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1976-05-13 第77回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十三日(木曜日)    午前十時十二分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 久興君                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 糸山英太郎君                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 亘  四郎君                 田中寿美子君                 竹田 四郎君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 田渕 哲也君    国務大臣        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君    政府委員        防衛庁長官官房        長        玉木 清司君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        科学審議官    半澤 治雄君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省経済局次        長        賀陽 治憲君        外務省条約局長  中島敏次郎君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        海上保安庁次長  間   孝君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        大蔵大臣官房審        議官       副島 有年君        農林省食品流通        局食品油脂課長  吉田鉄太郎君        通商産業省通商        政策局通商調査        課長       佐藤 剛男君        郵政省郵務局次        長        林  乙也君    ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○第五次国際すず協定締結について承認を求め  るの件(内閣提出) ○千九百七十五年の国際ココア協定締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出) ○アジアオセアニア郵便条約締結について承  認を求めるの件(内閣提出) ○北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約  を改正する千九百七十六年の議定書締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出) ○核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(第七十五回国会内閣提出、第  七十七回国会衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  第五次国際すず協定締結について承認を求めるの件  千九百七十五年の国際ココア協定締結について承認を求めるの件  アジアオセアニア郵便条約締結について承認を求めるの件  以上三件を便宜一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 戸叶武

    ○戸叶武君 UNCTAD国連貿易開発会議の第四回総会政府首席代表として出席する木村前外相は、この総会において、一次産品商品ごと個別的検討を前提に、途上国の要求する共通基金検討用意があるという、従来の態度から一歩進んで、最貧国対策として先進国側による十億ドルの緊急商品援助の提案を行うことを明らかにしたというような演説をやるということですが、あらかじめ外務大臣打ち合わせを行っての見解の披瀝だと思いますが、外務大臣からこのことについて一言承りたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 木村代表が出発されるに際しましては、私どもとも十分よくお打ち合わせもいたし、また、関係閣僚総理大臣初めの会議も開きまして、よく打ち合わせの上お出かけを願ったわけでございます。したがいまして、木村代表発言は、十分政府内でも練ったものでございますが、そのうち一次産品問題については、やはりこの問題が発展途上国にとりましては非常に大きな関心事であり、かつ、南北問題の一つの核になる問題でもあるということから、わが国としてはきめの細かい対策を考える必要がある、その価格の安定あるいは品質の向上等々、また、場合によりまして緩衝在庫というようなことも物によっては考えられるかもしれないといったような、まず前向きに取り組むという姿勢木村代表演説において表明をいたしたわけでございます。
  5. 戸叶武

    ○戸叶武君 国際収支の大幅な赤字に苦しむ後発開発途上国石油危機以後の深刻な打撃に対して温かい手を差し伸べたのだと信ずるのでありますが、そういう観点から、まず第一に、第五次国際すず協定に対してお尋ねします。  この協定は、五年前に価格の安定を目指して需給関係輸出量統制ということを目指して、一に緩衝在庫、二に輸出統制、そういうものをめぐって価格安定のために努力しようという心根だと思いますが、今日までその成果は上がっておるんでしょうか。
  6. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) すず協定につきましては、現在の段階ではすずの値段はやや高騰ぎみでございまして、現在の経済条項価格帯を若干上回っておる状況でございます。すずにつきましては生産国が比較的限られておりまして、消費国がそのすずを求める需要を追うにきわめて熱心かつ急であるということもございまして、基本的には、価格帯については若干柔軟な考え方を消費国もとっておりまして、理事会の決定によって価格帯修正が可能であるという状況になっております。最近も、実はすず価格帯修正が行われております。これに見られますように、現在の段階協定自体がかなり柔軟な運用を見せておりますこともありまして、全体としてこれを判断いたしますと、すず協定につきましても相当程度の効果を上げておる。また、事実現に輸出統制も実施中でございまして、そういったことを考え合わせますと、全体の評価としてはかなりのものがあるのではないかというふうに考えております。
  7. 戸叶武

    ○戸叶武君 輸出統制に関連しまして、緩衝在庫現状はどうなっておるのでしょうか。消費国に対しても義務を要請したいというような要望もあったということでありますが、それに対してはどういうふうに対処いたしましたか。
  8. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) ただいま御指摘のように、緩衝在庫の何と申しますか資金、ファイナンスの方法は、生産国のほうに義務的な拠出を約二万トン分求めまして、残りにつきまして消費国任意的拠出を求めておるわけでございます。従来は、実は生産国だけの義務的拠出協定であったわけでございますが、先般の協定改定交渉におきまして、消費国任意的拠出ということを新たに挿入したわけでございます。これに対しましては、任意条項でございますので、たてまえとしてはあくまで任意であるということでございますが、大体発効、十月一日以後の三十ヵ月後におきまして消費国がどの程度任意拠出をしたかということを審査することになっておるわけでございます。したがいまして、消費国としましては大体その時期をめどにいたしましてどの程度任意拠出をしていくかということを逐次検討してまいるというのが現状でございます。
  9. 戸叶武

    ○戸叶武君 すず生産国マレーシアインドネシア等ASEAN諸国が非常に多いのでありますが、マレーシアの方で世界の四割を占めているというし、次にボリビアの一八%、次にインドネシアタイというふうになっており、しかも、日本はその九七%までもすず輸入を全部東南アジアからしているということでありますが、これらの国に対しては、日本がいわゆる一次産品に対して前向きの姿勢で取り組むという態度からして、非常に好意ある処置をしなければならないと思うのでありますが、それらの国々に対して特別な対策というようなものは別にないんでしょうか。
  10. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) すず生産国が御指摘のようにASEAN諸国に見られますことが現実でございますので、わが方といたしましても、すず協定を通ずるこれら諸国との協定に対しましては十分留意をいたさなきゃならないというふうに考えております。当面、すず理事会におきまして緊密な情報交換とか統計の交換を実施しておりまして、相互間の意思疎通は十分図られておると思うのでございますが、御指摘のように、積極的な対策ということになると、やはり今後任意拠出をどう考えていくかという問題が出てまいると思いますが、これは先ほどお答え申し上げましたように若干の時間的余裕がございますので、この間、各国の動向を見ながら検討してまいると、こういう方針であると存じます。
  11. 戸叶武

    ○戸叶武君 本会議拡散防止条約のときに、三木総理答弁に対して私が遺憾の意を表して再質問したのも、東南アジア諸国発展途上国の中でも深刻な悩みを持っている国々であります。また、日本はこれらの国を相手にできないという態度じゃなくて、この発展途上国の苦悩というものをくみ取って、それに方向づけをやる、干渉はしないが思いやりのある態度をもって臨むということが非常に必要だと思いますが、三木さんは、この前田中さんがタイでつるし上げられ、インドネシアでまたつるし上げられたが、自分は田中さんとは違うから大丈夫だろうぐらいの構え東南アジアに臨むと大変なことになるというのが、ASEAN諸国のいまの体制づくりに努めているリーダーの人から直接お聞きしたんですが、それはいままでの日本東南アジア対策というものを、発展途上国に対する構えというものを根本的に変えていく態度を明らかにした上でないと、その確認を得た上でないと、東南アジア諸国からは歓迎されざるお客となるし、そういういろんな瀬踏み、模索、そういうことが非常に大切だと思いますが、このすずの問題も一つの代表的な問題でありますけれども、今後はこれらに対してどういうような対策を講ずるか、それは外務大臣からひとつ御答弁を願います。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま戸叶委員お尋ねは、実は確かに問題のポイントを突いておられるのでありまして、このすず協定は歴史も長うございますし、先ほど政府委員から申し上げましたように、比較的うまく動いておりますところの一次産品についての商品協定の私は代表的なものであろうと考えております。ことに、先ほど戸叶委員が言われましたように、これはアジアの国に関係をするところが非常に深い品目でございます。冒頭にお尋ねのありましたUNCTADの第四回総会において一次産品の問題がいろいろに議論をされておりまして、今後われわれとしては一次産品の問題をどう扱っていくかという大きな問題を持っておりますが、その中でいわば典型的な一つケースすずであるというふうに考えられます。しかも比較的協定がうまく動いている。関係国アジアの国が多いということでございますから、この協定消費国としてのわが国がどのような貢献をしていくかということは、いわば一次産品問題全体に対するわが国テストケースのようなことになっておるわけでございます。  そのようなことからも、私としてはわが国が応分の拠出をやはりすべきであるということを従来から考えてまいっておりますが、それをどのような程度において、また、わが国の内部においてどのような仕組みにおいて、すなわち、それが政府負担であるのか、あるいは民間の負担であるのか、あるいはその混合であるのか等々、この問題についてやがて政府態度を決めなければならないという問題になっております。また、そのことの反面は、これが一つテストケースであり、典型的なケースでありますだけに、将来このことが他の一次産品に際限なく同様な方式が広がっていくということ、そういう可能性については、財政当局は当然のことながらその辺のことを心配をいたしております。これは責任上私は当然なことだと理解をいたしますけれども、でございますから、そのような将来への展望も考えながら、このすず協定わが国がどのような貢献をしていくべきかということをやがて政府として態度を決めなければならない問題である、私としてはこれは非常に大切なテストケースだというふうに考えておる次第でございます。
  13. 戸叶武

    ○戸叶武君 大臣が言われるように、すずの問題は東南アジアにとってはきわめて重要な関心を持たれているテストケースだと思いますが、これに関連して、一九七四年にローマで開かれた世界食糧会議で提唱された国際農業開発基金に対し、日本としても西独並み五千二百万ドルの拠出用意があるということも木村さんは表明するだろうと伝えられておりますが、そういう具体的な見解もすでに打ち合わせ済みのことだと思いますが、さようでございますか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) さようでございます。
  15. 戸叶武

    ○戸叶武君 次に、ココア協定についてお尋ねします。  一九七二年に三年間の有効期間でこの協定はつくり上げられたということでありますが、このココアの問題は東南アジアと違って、西アフリカの問題だといってもよろしいのですが、一番生産国のガーナが世界の四〇%を占め、ナイジェリアが一五%を占めるというぐあいで、カメルーン、アイボリーコースト、トーゴというような生産国から日本は三万四千トン昨年は輸入し、ことしは二万八千トンに減っているということですが、それは消費関係ですか、それとも外貨事情関係ですか、その点を承りたいと思います。
  16. 吉田鉄太郎

    説明員吉田鉄太郎君) 最近のチョコレート、まあ国内におきましてはココアは大体チョコレート並びにチョコレート菓子に使用いたしております。現在のチョコレート菓子並びにチョコレートにつきましての国内需要は、おおむね横ばい程度で推移いたしておりますので、現在のところ輸入数量豆そのものは減っておりますが、それ以外のケーキであるとかココアバターというものに変わっておりますので、全体的には前年と同じではないかと考えております。
  17. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本世界消費国としてはどのくらいの順位になっておりますか。
  18. 吉田鉄太郎

    説明員吉田鉄太郎君) 第七位でございます。おおむね比率といたしましては三・三%でございます。
  19. 戸叶武

    ○戸叶武君 それで、この需要の波動はどういうふうな波を打っておりますか。
  20. 吉田鉄太郎

    説明員吉田鉄太郎君) 一昨年におきましては相当な数量国内需要があったわけでございますが、例の不況の関係で五十年にダウンいたしまして、本年は先ほど申し上げましたようにおおむね前年と同じではないか、こう推定いたしております。
  21. 戸叶武

    ○戸叶武君 この安定価格帯の問題でありますが、ココアの問題は、西アフリカ後発開発国が主なる生産国でありますが、ココアはミカンと同じように永年作物でありまして、市場価格というものが現在は安定しておりますが、この増産によってチョコレートなんかの需給のバランスが崩れていった場合には、ほかの生産物と違って暴落ということの急激な衝撃を受けないとも限りませんが、緩衝在庫の問題はどういうふうになっておるでしょうか。
  22. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) ココア協定緩衝在庫でございますが、緩衝在庫最高限度二十五万トンといたしまして、加盟輸出国からココア輸出及び加盟輸入国の非加盟国からの輸入に際して、一ポンド当たり一米セント拠金を課してこれを構成しておるわけでございます。ただいまの御質問の御趣意が、緩衝在庫がどういうふうに運営されるかということでございますが、ココア協定輸出割り当ての方をどちらかと申しますと優先的に考えております協定でございまして、緩衝在庫の方は第二次的な機能を持っております。輸出割り当てで、若干細かくなりますけれども、価格が四十七セントから四十五セントのときに年間輸出割り当ての一〇〇%、四十五セント以下のときは九七%という運用をいたしまして、なおそれでもそれを補完する必要があります場合に緩衝在庫からの放出を考えるわけでございます。現在ココア価格は、先ほど御指摘もありましたように高位に終始しておりまして、価格帯の上方に出ておるわけでございまして、現在の段階では輸出割り当て緩衝在庫も発動の条件を満たすに至っていないわけでございますが、将来価格暴落して価格帯の中に入ってまいります場合には、直ちに所定の手続によってこれらの機構が連動して作用し、この価格を下支えする、こういうことになっておりまして、ここにココア協定の大きなメリットがあるわけでございます。
  23. 戸叶武

    ○戸叶武君 私が心配している点は、暴落の場合に買い支えをやれるような万全の処置ができているかどうか、そういうことを特に承りたいと思っております。
  24. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 暴落の場合の買い支えの措置は、現在のココア協定一つ成果は、先ほど申し上げました緩衝在庫資金輸出行為に伴いまして自動的に徴収しておりますために、緩衝在庫基金状況が非常に好転しておりまして、少なくとも現在の段階ではそういう事態に立ち至りました場合には直ちに緩衝在庫は十分な機能を発揮し得る、こういう形になっておるわけでございます。
  25. 戸叶武

    ○戸叶武君 次に、アジアオセアニア郵便条約でありますが、アジアオセアニア十一ヵ国がこの連合を形成したのは一九六二年四月ということでありますが、去年条約を改正されて、機関の中に、アジアオセアニア郵便訓練学校というものをこの連合の中に組み入れることで責任を持たなければならないということになっておりますが、いままでアジアオセアニア郵便訓練学校というようなこの種の学校は、どういうふうな経緯を経てどのような成績を現在までに上げておるんでしょうか。
  26. 林乙也

    説明員林乙也君) お答えいたします。  アジアオセアニア郵便学校運営及び訓練活動につきましては、昭和四十五年に設けられたわけでございますが、四十五年の設立以来、国連開発計画、すなわちUNDP及びAOPU当時の加盟国からの拠出によって行われてまいったわけでございます。AOPU加盟国AOPU設立当時四ヵ国でございましたが、現在は十一ヵ国にふえておるわけでございますが、この郵便訓練学校への参加国は当初の三ヵ国、すなわちタイ、フィリピン、韓国という三ヵ国のまま現在に至っております。この間、わが国といたしましては、資金あるいはスタッフその他の面で特に郵便訓練学校とのかかわりを持つことなく現在に至っておるわけでございます。その事情といたしましては、この郵便訓練学校郵便業務各国における中堅幹部職員の養成ということを主たる目的として運営されておるわけでございますが、わが国といたしましては、すでに国内におきまして十分な訓練の施設も有しておるところから、特にこの訓練学校関係を持つ中で職員訓練に努めていかなければならないという特段事情がないということで、そういうふうになっておるというふうに考えております。  ところで、このUNDP計画が一九七〇年、すなわち四十五年四月をもちまして終了することになったわけでございますが、今回のメルボルン大会議におきましては、そのUNDP計画終了後も学校活動の継続が必要というように大会議において認められ、学校AOPUの一機関とするとともに、各加盟国が任意に拠出を行うことによりまして、積極的に学校活動参加するというようになった次第でございます。
  27. 戸叶武

    ○戸叶武君 わが国としてはこの訓練学校にお世話になる必要がない、それほど日本郵政活動というものは、鉄道、通信、それからこの郵政郵便の問題は世界の模範になっているのが事実であります。近代国家をつくる過程において、たとえばブラジルに行ったときもブラジル政府の人から、ブラジル郵便物の配達が余りにもでたらめな現状を見て、これは何とかして直さなくちゃならないのじゃないかと、やはり、一国のナショナリゼーションといっても、ただ意識の世界なりあるいは国家的な権力でもってナショナリゼーションをやるんじゃなくて、その他に住む人たちの便宜、世界との連係、そういうものに対処し得るような郵便体制ができなければいけないんじゃないかと言いましたところが、やはり日本から非常に多く学ぶものがあると言っていますが、いままでの事例として、日本からこの種の日本国内でやっているような訓練郵便訓練学校で求めているような訓練あるいは指導、そういうようなものを他国から要請されてきた実例はありましょうか。
  28. 林乙也

    説明員林乙也君) AOPU区域内におきますところの日本の地位といたしましては、ただいま先生から御指摘いただいておりますように、制度技術の面で非常にすぐれた面がある点につきまして、各国から協力あるいは援助を求められておるというケースは多々ございます。ただいま郵便訓練学校の点につきましては御説明いたしたとおりでございますが、日本といたしましてもAOPU職員交換というようなことで、毎年日本からの派遣、あるいは外国からの職員の受け入れということで努めております。これは大体二年に一回程度運営されておるわけでございますが、郵政幹部セミナーというものを開催いたしておりまして、この五十一年の三月から約二週間の期間でございますが、アジア郵政幹部セミナーというようなことで、アジア地域の十ヵ国から各郵政庁幹部職員日本に、これは日本負担といたしましておいでいただきまして、幹部セミナーなどを開催いたしておるわけでございます。このようなことから、AOPU地域内におきますところの日本郵便制度に関しますところの各国への協力というものは相努めておる次第でございます。
  29. 戸叶武

    ○戸叶武君 それはいつごろから始めて、いままでにどのくらいの人を呼んでおりますか。大体でよろしいです。
  30. 林乙也

    説明員林乙也君) 大体十年ほど前から実施いたしておりまして、二年程度に一回というようなことで、参加規模は、十一ヵ国から十五ヵ国程度規模ということで運営しておる次第でございます。
  31. 戸叶武

    ○戸叶武君 この技術協力なり友好親善というものを、こういう生活に密着した具体的事実からやはり伸ばしていくことが一番大切なので、日本に呼んで訓練するということも必要ですが、事実上においては、やはり日本の公務員の人というか公営的な事業に携わる人も、いろいろな点において途上国の前進のために協力するという構えで、アメリカ平和部隊などとはまた違う構想でよろしゅうございますから、今後やっぱり率先して外地にも行って、そうして具体的にこういうところはどうか、こういうことはどうかというふうに、親切に向こうの国々担当者と話し合って進歩させるというやり方の方が、いわゆるお役所仕事というよりは、もっと前進した形で、人間人間の触れ合いを通じて私は最も効果ある方法が生まれるんじゃないかと思いますけれども、どうも日本経済外交技術協力といっても、お役所仕事的なおざなりになっていて心がこもってないような感じがするのですが、そういうような模索なり発想が現在なされておるでしょうか。
  32. 林乙也

    説明員林乙也君) 先生の御指摘のとおりでございまして、この郵便訓練学校の点につきましても、日本といたしましては特段かかわりを持つことなく現在に至っておるわけでございますが、今回改めてAOPU条約において規定される機関ということになったわけでございますので、今後の問題といたしましては、UNDP計画終了後の問題といたしまして、学校運営訓練計画並びにこれらに伴う経費等の問題につきまして、今後の学校運営のスケジュールというものが徐々に具体的にAOPUの方におきましても固まってまいるわけでもございますので、それらの過程におきまして、日本といたしましてどういうような参画、協力というものがあり得るのかということにつきまして、関係の向きとも十分打ち合わせをする中で対処してまいりたいというように考えておる次第でございます。
  33. 戸叶武

    ○戸叶武君 UNDPに対する協力のほどはわかりますが、二国間でその種の協定というようなものはいままでになされた事例はないですか。
  34. 林乙也

    説明員林乙也君) 特に職員訓練関係に関しまして、二国間の協定というようなことが行われた例はございません。
  35. 戸叶武

    ○戸叶武君 今回の改正の中で、船便の通常郵便物の改正に関して西欧より四〇%下げるのを二五%に改正するというような点があるようですが、これはどういう経緯によるものですか。
  36. 林乙也

    説明員林乙也君) 今回AOPU条約の二十二条におきまして、ただいま先生の方からお話しいただいておりますように、従前は自国の国際料金の六〇%を超えない特別料金を適用することができるという点を、七五%を超えない特別料金を適用することができるというように改正されることに相なっておる次第でございますが、これは日本だけではございませんが、各国におきましても、近年における郵便物の取扱費用の上昇に伴う国内料金の引き上げという点がございまして、国際料金と国内料金との均衡の上から、特に大きな割引をすることが必ずしも好ましくないという加盟各国の一致した意見のもとに、七五%を超えない特別料金を適用するというように改められた次第でございます。
  37. 戸叶武

    ○戸叶武君 ここで外務大臣お尋ねしますが、きょうは、すずの問題、ココアの問題、郵便条約の問題に関して質問いたしましたが、この協定条約に関しましても、私たちがこういう具体的な生活に直接密着しているじみな問題に対して真っ向から取り組んで、そして具体的な対策というものをいつも示していかなきゃならぬということを痛切に感じるんです。これは外務省においても、拡散防止条約の批准に、私たちが積極的に党内の活発な論議を重ねてなおかつその批准に賛成したというのは、前向きな姿勢日本が平和外交、特に技術協力なり経済援助というものをやっていかないと、一つ日本の外交に対する魅力というものが全くなくなってしまうと思うのです。いわゆるテクニックだけで外交をやっていく時代が過ぎて、具体的事実を通じてその国の利益にやはり結びつくような外交が躍動しないと日本の外交というものに対する魅力はないと思うのですが、今後、この種の問題の処理に当たって宮澤外務大臣はどのような抱負と見解をお持ちですか。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国が憲法によりまして戦争を放棄して、いわゆる平和外交をやっていこうと決心をしましてから三十年になるわけでございますが、その間、世界の客観情勢はまずまずわれわれの憲法のこいねがっている方向に、わずかではあるけれども進んできておると申しますか、環境は決して悪くなっていないと思うのであります。そのようなわが国として世界平和に貢献し得る道というのは、やはりわれわれが軍備の大きな負担をしないということから生じますところの何がしかの余裕を、挙げて世界の将来の紛争の原因を除去するために用いなければならないというふうに考えるわけでありまして、将来の紛争の要因の中の一つは、やはり南北間の生活水準あるいは繁栄度の格差であるということになろうと思います。したがいまして、わが国の平和努力というものはそのような格差を少しでも縮小していくということに向けられなければならないということに当然なるわけでありまして、しかもその方法は、戸叶委員の言われましたように、具体的にじみちなものでなければならないというふうに考えております。それは、おっしゃいましたように、経済援助の形をとる場合もありますし、あるいは技術援助の形をとるときもあるでありましょうし、また、こちらから専門家を派遣する、あるいは先方からいわゆるトレーニーを日本に来てもらって技術をつけて帰ってもらう、さらに広くはもっと文化的な交流といったようなものにまで及ばなければならないと思いますが、いずれもいま戸叶委員が言われましたような、具体的な、お互いにわかり合うような方法貢献をしていくということがわが国の平和外交にとって最も基本的に大事な問題であるというふうに考えております。
  39. 戸叶武

    ○戸叶武君 最後に、外務省には、すずの問題ならすずの問題、ココアの問題ならココアの問題という、専門にそれと取り組んでいる人があると思いますが、やはりいろんな種類の問題と取り組んで技術協力なり経済援助なりをやっていかなくちゃならない場合に、何もかも掘り下げてよくわかっているという、そういう専門家を養成するということがやはり大切なことだと思いますから、外務大臣もそういうことには非常に心してもらいたいと思います。  それからもう一つは、たとえば郵便の問題ですが、日本近代国家をつくる上において日本の金融制度が確立したこと、それからやはりこの郵政関係が発達して非常に近代化されていること、それから交通機関の発達、そういうふうなことは、ただ高度経済成長で繁栄したという形より、日本近代国家形成の中において日本人というのはなかなか緻密な組み立てをやっているわいというふうに外国でも感心し、とにかくアジア・アフリカ諸国の中において率先して近代国家をつくり上げた功績というのはあるんだから、いままではどうも戦に強いということだけで、変なほらを吹くやつが多かったけれども、そういうんじゃなくて、こういう面における日本のすぐれた面を、国際的にもなるほど日本人から大変な手助けを受けたというような印象が残るような実績を今後やってもらいたいと思いまして、特に郵便の問題は、各国歩くと、各国と比較して日本が恐らくは最高じゃないかと思われます。このごろはどうもいろいろな滞貨が行われたり、賃金トラブルで問題も起きますけれども、やはり一つには、私はそれに従事する人たちにビジョンがなくなっている。国のために奉仕、世界のために奉仕していくという意識が欠如している面があるのは、やはりその中にだけ立てこもって満足しておって、これから伸びていこうという国々に対して手を差し伸べて感謝されるような活動を、日本のそういう技術者であろうが、そういう能力を持った人であろうが、やっていないところにあるんじゃないかと思うんです。われわれの祖国に対する献身と世界各国の人類に対する献身というものが結びつかなければ日本の新しい愛国の姿勢というものはできないと思うんです。そういう意味において、こういうじみな仕事に従事しているところの責任者なり指導的能力を持っている人なり、あるいは現場においていろんな訓練を経てきた人なり、そういうものを各国から呼んで訓練するというだけじゃなく、それらの国々に行って見て、その実際を検討して、それに対応するようなやはり一つ貢献をしていくように方向づけることが今後においては重要だと思いますから、これは外務大臣並びに関係各省の人たちにそういうことをお願いして、私の質問は終わります。
  40. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、まず最初にすず協定のことでお尋ねします。  発効の見通しは四十九条か五十条か、大体見通しとしてはどうですか。答弁を簡単にお願いします。
  41. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 一言で申し上げますと、確定的にせよ暫定的にせよ、四月一日に発効いたすということでございますが、もう少し詳しく申し上げますか。
  42. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 結構です。そうすると、この確定的な発効と暫定的な発効の場合はいわゆる効力においては違いはないのか、あるいはまた、こういう条約は憲法第七条によって公布をしなければならない、こういうような点においては違いはあるのかないのか。
  43. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) この点は、暫定発効の場合も、批准書が足りない場合でございますが、この批准書が不足分が出てまいりました場合には確定発効に移行するわけでございますので、おおむね暫定発効は確定発行によって最終的にはその状態に移行すると思っていいと思いますが、発効の効力は同じでございます。国内については伊達参事官から。
  44. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) ただいま経済局次長より御説明がありました点を若干補足させていただきますと、確定発効と暫定発効という点につきましては、協定自体の方から見れば効力において差はないということが言えるかもしれませんけれども、まだ正式に批准書ないし受諾書というようなものを国内的な手続を満たさないために提出できない国、しかしこれを暫定的に適用するという意思を通告する国にとりましては、この条約に定めますところの義務であって、行政府が現在のそのときにおける国内法令に基づいてできないようなところまでの義務を引き受けているものではないというふうな考え方をとっているわけでございます。
  45. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最近、非常に国際商品が値上がりをしておる。すずも非常にそれに漏れず値上がりをしておるようでありますが、こういう原因はどこにあるのか、これは外務省としてはどう判断していますか。
  46. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 一次商品の価格につきましては多くの変動があるわけでございますが、一九四七年前後においてかなり高騰の状態が見られたわけでございます。その後、景気の落ち込みその他がございまして、種々の変動要因を経ておるわけでございますが、今回御審議願っておりますすず及びココアにつきましては、かなり現在は高値に推移しております。ただ、これも高値はもちろん生産を刺激するということがございますので、いろんな反転現象が出てくるかと思います。ココアにつきましても、生産の回復で漸次価格は下がってまいるという予測もあるようでございます。
  47. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、将来の見通しとしてはまた生産力を刺激してそう心配はないと、こういう判断ですね。
  48. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) おおむねそういうことで考え得ると思います。
  49. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 すずの問題につきましては、先般新聞報道では、価格帯すず理事会が変更しておるわけですね。そうすると、現在のすず価格で言えば、前の価格帯であれば当然緩衝在庫からすずを放出しなければならないのに、上限価格帯を上げたためにその必要がない、こういうような現状になっているように判断しているわけなんですが、それは事実かどうか。
  50. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) まさにただいま御指摘がございましたように、今回すず協定価格帯の引き上げを行いました。すず協定は、先ほど申し上げましたが、理事会によって価格帯修正できるという柔軟な運用ができるようになっておりまして、生産国の希望を勘案して今回価格帯修正が行われたわけでございます。わが国といたしましては、消費国として、当然現在実施されております輸出統制の解除を行ってからしばらく様子を見て価格を上げたらどうかというような考え方を、この議論の過程で明らかにしておりましたのですが、消費国の大勢がやはり今回この程度の引き上げはやむを得ないというふうに考えましたので、結局引き上げが行われる結果になったわけでございます。しかし同時に、この引き上げは、御指摘のように緩衝在庫との関係が出てまいるわけでございますが、生産国はこれらの議論の過程において明らかにしておりますように、やはり生産コストの上昇からしてこの程度価格帯修正は必要であるということをもっぱら申しておったわけでございまして、そういう生産国の基本的な考え方からいたしますると、わが方といたしましては、直ちにこの価格帯修正によって一方的に生産国が有利になるための結果を生むものでも必ずしもないということを考えておる現状でございます。
  51. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 確かに、すず理事会価格帯を変更できるわけですけれども、結局値段が上がるとまた価格帯を上げる、また上がると上げる、これではすず協定というものは意味がないわけです。今回はボリビアあたりが強力に主張して、これが値上げされなければ脱退をすると、こういうような意見もあったように新聞では書いているわけですけれども、その場合、もちろん生産国消費国の立場は異なるわけですけれども、やはり値上げをするにしても、理事会が勝手に上げるのはこれはちょっと行き過ぎで、一つはやはり基準と申しますか、賃金の場合は物価が上がれば賃金もある程度上げる、そこに一つの基準があるわけですけれども、すず価格帯を変更する場合の原則的な考え方というものは確立されているのかどうか。
  52. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 確かに御指摘のように、すず協定理事会の主観的判断によって価格修正が行われるということでございますが、理事会の判断については生産国消費国双方の投票要件がございますので、ある程度の妥当な範囲であれば消費国もこれに同調いたしますし、これが過激な範囲にわたる場合にはもちろん投票要件が働いてこれを阻止するということはやはり考えられるわけでございまして、この辺から見ますと、今回の値上げはやや――ややといいますか、妥当な範囲であると言わざるを得ないので、これをもって直ちに将来の方向が全く自由無碍の方向であるというふうにはもちろん言えないわけでございます。
  53. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、緩衝在庫に対する消費国の供与の件につきまして、いまの御答弁では各国の動向を見ながら決めていきたいというわけですけれども、これはどうなんですか、将来の見通しとして、私は当然これは出さなければならないものであって、出さぬで済むものではないと思うんですが、その点の外務省の見通しはどうなんですか。
  54. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 拠出の問題でございますけれども、御指摘のように、ASEAN諸国すず協定の大きな主柱になっております関係もございまして、わが方といたしましては、この問題に積極的に取り組むべきであるという考え方を持っておるわけでございますが、先ほど戸叶先生にお答え申し上げましたように、発効後三十ヵ月後に消費国拠出の成績をいわばレビューすることになっておるわけでございまして、各国ともまだこの点若干の時間的余裕があるという判断をしておるようでございます。そういう意味でこの若干の時間的余裕のもとに、各国の動向をやはり見て対処するというのが当面の方針であろうかと考えます。
  55. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 新聞の情報では、大蔵省は今回の木村演説の中にも、演説の中かどうか知りませんが、ともかく今度のUNCTAD総会においてやはりはっきりそういう、三十五億円ですか三十億円ですか、わが国の分を出すということを表明することに対して大蔵省が非常に難色を示したと、こういうことが新聞で伝えられておるわけでありますが、これは宮澤大臣にお聞きしたいんですけれども、出さなければならぬものは、同じ出すなら早く出した方が、やっぱり外交というのはできるだけ先を見通して最大の効果を上げるのがぼくは外交じゃないかと思うのです。そういう意味で、特にこのすず東南アジア国々が多い。そういう点から言えば、よその状況を見るよりも、よそがやらぬ前にぱっと旗を上げる、出すのはどうせよそが出すときに一緒に出せばいいんですから、かけ声だけ一声かけるだけなんですからその方がはるかに外交的な効果があるんじゃないか。そういう点もう少し外務大臣、大蔵大臣と対決してがんばってもらわなきゃいけないと思うのですが、その点どうなんですか。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは先ほど戸叶委員にも申し上げておりましたように、歴史の長い協定で、そして比較的うまく動いておる。しかも、東南アジア国々関心が深いというようなことから、一次産品の中では一つの典型的なケースであるし、また、わが国がこのような問題に対処する今後の姿勢という方から言いますと、テストケースであるというふうに考えておるわけでございます。その点は塩出委員のおっしゃいますとおりですが、先ほど戸叶委員に続いて申し上げましたように、それでありますだけに、財政当局としてはいわゆる一次産品問題、それの緩衝在庫というような今後いろんなケースが出てまいりました場合にこれが一つの先例になる、財政からは当然そういうことをいろいろに考えておかなければならない、これは無理からぬことでございます。負担をするとしましても、それを国内でだれが負担をするのか、最終的なユーザーはわが国の場合には民間の企業、消費者でございますから、そういう人たち負担をすべきなのか、あるいは政府も何がしかの負担をすべきなのか、その間混合をして負担をすべきなのか、そういったようないろいろな問題がございますから、事はすずだけにとどまらずに、将来の一次産品全体を考えながらやはり態度を決めなければならないという問題、これは財政当局としては当然そういうことを考えるのは無理からぬことでありますが、早い方がいいということは仰せられるとおりでございますけれども、今回のUNCTADにおける木村代表発言には、明確な指示をすることができない状態になっておるわけでございます。できるだけ早く政府としての態度を決めなければならないと思っております。
  57. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これはひとつ速やかにお願いしたいと思うのです。こういう供与は当然国の予算の中から出すのであると思っておったわけですが、いまのお話では民間が出す場合もあり得るような、その点がまだ決まっていないというようなお話のようですが、この点は大蔵省にお聞きしますが、大蔵省としては大体いつごろ結論を出すつもりなんですか。
  58. 副島有年

    説明員(副島有年君) ただいま宮澤大臣から御答弁のありましたように、目下慎重に検討しております。何分にもこれがテストケースでございますし、後年度いろいろな負担が伴うという問題もございますし、緩衝在庫そのものにつきまして、拠出に伴います経済的な効果についてなおかつまだ若干の疑問が残っておりますし、それから何分拠出に伴う金額も大きいということで、いま検討をしているわけでございます。それで外務大臣がおっしゃったように、もしする場合にも、一体これはどういう形で、財政負担をするのか、あるいは輸入課徴金というような形でするのか、あるいは業界がボランタリーにするとか、いろいろな方法もありますしすることでもございますので、今後のパターンになるということもございますので、いまここでいつまでに結論を出すということはなかなか申し上げにくい段階でございます。ただ、なるべく早い時期に結論を出したいというふうに考えております。
  59. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今度の総会で、先ほども話がありましたけれども、農業開発基金に五千万ドルを出すということを日本は発表したわけですけれども、話を聞けば西ドイツが五千二百万ドルである。そうすると、わが国は特にこういう農業開発基金構想の趣旨から言えば、はるかに西ドイツよりもわが国の方が食糧の海外依存度は非常に高いんじゃないかと思うんですね。そういう意味からこの姿勢でいいのかどうか。昨年の十一月の首脳会談のときには六千万ドルだったのがちょっと一千万ドル後退しまして、非常に渋っているようですけど、その点はどうなんですか。
  60. 副島有年

    説明員(副島有年君) ただいま先生のおっしゃいました西ドイツの拠出額の五千二百万ドルというのは通常言われている金額でございますが、西ドイツが国連事務総長に正式に通報した金額は五千万ドルでございます。したがいまして、今回わが国木村代表拠出表明をされました五千万ドルは、西ドイツ並みという趣旨で五千万ドルとおっしゃったものと了解をしております。ナイロビでの一般的な受けとめ方も、日本の五千万ドルについてはかなり評価が高いというふうに聞いております。
  61. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで今度の総会においても非常に南北の対立、その中においても北は北なりに意見がいろいろあるようであります。南側寄りとか、あるいは先進国の論理を行くとか、確かに南北というのは意見は対立するわけですけれども、そういう中でわが国としてどういう姿勢をとるのか。先進国の一員としてがんばるのか、あるいはやはり日本アジアの一国にあるわけですから、そういう意味で第三の道を行くのか、そのあたり、やはり一つの理念というものがなければならないと思うんですが、外務大臣としてはこの南北問題においての日本の役割りですね、この商品協定経済条項の問題でもいろいろ対立があるわけですけど、そういうような一つの問題は別としても、その基本的な考えはどういう姿勢でいきますか。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どうもいまのすずのお話のすぐ後ですとなかなか申し上げにくいんでございますけれども、基本的には先ほども戸叶委員に申し上げましたように、平和国家としてのわが国が戦争放棄して、軍備らしいものを持たずにやっていくという、そこから出ますやはり経済的な余裕というものは、挙げて将来の戦争の種を除去していくということに使われるのが本当であろうと思いますので、そういう意味では、この南北問題というのはやはりその間の格差というものが紛争の要因になりやすい。そういうことをわが国としてはやはり最大限の、経済力のある限り南北問題に寄与することによって世界の平和と繁栄に貢献したい、基本的には私はそういうふうに問題をとらえておりまして、ことに昨年の国連特別総会以来、南側もいわゆる対決というよりは対話というような雰囲気をかなり出してきております。そこへ今度の第四回のUNCTAD会議でございますし、パリにおける国際経済協力会議でございますから、やはり話をして、お互いに十分自分の満足といかないまでも、共通の理解がそこで成立をして、それに向かって先進国として貢献をしていく、こういうふうな心構えでなければならないというふうに思っておりまして、ただ現在、いまの時点のわが国の財政というものは御承知のようなことでございますから、いますぐに大きな金が出せるということでは、必ずしもそうとは申し上げられないまでも、わが国の経済運営が正常化していけば、これはやはり相当の経済力があるわけでございますから、将来に向かってそういう心構えを続けていって、また、それを実践をすべきだというふうに考えておるわけでございます。
  63. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 時間がありませんので、ココア協定について質問しますが、ココア協定については、現在までのところ加盟のメリットというものは余りない。緩衝在庫が余り働いていないし、そういう点で余りメリットはない、将来価格が非常に下がったときのためのいま準備態勢にあるわけで、そういう意味では、われわれのような消費国側にとっては余り正直言ってメリットのない協定である。しかし、これは南北問題あるいは発展途上国への援助の意味でわが国は加盟をしておる、このようなニュアンスに判断をしているわけですけれども、それでいいのかどうか。
  64. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 御指摘のとおり、現在の段階では価格価格帯を上回っておりますので、即時的な効果はもちろんございませんが、この価格帯につきましても、生産国には一部まだ不満が当然あるわけでございますが、協定の二十九条で、初年度終了後七六年、七七年度中にかけまして理事会が再検討をして、それぞれ消費国生産国が三分の二の多数で採択いたしました場合には価格帯の上位修正ということもあり得るということでございますし、基本的には、将来の問題ではございますけれども、将来に備えるメカニズムというものは十分完備しておるというふうに考えなければならないかと思っております。しかし、御指摘のとおり、即時的効果という点になりますと、先生の御指摘のとおりでございます。
  65. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 外務大臣にお聞きしますが、これにはアメリカは入っておらないわけです。アメリカという国は、われわれの感じでは、非常に自分が得になることはやるけれども得にならぬことはやらぬ。そういうわけで、こういうココア協定アメリカが入らぬということは私はけしからぬと思うんですけれども、そういう意味で外務大臣もけしからぬと思うのかどうか、その点どうなんですか。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今度のいわゆる一次産品問題全体についてもそういう考え方があるわけでございますけれども、南北問題とそれからいわゆる市場原理と申しますか、マーケットメカニズムというものがどういう関係になるかという問題があるわけでございます。つまり、これは輸出割り当てを含んだ協定でございますから、輸出割り当てというようなことは本来的には市場原理、自由経済からは変則であるわけでありまして、アメリカとしては、考え方はやはり市場原理に背反するようなことは適当でないという、一般的なそういう物の考え方があるわけでございますね。それはわが国にもございますし西ドイツにもございますけれども、しかし、それを言っておりますと、それだけで割り切れるならば南北問題というようなものはある意味でないようなことになってしまうわけでございますから、そうばっかりもいかぬではないかと。基本的にわれわれは市場経済をやっていくという、これはもう大事な原則だと思いますけれども、たとえば、南の国に関する特恵というようなもの一つをとりましても、これは完全な自由競争、完全な平等競争とは違う原理がすでにそこへ入ってきておるわけでございますから、したがって、そうばっかりもいかぬではないかというふうに私ども思います。アメリカがこの協定に入らない主張というものはそういうものだそうでございますが、そうばっかりも言っていられないのではないかというのが南北問題について私などの考えておることでございます。
  67. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 結局、アメリカはこのココア協定に基づいて市場の価格が安定をすれば、そのメリットだけ受けて、それに対する資金緩衝在庫への供与も全然やらずに、そのいいところだけ取るということは私は非常に許されないと思いますので、アメリカ日本の国と別ですから向こうの考えもあるでしょうけれども、われわれとしては、日本政府としてはやはりアメリカもこれに参加させるように努力をすべきじゃないか。これをひとつ外務大臣に要望しておきます。  それから、この協定も六十九条の第一項と第二項によっていわゆる暫定発効と正式発効とあるわけでありますが、一九七二年の協定も、これは結局最後まで暫定発効でいったと、このように聞いておるわけですけれども、今回はどうなんでしょうか。暫定発効になりそうなのか、正式な発効になりそうなのか、どっちなんですか。
  68. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 前回の協定については御指摘のとおりでございます。今回、確定発効になりますか暫定発効になりますか、先ほどすずについて申し上げましたような形ではっきりこの際申し上げられる材料がまだ出てきておりませんので、もう少し様子を見てからということになると思います。
  69. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうしますと、前回、一九七二年の協定は結局暫定発効でずっと終わったわけですけれども、条約とか協定は、いわゆる憲法第七条一項によって公布をして初めて国民が知るわけですけれども、この一九七二年協定の場合は公布が行われてないと、このように聞いておるわけですが、そういう暫定発効の場合は公布はしないのかどうか。そういうことになりますと、国民は、法律を、協定を知らされないでそのままその協定に支配されておると、そういうことになるわけなんで、そのあたり、どうなんです、事情は。
  70. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 公布の点につきましては、ただいま先生が御指摘になったような問題点があるわけでございますけれども、やはり、公布という行為は、日本国民ないしは日本国というものについて確定的に効力を発したもの――国内法の公布にいたしましても条約の公布にいたしましても、確定的に日本国ないし日本国民の権利義務を定めたものにつきまして公布をするという考え方によっているわけでございますので、暫定発効の期間中に日本国にとりましてまだ確実に効力が発生していないと考えられるものを公布をするということは、現段階でちょっとむずかしいのではないかと、そのように考えております。
  71. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 しかし、実際は暫定発効であってもわが国に対する拘束力というものは本発効と何ら変わりないわけです。ところが、暫定発効の場合は公布もしないで、公布がないということは、国民は全然知らぬわけです。国民は知らぬけれども、ばばっとそのとおり拘束されているということはちょっとおかしな話で、その点暫定発効の場合は、やはり暫定発効ということの注釈をつけるなりして、ちゃんと公布をするのが筋じゃないかと思うんです。このような、暫定発効で公布しないまま終わったような例はほかにもあるんですか。
  72. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 暫定発効の場合には、従来とも公布はいたしておりません。過去に暫定発効のまま、このココア協定のように暫定発効のままで終わってしまった例があるかということでございますが、私の承知いたしておりますところでは、これが唯一の例ではないかというふうに考えます。
  73. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは手続的な問題ですけれども、筋論からいえばちょっとおかしな話じゃないかと思うんですよね。これは外務省においても、いままでは暫定発効、間のなく本発効、正式発効になる。だから、正式発効になるときに公布すれば時期がずれるだけで、それできたんでしょうけれども、こういうような場合があるということになれば、その点をもう一回検討をしなければ筋論としてはおかしいんじゃないか、そう思うんですが、この点、外務省として検討するかどうか。
  74. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) ただいまの問題につきましては、従来からも私どもも考えていたところでございますが、どうもうまい解決がまだ見つかっていないということでございまして、私どもは、ただいま先生の御指摘もありましたことでもございますので、さらに関係方面とも協議いたしまして検討を続けてまいりたいと思います。
  75. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に郵便条約でございますが、郵便条約の料金につきましては船便の場合あるいは航空便の場合、アジアオセアニア地域に対しては安い料金で、船便の場合は国内郵便と同じで、航空郵便の場合はもっと安くすることができる、こういう内容になっているわけですけれども、郵政省の決めた料金はその許された範囲内では最高限度額をいっておるわけですけれども、これは多少まけたからといって大した赤字がふえるわけでもないし、やっぱりもう少し安くした方がいいんじゃないですか。先ほどの話では、余り安過ぎると好ましくないという話が出たという話ですけれども、好ましくないのは郵政当局が好ましくないだけであって、国民の側からすれば安いにこしたことはないと思うのですが、その点はどうなんですかね。
  76. 林乙也

    説明員林乙也君) 御指摘ございました外国郵便の点についてでございますが、国際料金はUPU条約の方におきまして、書状及び郵便はがき、印刷物等の書状に関しますところの基本料金というものが金フラン建てで定められておりまして、それに対しまして一定の上下の幅をもって各国がそれを適用するという大前提がございます。それに対しまして、AOPU地域内におきましては七五%以内の限度をもって低い料金を設定するという形になっておるわけでございますが、特に船便で……。
  77. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それはわかっている。だから国内郵便の値段と七五の間ならいいというんでしょう。それを最高限度にするのはどういうわけだ、もうちょっとまけたらどうなんだと、それを言っているわけです。
  78. 林乙也

    説明員林乙也君) 実際問題といたしまして、書状二十グラムまでがAOPU地域内は六十円ということになっておりまして、片方、国内料金は書状は五十円ということになっておるわけでございます。先生指摘のように、安ければそれの方が望ましいではないかと申されますが、国内料金との関係からしますと、やはり同一重量同一種類のものについて申しますと、少なくとも国内料金よりは外国料金の方が上回るという形で設定するのが料金体系としては望ましいのではないかという点もございまして、現在のような形になっておるということでございます。
  79. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから六十円ならいいわけでしょう。それを今度また上げるわけでしょう。七五%というのは、現在の六十円が七五%になっているんですか。
  80. 林乙也

    説明員林乙也君) 現在、AOPU地域以外への料金、すなわち、一般の外国郵便料金は九十円でございまして、それの割引として六十円というふうになっております。その料金がこの条約の改定によりまして改定されるということには相なりませんのでございます。
  81. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、特に外務大臣に要望しておきたいことは、やはり郵便業務あるいは機械化、合理化とか、そういう郵便のあり方等、日本はかなり進んでおるわけですから、そういうような点ももっと積極的に協力していく、郵政職員交換も行われているようですけれども、私のもらった資料では、年間二ヵ国から四人とか、最近三ヵ国から六人とか、これは六人でも呼ばぬよりはいいですけれども、もうちょっと、余り金がかからなくて協力できる道があるんじゃないかと思うんですけれども、そういう点でもっと積極的にこの条約を生かして協力をするように努力すべきだと、その点の見解を承って終わりたいと思います。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの御発言は、郵政大臣にもお伝えをいたしまして、御趣旨に沿うように努力を私どもとしてもしていきたいと思います。
  83. 立木洋

    ○立木洋君 すず協定ココア協定とに関連して、若干の問題をお尋ねしたいと思います。  すず協定に加入した場合、わが国としては安定輸入やいろいろなメリットがあると思うわけですが、このすず会議が行われて議論された中での非常に大きな問題になったのは、緩衝在庫に対して消費国の供与の問題が非常に議論になったというふうに聞いておるわけですが、その中で日本としてはどういう主張をし、どういう態局をとったのかということを、まず最初にお聞きしたい。
  84. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) すず協定の改定会議過程におきまして、わが方は重要な消費国としてすず協定の基盤をできるだけ強化するという方向で努力をすべきであるということを考えておったわけでございますが、御指摘緩衝在庫につきましては、長きにわたりまして生産国義務的拠出ということで終始してまいったわけでございまして、今回これが消費国任意拠出に改められるという方向の努力がなされたと、その過程におきましてわが方といたしましては、基本的には主要消費国との大勢に同調したわけでございますが、最終段階におきまして任意拠出という形で収拾される方向になりましたので、わが方といたしましてもこれに対して同調するという態度をとり、しばらく協定運用状況を見守って、今後ひとつさらに貢献度を高めていくべきではないか、こういうような考え方に立って対処したわけでございます。
  85. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど、どうせ拠出するならば真っ先に述べた方が外交的にもいいではないかというふうなお話もありましたけれども、すでに拠出を表明している国というのはフランス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ等々出てきているわけですね。拠出を表明するという国も事実上ふえてきておる。先ほど大臣が言われましたように、このすず協定というのはうまく動いている代表的なものである。一次産品テストケースであるし、応分の拠出をすることを従来から考えてきたというふうに述べられているわけですが、しかし、今度UNCTAD会議では事実上木村代表はその点については表明されなかった。つまり、従来からそういうことが考えられてきたけれども、今回は表明していない。まだ表明する時期ではないのかどうなのか、なぜ表明できなかったのか。先ほどからも大分問題になっておりますけれども、その点もう一度大臣からお聞きしておきたいと思うのです。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは私の気持ちの中には、一次産品、南北問題いろいろ言ってはおりますけれども、これができないようじゃどうもという気持ちが正直言って私としてはあるわけでございます。先ほど事情はいろいろに申し上げました。でございますから、結局財政当局の立場としては、今後一次産品というものが、これがテストケースになってあちこち及んでいくような情勢がございますので、ここでひとつ物の考え方を何か将来に向かってはっきりさせておきたい、これ考えるのは無理からぬことでございますし、仮に金をつくるにしましても、それが民間であるのか、政府であるのか、あるいはまた輸入課徴金というようなことも考えられるのかといったようないろいろな問題をこの際ある程度将来の事態を予測しながら考えを整理しておこう、こういうふうに財政当局が考えているのは、それはそれで無理じゃないとわかりますものですから、まあ多少時間の余裕もあるから、それじゃもう少し検討してもらって納得ずくでやっていこうと、腹の中ではそう思っているわけでございます。
  87. 立木洋

    ○立木洋君 このすず協定に対しての問題というのは、やはり一次産品の問題に関して今後日本がどういう態度をとっていくかという意味でも注目されている点だと思うのです。それで、この間の木村代表演説でも、つまり一次産品に関してはワンパッケージ方式は事実上無理があるだろうというふうなことで、商品別に事実上検討していくべきだと、こういう態度表明があったと思うんですね。ところが、商品別にやっていくんだということを述べておきながら、その最もテストケースであるはずの協定に関しては態度を表明しないというのは、いかにもこれは矛盾だと思うのです。その点についてはやはり早急に、いま大臣言われたように十分に納得ずくでということはもちろんですが、やはり速やかにやるべきだろうというふうに思うのですけれども、その見通しですね、大平さんとも話し合っていただくことになるんでしょうが、大体いつごろそういう態度わが国としては表明できるのか。これは発展途上国等々も非常に注目しておりますから、一応の見通しのめどを述べておいていただきたいと思うのです。
  88. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさにどうもお話の筋道は立木委員の言われたとおりのことに実際なるわけで、ケース・バイ・ケースといって、非常にいいケースがあるではないかということにどうもならざるを得ないわけでございます。まあ三十ヵ月という余裕はあるとは申しますものの、問題の性質が、一次産品の問題というものはやはり前向きに対処していかなければいけないという意思だけは政府としてははっきりしておるわけでございますから、余り時間をかけずにこの問題は答えを出さなければいけないと思っております。いつまでと申し上げるのはちょっとつろうございますけれども、できるだけ早くひとつ決めてまいりたいと思います。
  89. 立木洋

    ○立木洋君 まあできるだけ早くということで。大蔵省の方もできるだけ早くという点では、いかがですか、いつごろになりますか、見通しは。
  90. 副島有年

    説明員(副島有年君) 先ほども御答弁申し上げましたように、ただいまの段階ではいつごろということを正確に申し上げにくいことは、これがテストケースになるということと、もし拠出するとしてもいろんなやり方もあり得るということも含めまして、慎重に検討しなければならないということもございますので、やはりなるべく、できるだけ早く検討をしたいということでございます。
  91. 立木洋

    ○立木洋君 この一次産品の問題と関連して、日本の経済にとって南北問題というのは、いままでもそうでしたけれども、これからも非常に重要な問題になるだろう。これは一朝一夕に単純に解決できるというふうな考え方はもちろん持っておりませんけれども、しかし、これを正しく解決するということは日本の経済にとってもやはり重要な問題だというふうに思うわけです。そういう点で、まあ外務大臣はその道でも専門であったわけですから、一体この南北問題というのは具体的にどういう問題なのか、基本的な点をまずお伺いしておきたいと思います。
  92. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) やはり背景には、大きな戦争がないという恵まれた環境が背景にありまして、したがって、そういうところから多くのかつての植民地が独立をしてまいります。一般に言って、国際的なそういうヒューマニズムと申しますんでしょうか、そういう動きが高まってきておるのが大きな背景だと思います。そのことはまさに好ましいことだと思いますが。  そのようにして独立してしきました国が、やはり何とか自分たちの繁栄、自分たちの生活水準の向上ということを考えるのは当然であって、たまたまそれらの多くの国が主として経済を一次産品に頼っておる。したがって、国の繁栄、生活水準の向上というものは一次産品から来る所得に非常に大きく依存せざるを得ないと考えるのは私は当然であると思います。従来、しかし、そういう一次産品価格あるいは供給の形態というものが、植民地であったせいもございますし、いろいろな事情から、いわば非常に交易条件が不利のまま推移してきた。それを改めたいというのが一九六〇年の初めのころにいわゆる南北問題が起こりました背景であったと思います。  それに対して先進国側は、正直を申しますと、一九六〇年の初めごろには、まあ言葉は悪いんですが、何とか時間かせぎをしていったらというような気持ちがなかったと言えばこれは偽りでございまして、それには幾つか理由がありまして、一つは、先進国側にとってはなるべくいい交易条件で買いたいという気持ち、それから先進国――これはまあちょっと問題は複雑になりますが、実は一次産品そのものも、数量で申せば先進国の方が供給量は多いわけでございますけれども、そのことをちょっと外して申しますと、わが国のような場合で申しますと、国内の生産との競合ということが一つやっぱり問題になっておりましたし、現在でも一部のものはなっておるわけでございます。ですから、何となく時間かせぎをしたいというようなことで六〇年代のかなりの時間を過ごしてきたわけですけれども、やはり国際的なそういう何と申しますか、ヒューマニズムと申すんでしょうか、それは耳をかさないわけにはいかないという気持ちにだんだん先進国側がなってまいって、そしてまた、全然別の要因で石油の問題が起こり、そんなことから、ついに国際経済会議にまで至ったわけでございます。また、時を同じくしてUNCTADの四回会議が開かれるということでございますから、どうも全体の問題として、これはもうここいらで本気に対処をしなければならないという気持ちがかなり先進国の間に強くなっておるものと思います。  わが国の場合には、先ほどから何度も申し上げておりますように、平和国家としての理念からも、やはりこういう国際的な不平等と申さぬまでも、いわゆる将来の紛争の要因を除去して、世界全体が繁栄に均てんすべきだという気持ちから、わが国としてはもう一つそういう動機が加わっておりますけれども、そういう問題として私は考えております。
  93. 立木洋

    ○立木洋君 先進国と開発途上国との経済格差といいますか所得格差といいますか、そういう点だと思うんですけれども、たしかUNCTADの第一回会議が開かれたどきには日本の首席代表として宮澤大臣出席されたと思うんですが、記憶に間違いなければ。で、事実上経済格差を是正するということで取り組み始められた。しかし、現実はなかなかそういうふうにはなっていない。今度のUNCTADのコレア事務局長の報告ですかにも述べられておりますように、五二年から七二年の間に先進国はGNPが一二・五倍、事実上三兆ドルに達した。しかし、開発途上国ではきわめて少なくてGNPはわずか五億ドル、大変な格差が、是正されるどころかまた広がるというふうな重大な問題も指摘されていると思うんですが、事実上こういうふうな所得格差がきわめて厳しい状態になっているということを、大臣は第一回首席代表として出席されてから今日までの間を振り返ってみてどういうふうにお考えになりますか。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いまのお話は、多分五〇年から二十年ぐらいの期間について言われたと思います。私は、その数字は恐らくそうであろうと思いますのは、事実申し上げましたように、六〇年代いっぱい、いろいろ話題にはしながらも、先進国側が有効に南北問題に精を入れて対処をしてきたとは私は申しにくいと思うんでございます。それがいま言われたような数字になってあらわれてきておると思いますが、ちょうど七三年にああいうことがございまして、それもありまして、ここまでまいりますと過去二十年のようなことではやっていけませんし、また、そうあってはならないという、ようやくそういうことになってきたのではないかと思します。
  95. 立木洋

    ○立木洋君 一九六〇年代を見てみますと、日本だとか西ヨーロッパで、資源輸入国ですか、そういう輸入型の国というのは高度成長を遂げてきたわけですね。しかし、現在の状態というものはそういう状態ではなくなってきている。将来、前と同じようなパターンで高度成長なんということは考えられないだろうということがほとんど言われているわけですけれども、そういう場合には、少なくともこの一次産品の問題に関して基本的に今後どういう態度をとっていくのかということが非常に重要な問題だと思います。いま大臣も言われましたように、所得格差の点では努力をしたとは申しにくいというふうにも言われたわけですけれども、つまり日本自身にとって、一国として努力をしてこなかったというふうにも判断されるわけですが、今後一次産品の問題に関して基本的にはどういうふうに対処されていくのか。さっき、すず協定の問題も出しましたけれども、基本的に一次産品全体の問題に関してどういう態度をとっていくか、いまUNCTADでも問題になっていますが。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどもちょっと申しかけましたように、一次産品が主として発展途上国の供給するところであるということでありますと、一つ問題のむずかしさが減るわけですけれども、御承知のように、かなりのものが実は先進国によって供給されているということがございますので、これが問題の解決を一つ非常に混雑させておると思います。ですが、基本的に申し上げられることは、そのような一次産品に頼っているところの発展途上国、その一次産品から生ずる輸出所得、この輸出所得を何とか余り大きな変動、ことにその下落でございますね、そういうことがないように、できればそれが逐年でも少しずつ上がっていくようにというようなスキームをどういう形で実現するかということになっていくんではないだろうかと思います。それはあるいはロメ協定のような考え方も一つであるかもしれません。または、このすずにございますような商品協定のようなやり方も一つであろうと思います。南側が言っておりますような総合的な、非常に壮大な青写真による総合計画と共通基金というようなものは、南側が結集するためにそういう旗を掲げておるということはそれなりに理解はできますけれども、そういう形では恐らくかえって手間を取るのであって、やはり具体的に一つ一つの商品、あるいはおのおのの国についてどうしたらいいかということを考えていく方が私は早いのではないかと思いますが、そのねらいは、やはりそういうモノカルチュア、あるいは多かれ少かれ、限られた範囲の一次産品に頼っているところの発展途上国輸出所得を少なくとも安定させる、ある程度向上させるというようなのがねらいであるだろうと私は思います。
  97. 立木洋

    ○立木洋君 先般のランブイエ会議でも、三木総理がこの一次産品の問題に関して幾つかの趣旨の発言をなされておりますが、それを見てみますと、一次産品というのは、生産国消費国を問わず、全世界的な立場から最も効率的に用いられることが必要であるという趣旨から、しかし問題としては、世界経済の不況に伴って一次産品価格暴落及び輸出の不振等々の問題もわが国としては無視できないという点で、さらにはアジア・太平洋地域の開発途上国関心品目を含む特定産品に関する輸出所得の安定化のためのグローバルな方式は十分検討に値するという問題が提起されているわけですが、この問題については、その後詳しく具体的に検討されたんですか。
  98. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは実はパリでああいう世界経済協力会議が開かれておりましたり、あるいはUNCTAD四回会議があったりしておりますものですから、何となくそういうことの帰趨も見たいという気持ちがございまして、それを待ちながら、しかし、問題は忘れてしまうわけにはいかない問題なものでございますから、それを見ながら、やはりわが国としてできればアジアにことに関心の高い品目を幾つか拾い上げて、三木総理大臣が言われたようなことをやっていったらどうであろうかということは、この両方の会議の結果も見ながら考えなければならない問題だと思っております。
  99. 立木洋

    ○立木洋君 話は若干変わりますけれども、中東戦争が起こったとき、いわゆる石油危機で大変ないろいろ問題があった。三木特使があのとき行かれて、アラブの各国に対して六七年の国連決議に何らの手を打たれていないことに遺憾の意を表明し、アラブに正義があるというふうな主張をなすった。しかし、その後アメリカなどの対応を見てみますと、七四年の九月ですか、いわゆる第九回世界エネルギー会議で、フォード大統領が主要消費国の結束と産油国に事実上圧力的な姿勢が示された。さらには七五年の一月、キッシンジャーがビジネス・ウイークで述べている点で見てみますと、いわゆる先進工業国が、工業世界が首を締めつけられるような場合には軍事力の行使も云々という趣旨の発言がされて、事実上アラブ諸国に対するわが国政府態度というのも徴妙に揺れ動いたと思うんですね。七四年、七五年、いろいろなアラブに関する問題が国連でも問題になり、国連での一連の決議があったわけですが、PLOの国連オブザーバーの資格決議や、パレスチナ人民の自決権、民族独立と主権、追放された土地に戻る権利を承認する決議、あるいはシオニズム非難決議、PLO安保理招請決議、あるいはイスラエルのアラブ占領継続を非難し、同国に対する軍事的、経済的援助の停止を求めた決議などなどに対しては、日本の国としてはすべて棄権をされている。アラブに正義があると述べられて、ああいう石油危機のときに示した積極的な態度というのが、事実上その後の国連の一連の決議を見ても棄権というふうな態度になっている。こういう点は非常に一貫性がない。やはりそのときの場当たり的な対応の仕方、エネルギー危機で問題になれば、これは大変だといって、アラブの皆さん、日本はこういう態度をとるからよろしくということになって、アメリカの方が強い態度に出るとやはり日本政府態度というのは若干変更する、若干というか大分というか、変更する。こういうことは南北問題を正しく解決していく上で重要な問題ではないかと思う。わが国としてどうして一貫性をとりながらやれないのか、このアラブ問題に関してはどういうふうにお考えですか。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最近の時点で申し上げますと、先だってPLOのカドウミという人が参りました。それからもっと最近カタールの皇太子が見えたわけでございますけれども、今年一月の国連安保理事会におけるこの問題についての決議について、わが国が積極的に賛成の態度をとったということがアラブ諸国にとっては非常に印象的であったようでございます。私どもとしては、従来からそう考えてきておったつもりであったんでございますけれども、ことしの一月の態度で、ようやく、なるほど日本は友だちであるというふうにアラブの国々が実際の問題として感じたらしゅうございました。われわれとしては、いままで二階堂官房長官の声明以来、この点ははっきりしてきたつもりでありましたし、ことに、昨年の一月の総理大臣の施政方針でさらにはっきりさせたつもりでございましたけれども、必ずしもそういうふうに受け取られていなかったきらいが、振り返りますとございますですね。言われるように、私も、はあはあそうかなあという感じがなきにしもあらずございます。  そこで、どういうことであったかと申しますと、結局パレスチナ人の自決権、生存権というものは認められなければならない、国連憲章に従って平和裏に認められなければならないという、それを除いてはアラブ問題の解決はむずかしいぞということがわが国の立場で一貫してあったと私は思うのでありますけれども、同時に、具体的な決議になりますと、二四二号という決議そのものもこれも無視してはならないわけでございます。ですから、片っ方だけをいって二四二号を無視するがごとき決議でありますと、それはまたそれだけでは問題の解決ができないということでございますから、両方のことを絶えず言わなきゃならないというふうにわが国はずっと考えてきました。ところが、二四二号というものだけではいかぬということをこえて、パレスチナという、イスラエルというものが正面から話の相手として認めるということになかなか表向きアラブ側が踏み切りがつかない、ことにPLOの側にそういう問題がございます。私は、いろいろ話をしておりますと、いやそれは自分たちが過去十何年だまされ続けてきた、そういう立場から言えば最後の切り札はやっぱり最後までなかなか見せられないということはわかってくれるだろうというようなことを言っておるわけでございます。でございますから、非常に頑迷なことをとことん思っているとも私は思えませんけれども、しかし、それはパレスチナ人の中での一種のやはり穏健派でございますから、その穏健派自身のまた中における立場というものがいろいろむずかしい問題があるんであろうと、そういうことがございまして、わが国は、過去パレスチナ人の問題は、先ほど申し上げましたように、われわれとしてはこの問題の中核だと考えるが、同時に二四二号というものを無視してはいけないということを申しますことが、ある意味でアラブ側の気に入らないことになってきておったんだと思います。しかし、最近になりましてその点についての理解がようやくはっきりしてきて、先ほど申し上げましたように、積極的に向こうから感謝といいますか、そういう意思表示が出るようになりましたので、いまとしてはかなりわかってもらえたと思っています。
  101. 立木洋

    ○立木洋君 この問題、もっと質問したいわけですが、しかし時間がありませんから、通産省の方にDDオイル、産油国からの直接輸入の分ですね、これはアラブのああいう問題が起こったときに、これをふやすという方向が表明されて、一時期ふえたように見えますけれども、現在ではどうなっていますか。
  102. 佐藤剛男

    説明員(佐藤剛男君) ただいまの原油の件でございますが、昨年は日本の不況ということで石油全体の輸入というものは非常に停滞という形で出ております。その結果全体の、いままでDDオイル大体五・八%ぐらいだったですか、そのシェアを維持しながら、全体としましてのものが減っておるという状況かと思いますが。
  103. 立木洋

    ○立木洋君 いま停滞というふうに言われたけれども、減少している面もあるんじゃないかと思うのです。いわゆるさっきの話に返りますけれども、大臣、DDオイルをふやすというふうな態度を表明されて、実際にのど元過ぎればではないですけれども、事実上そういうのが停滞し減少していくというふうな状態ですね。これもやはり好ましくないんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  104. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは結局、産油国におきますいわゆるメジャーのパーティシペーションの問題が、産油国とメジャーとのどういう取引になっていくかということにかなり私は関係があるんだと思うのでございます。ですから、その当時思ったほど産油国は教条的ではありませんで、パティシペーションはしましたけれども、案外メジャーを機能的には使うというような動きをしておるせいもありまして、DDオイルというのが当初私どもが感じましたほど大きな問題になってきていないんではないんだろうか、まあ需給の問題もございますけれども。
  105. 立木洋

    ○立木洋君 話はかわりますけれども、先ほど出ておりましたいわゆる東南アジア日本と貿易を行っているASEAN諸国等々からは、また最近日本に対するいろいろ不満や批判的な声が出ておるというふうな状況にありますけれども、この問題もやっぱり重要な一次産品の問題、いわゆる開発途上国の交易条件を改善していくという問題等とも関連があるわけですが、こういう問題については、特にASEAN諸国に対しての今後の交易の姿勢というのはどういうふうに考えておられますか。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) やはり一次産品を中心に、先ほど立木委員が昨年の総理大臣の意見として御紹介になりましたそういう考え方を具体化していくということ。それから、ASEAN諸国がせんだってのバリ会議の結果、ある程度おのおのの国の特定の産業を重点的に伸ばしていこうという考えを一応打ち出したわけでございますから、われわれとしてそれに対応して支援をしていこうと、こんなことを考えております。
  107. 立木洋

    ○立木洋君 最後に、最初の問題に戻りますけれども、今度のUNCTAD会議についても、事実上二月の七日に出されたマニラ宣言に対して日本としてどういうふうに対応していくのか、それに対してアメリカがどういう態度に出るのか、こういういわゆる各国の動向を見るという点については、これは私は決してそのこと自身が悪いという意味ではありませんけれども、しかし、日本アメリカなどと違って、事実上貿易に輸入としては五〇%頼っておる。日本が資源依存度が五〇%である、アメリカが二二%でECが一二%、こういう点では条件も非常に異っているわけですね。だから資源依存度の強いわが国としては、わが国のやはり方針を持って会議に臨んでいかなければならないし、いままでそういう南北問題に対して所得格差を是正していく点での努力が必ずしも十分ではなかったという趣旨のことも言われておるし、また、当面そういう問題を解決すべき時期にやはりきておると、何らかの意味で、ということも大臣述べられたわけです。そういう意味では、今度のUNCTAD会議に臨んだわが国の代表として、その点もっと態度を明確にすべきではなかったか。きのうでしたか、お話がありましたけれども、UNCTAD会議でキッシンジャーの提案に対して基本的には賛成であるという趣旨のことを述べられた。それから、共通基金に関しては、これは事実上反対であるというふうな態度だろうと思うんです。キッシンジャーの出されたいわゆる銀行の提案、それと共通基金との関係についてはどういう違いがあって、なぜ片一方に賛成できて片一方に賛成できないのか、そのあたりの点についてはどのようにお考えですか。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 発展途上国側が、いわゆる総合プログラムであるとか、共通基金であるとか、大きな青写真の旗を掲げるということは理解はできることでございます。たくさんの国を結集するためにそういうアプローチをしてくるということは理解のできないことではありませんけれども、先ほども申し上げたとおり、実はそういう大きな青写真で論争しておってもなかなかそれが現実には実現しがたいものでありますから、できるところからやっていきましょうということを、これは逃げ口上でなく言う方がいいのではないかというふうに思っているわけでありまして、キッシンジャーが言いましたことは、あの構想もいろんな意味で不明確な点が幾つかございますが、ともかく一次産品というものは大事である、われわれとしても取り上げざるを得ないということと、そのためにお互いに金をつくって一次産品価格の安定ということに、あるいは増産ということにも協力をしようではないかというのがキッシンジャー提案のエッセンスでございますから、そういう精神にわれわれは賛成だと、こう言っておるわけでございます。これと共通基金というものがどういう関係に立つかというのはデリケートな問題だと思いますけれども、少なくとも私どもとしては非常に大きな青写真としての共通基金というものを、まず、いわば青写真どおりにとにかくつくってしまおうということは現実的ではないという考えを持っておりますことは事実でございます。
  109. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカなどでは特に市場経済原理というんですか、という点から、どうしてもそういう共通基金などには賛成できないという趣旨の主張がなされておる。しかし、先進国でもこういうマニラ宣言などの提案についても理解のある態度を示している国々もある。これはもう時間がありませんから申し上げませんけれども、木村代表もこの問題に関しては市場原理へのある程度の公的介入もやむを得ないという趣旨の発言もなされておる。日本としてはこの問題に関して今後どういうふうな態度を事実上とっていくのか、最後にその点を明確にしておいていただきたい。それで私の質問を終わります。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど立木委員か言われましたように、日本は海外の資源に依存する度合いが非常に高いわけでございます。そういう立場からだけ申しますと、ちょっと言葉ははなはだ露骨でございますけれども、できるだけ安く買える方がいいという問題はやはりないわけではない、そのためには市場原理が比較的わが国としては、実はその観点からは好ましいという問題がございます。それは恐らくわが国と似たような立場にあります西ドイツなどは非常に明確にそのことをいろんな場合に言うわけでございますけれども、そういう考慮は考慮としまして、今度南北問題で考えますと、市場原理だけでこの問題を処理していくというのならば、南北問題の解決策というものはもうなきに等しいということになってしまいますから、やはり市場原理というものは、ことに先進国間で大事な原理だと私は思いますけれども、南北問題に対処するに当たっては、やはりそれはある程度他の原理の介入を許すということはやむを得ないだろう。立木委員の御質問に対しては、したがって、やはり肯定的にお答えを私はすべきだろうと思います。
  111. 立木洋

    ○立木洋君 最後に一言。だからそういう意味でやはり資源依存度の高いわが国として、国際的ないろいろな国がどういうふうに動くかということを見ながら態度を決めるということももちろん否定はいたしませんけれども、わが国わが国なりのやっぱり貿易立国としてのあり方があるわけですし、南北問題を正しく解決するという点ではわが国にとって重要な関係があるわけですから、これは政治的にもあるいは経済的にも、わが国としては自主的な観点から積極的なイニシアを発揮できるように私はやっていただきたいということを最後に要望して、質問を終わります。
  112. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  第五次国際すず協定締結について承認を求めるの件  千九百七十五年の国際ココア協定締結について承認を求めるの件  アジアオセアニア郵便条約締結について承認を求めるの件  以上三件を一括して問題に供します。三件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  113. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 全会一致と認めます。よって、三件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  115. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百七十六年の議定書締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。宮澤外務大臣
  116. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百七十六年の議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  現行のおつとせい条約は、日本国、カナダ、米国、ソ連の四ヵ国の間でおつとせい資源の最大の持続的生産性を達成するための措置を決定するため科学的調査を行うことを取り決めたものであり、一九五七年十月に発効いたしました。この条約の有効期限が本年十月十三日に到来することにかんがみ、一九七五年三月及び十二月に条約の改正を検討するための当事国会議が開催され、同会議で採択されたこの議定書が一九七六年五月七日にワシントンで四ヵ国により署名されました。この議定書は、条約有効期間を四年間延長すること等の点について現行条約を改正することを目的としているものであります。この改正に基づく今後四年間の調査により、おつとせい資源の最大の持続的生産性達成のための措置が一層明らかにされることが期待されます。  よって、ここに、この改正議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  117. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本件の質疑は後日に譲ります。  これにて休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十七分開会
  118. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  これより本件の質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  119. 羽生三七

    ○羽生三七君 核兵器の不拡散に関する条約については、昨年の国会で私、主なことは一通りお尋ねしたつもりでありますが、今度批准が多分可能だと思われるこの機会に、改めて数項の点についてお伺いをいたします。  政府が核兵器不拡散条約の批准を急ぐのは、単に核兵器の不拡散協力するという大義名分だけではないと私は思っております。この条約が核大国の手を縛らず非核保有国だけを縛ろうとする大国優位、核独占の不平等と思われる条約であるにもかかわらず、なおかつこれを批准しようとするのは、この条約に加入することによって、軍縮委員会等の場におけるわが国の軍縮についての発言を重からしめようとするものではないかと、私はまあ好意的に理解をしておるわけです。ただ単に国際信用の問題だけではないと思うし、また、それだけであってはならないことは当然であります。政府は、条約署名後数年にしてなおかつ批准しないのは国際信用にかかわると言っておりますが、そういうことだけなのか。それとも、この条約の批准を通じて積極的に核兵器の縮小、そして最終的には廃絶という方向への必要なステップと考えるのか、その辺の問題について大臣見解を承りたいと思います。
  120. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま羽生先生の仰せられましたように、政府がこの際批准につき御承認を得たいと考えておりますのは、いわゆる核軍縮、実験を中止し、さらには新しい開発をやめ、現にあるものを廃絶をするというところまで持っていって初めて核軍縮というものが完全になるわけでございますので、そういうことを、平和憲法を持ち実践してまいりましたわが国としては、やはりみずからもこの条約に加盟することによって名実ともに説得力のある発言権を得たいということが大事なねらいの一つでございます。  また、わが国は非核三原則を宣言しておりますけれども、世界国々、ことにわが国に比較的近接をしております東南アジア国々等の中には、なお将来の問題としてはわが国が本当に核武装をしないのであろうかどうであろうかという疑問を、現実にときたま表明するようなこともございますので、この条約によりまして国際的にそれを約束するということは、そのような意味でのアジアにおける安定にもさらに寄与するというふうに考えております。
  121. 羽生三七

    ○羽生三七君 核兵器の不拡散といいましても、現実には垂直的にも水平的にもむしろ拡散している状況にあるのが今日の実情だと思います。この核兵器の縮小、そして終局的には廃絶について日本が何をなし得るか、これを考えてみる必要があると思います。言うまでもないことでありますが、日本は今日経済大国となったし、また、これからもこの地位を維持し続けるであろうと思います。しかし、率直に言って外交面においては、高度成長、経済大国のような意味での評価を受けているとも思いません。日本が国際的に貢献する道は発展途上国への協力援助、これはけさほどからも質疑がありましたが、あるいは南北問題に積極的に取り組む等、これらもちろん重要でありますが、それとともに、国際平和のために日本が何をなし得るかを考えることがまた重要な問題であると思います。その意味で、核防条約を批准すればそれで事足りるという問題ではないことは、いま外務大臣自身がおっしゃったとおりであります。  日本世界に比類のない新憲法を持ち、また世界最初の被爆国であるのですから、この特殊な立場を生かして、核兵器の廃絶、完全軍縮を目指して力の限り努力することが国際平和に貢献する重要な道であると考えます。そのためには、国連の場を通じ、あるいはジュネーブ軍縮委員会を通じ、あるいは二国間の協議を通じて、あらゆる機会を生かして積極的に努力することであると思います。日本がこの特殊性を生かして積極的な努力を傾注しなければ、この条約の批准の意義は私はないと思います。そういう熱意を持って、いま大臣が新憲法を持つ国としてのふさわしい外交ということをおっしゃいましたが、これから後、具体的にお尋ねいたしますが、そういう熱意を持って積極的に核兵器の廃絶、完全軍縮のために努力されるかどうか、重ねてこの点をお伺いいたしたいと思います。
  122. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) われわれお互いに関しまする限り、われわれは非核三原則を持っておりますので、この条約を批准いたしましてもいたしませんでも、いわゆる核武装をするつもりはないということは、お互いに関する限りはっきりしておるとは存じますけれども、やはり対外的に見ますと、国際的な約束をするということが安心感を与える、また、それなりにわが国の核軍縮についての発言に説得力を付与することになろうと存じます。批准をしなかった場合との比較で申しますと、ああは言っておっても日本自身は加盟をしていないではないかということは、当然指摘されることになりますので、いや、われわれは非核三原則を持っておると申しましても、やはりそこに説得力というものが伴わないおそれがございます。従来わが国は、仰せのように、国連あるいはジュネーブにおける軍縮委員会等において、核実験の停止、それから核兵器の縮小、廃絶ということを何度か、できる限機会を見つけては強調してまいっておりますけれども、しかし、自分の立場というものが、加盟をしていないということがやはりそこに一つ後ろめたさといいますか、説得力を欠くということがあったことは否定できないと思います。幸いにして御承認を得て批准をいたしますならば、そのような説得力をさらに増すことになりますし、もとよりそういう立場で国連、ジュネーブ等において発言を強めてまいりたいと思います。  さしずめ、わが国としてどの点を一番強調するかということでございますけれども、やはり核実験の包括的な禁止ということにまず一番最初の目標を置くべきであろうと思います。ことに地下核実験につきまして、査察、検証等の方法については、わが国は地震についての学問が相当発達をいたしておりますので、それをもって寄与することもまたできると考えておりまして、さしずめ核実験の全面的な禁止、それからもう一ついわゆる平和目的と称しつつ行われるところの核爆発、これは純粋のものであればそれなりに意味がございますけれども、しばしば事実上は平和目的の名のもとに他の目的を頭に置いた実験というものがきわめて行われやすいのでありますから、その制限についても積極的に提言をしてまいりたいと思っております。
  123. 羽生三七

    ○羽生三七君 次の点は、あるいは私と大臣政府との見解を異にする問題かもしれませんが、私は、われわれが予見し得る近い将来、日本に対する外国からの理由のない攻撃、侵略はあり得ないのではないかと、こう思っております。ただし、攻撃をされるような条件をつくれば別ですが、そういう条件をつくらない限り、外国が日本に侵略、攻撃を開始してくることはまずなかろうと思う。核防条約批准に際して考えることは、日本アメリカの核抑止力に依存するのではなくて、むしろ日本国憲法の精神を基礎に、日本の特殊な立場を積極的に生かして、先ほど来申し上げるような核兵器の廃絶、完全軍縮を目指して世界の先頭に立つことではないかと思います。そういう国が世界一つぐらいあってもいいんではないか。つまり、常識的に世界の国と力を、歩調をそろえるということも大事でありますが、日本のような特殊的な立場を積極的に生かして、そういう理想をひっ掲げて国連の場その他で働く国が世界一つぐらいあってもいいんではないか。むしろそのことが、そのような日本に対する外国からの攻撃、侵略が簡単に行われるとは私は考えません。  そこでお尋ねしたいことは、日本は核兵器が存在する限りアメリカの核のかさにとどまるのかどうか。核兵器が世界に存在しても、日本はなるべく速やかにアメリカの核のかさから離脱しようとするのか。あるいはこういう体制を長く維持しようとするのか。その辺のお考えはいかがでありますか、お伺いいたします。
  124. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国の外国に対する信用のうちで何が一番大きいかといえば、やはり日本は戦争をしないという憲法を持って、それを三十年間実践してきたということであろうと思います。そして、これはまあ、仰せのように、世界の人類における最初のいわば大きな実験でございますけれども、三十年間の情勢はわれわれに比較的幸いしたというふうに考えますし、環境は決して悪くなっておらないというふうに思っております。したがいまして、もし日本のような経済大国がこの試みに成功をするということであれば、また自分もそれにならおうという国が出てこないとも限らない。そうなれば、文字どおり世界平和に向かってわれわれがお手本を示すということになっていくわけでございます。  他方で、いまの日米安保条約でございますが、私どもは世界現状において、なお全くこの条約を持たないでわれわれの安全を全うし得るという判断には立っておらないわけでございます。が、他方で、羽生委員の言われましたように、世界に核兵器というものがいやしくも何がしか残る限り安保条約というものは維持していかなければならないかということになりますと、安保条約自身に、国連による平和維持の体制が全く成った場合にはということも記されておりますし、核兵器がいやしくも残る限りはというふうに考えますよりは、このような条約がありませんでも、いわゆる抑止力というものが存在しませんでもわが国が攻撃を受ける心配がないと客観的に考えられるような情勢というものが到来しますならば、安保条約というものは、事実上軍事面の安保条約は必要がなくなるということになると考えるべきであると思います。その時期がいつでありますかについては、ただいま予見し得ないというのが現実であろうと思います。
  125. 羽生三七

    ○羽生三七君 この条約と直接関係することでありませんが、一般的に申せば、言うまでもないことでありますが、いま大臣からお話がありましたように、日本アメリカと安保条約、軍事同盟を結んでおります。私たちは日米安保の解消を主張する立場にありますが、しかし、この道が簡単に実現されるとは思っておりません。これはもちろん日米間で十分話し合いを通じて将来日米友好条約に転化していくことが望ましいと私は思っておりますが、特に安保の極東条項のある限り、私はやはりこの条約はなるべく早い機会に条件を整えて解消することが望ましいと思っております。日本はそういう立場からなるべく速やかに離脱をして、フリーの立場に立ってアジアの平和を確保しなければならぬと思いますが、インドシナにおけるアメリカの敗北は重要な意義を持っていると思います。世界一の軍事大国、経済大国が、あの貧しいアジアの国と何年戦っても勝利を得ることができなかったということは、武力だけが唯一のものでないことをこのくらい事実をもって証明したことはないと思います。  最近のアジア情勢を見るときに、ASEAN省画には中立化構想を具体化する方向が芽生えておりますし、このASEAN諸国とインドシナ諸国が非同盟中立の方向へ進めば、この地域における安定は確保されるのではないかと思います。そういう徴候はすでに出ておることは御存じのとおりであります。日本としてもこういう情勢が定着するように、出しゃばりではなく、分をわきまえながら積極的に寄与していくことが必要ではないかと思います。朝鮮半島についても、南北の対話を通じて平和的統一が達成されるよう期待し、そのためには、韓国だけではなく、朝鮮民主主義人民共和国との関係日本としても一層発展さしていくべきであると思います。  私が核防条約の審議に当たってあえて国際情勢に触れたのは、いま述べてきたような努力を通じて、アメリカの核のかさに依存するような情勢から脱却することをこいねがうからでございます。  さきにも述べたとおり、アメリカとはこの安保解消、日米友好条約を、それからソ連、中国とは不可侵条約を結び、日本を取り巻く情勢を、日本周辺の環境の安定化を図りながら、核に依存するような外交防衛政策を着実に変化さしていくべきであると思いますが、あるいはこれは基本的には政府見解を異にするかも一しれませんが、しかし、終局的にはこれを目指していく以外に世界の完全な平和が実現できるとは思いませんので、まずこの点をお伺いいたします。
  126. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 将来を展望しました大きな構想としては、やはりいま羽生委員の言われたようなことを私ども忘れてはならないと考えております。とともに、わが国といたしまして、現在といえども、いわゆる体制を異にする国、あるいは異ったイデオロギーを持っている国を含めまして、どの国とも平和につき合っていくということがわが国の外交の基本方針でございまして、その点におきましてはアメリカの外交方針とときどき相違を見せるわけでございますが、わが国のそのような方針で今後とも進んでまいるべきだと思います。  で、いま羽生委員の言われましたような大きな将来の構想を私ども決して忘れてはならないと思いますが、そこに至りますまでの現実の世界情勢の判断については、先ほども申し上げましたように、やはりある程度用心深く進んでいくという配慮は必要であろうと考えております。
  127. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、核問題や軍縮について、ジュネーブの軍縮委員会における日本代表の努力を無視するものではありません。それなりの評価をしているつもりでおります。しかし、この分野における大国の動きを十分認識してかかる必要があるのではないかと思います。  すなわち、一九六三年に成立した部分的核停条約は、地下実験を禁止の対象から除外しておりますが、これは核大国が大気圏の核実験をすでに不必要とする段階に到達をし、地下実験さえ許容されれば核兵器開発に支障はないと判断したからにほかならないかと思います。  また、一九七四年に米ソが合意した地下核実験制限条約も、不必要となった大型地下実験の取りやめを合意したにすぎないものと考えております。しかも、これらの条約は、いずれも最終的には軍縮委員会のいわば頭越しに、大国間の直接取引の形で交渉が行われております。その例としてはSALTがあることは御承知のとおりであります。この交渉は、初めから軍縮委員会を問題としていないばかりではなく、その内容は真の軍縮とはほど遠いものと言わなければなりません。  もちろん私は、大国相互間の直接交渉であっても、それが真に平和的役割りあるいは軍縮の精神に沿って実を上げるならば、これを歓迎するものであることは言うまでもございません。しかし、実際には垂直的拡散とも言えないこともないのがその現実であると思います。  このように見てくると、この核兵器不拡散条約の第六条に規定される問題、すなわち、「核軍備競争の早期の停止並び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する。」とのこの規定は、果して誠実に履行されているのかどうか、疑いなきを得ないのであります。この条約について、そういう欠陥がわるにもかかわらずこれを批准せんとするゆえんは、わが国はこの条約参加して、その加盟国たる地位に立って積極的に核軍縮に効果的な役割りを果たすことを期待するからにほかならないのであります。  さきにも触れましたように、大国間の直接交渉も、それが効果的なものであればあえてこれを否定するものではありませんが、やはり国際管理のもとにおける軍縮の推進が本筋ではないかと思います。また、そうした中における日本貢献活動が期待されるのではないかと思います。この大国間の直接取引と核軍縮の国際管理との関連について、大臣見解を承りたいと思います。
  128. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年五月にジュネーブでこの条約の再検討会議がございました席上で、米ソとも言い合わせましたように、とにかく米ソ間の核軍縮に関するいろいろな交渉、若干の取り決め協定等が、過去この条約が成立いたしましてから米ソ間にできておるわけでございますけれども、そのような米ソの接触、交渉というものは、この条約が成立をしていなかったならば恐らく考えられないことであったろうということを、米ソ共々に再検討会議の際に申しておったということを聞いておりますが、これは額面どおり受け取るわけにもまいらないかと思いますけれども、少なくとも、米ソともお互いがオーバーキルの状態であることはよく知っておりますし、それが財政負担になっておるということも事実でございます。したがって、この条約ができてこれ以上核兵器保有国がふえないという一つの前提ができましたことが、米ソの核軍縮をめぐっての接触、交渉をやりやすくしたということは申し上げられることではないかと思います。  それで、米ソの交渉でございますけれども、確かにテンポは非常に遅々としておりますし、それからお人によりましては、これは拡大均衡であるというような批評をなさる方すらございます。天井を設けるにしても、天井がいかにも高過ぎるというようなことも、私どもから言えば確かにそう思えますけれども、しかし、何か天井を設けようという合意がありますことは、俗に申します青天井の場合に比べれば何がしかの希望が持てることであるというふうにも申し上げることができるであろうと思います。  さらに、核実験のことでございますが、地下核実験について最近米ソ間に、これも敷居は高うございますけれども、合意ができつつあるといわれておりまして、それは恐らくソ連側が長年の問題であった査察というものを受け入れるということを意味すると存ぜられますので、そういたしますと、これは大きな進歩であるということができようと思います。  総じて、この六条に基づく核兵器の軍縮への努力は確かに遅々としておりますし、その程度もわれわれの希望するほどではないということは事実として認めざるを得ませんけれども、方向としてはそういう方向に向かって、ことに米ソが動き始めている。また、そのような利己的な動機もあると申し上げることはできると思います。本来ならば、そのような交渉は国際管理下で行うことが望ましい、それはもちろんであります。ただ、SALTのようなことになりますと、実際これは第三者が介入をいたしましても、その介入の効果と申しますか、事実問題として疑わしいかと思います。さしずめ米ソが圧倒的な核能力を持っておりますから、本則ならば国際管理下で行われるべきでありましょうけれども、ともかく米ソ間ででもそれが進んでおるということは、それなりに評価をしてよろしいのではないかと考えております。
  129. 羽生三七

    ○羽生三七君 大臣のお答えのとおりで、現実に核大国である米ソ両国の動きをジュネーブの軍縮委員会で介入して実を上げることが容易なものでないことは、私もよく承知しております。しかし、それにもかかわらず、やはり国際管理が軍縮の本筋であると思います。でありますから、介入ということではなしに、もっと米ソ両大国が核兵器の縮小に関し、あるいは廃絶に関して熱意を持って努力すべきであるということを、日本のジュネーブにおける軍縮委員の代表がしばしばそういう問題にも触れておることはよく承知しておりますが、もっと率直に米ソ両国に対して意見を開陳してはどうかと思いますが、いかがでございましょう。
  130. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは言われるとおりだと思います。昨年の再検討会議でもわが国代表はそのようなことを申しましたし、また、ソ連からは実はSALTの交渉について話を聞くという機会はないのでございますけれども、米国からはその都度の進展段階わが国にも実情の説明をしてくれておりますので、これはまあ非常に高度の専門的な話でありまして、なかなか十分そしゃくできない場合もあるようでございますけれども、わが国としてはSALTIIが早く妥結することを強く希望しておるということは、その都度米国に対しては申しております。
  131. 羽生三七

    ○羽生三七君 本条約に関して政府に求めたいことはいろいろありますが、その第一は、非核保有国に対する核不使用の問題であります。  御承知のとおり、一九六六年二月、ソ連のコスイギン首相は、軍縮委員会あてのメッセージで、核兵器不拡散条約の当事国であって、その領土内に核兵器を保有しない非核保有国に対しては核兵機の使用を禁ずるとの条項を同条約に挿入する用意があるという旨の提案をいたしました。同年秋の国連総会では、このコスイギン提案の趣旨を取り入れて、核保有国は領土内に核兵器を置かない非核保有国に対し核兵器を使用せず、または核兵器によるおどしを行わない保障を与えるべきであるとの提案を軍縮委員会が検討するよう求める決議が採択されました。また、中国も同趣旨の意向を表明していることも御承知のとおりであります。なおまた、周知のように、一昨年のインドの核実験に続いて、イスラエルもすでに原爆を保有しているとの報道もあり、核拡散の危険が深く懸念される今日、この提案は十分今日的意義を持っていると思います。日本としては、さきにも述べましたように、核兵器については特殊な立場にある国でありますから、これを生かして、この提案を実現させるよう積極的に努力すべきであると思いますが、いかがでございますか。
  132. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点も、御指摘の御趣旨は私はそのとおりであると存じますが、いま、ソ連というお話がありまして、実は御承知のようなラテンアメリカの非核地帯構想、非核地帯の設定についての条約に関しまして、ソ連のみがプロトコルに署名をしないという問題が現実にございまして、ラテンアメリカの非核地帯というものが有効に成立しないというような問題が現実にはございます。したがいまして、いわゆる宣伝でなく、実質を伴うような誠実な意味でのそのような約束ということが成り立つならば、それは非核保有国にとりましては、やはり非常に安全を増進することになるであろうと思います。
  133. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題についてもう一つ政府に求めたいことは、いま述べた問題を軍縮委員会で積極的に取り上げてもらいたいことは当然でありますが、それとともに、二国間交渉を通じて成功さしてほしいということであります。いま、ラテンアメリカの地域的な核非武装地帯の条約に対してソ連が参加していないというお話がありました。そういうことが現にあっても、なおかつ二国間交渉、つまり、さき申し上げたことは、これは軍縮委員会という大きな場面のことです。いま私がお尋ねしておる問題は二国間交渉、日本とソビエト、あるいは日本と中国というように、こういう二国間交渉を通じて、核を持たない日本に対して核を持つ国が攻撃することのないよう交渉してはどうか。実際には、ソ連、中国という二国交渉をする場合に、日本アメリカの核のかさのもとにあるために説得力に欠けることはこれは事実であります。しかし、非核三原則でこれをカバーすることができましょうが、そのためにも非核三原則を立法化する必要があると思いますが、これはまた後から触れます。  問題は、いま申し上げましたように、ソ連、中国と核不使用について二国間交渉をやってはどうか。いや、とてもそれは現状では不可能だと言うんでなしに、思い切って当たったらいいと思うんです。当たってみてだめならこれ仕方ありません。あるいはコスイギン提案につきまして――これは余談でありますが、私先年ソビエトを訪問して、ポドゴルヌイ最高会議幹部会議長と会談した際に、あのコスイギン提案は今日なおかつ生きておるかという質問をしましたところが、それは今日も変わりはない、それは生きておるという明確な答弁がありました。でありますから、ラテンアメリカ条約にソビエトが承認していないという現実はあるにしても、思い切ってソ連にも中国にも、それぞれの国が同じ意見を述べておるんですから、それが国際的にまだまとまらぬというだけで、ソ連なり中国がその種の、核兵器を持たない国に対して攻撃する意思がないということを率直に述べておるんですから、それを生かすように、日本とソビエト、日本と中国と二国間交渉をしてみてはどうか。だめならだめのときのことです。だめと思って発言をしないんでなしに、率直に見解を述べて相手の意向を打診してみてはどうかと思いますが、いかがでございますか。
  134. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おそらくその問題は、日中あるいは日ソの間の一般的な平和あるいは友好についての条約ができますならば、核兵器のみならず、領土不可侵、内政不干渉というようなことの一般的な約束の中に包摂されてしまうようなことになるのではないか。すなわち、日ソ、日中間において日本に核攻撃を先制して加えることはしないということ自身は、それのみならず、実はほかの兵器で攻撃を加えられても困るわけでございますから、いわゆる平和とか友好とかの条約の中に私は包摂されてしまうような事柄ではないかと思うんでございますが、問題は、したがいまして、そのような約束ができるできないよりは、その約束の有効性ということにかかるのではないだろうか。  私、羽生委員の言われますこと、根元から反対だと申し上げている意味ではございませんで、そのような約束の有効性というものをどう考えるかということになるような気がいたします。  いま申し上げたことの補足でございますけれども、たとえば領土不可侵、相互不可侵、武力または武力による威嚇に訴えないことを確認と一九七二年九月の日中共同声明にございますし、日ソ共同声明にも、武力による威嚇または武力の行使を慎む、国連憲章に従い、というような内容がございます。これはまあこういうものには大抵ございますわけですから、いわんや核兵器はということにこれは当然なるわけでございましょう。でございますから、結局はその約束の実効性というようなことになっていくのではないかと思います。
  135. 羽生三七

    ○羽生三七君 もちろん私も核兵器だけに限らず、一般の兵器について同じことが言えるということは当然心得ております。  そこで、これはいまの問題とともに、核兵器の先制不使用、先に核兵器を使わないという問題です。この問題がありますが、大臣も御承知のとおり、中国は一九六四年十月、第一回の核実験を行った際の各国首脳あて、亡くなった周恩来首相の書簡で、中国はいかなるときにもいかなる状況においても核兵器を先に使用することがないことを厳粛に宣言すると、こう述べております。今日もこの立場を変えてはおらないと思います。特に一九七一年十一月、国連に加盟した際の喬冠華代表の演説も、このことをはっきり再確認をいたしております。もちろん米ソともこのような言質はいまだ与えておりません。この国際合意がいま直ちに実現可能であるとは私も考えてはおりませんが、しかし、核の全面禁止という提案に比べれば先制不使用という方がやや受け入れやすいんではないかと、こう考えられます。他面、中国にいずれ軍縮交渉に参加してもらわなければならないという課題を考えると、米ソがこの核の先制不使用の問題を検討することはきわめて私は重要な意味を持ってると思います。この問題を世界規模で考え、その実現のために最善を尽くすことが必要ではないかと、こう考えております。  核の全面禁止、核兵器の廃絶は終局的な目標ではありますけれども、核兵器所有国が受け入れる可能性を考えて先制不使用という問題を提起したわけですが、これらの提案がもちろん私は簡単に実現できると言うほど甘い考えは持っておりません。ただ、核兵器不拡散の問題一つをとってみても、これが条約として実を結ぶまでには約十年かかっております。要は、日本政府が核兵器不拡散条約加盟という立場を背景に、さきにも述べましたように日本の特異の立場を生かして、核戦争回避という課題にどれだけ真剣に取り組むかということだと思います。現在の軍縮委員会に見られるように、海底非核化条約、生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約案等、あるいは将来の大量破壊兵器を禁止する条約案等、いわばこの周辺の、周りの問題でお茶を濁している現状を見るときに、軍縮委員会が本来の使命に向かって全力を尽くすことが肝要であると思います。いろいろなものをジュネーブ軍縮委員会でやっとるけれども、本題にさわることを避けて、むしろその周辺の問題でお茶を濁していると率直に言えないことは私はないと思います。だから、核兵器の先制不使用を軍縮委員会に提起してその実現を図るべきであると思いますが、これは問題によっては、問題といいますか、やり方によっては受け入れが可能であるという私は判断に立っておりますので、ぜひ軍縮委員会でそういう努力をしてもらいたいと思いますが、いかがでございましょうか、お伺いいたします。
  136. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは仰せられますように判断の問題になると思いますが、たとえば、中国は核を先に使うということはしないということを宣言をいたしております。おそらくいろいろなことから考えまして、中国はこれは宣伝でなく、文字どおりそういうふうに考えておるのではないかという判断を私自身はいたしておりますが、と申しますのは、一つは、中国自身は中国の安全を考えれば足りるのであって、いわゆる中国の核のかさによってどこかの国を守らなければならないという、そういう関係にはなっていないと存じますが、米国の場合にもソ連の場合にも、その核のかさの保護を受けておる国、あるいはそのような約束をしておる国をおのおの持っておる、しかも、戦争の場合には核兵器ばかりでなく通常兵器による戦争と核使用ということを総合して考えなければならないというのが、おそらく米ソとも同じ立場であろうと存ぜられますので、したがいまして、そのようなコミットメントをしております米ソおのおのの立場として、核の抑止力をきかせますためにはその先制使用はしないという約束がしにくいと、それによって抑止力か失われる――抑止力と申します意味は、核戦争に対する抑止力及び通常戦争に対する抑止力でございますが、それが失われるということを恐れておるのではないかというふうに私は思っておるわけでございます。しかし、他方で現実にとにかく理由はともあれ核を先に使ったということがもし起こりましたら、それに対する世界の批判はきわめて痛烈なものであるに違いないと思われますから、なかなか先制使用ということは、約束をしなくても実際には行われがたい。今日までの経過はそれを示しておると思います。私はそのような判断を実はいたしておりますので、この問題についてはなかなか困難なのではないかと思いますけれども、羽生委員は、いや、やり方によってはそうでないと、可能であるかもしれないという御判断の材料をお持ちのように承りますので、私どもも、もう少しその点はそれではよく事態を見きわめてみたいと思います。
  137. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほどの問題にちょっとまた後戻りをするわけですが、核を持たない国に対する核保有国の攻撃がないという保障、攻撃を行わないという保障、これをソ連、中国に求めてはどうかということを先ほど申し上げたわけですが、それは大臣のお話のように、確かに共同声明等の中にはうたわれております。総括的に、包括的にそういう問題でカバーしておるという言い方を向こうがするかもしれませんが、しかし、先ほど申し上げたように、ジュネーブ軍縮委員会に対するコスイギン首相の発言、あるいは各国首脳にあてた周恩来首相の書簡、これらはいずれも核兵器を持たない国に対して核を持つ国が先に攻撃することはないということをうたっておるんでありますから、当たって砕けよで、とにかく当たってみたらどうかと思います。いろいろあれこれ考えてそれはだめだというんでなしに、とにかく当たってみる。それを向こうが、それは共同声明の中に包括的にうたわれておる問題だといえばそれまでのことです。しかし、当たってみなければだめですから、とにかく当たってみてはどうか、こう思いますが、そういうお考えはないでしょうか、お伺いをいたします。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどお答えを申し上げたつもりであったわけでございますけれども、私としては、そういう約束をしようと先方が仮に申しましたら、それなりの政治的な意味合いというものはそこに発見することはできるかもしれないというふうに確かに思いますが、他方で、実体的にそのような約束の実効性といいますか、それをどのようにしたら確保できるのかということに、もう一つどうも十分に自分自身に納得のいかないような点もございますので、この点はしかし、重ねての仰せでございますから、少し検討さしていただきます。
  139. 羽生三七

    ○羽生三七君 核兵器不拡散条約は、核保有国が核兵器を他の国に持ち込むことを全く禁止しておりません。持ち込み可能な道が残されております。ところで、昨年の六月九日衆議院予算委員会で、三木首相は、非核三原則は無条件であり、有事たるを問わないと、こう述べられ、それから宮澤外務大臣もまた、六月十三日の衆議院外務委員会で核持ち込みにノーという総理の言明は政府の最高方針であり、後の内閣をも拘束すると考えると答弁されておりますが、このような立場は条約批准後ももちろん変わるはずはないと思います。このようなわが国の立場を一層明確にするために、でき得べくんばこの立法化をしてはどうか、これは先日参議院の本会議で質問が出た際に、日本はすでに非核三原則を明確にしておるからそういう必要はなかろうというお話がありましたが、さきにアメリカとスペインとで結ばれた条約では、核の貯蔵を禁止しております。これは核の存否を明らかにしないというアメリカの従来の基本方針を変えたということでは意味はありますけれども、しかし、これは貯蔵を禁止しているだけで、何か問題があったときに持ち込むことを禁止しているものではありません。だから、私はこの条約は必ずしも十分なものではないと思います。そういう意味で私は不十分だと思いますが、日本としては先ほど来大臣がおっしゃっておる、また、総理も言われておるこの非核三原則をもっと明確にしてはどうか。ということは、先ほど申し上げましたように、これはずっと前の質問に戻りますけれども、いろいろなことを外国に求める場合に、日本アメリカの核のかさのもとにあるということで説得力を欠くわけですね。ですから、相手の国を納得させる説得力を持つためには、非核三原則ということをもっと明確に立法化して、そうして相手の国に対する説得力を持つということ、これは非常に重要なことではないかと思う。でありますから、そういう意味でこの非核三原則をもっと明確な形で国会で明らかにすることはできないのか。宣言でもよろしゅうございますし、あるいは立法化できればそれはなお結構であります。その辺のお考えはいかがでありましょうか、お伺いいたします。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、実は私も非常に詰め切って考えておるわけではないのでございますけれども、いわゆる非核三原則というようなものは、国自身の政策意思の決定でございますので、立法というようなことに実は比較的なじまないのではないか。政府が国会を通じて総理大臣の名においてしばしばこれが国是であるというふうに申しておりますことは、いわば一つの宣言的な意味を持つものと思いますし、また、国会御自身がそのような議決をしておられるということも、これも国の最高機関によるところの一種の宣言であるというふうに考えますので、それをもって足りるのではないか。立法ということにはどちらかといえばなじまない種類の事柄ではないかというふうに従来私ども考えてまいっておるわけでございます。
  141. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題は、日本は非核三原則を持つと言い、また、アメリカ日本の意思に反して行動することはないと言っておる。そうであるならば、明確に問題を立法化するなり、それから、確かに非核三原則とは言っておりますけれども、政府のだれかの答弁であって、国会自身が行う宣言ではありません。だから日本の国会自体がそういう宣言をするなり、あるいは立法化するなりすることは、アメリカの核抑止力に私は何の影響も与えるものではないと思うのです。というのは、くどく申し上げますけれども、アメリカも持ち込みをしないと言う。いや、持ち込みといいますか、日本の意思に反して行動することはないと言うし、日本は非核三原則で持ち込みを認めないと言う。それならば核の存否を明確にしても一向構わぬわけで、日本にはないということを明らかにしても核抑止力に何の影響も与えるわけではないと思います。あるかどうか非常に疑問だということで抑止力が成り立つので、両方とも否定しておるのですから抑止力にかかわりはないと思いますので、むしろそれならばこの問題をより明確にすることの方が将来のためにいいんではないかと考えますので、重ねてお伺いいたします。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かにそのような立法が仮に行われるというときに、つまり核の有無を明らかにしないという米国の政策との関連で日本の安全保障上むずかしい問題が起こってくるかと申しますと、私はその点は羽生委員の言われますように、わが国の非核三原則及びそれがアメリカによって尊重されておるということの状態と別段変わったところはない、その点は私そうであろうと思いますが、むしろ先ほども申し上げましたように、国会にも国会の議決がございますわけですし、政府も歴代の首相がそのつど言明をしておるということもございますから、国の意思の決定、あるいは国の意思の表示としてはそれをもって足りるのであって、立法というような事項にどちらかと言えばなじまないのではないかというふうに、今日まで実は私は考えてまいっておるわけでございます。
  143. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまの問題とちょっとそれますけれども、これと関連のある問題ですが、海洋法会議で将来領海十二海里と決まった場合、日本としてはこの非核三原則との調整をどうするのか。これは衆議院でしばしば議論があったことはよく承知しておりますけれども、この条約の批准に際して、改めてこの問題に関する御見解を承りたいと思います。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 仮に、わが国が全く一方的に領海を十二海里にするということを宣言し、あるいは立法いたしました場合には、これは領海が広がるということでございますから、当然にわが国の法令、政策の適用範囲がそれだけ広がるということでございますので、その場合に非核三原則がその広がりました部分に適用されますことは、これは疑問がございません。それは明らかであろうと思います。  しかし、今度は海洋法という国際法のもとに、いわゆる領海十二海里との関連で国際海峡というものが新たに定められました場合には、その国際海峡というのは全く新しい概念として国際法上登場するわけでございまして、そこに無制限に沿岸国の主権が及ぶものではないということに、これはまだこれからのことでございますが、そのような方向に海洋法会議は動いておると存じます。したがいまして、その海洋法会議を受けましてわが国が領海を十二海里にし、したがいまして、国際海峡と申すべきものが設定されるといたしますと、それは普通の意味でのわが国の法令、政策が一〇〇%適用される領海というものとは違った性格を帯びることになろうと思います。それがどのようなレジームとして誕生いたしますかはこれからのことでございますが、そうなりました場合には、わが国の主権もその部分についてはそれだけの制約を受けるということにならざるを得まいかと思います。  いずれにいたしましても、取りまとめて申し上げられますことは、わが国の主権が一〇〇%及びます範囲におきまして非核三原則が守られなければならない、政府は非核三原則を当然にわが国の主権が一〇〇%及ぶ分野については堅持をしていく、こういうことでございます。
  145. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、海洋法会議の帰趨によっては、いわゆる国際海峡ができてわが国の主権が及ばないと判断される場合には、その場合には核積載艦艇の通航も認めざるを得ないと、そういう理解でよろしいんでしょうか、具体的にお願いいたします。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、ただいまの草案程度段階では、いわゆる国際海峡においては無害航行ではなく、より自由な通過というものが認められるべきであるという程度のことになっておりまして、そのより自由なというのが実は具体的にどの程度のことを指すのかということは、現在のところまだ明確でございません。つまり、国際海峡というものの性格が定義づけが十分にはできておらないということでございます。しかし、一般的に考えられますことは、領海におけるよりは通航者側により大きな自由がこの国際海峡には与えられるということであろうと存じます。また、わが国としては総合的な国益の判断、通られる側ということもございますが、通る側と申しますか、資源を海外に大きく依存しておりますから、大きなタンカーなどがよそのいわゆる国際海峡を通過するということはわが国にとって非常に実は大切な問題でございますので、その辺のこととも関連をいたしまして、残されました海洋法会議でその辺をどういうふうに考えていくかという問題が実は残っております。羽生委員の言われますような可能性というものも排除はできない。しかし、そうなるともいまのところ申し上げるわけにもまいらないというのが現在の状態でございます。
  147. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまのところというお話がございましたが、仮に領海十二海里と決まって、いわゆる国際海峡については自由通航、自由航行というようなことになった場合には、日本だけは特殊的な例外はあり得ないという御解釈と考えてよろしいんでしょうか。
  148. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) お答え申し上げます。  ただいまの海洋法会議で論議せられておりますのは、先生御承知のように、単一草案という、交渉の基礎として委員長が配付されました草案でございまして、かつ、今回の会期の終末においてそれの改訂版というものが改めて配付せられたわけでございます。  これらの草案によれば、いま先生仰せられたような点につきましては、一般的に言って、国際航行に使用されている海峡においては妨げられざる通過通航を確保すべしという考え方で、通過の船舶の種類のいかんを問わず、そのような海峡においては通過の自由及び上空の飛行の自由を確保せらるべしという考え方に従いまして案がつくられているわけでございます。その案が最終的にどういうことになるかという点につきましては、ただいま大臣から仰せられたような状況で、いまなお会期も続いておりますので、今後の動向をながめていかなけりゃいかぬ。その制度そのものは、一般的に言いましてあらゆる船舶についての通航制度、あらゆる船舶に関するその国際海峡の地位というものが論議せられているわけでございます。
  149. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題は、事態がもっと明確になってからまたお尋ねすることにして、次の質問に入ります。  これから申し上げようとすることは、参議院の本会議質問、衆議院の外務委員会等でずいぶん数多く取り上げられた問題でありますが、核兵器の禁止が世界規模において実現することはなまやさしい問題とは私も思っておりません。その場合、先ほど触れた問題ですが、大臣もお触れになりましたが、ラテンアメリカにおける核兵器の禁止に関する条約のように、地域的に核兵器禁止の網の目を広げていくことは、これは重要な一つ方法であると思います。いわゆるトラテロルコ条約は、これも大臣お話しのようにまだソビエトが参加しておりませんから、完全に所期の目的を達成しておるわけではありません。それは承知いたしておりますが、この場合、非核三原則を持つ日本としても、アジア・太平洋地域を非核武装地帯とするように関係各国と話し合ってみてはどうか。この核兵器不拡散条約の第七条に、この種の取り決めの実現を妨げない旨が規定されておりますし、また、核超大国もかかる提案を拒否もしくは無視することはできないんではないか。ラテンアメリカについてソ連がまだ参加していないことは明らかでありますが、しかし、いつまでもこの種のものを無視することはできないと私は思います。特に外相は、さきに衆議院での答弁で次のように言っておられます。アジアにはラテンアメリカに次いで非核地帯が可能になる条件があると思うので、核保有国に対する道徳的説得と検証方法発見の具体的努力をして外交目標としてその方向に向かっていきたいと、こう外相が述べておられるわけです。単なる国会答弁としてではなしに、実際に関係各国と折衝しようと、まあ、お答えになっておるんですから、具体的に努力をしたいと、こうおっしゃっておるんですから、各国と折衝されてはどうか。国連のワルトハイム事務総長が年次報告の中で、軍備拡大競争に警告を発してこういうことを言っております。核テクノロジーの知識が拡散をし、核分裂物質の膨大な蓄積が入手できる時代に、非核国がなし遂げ得る最上の核拡散防止処置は非核地帯の設定である、こう言い切っております。これはワルトハイム事務総長の年次報告です。それから大臣自身もできるだけの努力をしたいと衆議院で御答弁になっておるんですから、具体的にそういう動きを示されてはどうか。はなはだ失礼ですが、国会答弁と、後はもうどうなるかわからぬということでなしに、できるだけ努力をするとおっしゃっておるんですから、どこかの国ととにかく話し合いを始めてみる、先ほど来の問題も同じことです。それはだめだというんでなしに、とにかく話し合いをしてみる、そして、どうしても話ができぬ場合これは別でありますが、そういう努力を具体的におやりになる意思はあるのかないのか、お伺いをいたします。
  150. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは先だっても本会議で申し上げたところでございますが、戸叶委員お尋ねであったと思いますが、やはり大きな政治の目標としてはそういうことを考えておくべきであろうと思います。したがって、当面そのようなことが実現するような条件をどうやって整備していくかということに努力をいたすべきだというふうに考えておるわけでございます。その場合、そのアジアというのを最低どういう範囲に限るかということが、まず一つの問題であろうと思いますが、当然でありますが、中国には除外をせざるを得ないと思います。それから、公海は当然これは排除、除外されるということになるのであろうと存じますが、そういうことを頭に置きながら、そのような構想が可能になるための条件整備に努力をいたしたいと思っておるわけでございます。
  151. 羽生三七

    ○羽生三七君 この条約に中国、フランス等が参加していないことは、核拡散防止上の大きな問題点であると思います。特に、中国についてこの感を深くするわけでありますが、しかし、実際には、アメリカのことも中国は言っておりますけれども、実際には中ソ両国間の今日の現状を考えるときに、中国が簡単にこの条約に加盟するかどうか疑問でありますが、実は店先で売っていないある雑誌に、ホワイトハウス筋の情報として、フォード大統領が中国を訪問した際に、当時の、今は解任されて何らの役職を持っておらない当時の鄧小平副首相が、やがて中国も核防条約参加するであろうと言ったということが、これは店頭に売られていないある雑誌に出ておるし、また、実際にワシントン・ポストあるいはニューヨークス・タイムス等でもそういう情報を持っておると聞いております。その真偽のほどはとにかくとして、中国の参加があればこの条約がより完全なものになると考えますが、どうすれば中国の参加が得られるのか。中ソ関係現状のようであれば絶対に中国は参加しないというのか、あるいはどういう条件が整えば参加するというのか、そういう問題をもっと真剣に考えて、そしてわが国としても、この条約がもっとより完全なものになるように考えたらいいと思うのですが、その辺はいかがでございましょうか、お伺いいたします。
  152. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのような鄧小平氏でございますか、云々ということは、私ども実は承知をいたしておりません。真偽につきましても、どうも判断がいたしかねるのでございますけれども、一応中国が公に申しておりますことは、この条約は超大国による核のいわば独占と申しますか、そういう意味での覇権主義であるというふうに考えておるように聞いておりまして、そうだといたしますと、現実の都合、不都合と申しますよりは、米ソの超大国による支配というものがこの条約にあらわれておるということについての反対なのではないだろうかと考えておりますから、そういたしますと、これはなかなか中国としてはいわゆる原則の問題ということになって、簡単に考えを変えるということにならないのではなかろうか。これもしかし、私の観察にすぎないんでございますけれども、そう思っております。
  153. 羽生三七

    ○羽生三七君 次に、時間の関係で飛ばしていきますが、日本のこの原子力発電から生ずる核燃料の再処理で、英国では激論が交わされたというように聞いております。これはいわゆる環境保護の団体、それと政府の方の考えとの両方で非常な激論が交わされたというように聞いておりますが、当面は日本からの持ち込みを一応許可したようです。しかし、もし将来イギリスが日本からの廃棄物の処理を拒否した場合に、一体日本はどうするのか。新聞によると、通産省では二十年の行動計画ということで核燃料のサイクルを確立するように、二兆四千億円の金を投入しようという構想を持っておるようですが、その将来のことはとにかくとして、ずっと先のことはとにかく、イギリスがもしこれを拒否した場合には日本としてはどういうことになるのか。とりあえず当面だけは受け入れることになったようですが、その辺はどういうことになるのか、お伺いをいたします。
  154. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) ただいまのお話でございますが、核燃料サイクルの中で使用済みの核燃料をどういうふうに再処理していくか、使用済み核燃料の再処理の考え方でございますけれども、基本的には、現在日本でも再処理工場の建設を進めてございます。これは予定どおり進みますと五十二年度から稼働し得る。年間二百十トン処理の再処理工場でございますけれども、これはおおむね七百万キロワット程度の発電所の燃料を処理するに足る能力を持っておるわけでございます。それから核燃料サイクルを確立するという意味では第二再処理工場と申しますか、将来にかなり大規模の再処理工場をつくるという考え方を持ってございます。ただし、これは相当の期間を要するということもございまして、その間を、ただいまお話がございましたようにイギリス等に委託することによって処理するということで進めてございまして、現実にはすでにイギリスに委託をしてかなり再処理が行われております。ただいまお話がございましたように、イギリスにさらに相当の量を委託するということでいろいろ現地で問題ございましたけれども、大体片がついておりまして、昭和六十五、六年前後までは十分にそれで処理ができる。先ほど申し上げましたように、さらに第二再処理工場を国内に建設していくという方向で、現在いろいろな調査等を進めておるわけでございます。  そこで、さらに長期にわたりまして日本の核燃料サイクルをどうするかということにつきましては、現在原子力委員会の中に核燃料サイクル懇談会という組織を設けまして、その具体的な今後のあり方、進め方等について検討を進めているところでございます。
  155. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題、また日を改めてもう少し詳しく承りたいと思いますが、ここでもう一つ承りたいことは、この核兵器の不拡散条約は、核兵器とは何かということについての定義を欠いているように思います。これは衆議院の外務委員会でも質問かあったことと思いますが、たとえば外務省のいまウィーンに駐在と聞いておりますが、矢田部君の著書、「核兵器不拡散条約論」という著書がありますが、それによりますと次のように言っております。「核兵器不拡散条約上の核兵器の解釈に当り、米国原子力法(従って日米原子力協定)の定義をもっとも重要な指針と見なすことが可能であるが、この定義によれば原爆、水爆等の核爆弾及びロケット等の輸送手段から分離されかつ分割されうる部分である核弾頭が核兵器であることには議論の余地がない。従ってその反対解釈として、核弾頭を分離しうる輸送または推進のための手段としての原子力潜水艦、ICBM等がこの条約の適用上、禁止の対象となる核兵器に含まれていないことも、ほぼ明らかになると思われる。」こう矢田部君は著書の中で述べております。もし、そのとおりとすれば、核兵器とは核爆弾と核弾頭だけということになるんですが、政府としてどう考えるのか。この問題は、わが国はいかなる場合にも持ち込みを認めないことにしている核兵器との関係はどうかという問題にも重要な関連がありますので、日本で考えている核兵器の内容というものはそもそもどのようなものか、明確にしていただきたいと存じます。
  156. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  この条約におきましては、核兵器の定義といやしましては、ただいま先生が矢田部在ウィーン大使館参事官の著書を引用なさいましたけれども、大体そのようでございまして、この不拡散条約において核兵器その他の核爆発装置と申しますのは、私どもといたしましては、核分裂または核融合による爆発を利用するすべての装置を言っておりまして、平和目的の核爆発装置を含めてここで禁止の対象としているものというふうに理解しているわけでございます。  ただ、日米安保条約上に申します核兵器と申しますときは、核弾頭というもののみならず中距離ミサイル及びその基地の建設というものも少なくとも、これは定義ではございませんが、事前協議というものの対象となるということになっておりますし、かつ、昭和三十三年四月十五日の政府統一見解におきましても明らかにいたしましたように、ICBM、IRBMのように、本来的に核弾頭が装備されるものは核兵器であるという立場をとっているわけでございまして、その意味におきまして、この条約における核兵器と、それからただいま申し上げました日米安保条約との関連におきまして日米間の話で了解となっている核兵器というものの範囲は異なるわけでございますが、これはそれぞれ目的が異なっているというところからきている差異でございます。
  157. 羽生三七

    ○羽生三七君 最後に、先ほどのことを繰り返すことになりますが、世界に類のない平和憲法を持ち、また、非核三原則を持っている日本が、核防条約を批准して積極的にこの核軍縮、それは将来は通常兵器も含めての完全軍縮を目指して、単にああもしてみる、こうもしてみるというだけでなしに、具体的にジュネーブ軍縮委員会なり、あるいは国連の場なり、あるいは二国間の話し合い、あるいは条約を通じて積極的にこの条約批准の意義を生かすべきであるということを念願をして、私の質問を終わることにいたします。
  158. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私は、この重要な核防条約に関して私なりに国益のために相当時間をかけて研究してみました。その結果は、今日の時点においては、はっきり申しましてわからない、恐らくわからない点がたくさんあると思います。研究すればするほどわからないんです。  核防条約を批准すれば今後二十年間効力を持ち続けるということが一番大きな理由ですが、もし批准してしまって、条約から脱退をするということは一年かかるとか、あるいは可能だとか言われますが、私はかなりむずかしいことだと思うのです。なぜ私がこんなことを声を大にして言うかというと、私はいま三十三歳です。二十年たったときに五十三歳、大変失礼な言い方だけれども、この中で私一番若いんです。もしそのときになって二十年前を悔やむようなことになったり、あるいは私たちの子孫あるいは日本国民の子孫に悔いを残してはならないと私はそう思います。だからこそ、私は二十年後を生きる青年として、真剣に考えて質問するんですから、関係大臣、坂田防衛庁長官宮澤外務大臣、ともにお忙しい中を私のために百分も時間をいただきまして、私は真剣に聞きますから、どうか堂々と魂を持った返事をいただきたいということを最初に一言つけ加えさせていただきます。  具体的な質問に入ります。非核三原則という問題、わが国の国是といってこのむずかしい非常に理解に苦しむ非核三原則、いま先輩の羽生先生がいろいろと伺っておりましたけれども、私も非常に理解に苦しんでいるわけです。ここにいろいろと当時の議事録もありますけれども、改めてこの場を使って、いつ、どんなことから、どんな経路でもって非核三原則というのができ上ったのか、簡単でいいです、私わかっておりますから、簡単にもう一度、大臣から伺いたいと思います。
  159. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、物の考え方といたしましては政府はかなり前からこういう考え方をしておったと思いますけれども、非核三原則という名のもとに公に表現されましたのは、昭和四十二年十二月、佐藤総理大臣発言が最初というふうに承知しております。
  160. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 いつはわかりました。どんなことから、どんな経路で。
  161. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 四十二年十二月の臨時国会におきまして、及び四十三年の通常国会においてもそうでございましたが、佐藤総理大臣発言されたのが最初でございます。
  162. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 じゃ、少し私の方から、補足しなきゃならないんですが、非核三原則がわが国の国是となったその当時と今日ただいまの時点とでは、わが国をめぐる諸情勢に変化が見られるとぼくは思いますが、大臣当然そう考えていると思います。現実問題として考えたとき、諸情勢は変化しているとぼくは思うんですが、佐藤元総理の当時の考え方の中には、第三項の持ち込ませずについて、つまり核の一時通過、トランジットは入っていなかったのではないんですか。トランジットは持ち込ませずの解釈の中に入っていなかったのじゃないかといううわさもあるんですが、どうなんでしょうか。   〔委員長退席、理事増原恵吉君着席〕
  163. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いまのトランジットと言われます場合は、当時佐藤さんがいわゆる非核三原則と言われましたときには、確かにその点はそこまで詰めて、意識をして非核三原則を言われましたかどうかは定かでございません。と申しますのは、トランジットの場合どうなるかという問題は、後日、年がたちましてから議論をかなりされるようになっておりますから、当時からそれが明確に意識されておったことは考えにくいわけでございます。
  164. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 確かに、国際情勢というのは次から次に変わってくるんですから、簡単にうっかりしたことも言えないということもわかるし、たとえば、海洋法の新しいルールの問題についても羽生先輩委員から質問されましたが、この核防条約に関してだって、当然将来いろんな事件が起きてくる。当時、海洋法の諸問題が数年後に起きて、わが国の領海が三海里から十二海里に拡大される時代がくるであろうということは予想されていましたか。当時といまとでは現実は違ったとは言えませんか。
  165. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和四十二年の当時において、海洋法が国際的に成立をする、そうしてその中でいわゆる国際海峡とでも言うべき地帯が新しいレジームとして生まれるかもしれないというようなことは予想していなかったであろうと思います。
  166. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 大臣もお認めになって、予想していなかっただろうとお言葉いただきましたので、なお慎重に、核防条約に関してはそういうことも見通しながらやっていきたいと思いますので、次の質問に入ります。  私は与党議員です。自由民主党の党籍を持っている以上は与党議員ですが、大変申しにくいのです。あえてこの場を借りて、百分も時間をとってしゃべるのですから、私はこの場を命がけの決意で申します。  非核三原則の第三項、すなわち、持ち込ませずの本音は、わが国の陸上には核兵器は上陸させない、貯蔵はさせないことだと私は理解しています。つまり、核の一時通過、トランジットがあったとしてもやむを得ないということです。私はこれまでに核の一時通過、トランジットはあったんじゃないか、自民党の私が言うのです、はっきり申しまして。まあ、勉強不足だと言うかもしれませんけれども。これからもあり得る、特に三海里から十二海里になればあり得るということを私はかけます。あるいは国民を百人そろえてアンケートをとってごらんなさい。恐らく九十人ぐらいの人があるんじゃないかなあと疑問を持つと思うんです。もちろんその証拠はありません。なかなか大臣答弁がお上手ですし、ラロック証言が出てきても証拠はない。あったらこれは大変だ、立木さんが黙っていませんよ。しかし、核の一時通過ぐらいはある。はだで感じて、本当に素朴な疑問をまず私は持っているんですから、それからいきましょうよ。大臣、余りおどかしちゃうとびっくりしちゃうから。
  167. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御質問の部分は、いまのことについてどう思うかと言われるんですね。
  168. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 核の一時通過ぐらいはあるとはだで感じ、そして素朴な疑問を持っているのではないんでしょうか。国民はそう思っているんじゃないでしょうか。大臣はそういうことについてお感じになりますか。
  169. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもがトランジットということについて非常に厳格に考えておりますのは、たとえば銚子の沖でもこれはトランジットならトランジットということになってしまうわけでございますから、その場合の危険というものは陸上とは一緒ではございませんけれども隔たるものではないのでありまして、そういう意味で、やはりトランジットといえどもこれが事前協議の対象にしてもらわなければ困るという立場をとっておるわけであります。
  170. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 そういうお答えは毎回外務委員会で聞いてまいりました。いやというほどわかっております。しかし、これから三海里から十二海里と海洋法が出てくるにつれて、ますますこの外務委員会がそういう問題でもめる、あるいは質問も多いと思います。それは一体何が原因かというと、さっき私が質問しました、つまり、トランジットの問題について拡大解釈されたのじゃないか、佐藤元総理は。その点に関してどうでしょう、ぼくはまだそのとき議員になっておりませんけれども、どういう解釈をなすっておったのか。
  171. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは当時問題になっておりませんので類推をするしかないのでございますけれども、私は、そこまで問題を詰めて議論をされていない、考えられていなかったのではないかと思います。したがって、意識的にそれは除外をするのだというような了解のもとに言われていたというふうに私は考えておりません。
  172. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ニューヨークで五月七日に閉会しました国際海洋法会議の第四会期の方向は、先ほど外務大臣のお話も多少伺いましたけれども、領海十二海里がもう確実視されるとぼくは見ておりますし、新聞でも出ておりますし、九月、十月なんて言っていますけれども、こうちゃんとはっきりこれだけ出ていれば言えますから……。そうすると、ぼくはやっぱり十二海里をとる場合、まず一番しろうとの考えとして津軽海峡の十海里、十二海里でありますと当然これはおかしな問題で、ないわけなんですが、オール日本の領海となります。したがって、核を積んだ軍艦の通航は当然三原則に触れるということになります。これはあたりまえのことなんですけれども、初歩的なこの問題から伺っていかないとよくわからないもので、三原則の精神からいえば通航は不可能となります。一体この場合に通れるのか通れないのか、どちらですか。通れる、すなわち、核のトランジットは構わないということならばこれは大変なことだ。三木内閣はふっ飛んでしまって、記者の皆さんも大変なニュースです。これははっきり言ってください。トランジットは構わないんですか。
  173. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点、先ほど羽生委員の御質問にお答えをしておったことに関連をするわけでございますけれども、領海が十二海里になるということは、いま糸山委員の言われましたようにほぼ大勢になりつつあると思います。ただ、それは領海の問題だけがひとり歩きをするわけでございませんで、経済水域であるとかいわゆる国際海峡であるとかいうものと一括して、パッケージで合意をするかしないかということになっておるわけでございます。  そこで、十二海里になりました結果、いまの趨勢としましては、その間に国際海峡というものを設けて、その国際海峡においては領海におけるよりはより自由な、邪魔されないといいますか、アンインピーデッドというのが草案だと思いますが、そのような通航を認めるべきであるというのが大勢になろうとしておりまして、それがどのような内容のものであるかということは、実はこの次の会期最終までにもう少し詰めてまいらなければならない問題になっておるわけであります。したがいまして、そのようにしてできました――仮に国際海峡という名前で呼んでおきますと、というものは純粋な意味での領海でないことは明らかでございます。また、全くの公海でもない、新しいそういう国際法上の定義づけを持った観念が生まれる、こういうふうに考えております。
  174. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 米ソ両国は、そうならないように、国際海峡の自由通航方式を主張しています。たとえば、領海内となってもいわゆるシーレーンを設けると、いま大臣の言葉からお出になりませんでしたけど、シーレーンは通航は自由にさせようじゃないかという主張だとぼくは思うんです。自由通航帯、これはそういうふうに理解してよろしいですか。
  175. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、一般論といたしまして、米ソ両国と申しますよりは、わが国自身がこれだけ海外に向かって大きなタンカーあるいは貨物船等を動かしておりますから、その通路にある地域がいわゆる領海化してしまっては、航行が自由にならない。したがって、その場合にはやはり国際海峡ということで、妨げられない航行をわが国の船舶もさせてもらわなければ困るという立場でございますから、わが国自身も、そういうことになればやはり国際海峡というものを考えるべきであるという主張をしておる側でございます。
  176. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 資源の多くを外国に依存するわが国事情や、貿易国、海運国であるわが国の国益から考えて、わが国もこの国際海峡自由通航方式を主張してきたのは、私はこれは当然だと思います。しかし私は、わが国の主張の背景には非核三原則に対する考慮が強くあったと思えてなりません。政府の腹は、十二海里の宣言で領海が広がり、非核三原則が崩れても、それは国際法で決まったんだから仕方がないじゃないかというところにあるのではありませんか。結論として言えば、国際海峡のシーレーン、わが国の権限が及ばないところだという説明で非核三原則を破ることなく核のトランジット、核の通過は黙認するということではないんでしょうか。ことに野党の皆さんがこわいから。どうですか、外務大臣
  177. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 問題は、領海が広がって、その後に国際海峡というようなものができるというふうに解釈されてはならないわけであって、十二海里の領海というものを、国際海峡が必要な場合には設けられるということを前提にして十二海里というものを国際法の通念にしようというのでございますから、まずわが国の領海が十二海里になりまして、それを今度は別の行為によって制限するというのではなくて、わが国は現在三海里でございますから、国際法の通念によって国際海峡というものを前提にした上での領海十二海里というものを通念にしようというのでございます。したがって、一遍わが国の主権がフルに及ぶ地域が十二海里になって、それが今度はへこまされるというのではありませんで、三海里の領海が国際海峡というものを前提にした十二海里というものに変わっていくということでございますから、そうやって広がりました部分のうち一部は、少なくともわが国の主権がこの国際法の定める定め方いかんによっては、そこだけ制限された形で実現をするというふうに解釈すべきだと思います。
  178. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 宮澤外務大臣、何度やってもこれはぼくはだめなんです。もう頭が違うので、大臣が言っているのは、それはもうさっとこう当然、皆さんはわかると思いますけど、わからない国民が多いということです。ですから、もう少し今度ぼくはしつこく具体的にこれは大事なことですから伺いますけど、領海十二海里宣言の後は津軽海峡などの国際海峡にはシーレーンが設けられることになりますか、なりませんか。まずこれを、簡単でいいです、答えてください。
  179. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは二つに分けて申し上げなければならないので、わが国が仮に今日領海を十二海里にするということを決心をし、そのための法制をつくりましたならば、これは国際法の合意は何もないわけでございますから、文字どおり領海は十二海里になって、その十二海里の範囲についてはトランジット、先ほど仰せのトランジットというようなものについては非核三原則がフルに適用されるということでございます。  それから次に、海洋法会議の結果としての領海十二海里ということであれば、恐らくはいまの帰趨をもってすれば、海洋法会議は国際海峡というものを踏まえまして、その上での十二海里ということを決めることになるでございましょうから、その場合には、何かの形でそこにより妨げられない航行を確保するような方策が伴わなければならないということになります。
  180. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 つまりシーレーン、まあできるんでしょう、大臣、ずばり言って。先のことです。
  181. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) たとえばシーレーンというような考え方も、そのうちの一つの考え方であると思います。
  182. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 まあ先のことですと言ってても、これは大変な国際問題ですから。  じゃあ、シーレーンというのは、幅はどのくらいとお考えですか。
  183. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのシーレーンというのは、糸山委員が先ほどからおっしゃっていらっしゃることで、現在まで議論になっておりますのは、少なくとも妨げられない、より自由な航行が可能な地帯を設けるというのが国際海峡の概念でございますから、おのずから、ある程度の大きさを持った船舶が条約に抵触することなく安心して通れるだけの幅というものは持っておらなければなりません。
  184. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私は実は船が趣味でね、自分で運転するんですけど、非常にむずかしいんですよね、このシーレーンというのは。仮に一海里とるとしましても、千八百何十何キロという――千八百じゃない。――ちょっと待ってください。  じゃあ、シーレーンは領海ですか、それとも公海ですか。つまり、そのシーレーンというのをつくった場合は、領海ですか、公海ですか。簡単で  いいんですよ、わかりやすく。
  185. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから申し上げておりますとおり、そのようにより自由な航行のできる地帯を仮に国際海峡と呼ぶと、そういう新しい概念を国際法でつくり出すというのでございますから、従来の観念である領海と公海、従来その間には何もないわけでございますから、そのいずれに属するかということは申し上げることができない。新しい概念のものが誕生すると考えるべきだと思います。
  186. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ああそうですか。新しい概念、ほう。どの通路になるかわかんないけど、これは領海か公海か、これはもう違って、何か違うルート……
  187. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) つまり、領海ならば主権が完全に及ばなければなりませんし、公海ならばそれは及ばないわけでございますが、そういう意味ではそのいずれにも属さないもの、まあ厳密に言えば私はやはりそういうふうに観念すべきだと思います。
  188. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 与党ですから、余りしつこく食いついてもこれやっぱしいろいろ考えものでありますから、まあだんだんと後でゆっくりお伺いするとして、確認をしておきたいことがあります。  津軽海峡の公海上あるいは海中を、米ソの核を積んだ軍艦あるいは原子力潜水艦はいま通っていますか。さあ、きょうは防衛庁、海上保安庁、お見えになっているはずですから、はっきり答えてください。
  189. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私どもの確認しておりますところでは、ただいまお示しのございました海峡につきましても潜航をして潜水艦か――これは米ソいずれの国またはその他の第三国も含めまして、潜航しておるものにつきましては私どもとしてははっきり把握をいたしておりません。浮上して通航しておる潜水艦につきましては、ある程度把握をいたしております。
  190. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 いま防衛局長答弁、どんな方法でそれを確認しているんですか。
  191. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私どもの確認の方法といたしましては、海上自衛隊の艦艇、航空機、それから陸上にございます監視所、こういったところでございます。
  192. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 坂田防衛庁長官、非核三原則が一方的に破られてないという保障は長官としてお持ちですか。
  193. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私どもがとっております非核三原則というものは、十分に同盟国でありまするアメリカは理解をしておるというふうに信じております。
  194. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 アメリカは理解をしておりますというのでなくて、津軽海峡の中なんかを、アメリカはないとしても、どこかあるんですか。いまの御答弁納得しません。
  195. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) わが国が非核三原則をとっておるということは、単に同盟国でありますアメリカばかりではございませんで、各国ともこれは了承しておるというふうに思います。したがいまして、それを恐らく実行しておるというふうに思います。
  196. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 きょうは防衛庁長官に御出席を願ったのは、この核防条約というのは大変な問題だからいろいろいろと御意見を伺いたい。ぼくは防衛問題が大好きで、特に坂田長官には個人的にはもう本当に尊敬をしているんですけれども、どうも答弁がいつものらりくらりとしていてわからないので、きょうはじっくりやりたいと思いますが、特に十二海里になると防衛庁はいまの状態では困る。領海が三海里から十二海里に広がった後、海上保安庁の受け持ち海域もぐっと広がる。もちろん防衛庁も大変なことになります。どのように対処されますか。守備範囲が広がって御苦労のこととは思いますが、何が一番大変なことなのか。これは十二海里になってからだと言われてしまえばそれまでですけれども、そうじゃなくて、こういうものは先、先を考えていかなきゃならないから、まず防衛庁としての意見、海上保安庁として  の意見を伺いたい。
  197. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 領海の幅員が十二海里になりますと仮定しました場合は、防衛上の見地から見ますれば、領海が広がることは専守防衛の立場をとるわが国といたしましては特に大きな影響はないというふうに考えます。したがいまして、防衛上特別に新たな対策を講ずる必要はないと考えております。
  198. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 どうもこれはおかしいな。そのときに備えていま何か準備をしなければならないことはあるでしょう。大臣、どうしちゃったのですか、ロッキード以来、口が全くチャックされちゃって、もうぼくは予算委員会でも大臣答弁が出るとがまんできないのですよ。きょうはもうじっくりいきましょう。ぼくは大臣の味方なんだから大丈夫ですよ。決して大臣の足なんか引っ張らない。  はっきり言いましょう。たとえばPXLの必要論も生じてくるんでしょう。PXLがなぜ必要なのか。それが必要でないというなら必要でないと言ってくださいよ。
  199. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先生も御案内のとおりに、わが国は四海海に囲まれておりますし、資源の多くを外国から輸入をいたしまして経済を発展をさせておると、こういうわけでございますから、当然のことながら、この海を守るというのがわれわれの国防政策の大きい柱の一つであるということは疑いを入れないところかと思うのでございます。したがいまして、やはり対潜能力を高めておくということは非常に大切なことだと思います。しかるに、現在使用しておりますP2Jの能力から考えますと、日本周辺をめぐるいろいろの国々技術、軍事力というものが日進月歩いたしております。特に潜水艦につきましては原子力によるわけでございまして、非常に足が早くなってきておる。そういたしますと、どうしてももう少し足の早い、そしてまた分析能力がある、そして早く潜水艦を捕捉できる、位置を確認できる、そういうような次期対潜機というものをわれわれは持ちたいというふうに思っております。どういうようなPXLを持つかというならば、これはやはりP3C級の能力を持ったものをひとつ求めたいというふうに考えておるわけでございます。
  200. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 長官、その級とか何かそんなことをつけないで、P3C級とかそういう――それじゃほかにあるのかということをぼくはゆっくり聞いていきますよ。よく考えておいてください。頭の中に本当に何と何があるのか。  外務大臣、ロッキードのやっておるP3Cオライオンという機種について外務大臣はどのような評価と認識を持っておるのか、答えてください。
  201. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私、実は専門に勉強しておりませんので、評価ができません。
  202. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 これは大臣、国防部会の一人でもある大変な大臣ですよ。自民党のぼくが言っているのだから、大臣はっきり言ってくださいよ。そんな専門的なということじゃなくて、ぼくでもわかる程度のことで結構ですから、どうですか。
  203. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは一般的に申しまして非常に対潜哨戒の能力がすぐれておる、これは内部のエレクトロニクスにおいても非常にすぐれておるということを聞いておりまして、カナダはたしか、多少条件がついておるようですが、採用に踏み切ろうというふうに考えておるというようなことは承知しておりますけれども、それ以上専門的なことになりますと、私からお答えするほどの知識がございません。
  204. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 両大臣の考えは、四分六ぐらいでもってP3Cというのは非常にいいものであるというような、まあ答えてくれないから、いいということはわかっていると、必要であるということもわかっていると。しかし、言うタイミングがあるとか、時期があるとか、そんなようにぼくはいま考えられるのですけれども、そういうふうに理解してよろしいですか。
  205. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これはたびたび私申し上げておるわけでございますが、ただいまのところこれを国産にするのか、あるいはP3Cを輸入するのか、あるいはこの二者択一ということではなくて、機体は国産にし、あるいはそれに搭載いたします電子機器等については外国から輸入するとか、いろいろのまだ選択というものがあろうかと思うわけでございます。  そこで、いまはやはりロッキード問題の疑惑が国民の間にあるわけでございますから、私といたしましては、この機種の決定についてはいやしくも国民に疑惑を招かないような機種の選定を行いたいということが申し上げられることでございます。その手続といたしましては、ただいまポスト四次防の整備計画につきまして、昨年以来作業を命じておるところでございます。いずれこれが作業が完成をいたしまして、八月の末か、あるいは最終的には十二月ごろになろうかと思いますが、その段階までに次期防のいわば防衛構想、それに対しまして一体どのような兵器をつくるか、用意をするかということ、あるいはどういうものを選ぶかということ、あるいはいろいろの部隊の編成等についても、新しい構想をいませっかく作業を進めておるわけでございまして、それができ上がりました上に国防会議に諮って決めるという段階でございます。
  206. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 長官とこれからもう少じっくりやります。じわじわと伺っていかないと、どうしてもこれははっきり言いたいことも言わない、この長官は。  私としましては、この問題、野党サイドには次のような意見があると私は聞いております。それはPXLの必要論は、日米安保条約による日米防衛分担の上からである、PXLの採用はアメリカの核戦略に日本が組み入れられてしまう、そういう証拠であるということを言っております、と聞いている。わが国の防衛三原則の中で日米安保条約の存在を明言されておられる防衛庁長官とされてはどうお考えですか、その点についての御答弁願います。
  207. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これは先ほどもちょっと触れたわけでございますが、わが国の防衛というものは、わが国民、わが国の国民の一人一人の生存と自由を守るためにあるわけであって、その必要から対潜能力を高めたいというのは、わが国の自主的な考え方でございます。それに基づきましていろいろ装備等もいたすわけでございますが、常々私が申し上げておりますわが国の防衛というのは、一つには、わが国民がわが国土、わが国民一人一人の生存と自由を守る強い決意あるいは意思と申しますか、そういうものがなければ国は守れない、国を守る気概がなくなったら国は守れないというのが第一の原則かと思います。また、必要最小限度の防衛力というものは常にこれを保持し、そして常にこれに備えた努力を怠ってはならない。これは人的にも、また装備の点においてもそう言えるかと思います。しかしまた、同時に、他国に脅威を与えるようなものであってはならない、侵略を起こすような防衛力であってはならない。しかしまた、反面、財政を著しく圧迫するようなものであってはならないということも論を待たないところでございます。そうして、やはり核の脅威、あるいは大規模の侵略という事態に対しましては、わが自衛隊のみで対処することははなはだ困難でございますので、どうしても日米安保条約というものは日本の安全にとって不可欠なものであるというのが私の考え方でございます。  この国を守る意思、そしてそれを裏づけるところの能力である自衛力、そして安保条約、この三つがそろいますと、私は日本の安全と独立が得られる、こういうふうに思うわけでございまして、日米安保条約に基づきまして共同の危険に対して対処するということは、ふだんから日米間において詰めておかなきゃならないわけでございます。したがいまして、昨年の八月二十九日に、当時のアメリカの国防長官でありましたシュレジンジャーさんを日本に招きまして、私と会談いたしました。そうして二つのことに合意をいたしたわけであります。  その一つは、年一回最高責任者同士が会うということです。いま一つは、日米間の有事の際における防衛協力、特に作戦協力等についての詰めを行う場を、新しい機関を設けるということを実は合意をいたしたわけでございまして、こういうことによって日米安保条約というものが有事の際において有効に機能するということが大切である。日米安保条約を本当に有効的に機能させるためには、不断のわれわれの努力が必要であるというのが私の防衛についての考え方でございます。
  208. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 防衛庁長官答弁は予算委員会でも同じことを言っていらっしゃいました。もう新聞でもいつもそう読んでおりますし、ちっとも変化がございませんが、さらに詰めてまいります。もう少し長官、思い切ったことをきょうは発言していただきたい。ロッキード以来どうも口が重くなってしまって、初め防衛庁長官が就任なさったときはマスコミの皆さんも大変におもしろい長官だ、ユニークな長官だと言ってさんざん書いていましたけれども、最近口が重くて困る。もちろん防衛というものに関しては口が重くなきゃ困る。スパイがどうの、CIAがどうの、要らないときにべらべら答弁ばっかりするような防衛庁の人間もいます。それはいいです、あとでゆっくりやりましょう。  防衛庁はPXLの輸入、国産化の議論について、いまどうお考えですか。どちらがわが国の防衛の上でベターでありベストであるという御意見ですか。そして二方の意見、国産がいい、輸入がいい、いろいろ論議されていますが、その裏づけデータを簡単に示してください。
  209. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これは先ほど申し上げましたとおりでございまして、ただいま国産にすべきかあるいは輸入にすべきか、あるいはその二者択一じゃなくて、機体は国産、搭載します機器等は外国から輸入をするというふうにするのか、その点を鋭意検討をいたしておるというのが、いまお答えのできることでございます。
  210. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 長官、私はPXLの必要理由あるいは不必要理由について国民の多くはよくわかっていないのではないかと思います。私も委員になって一生懸命勉強するからわかるんであって、何かP3Cとかピーナツとか、Pの字がつくのがたくさん出てくるんで、非常に混雑しますが、防衛庁の説明不足、つまり努力不足にもぼくは理由があると思われてなりません。自衛隊に対する国民の再認識あるいは支持率も向上しているときに私は防衛庁側の一層の努力を期待して、さらに国民のコンセンサスを取りつける、防衛というのは必要なんだということを、長官、どうですか、ひとつここでもって伺いたい。
  211. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私が就任いたしまして一番最初に考えましたことは、いま先生から御指摘になった点でございます。どんなにいい装備を持ち、どんなに精強な自衛隊が存在しましても、もし国民の理解と支持と協力を失ったならそれは力になり得ない、防衛力になり得ないというのが私の実は考え方でございます。したがいまして、就任早々、昨年の四月、防衛を考える会というものを発足いたしまして、そのリポートも出ました。それを契機といたしましてかなり新聞等におきましても防衛論議が盛んになりました。一つにはサイゴンが陥落をした、ああいう事態がもし朝鮮半島に起きたらどうなるだろうというような一種の危機感というものがやはり日本国民一人一人の安全保障についての認識を深め、あるいは防衛問題についての自覚を促してきたと私は思います。  それからもう一つは、やはり防衛問題というのは単に防衛庁のみで、軍事力のみで論ずべき問題ではなくて、やはり総理大臣を中心として外務大臣あるいは経済閣僚等によります、いわば国防会議というものが中心となって広い意味における安全保障というものをいろいろな角度から議論をするということ、それがやはり国民に伝わり、国民も防衛の問題あるいは安全保障の問題を考えていくというふうに思うわけでございまして、やはり国防会議を実質的に審議する機関に高めていく努力をわれわれ政府がやっていかなきゃならないというふうに私は考えております。  それからもう一つは、やはりこれだけの部隊、陸海空二十六万の精鋭部隊がおるわけでございます。実力部隊があるわけでございますが、これをやはりコントロールといいますか、文民統制、政治優先という原則というものは何かと言うなら、国会みずからがやはりコントロールするということだと私は考えるわけでございまして、これは、ただいま私は防衛庁長官でありますから言う立場にはございませんけれども、しかし、ぜひとも国会の皆さま方の手によって防衛委員会なりあるいは安全保障委員会なり、常任の委員会をぜひとも私はつくっていただきたい、そうすることによって、やはり国民というものは防衛の問題を考えてくださるものだと私は思うのでございます。これはひとつ、ぜひお願いをいたしたいというふうに思います。  こういうようなことで、先生も御案内と思いますけれども、一月十六日の総理府発表の統計によりますと、四十七年の総理府統計の、自衛隊を支持する、七三%が今日七九%に上がった。わからぬと言っておった一五%が一三%に減った。絶対反対だ、違憲だ何だというような人たちが一二%ありました。それが八%に減ってきた。これはやはり大きな私は変化だと思うのでございます。そういうような意味合いから申しまして、今後ますます国民的コンセンサスを求める努力をいたしたいと思うわけでございますが、願わくは、ひとつ国会におきまして安全保障常任委員会等も先生方のお力によってつくっていただきたい。私は、やはり防衛の問題、安全保障の問題というのは、主義主張は違っても、国民一人一人の生存と自由というものを決めることでございますから、これについていろいろ各党で御議論いただくことが国民のコンセンサスを一歩深めるゆえんであるというふうに考えておる次第でございます。
  212. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 長官の御答弁、防衛を考える会であるとか、近く防衛白書を出すと言われますが、坂田長官初め防衛庁側の努力については私なりに理解はしております。さらに一歩も二歩も進んで、勇気ある、自信に満ちた、つまり防衛というのはもう命がけでやらなければだめだ、命がけの努力が一層必要であるということを、ぼくは防衛庁長官に青年として、みんなぼくと同じ年代の人間がいるんだ、防衛庁にはたくさん。PXL必要の背景としていわゆる日米の防衛分担があるのならばあるということを、長官、はっきり言うべきじゃないんでしょうか。そうした必要論の真相が何だかよく理解されてなくては、それこそ本当の国民の信頼も支援も生まれてきません。本音とたてまえとか、そういうものじゃなくて、坂田長官はもっと自信を持って、勇気を出して、もし国民に騒がれたらやめればいいじゃないですか。自分が正しいと思ったらとことんまで貫くのが防衛庁長官の仕事じゃないんでしょうか。どうですか。
  213. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 非常に御激励をいただきまして心強く思っておる次第でございます。しかし、私自身もやはりそれなりに自信を持って実はわが国の防衛の問題に対処いたしておるつもりでございます。防衛を考える会もそうでございますが、近く発表いたします防衛白書につきましても、国民のコンセンサスを求める一つの大きい手段であるというふうに考えておりまして、これが六年も出なかったというところがやはり問題があったと思うんです。そういうところを今回は一年がかりで実はまとめ上げました。あるいは若干まだ不十分なところあるかもしれません。しかし、それは毎年毎年出すことによって少しでも改善をしていくというふうな決意でおります。  それから防衛の問題については、いろいろ与野党の方々から答えにくい問題を御質問いただきますけれども、しかし、私は防衛庁長官としては避けて通るべき問題じゃない、これに対してはちゃんと誠実にお答えを申し上げなけりゃならないんだ、また、そしてそれを、責任を果たさなければならないというふうに考えておりますので、ひとつ、さらに御指導、御鞭撻を賜りたいというふうに思います。
  214. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私は次のように考えます。  今回のロッキード事件とPXL問題とは全く切り離して考えたいということです。つまり、わが国の防衛計画の中で、もしP3Cオライオンという機種が必要なものであり、採用をおくらせることによって防衛計画に空白が生じ、ひいては国益にマイナスになるということならば、国会の場で国民にわかりやすく、具体的に、明快にその理由を説明し、採用に踏み切っていいのではないんでしょうか。逆に言えば、P3Cオライオンがわが国の防衛にとってどういう理由から必要なのか、あるいは必要ないのか、一方、どのような理由から国産化の方がプラスなのか、あるいはマイナスなのか、そうした真剣な論議が国会の場でなされ、いま長官も言われましたとおり、国会の場でなされなさ過ぎるということが私にはなぜなのか理解に苦しみます。P3Cについては四月二十六日の参議院予算委員会で、防衛庁の丸山防衛局長が、海幕でもロッキード社のP3Cクラスの性能を要求しているが、P3Cそのものを導入する計画はないと答え、坂田長官が言われていた海幕がP3Cを要求するのは当然との考え方を軌道修正しています。防衛庁の見解は変わってしまったのか。長官にさっきも伺いましたけど、簡単でいいですから答えていただきたいのは、P3C級とかクラスというのは具体的に何を指しているのか。ほかにこれだけの性能のいいものがあるのかないのか、そのくらいのことははっきり言っていただきたい。ロッキードとこの問題とは別なんです。
  215. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) いまPXLの問題、その選定を考えておるわけでございますが、われわれの方では一貫した御答弁を申し上げておるつもりでございます。  それからもう一つは、外国機を選ぶといたしますと、やはりP3Cというのが一番性能がよろしいというのは、われわれの従来から申し上げておることでございます。
  216. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 参考になるかどうか、これはちょっと宮澤外務大臣の御意見も伺ってみたいと思いますが、四月二十二日、アメリカのフォード大統領がインディアナポリスでラジオインタビューに答えて、日本は軍備力を強化すべきであり、結局そうなるだろうと語っています。このフォード発言は大統領選挙を意識したことかもしれませんから余り日本では取り上げられなかったけど、アメリカ国内向けの発言だけとして受け取るんでしょうか。それでも予備選挙では完敗しているんです、フォードさんが。だったら、防衛庁長官宮澤外務大臣、これはどういうふうに解釈していいんでしょうか。簡単で結構です。
  217. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは私読んでおりませんし、前後の続きもはっきりいたさないのですが、日本日本として防衛庁が必要最小限度の防衛力を自分で持って育てていくということは、これは既定方針でございますから、そのことをフォード氏は当然のことながら言ったものであろう。何か特別にアメリカ日本についてこうしてほしいというようなことを言おうとしたものではないと思います。
  218. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) インディアナ州でフォードさんがどう言ったか、それは私読んでおりません。しかし、その少し前にテキサスの新聞記者に、ホワイトハウスでのインタビューに答えましてフォードさんが言った、それは原本も取り寄せまして読みました。これは質問そのものが再軍備云々と書いてありますが、それをフォードさんは、まあ日本の言葉に訳するならば、日本の防衛について防衛努力をするだろうか、そういうことがきっかけになっておるようでございまして、その内容そのものは、昨年私がシュレジンジャー国防長官と会いましたときの考え方と一向に変わっておらないということでございます。それから、最近アブラモウィッツという国防次官補代理、この方が日本を訪れまして、このことを次官及び防衛局長から聞きましたら、ただいま私がお答えいたしましたように答えております。そういうふうに認識してよかろうかと思います。
  219. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 NHKのニュースでもやってましたよ、お二人とも。アメリカがそういうことを言っているのに、大臣にぼくは怒っても仕方がないけれども、外務省の皆さん、NHKのニュース見てないんですか。伺ってませんで済む問題じゃないんです、こういう国防問題、防衛問題に関しては。どうかそういうことは、ぼくはこれがどうなるとかこうなるとかいうんじゃなくて、どうかお二人の大臣に、外務省というのはそのためにあるんですから、こういうことがあったという御報告だけはしておいていただきたい。御注意申し上げます。  私は、どうしても坂田防衛庁長官のお顔を拝見すると興奮してきてしまって、声も大きくなって、やじも飛んでしまうんですが、きょうは余りその問題に触れたくなかったんですが、一応最後に防衛問題について防衛庁長官に対して私の私見を申し上げます。  五十一年度予算に盛り込まれた今年度の防衛予算は一兆五千百二十四億円、五十年度に比べて一三・九%の増で、GNPに対する比率は〇・九%、国家予算の六・二二%に当たります。しかし、お年寄りから赤ちゃんまで一億一千万人の日本国民一人当たりの金額に割り出すと、数字の上では一人約一万三千七百五十円となります。ここで、皆さん各イデオロギーによって違うでしょう、考え方が。私は決してこれは少ないとか多いとかいう問題じゃないんですよ。ある説に言わせると、日本の防衛のために一人当たり一万三千七百五十円じゃピストル一つ買えないじゃないかという論もあります。だけど、私はその論を言うんじゃなくて、老若男女を問わず、国民は一人当たりこれだけ防衛費を負担しているのです。大臣、よく聞いてください。大事にむだなく有効に使ってもらいたい、これが国民の切なる願いです。坂田長官は参議院予算委員会でも、わが国の防衛三原則を熱っぽく強調されました。私も同感です。それだけに問題のポイントは、繰り返すようですが、どうしたら国民の理解を一層深められるか、どうしたら国民のコンセンサスを一層取りつけられるか、この二点に尽きると私は痛感します。私も与党の青年議員の一人として一層がんばりたいと考えておりますが、同時に防衛庁の特段の努力をこの際期待し、応援し、そして激励します。どうか、答弁は求めませんけど、長官、本当に防衛庁というのは大変なんです。局長、よくもう一度、予算をもらうだけじゃなくて、国民一人当たりどれだけ取っているかということを、いま述べたとおりのことを局長も考えていただきたい。これは国民の声です。  まあ、きょうは核防条約のことですから、本題にまた戻ります。  国際海峡の自由通航の場合は、潜水艦は御存じのとおり浮上して国旗を立てて海上を航行しなければなりませんが、たとえば、核を積んでいたときシーレーンから外れていたらわが国の領海を侵すことになります。三原則違反です。しかし、だれがどうやってそれを一つ一つ確認することになるんでしょうか。さっき申し上げましたシーレーンの幅が答えがなかったですけど、わずかであれば、仮に一海里といわれたら千八百五十二メートルなんです。仮に千八百五十二メートルとしたら、私はさっき言った、船を運転しますけど、絶対そんなもの通れるもんじゃない。出てしまいます。シーレーンの中を通るということは物理的にいっても無理だと僕は考えますし、恐らくこちらにいらっしゃる皆さん、これからシーレーンができて、その中を核を積んだのが通るんだ通るんだといって、そうでございますかと、そんな甘い考えじゃなくて、技術的に見ても物理的に見ても、何海里になるかということこれは大変な問題なんですから、ひとつ宮澤大臣、シーレーンというのを考えてないなんということじゃなくて、どうせ出るんでしょうから、自由通航帯ができたときにその中でもって通っていけるという自信がありますか。
  220. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 単一草案によりますと、いわゆる国際海峡でございますが、そういうふうな一定の幅で、これがより自由な航行ができるというような制度を設けますときに、仮にシーレーンとおっしゃいますからシーレーンと申し上げますが、それはやはり国際機関の了承を得たものでないといけない。おっしゃいますように、非常に狭いものではこれ役に立ちませんのですししますから、国際機関の了承を得て、客観的にもっともだというものにしなければならないということが単一草案にはたしか述べられておるように思います。
  221. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 三海里から十二海里になっても、大臣アメリカが核を積んでないと言うから核は積んでいるはずがないと言って、いままでずっとこの外務委員会でも御答弁なすってまいりました。私も、もう耳にたこができるほど聞いていますが、また十二海里の外で核をおろして通過する、いまは三海里ですけど、三海里の外で核をおろして寄港して、また出ていって核を載せるなんという、つまり子供だましのような説明を今後もなさるんですか、与党議員として伺います。
  222. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、おろしたり積んだりするというようなことを一切申し上げたことはありませんで、わが国の非核三原則に当たるときには事前協議をしなきゃならぬということを言っておるわけです。
  223. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 政府の考え方は、私は、いま大臣おっしゃった言葉、あくまでも非核三原則という言葉を常にとられましたけど、私はうその上塗りだと強く反論します。恐らく与党でもってこんなことを言った議員いないでしょう。領海が三海里であるいまでも核のトランジットはあるのではないかと、国民の多くは素朴な疑問を持っています。まして、もう領海十二海里に拡大されたときにはその疑問もますます大きくなるわけなんです。なってきますよ、絶対に。  私が言いたいことは、政府はたてまえと本音をずるく使い分けて、国民の多くが持っている素朴な疑問にまじめに答えていないということなんです。与党議員として、私は、政府がさらにうその上塗りをすることを恐れ悲しみます。むしろ逆に、ちょうどこの機会をとらえて、領海十二海里宣言のときにです、それでもいい、非核三原則の第三項「持ち込ませず」の解釈の中には、核の一時通過、トランジットは入らないと国民に明快に説明されたらいかがでしょうか。うそのない政治をすべきだとここで私は強く訴えたいんです。大臣、これはもう国民だれだってわかっていることなんだ。どうですか、大臣。この非核三原則、そして拡防条約、いろんな問題が出てきますけれども、この際、三木内閣の一番信頼ある外務大臣としては、思い切ってここで発言なさいませんか。
  224. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは私はそうするつもりはございませんが、先ほど言われましたのは、持ち込ませずというのは陸上についてのことである、あるいはあるべきだと言われましても、いまはトランジットというふうに言っておられますわけですが、糸山委員の御主張は、たとえば港でございますね、そういう場合にはどのようにすべきだという御主張でございましょうか。もし承われましたら。
  225. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ゆっくり後ほど述べますよ。
  226. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ああ、そうでございますか。
  227. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 じゃあ、どうしても大臣がお話しにならないので、この辺で私の意見を述べさしていただくとともに、もちろん前向きに検討していただかなければならないんですが、非核三原則の現実的修正は、核に対する国民の素朴な疑問を解消させ、うそのない正直な政治を行うことばかりでなく、わが国の安全保障の上からもベターだと私は考えます。なぜならば、日米安保条約によってわが国の平和と安全が大きく支えられているという否定できない現実面を考えたときに、日米両国のきずながさらに一層深まる結果となると思うからです。日米安保条約は単に軍事面だけではなく、経済面にも深くかかわり合いを持っているわけですが、それだけに、わが国としては果たさなければならない当然の義務があります。言葉をかえて言えば、安保ただ乗り論的な批判を受けないように、わが国アメリカに対してできる協力とできない協力を明確に伝えて、できる範囲の協力はたてまえと本音を使い分けることでなく、積極的に行うことが必要だと考えます。このことこそ、日米両国の一層の相互理解と友好を深める基盤であります。わが国の国益にとってプラスになるものだと私は考えます。外務大臣、いかがですか。
  228. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日米安保条約では当然日米両方に権利と義務とを課しておるわけでございますので、私は、わが国としてはこの条約わが国に課しました義務については忠実に履行しなければならないと思います。
  229. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私は非核三原則の修正を求めます。この際はっきり申します。すっきりさせたらどうですか。いまが修正のチャンスです。いまやらなければ非核三原則は永久に修正のチャンスはないと思います。答え一つでいいです。どうですか。修正するチャンスです。
  230. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは三木総理大臣がしばしば今国会にも述べておられまして、政府はそのような意向を持っておりません。
  231. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 当然そういう答えが返ってくると思いました。ここでひとつ委員長に申し上げておきます。これは外務大臣じゃなくて。  私が先ほどから非核三原則の現実的修正政府に迫っているのは、何も核武装の用意のためとか、核ならしのためではないんです。私はきわめて冷静に、客観的に、現実問題として論じているだけなんです。繰り返して申しますように、たてまえと本音をずるく使い分けていることはやめて、国民の多くが疑問を感じている核問題に、まじめに正直に答えてほしいという切なる願いからなんです。また、一部の野党の案のように、非核三原則の法制化を主張しているのではありません。理想は理想として評価しますが、有事の場合のことを考えると、非核三原則なんというのは立法化されたらこれは困ります。だけど、せめて非核三原則の修正ということを私はさっきから論じているんですが、これは決して核ならしとか核武装論ということを言っているんじゃないということを、ぼくは立ち上がってここで一言委員長に申し上げておきます。  逆に私の方から提案いたします。私もこの問題についてずいぶん考えたんですよ、もう二年間になりますけれども。それは非核三原則を非核四原則に変える。すなわち、その内容を次のように修正することです。  一項の持たずということについては、これはそのままで結構です。当然でしょう。つくらず、これもあたりまえのことです。ただ、第三項の持ち込ませずにかわって、新しく第三項には上陸させず、そして第四項には領空を飛ばさせず、この四項をはっきりと言ってみる。新四原にする。上陸させずには、先ほどから申しているように、わが国の陸上に核兵器を上陸させて貯蔵させてはいけない、認めない。これはあたりまえです。また、領空を飛ばさせずということは、かつてスペインでB52が墜落した事件のようなことがあっては一大事です。海ばかり規制していても、米軍基地に核を積んだ軍用機が離着陸することでは、上陸させずは守れません。どうですか外務大臣防衛庁長官、私のこの非核新四原則は政府として検討の価値はないんですか。はっきりお答えください。
  232. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 意見をお求めになっておられますので、多少批判がましいようなお返事をするかもしれませんが、そういうお尋ねでございますからお許しいただきたいと思います。  いまの糸山委員のおっしゃいます原則を適用して仮にまいりますと、これは仮定の話になりますが、わが国は横須賀初め港を米国の海軍にいわゆる施設、基地として提供しておりますが、米国の軍艦が核兵器を持ちまして仮に横須賀なら横須賀の港に入るということは、糸山委員のいまの原則によりますと認められることになるということになります。その場合に、日本のような狭隘な国でございますと、港には商船、漁船等々たくさん出入りいたしますし、また、周辺にも密集した家屋があるというようなことがございますから、そのようなことを認めますといたしますと、少なくともその地方の人たちにとってはそれはやはり非常に大きな問題になると考えるべきではなかろうかと存じます。そのような心配を、また、今度は何かの行動によって、したがってそれを阻止するというようなことが、従来のわが国の経験でございますときどき起こっておりますことは、原子力船「むつ」が漁船によって包囲されたというようなことからも心配しておかなければならない事態でございますが、そうなりますと、これは非常に深刻な問題に発展をするのではないであろうか。もちろん、あるいはそれは政治のリーダーシップをもって処理すればいいというお答えであるかもしれませんけれども、現実にそのようなことを考えますと、なかなか、いま言われましたようなことが、私は賛同した上で批評申し上げておるのではなくて、そのこと一事をとりましても容易ならぬ問題ではないかというふうに考えます。
  233. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 核兵器を持ち込ませずという政策が、米国の核抑止力に依存するというわが国の安全保障体制に矛盾するのではないか、あるいは、米国の核抑止力を著しく減殺するのではないかというような議論もあろうかと思いますが、米国の核兵器の持ち込みを制限いたしますことは、純軍事的に見ますと、やはりあらゆる核の脅威のスペクトラムに対応するという点から考えまして、多少なりとも制約を与える、したがいまして米ソ間の核均衡に、たとえ部分的にいたしましても影響を与えるということは事実であるといたしましても、それがまたわが国、ひいては極東の防衛上、決定的な制約要因になるというふうにはなるものではないというふうに考えるわけでございます。したがいまして、私どもはあくまでも三木総理が言っておられますこの非核三原則というものは堅持をしてまいりたいというふうに思っております。
  234. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 もう一度伺いますよ。  私は、非核三原則は理念としてはわかります。しかし、現実の面、実態の上からは全く疑問です。国民の多くも現実面から実態への疑問をはだで感じています。政府はこれまで理念の上にだけ立って現実面を逃げて国会答弁を繰り返してきました。しかし、私はいま、もしアメリカ側から実は核の一時通過、トランジットはあったと公表されたとしたら、歴代内閣はそれこそ大うそつきということになります。想像もしていなかったロッキード事件もあった、ラロック発言もあった、アメリカの公表が絶対にないとは私は思わないんですよ。私もデータも持っております。そのときに予想されることはどうか、どうでしょうか、政治の混乱を私は妨げられない、大変なことになると思う。三木内閣どころじゃないですよ、宮澤内閣もない、坂田内閣もないですよ。いままでの歴代の内閣は全部うそついたということになって、自民党はそれこそ大変だ。共産党さんなんかはそればっかりでやっているんだから、どうか、与党議員として私は心配しているんです。もう本当に日本の国のことを思っているからこそ、こんなことを与党の私が言うというのは、もうそういう時期に来たんじゃありませんかと、本音とたてまえ、うその上塗り、私自身がなぜこんなことを言うかといいますと、議員になる前はこの問題に関して政府姿勢に強い疑問を持っていました。議員になったいまではそれが余計に感じられます。両大臣どうですか、この際、核防条約の批准のタイミングに合わせて、非核三原則の現実的修正を勇気を持って行い、うそのない政治でもって国民の核への疑問を一掃されて、核防条約批准と同時に、どうかその勇気を、宮澤外務大臣じゃなければぼくはできないと思うし、三木内閣だからこそ思い切ってやってみる、そういう答弁をいただきたい。あるいはいまそれが私には言えないと、これはもう閣議を開かなきゃ大変なことだとおっしゃるならば、前向きに検討するとか、何かそういう答弁もらわなければきょうぼくはここからちょっと下がれない、命がけでやっているんだから。お願いします。
  235. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたように、今国会におきましても三木総理大臣が重ねて述べておられるとおり、政府には非核三原則をこの際改めるという考えがございません。が、さらに、先ほど糸山委員の御提言につきましては、私がちょっと申し上げましたようなこと一つをとりましても、なかなか、実効性のある御提言であろうかどうかということに私なりの疑いを持っております。
  236. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私は、あくまで非核三原則というものは堅持するべきものであるというふうに考えております。
  237. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 もう同じことを繰り返しても仕方がありません。私は、一応会議録にも残りますけれども、与党の議員の中からもこういうことが出たんだということを御認識いただいて、どうか頭の中に深く入れといて、ばれたら大変だということを頭の中に入れといていただきたいということを、別におどかしているわけじゃございませんけれども。さあこれからが本論になる。ぼくはいままでのはまだこんなのはたいしたことはないんです。  これから両大臣にゆっくり伺いますが、六年前の一九七〇年二月三日、わが国が核防条約にサインしたとき、政府は批准のための要因として次の三つの点を挙げました。これはもう時間がないから省略します。もう皆さんわかっていることですから、同じことを読んでもしようがない。第一の要因の背景である世界の核軍縮の実情について、政府は現在どんな認識に立っていますか、簡単で結構ですからお願いします。
  238. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) けさほどもお答えを申し上げたところでございますが、遅々としてではあるが、米ソを中心に核軍縮の方向は示されておる。また、世界情勢全体の展開から申せば、わが国のような非核三原則を持ち、平和憲法を持っております国にとって、環境は少しずつやはり私は好転をしておる、悪くなっているというふうには考えておりません。
  239. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 この問題に関して、わが国は過去六年間、具体的にどのような行動を重ねたのですか。その結果、どのような成果があったのですか。
  240. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国連あるいはジュネーブの十八ヵ国軍縮会議におきまして、常に核軍縮ということ、あるいは核実験の停止等々のことについて積極的な提言と主張をしてまいりまして、その結果、この条約が成立いたしましてから今日までの間に、米ソ間だけ申しましても六つないし七つの取り決め、協定が結ばれております。
  241. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 核防条約を批准してから、米ソはSALT交渉を行いました。政府はそのSALT交渉そのものを現在どのように評価しておりますか、防衛庁もちょっと答えてください。
  242. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま、いわゆるSALT第二段階にあるところでございますが、これは非常に手間をとっております。私どもとしてはもっと早く、しかも、できるだけ縮小均衡へと思っておりますけれども、なかなかその天井を設けるとなりますと、両方の内部に突き上げもあるかしまして、われわれの思ったほど低い天井というわけにはいかない。しかし、とにかく、天井を設けようということで交渉が粘り強く進んでおるということは、方向としては私は評価していいというふうに考えております。
  243. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) やはり青天井でないということ、それなりの努力をしておるということについて評価をいたしたいと思います。
  244. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 SALT交渉には米ソの首脳は政治生命をかけているという情報もありますが、政府は同交渉の進展についてどのように評価し、分析していますか。特に私の伺いたいのは、ソ連の核軍縮を、たしか宮澤外務大臣三木総理も本会議でもってソ連の核軍縮に否定をおっしゃったと、ぼくはちょっといま記憶がありましたけれど、その点ここでもう一度、ソ連の核軍縮はどうなっているか、どうお考えになるか、外務大臣
  245. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 米ソの政治当局者から言えば、やはり何といっても軍は安全な上にも安全を期しておきたいという自然のそういう考え方がございますから、なかなか内部のその突き上げというものは大変なもののようでございます。ございますけれども、ともかくそこは政治の意思で第一段階を終り、第二段階を進めているわけでございます。両方とも、これは軍を含めまして、いわゆるオーバーキルになっておるということは、はっきり知っておるわけでございますし、それが大変な財政負担になっているということも国民周知のことでございますから、そういう意味では、ただ人類愛的な見地ではなくて、米ソおのおのの間に、できるならば協定に達したいという意思があるというふうに私どもは考えております。
  246. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 防衛庁。
  247. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) やはり米ソのこの核均衡といいますのは、非常な緻密な軍事力の計算のもとに成り立っておるわけでございます。しかも一方、莫大なお金がかかるわけでございまして、それをやはり天井を青天井にしない、そうすることによって、なおかつ世界戦略の均衡は保ちたいということで、それなりに米ソとも真剣にこれに臨んでおるというふうに私たちは判断いたしておる次第でございます。
  248. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ただいまの答弁の中でもって、ソ連は核軍縮をしているとか、まあ非常にアメリカも詰めてきたとか、そういうようなコメントは全然ない、はっきり申しまして。もしそんなことを言ったとしたら、ずいぶん甘い評価ですね。私もいろいろと情報を持っています。いまの答弁は認識が足りない。外務省はもっともっと調査して、本当にソ連は核軍縮をしているのか。もちろん大変なお金を投資しているんですから、皆さんそんなものは持ちたくないとわかりますけど、何しろ片やアメリカは力による――力によるなんてことを言われるとやっぱりこわいし、ソ連も言ったらこわいし、やっぱりその点の外務省の情報というのはもっともっと正確にとって、勉強もしていただきたい。  この問題は次の機会に徹底的に私はやりますけど、政府はいま問題となっています核防条約を六年間も批准せずにきょうまで来てしまった。この事態についてどう考えていますか。何がまず一番の原因だと考えますか。六年間ほったらかしにしていたということは何だと思いますか。
  249. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは原子力の平和利用に関しますいわゆる保障措置協定について、われわれとしてはユーラトムに比べまして不利があってはならないということで、この保障措置協定をつくりますのにかなり実は時間を使いまして、それが昨年の二月でございましたか、お話がまとまったわけでございます。それを待っておりましたのがやはり一番遅延した原因でございます。
  250. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 サインしたのが早かったと思いませんか。六年前のサインをしたのが、調印したのが早かったと思いませんか。
  251. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはしかし、そのときに政府が、先ほどもお話しの三項目の声明をしたわけでございますけれども、あのときにああいう態度でもって署名をしたことは私は適切なことであったと考えます。
  252. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 そうすると、外務省は反省する点はないということですか。
  253. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まあ、反省する点がないと申し上げますといかにもこれは横着な言い分でございますけれども、大筋で進めてまいった進め方に間違いはなかったろうと思います。
  254. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私は、世界で唯一の被爆国であり、憲法のもと平和国家であるわが国が六年間も核防条約をほったらかしにしていたことが、いかに国際的信用を失いつつあるか、世界の現実を悲しみます。残念でたまりません。わが国の国益にとって決してプラスではなく、逆に対日不信感を醸成させたのではないかと考えます。私はそのような認識を強く持っているのです。決して核防条約反対者じゃないんですよ。政府側の話をしているんじゃないんですが、もし今国会で批准されなかったときのわが国のデメリットについてどのような認識を持っているか、これからの見通しを持っているか。本当に批准されなかったら大変だ、世界での日本なんてありませんよ。よくわかっているんだ。わかっていてこういう質問しているんだ。大臣、どうなんですか。
  255. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは委員会並びに院の御意思でお決めいただくことでありますから、それをどうこうという意味で申し上げるのではございません。お尋ねでございますから、そのままお尋ねにお答えを申し上げますと、やはりこの国会では批准が承認がなされるのではないかというふうに各国は考えておると思いますし、私どももまた、前国会では保障措置協定がおくれましたせいもございまして、御提案をいたしましたのが連休の前ごろでございましたから、いかにも会期が短かった。次の国会は臨時国会でございましたから、こういうことを御審議願うのには適さない。今回が本国会でございますので、五十一年の通常国会には御承認を得られるのではないかということを説明もいたしてまいりました。したがいまして、そうでなかった場合には、国内にはいろいろ国会の御審議に不都合なような事件が起こりまして、というようなことはございましたけれども、それはなかなか外国にはわかりにくいことでございますから、どうして通常国会で承認されなかっただろうかという、何と申しますか、外国としてはかなり意外な感を持つであろう。そのことが、しょせんわが国はこれを批准しないのではないかという疑いにつながっていく心配はかなり現実のものとしてあると存じます。  そういたしますと、一つは従来わが国が核軍縮について、われわれは唯一の被爆国であるというようなことをもあわせまして数々の提言をし、また、核軍縮の先頭に立ってまいってきたつもりですけれども、これが批准されないということからくるわが国の主張の説得力というものは、やはりかなりそがれると考えなければならないと思いますし、また世界国々、ことにわが国の動向に関心の深い東南アジア国々には、わが国が核武装するのではないかという疑いがいつになっても消えないのでございますけれども、そのような疑いをもう一遍再燃させるということによりまして一種の不安定感を増す、これはまあ杞憂でございますんですが、しかし、そのように外国、東南アジア国々などはとりやすい立場でございますから、そのような幾つかの問題が起こってまいろうと思います。
  256. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 核防条約に関しまして、本当にこれは大変な問題なんです。私も、これは六年前に佐藤元総理が約束をしたんです。もう国際的信義上から言ったって、信用度から言ったって、批准を早くしなければならないということは私はわかっている。わかっているんだけど、私がいまここでもってどうしても怒らなければならない点がある。五月十日の参議院本会議三木総理答弁の中で、国際信用を失墜するということについてストレートには触れないで、説得力に欠けたことを私はまことに残念に思います。なぜもっと素直にストレートに訴えなかったのか。批准をこれ以上おくらせることは世界の中の日本の信用にとって重大な結果を招くことになる。日本の国益を失わせないためにもぜひ批准してくださいと、総理が自分の首をかけて、総理のポストをかけるくらいの意気込みでもってなぜ訴えないのか。私は本当に残念です。恐らく野党からの追及がこわいのか、あるいは外国からの圧力と思われるのがいやなのか、三木内閣の有力閣僚として宮澤外務大臣、あの総理の答弁は私は納得しなかった。どうですか。簡単でいい。
  257. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは総理も本心は糸山委員の言われたように思っておられるのだと思いますけれども、院が、これから院の立場で御審議をなさるというときに、もしこれができませんとこういうことになりますというようなことは、いかにも何かお聞きようによっては差し出がましい物の言い方になりますので、それでああいう表現を使われたのだと思います。
  258. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 そんなことないですよ、差し出がましいなんて、そんなことないですよ。やっぱり総理は、一国の総理ともなれば、そこでどんと言って、これ外務委員会でも来て説得してもらわなければ困る。私は非核三原則を持ちながら、たてまえと本音が違うとの疑問を持たれては核軍縮の努力も迫力を失う。総理はこんなことを言いましたね、たしか本会議で。たてまえと本音が違うのは総理の方で、なぜもっと本音を言わないのですか。きょうは総理が不在なので、この点の質問は総理が出席のときに質問するとして、これは留保しますが、委員長、ここでもってひとつお願いします。核防条約批准に関しての質疑に関し、総理大臣の出席を要求いたします。いいですか、委員長
  259. 増原恵吉

    ○理事(増原恵吉君) 承っておきます。
  260. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 総理が出ていらっしゃれば、総理は総理でぼくはまた食いつきますけど、宮澤さん、今度は宮澤さんと呼ばしてもらう。三木さんだけじゃないですよ。ほくと大臣とはいつも顔が合うんだ。予算委員会だって、ぼくは一番前だし、あなたの顔をいつも見ている。坂田防衛庁長官なんか出てくると、ぼくにやじられちゃう。宮澤さんも一つ大変なことをしているんだ。ここでぼくは宮澤外務大臣にひとつやっぱりはっきりと謝ってもらわなきゃだめだ。  あなたは、五月四日の参議院予算委員会でわが党の宮崎議員の質問について、今国会期間中に法案、条約通らなかった場合はどうですか、各大臣どういう不都合なことが起きますかという質問ございましたね。そして大臣お出になってきて答弁なさった。当然外務大臣として核防条約の批准が出てくると信じていました。ところが大臣、それが出てこなくて、委員席から私が核防条約はどうしたんですかと外務大臣に異議を申し立てた。大臣知らぬ顔して向こうへ行っちゃった。さあこれはどうだ。
  261. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 五月四日でございましたか、宮崎議員から予算委員会におきまして、このような事情で会期はもうわずかしかない、全体の審議は進んでいない。そこで会期を延長することが必要だと自分は考えるが、もしいまのままでいろいろな案件が議了しないときには各省でどういう困ることがあるかというお尋ねがございました。私は、外務省の立場から申しますと、たとえば日韓大陸だな条約でございますとか、あるいは金融関係条約でございますとか云々というようなことを申し上げたのでございますが、核防条約ということを私は実は申し上げなかった、仰せのとおりでございます。と申しますのは、実はあの段階におきましては、核防条約は本院においてまだお受け取りになっておられません。これは衆議院においてまだ議論をしておられまして、本院は衆議院の送付を受けておられない。おられないものを、こういうことが困りますと本院に向かって申し上げることは私は筋が立っていない、そういうふうに思いましたので、それで核防条約ということを申し上げなかったんでございます。
  262. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 大臣、どうですか。そういう答弁じゃなくて、ぼくはあのときはこう推測しました。会期を三日間延長すれば核防条約は自然成立する。そうなれば参議院では幾ら反対があってもどうなるもんではない、核防条約にだからあえて触れることもない、外務大臣はひそかにそう考えてたんじゃないんですか。もしそうだとしたら大臣とんでもないことだ。参議院軽視もとんでもないことだ。ここで本音を言っちゃいなさい。
  263. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いまのは全くそのとおりでございまして、五月四日ではなくて……
  264. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 ちゃんと議事録がある。だめ、大臣そんなこと言っても。見せます、これ、議事録。もう出ているんだ。
  265. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 四日でございますか。
  266. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 あるじゃないか。ちゃんとここに出ていますよ。
  267. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私はこのことを記憶しておりますのは、かなり意識してそういうふうに私は思って申し上げたのでございます。つまり、案件をお受け取りでないのにそういうことを申し上げるのはどうかなと、こういう気持ちで申しましたんで、私はそれを記憶しておりますのは、記者会見で同じような問題がございまして、どうして言わなかったのかというので、そういうつもりだったということを説明した記憶がございます。
  268. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私はいまの大臣答弁に関して、決して参議院を軽視しているとはぼくは思っておりませんが、何しろ時間がないんです。私が百分とることは大変なことなんです。秦野委員にお願いしてお時間分けていただいているんだ。まだまだ質問がたくさん残っているんで、ちょっと急ぎますが、もっと本当はこの問題について大臣を徹底的に追及する予定だったんですが、まあ同じ与党からやってもしょうがないでしょう、こんなことは。だから一応これは大臣答弁でがまんしておきます。二度とこういう条約とか法案などが出たときには軽視なさらないように、参議院にも力を必要だということをはっきり申し上げた方がいいんじゃないか、与党だっていままで賛成だった人間が背中向けてしまう場合もあるんですから。どうかその点は注意していただきたい。  次に、衆議院外務委員会が四月二十七日に核防条約を賛成多数で可決したときに附帯決議をされました。私はその趣旨には賛成ですが、具体性を欠いているように見受けられます。したがって、参議院での決議にはもっと理想を高く掲げて、しかも具体性を持たせるべきだと考えます。ここに衆議院の附帯決議の書類があります。読み上げてもいいんですけれども、時間がありませんから読み上げませんが、それは一体何か、実は、私は私なりの私案を用意しました。つまり、参議院においても附帯決議を出していただきたい、つくりたい。はっきり言えば糸山私案というものを用意しました。この席ではその要旨だけを申し上げます。いずれきちんとした文書にまとめて提出したいと考えておりますので、各党各先生からの決議案も当然おありのこととは思いますが、理事会で私の私案を御検討願えれば幸いです。委員長、どうか参議院においても決議案を出していただきたいと思いますけれども、よろしいですか、要求します。
  269. 増原恵吉

    ○理事(増原恵吉君) その時点において考えます。
  270. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 では参議院でもって附帯決議を出すということは、委員長理事会で諮られる。衆議院は衆議院、参議院は参議院なんです。大臣もそれはわかっていただけましたね。  ここでもって、私は基本的な姿勢です。今日の国際関係は核兵器を持つ国を中心として動いています。この国際関係は定着していると言ってもいいでしょう。なるほど国際関係は力が支配します。しかし、その力が核兵器ということでは、いつまでたっても核支配の悪循環はなくなりません。どこかでそれを断ち切ることが必要なんです。世界で唯一の被爆国であるわが国は、この核の悪循環を断ち切るためのリーダーシップをとるべきではないでしょうか。被爆国だからこそ、世界国々にさきがけてその運動をダイミックに起こすべきではないのでしょうか。それがわれわれ政治家の悲願であると確信いたします。その努力を迫力をもって続けるべきではないのでしょうか。私は決議には、まずそうした理念を高く掲げるべきだと考えます。  次に、具体的な提言です。たとえば核保有国は核弾頭を解体して、エネルギー源として世界の平和利用のために放出せよということです。現在核兵器は一面においては開発競争をエスカレートさせていますが、同時に、核は決して使ってはならない人類破滅の兵器であるということなんです。おわかりだと思います。社会党のさっきの羽生先生の問題も出ました。だけれども、与党である私が、ましてもや、かなりいろんな支援者から核防条約反対、反対と私は言われています。きょうも電報が何通も来ております。これは大変なことだ、自民党の中においても。使ってはならない兵器、核兵器、核弾頭を解体してエネルギー源として世界平和、平和利用に放出する、これが実現できたら本当にすばらしいことです。その実現に向かってわが国が訴え、行動するのです。これまで政府は国連総会などでこのような具体的提案をしたことがあるでしょうか。いろいろとスピーチはなさいました。でも核弾頭を解体してそれを平和利用の資源に使おうじゃないかという、日本だからこそそういうことができるんじゃないんでしょうか。日本だからこそそういうことが言えるんじゃないでしょうか。国際会議でもってパンチのあるスピーチを、各国に働きかけたことを、そしていままでなかったとしたら、どうか外務大臣、国連総会でもどこでも行って、核の全面禁止ももちろん大切なこと、それをしなきゃならないけれど、まず核弾頭を解体して人類平和のために利用しようじゃないかということを日本の国から提案したらいかがですか。  第三に、非核三原則の現実的修正です。私は、そうした前向きでもって現実的で具体的な内容を盛り込んだ決議を参議院の自主性、見識の上からもぜひやっていただきたい。すべきだと私は考えます。私は、そうすることが核防条約批准のための三つの要因にも沿い、わが国の安全保障、原子力平和利用の保障問題を含めた国民的合意が得られやすいのじゃないかと考えます。  外務大臣答弁もらいますと時間がなくなりますから、私はこのまま提言します。これまで述べた私の提言をもし受け入れてくれないならば核防条約の批准に対して反対をしなけりゃならないのです。どうか私の言っている――一部の不平等条約だとか、あるいは批准は慎重にしなさい、そういう一部の慎重派の人たちと私は意見が違うんです。私の提言が入れられることによって、慎重派のお考えの皆さんにも少しでも参考にしていただきたい。そして私も一生懸命説得に努めますから、どうかこの席でもって、核防条約批准ということについて与党も野党も一緒になって決議文を出して、附帯決議を出して、三木総理にも政治生命をかけていただいてやっていただきたい。  時間がありませんから、もう一度だけ最後に再確認しますが、非核三原則の修正が第一。これは委員長にもお願いしました。第二項、いま私が申し上げました核弾頭解体論、そして世界平和のために資源として使おうじゃないかという呼びかけを日本の国が先頭になってやるということを附帯決議の中につけていただきたい。そして三木総理にこの外務委員会に来ていただいて、皆さんと手を握って、どうか日本の国は核防条約が批准されなければ世界的信用を失うんだということを一言述べてもらいたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わらさしていただきます。声が大きいのは生まれつきですからお許しください。どうもありがとうございました。
  271. 田英夫

    ○田英夫君 核防条約の問題については、先ほど羽生先生からも基本的な問題について御質問がありましたし、二年来論じられてきた問題でありますので、すでに大きな問題点は出尽くしているんじゃないかという気がいたします。にもかかわらず、この条約の持っている二面性といいますか、賛成するか反対するかという結論をどちらかにでも出せる、そういう要素を持っている。もちろん私が申し上げているのは、日本が核武装をする余地を持つべきだといういわゆる核フリーハンド論というものを論外にいたしまして、衆議院での採決の結果を見ましても賛成、反対に分かれている、その論拠は私どもも実によく理解できるのであります。つまり、それは、真剣に考えれば考えるほどこの核防条約が持っているというか、結ばれた当初のアメリカとソ連の二つの核超大国のねらいというものがわかり過ぎるほどわかるだけに、それにとらわれている限りこれは反対せざるを得ない、賛成するわけにいかないということになると思います。しかし同時に、先ほど申しましたように、一方に日本国内にも核フリーハンド論というものがあるし、また、米ソ両国は依然として核の拡大という方向に実際問題として進んでいるという状況の中で、そして非核保有国というものの安全保障というものも依然として確保されていないという状況が続いている中で、日本がこの条約参加をするということの意味が非常にますます増大をしている、こういうことを考えたときに、非常に高度の政治的な判断に立ってこれに賛成をすべきではないか、この批准に賛成をすべきである、こういう考え方に傾いてこざるを得ない。二面性と申し上げたのはそういうことであるわけですが、私どもも党内で数年来、ときには大きな声を出し合って議論をしてまいりましたけれども、そういう問題を踏んまえた上で、さらに残っているといいますか、ある意味では日本がこの条約参加をした状態になったときに一体何ができるであろうかということをお互いに考えてみたいという、そういうことでお聞きをしたいと思います。  第一は、核の問題については世界の人々がやはりわれわれの意見に耳を傾けざるを得ない。つまり唯一の被爆国であるという、そしてその後三十年間核の問題について主張し続けてきた日本がこの条約参加をしたということになった以上は、ただ批准をし、参加をしたということでは済まないはずでありますから、一体そこで何ができるのか、これは言うまでもなく核軍縮を進め、そして最終的には核を絶滅するという方向に向かって中心的な役割りを果たさなければならない、こういうことだと思います。  そこで、具体的に伺いたいんですけれども、核防条約の第六条に、核軍縮交渉を誠実に行うということがうたってあるわけであります。核軍縮ということになれば、これは当然核保有国の問題になるわけですけれども、現実にこれが条約を結ぼうと提起した米ソを中心として、核保有国の間でこの条約のとおりに進んでいるとお思いになるかどうか、この点はいかがでしょうか。
  272. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 第六条に定める核保有国の軍縮の進展が満足すべきものであるかどうかということでございますが、これはけさほども申し上げましたように、この協定ができましてから米ソの間にとにかく数個の核軍縮に関する、あるいは核実験の制限に関する協定、取り決め等ができております。また、昨年の再検討会議におきまして、米ソ両側から、この条約ができる以前にはともかく米ソが軍縮の話し合いをするというような雰囲気は想像もできなかったと申しておりますことも、私はある程度の真実を述べておるというふうに考えております。SALTの交渉につきましても、ともかく天井が高いということは不満でありますけれども、青天井であるよりはまだしもというように考えておりまして、進展のスピード及び程度につきましては満足とは申せませんものの、そのような雰囲気のもとに特に米ソの間で交渉が行われているということは認めてもいいのではないかと考えております。  それからちょっと委員長と田委員のお許しを得まして、先ほど糸山委員に私、御答弁をしたことをちょっと訂正させていただいてよろしゅうございましょうか。――私に混乱がございまして、申し上げようが間違っておりました。  五月四日に参議院の予算委員会で宮崎委員に申し上げましたのは、核防条約については四月二十八日にすでに院において衆議院から送付を受けておられますので、これを会期内に議了されるかどうかについては、これは院の御判断でおやりになり得ることであると、しかるに大陸だな条約、金融協定等々はまだ衆議院の段階であって参議院に送付が行われておりませんから、いかに院が御審議なさろうとされてもそれはおできにならないことであって、したがいまして、会期延長云々というのが宮崎さんの御質問に対する私のお答えでありました。核防条約を外して申し上げましたのは、これは院が送付を受けておられますから、与えられた期限の中でも理論的には御審議をいただける、そういう可能性がある、こういう意味でそれをはずして申し上げたのでございまして、私がさっき申し上げようを逆さに申し上げまして失礼いたしました。
  273. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、いまこれは羽生先生の御質疑にもお答えになったことで、先ほども防衛庁長官からも青天井でないことが一つの評価だと、こう言われたわけでありますが、具体的に私どももある程度数字を調べているんですが、政府でつかんでおられるSALT交渉の兵器別の現状と上限、それがおわかりになっていたらお答えいただきたいと思います。
  274. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 御承知のとおり、現在SALTIIを交渉しておりますが、SALTIの制限数と現状とを比較して御説明申し上げます。  まず、ICBMにつきましては、SALTIの制限数はアメリカが一千五十四、ソ連が一千六百十八ということになっておりまして、それに対しまして現状は全くその数字と同じ状況でございます。  それから、SLBMにつきましては総数アメリカの場合には七百十、ソ連が九百五十と、それに対しまして現状アメリカが六百五十六、ソ連が七百二十四ということになっているようでございます。その中でさらに潜水艦の数はアメリカが四十四と制限されておりまして、ソ連は六十二と制限されておりまして、それに対しまする現状アメリカが四十一隻、ソ連が五十四隻となっております。  なお、SALTIの取り決めの際には御承知のとおり戦略爆撃機は入っておりませんでした。対象外でございますが、御参考までに戦略爆撃機の数の現状を申し上げますと、米国が四百三十二、ソ連が百三十五でございます。以上がSALTIのICBM、SLBM、それから戦略爆撃機の現状、それをまとめて総計から申し上げますと、全部ひっくるめました米国の現在保有量は二千百四十二、それに対しましてソ連が二千四百七十七でございます。いまの数字はSATIの対象外の爆撃機を含めた数でございます。  それから七四年のウラジオの合意の際の上限との差がもし御参考になれば申し上げますけれども、運搬手段の総数は二千四百、これは御存じのとおりでございます。それに対しまして現状ではアメリカはこれよりも二百五十少ない数になります。ソ連は七十七超過しておる。  それから、MIRV化のものにつきましては米国が上限の千三百二十よりも三百七十下回っており、ソ連が千二百十下回っているというような数が出ております。ほかに弾頭数とかございますけれども……
  275. 田英夫

    ○田英夫君 結構です。これを資料として提出していただきたいと思います。
  276. 増原恵吉

    ○理事(増原恵吉君) ただいまのは資料として相出をしてください。
  277. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 承知いたしました。
  278. 田英夫

    ○田英夫君 この数字は私どもが入手したものと完全に一致しておりますが、問題は、いまお答えいただいたとおり、防衛庁長官の表現で青天井よりいいということで、現状より大部分が上になっている。最もはっきりしているのはMIRVの場合ですけれども、そういう状態にしようとしている。つまり米ソは現状よりも高いところに上限を置いて、いわば、先ほど大臣は何という表現を使われましたか、拡大均衡という言葉を使われました。私は高値安定だと言っているわけなんですけれども、そういう状態をねらっているところに非常に不満があると思います。  そういう問題を含めまして、実は昨年社会党の代表団がアメリカに参りましたときに、イークレー軍縮委員長、つまりSALTIIの交渉をしているアメリカ側の最高責任者でありますが、この人とかなり長時間話し合いましたときに、はしなくも出てまいりましたのが高値安定をさせているという、これはまずそこに線を引かなければ線の引きようがないということでやっているんだという、やや言いわけのような話がありました。これを将来は当然軍縮ということからすれば下げることになるだろう。ただし、下げていった場合には残る核保有国、つまり英中仏を指すわけでありますが、この線に米ソがだんだんおりて近づいたときに非常に世界的な問題が起こるであろうということを言っているわけですね。これは言うまでもなく核抑止力という考え方が根底にあって、アメリカなりの核抑止力というのは、米ソが圧倒的に核優位にあるという形の中でこそ、二つの圧倒的な力があるからこれが世界に対する核抑止力になる、これが五つ並んではほぼ同じ数字になってきたらその抑止力は弱まってしまうという意味だと私どもは解釈したのでありますが、こういう表現をしたということを初めて申し上げるので、すぐにお答えいただくのはどうかと思いますが、私どもの解釈はどうでしょうか、そういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  279. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私もそういうようなことがあるというふうに推察をいたしております。すなわち、この核拡散防止条約ができました後で初めて米ソがこのような話し合いができるようになったと言っておりますことの一つの意味は、今後核兵器国はふえないということで、米ソ以外に三つはございますものの、これからふえないということでその辺の未確定要素が一つ切れた、そういう確定要素の中で議論ができるからということを私は言っているのだと思うんでございます、ほかに意味もございましょうけれども。ということは、やはり米ソがいまは圧倒的でございますから、とりあえず二人だけのかなり高い天井のところで話し合っておればよろしいわけですけれども、それをずっと下げてきた場合には、ほかにまだ三国あるわけでござせますから、それとの関連で抑止力というものが危うくなるということをお互いに考えておるという要素は恐らく私はあると思います。
  280. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、第六条の核軍縮という問題が核保有国には義務づけられ、私どもはそれを強く、特にだれよりも強くこの条約の中に参加する以上は要求をしなければならないと思うわけでありますが、一方で日本は日米安保条約という形の中でアメリカの核のかさの中に入っている、つまり、アメリカの核抑止力によって日本の安全を保っているという形が一方にあるわけですね。これは非常に矛盾してくることになるのではないか、これはどうでしょうか。この核抑止力ということに守られながら一方でアメリカの核軍縮をやりなさいと、だからアメリカの言い方で言えば、中仏英も同時に下がっていって、先に向こうがなくなって、最後なくなるときもいつもおれたちは優位なんだという、こういうことになりかねない。いやそれどころか、私どもはむしろ米ソは核軍縮をやる意思が本当にあるんだろうかという疑問さえ持つんですけれども、いまの話と関連してどういうふうにお受け取りになりますか。
  281. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国アメリカの核抑止力のもとにありながら核軍縮を推進するという立場は、ある意味で矛盾をしていないかというお尋ねでございます。それにはこのようにお答えを申し上げることができると思います。それは確かにちょっとパンチを欠くではないかということは、その面から申しますとございます。  そこで私どもは、米国あるいは再検討会議などにおきましては、ソ連等に対してもそうでございますけれども、核軍縮を呼びかけますときに、バランスのとれた核軍縮をやってほしいということを、これははなはだ正直な表現になりますが、申しております。と申しますことは、世界現状では、わが国の安全が、やはり私どもの考えでは安保条約というものがなければ困るという考えをしておりますものですから、そうかというんでアメリカだけがずっとなくしてしまってよその国だけが残るという状態は、わが国にとってはいまの現状では少なくともそういう意味では心配な状態である。したがって、軍縮はぜひ進めてもらいたいけれども、その結果として現状におけるわが国の安全が脅かされることは困るという要請がございますものですから、核兵器及び通常兵器を含めてバランスをとりつつ軍縮をしていってほしいということを、大変正直なことを申し上げるんですが、しかし、そういうお尋ねでございますからそのとおり申し上げますので、そういうふうに申しております。  それで、先ほどの高値安定の件でございますけれども、実は私、機会がありまして、このSALTの交渉あるいはウラジオストクの交渉といったようなものの雰囲気をある高官から聞いた機会がございますんですが、あれはまあフォード大統領とブレジネフ書記長が会談をいたしたわけでございますが、困難はフォードとブレジネフとの間にもないわけではないが、おのおのが自分の後ろに座っている人たちとの間に同じぐらいな困難があるということを述懐しておりまして、これはやはり私はそうであろうと、私は後ろに座っている人を非難するという意味では必ずしもございません。やはりその職責の人たちはどうしても安全の上にも安全をと考える、それを政治の意思がある程度振り切っていくところの困難がやはり現実の問題としてずいぶんあるように聞くんでございます。そういたしますと、われわれから見るとどうも高値安定ではないか、もっと天井は低くならぬかということになるわけでございますから、そういう意味で政治が優先するといいますか、シビリアンコントロールといいますか、そういうことを交渉の過程の中で決めていくというところにやっぱりおのおのの国が困難を持っておる。それで、場合によってその天井が高くなりがちだということのように観察をしております。
  282. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、先ほど申し上げた核抑止力という問題なんですが、これは防衛庁長官からお答えいただいた方がいいかもしれませんが、私はこの核防条約――後で伺いますか、核防条約を発展さしていかなくちゃいかぬという、これはもう皆さんも当然そう思われると思うんですが、そういうことを想定したときに、私はいつの日か核抑止力という哲学を政府・自民党の皆さんも転換をされなければならないときが来るんじゃないだろうか。また同時に、米ソに対しても核抑止力という哲学を転換してもらわなければ核軍縮というものは進まない時期が必ず来る、こう思うんですが、この点はいかがですか。
  283. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 抑止力という概念は、やはり第二次大戦後、核の出現から出てまいったものだと思うわけでございまして、それはむしろ核の追求の結果出てきたもの、しかもそれは、核の破壊力というものが物すごい力を持つということ、場合によっては一億、二億の人類を破滅させるという恐怖、そういうものは避けなければならないということから成り立っておる理論だと思うんです。したがいまして、あくまでもその力の追求の結果としてそういう均衡論が出てきたわけなんで、核抑止ということが言われる、あるいはその哲学が存在する限りには、その背後に核というものがあって初めて成り立つというふうに私は思うわけで、もし核抑止論というものがなくなるときには核の存在というものがなくなったときでなければ考えられない。しかし、現実の政治から考えますと、確かにこの核軍縮ということをやはり米ソを中心として真剣に取り組んでおると思います。しかし、かといってなくなるというふうには実は考えにくいわけでございまして、現実はそういう姿ではない。しかし、われわれはあくまでもその核を使用しない、あるいは核がもたらす破壊というものが起こり得ないように努力をしなくちゃならない、協力をしていかなければならない、こういうふうに思うわけで、やはり戦略核・戦術核、通常兵器、兵力、こういうものが三つ絡み合って核均衡というものがこの世に残念ながら存在しているのが現実の姿じゃないかというふうに思っております。
  284. 田英夫

    ○田英夫君 現実と、核防条約に重大な決心を持って日本参加していくというその時点での一つの将来に向かっての意欲ということから考えると、やはりこの問題はお互いに真剣に議論し、同時に議論するだけじゃなくて、特に米ソに向かって、あるいは核保有国全体に向かって日本が主張していかなくちゃいかぬ問題で、そういう中で、ある時点からは核抑止力という考え方をわれわれの中からすべてなくすということが必要じゃないかと私は依然として考えるんですね。
  285. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 田さんのお考え、よく私わかるわけでございますが、最近の傾向といたしましては、しかるがゆえになかなか核は使えない。もちろん核の戦略の部門は使えない、戦術核ならいいじゃないかという議論も一時ございました。しかし、戦術核もやはり戦略核に及ぶということで、これもなかなか使いにくい。しかも、ローカルなものならいいじゃないか、しかし、ローカルなものでもこれはやはり米ソの核戦争を誘発する危険がある、こういうことでこれもなかなか使えない。したがって、たとえばワルシャワ体制とNATOとの関係におきましてはかなり緻密な計算のもとに成り立っておるわけで、むしろワルシャワ体制の方が通常戦力はNATO諸国よりも大きい。そうすると、もし、いま申しますような戦術核ですらも使えないとなると、ただいまではむしろNATO諸国は戦術核の支えによってかろうじて均衡を保っておる状況でございますから、使えないということになると、むしろ通常戦力というものが物を言ってくるという時代を迎えておる。したがって、むしろ核じゃなくて通常戦力をやはりNATO諸国も高めていく努力をしなければ自国の安全にとって困る、こういうような実は傾向は出てきておると思うんです。ですけれども、まだ先生のおっしゃるような理想のところまではいってないんじゃないか。しかし、それはわれわれ人類が追求すべき問題ではあるという点については、私も田委員と同じような考えを持っているわけであります。
  286. 田英夫

    ○田英夫君 そういう中で、私が申し上げたいのは、米ソは容易に核軍縮をやらないだろう、だから第六条の規定にもかかわらず、世界の先頭に立って日本がよほど腹を据えて、ただ国際会議でスピーチするというようなことだけじゃなくて、具体的な外交の仕組みの中で第三世界と手を握る、その他いろいろなことを含めてやって米ソを追い詰めていかないと核軍縮をやらないだろう、こういう考えが私の根底にあるわけなんですが、その上に立って、今度のエコノミストにも出ておりますけれども、「しのび寄る最終兵器時代」という見出しですが、いわゆる巡航ミサイルのことが出ております。ここに紹介されているのをもう御存じでしょうけれども、つまり、六、七メートルぐらいの短い、もっと短いですか、五メートルから七メートル、太さ七十センチという非常に小型なものであって値段が二百分の一ぐらい、しかも地上というか水面上すれすれに飛んでいくので、捕促しがたいというような、いろいろな特徴を備えているし、もちろん核弾頭がつけられる、あるいは通常の弾頭ももちろんつけられる。こういうことで米ソともに競って開発しつつあって、大体アメリカの場合は一九八〇年ごろに第一線配備できるんじゃないかという、これはエコノミストの紹介にもそうあるわけなんですけれども、これなどは、まさにわれわれがいま論じている核軍縮というものと逆行する方向に米ソは突き進んでいるというふうな印象さえ持つわけなんですけれども、こういう問題を防衛庁はどういうふうにお考えになりますか。
  287. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私どもは、いまの田先生の御指摘の巡航ミサイルにつきましては、その調査をいたします正式の資料というものはございませんので、アメリカで、あるいはその他で出ております公刊の資料を一応分析したものに基づいておるわけでございまして、まあこれは釈迦に説法になるかと思いますが、巡航ミサイルと申しますのは、御案内のように一連のICBM、IRBMあるいはMRBMという、こういう弾道ミサイル――大砲の弾か飛んでまいります、この弾道でなくて、ちょうど飛行機のように大気圏を自力で飛んで行くという、そういうメカニックになっておるミサイルというところでございます。  何ゆえにこの巡航ミサイルが問題になるかと申しますと、現在弾道ミサイルについては御存じのABMという、これに対抗するミサイルシステムを米ソともに開発をいたしましたけれども、技術的に非常に困難性がございまして、相互ともこの配備個所その他は数は減少してございます。人工衛星その他によりまして、一応ミサイルの発射については探知をする体制というものができております。前に日本で所沢にございましたOTHが問題になったことがございますけれども、これは弾道ミサイルの発射を空中のマグネチックな動きによって探知をする、こういう方式でやったわけでございますが、それがもうすでに進歩をいたしまして、ビミューズその他の方式ができて、あわせて、先ほども申し上げましたように、人工衛星ということで探知ができますので、一応この弾道ミサイルが発射された後における探知、あるいは第二撃の報復爆撃、報復発射、こういう対抗手段を講じられるということになるわけでございますが、この巡航ミサイルはそういうことで大気圏を飛んで行けますので、かなり低空の飛行が可能であるということと、それから地形を――どういう方法によっておるのか、詳しいことは私どもよく存じませんけれども、デジタルで表示をするということになっておりまして、途中での修正をかなり細かくみずからコントロールできるというような仕組みになっておるようでございます。したがって、目標に対する命中率が非常に高いということでございます。低空のために、いわゆる防空警戒組織をたやすく突破しやすいというような利点もあるというふうに言われております。  それから、私どもよく理解をできないんでございますが、製作費は弾道ミサイルに比べて大変安価に上がるということも言われております。これは何ゆえに安価であるかについては私どもよく、専門家の中でも理解ができないところでございますが、そういうことが通称言われておるということでございまして、この巡航ミサイルそのものは急に最近になってあらわれておるのではございませんで、在来、主として戦術ミサイルとして、どちらかといえばソ連の方が戦術ミサイルをいまだにやはり装備をいたしております。特にスティックスとかスクラバー、シャドックといった、潜水艦あるいは水上艦艇に搭載をいたします巡航ミサイル、これは極東艦隊に配備されております船にもたくさんございます。このうちの一部は核弾道を装備できるというものでございますが、そういうものがございます。  それからアメリカの方では、主として地対地のミサイルとしてレギュラスあるいはスナークといったものがかつては使われておりましたが、最近は戦術ミサイルとしてはほとんどこれらは老朽のものになって現役から退いておる、こういう状況でございまして、今度は戦略ミサイルという形で新たにあらわれたということでございます。  これが今後どのような、この米ソの核バランスにどういう形で影響を与えるものであるかという評価につきましては、ただいまのところはっきりしたことを申し上げる段階までには至っておりませんけれども、少なくとも現在SALTIIで、ソ連の超音速の爆撃機バックファイアとこの巡航ミサイルがSALTIIの本交渉の中で一番大きな米ソ間の論争の焦点になっているということでございますので、ソ連側としては相当この巡航ミサイルについて重大視をしておるというふうに判断してよろしいのではないかと思います。
  288. 田英夫

    ○田英夫君 いまお答えありましたように、われわれの願いとは逆の方向に現実は進んでいると見ざるを得ないわけなんですが、そこで、われわれとして決意をして核防条約参加をするという以上は、一体、段階的にどのようにして核絶滅というところにまで、これは遠い将来としても向かっていくのかという構想を持たねば意味がないんじゃないだろうかと思います。たとえば、核防条約への参加ということも実はその一つの、核軍縮を経て核絶滅へということのワンステップであるというふうに考えてもいいわけですが、その上で一体どういうふうなことがいま政府責任者の皆さんの間で将来に向かって考えられているのかということをこの際聞かしていただきたい。
  289. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) さしずめ、私どもとるべき具体的なステップの一つは、やはり核実験の全面的禁止ということでございます。いわゆる地下実験につきましては、最近米ソ間である程度話がつくというような情報がモスクワの方から出ておるようでありまして、としますと、これは査察をソ連が認めるということになるのであろうか、そうすればこれは一つの進歩であるというふうに考えられますが、ただこれは、敷居がやはりかなり高いわけでございまして、百五十キロトンでございますから、それを将来に向かって下げていくという問題がございます。わが国は地震探知技術などはかなり進んでおりますから、そういうことで核実験というものをまず一切抱括的にやめるということから、新しいものの開発をできないようにするということが比較的現実性のある一つの目標だと思っております。  それからもう一つは、いわゆる平和目的と称する核爆発につきまして、平和目的の名のもとに疑わしい実験が行われるということが現実にございますので、やはりこれは当面かなり厳しくしていくということかいいのではないだろうか、そのような幾つかの具体的な提案を進めていきたいと考えております。
  290. 田英夫

    ○田英夫君 その点は私どもも想定として、まず核防への参加、続いて核実験の禁止についての具体的な提案、さらに一方で核軍縮、これは軍縮委員会という形の中で日本参加していくわけですけれども、もう一つ非常に重要な問題として、社会党はかねて提案をしている非核武装地帯、あるいは非核武装条約という考え方があるわけです。この問題については、すでに羽生先生も触れておられるわけですけれども、私もこのことは世界から核をなくすということの中で、先ほども国連のワルトハイム事務総長の話も出ておりましたけれども、非常に重要な一つの問題である。これがラテンアメリカからアジアヘと広がることができたならば、非常な大きな影響力を持つだろうというふうに思うわけです。  先日IPUでメキシコへ参りましたときに、IPUの開会式でエチェベリア大統領は、非常に誇らかにラテンアメリカ非核武装条約に触れまして、われわれはこの地上から核兵器をなくすことの先頭に立っているという意味の演説をいたしました。実は非常に残念な気がいたしまして、日本総理大臣こそ、そういう演説を国際会議でやるべきじゃないかというふうに思いながら聞いていたわけなんですけれども、同時に、このラテンアメリカ非核武装条約というものを詳細に検討してみますと、非常におもしろい考え方が出ていると思います。  一つは、この発効についての条件として、核保有国が附属議定書の批准をする、つまり具体的にはラテンアメリカの地域に核を持ち込まない、核攻撃をしない、核で威嚇をしない、こういう約束をするかしないかと迫って、それをすべての核保有国が約束をするということにならなければ効力を発しない。残念ながらソ連がこれにまだ批准をしていないという状況で、まあ条約は実際発効したようですけれども、そういうことがありますけれども、この考え方などは、単に空論としてのものではなくて、非常に具体的に核保有国との間に関係を持っている条約であるという気がいたします。  このことについて、これをアジアに適用する、あるいは私どもアジア・太平洋というふうに考えますけれども、いま申し上げたようなことを含めて、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  291. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、政治の目標としてはやはりそういうことを常に指向していくべきだと思っております。まあ実効性の問題というのは、これはいろいろもちろんあるわけでございますけれども、しかし、条件を整備をしていくということによってそういう目標に近づいていくという、そういう心構えが必要なので、いま実効性がないからその話はだめですというようなことを考えるべきではないというふうに思っております。  それで、実は私自身がいま現実に一つ二つ持っております問題意識をちょっと申し上げてみますと、ラテンアメリカの場合には、まあソ連の問題ございますが、非常に大きな大陸でございますので、つまりほとんどの地域が領土であるということになりますが、アジアの場合に、公海、海の部分をどう考えるべきかということがございますし、それから公海の上といいますと公の空ということになるんでございましょうが、そういうものをどう考えるべきか。と申しますのは、一般に領空侵犯というようなことを従来お互いに考えてまいりましたけれども、領空というのはどの高さにまで達すべきものなのか、一応無限ということでありましょうが、そうしますと、人工衛星とかミサイルとかいうものはどこかの空を飛ぶわけでございまして、これは非常に高いが、しかし、観念的には領空であるということにやはりなるのであろうか。そうしますと、抑止力としての核というものを万一考えましたときに、太平洋の公海及び公空、そこも非核地帯に入るということになりますれば、そこは通れないということに考えざるを得ません。ということは、抑止力としての核というものがそれで働けるであろうか、厳密に条約を適用すると考えて考えなければなりませんから。そんなようなことの解決をどうすべきかというようなことなどがやはり何か答えを出しておくべき必要のある点じゃないかと、ほかにも幾つかございますけれども、存じております。
  292. 田英夫

    ○田英夫君 この問題は本当に先ほどの軍縮の問題と並んで、どこの党とか、あるいは政府とか野党とかいうことを抜きにして、やはりこれからの問題として検討をしていただきたいと思います。  私どもも、たとえば昨年アメリカに参りましたときには、さっき申し上げたイークレーともこのことで議論いたしました。あるいはシュレンジンジャー前国防長官とも議論をいたしました。まあ時間がありませんから紹介いたしませんが、簡単に言えば、イークレーは、中南米の場合には、いま宮澤さんが言われたこととやや似ておるんですけれども、中南米の場合は核保有国との距離が遠いということ、それに対してアジアは、特に大きな核保有国の三つの谷間に入っているという問題で、状況が違うのではないかという感想を述べておりました。シュレジンジャー前国防長官も、地域をどこに設定するかという問題について興味を持つというような答えを、話をしておりました。あるいは、昨年北朝鮮に参りましたときに、やはり私どもの想定の中で朝鮮半島というのは非核武装地帯としてぜひ入れなければならない最も重要な場所と考えますので、私ども接触できる朝鮮労働党の幹部ですが、この問題を提起したときに、非常に興味を持つと、われわれとしても真剣に検討したいという反応を示しておりました。  こういうことを含めて、ASEAN諸国も実はこの問題について討議をしていることは御存じのとおりでありますから、これを日本がイニシアチブをとってまとめるということは必ずしも架空の話ではないように私どもは思っているわけです。いま言われたことは技術的な一つの問題として理解できますけれども、陸上の地域、いわゆる領土領海というものに限ってやることは技術的に可能であると思いますし、そういう点からして、ぜひこの問題は政府としても御検討いただきたいと思いますが、いかがですか。
  293. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国に関します限り、これは完全な非核地帯ができておるし、また、政府はそういう三原則を持っておるわけでございますから非常に問題が少ないわけでございますが、したがって、わが国には一番そういう意味では問題がないと申しますか、言いやすい立場であると思います。  それで、先ほども申し上げましたように、政治の目標としてはそういうことは捨ててはならないので、現実にそういう条件を整備をしていくという努力をやっぱりすべきであろう。恐らく、いまの段階でございましたら韓国には難色があるかもしれませんが、しかし、難色のない国というものはアジアの中では考えられそうな感じがいたします。常にそういうことはやはり条件整備に努力をすべきだと思います。
  294. 田英夫

    ○田英夫君 そこでもう一つ先に進みますが、先ほど糸山委員は、あとの決議の問題に触れられましたけれども、決議ということも一つのお互いにこれから検討しなければならない問題と思いますが、もう一つ政府として御検討いただきたい問題として、核防条約参加をするということが、つまり批准が実現をしたという状態になったときに、政府として次のようなことを行動に移していただくことができるかどうか。  一つは、核保有国に対して、一種の質問の形になりますけれども、政府からの質問状という形になると思いますが、こういう点を確認をする。つまりこれはトラテロルコ条約の例の附属議定書批准ということに一つのヒントを得ての問題でありますけれども、第一は、貴国は、相手のその核保有国は、日本に対して核兵器による攻撃をしない、こういう約束をするかどうか、これはトラテロルコ条約の中にも入っているわけです。二番目に、同じように、核保有国は日本にと言うか、あるいは、日本を含む非核保有国全体に対してと言う方が正しいかもしれませんが、これに対して、核兵器による威嚇をしないことを約束するかどうか。これもトラテロルコ条約にあるわけです。三番目に、第六条の核軍縮ということについて、今後、核絶滅に向かって真剣に努力を続けることを約束するかどうか。この第三番目はやや精神的になりますけれども、この三点について日本政府から核保有五ヵ国に対して質問状を出していただくということができないものだろうかということですが、いかがでしょうか。
  295. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっとお待ちください。  ――いろいろ、事務当局の意見をちょっと聞いてみておるのでございますけれども、ただいま明確なお答えをちょっと申し上げることができませんで、しばらく検討させていただきたいと思います。  と申しますのは、いま問題にしておりましたのは、先ほども田委員から御指摘のありました、わが国自身が安保条約の規定によって米国の核の抑止力に頼っておる、そういうわが国姿勢について、ただいまのところ中国もソ連も、いわゆる安保を廃棄しろとちうようなことを最近申しておるわけではございません。それなりのひとつの、何と申しますか、沈黙の状態が続いておるわけでございますが、このような設問をすることによって、第三の点は問題がございませんけれども、日本自身のとっておりますそのような姿勢そのものを先方としては問題にせざるを得ないというところに、つまりそういう一種の反論を引き起こすのではないだろうかというようなことを外交的にはやはり危惧をする、心配をする、こういうことを事務当局が申しておりますので、しばらくひとつ検討させていただきたいと思います。
  296. 田英夫

    ○田英夫君 この点は重要な問題でありますから御検討いただくことは大変結構だと思いますが、だからこそとは言いませんけれども、日本アメリカの核の抑止力の中に入り、安保条約という体制があるということが、現在非常に問題になってくるのではないかという気が私どもはしているわけです。そういう中で、私ども自身もいろいろ問題を掘り起こし、議論をしてきたわけなんでありますから、ひとつ政府もこの点はぜひ御検討をいただきたいし、先ほど私が書簡というようなことを申し上げました、質問状というようなことを申し上げましたけれども、表現の仕方というものはいろいろあるというふうにこの際申し上げておきたいと思いますが、問題は、私どもが提起したいのは、スタートが非常に大事なわけでありますから、関係国といいますか、かなり世界の多くの国々日本の核防条約参加を期待して見詰めていた中で、つい先ほどもイギリスの外務大臣に同行してきたイギリスの外務省の人が訪ねてきまして、いつ批准するんだということを言っておりましたけれども、そういう状況の中で日本が入っていく、そのときに、スタートが大事ですから、そこで日本政府として国民を代表して、世界に向かって一つ態度を表明されるということがぜひ必要じゃないかと思いますし、その内容としては、私どもはこういうものを期待する、希望する、こういう意味を込めてのことでありますから、御理解をいただきたいと思います。  先に進みますが、もう一つ、これも羽生先生が触れられたことでありますが、海洋法と非核三原則の問題やはり当面の問題としてどうしても私どもははっきりさしておかなければならないと思います。念のために伺いますが、十二海里の領海ということが海洋法会議で決まることはほぼ確実でありますけれども、昨年の衆議院のたしか委員会だったと思いますが、伊達参事官が各海峡の幅をお答えになっているので確認しておきますけれども、津軽海峡、対馬海峡だけでいいんですけれども、津軽海峡が西口で十・四海里、東口で九・六海里、対馬海峡は北水道といわれるところで二十三・二海里という非常に微妙な幅になっておりますが、いずれにしても十二海里両側からはかるとすべて領海の範囲の中になるということは間違いない、この二つの海峡は、こう考えてよろしいんですか。さっきの自由航行の問題は別にしてです。十二海里をそのたま適用するとそうなるかどうか。
  297. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) ただいま先生がお挙げになりました海峡は津軽海峡と対馬の西水道、東水道でございますね。津軽海峡は二ヵ所ございまして、十・四海里のところと九・六海里のところとございます。それから対馬海峡の西水道は二十三・二海里、東水道が二十五海里と、まあ二十五海里の方は問題じゃございませんので、対馬悼崎と南兄弟島の間が二十三・二海里ということでございます。
  298. 田英夫

    ○田英夫君 ということは二十四の中だということですね――ということは、二十四の中に入るから領海になっているということですね。
  299. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 先ほど先生が申されました、要するに国際海峡の航行の問題は全く別といたしまして、単純に考えればそういうことになります。
  300. 田英夫

    ○田英夫君 そこで羽生先生の御質問に対して宮澤外務大臣は、現在の海洋法会議の中の案として出てきているものを見ても、また、日本の利害ということからしても、たとえばタンカーの航行の自由というふうな問題もあるので、すべてが領海に埋まってしまう場合でもそこを自由に航行できるという方向になるであろう、こういうふうにお答えになったと思いますが、そういうことでよろしゅうございますか。たとえば津軽、対馬という海峡も、全部機械的に言えば領海内になってしまうのですけれども。
  301. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) さようでございます。
  302. 田英夫

    ○田英夫君 そうしますと、日本代表はこの海洋法会議に出ていて、大勢がそうなっているから黙っているということなのか、非核三原則という世界には例のないものを掲げている日本政府としては、あえてその世界の大勢に抗しても、こうした海峡には核積載艦は除外する。つまりわれわれ非常にずるいようですけれども、タンカーは通れなければ困るわけですけれども、しかし、これは人間の生活のために非常に有益なものが通るんですから一向差し支えないわけであって、核積載艦というような有害なものが通るということは困るんだと、日本の立場からはこれは認められない、こういう主張をなさるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  303. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 詳しくは政府委員からまた申し上げることになろうかと思いますけれども、私どもとして、船のタイプによって航行の拒否を決めるという主張は、どうもみんなを説得する力がない、航行の態様によって決めるということの方が大勢のように思うわけでございます。  先ほど核積載艦とタンカーとのお話があったわけでございますけれども、私どもは核兵器ということについてこういう経験を持ち、こういう立場を持っておりますから、これが一番われわれとして、何と申しますか、避けてほしいと考えておる種類のものでございますけれども、たとえば東南アジア国々などにおきましては、むしろ軍艦の方は概してお行儀がよくて、タンカーのようなものが、大きさも大きゅうございますが、汚染をするというようなふうに考える向きもございまして、ちょっとそれが、やはり国情により何を好ましく何を好ましくないとするかということについては大変に意見が違っておると申しますか、わが国がある意味ではこういう特殊な経験と特殊な政策を持っておりますだけに、そういう意味ではきわめて少数派であって、どうもそういう立場では説得ができにくいというような状況にあるように聞いております。
  304. 田英夫

    ○田英夫君 それはある意味でわかるのですけれども、私が一つの、大変失礼なんですが、政府の非核三原則を守ろうとする熱意のバロメーターのような意味を込めてお聞きをしているわけなんです。私どもも、もちろんいま大臣が言われたとおり、その意見が通りにくいということはよく理解できるわけです。しかし、さっきも申し上げたように、世界でただ一つ非核三原則ということを掲げている日本政府として、あえてそれに挑戦してそれを主張されるということが、将来に向かって、核防条約参加をした日本が核絶滅に向かって声を大にしていくということのために役立つのかどうか、役立つとすればやった方がいい、あるいは日本というのは大変子供っぽいことを言うところだといって世界からむしろ相手にされないという判断をされているというなら、これはまたそれで一つの論としてお聞きしますけれども、世界の大勢がどうも聞きそうもないからやめておくということであっては、私どもとしてはちょっと納得できない、こういう気持ちなんです。
  305. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これが二国間の交渉でございますと、わが国の立場というものをどこまでも主張していくということが比較的容易でございますけれども、多国間で一つの新しい国際法をつくろうというときに、とことんのところはやはり大勢のおもむくところで決まるということになりやすうございます。私どもは、私どもの言っていることが子供っぽいというようなふうにもちろん考えているわけではございませんで、とことんのところ、現状より後退することがあってはならないということを一つ思っております。  それからもう一つは、このような国内――外国の資源に頼り大きな船腹を動かさなければならないわが国にとって、そのような船舶の航行が妨げられることは非常に大きな国損になる、こういうことがございますので、その辺のところを総合的に、国益を損しないようにしながら海洋法条約をつくり上げる方途いかんと、こういうような頭でおるわけでございます。
  306. 田英夫

    ○田英夫君 その問題はそういうことにしておきますが、そこで大変軍事的には素人のようなことをお聞きするんですけれども、さっき外務省からお答えいただいたとおり、領海ということを機械的にはかれば対馬海峡、津軽海峡というところは領海に入ってしまうわけですね、一方は韓国との間ですけれども。そうなると、もしそれが厳密にそのまま適用されるとすれば、そこは軍艦通れない。いわんや核積載艦は通れない。こういうことになると、一体防衛庁としてはどうですか。これはソ連の原子力潜水艦通れないわけです。ウラジオストクから出てくる、そして特に中国、アメリカ大陸に向かって、あるいは日本の沿岸に向かって出ていくということを当然、対馬海峡を通ってやっていた、あるいは津軽海峡を通っていたソ連の原子力潜水艦は出られない。同時に、アメリカの船も、軍艦もそこを通って日本海に入ることができない、日本の自衛艦は通れると、こういう物理学になるわけですが、その点についてどういうふうに判断されますか。
  307. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 大変仮定の問題でございまして、こういった見地からの問題の詰めを具体的にやっておりませんので非常に感覚的に物を申し上げることになるかと思いますけれども、日本の防衛という非常にローカルな、グローバルの中でのローカルな防衛問題という形でとらえました場合に、確かに日米安保条約を基調にしておりますので、アメリカの核抑止力という点に日本の防衛を依存しておる現在の立場から見ました場合に支障を来す、抑止力に支障を来すということは、これは免れないというふうに考えますが、その場合、全般的に評価してそれが非常に致命的なものであるかどうかということになりますと必ずしもそうでないんではなかろうか。この点は非核三原則の日本への核の持ち込みということについてよく大臣から申し上げておりますように、シュレジンジャーは、昨年日本に参りましたときに、日本の防衛については必ずしも日本への核の配備あるいは日本の領海領空の通過ということを必要としない、核の抑止力は日本以外の地域に配備してある核兵器によって十分その目的を達し得るという趣旨の発言をしておりますので、恐らくそういうことではないかというふうに判断をいたしております。
  308. 田英夫

    ○田英夫君 大変露骨な言い方ですけれども、ソ連はこの二つの海峡が通れないと、特にウラジオストクの原子力潜水艦というのは非常に強大な数を持っているわけですけれども、これが活動舞台に出てこれないということになるんじゃないか。この影響というのをずばり考えますと、日本を取り巻くアジアの情勢、アメリカ、中国というものを見渡して、このことは日本にとってプラスなのかマイナスなのかということは言うまでもないんじゃないかと思います。ですから、宮澤外務大臣は、もっと全体の問題を、日本の船舶という意味で航行の問題を訴えられたわけですけれども、日本を取り巻く軍事情勢ということから考えたときに、この二つの海峡の領海化という問題は決して小さなことではないというふうに考えて質問をしたわけですが、この問題、もっと、また場所を変えて御質問する機会があるかと思います。  最後に、時間がなくなりましたが、原子力の平和利用の査察の問題について一つだけお聞きしたいんですけれども、大体いままで外務省を初め政府としてこの問題についての態度は、繰り返しいろんな資料をお出しになって、ひたすらユーラトム並みになっているからいいじゃないかという、事実そういうふうに最終的になってきているわけですね。私はそれでいいのかどうかという逆な態度からお聞きをしたいわけです。つまり日本の国民感情、日本の非核原則ということに象徴される核に対する考え方ということからすると、日本は絶対に核武装をしない、つくらず、持たず、持ち込ませずということの上に立つと、日本はプルトニウムから原爆をつくるというようなことは一切しない、どうぞ見てください、厳密に見てください、こういう態度こそ日本のとるべき態度じゃないだろうか。ユーラトム並みでなけりゃならぬとか、いろいろ条件をつけられたのは、いわゆる企業の利益を代弁する方々の意見ではないだろうか。日本の外交という立場からすれば、むしろ世界で一番厳密な査察を受け入れましょう、こういう態度こそ日本のとるべき態度ではないのかという気がいたしますが、その点、どなたでも結構ですが、いかがでしょうか。
  309. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いまの、つまりわが国がいわゆる核兵器に核燃料を転換するのではないかという点につきましては、これは田委員のまさに言われますとおり、全くそういう気持ちがございませんから、その点は査察を簡単にしてもらって網の目を逃れようというような意思は、意図は一切ございません。ただ実は、その問題よりはわれわれが開発した技術がある意味で他人の知るところになるとか、査察に非常に時間がかかって作業そのものが妨げられるとかいったようなことの方に問題があるというふうに私は承知しておりますけれども、科学技術庁から来ておられますので、お答えを願いたいと思います。
  310. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 査察と申しますのは、本来の目的以外の目的に供さないということを確認する手段でございますから、その確認する目的を阻害するほど緩くやれということは決して言っていないわけでございます。ただ、その目的を十分果たし得る手段であれば、それを越えて平和利用活動にいろいろな支障を来すという必要はないわけでございまして、国際原子力機関の査察等に関する協定のモデルがございますけれども、そのモデルは、そういう目的に十分即するものであると同時に、平和的な活動を阻害しないという両面を充足するためにつくられているわけでございまして、そのモデルに即してつくられたのがユーラトムの協定でもございますし、ユーラトム並みと申しておりますのは、そういう意味での本来の目的を十分達し、かつ、平和活動に支障を来さないという両面を果たし得るものだというふうに私どもは理解しておるわけでございます。
  311. 田英夫

    ○田英夫君 時間がまいりましたので終わりますが、私は、きょういろいろな問題に触れて御質問いたしましたが、その根底は、冒頭申し上げたように、二つの面を持ったこの条約、賛成するという態度も反対するという態度も、日本人として本当に突き詰めて考えたときには、正しい意味でどっちもとれるというこの条約の中で、あえてこの条約参加をしようという国民の意思が決定していく方向にあるときに、やはりただ参加をすればいいということではなくて、世界のむしろ核絶滅への先頭に立つという使命を負って入るんだということをぜひお互いにこれから先検討したいという立場で御質問いたしました。ありがとうございました。
  312. 増原恵吉

    ○理事(増原恵吉君) これにて暫時休憩をいたします。    午後六時一分休憩      ―――――・―――――    午後六時四十二分開会   〔理事増原恵吉委員長席に着く〕
  313. 増原恵吉

    ○理事(増原恵吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続いて質疑を行います。
  314. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最初に、今回の核防条約につきましては、いままでいろいろ論議がありましたように、非常な不平等性がある。しかし、それを批准しなかったならばその不平等性は直るかと言うと、それは直らない。したがって、われわれとしても核防条約に加盟をして、そこが新たなるスタートになっていかなければいけない、こういう立場で、その点非常に矛盾を感ずるわけでありますが、最初に外務大臣にお伺いしたいことは、この核防条約の成立の過程においては日本の主張も――日本は軍縮委員会には入っていなかったようでありますけれども、日本の主張はかなり取り入れられていると、こういうように今日まで外務省も答弁はしていると思うんですけれども、しかし、いまこの核防条約の内容を見て、もう少し日本が何らかの努力をすればもっと一歩不平等性のない条約ができたんではないか。そういう点で、いまここで幾らがんばってもでき上がったものは仕方ないわけで、その条約のつくられていく過程においてもっと努力すべきではなかったかのじゃないかと、率直に言って私はそういう感じがするんでありますが、外務大臣はもちろん当時は外務大臣ではないわけですけれども、率直に言ってどういう感じを持たれているのか。
  315. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに、その不平等性ということは指摘し得ることでございますけれども、ある意味では、先ほど塩出委員がちょっとお触れになりましたように、この不平等性というのはわが国にとっては、わが国がみずから選んで核保有はしないといういわゆる三原則を宣言しておることから考えますと、何もこの条約のゆえにということでない、わが国にとってはむしろ非常に名誉なことだと考えているわけですが、そういう意味での不平等ということはそれは言えることではございますけれども、不名誉なことだというふうに私は思いませんし、そのような平等は結局われわれが持つことによって平等性を解決するのではなくて、持っているものが持たないことによって平等性を実現するのが本当であろうというふうに考えておるわけでございます。  それで、この条約を見て、もう少しどうあったらそのような感じがなくなるであろうかということでございますけれども、申してみれば、たとえば第六条の規定というようなものは、もっと締約国ことに核兵器国に対してきつい書き方ができておれば、これはもう一つよかったと、いいだろうということは確かに私も感じます。もちろんそういう主張は当時からありまして、いろんな情勢からこういうことになったのでありますから、そのことをみんなが気がつかなかったというわけではないのでありますけれども、第六条の書き方をもっときつくしておきますならば、核軍縮というものがもう少し拘束的なものとして実現し得たであろうということは私は言えると思います。
  316. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この核防条約をつくろうという背景には、やはり第二次世界大戦においてファシズムあるいはナチズムに支配をされた西ドイツとかあるいは日本が再び核武装するのではないかと、そういうような心配もかなりあってこういう条約ができたんだと、こういうようなことをいろいろ話には聞いているわけなんですけれども、そのことは事実なのかどうか。
  317. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのようなことは背景にございましたと思います。
  318. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういうことであれば、これはもちろん過ぎ去ったことを言っても仕方ないわけですけれども、やっぱりわれわれは過去を反省することが次への新たなる前進には必要じゃないかと思うんです。たとえば日本政府として、さっき言われた第六条ですね、こういう内容の第六条であるならばわが国はこういう核防条約には断固はいれない、それぐらいな宣言をもししたとするならば、やはり核防条約をつくる意図が、日本あるいは西ドイツが入らなければ非常に片手落ちになるわけですから、そういう効果があったんじゃないか。ところが、この核防条約は国連で日本が賛成をし、当時の新聞を見ますとそのときの外務大臣三木さんですけれども、これは特に反論する理由がないから賛成したんだと、こういうような新聞記事が載っておるわけで、われわれその当時核防条約というものに全然関心も余りありませんでしたので、いまそういう新聞記事から当時を見て、被爆国日本として確固たる姿勢をとるならば、もうちょっと一歩前進した条約ができたんじゃないかと、そういうことをわれわれは反省をしているわけなんですけれども、そういう点、外務大臣としては率直にどう考えているか、お伺いしたいと思います。
  319. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この条約条約としまして非核保有国に課しておる義務と核兵器国に課しておる義務とのバランスという点では、この第六条にもっと強く書いてございますと、条約としてはそのバランスを少し回復するということになるというふうに思いますけれども、それは条約としての問題でありまして、そうしたからといって、米ソの核軍縮の姿勢が現実にさらに前進をすることになったであろうかということについては、結局、これは多国間と申しましても主として米ソでございますから、現実の問題といたしましては、米ソがお互いの損得、お互いの事情から軍縮のテンポを決定していくわけでありまして、条約としては私はそういう感じがいたしますけれども、現実にそれがどれだけ影響があったであろうかということはまた別問題ではないかという気がいたします。  そこで、結局、米ソがお互いに持っておるいろいろな問題の認識とか国内事情というものから軍縮のテンポが決まっていくという事実は、残念ながら条約にどう書いたからということとは関係ないのではないかという感じがしておるわけであります。
  320. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 もちろん、いまおっしゃったことはわれわれもそういう感じがするわけですけれども、それは別として、いま条約の内容についての話だったわけですけれども、その点については宮澤外務大臣もそういうことは多少認めたような感じでございますので次に進みたいと思います。  先ほどから核の抑止力ということがいろいろ論議をされたわけですけれども、やはり核の抑止力というものが平和を保つ、これは力のバランスというものがあったときに平和が保たれるんだと、こういうことじゃないかと思うんです。  実は一昨年、ここにいる田委員とも一緒にアメリカに参りましたときに、ちょうど八月六日、広島に原爆が落ちた日、日本の八月六日ですが、ちょうどフォード副大統領に会いまして、そのときは大統領になる三日前だったわけですけれども、まだはっきりなるかならないか、九九%の大統領じゃないかと言われておったときですけれども、そのときに、ちょうど私も広島出身でもありますし、広島に原爆が落ちた日でもあったものですから、アメリカがもっと核をなくするとか、あるいはまた、米ソの武器輸出競争、そういうものをもっとなくするように、アメリカがもっとリーダーシップをとってもらわなければ困ると、そういうことを申しましたときに、フォード副大統領は、過去の歴史を見ると、やはり両陣営の力がバランスしたときに平和というものが保たれているんだということで、さしあたっては米ソの兵力の均衡ということが必要である、そういうことを言ったわけですね。われわれも、確かにそういうことも認めるわけですけれども、それは相対的な一つの平和であって、結局そういう力のバランスという考え方がだんだんエスカレートして限りなき軍拡競争になっていく。それにとどめを刺していかなければならぬ。そういう意味から言えば、われわれの求めるところのものとしては、こういう力のバランス、あるいは核抑止力というものに頼るような平和ではだめだ。もっとお互いの信頼というか、軍備のない平和というものをあくまでも求めていかなければならない、そういうことを感じたわけですけれども、外務大臣としては恐らくいまの考えには異存はないと思うのですけれども、どうですか。
  321. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) アメリカが、世界平和の維持というものを常に力の立場から考えている、いま塩出委員の言われましたことはそのとおりでありまして、フォード大統領が、自分はデタントという言葉をもう使わないと言いましたときに、力を通じての平和という言葉に言い直したということ、これはごく最近のことでございますが、でも明らかなように、そういう哲学であると思います。これは、好ましいとか好ましくないということよりは、恐らくアメリカから申せば、ソ連というものを意識いたしますと現実にはそうならざるを得ないのではないかということであろうと思います。もちろん、それはわが憲法が前文で期待しておりますような世界の情勢、それからくる平和とは異なるものでありまして、少なくとも、国連というものが最終的に世界の平和を維持できるだけの力を持つということにすらなっていないわけでございますから、われわれの考えている、理想としておりますものとははるかに違うことは確かであります。
  322. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、わが国もこの核防条約に署名をし批准をして加盟をするということは、結局は、まずこちらが裸になって、そして世界国々に核を持つことは非常に危険でもあり無謀なことだ、そういうことをやめようじゃないか、そういう非常な一つの決断と申しますか、確かにこちらが裸になって、それを機会に向こうがふところから刃物を持ち出してやれば非常にこちらは困るわけですけれども、しかし、絶対的な平和を求めるために、あるいはそういう悪循環を絶つためにわが国の方からまず裸になっていこう、この核防条約の加盟の中には、先ほど申しました、われわれが目指す軍備のない平和への第一歩を踏み出したことになるのだ、こういうようにわれわれは思いたいわけなんですけれども、外務大臣はそのような感じを持っているのかどうか。
  323. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、この条約と否とにかかわらず、いわゆる非核三原則というものをしばしば確認することによって、実はこの条約よりはさらにもう一つ、持ち込ませずというところまでコミットしておるわけでございますから、そのような約束、決心は、この条約を離れてすでに存在しているというふうに私は考えておりまして、この条約がそれに加えるものは、そういう約束をわれわれは一方的な国の意思として宣言するだけではなく、国際的なコミットする、約束をする、それも二十年という期間にわたってコミットするというところがこの条約によって加わる部分だというふうに考えます。しかし、基本的には、いわゆる非核三原則というのはわれわれ自身の選択によって一方的に宣言をして行ってきておりますし、今後ともそういう態度をわれわれとしてはとり続けていくのであると思いますから、そういう意味では、この条約をわれわれとしては現状を変更せずに批准しやすい立場にすでにある。ただ、それを国際的に約束することによりまして、われわれがこういう運動の先頭に立つ発言について対外的に信憑力を、説得力を加えることができることになろうかと思います。
  324. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、先ほどからの論議にありました、わが国の安全を保つためにどうしても米国の核の抑止力が必要である、あるいは安保条約がどうしてもなければならない、こういう点は、考えてみると、おれは裸になったんだからおまえたち裸になれ、そう言いながら、その物陰の裏にはちゃんとピストルを持った人が番をしておって、言うなれば本当に核防条約に入って裸になるというのはどうも本当の裸ではなくて、やっぱりそういう点、先ほど田委員の質問の場合も、各国、核保有国に手紙を出す場合に反対に向こうから言われるんじゃないか、これはくしくもわが国の弱みを率直に政府委員の人が言ったんじゃないかと思うんです。そういうような点に私は非常な矛盾を感ずるんです。わが国はちょっと偽善者に近いんじゃないか、ちょっと言い方はよくないわけですけどね。そういうような点は、外務大臣はどう考えますか。
  325. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 憲法が想定しておりますような世界の、いわゆる各国民の信義と公正に信頼をしてという事態が現実のものであるかどうかという判断の私は分かれからくるのであると思っておりまして、各党の中には、そういう世界というものを信じてもいい、現実に現在信じてもいいとお考えになっておられる党と、私どものように現在そういう世界はまだ残念ながら到来していないと考える者との判断の分かれになると思うのでありますが、私どもとしては、理想は理想でありますから、わが国の決めた基本は動かさない。しかし、それだけで完全に安全かというと、どうもいまのところそういう判断をするわけにまいらないというような考え方に立っておるわけでございます。それは、理想と現実とがいま一致していないからといって、われわれの姿勢を変えるべきだと私は思わないので、こういう姿勢は続けながら、なお万一というための準備は怠ってはならない、こう考えておるわけでございます。
  326. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 現実問題として、関係国を信頼するか信頼しないかというところから一つの判断が分かれるわけで、これはいまここでこれ以上論議しようとは思いませんが、ただ、現在アメリカでは大統領選挙の予備選挙が行われているわけでありますが、民主党の一番トップをいっておるカーター、ジョージア州の知事だった人が、私が大統領になったときには韓国から撤兵をする、こういうことをたしか言っているように私新聞で読んだように思うわけでありますが、やはりこの核防条約はあと二十年です。そうしますと、安保条約というものは、これは日本が維持しようと思ってもアメリカから一方的に切られる場合もあるわけで、やはりそういう点を考えていくならば、これはもちろん安保条約必要論である政府の立場を認めた上での話なんですけれども、いずれにしても核のかさとか力のバランスによって平和を保つ、そういう状態を早く乗り越えて本当の意味の平和を求めるための努力を一刻も早くやっていかないと日本の将来にとってもよくないんじゃないか。これは安保条約というものが日本の平和に必要であるという自民党の立場を認めた上でもそういうことが言えるんじゃないかと思うんですけれども、そういう意味で、その理想の平和への闘いというものをもっともっと続けていかなければいけないんじゃないか。こういう点はどう考えますか。
  327. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 世界の現勢は、わが憲法が想定をしておる立場から言えばきわめて不満足な状態であって、われわれとしては、やはり憲法の前文が定めるような世界の実現に向かって最大の努力をしなければならない。そのとおりであります。
  328. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、これは努力をするという言葉だけでは困るわけでありまして、具体的にどういう道を行くかということは非常にむずかしい問題だと思うんですね。先ほど宮澤外務大臣は、フォードとブレジネフが話をしたときの話で、フォード大統領とブレジネフ書記長との間の違いよりもフォード大統領あるいはそれぞれのその周りとの間の違いの方が非常に困難なんだ、こういう話をされたわけですけれども、これは私はなかなかおもしろい一つの話じゃないかと思うんです。じゃ、宮澤外務大臣はどうして同じ国の責任者とその部下との違いの方がより大きいのか。どういうところに原因があると思いますか。
  329. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、やはり非常に素直に考えまして、防衛を担当する直接の責任者の持っておる責任感というものが、ある意味で十重にも二十重にも物事を確かにしておこうという方にどうしても自然になってまいりますから、そこはある程度政治が決断をしなければならないわけで、それがシビリアンコントロールということだと思うんでございますが、やはりその職責に、防衛の職責にある者は国境を越えてといいますか、そういう共通の意識を持つということがあって、それをどれだけ政治がコントロールしていくかということではないんだろうかと思います。
  330. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、核軍縮を進めていくというのも、やはり国と国との信頼関係というものが生まれてこなければ決して核軍縮は進まないと思うんですね。そういう意味から、じゃ人間の信頼関係はどうして生まれるかというと、これはやはり人間というのはしょっちゅう会うて話し合いをする。与党と野党であっても、同じ外務委員会におれば何となく信頼感が生まれてくるように、そういう意味でブレジネフとフォードとしょっちゅう会っているから、両国の防衛担当者が会うよりもたくさん会っているからそれだけの信頼関係もあるんじゃないか。そういう意味で、私はやっぱり核軍縮を本当に進めていくためには、たとえば核を保有している首脳が会う。これは一同で話し合いつかなければ二回でも三回でも、あるいはまた防衛担当者が会うとか、あるいはまた国連において核問題特別総会等を開いて、できるだけたびたびそういうものを論議をしていく機会をつくる、こういうことが私は非常に大事じゃないかと思うんですね。昔と違って、いまは非常に地球も狭くなったわけですし、地球上の人類というのはもう運命共同体という認識もだんだん強くなっているわけですから、わが国は被爆国という立場であるわけですから、核保有国ではなくてもそういうものを呼びかけることは堂々とできるんじゃないかと思うんですけれどもね。そういう意味で、こういう核保有国の首脳会談とか、あるいは国連特別総会等を開いて、この問題を各国首脳がお互いに論議をし合い、お互いに人間を知り合う機会をつくるために日本はもっと努力すべきじゃないか、こういう提案をしていく考えはないのかどうか。
  331. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) フォードとブレジネフの信頼関係ということでございますけれども、信頼関係ということについて言えるとすれば、それはお互いが約束をしたことを実現するだけの指導力があるかどうかということについての判断ということでは信頼関係ということが言えるのかもしれませんけれども、私はいまの米ソにかかわらず世界の国と国との間、ことに米ソの場合にこういう交渉が可能になっておりますのは、実は信頼関係というところまではいきませんで、お互いの損得というようなことが基本ではないんだろうかと。非常にそれは露骨な話ですし、はなはだ味気ないことですけれども、やはりそれで動いているというふうに考える方が現実に近いのではないであろうか。すなわち、お互いにオーバーキルになっておる、そしてこれはとめどもなく進んでいけば大変な財政負担になり、国内でその他にしなければならない施策も十分にできないということはお互いに困ることでございますから、了解さえできればお互いにある程度のところで手を打ちたいという、そういう利己的な動機は十分に働いておって、しかも周りを見てもあと三ヵ国、それもとても近づいてくるようなところじゃありませんし、それ以外の国は核防条約があるから大きなことはできないというような、そういう利害関係の計算の上に成り立っておるというふうに、残念ながら私は現実はそう考える方が合っているのではないかというふうに思います。しかし、そうは申しますけれども、指導者の間の個人的な接触ということも、これも国交を深めるのには役に立ちますから、指導者が集まって、たとえばランブイエで世界の経済問題の議論をいたしましたように、軍縮の問題の話をするというようなことも、やはり一つの政治的な空気を盛り上げていくという意味ではそれなりの意味はあろうと存じます。
  332. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 もちろん人間は損得で動くわけですけれども、お互いに国と国が信頼がない場合は、損と知りつつエスカレートしていかなくちゃいかぬ。そういう意味で、やはり核兵器あるいは軍備をつくるためにお金をつぎ込むということは、もちろん一部の軍需産業にとっては得かもしれませんけれども、国としてはこれは大きな損失ですから、そういう意味でやはり損なことはお互いにやめようじゃないかと、こういう立場に立てば人間はその利害が一致するわけですからね。まあそういう意味で、いま申し上げた提案は、意味があるということじゃなしに、もうちょっと、やっぱり外務省というのは評論家じゃないわけですから、もっとこれを推進をしていく外交当局ですから、もっと日本政府としても積極的に取り組んでもらいたいと、このことを要望しておきます。  それから、これも先ほどいろいろ出た問題ではありますけれども、いわゆる非核地帯構想と申しますか、ラテンアメリカにおける核兵器の禁止に関する条約があるわけですから、そういう点からアジア・太平洋地帯でこういう条約締結してはどうかと。これは先般の本会議でも問題になりましたし、先ほども各委員から出された意見でありますが、それに対して実効性の点が問題があるということを一つ言われたと思うんですが、実効性ということは、実現性が余りないんじゃないか、あるいはそういうものができてもソ連が守らなきゃ何にもならないじゃないかと、どっちの意味なんですか、外務大臣が実効性がないと言われたのは。
  333. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ある意味で両方のことを含めて申し上げたっもりでございまして、つまり、現実に必要とされる条件が具備するであろうかということの問題と、一つの約束ができましたときにそれが守られるであろうか。守られるであろうためにはやはり検証をしていかなければなりません。事実核兵器が置いてないなら置いてないということを何かの方法で確かめることが必要でございますけれども、そのような検証が可能であろうかというような、その辺のことを全部実は含めまして実効性という言葉で申し上げました。
  334. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それからもう一つは、いわゆる空とか海とか、そういう条約できると結局核兵器を持った船とか飛行機が通れなくなる、そうなると核抑止力の点において困るんじゃないかと、こういうような発言をされたと思うんですけど、これはどういうことなんですか。
  335. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは私は別に詰めて考えました結果を申し上げたほどの意味ではなかったんでございますけれども、先ほど田委員からお話がございましたから、問題を少し考えて具体化していきますときに、公海公空というようなものをどういうふうに考えるべきか。つまりアジア地域といいますと非常に大きな部分が海でございますから、そこをどう考えるべきか。わが国の非核三原則は、わが領土、領空、領海について言っておりますけれども、公海においてはわが国としてはむろん何も言っておりませんし、したがって、核兵器が存在していると考える方がおそらく自然でございましょうと思います、海上あるいは海中、それから空中でございますか。そうなりますと、そういう状況を、もし非核地帯を非常に厳密に公海公空まで考えて考えるとしますと、そういう状況というのは非常に大きく変わるとしなければなりません。それがどのような影響を与えるだろうかというようなことは少し検討をしてみる必要があるであろうというような意味で申し上げました。
  336. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、もしこういうアジア・太平洋地帯に非核地帯というものをつくって、まあそこには、その国は核の製造とか実験、あるいはまた貯蔵とか配備とか、そういうものを本当に禁止をするという、そういう多国間条約をつくった場合に、本当に困るのはどこだろうかと、そういうことを考えるときに、恐らくASEAN諸国はそういう考えには賛成じゃないか。また、たしかオーストラリアとかあるいはニュージーランドもそういう非核地帯構想には賛成である。中国も恐らく問題はないんじゃないか。そうすると、あと韓国等はやっぱりそこに核があるわけですから、そういう点で問題、反対するかもしれませんし、また、核抑止力という点から考えるならば日本もやっぱり困るんじゃないか、日本は核抑止力、核のかさにいま入っておるわけですからね。そういう問題はありますけれども、やはりそれに乗り出していくことが大事じゃないか。いろいろなそういう問題もあるでしょう。確かにこのラテンアメリカにおける条約においてはソ連がまだ入っておりませんし、アメリカも、核の貯蔵はしないけれども核の通過という件については留保しているわけですね。そういう意味で一遍にはいかないわけですけれども、そういうようにやっていけばやっぱり国際世論というものをバックにして一つ一つ前進していくんじゃないか。そうして、いまラテンアメリカにおけるこの条約わが国外務委員会においても論議されるように、また、アジア・太平洋地帯においてそういう条約というものができるならば、日本が中心になってやるならば、そういうことがまた各国外務委員会においても論議をされ、それがわが国の核問題についての非核三原則の姿勢というものをPRしていくんじゃないかと思うんです。そういう意味で、もうちょっと積極的にやはり外務省として取り組むべきじゃないか。その姿勢がちょっと乏しいように思うんですけれども、何かこういうものをわが国として進めちゃ困る問題がほかにありますか。
  337. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ある意味では、わが国は全く正真正銘の非核地帯でございますから、わが国が一番いわば実践をしておるわけでありまして、言いやすい立場であることは事実でございますけれども、現在の米ソの核のバランスでございますね、それは全世界的な規模でバランスしておると思いますし、ことに、潜水艦の持っておる長距離の核兵器というものが相当世界に広く配備され移動しておると思うわけでございますけれども、その辺のことはちょっと専門的で私には十分、ほとんど知識が正直を言ってございませんが、そういったようなことから考えていきますと、太平洋非核地帯というようなものを公海にも及ぼすということになってまいりますと、米ソの核のバランスというものはどうなるであろうか。私どもはその核のバランスというのを大変理想的な状態だとは思っておりませんけれども、これが崩れて核戦争になるよりはまだまだましだと思っておりますものですから、そういうことも考みないといけないのではないか。ですから、その非核地帯という理想は政治的な目標として私ども決して忘れてはならぬことだと思いますけれども、それが現実にどのようなバランスの変化をもたらすかということにも現実の問題としては一遍考えておきませんと、どのような構想が可能であるかということがなかなかわかってこないといったような意味で、ちょっと気のつきました問題点を一、二実は申し上げてみたというだけのことでございます。
  338. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 われわれも、もちろんラテンアメリカアジアあるいは太平洋地域とはいろいろな点で条件が異なるわけですから、向こうでできたものがそのままわが国に当てはまるとは考えませんけれども、しかし、そういう問題があるからといって第一歩を進めなければ何にも前進はないわけで、まず第一歩を進めていくこと、そういう中からいろいろ出てきた問題を検討し、また軌道修正もしていくべきじゃないか。そういう点で、政府としてもこのラテンアメリカにおけるこれも参考として、または、より一歩前進したアジア・太平洋非核地帯をつくると、この趣旨は非常にいいんじゃないかと思うんですね。この趣旨は異存ないと思うんですけれども、それに第一歩を進めて、その中で、いま言ったような現実の問題として、力のバランス、核のバランスという点について問題があればまたそのときに検討していけばいいわけでありまして、いまから第一歩を歩む前からあれもこれもと心配しておったんではいかぬのでして、この第一歩をひとつ外務省としては踏み出してもらいたい。そして、そういう立場で、こういう問題こういう問題があるということをまた世論にも問い、一歩一歩前進していけるんじゃないかと。そういう意味で積極的に第一歩を踏み出してもらいたい、これを強く要望したいんですけれども、その点はどうでしょうか。
  339. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだっても本会議でも申し上げましたように、政治的な一つの将来の構想としては、われわれやはり頭に置いておくべきことであって、それに近づけるような条件整備をしていくということが大事だというふうに考えるわけでございます。
  340. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これはすでに本会議でも問題になったことかもしれませんけれども、シュレジンジャー米国防長官が、朝鮮での米軍が核を先制使用することがあり得ると、こういうようなことを発言したことがあったわけですけれども、われわれは、核防条約において核を持たない国が核兵器を持つことを禁じておきながら、一方において核を持っている国がその核によって他国に脅威を与えると、シュレジンジャーとしては、これは本当に使う気持ちはなくても抑止力として言ったのかもしれませんけれども、そういう姿勢というものは非常によろしくない。この点についてどう考えるかということと、もう大分期間はたっているわけですけれども、こういう問題について米国の首脳にそういうようなことを、抗議を申し入れたのかどうか。あるいは話題に出して日本の考えを伝えたことがあるのかどうか。その点はどうなんですか。
  341. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あの場合には、朝鮮の南北間が緊張した時期でございましたから、塩出委員があるいはと言われましたような、私は、一種の抑止力としてああいうことを言ったのであろうと、まずそれに間違いないと考えますのは、その後、しばらくしましてからそのような状態はなくなりつつあるというようなことをまた言っておりますから、一種の抑止的な意味で、警告的な意味で言ったのであろうということを当時答弁を申し上げております。いまもそう考えておりまして、あの場合でございますと、これを何といいますか、威嚇と考えるよりは誤解誤算に基づく戦争というものを避ける、避けたいという気持ちから、そういう意味では、何と申しますか、建設的な意味で言ったのであろうと思っております。
  342. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ、外務大臣としては、この程度のことは言うことは差し支えないと考えているんですか。
  343. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いつ、どのような状況において言っても差し支えないとは私は思っておりませんで、あの場合には特定の目的を持って言ったのであろうと、その目的そのものの本質は建設的なものであったというふうに考えています。
  344. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 外務大臣は非常に善意に解釈されていますけれども、しかし、日本人たちが新聞で見た限りの印象は決してそういうものではないと思うのですね。そういう意味で、私はやっぱり日米が友好国であるならばなおさらのこと、こういうことについては米国当局としても十分やはり配慮をすべきであって、軽々しくそういう核を先制使用するなんていうことは言うべきでないと、それぐらいのことは機会があったらぼくは言っておくべきじゃないかと思うのですね。われわれも機会があれば言おうと思ってもなかなか機会がないから、外務大臣の方がそういう機会が多いわけですから、そういうことは当然やはり言っておくべきじゃないかと思うのですけれども、その点どうですか。
  345. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう問題になりますと、わが国の国民の国民感情あるいは政府の方針、考え方というものとアメリカのそれとはやはり非常に違っておるということはどうしても前提として認めなければならないと思います。それはいまの段階では核兵器を持って、いわゆる力の立場から世界の平和を維持するしか方法がないと考えておる国民と、そういうことについて少なくとも自分はそういうことはしないんだということを宣言し、実行している国民とがやはり持っております考え方、感じ方が非常に私は違っておるんだと思います。ですから、私どもは終局的に核兵器というものは廃絶してしまえということは声を大きくして申さなければならぬし、申していいことでありますけれども、具体的にあのような場合に朝鮮半島で紛争がもし誤算によって起こるならばこれは非常に不幸なことだと考えて、それに警告を発したということ自身はそれなりの建設的な意味があったであろう。まあ私はあとしばらくしてから、ああいうことは何遍も言わない方がいいですよという意味のことは実は申しましたけれども、しかし、一遍あのときにああいう警告を発するということで紛争を防いだということでは、意図としては私は非難をしなければならないとは思いません。
  346. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わが国の非核三原則の問題につきまして、先ほどからこれを立法化するというような意見もあったわけですけれどもね。先般米国とスペインとの友好協力条約のことは発表になったわけですが、いままでやはりわれわれの認識している範囲では、米国が核があるとかないとか、そういうことをはっきり言わないのが核の抑止力になるんだと、こういうような説明を聞いてきたわけです。ところが、今回のこのスペインとの友好協力条約あるいはまた中南米、ラテンアメリカ条約でも核の通過ということは留保すると、あるいはまた朝鮮での核保有ということも明言をしているわけですけれども、そういう意味で、特に今回のスペインとの友好協力条約によっていままでの政府の考え方、われわれに説明してきたものの基盤が崩れたのではないか、これはどう考えていますか。
  347. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、実はアメリカにも照会をあの後に私どもいたしておるんでございますけれども、基本的に核について有無を言わないという政策には変わりがない。時として、アメリカあるいはアメリカ世界に持っております責任ですか、そういうことから言うことが無害である、あるいは場合によっては多少役に立つかもしれない、抑止力としての核の立場から、のときには申すこともあるというようなことを言っておりまして、スペインの場合もいろいろ事情は推察できますけれども、別に陸上になくてもいいし、貯蔵はなくてもいいし、ないということを申したところで、それ以外のことを何も言っておりませんから、まず差し支えなかろうという判断であったようでございます。ヨーロッパに戦術核がある、あるいはドイツ、韓国にもあるというようなことは時として申しておりますが、これはやはり言った方がと言いますか、言うことによって抑止力としての効果を減殺しない、あるいは場合によって、ひょっとして増加するというような場合に言っておるのではないかと思いますので、基本的に世界全体を相手にして有無ということを一つ一つ言うということはしないという政策は、法律の規定でもございますけれども、依然としてあるようでございます。
  348. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど糸山委員からもいろいろ質問がありましたように、日本の非核三原則については、特に核通過の問題については率直に言って国民の疑惑というものは非常にあるわけですね。そういう点で、われわれはやはり国と国との約束でございますから、また、日本は非核三原則をとると、米国政府はこのわが国の政策を尊重すると、そういうことだけでは非常に国民の疑惑があるわけですから、当然交換公文のような形ではっきりと非核三原則をアメリカは尊重するということを公の文書としてちゃんとやってはどうか、こういうことをいままで論議されてきたわけです。けれども、先ほどのお話ではそういうものを立法化するということは法律になじまないという、あるいはまたそういうことは必要ないんだ、信頼関係があるんだからと、そういうようないろいろな理由が言われているわけですけれども、もし日本がそういうことを要望すれば、アメリカとしてはそれはいいでしょうと応ずるのかどうか、こういう交渉はしたことがあるのですか。
  349. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、もとから申せば安保条約第六条の交換公文による事前協議の事項になっておるということは、これは日米両国間の明快な了解でございますし、しばしば歴代の大統領、現在のフォード大統領に至りますまで日本のそういう考え方を尊重すると言っておるわけでございますから、私はこれ以上のことはないのではなかろうかというふうに思っておりますのと、この法律化しろというのはまたもう一つ別個の問題であろうと思いますので、法律をつくることによってよその国を拘束するというわけにはまいりませんから、それはむしろわれわれの意思を法律という形で具現しておくか、あるいは総理大臣の言明、あるいは国会の決議ということで具現しておくかということの違いだけであろう。そうして国の政策を宣明するのであるから、それは法律といったものにはむしろなじまずに、行政府の長の責任のある言明、あるいは立法府の決議といったようなものが本来のやり方ではないかというふうに私は思っておるわけでございます。
  350. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま二つのことが一緒になっちゃったわけですけれども、非核三原則を立法化しろという、それは結局私はやはり本条約批准を契機として、わが国姿勢というものを全世界にPRしていくことが理想に近づく一歩でもあるんじゃないかと思うのです。この間の本会議では、三木さんは、この条約の批准をすることがPRになるんだと、しかし、この条約に入るということは、核の持ち込みというものまで禁止していないわけです。しかも、わが国では非核三原則は私たちしょっちゅう聞いていますけれども、本当に国際的に認識されているかというと、そういう点はないと思うんですね。というのは、この核防の批准がおくれたから日本は核兵器つくるんじゃないかとか、こういうことは私たち日本人の立場から見れば、世界に誇る平和憲法を持ち、これほど平和を愛する国民が核兵器つくるんじゃないかなんということをいま心配しているということは、この一事を見ても、やっぱり東洋の日本というものは、本当の非核政策というものも国際的にどこまで認識されているかと、こういうことは非常に疑問があると思うんです。そういう意味で、私は、先ほど田委員が提示されました質問状を出すことも一つ方法であると思いますし、また、今回の核防批准に当たって内閣の声明でもいいと思うんですけれども、わが国は非核三原則をあくまでも守っていくんだ、核の持ち込みまで禁止しているんだと、こういうことを全世界に、関係国に公式に伝える、これは方法はいろいろあると思うんですけれども、こういう考えはないかどうか。
  351. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、わが国の非核体制というものは世界には非常によく知れわたっておると思っておりまして、それでありますがゆえに、その日本が批准しないのはなぜなのであろうか、こういうふうな疑問を出されているんだと思うんでございます。つまり、非核体制というものはかねて知っておる、それならばもう真っ先に批准しそうなもんだが、しないのは、非核体制そのものが実は本当なのだろうかどうだろうかというようなことになりかねないということなのであって、非核体制そのものは、私はよく世界に知られておるというふうに思いますので、このたび批准をすることができましたら、さらにこれが名実ともに国際的な約束にもなって、本当であったということに印象づけることができると思うんでございます。
  352. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 その点はちょっと私たちの意見とは異なるわけですけれども、これはまあこれ以上論議も、時間もございませんので次に進みたいと思います。  もう一点、これも先ほど出ておった問題ですが、いわゆる海洋法会議における国際海峡の問題、これはやはり政府としては、海洋法会議において国際海峡の問題がはっきり一つの結論が出るまでは十二海里の宣言はしない、そういうふうに判断をしていいわけですか。
  353. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、海洋法会議の議長が参加国に対して、会議で議論になっておることのうちで都合のいいものだけを先取りするというようなことは差し控えてほしい、何となれば一括決定ということを考えているからということをしばしば言っておられまして、わが国としてはそれを尊重をしてまいっておるわけであります。それならば、海洋法会議がいつまでたってもまとまらなければ、いつまでも日本は十二海里ということをやらないのかというお尋ねがかつて国会でございまして、それに対しまして三木総理大臣は、まあまあ年内というようなことが一つのめどではないかと思うということを答弁をしておられます。私どもは、したがって、八月からの会議で実体がまとまるようであれば、まず大体私どもの見通しておったこととそんなに狂いはないと思うわけでありますが、もう全くそういうことにならずに、海洋法会議は当分成立の見込みがないというようなことになってしまいましたら、問題は別途に考えなければならないということになろうと思います。
  354. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど国際海峡の問題について、まあシーレーンの考えとか、そういうものが決まれば、わが国もその海洋法会議の結論というものを尊重していかなければならないのは当然だと思うのですけれども、ただ、わが国の主張としてどういう主張をしてきているのか、その点が実はわれわれも明確にわからないわけで、もちろん、わが国がこういう主張をしたからといって、これは多数で決まるわけですから、余り実現性のない主張をするのもどうかと思いますけれども、しかし、やっぱり国際会議においてわが国の主張をまずすると、それが通らなければ、だんだんそこで話し合いをして妥協していけばいいわけであって、私はこの国際海峡の問題については、非核三原則を守るわが国としては、より自由な国際海峡の通航というものは主張をしても、あくまでもやはり非核三原則は守らなければいけない、こういうことは私は主張すべきじゃないかと思いますけれども、その点どうなんですか。国際海峡についてのわが国としてはこう持っていきたいというものはないのかどうか、それがはっきりはしていないのじゃないかと思います。
  355. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 百数十国の会議でございますから、非核三原則というようなことを申しましても、実はこれは一国だけであって、わが国だけの考え方、主義でございますから、そのこと自身にたくさんの同調が得られるということはやはりむずかしいことでありまして、むしろ船の種類によって自由度を分けようというのであれば、大型タンカーの方がはるかに危ない、迷惑であるという意見の方が、これは相当そういう国がございますから、そのような実は情勢でございます。
  356. 立木洋

    ○立木洋君 質問に入ります前に、一言述べておきたいと思いますが、先ほど糸山委員が質問されたときに、核の通過が明らかになったら大変なことになるという趣旨の質問をされたときに、日本共産党はそればっかりやっているからというふうな発言がありました。私は、当外務委員会で核通過の問題、大臣御承知のように何回かやりました。これはこの問題が重要だから私はやったわけです。また、共産党はそればっかりやっているわけではもちろんありません。そういう実際に照らしても、私は不当な発言ではないかと思います。そういう意味で、そういう中傷的な発言はいただけないということだけを一言申し述べておきたいと思います。  それでは質問いたします。何回か大臣言われておりますからあれですが、まあ核の保有国をこれ以上広げない、そういうことを目的とした条約ということをもう何回か言われました。しかし、考えてみますと、この核防条約の批准の問題と関連して、いわゆる核の問題についての日本政府態度がどうなのかという、核の問題全般に関してですね。それから安保条約との関連でどうなのか、それから核保有国の態度の問題は一体どうなのか、それから核軍縮、核兵器の全廃という展望との関連で一体どうなのか、それから世界の平和と安全という問題をわれわれが考えた場合にどうなのか、幾つかの問題で重要な問題が私はあるというふうに思うわけですね。  それで最初にお伺いいたしたいのは、大臣も認められておりますように、事実上核保有国が存在し、一方には非核保有国があると、そういう意味では、核保有国をこれ以上広げないという点だけですから、不平等な点もあるというふうなことも認めておられる。しかし、この不平等な状態、事実上核独占という状態が一方の国で存在しているということが長期続けば一体どうなるのか。この問題はいわゆる核の力というのは大変な力がありますし、また、核兵器を保有しておる国々が国際情勢に及ぼす影響というのも大変な大きな作用があるわけですから、こういう不平等な状態が長く続くということは、日本の将来にとって一体どうなのか、この点をまず最初にお伺いしたい。
  357. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国の将来にとりましては、核軍縮が徹底的に進みまして、核兵器というものが廃絶されるという状態が最も好ましい状態であることは言を待ちません。それに至らざる間、現在のような状態でございますが、決して大変に結構な状態だと私は思っているわけではございませんが、この核兵器がだんだん使えなくなってきておるということ、これは一つは国際世論の圧力ということでありましょうが、もう一つは、いわゆるセカンド・ストライク・ケーパビリティーを消してしまうほどの完璧な第一撃というものを開発し得ないと、ますますし得なくなると思いますが、そういう意味で抑止力として働くがゆえに使えないという状態が進んでおりますことは、もちろん理想よりはるかに遠い状態でございますけれども、戦争の危険を少なくしつつあるというふうに思っております。
  358. 立木洋

    ○立木洋君 核軍縮の問題についても、当然現状はわれわれが考える立場から言うならばまだ十分だとは考えられない、しかし、青天井よりもましであろうという趣旨のお話も何回かあったと思うんですが、実際にこの第六条との関連で言いますならば、国際管理のもとにおける全面的かつ完全な軍備縮少とする条約を誠実に交渉することを約束するということになっているわけです。実際にはこの状態というのは事実上進行していないというふうに見ざるを得ないだろうと私たちは思っているわけです。先ほどのお話もありましたように、表現はそのとおりであったかどうかはわかりませんが、核大国がそれぞれの核戦略の配慮から、あるいはいろいろなそれぞれの立場から交渉が事実上順調に進まないというふうなこともあり得るというふうなことも述られると思うんですけれども、核大国、核を所有しておる大国自身の交渉によって核の軍縮が順調に進むというふうに見通しをお考えになっておられるのかどうなのか、その点はいかがでしょう。
  359. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはいまの米ソの力から見まして、アメリカに対しあるいはソ連に対して有効な圧力を加えられる国というのは力の面ではないわけでありまして、いわば道徳的な世論の圧力ということになっていくと思いますが、それは私は存在することは認めます。それは大事なことだと思っておりますが、しかし、これはなかなか決め手にはなりにくいわけでございますから、米ソおのおのに核軍縮をすることによる利益というものが感じられなければなかなか進展はむずかしい。そのような利己的な動機はあるかないかといえば、やはりおのおのがもう何十倍ものオーバーキルになっていることは認めている。したがって、これから先のことは相手さえやめればこっちもやめても差しつかえないということもわかっている。それにもかかわらず、やむにやまれずにやるということになると非常な財政負担になるということがわかっているといったようなことから、利己的な動機というものがある程度米ソ両側に存在しているというふうに思っております。
  360. 立木洋

    ○立木洋君 そういうふうに言われますけれども、たとえば一九七二年のSALTの第一段階のときにはABM制限条約ですか、このときには二百基までというふうに取り決めがなされて、当時の状態でいいますと、アメリカの場合ではABMがゼロ、ソ連が六十四基あった。だから相当高いところで決められているわけです。しかし、これだけを見れば、大臣が言われたように青天井よりも一定の限界はつくったということ自体は見えるかもしれない。しかし、さっき丸山防衛局長も言われましたけれども、いろいろと新型の核兵器がどんどんつくられていくわけですね。これがいわゆる制限された青天井以外の分野でどんどん開発された。第二次SALTの場合でも、事実上問題になっているのは巡航ミサイルだとかバックファイアだとかいうふうな問題があって、これを制限の条約の中に入れるかどうかということで大変な問題になっている。今度その巡航ミサイルとバックファイアだけで問題が終わるかといったら、新しく開発されている。そうして戦略的に見て古い兵器はある意味では制限がかけられるかもしれないけれども、どんどん開発されていくという状態が現実に続いている。そうすると、これは核軍縮につながるどころか、事態はとまっているわけじゃないわけですから、どんどん新しい兵器が開発されていくわけですから、事実上核軍拡が進んでおる。そうすると、核防条約がつくられて今日の時点までたって、事実上核軍縮の一歩になるどころか、どんどん核軍拡が続いている。だからこれを核軍縮の第一歩だというふうに評価するのは私は妥当な評価ではないだろう。どんどんつくられていくわけですし、そういう新しく開発された核大国というのが依然として独占的に存在する。核を持っていない国というのは依然として存在する。こういう不平等状態が続くということを、核の全廃という観点から見るとこれは重大な問題だと思うんです。そういうふうな新しい兵器が開発されていくということも見越して、なおかつ、これが核軍縮の一歩になり得るというふうに考えられるのか。それとも先ほど言われたように、経済上の問題その他の関連からそうならざるを得ないだろうと言われるのか。アメリカの議論なんかを見てみますと、核の優位はソ連が優位になった、これは大変だというふうな問題までアメリカ国内で起こっているわけです。私は、なかなかそういうふうに核大国のあり方というのは安易に考えるわけにはいかない。この問題は非常に重要な問題ではないかと思うんですが、どのようにお考えになっておられるか。
  361. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、法律ができますとすぐ法をくぐるという脱法が考えられますように、SALTでこういうことを決めますと、今度はそれにさわらないようなものを考える。クルーズミサイルとかバックファイアとかいうものがそういう性格を持っておると思いますけれでも、しかし、そうするとまたこれはいかぬではないか、これをひとつ協定の中に入れなければいかぬではないかというようなことがSALT第二段のいま一つの問題に私なっておるんだと思いますが、それは人類の知識知恵でございますから、いろんなことを次々考えるだろうということは、私そういうこともあろうかと思いますが、まあしかし、それにもある意味で限度がありまして、だんだんそうすれば法律の範囲、ここで申せば協定の範囲を広げていって脱法を防いでいくということ、現に行われているのがそういう交渉でございますけれども、そうなるのであって、だから初めから協定をすることが無意味だということまで極論しなくてもいいのではないだろうか。もともと米ソがお互いにとことん相手を信頼しておればこういう核兵器競争というものは起こらぬわけでございますから、もとにはそういう相手に対する疑いがあるのでありますから、すぐにそれが全部とまってしまうということを期待するのは無理かもしれません。やはり主だったものをだんだん網をかけていくということ、それしかどうも有効な方法はないのではなかろうかと私思いますが。
  362. 立木洋

    ○立木洋君 私のお尋ねしたいことに対する答弁にはなっていないように私は思うんですが、実際、できたものから網をかけていくと、しかし、網をくぐってまた新しいものがつくられていく、だから事実上核軍拡というのはどんどん進んでいくんですよ。そして、われわれがいま想像する以上に危険な核兵器がつくられていくんですよ。いまわれわれが想像できない大変な核兵器がつくられていく。これは国際世界に及ぼす平和や安全の問題、それから強いて言うならば私たちの日本の平和と安全の問題についても重大な問題がある。この問題に関しては、私は最近、非核保有国であります非同盟諸国の方々といろいろ話し合う機会があったわけですけれども、昨年の五月の再検討会議がやられましたときに、非同盟諸国、メキシコなんかが中心になって十八ヵ国ですかが提案をした。  その一つは、いわゆる核軍縮を忠実に実行してほしいという問題、いろいろ段階を唱えたようでありますけれども、これはこの核防条約の第六条に関しての問題です。それからもう一つは、非核保有国に対しては核の使用をすべきではない、あるいは核による脅迫を行うべきではないということも主張された。これは前文に関する、国連憲章を引用しての部分ですね。「武力による威嚇又は武力の行使を、」云々と述べているわけですから、当然核の不使用という問題も入るわけですね。そういう問題をメキシコなど十八ヵ国が提案をした。この提案をしたことは、私は全く妥当な提案だろうと思うんですけれども、大臣はいまの時点で考えてみて、この提案についてどういうふうなお考えをお持ちですか、ちょっと伺いたいと思います。
  363. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 昨年の再検討会議で非同盟諸国が提案いたしましたいわゆる追加議定書のお話だろうと思いますけれども、その第三追加議定書案が、核を置いていない非核兵器国に対する核による威嚇あるいは核兵器の使用を行わないという趣旨の規定がありまして、ある意味ではこれは例の一九六六年に行われましたコスイギンの提案の系統を引くような考え方であろうと思います。ところが、この問題がジュネーブの再検討会議におきまして議論されましたけれども、第一に、米ソがこれに非常に消極的な態度をとったということで、非核兵器の非同盟諸国は非常にがんばったんでございますけれども、結局物にならないで葬られてしまったといういきさつのある提案でございます。
  364. 立木洋

    ○立木洋君 それで、日本政府としての考え方、
  365. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 日本政府は、御承知のとおりこの会議には核防の加盟国ということではなくて、いわばオブザーバーということで出席いたしましたので、具体的に表決に加わったりしてこれに態度を表明することはできなかったんでありますけれども、とにかく非核兵器国の安全保障を少しでもはっきりさせるために、できるだけ有効な措置をとる必要があるんだという見地から、いろいろ会議の内外で意見を表明したわけです。そして、各国間の対立している見解が統一されて、コンセンサスのような形で何らかの新しい保障が実現することを期待したわけでございますけれども、残念ながらそういうことで実現しなかったということでございます。
  366. 立木洋

    ○立木洋君 ですから大臣、こういう非同盟十八ヵ国の提案、いま申し上げた二つの内容について、これは大臣お考えになっても不当な要求だとは考えないわけでしょう。いわゆる核軍縮を忠実にやってほしいということと、核の使用あるいは威嚇をやるべきではないという要望は不当な要求であるというふうにはお考えにならないだろうと思うんですが。
  367. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのこと自身は別に不当ということではなくって、ただ米ソとも、まあ一番の御本尊の両国が同調しないというようなことでは実効性がございませんから、何とかみんなが同調できるような内容を表現できないものかということで奔走したということでございます。
  368. 立木洋

    ○立木洋君 いまのお話でも明らかだと思うんですけれども、いわゆる第六条にも誠実に交渉を行うと、核軍縮の問題に関してもですね。それから前文でも威嚇や武力の行使を行うべきではないという、国連憲章まで引用して述べられている。しかし、事実上核大国というのはこのことすら実際に守るということを明確にすることについては、これは条約そのものの変更であるとかいろいろな議論を出して、事実上それをあいまいにしてしまう。だから、核大国自身に核軍縮の交渉を任しておいてうまくいかないだろうと、先ほど言ったことを蒸し返しはしませんけれども。こういう点から考えてみると、この問題は核を保有している国々、つまり核を独占しておる国々にとってきわめて有利であって、いわゆる不平等性というものをますます助長させるという重大な問題点を持っておると言わざるを得ないと思うんですよ。  それで、大臣御承知だろうと思いますけれども、一九七三年の第四回非同盟首脳会議が開かれまして、そこで決議がなされておるわけですね。その一項目の中に、この非同盟首脳会議のことですが、会議は全面完全軍縮なかんずく核兵器の使用禁止並びに核兵器とその運搬手段の製造禁止、現存する貯蔵兵器の一切の破壊、大気圏内外及び世界のあらゆる地域での核兵器実験の禁止に賛意を表明するものである、こういう決議が第四回非同盟首脳会議でなされているわけです。ですから、いまこの核防条約の再検討会議が五年たって行われて、そしてその時点で非同盟諸国が核軍縮を忠実にもっとやってほしいと、使用や威嚇はやめてほしいという要求をしたけれども、核大国によってこれが踏みにじられた。ですから、非同盟諸国の人々の話を聞いてみますと、この問題に対しては大変な不満と不信を持っているんです。核大国に任しておいては核軍縮はうまくいかないと、そして核防条約にわれわれ参加したけれども、実際五年間たってみて再検討したけれども、しかしわれわれの要求は踏みにじられた、われわれは核防に参加するということによってだまされたと、極端な人々はそういう発言までするわけです。これは私は重要な問題だと思うんですよ。  いわゆる五間年たった時点で、現実に核防条約で述べられている第六条や前文の問題に関して、これは核兵器保有国をそれ以上をふやさないんだということだけだと言いますけれども、しかし、この内容になっている問題が核大国として忠実に守られていないということは、いわゆる非核保有国である非同盟諸国にとっては大変な不満なんです。もちろん、私は非同盟諸国参加しておる八十数ヵ国すべてがそういう意見を持っているかどうかということを確かめたわけではありませんから、そこまでは私は申しませんけれども、しかし、非同盟諸国の主な国々、いわゆる核を持っていない国々が、自分たちの安全がどうなるのか、本当に核兵器がなくなっていくというステップになり得るのかどうなのかという点で大変不満と不信を持っている。こういう事実が、検討会議以降出てきている国際情勢の新しい動きだと思うんですよ。こういう問題に関しては、大臣、いかがお考えですか。
  369. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この条約があり、しかも他方で第六条に定めておりますような条件がなかなか急速に具備されないといたしますと、立木委員の言われたように、これは米ソだけが有利になってしまうではないかということについて、そういうことを有利と呼ぶかどうか、私の言葉で言わしていただけば、核戦力に関する限り米ソの優位というものがますます際立ってくるというふうに表現させていただきたいと思うんですが、そういうことにそれはなってまいります。が、もとから申して核戦力についての米ソの優位というものは現実にかなり前からあって、これを凌駕しようという動きはなかなかその他の国からは出てこないのは現実だろうと思うんでありまして、わが国のような価値観念から言いますれば、別にそのことをうらやましいとも思わないし、だからだまされたと、その点ではわが国は恐らく感じない。と申します意味は、日本はどっちみち核武装をするつもりがございませんから、だまされたというような感じ方は、恐らくはわが国のような国よりは、自分の方も核兵器をやろうかやるまいか、そういう選択をいろいろ考えておって、この条約ができて六条のようなことがどんどん進行していけば、これは核兵器はやらぬ方がいいと思って加盟をした。ところが、なかなか六条のような話が進んでいかない、それだったら加盟をするんじゃなかった、幾つかの国のようにフリーハンドを持っておった方がよかったかもしれないというような国々の不平不満というものが私はあるであろうと思います。ですからわが国はそういう国とは多少立場が違う。米ソが大変に優位になろうと有利になろうと、わが国はだからと言ってどうということを考える国ではないわけだと思うんです。  ですが、それは少しよけいな議論でありまして、第六条に期待された核軍縮への動きは進んでもらわなければなりませんが、もう一つ申し上げたいのは、これは前にも申し上げたことですけれども、この条約だけで核軍縮、非核平和というものが招来されるわけではありませんで、このほかにも、いわゆる国連や軍縮委員会におけるところの軍縮の努力であるとか、いろんなことが世界平和のためにはやられなければならない、そのうちの特定の不拡散という限られた目的を持った限られた条約であって、それが世界平和のための幾つかの手だての一つである、これがすべてではないというふうに考えるのがやはり本当ではないかと思うんですか。
  370. 立木洋

    ○立木洋君 非同盟諸国の人々がフリーハンド論でこういうものに対する不満を持っているというふうな意味ではないので、それは第四回首脳会議の核兵器の全面禁止、一切の破壊ということをわざわざ読み上げたわけですから、そういう意味で、いわゆる非同盟諸国の人々が不満を持っているということではないわけです。しかし、これだけで核軍縮にならないというふうな趣旨のお話ですけれども、それは一つであると、これ以上保有国をふやさないという意味でのいわゆる軍縮だという意味ですが、しかし、実際にそういう不平等性を認めてしまい、そして一方での核の独占、新たな開発を事実上認めてしまうということのもたらす重大性ということは私はやはり存在するだろう。そういう問題に対する不満あるいは不信というのは、これは人間の考え方として私は正当だろうと思うんです。非同盟諸国の人々が考えている考え方というのは、いわゆるフリーハンド論という意味ではなくって。  それで、この一つの動きとしてやはり出てきておりますのは、昨年の国連総会で、大臣御承知でしょうが、軍縮に関する国連の役割りを再検討することを目的とするアドホック委員会が設置された。これは御承知のように非同盟諸国なんかも提案の側に入ってアドホック委員会を設置して、そして国連で軍縮の問題をどういう役割りを果たすのか検討し直すべきである、そういう目的で出された委員会です。これはそういう意向の一つの反映だと思うんです。国連の舞台でもこの問題をもっと検討すべきだと、いわゆるジュネーブの軍縮委員会だけではなしに、国連のもとでそれをやるべきであるという一つの提案だろう。それは先ほど言った不満や不平のあらわれ方で、彼ら自身がみずから参加しておる国連の場でこれを取り上げてもっとやるべきだと、大国間の交渉に任せるとかいうふうなことではなしにという意味だと思うんですね。もちろん日本はこういうアドホック委員会の設置に関しては賛成された。  私は、それでお尋ねしたいんですが、賛成された理由と言えば、これはもう御答弁は決まってしまうだろうと思うんですが、いわゆる軍縮に関する国連の役割りを再検討することを目的とするアドホック委員会に日本参加して一体どういう役割りを果たそうとされるのか、その点を少しお聞きしておきたいと思います。設置されることを賛成されたわけですから、当然日本政府としては参加したからには何かをと、こう考えておられるだろうと思うんです。
  371. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) おっしゃいますとおり、日本はアドホック委員会の設置の決議案に賛成いたしました。この委員会の作業は現実にことしの一月から始まりまして、第一回、ことしの一月にニューヨークで短い会期がありまして、米英仏ソを含む六十ヵ国ほどが参加して討議を始めております。ことしの五月の、今月の実は初めまでに、軍縮の分野における国連の役割りについて各国がそれぞれどういうふうな意見を持っているかということを書き物にして国連の事務総長に提出することになっております。日本は現在ちょっとおくれておりますけれども、各国とも大分おくれておりますけれども、国連の事務総長に提出する文書の準備をいま最終的に詰めておる段階でございます。まだ最終的にでき上がっておりませんけれども、それに日本の考え方を盛り込んで提出する所存でございます。
  372. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ、日本の考え方は、その提出する文書に盛り込んで提案をするということですね。  もう一つのやはり最近の新しい動きとして考えられる問題というのは、ことしの三月にジュネーブの軍縮委員会が開かれました。ここでも大変大きな問題が問題になったと思うんです。これはジュネーブ軍縮委員会の前の構成が、非同盟諸国などの要望によって、いわゆる東側が八ヵ国、西側が八ヵ国、それから非同盟中立国が十五ヵ国、合計三十一ヵ国というふうに構成が変わったわけですね。ところが実際にその後、いわゆる米ソが共同議長国になっておって、特定の権限を持っておるわけですよ、共同議長国というのは。それで、米ソの利益にかなわない議案というのは、事実上ジュネーブ軍縮委員会ではなかなか取り上げられない。だから、そういうふうな形ではなしに、もっと核を持っていない国々の要求や意見も取り上げてジュネーブ軍縮委員会で論議すべきではないかと。そういう意味では、いわゆる米ソ共同議長国の特定の権限を取るという表現をしたかどうかはわかりませんけれども、いずれにしろそういう問題がもっと民主的に論議できるように改組をすべきであるという提案がなされたわけですね。ところが、これも事実上核大国の反対によって抑え込められた。実際にはそうならなかった。この問題も、一つはいわゆるジュネーブ軍縮委員会が実際に核軍縮につながっていくような場にすべきであるという非核保有国の要望の強い反映がこういう形で私は出てきているだろうと見ることができると思うんです。しかし、それが事実上核大国のいわゆる圧力によってうまいぐあいになっていない。これは大変な激論をやったと言って一般の新聞紙上にも何回か報道されました。これも私は大変な問題だと思うんですね。だから、こういう問題を考えてみて、いわゆる核軍縮に対する核大国の態度という問題をもっと直えみる必要があると思う。いまの状態のままで手をこまねいておるということは、事実上この核防条約というのは核軍縮にはつながらない。それどころか、重大な不平等性を持ったこういうものを肯定することは、かえって危険な要因すらやはりはらんでおるというふうに、これは私たちの考え方ですが、それは大臣はそうではないと言われるかもしれませんけれども、しかし、少なくともこういう核大国に対する不満といいますか、不信といいますか、それからもっと積極的に核軍縮をやるべきである、核の使用や威嚇をやめるべきである、こういう要望、動き、今度のジュネーブ軍縮委員会にあらわれたような動きについて、大臣はどのようにお考えでしょう。
  373. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 結局それは、米ソに対していわゆるモラルパースエージョンを他の世界国々が一緒になってどういうふうにかけられるか。それはどうすればいいかということのやはり私は一つの試みであろうと思います。立木委員のおっしゃっていらっしゃることは、私よくお気持ちとしてわかるんですが、米ソが共同戦線を張っておれたちはそういう話はいやだといってしまいますと、そんな話ならもう出てしまうといってしまえば、これは実際上有効に米ソを二つ相手にこうするああするということはなかなか容易なことでございませんから、やはりそういう話の中へとめておいて、そしてモラルパースエージョンをかけていくということが一番有効なんではないだろうかと思いますですね。
  374. 立木洋

    ○立木洋君 米ソにしても、国際的に孤立するということを大変恐れているんですよ。やはり自分たちの勢力圏ということを非常に大事にしておる。われわれそういうことを肯定しませんけれども、大事にしておる。孤立するということをきわめて恐れておるんですね。それがある意味ではその反動として出てきている動きなんです。だから、彼らが孤立してそんなら飛び出しますなんというようなことを簡単に言えるような状況に米ソ自身も置かれてないんです。そういうふうに考えるならば別の考え方がなされるだろう。ことしの八月、御承知のように非同盟首脳会議の第五回会議がコロンボで開かれます。ここでも、いま言ったように昨年五月以降の、再検討会議以降の非同盟諸国の核軍縮等々の問題に関する不満というのが大変高まってきていますから、八月に開かれる非同盟首脳会議では核の問題というのは一つの重要な議題になるということがいますでに報道されております。そしてまた、ことしの国連の会議でも、なかんずく核軍縮の問題が問題になるだろう、軍縮問題全般とあわせてですね。ということももちろん問題になるでしょうし、しかし、事実上核の軍縮の問題を国連総会で取り上げるということについて、いわゆる大国間での抵抗があるというふうなことも新聞ではいろいろ出されておる。非同盟諸国というのはもう八十数ヵ国になっているわけですね。世界はいま正確には百四十幾つですか、正確に私記憶しておりませんけれども。しかし、この国際舞台における八十数ヵ国の要望というのはなかなか国際的な情勢を判断する場合に無視できない要因だと思うんです。この声を見ないで、いわゆる大国間の方向ばかりを見て核の問題についての日本政府態度を決めるというのは、やはり正しい方向を見出すことにはならないだろう。先ほど言いましたように、こういう核を保有していない国々が何とかして核軍縮をさしていきたい、核を武器として脅迫やそれが使用されるということがないようなことにしていきたいと、こういう点では少なくとも日本政府が公の場で言われていることと私は一致していることだと思う。そうするならば、こういう非核保有国との話し合いにしろ、どういうふうにしていわゆる核の軍縮、さらには核の全廃という問題にまでいく道を探求するか。これはある非同盟諸国政府高官の話ですが、日本という国は最初に被爆をした世界でも特殊な国である。だからこの国が核問題で果たすべき特殊な役割りがあり得るだろうということを期待しておるということも私は聞きました。ですから私は、日本が言ってもなかなか大国がこうだから通らないということではなくて、国際的には新しいそういう動きもあるわけですから、核全廃の方向をもっと探求する、そういう非核保有国との話し合いだとか交渉なども通じながらそういう道を探求していくという努力は私は行ってしかるべきだろうというふうに思いますけれども、その点についてどのようにお考えになっていますか。
  375. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは私はおっしゃるとおりだと思います。昨年の五月の再検討会議のときのように、できれば米ソを含めたコンセンサスの決議をつくって米ソも拘束したいと考えたわけで、それでありますからこそ、非核保有国の間をいろいろ日本が奔走いたしまして一つのものをつくり上げようとしたわけですが、まあ他方で、あるいは立木委員の言われますように、もう米ソのことはほっておいて残ったものだけでひとつ決議をして、それでモラルパースエージョンをかけようという方法もそれは私はないとは申しませんです。相当な圧力になりますでしょう、確かに。両方ともいわゆる自分の有好国からあれこれ言われることは相当気にするわけでございますから。そういうことも私は一つの今後行き方として考えてもいいかもしれないと思います。できればしかし、やはり何とか一緒に決議案にコンセンサスで加わって、それに拘束されるようなことにした方が有効ではないかと昨年の五月には考えたわけでございますけれども、何もそういう方法ばかりがすべてだとは思わなくてもいいかもしれません。
  376. 立木洋

    ○立木洋君 私ももちろんその米ソをほったらかしてというふうなことを言っているわけではないわけであります。そういう非核保有国との意見の交流だとかいうふうなことが、より有意義な道を見出す一つのあり方ではないだろうかという考え方ですね。それは先ほど田委員も言われましたように、核保有国に対する先ほど述べられたような質問を出す、そしてそれに対して日本政府態度も明確に示し、いわゆる核大国については核大国についてとるべき立場をやはりもっと明確にしてもらうと、そういうふうなことももちろんあり得るわけですから、米ソをほったらかしてというふうな意味ではもちろんありません。だからそういうことも踏まえて、いわゆる核の全廃の道をもっと独自的にも、あるいは非核保有国の持っておる意見等々との交流を図りながら探求していくという努力をもっとやっていただきたいと、そういう意味ですね。  それでもう一つの点ですが、去年の六月五日、この外務委員会でいわゆる核の先制使用の問題について議論になりました。いま外務大臣が述べられたのは、当時朝鮮の問題に関して核先制使用をシュレジンジャー前国防長官が述べたことについて、これはそういう不幸な事態を引き起こさないような意味で建設的なものであったというふうに述べられたわけですね、いま。しかし、六月五日の議事録を見てみますと、「建設的」なんていう言葉は一言もございませんでした。そしてこのように書いてあるわけですね。「そのようなことを軽率に申してよいものではないというように私は思います、」と、これは大臣の。もう一ヵ所では、「もうアメリカも余り意気込んで、しこを踏むようなことは余りしてもらわなくてもいい、」こういうふうに言っている、いわゆる核先制使用の問題に関しては。いまは建設的だというふうに言い直された。これは私は理由があるだろうと思うんですよ。これは核先制使用の問題に関しては、あのときはシュレジンジャーだけでしたね、事実上言ったのは。そして、あれはベトナム後の朝鮮という問題があってのことだと思います。しかし、私が調べただけでも、その後この核先制使用というのは大変な回数発言されています、アメリカ政府首脳のあれを見ても。いまの時点に立って、これほど繰り返されておるという核先制使用、局地戦においても排除しないとまでキッシンジャー言っているわけですね。これはアンゴラ問題を想定してではないかというようなことを新聞で報道されておりましたけれども、しかし、こういう事態というのは、私はやはり大臣が前回、六月五日に言われたように、軽率にこういうことは申すべきでないというようにいまでも言っていただきたいんですが、どうでしょうか。
  377. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 結局アメリカとしては、核の抑止力というものを常に有効に保っておきたいという気持がございますから、威嚇といえば威嚇ととれないことは確かにございませんけれども、やはりその抑止力を生かしておきたいという意味で、時に応じてそういうことを言う。私、別にそれに賛成だと言っているわけでもありませんけれども、意図はそういうところであろうというふうに思うわけでございますね。そういう御答弁したのを私実は覚えておりますんですが、余り何度もそういうことを言うと、これは文字どおり一種の威嚇になってしまうので、しょっちゅう、しょっちゅう言うべきことではないという気持は私持っておりますけれども、あのサイゴン陥落の後かなりの南北間の緊張があったときに、一度ぐらいそういうことを言って誤算のないようにと考えてやったことは、結果としては、その結果とも言えないかもしれませんけれども、事実それ以上緊張が進むことがなかったのでありますから、それなりに評価はできるという程度の意味で先ほど申し上げたので、要は、余り繰り返して申しますとこれはやっぱり一種の威嚇になりますですから、本当に必要なときに誤算を生じないために、そうして抑止力としての意味合いを持たせるために時として言うことがあるということは、賛成をするとは申しませんけれども、そういうふうに解釈しておくべきなのではないかと思います。
  378. 立木洋

    ○立木洋君 何回も繰り返して言えば威嚇になると、そういうふうにいま言われましたけれども、その御答弁は大変大切な点だと私は思います。これはアメリカだけが事実言っているんではなくて、西ドイツのレーバー国防相も言っているわけですね。NATOの一国に対して攻撃を受けた場合に、西側が核の先制攻撃をかけるとの決意を抱くべきであるということを西ドイツの国防相も述べております。しかも、この核先制使用ということは、その都度繰り返し繰り返し述べれば威嚇になるということだけではなくて、これは三月二十五日、アメリカの上院外交国防安全保障小委員会では、核先制使用を放棄せずということはアメリカ政府の統一見解だというふうにまで言われている。これは私は大変な問題だと思うんですよ。いま大臣は、何回も繰り返して言えば威嚇になるし、できるだけ言わない方がいいけれども、時と場合によっては言っても仕方がないみたいなニュアンスですが、しかし、もし仮に、特定の国の名前を私は挙げませんけれども、ある国が日本という国を限定して核を先制使用するぞと言われた場合に、日本政府はどうします。
  379. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) アメリカがときどきそういうことを申します一番恐らく頭の中心に常時ありますのは、日本やなんかのことではなくて、ヨーロッパの情勢だと思っております。つまりソ連から地続きでございますから、どうしても通常兵器では、NATO側は何と申しましたってそれは地の利は悪いわけでございますから、それで西ドイツに戦術核を置いておるというようなことも明らかにするし、場合によってはこれを使わなければならないかもしれないという発言がときどきあるのだと思いますし、ドイツがまたそうあるべきであると言っておりますのも、通常兵器では万一の場合にNATOというのはいわゆるワルシャワ体制に比べて不利である。ですから通常兵器と核兵器との総合においてバランスがとれておる。したがって、事と次第によっては核兵器、戦術核を使わなければならぬかもしれぬということがドイツの人なんかからも出てきますのは私そういう意味だろうと思うので、全体として別にいいことだと思っておるわけじゃございませんが、ヨーロッパにおいては私はそういう考慮というのがアメリカにもあるし、またアメリカの同盟、安全保障関係にある諸国にも国益の問題としてそれを望む声があるんではないかというふうに思うんでございますが……。
  380. 立木洋

    ○立木洋君 好ましいことではないというふうなお話ですけれども、なかなかそういう言い方、事実上そういう核脅迫を受けた国自身にとってみれば大変なことになるだろうと思うんですよ。いわゆる核の先制使用、たとえば朝鮮などという特定の国を想定して、そういう事態が起これば核を使うぞというふうな脅迫を受けた国にとっては私は大変なことだろうと思いますよ。アメリカ日本に対して核を使うぞなんていうようなことは言うはずはないだろうと大臣はお考えでしょうけれども、たとえばほかの国が日本に対して核を使うぞと、何かの事態のときに。そういう脅迫を受けると、これはその国自身にとって重大な問題だろうと思います。それは政府だけではなくて国民全体にとって。これは事実上核が持っている大変な威力、また核をそういうふうに独占しておる大国等々のそういう圧力というのは、有形無形大変なものだろうということを考えると、この問題は先ほど来述べられておりますけれども、やはりそういうことは言うべきではない。少なくともこういうふうにアメリカが言っていること自身がこの核防条約で述べられておる前文の慎しむべきであるということから見ても私は違反している。現実にそれが守られていない。そうすればそうするほど、世界各国における不満というのは増大していくわけだし、実際上そのことがいろんな不幸な事態を招かないとも限らないことも想定するならば、やはりこういうふうなことは言うべきではないということは、当然日本政府としては何らかの形で明らかにすべきではないだろうかと思いますね、これは先ほど田委員も言われましたけれども。そういう点についてもう一度お答えいただきたいと思います。
  381. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは日本のような国に対しましてそういうことを申しましたら、これは明らかにアンフェアであるし、威嚇であって、それはそういうことを申しますことは徹底的に私は非難されるべきであろうと思います。それから北鮮のような国に対して何にもないときにそんなことを言うことも、これも私はどうも非難されるべきだろうと思いますですが、たまたま昨年のようなある誤解が生じるかもしれないといったような瞬間において言ったことについては、理解すべき事情もあるだろうという程度に私は思います。  しかし、ヨーロッパにおきまして、これはNATO体制の立場からアメリカが言うといたしますと、これはもう言っている相手は明らかに小国に言っているのでないので、恐らくはもうワルシャワ体制の中心に向かって言っているのでございますから、これはお互いにおどかされる間柄でもありませんし、百も御承知の上の両方の関係でございましょうから、これについてはまだ私は多少評価が違うだろうと思います。
  382. 立木洋

    ○立木洋君 どうも時と条件によってはその核威嚇を擁護するという核威嚇護論者のような答弁に聞きますけれども、そういうふうに解釈していいですか。
  383. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いえいえ、先ほど申しましたような、いわゆるNATO体制の持っております一つの対ソとの地理的な宿命みたいなものがございますから、NATOの構成国の中ですらそういうことを言うべきだと言う国があるぐらいなんで、それはそれらの国々が自分の国益に徴して判断をすべきことでありまして、仮にアメリカがソ連に対して核の先制使用があるかもしれないぞと言ったところで、おどされる相手でもありませんから、これは特に威嚇的なことだというふうに考えなくてもいいのではないかなと。私、結構なことだと申しておるわけじゃございませんけれども、ドイツなんかもむしろそういう防衛体制を希望しておるのであれば、NATOの一員としてのアメリカがそういうことを時として申すということも、まあ理解ができないわけではないという程度のことでございます。
  384. 立木洋

    ○立木洋君 どうもだんだん大臣答弁が歯切れが悪くなるわけですがね。先ほど十八ヵ国の問題を出したのは、私はこの問題と関連した意味でお聞きしたので、やっぱり核を使うべきではない、威嚇をすべきではない、それはそんな不当な要求ではなくて当然のことであるというお話でした。ところが、事アメリカのことになってくるとだんだん歯切れが悪くなって、ある場合には何か威嚇してもいいみたいなようなふうに聞こえるような答弁にだんだんなってくる。私はこれは意味があると思うのです。やはりこれはこの核防条約にもあれされておりますように、これとの関連した国連の安全保障理事会ですか、で採択されたいわゆる核のかさの肯定ですね。事実上日本アメリカの核のかさに入っておるということからやはり生まれてくる歯切れの悪さだろうと私は思うのですよ。  それで政府のお話によりますと、アメリカの核のかさによって現在の時点では日本が守られるというふうにならないと困るということですね。ですから、事実上そういう核の威嚇にしても、ある場合にはそれが建設的だというふうにも見えますし、大臣が先ほど言われたような建設的だというふうに言えるし、ある場合にはまた軽率だというふうな発言にもなりますし、好ましくないともいうふうな発言にもなるかと思えば、ある場合にはやむを得ないというふうな発言にもなるということは、やはり事実上日本アメリカの核のかさに入っておるということから出てくる論理の矛盾だろうと思うのですよ、先ほど来の御答弁を聞いていますと。  ですから、実際にはいわゆる不平等な核拡散防止条約に加わる、そして核大国による独占の状態を事実上容認して、そして核独占の大国によるその核のかさに入ることによってみずからが守られるということを肯定する論理というのは、実際には核の脅迫、場合によっては核の使用ということも認めることがあり得るという論理につながる可能性を私は持っている。そうしないと核のかさに入るということにはならないわけですから。ですから、私は重大な矛盾がそこにあるだろうと思うのですよ。その点についてはいかがお考えですか。
  385. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこのところを一緒にしていただきますと困りますのは、私はアメリカだから甘いことを言うというつもりではありませんで、そういうことを言っていけない場合、あるいは場合によっては言うことが必要かもしれないような瞬間、あるいはまた、言っても別段差し支えないと思う相手、それは態様によって違いまして、現にドイツのように戦術核兵器を置いてほしいというふうに考えている国があるわけでございますね。そうしますと、そこへ置く以上は、これを先に使うことがあるかもしれないということは論理的に出てくるわけでございますから、しかも、そういうことによってソ連を威嚇することになるかというと、これはなかなかそんなことで威嚇される国ではございませんから、その言う相手にもよりますでしょう、言う局面にもよりますし、言っていることの真意にも、私は意図にもよると思いますので、別にアメリカだからその辺をしんしゃくをして言っているという意味ではございません。  それからもう一つ次のお尋ねは、日本が核のかさに入っているということについてでございますけれども、これはそれとの関連で、安全保障条約との関連でアメリカ日本のために核を先んじて先制的に使うという必要があるとは私は思いませんです。恐らく核のかさに入っていることの意味と言えば、もし日本に核攻撃を加える国があれば、日本において核戦争が起こるというよりは、そのような意図を持った国に対して直接にアメリカは核で報復することがありますよという意味での抑止力でございますから、その性格から言いますと、当然それは第一撃であるはずはなくって、そのようなことに対する報復の用意はありますよという意味での――それか抑止力でございますから、先制使用というものを日米安保体制が前提にしておるというふうには私は思いませんです。
  386. 立木洋

    ○立木洋君 これもっと議論をしたいわけですが、もう時間がないので、最後に、先ほど来問題になっておりました海洋法会議での問題をちょっとお尋ねしたいのですが、改定草案の全文を私はまだ読んでいませんから、これは新聞報道によってお尋ねするので正確でない点があるかもしれません。改定草案全文が入手されたならばぜひ見せていただきたいといって外務省の方にもお願いしてあるわけですが、まだ入っていないようでありますから読んでいないわけですが、新聞の報道によって見ますと、事実上できる限り自由な航行を確保する、国際海峡においての、ということですね。「国際海峡の通航に関しては通過通航の考えを入れ、できる限り自由な通航を確保する。」というふうに述べられている。ところが、その後の方を見ますと、「沿岸国は、領海内にシーレーンを設定し、タンカー、原子力船、核積載船に対し、特定のシーレーンを通航するよう要求できる。」というふうな表現のように新聞の報道では見ているわけです。そうすると、自由な航行ということを基本にしながら、いわゆる特定のシーレーンをつくるというのは、沿岸国が要求できるという表現になると、沿岸国自身が特定のシーレーンを設ける、そういう権利を認めるという意味に解釈していいのですか。海洋法会議の条項では特定にその問題を決めないが、一応原則的には自由航行というふうにするけれども、いわゆる特定のシーレーンをつくるのは、沿岸国の権利として要求することができるという認め方をするのかどうか、解釈の仕方なんですが。
  387. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) お答え申し上げます。  先般終わりました海洋法会議の会期の一番最後に、その前にありました非公式単一草案の改訂版が配付されたわけでございます。実は、私も十分に全文をよく網羅して研究したわけではないのでございますが、いまお尋ねのシーレーンにつきましては、基本的にこの前の非公式単一草案と変わらない規定を設けておりまして、要するに国際航行に使用される海峡、いわゆる国際海峡においては妨げられない通過通航を保障しなければいけないということで条文ができ上がっているわけでございますが、その際に、沿岸国はシーレーン及び航行分離帯のようなものを国際機関に提案して、国際機関というのは実体的にはロンドンにありますIMCO、政府間海事機構のようなもの、海運に関する国際機構を考えているわけだろうと思いますが、そういうところに提案して、そして航行の安全という意味から技術的にきちんとしたものを、何と申しますか、要するに恣意的につくったようなものじゃなくて、航行の安全確保の観点から間違いのないシーレーンなるものを設定して、船舶がそこを通るということにすることができる、こういう意味であろうと理解しております。
  388. 立木洋

    ○立木洋君 私の聞いたことについてのお答えになっていないんですよ。つまり、海洋法会議で明確に先ほど問題にされましたように、こういう国際海峡にはこれだけの幅のシーレーンを設けるべきだというふうにきちんと海洋法会議で出されるのではなくて、一般的に言えができる限り自由な航行を認めるべきだという原則を確立して、シーレーンをどういうふうにつくるかというのはそれぞれの国の権限として要求することができることを保障する、認めるというふうな表現になる。そうしたら、問題は日本政府として、そのシーレーンをつくるかつくらないかということが問題になるわけですよ。いわゆる海洋法会議でこれだけつくりますというふうにならない、そういうふうに私は解釈したわけです。新聞報道で見て、必ずしもそういうふうに原文がなっているかどうかわかりませんが、そういうふうにした場合に、日本政府はそういうシーレーンをつくるのかつくらないのかということをお尋ねしたい。
  389. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 私の説明が十分明快でなかったかもしれませんが、私が申し上げました趣旨は、要するにいまのようないわゆる国際海峡においては、船舶が妨げられないで通過できるようにしなければならないということになっておりまして、したがいまして、国際海峡にはそういう船舶の通航制度が保障されるようにならなければならない。その妨げられないような通過通航を保障するための具体的なやり方として、シーレーンを設けてやることができる、こういうことでございます。したがいまして、沿岸国がそのような国際海峡に他国の船舶が通過する場合に特定のシーレーンを設けて、そしてそれで通れということにすることができる。ただ、その場合にその沿岸国が全く恣意的に自分の勝手に線を引くとかいうようなことではなくて、それが客観的にと申しますか、きちんとしたものでなければいけないという意味で、国際機関に諮って、その承認と申しますか、を得て、そういうシーレーンを設けるということになっております。  お尋ねの、わが国がそういうものをやるかどうかという点につきましては、先ほど来大臣からも御答弁ありますように、海洋法自体がまだ最終的に成立していない状況なわけで、これができまして、そのような具体的に海洋法で定めますような国際海峡をわが国が持ちます場合に、具体的にそのようなシーレーンを持つべきであるかどうかということが実際上問題になる。わが国の検討が、実際上そういうものを設けるか設けないかというところにまではまだいっていない。いまは、問題はそのような国際海峡における自由な通航制度がどうあるべきか、ほかの主要な問題とのパッケージで成立するか否かというところにあるわけでございます。
  390. 立木洋

    ○立木洋君 最後に、きょう核の軍縮の問題と核の先制使用の問題に限っていまお尋ねしたわけです。だけど、どうも私がお尋ねをしたんだけれども宮澤外務大臣答弁は明確さを欠いておられるように私は思いまして、まだ十分に納得できない点があります。先ほど言いましたように、問題はたくさんありますから、今後引き続いてお尋ねして政府の考え方を明確にしていきたいというふうに考えております。きょうはもう時間がありませんのでこれで終わります。
  391. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 大分時間も経過しておりますので、簡潔に二、三の点についてお尋ねをしたいと思います。  まず第一に、保障措置協定についてお伺いをしたいと思いますが、日本は形式的にも実質的にもユーラトム並みになったと言われておりますけれども、この点はそれに相違ないのかどうか、もしユーラトムと違う点があるとするならばどこがどう違うのか、この際御答弁をいただきたいと思います。
  392. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 科学技術庁の半澤審議官の方から。
  393. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 実質的にユーラトム並みになってございまして、ユーラトムと変わっておる点はないというふうに私どもは理解いたしております。
  394. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 そうしますと、今後国際原子力機関による日本に対する査察はユーラトム並みに制限できるわけですね。その場合、引き続いてお尋ねしますけれども、査察の場所とか回数とか具体的な点はどうですか。
  395. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 御指摘のとおりでございまして、わが国に対する査察の程度、態様はいずれもユーラトムと同様になるわけでございます。  お尋ねの第二点でございますが、その程度、態様が具体的にどうなるかという点につきましては、実はユーラトム自身が現在IAEAと交渉中でございましてまだ固まっておりません。そのやり方、ルールなり方法――ルールズ・アンド・メソッズと言っておりますが、そういうことを決めますルールとか方法につきまして、ユーラトムと全く同じ方式をとることについてはIAEAとの間に了解は得ております。
  396. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ヨーロッパの場合は西独、イギリス、オランダで原子力の共同開発をやっております。ところが、イギリスは核保有国でありますからこの査察の義務づけは行われていないわけです。こういう場合には査察のしり抜けというようなことになる恐れはないか、この点はどうですか。
  397. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) イギリス、ドイツ、オランダの三国共同の濃縮計画協定によりますと、これは平和的な目的に使うことが協定上決められてございます。  なお、ドイツの技術でつくりますものにつきましてはこれはオランダに置く。イギリスがイギリスの技術でつくりますものについてはイギリスに置くということで、ドイツの技術でつくりました濃縮工場が査察を免かれるということはないというふうに理解いたしております。  なお、イギリスはいわゆるボランタリーサブミッションで、自国内における施設でございましても平和の目的に供するものについてはIAEAの査察を受け入れるということで、現在IAEAとの間に交渉を行っている状況にございます。
  398. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 その場合のイギリスに対する査察というのは、非核保有国と大体同様のものですか。
  399. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 私どもが承知しております範囲では、平和的目的に供する施設に対する査察に対しましては、非核兵器国とほぼ同様の内容になるというように聞いております。
  400. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 アメリカも同様の査察を受けるという申し出をしておりますけれども、この場合どうですか。
  401. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) アメリカにつきましては、IAEAとの間の交渉は事実上終わっておるように承知いたしておりまして、その内容につきましては、非核兵器国が受ける査察と、その態様、内容において変わりがないというふうに聞いております。
  402. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この査察というものが核の平和利用を妨害することがないように、できるだけ簡略化するということが必要だと思いますけれども、そのためにはこの保障措置、査察の技術アップということが必要になると思うんです。これを日本も要求しておりまして、それによって原子力委員会や国際原子力機関に特別委員会が設置されることになったということを聞いておりますけれども、これの構成とか目的とか仕事、内容というものはどういうものですか。
  403. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 保障措置の技術諮問委員会は、昨年六月の国際原子力機関理事会でIAEAの事務局長の諮問機関として設置されております。わが国を含む十ヵ国、カナダ、西独、フランス、東独、インド、メキシコ、ソ連、英国、米国、それにわが国でございますが、十カ国の専門家によって構成されております。この委員会の任務は、IAEAが行います保障措置を技術的側面から検討あるいは評価をいたしまして、助言、勧告等を行うということとされておるわけでございます。
  404. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 日本が査察を受ける場合、ユーラトム並みになるといいましても、日本は自主査察の水準が非常に低いということが言われておるわけです。たとえば西独の場合は、西独の核武装を警戒してユーラトムが過去二十年積み上げてきた域内査察のレベルというものがあるわけですけれども、日本がこれに追いつくには早くて十年かかるだろう、こういうことも言われておるわけです。しかもユーラトムの査察技術研究費支出は二百億円以上、専門員は十五人と言われておりますけれども、日本のこの体制はどうなっておるのか。
  405. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 御指摘のように、ユーラトムと違いまして、日本は従来自主査察は行っておりませんから、御指摘のようなギャップはあるわけでございます。ただ、日本の場合には、過去やはり十数年にわたりましてIAEAの査察を受け入れておるわけでございまして、過去二年来、実は原子力安全局の中に保障措置室というのを設けておりまして、十二名の人員で査察官が八名おります。これは自主査察をしているわけではないのでございますけれども、IAEAが行います査察には必ず同行し、必ず立ち会ってまいってきております。したがいまして、IAEAが行います査察の実態、内容については、これらの査察官は熟知いたしてございまして、これから核兵器不拡散条約下の保障措置に移行するに当たりましては、必要な人員の増加、これは人員の増加は必要になると思いますが、その必要な増加につきましては、関係当局の実は了解を得てございます。さらに、予算的にも査察のための機器の整備であるとか、あるいは計量管理のデータを転換するための費用であるとか、あるいは分析に要する費用といった予算的の措置も実は講じておるわけでございまして、技術レベルが低いとは実は私ども考えておりません。  一つの証左になるかと思いますので例を申し上げますが、実は日本人の職員がこの国際原子力機関の査察員に出ておりますが、つい最近出た査察員の実態を聞いてみますと、ほぼ一ヵ月程度の研修で、国際査察員として十分その任務を果たしておるわけでございます。  さような例もございますので、技術レベルにおきましても新しい保障措置体制に移行するのに支障はないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  406. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、核保有国の核軍縮についてお伺いしたいと思いますが、先ほどから各委員からいろいろ質問されておりますので、重複を避けまして、一点だけお伺いしたいと思います。実際にSALTの交渉が行われておると言いながら、核軍縮は進んでおりません。核防条約成立時に比べて米ソとも核装備というものは増強されておるわけです。したがって、今後この核軍縮を具体的に進めるために、日本がどういう行動から起こしていくのか、この点について外務大臣にお伺いをしたいと思います。
  407. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先刻もちょっと申し上げましたが、やはりわが国としては、国連あるいは軍縮委員会等を通じまして、この条約に定められておることでもございますから、ことに米ソに対してわれわれの強い主張をするということが一つございます。  それから別途に、やはり核実験の問題につきまして、できるだけ早く全面実験禁止と、地下を含めまして、というところへ到達をすべく努力をする。その場合、わが国の探知技術等も提供をする用意があるということをつけ加えるということ。  それから平和目的と称する核爆発が、しばしばその名のもとに、必ずしも平和目的かどうかわからぬようなことに悪用されておるきらいがございますから、これについて、やはりしばらくの間は何かの規制をしていくというような、そういったような提案をしてまいりたいと思っております。
  408. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、濃縮ウランの安定確保の件についてお伺いをしますけれども、核防条約批准促進の一つの理由として、これを批准した方がウランの供給を受けやすい、こういう理由も挙げられておったと思いますけれども、本当にこれを批准した場合に、ウランの供給についてそれは確保できる保障があるのかどうか、アメリカ日本との間に協定があるわけですけれども、アメリカにおいても、アメリカの原子力委員会の政策に基づいてというのが大原則であります。したがって、万一その政策が変更されれば安定確保という面に支障を来すのではないか、この点はいかがですか。
  409. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) NPTに加盟することによって、いわゆるコマーシャルベースの核燃料、濃縮ウランを含めます核燃料物質の供給が保障されるという性格のものではないことは言うまでもございませんけれども、御案内のように、再検討会議等で見られますように、加盟国優先の考え方がかなり強く出てまいっておりますし、具体的にもそういう動きが見られないわけではないわけでございますので、このNPTに入ることに伴いまして、一般的な立場が安定化あるいは強化されるということは言い得るかと思います。  アメリカとの関係でございますが、アメリカの政策がどう変わるかというのは予測するわけにまいりませんけれども、日米原子力協定に基づきまして、ほぼ五千万キロワットに相当する濃縮ウランの供給契約が成立いたしてございますので、この面では私どもはあまり不安はないんではないかというふうに理解しておるわけでございます。
  410. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に、非核クラブのことについてお伺いをしたいと思いますが、核防条約は核の制限、抑制、国際管理への第一歩である、このように言われておりますけれども、しかし、基本的に核保有国と非核保有国との不平等性というものはあるわけです。特に、安全保障の面できわめて大きな格差というものができるわけで、やはり核保有国はその核という強大な軍事力を背景にして、国際的な場でも強大な発言力を持つ、当然こういうことになろうかと思います。そこで、この不平等性を少しでもなくすために、非核クラブの結成ということが論議されております。わが国としてこの点についてどう考えるのか、今後非核保有国の共同歩調、協力についてどのように取り組んでいくのか、この点について具体的なお考えがありましたらお伺いをしたいと思います。
  411. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実際問題といたしましては、昨年のレビュー会議のような場におきまして、非核国が中心になりましていろいろ最終宣言等々の起草にも大変な活躍をいたしました。同じ非核国としての立場からいたしたわけでございます。わが国はたまたままだこの条約に加盟をしておりませんからオブザーバーということであって、正規のメンバーとしての資格は持っていなかったわけでございますけれども、そういうことにはいろいろ奔走をいたしまして、事実わが国の主張がいろいろに取り入れられた経緯がございます。今後、正式に加盟国となりますと正規のメンバーでございますので、非核保有国の立場からお互いの間の意思の疎通も図り、意見の交換もさらに進めてまいりたい。加盟をいたしますとそれがきわめて容易になるわけでございますので、そういうことをいたしてまいりたいと思っております。
  412. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 本日はこれで終わります。
  413. 増原恵吉

    ○理事(増原恵吉君) 本件についての質疑は、本日はこの程度といたします。  これにて散会いたします。    午後九時十一分散会      ―――――・―――――