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1976-05-07 第77回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月七日(金曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員の異動  五月六日     辞任         補欠選任      和田 春生君     向井 長年君  五月七日     辞任         補欠選任      竹田 四郎君     上田  哲君      相沢 武彦君     矢原 秀男君      神谷信之助君     上田耕一郎君      沓脱タケ子君     橋本  敦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         八木 一郎君     理 事                 梶木 又三君                 高田 浩運君                 山内 一郎君                 吉田  実君                 小野  明君                 森中 守義君                 桑名 義治君                 渡辺  武君                 向井 長年君     委 員                 安孫子藤吉君                 石破 二朗君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 熊谷太三郎君                 源田  実君                 坂野 重信君                 玉置 和郎君                 戸塚 進也君                 中村 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 林田悠紀夫君                 最上  進君                 森下  泰君                 上田  哲君                 加瀬  完君                 片岡 勝治君                 神沢  浄君                 竹田 四郎君                 田  英夫君                 野々山一三君                目黒今朝次郎君                 矢田部 理君                 山崎  昇君                 太田 淳夫君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 上田耕一郎君                 内藤  功君                 橋本  敦君                 木島 則夫君                 田渕 哲也君                 青島 幸男君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        長)       福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  永井 道雄君        厚 生 大 臣  田中 正巳君        農 林 大 臣  安倍晋太郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  木村 睦男君        郵 政 大 臣  村上  勇君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣  竹下  登君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      福田  一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 井出一太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       植木 光教君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       松澤 雄藏君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       佐々木義武君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  小沢 辰男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        国防会議事務局        長        内海  倫君        公正取引委員会        委員長      澤田  悌君        公正取引委員会        事務局官房審議        官        水口  昭君        公正取引委員会        事務局経済部長  吉野 秀雄君        公正取引委員会        事務局取引部長  後藤 英輔君        警察庁刑事局長  土金 賢三君        警察庁刑事局保        安部長      吉田 六郎君        警察庁警備局長  三井  脩君        行政管理庁行政        監察局長     鈴木  博君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁長官官房        長        玉木 清司君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        防衛庁人事教育        局長       竹岡 勝美君        防衛庁衛生局長  萩島 武夫君        防衛庁装備局長  江口 裕通君        経済企画庁長官        官房長      辻  敬一君        経済企画庁長官        官房参事官    柳井 昭司君        科学審議官    半澤 治雄君        科学技術庁計画        局長       安尾  俊君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    伊原 義徳君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省入国管理        局長       影井 梅夫君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省条約局長  中島敏次郎君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵省主計局長  吉瀬 維哉君        文部省初等中等        教育局長     諸沢 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        厚生省公衆衛生        局長       佐分利輝彦君        厚生省医務局長  石丸 隆治君        厚生省社会局長  翁 久次郎君        厚生省保険局長  八木 哲夫君        厚生省年金局長  曾根田郁夫君        農林大臣官房長  森  整治君        通商産業省貿易        局長       岸田 文武君        通商産業省産業        政策局長     和田 敏信君        通商産業省機械        情報産業局長   熊谷 善二君        資源エネルギー        庁次長      森山 信吾君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        井上  力君        資源エネルギー        庁石油部長    左近友三郎君        中小企業庁計画        部長       織田 季明君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        運輸省航空局長  中村 大造君        郵政省人事局長  浅尾  宏君        労働大臣官房審        議官       吉本  実君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        自治省行政局選        挙部長      土屋 佳照君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        外務省大臣官房        領事移住部長   越智 啓介君        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君        日本国有鉄道理        事        尾関 雅則君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○昭和五十一年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十一年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十一年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  理事辞任及び補欠選任についてお諮りいたします。  木島則夫君から、都合により理事辞任いたしたい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  補欠選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事向井長年君を指名いたします。     —————————————
  5. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 昭和五十一年度一般会計予算  昭和五十一年度特別会計予算  昭和五十一年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、総括質疑を続行いたします。源田実君。
  6. 源田実

    源田実君 最初に、憲法解釈につきまして御質問申し上げたいと思います。  まず、総理にお伺いいたしますが、この憲法というものは国の最高の法規である。これは日本国民だれも容易に理解し、そうしてまた、その解釈分裂があっては、はなはだ困ったことになると、こういうぐあいに考えるのでございますが、その点は総理のお考えはいかがですか、お伺いします。
  7. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国民に、だれもがよくわかりやすくて解釈疑義の生じないことが源田君の言われるとおり理想だと思いますが、どこの国でも、憲法裁判所をもってやるときもある、やはり疑義が生じる場合がございますので、そういうことの疑義が起こり得る場合もあると思いますが、理想としては、疑義の起こらぬような憲法であることが好ましいことは一般論としては言えると思います。
  8. 源田実

    源田実君 こういう疑義が起こることは、これは若干あると思います。しかしながら、きわめて重要な問題で国論が大きく分裂するということは、はなはだよろしくない。これは憲法そのものについてもわれわれは検討しなきゃならない、こういうぐあいに考えるんですが、その点、総理いかがお考えになりますか。
  9. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはやはり、憲法疑義が生じたら直ちに改正ということは、このことは、改正というものはきわめて厳しい条件を付してあるわけですから。その厳しい条件を付したということは、憲法改正は世論の成熟を待たなければ、簡単にしょっちゅう憲法改正を持ち出して、国の基本法に対して、憲法問題が政治の中心の議題になるということは好ましいことでないことは明らかですから、したがって、憲法改正には厳しい条件を付してあることだと思います。どこの国でもそうですが、そういうことでいろいろ疑義の点があっても、その点はやはり国民理解ということによってそういう点を補っていく場合も私はあり得ると思う。すぐに改正というのは容易でないですから。好ましいことは、そういう疑義の生じないことは好ましいけれども、しかし、直ちに改正ということはなかなか容易なことではない。そうなってくると、その解釈をやっぱり国民理解国民多数の理解によって補っていく方法もとらざるを得ない、こう考えております。
  10. 源田実

    源田実君 朝令暮改は私も賛成ではございません。しかしながら、非常に重要な問題が長い間にわたって国論分裂というようなことを生じておるような場合には、これは特別にまた考えなきゃならぬと考えます。  ところが、この憲法の中で——私は大体旧制中学四年修了程度一般学力はそれしかありません。あとは専門的な部門に入ったもので、こういうものに対して旧制中学四年修了程度学力、しかし、そういう非常に学力程度の低い者が見てもどうにも解釈のできない問題がある。というのは、この前文の第一項の中に、「政府行為によつて再び戦争惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」ということが書いてあります。この「政府行為」ということによって戦争惨禍が起きることがないという、この「政府」というものの解釈は、四日に外務大臣アメリカの広範な意味政府ということを言われましたが、これは行政府を指すのか、それとも立法府、司法府、こういうものを全部含めた大きな意味のガバメントを指すのか、この点は、法制局長官、どうお考えですか。
  11. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 憲法前文の第一段にございます「政府」の言葉は、これは狭い意味行政府を指すのではなくて、国家統治機関全体を指すものというのが、これはもう学界の通説であろうと思います。
  12. 源田実

    源田実君 そうすると、この広い意味政府——狭い意味でも同じようになると思いますが、現在の憲法下において、国民意思に反して戦争に入るということは、どう考えてもないと思うのです。そういう危険があるのかどうか、この点ひとつ、これはやはり総理にお伺いしたいと思いますが、それとも法制局長官、どちらでもよろしいです。
  13. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) この前文の第一段で、「政府行為によつて再び戦争惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」と書いてございますのは、ただいま申し上げましたように、戦争の主体が国家である、戦争を起こすことの決定は国政の運用に当たる国家機関によってなされるということに着目したからであると考えられるのでありまして、その趣旨といたしますところは、要するに、わが国民がかつて体験したような戦争惨禍が起こることがないようにするという日本国民のかたい決意を表明したところにあると考えられまして、これは憲法基本原則一つであるところの平和主義を強調したものであるというのが現在の前文解釈であろうと思います。
  14. 源田実

    源田実君 それならば、なぜここに政府行為によりという文句が必要なのかどうか。日本国民は再び戦争というものをやらないという決意をここに表明するだけで、その方がむしろすっきりする。政府行為によると言うと、戦争をやるのは、政府というものがあって、これはうっかりできないものである、よほど監視しなければ危ないことをやる存在である——これはアメリカ独立宣言の中にちょっとそういう文句がありますが、そういうようなアメリカ流考え方であって、日本では政府が独断で勝手に戦争をやることはもちろんできない。そういうものが、これを見ると、やるかもしれないような疑いを持つようになりますが、この点どうお考えになりますか。
  15. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) それは、その前文のその言葉の次に、「ここに主権国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と書いてございますが、憲法制定の当時における考え方は、従来の、過去の戦争国家機関の手によって行われ、その惨禍日本国民がひとしく受けたというところに着目をいたしまして、どうしてもそういうことが起こることがないようにしよう、そこで国民主権ということを確立することによって過去のそのような例が起こることがないようにするというかたい決意を表明したものであるということが大方憲法学者解釈でございます。私もそのとおり考えております。
  16. 源田実

    源田実君 そうすると、もう戦後三十年たった。そうして今後また三十年なり五十年なり百年なりたった場合には、もう実績が十分出れば、こういう、政府に対して重大な疑いを持たせるようなことは、自分らが選んだ政府であって、それをみずから疑うというような形のものについては再検討を要すると思いますが、いかがでしょうか。
  17. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) この憲法前文にしろ、まあ他の法律にも前文が入っているものがございますが、憲法なりあるいは重要な法律制定するいわば動機となった立法者意思を表明するものでございまして、日本国憲法制定昭和二十一年の十一月三日に行われましたが、そのときにおける日本国民理念を表明したものでございまして、過去の事実であるということになればそのとおり過去の事実であるかもしれませんが、日本国憲法制定の原由となった考え方を示すものでございまして、新たに憲法制定するということになればこれは別問題でございますが、日本国憲法が存続する限り、この憲法制定の由来を示した前文はそのまま存置して何ら差し支えないものであると思っております。
  18. 源田実

    源田実君 次に、ここに憲法制定原理が書いてあって、それから、「これに反する一切の憲法法令及び詔勅を排除する。」というのがあります。ところが、私は、ちょっとこれは法律的には問題ないかもしれないが、道義的な意味から言いまして、旧憲法七十三条によって新憲法制定された。ところが、新憲法ができると同時に旧憲法は排除する。旧憲法というものを、これを新憲法を生む道具として使って、まあ俗な言葉で言うと、腹は借り物というような考え方がここにあると思うのですよ。これは神聖な憲法を扱う場合に、腹は借り物的な概念を与えるようなこの表現方法は、はなはだどうも納得できないんですが、納得できるでしょうか、これは。
  19. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 新憲法制定と申しますか、日本国憲法制定法理論的にどういうものであるかということについては、いろんな学説があることは御指摘のとおりでございます。ただ、政府といたしましては、これはあくまでも旧大日本帝国憲法第七十三条の改正手続によって旧大日本帝国憲法改正されて、その改正された後の姿として日本国憲法ができたものであると考えておりまして、その間、法理的に何ら矛盾はないものであると考えております。
  20. 源田実

    源田実君 私は、いまも言いましたように、法理的には矛盾はないかもしれません。しかし、道徳的というか、七十三条だけ使って、でき上がったらすぽっと親の方は切り離してしまうという、こういう考え方はわれわれ日本民族の伝統的の考え方の中にはないと思うんですがね、これはいかがでしょうか。
  21. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) ただいま申し上げましたように、旧大日本帝国憲法第七十三条では、憲法改正手続を定めております。その改正手続によって、もちろん旧憲法欽定憲法でございましたので、その改正手続天皇が発議をされて、それで当時の帝国議会審議をして、それをさらに天皇が裁可されるという形で改正が行われたわけでございます。改正が行われて新しい憲法基本原理国民主権ということにあることは御承知のとおりでございます。そこで、人類普遍原理である国民主権に反するような一切の憲法法令及び詔勅を排除するということを言っただけでございまして、大日本帝国憲法第七十三条の規定によって改正手続が行われ、その改正が行われた結果、国民主権というものが確立をされた。国民主権が確立される以上は、それに矛盾抵触するようなあらゆる法令詔勅は排除されることは当然でございまして、法理的のみならず、一般理念としても何らそこに矛盾するものはないと私ども考えております。
  22. 源田実

    源田実君 こういう問題、長く、よく私が納得できるように説明していただく時間もありませんから、ここらでこれは切りますけれども、この新憲法ができたのは旧憲法七十三条であるが、その七十三条には「将来此ノ憲法条項改正スルノ必要」云々と、これ、条項なんですね、条項であって、全部変えるということはここには規定がありません。  それからもう一つは、七十五条には、「憲法及皇室典範ハ攝政置クノ間之変更スルコトヲ得ス」、占領中日本は、これはポツダム宣言でも言っておるように、日本統治権というものは一時たな上げ、陛下の統治権というものはたな上げになっておったんじゃないか、これは占領軍最高司令官が握っておった、こういうことになっておるんじゃないでしょうか。これはいかがですか。
  23. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 御指摘のように、新憲法連合国軍占領下というきわめて異常な事態の中で制定されたということは事実でございますけれども、当時、旧憲法第七十五条にございましたように、摂政が置かれていたわけではないのでございますから、旧憲法第七十五条に矛盾するということは全くございません。法理論上は特に問題はないものと思っております。  それからもう一つ、旧大日本帝国憲法第七十三条には、「将来此ノ憲法条項改正スルノ必要アルトキハ云々とあって、この憲法全体を改正することはできないのではないかというような御議論がございましたけれども、これは一条項、つまり数個の条なり数個の項を改正することのみを言っているわけではなくて、基本的に旧大日本帝国憲法全文改正することも、この第七十三条の規定によってできるものと私ども考えております。
  24. 源田実

    源田実君 次に、前文の第二項の中に、「日本国民は、恒久の平和を」云々とありまして、「人間相互関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、」と、こうあります。「人間相互関係を支配する崇高な理想」、これを深く自覚する、この「人間相互関係を支配する崇高な理想」というのは、具体的に言うとどういうことになるでしょう。
  25. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 憲法前文の第二項と申しますか、第二段は、本文の第九条及び第九十八条第二項の規定と相まちまして、わが国平和主義国際協調主義の立場に立つことを宣明したものであると思います。そこの中に、「人間相互関係を支配する崇高な理想」という文言がございますが、これは、たとえば友愛でございますとか、信頼でございますとか、あるいは協調というような、民主的な社会の存立のために欠くことのできない人間人間との関係を規律する最高道徳律を言うのだというのが、これまた大方憲法学者説明でございます。私もそのように考えております。また、「深く自覚する」ということは、わが国が他から押しつけられて受動的にこの平和主義原則を宣明したということではなくて、人類の崇高な理想を深く自覚した結果、みずから進んで、他から押しつけられたものではなくて、みずから進んで決意したということを示すものとして「深く自覚する」という文言を使ったものと解釈をいたしております。
  26. 源田実

    源田実君 次に、第十一条及び九十七条についてお伺いしますが、十一条では「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」となっております。この「与へられる」は、これはだれから与えられるか。それをどうお考えになりますか。
  27. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) これは、わが国におきましては、いわば自然権——自然権と申しますか、自然法という考え方がございます。この自然法に基づいて付与される権利が自然権である。天賦人権の思想というものがございますが、そういうような考え方が基礎にあるものでございます。この基本的人権がだれによって与えられたかということは、宗教思想が深く浸透している国におきましては、三位一体である神あるいは天地創造の主というようなものによって与えられたというような解釈をする国もございますけれどもわが国においてはそのような考え方ではなくて、いわば自然権、天賦人権の思想というようなものによってこれが付与されたということに相なると思います。
  28. 源田実

    源田実君 それで、自然権として一応了解しますが、そうすると、九十七条。九十七条には、「これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」、こうなっておる。十一条は与えられたんで、これはいただいたものである。こっちは信託された。信託というのは、この意味は与えると同じ意味なのか。この日本文の憲法を英文に直したのを見ると、やっぱりイン・トラストという言葉が使ってある。そうすると、もし信託なら、信託銀行みたいに預けたものを返してくれというようなことも考えられるんですが、ここはなぜこの表現がこう変わらなきゃならぬのか、お聞きしたい。同じではいけないのかどうか。
  29. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 御指摘のように、憲法第十一条では、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」、その後に、「この憲法国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」と書いてございます。また九十七条では、「この憲法日本国民に保障する基本的人権は、」——途中を省略をいたしまして、「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」。その間に、「与へられる」という言葉と「信託」されるという言葉が違っておることは御指摘のとおりでございます。いずれにいたしましても、基本的人権は、人が生まれながらにして持つ人間の本来享有すべき天賦の権利であるという自然法的な考え方のあらわれでございまして、格別の差異は認められないと思いますが、強いて申し上げまするならば、第十一条は基本的人権の享有の基本規定でございまして、第九十七条は基本的人権の本質をさらに念を押してうたったもので、そこで、「信託された」という言葉の中には、ただいま御指摘がありましたように、預かったものであるというニュアンスがございますけれども、その預かりものとして大切にすべきである、また一般の、自分自身ばかりでなくて、一般の福祉のために活用しなければならないというような積極的な意味を持っているものであるという、憲法学者の中にもそういう説がございます。強いて、与えられるという言葉と信託されるという言葉の違いを指摘をして説明をすれば、まさにそのとおり、第十一条においては、いわば消極的にそういう権利が付与されるということを言っているだけに対して、第九十七条は、信託されたものである、預けられたものであるから大切に保持をして、自分自身のために使うばかりじゃなくて、一般の福祉のために使わなければならないという理念を秘めたものであると解釈することも一つ考え方であろうと思います。
  30. 源田実

    源田実君 こういうのは実はあんまりすっきり理解できないと思います。  しかし、時間もありませんから次に行きますが、実際、現在の日本においては、一番問題なのは、国の重要な安全保障というか、国家防衛に対する意見が分裂しておる。こういう国はちょっと珍しいと思うんです。その分裂の根源というものは、憲法第九条の表現というものがいろいろ解釈できるような表現をやっておる、こういうところにその根源があるいはあるんじゃないかと思いますが、これは総理、いかがでしょうか。
  31. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、これはもっと根の深いものがあるんではないか。憲法の多少の解釈疑義というものばかりでもない。防衛政策が憲法から来たというよりも、防衛政策それ自体が与野党の間に非常な開きがあるということだと思うのです。そういう点で、単に憲法に多少の疑義が、解釈があるということばかりでもない。もう少し、防衛政策の違いというものもあるような気がいたすわけでございます。
  32. 源田実

    源田実君 分裂があるということは、憲法九条だけではない、もっと根が深いといま総理が申されましたが、あるいはそうかもしれない。しかし、これは決して望ましいことではないと思いますが、いかがでしょうか。
  33. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、源田君も御指摘になりましたように、政党政治は、やはり防衛とか、外交とか、国家国民の運命に大きく影響するような問題は、共通の土俵というものが要るということが健全な政党政治の姿だと思うんですが、それが日本にできていない。小さい問題だけは幾つも成立するんですが、こういう問題で大きく開いておるということは、日本の政党政治をきわめて不安定なものにしておることは事実ですね。だから、私は、この予算委員会などにおいてもこういう問題が指摘されて、どうか防衛問題などについては、防衛という狭い軍事的な意味ばかりでなしに、もう少し国の安全保障という問題を広くとらえて、国会などには当然にやっぱり特別の委員会を置くべきだという感じ、考えでございますが、どうもああいう委員会の設置は各党間の合意を必要とするような慣習がございまして、野党の中にも賛成の党もあるわけですが、なかなか各党の賛成が至らないんでありますが、この点はぜひとも推進する必要がある。立場が違っても、そういうところを深く掘り下げて話し合いの場を持たなければ——両方の考え方というものが、あるいはもう少し接近する余地も私はあると思うんです。その機会がないですからね。したがって、ぜひとも国会は、当然に、国の安全保障というものは重大な課題ですから……。この問題に対して委員会を置くことも反対であるという説は私は納得できない。これは各党がやはりこの問題については真剣に考えてもらいたいと思う次第でございます。
  34. 源田実

    源田実君 いまの国家安全保障及び国防政策に対する国論分裂ということは、これは非常に憂慮すべき事態であります。したがって、いま総理が申されましたように、共通の土俵に立って物が言えるように、この点を今後とも政府は、われわれも協力いたします、ひとつ強力に推進していただきたい、これをまずお願いいたします。  それから、憲法問題は時間の関係でもうやめまして、次に、核拡散防止条約、この問題についてお話ししたいんですが、まず第一に、いまいわゆる戦略兵器制限協定とか、いろいろあります。ところが、その軍備協定が、いまだかつて私の知っておる限りに、終わりを全うした軍備協定というのはほとんどないんです。どこにその原因があるかということを考えてみますと、どうも軍備の制限協定だけやって、そうして国家が持つその国策、国の基本方針、対外方針、それに対する協定はたな上げしておいて、そうしてさしあたり軍備だけの協定をやろうとする、こういうところに軍備協定が終わりを全うしない大きな原因があると思うんです。現在のSALTIIというか、セカンドというか、これなんかもいま行き詰まりの状態にあるようですね。これなんかも、デタントという言葉をもうアメリカは使わないというようなことを言い出した。デタントに対する解釈の違いがある。こういうところが非常に大きな原因になっていると思うんです。したがいまして、私は、国策調整のない軍備協定は、一時的に経費節減には役に立つが、長い意味における、それから総合的な意味における軍縮協定はこれでは成立しない、こういうぐあいに考えるんですが、これは外務大臣いかがお考えですか。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 過去における人類の経験について源田委員の言われましたことは、私は過去においてそのとおりであったと思います。恐らく、しかしそのお尋ねは、前段に憲法についてるる御質問になりましたことと無関係ではないと思うのでありますが、わが国がこのような憲法を持ち、第九条を特に大事にしておるということ自身は、過去の経験から申せばまことに異例なことに属する、初めてのことと申してもよろしいのかもしれないと私は思います。しかし、われわれを勇気づけるものは、過去三十年間われわれはこのいわば人類初めての試みにともかく成功してまいりましたし、現在の国際情勢を見ますと、環境は決してわれわれのこの試みにとって悪くなっているとは思えない、むしろ勇気づけられるものがあるのではないかとすら私ども考えるのでございまして、過去の歴史はまさにそのようなものでございましたけれども、二回にわたる大きな戦争、世界大戦の結果、ことにわが国民がその経験から新しいものを学んで、新しい試みに挑戦をしようとしている、しかもそれが三十年間はともかく成功をし、今後とも環境は悪くなっていないのではないかと思われることは、私どもはやはり勇気づけられるのではないかと考えるのであります。  そこで、先ほどSALTについてのお話もございました。確かにSALTIIの進行というものは非常に遅々といたしておりますけれども、これはたびたび申し上げまして恐縮でございますが、ともかく米ソの二大国が、本来ならば主権の発動として無制限に行うであろうような核装備について何かの天井を設けようとしようとしていること自身は、青天井の競争よりはまだしも希望が持てる。天井が高い、非常に高いということは私どもとしては不満足でありますけれども、天井がないということよりはまだまだ何がしかの希望が持てるのではないだろうか。ことに、これはもう源田委員御承知のとおり、明らかに両者がオーバーキルの力を持っておるわけで、しかも、これをさらに伸ばすとすれば非常な財政負担になるということは、米ソ両国にとりまして、自分の利益から考えましても、ある程度以上の無制限競争をやめたいという動機もあるのではないかというふうに考えられます。等々を考えてみますと、今度こそはと申しますか、過去の歴史はそうでありましたけれども、核兵器のようなものがここまで発達することによってわれわれは新しい歴史のページをつくり得るのではないかというふうに考えます。
  36. 源田実

    源田実君 現在も実質的な軍備の協定を何とか妥結に持っていこうとして努力されておることは一応認めるのですが、やっぱりさっき言ったような国策の調整、こういうものについては、何かいま努力されておる——私は承知していないのですが、そういう面があるのですか。たとえば自由主義圏はここまで、社会主義圏はここまで、あとはその内部はお互いに一切干渉しないで、そうしてそれこそ体制の違いを超えてやっていこう。しかしながら、いま第三世界というものがある。そういうものに対してはどういう調整をやっておるのかどうか。そこらができないと、今後ますますこれは混乱してくると思うのです。こういう努力が払われておるのかどうか、その点はいかがですか。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは確かに非常に議論のあるところであると思います。たとえば、ヘルシンキにおける昨年の会議であるとか、あるいは伝えられるところの、昨年の十二月になされたと言われるキッシンジャーあるいはソンネンフェルトのアメリカの大使会議における説明というものが何を意味するかということは、必ずしも私は明確でないと思います。しかし、米ソ間において、少なくともお互いに侵してはならないと申しますか、手を触れてはならないエリアというものは、ある程度は私はあるというふうに考えます。しかし、第三世界が果たしてそれに当たるかということになりますと、そこがきわめて私はあいまいであると申し上げるよりほかはない。いわばデタントという政策そのものは、私は第三世界における米ソの、何と申しますか、勢力分野とでも申しますか、俗に彼らがスフィア・オブ・インタレストと言っておりますものを画定しておるというふうには私は考えておりません。
  38. 源田実

    源田実君 核防条約全般を見まして、この条約が私は一見してまれに見る不平等条約である、こういうことを感ずるのですが、これは総理いかがお考えですか。平等条約であるかどうか。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 核兵器保有国と、そうでない国とを、ある時点をもって区別をいたしまして、おのおの別の権利義務を課したのでありますから、そういう意味においては不平等であるという御批判は私は間違っていないと思います。  しかし、よけいなことですが、一言つけ加えさしていただきますれば、私どもは、核保有についての不平等というものは、持たない国が持つことによって平等を実現するのではなくて、持っている国がだんだんそれを廃棄していくことによって平等を実現することの方が正しいのではないかと考えておるわけですけれども、しかし、それ自身が不平等ではないかと言われることは、私は間違った御指摘ではないと思います。
  40. 源田実

    源田実君 日本がこの条約に調印したときに政府の声明が出ておりますね。その声明に対する政府の態度は、その後変わっておるか変わっていないか、この点をひとつお聞きしたいと思います。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 当時、一九七〇年二月三日の声明は、今日全く十分に実現したというふうには私ども残念ながら考えておりませんけれども、声明の趣旨は変わっておりません。
  42. 源田実

    源田実君 そうすると、この核防条約によると、一九六七年の一月一日までに核爆発をやった国は核兵器国になっておる、兵器を持つ持たぬにかかわらず核爆発をやった国は。そうすると、いまその核兵器国というのは全世界で五カ国しかありません。しかしながら、いまインドがすでに核爆発をやった。それから仄聞するところによると、イスラエルにはもうすでに現物の核弾頭がある、数発あるということも伝えられておる。インドは核爆発をやった。しかし、六七年より後にやった。イスラエルはもちろんそれ以後においてこういう兵器を持ったということになると思うのです。こういう国が今後ふえても核兵器国にはなるのかならないのか、これ、どうなんでしょう。
  43. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) イスラエルにつきましては情報がきわめて乏しく、かつ、まちまちでございますので、しばらく言及を差し控えるといたしまして、インドが平和目的と称する実験をいたしましたことは事実でございます。しかしながら、この条約に言うところの核兵器保有国でないことは明らかと思いますし、また現に、一般的な意味でインドが核兵器保有国で現実にあるかどうかということは明確でございません。
  44. 源田実

    源田実君 日本政府の声明の中に、「フランス共和国政府及び中華人民共和国政府が速やかに条約に参加して、核軍縮のための交渉を誠実に行なうよう希望するが、それまでの間でも、この条約の目的に反するような行動をとらないよう希望する。」とありますね。これに対して、事実はどういうぐあいにお考えですか。この条約の趣旨に反するようにやっておるのではないか、核実験の状況、それから核兵器の拡散状況を見ますとそういうぐあいに考えられるのですが、やっぱりこの条約の趣旨に反しないようにやっておるとお考えでしょうか、どうでしょう。
  45. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) フランス、中国ともに、今日現在この条約に加盟をいたしておらないのは遺憾なことであります。フランスとしては、本当の核軍縮のためには核兵器を持たないことが大事であるというような主張をしております。もとより、しかし拡散をしないということ自身は自分の国も賛成であるということであります。中国は、この条約そのものは米ソ二大国による核兵器のいわば独占であるから、そのような考え方には中国は賛成できない、ただし、中国が先に核兵器を使うということは中国はしないという立場をとっておるわけでございます。したがって、それらの二国がこの条約に参加していないことは今日もそのとおりであって政府声明の趣旨は実現されておりませんが、お尋ねの、「それまでの間でも、この条約の目的に反するような行動をとらないよう希望する。」ということになりますと、中国とフランスが今日までこの条約に参加していないが、この条約の目的に反するような行為を、行動をとってきたかということになりますと、いずれの国も自分の持っております核能力を他国に供与したということはございませんので、そういう意味では、この目的に反するような行動をとったとは考えにくいのではないか。ただ、参加をしていないということは御指摘のように事実でございます。
  46. 源田実

    源田実君 ここで希望だけ述べておりますが、政府は、実質的にいわゆる国際会議場ではいろいろ政府の見解を述べておる。しかしながら、個別にフランスや中華人民共和国に対して、この条約に加盟してくれということを、日本が直接、単独であるいはほかの国と共同してこういう問題の折衝をやったことがあるかどうか、この点をお伺いしたい。
  47. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる核実験が行われましたときに、わが政府として正式に抗議をするということは幾たびかいたしております。それは、そのような意思表示と関連のあることでございますが、なお昨年の五月のいわゆる再検討会議におきまして、わが国がかなりリードをとりまして、両国に対して加盟を呼びかけたということは事実としてございます。わが国が単独で、いわば一国対一国の関係で、この条約に、中国あるいはフランスに対して加盟をするように強く説得をした事実がございますかどうか、私としては実はつまびらかにいたしておりません。わが国としては、やはり再検討会議のような場において、各国と共同をして両国に呼びかけることがより有効であるというふうに従来は判断してまいっております。
  48. 源田実

    源田実君 この中華人民共和国とフランスと、ことに中華人民共和国、これがこの条約に加盟していないということは、この条約の将来性に大きな影響があると私は考えます。というのは、ソビエトとしては中華人民共和国といまのところ決して仲がよくない。世界じゅうで一番敵対関係が激しいところの一つ、その中の大きな一つである。そうすると、ソビエトとしては、中華人民共和国に対して、核戦力あるいはその他の戦力も含めて、ことに核戦力において常に相当な水をあけておきたいという希望は十分あると思うんです。そのほかに、ソビエトとしては、当面の対象がアメリカであり、また西欧という、これは三方面作戦というものをソビエトは考えなければならない立場にあると思うのです。したがって、もし中華人民共和国とアメリカ、ソビエト、こういう間に、この核問題に対して本当に納得いくような妥結を得られなければ、この核拡散防止条約というのは将来性は非常に望み薄いと考えられるんですが、望みがあると思われるのですか、どうですか。
  49. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまのような米中ソの関連がありますことは、私は恐らくはそのとおりであろうと考えます。しかし、この核拡散防止条約は、これがすべての核軍縮あるいは平和のためのオールマイティーの条約でありませんことは御承知のとおりでありまして、少なくとも世界が核戦争に巻き込まれるのを防ぐ一つ方法として、現在以上に核兵器保有国をふやさないことが世界平和に役立つであろう、そういう趣旨をこの条約は実現しようとしておるのでありまして、この条約ができたから世界の核戦争の危険は全部なくなるというようなわけにはまいらない。また、それだけオールマイティーの目的をこの条約ば持っているわけではございません。すなわち、世界全体に軍縮というものが核兵器保有国の間でも進んでいく、通常兵器、核兵器を通じて進んでいくということ、そういうことと並んで、これ以上核兵器保有国をふやさないことの方が世界の平和に貢献するであろうという、幾つかの世界平和実現のための手段のこれは一つであるというふうに、したがいましてこの条約は大事な条約でございますが、そういう観点からは限られた目的を持っておる条約であって、この条約のゆえにただいま源田委員の言われましたような問題が解消するというふうに考えるのは論理的ではないと存じます。しかし、さりとて、この条約そのものは、核兵器保有国をこれ以上ふやさないという意味で、世界平和の実現には私は大きなやはり貢献をするものであるというふうに考えます。
  50. 源田実

    源田実君 この条約の中で、私は、日本がほかの核兵器国と全部対等な立場になって、核も持って、本当の意味の対等で条約批准をやれとか、こういうことを言っておるという意味は毛頭ありません。しかしながら、ここで問題であるのは、この核防条約そのものの中には、どこを探しても、非核兵器国の安全保障を核兵器国が保障するという条項はどこにもない。日本では、まあこれはたびたび政府が言われるように、日米安全保障条約で十分だと、こういうことになっておる。ところが、これはまあ余り言う必要もないと思うのです.が、安保条約というのは一年でいつでも切れる。そうして、この条約は批准すれば、たしか九〇何年までですか、五年か六年まで有効である。その間、もし切れた後の、安保条約がなくなった後の日本の安全保障はどこが保障するのか、この点についてはどうお考えですか。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この条約は、第六条において、いわゆる核軍備競争の停止、核軍備の縮小等について規定を設けております。が、厳密に申しまして、ただいま源田委員の言われましたように、非保有国の安全保障について特にこの条約が規定しているというところは、御指摘のようにございません。で、安保条約との関連でございますが、私どもに関します限り、安保条約は私は無期限のものであるというふうに、むしろ考えております。確かに一定の廃棄の規定はございますけれども、そのことは逆に、何年間をもって終了するということではなく、いわば両国政府とも希望する限り無期限に存続すると、実態はそういうふうに私ども解釈を、解釈と申しますか、運用をしていいものではないかと考えております。なお、そのほかに、御承知のように、一九六八年の六月、国連の安保理事会における核保有国の決議がございますことは御承知のとおりと存じます。
  52. 源田実

    源田実君 国連の安保常任理事国のあの決議というのは、もうこれは外務大臣に私が一々言う——あのくらい矛盾したものはないと思うんですね。あのときに、核兵器国というのはこの五カ国だけであった。それで、核兵器で攻撃を加えるのはこの五カ国以外にはないですよ。それが常任理事国で、これが全部賛成しなければこの安全保障理事会の決議は有効にならないんですよ。侵略者がみずから自分を侵略であると言って、懲罰するということを侵略者が自分で言わなきゃこの決議は成立しないようなあの安保理事会の決議というものについては、これは全く矛盾に満ちたものであると私は考えます。まあこれはいま論議するつもりはありません。  しかし、今度ね、この脱退の条項があるんですがね。国の至高の利益が危うくなったときは脱退する権利がある、三カ月前に予告して脱退できると。これを日本政府は、「いることに留意する。」ということを日本政府はそのとき声明しておる。これは、留意するとどういう効果があるんですか。どういう効果があるか、この留意によって。——(「政府が知らぬときは源田先生、教えてやるんだ、それが国会議員だ」と呼ぶ者あり)  いま、同僚の玉置委員から御忠告ございましたんで、私の見解をまず言いますがね。どうでしょう、「留意する」。三カ月前ですよ。侵略者の危険が目の前に迫ったときに初めて国の最高の権利が侵されるということがわかる。いつ攻撃されるかわからぬ。そのときに、これは危ないからいまからわれわれもそれじゃ核で対抗しなきゃならぬから核武装をやらにゃいかぬ、まず脱退、それは三カ月前に予告するから、向こうは三カ月後に核武装を始めるぞということがわかるんです。それから核武装をやるとすれば、それからまあ日本でも相当かかるでしょう。いわんやそれが戦力になるのにはちょっとやそっと、まあ現実にはできない、役に立つものはおいそれとは。それまで相手は待っておるのかと。相手は、まだ準備ができてないから、脱退して核武装して、いよいよまともに戦えるようになるまで待つのか。これは国技館ではないんですよ。意味があるかどうか、この脱退条項に留意して意味があるのかどうか、役に立たないということに留意するのかどうか、そこのところをひとつ外務大臣、いかがでしょう。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そのお尋ねでございましたら、つまり、わが国のような国は国の能力としては核兵器を開発し得る能力を持っておる。それにはしかし、御指摘のように相当の時間がかかることでございますけれども、国際情勢がいま考えておりましたのと違うふうに展開をしていくときには、わが国もこの規定によって脱退をし得る。し得るという意味は、日本はある期間には核兵器をつくり得るということにこの条約だけからすればなるわけでございますから、したがって、そういう意味での潜在力というものは、ある意味でやはり抑止力になると考えてもよろしいのではないか、この条約に関します限りです。わが国は、別にいわゆる非核三原則というものを持っておりますから、一応それを切り離しまして、私、条約だけについて申し上げますが、いかなる場合にも、この条約そのものが、一遍加盟してしまったらば至高の利益に関係があってももう抜けられないものだという規定をいたすよりは、抜け得るというふうに考えておくことによってそういう潜在力が抑止力になり得る、そういう規定であろうというふうに私は考えております。
  54. 源田実

    源田実君 この問題は佐藤内閣のときにやられた問題であって、いまの総理、閣僚にこれは聞いても、ちょっと責任ある返答というわけにいかないと思うんですよ。しかしながら、要するに、この脱退条項というものは意味がないんですよ。意味がないことに留意すると、こういうことを当時書いたのもどうかと思いますけれども、実際意味がない。これは十分にお考えおきを願いたい。  次に、今度は私がお聞きしたいのは、例の非核三原則の第三原則、「持ち込ませない」というのは、たびたびもう国会でも総理からもお話がありました。これは事前協議の対象であるけれども、ほかの問題はイエスもあればノーもある、しかしこの問題はいつもノーである、こう受け取るんです。ところが、日本の領海あるいは領空、領海の上の領空、この領空も一緒、こういうところをアメリカの飛行機が、あるいはアメリカの軍艦が、核搭載をした船が入ってくるときは事前協議の対象になるんでしょう。いかがですか。
  55. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) さようでございます。
  56. 源田実

    源田実君 ところが、他の核兵器国の潜水艦なりあるいは飛行機は、入ってくればこれは領空侵犯措置によって退去を求めることができる。退去しないときに、いまの日本の領空侵犯措置では撃墜することはできない。相手から攻撃を受けたら初めて反撃できる。正当防衛。これは刑法第三十七条ですか、何かそれらによってやることになっておりますね。ところが、その他の国、アメリカ以外の国の核搭載艦、ことに潜水艦のごときは、これは普通の船でも持っておるか持っていないかわからないでしょう。しかし、無害航行の原則によって日本の領海を通過することができる、こういうぐあいになるんじゃないでしょうか。これはいかがですか。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) わが国の非核三原則は、アメリカに対するもののみでなく、世界どの国に対しましても宣言をしておりますから、そのことは当然に周知せられていると考えるべきであると思います。したがいまして、このわが国原則を破って行為をするということは、少なくともわが国に対して友好的でない行為考えなければなりません。その問題と確認の問題とは、これは私は、やはり考え方としては分けておかなければならない、いわんや、排除の問題はさらに分けて考えなければならないというふうに思っております。恐らく源田委員の御指摘は、アメリカの場合には事前協議という制度で少なくとも協議をしてこなければならないという義務を課しておる、その他の国に対してはそういう義務は課していないということは扱いが平等でない、われわれの友好国をむしろ厳しく扱っておるではないかというお尋ねに私は通じるのではないかと思いますが、それについて考えますと、やはり日米安保条約によりまして、これは条約の名前のごとく相互協力という性格を持っておりますから、われわれはアメリカに対してある権利を与えるとともに、ある義務を課しておるわけであって、その点は、このような条約を結んでいない他国とはおのずからアメリカの扱い方が異なるということはやむを得ないのではないであろうかというふうに考えているわけであります。もちろんこのことは、だからといって、このような条約上の義務を持っていない他の国が、わが国の宣明された国策に反して行動をとっていいという意味ではございません。
  58. 源田実

    源田実君 もちろん、よくはないんです。しかし、それをチェックする、実質的にチェックできる手段があるのかどうか、これはどうです。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 非常に顕在的な形でございますれば私はチェックをする方法があると思いますけれども、しかし、チェックされないでそのような行為をとるということは、恐らくは私は十分可能であろうと思います。
  60. 源田実

    源田実君 これは、いまの外務大臣の御答弁ではちょっと、なるほどそうか、まいったというわけにはいかないですね。これは私の方が口下手で外務大臣はうまいですから、うまいぐあいにすり抜けられるんですが、問題はそういうことじゃ済まない問題なんですね。実質的に国防というような重大な問題が、これは今後、この次の問題、また出てくるわけです。この点は、この国会における答弁でひとつ十分お考え願いたい。私がこれは偉い方々にお聞きするんですから、私はすぐちょろまかされると思うんです。しかし、私が幾らちょろまかされても、それによって、それなら日本の防衛は安全であるというわけには簡単にいかないです。ここの答弁でうまくこの場だけ逃れたらいいというわけにいかない問題がこれはたくさんございます。この点は真剣にひとつお考えを願いたい。  それでまず、大体日本アメリカの核のかさということをしょっちゅう言っておる。この核のかさと非核三原則の第三原則。持ち込ませない、事前協議の場合もいかなる場合も。これは衆議院の外務委員会のあの決議においても、いかなる場合も許さない。これは総理もここで明言された。これと、アメリカの核のかさというこの概念、これには矛盾はないんですか。これはどうなっていますか。
  61. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 前段におっしゃいましたことは、十分そのようにお話を伺っておるつもりでございまして、すなわち、問題になっております核拡散防止条約についても決して十全のものとは申せませんし、世界の核軍縮の進行も十分満足とは申せませんし、また、非核三原則が、現実にわれわれの友好国でない国によって、われわれが確認し得ない形で侵害されるということはないとは言えないといったようなこと等々、正直に私は現実のことはお答えを申し上げなければならないと思いまして、そのようにお答えを申し上げておるつもりでございます。これはしかし、わが国が平和憲法を持って、それを何とかして守っていこうということから生ずるところのいろいろな問題であって、そのような幾つかの欠陥なり心配があるがゆえにわれわれの方針が誤っているとは私は考えておらないということを申し上げておきたいと思います。  それで、お尋ねの本体は、わが国が核のかさ、日米安保条約による核のデターレントの中にあるということと、持ち込ませずということとの間に矛盾はないかというお尋ねでありますが、私どもは、わが国に核攻撃が加えられる危険というものに対して米国の核の抑止力が働くということの意味合いは、即わが国の領土、領海内に核兵器が持ち込まれなければならないというふうには考えていないということでございます。それはなぜかと申しますと、わが国に核攻撃を加えようと意図する国は、恐らくその国自身が核攻撃の報復に遭うということのゆえにそれを思いとどまるのがデターレントであると思いますので、したがいまして、今日のように長距離の核兵器が十分に精度を持っているというときにおいては、わが国に核攻撃を加えようとする意図を持つ国は自分自身が核攻撃を受けるという危険を覚悟しなければならないというのが抑止力でございますから、そのこと自身は、わが国の中に核兵器がなければ実現しないということではないというふうに考えます。
  62. 源田実

    源田実君 ここに私は重大な判断の違いがあると思うのです。これは戦略核というもの、アメリカ日本の局地防衛のために戦略核を使う意思は毛頭ないということを私ははっきり申し上げていいと思うのです。というのは、これは局地戦争です。いま防衛庁がやっているのは、小規模の侵略、今度のやつは。小規模の侵略、大規模じゃないですよ。大規模のときはもっと全然変わったことになってくる。米ソの正面対決ということになると状況は変わってくるですよ。しかし、日本だけが対象になったいまの場合、それはどこがやるかわかりませんよ、わからないけれども、その場合にはこれは全然変わった状況であって、アメリカのいろんな専門の評論家ないしは軍人が、いままでいろんな専門誌に述べておるところを見ると、日本だけを防衛するために、日本が核を持ち込ませないから、それならばわれわれは戦略核でやる、こういうことは絶対にないと。これはハーバード大学で私は議論したことがある、あそこの教授と。いや大丈夫、アメリカば守る、心配せぬでよろしいと言うけれども、それならば、もし日本が攻撃された場合に、日本は非核三原則である、あなた方の核兵器は入れないんだ、向こうは小規模の核で攻撃する、この場合に、それじゃあなたは戦略核兵器で相手をやるのか、やったらその三十分後にはアメリカの人口の半分が吹っ飛ぶのだぞ、それでもやってくれるか、どうなんだと。全部黙ってしまったです。そういうことは兵術家はやりません。もしアメリカがやるというのなら、まあこれは私はここで改めて新しい知識を得ることになるのですがね。これはどうです。アメリカの核で守ろうという意味は、戦略核ではない、地域的な核かあるいは戦術核である、こういうぐあいに私は理解しておるのですが、これはどうなんでしょう。これは防衛庁長官と二人、両方ひとつ答えてください。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 軍事知識の上では私はとうてい源田委員のお尋ねにお答えする力がございませんから、別の面で私は考えておることを申し上げますけれども、米国が条約上の義務を持っているということ、しかも、そのことは昨年の総理大臣と米国大統領との共同発表にもございますとおり、わが国に加えられる攻撃が通常兵器によるものであれ核兵器によるものであれというくだりがあるわけでございます。それらはいわば両国間の約束ということでございますが、さらに約束を越えて米国自身の利益という点から、ただいま源田委員の言われましたようなことがあり得るかあり得ないかということになりますと、私は、それは結局日本にそれだけの価値をアメリカが認めるか認めないかということに、とことん損得の話になれば、私は帰着してまいるであろうと考えます。その場合、私は、わが国は米国にとってそれだけの危険を冒しても守らなければならないだけの価値を持っているというふうに考えます。
  64. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) われわれが核の脅威に対しまして、この点についてはアメリカの核抑止力に依存せざるを得ないということは、戦争を未然に防止するという意味だと私は思うのです。戦争を起こさしめない、核の戦争に至らしめないということです。第二次大戦後の世界の戦略というのは、これは釈迦に説法かもしれませんが、やはり核というものが非常な人命の破壊力を持ち、一千万とか一億とかいうものを一挙に死滅させるという、そういう恐怖が結局この核の競争になったわけでございますが、しかし、この核競争の結果としましては、一億も殺傷する核は使えない、使うことはなかなかむずかしいというふうになっております。朝鮮半島のときにもそうでございますし、中東戦争のときにも一度は使おうかという可能性は検討されたようでございますけれども、しかしそれは使えなかった。そうすると、それじゃ戦術核は使えるかといいますと、戦術核を使えば結局戦略核につながっていくということで、戦術核も使えない。逆に、このような核競争をやった結果として、むしろ核は使えなくなったというのが今日の傾向であろうかと思います。  だからといって、それじゃ核競争をやめてしまえということではないわけであって、特にヨーロッパにおきましては、NATOとワルシャワ体制においては戦術核を西側が保持しなければ均衡は保てないということで、むしろ、通常戦力はワルシャワ体制の方がはるかに多い、しかし、これによってヨーロッパにおける平和は維持されておるということだと思うのでございます。でございますけれども、現在ヨーロッパにおいては平和が維持されておる。最近の傾向としましては、むしろ西側においては、使えないとするならば、通常兵力をやはりワルシャワ体制に、そこまではいかないにしましても現状よりもやはり増強しなけりゃならないと、こういうふうになってきた。あるいはアジア等におきましても通常兵力というものがやはり意味を持つということになってきておるわけで、私から言いますと、核のかさが高まることによって、逆に通常兵力でもって勝負をしようという世の中にまた立ち返りつつあるのではないだろうか、こういうことも言えるわけでありまして、そういう世界戦略の一環として日本列島を守る安全ということを考えた場合に、このアメリカの核抑止力が働いておる限りにおいて、しかも、中ソにおいては対立がある、あるいは米ソにおいてはデタントの一応の傾向がある、そして米中関係はいままでよりもいい、あるいは日本に対しても中国及びソ連はわが自衛隊を認めるというか、あるいは自衛力をとやかく言わないというふうに中ソとも考えるようになってきた、こういうような状況において、起こり得べき、生起すべき侵略事態というのは、直接侵略事態というのはやはり小規模以下のものであるだろう、そのことに対しては十分の即応力を持った基盤的防衛力を充実すればいいんだというのが、わが国一つの平和維持のあるいは安全保障の考え方考えておるわけでございます。  その意味合いにおきまして、非核三原則日本がとり、しかもアメリカの抑止力に依存するということのメリットというものは非常に大きい。なぜならば、先ほど法制局長官源田先生との間に取り交わされたような形において、国民は専守防衛という、他国に侵略をしないという憲法のもとにわれわれは生きておるわけでございますから、また、防衛庁長官としましては、その憲法のもとにおいて日本国民の生存と自由というものを守らなきゃならぬ責任を国民から負託をされておるわけでございますから、その意味合いにおきまして、私といたしましては、この非核三原則というものがはなはだしくわれわれの安全を脅かすというふうには思わない。  それから、先ほどの持ち込ませずという、この問題につきましても、源田先生は、わが国の安全保障体制に矛盾するのではないか、あるいは米国の核抑止力を著しく減殺するのではないかという議論があるがどうだということだと思いますけれども、米国の核兵器の持ち込みを制限することは、純軍事的に申しますと、あらゆる核の脅威のスペクトラムに対応するという点においては多少なりとも私は制約を与える、したがいまして、米ソ間の核均衡にたとえ部分的にしろ影響を与えることは事実であるといたしましても、それがわが国、ひいては極東の防衛上決定的な制約要因というふうにはならないというふうに考えているわけでございます。これは、昨年のシュレジンジャー前国防長官が参りました際、記者会見におきまして、核兵器が持ち込まれなくても、日本はいわゆる核のかさの下で安全に保障されるのかという質問に対しまして、米軍は世界全域に配備されており、したがって、日本以外に展開する米軍によって核の分野において十分な対応ができないような場所や任務は存在しないというふうに言明をいたしております。わが国の安全にとって核抑止力の有効性と非核三原則が両立するということを私は示唆をしておるというふうに承知をいたしておるわけであります。
  65. 源田実

    源田実君 これは、シュレジンジャーがそういうぐあいに言ったかもしれませんが、これはちょっと私には納得できないところがある。というのは、こういう問題は、万一相手側が核を持ってやってきた場合には——これは戦術核兵器のことを私は言っておる。その場合に、こちらは、米軍も応援に来るけれども、核なしにどうやって守れるのか、どうやって守ることができるか、核なしで。いわゆる上陸作戦なり陸上作戦なりが展開された場合に、日本の基地には持ち込ませないが、しかし、向こうの船から飛ぶのは日本の上空を核を持って飛ぶでしょう。これは日本は阻止する、領空通過を許さないのですから、そうすると、向こうは航空母艦から出るとすれば、沖合から出て、これは日本の領空を通るわけにいかぬから、ずうっと西の方を回ったり、あるいはずうっと東のほかの国の領空なんかを回って、また日本海なら日本海へ行ってやらにゃいかぬ。こういうことが考えられますか、一体。それで私は、ひとつここで防衛庁長官に。抑止力というものは現実にこういう手があるんだぞということを、むしろ隠すんじゃなくて、はっきり相手に示すことによって抑止力は生まれるんであって、やらない、何にもしないんだというんじゃこれは抑止力にならないんですよ。この点……。  それからもう一つは、防衛庁はこういう非核三原則の持ち込ませないということに同意らしいんですから、そうすると——私はここが非常に不満なんですよ。防衛担当の責任当局が、これは防衛庁で、核なしでも守り得るということを、オペレーション・リサーチなりあるいは図上演習なり兵器演習なりで十分に検討されて自信を持って言われるのか。それがあるんなら私は安心してもう任せます。もう必要がなくなる、何も。この点はどうなんでしょう。
  66. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先ほど申し上げましたように、日本は非核三原則を政策といたしておりますから、通常兵力で日本の安全を守るという以外に自衛隊としてはないわけでございます。したがいまして、核の攻撃ということに対しては、これはやはりアメリカに依存するということ以外にはないわけでございます。しかしながら、私は先ほど申し上げましたように、世界で初めての被爆国である、しかも、日本という国が非核三原則を持っておるということも全世界の人たちが知っております。そういうところになぜ核を使わなきゃならないのか——私は今日まで三十年間、かつて中東戦争でも、あるいは朝鮮戦争等においても使えなかったことだと思うんでございまして、そんなことはないじゃないかということもあり得ると思いますけれども、しかし、われわれの今日に生きる人間の悲願というのは、やはりこれを絶滅する努力をする、使わせない努力をするということだと思いますし、その意味合いにおいて、日本の役割りとして核を日本に使わせないということをやはり宣明させるということが必要だと思うんです。その意味合いにおいて、やはり核防条約の意義もあるんではなかろうかというふうに思うんでございまして、今日の安全というものにつきましては、単に軍事力のみ、あるいは核そのものだけではなくて、外交努力あるいは民生安定、あるいは経済努力、そういうものがあって初めて安全というものが保ち得る。しかも、それが具体的にあらわれてきておるわけでございますから、私どもといたしましては通常兵力でもって対処しようとしておりますから、核による戦術、戦略というものを、図上演習、リサーチ等もいたしておりません。
  67. 源田実

    源田実君 ここのところ、私は政府当局の方は問題をちょっとごっちゃにされておるんじゃないかと思うのです。われわれも、だれも戦争なんかやりたくない。もうやり過ぎたです。やりたくない。ところが、問題は戦争をやらないための努力ということ、これは、安全保障政策、それと防衛政策というものには、そこに区別があるんですよ。防衛政策というのは、外交努力その他あらゆる努力が実らなくて、やむを得ず防衛政策を発動するんであって、何もかもほかのものでやるんだから防衛政策は必要ないというんじゃ、これは意味ないです。もう自衛隊も何も皆やめた方がよろしい、それで全部いくんなら。それがやっぱり人間の歴史の中に、幾ら努力してもいかないということがある。その場合に、この防衛政策、防衛力というものが物を言うんですよ。その防衛力を、いまの政府考え方でいくと、日本はもうないからしょうがない——日本は初めから手を縛られておる。それからアメリカが来て、アメリカは刀ぐらい持とうとしておるんだが、刀を持ってはいけない、相手はやりを持っておるが、おまえ刀持っちゃいかぬ、手は縛って、相手から守ってくれ——アメリカ日本の防衛に対する協力を日本が求めているのはこのかっこうです。持ち込ませない。相手が使うか使わないかは向こうの考え方である。最悪の場合を考えて、相手が使った場合にはどうするかという、その最悪の問題をわれわれは考えなければいけない。われわれというか、政府。私は考えます、もちろん。意見が違うでしょう。  私は、それじゃここで今度は総理に、もう時間も余りありませんからお尋ねしますが、私はこういうことを希望しておるんじゃないですよ、われわれがこういう防衛政策を考える場合には、やっぱりその最悪の場合を考える。その最悪の場合にどうするかという、この最後の手は持たなきゃいけないです。その場合に、日本国民が全く屠殺状態になる、そうしてまた来援に来たアメリカ軍も屠殺状態、手を縛られておるんだから。その場合でも絶対にアメリカの核を使わせない、こういうことをやるのかどうか。国民が何とかしてくれと言う場合でもやりませんか、どうですか。これは総理大臣。
  68. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私よりも軍事知識、源田君の方が深いわけですが、この核という問題は大砲と違うです。大砲と違う。現地に持ってこなければ威力を発揮できないんだというものとは違う。核というものの威力は抑止力ですよ。抑止力。これは、核戦争が現実に起こって、日本へ核兵器を持ち込んで、そうして戦争が現実に起こったときを想像してごらんなさい。どういうことがあっても防がなければいかぬ。核兵器をこんな人口が稠密しておるところへ持ってきて、核で日本を防ぐという考え方には、もうあらゆる努力を払ってそういう事態を防ぐことですよ。抑止力というんなら、それならばアメリカがそういう抑止力を使ってくれるかという——私は、源田君も御承知のように、八月にフォード大統領と首脳会談をした。大統領が繰り返して私に言ったことは、通常兵器であろうが核兵器であろうが、あらゆる攻撃に対してどんな犠牲を払ってでも日本を守るという約束ですよ、これは。これは歴代の内閣が言っておるんですよね。これは歴代のアメリカの大統領が繰り返し約束してきたことです。それはその抑止力の内容を言えと。アメリカはあれだけの核戦力を持っているんですから、それは長距離弾道弾もあるでしょうし、戦略核兵器もあるでしょう、ポラリスもあるでしょう。今度日本を侵略するものは、核をもって、アメリカの核の報復を受けなければならぬというほどの抑止力があるでしょうか、日本を攻めてくるものは。アメリカはこの約束を必ず守るということを繰り返して言っておるわけだ。私は信じますね。それだけ日本は守るに値するだけのものを持っていると思いますよ。アメリカは守ると思う。このときに守るというこのアメリカの発言は大きな抑止力ですよ。証拠を見せる必要ないでしょう。アメリカはあれだけの核戦力を持っているんですから。  そういうことで、ここへ大砲のように持ってこなければ日本が守れぬというふうには私は思えない。いわゆる大砲とは違う。したがって、やはり核というものはそういうものでなくして、日本国民は核兵器を持ってきてもらいたいと望んでないんですから、国民意思に反してここへ核兵器を持ち込まなければ防げないとは私は思わない。そこにやはり核の抑止力というものがある。これは十分に日本に効いていると思いますよ。しかし、防衛力というものに対しては大事ですよ、必要最小限度の防衛力は持たなければならぬ。防衛力だけではやっぱり安全保障は果たし得ないですから、それに対して外交政策とか国内の体制だって大事ですよ。やはり社会経済、政治体制というものが堅固なものであることは必要である。(「防衛庁解散」と呼ぶ者あり)黙って聞いておれ。そういうことで、私は、ただ軍事力だけでというわけにはいかない。それを補うものも要る。安全保障に対してわれわれが第一義的に考えなければならぬということは、源田君の考えと同じであります。
  69. 源田実

    源田実君 この問題は、もう時間もありませんから、私は次にこれは委員会か何かでもう少し時間をもらって、じっくりやりたいと思います。とにもかくにも、人の手を縛って守るということは原則的にこれは通用しない。抑止力というのは発動する力があって初めて抑止力になるんで、人形を幾ら並べておいてもこれは抑止力にはならないです。これだけまず申し上げておきます。  そうして最後に私は一つだけ、これは通産大臣、科学技術庁長官、防衛庁長官、こういうところですな。三十年もたつかたたないかに石油がほとんど底をつく。それから軽水炉だったらウランが底をつく。その後何にエネルギーを求めるのか。いま着々準備が進められておるのかどうか。電力は何とかあるいはいくかもしれない。しかしながら、飛行機とか船は発電所から電線を引っぱってアメリカまで行くわけにいかぬですよ、モーターで。これに対してはどういう施策を——もう三十年といったらすぐですよ、あと二十何年。これについて日本ではどういうことを研究されておるのかどうか。この点についてお伺いして私の質問を終わります。
  70. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) それでは私から申し上げます。  二〇〇〇年の事態に対してどういう研究を日本ではしておるかという問題でございますが、御承知のように、一九八五年までのは去年閣僚懇談会で決定いたしまして、これは御承知のとおりでありますが、二〇〇〇年までの分に関しましては、まだ閣議で決めたとかいうものはございませんけれども、科学技術会議総理を首班といたしました科学技術会議がございまして、そこで去年の七月に答申がございました。ただいまそれをさらに深める意味で検討しておりますが、これは主として技術的なサイドから、そういう場合には石油にかわり得る代替のエネルギーが、どういうふうにどこまでやり得るだろうかという研究をしたものでございます。大体、ただいまの科学技術会議で結論を出しました部分は、二〇〇〇年までに原子力あるいは太陽エネルギーとか地熱、あるいは石炭利用等を技術的に考慮いたしまして、石油換算で約二億キロリッターくらいの石油に代替するものがやれるというふうに結論づけております。その中で私の担当しております原子力関係では、前前から申しましたように、長期では、したがって二〇〇〇年、二十一世紀の初頭ずっと過ぎましたころまでには核融合の問題が出てまいりますけれども、二〇〇〇年ごろまでには、ただいま考えておりますのはファストブリーダーでございまして、これは大体そのころを目指しましてやれると思います。  それからもう一つは水素でありまして、この方は多目的高温ガス炉を原子力研究所を中心にいたしましてただいま研究しておりまして、一千度以上の熱エネルギーをどうして得るかということで、これも大体二十世紀の初頭までにはいけ得るんじゃないか。それから、出たその熱を水素に還元し、あるいは水素自体を貯蔵したりエネルギーに使うそのやり方は、通産省の工業技術院で研究しておりまして、ただいま進めております。いま主として力を注いでおりますのは、私の方といたしましてはその多目的高温ガス炉と、それからファストブリーダーと、それから核融合、三つを中心に進めております。
  71. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 以上をもちまして源田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  72. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 目黒今朝次郎君。  なお、国鉄総裁が午後所用があるようでありますから、冒頭に質疑をしていただければと存じます。
  73. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 では、委員長の要請がありますから、最近の列車妨害の問題について、四月十八日の羽越線の事故、十二月八日の新幹線の列車妨害事故、並びに四月四日の名古屋における地下鉄の列車妨害の事故の概況と対策について、運輸省、公安委員長、国鉄総裁、関係者から答弁を求めたい、そのように考えます。
  74. 住田正二

    政府委員(住田正二君) まず、羽越本線の事故でございますが、五十年四月十八日に線路に置物がございまして、その置物はまくら木を二つに切断したものを針金で線路に縛りつけてありまして、それを列車がひいたといいますか、切断したという事故でございます。これに前後いたしまして、信号の方のレンズが赤色のペンキで塗られているという妨害も出ております。  それから、新幹線の事故でございますが、五十年の十二月八日でございまして、この事故もやはり線路の上に置物があった事故でございます。置物は鉄板を四枚くの字型に溶接して鉄棒を二本通しておったものを線路の上に置いてあった、それを電車が切断したということでございます。  それから、名古屋の地下鉄の事故でございますが、この妨害の内容は、レールの締結部のボルトを九十本、約二十五メートルにわたって取りはずしておったということでございます。
  75. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  これは重大な問題でございまして、列車妨害事件というのは、もちろん御案内のとおり、脱線転覆につながりますので、これが国民に大きな不安を与えるきわめて悪質な犯罪であると私は考えておる次第であります。したがいまして、この種の事犯については絶対に犯人を検挙しなければならないという意味合いにおいて、強い決意のもとに警察庁は徹底した検査並びに捜査を行うように処置をいたしておると承っておるわけでございます。
  76. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 列車の妨害事故は私どもとして一番心配の問題でございます。特に、ただいま御指摘のございました昨年の十二月の新幹線木曽川鉄橋におきます事故は、新幹線開業以来のいろいろな妨害事故の中でもかなり問題のある事件でございますので、その後鋭意公安官等を中心にして、原因といいますか、事情の究明に努めますと同時に、この種の事故が再発いたしませんように監視を強めておる次第でございます。
  77. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 総裁にお伺いしますが、当時その三つの列車にどの程度のお客さんが乗っておって、列車妨害の発見者はだれであったのか、御答弁願います。
  78. 尾関雅則

    説明員(尾関雅則君) お答えいたします。  新幹線は定員が約千六百人でございますので、千人以上のお客さんが乗っておられたと思います。この妨害を発見いたしましたのは、その列車を運転しておりました運転士でございます。
  79. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 羽越線は。
  80. 尾関雅則

    説明員(尾関雅則君) 羽越線は、これも乗客が何人乗っておったか、正確には調べてお答えいたしますが、発見いたしましたのは乗務員でございます。
  81. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 調べろ。
  82. 尾関雅則

    説明員(尾関雅則君) 早速調査をいたします。
  83. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 鉄監局長の回答がちっとも具体的でない、もう少し具体的に最も大事なところを説明してもらいたい。公安委員長も一年前の答弁とちっとも変わらない、現状の進捗状況を答弁しなさい。
  84. 福田一

    国務大臣福田一君) 具体的な問題については、実は刑事局長から答弁をさせるつもりでおったのでありますが、いままだここへ出てきておりませんので、お答えすることができませんが、ひとつ午後の時間にでも答弁をさしていただきたいと思います。
  85. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 木曽川のトラブルについての対策といたしましては、三月末までに大体一万七千人ほど、延べで公安官等動員をいたしまして対策をとっております。  それから、この機会に新幹線全般につきましていろいろ見直しをいたしましたところ、防護さくと申しますか、線路の両側に外部から侵入できませんように施設してありますさくの一部に、やはり改修を要するものを発見をいたしましたので、その部分について補強をするということで、現在補強工事を実施中でございまして、大体今日までの段階で半分以上、六、七〇%を進行いたしております。間もなく補強を完了いたすかと思っております。新幹線につきましては、そういうことで非常に心配をいたしまして、重点的に対策をとっておる次第でございます。
  86. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 鉄監局長説明、羽越線のやつ。トンネルがあったんだろう、カーブだったんだろう、正面から見えなかったんだろう、一番大事なことですよ。
  87. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 列車妨害に対する対策でございますが、名古屋の場合には前後いたしまして三件の列車妨害が起きております。一つは近畿日本鉄道、一つは名古屋鉄道、一つは先ほどの名古屋の市の地下鉄でございます。三つ起きましたので、本年の三月から四月にかけまして、現地の陸運局、国鉄、関係事業者、地元の警察署によります合同会議が開催されまして、その会議でいろいろ対策を検討いたしておるようでございます。また、私鉄各社につきましては、たとえば名古屋鉄道の場合には始発列車を出す前に必ず毎日保安電車を出すということをやっておりますし、また、関係者が添乗いたしまして巡回するということもいたしております。また、地下鉄につきましては保線関係者が巡回をする。地下鉄の列車妨害は巡回中に発見されておるようでございます。また近畿日本鉄道も、全部ではございませんが、始発列車前に保安列車を出すというような対策を講じております。
  88. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 羽越線の関係は。
  89. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 羽越線の方は国鉄の方からお答えいたします。
  90. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 羽越線の事故は、ただいま運輸省の方から御説明がございましたように、まくら木を置いてある、あるいは信号が消滅するようなかっこうになっておったということで、よく調べましたならば、信号のレンズにペンキが塗ってあったというような事故でございました。これは、その事故そのものについては十分何とか警察との連絡をとりまして、原因究明といいますか、でき得れば検挙にまでつなげたいという努力はいたしておりますが、新幹線の場合と違いまして、防護さくとか、そういう制度になっておりませんので、特に申し上げるような対策がとり得ないというかっこうになっております。
  91. 福田一

    国務大臣福田一君) 政府委員から答弁させるつもりでおったわけでありますが、まだ着いておりませんから、私がわかっておる限度においてお答えをいたしたいと思います。  まず、羽越線の問題でありますが、同事件は、昨年の四月十八日午前六時一分ごろ、新潟県村上市の国鉄羽越線間島‐村上間で、上り線路上にまくら木、鉄アングルを曲げて進行を妨害したため、川辺発吹田行き四十二両編成の貨物列車がこれをはねたものでありますが、列車には損傷のなかったものであります。  また、同時刻ごろ、現場から四十七メートル下り方向の同下り線第三閉塞信号機の青の灯火に赤い塗料が吹きつけられていた事案もあわせて発生いたしております。  事件を認知しました新潟県警におきましては、国鉄側と連絡をとりながら、現場の実況見分、付近の聞き込み、関係者からの事情聴取等の捜査を推進しておりますが、まだ犯人の検挙には至っておりません。この捜査の結果、現場から数百メートルの地点で青い灯火に吹きつけたものと認められる同種の赤塗色のスプレー一個を発見し、この販売先等をただいま追及中であります。これは羽越線の問題です。  それから、新幹線の問題でございますが、木曽川鉄橋における列車妨害事故の件につきましては、同事件は昨年十二月八日午後九時十分ごろ、愛知県下の新幹線木曽川鉄橋東詰め上り線外側レール上に鉄片を箱型状に組み立てた物件をセットし、折から同所を通過した博多発東京行き「ひかり」十六号列車がこれをはね飛ばし、その際、車両、まくら木等に損傷を受けたものでありますが、本件は列車転覆の恐れのある悪質な妨害事件として愛知県警では事態を重視し、国鉄側とも密接な連絡をとりながら、県警の総力を挙げて鋭意捜査に努めているところであります。また、本件の捜査に当たっては、列車妨害事件は脱線転覆につながるだけでなく、国民に大きな不安を与えるので、鋭意その捜査に当たっております。本件の捜査としては、事件発生とともに本部の応援を得て、所轄一宮署に捜査員約百名の捜査本部を設置しておる次第であります。  次に、愛知県下で本年三月二十二日以降四月四日までの間、連続発生している列車妨害事件の捜査でございますが、愛知県下では、御指摘のとおり連続した三件の列車妨害事件が発生いたしておりますが、愛知県警におきましては事態をきわめて重視し、特別捜査本部を設置するなど、県警の総力を挙げて鋭意捜査に努めているところであります。本件の捜査に当たっては、列車妨害事件が国民に非常に大きな不安を与え、また、きわめて悪質な状況であることは先ほど申し上げたとおりでありまして、鋭意捜査に当たっております。  また、関係交通機関、陸運当局などに対しては、事件の再発防止を図るための措置を要請するとともに、警察としては犯行の予想される土曜、日曜などには千数百名の制私服員を動員して特別警戒をいたしておるところであります。  それから、これは参考のために申し上げますが、四月十九日付に毎日新聞社等に、犯人は国鉄稲沢機関区の者だと報道されているというようなこともございますので、これにつきましてもわれわれとしてはいろいろと捜査をいたしておるところでありますが、しかし、これが悪質の、何かためにする通報であるかどうか、あるいは事実犯人がそういうことを言ったのかどうかということについては、まだ何ら証拠を得ておりませんので、お答えすることには至っておりません。  それから、兵庫県の加古川市におきましても、連続列車妨害事件が起きております。こういうことについてもわれわれとしては鋭意努力をいたしておるのでありますが、何しろこういう事件は夜間に行われておるような事態がございますので、なかなか捜査に苦労をいたしておりますので、私はこれは非常に重大な問題だと思って、国家公安委員会としてはこの種の具体的な事案についてどうこうと言うわけではありませんけれども、断じて犯人の検挙をするように努力しなければいけないということを強く指示をするといいますか、監督をいたしておるつもりでございます。
  92. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      —————・—————    午後一時八分開会
  93. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、総予算三案に対する目黒君の質疑を続行いたします。目黒今朝次郎君。
  94. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 関係者から一応話を聞いたんですが、もう一つお伺いしますが、公安委員長、この捜査の過程で、組合の活動家であるとか、あるいは国鉄職員であるとか、そういう者に焦点をしぼった調査が行われているという点をわれわれある程度つかんでいるんですが、そういうことはないと思うのですが、いかがでしょうか。
  95. 土金賢三

    政府委員土金賢三君) お答え申し上げます。  捜査に当たってはもちろん厳正、公平にやっておるわけでございますが、そういった特定の目星をつけてやるとか、何か特に組合に対してどうこうと、そういうふうな捜査はやっておりません。
  96. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そういう誤解のないようにやってもらいたいと思います。  それで三木総理にお伺いしますが、おたくは松川事件、下山事件の経過は知っていると思うんですが、最近の列車妨害について、こういうことの関連であなたの決意をひとつ聞かしてもらいたいと、こう思うんです。
  97. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 列車妨害というのは許すべからざる犯罪だと私は思う。多数の人々の生命を奪う。したがって、こういう犯人は、やはり迅速に調査をして厳罰に処されなければならない。何にも関係のない者に対して殺傷の被害を与えるということは、許しがたい社会的犯罪だと思うんです。
  98. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 国鉄総裁にお伺いしますが、新幹線はある程度防御はできても、在来線はどうにもならないとなりますと、現場の方々、労働組合の協力、あるいは機関士の判断、こういう点がどうしてもやっぱり当面の防止の手になると思うんですが、これに対する考え方を最後に聞かせてもらいたい、こう思うんです。
  99. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 御指摘のように、妨害事故がいろいろあるという場合に、運転に当たる職員諸君の苦労は非常に大きいと思っております。そういったものを十分くみ取りながら、片方において保安といいますか、安全につきましての対策を十分とりながら、また職員諸君の心情をくみ取りながら施策に当たってまいりたいと思っております。
  100. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 国鉄はいいです。  ロッキード事件について三木総理にお伺いしますが、五月三日のNHKの討論会で、おたくの中曽根幹事長が、ロッキード事件は長い間の自民党政治のいろんなたるんだ点がこういうものを起こした、十分党内でも今後注意してやる、そういうことを述べておりましたが、自民党総裁として自民党の中でどういうことをやろうとしているのか、お考えを聞かせてもらいたい。たとえば調査委員会などを設けてやるつもりかどうかということを含めて、決意を述べてもらいたい、こう思います。
  101. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この事件は自民党政権下で起こった事件でありますから、われわれとしても責任を感じざるを得ないわけです。自民党としましてもすでに調査委員会があるわけでございます。これが、調査委員会ができておるんですが、いままだ活発な活動というのには入っておりませんが、これはやはりわれわれ自身の手においても、政党の立場から政治的な道義的な責任というものの所在の有無ですか、責任の有無あるいはその所在、これは調査をいたす所存でございます。
  102. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 具体的に動いているのですか。
  103. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) すでに設置されまして、数回会合を開いておるわけですから、具体的にその限りにおいては動いていると申してよろしかろうと思います。
  104. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 では後でまた聞くとして、運輸省にお伺いしますが、四十四年当時、日本航空と全日空の間に非常ないざこざがあったと聞いていますが、どんな状態ですか。
  105. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 四十四年のころに両者の間にいざこざがあったということは、具体的に私は聞いておりませんですが、何か事例がありましたら、ひとつお示しいただきたいと思います。
  106. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 衆議院の大庭証言は、ではうそですか。衆議院の大庭証言。
  107. 中村大造

    政府委員中村大造君) 四十五年ごろに、大庭証人の証言に関連していざこざと、こういうふうな御質問であったように思いますけれども、特に日本航空と全日空との間でいざこざということはなかったのではないかというふうに承知いたしております。
  108. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 では四十五年の五月二十六日、当時の運輸大臣はだれで、この日重大な発言をしているわけですが、どんな発言でしょうか。
  109. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) そのころは橋本登美三郎運輸大臣であったと思いますが、重大な発言とおっしゃるのは、恐らく大型機を国内線で使うというのを慎重に構えろという意味の御発言を指していらっしゃるのではないかと思いますが……。
  110. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 航空事業の再編成について話はどうなっておりますか。
  111. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 当時、国内関係の航空事業についての再編成問題がございましたので、そのことについての再検討をするという意味の発言かと思います。
  112. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 その内容をもう少し具体的に。
  113. 中村大造

    政府委員中村大造君) 五月二十六日は、たしか新聞で当時の橋本大臣が記者会見されました模様が報道されておりますけれども、それは従来のいわゆる政策を再検討する、そういう必要があるということを表明されておるわけでございまして、具体的にその再検討の内容については特にお触れになっていなかったというふうに承知いたしております。
  114. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 再検討の背景は。
  115. 中村大造

    政府委員中村大造君) これは四十一年に閣議了解されましたいわゆる運営体制の基本、これを実行するために努力をしてきたわけでございますけれども、四十四年から四十五年に至りまして非常に客観情勢、特に航空の輸送需要が旺盛になってまいりまして、したがって、四十一年当時決められました航空政策というのは、いわゆる企業基盤を確立するということで、日本航空と当時の日本国内航空、それから全日空と東亜航空、いわゆる幹線企業とローカル運営企業とをそれぞれ統一させるという、そういうふうな方針でございまして、その方針を実現するために政府も努力してきたわけでございますけれども、四十五年になりまして輸送需要が非常に旺盛になってまいりまして、ローカル線を運営いたしております会社も、当時使用いたしておりますYS11を運営することによっても十分採算がとれそうだというふうな客観情勢になってまいりまして、したがって、そういうふうな非常に強い輸送需要というものを反映して、むしろその安全の確保と同時に、利用者に対してどのようにサービスをするか、こういう点が重要なファクターになってきたわけでございます。  したがって、そういう観点から従来のような方針を再検討する必要があるという客観情勢が生まれてきて、五月に当時の大臣がそのような表明をされたというふうに考えております。
  116. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 五月二十八日に名鉄の土川社長から五月二十六日の橋本発言の内容が裏づけされたという点は、一体どういうことでしょう。これは運輸行政としてはちょっとおかしいと思うんですが。
  117. 中村大造

    政府委員中村大造君) その点につきましては、私どもも新聞紙上でそのような報道がされておることを承知いたしておるわけでございますけれども、私どもの知り得る範囲では、そのような事実があったというふうなことは承知いたしておりません。
  118. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 三木総理、あなた調査をしていると言いますが、私も運輸の一人ですけども、こんな大事なことを大臣が発言して、外部から発表されて、内部の者が知らないなんということは、一体正しいのですか、これは。おかしいではありませんか。総理、調査しているというんだ、自民党が。
  119. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国会で問題になったいろんな問題点については、私も個々については承知しないが、全体としてできるだけ迅速に調査をして、国会の質問に答えられるようにという指示は与えておるわけでございますが、具体的なことについては関係者からお答えをいたします。
  120. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 運輸大臣、これはどうですか、運輸大臣として。一体こんなことが通るのですか、運輸省は。
  121. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) いま局長が申し上げましたように、当時の再編成問題についての橋本運輸大臣の発言がなるほどあったわけでございますが、四十一年の閣議了解でもって日本航空と国内航空が合併し、全日空と東亜航空が合併するというあの方針が、先ほど説明申し上げましたような事情で航空事情がよくなって、どうもうまくいかなかったという段階がございまして、そこで改めて再編成ということになったわけでございます。当時、亡くなられた名鉄の土川社長がどういうことを言われましたか、その間のことはいま局長が申し上げたようなことで、運輸省といたしましては別段これがその再編成の過程において疑問を持つとか、疑惑を持つとかいうふうなこととは考えておりませんので、別にどうこうという関心も持っていないわけでございます。何かそのことが当時の合併に非常に大きな問題になっておるという事実がございますれば、もちろんこれは調べますけれども、土川発言がどういう内容の発言であったかも別に気にしないで当時は過ごしたということでございます。
  122. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 しかし、運輸行政の重大な路線の修正じゃないですか。その路線の修正の発言に運輸省の事務当局が知らないというのは、一体許されますか。どうですか。
  123. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 路線の調整につきましては、恐らく土川社長も当時航空会社の役員等に名を連ねておられたと思いますので、そういう立場から路線についての発言は恐らくあったと思いますが、そういう問題は各航空会社においてそれぞれいろんな発言はしておると思います。ただ、それによって路線の問題が、最終結論が運輸省がそれによって左右されたという事実はございませんので、いろんな意見が出ておることは当時関係者は承知をいたしておるはずでございます。
  124. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 土川社長は橋本運輸大臣から聞いたと言っておるんですよ、どうですか。
  125. 中村大造

    政府委員中村大造君) 当時の土川社長が橋本大臣から聞いたということで、いろいろな発言をされたということが新聞で報道をされておるということでございますけれども、現実にそのような発言を当時直接聞いたわけではございませんし、いずれにいたしましても、再編成の過程におきましていろいろな意見があり、また希望もあったわけでございまして、そういうものを背景にして六月に運輸大臣が運輸政策審議会に基本政策について諮問をいたしまして、その答申をいただいて基本方針が決まったということでございまして、したがいまして、その過程におきましていろいろな希望表明なりあるいは意見があったということはございましたでしょうし、またそれが新聞にどういうかっこうで報道されたかということはいろいろありますけれども、私どもといたしましては、先生いま御指摘のような、そういう過去における土川前社長の発言というものを間接的にしか新聞報道で承知いたしておりませんので、これをもってどうのこうのということは申し上げることばできないというふうに存じます。
  126. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 だけれども橋本運輸大臣は現に存在しているんですから、なぜ確認しないのですか。
  127. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) いま局長が申し上げましたように、再編成については関係者がいろんな場合にいろんな意見を言っておったと思います。また、当時の運輸大臣にも陳情のような形でいろんな意見も言っておる場合も多々あると思いますが、そういうことが最終的に再編成の結論に非常に大きな影響を与えたというものではございませんので、いま局長が申し上げましたように、運輸政策審議会に検討をゆだねたわけでございますから、その結論を受けて再編成に取り組んだわけでございますので、当時の事柄について、新聞でこういうことがあった、ああいう記事が出ておったということを、御要望であれば確かめてはみますけれども、恐らく当時の運輸大臣も御承知であるかどうかわかりませんが、別に再編成に大きなあるいは影響があるというふうに考えておりませんので、われわれとしては別に橋本運輸大臣に聞いてもいないという、まあその間のひとつ事情は御理解をいただきたいと思います。
  128. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 しかし、最終的に土川発言の内容が十一月二十日の閣議決定にそのままなっておるじゃありませんか。これはどうなんですか。どうですか、それは。土川発言どおりだ、あなた閣議決定は。どうして確認してなかったんです。そのまま、原案のままだ。
  129. 中村大造

    政府委員中村大造君) いわゆる土川発言というものの内容そのものはわれわれ確認できないわけでございますけれども……
  130. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 確認せい、それなら。
  131. 中村大造

    政府委員中村大造君) とにかく、運輸政策審議会でいろいろ議論がなされて、そうしてその結論が出たわけでございますから、その過程においては当然たくさんの委員の方々が議論をされて、そして、それの集約された結論というものが公正に出たというふうにわれわれは存じておるわけでございまして、その結論というものと、それ以前にいろいろな方が表明された希望なり意見というものとが合致しているとかいないとかということだけをもって、そこに何らかの疑惑があるというふうに見ることは必ずしもできないのではないかというふうに考えます。
  132. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 橋本発言と土川発言と閣議決定、これは三者一緒なんですよ。あなたがどんなに強弁したって、これは現実は客観的にそうじゃありませんか。どうなんですか。これは橋本運輸大臣と土川さんの独走ですか。
  133. 中村大造

    政府委員中村大造君) 橋本運輸大臣が直接記者会見して発表されたことは、先ほど申し上げましたように、従来の基本方針を再検討する、そういう必要がある、こういうことを発言されたわけでございます。それからただいま先生御指摘の件は、亡くなった土川元社長がそういうふうな、これは橋本大臣とお会いになったかどうか知りませんけれども、とにかくそういうふうなことをおっしゃった、土川社長がおっしゃった。それを間接的にわれわれは一部の新聞報道で承知した、こういうことでございまして、当時その時点において、そのような考え方がすでに政府部内で固まって決定しておったということはあり得るはずがございませんので、いろいろなたたき材料というものは、これは当然ございますけれども、すべては運輸政策審議会に諮問いたしまして、そこで議論の結果結論が出されたというふうに考えざるを得ないと思います。
  134. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 かばう気持ちはわかりますけれども、信用できません。  それじゃ次にお伺いしますが、四十六年の二月二十日、衆議予算委員会の分科会で当時の橋本大臣はどういう答弁をしていますか、教えてください。
  135. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) たしかそのときには、社会党の楢崎委員か、あるいは田中武夫委員か、どちらかではございましたが、こういう趣旨の質問があったわけでございます。日本の国内航空路線において大型機を入れようとしておる。ことに、日本航空が国際線に使っておるところの大型機を国内に使う、また新しい大型機を入れるというふうな状況にあるけれども日本の国内の航空の安全は必ずしもまだ十分ではない。しかも飛行場の整備も十分にいっていない。また大型機を着発できる飛行場もきわめて少ない。こういう時期に急いで国内線に大型機を入れる必要もなかろうかと思う。運輸大臣は十分その点は考えるべきであるという意味の質疑があったわけでございます。  それに対して橋本運輸大臣は、特に航空の安全ということを非常に強く意識をされまして、その質疑の中で、大型機の導入については自分も慎重に考えたい、こういう意味の発言をしておられるのであります。
  136. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 森中委員の質問に対して運輸大臣は、四十五年の段階で、四十七年導入ということについては日航もあるいは全日空も企業サイドで考えておったと、こう言っておりますが、これは間違いありませんか。
  137. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 四十五年の十一月の閣議了解の中にもございますように、将来は国内線もジェット化あるいは大型化を考えるべきであるという基本的な方針が示されておるのに照らしてもわかりますように、当時の世界的傾向といたしましても、そういう傾向があったわけでございます。したがって、わが国日本航空あるいは全日空も、そういう状況の中で、しかも万博に向かって航空需要が非常にふえてきた状態でもございますので、将来の計画として、将来は大型機を導入しようという計画を持っておったわけでございます。これはたびたび申し上げますが、両社とも毎年、予算編成に関連いたしまして、大体五カ年ぐらいの大ざっぱな見通しを立てるわけでございますが、四十五年のその段階で両社とも、その五年間の将来の見通しの中で、大型機を入れよう、大体その中では四十七年ぐらいを目途にして入れたいという考えを持っておったということは事実でございます。
  138. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 運輸省として四十五、六年当時、この空港整備についてどんな考えを持っておったのですか。
  139. 中村大造

    政府委員中村大造君) 四十五年に第二次空港整備五カ年計画を策定いたしまして、四十六年度から五十年度までの間に約五千六百億の資金を投入いたしまして国際空港並びに一般空港の整備をする、こういう考えでございまして、その中では、当然いわゆるジェット化あるいは大型化、こういう趨勢に即応するような空港の整備を考えておった。それと同時に、保安施設の整備と騒音対策、こういうものも充実させる。これが当時の方針だったように存じております。
  140. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 当時の内村航空局長ですか、この方が四十六年二月二十日の衆議院分科会でどんな答弁をしていますか。
  141. 中村大造

    政府委員中村大造君) いろいろ答弁をいたしておるわけでございますけれども、空港に関係いたしましては、四十七年度においてジェット化あるいは大型化というものが可能である、そういう空港がある、こういう答弁をしていると思います。
  142. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 もう一回議事録を読んでください。八ページの一段、二段。
  143. 中村大造

    政府委員中村大造君) 先生御指摘の八ページでございますけれども、当時の内村局長は、来年度、いわゆる四十六年度から「第二次五カ年計画を立てまして、総額として五千六百億というものを計上」いたしております。「すなわち、現在幹線の空港でございます千歳、それから東京の羽田、名古屋、大阪の伊丹、それから板付、こういったところは現在いずれもすでに就航可能でございます。それからさらに今後ローカル空港につきましても、需要の多いようなところにつきましては、逐次二千メートルまたは二千五百メートルというふうな長さに滑走路を延ばしてまいりまして、さしあたり四十七年度ぐらいからも二カ所ぐらいは出てまいります。」と、こういうふうな答弁をいたしております。
  144. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 四十六年度の空港整備の事業内訳、これといまの答弁の関連を説明してください。
  145. 中村大造

    政府委員中村大造君) 四十六年度の予算の関係でございますけれども、東京、大阪を別といたしまして、たとえば名古屋空港につきましては、エプロンの改良ということで四十六年度一億二千七百五十万、こういう予算を予定いたしておったわけでございます。  それから熊本空港につきましては、用地造成、誘導路、エプロンの新設、こういうふうな関係で十五億一千八百万、こういう予算を計上いたしております。  それから新鹿児島でございますけれども、これも用地造成、滑走路等の三十八億等でございます。
  146. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 二カ所というのはどこだ。この内村答弁では四十七年度二カ所になっているでしょう。この答弁、あなたがいま言った答弁ですと、四十七年度ぐらいから二カ所ぐらい。この二カ所とはどこを指しているんですかと私は聞いているんです。これとこれの関連。
  147. 中村大造

    政府委員中村大造君) これは恐らくローカル空港ということでございますから、熊本と鹿児島、こういう空港を考えておったと思います。
  148. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 空港整備の面からは四十七年度から導入する、こういう計画と見ていいじゃないですか、エアバス。
  149. 中村大造

    政府委員中村大造君) 空港のいわゆる滑走路等の規格から考えますと、この四十六年二月当時といたしましては、羽田、大阪のほかに、ただいま申し上げましたようなローカル空港としては熊本とか鹿児島、こういう空港にエアバスが就航可能になるだろうと、こういうことでございますから、空港関係という点から考えますと、国内にエアバスを導入することが四十七年度から不可能であるということにはなってなかったと思います。
  150. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 閣議了解と実行予算を考えますと、運輸省の空港整備では四十七年度から導入と、企業サイドでも導入と。そういうふうに考えますと、先ほど木村運輸大臣が言った、この二月二十日の橋本運輸大臣の発言は個人プレーじゃないですか。
  151. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 空港の整備は、これは閣議了解の基本方針に従って将来計画として整備を始めたわけでございますが、たまたま四十五年が空港五カ年計画の初年度にもたしか当たっておると思いますので、そういう中で、いま局長が申し上げたようなローカル空港一、二の整備をやっております。当時は大型を入れる、いわゆるエアバス級の大型を入れる問題と、それからジェット化をするという問題があったわけですね。ジェット化にいたしましても滑走路の延長が要るわけでございますので、必ずしも四十七年度からおっしゃるようないわゆるロッキードの一〇一一とかあるいはDC10を入れるということではなくて、ジェット機が使用できるような空港に整備しようということから話が始まっておるわけでございますので、そういうふうな計画を持ったわけでございます。
  152. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 運輸に携わっているわれわれに対しては、そういう答弁は詭弁じゃないですか。大型化と高速化ということをうたっておって、そう言うのは単なる言いわけじゃないですか。
  153. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) そこで、いまのような御疑問があると思いますが、大型を導入するのに慎重になるということは、航空路の整備が大きな理由ではなくて、いわゆる航空の安全ということと、それからもう一つは、万博を境にいたしまして、そのころまでロードファクターで言いますというとかなり高かったのがだんだん減ってきた、対前年の伸びも減ってきたという、この航空需要の減少という変化を踏まえて、同じ大型機を入れるとすれば、幹線両社がやっておるわけですから、公正な競争のために両社とも入れて同時に使用するということが健全な競争のためには好ましいわけですが、その段階で急いで大型機を入れるということは、今度は需要に対して供給力がオーバーしてきて航空企業そのものにも影響があるということと、それからもう一つは、いわゆるエアバスと言っておられますようなDC10とかあるいはロッキードの一〇一一とか、そういったものは四十五年の段階ではアメリカにおきましてもやっと飛行機ができて、初飛行をした段階で、まだ実際には使っていない。実際に使いましたのは四十六年の秋以降でございますので、そういう十分に実用化した実績の状況もまだ見ることのできない段階において、急いでこういうものを入れるということはやはり航空安全という点からも問題がある、いろんな点から慎重にならざるを得なかった、そういう考え方のもとに橋本運輸大臣の見解がそういうふうになっておる、こういうことでございます。
  154. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 三木総理、閣議決定と大臣の発言でお伺いしますが、十一月の二十日に閣議決定があって二月の就任の発言で、わずか三カ月間に閣議決定とは違った方向を発言するということは、一体これは可能なんでしょうか。いまの大臣の答弁は本当に真実でしょうか。私はどうもごまかしでしょうがないと、こう思うんですが、三木総理の発言を求めます。
  155. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、大臣はこの場合に真実を述べていると思います。真実を述べていると思いますから、真実を覆い隠して皆さんの御質問に対して虚偽なことは申し上げておらないと信じております。
  156. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そういう情勢が許されるかしら、三カ月間で。総理の判断は。わずか三カ月ですよ。
  157. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 目黒君、私もよくその事情を知りませんので、運輸大臣の説明は私もそれでよく了解することができるわけで、その三カ月前のは基本方針を決めたんですよね、基本方針を。それで三カ月後に、具体的にどうするかということは決めてなかったので、三カ月たった後に具体的に決めたんだということ、そういうことはやっぱり閣議決定であり得ると思いますね。基本方針は決めて、具体的にある期間が過ぎてこうするということを決めることはあると思いますが、御納得がいきませんか。
  158. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 実行予算があるんだ、実行予算が。実行予算があり、大臣答弁があり、何でこんな答弁になるんですか。
  159. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 運輸大臣からもう少し詳しく説明をいたすことにいたします。
  160. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 納得できません、これは。こんな権威のないものですか、閣議決定なんというものは。
  161. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) もう少しそれでは詳細に申し上げますと、四十五年の閣議了解というのは一応の、日本の国内において再編成が主たる問題でございました。同時に、将来の空港として国内路線におきましてもジェット機を入れる、あるいは大型機を入れるという基本的な考え方があの四十五年の閣議了解で一応決まったわけでございます。いわば基本方針でございます。したがって、その基本方針を受けて、いついかなる時点においてこれを具体化するかということは、それからの航空事情というものを十分検討いたしまして、運輸大臣がいわば実施計画的なものを決めていくということになろうかと思うわけでございます。  そういう考え方の上に立って、四十五年の閣議了解を受け、その後、先ほど繰り返して申し上げておりますような航空の安全の問題、あるいは航空需要の変化、あるいは大型機の実用化の問題、そういう問題も十分見きわめた上で、あくまでも安全について日本政府として運輸省として確信の持てる段階で、しかも企業の基盤が損なわれないような経営ができるというふうなことを考えて実施計画を立てるということでございますので、運輸大臣の通達として四十七年に出しました通達がいわば四十五年の基本計画を受けての実施計画である、こういうふうなことになるので、その辺はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  162. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 どうもまだ納得できません。じゃ、別の角度から。  四十五年の秋に日本航空がジャンボ四機導入する、それで四十七年から国内線に一部LRを転用する、こういうことについて運輸省は事前に了解を与えた、こういう点についてはいかがですか。日本航空はやっているじゃないですか。
  163. 中村大造

    政府委員中村大造君) この点は、四十五年の十一月に日本航空が国際線用としてLRを四機購入したい、それの取得認可をしたわけでございます。そのときに日航の長期計画といたしましては、すでに国際線に就航いたしております三機を四十七年段階において国内線に転用したい、こういう計画を日航は持っておったということでございまして、それ自体を承認したとか、認可したということではございません。ただ、そういう計画を前提条件として日航は持っておった、そういうことをわれわれは十分承知して四機の購入を認可した、こういうことでございます。
  164. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 購入と転用を切り離しての答弁なんて、そんなこと、ごまかしてはいけませんよ。全体として承認を与えたんでしょう。
  165. 中村大造

    政府委員中村大造君) 四十五年の暮れに認可いたしましたその機材の実際に入ってまいります時期というものは、四十七年度になるわけでございますけれども、したがって、そのときに当時の日航の持っておりました需要見通しというものから考えまして、四機の国際線用の認可をいたしたわけでございます。そのときに、これは日航としては国際線、国内線全体を通じまして、それからジャンボだけではなく、在来機も含めまして、四十七年段階においては全体の機材繰りをどうするかという問題が四十七年になって具体的に出てくるわけでございますけれども、四十五年の十一月段階におきましては、日航のそのような三機の国内線への転用、こういうものが十分にあり得るということは、これは運輸省といたしましても承知して四機の購入を認可した、こういうことでございます。
  166. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 あり得るなんというごまかし言わないで、現に与えたのでしょう。これは日航の社長が現に証言していますよ。どうですか。日航の社長が証言していますよ。
  167. 中村大造

    政府委員中村大造君) 四十五年の十一月に認可いたしましたのは、国際線用としての四機の購入でございます。したがって、現実に国際線用の三機を転用いたします時期というものは、これは四十七年度になってからでございます。したがって、厳密に言えばその時点においてこれは事業計画の認可を四十七年段階にいたすわけでございますけれども、四十五年当時、四十七年を見通しまして、そのような機材計画というものを日航が持っておる、それを前提にして四機の購入を認可したということは、これは事実でございます。
  168. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 大蔵大臣、こういうあいまいな計画で金の融資を、予算を認めるんですか、いまの局長のような答弁で。予算を査定する際に。
  169. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 四十五年十一月当時の日航の計画でございますが、ただいま航空局長が御答弁申し上げましたとおり、国際線に四機入れる、それから国際線のうちの古いものを三機、将来国内線に転用しようというようなことばあったと聞いております。その後なお四十六年の三月に運輸省と相談いたしまして……
  170. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 よけいなことを聞いていないよ。
  171. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) いま具体的な内容をちょっと御説明したいのですが、それで日本航空の資金計画をやる際に、四十五年度の日航の収益が非常に減少したというようなことを判断いたしまして、国内線への大型線の導入ということにつきましては相談の上ストップしたということをやっております。
  172. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 まあ逃げている気持ちはわかりますが、何だかんだ言っても、こう見ますと橋本運輸大臣というのはきわめて独走しておった、何かあると、こう思うんですが、どうですか。総理大臣、橋本大臣の独走がわからないんですか。これ、どう思いますか。全部橋本大臣の独走ですよ、これは。どう考えますか、当時の副総理として、総理。一連の橋本運輸大臣、どうなんですか、これ。
  173. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 航空局長からもいろいろ説明をしておるわけでございまして、独走であるという目黒君の断定に私が同意をいたすわけにはいきません。
  174. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 客観的に独走じゃないですか、どうですか。客観的にそうじゃないですか、言ってください。
  175. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 大臣の責任において、そのときそのときの航空行政の上から一番こうすることがいいということでいろんな決定を行ったものだと。独走なりと、こういう言葉で、それを私からここでそのとおりであると申し上げるわけにはまいりません。
  176. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私の調査では、橋本大臣の第一次の発言の当時においてはロッキードから児玉に四千九百万、第二次の、いまの国会の発言の前後では一億三千万、児玉に集中的に橋本発言に前後して金が入っているんですよ。こういう問題について法務大臣なり、あるいはこれはどういうことですか、私は当然捜査の対象になると、こう思うんですが、いかがですか、法務大臣。
  177. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 検察庁はあらゆる材料を集めるだけ集めて、この点についてもあらゆる問題についてやっておりますから、御心配になるようなことはないだろうと思います。
  178. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 じゃ、お伺いします。私がいま言ったやつは調査の対象になりますか。
  179. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) そのような点は、先日森中委員の御質問にもあったことと同じようなお尋ねでございまして、そういう金の流れ、それからそういうエアバスの導入の経緯というようなことの客観的な事実はあることは検察当局も関心を持って調べておりますが、その間における関連性のことにつきましては、いわば捜査の内容に関することでございますので、私の口から述べることは御容赦を願いたいということでございます。
  180. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 捜査の対象になっていると考えていいですね、刑事局長。対象にはなっているんですね。
  181. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 捜査の対象ということはなかなか微妙でございますが、そういう事実の経過というものは調査、捜査の対象にはしております。
  182. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 じゃ、十分捜査してください。  次は、この四十七年導入で空港の整備、安全ということと、次に需要の問題とよく言うんですが、これを具体的に教えてください、航空需要。
  183. 中村大造

    政府委員中村大造君) 四十五年当時想定いたしました輸送需要は、これは昭和六十年時点を想定いたしまして、国内航空は約四千万人程度の輸送需要があるであろう、こういう想定であったと存じます。
  184. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 その四十七年を四十九年に延ばしたということについてあなたはよく言いますから、その関係をもう少し親切に言ってください。
  185. 中村大造

    政府委員中村大造君) ただいま申し上げましたように、この四十六年当時、四十六年を起点にいたしまして昭和五十年の予測でございますけれども、国内線が四千万、国際線が一千万、これが当時の予測でございます。当時、四十六年度に例をとりますと、実績でございますけれども、国内線は千六百八十三万、国際線が四百三十一万程度の実績でございます。
  186. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 どうもかみ合いませんね。航空需要が非常に減っているのでエアバスの導入を延ばしたと、そういうことを言っているんですけれども、その根拠になった伸び率の状態をもう一回言ってください、全日空の資料で。全日空の資料、あるでしょう。全日空の資料、ないですか。
  187. 中村大造

    政府委員中村大造君) これは運輸省が当時の輸送実績の推移を調べたものでございますけれども、四十五年の九月、これは九月ごろまでは、これは幹線でございますけれども、大体一三四%から四〇%、大きいときは一五〇%程度の対前年伸び率をいたしております。それから四十五年の十月以降、これは万博終了後でございますけれども、一二〇%、一二三%、一二二%というふうに落ちてまいりまして、四十六年度の七月になりますと対前年一〇九%、八月は一〇〇%と、対前年と全く同じということに落ち込んでおります。九月になると九三%ということで、むしろ逆に対前年は減少いたしておるわけでございます。  それからもう一つ、このいわゆる利用率、これは乗客の数と座席の数との比率でございますけれども、このいわゆる利用率を見ますと、やはり四十五年度終わりごろからずっと落ち込んできておる、こういうことでございます。
  188. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 日本航空は大体二二%プラス程度と、そういうことですね。全日空の方はダウンしていると。そういうことについてはどう考えていますか。
  189. 中村大造

    政府委員中村大造君) 全日空につきましては、特にこの利用率の減少が目立っておりますけれども、これは一つには、それ以前に輸送力を相当つけた、それとの関係で利用率が落ちてきておるということが言えると思います。それから、やはり全日空については、四十六年の七月にいわゆる雫石の事故を起こしまして、それからしばらくの間は非常に乗客が落ち込んだ、こういうことでございます。
  190. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 事故のあった当時はある二、三カ月ダウンするというのは、これは運輸事情の常識であって、それは何も驚くことばないのですが、私の持っている資料では、四十七年の十一月二日の全日空の見通しというのが極端に下がっている。そして四十八年からまたぐっと上がっている。わざわざ四十七年に見通しを下げた理由はどういうことなんですか、全日空が。これは児玉のためじゃないですか。見てください、これ、一一一。
  191. 中村大造

    政府委員中村大造君) 特に全日空が意識的に輸送需要の見通しを下げたということではなくて、私の考えますところによると、やはりこの雫石事故の後遺症、こういうものの回復というものに相当な時間を要する、こういう見通しを全日空が立てたためであると思います。
  192. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 うそを言いなさんな、あなた。全日空は当時もう完全に回復していますよ。一三〇%になっていますよ、この見通しをつくった段階では。回復していますよ、すっかり。見てください。回復してないですか。一一一でしょう、これ、全日空。四十七年十月一三〇、九月一三三、十一月一二四、これは実績ですよ、全日空のね。このからくりはどういうことですか。十一月でしょう。このからくりを教えてください。
  193. 中村大造

    政府委員中村大造君) いまのそれは実績値であろうと思います、先生の御指摘は。
  194. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 実績値だってあなた、四十六年、四十五年にちゃんとなっているじゃないですか。なぜここだけ違っているのですか。
  195. 中村大造

    政府委員中村大造君) 確かに実績値は四十六年から四十七年の中ごろまでは非常に落ち込んでおりますけれども、四十七年度の中ごろから非常に輸送需要は旺盛になってきておると、これは実績によって明らかでございます。
  196. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 じゃ、この見通しと合ってない。見通しは間違っているのか、全日空の見通しは、一一一というのは。
  197. 中村大造

    政府委員中村大造君) これはそのときそのときの見通しというものは、非常にシビアに見るか、あるいは客観情勢をどのように把握するかということでございますから、見通しと実績とが食い違ったからといって、直ちに私はそれを云々することはどうかと思います。やはり全日空については四十六年のこの雫石の打撃というものをきわめて深刻に受け取ったのではないか。それが予想以上に早く回復いたしまして、四十七年度の中ごろから復旧したと、こういうふうに解釈するのが順当ではないかと存じます。
  198. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 どんな詭弁を弄したって、数字が物語るのですから、いわゆるつくられた数字だという点だけは私は意見を言っておきます。つくられた数字だ。四十七年に関する限りはつくられた数字、いわゆるトライスターの関係で延ばすためのつくられた数字だと、こう思います。  時間がありませんから、最後に怪文書事件についてお伺いしますが、わが党の矢田部質問について、三木総理どの程度調査が進んでいますか。三木総理、さっき調査はすると言ったでしょう。
  199. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 矢田部氏の、自民党の航空特別委員会のお話でございますか。
  200. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうです、怪文書はそういうことです。
  201. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 怪文書はと、こう言われるものですから、このごろ怪文書は大分多いものですから……。  あの件は、先般もちょっと調べた結果を申し上げたのですが、自民党の正式の文書ではないんですね。一体、それならあの文書をだれがつくったのかということについて、いままだ、きょうまでにはこういうことでございますという報告は党から来てないのですが、この問題は私も鋭意調査をいたしますが、とにかく非常になんですね、党の正式文書でもなく、しかもこれは運輸省にも、正式の文書で判をついて出されたわけではないんですけれども、その文書は保管されている。まあ奇奇怪々な事件でございます。そういうことで、私は一体だれがこういう文書をつくったのかということは、調べなければならぬ問題としてこれは調査を党にも指示したわけでございます。まだきょうまでに、こういう経路でこの文書はできたという報告は受けてないのですが、今後とも調査をいたします。
  202. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 毎日新聞の五月一日付の、自民党政調会の千村メモということについては、事実確認はどうでしょうか。総理。これは自民党のことだから総理だ。五月一日の千村メモ、間違いありませんか。
  203. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 千村というのは事務局の者でございます。毎日新聞に出ておったようでございますが、詳細に私も承知してないのですが、そのメモもやはり党の調査の大きな対象になるわけですね、それはいろいろなことを書いてあったようですから。そういうことも参考にしながら、党の方で鋭意調査をいたしておるわけでございます。
  204. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 参考じゃない、あれだけ新聞に載っているんだ、全国版に。どうなんですか、これ。間違いないんですか、あるんですか。自民党に電話かけて聞きなさい。これだけあるんだ、毎日新聞に書いてある。
  205. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、調査中でございますから、そういうことも、そういうメモも皆やっぱり調査の参考になるわけでございます。できるだけ早く、いままでの調査がどうなっておるかということは、これはできるだけこの委員会に御報告をいたすことにいたします。どうなっているか、調査がこういうふうにはっきりしたかどうかということについて、まだ私はよく聞いておりませんので、いままでの調査がどういうことかという経過はできるだけ早くここで申し上げることにいたします。
  206. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 いや、この件はどうですか、この件は。
  207. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その点も含めてここで申し上げることにいたします。
  208. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 結局何もやってないじゃないの、あなた、時間かせぎで。いま確認してくださいよ、自民党本部に電話して。そんな無責任なことありますか。
  209. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 直ちにそれは党の方に連絡をとりますけれども、自民党の責任者、私は政調会長にこれを言っておるんですから、政調会長に私が問い合わせるほかにはないので、いますぐ本部へ電話をかけましても、政調会長がいるかいないか。少し時間をください。できるだけ早くいままでの調査の結果を御報告申し上げます。
  210. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 これは次の質問に大事な関連があるんです。次の質問に関連するんですから……。
  211. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま秘書官に問い合わさせております。おりましたらすぐに……。
  212. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 目黒今朝次郎君、続けてください。
  213. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 このメモにある、五月二十六日に全日空からこういう書面が出ていると。これは確認できますか。
  214. 中村大造

    政府委員中村大造君) ただいま先生御指摘の文書は、全日空から航空対策特別委員会に提出いたしました資料だと存じます。
  215. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうすると、「航空企業の運営体制について(要望)全日空」、これ、間違いありませんね。これは長谷川労働大臣も当時出ていることになっていますが、これは記憶ありますか、長谷川大臣。大臣に記憶あるかどうか聞いているんだ。あなたの名前が載っていますよ、ここに。長谷川峻さんと。
  216. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 党内で交通部会に関係していましたから、いろんな会合の中に一回ぐらい出ているようなことがあるかもしれません。
  217. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私が究明したいのは、わが党の矢田部委員が提案した問題と、この全日空の問題と、それから四十七年七月丹羽通達、この三つの文書が、整理してみますとほとんど内容が一致しておるんです。これはどうですか。
  218. 中村大造

    政府委員中村大造君) これは、この前も御答弁申し上げましたように、全体といたしまして内容的に同一のところもございますし、また非常に違っているところもあるということで、七月一日の通達が出されます過程においていろいろな意見があったということでございまして、したがいまして、同じところもあれば違うところもある、こういうことだと存じます。
  219. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は学がありませんから、項目ごとに全部調べたのですが、どこも違っておりません。したがって、違っておれば、後ほど違っておるところを具体的に提示をしてください。どこが違っていますか。全部一緒じゃないですか、みんな三案。どこが違っているんです。
  220. 中村大造

    政府委員中村大造君) 先生御指摘の、どれとどれとが同じであるかということでございますが、私の理解いたしております限りにおいては、七月一日の通達の内容とそれ以前にいろいろ出ております意見とは、大いに違うところもあれば、内容的に同じところもあるということでございます。
  221. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 この全日空の書面と、それからいわゆる福永航空対策委員長の書面と、それから丹羽通達の書面と、若干の、日本文でありますから、言い回しが違いますが、いわゆる骨格は全部一緒だと言うんですよ。これは仕組まれた私は芝居じゃないか、だれが仕組んだのか、ここが問題じゃないかと、こう言っているんですよ。どうですか、総理大臣。
  222. 中村大造

    政府委員中村大造君) こればそもそも、この通達の作業の内容が四十五年の閣議了解の内容を具体化する、いわば運営体制、事業分野の明確化と、それから輸送力増強等の基準を決めるという、そういうことでございますから、そういう骨格ででき上がっておるわけでございますから、大きな骨格はその限りにおいては違ってない。しかし、その中に書いてあるその具体的な内容については、これはまさに大きな問題でございまして、それは同じところもあれば違っているところもある、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  223. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 どんなに詭弁を弄しても、私は違っていないと言うんですから、違っているところをぜひ後ほどだれかに——もう時間がありませんから。とにかくこれは、すなわちこの三つは、全日空の利益代表がどこかと連絡をしてつくり上げた怪文書である、そういう策動である、そう私は考えて間違いない。もうこれ以上あなたの答弁は要りません。  それで、時間の関係もありますので次の問題ですが、三木総理にお伺いしますが、韓国中央情報部ですか、KCIA、この問題について、わが党の小林衆議院議員が質問書を出して、一月十六日に答弁しておりますが、その内容についてお答え願います。
  224. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 別に法制局の所管事項じゃございませんけれども、たまたまこれは閣議決定をいたしますもので、私も関与いたしましたので申し上げますが、その質問主意書の中で、「外国公権力の日本国内における行為について、次の点を明らかにされたい。」という中で、第三番目に「韓国中央情報部のその後の国内の活動について、どのような調査を行い、どのような調査結果がでているか。」、四番目に「その調査結果に基づき、どのような外交措置がとられたか。」という質問の主意でございますが、それに対して答弁としては、「(3)及び(4)政府としては、韓国中央情報部部員が日本国内に存在し、かつ活動を行っているとの事実はは握していない。したがって、特別の外交措置を執るという問題は生じていない。」ということをお答えいたしております。
  225. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 総理、その考えはまだ変わりありませんか。
  226. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 変わりございません。
  227. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 一九七六年の三月十七日、アメリカの下院外交委員会の国際関係委員会における韓国中央情報部の活動に対するレイナード氏の証言について御存じですか。
  228. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 記憶いたしますところでは、レイナードという人が金大中氏の問題について、これは韓国情報部が日本国から連れ去ったという趣旨のことを申したということ、承知しております。
  229. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 総理、いまの外務大臣の証言があっても、まだこの考え方は変わりませんか。
  230. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 変わりません。
  231. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 信用しないんですか。
  232. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういうことをレイナードという人が言ったことを知っておるかというお尋ねでございましたから、存じておりますと申し上げましたので、その事実そのものを私が確認をしておる、あるいは承認しておると申したわけではございません。
  233. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 日米関係に熱心な総理が、なぜ信用しないんですか。
  234. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日米関係に熱心なということは、アメリカの言うことを全部信ずるということではございません。
  235. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 それでは昨年十一月の十三日、わが党の田英夫委員が外務委員会で朝民連事件について質問をいたしまして、外務大臣が十分調査をすると、こういう答弁をしていますが、調査の結果について御答弁願いたい。
  236. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 何事件ですか。
  237. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 朝民連。
  238. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 田議員からそういうお尋ねがございましたわけでありまして、私ども、その間の事情をそれなりに聞き取りをいたしましたが、別段わが国の中で韓国の政府機関といったようなものがいわゆる公権力を行使したというような事実を発見いたしておりません。
  239. 田英夫

    ○田英夫君 関連。  いま三木総理も、あるいは宮澤外務大臣も、KCIAが日本で活動している事実はないという意味のお答えがありましたけれども、疑わしい事実は実はたくさん起こっているわけでありまして、一つ実例を挙げますと、ことしの三月一日に神奈川県のいわゆる民団の事務所を暴力的に乗っ取った一派があるわけですが、御承知のように、東京、神奈川などでは民団の中でいわゆる反朴側、朴政権に反対する側の人たちが多数を占めまして、いわゆる執行部を握っているわけで、民団の事務所もしたがって反朴側の人たちが使っているわけでありますけれども、これに対していわゆる親朴側の人たちが三月一日午前二時、深夜ですが、六十人余りでその神奈川県の横浜にあります民団本部を襲撃をして、暴行を働いてそこにいた人たちに負傷を負わせる、こういう事件があって、このときに四十三人が逮捕をされているわけです。その後、長い経過がありますけれども、一時逮捕され、排除された人たちがさらに数日後再び押しかけまして、このときにはかなりの人数が動員されたようでありますけれども、大体百五十人ぐらいで、四日の白昼再びこの事務所を襲って、遂にこれをまた乗っ取ってしまった。  こういう事実があるわけですけれども、それからずっと乗っ取ったままになっているわけですが、六日の夜には横浜の総領事館の車に乗った、その車の番号もわかっておりますが、領一三六六という車に乗って李起周という総領事自身がこの現場に出向きまして、翌朝までこの現場でいわゆる親朴側の暴力的に乗っ取った人たちを激励をしている事実があります。ここにその写真もありますから、顔で確認をしていただければわかりますし、車のナンバーも写っています。  これはKCIAと断定することはできないかもしれませんけれども、総領事という外交特権を持った人が、日本の国内で、しかも不法に、この不法という意味は後で申し上げますけれども、不法に暴力的に占拠している人たちを、つまり不法者を支援しに活動をしている。こういう事実を政府はどういうふうにお考えになりますか。
  240. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府委員がおりませんので、非常に詳細には申し上げることができませんが、私の承知しておりますところでは、これは非常にいわばいま田委員の言われた人々の間の、何と申しますか、仲間げんかと言ってはちょっと言葉は適当でないかもしれませんが、争いのようなものがございまして、そうして総領事館の者がそれに関与をしたと申しますか、そこに登場してくるということは確かにあったようでございます。  それが、つまり自国民の間の争いをそれ以上拡大させない、あるいは不法な家宅侵入についてそれを排除するというようなことであります限り、問題にしなければならないこととは実は考えませんが、問題は、わが国の警察官がそのような騒擾に対して、それを制止をして、そして秩序を立てようとしました際に、総領事館員と称する者がわが国の警察権の行使について少なくとも口頭で、少なくとも口頭である種の批判を加えたと思われることがあるわけでございます。そうなりますと、これは田委員の言われましたことにかなり近い事実になってまいりますので、私どもとして韓国政府、東京の大使館に対しまして、いやしくも日本の警察官の公の職務執行について、外交官あるいは領事という公の立場からそれについて、たとえ手出しをしたということでなくても、何かの形で干渉をするというようなことであれば、これは穏やかなことではないと考える旨を申しまして、それに対しまして、先方から先方なりの疎明があったという事実がございました。政府委員がおりませんのでございますが、大体大要は私そのように承知をいたしております。
  241. 田英夫

    ○田英夫君 もう一遍。  いまの外務大臣のお答えで明らかなように、まことに好ましくない行動をしている韓国外交官があるということです。そして私は、この総領事はおそらくKCIAであろうと思いますが、現に金大中事件を引き起こした金東雲という人物はKCIAであるということが確認をされているし、あるいは当時在日大使館の公使であった人物も、その指揮官であったとされているわけです。そういう中で、今回のこの神奈川民団事件でもう一つ非常に問題なのは、実はいま申し上げたような経過の中で、この不法に占拠した一味が立てこもり続けていたために、今度は本来の神奈川民団の執行部を握っている人たちがその立ち退きを求める仮処分を申請をして、横浜地裁はこれに対して仮処分を出したわけですね。で、最終的には強制執行という形になっていったわけです。  その間にいろいろ経過がありますが、これは省略いたしますけれども、この仮処分が出て執行官がその執行に当たろうとしたときに、これは三月八日になるわけですが、つまり事件が起こってから一週間後、三月八日の日にこの強制執行命令ということを出しまして、横浜地裁の執行官が現場に赴きました。ところが、立てこもった方はその執行官の言うことを聞かない、立ち退かない、こういう状態が発生をいたしまして、執行官は警察に対して、執行ができるように援助をしてほしいと、こういうことをわざわざ警察に出向きまして依頼をしている事実があります。にもかかわらず、神奈川県警、具体的には現場は神奈川署でありますが、この警察側はなぜか不法に占拠した側に味方をする態度をとって、執行官が執行をすることを援助しなかった。むしろそれどころか、執行官に対して、無理にやるとあなたの身が危ないというようなことを言って執行をさせなかった。結果的には、何と一カ月後の四月八日になってようやく強制執行が行われたのであります。退去をさせたのであります。この事実を国家公安委員長は握っておられるかどうか、伺いたいと思います。
  242. 三井脩

    政府委員(三井脩君) ただいまの件でございますが、この民団神奈川県本部の事務所は、民団神奈川県本部自身が二つに割れて、多数派といいますか、少数派といいますか、いわゆる主流派と反主流派というように分裂をいたしました。したがいまして、よくある例でございますが、この場合にこの事務所をどちら側が所有権を持っておるか、あるいは使用占拠する権原があるかということが争いになるわけでございます。この点につきまして民事訴訟法に基づく本訴が現に提起され、四十七年以来いまだに係属審理中と、こういう事態でございます。そこで、その間に仮処分があり、その仮処分は、時に主流派の占有を認め、時にまた反主流派の占有を認め、二転三転をいたしておるわけでございます。したがいまして、これに対します警察の態度といたしましては、この建物の所有及び使用をめぐる問題は民訴の本訴で争われておりますので、この点についてはいわば民事的な事件、警察としては民事に不介入の立場でこれを見守る。  そこで問題は、そういう中で行われます暴力的な事案、これは断固として取り締まる、こういう態度で臨んでおるわけでございまして、ただいまお話しもございましたように、三月一日の日に四十名余り、これは主流派の方でございますけれども、夜中に立ち入りましたので、暴力行為を中心として全員検挙をするということを行いました。次いでまた、三月に入りましてから、その後今度は反主流派の方が五十名ぐらいで同様な事案を引き起こし、中におりました主流派と乱闘となり、主流派の側で八名の負傷者が出る、こういう事案が起こりましたが、これは現場におきまして実力排除、後、事後捜査に付しておる、こういうようなことでございます。  そこで、いま御質問のございました、この間における本訴とは別の仮処分の問題でございますが、三月四日に主流派が中に入りまして、このときは三月一日の事案と違いまして一応平穏に入った、こういうことでございますが、その後三月五日の日に仮処分の決定があったと思いますが、今度はこの主流派がそこに入ることを裁判所の方で認めるという仮処分の決定があったわけでございます。その後また、その翌日、反主流派の方が異議申し立て、反対の仮処分申請をいたしまして、これまた裁判所が今度は反主流派の決定を認める、こういうことになりましたので、そうなりますと、いま御指摘になりました三月八日の仮処分の性行、この問題は四十七年に反主流派の申請に基づいて決定されました仮処分の内容を実現する、そのための執行と、こういうことに法的になったわけでございます。  そこで、仮処分の執行というのは、いわば国家権力の最終的な発露といいますか、これが暴力によって執行できないというようなことがございますと大変な問題でございます。ただし、御存じのように、仮処分にはいろいろの種類、内容がございまして、執行官が強制力をもってこの仮処分決定の内容を実現する、こういうようないわば作為義務を債務者に負わせ、それの執行を執行官が行う、こういう内容のものがあります。それからもう一つは、単に不作為を債務者に命じて、それの履行は債務者の任意の履行に期待をする、こういう宣言的な仮処分と、こういうのがございます。  本件の場合は、この後者に属するわけでありまして、債務者の任意の履行を期待する。したがいまして、この種の仮処分に対する執行官の執行というのはどういうことになるかと申しますと、執行官が現場へ行きまして、こういう仮処分の内容であるからこれを守りなさいということを口頭で促す、任意の履行を促す、こういう性質のものでございます。これにつきまして、執行官が警察に援助の要請をいたしました理由は、中に入っていって読み上げるわけでありますから、その際に妨害とかその他があって中に入れないとか、読み上げることを暴力によって妨害される、こういうことがある場合には、警察において執行の援助として措置をしてもらいたいと、こういう内容になるわけでございます。  普通典型的な仮処分の執行の場合には、中におる人間を、占拠しておる人間を執行官が強制力で排除する、それを警察が援護してくれと、こういうのが典型的な執行でありますが、その場合には、警察官は執行官とともに、執行官の命のもとに実力を行使して、たとえば座り込んでいる人を外に排除するということはできるわけでありますけれども、本件問題の仮処分はそういう内容でございませんので、名前は執行ということでありますが、執行の中身というのはいまのようなことでありまして、いわゆる実力によって排除をしていいという仮処分ではなくて、執行官が相手方に任意の履行を促す、こういう内容のものでございましたので、それに応じた措置をしたわけでありまして、三月八日の場合にも執行官からそういう申し入れがありましたので、警察官二百名余りを動員をいたしまして、妨害行動のないようにこれを警戒いたしました。執行官は無事に仮処分決定の内容を相手方に伝達をいたすことによって当日は終わったわけでございます。翌日、またもう一度やってみるということで同じようなことが行われたわけでありますが、当日も警察官、これは朝でございますけれども、六百名近い警察官を動員いたしましてこの警戒警備に当たりましたが、格別の問題なく推移したわけでございます。  その後、四月の七日になりまして、裁判所の方では、主流派、反主流派両方から出ております仮処分の申請を審尋いたした結果、本訴を促進して最終的な結論を出すことが第一であるが、これも大いに促進をする。しかしながら、この際は四十七年の仮処分に戻りまして、これの内容を実現する、こういうことになったわけでありまして、このときにも、四月八日の日に裁判官の要請により警察官が出動をいたしまして警戒をいたしましたが、これには、中におりました主流派の方が任意に従いまして退出をするというので、現在では四十七年時点と同じような状態で、いわば反主流派の人が中におる。  こういうことでございまして、仮処分の執行と簡単に申しますと、強制力をもって、最終的には警察力をもって担保すべき重要な国家の機能であるというように端的には感ずるわけでありますが、ただいま申しましたように、仮処分の内容に種々ありまして、この場合は警察力をもって実現できない仮処分の内容である。したがって、執行官の職務執行に伴う、それに伴う妨害行為、これがある場合に警察として措置をする、こういう性質のものでありましたので、民事訴訟法の規定に基づき、法的に適切に措置をしたものと考えておる次第でございます。
  243. 田英夫

    ○田英夫君 いや、いまの答弁が間違っていますよ。そういうことで納得するわけにいきません。これは私、現場へ行って調べてきたのだから。横浜の神奈川署に行き、神奈川県警の警備課長にも会い、現場を見て調べてきたんですよ、私は。事実が違いますよ。故意があれか知らぬけれども、わざわざ事実を間違えて言っちゃいかぬですよ。  強制執行命令と、さっき私はっきり言ったでしょう。三月八日の午後二時、横浜地裁は強制執行命令を出していますよ。そして執行官が現場に行く前に、まず神奈川署に行って、強制執行——強制執行ですよ、強制執行を行うので協力をしてほしいという要求をしたところが、何と警察は、国家公安委員長よく聞いてください、警察は、双方が険悪なムードにある、治安が保てない、混乱が生じても責任が持てない、こういうふうにこの署長が言っておるんですよ。警察が治安が保てないというのは、一体どういうことですか。治安を保つのが警察の責任じゃないんですか。そして不法に乗っ取ったから、それを強制執行で排除するという裁判所の最終的な決定が出ている。仮処分が出ている。それを、執行官がわざわざ警察へ行って協力してくださいと頼んでいるのに、警察は治安が保てないからと言って断っている。これが三月八日ですよ。そして最終的に、そういうことがずっと続いて、四月八日になってようやく、ここに竹田委員がおられますけれども竹田委員も立ち会って、一日じゅうかかってようやく執行されたんですよ、立ち退きさせたんですよ。こんなことで法治、国家と言えますか。  労働組合や革新団体のさまざまな問題が起こったときには、まさにゴボウ抜きで排除する警察が、私現場へ行って見てきた。ジュラルミンの盾を持って、この事務所の周りを外に向いて取り巻いているんですよ。中に暴力行為をしているやつがいるんですよ。それに向かって執行官が入っていこうとしているのに、なぜ警察は金属の盾を外に向けて、そこにしかもその暴力行為をやった連中が自分たちを守るためにこんな太い丸太でバリケードを築いている。その外に、また外に向かって——外は一般の人と、そして大ぜいの機動隊がいるだけだ。外に向かって警備しているというのは、一体どういう姿勢なんですか。中の人を守る姿勢じゃないですか。これは私は訂正をしていただく答弁を求めます。
  244. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 二つの点があると思いますが、第一は仮処分でございます。仮処分の執行について、これを強制執行というように言うわけでありますけれども、その中身に、ただいま申しましたような二通りがございます。  御指摘の三月八日の件につきましては、先ほど申し上げましたような単に不作為を債務者に命ずる、したがってそれを履行するかどうかは債務者自身の任意の自発的なものに待つ、こういうことでございます。それでらちが明きませんので、関係者がもっと強力な仮処分の申請をいたしました。それが四年七日に、両方から出しましたけれども、そのうちの反主流派申請にかかわる仮処分が認められまして、裁判所の決定がおりました。これの執行が四月八日でございます。この場合の仮処分の内容は、先ほど言いました単に不作為を命ずるものではございませんで、もっと積極的な内容のものでありまして、すなわちこの本件の係争になっております事務所、これを債務者、債権者双方から取り上げまして執行官の保管管理に移す、こういう内容であります。で、一たん執行官の保管管理に移されてから後、執行官は、これを申請をした——この場合は債権者、反主流派でございますけれども、これに使わせるべし、使わせてよいと、こういう趣旨のことでございます。  したがいまして、その現に占拠しておる状態を解除するということは、同じように強制執行と言いますが、物理的強制を伴う執行であるということでありますので、警察官として物理的な執行を執行官の指示により、執行官あるいは執行官だけでできないときには警察官もこれを援助して行うという構えで臨みましたが、先ほど申し上げましたように、現実には何らの抵抗なくこれが行われたということで、援助はいたしましたが、警察官自身の実力行使を伴うまでに至らなかったと、こういうことでございます。  それからまた、警察が治安維持ができないと言ったという御指摘の点でございますが、これは三月七日の日にいわば突然執行官が所轄警察署に見えて、さあこれをやってくれと、こういうようなお話でありましたので、先ほど来申し上げておりますように、三月一日の四十数名を検挙するという事案もある、こういうような現場のいわば荒れたようなムードの中で行うわけでありますから、執行するについて現場の状況を踏まえ、また警察側の執行にふさわしい動員体制を整備をする、それには若干の時間がかかる、待ってもらいたいと、こういうことでありまして、午後見えましたけれども、執行は夕方になりましたが、六時過ぎには執行を行った。こういうことで、その場の局面的な現場の状況のことを申し上げたわけでありまして、治安に警察が責任を持てないと、こういうような趣旨ではございませんで、現場の状況を踏まえた適切な、そして問題の少ない仮処分の執行方法について両者十分協議をしてやりましょうと、その事情を申し述べたということでございます。
  245. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 総理、いまから私は、二、三点、社会の底辺で苦しんでいる方の問題について申し上げますから、ぜひ前向きの判断をお願いしたい。このことを前もってお願いします。  外務省にお伺いしますが、ブラジルで日本国籍を持っておる六十五歳以上の年寄りの方々の生活実態についてお話し願いたいです。
  246. 越智啓介

    説明員(越智啓介君) お答えいたします。  現在、ブラジルにおきまする在留邦人が約七十一万、そのうち六十歳以上の老人は約三万五千人。そのうち、配偶者と死別ないし離別した、また子供と同居できないで孤老化して困窮しておられる方々の数も相当な数に上ると思われるので、実態調査を四十九年約百五十八万円の予算をとりまして、二カ年計画で始めました。それで、四十九年度には農村部を調査しましたけれども、大体農村部には困窮老人はほとんど見当らないという結果が出てまいりました。五十年に、引き続き百五十七万円の予算で調査を目下実行中でありまして、都市部を対象として結果を現地で集計中と、これが実態でございます。  なお、この援護の問題について、政府としてはこれは大きな関心を持っておるわけでありますが、この問題、居住国政府の施策と非常に微妙に関係する問題でありますので、わが国政府としても現地における施策の足らざるところを補うという形で、日本人会あるいは援護協会、こういう機関を通じて、相互援助団体を通じて間接的に援護する、こういう方針が望ましい形であると考えて、そのように実行しておる次第でございます。
  247. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 昭和四十六年サンパウロ総領事館の調査の結果、わかりませんか。   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕
  248. 越智啓介

    説明員(越智啓介君) 現在手元にございませんので、早速取り寄せてあれします。
  249. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 労働大臣、この「厚生環境」という雑誌が厚生省にいっていると思いますが、この関係でわかりませんか。
  250. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) つまびらかにいたしておりません。
  251. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 福田総理と竹下建設大臣にお伺いしますが、あなた方は昭和五十年にブラジルに行っておりますが、御事情わかりませんか。
  252. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 老人なんかで困窮している者もある、援護を要する、こういう話は聞いております。  そこで、その対策の一つとして、現地にリハビリテーションセンターをつくりたいというような要請もありまして、たしか本年度の予算でその援助が具体化したのじゃないか、こういうふうに考えております。
  253. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 竹下建設大臣、覚えありませんか。あなたも行っておるでしょう、ブラジルに。
  254. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私も副総理からお答えになったお話を記憶しておりますことと、それから各県人会が、そういうことを私の県の県人会も申しておりまして、各県でもそれらのことに対して何らかのことをしなければならぬというふうにお話を承っております。
  255. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 政府は関心を持っておると言っておりますが、実際いま聞いてみると何もわからない。こういう点では非常に遺憾に思うのですが、ここにいろいろな、現地のサンパウロ新聞その他からあるいは要請書がいっぱいありますが、時間がありませんから省略します。  そこで三木総理、非常に眠たそうですが、私の調査では、生活保護を要する方が約二千人いらっしゃる。たった一人のじいちゃん、ばあちゃん、子供がだれもいない、この方々が八百人、こういう方々については、せめて日本国籍にあるのであるから、日本の老齢年金について適用できるように何とか日本政府の善処を求めたい、そういう運動が非常に現地で多くあるわけなんですが、あなたはどういう考えを持っていらっしゃいますか。
  256. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) こういう問題は、やはりその国のいろいろな老人対策とも関連を持つわけでありますが、従来から日本人会とか援護協会などでそういうことに対してある程度のめんどうは見て、世話をしてくれておる人たちに対する謝礼などの予算もそれぞれついておるわけですが、これは政府の方としてもこういう問題については少し研究をさせてみてください。どういうふうにこの問題というものはするかということについては、少し研究の時間をいただきたいと思います。
  257. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 これは検討なんていうものじゃなくて、これは四十八年に自民党のある代議士、本人のために私は名前を言いません、わかっていますが。自民党のある代議士がブラジルの国会の招待で行った際に、日本人会の皆さんに、老齢福祉年金を本国並みに支給するよう早急に実現する、こういう公約を自民党のある代議士がやっておって、日本の国会で社労委員会で一回問題になった、こういう経緯があるわけです。それを、いまの検討では私納得できませんね。やっぱり前向きに実現する、こういう答弁をぜひ求めたい、こう思うのです。
  258. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 海外におる日本人で老境にいる人たちもブラジルの移民の人などには相当多いと思います、移民の歴史が古いですから。したがって、何かそういう人たちの生活が困窮に陥らぬような配慮は考えなければなりませんが、この問題はいますぐにここで老齢年金、福祉年金ですか、福祉年金をブラジルの老齢者にも適用いたしますというお答えを、いま目黒君から質問があってすぐ答えるということはこれは適当でないと思いますから(「前向きに検討してくださいよ」と呼ぶ者あり)検討は後ろ向きの検討というものはないのですから、これはもう前向きの検討であることは事実でございます。
  259. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 厚生大臣、「厚生環境」という雑誌の四十九年三月十一日号、これに載っていますから、ぜひ厚生行政としてもあなたの考え方を聞きたいと思うのです、これに載っていますから。
  260. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 率直に申して、その雑誌は読んでおりません。したがいまして、ひとつよく読んで、総理もただいま御答弁をいたしましたが、ひとつ相協力いたしまして、いろいろと検討をいたしたいと思います。
  261. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 二番目に、総理、植物人間というのは知っておりますか。現に見たことがありますか。
  262. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは最近も新聞紙上をにぎわわして、これに対していろいろ医学上にも問題を提起したわけでございますから、日本の場合でも、その記録なども取り寄せて検討をいたしてはおるわけでございます。
  263. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 三月三十一日、アメリカのニュージャージー州ですかの判決で、カレンさんという方について、これは一年以上であれば安楽死もやむを得ない、こういう判決がありますが、日本政府としてこれをどう思いますか。
  264. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) カレン判決についてはわれわれは聞いておりますが、日本といたしましては、あくまでも生命尊重で、この問題の医学的あるいはその他の援護に努力をいたさなければなるまいというふうに思っております。
  265. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 これは全国に約二千名近くおるんですが、私も去年一年、五、六人会って知っていますが、ぜひこのアメリカの判決を否定するような立場で、人間尊重でがんばってもらいたい。こういう点では、総理どうですか。
  266. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカのようなわけに私はいかぬ、日本日本としての物の考え方があるわけですから。日本はあくまでも人命尊重というのが日本考え方の基本になりますから、いろいろ研究はいたしますけれども日本日本の立場でこの問題を対処してまいることが適当であろうと考えております。
  267. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私、昨年の予算委員会でこの問題を取り上げて、厚生大臣、労働大臣はもう前向きに検討、大蔵大臣は予算の裏づけを見て検討、それから国家公安委員長は交通事故対策で検討と、こうなっておるわけですが、おのおのの大臣の検討の結果について御答弁願います。
  268. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 確かに目黒先生からこの問題についての御質疑がございました。当時、私記憶をいたしておるのは、宮城方式というものをこの際国の制度下におさめることができないかということが論点の中心であったようでございます。私どもも検討いたしました。しかし、この問題につきましてはいろいろと複雑な周辺の問題がございまして、遺憾ながら今日取り上げるというわけには至っておらないという状態でございます。  いろんな問題というのは、一つには、この種の症状というものは、がんの末期症状、あるいは腎臓、肝臓の重篤な者について同じような症状を生ずるわけでございますので、したがって相当の数にも相上るわけであります。宮城方式をそのまま実行する場合に、どの程度になるであろうかという試算もいたしました。大体公費負担百億ぐらいになるだろうということでございますので、これが他の同様の患者に波及をするということになりますれば、これはなかなか大変な財政負担でもあるということで、いろいろな問題を考えておりますが、宮城方式は残念ながら今日、これを国の制度としておさめる段階に至っておりません。しかし、その他の点については、研究等についてはこれを精力的にやるような方向で今日行政を進めております。
  269. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えします。  御承知のように、宮城県で特殊に県当局で施設をやっているものですから、そんなことなどを厚生大臣にお話を申し上げ、そして御研究願った結果がただいま厚生大臣の御答弁のとおりでございますが、いずれにいたしましても、前向きの姿勢でこういうものは検討していく筋合いだと、こう思っております。
  270. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 植物人間の疫学的研究、あるいは植物状態患者の研究への助成金につきましては、年々相当額の増加計上を図っておるわけでございますが、これには二つの問題がございまして、一つは植物人間自体の問題でございますが、これは大変個々の患者の置かれた状況、環境が違っておるようでございますので、その個別の状況に即しました加療体制の研究が大切であるという意味で、専門家の意見を聴取いたしておると承っております。  第二の問題は、植物人間と言われる障害者の、その家族に関係した援護問題でございまして、これは一般的な社会保障施策の中で、障害年金あるいは福祉手当の支給等、そういった援助の充実を通じて解決を図ってまいるべきであると考えております。
  271. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  ただいま三大臣から答弁がありましたように、政府といたしまして、また私といたしましても前向きでこの問題に対処いたしてまいりたい、かように考えております。
  272. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 ちっとも前向きにも、具体的な裏づけもないんですよ。厚生大臣がいろんな他とのバランスということをいろいろ言われていますが、私も非常に関心を持ってあらゆる社会施設を見て歩くのですが、植物人間とその家族ぐらい、事のいかんを問わず惨めなものはないというくらい私は確認をし、また見ております。ですから私はアメリカでこのようなむごい判決の問題まで出ているんだと。  総理にお伺いしますが、私は、いま各大臣が言ったことのすべてを超越して、非常に——佐藤榮作さんがなりましたね、ああいうようなのがずうっと三年も四年も続いているのですからね、ああいう状態が。ですから、思い切って、この植物人間の収容については国立病院あるいは大学病院あるいは地方自治体の病院、そういう公的病院に収容をして専門的な療養をさせる。そして家族をその看護から解放する、こういうことがきわめて私は必要だと、こう思うんですが、総理大臣の最後の見解をひとつお伺いしたいと思うんです。もう理屈抜きですよ、これは。政治の問題です。
  273. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 目黒君御指摘のように植物人間、本人はもとより、家族の人も大変に悲惨な状態に置かれるわけですから、いま各大臣がお答えをいたしましたように、いろいろ個々に病状なども違っておりまして一律というわけにはいきませんが、何か患者とかあるいは家族の人々に対して政府として対処できる方法というものをこれは真剣に検討をいたすことにいたします。
  274. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 宮城県と山形県で、あるいは東北の皆さんが自治体でいろいろやっている方法について、なぜ政府ができないのですか。それをもう一回聞きたい。——いや、総理総理の政治姿勢ですよ、聞きたいのは。
  275. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私もそれは、何をどういうふうにやっておるかということを私自身が承知いたしておりませんので、何かそれが政府としてできないような理由があるのか、これは厚生大臣からお答えいたします。
  276. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 宮城方式についての難点については先ごろ御答弁申し上げました。一番この植物人間で家族の方が困るのは、要するに付添看護だろうというふうに思います。
  277. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そのとおり。
  278. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) そこで、いま総理からの御答弁の次第もございますので、この付添看護について先般、中医協におきまして付添看護をもう少し濃厚にやる方式というものを考えたらどうかというお説もございましたものですから、いま最高のは特二類というのでございますが、特三類を設けろ、二対一ないしは一対一というものも考えたらどうかと、こういうお話もございますから、こうしたところを取り進めることによってこの問題のある程度の対処はできるかと思いますが、これについては検討をさせていただきます。いずれにいたしましてもいろいろな問題がございますが、先生の御要請を受けてさらに研究をいたしたいと思います。
  279. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 とにかく総理ね、これは付き添いだけでも一カ月三十六万かかるんですよ、三十六万。これはサラリーマンで交通事故に遭って、三十六万の支出をしたら、もう田地田畑皆離して、奥さんとも離縁して、それでもやっていけない、こういう悲惨な状況なんですよ。宮城県はこのうち大体十万補助している。私は佐藤みどりさんという、去年の二月ころ行ったとき眠っておった人が、去年の十月に回復したんですよ、三年四カ月ぶりに。いま元気でいます、宮城県の亘理に。私この前会ってきました。こういうことがあるんですから、人権尊重と言えば、もう少し私は大切にしてやってもらいたいということを最後に要望しておきます。  それからこれに関連して、この植物人間の半分ぐらいは交通事故なんですね、交通事故。それで、救急医療について山崎委員から質問がありまして、田中厚生大臣の答弁がありましたが、具体的に最も根本的な点はどう考えていますか、厚生大臣、このたらい回し防止について。
  280. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 救急医療が円滑に行われない、その結果、救急医へたらい回し事件が起こるということについてはかねがね、山崎委員に御答弁申し上げましたとおり、私は自分の責任として重大にこれを考えております。何とかひとつ速やかに前向きにこの問題の前進を図らにゃならぬということであります。  原因はいろいろあるようであります。消防庁の調べによりましても、専門医がおらないとか、あるいはベッドが満床で患者が収容できない、設備が不十分である等々の理由等が数えられておるわけでございますが、まだそのほかにもいろいろ問題があるようであります。現在の医者の卒後教育は、いわゆるストレート方式というものでありまして、専門家をストレートに研修をするというやり方でございますので、これはやはりローテイト方式で、およそ医者である限り、ある程度の各科の診療ができるように卒後教育を切りかえるなどという問題もあろうと思われます。しかし、これはすぐには間に合わぬだろうという反論も戻ってくるだろうと思いますので、いずれにいたしましても、私どもとしては、この救急医療が実際に円滑に行われるようにどうしたらよいかということについて、いろいろと考究をいたしております。  したがいまして、先般私の指示でもって救急医療問題懇談会というのをつくりまして、いろいろといま精力的にやっております。この中ですでにわかったことは、いわゆる情報の広域化をしなければならないということだろうと思います。コンピューターによって、それぞれの地域においてどこの病院にどういう専門の医者がおるか、手がすいているか、ベッドがあるかないかということをすぐわかるようなかっこうにするというのが非常に大切なことじゃないだろうか。郡部と地方におきましては、当該消防本部の範囲内だけではなしに、機動力で及ぶ限りにおいてそうした情報の把握をすることによって的確に病院に収容ができるだろうということをすでに専門懇の先生方がおっしゃっておりまして、重要な示唆を得たというふうに思っております。  いずれにしても、こうしたいろいろな問題、あるいは告示病院等について、ただいまの診療報酬というものは、現実に行為をしなければ収入が上がらぬという一面があるわけでございまして、こうしたところにまた告示病院等の申し出が少ないといったような問題もありますので、こうしたことを広く掘り下げ、またこれを考究をいたしまして、関係者の協力を得るように、今後五十二年度予算をめぐって大いに努力をいたしたい。しかし、それまでにもわれわれとしては、今日の現下の情勢にかんがみて、これをできるだけ円滑にやるような行政指導をしたいということであります。  ちなみに、たらい回し事件というのはいろいろ出るのだそうですが、大体九八%はどうやらこうやらやっているんですが、あとの二%がまずくて、これが非常に社会の人に御迷惑をかけているという事案だそうでございますから、この二%を何としても少なくするように努力をいたさなければならない。これが私どもの使命であるというふうに考えて、これについては大いに意欲を燃やし、努力をいたす所存でございます。
  281. 山崎昇

    山崎昇君 関連。
  282. 山内一郎

    理事(山内一郎君) 山崎昇君の関連質問を許します。
  283. 山崎昇

    山崎昇君 ごく簡単に関連質問します。  私は先月二十七日の日に、時間がありませんでしたから一言だけあなたにお聞きをして、実はいま裁判ざたが起きていますのは、これはあなたから国の責任であるという答弁がありました。私は当然だと思うんです。  そこで、いまいろいろあなたから対策が述べられましたが、私も実はこの間も述べましたように、救急車に乗ってみまして何が一番いま欠けているのかと言ったら、この救急車に乗っている患者に対して応急措置がとれないんです。私はけがをしたわけじゃありませんから別段出血もしていません。ただ自分なりに痛みを抑えていればそれでいい。しかし、看護婦さんも乗っていません。医者もおりません。そういう救急車の中に患者が二時間も三時間も待たされる。それがまた病院二十カ所も駆けずり回っていられる。だから、生きようとする患者が勢いそこで死んでしまうという状態が起きてくるわけだ。だから何より私は自分でささやかでありましたが経験してみて、この救急車に何とか医者が乗せられないかどうか、あるいは看護婦が何とか乗って応急の措置だけでもとれないかどうだろうか、こういうことが私はいま目下一番重要じゃないかと感じているんです。  そういう意味で、いまあなたの言われた恒久的な措置はなるほどそうです。そうですが、実際はそうなっていない。そこに一番問題がある。それからこの救急患者のうちで大変多いのがやっぱり交通事故者、これは多量の出血患者が多いです。そういう意味では、取りとめ得る生命もなくするという結果になっているのじゃないか、そう思いますから、何とか早急にそういう体制が整えられないのかどうか、その点が最もいま私は緊要じゃないかと思うので、この点、一点だけ聞いておきたいと思います。
  284. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、現在救急医療をめぐる問題は非常に複雑でございまして、とりあえず応じ得る体制といたしまして、ただいま山崎先生御質問のようないろんな点もございます。ただ、助手を使うということが、医師法あるいは医療過誤の問題との関連においてまだ解決すべき問題もあろうかと思っておるところでございまして、そういった点、さらに今後検討を進めてまいりたいと思います。ただ、救命救急センターを五十一年度予算から新設をいたすわけでございますが、その救命救急センターの部分につきましては、そのセンターに搬送業務を業務としてつけるわけでございまして、そこには医師の搭乗いたしますいわゆるドクターズカーというようなものも設置いたす所存でございます。
  285. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 厚生大臣、私は緊急医療の問題については、現在の医療というのは自由医療ですね、少なくとも緊急医療については義務化する、そういう特別のたとえば緊急医療法、こういう法律が私はぜひ必要だと、こう思うんですが、これに対する考え、いかがですか。
  286. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 救急医療の対策はきわめて大事であります。法制化の問題についても国会で各委員会でいろいろ質問を受けました。私どもは、現在の救急医療の体制を整備することがまず先決であろうというふうに思っております。したがいまして、実態を整備をいたし、その場合もし法律上の規制が必要であるとするならば、その節に考えたいと思いまして、いまのところ、率直なところ、実態を整備する方に主眼を置いておるわけでございますが、法制化について全くこれを考えていないということではございません。いずれにいたしましても、整備を急ぎ、その状況を見て法制化の問題について考究をいたしたいというふうに思っております。
  287. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 現在の消防法や医療法だけではどうにもならないという現実がもうあるじゃないですか。したがって、根本的な発想の転換をしない限り、どんな言い回しをしても私はこの問題の解決にならぬと、こう思うんですが、もう一回、じゃ総理大臣から答弁願います。救急医療法の制定についてどうかということ、総理大臣。
  288. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) ただいま先生がおっしゃった、たとえば搬送車の体制についての問題等についても、すでにいま医務局長が申したような法律上の問題がございます。あるいはまた、救急に関係する病院等についてどの程度に一体これを受け入れさせるかということについてもいろいろと検討をしなければならない問題があり、その間において法律上の必要が出てくるとするならば私ども考えたいというふうに思っておりまして、いま法律をつくるということについてはいろいろと検討しなければならない問題もありますので、法律の、要するに内容について想念の決まっていない今日、私どもとしてこれを直ちに法制化する、そのことによって事が万事終わるというような考え方を持つのはかえっていけないと思いますので、整備の方を先にやりたい。法制化を決して考えないわけではございませんが、実体を備えて、その上で法律上もし規制措置が必要であるならば、私どもは法制化についてもやぶさかではございません。
  289. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 どなたかに遠慮しておるためになかなか言えないと思うのですが、どなたかはすぐわかりますが、ぜひ前向きに検討してもらいたい。  じゃ、体制の問題でお伺いしますが、この国立病院や公立病院というものは、原則的には私は救急病院に指定すべきだと、こう思うのですが、いかがでしょうか。現状と考え方
  290. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) お説のとおり、国立病院等につきましてはかなりのものが救急をやっております。ただ、国立病院につきましても、精神とか、あるいは温泉、結核等々の特殊な任務を持っているものについてはこれを実施することが適当ではございませんが、たしか九十幾%、九六%実は救急業務に従事をしております。公的医療機関につきましてもそれぞれお勧めをいたしましてかなりのものがこれに従事をいたしておりますが、なおこれについてはお勧めを強力にいたさなければなるまいと思っております。ただ、一部国鉄とか専売等の病院につきましていろいろ議論がございますが、たとえば構内にあって職員だけしかどうも利用ができないような構成になっているものも間々あるようでございまして、こういうものについては公的医療機関といえどもいかがかと、こう思っておりますが、できる限り救急業務の重要性にかんがみて関係の向きに対して救急業務をお引き受けするように、今後強力にお願いをし、また指導をしていきたいと思っております。
  291. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 大学病院について、文部大臣いかがですか。
  292. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) お答え申し上げます。  大学病院につきましては、原則といたしまして、私は、厚生大臣がすでに申されましたように救急医療は非常に重要なことでございますから、これに積極的に協力するという体制を整えていくべきものであると考えております。しかしながら、現状におきましてはまだ理想から遠い状態にございます。国立大学付属病院二十七のうち、救急部を持っておりますのは七つでございます。そして、いわゆる救急告示病院となっておりますのは一つにとどまっております。ただし、告示のあるなしにかかわらず、救急というものを要する患者について大学病院が協力することは当然であるばかりか、大学病院というものも地域の医療に協力すべきものでございますから、事実上は相当積極的に患者を受け入れておりまして、昭和四十九年度の統計によりますと、国立大学付属病院におきまして三万八千人の救急患者を取り扱いました。  しかしながら、こうした状況をさらに改良いたしまして、救急の事態に対して積極的にいたしてまいりますために大学病院としてとるべき方策というものについて、文部省も大学側に指導、助言をいたしておりますが、その考え方といいますのは、大学病院にはそれなりの役割りがございますが、その地域におきますお医者様、あるいは公共団体、あるいは公立、国立の病院との間にネットワークをつくりまして、そうしてそういう全体的なネットワークの中で、国立大学にとどまらず、公立、私立の付属病院というものもその役割りを果たしていくべきである。  なぜネットワークの中でそういう大学の付属病院が特定な役割りを果たすということを考えるかと申しますと、これはおよそ三つ理由がございますが、やはり大学付属病院の場合には、第一に高水準な医療機関として救急災害医療に協力することが大事だ。といいますのは、たとえば最寄りの病院に入りまして、なお一層の診療を要する場合に協力する。第二番目には、災害時の場合に医療班を組織いたしまして、そうして全体的に活動していくことを助ける。さらに第三番目に、大学の役割りは教育研究にございますから、そうした角度から救急医療というものに対して協力をしていく。かようなことで、ネットワークの中で大学付属病院として果たすべき役割りを果たしていくべきである。こうした考え方に基づきまして、これは先ほどから御議論に出ておりますように、きわめて積極的にこの救急というものが、現在七つの大学に救急部があるにとどまっておりますが、なお積極的にこれを拡充する方向で考えていきたい、かように考えている次第でございます。
  293. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 郵政大臣に電信電話の病院、逓信病院の関係、それから大蔵大臣に専売公社、印刷局、造幣局の関係病院、これに対する考え方をお願いします。
  294. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。  郵政省及び電電公社所管の逓信病院は、職員及びその家族の健康を保持するための機関として設置されておりまして、その診療の実態も年間非常に多数の患者を取り扱っているところから、施設、要員面に余裕が全くなくて、政府として救急病院の指定を受けることは現在のところ非常に困難であります。なおしかし、実際の運用に当たりましては、緊急やむを得ない場合には救急患者の取り扱いはいたしております。
  295. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 現業にありまする病院といたしましてその職員の医療の需要に応ずることで、いま郵政大臣からお話がありましたように、私どもの方も精いっぱいでございますけれども、救急医療体制の組み入れにつきましては十分配慮し、積極的に協力しなければならぬものと思っております。
  296. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 民間の病院に協力を要請する政府が、いま言ったような形では私は非常に不十分じゃないか。大学病院の段階で実際に三万八千人の病人を扱っているならば、やはり救急病院として告示をして、いつでもいらっしゃいと、そういう態勢にあるのがたてまえじゃないか。この政府関係企業、たとえば鉄道病院、逓信病院、それから専売関係で八十一の病院が全国あるわけですが、その中でたった一つ、大蔵省の東京の病院、印刷局の東京病院、この病院は告示を受けています。それ以外全然ゼロだ。したがって、もう一回総理大臣にお伺いしますが、少なくとも政府機関が何らかの関係するこれらの病院は原則としてやっぱり救急病院に指定する、こういう方針をぜひとってもらいたいと、こう思うのですが、いかがですか。
  297. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これも前向きに検討いたします。   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕
  298. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 大分元気のない発言ですけれども、ぜひそれを実行方、要請します。  それで最後にお伺いしますが、診療拒否の正当性、お断わり、これについては昭和二十四年九月十日に「医発第七五二号」という達しが出ているのですが、これはどういうことですか。
  299. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 先生お尋ねの件は、医師法第十九条第一項のことだと思うわけでございます。診療に従事する医者は正当な事由がなければ診療を拒否できない、こういう規定になっておるわけでございますが、先ほど先生お尋ねの通牒は、その正当な事由に該当する場合の一つの例示を出しておるわけでございますが、正当な事由に該当すると考えられるものが、個々の患者の症状あるいは地域内の救急医療体制の状況等に応じていろいろ判断しなければならないとは考えておりますが、一般的に言えば重篤な症状の患者でございまして専門医の処置を必要とする場合に、その専門医の不在する場合、あるいはベッドが満床で必要な入院管理ができない等、そういった場合が正当な事由に当たるものと考えております。
  300. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 もう時間がありませんから、この達しが十分に守られておるかどうか、私は非常に疑問があると、こう思うのですが、それらの受けとめ方についてもう一回、考え方なり今後の指導を聞きたい、こう思います。
  301. 石丸隆治

    政府委員(石丸隆治君) 個々の事例についての判断は、先ほど申し上げましたようにそれぞれの地域の実情等に応じて個々に判断すべきものと考えておりますが、やはり診療に従事する医師の義務としてできるだけの、専門でなくても、少なくともその能力の範囲内で応急の措置をする、そういったことも必要かと思うわけでございまして、さらにそういった点につきまして今後各都道府県等に対しまして指導いたしますとともに、また日本医師会の方ともよく連絡をとって、診療拒否等の起こらないように万全の措置を講じてまいりたいと考えております。
  302. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 さらに前進をお願いします。  最後に、身障者の就労対策について基本的な考えを労働大臣に聞きたいと思います。
  303. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 連帯性を確保するためにも身障者の雇用というものはずっとお願いしているわけでして、雇用率は従来各官庁とか非官庁、現場のものにも実はありますけれども、これは倫理規定でして、なかなか実現することはむずかしゅうございましたが、こういう時代でございますから、全部雇用率を達成しております。しかし、いまから先は、この国会にも提案しておりますけれども、やはりこういう方々を、今度は倫理規定じゃなくて義務規定にして、そして各事業所別に雇用計画などを立てながら、こういう方々の能力開発、就職のあっせん、これをやってまいりたいと、こう思っております。
  304. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 昭和五十年十二月十一日に重度身障者の雇用ということについて答申などがあるのですが、特に車いすなどの方々について官公庁で実際に雇用しているかどうか、その実態をお願いしたいと、こう思います。
  305. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 重度の方々はなかなか大変でございますが、いまから先も今度の新しい法律でお願いしているものでは、重度の方々を一人雇ってもらえば普通の身体障害者を二人雇ったことにする、こういうふうな考え方の中に今度の法律は出して、なるべく重度の方々も雇用してもらうようなチャンスをつくりたいと、こう思っております。
  306. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 政府機関ではどうですか。
  307. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 先ほど一般論として申し上げましたけれども、昨年十月における国の行政機関の身体障害者の雇用状況を見ますと、一万一千名身体障害者の方々が雇用されております。一・七%の雇用率が適用されている非現業機関では一・八九%。上回っております。それから一・六%の雇用率が適用されている現業機関では一・七三%の割合となっておりまして、全体としてはいずれも雇用率を上回っているわけであります。
  308. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 車いすなどの重度身障者について、どうですか。
  309. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 職安局長から。
  310. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 労働省におきましては、車いす、いわゆる脊椎損傷患者といったような人たちの就業につきましても特に重点を置いて実施をいたしております。全国に十カ所余りのいわゆるリハビリテーション作業所、ここで実際のいろいろな仕事を覚えながら勤務をしていただいている。そして、そこから民間の企業へ就職あっせんをするというような体制をとっております。さらに官公庁におきましてもそういった趣旨を十分理解していただくという努力をいたしておりますが、昨年、労働省では車いすの新大学卒業生を採用いたしております。
  311. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 具体的に実数を教えてください、各官庁別に。
  312. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) 身体障害者全体の数字は把握いたしておりますが、車いすを使っておる重度身障者が何名各省庁別に採用されておるか、これはつまびらかにいたしておりません。
  313. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 もう時間がありませんが、ぜひこの実態を調査して具体的な指導をしてもらいたい。私も車いすの方にずいぶん会っていますが、やはりこういう方々は非常に頭が回転が早いですね。非常に回転が早いですから、そういうことについて特にお願いしたいと思いますが、文部大臣、この車いすの学校の先生の登用という点はどんなものでしょうか。
  314. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) お答え申し上げます。  先ほど労働大臣からお話がございました身体障害者雇用促進法というのは、学校の先生と申します場合には、小学校、幼稚園、それから中学校、高校という別の段階がございますが、中学校、高校について先ほどの法律が適用されることになっておりますのは、小学校、幼稚園の場合に、子供との体育活動その他がありますために必ずしも容易でないという趣旨に発するものと思います。しかしながら、学校におきまして、車いすを含めまして要するに学校の教員として免許状を有する人の中から教育公務員として適切であるという方、車いすを含めた身障者の先生方、こういう方々が教育委員会において判定をいたしまして、やはり先生として適切であるという場合には積極的にそういう方を採用していただくということが文部省としても方針でございまして、特に中高段階につきましてそういうふうな方向を強化いたしますように、教育長の会議でありますとか、あるいは課長関係会議において指導を行っている次第でございます。  ただ、大学につきましては、これはまたちょっと違う角度が出てまいりますのは、大学は教育公務員特例法によりまして、高度な専門家というものを大学の教官にするということでございますので、先ほどの労働大臣のお述べになりました法の適用外に置かれておりますが、しかし、専門化として適格であって、身障者である、そういう場合、身障者であるから採用しないというようなことは全くよくないことでございますから、事実大学におきましても国立大学、現在身障者の先生方がふえてきております。数もわかっておりますが、その中で車いすが何人かということは、ただ私のいま持っております書類にはございません。
  315. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 大学の先生の採用については大阪で現在若干の紛争があるということがありますが、内容は御存じでしょうか。
  316. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 大阪におきまして、車いすの先生をつくる会というものがございまして、これが昭和五十一年度の教員採用に関連して、車いす使用の障害者の方を教育委員会にぜひ採用するようにということで働きかけておられるということを承知をいたしております。これにつきまして大阪の教育委員会の方では、やはり先ほど申し上げましたように、教員の採用決定につきましては試験の成績もございますし、そのほか教員として適切な資質、能力というものを総合的に判定して教員の採用に当たるべきである、かような立場において、いまの車いすの先生をつくる会というものに対する立場をとっているというふうに理解をいたしております。
  317. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 われわれが調査をしたり話を聞いた範囲では、いま文部大臣が答弁したようになかなかきれいにいってない、非常に具体的な紛争があるということを聞いておるわけですが、労働大臣なりあるいは総理が姿勢を示しても、具体的な問題では非常に問題が起きておりますから、なお一層私は身障者に対するそういう具体的な配慮について前向きの姿勢をお願いしたいと、こう思います。  最後に、今回身障者に対する法律改正の中で、割り当ての基準を達成しないときには罰則でお金を取るということを聞いておるんですが、どういうことですか。
  318. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 事業所によりましてはどうしても身体障害者を雇用できないところもあるわけです。そういうところから、罰金といって、これは罰金じゃまずうございまして、人間を使ったり使われたりするのは信頼関係ですから、そういう刑罰的な意味じゃなくして、どうしても使ってもらえないようなところは納付金みたいなものをお出しいただいて、そして身体障害者の雇用促進、施設あるいは訓練、そういうものの金に充ててみたい、こう思っております。
  319. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 お金で処理するということになりますと、どうしても逃げてしまうというきらいになるんですが、この雇用審議会の答申の中で、身障者を多数雇用した事業者に対しては官公需を十分確保する、こういうことがありましたけれども、これは間違いありませんか。
  320. 遠藤政夫

    政府委員(遠藤政夫君) ただいま大臣からお答えございましたように、身体障害者の雇用を促進するために、一定の定められた法律上の雇用義務を達成できない企業からはその費用の負担をしていただくということで雇用納付金を徴収いたしまして、この納付金をもちまして一定率を満たした企業に対してはその度合いに応じて調整金を支給する。さらにいろいろな援助、助成の対象にしていく。こういう措置をとっておりますが、いまお話しの身体障害者を多数雇っております企業に対して、官公需の優先発注というような考え方審議会に御意見が出ておりましたけれども、これを法制的に処理するということにつきましてはいろいろ問題がございまして、行政指導としてはそういう方向で私ども指導いたしてまいりたいと、かように考えております。
  321. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は、答申の趣旨を尊重して、身障者の採用を消化しない企業に対しては官公需を発注しないというぐらいの強い姿勢をとるべきだ、金で物事を処理するということは基本的に誤りだと、こう思うのですが、大臣の考えはいかがですか。
  322. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) おっしゃるような厳しい姿勢も大事でございますけれども審議会などでの御意見などもいただきながら、問題は雇用率を上げていくことが大事だと思いますので、そういう意味での行政指導は行ってまいりたい、こう思っております。
  323. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうしますと、発注を抑えるという考えはないということですか。総理大臣、どうですか。このぐらいの厳しい姿勢をしかなければ私は身障者は確保できないと、こう思うのですが、総理考えはいかがですか。
  324. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 目黒君の言われる気持ちはわかりますけれども、こういうものはできるだけ皆に、身体障害者にできるだけ多く雇用の機会を与えるということは企業の社会的な一つのある意味における責任でもあるのですから、これを勧誘することが物事は穏やかだろうと思います。そういうことで今後企業側に対してもこれを熱心に勧奨する、こういうことでやってもらいたいと思います。
  325. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 大蔵大臣、特に銀行関係がきわめて身障者の採用が悪い。昨年の十一月の十四日、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会という方々が全国銀行協会連合会に申し入れをしておるのですが、これらの問題に対する大蔵大臣の行政指導の考え方を聞かしてもらいたい、こう思うんです。
  326. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 金融機関も身体障害者の雇用促進法の精神を体して協力しなければならぬ立場にあることは当然のことでございまして、もし遺憾なことがありといたしますならば、私ども監督官庁といたしまして十分注意を喚起しなければならぬと存じます。
  327. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 目黒君の質問が終わったようでございますから、先ほど目黒君から、自民党について航空特別委員会と称せられるプリントした文書、これをよく調べてみるようにというお話がございました。自民党としては千村氏のいわゆる私的メモ、こういうものも含めてこの問題全体として党として調査中であるが、まだ真相を把握するに至っていない。今後とも調査を継続して総裁にその結果を報告するというのがまいっておりますので、いまの中間報告として目黒君にこの点をお答えをいたします。
  328. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 締めくくりで、総理、いま終わりましたけれども、私は、あなたはスト権ストのようなときにはきわめて歯切れのいい答弁をするのですが、今回のロッキード問題についてはきわめて歯切れが悪い、こう思うのですが、いまの調査の状態もそのとおり。私は、やっぱりあなたが言葉で言うことと実行することは非常に違いますから、そういうことのないように、私はたてまえと本音というのは一番ちぐはぐじゃ困る、こう思っておりますから、ロッキード問題を中心に本当に誠心誠意日本の政治のためにがんばってもらうということを心から要請いたしまして質問を終わります。
  329. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 以上をもちまして目黒今朝次郎君の質疑は終了をいたしました。(拍手)     —————————————
  330. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 桑名義治君。
  331. 桑名義治

    ○桑名義治君 先日来からのテレビでも発表しておりましたが、最近ロッキード問題を中心にしまして、政治あるいはまた政党に対する大変な不信感が増大をしているということでございます。そういった意味から、私はいまの日本に、いまの政治家に、あるいはいまの政治に課せられておる最大の課題は、この不信をどうやって払拭していくかという点にある、このように考えるわけでございます。そういった立場から、三木総理並びに三木内閣の政治姿勢について私は質問をまず続けていきたいと、このように考えておる次第でございます。  最初に、憲法記念日の五月三日、政府主催の憲法記念日の式典が挙行されました。三日の首相の発言には憲法を遵守するという言葉が見られないわけでございます。稻葉法務大臣の憲法発言のときには遵守すると、このように言明をされておりますが、その気持ちがなくなったのだろうか、こういうふうに多少疑問を抱くわけでございますが、その点についてお答えを願いたいと思います。
  332. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 三木内閣のよって立つ基盤は現行憲法であります。これをもう遵守しなければ、これは政治運営の一つの基本は何によるのか。ないわけでございますから、憲法を遵守するということに対していささかも変わったものはございません。
  333. 桑名義治

    ○桑名義治君 ところが、記念式典が挙行されておりながら、事もあろうに自足党本部ではその式典の糾弾大会が開かれた。この事実は国民の皆様方には大変な奇異と疑問と、そういうものが起こっておることは事実であります。こういった事態に対しまして、総理はどのような認識と、今後どのように対処されていこうと考えておられるのか、明快に御答弁を願いたいと思います。
  334. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いかに憲法改正の意見を持っておる者であっても、現行憲法が何も改正されてないわけですから、この現行憲法を遵守するというものでなければ国の秩序は成り立っていかない。研究することはいいですよ。したがって、そういう党の基本的な方針と違ったような集会には党は会場を貸さないと。先般のも、そういうことはしないという約束で会場の使用を認めたわけでございましたが、一部の人にこういう行き過ぎたことがあったことはまことに遺憾である。党はやはり現行の憲法を遵守する、これが自民党の基本的態度であることに間違いはございません。
  335. 桑名義治

    ○桑名義治君 申すまでもなく、憲法は国の骨格をなす基本法でございます。しかも政府・自民党はこれは与党でございます。そういった立場から考えますと、総理憲法のいわゆる記念式典に参加をしながら、たとえそういう糾弾大会はやらないとは言いながら現実には行われた。この国民に与えた疑問、これは非常に大きな問題だと私は考えているわけでございます。そこで、ただ遺憾だということだけでは私は済まされないのじゃないかと思うのですが、今後総理はこの問題に対してどういうふうに対処されようと考えておられるのか、この点についてもう一度お願いします。
  336. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、そういうことがちょっと話にも出ましたから、そういうことでは自民党の会場は貸さないということで、主催者もそういうことは絶対にやらないという約束でしたわけでございましたが、一部の者がそういうことを、行き過ぎた行為があったようでございます。そのことがいかにも現行の憲法を軽視するというような印象を与えたことはまことに遺憾である。こういうことについては、再びこういうことが自民党の本部において行われるということは国民から見れば非常な誤解を生じるものだ、まことに遺憾至極と考えておりまして、今後はいやしくもこのような疑問を抱かせるようなことはいたさないということを深く私も考えておる次第でございます。
  337. 桑名義治

    ○桑名義治君 もう一点ですが、この憲法記念日の式典が行われた同日に、改憲派の自主憲法制定国民会議が開いた国民大会で配布された機関紙でございますけれども、自主憲法新聞の祝賀広告に閣僚の名前が十一名出ております。この十一名の閣僚の名前が出ているということは、憲法九十九条の閣僚の悪法尊重、擁護義務という立場から考えると、これは非常に大きな問題だと、こういうふうに考えるわけでございますが、この十一人の記載されておる閣僚それぞれに弁明を求めたいと思います。名前を申し上げます。福田大臣、稻葉大臣、安倍大臣、河本大臣、木村大臣、村上大臣、長谷川大臣、福田大臣、坂田大臣、佐々木大臣、金丸大臣。以上です。
  338. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、そういう名刺広告を出した覚えはございませんです。
  339. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 知らないことをやられているのですから、そっちの方へ文句を言ってもらった方がいいんじゃないかと思います。
  340. 桑名義治

    ○桑名義治君 文句を言ったのじゃなくて、事実かということを聞いているのです。
  341. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういう広告を出した覚えはございません。
  342. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 私もそういう広告を出した覚えはございません。
  343. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 私も覚えはありません。
  344. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 全く覚えありません。
  345. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 出した覚えはございません。
  346. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 私も覚えはございません。
  347. 福田一

    国務大臣福田一君) 私も同様でございます。
  348. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 全然私は覚えはありません。
  349. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私も承知をいたしません。
  350. 桑名義治

    ○桑名義治君 十一人の閣僚それぞれ覚えがないということでございますが、誤りである以上は、閣僚の姿勢として訂正広告を出させるのが至当ではないかと、こういうふうに考えるわけでございますが、その点どうでございますか、代表して。
  351. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さあ、その種の新聞というのはそうちょいちょい出るわけじゃないと思います。後これからいつ出るのか、私もよく存じませんが、訂正広告を出すことを求めるほどのことではない、かように考えております。
  352. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましても、三月に一遍という声がどこからかありましたけれども、不規則発言がありましたけれども、しかし、出た以上は、閣僚の責任として一応その疑惑を晴らすという意味で訂正広告を出させるのが私は至当ではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、総理、どうですか。
  353. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま桑名君お聞きのとおり、全然知らないのに出たわけです。しかし、そんなにたくさんの配布される新聞でもないでしょうが。私は、よりよい憲法を持とうとして議員が研究することはいいですよ、現行憲法を軽視するような考え方に私は賛成しないんです、これは。これはやっぱりよりよい憲法を持つためにいろいろ研究してやることは、自民党もそういうことを国民の総意を得て自主憲法制定ということをうたっていますが、しかし、やはり現行の法秩序を維持していくということでなければ社会の秩序というものは維持できませんから、今後そういう点では現行憲法を体して遵守をするという姿勢は、内閣として貫いていく所存でございます。
  354. 桑名義治

    ○桑名義治君 総理決意をお聞きしたわけですが、ではもう一点だけこの問題でお聞きしておきたいのは、今後も憲法記念式典を継続なさる決意でございますか、どうですか。
  355. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは御出席になったかどうか知りませんが、ちょうど連休のさなかにあって、非常に連休というものは皆、代議士の方方、政治家の方々、特にいろんな予定を持っているのですね。案外、だから新聞紙などで見ても、たった何名とかいうような表現で出まして、何かそういうことが、憲法というものが国民の中に今日においては一応定着してきているのですね。それに議員が案外少ないということで、かえって憲法記念日というものが、何かああいう形の式典というものに対してずっと続けていくということは検討を要すると思うのです。国民の中にそれはそれだけやっぱり定着したということかもしれませんね。案外出席者が少なかったと、新聞紙がたった何名というようなことは、どうもそういうことが、何か記念日をして、そういうことに対してこういう記念日——まあことしは発布三十年であったわけですからね。これが五十年であるとか、また、一つの区切りにおいてすることに私は意義があると思いますが、毎年ということに対しては、これは検討を要すると考えております。いま、したがって、これを毎年するということを今度はお答えするのには、少しいろんな各方面からひとつ検討してみなけりゃならぬと思っております。
  356. 桑名義治

    ○桑名義治君 総理は、この式典を毎年挙行するかどうかはいまから検討する、こういうお話でございますが、しかし、そういった言葉の中に、私は多少の後退姿勢があるというふうに考えざるを得ないわけでございますが、いずれにしましても、この民主的憲法をどこまでも守り抜いていく、この決意で臨んでいただきたい、このように思うわけでございます。  次に、政治資金の問題で質問をしてみたいと思います。  前々から政治資金規正法の問題は、前国会でいろいろと議論になったわけでございますが、この議論は、あくまでも各政治団体にお金が入ってくる、この使途についての議論が行われました。ところが、政治団体から他の団体へ出ていくという支出の面の議論がほとんど行われていない。ところが、総理はたびたび答弁なさっておられますが、私も予算委員会でこの問題を取り上げたわけですが、問題はもらい方と使い方だという発言をなさった。これは覚えていらっしゃいますか。
  357. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 覚えております。
  358. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、政治資金規正法の目的あるいは基本理念、これは政党その他の政治団体の「収支の公開及び授受の規正その他の措置を講ずる」、これは第一条ですが、第二条として「収支の状況を明らかにすることを旨とし」云々、「いやしくも国民の疑惑を招くことのないように」と、こういうふうにうたっているわけでございます。そこで総理、立法の目的から、収入のみならず収支においても疑惑を受けないように明白にすることが私は当然な義務だと、こういうふうに考えるわけでございますが、その点どうでしょうか。
  359. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そのとおりだと思います。
  360. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、前々から中曽根派の政治資金報告書の問題がマスコミ等で批判され、また、この委員会でもいろいろ問題になったわけでございますが、そういったことから政治資金の収支の、いわゆる出る方の明確化も当然やっていかなければならない、こういうふうに思うわけでございますが、この中曽根派の報告について立法の精神に欠けていたのではないかと、こういうふうに私は考えるわけでございますが、その点については総理と自治大臣と、お二人に答弁を願いたいと思います。
  361. 福田一

    国務大臣福田一君) この問題は私の主として所管するところでございますから、私からお答えをさせていただきたいと思うのでありますが、実は中曽根派の政治資金の問題につきましては、四月九日と四月十二日付で訂正の申し入れがございました。ところが、事務的に審査してみますというと、なお支出先が不明瞭でございまして、また、領収書その他の支出を証する書面の写しが添付されていない。言うなれば、先ほど総理とあなたとの質問応答の間において行われた趣旨が明らかでないということでございましたので、調査をいたしました結果、四月十七日付をもって再調査の上訂正をしてもらいたいということを申し入れまして、その後訂正が出てまいったわけでございます。ただいまその訂正を精査いたしておる、こういう段階でありまして、それが済んだ段階において公開の手続をとりたい、ちゃんと法律に定めたように書いてあればそのまま公開をする、こういうふうにいたしたいと思っておるわけでございます。
  362. 桑名義治

    ○桑名義治君 自治大臣ね、こういうような報告の仕方が立法の精神に外れているではないか、その点についてどうかということをお尋ねしているんです。
  363. 福田一

    国務大臣福田一君) いや、そこで、前になぜ訂正されたかということについては、これは雑誌に出ておっただけでございまして、われわれはその雑誌を見た後でどうもこれは不思議だなあと思っておるうちに、中曽根派からそういう実は訂正が出てきたわけであります、先ほど申し上げたように。  ところが、その訂正のうちに「別添の一、二及び三は、それぞれ新政同志会事務局長小林弘之が当該月日ごろ数回にわたって新政同志会所属国会議員の政治活動費、調査研究費、教育及び研修費として受領し、その当時の新政同志会の座長を中心に幹事会において、上記国会議員に対して上記趣旨で交付したことに相違ありません。」、こういうただし書きがその訂正の中でついておったわけです。訂正した場合に、小林という人が受け取ったんだ、で、それは皆に渡したんだと、こういうことなんです。皆に渡したということならば、これはやっぱりだれに渡したかということを明らかにしてもらった方が、一遍疑惑が起きた問題だから出してもらった方がいい、明らかにしてもらいたいという意味のことで訂正をもう一遍してもらいたい、再訂正を命じたと、こういうことです。
  364. 桑名義治

    ○桑名義治君 だから、好ましくないということですね。
  365. 福田一

    国務大臣福田一君) そうです。好ましくないということです。
  366. 桑名義治

    ○桑名義治君 自治省にお尋ねしますが、この訂正やり直し命令、これは技術的にはどういう点に一番問題があったわけですか。
  367. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 自発的にお出しになりました資料を見ましたところが、一つの例としては、ただいま大臣から申し上げましたように、ある事務局長という方の名前で受け取ったかっこうになっておりましたけれども、これはその方からほかの方へ渡したということがはっきりと文面で出ておりましたので、それはやはりそこまで書いていただくのが明確になるゆえんではないかということで、その点をお願いしたことと、それからもう一つは、領収証がついておりませんでした。前のは多分ないということはわかりますが、どういう形でだれがどうしたかという経緯はつけていただく方がはっきりいたしますので、それも出していただきたいと。それから、まあ何々ほかといったようなことで、若干明確でない点が技術的には若干ございました。そういった点を合わせまして、より明確にした形でお出しをいただきたいということをお願いしたわけでございます。
  368. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、経由機関ではいけないということですね。最終の受領者の名前を記載せよということですね。
  369. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 政治資金規正法のたてまえから、先ほどもおっしゃいましたように、国民の前にこれを公開をして国民の批判と監視を仰ぐという趣旨でございますから、なるべくそういった細かく支出した相手方がわかるというのがたてまえであろうかと思うのでございます。ただ、その支出先にはいろんな事情もございますから、絶対に最終的な受領者でなければいけないということもまあない。そういった意味で供与とか交付とかいう言葉が使ってございますが、一応受けるべき人にある仲介者が交付を受けて、そして渡すというケースもこれはあり得るわけでございます。ただ、そういった交付を受けて処分する方は、あくまでも自分がある程度そういった会を主宰するなりというような形で、権限とそれからそれを処分する判断と責任を持った方、そういったところに落ちついていくということが必要であろう。  きわめて細かい例を申し上げますれば、たとえばある会合でタクシー代等も出したとすれば、そこのタクシーに乗った領収書というのが本当は必要であろうかと思うのでありますが、場合によっては一つ会議の中での項目として、ある方がそれを含めてその支払いをされたという形になるような場合もあろうかと思うのでございます。これはまあ一例でございますが、しかし、できるだけこれははっきりとわかるように支出先を明らかにすることが必要であろうというふうに考えます。
  370. 桑名義治

    ○桑名義治君 この前の答弁から見ると、ずいぶん後退をしているように思います。この前の答弁では、経由機関がいけないという言葉が必ず出ていました。今回の答弁は何ですか、責任のある人がおるならばいいと。じゃ、内部の中でもいいんですか、内部の中でも。これは後でまた議論をしていきますけれども、私は政治資金規正法の精神から申し上げますと、右のポケットのお金を左のポケットに入れたとそれを記入したって何にもならないと思う。これは社会通念だと思うんですよ。要するに、他の団体からお金がある政治団体に入ってきた。これはAという客体からBという客体に来た。そのお金が今度はCという客体にこういうふうに移りましたという経過、いわゆるお金の流れがはっきりして初めてこの報告は正当性が私はあると思う。それをこの政治資金規正法の中では求めていると、こういうふうに私たちは解釈しているわけですが、どうですか。精神の問題です。
  371. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 御承知のようにこの政治資金規正法では、支出につきましては、法の四条で「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付」という言葉が使われておるわけでございまして、したがいまして支出という場合は、供与あるいは交付ということでございます。ただ、どこどこまでどうということが事細かに法律には書いてはございません。やはり法の趣旨から判断すべきことだと思うのでございますが、この場合の供与というのは、金銭等の利益を相手方に対してその者の所得に直接帰属をさせるという形で授与することをいうということでございますし、交付というのは、他の者に供与させるために仲介者に金品等の所有を移転をするというものであるというふうに、これは従来からの判例等で言われておるわけなんです。  要は、そういう場合に、交付といったような場合にどこまでが受ける権限があるんだ、どこまで明らかにしたらいいのかということになろうかと思うのでございますが、先ほども申し上げましたように、交付を受ければだれでもいいというわけではなくって、たとえば、ある事務を扱っておる人が、一応その人を通るから、その人がやれば一括全部いいんだというわけではございません。やはり、少なくともその交付を受けた金品等を自分の責任と判断で処分ができる、そういった地位にある、そういった者でなければいけないだろうというふうに考えておるわけでございます。そういった意味で、経由機関といっても単なる補助的な、その事務補助をやっているような方が、そういう人を通ったから全部その人が受け取ったんだと、こう言うわけにはいかないのであって、といってもまた全然完全な最後の方に供与しなきゃいけないということもない。処分できる権限の方に交付するということは、支出の定義等から見てそれは許されるというふうに考えておるわけでございます。
  372. 桑名義治

    ○桑名義治君 私が問うておる焦点はどこかというと、一つの団体の内部でお金が右から左に動いただけで一つの支出になるかと言うのです。政治資金規正法はそういう姿を望んでいるのかと言うのです。一つの客体から他の客体へお金が流れた。そのお金の流れを国民に公表することがこの精神じゃないかと言っているんです。その精神を聞いているんですよ。
  373. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) まあこの法の精神から見れば、確かにある団体から支出されたということでございますから、外へ渡っていくということが明らかになることがその精神だろうと思うのでございます。
  374. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこまででいい、精神だから。  そこで私は問題を提起をしたいわけでございますが、大変に失礼とは思いましたけれども、自民党の党内の資金の動きを調べさせていただきました。というのは、自民党は政権を握っていらっしゃいますし、ここが一番すっきりすればやはり日本の政治はまた一段と透明度を増してくると、こういうふうに私は考えたからでございます。ところが、この中身を見てみますと、これは責任のある人のところにお金が渡っておりません。総務局、執行部、政務調査会、みんな会が受け取っているみたいになっているわけです。ところが、皆さん方がそれぞれの政治団体にこういう書類を出しなさいという書類の指示、指示は住所から名前から全部出せと書いてある。ところがこれじゃね、執行部に渡っているとか、政務調査会に渡っている。だれに渡ったんだ。こんな領収書が発行できるんですか。これ、許可できるんですか。もし仮にこれが許可できるとするならば、われわれの党もあるいはそれぞれの皆さん方、他のまじめにいままで細かく報告をしておった政治団体は簡単なことです。みんなそれぞれの部をつくって、その部に渡したようにすればそれで済んじゃう。それでいいのですか。
  375. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 先ほど申し上げましたように、支出の形としては、当然その外部におる人にきちっと最終まで行ったものを届けるということが、これは正しい姿であろうと思うのでございますが、処理の仕方で、先ほど申し上げましたように、交付をしてそれを処分するという形態はあり得るわけでございます。そういった形で処分権、責任、自分の責任と判断のもとに処分できる人に渡るということは、それはあり得るわけでございますから、そういった場合に政治団体の中である一つの、まあ何と申しますか、一つの会合を開く、あるプロジェクトのもとに一つの会合を開くといったようなそういったことが行われた、ある会場で演説会やるというときに、一つの責任者がその処理をしたといったような場合に、そういった形で責任のある人に渡して、それがその人が受け取ったという形にすることは、それはそれなりでいいと思うのでございます。ただ、先ほどから申し上げますように、法の精神そのものは、やはり国民の前に明確にそういうものを示すというのが趣旨でございますから、できるだけ具体的な範囲内までやることが望ましいというふうに考えるわけでございます。
  376. 桑名義治

    ○桑名義治君 ちょっと待って下さい。いまの私の質問に答えていない。あなた、責任ある人と、こう言ったから、これじゃ全然責任のある人の名前が出ていないじゃないかと言っている。こんな領収書とこんな報告書でいいかと聞いているんですよ、あなたさっきから責任のある人、責任のある人と言うから。これ、責任のあるのはだれかさっぱりわからぬ。
  377. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) まあ、会というような形でございますから、責任のある人といった意味での、その具体的な個人が受け取ったかっこうにはなっていないわけでございます。ただ……
  378. 桑名義治

    ○桑名義治君 だから、おかしいじゃないか。
  379. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) したがってその点は若干不明確な点があると思います。その会が受けて、会のだれが責任者だという形でやってもらう方が正確だと思いますが、ただ、そういった責任のある形でだれが受け取ったというかっこうで、使われたのはこの会であるというものをお示しになったのは、それはそれなりで真実だろうと思うのでありますけれども、それじゃ若干不明確な点があるというふうに申し上げておるわけでございます。
  380. 桑名義治

    ○桑名義治君 大臣どうですか。この答弁に対してどういうようにお考えになりますか、担当大臣。
  381. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  ただいま選挙部長が申し上げましたように、確かにあなたの御指摘のように執行部とか政務調査会とかという名前でありますが、それは日付がちゃんと書いてありまして、その当時にだれが執行部におったかという、いわゆる幹事長がだれであったか、政務調査会長はだれであったかということは、これはわかるわけであります。もちろん、あなたのおっしゃるように名前まで書いておけばこれは非常に明確であったわけでありますが、それが書いてなかったという意味においてはいささか遺憾な面があると思いますけれども、しかし、ここにあなたもお持ちになっている資料をごらん下されば、ちゃんと日付でもってずっと書いてある。そのときにはだれが政調会長をしておったか、執行部のあれであったかということは、これは調べればわかることなので、これはあなたからおっしゃれば、それは名前が書いてないから法の精神とは完全に一致しないじゃないかという再質問があるかとも思いますけれども、実際は日が書いてあるんですから、ひとつそこは、これからは大いにひとつ戒心するというか、そういうことがないようにいたしますけれども、いままでこういう処理をいたしておったということについては御了解を願いたいと思うわけであります。
  382. 桑名義治

    ○桑名義治君 私は良識人でございますので了解できません。というのは、名前が書いてないからいけないということを単に私はお話を申し上げているわけじゃない。金を右のポケットから左のポケットに移した、この動きを報告して何で国民がすっきりするかということを言っている。この法の精神というものは、Aという客体からBという客体に流れた、その流れを明快にして国民の前に供覧するということが、これが主目的でしょう、精神でしょう。はっきり言いましたでしょう。その面から言った場合にこれは不当だと、こう言っているわけですよ、どうですか。
  383. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は、このいまの問題でございますが、だれが金を集めたかという責任者になれば、総裁が集めたんだと思います。そうして総裁が集めて、その事務は会計がやっておるのだと思うのであります。ちゃんとそれは会計責任者がおります。そうしてその会計責任者が、政務調査会長であるとかあるいは幹事長に何月何日にどれだけの金を渡したと、こういうことになっておるのでありまして、そういう意味で、まあ名前も書いておけばはっきりわかるわけでありますが、お説の点はよく私もわかるわけでありますけれども、右のポケットから左のポケットへ入れたというのとはちょっと違うのじゃないでしょうか。たとえば、お父さんが息子に金を渡したというのは、お父さんの右のポケットから左のポケットへ入ったのじゃない、やっぱり子供に渡した。言うなれば総裁が幹事長なら幹事長に渡した、政調会長に渡した、こういうふうに御理解を願いたいと思うのでありまして、あなたがそういう意味で不明瞭である、非常にそういう点は不明瞭であるからということで、御趣旨は、私もあえてこれにそんなことはありませんとは申し上げませんけれども、これは御理解をしていただきたいということを申し上げておるのであります。
  384. 桑名義治

    ○桑名義治君 私はいいことならすぐに理解するんですけれども、そういう不明な点については理解するわけにはいきません。あくまでも与党である自民党であるならば、政治資金規正法のいわゆる精神にのっとったそういう整理をしてこそ、初めて国民の政治に対する疑惑が明らかになってくると思うのですよ。私はこれを見たとき驚いちゃった。これじゃもう全然、金がどこへ流れていったかわからない。  そこで調査費について、その支出先、それを見てみますと、党内の執行部、政務調査会、総務局。その内訳は四十九年下期、五十年上期の一年間で執行部が約四千七百二十万、政務調査会約二億四千二百五十四万、総務局三千六百八十万円、こういう莫大なお金になっておる。国会対策費の分を見てみますと三千四百四十万円、執行部は八百万円、こういうふうになっている。こんな巨額な金が、いわゆる執行部が握っておってもどうにもならない。国会対策委員会が握っておいてもこの金は何にもならない。どこかへ出ている。そこから先が明快にならなきゃいけないと思う。たとえば本部から一つの支部にお金が交付された、これは私は構わないと思う。なぜかというと、この支部がまた報告するからです。ところが、国会対策は報告しますか。執行部が報告しますか。あるいはまた政務調査会の二億四千二百五十四万円という金を報告しますか、どこかに。そこが明らかにならないとこの法律の精神は死ぬんです。そのことを申し上げているわけです。どうですか総理、どう思いますか。
  385. 福田一

    国務大臣福田一君) この問題は私のところの所管ですから、私から申し上げたいと思うのですが、あなたの御趣旨はよくわかりますが、しかし政調会で二億何千万使ったと言っても、一遍に二億何千万使っておるわけじゃない。やはり何月何日、何日というふうにして支出をしておるはずでございます。また幹事長に渡した場合も、総計はおっしゃるとおりでございますけれども、やはり何月何日に渡したということになっておると思っておるのであります。  そこで、その内容をもっと詳しくしなければいけないじゃないかということでありますが、やはりその面においては幹事長とか政調会長というものには相当いろいろの仕事を担当させておるわけでございまして、まあ、ちょっとそれは自民党は大きいからというようなことを私言って弁明するわけにはいかないかと思いますけれども、やはり大政党として、いやしくも幹事長をやったり政調会長をやっとる人がその金をもらったからといって、でたらめに使ったり、むだに使ったりは私は絶対にしておらないと考えておるのでありまして、そういうたてまえでいままではやっておった。しかし、あなたがいまおっしゃるように、これではわからぬじゃないか、だからこれからはひとつ改めてもっとこれをわかるようにしなさい、こういう恐らく御忠言を最後にいただけるのだろうと実は思っておるのでございまして、そういう意味でございますれば、今後大いにひとつ注意をいたしてまいりたいと思いますから、とにかく、まあまあ御了解を願いたいと思うわけであります。
  386. 桑名義治

    ○桑名義治君 これ以上厳しくやろうと思いませんがね。日にちが分かれているとは言いますけれども昭和四十九年十二月二十七日、ざあっと政務調査会のお金がごっそり出ている。何億という金が出ているわけです。これをずっと見てみますと、五十年の一月も十二月も同じことです。それから同じように四十八年も、十二月の大体二十日過ぎにざあっと何億という金が出るわけです。そうして新聞見てみますと、そのときには一人に幾らのもち代が出たと、こういうふうに新聞では報道されている。私たちは勘ぐれば、ああこれはもち代だな、各議員、議員に渡ったんだなと、こういうふうに考える。そうすると、中曽根さんの報告書のときのように、当然最終の人々の名前を記載しなければならない、こういうふうにわれわれは理解せざるを得ないんですが、どうですか。
  387. 福田一

    国務大臣福田一君) 私は、これは個人の後援会の場合と政党の場合とはいささかやはり趣を異にするのではないかと思っておるわけでございます。あなたの御指摘意味はよくわかりますけれども、政党としてやっておりまして、そして幹事長とか政調会長がそういうふうな処理をいたしておるということでございますから、私はまあ、そういうことじゃ不明瞭じゃないか、法の精神に反しておるじゃないかということであれば、それにあえて逆らうような気持ちでお答えをいたすつもりはございませんけれども、個人の場合と政党の場合とでは、いささか私は趣を異にしておるということは御理解をしていただきたいと思うのであります。
  388. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連。  最初に、ただいまの問題に関連して選挙部長にお伺いしたいんですがね。いま桑名委員指摘した、この執行部あるいは政務調査会等で支出になっておりますね。その場合、領収書が添付されなければなりませんね。領収書は公開にはできないことに省令でなっておる。これは私もわかっておりますが、その領収書の場合ですね、やっぱり執行部だけでは私は恐らく選管は通らないと思うんですけれども、この場合はどうなっておるのか、それをまず教えていただきたいと思うのです。代表者名が必ず要るはずです。おたくの方から回ってきている報告書の様式がありますね。法律に基づいてつくられた報告書の様式の中には、きちんと代表者名を入れなきゃならぬことになっているんですよ。たとえ会に出ても、その代表者は要るわけです。だから、たとえばどこかで物を買ったとした場合、その領収書は会社の社長の名前を入れなきゃならぬようになっているわけですね、それでなきゃ領収書として意味ないわけですから。先ほど来いろいろ執行部全体でいいんだ、あるいはまた政務調査会全体でいいんだと、こう言われておりますが、実際領収書の中身にはきちんと代表者を書かなきゃならぬと、こうなっているはずなんですが、その点はまずいかがですか。
  389. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 先ほどから申し上げておりますように、交付を受ける、責任のあるそういった機関等でございますれば、それは支出の受ける対象になるわけでございます。ただ領収書は当然あるべきものでございます。ただその中身を、ちょっと私もいま急には覚えておりませんが、会のその代表である人とか、あるいはまた事務を扱う人がおる場合もございますし、それから何々会ということで、そこの実際に会で事務を取り扱っておる方が発行ざれた領収書もあったように記憶をいたしております。その場合は直接の責任者の一々の名前はございませんが、責任を持った事務局の方が受け取ったという領収書を出しておる、そういったものもあるように覚えております。
  390. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ということは、いわゆる政治団体あるいは政治資金団体の領収書というのは非常にいいかげんなものでいいということになりますね。私自身も後援会を持っておりますから、実際去年の年末は報告をちゃんとしているわけですよ。それは非常に細かく厳しい中身になっていますよ、実際の報告書の様式は。だから非常に事務員が苦労してやっておるわけですね。これでよかったら、こんなもの気楽なものですわ。どの政党もどの政治団体もちゃんと各局をつくって、わが後援会なら調査局、何局をつくって、それで何億——何億もないけどね、わが方は。十万とか二十万で出して、それで終わりということになる。そういうことになるわけでしょう。  それじゃ総理、どうですか。本当のこの公開という問題から考えまして、全然これは意味がないと思うんですよね。そのために領収書の様式までちゃんと指定されて選管から来るんですから。非常に領収書の写しをやることは厳密ですよ。選管もいいかげんだったら受け付けてくれないのですよ。自民党の本部でやっていらっしゃることが、非常にこういう形でできる、これはおかしいですよ、どう考えても。  それからもう一つは、旧法では千円以上が届けなきゃならぬです、領収書が要るわけです。新しい法律では一万円以上ですね。そんな千円以上とか一万円以上なんか、全然意味ないじゃないですか。何で一万円以上にしたのですか。なぜ旧法では千円以上になっているんですか。やはり一万円以上に領収書が要るということは、大体それぐらいの支出についてもちゃんと報告しなきゃいかぬという私は意味だと思うんですけどね、その点自治大臣どうですか。それと、総理にその点も含めてお伺いしたいと思います。
  391. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  確かに、そういう面において不明瞭な点がある、また、法自体の運用の面においていささか不明瞭な面があるではないかという御指摘に対しては、私はごもっともであると思っておるわけであります。しかし間違ったことをしておるわけではないのでございまして、皆領収書はついておるわけであります。そうして千円以上の場合でも——千円以上の場合ということは、百万円以上でも、受取がきちんとついておればそれはいいわけですね、正式のものであればいいわけですね。だから、それは受取はちゃんとついておるということでございまして、私も国対委員長をやったことがございますが、実は私も領収書を書いたことはあります。私はちゃんとサインをいたしております。そういうことで、ちゃんとそういうようなサインをしておることだけは間違いないと思うのでございますが、しかし内容についてもう少し詳しくして、前のは千円であったが、しかし、いままでの法律というものは大体ざる法的であるからいけないじゃないか、なぜ直さないのかということは十年来議論がされてきて、そうして昨年ようやく皆さんの御賛同を得て、そして法律ができたわけであります。したがって、それはことしの一月一日から公布いたしたのでございますからして、施行したのでありますからして、これからはひとついまのような疑義のないように取り扱いをいたしてまいりたい、こういうことを申し上げておるわけでありまして、これを私は何も自民党のためにだけ申し上げておるのじゃありません。自治大臣でございますからして、全部としてそういうふうな措置をとるようにお願いをする考えであるということを申し上げておるわけであります。  ただし、いままでの分についてはいろいろそういうような意味で御指摘のあるような面もあったかと思うのでありますが、その点はとにかく一応ちゃんと形を整えておるのでありますから、ひとつ御了承を願いたい、こういって申し上げておるということを御理解を願いたいと思うんです。
  392. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 改正前の法律においては、御指摘のように一千円以上というものを個々に出すようになっておりましたが、今回の法改正の際にいろいろ議論したわけでございます。もちろん、この一万以下のものでございましても、総額としては当然届け出の中へ入っているわけでございますが、個々に出す場合に、いまのいろいろな諸般の物価その他いろんな社会情勢から見まして、いつまでも従来のように千円という小さい単位で見るのがいいかどうかということは、いろいろ議論されました結果、おおむね個々に出すのはこの程度の単位でいいではないかといった意味で、常識的に一万円という線が出されたということでございます。
  393. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほど自治大臣が、何か知らないけれども、大政党の自民党だから無理だというようなお言葉でございましたが、これはおかしいと思うんです、論理は。小さくても大きくても、幹事長とか責任者がこんなにポケットに入れるわけないじゃありませんか。そんな失礼な物の言い方はやめてくださいよ。  それから、私は自治大臣ですから他の政党のと、こう言っておりますが、うちの政党の分も調べてきた、報告。きちっとうちの党からよそに出たように報告されております。おたくの党ですよ、こんなのは。何もかも、個人の名前は書いてありますけれども、見ましたらみんな住所は千代田区永田町一の十一の二十三、自民党の本部に皆さんが、交付していらっしゃる方々はみんな自民党の中に住所があるわけですな、これは。こういうことならば当然、疑惑が生まれるのはあたりまえなんです。そういった意味で、再び政治資金規正法の支出面について議論を起こし、改正をする必要がある、こういうふうに私は提議をしたいわけでございますが、ガラス張りの政治政治と言われている三木総理、どうでございましょうか、いままでの議論を通して。
  394. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政治資金規正法は資金の受け入れ、支出、これをできるだけ明朗な形にするということですから、いままでは確かに入ってくる方は厳重であったけれども、支出の点ではやはりいろいろと考えなきゃならぬ点が多々あったと思うんですね。今度は新しい政治資金規正法ができましたものですから、自治省でもこの支出の面の届け出というものをもう少し研究して、あれは一年ですからね、今度の場合は。だからまだ届け出までには相当の期間がありますから、なるべくいま桑名君の提起されたいろいろな疑問などを踏まえて、できるだけ支出面の届け出ということに対してもっと明朗な一つの方式といいますか、こういうものを自治省でも研究して、政治団体の届け出をするような場合の目安にするようなことはできないかと、いま質問を聞きながら考えたのです。できるだけ、一つのフォームがありますから、これが何かもっと明朗にするような方式というものは考えられないであろうかという点は研究をいたします。
  395. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうすると、この政治資金規正法を改正する方向で検討する、こういうことですか。
  396. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、改正するというのじゃありません。いまの中で、届け出の場合においていま相当厳しい、一万円以上とかあるんですから、この届け出はいまの法律によって、これを何か届け出の方式の中でもう少し明朗な一つの形というものは考えられると思いますから、一つのそういう届け出の形式というものは研究をしてみます。しかし、いまの政治資金規正法をもう一遍改正するという意図は持っておりません。私はあれは画期的な政治資金規正法だと思いますよ、あれは。実際はもうこれは政党の体質にも非常に影響を与えるものであって、これはいままで政治資金規正法の強化というものはできたことがないんですからね、桑名君。それは画期的なもので、皆さん余りこれを評価をしないことは私と意見を異にするわけです。
  397. 桑名義治

    ○桑名義治君 総理、今回の改正というのは、お金の入ってくる面についての改正をしているわけです。出る面については何にもやっていないわけです。ただ金額の面が上がっただけなんです。したがって、私たちがいま提起をしたように、また総理がたびたび言われるように、党から出ていく金が明朗でなければならないということを期するためにはもう少しこの法を改正しなければいけませんと、こう言っているわけです。形式的なものではだめですよ。実際にたったの一項目しかないんですよ、支出の面についての項目が。これじゃそれこそざる法で、どうでも解釈できるというような法律だから、そこを改正したらどうですかと、総理の信念に基づいて私は言っているのです。恐らく総理は、私がこれを提起したら、もうそれはそのとおりだ、改正する方向でがんばろうと、こう答弁が返ってくるものとばかり私は思っていた。そうじゃないですかね。そうでなければクリーンじゃありませんよ。
  398. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 桑名さん、そういうわけにもいかないので、いま新しい政治資金規正法、これは一月からですからね。これでいろいろな結果を見て、そうしてなおかつ政治資金規正法の目的がよく達成できぬということなら改正考えますよ。いま、まだ一月一日から始まったばかりですから、この適用を通じて、そうしてできるだけ法律の範囲内において明朗化を図るような工夫をいたしまして、その結果、なおかつこれが改正する必要があるというならばいたしますけれども、いまは改正意思は持っておりません。ようやく一月一日からスタートしたばかりの法律でございますから、その実績を踏まえて検討をいたしたいと思います。
  399. 福田一

    国務大臣福田一君) ちょっとお答えをさせていただくのですが、これはあなたもおわかりになっておいでになって御質問もあったんだと思っておるのですが、従来の政治資金規正法の第二条の二項には、「政党その他の政治団体は、その責任を自覚し、その政治資金の収受に当たっては、いやしくも国民の疑惑を招くことのないように、この法律に基づいて公明正大に行わなければならない。」、収受ということについて実はウェートが置いてあるわけです。支出の面について言うと、もちろんそれは両方やった方がいいのは当然のことですけれども、収受についてはこれはいやしくも疑惑を招くようなことがあっちゃいかぬということでありまして、その点に今度の政治資金規正法の重点が、この前の政治資金規正法のときの重点がそこに置かれておったということなんでございまして、しかし、それ、だからといって、あなたがいまおっしゃったことを否定するつもりはないんですよ。そういうことをもちろん否定するつもりはございません。しかしそういうことであって、この前の政治資金規正法をやったときには、この二条も踏まえながら、とにかくさしあたり前進をさせようと。あの法についてもずいぶん反対がございまして、これは再十七対百十七というきわどい数で通ったという実例は皆さんも御承知のとおりでございまして、これはいろいろの御議論があったところでありますが、そういうところも踏まえて実は考えておった。すなわち、金をもらう方は非常に公明正大にやりなさいというところがもっとはっきりするようにということを考えておったわけです。しかし、それだからといって、いまあなたがおっしゃったことがそれは間違っておるとか、そういうことは必要ありませんなんて、そういう考えはございません。できるだけ御趣旨に沿って実施をいたすようにいたしたいと思いますから、御了解を願いたいと思います。
  400. 桑名義治

    ○桑名義治君 そういうふうに言われますけれども、実際にきょうここで新聞記者の方、報道関係の方々あるいは傍聴の方々、たくさんいらっしゃいます。変なことを言うな、おかしなことだな、こうお思いになっていらっしゃると思います、私は。もらった金は、入った金はどう使うか。これはもう三木総理の信念じゃないですか。では法改正までいかないとするならば、早急にいわゆる省令なりあるいは手続法なりを変える意思はございますか。
  401. 福田一

    国務大臣福田一君) 御趣旨を踏まえて検討をさせていただきます。
  402. 桑名義治

    ○桑名義治君 では、この問題はこれくらいにしまして、次に、高度成長から低成長へ日本の経済は大きく転換をしてきたわけでございますが、そういった意味で、いまからの産業のあり方、こういった立場から少々疑問を提起してみたい、こういうふうに思っているわけでございます。  わが国の経済が高度成長から低成長へ転換をしてきた。言うならば、いま模索の時代だろうと思います。そういった意味で、今後こういった立場で日本の産業をどういう方向に導こうとしておられるのか、基本的な問題としてまず答弁をいただきたいと思います。
  403. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話のように、わが国の経済、これは在来の高度成長型からいわゆる安定成長型へ移行するわけです。そういうことになりますと、まず一つの大きな変化は、これは企業もそうです、また個人もそうですが、それに対応する姿勢ですね、その経済の針路、その変化に対応する姿勢をとらなけりゃならぬ、こういう要請にこたえていかなけりゃならぬだろうと、こういうふうに思います。  そういうことで、産業構造の転換が必要だというようなことが言われますが、まさに最も企業はその対応姿勢をとらなけりゃならぬ。それはやっぱり一番問題は、いままでのような高い成長じゃありませんから、企業の体質を強化するということだろうと思います。いま、わが日本の企業というものは少し量的にかっこうが大きくなり過ぎております。その内容を充実するという問題、特に自己資本が欠如しておるという問題ですね。これはストックの問題であります。そういうところに着目をしなけりゃならぬだろう。  それから、そう経済の針路の転換を要請されるゆえんのものは一体何だと、こう言いますと、これは省資源、省エネルギーというところに気をつけなけりゃならぬだろうと、こういう結論になるわけです。つまり、資源有限時代、その対応としての経済の針路の転換でございまするから、また個々の企業もその中において省資源、省エネルギーという体質を整えなけりゃならぬ。  それからもう一つ、最近の世界情勢の中で大きな変化が出てきている。それは南北問題の進展です。そして開発途上国の繁栄、発展というものが予想される。そうしていままでわが国の主力藤業であった、たとえば繊維、そういうものが開発途上国から近い上げられるという立場にもなる。そういうようなことを考えまするときに、わが国の産業全体をこれを知識集約型といいますか、そういう方向への転換を大きく考えなけりゃならぬ。  いろいろの問題がありますが、要するに高度成長、それが減速経済に転換するわけでありまするから、その中においてどういうふうに対処するか。まあ個々の企業でも大分いろいろ企業企業によって違うところもありましょうけれども大方ただいま申し上げたような趣旨の姿勢転換を行わなければならぬ、こういうふうに考えます。
  404. 桑名義治

    ○桑名義治君 ごく大要について副総理に答弁を願ったわけでございますが、そこで現在こういった状況の中で、非常に長期にわたる深刻な構造的不況を呈しているという中で企業再編成ということが非常にささやかれ、また現実に行われているわけでございますが、この企業再編成についてのいわゆる政府としての評価なり、あるいは今後どういう方向に持っていこうとされているのか、その点についてまず伺っておきたいと思います。
  405. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま副総理からお話がありましたような情勢でございますから、そういう情勢を受けまして、御指摘の企業の再編成という問題が出てきたわけでございます。いま、さしあたり対象になっております企業は紡績関係、それから石油関係、それから特殊鋼、それから平電炉、それから商社、それから軽金属の一部、こういうものが一応対象になっておるわけでございますが、政府としての考え方は、業界の自主的な判断に基づいてその方向を決めていただく、これが基本的な姿勢でございます。  そして、それに対して政府としてお手伝いすることがあれば積極的にお手伝いをしていく、こういう考え方でございますが、その際に特に気をつけなければならぬ点は、自由競争の原理がその再編成を通じて失われる、こういうことがあっては自由主役経済の健全な発展を図ることは不可能でありまするから、その点に対して十分配慮しなければならぬと思います。それから、大きな企業の場合、関連する中小企業が非常に数が多いわけです。でありますから、再編成の場合には中小企業に悪影響が及ばないように十分その点に対して配慮していく、この二点が当然考えなければならぬ点だと思います。
  406. 桑名義治

    ○桑名義治君 今回のこの再編成というものは大きな特徴があると思います。第一回は昭和二十年代末から三十年代にかけて、これは独占禁止法が非常に緩和された時代です。それから三十年代の後半から四十年代にかけて、これは貿易の自由化、資本の自由化、こういった体制の中でいわゆる再編が行われたわけです。ところが、今回の場合は、これはどうも特徴は前回の二つに比べまして消極的要因というものが非常に強い、こういうふうに考えますが、そういう意味では一つの歴史の流れというべきだと思いますけれども、どういうふうにこれを見ていらっしゃいますか。
  407. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これも先ほど副総理から説明がございましたが、高度成長時代が終わりまして安定成長時代に変わっていく、その過程におきまして幾つかの業種において当然再編成というものが行われるわけでございまして、その大きな転換期に際しての再編成と、こういうふうに理解をいたしております。
  408. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほどから転換期は申しています。しかし、その転換期も、過去二回の再編成の時代よりもまた意味が違う。前の二回の再編成というのは非常に積極的な姿勢だった。今回は非常に防御的な姿勢になっている。これをどういうふうにとらえるかということを聞いているわけです。
  409. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そこで、いま申し上げましたように、高度成長時代から安定成長時代に移る、そういう転換期に際しての再編問題である。したがいまして、その持つ意味は消極的な意味であると、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。
  410. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで問題は、半面の不況を乗り切るという意味で再編成が行われている。それは経営者の頭にあるのは、協調の利益ということが一番中心になってくる。そうなってくると、これは高度成長期の規模の利益を同じようにねらった形で再編が行われる、市場の支配が行われる、こういうふうになってきますと、これはゆゆしき問題が起こってくるわけです。そういう点についてはどういう認識を持っておられますか。
  411. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 確かに御指摘の点が問題点だと思います。そこで、やはり公正にして自由な競争原理というものが失われないというふうに配慮していかなければならぬということだと思います。それからもう一点は、先ほど申し上げましたように中小企業対策であると、こう思います。
  412. 桑名義治

    ○桑名義治君 それともう一つの特徴というものは、結局、金融機関が媒体になって、債権保全を目的とした企業合併ということが非常に目につくわけです。これはあなたが先ほどから業界のいわゆる自主的な判断によることが好ましいと、こういうふうに話されたわけでございますけれども、こういう立場から見ると非常に変則的な、いわゆる銀行主導型、金融会社主導型のいわゆる合併が行われ編成が行われているというふうに思われるわけですが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  413. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私が申し上げました業界主導型という意味は、それは政府がリードして再編成を行わせる、そういう形ではない、民間の関係業界が集まって今後のあり方を相談の上で決めていく、そういう意味でありますから、当然、日本の企業は借入金が非常に多いわけでありますから、銀行の発言権も相当あると思います。
  414. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、このままの状態が推移していくと、日本の経済というものは完全な銀行支配型の経済という、こういうかっこうになってくるおそれだって、この不況がもう少し続けば非常にゆゆしき問題が起こってくるように私には憂えられるわけです。  そういう意味で、私は、あなたが業界の自生的判断と言われたことは、同じ業界の自主的判断、いわゆる経済界の自主的判断という意味ではないと思うんです。あなたのいまの答弁を聞いていますと、そうではなくて産業界全体の自主的判断と、こういうふうに聞こえるわけですが、さっきは業界の——業界というのは同じ種目をつくっている、生産をしているそういうものを業界とこう言うんじゃないですか。
  415. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 業界という意味は、先ほど四つ、五つの具体的な事例を挙げて業界を例示いたしましたが、その業界内部において当然相談が行われると思いますが、その場合に、日本の企業の特徴といたしまして借入金が非常に多いわけでありますから、当然銀行の意見等も聞くと思います。関係各方面の意見を聞きながら、その業界において相談をしながら再編成の方向を決めていく、そういうことだと思います。
  416. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、副総理にお尋ねしたいのですが、先ほどからの議論といろいろ重なるわけでございますが、いまのこの激動期、混乱期を迎えているわけですが、これを切り抜けるためには、日本の産業構造の未来像だとか、あるいは低成長下における各産業のあり方、こういった指針というものを、指示をするのではなくて、国としてはこういう方向で進みたいんだ、こういうものを明らかにしていく必要があるのではないかと、こういうふうに思うわけですが、どうでしょうか。
  417. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御指摘のお考えはよく理解できます。そこで、それにどういうふうに政府として対応していくかということになりますが、これはどこまでも、ただいま通産大臣から申し上げましたように、民間がその発意、民間が主導的な役割りを演ずる、まあ民主官従と私は言っているんですが、まず民間の方で世の中の変化に対応してどういう体制をとるべきかということを考える。それを政府が見ておりまして、そして妥当でないということがありますればこれに対してアドバイスをする、こういう立場をとるべきかと、こういうふうに考えておるんです。そういうことで、通産省におきましても、主要の業界につきましてはどういう変化が求めらるべきかということを検討しておる。しかし、経団連に主たる検討をまずお願いする。こういうことでそういう作業が進行しておる段階である、かように御理解願います。
  418. 桑名義治

    ○桑名義治君 現在の経済情勢の中から考えますと、これは早急にやっぱり指針というものは明快にしておく必要があるんじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、通産省では、ことしから産業構造審議会に産業組織部会、あるいは産業政策局の中には産業組織調査室、こういう部会や調査室が設けられたねらいはどこにあるわけですか。
  419. 和田敏信

    政府委員和田敏信君) 従来、産業改造問題に関しましては、高度成長時代におきましてもかなり当初におきましても研究が進んでおりました。ただいま当方大臣より御答弁申し上げましたごとく、経済の成長が安定化の方に向かってまいります。まだ日本国経済におきましては、競争要因は相当荷いものが根底にはあろうかと思いますが、成長がだんだん安定化してまいりますと、特定の業界あるいは産業界におきまして、競争あるいは市場パーフォマンス等に関しまして、いささかたりとも競争において競争的でないような形になるということ、あるいは技術開発に関してたるみが出るというようなことがあっては国民経済上ゆゆしい問題でございますので、各業界におきまして、それぞれその業界を構成する企業間におきまして競争が十分に行われるよう、その産業界がどのような構成になっておれば最も望ましいかというような点を今後検討を進めてまいるという趣旨におきまして、このような研究を始めたわけでございます。
  420. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、産業構造政策と今回の産業組織政策との関連はどういうふうになって、両者の相違はどうですか。
  421. 和田敏信

    政府委員和田敏信君) 産業構造問題は、一次、二次、三次の間の産業のバランスがどうなることが望ましいか、あるいは二次産業におきましてどういう産業によってこれが構成されることが国民経済上一番望ましいかというような点を見るのが産業構造問題でございまして、たとえばわが国が将来省資源あるいは知識集約型に持っていくためには、わが国の産業は今後重点をたとえば電子計算機等に置くべきである、わが国の輸出は今後機械工業等がそのウエートを高めるべきであるというような点を検討いたしますものが産業構造政策でございます。  産業組織政策でございますが、これはたとえば二次産業の中のある業種につきまして、その業種を構成しております企業がどういう数があるか、それらの企業の間で競争が適正に行われておるかどうかというような諸点に関しましてチェックをいたしますのが産業組織政策でございます。
  422. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、組織部会ではいつごろまでに結論を出すことを期待しているわけですか。それと作業の段取り、方法、見通しを伺いたいと思います。
  423. 和田敏信

    政府委員和田敏信君) ただいま産業政策局の内部において検討をいたしておりますが、ことしの七月ぐらいまでに一応のフレームワークをつくりまして、フレームワークができ上がった段階におきまして、産業構造審議会の中に産業組織部会というものをつくりまして、七月以降その検討に入り、中間答申といいますか、中間報告という形にせよ、一年ぐらいの目標をもちまして結論を出したい、かように考えております。
  424. 桑名義治

    ○桑名義治君 次に産業毒編成について、先ほどから御答弁の中に中小企業に対する配慮というお話がございましたが、どういうふうにその配慮をお考えになっていらっしゃいますか。
  425. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 少し具体的に申し上げますと、商社の合併などが起こりましたときに、大抵の商社はその傘下の取引中小企業の数が数万に達しておる、しかも全国にまたがっておる、こういう非常に膨大な数でございますので、合併後も新しい企業体との取引関係が継続できるということを積極的に配慮してまいりませんと大きな失業問題等が起こってまいりますので、そういう取引関係の継続ということを主眼点に考えていきたいと思います。
  426. 桑名義治

    ○桑名義治君 そういうことになりますと、私は少なくとも産業組織部会や産業組織調査室、こういったところに中小企業の専門家を中に入れるべきではないかと、こういうふうに思うわけですが、どうでしょうか。
  427. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) そういうことももちろん必要かとも思いますが、通産省には中小企業庁というところがございまして、そこに専門家が数行名おるわけでございますので、そういうところとも十分連絡をとらせながら検討を進めていきたい。でありますから、両々相まってやっていくということが必要かと思います。
  428. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましても、民間のいわゆる中小企業の専門家をこの部会の中に入れてこそ、初めて中小企業に対しても前向きの姿勢であるということが言えるのではないかと思うんです。  そこで、また先ほどからお話にも出ておりましたけれども、再編成が進めば余剰労働力というものを処理することが大きないわゆる社会的な問題になってくることは、これは当然なことだと思うのです。そういった意味では、伊藤忠と安宅産業の場合にもこれは起こってきたわけです。そこで、余剰労働力を吸収するだけでなく、厚相対策の裏づけを用意する必要がある、こういうふうに思うわけでございますが、この点について労働大臣はどのようにお考えですか。
  429. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 御承知のように産業政策の転換あるいは産業の再編成、こういう過程において一番憂慮しなきゃならぬのは、おっしゃるとおり労働問題でございます。私の方としますというと、通産省あるいは経済企画庁がいろいろ計画を立てられるのに、私の方も人間関係のことを重視してもらうようにお願いをし、そして常時連絡などをしておりますが、そういう問題が起こることをまず防ぐことが一つ。起こった場合には、やっぱり職業転換関係の計画、さらにただいま持っておる雇用保険制度、そういうものによって充実させて、ありとあらゆる施策を講じていこうと。最近一つ考えておりますことは、雇用安定基金のようなものなどもつくりまして、ただ過剰労働力として給付金を出しているだけじゃなくて、その間に訓練などをする前向きの姿勢もいいのじゃなかろうかということなどについても御相談を申し上げているわけであります。
  430. 桑名義治

    ○桑名義治君 私は保険で救済するというようなかっこうよりも、再雇用という、雇用対策を促進する方が最もベターな方向であろうと思います。したがって、その雇用対策をどうするかという具体的な方針をこれは考える必要があると思うんですが、その点どうですか。
  431. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 近代工業国家は完全雇用を目指すのが目標でございます。そういう意味からしますと、私たちは先生のおっしゃるような方向で、ありとあらゆる施策を講じ、関係官庁と連絡をとりながら守ってやりたい、こう思っております。
  432. 桑名義治

    ○桑名義治君 現在には、それがどういうふうな方向なのかという具体的な案はないわけですね。
  433. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 現在のところは、近いうちに本予算も通るかもしれませんけれども、こうしたときに、まず失業者を出さないことにいままで苦労してまいりました。ですから、雇用安定給付金などを活用しておったことが一つ。そして、こういう間にもどれだけ有効求人倍率がふえるかということで苦労しておりましたが、幸いにいたしまして〇・六八というふうに上がってきていること、あるいは残業時間が延びていること、こういうふうなことで全般的な問題でやっぱりまず失業者を出さないこと、出した場合には、これを就職あっせんから訓練などをしてその次の場所に送る、こういう具体的な対策を懸命にやっているところであります。
  434. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましても、こういうふうに過渡期でもありますし、それからいわゆる企業の再編成というものがこういうふうに急テンポで始まってまいりますと、いろいろな方面に問題が起こってくるわけでございます。そういういろいろな問題を考慮しながらこの問題は見詰めていかなければ大変なことになる、こういうふうに思うわけです。  そこで、こうなってきますと一番また問題になってくるのが、いわゆる独禁法との兼ね合いがここで初めて生じてくるわけです。企業間の合併提携など再編成ムードが高まってきますと、いわゆる安易な競争休戦、カルテル的体質に流れるというこういうおそれが十分にある。また企業間の再編成が、先ほど申し上げましたような銀行主導型の寡占的集中に流れる心配があるのではないか、こういうふうに警戒をする必要がある、こういうふうに思うわけでございますが、この点についてはどのようにお考えですか。
  435. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) お答え申し上げます。  御承知のように、不況あるいは高度成長から低成長に変わるというようなときには、産業界あるいは企業の間にいろいろなそれに対する対応の姿勢が起こってまいるわけでございます。それが御指摘の再編成、合併、業務提携といった再編成の動きになって現にあらわれておるわけでございます。こういう動きが純粋に企業の体質改善につながるものでありますれば、独禁法上も何ら問題はないのでございますが、それが競争制限的な動きになり、あるいは市場支配につながるというようなことになっては問題なのでございまして、不況下あるいは低成長下におきましても、一国経済が活力ある動きをし発展いたしますためには、やはり公正にして自由な競争原理が働く経済でなければならないと存じますので、こういった再編成の動きが競争制限や市場支配あるいは寡占というような傾向につながることにつきましては、公正取引委員会としては厳重に注目してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  436. 桑名義治

    ○桑名義治君 いわゆる市場の寡占化の問題については、後ほど独禁法の改正の原案についていろいろとお尋ねをしたい、そのときにまた論を進めていきたいと思います。  今後、減速経済への移行、こういうことで、今回の状態のように再編成の過程で上位集中による寡占化、この進展が予想されると思うわけですが、政府としては、通産省あるいは企画庁としてはこの問題に対処してどういうふうな御見解をお持ちなのですか。
  437. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これから産業の構造改革が行われていくという過程におきまして、私は必ずしも寡占状態があらゆる面から問題になってくるというふうには思いませんが、ケースによりましては寡占につながっていくという問題もあり得ると思うのです。ですから政府といたしましては、過当な寡占状態がこの構造改革から出てこないようにということにつきましては、常々その監視をしていかなければならぬだろうと、こういうふうに考えます。これは多くの企業は通産省の行政指導と、こういう問題がありますから、その行政指導を通じて通産省がその辺を注意してまいらなきゃならぬだろう。それから、寡占状態が強化されるというようなもので、これが行き過ぎだというようなことになりますると、これはまたいろいろ問題もありますので、その辺につきましてもこれは注意を要するし、また公正取引委員会なんかの活動というものも期待される、かように考えます。
  438. 桑名義治

    ○桑名義治君 通産大臣はありますか。
  439. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほど来お答えをいたしましたように、企業の合同提携、再編の場合、一番気をつけなければならぬのは、公正にして自由な競争原理というものが失われるということ、これはあくまで避けなければならぬと思います。そういう意味におきまして、当然そのおそれのある場合には行政指導もいたしますし、また公正取引委員会等の御意見等も聞かなければならぬ。競争原理というものがその業界内部で失われないように気をつけていく必要があろうかと思います。
  440. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、競争原理も当然そうなんですが、価格の下方硬直性、いわゆる下の方の値段が下がらない、そういうような形が消費者利益を害するおそれも十分出てくると思うんです。そういうことに対して政府はどのようにお考えですか。
  441. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これは競争原理というものがその業界で確保されるということであれば、そういうことは起こらないと思います。でありますから、いま申し上げましたその原則はあくまで堅持していかなければならぬと考えております。
  442. 桑名義治

    ○桑名義治君 もう時間が短くなりましたので、次に独禁法の問題について質疑を続行したいと思いますが、政府は四月二十七日に独占禁止法改正案を閣議で決定をしております。昨年の通常国会で、衆議院において与野党全会一致という形で一応通過をしたわけでございますが、今回の原案を見てみますと、いわゆる五党改正案の大骨を抜いてしまった、こういうふうに考えるわけでございますが、三木総理、実際に本気でこの独占禁止法の強化を改正を実現しよう、こういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。もしそうならば、五党改正案に沿った改正案を私は提出すべきだと、こういうふうに考えるわけですが、どうでしょうか。
  443. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 先般の衆議院では五党修正の形で通過をしたわけですが、参議院では審議に全然至らずして廃案になった。ここで自民党の中においてもこの問題を深く掘り下げて、何十回やったですか、非常なやっぱり検討が行われたわけですね。そして、いわゆる企業分割と言われておる問題について議論が集中をした。この問題はいろいろ商法との関係もあるし、いろいろ問題点をはらんでおることは事実ですね。そして、中には公取のいろんな体制といいますかね、公取の体制自体もいろいろ意見を言われる人もあって、なかなかこれが結論を得ることにはもう少し時間がかかるという考えでありましたから、この問題はいますぐに緊急は要しないでしょう、この企業分割の問題はですね。この問題は前の高橋公取委員長もいま適用する企業はありませんと、こういうことでございましたから、いますぐにこれは緊急な問題を提起しておらないから、これは非常にいろんな根本の問題に触れておるものであるから、もう少し時間をかけてこの問題は論議して、そしてやはりもう少し検討を加えようと。  しかし、一方においては課徴金の新設であるとか、カルテルの強化であるとか、あるいはまた商社、銀行の株式保有の制限であるとか、こういうものは緊急を要するわけですからね。一方の方はいますぐにこれは適用する企業もないという、緊急は要さない、予防的な措置という意味があるわけでしょう。こちらの方は現にこれは緊急を要するので、いますぐに適用される企業もない問題については、議論がある以上はこれはやはりもっと検討した方がいい。これであきらめたわけではないんです。検討している。そして、いま緊急性を持っておる独禁政策の強化というものを取り上げることが実際的である。これならもう議論はないのですから、すぐ皆が自民党の中においても意見が一致したわけでございますから、これを全部大骨を抜いてしまったと、私は、桑名君、思ってはいないんですよ。いますぐに必要ない。緊急な問題から今度は片づけようということでああいう形にまとめて、そしてこの国会に近く提案をする考えでございます。  しかし、いまのいわゆる企業分割の問題は、これはやはり研究を要する。これは十分今後検討をして、この問題に対してなるべく——前の法案にもいろいろ問題点はあると思いますが、もう少しすっきりした形でこの問題は結論を出したいというのが私の考えておる点でございます。
  444. 桑名義治

    ○桑名義治君 そういうふうに総理は言われるだろうと私も思っておりましたが、政府の旧改正案、これは総理府総務長官の私的諮問機関として設置された独禁法改正懇談会ですか、それから自民党の独禁法特別調査会、これで審議されたのがもとになっているわけですね。というのは、もう自民党のほとんどの了解は得ていたんだというふうに考えざるを得ない。しかも、その案が五党の全会一致で衆議院を通過してきたわけですから。したがって、われわれとしてはそのままの状態で提出されることが最も好ましい、こういうふうに思わざるを得ないわけです。  それから、総理がいま緊急必要性がないとおっしゃいましたけれども、カルテル等の影響排除というこの項目が削除された。それから企業分割が削除されている。こうなってまいりますと、先ほどから議論がありますように、企業合併、企業合併でいまから先はどんどんどん進展していきます。企業合併で寡占化が進んでいくと、そこにカルテル行為というものが当然起こってくるおそれも十二分に出てくるわけです。そういうことを考えてくると、私は決していわゆる時期がきてないというこの議論は当たらない、こういうふうに思うわけですが、この点について公取委員長、どうですか。
  445. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) 公正取引委員会といたしましては、ただいま述べられましたいわゆる五党修正案、これが七十五国会におきまして全会一致で衆議院において可決されたという事実及びその案、これは尊重すべきものというふうに考えておるのでありまして、と同時に、改正案といたしましてはその案が基本となってしかるべきものというふうに考えておるのでございます。  ただ、先ほど総理からるる御説明がありましたように、いろんな調整を経まして新しい政府案が近く国会に提出されるということになっておるわけでございますが、実際に独禁法運用の事務を預かっております公正取引委員会といたしましては、この案によりまするといわゆる独占状態の排除に関する規定が落ちておるということは、率直に申して残念であると申さざるを得ないのでありますけれども、といって公正取引委員会、日々法律の運用に従事しておりますわれわれとしては、一つが落ちたから全部だめになるというのは忍びない。新しい法案についても十分重要な項目が盛り込まれておりまして、意味のあるものでございます。新しい案が提案されましたならば、御審議の上成立させていただきたい、かように希望をいたしておる次第でございます。
  446. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうすると、公取委員長は現行法よりも前進したと、こういうふうに理解されておるわけですか。
  447. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) 新しい法案が、いわゆる五党修正案に比べると後退したことは否めないと思います。しかし、現行法に比べますと前進しております。したがってこの成立を望む、こういう考え方でございます。
  448. 桑名義治

    ○桑名義治君 高橋前公取委員長は五党改正案の成立を強く望んでいたんです。私はこの委員会のこの場所で聞いたんですから。それをあなたは現行法よりも前進したからいいなんて言っておりますけれども、しかし、企業分割の問題や、いわゆるカルテル等の影響排除の問題が消されたのじゃ、これはとてもじゃないけれど後退です。しかも、新証拠提出権の緩和、訴訟におけるですよ、こういう問題が入ってきたらもう完全な後退じゃないですか、そういうふうに思いませんか。
  449. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) 私も独占禁止法の改正強化が必要であるということについては、高橋前委員長と少しも変わっておりません。そして、できることなら前の五党修正案が成立いたしますこと、これを非常に念願をいたすわけでございます。その点少しも違っていないというふうに考えておる次第でございます。
  450. 桑名義治

    ○桑名義治君 それにしては余り抵抗した感じが報道されませんでしたね。どういうふうに抵抗されましたか。
  451. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) 先ほど総理からもお話がございましたように、前の案が廃案になりまして、その後いわゆる山中調査会におきまして相当深刻な意見調整が行われたと聞いております。その間におきましても、それからその山中案が政府に渡りまして法案の作成が行われつつある時期におきましても、あらゆる機会をとらえて公正取引委員会委員会の希望が反映するように努力をいたしたのでございます。無力であったと言われればやむを得ませんが、決して座視していたわけではない。この点は御了承願いたいと思います。
  452. 桑名義治

    ○桑名義治君 今回の改正案は、私はひとえに自民党の党内事情にあったと、こう言っても決して過言ではないと思うんです。改正案は提出したいという立場と、公取違憲論者、これを盾に改正を阻止しようとする立場、この妥協案が今回の改正案と、こういうふうに私は認識しているわけです。総理には本気で独禁法を、こういった意味から意思があるのだろうかどうだろうかと私は疑問を抱いているわけですが、どうでしょうか。
  453. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 反対論者から言ったら、こういう法案を出さぬ方が一番目的にかなうわけです。しかし私は、やはり自由経済に競争の原理が取り入れられなければ自由経済というものは非常な弊害を伴う。だから、一歩一歩独禁政策というものは前進をしていくことが現実的であるということで、まあ五党の修正そのままでなかったことは残念でございますが、これはもう少し検討しないと、この最初の独占状態というもののこの法案を生かすことによって、もう少し——この独占禁止法に対していろいろな意見が出てきまして、その意見というものは、好ましくないような意見も出てまいったことは事実でございます。そういうことで、これはもう少し時間をかけて、拙速でなしに、いますぐにこれを適用する企業はないわけですから、したがって時間をかけて、まず現実に必要性のあるような問題を取り上げる方が、現実政治としてはその方がベターであるという選択をいたしたわけでございます。
  454. 桑名義治

    ○桑名義治君 私は、いま即座に出てきたから法改正しようたって間に合わない、どろぼうを見てなわをなうみたいなものですから。先ほどから自由競争、自由競争、それからそれぞれの業界の指導性に任せる、自主性に任せると、こう言われております。自由競争は確かに必要です。政府の干渉はないほどいいと思います。ただし、そのためにもやはり独占禁止法という一つの経済の憲法というものをがっちりしておかなければいけない。こういった立場で私はどうしても強化する必要がある、こういうふうに考えているわけですが、しかし公取委員長、企業分割の規定は必要と考えていますか、必要でないと考えていますか、どうですか。
  455. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) そういう規定を設けることは必要であると考えています。
  456. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、もう時間がないので、中身をずっとやりたかったわけですが、結論めいたことをお聞きをしておきたいと思います。  審判手続、訴訟手続の改正は公取の違憲論を背景に提示されている、こういうふうに思うわけですが、この問題は非常に重大なんです。いわゆる公取の独自性を保つか、永続するかという重大な問題にこれはかかる問題なんです。したがって、これは特に聞いておきたいわけですが、三木総理は現在の公取の職権行使の独立性は守れますか、どうですか。この点だけ確認しておきたいと思います。
  457. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 公取の性格からして、その独立性を侵してはいけないというのが私の基本的考えでございます。
  458. 桑名義治

    ○桑名義治君 じゃ、私は守るというふうに解釈をしておきます。守るというのであるならば、自民党の党内で公取違憲論、これも引き続いて検討する、その中身を検討するという項目が山中メモの中には載っておるわけですが、こういった動きを封ずることがあなたの仕事ではないかと、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  459. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 時間をかけて、もう少し時間があれば説得できると私は思っております。
  460. 桑名義治

    ○桑名義治君 封ずるかどうかということをお聞きしておるわけですが。
  461. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 公取の独立性を侵すような議論に対しては、私はこれを十分に説得していきたいという所存でございます。
  462. 桑名義治

    ○桑名義治君 公取委員長は、あくまでも現在の公取の職権行使の独立性を守る決意がありますか。
  463. 澤田悌

    政府委員(澤田悌君) 独禁法は、御承知のように経済運営の基本的なルールを定めるものであります。その運用に当たります公正取引委員会が、その職権行使の独立性がなければいけないことはもう当然でございます。私は独禁法の二十八条の条項に基づきまして職権行使の独立性を遂行してまいりたいと思っております。
  464. 桑名義治

    ○桑名義治君 もう一問だけ、済みません。  改正案はいつ国会に提出されますか。
  465. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま何日とは申せませんが、できるだけ早く提出をしたいと思っております。
  466. 桑名義治

    ○桑名義治君 それじゃ全然わかりませんが、いつごろですか。
  467. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 以上をもちまして桑名義治君の質疑は終了いたしました。
  468. 桑名義治

    ○桑名義治君 ちょっと委員長、まだ赤の一が出ていませんからね。いま、いつごろですかともう一ぺん聞きましたから、これでもうやめます。
  469. 八木一郎

    委員長八木一郎君) もう一度。
  470. 桑名義治

    ○桑名義治君 いつごろということを切ってください。それじゃ全然わかりませんから、早い時期に早い時期にじゃ。
  471. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) できるだけ早いというのは、そんなに余り遠いことを言うわけじゃないですから、御了承を願います。
  472. 桑名義治

    ○桑名義治君 時間がありませんのでやめます。(拍手)     —————————————   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕
  473. 山内一郎

    理事(山内一郎君) 橋本敦君。
  474. 橋本敦

    橋本敦君 私は、ロッキード疑獄事件について質問をいたしますが、この問題については、ロッキードのトライスター売り込みに関して、すでにわが党の上田委員指摘をしましたように、この問題はわが国の航空業界の再編あるいはエアバス導入時期をめぐる運輸省の指導、こういったものと関連をして、全日空のみならず、わが国航空業界全体にかかわる重大な事件となっております。  そこで、まず第一に明らかにして、質問をしたい問題は、例のコーチャン証言であります。御存じのとおり、コーチャンは、昭和四十三年当時は全日空よりは日本航空に働きかけていた、はっきりこう言っています。さらに彼は、私が六十八年、六十九年の両年に日本に行ったときは、当然時間かせぎはわが社の売り込みのキャンペーンの一部である、そのことを児玉譽士夫に指摘をして、そしてどういう方法が一番いいか助言を求めたと、これまたはっきり証言をしております。そしてコーチャンは、その結果、児玉譽士夫あるいは小佐野賢治、この両氏の努力の結果この問題が成功したとも証言をしています。言うまでもありませんが、日本航空は、これは政府が資本金の約半分、これを出資しているいわゆる国策会社。したがって、このような日本航空に小佐野、児玉を初め、あるいは政治家が絡んで運輸行政上の問題に介入されたことがあったという事実、これがコーチャン証言によって裏づけられているわけですが、まさにゆゆしい問題である、こう言わねばなりません。  そこで、まず端的に運輸大協に伺いますが、このような重大な問題がすでに報ぜられて三カ月、運輸省はこの点について調査をしましたか、どうですか。
  475. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) そのころの状況をいろいろと調べておりますけれども橋本委員が言われましたような関係はございません。われわれの調べている限りではございません。
  476. 橋本敦

    橋本敦君 運輸大臣はそのように答弁されるけれども、これを本当に調べるには、そう簡単にわかる問題ではありません。これを調べるためには多くの関係者、また多くの資料を集めねばならぬ。私は、いまの運輸大臣の答弁は、いまそのような事実はないと、否定されたけれども、とうてい納得するわけにいかない。もっともっと厳密な調査を私は要求をしたい。  そこで、次に伺いますけれども日本航空はエアバスを四十七年度に導入するという方針のもとで、昭和四十四年の一月十六日の常務会では、その年の三月末までに機種選定、これを決定する、こういう方針を常務会で決めた。このことは二月六日に松尾社長が記者会見をして公式に発表している。ところが、この機種選定作業が一体どうなったのか、その後の経過について航空局長から説明を伺いたい。
  477. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) 詳細なことは、航空局長がいまこっちに来ておる途中でございますから、もうすぐ参ります。
  478. 橋本敦

    橋本敦君 委員長、待ちます。
  479. 山内一郎

    理事(山内一郎君) すぐ来ますか、航空局長。急いでください。
  480. 中村大造

    政府委員中村大造君) お答え申し上げます。  日本航空は四十四年ころから、国内線に大型機を導入する、こういう計画を前提といたしまして社内的にいろいろ検討を開始しておる、こういうことは承知いたしております。
  481. 橋本敦

    橋本敦君 委員長、私の質問に、全然答弁になっていないです。
  482. 山内一郎

    理事(山内一郎君) 橋本委員の質問をもう一回大臣から聞いて答えてください——橋本さん、座ったままもう一回やってください。
  483. 橋本敦

    橋本敦君 航空局長委員長の指示でもう一遍質問いたしますから……。  日本航空が当初四十七年度にエアバス導入という方針で、四十四年の一月十六日の常務会でその年の三月末までに機秘を決めると決定をして、松尾社長が記者会見までやられて公表されているわけです。ところが、三月末までに決まらなかったことははっきりしているので、この機種選定作業はその後どうなったでしょうかという質問ですから。
  484. 中村大造

    政府委員中村大造君) お答え申し上げます。  その後、日本航空といたしましては、四十四年の中ごろ以降、機種選定作業というものはそのままいわば中断したようなかっこうになっておったというふうに承知いたしております。そして、四十五年になって導入を少し延期する、こういうふうな松尾社長の発言が出ておるように承知いたしております。
  485. 橋本敦

    橋本敦君 いま航空局長が答弁で明らかにされたように、機種選定作業が七月に至って中断されております。この中断された事実は、これは日本航空部内の資料でも明らかですが、たとえば「日本航空二十年史」には「一九六九年七月にいたって機種決定を白紙にもどし、採否決定は大幅延期とした。」と、こういうように公刊をしております。さらにこれだけではなくて、同じく日本航空技術部が発行しております「技術」一九六九年四月号、この記事を見ましても、一月の常務会の決定は「その後諸般の理由により四月二十四日の常務会に於て七月三十一日まで期限を延長し」た。そして今度は、七月三十一日に至ってこれを白紙に戻して、各メーカーにも機種選定作業はできない旨を通知した。社内報でもはっきりこう書いてあるわけです。つまり、七月段階に事実上中断というよりむしろ白紙に戻したと、日本航空の社内の資料は明らかにしている。なぜ四十四年七月段階でこのような白紙状況になってしまったのか、その理由について航空局長はどう聞いておりますか。
  486. 中村大造

    政府委員中村大造君) 機種選定は、これは会社が独自に会社の方針に従ってやるわけでございます。したがって、どういうわけでその機種選定作業を中断したかどうかということは、われわれといたしましては承知いたしておりません。
  487. 橋本敦

    橋本敦君 先ほど運輸大臣は私の質問に対して、調査をしたけれども疑惑がない、こう答弁された。いまの問題でも、これは日本航空が決めることだから航空局長自身が調査も何もしていない、知らないと言っています。こういう問題を調査しないで、どうして調査したと言えますか。  なぜ私がこれを言うかというと、四十四年七月に機種選定を白紙に戻して大幅に中断された。コーチャン自身は上院の証言で、機種決定を引き延ばすのが当時のロッキードの売り込み作戦の第一目的だったと言っているのですよ。まさにコーチャン証言と一致するではありませんか。こうなれば、中止をした理由は何か、これを調べないでおいて、運輸大臣が先ほど言ったように、調査をしたけれども一切疑惑がない、とうてい通りませんよ、その答弁は。この問題について改めて航空局長、いま私が指摘をしたような重大な問題とのかかわりで調査をしますか、どうですか。
  488. 中村大造

    政府委員中村大造君) 四十四年の中ごろに機種選定作業を中断いたしまして、いわゆる白紙に戻した、こういう点につきましては、これはわれわれ現在の時点において、会社からの報告によれば、それは当時その機種選定というものをそんなに急ぐ必要はない、こういう判断を会社としてはしたと、こういうふうに聞いております。
  489. 橋本敦

    橋本敦君 なぜそういう判断をしたかを調査しなさいと私は言っているのです。
  490. 中村大造

    政府委員中村大造君) お答え申し上げます。  それはわれわれの調査の限界といたしましては、当時の会社として早く機種選定をして導入を急ぐということについて慎重な意見が出たと、こういうふうに承知しておるわけでございます。
  491. 橋本敦

    橋本敦君 調査の限界などというのは納得できませんよ。運輸行政をあずかる立場で疑惑を解明しなさい。そういう姿勢がないということが問題ですよ。  次の質問に移りますが、ところで、日本航空がその機種決定を白紙にした四十四年七月に、一方全日空の方で、大庭社長が三井物産を通じてDC10、これのオプションをしたという事実が報道されている。これのオプションをしたその製造番号、これは航空局長としては知っておられますか。
  492. 中村大造

    政府委員中村大造君) 報告を受けておりません。
  493. 橋本敦

    橋本敦君 わが党のロッキードの調査団が、三井物産の当時担当重役であった石黒規一氏に会っております。そのときに石黒氏は次のように述べている。四十四年七月、大庭さんから製造番号を押さえてくれという申し出があった。その後、三井物産本社において、当時社長の若杉氏、そしてダグラス社立ち会いのもとでDC10の確定発注をした。はっきり三井物産側は私どもにこのように述べているわけです。同時に石黒さんは、その後、大庭氏から申し出のあった四機を含めて、三井物産独自の判断で二機を追加をして計六機の発注をした、こう言っているわけです。この計六機の発注番号、これは航空局長本当に知りませんか。
  494. 中村大造

    政府委員中村大造君) 存じません。
  495. 橋本敦

    橋本敦君 法務省安原刑事局長に伺いますが、三井物産はこの発注にかかわる内示発注書、レター・オブ・インテンツ、これをダグラス社との間に交わしていると、こう言うのですが、このこと、この書類を地検に任意提出をしたと、こう言っております。領置しているかどうか、はっきりしていただきたい。
  496. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 橋本委員十分に御理解いただけると思いまするが、検察庁がいま捜査中の段階におきまして、御指摘のような、こうこうこういう資料があるかどうかということは、あるにしろ、ないにしろ、申し上げることは秘密に属すると思いますので御理解いただきたいと思います。
  497. 橋本敦

    橋本敦君 ある、なしではない。三井側が出したと言っているから事実を確かめているのです。もう一度答えて下さい。だから、三井が言っていることが本当かどうか、はっきりしたらいいんです。
  498. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 三井がそう言っているかどうかは存じませんが、とにかく先ほど申しましたように、あるか、ないかを申し上げる段階ではございません。
  499. 橋本敦

    橋本敦君 納得できませんが、要するにわれわれが調べたところ、この製造番号は29番、33番、47番、48番、92番、101番、この製造番号で押さえられている。問題は、いま言った製造番号29、33、これが実は四十四年七月以前に日本航空が日本航空用としてオプションをしていた航空機であったと、こういう事実があるんです。これはわが党の調査団の三浦議員に対して大庭氏がはっきりとこのことを明らかにしている。大庭氏はこう言っていますよ。日航はDC10の製造番号29、33、それに、ほか一機を相当早くからオプションをしておった。そしてさらに重要なことに、松尾氏は大庭氏に対して次のように語っておる。実は児玉にやられた、やられてDC10をあきらめた。そして松尾氏は、わが社であきらめたから、あなたの方でやればすぐできるが、どうか、と、こう言ってきたので、大庭氏は自分の方で29と33、これを押さえたと、こういうように大庭氏ははっきりとわれわれに語っているのです。これは非常に重要な事実ですよ。この事実について、これがまさに児玉の圧力で日本航空のオプションがつぶされ、そしてそれが全日空へいき、それがさらにつぶされていく、こういう重要な経過について、これを調査しないという法はない。運輸大臣いかがですか、調査しますか。
  500. 木村睦男

    国務大臣(木村睦男君) いまの大庭社長の発言は、多分衆議院の証人のときに大庭社長が申し上げた事柄の内容だと思いますが、全日空は、御承知のように純粋の民間機関であるわけでございます。したがって、その民間機関である全日空が、自分のところで使います機材をオプションといいますか、まあ予約だと思いますけれども、メーカーに予約するということは、ただ単に社内の問題でございまして、あたかもたとえば私鉄が車両をメーカーに注文予約する、バス会社がバス車両を予約するということと同一であるわけでございます。しかし、後になってそのことが非常に問題になっておるので、運輸省としては当時なぜそれを調べなかったと、こういう御疑問だと思いますが、いま申し上げましたような運輸省の監督権限の範囲でやっておることでございますので、ただ単に企業の内部の問題としてその企業が使う機材をメーカーに予約したということ、これを一つ一つ調べなきゃならないという問題ではないわけでございまして、これを買う場合に、たとえば輸入許可が要るとか、あるいはそれを入れて路線に使う場合に事業計画の変更が必要であるとかというときに、初めて運輸行政としてそこでタッチをいたすわけでございますので、当時からすでにそういういま御指摘のような背後にいろんな問題があって、怪しいぞというふうなことがあればこれは問題は別でございます。当時としてはそういうことは毛頭考えてもいなかった。したがって調べていない。  現在は、先ほど局長が申し上げましたように、社内でもいろいろ意見が違って結局延ばしたということがわかっておるわけでございまして、それ以上のことは聞きましても、社内としても知りようがないというふうなのが実情でございます。したがって、それ以上のことは検察なり何なりでお調べいただくよりほかに、運輸省としてはそれ以上のことを調べるということは無理ではないかと思うわけでございます。
  501. 橋本敦

    橋本敦君 総理、いまの答弁、いかがですか。総理もこの疑獄の真相は徹底的に解明されねばならぬと、繰り返し繰り返し述べられた。一方、検察庁が捜査を進めるのはいいですよ。だけれど、政府自身、運輸省自身が、私が指摘をしたような重要な疑惑について、また私が指摘をしたことが事実かどうかについてなぜ積極的に調べようとしないのですか。こういう姿勢で総理のおっしゃる真相解明、政府の姿勢として貫けますか。私は疑問だと思いますが総理のお考えを明確にしていただきたい。
  502. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 運輸大臣は何も答弁を特に避けているわけでは私はない。行政権の範囲というものが、何か弧制的に捜査できるような権限がありませんから、向こうから報告を受けるというようなことがその範囲ですよ。いま御指摘のような問題は確かにいろんな疑問があるわけですから、まさしく捜査当局においてもそういう問題に対しては解明をされるものだと私は思います。いま内容を聞いたわけではありませんよ。捜査当局がどういうことをやっておるか、聞いたことはありませんけれども、その点はやはり捜査当局を通じて解明をされるべき問題であると私は思います。
  503. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 関連。
  504. 山内一郎

    理事(山内一郎君) 関連質問を許します。
  505. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 捜査当局、安原刑事局長に質問いたします。  いま橋本委員が出した問題、非常に重大な問題であります。それはこの全日空がオプションしたかどうかは、衆議院の予算委員会でのあの証人喚問でいろいろ疑惑の焦点になった問題でありましたけれども、いまの質問で明らかになりましたように、全日空がオプションしただけでなくて、その前に日航がダグラスDC10をオプションしていたということを、全日空の前大庭社長がわが党の調査団に明確に述べていたということであります。そうしますと、問題は、全日空に対するコーチャンあるいは児玉、小佐野の働きかけだけでなくて、政府が半分出資している国策会社である日航にまず最初に問題が生まれていたということであります。橋本委員が述べましたように、コーチャン証言は、六八年以来当初日航に工作を集中していた、そしてその延期に成功したということをはっきり述べている。そうすると、日航は当初昭和四十四年に機種選定を決めていながら、これをまた白紙還元した。白紙還元した内容は、DC10の二機あるいは三機をオプションしていたことを白紙に戻したという事実であります。こうなりますと、問題は、運輸省も非常に大きな責任を持ち、行政指導していた日航にまず問題が起きて、ここにロッキードからの黒い金が流れたのではないかという事実が浮かび上がってくるのであります。松尾前社長は、児玉にやられたということを述べ、そうして自分がオプションしていたDC10のそれを白紙に戻して、それを全日空の大庭社長にやらしたという事件の大きな背景がここに浮かび上がっております。  私は安原刑事局長に、捜査中なので答弁しない、答弁しないと先ほどから言っておりますけれども、いま首相が、この問題については報告は受けていないけれども、恐らく捜査当局は調べているであろうということを述べたことにかんがみて、この当初のコーチャン証言によっても明らかなような日航に絡まる大きな疑惑、この日航と、さらに全日空につながるこの事件の経過全体について、日航の問題についても捜査の対象としているかどうか、このことについてはっきりした答弁を国会の予算委員会に対して行うことを強く要求いたします。
  506. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 検察庁は、コーチャン証言その他公開の席上で行われました答弁内容等あらゆる事柄、要するにロッキード社の日本における企業活動の全貌にわたりまして重大な関心を持っているはずでございます。私は、具体的にいま上田委員指摘のようなことについて捜査をしているかどうかということは、実際問題として報告は受けておりませんけれども、いま申しましたように、ロッキード社の日本における企業活動の全貌にわたってその解明に努めているものと思います。
  507. 山内一郎

    理事(山内一郎君) 関連ですから、簡単に願います。
  508. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 報告を受けていないと言われましたけれども、報告を受けていないけれども、日航の問題についても恐らく捜査しているであろうということを言えるわけですね。
  509. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 先ほど申しましたように、要するに、企業活動の全貌にわたって重大な関心を持って解明に努めていると思います。
  510. 橋本敦

    橋本敦君 私が指摘をした事実については、総理も私が指摘をした事実がそうであるとすれば重大な疑惑があり、捜査当局の捜査を待つと言われたところですが、検察庁においては徹底的な捜査を遂げてもらいたい。  ところで、このロッキード疑獄事件の原点と言えば、私は昭和三十三年、三十四年にまたがる第一次FX戦争、まさにここに原型がある、こう考えています。言うならば、このグラマン、ロッキードの闘いは、一たん次期戦闘機としてグラマンが内定されながら、これが逆転をされてロッキードに決まっていくという、こういう経過をたどっているし、この間衆議院決算委員会においてグラマン攻撃が激しく展開されたことは世上周知のとおりです。この第一次FX戦争をめぐるロッキードの売り込みに関して、政治家にまつわる疑惑があるとするならばこれも徹底的に解明しなければならぬ。なるほど十八年前ですから、刑事事件としては時効だと安原刑事局長はおっしゃるかもしれませんが、三木総理はかねてから政治家の政治的、道義的責任を明らかにせねばならぬと、こうおっしゃっているし、議長裁定でも、政治的、道義的責任を明らかにすることを裁定で述べられている。したがって、これについてはFX戦争も含めて政治的、道義的責任を明らかにする必要があると、こういうお考えかどうか、総理の所見を伺います。
  511. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政治的、道義的責任というものは、刑事事件の追及とは多少性質が違いますから。あらゆる問題というものがいろいろ解明をされるべき性質のものだと思います。
  512. 橋本敦

    橋本敦君 防衛庁長官に伺いますが、グラマンが内定してわずか四カ月後の昭和三十三年八月の七日と九日、ホテル・テイトにおいて防衛庁幹部は、国防会議の内定とはまさに逆のロッキード側の説明を受けていると思いますが、この会合について、出席者、内容を明らかにしていただきたい。
  513. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) お答え申し上げます。  昭和三十三年の八月の七日、それから九日の両日にわたって、当時、今井事務次官以下がロッキード社から説明を受けたということでございますが、このことにつきましては、三十三年の九月十六日、衆議院の決算委員会におきまして左藤防衛庁長官から、党の幹部からF104Cについて、非常にいいものだから念を入れて、ロッキードも日本に来て説明したいと言っているから聞いたらどうだということで、念を入れる意味において八月の七日、九日、幹部の者が二回にわたりロッキード社から説明を聞いている、こういう証言がございます。当時、決算委員会に提出をいたしました資料によりますと、三十三年の八月の七日及び九日、防衛庁側は、当時の今井事務次官以下六名でございます。それからロッキードは、LASOというロッキード航空機海外サービス会社、それとロッキード航空機会社、これからの出席者が六人でございますが、ホテル・テイトにおきまして会談をいたしておる。この中身は、恐らく当時の104についての説明であると思いますが、議事録が残っておりませんので、明確なことはただいまはっきりいたしておりません。
  514. 橋本敦

    橋本敦君 その会合で、ハル、クラッターは来ていましたか。そして通訳したのはだれですか。
  515. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ロッキード側の出席者は、LASOというロッキード航空機海外サービス会社、この社長のハル、それから副社長のハモンド、それからロッキード航空機会社の技師長のディッキンスン、それからアスキュー、それからLASOの東京事務所の支配人であるエリオット、それからLASOの社長補佐鬼、この六名でございます。
  516. 橋本敦

    橋本敦君 通訳は。
  517. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) これはわかりません。だれが通訳をいたしましたかはわかりません。
  518. 橋本敦

    橋本敦君 私が、当時空幕長であった佐薙毅氏から聞いたところでは、鬼が通訳をしている。佐薙毅氏もこの会合に出席しているのです。  ところで、いま局長がお話しになった党の側から話があったという、党の側とはどなたですか。
  519. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) これは先ほども説明申し上げましたように、三十三年の九月十六日の決算委員会における当時の左藤防衛庁長官の証言の中に出ている言葉でございまして、具体的にはだれであるかは左藤防衛庁長官にお聞きをしないとわかりません。
  520. 橋本敦

    橋本敦君 私が会った佐薙毅氏は、それは河野総務会長であるとはっきり言っていますよ。そしてまた現に児玉氏自身が、昭和三十三年十一月十五日「財界」という雑誌の中で、「そこで河野と川島のお二人が、防衛庁にやかましく言った。」、ロッキードの社長が東京に来ておる、説明を聞け、こう言って川島、河野さんから左藤長官に言って、ホテル・テイトで初めて説明を聞いた、児玉自身がはっきりと雑誌の中でこう言っております。  ところで、もう一つ問題は、八月二十二日、自民党六役会議が開かれて、国防会議でグラマンが内定されているにもかかわらず、この六役会議ではこれを白紙に戻す、そして改めて機種選定をやり直す、こういうことを決めたと当時の新聞は報道している。当時の新聞が報道しているだけではなくて、衆議院決算委員会において河野一郎氏が証人として喚問され、河野一郎氏ははっきりとこのことを肯定する証言をしている。このことが事実かどうか。当時政調会長としてこの会議に参加をされたであろう現在の福田総理、事実間違いありませんか。いかがですか。
  521. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は当時、三十三年の六月から十二月まで政調会長をしておりましたが、そういう会議があった記憶はありませんです。それからロッキード、グラマン、この問題について聞いた覚えが全然ありません。
  522. 橋本敦

    橋本敦君 いまの答弁は納得できませんね。衆議院決算委員会の川島正次郎氏の証言をお読みになりましたか。川島正次郎氏は衆議院決算委員会に証人として出て、はっきりあなたの名前を挙げて言っていますよ。川島正次郎氏はこのロッキード、グラマン問題、官房長に聞いたと。聞いたわけですが、はっきりしませんので、さらに党の三役である河野総務会長、福田政調会長、私の三人が党の本部へ集まって今井次官その他の係官を呼んで話したと証言されている。ロッキードの口の字も、グラマンのグの字も聞かなかったというのは、これは事実に反するのじゃありませんか。福田さんいかがですか。これはおかしいですよ。
  523. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はうそは申しません。
  524. 橋本敦

    橋本敦君 知らぬ存ぜず、記憶なしというのはロッキードではやり言葉になったんです。本当にあなたはこのことをはっきりと証言してもらいたい。  三木総理にも伺いたいと思いますが、あなたも当時、政調会長から経企庁長官になられた。そして、経企庁長官になられた三十三年の十月四日に国防懇談会が開かれた。国防会議から私がもらった資料では、あなたも出席しておられる。そこで次期戦闘機問題、これが議論になったと、こう書いてありますが、総理はロッキード、グラマン、この問題が当時大問題であったことは当然御記憶でしょうね。
  525. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は大問題になったことはよく承知します、大問題であると。ただ、私は六カ月間経済企画庁の長官と科学技術庁の長官をしたんですよね、六月から十二月まで。昔のことですから記憶を呼んでみますと、三十三年の四月にグラマン社の機種に内定をして、そして三十四年の六月にまたそれを白紙還元したので、ちょうど両方とも私が在任していないときであったわけです。
  526. 橋本敦

    橋本敦君 いや、さっき言っていますよ、資料に書いてある。
  527. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、私は何も記憶にもないところを見ると全然——四月にはいないでしょう、三十三年の四月にはまだなっていないんですから。
  528. 橋本敦

    橋本敦君 十月四日。
  529. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それから次の白紙還元は三十四年の六月ですかね。
  530. 橋本敦

    橋本敦君 内定後の国防会議
  531. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) だから、その二つの重要な決定を行ったのは三十三年の四月と三十四年の六月でしょう、重要な決定を行ったのは。そのときは私はちょうど経済企画庁長官でなかったわけですから、だから私の記憶にはないんですよね、それは。十月というのはどういう会議ですかね。
  532. 橋本敦

    橋本敦君 国防会議懇談会。
  533. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そのときは私は、重大な決定はすでに三十三年の四月と三十四年の六月ですからね、両方とも経済企画庁の長官ではなかったわけですから、私の記憶にも何にも残らないのが当然だと思います。(発言する者あり)——いや、記憶を忘れたんじゃないですよ。そのときでないでしょう。   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕 六月から十二月までが経済企画庁長官ですからね、六カ月間です。その両方の在任期間以外のときにその決定が行われておるということでございます。
  534. 橋本敦

    橋本敦君 このFX戦争をめぐる問題についても、政治家の政治的、道義的責任の究明は必要だと総理はおっしゃったんですよ。そのころ党の主要な地位あるいは閣僚にかかわりを持っておられたお二人に聞いてもこういう状況では、三木総理がおっしゃっても政治的、道義的責任の究明は、これはおぼつかないという不信感を持たざるを得ないですよ。  問題は、この第一次FX戦争で、ロッキードの代理店が第一物産から丸紅に変えられた。これはなぜか。これは非常に重要な事実なんです。これは当時の第一物産の機械部長であった財部實氏と私は会いましたが、ロッキードのハルがやってきて、グラマンがもうどんどん決まっていく、ロッキードを売り込むためにはアンダー・ザ・テーブル、袖の下、賄賂を使わなきゃだめだ、こういうように強要したと、こう言うのです。そこでそれを断わったら、ロッキードは第一物産をやめて、私がコーチャンに直接聞いたところでは、児玉譽士夫の紹介で丸紅をロッキードは代理店にしたと、こう言うのです。まさにこのロッキード商法の原型がここにある。こういう問題について当時児玉が、決算委員会のグラマン追及にしろ、河野氏との関係にしろ、いろいろ彼が工作をした事実は、彼がみずからしゃべっている書物で山ほどあります。こういうFX戦争の背後に児玉が工作をしていたという事実、当時総理は聞かれたことがありませんか。
  535. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ、そのときの政治的立場というものは、私がどういう立場でおったかということは御存じのとおりでございますから、そんな内容にわたって、政策決定の内容に私は立ち入るような立場ではなかったけれども、うわさは非常にロッキードとグラマンの戦争という意味で世間を騒がしておったことはよく知っております。
  536. 橋本敦

    橋本敦君 そのうわさの中に児玉譽士夫が背後で工作をしておったということが、いまどんどん証拠が出ているんですよ。福田総理いかがですか。当時、児玉譽士夫が背後で工作したということ、お耳に入っているでしょう。
  537. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は三十四年になって幹事長になったんです。そのころになりますと、何かロッキード、グラマンでもたもたしておるという話は聞いております。それだけでございます。
  538. 橋本敦

    橋本敦君 全く歯ごたえのない答弁ですが、いまのようなことをおっしゃっても、背後に児玉が工作をした事実はどんどん証拠に挙がっていますよ。いずれ特別委員会で徹底的にこれは明らかにしたい。  ところで、次にP3Cの問題ですが、この対潜哨戒機P3Cの問題については、これは言うまでもなく安保体制下の日米太平洋戦略、ラムズフェルドのことしの対潜能力強化を期待するという報告書、こういったことから言っても深く安保条約との関係でかかわっているし、現にロッキードにとっても、トライスターの一千億商戦どころか、八千億とも一兆円とも言われる大問題になっている。  ところで、このP3Cの日本への売り込みの背後に代理人児玉がいたということは、防衛庁長官、いつ知りましたか。
  539. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 新聞で、児玉の問題についてコーチャンが発言したときであります。
  540. 橋本敦

    橋本敦君 その児玉の契約書、これはチャーチ委員会から公表され、私もここに持っておりますが、長官は読まれておりますか。
  541. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 内容は承知しております。
  542. 橋本敦

    橋本敦君 ここで外務省にお伺いをしたいのですが、ロッキードとは一体どういう会社か。アメリカの国防総省への兵器の売り込みで、アメリカの巨大企業の中でどのようなランクに置かれているか、お答えを願いたい。
  543. 山崎敏夫

    政府委員山崎敏夫君) ロッキード社がアメリカ国防総省の全受注商に占める割合その他について、正式の説明アメリカ政府から受けたことはございません。ただ、私たちが調べましたところによりますと、昨年十一月のアメリカ国防省の広報関係部局から発表された資料がございます。これによりますと、一九七四年七月一日より一九七五年六年三十日までの一年間におきまして、国防省の発注を受けた米国企業の中では、ロッキード・エアクラフト社及びその関連会社の占める割合は五・二七%でありまして、米国の企業中第一位を占めております。
  544. 橋本敦

    橋本敦君 そのとおりロッキードは米国防省との兵器受注関係では毎年第一位にランクされている。まあ言ってみれば一大兵器メーカー、私ども言葉で言えば死の商人です。だから、今度のこのロッキード疑獄についても、アメリカ上院のプロクシマイヤー委員長はどう言っているか。今回の事件は一企業ロッキードの汚職だけではない、これはまさに兵器売り込みのペンタゴンの指示に従った産軍複合体の犯罪であるということをサゼスチョンしている、こう言って、プロクシマイヤー委員長は二月十四日に、いまこそロッキードの疑獄は明らかにされるべきだとしていろんな資料を公表しましたが、この中で、アメリカ国防総省の外局である国防安全援助局、ここが出した通達文書があると思うが、外務省はこれを手に入れておられますか。
  545. 山崎敏夫

    政府委員山崎敏夫君) 御指摘のものがどの文書を指すのか、私もよくわかりませんが、国防省の安全保障援助庁が米国の軍需産業団体に出した非公式文書として、「中東における代理人報酬」と題する文書がございますが、これを御指摘でございましたら、これは私たちとして入手いたしております。
  546. 橋本敦

    橋本敦君 その文書の冒頭の三行、どう書いてありますか、明らかにしてください。
  547. 山崎敏夫

    政府委員山崎敏夫君) ちょっと訳を持っておらないのでございますが、原文はここに持っております。これは中東におけるエージェントの代理店手数料という問題でございまして、中東と極東とラテンアメリカは、エージェントが普通商業取引を成功に導くために必要とされる世界における地域である。
  548. 橋本敦

    橋本敦君 いま私が明らかにしてもらった理由は、アメリカの国防省は、極東を含む地域で代理店、児玉のような秘密代理人も含めてこれを置くことが必要であり、これをやることが武器売り込みに成功するんだということを明白に物語っている。さらにこれだけではなくて、クレメンツ国防次官、これが言っていることは、兵器の売り込みはまさにアメリカ国防総省の重大任務だと、こう言っている。しかも、いまの問題となったこの国防安全援助局の文書の中でも、必要とあれば賄賂もやむなしという筋の問題が中では明らかにされている。これが上院で問題になった。  そこで総理に伺いますが、ロッキード商法がこのようにまさにアメリカのペンタゴンの方針、賄賂もやむなし、秘密代理店もやむなし、こういう方針に基づいて、プロクシマイヤー委員長が言うように、わが国にトライスターやP3C、これを売り込んできておるんだということになりますと、私はこれはまさに重大な主権侵害だ、アメリカ政府自身の指針に基づくものだ、こういうことになる。この重大な問題について、総理としては、わが国国家主権を守る立場においても徹底的に政府としては調査をし、プロクシマイヤー委員長がサゼスチョンしたような事実が事実とあれば、米政府に抗議すべき責任があると私は思いますが、総理の所見はいかがですか。
  549. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 少なくともわが国に関する限りでございますが、そういう賄賂というような不正行為については、非常に日本は実は道徳水準が高い。それをその他の——その他のと、どこと私は申しませんけれども、そうでないと考えたところにこの出来事の間違いがあった。アメリカでしていけないことは、やはり日本でもしていけないんだということをアメリカ人は反省すべきではないかというのが、せんだって、今週出ましたライシャワーの論文の趣旨でございますから、恐らくそういう反省がアメリカ側にあるものと思います。
  550. 橋本敦

    橋本敦君 総理への質問。私は総理に聞いているのですよ。
  551. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この点は、アメリカとしてもそのために多国籍企業の規制というものを大きく取り上げておるわけでございますが、日本というものが、いま外務大臣の答弁にもありましたように、賄賂というのは一般社会的な慣習になっていないですからね、この国に対して。賄賂を渡す者も悪い、またもらう者も悪いけれども、両方とも、これは日本社会で賄賂というものに対する国民の反発というものは、よそなどに比べて、ほかの地域はともかく、非常に反発が強いわけですから、アメリカ日本に対してそういう日本社会を知らぬわけではないわけですから、したがって、いま御指摘になったようなことをその地域と同時に日本を取り扱ったかどうか疑問になりますが、このことに対しては深くこれはアメリカ自身にも、これだけの反発が起こっているんですからね、よその地域では必ずしもこれだけの反発は起こっていないわけですから、やはりもしそういう考えを持っている者があるとするならば、非常に深刻な反省の機会を与えたと思います。
  552. 橋本敦

    橋本敦君 次に、いわゆるPXLの国産化論議を白紙に戻したという、例の四十七年十月九日、この国防会議の了解事項について伺いますが、総理は、この日国防会議に出席をなさっておる。このような了解事項がなされるということを当時御存じでしたか、事前に。
  553. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 事前には知りませんでした。国防会議に出ましてね、こんな高度な技術的な知識を要するような問題はいきなりここで決めるということは適当ではないから、国防会議の中に専門家の委員会ですか、これを置いて検討してもらおうではないかというような提案が、詳細に覚えてないけれども、そういう提案があってそして賛成をしたというだけで、事前には何も聞きませんでした。
  554. 橋本敦

    橋本敦君 当時の外務大臣大平さんは事前に御存じでしたか。
  555. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 事前には存じませんでした。
  556. 橋本敦

    橋本敦君 防衛庁長官に伺いますが、防衛庁の海幕の幹部で事前に御存じであったかどうか。
  557. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 海幕は恐らく知っていなかったと思います。
  558. 橋本敦

    橋本敦君 植木大蔵大臣も当時知らなかったということを言明されている。ということになると、この問題を当時の国防会議にいわゆる論議を白紙にするというような原案を出す、一体これはだれがやったのかということが問題になります。これについて、だれがこの原案をつくったか、防衛庁長官から説明を願いたい。
  559. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 少し長くなりますけれども、ごしんぼういただきたいと思います。  次期対潜機につきまして、防衛庁は昭和四十三年ごろから部内研究を進めております。四十五年度には外国機の導入、民間機の改造、国内開発のおのおのについての比較検討を行い、予算額二千二百万円を、この成果に基づき四十六年度から四十八年度概算要求におきましては、PXLの国産開発に着手するための基本設計費等を要求し続けておりました。しかし、大蔵省はPXLの国産化は将来多額の経費を必要とするおそれがあることを理由にその開発着手に反対をし、将来の対潜機一般に要求される搭載機器等を主体とした調査研究委託費、予算額四十六年度三億一千万、四十七年度六億八千万は認めましたけれども、一貫して基本設計費を認めず、つまりわれわれ防衛庁が要求しておりました基本設計費を認めず、PXLの国産開発着手を認めるものではないとの条件を付しておりました。  このようにいたしまして、国産化を前提とした次期対潜機等の研究開発の問題は、大蔵、防衛両省庁間において数年間にわたって議論されてまいりましたが、四次防主要項目の政府部内での検討過程においても依然意見の一致を見ない状況にございましたので、その過去の議論を白紙とし、つまり大蔵省と防衛庁とのこの対立関係、この議論を白紙として、専門家の慎重な検討を待って結論を出すということとされまして、四十七年の十月九日の国防会議議員懇談会におきまして、次期対潜機の「国産化問題は白紙とし、今後輸入を含め、この種の高度の技術的判断を要する問題については、国防会議事務局に、専門家の会議を設ける等により、慎重に検討する。」旨の了解がなされたものと理解しておるわけであります。  なお、本件につきまして、いま申し上げました了解事項の「次期対潜機、早期警戒機等の国産化問題は白紙とし、」という表現が、一般に国産化は白紙としというように解されやすいわけでございますけれども、これを国産化の是非に関する従来の議論を白紙としという解釈がなかなかされにくかったので、非常な誤解を与えておると思います。  以上でございます。
  560. 橋本敦

    橋本敦君 いや、私の聞いたことに答えてないんですよ。この了解事項の原案、当日だれがつくって出したかと聞いているんです。全然答えてないです。あんなもの答弁になってないですよ。質問の答弁じゃないですよ。
  561. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 当時の経緯について、当時の関係者その他から事情聴取いたしまして、統一見解を作成をいたしたわけでございますが、ただいま御指摘のその了解事項を具体的にだれが作文をしたかということについては、その調査においては特定がしがたかったということでございます。と申しますのは、傍ら議員懇談会が開かれておりますときに、その脇において当時の関係者である方々がそれぞれ立ち会って案文を作成をしたということで、最終的には当時の国防会議の事務局長の海原氏が本了解事項を読み上げまして、そしてこれは議員懇談会の了解事項とするという趣旨の発言をし、議員懇談会においてその旨了承されて終わっておる、こういうことでございます。
  562. 橋本敦

    橋本敦君 だれに聞いてもわからないですよ。だれに聞いてもわからない。久保事務次官呼んでください。私は朝から要求しているんです。久保事務次官呼んでくださいよ、委員長
  563. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 久保事務次官は、本件草案作成の過程においてはすでに防衛庁に帰っておりまして、その席には居合わせておりません。したがいまして、久保事務次官をお呼びになっても、久保次官からはこの本件に関する証言を——証言というか、回答を得られないと思います。
  564. 橋本敦

    橋本敦君 聞いてみなければわからぬですよ。
  565. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 丸山防衛局長に申し上げます。もう一度お答えください。
  566. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ただいま御答弁申し上げましたように、久保事務次官は当時防衛局長でございまして、本件の議員懇談会におきまして、当時問題になっておりました支援戦闘機並びに高等練習機、T2、FST2改、これを防衛庁原案どおり国産でいくという総理の御裁定を得まして、そしてその旨を至急本庁に帰りまして記者クラブに発表するために席を抜けておりますので、本件の了解事項を素案をやっておりますときにはすでに不在でございましたので、いま御質問のように久保事務次官に御質問になっても、この件について具体的にだれが書いたのかという点については久保次官からも明確にお答えができないというふうに思います。
  567. 橋本敦

    橋本敦君 とうてい納得できませんよ。聞いてみなければわからないですよ。いま局長は海原氏の名前を出されましたが、私ども調査団が海原氏に会って、海原氏から直接聞いたところでは、この懇談会の前に後藤田、相澤、このお二人と、そして総理、この三人が会議をされて、そして後藤田氏が海原氏にメモを回してきて、そのメモをもとに了解事項がつくられたと、海原氏ははっきりこう言っているのですよ。防衛庁、何を調査しているのですか。こんな事実さえわからぬのですか。もう一遍調査し直しなさい。局長に要求します。
  568. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) この問題につきまして私が調査いたしました結果では、そこのところはこういうことでございます。  同日の国防会議において四次防の主要項目等が決定され、その際、支援戦闘機は国産機とすることとされた。国防会議に先立って、後藤田官房副長官総理に、懸案となっていた支援戦闘機の問題は国産機でいきたい旨進言した。総理は相澤主計局長を呼び、大蔵省に異存があるかどうかを確認した。相澤主計局長は、大蔵省も検討をし、大臣の了解を得ているとして、支援戦闘機の国産には異存がないが、次期対潜機、早期警戒機等の国産化を前提とする研究開発は、従来からの大蔵省の主張どおり、認めがたい旨の大蔵省の意見を述べた。総理は、このような技術的な問題を一々自分のところまで上げられては困る、そういうことば専門家に検討させて決めてはどうかという趣旨のことを言われ、国防会議議員懇談会の席上においても同様の発言があった。この総理の発言の趣旨を受けて「次期対潜機、早期警戒機等の国産化問題は白紙とし、今後輸入を含め、この種の高度の技術的判断を要する問題については、国防会議事務局に、専門家の会議を設ける等により、慎重に検討する。」ということが国防会議議員懇談会の了解事項となったということでございます。
  569. 橋本敦

    橋本敦君 いまの答弁で明快になったことは、まさにこの時期に論議を白紙に戻して専門家会議を置くということを発議したのが、田中前総理だということですよ。これは非常にはっきりした。ただ、メモをだれが書いたかという、私が海原氏のおっしゃっていることを指摘しての問題は長官の答弁ではなかったが、問題は、田中前総理が発議されたという事実ははっきりした。  時間がありませんので次に行きますが、その後MDAOから防衛庁に対してP3C、これについてのいろんな照会工作がなされている。この経過について防衛庁から明らかにしてもらいたい。
  570. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) P3Cについて、いわゆるアビオニックスの資料の提供をつとにわが海上幕僚監部としてはアメリカに要求しておったわけでございますが、アメリカからの回答はいつもノーで過ぎておったわけでございます。で、四十七年の八月に、当時ワシントンにおりました駐在官の玉川一佐から私信が参りまして、リリースの可能性があるという非公式の連絡が当時の海上幕僚監部に来ております。しかしながら、当時は御案内のように国産でいくという基本的な方針がありましたので、そのままで終わっております。  それから、その年の暮れの十一月に、MDAOと申します相互援助事務所、これから連絡がございまして、P3Cについてのブリーフィングをやるという連絡がありまして、海上幕僚監部から数名が参りまして、主としてスライド等によってアウトラインについての説明を受けております。  それから翌年の一月に岩国にPC3が三機飛んでまいりました。この機会に海上自衛隊で中を見たらどうかという在日米海軍からの申し入れがございましたので、海上幕僚監部あるいは航空集団、そういったところから参りまして、実際にP3Cに乗って中の見学を行っております。  それからその年の六月に、これはその後に十一月から調査団を派遣するという予定がございまして、これは当時の時点におきます海外の対潜哨戒機の資料を収集するという目的で参りますので、当然、当時対象になりましたのは、このP3Cと、それからイギリスのニムロッドという対潜哨戒機、それから英独の共同開発にかかわりますアトランティックという哨戒機でございますが、こういうものを対象にして調査をするということで、外務省を経由いたしましてそれぞれの国、国防省あるいはそれを製作を担当しておる会社等に一ついて資料の提出を要求を、照会をやっております。この際には、主として輸入あるいはライセンス生産についての可能性、それからその場合における諸条件といったようなものでございますが、この照会を出しましたのに対して、P3Cについては、翌月の七月にアメリカの作戦部長の方から当方の照会事項に対する回答が外務省を経由して参っておる、そういう状況でございます。
  571. 橋本敦

    橋本敦君 回答内容は。
  572. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 回答内容は、先ほど申し上げましたように、そのライセンス生産の可能性、それからライセンス生産を行います場合の当時の時点における価格、それからその他の諸条件、こういったものでございます。
  573. 橋本敦

    橋本敦君 一方、ロッキードのローガン、あるいはロッキードの対潜機本部長のJ・E・ギャノン、こういった人たちが来日をして防衛庁とコンタクトしているはずですが、その経過を明らかにしてもらいたい。
  574. 江口裕通

    政府委員(江口裕通君) ただいま防衛局長から申しましたように、米国の海軍の作戦部長の書簡が渡されました前後から、ただいま御指摘のありましたローガンあるいはダニエル氏というような人がそれぞれ数回程度防衛庁を訪問しております。これは大体四十八年の後半から五十一年初めにかけてでございまして、主として装備関係あるいは海上幕僚監部の関係者に対して事務連絡、あるいはその書簡の内容をさらに敷衍いたしましてロッキードの考え方説明してきております。
  575. 橋本敦

    橋本敦君 総理、私が指摘したいのはこういうことなんですよ。四十七年十月九日に田中前総理の裁断で国産化の動きが白紙になったと。どうですか、その直後の四十七年十一月十五日、一カ月後からアメリカ海軍はMDAOを通じてP3Cの売り込みを開始をする。そしてそれと同時にロッキード自身がローガンを四十八年一月に送り込んで、いまお話しのように防衛庁にコンタクトを始める。そしてもう一つ大事なことは、アメリカ海軍がこのP3Cのライセンス、これのオーケーの公式の回答を初めて出した四十八年七月、この年に、先ほど指摘をした児玉のP3Cに関するロッキードとの契約が結ばれているんです。これは米海軍がオーケーしなければP3Cは出すことはできません。オーケーして初めて商売が成り立つ。このことをロッキードも児玉も知ったから、まさに米海軍から回答があったこの四十八年七月に例の契約書ができている。そして、このころは、児玉の領収書でわかるように金がずっと流れ続けている。重大な疑惑がこの十月九日の決定、これをめぐる時期からずっと続いている。  検察庁に伺いますが、こういう関係の疑惑について徹底的に捜査する方針でやっておりますか。
  576. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 検察庁が全力を挙げて真相の解明に努めていることについては、どうぞ御信頼いただきたいと思います。
  577. 橋本敦

    橋本敦君 信頼せよと言う限り、当然これはやるということだと理解しますよ。田中前総理を含めて事情を聞かなければ明らかにならぬです。  総理に伺いますが、まさにこのP3C導入は一兆円にもなろうといわれた。国民生活がこれだけ苦しいときにこんなものを導入してよいのか。そしてまた、ロッキードの疑惑に包まれている渦中でこれを導入してよいのか。私は断じてそういうことはあってはならぬと思う。それよりも、このP3C問題は日本の防衛庁、政府アメリカの海軍、政府、この関係ですよ。これに秘密代理人児玉がかんで、五十機を導入すれば二十五億円も報酬をもらう。許せますか、こういう契約が。国と国との関係で許せますか。児玉とロッキードのこの契約、これを破棄させるように総理はしかるべき処置をとるべきだと思いますが、厳におとりいただけますか。こんな契約許せますか。
  578. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) P3Cの問題は、これだけ国民の疑惑に包まれておるわけですから、この問題を決定をするときには、国民の疑惑を受けないような形でなければならぬということでございます。
  579. 橋本敦

    橋本敦君 質問に答えてくださいよ。児玉とロッキードの契約、こんなものを許せますか。これの破棄を措置するように総理は指示をしなさいと言うんです。
  580. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 児玉とロッキードのこれはやはり解明されなければ、いろんな問題がコーチャン氏の証言で出ておるけれども、その信憑性というのはまさしく検察当局が……。
  581. 橋本敦

    橋本敦君 契約書。
  582. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 契約書に対しても、皆いろんな一切のものが真相が解明されなければなりませんね。私が言うのは、やはりこういう自衛隊の機種のようなものは、国民の疑惑を受けないような形でこの問題は決定されなければならぬ。専門家にすればこのP3Cの長所というものもいろいろあることは事実でしょうが、この決定に対してはやはり国民の疑惑を受けないような形で決定されなければならぬというのが私の決意でございます。
  583. 橋本敦

    橋本敦君 最後に。  疑惑のある契約書を総理は承認されますか、こんなものを。そう聞いているんですよ。
  584. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) コーチャン証言でいろいろ出された契約書とかなんとか、領収書であるとかいうものは、これはやっぱりいろんな捜査当局の捜査を通じて信憑性というものは明らかにされなけりゃならないわけです。コーチャンの証言がすべてもう全部一〇〇%正しいかどうかということは、これはやっぱり解明されなけりゃならぬ問題点だと思います。
  585. 橋本敦

    橋本敦君 時間がありませんから、この問題は特別委員会でやることにして、終わります。
  586. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 以上をもちまして橋本敦君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十六分散会