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国務大臣(
宮澤喜一君) ただいま、この間の
サンフアン会議におきまするいわゆる東西
経済関係についてのお尋ねでございましたので、多少この問題については一般に世上に、誤解とは申しませんけれども、理解が十分でない点があるように私思いますので、ちょっとその点から申し上げさせていただきたいと思います。
今度の
サンフアン会議で、東西
貿易というもの、東西の
経済関係というものはかなり議論になったわけでございますけれども、全体の基調として、東側との
経済関係を深くすることがわれわれにとって不利である、よくないことであって、それはどっちかと言えば制約、制限していった方がいいのだという空気であったかと申しますと、必ずしもそうでなかったというふうに私は実は感じておるわけでございます。ちょうどそのしばらく前に、東側に対するクレジットの条件について、西側が競ってこの条件を崩していくというようなことはおもしろくないではないかということから、ある程度の西側の間の了解ができたということがございましたがために、何となくその延長として東西
経済関係を締めていこうということが議論されたのではないかという、漠然とそういう印象があるようでございますけれども、どうも
会議そのものは必ずしもそういうものではなかったように思います。
会議参加国の中には、
経済関係を締めることによって東側の政治的な意図を左右しようということは、効果がないのみならず逆効果ではないかというような発言すらございましたし、また、ちょうどいまキッシンジャー国務長官のお話がございましたけれども、キッシンジャー氏自身も、この
サンフアン会議の直前にございましたOECDの
会議では、東西の
経済関係について一種の先入観を持たない
立場からの検討が必要ではないかという趣旨のことをかなり詳しく述べておるわけでございます。つまり、今日の
情勢において東側の国々が西側の国々と
経済関係をますますふやしていかなければならないというのが現状ではないだろうかというようなこと、あるいは東側にも相当の資源等々もあることであるしというようなことも述べておる部分もございますし、また他方で、しかし、東と西と
経済体制が全く違うときにどのような
協力関係が生まれ得るだろかというようなことも、そんな面でも言っておる点もございますが、結局OECDでキッシンジャーが提案いたしましたことは、政治というような
立場を離れて、これだけ
関係の深くなった東西間の
経済関係を今後どうすることがいいかと、メリットとデメリットはどういうことであるかということをOECDで検討してもらうことが最も適当ではないかと、純粋に
経済的な面へ問題を預けるというような発言をしておりまして、私の見ますところでは、キッシンジャー自身は東西の
経済関係を政治と確かに切り離して考えておるわけではございません。ある程度のリンケージを考えておりますけれども、しかし、それはたとえば
ソ連に対して最恵国待遇を与えるといったような提案をかつて議会にいたしまして、これは
アメリカの議会で御承知のように承認を得られなかったわけでございますけれども、しかし、その後小麦、穀物等の協定は結ばれておるというふうに、ある程度
経済関係を持つことの方がそうでない場合に比べて
アメリカとしてある程度のレバレージと申しますか、てこと申しますか、そういうこととして働き得るのではないであろうかという、少なくともそこまでは考えているように読まれます。
そうだといたしますと、このたびの
会議が全体として東西
関係の
経済関係を縮小させようというような雰囲気でなかったということは、私の
会議に出ておりました印象として申し上げても間違いでないように考えるわけでございます。
最後に、
わが国との
関連についてのお尋ねがございましたが、
わが国は
ソ連との
関連で二十億ドル程度のクレジットの約束をしておりますわけで、現在高は五億ドル内外であろうと思われますが、これは御指摘のように資源
関係を背景にしたものでございます。そのような
ソ連との投資
関係、
経済関係をここで方針を変えるという気持ちは政府としてございません。また、このたびの
サンフアン会議においても、
ソ連の債務返済能力についていろいろ議論がございましたけれども、それに疑いがある、心配をしなければならないというふうな見方ではありませんで、むしろいろいろな事情から
ソ連のクレジットスタンディングはかなり高いというふうに考えるべきではないかという
意見の方が多うございました。
したがいまして、あれこれ総合いたしますと、西側が援助条件と申しますか、金融条件をむやみに競争をして崩して低くしていくということは、これは
お互いに自粛しようではないかという申し合わせはございますものの、そのことは東との
経済関係を縮小していった方がいいということとはつながっていない。むしろ
会議の大体の雰囲気は、東側との
経済関係を縮小すべしということではなかったというふうに私は
判断をいたしております。したがいましてと申しますか、そのような経緯に照らしましても、
わが国が従来からやってまいりました政策を変更する必要はないというふうに
判断をいたします。