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1976-05-20 第77回国会 参議院 逓信委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月二十日(木曜日)    午前十時二十六分開会     —————————————    委員異動  五月十九日     辞任         補欠選任      安田 隆明君     細川 護煕君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         森  勝治君     理 事                 長田 裕二君                 西村 尚治君                 最上  進君                茜ケ久保重光君     委 員                 川野辺 静君                 郡  祐一君                 迫水 久常君                 新谷寅三郎君                 高橋 邦雄君                 棚辺 四郎君                 案納  勝君                 川村 清一君                 森中 守義君                 藤原 房雄君                 山田 徹一君                 山中 郁子君                 木島 則夫君                 青島 幸男君    国務大臣        郵 政 大 臣  村上  勇君    政府委員        郵政政務次官   羽田  孜君        郵政大臣官房長  佐藤 昭一君        郵政省電波監理        局長       石川 晃夫君    事務局側        常任委員会専門        員        竹森 秋夫君    法制局側        法 制 局 長  杉山恵一郎君    説明員        法務省矯正局教        育課長      小野 義秀君        法務省保護局総        務課長      横山精一郎君        文部省社会教育        局視聴覚教育課        長        稲垣  守君        厚生省社会局庶        務課長      北村 和男君        郵政省電波監理        局放送部長    鴨 光一郎君        労働省職業訓練        局管理課長    中野 光秋君    参考人        日本放送協会経        営委員会委員長  工藤信一良君        日本放送協会会        長        小野 吉郎君        日本放送協会副        会長       藤根井和夫君        日本放送協会専        務理事      藤島 克己君        日本放送協会専        務理事      野村 忠夫君        日本放送協会専        務理事      坂本 朝一君        日本放送協会理        事        山本  博君        日本放送協会理        事        川原 正人君        日本放送協会理        事        堀 四志男君        日本放送協会理        事        中塚 昌胤君        日本放送協会理        事        橋本 忠正君        日本放送協会経        理局長      堀場 仁徳君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 森勝治

    委員長森勝治君) ただいまから逓信委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  安田隆明君が委員を辞任され、その補欠として細川護煕君が選任されました。     —————————————
  3. 森勝治

    委員長森勝治君) 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 案納勝

    案納勝君 私は、ただいまから提案をされております日本放送協会の五十一年度収支予算について質問しますが、十八日以降、同僚議員から主要な問題については質問されました。ただ、中身の解明についてまだ不十分なものがあります。したがいまして中には重複する部分もあると思いますが、特にNHK基本にかかわる問題、財政予算事業計画にかかわる問題に分けて、まず第一は基本問題であります。  去る十三日、小野会長から五十一年度の収支予算等について説明を受けました。その中で、会長は広く聴視者意向を吸収した上で、今後三年間の経営を見通して、公共放送としての協会社会的使命を果たすため、やむを得ず受信料値上げ提案をした。また協会事業基本的性格を一層強く自覚して、聴視者——国民ですね、国民意向を吸収し、すぐれた放送を実施し、その使命責任を果たすために努力をすると述べられております。  しかし、口先だけで美辞麗句を並べられても、私は、国民は納得をしない。いまNHKはきわめて重大な段階にあると同時に、国民口先だけのそういうものでなくて、実態は果たしてどうかと敏感に反応している。現在、受信料予算が上程されているだけに市民の中の反響は、また問題意識は、論議はきわめて大きく行われている。ここで、私は、NHKの今回の審議に当たってきわめて重大なことは、NHK経営危機が単なる財政上の問題にとどまらない。NHK国民放送局としてどうあるべきかというきわめて重大な問題にかかわっている。きのう公聴会を開きました。これらの公聴会の中の参考人すべてが、実は、そこに焦点が合っているのです。  私は、したがってそういう立場から、会長が言う社会的使命とは何を言っているのか。NHK事業基本的性格とはどう理解をされているのか。そうして理事者としてNHKの持つ機能、性格使命というものを考えた場合に、その姿勢はどうあらねばならないと考えられているのか。今日、NHKの置かれている立場についての現状認識をどのように理解をされているのか、まず、ここからお伺いしたいと思います。
  5. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) きわめてNHK根幹に関する御質問でございます。  私は、過般、五十一年度の予算案を御審議いただくに当たりまして提案趣旨を御説明を申し上げました。その中に、ただいま御指摘のような表現をとりましたことは事実でございます。NHKが果たさなければならない社会的使命は、これは申すまでもなく、国民のために、国民によって支えられておる経営基盤でございます。しかもNHK社会公共福祉増進のために尽くさなければならない重要な使命を持っておると思いますので、そのような重要使命にかんがみまして、公共福祉増進国民の幸福、繁栄、これに寄与できるようなサービスを提供いたしますことが社会的使命ではないかと、私はそのように理解をいたしております。  また、NHK基本的な性格といたしましては、そういった社会的使命を果たすために国民要望を十分に取り上げて、国民に親しまれ、愛される事業体でなければならないと私は強く痛感をいたしておる次第でございまして、そういったような見地から、現在のNHK現状を見ますと、ひとり財政の問題ばかりではなく、NHK経営姿勢自体が非常に問われる重大な試錬の関頭に立っておると思います。そういう際でございますので、ただいま申し上げましたような社会的使命の完全な完遂と、基本的な性格についての認識を誤りなく堅持いたしまして、国民の負託にこたえていかなければならないものと考えております。
  6. 案納勝

    案納勝君 いまの小野会長社会的使命基本的性格、そしていま置かれておる現状認識、私は果たして小野会長最後に言われたNHKの置かれている現状認識というものを本当に真剣に考えておられるのか疑わざるを得ない。  一月の二十三日に、あなたは朝日新聞NHK問題をめぐっての料金値上げについて記者質問に答えて、これは四ページに解説として相当大きな見出しで問答が載っています。ところが、この中で言われているのは、いまNHKがその社会的使命基本的性格国民から問われているこれに対して答えるというのは何もない。言われているのは財政上の危機だけだ。私は、ここに、昨日の参考人意見聴取の中にもありましたように、いまNHK自身理事者側経営姿勢というものは、いまさまざまな新聞マスコミあるいは雑誌等指摘をされて、国民の中に大きな問題を提起をしている。あなた自身責任の中でそういう問題が提起をされてきていると思う。私は、そういう意味では、いま小野さんの言われる言葉だけじゃなくて、いまこそ実際の行動実践を通じて国民の前に明らかにすべきときだ、その点を私はまずいまの御答弁の中で感ずることについて指摘をいたしておきます。  次いで、私は、いまあなたが御答弁をされましたことについて関連をして質問をいたします。社会的使命とは、国民のための、国民に支えられたNHK基盤だと。これは受信料方式によって権力介入を排除して国民の側に立ち、国民の最も近いところに立って国民福祉増進する。私はこれについて一番必要なのは、今日における日本民主主義というものについて、主権在民ということを頭にした憲法をまずNHK実践をするという立場になくちゃならぬ。私は、昨年五十年の予算審議のときに、あなたに、この民主主義基本的理念をあなたはどのように理解をされてNHK運営を行おうとしているのかと御質問をいたしました。この質問に対し、あなたも幾つかの諸点について御答弁をされましたが、今日でもこの見解は変わらないのか。NHK国民の支持を得られるかどうかは、NHKが内外において民主主義的経営を貫くとともに、国民意見要望を受けとめていくという、私はそこに組織が成り立つかどうかがかかっていると思います。その姿勢がなければ、あなたたちの手によってNHKは崩壊をたどる以外道はない。私はこれらについて、あなたの民主主義原則というもの、これをどのように理解してNHK運営に生かしてこられているのか、また生かそうと考えられているのか、もう一回繰り返し、私は昨年のように多く論議しようと思いませんが、明確にこの時点でしておきたい。
  7. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 昭和五十年度の予算の御審議の際に、同様な御質問を賜りました。私は、そのときにお答えをいたしました気持ちはいまも変わっておりません。  民主主義は、国家形態で言えば主権在民国家体制でございます。現行憲法もそのことを非常に高らかにうたっております。やはりそういった憲法のもとにおきまして、この民主主義の成果が十分上がりますように私どもは努めてまいらなければならないと思います。民主主義根幹は、何と申しましても個人尊厳最大限に尊重されなければなりませんと同時に、個人の自由は大きく最大に守らなければならないものと考えております。しかも、その間に、多数意見の中には少数意見もございますけれども、これをネグレクトするようではいけないのでありまして、これもその趣旨は十分に尊重をしてまいらなければならないものと思います。もちろん、ある一定の方向づけにつきましては、意見が分かれます場合に全体の意見結論として満足させることはできない場合もありましょう。その場合は民主主義原則に従いましていわゆる多数の原理が働くわけでございますけれども、根幹には個人尊厳が十分に尊重され、個人の自由が最大限に保障されるところにあると私は今日でも理解をいたしております。
  8. 案納勝

    案納勝君 私は、いまの小野さんの答弁が間違いだとは思いません。しかし、私は大事なことが欠落をしておるように思う。  それは、私が五十年に申し上げましたように、民主主義を継承、発展をさせるという、そのためにこそNHK存在理由がある。これを前提にして、民主主義というのは国民参加による主権在民政治だと。そしてそれは、NHKが置かれているのは、国民の中で国民の手によって構成される放送局のあり方としては、公的な権力介入を排除して、不偏不党はもちろんのこと、言論の自由、表現の自由、真実の報道、そして自律性、その保障、こういうものの中で、できるだけ権力の側から遠ざかって、額に汗を流して働く国民の側に立ってNHK運営をしていくという、そういうことが民主主義の擁護、発展をさせる、もって具現をする私は現実的な実際的な行動につながってこなくちゃならぬ、こういうふうに指摘しました。あなたのお気持ちいかがですか。
  9. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) まさにお説のとおりでございます。私もそのとおりに理解をいたしております。
  10. 案納勝

    案納勝君 それでは具体的にお尋ねします。まず、最近、NHK報道に対して政権与党であります自民党の中で、その偏向の攻撃や圧力がかかっているというニュースが枚挙にいとまがありません。マスコミを通じてそれらが国民の中に大分もう入っていますから、きわめてにぎやかしくなっています。そのように最も政権に近い、政権政党である与党からの抗議が行われておるというこの事実について、あなたはどのように理解しますか。
  11. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 私は、新聞紙上等におきまして、そういった事実が存在したことは承知をいたしております。しかしながら、これがNHKとのかかわり合いにつきましては、全然、それによって権力介入があったとは私は考えておりません。
  12. 案納勝

    案納勝君 新聞紙上で事実が存在したことは知ったが、権力介入はない、こういう答弁ですね。  新聞によりますと、四月の十六日付で、自民党総務会中曽根幹事長玉置委員の主張に対して善処をする、こういうふうに答えられたと伝えられております。善処ということは常に政治の場にはあります。表で見えないようにして協会に何らかの圧力がかかる、こういうことが徐々にしてあるものです。何らかの圧力が加わったということはありませんか。
  13. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) そういった事実はございません。新聞紙上等によりますと、中曽根幹事長もいろんな意見を受けられて善処すると、こう言われたようでございますけれども、その善処具体的行動NHKに関する限りは皆無でございました。
  14. 案納勝

    案納勝君 それじゃ、あなたはこの問題で自民党の役員の皆さんに呼ばれて、あるいはNHKの幹部の皆さん理事者の方、これらの問題で話し合われたことがありますか。
  15. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) この問題につきまして私が呼ばれたこともございませんし、こちらから参ったこともございません。他の理事にしても同様であると思います。
  16. 案納勝

    案納勝君 一応、この程度にとどめておきますが、次に進みます。  同じく毎日新聞によると、四月の十三日の自民党総務会で、十一日の朝六時のニュースでピーナツを食べた政府高官名を二十八名並べたのはけしからぬ、こういうように宮崎氏が主張されたと書かれています。NHKニュース放送した原稿はそのとおりですか。
  17. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) いま先生は十一日の午前六時にという御指摘でございましたけれども、事実は、午前七時のニュースでございまして、これは共産党上田耕一郎政策委員長記者会見をいたしまして、そして共産党としてはということで記者発表がございました。その記者発表中身上田耕一郎政策委員長共産党独自調査新聞週刊誌などのマスコミ報道を手がかりにまとめたものとして記者会見で発表したという、そういうクレジットをつけまして放送したわけでございます。  その放送した中身は、例のロッキード問題で疑惑を持たれている政府高官の二十八名の方のリストを明らかにしたという趣旨のことでございまして、最後共産党はこれら二十八人の中には潔白な人物が含まれているかもしれないが、日本の国益と民主主義を守るためにもあえて疑惑指摘したいと、こう言っております。しかし、このリストは大部分がこれまで疑惑指摘した新聞週刊誌などマスコミ報道が裏づけとして引用されているだけに、名前を挙げられた関係者からの強い反発が出るのは必至とみられます、という言葉で結んだニュースでございます。
  18. 案納勝

    案納勝君 それじゃ私もここへ持っていますが、事実と新聞報道の中で指摘をされたものとは違いますね。なかんずく、あなたもお読みになったかもしれませんが、これも情報収集という意味であり得ると思います。過般の自民党の「自由新報」には問題のニュース放送されるまでの経緯について長々と説明されています。あなたも御存じだと思いますが、御存じなければここで読み上げてもいいんですが、この中には、一部偏向派が強行したものと書かれております。あなたは、そういう事実がありましたか、どういうように理解されますか。
  19. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 「自由新報」の記事を正確に記憶いたしておりませんけれども、たしかそのいま申し上げましたような主題に対して上田耕一郎政策委員長記者会見だということであれば、発表して、放送してしかるべきであろうという結論が部内で出たにもかかわらず、それが、十一日の朝、上司のいないときに放送されたということは一部偏向があったんではなかろうかというような、そういう疑問符のつけられた記事ではなかったかと記憶しておるんでございますけれども、日曜日といえども責任者はおりますし、そういうようなことで放送をされたという手順ではございません。
  20. 案納勝

    案納勝君 次に移ります。  また、小川半次氏が「CIA自民党資金を流したという報道についても、幹事長米側抗議したのに、前段ばかりを強調してわが党の抗議を必要以上に小さく扱っていた。」と、そういう事実がありますか。
  21. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) CIAニュースにつきましては、四月二日の午後の七時のニュースの時間に放送したんでございますけれども、これはアメリカ週刊誌の「ニュー・リパブリック」と、それから「ニューヨーク・タイムズ」が二日にそろってロッキード事件の黒幕の児玉譽士夫CIAの密接な関係を暴露して、CIA秘密資金日本の政界に流れていた疑いを強く示唆する記事を掲げたということで、その中身放送したわけでございまして、なお、その週刊誌の「ニュー・リパブリック」の方はワシントン発共同ということで報道いたしておりまして、これは戦後の児玉のいろいろな事項に触れまして、それが言ってみればアメリカのいわば政府を揺るがすようなことになるんではないか、そしてアメリカがむしろこの暴露を非常に恐れているというような、アメリカにポイントを置いたような形での記事のようでございました。それからもう一方の「ニューヨーク・タイムズ」の方は、NHK日高特派員アメリカの「ニューヨーク・タイムズ」に市内版で一面のトップで伝えておるという、大体、同工異曲のニュース報道してまいりました。  そして、これに対しては関係者から反論がございまして、その反論も同時に放送いたしておりまして、それから翌日、自民党中曽根幹事長がその記者会見で「ニューヨーク・タイムズ」がああいう報道を流すというのはけしからぬ、これは全面的に否定する、そしてこのCIAというのはアメリカ政府機関でもあるから外務省とも相談して無責任報道が行われることのないよう、アメリカ政府に対して適当な措置を要請することも考えている、という自由民主党の中曽根幹事長の談話を発表いたしたわけでございます。
  22. 案納勝

    案納勝君 それじゃ、そういう事実はないということですね。  もう一つお尋ねします。また、同じく、来日をしましたマルシェ共産党書記長緒方解説委員長がインタビューした番組です。これも問題があったと聞いていますが、これはどういうことですか。
  23. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) マルシェ共産党書記長放送は四月の十一日の日曜日の夜のNHKニュース展望」という時間で緒方解説委員長との対談という形式放送したわけでございますが、「ニュース展望」という時間は、その週間のいろいろハイライトと申しますか興味のある出来事と申しますか、そういうものを中心に内政、外交、経済にわたりまして解説委員が必ず出席いたしまして、そしてその道の専門家等のゲストを呼んで対談ないしは鼎談というような形で放送する、そういう形式番組でございまして、たまたまこの期間にマルシェ書記長が来日されましたので、マルシェ書記長にその所感を伺った。  その中身は、マルシェ書記長フランス共産党プロレタリア独裁というようなことは放棄するんだというようなことと、それからフランス共産党政権を取っても野党の存在を認めるんだというようなこと、それからフランスにおいてもだんだんそういう機が熟してきているんだというような一般的な対話と申しますか、そういうものが交わされましたのを放送した次第でございます。
  24. 案納勝

    案納勝君 いま一連の質疑のやりとりの中で、たとえば冒頭申しました「赤旗」の記事政府高官二十八名ですね、あるいはいまの質問をしたマルシェ仏共産党書記長等の問題あるいはCIA問題、自民党から指摘をされている問題についてその事実がない、こういう答弁であります。たとえば公正な報道機関として、逆に裏返して見て、自民党の「自由新報」では今日の課題についてこういう報道がなされたということは私は報道の場合にあり得ると思います。どの政党であろうと政党の動きを報道する場合、客観的にそういうことがあり得る。そういうことがいま事実がないのに、この程度文句がつくということは、また文句がつくとすれば、私はNHK独自性編集権は一体どうなるかという危惧を持たざるを得ないのであります。NHKは今日までの態度をこれらについて毅然として持ち続ける、こういうふうにあるべきだと思います。  私がなぜこういうふうに指摘をしているのかと言いますと、これは与党先生方もお聞きをいただきたいのですが、報道機関報道というのは、民主主義社会の中において国民国政に関することにつき重要な判断の材料を提供するものです。国民国政参加をする、これは民主主義原則であります。国民の知る権利に奉仕するものであるんです。この民主主義の根源であるこの報道の自由に対して、今日までの歴史を振り返ってみるときに、表現の自由、そしてその一環としての言論の自由が常に安泰であったということは言い切れないのであります。むしろ絶えず危険にさらされてきているというのが今日までの歴史が物語っているところなんです。しかも、その危険にさらすものは何かというと国家権力なんです、常に。専制政治強権政治、ファシズム、それにつながる全体主義あるいは軍事政権、こういうものが国民民主主義を破壊をして政治を壟断ずるときに、あるいはそういう傾向が出たときに、言論の自由というのは権力の側から侵されてくるんです。  だから、私がここで指摘をしているのは、それぞれ言論の自由が民主主義では保障されていますから、意見批判があるのは結構です。しかし、権力に最も近いそういう場において私はその行動は最も慎まなくちゃならないことだと思うんです。ましてやNHKという、国民機関として、国民放送局として成り立っているNHKに、民主主義発展をさせる立場での政党が、政権政党が、これに対してくちばしを入れることについては、あるいは事実ではない批判をすることについては、きわめて重大な結果をもたらすことを私は知らなくちゃいかぬと思うんです。  いま、最近、一般の商業新聞国民の前にこういうことが言われている、報道されているんです。「またまた政治権力によるマスコミの赤狩りが始まった。またまた、というのは、権力が重大な危機に直面するたびに必ずといっていいほど反復してきた、お定まりのパターンだからである。その毒牙の餌食になったのは、わが国最大マスコミにふくれあがったNHK。ひとしきり大騒ぎしたあげく、結局はウヤムヤに終わってしまうに違いない。だが、そんな表面とはうらはらに、毒牙の毒はNHKの体内全体に深く静かに潜行する。そして、その体質をいよいよ蝕むのである。問題はそこにある。」と指摘をしています。これはある週刊誌です、多くの国民が読んでいる週刊誌です。私はこのことを憂慮するんです。だから、そういう面で、私は、NHKがこれらの問題について毅然たる態度を堅持をしていくという姿勢を貫くべきだ、その決意なしにはNHK自身の崩壊につながるということを強調しているんです。  そこで、私はもう一回進めて、NHK内部の問題について、私は質問に当たって二日ほどNHK内部についていろいろ調査をしました。その上に立って質問します。  まず朝日新聞には、そういう自民党総務会等の批判、要するに料金値上げ受信料値上げをえさにして、てこにして言論あるいは表現の自由、NHK偏向攻撃というものが行われているということに対して、小野会長以下幹部が連日議員の間を走り回っている、こういうふうに報ぜられています。予算承認を盾に注文をつけられて右往左往している。これは単に朝日新聞だけじゃありません、各社とも書いている。報道に報ぜられているのは、事実ですか。いわばそういうことが事実としてあるならば、私たちが一番心配する権力介入、こう言っても言い過ぎじゃないでしょう。その辺は小野さんどうですか。
  25. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) ただいま新聞紙上で言われておりますようないわゆる危惧と申しますか、そういうようなことは事実としては存在しておりません。  私どもといたしましては、民主国家の発展のためには表現の自由が最大限に保障されなければなりませんし、そのたてまえから現在の放送法も、放送事業に対しましてはどこからも干渉を受けない、規律されない、不羅独立の立場を保障されておるわけでございます。この貴重な立場民主主義の維持発展のために、これは民族の幸福と繁栄につながるわけでございますけれども、堅持しなければならないものと考えております。かたくそう考えております。  まあ新聞紙上でそのように言われますのは、時たまたま予算の御審議を受ける時期に際会をいたしておりますし、この予算が円滑に国会の御承認を得られるように努力することはこれまた当然でございます。そのような努力をいたしております行動が、たまたま、そのようないろんな批判の出ましたそういう時期と重なり合ったために、いかにもその批判におびえて右顧左べんしているように目に映ったかもわかりません。真実はそうではないのでありまして、私どもがいまの不鶴独立、報道の自由、これを守りますためにはいろんな批判もございましょう、これは民主主義の国家として当然だと思います。その批判の中で正しい批判にはこれに耳をかさなきゃなりませんけれども、不当な圧力批判等に対しましては毅然と対処しなければならないものと思いますし、この表現の自由、報道の自由を守り通しますためには、私は謙虚で信念を持って、勇気を持って守り続けなければならないものと考えております。
  26. 案納勝

    案納勝君 また、それはいまの小野さんの答弁の中でもうかがい知れますが、それじゃそういう事実はなかった、報道したことも間違いはない、批判もそれはいわれない批判だと、こういうふうに確信を持って編集権の自由を確保していく、そういうことですね。  私はもう一回聞きますが、電話で一斉に自民党先生方からNHKの幹部、知り合いのNHK首脳部に抗議があった、こういうことも聞いていますが、これはいかがですか。
  27. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 私の関します限りにおいては、そういうことは皆無でございます。
  28. 案納勝

    案納勝君 じゃ新聞に書かれている、新聞記者の人たちはうそを書いた。私は新聞記者の人たちはその事実に照らして公正な報道をするために日夜懸命に努力されています。私も敬意を表している。  会長ね、そういうところが会長の官僚的答弁といいますか、事実は事実と言った方がいいと思うんです。多くまた後ろがあるんじゃないか、やられているんじゃないか、NHKはそれについてたとえば予算を人質に取られたり、あるいは人事権の問題の揺さぶりがあって弱腰になってきているんじゃないかというのがいま国民最大の実は問題にしているところです。したがって私は聞いた範囲内においてもNHK内部に混乱があったことも知っています、このことを。その混乱がいろんな意見について、いわゆる従来の態度を毅然と守っていくための意思調整のための混乱であったかもしれません。しかし、事実、こういうことが一定の問題として行われたことは私は否定できない。ただ、行われても、それに対してどれだけ幹部が毅然たる態度をとれるか、そこが私は大事だと思う。  そこで私は次に進みますが、いま言った一連の問題が出た直後からニュースセンターでニュース担当の堀さんが、ここにおられる理事さん、編集会議で激しく報道管理体制の強化を指示したと聞いています。それは事実ですか、堀さん。
  29. 堀四志男

    参考人(堀四志男君) お答えいたします。  そういう事実はございません。ただ、私が客観報道として国民の期待に沿うようなニュースを出すのに、より一層の精励を求めたことは事実でございます。
  30. 案納勝

    案納勝君 小野会長がその際の編集会議で、この問題を小野さんからの指摘等もあって政治部長に説明を求めた事実は、堀さん、ありますね。
  31. 堀四志男

    参考人(堀四志男君) 編集会議と通常呼んでおりますものは、ニュースセンター内で毎日行われておるものでございます。それに私が出席したということは、ここ大分なりますが、ございません。しかし、編集長室においていろいろな話をする機会はございました。そのときに、ニュースが出た経過について、職務上、政治部長にその経過を聞いた事実はございます。
  32. 案納勝

    案納勝君 それは、堀さん、四月の十三日ですか。
  33. 堀四志男

    参考人(堀四志男君) はっきり日は覚えておりませんが、たしか火曜日ですから四月の十三日じゃなかったかと思います。
  34. 案納勝

    案納勝君 十三日火曜日ですね。
  35. 堀四志男

    参考人(堀四志男君) そうです。
  36. 案納勝

    案納勝君 十三日ですね。
  37. 堀四志男

    参考人(堀四志男君) ええ。十一日には、編集長とその問題について話し合いました。
  38. 案納勝

    案納勝君 四月の十四日、小野会長政治部長を呼んで、その事情を、説明を聞いたのか釈明を求めたのか知りませんけれども、そういうことはありましたか。
  39. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) これは私が聞きました。と申しますのは、その関係報道はすらっといっておらなかったのです。組織どおりにすらっといかなかったわけです。組織内に混乱がございました。  これはやはり管理は、もちろん会長があり、理事があり、その中にニュース関係についてはニュースセンター長、いわゆる編集長なる者があります。その編集長の下には副編集長が配置されております。そして各部に分かれて、政治部、社会部、整理部、経済部、こういうような部署がございます。その事件のそれは、通常で言えば、センター長と申しますか、編集長の総括のもとに、政治部は取材をし、整理部は選別をして、これを出す出さぬを決めると、こういうたてまえでございます。ところが、問題はそのたてまえのようにスムーズに動かなかったわけでございます。その間の事情を、私は、政治部長に聞く必要があるので呼んで聞いたわけでございます。
  40. 案納勝

    案納勝君 そこで、いま混乱があったというのは、これは行き違いがあったことなんですか、それともそういうものでなくて、もっと重大な混乱なんですか。
  41. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いろいろそのニュースについては、扱うべきでないという意見があり、扱うべきだという意見がありました。組織どおりにいけば、副編集長は扱うべきでない、これが最高でございます。編集長はそのときおりませんでした。そうして政治部はその取材に当たるところでございますけれども、これを出す出さぬを決めるのは編集部でございます。編集部は出すべきでないと判断をいたしました。政治部は、政治部が責任を持つから出せと、こういう混乱があったわけでございます。  これはやはり組織としては通常の流れではありません。整理部がそういう権限を持っておるところでございますけれども、そういったそれは、事柄がどうこういうことではなく、組織の流れとしてやはり好ましいことではございません。そういうことで、その辺のいきさつ、事情について私が聴取をしたということでございます。
  42. 案納勝

    案納勝君 それは、その記事報道そのものについては、私は先ほどから言うように、問題ないわけです。出す、要するに最終的な選択、評価はその内部で行われるでしょう。しかし、この報道そのものについては、先ほど私が申し上げたように、仮に自民党の「自由新報」の記事がこうだという客観的報道はあり得る。あるいは実際に報道されたような内容についての報道は、先ほどの答弁ではありませんが、問題はないという前提に立った上で、そのニュースの機構上の流れの中で事情を聞く必要があるというので聞いたと、こういうことですか。
  43. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) そのことを出したのが悪いという見地からは聞いておりません。ただ、組織は組織どおりに流れなきゃならないので、いわゆる組織で決められた流れがやはりそこの所定のとおりに流れなかったということは、今後、いろんな問題に関連をいたしまして非常に困ることになりますので、その間のいきさつも聞く必要があったと、こう判断をいたしました。
  44. 案納勝

    案納勝君 それで次にいきますが、あなたは、四月の二十八日の衆議院の逓信委員会で、志賀委員質問に答えて、今後の編集あるいは報道体制について「理事を陣頭に立てまして、これを中心に、あるいは報道解説、考査、これを一体として、いろいろ基本的」方向にそういったものを進めていきます、こういうふうに答弁をしておるわけですね。ここに言う「理事を陣頭に」ということは、これは堀さんのことを言っているんですか、いかがですか。
  45. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) そのとおりでございます。
  46. 案納勝

    案納勝君 これはいままでと違った体制ですね。新たにわざわざニュース理事がチェックするということですね。
  47. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) ニュースはチェックすべきものではないと思います。客観的に、あるものをあるがままに扱うのがニュースでございます。管理のしようはございません。ただ、いろいろたくさんのニュースがあります中で、一定の限られた時間内に出します場合に、何を先に出すべきか何を後にすべきか、この辺の選別は、これは常に必要でございます。
  48. 案納勝

    案納勝君 それはいつも理事がチェックしてこなかったじゃないですか。異常な状態になっているというふうに私は見ております。なかんずく、いまここで説明いただきたいのは、いままで、通常、ニュースはどういう流れでどのようになっていたか一回説明してください。記者から放送まで、考査室までの経緯。
  49. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 会長が御説明申し上げましたように、取材部の位置づけにございます政治部、社会部、経済部等の所属の記者が外部へ行ってニュースを取材してまいりまして、そしてデスクにそれを出します。デスクはその記者から出稿されましたニュースを見て、それで足らないところがあれば再度取材を命じたり、適当でないところがあればそこをチェックするというようなことをいたしまして、そして整理部に出稿するわけでございます。整理部は全体のニュースの流れの中でそれを取り上げるか取り上げないか、取り上げるとしたならばどういうオーダーで取り上げるかというような、そこにはどんなような写真を入れるかというようなことも整理部で判断いたしまして、そして整理部の責任放送をするという手順になっておるわけでございます。
  50. 案納勝

    案納勝君 私の方からもう一回繰り返して言いますから、間違いがあれば間違いがあると。  第一線の記者から通信部のデスクへ記事が送られる。このデスクで誤字、脱字あるいは表現上のものをチェックする。そして各出稿部デスク、そこで内容、表現についてチェックをして価値判断をして、その中で報道番組関係に回すもの、あるいは解説室へ回すもの等振り分けて整理デスクへ回される。ここで価値判断あるいはオーダー、分量の決定をして、それで放送に回される。その過程で、場合によっては整理部長——これは副編集長及び編集長の形で判断する場合もある。こういう流れになっていると私は理解します。そのとおりですか、間違いありませんか。
  51. 堀四志男

    参考人(堀四志男君) お答えいたします。  通常のルートはそういうものでございます。
  52. 案納勝

    案納勝君 通常のルートはこうで、今度は理事が陣頭に立ってということはいまだかつてない異常な状態だということではありませんか。この管理体制強化、これは自民党総務会指摘を受けて、その迎合及びそれにこたえて出てきた管理体制の強化じゃありませんか。  私の調査では、現在、ロッキード関係報道については従来と実態が違うようになっている、こういうふうに私は理解をします。現場では、いまロッキードニュースは堀さんの承認を得なければ放送ができないというんじゃありませんか。出稿部の各部長は毎夜遅くまで原稿が入ってくるのを待っていて、その都度堀さんに報告をして許可をもらっていると聞いています、直接。まさに従来のやり方と違った異常な状態でのやり方がいまここで行われているんじゃないですか。最近、ロッキード隠し問題というのが盛んに言われている。こういう姿勢が私はNHK姿勢の中で偏向攻撃と相まって出てきているというふうに理解しますが、どうですか、小野さん。
  53. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 理事はやはりただ遊んで上におるだけではございません。放送局長初め放送総局の副総局長理事、これはやはり番組関係についてはいろんな判断をするためにおるわけでございます。  ニュース関係には、まあいろんな権限の分配もありましょう。編集権会長にありということで会長が一切番組に全部タッチすることは物理上不可能でございます。そこにやはり権限の配分がなければ組織というものは動いていくわけではございません。そういうことでニュースは編集長が最高の責任者で、あとは理事も副会長も全然知らない、こういうようなことこそ私は国民の負託に沿い得るNHK姿勢ではないと思います。ただ通常はもう全部最高責任は編集長だと、あとの理事会長はロボットのように座っておりゃいいんだと、こういうことでは毛頭いけないと思います。  そういう意味で、陣頭指揮というのは、いろいろやはり編集長のところで迷いがあることもあります、どうすべきか迷う場合もあります。そういう場合にはやはりその上にある理事が指示すべきものと思いますので、その意味において堀理事を陣頭指揮に立てる、こういうことをいたしたまででございます。決して異例のものではございません。
  54. 案納勝

    案納勝君 理事というのが大所高所に立って、それがその流れについて、あるいは事業運営について目を通しながら関連をしていくというのは、その責任を果たしていくというのはいいでしょう。しかし、あなたが言う理事を陣頭に立ててという中で、現実に出稿部の各部長が原稿を持って堀さんの許可を得なければ流せないという、理事を陣頭に立ててというのはいままでと違った、通常の形と違った形が出てきたということを先ほど言われた。出稿から原稿に至るまで理事に回って、理事がデスクがわりを勤めるということじゃないですか。これはまさに大本営発表のいまやNHK版じゃないですか。いままでNHKにこういう事態、異常な事態がありましたか、こういうことがありましたか。私は聞いていません、この調査の中でも。この辺どうですか。
  55. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 過去の例を申しますと、安保の放送体制のときにはもっと厳密な体制をしいておりました。例がないわけではございません。今回は、それほどの問題ではございませんけれども、やはり編集長以下で非常に迷いを生ずる場合があるわけでございます。今回も、まさにそのような事例がありましたので、そういう場合にはやはり理事の判断を仰ぐべき必要もあるわけでございまして、その意味における陣頭でございまして、一切のそれを一々理事に聞かなきゃ出せないと、こういう体制にはなっておりません。
  56. 案納勝

    案納勝君 現場では、みんながこのチェックについて敏感に感じています。いままでの伸び伸びした——いままでというか、一番大事な職場の中で、あるいは第一線の記者の人たちが、自分たちはNHKという民主主義を守るこの機構を国民の側に立って最大限守っていくんだと、そういう信念で職員の人たちは働いていますよ、きのういろいろ言われましたが、私後ほど触れますけれども。  したがって、そういう伸び伸びして、しかも使命感を持って働いている、取材をしている第一線の記者の人たちの中で、こういうチェック機構が強まった、こういうことでそれらの意欲やあるいは気力というのが事実上めいってしまうというようなことになりかねない結果を招いているじゃありませんか。私は直接デスクの方に聞きました、最近の職員の間ではそういった萎縮した気持ちや自主性、創意性が規制される空気を敏感に感じているということについて。私は軽視できないと思うんです。だからNHK権力寄りじゃないか。偏向攻撃が始まって、先ほど、うやむやにされるかもしれぬけれども、中に毒が回っちまっているんじゃないか。小野さんは、ある新聞によると、田中前総理と大変親しい、そういうことが引用されてあなたの姿勢すら疑われる。まあ後ほど触れるけれども、専門懇の座長問題だって不見識と言えば不見識、そういう状態を、私はいまあなたが言う管理体制、理事陣頭というのが現出をしているんじゃないんですか。していませんか、担当理事の堀さんに。
  57. 堀四志男

    参考人(堀四志男君) お答えいたします。  私が陣頭に立つという意味は、先ほど会長がおっしゃったとおりでございまして、私はそういう精神を伝えて以後、幸か不幸か一度も編集長から相談を受けたこともございませんし、また現場の部長が直接私に原稿を見せ云々ということは全くございませんでした。ただ精神的には、やはりこれだけ大きな事件でございますので、広がる度合いに応じて責任ある報道をするためにはやっぱりしっかりした何といいますか、心構えで臨もうということでやっていることは事実でございますが、事実として、一々部長がそういうことをしたということは全くございません。これについて、夜間、電話を受けたことさえございません。  なお、現場が萎縮したということになりますと、これはわれわれの責任として、御指摘の点があれば十分反省し、伸び伸びとした、かつ自主的な取材が十二分にできるように配慮をいたしたいと思います。
  58. 案納勝

    案納勝君 私がいま指摘をしているのは、単にNHKのそういった人間の関係だけじゃないんです。ロッキード問題というのは日本民主主義根幹にかかわる。だから政府与党皆さんも私たちも徹底的に真相解明をしよう、でなければ政治不信がいまや国民の中にこれ以上高まったら日本民主主義は危ないと、こういうことで満場一致の決議にもなっているんですね。このロッキード問題の徹底的究明というのは私たちは最大の任務だと思う。これはNHKにとってもそうです、民放以上にNHKとしては必要なことです。  私はずっとNHKについて、逓信委員ですから、できるだけ見るようにしてきています。今日の段階、あるいはロッキード問題についても、二月から始まって今日までの間、一定の時点時点でその経過を振り返ってまとめたり、あるいは問題を掘り下げていく、国民に課題を提供する、そういう番組が私はNHKで必要じゃないんですか。ところが民放のそれ、あるいは新聞の今日取り上げられているロッキード問題等の記事、それに比較した場合に全く自主性がないというのか、積極性が見られないというか、私はそういった印象をぬぐい去ることができないんです。国会討論会や国会中継、ニュース解説を除いて、私はいまマスコミ新聞等のロッキード問題の資料については毎日のようにそれを取っております。それらと比較して全く問題にならないNHKが、いま言う国会討論会、国会中継、ニュース解説を除いて、二月の十四日から五月の三日までの間、何回、それらのロッキード問題についての経過をまとめ、国民に問題を提供する報道番組放送をやりましたか。わかったら明らかにしてください。
  59. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) まことに申しわけありませんが、いま手元に資料を持っておりませんので、お答えいたしかねます。
  60. 案納勝

    案納勝君 私から申し上げてみると、二月の十四日、ニュースセンター・リポートでロッキード事件の十日間。二月の二十七日、教養特集で多国籍企業と国益、これが二回目、二月は二回だけです。三月の二日に一億人の経済、これで米上院調査活動。三月の九日、多国籍企業。三月の十二日、教養特集で航空機の国産化。三月の六日、ニュースセンター・リポートで、ロッキード事件一カ月、ここまではいいのです。四月に入ると全く、ほとんどない。四月の六日、ドキュメンタリーで総合商社。十日、NHK特集でCIA。これはCBCのテレビから購入したもの。五月三日、特別番組ロッキード事件政党の課題。これだけしかない。そして三月から四月には国会承認の手続のほかの問題、そういうものは別にしても、「ニュースセンター九時」には、毎日、ロッキード情報のミニコミコーナーを設けてやっているだけです。私が調べた中では、これだけしかしていないのです、四月から五月にかけて。いま私が質問した一連の事実はありません。  内部についての報道の体制の強化だと、報道体制を強化をして国民の期待にこたえていくというなら、理事が先頭に立つというそれも大事でしょうが、なぜ第一線の記者を増員したり、安保のときのように、そういう体制をとらないのですか。そういうものは全く——そうしてしかもロッキード問題については、先ほどの堀さんの御答弁を私はそれはそれとして聞くとしても、堀さんのところまで行かなければロッキード問題の記事については発表できない、放送できない。しかも中身はこういうものだ。その自主性や積極性というのが全く欠けるというふうに受け取らざるを得ないような中身について、政治圧力に屈しているんじゃないか、こういうふうに私どもが理解することに無理がありますか。このことを私は一番恐れるから申し上げるのであります。小野さん、どうですか。
  61. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いろいろ誤解を招きますことは、まことに遺憾に思います。そういうことがあってはならないと思います。私どもの姿勢は前々申し上げておりますように、決してNHK使命の完遂の上から言って問題のあるような姿勢はとっておりません。  ただ、それがいかにもいろんな現象の中で、あるいは将来に対する戒めによるそういう御指摘もあるでございましょうけれども、いろんなやはり言論報道の自由が余りに高度な自由でありますために、いろんなやはりそれが損なわれるのではないかとか、いろんなやはり危惧あるいは疑念というようなものが投げかけられます。当然なことだと思います。私どもはそういった面について、決して危惧、疑念にわたるような事実が生じては、これは大変だと思います。そうでないように、NHKはどこまでも中正の道を堂々と歩んでいく覚悟でおりますし、また、そのようなことで国民にもおこたえをしてまいりたいと、かように考えます。
  62. 案納勝

    案納勝君 小野さん、私のところに朝日、読売、毎日の三社を初めとする新聞がこの種の関係についていっぱいあるんです。もう一回ひとつ私ここで紹介しておきます。  「NHK偏向しているとかみついた政党があると聞いた。ウン、そう思う人間はいるだろうナと思っていたら、ナヌッ、偏向偏向でも「左翼的」なそれであり、言っているのが自民党?!時、そういう寝ボケた状況認識しかできないから、この党は年々衰退の一途をたどらざるを得ないのだ。「左翼的偏向」とはよくぞいったもの。公式の席で「党が、党が」と平然と連発できる会長を頭にいただく放送局がなんで「左」寄りの報道をする。一言、自民党からクレームをつけられて即座に管理強化のためニュース部門に副編集長を補充して顔色をうかがうような局に、なんで「左」偏向ができる。世の中、バランスということがある。こうなりゃ、野党各党、自民党に負けないぐらい声高に「右翼的偏向」とかみついてみてはいかがか。」これは商業新聞ですよ、一般に市販されている。こういうのに類するのがいっぱいありますわ。  会長ね、私は誤解をされる分野、これが一番だめなんですよ。あなたが口でりっぱなことを、美辞麗句を並べても国民は信用しないというのはそこなんです。その実態を敏感に把握する、敏感に反応する知恵をいま国民は持っているんですよ。だから国民NHKに対して、受信料値上げの問題について、単にそれにとどまらず、これだけ広範にNHK問題を考えようという動きが出てきてるんじゃないですか。その意味で、会長理事者姿勢というのは、きわめて厳しいことをやっぱりしっかり受けとめていかなくちゃならぬということを私は申し上げたいんです。  もう一つ、どうしても私わからぬことがあります。副編集長の補充がなぜ報道体制の強化というふうになるのか、これは一連のものとして。最近、ニュースセンターに、四月二十六日ですか、配置された副編集長はこれは何をする人、どういう職責で配置されたのか、これが第二点。報道体制の強化と言われますが、任命後、約半月今日たっています、四月の二十六日。この人に現在机さえないというじゃないですか。また、もう一人の副編集長との間に仕事の分担さえはっきりしないと。これは言葉では昨年の四月からの空席を埋めたということを衆議院で答弁している。実態はそうじゃないですか、これはどういうことです。
  63. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) これは衆議院でお答えをいたしましたとおり、四月から欠員になっておりましたそれを補充したまででございます。  また、いろいろ管理体制の強化とか報道体制の強化とか言われましたけれども、そういうことは衆議院における志賀委員質問に対しても私は答えておりません。運用の万全を期するためにそういった措置をとったと、こういうことでございまして、決して口をふさごうとか、あるいはチェックをして言うべきことも言わさないようにしようと、こういう意図は毛頭ないわけでございます。
  64. 案納勝

    案納勝君 そこで、私はこういう問題についても、いま会長答弁をしましたけれども、先ほどから一連の問題でお聞きの皆さんでもやりとりを聞いていても、私はNHKの今日の姿勢について大変幾つかの心配をされると思う。このようなケースというのは、いま私どもが主張しているのは、NHKというものを大事にしていこう、でなければ、みずから内部崩壊してしまう、国民から離反をされて崩壊をする以外道はない。そういうことを心配をするがゆえに言っているのです。  また、もう一つ聞きますが、NHK内の常識として、この種の権力介入が日常的に行われているような印象を受けている人たちも多いのです、職員の中に。現場に直接電話が入る、また上層部から、特に理事者の方からその都度指示がおりてくる。私は小野さんがこの前いつか言ったように、職員の人たちは、先ほど私繰り返し言うように、NHKの職員としてNHKの機能と使命性格をしっかりわきまえて、それを守ろうとして一生懸命やっている。それ以上のものはないと思いますよ。そういう立場にあるそういう職員の皆さんに、いま言うように、常識的に一定の介入というものがはだで感じられるというようなことがあるとするなら、私はゆゆしきことだと。それを払拭するために、いまこそ会長以下理事者の人たちが全力を挙げて私はこれについて取り組むべきだと思う。会長、いかがですか。
  65. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 御説そのとおりでございます。私どもはそういうような運営に徹していかなければならないと思います。私は会長に就任いたしまして直ちに、NHK使命を全ういたしますためには、まず謙虚であることと信念を持つこと、信念を持てば勇気を持って何物も恐れずに中道を歩むべきだと、こういうことを宣明しております。そのために責任を負うことがあれば会長みずからが責任を負うと、これを明言しておるわけでございまして、これは職場のすみずみまで行き渡っておるはずでございます。私は、いま御指摘のとおり、まさにそのような姿勢をもって貫くべきものと思います。  ただ、世上、いろんなことがあればいろんな憶測も出ますし、他には動揺していなくても動揺しているんじゃないだろうかと、外の波風が強ければあるいはそういうことに惑わされて動揺しておるんではないかという危惧を受けることは、これはやむを得ないと思いますけれども、実際は、そのようなことで全然動揺いたしておりません。
  66. 案納勝

    案納勝君 あなたそう言うなら、なぜ自民党総務会であれだけの問題が出、それならばあなたはNHKを代表してなぜ抗議をしないんですか。なぜそういった行動理事皆さんはとれないんですか、天下に恥じることなければ。自民党の方々といえども、NHKの今日のあるべき姿を曲げてまで強引に押し切ろうという、そういうことは私は国民が許さないと思います。そういうことはまたできるものじゃないと思う。ところが、裏におってあなたはツーカーなのか知りませんが、そういう姿勢が出てこないところにまた大変不安を感じる。私はこの問題についてNHK理事者側が——冒頭、私は、今日のNHKについての現状認識とその使命基本的性格について質問しました。民主主義を守っていくNHKの機能について、それを預かる立場に立ってどう考えているかということについても明らかにしました。私は、その立場に立って、全理事者皆さんがこういう問題について明確な態度を、そして毅然たる態度をとっていくことについて、今後、そのことを明確にしてもらいたいと思います。  あわせて、大臣に、私はお伺いします。いま一連のやりとりがありました。私はいまの問題について無関心でおられない。先ほどから繰り返し申し上げているように、NHKは公的権力から常に遠い位置におって国民に密着をしていくという、そういう立場の中で民主主義を継承、発展をさせる使命がある。そして、今日、国際的にも国内的にも大変社会は進歩をしている。それを洞察をして国民に電波を提供をしていくという私は今日使命だと思います。これがやはりNHKの持つ使命であり役割りであるとするなら、その機構を生かしていくことが大事であるだけに、今日の置かれている、こういう国民一般の中で、やはり国民NHKに対する受とめ方として、新聞紙上やその他に報道せられている、問題が提起をされていることについて大変危惧を持つものです。これはNHKとして、あるいは大臣は監督官庁というわけではないんでしょうが、いずれにしても大臣の権限は大してありませんが、郵政大臣としてこれらについてどうお考えになるか、一言だけ。
  67. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) お答えいたします。  NHKは、その言論報道機関としての性格に基づきまして、業務の運営が自主的に行われるように保障されているところでありますので、放送の不偏不党をあくまでも堅持するような不断の努力を傾注すべきであるものと考えております。  私、案納先生のいろいろお話を承っておりましたが、しごくごもっともな点もありますけれども、しかし、自由民主党の総務会云々については、いま小野会長に自由民主党の総務会意見を尊重しておるかのようなお話がありますが、自民党総務会というか、自民党の各機関におきまして、もしそういうような強い意見があるならば、少なくとも、権限は何にもありませんけれども、出先の私にも何かそういううわさが入るはずだと思いますが、私も、先ほど小野会長のお話のように、新聞報道で何か総務会で話が出たということを承知したぐらいでありまして、少なくとも自民党の代議士も皆放送法は十分読んでいると思いますが、そういうような、そのことによってNHK圧力をかけるとかなんとかいうようなことは絶対にない。  ただ、私、NHKは少なくとも国民放送である、したがって間違った報道をしてはならない、その報道に対しては責任を持たなきゃならないというような見地から、このロッキード問題なんかも取り上げ方が足らないようでありますけれども、いま盛んに関係方面で慎重に調査しているやさきでありますので、ちょっと記事に、いまの段階では、ならないのではないかと……
  68. 案納勝

    案納勝君 素人はそんなこと言わなくてもいいの。
  69. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 私はこう思っているんです。でありますから、ひとつその辺、これは私の考えついたままを申し上げて恐縮ですが、どうぞひとつ御参考にしてもらいたい。
  70. 案納勝

    案納勝君 大臣、政府としてもNHK使命や機能あるいは基本的性格を大事にして侵す気はないと。また、自民党のしかも重要な幹部であります大臣自身もそう思うというふうに理解していいですか、どうですか、そのとおりでしょう。
  71. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 自民党の幹部やあるいは私どもが、そういう放送の曲げられておるとかなんとかいうようなことを考えてはいない、こう言われることならば、私はそういうことについては意見はいろいろあるかもしれませんけれども、NHKやあるいは出先に対して強くそれを反駁してくるというようなことは絶対にないと、こう思っております。
  72. 案納勝

    案納勝君 介入する気はない、介入しないということですね。
  73. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 介入はしていないと思います。
  74. 案納勝

    案納勝君 していないと。しないと、今後も、いままでしてないけれども、ということでしょう、大臣、そういうことですね、そういうふうに理解をしていいですね。
  75. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) もとよりNHK放送について介入するということは考えておりません、考えられません。
  76. 案納勝

    案納勝君 大臣の答弁の中にちょっとひっかかることがあるんですがね、これはよしましょう、余り大したことじゃありません。  そこで、私はもう一回小野さんに聞きます。  NHKは過去十年、現在もそうですが、内閣調査室に情報を提供していますね。
  77. 山本博

    参考人(山本博君) そういう事実がございます。
  78. 案納勝

    案納勝君 事実はない——
  79. 山本博

    参考人(山本博君) 事実がございます。
  80. 案納勝

    案納勝君 これは外国放送の傍受をしていた材料を内閣調査室へ提供して、それで内閣調査室から一定の報酬といいますか原稿料といいますか、何かもらっているようですが、幾らぐらいもらっているんですか。
  81. 山本博

    参考人(山本博君) 提供いたしております内容は、海外放送受信二十一カ国三十三放送のうち、東南アジアを中心に十五カ国十五の英語放送によるニュース、論調などでございます。提供の方法が一日二回、提供量は一日約三十項目、こういうことで、開始いたしましたのが昭和二十八年でございます。で、この経費といたしまして内閣から受けております委託経費、これが四十九年度で七百三十万ほどでございます。  なお申し添えますが、これは内閣と話し合いをいたしまして、今年十二月に打ち切ることに措置が済んでおります。
  82. 案納勝

    案納勝君 七百三十万円。これは四十一年の私の調査でも七百三十万円です。  小野会長、私は、内閣調査室については会長御存じだと思いますが、昭和二十七年から発足をした。幾つかの変遷があることは知っています。しかし、先月の二十七日、参議院予算委員会でも内閣調査室の問題が提起をされました、CIAと絡んで。私はそういう内閣調査室の役割りが、変遷があったにしても、NHKという機関が情報を提供して、長期にわたって、その報酬として七百三十万円、私の手元にあるのは四十一年度の決算の中身であります。今日になっても七百三十万円、変わっていない。その内容は膨大であります。  果たしてそういうことが、あなたが言われる公正厳正、中立、権力と距離を置き、国民の側に立っていわゆるNHKとして正当な行為だと思いますか、当然なことだと思いますか。いま部内から、十二月から、これはどういう関係でなったか知りませんが、中止をする。いま私が、これ、じゃNHKに金を出すからこの分についてということで、どこの団体でもあなたのところに来ればその材料や資料は売ってくれますか。私はそんなものじゃないだろうと思うのだがね。まことに私は、あなたが百万遍、公正であり中立であり、国民の側に立った放送局であると、こう言いながらも、先ほどから質問やその他について幾つかもう明らかにしましたが、誤解するなと言っても誤解せざるを得ないの、国民は。あなたが毅然たる態度をとると言っても、日本放送協会がこういうことを二十年にもわたって行ってきたということについて、私はきわめて重大な問題だと理解します。どうですか、会長
  83. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 海外放送のそれはセットさえ持たれればどこでも聞こえるものでございます。これにNHKが工作をして、いろんな意図を加えて提出しておるものではございません。内閣調査室でセットを持って聞かれようと思えば、何もNHKにそういった資料の提供を仰がなくってもこれは聞き得るものでございます。ただ、そういったことを省くため、省いてNHKがせっかくやはり外国の放送を聴取いたし、これを国内放送の参考に、あるいは国際放送の参考にいたしておる限りにおきまして、そういうものがあるんなら、金を払うから提供をしてほしいと、こういうことで続けたわけでございますけれども、これは山本理事は今年の十二月からやめるんだと言っておりますけれども、昨年十二月一日にすでにやめております。したがいまして五十一年度予算にはこの関係の金は全然入っておりません。
  84. 案納勝

    案納勝君 小野さんね、外国放送は聞けるものですよ。で、その放送は聞けるものをなぜNHKに頼まにゃいかぬのですか。NHKはなぜ引き受けなくちゃいけないんですか。民間の会社であり、営利を目的としているところならまだいいですよ。しかし、十年にわたってその委託、あなたたちが、何といいますか、売り渡していた、総理府から金をもらっている、十年にわたって動いてないんですよ、これは。しかも内閣調査室は常に何かのときには問題になり提起をされてきていることが多いんです。発足のときから問題があっただけに、三十三年では平和友好祭に当たって替え玉事件が起こり、あるいはスパイ容疑の事件が起こる。   〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕 そういう先ほども言いましたように、先月二十七日では予算委員会で問題になる。そういうものについて政府機関NHKという機関があまねくみんなが聞けば聞けるものについて、なぜその情報の提供についてNHKがやらなくちゃならないのか。  この辺の理解と考えが、小野会長が公正だなんて言っても一般の国民やその他の人たちと受け取り方の違うところじゃないでしょうか。あなたがどんなに言ったって、小野さんは政府のかいらいである、こういうふうに受け取られてもやむを得ないところじゃないですか。頭のまずそこの切りかえが私は大事じゃないでしょうか。私は、その点について、もう一回、昨年からやめたと言いますが、それならばそれで結構、今後、こういうことのないように明らかにしていただいて会長の見解を承ります。
  85. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いろんなこの問題は疑惑を受けることもよくわかります。問題は、決してこれが全然どこにも聞かれては困るような秘密のものを提供しておるわけではなく、たまたま、だれでも聞けるものでございますけれども、そのためには機械設備なりあるいは外国語の理解できる人員を配置しなければなりません。そういうようなことでもNHKからもらえれば便利だということで続いたと思いますけれども、このことがNHKのいわゆる権力への癒着といったような目で見られるべき筋合いのものではないと思いますけれども、世上、やはりそういう疑惑の目で見られることもこれも警戒しなければなりません。そういうことで昨年の十二月一日以後をもってこれを廃止するという措置をとったわけでございます。
  86. 案納勝

    案納勝君 今後も、こういうことはしない……。
  87. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 今後ございません。
  88. 案納勝

    案納勝君 じゃ次に続けます。  あなたが諮問機関として設置をされた基本問題調査会の報告には、大変重要な報告がなされております。NHK受信料を徴取して維持する国民的自主的公共機関と繰り返して、その責務を着実に果たすべきである。その業務運営に当たっては国民の声に謙虚に耳を傾け、意見批判に柔軟に対応できるようNHKの体質の改善を図れと。そして真の国民のための放送機関としての実を上げるように努めるべきだ。いまや社会、経済転換のときに当たり見直しと反省を行い、新しい視点に立って経営の安定を実現する。また受信料問題については受信料改定を考慮せざるを得ないときには国民的合意を得るよう最大限努力をすべきである。そして、その運営に当たっては——飛びますから途中を割愛しますが、受信者たる国民との間に生まれる相互理解と信頼こそがNHK存立の基本的条件であることを十分認識し、その意向吸収のための既存機構についても形骸化する危険もあることを念頭に置いて、運営が独善に陥ることを厳に避けなければならない。運営のためには各分野、各世代の意向を吸収反映させるために創意を加えて能動的な働きかけの充実を図れと規定されているのです。私はいまこれがまさにNHKがいまやらなくちゃならぬことだと思う。  ところが、今回、提案をされている内容、説明を聞く限り、あるいは新年度の事業計画を見る限り、私はこれをそのまま理解することはできないんです。どのように今後の運営や計画に盛り込まれているのか、説明をしてください。   〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕
  89. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) ただいま御指摘になりました基本問題調査会の答申の諸項目は、きわめてNHKにとって重要なことでございます。私どもはそのような気持ちを十分に把握いたしまして、今後の運営に当たってまいらなければならないと思います。とかく事業体におきましては、そういった外への問題よりも、やはり中の家庭事情をいろいろ気にする面もあろうかと思います。そういうことでは、いまの御指摘のような状態に十分こたえていくことは不可能であろうと思います。したがいまして基本問題調査会で指摘されましたそういう重要な事項については、これをもう本当に最優先的に考えまして、これで処置をしてまいらなければならないと思います。  そのためには、五十一年度予算の形の上に何が出ておるかと申しますと、あるいはこれは成長時代の傾向が低成長に変わってくる非常に大転換期でございます。そういうようなことを十分に認識して反省を加え、新しい時代に即した運営体制をとらなければならないという点につきましては、新規事業拡張、こういったものは原則としては全然認めない。しかし、それはいままであるものを在来そのとおりに延長していっていいかと申しますと、情報社会は漸次発展してまいるわけでございますので、新時代に即応する一つの使命も出てまいりましょう。そういったことには十分にこたえてまいらなければなりませんけれども、何をおきましても国民のための放送機関でございますので、国民意向を吸収し、国民意向にこたえてまいることは何よりも大事でございます。内部のいろんな事情を先に考えるよりも、内部的には非常につらいことであっても、外部の要望国民要望に沿っていかなければならないことば当然でございまして、そのためには、いままでもいろんな措置をとっております。たとえば全国の各局には相談室を設けまして、ここでいろんな御意見なり御要望なりをいただき、それに沿うような努力もいたしておりますし、あるいは懇話会、懇談会、モニター制度、考査室制度、いろいろなものを持っておりますし、また世論調査、文研の活動によりましては国民意向が那辺にあるかを十分に把握するような調査もいたしまして、できるだけそれに沿うような努力もいたしております。  また番組編成については番組審議会もありますが、現在の人員構成では非常に不備ではないか、こういう御指摘を受けております。これもやはり改善してまいらなければならないと思いますし、非常にいまいわゆる経済の曲がり角で、人心にもそれが微妙に反映をいたしております。そういうことに関連をいたしまして、NHKに対する、いわゆるNHKを愛すればこそのいろんな御要望もございます。それには十分こたえなければなりませんので、在来の仕組みだけでは足らないと思います。これはやはり考えを一新いたしまして、国民要望に十分沿い得るような措置を今後とっていかなければならない。これはこの五十一年度予算の中に項目、柱としては作文の面でちょっと出ておりましょうけれども、これに予算が幾らというような形では出ておりませんが、この予算の運用の過程において十分に取り入れてまいりたいと、かように考えます。
  90. 案納勝

    案納勝君 午前中の質問を打ち切りますが、その前に区切りをつける意味でもう一点だけ。  あなたはそういうふうに言われますけれども、ここも私は苦言を呈しておきたいんです。今回の五十一年度予算提案理由、あなた方小野会長を初めとして理事者、本当に国民の総意をいま予算案についてチェックする機能というのは、国民の意思でチェックするのはこの場しかないんです。この場を通じて総意をくみ上げようというなら、そして本当に国民のためのNHK放送局とするならば、満場一致このことが実現をできるように、あなたは最大限の努力を、国民との対話や、そういった説明やあるいは国民の意思の吸収やということを満場一致のために努力しなくちゃならなかった。しかし、あなたはそういう信念を頭に置いて果たして行動をされたかどうか大変疑わしいんです。私は幾つかの質問について省略をしていま言っているんです、一括して答えていただく。  あなたは、今回の予算案審議については、政府与党の単独承認もあり得る、こういうふうに踏んだ上での行動もあったのではありませんか。そしてそういう状態になったときでも大したことにはならない、こういうふうに頭の中にはあったのじゃありませんか、私はこのことをお聞きします。私は、今日のNHK受信料制度のもとで一党の単独承認という事態となったら、言論保障の有効性に深く傷をつけることは間違いない。けさ以来、私が指摘をしてきている諸問題とあわせて基本的問題が完全に崩壊をするということになりかねない。そのことは自殺行為であり、NHKの崩壊につながるんです。ところが、あなたの場合は、そういう行為、あるいは理事者の場合においてもそういう行為について厳粛なやはり態度というものが見られない。この点についての見解をお聞きすると同時に、あなた自身姿勢も疑わざるを得ないのでありますが、たとえば、それらの行動の中でニュースセンターの編集長や解説委員まで引っ張り出して説得に回る、こういうこともあります。  いまの前段のやっと違った意味で私は質問する。あなたの姿勢自身はいまさっき私が言ったような姿勢になっている。ところが、反面、いま言うような人たちまで狩り出されて実は接触をする。国会の中をうろうろするということもある。これらの人々の職責はどうなっているのか。あなたが中途半端に、信念もない、これらについてもまさにその姿勢を疑われるという反面、こういった人たちを引っ張り出して、そして陳情に回る。この人たちは解説委員ですから、そういったことを頼みに来て、あるいは陳情に来て、翌日、どんな顔をして解説をせにゃいかぬか、私はこれはこういうことに根ざしていると思うのです。  私が先ほど申し上げましたように、NHKについて私は大変関心を持っています。実際調査をしました、多くの人に会いました。しかし、NHK理事者を含めて、内部の中で今日の政権与党とのつながり、人脈というのを否定できないという声を多く聞くのです。そういう中から部長になり重役になるためには、そういうものにつながらなくちゃならない。こういうものが事実はこの行動の中にもあらわれてきているのじゃないでしょうか。私は先ほどから言う、きわめてこういった問題が一連の問題として今日指摘をされ、あるいは疑惑を持たれ、会長姿勢自身について、その資格が疑われるというのは、こういう問題について会長どう考えるか。私は今後も十分これらの問題について注視をしていきたいと思いますが、いま私が指摘をした幾つかの問題について、最後答弁をしていただきまして午前中を終わりたいと思います。
  91. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いろんな誤解を受けましてまことに残念でございます。非常に遺憾でございまするけれども、まず、かようにお答え申し上げますが、まず第一点の、いわゆる予算承認に当たりまして自民党の賛成が得られれば全会一致でなくってもいい、こういったようなことを考えたことは毛頭ございません。それゆえに私は与党自民党を回るよりも、野党の各先生方の方を回ったところがはるかに多いんでございます。これはやはり基本問題調査会で答申が出ましたときも、国民の合意を得るようにと、こういう一方の新聞記者の諸君の質問に対しましても、それの組織的、典型的、具象的なあり方は国会で全会一致をもって承認していただくことだと、この点については全力を傾けるつもりだと、こう言っております。どういう間違いなのか、私がいかにもそうでないような姿勢であるように思われますけれども、これはとんでもない誤解でございまして、この点はぜひ御理解を賜りたいと思います。  次に、解説委員等が回りましたそれは、私は、会期の関係とも関連いたしまして、予算が非常に大事な時期に逢着いたしましたので、いわゆる常時の国会担当の理事一人に任しておいてはとてもそれは回り切れないと、したがって全役員が分担をしてやってくれと、こういうことは言いましたけれども、これが職場の解説委員とかそういうそれを引き連れていけと、こういう指令をいたした覚えは毛頭ないわけでございまして、この辺も非常な、私も現実にはそのようになりまして遺憾に思いますけれども、私の意図ではございません。  以上、非常に簡単でございますけれども、お答えを申し上げます。
  92. 案納勝

    案納勝君 最後に、いまのやつ。  五月の十一日、あなたはある人に電話をしたという電話がかかった。その話のやりとりを私は知ってるんです、だから言うんです。私はここでいま明らかにしませんよ、これ以上は。こういうことの姿勢が疑われる。そして与党については偏向攻撃の中で右往左往し、そしてしかも管理体制の強化か何か知りません、先ほどもそういうことはないということですが、そういう中で国民に多くの疑惑等を与え誤解を与える——誤解といいますか、私はある程度事実だと思います。そういうものが累積をしてきているんですよ、やっぱり。何か私は打ち切ろう打ち切ろうと思いますけれども、打ち切れないのはそこにある。  だから、今後、満場一致、あるいはこのことについて理解を求める、与党の方にはもうある程度行っているものがあるから、野党の方へと、そのやり方も私は多くの問題を疑わざるを得ません。もっと国民になぜ投げかけないか、この辺について大変私は重大な気持ちを持っています。多くの、その意味で先ほど私は基本問題調査会の答申をわざわざ読み上げて、問題点について指摘をして、あなたの見解を聞きましたのもそのためなんです。やはり気持ちを一新して、今後の運営について私は明確な態度を小野会長にとってもらわなければ、みずから墓穴を掘るということになることを私は明らかにしておきたい。  以上で午前中は終わります。
  93. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いろいろ誤解を受けますことも、これ私の不徳のいたすところでございまして、そういった点については十分の反省をいたし、今後は、そういった誤解を受けることのないような態度を貫いてまいりたいと思います。
  94. 森勝治

    委員長森勝治君) 午前の審査は、この程度にとどめまして、午後一時再開することにし、休憩いたします。    午後零時九分休憩      —————・—————    午後一時十五分開会
  95. 森勝治

    委員長森勝治君) ただいまから逓信委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  96. 案納勝

    案納勝君 それでは午前中に引き続いて質疑を続行さしていただきますが、午前中に、今日のNHK使命や機能や基本的性格について幾つか申し上げました。これに対する小野会長答弁を踏まえた上で以下質問をいたしたいと思います。  工藤経営委員長、大変御苦労をお願いをして御出席いただいておりますが、経営委員会について御意見を伺いたいと思います。  今日、御案内のとおり、社会の構造が大きく変化をし、意識も多様化し、権利意識も高揚をしています。そういう状態の中で激しく動いているわけでありますが、私は、今日までのような経営委員会の機能あるいは運営が果たしていわゆる言うところの午前中私が申し上げましたNHKにかけられている使命、そしていま置かれているNHK現状も踏まえて有効に働いているというふうに経営委員会はお考えになっておりますかどうか、経営委員会の今日のあり方についてひとつ御意見を伺いたいと思います。
  97. 工藤信一良

    参考人工藤信一良君) 私ども経営委員に任命されました者は、この経営委員会の重大な使命NHKの最高意思決定機関であるところの経営委員会の重大な使命というものについては十分の自覚もしており、懸命に使命を果たしたいという努力はしているつもりでございます。  ただ、これについてはいろいろな御批判もあろうかと思いますし、月に二回が多過ぎるの少な過ぎるのといろいろな御批判もございますが、しかし、私が過去六年間経験してまいりましたところでは、経営委員会の各委員が非常に熱心に隔意なき討議を遂げて物事に真剣に取り組んでおるという点だけは私もそのとおりだと、懸命に取り組んでおるというふうには感じておるんでございます。ただ、これについてもう少し回数をふやしたらどうかとか、あるいは、後で御質問が出るかもしれませんが、事務局はどうかとか、いろいろな御批判もあろうことかと思いますが、われわれは、大体、年に一回、八月を期しまして、大体八月に経営委員会のあり方というものについて反省する会を持ちたいと思っておりまして、経営委員にも大分変動がございましたので、来る八月には改めて経営委員会の運営方法というものについて十分討議していきたいと思っております。現在のところまでは、私は、各自懸命に使命を果たすべく努力はしておるというふうに考えております。
  98. 案納勝

    案納勝君 経営委員会は、その権限や組織は法の十三条から十六条まで任命その他について明らかにされております。これは経営委員会は執行機関から独立したメンバーとして、何といいますか、社外性の上に立って運営されているわけですね。で協会の目的、その使命からますます協会独自性、自主性が要望されてきているという今日の立場に立ったとき、私は経営委員会に対する要請というのは大きくならなくちゃならないと思います。  ところが、今日の運営を見ますと、逆に諮問機関的機能を持っているにすぎないのじゃないか。理事会の屋上屋ということで形骸化してはいないかということについて、実は、疑念を持たざるを得ない。先ほどから討論やりました諸点についても本当に機能しているならば、私は経営委員会の中で論議をされてそういうことがあってしかるべきだと思う。単に財政上の立場からでなくして、経営全体についての経営委員会の責任が、だからこそ国会の同意を得て、いまの法律は、任命される。そこでもっと国民の意思を吸い上げるという運営をしていくという意味でのために、いまの運営や選出のやり方というものについて考え直していくということが私は必要ではないかと、こう考える。これについて、工藤さん、どういうふうにお考えになりますか。  特に、私は、三十九年の臨時放送関係法制調査会の中における討議の内容の中にも、実は、経営委員会の運営についての指摘があります。言われるところの諮問機関的機能を持つにすぎなくなっていく危険性というのを指摘している。しかも、本来、経営委員会が有する機能、その他についての幾つかの危険性が私はこの中に受けとめることができる、こう思っているんです。いまや私は基本的に経営委員会の機能や運営その他を考え直すときじゃないか、こういうふうに考えますので、御意見を伺いたい。
  99. 工藤信一良

    参考人工藤信一良君) 経営委員会が諮問機関的な形態を帯びておるという点に関しては、私は決してそうではないと思っております。これは放送法で決められておりますように、NHKの最高の意思決定機関としての機能を果たしておるつもりでございまして、なるほど執行部は立案に当たる、執行部が案を立てて予算も執行部でつくって持ってくるんですが、最終的にこの重大事項を決定するのは経営委員会の任務である。それは守られておりまして、決して諮問機関というふうな形での存在ではないというふうに考えております。  経営委員というものが御承知のように政府の任命ではございますが、国会の承認を得てわれわれは経営委員になっておるので、これがある意味では、これは放送法にはございませんけれども、そうは書いてございませんけれども、ある意味では国民の意思を代表してNHK経営を見守るという機能を持っておるということは、われわれ十分自覚してやっておるつもりでございます。ただ、この経営委員の選出その他については、その是非を申すべき、私、立場ではございませんから、それは御了解願いたいと思います。
  100. 案納勝

    案納勝君 私は、先ほどから申し上げているように、今回の基本問題調査会の答申にありますように、NHKの体質改善を図らなくちゃならない。それで見直しと反省の上に立って、いま既存の機構というものが形骸化しているおそれがある。で、できるだけ国民の合意とそして協力を最大限に得るように機能していくべきだ。その中で初めて国民との間の相互理解と信頼、それがNHK基盤だということで先ほども指摘をした。  いま経営委員会の委員の構成から見まして、私は、いま言うように、いま現状置かれているようなNHKの状態から考えた場合に、経営委員会が社外的な性格を持ちながら最高の機関として存在をしているその役割りというものについては、実は、国民も多くその役割りについて期待をしていない、期待できないでいるのじゃないか。先ほど言うように、ますますNHKの自主性や独立性、しかもその役割り、使命が拡大をし、しかも国民との連携がより強まってくる中では、いまのようなかつて二十五年につくられたようなそういうシステムの中における経営委員会のあり方という、委員の選出についてもこれは失礼ですが、大変御高齢の方が多いようだし、それから企業の経営者の方が多い。もっと普遍的な国民の総意の上に立ってNHKという機構を十分に機能を発揮させていく。こういうふうに私は考えて、この問題を新たな立場から考え直すそのことがいま重要な時期じゃないか、こういうふうに考えます。  それに対して、大臣、どのようにお考えになっているか。これは衆議院段階でも少し出たと聞いています。大臣の御見解を承ると同時に、経営委員会の審議の内容を報告書にして国民の前に明らかにする、こういうことについて私はそうやるべきだと考えます。工藤さん、小野会長、どういうふうにお考えですか。
  101. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 経営委員会は、公共福祉に関し公正な判断をすることができるような知識と、広い立場から構成されておるものでありまして、経営委員会のあり方につきましては、各方面からいろいろとその考え方をいただいておりますが、これはわが国の放送制度の根幹にかかわる重要な問題でありますので、慎重に検討してまいりたいと考えております。
  102. 工藤信一良

    参考人工藤信一良君) 経営委員会の会議の経過あるいは会議の報告というものを出してはどうかというお話でございまして、経営委員会の審議する事項は、非常にあるときは機微な問題にも触れ、あるときはデリケートな問題にも触れてくる場合が多いのでございまして、正式の報告は郵政当局に出してはおりますけれども、あるいは議事の報告を詳細にするということはかえって経営委員会の自主性なり公正なる判断、あるいは各委員の活発な発言に対してのあるいは障害になるのではなかろうかというふうにも考えるのでございますが、仰せもありましたので、そういうことも含めまして八月に経営委員会の運営のやり方ということを考えるときに御提案趣旨を皆様にお諮りしたいと思っております。  ただ、ここで一つお断りしておきたいのは、経営委員長というものは経営委員の互選によって選ばれました議事進行係でございまして、私自身の意思をここで述べるということはいかがなものかと思いますので、経営委員会の内容につきましてはいかようにも御説明いたしますけれども、将来のことあるいは将来の運営方法ということについては、委員にお諮りしてお答えするのが至当かと思います。御了承願います。
  103. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) ただいま工藤委員長から御答弁になりました趣旨に、私も同感でございます。案納先生のおっしゃるように、いわゆる議事内容をそのまま国民の前に公表するということは開放的経営あるいは民主的経営、こういった面においてその実を上げるような点はこれは認められますけれども、まあ経営委員会としては非常に自由濶達にいろんな問題について腹蔵なく審議をしていただくのが本旨でございますし、仮にそういうことで発言を控え目にされるというようなことがあると、これはかえって経営委員会としての活動に非常な支障を及ぼすのではないかと思います。この辺の考量をどう考えるかが非常に問題でございますので、せっかく工藤経営委員長も八月の勉強会ではその点についても突っ込んだ検討をしていきたいと申されておりますので、私はそれで非常に結構だと思います。
  104. 案納勝

    案納勝君 この問題はNHK全体のあり方を見直す意味で非常に大事だと思います。私は活発な意見が交わされることについてそれをとめようと思いません。ただ、今日直面をしているNHKの実態からするともっと機能をしてよかったんじゃないのか、機能すべきではないのか、こういうことについて経営委員会のあり方について多くの疑問を持たざるを得ない。ぜひひとつどういう措置で報告の形で国民に公表されるのか、可能ならばそのことについて御相談してください。  なお、私は大臣に時間がありませんから簡単にお尋ねしますが、そういう面も含めまして先ほど大臣は慎重に検討する、いまの経営委員会の選出方法について三十九年の臨時放送関係法制調査会では地区選出の経営委員については「社会分野の代表性は考慮しないこととする。」と、こうなっている。私はこれはある意味では今日置かれている現状から遊離をしてきているんじゃないか。少なくとも、先ほど申し上げましたように、国民の各分野、各層に対しての総意を吸収して、NHK全体が、これは幾つかの方法もありましょう、経営委員会という場においても、そういう方向で努力をすべきだと。今日、御高齢の方が大変御苦労されていることは多としますが、これらを含めて十分な御検討をされることを、また私もこの問題については今後も改めて検討を続けたいと思います。  これ以上の質問はこれでとめますが、最後に、経営委員の人員や報酬、事務局のスタッフ、こういう問題について、現状のままで当面いくとしても、その主体性を強めるという意味でもっと見直すべきじゃないか、こういうふうに考えますが、この点で小野さんひとつ。
  105. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 御説の趣旨はよく理解できます。そういったような点で経営委員長とも御相談を申し上げて対処してまいりたいと思います。
  106. 案納勝

    案納勝君 じゃ時間もありませんから、工藤さんの関係する分野を先に。  一つは、会長・役員人事についてお伺いをしたいと思います。  NHK会長はいまいる小野さん、会長をどういうふうに選ばれるのか。これは法律的に言うならば、経営委員会が選ぶことになっております。しかし、これは選ぶに当たって、ここで工藤さんにお聞きするんですが、内閣や郵政省あるいはNHK当局が候補者の推薦や愚見というものが経営委員会に提出される、こういうことになるのか。少しでも政府が他の方法によってでもこの人選については何らかの意思表示を行うのか。今回の、仮に、これは大変失礼ですが、小野会長が四十八年に任命されたとき、工藤さんは経営委員だったと思います。そこでどういう経緯でこれは決められたのか、ちょっとお尋ねしておきます。
  107. 工藤信一良

    参考人工藤信一良君) なかなかむずかしい問題でございますが、放送法で決められております点は、これは御承知のように「会長は、経営委員会が任命する。」と、そしてその経営委員会は、経営委員会において九名以上の賛成によって会長が決まるということがこれは放送法で御承知のように決められておるんでございます。  それじゃ実際に、一体、どういうふうになっておるのかという御質問でございますけれども、私、一回、この前の前田会長から小野会長になるときに、委員としてただ一度の経験だけでございまして、そのときのことを想起いたしますと、そのときは、内閣とかあるいは郵政省とかあるいはほかのいかなる形においても、どこからか推薦があったという事実は私の知る限りはございません。そのときの経営委員長、伊藤経営委員長でございますが、伊藤経営委員長委員会で率直にお諮りをして、そして委員会が数次の検討の会議を持った上で決定をしたというふうに記憶しております。恐らく今後もそういうプロシーデュアが続いていくのではないか。私の知る限りにおいては、これは委員各自に対してはどういうアプローチがありましたかどうかということは私無論知りませんが、私に関する限り、どこからも何の示唆もございません。ただ経営委員会によって、これはたしか数回開いたと思いますが、数回の経営委員会において決定をいたしたというふうに記憶しております。恐らく、今後も、そのような形が続けられるのではないかと思うのであります。
  108. 案納勝

    案納勝君 これは世間では、国鉄・電電・NHK、この総裁・会長は総理大臣の三大人事だと。法律的に見て、国鉄あるいは電電の場合とNHKは違います。しかし、そういうふうに取りざたをされている問題があることは事実なんです。  私は、たとえば一般的にここに、先ほど午前中偏向攻撃の問題について申し上げましたんですが、それに関係をしてこういう新聞記事があります。「いまの小野会長は、田中前首相が郵政相だった時の郵政事務次官だ。年は小野氏の方がひと回り以上も上だが、」「小野会長会長昇格は、当時の田中首相の意向によるもの、とされている。七月の会長人事が、もう政界筋でとりざたされ始め、三木首相に近い経済政策通とか、学者らの名前があがっている。」、私も聞いていますが、「「後任は首相好みの人物」「いや、それは反三木派が流している怪情報だ」などなど。そのたびにNHKは神経をピリピリさせている」、こういう記事がある。こういうことが偏向攻撃、NHK姿勢の問題でいろいろと取りざたをされている。いま、会長、工藤さんが言われた表向き、それはそのとおりだと思います。しかし、いま私が読み上げましたような受け取り方が現実にされて、こういう点について私はきわめて遺憾だと思うんです。  で、その人選は、いままで多くの人選の中で裏づけされるような人選が行われたところにも問題がありますが、そこで、私は、今日のNHKの置かれている立場から言って、言論報道機関NHKの代表は、NHKの内部で育ってきた言論人、そういう人たちを経営委員会で私は会長に推薦をする、あるいは決定をしてもらう、こういうふうに私はやるべきなのが原則ではないのか。他から、政官財界から持ってくるというようなことが、私は間々にしてあるいは今日までもそこに政治の介在が事実上感じられる、こういうことに今日私はなっているんじゃないかと思います。そこで、そういった意味で郵政省もNHK政府もこの人事についてはあずかり知らぬ、NHK経営委員会が会長を決めている、その原則を明確にするならば、いま言った内容、立場というものを私はとるべきだと思いますが、委員長はどういうふうにお考えでしょうか。
  109. 工藤信一良

    参考人工藤信一良君) 会長の選任が経営委員会に与えられた非常に大きな重大な使命の一つであるということは十分自覚しておりまして、放送法にのっとりまして、放送法の命ずるところに従いまして公明正大に経営委員会が自主的にこれを決定していきたいという強烈な印象を持っております。  ただし、私のいまの立場として、内部から出すのがいいか、あるいは外部からなにするのはどうかということについては、これは各経営委員の御意向もあることでございまして、私が経営委員を代表してここで申し上げるという立場ではないので、この点は御容赦願いたいと思います。
  110. 案納勝

    案納勝君 どうも工藤さんありがとうございました。これで終わります。  あと、番組審議会、その他市民参加の問題等が基本問題の部分にありますが、各省をお呼びしています。そういった点もありますから後回しにしまして、せっかくお見えになっていただいた他の省の関係もありますから、まず具体的な予算問題について入りたいと思います。  提案されています五十一年二月の大臣意見書によって収支予算提案されましたが、先ほど午前中言いましたように、三年間の経営を維持するに足る料金、こういうふうに説明をされて、平均受信料は五〇・六%引き上げる。収入不足額二千百二億をカバーをして、その上でなおかつ二百十七億プラス五十年度の欠損金のうちの借入金補てん額を含んで提案されています。あわせて事業計画資金計画が法律に従って提案をされていますが、まず最初に聞きたいのは、今国会が異常な状態の中で推移をしたために、二カ月にわたり暫定補正予算が組まれました。この結果、提案をされている予算案との関係できわめて財源的にも内容的にも重大な計画変更がなされなくちゃならない事態にきているだろうと思うんです。この辺について明確にひとつお答えをいただきたい。
  111. 山本博

    参考人(山本博君) 御指摘のとおり、三カ年間の期間を見通しまして財政計画、事業計画収支予算、そういうものを見通したわけでございますが、いまお話がありましたように、四月と五月の暫定予算を編成いたしました結果、約百二十億、厳密に申し上げますと百十二億ほどになりますが、この金額が収入という面で不足を生ずるという結果になりました。しかし、三年全体の事業計画といたしましては、現在策定をいたしました事業計画をそのままなお実施をいたしたいと思います。  ただ、確かに御指摘のとおり、収入の不足というものが見込まれますけれども、これは三年間全体の期間の中で計画と見合った形で処理をしてまいって、最終的に三カ年間総計画といいますか、計画全体、それから収入全体、支出全体、そういうものと総合的に考量をいたしまして、百二十億の不足というものを処理してまいりたい。したがいまして事業計画そのものを現在直ちに変更するという、本年度五十一年度の分につきましては計画を変更するというつもりはございません。しかし三年見通しておりますので、三年後に経済情勢その他もろもろの変化が生じてまいりましたときには、三年目とかあるいは二年目とかいうようなものについて何がしかの変更というものもあり得ると思いますけれども、さしむき五十一年度の事業計画につきましては、現状のとおり実施をいたしたいというふうに考えております。
  112. 案納勝

    案納勝君 そこで私はお尋ねをするんですが、五十一年度の予算及びこれに伴う予算総則、これは予算及び予算総則は一緒に提案をされておるわけですね。要するに予算総則は数字と一緒にこれここで承認をせられるということになりますね。ところが予算総則の中に料金値上げの問題が入っています。そこで、いま提案をされているのは、これだけの料金を上げます、これは三年間の経営を維持する料金です、上げ幅はこれだけです。そこで五十一年度は御案内のように一部支出充当資金はかくかくしかじかでといいますか、事業支出は千七百五十五億で、それで事業収支の差益は二百八十九億で百十億の支出充当をいたします。収支過不足額は百七十九億で、これは五十三年度に回します、こういって出されているんですね。これはひっくるめて出されている。  私はここで明らかにしていただきたいんですが、NHK予算というのはどんぶり勘定で出して、そして二カ月間の減収は百十二億、事実上暫定予算期間中は減額、それだけ料金徴収できなかったんで収入減なんだ。予算案と計画は、裏打ちをされた予算が出され計画が出されているにかかわらず、百二十億もの減収が行われるのが目の前明らかなのに、いやこれはどんぶり勘定でございますから認めてくださいという提案の仕方が果たしてありますですか。これは私は言いかえるならば、予算案NHKが勝手につくります、それで国民に対するその説明も十分でなかったと言いましたが、国民はこれに対する参加意見の言う場もない。それで国会はただ一つのチェック機関、これは承認でございます。百二十億の収入減になって、あとの計画はどんぶり勘定でやります、どうなるかわかりません。こんなこと私たちがここで審議できると思いますか、無責任なものを。私は、本来であるならば、二カ月間について百十二億の減収になる、その計画、収入・支出の計画修正をやって、その上でこの委員会で審議をする、こういう立場でなければ私は国民の代表として審議に参画することはできませんよ。この辺はどういうふうにお考えになっていますか、大臣、そして小野会長どういうふうにお考えになっていますか。
  113. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 放送法上、暫定予算は本予算が国会の承認を受けたときにはその効力を失い、本予算が当該事業年度の予算として働くことになっておりますが、本予算の収入見積もりは四月からの当該事業年度の予算として収入を見積もっておりますが、暫定予算の編成によって本予算において予定したとおりの収入が得られない事態が起こったとしても、それは本予算を実施した結果として収入不足を来したものと見るべきものでありまして、このことによって当然に本予算の修正を必要とするものではないと考えております。予算性格上、収入の見積もりと現実の収入との間に変動が生じることは避けられないところであります。
  114. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 二カ月間の暫定によりまして、当初の計画から申しますと確かに百十二億の減収があります。この限りにおきましては、当初予算は相当な変貌を来すことは当然でございますけれども、二カ月の暫定予算による百十二億の減収によりまして、直ちにここで御承認をいただきます際に当たって、事業計画等を変更してどうこういうことは、これはまた非常に問題もございますので、一年間を通じまして予算の執行過程において努力をいたしましてこの減収に対する影響を最小限度にとどめるような努力をしながら、それでやはり必要があれば、いわゆるこの次の国会に補正予算の御審議をいただくということに相なるのではないかと思います。
  115. 案納勝

    案納勝君 百十二億の減収になったやつが努力によって百十二億もぽんとでき上がってくるんですか。法三十七条には、協会事業計画及び資金計画を作成し郵政大臣に提出しなくちゃならない。これを変更しようとするときも同様とする。要するに完全な変更じゃないですか。収入について、収入見込みが完全に事業計画から変更されている。しかも予算総則では、十二カ月分の前納等の料金の問題について、五十一年度の予算で新料金の徴収額が決められています。私は、これらの問題についてすでに二カ月間は旧料金で徴収をしている。問題は今後どうするのかという問題であります。でありますけれども、このことは明確になっておるだけに、ここで修正を出して、その上で承認を求めるというのが国会の承認を求める手続きじゃないでしょうか。本来ならば衆議院の本予算可決の段階で、可決前にこの収入見込みについて修正を出す、こういうふうに私はなるべきだと思う。  そこで、もう一回、大臣及び小野さんに聞きますが、この三十七条の承認というのは、国会におけるこの内容の修正が私はできると思います、実質的修正ができると。その点について、大臣、会長、どういうふうにお考えになっていますか。
  116. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 電波局長からお答えいたさせます。
  117. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) ただいまの修正意見の問題でございますが、政府といたしましては、この放送法第三十七条二項の承認というものは、収支予算等について、これを全体的に是とするか非とするかという意味に解しております。したがいまして、もし不承認になりますと、NHKといたしましては予算を再検討いたしまして、そうして編成し直して、改めて国会の審議を受けるということになるものと思われます。  なお、御参考までに、三公社の予算につきましては、いずれも国会の議決を必要とするということとされておりまして、この議決という中には予算の修正が含まれるものと、そのように解しております。
  118. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) ただいま郵政御当局からも御答弁がありましたけれども、私もそのように考えておる次第でございまして、この点につきましては、私どもも郵政省の御当局の見解と同意見でございます。
  119. 案納勝

    案納勝君 受信料は国会が決定をするということですね、承認によって。これ石川さんにお尋ねしますが、三十七条の四項は「第三十二条第一項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料の月額は、国会が、第一項の収支予算承認することによって、定める。」と、こうなっています。定まるではないのです。あなたが言うように修正か承認か、しからずんばそうでないかと、反対かと言うなら、定まるとならなければうそなんです。このことは国会が受信料に対しての最終決定権があり、国会が決めて初めて受信料の月額というのは決まると思うのです。  したがって、いまのような、明確に事業計画や収入見込みがはっきりして、暫定予算あるいは補正予算によって減収するときに、単にこれは事業努力によって百十二億も何とか克服していきます、それで何とか乗り切れますという答えだけで、国会が、はい、そうですが、それでは受信料をこれだけ引き上げますという決定は私はできないと思うのです。この辺について、石川さん、どういうようにお考えになりますか。
  120. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) この暫定予算の考え方につきましては、先ほど大臣から御答弁を申し上げたとおりでございますが、予算性格でございますが、これはやはり予算の収入は一つの見積もりということでございまして、現実の収入との間に変動が生ずるということは、これは避けられないと思います。しかしながら、協会の方におきましても、今後、この収入の増加についても努力をいたしますし、また減収につきましても今後事業の内容の節約等によりまして、なるべく減額を減らそう、枠を減らそうという努力もされるわけでございまして、したがいまして、この本予算の御承認を受けた後に、事業の実施状況などを見た上で、年度の途中で必要が生じた場合には何らかの措置を講じなければならない、かように考えておるわけでございます。
  121. 案納勝

    案納勝君 「定める。」はどうなんです。国会でこれについての修正ができるのじゃないですかと聞いているのです、変更が。
  122. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 法律の解釈の問題でございますので、放送部長から答弁させたいと思いますが、お許しが得られれば放送部長から答弁させます。
  123. 鴨光一郎

    説明員(鴨光一郎君) お答えいたします。  三十七条の四項でございますが、「国会が、第一項の収支予算承認することによつて、定める。」という条項でございますが、これは御承知のように収支予算の中に受信料月額が盛り込まれておりまして、それを国会で御承認をいただくということによって定まるものというふうに考えます。
  124. 案納勝

    案納勝君 予算総則が、五十一年度の四月から本予算として成立を承認をすれば、料金が引き上がることになるわけでしょう。事実上、四月、五月は旧料金でいくわけでしょう。こういったものについての予算総則上の取り扱いも、私は、そのまま承認ということにはならないのではないですかと聞いている。  そうして、私は、これは国会がその辺についての修正意見、修正権、何らかの形でこれを国会の承認の中で変えることができるのじゃないか、こう聞いていますが、これについて法制局お見えになっておると思いますが、ちょっと見解をお聞かせいただきたい。——それでは、その点は後ほど法制局が来てからにします。  そこで重ねてお尋ねしますが、いま減収については何らかの実績を見た上でと、こういうふうに言う。それは内部の合理化、経営努力でやるのか。あるいは、この中に大変大事な問題が出ていますが、NHKが最も重要な目的として定められている難視聴解消のための建設費、こういうのが遅延、変更、減額されるのか。あるいはきのう問題になりました新しい料金値上げということが三年の間に出てくるのか。そうなると私はこれは承認することはできません。たとえ衆議院でわが党が賛成承認して上げてきたとしても、改めて私たちは考え直さざるを得ません。そんなに権威のない予算案を私たちは審議しているはずはないわけであります。したがって、その辺について御見解を承りたい。
  125. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 百十二億の減収によりまして、暫定予算の期間中におきましては、いわゆる建設関係の仕事につきましては前年度末における工事の継続の仕事しかできません。新規の難視聴解消の措置はとれないわけでございます。しかしながら、本予算が御承認を受けることになりますと、これは年度当初にさかのぼってその面では予算の支出行為が認められるわけでございますので、実際には二カ月間の工事の遅延というものはなかなか挽回しにくい面もあろうかと思いますけれども、私ども難視聴解消に対して最大の努力を払わなければならない立場におります者としては、あと十カ月で一年分の工事をやり遂げるような努力をやっぱり努めるべきであろうと思います。そういったような点でいろんな工夫は必要でございますけれども、できるだけそういった計画面については暫定予算期間中における措置によってそういった計画のそごを来さないように努力をしてまいらなければならないと思います。  そういった点を考慮いたしますと、あとの十カ月間で非常な努力を払わなければならないわけでございますけれども、二カ月間延びたので、その間の工事費はまるまるもう浮くと申しますか、結局はやっぱり二カ月間工事がそのままずれてしまうということでは、難視聴解消に対して期待を寄せておられる聴視者の方々に非常に申しわけないのではないかと、かように考える次第でございますので、最大の努力を傾けてまいりたいと思います。
  126. 案納勝

    案納勝君 よくわからないんです。私が聞いたのは、内部の合理化によって、これは努力によって補うのか。いま言われた難視聴解消のための工事遅延などはしないでやりますと、こういう答弁です。これ二点目はいいです、一点目はどうなるのか。  それから、この中期計画に伴うこれだけの料金値上げ、三年間見通した料金値上げ提案されているわけです。初めから百十二億の赤字がすでに現出をするのに、それをどういうふうにしていくのか。百十二億というのは簡単に捻出できるものですか、経営努力で。それなら料金を最初から下げればいい。国民の間でこれだけ問題になっているのに。そういう点もありますから、どうするのか。おとといですか、料金値上げを考えざるを得ないとか、例のあり得るとか、そういう答弁です。そんな措置でいこうと考えておられるのかどうか、明確にしてください。
  127. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 御答弁を漏らしまして、まことに恐縮でございます。百十二億のいわゆる暫定予算による減収は、できるだけ事業計画の遂行の過程におきましてこれを縮めてまいりたいと思います。で三年間のそれを通算いたしまして、確かに百十二億の当初計画からは穴があくわけでございますけれども、そのために、三年間はこの料金でまいりますと、こう言っておったそれに反するようなことはしたくないと思いますので、将来三年間には、さらに料金値上げをお願いするようなことがないように、最大の努力を尽くしてまいりたいと思います。
  128. 案納勝

    案納勝君 ないようにというのは、やらないということですか、あり得るということなんですか。それは天変地異があって、大変な経済社会全体が変動があったときはそれは別ですよ、おのずと。しかしながら、あなた提案しているのは、三年間の経済見通しで中期計画はこうでございますと、五十一年度ではこうでございますと、そしてその事業の裏づけはこういう裏づけになっていますから承認をしてくださいと、国民皆さん理解をしてくださいということで、チェック機関である国会に提出をしているんでしょう。それで国会に提出して、こういう国会の事情によって二カ月の暫定予算を組まれた。百十二億の減収になった。百十二億の減収について、提案をしている以上、これは何とか三年の間やりますが、いずれにしても料金値上げはあり得ますよと、そんなのを含んでどんぶり勘定で認めてくださいなんて言ったって認められるはずないじゃないですか。それはもう大変な問題で、NHKがすべて自分の恣意によって、そして承認でございますよと、反対か賛成か以外にありませんよと。その内容の審議について、問題はこうあったらしかるべきじゃないか、あるいはこういうふうに料金をできるだけ下げていったらどうかという意見があるのは当然であります。十かゼロかという、そういう出し方を今日しています。あるいはあなた方は法体系がそうなっているんだと言う、私はそういうふうになっていない。これはひとつ後ほど法制局長来るでしょう。  もう一つは、そういう出し方自体が私は重大な欠陥があると思う。私はもっと法の真意から言うならば、郵政大臣は法の四十九条の二に基づいて、本委員会の審議の前に、NHKに資料の提出を求めて、それで国会の承認を得るべく私は最善の努力をしてしかるべきじゃなかったでしょうか。だから私はもう一回聞きますが、百十二億の減収はそう簡単な金額じゃないと思うんですよ。私はあなたが言うように、この三年間に値上げをしなくちゃならないような要素、特別な事情があるなら別です、それは。国家予算だってそうです。しかし、そういう事情のない限り、提案をしているこの中身から言って、二カ月の減収は克服しますと言うなら、これは守っていきますと、値上げしませんと、NHK最大の努力をしてこれを忠実に実行しながら内部努力によってそれは克服していきますと、こういうことがなぜ国民に言われないんですか。その辺を私はもう一回お尋ねします。
  129. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 回りくどいことを申しましてまことに恐縮でございました。この計画のとおり、三年間の中において再度値上げをお願いすることはいたしません。
  130. 案納勝

    案納勝君 それじゃ杉山法制局長にお尋ねをします。  この三十七条の中で、本委員会が受信料の月額等について何らかの形で修正といいますか、そういう措置がとり得るというふうに解釈することができるか、この辺について。
  131. 杉山恵一郎

    ○法制局長杉山恵一郎君) いま問題になっております収支予算その他は、国会に対して承認を求めて出てきているものでありますので、ちょうど法律案をやるようなぐあいに、何々を何々に改めるとか、あるいは何項を削るとかいうふうな形で、直接その案に手を加えた修正という形ではこれはできないと思いますけれども、その案件に対して承認を求めておられるわけでありますから、全部承認か、あるいは全部不承認だけしかできないというわけにはいかないだろう、この部分が分離して処理できるものならば、一部不承認ということもあり得るのではないかと考えております。
  132. 案納勝

    案納勝君 それじゃ、たとえばこの中で七百十円にカラーテレビがなるようになっています、予算総則で。したがって、この七百十円というのはこの予算総則でいくと五十一年度予算の当初からということになるわけですね。二カ月いずれにしてもすでに旧料金で来ているわけです。そうしますと七百十円の新料金は六月から認める、六月からの新料金と、こういうふうにここで一部不承認を行って、そういうふうに修正ですか、修正といいますか何といいますか、切り離して承認をして、それであわせてこの中のそれに基づいて各款項目ですか予算が立てられていく。これ一々いじることは、修正することはできないでしょう。総括的に百十億なり百十二億の要するに歳入不足になります。それを引いた上で、この予算案承認をするというような措置がこの委員会でとれますか。
  133. 杉山恵一郎

    ○法制局長杉山恵一郎君) 三十七条の二の中では、暫定予算をやっている間は、旧料金でやるんだぞということが法律上はっきり出ております。そしてなおその本予算が成立したらこれはもとへ戻って年度の初めからこの予算でやったということになって、この予算による収入・支出とみなすということになっていますので、わざわざ暫定予算でやったところまで戻って直すということが必要かどうかについてはちょっと要らないことじゃなかろうかというような感じを持ちます。  それから予算の方の関係ですけれども、これは収入全体として本予算でやったということになるわけで、本予算の執行の結果、歳入はある程度減ったという形になるわけですから、当然に修正をしなければならないということにはならないと思いますけれども、当委員会である金額は予算としては認めないということをおっしゃること、そのことは可能ではないかというふうに思います。
  134. 案納勝

    案納勝君 じゃもう一回聞きますが、たとえば公労法の十六条関係承認事項で、この部分は認めませんよというのがありましたね、昭和二十年代の後半で。
  135. 杉山恵一郎

    ○法制局長杉山恵一郎君) はい、ございました。
  136. 案納勝

    案納勝君 小野さんが次官のとき。だから、そういう意味で今後のために聞くんですが、受信料の場合についても国会の審議の過程で、百かゼロかじゃなくして、この部分は認められない、この部分は認めると、こういうことはできるわけですね。
  137. 杉山恵一郎

    ○法制局長杉山恵一郎君) はい、できると思います。それが全体として一体不可分で分離できないというものなら別ですけれども、分離可能であるというなら可能だと思います。
  138. 案納勝

    案納勝君 じゃ最後に聞きますが、この受信料等の問題でそれはできますか。
  139. 杉山恵一郎

    ○法制局長杉山恵一郎君) 受信料については、それは可能だと思います。
  140. 案納勝

    案納勝君 わかりました。どうもありがとうございました。結構です。  大臣、それ認めますね。
  141. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) ただいま国会の法制局の方からのお話がございましたが、政府といたしましては、内閣法制局と従来からいろいろこの問題についても検討しておりますが、先ほど申し上げましたように、政府といたしましては、この三十七条二項の承認は、全体的にこれを是とするか非とするかと、こういうふうな解釈になっております。
  142. 案納勝

    案納勝君 これは私はいまの取り扱いについては改めて私の方も処置をするとして、これはこれで一応飛ばします。ただ立法府ですからね、参議院。そういう意味では政府の解釈とは違うかもしれません。立法府は立法府のたてまえをとらざるを得ません。その点だけ明確にしておきます。  そこで、いま論議をいたしました点は今後の課題としてとどめておきますが、小野さんからの明確な答弁がありましたので、その点はそのまま進めたいと思います。  そこで時間もありませんから、せっかく各省からきょうお見えになっていますので、まずその辺についてお尋ねをいたします。  昨年、私は、本委員会で受信料について、なかんずく免除にかかわる諸点について各省及び関係皆さん質問をいたしました。検討をするということになって、これについてNHKはどのような措置をとられたのか。これは参議院の附帯決議にも明らかにされております。どのような措置がとられてきたか。大臣はどのように各省と御検討をされてきたのか。  この免除相当額の料金の減収は総体の二割に匹敵する状態になっております。したがって、いまNHK財政経理状態から見ると私はこれはこのまま軽視することはできませんし、たとえば電電の福祉料金制度に見られるように、昨年も指摘をしましたように、免除については本来国が福祉政策を進めるべきがたてまえであります。たまたまNHKの場合は免除規定がありますけれども、大正十四年ですか、このNHKといいますか、放送事業が始まって以来の実は歴史、経過もあるとしても、これは性格的に今日の放送法と違うわけであります。国がやるべき社会保障、福祉政策——国民は税金を払って国によって福祉政策をやってもらっているわけです。また受信料でその福祉政策のカバーをしなくちゃならない。二重の支払い、二重に負担をするということについてはきわめて問題があります。この辺についてどのような措置がとられてきたのか。各省はNHKからの要請を受けてどのような態度を決めて、どのように回答をされたのか。その辺をひとつ一括して御答弁いただきたいと思います。
  143. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 社会福祉事業施設あるいは文教施設等に対する受信料の免除は、御指摘のように大正十五年にNHKの前身である社団法人日本放送協会が発足した当初から今日まで引き続き実施してまいったものであります。この問題につきましては、各方面からの御指摘もありましたので、関係の向きと相談しながら検討を進めているところでありますが、受信料の免除は、公共放送としてのNHKが自主的に実施してきたものでありまして、それなりの役割りを果たしてきた経緯もありますので、にわかに結論が得られないところであります。  なお、受信料免除措置につきましては、第一次的にはNHKにおいて見直しを行うべきものと考えておりますので、今後、さらにNHKと連絡をとってまいりたいと思っております。
  144. 川原正人

    参考人(川原正人君) ただいまの免除のことと関連しまして、NHKがとりました措置について申し上げますと、昨年の参議院の附帯決議の趣旨を受けまして、NHKといたしましては昨年六月二十日付会長名の文書をもちまして、免除に関連しております厚生大臣、文部大臣、労働大臣、法務大臣あてに、現在やっておりますNHKの免除につきまして国庫からの補てんをお願いしたいという趣旨の文書を出しております。しかしながら、その後の折衝の経緯の中では、各省側といたしましては、いろいろ国の施策もやってはおるけれども、なかなか財政的に十分とは言いがたいし、NHKがやっておる免除につきましては、それなりの意義もあることなので引き続きNHKの負担において免除をしていただければありがたいと、こういう趣旨で五十一年度の国の予算の方にはその国庫の補てんということが計上されるに至りませんでした。  協会としては、五十一年度の予算は、引き続き免除の額はそのまま予算に計上しております。
  145. 案納勝

    案納勝君 各省の意見を——。
  146. 稲垣守

    説明員(稲垣守君) 学校におきまして今日テレビを補助教材として利用しているわけでございますが、大変効果もあり、文部省といたしましては、今後とも、その利用を促進しなければならないというふうに考えている次第でございます。  この受信料免除の問題につきましては、NHK財政事情もあることとは存じますけれども、NHK公共的な性格にかんがみまして、今後とも、このよい現行の制度を維持していただくようお願いしているところでございます。
  147. 北村和男

    説明員(北村和男君) 社会福祉施策に関しましては、ひとり厚生省だけでございませんで、関係の行政機関、民間団体等を含めました幅広い御支援を得なければ期待にこたえられない段階でございまして、NHKのやっていらっしゃいます受信料の減免もその趣旨に沿ったものであるということを私どもは考えておりまして、財政事情もございますが、今後、できますならば続けていただくようにお願いをいたしまして、昨年、お申し出がありましたときも、そのような御回答を申し上げております。
  148. 中野光秋

    説明員(中野光秋君) 職業訓練法によりまして、公共職業訓練校で受信料の免除をお願いしているわけでございます。私どもといたしましては、このNHK放送が訓練を実施する上におきましても非常に効果があるということで、引き続いて積極的に活用さしていただいておるところでございまして、私どもといたしましては、受信料の免除につきましても、従来に引き続いてお願いしたいという態度でまいっているわけでございます。
  149. 小野義秀

    説明員小野義秀君) 法務省の所管となっております刑務所、少年院、少年鑑別所等の矯正施設におきましては、収容者の専用に供しておりますテレビは受信料が免除になっております。これらの矯正施設で収容されておる収容者に対しましては矯正教育を行いまして、その犯罪性を除去して健全な市民として社会に復帰させることを目的としているわけでございますが、こうした矯正教育の実施の一方法といたしまして、学校と同じように社会教育番組等のテレビ番組の視聴は現在欠かせないものとなっております。矯正教育は人間の改善という大変むずかしい仕事でございまして、国の行政による働きかけだけでは十分でございませんで、公共機関、公益団体あるいは民間の篤志家等の幅広い層の御協力を必要としているわけでございまして、テレビの視聴料の免除につきましても、そのようなものの一つとして理解しております。したがいまして、今後とも、このような御配慮について続けていただきたく考えている次第でございます。
  150. 横山精一郎

    説明員横山精一郎君) 法務省の法務局が主管する中に更生保護会というのがございます。更生保護会は満期出所者それから保護観察対象者あるいは起訴猶予になった者などを収容して、その生活指導などを行っておりますが、これらの者はいずれも身寄りがないとか、あるいは身寄りがありましてもそれらの家族に受け入れられないとか、そういうような者を入れておるわけでございまして、これらが再犯しないようにということにつきまして相当の苦心もいたしているところでございます。  そういうようなわけで、更生保護会は刑事政策上も重要な一つの施設として国会でもお認めいただいているわけでございます。  ただ、この更正保護会は法務大臣の認可を受けまして民間の篤志家が実は運営をしておる施設でございます。そういう関係もございまして、社会各層の協力者を得まして、そしてその運営をやっているということでございますから、そういうような関連の中で、ひとつ今後ともNHKの免除の制度に浴さしていただきまして、これらの者が再び犯罪を起こさないような方にぜひ御協力いただきたいというふうに思っておる次第でございます。
  151. 案納勝

    案納勝君 厚生省にお尋ねしますが、電電公社の福祉電話の関係はどのような措置になっておりますか。
  152. 北村和男

    説明員(北村和男君) お尋ねの福祉電話の制度は、市町村が電話を架設をいたしまして、これをたとえば寝たきり老人の家庭あるいは重度の身体障害者の家庭にいわばお貸し付けをして、それで利用をしていただくという制度でございまして、それにつきましては、架設料につきましては国の補助、県の補助で賄い、利用料につきましては、これは原則として自治体が主にこれを負担している制度でございます。
  153. 案納勝

    案納勝君 私は、いま福祉行政がばらばらだと思う。いまも言われたように、NHKと電電公社と比べた場合に、私はこれまた性格が違います。けさ来論議をしているように、NHKというのは国民受信料制度によって運営をされている独立をした機関であります。そういうのと、電電公社の場合は国の一つの公共事業としての性格を持っている。財政的にもあるいは一定の公社としての役割りと国との関係が明らかであります。その電電公社ですら福祉料金は地方自治体及び国が負担をしている。  昨年、私は、この委員会で、そういう立場に立って福祉政策というのはどこがやるのか、国なのかあるいはいずれの機関福祉政策をする責任があるのか、ということをお尋ねをしたと思います。大臣は、国だと。そのとおりだと思います。  この中で私は画一的に言うのじゃありません。たとえばいま更生保護会の問題が法務省から出ました。こういう問題、民間の篤志家を中心にして行われるこの種の問題と、本来各省が業務の施設として、設備施設として設置をしなくてはならないものと私は区別をしてしかるべきじゃないか。たとえば法務省の所管の施設の中でテレビを設置する。これは施設で当然法務省の業務の一環として行うべき筋合いのものじゃないでしょうか。労働省の職業訓練にしてもしかりじゃないでしょうか。文部省にしても学校教育という立場に立って、これは文部省の施策の一環としてテレビを入れるんじゃないでしょうか。厚生省にしても私はしかりだと思います。その部分が大変あると思う。私は、これらの福祉行政がばらばらで、ちょうど都合のいいものには乗っかかって、それで知らぬ顔していくというのが実際に出てきている各省の姿じゃないでしょうか。  大臣、これは本当に受信料制度が公共料金の一部と言われているぐらい、ある意味では国民の生活の中にも響いているんですよ。単にもうNHKが勝手にどんぶり勘定で受信料を上げている、そういう中で国民の生活の実感からも受信料についての値上げについてはきわめて大きい批判があるわけ。こういう中で私は考えた場合に、検討を今後もしていきますというんじゃなくして、ここで明確にしてもらいたいのは、私は問題が二つあると思う。受信料免除規定そのものについて再検討してもらう、中身について。私はもっと分離をできる、細分化できる中身があると思います。その上に立って国でやらなくちゃならないもの、あるいは国民の協力できているもの、先ほど言われる法務省の更生保護会みたいな措置についてどうするかというものについては、もっと私は理由の立つように区別をして明らかにしてもらいたいと思いますが、大臣いかがですか。
  154. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 至極ごもっともな御意見でありまして、ただ、今日まで五十数年にわたるNHK歴史というようなものからの一つのとり来った道であろうと思いますが、先ほどもお答え申し上げましたように、第一次的にはNHKにおいて練り直しを行うべきものであると考えております。十分政府としても検討していきたいと思います。
  155. 案納勝

    案納勝君 検討していただきたいんですが、大臣ね、五十年ぐらいの歴史というのはそのとおりなんですがね、それは国が干渉した要するに放送事業、あるいはそういう中において国が施策として放送の拡大やあるいは普及のために、あるいは福祉対策のために戦前までやってきた、私は一定の理由が立つと思うんですよ。戦後、新しい放送法になってから国民放送局としての役割りを果たすようになってからというのは、国が一定のこれらについての責任を引き継がなくちゃならぬ。ここが違っているじゃありませんかと、改めて検討しなければならないんじゃないですかと、こう言っているわけであります。だから、その辺について、いま大臣の言われた、結論的にはそれで結構ですが、あわせて小野会長、免除規定を改めて検討するということについてどうですか。
  156. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いろんな過去の伝統はございますけれども、現時点に立って、あるいは将来への趨向等をも考えまして、いろいろ現在の受信料免除の内容につきましてはこれを分析、検討する必要のある時期に来ておろうと思います。そのような検討は続けてまいりたいと思います。
  157. 案納勝

    案納勝君 じゃ次に移ります。  海外放送について、これも時間の関係がありますので走っていきます。  まず、国際放送については国が命令をして行うわけですね。で法の第三十三条、三十四条、三十五条に命令及びその以下の費用の分担が明らかにされております。本年度の費用は昨年に比べてどのぐらい増額されているのか、総額幾らになっているのか。
  158. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 昭和五十一年度は四億四千八百万でございまして、前年度に比べまして三〇%の増加になっております。
  159. 案納勝

    案納勝君 これは石川さんにお聞きする方がいいかもしれません。資料によると、各国の国際放送に伴う波数ですね、それからどの程度使われていますか。あわせて中継基地はどういうふうになっているか、放送時間はどの程度になっているのか。アメリカ、ソビエト、イギリス、西ドイツ、フランス日本、各国について説明してください。
  160. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) あるいは詳細にはかえってNHKの方で掌握しているかもわかりませんが、私どものところに入っております資料で、ただいま先生の御質問に対してのお答えでございますが、波の数はちょっと全般的にわかりません。しかし、運用時間とかあるいは使用言語等はわかっておりますのでお答えいたしますと、まず日本の場合をとりますと、これはNHKが二十一の言語を用いて一週間に二百五十九時間という国際放送を行っております。  それからアメリカでございますが、アメリカにおきましては、VOAというのは国営の放送でございますが、これが三十六の言語を用いて一週間に八百五十八時間の放送を行っております。海外中継基地を十一カ所設けております。それからソ連でございますが、ソ連はソビエト国営放送が八十以上の言語を用いて一週間に千九百時間以上の放送を行っております。それからイギリスでございますが、イギリスは公営放送であるBBCが四十の言語を用いて一週間に七百二十七時間の放送を行っております。   〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕 海外中継基地を五カ所設けております。それからフランスでございますが、公営放送であるラジオ・フランス・インターナショナルが四つの言語を用いて一週間に百三十三時間の放送を行っております。それから西ドイツは、公営放送であるドイツチェ・ベレ放送協会が三十二の言語を用いて一週間に五百九十二時間の放送を行っておりまして、海外中継基地を三カ所設けております。以上でございます。
  161. 案納勝

    案納勝君 波数は、わかったらNHKの方から。
  162. 橋本忠正

    参考人(橋本忠正君) まず、中継基地につきましては、ただいま郵政御当局から答弁ございましたように、アメリカ十一、イギリス五カ所、西ドイツ三カ所でございまして、フランスとソビエトはございません。  それから波全体の数はちょっと私どももつかみかねております。
  163. 案納勝

    案納勝君 そんなことない、資料が出ているじゃありませんか。  それはいいですが、そこで郵政省の命令はどのようになっていますか。波は何波で、放送時間は何時間の命令になっているか、命令の中身をお伺いします。
  164. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 国際放送の命令の内容でございますが、これは放送法の三十二条の規定によりまして、郵政大臣がNHKに命令いたしておりますが、五十一年度におきましては、放送事項としましては、時事、国策等に関する報道及び解説となっております。それから放送区域がジェネラル・サービスとして全区域を対象とするほか、地域別放送として十八区域を対象としております。それから空中線電力は放送区域によりそれぞれ五十キロワットから二百キロワットまでの間で実施することとなっております。
  165. 案納勝

    案納勝君 何波を出せと、幾つ電波を出せという命令になっておりますか。
  166. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 周波数の数は別に命令してはおりません。
  167. 案納勝

    案納勝君 NHKの国際放送では、欧州向けは二波ですね、北米東部向けが二波、北米及び中米・ハワイ向けが四波、アフリカ・南西アジアが二波、中東・北アフリカが二波、南米が三波、アジア大陸北部・中部が三波、東南アジア向けが三波ないし二波ですね。東アジアが三波、欧州、ニュージーランドが二波、朝鮮が三波、全地域三波と、こういうふうになっていますね。  いま郵政省がNHKに命令を出して、そして費用を分担している積算は、どういう根拠でそういう金額になっていますか。
  168. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 先ほど申し上げましたように、政府といたしましては五十一年度四億四千八百万という経費で国際放送をやっていただくということになっておりまして、それに対する命令を出しておりますが、この内訳でございますが、大体、給与とかあるいは諸手当といたしまして約半分の二億三千万ほどでございます。また番組の制作とか編成などに要する費用、それから通信施設に要する費用、これが大体二億一千八百万ということでございまして、合わせて四億四千八百万というふうになっております。
  169. 案納勝

    案納勝君 それは一波だけの国際放送に対する積算でしょう、一波だけしか出していないでしょう、そういうことで出せるはずないじゃないですか。
  170. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) これは先ほど申し上げました政府命令分の経費でございます。
  171. 案納勝

    案納勝君 政府命令分というのは一波ですね、積算の根拠。
  172. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 波といたしましては、この積算の根拠の中に地域放送としては一波、それからジェネラル・サービスでございますが、これについては三波という計算でこれの積算をいたしております。
  173. 案納勝

    案納勝君 それで政府として私は国際放送がどういう目的で行われるのか先ほどは質問を省略しました。それで国際放送政府として十分にやれるというふうに御理解になっておられますか。
  174. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 国際放送につきましては、かねがね国会におきましても充実強化ということを言っておられますし、われわれといたしましてもさらに充実強化したいということで努力しているわけでございますが、決してこれで十分とは思っておりません。今後とも、さらに格段の努力を続けて、国際放送を充実していきたい、かように考えております。
  175. 案納勝

    案納勝君 大臣ね、私は国際放送というのはきわめて重要な役割りを果たしていると思います。御案内のとおり。それだからこそ政府は命令を出して国際放送をやらせる。それでやった命令に伴っての経費は国が負担をするということなんです。  いま指摘しましたように、郵政省はNHKに対し一波だけしか積算をしていない。この一波だけというのは事実上半分も聞こえない状態が現出をするんです。国際的にいっても一波だけしか出していない国際放送なんてあり得ないわけです。主要な諸外国の場合は中継基地を持ち、そして波数もきわめて多いんです。あとはNHKさんおたくがやりなさいということだけで、私は国際放送の国の責任は済まないと、これ百万遍言っても少なくとも国際放送について私は大臣が従来の発想からもう一歩前に出た発想で予算の措置をしなくては、この国際放送部分国民の負担でやらせるということになる。国の責任を、一定の責任を果たしてもらうという立場で、ことしはもうすでに予算が上がりましたが、あなたの立場で郵政省は検討してもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  176. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) ことしもずいぶん努力したつもりですが、まああの程度ですが、来年はひとつ大いにがんばって御期待に沿うように努力いたします。
  177. 案納勝

    案納勝君 あと時間がありませんから少しく取り急ぎますので、これは基本問題に入ります。  小野会長にはけさ来午前中の質問の中で申し上げまして、あなたの答弁がありましたように、基本問題調査会あるいはその答申の中身、あるいは本来NHKのあるべき性格あるいは社会的使命、こういった面からあなたの答弁を裏づけをしながらお聞きをしていきたいんですが、まず番組審議会です。今日でも中央、地方とも委員の選考が——私は多く申し上げません、もう時間がありませんから——あいまいではないかと思います。私は先ほど言うように、私だけではなくして、もっと各分野、各世代、もっと国民の意思を吸収をしていく。発想を転換をして既存のものが形骸化をされていることについてきわめて敏感に反応をしていくという意味で、私はもっと勤労者の代表、青年、主婦の代表、こういうものを網羅をして番組審議会というものについて私は取り組むべきじゃないかと思うんです。したがってその点について小野さんどういうふうにお考えになるのか。  あわせて、この二年間、番組審議会の中で、番組の適正化について意見が出されたことがありますか。これは法によりますと、その出された意見についてはNHKは尊重して必要な措置をとるというふうになっています。これについていままでそういうことがされた事実があるかどうか。あれば、その記録があれば後日提出を願いたい、こう思いますが、この二点について御見解を——。
  178. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 前段の番組審議会のメンバー構成の問題でございますけれども、確かに御批判を受けるような点は十分に理解できます。やはり広く国民番組に対する要望なり意向に沿わなきゃならない審議をする番組審議会といたしましては、あらゆる面が代表されるような構成が必要であろうと思います。漸次、将来、そういった見地に従いまして、中央、地方を通じての番組審議会の委員構成はそういった御期待に沿うように努力をしてまいりたいと思います。  また番組審議会のいわゆる審議経過につきましては、坂本局長の方から御答弁させていただきたいと思います。
  179. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 先生指摘の、番組審議会において先生方の御意見をどう反映したかということにつきまして、四十九年度におきましては、現在の国際問題あるいは資源問題、そういうものがわが国にとって非常に重要な問題だから番組の編成の中で十分取り上げてほしいということで、「七〇年代われらの世界」その他の番組で御趣旨に沿うように努力いたしました。それから視聴者参加番組というような形でBBCで「オープンドア」というような新しい番組が開発されたんだけれどもNHKとして当然関心を持つべきではないか、そういう前向きの姿勢番組づくりをしたらどうだと、こういう御指摘がございまして、まあわれわれもこの問題につきましては、かなり編集権とのかかわり等むずかしい問題もございますけれども、番組審議会の御指摘に沿うべく努力いたしまして「あなたのスタジオ」という番組を五十年度以来発足させている次第でございます。なお、たまたま五十年度が国際婦人年に当たりますので、やはり五十年度は国際婦人年に当たるので、来年度の番組の中で十分その点を考慮するようにということでございまして、そういう趣旨番組を五十年度において編成いたしました。  それから五十年度の番組審議会といたしましては、五十一年度におけるNHKの厳しい情勢のことを考えて、十分NHKの企業の性格その他を聴視者の方々に理解していただくような意味合いでの番組編成、いわば簡単に言えば広報的な意味を含むかと思いますが、小野会長自身出席するような形での広報番組を大いに考えたらどうだと、こういうようなこともございまして、これにつきましては、その趣旨に沿う努力をいたしておるわけでございます。  それから、例の物価問題その他もございまして、まあ消費者の問題、そういう問題についてもっと積極的に考えていくべきではないかということで、海外取材番組で消費者新時代というようなものを編成いたしました。その他、多少長くなりますので省略いたしますけれども、有益な御意見をいただきまして努力いたしておる次第でございます。
  180. 案納勝

    案納勝君 それは資料として提出してください。  そこで、小野さん、私は、いまの答弁を受けて言うのですが、中央の番組審議会の場合は経営委員会がありますね。地方の場合は会長ができるわけですから、審議会の社会的な学識経験者ということについて、あんまり狭く考えないで、いまの時期ですから。それで任期切れがくるところがありますね。私は改選する際には、いま会長答弁したように、私たちの意向を受けて、各層、各世代、そして広く国民意見を吸収していくという立場でやってもらえる、こういうふうに確認したいと思いますが、よろしゅうございますか。
  181. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) そのとおりに考えておりまして、漸次、近いうちに任期のまいりますたびに各分野の意見が十分に反映されなければなりませんので、そういった面について適切な選考をするように私としては要望をいたしております。
  182. 案納勝

    案納勝君 それから、やっぱり委員皆さんについて、モニターの報告やら番組についての投書やらあるいは意見やらたくさん寄せられていると思います、そういうものを取りまとめて論議のしやすいようにするということも大事だと思います。ぜひこれは配慮していただきたいと、こう思います。  それから、いま説明のありました国民番組参加というか、要するに参加をするローカル放送の強化というのがいま私は最大の一つの課題だと思います。難視聴解消、ローカル放送の充実というのが、国民と結びつける意味で、さらに地方の文化を高揚させる意味できわめて大事だと思います。このローカル放送の強化とあわせて、一定時間の市民への開放といったものも工夫してみる必要があるんじゃないか、いまも答弁されましたが、これらについてはどう思いますか。
  183. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 先生指摘のとおりでございまして、先ほど御紹介いたしましたイギリスの「オープンドア」にならいました「あなたのスタジオ」という番組も、まあ多少試行錯誤の点もございますけれども、聴視者の御支持を得つつございます。あの種の一つのバリエーションというふうなことをローカルで考えるということは十分でき得る範囲内のことではないかと思っておりまして、現在、検討をさせておる次第でございます。
  184. 案納勝

    案納勝君 それから、これはきわめて付属的なことになるかもしれませんが、先ほど番組審議会についての各層の意見の吸収ということで小野さんも前向きで答弁されております。そういうことだけにこだわる番組審議会ということじゃなくして、全体について国民の各層の意見を聞くという立場で、あるいはいま既存のそれぞれのたとえば特別聴視者懇談会、懇話会とかいろいろありますね、それにこだわらずに定期的に公聴会的なものを開いて、会長以下理事皆さんも出て、それを東京だけじゃなくして地方の段階でもそういうものが開かれる、こういうふうにどんどんおりていくことが必要だと思いますが、これについてどういうふうに考えておられますか、どう改善したい、あるいは進めたいと考えておられますか、もし意見があったら聞かしてください。
  185. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 私はかねがね聴視者の中に溶け込んでいけということを申しております。ただいまの御指摘の点は十分に私は賛同できますので、中央、地方を問わず年に適当な機会を得まして、いろいろな人に集まっていただいて、現在の懇話会、聴視者懇談会、こういったものでもやっておりますけれども、そういう規模ではなしに、やはりこれが世間にも公開できるような状況においてそういう機会を持って、いろいろ私どもの方でお願いすることもお願いをし、またいろいろ御要望に対して沿い得るような一つの根拠になりますように運用してまいりたいと思います。
  186. 案納勝

    案納勝君 聴視者会議になりますか、仮称になりましょうが、私がいま勝手につけたわけでありますが、やっぱりここではっきりしてもらいたいのだが、たとえばこのことはあなたの諮問機関基本問題調査会の中でもきわめてウエート高く指摘されている。たとえば副会長がその担当になるとかいうようなことを、それで各局段階でこれらについて検討するとか、具体化していくとかいうやつを私は明確にひとつ方向として小野さんからお聞きしておきたいと思います。
  187. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 早急にそういった措置はとってまいりたいと思います。
  188. 案納勝

    案納勝君 じゃ私は最後に、ぜひひとつ会長理事者皆さんに私の意見を申し上げて御答弁をいただきたいのですが、というのは労使問題です。  小野さんは、かつてこの委員会で茜ケ久保さんの質問に答えて、NHKの労働組合である日本放送労働組合との関係で、労使の信頼関係最大限に尊重し、協調を第一義として進めていくというふうに考えを述べられています。これは五十年、去年ですね。私は、私自身御案内のとおり、先輩の皆さんもたくさんおられますが、郵政の中で働いた一人であります。いま国鉄初め私たちの労使の関係でも多くのひずみや労使の関係の不信感というのはまだ根絶をされておりません。真に郵政事業やあるいは国民のためにその事業が役割りを果たす場合には労使の信頼関係を基礎にする以外に、事業発展国民への福祉増進、増幅を図ることは困難であります。ましてや日放労の場合は、NHKという基本使命に基づいて、職員の皆さんも個々の人たちも、その使命感の上でそれを守っていこうとして一生懸命働いておられます。日放労に入っているから、その使命をゆがめているのではないのです。労働組合があるからゆがめられるのではない。みずから働くことによってNHKの持つ使命を守り通そうとしているわけなんです。したがって、その間に労使の関係意見の交換や、そしてその上に立って信頼関係の確立がなければならない。私は十年前に不幸な事件があったことを知っています。そしてそれに対して五項目にわたって労使の信頼関係を今後続ける意味での約束事があったことも承知をしています。  私がここでお聞きしたいのは、そのときの小野さんの姿勢、今日の姿勢も変わらない、そして労使の問題についてどのようにあなたの決意を持っておられるのか、明らかにしていただきたい。
  189. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 労使の関係における正常なる協調関係が保たれますことはきわめて重要でございます。特にNHKのような国民に奉仕しなければならない立場にあります協会業務の運営につきましては、労使関係がぴったりいっていないようではこれはまことに不幸であろうと思います。そのためには労働組合の持つ意義、使命等については最大限に私はこれを理解し、尊重し、両者相協調して国民の負託にこたえていくべきものと考えております。  そのためには、NHKといたしましては、ほかにもそういうところもありますけれども、いわゆる労働条件の改善等における団体交渉等の関係だけに限定されずに、あるいは経営協議会、最高経営協議会というものを労働協約上持っております。そういう場を活用いたしまして十分に労使が協調して、ともどもにNHK発展のために努力し、もってそれが国民の負託に十分にこたえ得るような運営をすべきものと考えております。
  190. 案納勝

    案納勝君 歯に衣を着せずに最後だから一言だけ言っておきます。  私が午前中から申し上げた報道管制の体制強化とか、あなたは運用だと、こう言われますけれども、これについて幾つかの不信感、不信の念を申し上げました。あなたからの答弁もいただきました。今後、見守っていきたいんですが、これはロッキード報道だけが問題ではないんです。あなた御存じのように、会長室特別プロジェクトチーム、ある種のそれに対する見方としては、先ほど申し上げたように、生臭いかもしれません、聞いてください。これは秘密警察プロジェクトチーム的な性格じゃないか。これはたとえばあなたが知っているNHKの十年前の問題の中の関係をした人等の方々が抜てきをされて、合理化対策や放送関係や労務管理、こういったものの立案やあるいはプロジェクトとしての遂行、こういうものをやるところではないのか。もっと言いますと、七月任期が切れる会長再選体制の工作プロジェクトチームじゃないか、こういうことを私が会長にここであえて言ったのは、このことについてこういういまみたいな意見、不信感が私はいままでの姿勢の中で見ることができるといいますか、見えると、こう言いたいんです。  先ほど言ったように、二日にわたってNHKを調査しました。根強い不信感が一定のものがあります。たとえば、もう多く申し上げませんが、新たに配置された副編集長に対する不信の問題も一つあります。私は生臭くて余り言いたくなかったんですが、これだけは言っておきます。だから、そういうものについて小野さんが言われるように、本当に労使が一体になってNHKというものを守っていく、NHK存在というものを国民基盤の上でしっかりしたものにつくり上げていくという意味では、そういうものがあるとするならば、積極的に上に立つ人が前に出て、問題の解消、氷解や信頼感の回復をやるべきが私は今日あるべき姿だと思う。したがって会長はけさ来幾つかの信念を、あるいは自分の考えている考え方を明らかにされました。そういったものを実行するあるいは進めるという立場に立って、労使の信頼関係の回復、いや信頼関係を修復するために、あなたから前に出ていってその輪を広げていくという積極的な姿勢をとってもらいたいと思う。その点いかがですか。
  191. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 私は、非常にそういった面についてはきわめて物をフランクに考えております。今日、いろんな労使関係の中に不信感があるというようなことが言われますけれども、これは不幸にして十年前の不当労働行為に起因するものであろうと思います。これはもうすでに十年たっております。そういう前時代的なことが許されていいはずはございませんし、また今後再燃するような危惧も私は持っておりません。ただ、人間には長所もあり短所もあります。お互いに長所を伸ばして激励し合っていくのがやはり人間の道ではないかと思います。十年前にこうだったからという、いつまでもその色をつけて、その人間はもうだめだと、こうレッテルを張ってしまうことは、やはり広く胸を開いた労使協調の態度を貫く上において、これはまた不幸なことではないかと思います。  いわんや、私の会長室の中にいるいわゆるその部門が私の再任のための一つの道具だというようなことは毛頭考えません。私は人事についてはきわめてさらっとしておりまして、もういつやめてもそんなことを異といたしません。また、残りたいためにかれこれ運動するようなことは大きらいでございますし、そういうことは毛頭いたしません。仮にそういうことをやろうという部下がおっても、私はしかりつけてとめるぐらいでございます。そんないやしい根性は持っておりませんし、私は、人事は議すべからず決すべきものだと、この信念をかたくいたしておりますので、私の人事は経営委員会が決められることでございます。経営委員会が独自の見解をもって新たに決せられればそれでいい問題でございますので、何らその間に運動とかなんとかいうようなけちくさいことは毛頭考えておりません。そういう面で私自身でないほかの人事も見ておりますので、これは公平な適正配置、これがやっぱり人事の基本であろうと思いますので、そういう面で今後とも対処してまいりたいと思います。
  192. 案納勝

    案納勝君 ぜひひとつ、十年前のことをいつまでも考えておるわけじゃないでしょうし、お互いに信頼をされるということを、実際に体を通じ行動を通じてお互いの信頼をつくっていただきたいんですよ。一たん信頼関係が壊れたら十年は回復しません。これは私たちのところが、ここに大臣おられますが、一番いい例です。まさにその意味では、そういった点について虚心にひとつ小野会長の今後の姿勢の中で報告をしていただきたい。  最後に、私は、本当はもっと時間があれば課題を提供したかった。それは専門懇の座長の問題です。一つは、これについて大きな不信感も持っておる。公正な第三者の機関ではありません。   〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕 政府閣僚協の専門委員懇談会、NHK会長として、本来あるべきNHK使命を遂行する立場として、ああいう専門懇の座長などという立場に立つことは私は許されない。  まして、ストライキ権の問題は昨年の年末大問題になりましたが、きわめて高い政治的課題です、今日。たとえば、私はあなたに、会長としてもって社会の流れや社会の進歩を洞察をして、NHKというのは国民民主主義のそれを守る立場でぜひ活動してもらいたいということを先ほど申し上げました。いま国際的にも労働組合というのが、専制やあるいは圧政やファシズムや全体主義の社会でなく、民主主義の社会の中では、不可欠な要素になっているんです。ここに資料がありますが、五十年のILOの場でも、事務局長は公務員のストライキ権問題はもはやストライキ禁止というのは正当化されないと、こう言って公務員専門委員会に課題を投げかけているぐらいなんです。百年の歴史の中で労働基本権というのは多くの試練を経て今日来たわけです。そういう中で、あなた、きわめて政治的課題——私はこれ以上言おうと思いません。  しかし、この座長を務めて、最後記者会見で、労働組合がけしからぬ行動に出るかもしれない、こういうあなたの放言がどこから出てくるのか、私はあなたの姿勢やきれいなことを、きょう先ほどからずっといろいろお聞きをしてきましたが、どこから出てくるのかわからないんです。そういうところから私たちは確かに言われるようなことがあるのじゃないかと不信感が出るわけです。私は、あの専門懇の座長をされたことについてあなたはどういうようにお考えになりますか。今後の問題について、あなたのお気持ちをお聞かせください。
  193. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 専門懇の問題につきましては、私は、委員を七月に任命されまして、当初は毎日新聞の高田さんが座長をやっておられました。これは最年長者がやるというような一つのルールがあったわけでございます。高田さんが毎日新聞の社長に就任されまして、新聞社の非常なやはり重要な時期にほかのことはやれないということで、これをお断りになって、おはちが私に機械的に回ってきたわけでございます。  私は、この座長の職責といたしましては、自分の見解で左右すべきものではなく、全体の意見を公正に取りまとめるのが座長の仕事だと思っておりますし、また、そのとおりに動いてまいりました。しかし、この専門懇の座長を引き受けましたことがNHKの不偏不党、中立公正の立場のそれと相反するんではないかと、いろんな御批判を受け、いろんなやはり疑惑を持たれております、これはやはり好ましいことでないと反省をいたしております。そういうような気持ちでおりますので、将来は、やはりNHK会長NHKの業務に専念すべきものとかたく考えておりますので、私の現在の心境はそういうようなことで、この重大なNHK会長としてはその本務に専念すべきものと、かように考えております。
  194. 案納勝

    案納勝君 あなたは、けしからぬ行動だと、それは民族にとって不幸なことだと、こう言い切ったわけですね。これ以上きょうはこの場ではしません。こういう感覚が私が先ほど最後に申し上げました問題が派生をする原因だと思います。ぜひ自粛をしていただきたいと思います。ぜひその辺を最後に重ねて申し上げておきます。  あと難視聴解消問題、なかんずく今度の予算を見ますと、放送設備の改定ですか更新ですか、こういうものの予算が膨大に取られて、難視聴問題についてはきわめて私は不十分だと思う。五十一万世帯まで努力をする、こう言われました。しかしながら、この難視聴解消というのはいまやNHKのこの放送法にあるように最大の目的なんですね。したがいまして、時間がありませんが、私は多くの課題を次に残します。今後のNHK運営その他を見守りながら次の機会にこれらについての進捗状況等を含めて再質問さしていただきます。きょうは、これで打ち切りますが、ぜひ十分な配慮をして今後進めていただきたいと、こう思います。  以上をもって終わります。
  195. 山中郁子

    ○山中郁子君 NHKの五十一年度予算審議に当たりまして、私は、先日来から問題になっております公共放送としてのNHK報道の中立、不偏の問題、それから経営姿勢予算上の経理問題、番組充実、とりわけローカル放送の課題、また職員、出演者の待遇問題などについてお伺いをしたいと思います。   〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕  で、具体的な質疑に入ります前に、ぜひともひとつ郵政大臣並びに会長に私の意見も申し上げ、そしてまた御意見を伺いたいと思います。  それは、昨日の参考人質疑の中でも参考人の多くの方が述べられておりましたが、NHKの問題に関して最も根本的な点の一つである、電波が公共のものである、しかしその電波が限られた人々によって使用される、この放送事業の中でのNHKのあり方、ここに基本的な課題があると思います。  そこで具体的な問題については後ほど先ほどの課題に沿って進めますけれども、私は、まず第一に、NHK国民の前に開かれたものであるということが必要だと思います。それから二つ目には、そのことが保障となってNHKの業務が国民の期待にこたえるもの、国民の期待を満たすものでなければならない。そしてさらに、いまの二点を前提として、受信料制度の問題に端的にあらわれておりますが、NHKの今後の展望というのはまさに国民の支持によって成り立つ以外にないんだと、この三つの点は、私は審議を行うに当たってどうしても離れていかれない問題だというふうに自分では考えています。国民の前に開かれたものであること、それから国民の期待を満たすものであること、それから国民の支持によって成り立つものであること、この点について御異議はないと私は思いますけれども、初めに郵政大臣並びにNHK会長の所見をお伺いいたします。
  196. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 電波は国民のものであると、御意見のとおりでございます。  NHKは、公共福祉のためにあまねく全国におきまして受信できるように放送を行うことを目的として、放送法によって設立された特殊法人であります。したがいまして放送最大限に全国民に普及されるよう努めることはNHKに課せられた最大限使命であると考えられます。また、NHKは、その言論報導機関としての性格に基づきまして、業務の運営が自主的に行われるよう保障されているところであります。NHK放送の不偏不党を堅持するよう不断の努力を傾けるべきものと考えております。
  197. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) ただいま御指摘の三点は、相互に関連する問題と思います。これが個々ばらばらに存立するものではないと思います。いわゆる閉鎖的な独善的なこういった経営の中に国民の支持が得られようはずもありませんし、国民意向の反映されよう道理もありません。どこまでも経営は明るい開かれた経営でなければならないと思います。こういう姿勢をとることによって初めて国民のあらゆる要望にこたえることができるのではないかと思います。このことがやがては国民の支持を受ける必要な条件でございまして、この三者は皆関連を持っておるわけでございます。  私どもは、そういった意味において、そういった経営をこそ念願をして歩んでおりますが、現状が一〇〇%満足だとは私は申しません。まだまだ努力しなけりゃならぬ点が多々あると思います。私は、御指摘のような三点にかんがみまして、遺憾のない運営をするように努力をしてまいるつもりでございます。
  198. 山中郁子

    ○山中郁子君 なかなか開かれてない部分があるというふうに思えるんですが、そこはまた後ほど触れます。  それで報道の不偏不党、中立公正と、こういう問題です。いま私は日本国民が最も関心を持ち、最も真実を知りたがっている、そういう課題がロッキード事件であるということは衆目の一致するところだというふうに考えますが、その点については御異議はないでしょうか。
  199. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 私も同様に考えております。
  200. 山中郁子

    ○山中郁子君 私がこのことを問題にいたしますのは、二つの大きな側面があります。  一つは、まさに今回のいま論議をされております報道の中立公正、あるいは中立公正ということを盾にとった介入を思わせるさまざまな現象、こういうものが基本的に言論表現の自由を侵すそうしたものにつながる内容であると同時に、NHKの存立のゆえんである放送法の精神を踏みにじる、そこにつながるものである。これは先行き日本民主主義をどこからか取り崩していくそういう危険な中身を持っているということと同時に、その具体的な問題がロッキード事件であるから、その二つの理由から私はこれはまさに看過できない重要な問題だと指摘せざるを得ないわけです。この点に関しましては、けさほど来、案納委員からさまざまな質疑が行われました。私はなるべく重複はしないようにしたいと思います。しかし、そういう観点から看過できない重要な問題である立場で幾つかの点をただし、あるいは指摘をしなければならないと考えております。  問題は、いま国民が全国的に知りたがっている、そして怒りを燃やし何とかもうこういうことは願い下げにしてほしい、こういう腐敗した政治はもう御免だというそのロッキード疑獄をめぐって、何とかこれをうやむやにごまかそう、これはどういう理屈をつけようと何とか政府高官名もやみからやみへ葬って、そして真相を明らかにしないまま現状を維持していこう、こうした蠢動が行われているということはこれもまた衆目の一致するところです。連日の新聞が大きな紙面を割いてそれを報道しております。この点についても小野会長認識は違わないと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  201. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) ロッキード事件がいわゆる日本の民主政治、民主社会におきましてきわめて不幸な事件であることは申すまでもございません。したがって、これが徹底的に解明されることは当然であろうと思います。国民ひとしく念願するところだろうと思います。この見地に立って、放送事業者といたしましても、いわゆるそういう客観的な真実をつかめば、これはやはり放送すべきものと考えております。  ただ、いろんな推測、思惑、これを加えてやりますことは、事、人権にも関する問題でもございますので、その点については、決してこの問題の解明を非常に逃げるということではなく、必要なことであろうと思います。基本的なロッキード事件が徹底的に解明されなきゃならぬということについては同様でございますし、そのために必要な放送は決して控えるつもりはございません。   〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕
  202. 山中郁子

    ○山中郁子君 それで、これらの問題を材料にいたしまして、自民党総務会で、NHKニュースが「赤旗」の報道を引用しているからけしからぬ、あるいはCIAの金が流れていることについての報道が大き過ぎているからけしからぬ、ないしは先般来日いたしましたフランス共産党のジョルジュ・マルシェ書記長へインタビューを行ったからけしからぬ、その他さまざまな論議が報道されております。これは新聞報道で私たちは認識をしているわけです。  このことについて、小野会長は、こうした質疑の中で、私は繰り返して言うことを避けるために一言で言ってしまいますけれども、「赤旗」報道云云という問題については共産党の上田参議院議員の記者会見の内容の報道である、またその他の問題についても偏向であるというふうには考えていない、確信を持ってその報道について進めてきている、今後もそれは変わらない、こういうことを言われたと私は理解をしておりますけれども、それについては間違いありませんでしょうか。  なお、つけ加えて申し上げるならば、午前中の案納委員質疑に対して、「赤旗」であろうと、あるいはどういう種類からの取材であろうと、報道の中立ということについて侵されることはない、そういうことも含めて答弁をされたと思いますが、確認をいただきたいと思います。
  203. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 民主社会において批判がありますことは当然でございます。批判のない民主社会は暗い社会でございまして、民主社会の発展につながるものではございません。したがいまして、そういったいろんな批判がありますことは私どもは承知をいたしております。政治にすぐそういうふうに批判があるとNHKはよろめいた、こういうように見られがちでございます。決してよろめいておりません。けさほどから申しますように、NHKはそういった面についてよろめいておりませんし、またそういう批判をされる側も決して干渉とか抗議とかいうそれを受けておりません。そういうような状況でございますので、ただいま確認がほしいと言われたそれは、そのまま私はそのとおりに考えております。
  204. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、新聞報道されておりますNHKのそうした報道態度に不満とし、そして、こういうことなら参議院で予算を通さないとか、あるいは幹事長善処をするということを約束したとか、そうした一連の推移、そういうものに対して、まずNHK会長としてこういう現象をどのように考えられるのか。言ってしまいますと、私は、当然、案納委員指摘されましたけれども、NHKとしてはこうしたものにきちんとした態度を表明して、そして国民の前にNHK姿勢を明らかにすべきだと私は考えます。しかし、その点についてはこういうところで審議になったり質問になったりいたしますと、そうすると、そういうことは絶対にありませんと。ないけれども現実に自民党総務会でそうした発言がされたということは、これは事実だとしか言えないと私は思います。その事実に対して、それではどのような対応をされるのか、まず、どのようにそのことを考えられるのか、それをぜひお聞かせいただきたいと思います。
  205. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いろいろ新聞紙上等の伝えるところによりますと、自民党総務会の中でいろんな発言があったことは、これは私どもも承知をいたしております。また自民党だけでなしに、いろいろNHK番組については各党ともいろんな御批判がございます。それはそのとおりに承知をいたしております。正しい御批判に対してこたえなければならないことば当然でございます。報道の自由、言論の自由はいわゆるわがままほうだいの自由ではありません。裏には大きな責任感があります。そういったようなことで、非は非、是は是としなければなりません。正しい批判にはこれは謙虚にこたえることが自由を守り通す一つの道であろうと思いますが、間違った批判に対しては、これによってよろめいてはならない、かように考えます。  そういうことで、いろいろいま問題になっております、話題にされました自民党総務会の中におけるそういう発言で、これは新聞が伝えるとおり事実でありましょう。それはやっぱりNHK姿勢との関係については、われわれについては何ら具体的な行動で出ておりませんし、全然、NHKとしては、世間は揺らいだんじゃないかと疑われるかもわかりませんけれども、決して揺らいではおりません。この姿勢を厳然と持つことがそういった批判にこたえるゆえんではないかと思うわけでございまして、一々の批判に対して、それに対してはこういう抗議行動に出るとか、そういうようなことよりもむしろ毅然たる態度を持ち続けることこそ国民の信頼を得る道ではないかと、かように考えております。
  206. 山中郁子

    ○山中郁子君 では重ねてお伺いいたしますけれども、自民党総務会でそのような意見が出で、予算の問題まで含めた脅迫的な言辞が弄されると、そういうこと自体に対して会長はどのようにお考えか、そのことをお伺いをしたいと思っております。
  207. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 私はどのように考えるよりも、そういうことによってNHK予算の通過が妨げられると、こういうようなことはあり得ないと、このように考えております。
  208. 山中郁子

    ○山中郁子君 そういうことによって妨げられたりゆがめられたりすることがないということは、そうした一連の主張ないしは現象がNHKという業務の推進にとってあり得てはならないものだというふうに理解しているというふうに、私の方で認識してよろしいでしょうか。
  209. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) そういうことによってNHKの運用が曲げられることはないということでございます。
  210. 山中郁子

    ○山中郁子君 私はやはりそれははっきりしておきたいというふうに思います。曲げられることはないということはわかりました。そういうことばNHKにとってあり得てはならないもの、強いて言うならば言論表現の自由、それに基づくNHKの中立公正の立場放送事業、そういうものに対してあり得てはならないものであるというふうにやはり認識をしておられるのかどうか、そのことを伺ってます。
  211. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) あり得てならないとは私は考えません。批判は大いにあるべきだと思います。大いにあることこそ民主社会における一つの発展過程において必要な要素ではないかと思います。そういう批判が一切ない、全部NHKがやることが正しいんだから、これで黙っておれと、こんな思い上がった経営というものは、かえって最初に挙げられました、開かれた経営国民要望に沿うNHK国民の支持を受けるNHK、これにやっぱり反するんではないかと私は考えております。
  212. 山中郁子

    ○山中郁子君 やはり少し問題をすりかえられているというふうに思います。私は一般論を申し上げているわけじゃないんです。初めに申し上げましたように、いまなぜそれが問題かということは一般的な中立、不偏不党ということと同時に、その問題がロッキード疑獄を隠蔽しようというそういう動きにつながると考えざるを得ない。そういう問題だから国民の期待を満たし、国民の支持によって成り立つNHKが最も大きな重要な問題としてとらえなければならないだろうということを申し上げているわけです。  重ねてお伺いいたします。自民党総務会で言われたというふうに伝えられております。こういうことでは予算を上げないとか、あるいは「赤旗」の報道だからけしからぬとか、フランス共産党の書記長のインタビューをしたからけしからぬとか、そういうことはよくないことでしょう。受け入れるところではないでしょう。受け入れないからそれによって煩わされないというふうに言われているわけでしょう。そこのところを国民皆さんNHK会長としての姿勢を明らかにすべきではないですか。私はいまそこを明らかにしていただきたいということを申し上げているわけです。どんな批判だっていいと——もちろん批判を封じることとはつながりませんよ。またあるいはどんな批判にならないような意見でもいいです、それはね。だけれども、それをもって予算を通さないとか、どこそこの記事を出したからいけないとか、そういうことは間違っていると考えられるからこそそういうものに煩わされないというふうに確信を持って言われるわけでしょう、と私は思いますけれども、そこのところを伺っているわけです。
  213. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 現実の動きは予算を通さないような動きになっておりません。そういう状況でございますので、これをことさらにやはり取り上げるよりも、NHKは毅然として不偏不党の姿勢を貫き通すことにこそ国民の信頼が寄せられるのではないかと思います。
  214. 山中郁子

    ○山中郁子君 そういうことで予算が通らなくなるようになったら大変です。国民の力とかNHKのその姿勢だとか、それから国会の力というのは一体どこへ行ってしまうか、こういうことに私はなると思います。そういうことを言っているわけじゃありません。  重ねてこのことについて、つまりいま私が何回も申し上げました、そうして新聞でも報道されているそれらの問題について郵政大臣はどういうふうに考えられるか、それは結構なことだとは思っていらっしゃらないことと私は思いますけれども、改めてお伺いしたいと思います。
  215. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 自民党総務会で、いま先生のお話のような、NHK予算問題にまで触れたというようなことは、私は新聞でも承知しておりません。したがって、そういうことはあろうはずはないと思いますし、もし何かあれば、少なくとも、出先きでありましても、私も党員ですから、私にも何らかの話があるはずですよ。私も小野会長と同じように、新聞で知っただけでありまして、別にだれからもささやかれたこともございません。そういうことでありまして、この問題は何か大げさに取り上げられるべき問題じゃないんじゃないですかと、こう思います。
  216. 山中郁子

    ○山中郁子君 私はNHKの問題について大臣に伺っているのではなくて、自民党総務会の中で出されたそうした問題についての大臣の御所見を伺ったわけです。私はそれが、大事だ、重要な問題ではない、大した問題ではないというふうに言われたことについて、これはかなり重要な御発言だというふうに思います。つまり事実がなかったということではないんでしょう。新聞でこういうふうに明らかに報道されて、これはだれも認めてるんです。もしそうならば、もしこれが新聞報道されていただけだから、事実はそうでないかもしれないじゃないかというならば、何だってそうなります。直接耳にしない限りは何にも信用できないことになって、何にも議論なんかできなくなります。すべての新聞がこのように取り上げて、そうして報道して、小野会長自身もそれは事実であろうというふうに先ほど言われましたけれども、小野会長の判断は、いまの郵政大臣の判断と関係ありませんけれども、私はそこのところをやはり重要な問題として政府が受けとめなければ、これはけさからずっと論議もしているし、いろいろ問題になった放送の中立、不偏不党、公正を守る、そういう問題は全く中身のないものになってしまう。そのことははっきりさせていただかなければいけないと思います。
  217. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 私は自民党総務会でいろんな批判のあったことについては新聞報道によって承知しておりますから、それを否定するものではありません。新聞報道は私はこれは正鵠を得ていると、こう思っております。ただその中で、NHKのこの予算を云々ということについては、これはもしそういう話があれば、少なくともだれかから私の耳にも入るはずですが、私はそのことについての真相か何か知りませんけれども、それはけさほどの案納先生の御指摘の中によって私は承知したことであります。ですから私としては信じられないということであります。
  218. 山中郁子

    ○山中郁子君 信じられないということ、信じられないというふうに大臣が言われることは、それはそのように承りました。しかし、それが大したことでないということじゃ、それじゃないですね。先ほどそういう表現をなすったけれども、大したことじゃないということは、ちょっと確認をしていただきたいと思います、そういう言論放送の中立公正の問題と絡むこういう現象が郵政大臣が大したことでないというふうに考えられているとすれば、私はやはりこれは重要な問題だというふうに思いますので。
  219. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) そのどんな問題か知りませんけれども、とにかくそのことによって国会に御審議願っておるNHK予算を通さぬぞというようなことは、これは私は重大だと思います。しかし、そういう話は私はないものと、こう私は解釈しております。いまのそれは何にも耳に入らない。少なくとも郵政大臣である私の所管に関する問題ですから、だれかから、そういうことならば何かささやきでもあるはずですが、そういうことが何もないですから、私は問題にしておりません。そういうことであります。
  220. 山中郁子

    ○山中郁子君 予算を通さぬぞということだけを申し上げているわけじゃないんです。もうそれは十分わかっていただいていると思うんです。そして、それはまた大したことじゃないなんて言えるものじゃなくて、大した問題だ、重大な問題だと、幸いにしてそうした願望が挫折しているのかどうか知りませんけれども、そういうことで、私は重要な問題としてそのことを重ねてここで申し上げているわけですけれども、それはなぜかというと、もうこれも何回も言われましたけれども、結局かつての戦前、戦中の放送報道管制、統制、すべて国の意思に背くような報道は許されないとされた、あの暗黒時代の一つの支えであった報道国家権力による統制、そういうものがそのまま同じ形で、歴史が進歩しているいまの日本に再現するということはないでありましょうけれども、またそんなふうにいまのNHK自身も、それからそれとの関連での国民の力、民主主義の土台もそういうなまはんかなものではない。私はそれは確信をしております。しかし、そうしたものへ傾いていく道がどこにつながっていくかということは、やはり戦前、戦中と違った歴史の進んできているいまの時点において、その落とし穴は私はやはり自主規制というところがからつながっていく、このように考えます。  これは昨日の参考人質疑でも、あるいはいままでの質疑の中でも、制作者の自由、それがどんなに本当に大きな意味で言って、私が一番最初に確認をしました放送国民に開かれて、国民の期待を満たすものであって、そして国民の支持によって成り立つということの中で、欠くことのできないファクターであるかということは、私は繰り返すまでもないと思いますけれども、一番そこへつながっていくとするならば、そのあらわれ方はやはり自主規制なんです。このことに関しては、私はNHKの方たちがそういうことはいたしませんというお答えをいま求めるのではなくて、どのようにやっぱり考えていらっしゃるかお伺いしたいところです。
  221. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) ただいま自主規制なるものが非常に悪だと言われる、それには賛同できません、人間の体でもそこにコントロールがあってこそ円滑に各機能が、器管が働くわけでございますから。組織体の自主規制なくしてそのまま放任されることは、いたずらに混乱を起こすだけでございます。組織が大きくなればなるほどやはりそこには節度ある一つの自己規制がなければならないと思います。そのことは結局、作業意欲の喪失とか、あるいは統制とかいうことにつながるわけではないと思います。十分に自主性を発揮する上において必要なやはり自主規制というものはなければ、全く烏合の衆のようなことになって散り散りばらばらになろうかと思います。その意味において自主規制は悪なりと、これがあることが不偏不党、中立公正のNHK姿勢あるいは開かれた経営国民の負託にこたえるあり方、国民の支持を受けるNHK、これのあり方に障害を与えるものではないと確信をいたしております。
  222. 山中郁子

    ○山中郁子君 それは言うならば自律ということでありまして、私が申し上げているのが通じなければもう一度重ねて申し上げますけれども、いろいろなそうした権力介入めいたものがある。あるいは権力の志向というものが受けとめられる。そうした場合に露骨にそれをしてはいかぬとか、これは放送してはいかぬとか、そういうことでなくても、そこをおもねって、あるいはそこの顔色をうかがって、新聞でさんざん書かれておりますように、顔色をうかがってあたふたすると、その結果、これは出さないでおいた方がよろしかろうと、いま申し上げました、その真実を報道する、不偏不党のその真実をNHK報道するというその面においてみずから規制する、言われなくても。圧力がかかって、具体的にそれは放送しちゃいかぬとか、そういう圧力でなくても、みずからそういうことで規制していく、こういうことをいま私は申し上げたわけです。会長が言われたのは、それは組織の自律という問題です。ですから、まあその点についてのつまらない私は理屈の論議をするつもりはありませんから、ですからそういう中身である、そして私は会長がもう再三そういうことはいたしませんということはもうたくさん伺いました。だから、そういう答弁ではなくて、先ほど申し上げましたように、そうした方向へ行くとすれば、つまりそうした介入が実現していくとすれば、その組織体のNHK、この場合NHKですね、NHKの自主規制、私がいま言った意味でのですね。みずから押えていく、その権力意向とか志向とか、そういうものに迎合する形で、対応する形でみずから押えていく、こういうふうになっていく、これが考えられると思うし、そのことがやはり一つの重要な問題であろうと、このことについての認識を伺ったわけです。
  223. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) ただいま伺いました、いわゆるよその圧力に、他の圧力によってそれに迎合することによる制約、内部制約、これはなすべきでありません。私はそういうことはやっておりません。これこそ他律敗北でございます。そういうことがあってはならないので、自分が自立独立な歩みをする上におけるコントロールというものは、これは必要だということを申したわけでございます。
  224. 山中郁子

    ○山中郁子君 その点に関して、一点だけ具体的な問題に触れたいと思いますけれども、これは日放労の放送白書の中にもいろいろデータも出ておりましたけれども、制作者が、つまりそこで働いている人たちが自分でぜひともこういうことをやりたい、いまNHK国民の期待にこたえるためにはこういう報道が必要だ、こういう番組が必要だというふうに思っても、なかなかやっぱりそれが実現しないということが一つ。それから出してもそれが否定されていくということが一つ。そしてだんだんとそういうことが重なると、中にはやっぱりもう出してもどうせだめだというふうに思ってしまう傾向も出てくるということは否定できない。もちろんその半面は、そういう中で本当に国民の期待にこたえる報道番組編成のためにたくさんの方たちが努力をされて、そしていい番組もつくっておられる、こういう両面ある問題ですけれども、そうした制作者の自由ということは、もっと言うならば自由な自主的な放送NHKがつくり上げていく、そのエネルギーですよね。そのエネルギーを発揮していくために、つまりいまのまさに自主規制でない、正しい、どのような干渉があっても正しい立場事業を貫いていくというために、主として制作者の問題に関してどのような保障がされているのか、あるいはどのような手だてをこれからさらに講じようとしているならば、その辺についての見解なり計画なりを伺いたいと思います。
  225. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いわゆる職場における制作意欲が非常に旺盛でなければならないことはもちろんでございます。そのために、いろいろ熱意を傾けた制作意欲がそがれるようなことがあってはなりませんので、いろいろやはりそのために、みんなもう英知を集め合っていろいろ討議をし、その中からすぐれた番組が生まれてくるような仕組みになっておるのがいまのNHKでございます。で、そういうことでございますので、決して非常にいい創意工夫がみんな押さえつけられ、職場に働く意欲を失う、その提案の意思さえ曲げられると、こういう現状ではございません。ただ制作の個人個人が、自分が思っていることが全部そのまま出なきゃ、これはやっぱり創意工夫が殺されたんだと、こう言われることは、やはり非常に問題ではないかと思います。やはり他といろんな討議の上において、みんなの英知を集めて、結集されたその番組には自分の意見が一〇〇%入らない場合もあるのでありますが、やはりそれに対して張りを持ってもらわなければならないと、かように考えております。
  226. 山中郁子

    ○山中郁子君 ちょっとお願いをしたいんですけれども、私は、私が言っていることがどの範疇に入ることであるかぐらいは、私は小野さんはお話を聞いていただいてわかると思うんです。私はそんなことを言ってないということ、おわかりになるでしょう。共産党の議員の言うことがそのとおりだというふうに言うのがまずくて、ちょっとしかしと言ってみるみたいなことだったら、それはもうどうぞおやめいただきたいと思います。私はそんなつまらないこと言ってないですよ。さっきから何回も繰り返し言っているでしょう。それをそのように私は故意にゆがめて受けとめた形にして、つまらないただし書きをつけるということは時間の空費だと思います。それはぜひとも良識ある御答弁をいただきたいというふうに思います。  それで、この問題の最後に、まあ議論の中に、いろいろたとえばそういう、私どもが仮に自民党総務会のそうした問題についていろいろと意見を言うと、それさえも結局、言論表現なり何なりの弾圧ではないかと、介入ではないかと、こういうふうな意見も散見いたします。私は問題ははっきりさせなきゃいけないのは、NHK放送に関して、事業に関して、報道に関してその自主性を守る、自主性を擁護する立場と、それからこれに介入する、自主的な報道を非難する立場と、これは明らかに根本的に違う問題です。それは言論表現の自由のために、民主主義の保障のために、どちらがどういう立場で問題を見ているかということは、これははっきりさせなければいけない問題だというふうに考えております。で、この点について、あえて私は御意見は伺いませんけれども、具体的な問題として一つだけ確認というか、意見を申し上げたいんですが、そうした権力介入とも思われる問題に対して、まあ右往左往しているとか、あわてて副編集長を埋めたとかというふうなことがいろいろ議論になっています。報道もされております。  これは衆議院の逓信委員会共産党の平田議員も質疑をいたしましたし、けさほどの質疑の中にも含まれておりましたから中身について繰り返しませんが、私は幾ら小野会長が弁明しようとも、あの問題が起こってあわてて報道体制を強化いたしますということを衆議院でも答弁をしているわけです。そうしていたしましたと。で、それは何かと言うと、たとえばその副編集長の補充の問題に関して取り上げられれば、いや、あれはたまたま空席だったから埋めただけだと、こういうお話をなさる。しかし、じゃいつから空席だったのかと言えば、最近になって空席になったわけじゃないんですよ。一年も前からたしか空席だったんじゃないですか。だったらその間何で埋めなかったのか。そこへたまたま問題が起こって、報道体制強化いたしますと言って埋めたと、そういうことは普通一般の理解では、これは常識では、ああ、あわてふためいて、やはりそういうものに対応して編集体制の強化ということでチェックを強化したなというふうに言われるのは、これは当然なんですね。これはどういうふうに言おうとも、実際に国民がそういうふうに見る。いまのロッキード隠しのいろいろな問題が、どのようにその当事者が弁明しようとも、理屈をつけようと、国民の大方の世論は、ああ、これはロッキード隠しだと、こういうふうにちゃんと見通すわけでしょう。そういうものというのは私は限度があると思うんですよ。つまり実際にあらわれて、みんなが受けとめるその性格ですね。それからそれを動かした側の言い分なり理由なりということが全く違っているということは、これはあり得ない。つまり限度があるという問題だと思います。その点に関しては、私は厳重にNHKのその具体的な一つの問題とってみても、一年も前からあいていたのを、それじゃなぜそれまで放置をしてたのかということについてだけは伺っておきたいというふうに思います。むしろそれは責任があるんじゃないですか。責任が問われなくちゃいけない問題じゃないですか。逆にどうしても今度の措置が合理的なものであり、必要なものであるとするなら。
  227. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) たまたま欠員になっておった、それを補充したまでのことでございます。ただそう言えば、非常に何か背後にあるんじゃないか、こういう気持ちを持たれることも私よくわかります。何もごまかしを言うわけではございませんけれども、けさほども御答弁申し上げましたように、これはすらっと問題が流れなかったわけです。いろいろある種の放送を出したのがいいとか悪いとか、私はそういう見地で物を見ておりません。職場における一つのルールどおりの運用がなされなかったというところを非常に重視しております。これこそNHKの非常に濶達な報道活動に対する非常なやはり嘆かわしいことではないかと思います。そういった面を適正にするために配置したわけでございまして、補充したわけでございまして、決してそれは空席になったのを機械的に補充したというだけではありません。意味は大いにあったわけです。そういうことですから、補充しなかったことに対する一つの責任と言われますけれども、それはちょっと問題の本質とは外れているんじゃないかと思います。
  228. 山中郁子

    ○山中郁子君 報道の中立公正の問題について、断固とした姿勢を堅持して、そうして国民の期待にこたえるということを繰り返して言っておられます。私はそういうことのNHKが続けておられる努力を決して否定するものではありません。しかし問題は、それほど重要な根本的な問題で、民主主義根幹につながる問題であるということから、私はなお一層、繰り返し会長答弁されたことが本当に、その方向にNHKが全体として発展していくように、そしてそれがまさに、後ほど触れますけれども、NHK経営問題を支える不可欠の基盤であるということの要望と、それから強調をいたしまして次の問題に移りたいと思います。  次の問題と言っても、一番最初に申し上げました、国民に開かれたものであるということ以下のことをとにかく基本にしていかなければならぬので、この点については、ぜひともそういう立場でよくお聞きになっていただきたいと思うのですけれども、私はたしか昨年のNHK予算審議の際にいろいろなことを申し上げましたけれども、その中で、ひとつ国民の声を聞くとか、国民に開かれるとかいうふうに言うけれども、国民の声を聞く流れの中に、集金人さんを接点とする声を聞くような仕組みになっていないじゃないかということを申し上げた覚えがございます。そして会長もそのとおりであるということで、今度の基本問題調査会の報告書によりますと、放送番組編成の流れとして入っているわけですけれども、問題はいかに実質的にその中身を保証するかというところにあるというふうに思います。それでぜひとも具令的に、どういうような形で国民の声を集金人さんの具体的な接点を通じて、NHKがくみ上げているのかということのプロセスと、それから中身についてお伺いしたいというふうに思います。私はそれにつけ加えて申し上げますが、昨日の稲葉参考人の御発言がありましたけれども、結局、経費の節減というふうなことで、現象的には短絡しないかもしれないけれども、大きな立場でいって、集金人の数をもっとふやして、そうして国民の一人一人との接点で、この時間をもっとたっぷりとって、そこから意見もくみ上げていく、これが大きな目で見てNHK発展の上で欠くことができないものだと思うというような御意見がありました。私はそのように考えているのです。それは昨年の審議のときにも申し上げました。そういうことを前提にしてお答えをいただきたいと思います。
  229. 川原正人

    参考人(川原正人君) 昨年の御審議の結果を踏まえまして、私どもとしても具体的に幾つかの措置をとっております。まず従来とも集金担当の者が現場で承りました受信者のお考え、御意向というものは随時各営業部なり営業所を通じまして集約して、最終的には毎月一回、これはほかの各種懇談会、あるいは相談センター等に寄せられました意見とあわせまして、集金者が集めた意見というふうにはっきり区分けをいたしまして、書類で理事会等に報告は出しております。しかし、それだけでは私どもやはり不十分だと考えまして、特に昨年、全国の営業部に対しまして、私からもっと詳細に集金者が日常接した中での意見を集めるように指示をいたしました。そしてそれを集める方法としまして、一つは昨年の秋から毎週一回各地方本部、これは全国に七カ所ございます。そこの営業部長を、毎週電話の会議を開きまして、これは私自身が出まして、その中で、もちろんいろんなほかの連絡事項もございますけれども、集金担当者を通じて集まりました情報をできるだけ出せと、特に重要な変化のあったときには私自身質問をいたしましてそれはとっております。  それから特に、東京本部周辺におきましては人間を集めることも可能なものでございますから、これは毎月一回東京都内に約十カ所の営業所がございます。さらに横浜、千葉、埼玉等数カ所の営業所の、この中に所長のほかに若干の管理職もおりますので、特定の管理職をその種の仕事に任命をいたしまして、この人間を毎月一回東京の本部に集めます。そしてこれには私どもの副総局長が出まして、特にこの集金担当者が現場で承った意見だけを集約検討するためのこれは会議でございます。これを開きまして、それを整理した上、さらに営業の方の責任者が今度は番組の方の委員会、これは放送局長の司会する番組委員会に毎月出まして、かくかくの意見があったということをしさいに報告いたします。それから一方、番組だけではない御意見もございますので、これも昨年から実施しておりますけれども、広報関係あるいは業務関係を担当します部局長の会議に先ほど申しました副総局長が出まして、営業の現場からではこういう意見が出てきているということをこれも毎月一回報告するようにいたしております。  なお、その中で非常に重要なものは私自身が役員会、理事会等の席で、会長初め各役員に報告をするということを昨年来実施いたしております。
  230. 山中郁子

    ○山中郁子君 私はもう少し伺いたいのは、実際に集金人の人たちが集金に行きますでしょう。そうすると、そこではどういうことが保障されているのか、つまり話を聞く時間がたとえば保障されているのか、それともあるいは何かそういうことについて報告書を上げるようなことが保障されているのか。いまのお話の中に若干ありましたけれども、私が直接伺ったところでは、委託用の報告書、取次報告書というのがこれありましてね(資料を示す)、そしてそういう意見を上げるところというのはほとんど欄としてもないんですね。これのほかに何かあればお知らせいただきたいんですけれども、そして備考欄みたいにここにちょっぴり書けるようになっていて、これしかないんです。ここにそんな集金人さんが話を聞いて上へ上げるための意見なんかとても書けないし、あるいはそういうものを書くような時間も保障されているのかどうか。次から次へ回らなくちゃいけないしというようなことが、いま言われたようなそういうシステムなりをつくったけれども、そこの中に本当にそういう中身が流れていっているのかどうか、それがやはり問題だというふうに思います。その点についての改善策なり、さらに積極的な考え方などがおありでしたら伺いたいと思います。
  231. 川原正人

    参考人(川原正人君) その種の仕事の保障というのはなかなかいろいろと問題はあると思います。そのような御意見を承る時間が何分あるいは月に何日というふうな形での数字的な保障というのは大変にむずかしいので、そういう形のものは明確に出てまいりませんが、いまお示しのものがどの書類だか私よくわかりませんが、集金の受託者には日報というものを整理をして、これは契約でもって集金を請け負っておりますので、毎日毎日NHK放送局に出勤はいたしてまいりません。まいりませんが、これを週間をまとめて週報あるいは日報の形でまとめて報告を求めております。その中に、備考欄であったか摘要欄であったか、そういう集金途上で承った受信者の御意見を書くべき欄は用意いたしております。  なお、その集金の者がその場でいろいろとお答えしにくいと。まあ大変むずかしい問題であるとか複雑な御提案であるとかいう場合には、その場で口頭ではなかなかできませんので、実はこれも昨年の国会の御審議の後、私どもで考えまして、はがきを用意いたしまして、これを持たせまして、非常にむずかしい御提案、複雑な御意見等はそれに書いていただいて、そしてNHKの方で、受取人払いと申します、こういうはがきを個々の集金人に何枚か持たして、場合によってはそういうことで直接御意見をちょうだいしてこいと、こういうことも申しております。
  232. 山中郁子

    ○山中郁子君 これは集金人の方たちの労働条件とか待遇とかに直接関係してくる問題なんですね。つまり一定のノルマでやっておられるようですから、結局十分時間とって接触をしてればノルマが果たせない、したがって、それに基づく報酬が得られない、こういうことで労働時間の問題、それから報酬の問題とまさに裏表の、紙の表裏の関係になっているので、私は総合的にやはり、私の意見としては、抜本的な方策を講じることを研究されてしかるべきじゃないかというふうに思うんです。  私の考えていることは——まずその前提として一つお伺いしたいんですけれども、どのくらいのノルマで——ノルマというか、業務の内容が基準になって、どのくらいの報酬が維持されていて、そしていま現在どのぐらいの労働時間ないしは賃金ということで平均化されているかということを、ちょっとまとめてお尋ねをしておきたいと思います。
  233. 川原正人

    参考人(川原正人君) この集金を委託しております人たちは、その地域地域によりまして大変事情が異なっておりますので、   〔委員長退席、理事長田裕二君着席〕 非常に少ないわずかな軒数を受け持って副業的に担当しておられる方と、やや都会地等においてほとんどもう専業的に担当しておられる方、しかも都会地等は非常に家屋が密集しておりますので、率直に申しますと隣のお宅へ行くのにかなり能率も上がる、早いと、こういうものがありますので、大変むずかしいのでございますが、一応平均的に申し上げますと、私どもが契約で委託しております、いま全国で約四千人の受託者がおりますけれども、一人当たりの集金をして回ります受け持ちの軒数と申しておりますが、二カ月間でそのお宅を回って料金をちょうだいしてくるというその受け持ちの契約者の数でございますけれども、全部を平均いたしますと三千三百七十七、約三千四百軒を一人の受託者が二カ月間で訪問して料金をちょうだいしてくる。二カ月間でございます。そしてそれに基づきます、まあ月々の収入と申しますか、これが五十一年度の予算で予定しておりますのは平均して十五万円ということになっております。  なお、つけ足してよろしゅうございますか。
  234. 山中郁子

    ○山中郁子君 はい、どうぞ。
  235. 川原正人

    参考人(川原正人君) いまの御質問の中にありました、まあ労働条件といいますか、そういうことのためにどの程度のゆとりがあるのかと。これは実を言いますと、私どもの部内でも議論がありますし、また具体的に、これは現実論としまして、その集金をして回っている受託者の方の立場との議論もございます。正直いろいろ食い違う場合もございますが、いま申し上げました約三千四百軒弱といいますのは、やはりここ数年来のいろいろな事情から言いまして、私ども、そういう受信者との話し合いの時間も必要であろうと、また逆に受信者の方からも大変いろいろ御意見が最近はふえてきておりますので、この受け持ちの軒数は徐々に減らしております。たとえば、いまから七、八年前ですと約四千軒の受け持ち軒数がございました。それを最近では平均して三千四百軒弱というぐらいにいたしまして、そしてできるだけそういう時間もその中で見つけ得るように配慮をいたしておるつもりでございます。
  236. 山中郁子

    ○山中郁子君 もう一つちょっと御答弁がなかったんですけれども、それによって、労働時間ですね、一概に言えないということは十分よくわかるんですけれども、たとえば具体的な事例でも結構です、都市と地方というふうなことぐらいに分けてでも結構ですから、ちょっとお知らせいただきたいと思います。
  237. 川原正人

    参考人(川原正人君) 私どもこの方たちと契約で仕事の分量をお願いしまして、労働時間というものは指示をしてございません。二カ月の間でこれだけの集金、あるいはその地域内で未契約者があればそれを契約をとっていただきたい、こういう契約でございます。実際の仕事の分量はどのぐらいかと申しますと、これもいま四千人の平均でございますけれども、実際にお仕事に出かけられた日にちが二カ月間、これ私ども単位にしておりますが三十二日、一カ月にしますと十六日間が作業日数になっております。
  238. 山中郁子

    ○山中郁子君 それで方向としては大体そういうことを肯定なすっていらっしゃるわけですけれども、一つはこの集金人の接点の場での国民の声をくみ上げると同時に、それとの裏表の関係で集金人の人々の労働条件、賃金の保証ですね。これ結果的なことでいいですよ、いまの契約の状態、契約の条件がどうであるかということで。保証というのは実質的な保証です。そういうことについて、かなり抜本的にいま先ほどから私も申し上げ、川原参考人も同意をされている方向へ改善なすっていくということについてのお約束はいただけますか。検討なすっていくという、つまりちょっと四千軒が三千五百軒ぐらいになるというんじゃなくて、幾らというふうに言いませんけれども一という意味です。その辺についての見解はお持ちでしょうか。
  239. 川原正人

    参考人(川原正人君) 当然、私ども、この集金に当たる者が受信者との一番最前線の接点でございますので、十分なゆとりも持ち、また知識と申しますか、私どもが必要な資料なり何なりは十分に持ってもらって納得のいくお話をしてもらわなきゃなりませんので、当然、そうあるべきだと思っております。ただ、いま申し上げましたように、現在この方たちの平均従事日数は月に十六日、特にもっと細かく申し上げますと七〇%ぐらいの方は実は十五日以下の従事日数でその事務を果たされております。もちろんこれはいろんな地域的な事情もありますので一概に申せませんけれども、私どもとしては、総じて言えばそれほどゆとりのないお仕事ではないんではないか。しかし、もちろん部分的にはかなり条件の違う方もいらっしゃいますので、常にお話し合いをして、非常に条件の厳しいところではできるだけ十分な時間を持って仕事ができるように、これは今後とも配慮をしていきたいというふうに思っております。
  240. 山中郁子

    ○山中郁子君 私はこの契約形態だとか、それから集金人の皆さんの組合もありますし、そこでの要求などもあります。ですからそういうことは当然の前提としてあるということで、そこに深入りすることはいたしませんけれども、   〔理事長田裕二君退席、委員長着席〕 たとえば退職金だとか、そうした保証が一般の職員と違った保証のない状態ですね。そういう状態で平均十五万というのは、決して私はそれで足りるとするものではないことは、もうこれは明らかだというふうに思います。そういう前提から、両面、つまり労働条件の問題、生活権の問題、それからあわせて国民の声をNHKが最も有効に具体的な接点の場から吸収するということについて、さらに一瞬策を講じていただくものと理解をいたしまして、それを要望いたします。そしてあわせて、こういうふうな具体的なNHKとの接点のない視聴者ですね、つまり口座振り込み——私も口座振り込みでしていますけれども、そういう人たちとの間でのNHKのパイプというものはどういうところにあるのか、いまは多分ないんだと思いますね。現実に私はないですから、お金払って領収証が来るだけですから。その辺のところは何か考えていらっしゃるかどうか、お伺いします。
  241. 川原正人

    参考人(川原正人君) 正直に申しまして、具体的に定期的にはっきりした形のパイプというものはほとんどございません。これは私ども非常に残念に思っております。で、いまやり得る最大のこととしまして、この口座でお支払いの方、二カ月ごとのお支払いの方もおりますし、六カ月ごとの方もいらしゃいますけれども、あるいは一年の方もいらっしゃいますので一概に言えませんが、領収証のあのはがきの裏面は、これは他の企業等は全く銀行に依頼をして、銀行のPRが入っておりますけれども、私どもはそのはがきの裏面だけでもせめて活用したいということで、あの領収証の裏には必ず協会のそのときどきの経営の事情とか、あるいは新しい番組のこととか、これを印刷しまして、二カ月に一回なり、時に半年に一回の方もいらしゃいますけれども、できるだけそういう形でこちらの意のあるところはお伝えしたいと、かように考えて実施しているわけでございます。
  242. 山中郁子

    ○山中郁子君 私はそこのところにもう一つ積極的な施策が講じられなければならないというふうに思います。これはいままでNHKがずっと答弁していらしたことから言っても、国民の声というふうなことを一生懸命、もっともですと、こういうふうに言っても、その物すごくたくさんの国民の声との接点である、接点というか、そこの保障であるところのその振り込みの視聴者がNHKの一方的な、はがきの裏に事業内容を説明するということじゃ、それはNHKから視聴者に何か言いたいことを言うだけであって、問題の柱は国民の声をNHKに反映するというのは——視聴者の方が何か言いたいわけでしょう。そこのところをやっぱり保障することについて、これは大変でございまして、というふうに言っているんじゃ私はやっぱりちょっと、いささか経営姿勢としては疑わざるを得ないんですけれどもね。いかがでしょうか。
  243. 川原正人

    参考人(川原正人君) その点も御指摘のとおりでございまして、実は私ども、先ほど来お話に出ておりますその集金の委託をしている者に何らかの形でやはりこの口座受信者——その方も結局一軒一軒訪問集金をしている家と家の間に結局お住まいなわけなんで、そこで何らかの一つの接触ができないか。実はかなり前からそういう口座の受信者についても何らかの意味の接触は当然必要であろうし、その逆に受信者の方からの御要求によって接触する場合もあるということで、そういう口座の受信者と何らかの意味の接触の仕事も出てくるであろうということで、それなりの若干の手当みたいなものは入っているわけでございますけれども、やっぱり先ほど御指摘のように、仕事の量的な問題との関連、それからざっくばらんに言いまして、いろいろ議論はしたんですけれども、いきなり口座でお払いの方のところへ集金人の者を差し向けまして、何か御意見はということだけをいきなり言わせましても果たしてどういうことになるだろうかというような議論もありまして、いまいろいろなことを研究している最中でございます。
  244. 山中郁子

    ○山中郁子君 私がこういうふうに一人一人の視聴者を問題にしますのは、一つはこういうふうな意見を持っているんです。NHKはその国民の声を反映するということでさまざまな方策を講じていますということで、聴視者委員会だとかモニター制度だとか、そういうこと、いっぱいありますね。私はこれは否定をするものではないんですよ。ただ、そうであるからといって、じゃ国民の声が十分反映されているかということにはならないと思うんです。このこともそのうちの一部でしょう。だけれども、多くの人たちはなかなかやっぱり、そういうことでモニターになるわけでもないし、聴視者委員会の委員になるわけでもないし、そういう場はなかなかないんですね。これは私は率から言えば圧倒的にほとんどないと言ってもいいというふうに思うんです。だから、そういうことのパイプを通じて反映されるものが国民の声と全く違ったものになるということまでは私は言いません。しかし必ずしも全面的により広く反映できないものであるという、非常に大きな限界を持っているということは言わなきゃならないというふうに思うんです。  それから、たとえばそういうふうな形で各地方において意見を聞く会を持っていますと、こうおっしゃいますけれどもね。そこへ参加する人は本当に限られているわけでしょう。そうすると、たとえばこういうことをNHKとして御意見を聞く会をいたしますと、どうぞ皆さんいらしてくださいというふうに、たとえば新聞で折り込み広告出すとか、ビラを張るとか、そういうふうなことも余り私は見受けてはいないんですよ。そうすると、かなりな程度に恣意的なものが働くというふうに言っても差し支えないんじゃないかというふうに思うんです。うんと、もっとざっくばらんに率直に言いますと、NHKの何となく好みに合いそうな人を呼んできて、ないしはそういうところに依頼をして、人選をしてもらって懇談会開くとか、というふうなことになってしまうという危険はやはり内包しているというふうに思うんです。それで私はこういうことを重視して申し上げているわけなんです。  それで、たとえばの話です。たとえば振り込みの視聴者に対して一年に一回でも私いいと思うんです、御意見をどうぞというはがきをNHKが配るというようなことは考えられないんだろうかと。で、素人考えで言えば、そんなことは簡単に私はできそうに思うんですけれどもね。それが大変な問題であるならあるという理由も聞かせていただきたいし、できることなら、すぐたとえばやっていただきたいというふうに思います。地方によっては何かそういうことをやっておられるところもあるように私は伺いました。その辺はいかがでしょうか。具体的にやっておられるところがあればそうした実例なんかも聞かせていただきたい。
  245. 川原正人

    参考人(川原正人君) いま二つ御指摘あったと思いますけれども、一つははがきででもどうだ。これは確かに私ども議論をし検討し、実は一部やっているんでございます。ただ、いまの実は銀行振替でお払い込みの方がすでに八百七十万、間もなく九百万ぐらいになろうかと。そうしますと、はがき一枚でもいま二十円でございますので、九百万の方に差し上げますと、一億八千万、往復はがきですとその倍の約四億近くになる、そういう経費の問題で、もちろん受信者の意向を聞くためであるんだから冒頭御指摘がありましたように、多少の経費を惜しむというのはおかしいではないかという御指摘ももっともだと思いますが、やはりいまの協会といたしまして三億、四億の経費となりますとこれは相当慎重に考えなくてはなりませんので、なかなかそこが踏み切れないというのが実情でございます。しかし、そうばかりも言っておられませんので、場所によりましては多少経費を都合をつけてこれは九州でございますけれども、ダイレクトメール方式をいま試みにやったところもございます。これはもう少しその結果を分析いたしませんと、そのことが果たして経費に見合って効果のあることなのかどうか、これは相当慎重にやりませんと、また相当の経費がまとまって出るものですから、分析をした上で全国的に広めるかどうかを考えてみたい。  それからもう一点、懇談会等が全くこちらの都合だけでということは決してございませんで、こちらからお願いする場合もございますけれども、たとえばそういうことではならないということで、これはごく最近でございますけれども、やはり東京の中央線沿線等では町会と申しますか、自治会といいますか、そういうところにお願いしまして、ちょっと問題もあったところなものですから、全くそういうルートでどなたでも御参加いただきたい。  それから、これもやはり同じ事例でございますけれども、東京の奥の方で生活協同組合等にも行きまして、その協同組合員のとにかくどなたでもおいでいただきたい、できるだけたくさん御出席いただくのがありがたい、そういう形で最近聴視者の方との懇談会等をどんどん新しく展開していっております。決してこちらの都合だけで人選等はいたしておりません。
  246. 山中郁子

    ○山中郁子君 経営の効率的な運用ということはありますから、大いに慎重に検討されておやりいただくことは結構なんですけれども、全部が全部一生懸命はがき書いて出すわけじゃありませんから、そういう意味では経費の問題も言われたとおりというだけではないと私も思います。  そして二点目の問題に関して言えば、私はそういう方向は大変結構だと思いますので、それをもっと一般的なものにしてほしいと思うんです。つまり開かれたものでなければいけないというふうに私が申し上げましたのは、現実になかなか開かれていないんですね。実際率直な話がなかなか開かれていないです。ですから開かれたものにするためには、やはりひとつはそういう意味での方向を、どんな人でも参加をして意見を言うことができる、その意見をやっぱり大事に扱っていくということが一つの大きな保障になる、このことは重ねて強く要望をしておきたいと思います。  次に受信料制度の問題について入りたいと思います。受信料制度の問題は、一般的にこの審議を通じてNHK会長を初めNHKの方々も、これはNHK受信料制度というのは大変すぐれた制度であって、これを守っていくというふうに答弁をされていらっしゃるというふうに私は理解をいたします。したがって、そこのごく基本的な問題ですね、やむを得ずとか、積極的にとか、消極的にとか、どういう位置づけでもって受信料制度について理解をしていらっしゃるのかということを会長の御意見としてお伺いしたいと思います。
  247. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 私は受信料制度はきわめて積極的意味におきまして、いわゆる報道の自由を保障する一つのすぐれた制度として堅持すべきものだと考えております。
  248. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、今後にわたっても受信料制度を改めるというお考えがないというふうに理解してよろしいですか。
  249. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) これは改める必要はないと思います。
  250. 山中郁子

    ○山中郁子君 これがいろいろ問題になって議論をされているんですけれども、受信料制度というものをどういうふうに認識するかということですね。そして理論的に言うと、サービスの対価であるといういわゆる対価説とか、一種の税金であるという論、ないしは受信機を使用するための免許料であるというふうなことだとか、それから国民の負担金であると、いろいろな説が——いろいろな説と言っても、いま一般に私が申し上げた四つの説に包含されると思いますけれども、そのように考えておりますが、そのうちのやはりNHKとしてはどういう考え方をとっていらっしゃるか、お聞かせいただきたい。
  251. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) これは昭和三十九年の臨時放送関係法制調査会で結論を出されました、NHKの業務を維持するために特にNHKに徴収権を認められたいわゆる国民の負担金だと、かように観念をいたしております。
  252. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、世帯契約の問題、台数契約の問題がまた議論になっています。これは私は、いろいろな議論がありますけれども、そのよってくるところのゆえんは、いろいろな赤字問題、財政の困難な問題、それをどういうふうにどこで解決していくかということから出る積極的な意見、善意の意見、さまざまな問題があるというふうに思います。しかし私は、率直に言いましてこの台数制の問題は、これは受信料制度の基本にかかわる問題だと、基本に結びつく問題だというふうに考えているんです。その辺のところをちょっとただしていきたいというふうに思うんですけれども、もし台数制ということに持っていきますと、考え方をそこに持っていきますと——台数契約ですね、そうしますと、国民の負担分であるとする受信料制度の基本と矛盾してくるというふうに私は考えておりますけれども、その点はいかがでしょうか。
  253. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 私はただいま申し上げました受信料性格、定義と台数制のそれが矛盾するとは思っておりません。
  254. 山中郁子

    ○山中郁子君 二台あるから二台分払うということは、二台で放送を受信するから払うという以外の根拠はないですよね。そうすれば、それはやはりサービス対価ということになるんじゃないですか。
  255. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) それは基本的には、としましては、いわゆる国民の負担金でありまして、均一負担金とは申しておりません。したがいまして、二台持たれる方は二台、三台持たれる方は三台、これはいわゆる負担金の公平を期する一つの案ではあろうかと思います。
  256. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、受信機は持っている、だけど私はNHKは見ませんということで払わないということも理屈が成り立ちますね。いかがですか。
  257. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) まあ実際に見られないと、現実に。全然見られないということになれば、そういう論理も成り立とうかと思います。しかし、そういう事実はほとんど考えられないのではないか、こう私は思いますけれども。
  258. 山中郁子

    ○山中郁子君 私はこれはやはり、きょうのこの限られた時間の中ではっきり決着つけようとも思いませんけれども、早期にやはりはっきり理論的にもさせなきゃいけない問題だというふうに思っております。ということは、もともとが受信料制度というのができていて、いま一つの不払いの問題が起こってきていることで、すごくもうそれがちょっといろいろ困難な問題としてありますでしょう。それが収入問題でも一つのネックになるというふうなことが現実にあります。だから、そういう中の一つの理屈として、私はNHKは見ないと、テレビでもNHKは見ませんと。見るのも見ないのも自由ではないか、したがって払うのも払わないのも自由ではないかと、こういう論があります。そしてそれはやはりNHKとしては事実を認めないという意味じゃなくて、理論的にはそれは認められてないわけでしょう、そういう論は。だから、やはり受信料はテレビを持っている方からはいただくと、もし仮に見ないという主張があってもね。どうしても見ないということで、それが何らか証明されれば受信料はいただきませんということにはなっていないわけだと私は思うんですよ。そのところはどうですか。
  259. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 現在の放送法のたてまえは、NHK放送を受信できる、受信可能な設備を設けたら契約しなければならないとなっております。これは見ても見ぬでも取るという意味合いではないと思います。やはり現実の大勢は取りつけられれば見るために取りつけられているんで、見られるであろうことを前提にしての法律だと思います。それを一々やはり全然見ないんだから払わないと言われる、それを是認しておっては、そういう面が今日でも見ても不払いという現象のある中で、受信料制度の支えというものはこれは非常にむずかしくなってくると思います。そういった意味合いから申しまして、全然見ないんだから払わないと言われるそれは、法の制定の根拠がいわゆる現実の事実、大勢に基づいてそういう契約調整の措置をとっておる。この法制の運用の面については、そういった趣旨を生かしていくべきだと思いますので、やっぱり取りつけられればいただかなければならないと、かように考えております。
  260. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうすると、二台あるから二台の受信料を徴収するということは、そのことが負担の公平というふうなことの論拠になるとすれば、見ないから払わないということも負担の公平の論拠になるんじゃないですか。さっき会長がおっしゃったのは、台数契約制ということについて否定をしない論拠として、国民の負担であるということについてはそういう論をとっておると。その負担の公平という意味から言えば、二台持っているから、二台ということで一台の人よりは多いということも負担の公平だと、こうおっしゃるわけでしょう。そうすると、見ないという人にとってみれば、それはお金払わないということが負担の公平なんじゃないですか。私はちょっとはっきりさせるためにこういう議論をしてますけれども、問題は受信料制度というものがどういうことによって成り立っているかというところから考えていかなければならないし、そういうふうにして考えていけば、台数契約というものは、台数制というものは理論的にはあり得ないというふうに思っているんです。そこのところを聞かせてください。つまり、負担の公平という意味ならば、見なければそれは払わないというのが公平なんじゃないですか。
  261. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) これは見られるか見られないかは立証できません。いわゆる取りつけた方の主張そのものに応じる以外ありません。それはやはり見ても見ないと言われれば、見ないことになるんです。受信料の負担の公平を欠くことになります。中には、多い中に見られない人もあろうかと思いますけれども、そういうそれは合理的に言ってこれは徴収すべきでないと、こうなりますと、私は大きく申しまして受信料制度は破壊していくと思います。そういう面において無理もありますけれども、放送法規定によるいわゆる見得る設備をされれば契約しなければならないということは、見ぬでも取るんだということではなく、大勢は見ておられるんだ、こういう現実に基づいて規定されたものだと考えております。その意味におきまして、台数制によって徴収をいたしますことは受信料の定義を曲げるわけではございませんで、いわゆる国民負担の公平を期する一つの方途ではあろうかと思います。ただし、これを現実に取り入れるかどうかはもっと大きな問題がございます。これは果たして各世帯ごとに、この家には何台、この家には何台、これを把握する能力があるかどうか、またそういうような手段があるかどうかの問題でございまして、非常にやはり人権にかかわる問題にもなってくるわけでございます。そういった面で、私は公平を期する一つの手段ではあるとは申しましたけれども、世界はほとんど軌を一にしまして、受信料制度をとっておるところは、ごく発展途上国の少数のそれを除きましてはみんな一世帯一契約、偶然にもそういうような運営をいたしております。
  262. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、それは偶然の結果じゃなくて、そこに合理性があるからだというふうに思うんです。その合理性ということは、いま会長が言われましたけれども、そのことと、実際に台数契約を実施するとは別問題で、台数契約をしようと思えばそこにいろいろな困難があると、こういうことを言われています。私は、その困難があるということも含めて、すべてそうした問題点を含めた上で成り立っているのが受信料制度だと思うんです。そうでしょう。だから、受信料制度というものは国民NHKの信頼関係によってしか成り立たないんですよ、それね。だから、実際にテレビあるじゃないかと、あなたのところテレビあるんだから金払いなさいと。で、払わないという人が出ても、それについて払わせると。実際にテレビがあるかどうか見ますというようなことができないということは、そういうものの上に受信料制度というのが成り立っている、そこが問題だと思うんです。で、その受信料制度の中身の一つとして台数契約が不可能であるということも入ってるんです。普通人っているというふうに考えざるを得ませんでしょう。  つまり、二台持っててね、台数契約ということを考えてみても、私の方は二台あるけど、これは上と下にあるだけであって、一階と二階にあって、一階にいるときは一階の方を見るし、二階行けば二階の方を見るんですと、だから二台分見ているわけじゃありませんと、こういうことに一般的にはなりますよね。当然そういうことは出てくるわけ。だから私は、受信料制度そのものは国民NHKの信頼関係において成り立ち、そしてそれは、信頼関係というのは国民が支持する放送、で、この支持を土台にして自発的に受信料を払うという、そういうことですね。そういうものによって成り立っているということの中身の一つとして世帯契約ということが結論的に出てきている問題だし、またそれは不可欠の問題だというふうに考えているんです。その点はいかがでしょう。
  263. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 受信料制度がNHK聴視者との間における信頼関係に基礎を置いておることはそのとおりでございます。私もそのとおりに思います。信頼関係なくしてはこの制度が維持できるはずはございません。したがいまして、ごく概括的にいまの台数制の問題については、そういうことが仮に仮定の問題としてあるとすれば、負担の公平を期する一手段ではあろうと私は申しましたけれども、これは一方的にそういうことで押しつけ得るものではありません。国民が、やはり台数が多いところはよけい払うべきだと、この理解、支持、そういったことがやはり受信料制度の信頼を棄損しないと、こういう前提に立つべきものと考えております。
  264. 山中郁子

    ○山中郁子君 つまり、台数制度というのは、台数契約ということは現実の問題で不可能であるということだけでなくて、それはやはり受信料制度そのものの本質にかかわってくる。つまり、NHK国民の信頼関係に基づいて、そしてそれを国民が払うと、義務制でないにもかかわらず払うということの中身として受信料制度というものがあると。そうすれば、当然、もし理屈として見ないという場合でも、それは払っていただくというたてまえになっているのと同じように、二台あっても一台分で払うということが当然の帰結として現象していると私は思うんです。私は、見ないということについて払わなくてもよろしいということをいま私が言っているわけじゃないですよ。その事実を言っているんです。そういうことが負担の公平ということからくれば出てきてしまうではないかと。そこにやはり矛盾が出てくるわけです。ですから、私は台数契約という問題については、それを全く考察なしに、いま私、これは問題提起です、問題提起として、本質的な考察なしに、それはそれでできれば結構なことだというふうな安易な考え方はするべきではないだろうということを申し上げたいわけなんです。その点はいかがでしょう。
  265. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 御説のとおりでございます。私はそれを率直にそのまま賛成でございます。したがいまして、台数制なるものは、国民のやはりそういった支持、信頼の上に、仮にとるとすれば、築かれなければならないのでございまして、信頼なくして、負担の公平を期する方便にはなるということで、台数制を押しつけるべきものではないと思います。
  266. 山中郁子

    ○山中郁子君 もう一つはっきりしないんですけれども、台数制ということは、受信料制度に照らして、国民の負担という説をとるNHKとして、受信料制度に照らして合理的なものではないというふうに考えています。そういうことでよろしいんですか。何か会長のいままでの議論の中では、それは理想ではあるけれども、なかなか困難だという、こういうふうに言われるんで、私はそれが理想だというふうに理解されるとすれば大分違うなというふうに思っているんですが、いかがですか。
  267. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) それは山中先生のような御意見もよく理解できます。また、他面には台数制こそ負担の公平を期する道だと、こういう意見を持っておられる方もあります。そういう面は一つの結論にまとまっておるわけではございませんので、軽々にはこれはどちらがいいといったことを言い得る段階ではないと思います。
  268. 山中郁子

    ○山中郁子君 私も台数制の議論が、初めにも申し上げましたように、NHKのこの困難な経済財政状況のもとに、いろいろな観点から積極的にあるいは善意の立場で出されてきているということも十分理解をしております。しかし、いま私がずっと述べてまいりましたようなそういう本質的な面からいきまして、台数制というのはやはり国民の負担とする受信料制度というものとの本質とやっぱり矛盾するものだということはもう繰り返し言いませんけれども、そこのところの私の主張は御理解いただいたというふうに理解をいたします。それで、その点については、私はやはり受信料制度、現在の世帯契約ですね、この点についての方向は確保すべきだというふうに考えております。  同時に、事業所問題につきましては、やはり一般の世帯契約、国民の負担という観点から言えばまた違った問題になりますし、これも再三再四それの収納問題あるいは契約率の問題なんかが問題になっています。NHKがいろいろ事業所数がこうこうこうであって、そのうちの何%はできているけれども、さらに努力したいと、こういうふうに答えられるのはもうわかっているんですけれども、私たちの調査によれば、NHKがおっしゃるような数ではないという見込みが出てくるんですよ。そんな甘いものじゃないという感じですね。まあこれ数字はいま具体的に詰めませんけれども、その点についての見方がずいぶん違うわけね。その何万台のうちの何万台が契約されていて何%だというNHKは再三答弁されている。それほど甘くはないと、もっとやはり取りこぼしがあるというふうには私たちは見ているんですけれども、その辺は一言で結構ですので、総括的な考え方を述べていただきたいと思います。
  269. 川原正人

    参考人(川原正人君) 確かに、この事業所についてのテレビの所有状況、あるいはどの事業所が本当に有料の対象になるべき事業所であるか、これは確かにむずかしい問題があると思っています。私どもも、私どもが調べたものがもう絶対に一〇〇%完璧であるというふうには毛頭思っておりません。これは毎年やはりそれの実情につきましては私どもも調べ直しが必要だと思っておりますし、実際に現場を回りまして非常に、実情はここはどうかと、あるいはなかなか、先ほど来会長も申し上げておりますように、世帯もそうでございますけれども、事業所につきましても、その中まで私どもが立ち入ってどうこうということは、調べるだけのもちろん立場も権限もございませんので大変むずかしい問題がある。場所場所によりましてもずいぶん差があるということはよくわかっておりますので、一部のサンプル調査だけでもって、これ一〇〇%間違いないということはなかなか言い切れない問題があると思います。これはさらに今後ともそういう調査を含めまして、もっともっと私どもが努力をしていかなければならない分野だろうというふうに正直思っております。
  270. 山中郁子

    ○山中郁子君 次の問題に入ります。  これもいまの受信料問題と同じような性格を持って財政上の観点から提起をされているものというふうに私は理解をしておりますけれども、教育放送の国への移管の問題、これが若干議論になっています。そしてこれは、実は私が昨年やはりこの予算審議のときに自民党総務会の討議された内容としてここで指摘をいたしまして、予算の手続が自民党総務会の了承を得なければできないと、で、これについては受信料義務化制度を導入しなければだめだというふうな意見があったとか、そういうことについてここで質疑をしたことを覚えておいでかもしれませんけれども、そのときの中身としても若干議論をされたというふうに伺っている問題なんですよ。ただし、それは詳しくは私も知ってはおりません。だけど、いずれにいたしましても教育放送を文部省に移管すべきだというふうな点について、まずNHKのお考えを伺いたいと思います。
  271. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 教育放送番組につきましても、現在はあるいは教育課程に準拠しなければならないといったような放送法規定はありますけれども、基本編集権NHKにあると、こう観念されております。その面から、いわゆる文部省の御用教育放送になりますと、そこに国定放送と、こういったような疑義が出ることは非常に問題であろうと思います。現在のNHK部内のそれは労働組合も加えまして、そういう面についてはきわめて抵抗が強うございます。
  272. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、やはりいま会長も言われたことも含めましてね、教育放送であるからということで、それが国の所掌に含まれるということはあってはならないことだというふうに考えているんです。ただ、いろいろ議論としましてね、国際放送の問題もあるんですけれども、たとえばその国際放送にかかるお金が一般の視聴者の負担による受信料で賄われるのはおかしいではないかという問題だとか、それから教育放送だとやはりごく限られた人数しかないと、それをやっぱり一般の聴視者受信料によって賄うのは理論的にもおかしいし、またNHK財政の面からいっても考えたらよかろうという、そういうさまざまな意見があるというふうに思います。  しかし、私は基本的に、先ほど受信料制度の問題で議論をいたしましたように、受信料制度そのものが体現しているように、そのニーズに合わせた、対応する、量的に対応する番組ですね、というものが貫かれるということではないわけですね。そういうことからいって教育放送が国の所掌の範囲に入るということではないであろうということと同時に、やはり放送報道の不偏不党、中立、それから教育の民主的教育、中立という観点からいきまして、やはりそれはNHK放送法に基づいてNHK事業中身として位置づけられてしかるべきだということを私どもは考えております。特に御意見があれば伺いたいと思います。
  273. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) ただいまの御説に対して意見は持ちません。
  274. 山中郁子

    ○山中郁子君 次に、経営委員会、番組審議会の構成についてお尋ねいたしますけれども、まあこれも先ほど案納委員が触れられましたのでダブらないようにいたしますが、初めに、衆議院のこのNHK予算承認に当たって附帯決議がつけられているわけですね。そうして「経営委員会の機能を十分発揮し得るよう、その構成に格段の配慮を行うとともに、番組審議会の委員の構成が、受信者の意向を十分反映できるよう一そう留意すること。」、こうなっておりますけれども、まず郵政大臣に、この衆議院での経営委員会などの構成に関する附帯決議をどう受けとめられて、どのように考えられているかをお伺いしたい。
  275. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) お答えいたします。  経営委員委員の構成につきましては、経営委員会の重要性にかんがみまして、「公共福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者」が任命され、「教育、文化、科学、産業その他の各分野が公平に代表される」ようという放送法規定に従いまして、広く各界の意向が反映されるよう今後とも一層配慮してまいりたいと存じます。
  276. 山中郁子

    ○山中郁子君 番組審議会のことについて具体的にそれじゃお尋ねいたしますけれども、これは具体的なお尋ねをする前に、いまの番組審議会の問題についての衆議院の附帯決議ですね、これについての会長の所見を伺いたいと思います。
  277. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 番組審議会につきまして、衆議院逓信委員会で付せられました附帯決議の趣旨、これは十分に私どもはそのようにあるべきものと考えております。結局、国民要望に沿う放送をすることがNHKとしては真っ先に考えなきゃならぬことでございますので、その関係審議を尽くします番組審議会の構成は、各番組に対していろいろな御要望のある各分野の意向が十分に反映されなければならないと思います。ただ。学識経験者ということで、いわゆる知名の人ばかりを集めるということでは足らないのではないかと、かように考えます。
  278. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、現行の構成について改善なさるという積極的な意向をお持ちでいらっしゃるわけですか。
  279. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) そのとおりでございます。
  280. 山中郁子

    ○山中郁子君 これは、私、前にも経営委員会の問題で申し上げたんですけれども、いまの番組審議会の構成ですね、これ見ますと、まあ女性が入っていないというふうに言われては困るので入れますという感じなんですね。具体的に申し上げますと、中央番組審議会は十九名中婦人は二人です。それから関東甲信越は十一名中二名です。それから近畿は十名中一名、それから中部は十一名中一名、中国は九名中一名、九州は十二名中一名、東北は十二名中一名、北海道は十二名中二名、四国は十名中二名、それから沖繩は七名中一名と、こういうことになっているんですよ。入っていないと、女性が入っていないじゃないかというふうに怒られるといけないから、この点は忘れずに入れましたと、こういう感じの構成になっているんですね。私は何も婦人の問題だけを問題にするつもりはありません。たとえば青年の声をどう反映するか、あるいは自営業者の人たちの声をどう反映するか、勤労者の声をどう反映するか、そういうふうなことで、国民の広範な多面的な層をやはり公平に反映できる、そういう構成になってなければならないし、衆議院の附帯決議もそういうものだったというふうに考えておりますけれども、いかがでしょう。人口の半分以上を占める婦人が何か最低一人は入れなきゃいけないみたいな入れ方がされているというこの現状は、私はやはり多分に偏っているというふうに言わざるを得ないと思いますけれども、どのようにお考えですか。もし、もっともですなんておっしゃるんだったら、なぜいま現在はこういうふうになっているのかということも含めて、それはお伺いしたいと思います。
  281. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いまの現状に対しまして非常に御批判のありますことは十分に承知をいたします。また、そういう御批判を受けるに足る現実であろうと思います。まあ御婦人の方のそれが現在いろいろ配意して入っておりますが、仕方なしに入れておるわけではございません。
  282. 山中郁子

    ○山中郁子君 でも、そんな感じですね。
  283. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 特に番組視聴の実態を見ますと、御婦人の方の視聴率が非常に高いのであります。一日における視聴時間も御婦人が非常に長いわけでございまして、主婦の立場あるいは消費者としての立場、重要にやはりこれは着目しなければならない問題と思いますので、そういうこともあわせて将来構成に改善を加えてまいりたいと、こう思っております。
  284. 山中郁子

    ○山中郁子君 これは、昨年国際婦人年だったわけでしょう。それで一年間にわたって国会でもさまざまなところで婦人の声ということが論議をされました。そして私も経営委員の問題ではございましたけれども、この委員会でも指摘をいたしました。それでもどうして——そしていま会長がごもっともでございますと、こうおっしゃっているのに、なぜいま現在やっぱりこういう状態になっているのか、私はそれがどうも不思議でしようがないんです。これは一番最初に言うと、またまずいから言わなかったんですけれども、結局こういうことだから私は言わざるを得ないんですけれども、ごもっともでございますと、こういうふうにおっしゃるけれども、実際はそのことがなかなか実現しない。たとえばこの問題、私は奇異に感じます、そういうようなアンバランス。いま会長みずからがおっしゃったように、視聴者の率というのは婦人がすごく高いし、時間的にもそうだし、そういうのにもかかわらず現状はこうなってるということについて、なぜそうなのか。依然としてNHKではそういうふうな考え方が、認識がやっぱりおくれておりましたと、こういうことなんでしょうか。そういうことについて伺いたいし、具体的にいつの時点でどういうふうに改善をしていくと、これは婦人の問題だけじゃありませんよ、していくかということについてお答えをいただきたいと思います。
  285. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 確かに先生指摘のとおり、婦人問題については大いに改善しなければならないというふうに考えておりまして、いま先生の御指摘の中央番組審議会が十九名で婦人が二人だという御指摘をいただきましたけれども、その後、新しく白井先生をお願いをいたしまして、二十名にして婦人を三人というふうに改善いたしました。それでいいということではもちろんございませんけれども、そういう形でできるだけ御趣旨に沿うように努力してまいりたいと思いますし、その他の構成につきましても、会長が御答弁申し上げましたように改善していかなければならないと考えておるわけでございますけれども、何分にも二年という任期でお願いしてあることでございますので、その任期の交代期に改善していくというようなことになろうかと思いますが、しかし、現実には法律では何人以上というふうに規定してございますから、別に定員制ではございませんので、その何人以上というアローアンスの中で考えていくべきだというふうにも考えておりますので、できるだけ積極的に御趣旨に沿うように努力をしたいというふうに思います。
  286. 山中郁子

    ○山中郁子君 この経営委員会や番組審議会ですね、こうしたものが、開かれたNHKでなければならないという観点からいっても、私はまずそうしたところがガラス張りに国民の前に存在していなければならないというように強く思っているものですけれども、経営委員会や番組審議会は、そういう観点から公開にすべきであるというふうに私は思いますが、その点について大臣並びに会長の御意見を伺いたいと思います。
  287. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 経営委員会の会議を公開にするかどうかということについては特段の法令はないのでありまして、経営委員会自体が決めていくということになっております。
  288. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) こういった委員会、審議会の審議過程を公開することには大きな意義がございます。他面には、それによる非常な懸念もございます。と申しますのは、自由濶達に何でも腹蔵なく論議されることがこれが本旨でございますけれども、公開の面で遠慮されて言うべきことを言わないで済ませるようなことになってはやっぱり困ると思いますので、けさほど経営委員長も、この夏の勉強会では十分にそういう御趣旨を体して検討もしてみたいと、こう言っておられますし、私どもも経営委員会のそれは、私がくちばしを入れるべき筋合いのものではございませんけれども、番組審議会についてはそのような意味合いで検討してまいりたいと思います。
  289. 山中郁子

    ○山中郁子君 そういうことで、検討なさるということで、それはそれでよろしいのですけれども、いま会長がやはり言われましたね、公開にすると言うべき意見も言えなくなるということも出てくるとおっしゃるけれども、私はそれは本末転倒だと思うのです。そこに私は重大な間違いがあると思うのです。ということは、開かれたものでなければいけないと、だけれども、それは公開をされなければ、そうしたら、その中でどういう議論が行われて、たとえばどういう圧力がかかって、どういうふうな結論になったかというようなことは国民はわからないわけでしょう。密室ですよね、いわば。そういうことの方が決定的に問題なんですよ。であって、当然のことながら、経営委員に任命し、また番組審議委員を委任する人たちは、そんな公開されて国民が見ているから、聞いているから言うことが言えないなんていう人材を登用なさっているはずは前提としてないと私は思いますし、またそうであってはならないし、だれだって国民にむしろ聞いてもらいたいと、そういうふうに思うんじゃないかと思います。それが民主主義というものです。国民の支持を基盤にして自分の主張することを主張すると、これが民主主義基盤だと思います。ですから、言いにくいこと、言いたいことが言えなくなるから公開ということについても問題があるというふうなお考えは、私はこれはとっていただきたくないし、とるべきではないと思っておりますが、重ねてそのことをお尋ねいたしますと同時に、郵政大臣に、先ほど経営委員会が自主的に決めることであると、こういうふうな御意見でしたけれども、少なくとも公開してはならないということはないということについては確かだと思いますが、その点を重ねてお伺いしたいと思います。
  290. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 別に特段の法令があるわけでないんですから、これはもう経営委員会自体が決めることでありますから、郵政省なり郵政大臣なりがどうするべきであるというようなことは、これは差し控えなければならないと思います。
  291. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 御趣旨はよく理解できます。そのとおりだろうと思います。  申し落としましたけれども、いざ公開するとして、どういう公開の具体方法があるかということが問題でございます。印刷物によるのか、あるいはNHKのテレビを使ってその場面を長々と放送するのか、これはなかなかそうもまいらないんではないかと思います。そういう具体的方法についても検討を詰めませんと、趣旨はよくてもなかなか、印刷物にしてもえらい相当経費がかかるようなことにもなりましょうし、そういう面はいろいろ検討してまいらなければならない問題点ではないかと思います。
  292. 山中郁子

    ○山中郁子君 それは方法なんて幾らだって考えていただければいいんですよ。何も国民一人一人に記録書全部送れなんというふうなことでなきゃ公開にならないとか、そんなことはないわけでしょう。傍聴ということだってありますでしょうよ。それから記録書を放送会館に常時置いておいて、そして閲覧できるような仕組みにするとか、それは幾らだって考えられると思うんですよ。私はそういうことをNHKがいままで考えてこないで、やってこなかったということに私大きな問題があるというふうに思うんです。それが、だからNHKの閉鎖性だとか独善性だとか、国民の声を拒否するとか、私はそうした批判が全面的に当たっているとは、それは一〇〇%当たっているとは言いませんけれども、これは否定できないんです。だから、私が最初に、開かれたものでなければいけないということを主張したのはそういうことなんです。口だけで開かれたというふうに言っていてもだめでね、本当に大事な番組審議会だとか経営委員会が国民の前に開かれていなければ、本当に開かれたNHKではないでしょう。  そこのところを私は、本当にいままで何でそういうふうにそうしたことが考えられないで来たのかと。そしていまこの期に及んでも、ごもっともでございますと会長言われるけれども、児戯に等しい言いわけみたいなことをなすって、方法について考えなきゃならぬというふうなことをおっしゃる。それはもう私はまたもう一度怒り返すことはしませんけれども、私が申し上げている趣旨なんていうのは百も承知の上で、そして何か議事録を全国民に配らなきゃならないみたいなことをちらっとおっしゃるみたいな、そういうことはやめてほしいということなんです。私はそのことについてはNHKは怠慢だと思います。もし仮に、公開すべきであるし、それから開かれたものでなければならないということについて、もっともだとおっしゃるならば、私は怠慢だと思います。  それからもう一つやはり危惧するのは、口ではもっともだというふうに言われるけれども、実際はやはり公開したくないものもあるというふうなことで、なるべく一つは壁を残しておきたいというふうな結果を生み出している。そのどちらかにつながると思うんです。私は、この点については会長がもっともですというふうにおっしゃっても、ああそうですか、結構ですというふうには引き下がるわけにはいかないと思いますので、少なくともいま申し上げました具体的な施策を、いつごろまでにどのように検討されて実施するということがあるかということについてはお約束をいただきたいと思うんです。
  293. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 前向きに検討いたすつもりです。
  294. 山中郁子

    ○山中郁子君 いつごろまでにそうしたことに具体化ができますか。大体でいいんですよ。
  295. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 期限つきのそれはひとつ御勘弁を願いたいと思います。私は誠意を持って前向きに検討いたしてまいりたいと思います。
  296. 山中郁子

    ○山中郁子君 昨年から聴視者委員会というものを設けられて、そしてこれも国民の声を聞くという観点でのお取り組みがされているようですけれども、私はちょっとこの点については余り詳しく知っておりませんので、端的に言ってこういう成果が上がったとか、こういうふうなことについて新たなあれを得ることができたとかというようなことについて、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  297. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 実態につきましては担当の理事からお答え申し上げますけれども、これはやはり開かれた経営を目指すために、私が督励してこの聴視者委員会はつくったわけです。これには、いろいろ電話なり文書なり、あるいは直接おいでになったり、これで相談所窓口に、あるいはその他の投書その他でいろんな御要望を承っております。これは内部におきましては決して聞きっ放しではなく処理はいたしておりますけれども、これはよその目には映りません。したがって、これが開かれた経営であるようには映らないわけです。そういう意味合いから、処理の実態を見ていただくために外部の委員を委嘱いたしまして、いわゆるこれらの要望なり不平なり批判なりがどのように処理され、どのように生かされておるかを知っていただき、これをやはりこのようにやっておるのでございますと、こういうようにするために放送に出しなさいと言っておるわけです。ただ、私が要望するほど充実いたしておりません。過去一、二回はテレビの画面にも出しましたけれども、これはやはり天下の公器であります国民の電波を私するものではないと思います。そういう意味において、聴視者委員会の活動のそれはつまびらかにやはりテレビなりラジオなりによって知っていただくようにすることこそ、私の本旨でございます。いままでの運営の実態については担当の理事からお答えを申し上げます。
  298. 川原正人

    参考人(川原正人君) この聴視者委員会は昨年の九月から設けまして、東京でございますけれども、十五名の委員の方をお願いいたしております。この委員の方は、いろいろな消費者団体の代表をされるであろうと思われる方、あるいは自治会の方、それからPTAの方、十五名の中には御婦人は四人入っております。そういう方をお集まりいただきまして、これは会長が申しておりますとおり、この委員会の委員の方の御意見を直接聞くというよりは、私どもがいろんな形で、相談センター、懇談会その他聴視者意向を承っております。それが年間で言いますと、相談センターだけで承ります御意見だけでも四十万を超すという状況でございますので、毎月毎月、前の月に大体こういう御意向を承っておると、それを御披露いたしまして、物によりますと、その御意向に基づいてすでにこういう処置をとった、果たしてそれが妥当であっただろうか、あるいはまた特に処置ということでなくて、こういう意見とこういう意見と、まあしばしば両側の全く相対立する御意見をちょうだいすることが非常に多いわけです。そういう場合に、その委員会の方にどのようにお考えであろうかと、それをまた私どもの業務に反映するというふうにいたしております。で、これは相談センターというところが一番聴視者意向の集中するところでございますので、その相談センターを担当いたしております私が毎回出まして、ただ私が聞いただけでなかなか協会の各分野に反映しにくい面もありますので、一番御意見の多い番組につきましては、放送総局の副総局長、それからもう一人総務という幹部が出まして直接意見を承って直ちに必要なものは業務に反映すると、こういうふうにやっております。
  299. 山中郁子

    ○山中郁子君 それでは、続きまして経理問題の若干の点について質疑をいたします。  これもいまの問題と本質的な問題で私のとらえておる観点は同じなんです。つまり、ガラス張りであるのか、国民の側に開かれているのか、そういうものの支持を基盤にするというふうなことを貫かなければならないということの観点から二、三の点をただしたいというふうに思うんですけれども、まず受信料の今度の値上げ、かなり大幅な値上げです。  これがやはり国民の中でかなりの疑問と否定的な受けとめ方がされている。つまり反対である、値上げされては困るということでもって受けとめられているということについては、多分ある程度掌握はしていらっしゃるというふうに思いますけれども、それでもなおかつ値上げについて協力をしてもらわなければならないとするNHK立場なら、そのことについて積極的な国民への理解を求める努力があってしかるべきだというふうに思いますけれども、そういう観点からのどういう努力をされてきているかということについてお尋ねをいたします。
  300. 野村忠夫

    参考人(野村忠夫君) この料金の値上げを決定いたしましたのが一月でございますが、私どもは国民生活に大きな影響を与えるという観点から、あらゆるメディアを通じてまずその実態をお知らせすることに主力を注ぎました。これは私どものテレビ番組、ラジオ番組の中に「NHKガイド」という企業のPRが若干できる時間がございます。そこで受信料制度というものの根底から御説明申し上げまして、数日間放映いたしました。また、新聞に広告を出しまして、その広告の中で私どもの企業の内容、特に五十一年度のこの値上げ案の内容そのものについてのパンフレットを七十三万部だけ用意いたしましたけれども、ほとんどそれを配り切ったという状況でございます。さらに全国に特別聴視者懇談会を例年に増しましてその期間開きまして、各理事が全国的に特別聴視者懇談会に出席して御説明申し上げました。また、七月には、昨年来の基本問題調査会の発足に際して参考意見を伺うために、私どもは千百五十二名の各地方の有識者あるいは労働団体、市民団体等の方々にアンケートをいただきましたので、予算案が確定しましたその結果について改めてそれらの方々全員にお知らせをして御意見をいただくような努力をいたしました。御承知かと思いますけれども、それ以外に週刊誌あるいは新聞紙、この二月、三月、四月とできるだけ国民に周知徹底するような努力をいたしたつもりでございます。
  301. 山中郁子

    ○山中郁子君 幾つかのそうした点の施策を講じておられるということについてはわかりました。  それで、これから具体的な幾つかの問題に入る前提として、NHKの経理について私たちがいただく資料だけでもなかなかわかりにくいんですよ。それで一生懸命数字をあっちにやったりこっちにやったりして、ああそうかとわかることがずいぶんあるんですけれども、こういうことをそのままばさっと国民にあれしてももちろんわからないということは当然ですけれども、そのことをわかるようなものとしてということを前提にして、だれでもが見ようと思って、知ろうと思えば見られるというふうな経理状況の公開ですね。そういうものを、たとえば先ほど申し上げましたことと共通しますけれども、放送会館に常時展示して置いておくとかというふうな措置はとられてしかるべきじゃないかというふうに思いますが、その点はいかがですか。
  302. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 御指摘の点は当然でございます。そういう努力はいたしてまいりるつもりでございますし、またNHK番組の一部を使いましても、NHKの経理の実態、運営の実態がわかりやすく御理解いただけるように努力すべきものと思いますし、そのようなことを私も要望をいたしております。まだ十分でございませんけれども、そういった面は今後大いに配意をしてまいりたいと思います。
  303. 山中郁子

    ○山中郁子君 それで、この予算提起の仕方ですね。私どもも資料などもいただいたり、いままでも質疑の中で答弁もいただいているんですけれども、やはり私はそれを本当に国民にありのままに、わかりやすく、わかってもらうという努力がすごく足りないんじゃないかと。私もこういう経理だとか予算案をつくるとかということの専門家ではありませんから、その点については専門的な問題があるかもしれないけれども、基本はやはり国民にどういうふうにそのことがすぐストレートにわかってもらえるかということを押さえなきゃいけないというふうに思うんです。  そういう観点から二、三ちょっとただしたいんですけれども、今度の予算の中で具体的な問題としては値上げ幅が大変大きいと、しかもそれが五十二年、五十三年分の赤字分の先取りであると、そういうふうな批判もあります。で、その点について、まずどういうふうな中身なのか、これは説明がありますけれども、ちょっと簡単にお知らせいただきたいと思います。
  304. 山本博

    参考人(山本博君) 三カ年間の財政の見通しを立てましてこの受信料の月額を考えたわけでございまして、ただいまお話がありましたように、三カ年先までの先取りではないかというお話がございますが、実は料金を先に設定いたしましたわけではございませんで、三カ年間の事業計画というものを先に設定をいたしました。  事業計画中身といたしましては、けさ方会長も申しましたとおり、現在のNHKの規模をさらに広げるというような内容のものは極力抑制をいたしまして、現状NHKの内容を質的に充実をするということを主眼にいたしまして、新しい投資といたしましては、難視解消のための投資、それから現在すべてのテレビの中で白黒として残っております教育テレビのカラー化を一部実施をすると。三カ年間では全部にいたしますが、五十一年度はその一部をすると。なお、物件費の値上がりは八%、職員の給与、待遇改善一一%、これはそれぞれこの予算編成当時の政府見通しに沿って出したわけであります。なお、職員の数は現状のまま三ケ年間推移をするというようなことを前提にいたしまして、で、事業計画中身といたしましては、これもいろいろな各方面からの御指摘がありましたものを十分吸収いたしまして、第一義的にはいま申し上げました難視解消というようなことで国民の御期待に沿おう。それから二番目は、できるだけ国民との放送ということを通じての接触度をさらに深めていくということで、ローカル放送を充実してまいりたいというようなこと。さらには営業関係を通じまして国民皆さんの御理解を得たい、それを深めていきたいということの経費。  この三つを主たる柱にいたしまして事業計画を組んだわけでございまして、その結果、三カ年間の事業を遂行いたしてまいりますためにほぼ二千百億ばかりの金が必要になる。この二千百億の金を三カ年間に白黒とカラーとにあんばいをいたしまして、受信料月額を七百十円と四百二十円、アップ率としましてカラーの方が五二%強、普通受信料の方が三三%、こういうふうに設定をいたしたわけでございます。  その結果、三ケ年間を見通しますと、五十一年度におきましては事業収支差金が二百八十九億円生まれてまいります。これは資本支出に充当いたしますのが百十億。それから事業収支の純粋の差金といたしまして百七十九億出てまいります。五十二年度になりますと、これがいわば収支完全に償いましてゼロになります。五十三年度になりますと、先ほど申し上げました百七十九億、三カ年間の財政安定ということから繰り越しました百七十九億、ちょうど五十三年度は赤になります、そこへこの百七十九億を充当いたしまして、三カ年間の事業計画財政の裏づけにするという仕組みになっております。
  305. 山中郁子

    ○山中郁子君 二百八十九億の黒字、私は簡単に黒字と言ってしまいますけれども、五十一年度末であると、そしてその内訳が百七十九億が五十三年度分の赤字補てんとして、百十億が借金を返すと、こういうことだという御説明なんです。  そしてそれはおたくからいただきました資料にもそのように出てはおるんですけれども、たとえばこの百十億の問題ですが、資料の二というのでいただきました事業計画のあらましの中では、最後のページに、支出として放送債券の償還十億六千万、長期借入金の返還九十二億円と、こうなっておりますね。これがいわゆる借金の返済だというふうに思いますけれども、これを合わせますと百二億六千万円ですね、この借金を返済する額は。百二億六千万だけれども、こちらの資料によれば、そしていまの御説明によれば、借金返すのは百十億だと、こうなって七億四千万円からの開きがこれで出てくるわけですわ。これは私は一つの例として申し上げておりますので、たとえば、そういうことがやっぱりわからないですよね、どうなっているんですか。
  306. 山本博

    参考人(山本博君) 私の方の資料によりますと、百三億という数字はちょっと見当りませんのですが、私の方の資本収支の支出によりますと百九億九千万。これは放送債券の十億六千万、長期借入金の九十二億円、それから放送債券の積立資産の繰り入れが十七億九千万、こういうものになっております。
  307. 山中郁子

    ○山中郁子君 このNHKからいただいた資料です。ナンバー一からたしか五ぐらいまでありましたね。その資料二の日本放送協会昭和五十一年度収支予算事業計画のあらましというものです。四、五枚のつづりになっています。それの最後のページに資本収支となっていて、支出のところに放送債券の償還が十億六千万円、長期借入金の返還が九十二億円と、こうなっているんです。  そうしますと、これは百二億六千万円で百十億とは違うんでどうなんですかとお伺いしたわけで、どうぞNHKの資料に基づいてお答えをいただきたいと思います。私どもに配っていただいた資料に基づいてお答えいただきたいと思います。
  308. 山本博

    参考人(山本博君) 失礼しました。  私が先ほど申し上げましたように、いま御指摘がありました百二億というのは債券の償還と長期借入金の返還分でございます。なお放送債券の積立資産繰り入れというのが、これは法律によりまして一〇%積み立てなければならないものがございますので、それをただいま御指摘がありました百二億に足しますとちょうど百九億九千万。これは資料としましてこの資産繰り入れば別途載っておりますので、足し算をいたしますときには、その放送債券の資産の繰り入れも入れませんと資本支出になりません。そういう計算になるわけでございます。
  309. 山中郁子

    ○山中郁子君 資本支出充当として、資料の四の中には、百十億となっているんですよ、五十一年度予算に。そしてこっちの資料二の方の資本収支の中の支出のところで、いま私が申し上げました百二億六千万円になるの。だけど私は七億四千万円をどこかでごまかしているとは思いませんよ。思わないから、それはそれなりのいまの何かおっしゃった根拠があるのかもしれないけれども、なぜそういうことがわかるようにちゃんとしないのかということを言いたいわけですよ。そしてわずか七億四千万円とはよもやおっしゃらないと思うんです。  先ほど国民意見を聞けということについて、はがきをみんなに配ると二億から三億かかって、これは慎重に考えなきゃいけないと、こういうふうにおっしゃったわけでしょう。それなのにこれの資料だと七億四千万円という行方はわからないんです。これはだれが見てもわからないと思うんです。そういうことをしてもらっては困るということを私は言っているんです。
  310. 山本博

    参考人(山本博君) やや繰り返しになって恐縮ですけれども、資本支出充当の百十億と申しますのは、資料として確かに差し上げました。それでなお、私の方が本当の予算そのものとして設定いたしますときには、いま申し上げました長期借入金と放送債券のほかに、法律によりまする放送債券の償還のための繰り入れというのが義務づけられておりますので、それも足しましたのが資本支出になる。ちょっと御指摘がありましたように非常にわかりにくいところがございますけれども、数字的にはそういうことでございます。
  311. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 御指摘の点、これは非常に不親切だと思います。私もよくわかります。ですから、そういうところで支出の面で掲げておるものですから百二億六千万になるわけでございますけれども、後の金は内部留保で支出の面には上がりません。しかし、それは百十億円資本収支の充当を掲げます対応のそれとしては、そこに備考としてでも掲上されておらないとちょっと御一覧になって非常におわかりにくいこともよくわかりますし、今後は、そういった面には十分気をつけてまいりたいと思います。
  312. 山中郁子

    ○山中郁子君 それと同じようなケースがやっぱり随時見受けられるんですね。つまり債務償還ということで出されるけれども、実際には百二十五億しか債務ば償還されていないという結果になって、その分は借入金で相殺されているという成り行きになるわけでしょう。その借入金は難視解消や何かということでつまり先行投資でしょう。そしたらうんと端的に言うならば、赤字だからすごく困っていますから上げてくださいというのが基調なんですよ、おたくのおっしゃる。だけど実際中身を言えば、先行投資も含めてこれから——その先行投資が私はむだなお金だというふうに言い切りませんけれども、だけれども、そういうものも含めて新たにはこういうものをつくらなければいけないし、借り入れもしなければいけないと、だから借金を返すについてはこれだけなんだということを本当にわかるように、国会の資料という意味だけではないんです、繰り返し言いますように、国民がみんなわかるようなそういう周知を図らなければいけないでしょう、そのことをいま申し上げたんです。  それと重ねまして、この問題で選挙交付金のことについて、やはりこれも同じような意味で、どうしてもっとちゃんとわかるようにぱっと出さないのかというふうに思うのですが、それは実は選挙交付金が四百五十万円の知事選分しか計上していないという御説明でした。それでことし総選挙があることははっきりしているわけでしょう。そうしてこの点では自治省予算でも政見放送用に五億円計上されている。この中で一億六千五百万がNHKに交付されるというふうになっている。それだったらどうしてそういうことを予算に計上しないのかということが私は不思議なんです。そういうことの何かからくりが結局あるんではないか。おたくの予算総則の中にはそのことについて触れてあります。だけど触れてあることを見れば、四百五十万しか計上していないけれども、総選挙があった場合にはその金は入るからその金は選挙のところに使いますよと、こういうことを言っている。そんなわかりにくいことを言わないでちゃんと予算として計上したらどうなんでしょうか、このことはいかがでしょうか。
  313. 山本博

    参考人(山本博君) 私たちが予算を編成いたします当時、まだ自治省の方で……本年度から放送時間が延長になる予定になっておりました。それから一人当たりの単価が増加になる予定でございました。まだ自治省の方で選挙に立候補される方の人数の算定といいますか、予測といいますか、予算上の予測、そういうのがまだできておりません状態のときに、ちょうど私の方が予算編成に当たりましたので、その変動のない年でございますと、ある程度の見込みができましたけれども、時間数なり単価なりこういうものの変動がその当時決まっておりませんでしたので、私の方がその当時わかっておりました知事選だけを載せまして、あとは国の予算が確定した後で繰り入れをしていただくと、こういう処置をとった次第でございます。
  314. 山中郁子

    ○山中郁子君 そういう御答弁は御答弁として伺っておきますけれども、おわかりいただけると思いますが、私はこの予算総則の十一条にこう書かれているんです。「国際放送ならびに選挙放送の実施に対する交付金が予算額に比し増加するときは、その増加額は、それぞれ国際放送ならびに選挙放送関係ある経費の支出に充てることができる。」と、こうなっているんですね。これも何かちょっとわかりにくい話なんですけれども、それよりも予算なんですから、予算は立ちますでしょう、いま参考人が言われたようなことがあったとしても、予算というものはそういうもので、私たち国民はことしは総選挙があるというふうに決まってわかっていると。そうしたら、当然、そのことについて、たった四百五十万ということはないだろうというふうに思って、そういうふうに疑問に思いますよね、そういうことがなぜこういう官僚的な扱いにしかならないのかということを申し上げているんです。   〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕
  315. 山本博

    参考人(山本博君) NHK側が自分のいろいろの施策として行うことでございますと、ある程度のめども立てようもございますけれども、何せNHK側でそういう基準その他を立てるたてまえになっておりませんで、これは自治省がそういうものをつくりまして、予算を通しまして、それからNHKに交付をしてくるという筋道になっておりますもんですから、NHKなりに余り自由な裁量で数字の根拠をつくるということが非常に困難なものでございますので、本年度はそういう措置をいたしましたけれども、特にそういう変動のない年で、ある程度確定できる場合は、そういう措置をいたすことに従来もいたしておりましたし、今後もいたしたいと思います。
  316. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうすると、やっぱりこういうふうな措置をとったのは、それは正しくってそれ以外にはないと、こうおっしゃるわけですか。私の言っている意味がちっともわかっていただいてないように思うんですけれども、それはやむを得ないということなんでしょうか。
  317. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) やむを得ないことではございません。余りにきちょうめん過ぎて、交付金がぴたっと決まらないと計上できないような、そういう気持ちでできております。私も実を申しますと、こう言っては非常に無責任に聞こえるかもわかりませんが、予算書ができまして、提出をされた後つぶさに見ました。この点には先生と同じような疑義を持ちました。金額に後で相違は起きても、見込みでやはり計上しておくべきじゃないかと、こう思います。そういうような面でいろんな御指摘を受けましたけれども、ことさらにわかりにくい予算になっているようなお疑いを持たれても、これいたし方ないと思います。今後は、そういう点については十分な配慮を下してまいりたいと思います。
  318. 山中郁子

    ○山中郁子君 それはぜひお願いします。まだたくさんありますけれども、そういうのたくさん言っていたらもう時間なくなっちゃいますからやめますけれども、いまの指摘したことは、そういう点でとにかくわかるように努力をしてくれということなんですね。その点についての、いまの小野会長のお答えを了といたします。  それで、もう一点、具体的な問題についてお尋ねしたいんですけれども、これはまあ経費節減しなきゃいけない、何とかして予算も赤字幅を少なくできないのか、値上げ幅を少なくできないのかといろいろ皆さん各方面から検討もされたし、またこの委員会でもそういう観点からの審議も行われていますけれども、私はそのうちの一つですね、減価償却の問題についてちょっとただしていきたいというふうに思うんです。  減価償却は、御承知のように、定率法と定額法をとることによって相当支出が変わります。で、この問題でNHKの場合には、機械類だけが定率法になっているんですね、あとは定額法です。その機械類だけなぜ定率法なのかということについて初めにお伺いいたします。
  319. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 理想的に申しますと、NHKは長らく機械、設備だけでなしに、建物、構築物等についても定率一本でやってまいっております。ただ過去八年間値上げをしないで、いろいろな物価上昇の荒波にもまれながら、しかも収入増は非常に契約の伸び悩みできわめて低位にありながら、いろいろな非常措置といたしまして、建物、構築物等については、これは技術革新でいろいろ変わってき、それに対応すべきものでもありませんので、定額制に変えまして、それによって約四十億ぐらいでございましたか、いわゆる赤字になるべきものを縮小したと、こういう措置をとりました。  ただ、機械、設備につきましては、同様の措置をとれば八十億ぐらいは浮くのでございますけれども、そこまでやるのは非常に行き過ぎであろう、やはり技術革新のテンポに合うような対応した施策をとらなければなりませんので、そういう面で在来の定率をそのまま維持すべきものということで、現在、建物、構築物と機械、設備との間には定額、定率の差異を設けておりますが、この経緯はさようなことでありまして、本来は定率が好ましいわけでございます。
  320. 山中郁子

    ○山中郁子君 減価償却の方法がどうであるかという議論はいまちょっと置きます。そういうことはせずに、具体的にいまNHKが少しでも支出を抑えなければならない、そうして値上げ幅も抑えられるだけ抑えなければならない、こういう事態のもとでつくられた予算だと思います。その点につきまして、いま申し上げました機械の定率法をもし定額法として考えるならば、これは実際問題としてのNHKの資料に基づきますと、機械類は大体耐用年数が六年とか五年とか四年とか三年とか、こうなっております。もちろん長いのは十五年というようなものもありますけれども、大体、平均すれば五年になるのではないかと、五年ということで定額法を導入するとしますと、定率だと一年度が三六%になりますけれども、定額では結局半分になって一八%になるということで、実際には機械の減価償却の予算として九十二億計上されていますから、これが実際には半分になりますから四十七億ぐらいに減らすことができるわけですね。それはもちろん機械が技術革新その他でもっていいものができて、そのためにお金が使えればそれにこしたことはないという、そういう限度はある、そういうものはあると思います、基本的に。だけれども、いま実際問題としてNHKは過去の膨張主義ないしは膨張主義というふうに言われるような政策が批判もされ、また会長自身もそれについては一定の反省もしていらっしゃるし、今後は、そういうことについて着実な運営をしていきたいと、こういうふうに言われている以上、これはあえて定率法をとって四十数億の支出削減をやっぱり図ることができないという理由には私はならないというふうに思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  321. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) この点はいろいろ経営委員会でも論議のあったところでございます。減価償却のそれを財政難のために本旨を曲げるべきではないと、これは正論でございましょう、そういう意見が非常に強うございまして、やはり技術革新のテンポに合うような対策はとっていかなければならないので、それに立ちおくれるような定率制を定額制に変えることは、これは経営基盤を危うくするということで、あえてその面については経費削減になる措置はとっておりません。   〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕
  322. 山中郁子

    ○山中郁子君 私はNHKの減価償却費が利益隠しの方便になっているというふうにはもちろん考えていません。しかし、一般に言われるところは、何も共産党指摘するだけではなくて、大企業その他の値上げなんかに関係して必ず問題になるのが、たとえばこの減価償却などを含む内部留保の問題ですよ。内部留保にごまかしがあって、もうかっているにもかかわらず、もうかってなくて赤字だ赤字だと言って値上げをするということがやっぱり一つの大きな問題点になっているわけなんです。ですから、私は、NHKの減価償却がそうした内部留保、利益隠しの隠れみのになっているとは言わないけれども、少なくともその点についてでき得る限りの支出を抑えるという、そういう立場での最低限のぎりぎりのところの方策をとるべきだというふうに思います。そういう観点からこの減価償却、機械類の問題につきましても定額法をとるべきであるということを重ねて主張をいたしますが、その点について今後の問題としてのお考え方をお伺いいたします。
  323. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) いまの減価償却の方式の変更だけでなしに、過去八年間におきましては、いわゆる機械、設備等の更新の問題につきましては、実際は更新期が来たものを更新をいたしておりません。寿命の過ぎたものもこれをやっぱり使いまして、そういった面にかかる経費の節減は相当に図っております。ために、地方の局等におきましては新設民放局の新鋭な機械に比べますとかなり劣りを見せて、これが端的に画面にもあらわれておりまして、非常なやっぱり不満を聴視者の方々からいただいておるような状況でございます。これはむしろいまの減価償却の方式変更よりもはるかに経営のいわゆる値上げ回避の措置にはなっておるわけでございます。  今後のそれは、できるだけやはり正常に更改すべきものは更改していくことが好ましいのでございまして、非常措置をとることによりまして、将来、これが非常な壁にぶつかって経営の禍根になるようなことは避けなきゃならないのではないか、かように考えております。
  324. 山中郁子

    ○山中郁子君 経理問題については、ずっと私は指摘してまいりましたように、やはりありのままの姿をありのままにわかるように提示をして、そして支持を得る、その支持を基盤にして値上げが実行されるということにならなければ、そこができてないと値上げされたら今度不払いがふえるだけですよということなんですよ、私が申し上げたいのは、結局。それは信頼関係によって成り立って、国民の支持によって成り立つんだから、勢いそうなるわけです。そのための努力を、たとえば経理の問題、予算の問題についても図るべきであるし、幾つかかなりな程度にその点については不親切であるし官僚的であるし、マンネリなやり方をしていて、何ら意欲的にそういうことから脱皮を図っていくという点が見受けられないということは私は大変遺憾に思います。そういう点についての一層の改善を、姿勢を含めて、求めておきたいと思います。  次に、番組内容の問題についてですが、具体的に一つだけただしていきたいと思います。それはローカル放送の問題です。  これはNHK自身もローカル放送の充実を図るということについては盛んに言われておりますけれども、いま具体的にはどういうふうな観点、どういうふうな施策でもって番組中身にローカル放送の充実が反映されているのかということについて総括的に初めにお尋ねをいたします。
  325. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 昨年以来、NHKの五十一年度の番組の重点的なテーマとしてローカル番組はどうあるべきかということで、実は、われわれ各地方本部に参りまして地方本部の本部長以下関係者と逐次協議を進めてまいりました。その結論として、全体のローカル時間量としてはともかくとして、編成的な内容の点でもう少し知恵が出せるんではないかということで、その結論といたしまして、散在しているローカル時間をある時間に集中編成する、そういうことによって番組中身も濃くなる、それはあわせて地方のローカルの聴視者のサービスにつながるんではないか、そういう観点からいろいろ編成的な工夫をいたしました。  具体的には、総合テレビにおきまして午後六時四十分から七時までの時間にローカル時間帯を設けることにいたしました。ただ、局々の事情によりまして六時四十五分からでもよろしいし、その局の事情によって六時四十分からでもよろしいという両立ての編成にいたしました。それから午後九時の前に、現在、昨年度は五分間ローカルニュースを編成しておりましたが、その時間ももう五分編成できるところは編成し得るように、八時五十分から九時まで十分間ローカルニュースが編成できるような編成上の工夫をいたしました。そして、その具体的な中身につきましては、これはもう全く東京ではコントロールしない、それぞれの地方の本部長ないしは地方の局長のその地域の方々にどういう形での演出なり内容なりが効果的かということを自主的に判断してもらって編成することにいたしました。  四月発足以来、あるところでは「ニュースセンター9時」のやや小型版のような演出をしているところもございますし、あるところではかなりストレートなニュースが出るというような形のところもございますし、いろいろそれぞれの地域での工夫がこらされております。東京では「6・40」ということでごらんいただけたかとも思いますけれども、放送記者がキャスターになって放送するというような形の時間が誕生したわけでございます。
  326. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、NHK自身もそう言われているし、基本問題調査会でもかなりそういうふうに指摘をされていますけれども、ローカル放送の充実ということがやはりかなり重要な、まあ使命というのはオーバーな言い方ですけれども、位置づけがされているというふうに思います。それは私は至当だと思います。そういうようにして出されていくローカルニュースが、それはいろいろ少しずつ充実したり少しずつふやしているということはあるでしょう。だけれども、本当に求められているようなウエートをもって取り組まれているかどうかということについては、かなりやっぱり不十分でまだまだ及んでいないというふうに言わざるを得ないというふうに思うんです。  たとえばいま御説明がありましたいわゆるプレセブンといっている番組ですね、あれなんかもかなり好評だという声も聞きますけれども、そのかわりに、実際に番組の編成いろいろ細かいことがあってなかなかわかりにくい面もあるんですけれども、今度のローカル放送の、いま言われた、そのNHKに言わせれば充実したというやり方の結果、十二時のローカルニュースから午後の時間に今度ローカルニュースの時間がなくなる、つまり寄せ集めるということになりまして、単に細かい時間を集めた形になるというのじゃないかというふうな、たとえばのね、疑問があるわけです。そうすると、その間にそのローカルでもって事件が起こったり何か地域の人たちに伝えるべきニュースがあった場合には一体どういうふうに扱われるのかということで、時間を集めて少し中身は長くして充実はさせたということはあったとしても、片方でずっと長い時間帯にローカルニュースが入らなくなるとかというふうな、そういうことが出てきているのじゃないかというふうに思うのですけれども、そうしたことはありませんか。つまり時間帯が長時間にわたってローカル番組が入らなくなってしまう、寄せ集めてきたために、そういう事態が起こっているというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  327. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 先生指摘の点が一番この編成をいたします決心をいたしますときの問題点でございました。  ただし、やはりローカルの時間帯を集中することによってそれまでの間サービスしておった時間の中身が薄くなるということではこれまたぐあいが悪いのではないか。しかし、集めました時間帯が多くニュースの時間を集めたわけでございますので、そのニュースにつきましては、事が起これば直ちにその局が、その連中のニュースが抜けて編成できるように、たとえば具体的に申し上げますと、午前八時三十七分から八時四十分、午後三時三分から三時五分、そういう従来放送しておりました時間帯のところをローカルが適宜抜けるように処置して編成的な措置をしておりますが、具体的な事件が起こったということであれば、いま申し上げました時間帯に、その局の責任でその時間を抜きましてニュースが出せるというふうに編成的な工夫もあわせて考えておると、こういう次第でございます。
  328. 山中郁子

    ○山中郁子君 それはさらに全体的に充実させるという方向でぜひとも柔軟に対応するということも含めて進めていただきたいというふうに思います。そしてそれは当然御異存のないところだというふうに思います。  もう一つローカル問題で伺いたいことは、首都圏にいわゆる県域のローカル放送がないわけですよね、県域の。その点については今後の問題として何らかの方策をお持ちですか。当然、要求としてはあるわけですけれどもね。
  329. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) いま先生指摘のいわゆる大電力の周辺局といたしましては、関西並びに中部とあるわけですけれども、これはすでに県域のUの免許が出ましたので、残るところは関東六県ということでございますが、これもこの三年間の中期構想の中で一部着手するという方向で検討を始めております。
  330. 山中郁子

    ○山中郁子君 全国各地に放送会館がたくさんあります。そしてこういうものは放送文化の一つのかなめになるところですよね、地域的に言えば。そういうものがいわゆる地方ローカル番組の作成だとか、あるいは地方文化に何ほどかの貢献をしているのかどうか。貢献はしているはずだと思いますけれども、その放送会館スタジオの利用状況とか、その辺のことをちょっと伺いたいんです。  話に聞くところによりますと、NHKの場合だけとは言いませんけれども、一般的に文化の中央集中化というものがいま日本の一つの大きな特徴になってきてます。ですから、放送文化だけではなくて、文学にしても音楽にしてもとにかく中央に出てこなければだめだというものになって、NHKの職員の方たちも地方へ行けばそこでもって意欲的な積極的な仕事をする場が与えられないというふうな、そういう傾向というものはこれは否定しがたいというふうに思うんですけれども、私はそういう意味NHKだけの問題じゃなくて、基本的に日本の文化の問題がやはり全国ですね、地方的な文化の充実発展というよりもその開花ですね、そういうものの上で一つの大きな役割りを果たすのはNHKの機能でもあるというふうに思っております。そういう観点から地方にたくさんある放送会館なんかの活用状況とか何かについてお尋ねをしたいわけです。
  331. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 大体、県庁所在地局級でスタジオは五十坪級のスタジオが一つでございますので、そのほかにニューススタジオのあるところもございますが、今度「6・40」のローカルアワーが誕生いたしまして非常に活発に使われる状況になっております。  それからまたFMで土曜日にリクエストアワーという時間がございまして、これはスタジオに聴視者をお招きしてレコード鑑賞会のような形でそれを放送するというようなことをやっている局がかなりたくさんございまして、これが市民とNHKとを結びつけますいい場になっているようなわけでございますので、御心配いただいて恐縮でございますけれども、かなりそういう意味での利用度は高いというふうにわれわれは判断しておるわけですけれども、なお一層御指摘の点にこたえる努力は続けなければならないというふうに思っております。
  332. 山中郁子

    ○山中郁子君 地方番組と全中番組の経費ですね、これなんかについても私はローカル番組の充実という点でのしかるべき方策がとられてしかるべきだと思いますけれども、その点については、具体的に比較をして、至当な番組についての予算書を長くいろいろ繰って計算していけば出るという面もあるんですけれども、比較を伺いたいと思います。
  333. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) まあローカル番組と申しますのは、主に情報提供の番組が多うございますので、そういう形で東京で出しております全中番組との比較というのはなかなか算術的にはむずかしいかと思うんでございますけれども、たとえば朝のテレビの七時二十分から七時三十五分までやっておりますあのローカルアワーでございますが、これは大体県庁所在地局級のところで、この一週間のうち県域をサービスにいたします場合と、それからその地方本部所管の地域に管中という形で放送いたします部分と二通りあるわけでございますけれども、県単独のローカルという場合には大体一本当たり六万五千円、もちろん直接費でございますが、六万五千円というのが平均単価でございまして、そして管中といって広い広域に流します場合が十一万円というような基準になっております。これに見合います東京で、東京は「テレビロータリー」という形で朝七時二十分のところに放送しているわけでございますが、これはローカルではございますけれども、東京の場合でございますので関東六県もカバーするというような意味合いもございますので、算術的にこれと比較するのはあるいは不適当かとも思いますけれども、この東京の「テレビロータリー」の場合は大体一本三十四万円くらいの割合になっております。
  334. 山中郁子

    ○山中郁子君 県域と管中でもって六万五千円と十一万円というお話でしたね。これはやっぱりローカル番組の方がずいぶん安上がりにできるんだなという印象になりますけれども、それはやっぱり合理的な理由があってこれだけの違いができるわけですか、ほぼ半分——半分までいかないですけれどもね。
  335. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) まあ県域のローカルとそれを広域に出すという場合の中身と申しますか、そういうものが御指摘のように約半分ほどの中身の違いがあるのかというふうに御質問受けますと、必ずしも適当な答えにはならないかもしれませんけれども、広域に出すということによる取材の広域化とか、そういうような意味でやはり県域よりか広域の方が直接費がかかるというふうに判断して、査定と申しますかそういう値を一応つけたと、こういうことで余り具体的にどうということになりますといろいろまた問題があろうかとも思いますけれども……。
  336. 山中郁子

    ○山中郁子君 それは多少の取材費の違いなんというのはもちろんあることだというふうに思いますけれども、そういう点でのローカル番組の充実ということを財政面からも支えるという観点は、それはやっぱりどうしても必要だというふうに思うんです。その点を申し上げておきたかったわけです。  最後に、出演者や職員の待遇の問題について、三点ばかり、時間が余りなくなりましたので簡単に入れていきたいと思います。  まず初めにNHKで働いておられる嘱託の方たちの問題なんです。嘱託の人たちはどのくらいいてどういう待遇、基本的な待遇で結構ですけれども、それを伺った上で、幾つかの点について質問をしたいというふうに思います、労働条件です、いわゆる。
  337. 中塚昌胤

    参考人(中塚昌胤君) NHKに働いております嘱託は全国で約百名でございます。その中の大体の区分けを申し上げますと、国際放送等に従事しております語学の専門要員、それから協会を定年退職いたしました者の中で専門的な能力あるいは特殊技能、そういうものを持った方でどうしても協会で引き続き仕事をしてもらいたい、そういう方、それからそのほかに、これは地方にいるわけでございますけれども、テレビのメーキャップとかあるいはかつらとか、そういう特殊技能あるいは冷暖房の空調の特殊技能を持ったそういう方、それから在職中に死亡いたしました職員の未亡人、そういう方を嘱託で雇用している、そういう仕分けでございます。  で、労働条件でございますが、賃金は本人の専門能力あるいは技能等によって、こういう百名程度の方でございますので、個別に決定いたしております。それから基準外賃金でございますとか、あるいはボーナスでございますとか、そういうものについての支給条件は職員と同様にいたしております。
  338. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、嘱託というのが、いま御説明がありましたように、それなりのそれぞれ理由があってそういう雇用形態になっているということがあると思いますけれども、その雇用形態自身の是非についてはいまは触れません。  問題は、一つは、具体的に嘱託の立場にある方から、定年の問題、退職勧告の問題だとか、あるいは退職金がないというふうな問題だとかいうことで私もいろいろと相談も受けたりなんかした経験がありますので、いまここで申し上げたわけですけれども、そういういろいろさまざまな理由があって嘱託という形で働いておられる方が普通の職員の方たちと大きく見て差別を受けるようなことがあってはならないというふうに私は思います。それで機械的な定年の押しつけだとか、あるいは退職金も支給されていないという現状も考えて、嘱託という立場にある人はやはり身分上弱い立場にいるわけですから、そういう方たちが生活権が脅かされるような処遇をNHKから受けることがないように、それは公共放送ということ、一般の企業の雇用の問題というだけでなくて、実際にNHKの企業の性格からいいまして、やはりその点はより一層万全でなくてはならないというふうに考えておりますけれども、その点についてのお考えを伺いたいと思います。
  339. 中塚昌胤

    参考人(中塚昌胤君) いま御指摘がございましたように、職員との関係で、われわれとしてもできるだけその待遇の改善については努力してまいりたい、このように思っております。
  340. 山中郁子

    ○山中郁子君 次には、出演者に対する待遇の問題なんです。そして、これはいままでも——私はここで取り上げたことはないんですけれども、衆議院でも取り上げられていますし、日芸労の労働組合の要求の問題もありますししますけれども、私はやはりNHKが今回の予算値上げの中の一つの理由としても、民放に比べて出演者に対する報酬が大変少ないと、何とか改善したいというふうなことも言われておりました。  で、初めに、出演料ですね、一回の出演料の基本料みたいなものですね、そういう点についての基準を、ランクがあると思いますけれども、大変細かくなくて結構ですから、大まかなところをお示しいただきたいと思います。
  341. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 五十年度の基準といたしましては、専門家としての最低の出演料はラジオが三十分六千円でございまして、テレビが三十分七千円でございます。それを五十一年度においてそれぞれ千円ずつ最低の料金を上げたい、こういうふうに考えております。  それで五十年度のランクといたしましては、大体、ラジオが最低六千円から最高が四万円、それからテレビが最低七千円から最高が五万円、三十分でございますけれども、そういうような基準になっておりますのを、もう少し幅を広げたいというふうに考えておるわけでございますけれども、ただ、いま現在話し合っております外部の出演者の方々とは、五十一年度の予算が国会で承認をいただいたらということで話し合いを進めておる、こういう次第でございます。
  342. 山中郁子

    ○山中郁子君 この予算説明NHKが見えられたときに、野村専務理事だと思いますけれども、出演料の問題に関して、現状は民放の半分ぐらいだ、したがって今後三年間に三割ずつ上げて、いま現在の——三年後になるけれども、いま現在の、三年おくれで民放の水準並みにしたいというふうに言われていたのですけれども、そういうふうになさる計一画ですか。
  343. 野村忠夫

    参考人(野村忠夫君) 私どもはこの予算を編成する前に基本問題調査会というのをつくりまして、基本問題調査会には井上ひさしさんというシナリオライター・作家、あるいは森繁さんという高名な出演者がいらっしゃいます、これらの方々の御意見は、民放と比較して、先ほど先生がおっしゃられたような非常に大きな格差がある。私はそういう御意見を十分この予算の中に組み入れて、しかし一挙に五十一年度から民放並みというわけにはいかぬということで、この三年間に、井上ひさしさんの発言によりますと三分の一ぐらいだという方もありますし、それぞれの出演者の方方によっていろいろな格差がございます、そういったものを平均的に見て、できるだけそれに近い努力を払いたいという御説明を申し上げたわけでございます。
  344. 山中郁子

    ○山中郁子君 説明はそういうふうに、だから伺ったんですよ。そういうふうになさるんですかということなんです。
  345. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) そういう計画を現在立てております。
  346. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、第一年度、五十一年度の分としては三〇%というふうに計画を立てていらっしゃるというふうに理解してよろしいですね。
  347. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 具体的な点になりますと、いまお話し合いを進めておりますので、現実問題といたしますとややその点は不分明な点があるんでございますけれども、計画としてはそういうふうに努力したいというふうに思っております。
  348. 山中郁子

    ○山中郁子君 日芸労の場合は妥結しましたでしょう、賃金が、賃金闘争で。それで三〇%の引き上げが保証されたわけですか。
  349. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 日芸労の場合は、これは一般の方といろいろと契約の形態等も違うもんですから、そういうマクロ的な形での数字が当てはまりかねるわけなんでございますけれども、現状では、本年度お話し合いをいたしまして、大体、ラジオを最低七千円にし、テレビを最低八千円にするということ、それから契約料につきまして技能に応じて改善する、それから技能奨励金、これを一律三万円増額して十二万円にするということでお話し合いをいたしました。日芸労所属の方につきましては、五十一年度の全体の平均のアップ額は十六万一千七百六十二円ということで、前年度に比較いたしまして一三・四%のアップ、こういうことでございます。
  350. 山中郁子

    ○山中郁子君 結局、三〇%のアップというふうにはなっていないわけですよね。私はそこのところはやはり問題だというふうに思います。  それで、先ほどこの出演料が民放に比べてうんと安いというランクをお示しになりましたけれども、この日芸労の方たちのランクを見ますと、全部やっぱり最低なんですよね、ほとんど。個別にずっと資料をいただきましたけれども、六千円とか七千円とか六千五百円とか。これはやっぱり先ほどNHKがよそに比べても非常に低いというふうに言われているランクの中でも最低ランクなんですわ、ほとんどね。この辺のところは私は重要な問題があるし、ここのところこそ、初めにそちらがお考えになっていらした三年間で民放並みにということが、それが一番いいというふうにも思えませんけれども、つまりもっと問題は根の深いところにあると思いますけれども、少なくともそこのところでの解決、つまり三〇%のアップは実現しなければならないことではないかというふうに思います。  それで日芸労の方たちの年齢構成だとか、それから長いことNHKにこういうふうに働いてきたというそういう年数などを全部トータルしますと、平均年齢がたとえば五十歳になるし、勤続年数というのですか、普通の企業で言えばいわゆる勤続年数ですね、これがもう平均で二十一年になるというんです。長い間本当にNHKの中で下積みでもって働いていらして、NHK放送を支えてきたそういう人々が、今回の場合でも、やはり報われないというふうな扱いになっているということは、私は全体の出演料の問題とのバランスから言ってもやはり重要な点ではないかというふうに思いますが、この点はいかがでしょう。
  351. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 日芸労の方々とは現在誠意を持ってお話し合いをしておるわけですけれども、回数出演契約者という契約の形態がいろいろと変遷をいたしておりまして、その都度その契約の形態でのピリオドを打っておりますので、現在、われわれが回数出演契約としてお話し合いをしておりますのは昭和三十七年四月一日以降ということでございますので、その点はひとつ先生にも御理解いただきたいと思うのでございますが、なお、いまそういう処遇の問題について日芸労とお話し合いを進めているということで、われわれも誠意を持ってこれに当たりたいということでございます。
  352. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ目安としてはたとえば三〇%年度ごとにアップしていってということについては、誠意を持って実現を図っていただくと、こういうことで理解をいたしまして進みますけれども、それではまずいですか。
  353. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 三〇%という数字につきましては、先ほど申し上げましたように、具体的なケースに当てはめます場合に、全体の予算のマクロ的な数字でございますので、それをそのまま適用するということをお約束するのはなかなか困難かと思いますので、ただ、いま申し上げましたような形で誠意を持つということについてはひとつ御理解いただきたいというふうに思います。
  354. 山中郁子

    ○山中郁子君 目安、指標としてというふうに申し上げておりますので、そのように御理解いただきたいと思います。  じゃ、この問題の一番最後ですけれども、一般の職員の給与の問題、賃金の問題について私はちょっと一つだけ触れたいんです。  これは賃金問題、NHKの賃金体系がどうなっているか、労働協約がどうなっているか、そのことについて労働組合がどういう意見を持っていて、どういうふうに問題がいまあって解決がされているのか、されようとしているのかというふうなことについては全部いま横に置きます。  私は、NHKに難関を突破して入ってこられる方は、みんなそれなりの能力も持ち、仕事に対する意欲も持ち働いていらっしゃる。そういう方たちが長年働いている期間の中にだんだんと結局格差が出てくる。これは昇任昇格の問題ですね。そういうことで実に複雑な賃金の形態があるということも存じておりますけれども、その細かい点に入る余裕はありませんが、基本的にそういう体系のもとで同期に入った人が、ごく例外的な小さな格差ならともかくとして、年間三十万とか四十万とか五十万に上るような格差が生まれるようなあり方は、私はあってはならないというふうに思います。  で、これは私も長いこと電電公社で働いて、普通にちゃんと人並み以上に働いてきたつもりですけれども、共産党員であるということでもってかなり露骨な差別を受けまして、長い間それについて怒ってきたわけですけれども、そうした思想差別であるというふうなことに限定はいたしませんが、私はNHKのいまの職員の給与の実態がそういうふうに不合理な理解できない格差が生じてきているということは、それがあるということは言わざるを得ないと思います。で働く者にとっていわれのない、しかも賃金の差別をされるぐらいこんないやな頭にくることはないのですよね。そういうことがNHKであってはならないというふうに思いますけれども、その点についての見解をお伺いしたいと思います。
  355. 中塚昌胤

    参考人(中塚昌胤君) この職員の賃金につきましては、高校卒業あるいは大学卒業、それの学歴別の初任給からスタートいたしまして、本人の職務遂行能力それと勤続、その二つを要素といたしまして、昇給それから昇進、これを実施しておるわけでございまして、その間に当然差が出てくるということは、これはもう当然でございます。いわれなき差別というのは全くございません。しかし、大学を卒業いたしまして定年までの間に、管理職にならないで定年になられる方、そういう方は過去にもございますし、現在でもございます。それはあくまで本人の能力ということでやっておりますので、そういう特別な意図を持った差別というのは全くございません。
  356. 山中郁子

    ○山中郁子君 まあ、そういうふうに言われます。で、私は一つだけ事例を挙げます。具体的にどの管理者が言ったということは私はあえてここでは言いません。  だけれども、考課の問題だ、本人の能力の考課の問題だと。私はその考課自体、考課制度自体についても意見は持っております。しかし、それとは別に、ある職員に対して、その仕事ができるかどうかが考課の対象ではない、仕事上、協会の命令に忠実に服従するかどうかが問題であると、こういうことを管理者が言っているのですよ、その本人に対して。私は、ここにあらわれてきているその不合理な不正義な根源ですね、格差を生み出す根源、こういうものは絶対にあってはならないというふうに思います。だけれども、現実にこれはあるんです。いま私はそれを具体的な事例として知っています。ですから、そういうことについては絶対にこういうことはあらしめないということについての、最低、この点についての会長のお答えをいただきたいと思います。  そして、もうこれが最後になりますから、私が重ねて先ほど来ずっと指摘をしてきております私の言わんとしたところの筋はおわかりいただけたと思います。で、そのことについてくれぐれも申し上げますけれども、もっともです、もっともですとずいぶんたくさんのことについて御同意をいただきました。そして具体的なお約束もいただきました。このことについて、後になって、やっぱりあれはNHK予算を通すために言っていたんだということのないように、報道の中立、公正、不偏不党を守るということを原点にいたしまして、やはり私たち国民の要求にこたえる民主主義を支える上での報道機能というものを守り発展させていくという、そういう立場に立っての今後の事業運営姿勢を重ねて決意のほどを伺いたいと思います。  以上をもちまして、私の質問を終わります。
  357. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 待遇の問題につきまして、御指摘のような、能力のあるなしではなしに、上司に対して忠実なのかどうかが、これは給与に対するいわゆる基本的考え方だと……
  358. 山中郁子

    ○山中郁子君 上司じゃない、協会です。
  359. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) そういったそれは私は理解できません。やっぱり能力主義であるべきだと思います。協会としてはそういったことを人事方針の根幹に置いておりますので、ただいまある管理者がそんなことを言ったと、こういうように仰せがありましたですけれども、これは非常な間違いでございます。そういうことがあれば是正をしてまいりたいと思います。  その他、この御審議の過程におきまして幾多貴重な御意見を賜りました。相当な部分について私は同意をいたしまして、そのように検討をします、あるいはそういたします、こういう答えをいたしましたけれども、これはこの場限りのものでは決してございません。私は厳粛なこの逓信委員会審議そのものは私どもが勉強するいわゆる修練場と心得ておるわけでございまして、決して言いっ放し、聞き流し、こういった不心得な気持ちは毛頭持っておりませんので、私どもは、誠意を持って、検討をお約束いたしました点については、こたえてまいりたいと思いますので、今後のいわゆる私どもの行動について十分見張っておいていただきたいと思います。
  360. 森勝治

    委員長森勝治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  361. 森勝治

    委員長森勝治君) 速記をつけてください。午後七時再開ということにしまして休憩をいたします。    午後六時二十三分休憩      —————・—————    午後七時七分開会
  362. 森勝治

    委員長森勝治君) 委員会を再開し、質疑を続行いたします。
  363. 木島則夫

    ○木島則夫君 私は、最初に、先ほどから当委員会で問題になっております一つ、NHK公共性、中立性という問題から触れてみたいと思うんです。  公共性という言葉ほどあいまいなものはないと思う。現在のように価値が多様化して、ことに政治が複雑混迷の度合いを増せば増すほど公共性に絡まる問題が起こってくるわけです。与党からしますと、どうもNHKニュースそのほか野党的な立場で問題を扱い過ぎるとか、野党からしますと、体制べったりのものが多過ぎるといったぐあいに、政治、経済、社会が複雑になればなるほど、この種の批判というものが私は増加をしてくるだろうと思います。これは当然だろうと思います。ましてや受信料値上げという環境があれば、これはもっともっと複雑な様相を呈してくるだろうと思うんです。NHKの側からしますと、一方から言われる声が偏向であり、一方から言われることが、これこそ国民の声だというような訴えられ方の格差が多くなればなるほど、またNHKとしてもきっとお悩みだろうと思います。  加えて、さっきから言っているように、価値の多様化が進むにつれましていろんな要望、言い分、これがNHKに集中をしてくる。で、私は国民立場で言う表現国民立場でという表現も大変あいまいもことしているし、公共的、公共性という言葉もこれもあいまいもことしている。これを私はどうのこうの言っているんじゃない。むしろこういうあいまいもことしたものがあった方がいい、NHKには。で、この委員会でもそれぞれの立場NHKへの要望が述べられている発言も、みんなその国民立場でという表現の上に立ってなされているわけですね。ですから、このごろはNHKも一ころと違ってずいぶん体が大きくなった。したがって、風にそよぐアシというような表現は不適切だとは思いますけれど、私はなかなか大変な状況にNHKは置かれていると思います。   〔委員長退席、理事茜ケ久保重光君着席〕  こういう中で私が一番危惧をするそのことは、公共性、公共性、中立性という言葉が余りにも頻繁にNHKに浴びせかけられ、またそれをNHKが意識をしてもらわなきゃ困るんですけれど、過剰にそれを受けとめることからくる私は、何というか、NHKの萎縮、からに閉じこもる、平均点主義番組づくりにそれがつながっていく、このことの危惧を私は一番いま持っているんです。私も体験的に言うとNHKにいたことがございます。そういう古い経験をもとにしておりましても、こういうふうに言われ出すと、さわらぬ神にたたりなしと余り問題を起こさない方がいいじゃないかというような自主規制、自己規制が始まりまして、それが外部から見ると何となく生気のない型にはまったパターン化した番組づくりにつながっていく。私はそのことを一番いま心配をしているんですけれど、どうでしょうか。これはやはり概括的な問題ですから、会長にお答えをいただきましょうか。私の危惧というものをやはり会長自身NHKの方たちもお持ちになっているか、どうでしょうか。
  364. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) お説のとおり、公共性の実態なるものはなかなかずばりこれだとは決めかねる問題でございます。また、中正の道とは何か、これも非常に直線的にいってこうだ言うこともなかなか言いかねると思います。また、国民立場からいっても、国民にもいろいろな主義、主張もございますし、国民立場ということも非常に端的にこうだというように単一に割り切れないものがあると思います。そういうところに公共性を貫き、中正の道を歩んでいくということは非常に悩みの多いことは御指摘のとおりでございます。そのためにいわゆる左せんか右せんか、あるいは中正の道がどうなのか、こういった面でNHKが非常に士気を阻喪するようなことがあってはならないと思います。漠然とながら、公共性は、国民大衆に対してやはり伝えるべきものは伝え、またその欲せられるところはこれにこたえていくということであろうと思いますので、漠然とながらこれはやはりそういった面で公共性への奉仕はやっていかなければならないと思いますし、   〔理事茜ケ久保重光君退席、委員長着席〕 中正の道も非常にむずかしいですけれども、これを模索しつつ、やっぱりそういった放送に徹していかなければならないと思いますが、現在の実情はどう言ったら——偏向だと言われる場合もあります。相反する両方から言われるから中正の道を歩んでおると、安易にそうも考えられません。  そういうことで、これは一に不断の努力をしなければならないと思うわけでございますけれども、私はやはり漠然とした観念ながら公共性を貫く努力はいたしてまいらなければなりませんし、また国民の声ということも、これはいろんな立場存在ありまして、相反する声もありますけれども、その両者を取り上げることによって、国民の声をやっぱり取り上げたということにもなろうかと思います。まあ放送法も、意見が分かれておる問題は、それを公平に両方を紹介すると、取り上げて放送すべきだということが言われております。そのことはいかにも放送としてはなまぬるい結果になるのじゃないかという危惧ももちろんございます。もっと勇気を持って、初心に向かって、批判はありましてもそういった道を貫くことも一つの方法だと思いますけれども、やはり放送法の要請は、いろんな面を考慮した上で最大公約数的にこうありたいということでありましょうし、そのことが非常になまぬるいからいけないとも断定できないと思いますので、NHKといたしましては、そのようなつもりで運営をいたしておりますし、これは会長であります私個人意見ではなく、NHK職員すべてそういうような面で悩みを持ちながらも勇気を持って仕事に取り組んでおると、こういうのが現実ではないかと思います。
  365. 木島則夫

    ○木島則夫君 政治の問題について言いますと、NHK放送というものが自民党にとっても気に入らない、また野党にとっても気に入らないという場合だってあり得るわけです。気に入らないことが、いつも一方に偏っていることが問題なんです、実は。さっき私が申し上げたように、一番恐れていることは、NHKが問題を起こさないように起こさないように、どっからも問題でつっつかれないようにつっつかれないようにする余り、いつしか生気を失っていって、つまり自己規制をしてしまう。本当におもしろみのない、まあ六十点か七十点の平均主義番組というものが生まれてくる。そのことへの脱皮をNHKがどうやってこれからやっていくかというのが、私はきょうの一番大きな問題だと思う。で、いまそのことを会長もずばりおっしゃったと思うんです。  そういう例として適切かどうか、大分前のことですから私も記憶が定かではございませんという前提で申し上げたいんですけれど、あの安保の問題が騒然としているときに、私もよく覚えているんです。それこそ国会を取り巻くデモが騒然たる状況だったわけですね。で、その中で、その最中にNHK放送が何をやっていたかというと、本当に良識的な先生方と言われる評論家の方々がスタジオにお集まりになって、民主主義原則は何かということを、それこそいわゆる本当に春風駘蕩というか、何とか迫らざる状況の中で悠然とおやりになっていた。それをある人は、さすがにNHKは物に動じないと言った。そういう見方も確かにあるでしょう。しかし私は、そうじゃない。それはやっぱり逃げだと思う、私は。そうじゃなくって、生々しければ生々しい問題をもっともっと違った角度で提起をしていく中で、問題の本質なり問題のありようというものを国民皆さんに私は提起をすべきではなかったかと思いますね。果たせるかな、外部からじゃんじゃん電話がかかってきた。きっと覚えていらっしゃると思う。何やっているんだ、いまごろあんなことをやってと言う。つまり、私が指摘したいことは、そういうふうな政治的な、国論を二分するような、また非常に複雑な社会、政治問題が起こると、いま会長がはしなくもおっしゃったように、非常に悩んで問題を起こすよりはということで、事なかれ主義に結果的に終始してしまう、そのことなんですね。それをどうやってNHKが脱皮するかということが、私はここで多く語られなければいけない問題だということで、まあこれから少し比論を申し上げたいと思う。  何と言いましょうかね、この間ストライキ、いわゆるゼネストが行われたときにも、私は放送を非常に注目して見ていた。そうしたらば、これも従来からストというと決まり切ったことしかしない。がらがらになった駅のホームを映している。それから、今度のストライキについてあなたはどうお思いですかと言う。答えを出す。その答えも賛否必ず仲よく二人ずつ、あるいは一人ずつ出す。そして、ストはいまどうなっております、車の発車状況はどうでございます、こういうことを言って終わる。まあこれも私は悪いとは言わないけれど、どうかなと。どうかなあと思うのは、その前後の新聞のアンケートによると、大多数の人たちが、このストライキは大迷惑だというふうに答えている。そういう実態、世論というものがある中で、いつでも足して二で割って、事なかれの主義をとっているNHKのそういう行き方というものは、私は結果的に国民から見捨てられる放送につながっていくんではないだろうか。その時点時点で、ストが迷惑なら迷惑、もう一つ次の段階で、スト権を付与するならば付与するという、そういう論調を鋭く出していって、それを全体の立場、長期の視野の中でいろいろ計算をして見るとバランスがとれているというようにしないと、NHKはおもしろくも、くそもないのだと、何だ、見たって、言っていることはいつものと同じ、今度のスト、そのストの扱い方を見ても、去年のスト、またその前のストと同じじゃないかと、見なくたってわかっているんだよというようなNHKに対する批判があることもきっと御承知だろうと思いますね。そういう事なかれ主義というものはどこから生まれるのですかね。
  366. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) やはり事なかれ主義を標榜しているわけでは毛頭ないと思います。ただ一つの番組の中で、やはりいろいろ意見の違うそれを両方とも出すところに非常にそういった印象が強いのではないかと思うのですが、私はNHK放送全体を通じて、やはりあるべき姿を十分に提供しつつ、これによって国民に御判断をいただく、こういうのがやっぱりNHKとしてはいくべき道ではないかと思います。そのためには、ある種の一つの番組については非常にやはり激しい攻撃もあるかもわかりません。他の面では、反対の方面から激しい攻撃があるかもしれぬ、そういうバランスの上に立って、全体のバランスの上で中正の道を歩き、偏向しない方途を見出す道があるのではないかと、かように私は考えております。
  367. 木島則夫

    ○木島則夫君 何か私の少ない、ささやかな体験の中からNHKの体質というものをこう判定をいたしますと、そういうふうな足して二で割る的な行き方をしないとNHKというのは生きていかれない、はっきり申し上げて。ですから、これは永遠に続く問題なんです。  しかしまた、国民のためのNHKというのは、攻める側からしても大変都合のいい言葉なんです。守る側の、ガードをする側のNHKにとっても大変都合のいい言葉なんです。なぜ私がこんなことを言うかというと、やっぱりそこには土俵があって、NHKという土俵にいろんな声が、いろんな注目が、いろんな要望が入ってくる。それは広場なんですね。広場というものはいつも必ずしも丸いとは限らない。時によったら四角になるし、同じ面積の中で三角にもなっていいと私は思う。そういうものが自在に変化をしながら、きちっと国民の広場を確保をしておくというこのことがぼくは国民のためのNHKだと思うんですね。そしてそこには相当の幅がある。時計の振り子じゃないけれども、揺れがあっていいと思う、私は。それはその時代時代、時代相、社会状況、政治状況によってその振りがある程度あって——なきゃだめです、生き物だから。しかし、結局その振り子というものはある一定の枠の中でちゃんと振動をしているという、ここにNHKのビビッドな面がなければならないというぼくは論を持っているんです。こういうものに御批判があったら、後でしていただきたいと思う。  どうもNHKが扱うものは、せっかく鮮度のいい素材がたくさんあっても、それをいつも料理しちゃって生で食べさせてくれない。聴視者の方は、国民の方はたまには本当に取り立ての野菜があったら生でかじりたいんだけれども、かじらしてくれないんだ、それを、NHKは。いつも何だか知らないけれども、お湯で湯がいたり、虫がいちゃいけないからといって、そこでもってボイルをしてしまうから新鮮度がない。確かにおなかはこわしませんよ。そこまでNHKがめんどう見てくれる必要はない。素材が鮮度のいいものがあったら、それをぶつけてくるんです。そしてその並べた鮮度のものを直接食べて、もしそれが口に苦かったり、まずかったらば吐き出せばいい。それがつまりNHKに対する公正なる批判です。おいしかったら食べればいい。私はもう少し、余りこうあっち見たり、こっち見たりして、こう萎縮しちゃってというような、そういう体質をうわっと、ちょっと両手を踏ん張ることによって縄をほどいてもらいたいんですよ。そういうものがないと、国民NHKなんて言えた義理じゃないと思います。私は比較的放送の中にいたものですから、よくわかるという表現はおかしいと思いますけれども、やっぱりわかるんです。わかるなりに、どうもNHK見てると歯がゆいんですよ。私の言ってること間違いですか。  せっかくとれた新しい鮮度のあるニュースの素材、ときには生でがりがり食べたいんです。ところが、御丁寧にも、生でかじって歯を砕くといけません、これはやわらかくいたしましょう、その度合いは六〇%ぐらいがよろしいでしょう。そんなことやってたんじゃだめですよ。いまの時代というものは、やっぱり新鮮なものは新鮮なものとして、どうですか皆さんと言って、そこへ提供するんだ。こんなものは要らないよという人はそれでいいじゃありませんか。それが私は国民NHKだと思います。どうも私の話は多少感覚的なとらえ方をしているけれど、私はNHKというものはそうあってほしいと思いますね。どうでしょう。
  368. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) お気持ちはよくわかります。
  369. 木島則夫

    ○木島則夫君 いや、気持ちだけわかってもだめなんですよ。(笑声)
  370. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) お気持ちはよくわかります。そういうことも一つの行き方であろうと思います。基本的にはそういう行き方が正しいのではないかと思いますけれども、NHKNHKとしての使命を守り通しますためには、NHK側のみがそういう気持ちだけでいったんでは、これは貫徹できないと思います。やはりNHKを見ておられる方々との両面のそれが適当に調和されて初めてNHK公共性と申しますか、中正の道というものがやはり守られるんではないかと思います。NHKが一方的に中正の道を歩もう、公共性に奉仕しよう、こういうそれだけではこれは目的を達成したものではございません。見る方に、批判批判として、これを全体を見てやはり節度ある御批判をいただくところによって、両々相まってNHKNHKとしての面目を発揮できるのではないかと思います。ただ、放送の影響はきわめて強力でございます。新聞等から比べますとはるかに強力でございます。全体の瀞組の中でそういった中正の道をと申しましても、やはり一つの番組がどぎつくある一面をとらえますと、この強烈な印象はなかなか消えません。それで反作用としての他面があってもこれは時間的に違うわけでございますから、最初の印象というものはそう消えるものではございません。そういう意味において非常にむずかしさがございますけれども、基本的には木島先生意見に賛同を示しましても、現実の道はなかなかそんなに簡単にはいかない、こう私は考えます。
  371. 木島則夫

    ○木島則夫君 どっかのコマーシャルにあるように、悪魔のように緻密に、天使のように大胆にというところがもう少しNHKに出てくると、NHKというのは、私はこう生き生きしておもしろくなると思うんですよ。こういう概念的なお話は、ちょっと時間がございませんから、このくらいにいたしますけれど、私が言いたいことは、国民放送とか公共性というものを意識して、大いにそれをバックグラウンドに放送をやっていってもらいたいんだけれど、そのことを意識し過ぎて萎縮性を起こしてもらっては困ると、前向きに展開をできないだろうか。それが、いいですか、不払いをなくし、NHKに対する変な既成概念を取っていく私は一番早くて一番端的な道であるというふうに申し上げておきたい。  さて、政治ニュースとか報道番組の中で、原稿ニュースとして上がってくる場合にはめったにないんですけれど、やっぱりたまにはある視点、ある立場に立ってのニュースと受け取らざるを得ないものがあるんですね。これは私は人間——放送マンといえども神様ではないですから、私は完璧、パーフェクトであるというふうには思いません。しかし、これは本当に慎重にやってもらわなきゃ困る。そしてNHKの職員も、政治それから思想的信条というものはこれはもう全く自由なはずです。しかし、さっきから問題になっているように、自分の思想、政治信条がそのままニュースの選択につながっていったらこれは大変です。これはもう会長もいまそういう意味のこともおっしゃっております。だから、複雑な政治を扱うニュースであればあるほど、そのニュースをろ過する——ろ過という言葉がいいかどうか、厳密な組織機構というものが必要なことはこれはもう放送に携わった者は百も承知のはずですね、こういうことは。  ところで、その現場の担当者の中には、ストレートな政治報告の中などには、ああ、あの人は一つの視点に立ってやっているんじゃないかなと思われるような場合があるんです。ときどきニュースを見てても、民社党の扱いについてかちんとくる場合があります。だからといって困るというようなけちなことはここで言いませんけれど、私はむしろこうした場合でも好意的に受け取っている。たとえば放送記者の諸君は、自民党を、与党を長く担当をしていますと、やっぱり与党的な見方をこれはどうしたってするようになる。だから、視点はどうしても与党の側に立った見方をする。これも真実でしょうね。長い間野党を担当しているということになると、やはり野党的な物の見方をしたり、その論理の進め方をしたくなるというのはこれは人情だろうと思う。むしろこういうものをどうやって放送の現場で、いわゆる中立性、公正なものに戻すかというその転換ですね。そういうものが私は記者教育であり、NHKのリポーター教育であり、アナウンサー教育だと思う。そこに問題点がある。その辺はいまどうやってますか。これは会長さんでなくても、むしろ具体的な問題ですから現場の方で結構でございます。
  372. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 木島先生指摘のように、最近はいわゆる書きニュースのみならず、記者が直接カメラの前に立ってリポートするというような演出形式もふえてまいりましたので、当然そういう点についての配慮というようなことを注意深くしなきゃならないような状況であることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、そういう点についてわれわれ日常の職場におきます訓練もさることながら、中央研修所等に集合しての研修というようなことも年何回かにわたって実施するというような経過を全国的な規模で実施しておる次第でございます。
  373. 木島則夫

    ○木島則夫君 これは放送の現場に立った者でないとわからないと思いますし、えてして犯しやすい誤りの一つなんですけれども、たとえば浅間山荘事件が起こったときに、NHKは即座にそこに中継車を持っていって、あの生々しい事件をわれわれに知らしてくれましたね。その中で、これは私の記憶が間違っていないと思いますけれど、たしか担当記者だったか現場のリポーターだったか忘れましたけれど、赤軍派の人たちが、人たちがと言っていた。しかし、すでに何人か人を殺しているんですから、それは犯人のはずですね。そしてやっぱりそこに電話があったはずです、あれは犯人じゃないかと、どうして赤軍派の人たち、人たちというふうに言うのかというような、小さい問題をとらえると、現場ではのめり込んでいって、本当は犯人と言いたいところなんだけれど、赤軍派が、赤軍派がという言葉で犯人が省略される場合だってあり得る。これは現場の私は特殊性だと思う。しかし、そうだからといってプロは許されない、これは。  いま坂本さんの一般的なコメントがございましたけれど、私はNHKがここで言う公共性、いわゆる中立性というものを意識するなら、そういう過ちというものは本来許さるべきではないと思います。どうもやっぱり事件が多い、お忙しいし、長時間その場に拘束をされる、タッチしなきゃならない、肉体的な疲労もある、物理的な問題もあるということで、人間ですからそうパーフェクトなものを期待はできないとは思いますけれど、ちょっと私はその辺がこのごろ手抜かりではないかと思いますね。私はそういう点ではもうちょっとびしっとやっぱり厳しくそういう教育をやってもらいたいと思いますけれど、さっきのは一般論だ、あのお答えは。そうじゃなくて、もうちょっと具体的の実のあるお答えをいただきたい。
  374. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) その点は一人一人の能力とのつながりも出てくるかと思いますけれども、私が日ごろ申しておりますことは、いま先生がおっしゃったように、われわれはプロなんだと、少なくともプロである以上エクスキューズはない、こういうことでかなり厳しく指示しております。したがいまして、言いわけがましいことは申し上げません。おっしゃるとおり、そういうプロ精神に徹して現場に当たるということでなければならないというふうに考えております。
  375. 木島則夫

    ○木島則夫君 それから、この際ですから、私も言葉を大事にする一人として、これは公共性の問題とは多少外れるかもしれませんけれど、内容があれば言葉はどうでもいいんだという方針ではないかと思いますけれど、大分言葉が乱れていますね、悪いけれど。そういう点は私はやっぱりもっと厳しく考えてもらいたい。報道の内容を重視することはあたりまえです。しかし、それを表現する方法、そういうものも大事にしてもらいたいと思いますけれど、ちょっと私はその辺がこのごろ抜かっているんじゃないかと思うし、内容さえ伝えれば言葉なんかどうでもいいんだということになると、いまの日本語の乱れに拍車をかけていく、公共性からずいぶん私は外れてくると思いますけれど、そういう点の教育、なすっていますか。これはアナウンサーであろうが放送記者であろうが、画面に出て、ラジオの中に入ってしゃべるということになれば、その辺もやっぱりシビアに考えていただきたいんだけれど、どうでしょうか。
  376. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 全くおっしゃるとおりでございます。最近はアナウンサーのほかに、先ほども申し上げましたように記者も出演いたしますし、プロデューサーも出演するというようなケースが多くなりつつあります。これはある意味では画面に精彩を加えるということになるわけですけれども、反面、言葉遣い等について十分でないということも起こり得る危険性もあるわけでございますが、しかし、記者といえどもこれはニュースを書くということで言葉の問題を非常に平素大事にしている人たちでございますし、プロデューサーも同様、放送に従事する以上、言葉というものを大事にするという精神に変わりはございませんので、ただ表現の巧拙等において、あるいはその人、人の能力いかんによって御指摘をいただくようなケースがあるということもそれは否定いたしませんけれども、先ほども申し上げましたようにかなり厳しく指導しておるつもりでございますし、またその用語等のことにつきましても、文研その他においてかなり研究し、それを現場にフィードバックするという努力もいたしておる次第でございます。
  377. 木島則夫

    ○木島則夫君 ところで、そのNHKに登場する方々について私はここで一つ提言をしたい。どうもNHK好みというんでしょうかね、何とか好みがあり過ぎるように思いますね。さっき私は、NHKというものは国民の広場だ、そういうものでなければならないという提言を申し上げたつもりです。NHK放送を大事にする余り、公共性というものを意識する余り、やっぱり大変良識的で、常識的で、余り何というか枠を外れたお話をなさらないような方々を、無意識のうちにかあるいは意識的にか、御選定になっている向きがありますね。どういう人がNHK放送に適していて、どういう方々が適していないかというリストもあるように聞いている。だけど、やっぱりNHKというのは国民の広場なんですよ。多少はNHKが考える枠からはみ出たような方々も登場をして、急見を聞いてもらって、それを判断をするのは国民皆さんじゃないですかね。初めから広場には、どういう帽子をかぶった人は入れないとか、どういう形をした人は入れないというようなことでは広場が泣くんじゃないかと思う。そうしてそういうことをもっとオープンに、勇気を持って、大胆に、さっきの言葉じゃないけれど、おやりになることが、私は聴視料、いわゆる受信料の不払いをある程度解消することにつながるという意見を持っているんです。少うし用心なさり過ぎるんじゃないですか。私は大体知ってますよ。どういう人が適切で、どういう方々がNHKに貢献度があって、どういう方々がぐあいが悪いのか、大体私は聞いている。しかし、やっぱりそれはあくまでNHKの、NHK理解する公共性であって、どっちかというと保守的過ぎる。世の中がどんどんどんどん変わっていって、ずいぶん私はその変わりようというものは激しいと思いますよ。そういう中で、安全第一、この人を出しておけば間違いない、しかし、おもしろみはない、世の中の一番進んだ考え方もそこからは吸収できないし、いろいろ抵抗感のある話もない、あっと驚くような感覚を持った話もそこからは伝わってこないということになると、この広場は私は死んでしまうと思います。そういう枠をもう少しお崩しになる気持ちございませんか。
  378. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) NHKがみずから一つの土俵と申しますか、枠と申しますか、これを定めることは私はよくないと思います。やはり広場は広くして、その中から自然にNHKカラーが出るような、これが好ましいと思います。ただ、一気にそういうことのためにかえって非常に急激に突っ走り過ぎますと、これまた非常に大変なことになるんじゃないかと思います。NHKのこの固定的な一つの観念を持って、出演者にしても、この階層に、やっぱり出てもらう方と出てもらわない方とを区別すべきではないと思います。まあ現実にNHKとしてはそういうようなことをやっておるとは思いません。ただ、そこにもう一つやはり工夫が必要であることは私も認めざるを得ませんので、漸次そういった面については御期待にこたえていかなければならないと、かように考えます。
  379. 木島則夫

    ○木島則夫君 まあここでどういう人がどういう考えを持って適切ではないとか、いいとかということを議論している時間もございませんし、そういう細かい問題は会長に伺う問題ではないと思います。  ただ私は、いままで私が私なりに理解しているNHKのカラーとかNHKの枠というものは、必要以上に何か自衛を講じ過ぎているんだと、安全度をとり過ぎているんだと。四十キロで走れるところを必要以上に三十キロでいつも走っているんだということでは世の中の流れについていけないのと同じなんです。だから、少し枠をいま広げて漸次そういうものをおやりになるという方向は、ぼくは大変いいと思います。そういうことをおやりになると必ず反響がある。反響が生まれてくるところに新しい再生があるのです。反響がなければ再生なんというものはない。そこにいわゆる放送のおもしろみ、ビビッドないわゆる生気が生まれてくるわけですからね。その辺はもう少し基本的な原則としてNHK広場を皆さんに開放なすっていただきたいと思うのですね。  さっき私は、公共放送という言葉は、攻める方にも守る方にも大変都合がいい言葉だというふうに申し上げた。NHKというのはこの言葉を逆手にとって少し出演料を抑え過ぎていませんか。ある著名な野球評論家、野球解説家、この方が民放に出ていたときの出演料とNHKが契約をなすったときの出演料というものは、土地の実勢価格と公示価格以上に違いがある。これはある人の話ですから定かではありませんけれど、こんなに一カ月にいただいていいんですかとおっしゃったけれど、いいえ、それは一年間の契約料だというお話すら伝わってきている。  一体そういうものの査定というか基準というものは、どういう公共放送の基準で決めるのですか。公共放送ですから安くという、公共放送だから出演料は安くていいんですと、そのかわりあなた方は全国あまねくネットワークの中でお顔も出るし、人気も出るでしょう、それが金に換算できないメリットですよという、こういう考え方があったら私は大変官僚的だと思いますね。いまは民放だって全ネットワークを組んでいる。これも一一どなたが幾らもらって、その額が民間放送の一カ月分の出演料だ、だれが具体的にということはこの場では申し上げません。いかがですか。つまり、公共放送というものを都合のいいところでは、悪いけれど、逆手にとり過ぎているのですよ、NHKは。都合の悪いところだと、公共放送ですからそれは御勘弁、できません、できませんと言う。NHKにとって出演者を安く——安くと言うとおかしいですね。安く出演をさせてあげるということは、NHKにとってはいいかもしれないけれど、実際どうなのか。これは坂本専務に伺います。
  380. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 出演料の問題につきましては、どこら辺が適正かどうかということについてはいろいろと御議論のあるところかと思いますけれども、われわれとして決して、公共放送だから不当に安く御出演願いたいなどというような、そんな不遜なことを考えているわけではございませんけれども、かつては薄謝協会というふうに言われた時代もございまして、何とかそういう点についての適正基準を持ちたいということでいま努力をいたしております。ことに、出演者の方々はNHK放送を支えてくださっている方々でございますから、放送へ出て、それであなた方も知名度が上がるのだからいいじゃないかというような、そんな不遜な大それたことを考えているのではさらさらございませんので、できるだけそういう点については適正化を図りたいということで努力いたしまして、五十一年度の予算も御審議いただいていると、こういう次第でございます。
  381. 木島則夫

    ○木島則夫君 公共放送という問題に絡んで、NHKは娯楽番組を拡充強化をすると言いますね。で、日本放送法というか、放送基準には、やっぱりNHKと民放の役割りというものがきちっとそこに、たてまえというか、そういうものがきちっと明記されているはずですね。娯楽番組を拡充するということは決して悪いことではありませんけれど、私なりに勘ぐりますと、やっぱり聴視料、受信料を上げるというときには、娯楽番組みたいなものでサービスをするというのが一番手っ取り早いのですね、本当は。もしそういうことをすることが受信料値上げの代償としていわゆるサービスだというふうに考えられたら、これは困るし、民放とNHKの役割りがきちっと厳然と決まっている、これこそ公共放送の役割りを逸脱することになるのだろうと私は思います。具体的に娯楽番組をどんなふうに強化拡充なさるのか、その具体策を聞かしていただきたい。
  382. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) 私は、放送法のたてまえはNHKと民放の二本立てということで、そしてNHK番組の編成に当たっては、報道、教育、教養、娯楽という部門を調和ある形で編成しなさいというふうに法律に定められております。法の精神も、NHKと民放との両建てということは、適正な競合と申しますか、そういうことでお互いに切瑳琢磨して放送文化の向上を図るべきであるという御趣旨かと思いますので、NHKが娯楽番組に力を入れてはいけないというふうには私自身理解をいたしておりません。NHKも娯楽番組に力を入れるべきだというふうに考えておりますが、ただ、ただいま木島先生の御指摘で、五十一年度は値上げに絡まって娯楽番組を拡充するというふうにおっしゃいましたけれども、具体的なパーセンテージから申しますと、全く娯楽番組を拡充はいたしておりません。大体五十年度並みのパーセンテージでございます。そしてたとえばゴールデンアワーのテレビジョンの八時から九時までの間におきましても、NHK特集というようなことで、第一回目においては「氷雪の春」という、第二回目においては「CIA」というそれぞれのかなり硬派の番組をスペシャル番組として編成しておりますし、格別娯楽番組を拡充するというような手だてをとっているわけではございません。
  383. 木島則夫

    ○木島則夫君 だんだん現実的な話になってまいりますけれど、NHKの職員がたとえばテレビの画面に顔を出す、あるいはラジオに出る、そうすると人気が出てきますね。人気が出ますと、この人気と公共性というものとの両立がなかなかNHKの中ではむずかしい。NHKの枠の中におさまり切れないケースがいままでもずいぶんあったわけですね。一ころはこういう分野の人は、どっちかというと芸能とか司会の分野の人に多かったのだけれど、最近はやはり報道が圧倒的にスポットを浴びる機会が多いので、報道分野にこういうジャンルが移ってきたということが言えるわけですね。  具体的にお名前を出して恐縮でありますけれども、その端的な例が磯村氏だと思うのです。磯村氏に絡むいろいろなうわさがある。これはうわさですから、私はどうのこうの国会のこの場では問題にはいたしません。しかし、御本人のお話を聞いてみると、ずいぶん疲れているということですね。だから、NHKとしてはこういう方を大事にしていただいて、人気というものとNHKの中での公共性、つまり組織の中の人との調和をできるだけNHKがやはり考えてあげて——私はもっとNHKの中からスターというものが出てほしいと思う。金が詰まったり、公共性でかんじがらめ、公共性、公共性、公共性ということを過剰意識すると、悪いけれど、何というか、かちかちの体質になって、そこからは本当に国民が楽しめる愉快なという人たち、番組というものは生まれない、残念ながら。  そういう意味で私は、鈴木健二君なんかが出てきて堂々と外へ行って、余りテレビは見ない方がいいですよと言うような、こういう人がNHKにもっとたくさんいていいと思う。そういう人が自在にNHKという組織の中でも闊歩できながら、しかも公共性というものの中で調和を保っていけるような土壌というものが私はNHKになくなってきたと思うのです。これは時代の変遷ですから、昔はあったから昔に戻しなさいなんということは私は言っていない。言っていないけれど、後で私はこの問題をもう少し敷衍をして、一点にしぼってコンピューターの問題とつなげて伺いますけれど、坂本さんどうですか、私はもっともっと自在濶達なNHK放送マンがいて、その人たちがみんなから非常に愛され、「あっ、あのキャスターが出た」、「あっ、今晩はあの司会者が出た」というふうに——やっぱりNHKの顔ですよ。そういう人たちがもっともっとNHKの中から出てこなければいけない。そういう人が芽生えてくると、NHK公共性というのか、何というのか、そういう重苦しさの中で並立、両立ができないで、何らかの形でもってよそへ行っちゃったり、そういうことがあっちゃ、せっかくの国民のためのNHKが私は損失だと思いますから、その辺はひとつ——文化というものは余饒の土壌からでなければ生まれないと言う。多少緊縮予算を組んで、節約をして、物を大事に使いなさいというさっきからの話の中ではあるいは二律背反的なお話かもしれないけれども、坂本さん、どう思いますか、この辺は。私は今後のNHKの体質、放送の土壌というものを考える上で非常に大事な問題点を含んでいるんで伺いたい。
  384. 坂本朝一

    参考人坂本朝一君) たまたま磯村君の名前が御指摘になりましたけれども、おっしゃるとおりだと思います。「ニュースセンター九時」という時間も聴視者意向調査その他によりまして、NHKニュースが比較的かたいといいますか、もう少しやわらかく、ソフトに、わかりやすく伝達される方法をNHKが開発すべきではないか、これは番組審議会等においても同様の御意見がございまして、われわれ検討いたしました結果、「ニュースセンター九時」という時間の誕生を見たわけでございますが、そのときに磯村君が外信部長でおったわけでございますが、彼のキャリア、彼の見識と申しますか、そういうもので起用すればいいんではないかと思って起用をいたしましたところが、非常に聴視者の皆様方から好感を持って迎えられて今日に至っているわけでございますけれども、彼は本来放送記者でございまして、あの種の仕事に多少戸惑いもあったようでございますし、その後の経過の中でいろいろといわゆるスターというような形になった、そういうことでの煩わしさと申しますか、そういうこともきっと彼のフィーリングの中にはあるんではないか。したがって、疲れているというようなことをあるいは漏らしたのかどうか私は定かにしておりませんけれども、しかし、いわゆる人の足を引っ張るような形でそういう人たちの誕生を阻むというようなことは、これはもう全くわれわれとしては心しなければならないというふうに思っております。第二、第三の磯村君が誕生し、それがまた報道の分野のみならずいろんな分野でNHKマンが育っていくということを私としては祈念している次第でございます。
  385. 木島則夫

    ○木島則夫君 足を引っ張るというのは、直接足を引っ張る人はいないんです、だれも。しかし、要するにスポットが当たって、人気が出て、ああすばらしいキャスターだなというような位置にいればいるほど何となく周りとそぐわない雰囲気がNHKの中にできている、そういうものとの両立をやはりきちっと考えてあげないと、本当のキャスターなり本当のスターというものは育っていきません。そのことを私は申し上げたい。  先へ進みます。で、私が言うことは、さっきから言っていることをここで一まとめにしてみますと、文化というものの創造はきわめて効率の悪いものだと言っていいと思いますね。だから、文化は余饒力のある土壌にしか育たないんです、はっきり申し上げて。放送文化のためといっても経費は限られています。そこで、その限られた経費を有効に使おうとしてこれから伺う番組技術システムが登場をしたり、その前提として番組のパターン化が実施されるわけですね。そうしてその結果は可もなく不可もない七十点番組が生まれてくる、要求される。そうして七十点文化主義というものが生まれてくるんじゃないだろうかと私は持論を持っています。緊縮予算を組み、経費の節約を至上命令としているときに、何か私の話の中には二律背反的なものがあって、おまえの言っていることは矛盾を感じるというような受け取られ方もなきにしもあらずだと思いますけれど、私は文化というものは常にそういった問題を包蔵をしていると思う。放送文化たりといえども例外たり得ないという前提で私はNHKのコンピューターの導入問題を取り上げてみたいと思います。で、前提としまして、私は実はコンピューターとか、そういう電子計算機とかいうものについての専門的な知識は実はございません。したがって、専門用語の部類、あるいはそういった表現においては多少当を得ていないかと思いますけれども、その辺はひとつ適当に御了承をいただきながらお答えを願いたいということを前段で申し上げておきます。  高度成長というものがいろんな意味で問題になっていた。確かに経済的な豊かさというものをもたらしましたけれども、これには付随的に物価高あるいは公害等マイナス面でも大きな問題を提起しているわけです。放送事業も高度成長を反映して急激な拡大をし、設備投資も目をみはるものがあったわけです。NHKも実は例外ではございませんでした。東京・渋谷に豪華壮麗な放送センターを完成させる一方では全国の放送会館の新改築も行っていったわけです。こういった急激な設備投資というものは当然収支のバランスを崩し、四十七年度以降は財政状態がここで問題になっているように急激な悪化を見た。その手当てをどうするか、これがいま当面の問題になっているわけです。すばり伺います。NHKというものは放送事業体NHKは高度成長に悪乗りし過ぎた感じはございませんかしら。NHK国民NHKという立場から私は悪乗りをし過ぎたと思いますけれども、会長、どう思いますか。
  386. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 私は、ニーズにこたえて非常に膨大になってきたこの事実は認めますけれども、いわゆる高度成長の波に不必要に便乗して拡大をしたとは思っておりません。もちろん高度成長のそれは国民所得の、それぞれ国民のふところぐあいをよくいたしました。その限りにおいて放送に対する享受の意欲も非常に強うございました。そういった面で全国津々浦々まで見えるようにする。これがやはり山間僻地においてもテレビセットを置いてこれを享受したい、こういうニーズが急激にふえてきたと思います。そういう面における必要な措置で大きくなったわけでございますので、いわゆる悪便乗をしてことさらに不必要な膨大を来したとは私は考えておりません。
  387. 木島則夫

    ○木島則夫君 NHKの膨張主義というものを批判することはこれは簡単なことですね。これはもうだれにだって批判ができる。しかし、NHKの側からしますと、NHKにも当然長期の展望に立った経営ビジョンというものがあってのことだと私は思います。で、これは私の私見ですから違う見方もあると思いますけれども、NHKの拡大に次ぐ拡大、膨大な設備投資量に対して、NHKでは経営の合理化とか職員の少数精鋭主義、こういった点でこの膨大な過大な投資も吸収できると実はお考えになっていたと思います。そこに登場したのが実はコンピューターであり、経営の合理化のチャンピオン、切り札としてスポットライトを浴びたと、私はこういうふうに理解をしたい。で、コンピューターによる合理化の推進力がおやめになった前田会長でもあるし、また実際の現場の担当者は松浦さんでもあったわけでございましょうか。このコンピューターの導入によりまして、経理システムとか、職員の給与の計算とか、それから職員システム、経理システム、それから——職員システムの段階ではそれほど問題はなかったというふうに聞いておりましたけれども、その受信料事務をすべてコンピューターで処理しようとする事業システムと言うんでしょうか、どういう言葉を使っていいんでしょうか。そういう段階ではいろんな障害が出てきた。——間違っていたら御指摘ください。大都会の人口の変動が非常に激しい。その一々変動をするデータをコンピューターに入れる手間がこれまた大変。手直しをするそのことが大変複雑になっていった。イエスかノーかで結構です。そういう事実はございましたか。
  388. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) いま先生指摘のとおりに、いろいろと都市周辺、あるいは都市を含めまして加入者の数が膨大になってまいっておりますので、そういうことの処理をする、インプットをする手数というものは当初よりもかなり複雑になってきておるのは事実でございます。
  389. 木島則夫

    ○木島則夫君 いまかなり複雑になっていることは事実であると一それがどういう形でどういう点だというような細かいことはいま結構です。営業システムでもいまお話があるようにやっぱり複雑な問題が出てきているということですね。で、これを番組政策という、さっきから私が言っている放送文化というものは、ある程度余饒の土壌の上に花を咲かせるはずの放送文化、つまり創造的な分野にコンピューターを導入する番組技術システムという面になりますと、これは大変な問題が出てくるだろうと私は思う。これは素人の私だって容易に想像がつくことです。  私も多少番組のことは知っているつもりです。番組制作といいましてもこれは多種多様ですね。その業務をコンピューターで処理するためには、一つにはパターン化が必要ですね、パターン化が。それからそれを数値化すること、ネットワーク化が必要なことは当然だと思います。しかし、事放送番組技術システムというものは、世間一般で考えるように、自動車の生産の中にコンピューターを取り入れたり、また電化製品の製造の部門にコピューターを導入するのとは全く私はわけが違うと思う。いずれにしても、これは四十三年の十月から番組技術システムの運用に入ったというふうに聞いておりますけれど、間違いございませんか。
  390. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) 間違いございません。
  391. 木島則夫

    ○木島則夫君 それまでは、何というか、プロデューサーが番組を制作する場合には、たとえばスタジオであるとか、カメラであるとか、録音、録画の手配、これは何というか、人対人と言うんでしょうか、マンツーマン方式でやっていたはずです。謝金伝票、車の送迎伝票を自分で処理をしていた。それが様相を一変したわけだと私は思います。  ここにNHK総合放送文化研究所編の「放送の未来像」という文章の中にこういう部分がございます。NHKとしては将来あるべき姿をこういう言葉の中にきっと描かれていたんだろうと思いますけれど、読んでみます。   一九八〇年代の現在、制作者は日々の番組制作業務に創造力をすりへらすことなく、新しい番組を開発するための高度な創造活動に専心することができ、その結果として生みだされたすばらしい作品の数々が研究者の手によって分析され、日常の番組制作を行なう電子計算機を稼動させている。しかし、その範囲は構成密度の比較的低い番組に限られており、ドラマやドキュメンタリー番組などの制作にあたっては、まだ、プログラミングするだけでは制作過程を統制できず、制作者の手を多くわずらわしている。研究者はそれらの制作者がおのおのの創造力をじゅうぶん生かして、よい番組をつくる時間をじゅうぶん得られるようにするため、一日も早く日常番組の制作・送出過程が自動化できるようにと夢みているのである。  コンピューター導入の最終目的はこの辺にあったということがうかがわれるのですけれど、間違いございませんでしょうか。
  392. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) 技術のサイドからだけのお答えじゃ御満足じゃないかと思いますが、さしあたり私どもからの考え方を申し上がます。  御承知のとおり、NHKでいま番組を制作している本数は相当莫大なものでございまして、一週間に大体二千本近くの番組が制作されております。その番組につきまして、先ほどお話にもありましたように、番組を制作する機材、スタジオあるいはその出演者も含めまして、その間を連絡調整するいわゆる伝票とか電話とかというものが大変に膨大な量になっておりまして、四十三年の当時で考えましても、それに必要な作業伝票、あるいは日程を依頼する依頼伝票、そういうのが百種類ほどございまして、その百種類をそれぞれのプロデューサーなり担当の方が一々自分で記録をして、相手に回して、了解をとってする手配というのは大変繁雑なものになっておりまして、これがだんだんカラーテレビになってまいりまして番組の質がだんだん向上してまいりますと、ますますそういうものの繁雑さが非常に目立ってきまして、番組をつくっているのかそういう手配をしているのかわからない、極端なことを申しますと、そういう段階に入っていくおそれがあります。  そこで、私どもが御指摘のような番組技術システムというものを発足さしたわけですけれども、これは世上よく言われますように、番組中身をコントロールするものではもちろんございませんで、それから工場その他で使っているように、能率を上げて企業生産性を高めるというようなことでもございません。もちろんそういうことも入っておりますけれども、本当のねらいは番組の質的な向上を図ると。そういう煩わしい作業手順に悩まされることなく、本当の番組中身の質的な向上を図りたいというのが番組技術システムの考え方のすべてでございますので、それからいろんな細かい手順その他を割り出してプログラムもできておりますし、恐らくそういうものがなければ現在の番組制作というものはもっと繁雑な手配のために、あるいは押しつぶされてしまうのじゃないかという私は気がいたしております。
  393. 木島則夫

    ○木島則夫君 これは私もよく理解できます。こういうシステムが入る前は、一人一人のディレクターとかプロデューサーという者が出演交渉をする、手持ちの自分があっためている資料を使って、そして向こうと出演交渉をして、それをオープンにしない。ですから、同じ出演者に対してNHKの二十人、三十人の人たちが同じ手数をするという、それをひとつコンピューターのデータに入れれば一気にわかってしまうという意味では、私もコンピューターの威力というものはすばらしいと思っていますね。しかし、問題はそこから後なんです。実は大型の連続ドラマをつくるような場合に、事前に必要な予算とか施設とか、あるいは機材、放送時間、スケジュールなど、こういった資料をコンピューターに記憶をさせておいて、実際に制作をする場合には、末端機械であるディスプレイと言うんですか、うまいことそれを使うと、たちどころに答えが出てくるということですね。そしてそれによって制作スケジュールから、スタジオ、あるいはVTRの割り当て、時間の割り当て——これは私は専門家じゃないから間違っているかもしれない。そういうものを教えてもらえる、つまりお伺いを立てるわけですね。  ただそれだけではなくて、さっき読んだコンピュートピア、つまり未来を想像していたこの構想によると、番組技術システムの一環として番組編成についてのシステム、それから番組予算編成のシステム、さらには資料検索システム、あるいは番組評価についてのシステムを完成させる、コンピューターを軸とした編成、番組制作の青写真を描いていた。そうなると、私はやっぱり限度を超えて、コンピューターが人間を支配するようなことをあえてNHKが計画をしたと言われても仕方がないのではないか、そうじゃないんでしょうか。どうも私はコンピューター万能、当時はコンピューターを見るなら外国なんか行かないでNHKへ行きなさいという言葉がはやっていたくらい、NHKのコンピューターシステムというものはスポットライトを浴びていたことも私は知っている。しかし、ある意味で、生の人間が番組をつくるときには、生の人間の創造力、むだ、思わざるアクシデント、そういうものを総合をすると、このコンピューターできっちりぱちんと枠組みをされてしまう中からは必ずしもいい結果が得られないで、実際の面とコンピューターが描き出した計画との間のそごが出てきたということを私は聞いている。そういうものが現場で大きな問題になっているということも聞いているのですけれど、間違いでしょうか。
  394. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) ただいま御指摘のように、番組制作そのものをコンピューターが支配をするというようなことはもちろん考えてもおりませんし、そういうことはできないことだと私は思います。第一、コンピューターにお伺いを立てて、その中から答えを引っ張り出すということじゃございませんので、番組を制作する方が御自身で、このVTPはいつ使えるかとか、このカメラはどれとどれがあいているかとか、あるいはスタジオはどこが一番いま都合がよろしいかということをコンピューターと相談——相談と言うとおかしいですけれども、設備の数が決まっているものですから、むだにあいているところがあっても困りますし、ある一カ所に集中してもなお困りますので、そういう重複、むだがないような配置はどうすればいいかということをコンピューターがいろいろと持っているメモリーと引き合わせながら答えを出してくれるわけでございまして、管理者側が何か一つ答えをそこへインプットしておいて、ボタンを押せばその命令が返ってくるというものではこれは私はないと思います。そういう意味で、やはり制作者の手足となってこれは十分働いているわけでございまして、これが制作者を逆に縛るような形になるということならば、私らは番組技術システムをつくった意味は全くなくなると思います。
  395. 木島則夫

    ○木島則夫君 私の危惧がただ単なる危惧に終われば大変うれしい。しかし、まあその危惧をもう少し私なりに推し進めて考えますと、こういうシステムというのはえてしてその現場の人たちを管理しやすくなる。つまり、管理する側にとってはこんなに都合のいいものはなくって、管理されてしまう側にとってはこんなに都合の悪いというか圧迫を感じるものはないというようなことになったら大変だという危惧を申し上げているわけです。当然労務問題が起こってきましたね。どこが問題でした。
  396. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) コンピューターの導入並びにいろいろ拡張してきます段階におきまして、逐一これは労働組合ともよく話し合いをしながら進めてまいりました。その意味ではそうそごは来していないと私は思っております。
  397. 木島則夫

    ○木島則夫君 私が得た資料によりますと、いろいろの経過はありましたけれど、番組技術システムの運用は労使が合意するまで本番じゃないと。つまり、本番移行期であるという取り決めをしているようですけれど、この辺は間違いでしょうか。
  398. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) 間違いではございません。そのとおりです。間違いではございません。いま御指摘のとおりです。
  399. 木島則夫

    ○木島則夫君 そうすると、いまもその状態が続いておりますか。
  400. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) いいえ、もうすでにそういう事態は解消いたしまして、本番の運用に入っております。
  401. 木島則夫

    ○木島則夫君 労働組合の反発というものは、それはそれといたしまして、番組制作の現実的な問題として見て、いろんな不都合が出ているようですね。人間の管理と違いまして不都合も当然起こってくる。少しでも制作時間が延びてくると、スタジオが使えなくなったり、リハーサルの時間中にスタジオの照明が使えなくなったりするような、こういうことがいろいろ起こっているようです、いたようです。こういった問題はまだ続いてるんですか。
  402. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) それは本来はコンピューターの問題じゃございませんで、番組は多数ふくそうしておりますものですから、最初に計画した時間を過ぎますと、次の番組がそこに入ってまいりますので、そういう点でそこのスタジオが使えなくなったりすることが間々ございます。ですから、最初コンピューターを使っていろいいと制作の時間なり制作の場所なり制作の機材というものを自分でこれは決めて始めているわけですから、その規模の中でやはりなるべくその仕事を終わらせるような習慣をつけてもらいませんと、その仕事の仕方とコンピューターの方の時間的にもう決めてしまった仕事とがなかなかかみ合わなくて、コンピューター、時間が来たらもう知恵がないものですから自分で切ってしまうわけですね。そういうことが間々あったことは事実でございます。しかし、そういうことは最近は大分解消されておると私は思っております。
  403. 木島則夫

    ○木島則夫君 大変シンプルな質問ですけれど、コンピューターをお入れになった最終的な目的というのは、さっき私が将来あるべき姿の中でとらえたああいうニュアンスだったのか。一体どこまでをコンピューターでやるのか、その辺大変原則的な原理的な点ですけれど、教えてください。
  404. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) 先ほども私もちょっと触れましたけれども、工場その他でコンピューターをお使いになっているいわゆる効率化という問題、これはやはりむだをしないという意味では、そういう面も必要でございますけれども、コンピューターの番組制作に導入した主たる目的は、しかも最大の目的は、番組の内容の質的な向上ということでございますので、そのために、なるべく煩瑣な手続はほかの機械でやらせようということでございますから、どこまでと言うとなかなか私もお答えに窮しますけれども、少しでも番組制作者が雑務から開放されて、本来の番組制作の方へ能力をフルに活用してもらいたいというのが番組技術システムの本来の姿でございます。
  405. 木島則夫

    ○木島則夫君 そうしますと、四十八年に取り交わしました、組合との間に取り交わした番組技術シスアムのネットワーク手法、それに基づくスケジュール管理をやめて、スタジオやVTRなど機材管理だけにとどめる、これに従い大幅なシステムの改善を行うということをお約束になったというこのことは、番組技術システムがNHKのコンピューター計画の中心となっていたし、その基盤となっておりましたね、要するに、何というか、ネットワーク化だったと見るならば、それがやっぱり大きく手直しをされて後退をしたというのは、当初の計画を大幅に変更したということになりませんか、違いましょうか。
  406. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) 私どもの説明その他不十分だったせいか、そういう御疑問を方々で私も聞かされます。それに私も一応はお答えしておるわけでございますけれども、いまも御指摘になりましたネットワーク手法というのは、私どもが番組制作にコンピューターを使っている中の番組の制作日程の計算をする部分でございまして、全体の番組技術システムの中から言いますと、パーセントで申しますと約三%以下でございます。
  407. 木島則夫

    ○木島則夫君 まあ私はコンピューター導入がいいとか悪いとかという議論ば、これからを待たないといけないと思いますけれども、私はここで指摘したいことは、世間でこういった話がたくさんあるだから、一体これは本当なのかどうなのかということを、NHKにつまりただす意味でいま伺った。  もう一つ、なぜこういうコンピューター問題をここで取り上げたかと言いますと、最初に、NHK公共性というものがいま大きく問題になっている。その公共性というものを余りにもNHKが意識し過ぎると、そこから番組が萎縮したり閉鎖的になってしまうことへの私の危惧を、公共性の問題で取り上げた。  それからもう一つ。いまの後段では、NHKが膨大なる設備投資をされる、あるいは新規の機械を入れる、そういった金のかかり方を、NHKが合理化をすることに専念をする余り——余りと言うか、コンピューターシステムをその中に導入される。それが度を越して、本来人の心が、本来人手がやるべきところにそういうものが介入をし過ぎて、人間のやる気を阻害をしたり、押さえたり、それが人の管理になったりすることがもしあったとするならば、さっきの公共放送の重みにつぶされて、萎縮をした番組しかできない七十点平均主義と、コンピューターがはじき出すそういうパターン化、画一化、そういう中から生まれてくる放送も同じく七十点番組でしかないのではないかというこの辺の私は危惧を、いまこういう形で御質問を申し上げた。私もコンピューターについては専門家ではありませんから多少飛躍的なことをここで申し上げたかと思うけれど、私のいま伺いたい本旨とするところは、そういうところにあった。  だから、さっきから言っているように、放送文化というものは人の心と人の創造性、そういうものが花開いたところに生まれるとするならば、そういうものを取り去ったり、抑圧したり、パターン化してしまう中からは決して私はいい放送は生まれてこない。その大もとはNHKが余りにも金を使い過ぎた、それをコンピューターシステムによって解消し、回収をしようという、何か余りにも合理主義一点張りというか、そういうところに立脚した結果ではなかったのか、結果になることを危惧しての私のいまのいわゆる論拠なんです。もう一回聞きます。そういうことはないでしょうね。
  408. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) 大変有益な御指摘でございますけれども、私どもはそういうことはさらさら考えてもおりませんし、現実にもそういう使い過ぎた金をコンピューターで回収するなどということは起きておりません。
  409. 木島則夫

    ○木島則夫君 念のために、NHKが導入したコンピューターの設備費とそのレンタル料というのはどれくらいか、教えてください。
  410. 藤島克己

    参考人(藤島克己君) 三十七年度からいろいろやっておりますので、それからの累計で申しますと、いわゆる設備投資と言われておる建設費の部類に属するものが三十七年から五十年度までの——五十年度はまだ最終決算が済んでおりませんけれども、一応予算数字を加えて申し上げます。三十七年度から五十年度までの建設というものの総額は二十七億二千六百万円強でございます。それからいわゆるレンタル料を含んでおります事業費というものが百三十億七千八百万円弱でございます。両方合わせまして三十七年度から五十年度までの合計は百五十八億四百万円強でございます。
  411. 木島則夫

    ○木島則夫君 このことは質問通告を私出しておりませんので、おわかりにならなければ結構です。  そのコンピューターを導入して、どのくらいの合理化ができて、どのくらいのメリットがあったか、わかれば、その数字的なものもほしいんですけれど、いまちょっと即座には出ませんか、出ますか。
  412. 山本博

    参考人(山本博君) 私の方で、昭和三十七年以降のコンピューターを入れました後、今日までどういう効率化の効果が上がったかということは、いろいろとり方がございますが、これは主に人間の面での効果でございます。それでEDPS関係で申し上げますと、私たちの計算にいたしますと約二千四百名抑制効果があった。したがいまして金額にいたしまして、まあ古い時代からでございますが、換算をしてずっと計算をいたしますと約八百億ぐらいの効果があったのではないかというふうに考えております。
  413. 木島則夫

    ○木島則夫君 確かに、その収支の上では八百億、かかった金が大体百五十八億。ということであるならば、それはずっともうメリットが金の面ではあったというふうに判断をすることができるだろうと思います。しかし、私は、必ずしもそれがそのまま表面に出てこないのが放送であると言いたい。そこのところはひとつよくわきまえてください。  なるほど、これは数値の面では確かにメリットはあったかもしれない、あなた方の計算によれば。しかし、そのコンピューター導入によってさっき言ったようなもし事態が中で起こり、それが平均七十点主義番組にもし結果したとなるならば、私はやっぱりその功罪というものはもう一回根本から問い直すべきだと思う。そのことをひとつわきまえておいていただきたいと思います。そのお答えは結構です。  さて、もう時間が余りございませんので、どこまでお聞きできるか、基本的な問題について伺いたい。  NHK基本問題調査会では、その報告書の中で、効率的安定経営への指向と、国民意向吸収とその反映のための施策の強化を提言しておいでです。これはNHK経営の核心に触れた問題でして、NHKとしても最大限に尊重しなければならない点であると思います。で小野会長はこの提言をどのように生かされているか。いまのコンピューターの問題も実はその一環だろうと私は思いますね。で、どのように生かされているかという中で、ひとつ小野会長が見たコンピューター導入が、いいですか、国民NHKという番組構成の上に、会長として、役立っているかどうかをはっきりおっしゃっていただきたい。
  414. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 基本問題調査会のきわめて重要な提言に対しまして、その中の一環としてのコンピューターの関係についてのこれの功罪の御質問でございますので、その点にしぼって申し上げたいと思います。  私は大いに効果があったと思います。また、今後、その効果は増大していくものと考えております。もちろんコンピューター導入の当初におきましては、やはり人間と機械という一つの関係におきまして反発もございました。そういったような面は、歴史的過程におきましても、産業革命のときにもあったわけでございます。同様なそれはNHKの職場にもかなりコンピューターに対する反発と申しますか、違和感というものがありました。人間が機械にとってかわられるのではないか、こういうやっぱり誇大な一つの心配、危惧もございました。今日では、だんだんなれてまいりまして、木島先生が御心配になっておられますような、いわゆる計数的メリットはあったけれども、より重要な番組の質の問題において非常なやはり低下を来したんではないかと、こういう御危惧もあるようでございますけれども、私は、番組の制作過程におきまして、人間の雑務を取り払って、これを機械がかわって、人間の番組の内容、制作に専念する非常に幅を多くしたことは、これは否めないと思います。しかし、そのとおりに実は番組の質的向上に本当に一〇〇%つながっておるかと申しますと、まだ試練期ではないかと思います。とはいえ、これがかえって質的低下を来したのではないかという御指摘に対しましては、私は今日におきましては、もうそのようなことはないと信じております。
  415. 木島則夫

    ○木島則夫君 この辺の問題をもう少し詰めてやりたいんですけれど、何分あと三十分しか時間がございませんので、先に進みます。  今年度の建設投資額は二百二十億ですね。かなり増額されているんですけれど、難視解消の直接経費はといいますと、それは五十八億円程度で、財政が逼迫していた昨年度よりもちょっとふえているにすぎないわけです。これは小野会長の公約に反すると思うんですけれども、もっと多く振り向けて難視解消を図るべきではないだろうか。それに伴ってNHKの言い分としては恐らく施設が古くなったので、こういうものの取りかえに金がかかるんだというようなこともおっしゃりたいと思います。設備投資はどのような方針のもとに行っておられるのか、直接経費が五十八億というのはちょっと少ないように私は思うんですけれどね。これも簡単で結構です。端的におっしゃっていただきたい。
  416. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 直接経費は五十八億と計上されておりますけれども、いわゆる画質の改善と申しますか、難視改善プラスそういった面を加えますと、百四十億ぐらいの五十一年度予算ではウエートを持っておるわけでございます。
  417. 木島則夫

    ○木島則夫君 NHKの難視解消計画ですと、現行の地上方式というのは五十五年までが限度で、それ以後は放送衛星によることを予定をしているようですけれど、それまでに放送衛星が実用化される見通しがあるんだろうか。でNHKの「今後の経営について」の中でもきちっとそれに触れておいでになります。  つまり五十一年から五十三年度ですか、中継放送局の建設であるとか共同受信施設の設置によって難視世帯が減っていくんだけれども、結局、五十五年度末で四十二万世帯が残るということですね。で「この約四十二万の残存難視世帯は散在世帯であるので、」——辺地ということでしょうか、「散在世帯であるので、主として放送衛星による難視解消を期する。」と、はっきりここにもうたっておいでのようでございます。どうでしょうか、それまでに放送衛星が実用化される見通しがあるんでしょうか。
  418. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 先生のお尋ねでございますが、実は、残念ながらこの五十五年度までにはこの実用の放送衛星の実現ということは困難でございます。したがいまして今後の問題ではございますが、やはり難視聴救済につきましては、NHKも今後はさらに努力を続けていただきたいと思っているわけでございます。  この実用化の見通しといいますか、このめどでございますが、これちょっと御説明申し上げますと、実用化のめどをつけるために、郵政省といたしましても、昭和五十二年度に打ち上げる予定でございます実験用の放送衛星によりまして、放送衛星に関する各種の実験を行うわけでございます。たとえば受信可能地域がどういうところかとか、あるいはその電波がどういうふうに伝わるか、あるいは雨とか大気によってどのように影響されるか、そのようないろんな受信状態の評価試験を行うわけでございますが、その成果を踏まえまして今後の実用化のめどをつけていきたいということでございます。したがいまして当然この実験の中にも、難視といいますか、非常に現在受かりにくい地点で、どのような形で地上からの電波では受けにくい地域がこの衛星によってどういうふうによく受かるようになるか、こういう実験も加えているわけでございます。さらに一方、国際的な会議などもございまして、今後の世界における放送衛星というものについてのいろんな取り決めが行われるわけでございますので、そういうことも踏まえて考えますと、やはり五十五年ではなかなか実現は困難ではなかろうか、かように考える次第でございます。
  419. 木島則夫

    ○木島則夫君 しかし、NHKのこれからの経営指向、運営指向の中で五十五年度末で四十二万世帯が残る、これは地上施設では無理があって衛星によらなければならないということで、はっきりうたわれているわけですね。郵政省としても問題点があることは私もわかるわけです。しかし放送衛星の利用というのはこれは難視解消には非常にすばらしい効果があることも事実です。しかし五十五年には残念ながらだめだというそのお答えの中には、実際に活用するまでには国際的にもいろいろな問題があったり、国内的にも大きな難問を抱えていることにつながると思います。  国際的な問題はともかくとしまして、国内的な問題としては、衛星の用途、つまり地上方式の補完的な役割りを果たさせるのか、あるいはその地上方式の代替としてこれを使うのかという点もあるはずです。後者の場合には、県域を対象とする民放をどうするか、これは現在の放送秩序を根本的に変革することになります。前者の場合でもややこしい問題がありまして、ローカル番組を期待することができないとともに、経済的負担能力に乏しいと思われる辺地の方々に高価な受信機の購買を強いるというような問題があるはずでございます。  現在は、もっぱらハード面での研究に重点が置かれておりまして、ソフト面への対策がなされていないのは大変残念なんですけれど、そこで郵政省は放送衛星の実用時期——これはもうこの辺はっきりしてもらわないと、NHKの方は数字を出されているわけですよ。だから郵政省は放送衛星の実用時期とその活用方策をどのように考えているのか、これもひとつ端的に答えてもらいたいんです。そうじゃないとNHKの方針が立たないんですよ。
  420. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) ただいま御説明申し上げましたように、放送衛星の実用化というのには時間がかかるわけでございます。ただいま御指摘のように、放送衛生を補完的なものに使うか、あるいは代替的なものに使うかという御質問でございますが、放送衛星の機能といたしまして、どちらにでも使えるわけでございます。それぞれ一利一害がございまして、ただいま御指摘ございましたように、補完的に使うとすれば値段の点などがある、あるいは代替的なものに使うとローカル放送がどうなるか、こういうような問題があるわけでございます。したがいまして、そういう面も含めまして、この実験の結果が出てまいりますとそういう点についてよりはっきりしてまいると思います。その時点で将来の実用化の問題を、国際問題等も含めて、決定していきたいというふうに考えております。  さらにハード面に力が入り過ぎているではないかという御質問でございましたが、やはり当面この実験ということになりますので、どうしてもハード面に力が入るのはやむを得ないわけでございますが、当面この実験が終わりましたら、その後、放送衛星システムを含めてのソフト面というものについて十分検討を進めていかなければいけないのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  421. 木島則夫

    ○木島則夫君 慎重な検討とか、慎重に事を運びたいということはよくわかるんです、大変大事な問題、むずかしい問題ですから。しかし国際的な制約が解決しますと、外国のテレビ電波がどんどん飛び込んでくるようになり、いやおうなしにその対策を考えなくてはならないということになろうと思います。一体、何というか放送衛星の国際的使用開始時期を何年ごろと見ておりますか。この辺は大事ですから、具体的にお答えができればしていただきたい。
  422. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) ただいま御指摘の国際問題でございますが、現在、この放送衛星につきましての問題が二つございます。それは一つは宇宙空間利用の面でございます。もう一つは宇宙無線通信関係の面でございます。  この前者の宇宙空間利用の面につきましては、現在、国連の宇宙空間平和利用委員会、ここにおきまして検討されているわけでございます。ここで外国向け放送における情報の自由な流通とか、それと受信国の立場の尊重をどのように調整するかというような問題が現在論議されておりまして、これは先般も会議が開かれたわけでございますが、まだ結論を得るに至っておりません。  それから無線通信関係の方でございますが、これは実は来年早々、世界無線通信主管庁会議が予定されておりまして、ここでその割り当て周波数とか技術基準について審議されるわけでございます。で、われわれとしましても、将来の放送衛星につきましてなるべく早期にこの実用化を図りたいということでございますので、われわれもこの会議に参加いたしまして、国際的になるべく早く解決しようということで鋭意努力中でございます。ただ、ただいま申しましたように、この国際会議の動向、結果というものを見きわめをつけないと、われわれ実際の作業にかかるわけにいきませんので、その点、いつごろということは、やはり国際的な関連もございますので、ここでは申し上げかねるわけでございます。
  423. 木島則夫

    ○木島則夫君 まあなかなかそれはむずかしいし、郵政省としてもいつごろそれがということはお答えになりにくいと思いますけれど、要するにNHKが辺地難視解消のコストアップを理由に衛星方式というものを採用することにしますと、政府の方針が明確になるまで辺地難視対策というものが何というか停滞することになりはしないか、消極的になりはしないかと、その辺を私は心配するのです。  ですから、そういう意味でも、それは国際問題との絡みもありましょうよ、ありましょうけれど、事はどんどん要請度、重要度というものは迫られているんですからね。やっぱり郵政省がきちっとしたある程度の見通し、方針というものを決めないと、いつまでたっても難視の解消一つとってみてもできないということになりはしないでしょうか。
  424. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 御指摘のように、われわれといたしましても、なるべく早く方針を立てて、そうして難視聴地域の救済などに活用されればと思っております。ただ、最近、そういう辺地につきましては、技術的に開発いたしましたミニサテ方式というものも開発いたしまして、やはり十分ではございませんが、ミニサテを使ってなるべくそういうような辺地の地域をつぶしていこうということで、これはNHKと相談しながらなるべく民放、NHK協力のもとにこの辺地難視聴の解消に努力しておるところでございます。
  425. 木島則夫

    ○木島則夫君 ちょうど私が聞こうと思ったミニサテの問題も出てきたわけですね。これだっていまあるたとえばすりばちみたいな辺地というのでしょうか、盆地みたいなところだけしか使えないとか、使用制限、免許条件というものがありますね。だから全部をつぶしていこうとすると、これだってなかなかやっぱり容易なことじゃないと思うのですね。NHKの長年の努力によりましてミニサテが実用化に移されたと、これは大変いいと思います。コストダウンにも大きくこれが寄与していることは大変結構なことだと思います。しかも民放との共同建設をやっていきますれば、さらにそのメリットは大きくなるはずです。  しかし、いま私が触れましたように、送信機の性能等の関係から使用対象地域というものが制限されていると聞いているわけですけれど、その実情はどうなっているか、コスト、民放との共同建設、まず、その点について聞きたいんです。
  426. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) まずコストでございますが、これは従来の中継局方式でいきますと、たとえばNHKを二波とそれから民放二波ということにいたしますと、約八百万円かかっていたわけでございますが、このミニサテ方式にいたしますと、同じNHK二波と民放二波の四波を入れまして、約二百八十万ということで相当廉価にできあがるわけでございます。  それから現在までミニサテによります難視聴地域の解消世帯数でございますが、NHKとしましては、四十三地区に設置いたしまして、約四千二百三十世帯というものが救われたのでございます。NHKが四十三地区につくっておりますが、この四十三地区のうちで民放との共同建設をやったところは二十四地区でございます。残りはNHKの単独でやったところでございます。
  427. 木島則夫

    ○木島則夫君 もうそろそろ、私、結論というか、質問を終わりたいと思うんですけれども、要するに、このミニサテの問題も、先ほどからの放送衛星との絡みで、放送衛星の打ち上げが、実用化がいつになるかということとミニサテとの問題もやっぱり相関関係にあるわけでしょう。NHKとしては、うっかりつくれば二重投資になって経費のむだ——まあむだ遣いとまではいかないけれど、というようなことを心配して消極的になるかもしれないとか、この辺の絡みも大変大事な問題ですね。  だから、私は、できるだけ早く具体的な計画なり実施計画をお決めになると言葉ではおっしゃるけれど、事態は刻々と迫っていっているということ、そうでしょう。難視の解消が大事だ、大事だと郵政省は声を大にしておっしゃっているわけですよ。それにはやはり基本となるこれからの放送体制にも影響をする、やっぱりそういう基本的なこれからの放送をどうするかというようなきちっとした構想が打ち出されなければ、どっちからどう手をつけていっていいのかわからないという混迷状態が続くと思います。ということは、結局、国民の難視の解消には大きなメリットにならない。そういうことを考えて、これはやはり早急に、具体的な基本方針ですから、私はお答えをいただきたいと思うのですけれども、どうでしょうか。
  428. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) おっしゃいますように、われわれといたしましても、なるべくこのような問題は早く解決したい、方針を立てたいということで考えているわけでございますが、ただ、私たち、今後の問題といたしまして、まあミニサテとの絡みでございますが、今後、放送の方がローカル放送が多くなってまいりますと、この放送衛星というのは使えなくなってまいります。その辺のところをやはり十分NHKと打ち合わせて検討していかなければ、必ずしも放送衛星ができたからそれで難視聴が救済できる、こういうことにはならないかと思います。その点、われわれとしても大急ぎで詰めたいと思っております。
  429. 木島則夫

    ○木島則夫君 これは非常に大事な問題ですから、大急ぎで詰めてくださいね。  それから難視の問題に絡んで、これは私の意見だけ申し上げておきますけれども、国民皆さんのテレビの視聴実態から見て、辺地の難視あるいは都市の難視についても早急に抜本的な対策を具体的にすることが必要です。郵政省は、テレビ難視調査会の答申を受けて、これからその対策を立てなきゃいけないんですけれど、根本的な制度の設置、つまり立法の面と行政措置でできることは、これもやっぱり逡巡をしないで徹底的にやっていただきたいということ、そのことを私は意見として申し上げておきます。  きょう、私がここで取り上げたNHKに対する、あるいは郵政省に対する問題を要約をすると、三つの面から成り立っていたと思います。  一つは、NHK公共放送というものについて、その根本、もう一度あるべき姿というものをきちっとNHKがわきまえてもらいたい。公共放送を大いに意識してもらいたいけれど、その意識が大きく過剰になり、そのことからNHKが萎縮をすることのないように、生気ある番組編成を行ってもらいたいという、そのこと。それから二番目は、合理化機械化ということが行き過ぎて、それが人間の創造力、文化の花を摘み取ることのないようにしてもらいたいということ。それから、これからの放送衛星を含む難視の解消、そういうものを考えるときに、放送体制全般の問題にそれが関連をしてくるから、その辺の計画を郵政省はきちっとつけていただきたいという、要約をすると三点について伺って、もう御意見は結構です、できるだけそういうものが前向きの形で早く実現をする、有効にそれが作用するようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  430. 森勝治

    委員長森勝治君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  431. 森勝治

    委員長森勝治君) 速記を起こしてください。暫時休憩いたします。    午後八時四十五分休憩      —————・—————    午後八時五十三分開会
  432. 森勝治

    委員長森勝治君) 委員会を再開いたします。  ここで、理事会の報告を申し上げたいと存じます。  今日までの当委員会の審議の中で誤解を招くような発言がありましたことについて、長田理事より遺憾の意が表明され、各理事の了解を得て、議事録の取り扱い等については委員長に一任されたことを報告しておきます。     —————————————
  433. 森勝治

    委員長森勝治君) 休憩前に引き続き、質疑を続行します。
  434. 青島幸男

    ○青島幸男君 まず、五十一年度のNHK予算審議に先立ちまして、一言申し上げますけれども、長時間にわたりまして各委員の方々から御熱心な質疑がありまして、私もさまざまな問題につきまして用意いたしましたが、先に立たれました委員の方々の質問の中に納得のいく点も多々ございました。その部分は重複を避けまして省略させていただきます。私、このたび、ただ一点、きわめて基本的な問題につきまして御質疑申し上げたいと思います。  このたびの予算の、少なくとも値上げを含んだ予算審議に当たりまして、どの委員からも発言があったことですけれども、ただ単に計数上あるいは金銭上の問題ではなくて、NHK基本姿勢というものについてかなりの質問が精力的になされましたし、そのことにつきましてNHKからもかなり突っ込んだお答えもありました。で、今日のNHK国民的な立場に立って国民に本当に支持され愛されているHNKであるかどうかという問題が、実は、値上げに関しましても、今後の運営方針にいたしましても、きわめて基本的な問題であるということは私もこの席におりまして伺っておりまして肝に銘じました。この問題さえきれいに解決すれば、値上げを含んだ予算案であろうとどうであろうと大した疑念もなく国民の支持を得られるものではなかろうかと私考えるわけですけれども、その基本的な問題の一番重大な部分はやはり経営委員会、このNHK運営基本を決定する最高の機関である経営委員会のありようが大変に閉鎖的で、しかも国民の考え方から遊離しているんではなかろうか、この疑念一点実に重大な問題だと思います。  かつて、私、四十八年のこの当委員会におきましても、この問題に関しまして小野会長と議論を闘わせたことがございます。その節、私申し上げましたのは、国民あるいは視聴者の方々とNHKの間の相互の理解の上に成り立っている現方式は大変合理的で納得のいくものである。これを民主的な運営にしていくためには相互の信頼と理解がなければならぬ、この点につきましては小野会長も当時お説ごもっともでございますということもおっしゃられました。そのための方途をいろいろ考えておられることも確かでございます。私もその都度提案申し上げたんですけれども、その節に、直接に視聴者の皆さん方から選挙で選ばれるような形で経営委員皆さん方が選ばれるようなことがもしあれば、これは本当に視聴者の方々が、平たく申しますと相互会社のように、一株株主と申しますか、ですからだれにも会長になる権利もあるし、会長を選ぶ権利もある、経営委員会のメンバーを選ぶ権利もあるというふうなことになりますと、一人一人が経営に参与しておる、われわれのためのNHKだという認識を深く腹にとめることができますので、相互の理解の上に非常に役立つんではなかろうか。ですから、受信料の領収証をもって一票を投票する権利にかえて、直接の選挙をしたらどうだろうかというようなことを御提言申し上げました。  その節、郵政省からは、放送法第十六条の規定からも、このありようがこの法律の条項になじまないのではなかろうかという御返事もありました。その後、つらつら考えてみますと、そのことがいかぬとも書いてないし、少なくとも内閣が任命すると書いてあるわけですね。人選するということと任命するということと、私、基本的に違うことだと思う。  この条文にありますのは「公共福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、」云々とあります。だれしも神様じゃないわけですから、歴史的な世界観を通じても、未来永劫、常に厳正中立であるということはだれにも望めないことです。ですから、当時、私、この条文はナンセンスだと申し上げました。条文は条文として規定してありますから、これを否定することはできません。厳正中立であるということは、当委員会におきましても、さまざま、主張、信条の分かれるところがございます。しかし、それは、どなたもみずから信じるところが正しいと思われているわけですし、厳正中立を代表する者が果たしてだれかというのは、それはコペルニクスやガリレオの例を引くまでもなく、時の権力が決めるものでも何でもないわけです。少なくとも民主主義憲法の中では、多数の方々が考えるありようがすなわちその時点の中正あるいは厳正中立であるという考え方になじむのじゃなかろうかと思うのです。ですから、だれが言っていることが正しいのかということを判断するのは、時の権力でもないし郵政省でもないしNHKでもないわけです。  ですから、もし一票一票で直接に投票するということが不可能でしたら、少なくともNHKは調査機関の大きなものを所持しておいでになりますし、常々、視聴者の方々の御意向を尊重しながら運営していきたい、そのためにはあらゆる手だてを惜しむものではないということを会長は申されております。ですから、私かつて申し上げましたのは、受信料の受け取りをもって一票とかえろと申しましたけれども、少なくともどういう方々が経営委員会のメンバーとして参画することが適切であろうかというアンケートをとるぐらいの誠実さはおありになっても決して間違いではなかろうと思いますし、また、その出てまいりました結果を判断の材料にいたしまして、郵政省が任命するということになりましても、この十六条の条文に一向に触れることではないと私は思います。  そのぐらいオープンな考え方がNHKにおありになりませんと、真に国民の代表として運営しているという確信をお持ちにもなれないでしょうし、私、現在の経営委員会の方々が怠慢であるとか、あるいはNHKの執行部が偏っているとか全く申しません。それぞれの分野で皆さん方誠心誠意御活躍になっていらっしゃると思いますけれども、それがそのまま御努力が国民の目に映らないという現状の中から、少なくともそのかっこうを改善していかなきゃならない、その改善するということに対する御熱意は、私、お持ちだと思います。ですから、ただいま私が改めて提案申し上げるようなことに関しまして御意見を承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
  435. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) NHK会長であります私が経営委員会のあり方につきまして答弁申し上げるのはあるいはいかがかと思いますが、現在の経営委員会制度のそれは、法定のそれではNHKの意思決定の最高機関にはなっておりますけれども、政府がこの委員を任命する、そして会長の任免権を持たされておるということでございますので、私は、いまの御構想に対しましてこれは全然反対するわけでもありませんし、また、それは賛成で取り入るべきだと、これも越権であろうと思います。そういうことでございますので、この点については私からの答弁はひとつ御勘弁をいただきたいと思います。
  436. 青島幸男

    ○青島幸男君 まことに適切なお答えだと思いますし、そのことを私は会長にこの場で問うたということの方がむしろ酷だったかと思います。しかし、会長の座から離れて考えろということをこの場で申し上げるのは無理だと思いますけれども、そのくらいの姿勢がないと、少なくとも国民はわれわれの手でNHKを守り育てていこうという気にはならないんではないか。  先ほど山中委員からも御指摘がありましたけれども、委員会の内容をつまびらかに公にしたらどうだという際に、その詳細を一般の方々に知らしめることはなかなか困難だというようなことをおっしゃられましたけれども、これを公開の場にして新聞記者その他の諸君の傍聴を許すというかっこうになれば、その方々がその方々の判断、あるいはその方々がしょっておられる、代表しておられる会社が、あるいは企業が、どんなことが行われているか、どんなことが国民の関心の的になっているであろうかということを報道することは、これはもう押しとめることもございませんし、そういうことから一般の国民の方、一般の視聴者の方々がどういうふうな考えでこのNHK運営されているのかということをつまびらかにできるわけですから、そういうような考え方を持って臨んでいかなければ、どんなに取りつくろって御答弁になっても、どんなに御誠意をお示しになろうと努力なさっても、これは空回りに終わるだけで、その真意は全く国民に通じないと思います。  ですけれども、大臣、どうでしょうね、先ほど私提案いたしました件、NHKに聞くのは酷だと申しましたけれども、任命する立場におありになるわけですから、その任命の材料として、もしそのようなアンケートが、NHKがやらなくてもいいんです、他の民間のものがやったとしても、ある信頼に足る資料であるとするならば、これを参考にして人選をするというぐらいのことはお考えいただけても妥当ではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  437. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) NHK経営委員を非常に広い分野からこれを選出するということにつきましては、私も全く同感であります。  御指摘のように経営委員の選出の手続として公選的手続を採用いたしますことは、経営委員を選出する一つの方法かとも存じます。まあしかし、現行制度におきましても、任命に先立ちまして両院の御同意を得なければならないのでありまして、これはやはり国民の総意が反映できておるものと、こういう解釈もできるのじゃないかと思います。
  438. 青島幸男

    ○青島幸男君 この問題を論じますと、いつもそこにくるんですけれども、これ基本的に、私、間違いがあるんじゃないかということを最近考えたんですけれども、NHKと契約をしている視聴者の方々を即一般国民と同義語にお考えになる、この辺に誤りがあるんじゃないかと思うんです。  それは確かに国民の大多数の方々がNHKのテレビをごらんになっているでしょう。二千数百万という契約があるわけですし、一家族五人単位とすれば、もうすでに算術的な計算をしても国民の総数に値する数になりますし、しかし、いまだにNHKと契約をあえてなさらない方もおいでになりますし、当然、その方も選挙権お持ちになっているわけですね。でNHKにどういう放送を求めるかということは、契約者として、少なくともNHKはその聴視料を対価として受け取っていらっしゃるし、契約の上に成り立っているわけですから、これが国民の行政に対する願いですね。一方選挙で選ばれるのは。行政に対する願いとどういう放送がなされるかということに対する願いとは別個のものと考えるべきです。  ですから、大臣申されるように、衆参両院が国民の代表なんだから、その代表が認めるんだから、それで国民の総意と同じと考えていいじゃないかという御発言ですけれども、しかし、それは一票を投票する方は行政を任せるという意味で投票なさっているわけですよね。NHKがどういうかっこうで放送をなされるかということは、視聴者との契約に基づいて行われている意思の上に成り立った決定でなきゃならないはずですから、それは全く別の主体と考えなきゃならないと思います。そうなりますと、どういう方が改めて経営委員として任命されるのにふさわしいのかということと、どういう方に行政を任そうか、どういう政党と私の考え方は近いというかっこうで投票をするのとは別個の問題と考えなきゃならない。  ですから、先ほども申しましたように、だれが中正で、だれが正しいのかということの判断は国民がするわけですから、少なくとも国民というのはこの際は視聴者が行うわけですね、だれが経営委員にふさわしいかということを。その方々の主張あるいは信条、思想について、私はあの考え方の方に近いと。で、その圧倒的意見を得た方がNHK放送の主体に意見を差しはさむ、あるいはその考え方で運営されるということが、実は、一番NHKの民主的な運営につながるのじゃなかろうかという気がします。ですから、この十六条にあるように任命する権利はおありになるわけです、確かに。しかし人選のありようについては、もう少しお考えになってもいいんではなかろうか。  いままでの考え方を伺っていますと、当委員会でも御発言になりましたけれども、折に触れ、学識経験を有せられる方で、公共福祉に大変関心のおありになる方に注目していて、欠員ができた際に、おいでいただくというような説明しかなされてないわけですよ。しかも国民の側から見ますと、政府が任命するんだから、どうせ政府の息のかかった方だろうという考え方しか得られないとすれば、これは全くNHK存在は遠いものになってしまうということも、これは理の当然なわけですよ。ましてNHKが民主的に報道の自由あるいは放送の中立を確保しようとするならば、時の権力からはなるべく遠いところにいなきゃならないわけですし、そうなりますと、全くこの任命のあり方、十六条のあり方というのは矛盾を含んでいることになりますね、NHK運営のあり方。ですから、人選のあり方については、前の久野大臣からも承りましたけれども、十分慎重に配慮しなきゃならぬとか、重々御意見を承って配慮いたしますとかということでは、これは納得できない問題だと私は考えます。その点、いかがお考えになりますか。
  439. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 具体的な問題でありますので、政府委員から。
  440. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) ただいま先生から御質問ございましたように、両院のあれは行政志向型ではないか、視聴者の方の意見も聞くべきではないかというお話でございましたが、われわれといたしましては、行政がやはり視聴者の意向もくんで行政を行うということを考えておりますと、やはり両院においてその点御意見をいただいた方が、やはり今後視聴者以外の方でも視聴者となるという可能性もございますので、その点かえって幅広く選考できるのではなかろうかと、かように考える次第でございます。
  441. 青島幸男

    ○青島幸男君 その辺が非常に違うんですね。ですから、行政を任せようと思って聴視料を払っているわけではないんですよ、聴視料は税金じゃないんですから。放送を享受することの対価として支払っているわけですね。で、NHKと視聴者は契約を結んでいるわけですから、これは相互会社と同じなわけですから、そこに行政の意見を差しはさむ余地はないわけですよ。どう御理解になっていらっしゃいますか。
  442. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 行政の立場でございますけど、行政はわれわれだけが勝手に行政するわけではございませんで、やはり国民の総意というものをくみながら、われわれいかにすれば国民のための放送ができるかということで行政を行っているわけでございます。したがいまして行政当局も当然その意見を両院にお上げいたしまして、両院に御判断をいただくということになるかと思います。
  443. 青島幸男

    ○青島幸男君 これも私前回申し上げたことですけれども、その任命権があるわけですから、非常に偏った人選の仕方をして任命をなさると大変偏った型のNHKができ上がりますし、そこで九十何%というカバレージで一日二十何時間という放送をなすっていらっしゃるわけですから、NHKは。そうすると、その偏った考え方ですべての放送がなされるということになりますと、これは全くファッショに通じるということが当然のように考えられるわけですね。しかも政党によって政治が行われていて、その多数を得た政党が行政権を握るということになりますからね。すでにもうそうなっているのじゃないかという懸念を持っている人さえいるわけですよ。ですから、そういうあり方をやめようという歯どめはこの十六条からはどこからも出てこないわけですよ。これは仮定の問題ですから仮定の問題としてお答えいただいても結構ですけれども、そういうようになったら大変だという懸念を国民も抱いておりますし、そうなることの矛盾を含んでいるNHKにだれが聴視料を払うものかという考え方さえ成り立つわけですね。  そういう危険を何とか避けるためには、どっちかといえば、これ条文変えなければならないでしょうね、基本的には。しかし、いまある放送法をそのまま変えないでも、上手に運営することが法の趣旨でしょうから、法律をつくった人はまさか曲げて運営されるとは思っていないわけですよ。ですから、上手に運営をして国民の納得のいくようにすればいいわけですからね。その懸念のないように運営するためには、そういう手段を講じるしかないだろうということを申し上げているわけです。
  444. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) いま先生からの御指摘のような方法もあるかと思いますが、われわれ——われわれと申しますか、この法律に述べられておりますのも、大体、趣旨といたしましては、先生のお考えのような広い分野からの方を求めてということだろうと思います。しかもこの法律にございますように、まず、やはり両議院の同意を得てから、その同意を得た人について内閣総理大臣が任命するということでございますので、この議院において十分その検討がなされると考えられますので、やはり適正な人が選出されるのではなかろうか、かように考えております。
  445. 青島幸男

    ○青島幸男君 だから適当な人が選出されないのですよ。ということは、政府与党が、現今をそう申しているわけじゃございませんよ、ある強大な政党があって、その政党が自分の考え方で国を運営しようと非常に非民主的な考え方をしているといたします、仮に。そうすると、その方々が勝手に任命した方々でNHKを牛耳ればヒットラーにもなり得るということです。そういう危険性を含んでいるいまの現状のありようは大変危険なもんであろうということを認識している国民もかなりおいでになる、視聴者もおいでになる。だから、その懸念が少しでもなくなるような方策を講じなければ納得がいかないだろうということを申し上げたわけです。
  446. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 先生のお話のように、やはりそういうふうな仮にということでございましたが、仮にそういうことになった場合にはやはりそういう懸念もあるかもわかりませんが、われわれはやはり法律というものがある以上は、この法律の意義というものを十分くんでいただきまして、これを善意に解釈して実施していただくというたてまえをとっているわけでございます。したがいまして、この現在の十六条によりましても、先生御懸念のあるようなことは万々ないというふうにわれわれは考えております。
  447. 青島幸男

    ○青島幸男君 そうしますと、先ほどの話に戻りますけれども、人選をする際に、いままでですと、郵政省の方々が日ごろこの方が適当なんではなかろうかと目星をつけられた方にお願いをするというケースですね。私、申しておりますこと違っておりましたら、訂正をしていただきたいと思います。
  448. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) これは現在の委員の任命のあり方でございますが、手続といたしましては、この条文にございますように「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」ということでございまして、その人選に際して、まあ郵政大臣が意見を求められる、あるいは相談に乗るということはございますが、任命行為あるいは人選の結果、その決定ということにつきましては内閣総理大臣が決定する、かようになっております。
  449. 青島幸男

    ○青島幸男君 それはわかっているわけです、それはわかっているわけです。ですからね、しかし一党が過半数を持っていれば、その政党の考え方で通るわけですから、ですから、これがいいんだと言って、少数派が反対しても通ってしまうわけですよ。  で、郵政大臣が、常日ごろ、こういう方がいいんではなかろうかというところに目安をつけて人選をなさっているわけですか、現状の人選のありようを、では教えてください。
  450. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) ただいま御説明申し上げましたとおり、郵政大臣が内閣総理大臣から意見を求められる、あるいは相談に乗って、そこでこういう人が適当ではないかということを申し上げることもある場合があるかと思いますが、それはそれぞれ個別具体的な場合によって違うかと思います。
  451. 青島幸男

    ○青島幸男君 一向に明確にならないんですよ。どういう手続で人選が行われるのですか、その辺を明確にしていただきたいと思うんです。
  452. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 人選は、政府部内でどういう手続をとろうかという手続もありませんが、政府部内で、総理がこういう人でどうかという場合もあるし、これはもう政府部内で人選して、そうして閣議に諮るとかいうようなことはしませんけれども、そうしてどの地区からはこういう人をというような推薦があろうし、そういう人を、これが広い分野から適正な人だというような人を、任命するのじゃないですから、推薦して、そうして両院に諮るということです。両院で賛成が得られた場合に初めてその人が任命されるということです。
  453. 青島幸男

    ○青島幸男君 だれが適当かということは視聴者が決めるんではなくて、それは内閣が決めるわけですか。
  454. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) それは両院が決めることです。
  455. 青島幸男

    ○青島幸男君 それは決めるのはそうですよ。しかも決めるのはそのとき多数を持っている政党が決めるんですよ、具体的に言えば。その推薦をする段階でほかの野党が推薦したって否決されるわけですから、極端な話、はっきり申し上げれば。そういうことはあり得ないわけでしょう。  ですから、そういうありようは、それではもうひとつ翻って考えますと、ずっとこの長時間にわたって論議されてまいりましたことは、NHKが真に国民のものであるという認識国民が持つことが一番大事だということは御認識になっていらっしゃるわけですね。それだったら、その意思の最高決定機関である経営委員の方々が、視聴者の方々が願っておられるような方が就任されることが一番正しいとはお考えになりますね。視聴者の意見も聞かないで勝手に決めてしまったんでは、視聴者の方々の御意思の反映がそこにないんだから、当然、そこになじまないものが出てきやしませんかということを申し上げているわけですよ。
  456. 森勝治

    委員長森勝治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  457. 森勝治

    委員長森勝治君) 速記を起こしてください。
  458. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) これは先ほどの議論とまた堂々めぐりになるというそしりがあるかもしれませんが、結局、現在の法律のたてまえが、先ほど電波監理局長からも御説明申し上げましたとおり、やはり国民の意思を代表する両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命するという点におきまして国民の意思が反映しているというふうに、まあこの法律の規定ができているというふうに考えるわけでございます。  先生おっしゃいますように、視聴者ということでございますが、現在、そのNHK聴視者というものは国民の大多数を占めているという点からいたしますと、確かにそこに視聴者でない国民もいるわけでございますけれども、この大多数を代表している、やはりその意思を代表しているのが両議院であるというふうに理解できるんではなかろうかと思います。そういう現在の法律のたてまえからいたしますと、さらにそこにまあ視聴者による選挙というような形を入れるということは、まあ屋上屋を重ねると言っては語弊があるかもしれませんけれども、そういうことでこの法律では期待してないんじゃないかと、かように存ずる次第でございます。
  459. 青島幸男

    ○青島幸男君 それは大変勝手な解釈のなされ方だと思いますし、法の趣旨をちっとも尊重していらっしゃらないんじゃないかという気がしますし、ここで堂々めぐりの意見を闘わしても仕方がありませんからね、もう一つ新たなる御提案を申し上げます。  たとえばNHK基本問題調査会のメンバーにはどんな人がふさわしいと思われますかというようなアンケートを取ることは一向に差し支えないと思いますが、いかがでございますか、会長
  460. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) それは差し支えないと思います。
  461. 青島幸男

    ○青島幸男君 そういたしますと、そのアンケートの結果もいきなり経営委員のメンバーにどういう人がふさわしいかとお考えかというアンケートをもとにして経営委員を決定なさったらどうですかというようなことを、私、先ほど会長に申し上げました。それは酷な質問ですしお答えになれないのは当然だと思う。しかし基本問題調査会のメンバーとしてどういう方が適切とお考えになりますかというアンケートの中に、国民がこういう方方にNHK運営について参画をしてもらいたいという願いがあらわれてくるであろうということは認められますね。で、その結果を踏まえて人選の参考になさるというようなことがあっても一向に法の条文には触れまいと思いますけれども、いかがですか、大臣。
  462. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 法にどうも従わなければなりませんのですが、そういう法律になっていないですから、直ちに結構ですとは申し上げられないと思います。
  463. 青島幸男

    ○青島幸男君 ですから、法律は、公共福祉に関し公正な判断のできるという人が望ましいと書いてあるんですね。ところが、公正かどうかはだれが決めるのかといいますと、歴史的に見たって、それは権力者が変われば、きのうまでの善人は悪人になりますし、是非善悪は時の権力歴史的に決めてきたわけですよ。かつての封建時代の考え方と基本的に違う民主主義の根本は、大多数の考えにのっとって運営していこうじゃないかということなんでしょう。だから、だれが公共福祉に関し公正な判断ができるかということは、それは内閣が決めることでも何でもない、国民が決めることだと言うんですよ。ですから、ましてや直接的に国民の方々が、NHK運営に関してはこういう方の御意見が欲しいというアンケートで出てきた答えを参考にして判断をする方が的確な人選ができるんではなかろうかと。だから、そういうことも参酌なさったらいかがなもんでしょうかということを申し上げているんで、私、決して理不尽なことを申し上げているつもりはないと思いますけれどもね。物のありようは、公共福祉に関し公正な判断をすることができる人間というのはだれかというのは、実は、視聴者が決定するものであると私は認識しますけれども、しかも、そういう認識の上に成り立った方がNHK運営国民に結びついていく、視聴者に結びついていくと考えますが、違いますかということを申し上げているんですよ。
  464. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) あなたの御意見はよくわかります。それはNHK関係のある者が、それが一つの有権者となって、そうして自分たちの経営委員を決めるのだと、これはよくわかります。しかし、ほとんどの国民NHKにいま関係がある。しかも国会はその国民を代表して、国の選良として衆参両院に選出されておるのでありますから、まあその国会で御同意が得られるならば、私は、いまの段階ではこれより仕方がないのではないか、こう思います。  なるほど直接選挙のような行き方も結構だと思いますが、先生の御意見については、これは十分今後慎重に検討してみたいと思います。私も決してそれはいかないということではないので、ですから十分検討したいと思います。いまここですぐ返事をしろといっても、なかなかこうして放送法十六条で決まっていることを、いま私が勝手に承知しましたと言うわけにはいかないので、慎重に検討いたしますから、ひとつこの程度でよろしくお願いします。
  465. 青島幸男

    ○青島幸男君 わかりました。公選するという考えも含めて、経営委員の人選のあり方については、視聴者の方々の納得のいくように前向きに検討していくことにやぶさかでないと、こういうふうに大臣がおっしゃられたと認識してよろしゅうございますね、御検討いただくということで。
  466. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 十分検討いたします。
  467. 青島幸男

    ○青島幸男君 そうしてください。そのことは私かねがね懸念に思っていることですし、皆さん方の御苦労がちっとも報いられないで、いつまでたっても視聴者とNHKの間に疑惑がいつもあるというような存在はだれにとっても不本意なことだと思います。  会長はいつも胸を張って、私は誠心誠意視聴者の皆さん方の御希望にこたえられるようなNHKでありたいと、努力したいとおっしゃっている。そのことは私は信じます。ですから、その努力が実りあるものになるためには、経営委員会の内情がオープンになって、国民に親しめるものになっていくということがなければならないので、経営委員の方々に会長からああせい、こうせいと言うことはむろんできませんけれども、そういうふうな願いのあることも陳情に及ぶくらいのことはできると思いますね。そういうふうにしていただきたいと思いますし、それから、そのことの疑惑NHKへの不払いだの、反対だのを育成していく基本になっていると思うんです。  そのことさえ解消されれば、皆さん方、いま御享受いただいております放送が赤字でございます、皆さんの御趣旨を体してやっておりますが、かくかくしかじかでございますと言っても、内情がつまびらかになっていれば、おおそうかと言って応じてくださる方々の方が多いと思います、私は。疑念が残るから、どこが足りないんだ、いままでどおりじゃ何が悪いんだと、五〇何%も上げる必要がどこにあるんだという疑念になって返ってくると思うんですよね。当委員会でも大変このことが問題になったんで、私はむしろある意味では民主主義が行われているんじゃないかと思うんですけれどもね。二千何百万契約者がおいでになって五十何万の未収があると。しかも、そのうちには難視聴を含んでいるわけですね。主義主張に基づいて、あるいはNHKのやり方に反対だからという方は、そのうちのわずかなパーセンテージしか占めていない。私、こんな効率のいい企業はないと思うんですよ。雑誌や新聞で具体的な事実を刷り物として現物がある企業でも、百万部、百五十万部売っているんだという新聞社の料金の回収率、収集率と申しますか、集金率なんていうのは七〇%以下の場合の方がむしろ多いんじゃないかというぐらいで、それでも採算はとれるわけですよね。その面からすれば、目に角立って払わない人を追及していくということの方がむしろ不思議なくらいで、一〇〇%の方々がお支払いになるということの方がむしろ気味が悪い事実じゃないかと思うんですよ。  そのことを会長にここでお尋ねして、まさにそのとおりでございますというお答えは当然返ってくるわけはないと思いますけれども、しかし、そこまでやってこられたというのは、NHKのただならぬいままでの努力があったからだと私は認識して評価しております。ですけれども、ますます一人一人の理解を深めるんだったら、徴収する方が門口へおいでになってNHK姿勢について延々説明申し上げるよりも、NHK経営の内容をつまびらかにする方がもっと手っ取り早くて、もっと深い理解が行き届くということを申し上げるわけでしてね、経営委員会のあり方についての考え方はここで打ち切りますけれども、今後、経営のあり方について極力オープンにしていこうという決意のほどを再度承りまして、私、質問をこの程度で打ち切りたいと思うんです。
  468. 小野吉郎

    参考人小野吉郎君) 御説のように、国民の皆様方の支持と理解を得ますためには、やはり経営の内容がつまびらかにならなければ、これは無理であろうと思います。その意味におきまして、NHK経営の実情をオープンにする、こういう努力をいたさなければならないことは当然のことでございまして、どういう措置をとれば最も有効に目的にかなうか、これは常に検討しなければならないことと思います。私はやっぱり経営の内容を秘密にすることこそいけないことでございまして、国民の皆様方の支持と理解を得るための最大の努力の一つの有効なあり方として、経営の実情をあからさまにする、これはぜひやらなきゃならぬことと考えております。
  469. 森勝治

    委員長森勝治君) 本件に関する本日の審査は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後九時三十五分散会