいもので、したがって、そう簡単にできないという意味で、またこれは悪税であるということを申し上げまして、大分時間が超過いたしましたですが、私の考え方を述べさせていただいたわけです。(拍手)     —————————————
  48. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 続いて公述をやっていただきます。安恒公述人にお願いいたします。安恒公述人
  49. 安恒良一

    公述人(安恒良一君) ただいま御紹介にあずかりました安恒であります。  私は、昭和五十一年度予算の中で、特に社会保障に問題をしぼって意見を申し上げたいと思います。ただ、社会保障と申し上げましても、広義に考える場合と狭義に考える場合にはいろいろありますから、その点は私なりの解釈のもとで二、三点にしぼって申し上げたいと思います。   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕  まず第一に申し上げたいのは、この五十一年度予算と、これに問われるところの財政政策の理念について申し上げてみたいと思います。  御承知のように、すべての国がスタグフレーションに見舞われまして、共通をいたしまして国家財政の危機が訴えられているのであります。これはなぜかというと、第一には、スタグフレーションのもとにおけるところの税財源が非常に少なくなっているという点が第一点であります。第二点目は、インフレが持続をいたしておりますから、税財源が少なくなったにもかかわらず、支出は名目的にふえている。さらに、スタグフレーションの影響を直撃的に受けている層に対しまして、この救済のための支出増加をしている。こういうような状態の中におきまして、いわゆる財政の膨張、こういうことが国家財政を非常に危機にしているわけであります。しかし、私が考えますのは、財政の危機というのは決して一時的な経済循環の現象ではないというふうに考えます。特にわが国の場合に、高度経済成長からいわゆる安定なり低経済へという移行の過程にあるわけでありますから、問題は、いわば財政運営を技術的な対応でただ単に均衡をとればいいということではないのじゃないだろうか。問題は、いわば低成長下の国家の財政政策、こういうものに対する理念自体の確立が迫られているというのが今日の問題ではないかと思います。  しからば、それはどういうことなんだろうかと申し上げますと、御承知のように、高度経済成長政策というものが労働者や国民の生活に対して数数の問題点をもたらしました。その結果、わが国経済財政政策というものは、いわゆる高度経済成長のもとにおきましても福祉型への転換ということが強く叫ばれてきたわけであります。問題は、スタグフレーションになりました今日、何が必要なのかというと、私は、スタグフレーションになりましても、やはり労働者や国民の希望というものは福祉型への転換ということを強く希望しているというふうに思うわけであります。ところが、現在この国会で議論をされていますところのこの五十一年度国家予算を見る限りにおきましては、いわゆる自民党政府がお出しになっている予算はこれとは全く正反対に、福祉を犠牲にいたしまして、いわゆる資本蓄積のてこ入れ、地方自治体の圧殺、こういう方向に進もうとしているのではないかということを国民の一人として大変心配をしているわけであります。  御承知のように、一般会計の総額は二十四兆二千九百六十億一千百万円で、政府はこれをごろ合わせをされまして、「景気浮揚に苦労して、いい予算」と、このようにお呼びくださっているのであります。しかし私は、大企業にとりましては低福祉の本当にいい予算だと思いますが、国民にとりましては私はこのように考えるわけであります、「福祉を袋だたきにするいいかげんな予算」と。同じ数字を読みましても、国民の立場に立ちますとこのようにこれを読まざるを得ないのであります。  しからば、なぜそのようなことを申し上げるかということについて、社会保障の部面に限りながら申し上げてみたいと思います。  まず第一に、社会保障の中身が豊かかどうかということは、やはり比較論が必要でありますから、今年度の国家予算の中で重点的に考えられていますところの公共投資促進と福祉予算について少し意見を述べてみたいと実は思うわけでありますが、御承知のように、五十一年度予算について見ますと、いまも加藤先生から触れられましたように、社会保障の予算は前年度に比べまして二二・四%であります。これに対しまして公共事業費は二一・二%、さらに本年度設けられました予算措置を加えますと二六・四%でありますから、この両者を比較いたしますと格段に格差があるようには見えません。しかし、福祉元年と言われていますところの昭和四十八年が社会保障の伸びが二八・八%、四十九年度が三六・七%、五十年度が三五・八%に比べますと、ことしの社会保障の伸びは福祉元年と言われている以前に戻ったというふうに私は考えるわけであります。  さらに他方、公共事業費でありますが、この二、三年来の当初予算ではほとんど伸び率がゼロだったのでありますが、今回は二六・四%に一挙にはね上がっています。この二つの流れを見ますと、財政の流れが私は逆転をしたというふうに言わざるを得ないわけであります。もちろん、公共事業伸びというものについて私は公共事業そのものを否定するわけではありません。問題になりますのは、公共事業の中で、いわゆる道路整備であるとか、港湾整備であるとか、新幹線の建設であるとか等々、主としてたとえば本四架橋の新設であるとか、こういう列島改造大型プロジェクトを中心とした、いわば産業基盤育成に重点が注がれている。これが約一兆九百五十億で約五四%。これに比べまして、住宅とか下水道、環境衛生、公園などのいわゆる国民生活環境整備費というのが七千三百八十六億で二〇・八%。いわば産業基盤整備と生活基盤整備が二対一に置かれているというところに私は一つの問題を大きく考えるわけであります。  そういうような状況の中で、問題は、社会保障、福祉に限って見てみますと、率直に申し上げて、私は高負担低福祉、こういう形に今年度国家予算が大きく性格づけられているというところにこの問題があるわけであります。もちろん、このほかに、受益者負担の公共料金の大幅引き上げ、こういうものが労働者や国民生活を大きく圧迫しますが、これは私に与えられている直接のテーマでありませんから省略したいと思いますが、この高負担低福祉のいわゆる社会保障問題について少し中身について申し上げてみたいと思うのでありますが、まず最初に社会保障について若干の改善がされているではないかという御主張がありますが、まず、この福祉後退の中身の一つといたしまして、社会保障費のいわゆる諸給付はほぼ一二ないし一三%ほど引き上げられております。しかし、これは五十年度物価上昇が年間を通じまして約十数%ありましたから、率直に申し上げて物価調整に辛うじて追いつく程度だ、こういう程度の引き上げしかないわけであります。  こういうことを申し上げますと、この二、三年はこうした社会保障の給付が大幅に引き上げられたのじゃないかと、こういうことが述べられると思いますが、これは率直に申し上げまして、わが国の社会保障というのは、制度、形の上では欧米先進諸国と同じような、形だけございますが、大変この中身が貧弱である。その中身が貧弱であるというのは、率直に申し上げまして、生存を確保する水準に達成してなかった。そこで、この二、三年来は、その水準に達成をするためにかなりの引き上げが行われてきたということにしかすぎないのであります。そういう達成するためへの動きをやっと始めた。これがここ数年来の傾向だと思います。そういたしますと、社会保障の給付費というものは、単に技術論的に財政運営のいわゆるつじつまを合わせるということじゃなくて、生存に足り得るものかどうか、こういう点を中心に社会保障の改善を行っていかなければならないと思いますし、また、その評価もそういう角度から行われるべきだというふうに実は考えるものであります。  そういうふうに見てまいりますと、ことしの社会保障の改善というものは非常に貧弱である。たとえば七十歳以上の老齢福祉年金でありますが、月額は一万三千五百円、これは千五百円のアップであります。これは昨年私ども政府との間に国民諸要求ということで、このことを主張したときに、厚生大臣といたしましては、本年度は二万円の実現と——私たちの要求は三万円であったのですが、そういう公約を国民にしておったのでありますが、わずか千五百円アップの一万三千五百円になっている。障害者年金が二千三百円アップの二万三百円である。それから母子年金が二千円アップの一万七千六百円である。こういう状況であります。これは、現実に生活の維持にいかに無力なままに放置されているかということは、この金額を見て御理解がいただけると思いますが、こういう金額を見ますと、率直に言って、いわゆる財政運営至上主義、こういうことが露骨に予算編成の過程の中で出てきているのではないかというふうに思うわけであります。  さらに、私は、給付水準が大変お粗末ということで具体的な数字の一つを挙げておきたいのは、いわゆる生活保護世帯でありますが、これも物価上昇程度ということで、一二・五%の幅が引き上げられました。これは、一級地域の標準世帯、四人世帯の生活扶助費は八万四千三百二十一円となります。これを一回分の食費にならしますと百六十八円七十五銭にしかすぎません。これでは、率直に申し上げまして、駅弁が一食五百円する世の中でありますから、依然といたしましてラーメン代にも満たない低水準であるということであります。このように、非常に給付費の中身が大変貧弱であるのにかかわらず、いわゆる今度は負担の方が非常に大きく、国家予算の中で倍増が考えられているというところであります。  まず最初に、いま申し上げましたように、年金の改善が非常にお粗末なのでありますが、たとえば私たち雇用労働者の厚生年金でありますが、今回は料率が約三〇%の大幅引き上げが考えられております。また、医療健康保険制度におきましても近来にない大改悪が考えられていると思うのでありますが、御承知のように、分娩費の最低保障額なり埋葬費の最低保障額がそれぞれ引き上げられました。しかし、弾力条項の発動によりまして健康保険料の引き上げが七・六から七・八へと。そして非常に大きい問題でありますが、初診時一部負担が現行二百円を三倍の六百円にする。それから入院時一部負担が現行一日六十円を今度は一日二百円で、しかもいままでは負担期間が一カ月であったのを六ヵ月に延ばすと、このように非常に大幅な、各種のいわゆる年金、医療健康保険等等の掛金なり一部負担が大幅に増加しているのであります。たとえば、さらに高額医療の自己負担現行三万円を三万九千円に大きく引き上げられました。さらに、老人医療健康保険制度の有料化の問題でありますが、これは途中で消えたようでありますけれども、私は心配するのは、またぞろ来年あたりに七十歳以上の老人のいわゆる有料化問題が復活をしゃしないかというふうに、このように考えるわけです。これらを総合して考えてまいりますと、率直に言って、いわゆる低福祉高負担、こういう形に今年度の国家予算の中が編成をされているという点を私は非常に重視をするわけであります。  一方、今年度国家予算の中におけるところの国家予算の性格といたしまして、いわゆる景気振興という問題が国家予算の中の重要な角度になっておりますし、率直に申し上げまして、だれが考えましても不況状態がいいというふうに思う人は一人もおりませんし、やはり経済が安定をした成長をする、このことはだれしも望むわけでありますが、問題は、その中で、まあ広義の社会保障という意味考えますと、労働者の住宅、国民の住宅問題であります。御承知のように、私たちは、景気を振興するに当たって住宅の建設というのは非常に重要な問題の一つだというふうに考えるわけでありますが、どうも住宅が依然として民間の自力建設を中心に考えられている。五十二年度の住宅建設計画、五カ年計画は、いわゆる総建設八百六十万戸のうち、公的資金による住宅は三百五十万戸、一方民間の自己建設が五百十万戸、こういうことで、低家賃公共住宅は大変軽視をされている。私たちは、低家賃の公共住宅の大量建設ということを望んでいるわけでありますが、こういう問題が五十一年度では、公営住宅が八万五千戸、公団住宅は六万五千戸、こういうことで、いわゆる住宅難世帯は政府統計で見ますと二百四十七万七千戸になっているわけでありますが、そういうふうに、非常に今回の場合のこの住宅建設というのがなおざりにされている。こういうことを一つ特徴的な問題として申し上げたいと思います。  それから最後でありますが、雇用・失業対策費であります。これも私は広義の意味におけるところの社会保障費の一つだと思うのでありますが、御承知のように今日、公称で百万ちょっと、まあ月によって違いますが、百二、三十万、三菱の経済研究所でも政府発表の二・三倍は失業者がいるということでありますから、実際は約二百四、五十万から三百万に近いと言われる失業者がいるわけであります。これに対するところの失業対策費というものを見ますと、一応国家予算の中で見ますと、失業給付対象人員が一般で六十八万人、特別例で一時金等、出かせぎ等を含めまして、これが七十六万人しか見込まれていません。それから失対事業の吸収人員が九万二千五百人で、前年の九万六千人よりも下回っているということであります。ただ、まあ雇用調整給付金は、これは二・七倍という組み方である。こういうふうに考えてまいりますと、どうも失対の事業の組み方自体も、高度経済成長政策時代の景気変動によるところの失対ということにどうも重点が置かれているんじやないか。ところが、私は失対問題についても、もうすでにそういう時代でなくて、構造的に問題を考えなきゃならぬ。それはなぜかというと、高度経済成長下であるならば、景気変動に伴う数の問題として考えればよかったのでありますが、これから低経済成長を続けていく限り失対問題というものは質的な問題として考えざるを得ないと。そういうことになりますと、たとえば高度経済成長政策下であれば、一時的に失業しますと、たとえば農村にこれを吸収できる、こういう場面もありました。しかし、今日の時代において大都会の失業者が農村へ吸収できるということは、これはもう全然考えられません。そういたしますと、いわゆる社会保障の意味の中の失業対策ということについても質的な問題として考える。たとえば、現在の失対・雇用対策法におけるところの中高年齢が、雇用保険の給付が切れても依然として就職ができない。こういう人に対する特別な、たとえば全国延長であるとか一律延長問題を大胆に抜本的に考えるとか、さらに、いわゆる失業給付が切れた後の生活について、欧米先進諸国では、いわば失業手当ということで社会保障的にその人の本人の生活と、さらに新しい仕事を見つけるまでの職業訓練等について国家財政が投入されていますが、わが国においてはそういう制度がほとんどない。特に失業保険が切れた後の失業手当という制度が全然わが国においてはないわけでありまして、このような問題についても格段の御配慮を私はお願いをしなければならないというふうに考えております。  まだ申したいことがありますが、時間の制限がありますから、最後にお願いをしたいのは、いわゆる参議院におけるところの制度の改革という問題の中で一つお願いしておきたいのは、私どもは、こういう状態でありましたから、インフレ国民総負担と失業に反対し、社会的諸制度改善の国民生活を守るための統一請願ということで請願をやりました。率直に申し上げて、私ども春闘共闘でやった中で、全体で約七百万の署名を集めることができました。この署名を衆議院議長と参議院の議長に、それぞれ社会党を初め共産党、公明党さんの皆さん方のお力をかりまして、いわゆる紹介議員といたしまして、私たちは請願を河野議長のところにも過日約三百万通ぐらい届けています。そこで、私がお願いしたいのは、こういうものの請願について、関係委員会における慎重な御審議と、その結果どうなったのか、請願したものに対してどうなったのか、こういうことについても的確なお答えをひとつぜひお願いをしたい。  一口に言って七百万の署名を集めるということは、大変集める方としては苦労をして集める。しかし、国民が非常にこのことに、いま現在インフレ、それから失業、社会保障制度の改善、こういうことに国民の皆さん熱意がございましたので、七百万の署名を集めることができました。どうかこういう問題についても、本委員会においても慎重な御審議を賜りますことをお願いを申し上げて、簡単でありますが、社会保障制度全体について、今年度国家予算に対する私の考え方の意見開陳を終わりたいと思います。(拍手)
  50. 山内一郎

    ○理事(山内一郎君) ありがとうございました。     —————————————
  51. 山内一郎

    ○理事(山内一郎君) それでは、質疑のある方は、公述人を指名して御発言を願います。
  52. 鳩山威一郎

    鳩山威一郎君 加藤先生にひとつ質問をさせていただきたいのであります。  先ほどお話がございまして、日本の税制についてお話がございました。現在、赤字国債をどうするかというのは最大の問題でありますので、一番関心が深く伺ったわけでありますが、この日本の税制が投資促進型であるというお話であって、その最大の特徴はどうも償却が甘いのじゃないかと、こういうお話であったわけであります。そこで、私ども持っている数字ですと、いま償却が総資産に対しまして一八から二〇%というようなお話があったのですが、どうもその辺の数字が私どもとしてはちょっと多きに過ぎるのじゃないかという感じがいたしたわけでありますが、逆にいま一般には、最近の物価が上がってしまって、実際は日本では償却不足だ、機械をもう一度買うときには前の金額では買えないというようなことが言われております。日本では、特に商法では、強制償却制度といいますか、適正な償却を企業は義務づけられておるということであって、結局、償却年数が長いか短いかということ、特に一般償却の場合はそうであろうかと思います。私も特別償却でいろいろ甘くなっておる点があるということはよくわかるのでありますが、どうもお話は一般償却のようでございましたので、日本の償却が一般の償却制度として、商法で言っている適切な償却というものを超えた償却になっておるということにつきまして、その辺のはっきりしたお話をもう一度伺いたい。  私ども持っておる数字では、たとえば紡績業をとってみますと、業として日本では十年という償却を決めております。アメリカは十一年でありますが、余り差はない。西ドイツも十年から十三年ということでありますし、大きなものとして鉄鋼業をとってみましても、日本は十四年、アメリカは十四・五、西ドイツは五年から十年というようなことになっておりまして、自動車製造業、これも日本では十年でありますが、アメリカは九・五、西ドイツは五年から十二年というようなことで、どうも個別の制度としてどこが一体長いのだろうかということが問題になろうかと思います。そういう御指摘があればお伺いしたい。  どうも私は、やはり特別償却制度が非常に償却を高めている大きな原因ではないかと思うのでありますが、その辺の認識がいささか私どもと違うと思います。仮にお話しのようなことを、もし何兆円か、まあ仮に十兆円近い償却があるといたしまして、それを半分にすると五兆円出るというような話がありますが、しかし、そういうことをやった場合にはそれは適切な償却ができないということになれば、銀行で借り入れして設備をつくっても、それは返却できない。今度はまたリプレースメントのときは、またさらによけいな借り入れをしなきゃならぬというようなことで、ますます企業が金融支配に屈するというような形になるのではないか、こういうような心配があろうかと思うのでありますが、その辺の御見解をお伺いしたいと思います。  それからもう一点は、実はことしの財政問題を見て、一般会計はお説のように大変な苦しさでありますが、たとえば国鉄、電電のような公営企業がまた最大のピンチになっておって、この財源対策も、ことしの予算では過去の累積赤字につきましてたな上げをするとかいうような措置政府もとっておるのでありますが、それも運賃法の改正がなかなか審議されないというようなことで、   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕 この国鉄、電電、公営企業の問題につきまして、ヨーロッパ各国、国鉄を抱えておるたとえばイギリスであるとかフランス、ドイツというようなところでは、もうイギリスにおきましては一九六五年以来毎年運賃改定を行ってきておる。去年あたりは年に四回も運賃を改定したというようなことも聞いておるわけであります。西ドイツでも、七一年以来毎年運賃を引き上げてきておる。フランスでも、フランスはもっと前から、六九年以来毎年運賃改定を行ってきておるというようなことで、これは日本ではもう数年おきに死ぬほどの思いをして、この運賃改正を何とかやっと国会を通すのが大変だということでありまして、やはり運賃とか料金というようなものにつきましても、まあいま社会保障ではいろんな面で物価調整というようなことが行われておりますけれども、この料金に至ってはなかなかこの物価調整ができない。そのためにこれが政治問題化する。政治問題化しますと、やはり運賃は上げない方が国民の評判もいいわけでありますし、なかなかこれを通すのは大変なことだということで、各国では運賃を法律で決めるというようなことはしておらない。スリランカが法律で決めているというようなことも聞いておりますが、ヨーロッパ各国ではそういった国はないわけで、運賃というようなものにつきましても、これを政争の具にしないで、もっと物価調整的な運賃改正というものをやれるように配慮さるべきではなかろうかと思うわけであります。  その辺の、この国鉄運賃問題になりますと、それは従来からもっと国が金を出して設備もやればいいじゃないかとか、あるいは貨物のために赤字が多いとか、あるいは通勤通学の割引があるじゃないかとか、いろんなことが言われておって、そういったものが行われているうちは運賃は上げさせないというようなことではとてもにっちもさっちもいかないことになるので、もっと物価調整的な運賃、それを考えていく上には、やはり政争の具にしないということが何より大事ではなかろうかと、こう思うので、その辺の御見解も承りたい、こう思うわけであります。  もう時間がありませんので、二点だけについてお願いいたします。
  53. 加藤睦夫

    公述人(加藤睦夫君) 最初の問題で、償却の問題でありますが、実は私三つ並べまして、そのうちの一つということで、三つのうちの一つは、これは狭義じゃなくして広義の世上言うところの特別措置ですね。これは主に企業関係しているものを頭に置いているわけですけれども、二つ目が、企業だけでなくて、いわば個人所得の面でも税制の民主化が非常におくれているといいますか、なってないの、じゃないかというのが第二点で、三番目に償却の問題を申し上げたわけですが、まあ大体三つとも同じぐらいの比重で申し上げたわけですけれども、償却の問題について言いますと、これは実は個々の制度ですと何か非常に複雑でわかりにくいものですから、これは大蔵省の例の四半期ごとにとってあるあれで、償却対象資産と償却額というものを戦前から、ずっとトレースしてきますといまのようなパーセントになるわけです。  それで一八というのは、いまちょっと数字を控えてなかったものですから、そんなに大きな間違いは……。私の計算ですと、ただしこれは最後は四十九年ですか、必ずしも昨年という——数字がおくれますので、なっているということはあります。それから自動車の十というのは、私はいまちょっと数字はないんですけれども、これは十年ですか。五年ぐらいに非常にスピードアップになっているというふうに思っていたんですけれども、西ドイツと同じレベルに。これはまたあるいは私の……
  54. 鳩山威一郎

    鳩山威一郎君 やっぱり特別償却だろうと思うんですがね。
  55. 加藤睦夫

    公述人(加藤睦夫君) 私は全部入れましたあれです。ただ申し上げたいのは、特別償却の比重というのは、全体の償却と比べますと、昔と違っていまではおのずから比重が変わってきていますので、特別償却だけ見ていたのでは事実はつかめないのじゃないかということを申し上げたかったわけです。それから、個別のあれですと、たとえば飛行機ですね。日航の償却額などは大体アメリカの倍というか、逆に言いまして耐用年数が半分というようなことも。ただしこれは断片的に見ましたので、そのようなことで申し上げたわけですが。  それから第二点の国鉄、電電の問題で、実はきょう必ずしもちょっとマークしておりませんでしたが、ただ私は、国鉄、電電につきましては、一般の運輸交通、民間企業と違って、一定の政策の目的上採算をある意味では二の次にしておやりになっている部分が、これはいろいろ複雑なものがあろうかと思うんですけれども、あるということが一つありまして、それからもう一つ競争上のあれですね。やはりいまの国鉄、電電でも同じようなことがある程度言えるかと思うんですけれども、たとえば道路ですと、陸上輸送ですと、道路支出は国費で負担しているというような問題ですね。ですから国鉄につきましても、ちょっとこれは飛躍する、私も必ずしも固めているわけじゃないんですけれども、いわゆるベースになる社会資本に相当する部分については、これは一定の国庫負担は免れないのじゃないかというふうに考えているわけです。そういうことをさらに含めましてもう少し交通政策として考えなきゃいかぬということが、またもっとその基礎にあると思うんですが、ただし、一切運賃は上げちゃいかぬなんということを言っているわけじゃないので、ただそれにはタイミングがありまして、いまのように、たとえば一方では過剰流動性、他方では公共投資を中心にした実物の需要を起こしながら、それで要求アップいたしますと、三位一体で、他方で何といいますか、デフレギャップが二十兆円あるということでありますけれども、絡み合いますと、これは非常にぐあいが悪いことになる。その証拠には、やはり国鉄のああいう運賃値上げの方式というものがある意味でいまの民間企業物価、例の新価格体系への誘導の役割りを、価格体系の認められないそういうものまでそれを一遍に誘導しちゃうというような危険を、むしろタイミングとしては感じているわけです。
  56. 鳩山威一郎

    鳩山威一郎君 私の質問の要旨は、外国では毎年物価調整的に料金を翻していく。日本では法律改正ですから、やはりイデオロギー的にも非常に大変な政治問題化するから、もっと物価調整的に、年金や何かも物価調整で直していくのだから、料金などもそういうふうに考えられぬかと。もっと小まめにそういうことをやらぬから、何年分か一度にぽかっと上げなくちゃならぬことになるからますます大きな問題になるので、そういうことについての御意見を伺ったわけです。
  57. 加藤睦夫

    公述人(加藤睦夫君) 料金決定制度にまでかかわるような問題ということになるわけですね。
  58. 鳩山威一郎

    鳩山威一郎君 物価調整的な調整が何か考えられるのではないかということなんです。
  59. 加藤睦夫

    公述人(加藤睦夫君) 逆に言いますと、上げるべきときに上げなかったのが、たまってきてこうなったということをおっしゃりたいというわけですか。
  60. 鳩山威一郎

    鳩山威一郎君 そうです。
  61. 加藤睦夫

    公述人(加藤睦夫君) ただ私は、その問題は確かにありますけれども、もう少しいまの基本的な問題があるのではないかと思っているわけなんですけれども
  62. 坂野重信

    ○坂野重信君 大分時間が経過しておりますので簡単に御質問いたしますので、加藤先生、よろしくお願いいたします。  第一点は、財政経済との問題でございますが、こういう経済が非常に不安定な時代でございますから、いわゆる財政主導型の経済運営というものは、今後当分の間、当然これは持続すべきだと思いますが、それに対する見解。  それと、財政の方向としては、やはりいろいろ予算の編成の段階におきまして、公共事業を中心とする積極財政論と減税論といろいろ意見があったわけでございますが、結果的には、積極財政論ということでいまの予算の編成が組まれていると思いますが、その辺に対する先生の御見解、それが第一点でございます。  第二点は、福祉問題でございますけれども、いわゆる低成長時代を迎えようとしているときに、何でもかんでも国の負担、国の責任ということで福祉は確かに整備する、あるいはこの福祉を大いに強調するのはもちろん必要なことでございますし、私どもそれに大賛成でございますけれども、すべて国の負担においてこれをやるということになってまいりますと、やはりいわゆる高福祉高負担−高福祉低負担というものが理想かもしれませんが、国の財政力というものにも限度がある。そういうことを考えてみますというと、この福祉というものは高福祉高負担というものが原則でやらざるを得ない。ヨーロッパ等におきましても、聞きますと、そのためにかなり税負担というものが国民に高く課せられておるということでございますので、その辺の先生の考え方。  これに関連するわけでございますが、いわゆる福祉政策でよくナショナルミニマムという言葉が使われておりますが、これはいろいろ財政力、税負担というものと関連してくると思いますので、ナショナルミニマムということをどういう考え方で先生方はお考えになっておるのか。経済力なり国民の負担力というものの限界におけるナショナルミニマムでなけりゃならぬと思いますけれども、その辺の考え方がどうかということでございます。  それから、先ほどから安恒先生からも出ておりますけれども、何か大型プロジェクト即産業基盤整備というような考え方があるようでございます。私は、これはいろいろ高速道路にいたしましても、大規模なダムあるいは大規模な農業基盤整備等にいたしましても、一〇〇%大型プロジェクトというものは必ずしも産業基盤ということは言い切れない。たとえば高速道路にいたしましても、先般の国鉄ストによって大変な生活の脅威を来したときも、高速道路があったために生活物資、生鮮魚類というものもこれは運搬できたという、交通量の中身を見てもそういうことなんです。東京都の首都高速の中身にいたしましても、産業のみならず、生活に密着したものが非常に大きなウエートを占めているということは、これは否めない事実ではないかと思うわけでございます。まあ一つの例でございます。その辺の御見解をもう一度承りたいということでございます。  それからもう一つ最後に、ちょっと数が多くて失礼でございますが、首都移転問題、お聞きかと思いますが、超党派でいま研究会ができておりましていろいろ勉強させていただいておりますが、これも考えてみますというと、大都市の分散の一つの方向じゃないかと思っておりますが、いろいろ御意見はあるかと思いますけれども財政投資をする場合に、午前中も戸塚委員から質問が出ましたけれども、大都市地域と田舎の農山漁村の過疎地域における財政投資のバランスというようなことが、特にこういう選択時代において、地域のバランスというものを考えることが非常に重要な時期に来ているのではないかというような気がしているわけでございますので、それだけ端的に御質問を申し上げたわけでございます。  よろしくお願いいたします。
  63. 加藤睦夫

    公述人(加藤睦夫君) 第一の問題は財政主導型、この問題につきまして私あるいはちょっとずれるかもしれませんけれども、申し上げたいと思うのですが、私が問題にしたいのは、財政主導かどうかというところはまた問題にすることもできるのですけれども、そういう問題より、一体どういう中身で、あるいはどういう方向で財政が、何といいますか、一定の財政政策を立てるかというところが肝心だと思うんです。  そこで、ちょっと先ほど申し上げましたこととかかわって言いますと、私は簡単に言いますと、大型プロジェクト中心の公共投資とどうも言わざるを得ぬような感じがしているわけですが、これは一体日本経済をどう考え、それはスピードだけでなくて、産業構造の問題までありますし、簡単に言いますと、日本の工業というのは素材型重工業で、それで資源多消費、公害多発ということが一般によく言われております。こういう型のあれで、またそういう型の工業が国際経済の中で一定の、日本経済がまさに受け持っていくようなかっこうのそういう関係の中で高度成長があったと思うんです。しかし、それはそういう関係の中であったので、その関係がいまでもあるかと言いますと、これはちょっとなくなったとは言えない点がありますけれども、非常に問題を生じてきている。むしろ、そういうことを十年一日のごとく考えていますと矛盾が山積してやれなくなるということが、いまの高度成長から安定成長へと一般に言われる問題の中身の一つじゃないかと思うんです。  だから、公共投資でも一体どういう経済計画なり目的を持つかということが大事だ。その点につきまして今年度予算案で言いますと、どうも非常に理解がしにくくて、高度成長経済の反省が、あるいは再検討というものがどこまであって、どういう点が問題になって、それが公共投資の本年度予算案の中に具体化しているかということはどうもわからぬ。需要面で見ましても、非常に手っ取り早くやっぱり特定の大企業需要を引き起こすようなところへいってしまっているというところを問題にしているわけであります。  一般的に財政主導型ということで言いますと、これは今日の資本主義ではそういうことは避けられないだけじゃなくて、むしろその点を活用していくことができるのじゃないかというふうに思うわけですが。  それから高福祉の問題と負担の関係でありますけれども、これはちょっと私、実は安恒さんの方がかえってあれかと思うので、非常に大まかなところで申し上げますと、要するに、とどのつまりを言ってしまいますと、これはヨーロッパ型を追求しろなんということを言うつもりはないのですけれども、欧米諸国がいま社会保障に、しかも一般会計から一般財源でもって負担している一定の割合がありますですね、四分の一とか三分の一。これはやっぱりそれなりの根拠を持ってそういうふうに現実がなっているわけで、特に、GNP二位なんと言いましても、これは全体の総規模ですけれども、持っている日本のあれから言いますと、それに似たような財政負担、一般会計負担というのは避けられないのじゃないか。何かほかにいい方法があるかと思って探してもそういうことはならぬという非常に大まかに割り切った考え方でございますけれども、ただ税負担でやるか、保険料でやるかという問題はありますが、日本はどういうふうにしたらいいかということはあるんですけれども、しかし、そういう型をとりましても、保険料を中心により重点を置いていきましても、一般会計負担は私は四分の一か三分の一というのは不可避であるというふうに、非常に大まかな話で失礼でありますけれども思っているわけであります。  したがって、そういう場合には税負担は避けられないわけで、税金でなくて公債でやれというようなことを言うつもりは全然ありませんけれども、ここで問題なのはやはり税制というものが、本当に民主的税制がどこまで追求と言いますか、私なんかで言いますと、直す、性格を基本的に、やっぱり高度成長の反俗と一緒にそれができているかどうかということがありますので、そのことを抜きに税負担を上げていくことはできないというふうに考えるわけです。  それから、三番目の問題はこの問題でよろしゅうございますでしょうか、ナショナルミニマムの。  首都移転問題につきまして、私この席上、責任を持って私の考えを述べるちょっと能力もありませんので、失礼ですけれども……。
  64. 森下泰

    ○森下泰君 自由民主党の森下でございます。  安恒公述人にお伺いさせていただきます。大きく分けまして問題は二つでございまして、一つは福祉財源の問題、いま一つは医療制度につきまして若干御意見を承りたい。  実は、ただいまお話を大変勉強させていただきまして、感銘を受けて拝聴させていただきました。特に、福祉型への転換という御意見につきましては私ども全く御同感でございまして、わけて、これから老人がふえますこの傾向におきましては、ますます大事なことになっていくのではないかと、かように私ども考えている次第でございます。  ただ、ただいま予算につきまして、福祉を袋だたきにする予算だというお話でございましたが、これは少しお言葉が過ぎるのではないかと、いささか私どもなりに御異論を申し上げたい次第でございますが、まあいずれ改めて別の機会にゆっくり御意見を承るといたしまして、一言だけ言わせていただきますれば、福祉が大事でありますので、そのためにこそ私ども景気の回復、あるいはもっと端的に申しますれば、経済の安定と成長なくしてはいかなる福祉も実現はできない、かように私などは特に考えております。したがいまして、その限度内でできるだけのことを本年は予算に計上したというのが私の理解をいたしております本年度予算でございまして、したがって、袋だたきにするということではないと私ども考えておる次第でございます。  それはさておきまして、その問題につきまして、いままたお話の中に高負担低福祉と、こういうきわめて鋭いお決めつけがございましたのですが、それにつきまして実はお伺いさせていただきたい。実はいま坂野委員から加藤先生に御質問がございまして、同じような内容になりますのですが、私といたしましては、特に安恒公述人の御意見を賜りたい次第でございます。  端的に申しますと、私は、本年五十年版の厚生白書で御案内のとおり、国民所得に対する租税負担率、社会保険負担率は、西欧諸国に比べましてきわめて低いというのは御案内のとおりでございます。あえて申し上げますれば、西独が三〇対一五、フランスが二七対二〇、イギリスが四〇対七と、かようでございますのに、日本の場合は残念ながら二二対五、合わせましても二七%にしかすぎません。したがいまして、西欧諸国に比べますと租税負担率は三分の二、社会保険負担率は三分の一というのが実情でございます。御案内のとおりでございます。これにつきましては、ただいま坂町委員の御質問に対しまして、加藤先生の方からは御賛成である、高福祉高負担であっていいというような御意見であったように私は解釈をいたしましたが、それはともかくといたしまして、このことにつきましての安恒公述人のお考えをぜひお聞かせをさしていただきたい。特に、端的に申しまして、高福祉高負担がやむを得ないというよりは、むしろそれが望ましい方向であるかどうか。そして問題は、その内容の、税金と保険負担ということにおきましては内容につきましての御所見を承れれば大変幸いと存じます。  いま一つの問題は医療制度でございまして、これはもう安恒公述人さんは前から中医協の委員として御活躍でございまして、私どもよく御意見は存じ上げておりますが、したがいまして特にお伺いさせていただきたいのですが、それは医療問題の中で現在具体的に発生しております事実といたしまして、安易に医療機関を利用し過ぎているという現状がございます。たとえば、三時間待って三分間治療ということがよく言われておりますが、さようなことが実際に具体的な現状として進行いたしております。しかも、他方におきましては、医療技術あるいは診断技術に対する評価が必ずしも高いものではございません。西欧諸国と比べまして必ずしも高いものではない、きわめて低いというのが現状ではないかと、かように考える次第でございます。  そこで問題は、お伺いしたい点は、私どもは国民の健康管理の基本は、国民一人一人の自分の問題でありますから、自分が自覚をいたしまして、十分に自分で自己管理をいたしまして、そして医療機関にその上でかかるというのが本来の趣旨ではないか。したがいまして、国民の一人一人の保健教育に対する知識教育を徹底する必要があり、その一つの大きな内容といたしまして、私は特にセルフメディケーションということから考えられますいわゆる一般用医薬品、大衆薬でございますが、大衆薬というものに対する評価ないしその制度あるいは管理というものにつきまして、この際新しい考え方で取り組むべきではないかと、かように考えるものでございます。と同時に、言われております医療技術の評価に関しましてでございますが、いわゆる医療資源、つまり人的、物的両方加えまして、いわゆる医療資源の再開発と荷配分ということが言われております。これに関連をいたしまして医薬分業の問題がございます。この点につきましてもあわせて安恒公述人の御意見を賜りたい次第でございます。お伺いいたします。終わります。
  65. 安恒良一

    公述人(安恒良一君) 二つの御質問についてお答えをいたします。  まず最初に、私どもが申し上げておりますところの国家予算の性格についてでありますが、これは前の先生からもちょっと私の名前も挙げられながらおっしゃいましたから、その点をちょっとお答えしたいのですが、私はわが国経済考える場合に、前段でも申しましたように、だれでもマイナス成長がよろしいとか不況が好ましいというふうに考えませんし、失業や操短がなくなりまして安定した成長を求めるということは非常に必要なことなんです。そこで、それがためには、いまもおっしゃいましたように景気の回復が必要だということなんですが、問題はこの景気の回復なり成長率をどうして上げればいいかということでありまして、どんな方法でもいいから景気を回復すればいい、どんな方法でもいいから成長率を上げればいいということにはならないわけです。  それはなぜかと言うと、先生も御指摘されましたように、福祉を行うに当たっても、景気の回復が必要だということなんです。そこで、問題は方法論によるわけでありますが、私がこの大型プロジェクトと申しましたのは、主としてたとえば本四架橋をかけるとか、新幹線の建設であるとか、産業道路の整備であるとか、いわばこれは列島改造型で準備されました大型プロジェクトを中心とする景気対策です。もちろんこの路線というのは東西部門を中心とする需要の増大を起動力といたしまして、大企業の利潤を増大をさせる。それによって投資成長率を高めようとする路線であることは雷をまたないところであります。でありますから、こういうやり方をすると、これはどうしても大企業の利潤増大をてことするいわば利潤優先型の景気回復政策だというふうに思います。そうしますと、結果的に列島改造というものが狂乱インフレを引き起こしまして、その対策として財政金融の引き締めが行われる。そして財政金融の引き締めが不況をもたらして、そして再び列島改造と、こういう悪循環を私はやはり繰り返すのじゃないか。  そこで、私ども考えます同じ景気刺激政策は、いわゆる福祉型政策であらなきゃならぬということを私は強調しているわけです。いわゆるこの狂乱インフレと戦後最大の不況の犠牲をもろに受けています国民生活と福祉の改善、それから消費支出の増大、これをてことする景気回復を行うべきではないかという私ども考えなんです。でありますから、これは短期的に成長率が上昇するだけの考えじゃなくて、やはり中期的な展望を持ちながら国民福祉をまず充実させていく、これが基本的に必要ではないだろうか。それから第二番目には、やはり今回の景気刺激政策の中では、具体的には雇用効果があらわれてくる政策でないといけないのじゃないだろうかと、こう考えているわけであります。  でありますから、やります具体的な中身を申しますと、時間がありませんで私は前段で触れませんでしたが、一つはやはり減税ですね、二兆円ぐらいの大幅減税をやる。それから社会保障給付費の拡大、これは私に与えられたテーマの中心でありますが、これは、以上のことは低所得者中心の消費拡大に大きく連なっていくわけであります。それから第二番目には、私はこれも触れましたように、たとえば公営住宅の大量建設、それから義務教育や高校等の不足がございますから、こういう問題の学校建設を大量にやるとか、それから上下水道、公園、保育所の整備、こういうようなやり方等を私はやっぱり積極的に、同じ公共投資としてもやっていくべきじゃないだろうか。そういう点が大変不足をしているということを申し上げたことを、ちょっと前段の御質問にも触れて答えておきたい。  そこで、直接の質問でありますが、負担割合の問題であります。高福祉高負担は賛成なのかという御質問でありますが、問題は二つの角度から見ていかなければならぬ。いま先生は、いわゆる租税と社会保障費の負担割合だけを諸外国の例を挙げられたのでありますが、私はここに手元に持っております統計によりますと、国民総生産に占める社会保障費の割合というのがございます。これを見ますと、日本は約六%、それからイギリスが一二・六、西ドイツは一七・四、フランスは一五・六、イタリアは一六・二等々、欧米先進諸国におきますいわゆる国民総生産に占める社会保障の支出の割合を見ると、日本は半分ないし場合によれば三分の一だと、このことが一つ大きく言えるわけであります。  それから問題は、それを大前提といたしまして、その中身をだれがどのように負担をしているかということなんであります。問題は、ざっくばらんに申し上げましてヨーロッパには二つのタイプがございますが、たとえば医療健康保険なり年金なり失業保険なり等々のいわゆる社会保障の負担割合を、各労働者、使用主、国家、こういう三つの角度から見る、もしくは国民という角度から見る。そういたしますと、ヨーロッパには二つのタイプがございまして、ただ共通して言えることは、おおむね三分の一を労働者ないし国民が持っている。そして、残りの三分の二を国ないし使用主が持っている。これはいわゆるイギリスとかスウェーデン等の北欧では国の負担率が非常に高い。フランス、イタリアの場合には使用主の負担が高い。しかし、いずれも合計いたしますと三分の二はいわゆる国ないし使用主が持っている。残りの三分の一を労働者ないし国民が持っている。こういう点をぜひお考えをお願いをしたいと思います。  それからいま一つは、これを税金で見ていくのか、それとも社会保険給付費、掛金として見ていくのかということの見方があります。私は、まず大きく言って、国民のどの層がどのように見るかということが一つは非常に重要だと思います。それからいま一つは、税金と社会保障費の関係の場合、私はやはり社会保障費を、いたずらに掛金を上げるのではなくて、国家財政支出する場合には税金を中心にする。それはなぜかというと、税金は御承知のように高度累進課税の制度が一応とられていますから、私はやはり税金考えるべきだろうというふうに思います。  それからその次の質問でありますが、医療保険制度の問題でありますが、これは二、三点ございましたが、まず、わが国の医療保険制度の基本的な欠陥は、国民の健康管理ということを言われましたが、私はわが国の医療健康保険制度というのは、病気なりけがをした場合に初めて医療保険の給付が始まる。いわゆる前後の措置がない。いわゆる予防、それからリハビリテーション、この二つについて保険の適用がされてないというところに問題がある。私は、ヨーロッパ先進諸国の医療保険制度の中には、やはりこの予防と、それからリハビリ、それから病気やけがをした場合の治療、この三つが一体となって医療保険制度というふうに仕組まれておりますから、わが国の一番大きい欠陥はいわゆる予防とリハビリが十分でないというところにあるということをまず申し上げておきたいと思います。  それから、安易にかかり過ぎると。これはどういう意味で言われたかわかりませんが、私は医学技術を修めているわけではありませんが、これはいわゆるお医者さんにお聞きくださるとわかりますが、病気というものはできるだけ早く、初期のうちに医者の門をたたくことが一番治療が早い。本人の苦痛も伴いませんし、また医療経済の観点から言いましても、重病になって医者の門をたたいた場合と軽症のうちにたたいた場合には、国民経済の観点から言っても、それは非常に病気が軽いうちにお医者の門をたたくことが一番いいというふうにされています。  でありますから、先生がおっしゃった三時間待って三分診療というのは、安易にかかり過ぎるということよりも、私から言いますと、日本におけるところの医療機関の任務分担が、非常にいわゆる制度として、私たちかねがね社会保険審議会、社会保障制度審議会、中央医療協議会等で指摘をしておるにもかかわらずに、厚生行政としてされてない。それはどういうことかというと、たとえば簡単なかぜやけがや腹痛の場合でも専門病院、総合病院の門をたたいてみたり、大学病院にいきなり行ってみたりするということ。私は簡単なかぜやけがやそれから腹痛の場合には、いわゆる個人開業医、診療所の門をたたくべきではないか。そこで、非常にこれは検査が必要である、こういうときにそれは専門病院、総合病院に送られて、そこで検査がされる。でありますから、総合病院、専門病院は、原則的に外来患者を受け付けないということにしている。そこで送ってまいりました患者を検査をいたしまして、入院治療をさせる者は入院治療させるし、通院治療の必要なものは通院治療をさせる。しかし、検査の結果、これは病気が非常に簡単であるというときには、これを個人開業医、診療所の方に差し戻しをする。こういう病院の任務分担、医療機関の任務分担というものが明確になれば、いま先生の御指摘あったような、いわゆる三時間待って三分診療などということはなくなる。こういうようなことはもう十数年来、国民皆保険になってかねがね指摘をしているところでありますが、行政が非常におくれているということであります。もちろん先生がおっしゃいましたように、個人個人が病気にかからないような保健教育ということ、このことは私が言うところの予防ということに入っているわけですから、その点が非常におくれているという点の中で御理解を願いたいと思います。  それから医薬分業について、私はいまの段階において医薬分業には直ちに賛成をしかねます。それはなぜかというと、わが国において現在残念ながら無医村がいま三千近くあるわけです。ここで直ちに医薬分業したら、それと同じ現象が出てまいります。というのは、町にはたくさんの薬局がございますが、医薬分業を行ったときに、いわゆる売薬だけではだめなので、薬剤師がちゃんとしておりまして、そして調剤能力があるところの薬局をつくらなきゃなりません。これがためには衛生管理のきちっとした薬局。ところが、いまの場合にはそれがございませんから、もしもいまの現状で医薬分業をすると、国民は無医村で悩んでいるほかに、今度はまた薬局探しで、薬局のない市町村が出てまいりまして非常に困る。そこで、私は医薬分業というものは条件つきでありまして、まずいま申し上げたような薬局の整備をきちっとしていく。その中で医薬分業というものが遂行されるならば、国民のために一つ方法だと思います。  薬問題については、まだ私は私なりにいろいろ見解を持っていますが、先生の御質問に限ってお答えをしますならば以上のとおりであります。
  66. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 加藤先生にお尋ねをいたしますが、赤字国債の発行ということ、まあこれは数年続くでありましょうし、大蔵省の出しております中期財政計画によっても大変巨額な国債の累積ということになるわけでありますけれども、こういうことを重ねていきますと、財政硬直化の問題は当然出てまいりますし、いまお話にあった社会保障の切り下げというような問題もこれは当然起きてくるだろうと思います。したがって、大蔵省として付加価値税の導入という、先生のお話にもありましたけれども、公式には言っておりませんけれども、付加価値税の導入ということを考えているやに伺っているわけでありますが、これについてはかなり大きい野党からの反対運動というものが盛り上がってくる。こういうことになりますと、結局今後の累積する赤字国債の解消ということは、民間が銀行の借入金を軽くするためにインフレをやったと同じように、今度はやっぱりインフレ財政というもので結局負担を軽くしていく、こういう方向に私、行かざるを得ないのじゃないか、こんなふうに考えているわけであります。  そこで、これは私ども予算委員会や大蔵委員会でいつも税制の問題で言われている点は、先生がおっしゃられた三つの点、この点がよく言われているわけでありまして、この点では問題点の所在ということでは、特に法人関係の租税特別措置法、あるいは個人関係の、もちろん広義の意味でありますけれども、租税特別措置、こうしたことというのは、ほとんど毎年の大蔵委員会税金問題では具体的に提案をされているわけなんであります。  償却制度については、私はこれは若干いまの短い償却年限をもう少し延ばしていいのじゃないだろうか、こうは思います。特にいままでのような技術革新というものが今後行われていくかどうかということを考えてみますと、いままでのスピードでは恐らくいかないだろうと思います。したがって、機械設備の陳腐化というものも、いままでのように短い期間に陳腐化してしまうということは恐らくなかろうと思いますから、これはもう少し延ばすことによって、おっしゃるようなことができると思うのですが、問題の所在というのは非常によくわかるのですが、私どもいつも悩む点は、じゃ、いま先生のおっしゃる数字でいきますと、六兆というような税収というものが生まれてくるわけでありますが、しかし、いま一挙に六兆の税収を図るということは、私はそう簡単な問題ではないような気がいたします。政権でも交代をすれば徐々にこれは緒についていくにしても、やはりある程度プログラムというものを提起をしていく責任というものは私どもにもあるだろうと思いますが、その辺、何か先生の方で税制の民主化の方向のプログラムというようなものをお持ちでありましたら、ぜひお示しいただければ幸いだというふうに思います。  それから、いまの日本景気回復の問題で私は一番心配しているのは、どうも国内の最終需要をふやすことじゃなくて、むしろ国外の輸出ということによっての景気回復をねらっているという点は、私は一番いま将来に対して危険をむしろ感じているわけです。そして安定的な成長という壁というものが恐らくじきにあらわれてくるでありましょうし、すでに最近においては各国の輸入制限という壁、こうしたものもかなり明確にあらわれてきておりますし、アメリカあたりでは自動車関係では一部にダンピングがあるのではないかということで、最終結果は出ておりませんけれども、いずれにしてもそういうダンピング傾向というものがあるわけでありまして、先ほども午前中もお話が出ておりましたけれども、輸出の価格指数というものはむしろ下がっている、数量で輸出を補っている、こういうふうないままでの高度成長の形というようなものが産業の中にまた再び相当頭をもたげてきたということが言えるのではないだろうか、こういうふうに思うわけでありまして、どうしても国民の一番大きい個人消費支出、その点をふやしていく、このことがいまの日本不況克服、新しい民主的な経済の仕組みをつくっていく上では、私はその点が一番基本ではないだろうか。  それにはベースアップの問題、あるいは個人所得減税の問題、あるいは移転支出をふやして税負担をしていない人々の消費をふやしていく、こういうところに購買力をつけて国内での景気回復をねらっていかなければ、私はじきに壁に突き当たるだろう。それでどうしても今年度における所得税の減税措置というようなものを私はやるべきであろうと思いますが、やり方がいろいろあろうと思いますが、先ほど丸尾先生の話では、この夏のボーナスについて減税を行えというような御提起もありましたけれども、その付近、加藤先生の方ではどういうお考えか、御名案がありましたらぜひひとつ御教授をいただきたいと思います。  それから三番目の問題として、私ども社会党としては大土地所有者の地価を再評価して、それに再評価税をかけろと、こういう主張をしているわけですが、もうけるときにはもうけようというので、銀行から金まで借りてどんどんと土地を買いまくる、あるいは土地転がしをしてその価格を上げてきたということでありまして、彼らの見通しがそれに沿わなかったからいま大変もてあましぎみだということでありますが、私はこれは当然だと思うんですね。一般の働く人は、経済不安だといって消費をものすごく切り詰めることによって何とかここを過ごしてきたわけでありますから、そうした大法人やあるいは大土地所有者に対する土地の再評価税というのは、かけるのは私はあたりまえだ。若干それが赤字であろうが、当然それは国民だってこのインフレで損したわけでありますから、負担の均等という形においても私はそれは当然だと思いますけれども、これについての先生のお考え方を承りたいと思います。  それから、ことし大きく問題になるのは、先ほどもお話に出ておりました公共料金のあり方だと思いますけれども、私はただ単に公共料金というのは何でもかんでも上げちゃいけないんだ、一銭たりとも上げちゃいけないんだという考え方には私はあまりくみしていないわけでありまして、むしろ上げ方の内容に私は問題があるのではないだろうか。負担のできる人には高い料金を、負担のできない人にはやはり低い料金をという、その料金体系の中で、一律な料金でなくてその間に負担能力に応ずる格差、あるいは電力料金でも大量にエネルギーを使う者には高い料金、それから生活のためにわずかしか使わない者には低い料金、こういうふうな料金の内部においてのランクというものをつけて負担の適正化というようなものを私は図る必要があるのではないか。そういう料金体系というものがちょっと顔を、去年だかおととし電力料金で、あれはそうであったのかどうなのか、これは後でよく調べてみないとわからないことでありますけれども、一応政策料金という形で出されたわけでありまして、こういうものを今後の電力、電話あるいは国鉄、こうした料金の中にも私は含んでいくような方向が公共料金のあり方として正しいあり方ではないだろうかと、こういうふうに考えておりますが、お教えをいただきたいと思います。  それからもう一点。最近、国の財政制度の中に私は特別会計というのが大変たくさんできてきてしまっていると思うんです。特に事業会計というようなものは、これは一長一短非常にあると思います。確かに過去のどんぶり会計というようなものから見ますと、その経営の内容を明らかにするというような形で特別会計というものの長所もありますけれども、あまり細かくぶった切っている。それだけの会計の中で収支のバランスを合わせるといえば、これはどうしても料金を上げていく、あるいは負担を多くしていくということでバランスをとるようにならざるを得ない。もちろん、国の一般会計から特別会計に金を入れるということを全部禁止しているというわけじゃありませんけれども制度としては当然その特別会計なりの中で独立採算をしていくというのが、私は特別会計のやっぱり一つの原則だろうと思います。そういうことによって必然的に公共料金というのが上げるようなシステムにつくられている。こういうことで、私はいまの特別会計というものは高度成長時代の一つ財政制度、こういうふうに考えられてならないわけでありますが、この辺についての先生の御見解をひとつ承りたいと思います。
  67. 加藤睦夫

    公述人(加藤睦夫君) 五点ほど御質問がございましたわけですが、第一点の、私が先ほど報告した言い方でいきますと、税制民主化のプログラムを示せということでございますが、実は税というのは、自分が重くかかりますと、やむを得ずと言いますか、それを批判する気持ちが起こってくるわけですけれども、よそから取れという、取れと言うと語弊がありますけれども、公平な負担を税制全体に実現しようというようなことは、なかなか人々のまとまった力になりにくいということがございまして、特にそれは高度成長の過程ですと、何と言いましても自然増収が多くて、一方で端的に言いますと資本蓄積本位の減税をしていましても、直ちにこちらの方でその分だけ税金が、税負担が高くなるというようなことは必ずしもなかったものですから、よけいそうだったわけですが。だからその点で言いますと、私は手だてというのは何か制度的にこういうふうにという意味じゃなくて、国民の声とするのにどういう手だてがあるかというところをちょっとまずもって考えたいと思うんです。  ところが、そういう事態はやっぱり最近の数年間というんですか、わりと最近ですけれども、三年ぐらいの間に非常に変わってきている。というのは、変わってこなければならぬ物質的な基礎といいますか、根拠があるわけですね。たとえば一方の方で税が適正に取られていませんと、いまの財政状態あるいは税の入りぐあいですとたちまちほかの方へ響いてくるということで、その証拠には、五十一年度予算ですと所得税の減税は見送りということになる。これは計算しますと源泉所得税だけで一兆円の増収。増収というのは、つまりこれは税の負担が上がるということでありますけれども。それから物価の変化というもの、実質所得の変化を考えましても、一兆円というのは二五%ぐらいふえるわけで、ということが端的に出てくる時代というのですか、時期になったものですから、もう、五、六年前にはとてもそういうような呼びかけで皆さんなかなか一緒にこれないというふうに思っていた事態は私は変わってきていると思うので、ここをやはり国民の声にするのにどういうふうにあれしたらいいかというところに、プログラムといいましたら一番そこを置きたいというふうに思うんです。  あと具体的な問題につきましては、それは事の進行でいろいろとありますので、どれが先へ行かなきゃならぬかというようなことがありますけれども、やっぱり一番だれが考えてもおかしいということからおのずから出ていくわけで、だからやっぱり特別措置というような問題がまずもって問題になり、それからそれが個人の、特に資産所得の課税の問題というのは、これは実はある意味で言いますと特別措置以上にむずかしい点があって、というのは日本の税制で単に高度成長の時期だけの問題ではなくて、もう戦前からあるいは明治から伝統的なものまで含んでいる。たとえば預金利子の課税なんかそうであります。だから、そういうことはありますが、私は基本的にはやっぱり国民の目が、それがそういう条件ができているということを申し上げたいと思うんです。これはやっぱり高度成長が終えんしたことの証明の一つだろうと思うのです。  それから第二番目に、輸出からかかわりまして、個人消費支出を中心にふやしていくという不況対策の立て方でありますけれども、私はこの点について全く異議ございませんし、同じ考えでございますが、ただ、消費支出を伸長させていくということは、つまり国民生活を豊かにしていくということで、それは消費だけじゃなくて、実はそういうものを基礎にした一定の産業というものがあるわけで、私は消費から、その消費を伸ばす、国民の生活を充実するというところに立脚した、やっぱり他方で産業政策といいますか、経済計画というものがおのずからあるのじゃないかと思いますので、ベースは生活に置きながら、同時に産業政策といいますか、経済計画が、その観点でのあれが出てくるのだろうと思うんですが、いまのあれでいきますと、その点が私の非常に不満とするところの一つであるわけです。つまり予算案などであらわしましたところを私なりに受けとめまして考えましても、そこら辺が非常にはっきりせぬということであります。  それから再評価税の問題でございますが、私は非常に一般的なことを申し上げて失礼かと思うんですけれども、やはりここでもまた二十年来重ねられてきた高度成長というものを切りかえなきゃいかぬ。これはだれでもその点では異議ないわけですけれども、切りかえのときには、やはり切りかえの出発点というのは、高度成長の一番いわば極端な、最悪の状態の中で蓄積した利得というものは何らかの形で課税の対象にあげていって、そこから上げました財源というものを次の段階計画の手段にしていくということが、これは少しでも本当にそこで節をつけなきゃならぬ、変わらなきゃいかぬということがはっきりすれば、そういうことになるのじゃないか。歴史的に見ましても、日本は何といいましても、戦後の財産税というものが非常にもっとそれは変化は劇的な大規模なものですけれども、やっぱり戦時経済というものから切りかえていくときに財産税が問題になる。だから財産税というのは、あんな規模の大きいものを必ずしもいまの変わり目に必要かどうかということはありますけれども、しかし、おっしゃられるような何がしかの一定のそういうものが必要だ。その中に当然のことながら土地の再評価税というものが入るし、土地だけじゃなくて、もう少し広くそのことは考えられてもいいのじゃないかというふうに思っているわけです。  それから四番目の上げ方の問題なんですけれども、これも一つは料金体系の問題で、これは一面で言いますと、それは福祉型体系というようなことを言われている面もありますけれども、単に福祉型だけじゃなくて、同じ外見は一緒ですけれども、またほかの面もちゃんとあるわけですね。というのは、つまり資源の有効利用というような面からも説明できるわけで、こういうことから言いまするに、大体いままでの料金体系が非常におかしかった。電気料金体系なんか私はそう思うわけです。だから、この点は全く私も同じ考えでありますが、ただその前に、やっぱり料金で負担すべき部分というのを、それはそれでそれぞれの行政なり公企業の内容に即して、非常に複雑ですけれども、多様でありますけれども、やはり料金の負担すべき範囲というのはまたそれで議論していきませんといかないじゃないか。  たとえば国鉄なんかですと、私ちょっと申しますと、やっぱりあれは民間企業と違いまして一定の政策の目的で国鉄を、何といいますか、拡張したりつくっているという面がありますので、そういう部分はもうこれは言うまでもなく料金負担でなくていわゆる公費負担にしなければならぬし、もっと言いますと、またさっきもちょっと言ったのですけれど、別のまたいろいろな考え方があるわけで、公企業だから独立採算で全部というような昔風の独立採算方式というのは、いまはもうだれも考えていないのじゃないかと思うわけです。だから、その上で料金の中の、これを福祉型と言おうが資源の有効利用と言おうが、まあ両方は意味が違いますけれども、それは料金体系の中で十分活用していったらいいのじゃないか。非常に一般論ですけれども、申し上げます。  それから五番目の特別会計の問題ですけれども、いまおっしゃられましたのは、どっちかといいますと、いわゆる財政政府関係機関、公社、公団というふうなものをお考えのようですけれども、特別会計でいいますと、特に公共投資公共事業関係なんかで、ちょうど交付税率の過程でたとえば道路は道路整備特別会計で一般会計からは直接一文も、というと語弊がありますけれども、要するに本質的には一文も出さないということになっているわけで、それが実はいま私たちが見てもおかしいと思うし、財政当局もそこのところは問題があるというふうにお考えになっている。  たとえば目的税が、つまり目的税と特別会計の設定というのはくっついているわけですね、道路整備ですと。それから目的税以外、また場合によりますと借り入れでやるとか、つまり交付税率の過程の中でそういう事業を拡大する必要上、税金だけじゃなくて、特定の税金あるいは一般的な税金だけじゃなくて、料金もそこでですね、そういうものをプールして事業を拡大していくという、行政を拡大していくというねらいがあったと思うんですけれども、そのことが今日では全体の行政を有効に、それから一定の目的に十分使うのに足かせになっていて、それでガソリン税をふやしましたら、道路に使わないと、いまの制度ができていますので何ぼ筋道を言うてもそこを根拠地にしてがんばられてしまうとなかなか手に負えぬということが出ていると思うんです。  やっぱり特別会計というのはそういうような影響を持ちますし、一般的にはこれは財政学の古典が言うように特別会計の乱設というのですか、これは慎まなければならぬ。しかし、いまの財政というのは、あるいは行政というのはかなり複雑になっていますから、あるものは、たとえば企業的な形態をとっているものは、そういうものはまた別個の経理をした方がいいということはもちろん否定はできないわけですけれども、一般的にはいまのようなことが言えるかと思うんです。ちょっと何か教室の講義みたいで失礼いたしましたですけれども、一般論で言いました。
  68. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 社会党の目黒ですが、安恒先生に二、三お伺いいたします。  先ほど、ことしの予算は社会福祉を袋だたきにした予算、こういう表現がありましたけれども、私も、この予算が出てから福祉関係のいろんな施設を歩いてみますと、むしろ安恒先生の表現とぴたり合うようなことをあちらこちらで聞いてまいりました。たとえばこの前、四国の本四架橋の現地視察に行ったときに、四国の老齢年金をもらっているおばあさんが、二万円の公約を実現しないで、なぜ本四架橋に三本の橋を架ける何兆円という金を使うんでしょうかという点を私に食ってかかっておったわけでありますが、それは三木総理や宮澤外相や大平蔵相に言った方がいいじゃないかと言ってきておるわけでありますが、そこで私はひとつお伺いしたいのは、この社会保障という問題は、まあ言い方が悪いかもしれませんが、現在の社会で労働者なりあるいは商売をやっている方々が、一生懸命働こうと思っても働くことができない。いわゆる年をとった、あるいは病気でどうにもならぬ、あるいはけがをして障害年金をもらっている、あるいは失業した、どうにもならないもうぎりぎりの方々が追い詰められた段階で、政治の責任でその方に人間としての生活を保障するのが私は社会保障の基本理念であると思っております。したがって、先ほど自民党の方から話がありましたが、そういうぎりぎりの線から言いますと、好不況につれて直接的に影響を与えるのは私は政治のあり方としては好ましくないではないか、このようにいま考えるわけでございます。  そこでお伺いしたいのは、いわゆるナショナルミニマムという話がありましたが、年金の問題にしても、あるいは生活扶助の問題についても、あるいは労働者の最低賃金の問題についても、もうこれだけの議論されておる段階でありますから、最低の生活はどの程度だという点が当然に私は設定されてしかるべきだと思うのでありますが、なぜ設定されないのか、この件についてどういうお考えを持っているかという点をぜひひとつお伺いしたい。そうして私は、その最低生活費を設定したならば予算の最優先政策として実現する、一遍でできなければ三年か五年ぐらいの長期的な計画をもってその実現を図る、そういう積極的な姿勢がなければ、どんなに議論をしても私は社会保障の問題は解決しない、このように基本的に考えておるわけでありますが、そういう点から見ますと、四十八年福祉元年から始まった五十一年、こう見ますと本当に行き当たりばったりで、どこに社会保障の基本政策があるのかという点がちっともわからないと言っても私は過言ではない、こう思うわけでありますが、これらの基本的な考えについて第一点お伺いしたいと思います。  第二点は、最近、私は非常に不審に思っているんですが、厚生大臣の私的諮問機関に年金懇談会が発足する、あるいは医療のたらい回しで問題になっている医療救急の問題については懇談会が発足する。何か社会の最も焦点になった大事な問題になりますと、行政当局はその責任を回避して懇談会懇談会と、こう逃げていくというふうに見えて仕方がないんです。それで、この懇談会に対する考え方についてぜひお考えを述べてもらいたい。私はこういう懇談会を設けるということを是認すれば、少なくとも厚生大臣は、厚生省はこういう具体的な方針を持っているが、それについて御意見を聞かしてほしいという、政策を打ち出して懇談会を持つなら結構でありますが、その政策がなくて皆さんの御意見を聞くという形で、非常にだらだら懇談会になってしまう。それからいろんな、社会保障審議会と懇談会との関係はどうなるか。これらから見ますと、屋上屋を重ねて問題の解決を先に延ばす、そういう政治の回避にすぎないではないか、こういう感を非常に深くするわけでありますが、これらの問題について、社会保障を一日も早く確立するという角度からどのようなとらえ方をしているか、ぜひ御意見を聞かせてもらいたいと、こう思うわけであります。  三番目には、よく問題になるわけでありますが、厚生年金の積立金が莫大な積み立てになっている。そして、大蔵省に行って財政投融資の大きな財源になっておるわけでありますが、これはILOの批准の問題についても、やはり少なくともこの労働者が出す年金の財源等については、当事者が運営をする、そしてどのような方向で使うかということは当事者が決める、そういう原則がILOの段階でも確立されておるわけでありますが、日本政府は絶対にこの問題を受けようとしない。たとえば衆議段階でわが党が老齢福祉年金の問題について、どうしても財源がなければ当面この厚生年金の積立金を一時流用しても老齢年金に回すべきではないか、そういう意見を述べても、全然大蔵当局、自民党政府はこれを受けようとしない。こういう点から考えますと、やはり労働者の掛金で自分たちのふところをあっためていると言っても過言ではないという邪道に行っているのではなかろうか。したがって、この厚生年金の積み立て事業を筋道に戻すという点が、やはり社会保障の問題の当面の課題ではなかろうか、こう思うわけですが、ぜひこの点に対する考え方を聞かせてもらいたいと、こう思います  最後に、現在、公的な福祉と企業福祉という言葉が言われておるわけでありますが、方向として、公的福祉、企業福祉という段階でどこにウエートを置いて進めるべきか、考えがあったらお聞かせ願いたい。  以上、四点を簡単にお願いいたします。
  69. 安恒良一

    公述人(安恒良一君) 目黒先生の御質問についてお答え申し上げます。  四点ございましたが、第一点のナショナルミニマムの問題、これは私はぜひとも設定をすべきだと思います。もちろん、私たちはできるだけ急速にこれをやっていただきたいと思いますが、直ちにできない場合には、私は社会保障の長期計画というものがまずつくられるべきではないだろうか。ところが、今年度国家予算を見ますと、公共事業に対しましては八つの長期計画がございます。港湾、空港、住宅、下水道、都市公園、海岸、安全施設、沿岸漁場、これら新しい八つの長期計画が発足している。ところが、いま目黒先生がおっしゃいましたように、すべてに優先をしてやるべきいわゆる社会保障の長期計画というのは一つもございません。ここにやはり私は、なぜできないかというのは、わが国の政治の貧困というところに一つできない問題があるだろう。  いま一つは、率直に申し上げて私たち労働組合や勤労国民の力が十分でないと思うんです。私たちは国民春闘ということで、こういう問題を取り上げて直接政府、財界と交渉いたしておりますが、政府考え方は、こういうものは国会の場なり政治の場でやるべきであって、直接労働者や国民と話し合いすべきでないと、こういう経過なんです。しかし、欧米先進諸国どこを見ましても、直接民主主義ということでこういう問題を取り上げて、政府、財界と労働者や勤労国民が話し合いをしながら社会保障のナショナルミニマムをつくっていくというのは、欧米先進諸国全体がとられていることでございますので、一段とそういうことに力を入れていきたいと思います。  私は、最大の欠陥はやはり何といっても政治の貧困。しかもいわゆる政府・自民党が長期計画をまず持つべきである。また野党先生方の御奮闘によってそういうものをつくっていただきたい。それに向かって着実に私はやはり前進をしていくべきものではないだろうかと思っています。  それから第二番目の問題でありますが、これも民主主義の形におきまして、私たちも直接参加、直接民主主義という形を考えている。でありますから、いろいろ問題のための審議会がつくられることについて必ずしも反対をいたしません。ただ問題は、審議会のつくり方なのであります。たとえばいま目黒先生が例に挙げられましたところの医療の救急の問題、このときに、私たちは少なくともたらい回し問題を防止するためには、これに従事している医療労働者の代表であるとか住民代表というものを加えて救急医療審議会を設けるようにということを、再三再四厚生大臣に交渉したのでありますが、残念ながら、学識経験者をもって構成するということでこれが拒否をされています。  それから年金の問題につきましては、私は屋上歴を重ねる必要がないと思うのです。それはなぜかというと、すでに年金問題を審議するためには社会保険審議会がございます。さらに社会保障制度審議会がある。これにはそれぞれ社会保険審議会は各側代表をもって三者構成で成立しています。それから社会保障制度審議会は学識経験者をもちまして、裁判所で言いますならば地裁と高裁というような形で、高い次元において社会保障制度全般をここで議論をしているわけです。そういうものがあるにもかかわらずに、年金審議会がつくられようとしているわけであります。  これは目黒先生も御承知のとおり、全くいわばこういう問題が起こってまいりますと、私的な諮問機関をやたらにつくる。たとえば例を挙げますと、二、三日前の新聞を見ましたら、労働大臣が国民諸要求を毎年要求されるのだから、この際は労働四団体を含めた国民諸制度を審議する私的諮問機関をつくりたいと。労働省所管以外のことを、どうして労働大臣の私的諮問機関でできるのかわかりません。国民諸要求というのは労働省所管だけではなくして、厚生省所管もあれば、通産省所管もあれば、各省にまたがるものであります。そういうものを労働大臣が私的諮問機関をつくってそこでやろうとすることについては、むしろ私どもから申し上げますと、国民諸要求、春闘の高まりというものを私的諮問機関によっていわゆるさえぎっていく、こういうねらいがあるのじゃないかと思いますから、私たちは必要な審議会というものはつくられる必要がある。ただし、屋上屋は要らないということ。それから、つくられる場合には、それにはいわゆる国民や労働者の総意が反映をするようなきちっとした審議会というものがやはりつくられるべきである、こういうふうに第二点については考えております。  それから第三点の財政投融資の問題についてでありますが、私は前段のときにも申し上げませんでしたけれども、私はことしの税制面において一番大きい欠陥は、いわゆる不公正税制をそのままにして、そうして財政の不均衡を抜本的に是正することなく、逆に大衆課税を強めたり、赤字公債の大量発行でやろうという歳入面の欠陥が一つあるわけでありまして、減税のことは私に与えられた直接のテーマでありませんから触れませんが、たとえば財政投融資計画によりますと、ことしの財投は十兆六千百九十億です。国債引き受けが一兆円、総額で十一兆でありますが、このうちの九兆六千二百十九億が勤労国民のささいな郵便貯金、厚生年金などで資金運用部から調達をされているわけであります。  すでに厚生年金の積み立てが十兆円になっておりますが、私はそういうものを使う場合には、大蔵省資金運用部からこれを切り離して、ILO条約においても明示されておりますように、厚生年金は厚生年金の資金運用のための審議会がつくられる。それには、条約にも示されていますように労使が対等で参加をする。さらに、政府も若干財政支出をいたしますから、政府の代表も入れて結構だと思いますし、必要ならば私は学識経験者ということで公益委員を入れた、このような審議会がつくられて、そして積み立てられました厚生年金をどのように国民や労働者の福祉重点に使わせていくのか、こういうふうにするべきだということも、これももう私たち長年の要求ということでしばしば厚生大臣に対してこのことを要求し、しかもこのことに対しましては、労使が一致をしまして社会保険審議会の答申文書には書いて——もちろんこれは労使だけではなく、公益を含めて、社会保険審議会の答申文書にしばしば書くわけでありますが、常に厚生省は大蔵省との話し合いの中でこれが握りつぶされている。こういうのが今日の現状でございまして、ぜひともこれは、自分たちの積み立てた金に参加できないというのは、これはもう低開発国においてすらすでに実行されておることでありますので、厚生年金等の積立金の運用については、いまも言ったような考え方でできるような御努力を一段とお願いを申し上げたいと思う次第であります。  それから、今日のようにいわゆる福祉問題が非常にやかましくなってまいりますと、よく企業福祉と公的福祉の問題がありますが、私はこの点におきましては、やはり公的福祉ということに重点が置かれなければならない。  御承知のように第二次世界大戦以来、先進資本主義諸国がとってまいりましたやり方はいわゆる高度経済成長でありまして、そして高度経済成長は福祉国家ということを標榜してまいりました。福祉国家の旗印は二つございまして、一つは完全雇用、一つは社会保障、社会福祉の中身を、水準を引き上げる、このことによって高度経済成長政策を各資本主義諸国はとってまいりました。ところが、四十八年のオイルショックや南北問題等々いろいろな原因で世界的なスタグフレーションに入りました昭和四十八年以降の各国の事例といたしましては、もうすでに福祉国家論そのものが危なくなる。これは時間がありませんから細かく申し上げませんが、完全雇用ということについてはどこもいずれも、アメリカ、イギリス、フランス、日本、イタリア等、常時最低百万の失業を抱えておるという現状であります。また各国とも見ますと、いわゆる国家財政赤字になりますので、福祉の切り下げということが各国で行われている。でありますから、各国どこにおきましても、今日減税問題や社会保障の中身や福祉を高めるための要求というのが、これはアメリカもイギリスもフランスもドイツも日本も、すべて勤労国民、労働者から要求として時の政府に出されているのが今日の現状であります。  こういうような中において、公的福祉と企業福祉というのは——企業福祉というのは一部支払い能力を持っております大企業においてはできることである。しかし、全体の企業においてはできません。ましてや、低経済成長政策をとってまいりますと、大企業においてすらいままでのような企業福祉ということはなかなか困難な状況が出てきておる。そういたしますと、福祉問題、社会保障問題というのは、いわゆる公的制度において年金を初め医療その他すべての社会保障をやっていくということが私は今日において正しい制度だと思いますので、その方面についての一段の御尽力をお願いを申し上げて、私の質問に対するお答えにしたいと思います。  以上であります。
  70. 渡辺武

    ○渡辺武君 共産党の渡辺武でございます。  加藤先生に一、二点伺いたいと思います。  一つ公債の問題であります。御承知のように、すでに公債の累積残高が五十年度末で約十五兆円くらいになっているはずであります。ところが、先日発表しました大蔵省の財政収支試算によりますと、五十五年度末にはこの額が五十兆円を超えるという数字になっております。五十五年度GNPに占めるこの公債累積残高を大まかに計算してみますと、約二八、七%になるのじゃないかというふうに考えられるわけであります。この莫大な公債の累積、これがどんな影響を特に国民に与えるのか、あるいはまた日本の国民経済に与えるのか、その辺を御説明いただけたらありがたいと思います。  特に、私いま申しました財政収支試算を見てみましたら、五十年度の国債費ですね、金利の支払いその他に充てられる分ですが、約一兆一千億円、ところが五十五年度にはその四倍、四兆四千億円と急増しているわけであります。恐らくこんな事態では、この国債の累積ということそのことが、将来の重税とインフレの原因になるのじゃないかというふうに思いますが、その点も含めてお答えいただきたいと思います。  それから、同じく公債の問題でもう一点伺いたいのですが、この財政収支試算によりますと、赤字公債の発行が五十三年度もしくは五十四年度まで続くという見通しになっているわけであります。従来の理解によりますと、赤字公債の発行は財政法四条でも認められていない。財政危機などの緊急な場合に緊急避難的な意味で認められるだろうというのが多くの財政学者の意見だったと思いますけれども、五十三年度、四年度といいますと、すでに景気が回復して経済もかなり成長しつつあるというときに、なおかつ赤字公債を出そうという見通しになっているわけでありますから、一体これでは公債発行の歯どめはどうなるだろうかと疑問が出てくるわけでありますが、この公債発行の歯どめという点について御意見を伺いたいと思います。  それからもう一点伺いたいのは、先ほど先生の御公述の中で、五十一年度予算が依然として列島改造型の公共投資を中心にしているという御趣旨の御発言があったわけでありますが、私はこれは国家予算だけでなくて、地方財政の方もこういう国家予算の性格にいわば従属化され一体化されて、そのことがまたいまの地方財政危機の一つの大きな原因になっているのじゃないかというふうに考えられますが、特に、この公共投資に関連して地方財政計画がどんなふうになっているのか、この辺を伺いたいと思います。
  71. 加藤睦夫

    公述人(加藤睦夫君) 三点の御質問があったわけですが、第一の公債影響の問題でありますが、ちょっと非常に一般的なお答えで失礼かと思うんですが、もちろん第一に、いまおっしゃいましたような規模の国債というものがインフレと、これはあえて言いますと、直結するような位置を持っているということは明らかだろうと思うんですが、その点につきまして——そうですね、最初に項目を申し上げますと、その次に、インフレが顕在する途中の過程で、クラウディングアウトというような言葉をこのごろよく使うわけですけれども、つまり中央銀行の追加信用というような事態を一定限度で避けようとしますと、金融機関という場面になるわけですけれども、資金の配分のあれを変えていかなければならぬという問題があります。  結局、その資金の配分をかなり徹底してやっていけるというような見通しがあれば、その限りでインフレの問題はもう少し後景に退くわけですけれども、しかし、それができるのかという問題。できるのかというのは、つまり公債規模がいまおっしゃったような規模になりました場合に必要な資金の配分を変えていくということが可能かどうかといいますと、これは大体建設国債と言われるような範囲の問題でしたならば、あるいはそれは直結するというようなことに——言い方は適切でないかもしれないですけれども。特例公債と合わせて五十兆円になりますと、これはとてもそういうような資金配分を変えていくというようなことはむずかしい。ましてや、それが不況の局面で一定の遊離貨幣が発生しているときには、非常に短い期間ですとある程度うまくいきそうな局面がないことはないですけれども、しかし、それは循環局面が変わりますと非常に一遍に様相が変わってくるというようなことで、現実には資金量の再配分ができない。  つまり、産業企業への貸し付けを抑えて国債を売りにくるというようなことは非常に限度がありますので、金融機関の中で一定の非常に緊張状態が起きてくるということの中で、中央銀行が信用膨張の手段に訴えなかったらこれは全般的に非常にぎくしゃくがひどくなって、そこでは切り抜けても、ほかのところでもっとある意味ですと重大な矛盾が出てくるというようなことの中で、現実には私なんか三兆円を超えるような公債発行になりますと、ことに日本の金融のあれですと、つまり国債の利子を上げていくというようなことがこれはできないと言った方がいいかと思うのですけれども、そういう中で信用割り当てが行われますので、つまり中央銀行の信用膨張というものはついて回るということで、いまのような規模の国債というのはインフレと直結すると言った方がいいのじゃないかと思うんです。それが、報告の中で申し上げましたような過剰流動性の問題で、つまり現金と預金の合わせたものが前年度増加率二〇%に達しているというようなことが、そのことをその結果としてあらわしていると思うのです。  ですから、インフレの問題と、その前に資金の配分上の圧迫がくるということであります。  それだけかといいますと、もう一つは、財政上の負担が公債の、もちろん元利償還でありますけれども、元金の方は、一定限度ですと公債管理政策に頼って買いかえというようなことができないわけじゃないですけれども、しかし、それも後から後から新発債が出てくるという状態の中では非常にむずかしくなる。だから、元金の返済はその点で迫られるわけですけれども、同時にこれは利子の利払いというものが、国債を大量に発行しますと——本当は財政当局は国債を大量に発行いたしますと、元利償還を考えますと低利でいきたいわけですけれども、実は大量国債を低利で発行するということは本当は背理なんで、それは利子を上げていくのは財政金融全体を通じまして抑えているわけですけれども、しかし、下げるということはとてもむずかしくなる。そこで利子負担が非常に大きくなるということで、ある期間を過ぎますと、ただ新発債は元利償還のために埋めていっても足りないというようなことになりかねないと思うのです。  それで、財政にとりましては利子負担、元利償還負担の増大ですけれども、それは今度は国債の持ち手から言いますと、国債の所有者に対して利子が支払われる。利子負担が財政上非常に負担が高くなる、重くなるということは、国民所得全体から考えますと、国債利子ということで再分配が行われるということが、これは昔から言われていることでありますけれども。  大体その四点、皆うらはらになっているわけですけれども考えていかなければならぬことじゃないかと思うのです。だから、再分配のことがあまり言われないきらいがありますのですが、本当から言いますと、国債を使っての所得の再分配というのは、実はこの三つか四つの問題に劣らない重要な問題であるわけです。  それから二番目の歯どめの問題になりましょうか。もちろん、財政法というのは直接にあれは憲法的な基礎を持っているわけであろうかと思うのですけれども、特例公債というのは、まさに特例法として認められない限りそれはできないことは明らかなわけですけれども、しかし、そのことは同時に、そう継続してやったら、毎年毎年特例法を出しましたら実際上は特例法じゃなくなっちゃうということが他方でありますが、そこで歯どめの問題としていままで言われていますことは二点になっているわけですね。一つは市中消化という歯どめ、それからもう一つは建設国債という歯どめ。つまり赤字国債は例外である。本当は赤字国債を四年も五年も続けるというのは、これはもう背理になるわけです。  まず、市中消化のことでいきますと、これは実は割り当て消化なんで、市中消化という外観だけで歯どめを設定するということが、特にこういう大量国債の時代になるとどれだけ有効かどうか。私は国債の量的な歯どめというやつを、ちょうど日銀券のあれで一これはいまはそういうのはないわけですけれども、戦後といいますか、歴史上そういうことはかなり長い経験を持っていた時期もあるので、その消化のことで言いますと、市中消化ということだけに頼っていたのではだめで、量的なあれがなかったら、と言いますのは、割り当て消化ですから、一応みんな市中の消化ということになって、一年置きましたら後はどうにでもなると言ったら極端ですけれども、それはもちろん日銀、中央銀行は中央銀行としての政策目標がありますから、それに規定はされているのですけれども、他方で言いますと、どうにでもなるということがまた当てはまるような事態がありますので、その手段は非常に多様であって、必ずしも国債買い取りという手段だけでなくても、一般的に信用を膨張させていくということでそれは満たせるわけだと思うのです。  それから赤字と建設の区別なんですけれども、これは私は一定の歯どめ的な意味は認めるわけです。ですから、その点では建設国債という立て方は決して無意味なものでないと思うのですけれども、しかし、経済的には建設国債だからいいというようなことにはならなくて、赤字国債とどれだけの根本的な差があるかといいますと、その差というものは非常に怪しいものだという考え方なんですが、ただ歯どめとしては、そういう経済的な意味とは別に、行政的あるいは行政統制的な意味では一定の意味は持っているというふうに思うわけです。  ちょっと一言言いますと、建設国債がわりと一定の根拠を持っていたのはまさに高度成長の時期なんで、高度成長の時期には社会資本の造成というやつが比較的生産力の増大ということの一環に動くような関係が、これは相対的な問題ですけれども、若干なりともある。しかし、いまのような時代になりましたら、公共投資をやったからそれが生産力として動いていくというようなことにならぬで、非常にむずかしくなる。ですから、そういうような意味では、建設国債という経済的な意味の歯どめというのは、もういまは非常に変わっているのじゃないかということを言いたいわけです。ただし、行政的な歯どめの意味というのは確認していいかと思うのですが。  それから列島改造型ということで申し上げて、私ちょっとやっぱりそれは正しいのじゃないかと思うわけですけれども、それで地方財政関係でいきますと、実はこれが、先ほども公共投資というものが非常に大型プロジェクトで中央集中の形をとっておるということを申し上げたのですけれども、ちょっと数字を申し上げますと、まず国の一般会計の公共投資の対前年増加率が二六・四%であります。それに対して、そこから一部といいますか、三分の二ぐらいになろうかと思うんですけれども、地方財政公共事業の補助金が配賦になりまして、それで地方でもって普通建設事業が行われるわけですが、これが対前年伸び率で一七・七、というのは地財計画の数字をそのまま使わしてもらっているわけですが。ところが、単独事業、単費がどのくらいになるかといいますと一二・六。それからさらに地方財政における公共事業関係の維持補修費になりますと六・三%。実はこの維持補修費は、自治省のあれを見ますと、五十年度予算ですと前年度二五%増ということで、ことしはさま変わりであります。この中には、先ほど長野県の知事さんがおっしゃいましたような、維持補修費の一部を補助事業に繰り入れたということは若干なりとも影響しているわけですけれども、しかし、この変わりようは、これはそのことではとても説明できるものじゃないと、私は内容はよくわかりませんけれども、思うわけです。  ここで申しましたのは、つまり地方財政が、主としてやっぱり普通建設事業、補助金をもらいますと、公共事業をやるためにかなり無理している。これは手当てはどこでやるかといいますと、地方債が主力になっているのが現状であるわけですけれども、そのため単独事業、特に補修なんということには非常にしわが寄っているということが明らかだろうと思うんですが、だから、詰めて言いますと、これは大型プロジェクトの関連事業にやはり主力を注がざるを得ない状態があらわれていて、単独事業あるいは補修事業というのは、今日の地方財政の状態の中では、これの地財計画で見ますと歴然としてそのしわ寄せが来ているということかと思うんです。ちょっとそれだけ、先ほどのに補足させていただいて、お答えにかえさせていただきたいと思います。
  72. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは大分遅くなっておりますので、安恒公述人に簡単にお伺いをしたいと思います。  先ほどからの論議でも、五十一年度予算案をめぐりまして、高負担低福祉なのか、高負担高福祉なのかということが大変論議になったわけでございます。安恒公述人は、福祉袋だたき予算だと、こうおっしゃっておられたわけでございますが、私どもも福祉憎む予算だとこういうふうに申しておりますので、まさに御見解はよくわかるわけでございます。  特に国民は、大変なインフレと深刻な不況の中で、生活防衛に大変な努力、苦労をしているわけでございますが、そういった中で、ごく一般的に言いまして、やはり老後の不安、それから疾病に対する不安、こういったものが非常に大きなウエートを占めておることばもう御承知のとおりでございますが、そういう中で、先ほどからのお話の中では、高福祉高負担か、高負担低福祉かということになっておったわけでございますが、私繰り返しませんけれども、すでにお話の中で出ておりますように、ヨーロッパ諸国との比較を見ましても、国家支出が大変社会保障費に対して少ない。これはもう数字が示しておるので非常に明確でございますし、その後のお話の中でも出てまいりましたように、統計が示しますような国民総生産に対する社会保障費の比率も、まさにヨーロッパ諸国の三分の一ないし五分の一というきわめて大変な状況になっておるわけでございます。  ところが、五十一年度予算では、御指摘がありましたように、厚生年金でも掛金が千分の七十六から千分の九十四と、非常に大幅な引き上げがなされる。健康保険の方はすでに弾力条項というふうな法律ができ上がっていて、自動的に負担増がやられるというふうなことになっておるわけでございますが、そういった中では、これは負担の面から言いまして明らかに被保険者である国民の高負担というのは実に明確であり、しかも、毎年のように負担増が出てくるということは火を見るよりも明らかだと思うわけです。そういう中で、先ほども御指摘がありましたけれども、ヨーロッパ諸国では国家財政から支出するという割合も非常に高い。同時に、社会保険に占める労使の分担割合というのが非常にやはりわが国とは違っている。わが国では厚生年金におきましても社会保険におきましても、五割五割というまさに労使折半の負担割合になっておるわけでございますが、同じく資料によりますと、フランスではその割合が労働者一に対して事業主が三・六倍、イタリアでは労働者一に対して四・一倍、スウェーデンでも一対二というふうになっておる状況でございます。  まさに、そういった点は先進資本主義国における趨勢とも言える状況になっておると思うわけでございますが、わが国で依然として五対五というのは、これはやはりどうしても改めていかなければならないのではないかというふうに思うわけでございます。私ども日本共産党でも、この点については、少なくとも労働者三、資本家七というふうに負担割合の変更を実施するべきであるという点を提案をしておりますし、また労働団体の皆さんの方でもそういった御見解が出されておると思うのですけれども、具体的に労働者の負担割合を軽減していくという立場で、こういった三対七の負担割合等についての御見解をひとつ、この際でございますのでお伺いをしておきたい。その点が一点です。  もう一点は雇用問題、雇用不安の問題、失業の問題等の中で出てまいっております一つは婦人労働者の問題でございます。特に、深刻な不況の中で婦人労働者に対する首切り、雇用不安というのが顕著に出てきているというのはもう御無知のとおりでございますけれども、そういう雇用不安の中で、これは労働省も認めておられるようですけれども、こういった雇用不安の中では働く婦人の労働条件の低下というものが覆うべくもなく出てきているということは、すでに統計でも出てきているということでございます。  ところが、わが国雇用労働者の中の三分の一、千二百万人に及ぶ婦人労働者が働いておるわけでございますが、しかも、その中で軽視できないと思いますことは、昭和三十年時代と違いまして、既婚の人ですね、労働婦人の中の既婚者が、いわゆる寡婦の方を含めますと七〇%になってきているという点が労働婦人の実態のようでございます。しかも、そういった中での母性保護の問題というのはきわめて重要になってきているわけですけれども、残念ながらわが国では、ずいぶん医学、医療の進歩をしておるにもかかわらず、妊産婦死亡率、これは残念なことにスウェーデンあたりと比べますと五倍以上にもなっておるというふうな大変な事態が起こっているわけでございます。  そういう点で、こういった不況下における特に婦人労働者に対する攻撃というのですか、圧迫というふうなものが出てきておるというのは、もう一面で見ますと、新たな不況下における新らしい合理化傾向というのが出てきていて、その中では、人減らしがどんどん進められていくという中で大変な残業というのが起こってきています。私どもが職場の働く婦人と話をしますと、サービス残業というような話が、サービス残業というのですから、恐らく手当がどうなっているかわからないという中身であろうと思いますが、サービス残業という言葉が頻発をするというふうな事態にまで来ているという、こういう中では、本当に民族の将来を守っていくためにも婦人労働者の保護というものがきわめて重要な段階に来ていると思うわけでございます。  ちなみに、昨年は国際婦人年ということで、特に各界の婦人の中では婦人の母性保護に対する要求というのは非常に強くなってきておるわけでございますが、そういう中で労働省の統計等を見ましても、実績といたしましては、産前産後、特に産後休暇については五十日になっておるというふうな実績、そういった点を含めまして見ますと、どうしても母性保護の立場から言って、産前産後休暇八週間以上を含めて、そういった母性保護の点でも強化をしなければならないというふうに考えますけれども、そういった点での御見解をあわせてお伺いをいたしたいと思います。
  73. 安恒良一

    公述人(安恒良一君) 私が福祉を袋だたきにするいいかげんな予算と申し上げて、自民党の先生方からもいろいろ御批判をいただいているんですが、私は根拠があって申し上げているわけでございまして、時間がなかったから申し上げませんでしたが、まず受益者負担で公共料金がむちゃくちゃに上げられるわけです。たとえば、いまも議論になりましたように、もしも国鉄運賃をことし約五割上げて来年五割上げていく、こういうことになりますと、いままでだったら東京から大阪まで行けた距離が、名古屋までしか行けなくなる。そうでなくても不況その他がございまして、なかなか労働者が自分の生まれた田舎に正月やお盆に帰れない。こういう状況の中、ますます遠のいていくと思いますし、電信電話料金の値上げも計画。そういたしますと、政府統計だけでも公共料金の値上げが物価に二%やはり響く、こういうふうにされているわけです。  それから、高負担低福祉問題はもう触れましたから省略しますが、いま一つはやっぱり減税問題です。御承知のように、ことしの減税は、十六年ぶりでありますが所得減税が見送られました。一方、逆に住民税の均等割りが三倍に引き上げられましたし、自動車関係税が上げられましたから、国民の負担は非常にふえるわけです。ところが、会社の場合は租税特別措置法、私は税調委員をしていますが、いろいろ手直しをお願いしたんですが、実際は全部セレクトされまして、年間で約百五十億程度、しかも四十九年度会社臨時特別税は千八百億の収入があったんですが、これはもう企業課税を廃止をする。でありますから、実際上私ども労働者の場合には所得減税がございませんでしたから、具体的には増税になる。こういうことで、午前中にも御発言があったそうですが、もう国家予算はいまこの国会で審議されていますから、五十一年度のいまの予算で無理でも、少なくとも秋には私はまた補正という問題等が出てくると思いますから、年度の中途においても大幅減税をぜひともこれはお願いをしたい等々、いろんな根拠を持ちながら、いわゆる福祉を袋だたきにする予算だと申し上げたのでありますから、この点については御理解を願いたい。  そこで、沓脱先生の御質問に直接お答えをしたいと思いますが、私どもはやはり各種保険の割合を、森下先生の御質問のときにも答えましたように、ヨーロッパ並みに七対三にしたいというふうに実は考えております。そして、すでにこれは七三年からここ三年間、私たちは春闘の中で資本家に要求してこれをやってまいりました結果、現在では組合数にいたしますと千七百二十の組合が一応七対三の割合になります。しかし、これはごく一部分でございます。これを大きく阻害をしているのは何かというと、厚生年金、それから失業保険法、それから健康保険法等に、労使負担はいわゆる折半を原則とする、もしくは折半をする、こういう法律があるわけであります。でありますから、ぜひとも私たちはこの法律自体を改正をしていただきたいと思います。  しかし、法律の改正というものについて、私たちはわれわれだけが手をこまねいて見ておってはいけませんので、具体的に労使の団体交渉事項として、いま一歩一歩改正を積み上げてきている。さらに厚生省との議論の中でも、労使である程度決まったならば、たとえば年金なら年金の負担割合の内容についてはせんさくするいとまがない、こんなところまで引き出すことに成功いたしましたが、手っ取り早いのは率直に言って法律改正が一番早いと思いますから、私たちも努力をいたしますが、どうか先生方もやはりヨーロッパ並みに労使の負担が七対三になるような法律改正について、一段と御協力をお願いを申し上げたいと思います。  それから婦人問題は、これはもう非常に重要な問題でございまして、いま御指摘のとおりの産前産後休暇八週間以上というものは私は大賛成でありますが、その前にやはり一番考えなきゃならぬことは、日本の場合には大学や高校や中学を出たときに、初任給に男女格差があるわけです。こんなばかげたことはないわけです。ヨーロッパ各国どこを見ましても、初任給から、男であるから初任給幾らだ、同じ学歴で女だから幾らだと、こんなばかげた制度はもう男女差別もいいところでありますし、私たちはやはり三分の一が婦人労働者で占められていますから、われわれもやはり国会の外において、労働運動といたしましても、産前産後休暇を初め、それからいわゆる初任給から男女に差別があるなどということについて、やはり同一労働、同一賃金ということで是正のためにがんばっていきたいと思います。  それと同時に、雇用不安という問題は、これはただ単に婦人労働者じゃなくて全体の問題でありまして、私は雇用不安を解決する積極的な方法は何かというと、これは率直なことを申し上げて、一つは定年制の延長、第二番目には週休二日制の完全実施だと思います、週休二日制。さらに、先生の御指摘のような産前産後休暇や年次有給休暇を完全に消化していく。このことは積極的な雇用拡大につながるわけでありますから、そういうような点もあわせて私どもは院外においても労働運動としてがんばっていきたいと思いますし、どうかそういう点について、法律の積極的改正についても先生方の一段の御尽力をお願いを申し上げて、二つの質問にお答えとしたいと思います。  以上です。
  74. 八木一郎

    委員長八木一郎君) それではこの程度にいたします。  お二人の公述人には、長時間にわたり貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手)  明日は午前十時から予算委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十八分散会