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1976-05-20 第77回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月二十日(木曜日)    午前十時十一分開会     —————————————    委員異動  五月十九日     辞任         補欠選任      源田  実君     宮崎 正雄君  五月二十日     辞任         補欠選任      宮崎 正雄君     稲嶺 一郎君      中村 利次君     向井 長年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 久興君                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 糸山英太郎君                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 宮崎 正雄君                 亘  四郎君                 田中寿美子君                 竹田 四郎君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 野坂 参三君                 向井 長年君    国務大臣        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君    政府委員        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        防衛施設庁施設        部長       銅崎 富司君        科学技術政務次        官        小沢 一郎君        科学審議官    半澤 治雄君        科学技術庁原子        力安全局長    伊原 義徳君        外務大臣官房長  松永 信雄君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省中近東ア        フリカ局長    加賀美秀夫君        外務省経済局次        長        賀陽 治憲君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  中島敏次郎君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵省国際金融        局長       藤岡眞佐夫君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        井上  力君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        科学技術庁原子        力安全局原子炉        規制課長     松田  泰君        外務大臣官房外        務参事官     谷田 正躬君     —————————————   本日の会議に付した案件日本国ハンガリー人民共和国との間の通商航  海条約締結について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○経済協力開発機構金融支援基金を設立する協定  の締結について承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○米州開発銀行を設立する協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国際通貨基金協定の第二次改正の受諾について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国際連合大学本部に関する国際連合日本国と  の間の協定締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(第七十五回国会内閣提出、第  七十七回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
  3. 戸叶武

    戸叶武君 議事進行。  議事進行に関して、名をかりて一言委員長に申し入れを行います。  この核拡散防止条約の批准の問題は、今国会において重要法案一つであります。しかし、この問題はもう数年間にわたって論議され尽くし、特に、去年からことしにかけては活発な論議が各党においてもなされておるのでありまして、この核拡散防止条約に対する賛否の立場はありまするけれども、これが万が一にも通らないようなことになると、国際的な信義にも私は関係があり、日本軍国主義の復活ということに対して警戒の眼を張っているところの近接諸国においても重要な私は反応が生まれてくると思うのであります。そういう意味において、この参議院において重要法案であるから審議は十分に尽くすべきと思いますが、最近における動きを見ると、慎重審議に名をかりて、政界の不安定な状態を背景として、ただいたずらに引き延ばしのための言動があらわれておるのでありまして、これは容易ならぬ事態でありますが、自民党並びに政府においてもこの責任は十分感じておると思いますけれども、私たちは、事日本の国内だけじゃなく、列国にも関係のある問題ですから、この問題を論議をし尽くした最終段階において、総理大臣もここに出席するでしょうが、そういう意味において一日も早くこれを上げてもらいたい、こう思っております。  そういう意味において、私はいままで理事会においてきょうの質疑の問題も、社会党は質疑をしないで促進をしようとしたのは、質疑を無視するわけじゃありません。もう質疑段階ではなくて採決の段階にまできている、最終的な私は締めの段階にきていると思うんですが、自民党側党内対策のために、いわゆるタカ派人たちの無責任と思われるようなあの速記録が外国に行ったならば、日本は一体何を考えているのかということの誤解を必ず生ずるような、日本国会の威信にも関するような言動が放たれているんでありまして、このことは、言論の自由と言いながらも、政府並びに自民党が大きな責任を後でしょわされることになります。言論の自由のあるところですから参考になるにはいい見本でありますけれども、そういう意味のことを踏まえて、もう少し委員長参議院外務委員会の権威のために、責任ある態度をもってこの問題と取り組んでいってもらいたい、私たちはそういう意味において、審議を放棄したのではないんです。やはり最終段階における総理大臣出席のもとにおいて問題点を集約して質問なり質疑なりを行って、そして一日も早く、できるなら二十一日でも二十二日でもこれは採決して上げるべきだと思うんです。この態度がはっきり政府側に並びに委員長において表明せられない限り、私たちはこの委員会において協力することが困難になってきておりますので、そういう意味における警告の意味を含めて、私たちは本日は質疑は引き下がるという形で、自民党態度を見守ることにいたします。
  4. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいま戸叶委員発言でございましたが、その発言をそんたくして事を進めてまいりたい、かように委員長は考えておりますので御了承いただきたいと思います。     —————————————
  5. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) まず、委員異動について御報告いたします。  昨十九日、源田実君が委員辞任され、その補欠として宮崎正雄君が選任されました。また本日、中村利次君が委員辞任され、その補欠として向井長年君が選任されました。     —————————————
  6. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 日本国ハンガリー人民共和国との間の通商航海条約締結について承認を求めるの件  経済協力開発機構金融支援基金を設立する協定締結について承認を求めるの件  米州開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件  及び、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案(いずれも衆議院送付)  以上四件を便宜一括して議題といたします。  これより四件の質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 竹田四郎

    竹田四郎君 私に与えられた時間がこの四つの案件で五十分ということでございますので、ひとつ答弁側の皆さんに簡略に要を得て御答弁をいただかないと、時間がすぐ過ぎ去ってしまいますので、お願いをしておきたいと思います。  まず、米州開発銀行に関する件について若干質問をいたしたいと思います。今度、域外国から金を集めるということになるわけでありますが、米州だけで資金が調達できないという理由は一体何なのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  8. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) お答えいたします。  米州開発銀行は、従来域内の二十二カ国プラス米国、カナダ、この二十四カ国が加入国になっておりました。それで中南米発展途上国経済社会開発に寄与してきたわけでございますが、御承知のように、中南米諸国域内経済開発のための資金需要というのは大変膨大でございまして、米州開発銀行だけに関してみましても、その融資状況を見ますと毎年二六%ぐらいずつ増加しております。このように、大変資金需要が大きいものですから、従来の域内だけの加盟国出資ないし拠出金だけでは原資に事欠くということになりまして、域外の国からも出資及び拠出を求めようということになったわけでございます。同時に、域外加盟国十二カ国でございますが、従来中南米諸国に関していわゆるバイラテラルにすでに経済協力資金協力をやってきておったわけでございますが、この際、そういった米州開発銀行資金需要の増大にもかんがみまして、こういった地域銀行を通ずる経済協力という方法もとっていきたいといった願望が一致いたしまして、域外国新規加盟ということになった次第でございます。
  9. 竹田四郎

    竹田四郎君 アメリカはこれに対していままでどういう努力をしてきたんですか。少なくともいままでの形では、米州のことは米州でという形でのモンロー的な考え方というものが私はかなり強くあったと思うわけでありますけれども、そういう意味では、何といっても最大資金供与国であるアメリカ、そして米州全体におけるところの主導権を持っているというのはやっぱりアメリカだろうと思うのですけれども、そういう意味では第一次的なこれに対する責任というのはアメリカが負うべきであるというふうに思うんですが、アメリカは一体どういう努力をいままでこのためにしてきたのか。
  10. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) 仰せのとおり、この米州開発銀行というのはきわめて地域性が強いといいますか、域内独立性といいますか、リージョナリズムの性格が非常に強いわけでございます。それに加えまして、米州大陸経済大国であります米国が参加してきおったわけですが、従来、米国はこの米州開発銀行協定上は投票権の三四・五%以上のものを持っておりまして、つまりこれだけの投票権を持っているということは、それだけの資金供給を行っているということでございます。  この米州開発銀行には通常業務基金というのと特別業務基金というのがございますが、前の方の通常基金の方では米国のシェアが四〇%を超えておりますし、特別業務基金の方は七一・二%ということになっております。したがいまして、米国発言権が大きいと同時に、資金協力の範囲も非常に大きかったというふうに見るわけでございます。今回も、米国は自国だけではラ米内の資金需要というのは賄わないということでございまして、域外国加盟を積極的に歓迎するということをやっております。ですから、米国としても資金の確保といいますか、米州開発銀行が適切に運営されるということに関しては、発言権もございますが、同時に義務も履行しているというふうに見るべきではないかと思います。
  11. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまの質問と関連して外務大臣にお伺いしたいと思うのですが、アメリカはこの協定の、域外国加盟というこの協定の成立、このことに関連しまして、やはりいままでわれわれが受けているモンロー的な考え方米州のことはとにかくアメリカがやるからおまえら口出すな、こういう考え方について、やはりアメリカ自体が大きな変更を迫られている、あるいは大きく変更をしていくのだというふうな態度とかあるいは何らかのそういう表明とか、そういうようなものは期待されるんですか、どうなんですか。それとも、いままでと同じように、金は出せ、しかし米州のことはおれがやるからおまえたち余り入って来ちゃ困る、口を出すな、金は出しても口を出すな、こういうふうな態度なのかどうなのか。これはどうなんですか。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) かつてアメリカ米州、ことにラテンアメリカに対しましてかなりはっきりした影響力を確立しておった時代が御承知のようにございましたけれども、いろいろボゴタで事件がありましたりいたしましたころから、そのような関係変化が見られるようになり、そうしてやはり一般的ないわゆる南北問題の帰趨とも無関係ではなかったと思いますが、かつてのラテンアメリカに対するアメリカ態度というものは実際問題として修正を迫られるに至っておったと思います。そうしてそれにもかかわらず、しかし幾つかの国はかなり、いわゆる自由主義経済あるいは民主主義体制ということから見れば違った方向へまいりました。その間、アメリカ権益が接収されるというような事態も起こりまして、基本的に非常に大きな変化がその間に、この十数年の間に生まれたと考えます。  しかし、そのようないきさつがありました結果として、従来の、かつてのラ米に対するアメリカ態度というのは現在になりますと非常に変化をしてきた、いわば柔軟に対処をすることの方が賢いというふうに変わってまいっておるように考えておりまして、かたがた、これらのかなりの国が自立能力を十分に本来ならば持っておる国でございますこともありまして、アメリカの現在のラ米に対する態度というものは、かつてのそれとは著しく異なったものになっておる。いわゆる余り体制というものに神経質にならずに協調路線を歩こうというのが基本になっておるのではないかと見ております。
  13. 竹田四郎

    竹田四郎君 それにもかかわらず、恐らく具体的にはこういう国々の経済的な支配というのはアメリカ資本によって実際支配されていると思うんです。しかも、それらの資本というのはかなり巨大な資本によって支配をされているというのが恐らく、私行って見たわけではないですけれども、現状であろう、こういうふうに思うわけです。だから、幾らそういうことでアメリカが柔軟に対処しよう、いままでの戦略を変えよう、こう考えても、資本論理からいきますと、やはりいままでの自分たち権益なりあるいは領域なり、そういうものは当然守ろうとするのは、私は資本論理として当然であろうと思うわけですけれども、口ではそういう形、あるいは態度ではそういう形をとっていても、やはり入っていくのに大きな障壁がある、これでは実は困ると思うんですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、アメリカラテンアメリカに対する投資は非常に長い歴史を持っておりますから、それが一朝にしてどうなるというふうに私は別に考えませんけれども、しかし、幾つかの国において見られますように、それらの資本が接収をされるというような事態に対して、かつてのアメリカでありましたら、これはあるいは武力にでも訴えたであろうかもしれないような事態でありましたけれども、世界の情勢はそういうことをもはや認めないという情勢現実になっておりましたし、アメリカ自身もまたそのようなことはあえていたさなかったということから見ますように、今後アメリカとしては、もとよりラ米に非常に大きな関心を持つことは当然といたしまして、かつてのような一種の力による、これは力というのは武力による場合もありましょうし、金力による場合もあろうと思いますが、そういう一本調子の関係というものは続けられなくなっておる、そういう事態として考えなければならないというのがアメリカ側の基本的な認識ではないかというふうに考えております。
  15. 竹田四郎

    竹田四郎君 この米州開発銀行によりますと、公私投資を促進するということがその目的の第一に挙げられているという事態でありますけれども、現実に、いままでの米州銀行融資公私の、公的資本私的資本との割合というものは具体的にどんなふうになっているわけですか。
  16. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) 仰せのとおり、協定第一条第二項によりますと、「公私資本投資開発目的とするものを促進する」ために米州開発銀行融資するということになっておりますけれども、現実には、圧倒的に貸し付け相手開発途上国政府ないしはその政府機関行政機関でございまして、加盟国の領域内にある企業に対しても行われておりますが、きわめて少ないわけでございます。例外的にブラジルとかアルゼンチンのように比較的中進国的な国に対しては企業貸し付けたことはございますが、歴史的に申しますと、最初は企業貸し付けておったんですが、その後は、企業貸し付ける場合でも政府ないし政府機関の保証をとるという制度に変わってきておりますので、事実上はもう相手政府というふうに見た方がよろしいんではないかと思います。
  17. 竹田四郎

    竹田四郎君 貸し付け融資額を見ていきますと、ブラジルとかアルゼンチンとかメキシコとか、こういうところがかなり圧倒的に高いというふうに見てもいいわけですが、一人当たり国民所得を見てみましても、これらの国々というのはかなり高いように私は思うんです。最大だとは言えませんけれども、かなり高い国々がその資金を多く使っている。むしろ、民度を上げていく、そういう立場でこういうものは私は原則的には利用されなければならない、こういうふうに思うわけでありますけれども、たとえば、多いところでアルゼンチンというのは七三年に国民所得が一人当たり千六百四十USドルですか、こういうふうになっておりますし、ブラジルにいたしましても七百六十ですから平均より高いところにある。あるいはメキシコにいたしましても八百九十USドルという形で高いところに集中している。本来ならもう少し低いところ、低い国がまだまだあるわけですよ、三百三十とかあるいは五百台のところもかなりある。あるいはハイチなどは百三十、こういう低いところがあるわけですが、むしろそういうところの産業を開発していくというふうに私は使わるべきじゃないか。そういう意味では米州開発銀行のいままでのやり方というのが、最近における南北問題とか、そういう立場から見ますと大変奇異な感じを受けるわけでありまして、いままでのアメリカ植民地経営一種としての融資というふうな感じすらするわけです。しかも、ブラジルアルゼンチン、あるいはチリのことは有名でありますけれども、こういう国々というのは、いずれも軍事独裁国家様相現実には示しているわけです。そして、その後ろには、どうもブラジル政変、こういうことを見ましても、後ろにはアメリカの石油の多国籍企業というようなものが介在しているんではないだろうか。あるいはチリ政変についても、チリは余りいま関係がないようでありますけれども、チリ政変にいたしましても、これはアメリカの上院の調査で明らかなように、ITTやあるいはCIAというものがかんでいた、こういうことが明らかであるわけであります。そういう意味では、確かに米州開発銀行の方針というのはそういう政治的なものにかかずらわってはいけないということが明確に規定されておるにもかかわらず、われわれとしてはそうした多国籍企業というものの介入といいますか、そういうものが現にあることは、これは私は事実であろうと思うんです。しかも、そういう国々にたくさんの金がいっている。今度はわれわれの国民の税金もそれに入っていくということになりますと、日本国憲法の条章に関連してもこれはちょっと何か奇異な感じを抱かざるを得ないということなんですよ。いままでの長い米州銀行歴史があったと言えばそれまででありますけれども、その辺には何か大きな変化といいますか、そういうものを国民に明らかにしていただかないと、せっかく、われわれの金がそうしたところの非民主的な国のために使われる、そういう政府のために使われるということになりますと、何かトラブルメーカー的に金を出してやっている、こういう印象を私は免れないと思うんですよ。その点は加盟とともにどう改善していかれるのか、その辺をはっきりしていただきたいということだと思いますね。だから、見まして、どうも本当に民度を上げていくという開発ではなしに、こうした国々の原材料をより多く各国に売って、米州の一次産品、その後ろには、さっき申し上げましたようにアメリカ合衆国の圧倒的優位のもとに、具体的には中進国といいますか、あるいは後進国といいますか、途上国の名前によって強力な輸出推進が行われていく、そして、一層植民地経済様相というものが深まっていく可能性というものも全然ネグレクトするわけにはいかないんじゃないかという気がするんですが、その辺は、やはり政府として加盟をするということであるならば明確にしてもらわないと、私はどうも国民として納得できないんじゃないかと思うわけですが、いかがですか。
  18. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) ただいまの御質問でございますけれども、まず、事実関係から申し上げますと、確かに御指摘のとおり、金額的に見ますとブラジルアルゼンチンメキシコ、ペルーその他に対する融資通常業務基金の方も、それからいわゆるソフトローンを出すために設けられました特別業務基金の方からも、これらの国は一番融資を受けているわけでございます。ですけれども、これをもっとしさいに検討してみますと、特別業務基金の方がブラジルアルゼンチンとか中進的なところに向けられた場合には、多くの場合、その国のインフラ的な部門に対する融資の場合に特別業務基金の方から使われているということが一つ。第二番目といたしましては、確かに絶対額ではブラジルアルゼンチンにいっている金額は多うございますけれども、これを頭割りで見たというような場合には、必ずしもこのブラジルアルゼンチンに多くいってないで、むしろ、よりおくれた、開発のおくれた国の方にいっているという事実がございます。それから第三点といたしましては、同じ特別業務基金から融資する場合でも、より開発のおくれた国に対する場合の融資条件が最も寛大な条件になっております。つまり、特別業務基金というのは一%ないし四%の金利でございますが、その下限の方で後発の途上国に対しては融資をしておるという状況でございます。  それからその次の御指摘の点でございますが、米州開発銀行はその協定によりまして、非政治的に運営されるべきことが決められておりまして、あくまでも目的米州地域内の特に発展途上国社会経済開発に寄与するということが最大の眼目でございます。それからしかも、その運営に当たりましては域内途上国、つまり融資を受ける側の国の意思を最も尊重すべきである。そういった国々のニーズといいますか、それを最優先すべきであるということがこの米州開発銀行協定を貫いている思想でございまして、先ほどもちょっと申し上げましたように、域内発展途上国借り入れ国側に五三・五%以上という発言権が、投票権が確保されているわけでございます。したがいまして、域内発展途上国の希望というものが最優先されて運営されているということによりまして、いわば民主的に運営されているということが言えるのではないかと思います。  それから、域外国加盟と同時にどういう点が改善されるかという御質問でございますけれども、域外国はあくまでも資金供給といいますか、開発資金の需要にこたえていくということでございます。しかしながら、同時に、域外国も各国一人ずつ総務会に対する総務を出せますし、それから域外国十二カ国で二人の理事を出せることになっておりますので、そういった総務ないし理事を通じて域外国発言権といいますか、考え方の表明というものは確保されていくのではないかと思います。  それから最後に、多国籍企業のことを申されましたが、米州開発銀行自体に関する限りは、米州地域にある多国籍企業、たとえばアメリカ資本一〇〇%の企業に対しては融資はできないことになっております。これは事実関係として御参考までに申し上げます。   〔委員長退席、理事秦野章君着席〕
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 局長の説明は私ちょっと事務的だと思うんです。経済というものは生きているものであって、金というのは一回渡れば、この金は何のために使われるといって色がついているわけではないと思うんですね。一つのからくりの中で金というのは役割りを果たしていくと思うんです。日本だってそうでしょう。銀行が中立的だ、中立的だと、こういうふうに言われているんだけれども、じゃ銀行が本当に中立的だと、国民はそれをそのとおり思っているかというと、そうじゃないでしょう。現実に為替相場の変動のときにはうまいことして金もうけたということは、これは有名でありますしね、決して中立的にはやってないわけです。ですから、一体こうして米州開発銀行から出ていった金が、それは第一次は中立的でしょう。具体的にそれがどういうふうに使われているかというところが私は最大の問題だと思うんですよ。いまの局長の話ではそういう点が全く触れられていない。それじゃ国民に対する私は答弁になってないと思うんですよ。そういうことを調べたことがあるんですか。おそらくそういうことを調べもしないで、域外加盟国になるということだけじゃないですか。私はそういうことでやっていくとすれば、この金というのはプラスになるんじゃなくて、むしろマイナスになっていく可能性すらあると思うんですよ。どうもいまの答弁じゃ納得しないのですが、そういうことを調べたことがあるのですか、どうですか。もしあるとしたら、ひとつあとからでも結構でございますけれども、この二十四カ国に対するアメリカの多国籍企業の影響というものは具体的にどのくらいどういうふうにあるのか、資金的に、あるいは企業的に。こういうものを明らかにして出してみてください。それがきょうじゅうに出せるというのなら私はあなたの言うことを信じます。出せないというならあなたのいまの答弁では私は満足しませんよ。  もう一つ言いますと、たとえばキューバという国一つをとってみても、キューバは社会主義国だから、社会党が言うと、何かおまえその方にばかり肩を持つと、こう思われるかもしれませんが、出資の方じゃ相当大口の出資者でしょう、キューバは。しかし、現実には表にも載らない、ほとんど貸していないというような事態でしょう。そういうことを見ますと、やはり政治的にかかわってはいけないとは言いながら、現実にはそういう形でかかわっているじゃないか、こういうふうに思わざるを得ませんね。そういうものはかかわっていないというならその反証を挙げてください。どうですか。そういう資料を出してくれるなら私はあなたの言うことを信じますよ。そういう資料も出さないで、あるいはすぐ出せないという事態の中で、あなたのようなことを言ってみてもこれはいけないし、あなたの答弁というのは、頭割りにしてみればそう差がないなんていうのは、これは一体経済が生きているのか死んでいるのか、まるで何か配るような言い方というのは、これはまさにあなた外務省の経済局長として私はどうも不適切な発言だと思うのですよ。
  20. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) 先ほど申しました頭割りの話は、ほんの御参考までに申し上げたわけでございまして、まあそれで正当化されるといいますか、そういう主たる理由として申し上げたわけじゃないので……と申しておきます。  それから米州開発銀行に限りまして申し上げますと、どういった分野に投資が行われたかということに関しましては、後ほど、これは主として分野別の大まかなものにならざるを得ないと思いますが、これは提出をいたしたいと思います。  それから米国の対ラ米投資というのは、先ほど大臣が申されましたように、膨大なものでありまして、非常に大まかに申しまして、米国の対外投資が一千億ドルぐらいあるとすれば、その六割方がラ米にいっているというのが普通の常識でございますが、その点に関する詳細な資料というのは、ちょっと私の方では困難ではないかと思いますが、検討さしていただきます。  それからキューバにつきましては、キューバは米州開発銀行の設立の動きのありました一九五九年当時は設立交渉に参加しておりましたけれども、終局的には加盟しなかったわけでございますので、その点は御了承いただきたいと思います。   〔理事秦野章君退席、委員長着席〕
  21. 竹田四郎

    竹田四郎君 これらの二十四カ国に対する日本資金協力というようなものは、民間あるいは公的なもの、それを含めてどんなふうになっているのですか。
  22. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 日本がいままで米州開銀に供与いたしました資金は輸銀ローンが中心でございますが、これは八回にわたって四百十億円なされております。そのほか日本の商業銀行のローン及び米州開銀が日本で募集いたしました円建て私募債がございまして、合計でいままでに五百八十七億円供与いたしております。
  23. 竹田四郎

    竹田四郎君 国別にはどうですか。
  24. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) いまのは米州開銀に日本から出した金額でございますので、それが米州開銀からどの国に出たかというその分ではございません。
  25. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) お答え申し上げます。  まず、政府レベルの円借款について申し上げますと、国名と金額だけで申し上げますとペルー……。
  26. 竹田四郎

    竹田四郎君 局長さん、ちょっと恐縮なんですが、時間があんまりありませんので、それを表にして、後で出していただければいいですから、表にして出してください。
  27. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) 承知いたしました。
  28. 竹田四郎

    竹田四郎君 それから、加盟国によってこれらの国々日本関係が一体どうなるのか。中南米、もちろんこういうことによっていままでもやってきたと思うのですが、いろんな開発計画なり、開発政策というものをつくっていくだろうと思います。これは、恐らく全体として、あるいは各国ごとにこれらに関連してそうした開発政策がつくられると思うのですけれども、そういう開発政策に対して日本のかかわり方というようなものは一体どうなっていくのだろうか。  それからもう一つは、日本の希望といいますか、こういう中南米開発に対する日本の希望、あるいは関心、興味といいますか、こういうものは一体どういうところにあるのか、その辺を伺っておきたいと思います。
  29. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) 今後、日本加盟によりまして、米州発展途上国開発政策に対してどういうふうにかかわり合っていくかという御質問でございますが、先ほど国金局長から申されましたように、従来は主としてバイラテラルに、しかも政府、民間両方から資金協力を行ってきたわけでございますが、今後はそれに加えまして、決してバイラテラルの援助を今後減らすというわけではございませんけれども、それに加わりましてマルチラテラルの地域銀行を通じた協力を行っていきたい。今回の日本域外加盟の方法といいますのは、日本域外加盟十二カ国のうち最大出資及び拠出を行うわけでございまして、したがって、それに対して恐らく日本側から理事を出すことも可能と思いますので、こういったバイラテラル、マルチラテラル両方の方法を通じまして、米州域内開発途上国に対する開発を援助していきたいというふうに考えております。  それから、第二の日本の希望、関心という御質問でございますが、これは米州開発銀行加盟します以上、米州開発銀行の基本的な目的に沿って、それから基本的な運営の仕方に応じた協力の仕方を行っていきたい。ただ、これは一般的な言い方でございますが、わが国の場合はラ米、特にブラジル、ペルー等に約八十万の在留同胞がおります。そういった事実にも着目しながら、米州諸国との経済関係はもとより、友好関係、外交関係も緊密化さしていきたいというのが日本の願望でございます。
  30. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうも局長答弁というのは大変事務的な答弁なんですが、やはり経済的、政治的に、こういう金を出していく、これが一体中南米諸国の経済と日本の経済とがこれによってどうなっていくのか、この辺は私ども非常に関心がありますし、現実にはいろいろな企業が南アメリカに進出しているという記事はいろいろ新聞等で非常に拝見するわけでありますけれども、ただ、ここに金を出したというそれだけの問題というふうに限定しないで、全体的に経済的に南米諸国日本とのこれからの経済のかかわり方、あるいはどういう立場でいくのか、この辺の基本的な考え方というものをお示しいただきたいと思うのです。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど来竹田委員のお尋ねを伺っておりまして、ごもっともなお尋ねだと、恐らくそのような問題について国民の多くがやはり知りたいであろうというような種類のお尋ねであったと思います。つまり米州ラテンアメリカというものはアメリカが非常に強い支配力を持っておるのであって、それにただ、ひとつ協力をするだけならば本当にそういうことに積極的な意味があるか、むしろ反対の意味すらあり得るではないかというような、漠然としたそういう感じというものは、私、国民のかなりの人が持っておられると思うのです。  それで、キューバの問題は一応別にいたしまして、ちょうどこの銀行ができます一九五九年というのは、多分キューバのカストロ革命の年であったせいもあると思います。そういうことで、キューバのことはですから別に考えてよろしいと思いますが、この銀行といわゆる米州機構との関連について、米州機構もどうも今日ではすっかりたがが緩んでしまっておりますが、かつてアメリカの指導性が強かった時代においても、この銀行は米州機構とは独立の考え方、歩き方をしようということで誕生をしたと思います。先ほど政府委員から申し上げましたように、銀行の方針の決定の仕組みについても、アメリカのドミネーションが極端にならないようにという配慮はいろいろに加えてありますし、そのようなことは今日までそう行われてまいったと思います。まあそう申し上げても、しかし全体的にアメリカの指導性の非常に強かった時代には、おのずからそのような政治情勢と経済というものは無関係ではないはずではないかとおっしゃれば、私はそのことは全く間違いでございますと申し上げるつもりはありません。が、米州機構というものが現在のようなことになって、冒頭に申しましたようなアメリカラ米に対する考え方がこれだけ変わってきたといういまの段階になって、この銀行が当初から考えておりましたような独立、中立的な融資経済に対する関与というものは、現在では御心配のような問題が皆無と申し上げるのも少し言葉が過ぎるかもしれませんけれども、そう御心配いただかなくてもいいような情勢になっておるのではないであろうかというふうに考えます。  それで、わが国がこれに加盟することによってどういう新しい意味をわが国にとって持つかということですが、あれだけ大きな地域にわずかな金を出しましたところで、そんなに大きな影響力があるわけではないと思います。むしろ私の思いますのは、わが国はこのラテンアメリカの多くの国に、いわゆる二国間の関係で経済援助あるいは投資等を行っておりますが、今回この米州銀行というものに入ることによって、ラテンアメリカ全体の繁栄発展というものにわが国としても関心を持っているのである、特定の相手国一国一国に対する関心もさることながら、ラテンアメリカ全体が民生も向上し、繁栄をしていくということに、物事の考え方の問題として、わが国も貢献をしたい、そういうわが国の国としての意思表示、希望の表示というものが、今回加盟をする私は中心の意味合いではないかというふうに考えます。
  32. 竹田四郎

    竹田四郎君 米州開発銀行についてはこの程度にしたいとは思いますけれども、しかし、現実にいま国連でも、たとえばチリ問題等々についての調査も進んでいることであるし、あるいはアメリカの上院でも、アメリカの多国籍企業の調査というものは進んでいるわけでありますから、やはり金は出してやったけれどもそれが悪用されるというんじゃ、これはもう出した趣旨と全く違うと思うんですよ。だから、確かにこればかりの金を出して日本中南米支配しようなんということには私はこれはならぬと思うのですけれども、少なくとも、この前の委員会でも申し上げましたように、やはりそうした金がそこの民度を引き上げていく。特に南米に在住する日本人の生活というのは必ずしも、こちらに来ている報告によりますと、十分に民度が上がっているという人もあるでしょうけれども、大多数の人は南米移民をしたけれども最後はどこへ行ったかわけがわからないという事態があったりするわけでありますから、そういう意味では、やはり南米諸国民度を上げるとともに、一国の独裁的、独占的な支配を許していかない、こういう形の方針でやっぱり臨んでいかなくちゃならないし、その方針を明確にしてもらわなくちゃいけないということを強く要望しておきたいと思います。  それから、OECDの支援基金の問題でありますけれども、どうも私はこの支援基金をいまどうしても通さなくちゃならぬという意味が余りよくわからないんです。もともと、このものが大きく新聞紙上で論ぜられたことは、キッシンジャー構想が一般的には主体になっているような気がするわけです。そのキッシンジャー構想というのは一体何だったかということを考えれば、石油消費国同盟をつくろうじゃないか、産油国の言うことなんかおとなしく聞いているなんて、そんなばかなことはあるか、おれのところには石油資源があるのだから、そんなところから買うのはやめようじゃないかということが非常に大きくクローズアップされた、その後にこういうものが出てきたというのが一般的な印象です、実際の問題はもっと細かいところで論ぜられていたのかもしれません。それを藤岡さん、あなたいろいろなものに書いておられて、一生懸命あっちの角を取りこっちの角を取って、そしていまの二百億ドルにしたということをお書きになっているんですが、まあ大変御苦労なことだったと、私もその点ではあなたの労を多とします。するけれども、もともとがキッシンジャーのそういう考え方から私は出ているような印象を非常に強くするわけです。いま日本立場で言えば、資源はないということであれば、むしろ南北問題、要するに石油消費国同盟をつくろうとした国々と同じような立場日本はないと思うのですよ。だから、あのときも恐らく消費国同盟に日本は入るのはやめようじゃないかという議論も私はあったと思うのです。この基金ができた根源というものはどうもその辺のような気がするわけです。  そうしますと、どうもこれからの日本を考えてみると、第三世界を中心とする資源保有国、そういうものに対立し、対抗しようというような、そういう印象を私は持ってしようがないわけですよ。いま何でこんなものに加盟してこんな基金をつくらなくちゃならないか、その理由がよくわからない。しかも、この基金を実際使うというような事態というものは私はほとんど出てこないだろうと思うのです。まあ出てくるということは、石油ショックと同じような状況がまた出てくるということで、好ましくないことでありますけれども、そういうあり方というのが果たしていいのかどうなのか。  もう時間がありませんから全部言っちゃいますけれども、それからもう一つ、これが発効するということになりますと、少なくとも条件があるわけですね、発効する場合の条件が。たとえば九〇%だとかあるいは六〇%だとか、こういうのがありますけれども、外務省で出された協定書の説明書 によりますと、これに対していままで比准した国というのはごくわずかです。一ページのちょうど中段くらいに、本協定にデンマーク、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンと、こういうふうにあります。これ全部合わせたところで、金額にしたらもうごくわずかなものです。十三億ドルぐらいなものでしょう。最近ほかの国も批准をするという予定があるそうですが、それを入れても六〇%にならないわけですね。そうしたならばこれは効力を発しないと私は思うんです。そういうものに、何で急いでこの協定を批准をしなくちゃならないか。もう少し待っていてもいいんじゃないか、次の時期に送っても私はいいんじゃないか、こういうふうに思うんですが、その辺一括して御答弁いただかないと時間がございませんので。
  33. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) まず、この基金ができましたいきさつでございますが、確かに、おっしゃいますように、七四年十一月十四日にシカゴでキッシンジャー長官が演説されました件は、天下に広く知れ渡っておったわけでございます。その中で、七五年に規模で二百五十億ドルの各国の拠出または保証によるスキームをつくり、その利用を石油政策とリンクしようというのが骨子だったと存じます。しかし、その前の十月に、OECDのバン・レネップ事務局長が各国に提案をいたしまして、やはりOECDの加盟国が相互に支援をし合うスキームをつくろうといったわけでございます。私どもの実際の作業は、十カ国蔵相代理会議のもとにおきましてこの十一月から始まったわけでございまして、もちろんこういった各種の提案は参考にはいたしましたけれども、独自の立場で検討いたしまして、翌年の一月に、大平大臣が議長をしておりました十カ国蔵相会議で基本的に合意し、さらに、それを拡大してOECD全体で検討しようということで、四月に調印の運びになったわけでございます。  いきさつはそういうことでございますが、大事なことは内容でございまして、確かに、当初のアメリカ考え方には、産油国と対決するというふうにとられてもしようがないような面があったように存じますけれども、この作業を通じまして一貫してそれも排除したわけでございます。幾つかの例ございますが、たとえばこの基金の名前を団結基金と言おう、産油国に対して消費国が団結するというねらいで団結基金というふうにしようと言ったんでございますが、それは私どもで反対して、ごらんのように金融支援基金というふうに変えたわけでございます。実体におきましても、当初の対決色が全くなくなっておりまして、石油政策とのリンクもなくなっておるわけでございます。  それから次に、南北問題が大事じゃないか、これはまさに御指摘のとおりでございます。これは、先般のジャマイカにおきますIMFの暫定委員会におきまして、開発途上国に対しましてはIMFの融資枠を通常の四五%増にするとか、あるいはIMFの持っております金を一部売って、その差益で信託基金をつくって開発途上国のために使うとかいうふうな、幾つかの取り決めがあったわけでございますが、それとあわせてまた、IMFは今回増資を進めておりまして、資金量がふえますとそれだけ開発途上国の方にたくさんの資金が回るわけでございます。ところが、今回の石油の大幅値上げによりまして生じた国際収支の不均衡は非常に大きな金額でございまして、たとえば七四年だけで見ますと、OPECに六百四十億ドルの経常収支の黒字がたまりまして、それに見合う分をOECDあるいは非産油開発途上国等が負担をするということになるわけでございまして、開発途上国に対しましてはIMF等におきましていろんな手当てをしておりますが、先進国の分までとても十分にファイナンスをする余裕がないわけでございます。他方、先進国の方は、それぞれの信用力によって市場から資金を調達する力もあるわけでございますので、先進国の方は相互に保証し合う、助け合うということで市場からその資金を調達しようということで今度の基金ができたわけでございます。  これを急ぎます理由は、御案内のように、いま国際収支の状況は非常に不均衝でございますし、世界景気も、回復の緒にはつきましたけれども、まだ十分にはいっておりません。先進国も困っておりますが、開発途上国も困っておるわけでございまして、OECDの加盟国が国際収支の困難に負けずに、貿易制限とか為替切り下げ競争とか、そういうことをしないで安定成長に戻るということは、先進国だけではなくて、開発途上国のためにも非常になるということで非常にこれを急いでおるわけでございます。  最後に、手続的なことでございますが、なるほど日本のシェアが一一・七%でございまして、九〇%になりませんと自動的には発効しないわけでございます。いままでの各国の手続の進捗状況でございますが、先社御指摘のように、手続の終了いたしましたのは二十四カ国のうち十三カ国でございますが、五月中に手続を終わろう、それからまた、ほかの国の出方を見て終えようという国も相当ございまして、私どもといたしましては、やはりこれは期日までにでき上がるというふうな見通しを聞いておるわけでございます。仮に日本が手続がおくれまして、十五カ国六〇%のシェアを持っている国が集まって全会一致でこれをつくろうということになりましても、六〇%ということは、アメリカ、ドイツ、日本のうちのどこかが入っておりませんと数字的にはそうなりませんが、たとえば、アメリカ日本がおくれてドイツだけが六〇%に入ったという場合におきましても、ドイツは、いままでの話し合いを通じて聞いておりましても、アメリカとか日本が入らないと自分だけがスキームの中で資金を貸す側に立つのはいやだというふうなことを言っておりますので、やはり日本が入りませんと全体ができないというふうな事情でございます。
  34. 竹田四郎

    竹田四郎君 もう時間ですから、あとまだ質問があるんですが、残念ですができませんので、一言だけ私要望しておきたいと思うんです。  石油ショックにしたって、これは言うなれば先進国の国際収支に対する節度の問題なんです。これは日本だってアメリカについて何回か節度を保てということを言っているわけですよ。問題は、いまおっしゃられるように、国際収支の非常に危険な国というのはむしろ開発途上国なんです。協定に参加する国じゃなくて、そこから材料を買う、そういう発展途上国の国際収支の危機というものは、私はこれは何か考えなくちゃいかんと思うんです。基金に加盟する国々は、むしろみずから経済運営の節度をぴしっとしなくちゃならぬ国なんです。また、それだけのことのできる国なんですよ。私は、イタリーにしてもイギリスにしても、もっと節度を持たなくちゃいかぬと思うんです。そういう国が乱れてこの資金を使うような事態というのを引き起こすこと自体が、私は先進国の役割りを果たしていないと思うんです。そういう意味で、私は、本来はOECDの支援基金というのは、考えてみればこんなものつくるべきじゃないと思うんです。しかし、衆議院の方で通しましたから残念ながら賛成せざるを得ませんけれども、そういう点で、もう少し私は所属する国々の節度を要求すべきだと思うんですよ。そういう態度政府がやっぱりとっていただくことを私は強く要望したいと思うんです。
  35. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私は、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案、この件に対しての質疑でございますから、簡単にやります。  現在、世界の動きがこれだけ激しい今日、わが国の外交もスピーディーに、しかも的確に行われなければならないことは当然です。外務大臣を初め外務省の皆さんは、もちろん十分よく認識されて努力されていることと思いますが、この機会に幾つかの点をお尋ねします。  今回のロッキード事件を解明するために、アメリカ時間で三月二十三日、日米法務当局の取り決めが交わされましたが、それを受けて日本時間三月二十四日夕方、外務省の事務当局の首脳は、ここに名前を出してもいいんですけれども、いろいろと摩擦があるから名前は出しませんけれども、記者懇談会の席において、これで外務省の仕事は終わったと発言したことが伝えられています。もし、これが事実だとしたらとんでもないことではありませんか。私は、外務省首脳の認識のなさに腹の底から激しい怒りを覚えます。外務大臣、あなたの部下の重大発言です。これは冗談じゃ済まないと思います。ロッキード事件解明のスタート、これが初めてスタートを切ったときじゃないですか。にもかかわらず、外務省のもうトップのトップがそういう発言をなさるということは、だから外務省がたるんでいる。私、きょうこれから徹底的に外務省に質問しますけれども、一体真相はどうなのか、はっきり言ってください。
  36. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう、御引用になりましたとおりの表現を用いた者があったかどうかは定かでありませんけれども、それはこういう心理を私は申したのであると思います。  すなわち、あの段階まで外務省が日米間のこの問題についてのチャンネルに、もっぱらのチャンネルになってきたわけでございますけれども、だんだん事態が進んでまいりますと、いわゆる調査なり捜査なりの機密に関する事項が出てまいりました。ところが、われわれ外務省に勤めております者は、いわゆる法執行官吏でございませんのでそういう機密の扱い方あるいは扱う権限というものを正確に申しますと持っておらないわけでございます。外務省は、従来外国とのやりとりにつきまして、外交上の理由で機密にしなければならないと考え、また、世間にそれで御了承願っておるケースはたくさんございますけれども、犯罪捜査上の理由で機密にしなければならないという考え方は、外務省自身の考え方になじみませんし、外務省設置法そのものもそういうことを含んでおらないわけでございますので、したがいまして、あの段階までそういう調査、捜査の機密に関する事項を勢い従来からの経緯上外務省が扱わざるを得なかった。そのことを、今度取り決めができますことによって本来の法捜査、法執行機関である当局に移すことができた、こういう意味のことは私ども一様に感じました。従来、つまり、かなりなれない、しかも、どちらかといえば法執行当局の仕事になじむであろうような仕事をやってまいったわれわれとして、ともかく、それを本来の当局に移すことができたという感じは一様に持ちましたので、そういう発言があったとしましても、それ以外の、いわば、外務省の綱紀の弛緩を意味するような意味合いの発言ではなかったと。これは私、当時の雰囲気から申し上げられると思います。
  37. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 いわば、大臣は、部下のことですからかばっているというふうな印象しか私は受けません。  これは委員長お願いします。調査をして、この委員会の席においてやはり本人から確認してください。そう思いますじゃなくて、記者の人たちも皆さん聞いているんで、懇談会でもって言ったということをちゃんと私とっているんですから、これは大臣、やっぱり大変なことですよ。大臣、そういう方の発言が、ましてそのときは、これから特使か何か出るか出たか、前後にそういうことを言われたんじゃ困りますから、どうか、大臣、ひとつ調べて、この席でもって、この次の外務委員会において、御本人連れてきても構いませんけれども、少し軽率過ぎると、私はそう思います。委員長お願いします。
  38. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまの件、糸山発言を十分取り上げてよく調査してください。
  39. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ロッキード事件といえば、二月四日にチャーチ委員会でコーチャン証言があったとき、ワシントンのわが駐米大使館には日本の大使は不在でした。つまり、大使のいない日本大使館であったわけです。私の調査によると、今回のロッキード事件の情報は、昨年の暮れには関係商社がすでにキャッチしていたと私は聞いております。当然、駐米大使館を通じて外務省もキャッチしていなければならない重大ニュースであったはずです。ところが、肝心のときに駐米大使館には大使がいなかったのです。大臣は、ちょうど大使の交代時期にぶつかったと、恐らくそういうふうに釈明されると思いますが、そうしたときこそ特派大使を急遽出発させるくらいの対応がなぜできないのか。外務省首脳の発言問題といい、また、この問題に対する取り組みといい、私は声を大にして外務省のふまじめさ、のろまさをしかりつけます。外務大臣、御答弁お願いします。
  40. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 二月四日にチャーチ委員会における公聴会があるという事実は、実は在米日本大使館は事前に承知をいたしておりました。これは秘密の通知を受けたというわけではありませんで、十分注意しておりますと議会の議事の日程などでわかるわけでございます。したがいまして、この証言のあらましは直ちに本省に報告をいたしてまいりました。これは別に誇らしげに申すわけではございませんけれども、一般の報道機関は必ずしも、ルーチンの証言でございますから、そう着目しなくても不思議はないと言えば言えるので、出先はしかし、このことを注意しておりまして、すぐに報告をいたしてまいっております。したがいまして、当時確かに大使はおりませんでしたけれども、出先のこの問題についての体制は決しておろそかにはなっていなかったというふうに考えております。  なお、一般的に外務省の執務体制等についての弛緩についての御批判は、これは私ども十分反省をいたさなければならないと思いますが、本件につきましてはそのようなことはなかったように考えております。
  41. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 そうなりますと、外務大臣は今回のロッキード事件をめぐるワシントンの日本大使館の情報収集、情報分析などの外交活動についてどのように評価されているのか、恐らく満足なさっているんじゃないですか、いまの答弁だと。私は満足し得ないと思いますけれども、大臣、ずばり。
  42. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは何分にも前例のない、しかも先ほど申し上げましたように、途中の段階からいわゆる捜査当局というものしか知り得ない段階に入ってくる、この過去の三月余りの経緯を考えまして、十分とは申し上げませんけれども、与えられた環境のもとでベストを尽くしてまいったというふうに私は考えております。
  43. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ロッキード事件解明のための性別調査委員会が設けられたことでもありますし、私きょうこの事件に関する質問は余り触れたくないんですが、在外公館の外交使命という観点から触れざるを得ません。ずばり外務大臣にお尋ねします。  大臣御自身がロッキード事件の第一報をキャッチされたのはいつですか。また、どなたから報告されましたか。簡単で結構です。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今回のように発展をいたします最初の端緒は、したがいまして、二月四日の公聴会が行われた、公聴会に実は出先のワシントン大使館関係の者を傍聴させておりましたので、その手書きが直ちに本省に報告をされてまいりまして、そのとき知ったわけでございます。
  45. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 そうなりますと、私の調査でもちろん出ていますし、また、一部のけさの朝刊においても、一部のマスコミにおいても、商社も関係者も外務大臣よりも早く情報をキャッチしていたことになりますが、この問題は大変な問題ですし、もしそうだとしたらこれは大変な問題です。私は確信あるんです。しかし、これは捜査にも影響があるといけませんし、後日私はロッキード特別委員会に機会を持って徹底的に明らかにしていきたいと思います。ただ私は、アメリカの上院外交委員会国籍企業委員会、いわゆるチャーチ委員会は単にロッキード問題だけではなく、アメリカの多国籍企業全体の実態について早くから取り組んでいたと認識しています。その上、ロッキード問題に関しては議会で取り上げるまでにいわゆる事前調査を徹底的に行い、多くの資料、データを整えて、コーチャン氏など喚問、追及になったという経過です。この間、そのようなチャーチ委員会の活動について、外務大臣日本の外務当局、当然的確な情報をキャッチしていなければならない問題と私は考えています。この点、アメリカ局長外務大臣、どうお考えになっておりますか。
  46. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 米国の上院外交委員会の多国籍企業委員会がこの多国籍企業の問題を審議していたことはわれわれも承知しております。具体的には、昨年の五月から九月にかけまして七回にわたって公聴会を聞いております。それ以外にも秘密会を開いております。その際、ガルフ石油、ノースロップ、エクソン、モービル石油及びロッキードの各社に関する審議を行っておったわけであります。ロッキードに関しましては、昨年の九月十二日の公聴会で審議が行われました。ただ、その際にも若干の新聞報道がございましたので、われわれも注意いたしましたが、それはインドネシア、イラン、サウジアラビア及びフィリピンに関する審議でございまして、日本に関しましては何ら言及がなかったわけであります。したがいまして、その後、日本の問題が出てくるかもしれないということは、われわれとしても注意しておったわけであります。  他方、それと相前後しましてというか、それに先立ちまして、八月二十五日にプロクシマイヤー上院議員を委員長とします上院の銀行委員会の公聴会が開かれました。この際には、ロッキード社に対して米国連邦政府が保証した融資に関連していろいろ論議が交されたわけでありますが、その際にロッキード社のホートン会長等は、一九七〇年から七五年の六月の間に支払われたコミッションの一五%に当たる約二千二百万ドルが外国政府関係者に渡されたということは一般的には申したわけであります。ただ、具体的な国については一切申しませんでした。その際、プロクシマイヤー委員長は、ロッキードがトライスターを売った先の国別について一々質問したわけでありますが、いずれについてもホートン会長は何ら具体的なことは申さなかったし、また、それで銀行委員会の公聴会は終わっておったわけであります。われわれとしましては、その銀行委員会の公聴会の記録はその後取り寄せまして、当時、国会の一部の委員からの御要望もありましたので、たしか十月中旬ぐらいにその公聴会の記録を入手しまして、関係部分の訳文もつくって、国会関係委員会には御提出申し上げた次第でございます。  このようにして、われわれとしては、このアメリカの上院におきますロッキード問題をめぐる審議についてはフォローしておったわけでありますが、その九月十二日の公聴会以降は全然情報は実はなかったわけであります。ただ、先ほど大臣も申されましたように、二月四日に公聴会が開かれるということをキャッチしましたので、あるいは日本の問題も言及されるかもしれないというので、大使館の者をして傍聴せしめたというわけでございます。われわれとしては、本問題に関しては力の及ぶ限りにおいて十分フォローしておったつもりでございます。
  47. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 いまの局長の御答弁立場もあるでしょうし、私はこれ以上しつこく追及しませんけれども、私は日本大使館の中からも聞いていますけれども、もう少し対策があったんじゃないか、もっと早くこういうものは、別に何ももみ消すとか何とか、そういうことじゃなくて、こんなに事が大きくなってしまって、あわてふためくようなことでは非常に困る。おかげさまで国会もこれだけ長期間ストップしてしまったということも、もう少しアメリカ局長としても責任感じていただきたい。  続けます。  外交とは、一国の未来の命運を決定づけるもの、それが外交であり、きわめて重要な国家の行動であります。よく局長聞いてください。十年先、二十年先の国家の命運、つまり言葉をかえて言えば、国の未来が平和で安全でそして繁栄できる進路をつくること、それが外交であると私は考えます。在外公館はその外交を推進させるための最も重要なアンテナと言えます。ずばり一言で言えば、在外公館の外交活動に国の未来の命運がかかっていると言っても決してオーバーではないと私は考えています。激変する国際情勢をいち早く的確にキャッチするため、日夜あらゆる努力を続けることが本来の使命であると私は認識をしております。外務大臣、当然だと思いますが、いかがですか。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まことにそのように考えております。
  49. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私は、現在の在外公館の外交活動について、残念ですが満足しておりません。例を挙げてもいいんです。きょうはまあ余りきついことも与党から言ってもいけませんので適当にしておきますけれども、たとえばアルコール中毒患者、アル中の人間か大使をやっていたり——名前も出ている。あるいは特定商社の代弁者、もう商社の手先ですよ。現在どこかの大使をやっているという名前も出ているけれども、こういうアル中の大使とか、大体商社の手先になるような大使を置いておくなんということは、私は信じられません。こうした許されない話を聞くと、一体やる気があるのかないかという激しい怒りをぼくは感じるんです。私は議員になる前は実業界で生きてきました。会社経営と在外公館とを対照させることは適当ではないとしても、会社の経営においては、自分の経験からして、経費ばかりかさんで業績が伸びなければ会社はたちまち倒産してしまいます。私はやる気のない社員はどんどん入れかえて、少数精鋭主義でやってきました。外交の重要アンテナである在外公館ががんばっていなければ、国の将来、国の未来は、どうなりますか。私は在外公館の外交活動に常に百点満点を要求します。あの石油危機、オイルショックをもたらした第四次中東戦争について的確な情報をキャッチしていなかったのではありませんか。あるいは、南ベトナムのグエン・バン・チュー政権の崩壊をめぐる情報はきわめて甘かったんじゃないでしょうか。この二件はどのように処理されていたんですか。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 在外におります者、必ずしも完全な人物と申しませんことは認めなければなりませんので、十分に注意をしてもらわなければならないとかねがね思っておりますが、ただ、その中で特定商社の手先の者が大使におるというようなことはあってはならないと思いますので、私どものために、後刻差し支えなければひとつ糸山委員の御在じの事実をお話しくださいますことを、できましたらお願いをいたします。これは在外をよくするためと考えまして申し上げることでございます。  次に、第四次の中東戦争の勃発について予知をしていなかったではないかということは、残念ながらそのとおりでございます。しかし、これは弁解を申すわけではございませんが、イスラエル自身が十分に対処をしていなかったというふうにすら考えられますので、第三者が知り得る程度というものは客観的にわずかであったのではないか、可能性はわずかであったのではないかと考えられます。  それから、いわゆるサイゴン政権の問題につきましては、当時サイゴンに在勤しておりましたわが国の大使は、サイゴン政権というものの将来についてかなり悲観的な見方を終始本省に送ってまいってきておりまして、その辺の見方は米国の見解と著しく異なっておりました。私どもそのいずれが正しいかを判断を ることができなかったわけでございましたが、この点については、結果としてはわが方のサイゴンにおける大使館の判断の方が事実に近かった。ただ、それにいたしましても、あのように急速な崩壊があるということは予測をしておりませんでした。
  51. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ただいまの大臣の答弁に関しまして、人事の件に関しては、官房長に後ほど私のところへ来ていただければ、実名を挙げてゆっくり指導して差し上げます。それはいいです。  そしていま、いろいろ外務省としても情報が誤っていたということを大臣がお認めになりましたので、やはりそれだけに大使とかあるいは在外公館にいる方は信頼関係、外務省本庁との信頼関係というのはなくちゃいけない、彼が言うことならば本当だろうというぐらいのやっぱり信頼関係、その人がアルコール中毒患者では困るということで、十分注意をしていただきたいと思います。  在外公館に関する改正法律案についてきょうは審議をしているわけですが、私は国益にプラスになることであれば、在外公館の数をふやし、勤務する外交官の給与をアップすることも賛成です。むしろ、必要ならば積極的に改正を促進します。しかし、貴重な国民の税金を使うのですから、むだになってはいけません。私は在外公館の日常の外交活動の中に多くのむだがあるというデータを持っています。ですからこの質問もしているわけです。  たとえば本省と在外公館の報償費について、あるいはプライベートで海外へ出かけたときの国会議員に対する便宜供与について多くのデータを持っております。便宜供与については、プライベートな海外旅行であるのにもかかわらず、多くの要求があれば、要求する国会議員の方にも在外公館に対する認識のなさが指摘されることになります。余談ですが、これは与党も野党もあるということを私はつかんでいる。外務省の人たちから多数の苦情も私は受けています。個人の買物、あるいは奥さんの市内見物、あるいは子供たちの便宜供与まで、私がここで申し上げたいことは、在外公館は本来の使命達成のために大いにがんばってもらいたい。そのために援助や応援をすることがある、それならば私は全力でもってバックアップしようということなんです。もっときわめてずばりと申し上げれば、国会議員のプライベート海外旅行に関しての便宜供与などは直ちにやめるべきです。外務大臣は実情についてどのように認識され、どのように理解されているか。むだ遣いの問題と国会議員に対する便宜供与問題については外務大臣の明快なお考えを伺い、そして、この場でもって私に約束していただきたいのは、それは今度のロッキードとかあるいは国政調査権、あらゆることでもって行く、公用の場合はぼくは構いません。それは大いに大使館に連絡するなりしていただきたい。私が仮にどこへ行っても、ずいぶんデータもいただきますけれども、持ってくるデータは三年前、四年前のデータばかりです。新しいデータなんか一つもつくってはいない。なぜだというと、まあパリならパリへこの正月に百人以上の議員の先生方がお見えになりまして、送り迎えだけでもっていっぱいでした。そんなような在外公館ならばぼくはおかしいと思う。正月とか休会中に遊びに行く、そういう国会議員の便宜供与なんというのを一切やめるべきじゃないですか。大臣、決断、ここでもってはっきりやめましょうよ。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国会議員がプライベートに外国にお出かけになるという問題でございますけれども、国会議員の方々の中にもいろいろな意味で外国にいらっしゃって、お世話をやく人たち、友人等々をお持ちの方もおいでになりますけれども、必ずしもそういう方々ばかりとは限りません。いわんや非常に大都会でございますとそういうことも自然おありでございましょうけれども、そうでないところになりますと、文字どおり在外の大使館なりあるいは総領事館なりがお世話をしなければ本当にお動きになれないという場合はこれはしばしばございます。それから国会議員のプライベートの旅行とおっしゃいますけれども、それは観念的にはそういうことが申せますが、わが国の国会議員が外国にいらっしゃってその事情を見てこられる、知ってこられるということは、仮にプライベートな目的であったとしても、それは議員の今後の国政を審査される、調査される上に必ず何がしかの影響を与えるのでございますから、私はそういう意味で全くプライベートで公の性格でないというようなことを言い切れるケースというものは非常に少ないのではないかというふうに考えております。したがいまして、国会議員が外国にいらっしゃる場合に何か便宜を供与してほしいとおっしゃれば、私どもはできるだけのことはいたすべきものだというふうに考えております。もとより過当なというようなことは私どもにできもしませんし、いたしもしませんが、できるだけの御便宜を計らうのが私どもの仕事の一部であるというふうに考えています。
  53. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ちょっと時間が経過しました。
  54. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 最後にします。  たくさん質問がある。私の時計だと二十七分なんですけどね、まだ。ちゃんとタイムウォッチを持っているんですけれども。  いまの答弁伺いまして、やっぱり大臣は国会議員でもありますし、まあ守っているという感じですけれども、どうか、車で送り迎えするのも結構ですけれども、車の実費をいただくとか、あるいは家族がどこか市内見学するのに案内するなんていうばかげたことは、もうこれはやめさすともっとはっきり大臣言ってくれなければ、私は今度のこういう問題もまだまだ私はたくさん言いたい。  最後に一言だけ、具体的な外務省の外交官の教育のあり方、あるいは改正上一つだけ、もう一つ要求してやめます。  現行の外交官採用試験のうち、上級外交官試験に必要な外国語は、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、ロシア語の六カ国語の中からどれか一つ選択することになっております。しかし、この制度は世界の現状に照らしてまことにおかしいことではないかと私は考えます。なぜならば、発展途上国語が一つも入っていないからです。南北問題がこれほど世界の流れの中で議論されている今日、しかも対途上国外交の一層の推進を力説しているわが国において、これは全く不可思議な現象ではありませんか。これで南北問題に対応できるのでしょうか。その一方では、中級試験の中には朝鮮語やマレー語、アラビア語などがあります。ドイツ語の場合は、現在では東西両ドイツとオーストリア、スイスの各国を除いてはほとんど通用しないといっていいぐらいの実情です。ドイツ語が入っているくらいならば、同じように複数の国で使われている言葉、たとえばマレー語とかアラビア語とか、そういう言葉を上級試験の外国語の中に加えるべきではありませんか。外務大臣、私はそう考えているんですが、どうか、短い三十分の時間でもってこれしか言えませんけれども、やっぱり上級試験は六ヵ国じゃなくて、その中に、これから大いに日本の国がめんどうを見、あるいは協力を求める国の言葉も入れてくれなければ、これからの外交あるいは在外公館にいく人たちは非常に困るんじゃないかと思いますので、これはあえて私のお願いをしまして質問を終わらしていただきます。
  55. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 現在上級試験を受験いたします場合の外国語としては、御指摘がありました六カ国語が指定されております。これは、現在これらの六カ国語が非常に広く国際的に一般外交用語として使われているということのほかに、わが国におきます教育機関における外国語の教育というものも念頭に置いて指定されているわけでございます。しかしながら、実際に外交上の用語としてこれらの言葉に限らず、ほかのいろいろな国の言葉も必要でございます。このために、私どもは、外交上級試験に合格して採用いたしました者に対しましては、この六カ国語に限らず、さらに広い範囲の外国語の中から研修語を指定し、修得させております。たとえば、最近はアラビア語の必要性が非常に増大しておりますので、毎年合格します者の中から一、二名をアラビア語を指定して、この専門の語学の研修をいたさせております。また、中級あるいは語学研修員試験におきましては十八カ国語が指定されており、その中には御指摘のありました朝鮮語も入っているわけでございます。  しかしながら、実際の実情を申し上げますと、例年これらの試験を受けて合格してまいります者は、英、仏、独、スペイン、中国語等の、先ほど申し上げましたような外国語にほとんど集中して、それらの試験を選択して受験した者に限られているというのが現状でございます。しかし、入省後にやはりいろいろな特殊の外国語を研修させる必要がございますので、できる限り現在外交上要請されております外国語の修得に遺憾のないように努力しております。また、今後とも努力してまいりたいと存じております。
  56. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 大臣の答弁いただきます。いまのようなことでぐじゅぐじゅ言っているのじゃなくて、はっきり大臣、こういう言葉も、これから発展途上国語も使っていきたいと思いますとか、前向きですとか、何か答えてくださいよ、大臣。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最小限知っていなければならない語学と、それから次にやはり心得ていなければならない語学というものをあわせまして、受験の条件とその後の研修のやり方、総合的に前向きに考えてまいりたいと思います。
  58. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 わかりました。それでいいんです。
  59. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まず最初に、在外公館のこの法律案について質問いたしますが、今回の改正によりまして、戦争等による特別事態の際の外務公務員の在勤基本手当の額の設定、こういうことになっておりますが、この特別事態であるという認定は外務大臣がするようになっておるわけでありますが、大体どことどこの国がそれに該当するのか。
  60. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 現時点におきまして、在外公館の中でこの法律が制定されました場合にどこが指定されるかという御質問かと存じますが、現在の時点において考えますると、おそらく私どもが考えておりますのは在レバノン大使館がこれに該当するということになると思っております。
  61. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、今年度の外務省の予算のわれわれ説明を受けた中では、五本の柱の一つに海外子女教育の充実強化、そういうことが挙げられております。そうして今年度は海外において何カ所かの、ロンドン、ミラノ、北京、ブラジルのベレーンですかの四ヵ所に学校をつくる、このように説明を受けておるわけでありますが、この四校の開設はもう終わったのかどうか。
  62. 谷田正躬

    説明員(谷田正躬君) 御指摘のように、全日制日本人学校の新設につきましては、本年度北京、ロンドン、ミラノ、ベレーンという四カ所に認められておりますが、実際に設置が終わりましたのは、北京がつい最近開校いたしました。ロンドン、ミラノ、ベレーンにつきましては現在準備中でございます。
  63. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 四月十六日に海外子女教育推進研究協議会が文部省に報告を出しておるわけでありますが、それによりますと、義務教育年齢該当者、すなわち海外における義務教育年齢該当者は、四十六年が八千六百六十二人、五十年は一万六千三百十六人、このようにわずか四年の間に非常に倍増しておるわけでありますが、それに対する海外子女教育のための教員の定員も五十年が三百六十人、五十一年が四百四十八人と、このようにふえていると聞いておるわけでありますが、この定員は十分なのかどうか、また、この予算定員というのはどういう基準で決めておるのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  64. 谷田正躬

    説明員(谷田正躬君) ただいま御指摘のように、五十年度におきまして海外で義務教育に相当する該当者子弟は一万六千三百十六人ございます。そのうち約五千五百人が現地の学校で教育を受けながら、週一、二度程度の日本語の補習授業に通学してございます。その補習授業校は、いま全世界で四十七校設置されてございます。残りの四千六百人はおおむね現地の学校のみにいま依存しているわけでございますが、これらの者に対しましては、海外の子女教育振興財団というのがございまして、ここで通信教育を実施いたしております。政府といたしましても、今後は現地の要求を踏まえながら、必要に応じ日本人学校の設立、補習授業に対する援助の増大、それからいま申しました通信教育の一層の充実を図っていくという方針でございます。  次の教員の問題でございますが、現在は、予算で予定しております教員派遣につきましては、これは現地からの要望を取り入れまして、これに応じて各都道府県から教員を募集いたしまして、もちろんこれは予算の限度がございますけれども、できる限り海外の日本人学校、補習学校等の要望にこたえて派遣教員の割り当てをするという仕組みになっております。本年度、五十一年度には四百四十八名を予定しております。
  65. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この推進研究協議会の報告によりますと、五十年度の場合は予算定員に対して八名不足しておる、五十一年度は二十四名不足をしている、こういうことを言っておるわけでありますが、五十一年度はその後どうなのか。いまのお話では、予算定員というのは現地の要望によって決められるようでありますが、二十四名不足では現地の要望にこたえられないと思うんですが、どういう理由で不足をするのか、その点はどうでしょうか。
  66. 谷田正躬

    説明員(谷田正躬君) 現在、海外の日本人学校に対する教員の派遣は、各都道府県の教員で研修出張というような名目でもって、一時的に従来の職務を離れる者に対して、外務省の方で、外務大臣がそれらの教員に対して海外の日本人学校の教育指導に従事するということを委嘱する形をとってきておるわけでございます。この場合、教員の俸給、いわゆる本俸と申しますのは都道府県が負担しておりまして、海外へ出た場合の旅費それから在勤手当、いわゆる在外俸と申しますか、これは外務省が負担しておるという形になっておるわけでございます。それで、最近は海外の日本人学校の数、それから規模が非常に大幅にふえてまいりまして、その結果、こういった学校で必要とされる教員の数が急激に増加いたしまして、他面、最近の都道府県の財政上の事情というものがございまして、これまでどおりの派遣方式で十分な数の教員を派遣することが困難になってきておるというのが実情でございます。御指摘のように、五十一年に四百四十八名の予算定員で二十四名不足という事態が見込まれておるわけでございます。  これに対する対策といたしましては、派遣制度の、従来の都道府県と国による分担方式という方式について改善を加える必要があるだろうということで、いわゆる都道府県の財政状況が非常にいま苦しいという事態を踏まえまして、関係省庁、文部省との間で協議してこの派遣制度の改善ということを検討しておる段階でございます。
  67. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 外務大臣にお尋ねしますが、やはり海外における子女の教育という問題は、これはまあ商社の人の子女もいるでしょうし、外交官の子女もいると思うんですし、個人的なビジネスで行ってる人もあるわけですけれども、しかし、この人たちの子女に対する教育をどうするか、あるいはまた、派遣をされる先生方がそれぞれの地域社会においてどういう行動をとっていくかということで、日本の外交の上から考えても非常に大事なことじゃないかと思うんですね。そういう意味で、まま現実には不十分な定員でありながらそれも不足している、こういう現状でございますので、これは早急に少なくともその定員は満たすように外務省としても努力をしてもらいたい。それから、都道府県がお金を出し、国が旅費と謝金だけを出している、こういうシステムというのは本来からいえば余りよろしくないんじゃないか。できれば国が一切の責任を持ってやるべきであって、都道府県に任せておくからこういうようなことになるんじゃないか、そういう点でこれは抜本的に検討すべきではないかと思うんですが、その二点についてお尋ねしたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私もこの海外子女教育のための財団ができますときに、ある理由から多少かかわり合ったことがございまして、この問題に関心を実は非常に持っております。したがいまして、この制度を充実することがきわめて大事だというふうに考えまして、及ばずながら、はからずも外務省でこの仕事をするようになりまして、関心を持って努力をいたしております。  次に、その教員の問題でございますが、確かにここにちょっといろいろ問題があるように存じます。つまり、都道府県によっては、本俸は持つというところもありますし、いや持たぬというところもある。持たぬというところの方が都道府県の数としては多い。ただ、まあ派遣しております帰属先としては東京都等の周辺が多うございますからなんでございましょうが、都道府県の数としては持たないというのがおそらく多いんではないかと思います。この方々が地方公務員でございますから、それはそれでいいというようなものの、実は帰ったときの、もう一度復職できるというようなことについてもいまの状態では不安があるということである。地方公務員が実際やっておりますことは、今度海外へ行けばその地方のために子女教育をしておるんではなくて、いわば国家公務員のような仕事をしておるわけでございますので、どうも筋道から言うと塩出委員の言われるような問題が確かに私はあると思います。これは各省にまたがる問題ですので、すぐに解決をいたしますと申し上げることができませんけれども、どうもいまの制度そのものに十分でないところがあるのは私おっしゃるとおりだと思いますので、その点は関係各省と話して改善を私はいたしたいと実は思っておる点でございます。
  69. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この点は、もう時間がございませんので、また後日に譲りますが、その他、子供たち日本へ帰ってきた後の教育の問題、そういうような問題もたくさん提起されておりますので、外務省また文部省当局におかれましては、海外にいる子供たちが、また、その教育に当たる先生方が十分安心して教育に励むことのできるように、こういう対策をさらに進めていただきたい、このことを要望いたします。この問題については、さらに次の機会にお尋ねしたいと思います。  次に米州開発銀行の問題でございますが、これはいま竹田委員の方からいろいろ質問ございましたので簡単にお尋ねいたしたいと思いますが、今後、この米州開発銀行の経営あるいは方針等にわが国の意見はどのように反映されるのか。理事とかその他ポストがあるようですけれども、そういうものに参加できるのかどうか、その点はどうなんでしょうか。
  70. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) お答え申します。  今後、日本加盟が実現いたしますと、域外加盟国全体で二名の理事を、域外加盟国の間の相互による投票で選出できることになっております。しかも、日本の場合は域外出資及び拠出の金額におきまして最大となっておりますので、ぜひ日本側から理事を出したいということで、域外加盟国の間で、現在メキシコで話し合いを進めているところでございます。
  71. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほどからいろいろ論議がありましたように、わが国も出資する以上は、この米州開発銀行というものが本当に中南米諸国から感謝されるような、そういうあり方でなければならない。そうでないと意味がないわけでありまして、そういう点につきましては、理事になればその理事を通すなり、いろいろな面でそういう点には十分配慮をしてやっていただきたい。このことは異存はないですね。
  72. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) 仰せのとおりでございます。  日本側の出資及び拠出は、特に拠出の方でございますが、特別業務基金の方にも拠出する、つまり地域間資本と同額の金額を特別業務基金に出すということによりまして、域内発展途上国経済開発により多く寄与し得るのではないかと期待しております。
  73. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 現在までの米州開発銀行の貸付状況とか返済状況、そういう経営状態と申しますか、そういうものは問題ないのかどうか。
  74. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) 一九七五年末、昨年末現在の融資承諾累計は、通常資本の方で二百九十件、三十九億二千万ドル、それから特別基金と申しまして、より寛大な条件で出す基金からは四百四十六件、四十・八億ドル、合計いたしまして八十億ドルの融資をすでに行っておるわけでございまして、主要借入国はブラジルメキシコアルゼンチンというふうになっております。それから、貸し付けの主要分野といたしましては、通常資本の方は電力、鉱工業、運輸通信という順序になっておりますが、特別基金の方は、農林漁業、運輸、通信、衛生、電力といった、いわゆる農業及びインフラ部門に融資をされております。  返済の状況につきましては、一九六六年にブラジルアルゼンチンの民間企業貸し付けた場合に若干問題がございましたけれども、その後、処理がつきまして、最終的にこげつきになったのはアルゼンチンに対する百八十万ドルということになりまして、八十何億ドルの融資のうち、まあほとんどすべてが、ほとんど一〇〇%支障なく貸し付けられ、返済を受けているという状況でございます。
  75. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほどからの話では、いままでは二国間でいろいろ協力をしてきたのに加えて、今回、米州開発銀行を通してそういう地域単位に協力をしていく、こういうお話でございますが、これはいままでの二国間による援助をやめるというわけではなしに、そういうものはいままでどおり続けて、さらにこの米州開発銀行を通して協力をしていく、このように判断をしていいのかどうか。
  76. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) 仰せのとおりでございます。
  77. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこでこれ、ちょっと大蔵省にお尋ねしますが、この米州開発銀行、またもう一つ、OECDの金融支援協定も通じてわれわれ思うことは、非常に両案件につきましても大蔵省が積極的で、われわれ、大蔵省というのは金を出すのには非常に渋い、まあ後の方は出さないにしても、出す場合もあるわけです。いままでの、この間この委員会審議いたしましたすず協定の緩衝在庫に対する供与の三十五億円、これもなかなか大蔵省が財布が固くて出さない。また、この間木村さんは農業開発銀行に五千万ドル出すということを、ようやく、昨年の十一月に言えばいいものをわざわざいまごろ言わなくちゃならない。それぐらい非常に大蔵省は固いわけでありまして、われわれは国民の税金を一銭のむだもないように効果よく使っていこうという大蔵省の気持ちはわかるんですけれども、何かあっちの方は非常に財布のひもは固いのに、どうもアメリカがリーダーシップをとるような、また、大蔵省が主導権を持つようなところには一生懸命早くやれやれ言うけれども、外務省が主導権を持ってやるいわゆる南北問題に関する、われわれから見ればさらに重要な問題にはなかなか財布のひもが固い、そういう点においては非常に納得がいかないわけなんですけれども、これは国際金融局長の担当外の問題もあるかもしれませんけれども、大蔵大臣にかわってひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  78. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) いま塩出先生御指摘になりましたように、私ども大蔵省全体としては、大事な税金を使うわけでございますから、有効にむだなく使いたいという気持ちはだれしも持っておるわけでございます。同時にまた、国際協力というものは非常に大事であるということは外務省と同じように思っておるわけでございまして、大蔵省が言い出したからどう、外務省が言い出したからどうというような、実は私もそういう意識なくいままでやってきたつもりでございますが、今回の米州会議に参加する件といい、また、OECDの金融支援基金協定に参加する件といい、これはともに国際協調をとりながら世界経済の繁栄、また、世界経済の繁栄とともに日本にとって非常に大事だということで私ども推進しておるわけでございまして、別に外務省、大蔵省という区別なしに考えておるつもりでございます。
  79. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 われわれ日本の国は、そういうOECDの加盟国々とも協力をしていかなければならない。また、アメリカとも協調もしていかなきゃならない。それと同じように、あるいはそれ以上に、日本の将来を考えるときには、いわゆる南北問題、発展途上国に対する関係というものも改善をしていかなければならないと思うのです。そういう意味で、われわれは決して先進国あるいはアメリカとの関係を壊してまでやれというんじゃないわけですけれども、もうちょっとやはり大蔵省の姿勢としても大きな視野に立ってやってもらいたい。まあわれわれ当委員会論議した範囲での感想で、あるいは間違った意見かもしれませんけれども、今後ともそういう一次産品の問題に関する共通基金の問題とか、そういうような点にもひとつ力を入れてやっていただくように、そのことはひとつ大蔵省、大蔵大臣にはっきり帰ってよく伝えておいていただきたいと思うのです。これはまた、後日その点については機会を設けて大蔵大臣にも要望したいと思います。その点よろしいですね。
  80. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 承知いたしました。
  81. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから次に、OECD金融支援基金協定でございますが、アメリカは一番シェアが高いわけですけれども、アメリカはまだ現在は批准をしていない、五月末までには批准をするであろう、このように大蔵省からいただいた資料にあるわけですが、アメリカの批准の見通しはどうなのですか。
  82. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 最新の私どもが得ました情報によりましても、五月末までにはするというふうに聞いております。
  83. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは次に、時間がございませんのでいままで論議された点は省略いたしまして、この金融支援協定はOECDの諸国が助け合うためのものでありますが、最近のOECD諸国の国際収支はどうなっておるのか。特に、比較的小さいOECDの諸国状況はどうなっているのか。これがもしできた場合に、これの余り恩恵を受けるようになっては困るわけですけれども、そういう方面に最短距離にある国はどういうところなのか。
  84. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 昨年のOECDの経常収支の赤字は六十五億ドルと見込まれておりまして、石油の大幅な値上がりが本格的に効果を出しました第一年の一昨年の三百三十億の赤字に比べますと非常に改善しておるわけでございます。しかし、この改善の大きな部分はアメリカとドイツの黒字のせいでございまして、アメリカ、ドイツその他大きな国七カ国を除きますと、OECDのいわゆる小さな国の赤字は依然として大きいわけでございます。七五年では百二十億ドルぐらいの赤字でございまして、七四年とほぼ同額でございます。  さらに、ことしの見通しでございますが、先進国の景気が回復に向かっておりまして、OECDで全体としては赤字が再び百八十億ドルぐらいにふえるということは見込まれておりますが、その中にありまして、やはり小さな諸国の赤字は百億ドルを超すというふうなことでございます。国別にも一応の見込みはございますけれども、経済規模に比べましてその赤字の額は非常に大きいわけでございまして、ただ、具体的にどの国が一番初めに借りに来るかどうかということにつきましては、まだどの国からも借りたいという意思志示はございませんし、それから、このOECDの基金に借りに来る前に、IMFその他あらゆる金融手段を努力してから来るということになっておりますので、具体的にどの国が来そうだということも、いまの段階ではちょっと申し上げにくいのじゃないかと存じます。   〔委員長退席、理事亀井久興君着席〕
  85. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 本基金の貸付期限は二年間になっておるわけですね、返済の方は七年のようでありますが。そうすると、現在のOECD諸国の国際収支の現状から見て、二年間ということで問題はないのかどうか、その点はどうですか。
  86. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) このOECDの金融支援基金は、あくまでもいわゆる石油危機の後の国際収支の不均衡、これを乗り切るための臨時措置でございまして、これだけの大きな不均衡がいつまでも三年、五年と継続するということになりますと世界経済は混乱してしまいますので、私どもは、そういうことはあってはならない。現に、産油国の黒字も七四年の六百億ドルを超す規模から七五年は三百億ドル台になっておりますし、各方面の見込みによりましても、五年後の一九八〇年には産油国の国際収支はほぼ均衡に近づくのではないかと言われておるわけでございます。したがいまして、いまこの一番大事な時期、まあ二年間を乗り切るためにお互いに助け合おうということでございますが、もちろん、二年の終わりになりましてどうしても世界経済が依然として困難であるという場合には延長をするということも可能でございます。私どもはそういうことがないように願っているわけでございますが、万一そうなった場合には、改めて国会の方にお願いにくるということになろうかと存じます。
  87. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 OECDの諸国も大変ですけれども、一番大きな問題はいわゆる非産油の発展途上国ですね。そういう国々はダブルパンチを受けておるわけでありますが、この金融支援協定というものが成立した場合には、そういう国々に対してはどういう点で貢献するのか。
  88. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 非産油開発途上国の赤字も非常に多うございまして、これにどう取り組むかという問題は大事な問題でございますが、先般ジャマイカで開かれました会議におきまして、IMFの貸出枠を四五%ふやすとか、あるいはIMFの持っております金を一部売りましてその差益で信託基金をつくって開発途上国にソフトな条件で貸そうというふうな取り決めができておりまして、いろいろな面において非産油開発途上国資金手当てはできつつあるわけでございますが、OECDの方はこういった資金を使わなくても相互にある程度の信用力がございますので、いわば担保し合って市場から資金を調達しようということで、別途こういうような基金の設立をお願いしておるわけでございます。こういうふうに先進諸国が国際収支の心配なく経済の回復に向かって努力することができますれば、貿易制限とか為替切り下げ競争とか、そういった近隣窮乏化政策をとらないで世界経済全体を順調に持っていくということができることになりますので、先進国だけではなくて非産油開発途上国にも非常に大きな貢献になるのじゃないかと存じております。   〔理事亀井久興君退席、委員長着席〕
  89. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この金融支援基金を設立する協定の最後に、外務大臣に、この協定によって国際収支の問題に対処し得るとしても、より基本的な問題は、産油国と対決的な関係に立つことなく、いかに産油国の価格政策をリーズナブルにするように持っていくか、こういうことにあるんじゃないかと思います。これが資源貧困国であるわが国の外交に課せられた最大の責務であると思いますが、これについて外務大臣の所見をお伺いしておきます。
  90. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 七三年の十月に戦争が起こりまして、消費国が最初に集まりましたのは七四年の二月でございますが、そのときから、わが国はいま塩出委員の言われますような基本的な立場をとってまいりました。わが国に賛成する国もあり、また、アメリカのように当初かなり対決的な色彩を出した国もございまして、いろいろ経緯はありましたが、結局昨年の暮れにあのような国際経済協力会議というものが誕生いたし、今日まで消費国、産油国、非産油の発展途上国、三者でああいう四つの委員会で問題を総合的に討議しております。でございますので、まず、いまの段階で塩出委員の言われますようなところへ大勢は落ちついたということは申し上げられると思います。また、いわゆるセーフティーネットにつきましても、当初これが対決的な姿勢ではないかという危慎を産油国がかなり持ったようでございますけれども、今日の世界経済秩序の中で、このような仕組みそのものが産油国にとっていわゆる非友好的なものであるというふうには、産油国ももはや考えていないようでございまして、その間、三年近い日子の間に、かなり問題についての双方の理解が進んでまいったと見ております。わが国としては、したがいまして、塩出委員の言われましたような基本方針で今後とも進みたいと考えております。
  91. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、ハンガリーとの通商航海条約につきまして二、三お尋ねしますが、四十四年十一月における交渉のときには、ハンガリーがガット加盟国でなかったために交渉がまとまらなかった、それが今回ガットに加盟をして、それで交渉成立に至ったという、そのあたりの事情はどういうことなのか、簡単にひとつお願いします。
  92. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ハンガリーとのこの条約の交渉は、六六年に最初に口火が切られましたが、その後、双方の貿易制度その他の法制も検討する段階に入り、六九年ごろから交渉が具体化した次第でございます。ただ、そのときに実質的な問題としては、ガット優先条項についてハンガリー側が難色を示したために交渉が停滞いたしました。その後、一九七三年に至りまして、ハンガリーがガットに加盟いたしました。したがいまして、ハンガリー側における要因もなくなりました。その結果、その後の交渉が進捗いたしまして、今回妥結の運びとなった次第でございます。
  93. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ハンガリーは、国際通貨基金協定には未加盟のように聞いておるわけでありますが、外務省の資料では、一九六九年の交渉のときにはガットとともに国際通貨基金協定に入っていない、その優先条項が問題になったと聞いておるわけですが、そうしますと、IMFの方は問題なかったのかどうか、これに入っていないということは。
  94. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ハンガリーはIMFに加盟しておりません。しかし、ガットについての問題が解消した際に、同様の性質を持っているこうした多国間協定についてハンガリーとしては異議がないという立場をとり、その考えでわが方の考え方に同調し、妥結をしたものと考えております。
  95. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最近、日本からハンガリーを訪問する日本人が非常に減っておるわけです、私のもらいました資料では。それは何か理由がありますか。二、三年前は五千人ぐらい行っておったのが、半分以下に減っておるわけですが、何か理由があるのですか。たとえば一九七二年には約六千名であったのが七三年には四千百名、七四年には二千二百名、これはどういうわけですか。
  96. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 私ども存じます限り、特別の理由は見当たりません。確かに二、三年前まで非常にわが方のハンガリー訪問者もふえ続けてまいったわけでございますが、むしろその後における景気全体の動向から、わが国の海外旅行者が全体として減っておる、恐らくその一環としてハンガリーへの来訪者も減少しているものというふうに推測しております。特別の理由は見当たりません。
  97. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、最近の日本とハンガリーとの間の問題点につきましては、特に最近日本の輸出超過、出超であるということを聞いておるわけでありますが、今後こういう問題を含めて、日本政府としてハンガリーとの間に特に今後留意していくべき問題点があれば、それについて外務大臣の御見解を承って質問を終わります。
  98. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ハンガリーと日本との貿易関係はずっと一昨年までまさに伸長の一途を遂げ、数年間に十倍というような貿易量にもふえましたのですが、昨年の貿易が、特にわが方のハンガリーからの輸入が減っておる、これが貿易関係をやや停滞させている事象になっております。結局、ハンガリー側は日本の機械機材等に対する需要が非常に強い、これは今後も引き続きあると思います。ただ、ハンガリーの日本に対する輸出が伸び悩みということでございまして、これはハンガリー側の輸出品目それから輸出努力が一方にあり、他方わが方の経済活動全体、景気の動向、これが回復するにつれて、おのずとわが方のハンガリーからの輸入というのもふえていく、そうした基本的な関係があると思いますので、そういう意味では貿易関係は将来には伸びるものと思います。そういう関係を、今度の条約を御承認いただけば、単に貿易関係のみならず、商業活動あるいは経済的な協力、広い意味の経済的な協力等を含めて、両国間の貿易経済関係を長期的に安定させる基礎ができますと思いますので、将来は明るい展望がさらに開けていくものと考えております。特別にそれ以外に両国間の障害というものはないと考えております。
  99. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に外務大臣、今後の方針というか……。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま貿易状況につきまして政府委員から申し上げたのでありますが、ハンガリーとわが国とは必ずしも体制が同じではございません。しかし、今回このように通商航海条約が結ばれるようになって、また、その結果混合委員会もできるようになりました。体制というようなことは別に私どもこだわる必要はない、また、こだわらずに今後とも友好関係を増進していきたいということを基本に考えております。
  101. 立木洋

    ○立木洋君 まず、最初に、金融支援基金設立協定に関してお尋ねしたいのですが、先ほど若干大臣お触れになりましたけれども、一九七三年末、いわゆる石油ショックがありまして、いろいろ国際的にも問題になりました。日本としても、その後政府はいろいろ苦慮されたと思うんですが、つまり石油危機とその後の事態の中から、日本としては、今後特に経済外交上どういうふうな数訓をお引き出しになったのか、そして当面どういうふうな点に力点を置いてその教訓を生かしておいきになるつもりなのか、その点を最初にお伺いしたいと思います。
  102. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題は、総合的に申し上げますと、立木委員もお気づきのように、非常に広い問題を含みますけれども、さしずめ一点だけとって申し上げましても、私どもは石油の供給というものはある意味で保障されたものであるというような考え方をいたしましたし、したがって、価格もどうやら買い手市場であるということで、長年いわば楽をしてまいったわけでありますが、それがそうでないということをはっきり今度の問題で知らされた。しかも、これをカルテルと見るかどうかはともかくとして、従来いかにも踏みつけられた価格であったと産油国が考えるのはもっともである。現在の価格がいいとは申しませんけれども、いかにもいままでの価格はひどかったではないかということは理由があることである。それらの国々もこういう有限な資源にいつまでも頼っているわけにはいかない、やがて工業化をしたいと考えていることも、これももっともではないかというところまではかなりはっきり認識をいたしまして、したがって、われわれの御指摘の経済外交というものについて、いままで申してみれば、済まぬことですが、無関心で済んでおれた地域に対して、今後そういうわけにはまいらないということが一つの大きな教訓であろうと思っております。
  103. 立木洋

    ○立木洋君 一つの面をお述べになったと思うんです、産油国との関係で。しかし、日本の経済の自主的なあり方という面では、この石油ショックの問題から何もお感じになりませんでしたか。
  104. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、たとえば石油に関するメジャーということの関連でございますれば、従来買い手市場でありましたから、私どもとしては、供給者同土を上手に、言ってみれば操作することによって一番有利な条件で石油が買えるという立場であって、したがって、メジャーというものを上手にわれわれとして使うということで済むと思っておったわけでありますが、それがあのような状態でそうでなくなった。私はしかし、今後とも供給者としてのメジャーというのは、結局パーティシペーションや何かがありましても、相当な役割りを担っていくと思いますけれども、ああいう事態になって、いかにもわれわれの、自分がある程度自由にできる石油資源を持っていなかったということについてはいろいろな反省がございます。ただその場合、日本の固有の資源をアラブの国々に持っておったと、多少は持っておるわけですが、しましても、やはりパーティシペーションというものからはなかなか免れられそうもないというのが大勢であるとすれば、何とか、これはちょっと我田引水のような議論になって申しわけありませんけれども、わが国の領域内あるいは近海においてそういうものも開発すべきではないかということも考えるわけでございます。
  105. 立木洋

    ○立木洋君 なかなかいいところに大臣落としておられますけれども、石油危機が起こってからは、アメリカの石油政策というのも、その当時から見ますと、七四年十一月のキッシンジャー構想がありましたし、その後も若干の変化アメリカの石油政策も変わってきているんではないかと思いますが、現在の時点でアメリカのエネルギー政策、特に石油政策、どのような政策をとろうとしているというふうにお考えになっておられるか、その点について。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆるエネルギー独立計画というものを立てまして、これに巨額の投資をして、できるだけよそからのエネルギーに頼る率を少なくしていこうというのがアメリカの基本的な方針だと考えております。しかし、いままでのところは、恐らく短期間ではありますが、現在アメリカの石油に関する限り輸入依存率というのはむしろ上がっておって、四〇%近くになっておるのではないかと思いますが、これは御承知のように国内のいわゆる古い油、新しい油という、オールドオイルというものの価格政策にこのことはかなり関係があった、物価政策とのかね合いがあったと思うので、ある程度やむを得ないと思いますけれども、一定の時間をかけて自由化を行っていこう。そうしますと、国内の開発というものがまた行われて、そうして自給に向かって、つまり外国依存率をまた昔に向かって下げていく、こういう方向を指向していると思います。もちろんそのほかに石炭、天然ガス、それからアラスカの開発等々、多少環境問題などとも妥協しつつ進めているというのが現状ではないかと思います。
  107. 立木洋

    ○立木洋君 さっき藤岡さんは、この基金設立の協定、これはつまり石油政策とリンクしてないというふうにお話しになったと思うんですが、基本的には、表現等々、産油国に対する対決姿勢でないように緩和するために努力をされたというふうにお述べになったと思うんですね。しかし、キッシンジャー構想に見られるのは、表現上きわめてどぎつい、もう引用しませんけれども、おわかりでしょうから、いろいろありましたけれども、しかし、石油政策の中に流れている考え方というのは、やはり金融基金設立協定の中にも基本的には入っているんではないかというふうな考え方をするんですけれども、その点はどうなんですか。
  108. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 確かに先進諸国を含め、世界全体の国際収支の不均衡は石油価格の大幅な引き上げによって生じたわけでございますので、この国際収支の困難を乗り切るためには、やはり各国が健全な経済政策をとることは必要でございまして、その際に石油のむだ遣いなどはしないということは、これはアメリカに必ずしも当時追随しておりませんでしたフランス等も言っておることでございまして、OECD諸国皆そう考えたわけでございます。しかし、キッシンジャー演説の中にありましたように、アメリカは一日百万バーレル節約するから、先進国全部で、工業国全部で三百万バーレル節約しろというふうな数量的なリンク、あるいは各国に一律的に強制的に義務づけるというふうな石油政策とのリンクは全く断ち切ってあるわけでございます。
  109. 立木洋

    ○立木洋君 この第一条の第二項の「目的」の(a)で、「基金の目的は、次のとおりとする。」と。時間がないので読み上げませんけれども、この内容を見てみた場合には、やはり先進諸国における石油輸入削減の問題、あるいは国際的な金融協力の問題、あるいは緊急時のいろいろな対応の問題等々の考え方というのは、やはり基本的に盛り込まれておるというふうに考えられると私は判断しているわけですが、それで前回衆議院の外務委員会でしたか、宮澤大臣がキッシンジャー構想にはくみしないという趣旨のお話があったと思うのですが、キッシンジャー構想にくみしないというのはどういう意味でくみしないというのか。全般的に排除するという意味なのか。しかし、こういう点はキッシンジャー構想の中で取り入れられるというふうにお考えになっているのでしょうか。そこらあたりの、キッシンジャー構想全体に反対されたのかどうなのか、その辺の真意をちょっとお聞きしておきたいと思うんです。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私があのとき申し上げましたのは、一九七四年の二月に初めて消費国がワシントンに集まりまして以来の伝統的なわが国の考え方を申し上げたつもりであったのであります。すなわち、片っ方で、これ経済現象としましては、まあキッシンジャーの言葉をかりれば、これは輸出側のカルテルであるという思想を彼は常に持っているわけで、カルテルであるから消費者は団結しなければいけない。政治的に上げられた値段であれば政治的に下げられるはずであるというようなことを、これもまあ硬軟両用、アメリカ立場はわが国の立場よりも少し複雑でございますので、硬軟両用取りまぜての発言だとは思いますけれども、しかし、そういう思想があることはやはり疑えないわけであります。私どもはしかし、アラブがこれだけ団結をしてくればこれは本物であって、そう簡単にこの問題を、いわば力といいますか、対決という姿で解決することはできないのではないかという考えを基本的に持っておりますので、それでいろんな場合に、キッシンジャー構想そのものにはくみしないということを申し上げてまいったわけでございます。
  111. 立木洋

    ○立木洋君 表現上やわらげられたというふうな意味合いがあっても、事実上この金融支援基金設立の協定というのは、消費国の中で協力し合っていく、それは団結基金という言葉を使うかどういう言葉を使うか別として。いわゆる生産の増加を図り、あるいは節約を促進するということは、一般的に言えばそれはそれなりの論理が成り立ち得ますけれども、しかし、産油国との関係で見ればいろいろな問題が生じる。ですから、全体的にこの金融基金設立協定は、産油国との関係を改善するというのに役立つというのではなくて、いわゆる産油国と、対決すると言えば厳しく聞こえますけれども、ある意味では産油国との関係を改善するのではなくて、そして産油国間から生じておるいろいろな問題を消費国間が協力し合って解決していこうという意味で見るならば、やはり事実上これは産油国に対する、対立したと言ったらどぎついかもしれませんけれども、そういうような事実上内容になり得るんではないか。大臣が一番最初に、われわれがいままでそういうふうに認識していなかった産油国の問題にまで目を配らないといけないというふうに、一番最初にお述べになったと思う。そして、少なくともやはり産油国との関係を改善していく努力をしていかなければ、事実上外国の資源依存度の非常に高いわが国としては問題が困ってくる。そうではなくて、やはり消費国間でかたまっていく、こういう論理につながる点から言うならば、これは客観的に見ればキッシンジャー構想の根底にあるものに私はつながっているんではないかというふうに考えざるを得ないんですが、一番最初に言われた教訓をお引き出しになられたという点との関連で見て、この金融基金設立協定というのをどういうふうにお考えになっているのか。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これが、七三年の暮れから七四年の初めごろ、初めて消費国がこの問題を取り上げましたころのアメリカ態度等々、沿革から見まして、いま立木委員の言われましたような要素がこの問題の早い時期にあったことは、私は事実でございますから、そのとおりだと思います。ただ、その後、やはり消費国もいろんな教育を受けましたし、産油国もいろんな教訓を受けたというふうに私は考えております。いま産油国が非産油の発展途上国から受けております批判の一つは、自分たちがこうやって獲得したドルを先進国の市場に流しておる、そのことはけしからぬではないかという非難を産油国は受けておりますことからわかりますように、実は産油国自身が、石油価格引き上げによりまして得ました所得を先進国で運用しなければならない、そうでないと安定して確かな運営ができないということを、これも一つの教訓として私は学び取ったというふうに見ておるわけでございます。したがって、このようなセーフティーネットによって、私どもは確かに先進国間の金融秩序というものを維持しようと思っていますけれども、そのことは世界経済の、当然これは一つのものでございますから、から見て、産油国自身にも今日決して先進国の経済秩序が壊れることは有利な結果にはならないということを産油国自身が知っておる、私はそういう見方をしておりますので、産油国がこのような金融支援基金を非友好的なものだと考えておるとは、私は今日の段階になりますと思っておりませんし、また、そのような非難を最近聞かないということから見まして、確かにこれは先進国のいわゆる自助共済の仕組みではありますけれども、よかれあしかれ、先進国が世界経済に持っております実際上の影響力からいたしますと、これは先進国ばかりでなく、すべての発展途上国にとって決して不利な仕組みではない、むしろ私どもから考えますとみんなのためになる仕組みではないかというふうに、私はそういうふうに評価をいたします。
  113. 立木洋

    ○立木洋君 キッシンジャー構想が出されたときに、産油国としては日本の動向というのを非常に注目しておったと思うんですね。日本はいろいろ苦しい経験を経たから、キッシンジャー構想にはまさか賛成することはあるまいというふうな議論なんかもありまして、その後、産油国でもいろいろな変化が生じたということをいま大臣言われましたけれども、確かにそうだと思うんです。しかしこれは、くどくど言いませんけれども、いろいろな形でアメリカが働きかけたということも一つの要因にある。そしてまた、産油国自体の中で必ずしも、この金融基金協定が非常にいいものだ、われわれとの関係もこれによってある程度よくなるというふうに果たして考えているかどうか、これは産油国内部の問題を見てみますと議論がいろいろあります。少なくともこれが私はキッシンジャー構想につながるものとして、いわゆる本当の意味で産油国との関係を改善していくものに役立たない、長期の展望を見たら。この金融支援基金というのが今後どういう機能を果たし、どういう役割りを果たして、国際的なエネルギー問題というのがこれによってどういうふうな影響を受けるのかという点については、私は重大な疑問を抱いているわけです。  その点だけ一言述べておきますが、さらに続いてこの問題で私は問題点感じられますのは——その前に一言質問しておきたいんですが、この目的の第二項の(a)の(ii)のところに、「加盟国が、適当な国内経済政策及び国際経済政策をとること」と、括弧内には「含む」とありますけれども、「適当な国内経済政策及び国際経済政策をとること」というのは、どういう政策のことを言うんですか。
  114. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 石油危機の後、世界的に問題になりましたことは、各国が自分だけが国際収支がよくなればよいということで貿易制限、輸入制限をしたり、あるいは輸出奨励をしたり、為替切り下げ競争をしたり、そういうことは世界のために好ましくないから避けようということでございまして、これは、石油危機のすぐ後開かれました七四年一月のローマにおけるIMFの二十カ国委員会でもそういう合意できたわけでございます。その後、六月にはOECDでも同様なプレッジができたわけでございます。それは従来の伝統的な経済政策、すなわち、国際収支の悪いときには健全な財政金融政策等をとって国際収支の困難を乗り切るというふうなことが石油危機の後非常に危なかっしくなった、ともすればもっと手っ取り早く輸入制限等をして回避しようという傾向を防ごうということからそういう認識が高まったわけでございまして、この(ii)にございますのは、伝統的な財政金融政策を中心とした健全な政策だと、(i)は、石油危機の後特に問題になりました、いま申し上げましたその近隣窮乏化政策みたいなものを回避しようという趣旨でございまして、なお、この(ii)の中に括弧をしてつけ加えてございましたのは、これわざわざ括弧したわけは、まあ国際収支の大きな不均衡が石油危機から起きているということでございますので、この石油の消費も節約しようということを括弧として入れたわけでございます。この全体につきましても、これは義務的にやるということでなくて、こういう目的を奨励し、助けるということになっておりまして、各国の自主的な政策にまつということになっております。
  115. 立木洋

    ○立木洋君 もちろん、先ほど来のあれで出ておりましたけれども、たとえば消費国が困ったときに助け合おうというふうな、そのこと自身に私は反対があるわけではないんです。しかし、その助け合いの仕方、それから産油国との関係が実際どうなっていくのかという問題点から見ると非常に重要である。同時にもう一点は、ここの目的のところでは、確かに二項に関しては「奨励し及び助けること。」というふうに述べられてあるわけです。しかし、第五条の貸し付けの第二項の「貸付けを受ける資格」の(b)のところでは、「基金に貸付けを申請する加盟国が(a)に掲げる資格要件を満たしていること及びその加盟国の政策が第一条第二項(a)に定める基金の目的と矛盾していないことを確認しなければならない」。それから同じく第三項の(e)では、「借入国は、借り入れた資金を基金の目的に従って使用することを約束する。運営委員会は、借入国の経済政策及び(c)にいう条件の実施状況を常時検討する。」と、厳しい監視の目が届くわけですね。そうすると、この加盟国というのは、お金を借りる場合もそうでしょうけれども、事実上加盟した場合にこの第一に掲げてある国内経済政策及び国際経済政策等々にまで監視の目が及ぶ、きつい言葉を言えば、これは加盟してお金を借りるということになると、そこで一体どういう経済政策をとるのかということまで監視されている。そしてそれに反するようなことがあれば問題にされている。つまり、言うならばその国の経済政策自身がこれによって束縛される。だから、加盟国の中でもいろいろなエネルギー条件の国がありますし、それから資源の外国への依存度の違う国々もあるわけですが、そこで日本が自主的にこの問題はこう解決したいと言っても、加盟してお令を借りたということになれば、これは大変な束縛を受ける。そういう意味では自主的に自国の条件に応じたエネルギー問題の解決策をとることが、事実上この基金への加入によって手を縛られるというおそれがあるんではないかというふうに感じますけれども、どうでしょう。
  116. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) IMF等ほかの国際機関がお金を貸しますときにも、多かれ少なかれこういった形の条件と言いますか、たとえばIMFの場合には、IMF協定目的に従って政策をとるんだというふうな意味条件がついておるわけでございます。私どもこの協定作成に当たりましても、そういう他の国際機関の例を参考にして書いたわけでございまして、結局は貸し付けをいたしましてその債権を無事に回収する必要がございますので、債権を保全するという意味におきまして、お金を借りたけれどもそれは何かむだに使ってしまったというのでは困るわけでございまして、こういうふうな規定を置いたわけでございます。加盟したからすぐにこういう条件が課せられるというわけではございませんで、借り入れをするときにこういうような条件がつくわけでございまして、さっきも申し上げましたように、これは決してその国の自主的な政策を左右する、監視をするというわけではなくて、さっき申し上げましたような伝統的な健全な財政金融政策をとるとか、あるいは近隣窮乏化政策を避けろというふうな意味条件でございます。
  117. 立木洋

    ○立木洋君 その点については後で述べますけれども、それで日本出資するのは金額は幾らなのか。いつごろどういう形で出資をするのか。当面この金融基金を利用する計画があるのかどうなのか。その点一括して、簡単で結構です。
  118. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 日本の割当額は二十三億四千万SDRということになっております。円にいたしますと八千億円ぐらいになりますが、これはあらかじめお金を出すのではございませんで、どこかの国が借りに参りまして、それに貸すと決まりましたとき、その貸付金額に日本のシェアを掛けました金額をいざという場合に担保する。すなわち、この基金は必要なお金をユーロダラー市場等から調達するわけでございますが、調達して借入国に貸すわけでございますが、たとえば七年間貸しまして七年目に返ってこなかったという事態が万一起きる場合には、加盟国がそのシェアに分担して資金手当てをするのだという約束を取り付けて市場から資金を調達するということでございます。まあ日本自身が借りるということはもちろん可能でございますけど、最近国際収支が大分改善基調にございますので、さしあたってそういう必要はございません。また、ほかの国が借りるかどうかということにつきましても、国際収支の赤字で困っている国は多数、ことに小さな国にございますけれど、他の金融手段を全部尽くしてからこちらの基金へ来るということになっておりますので、いまのところどの程度の国が来るかという見当はつきません。
  119. 立木洋

    ○立木洋君 私先ほど言いましたけれども、やはり目的に従って目的を守るということが条件になるということは私はそのとおりだと思うのですよ。しかし、私はその目的そのものに疑義がある。いまのエネルギーに関する国際的な関係を正しく改善していくものになり得るのかどうなのかという点で、私は産油国との関係で言うならば、やはり問題点があり得る。キッシンジャー構想につながるものだとすると、そういうキッシンジャー構想につながるものに反する経済政策をとり得ないというやはり束縛はかけられるのではないかという私は問題点指摘しておきたいと思うのです。  もう時間がありませんから次の問題に移りますけれども、次に、米州開銀に関する協定の問題ですが、この米州開発銀行が設立に至った国際的な背景といいますか、どういう状況の中でこの開銀が設立されたのか。その点については日本政府としてはどのようにお考えになっているのか、お答えいただきたいと思います。
  120. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) 中南米地域の経済開発を促進するために地域的な金融機関をつくろう、つくる必要があるということは、一九五〇年代の後半から米州諸国間で本格的に論議されるようになりました。この設立の構想が具体化したのは、実は米州機構、OASというのがございます、それの下部機構でありまする全米経済社会理事会が一九五九年一月に米州諸国代表者会議というものを招集しまして、その会議で同年の四月にIDB設立協定案が作成されまして、その協定が同年の四月に米州二十一カ国によって署名された。同年の十二月三十日に発効し、実際の業務は翌年の十月一日より開始されたということになっております。  こういう経緯でございますので、基本的には米州機構、特にその下部機構である全米経済社会理事会というところがこの設立のイニシアチブをとったというふうに了解しております。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 いま局長が言われたのは経過ですよ。私が言うのはそうではなくて、何の目的でつくられたのか、つまり国際的な背景、どういう状況ラテンアメリカに起こってこういう開銀をつくることが必要になったのかという、その点をお聞きしたいのですよ。大臣いかがでしょうか。
  122. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) 政治的な背景と申しますと、実はOAS、米州機構でございますが、これが一九四八年にできたんではないかと思いますが、これは御承知のように、地域的な機構、国連憲章に言います地域的な機構でございましたが、最初は恐らく政治的な連帯、米州諸国の連帯ということでできたわけでございますが、その後、こういった地域機構の共通の現象でございますけれども、それの経済部門、地域機構の経済部門を強化しようという必要が唱えられまして、そのOASの経済分野を強化するという意味でIDB、米州開発銀行という構想ができたわけでございまして、そのねらいは、もちろんおくれております中南米開発経済社会開発というものを早急に促進しようということがその目的であったと思います。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 第一次大戦の後に、やはりアメリカの民間資本というのが大分ラテンアメリカに流れ込んだわけです。そしてアメリカの民間資本に対する経済依存度というのが非常に強まった。ラテンアメリカでは、これは一次産品輸出が主ですから、そして植民地的な経済になって、そしてラテンアメリカ諸国においてはそういうあり方に不満を持った、それらの国の基礎的な経済開発に役立たないという意味で。アメリカのあのラテンアメリカに見る経済援助という点を見れば、民間資本の輸出に比べて限られた額で非常に少なかった。同時に、一九五九年にキューバの革命が起こったわけです。そこで、ラテンアメリカというものに対するもう一遍アメリカとしての見直しが始まった、そこで大きな転換が図られる、そういうことのあらわれが私はこの開銀だと思うんですよ。  それならお尋ねしますが、この米州開発銀行がつくられてからその運営上どういうふうな特徴があったのか、アメリカの政策との関係でこの米州開発銀行の運営上どういう特徴が見られるのかという点についてお尋ねしたい。
  124. 菊地清明

    政府委員菊地清明君) この地域銀行でございますが、特に米州開発銀行の場合は非常に地域主義といいますか、地域内発展途上国の意見を重視するというのが非常に大きな特徴ではないかと思います。その一例といたしまして、実は同じアメリカ大陸にありますカナダですらこれに対する加盟がかなりおくれたということがございます。まあ今回、域外加盟ということでだんだんその地域主義的な面が薄まってはきておりますものの、域外加盟する場合でも地域間資本という別個の資本金がつくられるというようなことでございましてきわめて地域性が高い。つまり、あくまでも地域内発展途上国の意思を中心に、民主的といいますか、に運営していくというのが特徴ではなかったかと思います。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 どうも局長答弁では満足できないわけですが、それなら私の方から述べますけれども、米州開銀、いわゆるアメリカの経済政策を見てみますと、たとえばキューバ革命が起こってアメリカはキューバに対する封鎖政策をとった。それでつまり加盟各国がこのキューバに対してどういうふうな態度をとるのか、アメリカに同調しない国に関しては低利長期融資特別業務基金融資をしなかった。あるいは七二年になりますと、アメリカの経済政策に気に食わない経済政策を掲げたチリ、ボリビア、ペルーなどについてはアメリカの経済援助はストップされた。これは国際機関にも融資停止を呼びかける、七二年から七四年、チリではアジェンデ政権が誕生していたわけですが、このときには米州開発銀行融資は行わなかった。  こういうふうな経緯を見てきますと、やはりアメリカに従ったことをやるかどうか、この開銀の中でアメリカの占める地位というのは、いわゆる株の占める比重から見ても、それから運営上でも相当大きな権限を持っているという状態から見るならば、アメリカの経済政策に従うかどうか、それに好ましい態度をとるかどうかということが、この開銀が融資をする場合のやはり事実上条件にされておるような印象を受けるような経緯がやっぱりある。そうすると事実上私はひもつきだと思うんですよ。その国がどういう経済政策をとるかということが中心になって、それで融資するかしないかという問題を問題にされていくということになれば、これは事実上ひもつきになるんではないかと思うんですが、この点についての御認識は大臣いかがでしょうか。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 午前中にその点について、アメリカとつまりラテンアメリカとの関係について御議論があったところですが、確かに、かつてはアメリカラテンアメリカに対して非常な優位性を経済的にも政治的にも持っていましたし、また、ラテンアメリカでもそれでよろしいんだと申しますか、同調する気配が強かったと思います。この銀行は、確かに立木委員の言われますようにアメリカにある程度の影響力を与えておりますけれども、しかし、政治から中立であろうということで圧倒的な支配力を与えないようなふうに工夫してございますが、しかし、それにしてもそのときの政治情勢というもので、それはやはり各国が、ことにアメリカと協調していくということを基本にしておりました時代にはそのような方へ運営が行くということは、これは私は恐らくあったであろうと思います、またありそうなことであります。しかし、その後御承知のように幾つかの国が社会主義化する、あるいはアメリカ投資を接収するというようなことがあり、今日になりますと、結局キューバの問題にしてもあれだけやりましたけれども、最近では米州機構そのものがキューバをつまはじきにするということはやめるということになり、アメリカとの間はまだもう一つそういっておりませんけれども、ここもアメリカが非常な教訓を得て、体制というようなものに余りこだわらない友好関係というものをつくるしかないというふうに、いまとなりましては、過去二十何年、三十年に近い経緯の中からそれを学んできたということではないかと思うのでございます。恐らく御所論は、ですからこういうものに日本がつき合ってアメリカラテンアメリカ政策の遂行のお先棒をかつぐということは好ましくないではないか、これは従来もそういう議論があるのでございますから、そういう疑問が出されることは私ゆえなしとしないと思いますけれども、いまそのアメリカラテンアメリカにかつてのようなことをやれるものであるか、やろうとするものであるかと言えば、私はそれはもう非常に変わってしまった、その事態をその事態としてアメリカはやはりそれに対処しなければならないという考えになっておるというふうに私は思いますので、沿革で立木委員の言われるようなことが私はなかったとは申しませんけれども、ただいまの事態でわが国がこれに加盟することによって、アメリカのかつてのラテンアメリカ政策にわが国が加担をするというようなそういう批判は当たらないであろうというふうに私は思っております。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 かつてそういう時代があったということを否定なさらなかったわけですけれども、午前中の論議でも、武力を行使するなんというのはこれはもう論外であって、しかし、経済の力というのは使いようによっては大変な圧力になるわけですね、これをどう使うかということによっては。ですから、いまのアメリカはそういうふうには使わないであろうという、非常に善意にアメリカの行為を解釈されるようでありますけれども、大臣、アメリカの上院情報活動調査特別委員会チリにおける秘密活動に関する報告、七五年十二月四日に発表されたものですが、これはもうお読みになっておられますか、お読みになっておられませんか。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 詳しくは存じませんけれども、ITT等の関連のことは概略は承知しております。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 この秘密報告ではこういうふうに述べてあるわけですね。去年の十二月に発表されたものですが、「カストロの存在は、チリに特別な意義を与えるアメリカの新しい西半球政策を刺激した。」「アメリカは、各国の国土開発計画にたいする借款の供与を引き受け、改良主義的な文民政権を支持したが、これはすべて、われわれの半球にもう一つのフィデル・カストロが出現するのを阻止する目的を持っていた。」「チリにたいする経済的「締めつけ」の強化に国際金融機関や民間会社の協力を得ることに努力し——そして部分的に成功した。」、こう述べられてあるわけです。この点についていかがお考えですか。
  130. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 恐らくそういう時代があったと私は推察いたします。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 ですから私は、この米州開銀がいままでやってきた問題、先ほどそういう点があったかもしれないし、否定されなかったわけですが、いろいろな問題を。それからいまこのアメリカが明確に述べている意図、国際金融機関や民間会社に、チリに対する経済的な締めつけの強化、これに協力を依頼して、そして部分的に成功したというふうに述べているわけです。私はそういう意味で、米州開銀というのは非常に問題がある。  最後に、この問題と若干離れるかもしれませんけど、一言だけお尋ねしておきたいわけですが、私は四十九年の九月、決算委員会で、当事の外務大臣でありました木村外務大臣に次のことをお尋ねしたわけです。「コルビー米中央情報局長官がアメリカ下院の秘密聴聞会で、「CIAはアジェンデ政権を統治不能に陥らせるため、ニクソン政権から一九七〇年−七三年の四年間、八百万ドル以上の予算を得て秘密活動を行った」」というふうな点を質問いたしました。当時、この件について日本政府はどういう見解をお持ちになっているのかと聞きましたら、木村外相は、そういう事実がはっきりした段階で述べたい、というように答えられているわけですが、この事実がもうすでに明白になって時点で、新しくかわられた宮澤外務大臣にこの見解を一言お聞きしておこうと思います。
  132. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あのような報告をアメリカ政府そのものが全面的に肯定しておるかどうかは別といたしまして、恐らくアメリカ人全体がかなり暗いことがあったという印象を持っておるのではないかと思います。ということは、アメリカ人全体にああいう報告にあらわれたような反省があるということであると私は思っていまして、当のアメリカがああいう自己浄化の作用の中で反省をしていくということであれば、わが国として特にそれをこういう公の席でどう申し上げなきゃならぬ問題だとも思いません。もちろん、好ましいことか好ましくないことかと言えば、それははなはだ好ましくないことであったと申し上げるよりほかはないと思いますが、アメリカ自身がしかし、そういう自分自身で反省をしつつあるということは、これは評価してもよろしいのではないか。  それから一言、先ほどのお尋ねでございますけれども、仮に米州開発銀行に過去においてそのような何がしかの傾向が、しばらく前の過去においてあったといたしまして、私は、アメリカラテンアメリカ関係は、いまそういうものではあり得ないことになりつつあると申し上げたんですが、ラテンアメリカ国々からいたしますと、アメリカが以前の、過去にあったようなことを繰り返さない、繰り返してほしくないと考えるならば、域外加盟国がたくさんこれに入ってくれることを恐らく歓迎するんではないだろうか。つまり、アメリカ立場から言えば、本当に自分の思いどおり振り回したいのならば、域外加盟国がたくさん入ることはむしろ都合が悪いのではないかということを申し上げても私はいいと思うんですが——これは御同意をいただけるとは思いませんけれども。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 最後に一言だけ。  その点、反論しておりますと時間が長くなりますから、もう申し上げませんけれども、私は、少なくともいまの国際情勢を考えた場合に、開発途上国との協力関係、前回以来いろいろ問題になっておりますが、というのは非常に大切だと思うんですよ。そうして、大蔵省はむだなお金を使わないように、頭よく考えておられるということですけれども、私はなかなかそうではない。やっぱりむだなところにお金を使っていると思うんですよ。いいところにお金を使っていると言われる先生方もおられるようですが、やはりもっといまの国際情勢を正しく勘案して、将来こういう外国の資源への依存度の高い日本としてはどういう国際的な経済協力を進めていくべきか、もっと私は真剣に考えていただきたい。これは外務省もそうですけれども、特に私は大蔵省に言っておきたい。今度のUNCTADのあれでも、国際すず協定というのは、もう大臣が言われたけれども、あれは代表的なものでしょう、いまの時点で言えば。南北の商品協定で言えば。それにお金を出すのを渋るなどということです、わずかな金額です。そういうことを渋って、いま言った非常に問題点のあるようなところにお金を出すというふうなやり方というのは、私は今後国際的な協力関係の中で生きていかなければならない日本としてはきわめてまずいし、よくないあり方だと思うんです。その点だけ最後に述べて、質問を終わります。
  134. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に発言もないようですからこれより直ちに採決に入ります。  まず、日本国ハンガリー人民共和国との間の通商航海条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  135. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、経済協力開発機構金融支援基金を設立する協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  136. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、米州開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  137. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  138. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、四件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これにて、休憩いたします。    午後一時十七分休憩      —————・—————    午後二時五十七分開会
  140. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  国際通貨基金協定の第二次改正の受諾について承認を求めるの件  及び、国際連合大学本部に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  両件を便宜一括して議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。宮澤大臣。
  141. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました国際通貨基本協定の第二次改正の受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  一九七一年八月における米国の新経済政策の発表、いわゆるニクソン・ショック以降、国際通貨制度は大きな変容を受け、さらに、一九七三年末の石油危機以来、インフレーション、国際収支問題、また、これに続く世界的不況というように世界経済は幾多の困難に直面してまいりました。国際通貨制度は、世界経済の安定的発展のための枠組みともいうべきものであり、新たな世界経済の状況に適合したものとしてこれを再建し、その安定的かつ効果的な運営を図る必要があります。  このような観点に立脚し、国際通貨基金の二十カ国委員会及び同暫定委員会等の場において、一九七二年以降三年余にわたり国際通貨基金協定の第二次改正について検討が行われてきましたが、本年一月ジャマイカの首都キングストンで開催された暫定委員会においてその概要につき合意が成立いたしました。国際通貨基本協定の第二次改正案は、この合意を踏まえて基金の理事会が案文を起章し、その後基金の総務会によって承認されたものであります。  この改正の概要は次のとおりであります。  まず、為替取りきめにつきましては、各加盟国は自由にその為替相場制度を選択することができるが、加盟国は、基金と協調し、その監視に従うこととなります。また、世界経済が安定した後には、基金が平価制度への移行を決定することができることとなっております。  次に、金の取扱いにつきましては、国際通貨制度における金の役割りを漸次縮小させることとしております。  さらに、基金の一般資金の利用、基金の機構等につき所要の規定の整備を図っております。  なお、この改正は、基金の第六次一般検討に基づく増資の効力発生要件ともなっております。  この改正は、世界経済の安定的発展を実現するために必要であり、また、これは世界経済の動向によって影響されるところの大きいわが国経済の発展にも寄与することになります。さらに、この改正の効力発生によって基金の増資が可能となるごとは開発途上にある国の国際収支困難の克服にも資することになると考えられます。  よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。  次に、国際連合大学本部に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和四十八年十二月の第二十八回国際連合総会において採択された決議に基づき国際連合大学本部が本邦に設置されることとなったことに伴い、国際連合大学本部に関する協定締結交渉を国際連合側と行ってきましたが、本年五月十四日ニューヨークにおいてわが方国際連合代表安倍大使と先方スイ国際連合法務部長との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、前文、本文十五条三十二項及び末文から成り、また、協定に関連する交換公文が附属しております。協定は、国際連合大学本部のため、政府が建物及び土地を提供すること、それらの建物及び土地は、不可侵とすること、国際連合の職員である大学本部の職員は、大学が支払った給料及び手当に対する課税の免除等の特権及び免除を享有すること等を内容としております。  わが国は当初から国際連合大学構想を積極的に推進してまいりましたが、昭和四十九年末に大学本部の仮事務所が本邦に設置され、大学は、いまや本格的な活動を開始しつつあります。この協定締結が大学本部の効果的な機能の遂行に資することが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、なにとぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  142. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 続いて補足説明を聴取します。伊達条約局参事官。
  143. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 最初に、国際通貨基金協定の第二次改正についてでございますが、この第二次改正の中で特に重要な意味を持っておりますものは、為替相場制度及び金の役割りの縮小に関する改正でございます。  為替相場制度に関する新たな規定によりますと、各加盟国は、為替の安定のために実体経済の安定を図るとともに今度の改正の発効後三十日以内に自国の選択する為替取り決めをIMFに通告することが要請されております。この場合、IMFは、加盟国の為替相場政策を監視し、また、加盟国は、為替相場政策についてIMFと協議することとなっております。世界経済が安定いたしました後には、IMFは総投票権数の八五%の多数決によりまして、平価制度への移行を決定することができます。この場合、平価の基準はSDR等とし、金または通貨であってはならないことになっております。  次に国際通貨制度における金の役割りの縮小につきましては、平価の共通表示単位としての金の機能及び金の公定価格を廃止すること、IMFは総投票権数の八五%の多数決によって、保有している金を市場価格を基礎として売却し得るということなどを定めております。  このような改正によりまして、国際通貨制度を世界経済の現状に適合した制度とすることを図ろうとするわけでございます。  なお、今般割り当て額の増加のため増資が行われることとなっておりますけれども、開発途上にある国々の国際収支困難に対処するためにも増資発効の要件になっております今回の第二次改正の発効が急がれているわけでございまして、わが国といたしましてもこの改正を早く受諾したいと考えている次第でございます。  次に、国際連合大学本部に関する協定でございますが、国際連合大学設立の構想は、昭和四十四年、当時の故ウ・タント国連事務総長の発意に基づいて提案されたものでございまして、国連及びユネスコにおける研究がなされました結果、昭和四十七年の第二十七回国連総会で国際連合大学の設立が決定されたわけでございます。  国際連合大学は、その大学憲章によりますと、学長、大学理事会、大学センター、それに研究研修センター及び研究研修計画というものから構成されておりまして、我が国に設置される大学本部とは、学長と大学センターを指しているものでございます。大学本部は、本邦設置が決定された後に、昭和四十九年には東京の帝国ホテル内に仮事務所を設けてその活動を開始いたしましたけれども、昨年は、第四回の大学理事会で世界の飢餓、天然資源、人間と社会の開発という国際連合大学の三つの研究領域が決定されましたし、また、仮事務所も渋谷の東邦生命ビルに移って、国際連合大学は、具体的な活動に入りつつある次第でございます。  この大学本部の施設の提供、職員の特権、免除等を内容とする協定締結によりまして、この国際連合大学の中枢機構でございます大学本部の機能の円滑な遂行が期待されている次第でございます。  以上でございます。
  144. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 以上をもって説明は終わりました。質疑は後日に譲ります。     —————————————
  145. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  146. 木内四郎

    ○木内四郎君 先日来、同僚諸君がきわめて詳細に質問されましたし、また、外務大臣も大変御親切、御丁寧に御答弁願いましたので、私はなるべく重複を避けます。  ただ私は、たまたまこの条約の調印当時に責任の地位にあって責任を分担していたようなたてまえから、その当時のことを反省しまして、いま一度ちょっと見直してみたい点があるものですから、二、三の点について御質問いたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  わが国は、原爆の被爆の唯一の国といたしまして、核兵器の存在、またそれの拡散ということに対して非常に関心を持っておるわけですね。ところで、この核拡散防止条約はこの問題を取り扱っているんですけれども、この条約は、御案内のように非常な不平等の条約であり、不公平の点もずいぶんあるわけです。そこで、これをどうしたらいいかということであったんですけれども、私は、少しでも拡散を防止する、そして核軍縮を進めることに効果のあるものはできるだけ努力してみなくちゃならぬというたてまえから、これは調印をして、そして批准をするまでの間に、直し得るものはできるだけ直して、まあ条文は直すわけにいきませんけれども、その適用部分などにおいてできるだけ直して、そしてわが国の立場も考慮に入れながら、大体満足できたらそのときには批准をする、こういうふうに運んだ方がいいだろうと思いまして、調印に同意と言うか、調印を促進する方の側に立っておったわけです。  ところが、わが国に対する査察の問題、第一には査察の問題です。それはなかなか厳しかったんですが、ヨーロッパの諸国、すなわちユーラトムに対するところの取り扱いの方が非常に穏やかであった。そこで、わが国もその方式に従って、それを取り入れて、それによってひとつ査察を受けるようにしなけりゃならぬというので、科学技術庁において国際原子力機関の方といろいろ話し合いをした結果、大体ほぼ満足すべき状態において合意に達したということであるのです。それは非常によかったと思うのですが、わが国としてはそれでいいんですけれども、最近いろいろ新聞その他で聞くところによると、   〔委員長退席、理事増原恵吉君着席〕 アメリカはもちろん、西独、フランスあるいはカナダあたりが、この条約加盟している韓国とか、あるいはイランというようなものばかりでなく、あるいはインド、エジプト、イスラエル、南ア、ブラジルアルゼンチンあるいはパキスタン等に対しても、平和利用のために原子炉の建造をやったり、あるいはノーハウを渡したりしているというようなこともあるんですが、これはどうも平和目的といっても、平和と軍事目的とは紙一重でありまして、平和目的のためだからいいと言っておっても、それは紙一重で軍事目的に変わるようなものですから、この核条約加盟もしておらないこういう国に対しても、商売上利益があるからというのでもしそれを渡していくというようなことになれば、これはしり抜けになっちゃいはしないか、こういうことを非常におそれているんですが、そういう点はどうでしょうか。それに対する査察、安心してそれを任せることができるような査察の状態であるかどうか。その点をひとつ伺っておきたいと思うのです。
  147. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 木内委員におかれましては、本条約署名の前後を通じまして国務大臣として直接にこの条約の署名に御関係をお持ちになったお立場でいらっしゃいますが、当時政府が三点にわたる、御承知のように、声明をいたしまして、その一つがいわゆる平和利用の確保に関する問題であったわけであります。  ただいまのお尋ねは、そのことと関連をしつつ、いわゆる平和利用の名において核の拡散現実に行われ、あるいは行われる危険がきわめて大きいのではないかという御質問であります。  御指摘になりましたうち、インドにつきましては、カナダからの核関係資材等の供給によりまして平和目的と称する核爆発が行われたという事実は明確に確認をされております。この点はしかし、御承知のように、遺憾ながら当時この条約の適用がなかったということから起こったことのように承知をいたしておりますが、その後、カナダ政府は非常に事態を重視いたしまして、供給を停止をする、暫定的に停止をし、昨日でございますか、インドに対して今後そのような供給をしないという決定をしたと承知をいたしておりますが、しかし、既成事実は既成事実として残るということは残念ながら否定はできない状態であろうと思います。なお、そのような事態にもかんがみまして、カナダは韓国に対しましては昨年きわめて厳重な保障措置協定を要求したということを承知いたしております。  その他、エジプト及びイスラエルに対しましては、米国との間に核関係機材の供与ということが基本的に約束をされたようでありますけれども、これも、米国側がただいまのような危険を防止するためのセーフガードについてきわめて厳重な要求をしておるために、実現をするに至っていないと承知をいたしております。  ブラジルにつきましては、最近西ドイツが関係機材の提供をするということになったわけでございますが、これにつきましても西ドイツと米国との間で協議がありまして、かなりきつい条件を西ドイツが付することになったと承知をいたしております。  大体以上のようなことで、木内委員の言われますような危険がかなり顕在化をし、しかも当面の問題になってきたことにかんがみまして、各国とも保障措置につきましては相当厳重な条件を付するという傾向が最近とみに顕著になりましたことは、この条約目的に沿うものであるというふうに考えておりますが、なお、この条約加盟しておらない国があることにもかんがみまして、先日来お話の、いわゆる先進国数カ国が時として集まりまして、そのような危険を防止するためにおのおのの国がとる措置について討論をし、また、話をし合っているということも御承知のようにございます。したがいまして、全体として、ただいま御指摘の問題についての関心は供給国側にことに強くなっておりますが、しかし、と同時に、やはり御指摘のように、平和利用目的の爆発は基本的に考え方としては許すという考え方条約でございますが、それを悪用されないための保障というものが実は乏しい現在でありますので、やはり平和目的とは申せ、そのような核爆発であっても一定の制約のもとに置くということは、さらに厳しい規制が必要なのではないかというふうに考えております。
  148. 木内四郎

    ○木内四郎君 ありがとうございました。  大体お話はわかりましたし、われわれは拡散防止、まあ核の広がることを防ぐのをこの条約の大きな一つのねらいにしているんですから、どうかこれが根底から崩れたりしり抜けにならないようなふうに、ぜひひとつ当局においても御配慮願いたいと思います。  それから、この前、この条約を署名するときに三つばかりわが国の立場を述べておるんですけれども、ほかのことはとにかくとして、第一に核軍縮ということをトップに挙げておるんです。これは条約で言えば第六条になるわけですけれども、どうも六条の書き方というものははなはだ不徹底で、同僚諸君も大いに指摘されましたけれども、これは非常に不徹底な条文であると思うんです。しかし、この条約は核を方々の国に拡散することを防ぐと同時に、やっぱり核軍縮ということを大きな一つのねらいにしているわけですね。この条文の書き方は非常に不徹底であっても、ねらいはやっぱり拡散と一緒に並んで現在のたくさんの核をだんだん減らしていくというのがねらいの一つじゃないかと思うんです。  そこで、最近各国、まあアメリカとソ連ですか、それの持っている核弾頭、これの表をいただいたんですが、これはどうも私は余り信用が置けないんですね。これはどこかの政府が調べたとか、あるいは国際原子力機関が調べたとかいうんならいいけれども、英国の国際戦略研究所の一つの記録、まあ記録というか、雑誌なんですね。それを外務省からいただくとは実は私思わなかったんですが、外務省からはもう少しオーセンチックのものをいただくと思ったんですが、国際戦略研究所発行の「ミリタリー・バランス七五〜七六」というんでしょう。これはどうも私ども納得いかないんですが、まあとにかくこれ、大勢はわかるんですよ。だけれども、こういうことを核保有国がみずから自分たちもひとつ査察を受けようという気持ちにならなければ、本当に真剣になってやっているというふうには思われないんですね。おまえたちにはみんな、わずかなものでもそれを査察すると言っておきながら、山のように持っている人間が自分は査察を受けたくないという、そういう根性でこの核軍縮というものが行われるものじゃないと思うんです。査察を受けよう、おれたちも受けようと、こう言わなくちゃいかぬ。そうして、しかも、単に自分たち努力していると。これは外務大臣もこの前お話しになりましてよくわかるんですよ。まあこれ、急に言ったってそうできるものじゃないんだから、非常に努力しているということはお話がありましたけれども、それだけじゃ足りないんですね。やっぱりこれは、条文ははなはだ不完全だけれども、大きな一つのねらいなんですから、自分たちは、この間どなたかのお話にありましたけれども、自分の持っている核弾頭はだんだん減らしていく。ことしは一割、来年は一割とだんだん減らしていくような案でもできて、しかも査察も受けよう、こういうことになるというと信頼性が非常に高まってくるわけですね。そういうことを、どうでしょうかね、いまの査察の場合にはユーラトムの方式でもって国際原子力機関との合意ができた、こういう問題についても、こっちは入る前に、今度は査察の問題については日本は入ることを妨げるもんじゃないですし、大体協定ができました、合意ができたということですから。こういう点についても核保有国が一定の計画を立てたり、あるいは査察を自分たちも受けようというようなことを言ってきてくれるというと、わが国もこの条約を批准するに非常に強いバックを得ることになると思いますが、そういうことはいかがですかな、外務大臣、ひとつこれから、なかなかむずかしい問題ではあるけれども、お骨折りを願いたい。こういう機会なんてのは非常にいい機会です。あなた方がそこまでやられるならおれたちもこれはひとつ入ろうと、こういうことは私は、言ってもあんまり不合理じゃないし、大義名分が立つと思うんですね。こっちはみんな九十何カ国が全部査察を受けてやっているんだから。二カ国、大国二つも、おれたちもひとつ参加していこうと、こういうことになるのでなけりゃ、どうもこの第六条の実施に真剣味がないように思うんですが、いかがですかな。
  149. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 第六条の書き方につきましては、確かに木内委員の言われますように、微温的と申しますか、十分拘束的でないということは、私どもも率直に申して感じます。ただ、こういう規定がありますということは、締約国に対して核軍縮の効果的な措置について、あるいは完全な軍備縮小の条約について誠実に交渉を行えということを言っておりますし、当事国は、締約国はそのような六条の義務を受諾したということにはなっておると考えます。したがって、再検討会議等において締約国はいわゆる核兵器国がこの六条に基づいてどのような進捗甲見せたかということについて質問をし、場合によりましてそれに対して道徳的な圧力をかけるということはでき得る立場であるというふうに考えます。  そこで、それらのいわゆる核保有国に対する査察の問題でございますが、御承知のように、平和利用についてはそのような条約上の義務はございませんけれども、アメリカはすでに平和利用については他からの査察を受けるという、いわゆるボランタリーサブミッションについてほとんど協定交渉を終わったというふうに聞いておりますし、イギリスも同じくそのような協定を結ぶ用意があると言っておる由でございます。ソ連については、私どもそういうことを再検討会議の席でも言っておりますけれども、ソ連については残念ながら進展がございません。  もう一つの問題は、いま木内委員の言われましたのは、核兵器の保有状況についても何かの形でこれをチェックする方法がないかということであったと承りますが、これはやはり第六条から言いますれば、誠実な交渉が行われているかどうか、効果的な措置が進んでいるかどうかについて、われわれは締約国になりますと問い得る立場にあると思います。したがって、たとえばSALTならSALTの交渉について、その結果がどのようになったか、どれだけの進歩があったかということは、再検討会議等においては聞き得る立場に私どもはあるであろうと考えます。その次に、しかし、それを検証するということになりますれば、おそらく米ソの場合、現実にその核兵器の保有状況等々について、現地の査察を許すとは、ただいまの状況では考えられませんので、そこに至りますにはまだまだである、そのような状況に至っておらないことは事実として認めなければなりませんけれども、しかし、この六条によっていろいろな意味での道徳的な圧力あるいは報告を求める等々のことはなし得るところであると考えます。その実効性、有効性の問題については、いわゆる検証ができるかという問題がございますけれども、しかし、そういうことを求め得る立場には私どもあるであろうというふうに考えます。  総じて、この第六条に伴う核兵器、核保有国の軍縮の進展は、これはせんだってから何度かお尋ねもあり、申し上げておりますので繰り返しませんが、歩みは遅々たるものであって、私どもの希望するようなテンポ、希望するような規模において行われていないことはそのとおりでありますけれども、しかし、米ソともおのおのの事情から、現在の保有量がオーバーキルであることは知っており、それが巨大な財政負担にもなっておるというような点は、今後について、かなり気の長いことではありますけれども、大まかな傾向は悪い方向には向かっていない、その程度のことは申し上げられるのではないかと思います。
  150. 木内四郎

    ○木内四郎君 ありがとうございました。私はもう持ち時間がありませんからやめますけれども、いま非常に困難な問題であることはもちろんですけれども、この条約が不平等であり不公平であり、また、いろいろなことを言われておるんですね。だからこれは、やっぱりいつの日かこれを払拭しなくちゃいけないと思うんです。そのためには、ひとつ外務御当局の格別の御努力を切にお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  151. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 私は、NPTについて論理的に、条約論理にも批准の論理にもどうも納得のいかない点があるわけなんです。それらの点に関連しまして質問をいたしたいのでございますが、大体八項目ばかりに分けまして、順次、質問をしてみたいと思います。  第一は、いままでの経過、手続上の問題点、第二は議題について、第三が提案理由について、第四が条約の内容について、第五が保障措置協定、第六が関係国内法、第七が七カ国合意の秘密協定があるやに聞いておりますのでこれらの点について、さらに、いままで政府がお述べになりました見解について、私たちが納得がいかない点がありますので、これらを逐次質問をしていきたいと思うのでございます。  しかし、それに先立ちまして、私は私の立場を述べて、そしてそれに基づいて質問いたしますので、あらかじめその点をひとつ御了承をいただきたいと思います。  午前中の糸山議員の御発言にもありましたように、一国の外交というものは非常に重要でございまして、それが成功するか失敗するかということはその国の運命を左右するものである。これは歴史が証明しておることでありますから、いまさら申し上げるまでもないことでございます。  そこで、外交につきましてはきわめて慎重でなければならない、これが私の第一に考えているところでございます。ところが、最近のわが国の外交の動きにつきまして、私は外交においては素人でございますけれども、素人ながら何か納得のいかない点が余りにも多いようなふうに感じております。NPTもその一つであると言っていいと思います。私たちは、下手をすると過去の過ちをまた繰り返すのじゃないだろうか、こういう心配が非常に私は強いんです。  そこで、外務大臣も恐らく御承知だと思いますけれども、近衛内閣のブレーンであったと思いますが、亀井貫一郎さんが近衛文麿氏に書簡を送っております。その一節にこういうことが書いてあるんです。「私はこの時程否、この時以来、日本の政治家代議士、軍人、官僚共が世界外交について、何等の経綸なく、見識もなく、否、之等の無きはまだしも可なり、智識すらもなく、なす可き事も知らず蝉声蛙鳴徒らにその狭い立場で我々の動きを批評してみた無智と下劣と怠惰を我々自らの為に怒るのでもなく、それに率いらるる国民の為に悲しんだ事は無いのであります。」。前がありますから、これだけではおわかりにならなぬと思いますけれども、いわゆる当時の政治家や軍人や官僚や、こういう人たちが外交についてどのようなことを考えて何をやったかということの反省であると思うのでございます。いまの私たちの目に映るのが、何かこれによく似たような感じがしないわけではございません。  それからもう一つ、私が非常に強く感じましたのは、その当時内閣の情報部長をやっておられた横溝光輝さんという人が「昭和史片鱗」という書物を書いておられます。この中に私は非常に打たれる点があるのでございますが、それは私の先輩であります矢部貞治さんがお書きになりました「近衛文麿」という伝記の中に、近衛さんが述べて、書いておられることでございます。「この声明」——この声明というのは、国民政府相手にせずというこのことを意味しておるんですが、「この声明は」「非常な失敗であった。余自身深く失敗なりしことを認めるものである。」と、こう近衛さん自身がお書きになっている。しかし、私は声明するかしないか、それがよかったか悪かったか、それを私は問題にしておるのじゃないのでございまして、その手続に私は非常な問題がある、こういうふうに思うわけでございます。  それで、その点を申し上げてみますと、この声明をするかしないかということにつきまして、当時の政府、大本営連絡会議で多田参謀次長一人が四面楚歌のうちに、そういう声明をやってはいけない、交渉をもっと継続すべきであると、こう主張したのでございますけれども、しかし、なかなかそれが入れられない。政府、大本営の打合会を三度にわたって休憩して、結局、多田さんはこういう心境でそれについに同意したと。「もし統帥部側があくまで交渉継続論を」、すなわち声明を出すべきじゃないという論を「主張するなら近衛内閣は総辞職する」との意見をほのめかされ、多田次長はついに政府側に折れて打切り論にまとまった。あとで多田次長は「交渉打切りは嫌だ。長期戦は嫌だ。しかし近衛内閣の崩壊はなお嫌だ」と、こういうことで最後にはその声明に応じてしまったわけです。それがあのシナ事変の長期化を招き、大東亜戦争にまで発展した。  こういう事実を見ますと、やはりただ単に少数だから、大多数の者が賛成だからというようなことで軽々しく結論を出していただくことは、私は非常に危険じゃないか、こう思うのでございます。  それで私は、いまの政府関係者が現時点においてこれを承認することが国益のためだという信念に基づいて御努力なさっておる、その誠意を疑うものではございません。しかし、少なくとも与党の内部にこれについて慎重であるべきという意見もある。しかも、それだけではなくして、いわゆる学者、文化人、評論家、大学教授、物事を非常に公正、冷静に考えて判断される方々も相当多くの方々がいろいろ検討された結果、これは慎重を期すべきであると、こういうふうな結論を得ておられるのでございます。私は外務省の、あるいは政府の御説明が全部間違っておるというようなことは申しておりません。しかし、そこにはなおわれわれの素人の納得できないところがある。一方、それらの先ほど言いました文化人や学者の方々の言い分の中にはなるほどだと、このような感じを受ける場合もあるわけでございます。いずれが正しいかということにつきまして、われわれ自身が非常にこの判定に苦しんでおるというのが現在でございます。  そういうような観点から、われわれがどういう点にそういう問題を感じておるのか、もうすでに同僚の皆さんからいろいろな御質問があり、また、衆議院では長時間にわたって審議されたのでございますから、もう問題はないかもしれません。私は外務委員でもございませんから、きょう突然に発言の時間をいただいて出てきたわけでございますから、あるいは重複したことをお尋ねするかもしれませんが、これはひとつお許しをいただきたいと思うのでございます。  そこで、まず第一に、この条約責任を持って扱っていらっしゃるところはどの部局であるかということを外務省の方からお聞かせいただきたいと思います。
  152. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 外務省の国際連合局でございます。
  153. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 そこで、この問題が起こってから今日までに、まあ最高の責任者は外務大臣です、それから国連局ですか、局長。さらに国連局の中でこの問題を専門に扱う部局あるいは室ですか、あると思いますが、それらの今日まで関係された方々はおのおの何名ぐらいあるかということをちょっとお聞かせいたただきたいと思います。
  154. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 日本がこの条約に署名をいたしまして以来、外務大臣はただいまの宮澤大臣が五人目の大臣でございます。国際連合局長につきましては私は四人目に当たります。それから軍縮室というのがございますけれども、現在の軍縮室長は六人目に当たっております。
  155. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 課長はいないんですか。
  156. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 担当の課と申しますのが実は室でございますので、軍縮室長ということでございます。
  157. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 いまお聞きしたところによりますと、まあこれですと一人の方がその同じポストにおつきになっておるのは平均しますと二年ちょっとですね、大体。二年たつと皆さんはかわっていらっしゃるわけですね。ところが、一たびこの条約が決定しますと、条約はこれから二十年以上、あるいは永久に続くかもしれません。だから今後も、いまのなんでいきますと二十年のうちにはもう十人ぐらい大臣がかわったり、局長さんがかわったり、室長さんがかわられる。  そこで、この二十年間に、いまの国際情勢判断で最善であると御判断なさったんでございましょうが、この二十年間の国際情勢変化が、果してはっきとこうなるだろうという判断ができるかどうかという点に、私は、そこでもし不幸にして国際情勢が変わって、そしてどういう事態が起こるかわかりませんけれども、そのときになって、この核防に加盟したがために、世界情勢は非常に激しく動いて、しかし、日本は手足を縛られてそれに適切な対応措置ができない、それが日本に対して非常な致命的な大きな損害、あるいは不利な状況になるというような事態が起こったときに、責任はだれが負うことになるでしょうか。その点をひとつ。
  158. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これから二十年近い間、わが国はこの条約によって国際的な約束をいたすわけであります。過去の二十年を振り返りますと、今後の二十年というものに何が起こるかということは、まことに思い半ばに過ぎるものがありまして、これを的確に見通すということは率直に申し上げまして非常にむずかしいことであろう。したがいまして、このような決断をするに際してそのような不安定要因、不確定要因がありますことは、これは最初から認めざるを得ないところであります。私どもは、したがいまして、その問題もさることながら、どのような変化かがあった場合にわが国が自分で核兵器を持つ、あるいはつくるということがわが国の国益に沿うような、そういう事態になる可能性があるかどうかということについて、その面から考え得るだけ考えてみたつもりでございますけれども、その点では、まずどのような変化があろうとも、わが国自身が核兵器をつくり、実験をし、それを持つというようなことは、考えられる限りにおいて国益に沿うゆえんではあるまいという判断をいたしたわけでございます。  そのような判断の正しさ、誤りについて将来に向かってだれが責任を負わなければならないかということになりますれば、今日国会に御承認をお願いをいたしております私どもが負わなければならないというふうに考えております。
  159. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 しかし、いま、まあわれわれもそれに承認するかしないかは別問題としまして、そのときに果たしていまの者が何人その責任を負う、そういうような立場におれるかどうか。われわれは年齢的にもう二、三年すればこの世から姿を消していくわけですが、一番若い人でも二十年間果たして国会におられるのかどうか。それでこれは間違いだったと、よしひとつこれを改正しようとしても、手も足も出ないじゃないでしょうか。  そこで、外務大臣の先輩に当たられます松岡当時の外務大臣が、これがもう余命幾ばくもなく病床にあって、さめざめと涙を流して、日独伊三国同盟を結んだことは私の大失敗であった、そのために国民や陛下に御迷惑をかけて申しわけないといってさんざんとお泣きになったそうでございます。しかし、いかにそのときに松岡さんがお泣きになったって、われわれ国民が戦争に駆り立てられて、そうして非常な不幸のどん底に陥れられたという事実は、これはいかんともしがたいんです。松岡さんがいかに泣いておわびになっても、これはもうどうもならぬのですね、そういう現実は。そこで、われわれの先輩がわれわれに教えたことは、はっきり確信があることであればいいけれども、どうだろうかというときには、これはやはり慎重な道を選ぶのが穏当な選択であると、こういうようなことを教わったことを私は覚えております。だから私は、責任をはっきりと、まあ三年や五年ならこれはそのときに対する適当な措置がとれますから、悪かったらそれに変更もできるでしょう。けれども、もうそのときにはすでにわれわれは力が全然ない、いかんともしがたいというようなことになるかもしれないということについて、無理をしてそれを強行するということは果たして私はいかなるものであろうか、こういうことを感ずるんですけれども、外務大臣はいかがお考えでしょうか。
  160. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今後二十年に近い長い年月を覊束する種類の決断をいたそうとするわけでございますから、もとより私ども関係者、政府、最善を尽くしてあり得るべき可能性については検討をいたしたつもりであります。しかし、どのような能力をもっても二十年を的確に見通すことはできないであろうと言われます点は、これはもう否定しようもございません。われわれとして最善の判断を誠実にやったということを申し上げる以外に私は申し上げる方法はないと思いますが、先ほど、糸山委員のせんだっての御発言についてお触れになりました。  この間の御発言は、これから二十年というものを、糸山委員のようなお方は実はこれから自分の将来をそちらへ向かって持たれる方であって、そのような決断をして一体将来に向かって自信があるのかという御趣旨のお尋ねであったわけであります。私はそのことは心底そのとおりだと思って承りつつ、なお同時に、私どもが第二次大戦を通じていたしました経験、ことにそれは被爆という経験があったわけでございますが、この経験は恐らくは時とともに失われていくであろう。第二次大戦あるいは原爆というものを直接に体験をした者は、時間がたてばこれは世を去っていかなければならないわけでございますから、そのような体験は将来に向かっては私は世代から失われていくであろうと考えます。過去のことは忘れてしまった方がいいことも確かにいろいろございますが、これだけは将来子々孫々に忘れさせたくないという種類の体験もございます。そういう意味で、今日われわれがこのような条約の御承認を得たいと考えております気持ちの中に、過去のあのような経験を、それをもう知らないであろう将来の世代に向かって、どうか繰り返してほしくない、誘惑に引かれないようにという気持ちがやはりあるのではないだろうか。しかし、これは一種の情緒的な問題として申し上げておるばかりではございませんで、いま考え得る理性を持って考えてみてこの決断がやはりいいのではないかということが基本でございますけれども、同時に、いまのような、民族としてのあのような体験をもう二度と繰り返してはならないというわれわれの世代の体験というものがここに入っておるということも事実ではないであろうか。  なお、将来起こり得べきことについて、この条約には御承知のように脱退条項というものがございますけれども、これはもう宮崎委員がよく御承知のことでもありますし、いま御承認をお願いしようとしている立場から、余りこの点を私は強調しようとは思いませんけれども、そのような条文もこの中には入ってはおります。
  161. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 私は、外務省あるいは政府の御決断が全部間違っているんだということを申しておるのじゃないんです。いろんな問題点があるんだ、それをもっと解明して、そうしてとるべき対策もはっきりして、それから決断をしても遅くはないじゃないな。加盟はこれはいつでもできるわけです。それを、そういうような問題点を残したままでなぜ承認をお急ぎになるのか。これがタイムリミットがありまして、何月何日までにこれを上げなければもう大変なことになるということであれば、少々の審議は省略してもそれは結論を出さなきゃいかぬと思うんですよ。ところがこれは、一年おくれたからどれだけの具体的なダメージがあるかというと、そういうものじゃないと思うんで、それを特に、そういうことを言っては悪いんですが、会期末のしかも非常に落ちつきのないような情勢の中で審議をスピードアップして、そして無理やりに承認をしようというその行き方について私は、これも一つの問題じゃないか。  この間私、大臣御承知のように予算委員会で、参議院は何のためにあるのかということを政府に聞いたわけです。そのときの法制局長官の答弁は私の期待する答弁じゃなかったんです。参議院が特に設けられました一番の重要な点は、国会が国権の最高機関であるということがはっきりしたことによって、立法においてはあくまでも慎重を期さなくちゃいけない。そこで安定した参議院というものを設けて、そういう長期的な基本的な問題については参議院でゆっくりやるべきである、そのために参議院という、あるいは二院制が設けられたんだということ、あの新憲法制定当時の議事録を読んでみますとそういう趣旨でございます。ところがいまの状況から見ますというと、どうもそういうふうになっておらない、何が何でも二十四日までに一応議了したことにして承認しようという、そういう行き方になっておるんじゃないだろうかということを私は非常に心配するんです。  そこで、先ほど大臣はいまとしてはなし得る限りの慎重な検討をした上の決断であるということをおっしゃいましたからお伺いしますが、私の知る限りにおきましては、去年の四月二十五日でしたか、国会に提案されましたのが。そのときに国会提案を持ち回り閣議で御決定になったと私は承知していますが、そのとおりでございますか。
  162. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 昨年の四月二十五日の定例の閣議で、国会にこの条約の御承認のために提出するということが決まったわけで、閣議決定の日は、定例の閣議において決定されたということでございます。持ち回りということではございません。
  163. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 いまの御答弁は、それは違いますよ。私がなぜそういうことを申し上げるかといいますと、自民党の結論がまだ出なかったんですよ。それで、定例閣議に付議しようとしたけれども、党内の手続が終わらぬがために定例閣議に提案ができなくて、翌日の、曜日も土曜日だったと思います、そのときに持ち回り閣議で御決議になって提案されたと私は記憶しておりますけれどもね、違いますか、私の記憶は間違っていますか。
  164. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 実は、先ほどその点の御質問が先生から出るのではないかという話を漏れ承りましたので、内閣に問い合わせたところ、持ち回りではなかった、定例の閣議でこれが決定されたということでございます。私も持ち回りをやったという記憶がございませんでしたのでちょっと確かめてもらったわけでございますが、そういうことでございました。
  165. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 私はそのころ、党の最終結論を出すことに非常に皆さんと一緒になって苦労したときでございましたから、はっきり自分で覚えておるんですよ。そうして翌日の新聞に、党の了承を得たから持ち回り閣議で決定して国会に提案したとなっていますが、これはまあ論議しませんよ、もう。しかし、それにしましても、定例閣議にかけられる前に、どれだけの部内の御検討をなさったかどうか。
  166. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点につきましては、昨年のあのころの状況は、いわゆる保障措置協定の交渉が実質的に妥結をするというのを片方で待っておりつつやっておったのでありますが、私から何回か閣議等の場におきましてこの条約については説明をいたしております。もっとも決をとったわけではございませんが、説明はいたしておりますし、また、与党内部におきましても幾たびか重ねて御論議のありましたことは宮崎委員も御承知のとおりで、私どもも与党内部の各部会等々に関係大臣、防衛庁長官、科学技術庁長官、私等々、一月過ぎから回を重ねて御論議を願っておったという経緯がございます。
  167. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 私がなぜこんなことをお伺いするかといいますと、なるほど条約の主管はこれは外務省ですわね。しかし、内容から見ますと、これはもう防衛とかあるいは科学技術とかエネルギーとか、あるいはその他いろんな面において非常に深い関係があるわけなんですよ、内容的には。これは御承知のとおりだと思うんです。そうなれば、その結論をお出しになる場合に関係部局が相当私は真剣に御討議にならなければならぬ問題をたくさん含んでいる条約だと思うんです。ところが、そういうようなことが行われたような印象がないんです。もっぱら党内の調整には十分にエネルギーが割かれたようでございますが、内閣、閣内で果たしてどの程度の御検討をなさったかどうか。これを他のものと比較してみますと、たとえば独禁法、問題がありますとわざわざ関係閣僚協議会を開いて何回となく閣僚以下非常に真剣に御検討になった。あるいはスト権ストが問題になる、やはりこれは公務員のスト権が問題になれば関係閣僚の協議会、懇談会を開いてそうして衆知を集めて結論をお出しになる。ところが、今後二十年間少なくともわが国の運営を左右するかもしれない。しかも、防衛とかエネルギーとか科学技術とか、非常に重要な問題をはらんだこの条約の批准に当たって、果たして政府部内でそれだけの御検討がなされたのかどうかということについて、私は非常に疑問を持っておるもんですから、だから正式の閣議であれば正式の閣議でいいんです。その正式閣議に提案される前に、どの程度の、関係部局のそうした点についての意思統一、御検討、御協議があったか、概略で結構ですから教えていただきたいと思います。
  168. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その問題でございますと、実は政府部内の議論、意思統一は、この条約国会に御提案するという段階よりはるかにさかのぼりまして、署名をするという、いまから数年前の段階からなされておったと承知をいたしておもまして、そのゆえに、三つの条件というもの々当時政府声明で掲げたわけでございます。したがいまして、行政府としての意思は、署名の段階において、一応それまでの過程で検討されておったというふうに承知をしておりまして、保障措置協定締結がその後昨年まで時間がかかっておる。昨年の事態におきまして、当時の政府声明の三つの点についてどれだけの充足があるかということはさらに検討をいたしたわけでございますけれども、政府に関しましては、この問題は数年間検討されておったというふうに考えております。
  169. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 そういうことであれば結構でございますから、次に進んでまいりたいと思います。  それで、今度承認を求められるこの条約は、憲法の七十三条の三号によって承認を求めておられる。三号のただし書きですか、条約締結する場合に国会承認を求めるという、この憲法の条項によって求めていらっしゃると思うんですが、したがって、国会にお出しになったのは、その前に政府が調印されたものが提案されたと、こう考えていいですか、外務省。
  170. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 第七十三条三号に申します「条約締結すること。」、先生もおっしゃいましたように、ただし書きに基づきまして「事前に、時宜によっては事後に、国会承認を経ることを必要とする。」ということでございまして、この場合には、わが国はまだ締結前でございまして、その前に国会の御承認を得ようということでございますので、このただし書きの中の事前に国会承認を経るということで御提出申し上げているわけでございます。
  171. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 その事前に国会提出なさるその条約というのは、調印された条約ですね。
  172. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 署名したものでございます。
  173. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 そうすると、今度国会に提案された、その署名された条約というものはどれを指すんですか。
  174. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 署名された条約と申しますのは、お手元に差し上げてございます、これは五カ国語でできておりまして、日本語は正文ではございません。この五カ国語及びそれを正確に訳しました日本語に盛られている内容のものでございます。
  175. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 そうすると、国会に出されておりますところの日本文は、これは参考文献ということになる、参考資料ですか。
  176. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 日本語といたしまして、これは正文ではないという意味では、解釈等におきましては国際的に基準にはならないものではあるかもしれませんが、しかし、日本におきましては公布をされるということがございまして、公布されますと法律と同じ効果を持つものでございますので、この訳文につきましては、非常に巌密な検討を加えたものでございます。これは外務省ばかりではなく、御承知のように、内閣法制局におきまして専門的な見地から法的に詰めた上で訳文を選択しているということでございますので、どうも、参考資料かどうかと言われると、いかにも軽いもののようなことになりますけれども、私どもはやはり重要な内容を示す、日本語で内容を示す重要なものというふうに考えております。
  177. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 だけれども、正文は外国語、五カ国語のやつですね、そうでしょう。
  178. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 国際的な正文はこの五カ国語でございまして、日本語は含まれておりません。
  179. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 署名されたのは、その五カ国語の中のどれに署名されたのですか。
  180. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 署名欄におきましては、五カ国語が一緒になっている欄が日本のために設けられておりまして、それに日本代表が署名をしたということでございます。
  181. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 じゃあ、五カ国語の全部に署名したということになりますね。
  182. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) そのように解せられます。
  183. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 それなら、その署名されたその条約、それの承認を求めておられるわけですね。そうすると、それを提案したということは、どこへそれをなにしてあるんですか、国会の中の。提案された文書の中で、署名した五カ国語の分を提案しましたということは、国会の記録のどこになるんですか。
  184. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 御提出申し上げました条約の十一条でございますが、「この条約は、英語、ロシア語、フランス語、スペイン語及び中国語をひとしく正文とし、」と書いてございます。
  185. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 だから、署名された正文の承認を求めておられるわけですね。この五カ国語の正文をどうか承認してくださいというそういう提案が、どこにその手続が行われたかということをいま伺っているのです。もっと具体的に言いますと、日本文についての提案は出ていますよ、私知っていますよ。しかし、承認を求めるべき五カ国語の分をこれでございますという、そういう手続がどこに行われているかということを私は伺っているのですよ。
  186. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 正文でございます五ヵ国語は、国会の御承認を得るべきものとして御提出申し上げてあるはずでございますが、先生のお手元に。
  187. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 印刷物は出ていますよ。もらっていますよ。しかし、これが提案したものでございますということはどこにも書いていないんですよ。だから、端的に言いますと、日本語の条約文はちゃんと提案をしてありますと、ところがそれは正文ではない、正文の方は提出しましたということはどこにも出ていないですよね、手続上は。だからいままで審議されたものは、日本文の条約については審議されたかもしれませんが、厳密に言うと正式の正文についての審議は提案されていないから、書面は出ているけれども、正式の提案の手続はとっていないから、したがって審議は行われていない、こう解釈せざるを得ないのですよ。
  188. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 補足になりますが、一言御説明申し上げさしていただきます。  国会に御審議をいただいておりますのは、核兵器の不拡散に関する条約締結について御承認を求めておるわけでございまして、案件は核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件ということになっております。ところで、核兵器の不拡散に関する条約というのは、お手元にありますテキストに、日本語のテキストにも明確にありますように五つの言葉をもって作成されており、それが正文とされておるということでございますので、五つの国用語をもって作成された条約締結について御承認を求めているわけでございます。いま説明がありましたように、その五つの言葉のほかに和文のテキストをつくりまして、あわせて御提出してあるわけでございまして、その中にも明らかにありますように、いま申し上げましたように、五つの言葉でつくられた正文の条約、それを締結することについて御承認をいただきたいということになっているわけでございます。この関係は一般的な日本語が正文になっておりません国際条約のすべてに通用する手続でございまして、この条約について特異な手続をとっておるということではないわけでございます。
  189. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 少なくとも、わざわざ横文字は書かぬでもいいんですけれども、正文の一カ国語ぐらいはそれをそのままつけてお出しになればわれわれとしては、読む読まぬは別問題として、出された資料がこれは審議されたというふうに解釈できるんですけれども、そうでなしに、和文だけ出されて、ただ付録文書のようなかっこうで配付されましたって、それは審議の対象にはなっていないとわれわれは解釈せざるを得ないのです。  そこで、私がなぜそういうことを言うかといいますと、いまお話しのように、いままでほかの条約あるいは協定についても大体そういうやり方をしておるとおっしゃるから、だからその日本文について問題がなければそこまでわれわれ言わないんですよ。なぜそこまで言うかというと、お出しになった日本文が正文と意味が違うんじゃないか、こういう疑問を持つから私たちはそこまでさかのぼって検討せざるを得ない、こういうことなんです。  じゃどこが違うかということを申し上げますと、原文がアメリカの第一次草案にありましたように、アメリカの第一次草案には、TREATY TOPREBENT THE SPREAD OF NUCLEARWEAPONSと、こう書いてあったんですね。だからこういう原文の見出しが、表題がそれであれば、いまの日本文で私は文句は言いません。ところが、この正文はそういう言葉を使ってなくして、聞くところによりますと、ソ連の提案したTREATYON THE NON−PROLIFERATION OF NUC−LEAR WEAPONSこういう言葉が使ってあるわけです。そこで問題は、この両者の表現は内容的に非常に大きな相違があるとわれわれは解釈するから、したがって、そこまでわれわれは吟味せざるを得ない、こういうことなんです。  そこで正文の中の中国文がここにあります。中国文に拡散という言葉使っておりません。防止核武器蕃衍條約、これなら意味が内容と一致するわけですよ。ところがそうでない。日本の訳は、アメリカの草案の文なら一致するけれども、正文のものだとこれは意味が相当違ってくる、こういうことなんですがね。だから、卑近な例を申し上げて大変失礼なんですけれども、   〔理事増原恵吉君退席、委員長着席〕 まあ、かん詰めがあります。レッテルには天然ジュースと書いてある、中身は加工飲料である、こういうことになりますとこれは大変なことになりますね。それと同じことになっているおそれがあるから言うんですよ。皆さんがお出しになった日本文は、これはノンプロリフェレーションの訳語としては適切でない。アメリカのツー・プリベント・ザ・スプレッドであればそれでよろしい。ところがスプレッドとそれからプロリフェレーションとは意味が非常に違うんです。その辺の点は外務省はどういうふうにお考えになっているか。
  190. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 外国語でできました文章を日本語にどのように訳すかということにつきまして、特に文芸作品と異なりまして、条約文というのは正確に訳さなければいけないことは、私どもも十分承知しているわけでございまして、そのためにこそ、かなりの時間をかけて用語の選択等につきましても検討いたしますし、内閣法制局等においても審議をする、法律用語として適当であるかどうかということも兼ねまして審議をするという過程を経ましてつくられたものでございますが、ノンプロリフェレーションというのが不拡散という言葉で不適当であるというお言葉ではございますけれども、私どもはいろいろ検討いたしました結果、平易でわかりやすい拡散、不拡散と、プロリフェレーションというのを拡散ということがかなり実態をあらわしているのに適当な言葉ではないかというふうに考えているわけでございます。
  191. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 日本文で、日本国だけの問題であれば日本語として国民が理解できればそれでいいわけですが、しかし問題は、これは国際的な問題です。国内で通用したって国際的に通用しなければ、これは大変なことなんです。だから、この辺の言葉の違いのようだけれども、実質的に影響するところが非常に大きいんです。  これも卑近な例を申し上げて大変失礼でございますが、この間のロッキード事件で、日本語では政府高官になっている。原文ではガバメントオフィシャルです。ガバメントオフィシャルに政府高官という意味はないんです。それを日本語で政府高官となるからこんな大問題になったわけです。それを原語どおりに翻訳されておったらこんなことに私はならなかった、相当言葉の違いというものは影響が大きいんでおろそかにできない。また、外務大臣も御苦労なさっております北方領土の問題、ソ連はもうそれは済んだと、日本はそれは済んでないんだというような論争も、これはやはりロシア語と日本語との相違からくる大きな私は問題点だと思う。そういう意味におきまして、この核防条約日本の運命を、大げさに言うわけじゃない、われわれからいえば日本の運命を決定するかもしれない、あるいは今後二十年間日本を拘束するかもしれない。したがって、日本ではこういう解釈をしておりますと言ったところで、正文でないんですから、正文の解釈はこうだと押し切られたら、これはいかんともできない。そういう点を心配しますから。  そこでちょっと具体的に例を申し上げてみますと、この条約を翻訳してみますと、この条約は核兵器国、いまでは米ソですね、——が、みずから製造した核兵器を非核兵器国、たとえばモンゴル、韓国、西ドイツに六千発以上も拡散されておるが、その管理権を移譲しておらないからこの条約では問題にはされないのです。ところが、またもう一つ、核兵器国のA、たとえば米国が、核兵器国B、たとえばイギリスによりよい核兵器を持たせるように援助、奨励、勧誘することも、これはこの条約には抵触しないのです。ところが、いま政府がお出しになったような条約でございますと、ちょっとこれは内容が変わってくるわけです。だから日本に当てはめた場合には、アメリカから、日本が核開発といいますか、核兵器の開発、核武装することについてはこの条約加盟すればできない。しかし、アメリカの核兵器を日本に持ち込むことは、いまは三原則とか事前協議でノーと言ってこれを拒否できる状況にあるけれども、もしも三原則がなければアメリカの核を日本に持ってきたってこの条約には抵触しない、こういう大きな差ができてくるのですよ。だから、単なるスプレッドとプロリフェレーションとの、まあ適当にこちらの方が訳がいいだろうぐらいな簡単なことでは済まされない問題だと私は思うのです。その辺はいかがなされますか。
  192. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) ただいま先生が第一条の解釈といたしまして三つほど例を挙げてお話しになったわけでございますが、それ自体は第一条の解釈として私は正しいものと思います。ただ、最後の第三番目の例といたしまして、アメリカ日本へ持ってきてもいいのだということでございますが、結論はよろしいわけでございますが、持ってくるというのが一体どのような形で持ってくるかという点はやはり若干問題でございまして、管理権といいますか、そういうものをアメリカが保持している限り、つまり日本がその核兵器を用いたいと思っても日本の自由意思にはならない、すべてアメリカが管理権を持っているという形で持ってくる限りにおいてこの条約の違反ではないということでございます。
  193. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 日本は政策として持ち込ませない。だからそれを無理に持ち込むことは恐らくないと思いますし、それからまた、政府がしばしばお話しになっているように、ノーというときにはノーと言うと、こうおっしゃっていますから、現実問題としては私は日本拡散することはないと思います。けれども、条約上から言えばこれはやってできないことはない、こういうことなんですよ、いまの政府から出された和文、日本文から言えば。  そこで国民も議員さんも、これがあればまあ日本には核兵器は絶対入ることはないのだ、そういう理解のもとにこれは承認した方がいいだろうというようなことになると、これは国民の判断を誤らしめることになるのじゃないか、こう思うのです。
  194. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 先生のおっしゃったとおりでございまして、このつくらず持たせず、つくらせず持たせないというのが核兵器国の義務として第一条に規定しているわけでございまして、その核兵器国が持ち込むことができる、つまり持ち込みそのものは禁止していないのだということは、これは衆議院段階における審議におきましても、それ以前からもはっきりと政府側から御説明しているところでありまして、訳語のいかんにかかわらず、そのことははっきりしているものでございます。なお、それは訳語が間違っていたからそうなるということではなく、原文を読みましても、ただいまのような解釈が正確に出てくる原文でございます。
  195. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 そういうふうにおっしゃいますけれども、アメリカの第一案とソ連の原案とは相当違うんですよ。それを簡単に核兵器の不拡散だというようなふうに表現されますと、これは大変な間違いになると思いますよ。その問題についてそういう非常に重要なもっと明確にしなければならないところの問題を含んだ日本文であるということを私は指摘して、さらにそれからどういう問題が発展するかというようなことにつきましては、また今後のときに論議したいと思います。  そこで次に、外務省は非常にわれわれから言うと、よく言えば熱心に御努力になって、そうしてここまで持ってこられたのですが、われわれから言うと非常に無理をしていらっしゃるのじゃないか、こういう感じがするわけですね。どうしてこんなに無理をせられなくちゃいかぬか。その経過をたどってみますと、最初はともかく調印だけさしてくれ、批准はそのときにまた改めて検討しますからと、こういうようなことで調印をしたわけですね。その次には、ともかく国会に提案だけさしてくれ、こういう言い方で、そうしてまた国会も提案されました。それで今度は会期内にぜひひとつ上げてくれと、こういうようなことにして、非常に何といいますか、それでわれわれとしては後追いをしている。事前にそれらの点を十分に検討するようなチャンスがなかった。これは党内のことを言っては非常に私はこういう席ですからまずいですけれども、しかし、それも一つ条件になっておったから申し上げますけれども、この条約は党としては提案は認めようというところまでは決まっておりました。これを承認する、議決するかしないかについては、改めてこれは党と政府が協議して、機関に諮って決める、こういうことになっていた。そうしてそれを総務会に報告して了承を求める、こういうことになっておったんですが、経過を見ますというと、もうそういう手続を省いて、それで先に衆議院の外務委員会で議決して、委員会が通ったんだから本会議で議決して、そうして参議院に持ってこられる。そうして参議院において会期は二十四日までだからひとつ上げてくれ、何かともかく終始追い立てられて、しかもその追い立てられたのが、こういう理由だからやってくれということじゃなしに、その場限りの都合のいいような理由でもって無理をしてこられた、われわれはそういう印象を受けるのです。だから、参議院の中にはまだ納得いかないという方が相当あるのはそういう点なんです。理解を積み上げていって得た結論に基づいて進んできたんなら、そんなことはいまの段階になってないはずなんです。ところが、既成事実の方が先に進んで後で追っかけるから、まだこういう問題があるじゃないか、こういう問題があるじゃないかと、こう言わざるを得なくなってくるのですよ。  そこで私は、さっきも申し上げましたけれども、なぜここまでお急ぎにならなければならないのか、どうなんですか。端的に言いますと、アメリカとかソ連とか、超大国からどうしても早くしろと、しなければ承知しないぞというような圧力でもあったのかないのか、その辺はいかがですか。
  196. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この条約政府が署名いたしましたのは一九七〇年でございますが、その後、御承知のように保障措置協定につきまして少なくともユーラトム並み、それより不利な条件は受諾をしてはならないと考えまして、その交渉を長いこと継続をいたしておりました。御承知のように、これが事実上完結いたしませんとこの条約の御承認を求めるために国会で御審議を願うというわけにまいりませんので、この保障措置協定の実質上の妥結について長い年月を要したわけでございます。それが実質的に妥結をいたしましたので、昨年私から御説明をいたし、また、政府として国会に御提案をしたわけでございますが、その際、とにかく提案だけは認めていただきたい云々ということは、私の存じております限り、私から申し上げたことはないように存じておりまして、政府としては、御提案をいたした以上御承認を得たいというつもりでありましたことは当初から変わっておらないと存じます。もとより、その間、党内においてその後の処置について御協議あるいはお取り決めがございましたかもしれません。しかし、政府が御提案を申し上げる以上、御承認を得たいという気持ちで御提案をしておったわけでございます。  そこで、何ゆえに急ぐのかというお尋ねでございましたが、そのようなことで保障措置協定に時間がかかりましたので、実質妥結をいたしまして直ちに御提案をいたしましたが、もうすでにこの条約が成立いたしましてから六年余を経過しております。昨年再検討会議がございましたが、わが国は加盟国でないということで再検討会議にもオブザーバーという資格を持って出席をすることを余儀なくされたわけでございます。保障措置協定がまとまりました以上、できるだけ早く御承認を得て批准をいたしたいと考えておるわけでございます。
  197. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 調印されて提案されたんだから、それが早く承認ができるように政府が御努力をなさることは、これは当然の務めだと思いますから、それ自体をどうこう私は申し上げません。だから、これはある意味から言ったら党の方の問題になるかもしれませんが、再検討会議に、一つのタイムリミットとしてこれに間に合わせるように努力されることもこれはわからぬわけではないですが、これはもう過ぎてしまったわけです。だから、その点で言えば、次の再検討会議に間に合えばいい、最大限そういうことになると思うんですが、それをどうしても今度承認しなければならぬということについては相当な私は理由がなくちゃならぬと思うんですが、その点はいかがですか。
  198. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は、そういうふうにお尋ねでございますと、せんだってから当委員会で申し上げておりますことをごくごく概略申し上げなければならないわけでございますが、政府としては、この条約加盟いたしますことが総合的な国益であるという判断に立っておりますために、保障措置協定ができました以上は早いことが望ましいと基本的に思っているわけでございますが、その国益であると判断いたしました理由は、ただいま再検討会議のことをたまたま申し上げましたが、それはもうごくごく一部の問題でありまして、つまり、わが国がこのような平和憲法を持ちながらこの条約加盟をしないということから生じますところのいろいろな疑惑、その中には東南アジアの国々がわが国に対して時として表に出しますような疑惑も含まれております。それによってくる東南アジアの一種のわが国に対する猜疑心といったようなものもございますし、また、わが国が世界核軍縮の先頭に立ってこれを指導いたします際に、自分自身が批准をしていないということからくる説得力、信憑力の欠如といったようなこともその一つでございますし、総合的な国益からと申し上げますことを詳しく申し上げますとかなり長くなりますし、先日からこの委員会で申し上げたとおりでございます。  なお、先ほど米ソ等々の早期批准への圧力があるかというお尋ねがございました。一切ございません。
  199. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 私が受ける印象は、ともかく批准ということが最大目的になっておって、それ以上に重要な核軍縮の実現とか進行というようなことが何か二の次になっているような印象を受けるんです。ともかく批准さえすればいいんだ、そうすれば世界から信頼されるんだというようなことですがね。われわれが実際に考えることは、批准よりもむしろ世界平和の確立とか核戦争の防止とか核軍縮、これが最大の目標にならなくちゃいかぬわけでしょう。この点私は御異論ないと思うのです。そうすると、その最大の、しかも困難な目的を達成するために、ただ単に日本が批准する方が有効なのか、批准はおくれても、その批准ということを、まあ、てこと言っちゃ悪いんですが、てこにして、核軍縮を促進した方がいいのかどうか、私はこれはある程度検討すべき問題だと思うんですよ。批准してしまって果たして日本がどれだけの活躍ができるのか、あるいは批准しないでおって何もできないのか。私は、これは見解の相違になると思いますから詳しくは言いませんけれども、その目的をやっぱり本末というか、目的を明確にする必要があると思うのです。あくまで核軍縮であり、あるいは核戦争の防止であり世界平和である。そのためには日本が批准した方がより有利なのか、あるいは批准がおくれても、ほかにそれを一つのてことして問題の促進に役立たした方がいいのか、これは私は検討すべき問題であると思います。  そこで次にお伺いしますが、日本がこれに加盟して、私は常識的に言って、ソ連ないしソ連陣営は、有力な自由陣営の一員である日本がその体制の中に入っていわば手足を縛られるんですから、ソ連としてはこれは非常に大きなメリットじゃないかと思う。ところが一方に、アメリカ陣営が有力なそういう日本をその陣営に組み込んでしまって手足を縛ってしまうことが果たして自由陣営のためにいいのか、アメリカのためにいいのか、その点はアメリカはどのような見方をしているんですか、日本加盟ということについて、どう判断なさっていますか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  200. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたように、アメリカ側からわが国に対してこの条約の批准に関する何らの意思表示を、私の知っている限り最近受けたことがございませんので、厳密な意味でお答えすることは困難でございますが、かつて数年前、この条約ができるより前からもございましたけれども、ひとときアメリカが、わが国も核武装することが好ましいのではないかと少なくとも一部の人々が考えておったことはあったように思います。それは一部であったと思います。しかし、その後絶えてそういうことを聞きませんで、恐らく現在の米ソ二つの核超大国の立場から言いますならば、日本であれ西ドイツであれどこであれ、これ以上核兵器を持つ国が拡散しないことが総合的な立場から望ましい、こう考えておるのではないかと私は想像いたしますが、しかし、いずれにいたしましても圧力がましいこと、あるいは干渉がましいことは米ソどちらからも私の知っている限り受けておりません。
  201. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 私は、日本加盟して努力すべきことは二点あると思うんです。  一つは、日本加盟することによって、核兵器国でありながら未加盟の中国やフランスを加盟させることができるかどうか、それに貢献できるかどうか、これが一点あると思います。それからもう一点は、そういう核兵器国でなしに、非核兵器国でまだ加盟していない国を加盟させることについて、日本加盟がどのような貢献ができるかどうか。  もう一点は、日本加盟することによって米ソの核軍縮をどの程度促進させることができるか、こういうような問題について日本加盟が非常に大きな力になるということであれば、私は、少々問題があっても一日も早くこれは加盟すべきじゃないかと思うんです。その辺の御判断はいかがですか。
  202. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) フランス及び中国はこの条約加盟をいたしておらないことは御指摘のとおりでありまして、お尋ねは、わが国がこの条約加盟することによって、その両国あるいはいずれかに早期加盟を促す動機になり得るかどうかというお尋ねでございますけれども、恐らく、仏中国両国とも、加盟をしていない理由はおのおのが述べておりますけれども、その中で日本加盟をしていないからということは全く言っておりませんので、わが国が加盟したことによって両国の立場に大きな影響を与えるというふうには残念ながら申し上げることができないと思います。  それから、それ以外の未署名国あるいは未批准国等にどのような影響を与えるかということでございますが、これも、私は直接にこのような影響があると申し上げることは率直に言って困難なのではないであろうか。ただ、総合的に申し上げられますことの一つとして、日本もついに加盟をするに至ったということは、わが国が核能力を持つておりますことが知れわたっておりますだけに、西ドイツと相まちまして、これは世界に迷っておる国があるとすれば、相当のそういう背景としては核拡散あるいは核軍縮を前進させる力になるのではないだろうか、これは私は申し上げることができるであろうと思います。
  203. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 もう一点、いわゆる米ソの核軍縮にどの程度の貢献ができるか。
  204. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 米ソの核軍縮につきましては、この第六条からくる、米ソがこの条約上負っておりますいわば一つの厳密な意味での何と申しますか、非常に覊絆力とは申せませんが、少なくとも条約上そのような負担を負っておるわけですが、したがって、これはいろんな場において加盟国がこの六条を盾にとって米ソに追る、力をもって追ることはどの国にもできませんから、結局そういう道徳的な説得力ということ、及び米ソともやはり国際社会において自分たちの友好国というものとは友好を続けていきたいという気持ちがございますから、ただ力だけが説得力であるというわけではないと思いますので、やはり友好国との友好関係というものは米ソおのおの大切にしておりますから、そういう意味加盟国としてのわが国が申します立場と、みずから非加盟で申します立場とは説得力の違いがあるであろう、ここまでは申し上げられると思います。しかし、それを越えまして首根っこを押さえてでもさせる力があるかといえば、むろんそういうわけにはまいりませんので、それも相対的なことであろうとおっしゃれば、それはそうであるかもしれません。しかし、主張いたします立場として、自分が実践をしておるかおらないかということはおのずからそこに説得力に違いがあることは、これは私は大切な問題だとして申し上げることができるように思います。
  205. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 先ほど大臣が、東南アジアが日本を非常に心配しておる、その心配、不安が解消するんだということをおっしゃいましたけれども、常識的に見ますと、日本は現在何も持っておらない。ところが中共は、どの程度か知りませんが現実に持っておる。しかも中共が、東南アジアに対する態度からいうと日本とはまるっきり変わった態度をとっています。だから、現実的な不安という点があったら、日本よりも先に中共の核を心配すべきじゃないかと思うんです。それをなぜ、中共のことは心配しないで、現実に持っておる方は心配しないで持たない方の心配するというのは、これはどういうことなんでしょうか。
  206. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは余り申し上げたくないことですけれども、やはり東南アジアが、過去においてわが国の第二次大戦の経緯の中でいろいろな被害を受けたという記憶がなかなか消え去らないということに一つの理由があろうと思います。
  207. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 日本政府はこの核防について非常に大きな期待をしておいでのようでございます。しかし、この条約の発生経過から見まして、もうすでにその当時から、この核防条約というのはまあ西ドイツと日本の手足を縛るのが究極の目的である、こういうふうに言われ、そしてそれはどういうことかというと、米ソの核による世界支配体制を確立することなんだ、そのためにこの条約がつくられたんだ、こういう見方があったわけでございます。ところが、日本はそういう見方ではなくして、非常に何と言いますか、善意と言いますか、この条約を非常に高く評価して、そうして大きな期待を持たれ、また、それによってわが国は非常に大きな貢献ができるようなふうにお考えになっているけれども、これは少し条約に対する過大評価じゃないかと思いますが、その点は私の考えは間違っていますか。
  208. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ドイツの場合の経緯をつまびらかにいたしませんのでわが国についてのみ申し上げますけれども、先ほどから、この条約の批准についてわが国は米ソいずれからもいわゆる圧力あるいは交換条件といったようなものの提示を受けたことがない、これは現実にございませんのでそのことをまず前提にいたしますと、わが国がこの条約を批准するかしないかということは、全くわが国独自の意思に基づいて行われるということは明確であろうと存じます。その場合、わが国が何ゆえに、どのような判断に基づいて独自の意思を行使するかといえば、私はやはり基本は憲法が定めたレールではないかと思います。憲法は、核武装を禁止しておるかおらないかということには論争がございますから、いまそれには触れませんけれども、憲法に述べられておるいわゆる平和国家の路線というもの、それはまた第二次大戦の経験から来たことでもあると思いますが、その路線が今日まで三十年間ともかく成功をしてきて、そうして今後、客観情勢は決して過去三十年間に比べて悪くなっていない。むしろ好転しているかと思われる。そのようなわれわれの過去の経験に勇気づけられて、この条約を自由な意思に基づいて批准することがいいのではないかというのが、私は国民の多数の意思であろうというふうに判断をいたしておりまして、また、そのゆえに御承認を求めておるわけでございます。
  209. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 日本は非常に良心的で善良であるということをしみじみ感ずるわけです。ところが、国際社会はなかなかそうじゃないです。日本が善良だから相手が皆善良かと思うとそうじゃない。目的のためには手段を選ばぬというようなことが方々、毎日のように起こっているわけですから、したがって余り、自分が善良だから相手も善良だろうという前提で事を判断したり運ばれますと、結局やられてしまう危険性がある。だから、もうちょっと、やっぱり日本の水準で物を考えるんじゃなしに、国際情勢の判断も、そういう世界のほかの国々の水準で物を考えて、そうして日本がどうなるだろうかということをお考えいただきませんと、これは私は大変な失敗をすると思うんです。  現にこの核防条約の、まあ生みの親ではないでしょうが、それに大きな貢献をしたといわれるところのマクブライドですね、この方が日本に来て、これは朝日新聞の記事ですから、そのとおりだったかどうかしりませんけれども、その朝日新聞の記者とのインタビューで、お目にとまっておると思いますが、核拡散防止条約は結局ごまかしで核軍縮には何ら役立たない、こういう発言をしております。私は、これが公正な世界情勢、しかしこのマクブライドは、佐藤元総理と同時にノーベル平和賞をもらわれた方ですから、一番真剣に考えておるのは世界の平和であり核軍縮である。しかし、その世界の平和や核軍縮に対してこの条約は何ら力はないんだ、結局これは先ほど私が言いましたように、米ソのごまかしによってつくられたんじゃないかという評価は、私は、一応そういう立場の人の発言でございますから、政府としてもやっぱり玩味すべき発言じゃないかと思うんですが、どういうふうにお考えですか。
  210. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、前段の問題でございますが、わが国が善意でありお人よしである云々ということについては、私どもも、善意でさえあればわが国の安全が保たれる世界であるとは考えておりませんので、そのゆえに自衛の意思を持ち、自衛力を最小限備えておりますし、また、安保条約というようなものも大切なものであると考えております。これは国民のすべてがそれに賛成をしておられるわけでございませんが、政府はそのように考えてまいっております。したがって、この点に関します限り、宮崎委員の御所見と私どもの所見は、同じ方向を向いておると思います。  それから、その後のマクブライドの点でございますけれども、私は、マクブライドの申しましたことは、こういう意味であろうと考えております。すなわち、この条約を成立させることによって、あるいはこの条約加盟をすることによって世界の核軍縮が大いに進むのだということはないぞと、それはごまかしであるぞと言っておりますものと思います。確かにその意味では、この条約は核軍縮については、米ソに向かっては第六条の規定があるだけでございますから、これはこれによって米ソをぎりぎり追い詰めていくことはとことんはできないのであって、核拡散の防止というのは総合的な世界軍縮を達成するための一つの私は手だてである。これをやったからすべて軍縮が進むというわけにはまいらないので、まず、持っている国の数を制限しようではないかということでございますから、限られた目的を持つ限られた条約である。これさえあれば世界の軍縮が完成するというようなものでないということは、これはもうむしろ当然のことであって、それはそれなりにまた米ソ間でいろいろなことが行われなければならないし、また、われわれもできる限りのそのための努力をしなければならないことでございまして、この条約そのものが世界の核軍縮をこれさえあれば達成するといったような、いわゆるオールマイティーのものでないことは、もう明らかだと思います。
  211. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 マクブライドさんが言っておるのは、言った発言で重要なのは、そのオールマイティーであるかないかということでなしに、ごまかしであると、この一言に私は大きな意味を感ずるんですよ。最初に言いましたように、純真にこの条約が世界の平和なり核軍縮なり、そういうようなものを達成しようと言葉では言っておるけれども、真のねらいは、これは米ソが日本と西ドイツを縛り上げて、そうして自分たちの世界支配を容易にしよう、こういうことでやったんじゃないか、そういうふうに考えると、このマクブライドさんのごまかしではないかということが、われわれに非常によく意味が通ずるわけなんですよ。  それで、こんなことも言っては失礼ですけれども、世界のある外交官が、まあ日本をお人よしと言ったわけじゃないんですけど、アメリカ日本と外交のいろんなやりとりをしますと、日本は非常に善良なものだからアメリカにやられてしまう、そのアメリカが今度はソ連とやるとソ連にこてんこてんにやられちゃう、そのソ連が中共とやるとまた中共にこてんこてんにやられちまう、結局一番損するのは、善良であるけれども日本がいつも損しておるんじゃないか、こういう外交専門家の批判を聞いたことがあるわけです。  そこで、いま何でも大臣は善意善意、そういうふうにおとりになるところに私はむしろ非常な不安感というか、もうちょっと人間が悪くなってほしい、こういう感じが強いんですよ。そうせぬと、国際社会であんな海山千年の、目的のためには手段を選ばないような、そういう事実はわれわれは後で発見して、ああ、あのときそんなことがあったのかと言ってびっくりするようなことをやっているんですから、そういう連中を相手に余りに私は正直にやられるというと、後でわれわれが泣かねばならぬ。そういうことがあってはならぬ、こういうことを心配しますがゆえに、くどくこういうことをお話ししておるわけでございます。  そこで、私は最初に言いましたように、そういう心配があるから、だから日本がマイナスがなければそれは入って、そうして大いに国際社会の一員として協力することは、これは私は当然いいと思うんです。マイナスがなければですよ。ところが、もしも入ることによって日本に相当な危険なりマイナスがあるということになると、そこは十分警戒しなければいかぬ、こういうことを私は申し上げておるのです。  そこでお伺いしますが、そういうような国際社会の加盟国がこの条約について十分なる履行をしなかった場合に、どのような制裁の制度があるんでございますか。
  212. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 条約不履行の場合の制裁の制度ということでございますが、この条約自体には、違反に対する制裁の規定というものは設けられていないものでございます。
  213. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 先ほど外務大臣は、日本に対して非常に脅威を感じておる国がある、核武装について。しかし、日本のいま置かれた条件から言ってそういうことが果たして可能であるかどうか、日本が核武装することがですね。第一に、卑近な例ですが、原子力船「むつ」の問題すら処理できない日本において、核武装なんということが果たして、仮に能力があり意思があっても、日本の現状からしてそれができるかどうか、日本国民が核武装をやろう、そういう意思を持ち、やればできるということがあっても、現時点において客観的な条件ができるかどうか、まず第一に技術者がおるのかどうか、そういうことをやってくれる工場があるのかどうか、やったものを実験するところがあるのかどうか、技術者もなしに工場もなしに実験もせずしてどうして核兵器持てるのか、私はそう思うんです。だから、仮にやろうとしたってできないんだ、不可能なんだ、日本は。こういう点をみんなに認識を徹底させれば、日本に対する不安感というものはこれは納得してもらえるんじゃないかと思うのですが、そういう点はいかに外務省としては御努力なさっておるんですか。
  214. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は、ただいま宮崎委員がおっしゃいましたとおりのことを私どもそれらの国に申しておりまして、日本にはそういうつもりはないんだと申しております。そうしますと、先方が質問いたしますことは、それならばどうしてあの条約を批准しないんだと、こういう質問になってまいるわけでございます。
  215. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 それはごもっともな反問だと思いますけれども、しかし、現実日本の隣には核兵器を持っておる国が三国あるわけです。そうすれば、日本は外部に対してそういうような攻撃する意思も能力もないけれども、しかし、周辺にそういう脅威がある以上は、それに対する安全が、日本国民が本当に安心できるような条件が整わなければこれを承認しろと言ったって国民が許さないんだという、そういう説明はできないんですか。
  216. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ですから、それらの諸国の疑問というのは少しその辺が短絡的であることはそのとおりでございますけれども、しかし、ただいまの宮崎委員のような説明をいたしますと、そうすると、事情はともあれ日本はフリーハンドを持っていたいわけですなという議論にどうしても発展してしまいまして、そのフリーハンドはあなたの方に向けられるフリーハンドではないということは、これはなかなかそこまで、これはもうあと考え方の問題になってしまいますものですから、説明としてはむずかしゅうございます。
  217. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 フリーハンドというのは核武装するためのフリーハンドじゃないんですね、われわれが望んでおるのは。やっぱり平和利用のための自主的な技術開発をする、そのために諸外国の干渉を受けないようにフリーな立場で研究あるいはこれを進めていきたい、そういう点のフリーハンドでして、核武装するためのフリーハンドのためにどうこうと言っているんではないんですからね。そういう点の、やはり日本のような資源のない国が生きていく上については技術開発以外にはないんじゃないか、エネルギーの確保以外にはないんじゃないか、それを自分たちがこれから努力してやろうとする。ところが、入ってしまえばその努力は大きなブレーキをかけられるおそれがある。その辺の見通しが立たない以上、日本自身としてはそう簡単に加盟はできないんだと、そういう条件が解決しない以上は。そういうことの説明がどうしてできないんですかね。
  218. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは一々宮崎委員の御議論にお言葉を返すつもりではないのでありますけれども、そういう東南アジアの人々と議論しておりますときに、いや、核兵器を持とうというつもりではない、いわゆる平和利用、技術開発について云々ということを申しますと、この条約はそれらのことを一切禁じておりませんで、ありますものはいわゆる査察、保障措置協定でございますから、それならば保障措置協定を十分なものにすればいいではないかという結論にならざるを得ないのであります。
  219. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 意見の相違で、平行線になれば時間だけ空費しますから次に進んでまいりますがね。  私は、まあ日本加盟すれば政府がお話しになるようなメリットが確かにあると思うのですよ。しかし、これはいわば抽象的なメリットであって、現実にきょうあすそれによってどうこうということは私はないと思います、これからの問題だ。ところが、現実的に日本のエネルギーの問題から言って、日韓大陸だな協定というのは、これは早速現実的に日本に大きな関係を持ってくるわけですね。だから、順番としてはまあそういう理想的な、あるいは抽象的と言っちゃ言葉が適当じゃないかもしれませんが、そういうような核防に努力するよりも、大陸だな協定を一日も早く成立さして、それによって石油資源の開発努力する道を開く方が先決じゃないかと思うのですが、どうして大陸だな協定の方が後回しになってこちらの方が先行するんですか、その辺の事情をちょっと。
  220. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は、私どもとしてはこれもあれもとお願いを申し上げておるわけでございますけれども、大陸だな協定は今日まだ衆議院の段階において御議論でありまして、いろいろ委員会の運営、あるいは問題の性質そのものによるのかもしれませんが、大陸だなについてはまだ衆議院の御質疑が完了しておらない段階でございます。
  221. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 先ほど申し上げましたように、日本の周辺には核兵器を現実に持っている国があるわけです、アメリカ、ソ連、中国とね。そこで、日本加盟すれば一応は米ソの脅威というものは、これはまあなくなるかあるいは軽減されたと、こう考えていいわけですね、安全保障上は。ソ連とアメリカは、われわれが加盟すれば同じ条約国の一員でございますから。ところが、その枠外におる中共はそれに拘束されないわけです。そして依然実力は持っておる。国民の一般的常識から言ったら、現実に力を持って枠外におる、日中関係を正常化しなければ、それを条約加盟させるか、それができなければせめて日中条約締結する方が先決の条件じゃないのか。そうすれば、仮に条約加盟していなくても日中平和条約があるから、中国の、中共の核の脅威は日本はもうこれで一応は解消したとみなしていいんだ、こういうことになるんですが。  そういうときに、これは防衛庁長官にお伺いしますが、仮にもう米ソは核兵器を、これを廃棄とはいかなくても、廃棄したとしまして、しかも中共は残るんだと。そのときに日本は防衛上どういうような対応策が考えられますか。
  222. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 米ソは核軍縮につきまして相互にその努力を続けていくと思いますが、しかし、本来核軍縮と申しましても、現在の核の抑止の状態が変更されないということを私は前提としておるというふうに思いますし、この核戦力の均衡を維持しながら行われるものである、そういうふうに考えるわけでございます。したがいまして、中国の核装備というものの発展、進展というものはきわめてこれはわれわれにとりまして重要な関心事の一つではございますけれども、これに対処する方策といたしましては、やはり依然として日米安全保障体制に基づく米国の核抑止力に期待するという従来の基本方針を変える必要もないし、それがあって初めて日本の安全というものは保たれるというふうに私は考えるわけであります。
  223. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 長官、いま申し上げましたのは、米ソの核はもうほとんどなくなっちゃったんです。だから中共の核に対するのに、アメリカに依存しても対抗手段はないんじゃないでしょうか、日米安保条約はあるとしましても。もう一遍言いますよ。米ソはこれは核軍縮をやったと、だから仮に、極端な場合言ってゼロになった。しかし、中共の核というものは残るんだ。そうすると、持たないアメリカと日米安保条約を結んでアメリカに依存しても、その核に対抗する手段にはならないんじゃないかということを私はお尋ねしておるわけです。
  224. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先生のおっしゃる意味が実はよくわからないんですが、現実問題として。仮定の問題でありましょうけれども、そういうことがあり得るでしょうか。
  225. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 あり得ないということは、これは論理的にはちょっと矛盾なんじゃないんですか。核軍縮を推進して、これをやめさせようというんでしょう、この条約の究極的のねらいは。だから、忠実にこの条約を履行していけば、おのずからいまの核兵器国も核というものはなくなるという、こういうことになるわけですね。けれども加盟していない中共はそれに拘束されぬから、それはそのまま残るんだ。そのときに、もう核を持たないアメリカに、日米安保条約に依存しても対抗手段にならないんじゃないかということを私はお尋ねしたわけです。
  226. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) いまのようなお考えが私は非常に現実的でないんじゃないか。仮定だとおっしゃいますけれども、仮定にしましても、もう少し世界の核戦略というものを先ほどお話しのように冷厳に見なけりゃいけないんじゃないかというふうに思いますし、先ほど外務大臣がお答えになりましたように、この条約そのものがオールマイティーじゃないんだと、核軍縮への一歩前進する一つの方法なんで、それはやはりわれわれも努力しなきゃならぬ、協力しなきゃならぬのじゃないかというお話だと思うのです。そこ意味におきまして、先生のその立論が私にはどうしてもよく理解ができないんで、われわれ日本の防衛というものをあずかっている者といたしましては、そう簡単に米ソの核が、核均衡というものが根本的に崩れてしまうというふうには、近い将来には私には考えられない。やはりその意味合いにおきまして日米安保条約は有効に機能するというふうに思います。
  227. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 米ソが核軍縮を徹底的に進めていってもらうことを、私どもはこれからも最大限の努力をいたしますし、それが最終的に現実になることを祈るわけでございますが、恐らく米ソの核の敷居がずっと低くなってまいりました段階では、米ソとも、それ以外の核保有国、この場合フランスと中国でございますが、それをそのままにしておいて最後の核兵器を廃絶するというようなことは、米ソ自身の立場から恐らく容易になし得ないことで、自分たちが最終的に廃絶するときには、その他の保有国、フランス、中国に対してもそれを求めるであろうと考えるのが、米ソ自身の利害から考えて普通であろうと思われますし、また、そこまでいきませんと、自分たちだけが先に廃絶してしまうということは、恐らく現実の問題としては考えにくいのではないか。非常にみんながやめることは望ましいことでございますが、米ソだけが率先して全部やめてしまって、フランスと中国だけが何か持って残るというようなふうには、米ソ自身がそこまでそれこそお人よしにはいくまいというふうに私は考えるわけでございます。
  228. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 そこが現実問題として、常識的に言って、いまおっしゃったように、中共の核がそのまま存在しておるのに米ソが徹底した核軍縮をやらないだろうということは、これはもうみんなわかるんですよね。ところが、余りにこの条約について核軍縮を強調されますと、一般国民は過大な期待を持つんですよ。これさえあれば核軍縮は進行するんだ、ところが、現実に何も進んでいないじゃないかということになると、この条約自身に対する不信感ということになると、これは最後には軽視され無視されてしまうわけです。だから、そういうことであれば、そういうふうにやっぱりこの条約の限界というものを十分に国民に理解させませんと、日本は世界の核軍縮をこれに加盟してやるんだ、ところが一向に進まないじゃないか、けしからぬじゃないかということになったら、私はそういう点を、論理的に飛躍するようですけれども、筋道からいったら、やっぱりなった場合には残るけれども、しかし、現実問題として中共の核が存在する以上は、これは核軍縮やってもある一定の限界までしかできないんですよと、こういうことをやっぱり理解させませんと、過大のこれは期待を、夢を与え過ぎますよ、そういういままでの説明だと、核軍縮と言って。現実問題は、私自身は条約いかんによって核軍縮ができるとは思っていません。世界情勢なり、あるいは米ソの国益の立場から必要があればやるでしょうし、あるいは必要があれば拡大するかもしれません。だから先ほどおっしゃったように、この条約はオールマイティーじゃないんだということは正しく理解をさせませんとね。最初に私がやかましく言った表題の見出しのことにつきましても、私がやかましく言ったのは、拡散防止であればもうどこにも、これは核兵器が世界じゅうどこにでももういかなくなるんだ、にもかかわらず、韓国にいっているじゃないか、あるいはイスラエルにいっているじゃないかということになると、これまた不信感です。しかし、本来の意味において製造したり、あるいは管理権というものを持った国をふやさないんだ、これが本当の条約の精神なんだということを正しく理解させませんと、条約を誤解させますとこれは大変な、条約の、国民の期待を裏切った結果の不信感は、これは大変大きな、これだけに限りません、外務省の言うことは皆そうかと、あるいは政府の言うことはみんなそうかということになりますと、私は非常に大きなマイナスがあると思うんです。だから是は是、非は非、できるところはできる、できないところはできない、限界はここまでだという、そのけじめをやっぱりはっきりしていただきませんと、私はむしろ逆効果になるんじゃないか、こういうことを心配するんですが、もう一遍その辺の政府態度を。
  229. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その御指摘はごもっともだと考えます。私どもも、この条約は限られた目的を達する限られた役割りを持っている条約だということを機会あるごとに申し上げてきたつもりでありますけれども、何分にも世論が非常にこの条約に関心を持ちましたために、宮崎委員の言われるような過大な期待を持っておる国民もあるいはあるかと思います。  政府としては、この条約が幸いにして御承認を得て批准されるならば、これはこれで核軍縮ができたのではなくて、実はこれから核軍縮というものが始まるその一歩であるということをやはり強調してまいりたいと思っております。
  230. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 最後にお伺いしますが、私は物理的諸条件から見まして、今後相当国際情勢変化というものは大変なことが予想されるわけです。だからそういうような場合に、日本のいわゆる安全と繁栄を確保するためにはどうしたらいいか、これは私は一外交だけではいかぬと思うんです。あるいは一防衛だけじゃいかない。科学技術もあればあるいは産業経済、いろんな面が関係してくると思うんです。そういうような総合的な一番広義の日本の安全保障、それの根本的な対策、これを確立する必要があるんですが、これは責任はどの役所が、どういう機関がやるんですか。これはだれにお聞きしたらいいかわからないんですが、広義国防、防衛という意味において防衛庁長官どういうふうにお考えになっていますか。
  231. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 一防衛庁だけでは全うできるものではないというふうに思います。しかし、私、防衛の直接の責任者といたしましては、かねがね申し上げておりまするように、まず国民に、侵略を受けた場合にこれに抵抗する強い意思を持つということ、国を守る気概というものが国民に失われてしまったら国は守れないということが一つであります。いま一つは、必要最小限度の防衛力というものは保持し、これを常に怠らないように高める努力をしていかなければならない。しかし、それはかつての軍国主義時代のような他国に脅威を与えるようなものであってはならないし、また、一面において内政を著しく圧迫するようなものであってはならない。いま一つは、大規模の攻撃あるいは核の脅威に対しては、自衛隊のみによっては守り切れませんので、やはり日米安保条約というものはどうしても必要である。つまり、国を守る意思とその能力としての防衛力、そして安保条約、この三つがそろって初めて日本の安全と独立とが守られる。しかし、やはりその目的というものは日本に戦争を起こさない、あるいは侵略を未然に防止するということが目的でございますので、われわれがそういう防衛努力をし、防衛力を持つと同時に、それに至らしめないためにあらゆる外交努力をやっていただくということ、これは宮澤外務大臣の、そういう広い安全性……
  232. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 長官、時間がありませんから。私の質問は、そういうようなものを総合して方針を確定するのは政府としてはどういう機関があるのか、あるいはどこがおやりになるのかということ、それをお聞きしているんです。
  233. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) それはやはり私は国防会議がもう少し実質審議をやり、充実しなければならないというふうに思っております。
  234. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 終わります。
  235. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 先ほどの宮崎先生の御質問の中で、昨年の四月二十五日の閣議についてのお尋ねがあったわけでございますが、先生のお言葉もございましたので、内閣にさらに調べてもらいましたところ、先生の御記憶の方が正確でございまして、私の先ほど申し上げた答弁が誤っておりました。二十五日には持ち回り閣議で行われたということでございますので、この際おわびを申し上げますとともに、ここで訂正させていただきたいと思います。
  236. 黒柳明

    ○黒柳明君 核防についてはもう相当審議が煮詰まっておりまして、大所高所から質疑がなされていると思いますんで、具体的な問題をお聞きします。  その前に外務大臣に、六年かかってやっと国会承認、批准の可能性がちらほら見えてきたわけでありまして、歴代の内閣あるいは外務大臣非常にやっぱり骨を折られた。その仕上げを宮澤外務大臣がこれからまさにやろうと、こういう寸前かと思います。これは国のために私たち立場から結構なことだと思うんです。だが、惜しむらくはいまのこの政変劇だと思います。当然これは国会が批准しまして、これを調印した政府、なかんずく対外的な、一手に国の信用あるいは名誉というものを享受する政府がこう不安定であっては、外務大臣もやっと六年の仕上げをする喜びとともに、やっぱり一抹の何か心残りがあるんではなかろうか、こう思いますが、いかがでしょう。
  237. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いかなるものが外交の責任を負うにいたしましても、この条約を御承認いただきました上は、批准をし、誠実に履行をしてまいりたいと考えております。
  238. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはもうあたりまえでありまして、大臣がかわろうが、日本の国が変わるわけではありませんから、その立場を踏まえて、やっぱりいまの政変劇がなければ、この核防を批准する九十三番、九十四番目ですか、やっと仲間入りをするわけでありますから、それに対して日本政府は苦しい立場に海外において立たされた局面もあるわけですから、これは全くある意味では平等の立場になるわけです、いろんな問題もあるにせよ。しかしながら、その政府が非常に不安定であり、早いところ言うと、ついせんだってこの核防が批准されたら系統的な軍縮を考えると、こう外務大臣おっしゃったですな、果たして御自分の手でそんなことできますか、可能性として。それより内閣の方がどこかに行っちゃう可能性の方が強いんじゃないですか。どうでしょう。
  239. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだって、今後の軍縮の手法について系統的に考えてまいりたいと申しましたことは、私個人の希望として申しましたのではなく、外務当局としてそのように考えておるということを申し上げましたので、これは国会におけるお約束として誠実に行われていくことと存じます。政変云々ということとこの条約の問題、お前はどういう心境かというようなお尋ねでございますけれども、まあそれはそれ、これはこれというふうに考えております。
  240. 黒柳明

    ○黒柳明君 なかなかそれはそれ、これはこれといかないわけですよ。国会自体の機能はこれは別に問題はないと思いますけれども、政府の中は、これはもう与党、大臣あたりが足の引っ張り合いっこしているわけですから、そうなりますと大平大蔵大臣あたりも宮澤さんの派閥の大将ですね、国会が終わると辞任するんではなかろうかといううわさすら聞こえているわけですから。宮澤さんはあれですか、大平さんが辞任しても宮澤さんは辞任しませんね、どうですか、御覚悟は。これは重要なことでね、宮崎先生の質問も重要なら、私の質問も重要でありましてね、どうです。
  241. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは私の党のことに関することでございますが、私は自民党拡散いたさないように祈っておるわけでございます。
  242. 黒柳明

    ○黒柳明君 やっぱり宮澤さんもそろそろ責任を逃れるので、うまいジョークを使って……。長官、どうですか。いまの政変劇ごらんになって、やっぱりある程度国を守る——これから長官にもいろいろな質問しますけれども、その外務大臣と並んでやっぱり責任を分ける当事者ですよ。ところが、肝心の政府が対外的にどうなっちゃうのだというようなことで、日本の国だけじゃありません。アメリカにもいろんな話伝わっています。いまのロッキードの余聞として、いろんなアメリカ側の話も伝わっておりますけれども、そうなると、これを批准しましても本当にこの内閣が、これを批准した内閣が、あるいは長官が外務大臣がとなれば、これは一貫した役人の姿勢というものは変わりないとは思いますけれども、やっぱり外国政府は大臣というもの、時の政府内閣というものに対して全面的に目を向けているわけですよ。これがこういうがたがたしているとき、まあ坂田さんは中間派で、あっちもこっちも寄らない中間の立場ですけど、自党の中からこういうふうな大切なときに足の引っ張り合いっこやっている。しかも、この六年の仕上げをやろうという核防、ロッキードの問題はさておき、核防のときにこういうがたがたしたものをやってたんじゃ、対外的に信用をと言いながら、対外的に信用をなくしているんじゃないですか、いま政府が。これはこっちとこっちは違うよというわけにいきませんよ。一政府ですよ。これを批准しないことは日本政府の恥だ、対外的にうまくない。であるならば、同じですよ、それを六年の仕上げをやろうといういま、がたがたしているところは外から見れば同じなんです。どうです長官、中間派としましていまの足の引っ張り合いに対しての御感想。
  243. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) やはり私、内閣の防衛庁の責任者でございますので、忠実に私に与えられた任務を全ういたしたいと思っております。したがいまして、ごたごたがひとつないようにと祈るばかりでございます。
  244. 黒柳明

    ○黒柳明君 これでやめますけど、これは質問の趣旨じゃありませんで、もう私は寝ても覚めても何とかならないかなあと、自民党のため、国のため、国民のために思っているんです。そういうことがどうしても冒頭に、委員会に出て大臣の顔を見るとやっぱりそういう質問をせざるを得ないような心境なんです、いま。願っておりますと、忠実に義務を履行しますと、政変劇は起こらぬ——もう起こっちゃっているんですから。二十四日に終わって、二十五日、田中派は禁足令まで出しているんでしょう。大平派にしたって、お隣にいますよ、大平派の一人が。反三木ののろしを上げているんでしょう。そういうときに、ないように願いますというんじゃ、ちょっとやっぱり幾ら公式な場にしたって、あの稲葉さんみたいに思い切ったことを言うところに自民党のよさがあるんじゃないですか。どうですか長官、思い切ったことを言うところに自民党のよさがあるというじゃないですか。
  245. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私は先ほど申し上げましたような気持ちでございます。
  246. 黒柳明

    ○黒柳明君 結構。  本論に入りますけれども、いろんな国際情勢を踏まえて質問したいんですが、いま例の東海村のことで地元でいろいろ陳情なり話なり来まして、そちらの方を先にちょっと概略の説明、きょうの、活字では読んでおります。また報告書いただきました。地元の町会、県会からいろんな話も聞きました、午前中ずっとかけまして。簡単に概略説明してくれますか、どういうことなのか。
  247. 松田泰

    説明員(松田泰君) 概略御説明いたしますが、東海村にあります日本原子力研究所のJPDRと俗称しておりますわが国最初のPWRの動力試験炉がございますが、そこの一次冷却水から機器等で漏れてまいります漏洩水を回収するタンクがございますが、そのタンクの一部に欠陥がございまして、それが過去長い漏れていたということがわかりました。この事実は、ことしの初めに起こりましたものにつきまして四月の初めに報告がございましたが、それを調べてみますうちに、実は過去昭和三十九年から四十年、四十一年、四十二年ごろにわたりましてやはり同様のことがあったことが判明いたしました。それについてのわれわれの方で原研に調査を要求しまして、その結果を最近一部いただいたわけでございますが、それによりますと、過去におきまして、トータルにしまして約七千五百トンばかりの漏洩水が地下にしみ出ていたということがわかっております。なお、ここの漏洩水は放射性物質がわずかまじっておりますが、その濃度は比較的低うございまして、環境に対する影響は実際上ないという評価もいたしております。
  248. 黒柳明

    ○黒柳明君 これに対する監督局としての反省、どう反省していますか。
  249. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) いずれにもせよ、こちらへの報告ないままにこういう漏洩の事故を起こすというのはきわめて遺憾でございまして、今回わかりましたときに直ちに原子力安全局長名をもって厳重な警告並びにとるべき措置、報告を要求いたしております。今後ともこういう事態を引き起こすについてはその原因の解明がきわめて重要でございますが、原因の解明、これに対して講ずべき措置その他に関しまして厳重に注意をし、今後こういう事態を起こさないような措置を講じたいと、かように考えております。
  250. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣が来ないんで政務次官いま来ますけれども、これにはもう報告義務があるでしょう。事故に対しての報告義務があるでしょう。それを怠っていれば行政的な罰則もあるんでしょう。
  251. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 御指摘のとおり、原子炉等規制法におきまして報告義務違反に関しては罰金の規定がございます。
  252. 黒柳明

    ○黒柳明君 違反ですね、これは。
  253. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 報告義務違反でございます。
  254. 黒柳明

    ○黒柳明君 どうします、それ。
  255. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) ただ、罰則の適用に関しましては、特に行政罰の場合には行政目的達成のための最終的な担保でございますから、その適用に当たりましては、違反の態様なり程度あるいは行政目的の阻害に対する程度といったものと無関係に画一的に処理すべきものとは考えてないわけでございます。本件と申しますか、大分前に出ました本件漏水につきましては、放射能レベルにおいて危険性があるというわけのものではございませんので、かつ、原研におきまして原因の究明と今後所要の措置を講ずるということで、現にその措置を講じつつあるという事実がございますので、当庁といたしましてこれを告発するといったところまで実は考えておりません。
  256. 黒柳明

    ○黒柳明君 原子炉等規制法で、要するに影響の有無の前に定期的な報告の義務、事故に対しての報告の義務はあるんでしょう。そうでしょう。だから違反だっていまその前提で言ったわけでしょう。影響なんか関係ないんじゃないですか。
  257. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 報告義務違反であることは、先ほど申し上げましたように、そのとおりでございます。
  258. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、義務違反でしょう。影響については関係ないでしょう、影響がどうあろうと。地元の騒ぎ知っていますか、審議官。
  259. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 実は私、地元の状況について詳しくまだ把握しておりません。
  260. 黒柳明

    ○黒柳明君 詳しく知っているの、出せ。審議できないじゃないか、こんなことでは。出せ、早く。
  261. 松田泰

    説明員(松田泰君) 地元の状況については私、担当の課としまして把握しております。
  262. 黒柳明

    ○黒柳明君 課長じゃない。課長が政治的な結論出せるか。何生意気言ってんだ。政治的結論が出せるか。出せるか、お前が。出せるか。
  263. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) ただいま担当の局長呼びます。
  264. 黒柳明

    ○黒柳明君 待ちましょう。どっちみち日が長い。もう目の前ですから、大臣、安心している——。  外務大臣、お聞きしますけれども、デタントの問題です、米ソ二超大国のデタント。昨年の秋以来から若干、私の感じとしてはこのデタントについての両大国の考え方が変わってきたんではなかろうか、具体的には外務大臣がよく御存じのとおりでありますけれども、どうですか、この米ソ両超大国のデタントに対する動き、外務大臣はどういうふうにお受け取りになりますか。
  265. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) デタントについての最近の議論は、主としてアメリカ側で起こっておるように思いますが、私自身は、これはデタントというものが限られた日的を持つ一つの政策であるにもかかわらず、それが米ソ間のすべての問題を決定する政策であるかのごとき誤解から、アメリカ側で議論が起こっておると考えております。  すなわち、デタントの本質であるところの米ソの核戦争を回避しなければならないという、そういう命題は、私は米ソ両国側とも現在お互いに持っておるというふうに考えておりますので、このデタントという言葉を使う使わないといったような議論がございますけれども、その限りにおけるデタントについての米ソ間の合意というものは実質的に変わっていないというふうに私は考えております。
  266. 黒柳明

    ○黒柳明君 実質的には変わっていないと思います——。  長官に、防衛白書の原案が出ているんで、四日の日、読ましていただきまして、また、若干質問したいと思いますけれども、というのは、共存と抗争なんて書いてありますけれども、根本的には変わっていない。しかしながら、大統領が力による外交、片っ方の、いま外務大臣おっしゃったように米国の方と、私もそういう感じするわけですけれども、ソ連の方はやっぱりああいう国ですから、ことごとにそういうものについての発言なり動きなりがすぐ即座になかなか出てこないわけですけれども、大統領が力による外交と、こう言ったし、あるいは核について国防長官あたりが、おくれている、ソ連におくれをとっている、アメリカはと、こういうような発言もあります。だから、基本的には変わりなくても、アメリカの方からデタントに対する考えというものは相当やっぱり変わりつつあるんではなかろうか。また大統領選で、まあだれがなるかわかりません、フォードがなるにせよ、だれがなるにせよ、またそれを一つの契機にしまして変わる可能性もあるんではなかろうかという感触があるんですけれども、根本的にはいま変わっているとか、この次変わるとか、こういうものではないと思いますが、明らかにアメリカの方から除々にあるいは相当変わる可能性があると、こういう考えですが、どうでしょう。
  267. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) フォード大統領がデタントという言葉のかわりに力による外交、力を通しての平和でございますか、そういう言い方をすると言いましたのは、私は本質的に何も違ったことを言ったとは思っておりませんで、もともとアメリカの外交政策、ソ連もそうでございますが、黒柳委員がよく御存じのように、いまの世界の平和を推持しておるものは力の均衡であるというふうに考えておりますから、この際力を通じての平和と申しましても、それは哲学の変化ではないと思います。ただ御承知のように、デタントという言葉を使わないと言うに至りましたのは、たとえばアンゴラというような事件が起こってきた、他方でアメリカはソ連に食糧を売ってるではないかというようなことと両方あわせますと、いかにもアメリカがデタントの政策の結果ソ連にごまかされておる、損をしておるというような、まあいわゆる俗論と言っては言い過ぎかもしれませんが、そういう意見が選挙を通じてずいぶん出てまいりました。そのでデタントという言葉を使わないということになったと思いますが、もともと私の考えております限り、先ほど申しましたように、デタントという政策そのものは、両方が核戦争をしまいという基本の政策であって、アンゴラにおいて何が起こるとか、ポルトガルにおいてどうなるとかいうような、米ソの何と申しますか、勢力分野を定めたような政策ではなかったというふうに思っておりますから、その辺をアメリカ人のかなりの者が誤解をした、あるいはその誤解そのものが選挙の論争になっておる、こういうふうに私は考えていまして、お答えとしては、アメリカの選挙がどのような結果になりましても、基本的にデタントの政策、私の存じておりますそのような定義のデタントの政策というものは、私は変わらないであろうと思います。
  268. 黒柳明

    ○黒柳明君 実際に核防が批准されたとしましても、これはまあ外交政策とは別に、現実には各国とも自国の防衛のために、なかんずく米ソのこの核戦争というのはやっぱり私たち客観的に見ても決して鎮静化はしてない、こんな感じするんですが、長官、白書の原案見ると、非常にやっぱりデタントについて簡単に触れてる。まあいろいろマスコミのコメントが出てました。まあこれは勝手自由だと思いますけれども、非常に厳しい見方であるとか、あるいはデタントについて、余りこう内局と制服といろいろ話が食い違って具体的には述べられないんじゃないかとか、まあいろんなことが書いてありますけれども、それは別にしまして、いわゆる長官の、いまこの核防をわが国が批准する、世界的には日本が核防に対してこれを推准しないため承認しないために持っていた憂いというものはなくなります。だけど、現実にはそんなものとは違うわけです、日本の国防っていうのは。やっぱり現実的には力の関係、核の保有。現にこれがどの程度効果があるかどうか疑問視されている。インドなんかも実験やってるわけですね、言うまでもなく。イスラエルも保有してるんじゃなかろうかというようなことです。そういう観点に、一番直接それこそシビアに感覚を持っていらっしゃる長官としてはどう思いますか、このデタントについて。
  269. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) いま外務大臣からお答えになったように、私も本質的には変わっておらないというふうな認識を持っておるわけです。なぜならば、もともとデタントというものは、核の競争というか、米ソの力の追求の結果として生み落とされたものだと私は思うんです。その意味合いにおいて本質的には変わりませんし、いま外務大臣がおっしゃったように、何としても核の破壊力をお互い熟知するがゆえに、何とか核戦争をなくしなきゃならぬというのがいま米ソのやはり至上命令だと。だから、そのためにむしろ核競争が依然として続いているということなんで、その内容というものは私は変わらぬというふうに思います。ただ、これが適用の問題で、たとえば米ソの関係が非常に、ワルシャワ体制とNATOとがっちり兵力の、核を含めた兵力の対峙があって、そしてこれが緻密に計算されておるところではそれが使えないという状況が非常に確実性が高い。しかし、アジアに適用した場合一体どうなんだという問題が一つ残ると思うんです。しかし、それであってもなお米ソの関係はアジアにおいてもがっちり組まれておる、こういうことだと思います。しかしながら、NATOとワルシャワ体制とアジアとの違いはどこかというならば、日本に対しては確かにソ連の日本海その他につきましての海軍力の増強というものは著しいものがあります。つまり、潜在的な力というものは非常に増大をしておる。しかし、それは日本に対して直接脅威であるかどうかとなりますと、それは顕在化してない、こういうわけでございますし、NATOとワルシャワと対峙しておる関係は、日本とその他の国々と対峙しているわけじゃない。そこは若干違う。違うけれども、アメリカの国防白書を読みましても、やはり世界の核戦略の中でどうしたって、核戦略というよりも軍事戦略の中でNATOの中心は西ドイツを中心としたところであるし、また、北東アジアのかなめは何と言ったって日本なんだと、こういう認識は変わっておらないし、それはNATOよりも以下であるというふうには考えていない、ほとんど同等だというふうな認識があろうかと思います。しかし、それがたとえばアンゴラとかその他のところになるとまた若干違った状況、危険なる状況というものはある。あるいはいろいろの別な意味における勢力の支配というものも考えられる、こういうふうに私は考えております。
  270. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、もっと具体的にお聞きしますと、この原案の中には、核については信頼性あるアメリカの抑止力に依存するということでしょう。まあこれが最終的であるかどうか、だけれども原案ですから相当の練ったものでしょう。そうすると、アメリカの核抑止力が信頼性があるか。まあ、過去においてあったかわからない。あるいはいまあるかもわからない。だけど、アメリカ自体も、さっき言ったようにICBMやなんかの保有率については、米ソについてはアメリカ。だけど、輸送手段についてアメリカよりソ連の方がすぐれているとか、そういう段階になっているわけですね。若干ずつバランスが、あるいはさっき言ったように国防長官あたりはアメリカよりソ連の方が核の力が強くなりつつあるなんて発言もしているわけですよ。信頼性あるアメリカの核の抑止力に果たしていつまで頼り得るのか、私は頼ることがいいと言っていないんですよ、決して。反対の立場ですよ。しかしながら、百歩譲ったとして、信頼性があるアメリカの核の抑止力という、去年まではよかった。いままではよかった。だけど、そういうものがなくなりつつあるんじゃないか。そういう意味のデタントなんです。それがいま言ったアメリカの大統領が力による平和、それから国防長官が言った米ソの核についての特に輸送手段についてはアメリカはおくれていると、そういうものにあらわれている。そうすると、今度は日本が信頼性を持つという、いままでだってアメリカが攻撃されたときに日本が守られるのかなんて単純な常識的な議論もありました。そういうのは別にしまして、そういう空想、推理は別にしまして、アメリカ日本を守る、信頼する、両政府間の信頼関係があるんだと、それをまた百歩譲ったとしても、現実のバランスは若干ずつでも崩れつつある。そうなると、信頼性があるということじゃなくなる可能性があるんじゃないですか。現にその兆しが見えているんじゃないですか、どうですか。
  271. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) まあ十数年前は明らかにアメリカが優位にあるというふうに、これは自他ともに、ソ連自身もそう思っていたに違いないと思います。しかしながら、その差がだんだん狭められてきたということはアメリカは考えております。恐らくしかし、アメリカそれ自身としてはまだ優位にある……
  272. 黒柳明

    ○黒柳明君 ソ連の方が優位にあるものがあるでしょう。
  273. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) あります。それはいろいろ議論があるところ。でありますがゆえに、いろんなやり方でその核の均衡を保とうと双方が努力をしているということは否定できないというふうに思います。  それから、まあ果たして日本がそういうアメリカの核抑止力に信頼できるかということでございますけれども、これはたびたびお答えするわけでございますけれども、私は、やはり日本の安全ということが同時にアメリカの国益にかなうというふうに本当に思っておるというふうに思います。その限りにおいてやはり信頼性があるというふうに思います。
  274. 黒柳明

    ○黒柳明君 アメリカの核政策、まあスペインのあの条約は、決して変わったわけじゃない、例外もあり得ると、まあこういう御答弁出ていますけれどもね。やっぱり韓国にしてもあるいはヨーロッパにしても戦術核がある。あるいは七千発の戦術核がある。そういう発言をする段階において、やっぱりその国の国民性にこたえるために、そういう例外ですか、これもやっているわけですね。そうすると日本の場合、やっぱり日本国民性、これは大統領がかつて言ったことがありますね、非核三原則のときに。日本国民性にやっぱりアメリカがこたえる、そのためにはやっぱりいまの状態じゃうまくないんじゃないですかね、アメリカの核政策というものは。あらゆる国で、あらゆるところでアメリカはその国の国民にこたえて、核に対して、例外的な核、戦術核がある、あるいはスペインにおいてもそういう条約を結んでいる。ところが、日本はあくまでも核に対しては日本政府を通じてアメリカのすべてこれ秘密。日本においてもやっぱり例外的な、もし例外と言うならば、アメリカは核政策をとれる余地があるんだし、日本国民性はそれを望んでいるんじゃないでしょうか、国民としては。どうですか。政府だけがそれを突っぱねているんじゃないんですか。スペインのように、西ヨーロッパのように、韓国のように、戦術核があるんだ、七千発の戦術核があるんだ、あるいは核を貯蔵しないのだ、こういう例外的な条約、あるいは発言日本においてはすべて何にも言わないことがと、こういうふうになっておりますね、アメリカの核政策の原則。ところが、日本に対しても、やっぱり日本国民性というものを絶えずアメリカは考えている。その日本国民というのは、決していまの原則的なアメリカの核に対しては一切発言しないということを好んでいない、こう思いませんか。
  275. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) アメリカが核兵器の存否を言わないということを原則としつつ、ときとしてこれを言っておりますことは黒柳委員の言われるとおりでございますが、これは、申しました方が核の抑止力としての機能を発揮させるのに有効であるという場合にしばしば言っておるように存じます。御指摘のように、西ドイツの場合には、通常兵力は何といってもワルシャワ体制とNATO体制ではNATO体制が地形上劣りますから、それで戦術核があると言うことが抑止力になる。また、おっしゃいますようにそれが国民の要望に沿ったものであることになるのであろうかと思います。あるいはサイゴン失陥直後の韓国における戦術核の言明、これもやはり抑止力としてはっきりさせておくこと、これもあるいは韓国の国民を安心させるという効果があったかと存じます。スペインの場合にも友好条約等の一環でございますから、国民感情を配慮したものと思います。ですから例外的に申すことがある。しかし、基本的には、核を有効ならしめるためには言わないという原則があるように思います。  わが国の場合、わが国の非核三原則あるいは国民感情をよく理解して云々ということをしばしば米国首脳部が言っておりますのは、ある意味でそのことを言わないまでも、いろいろなことを配慮しながら日本に核がないということを言っておるということになろうとは思いますけれども、それはスペインにおけるような形をとっていないということではないかと私は思っておるわけでございます。
  276. 黒柳明

    ○黒柳明君 原則は原則で、例外はあるわけですからね。だから、日本国民感情というのは、少なくともその持ち込みはしない、持ち込ませないという両国の取り決め、これは結んでもらいたいということは、もう自民党を含んでのやっぱり原則じゃないですか。国民感情じゃないですか。そういう例外規定というものをやっぱりアメリカ日本国民感情を理解するという中において外交、正式外交権を持っている日本政府がそういう態度に出れば、これについての話は全く拒否するという態度にはアメリカ出てこないんじゃないですか。例外があるんですから。
  277. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、わが国との仕組みが御承知のように条約に基づくところの事前協議ということになっており、また、そのような適用がございませんでした沖繩については、返還の際にきれいになっておるということを正式にアメリカが声明をし、書簡も寄こしておるということでございますから、実質上ない状態であるということは、まあ世界に向かって言っておるのと同じことになると思います。私どもとしては、それに加えまして、しばしば米国首脳が言明をしておることがございますので、新たにそのための条約を結ぶというようなことは必要がないであろう、現行の制度をもって十分であろうというふうに日本政府として実は判断をしておるわけであります。
  278. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、その日本政府の判断と、アメリカが絶えず日本国民の感情を考える、日本国民のいろいろ意思を考慮しているんだと、これとのギャップですよ。ない、私もなかろうというような感じしますよ。相当そういう感触強いです。そうじゃなくて、持ち込み、搭載可能の艦船あるいは飛行機、一時通過、そういうものについて日本国民感情は皆さん方、当然外務大臣も含んで持ち込ませないと言うんですから、持ち込まれちゃ困るということは、これ大前提じゃないですか。ですから、それについて事前協議があるから、その事前協議があること、これはもうわかっているし、何回も国会論議繰り返された。にもかかわらず、非常に疑いがあるという野党の質問も出ている。それに対してアメリカとの信頼性と、これだけだったでしょう。ところがそれに一歩国際的には前進した可能性が出たわけですから、例外というね、条約上ですよ。発言の例外というのは、いま言ったようなヨーロッパや韓国でもあったわけですから、実態を示したというね。そうすると、日本においてもやっぱり国民感情というものは明らかにもう、なかろうと思うけれども、一時寄港あるいは一時持ち込み、いわゆる一時持ち込み通過に対しては全く与野党あるいは国民すべて含めてこれはしない方がいい、してもらっちゃ困るということは、もう完全に合意されているわけです。そういう国民感情を理解しているならば、アメリカにその政府が代表して物を言うことについて、アメリカは拒否することもない。その日本政府が、いやそんなこと必要ないんだというところにちょっとギャップがあるんじゃなかろうかと、こういうことなんですけどね。
  279. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはたびたび御議論になっておるところでございますけれども、政府としては事前協議制というものをいま条約で設けており、他方で非核三原則というものはしばしば言明もし、アメリカも理解をしておる、国会も御決議になっておるということで、まず体制としては十全と考えておるわけでございます。
  280. 黒柳明

    ○黒柳明君 まだ来てないですな、政務次官。  長官、来るまでP3Cのことですけれども、要するに海幕がP3Cを導入する計画はない、だけれども、それを導入したいという気持ちは、これはもう要求は当然だと、それで長官もP3C級の性能を持ちたいと。ということは、結論としては長官もP3Cを導入したいということになるわけですね、お気持ちとしては。まだ決まってないということは当然ですよ。まだ国防会議にかかってないということは当然ですよ。ですけど、これをこうあれしますと、長官としてもP3Cはやっぱり導入したい、こういう気持ちははっきりしている、こういうこと。
  281. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これはまだ白紙でございまして、決めておりません。
  282. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ決めてないんですよ。だけど、防衛局長が要するにP3Cを要求する、それに対して長官がああもっともだ、長官も性能がいいP3C級のものをぜひ持ちたい、こういうことでしょう。それじゃこれと同じ性能のあるものがほかの国にありますか、局長、ほかの国に。ほかの機種が。
  283. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 厳密に申しますとございません。
  284. 黒柳明

    ○黒柳明君 ない。そんなことは何も私、素人が言うまでもない、ないわけですよ。だからP3Cを導入したい、その要求はあたりまえだ、私もその同じ性能を持っているものを導入したい、P3C級の性能を持ちたい。導入したいと言っていませんな。決めているとは当然言っていませんよ。ということは、気持ちとしては、心情としては、ないんだもの、ほかに。P3Cをやっぱり導入した方がいいと。決めていませんよ、そんなことは。こういう気持ちであることは、もう明らかじゃないですか。
  285. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) それはどんなにお聞きになりましても決めてないんです。というのは、外国機にないことは防衛局長が申し上げたとおりです。しかし、国産というものも一つあるわけですね、選択の一つとしては。それからまた完全に輸入、あるいは完全に国産、二者択一だという考えもありますよ。考えもありますけれども、別にオプションもあるわけですね。機体は国産でやる、あるいは中身の脳みそは外国のものを導入する、まあいろいろのコンビネーションもあるわけで、したがいまして、私は白紙でまだ決めてないということであります。
  286. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、一番その手っ取り早い、すぐ向こうから導入してこれを実用化できるのにどのぐらい年数かかりますか、局長。パイロットの養成とかなんとか、まだ全くやってないわけですな。一番手っ取り早い方法でこれを実用に使うためにどのぐらい時間かかりますか。
  287. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 輸入でございますと最低三年、コンプリート輸入で最低三年、それからライセンス生産で五年でございます。非常に大ざっぱでございますけれども。
  288. 黒柳明

    ○黒柳明君 私もささやかながらこの問題でハークさんとたびたび、新会長ですな、こう文書を交わしてましてね、これは何もこれが絶対なものじゃないですけれども、こんな文書が来ているんですよ。P3C機の日本売り込みの可能性につきましては、日本政府へのわが社の提案を御記憶でしょうが——これは私に対して——P3C機製造について米国のライセンスのもとで日本で行われる——さっき言った可能性一つですね、このことは日本に、日本の航空機産業の比類なき製造技術を利用し、かつ高めるであろう取り決めのもとで、世界で傑出した対潜哨戒機を委託することになるとわれわれは考えておりますと、こういう、まあ一番これは新しいハークさんの書簡なんですけれども、何かこれ見ると、これは私全面的に信頼はしませんよ、私、英語へたなものですからね、日本政府、シャパニーズガバメントと、こう出ているんですよ。どうなんですかね。日本政府へわが社の提案を御記憶でしょうがなんて、ないものを書くわけないと思うんですけど、これはどういうことを意味してるんですか。ライセンスでいくことは間違いなかろう、こう希望していると、こう書いてあるんですよ。
  289. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) これは、先生御存じのように、四十八年の六月に、当時いまのP3C、それからヨーロッパのニムロッド、アトランティック、こういった各機種につきまして防衛庁から外務省を通じまして、ライセンス生産の可能性、それからじかに輸入するコンプリート輸入の可能性、それからライセンス生産をやる場合の条件、価格、こういったものについての照会を出しております。その回答が四十八年の七月に参っておりまして、その場合はライセンス生産についての条件その他を回答してきておりますので、アメリカとしては日本がライセンス生産の気持ちがあるということは十分にその時点において承知しておるんではないかと思います。
  290. 黒柳明

    ○黒柳明君 一部にP2Jについて、まあ足が長いものが必要あるとかないとか言われていますけど、やっぱりこのP3Cをなるたけ早い時期に持つ必要があると、日本の防衛については。そういう考えですか、長官。
  291. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私といたしましては、やはり島国でございますし、海洋の安全というのは非常に防衛上大切であると思います。したがいまして、対潜哨戒機の機能を高めるということは非常に防衛上大切なことであろう。それから一面、いま使っておりますP2Jもそれなりの役割りを果たしておるわけでございますけれども、やはり周囲の軍事力が高まってきますし、それから足が速くなってまいっておりますし、あるいは分析その他から申しますと、もう少しいい、つまりP3C級のものを持ちたいというふうに海幕あたりで考えるのは無理からぬことだというふうに思っております。
  292. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、持ちたいというのはいいんですよ。これは日本の防衛ですから、防衛というのはいついかなるときに何が起こるかわかんないための防衛ですから、まして長官は非常に歴代の長官としては熱心であろうと、こういう何か一部に評価もありますけれども、そういう中で、時間がやっぱり問題になるんじゃないですか、ある意味においては。何をやるかはせく必要はないですよ、そいてやると事をし損じますから。ですからせく必要はないけれども、やっぱり長官として、最高責任者として、時間のめどというものを考えないで、そのクラスを持持ちたい持ちたいなんというような長官ではないと、こう思います。いまおっしゃったように、一番早いんで三年でしょう、実用に使えるの。そういうP2Jということじゃなくて、P3C級を持ちたいというんですから、ライセンスでも五年、国産といったらもう七年も十年もかかるんじゃないですか。そういう期間というものを当然考慮して、そのクラスを持ちたいということも表裏一体だと思いますよ。そういうことから、どうですか、おのずから範囲が狭まれてくる可能性があるんじゃないでしょうか。国産はもうドロップしなきゃならない、こういうことですか。あるいは国産までも、まだまだ決めてないんだから、時間の問題はあるけれども、すべてともかく可能性をと、まだこういうお考えですか。
  293. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先生のおっしゃる意味はよくわかるんです。われわれの方も、やはり防衛上穴があくということはよくないことでございますから、その点は十分心得てこの機種の選定をしなきゃならぬというふうに思っております。しかしまだ、御承知のようにポスト四次防の作業をいまやっておるところであります。いずれこれが決まる。恐らく八月の末あたりには大体決められるのではないかと思います。あるいはそれがずれましても、十二月の末にはいずれかに決めなきゃならない。そういう一つのポスト四次防の構想が、理念がはっきりいたしまして、その長期計画の中で一体対潜機をどうするか、どういうものをするか、どれくらいの数量するかという作業がございます。でございますから、そのときまでにはまず決めなきゃならないということでございます。  それからいま一つは、何と申しましてもロッキード問題、真相をいま究明中でございます。やはり、国民に疑惑を招くような決め方はすべきじゃないというふうに私は思いますので……
  294. 黒柳明

    ○黒柳明君 局長、国産だとどのくらいですか、実用化まで。
  295. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 国産を、中身から全部完全にいわゆる完全国産ということにいたしますと、実用試験から実戦配備まで大体七年ぐらいかかると思います。先ほど大臣から申し上げましたように、いろんなバリエーションを考えておりますので、大体いまのP2Jのピークが過ぎますのが五十七年というふうに考えております。ただ、これは現在の耐用年数と実働時間、こういったものを算術的に計算して得た見通しでございまして、これが多少延びるのではないかということをただいま検討中でございますが、それにしても、せいぜい二年延長、つまり五十七年が五十九年ぐらいにしか延ばせないと思います。したがって、五十九年までにははっきりした実戦配備をする必要がございますので、いろいろなバリエーションを考えておるわけでございます。
  296. 黒柳明

    ○黒柳明君 まだ決まってないし、いろんな選択があるわけですし、いまの問題があるわけで、そうすると、三年と五年と七年と、P2Jを考えると、五十九年ですとちょうどいまから七年ぐらいですね。そうすると、そこまでにはどうしてもということに、あと十二月まで、それで最悪の場合にはあれですか、それほど執心なものでも、やっぱり一番最終的な長距離の、長い七年間というものも考えざるを得ない、こういう長官のお考えがあるんですか。全く決めてないわけですから、三年という短距離から七年という国産化の距離の間、ともかく持ちたいわけでしょう、このクラスのものを。最悪の場合には国産化ということで七年間。そうすると、P2Jの場合の五十七年、遅くとも五十九年、何とかそこまでにはと、ここまでも考えに入れざるを得ない、こういうことですか。
  297. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) やはりそうだと思います。
  298. 黒柳明

    ○黒柳明君 政務次官、参りましたね。もうこれ、報告聞いてますね。
  299. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) はい、聞いております。
  300. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣が御病気でいらっしゃらないので、済みません、お忙しいところ申しわけないですけどね、どうですか、これほど重要なことで、しかも報告義務の違反。行政的な罰則規定がある。しかも、四年間にわたって七千五百トンですか幾ら漏れちゃった。気がついた、わかったなんたって、多過ぎます。ふろの水が半分漏れた、いま気づいたというのとわけが違う。これをさっき二人とも、審議官も課長も、いや影響力ない。確かに最後は影響力ない。ないにしたってあるにしたって、法で決められた規則にも違反している。それについての罰則規定もある。それについて地元が、事故が起こって、そんな昔にもあったのか、それとなったらこれはもう大変な問題じゃないですか、いま審議官が、これについて私たちはその罰則規定、当てはめる考えもあるとかないとかおっしゃった。政治的にはそんな問題じゃないんですから。やっぱりこれを隠す、うやむやにする、やっぱり隠すことが原子力問題については政府態度かと。幾らやったって、安全というものが確保されなければわれわれはだめだ。これだけのことがはっきりしたって、法則に基づいたことだって、そんなことわれわれは考えてませんとなったんじゃ、これは私たち安全性だって疑問だ疑問だ。もし安全性さえ確保されればという考えとは全く合致しませんよ。思い切ってやっぱりこれについては規定にのっとった処罰もしなければならない。対処もしなければならない。どうですか。反省だけでは済まされないんじゃないですか。
  301. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) ただいま先生御指摘のこの問題につきましては、たとえその人体あるいは生活環境に影響がないということであったとしても、法律にも書いてありますとおり、報告して万全の処置を講じなければならない義務があるわけであります。そういうことで、明らかに私どもとしては報告義務違反の事例に該当する問題である、非常に重大なことであるというふうに考えてはおりますけれども、ただ、いま直ちに告発して罰則規定を適用させるべきかどうかという点につきましては、現在の段階では、いますぐ告発して罰則を適用させるという考え方はとっておらないわけであります。
  302. 黒柳明

    ○黒柳明君 なぜですか。なぜですか。その理由。
  303. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) 非常に重要な問題であるとは思いますけれども、いわゆるその罰則というものが、ただそういったことがあったからといって、直ちに罰則をかけて処分しさえすればいいということではなくて、やはりこういったことが起きないように今後万全の対策を講じるという方に私どもとしては重点を置いて考えるべきだと思います。まあそういうことで、この問題は非常に重大な問題でありますが、結果的には人体あるいは生活環境等にも影響のないということでございますので、直ちにその罰則を適用するという考えはいま持っておらないということであります。
  304. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、人体に影響があった場合に罰則を適用すると、こういうことですか。
  305. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) いえ、その罰則を適用するかどうかという点につきましては、必ずしも人体に影響あるとかないとかということで考えられるべきだとは思いませんけれども、今回の問題につきましては、われわれとしては告発して罰則にかけるという考えはないということでございます。
  306. 黒柳明

    ○黒柳明君 それじゃ罰則規定なんか必要ないじゃないですか。取っちゃえばいいじゃないですか。あくまでも事故が起こった場合には私たちは前向きに対しての防止をすることを本来の趣旨として、事故が起こったものについては反省を求めると、こういうふうに変えればいいじゃないですか。何のための法律ですか、それじゃ。
  307. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) いや、それはいま先生そうおっしゃいますけれども、私の申し上げたいのは、ただ単にそういった事故が起きて、すぐ罰則だけを適用して処分すればいいということだけが法の目的ではないんじゃないかという考えを申し上げたわけであります。
  308. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは余りにもおかしいよ。そういうものについて、怠慢だから罰則規定があるのに、あくまでもそういうものについては反省を求め、善処することがわれわれの義務でありましてなんと言ったら、立法府としてそんなのやめちゃえばいいや、法律つくるの。
  309. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) もちろん、ケースによって告発してすぐ罰則を適用させなければならないという問題ももちろんあると思いますけれども、今回の問題につきましては、私どもももちろん厳重に注意をし、警告をしているところでありまして、告発するというところまで考えていないということであります。
  310. 黒柳明

    ○黒柳明君 全くおかしいよ。こんなの、まあ論議してたってしようがないですけれども。局長、これはあれですか、やっぱり設計や工法にもミスがあった、これは通産省ですか、この容器というのか、工事の機具、原子炉ですか、それについて。これは通産省の管轄ですか。
  311. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 簡単に申しますと、通産省が検査をする施設でございます。
  312. 黒柳明

    ○黒柳明君 それに欠陥があったわけですな、工法とか設計にミスがあったわけですね。
  313. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) そう考えられます。
  314. 黒柳明

    ○黒柳明君 それが何か欠陥があったと、こういうことですね。通産に対してはもうすぐそれについては、話しして現場には行ったんですか。
  315. 伊原義徳

    政府委員(伊原義徳君) 通産省とも十分連絡をとっております。通産省としても、本件について十分な考え方をまとめておりますが、私が仄聞しておりますところでは、原子炉施設に非常に重要な施設と、やや付帯施設的なところがございます関係上、通産省の扱いとしましては、このクリーン・ドレーン・サンプと称しております水ための系統は、非常に重要な部分という分類には入っていないと承知しております。しかしながら、やはり通産省といたしましても、こういうふうな大量の漏れがあることは好ましくないということで、適切な対策をとるべきである、こういう御方針で御指導いただいておると思います。私どももこういうことが今後絶対あってはいかぬということで、厳重な警告を発しておるところでございます。
  316. 黒柳明

    ○黒柳明君 政務次官、大臣にもよく言ってもらいたい。科技庁としてやっぱり真剣に取り組んでもらいたい。原子力の必要性、これはもう全く否定できないような方向にいくことは間違いない。だけれども、アメリカだってこの原子炉の問題については、絶えず安全性を保ちながら、技術的にはわが国より数段進歩していながら不安がつきまとう。ましてわが国はそっくり導入しているんだ、輸入しているんですから、全く技術的にも幼稚なわけです、劣っているわけです。それについて、もし事故があるとするならば、これはやっぱりこれからのエネルギーの問題を先行して考えるよりも、これは安全性があれならば、人体にも実際問題になってくるわけですからね、生命の問題ですからね、子孫末裔までの問題ですからね。これは明らかに説得力が弱くなりますよ、政府自民党としては。それに対して対応するためには、こういう事故があったときに、前向きに、それこそそんなことはないんだということをすっきりやる。起こったことに対してはやっぱりしようがないじゃないですか。起こったことに対してぐじゃぐじゃ言ったってしようがないですから、法がある、それに対して罰則規定がある、何のためにあるのか。すぐこれ現場に行きまして、そこらの、失礼な話ですけれども、現場に任せない、科技庁としてやっぱり責任持ってすっ飛んで行って地元に対して対応する、せめて地元に対しては申しわけなかったと、そのぐらいの姿勢をとらないと、大臣いないんだから、失礼ですが、次官若いんだから、東海村まで二時間で行っちゃうんだからね。すみませんけれども、ぼくは忙しくて行けませんけれども、ひとつ行くぐらいの気持ちで対応すれば、それは百分の一のやっぱり説得力はあると思いますよ。それやらないで地元に任せて、これだけの問題になって、エネルギー問題でもう全面的にこれに反対することはどうか、京都あたりだって、あそこだってああいう問題が起きているんですから、全面的に反対できるかどうか疑問なエネルギー問題をわが国は抱えてるんですから、こういう問題が起きたときに、ただ単に、罰則規定があるのに、知りません、そんなことは、これはケース・バイ・ケースです、それから今度は通産にも言ってあります、あるいはこれについてはもう直したからいいです、直したのがまた事故起こっている。ここで本当に科技庁として、政府として、前向きの姿勢で現地に行って、せめてわかってもらう。せめて百分の一でも真心を込めてこの問題を説明するべきだと、こう私は所感を持っているんです。どうですか、これに対してただ単に精神論を吐露するだけじゃなくて、大臣の不在を預かる政務次官として、どういう態度でこれを取り組みますか。
  317. 小沢一郎

    政府委員(小沢一郎君) 今後の原子力の研究開発を進めていく上におきましても、もちろん先生の御指摘のように安全ということが最大の大前提であると思います。私どもとしても、この安全性の問題については最大努力をしておるつもりでありますけれども、なお、ただいま問題になっておることにつきましても、先生ただいま御指摘のような姿勢で今後取り組んでまいりたいと思います。
  318. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間超過してすみません。
  319. 立木洋

    ○立木洋君 いままでアメリカの核のかさの問題でも何回か議論されてきたわけですが、最初に宮澤大臣にお尋ねしたいんですけれども、このアメリカの核のかさに入るということは、いわゆる政治的に見て日本がどういう状態にあることを意味するのか、その点について最初にお尋ねしたいと思います。
  320. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、安保条約そのものは、相互協力ということが書いてございますように、わが国の国益にもなるがアメリカとしてもアメリカの利益になる、両方の利益が合致したところでできております取り決めであると考えております。もとよりその前提として日米両国がいわゆる民主主義、自由主義の政治であるとか、あるいは市場経済に対する信頼であるとか、いろいろな意味での価値観を基本的に同じくしておるということがその基本になっておるというふうに考えております。
  321. 立木洋

    ○立木洋君 同じ質問ですが、坂田長官。いわゆる防衛上、核のかさに入るということは、日本がどういう状態になっていることを言うわけですか。
  322. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私、かねがね申し上げておりますように、わが国は非核政策をとっておりますし、しかも、核の脅威に対してはわが自衛隊のみによって日本の国を守ることができない。したがいまして、どうしても日本の安全ということを考えれば、安保条約というものは不可欠なものであるというふうに考えるわけでございまして、その意味合いにおいて、アメリカの持つ核抑止力というものは非常に日本国民の一人一人の生存と自由にとって大切なものだというふうに思います。しかし、同時にこれはまたアメリカにとっても利益であるということからして日米安保条約というものが成り立つというふうに思っております。
  323. 立木洋

    ○立木洋君 私がお尋ねしたのは、いわゆるアメリカの核のかさに入るということが日本の防衛上どういう意味を持つかではなくて、核のかさに入るということが日本がどういう状態になっていることを言うのかと。これをやっていきますとまた抽象的になりますから、少し具体的にお尋ねしたいと思うんですけれども、日本にあるアメリカの核に関連する部隊ですね、核部隊とは言いませんが、核部隊の定義になるとまた宮澤さんがいろいろ言われますから、核に関連する部隊、いろんな意味で機能を持っている核に関連する部隊、どういう部隊が日本に配置されているのか。
  324. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 核に関連するという御質問の趣旨がちょっとよく私どもわかりかねますので。要するに、核の戦略について直接の任務を与えられている部隊は在日米軍の中にはないというふうに私ども判断しております。核戦略の直接任務を与えられている部隊は在日米軍の中にはないというふうに判断をいたしております。
  325. 立木洋

    ○立木洋君 いや、たとえば核の投下訓練を行うとか、あるいは核投下をした場合の実際の状況偵察する偵察部隊だとか、いろいろあるわけです。いわゆる核非核両用のりゅう弾砲を持っておる部隊だとか、そういういわゆる核戦略云々というふうな厳密な規定だとか何とかということではなしに、いわゆる一般的に言って核に関連のある部隊というのはどういう部隊ですか。
  326. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) いま先生の御指摘の問題は、たとえば核爆弾の投下訓練を行っておる沖繩の一八戦術戦闘航空団、それがミッションとして核のあれを帯びているかというと、そうでないと思います。これはかねがね外務省の方からも御答弁申し上げておりますように、アメリカはグローバルに部隊を展開しておりますから、全体の部隊の能力の均衡を図る、均等化ということが一つの問題だと思います。したがって、模擬弾の訓練、ファントムによる模擬弾の投下訓練というようなことは、アメリカの空軍としては必須の一つの部隊レベルを保つための必要最低基準ということになっていると思います。したがいまして、日本でそういう訓練を行うということはございますが、これが直接核のミッションを持っておるかどうかということとはつながりはないというふうに考えておるわけでございます。
  327. 立木洋

    ○立木洋君 いや、いつも核の問題を聞くとなかなか防衛が固くて、そういう面での防衛では私はないと思うのですけれども、おたくの任務というのは。  実際に私が言っているのは、つまり核のかさに入るということが日本がどういう状態になっておるかということを知りたいんですよ。ですから、直接的な任務、核戦略の任務を持っておる部隊だ、あるいはその部隊でないというふうな規定を私が要求しているのではないんです。いろいろなことをやっていると思うのですよ。いわゆる核は持っていなくても核訓練をやるというふうに、何回かいままで山崎局長が言われたことがありますよ、国会でも。だから、核があるということを私は前提にして言っているのではなくて、また、核戦略の任務を直接持っているという部隊であるということを言っているのではなくて、いわゆる核に関連のある部隊というのがどういうアメリカの部隊が日本に存在しているのかということを聞きたい。  じゅあ、一つ一つお尋ねしますよ。先ほど言われました第一八戦術戦闘航空団、これはどれだけの機数があって、どういう部隊編成になっているのか。
  328. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 第一八戦術戦闘航空団でございますが、これは戦闘機、ファントムでござ  いますが、F4のC、Dというところでございますが、これが四個スコードロンでございます。一個スコードロンは十八機であったと思います。ですから七十二機でございます。それから偵察機、ファントムRFでございますが、これが一スコードロン十八機、それから輸送機、C130Eでございますが、これが一スコードロン四機というところでございます。
  329. 立木洋

    ○立木洋君 この第一八戦術戦闘航空団のいま言いました四四、六七、二五、一二、いわゆる戦術戦闘中隊が最近どういうことをやっていますか、沖繩で。もう新聞にも報道されていますし。
  330. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私ども一々在日米軍の細かい行動についてフォローをしておりませんので、一八戦術戦闘航空団の最近の動きにつきましては、まことに申しわけございませんが、詳しく承知をいたしておりません。
  331. 立木洋

    ○立木洋君 たとえば二月の十一日、十二時間、いわゆる核投下訓練等々を含めた爆撃、実弾射撃、投下演習など四百十五回、ですから一分五十秒に一回というすさまじさで行われているわけです。これは何回かこの外務委員会でも問題にしましたし、こういう投下訓練というのはやるべきではない、最小限にとどめるように申し伝えたいというふうなことを木村大臣のときから言われたと思うのですよ。これは山崎局長も御承知のとおりだと思うんですが、大変激しい状態でいわゆる投下訓練というのが行われている。それから三月の八日から十八日、韓国の東海岸で行われたドラゴン演習では、このファントムがやはり参加しておるという状況があるわけです。前回こういう核投下訓練というのについては、やはり地元の人々の要求もあるし、こういうふうなことはできるだけ少ない方がいいということを繰り返し言われてきたわけですが、大変な回数で現在でもやはり核投下訓練というのが事実上行われているということについて、大臣どのようにお考えでしょうか。
  332. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 先ほどから丸山防衛局長からも御説明がありましたように、アメリカの空軍は全世界にわたって展開いたしておりますので、その一定の練度を均等に維持するために訓練をしなきゃならぬということはわれわれとしても理解する必要があると思います。そうしてわれわれは、詳しいことはわかりませんが、特別にその訓練が激化しておるとは承知しておりません。ただ、訓練というものは平均して行われるわけでは必ずしもなく、まあ軍隊でございますからときどき査察というようなこともあるのでございましょうから、あるいはそれに備えて訓練を強化する、一時期強化するということもあり得るかと思いますが、年間を通じて見て、特に沖繩方面その他において訓練を強化しておるという印象はわれわれとしては持っておりません。
  333. 立木洋

    ○立木洋君 強化されているという印象は持っていないというわけでしょう。局長、やっぱり事実について調べていただいてから述べていただきたいと思うんですけれども、これはベトナム戦争以前、つまりベトナム戦争後ではなくて、ベトナム戦争中ですよ、この第一八戦術戦闘航空団というのは二個中隊、いわゆるファントム、これは四四と六七ですよ、戦闘中隊というのがあったのが。これは核投下訓練をやったのはこの二個中隊です。だけど、ベトナム戦争後にこの四四と六七戦闘中隊に加えて、一二、二五戦闘中隊がふえて四個中隊になっているんですよ、いま局長が言われたように。そしてこの四個中隊が繰り返しやっぱり訓練やっているんですよ。これはそういう核投下訓練を事実上行っている中隊がふえているんですよ、ベトナム戦争後に。これは印象で激しくなっているとは思われませんというふうに言われると、やはり私は反論せざるを得なくなるわけです。その点はやはりちょっと事実を調べておいてお答えいただきたいと思うんです。  それからもう一つ、いままで問題になりましたけれども、第四〇〇弾薬整備中隊というのが嘉手納にありますけれども、これはどういう機能を備えた弾薬整備中隊なんでしょうか。
  334. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 余り私どもは詳しいことはわかっておりませんが、第四〇〇弾薬整備中隊、これは第三一三航空師団隷下でございまして、任務といたしましては、第五空軍の輸送空軍、それから戦略空軍、これらとともに弾薬支援を提供するという任務を持っておるというふうに理解をしております。
  335. 立木洋

    ○立木洋君 この第四〇〇弾薬整備中隊の管理しておる弾薬貯蔵庫、これは一般弾薬もあるということはもちろんですが、これは沖繩が返還される以前はいわゆる核兵器をここで貯蔵しておったということはアメリカが明確に述べてますから間違いないと思うんですが、そうだったんですか。もちろん沖繩返還後これは全部撤退しましたというふうにアメリカ言っています。ここに沖繩が返還される以前にはやはり核のいろいろな事故があったという報告もアメリカの文書で出されております。だから、この第四〇〇弾薬整備中隊というのは、いわゆる沖繩返還以前には核兵器を貯蔵するそういう機能を持っておった弾薬貯蔵庫であるということは言えるわけでしょう。
  336. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) お答え申し上げます。  私どもの方では、いま先生のおっしゃったことについては裏づけるような材料を持ち合わせておりませんのでわかりません。
  337. 立木洋

    ○立木洋君 これは、防衛上アメリカの核のかさに入っているというわけですから、いわゆる核のかさがどうなっているのかということをよく状態を知っておらないと、防衛上いろいろ問題になるだろうと思うんです。坂田長官がいろいろやられておる、共同作戦問題なんていうことを議論して前向きにやりましょうと、私は前向きとは言いませんよ。だけど言われておるんだから。だけど具体的に状態がどうなっているということをわからなくて、そして共同作戦やりましょう、やりましょうと言ったって、事実上何にもわからないで盲にされておると同じことになるわけですから、そういう実態というのはよくやはりつかんでおいていただきたいと思うんです。ところが、この第四〇〇弾薬整備中隊というのは、沖繩に返還する以前にいわゆる核弾頭貯蔵する能力を持っておったんでしょう、核爆弾をですね。そして核兵器が沖繩返還後撤退されたというふうに言われています。ところが、その後やはりここには核兵器の専門要員、核兵器の技術職と専門職、こういう人々がここに存在しておるという状態もあるわけです。これは私は、だから核があったと言えばまたそれは否定されますから、そういうふうには私はお尋ねしませんけれども、しかし、依然としてこの第四〇〇弾薬整備中隊というのは核をいつでも貯蔵することのできる状態に置かれているということは、沖繩返還後もいわゆる核専門職、核兵器に関する専門職が、ちゃんと名前までもう明らかになっているわけですから、いたわけですから、これは状態としては明確に存在しておるというふうに私は言えると思うんですけれども、その点どうでしょう。   〔委員長退席、理事秦野章君着席〕
  338. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 先ほどから申し上げますように、アメリカの空軍の場合、世界にまたがるコミットメントを支援する能力を備えておく必要がある。そして、その空軍に必要な弾薬を取り扱う要員についても、通常兵器のみならず、核兵器をも扱い得る能力を訓練しておく必要があるということは事実でございまして、そういう観点からそういう訓練を受け、そして、そういう資格を有する人間が世界各地に配置されておるということは事実でございます。しかし、それと実際に核兵器が置かれておるということとは全く別の問題であることは立木委員も御承知のとおりでございます。
  339. 立木洋

    ○立木洋君 もう一つ、三四五戦闘空輸中隊、これがどういう任務を持っているのか、どういうふうな編成になっているのか、この点についてはいかがですか。
  340. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 横田に展開しておる部隊のことだと思いますが、これはフィリピンのクラークにございます第三七四戦術空輸航空団の隷下、指揮系統はそこに入るものでございます。装備としてはC130E輸送機、これが十六機ございます。任務は戦術空軍でございます。
  341. 立木洋

    ○立木洋君 これは核を空輸する任務を持っているということは御承知ですね。山崎局長、答えていただきたい。
  342. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 本件に関しましては、さきに立木委員から御質問がございまして私も御答弁を申し上げたことがございます。この三七四戦術空輸航空団の任務の一つとして、核兵器輸送ということもあるということは事実でございます。
  343. 立木洋

    ○立木洋君 この三四五戦術空輸中隊というのはどういう方面に特に行き来をしておるか。この点も前回の資料で明らかだと思うんですけれども。
  344. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 行動範囲について私たちは正確に存じておりません。  それから、先ほどちょっと言い間違えましたが、この戦術空輸航空団の正確な名称は三四五でございます。
  345. 立木洋

    ○立木洋君 これはあのときにフライトの計画、それから実行された内容、事実どちらに向けて飛んだかというのは全部資料をお渡ししたと思うんですよ。これはアジア、いわゆる韓国だとか、フィリピンだとかタイだとか、こういうところに行き来をしておるという状況になっております。  それからもう一つ日本の嘉手納基地にある三七六分遣隊司令部というのはどういう任務を特に持っておりますか。ありませんか、そちらに。
  346. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私どもの関知している限りでは、そのような部隊は存在しておりません。
  347. 立木洋

    ○立木洋君 これは、B52がいつでも飛来可能なように態勢を整えていくことを任務にしております。それで、きのうでしたか、またB52が飛んで来ましたね。これはまた口実は同じように台風のためということになっておりますが、この経過、どういう事情でどういう形で、B52が飛んで来た場合の外務省に対する通告その他どういうふうになっておりますか。
  348. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 昨日の午前九時に在京米国大使館から外務省に対しまして、グアム島にあるB52十三機及び給油機であるK・C135六機が、台風避難のために昨日の午前十一時三十分以降順次グアム島を飛び立って、同日午後順次沖繩の嘉手納飛行場に到着する旨を通報してまいりました。そして、グアム島における台風が去ったならば直ちにグアム島に戻る旨をあわせて通告してまいった次第でございます。
  349. 立木洋

    ○立木洋君 この問題についてまた議論をしたい点もありますけれども、きょうは主にそれが目的でありませんから、先に進ましていただきますけれども、いわゆる第三海兵師団ですね。第三海兵師団の、これには歩兵連隊もありますけれども、特に砲兵ですね。第一二海兵連隊の持っておるりゅう弾砲、どういうりゅう弾砲を持っていますか。   〔理事秦野章君退席、委員長着席〕
  350. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 第一二海兵連隊は、私どもの知り得たところによりますと、二百三ミリの自走りゅう弾砲、それから百五十五ミリのりゅう弾砲、同じく百五ミリのりゅう弾砲でございます。
  351. 立木洋

    ○立木洋君 これは、すべて核非核両用ですか。どういうふうになっていますか。
  352. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ただいま申し上げましたうち、二百三ミリの自走りゅう弾砲と百五十五ミリのりゅう弾砲、この二種類につきましては核非核両用であるというふうに承知をいたしております。
  353. 立木洋

    ○立木洋君 この第三海兵師団というのは、最近どういう訓練を行っていますか。
  354. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私どもでは訓練の詳細は承知しておりません。
  355. 立木洋

    ○立木洋君 これは読んでおいていただきたいのですが、アメリカの国防総省が四月九日に明らかにしておりますが、その一部を読みますが、「沖繩駐留の米第三海兵師団は、世界各地の米軍と同様に、核兵器はもとより、生物化学兵器戦の訓練を行っているということを公式に明らかにする。」、こういうふうに言われているわけです。ですから第三海兵師団というのも、事実上核訓練を行っている部隊であるというふうに言えると思うのですが、いかがでしょうか。
  356. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) そういう発表があったことは承知しております。これはいずれも、われわれの了解するところでは、核兵器あるいは化学兵器に対する防護訓練を主としておると承知しております。
  357. 立木洋

    ○立木洋君 この第一二砲兵連隊、第三海兵師団は最近韓国に行って訓練をやっている、演習が行われたということなんですが、実射の訓練が行われたということですが、それは御承知ですか。
  358. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 第三海兵師団の一部の部隊が韓国に赴いて韓国軍とときどき合同演習をやっているということは、報道等によって承知しております。
  359. 立木洋

    ○立木洋君 いま局長がときどきやっているというふうに言われましたけれども、特にいわゆる核非核両用のりゅう弾砲を持っている第一二砲兵連隊は、数年間、韓国に行って練習したことはないですよ。ことしの三月の末から一カ月間行って実弾の射撃訓練をやっています。だからそういう点、以前とはやはり違う状態にあるということ、それが核非核両用のりゅう弾砲である、このこともやはり明確にさしておきたいと思うんです。  それから次に、アメリカの太平洋空軍核兵器安全計画という文書があります。これは一応公表されている文書ではありませんけれども、その中の一節にこういうふうに書いてあるわけですね。第一章の第一節の総論のところに、「本教範は、核兵器能力を維持することを要請されている太平洋空軍のすべての施設と部隊に適用されるものとする。」、こういうふうに書かれてあります。だから核兵器があるということではありません。けれども、核兵器能力を維持することを要請されているところにすべて送られる。これは日本の米軍ではどこどこにこの教範が配付されていますか。
  360. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) いま仰せのとおり、それは米軍の内部文書でございますから、われわれとしてはどこに配付されておるかは承知しておりません。
  361. 立木洋

    ○立木洋君 これは予算委員会でしたか外務委員会でしたか、私たちは資料を提出いたしました。宮澤外務大臣に直接お渡ししました。これを見ますと、日本にある配付先を改めて言いますと、日本には八つの基地のうち八つの基地すべてに配付されております。十九部隊のうち十三部隊に配付されております。  それは第五空軍司令部、第四七五戦術戦闘航空団、第三四七戦術戦闘航空団、第六三四一支援航空団、第三四八戦闘群、那覇にあります第五一戦闘迎撃航空団、第三七四戦術空輸航空団、嘉手納にある先ほど言いました第一八戦術戦闘航空団、第四九八戦術ミサイル群、第四〇〇弾薬整備部隊、立川にあります三一五航空師団、第八一五戦術空輸中隊、こういうところに全部これが配られています。これはだからここに核があるというふうには私は申しませんけれども、しかし、ここに明確にされておりますように、核兵器能力を維持することを要請されておる空軍であるということだけは、アメリカのこの教範の第一章に書いてあるわけですから、これは私は間違いないだろうと思います。それはそのとおり御承知いただけますか。
  362. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 私たち承知しておりますところでは、この種の計画書はかつてあったということは事実のようでございますが、それは一種の災害対処計画の一環として準備されたものであるというふうに承知しております。しかし、この計画書は現在は使用されていないというふうに聞いております。
  363. 立木洋

    ○立木洋君 使用されていないというのはいつからですか。そうしてこれにかわるものがでたということは明確にすることができますか、局長
  364. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) この問題につきましては、私、四十九年の十月十四日の衆議院外務委員会において、共産党の松本善明委員から御質問があったわけでございます。そして具体的な資料の提示もございましたので、調べましたところ、先ほど申し上げたようなことでございまして、その旨も私たちとしては御回答申し上げました。その後、そのときに提出された計画書にかわる新しい計画書は作成されておるかどうか、あるいはもう作成されていないのかどうかについては、私たち承知しておりません。
  365. 立木洋

    ○立木洋君 これはまだ挙げればきりがないのですけれども、もう時間がありませんから結論の方に急がなければならないわけですけれども、一つは、先ほど言いましたように、第一八戦術戦闘航空団にしろ、弾薬整備部隊にしろ、海兵師団にしろ、偵察中隊にしろ、いろいろと核に関連のある米軍の部隊というのがある。しかし、事実上アメリカの核のかさに入っておるというふうに言いながら、防衛庁としてはそれぞれの部隊がどういう機能を持っているのか、どういう核との関連の訓練が行われているのか、その実態が十分にわからないというふうな状態について、防衛庁長官いかがお考えですか。
  366. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) いままでずっと静かに聞いておりましたけれども、これはあくまでも核の訓練をやっておるわけでありますから、しかもわれわれの方は、日本にはもう非核三原則、たびたびこれはフォード大統領も来て言明をしておるわけでございますから、それからまた、日本国民感情というものも非常によく承知をしておるわけですから、そういうことはないというふうに思っております。ただ、私ども防衛庁としましては、世界の核戦略といいますか、あるいはいろいろのものについて、やはりもう少し知らなきゃならぬということは考えております。その点が多少不十分であるというふうに思っております。と言うのは、非核三原則をわれわれは政策としてとっておる。だから核の問題何も勉強する必要もなければ調査する必要もない、あるいはアメリカの機能についても知らぬでもよろしいというようなものではないというふうに私は思っております。この点は少しやはり研究してみたいと思っております。
  367. 立木洋

    ○立木洋君 私たちは、もともとこういう核に関連のある部隊、中隊がおるということ自身私たちは反対です。しかし、私がきょう質問した範囲内においても、これは私、軍隊に行ったことがありませんから、こういう問題の関係について私は全然専門家ではありませんし、ずぶの素人です。しかし、新聞を読んだり、いろいろの材料を集めただけでも、大体どういう部隊があり、どういうふうに位置しているのか、どういう意味で核の関連があるのかということは、素人でも新聞などを読んでいけば大体わかることですよ。それが聞いてみたらどういう機能を果たしているのかわからないし、具体的に現在どういう行動をとっているのかということもわからない。そうして核のかさで守られておりますから日本は安全ですという結論だけをいつも言われておりたのでは、やはりこれは困ると思うのですよ。そういう実態を明確にされて、その上でこうなっているのだというふうにされないと私は困るのではないかと思うのです。長官も少し、もう少しというふうに言われましたけれども、もっと十分に私はその点言って、いわゆる委員会での質問でも明確にお答えしていただけるようにぜひしていただいておきたいと思うのです。  それから、この問題に関して、前もちょっと関連してお尋ねしたことがあるわけですけれども、韓国に核が配備されておるということは、もうすでにアメリカの言明によって明らかにされているわけですね。韓国で事が起こった場合に、この韓国にある核というのはいつも受け入れることが可能な状態に日本はなっておるわけです。そうした場合に、日本に一時避難をするというふうな事態は想定されませんか、長官。
  368. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) ちょっとそういうことは想定いたしません。
  369. 立木洋

    ○立木洋君 これは前も議論をしたわけですけれども、実際にそういう韓国で事が起こるという事態というのは、日本にとっても私はやっぱり重要な時期だ、それはどういうふうに重要かというのは、防衛庁が考えられる考え方と私たち考え方とはまた立場が違うかもしれませんけれども、しかし、いずれにしろ重要なかかわり合いを持つということだと思うのですね。実際に核に関する機能を持った部隊があり、受け入れの、もうちゃんと受けざらまでできているわけですよ、日本という国は。これは日本全国が大体そういう状態になっておる。そうするとやはりそれは無関係ではないと思うんですよ。韓国に核を配備しているということをアメリカの核戦略という観点から見れば、日本をそういう状態につくっておくということと、いわゆる彼らにとって第一線である韓国に核を配備しておるという関係は無関係ではないだろうと思う。やはり一定の関係があるんじゃないでしょうか、軍事的に考えるならば。
  370. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 韓国に核を配備しておるということは、やはりその能力を持っておるということが抑止力になっておるわけでございますから、それはそのとおりだと思います。でございますけれども、実際上それが果たして使えるかどうかという問題、現実問題として、そういうことを予想はなかなかいたしかねる。しかし、その能力は持っておらなければ抑止力にならないことは先生御案内のとおりでございますから、そういうフリーハンドをアメリカは持っておるということはもう当然なことだというふうに思います。
  371. 立木洋

    ○立木洋君 いや、私がお尋ねしているのはそういう意味ではないんですよ。いわゆる六百数十発の核があるということが事実上言われているわけですね。だから、核をそこで使うかどうか、使ってもらったら困るわけで、使わない方がいいわけですよ。しかし、もし仮に何らかの形で武力紛争が起こった、核を使うという状態でないけども。しかし、アメリカとしてはこれはハイジャックされては困るだとか、いろいろな点で核に関しては防備を固めているわけです。そうすると、大量の核兵器が存在しておる韓国で武力紛争が仮にあったとした場合には、これはやっぱり直ちに避難しなければならない。ほったらかしてアメリカ兵は逃げるだとかというようなことをしないだろうと思うんですよ、そういう状態の中で。そうすると、やはり日本にそういう受けざらがあるわけですから、一時的にでも日本を使うということは、アメリカとしては当然考えるだろう。その場合に、いまから韓国にある核兵器を一時日本に避難させていただきたいがいかがでしょうか、といって事前協議にかけてくる——政府の主張によりますとね。そうした場合には、三木さんの答弁では、すべての場合にノーと言うということですね。そういうふうに理解していいわけですか。そういう意味での関連がないかということです。
  372. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これは、昨年の八月二十九日にシュレジンジャーがこちらへ参りまして私と会談をいたしました。その後で記者会見で、これもまあ先生御承知と思いますけれども、核兵器が持ち込まれなくても日本はいわゆる核のかさで安全を保障されるのかという質問に対しまして、米軍は世界全域に配備されており、したがって、日本以外に展開する米軍によって核の分野において十分な対応ができないような場所や任務は存在しないというふうに言明し、わが国の安全にとって核抑止力の有効性と非核三原則が両立するということをサゼスチョンしておるというふうに私は考えます。
  373. 立木洋

    ○立木洋君 昨年来、日米共同作戦の問題がいろいろ問題になっておりますけれども、昨年の六月十六日、衆議院における連合審査の席上で丸山防衛局長が日米共同作戦についてこう述べられているんですね。わが国の防衛に必要な限度内で自衛隊の行動範囲が公海公空に及び得る、この際米軍が核兵器を持つことはある、というふうに述べられていますね。これはそのとおりですね、局長。いや、局長の言われたことを私は読み上げたんです。
  374. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 議事録のとおりであればそのとおりだと思います。
  375. 立木洋

    ○立木洋君 議事録にないことを私は読み上げませんけれども……。  そうすると、やはり公海公空の場合だったら核兵器を持った米艦船と共同作戦を行うこともあり得る、日本の自衛隊というのは、ということになるわけですね。公海だとか公空だとかいう、いわゆる領海ということは言いませんよ、またそれになるといろいろ問題があるでしょうから。いわゆる公海において核を積んだ米軍の核積載艦と日本の自衛隊の、海上自衛隊ですか、共同作戦を行うことがあり得るということですね。
  376. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 一般的には、前からお話をしておりますように、アメリカの部隊のミッションとわが国の部隊のミッションとは性能その他から言ってもまるきり違うわけでございます。ですから、いま先生のおっしゃるように何か入りまじって組んで共同行動をするというような場面を考えておられるようですけれども、現実的にはそういうふうにはならぬだろうと思います。結局、共同の脅威に対処するということでございますから、共同の敵に対するためにある分野においてアメリカがやり、ある分野においてわが国がやるというような形になると思いますので、いまおっしゃるような事態現実に出てくるかどうかということについてははっきりわからぬと思います。
  377. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がありませんから、最後に述べて、それぞれ大臣と長官の御意見を聞いておきたいんですけれども、核防の問題についていままで審議をやってきました。そうして核防の問題については、いわゆる核兵器の新しい保有国をつくらないだけであるということも何回も言われたわけですね。しかし、その他の問題には大変な問題もあり得る。大変という表現はしませんでしたけれども、いろいろな問題があり得るということもすでに述べられた。事実上米ソの核軍縮というのもなかなか現状ではうまくいかないだろう。いろいろの問題があり得るだろうし、ある場合にはさらに核の開発が行われるというふうなことも想定されなければならないだろう。そうすると、日本の防衛庁の言われておるいわゆる防衛というのは、アメリカの核のかさによって守られる。そうすると、この核軍縮もなかなかうまくいかない、そうして事実上日本アメリカの核のかさによって守られる。核防に入って、そういう状態というのは、私の考えでは一層強まるのではないだろうかということに考えたときに、こういう日本にある日本全土の中で核をいつでも受け入れられることのできる状態、核兵器をいつでも使うことのできる部隊、そうしていわゆる核に関連したアメリカの軍隊がこれだけの状態で日本に存在する。そうすると、そういう状態が私は長期にわたって今後続くというふうな状態というのは、まことに日本国民にとってはこれはもうがまんならないことだと私は思うのですよ。こういう問題をやはり何としても解決しなければならない。もう大臣も何回も言われますけれども、核兵器の全面禁止、核兵器を全部なくしていくという方向が望ましい、だけれども現実にはなかなかむずかしい。そうすると、現在の状態でいけば、こういう核の関連部隊というのが日本に大量に存在するという状態を長期にわたって続けなければならない。こういう状態についてどのようにお考えになるのか、これに対して今後どういうふうな、国際情勢との関連において核の関連部隊がこれほど日本に存在する、またある場合には受けざらとして核兵器が入ってくるかもしれない状態に常に日本が置かれておるということをどのようにお考えになるのか。それをいいと言われるのか、こういうことは好ましくないけれども仕方がないと言われるのか、大臣と長官の御意見を伺っておきたい。
  378. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは毎々申し上げておりますとおり、わが国が核の抑止力のもとにあるということは、わが国がどこかから核兵器の攻撃を受け、あるいはその脅威にさらされたときに、米国はわが国に向って核を使用するのではなくて、その脅威を与え、または攻撃をかける、その中心部に向って核を用いるという意味において核の抑止力が成り立つのだというふうに私どもは考えておりますから、したがって、わが国に核が存在することは必要ではない、こういうふうに考えていますし、そう申し上げております。したがいまして、先ほどから立木委員の言われましたような核の訓練あるいは防衛をするための部隊、それに関連する機材等が仮にわが国におるといたしましても、そのことは安保条約から、核の抑止力からくる必然の結果ではない、こういうふうに考えています。
  379. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これはやはりわれわれは非常に困難である、あるいは現実としてはそういう核の訓練等も行わなきゃならないという実態はあると思いますけれども、われわれはやはりあくまでも理想の追求はしなくちゃならぬと思うのです。同時にしかし、現実を忘れちゃならないわけで、私どもはやはりこういう現実を踏まえながら理想を追求をしていくというのがわれわれの態度です。
  380. 立木洋

    ○立木洋君 あとは次回に譲って、きょうはこれで終わります。
  381. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本件の質疑は、本日はこの程度といたします。  これにて散会いたします。    午後七時二十一分散会      —————・—————