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国務大臣(
安倍晋太郎君) 米は、これは何と言っても
国民の主食でありますし、
農家にとりましては最重要な
農産物であることは間違いはないわけであります。したがって、これまで政府といたしましても、
農政の米
対策が最重要課題として
生産対策等については力を尽くしてまいったわけですし、あるいはまた、
国民の食糧確保という点からも在庫の積み増し等も行ってまいりました。去年の暮れには百万トン、ことしは百五十万トン、これがオーバーして二百三十万トンになるわけですが、とにかく在庫の積み増しも行ってきた、あるいは消費拡大ということにもいま力を注いでいるわけでございますが、そうした米
対策を進めながら今日の米の
需給事情はどうかというと、非常な過剰な基調にあることはこれはもう事実であります。そして今日は、
生産調整等で米以外のこれから増産させなきゃならない
農産物の
生産対策等にも力を注いでおりますし、あるいは開田抑制策等もとっておるわけでございますが、しかし一面においては自己開田等も非常な勢いで進んでおる。こういうことで、ことしの十一月には二百三十万トンの在庫の積み増しが出ると。私たちは、これは三年計画ぐらいで二百万トン持ちたいと、まあ二百万トンが限界であると考えております。それが、ことしの十一月にはすでに二百三十万トンになるというような過剰の状態であります。そうしていまの情勢から見ると、さらにこれは過剰の基調というものは進んでいく可能性があるわけでございますから、これを私は非常に一面においては憂えておるわけでございます。四十二年のときの米を
生産しなきゃならぬ、増産しなきゃならぬという背景のもとでああいう
算定方式がとられて、そして
米価が決まったわけであります。その後の米は非常な過剰の中に入っていきまして、ついに
米価は三年間据え置かなきゃならぬという事態になったわけでありますし、あるいは
食管制度そのものの存在が問われるというような議論も起こったわけであるわけでございます。そういうようなことを考えますと、やはり米というものは大事な
農産物でありますが、やっぱり
需給の均衡をとりながら適正な在庫を持っていく、これがやっぱり必要なことであって、過剰が続いてということになると、せっかく大事な
食管制度そのものまでがおかしくなる。そして、この水田総合
利用対策といった米以外の新しい
農産物の
生産をしなきゃならぬということまでができなくなってしまう、こういうことを私は総合
食糧政策を進める見地からも非常に心配をいたしております。そうしたいわゆる米の今日の過剰の基調というものも
米価を決定する上においては、
経済事情の中にあってこれをやっぱり配慮しなきゃならぬわけでありますから、
米価の決定に当たりましては、これはもちろん
生産費所得補償方式によりまして再
生産は確保するということは大前提でありますからこれはやらなきゃなりませんが、これ以上
生産刺激的な
要素を加えるということにはやっぱり私は問題があるのじゃないか。そういうことをいろいろと勘案して、今回の
米価というものはとにかく再
生産は確保できる、今日の米をめぐる情勢から見て合理的なものであるというふうに私は考えております。
なお、米の逆ざや解消ということも私は大きな
政策的な見地からこれを進めておるわけでございまして、昨年は
逆ざや不拡大の線を貫いたわけでございます。その結果として、本年度の
予算を見ていただいてもわかるわけですが、相当
予算的な面においては
農政全体では前進したと思っておりますし、いま米の
売買逆ざやだけで五千億、政府の管理
経費、人件費等を除いて五千億あるわけでございますから、それはある意味においては
農林省予算、
農政全体の中の一つの重荷にもなっていると言ってもいいのじゃないか。ですから、これは
財政という問題じゃなくて、
農政の問題からこうしたやはり逆ざやをできるだけ解消して、そしてそれだけの余裕をこれからやはりやらなきゃならぬ
基盤整備がうんとおくれているのですから、あるいはその他の重要
農産物をつくって、いかなきゃならぬいろいろな諸施策を講じなきゃならぬわけであります。麦価もことしは一万円麦価ということにいたしたわけでありますし、そういうものを積極的に進めていくためにはそれだけのやっぱり
予算というものを獲得しなきゃならぬ。それには、やはり逆ざやを縮小しながらそういう
方向に持っていかなきゃならぬというのが私の基本的な
考え方で、これが全然
大蔵省の
財政的な見地からやっておるわけじゃなくて、
農政をこれから進めていく上においてこれはどうしてもやらなきゃならぬ仕事であるというふうに考えて取り組んでおるわけでございます。