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国務大臣(
福田赳夫君)
昭和四十八年まではいわゆる高度成長が続けられてきたわけであります。ところが四十八年の十一月に
石油ショックが起こってきております。そこで様相を一変いたしまして、高度成長を支えてきた条件、これが喪失をすると、こういうことになった。一番大きな
原因は
石油でございます。
石油ばかりでなくて、あらゆる
資源にそういう同様の影響があるんですが、端的にあらわれたのは
石油である。そこでこの
石油、いままでは金さえ出せば豊富低廉に
石油の——原油と言った方が正しいですね、原油の入手ができたわけです。
石油ショックを境といたしまして、
石油の供給を受けることがこれはそう安定していない、また供給を受けるにいたしましても、価格の面で相当産油国から要望を聞かなきゃならぬと、こういうような事態になり、豊富低廉な
石油が支えてきた高度成長というものを
反省しなきゃならぬ、そういう時期に来たわけであります。
しかし四十八年十一月の
石油ショックは余りに深刻でありまして、これの傷跡をいやすそれがなかなか容易じゃない。大体、当時私は三カ年の日子を要するであろうと言っておったわけですが、ちょうど本年が三年目、そして第三
年度を迎えるわけです。そこで三年たった。そこで、この傷跡も大体いえそうだ、そういう時期に来ましたので、
昭和五十一
年度を初
年度として、これから先の
経済の長期展望をしてみたい。そうなりますと、新しいこの展望というものはもう根本的に
経済社会基本
計画と違ってくるんです。
それは、一つは成長の高さの問題です。
経済社会基本
計画におきましては実質九・四%という成長を
考えておった。ところが、それはとても実現できない。またそれを実現していくということは適当でもない。まあ
資源の問題もありますが、同時に
国内的に九・四%成長なんて言えば、十カ年で
日本の
経済規模が二倍半にもなる。それを許す立地条件が整い得られるかという立地条件上の制約があります。それから今日すでに公害という問題でこれほど
国民が
心配し出しておる、その公害問題の制約というものもあるわけであります。まあその他
物価から見ましてもあるいは
国際収支というような観点から見ましてもかなり低目の成長ということを
考えなければいかぬと思うんです。
そこで新しい概案におきましては六%強、こういう成長を
考えることにいたしたんです。まず第一にその速度の点が違ってくる。それからもう一つは、そういう減速
経済ですね、減速
経済を運営していく
政策の中身を変えていかなければならぬ。いままでは高度成長でありまするから毎年毎年成長するその成長の成果、果実ですね、それを次の成長、大きな部分を産業
投資に充当したわけです。しかし、これからは低い成長でもある、そういう時代になりますので、成長の成果ですね、これの大きな部分を
国民の生活関連諸施設の整備に振り向けていく、こういう
考え方をとるわけです。したがって社会保障、いわゆる振替所得ですね、これの比率が向上をするということになり、また国家諸
投資の中で生活関連への充当、これがふえてくる。それから
石油ショックの影響等もあり、多額の公債をこの
石油ショックの治療
期間中、また予後
対策といたしまして発行しなきゃならぬ。これはしかし、そういう多額の公債発行という
状態を続けていくということも妥当ではない。そこで
国民の租税負担率、これについて、若干これを増加していく必要があるんじゃないか、そういうようなことも出てくるわけです。
それから
物価につきましては消費者
物価ですね、これはいままでの基本
計画におきましてはかなり低目の、四%程度の上昇ということを
考えておりましたが、この新
計画におきましては、これは国際社会が非常に不安定なんです。つまり
資源有限時代という、
資源保有国がいついかなる出方をしてくるかもしらぬし、そういう
資源保有国の立場が強くなるということになりますると、
資源保有国がわれわれに供給する
資源の値上げをしてくる、こういうことも
心配になる。
そういうことを
考えまするときに、
物価はいままでのような低い水準ではいくまい。そこで消費者
物価につきましては旧
計画、基本
計画では四%強ということを
考えておりましたが、まあ六%以内という程度に見ておかなけりゃならぬかな、こういうふうに思うのでありますが、これを要するに一言で言いますと、成長中心から
生活中心へと、こういう動き方になると思うのです。そしてインフレのない成長
政策ということで、そう高い低いという波のない
経済運営をやってまいる、争ういう
経済運営を
考えますと、いままでのよう九
景気調整手段だけでは足るまい。そこで
景気を調整するための財政また税制、そういう上において相当工夫を要することになるんではあるまいか、そんなふうに
考えております。