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1976-05-20 第77回国会 参議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月二十日(木曜日)    午前十時三十五分開会     —————————————    委員の異動  五月二十日     辞任         補欠選任      上田  哲君     寺田 熊雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岩動 道行君     理 事                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 野々山一三君                 矢追 秀彦君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 土屋 義彦君                 鳩山威一郎君                 桧垣徳太郎君                 福井  勇君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 大塚  喬君                 寺田 熊雄君                 福間 知之君                 藤田  進君                 村田 秀三君                 鈴木 一弘君                 近藤 忠孝君                 渡辺  武君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  大平 正芳君    政府委員        経済企画庁長官        官房参事官    佐々木孝男君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        大蔵政務次官   細川 護煕君        大蔵大臣官房審        議官       佐上 武弘君        大蔵大臣官房審        議官       戸田 嘉徳君        大蔵省主計局次        長        高橋  元君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  松川 道哉君        大蔵省理財局次        長        吉岡 孝行君        大蔵省証券局長  岩瀬 義郎君        大蔵省銀行局長  田辺 博通君        国税庁調査査察        部長       系  光家君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        資源エネルギー        庁公益事業部業        務課長      篠島 義明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十一年度の公債発行特例に関する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 福間知之

    福間知之君 特例法質疑に入る前に一、二お伺いしたいと思います。  最近、今国会も終盤を迎えまして、特例法というのももちろん一つの重要な問題ではあります。しかし、この国会が、例のロッキード問題に端を発しまして、かなり国民一般にも大きな関心と、あるいはまた疑問を投げかけるような経過をとったことは御承知のとおりでありまして、この数日の間に、大蔵大臣の所属されるいわゆるいまの内閣さらには与党内部を含めまして、幾つか重要な動きが報道されております。大臣の顔を見ていますと、非常にさわやかそうでございますが、心中少なからず複雑なものがあるんじゃないかというふうに察しておるわけですが、特に昨日も記者会見が、テレビあるいは新聞で報道されておりました。その中で、この国会が終われば三木内閣大蔵大臣として大平さんは重大な決意をすると、こういうふうな意向を表明されたようでございますが、これは一体どういうことでございますか。
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのうの記者会見で、私が申したことは、そういうことを言った覚えはないんで、見出しはそういうふうに書いてあるようですけれども、私が申しましたことはこういうことです。政治というのは、政治家というのはいつも真剣に対処せなければならぬわけでございまして、現在も対処いたしておりますし、国会終了後も真剣に対処いたしますということを申し上げたわけでございます。
  5. 福間知之

    福間知之君 見出しには、私の持っている新聞は書いてないので、中身に書いてあるわけでございまして、真意はいまおっしゃったとおりと、こう承っておきます。  ところで、この会見の中で一、二お聞きをしたいんですが、財政状態あるいはまた経済状態についての所信の表明とあわせまして、来年度は物価調整減税程度のものは考えなきゃならぬかもしれない——どういう表現でございますか知りませんが、そういうふうな趣旨が述べられております。これは十七日でございましたか、この委員会で私もかなり時間を割いて所得減税問題についての今年度あるいは来年度等に及ぶ大臣所信をお伺いしたんですが、そのときにはこういう御意向は言葉の中では感じ取れなかったんですけれども、そういう含みがおありということなんですか。また、そういう考え方を今年度、来年度に向けての税調に諮ってみようというふうな御方針があるわけですか。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうことではございませんで、財政赤字財政から脱却する道を手がたく進めてまいる上におきまして、一般的な減税というものは大変むずかしいということを申し上げるところにアクセントがあるわけでございます。しからば選択的な増減税というような問題が、したがって、一般的な減税というようなことはむずかしいとすれば、選択的な減税というような点が全然状況によって考える余地が、だんだんいまから封じ——できないということをいまから断言していいか悪いか、その点は私はまだ自信がございませんので、そういう点につきましては今後の事態推移を待たなければなりませんけれども、おととい申し上げた趣旨は、一般的な減税ということは大変困難であるというところに力点があると御承知を願いたいと思います。
  7. 福間知之

    福間知之君 さらにこの特例法の問題に順を追ってお聞きをしたいわけですけれども、その中にも五十年代前半財政見通しとしてかなりの増税ということが予測されるわけなんですけれども、いわゆる付加価値税についてはまだ考える段階には至ってないと、こういうことを表明されているようですが、どうですか。  さらには、例の租税の特別措置等については、一般論としてはさらに今年度に引き続き厳正にチェックをして改正を考慮していかなきゃならぬと、こういうふうにおっしゃっておられるんですが、財政展望等からいきますと、私はむしろ国民に対する一つ指導的ポリシーとしては果たして増税減税かということで考えて見ると、やはり政府立場ではそのいずれかを力強く指し示していく、またそれにかかわる国民の合意をあらゆる諸政策を駆使して図っていく。こういう私は責任のあるといいますか、非常に熱情のほとばしって出るような姿勢というものが非常にこれから望まれるんじゃないかと、そういうふうに思うんです。その点いかがですか。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 福間委員のおっしゃることよくわかるわけでございまして、そういう確信を持って政策のDRに当たらなければならぬことは申すまでもないことと思います。けれども政策をいよいよ自信を持って作案して世に問うということに至るまでには十分の国民理解が得られるまでにこなれた政策でなければならぬわけでございます。財政がこのような状況にございまして、できるだけ早くこれは正常な財政に中央、地方を通じて戻さなければならない。同時に、五十年代前半にいろんな課題を抱えておるわけでございます。経済計画というようなものも持っておるわけでございまして、そういうものに必要な財源も充足せにゃならぬというような立場を持っておるわけでございまして、そういうことをお示ししてあるわけでございますから、国民がそれではこれだけのものにはよろしいからそれに対して十分の財源を充足することについて政府考えることについてわれわれも理解を示そうという雰囲気ができるような政治でなけりゃならぬと思うのであります。いま経済計画もこの間閣議で決まったばかりでございます。それからそれに伴う財政収支試算というようなものも一応国会を通じて世に御検討をいただいておるわけでございますので、そういったものを通じまして五十二年度の予算をどう考えたらいいか、税制をどのように切り盛りしていくべきかという見当をこれからつけていかなけりゃならぬと思うのでございまして、それに確信が持てますならば、こういうラインでそれじゃ税制調査会にもひとつ御検討願おうということにしなければなりませんし、その御討議がほぼ煮詰まったところで丁寧にPRいたしまして国民理解を求めるようにしてまいらにゃいかぬことは仰せのとおりだと思っておるわけでございます。仰せ趣旨を手順に翻訳してまいりますならばそういうことになろうかと私は思っております。
  9. 福間知之

    福間知之君 そこで四十八年のいわゆるオイルショック、あるいはまたそれに対応する国内における財政金融政策等、顧みればいろんな経過が思い起こされるわけですけれども、今日膨大なこの特例公債発行をも余儀なくされるに至ったそれら経済的なここ数年の歩み、いわゆるただいま見るような財政危機と言われる状態というものを招来した背景、理由、そういうものについて財政当局である大蔵省責任者大臣としてはその点をどのように反省されておられるか、お聞きをしたいと思います。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今度の不況は大変従来の不況に見られない長い不況でございまして、従来の不況でございますならば一年内外で不況から脱出するという経過をたどっておったと思います。それからこの不況の深さでございますが、たとえば生産ピーク時とそれからボトムとの落差を見ましても、今度の不況の場合は大変な落差でございましたけれども、従来の不況でございますならばそうでもなかったわけでございまして、したがって、そういう従来の不況でございましても、今度の不況はとてもこれはえらい不況である、構造的な不況であるなんていうことで言われたんですけれども、まあ一年ぐらいたつと何ということなくこれは循環不況で終わるということであったと思うんでございます。ところが今度の場合は非常に長い不況でございますし、彫りの深い不況でございますので、従来のような感覚で、とらえられない不況であったと思うんでございますが、私ども財務当局がこれを受けとめた場合の感じは、その彫りの深さ、その波長の長さについてこれほどまでのものとは思わなかったところに一つ反省、大きな反省があるわけでございます。いまから振り返ってみますと、こんなにまでなるとはよもや思わなかったのにという悔恨が先立つのでございます。したがって、五十年度の大型補正予算が端的に物語っておりますように、三兆八千億もの減収を記録するというような、減収を見込まなけりゃならぬというようなことになりまして、大型補正をお願いせにゃならぬということになったわけでございます。それが一つ大きな反省、われわれの反省でございます。しかし、広く海外の状況を見ましても、程度の差こそあれ、先進国いずれも同じようなスタグフレーションの波に洗われておるわけでございまして、日本のように資源の足場が必ずしも弱くない国におきましても相当大きな衝撃を受けており、日本と同様な不況にさいなまれておったわけでございますから、わが国が受けた衝撃というものも、こういう先進諸国と比較いたしまして、いまから考えてみるとそうあるべきであったのかもしれませんけれども、当時そういうことは予想できなかったということは、端的に申しまして財政当局が深く反省せないかぬことであると考えておるわけでございます。こういう反省の上に立ちまして、財政政策の運営ということにつきましては、非常な緊張を持って常時当たらなければならぬということと、些事もゆるがせにしてはならぬという意味におきまして、今度の経験はわが財政当局にとりましては、ある意味において非常に高い授業料でございましたけれども、私は非常な貴重な経験になったのではないか、この経験は将来にわたって有効に生かし切らなければ国民に申しわけないんじゃないか、そういうように考えております。
  11. 福間知之

    福間知之君 ただいまの大臣の御答弁については、気持ちとして私も了解するところはございます。しかし、これは後ほどにも少し触れたいと思うんですけれども金融財政の采配を振るう当局とされて、そういう立場でしぼって考えてみますと、やはり異常なまでのインフレーションの一つの反動といいますか、結果として、政策当局はどうしてもインフレ早期収拾ということに、当然とはいえ主力を注がれたわけでございます。それが財政金融一般をやや抑制的にしてしまったということが私は言えるんじゃないがと、こういうふうに思うわけです。さらに、インフレが収拾する過程に入りましてから、その結果としていわば成長率が、名目的な成長率というものが伸び悩む、というよりも急速に鈍化する、そうして税収の鈍化というものを当然のこととしてまたもたらす、そうして今日に至る、さらに打ち続く大臣がいまおっしゃられたような予想外長期不況税収不足の持続、それが今日財政危機と言われる事態を私はやはり招来したんじゃないか、そういうふうに考えるわけです。このことは後ほど関連してまた少し触れたいと思います。  そこで、大蔵省の方は一時こういうふうなことを考えておられたと承るんです。というのは、この不況回復させていく政策選択の中で、いわゆる公共投資設備投資とか消費というものを引っ張っていくという姿は、さながら死んだカブトムシを小さなアリが一生懸命引っ張っているような姿なんだと、そうして財政というものが景気対策上での切り札に必ずしもなり得るとは言い切れない、こういうふうなお考えがあったやに思うのですが、いかがですか。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御質問の御趣旨がどこまで理解できているかちょっといぶかられますが、申すまでもなく経済を支えておる最大の基盤は、何といっても最終消費なんでございますが、財政による公共投資というようなものはそんなに大きな、過大な力を持っておるとは私ども考えていないわけでございます。しかし去年、おととしと、あなたがおっしゃったように、比較的抑制ぎみ財政経済運営してまいりました。いわば需要管理をやって総需要抑制をやってまいりました場合に、抑制をやる場合に、公共投資というのを押さえ込んでまいりましたので、ノミナルに申しても公共投資額をふやさないというようなことをやってまいったわけでございます。だから、そういうことは相当無理であったということが一つと、   〔委員長退席理事中西一郎君着席〕 それから今日、景気の総需要抑制策効果は一応出てまいりましたので、経済政策の基調を景気回復と雇用の安定に向けなければならぬというようになってまいりました場合に、仰せのように、公共投資一つの期待をかける方が消費拡大よりは日本の現実におきましてはより有効に働くのではないかという配慮と一緒になりまして、公共投資予算面におきましても、あるいは財投面におきましてもある程度ふやしてまいりましたことは事実でございます。したがって、私ども特に公共投資景気回復における力というものを過大視いたしておるものでもなければ、過小視しているものでもなければ、それなりの評価をしながら、そのときどきの状況に応じて適正な規模をあんばいしてまいったと自負いたしておるつもりでございます。
  13. 福間知之

    福間知之君 それにつきまして、そういうお考えであるから、今度の財政展望なり、あるいはまた財政収支計算書等を拝見いたしますと、公共投資あるいはいわゆる振替支出ですか、そういうもので大体五十五年ぐらいまでのそれぞれの予測値が出ておりまして、一五・五%余り公共投資では伸びる、あるいは振替支出でも二八%ぐらい伸びる、こういうふうに上がっているようであります。このことは、民間のいわゆる消費が依然として伸び悩みを続けるだろうというふうにお考えになっているからですか。
  14. 高橋元

    政府委員高橋元君) ただいまの御質問財政収支計算、私ども国会にお出ししております数字で、公共投資振替支出伸び一般会計ベースで一五・五ないし一六となっておりますのは、過般閣議決定に相なりました五十年代前期の経済計画、それの書き示しておりますところの五十五年のナショナルのマクロの姿というものを下敷きにしてやっておるわけであります。したがいまして、公共投資伸びが一五・五と申しますのは、この期間における政府固定資本形成伸びが一三%であるということ、それを踏まえて一般会計ベースに換算したわけでございます。それから、振替支出の八・五%という対国民所得比から、昭和五十五年に一〇%という国民所得比に上げてまいる、その過程国民経済ベースでは年率平均一七%ぐらいで伸びていくはずである、それを一般会計ベースに戻しますと一六という数字になるわけでございます。したがいまして、全体としての国民消費伸びがやはり経済バランスの中で五十五年に向けて伸びてまいるということを当然に前提といたしておるわけでありまして、この財政収支計算をつくりました過程で格別の財政の面からの民間消費個人消費支出というものについての想定を置いたわけではないわけであります。
  15. 福間知之

    福間知之君 公共投資の私は伸び率が高過ぎると言っているわけじゃなくて、いま御質問したのは、というよりも、むしろ民間消費伸びの方の見方というのが果たして妥当性があるかどうかということに疑問を持ったから、公共投資関係でお伺いしたわけであります。  で、その点と、まあ公共投資が大体一五%強伸びていく、逐年伸びていく、絶対額でも逐年増加していますね。その中身について、しからば経企庁の方はどういう展望を持っていられるか。たとえば、私たちはいままで、いわば四国に橋を二、三本かけるというふうなことはどうも感心しないじゃないか、あるいは新幹線もこういう財政状態の中で拡大をしていくということについては疑問があるじゃないか、もっと身近な生活関連施設への整備投資をやるべきじゃないか、その方が景気推移に対応して公共投資というものをうまくコントロールできるのじゃないか、こういうふうなことを述べてきたわけですけれども、大方のひとつその中身を、わかっておれば御説明いただきたいと思います。
  16. 高橋元

    政府委員高橋元君) 先ほど私の御答弁の中でちょっと一ところ足りないところございましたのでこの際申し上げますと、個人消費支出は、この財政収支試算の基礎になっております経済計画ベースで申しますと年率一三%弱という形で伸びるように想定されております。  そこで、公共投資の御質問でございますが、この公共投資を五十五年において一般会計ベースで八兆一千三百億円というふうにはじいておりますが、これは経済計画の中で部門別公共投資額というものが想定をされておりまして、部門別公共投資額社会的消費の増加と申しますか、社会資本の充実の要請にこたえて五カ年間において累積額で百兆円という想定でございます。百兆円の中で、いまお示しのありましたたとえば環境衛生でございますとか、公共賃貸住宅でございますとか、厚生福祉でございますとか、そういうような国民生活に直結する部門伸びというものは相対的に高く考えられておるわけでございますが、百兆円のこの配分につきましては経済審議会、その事務当局でありますところの経済企画庁におきまして、関係各省部門別のつり合い、それから重要性事業自体緊急性事業投資効果などを考えまして、バランスをとって配分をしておるわけでございます。数字を、もし必要でございましたら申し上げますが……。
  17. 福間知之

    福間知之君 結構です。後でまたできたら……。
  18. 高橋元

    政府委員高橋元君) それではまた後ほど、御質問に応じて……。
  19. 福間知之

    福間知之君 ところで、本年度この特例公債発行に関しまして、当初の予算から三兆七千五百億円という膨大ないわゆる赤字公債をはらんだ予算として提出され、決定をされているわけでありますが、さらに五十五年度まで、この特例公債そのものは漸次発行額は減少するものの、建設公債を含めますと毎年七兆円を超す発行という展望を出しておられます。これはまず基本的に財政法第四条の精神というものをいわばないがしろにすることに通じないのかと、私、本会議でもこの点を申し上げたんですが、もう一つ納得のいく御説明がいただけない、改めて大臣所信をお聞きしたいと思うんです。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私ども、去年、ことしと、引き続き特例債発行をお願いいたしておるわけでございますし、ここ二、三年またその状態残念ながら続けざるを得ない条件があると見ておるゆえんのものは、財政収支試算でもお示しいたしましたように、現在もくろんでおりまする財政需要というものを頭に置いて、しかも五十年代前半赤字財政から脱却するということを同時に達成しようというために、それだけの時間帯の中で——それだけの時間を与えてもらいたいということでございます。今度の不況が、先ほど御説明申し上げましたように非常に彫りの深い長期不況でございまして、わが国経済国民生活に相当深刻な影を投げておるわけでございまして、これから経済がもう健全な姿になり、財政もまた健全な姿になってまいりますために、短期間の間にやりたいわけでございますけれども、それはなかなか容易じゃございませんので、また、そうやることは大変無理なことになりかねませんので、これだけの時間を何とかかしていただいて、その間に財政法精神にのっとった財政健全化が実現できるような状態を招来したいということでやっておりますので、財政法精神にもとるということではなくて、財政法精神をこの困難な状態に何としても生かさなければならないという苦心のあらわれとして御理解を賜りたいと思います。
  21. 福間知之

    福間知之君 大臣のそういうお気持ちは何とかくみ取りたいとは思うのですけれども、実際はしかし、この財政展望のあの二つのケースを見ましても、五十五年に至るまでの間特例公債、IIのケース、十兆七千七百億円ですか、Iのケースで十三兆五千七百億円の累積になる。事実上のこれはやはり赤字公債とも言っていいと思うのですが、建設公債も合わせてみますと四十八兆二千億ないしは五十一兆四千億と、こういうふうな巨大な公債残高になるわけです。それに対する金利の支払い、国債費が今年度一兆六千七百億円から逐年二兆円台、三兆円台とふえていきまして、五十五年には四兆円をはるかに突破するという水準になっております。このことは、したがって、その間に財政硬直状態というものが抜き差しならなくなると、これは景気見通し税収見通し関連があると思うのですよね。思うのですが、いかにも私はこれは厳しい目で見詰めざるを得ないなと、こういうような感じを受けているのですが、いかがですか。
  22. 高橋元

    政府委員高橋元君) 公債費が累増して、五十五年度におきまして一般会計歳出規模に対しましておおむね一〇%を前後すると、ケースによって違いますが、それくらいの割合になってまいるわけであります。現在の公債費、つまり元本の償還費と利払いでございますが、これが六・九%ぐらいでございますから、約三%程度公債費が上がってまいるということは、その面からとらえれば確かに御指摘のように非常に大きな硬直化要因でございます。全体としまして、一般会計公債をともかくも建設公債の原則の中にはめてまいるためには、四条公債をもって賄い得る公共投資部門以外の部門、つまり一般的な部門、すなわち一般歳出というものに対して、一般歳入の割合をふやしていかなきゃいけない。これを私どもよくすき間という言葉で言っておりますけれども、すき間、つまり建設公債発行可能額というものに対して建設公債の現実の発行額を、それを下回らせるということをやっていきませんと、建設公債原則が維持できないわけでございますが、現在は特例公債にすでに入っておるわけでございますから、この計算どおりといたしますと、いわゆるすき間というのがマイナスになっておるわけでございます。  そこで、一般部門での硬直化要因、たとえば「振替支出」、それから「その他」と、大まかにくくってございますが、「振替支出」 「その他」「国債費」と、この三つは、本来ならば一般財源をもって、普通歳入をもって賄うべき歳出でございます。そういうものの歳出部門にありますところの硬直化の要因というのをいろいろ財政制度審議会その他にお諮りをしまして、逐次解消を図って、また、一方で国民負担の状況をも考慮しながら、「税収」「税外・その他」の普通歳入の増加も図っていくと、そういうことでないと、この収支試算が示しているような姿にならないわけでございます。そういう意味で、硬直化要因全体の総合的な、また掘り下げた検討というのはもちろん必要でございます。そういう方向でぜひ努力をしていかなければならないと思っておりますが、そういう努力を織り込みまして、お手元にごらんになっておられるような五十五年度の姿に達するわけでございます。その努力を五十五年から先にさらに積み重ねてまいりますならば、建設公債原則の範囲内で公債の圧縮がさらに可能になってまいる、こういうふうに私どもは思っておりますし、ぜひそうしていかなければならないというふうに考えております。
  23. 福間知之

    福間知之君 まあ経済景気というのは生きものですから、いまの当局のお考えである程度自信を持っていられるようですが、ちょっとお聞きしたいのは、私はわからないんですけれども、「国債費」と、もう一つの「公債対象経費」というのがありますね、これに二兆円以上の開きがあるんですが、それは一体何ですか。
  24. 高橋元

    政府委員高橋元君) 「公共投資」と書いてございますのは、若干違いますけれども、ほぼ公債対象経費と見合っておるわけでございます。これは歳出の関係でございます。つまり公共投資から揮発油税とか、そういった公共投資に本来充てるべき特定財源を差し引いた残りが建設公債を出せる限度額でございます。したがいまして、五十五年の姿でごらんいただきますならば八兆一千三百億円の公共投資がございますが、ほぼこれに見合った公債対象経費が六兆五千八百億円、そのすき間が、その差額は揮発油税その他の特定財源、大まかにさようにお考えいただきたい。これは歳出面の勘定でございます。「国債費」と申しますのは、発行いたしました、また累積をいたしておりますところの公債の元本の一・六%を繰り入れますとか、利払いを行いますとか、そういったことに要する消費的な支出でございます。
  25. 福間知之

    福間知之君 先ほど言ったいわゆるすき間というのは、この対象経費と公共投資との差額だということですか。
  26. 高橋元

    政府委員高橋元君) ちょっと御説明が行き届きませんが、すき間と申しますのは、「公債金収入」というのが歳入の方にございますが、「公債金収入」と「公債対象経費」との差額というふうにお考えいただきたいと思います。
  27. 福間知之

    福間知之君 わかりました。  次に、公債発行に伴う金融的な問題についてお伺いしたいと思います。  一つは、景気の刺激をねらって発行される建設公債、さらには特例公債を含めまして、その規模はかなり大きいものですが、結果としてそれが民間の企業における必要資金の問題、過不足、そういうことについて関連性をどういうようにお考えになっていますか。
  28. 戸田嘉徳

    政府委員(戸田嘉徳君) いまのお話でございますが、大局的に申しますと、国債が相当多量に出されるという経済状態といいますのは、民間の方の経済活動が非常に沈滞いたしまして、そのために税収等が非常に落ちてしまう。それを補うという役割りが非常に強いわけでございます。したがいまして、これを金融面から申し上げますと、いわゆる民間の方の資金需要が非常に減っておるわけでございます。それをちょうど補足するといいますか、という形で国債が出るわけでございます。したがいまして、大局からいえば、そこでバランスがいたしまして金融的にはいい形でいくというのが、大きな形で申すとそういう形になるわけでございます。ただし国債が相当出されまして、その効果もありまして次第に景気回復してまいります。適切なところまでなら問題はないと思いますが、ややそれがさらによくなるということになりますと、どうしても民間の方の資金需要が出てまいります。そうしますと、そこで国債との間で金融面で窮屈になるという問題が出てくる可能性はございます。その辺のところはまさに金融調節で、そういう面で、たとえば国債の方が税収等の上がりによって相当歳入の方も余裕が出てくるという見通しがあれば、国債の方を若干カットするということもございましょうし、また民間の方も余り行き過ぎるというのはこれはまたよろしくございませんので、また金利機能を発揮しまして、その中に民間の資金需要もやや抑えられるというような形でそこに調整が行われる、かように存じております。
  29. 福間知之

    福間知之君 いまおっしゃったことわかるんです。結局発行した初期は大して問題はない。漸次国債発行の、景気浮揚の刺激政策効果を発揮してきて、企業の生産増大あるいはまた利益の向上、留保率の向上、そうなってきましていわゆるフル稼働に入っていくとなると資金需要拡大してまいります。そうすると、そこで一つ問題はインフレーションですね。これはまあひとつ問題として考えておかなければならないし、またその資金需要に対して資金貸し出しというものをどうするのかということによって、いわゆるクラウディングアウトというんですか、資金需要を追い出してしまうと、民間のね。こういうふうな現象が出るとも専門家は言っているわけであります。調べたところによると、昭和四十二年から四十八年に至る建設公債発行過程におきまして、金融機関のこの貸し出しの増がずっと行われたという記録が残っておりますけれども、したがって、そのときにもうインフレーションがやはり一方において進行すると、こういう実績があるやに思うわけですけれども、この膨大な今日的な次元でのこの公債発行額が適宜適切に削減されない限り、いま言った金融調節、インフレーションという難題がどうしてもつきまとってくるんじゃないだろうか。景気回復すればするほどむずかしくなってくるんじゃないか。公債を削減するということに、そのときに踏み切っていけばもう別ですけれども、まあ政策当局としてはその点どういうふうに判断されようとしていますか。
  30. 戸田嘉徳

    政府委員(戸田嘉徳君) いまおっしゃいましたとおり、まあ最近少し前までインフレが起こったわけでございますが、これは私どもの見解では建設公債が出されたために起こったとは考えておりません。つまり、あれは円の切り上げを回避するというようなこと、それからあの当時非常に国際収支がよくなりまして、まあよくなり過ぎまして、どんどん外貨が入ってまいりました。そこで非常に文字どおりの過剰流動性が出てきてしまったということによって非常にインフレーションが起こったというふうに考えております。私どもとしましては、今後の財政金融政策の目標は、あくまでも景気を安定成長の形で維持していく、ということは同時に、片方では絶対的に物価というものを無視し得ないということでございます。まあいわばそういう二本の柱、さらに言えば国際収支もまたそこで調整を見ていかなきゃいかぬわけです。したがいまして、どうしてもその基本というところはやはり成長率にある、適正な成長率を維持するような、物価を見ながら適正な成長率を維持していけば、国際収支の方もそれに大体見合う形のいい形に落ちつくはずでございます。  まあそういう形で持っていくわけでございますので、いまおっしゃいましたように、景気が過熱してくれば当然そこでまずは金融政策、それから必要に応じて財政政策というものも使われまして、その過剰な景気を抑圧する、つまり過当な有効需要をやはり削減する措置をとらなければこれはいけないと思います。そういう形においては、いわゆる金融政策としましては、金利機能の活用、あるいは必要に応じてまた日銀の窓口規制ということも当然これは考えなければいけない。そういう形で、民間の方の資金もある程度需要とおりにはまいりません、それは抑えないと大変なことになります。同時に、国の方もそういうときには当然やはり税収が上がってくるわけでございます。したがって、その辺から見ましても、やはりこの国債を発行しないでも済むという経済的な基盤も当然できてくるわけでございます。その辺はよく判断いたしまして、財政金融の妙を発揮しまして、さようなインフレの再び起こるというようなことは絶対にさせないようにいたしたい、かように考えます。
  31. 福間知之

    福間知之君 その点なんです。絶対にひとつインフレを起こさないというふうにしたいという精神的な気持ちはよくわかるんですよ、これが非常に私はわが国の場合危険がある。先ほどちょっと触れられましたように、金利機能の問題とかいう点についても、これ後ほどちょっと触れることにいたしたいと思いますが。  そこで、いまおっしゃった、そういう金利機能等の問題を含めながら私はお伺いをしていきたいと思うのですけれども、まずこの国債の発行をめぐって、その是非に関しましてかなりまあ長い期間問題の議論が行われてきました。しかし、なかなかこれは決着はつきそうもありませんけれども、私はその是非の問題と合わせまして、日本における国債発行をめぐる環境、制度といいますか、そういう点について外国との比較もある程度念頭に置いて考えた場合に欠陥があるのかないのか。金融政策というのはどうも国債の管理政策に従属をさせられてきたというきらいがないだろうか。それがいわゆる日銀等の通貨供給政策にも影響を投げかけ、ひいてはインフレの危険が常に胚胎をしていくということになるんじゃないのか。また、公債発行規模の多いか少ないかという問題につきましても、いわゆる市場における歯どめ装置、機能というものが生かされてないんじゃないのか。結果とてしそれは財政支出の膨張というものを一面的に促進する、助長するという傾向を生じますし、国債発行というものを、言っちゃ悪いですけれども、比較的安易に考えがちにしちゃう、こういうことになるんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  32. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 先ほどの銀行局の方からの御説明並びに御質問をわきで伺っておりますと、余りにも貨幣的な側面ばかりが強調されてくるような気がいたしますので、二、三の数字を私の御説明に先立ってちょっと触れさせていただきたいと思います。  それは四十四年から四十七年度までの四年度間に、民間の金融機関が貸し出した総額が、概数で申し上げまして、四十四年度が九兆五千億、四十五年度が十二兆、四十六年度が十六兆六千億、四十七年度が二十一兆九千億、このように三、四年の間に倍増するような非常に大きいふえ方をいたしております。しかも、その間におきますいわゆる製造工業の稼働率指数が、四十四年度では一〇一・九、四十五年度では九八・七、四十六年度では九三・九、四十七年度では九六・六と、こういう数字になっております。すなわち、片一方で相当の稼働率が高い状況において、しかもこのように急速な貸し出しの増加が行われた、これは先ほど先生御指摘のように、貨幣的な側面から見て貸し出しが非常にあった。しかも、その地合いが稼働率としては相当高いところで行われた、この二つの要因があったわけでございます。ところが、この貸し出しが四十八年度、四十九年度と減ってまいりまして、ごく最近の指数はまだデータが整っておりませんが、稼働率指数の方は最近のところまで出ておりますけれどもこれは五十一年度の二月、私の手元の一番新しいものでもまだ八六・四と、これは八〇%台からやっとそこまで上がってきておるということでございまして、確かにいろいろな形で資金供給——マネーサプライをふやしてまいりますことは、これは景気を刺激する面がございます。しかし、ただいま先生御指摘のように私の聞き違えかもしれませんが、三、四年前のインフレと申しますか、価格が非常に上がってきたと、こういう時代の状況とはその辺の地合いが非常に異なりますので、そこらを考えながら、金融当局もかじをとっておると思います。したがいまして、もちろんそこに油断があってはなりませんけれども、金融当局が相当慎重にやっていく限りにおいては御懸念のような事態は起こらないんではないか、そういう感じがいたします。したがいまして、片一方で歯どめの方でございますが、これも国債の量というのが国民経済の総量、すなわちこれも金融面で申しますれば公共部門の資金需要、企業部門の資金需要、家計部門の資金余剰のありさま、こういったものとバランスがとれていく限りは、若干ふえていっても、これは経済に悪影響をもたらすものではない。しかもその間にあって、国債についてはたびたび御指摘がございますように市中消化の原則ということをきちっと守ってやっておりますから、その限りにおいてこの両方が歯どめになりまして、あとそれを補うものに私ども財政当局としてできるだけのことをする。金融当局もそれなりの配慮をするということであれば、歯どめも十分に、かつ有効に働いてくるんではないか、このように考えております。
  33. 福間知之

    福間知之君 ただいまの御答弁関連しまして、稼動率が上がってきたと、いま申された年次では比較的緩やかに上がってきたと、望ましい姿できたということですね。
  34. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 稼動率指数でございますから、その上がり下がりも問題でございますが、その絶対水準、一〇〇%に近いところにあると。これは指数でございますから、稼動率そのものが一〇〇%であったという意味ではございませんけれども、稼動率指数が相当ハイレベルにあったということがインフレなり景気の過熱ということに対する悪影響を及ぼしやすい、そういう地合いであったということで申し上げた次第でございまして、その動きももちろん大事でございます。しかし、これも逆の意味で稼動率指数が余り低いところに長く逗留しているのも、これも決して好ましいことではないと思います。
  35. 福間知之

    福間知之君 じゃ、これからの推移についての見通しとして、現況では八六、七%の稼働率指数だと、こう言われるんですけれども、それが果たしてことし下期にかけまして、経済見通しのように年間六%程度の成長を支えるような企業稼働率というものが達成できるかどうか、少しまだわかりませんが、逆に考えましてまだそうは行きにくいかもしらぬぞと、まだ景気浮揚というのが思ったよりも持続しないかもしらぬぞと、大蔵大臣がきのうの記者会見でおっしゃってますけれども、本物にはまだなっているとは楽観できないと、こういう見方されておりますけれども、だとすれば、今度は企業がいま過剰の雇用を抱えたり、過剰の設備抱えてますから、一般的には後ろ向きのいわば不況対策資金というものが要るということも考えられるわけです。かなり長期的に要るということも考えられるんです。  そうすると、先ほど私ちょっとお聞きしたように通貨供給の関係、貸し出しの関係で、そういう場面に直面したときに、果たして金融政策としてどうなんだと。これはすぐれて私は、このむしろ金融政策だけの責めに帰すべき問題ではなくって、ここ数年の大きな環境変化の中でとらえれば、将来にわたる日本の産業構造なり、あるいはまた新しいイノベーションなり、また新たな望ましい需要の創出なり、そういうものと深く関連していると思うんですけれども、金融政策だけにしぼった場合に、この膨大な国債発行に伴ういわゆる貸し出し政策の調整という面で、非常にこれはむずかしいんじゃないか。むずかしい問題があるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  36. 戸田嘉徳

    政府委員(戸田嘉徳君) いまの御質問の前に、ちょっと先ほど御質問ありました金融政策として何か国債を発行しやすいようにしてきたんじゃないかという御質問がございました……。
  37. 福間知之

    福間知之君 いやいやそうじゃないです。
  38. 戸田嘉徳

    政府委員(戸田嘉徳君) そうでございますか、それじゃそれはあれいたします。  それでは、ただいまの御質問でございますが、いま理財局長がお答え申し上げましたように、その設備投資というものが、まだ、何といいますか、稼働率において余裕があるということから、それでは景気が非常にまだまだ浮揚しないんじゃないかというようなお話でございますが、私どもが金融を通じて見ております限りは、後ろ向き資金需要というものも非常に落ちついてきております。ただ、若干の特殊な業種につきましては、まだ残っておりますが、全般的に言うと非常にそこは落ちついてきておるということから見まして、いまおっしゃいましたような、まだまだ景気は悪い状態じゃないかというふうには、私ども考えておりません。さればと申しまして、前向きの資金需要、つまり設備投資関係のが出てまいったかというと、これもきわめてまだ落ちついておる、いわば両方落ちついているわけでございまして、そういうところで非常にいまのところでは金融の、率直に言うと平穏という形でございます。したがいまして、こういう形で輸出の方は幸い非常に堅実な歩調で伸びているように考えられます。こういう状態が続いてまいりますと、いまおっしゃいましたような金融上の困難ということはそれほど考える必要はないのじゃないか。もちろん私どもとしては何が起こっても対処できるように常に警戒はいたしておりますが、全体的に言うとそういう状態でございます。ここのところは別段そう御心配いただくような状態はないと、かように判断しております。
  39. 福間知之

    福間知之君 先ほど少し答弁の中で触れておられたようなんですが、いわゆる市中消化ということを私たちやかましく言っているわけですね。日本の場合は実質的な意味での、厳密な意味での市中消化ということは、大変不十分じゃないのか。たとえばいま当局から出されていますこの公債発行特例に関する法案の参考資料を見ましても、この十五ページにありますが、「国債の所有者別構成比」国際的な比較表が出ているんですがね。これで言いますと、アメリカにおいては比較的高くて、政府と中央銀行の保有は四六%、イギリスは二七・九%、西ドイツは一一・四%ですね、政府と中央銀行の保有分合わせますと。  それから、それらの保有率と金融機関の保有率と、それから若干の海外における、これはわずかですけれども、その他という中にいわゆる機関投資家とか、個人のあると思うんですけれども日本の場合は機関投資家なり個人というものがわずかに九・一%という数値です。アメリカは三〇・一、イギリスは二九・三、西ドイツは二四・二、フランスに至っては八九・九%、こういうふうに大蔵委員会の調査室から出ている資料ですけれどもございます。  そこで私は、日本の場合にこれでいいんだろうかと。観念的に私、国債の発行はもうだめだということで考えるんであれば別ですけれども、各国とも複雑な経済推移の中では、やはり国債というものの活用が適宜行われるだろうということを一応前提にして考えた場合ですよ、そうでないとこれは議論になりませんので、一応そういう前提にして考えた場合に、市中消化のあり方というものが問題にならないだろうか、日本の制度として非常に未発達ではないのか、その点どうお考えですか。
  40. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 市中消化という言葉の定義でございますが、これはまず中央銀行が引き受けて、それに見合いの通貨を増発することがあれば、これは直接引き受けそのものがマネーサプライの増加になる、これがインフレの要因になる、そしてまた裏返せば財政の節度にも非常に楽な環境をつくると申しますか、そういう影響がございます。その意味で中央銀行が引き受けるのを禁止するというのが市中消化の原則でございます。したがいまして、ただいま国債を発行いたします場合に、日銀が引き受けということはやっておりません。全部これは民間の金融機関ないし種種の機関投資家または個人、そういったものが買っておるわけでございます。  そこで、ただいま御指摘のございました国債の所有者調べ、これになりますと、現在のストックがどうなっているかということでございますが、ここにもございますように、確かに日本の場合には中央銀行の比率がわりあい高うございます。これは中央銀行の機能の一つとして、経済が成長する、これに応じまして民間経済活動にも種々の所要資金の増加ということが見られます。私どもが成長通貨の供給と呼んでおりますが、これを日銀がやっておるわけでございます。国債が出ます前、昭和三十年代まではあるいは政府保証債を日銀が買うとか、あるいは金融債を買うとか、そういう形でオペレーションをやりまして、これによって資金を供給しておったわけでございます。ところが、日銀のサイドとしてみれば、日銀が持つ資産は確実性の高いものであればあるほどよいと、その意味では金融債なり政府保証債よりはストレートに国債の方がよいということで、国債が導入されましてからは、このオペレーションの対象として国債に相当のウエートを置いてきております。そこで、先ほどの市中消化の原則とこれが矛盾いたさないように、ある程度の期間市中に滞留いたしました国債のみをオペレーションの適格債ということにいたしまして、これを買うことによって市中に成長通貨を供給しているわけでございます。ただ、たまたまここにございますこの年代までの期間と申しますのは、日本の国債の総額が比較的少なかった。したがいまして、日銀の成長通貨の供給、これも量的には限られたものではございますが、その中で相当量が国債を買うというオペレーションを通じて通貨の供給がなされたということで、結果として中央銀行が相当大きいシェアを占めております。  それからもう一つ指摘しておきたいと思いますのは、日本におきます金融市場ないし債券市場の性格が外国と若干違うということでございます。これは御案内のとおり、たとえば外国の企業であれば、これが所要資金を調達いたしますには、日本と比べますと、たとえば内部蓄積が非常に大きいからまずこれを使う、そしてその次に外部資金を調達する場合にも、相当量は直接金融と呼ばれております、あるいは社債を発行するとか、あるいは増資をするとか、そういう形をとっております。ところが、日本の場合にはどうしても銀行から借りるという間接的な資金調達形態が多い。これが裏返しになりますが、たとえば五十年度にどれだけの貯蓄がなされたかというのが日銀から発表されておりますが、五十年度の貯蓄実績約三十三兆七百億円のうち、これは個人の貯蓄も法人の貯蓄も若干入っていると思いますが、貯蓄実績三十三兆七百億円のうち、証券形態をとりましたものはわずかに三兆四千二百億円、率にして一〇・三%でございます。そして実に二十六兆一千八百億円、率にして七九・二%が預貯金という形態をとっております。これが日本のたとえば個人の預貯金もそうでございますが、金融市場全体の実際の姿でございますので、こういう姿を前提にして国債を出すということになれば、個人が貯金されたものをそれを間接に銀行に買っていただく、あるいは資金運用部が引き受ける、そういう形で国債を発行せざるを得ない。その意味で外国のような場合と非常に違った形態をとっておるということを御了承いただきたいと思います。
  41. 福間知之

    福間知之君 いわゆる先ほども申しました政府なり中央銀行の保有率が高い、その中には買いオペというものが、したがって各国よりはかなりの高さで行われざるを得ない背景があるのだ、その理由としていま貯蓄の内訳が発表されたわけです。一般に日本は貯蓄率が高いと、こういうように言われているそのことと通ずるわけでございますけれども、ということは、さらに考えてみると、そういう高い貯蓄率の中で国債発行というものを今後数年にわたってやっていくとなると、いわばここの統計にあらわれたような傾向は簡単には変わらないと一応類推、推察されます。そういう姿はいいんだろうか、私必ずしも貯蓄率を観念的に減らすべきだとは思っていませんけれども、社会保障がおくれているとか、いろいろな日本的特殊事情の中で貯蓄率が日本の場合は高いわけでございまして、考えようによれば、これはまだまだ日本国民生活は貧しいということのあらわれでもあるのです。私はそう思います。  だから、その問題にまで発展させますと議論がわき道にそれますけれども、証券市場の近代的な育成という面から考えた場合に、やはり国債の魅力というようなものをもっとふやさなきゃならぬのじゃないかと、先般長期国債構想を大蔵当局考えているという発表がありましたし、中身は私は詳しくは存じませんが、結構なことではないか、あるいはまた国債を担保にして個人融資をする、こういう構想もあるやに報道されておりますが、とするならば、それは私結構だと思うのですけれども、それだけじゃなくて、さらにもっと制度として思い切って近代化をしていく、市中消化を促進する、そして貯蓄率の必要以上の高さというものは自動的に政府がされる、これは単に赤字公債あるいはまた建設公債だけじゃなく、社債その他を含めまして、公社債の市場の育成というふうな面で考えておるわけですけれども、そういう点についてのこれからわが国のとるべき方向は果たしてどうなのか、シンジケート団にかなり強い指導性を発揮して割り当てをするというようなやり方から脱却することが、先ほど来言っているように歯どめの機能にも役立つと、それはやっぱり新しい行き方じゃないのかと、こういうようにも思っているのですけれども
  42. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま御指摘の点は、大筋として私どもも大体同じような感じを持っております。そこで高い貯蓄率がずっと続いてまいりました結果、日本の一人当たりの金融資産と申しますか、貯金であるとか、債券であるとか、株券であるとか、こういったものを合計しました数字というのは、ほぼ西欧の、たとえばドイツぐらいに近いところへきております。ただいま正確な数字を持ち合わせておりませんので、具体的にはちょっと御説明できませんけれども、大体ドイツ並みの程度のところへきておる、しかもその中で、先ほども申しましたような預貯金のかっこうをとるものが非常に多いというのが日本の特質でございます。これは私ども流動性選好と呼んでおりますが、必要なときにはいつでも金出せるように、そういう形の金融資産というのを非常に好んで持っておる、これがある程度の額へ来れば利回り選好と申しますか、金利をもう少し高くかせげるもの、こういったものに移っていくだろうし、さらにそれがふえれば株券のようなものにまで進んでいくであろう、そういう大きな筋を頭に置きながら施策をやっていきたい。そして国債がこういう大量に発行されるようになったこと、これは事のよしあしその他はともかくとして事実でございますから、そしてまた国債というのは国の信用をバックにいたしました最も安全な投資物件でございますから、これを一つのてこにいたしまして、ただいま先生の御指摘のような形へ持っていくことができないかどうかということは、私ども一つの課題であろうと思っております。  そこで、御指摘になりましたように、そうするには国債に魅力をつける、いわゆる魅力ある国債に持っていくということが一つの重要な課題になってくるわけでございます。そういたしますと、どうすれば魅力ある国債になるかということは大きく分けて二つの面があろうかと思います。  一つ発行に係る問題でございます。それからもう一つは流通市場に係る問題でございます。  まず、発行市場の方から申し上げますと、これは発行条件がやはり相当魅力のあるものでなければいけないということが一つございます。こうなりますと、いろいろな他の預貯金あるいは公社債、そういったものとの均衡、バランス、これが一つ問題になってまいります。たとえば卑近な例を取り上げて恐縮でございますが、郵便貯金に定額貯金というのがございます。これも相当の金利が払われております。国債の金利がこれより高くなければ郵便貯金の方に流れていってしまう。それからまた他の公社債とのバランスが余りはずれるようであれば、これは他の社債の方を買ってしまうかもしれない。そしてまた一方には、発行者の立場としての区切りがございまして、冒頭にも御議論がございましたように、金利が一分違っても何百億、何千億という違いが国庫の負担として出てくるわけでございます。これは特に後代の国民の負担になるわけでございますから、発行者としてもその辺は十分考えなければいけない、こういったいろいろな要素を考慮いたしまして、たとえば昨年の十一月、十二月に長期金利の一連の改定をいたしました。このときに公社債は〇・五%程度金利を下げたのでございますが、国債につきましては〇・一%弱しか下げなかった、そういう意味で、相対的に魅力をふやすというようなことを私どもも努力してまいってきております。これは今後ともそういった面には十分配慮しながら、なかなか相反する要請が多いものでございますから調整にはむずかしいことが多うございますが、その点を十分考慮し、そして冒頭申し上げました大きい線の方策にかなったようなかっこうで政策を引っ張っていきたい、このように考えております。  なお、第二の国債に魅力を持たせる一つの面である流通市場を整備する、すなわち国債を十年間持っていようと思って買った方が、何らかの事情で途中で換金せなければいけないというような場合に、それがやりやすいような形にし、そして国債の価格形成もうまくいくようにするということで、この点につきましても昨年来、たとえば債券に関する流通金融を拡大するとか、あるいは取引所における売買手法を改善するとか、私どもとしましては一歩一歩そういう形で国債が魅力があり、国民がみんな持ちやすいものにしたいという形に持っていきたいという努力は重ねております。  そこで、最後に一言申し上げたいと思いますが、そのような努力の結果、これは金融環境の変化ということも一つございますが、個人の場合には会社ないし金融機関よりは金融環境変化の影響は少ないのでございますが、個人消化の割合という、個人消化の絶対額が、昨年は相当低くて、年末でも三百億をやるのがやっとだったと、昨年の十二月でございますね、それが最近では五百億を超えるオーダーで毎月出せるようになった。この辺、五十年度の初めに月間百五十億とか百八十億とかやっと個人にさばいておったのを見ますと、その何倍かのものがさばけるようになってきた。これは私ども着実な努力の結果であろうと思いますし、今後ともそういった方向の努力は重ねてまいりたいと思っております。
  43. 福間知之

    福間知之君 まあかねがね言われてきておるわけですけれども日本における国債発行政府の御用金調達的な思想なり、やり方で行われてきたのではないか、それはいけないと、それを改めていくということにやはりはっきりと方向を転換すべきだと思う。ただし、その場合に一つの問題は、先ほど議論になっています市中消化というものの不十分さですね。確かにいまのお話のように最近改善されていると、こういうことでございますけれども、これも私ちょっと疑問があるんですけれども、確かに昨年の年間を通じた個人消化額は大体百数十億円、十二月でようやく二百九十二億円だと、こういうように伺っていますけれども、最近それが五百億を突破するようになったと、こういうわけなんです。私は先ほど触れたような一つの私なりの問題意識からして、公債市場というものの現状に大きな問題があるんじゃないかという観点からは、まだまだこれはこの程度の金額では、この膨大な回債金額と比べてみまして、そんなに市場が機能してきたなとは私思えないんですがね。ただ、この程度でも改善されたということは、金利、現在の国債の利回りですね、社債との比較におきましてもそんなに高くないのに、何かというと、やっぱりマル優なり特別マル優制度なりというふうなものの枠がありますですね。マル優で三百万円、それから特別マル優で三百万円ですか、家族を入れまして千二、三百万円ぐらいのマル優の枠になるんですか、仮にその程度のしかし預金を持っている人がどれだけおるのかというと、預金のできる人がどれだけおるのかというと、それはできませんよ、簡単には、おりませんよ。結局いま五百億余りの消化水準になったといっても、それはやはり一部のきわめて限られた資産家の方々によって買われているにすぎない。やはり国債発行のいわば必要性というものは、財政状態なり経済状態に起因するわけですからね。それはやはり国民的にやっぱり理解もしてもらわなければならないし、また国民的な合意の上にこの財政危機を突破していくというふうなことを考えた場合に、やはり国の政策の延長線上で考えた場合に、市中消化というものの意味をもっとやはり厳密に考えていく必要があるんじゃないか。まあ私もそんなことを感じているということであります。
  44. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 御指摘でございましたように、所得税の非課税の限度をフルに活用する方はこれは相当恵まれた立場の方だろうと思います。  そこで、それでは庶民はどうなんだということでございますが、先ほどもちょっと触れましたが、日本の場合に郵便貯金の制度というのがございまして、これが国の信用をバックに国民のお金をお預りしておる。外国の場合にはこれに対応するものとして貯蓄国債というのを発行いたしましたり、いろんな例がございます。私の手元にいま一九七三年度でちょっと古くなりかけた数字でございますが、外国の数字がございますので御披露させていただきますと、アメリカの場合には、これは郵便貯金という制度をやっておりません。国の信用を背景にして零細な所得の方々ないしは一般の国民大衆から集めておるのが貯蓄国債という形をとっておりますが、これが六百八億ドルで、邦貨換算約十七兆円でございます。イギリスの場合には貯蓄国債と郵便貯金と両方の姿をとっておりますが、貯蓄国債で三十八億七千円ポンド、約二兆五千億円、それから郵便貯金で二十億八千万ポンド、約一兆三千五百億円、両方足しましても、邦貨換算三兆八千七百億ぐらいが国の信用をバックに集めておる貯蓄国債と郵便貯金の残高でございます。西ドイツも貯蓄国債と郵便貯金を両方持っておりまして、マルク建ては省略させていただきますが、円建てに直しまして、貯蓄国債の残高が約三千百億円、郵便貯金が一兆五千四百億円、両方足して一兆八千五百億円でございます。フランスも二つの制度を持っておりまして、貯蓄国債が一兆七千億円、郵便貯金が三兆四千億円、両方足して五兆一千億円、こういうのがこの貯蓄国債と郵便貯金の各国における残高でございます。  この比率がどのぐらいになっているかというのを仮に国民所得を分母にして見てみますと、アメリカの場合には五・七%であり、イギリスの場合には一〇・四%であり、西ドイツの場合には二・五%であり、フランスの場合は九・八%となっております。これに対しまして、日本の場合に、御指摘のように、個人消化を主たる目的とした貯蓄国債というのは出されておりませんが、郵便貯金の残高は、これは約二十二兆、国民所得に対しましても、一七、八%という高さになっております。と申しますことは、外国ではあるいは国債の形をとって個人消化を楽にする、しかも、それは比較的所得の低い人でも買えるようにするという政策をやっておりますが、日本の場合には、そのファンクションは郵便貯金の、特に定額貯金という制度が相当やっておりまして、これが外国の個人消化の国債よりもはるかに大きい金額をもうすでに集めております。それはあるいは国債の引き受けに使われ、あるいは財政投融資を通じていろいろな国家目的、公共目的のために使われておるということでございます。それこれ考えますと、その上にある国債だけを切り離して外国とすぐ比較するということは若干無理があるので、やはり郵便貯金から国債かな全部引っくるめ、またそれが金融市場、貯蓄市場、債券市場、そういったものの中における姿を全部引っくるめて考えて、日本的と言えば余りにも日本的かもしれませんが、日本の現状に適した国債の発行の仕方をしていく、しかも、冒頭御指摘ございましたように、中央銀行の直接の引き受けには頼らない、そういう形で運営していく、これが日本の国債の姿ではなかろうかと思っています。
  45. 福間知之

    福間知之君 ただいまの資料はできましたら後ほど参考にいただきたいと思うんですけれども
  46. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 理事会でそういうふうに決まりましたら、私ども喜んで御提出したいと思います。
  47. 福間知之

    福間知之君 いまの御説明の中でも、日本の貯蓄残高と小口の貯蓄の総残高というものが、かなり高いという、そこに、また別の角度から言えば、少し問題があると思うんですけれども、じゃ、資金運用部の資金で、今度のことしの場合に限っても、どの程度を引き受けるのかというと、決して多いとは言えませんね。それは郵便貯金だけが原資であるとは言いません、資金運用部資金は。しかし、高度成長時代に運用部資金、財政投融資に回したり、その他幾つかありますね、詳しく私存じませんが、厚生年金の還元融資にしたってそうでしょうし。中には適切な使い方だなと判断されるものもこれあり、そうではなかったんじゃないかなと、こういうのもこれあり、また特に今日のように国債がこのように大量発行されるとなった場合には、貯蓄残高との関係考えても、政府のこの資金運用部の資金というものの使い方、改革をする必要はありませんか。
  48. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 私、いま国債との関連で、国債の市中消化に運用部の果たした役割りを申し上げた次第でございます。運用部自体のあり方につきまして、また財政投融資全体のあり方につきましては、従来とも私どもその改善には毎年心を痛め、そしてこれが国民全体の利益に還元されるような形で徐々に改善いたしてきておるつもりでございます。また、もちろん今後にわたっても絶えず反省は重ねていかなければいけない。ただ、いま現在でここが悪いというようなところは、私ども直ちには思い当たらないというのが現状でございます。
  49. 福間知之

    福間知之君 次に、先ほどちょっと問題にいたしました、公債発行インフレーションに直接波及しないというためにはどういうふうなことが前提として必要かということ、当局のお考えを聞きたいと思います。
  50. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) これは、基本は中央銀行引き受けを通ずる、あるいはその他の形を通じて急激にマネーサプライをふやしたりなどいたしまして、そしてインフレの要因をつくらない、これが基本であろうと思います。
  51. 福間知之

    福間知之君 確かにそれはもう私も同感であります。しかし、その場合の日銀当局、金融当局としての政策選択における判断、その自由度合いなり、あるいはまた独自性というもの、自主性というものについては問題がないだろうかという疑問が一つ、それからもう一つは、先ほど来触れていますように、公社債市場の未発達という現状、結局法人なり個人が資産選択の一つとして公債というものを保有するという、そういういわゆる市中消化というものの不十分さ、それが一つ、歯どめとしての機能を発揮しないんじゃないだろうか、あるいは金利の人為的な規制というものが、いわゆる臨時金利調整法に基づいて行われているわけですけれども、市場における金利の自由決定というものの裁量を押しとどめているんじゃないだろうかと。この金利問題などを考えていきますと、これは大変なことでございましょうから、簡単にはそれは目の先どうするということはむずかしいと思うんです。これはやはり日本における金融機関の構造的な問題にも関連しますでしょうし、長期にわたってやっぱり考えなきゃならぬと思うんですけれども、せめて中期的には弾力的なこの金利の運用なり金融の運用なりというようなもの、先ほど触れました金融政策の独自性というものに関連して弾力的にこういう金融政策全般をやはりやっていく。硬直した姿ではいけないんじゃないだろうか。そういう姿ではもう財政状態、あるいはそこから生まれるたとえば大量の公債発行という、そういうただ一つ政策に迎合的に追随するという以外に金融政策はなくなってしまうんじゃないのか、そういうふうに考える。結果としてインフレーションというものがやはり非常に危険になってくる、こういうふうに思うわけです。   〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕  そこで、これは何回も私申してきましたのでいいですが、そういう認識に立てば、本会議でも私触れたんですけれども、いわゆる金融政策決定していく機構として存在する日銀政策委員会、あるいはまた金利の調整委員会というんですか、そういう委員会中身というものを吟味してみる必要はないだろうかと。財政はこれなりに大きく危機的状態を示す、公債発行しなきゃならぬということで、国民的なこれは大問題なんですからね。そういう場合にいまの日銀の政策委員会のあり方は、形の上では民主主義的な形をとっているようですけれども、事実上は政府の一部の首脳あるいは大蔵、日銀の一部の幹部等によって秘密主義的に運営されているのではないか。もう少しこの委員会等の構成あるいは運営について考え直してみるということが望ましいんではないかと思うんです。いかがですか。
  52. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 初めに一言だけ金融政策と国債との絡みで御説明させていただきたいと思います。  私どももこの国債が量的にこれだけ大きくなってまいりますと、特に金融面に与える影響も大きくなってまいりますので、金融政策当局とは非常に緊密な連絡をとってやっております。たとえば本年度の例をとりますと、本年度全体の金融市場の需給関係見通しを頭に置きながら計画的な発行をやっていきたいということで、五月にも相当多額の国債を出すことにいたしましたが、これもただいま御指摘のような事情が背景にあり、私どももそれを強く認識しておるからでございます。その意味におきましても、年度間を通じての国債発行の計画がなるべく立てやすいような環境が一刻も早くできるようにということが私どもの切なる希望でございます。
  53. 戸田嘉徳

    政府委員(戸田嘉徳君) いま日本銀行の独自性、それから金融政策がどうも国債政策の方に追従したんではないかというようなお話ございました。私ども日本銀行はいやしくも中央銀行としまして通貨価値の維持ということは一つの最大な責務の一つでございます。したがいまして、従来日本銀行がさようなことはいささかも考えたことはないと確信しておりますし、またそういうことで全くの独自性といいますか、そういう通貨価値の維持という責務を十分考えて行動をいたしておる、かように確信いたしております。  それから、金利の活用とかいわば金融政策の弾力化というものにつきましてはおっしゃるとおりでございます。これは私どもとしましてもできるだけ今後金融政策の弾力的に、これはいままでもやってきたわけでございますけれども、金利というものに限定しました弾力化でございますね、これも十分考えてまいりたい。せんだって金融制度調査会で中間取りまとめというのをいたしました。それは金融機関の役割りというテーマについてでございます。その中でも金利の弾力化ということを言っております。御承知のように、わが国の金利というのは貸し出し金利につきましては短期の方の金利は法定されております、その最高限が。しかし、長期の方は法令上の制限はございません。特に公社債の金利というものは何ら法令上の制約はございません。これは市場の実勢を見ながら関係者で決めていくと、こういうような形に相なっておるわけであります。ただ、預金の方の金利が、これは先生御承知のように臨金法で基本的なものが決まりまして、それをもとにして日本銀行がそれを少し細かくブレークダウンした形でガイドラインを設けていくという形でやっております。その預金金利も動かないわけではございません。これはいままででも動かしてきておりますが、やはりその貸出金利、まあ公社債金利含めましてそちらの動き、あるいは公定歩合の動きから見ますとはるかに動きが少ない。これはもう事実でございます。その辺率直に言いまして、金利の弾力化というときにそこんところがむしろ一番問題になってくるわけでございます。それにつきましてはかねてから問題になっております郵便貯金の金利との整合をどうやっていくかというような問題にまでどうしても入らざるを得ないわけなんでございまして、その辺はもう少し時間をかしていただきまして、私どもとしてもその点はできるだけ勉強いたしまして、今後金利をなるべく弾力的に動かし得るというような体制を何とかしてつくっていきたい。そうしませんと、なかなか文字どおりの金融の弾力的運用、運営、その効果ですね、十二分に発揮されにくいということは申し上げざるを得ないと思います。その点は十分努力したいと思います。  それから、いま先生のおっしゃいましたこの日本銀行のいわば意思決定機関であります日銀政策委員会、これがどうも構成がどうであろうかというようなお話でございます。これにつきましては日銀法で規定がございまして、ただいまは御承知のように、日銀総裁、それから任命委員といいまして、金融関係の学識経験者が二名、それから商工業関係の学識経験者が一名、それから農業関係の学識経験者が一名、それに行政庁の代表が二名、大蔵省経済企画庁がそれぞれ出しておりますが、こういうところで構成をされているわけでございます。これらの委員はいずれもそれぞれのいままでの立場ということではございませんで、この規定によりますと、いずれもそのたとえば金融業に関しすぐれた経験と識見を有する者ということでございまして、そういう知識というものをフルに発揮していただいて、その立場——固有の立場というものじゃなくって、そういう経験知識を大局的に活用していただいて、それで御審議を願う、こういうことになっておるわけでございまして、当然それは全国民的な視野からの判断が行われているわけでございます。   〔委員長退席理事中西一郎君着席〕 しかも、その審議がどうも密室ではないかというお話でございますが、その審議過程では自由な討論が行われて、いろいろな資料も検討されて重要な政策決定されるわけでございまして、そういうことがまた外部に出ますということは、これはまたそれがいろいろと投機のきっかけになりますとかいろいろかえってそういう弊害も生じるおそれが十分あるんじゃないかと思います。したがいまして、その決定された事積というようなことは、いずれもこれは事後的でございますけれども、報告されるわけでございます。したがいまして、私どもとしましてはただいまの構成でよろしいんじゃないかと、かように考えております。  なお、参考までに申し上げますと、日本銀行には参与制度というものが別にございまして、これは十三人でございますが、これはいろんな各界からの立場の方が入っていただいておりまして、総裁が常時といいますか、時折といいますか、そういうお集まり願って、いろいろと御意見を伺って判断の参考にさしていただくというふうなこともやっているわけでございます。  なお、金利調整審議会につきましても、これは臨金法に規定がございまして、その規定によりまして大蔵省の銀行局長、それから経済企画庁の調整局長、それから日銀の副総裁、それから金融界の代表者七名、それから産業界の代表者三名、それから学識経験者二名ということでございまして、ただいまでもその学識経験者のお二人は大学の先生と労働代表の方が一名、かような構成に相なっております。これも非常に御熱心に専門的にいつもいろいろ審議していただいておるわけで、その機能は十分発揮されている、かように私ども考えております。
  54. 福間知之

    福間知之君 私はもちろんこのいまのような複雑かつ高度な技術社会におきまして、この国の経済財政全般について一定のあるいはすぐれた知識を持った専門家、テクノクラートが必要でもあるし、そういう方が議論をされるということに異論をはさむものじゃありません。しかし、委員会の運営そのものが非常に私は閉鎖的じゃないかと、議事録ぐらい公開して、より多くの関係団体なり識者に批判を仰ぐというような、そういう何といいますか、安全弁そういうことがもう少し考慮されていいんじゃないか。だから議事録ぐらいは出していくという考えですね。またいまの構成のお話でございますと、確かに専門家だけでございまして、今日の社会を構成している各階層、集団そういう中でも私は消費者の代表するような立場とか、職場の労働者を代表するような立場というふうな人は西ドイツのように、そういう機構に参画していくというようなことをぼつぼつ考えていってはどうかと、そういうふうに思うんです。専門家であるからいいということでなくて、専門家であるからまた逆に弱点としてそのときその情勢に応じてやはりいろいろな圧力が私はかかってくる。それに対する抵抗がない、できない、抵抗力がない。そういう欠陥を私は持っていると思うんですよ。何か日銀の最高政策に属することだから、それはもう何か雲の上で慎重かつ専門的にやることが正しいんだとか、ふさわしいんだとかというふうなことじゃないと思うのです。もう日本経済日本財政が新しい時代に突入したんですから、しようとしているんですから、やはりそういう機構の改革等も思い切ってやっていくということでないと、国民的な協力というものはやっぱり得がたくなっていくんじゃないか。まあ日本のこれからの私は社会、これからのあり方を考えてみて申し上げているんですが、決して理想じゃないと思うんです。これは英知と決断だと思うんですね。その点所信をお伺いいたします。
  55. 戸田嘉徳

    政府委員(戸田嘉徳君) 最初の審議内容の公開でございますけれども、これはやはりその取り扱っております事柄の性質上きわめて経済的に影響力の大きなものでございます。そして経済というものはまたそういう影響がきわめて拡大されやすい性格を帯びているもんでございますので、性格から申してどうも私どもには公開するのは適当でないと考えます。現に臨金法の規定におきましても第十条で議事の秘密というのがございまして、「審議会の議事は、すべて秘密とする。」と、法律でお決めいただいております。それはそういうような性格があるからである、かように私ども考えております。  それから、後者の点につきましては、まあ、私ども決していまの政策委員の方々がいろいろな外部からの圧力に屈して曲がった判断をされるとは夢思っておりません。現にその身分保障ということも法律上規定されておりますし、それから兼任は一切許されない、たとえば公選に基づく公職の候補者になることはできない、あるいは一切の政治活動はいかぬとか、あるいは兼業が大体禁じられております。商業もいかぬ、非常にいわば独立した委員というものが制度的につくられ、またそれが身分保障されるということで、きわめてそこに自由な活動が確保されているわけでございます。そしてその内容がすぐれて経済的な問題でございますとか、そういうそれぞれの立場でなくして、全くの高度の知識というものの活用でそういう判断を願う、こういうお仕事でございますので、私どもといたしましては、ただいまの構成で差し支えないんじゃなかろうか、かように考えております。
  56. 福間知之

    福間知之君 この問題はもちろん大きな問題ですし、いま、法律を示されましたけれども国会としてもまた今後対処しなきゃならぬということであろうかと私は思います。それはともかくとして、いままでの金融政策、そのデシジョンをするときに、またその結果考えてみて、非常に、何といいますか、好ましい機能を果たしただろうかと、これは顧みればオイルショックの直前ごろから始まった過剰流動性ですね、売り惜しみ、買い占め、いろんな諸悪の根源がここにありとまで騒がれた時代がありました。そのときに必ずしも適切なオペレーションが行われたとは言えないということが定説になっているんですね。さらにまた、逆に今度は七四年から七五年に、これは不況のときですけれども、このときの金融政策景気の過度の落ち込みをやはり防止すべきだったのに、むしろ物価の抑制あるいは賃金の抑制というものに力を入れ過ぎちゃったということがあったんじゃないだろうか。結果として雇用問題もかなり深刻になった、まあこれは一面的な見方かもしれません。私全面的とは言いませんけれども、傾向としてそういうことを感じとったんですが、だから今後こういう国債を発行した厳しい財政状態あるいはまた各金融機関、各企業それぞれが非常に複雑な今後動きをとると思うんですけれども、それに機敏に適切に対応して、やはり誤りなきを期していくと、こういうことを私は強調したいわけで、そのために一種の安全弁としてこの重要な政策決定の機関である委員会のあり方を、もう少し一般国民理解されるように切りかえることはできないかなと、こういうふうに感じたから申し上げたわけであります。  時間がまいりましたので、最後に一つ、国債の償還の問題ですね、これについて本会議で私も触れたんですけれども、具体的に少し御説明をお願いしたいと思います。
  57. 高橋元

    政府委員高橋元君) 起債の償還財源をどのようにするかということと、国債の償還方式をどうするかという二つの問題がございます。昭和四十年に、当時の財政特例法をもちまして二千数百億円の国債を出しましてからこの方、すべて日本のいま出しております新国債は満期に一括償還をするという方式をとっております。したがって、保有者と国との間では七年または十年の満期日に全額償還をする、そういう条件で発行をいたしております。したがいまして、償還が起こりますのは発行から七年または十年後に全額について起こってくると、そういう形で償還計画を予算と同時に国会にお出しをしておるわけであります。そのために必要な財源をどういうふうに持っていくかという問題でございますが、これにつきましては四十年の国債発行後二年間を経まして、財政制度審議会でいろいろ議論をしていただいて、国債償還制度と申しますか、減債制度というものを確立をしたわけです。御案内でございましょうけれども、減債制度と申しますのは、前年度首の国債残高の一・六%というものを予算をもって国債整理基金特別会計に繰り入れる、いわゆる定率繰り入れ。それから剰余金、これは前々年度ということになろうと思いますが、前々年度の剰余金から、たとえば揮発油税その他の剰余金等、また交付税相当額等、将来に向かって補充するものを差し引いた残り、いわゆる財政法六条の剰余金、この二分の一を公債償還財源として繰り入れる。それから交付国債とか出資国債というものがございますが、そういうものは償還期の定めがございません。要求払いというようなものもございますし、それから年次償還というものもございますので、そういうものにつきましては予算繰り入れをしていく。全体として償還財源を補うために、いま申し上げました交付国債、出資国債というものの償還のための予算繰り入れを補って、さらに予算繰り入れを行う、こういう制度が四十二年にできまして、それはすべての公債に共通するものとして戦前国債それから外貨債それから建設公債特例公債すべてを通ずる制度として確立をして、それによって国債発行ないし管理の節度というものを示すという趣旨で現在に及んでおります。これは、総合的なこのような減債制度というものは国債の償還のかなめでございますから、今後ともこれによって償還の確立を図っていきたい。  ただいまの特例公債につきましては、満期に全額現金償還をいたしますということを昨年の臨時国会大蔵大臣から国会に御答弁申し上げて以来、今度の国債も満期に借りかえを行わないという形で法案の御審議をお願いをいたしておりますことは御案内のとおりでございます。したがいまして、特例公債の償還を支障なく行うために、先ほど御答弁申し上げましたような制度を十分使いまして、この財源の確保を図ってまいりたいと思いますが、何よりも特例公債を出しております際に、特例公債の償還財源を事前に積み上げるということをいたしますと、公債をよけいに出さなきゃならぬということになりますので、まず第一に五十五年、五十四年という見通しをお出ししておりますけれども特例公債発行する、それに依存しなければならないという財政状態から脱却をして、その後に償還財源の円滑な確保というものを図っていく、それに全力を挙げていくという覚悟でおります。
  58. 福間知之

    福間知之君 償還の計画、これは法律でも出さなきゃならぬということで出しておられるわけですけれども、これもそのとおり必ずしもいくというふうに考えるわけにもまいりません。これからの経済財政の運営、状況いかんによると思うのですけれども、いま申されましたようなこの返還の展望。特にこの間も問題になっていましたように、百分の一・六相当額の返還率というものですね。これは私も詳しくわからないんですけれども建設国債と特例公債とでは償還期限が違うんだから、常識で考えてもおかしいのじゃないかとこういうふうに思うのですが、そういう点は別に問題ないんですね。これ何遍も言われているんですけれども、ぼくは頭が悪いんではっきりわからない。
  59. 高橋元

    政府委員高橋元君) 百分の一・六を算出いたしました根拠は、いま先生御指摘のように、当時建設公債をもって当初なされるところの公共投資の平均の耐用年数、資産の耐用年数が六十年であるということを計算根拠としてはじいたものであるということは事実でございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、現在の減債制度というのは、総合的な減債制度でございますから、その中には外貨債もあれば戦前国債もある。建設公債もあれば特例債もただいまでは入っております。そういうもの全体をまとめまして、前年度首の国債残高の百分の一・六を入れていく、それは建設公債の場合には借りかえをある程度の前提にしておるのに、借りかえの全くない特例公債の場合それで足りるかとおっしゃいますと、それは計算上の問題としては確かに満期になりますと特例公債の償還のために余分の予算繰り入れをしなければならぬということが起こってくるかもしれない。それをどう平準化していくかということが一つの問題でございます。同時に定率繰り入れというものも公債の現在高が現在のように——余りいいことではないと思いますけれども一般会計規模とほぼ同じくらいに国債残高をいま擁するようになっております。そこから繰り入れてまいります定率繰り入れのたまりというものがかなりございます。そういうものを使って——定率繰り入れのたまりがございますが、その定率繰り入れのたまりを使って、これは理財局の国債管理政策が今後どう展開されていくかによることでございますけれども、事前に繰り上げ償還をやるとか、買い入れ消却をやるとか、市場の状況に応じてそういうことをやっていくということによって特例公債を減らすことも可能でございます。それから、そのたまりを使って満期に金繰り上は特例公債の償還に充てるということも不可能ではないと思います。  それから、平準化していきますために事前に予算繰り入れを行う、これは将来の財政状況が、また経済情勢がいま申し上げられるだけのはっきりした計数的な私ども根拠を持っておりませんものですから、いつ幾らということは申し上げられないわけでございますけれども財政状況を見まして、公債の償還には絶対支障のないように処置いたすという決心でございます。
  60. 中西一郎

    ○理事(中西一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  61. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  62. 大塚喬

    ○大塚喬君 初めに、やっぱり大蔵大臣、せっかくなじみに願ったのに、きょうの新聞を見ますというと、国会終了後に重大決意、こういうことの報道がなされておるのですが、率直に言って、ずばりおやめになるのですか、どうなんですか。そこのところを、ちょっとひとつ、せっかくいろいろ御指導をいただいて大変、大臣の席をやめられるということになると私も考えがあるものですから、ひとつ。
  63. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 重大決意などという超弩級の言葉を使った覚えはないんです。それは新聞の方の用語でございまして、私は政治家といたしまして、国会中はもちろん真剣に提出法案の審議その他に最善を尽くさにゃなりませんけれども国会が終わりましても一生懸命に政治に精進いたしますと、そういうことを申し上げただけでございます。
  64. 大塚喬

    ○大塚喬君 新聞報道というのは事実無根である、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。真の政局安定を目指して行動するというようなことで、どうもニュアンスとしては、大臣これは重大決意をしておやめになるのかなと、こういう、けさ新聞を見て率直に印象を受けたわけですが、どうなんですか。こういう重大な、この重大というのはいろいろ意味があろうと思いますが、財特法の問題が国家財政に重大な影響がある、こういうことで私どもも精力的な審議を継続いたしておるところでありますが、どうも大臣の真意というのが把握しにくいということで、いまのお答えのように全くそれは新聞報道の誤りであると、こういうふうに受けとめてこの審議を続けてよろしゅうございますか。
  65. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政局の安定のためにこれまでも努力してまいりましたし、国会終了後も努力するのは当然の責任だと考えております。
  66. 大塚喬

    ○大塚喬君 政局安定を目指して行動するというのは当然の話、これはもう言葉で言えば全くそのとおりだろうと思うんですが、その具体的な内容というのが、この審議にかかわって、大蔵大臣が政局安定のためにやめられるのか、引き続いて努力をするのかという点は、大変私はこの審議に重要な関係があるものと、こう考えたわけで、大臣の言葉では大臣の真意というものは一体どっちなのか、そこのところがどうも疑問でございます。ひとつ、もう一度率直な所信をお聞かせいただきたいと思います。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政局安定のために最善を尽くすのが私の本意でございまして、政局不安定のために画策するなんというつもりは毛頭ありません。
  68. 大塚喬

    ○大塚喬君 要領を得ませんが、だんだん本題の方の時間もあれなものですから次に進みます。  一つだけ、大変前回の質問関連して基地跡地の三分割案利用計画について一回だけ、ひとつ質問をさせていただきますので、委員長にもひとつ御了承願っておきたいと思います。  大蔵省の貸付譲渡条件の改定、この案によりますと、国も赤字、地方財政赤字という中で地方財政に与える影響がきわめて甚大なものがあると、こういう予測をいたします。改定案どおり実施されますと、東京、千葉、神奈川、いわゆる首都圏内における大規模な基地を抱えておる都道府県、地方団体、たとえばキャンプ朝霞の場合、埼玉県の県と関係市、あるいは東京都内の大規模基地の東京都と関係の市町村、それから神奈川県における大規模基地の県と市町村、この改定と改定後によって地方財政が大きな負担増をされる、この試算について検討されたことがあるのかどうか。現状の地方財政の中でこの改定案によってそういう問題の処理が可能なのかどうか、大変私は心配をいたしております。で、その心配のもとと申しますのは、これらの府県というのは、いずれも人口急増県であります。教育施設、さらに避難緑地の設定の問題、これに重大な支障ができて、今後地方自治体の運営というものがこの負担増に圧迫をされて、きわめて困難な状態に陥ることを恐れるものであります。で、きょう重ねて質問をいたしました理由は、小委員会で案が決められ、ごく近い将来に中央審議会から大臣あての答申がなされる。そうしますと、今回以外にちょっと発言の機会がございませんので、特に私といたしましては、一体そのようなことで大蔵省当局がこの三分割方式というものを見切り発車をする、そういう考えがあるのではないかと。そのことを急げば基地問題というものはいたずらに混乱を増大をして、基地の跡地利用というものが結局は宙に浮いて事の処理を困難にさせる、こういうことを懸念をいたすわけであります。  で、一つお尋ねをいたしたいことは、いま申し上げたことに関連をして、見切り発車をやるのかどうか、これはそういう三分割方式というものを地方自治体や何かの同意、理解を得ないままに見切り発車ということでこれを実施に移すのかどうか、その場合に大蔵省責任として、先ほど申し上げた、そういう心配について一切の責任大蔵省当局が負うのかどうか、この一点だけについて初めにお尋ねをいたしておきたいと思います。
  69. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 基地が返還になりまして、それぞれの地元から利用計画が出されておることは私どもよく存じております。そこで、その利用計画を具体的に見ますと、あるいは学校をつくるものであったり、あるいは公園をつくったりするものである。そういうことになりますと、先生お尋ねのように、その財源どうなるんだということとの関係で見ますと、人口がふえれば仮に基地の返還がなくても学校はつくらなければいけない。まあ公園ですと多少そこは早くつくるか後でつくるかの、その辺の選択の余地はあろうかと思いますが、小学校であるとか中学校であるとか、その他のものはつくらなければいけない。それはそういう面から把握いたしまして、各地方公共団体の財政需要を計算いたしますときに、その辺は全体として考えますれば入っておるわけでございます。  そうしますと、現に基地の返還のあったところとないところとを比べますと、ないところはそれぞれの値段で買わなければいけない。あったところはその減額の幅が地元にとってはあるいは不満足であり、または不十分であるとお考えかもしれませんが、それがない場合から見れば、財政的な負担は軽くて済むということになりますので、ただいま先生が疑問を御指摘になりましたけれども、私どもの方で全体を見ております限り、そういう義務的に設置をしなければいけないものであれば、かえって基地が返ってきた方が財政負担は楽な面があるということをひとつ御了承いただきたいと思います。  それから、何せこの土地が非常に貴重な日本においてまとまった土地が返ってくる、この機会に公園をつくりたいというような話がございますが、これらの場合におきましても私どもはその市町村の財政が許す限度で、そして過重な負担がかからない限度で地元としてもお考えになるでしょうし、またこれらの施設のあるものは、返還になります過程におきまして国としてもある程度財政負担をして、基地の統合というようなことも防衛庁を通じてお願いして返ってくるようになったというような経緯もございますので、その辺はやはりある程度財政負担はしていただかなければいけない。  そこで、最後の御指摘の点でございますが、どうも先生のお言葉を返して恐縮ですが、見切り発車とかいろいろ言う言葉は、これは地元の方のお気持ちをあらわす上ではそういうお気持ちを持っておられる市町村もあるように承っておりますけれども、全体としての方針をどうするかということを立てていく。これは前回次長からも御説明をいたしたかと思いますが、しかるべき地方団体の長の方の御意見も拝聴する場を設けながら、その上で結論を出したいということでございます。地方には地方の立場もございましょうが、国としてもある程度行政には筋を通してやっていかなければいけない面もございます。そしてまたこの基地の問題をいたずらに延引させるのも決して私どもの本意でもございません。そういった意味からできるだけいろいろな、場合によっては相矛盾する要請を認識し、そしてその中でできるだけ国民全体の利益にも合致するような方向で何らかの妥協点を見出していきたいと思っております。
  70. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 午後二時十五分まで休憩いたします。    午後一時五十五分休憩      —————・—————    午後二時二十分開会
  71. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き五十一年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  72. 大塚喬

    ○大塚喬君 先ほどの基地跡地の問題で一言だけ申し上げて財特に入りたいと思います。  いろいろ考えが述べられましたけれども、この新処理基準の設定ということが結果としては窮迫をしておる地方財政をより一層財政的に負担を重からしめて地元の反発、そして今後の問題に必ず強い反発を受けるだろうということを心配をいたしております。ですから、強く要望申し上げておきたいことは、この新処理基準については十分地方自治体の意見を聴取をし、尊重をし、その意向を盛り込んだ形においてこの新処理基準の設定なぜひつくっていただきたいということが一点。それから第二には、具体的には地方の財政負担を重からしめないような配慮を必ず考慮していただきたいということが二点であります。そして、これらの問題について、もし紛糾が起これば、私は挙げて大蔵省責任であるという点を指摘をして、この問題について一応結びたいと思います。  次に、財特の問題についてお尋ねをいたします。  五十一年度財政は五十年度に引き続き大幅な税収不足と、こういう問題でこの財特の法案が提出をされ論議を続けておるわけでございます。で、三兆七千五百億円、それといわゆる四条公債と合わせて七兆二千二百五十億円、この膨大な公債依存の財政運営について大きな問題がございます。で、一つは、この問題について先ごろ大蔵省からも財政収支試算というものが出されました。私どもも拝見をして大きな問題点があることを心配するものでございますが、それはさきの財特の審議の際に、政府は速やかに償還財源計画を含めた中期の財政計画を提出すべきだと、こういう強い各野党の要望によって出されたものと理解をいたしておるところでございます。で、その中でいま問題点は、いわゆるこの財政収支試算において重い税収を見込んでおるという点であります。五十二年度、五十三年度、この中で二四・二%、二四・三%というそれぞれ大幅な税収伸びを期待しておる、こういう試算の内容でございます。といたしますと、このような大幅な税収伸びを何に求めるか、こういうことが直接的に疑問の内容になるわけであります。で、現在の税収から増収を図る、こういうことは、二四・二%、それぞれ二四%以上の税収伸びを図るということではどうしても理解がつかないところであります。そのような大幅な税収伸びということを具体的に考えれば、いろいろ問題になっております付加価値税の創設なり、新たな消費税の創設なりという以外になかなか考えがつかないわけでございますが、この二四・二%、それぞれの二四%台の税収伸びという内容を大蔵省としてはどのような根拠に基づいてこの試算を出されたのか、その点を具体的に明確にひとつお示しをいただきたいと思います。
  73. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) いままで他の機会にお答えいたしましたのと重複いたすかもしれませんが、ただいま御質問の中で言及されました一般会計収支試算のつくり方につきまして、税収の部分についてできるだけ簡単に申し上げますと、これは五十年代前期経済計画をベースにいたしまして、それをいわば一般会計に翻訳してみるという作業をしたものなのでございます。したがいまして、たびたび申し上げておりますように、歳出面では公共投資振替支出、その他につきまして経済計画と合うような一般会計ベース伸び率数字を出してみる。歳入面につきましては、ケースIにつきましては五十五年度で特例債から脱却できるという前提を置く。その場合に税負担を、経済計画にございますように、五十五年度までの間で税及び税外負担率が三%ポイント上がるという予定を先に置いてあるわけでございます。先にその予定を置きまして、さてしからば三%というのは国税、地方税、税外との合計でございますから、それを一般会計でどの程度受け持てばいいであろうかということをまず決めてかかったわけでございます。   〔委員長退席理事中西一郎君着席〕 これは従来の負担割合などを考えまして、非常に大ざっぱでございますけれども一般会計ベースで三ポイントのうち二ポイントを負担しようということで試算をするという、いわば試算の前提としてすでに先にそれを決めたわけでございます。で、五十五年度の姿としまして、予想される国民所得に対して四十八から五十平均よりも二ポイント高い税収負担というのは幾らになるかということで、その表にございます三十五兆五千八百という数字を先に出してみる、しかる後に三十五兆五千八百と、現在五十一年度でこれはすでに予算として予想が決まっております十六兆一千億とをどうやってつないだらよろしいかということで後からつないだわけでございます。したがいまして、そのつなぎ方はかなり機械的につないであるわけでございます。ぶつ切りをしてつないでございますから、五十二年度に出てきておる数字と申しますのは、これは五十二年度を何らかの数値を用いて積み上げたものではないわけでございます。五十五年度に予想される姿をまず決めまして、それと五十一年度とをつないでみる。つなぎ方は、その経済計画概案の中にございます前半がわりあい高目で、後半はやや低いという成長率の予測を用いまして、五十二年度、五十三年度はGNPで申せば一五%の伸び、五十四、五十五年度は一二%の伸びと、それぞれの伸びに対応して税収を伸ばした形にしてつなぐということをいたしたわけでございます。したがいまして、やや繰り返しになりますが、税収としては三十五兆五千八百というゴールのところの数字をまず置きまして、それとスタートのところの数字をつなぎますと、平均しては二〇・九の伸びが必要である。これだけあるんだろうということではなくて、必要であるという性質の数字でございます。この必要である平均二〇・九というのを、予想されます一五%と一二%の成長率にリンクさして割ってみますと、まさしくおっしゃいましたように五十二年度と五十三年度ではケースIで申しますと二四・三%、それぞれ対前年度で伸びないとこれだけの歳出をカバーしかつ特例債から脱却することにはなれない。そういう性格の数字でございます。したがいまして、五十二年度について具体的に五十二年度予算が、ここにございますような、それぞれの歳出の数字になるだろうかとか、あるいは歳入がこういう数字になるだろうかというのはこれからの問題でございます。五十五年度のゴールになだらかに到達するという前提を置けば、五十二年度は一応こういうステップを踏むことになるだろうという性格の数字でございます。したがって五十二年度の税収がどうなるかということにつきましては、この中でどれくらいが自然増収でカバーできるかということをまず計算してみないとわからないわけでございます。  五十二年度の経済がどうなるか、したがってまた自然増収がどうなるかという点につきましては、これはまだとうてい予測ができない。秋が相当深まりませんとある程度の絵がかけてこないわけでございます。そのころまでに税の方ではたびたび御質問も出ております具体的にこれからどうするのかということにつきましては、税制調査会にお願いをいたしまして、所得課税、資産課税、消費課程のすべてにつきまして吟味をお願いいたしたい。それを具体的に五十二年度にどの程度やるのか、また増税ということをやっていいような経済環境になるのかという点につきましてはもう少し時間をかけて考えてみませんと、いま直ちに五十二年度にどの税目で幾らというようなことを決められないのが現状なわけでございます。時間かかりまして恐縮でございましたが、五十二年度分の数字の性格というのはそういうものでございます。五十二年度に対して何をやっていくかということにつきましては、現状はまだ勉強を続ける段階でございまして、具体的にどの税目で幾らという数字的な見当をつけるのにはまだまだ時間がかかると申し上げざるを得ないかと思います。
  74. 大塚喬

    ○大塚喬君 そうしますと、話の前提が大分全面的にぐらついてきてちょっと論議が大変複雑に発展をする、そういう感じがいたします。  初めに戻りまして、いまの問題もとてもとても納得できませんので重ねてお尋ねをしたいと思いますが、五十年度の一般会計税収不足分、それからそのほか税外収入ということで三兆九千二百九十七億円赤字が出たと、こうされておるわけでありますが、これらの試算の場合に税収不足が三兆円であったと、こういうことを一応前提にしてケースI、ケースII、一つは、まあそういうことでなされておると理解をいたしております。そうなりますと一体五十五年までにその赤字国債発行をとりやめると、こういう問題や、昭和五十五年度には日本の国債残高合計は幾らになるというようないままでの論議ががらり根底が、前提条件が変わってまいるわけであります。一体あのときの試算で、五十三年度一ぱいでなくする、赤字国債発行を取りやめる、五十四年度一ぱいで赤字国債発行を取りやめると、こういう試算については、時期も経過をいたしておるところでありますが、いまもあの試算の、そういう目標で大蔵当局としてはこれらの財政運営に当たっておられるのかどうか。あの試算というのはいまでも根拠のあるものだと、こういう理解をしてよろしいのかどうか、そこのところを初めにお聞かせをいただきたいと思います。
  75. 高橋元

    政府委員高橋元君) ただいまの大塚委員のおっしゃいました試算というのは、恐らく私どもが臨時国会の際にこの委員会で申し上げました、昨年七月の財政制度審議会の中間報告に基づく試算の御指摘かと思います。その試算は性格的に申しますと、当時の五十年度の初めに予想されました財政の非常な需要の深刻さと、こういうことを世上御理解いただきまして、五十一年度以降の予算編成について非常に深い警戒と注意を払ってやっていくということを目標として、きわめて簡単で大胆な前提を置きまして、五十五年までその姿を引っ張っていった、将来に投影したという性質のものでございます。  そこで、ケースがたしか三つあったと思いますが、五十年度の税収欠陥が幾ばくかわからなかったものでございますから、一兆円、二兆円、三兆円と三つのケースをつくった。そこで将来の国民所得の伸びを一二%というふうに想定をして、いわば複利で計算をいたして、五十五年度まで数字を出したわけでございます。したがいまして、今回、先ほど主税局長から申し上げましたように、お手元にお出ししておりますところの経済審議会のつくられた五十年代前期経済計画概案——概案の段階につくりましたので、概案の計数をもとにして五十五年の一般会計の姿を想定をして、それと五十年度の補正後の数値とをつなげた、お手元にごらんになっておられる財政収支試算とは計算の前提が根本的に変わっております。したがいまして、前回たしか三兆円減収の場合には五十五年までの公債累積残高は六十一兆一千億であるというふうに申し上げておったかと思います。今回は五十三年に特例公債から脱却することを想定をいたしましたケースのIIですと、累積公債残高は四十八兆二千億、五十四年まで特例公債に依存せざるを得ないという前提でやりますと五十一兆四千億、相当程度の開きがございますが、それはすべて将来の五年間、今後五年間にわたっての国民所得の伸び、それから財政支出の置き方、税収の置き方、それらの前提が変わってまいったことによる変化でございます。したがいまして、大塚委員のおっしゃいますところの、昨年の臨時国会説明をしたその数値がいまでも大蔵省の指針として生きておるかという御指摘でございますれば、私どもはただいまごらんいただいております、経済計画に乗った財政収支試算というものの方を、より現実的な経済の将来にわたっての展望に基づく財政構造改善の手がかりとして理解をしております。これを手がかりとして、歳入歳出両面にわたって財政の改善を図っていきたい、こういう所存でおります。
  76. 大塚喬

    ○大塚喬君 そうしますと、この五十一年二月六日に出された財政収支試算ケースI、ケースII、ケースIIIというものはいま現在でもこれは大蔵省としては最も正確、最も新しい、そういう試算ということで受けとめてよろしゅうございますか。
  77. 高橋元

    政府委員高橋元君) ケースI、ケースIIと、二つのケースだと思いますが、五十一年二月六日にお出ししております財政収支試算、これは今後五年にわたって政府全体として民間政府、企業すべての要因を見通しました将来の姿を描きました唯一のものに基づいておるわけでございますから、先ほどもお答え申し上げましたように、この財政収支試算数字を私ども一般会計ベースで出しておりますが、今後の財政をはかっていく上の手がかりにするという唯一のものでございます。
  78. 大塚喬

    ○大塚喬君 この場合で、先ほどの質問に戻るわけでありますが、私の理解では五十三年あるいは五十四年に赤字国債の発行をなくするようにするという場合にしても、やはりその最大の前提条件というものは税収入のいかんにかかわるものと。で、先ほど目的を設定してそこへ至るまでの一つ試算というか、仮定だという、こういうお話があったわけでありますが、一体、しからばそういうことをお考えになるということならば、具体的な手段、一体その直間どちらの税制にウエートを置いてどういうことにすればそれだけの税収入があるかという問題が、やっぱり当然一緒に考えてこられるわけであります。そういうものはすべてその仮定の条件だということで、この赤字国債の論議をしろと、こういうことであっても、それはちょっとできませんということ以外に私どもは言わざるを得ません。こういうことをやって税収入をこれだけ確保するんだと、だからその赤字公債発行というものは五十三年には終わります、五十四年には終わりますと、こういうことになるのが話の筋だと思うわけでありますが、先ほどのことでそこらについては大変ここまでだと、そこの上がる階段、はしごのことについては全くこれは仮定な問題ですと、こういうようなお話ではちょっと論議になりませんので、もう一度ひとつここについてはどういう方向で、少なくともそのくらいのことが明らかにならなければこれらの審議というものは進まないと思いますので、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  79. 高橋元

    政府委員高橋元君) 先に私の方から申し上げますと、この財政収支試算が五十五年の姿というものを基準にしてまずつくられておるわけでございます。この五十五年の姿と申しますのが、先ほど来申し上げております五十年代前期経済計画概案、これのマクロの国民経済全体の数字からつくり出しました一般会計数字でございます。その中で二つ目標を、試算ケースI、ケースIIということで、二つケースをつくりました。一つ目のケースは、五十五年に向かって、まあいわば国民所得の伸びがスライドしてと申しますか、スライドして五カ年間税収推移していく場合。それからケースIIが、五十四年に特例公債から脱却をする。すなわち、五十四年度に建設公債だけになるという前提を置きまして、やや税収の増加のテンポを早めた場合。それがケースIIでございます。したがいまして、経済計画には中間の年次のケースがないわけでございまして、五十五年の財政収支試算は、五十五年の経済計画に基づく姿に基づいて出ていく、これは共通でございます。それまでのつなげ方を二とおり設けてやっておるということでございますが、そのもとになっておりますのは経済計画にも言っておられますような、今後五年間に国民の租税負担率が三ポイント上がる。その中の国税の負担率が二ポイント上がるという想定でございますから、したがって全体としてつり合いのとれた整合性のある想定でございます。
  80. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 税収のサイドで申し上げますと、五十五年度までに国税の一般会計ベースでの負担率が二ポイント上がるという想定をまず置きまして、それをケースI、ケースII、それぞれに各年度に予想される成長率に応じて割り振ったわけでございます。ここから言えますことは、どうやらいままでのままの税の仕組みでは自然増収だけではこれほどの税収は期待できないんではないかということはほぼ申し上げられる。したがって、この次にまいります問題は、しからばいかなる時期にいかなる税目でそういう増収を図ったらよろしいかという問題になるわけでございます。  で、いかなる時期に増収を図るかという点につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、経済がある程度規模の一般的な増収にたえ得るほど回復すると思われる時期を選ばなくてはなりません。その時期がいつであるかということについては、まだ具体的にいつと申すまでの環境が熟していないのではないかと思われます。大塚委員の御質問の本旨は、しかしそこではなくて、むしろ一体どの税でやるのだと、どういうつもりなんだという御質問だと思うのでございますが、その点につきましては、これはやはり国民の、納税者全体の負担にかかわる非常に大事な問題でございますから、私どもの方であらかじめ一方的にある特定の税しかあり得ないというふうに決めてかかるつもりはないわけでございます。税制調査会に十分御審議をお願いしまして、それは所得課税でも資産課税でも消費課税でも、それぞれにいいところもあり、しかし悪いところもあるわけでございますから、それを十分御吟味願うと、それが国民経済にどういう影響をもたらすであろうか。所得分配にどういう影響をもたらすであろうか。景気にはどうであろうかということを御審議を願い、場合によっては一つでなくて組み合わせになるかもしれない。そういうものとして納税者に選択をしていただくための議論をいまから始めていただきたい。あらかじめ特定の税目しかあり得ないというふうに政府が決めてかかるつもりはございませんし、また私どもはそれは適当ではないのではないか。もう少し幅広く客観的な御議論を積み重ねた上で方向を打ち出していただきたい、そう思いますので、別に決めているのを隠しているとかなんとかというつもりは毛頭ございません。これから決めていただきたいというのがいまの私ども考え方でございます。
  81. 大塚喬

    ○大塚喬君 どうも肝心なところがこう逃げられておるという感じでございます。大幅な何か新税導入でもしない限り、この二四%という税収増加は不可能だと、こういうことで、このことは赤字公債発行に対する批判、不満、こういうものを早い機会になくすると、こういうことの手段のために、税収を引き合いに出しておる。その税収の引き合いというものは、ことしの場合、自動車関係諸税を増収した。物価が上がるのに所得税減税を取りやめた、こういうことであって、そして一七%の税収伸びしか期待できない。そうだとすれば、この二四%台という税収を確保するためには、さきに申し上げたように、大幅な新税の創設で増税を図る以外にないのではないか。そうすると、政府の言っておることは、いろいろ大変ていのいいことを言っておるが、腹の中ではこの赤字国債発行をやめるためには、これはもう増税やむを得ないのですよと、こういう前提をこの審議を通じて押しつける、こういう感じを強くいたすわけでございます。で、ここまで上がるのにその手段を仮につないだだけだと、まあこうおっしゃるわけですが、その階段というのは一体どういう形でこのいまの財政収支試算というものができたのか。階段に石段で上がるんですよ、ヘリコプターで上がるんですよ、ここまで上がるんですよと、そういう内容まで明らかにしなければ、危なくてこの赤字国債発行の審議、将来にわたって国家財政を不安に陥れる、こういう立場からどうも審議が進めかねます。いまのような逃げる答弁ではなくて、ひとつ具体的にこういう方法をとって税の増収も図ります、それから赤字国債発行昭和五十五年にはなくなりますと、こういうことを私どもにはっきり納得させるような形で答弁をいただきたいと思います。
  82. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 先ほど申し上げましたように、すでに決めていることを隠しているというようなつもりは全くないわけでございまして、負担率が二ポイント上がる、その場合に各年に割り振る、割り振ってみた結果はできるだけなだらかに上がる方が望ましいかもしれません……
  83. 大塚喬

    ○大塚喬君 わかった、それは。
  84. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) その意味では、ケースIの方がなだらかでございます。しかし、もっと早く赤字国債をなくそうというんならば、一段目の階段はきつくならざるを得ません。それは、ケースIとケースIIをお比べいただけば、ケースIIの方が五十二年度に必要とされる税収は大きくなると、つまり、一段目が高いと、そういうことでございます。  さて、その先、具体的に、それでは五十二年度にここにあるような数字税収をどうやって確保するのかと、そのためには具体的に何を考えているんだということをお聞きになっているんだと思いますが、その点につきましては、ケースIに即して申し上げますと、二四・三%伸びることが必要であるというふうに仮に考えますと、それはもし経済成長率がGNPで一五%といたしますれば、それはいわゆる弾性値としては一・六二の弾性値になって出てまいります。一・六二という弾性値は一体可能かと、つまり、何もしないでもそういうことはあり得るかと言えば、過去にはそういう年もございました、一年だけは。したがって、五十二年度はそういう年であるかもしれないわけです、また。だから、そういう意味で私は先ほど、五十二年度が具体的にどういう年になるのか、自然増収がどれくらい出るのかということがもう少し姿が見えてまいりませんと、五十二年度に何千億の増税が必要かということもわかってこないわけでございます。そういうことを勉強いたしながら、もし必要であるとすればどの税目によるべきかということ、これも、くどくて恐縮でございますが、本当に私どもは決めていないのでございます。決めて押しつけるというようなことをすべきでないと思っておりますから、これから税調で議論していただきたい。それは、所得税にウエートを置いた税制の方がいいのか、所得税というものはいまぐらいのウエートの方がいいとお考えになるのか、そういうことをもう少し時間をかけて冷静に御議論いただいてみませんと、所得税は必ず減税するのであるというふうに決めてしまうとか、そういうことがまだできない状況でございますから、消費税というものは絶対にやらないというふうに決めてしまえない状況でございますから、何かを私どもが決めておって、それを意図的に申し上げないで逃げておるというふうにおっしゃられると、私としては当惑する以外にないわけでございます。
  85. 大塚喬

    ○大塚喬君 そういう答弁を聞かされると、こっちも当惑する以外にない。——本当だよ、それは。真剣に財特の審議をしておる場合に、特例法特例法だ、五十年も特例です、五十一年も特例です、五十二年も特例です、五十三年も特例です、五十四年も特例ですと、こういうかっこうになられたのでは、私は、国家財政の審議をする責任あるこの本委員会としても、きわめて責任をなくする、そういう論議になるだろうと思うわけです。で、皆さんの方で財政収支試算というものをなされたと、一応これが現在、あなた方の指標であるということもわかる。で、そういう場合に、その前提になる問題について、税収がどうも——押しつけるわけじゃない、しかし、税収だけで二%ずつ、二%を増収を図るんだと、こういうことまでおっしゃるならば、その中身というのは一体大蔵省として、所得税を増収するのか、あるいは法人税を増収するのか、あるいは資産税を増収するのか、あるいは消費税、あるいは消費税の中の付加価値税というようなものを新設をして、それで取るのか、そういうことについてもう少し親切に答弁をいただかなければ、二四%というような一つの前提になる論議というものは、全くこれは信用のできないものです。と申しますことは、ことし一七%というのが自動車関係の新税を増税としてやったということが一つの条件になっています。それから所得税減税ということもことしやらないで一七%という数字が確保できたんだと。そうなりますと、じゃ、五十二年度、五十三年度以降の分について、一七%から二七%という税の増収を図るためには、一体新税としては何を考えているか。さっき申し上げたような、どこらのところに重点を置くのか。  それからもう一点は、これから先どんどんまた物価が引き続いて上がる。五十二年も五十三年も所得税減税というのはやらないのかどうか。そこらがやっぱり私どもとしては重大な関心を持たざるを得ない議論でございます。で、これでひとつこの財特をお認め願いたいというそういう論議には、はいそうですかという答えを出てまいりません。だから、そこらのところをひとつ私どもにも納得いくような、そういう答弁をいただきたいと思うわけであります。所得税減税は今後やらないんですか。それから、新税というのは創設するんですか、しないんですか。そこらのところをひとつ、二四%という試算が出た以上は、そこらについてもひとつ明確にしてほしいと、私はこうお願いをいたしておるわけであります。
  86. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 一般会計の歳出が、ここにございますように、一七・三%で決まるかどうかはこれからでございますが、もし決まるということになって、しかも赤字特例公債数字はここにある数字にとめるということになれば、それは税収はここにあるだけの数字が必要になります。そういう前提を置きました上で、さてしからば二四%の増収が何もしないでいても出てくるかということは、これはわからないわけです、また。一五%のGNPの伸びのときに二四%税収伸びるということは、理論的可能性としてはないではないのでございます。そういう年があったのでございます、いままでに。しかし、来年がどれくらいの増収になるかというのは、これはわからないとしか申し上げようがない。  したがって、先ほど来申し上げておりますように、五十二年度に年度割りでお出ししております数字が絶対にどの項目もこのとおりにならなくてはならないという性質のものではないわけでございます。そのことだけは、ぜひまず御理解をいただいておきたい。その上で、しかし、歳出はここにある数字に変動があり、公債金収入についても変動がありながら、やはり自然増収だけではカバーできないという状態になるといたしますれば、それをどの税目でやるかということについて私が先ほど来申し上げておりますのは、大蔵省事務当局があらかじめ独断的にこの税しかあり得ないということはいま決めておりませんと。それは、所得税を減税をがまんしていただいた増収というものもあるわけです。所得税を増税したらいいという御意見もあるわけです。あるいは、法人税を増税しろという御意見は野党からしばしばいただいております。消費税をやるべきでないという御意見もいただいております。しかし、消費税をやったらいいという御意見があることも事実でございます。それらすべてをもう一遍税調で根元から御議論いただきたいと私は申し上げておるわけでございまして、昨日税制調査会長もそのようにお答えになったというふうに伺っております。いまあらかじめ答えを持ちましてそれを押しつけるというようなつもりは私どもに全くないということだけもう一度申し上げさしていただきたいと思います。
  87. 大塚喬

    ○大塚喬君 押しつける気持ちがないということは、私もそれじゃ答弁を信用いたします。押しつけないということは信用いたします。ですが、今後税収というものは、ことしの一七%、これ以上に税収伸びを期待しておるということも事実ですね、これは。その場合に、ことし所得税減税をやらなかった。それから、自動車関係諸税をふやして一七%という数字をやっと確保したんだと。だとすれば、具体的にお尋ねいたします、昭和五十二年、五十三年、所得税減税というのは無理だとお考えになっておるのですか。やらないという、そういうことに一応大蔵省としてはとらざるを得ない、決して好ましいものではないけれどもそうせざるを得ないと、こういうふうに基本的に立場をとらざるを得ないのかどうか。それから新税という問題は、いろいろ消費税なり所得税なり法人税なり、あるいは資産税なりこういうことであっても、これは押しつけるものではないけれども、今後そういう新税の創設、こういうことをやらざるを得ないと、こうお考えになっておるのか、その点だけひとつはっきりお聞かせをいただきたいと思います。
  88. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 具体的に各年度にどのような手段をとるかということにつきましては、私がお答えできる立場にはおりませんけれども財政収支試算が示しておりますことは、やはり五年間を通じてある時期に何らかの新増税をお願いしないと、歳出をこれだけ伸ばしながら特例債から脱却するということはできそうもない。これは私はかなりはっきりしておるように思います。それがどの時期であるか、どの税目であるかということにつきましては、先ほど来お答え申し上げているとおりでございます。したがいまして、その中期財政収支試算が、今後の財政運営の手がかりとして大事なものであるということを考えまして、そこから出てくる予想といたしましては、仮にこの期間に何らかの所得税の減税を必要とするという判断が出てまいりましたら、その減税をカバーする以上のものを所得税以外の税目で確保しないと、この試算に出ている路線からは外れる危険がある、そこまではこの試算からは出てくると思います。しかし、ある年度に何らかの所得税減税をすべきかどうかということは私だけで決められる問題ではとうていございません。財政収支試算が描いている姿というものはそういうものだと思うというふうにしかお答えできないと思います。  また、新税創設という言葉がしばしば出ておりますが、それはやはり新税というよりは、むしろ新増税ということで考えるんだろうと思います。いまある税目で税率を上げるとかなんとかという形での増収というものも入って、新増税、何らかの新増税を必要とするであろうというふうに予想される、財政収支試算からは、ということであろうと思います。
  89. 大塚喬

    ○大塚喬君 ただいまの主税局長答弁を受けて今度は大臣にお尋ねをいたします。  ことしの所得税減税を見送ったことについて私、率直に遺憾の意を表するものであります。いまの主税局長答弁だというと、そういう情勢が来るかどうか、やるかどうかという問題は主税局長の権限以上のものである、こういうふうに受けとめたわけでありますが、この財政収支試算というもののレールから外れないためには、そういう場合があった場合には、今度は新増税ということを当然必要だと、これも話の筋、事のよしあしは別ですよ、私はそれに反対ですけれども、そのよしあしは別にしてもその話としてはわかります。  で、大蔵大臣に率直にお尋ねをいたしますが、所得税減税、いまじわじわとやっぱり依然物価というものは上がり続けております。このレールから外れないために所得税減税大蔵大臣としてはどうお考えになっておるのか、そのレールを外れないために所得税減税は今後少なくとも、ある期間は実施が無理だと、こうお考えになってやらないとおっしゃる考えか。  それから、新増税の問題について二%という増税はやむを得ないんだ、そのためには新増税、ことし自動車税関係を上げたんだ、それ以上のそういう内容でこれをやるのかどうか、ひとつ大蔵大臣としての責任ある立場から御答弁をいただきたいと思います。
  90. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) すでに、五十年代前半経済計画というものは、この間閣議で承認をいたしたわけでございまして、もとよりこれの実行は年々歳々予算案の姿で確定していかなければならぬものでございますけれども政府が決めました以上は、これから大きく外れることのないように実行を期していかなければならぬものと思います。だといたしますと、これに必要な財政、これに必要な財源というものの用意をしなければならなくなるわけでございまして、それが五十年代前半のどの年度にどれだけ、どのような税目でいたしますか、また自然増収がどれだけ出てまいりますか、それはわかりませんけれども、いずれにいたしましても、この財政収支試算で表示いたしてありまするような程度税収は何としても確保しなければならなくなる筋合いのものでございます。こういうことでいくということが政府の基本、政府の方針として決まりますならば、まず第一に、一般的な所得税減税ということは大変むずかしくなるということは仰せのとおり、私はそう思います。  それから、何らかの新増税というものを考慮せざるを得ない筋合いのものになるのではないかということ、仰せのとおりだと思います。
  91. 大塚喬

    ○大塚喬君 いまの大臣答弁をお聞きしていよいよこれは困ったこと、大変なことだという心配でございます。給与所得者にとってこのような物価上昇が継続する場合に所得減税がむずかしい、しかも五十一年度がだめだと、後五十二年、五十三年、少なくともそういう間むずかしいということになると、とてもここでいまの大臣答弁をお聞きして黙って引き下がるということはできません。それと一緒に二四%以上の税収伸び、これを外れないようにするのだ、こうはっきりおっしゃることになれば、現実に何らかの税を増収するための計画、そういうものがなくて、大蔵省ともあろうものが、このような二四%の税の増収を設定をして、そうして公表する、そんな腰だめの数字を少なくとも国会に発表するというような、そういう無責任なことはできるはずがないと私は推察をいたしております。現実にそうだろうと思います。じゃ、いままでのそういうことについて大変抽象的に押しつけはいたしませんということだけで、ここで私どもに納得をしろ、こういうことにはとてもとてもまいりません。大蔵大臣として所得税減税は今後しばらくできないのだ、ここではっきりそう断言をされるわけですか。それと一緒に、新増税について少しもっと親切なひとつお答えを具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  92. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 毎年毎年予算案という姿で政府で決めまして歳入、歳出とも国会の御審議を得なければならぬわけでございますので、税ばかりじゃございませんで、歳出面でも公共投資振替支出、その他、これ皆押しつけられる性質のものでないのでございます。で、一応こういうことを歳出面で考えるとすれば、これだけの歳入を用意する必要があるのではないか、五年間の間に。そういたしますと赤字財政からどうやら脱出ができると、こういうひとつ試算を試みたわけでございます。でございますので、これは、これを発表する以上はこれを裏づけするものがないとおかしいじゃないかということでございますけれども、そうではなくて、一応こういう前提をおいてこういう試算を試みると、こういうことになりますので、これは一つの手がかりとしていまからわれわれといたしましては歳出、歳入にわたってもろもろの用意をしていかなければならない、一つのこれを手がかりとして毎年毎年用意をして予算案、法律案の形で御承認を得るようにやってまいらなきゃならぬということなんでございます。前もって積み上げられた計画がこの下敷きにあるわけではございません。
  93. 大塚喬

    ○大塚喬君 やっぱり不親切な答弁ということになると思います。こういうことにならざるを得ない、するんだと、こういうことだとすれば、その手段というものがやっぱり二四%以上のものなんですから、何か着々と陰で準備をしておいて、そしてそれの導入のための方法、手段というものがなければ、二四%という口だけのそういうものではない、この作業をできっこないはずだと思うんです。だから、そうだとすると、押しつけないというそれだけで、この収支試算、これは政府の方針なんだから五十五年度にはもうすっきりした形になりますよと、こう言われても、そんなことはないよと、こういう反発の方が先にどうしても出てまいります。   〔理事中西一郎君退席、理事戸塚進也君着席〕 だから、この審議をいまのような形で何も存じません、ありませんというだけで審議をしてくれというのは無理だと思うんですが、大蔵大臣そうお考えになりませんか。こんなことでこの審議はできませんよ、これは。そこのところ実のある、抽象的なことでなくてお答えをいただきたいと思います。
  94. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 決して無理なお願いをしているわけじゃないんです。もしこれ税収が、あなたが御指摘のように無理だという判定がありまして、われわれもいろいろやってみて案を提示申し上げて、これは大変無理じゃないかということになりますと、これは五十五年に赤字財政から脱却ができなくなる、延びるということになるのです。延ばさないでやろうとすれば、相当無理だけれどもこういうことをやらなければならなくなるんでございますと、これだけの五十年代前半にひとつ赤字から脱却しようと思えばこういうことでいかなければならぬ計算に一応なりますと、だからこれいかぬから大塚先生の方で、それじゃひとつ歳出の方から、これは無理だから、そんな無理なことを言ってもいかぬから、歳出の方をひとつもっと工夫して節減を図るという方法も考えろということであれば、またこれも検討の余地がないと言えないと思いまするし、歳入の方が無理じゃないかと言えば、またそれも検討の余地がないと私言えないと思いますが、しかし両方とも無理だということになれば、結論として五十五年度に赤字財政から脱出するという目標が達成できなくなるわけなんです。   〔理事戸塚進也君退席、委員長着席〕 それで国会もいいと、最高機関である国会がもうそれでいいと言うんなら、それはやむを得ないことなんですけれども、私どもそんな力はないわけなんでございまして、もしこういう材料を出しまして、いま計画を政府が継続しているいろいろな歳出を一応充足するにはこれだけの、そしてしかも赤字財政から脱出するとすればこういう計算になりますよと、それにはいまからいろいろこれを土台に、これを一つの手かがりとしていろいろな工夫をしなければいけません。あなたがぼくの立場であっても同じような手がかりを求めて、それから検討を始めると思うのでございまするが、ほかに何か、いや大平君、こんなことを考えぬでも、もっとアプローチの方法はあるぞというお知恵があったら、私またそれはお教えをいただきたいと思うのでございますけれども、私どもこういう一つの検討の方法もあり得ると思いまして御審議を願っておるところでございます。
  95. 大塚喬

    ○大塚喬君 それは大臣、論議がそれちゃったと思うんですよ。私が言うのは、レールの敷き方についてここでとやかく言っているわけじゃなくて、レールを敷いたと言うものだから、そのレールというのは一体どこを通っていくのか、自動車を使うのか、電車を使うのか、ヘリコプターを使うのかということでお尋ねをしているわけです。だから、いまここで私が大蔵大臣になって、この考え方が全然吹っ飛んでしまって別なものにするとか、これが悪いとかという論議はいま私ここではいたしておらないわけです。ここまでいくんだと、それじゃ、いくんだということでこういう試算を発表したんならば、じゃ、それはどうやっていく、その手だてを、押しつけません、知りませんということではどうも国会の審議というものが具体的にはならないんじゃないか。だから、そういう方向ならば、それじゃ具体的に私が一、二の例を、所得税減税というのはやらないでこの大幅な税収伸びを確保するのか、それから何か新税あるいは増税をするのかと、こういうことをお尋ねしているんですが、さっぱり不得要領な返事なものですから重ねてお尋ねをいたしておるわけでございます。何かそれは具体的なことを隠しているのと違いますか。
  96. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いや、隠しようがないんです。これ税といっても結局国会に提案申し上げて、国会の御承認を得なければびた一文できないんですからね、隠しようがないですから、いまの段階で国会の御審議を得るようなものをおまえら持っておって、これ隠しておるのかということで、そんなことはありませんと、まだそんなものはまたできないんですということを申し上げているだけで、いずれ御審議を得るわけなんですから、そのいまの時期ではそれはまだわかりませんと、だけれどもいま言えることは、一般的な所得税の減税というのはむずかしいような感じがしますということ、それからやはり増税というような、新増税というようなものも考えざるを得ないようなことになりそうでございますと、けれどもどの年度で何によってどれだけお願いせにゃならぬかということは、いまわれわれはわかっておるけれども、まだ国会には出さぬのだと、そんなわかっておれば出しますよ。自信があれば出しますよ、そういうことではない。いままだそんな段階にないということだけ申し上げているわけですけれども、そこをおわかりいただければこちらは正直であるということがお認めいただけると思うんですが……。
  97. 大塚喬

    ○大塚喬君 何によってということを私繰り返しお尋ねしているんですが、それがわからないと、こうおっしゃるわけですが、それじゃ主税局長、主計局次長、少し言葉が過ぎておしかりを受けるかもしれませんが、ちょっと怠慢じゃないですか、どうです。そこらのところはっきりして、ともかくどういう何によってやるんだ、ここらの方向づけぐらいこういう試算を発表したならば、こういう方向でやりたいんですと、それは審議は後でかかるにしてもこれは当然じゃないですか。それから所得税減税をやらない。このことについては引き下がれません。所得税減税は少なくともことし見送って——私は年内にでも所得税減税については考慮すべきであると、真剣に取り組んでほしい、こういう強い要求を持つものでありますが、一つの問題は、やっぱり現在の税制について特に不合理税制の最もはなはだしい租税特別措置法、こういうようなものはもっと深く突っ込んで全面的な見通しをすべきである、私はこういう主張を強くこの席でも大臣初め関係の皆さん方に強く要求をいたしておくものでございます。  それから、一番の本日の論議の柱になります償還計画の問題、これを本気になってお尋ねをいたしたいと思います。五十年から引き続いて膨大に、こう膨張していく赤字国債、一体どのような手段をもって償還を行うかについて、何ら大臣趣旨説明でも、それからいままでの論議の中でも明確にされないことを大変遺憾に思います。一つは、さきの国会からの論議の継続で、赤字国債は借りかえを行わない、十年後の償還期には全額償還すると、こういうことはわかりました。しかしながら、このような公債発行を継続するということになれば、できるだけ速やかな時期に、一刻も早くその償還財源についてその計画を明らかにすべきのが当然の責務であろうと考えます。政府がこの償還財源計画について一つのまあ答えというのがこの試算であったと、こう思うわけでありますが、先ほどからの論議のように、その具体的な内容についてはまだまだ不明なところがあるわけであります。私がここでお尋ねをいたしますポイントは、定率繰り入れ、剰余金繰り入れ、それから予算繰り入れ、こういう三つの方法について国債を償還するということは、いままでも論議をしてきたところでありますが、その剰余金繰り入れ、それから予算繰り入れ、こういうふうなものが、いま現在財政赤字であるときに、少なくとも五十五年までは困難だと、こういうことも一応私どもも頭の中にいままでの答弁で入っております。しからば、その五十五年以降の分についてはどうするのかという、ここらについてもこの論議の際には当然触れざるを得ない問題であるし、政府としてもそれらの財源計画というものを明示しなければならない義務があろうと思うわけであります。この償還計画について一体どのように政府考えておるのか、ひとつそこのところを明らかに明示をいただきたいと思います。
  98. 高橋元

    政府委員高橋元君) 特例債を含めまして、国債の償還の財源をどういうふうにして調達をするかということにつきましては、昭和四十二年以降確立しておるところの減債制度というものの運用で対処いたしますということは午前中他の委員の御質問に答えて申し上げたところでございます。しからば、それが五十五年までは特例公債があるわけだから、予算繰り入れというものはできないだろう、それから剰余金もそう多額に発生しているはずはないだろう、五十六年から後、特例公債から離れました後で六十年、六十一年、それから六十四年まであり得ることになるわけでありますが、特例公債の償還期にどのような財源措置をするのかというお話だと思いますが、五十六年から後、そもそもどのように一般の歳入それから歳出の前提になっております経済の姿というものを数字的に想定をしていいかということについて、私どもはよりどころがないわけであります。六十年、六十一年、それから六十四年までに償還をすべき特例公債の額は、ケースIで申し上げますと十三兆、それからケースIIで申し上げますと一兆余でございますが、そういうことは満期が来た場合に償還をするということでございましょうけれども、それにつきましても満期の到来する前に国債整理基金の余裕金をもって買い入れ消却なり、繰り上げ償還をする場合もこれは多分あろうかと思います。ちなみに、五十五年まではここに数字が出ておりますから、五十五年までに毎年毎年国債費として数字が上がっておりますが、その中で定率繰り入れに当たります部分をこれは特例公債建設公債合わせてでございますが、累計をして出してみますと、一兆八千ぐらいになるかと思っております。したがいまして、五十五年までの姿というものはおよそ申し上げることができるかと思います。  それから先、数字的にどういう財源をいつの年に留保するのか、それを一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れるのか、それを数字的に申し上げることは根拠となるべきものがございませんので、お許しいただく以外にはないというふうには思いますが、ただ償還のための借りかえ起債は行わない、これはいま審議をお願いしております法案の中にも明らかにそういう条文を設けておりますし、それから剰余金が今後発生いたしてまいります際に、従前の二分の一でなくて全額を繰り入れますということを申し上げております。必要に応じて予算繰り入れをもっと補充をするということも申し上げております。それらの方針を忠実に実行を将来にわたってしてまいりまして、六十年から六十四年また三年に至る特例公債の償還には万支障なからしめるようにしたいというふうに考えております。
  99. 大塚喬

    ○大塚喬君 いまのお答えで、このいわゆる財政収支試算というものは、利子とそれから定率繰り入れの分だけですね、念を押してお尋ねをいたしておきます。
  100. 高橋元

    政府委員高橋元君) そこに書いてございます国債費、たとえば五十五年でございますと、ケースIで四兆四千二百億でございますが、これはその約八割が利子でございます。数字で申し上げますと、三兆七千億が利子でございます。それから定率繰り入れが六千億、それから残る千二百億は出資国債、交付国債等がございますから、それらの償還に必要な予算繰り入れでございます。合計しまして四兆四千二百億。
  101. 大塚喬

    ○大塚喬君 いまの答弁では私が心配しております点については何らお答えになっておりません。借りかえをしないと、こういうことになれば六十年度から仮に六十四年度まで続くとすれば、十年の期間で償還ということになれば六十年ないし六十四年、この五年間に続くいわゆる巨額の償還財源、これがその大部分を予算繰り入れと、こういうことに頼らざるを得ない、そういう事態が続くわけであります。それをいまここでお答えできません、一体いまは何とか急場しのぎに国債を発行して借金しますからいいですよと、後の十年先のことは、私らはともかく責任者でないことは明らかなんだから、それは野となれ山となれどうぞ御自由にと、こういう論議をここでしろと、こういうことであってはとてもこの審議はできません。少なくともそれらの方針については予算繰り入れを六十年からどういう方針で、どういう基準を持ってやるんだと、こういうことぐらいここの論議にしないでこの財特を仮に通すというようなことになったら、昭和五十一年のこの国会の審議は一体メンバーだれがやったんだと、これはとんだことになると思うんですよ。もう膨大な六十年からもう毎年毎年予算繰り入れでみんな食われてしまって、学校の教育もやめです、社会福祉もやめです、土木事業もやめですと、こういうことにならざるを得ない。こういう将来のわれわれは責任を持つわけでありますから、そこのところはひとつ主計局次長、それから主税局長、そこらのところをひとつはっきりさしてください、どうするつもりです。
  102. 高橋元

    政府委員高橋元君) 六十年に償還をいたすべき特例公債というものが二兆二千九百億円、それから六十一年に償還をいたすべき特例公債が三兆七千五百億円、このすべてケースIの想定で申し上げているわけでありますが、六十二年度に三兆四千億、六十三年度に二兆五千七百億、六十四年度に一兆五千五百億、そういう計算と申しますか、想定でこのケースはできておるわけでございますから、それらの満期到来時にこれらの特例公債を借りかえすることなく返すと、償還すると、このことはもう絶対間違いはないわけでございます。そのために、先ほどから申し上げております定率繰り入れ、それから剰余金の全額繰り入れ、それから予算繰り入れ、こういった制度を活用をしていくわけでございますが、六十年に全額、たとえば二兆二千九百億円、これを予算措置をいたすのか、それよりも前から、いわば国債費の平準化という観点で予算繰り入れをあらかじめ行っていくのがよろしいのか、それがまたどういう状況のもとで可能なのか、計数的に年度を分けて申し上げるということははなはだむずかしいわけでございます。ただ、やり遂げる方針だけは明らかに申し上げられる。これはもう大臣も繰り返し繰り返し御答弁を申し上げておるとおりであります。
  103. 大塚喬

    ○大塚喬君 いまのようなお答えならばよけい国債費については六十年度までの財源繰り入れというものを準備をするのが当然じゃないですか。そして、それらの繰り入れ額をこの審議の際に、五十五年以降六十年までの間に何ら責任ある回答をしないで、この公債を通してくれと言ったって無理ですよ、それは。一体まあ五十五年までが国債が続くと、これはいいこととは思いませんが、そうだとしても、それ以降六十年の償還期一年ぽっきりで終わるんでなくて、いまの計画からいえば六十四年まで続くはずだ、それだのに何の準備もいたしません、六十四年には借りかえいたしません、はい、そうですか、こんなことにはなりません、それは。やっぱりそこらのところは政府の方針を明示すべきだと思います。大蔵大臣いかがですか。
  104. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 逆に、もし一ぺんに払わなければならなくなって、大塚先生御心配になっているのは、国債費はこれ義務費ですから何をおいてもこれは払わにゃいけませんので、償還はですね。ですから、そのときにほかの支出に支障を来すようなことがあっちゃいかぬから、前もっていろいろ財源を積み立てておいて支障ないようにやれと、やらなけりゃいかぬじゃないかというおぼしめしですね、あなたが言われていることは、そういうことだろうと思うんでございますが、先ほど伺っておりますと、学校の経費だ、その他に支障が来すようなことがあっちゃ困るじゃないかということでございますが、私ども、これ日本国が借金をするわけでございますから、この借金はびた一文約束どおり払わなけりゃ大変なんです、内外に対する借金は。それでこの日本国というのは借金に対して非常に誠実な国であるということで内外に信用を得ているわけですからね。世界のうちで最も高い信用を享受している国でございますから、日本の国債が期日に払われないなんということを考えておる人は世界じゅうにだれ一人としていないんです。大塚先生だって日本の国は借金を払わぬだろうなんということを心配されていないと思いますね。あなたが心配しているのは何じゃないですか、要するに一ぺんに払うとなると、そのほかの経費に支障を来したらいかぬと、だから前もって積んでおかにゃいかぬじゃないかと、償還財源は。とりわけ五十五年以降予算繰り入れを計画的にやっておかないといけないじゃないかということでございます。大事をとるためでございましたら借りかえを従来どおり認めさしていただいてやっていけばそれは楽でございましょう。楽でございましょうが、われわれは借りかえもいたしませんで、これは期初計画どおり払いますという、もう不退転の決意を国会に披瀝しているわけなんですが、だから相当この国債をこういうように発行してまいって十年満期が来ますと、これ耳をそろえて払うということについては、これはもう借りかえによらずに財源を調達してやるという決意をいたしておるわけでございますから、予算の繰り入れはあなたがおっしゃるとおり特別債から脱却いたしまして、年々歳々やってまいりまして、満期には支障がないようにやってまいると、そこは御信頼いただきたいと思うんでございます。そうしないと世の中は真っ暗になるんじゃないんでしょうか。やっぱり百二十万人が政府に雇われておるんですけれども、これわれわれの月給どこが払ってくれるんだろうかなんていうだれも心配してないと思うんですよ。日本政府というのを信頼していただけると思うんです。日本の国の借金というのは、日本政府がその信用によって発行して御信用を得ておるわけで、この前にも申し上げましたとおり、どこの社債にしたってどこの金融債にいたしましても、あなたの言われるように、これをどこの社債にしても、この償還財源はどのように社内で積み立てていくんだ、行内で積み立てていくんだ、その積み立て法を知らせと、そうしないとこれ買ってやらぬなんという会社はないんですよ。いわんや一つの電力会社、一つの銀行の発行する債券さえそうなんですから、日本国が出す国債に、それを年々歳々出しておかなければ、この公債の消化に心配があるというようなことは私はないと思うんです。あなたの心配なのは、結局財政運営について国会議員のお立場から御心配になっておられて、財政運営の問題を心配されておるわけでございますので、先ほどから御心配のように、こういう多額の国債を出す場合の財政運営、これはいつごろ脱却するんだと、それについてはどういう歳出の状況になるんだ、どういう歳入の状況になるんだと、で、いつごろ脱却するんだと、それにはどういう手だてをしていくんだというようなことを先ほどからお聞き取りをいただいておったわけでございますが、そういうことは私は確かに問題だと思うんでございますけれども、償還それ自体について御心配をいただくということは私、非常に情けなく思うんでございます。そんなこと心配している人だれもいませんよ。だから、それは政府の信用によって、一番高い信用を持っておるんでございますから、その点は御安心をいただきたいと思います。
  105. 大塚喬

    ○大塚喬君 国の信用が絶大なものがあるから心配するなと、こうおっしゃりたいわけだと思うんですが、財政運営を審議する立場から言えば、口でそう言われてもはいそうですかということでどうも下がれません。それで、ともかく六十年から引き続いて大量の赤字国債を償還すると、これに伴って大きな、まあ後遺症と申しますか、国家財政に大きな影響が出ることは必然の成り行きだと思うわけです。そうだとすれば、まあ一応私どもはこの財政収支試算というものを基礎にしていま論議を続けてきたところでありますが、五十五年までの分は一応皆さんのそういう試算で話が前提にして進めてきたと、しからば五十五年以降ですね、この償還財源繰入計画というものをここで当然われわれは審議する義務があるし、そのことを全然触れないで、六十年には借りかえいたしません、信用しなさいと、こういうことで引き下がりなさいと、あなたもそれ以上聞くのは少しやぼじゃないか、頭が悪いんじゃないかと、こういう意味答弁では私はとてもがまんができません。  委員長にお尋ねをいたします。お尋ねというか要求をいたします。この財特法の審議をする場合に、この昭和五十五年以降政府は償還財源繰り入れ計画を本委員会に提出すべきである、提出をしてもらいたい、このことをひとつ委員長においてお計らいをいただき、速やかに御決定をいただくようにお願いを申し上げます。でなければこの審議は私どもとしてはできません。
  106. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この法律にも書いてございますとおり、償還計画表を国会に提出しなければならぬと書いてございまして、そしてそれに従いまして予算書には償還計画表が添付されてございますことは大塚委員も御承知のとおりであります。で、これは十年債でございまして、一括償還でございますから、十年たてば全額償還するという計画が出ておるわけでございます。で、償還計画というのは厳密な意味においてそれだけしかないわけでございますが、いま仰せになったのは償還財源の繰り入れ計画、特別会計に対する一般会計からの繰り入れ計画を、特例債を出しておる間はともかく、それから脱却した後、年次別に出せという御要求なんでございます。それは私もたびたび、去年同様の特例債の法律を御提案申し上げたときにお話申し上げたように、それをお出しすると、その御要求に応ずるといたしますと、その前提といたしまして各年度の財政計画が要るわけでございます。それで収入も支出も要るわけでございます。私ども先ほどからもるる御説明申し上げておりますように、どうやらことしの経済はこういう展望で、こういう見通しで、これだけの収入が確保できますということの一応の見当をつけまして予算を組んだわけでございまして、五十一年度の展望だけは一応政府は持っておるわけでございますが、五十二年度はまだできていないわけなんでございます。これはこの秋深くなりまして、明年度の予算編成と絡んで明年度の予算経済見通しをできるだけ立ててみましてつくり上げにゃいかぬわけでございますが、かつてこれが合ったためしはないんですけれども、一応予算の前提といたしましてその見通しを立てて予算を組まなけりゃならぬ、まあ、来年の話でございますが。あなたのおっしゃるのは、五十六年以後の展望をずっとこの六十三年までの間これやらないかぬわけなんでございまして、これはいまそういうことを政府に求められても、とてもできる相談ではないわけなんでございます。内外の経済状況で数年先から十年余り先までの展望を見て、数字的に財政計画を立てて、その中でこれだけの償還財源を年々歳々積んでいきますと、国会にはうその数字出せませんから、まあこういう数字だけ一応それじゃ載せておくかというわけにいきませんから、国会に出す以上はやっぱりちゃんとした根拠ある数字を出さないかぬと、根拠ある数字を出す自信はないわけでございますから、簡単に請け負うことはできないわけでございますので、そういうことは非常に不可能を強いることになると思うんでございます。  そこで、いろいろ両院のお話もございましたので、五十年代前半はどうやら経済計画概案というようなものも一応できましたし、それを手がかりといたしまして、財政収支試算というものをそれにかわる展望一つの手がかりとしてごらんいただく意味で、先ほどから御議論をいただいておるような試算をお出し申し上げたのが精いっぱいのところであったわけでございます。それとてもまあいろんな前提を置いてやっておりますから、あなたがごらんになられてもいろいろ穴だらけでございまして、先ほどからおしかりをちょうだいしておったわけでございますけれども、それがいま精いっぱいの政府のできるところでございますので、仮に理事会で御相談いただくにいたしましても、そういう事情でありますことだけはあらかじめお含みおきをちょうだいいたしたいと思います。
  107. 大塚喬

    ○大塚喬君 委員長最後に一言。  その五十五年以降のいわゆる償還計画、これを出せる立場にはありませんと、こういうことになればこちらも財特法の審議をできる立場にありませんと、こういう答えになってしまいます。ひとつここのところははっきりその償還計画というのを出すということになっておるわけですから、その法律に従った趣旨に基づいてひとつこの償還計画、五十年から以降の六十三年までの——ずっと借りるというんですから、その前提でいま論議をしているわけですから、そこのところについて理事会で相談をいただいて、私の要求をぜひひとつ実現をさせていただきますようにお願いをいたします。
  108. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 償還計画はちゃんと予算書に出ておりますから、先ほど申し上げたとおりです。
  109. 大塚喬

    ○大塚喬君 じゃ、これ最後で。  私が言っている償還計画の一番中心になる、予算から繰り入れする、そこらの方針をやっぱり政府は口先だけでなくて、昭和五十五年以降こういたしますという具体的なそういう計画を出してほしいと、示してほしいと、示してほしいと、こういう要求をいたしておるわけでございます。
  110. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それにつきましては減債計画につきまして定率繰り入れから、剰余金の繰り入れから予算繰り入れと、借りかえを行わないというような政府の決意、方針というものにつきましては、本委員会においてたびたび申し上げておる政府の方針はお聞き取りいただいたと思います。     —————————————
  111. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、上田哲君が委員を辞任され、その補欠として寺田熊雄君が選任されました。     —————————————
  112. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 何か通産省の担当官が他の委員会に呼ばれているんだそうで、どうしても先にやってほしいということで、大臣、その方を先にやりますから。  それは電力料金のことだけについてお尋ねするんですが、これは電力料金の引き上げについて、各電力会社から認可の申請が通産大臣あてに出されておるようですけれども——あなたが通産省。
  113. 篠島義明

    説明員(篠島義明君) はい、業務課長です。
  114. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 電力料金のことをお尋ねしますけれども、この料金の引き上げについての申請が各電力会社から出されているようですね。いま鋭意検討中と承っておりますけれども、それいつごろまでに大体方向が決まるのか。まあ問題は二〇%台か三〇%台かというようなことで、大変注目をしておるようですが、そういう点の見通し。  それからもう一つは、経済企画庁に後でお尋ねしようと思うんだけれども、私どもの知り合いで、たとえば引き上げることによって、アルミ関係の工場なんかは非常に打撃を受けるような状態のように聞いているんです。物価に与える影響をどの程度に踏んでおられるのか。そういう点をちょっと御答弁願いたいと思います。
  115. 篠島義明

    説明員(篠島義明君) 現在の料金認可の処理の現状でございますが、先週北海道の公聴会を終えまして、査定については取りまとめ中でございます。お恐らく今月終わりごろには企画庁の方へ協議いたしまして、企画庁の方では物価安定政策会議の特別部会にこれをかけることになっておりまして、それを終えますと、最終的には物価対策閣僚協議会にかけまして認可ということになるわけでございますが、われわれ作業のめどといたしましては、大体六月の上旬ぐらいまでに終えたいということで進めております。  それから、幅につきましては、これは現在査定中でございますので、ここで申し上げるわけにいきませんが、できるだけ厳正に査定をしたいということで慎重に対処いたしております。  それから、物価に対する影響でございますが、これは直接的に物価に対する影響を試算してみますと、大体消費者物価指数でもし今度の四社の申請そのまま認めるとすれば〇・一一、それから卸売物価指数で大体〇・一三ぐらいになるというふうに試算いたしております。
  116. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 では、できるだけ上げないように厳正にお願いするとして、それであなた結構です。  あと経済企画庁です。  大蔵大臣、大塚さんや福間さんの御質問とあるいはダブるのかもしれませんけれども、毎委員会ごとに恐らくたくさんの方からあなた御質問を受けておられると思います。いまの政局の問題で、もう本当に現内閣が気息えんえんの状態にあるということは何人も疑わないようですね、よたよたしておる。ことにあなたの動向、福田さんの動向が一番注目されておるようですが、きょうの新聞で一いままであなたは、当面、これは福田さんと一緒になるのでしょうが、当面国会の乗り切りに全力を尽くす、財特法の審議に全力を尽くすということを言っておられますね。ところがきょうの新聞など若干それが風向きが変わってきて、何かこの国会があけたあとで重大な決意をするというような新聞記事があります。そういう御決意がおありなのかどうか、おありとするとその決意の内容というのはどういうものか、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  117. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 新聞社の方で国会終了後重大な決意をするのかという質問がありました。で、私は、国会中でございまして、いろいろ大蔵大臣として微力ながら全力投球をいたしております。ことに国会終了後におきましても、政治家として真剣に時局に対処するのは当然と思っておりますということだけを答えたわけで、重大なる決意なんていう言葉は、私は申し上げた記憶は言葉ではございませんで、新聞社の方のボキャブラリーだろうと思います。
  118. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 つまりあなたが言わなくても、何かあなたの体の周囲にそういうもやもやとした雰囲気がただよっているんですね。だからどうしても何をあなたが言われても、そういうふうに理解せられてしまうということなんじゃないでしょうか。やっぱりあなたの政治的な立場とか、体質とかいうものがその原因なんだと思いますけれども、どうでしょうか。
  119. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は、平常な真意を持ちまして平穏にしかも真剣に毎日の仕事に精進をいたしておるにすぎないのであります。
  120. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 歴史的な経過を待つことにしてそれだけにしておきます。  それから、今度の租税特別措置法の改正などで、一貫した方策があらわれたんでしょうけれども、結局は、交際費課税の問題ですがね。これは私の方も強化するようにいままでずいぶん要請してまいりましたし、まあ微温的ではありますけれども、多少前進があったわけですけれども、私ども実際いろんな知人、友人などで聞いてみますと、まあある会社がやっぱり交際費足りないと。まあ足りないというのが、私どもから見ると使うべからざるところに使っているから足りなくなることは明らかなんで、足りない、どうするかと。そうすると、損金として落ちないというのは困るから、子会社であるとか、あるいは関連の会社の交際費として金はこっちが出してやるんですね。しかし、そういう子会社や関連会社の支出として落としていくということが間々あるようですよ。これは現実に私、実例を知っているんですがね。そういうことは国税当局なり主税局としては把握しておられますか。
  121. 系光家

    政府委員(系光家君) 親会社が子会社の交際費の枠を使って支出をしているようなことがあるかどうかと、承知しているかということのようでございますが、そういったようなことが税務調査上こちらでも把握した事例があるということは承知しているわけでございまして、そういう場合には、その支出というのは、そもそも親会社が負担すべきものでありますので、子会社の方の支出は親会社に対する寄付金であるというような措置になりまして、交際費ではない。親会社の方ではその金額だけの収益があった、同時にこれは本来自分の方で支出すべきものでありましたので、それだけの交際費の支出があったということで、限度計算の規定を適用しまして、超える場合には収益に加算して課税をするといったようなやり方をやっているわけでございます。
  122. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そこは抜け目なくやっていらっしゃるようにお聞きしたんですが、大体頻繁にありますか。どうなんですか。私は大きな会社ほどそういう危険性はあると思うんですけれども、どうでしょう。
  123. 系光家

    政府委員(系光家君) そういうことが頻繁に行われているというふうには聞いておりません。
  124. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、会社の規模によってやっぱり大きいほど多いというようなことはどうですか。
  125. 系光家

    政府委員(系光家君) そういうことを機械的に私ども現在いまのところまだ把握しておるわけではありませんので、統計的に非常にどういうところがやっているとかということをここで一般的に御説明するだけの資料はいまは持ってないわけでございます。そう例がたくさんあるというふうには聞いてないわけでございます。
  126. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、私の友人がそれを拒否したら、親会社との関係切られちゃったんですね。生生しい体験がある。何とかあれは税法上厳しい何か規制の方法というのはないものですかね。正直にそんな脱税的なこといやだ言うて断ったために非常にきげんを損じた実例があるんですね。どうでございましょうかね。何か規制の方法はないんでしょうか。
  127. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 実際の商取引の場合におきまして、ただいま寺田委員がおっしゃったような必ずしも好ましくない事例があるということは私どもも耳にいたします。またほかの例で申しますれば、たとえばリベートを出しましたときに、その受け取った相手を絶対に言わないでくれ、もしそれを言われたら取引は停止だというようなことを言われるというような非常に好ましくない例も耳にいたします。それらを法律的に何らかの条文で規制できるかということにつきましては、これ書いてみましても非常な倫理的な条文しか恐らくはできないんで、やはりただいま調査査察部長申しましたように、実際の執行面においてそういう好ましからぬことが起こらないように厳しく監視の目を光らせるということではなかろうかと思います。税の原則といたしましては、自分の支出でないものはもちろん自分の支出ではない、人に頼んで支出さしたものは、人から金をもらって自分が支出したというように、真正な姿に戻して課税するのがたてまえであるということはもちろんでございます。
  128. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 また大臣に戻るんですけれども、昨今の国家財政が非常に財源難で厳しいものがある。そこで歳出を切り詰めていく。もう一つは租税、社会保険料などの国民負担率を高めていく。公共料金でもあり方を見直していく。国があんまり穴埋めせぬでもいいようにするというようなことで、何かさっき大塚委員質問しておられた財政収支試算というものも、これを拝見しますと、結局いまの租税負担率を国税の場合で二%、それから地方税の場合で一%、社会保険料もやはり一%負担率がアップする、そういう前提でやったものでしょう。そうですね。
  129. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) おっしゃるとおりでございますが、社会保険料はたしか一・五%ポイントだったと思います。
  130. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それで、きのうも小倉税調会長の話では、この租税負担率という中には自然増収も入っているんですと、こう言うんですね。そうなると、まあ大蔵大臣は五十二年度は増税しないでも三年後からは増税するというように最近おっしゃっているようですけれども、その自然増収分というのをどの程度三%の中で見ておられるのだろうか。つまり国税の中では何%自然増収分がある、地方税の中では何%自然増収分があって純粋の税率アップによる、あるいは新税の設定による負担の増加というものはどの程度に見ているんだろうか。その点がどうもあいまいなんだね。この間も福田経済企画庁長官も、たしか矢追さんの質問に対して自然増収入っているんだから必ずしも増税せぬでもいいですよというような答弁を本会議でしておられたようですね。その点ちょっと説明していただきたい。
  131. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 国税の一般会計ベースで二%ポイント程度上昇するということをがまんしていただくということで経済計画全体ができ上がっておりますが、二%ポイントの中でどの程度が自然増収であるかということは、正確には実はわからないとしか申し上げようがないわけでございます。  ただ一つの御参考として申し上げますと、先ほど大塚委員にもお答えいたしましたが、ケースIの場合には、予想されますGNPベースでの経済成長に対しまして税収がどのくらいの割合で伸びなくてはならないか。通常言われている弾性値とはちょっと違う使い方でございますが、やはり言葉の概念としては弾性値というものになると思います。それがケースIの場合には一・六二になるわけでございます。つまり経済成長一の場合に税収が一・六二の割合で伸びないと、こういう姿にならないという想定になっているわけでございます。で、一・六二ということが一体現在の租税のシステムで可能であろうかということにつきましては、これは過去十年の経験値は一・三五でございます。  それから過去五年の経験値は一・三九でございます。したがいまして、五十五年度までの期間を通じて平均して一・六二の税収が上がってくるという予想は余りに楽観的過ぎると。やはり何らかの新増税をどこかの時点で考えざるを得ない、そういう構えで今後の財政運営をしなくてはならないという厳しい予告がされておると言わざるを得ないと思います。ただ、先ほど大塚委員にもお答えした中に入っておりましたのですが、一年ごとがどうなるかというのは、これは実は非常に流動的なわけでございます。先ほど申し上げました平均一・三九という過去五年をとりましても、さかのぼって逆に申し上げてみますと、〇・九五、一・八四、一・四二、一・一八、一・四五。非常に波を打っておりまして、それを平均しますと一・三九になるわけでございます。したがって、五十五年度を目標にして五十二年につないで見た、そのぶつ切りになっている各年度が必ずそういう弾性値の年になるということはむしろあり得ない。年ごとには自然増収というのは非常に波を打ちますから、その意味で五十二年度がどうなるかというのはまだわからないと申し上げるしかないわけでございますが、五年間を通観して見ますと、やはり一・六二という平均的に、しかも五年間続いての弾性値というものは、これは期待できないと。したがって、仮にその一・三九というのを丸めまして一・四というようなことで、いま予想されてますGNPで大ざっぱに計算してみますと付加率というものは、予想される付加率に対してやっぱり一ポイント強足りないという、非常に大ざっぱな推算はできます。したがって、二ポイントが全部自然増収でカバーできるというわけにはとうていまいらないだろうと。この間の平均弾性値がどのくらいになるかは全く未知数でございますが、やはり経験値から推して見ますと、一ポイント程度は何らかの新増税でカバーしないと足りないということになるんではないかと思います。
  132. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、年六%平均で経済が成長していくと。それから租税弾性値を一・四として平均していくと、不足額は一%だと、こう言うんですね。
  133. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 一ポイント強でございます。
  134. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 一%強。そうすると租税負担率を二%国税の分野で高めると、こう言っても、現実には一%強でいいと。いわゆる新税の創設とか、あるいは税率のアップによる増収部分というものは一%強でいいと、こういうことになりますね。
  135. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 過去の経験値を使って非常に大まかに計算してみますとそうなります。今後が仮に過去よりも弾性値が下がってしまうと平均して、という予想をとれば幅が広がりますし、それから五十五年までの間には景気回復期が入っているから、平均するとむしろいままでより高いんじゃないかと予想すれば、幅は小さくなるわけですが、そういう点を留保いたしました上で、非常に大ざっぱに過去の経験値だけを使えば、大体半分足らずは自然増収でカバーできる、残り半分強は何らかの新増税考えないといけないという漠然たる予想はつくと、そういうことでございます。
  136. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その場合、地方税もやっぱり同じような比率で考えたらよろしいか。
  137. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 大勢としてほぼ同じ傾向だとお考えいただいて結構だと思います。
  138. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうですか。それに比較すると社会保険料の場合はどう考えていったらいいんでしょうかね。これはあなたはさっき一・五%負担をふやしていく計算になっていると言われますが、これはもうネットにふやすわけで、いま言ったようにあれですか、率は変わらなくて、つまり厚生年金の保険料なんていうものは収入が上がればやっぱりおのずからふえていきましょう、そのかわり支出がふえるか。どういうふうに考えたらいいんだろう、この点ちょっと説明していただきたい。
  139. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) 社会保険の負担の増加につきましては、この期間に、計画期間中に社会保険の給付に当たります振替所得が大体一七%程度増加することにしております。それと大体同じ程度に負担が上がるという計算をいたしますと、その結果として率が一・五ポイント上がるという計算になるわけです。ですから、いわば社会保険関係につきましては、歳入歳出大体中立的に物を見ると。たとえば実際の問題といたしましては、標準報酬を引き上げるとかいろんな方法ございますので、これはどういうことになるかということは、具体的に厚生省関係等のお決めになることだと考えております。
  140. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、いま財特法が通るか通らないかという瀬戸際で、これは見通しの問題になりますけどね、それで通らなかった場合はやっぱり建設国債の発行一本でいかざるを得ないわけでありますが、一体いまの予算の執行が、まあ財特法による特例公債でも建設公債でも、公債としての役割り、財政収入をもたらす機能というのは一緒だからね。だから、一体これは建設公債でまかなっていた場合に何月まで賄えるのか、そこのところをはっきり教えていただきたい。
  141. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 私どもの方は本年度予定されております国債の総額を一方でにらみ、また他方で本年度を通じましての金融情勢なり何なりをにらみ、そして弊害が一番少ないようにということを考えながら、月別の発行計画を立てたいということでおりますが、まだ特例公債に関する法律が通っておりませんので、一応年間の計画を立てることができずに、本日に至っております。御案内のとおり四月は暫定予算になりましたので、全体から見ればもう少しよけい出したかったのでございますが、五千億を出しました。五月は一兆二千億をシ団と話し合いをいたしまして、ただいま募集中でございます。そうしますと一兆七千億が四月、五月の二カ月でさばけるわけでございます。これは年間の発行枠が七兆二千七百五十でございまして、そのうち運用部の引き受け分をのけますと、一カ月大体六千億程度、これが市中で平均的であればさばかれなければいけない数字でございます。これを先ほど申し上げましたように、金融機関の繁閑を見ながら、少し前倒しぎみに二カ月を推移したと。それで六月どのくらいにするかということは、現在この法案の審議状況を見ながら、内々打診を開始しているところでございまして、まだ計数を申し上げる段階には至っておりません。  そこで、いつまでもつかという話でございますが、これは実は金繰りの問題ではないんではないかという気がいたします。これは金繰りであれば御案内のとおり、別途大蔵省証券の制度というのがございます。しかしこういうものでまいりましても、どこかの段階で年度越しができるような収入金に置きかわらなければいけない。そうしますと、金繰りでもってつないでまいりましても、それを後で置きかえる期間が短かければ短かいほど金融市場に対する影響というのは大きくなってまいります。そこで私どもの方といたしましては、でき得べくんばこの月間の平均発行額が、しかも、相当前倒しになったものでいくことができれば、この国債の持っておるいろいろな影響のうちで好ましくない部分を解消することはできるのじゃないか、このように考えております。
  142. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、結論をざっくばらんに言いますと、財特が通らなくても、つまりシ団の協力さえあれば思い切って発行しておいて、そして後は、財特が七月に通るか九月に通るかわからぬけれども、通った段階でそう無理をせずに滑らかに発行ができると、こういうふうに理解できるんじゃないだろうか、どうでしょう。
  143. 高橋元

    政府委員高橋元君) 七兆二千七百五十億の国債の発行権限が毎月どのように実行されるかという問題と、財政特例法がなかったら予算の執行に影響があるんではないかという問題とは、おのずから別個の面を有しておると私ども考えております。七兆二千七百五十億の中で、全体の金融の繁閑を見ながら、どういうふうに公債を出していくかということを、先ほど理財局長から申し上げたわけでございますが、その中の三兆七千五百億といういま御審議をお願いいたしております法案に基づく特例公債と申しますのは、実は建設的な経費以外の一般的な経費、これは約二十兆弱でございますが、それの二〇%近い一九%ぐらいの割合を占める重要な歳入、そういう歳入がなくて歳出の執行ができるかということになりますと、そこは非常に大きな問題になってくるだろうというふうに私ども考えております。したがいまして、公債発行権限が何月に使い果たされるのかという問題と別個に、特例公債法案は今回の予算の背骨であって特例公債発行ができなければ、予算の執行全般に影響があるということを申し上げざるを得ないというふうに私ども考えております。
  144. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ、税収も毎月入ってくることだし、それから二十兆か、この公共事業以外の財政支出だって、これは月給は繰り延べるわけにはいかないが、そこのところは適当にあんばいもできないことはないし、それと建設国債を一応発行しておいて、それを月給なら——月給というとちょっと支障あるかもしれぬが、その他の財政支出に回すというようなことも現実にはあり得るのじゃないだろうか、その点いかがですか。
  145. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 先ほども申し上げましたとおり、途中で若干のやりくりをいたしましても、結局、残ったものは最後のどこかで年度末までに安定的な収入、すなわち予算上で申しますれば歳入になり得る収入でございます。逆に申しますと、蔵券の発行上がり金のようなものではない、歳入になり得る収入でもって置きかえられなければいけないわけでございます。その置きかえる期間が短ければ短いほど金融市場に対する圧迫が大きい。しかも、たとえば下半期をとりますと、民間の資金需要も大きくなるでしょう。それから政府関係機関の発行する債券であるとか、地方債であるとか、こういったものもどちらかと言えば、下期の方に片寄りがちでございまして、それこれ考えあわせまして、公共債全体の持つインパクトを金融市場にどれだけ少なくするかということを考えますには、やはりある程度はっきりした年間計画を持ち、しかも、その中で相当上期——上期と申しましても、しかも、その中でもまた早い時期の方へ負担をかけなければいけない。先ほど五月に一兆二千億という数字を申し上げましたが、この一兆二千億という数字は相当大きい数字でございます。しかも、シ団の方もこれをやりましょうということで同意いたしましたが、これはシ団といたしましても、彼ら自身が今年のずっと先のことを考えまして、自分の手元から見てもこれだけはやっぱり先にやっておくべきであるということを御理解いただいて、そして私どもとの間で契約に同意していただいたわけでございます。そういうことを考えますと、この問題というのは国庫の中だけのやりくりでどうのということを越えまして、非常に大きい経済的ないし金融市場に与える影響も頭に入れながら考えていかなければいけない、そういう問題であろうと思っております。
  146. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、本質的な問題じゃないね。つまり建設国債、この一兆七千億だって建設国債として発行したわけでしょう。だって、特例債はまだ発行はできないんだから、法的に。だから、どうしたって建設国債として出したと言わざるを得ないわけだ。しかし、それが建設国債——公共事業に全部使われたという保証はないんだよね。要するに国庫の歳入欠陥を埋めるものとして機能しているに違いない。だから問題は、計画が樹立できるかどうかという、もっぱら財政金融上の政策論になってくるわけですよ。法律的にはいささかも差し支えないし、だからあなたのおっしゃるように、将来いろいろ政府債や社債の発行とダブっちゃって、金融梗塞の状況ができるおそれがあると——私はそうは思いませんけれども、思わないけれども、おそれがあるとしても、もしそれがおそれとして考えられるならば、いま一兆七千億出したんだから、まだ一兆五千億の余裕があるわけだね。それから蔵券もあるし。だから、少なくとも何月まではいまのままで賄える、可能だということはある程度言い得るんじゃないでしょうか。
  147. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 四月−五月に出しましたものは、御指摘のとおり財政法四条に基づく国債でございます。通常、建設国債と言われているものでございます。  次の点の計画性の問題でございますが、ただいま私は国庫の方での計画性に触れましたが、これは御答弁の中でも若干触れましたとおり、国債のシ団を構成しております構成員、これの多くのものは金融機関でございます。彼ら自身もある程度の計画性が自分の方に与えられなければ、自分の方としてはなかなか、何月に幾らですよ、これだけの国債をお願いしますよというときに、承知しましたということはなかなか言いがたい。その上から言いましても、私どもに対してできるだけ早く自分たちも計画が立てられるように、一つずつ固めていっていただきたいという要望を受けております。その意味で計画性という言葉を使いましたが、これは国のみならず、広く金融市場に関係しておるもの全体が、この国債の持つウエートということを考えて、なるべくスムーズにやっていきたいということで、計画に融通性を持たしてほしいという要望を持っておるのが実情でございます。  最後の点で、蔵券にちょっとお触れになりましたが、蔵券は先ほども申し上げましたとおり、どっかの段階で国債にかえなければいけないもの。かえる期間が短ければ短いほどイムパクトが大きい。その意味から言いましても、この計画性の中に吸収されてしまって、これは一時的の金繰りとして動くものである。  それから、御案内のとおり、そしてまた御指摘のとおり、現在一兆七千億出しました国債のかわり金でございますが、これがすべて現時点を断面をとってみますと、公共事業に使われておるものだけでないことは御指摘のとおりでございます。その意味で国庫の金の一体的、効率的利用の中に入っております。そういった意味の金繰りから申しますと、ある程度可能のようですが、くどうございますけれども、この債券をいつどういうふうにして金融市場にはめていくかということの方の持つ意味考えますと、そこは金繰りだけでは解決のつかない大事な問題を含んでおりますということを御指摘いたしたいと思います。  後、法律論の方は主計局の方から御説明いたします。
  148. 高橋元

    政府委員高橋元君) いまの財政法のたてまえ、また予算、それが基づいております憲法の財政に関する考え方のたてまえから申しますと、歳出というのは、これは国会から支出権をいただく行為であります。歳入の中の税収その他の税外収入につきましては、これは別途租税法定主義等の要請に基づいて定められた法規に基づいて入ってくる歳入の見積もりでございますが、ただし公債金、これだけは借り入れをする権限を国会からいただくということが憲法及び財政法によって定まっておるわけでありまして、したがいまして、その歳入の中で公債金というものは御議決がなければ動けないという性質のものでございます。財政法四条一項ただし書きに基づいて発行するいわゆる公債金という予算上の文句でございます。これは別途予算総則で御議決をいただきましたので、これは実行可能になっておりますが、残る三兆七千五百億円の特例法公債金という収入の部については、いまだこれは御議決がなくて動かない。これはそういう法的な性質上当然だと思います。ところが先ほども申し上げましたように、それが支えておりますところの歳出というものが十九兆七千億、つまりその五倍の歳出を支えておりますんですが、これは本来租税をもって賄うべき部分でございます。そういう意味で申しますと、租税の中で、たとえば源泉所得税が五兆六千億ばかりある、法人税が四兆四千億でございますか、そういう収入が不確実であるということと同じような状態に歳出予算の執行としては置かれるわけでございます。実際に金を払っていきます場合に、どこまでもつのかという問題は一つはございましょうけれども、そういうことよりももう一歩前に、そういう歳入の方途が確実になっていない、そういう予算について歳出の支払い計画を円滑に組んでいくことができるのかというところまで問題はさかのぼっていくんではないかというふうに考えておりまして、冒頭に御質問でおっしゃいましたように、私どもはこの法律をこの国会でぜひ成立をさしていただくように心からお願いを申し上げる次第であります。
  149. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまの主計局次長のお答えを伺っても、何かこう望ましい意味のたてまえ論のようなものを振りかざしているけれども、法律的には全然支障はないように思う。ただ、何か金融機関がめどがちょっと立ちにくいというような問題だけに帰着してしまうように思われるんですね。だからそれは余り長いこと引っ張っちゃいけないかもしれぬけれども、一カ月や二ヵ月われわれがもう一遍この問題を慎重に検討をし、人心を一新して、そして財特をどうするかということで賄っていけばそれで足りるんじゃないか。いまやこれは大臣の、何というかな、これは自信というか決意というか、そういう問題に帰着してしまうんじゃないだろうか。法的にはいささかも差し支えないと私は思います。大臣いかがですか。
  150. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただ、当委員会におきまして大変御熱心に御審議をいただいておりまするし、私どもも誠心誠意努めておりまして、私どもが誠実さが足りないということでございますならば、いかようにでもおわびをしなけりゃなりませんけれども、私どもが誠意を持って努力をいたしておることが御理解いただけますならば、私どもの希望をお入れいただきたいものと思います。   〔委員長退席理事中西一郎君着席〕
  151. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまは結局もう全国民が何かうんざりしているといいますか、新しいものを期待するという、そういう期待感というようなものがびまんしているように思うんですよ。それはやはりロッキードの問題をきちっと始末をしなければいけないということと絡み合っていますから、それが何らか変化というものを抑える、そういう抑制的な機能として動いているということのために、何かずるずるいっているんですね。しかし、もうすでに新しいものを期待するというか、変化をもって精神はつらつたる政治を期待するというのは、やっぱりもうこれは日本全国のそういう一般的な気持ちじゃないかと思うんですね。ですからこの際は、財特というようなものにこだわらずに、やっぱり現内閣のもとでもよろしいから解散に持っていって、そして財特の成立なら成立を二カ月なら二カ月後にやって解散をして、そして政治を一新するということの方が国家的な見地から、国民的な要望にかなう道だと私は思います。私は大体そういうことで自民党の友人とも話してみたけれども、何派というようなことでなくて、そういう期待というものはいま強いようですよ。だからいまこの時点で財特を通さなければならないという問題じゃないんですから、そこはもう十分考えていただいていいと思うんです。大臣の御決断いかがでしょうか。
  152. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大変しつこいようでございますけれども、重ねてお願いを申し上げます。
  153. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは何回繰り返しても同じことになりましょうからこれで終えて。  今度は経済企画庁の人に。この間も質問ができなかったので質問したいと思うんです。というのは、月例経済報告というのを拝見いたしますと、現金給与総額は、三月が十五万七千九百八円で、前月比一四・九%増となっている。これは所定外労働時間の回復によるところが多い。実質賃金は、前年同月比五・五%アップであるということになっていますね。そうしますと、物価のアップは、消費者物価の増加というのは、これは前年同月比八・八%だという。この月例報告による数字だけでも実質賃金が五・五%アップで消費者物価の増加が八・八%の上昇だということになると、これはもう明確に所得が目減りしているわけですね。しかも税金はよけいに取られるし、これはノミナルな所得がふえていますから税金は当然ふえていく。その上にまた電力料金が上がる、社会保険料が上がる、消費者米価も上がるということになると、これは結局国民に耐乏生活を強いるということになるんですね、結論としては。それでいいんだろうか。経済企画庁として晏如としておられるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  154. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) ただいまの御数字でございますが、確かにいま賃金が一四・九で、物価が上がっております。御指摘の八・八でございまして、実質賃金が五・五ということになるわけでございますが、逆に申しまして、やはり生活水準の向上、実質賃金の上昇ということは成長率、実質の成長率が問題でございまして、現在の五十年度の経済成長率は二・六%と考えておるわけでございますから、確かに目減りはしておりますけれども、実際の成長率に見て非常に国民生活が圧迫されているということにはならないかと考えております。
  155. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは国民経済成長率が実質二・六%で、そしてそれとの対比ということを考えると、いま言ったように、どうして、実質賃金の増加と、それから消費者物価の増加の乖離というものが現実にあるのに実際の生活が目減りにならないのか、そこのところをもう少しよく説明していただきたい。
  156. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) そこのところが非常にむずかしいことでございますけれども成長率というのは結局毎年毎年新しくつくり出されます財サービスの増分になるわけでございますから、それがふえなければ同じ生活をせざるを得ない、物価が上がっておりましてもあるいは物価が下がっておりましてもいまの関係は変わらないわけでございまして、結果としてやはり実質の商品サービスの量というものが生活の基礎になるというふうに考えております。
  157. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 しかし、それを国家全体、国民生活全体として見てどうかということよりも、実際個々の家計から考えてみると、それを購入する購買力というものは実際上低下しているんですからね。それはもう争うことはできない。だから、個個の家計ということは、その低下分だけ耐乏生活を余儀なくされるという結論が出るんじゃないですか。どうでしょう。
  158. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) 確かに収入がふえた分だけ実質の購買力がふえないということは事実でございますけれども、しかし、その生活水準が去年に比べて下がったかと、そういう意味で目減りはしていないわけでありまして、全体としての生活水準は、わずかでございますけれども上昇しているという結果だろうと。逆に申しまして、たとえば賃金が上がりますと、これはいまいろいろの労働組合の方もございますけれども、ある程度物価にはね返るということを御承知おきいただいていると思うわけでございますが、やはりその分だけ、物価が上がった分だけ目減りをするけれども、トータルとすれば生活水準は少しでもよくなっている、こういうことになろうかと思います。
  159. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なるほどそれは、国民経済というものは成長率がそれだけプラスされたから、そのプラスされた分だけは全部に均てんしているという考え方なんですね。  マクロの見地から言えばそういうことが言えるかもしれないけれども、そのふえた分は平等に均てんしているのじゃなくて、というのは、それはつまりノミナルな額がふえて、個人個人が。そうしてそれが物価の高騰に大体見合ったもので、実質賃金が物価の高騰よりも同じか上回らなければそれは自分のふところに入ってこないんじゃないか、ほかへ行っちゃって。
  160. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) それは画一的に数量的にお話することは非常に困難でございますけれども、物がいろいろつくられますと、これは経済の変動のときにいろいろの実物の配分があるわけでございます。すべて均等かどうかというお話がございましたけれども、大きな使い方といたしましては、政府関係で使うという部分がございますし、企業が使うという部分がございますし、それから個人が使う、こういうものがあるわけでございまして、どちらかといいますと、成長率が非常に高いときというのは、設備投資がふえまして、企業が使う分がふえるわけでございます。いわゆる労働分配率が低下するわけでございます。しかし、昨年のような状態で申しますと、設備投資は前年に比べて減っておりまして、全体としての労働分配率は不況でありますけれども増加している、こういう形になっておりますから、不平等な分配のために家計が非常に苦しくなったということは当たらないのではないかと考えるわけでございます。
  161. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうもおかしい。あなたのおっしゃるように設備投資の資材というものがどんどんふえて、そのために国民経済成長率は高まったというんだったら、なるほどそれは国民生活上直接家計のふところには入ってこないだろうけれども去年は労働分配率が高まっていると、そういうふうなあなた見方をしていらっしゃるわけですね。
  162. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) はい。
  163. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは数字がありますか、労働分配率が高まっているという。
  164. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) 国民所得の分配につきましての数字はまだ十分確定しておりません。で、お示しすることはできないわけですが、先ほど申しましたように、名目賃金の伸びが一五%近いわけでございまして、設備投資は前年水準を下回っているということを考え、また法人所得も下回っているということから推定いたしまして、労働分配率は上がっているのではなかろうかと推定しておるわけでございます。
  165. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはきょうでなくてよろしいから、労働分配率が現実に高まっているという数字があなたの方に入手されましたら、この委員会へ出してください。
  166. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) はい。
  167. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 委員長ひとつ、よろしいですね。
  168. 中西一郎

    ○理事(中西一郎君) わかりました。
  169. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それからもう一つはマネーサプライの問題です。これがやはりいまの報告の九ページと十四ページに出ていまして、この一月、二月、三月と引き続いて一五%以上増加しているという数字が紹介されています。それから日銀券の発行高も、同じく前年同月比で一月以外は全部一〇%を超えているわけですね。それだけ現実に増加している。それから全国銀行実質預金、これも一月、二月、三月といずれも一五%以上ふえている。その上輸出が非常に好調で、どんどんと輸出代金が日本に入り込んでくると。また、予算も通りまして、先ほどの財特の問題はあるにしても、これを建設国債で賄うかというような問題はあるにしても、財政支出は拡大していくと。そういうようないろんな条件というものを総合しますと、通貨及び現金需給のアンバランスが一層拡大していくという結論にならざるを得ないんですが、これが過剰流動性となってインフレを促進するということが本当に懸念される段階じゃないんだろうか、その点いかがでしょうか。
  170. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) いま御指摘がございましたように、通貨の供給量というものは、これまでの経験で申しますと、物価の上昇とかなり密接な関係があると言われておるわけでございます。しかし、一体どれくらいの数字が危険信号かという点につきましては、まだ確答がないわけでございますし、先ほど、賃金が大体一五%くらいで通貨供給量も大体そのくらいでございますので、これが名目の成長率から非常に大幅に乖離するということになりますと、通貨供給量からのインフレ圧力要因というのは強まってまいりますけれども、現在のところ、まだ危険であるというところまで至っていないのではないかと思います。また、一月、一月の数字ではなくて、もう少し長い目で見てこれ判断しなければなりません。最近の通貨の動きにつきましては、経済企画庁におきましても、日銀におきましても、その動きを非常に注目している段階であることは御承知のとおりでございます。
  171. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 まだ赤ランプはついたというところまで言えないという考えですか。
  172. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) そのようでございます。若干警戒ぎみということでございます。
  173. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは経済企画庁としてはいまのような通貨の増発であるとか、あるいは新価格体系への移行であるとか、それから成長率の低下に伴う賃金コストの上昇、これは成長率と比較しての意味でしょうね、それから輸入原材料価格の上昇、公害防止費用の増加など、物価上昇圧力が非常に高まる可能性があるということをあなた方みずから指摘しておられるんだけれども、そういうような、いろんな物価の面の悪条件というものが重なり合っているこの現在で、なおかつあなた方は政府目標である六%アップという線を守り得るという自信がおありなんでしょうか。いままで大抵この見込みははずれておったでしょう。今回もどうなんでしょうかね。自信がおありなのかどうか、あなた方のその……。
  174. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) ただいま御指摘になられましたように、いろいろなコストアップ要因があることは事実でございまして、したがいまして、今回の計画におきましては、五カ年平均いたしまして、消費者物価六%台ということを目指しております。この数字は従来の計画あるいは従来の実績から申すと、むしろ高い数字でございまして、これはその意味では実現性を考えているわけでございます。  もう一つ、御指摘の点でございまして、これが実現できるかどうか、それは実現できるとお答えをせざるを得ないわけでございますけれども、それよりも客観情勢を少し考えてみますと、確かにコスト要因というものは強くなってまいります。しかし、逆に消費者物価に対して有利な条件も出ているわけでございまして、それは一つはやはり成長率が下がってくる、従来の一〇%強の成長率から六%強に下がるということは一つの条件でございまして、これは過去の数字と、これからの日本経済では条件が同じではございませんから、直接的な比較というのは、非常にむずかしいわけでございますが、過去三十五年からとりまして一けた台の成長率というのは四、五回ございます。たとえば三十七年は成長率六・四でございまして、消費者物価が六・七でございます。それから四十年、これは不況の年で異常でございますが、五・七の成長で六・四、それから四十六年は、七・三に対して五・七というふうになっておりまして、やはり成長率というものは一つの条件であろうと思います。  なぜ成長率をこのように申しますかといいますと、一つは、成長率が低いということは、非常に需要の圧力が高度成長の時代よりも少なくなっているということ、特に消費財についても同じようなことが当てはまるのではないかということが一点でございます。  第二点は、これまでの消費者物価の上昇を押し上げてまいりましたものといたしまして、いわゆる生産性格差インフレーションというのがございます。これは先生御承知のことと思いますけれども、たとえば生産性の非常に高い重化学工業で二〇%の賃上げをすると、それに対して生産性の上昇はゼロである、たとえばいい例ではないと思いますけれども床屋さんも大体それと同じくらいの所得を上げなければならぬといいますと、ここで二〇%の物価上昇が起こるわけでございますが、今後はそういうことはないわけでございますから、その点から緩和条件が出てまいります。  もちろんこのような条件を生かしてまいるためには政策のよろしきを得なければならないわけでございますけれども、そのためには、第一にやはりそういう観点から申しまして適正な需要水準々維持する、超過需要が起こらないような経済運営をしていくということが中心でございまして、それには構造政策、競争政策を組み合わせました総合的な政策効果的に実施すれば、私たちは六%台、計画期間中には六%以下の消費者物価というのは実現可能であろうと考えているわけでございます。
  175. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 競争条件の整備などといっても、なかなか独禁法一つが改正できないというような状態もありますし、まあ心配だけれども、一応その問題はひとつ置いておきましょう。  それで、私は、今度は計画の方ですが、昭和五十年代前期経済計画、きのうもまたこの問題でお尋ねしたんだけれども、これは税制景気調整の点についての活用の問題をお尋ねしたんですが、この前期経済計画というのを読んでみますと、着眼点は確かにいい面があるんですね。それは計画の目標というのは、家庭も企業も国民のすべてが不安なく将来設計のできる経済社会を建設することを目指すんだと、その第一条件としては物価の安定と完全雇用だと。私は、この結論には異議のある人はないと思う。問題は、それが本当に達成できるかどうかということにかかわっているわけですが、ここに定年制の問題を一つ提示してますね。定年制の延長は重要な課題だということを言って、いまの定年制の延長の必要をうたっておられる。これもまあ私も一度予算委員会で三木さんに質問して、三木さんも六十歳定年説を強く肯定されたわけです。そして、後ずっと読んでいくと、五十ページに、六十歳定年制をとるべきだという主張が出ている。これも私は大いに同感なんだけれども、問題はそれを実現するメトーデなんですね。どういうプロセスでそれを実現していくか。私どもの子供が実際勤めているところでも、五十五歳定年ということをいまとっているようですが、実際上二年間延長して、その二年間は嘱託として置くというような、何か中途半端な制度をとっている企業が多いようです。しかも、それは月給が急に六割にダウンするというようなこともあるようで、それで子供がまだ娘は結婚適齢にならない。大学も卒業しない。高級官吏の人はどこかいろんな外郭団体に天下って、そこをうまく調整なさるようだけれども、一般の労働者はなかなかそうはいかない。だからあなたは六十歳定年制をうたったという目的はきわめて正しいんだが、これをどういうふうにして実現していくのか、その熱意、その方法、それが大事なんですね。それをちょっとお話しいただきたい。
  176. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) 御承知のように、定年制の延長というものが企業の中に次第に広がってきてはおりますけれども、いま御指摘のように、中小企業その他なかなか円滑には進んでおりません。しかも、これから成長率が下がるというような状況考え、一方において労働力全体として老齢化するということを考えてまいりますと、この実現は非常に困難になろうと思っておるわけでございます。しかしながら、これはやはり日本の現在の社会問題から、あるいは経済問題から考えましても、きわめて重要な課題であるわけでございまして、その実現の方法ということにつきましては、これはやはり基本的には労使の間でお考えいただくということになろうかと思います。そういう意味で、計画におきましても労使の方々の御理解をいただく、非常に苦しいけれどもこれをやっていくということが一つあろうかと思いますし、それにつきまして、これは計画に書いてあることではございませんけれども、いろいろ議論ございました。それについて、ある程度いまの年功序列制の賃金カーブというものも考え直す時期に来ているんじゃないか。そういうことも含めまして、やはりこれから定年延長というものを重視していく。これは政府として労使双方にお願いすることになります。  それから、これは具体的な政策といたしましては、高年の雇用率の設定をいたしておりますし、それから定年延長奨励金という制度もございます。これ主として中小企業が対象になるわけでございまして、いわゆる先ほど申しましたような労使の交渉の中で定年延長の問題が円滑に動くようなムードづくり、そういう環境を醸成するということが政府の務めであろうと考えておるわけでございます。
  177. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 民間企業については大いに蛮勇をふるって、その指導、奨励をする方策を講じていただきたいと思うんだけれども、これが閣議で承認されたということになりますと、国家公務員については定年制ないけれども、私どもの親戚でも、ある官庁で五十五でやっぱり勧奨退職でやめざるを得ない者があったわけですがね。これは国家公務員については政府の決意でどうにでもできるんじゃないかと思う。だからそれを蛮勇をふるって推進する決意があるのかどうか。まあ事務官僚としてももちろんですよ。  それから、大臣、いいですか。あなたは財政担当のきわめて重要な地位にある大臣、この計画は閣議で承認したんでしょう、六十歳定年説。国家公務員についてなら、これはあなたの分野だからできるはずですよ。どうですか、あなたの決意。先にあなたから計画大臣の御決意を承りたい。それ、通り一遍のじゃなくて本当に真剣な答弁を期待します。
  178. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) 計画の文章におきましては、計画期間中に企業の六十歳定年が一般化することを目途にするということでございまして、先ほど申しましたように、労使のこれは両面からの御理解をいただきまして……
  179. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 みずからやらなきゃ、企業に押しつけられない。
  180. 佐々木孝男

    政府委員佐々木孝男君) お願いしているわけでございまして、ただ、この五年間に、まあ目途でございまして、これ全部一般化するというのは非常にむずかしいという表現だろうと思います。したがいまして、その意味から政府は、いま御指摘がございましたけれども、賃金にいたしましても雇用条件にいたしましても、やはり民間追随型でございますので、その民間におきます動きによりまして、それに対して動いていくことになろうかというふうに考えております。
  181. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 自分がやらぬで民間にどうして押しつけるんですか。それはおかしいな。  大臣、あなたの御決意を、国家公務員について。
  182. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この趣旨に沿いまして逐次努力してまいるということだと思いますが、所管から申しますと私ではなさそうでございますので、趣旨はそういう……
  183. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなた、国務大臣ですからね。国務大臣として、行政大臣として。それは行政庁の長官としてじゃないですね、やっぱり。内閣を構成する国務大臣としては一識見を持ってしかるべきでしょう。
  184. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) だから答えたんです。
  185. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはあなたのそういう識見の中にそれ入れて当然しかるべきだと思いますよ。
  186. 中西一郎

    ○理事(中西一郎君) お答えになりますか。
  187. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この趣旨は尊重すべきものと思います。
  188. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 委員長、まだたくさんあるんですが、時間が来ましたから終わりますが、まだたくさんあるんですよ、質問は。十分の一も行ってません、よろしいですか。
  189. 中西一郎

    ○理事(中西一郎君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  190. 中西一郎

    ○理事(中西一郎君) 速記起こしてください。
  191. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは後ほど委員長からまた答弁をいただきたいと思いますが、公債発行特例に関する法律案、このことでいまここで審議ありますけれども、テレビや新聞等で報道されているところでは継続審議となるというような言葉が出ております。私たちは、両院議長の裁定にあるところの精力的に審議をするということを、一生懸命やっているわけですけれども、いかに精力的に行っても時間の不足ということはどうにもならない。そういうときにああいうようなことが伝えられた。これは何も急ぐ必要がないんじゃないか。ところが話によると定例日でない金曜日まで行うという話でございますけれども、   〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕 これは委員会の運営としてはなはだ好ましくないんじゃないか。少なくも数十時間の審議時間は必要だろうと、こう思われますが、私はこれは委員長の運営の姿勢を判断する重要な材料でもございますので、これについてまず御答弁をいただきたいと思います。
  192. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、ちょっと委員長。私も、鈴木委員の前に委員長代理に申し上げたんですが、やっぱり委員長に聞いていただかなきゃいけません。  私の質問は、私の質問のすべき事項の十分の一ぐらしかまだ行っておりませんから、十分な質問時間をお与えいただきたい。
  193. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 速記ちょっととめて。   〔速記中止〕
  194. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 速記を起こしてください。  それでは、鈴木一弘君の財特法に対する審議について、基本的な委員長の態度をお聞きになりましたそうでございますので、お答えを申し上げます。  私は、本案件を継続審議にするとかなんとかということは、一切決まったことではございません、と承知しております。あらゆる機会を十分に活用して委員会の審議を最善を尽くして、そうしてその結果本案件をいかに処理するかということになるので、ただいまは鋭意審議を続けるということに尽きるのでありまして、何ら委員長としては他意はございません。慎重にかつ精力的に審議をするということがただいまの私の心境でございます。
  195. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 委員長、私はもっと十分な審議時間をお与えいただきたいというお願いを委員長にしたわけですから、委員長よく心におとめくだされば結構ですから。
  196. 岩動道行

    委員長岩動道行君) その点は私も十分に留意をいたし、また、時間の割り当て等につきましては理事会において十分に協議をさしていただきたいと存じます。
  197. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それからもう一つ。これは風聞かもしれませんけれども、二十一日に何か強行採決をするとか、二十二日の公聴会の後ではやるのじゃないかとかというようなことが聞こえてくるのですが、委員会でいま審議始めたばかりで、審議している最中にそういうことがわれわれの耳に入りてくる。疑ってみたくはございません。疑いたくはございませんが、委員長が何かはかっているのじゃないかというふうに考えざるを得ないので、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  198. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 全く私はそのようなことは聞いてもおりませんし、考えてもおりません。
  199. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 じゃ、大臣にお伺いいたしたいのですが、ここまでいろいろ詰まってきますと、これから先いろんな問題が、何といいますか、これからこの法案の扱いがむずかしくなってくるわけでございますけれども大臣としてはもちろんそのお気持ちは全部わかりますけれども、最近いろいろ紙面をにぎわしているいわゆる三木退陣要求などの政変の動きがございます。そういう意味で、政治家大平正芳氏として、大蔵大臣としてではなくて、その大蔵大臣立場を離れた場合、この法案についての成立などは当然望んでもいらっしゃらないのであろうと、こう思うのでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  200. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) とんでもない話でございまして、参議院の大蔵委員会におきまして精力的に審議が進められておることに対して敬意を表しておりまするし、この審議の終点におきましてめでたく成立することを期待いたしております。
  201. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 じゃ、前置きはそのぐらいで入りたいと思いますが、歳入の不足を埋める、これが建設公債あるいは今回の赤字公債発行になったわけでありますけれども、そもそも公債発行するということは、本来の税収が不足である、そのためであろうと思います。で、やはり税収だけで経済財政を運営していくという、健全財政にしていくということが公債発行していく政策の最終的なねらいで、なきゃならないだろうと思います。そうしていくためには、不況を克服していく。そして国がいまの市場経済を自由にやらせるのではなくて、いろいろな投資をするとか——いま公共投資やっておられますけれども、そういうことが必要となってくる。本来ならば租税でもって所得の分配をできる限り平等にして、そうして消費性向を高めて不況を克服し、歳入の、税収の増加を、自然増を図るというのが本当だろうと思うのですけれども、その点のお考えはいかがでございますか。
  202. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) おおむね鈴木委員の言われることが本筋であると思います。
  203. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 国家が、今度もいろいろ建設公債三兆五千億を超えておりますが、そういうような建設投資をしていく。そういうことで所得と消費とのギャップを埋めていく、こういうことが租税だけで不十分、租税の不平等を直すことが不十分であればそうせざるを得ないのですけれども、やはり赤字公債の前に建設公債を出した。その建設国債の発行でさえも、本当ならば租税で十分投資ができるならこれはする必要がないはずです。やはり租税の不平等を直すのが真っ先で、そうしてそれでもって国家としての公共投資をする、そうして景気を刺激していく、こういうことができない、不十分だとなったら、建設国債というのはわかるのですけれども、それも十分やらないうちに現在は赤字国債まできてしまった。今回の、五十一年度の租税の改正を見ても、会社の臨時利得税を二千億円でございますか、そういうものがなくなったり、この委員会でも何度も問題になっていますけれども、社会保険料の、診療報酬のいわゆる非課税の問題、そういう特別措置的な問題、こういうことや、財産隠しのことも指摘をいたしましたけれども、こういうようなことを全部やった上で、不足の場合、初めて建設国債の発行になり、そうして最後は赤字と、こうなるのだろうと思いますが、一番大前提のこういう租税の——いわゆる大蔵大臣は、前に一般的増税はやりたくない、選択的増税をしたいということをはっきり言われましたですね。その努力の上で間に合わなければ赤字公債という順序を踏むということをこの席上で言われたことがあったと思うのです。私はそういう意味で、選択的増税となるべきものを逆に動いていった。取れるところから取るような方法さえもとらなかったというのじゃないか。その点で非常に不満があるわけでございますが、これはどうお考えでございますか。
  204. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府としてはとれるだけの措置はとったつもりでございます。不公正の是正措置は十分でないというお考えでございましょうけれども、私どもといたしましては、現行税制はわれわれの諸先輩が丹念につくり上げたものでございまして、どこの国と比較いたしましても、そんなに見劣りのするものであるとは思いませんし、相当誇るに足る内容を持っておると思います。また今年度、今国会におきまして御承認をいただきました特別措置の見直しも、今日の時点におきましては精いっぱいの見直しをやらしていただいたと自負いたしておるわけでございます。その点につきましての評価におきましては、鈴木さんと若干違うように思いますけれども、税で本来片づけるべきで、それで足らないところがございますならば公債に頼ると、やるべきではないかというお説に対しましては、そのとおりと私も存じます。
  205. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次は、償還計画についての基本的な考え方を伺いたいんですが、今回のこの法律によると、今回発行赤字公債については借りかえを行わないというふうになっております。おるけれども、六十一年ですか、償還のときは。そのときになっても償還するための財源不足、財源が十分ないと、租税の方からそれを埋めたために、どうしても今度は一般会計財源が不足するとなると、赤字公債を再び発行しなければならないということになってくるので、この点がなんか非常な矛盾を感じざるを得ないんでありますが、その点は、十年先のことはわからないと言われるかもわかりませんけれども、基本的な考え方としてどうお考えなんでしょうか。
  206. 高橋元

    政府委員高橋元君) ただいま御指摘の、六十一年度三兆七千五百億円の特例公債を借りかえのための起債をしないでどうやって返すのかというお話でございますが、これは五十五年までに遅くとも特例公債依存の体制から脱却をするという決意であるということはたびたび申し上げておりまして、経済計画に即して、それまでの一般会計の足取りについて計数的な見込みも現在のところできるだけのことで提出をいたしております。  五十五年度または五十四年度以降、財政をどのように推移さしていくかということになりますと、これは特例公債に再び戻るということはあり得ないわけでございまして、それ以降歳出を合理化し、歳入を確保して国民負担の状況考えながら逐次公債の依存度の圧縮に努めていく。いま大臣から、できるだけ租税収入をもって歳出を賄いたいというお話がございましたけれども、さような方針で、特別公債発行しない、逐次四条公債の国債依存度を下げていく。それは景気の変動もございますから、一本調子にそういうふうになるかどうか、十年先のことまでいま数字をもって見通すわけにいきませんけれども財政の運営の方向としては、公債依存度を逐次下げていく。それによって六十年、六十一年にただいま問題になっておりますところの、また発行を現にお願いいたしておりますところの特別公債の償還に遺漏なきようにすべきであると思っております。そのようになるというふうに私ども確信をいたしております。
  207. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 十年先のことをえらい確信をお持ちなんでびっくりしているんですけれども、五十五年以降は再び特例公債を出すことはあり得ないであろう、建設公債もそのときにはなくなってくるであろう、償還財源は十分ありますという。これは経済的に見て果たしてそうなるのか。たとえばほんの昨年のことでも、急に、十分な財源がある見込みが、あわてて公債発行しなきゃならなくなったわけでございます。そういう点から考えると、いまそこまでおっしゃること自身が私は不思議な感じがいたします。まあそういうふうな方向で努力をするということならば納得がいきますけれども、そういうことはあり得ないということになると、これはもう判断わからぬです。その点はどうにも納得ができません。
  208. 高橋元

    政府委員高橋元君) もちろん、将来の経済を予測いたしますことは非常にむずかしいことでございます。そこで、先生のおっしゃるような意味で、私ちょっと言葉が走りましたのでございますが、まさに先生のおっしゃるような趣旨で、私どもはそういう決意を持っておるということを申し上げておきます。
  209. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それから、公債による財政経済というのは、どうしても償還それから利子の払い、こういったことがございます。それは発行した後の国民の税負担、その租税の負担でしなければならないということはもう当然のことでございますから、言いかえれば、公債による財政政策経済政策というのは租税による経済財政政策に戻るということを意味しているんだと思いますね、埋めるのに公債でやるのじゃなくて、租税でやるのが本当なんですから。そうすると、もしそうでなければ、公債、国債残高の上にさらに国債残高をふやしていくという、どんどんインフレ的な意味にしかならないわけですから、やはり公債政策意味とすれば、一刻も早く租税による経済財政に戻すということを意味しているんだと思う。そういう点からいうと、現在の国債整理基金特別会計法の第五条に「政府ハ国債ノ整理又ハ償還ノ為必要ナル額ヲ限度トシ起債スルコトヲ得」、つまり今回の法律案にはこれを入れなかったわけでありますけれども、この国債の整理や償還のために必要な額を限度として起債が再び発行できると、こうなっている。このこと自身、この国債整理基金法第五条をやめない限り、やはり大臣が、将来は租税政策に戻るんだと、租税中心の財政に戻したいと言っても、これは絵にかいたもちになるんじゃないか。だから私は、この国債整理基金法第五条のこの文章というものは廃止をするのが本当だと思うんですけれども、いかがですか。
  210. 高橋元

    政府委員高橋元君) 御高承のとおり、この特別会計は、明治三十九年に日露戦役によって累積をいたしました膨大な国債——当時元利償還分だけでたしか一億一千万円に相当したと思います。その国債を整理いたしますためにつくりました会計でございまして、その後数十年の経緯を経て今日に及んでいるわけでございますが、今日においては公債の秩序ある管理のために償還財源一般会計から定率、予算または剰余金繰り入れという形をもって繰り入れをしてまいる。それによっていわれておりますところの建設公債の収入金によります建設的な資産の耐用年数に応じて公債の円滑な償還を図るという機能を持っております。  そこで、一・六%の定率繰り入れが、それは六十年償還ということを前提にしてつくられております。また公債発行条件というのは、市場の状況によっても、また国内、国際の市場の状況によっても変わってまいるわけでございますから、したがいまして、そういう点を全部おしなべて公債のいわば秩序を保つために少なくとも建設公債の借りかえということは必要であろうかというふうに思っております。  第二に、整理という言葉がございますが、これも国債の発行の際の市場条件というものが国債の円滑な消化のために取り入れられるわけでございますので、将来金利情勢の変動によって非常に高利の国債がたまってしまうということもあり得るわけでございます。そういう場合には、より有利な国債に借りかえるという道もやはり開いておく必要があるのではないか。そもそも、先ほど申し上げました明治末年のこの整理基金の置かれました時代には、高利の外債、高利の内国債を低利にまず借りかえるというところから始まったようにも承知しておりますし、現在ではさように大きな整理のための目的というのはいまのところはないわけでございます。今後の経済情勢の推移がいかように相なるか、先ほどおしかりをいただきましたけれども、予測できないところがございますので、やはり整理のための起債ということも、国民のための財政全体にとって有利な場合もあり得るというふうに私ども思っておりますので、この条文の運用が乱にわたらないという前提で、この条文を削除せよという御意見には私どもは残念ながら賛同を申しがたいわけでございます。
  211. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 確かに繰り入れが百分の一・六ですから、そうしますと、六十年、片方とは差がありますから、どうしても全額六十年たってからというんじゃないでしょうから、そうなればいま言われたような借りかえということがあるんだろうと思うんです。しかし、建設国債であろうと赤字国債であろうと、国債には少しも変わりはないわけです。そうですね。国債で調達されたお金が、これは建設用であるといって色のついたものが来るわけじゃございません、政府の国庫に入ったときには同じお金になってしまうわけですから。そういう点から考えると、やはり本来、建設国債といえども将来は廃止するという方向が当然でしょうし、そうなれば租税でこれを返していくというのを打ち立てていくのが、健全な財政を将来ともつくっていくとなればどうしても必要だろうとぼくは思うんですけれども、いま有利な国債にかえることもあり得ますからという話がありましたけれども、はしなくも答弁の中で、不利な国債に買いかえたがために、最初はつくられたらしいというお話がありました。そういうことだってあり得ることですよね。その点からも私はやはり廃止するのが本当じゃないかと思うんですが、もう一遍その点を伺いたいんですが。
  212. 高橋元

    政府委員高橋元君) 現在、一般会計規模が二十四兆三千億でございますが、公債累積残高は本年の末で二十三兆円、こういうふうになろうかと思います。少なくともすでに発行をいたしてしまいました国債の償還につきましては、現行の減債制度の利用によって秩序をもって行ってまいるという必要はございます。  それからまた、国債整理基金に繰り入れられる財源は租税であるべきだという御指摘でございますが、これはまさに国債償還のための起債ということはこの六十年物の借りかえのため以外には公債をもって調達することは財政法四条の一項の原則によって禁ぜられておるわけでございます。私ども特例公債発行中は特例公債の償還のための予算繰り入れをあえて行わないと申し上げており
  213. 高橋元

    政府委員高橋元君) 現在、一般会計規模が二十四兆三千億でございますが、公債累積残高は本年の末で二十三兆円、こういうふうになろうかと思います。少なくともすでに発行をいたしてしまいました国債の償還につきましては、現行の減債制度の利用によって秩序をもって行ってまいるという必要はございます。  それからまた、国債整理基金に繰り入れられる財源は租税であるべきだという御指摘でございますが、これはまさに国債償還のための起債ということはこの六十年物の借りかえのため以外には公債をもって調達することは財政法四条の一項の原則によって禁ぜられておるわけでございます。私ども特例公債発行中は特例公債の償還のための予算繰り入れをあえて行わないと申し上げておりますのも、公債をもって公債を返す金をためるということはおかしいではないかという趣旨からでございます。建設公債につきましても、一般の租税をもって定率繰り入れないしは予算繰り入れを行うということは当然でございます。そういうような意味で、すでに過去に発行しました国債の管理という観点からも、その条文を存置をしておく必要があろうと考えております。  それから、先ほど私が御答弁申し上げた中で若干用語が不適切であったかもしれませんが、この国債整理基金は、この制度ができました際には非常に高利、短期の国債が内外に累積をいたしておりましたのをまとめて有利な低利にまず借りかえ、それから償還の秩序をもってその後大正三年までに相当な程度圧縮してまいったということが歴史的な沿革でございます。
  214. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 ちょっとここで法案に入る前に少し伺います。  少し方向は変わりますけれども大蔵省、経企庁の方もいらっしゃっていると思いますが、最近、景気回復してきていると、こういうふうに伝えられている。実態としてはまだまだ中小企業等では冷え切ったままというところがものすごく多いわけでありますが、どうも伝えられているのと、われわれが耳にしているのとでは非常な乖離があります。それはどういうふうに見ているのか、政府としてどのように見ているのか、これはぜひ大蔵省と、それから経企庁の両方から御答弁をいただきたいと思います。
  215. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 最近の景気は、五月の月例報告でも申し上げておりますとおり、輸出が非常に好調でございまして、それに加えまして国内需要もこのところ底がたい動きとなっているということでございます。したがって、物価のやや高いテンポが上昇する中で、国内景気景気回復傾向をさらに強めているという判断でございます。これがただいま御指摘のありましたようなミクロの経済との若干の乖離があるわけでございますが、景気は着実に全体としては回復しておるわけでございますけれども、昨年の初めにおきますところの経済活動の低下が非常に底が深かったためにまだ一番高い時期のところまで生産にしろ出荷にしろ回復していないと。マクロとミクロの間の乖離が若干ございますので、いまのところ個別の企業の経営につきましては、業種によって異なりますけれども、相当苦しいところが現在あることは事実でございます。ただ、こういう景気回復状況にございますので、徐々にミクロの方にもその影響が及んでまいりまして、少なくとも本年度末ぐらいには相当ミクロの面につきましても回復が及んでくるというふうに見ております。  一例を挙げて御説明いたしますと、企業の操業率を示しますところの稼働率指数というのがございますが、これが昨年の三月が底でございまして、昭和四十五年を一〇〇といたしますと七七まで落ち込んでおります。それが徐々に回復してまいりまして、現在二月の数字が一番新しい数字でございますが、それが八六強に回復しております。この調子で回復してまいりますと、来年の三月ぐらいには九五あたりのところまで回復するであろうというふうに考えられます。そこまでまいりますとミクロの経営といたしましてもほぼ妥当な操業率まで回復するというように考えておりますので、ミクロの経済もだんだんによくなっていくというふうに解釈しております。
  216. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大蔵省からも御答弁お願いしております。
  217. 佐上武弘

    政府委員(佐上武弘君) ただいま青木企画庁調整局長の述べられたことに特に付加する必要は私どももございませんし、景気情勢の分析についての考え方も常に連絡もいたしております関係から大体同様でございます。いま先生御指摘のやはりミクロとマクロの乖離という問題は、何と申しましてもミクロにおきましては企業収益のいわば回復というものがございませんと好況感が出ない、今年度の法人税の収入をごらんいただきましてもああいう状況でございますから、少なくともこの日銀の短期観測等を見ますと、五十年の上期の収益状況は四十六年下期を一〇〇といたしましてまあ数十%程度、さらにまたこの下期になりまして七〇%というような状況でございますから、収益面においていまだにまあじわじわとしたものが出てこない。ただ景気の実態としてマクロでありますと、先ほど青木局長が申し上げましたように、操業率も次第に向上してくる、したがって固定費の軽減もかなり増収益も改善していく、こういうようなことで、えてして景気回復期にはミクロとマクロの乖離ということが言われるのでございますが、今回の場合には何せ二年半に続く不況でございますので、その点の立ち上がりにつきましては従来の景気回復、つまり一年足らずに比べますと、そういう点が強く尾を引いているというふうに考えますが、先ほどお答え申し上げましたように、ほぼ順調な姿で続けていくならば操業率の向上等と相まって次第にミクロとマクロの乖離は解消していくものというふうに考えておる次第でございます。
  218. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、大体両者からの答弁を承っていると、本年の年度末、つまり来年の三月、四月というところになると思いますが、その辺にいくと完全にというか、景気回復になる、こういう見方であるというようにとれるわけでございますが、それでよろしいですか。
  219. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) ミクロの経済が完全に回復したという感じを持たれるのはそれくらいの時間かかるかというふうに判断しております。
  220. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 政府のいわゆる財政支出、これが今回の先ほどの稼働率の話からいろいろ伺っておって、回復基調にあることは確かでございますが、この財政支出がどの程度景気回復に影響しているのか、この辺がぼくらにはよくわからないわけです。波及効果であるとか、乗数効果とかいろいろなことを言われるわけでありますけれども、しかし政府財政支出のためにここがこうなったというようなものがよくわからないわけでありますが、どの程度影響を与えているのか、これをちょっと詳しく伺いたいんでありますが。
  221. 青木慎三

    政府委員青木慎三君) 今年度の経済見通しでまいりますと、国民総生産いわゆるGNPの成長率が約一三%の伸びを見ておりますが、それに対しまして政府の財貨サービス購入、国民所得ベースで計算いたしますと一三・三%ということで、政府の財貨サービス購入の方がGNPを上回るということになっておりまして、これが景気を刺激するという私どもの主張の根拠でございます。ことにこの政府の財貨サービス購入の中で、波及効果のきわめて高い資本支出の方が、名目で申しまして一四%の伸びということになっておりまして、これを景気全体を刺激する効果をあらわすものというふうに考えております。これを実質で見ますと、国民所得全体の伸びが本年度は五・六%と見ておりますが、資本形成は八%強という支出を見ておりまして、こういう政府の資本形成の景気に及ぼす刺激効果というものはきわめて高いというふうに一般に言われておりますので、こういうものの働きによりまして、景気を上向けさすという働きを政府の支出が行うというふうに見ておるわけでございます。
  222. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 ここで、いわゆる景気の上昇がありますので、これから先、恐らくいままで予定していたよりも税の調定額も上がるし、入ってくるんではないかと思うんですが、その前提段階として昭和五十年度の剰余金の問題ですね。税収実績が補正後の税収予算額十三兆四千六百十億円ですか、それを約三千億円上回る見通しというふうに伝えられておりますけれども、その原因は何なのか。また純剰余金は二千億円というふうに伺っておるんですけれども、その点はそのとおりなの九どうか伺いたいんですが。
  223. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) まず税収について申し上げますと、制度改正がございましたのでまだ四月分税収が確定いたしません。したがって、ただいまから申し上げますのはまだ概数ということで御勘弁いただきたいんでございますが、ただいまの段階では、補正予算に対しましておっしゃいますように約三千億程度の増収になるのではないかと考えております。その増収の主体はほとんど同額が申告所得税になろうかと思います。その他の税目は、税目ごとに出入りがございますけれども、申告所得税以外の税目全部は、通じまして大体補正予算で見たぐらいの税収でございまして、その意味補正後の増収の主因は申告所得税である。申告所得税がこのように予想外に増収になりました最大の原因は土地の譲渡所得でございます。  昨年度の補正予算は、御承知のように九月という非常に早い時点で見積もりましたので、不確定要因をたくさん抱えたままいわば見切り発車をして、最後まで心配し通しであったわけでございますが、九月に補正予算を組みますときに、土地の譲渡所得についてはいわば全くあなた任せでございまして、手がかりがございませんので、当時判明しておりました四十九年度実績とほぼ横ばいというような推定をいたしたわけでございます。ところがふたをあけてみますと、これが四十九年度実績、すなわち五十年度補正見込みに対して約八割増加いたしました。これは原因は、御承知のとおり税制改正がございまして、本年の一月に入って以降、個人が昔から持っておられる土地を売却されますと税負担が高くなる。したがって、去年の年末までに売った方が税負担は安いという制度改正をバックにしたいわゆる駆け込み譲渡が主体であると思われます。九月に駆け込み譲渡がこれくらいあるということは正直申し上げてちょっと予測ができなかった。そういう制度改正があることはわかっておりましたけれども、まさか三兆円を超えるような土地取引があるだろうというような推定ができなかったということで、そこの見込みを間違えたわけでございます。したがいまして、端的に申し上げますと約三千億の増収の主体は申告所得税であり、そのうちの約二千五百億ぐらいは土地の駆け込み譲渡によるものである、そのようにお考えいただきたいと思います。  剰余金につきましては主計局の方から御説明申し上げます。
  224. 高橋元

    政府委員高橋元君) ただいまお答えがございましたように、税収につきましては約三千億円程度補正予算額に対して増収が見込まれるようでございます。税外及び歳出の不用でございますが、これも目下集計を始めておるところでございまして、正確な数字はわかりません。しかしながら、大体の見当といたしましては、両方の項目合わせまして二千億円程度であろうと承知しております。合わせまして、税収、税外、歳出の不用で五千億のプラスということでございますが、公債の中で五十年度の公債発行特例法の二条のところにおきまして、四月以降の発行を一応予定していたと申しますか、引き当てておりました金額が二千億ございまして、この二千億を発行しないということにいたしましたので、したがいまして、財政法四十一条の新規発生剰余金が三千億ということになります。三千億の中で、先ほどの税収中身の御説明から、私ども一応地方交付税等の精算分が約千億あるのだろうというふうにざっと推定をいたしておりますので、財政法六条の純剰余金ベースで申し上げれば二千億円ということがいまのところの大まかな見込みでございます。
  225. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 したがって、こういう、五十一年度予算がここでこの間成立したわけですけれども、それが作成をされたときにはまだいまのような五十年度の最後のことはよくわかってないわけですね。そういう経済情勢のときにつくられた予算、それとこの特例公債発行の法律という時点的なずれが今度はもう現時点においてはかなりできているんではないか。かなり歳入がふえてきて、そしていまの、いえば三千億という、これは本年度使えるわけじゃないかもしれませんが、三兆七千億を十二で割れば約三千億、約一カ月分ですね、特例公債。そういうものがちょっと出てきているような状況でございますから、それはこれから先の五十一年度の税収でかなり増加をしてくるんじゃないか。そうすると、そういう見込みはある程度見た上から、この特例公債のことを考えていいんではないかと思うんでございますが、そこで、いまの税収のこれからの見込みは一体どういうふうに五十一年度はなっていきそうなのか、これが一つ。それから、それがふえた場合には、ふえることが予想されるんですから、この公債法律案についてはしばらく時期を見ておいた方がいいんじゃないかという、こう二つが考えられるんですが、その二つの点についてお答えをいただきたいと思います。   〔委員長退席、理事戸塚進也君着席〕
  226. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 先ほどのお答えの中で触れましたように、制度改正がございましたもんですから、四月分税収の大部分は五十年度税収でございます。したがいまして、五十一年度の税収というのは今月に入ってやっと入り始めたと、いわばこれから先十二カ月の勝負でございますが、おっしゃいますとおり五十一年度予算の歳入の税収を見積もりましたベースは五十年度補正予算でございます。その上に五十一年度の経済見通しに入っております諸指標を使って見込んでいるわけでございます。  そこで御質問の第一点は、五十年度が補正に比べて三千億ふえたんだから、土台が大きくなっているから、その分だけは少なくとも五十一年度に若干の伸びを含めて伸びるんではないかということかと思いますけれども、五十年度補正予算に対する増収の内訳が、先ほど申し上げたように、土地の駆け込み譲渡の分が圧倒的に大きいわけでございまして、この分は実はGNPとも無関係でございますし、また事柄の性質上逆に五十一年度は全く期待できないのかもしれません、そういう税収が。そういう意味では五十一年度の税収見込みの土台になっております五十年度補正に対比しての五十年度実績というのはいわば補正とほぼ同じというふうにむしろ考えるべきではなかろうか、土台としての考え方としましては。よけいなこぶがついているだけで、こぶの方は五十一年度にはまあ当てにならないというか、むしろないと考えなくちゃいかぬかもしれない、まずそういう点がございます。   〔理事戸塚進也君退席、委員長着席〕 それから、その土台が余り狂ってないとして、さて五十一年度にかけての伸びの方はどうであろうかという点につきましては、先ほど来景気が順調にマクロ的には回復しつつあると思うというふうに企画庁からもわが省からもお答え申しておりますが、そのことの意味は、その結果大体予定したような五・六の実質成長というのが確保できるという話だというふうに私は理解いたしておりますし、その意味では現時点では土台も余り変わってない、伸びの見込みも変わらないということであるならば、全くわかりませんけれども、いまの段階で申せばやはり五十一年度税収としては大体見込んだぐらいに入ってくれると、ばかにふえもしないし、しかしそうかといって減る心配もまだしないでよさそうであるということではなかろうかと思うわけでございます。
  227. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それから、この財政法の中にはいわゆる国債の発行の金額三兆七千五百億円というものが、この法律の中には入っておりません、法律案には。まあ予算総則の第六条の二項のところで三兆七千五百億円とするということが出ているだけであります。なぜそういうふうにしたのかということですね。特にいままでの昔出た公債の「昭和十六年度一般会計歳出ノ財源ニ充ツル為公債追加発行ニ関スル法律」なんていうのを見ると、十一億二千四百七十万円を限り公債発行したり借入金ができるとか、あるいは昭和十七年の場合も十五億七百九十万円を限り公債発行できると、一般会計の場合も同じように一億何ぼというように、昭和十四年も十五年も十六年も十七年も一般会計財源のための国債発行の限度、あるいは十九年の場合は六十億幾らというふうに金額までが一つ一つ公債発行に対しての法律については出ております。ところが今回の法律案では「予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内」ということですから、これは私はやはり明確に発行限度額は幾ら幾らにするべきであると述べるのが本当だと思うんです。その理由はどうしてやらなかったのか、これ一つ伺いたい。
  228. 高橋元

    政府委員高橋元君) 戦前の歳入補てん公債が法律をもって限度額を定めていたと、追加をする場合にも同様であったという御指摘でございます。昭和七年から二十一までの毎年度の歳入補てん公債法、これはまさに鈴木先生御指摘のような構成をとっておりますが、それは当時はまあ旧憲法のもとでの財政制度でございますから、旧憲法では、歳入歳出は毎年度予算をもってと、予算という法形式が指定されて「帝國議會ノ協賛ヲ経ヘシ」と相なっておったわけでございますが、「國債ヲ起シ及」「國庫ノ負據トナルヘキ契約ヲ爲スハ帝國議會ノ協賛ヲ経ヘシ」こちらの方は予算という法形式は指定しておりませんで、現在とは予算の立て方を異にしておりまして、予算の総則をもって国が国債を起こす、国債という形で債務負担をするということを定めるという制度がなかったわけでございます。したがいまして、予算外国庫債務負担行為というのも単独の議決案件で、現在の予算総則、予算の形ではございませんでしたし、国債につきましても総則をもって予算の形で御議決をいただくということがそういった法制度のたてまえ上不可能でありまして、法律をもってお願いをしておったわけです。ただ戦前でも、話が長くなって恐縮でございますが、道路事業公債というようなものは、道路事業費の財源に充つるため公債を出すことができるというふうに包括的に予算の歳入に委任したものでございます。これはきわめてまれな例でございますが、法律に金額を打ち込まなかった例もございます。  ところで、戦後になりまして予算の中に国債の発行額、それから国庫債務負担行為その他ずっと予算をもって定めるという制度に相なってまいったわけでございまして、昭和二十二年の財政法で、財政法四条一項のただし書きでいわゆる建設公債発行することができるという規定が置かれておりますが、その場合には予算をもって定める金額の範囲内ということになっております。昭和四十年の財政処理の特例に関する法律も、その特例公債予算をもって定める金額の範囲内で出すということ、それから五十年、昨年お願いをいたしました特例法も同様な構成になっております。  それで、四条公債にいたしましても特例公債にいたしましても、公債を歳入と歳出の差額というふうにとらえますならば、予算の内容を逐一歳入にこれだけを見込み、歳出をかように調定をするということで、その結果やむを得ずして公債に相なるわけでございますから、予算の全体の規模及び内容を定めます際に公債発行額がおのずと定まってまいる、いわば一体として定まってまいると申し上げていいかと存じますが、そういう性質のものでございますので、戦後の立法がさような先例を追っておることもございますし、今回の特例公債の限度額につきましても予算の一部として予算総則の御指摘の六条二項、ここに金額を譲って、この特例公債法では前年度と同様発行権限をちょうだいをいたすという構成にしておるわけでございます。
  229. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私はこれがやはり一つの、何というんでしょうかね、大きな落とし穴のような気がするんですよ。前回のときは補正予算のとき、そういうときであれば、それから以後また補正をということがほとんどないと思うんですけれども、なかったわけですし、ところが今回の場合はこれは本予算であります。それが、その法律の中身が「予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、」というようになったということは、補正予算のときに改めて特例公債発行に関する法律を出さないでもいいようにしたということですよ。つまり、今後何かあったときに補正予算を組んで特例公債を幾らでも出せる、無限にすることはないと思いますが、幾らでも出せる、増額をやり得る抜け道をわざとと言うと語弊があるかもしれませんが、つくったようにしかとれない。やはり本来法律の中ではっきりと一般会計歳出の財源に充てるためにこの法律に定める金額でと言って、三兆七千五百億円なら三兆七千五百億円とはっきり記入をする法律案にするのが、財政当局として、赤字公債というものを余り多く発行したくないという、できれば先ほども答弁がありましたように少しでも余分に租税の収入があれば減らしたいというわけですから、そういう気持ちがあるならば、そういうようにきちっとした発行限度額を法律の中に決めておくということの方が正しい姿勢だと思うんですけれども、その点いかがでございましょうか。
  230. 高橋元

    政府委員高橋元君) 特例公債発行額予算総則の規定にゆだねる、そういう法律構成をとりました趣旨は先ほど申し上げました。  そこで、公債発行額予算のほかに法律にも限度を定めるということにしたらどうか、その方が財政の節度として適当ではないかという御指摘でございますが、法案も予算もいずれも国会の御審議を経て御議決をいただくわけでございます。そこで、そもそも特例公債、それから建設公債、いずれも予算上、運営上必要最小額にとどめるというのが私ども財政に携わっておる者の当然の責務であろうと思いまして、そういう意味で同一金額、つまり予算をもって定める発行権限額というものは、まさにそれ以外に法律をもって特別の金額で決めるということは不可能ではないか、またそういうことはあり得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  231. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 委員長、あと質問を留保いたします。
  232. 岩動道行

    委員長岩動道行君) この際、暫時休憩いたします。    午後六時休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕