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政府委員(
貞家克己君) 教科書訴訟と長沼ナイキ訴訟と大阪国際空港訴訟でございますか。
まず、教科書検定訴訟から御
説明いたします。教科書訴訟には二つございます。第一次訴訟といいますものと第二次訴訟と申しますのと二つございます。第一次訴訟は、文部
大臣が家永三郎教授の著作にかかる歴史教科書につきまして、昭和三十八年に検定不合格処分、昭和三十九年に条件つき検定合格処分をしたのでございますが、家永教授が、検定制度自体が違憲、違法であるという理由で、昭和四十年五月に国に対し百万円の損害賠償を求める訴えを提起されたのでございます。この訴えにつきましては、まず昭和四十九年七月十六日に東京地方裁判所におきまして教科書検定制度自体は合憲であり、合法であるけれ
ども、先ほど申し上げました条件つき検定合格処分の中に、文部
大臣が不適切であるといたしました若干の個所に、一部裁量権の範囲を逸脱した不当な点がある、違法な点があるという理由によりまして、国に対して金十万円の慰謝料の支払いを命じた
事件でございます。この判決に対しまして、家永三郎教授は、裁判所の憲法
判断に誤りがあるといたしまして控訴をいたしました。国におきましても、この若干の部分に文部
大臣の
指摘に違法な点があるという点に不服があるといたしまして、付帯控訴をいたしまして、現在東京高等裁判所で審理中でございます。
次に、第二次訴訟でございますが、これは行政訴訟でありまして、原告が家永三郎教授、被告が文部
大臣で、検定処分の取り消し請求
事件でございます。この訴訟は、やはり同じく家永三郎教授の著作にかかる歴史教科書の改訂検定申請について不許可処分を昭和四十一年に文部
大臣がいたしましたのに対しまして、家永教授が、検定は憲法二十一条の表現の自由等に違反すると、したがって検定制度自体が憲法違反であるというような主張をいたしまして、検定申請不許可処分の取り消しを求めている
事件でございます。この
事件につきまして、東京地方裁判所は、昭和四十五年七月十七日に判決をいたしました。これは俗に杉本判決と言われるものでございますが、この判決は、教科書検定における
審査は、教科書の記述内容の当否にまでは及び得ないものであるという
判断をいたしまして文部
大臣敗訴、つまり検定処分取り消しの判決を言い渡しました。そこで、文部
大臣はこれを不服といたしまして控訴いたしました。その結果、東京高等裁判所は昨年の十二月二十日に判決をいたしましたが、この判決は、第一審判決の憲法
判断が不要の
判断をしたもので、その点は失当であるといたしましたが、検定申請に対する不許可処分が行政の一貫性、安定性を欠いて違法であるという理由を掲げまして、検定制度に対する憲法
判断はいたしませんで、文部
大臣の控訴を棄却するという判決を言い渡したのでございます。これに対しまして文部
大臣は、改訂検定制度の
趣旨等の
判断を誤って、その結果結論が誤ったというふうに考えまして、昨年末に上告をいたしまして、これは最高裁判所に係属中でございます。
次に、長沼ナイキ訴訟でございますが、これは非常に有名な訴訟でございますのでごく簡単にさせていただきたいと思うのでございますが、これは原告が二百七十名ばかりになります北海道夕張郡長沼町の
住民でございます。被告が農林
大臣でございまして、保安林解除処分の取り消し請求を求めている
事件でございます。この
事件は、昭和四十四年の七月七日に農林
大臣が長沼町にあります国有の保安林約三十五ヘクタールにつきまして、航空
自衛隊のナイキ基地設置のために保安林の指定を解除いたしました。ところが、それに反対する原告らの
地元住民が、この保安林指定解除の取り消しを求めている
事件でございます。この
事件におきましては、
自衛隊のナイキ基地の設置が森林法二十六条に言います公益上の理由に該当するかどうか、保安林の指定解除は、保安林の機能を維持するに足る代替
施設設置後にされなければならないかどうか、
本件の解除手続に瑕疵があるかどうかというような点が主要な問題となって争われましたが、第一審の札幌地方裁判所は、これは御
承知のとおりだと思いますが、憲法九条の解釈を打ち出しまして、現在の陸上、海上、航空各
自衛隊は、いずれも憲法九条二項に言う陸海空軍に該当して違憲であるということから、保安林解除の目的が憲法に違反するものである以上、森林法に言う公益上の理由には当たらない。したがって農林
大臣のいたしました
本件の保安林の解除処分は取り消しを免れないという結論をいたしまして、原告勝訴の判決をいたしたわけでありますが、これに対しましては、国側が原判決は憲法の解釈を誤ったものであると主張いたしまして、直ちに控訴をいたしました。そこで札幌高等裁判所におきまして、昭和四十九年の七月から九回にわたる口頭弁論が開かれたのでございますが、去る三月十二日に弁論が終結されまして、八月五日に判決言い渡しの予定でございます。
次に、大阪空港の訴訟でございます。これは第一次から第四次までありまして、第一次から第三次までの訴訟が現在最高裁に係属しておりますので、それについて御
説明いたしますと、これは大阪国際空港の周辺に居住いたします原告ら二百七十名ばかりの者が国を
相手にいたしまして、大阪空港を午後九時以降翌朝七時までの間、航空機の離発着に
使用させてはならないという、いわゆる飛行場の供用差しとめの
命令と、並びに航空機
騒音等による過去及び将来にわたる損害の賠償を求めている
事件でございます。
本件につきましては、昭和四十九年二月二十七日、第一審の大阪地方裁判所におきまして、国一部敗訴、原告の請求一部認容という判決がございまして、午後十時から翌朝七時までの
使用を差しとめる。それから尉謝料といたしましては、過去の分につきまして一人最高五十数万円から最低九万円程度の損害賠償を
認めました。ただ、将来の請求は
認めないという判決をいたしました。この判決に対しましては、原告の
住民並びに被告国、
双方がこれを不満といたしまして、大阪高等裁判所に控訴いたしました。大阪高等裁判所は、昨年の十一月二十七日、判決を言い渡しました。その内容は、一審の原告らの請求をおおむね全面的に
認める国敗訴の判決でございました。内容といたしましては、午後九時から翌朝七時までの飛行場の
使用の差しとめ、それから各人につきまして最高百数十万円から二十万円程度の損害賠償を
認めたわけでありまして、なお将来の分につきましても月幾らずつというような割合で将来請求をも認容しているわけでございます。これに対しましては、国はこの判決には法律上さまざまの問題点があるということ等考えまして上告手続をとりまして、現在最高裁判所に係属中でございます。
以上でございます。