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宮崎正雄君 私は、NPTについて
論理的に、
条約の
論理にも批准の
論理にもどうも納得のいかない点があるわけなんです。それらの点に関連しまして
質問をいたしたいのでございますが、大体八項目ばかりに分けまして、順次、
質問をしてみたいと思います。
第一は、いままでの経過、手続上の
問題点、第二は議題について、第三が提案理由について、第四が
条約の内容について、第五が保障措置
協定、第六が
関係国内法、第七が七カ国合意の秘密
協定があるやに聞いておりますのでこれらの点について、さらに、いままで
政府がお述べになりました見解について、私
たちが納得がいかない点がありますので、これらを逐次
質問をしていきたいと思うのでございます。
しかし、それに先立ちまして、私は私の
立場を述べて、そしてそれに基づいて
質問いたしますので、あらかじめその点をひとつ御了承をいただきたいと思います。
午前中の糸山議員の御
発言にもありましたように、一国の外交というものは非常に重要でございまして、それが成功するか失敗するかということはその国の運命を左右するものである。これは
歴史が証明しておることでありますから、いまさら申し上げるまでもないことでございます。
そこで、外交につきましてはきわめて慎重でなければならない、これが私の第一に考えているところでございます。ところが、最近のわが国の外交の動きにつきまして、私は外交においては素人でございますけれども、素人ながら何か納得のいかない点が余りにも多いようなふうに
感じております。NPTもその
一つであると言っていいと思います。私
たちは、下手をすると過去の過ちをまた繰り返すのじゃないだろうか、こういう心配が非常に私は強いんです。
そこで、
外務大臣も恐らく御
承知だと思いますけれども、近衛
内閣のブレーンであったと思いますが、亀井貫
一郎さんが近衛文麿氏に書簡を送っております。その一節にこういうことが書いてあるんです。「私はこの時程否、この時以来、
日本の政治家代議士、軍人、官僚共が世界外交について、何等の経綸なく、見識もなく、否、之等の無きはまだしも可なり、智識すらもなく、なす可き事も知らず蝉声蛙鳴徒らにその狭い
立場で我々の動きを批評してみた無智と下劣と怠惰を我々自らの為に怒るのでもなく、それに率いらるる
国民の為に悲しんだ事は無いのであります。」。前がありますから、これだけではおわかりにならなぬと思いますけれども、いわゆる当時の政治家や軍人や官僚や、こういう
人たちが外交についてどのようなことを考えて何をやったかということの反省であると思うのでございます。いまの私
たちの目に映るのが、何かこれによく似たような
感じがしないわけではございません。
それからもう
一つ、私が非常に強く
感じましたのは、その当時
内閣の情報部長をやっておられた横溝光輝さんという人が「昭和史片鱗」という書物を書いておられます。この中に私は非常に打たれる点があるのでございますが、それは私の先輩であります矢部貞治さんがお書きになりました「近衛文麿」という伝記の中に、近衛さんが述べて、書いておられることでございます。「この声明」——この声明というのは、
国民政府を
相手にせずというこのことを
意味しておるんですが、「この声明は」「非常な失敗であった。余自身深く失敗なりしことを認めるものである。」と、こう近衛さん自身がお書きになっている。しかし、私は声明するかしないか、それがよかったか悪かったか、それを私は問題にしておるのじゃないのでございまして、その手続に私は非常な問題がある、こういうふうに思うわけでございます。
それで、その点を申し上げてみますと、この声明をするかしないかということにつきまして、当時の
政府、大本営連絡会議で多田参謀次長一人が四面楚歌のうちに、そういう声明をやってはいけない、交渉をもっと継続すべきであると、こう主張したのでございますけれども、しかし、なかなかそれが入れられない。
政府、大本営の打合会を三度にわたって休憩して、結局、多田さんはこういう心境でそれについに同意したと。「もし統帥部側があくまで交渉継続論を」、すなわち声明を出すべきじゃないという論を「主張するなら近衛
内閣は総辞職する」との意見をほのめかされ、多田次長はついに
政府側に折れて打切り論にまとまった。あとで多田次長は「交渉打切りは嫌だ。長期戦は嫌だ。しかし近衛
内閣の崩壊はなお嫌だ」と、こういうことで最後にはその声明に応じてしまったわけです。それがあのシナ事変の長期化を招き、大東亜戦争にまで発展した。
こういう事実を見ますと、やはりただ単に少数だから、大多数の者が賛成だからというようなことで軽々しく結論を出していただくことは、私は非常に危険じゃないか、こう思うのでございます。
それで私は、いまの
政府関係者が現時点においてこれを
承認することが国益のためだという信念に基づいて御
努力なさっておる、その誠意を疑うものではございません。しかし、少なくとも与党の内部にこれについて慎重であるべきという意見もある。しかも、それだけではなくして、いわゆる学者、文化人、評論家、大学教授、物事を非常に公正、冷静に考えて判断される方々も相当多くの方々がいろいろ検討された結果、これは慎重を期すべきであると、こういうふうな結論を得ておられるのでございます。私は外務省の、あるいは
政府の御説明が全部間違っておるというようなことは申しておりません。しかし、そこにはなおわれわれの素人の納得できないところがある。一方、それらの先ほど言いました文化人や学者の方々の言い分の中にはなるほどだと、このような
感じを受ける場合もあるわけでございます。いずれが正しいかということにつきまして、われわれ自身が非常にこの判定に苦しんでおるというのが現在でございます。
そういうような観点から、われわれがどういう点にそういう問題を
感じておるのか、もうすでに同僚の皆さんからいろいろな御
質問があり、また、衆議院では長時間にわたって
審議されたのでございますから、もう問題はないかもしれません。私は外務
委員でもございませんから、きょう突然に
発言の時間をいただいて出てきたわけでございますから、あるいは重複したことをお尋ねするかもしれませんが、これはひとつお許しをいただきたいと思うのでございます。
そこで、まず第一に、この
条約を
責任を持って扱っていらっしゃるところはどの部局であるかということを外務省の方からお聞かせいただきたいと思います。