○片山甚市君 本
委員会を代表して、村田
委員長、
石本、
柏原、神谷の各
委員、それに私、片山によりまして、去る一月十九日から三日間の日程で愛媛、香川両県下の厚生、
労働行政の実情
調査をしてまいりましたので、日程の順序に沿って簡単に御報告いたします。
まず愛媛県庁において、大西副知事を初め、
関係者の方から
説明を
聴取いたしました。本県は現在人間尊重と
生活優先の
理念に基づいた生きがいのある
生活福祉県の建設を積極的に進めております。その
施策の一環として県独自の老人
福祉対策について述べますと、健康保持、
生活安定、生きがい
確保対策の三つが挙げられます。
これら諸
対策のうち特徴的なものとして生きがい
確保対策があり、この
施策は老人、婦人、青年の三世代の交流を通して、明治、大正、
昭和を生き抜いた老人
たちの
生活経験を聞きながら、相互に
理解、融和、地域
社会の連帯意識を高めるとともに、今日大きな
社会問題となっている核家族化の防止を図ることをねらいとしております。その具体的な事業として老人海上大学を開催し、毎年一回老人三百人、婦人、青年それぞれ百人が参加し、三千トンの船をチャーターして二泊三日のコースで松山、広島、別府の各地を訪れ、講演、
施設見学を四十八年度より
実施しております。その他老人の
生活安定
対策の一つとして、老人居室
整備資金貸し付け事業を
実施し、老人と家族との同居を
促進させ、老人のいる安らぎのある家庭づくりを
実施しております。
次に
労働問題について申し上げます。
関係者の
説明によりますと、
雇用調整給付金制度は失業の防止に大きな役割りを果たしているにもかかわらず、昨年八月末で指定期間が終了した和紙業界は依然として市況がさえなく、需要期に入っても
雇用調整を
実施している
現状でありました。そこで、県当局から本
制度の指定業種として、再度指定をし、
雇用調整給付金を支給されるよう格別の
配慮を求める要望がありました。
愛媛県健康増進センターは
社会環境の複雑多様化によるストレスの増大、
生活労働の機械化による運動不足、さらに、不適当な食
生活などが原因で高血圧、心臓病などの成人病が増加しているのを防止するため、総額十一億円、そのうち国庫補助三千五百万円の資金で設置され、昨年九月に完成いたしました。このセンターのフルコースの健康診断料金は一人当たり八千円となっておりますが、実費は一万二千円と見込まれ、その差額四千円は健康保険の対象となっておりませんので、県の負担になっております。また、これまでの診断の結果によりますと、百人の健康診断のうち一二・四%がセンター外の医師の診療が必要であり、八二・九%が入所によって健康
指導が必要とされ、残りのわずか四・八%が健康者であるという内訳になっており、いかに半健康者が多いかがうかがえます。
愛媛県盲人
福祉センターは視覚
障害者の総合的な更生と
福祉の
向上を目指して、人生中途で失明した不幸な人
たちを入所させ、あんま、マッサージ、指圧師としての学術を習得させ
社会に復帰さしております。そのほかに点字図書の関覧、貸し出し、点訳及び点字出版、さらにテープライブラリーの運用など六つの事業を行っております。中でも私
たちが感心いたしましたのは、盲人の方々の教養を高めさせ、生きがいを持たせるためにこれまでに十二年間、延べ時間にして千二百時間もの長時間にわたって、ボランタリー活動として文学書などを録音テープに自分の声で吹き込んでいる主婦の今川潤子さんの姿でありました。
次に私
たちが訪れましたのは、脳性麻痺などで手足が不自由となった
子供たちの
施設であります。県立愛媛整肢療護園であります。
昭和二十七年に開設され、この
施設は県立の同種の
施設としては
わが国では最古のものだと言われております。しかし、この
施設でも全国的に共通な悩みである理学、作業の両療法士の不充足が見られ、本県出身の療法士を
中心に目下その
確保に力を
入れております。
さらに、私
たちは温泉郡川内町役場において、川内町の母子衛生実践会の活動
状況の
説明を受けました。現在九千人の人口を有する過疎地川内町に母子衛生実践会が発足いたしましたのは
昭和三十三年であり、二十年近い歴史があります。ここの町民の健康保持の意識は非常に高く、伝染病及び結核の予防、回虫駆除の検便の徹底から始まった衛生
向上運動は公衆衛生全般について広がり、官民協力体制が強力に展開され、実践会の諸行事が即町の行事となっております。その中でも注目されることは、
昭和三十七年の母子健康センターの設立であります。その結果妊婦の検診率は、四十一年以降一〇〇%に達し、それによって治療率も九六・八%と高くなり、このことが乳幼児の死亡、未熟児の出生を激減させております。しかし、現在センターに勤務している助産婦さんは二人おりますが、そのうち一人は非常勤者であり、助産婦の不足とともに、高齢化によって今後この問題をいかに解決するのかという悩みも存在していることがわかりました。
次に、香川県について申し上げます。
まず県庁において、前川知事を初め、担当責任者から県下の全般的な厚生、
労働行政の実情について
説明を
聴取いたしました。香川県の輸出縫製品製造業が、現在の不況によって
労働面にどのような影響を及ぼしているのかを
調査するために丸亀市の香川県輸出縫製品工業協同組合を訪れました。
関係者の
説明によりますと不況のもととはいえ、女子若年
労働力の不足は加速度的に深刻の度を加えており、さらに定着
状況の低さ、年々高齢化をたどっていると言われております。一方、県下の
企業の一社当たりの平均従業員は六十四人と、全国平均六十五人と同じ規模でありますが、香川県の特徴として下請、外注の生産体制からいまだ脱却するに至っておりません。その結果、製品の高級化、競争力等において不利である点が免れず、今後この問題をどのように打開していくかが大きな
課題の一つになっております。なお、不況による
企業倒産等については中小
企業が大部分のため、減産体制の即応化が容易であること、デザイン等の先取りなど小回りをきかせた経営によってさほど大きな問題に発展していないとのことでした。
次に、私
たちは
社会福祉法人恩賜財団済生会が所有する「済生丸二世号」百五十五トンに乗船いたしまして、香川県豊島の診療
状況を視察いたしました。「済生丸二世号」は船体、診療機能が老朽化した一世号にかわって日本船舶振興会
関係四県の補助によりまして総額二億一千二百七十二万円余の建造費でもって五十年七月十六日に完成し、岡山、広島、愛媛、香川の各県の離島の住民を対象に巡回診療を行っております。そこでこの事業運営について当面の
問題点を申し上げますと、五十年度の事業
計画によって見ますと、七十の対象島の診療予定人員九千七百四十七人、出動予定日数年間二百六十五日、これに要する経費は三千三百五十六万円余の予算であります。したがいまして、一日の出動に対して約十三万円の出費
割合になりますが、これに対する国庫補助基準は一回の出動につき七千円の金額であります。このような補助基準の低さに加えて、最近では船の燃料、人件費の急騰によって出費がかさみ、五十年度の場合、四十九年度の予算と
比較しまして、千三百万円の増加が見込まれており、財政悪化が続く病院財政の事情のもとではこの増加予算の捻出は非常に困難な実情にあるとの訴えがありました。そこで、現在国が行っている巡回診療船と巡回診療車の同一補助基準を改定してもらいたいとの要望もありましたので御報告いたします。
社会福祉法人イエス団豊島神愛館は現在二歳までの乳幼児を六十人の収容定員に対しまして三十六人がおります。これら乳幼児の入所
理由は、
社会的原因として、母の就労、父母の離婚、父母の死亡など挙げられますが、最近の傾向として父親の
交通事故による母の就労が多くなっております。この
施設では二十三ヘクタールの所有地があり、そこに乳牛を飼育して乳幼児の牛乳を自給しており、
子供たちの成育に大きな
効果を上げております。こうした中で養子縁組みに当たっては館長の兵藤みや子
先生を
中心に職員の方々がポケットマネーでもって養子縁組み先の
調査を徹底し、
子供たちの先の幸せのために粉骨砕身、
努力されている姿を拝見いたしました。しかし、当
施設においても
問題点があります。
児童福祉法第三十七条によって満二歳までしか
施設におれない仕組みになっております。神愛館においても発育や知恵のおくれた幼児が養護
施設に送れずとどまっております。つまり、これらの
子供たちは非常に手間がかかり、次の
施設で受け
入れるのを敬遠すること、さらに保母さんと
子供たちの間に愛情がわき手放せなくなったことなど、内外の諸事情によってであります。
最後に、
雇用促進事業団の香川高等職業
訓練校及び香川県立漆芸研究所に参りました。職業
訓練校の最近の入校率は養成、
能力再開発
訓練を合わせて七〇%台であり、全国平均とほぼ同率であります。しかし、中途退校者は四十八年三一・二%、四十九年二二・九%とかなり高い率となっております。
ここで提起された
問題点を整理して申し上げますと、
中高年齢者の
訓練が六カ月
程度の短期間なために、
訓練技術が
企業の需要にかなえられるものであるかどうかということ、さらに
指導員の
労働組合からは定時制高校在学中の
訓練生が多くいることから職業
訓練と学校
教育との連携
制度について定時制高校で履修している普通学科を
訓練校側で認定
措置をとり、
訓練生の二重負担を解消すること、
訓練技術の習得だけに偏重せずに
訓練生の
一般教養、体力をつけられるような講師の
確保、さらに重要なことは
訓練による技術の習得が初任給など
賃金にどれだけ評価されているかなどの
問題点の指摘や要望がなされました。
以上で両県の
調査報告を終わります。