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参考人(
福田勝君)
福田でございます。
冒頭私は、
参考人として
意見を述べる
機会を与えられましたことに対しまして、感謝をいたしたいと思います。
私は、今回のきわめて重要な
法案である電気、
ガス社債発行限度に関する特例法につきまして反対であることを申し上げたいと思います。
その理由として、第一に、
限度額を現行の二倍にした根拠がきわめて不明確であるからでございます。
資金が不足をし、
増資による
資金調達ではコスト高になるという理由であるならば、今日他の私企業においては全く同様でありまして、これは
ガスなり電気だけに、特定に限らないものであると思うわけであります。電気
会社について言えば、
社債の
発行現度を商法の規定よりも二倍にしたというのは、戦前でもありましたけれ
ども、戦後は廃止をされ、そして一般商法の原則に復帰したのでありますけれ
ども、それがさらに復活したのは、
昭和二十五年の
公益事業令に基づいて九分割の
電力再編成という特殊な条件下にあったからというふうに考えられるものであります。さらに、
社債枠を倍増する以上は、このような組織や
事業の基本的な性格に変化がなければ理由とはなりません。もし倍増するならば、
事業や
経営の公益性、また、公的規制が当然伴わなければきわめて片手落ちであると言わざるを得ないと思うのであります。このことは四大
ガス会社についても同様であります。
次に、今回の特例法は十年の時限立法ということになっておりますけれ
ども、さらに十年の経過措置がとられており、特例法といいながらきわめて恒久的なものであります。したがって、このような措置は特例法ではなくして、当然
電気事業法なり
ガス事業法の改正として提出すべきものであると考えるのであります。
理由の第二としては、
資金調達のその内容についてであります。
ただいまも
工藤参考人からもお話がありましたけれ
ども、
電源開発の
資金必要額は
昭和六十年までに四十七兆六千億という膨大なものであり、そのため不足する十六兆八千億を調達するのが電気について言えば今回の内容でありますけれ
ども、なぜこんな膨大な
資金を必要とするかきわめて疑問であります。
電力の五十一年度の工事
計画は二兆円を超え、対前年度の四五%という、高度成
長期の二〇%から三〇%をはるかに上回るものでありまして、さらに繰り上げ分を含めると三兆円を超えるという膨大なものになっているのであります。このことは、他の産業の
設備計画の平均が九%
程度であるということから見ても、いかに大きなものであるかということがわかると思うわけであります。六%成長でこのような
設備計画が必要だと説明されておりますけれ
ども、他産業と比べてみても、なぜこのような膨大な
計画が必要なのか、きわめて理解に苦しむわけでございますし、また、自己資本率が現在の一八%から十年後には一〇%に低下するということは、
電気事業の健全な発達と安定的
供給の見地からしても、決して好ましい姿ではないというふうに思うわけであります。
さらに、
計画内容でございますけれ
ども、この十年間に
電源開発の総計十七兆八千四百億のうち、
原子力に何と十兆円も
投資をし、
原子力の比重を飛躍的に増大させる内容となっております。言うまでもなく、
原子力建設は
火力の二倍近くの
建設資金を必要としておりますし、かつ、事故の危険性や操業度の低下によって
供給に大きな不安がございます。
遺伝障害、それから放射性廃棄物、温排水など
原子力発電につきましては、
安全性について基本的な大きな疑問が投げかけられております。そのような
原子力発電を大量
建設するための
資金の調達をねらいとするのであれば、私
どもは
資金計画に基本的に賛成ができません。したがって、
資金計画は
原子力問題を抜きで検討すべきでありまして、まず、現在各地で
原子力発電に対しましてこのような形で反対運動が起こっているわけでありますから、
国民的合意が先であるということを強調しておきたいと思います。
また、
ガスにつきましても、資源と高カロリーという観点で
都市ガスから
LNGへの転換が進められておるわけでございますが、これについても北海道等で爆発事故が起こっておりますし、また、住民からも幾つかの疑問が投げかけられているわけでございますから、再検討をすべきであると思うわけであります。
理由の第三として、このような膨大な
資金計画が、
長期的に見るならば
電気料金の値上げと
電力労働者への労働
強化となるということでございます。
現在、先発四社が三〇%を超える大幅値上げを申請しておりますし、さらに、その後に五社の値上げが引き続いて申請されようとしているというふうに伝えられているところであります。まさに今回の
電気料金の値上げは、このような膨大な
設備資金の先取りであるということを指摘しておきたいと思うわけであります。
電源開発や資本の蓄積のために
社債や
借入金を行い、そして、
金融機関に
借入金や支払いの元金や利子の返済を行って
金融機関をもうけさせ、そして、このような
資金の支出は
電気料金として勤労大衆や各産業から徴収をするという関係にございます。したがって、今回の
資金計画につきましては、料金の
立場からも認めるわけにはいかないということを申し上げておきたいと思います。
最後に私は、この際、
電気事業の
あり方につきして、若干
意見を申し述べてみたいと思うわけであります。
私
ども総評は、去る一昨年の八月、関係二十の組合の連名で
東京電力及び通産省を相手に、
電気料金に関しまして行政訴訟を提起をいたしました。現在、
東京地裁に提訴中でございます。その内容は、一昨年の六〇%に近い大幅な
電気料金の値上げ内容が納得できないだけでなくして、
電気料金の決定
方法につきまして大変不満があるからでございます。現在の制度のまま九
電力の
経営上の都合によって値上げを認めていくということであるならば、
需要の地域的密度の格差などによって九
電力の企業
規模、料金の地域格差は
拡大する一方であります。そして、いま
国民の間から、なぜ北海道の電気と
東京の電気が値段が違うのかという基本的疑問も出されているところであります。
また、発電所の立地条件につきましても、九分割の
電力体制とは異って、他の地域へ大幅に進出をせざるを得ないという
状況にあります。
そしてまた、料金決定の手続は、現行制度では一方的に通産大臣の決定にゆだねられておりまして、名目的には公聴会以外には保証されていないのが
実情であります。したがって、料金問題は単に値上げ幅が適当かどうかという問題だけではなくして、
経営や
事業の過去の実績や将来の方針に不可分のものでございまして、
経営に関する
国民の信頼性が確立されなければ、現在各地で起こっているように、料金に対しまして
国民は納得をしないという関係にあると思うわけであります。したがって、この際政府は、民主的かつ能率的な制度確立のために、九分割にされている
電力の
事業形態につきまして検討を行うべき場を設けて、速やかに検討を開始すべきである、このように思うわけであります。
重ねて申し上げますけれ
ども、私
どもが行政訴訟を提起し、一番基本的に疑問に思っていることは、
電力が
国民生活に必需の
エネルギーであるばかりでなく、産業の基幹
エネルギーであり、そしてまた、地域独占
事業であるにもかかわらず、料金決定に当たっては、形式的な公聴会を開催して通産大臣が一方的に認可をする。そして九
電力ごとに異なる料金内容を持っている。こういうような料金の
あり方、料金決定の
方法、さらにまた
経営形態につきまして、基本的に私
どもは疑問を持つものでございまして、そういう角度で私
ども行政訴訟を提起し、今日に至るまで
東京電力と政府を相手に争っているところでございます。
本案につきましては、きわめて重要な
法案であり、そういう角度からぜひ
本案をこの際保留していただいて、
電気事業の
あり方全体について根本的な再検討を加えていただくように
お願いをいたしまして、
参考人としての
意見といたしたいと思います。