○春日正一君 これですね、中海淡水化
影響調査委員会の
報告ですね、環境庁の。これに書いてあることでも、これは私は読んでみてそう思ったのだけれども、締め切り、淡水化いかぬとは言っていないのですね。いかぬとは言っていないけれども、結論部分とかいろいろ読んでみますと、問題になるところがたくさんあるわけですね。たとえば湖主流部の最大流速は現況〇・一ないし〇・二から
計画完了後は〇・〇三ないし〇・一メーター毎秒というように低下する、だから締め切るからほとんどが動かぬみたいな
状態になってしまう。そうなったときに一体水の汚濁の
状況というものはどう変わっていくかという問題も当然出てくるわけですし、また下水道が
整備されたとしても、全体として負荷量の減少は余り期待できない。また「下水道
計画に伴なう汚濁負荷の年次推定では、施設が
整備されても六十五年次には、富栄養レベルに達すると考えられている。こうした栄養塩負荷を軽減させる方策については、現在の排水
規制、下水道
計画等では考慮されていない」、こういうふうに言っているのですね。それからまた「工場、下水処理場、し尿処理場等における」「窒素、リンを含んだ排出水や放流水を湖に負荷しない方策(外海への放流等)が考えられよう。」というようなことで、じかに入れるなというようなことも言っておるし、それから「現時点では中海の富栄養化の現況の把握及びそのメカニズムの科学的解明が不十分であり、栄養塩濃度とプランクトン発生間の因果
関係等も十分に把握されていない」というように言っておる。そういう形で農林省と
建設省が出した資料をもとにして
検討したこの環境庁の
報告でさえ、大きな疑問というか懸念を残した形で出ておるわけですわ。
そうしてこれの最後のところを見ますと、「おわりに」と言って、「中海周辺は山陰地方における産業、文化の中心であり、このような中海を魚釣等のレクレーションの場として広く
地域住民、観光客等が
利用し中海について
関心をもつようにすることが、ひいては水質保全につながるものと考えられる」、こういうふうにも言っているのですね。そうすると、観光で釣りでもやろうということになると、塩水が入ってこう来ているときは魚の種類も非常に多いし、釣りのおもしろみもあるけれども、本当に淡水湖にしちゃったらコイとフナということになってしまう。だから、そういう面から見ても、これを汚濁してそうするんじゃなくて、淡水化があの辺の農業灌漑に必要ということも言われますけれども、あるとしたら、ほかの
報告書の中、たとえば末石
報告というのがここにありますけれども、つまり島根県が委託して最大の末石教授の教室で研究してもらった資料ですね。それによっても、「淡水化のため水門をしめ切ると汚濁化はおこる可能性がある」と。これ四十八
年度の
報告ですね。中海水門は閉ざした環境形成を示唆する、これは一種の反自然であり、この水域からの取水、水
利用は処理、水道系統に新しい対応技術が必要となる。宍道湖の淡水化は斐伊川の上流ダム
開発なども含めた総合的水政策の一環として
段階的に進めるべきである。将来のある
年度を想定して大規模
事業を決定し、その一部分に着手するのは誤りであるというようなはっきりしたこういう
報告を島根県が頼んだ京大の研究室で出してきているわけですね。そういうものを無視されて
計画が進められてきたというところに私は非常に問題があるんじゃないかと思うんですよ。そうして「この研究を通じて最も大きな結論は、」「
段階的淡水化でなければならない」というふうに言っておるですね。だから、もしどうしてもそういう灌漑その他で必要なら
段階的にやんなさいと。斐伊川の流入口の方から淡水化をやり、そっちから水を取るようなことをやりながら、全湖の淡水化していく上でどういう問題があるかを解明しながら処理していくと、解決していくという方向をとらなければ、一挙にやってしまったら取り返しのつかないことになるおそれが十分あるというようなことを膨大な
報告書をつくって言っているんですね。
そうして実際は
関係漁民の人たちでも、最初は汚濁公害の話がなく、さっき
大臣の言われたように。純淡水化されるだけと思って承諾したんだけれども、いまは魚がとれなくなって汚濁が問題になってきている。組合員の
関心も高くなっておると。水門の締め切りは再
検討してほしいと、あそこの漁協の組合長は言っているんですね。それから中海の漁協の組合長の方も、県はこれ以上水質は悪くならないと言いながら、下水道は何年先になるかわからないと言う。内水面に合った漁業の見通しも明確ではないと、こういう
状態で締め切られては困るというふうに言っておるし、農民の方も農業用水の不足から淡水化を望む声もあるけれども、しかし、宍道湖や中海が死んだんではどうにもならぬと。だから、その辺はやはり慎重にやってほしいと、
関係農民の方でもそういう意見が出ておる。さっき言ったような専門家は環境庁を含めて、鳥取の岸岡先生の研究でも、それからこの末石
報告でも、十分やはりまだ問題が解明され切ってないから慎重にやれということを示唆しておるということですから、これは
大臣、まあ私のくにだと言われたけれども、なおさらのこと、やはり水門締め切り、淡水化というものは総合的に
検討してみて、そうして間違いのないようにやっていくと、慎重にやっていくというようにしてほしいと思うんですけれども、その点どうですか。