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政府委員(
橋本道夫君)
長官の
基本的なお答えの前に、先生の三つの問題点につきましての御
質問にお答えしたいと思います。
まず第一が、この
法律で予定しておる
規制基準は甘くなっておるのではないかという御意見でございますが、ここにこの
法律で出しております
基準が五十五から七十というところをほぼ
基準にしましてやっております。これは
工場、
道路に関連したものを申し上げたわけであります。で、これを現在地方
条例でやっておりますものに当てはめてみますと、七つの地方
条例ではこれよりも甘い
基準を立てておりますので、そこはこの
法律を
施行することによって厳しくなってきます。
それから七つの地方
条例におきましては、これは
規制基準あるいは指導
基準としまして数値を比較をいたしますと、これよりも厳しいという数値だけを比較すると、そういう
条件のものがございます。甘いのではないかというのはそこの点に対する御指摘であろうかと思いますが、数値だけを比較しますとそういう議論は成り立つわけでございますが、厳しい数字はどうなっているかといいますと、ある
自治体ではゼロミリメーター・パー・セカンドという数字を夜間住宅地で決めております。これは最初、
自治体が三十年の末ごろに先発
条例のときにそういうことをやったことがございましたが、その形を四十年の初めに後発の
自治体が見習ったと。ところが最初にゼロを決めた
自治体は四十年の中ごろ過ぎにいろいろ
経験を積んでみて、その後の知見で、やはりゼロというのではないということで、そういう
自治体が〇・一ミリメーター・パー・セカンド、これは五十一デシベルに相当します。そういう数字に改定してきたという経緯がございます。そういうことで、一見そのような御議論がございますが、この答申を基礎にした今後の
基準の考え方で一番キーのところは、実は
振動の
影響ということにつきましての
調査研究資料が従来非常に乏しかったわけでございますが、四十五年から、特に
環境庁発足以降四十七年から五十年にかけまして、非常に精力的に
研究費も使いあるいは国内で実験もやり、
調査もやり、また国際的にも一九七四年の
ISOで決めましたこの
基準というものもあらわれまして、先ほど申し上げました五十五から七十の幅のところであればこれは問題ないと。そこでいけば十分この
規制の
効果というのは上げ得ると、それ以下に持っていく必要も余りないというような数字でございます。
具体的にどういうことかと申しますと、
人間の健康障害が起こるかという議論――絶対に起こりません。
人間の健康障害が起こってきますのは、これは九十六デシベルというようなところを超えれば健康障害というものの中でもこれ以上はちょっと耐えられないなという程度のものを言っております。しかもそれを八時間ぶっ続けに暴露をするということでございます。そういうことで、大体八十五から九十というところでその生理的な
影響が起こる。つまり脈が少し変化をするとか、そのような生理的な
影響が起こるという問題がありますが、そのような、八時間もそのような
条件暴露することは、本法令の
基準では一切起こりません。それが
一つございます。
それからその次の問題点につきましては、夜間の睡眠を
確保をするということでございます。夜間の睡眠を
確保をするということで住居地の夜間の下限を五十五デシベルというところに切っております。これは従来から受け入れられていたことでもございますが、大体六十デシベルというところから以下は大体
人間は余り感じない、あるいは五十七デシベルというような数字もございます。そういうような家の中で五十七デシベルぐらいだと感じないと、それを五十五と置いておりますので、そこのところは問題はないということでございます。
なお、工業
地域、
工場関係のある
地域におきまして、数字としては六十五というような数字がございますが、これはその地盤でございますので、五デシベル足しても七十デシベルと。そうすると浅い睡眠には若干
影響があるかというようなデータもございますが、特に問題になるというようなことは一切起こらない。また物的被害ということにつきましての意識が明らかに出てきますのは七十デシベル以上ということに
経験されております。因果
関係の証明されるのはもっと高うございます――八十から九十以上でございますから、そのような状態も起こらないということでございまして、この五十五デシベルを下限といたしまして睡眠は
確保できる、まず感じない水準である。なおかつ病院の
周辺等では、さらに五デシベル下げることができるということで必要にして十分な
基準であるというように考えれらましたので、あえて引き下げるとか甘くするとかいう意味では全然ございませんで、新しい学問的な
調査研究の知見に基づいて、この水準でやれば
規制として実効を上げ得るということで決めたわけでございます。
それから、決めるまでにどういう
手続をとったかということでございますが、これは
専門委員会を三十回余り開きまして、そうしてこれは非常にいろいろの
調査研究を
環境庁自身がいたしたのもございますし、そのほかの音響学会やあるいは公衆衛生学会等で出された
調査研究報告等もすべてその中で各分野の専門家が寄って目を通してやられております。また
地方自治体の
条例との
関係ということで非常に意を用いまして、大阪と
東京でございますが、二
地方自治体の専門を呼びまして十分な時間をかけて実情を
調査をするというようなことをいたしております。そういうことでこの
規制基準というのは最終的に決まってまいりました。