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国務大臣(
三木武夫君) 一月半に及ぶ政治の空白に対して
政府の政治
責任というもののお尋ねでございます。そこで、一月半に及ぶ
国会の空白という跡を振り返ってみますと、問題は私はこういうところにあったと思う。二月の二十三日でしたか、
衆議院、参議院において
国会の決議があった。その決議はロッキード問題の
真相を迅速徹底的に究明するということが大前提である。そのためには、アメリカに対して、いわゆる高官名も含めてあらゆる未公開の
資料も提供を受けるようにアメリカの上院、アメリカ
政府に対して要請するというのが主眼でございます。これをアメリカ
政府に伝達方を両院の議長から私に依頼してきたわけでございます。問題の点は、
資料の提供を受けるということが決議の主眼である。そこで私は伝達すればまあいいわけですが、さらに私は、この日本の
国会というものが
憲法上に持っておる重み、またこの決議の背景、こういうもので、異例のことでございますが、大統領に対して親書を私が出したわけでございます。
藤井君もお読みになったか知りませんが、読売新聞でありましたか、ワシントンの特派員は、
三木総理の親書の真剣な
態度に対してアメリカの国務省もホワイトハウスも深い感銘を受けた、これに対してはこたえなければならぬということが国務省とホワイトハウスにおいて、そういう空気が非常に強くなってきたと。
国会の決議も背景にありましたけれ
ども、
裁判所がこの
資料は外に出してはいけないという
決定が行われておる、その
決定を一部解除して、そしてアメリカが日本に対して全
資料を提供するようになった
一つの私は動機にはなったことは事実だと思うのでございます。しかも、私は
国会でしばしば申し上げておったことは、
資料を公開するという前提のもとにアメリカに対して
資料を
要求したのでありますから、アメリカから条件がついてこなければ
資料を全部公開いたします、ただし、条件がついておるときには別であるというのが、ロッキード問題集中のときにおける
各党に対する私の
答弁である。
民社党からは、河村君が、そんならばその条件の
内容だけは公表いたしますかと言うから、いたしますと答えたのであります。
国会における
答弁に私は食言があったとは思わない。しかし、とにかくまあ私としては
政府としてできる全力を尽くした所存でおるわけであります。
資料の提供を受けろという院の
要求に対しては、もう最大限度こたえようとして努力をしたわけでございます。これが
一つ。
しかし、
野党の諸君は、それではいかぬ、公開をアメリカに対して
要求するために再交渉せよというのが
野党の方々の
主張であります。そこで、あれだけ、大統領の書簡が来て、しかもそういう解除の手続までして提供をされて、そして
資料の提供を受けるについて当事者間の実務者の取り決めも行われたものを、もう一遍交渉して公開せよということは
政府としてはできませんと。しかも、その大統領の公開できないという理由は、アメリカ自身でもいまこれを
調査しておるのだ、
調査の途中で
資料を公開することは捜査や
調査の妨害になる、しかも、裏づけのないままに発表することは人権の侵害にもなって、アメリカの慣習、
司法的な慣習あるいはまた法制上もできないのだという理由もついておりますから、私は精いっぱいのことはアメリカ大統領はしてくれたものだと思うわけです。そこで、やはり
野党の
要求、もう一遍交渉して、再交渉して、
資料を全部いまの段階で公開するために再交渉ということには応じられなかったわけであって、一点、これが空白の大きな原因。
もう
一つは、
藤井君の
民社党の御
主張もそうでありますが、ロッキード問題と
予算審議は別々に両方がやれるではないか。ロッキード問題を追及しながら
予算審議をやってもらわなければ、ロッキード問題はこれは時間が相当にかかるわけです。
予算はそうはいかないんですから、だからこれを両立させてくれという
主張が、遺憾ながらこれは
野党の諸君の承服するところでありません。そういうことをすれば、
政府は、
予算審議をやればロッキード問題というものにふたをしてしまうんではないか、そういうことはいたしませんと繰り返しても、残念ながら各
野党の御了承は得られなかった。(「全部の
野党じゃない」と呼ぶ者あり)いま、まあこれは不規則
発言ですから取り上げませんが、とにかくそういうことで、これがやっぱり空白の二つの原因です。
それでも議長の裁定は、
政府は一生懸命にやったと言うけれ
ども、まだやっぱり
政府の努力は不十分である、今後一層努力をせよというこの議長の裁定に対して謙虚に私
どもは反省をして、そして今後一層この
真相の究明に対しては当たっていくつもりでございます。議長の裁定に異議は唱えなくて、これを受け入れたわけです。で、新聞などをごらんになりましても、
政府の
態度もむろん非難をされておりますが、
野党の
態度に対しても、各論説、どの新聞も例外はありません。これに対しても相当な
批判を受けておるということでございます、
野党の
態度に。そういうことで、もし
藤井君があの空白を全部
三木内閣の
責任であると断ぜられるならば、私は承服いたしかねるのであります。しかし、議長の裁定のごとく、努力はしたけれ
ども、まだ足りない点もあったと、これから一生懸命にやれということには、反省はいたすわけでございます。したがって、そういう点で
責任を感じつつ、政権を担当しておるんですから、
責任を感じつつ、議長の裁定にありますように、一層努力していきたいと考えておるわけでございます。
国会の空白に対する政治
責任の問題について、せっかくのお尋ねでございますから、率直に私の
所信を述べた次第でございます。