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国務大臣(稻葉修君) 何の因果か、この
ロッキード事件の一番の被疑者の中心である児玉譽士夫と、現在の
刑事責任追及の最高責任者である検事総長のまた上に監督する法務大臣稻葉修とがね、向こうも私を知っており、こっちも向こうを知っておるということが
新聞報道をされましたことは、それは重大な、
国民に影響するところ大きいと、まことに責任重大だなと、こう思います。ただね、きのうの
新聞に、十遍会ったなんて言うけれ
ども、まあ見たというのが十遍くらいで、見たというのが。会って話をしたというのはね、まあ私の記憶では三回くらいですな。一度は、二十年くらい前に、春秋会という派閥がございまして、派閥の大将は河野一郎さん、この人のところへ彼が訪ねてきたときに、大ぜいいました中で紹介された、これが一度。それからその中では、ときどき彼は来ておったようですからね、そういう点で、見た回数はわりにありますな。口をきいたというところまではいきませんけれ
ども。それから河野さんの葬式のとき。それから河野さんが死んで、春秋会が二つに分裂して、まあいわゆる中曽根派と森派というものになったんです。そのとき以来縁は大体切れましてね。ことに総裁選挙で佐藤総理三選のときに、いろいろその総裁選挙にこういう児玉譽士夫と仲のいい財界の人から干渉がましいことがあるから、これはもう縁を切ろうということで、そこで断ち切って、それ以来交際はなかったんです、全然。行き来なし。
ところが、あのジャパンラインと三光汽船の業務協定をめぐる何だか争いありましたな。私、経済のことは知りませんけれ
どもね。株の売買とか、そういうことは知りませんけれ
ども。そういう
事件のさなかに、忘年会の席上へ女中がやって来て、児玉さんという人を御存じですかと言うから、知っていると。ぜひ至急に会いたいと言うて応接間で待ってますからと。それから行ってみたら彼なんです。それはね、大していままでそんなことについて話したことのない、そういう具体的な今度は
事件についてね、あなた河本さんと非常に親しいんで、あなたから河本さんに言えば彼はうんと言わざるを得ぬ間柄であるということをおれ調べて来たんだというふうな調子でね、言うから、いやそれはおれに言うてもだめだねと言ったんだ。そういう商売のことはおれ全くだめなんだから、おれに言われてもだめだねと。じゃ紹介だけしてくれと、こう言うから紹介してやったと、こういうことでございます。そのことはね、まあこの
ロッキード事件が起きてから週刊文春というものに載っておりますわな。あのとおりなんです。稻葉のところへ行ったけれ
ども、はしにも棒にもかからなくて失敗したと、そして別の人のところへ行った、それが成功したと、こういう記事、そのとおりなんです。そのとおり。
しかし、こうなってきますとね、そういう
事件があったことは事実なんだからな、そういうことが。そういうことで口をきいたと。彼は、そういうことが非常な彼のあれですな、活動の中心のようでございますね。会社の内部に入って、まあ総会屋と言っちゃ悪いけれ
ども、それに近いような、そういう者と、そういう
事件について会ったということがあるんだね。そうして今度の
事件だもの。これは本当に何の因果かと思う、わしは。(笑声)まああれでね、済んだと思っておったら、きのう、あの文春でいろんな人が来たから、よく
説明したんで、これで済んだと思ったら、また国会の
法務委員会のその質問に出されてぎくっといったよ。
これはあれだなと、とにかく私も政界人に長くいますと、いろんなのと会っていますわな。それから
国民のうちには、私は全然知らぬ人で向こうが知っている人、それから向こうも私も知っている人、それから私は知っているけれ
ども、向こうは知らない人、こういろいろあります。向こうも私も知っている人の中に、法務大臣と被疑者児玉譽士夫と、こうはまったからね、まことにざんきにたえないけれ
ども、これ、そういうことなんでございまして、したがって、こういう
事件がなけりゃ、まあそれはしょうないじゃないかと言われるかもしらぬけれ
ども、こういう
事件があると、しょうないじゃないかではどうもうまくないね、これは。ただ、こんなことで被疑者に同情したり、またそれがために被疑者に憎悪に燃えたり、そういうことがあってはならないというふうに私はいまの心境ではそういうことでございます。ただ、あれで済んでいたと思ったら、またあの旧聞を
新聞に書かれる。旧聞を
新聞に書かれるとは思わなかったんだ。だから、
新聞社は旧聞社になったのかなと思うぐらいだ。閣議後の会見なんかでも、今度、
新聞記者会見でなくて旧聞記者会見と言おうと思っているぐらいだ。そういうことでございまして、ざんきにたえません。ただしかしこれ、悪運みたいなものでございましてね、それがために、しかし世間一般から、あの法務大臣は怪しいやつだというふうに思わないでいただきたい。ことに同僚である国会
議員の皆さんからは、どうかそういうふうに見ないでいただきたいとお願いするわけです。これから
国民の皆さんにもそういうことなんだということを言うて、誤解を解いてまいりたい。罪滅ぼしだからね。罪滅ぼしって、おれは罪を犯す気持ちはなかったんだけれ
ども、悪意はないんだけれ
ども、何の因果かと言いたい。何の因果かこういうことになっちゃった。まことにざんきにたえません。