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柄谷道一君 私は、ここで理論的に反駁しようと思いません。時間的にはその余裕もございません。しかし、私は本来
未払い労務債権問題は当然
労働者に
支払われるべきものが
支払われないことによって
労働者の生存が脅かされるというものでありまして、憲法二十五条の生存権、憲法二十七条を受けた
労働基準法二十三条にかかわる重要な問題であろうと思うのであります。一夕一朝にしてこの検討が終わるものとは思いません。また、この法の
改正だけで労務債権が確保されるものだとも持っておりません。しかしながら、現行の法
体系の中でこの
未払い賃金というものの置かれている位置というものがやはり低きに置かれているということは争えない事実ではないかと私は思うのであります。したがいまして、今後法務省といたしましても、前回前向きに検討するというお答えをされたわけでございますから、この問題についてより有機的な取り組む姿勢を求めておきたい、こう思うわけでございます。
時間もございませんので次の問題を移しますが、西ドイツでは一九六九年、
雇用促進法の第三次
改正法として破産不払保険金法を一九七四年七月十九日に公布し、翌二十日より施行いたしております。この法案の
内容はすでに
労働省御存じだと思いますので省略をいたします。
しかし、この法案の発想というものは、今後のわが国の未来展望としての労務債権確保の法のあり方というものに対して
一つの示唆を与えているものではないかと思います。また、私たち民社党も、恒久的施策として不払
労働債権保証保険法の制定を提唱をいたしているわけでございます。今後、
労働省といたしましても、今回この
労災保険法を活用する
方法によって第一歩を踏み出したとはいえ、この問題の解決のためにいかなる法
体系と法制化が必要であるのか、これらについてはまた改めて
大臣にも意見を述べる機会を持ちたいと思いますので、十分御検討を願いたいと思います。時間の
関係からこれは問題提起にとどめておきたいと思います。
次に、適格
年金支払いの問題について質問をいたしたいと思います。
今回の法
改正におきましても、退職金はなるべく
企業外に積み
立てろと、こういう
指導をしていくんだということを訓示規定ではありますが、うたっております。ところが、果たして適格
年金というものが、
企業外に積み
立てた適格
年金そのものが安全なのであろうかということになりますと、新しい問題が発生しておるわけでございます。
これは昨年十月末、
日本製麻という会社が国内
企業の全面撤収を行いました。
企業内にあります退職金は
労使の話し合いによって確保されたわけでございますが、
労働組合は、まさかこの適格
年金だけは大丈夫であろう、こう思っておりましたところ、過去債務の償還
期間が非常に長い。したがって、仮に私が三十年勤めておりましても、信託銀行に
払い込まれているものは二年ないし三年にしかすぎないという
事態が生まれてきたわけであります。しかも会社は言を左右にしてこの適格
年金の
未払い分の清算に応じようとしない。ところがこの適格
年金制度は、税制上の優遇
措置としてありますけれども、立法の基礎がない。したがって、信託銀行に強制取り
立ての権限もなければ担保物件も設定されていない。したがって、せっかく
企業外に積み
立てましたその適格
年金が、すでに納めた分にしか
適用されないという
問題点が発生してきたわけでございます。いろいろ大蔵省銀行局なり国税庁とも話し合ったわけでございますが、国税庁は、これを管理している局であって何ともしようがない。銀行局の方も、信託銀行に対して行政
指導といっても打つ手にも
限界があるということで、いまだ解決されておりません。私は、この労務債権確保という問題について、この適格
年金という
制度に案外の落とし穴があるんではないかということを実感をいたしたわけでございます。
これも時間がありますならばさらにその
内容も述べつつ
改善の方策を述べたいと思うんでございますが、ひとつこれは
大臣、閣議でも大蔵ともいろいろ話を願って、果たして過去債務の年限が現在でいいのか、それとも、そういう義務が履行されない場合にどういう担保を
労働者として取ることがいいのか。これはまさに現在の盲点であろうと思うんですね。まあ、いろいろ聞きますと、適格
年金を採用するような
企業にはまさか
倒産はあるまいというものも前提につくられた
制度ではないか。こういう問題の予測がまずされていないというのが実態でございますので、これももっと述べたいわけでございますが、時間が制限がされておりますから、この問題もひとつ
大臣に対する宿題という形で申し上げておきますので、改めての機会にまた
政府の御答弁を賜りたいと思います。
時間があと五分しかございませんので、最後に、建設
労働法の問題について、これも残念ながら質問の時間が尽きましたので、あと五分で一括申し上げます。
私は、この
建設労働者の
雇用改善につきましては、ただいままでの質問で出ておりますように、重層
下請機構の存在、資本金一億円以下の
中小企業が九九・三%を占めるという実態、受注契約、請負契約後の危険度を受注者がしわ寄せを受ける仕組み、発注体制の不合理、職人的零細経営の存在、手工業的技能を中心とした生産から大型機械の採用、新建材の
開発、工法の改良等による大刑化の傾向がいま顕著にあらわれてきているという事実、都市公害等の問題による工事環境の変化、さらに第一次産業就業者の減少と高齢化、こういった現実を直視いたしますと、今回のこの法案によって一歩前進することは確かでございますけれども、
建設労働者の
雇用改善というものに対する決め手とはなり得ないと思うのであります。そうなってまいりますと、どうしてもここに
長期的、総合的視野に立った産業の構造
改善というところにまでメスを入れなければこの問題の解決はできないと思います。
さらに私は、この問題は
中小企業政策、農業政策、
雇用政策、
社会保障政策とも重大な関連が生じてまいります。また、
審議会が
答申しております計画化、工法、工期、工事費の合理的
基準の設定ということなども考えますと、公共
事業に関しましては、予算
制度やその執行
制度にまで私はかかわりの出てくる問題ではないかと、こう思うのであります。で、もちろん、現行職業安定法、
労働基準法、
労働安全衛生法の啓蒙、徹底と、その補強という問題が底辺となりつつ、これらの産業構造の
改善と、そして国としても、現在の公共
事業に対してやはりメスを入れるということが相まち、相並行しつつ
雇用の
改善という問題につながってくる、こう思います。といたしますと、今回の問題につきましては、
労働省一省の取り扱うべき問題としては余りにも荷が重過ぎる。今回の法
改正をひとつ契機といたしまして、建設省など、
関係省庁との間に十分協議を深める体制づくりから始めて、これらの根本問題に対する
改善へのメスを入れる、こういう姿勢を
国務大臣である
長谷川大臣に強く要望したいと思うのであります。これらに対する
大臣の明確な答弁を求めまして、あと質問時間二分を残しますが、私の質問は終わります。