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鈴木省吾君 私は三点質問をいたします。
一つは
食糧自給の問題、
一つは畜産の問題、さらに蚕糸の問題、この三つですが、
大臣が何かお急ぎのようですから、私は四十分あるんですけれども、なるべく
大臣が出られるまでに、この三点をできるならばやってしまいたい、かように考えております。
第一の
食糧自給の問題でありますけれども、今回の
大臣の
所信表明におきまして、
大臣は「
食糧問題は、今や農林水
産業やそれに携わる者のみの問題にとどまらず、広く
国民の安全保障にかかわる問題であると申さねばなりません。」こういうような
認識をしておることをお示しになりました。まことにこの点は同感であり、心強く考えます。しかしながら、先ほど来いろいろと御議論がありました、それじゃ、それを具体化するのにどうしているん、だということになりますと、どうもわれわれ必ずしも賛成をいたしかねるわけでございます。先ほど来お話の「
総合食糧政策の
展開」これにしましても九
項目の
項目を挙げられまして推進をしていくというような話であり、さらにまたそういう点を踏まえ、あるいはいままでのいろいろな実績を踏まえられまして、先般「
農産物の需要と
生産の
長期見通し」こういうものも御発表になっておりますけれども、こういう表からも拝見いたしまして、そういう御
理解なり
認識にはちょっとほど遠いんじゃないか。あるいはそういう御
理解でもありながらなかなかそういうお考えのとおりいかないんだ、というそういった弱気といいますか、あるいはやる熱意と申しますか、それが足りないんじゃないかというふうに疑われるような節があるわけでございまして、端的に私は申し上げますけれども、今日の日本の
農政で最も大きな問題は米をつくりたい、つくりたいというのをつくらせないで、そして減反をしなければならぬ。しかも輸入し、あるいはまたこれからもどんどん国内で必要であるところの麦あるいは雑穀、豆、こういうものをつくらせようと思ってもなかなかつくらない。こういうことに一番の大きな
農政上の問題があることはいまさら申し上げるまでもないわけでございます。
そんな観点から、いまの畑作総合対策というものも御
計画になっておるのでありましょうけれども、この案を拝見いたしましても、まことにその場限りのような感じがいたしてなりません。豆に五万円の補助金をやる、ほかの作物に四万円の補助金をやると、こういうことで誘導しようとしておりますけれども、それをやっている間は恐らく十九万ヘクタールかあるいは八十万トンか、その
生産調整もでき、あるいは誘導しようという作物もつくるでありましょうけれども、しかしその補助金がなくなった場合に、またもとへ戻っちゃうのであります。いままで五ヵ年ほどやってまいりました
生産調整の問題にいたしましても、どれだけ定着したかということになりますと、昨日もどなたかの御質問がございましたけれども、私は疑問だと思います。今回の水田総合利用事業にしましても、三カ年過ぎた後にはまたもとのもくあみになってしまう。そして依然として今日のような困難な問題が続くんではないか、こういうふうに考えるのです。
しかしながら、時間がありませんから私は端的に申し上げますけれども、やりようによってできるんです。そのやり方を知らないといいますか、やる熱意がないんではないかというふうに私は考えます。豆
一つとりましても今日御承知のように二俵半です。二俵半——百五十キロですか、しかとっておりませんけれども、昨日も
局長答弁でようやく、三百キロぐらいはとれるんですと、こういう話を出しました。いままで私は何回もそれを話をすると、いや試験場では三百キロぐらいとれますけれども、農家へ行くと、そうはいきません。なかなかどうも同意しなかったのでありますけれども、きのうあたり、ようやく三百キロぐらいはとれます……。そうでしょう。あなたの方の何課が——畑作振興課かあるいは稲対室ですか、実績なんか調べていると、もう三百キロなんて普通でとっているのですよ。四百キロもとっています。五百キロもとれる。そういう技術というものを吸い上げていかない。そこに私は問題があると思うのです。この「
総合食糧政策の
展開」というこのあれを見ましても、九
項目いろいろ書いてあります。
基盤整備であるとか、あるいはいろんなこと、価格
政策、こんないろんなもの書いてあります。が、肝心な物をつくる
基本の技術というものに対して、これ何にも書いてないんですよ。
農産物はこれは物をつくるところから始めなきゃならぬ。つくった物を、価格をどうしよう、流通をどうしようということは、これはその次の問題である。まず物をつくることから始めなきゃいけない。豆でも麦にしましても、もっと私は真剣につくる技術というものを
検討してまいるならば、豆なんかはもうすでに三百キロは普通の農家でとっているのですよ。私のすぐ近くでも、いまの
農林省で今度何か表彰してくれるそうです。婦人たちが集まって——三百キロなんて毎年もうとっている。全国見ましても、そんな例はざらにあるわけですから、こういう技術をひとつ吸い上げて、そして、これを一般に広めていくということが必要だと思います。しかも三百キロなんて言わないで五百キロあるいは六百キロ、これもその
基本には、やはり技術者というものは本当に品種改良に取り組む、そして、いまある栽培技術なり、あらゆる技術を増収のために組み立てて、それをそして普及していく、こういうことが重要なお仕事だと思うんです。
まあ質問でなくて、私、当分
皆さんに教えるつもりで(笑声)問題を提起いたします。そういうことにいたしますと、(「農林
大臣になったらいいんだ」、と呼ぶ者あり)この
農産物の需要と
生産の目標にいたしましても、食用の
大豆を四十七年では十二万七千トン
生産しておる。これを六十年には四十二万七千トンとろう。ですから、自給率が食用だけにすれば、二〇%のものが六〇%になる、こういうことでありますけれども、あるいはまた、食用油を含めた量からいくと三百九十九万三千トンですか、国内で消費している、四十七年度は。これが六十年度では五百五十四万三千トン。それにしましても一一%の自給率が一三%になるから、こう言うのでありますけれども、需要全体からいくと三百九十九万トンが五百五十四万トンになる。自給率がわずか一、二%上がったって、逆に輸入量は百万トンもふえるのです。麦だって同じことなんです。麦だって——こういう需要と
生産の
長期見通しなんていうもので甘んじているということは、私は、本当に真剣に
食糧自給ということを考えているのかということを疑わざるを得ないわけでございます。麦にしましても、御承知のように、いま四十七年で見ますと七百二十一万トン、総計で七百二十一万トン。これが、六十年では八百四十万一千トン。国内自給を六十万トンから百四十四万トンにする。したがって、自給率を八%から一七%に上げる。それで満足しておられちゃ困るわけで、率は上がっても、外国から買う量というのは、逆にまたこれに百万トン近いものが多くなる。果たして、こういうものが輸入できるかどうかということになると、私は問題であろうと思うのです。そういうことを考えますと、何としても豆なりあるいは麦というものを国内で自給していかなければならない。ところが、自給できないかどうかというと、私はできると思う。いまのように百四十キロや百五十キロとっているのではなくて、もうすでに三百キロはだれでもとれるのです。五百キロもとれる。五百キロもとるならば、豆で七百二十七万トンですから、これは五百キロですと十四万ヘクタールあればいい。十四万ヘクタールの水田に豆を植えてもらえばいいのです。しかし、そう言ったって、米と同じような収入がなければ植えない、こう言うでしょう。転作がみんなそうです。ところが、豆はいま約一万円ですか、七俵とれれば七万円。米だっていま一万五千円、八俵とって十二万円ですから。ところが、その
生産費というものは、これはやっぱり
農林省の統計で見ればすぐわかるのです。私は統計見なくたってわかっているのだけれど。
生産費が、米ですと大体四万か四万五千円ぐらいでしょう。総所得にして七万五千円か。ところが、豆五俵とれば五万円。それに補助金五万円くれるなら十万円。ところが、
生産費は、豆は二万円ぐらいになる、上がる。労働時間は、十アール当たり米は約八十時間から九十時間、豆は三十時間かかる。岩手のあるところでは、せっかく改善したけれどもたんぼにできないというので、いま豆をつくろうという
計画をして、去年十一町歩ほどやったというのですが、その結果が、
農林省の
農政調査委員会で、こういうふうにちゃんと報告が出ていますね。これだと、五時間か六時間で一反歩豆をつくるという、いろんな機械を設備してやれば。そうすると、反収、反の所得から言って、あるいは労働報酬から言ったって、これはもう米の何倍にも労働報酬が当たるのですよ。こういうことをやりようによってはできるのです。麦だって、そのとおりなんです。麦だって現在二百何十キロですか。ところが、麦の収量というものはそれじゃ、どれだけとれるんだということになると、ちょっとやれば千キロすでにとっている。一トンとっている。最高どれだけとれるかというと二トンはとれる可能性があると、こう言うのです。こういう本にちゃんと書いてあります。これ、私の言うだけでなく、こういう本もぜひ、
農林省の方々は、専門家もおられるわけですから、読んでいただきたい。麦の収量はどの程度上がるかというと、麦作競作会というのを
皆さんの方でやっていますが、千キロはすでに実績は出ています。最高二千キロぐらいまでは可能だと書いてあるんですよ。ただ、これをやらせないのだ。
農林省のいままでのやり方は、麦をつくらない、豆をつくらないような
政策をやってきたから。米のように全力を挙げて増産しようという態勢をつくったならば、麦は千キロとれます。豆だって千キロとれます。そうなると米以上に有利な作物なんです。麦千キロつくれば国内で消費しているものは七、八十万ヘクタールあればできるんです。裏作可能な地、それぐらいありませんか。そういうことをぜひ——大変これは講義になってなんですけれども、よく御
検討を願いたいと思いますが……。
それにつけましてもやはり技術というものをもう少し真剣に考えてもらわなきゃならない。技術革新というものをやってもらわなければだめなんです。物をつくることを知らない人が
農政ばかりやろうとしてはこれはだめなんだ。やはり物をつくることが先決ですから、もっと技術者というものを優遇してもらわなきゃならない。今日、豆づくりの試験場の技術者なんて、日本じゅうに何人いますか、幾らもいないでしょう。麦だって、
昭和の初め始めたのをやめてしまったから、もう今日のような状態になっている。ですから、どうぞひとつこの技術をもっと真剣に取り上げて、そして品種改良あるいは優秀な栽培技術の組み立て、それの普及、こういうものをぜひやってもらいたいと思いますが、
大臣の所見をひとつ伺っておきます。