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政府委員(吉岡裕君)
農業災害補償法及び
農業共済基金法の一部を改正する
法律案につきまして、提案理由を補足して御
説明申し上げます。
まず第一に、農作物共済の
充実と
合理化に資するための措置について御
説明申し上げます。
その一は、補償
水準の引き上げに関するものであります。
現行の農作物共済において、災害を受けた際に支払われる共済金の額は、一筆単位引受け方式にあっては、各耕地ごとに、基準収穫量の三割以上の減収があった場合に、また
昭和四十七年に導入されたいわゆる半相殺の農家単位引受方式にあっては、農家ごとに、被害のあった耕地の減収量の合計がその農家の総基準収穫量の二割を超える場合に、それぞれその超えた数量に単位当たり共済金額を乗じて算出することとなっております。この場合の単位当たり共済金額は、米麦の価格の九割を限度として主務
大臣が定めた金額のうちから選択することとなっております。
改正案では、この場合の単位当たり共済金額の限度を米麦の価格の十割まで引き上げることといたしました。この結果、全損の場合の実損てん補割合は、最高の単位当たり共済金額を選択した場合、一筆単位引受方式では七割、いわゆる半相殺の農家単位引受方式では八割、次に述べます新しい方式の農家単位引受方式では九割となり、従来に比し
相当程度補てん
内容を
充実し得るものと考えております。
その二は、引受方式の改善に関するものであります。
現行の引受方式は、一筆単位引受方式といわゆる半相殺の農家単位引受方式であり、そのいずれかを組合等が選択することとなっておりますが、災害を受けた農家の所得を合理的に補てんするという本
制度の
目的に照らし、大きな災害に対し経済効用を十分に発揮する共済金の支払い方式として、新たに、農家単位で増収分と減収分とを相殺するいわゆる全相殺の農家単位引受方式を導入することといたしました。すなわち、近年普及が進みつつあるカントリーエレベーター等の施設を利用する等により農家ごとの収穫量を適正に把握できる地域においては、組合等の申請に基づき、農林
大臣が地域を指定し、農家ごとの総基準収穫量から総収穫量を差し引いて得た数量が総基準収穫量の一割を超える場合に共済金を支払うことといたしております。
なお、
農業経営の安定及び
制度の効率化を図る見地から、農家単位引受方式がより多くの組合等に導入されるとともに、この方式による共済
事業が円滑に実施できるよう、本方式を導入した組合等の地域内の収穫皆無耕地については、農家単位引受方式によっては共済金が支払われないような場合であっても、当分の間、その耕地ごとに共済金を支払うことといたしました。
その三は、水稲病虫害に対する損害防止
給付に関する特例の新設であります。
現行の農作物共済は、災害発生に伴う農作物の収穫量の減少について共済金を支払う方式をとっております。しかしながら、近年における水稲の被害発生態様を見ますと、耕種技術の改良、風水害の減少により、その被害量は全体としてかなり減少しているものの、病虫害による損害は相対的に増大する
傾向にあること等にかんがみ、従来から、本
制度における病虫害防止機能を拡充強化すべきである旨の強い要請があったのであります。このため、今回、共同防除体制が整備された地域において、病虫害が異常に発生し、組合員等がその病害虫の防除を共同して行ったときは、当分の間、その防除に要した農薬費、動力燃料費につき一定の限度で共済金を支払うことといたしました。
このほか、農作物共済につきましては、水稲に係る病虫害の事故除外、いわゆる全相殺の農家単位引受方式及び水稲病虫害損害防止
給付を農林
大臣の指定する地域で行うこととしたことに伴い、組合等の区域内にこれらの地域が存する場合には、それにより区分される危険の
程度に応じて共済掛金率等を定めるとともに、
保険関係及び再
保険関係もこの区分ごとに成立することといたしました。
第二に、蚕繭共済の
充実に資するための措置について御
説明申し上げます。
その一は、共済事故の拡充に関するものであります。
近年、東北地方等の豪雪地帯を
中心に、冬期間に桑の樹皮等が野そによる食害を受け、その結果、桑葉が減収するといった被害が発生しておりますので、新たに、共済事故として桑葉の獣害による減収を加えることといたしました。
なお、この共済事故は、現行の共済責任期間の始期である桑の発芽期より前の冬期間に多く発生いたしますので、この共済事故を選択する地域においては、共済責任期間の始期を前年の桑の落葉期まで早めることといたしました。
その二は、蚕期区分の導入に関するものであります。
近年、養蚕施設の効率的利用、労力の平準化を図る等のため、多回育養蚕が普及し、かつ、それが定着している地域がございますが、そのような地域におきましては、その
経営実態に即応して共済
目的に蚕期区分を設け、その区分ごとに共済金の支払額を決定することといたしました。
その三は、補償
水準の引き上げに関するものであります。
現行の蚕繭共済における単位当たり共済金額は、繭の価格の六割を標準として主務
大臣の定める金額のうちから選択することとされておりますが、他の
農業共済
事業との均衡を考慮して、これ・を繭の価格の七割まで引き上げて、補償の
充実を図ることといたしました。
第三に、家畜共済の改善に関する措置について御
説明申し上げます。
その一は、共済
目的の拡大であります。現行の家畜共済では、牛、馬及び種豚が共済
目的となっておりますが、食肉資源に占める肉豚の重要性が高まりつつあること、肉豚の飼養形態が零細副業から多頭飼育へ変化したこと等にかんがみ、今回、家畜共済の共済
目的に肉豚を加えるとともに、その共済事故を死亡とすることといたしました。なお、肉豚につきましては、従来の乳牛の雌、肉用牛、
一般馬及び種豚と同様に包括共済対象家畜とし、
加入農家が飼養する肉豚はすべて家畜共済に付されることといたしておりますが、飼養頭数が多数に及ぶ上、その飼養期間も短期間であること等にかんがみ、飼養区分ごとに引き受けと損害
評価を行うよう諸規定を設け、その適正かつ効率的な運営を期しております。
その二は、共済掛金の国庫負担の改善であります。
現行の家畜共済の共済掛金国庫負担は、牛は、包括共済の場合原則五分の二とし、特に、飼養
規模が、乳牛の雌に関しては三頭以上四十九頭以下の者、肉用牛に関しては三十九頭以下の者に対して二分の一とし、主として自給飼料によらないで乳牛の雌を飼養する者に対して三分の一とし、また、個別共済の場合五分の二としており、種豚は、三分の一を国庫が負担しております。
以上述べました現行の共済掛金の国庫負担方式は、
昭和四十六年における
制度改正により定められたものでありますが、畜産振興の重要性及び最近における畜産
経営の実態にかんがみ、今回、共済掛金の国庫負担を牛については二分の一、種豚については五分の二に引き上げるとともに、肉豚についても三分の一の国庫負担を行うことにより、農家負担の軽減による
加入の促進を図り、畜産
経営の安定に寄与することとした次第であります。
その三は、組合等の共済責任の拡充であります。
現行の家畜共済では、末端の共済
事業を行う組合等は特別の事由のある場合を除き、その総共済金額のすべてを
農業共済組合連合会の
保険に付し、連合会は、これを県ごとに取りまとめた上、そのうちの一定
部分を保留して、残りの
部分を政府の再
保険に付することになっておりますが、組合の区域の広域化等に伴い、家畜共済についても
一般的に共済責任の一部を組合等に保有させる条件が整ってきたこと等にかんがみ、改正法案では共済責任のうち原則としてその一割を組合等において保留して、その残りの
部分を連合会の
保険及び政府の再
保険に付することといたしました。この結果、農家の負担する掛金の一部が組合等に保留され、組合等の責任ある業務執行が
期待されるところであります。
第四に、果樹共済の
合理化に関する措置について御
説明申し上げます。
現行
制度においては、気象上の原因による災害、病虫害等のすべての災害による果実の減収を共済事故とし、
加入者が共済事故を選択することは認めないこととなっておりますが、最近における果樹栽培技術の向上、果樹
経営の実態等にかんがみ、果樹の栽培条件が一定基準に達した農家につきましては、例えば病虫害といったその
経営からみて必要性の少ない事故を共済事故から除外する旨組合等に対し申し出をすることができることとし、これに伴う掛金率の低下により、
加入の促進を図ることといたしました。
第五に、
農業共済
基金の業務及び組織の整備強化に関する措置について御
説明申し上げます。
まず、
農業共済
基金の業務範囲の拡充に関するものであります。
現行の
農業共済
基金の業務は、
農業共済組合連合会または組合等が
保険金または共済金の支払いに不足を生じたときに資金の貸し付けまたは債務の保証を行うことに限られておりますが、近年における災害発生態様の変化により会員等の
事業収支が改善され、
農業共済
基金の資金事情が好転していること等にかんがみ、今回、新たに従来の業務に支障のない範囲内において、会員等が
保険事業または共済
事業を円滑に執行するために必要とする資金について貸し付けまたは債務の保証の業務ができることといたしました。
また、
農業共済
基金の組織につきましても、その
事業執行体制を強化するとともに、運営
委員会の
構成等についての規定を整備することといたしました。
以上のほか、
農業共済団体の組織及び運営に関する規定を整備することとし、前述の組合等の区域の一部における
事業実施に関する規定のほか、
農業共済団体の自主的
判断により、特定の場合に役員及び総代の選挙を省略できること等、
事業運営の円滑な推進を図るための改正をあわせて行うことといたしました。
最後に、この
制度改正の実施時期でありますが、準備期間等を考慮いたしまして、原則として
昭和五十二年度からといたしております。
以上をもちまして提案理由の補足
説明を終わります。