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1976-07-09 第77回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年七月九日(金曜日)    午前十一時十三分開会     —————————————    委員の異動  五月二十四日     辞任         補欠選任      安田 隆明君     稲嶺 一郎君  六月九日     辞任         補欠選任      向井 長年君     田渕 哲也君  六月二十一日     辞任         補欠選任      立木  洋君     渡辺  武君  七月二日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     立木  洋君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 久興君                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 稲嶺 一郎君                 木内 四郎君                 亘  四郎君                 田中寿美子君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 吉田忠三郎君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 田渕 哲也君    国務大臣        外 務 大 臣  宮澤 喜一君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局参        事官       中村 安雄君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        法務省刑事局公        安課長      石山  陽君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局外務参事官   浅尾新一郎君        外務省欧亜局外        務参事官     木内 昭胤君        外務省条約局長  中島敏次郎君        水産庁沿岸漁業        課長       平井 義徳君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (サンフアンにおける主要国首脳会議に関する  件)  (派遣報告に関する件)  (日本近海におけるソ連海空軍情報収集活動  に関する件)  (日米防衛協力小委員会に関する件)  (北方領土問題に関する件)  (漁船拿捕事件に関する件)  (統一ベトナムに関する件)  (金大中事件に関する件)     —————————————
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査を議題といたします。  まず、サンフアンにおける主要国首脳会議について外務大臣から報告を聴取いたします。宮澤外務大臣
  3. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 委員長のお指図によりまして、先般サンフアンにおきまして開かれました主要国首脳会議に関する報告を申し上げます。  六月二十七、二十八の両日プエルトリコサンフアンで行われました今次の首脳会議は、日、米、仏、西独、英、伊及びカナダの首脳が昨年十一月のランブイエ会議以降の世界経済情勢の推移を回顧し、今後とも各国が一層協力して世界経済の抱える諸問題を解決していくため、その基礎を強固なものとすることを意図いたしまして、フォード米国大統領の招請のもとに開かれたものであります。  同会議では、民主主義を守り自由経済維持発展を図るという昨年のランブイエ会議におきまして示されましたランブイエ精神が、その後各分野において着実に成果となってあらわれていることが確認され、この精神を引き続き守り育てていくことが重要であるとの共通認識を得ましたことは、このたびの会議の大きな成果であったと考えます。  今回の会議においても、各国経済がますます相互依存関係を深めつつあるという背景のもとに、現在回復過程にございます世界経済がインフレの再燃を避けながら、その成長を持続していくためにいかにして各国が協調していくかについて率直に討議がございました。この点で、各国経済回復についてランブイエで表明した決意が予想以上に成果をおさめつつあることを確認いたしますとともに、今後の課題として、この回復過程にある主要国経済を安定的かつ持続的な拡大へと移行させるための効果的な管理を行っていくことに合意を見た次第でございます。  また、開発途上国との関係につきましても、先般の国連貿易開発会議ナイロビ総会における成果を踏まえまして、南北間の幅広い経済問題を解決するため、対話と協調の精神をもって引き続き努力を積み重ねていかなければならないことについて合意を見ました。  通貨金融問題につきましては、この問題の比重は、前回ランブイエ会議に比べますと、今回は大きくはございませんでしたが、ランブイエ以降結実いたしました国際通貨制度面の進歩を踏まえつつ、協力体制の一層の改善をうたっております。他方、最近における不安定な欧州通貨情勢の動向にかんがみ、通貨安定の基礎をなす経済金融情勢の安定の必要を説いております。また、各国が適正な国内及び対外的政策を通して、より安定的永続的な国際収支構造を目指して努力する意向を確認いたしております。また、国内経済不安と深刻な国際収支問題を抱える若干の先進工業国の諸問題につきましてその解決のため一層検討することにつきお互い協力しようということに合意をいたしました。  なおまた、貿易との関連為替相場への恣意的な介入は回避をすべきであるということも合意をいたしております。  このような、プエルトリコ首脳会議では、世界経済の運営についてともに大きな責任を有する主要国首脳が再び胸襟を開いて世界経済の直面する諸問題を取り上げ、共通問題意識相互信頼のもとにこれら問題に取り組む政治的決意を示し、このために国際協力を行うことの重要性を確認しあいましたこと及び首脳間のお互い信頼感親近感がますます深まったことが大きな成果であったと考えております。  首脳間のレベルでこのような会合を持ちますことは、一つには、最近の趨勢として、景気、保護貿易問題を含む国際経済問題が、たとえば失業、所得政策等各国内の政治社会情勢と密接に関係をしておりまして、その解決には最高の政治判断と指導を要するという事実、また、国際経済情勢が悪化いたしました後で事態に対処するよりは、事前に密接な協議をしつつそのような悪化を防止することが効果的であることは申すまでもないことでございますから、そのような意味から見ましても、このような会合、会談は今後ますます重要性を持つものと思われるのであります。その観点から、三木総理大臣は、将来もし本件首脳会議を再び開く必要が生じた場合には、わが国がそのホスト国となる用意がある旨を今回の会議で明らかにいたした次第でございます。  以上がサンファンにおける主要国首脳会議に関する報告でございます。
  4. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) どうもありがとうございました。     —————————————
  5. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、先般本委員会が行いました国際海峡問題、北方領土問題等に関する調査につきまして派遣委員から報告を聴取いたします。亀井久興君。
  6. 亀井久興

    亀井久興君 本委員会高橋雄之助委員長戸叶武理事吉田忠三郎委員塩出啓典委員渡辺武委員及び私の六名は、去る六月二十三日から二十七日までの五日間にわたって北海道を訪問し、国際海峡問題、北方領土問題等調査してまいりました。  現地におきましては、まず、国際海峡問題につきまして、航空自衛隊第二航空団千歳基地海上保安庁函館保安部海上自衛隊函館基地隊より説明を聴取するとともに、海上保安庁のヘリコプターに搭乗して、約一時間にわたり津軽海峡を視察いたしました。  次いで、北方領土問題等につきまして、札幌市、根室市及び羅臼町においてそれぞれの当局者並び関係団体等から意見要望を聴取するとともに、海上保安庁巡視船「いしかり」に乗船して国後島の西岸三海里まで接近し、同島の山並みや海岸線、まばらに建っている家屋や監視塔などを指呼の間に展望いたしました。  今回の調査において、現地関係者から寄せられた意見要望の幾つかを申し上げますと、第一は、言うまでもなく北方領土復帰早期実現についてであります。現地におきましては、歯舞群島色丹島国後島及び択捉島の四島復帰基本線とした粘り強い対ソ外交交渉を念願する一方、国内においては、国論の統一国民世論の喚起に一層努力されたい旨の要望がありました。特に、沖繩復帰時に比べて盛り上がりを欠いている国民世論を喚起するためにも、外務大臣現地視察を望む声が非常に大きく、来たる八月三十日に札幌市において開催される北方領土返還要求東北北海道国民大会にぜひ外務大臣出席を仰ぎ、その機会に納沙布岬に立っていただきたいとの強い要望がありましたことを申し添えておきます。  第二は、北方海域における安全操業についてであります。北方領土問題が未解決であるため、ソ連側に拿捕されるわが国漁船は後を絶たず、昭和二十一年以来今日までの拿捕総数は千五百十一隻、一万二千六百十名に達しているのであります。このような不幸な事件をなくすため、目下政府間交渉が継続されているのでありますが、人道的見地からも速やかに安全操業実現されるよう図られたい旨の要望がありました。同時に、現地漁業関係者としては、最近の海洋法に関する成り行きを深刻に受けとめていることが強く感じられました。すなわち、領海十二海里、経済水域二百海里の世界的趨勢はやむを得ないとしても、これが国際的に確立されたならば、北方海域の漁場はますます狭隘となってしまうことに対する危惧であります。かかる観点から、安全操業早期実現とともに、現有漁業権益の確保が強く訴えられたのであります。  第三は、北方地域における旧漁業権補償についてであります。本土の旧漁業権は、昭和二十五年に制定された新漁業法に基づき国による買い上げ補償が行われたわけでありますが、北方地域における合計千四百五十五件の旧漁業権につきましては、当時わが国行政権が同地域に及んでいなかったことを理由に補償対象からはずされ、今日に至っているのであります。したがって、公平の見地から、本土と同じく財産権補償観点からの旧漁業権補償早期実施されるようにとの要望が出されたのであります。  第四は、北方地域墓参についてであります。本年も歯舞群島及び色丹島への墓参実現したことについて、現地関係者、特に旧島民はこれを心から喜ぶとともに、明年以降も毎年継続して実現できるよう、また、昭和四十五年以来行われていない国後島及びまだ一度も実現を見ていない択捉島への墓参実現されるよう、従来にも増して努力されたい旨の要望がありました。  第五は、ソ連漁船団日本近海操業に伴い、わが国沿岸漁民との間に生じている事故の防止についてであります。かかる事故を防止し、事故が発生した場合の紛争の迅速かつ円滑な処理を図ることを目的として、さきに日ソ漁業操業協定が締結されたのでありますが、その後も漁具等の被害は後を絶たず、また、操業中のわが国漁船ソ連漁船に漁網をひっかけられた上、停止信号を送ったにもかかわらずそのまま引き回されるという事故などが頻発しているのであります。こうした日ソ漁業操業協定に違反する行為をやめさせるため、ソ連政府が厳重な措置をとるように、わが国政府として申し入れをされたいとの要請がありました。  このほか、北方地域の元居住者に対する援護対策の充実、北方海域で拿捕された漁船早期返還拿捕抑留漁船員等に対する援護措置改善、新海洋法実施に伴う海上保安体制拡充強化などについての要望がありましたが、詳細につきましては別途文書による報告を提出いたしますので、それを会議録に掲載してくださるよう、委員長においてお取り計らい願いたいと存じます。  以上で報告を終わります。
  7. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。  なお、ただいま派遣委員から御要望がございました別途提出報告書につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいいたします。     —————————————
  9. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、国際情勢等に関し質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 秦野章

    秦野章君 国際情勢の中で、最近日本を取り巻く言うならば日本周辺の問題で、ソ連艦艇演習をやるとか、あるいはまた、いままでにないような艦艇接近があるとか、測量が行われるとかいうようなことが新聞をにぎわしておるわけですが、なお加えて、ソ連太平洋艦隊極東方面増強ぶりもいま報道されておるわけですけれども、われわれが平和国家に徹するということのために十分に客観情勢認識するということが大事だと思うんですけれども、現実の客観的な情勢状況というものを知ることから、それに無関心であってはならない。そういう意味で、いろいろお伺いする前に、そのようなソ連演習とか測量艦とか情報収集艦とかといったような、近来頻度が非常に多くなっている、その状況についてまず最初に説明防衛庁から聞かしてもらいたい。
  11. 丸山昂

    説明員丸山昂君) 最近の日本周辺におきますソ連太平洋艦隊空軍の動き、こういった点につきまして御説明申し上げたいと思います。  太平洋艦隊潜水艦中心といたしまする約七百五十隻、トン数にいたしまして約百二十万トンを持っております。その司令部がございますのは御案内のようにウラジオストクでございますが、このほかカムチャツカ半島のペトロパウロフスク、それから沿海州にございますソビエツカヤガバニ、こういった主要な基地を使用いたしまして、近年その活発な行動が注目をされております。  最近になりまして特に活発になりましたのは情報収集艦活動でございまして、日本周辺地域におきまして、この五月以降、情報収集艦が六回ないし七回でございますか、非常に近接をした事案がございます。このうち典型的な事例を申し上げますと、五月の半ばでございますが、房総半島野島崎の南方二十七キロでございまして、ちょうどわが方の海上自衛艦が対潜訓練実施をしておったわけでございますが、これに大変近接をした、三キロ以内の地点まで参りまして訓練状況を見ておったというふうに判断をされるわけでございます。それから、同じく五月の下旬でございますが、若狭湾北方情報収集艦が参りまして、若狭湾の越前岬の西方約二十二キロの地点まで接近をいたしておるわけでございます。これは一たん対馬海峡へ参りまして、また六月の初旬に再び若狭湾北方に参っております。それから六月に入りまして、九州の平戸島十二キロ西方のところでございますが、これは測量艦でございます。これが参りまして、いかりをおろしまして、相当長時間にわたって測量実施をしておったというような事態があるわけでございます。最近、ヨーロッパから新型のミサイル搭載駆逐艦クリバック型、これは最新鋭の水上艦艇でございますが、これがウラジオ増強をされておるわけでございます。それから七月に入りましてから、現在ウラジオ艦隊の主力になっておりますクレスタ型、クレスタII型と申しますか、これはミサイル搭載の巡洋艦でございますが、これと、同じくミサイル搭載のカシン型、カニン型という二つの駆逐艦でございます。これに給油艦が随伴をいたしまして、対馬海峡を通りまして南下をいたしまして、それから沖繩の北の列島間の海峡を通りまして、沖繩東海域に出ております。ちょうどこれと符節をともにいたしまして長距離の爆撃機、TU95という航空機でございますが、これが東回りで六機、同じく対馬海峡を通りましてIL38、これは対潜哨戒機でございますが、これが六機参りまして、ただいま沖繩東方海域で主として対潜訓練実施しておるのではないかというふうに言われております。大変日本に近いところでございますので、私どもの方では沖繩のP2Jを飛ばしましてその動静を見ておる、こういう状況でございます。  大体こういう行動について、その意図が何であるかということでございますけれども、情報収集艦につきましては、わが国自衛隊装備をいたしますレーダーその他の性能についての調査測量というものを実施しておるのではなかろうか、比較的符節が合いますのは、新しい装備に切りかえたとき、そこに近接をして情報収集をしているという事例からいたしまして、大体そういうことではないかというふうに思います。そういう調査をすることによりまして、総合的にわが国自衛隊の防空、対潜、こういった面におきます能力の評価を判定をしておるのではないかというふうに推測をしております。  それから当然のことではございますが、米第七艦隊行動符節するように活発な活動実施をされておるわけでございます。アメリカに対する対応措置というものは日本周辺ばかりでございませんで、アメリカ基地でございますグアム、それからフィリピンにありますスービック、それからアメリカ大陸間弾道弾の試験を行いまして、その弾道弾着弾地になりますクェゼリンでございますが、それとハワイ、ミッドウエー、こういったところには終始固定の情報収集艦を張りつけに置いております。わが国の場合には、対馬海峡に大体常時この種の船が定着をしております。状況によりましては対馬海峡、宗谷海峡に張りつけになる場合もあるわけでございます。  それから、これもまあ当然のことだと思いますが、日本近海におきます潜水艦活動あるいは先方の対潜哨戒機活動のために必要な海洋調査、これが測量艦目的ではないかというふうに考えておるわけでございます。  以上でございます。
  12. 秦野章

    秦野章君 たまたま、きのう日米安保協議委員会が開かれたようでございますが、きのうの会合で、新聞では朝鮮半島情勢判断といいますか、これが討議されて、余り変化が旧来とはないような結論が出たというふうに出ていますけれども、いま防衛庁から説明があったような、そしてまたいろいろ報道されているような、日本海中心情勢というものについて、朝鮮半島が論じられてそっちの方が論じられないことはぼくはないだろうと思うんだけれども、安全保障条約のもとに日米共同協力というものが、結局平和の維持戦争抑止ということで、いまそれが日本安全保障一つの側面の条件になっているわけですけれども、きのうの会合安全保障立場からいまのような状況に対してどういうような判断情勢判断をなされたのか、外務大臣にお聞きしたいと思います。
  13. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの点につきましては、ソ連が世界的に海軍力増強というものをこの何軍か志しておるということ、そうして極東においてもそれは例外でない、ソ連太平洋艦隊増強の事実がかなり顕著であるという説明米側からもございました。  なお、この会議には防衛局長自身も列席をしておられましたので、詳しくは防衛局長から御説明をいただきたいと思います。
  14. 丸山昂

    説明員丸山昂君) 昨日の国際情勢に関します日米相互間の意見交換でございますが、政治経済問題を含めまして安全保障問題の基盤となるような問題、そういう観点からの意見の開陳があったわけでございます。大体ただいま外務大臣がおっしゃいましたようなことについて御意見がございました。  いま御指摘のソ連の問題につきましては、ソ連海洋政策と申しますか、在来沿岸艦隊であったものから外洋艦隊にその性格を変えていくという、こういうソ連の基本的な見方につきましては、在来からアメリカも指摘しているところでございまして、今回の会議の中では特にこの点を強調するというような点はなかったように思います。十分その点については日米相互において認識があるという前提においてお話が進められておったように私は考えるわけでございます。
  15. 秦野章

    秦野章君 一方、アメリカの第七艦隊勢力を減らしつつあるというような報道もある。この点はどうですか。
  16. 丸山昂

    説明員丸山昂君) 第七艦隊につきましては、隻数その他においてむしろ減少の傾向にあるように思います。全般的にアメリカが現在保有しております艦艇は第二次大戦直後につくられましたものが大変多く、大体艦齢がそろそろ終わりに来ておるようでございまして、したがいまして、航空母艦も十五隻保有しておりましたものを二隻退役除籍をいたしまして、十三隻にするということになっております。したがいまして、在来第七艦隊には航空母艦が三隻就役をしておりましたのが、現在は二隻に減少しておるという状況でございまして、むしろ全体の勢力、少なくとも隻数トン数というような点から見ました場合には最盛時に比べて減勢の態勢にあるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  17. 秦野章

    秦野章君 そういう数字というか何というか、力のバランスといいますか、そういうバランスというものが極東地域にちゃんととれているんだということですか。
  18. 丸山昂

    説明員丸山昂君) 一応海上バランスはとれているというふうに判断をされていると思われますが、先ごろのラムズフェルド国防長官それからブラウン統合参謀議長等報告によりますと、太平洋においてアメリカ海上交通、シーライン・オブ・コミュニケーションと言っておりますが、これを確保できるのはハワイからアラスカまでのラインである。西太平洋においては在来のようにアメリカが自信を持って、確信を持ってライン・オブ・コミュニケーションを確保するということは非常に困難になりつつあるという言明がございますので、一応均衡は保たれているものというふうに私ども考えますが、しさいに検討いたした場合には、必ずしもアメリカにとってフェーバラブルな状態にはなっていないというふうに考えるわけでございます。
  19. 秦野章

    秦野章君 ついては、今度日米防衛協力小委員会を設置されたわけですね。それで、いわゆる安全保障という立場から、この日米防衛協力小委員会がどうしてできたか、どういうふうにしてこういう問題が出てきたかというのは、これもいままでもうちゃんとわかっていますけれども、こういう機会に改めて理念外務大臣から、安全保障という立場に立ってこの委員会がその枠の中でいろいろ運用されていくわけですけれども、安保条約五条とか六条とかという問題に具体的にはなりますけれども、その前提理念をはっきりしていただくといいと思うんですが。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 小委員会が設けられるに至りました経緯については、秦野委員がすでに御存じだと言っておられますので繰り返しては申し上げませんけれども、いわゆる緊急時におきまして、わが国自衛隊米軍との間の整合のとれました共同対処行動をどういうふうにすべきか、どのような措置をとるべきかということについての指針を含めまして協力のあり方を研究協議をする。そしてその結論を本委員会報告するということでございますので、まさしくただいま秦野委員の言われましたような問題もこの委員会研究協議対象になろうと考えております。  先ほどの御質問との関連におきましては、米側情勢説明は、一般論として一九五〇年代あるいは六〇年代にあったような米海軍太平洋地域における一方的優勢というものはもはや存在をしないことになった。しかしながら、米国としては今年は軍事予算増強をするというようなこともあって、ともかく逆にソ連側の一方的な優勢なことにならないように、そのようなことを許すつもりはないということで施策を進めていくつもりである。しかしながら、それについてはアメリカが全部独力で日本の安全を守るということは、情勢の変化によってすでに困難となりつつあるので、日本側からいろいろなアドバイスと協力をやはり求めたいと考えている、これは日本自身の安全に関してでございますが、そういう背景の説明がございました。この小委員会目的そのものがまさにそのようなことの研究協議をすることにあるというふうに考えるわけでございます。
  21. 秦野章

    秦野章君 軍事力の情勢というもの、大きな核戦力はともかくとして、日本を取り巻く先ほど来のソ連艦艇等における軍事情勢というものにもやはり対応していくことによって力のバランスというものが保たれるし、それによって戦争が抑止される。そういう観点から今後とも日米防衛協力の問題を進められると思うんですが、ついては、私は当然のことだと思うし、それは平和のためだということだと思うんだけれども、端的に言って、最近国民がやや心配していますからね、新聞なんかでずいぶん報道されるし、ソ連艦艇演習だとか、日本近接して、余りいままでこれほど頻度の高いのなかったですから。それは心配ないことだというふうに、そういう判断だったわけですか。余り気にすることはないんだと、外務大臣として、国際情勢、軍事的情勢の問題になりますけれども、そういう情勢に対する判断が、これはやっぱりある程度われわれも理解しておきたいと思うんですが、それはどうですか。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる小委員会を設けて研究協議をしようということ自身は、秦野委員の言われましたように、そのような緊急時を想定してとるべき措置に関しての研究協議ということでございますから、目的は十分そういう事態に備えておるということによって、そういう事態が起こることを阻止しよう、抑止しようというのでありますので、まさしく目的はそのような事態を回避するための、事態が起こらないための防衛的な性格を持つ研究協議であることは間違いないところであろう思います。  それで、一般的にどういうふうに最近の情勢判断するかということでございますけれども、情報の収集であるとか訓練であるとかということ自身は、ソ連極東艦隊太平洋艦隊増強に伴いまして、まあ申してみればルーチンの仕事に属すると言えば属すると申せるであろうと思います。しかしながら、それが全くいかなる事態をも想定せずにただルーチンとして行われているということも、これもそう簡単には言い切れないことでございますから、いろいろな事態ソ連側が想定しているということはあり得ることであろうと思います。ただ、現在のこれだけのことからは、ソ連がどのような意図を持っておるのかということを判断することができませんので、したがいまして、こういう事態を注意しながら防衛庁もまた米軍もその事態の分析と申しますか、事態認識というものを怠りなく見守っておるというふうに申し上げるべきではないかと思います。
  23. 秦野章

    秦野章君 何年か前だったと思うんだけれども、四国沖で何か演習ソ連艦隊がやるという状況で、こちらが申し入れてやめたことがありましたね。——まあいいやわからないなら。  要するに、漁民の不安もいろいろあるかもわからぬから、そういう警戒の念を、必ずしも大きな心配ではないにしても、やはり日本国民の不安とか、何か気にかかるようなことについては当然それなりの配慮をしていくべきだと思うわけですけれども、これは余り刺激的なことを言って一層逆効果になってもいかぬわけですけれども、何かいろいろ接近状況なんかもかなり危険な、そういうものがトラブルになって、それが言いがかりみたいなことになって大きくなってはこれ事だと思うんですよ。だから、ソ連という国はときどき言いがかりやるから、よっぽどこっちも気をつけないと、これはまあ漁船問題でもそうですけれども。  領空侵犯なんかで抗議して、それはまずかったと言って向こう側が認めた例ありますか。
  24. 丸山昂

    説明員丸山昂君) 領空侵犯につきましては、いままでに三回事例がございます。四十二年と四十九年に、これは北海道の礼文島の上空でございます。それから最近になりまして、昭和五十年になりましてから、伊豆七島の式根島と神津島の上を通ったという事例で、これは三回あるわけでございます。その都度、外交ルートを通じましてソ連政府に抗議をいたしておりますが、四十九年の礼文島の事案だけはソ連側も侵犯の事実を認めております。その他につきましては回答がございません。
  25. 秦野章

    秦野章君 いつか東京都の式根島、神津あたりのところで領空侵犯があった、ああいうのはやっぱり認めないですか。
  26. 丸山昂

    説明員丸山昂君) いま申し上げました第三の事例でございまして、五十年に式根島と神津島の中間を飛んでおるわけでございますが、このときは回答が出てきておりません。
  27. 秦野章

    秦野章君 それは外務省を通じて抗議なりそういった事実を指摘してやっているわけですか、外務省を通じて。
  28. 丸山昂

    説明員丸山昂君) この三回とも、いずれも外務省を通じまして先方に対する抗議を行っております。
  29. 秦野章

    秦野章君 返事が来ないというのは、しょうがないと言えばしょうがないけれども、やっぱりその都度その都度の事案について、抗議がなれにならぬようにして、原則をぴしっとやっていくということにして、まあそれはソ連のことだから、ちょっとわれわれとも哲学が違うし、自分の非を認めるということは余りしませんからね。絶対真理の信奉者というものは、すべて相手が悪いということになる可能性が強いのだけれども、われわれの心配するのは、漁船の問題でも艦艇接近の問題でも、何かこう現場だけの正義感みたいなことでトラブルが起きて、それがきっかけになって拡大するというようなことがあることは、やっぱり非常に心配なんですね。だから、それはむろん注意されていると思いますけれども、抗議ということも当然間違ったときにはせにゃいかぬし、そういう後のけじめをぴしっぴしっとつけていく。返事が来ないということでやむを得ぬということかもしれませんけれども、何遍も繰り返して、大きな問題が起きない前の動作というものが私は非常に大事なような感じがするわけですよ、これは要望しておきます。  それから、ことしの二月の二十五日の例のソ連の党大会のブレジネフ演説のときに、北方領土問題で、これは前にもちょっと私も申し上げたことがあるんだけれども、何か北方領土問題の日本の主張が大変不当であると、ブレジネフ書記長演説の対日関係の中で、外部からのあからさまなそそのかしのもとに、ソ連に対して根拠のない不法な要求を突きつけている。これは恐らく領土問題だと思うのですけれども、これ以後、モスクワ放送なりイズベスチヤなんかの報道で似たようなことがあったと思うんですが、その経過をちょっと説明してもらえますか。
  30. 木内昭胤

    説明員木内昭胤君) ただいまの御指摘のブレジネフ演説後、同様の、いわゆるいわれのない要求だときめつけた言及の例としては、二月末のモスクワ放送、あるいは三月中旬のモスクワ放送、それから四月には「国際生活」という雑誌においても同様の言及がございまして、五月中旬にモスクワ放送が再度、さらに、「極東の諸問題」という雑誌の六月号に同様の言及がございます。このほか、日本ということじゃなくて、中国を非難した際にわが国の領土問題に触れた例もございます。
  31. 秦野章

    秦野章君 この北方領土問題というものは、日本の姿勢というものはもう外務大臣からしばしば説明されているように、日ソ外交の中でどういう位置づけで日本が進めていこうかということははっきりしているんですけれども、ややそれと矛盾するような形のこういったソ連の言い分というものが、ブレジネフ演説以後、いまお話しのようにたびたび出るわけです。それで、北方領土問題というものが不当の要求であったり不法な要求であったり、ときには反ソ的でもあるというような、そういう言い方というものはいささか真意を解しがたいような感じもする。日ソ友好、日ソ親善ということを本当にやる気があるのかどうなのか、ちょっと疑問に思うような節もないではないですが、しかし、まあそこを疑問に思っちゃったんじゃしょうがないんで、あくまでもわれわれは日ソ親善、日ソ友好というものの中で外交を進めていくという姿勢しかないわけです。しかし、領土問題というものについて、何かそういう言動をすれば反ソ的であるというようなことを言うソ連の真意は一体何でしょうか、外務大臣どう思われますか。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど御指摘になりました、第二十五回ソ連共産党大会におきますブレジネフ書記長の演説は、その部分を引用して申し上げますと、「平和的解決の諸問題に関し日本には時として外部からの直接的な教唆のもとに、ソ連に対して根拠のない不法な要求を提起しようとする者がいる」と、こういう趣旨のことでございます。  そこで、もしこれが領土問題についてのわが国立場意味しておるのであれば、全くこのようなことは事実に反し、理解に苦しむということを正式に、当時臨時代理大使でございましたが、に対して、欧亜局長から、招致いたしまして、ソ連の注意を喚起したことがございます。  その後に、トロヤノフスキー大使に対しまして私からもこの問題を提起をいたしました。それに対してトロヤノフスキー大使は、領土問題についてのソ連側立場は、ことしの一月、グロムイコ外務大臣日本を訪れましたときに私に述べたところに尽きておるという答えをいたしましたので、私から、グロムイコ外務大臣の言ったことは、領土問題についてのソ連立場日本立場と異なるという意味のことは確かに承った。しかし、われわれはこの領土問題についての過去の経緯沿革を話して、法律的に考えても日本の主張というものは間違っていないということについては、グロムイコ大臣は別段の反論はしていない。立場が異なるということは言っているけれども、日本の言っていることが根拠はないと言われたつもりは私はない、こういうことをトロヤノフスキー大使に実は申したことがございます。それにつきましてトロヤノフスキー大使は、今回のブレジネフ演説についてはそれ以上つけ加えることはございませんというような答えであったわけでございます。  したがって、私の考えております限りでは、この領土問題についてのわが国の主張が法律的に、あるいは条約等の関連において根拠が誤っておるということを聞かされたことは一度もない。ただ、いまそのような主張をすることは現実的でない、あるいはまた、ソ連立場日本立場と異なるというようなことは、両国の外相会談で二度にわたって出ておるわけでございます。  そこで、その限りにおいて厳密に考えますと、ブレジネフ書記長のこの演説がもし日本の領土についての指摘であるとすれば、恐らく私はそうであろうと推察をいたしますけれども、それはグロムイコ外相が述べておるところと完全に同じではないというふうに考えざるを得ないわけでございます。もちろん、この中で直接的に外部からの教唆云々というのは、これは申し上げるまでもなく意味しているところは明らかでございましょう。そのことはしかし、われわれにとっては事実ではございませんが、ソ連がそのことを言いたがっているという点であれば、言っていることの意味はわからないわけではない。が、日本の領土についての主張が根拠がない、かつ不法であるというようなことは、かつて外相会談ではそのような議論にはなっておらないわけでございます。でございますから、まあ強いて申しますと、外相会談でそういうかなり厳密なやりとりをしておることに比較いたしまして、ブレジネフ書記長であるとかあるいは先ほど御説明いたしましたその後の一方的な先方の言い分というのは多少ルーズである。外相会談ほど厳密な立場に立っておらないものというふうに考えるべきではないかと私は思っておるわけでございます。
  33. 秦野章

    秦野章君 中国、北京の来日する代表団が北海道、つまり北方領土の近くに行って返還問題を激励したり何かしているという、あれ何遍ぐらい行きましたか。
  34. 木内昭胤

    説明員木内昭胤君) 北京からの来訪者として北海道に参っておりますのは、昨年の五月新華社の社長を団長とする中国ジャーナリズムの一行が参っております。そのほか私どもで掌握しておりますものに、本年二月の中国の卓球団、さらに三月に中国の対外友好協会の関係者が北海道に行っておるというふうに承知しております。
  35. 秦野章

    秦野章君 まあ現場に行ったときのあの発言とか、要するに意図みたいなものは大方同じだと思うんですけれども、イズベスチヤの去年の十月四日の「他人の後押し」という論文、文章がありますね。これ見ると、要するに北海道の——北海道のと言ってないが、まあ要するに日本の一部の人が北京の反ソ宣伝、反ソプロパガンダに舞台を提供しているんだという書き方で指摘しているんですよ。つまり反ソ宣伝のプロパガンダに舞台を、北京の連中、毛沢東主義者へ舞台を提供しているんだ、こういうことをイズベスチヤで言っていますけれども、恐らくさっき大臣のお話しの一部にもありましたけれども、そういうことがかなりまあ影響しているというふうに読むことは、だれでも当然だと思うんですけれども、そうなってくると、この領土問題についてちょっと日本は迷惑な話になってくるような感じですね。確かに二国間問題でもあるんだからありがた迷惑みたいなところがあるんだが、こういう問題について北京に対して日本の外交というか、どういうような、現実に反ソ宣伝のプロパガンダにしているんだというようなことを言っているし、まあそれからブレジネフ演説以後はどうも人にそそのかされてやっているんだということを一々言っていますから、外相会議のときとはニュアンスがちょっと変わっているわけですね。変わり方というものがそういう角度からの変わり方。そういうことになってくると、これはそのままではまずいんじゃないかという気もするわけです。そのままではまずいんじゃないか。まあ北京も悪気があって言ってるわけではないと思うわけですけれども、それだけに日本としてはデリケートですけれども、しかし、外交の基本というものを考えれば、これに対してほっぽっといていいんだろうか。これからもまた北京から来て、北海道へ行ってやっぱり同じようなことを繰り返していくというようなことになる。これだけこうソ連が何遍も言っているのを、それを放置してそのような状況が続くというようなことがいいかどうかということに大変私も疑問があるんですよ。これは慎重な行動、いろいろの関係がありますから、いろいろ配慮していかなきゃならぬと思うんですけれども、このままずうっとほうっとくということがいいのかどうかということになると、ちょっと疑問がある。この辺について、大臣どうお考えですか。
  36. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 領土問題、北方領土の問題はわが国ソ連との間の純粋に二国間の問題でございますので、この問題について、いかなる立場からも他国が容喙をする、あるいは関与をするということは本来好ましくないことというふうに私は考えております。中国の立場からいたしまして、いわゆるソ連の覇権主義の一つのあらわれがこの問題であると中国が考えておるかもしれないということは十分に想像のできることでございますけれども、それは中ソ間の問題であって、そのような観点から、わが国の領土問題を中国が論じてくれることは私どもにとって事態の円満な解決のために役に立つことではないというふうに考えております。そのことは、ある機会に私からもそのような意思表示をいたしたことがございます。表現としては、御支援をしてくれるおつもりのことではあろうけれども、しかし、これは日ソ間の問題であるので、われわれが解決をするつもりであるというようなことは申したことが実はございまして、われわれとしましては、北京の立場から見た対ソ観というものはそれはそれとしてあるでございましょうけれども、その問題の例としてこの北方領土を引用されるということはこの問題の解決に決して資するものではないというふうに考えております。これは本日この機会を通じましても、政府はそう考えているということを申し上げておきたいと思います。
  37. 秦野章

    秦野章君 よくお考えはわかるんですけれども、問題は北京が中国の中でどう言おうとこれはまあいい。しかし、日本の国に入ってきて、そして現場に行ってまでおやりになるということ、これはやっぱり、それをほうっておくというのはどうでしょう。日本国内問題ですからね、ある意味においては日本の国土の中の問題ですから。そういう問題についてはもう少し私は善処してもらうということは必要じゃないのか。それはちっとも遠慮することはない。反中的でも反ソ的でもないと思うんですが、どうでしょう。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は北海道におきましては、ソ連の側におきましてやはりかなりこの領土問題について、われわれから見ますと、本来好ましくないと考えられる動きが過去何度かございまして、中国側としてはそのようなことを頭に置きながら発言をしたということであろうかと思います。これは確かにわが国国内の問題でございますから、そのような発言をしてくれることは、その意図するところはともあれ、適当なことではないというふうに私は考えますけれども、ただ、これが公の外交官の資格において言ったというようなことでは必ずしもございませんので、私人の発言としていままでは黙っております。もとより、呼びかけられたわが国の当事者たちに対しては、慎重に行動してほしいということは申しておるようなわけでございます。
  39. 秦野章

    秦野章君 もうやめますけれども、やはり何らかのアクションで、そういうことが行われないような方向に努力してもらった方が結局好ましいんじゃないか、やっぱりアクションが要るのじゃないか、どこでどうするかは別として、それはちっとも支障がないんじゃないか。むしろその方がベターじゃないかという気がしますので、これは要望でやめておきます。  それから、さっきソ連艦艇のことを申しましたが、漁船の拿捕がやっぱり去年の同期に比べればふえておる。大方倍ぐらいになっておる。これは何か事情というか、特別なことはなくてふえているんでしょうか、その辺ふえている状況等、どうですか。
  40. 平井義徳

    説明員平井義徳君) お尋ねの最近の北方水域における拿捕の実態でございますが、最近五年間では大体二十五隻から四十二隻の間で毎年拿捕されておりますが、いま御指摘のように、ことしに入りましてからは六月までに十四隻、乗組員数で七十八名が拿捕されております。昨年の一月から六月までの拿捕が八隻でございますので、これに比べまして確かにことしの拿捕は多いということが言えようかと思います。  この事情につきましては、いろいろなことが言われておりますけれども、われわれとしてははっきりした根拠を持っておりませんので、お答えは遠慮さしていただきたいと思います。
  41. 秦野章

    秦野章君 私は行けなかったのですけれども、北方領土問題に関連して視察団が行って、先ほども報告がありましたが、この悲劇がやっぱりいつまでも続いていくということについて、いろいろ一歩一歩前進する、補償の問題とか、操業委員会をつくったりして一歩一歩は前進しているようですけれども、基本的な課題はやっぱり拿捕問題というものはちょっと北方領土返還までめどがつかないというまあ悲劇ですね。だけれども、これはどうしてもそういうことでいかざるを得ないのか。政府間交渉ならとても無理でしょうし、領土問題があるんですから、領土問題をたな上げするようなかっこうになるわけにはいかぬのですから。しかし、コンブについて民間協定をやったように、何か政府もバックアップして、多少の入漁料を払っても何かああいう犠牲が起きないような、そういう前向きの工夫というものをやっていくということは、大体私も素人でよくわからぬけれども、無理な話でしょうか、どうなんでしょう。
  42. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題は、まさに秦野委員が御指摘になりましたように、領土問題と関連すると申しますか、領土問題そのもののような性格を持っておるわけでございまして、安全操業という言葉が私どもにとっては定着した言葉になっておりますけれども、ソ連側安全操業という言葉をきわめて好まないわけでございます。いわば自分の方の領海に入って操業するということは領海の侵犯であるというに近い考え方をしておりますから、その場合安全ということは何を意味するかというような議論に常になるわけでございます。しかしながら、われわれとしては領土問題についての主張をこの問題との関連で曲げるわけにはまいりませんから、その主張は主張として残しながら、何かの方法で現実的な危険の起こらない考え方というものはないであろうか。そういうことは問題提起としては私は非常に意味のある問題提起だと思っております。ですから、安全操業と申すかどうか、われわれはそう呼んでおりますが、そのような交渉を継続をすることによって、何かこの領土問題についての主張を曲げずに、お互いの主張をそのまま残しながら解決をしていくということは、やはり努力をいたしていかなければならない問題だというふうに私は考えておるわけでございます。
  43. 秦野章

    秦野章君 安全操業という言葉は確かに問題にされるし、必ずしもこの場合適当かどうかわかりませんけれども、とにかく向こうの領土へ行ってお金を払えばコンブをとらしてくれるという一つの先例があるから、コンブ方式とでも言って——安全操業なんて言わないでコンブ方式とでも言って、コンブ方式を魚に適用する。コンブはソビエトの人は食わないのか、食わなくたって、とって売れば同じことでしょうから。要するに、コンブ方式を魚の方に持ってくるというような努力を民間の、実力者も民間にもおるでしょうから、何かそれをバックアップしてやるような方向をとることができないかどうか。まあ、これは悲観説も強いかもしらぬけれども、やっぱりだれでもこれは考えられることだと思うのです。コンブは高碕さんがやったのですか、地元の人が毎年行って交渉してコンブだけはとれるようになっているという、まあ、非常に窮すれば通じた妙案だと思うのですけれども、やっぱり民間のそういうような方向を守り立てるというか、バックアップするというか、これは水産庁と外務省の両方かもしれませんが、ぜひひとつ余り悲観論にならないで前向きに検討していただくことを要望して、時間も参りましたので、私はここで質問を終わります。
  44. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      —————・—————    午後一時四十一分開会
  45. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  国際情勢等に関する調査について午前に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  46. 戸叶武

    戸叶武君 日米両国政府は、きのうの午後、外務省で第十六回日米安保協議委員会を開いた。これは日米安保条約が一九六〇年に改定されて以来十六年間問題になっていた、自衛隊誕生以来の懸案であった作戦調整機構としての日米防衛協力小委員会の正式決定と見られるが、緊急時の研究協一議の対象となろうと宮澤外相は答弁しているということでありますが、いまこういう緊急時の研究協議対象ということにしぼって、このような時期にこのような形で正式決定をしたというのはどういうところにその構えがあるのか。八方破れの構えか、それとも何か意図するところあっての決定か。日中平和条約締結を前にし、中ソ関係の対立というものも覇権問題や北方領土の問題をめぐって非常に厳しい折で、また、ソ連北海道の漁民に大きな脅威感を与えたり、また、太平洋における進出というもので異常な事態が生まれていると思います。  朝鮮問題に火がついたときには、そのときでは間に合わないからというようなことも防衛庁関係の人たちからは発言がなされておりますが、防衛庁における考え方にはそのようなものが内在しているにしても、いま一国の外交方針というものが拡散防止条約の批准をめぐって、核を持つ能力はあるが核を保有しない、日本は平和外交に徹するんだということを世界に宣明したのにもかかわらず、こういう事態において、一方においては万一の場合をということを考慮して、このようなときにこのような会合を持ったということは他国を刺激すること甚大なものがあると思います。外交は自分の国のひとりよがりでなくて、常に近隣諸国との友好親善というものをめぐって、他の国がいかなる衝動に駆られても毅然として平和外交を貫くだけの決意を持って相手を説得する努力が目下の急務だと思いますが、防衛庁のことはさておいて、外務大臣宮澤さんを信頼してわれわれは拡散防止条約の批准の促進の問題に対しても努力を払った一人として、平和のときもあればあらしのときもある、戦争にも備えなけりゃならぬというような形でこのような会合を持ったのかどうか。防衛当局関係要望によるものか、それともアメリカ側の前々からの要請を受けてこの緊急事態を想定しての会合を持ったのか。その辺を国民が非常にびっくりして、私もけさの新聞を見てびっくりした次第なので、その点をひとつ宮澤さんからお聞きしたいと思います。
  47. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) けさほど秦野委員からこの小委員会の設置につきまして、この小委員会で日米間の協力のあり方について研究協議を行うということの意味合いは、われわれがそういうことを周到に研究協議をしておくことによって不測の事態が生じないようにする、そういう一種の何と申しますか、抑止的と申しますか、自衛的な観点であろうというお尋ねがございまして、そのとおりに考えておりますと、まさしくそういう目的でございますと申し上げたのでございます。  この小委員会に与えられましたような機能というのは、実はきのうきょう、こういうことが入り用だとして初めて提起されたわけではないように考えます。昨年来坂田防衛庁長官が本院あるいは衆議院のいろいろの機会におきまして、このような協力のための研究協議がしかるべき機関で従来行われていなかったことがむしろ不思議なことである、これはいわゆる安保条約も長い歴史を持っておりますから、つとにこういうことは行われているべきであったと自分は考えておったが、自分が就任をして、ひとつ、そのつとに行われているべきであったそのような仕組みというものを考えてみたいと昨年来言っておられたところでございます。私も、この坂田長官のお考えはしごくごもっともなことだと考えますので、もとよりこの安保条約に定めているところの規定は万一のことを考えておるわけでございますから、その万一というものがないということであれば、そのような世の中であれば安保条約そのものも必要のないことになりますけれども、遺憾ながらそうではございませんから、したがって、そのような万一のことを考えての安保体制というものは、万一の場合には具体的にどのようにすべきかということは、これはやはり用意をしておくことの方が本来であろうと、私も従来からそのように考えておったわけでございます。  そのことが、たまたま昨年来防衛庁長官のそのような御発意から米国の国防長官にもそういう話をされ、そして両国が基本的に合意ができまして、このたび委員会を設置することになったわけでございます。  これについてアメリカ側からいろいろせっつかれたか、要望があったかというお尋ねもただいまございましたけれども、私の存じております限りそのようなことはなかったと存じております。これはここ何年かそういう話を私アメリカ側から聞いたことはないのではないかと考えておりますし、また、昨年この問題を防衛庁長官が取り上げられましたのも、御自分の、いわばわが国側の発意、それも今日まで何年間あるいは十何年間も放置されておったことの方がむしろ意外であったのではないかというようなお考えから、わが国側で発意をされたように承っておるわけでございます。でございますから、ただいまの時点で何かを考え、あるいは何かの事情で卒爾としてこのようなことをいたしたという性格のものではございません。また、諸外国に対しましても、何かわが国がこの時点になって特定のことを考えてこういうことを始めたというようなことでないことは、恐らく経緯からしてもわかってもらえるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  48. 戸叶武

    戸叶武君 アメリカ側からの働きかけでなく、十年間むしろこういうことをほうっておいたところに問題があるので、昨年坂田防衛庁長官の発意のもとにこの問題が取り上げられたという説明は、坂田さんから聞くならば一応ごもっともと、これはいい悪いは別問題として私は了承するのですが、宮澤外務大臣からこのことを聞くのはむしろ意外であります。世界の眼はポストベトナム、ベトナムの後においては朝鮮に火がつく危険性がある、発火点は朝鮮だという形において非常な警戒の眼を見張っているのであります。  そういうときに、あなたの意向はそのとおりであっても、防衛庁側では、丸山防衛局長の発言によれば、新聞によるものですからこれは改めて防衛庁側にお聞きしますけれども、防衛庁側では、「緊急時の詰めをやっておけば、侵略の抑止力にもなるし、朝鮮半島に火の手が上がっても大綱を部分的に発動させるだけで済む」、というような答弁をやっております。ここで私たちが一番問題にしなければならないのは日米安保条約の運営の問題であります。具体的な運営の問題にこれは関連しまするけれども、御承知のように日本国憲法の制約を受けているのです。国際条約は憲法に優先するという議論もありますけれども、日本の国民であり日本の政府をあずかっている以上は、国民の総意によって支持を受けている日本国憲法の基本的な制約というものを無視して私は事を行うことは、国民に対して挑戦することになるのでありますから、このことは私はもっと慎重に、九月まで十分慎重に論議するとのことでありますが、慎重審議してもらいたいと思います。  そこで、この安保条約の五条と六条の問題がありますが、「(我が国領域への武力侵略に対する共同対処)のほか、同六条の(米軍への施設区域の提供)を対象とし、有事の際の共同作戦大綱を策定することに主眼を置く」ということになっておりますが、これはどちらに重点を置いての一つの研究をやろうとしているのですか、その点を承りたいと思います。
  49. 丸山昂

    説明員丸山昂君) ただいま私の発言を御引用になったようでございますが、私は、いま先生の読み上げられましたような発言はしておりません。  今度のこの小委員会目的は、一つは、もともとこの安保条約が有効に運用できるような状態にするということによって、先ほど外務大臣からもお話しがございましたように、抑止力を強化するという趣旨でございます。御案内のように、わが国安全保障、防衛につきましては、日米安保条約によりまして核の抑止力あるいは通常兵器による抑止力というものを依存をする、それからわが国みずからも自衛力を持つということで、この二つが相補い合いまして日本に対するあらゆる形の侵略に対応できるように態勢を整えるということがわが国の国防の基本方針であるわけでございます。  そこで、このアメリカの抑止力に依存をするということでございますが、そのために安保条約を締結をしておるわけでございますが、この安保条約が現実に動き得るような形には現在なっていないのでございます。安保条約が円滑に運用できるようなための日米相互の研究と協議というのがこの小委員会目的でございます。  そこで、安保条約のまず第五条にございます、日本に対して武力攻撃がありました場合に、日米が共同して共通の敵に対処するという趣旨になっておるわけでございまして、そういった場合に日米間でどのように調整をしていくか、共同対処のためにどのような調整を行っていくかということ、これが主たる議題と申しますか、研究協議対象になるというふうに考えるわけでございます。  それから、これは私、防衛庁立場から御説明をすることが適当であるかどうかと思いますけれども、第六条の関係、つまり日本の安全及び極東の平和と安全のためにアメリカ日本におきます施設・区域を使用することができるということになっておるわけでございまして、日本としてはこれによって基地を提供する、施設・区域を提供する義務を負っておるわけでございますが、これをどのように円滑にやってまいるかということでございまして、これは日本政府としての立場で処置すべきことでございますが、この問題も、最初に申し上げました、前提安保条約の円滑な運用、実施という、そういう考え方から当然第六条の問題も研究協議対象となることが予想される、こういうことでございます。
  50. 戸叶武

    戸叶武君 ただいまのあなたのお話を承ってあなたの見解はよくわかりました。私が参考に引用したのは日本経済新聞の記事でございますが、全部各社読んでですが、全体の新聞の受けとめ方にはやはり一抹の危惧を持っているのが事実だと思いますが、研究協議というところにウエートがあるように思われますけれども、この問題はきわめて私は国民に与え、また諸外国に与える影響というものも甚大だと思いますから、制服組だけでもって事を急いで滑り出すというようなことをするならば、シビリアンコントロールの意味味もなくなるし、いままでわれわれが骨を折って平和外交で日本はいこう、とにかく中国もソ連も、一枚岩と言われたような国でも、領土問題その他をめぐってあのような血で血を洗うような抗争がなされているときです。日本の平和外交を推進させる道というものは世界で一番むずかしい一つの外交路線です。それをあえてしょうというところに日本国民の悲願があり、これは日本国民だけでなく世界がそれを望んでいるんだと思ってわれわれは踏み切っているんです。そういうところに、あっちを向いたりこっちを向いたりする一つの行き方、いろんなことがあります。外交の中に権謀術策はつきものです。しかしながら、日本が信義を、国際的に国内的に不信が渦巻いている時代に、相手をいたわり、相手を信じながら善意ある外交展開をしようという決意ができたときに、このような一つの火遊びと言っちゃいけないですけれども、実務的な形において重要だと言いながらも、軽々率率にこういう走り出しをされては、あたり迷惑のことがあると思います。そういう点において、この点は改めて防衛庁長官が出たときに慎重に論議を重ねたいと思いますから、あなたの言っていることが本当だ、新聞の書いているのはうそだというんじゃなくて、国民の受けとめ方においては、あなたの説明だけでは説得が足りない面が多々あります。こういう重大な問題を軽々率々に滑り出されては困る。十分な論議を経てからやってもらいたい。防衛庁長官も防衛庁長官だが外務大臣外務大臣である。  問題は転換して、プエルトリコサンフアン会議成果について外務大臣にお尋ねいたします。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) けさほど首脳会議に関する報告として申し上げました中で、いわば成果というような部分に触れたつもりでございましたが、要するに、一つランブイエで、あの当時は世界貿易が縮小均衡の過程にあった段階でございますから、何とかしてこれをもう一度拡大過程におきたい。また、各国経済成長もあの年にはほとんどの国がマイナス成長でございましたのでプラス成長にもっていきたい。そのためには、おのおの独自の立場だけでは問題が片づかないので、共通認識に立って幾つかのことをしようではないかというのがランブイエ会議であったわけでございますが、それから半年余りたちまして、さてその結果はどうであったかということをまずレビューするということが一つの問題でございます。  幸いにして、ランブイエで考えておりましたよりはかなり予想を上回って世界経済が、少なくとも世界の貿易量は拡大に転じつつあるということが確認されましたし、その中において、経済回復の過程の早い遅いが実は御承知のようにございますけれども、いずれにしても、各国とも景気回復過程に入りつつあることは喜ばしいとして、これをインフレを再燃しないでやっていこうではないかということについての合意一つであろうと思います。  また同時に、世界貿易が縮小過程に入らず、拡大過程を進んでいくために、たとえば輸入制限をしないというようなことについての各国間の合意の確認、あるいはまた、関税引き下げ等々の多国間のいわゆる東京ラウンドと言われるものの推進、あるいはまた、当面の問題であります南北問題についての対話と協調路線といったようなものを先進七カ国が確認をし合ったということは、やはり何と申しましても一九三〇年代とは違いまして、各国に十分な協議協調の場があるということが戦後の世界経済を発展せしめ、混乱に陥れなかった最大の原因であろうと思いますので、そういう方向でさらに強化をしていこうではないかということは、やはり当然と言えば当然と申せるかもしれませんけれども、一九三〇年代を顧みますと、大きなやはり改善であると考えてよろしいのではないかと思います。  さらにまた、各国首脳が二日間でもともかく四六時中顔を突き合わせて共通の問題を話し合うということは、首脳間の信頼感を高めますし、さらにまた、将来何か起こりそうなときにはあらかじめ集まって相談をして事態の悪化を未然に防ごうではないかというような、仕組みとしてもこのような仕組みは意味を持つのではないであろうか、このような評価をいたしておるわけでございます。
  52. 戸叶武

    戸叶武君 わが国はアジアにおける唯一の参加国であります。今回の七カ国首脳会議において、発展途上国の要求である国連貿易開発会議で採択された共通基金案、これをやはり取り上げてもらうことが発展途上国すべての日本に託する願いであったと思います。三木さんもこの問題ではずいぶんはしゃいでおったようですが、国内の方のはしゃぎ方と国際会議の場におけるはしゃぎ方はだいぶ違うので、発展途上国の失望を私は買っていると思います。それが事実上通らなかった。まあキッシンジャーの国際資源銀行の提案すらも入れられなかったんですから、あの空気の中では無理であったかとも思いますけれども、日本へという一つの申し入れを行った意図というものは、アジアの発展途上国の苦悩をも代表して日本は南北問題における具体的な問題解決の方向を規定づけよう、そういう意図を持ってなされているのかどうか。あの世界からの期待に反するような、成果が得られなかったことに対して、次にどういう形においてこの発展途上国の日本に期待している要望を達しようとしているか、その点をお聞きしたいと思います。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまお尋ねの問題は実は二つの問題がございますので、一応分けてお答えをさせていただきたいと思います。  いわゆる共通基金という発展途上国がマニラ会議で主唱をし、そうしてナイロビで強く主張いたしました構想でございますけれども、これについての現状と申せば、わが国を含めまして先進国側もいわゆる一次産品の価格の安定、輸出所得の向上というふうなことについては、問題の所在はわかった、これは前向きに対処をいたさなければならない問題であるということはほぼ合意されておると考えます。場合によっては品物によってバッファーストックのようなものを考えることが有効である品物もあるであろう。その辺のところまでは私は大まかな合意が先進国の間にもできかかりつつあるというふうに考えているわけであります。  ただ、その場合一次産品と申しましても、戸叶委員が御承知のように千差万別でございますから、ゴムのようなものもあり、ジュートもあり、あるいは砂糖もあり、コーヒーもあり、また鉱物資源、すずのようなものもございますでしょうし、発展途上国によってはバナナもあるというような千差万別の品物でございますから、その千差万別の品物に一つの方式での価格安定というものを考えることは現実問題として恐らくむずかしいであろう。それは決していい結果にならないであろうということから、やはり品物ごとにそれに即する対案を考えるのが本当ではないだろうかということを私どもなども実は考えておるわけでございます。品物によりましては、まさに長期協定をやって、そしてバッファーストックでもつくって、そのバッファーストックになりますと、それはそこに資金という問題が生まれてくるわけでございます。それで有効に対処できるものが確かにあるかもしれない。また、品物によってはそうでない方法がいいというものもあるであろう。そういうふうに考えていきまして、幾つかの品物についてそういう取り決めができ、またバッファーストックのようなものが考えられるとすれば、そこに金融措置がどうしてもついてくるわけでございますから、最後の姿としてそのような金のプールが何かの形で、仮にそれを共通ファンドと呼んでも一向に差し支えないことでございますけれども、そういうこととして答えが出てくるというアプローチでないと、現実に一つ一つの品物を、それを産する産出国のために現実に役に立つような仕組みにならないのではないかというふうに、どちらかと言えば私どもは考える。  それに対して発展途上国は、何か大きな共通資金というファンドでもできまするならば、仮に何十億というファンドでもできまするならば、それを自分の国の得意とする一次産品と結びつけるならば非常にうまくいくのではないだろうかという、まあいわば一つの希望図と申しますか、そういう絵を先に頭に置いて共通基金からまず合意しようではないか、そういう動きに発展途上国の動きはマニラ以来なってきておったと思います。なかなかそう金を突然積み上げたところで、一つ一つの品物とどう結びつくかということがなければ一次産品の輸出とか安定にはならないではありませんかという私どもの説得といいますか主張を、発展途上国としては非常に消極的な拒否的な態度であると、ナイロビの会議のかなりエキサイトしました段階では考えたようでございますけれども、しかしまた、ああやってパリの二十七カ国会議というようなところへ返ってまいりますと、発展途上国も多少冷静に私どもの言っていることも考えてくれるということになるのではないであろうか。  もう一度、ごくつづまやかにつづめて申しますと、私どもは現実的に一つ一つの品物についてアプローチした方が結局早いし効果がありますというのに対して、最初はそれは逃げ口上だというふうに発展途上国は受け取ったようでございますけれども、考えてみて、必ずしもそうでもないかもしれないというようなところにいまパリの会議がこようとしておると申しますか、ああいう機会でそういう話し合いを続けていきたいと考えておるというのがこの問題の私は現状であるというふうに思っております。  三木総理大臣が、次回このような会議をするときには日本がホストになる用意があるということを言われましたのは、いまの問題と直接に結びついてのことではなかったと私は判断をいたしておりますけれども、と申しますのは、このような会議が次回開かれるということが別に予想されておるわけではございませんし、いわんや、いつということもはっきりしておるわけではございません。むしろ一次産品の問題の方がそれよりも処置を急がれておるのではないだろうかとすら思われますわけでございますから、この二つの問題に直接の連関はなかったのではないかというふうに私としては考えております。
  54. 戸叶武

    戸叶武君 三木さんにも言ったんですが、やはり外交においても抽象論じゃなくて、具体的な問題に対して一つ一つ具体的な回答を用意してこれからは前進しないと、日本に頼っていると何かムードだけで、空気を吸わされて帰ってきたというような絶望感を発展途上国は持つと思いますから、いまのような、なかなか宮澤さんは説得力は三木さんに劣らないであるようですが、その経緯、事情というものは、やはり発展途上国に十分のみ込ませてもらいたいと思います。  次に私は、劈頭にフォード大統領が国際収支黒字国の協力を要請した、あのねらいは、やはり日本なり西ドイツのドルが黒字になっているので、日本ではことしの一月から五月まで約四十億ドル、西ドイツでは約四十三億ドル、日本はことしじゅうで百億ドルを超えるだろうというようなまでの憶測がされておりますが、しかしこの問題で、片方落ち込んでいる先進国とはいいながらイギリスなりイタリアを何とか助けるために協力してくれという意味なのか、それとも日本の円が安過ぎるからこれをもっと引き上げろという意味なのか、そこらはあの会議はやはり何か霧に包まれて結論がなかったようでありますが、アメリカとしても去年はドルが大変黒字になったのでありまして、ことしになってから少しばかり赤字になったといってびっくり仰天する必要はないと思うんですが、その間の経緯、どっちにウエートがあったのか、それを承りたいと思います。
  55. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いま戸叶委員の言われましたように、アメリカは今年になりまして貿易は赤字になりつつあるわけでございますけれども、今度の会議で議論になりましたことは、アメリカは赤字になりつつあるけれども、しかし、これを無理をして急にどうしようとは考えていない。むしろ多少赤字になったとしても、それによって景気回復機会をつかもうとしておる国々に利益があるのであれば、アメリカだけのことを考えて無理にこれを黒字に転換させようというようなことは考えていない、アメリカ立場としてはそんな立場だということを申すわけでございます。したがって、貿易が黒字になっておる国も、余りとにかく黒字、黒字とためるようなことも、これも無理をしてやってはほしくはない。お互い先進国同士が、そこはやはりイタリー、イギリスのような国もございますので、そういう国のことも考えてやっていくべきではないかというような大筋の合意であったというふうに存じます。  そのこととわが国の円の問題との関連でございますけれども、いっとき前に、どうも日本の円が人為的に操作をされておって、日本政府は故意に円を円安に置いておるのではないか。それによって貿易黒字をかせいでおるのではないかという論文のようなものを発表した向きがございまして、そのときに、わが国にもそういう報道がなされました。しかしこれは、大蔵省の政府委員も来ておられますので、お入り用であれば事実に基づいて御説明が願えると思いますけれども、わが国は、円について人為的に円安に置いて輸出をかせごうというようなことは現実の問題としていたしておりません。急激な一日一日の変動を避けた方がいいということは、これはランブイエ合意でございますから、ごくまれに急激な動きを本当に一日なり何なり短い期間調整するということはございましても、恒常的に円を円安に置くために政府が円をつまり売るというようなことは事実問題としていたしておりませんので、したがって、この批判はゆえなきものであったということがもうサンフアン会議の段階では各国にはっきりいたしておりました。したがって、そういう問題としては提起されてはおりませんで、むしろ戸叶委員が前段に言われましたような、私が前段に申し上げましたような問題として提起されておったと思います。
  56. 戸叶武

    戸叶武君 最後に私は、大蔵省が六月までの外貨準備高の発表によると百五十三億九千七百万ドルになっていることが明らかになっております。ことし一月から通算すると二十五億八千二十万ドルも外貨準備がふえておるのでありますが、この現実を見て、貿易大国であるが資源小国である日本立場というものを全面的に理解することのできない国においては、やはりいろいろ憶測が生まれると思うのであります。しかし、それよりもやはりこの問題の打開は、日本の弁解だけじゃなく、積極的な姿勢で日本の中立自主平和外交の路線というものを明確に打ち出して、日本が南北問題なり、あるいは他国と違って東西問題が日本においては非常に重要なわけです。自由主義諸国との協力も重要でありますけれども、隣にやはりソ連なり中国なり朝鮮なりと接触しておるのでありまして、日本の国の経済外交と言っても、経済外交は日本のやはり政治姿勢を主眼としてつくられなければならないので、単なるマーチャントの外交であってはならないと思います。  そこで一番あの会議でも問題になっているのは、簡単に言うとソ連に対する不信感が非常に強かったと思うんです。そういう形において、日ソ貿易なら日ソ貿易というものが今後において大きく期待されているにもかかわらず、そのことを余り行き過ぎて日本がそれに落ち込んじゃいけないということを上品な言葉で警戒している点があると思います。キッシンジャー国務長官は、東側諸国は自国の経済発展のため西側の技術、機材導入を最大の頼りとしている。その結果、東西貿易は過去四年間に四倍にふえ、民間融資分だけでも百五十億ドル、政府ベースの貸し付けを加えるとその二倍の三百億ドルに達したと指摘して、共産圏に過大な債権、すなわち融資を与えては西側にとっては弱みとなるというような警戒的な発言を行っております。サンファン宣言の中にもこの見解がやはりにじみ出ております。  問題は、日ソ間における相互不信感に近い問題がいま一つの東亜における暗雲を、アジアから太平洋にかけて、ちょうどこのごろの天候異変と回しように、不気味な異変を生んでおりますが、一面において日本は日ソ間のシベリア共同開発は、日本側が、返済は主として開発した資源を受け取ることになっているから何ら心配は要らないのが実情だというような当事者は発言を行っておりますが、日ソ貿易の現状並びに日ソ貿易の発展について、キッシンジャーが言っているような心配は日本に関する限りは余りないんだ、あるならあるんだと、その問題を具体的に私はここで回答していただきたいと思います。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま、この間のサンフアン会議におきまするいわゆる東西経済関係についてのお尋ねでございましたので、多少この問題については一般に世上に、誤解とは申しませんけれども、理解が十分でない点があるように私思いますので、ちょっとその点から申し上げさせていただきたいと思います。  今度のサンフアン会議で、東西貿易というもの、東西の経済関係というものはかなり議論になったわけでございますけれども、全体の基調として、東側との経済関係を深くすることがわれわれにとって不利である、よくないことであって、それはどっちかと言えば制約、制限していった方がいいのだという空気であったかと申しますと、必ずしもそうでなかったというふうに私は実は感じておるわけでございます。ちょうどそのしばらく前に、東側に対するクレジットの条件について、西側が競ってこの条件を崩していくというようなことはおもしろくないではないかということから、ある程度の西側の間の了解ができたということがございましたがために、何となくその延長として東西経済関係を締めていこうということが議論されたのではないかという、漠然とそういう印象があるようでございますけれども、どうも会議そのものは必ずしもそういうものではなかったように思います。会議参加国の中には、経済関係を締めることによって東側の政治的な意図を左右しようということは、効果がないのみならず逆効果ではないかというような発言すらございましたし、また、ちょうどいまキッシンジャー国務長官のお話がございましたけれども、キッシンジャー氏自身も、このサンフアン会議の直前にございましたOECDの会議では、東西の経済関係について一種の先入観を持たない立場からの検討が必要ではないかという趣旨のことをかなり詳しく述べておるわけでございます。つまり、今日の情勢において東側の国々が西側の国々と経済関係をますますふやしていかなければならないというのが現状ではないだろうかというようなこと、あるいは東側にも相当の資源等々もあることであるしというようなことも述べておる部分もございますし、また他方で、しかし、東と西と経済体制が全く違うときにどのような協力関係が生まれ得るだろかというようなことも、そんな面でも言っておる点もございますが、結局OECDでキッシンジャーが提案いたしましたことは、政治というような立場を離れて、これだけ関係の深くなった東西間の経済関係を今後どうすることがいいかと、メリットとデメリットはどういうことであるかということをOECDで検討してもらうことが最も適当ではないかと、純粋に経済的な面へ問題を預けるというような発言をしておりまして、私の見ますところでは、キッシンジャー自身は東西の経済関係を政治と確かに切り離して考えておるわけではございません。ある程度のリンケージを考えておりますけれども、しかし、それはたとえばソ連に対して最恵国待遇を与えるといったような提案をかつて議会にいたしまして、これはアメリカの議会で御承知のように承認を得られなかったわけでございますけれども、しかし、その後小麦、穀物等の協定は結ばれておるというふうに、ある程度経済関係を持つことの方がそうでない場合に比べてアメリカとしてある程度のレバレージと申しますか、てこと申しますか、そういうこととして働き得るのではないであろうかという、少なくともそこまでは考えているように読まれます。  そうだといたしますと、このたびの会議が全体として東西関係経済関係を縮小させようというような雰囲気でなかったということは、私の会議に出ておりました印象として申し上げても間違いでないように考えるわけでございます。  最後に、わが国との関連についてのお尋ねがございましたが、わが国ソ連との関連で二十億ドル程度のクレジットの約束をしておりますわけで、現在高は五億ドル内外であろうと思われますが、これは御指摘のように資源関係を背景にしたものでございます。そのようなソ連との投資関係経済関係をここで方針を変えるという気持ちは政府としてございません。また、このたびのサンフアン会議においても、ソ連の債務返済能力についていろいろ議論がございましたけれども、それに疑いがある、心配をしなければならないというふうな見方ではありませんで、むしろいろいろな事情からソ連のクレジットスタンディングはかなり高いというふうに考えるべきではないかという意見の方が多うございました。  したがいまして、あれこれ総合いたしますと、西側が援助条件と申しますか、金融条件をむやみに競争をして崩して低くしていくということは、これはお互いに自粛しようではないかという申し合わせはございますものの、そのことは東との経済関係を縮小していった方がいいということとはつながっていない。むしろ会議の大体の雰囲気は、東側との経済関係を縮小すべしということではなかったというふうに私は判断をいたしております。したがいましてと申しますか、そのような経緯に照らしましても、わが国が従来からやってまいりました政策を変更する必要はないというふうに判断をいたします。
  58. 羽生三七

    ○羽生三七君 過日、ベトナム社会主義共和国が正式に発足したわけで、長い戦争が終結をして南北ベトナムが統一され、新たに統一ベトナムとして発足したことは私どもも非常にこれを祝福したいと思います。  ところで、このベトナム社会主義共和国に対して日本政府はハノイ駐在の長谷川大使をして三木首相の祝電をベトナム外務省に伝達をし、これをもって新国家承認のいわば黙示的な承認ということ、そういう過程をとったようでありますが、こういうことだけでよろしいのか、もっと正式に何らかの形で統一ベトナムを承認するという方法はおとりになれないのか、その辺をお伺いいたします。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま羽生委員の言われましたように、わが国といたしましては七月三日に総理大臣並びに私から先方におのおの祝電を発出いたしたわけでございます。これによっていわば承認が黙示されたのであろうというお尋ねでございますが、そのようにお考えいただいて結構であろうと思います。  実はいま羽生委員のお尋ねは、もう少し明示の方法あるいは違った方法をとる方がいいのではないかというお尋ねであったわけでございますが、わが国がこのような方法をとるに至りました理由の一つは、先方にかなりそのような強い希望がございまして、つまりベトナム社会主義共和国の主張は、もともと自分たちは一つの国であったので、それがある変則な事態のもとに分裂したようなことに一時なったけれども、今度の統一という事態はむしろ正常の状態に返ったのである。したがって、ここで新しい国家が、いわば分裂国家でない各国が独立をするとかいうような形で新国家が発生するというのとはわけが違うのである、そういうことをわが国に対してばかりではございません、一般に関係国にかなりはっきりと意思表示をしておりましたので、わが国として、そうであれば今後の友好関係を深めるために接触をするわけでございますから、その意思は尊重したらいいではないかということで今回のような方法をとった次第でございます。
  60. 羽生三七

    ○羽生三七君 よくわかりました。  それに関連して、この経済協力については、日本は昨年度ベトナム民主共和国、ハノイとの間に八十五億円の無償経済協力を取り決め、さらに本年度はほぼ五十億円程度でまとめたいお考えのようでありますが、統一国家誕生という新しい事態との関連でこの問題にどのように対処されようとするのか。かつての南ベトナムとの賠償があったわけですが、これらとの関連はどうなるのか。要するに、昨年度の八十五億円、本年度の五十億円の贈呈は、これはいわゆるハノイとの関連でこうなっているわけですが、今度統一ベトナムになった後のこの経済協力はどういう形をとるのか。いままでの政府の考えどおりでいくのか、あるいは何かもっと新しい考慮を払われてお進めになるのか。それから南ベトナムとの賠償、もうすでにかつて済んだ南ベトナムとの賠償との関連はどうなるのか、その辺をお伺いいたします。
  61. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま御指摘のハノイとの経済協力の問題でございますが、国交を回復いたしました際にハノイ側の主張は、第二次大戦の結果の賠償を日本から求めるという、気持ちはそういう気持ちであったと思います。それに対しましてわが国は、その点は南ベトナムにすでに賠償として支払っておるという考えで気持ちはあったわけでございますけれども、結局南ベトナムに与えましたのとほぼ同額の無償協力をハノイに与えるということで実体上話がまとまりまして、それを二年に、二回に分けまして無償協力をするということで第一回目の金額が御指摘の八十五億でございます。残りをただいま協議中であるということでございますが、南に与えました金額がおのずからのめどになるということにお考えいただきまして結構であろうと思います。  この交渉をいたしております段階で、すでに北と南とはある時期には一緒になるということは私どもも予想いたしておりましたし、先方もそう考えておったわけでございますから、このたび新国家が——新国家と申しますか、このたびベトナム社会主義共和国が発足をしたことによって従来交渉しておりましたこの関係が変わるということはないであろう、従来の線でこの第二回目分の金額が妥結をいたしますと、一応無償協力というものがこれで完結をするというふうに考えております。  そこで次のお尋ねは、その後にどうなるかということでございますが、このベトナム社会主義共和国が従来の、仮にサイゴンという名前で呼ばせていただきますが、に対してわが国が持っております債権をそのまま問題なしに承継するものであるかどうかということについては、ただいままでのところはっきりした合意がございません。これからベトナム社会主義共和国とわが国との間で詰めていかなければならない話でございます。  そういう未解決の問題を一つ持っておりますので、今後わが国とベトナム社会主義共和国との間の経済協力関係を進めていきます際に、やはりただいまの問題を何かめどを実はつけなければならぬというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。実際問題といたしましては、しかし、たとえば経済復興を急ぐということで農業関係協力を求められるとか、あるいは場合によりましてそれ以外のものでも経済協力関係が民間の努力で生まれてくるということがあり得るわけでございます。したがいまして、そのような可能性とペンディングになっておりますただいまの債務の承継非承継の問題等、両方を頭に置きながら進めていかなければならないというのがただいまの実情であるわけでございます。
  62. 羽生三七

    ○羽生三七君 ベトナム戦争におけるベトナムの勝利、それから米軍の撤退という状況の中で、今後アジアの平和と安定をどう構築していくかということを考える場合に、私は統一ベトナムの持つ比重は相当高いものだと思うのです。このベトナム社会主義共和国とASEAN諸国とが平和的に共存をして、非同盟中立の立場に立つならば、アジアの安定は一層強化されると思うのです。日本政府は絶対に出過ぎたことをやるべきではないけれども、しかし、分に応じて統一ベトナム、広くはインドシナ三国ですね、これとASEAN諸国が平和共存をし、非同盟中立の立場に立つような関係になることになれば、アジアの安定に一層役立つと思うのでありますが、そういう点についての日本政府としてのお考え、もちろん私先ほど申し上げましたように、出過ぎたことはやるべきではないけれども、分に応じてこれに協力することは非常にアジアの平和と安定に役立つと思いますが、このベトナムとASEAN諸国との関連について外相の御見解を承りたいと思います。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まさに羽生委員の仰せられますように、私どもとしても出過ぎたことをするつもりはございませんけれども、ベトナム社会主義共和国とASEAN諸国とが仲よくやってもらいたい、そのために日本としてできることがあれば微力ではあるけれどもいたしたいという気持ちでございます。まさしくそういう気持ちを持っておりまして、したがいまして、先般政府の各省の代表から成ります経済ミッションをハノイに出しまして、今後の経済協力等について友好裏に何日間か協議をしてまいったようなわけでございまして、私どもとしては、われわれのそのような努力がベトナム社会主義共和国とASEANとの間を仲のいい、敵対的でないものにするというこに役立てたいというふうに考えておるわけでございます。  ASEAN諸国としましては、二月のパリ会議、パリにおける首脳会議の結果、ハノイに対してそのような姿勢で呼びかけをいたしまして、いっときハノイの側から、いわばASEANのうちの何カ国かはアメリカ帝国主義の手先であるといったような、かなりきつい言葉が流れておりまして、しかしまた、先般統一と同時にミッションをASEANの何カ国かには派遣するというような動きにもなっております。その点が、どのあたりにベトナム社会主義共和国の意図があるのか十分につかみ切れておりませんけれども、わが国としては、羽生委員の言われましたようなASEANとベトナム社会主義共和国との間が円滑に友好的なものになるように、わが国なりの努力をいたしたいというふうに考えております。
  64. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題は、私たちが希望するように容易に実現するかどうかわかりません。なかなかむずかしい問題だと思います。たとえば、過日このASEAN外相会議が開かれた際、懸案の東南アジア中立化構想について話し合ったと伝えられておりますが、その際の論議の焦点は、インドシナ三国、特に統一ベトナムとの今後の関係改善にしぼられていたと言われます。これについては積極消極両論があったと言われております。また一方、ベトナムのレ・ジュアン労働党第一書記は、統一国会の政治報告の中で、外国軍隊基地の駐留を認めず、平和中立、内政不干渉の原則に立つ国ならどんな国とでも友好関係を進めていくと、こう述べながらも、同時に、東南アジアの真の独立平和中立のための正義の闘争を支持すると報告したと言われますが、私はいまの後段の主張にウエートを置かずに、前段の、つまりあらゆる国と関係を持っていきたいという、原則が認められるならばあらゆる国との関係を、どんな国とでも友好関係を進めていくという、このレ・ジュアン第一書記の報告の前段の方に私はウエートを置いて問題を考えたいと思うんです。独立闘争の支援ということもあるでしょうが、それよりも前段の意思表示の方に重点を置きたいと考えております。  インドシナは、言うまでもないことですが、フランスの支配に続くアメリカの侵略に屈することなく今日の独立をかち得たのでありますが、特に強靱なベトナムの闘争力は驚くべきものがあると思います。そのベトナムが統一国家の発足と同時に、いま外相からもお話がありましたように、タイを除く他のASEAN加盟国四カ国に積極的な外交交渉を展開し始めたようです。しかし、この統一ベトナムとASEAN諸国との関係が、考えるほど甘いもんではないという気も一方でするわけです。したがって、そういう点については、ベトナム社会主義共和国の成立という今日までのこの歴史的な経緯をよく認識をして、誤りない外交を展開していただきたいと思うのです。  先ほど申し上げましたように、アジアには朝鮮半島の問題という重要な要因もあるのですが、このベトナムとASEAN諸国との平和共存、非同盟中立政策が実を結べば、アジアにおける平和に大きな希望が持てると思いますので、重ねてお尋ねするようなことになりますが、両方とも平和共存を非常に望んでおるようですが、簡単なようですけれども、しかし同時に、なかなかむずかしい側面も一方にはあるように思われますので、そういう中にあって日本外交が果たしていく役割りというものはきわめて重要だと思うのです。そういう意味で、もう一回繰り返してこの問題をお尋ねいたしますので、御所信を承りたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに、レ・ジュアン第一書記の政治報告におきまして、かなり米国帝国主義云々といったようなことも言われておりますし、きついといいますか、教条的という言葉は当たらないかもしれませんけれども、かなりきついトーンが出ておりますことは私どもも承知しております。ただ、これは何分にも大国を相手に、ことにただいまお話しのように、フランス、ディエンビエンフーの以前から戦い続けてきた国が一つになるという非常に高揚された雰囲気の中でございますから、勢い主張も非常に強くなるということもあるいはあることであるかもしれません。またしかし、他方で労働党が中心になって国づくりをしておるというところから見ますと、社会主義国であるという意識は現実としても強いのかもしれない。その辺は、いまこの国はこういう路線を何が何でも歩くのだ、レ・ジュアン書記のようなことが全部達成されなければ近隣とのつき合いはしないのだというふうに決めてかかるというようなことは、何も私どもする必要はないであろう。事を安易に考えるわけにはまいりませんけれども、しかし、今後ベトナム社会主義共和国がどのような外交政策を近隣に対してとっていくかということは、一つには近隣諸国の出方にもよることであろうというふうに考えますから、その辺は、冒頭に羽生委員が言われましたような考え方で、ベトナム社会主義共和国がいわゆる冒険主義の道へまっしぐらに進むということがないように、わが国として出過ぎるつもりはございませんが、できるだけASEANの国ともわが国とも友好関係が生まれますような努力をしてまいりたいと考えております。
  66. 羽生三七

    ○羽生三七君 このASEAN諸国の中立化構想にとっての最大の課題は、その中立化政策に対する国際的保障であると思うのです。私の言う国際的保障とは、アメリカソ連、中国の三国にかかわりがあると思うのですが、ただ、ここで一つ私特に申し上げたいことは、もしこの地域に仮に紛争が起こったような場合、アメリカがベトナムで犯した過ちを再び繰り返すとは思いませんけれども、しかし、もし何らかの形で米軍がこの地域行動を起こすようなことが起こった場合、日本はベトナム戦争でアメリカ協力したわけですが、そういう過ちを繰り返さないことが非常に大事ではないか。あのベトナム戦争の教訓を生かして、国際的保障という場合、ASEAN諸国が望んでおる国際的保障という場合に、いま日本アメリカとの関連でかつての過ちを二度と繰り返すべきではないと思うのですが、その辺はいかがでありますか。
  67. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ある意味で非常に、どう申しますか、現実の事態と言いますよりは、一つの大きな物の考え方としてのお尋ねだと思いますので、アメリカ自身がベトナムで十分に教訓を得たというふうに考えておりますし、また、ASEANの国々もあのことからいろいろな教訓を得ておるだろうというふうに思います。わが国もまた例外ではございません。したがって、そのような事態が起こらないようにということでわが国としては努力をするというふうに申し上げさしていただきたいと思います。
  68. 羽生三七

    ○羽生三七君 非常に唐突な質問になるわけですが、いまの問題を考えた際に、いまの問題にかかわらずアジアの全体の情勢を考えた場合に、日米安保条約極東条項を再検討されてはどうか。まことに唐突な質問ですけれども、私いつでもこのアジア問題を考える際に必ず起こってくる疑問というか問題点ですね。少なくとも安保条約極東条項——安保条約の本質論には私も触れません。極東条項は再検討さるべきではないか。さきの日米とベトナムとの関連を見ても。まあ極東の範囲の議論は私ここではいたしません。やはり安保条約極東条項は再検討していい時期に来ておるのではないか、そういう気がするのですが、これはいささか唐突過ぎるかどうか、御所見を承りたい。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 羽生委員がよく御承知のように、極東条項に申しますところの極東というのは、地理的にきちんと定義が与えられる性格のものではございませんので、そういう意味ではわが国自身の安全、繁栄といったようなこととの関連でいわば政治的な判断によって決められるべき性格を持っておると思います。ベトナム戦争等等から関係各国みんながいろいろな経験をいたしたわけでございますので、今後この極東条項といったようなものを現実に発動していくと申しますか、発動するかしないかというようなことをもし考えなければならない事態になりましたときには、やはり過去の経験というようなものは十分われわれ頭に置いて、間違いのない政治的な判断をしていかなければならないというふうに考えます。
  70. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一問で終わるわけですが、先ほどのベトナム社会主義共和国が誕生した際の経済協力の問題にもう一度戻るわけですけれども、あのとき私の言ったのは、かつて日本が南ベトナムに賠償を支払った、支払いをしてあるわけですが、それと統一ベトナムの今度の経済協力との関連はどうかと言ったのですが、何か大臣の御答弁は、当時のサイゴン政府に対する債権の問題というようにお言いになったのじゃないですか。そうじゃなかったですか。なければよろしいのです。
  71. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういうふうに申し上げたのでございますけれども、つまり二つのことを申し上げなければならなかったのだと思います。一つは、南ベトナムにはわが国はすでに賠償の支払いを終了しておりますわけでございます。それとまた別途に当時の北ベトナムとはほぼ同額の無償経済協力をするということでございましたから、統一されましたことによってその二つのことは別段新しい影響は受けないと、こう考えておりますという点と、全然別個に、サイゴンに対しまして、賠償でなく、その後にいろいろ経済協力をいたしております中で、いわば有償のものが債権として残っておる、それを統一国家がどのように承継するかしないかという問題が別途にございますと、こういうことを申し上げさしていただきます。
  72. 羽生三七

    ○羽生三七君 わかりました。  最後に、先ほど御報告もあり、また質問もありましたサンファンにおける先進諸国の会議についてですが、私は全然内容の個々の問題に触れる意思は毛頭ありませんが、宮澤外務大臣のお感じとして、インフレとデフレの共存をしておる今日のスタグフレーション一というようなもの、こういうものを完全に克服できる自信を持って各国は臨んでおったのか。あるいは、これはこういう表現が適当かどうかわかりませんが、資本主義体制の本質的な矛盾が露呈しておって解決が非常にむずかしいと考えておられたのか、そういうことは論議の中にあったのかどうか、その辺のところをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  73. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 資本主義体制と申し上げますと、それならばそうでない体制ではそういう問題がないかという議論に発展いたしそうでございますから、そうは申し上げずに、かなりざっくばらんに各国首脳が話をいたしておりますので、いわゆるわれわれの自由主義、民主主義陣営の中においては国民の欲望というものが常に常に拡大をしていくので、インフレがなく経済成長もし失業がなくなるというような理想的な状態というのは、やはりなかなか言うべくして容易なことではない。民主主義における何と申しますか、よく統治可能性とかという言葉を申しますけれども、そんなような自由な国民の無限な欲望というものに政治がどう対処するのかという問題はなかなかむずかしい問題だと、皆さんそういう苦労を一人一人していらっしゃるお人の会合なものでございますから、そういう空気は、何と申しますか、そうかたい話ではございませんけれども、なかなか悩みがあるなというようなことは二、三言っておられたように私聞いております。
  74. 田英夫

    ○田英夫君 七月三日付で、何人かの法律専門家の方々を中心とした人たちが、金大中事件関係をした元KCIAの三人の人を告発するということをいたしました。すでにそのことは皆さんも御存じだと思いますが、最初に伺いたいのは、法務省の方おいでになっていると思いますが、検事総長あての告発状でありますが、これについて政府としてはどういう取り扱いをなさるおつもりなのか、承りたい。
  75. 石山陽

    説明員(石山陽君) 本件告発は、七月三日に先生お話しのとおり最高検察庁の方で受理いたしました。同月六日に同庁から東京地方検察庁の方に移送の手続がとられまして、翌七日東京地検で正式に受理いたしております。  何分まだ告発いただいたばかりでございますので、具体的な方針を検察庁でどのように決めておるのかつまびらかではございませんが、いずれにいたしましても、この告発がありました経緯に、東京地検といたしましても、関係機関と密接な連絡をとりながら、事案の真相解明に努力してまいるだろうというふうに考えております。
  76. 田英夫

    ○田英夫君 通常の手続でいきますと、告発されて東京地検で受理されるということになれば、地検としていわゆる捜査に乗り出されることになるだろうと思いますし、関係当局と言えば、従来この問題の捜査をされていた警視庁、警察側とも御連絡なさるだろうと思います。そういうことに考えていいですか。
  77. 石山陽

    説明員(石山陽君) おっしゃるとおりでございます。
  78. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、これは実はこの三年間何回となくこの委員会で外交上の問題としても取り上げてきたことなんですけれども、いま改めて国民の一部の方からこうした告発という手続がとられた。改めて検察庁も捜査に乗り出すということになってくると、いわゆる外交上決着をつけたということになっている問題との関連は一体どういうふうになるか、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  79. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 外交上の決着をつけたということはそのとおりでございますけれども、犯罪の容疑についての捜査そのものは打ち切ったわけではございませんで、新しい事実等々があればなおそれはわが国の捜査当局が独自の立場において捜査を続けるということは、別段妨げになるものとは考えておりません。
  80. 田英夫

    ○田英夫君 当然そうなると思うわけですが、そこで、三人の人物は韓国の人であります。つまり外国人でありますから、この問題について捜査をするとなると、この三人の被告発人に対する取り調べということをやらざるを得ないと思いますが、そういうことになるんでしょうか。
  81. 石山陽

    説明員(石山陽君) 先生おっしゃいますとおり、告発を受けまして検察庁が具体的な捜査に乗り出すという段階になれば、その段階に応じまして適宜適切な捜査方針を立てそれを実行するということになるかと思います。この点につきましては先ほど御質問にもございましたように、本来この事件につきましてはつとに警察当局におきましても捜査を進められておることでございますので、その点十分に連絡をしながらいろいろと方針を立ててまいることだろうというふうに現段階ではお答えいたしておきたいと思います。
  82. 田英夫

    ○田英夫君 いま警察の調べのことが出ましたけれども、警察庁の方おいでになっていると思いますが、すでにこの三人のうち一人、金東雲については現場の指紋が採取され、かつてこの委員会で警察庁の刑事局長が、これはきわめて確度の高いものである、こういう答弁をされた記憶があります。そうなりますと、警察のいままでの取り調べの結果から見て、さらにこれをもう一つ先の段階に検察庁と協力して捜査を進められるということになれば、この三人についての取り調べということが必要になると思いますが、警察の方の御見解はいかがでしょうか。
  83. 中村安雄

    説明員(中村安雄君) ただいまおっしゃられましたように、現場に金東雲の指紋が残っておる、あるいは若干の目撃証人もいたということで、本件犯行に金東雲元一等書記官が加担をしておった疑いが非常に強いという方針のもとに捜査を進めてまいったわけでございましたが、事件が起こりましてその後に同一等書記官の出頭を求めたのでございますが、これは実現をいたしておりません。その後、外務省におきましても努力をされたわけでございますが、まだ実現はいたしていないわけでございます。警察といたしましては、今後告発を受けました文書等をさらに検討をいたしまして、いわゆる自前の捜査と申しますか、さらに捜査を進めていきたいとかように考えております。
  84. 田英夫

    ○田英夫君 今度の告発状によりますと、罪名罪状という項目に七つのことが並んでおります。逮捕監禁致傷、銃砲刀剣類所持等取締法違反、兇器準備集合、強盗、殺人未遂、国外移送略取、出入国管理令違反、そして詳しく罪状の内容が書かれているわけでありますが、そこでこれは捜査当局、警視庁ということになるでしょうが、従来の捜査を進められてこられた関係から金在権こと金基完、これは犯行当時、金大中事件当時韓国の駐日大使館の公使でありましたが、この人物は現在カリフォルニア州ロサンゼルスに住んでいるということの事実は御存じでしょうか。これはどなたでも結構ですが、御答弁がなければ御存じないということになるわけです。
  85. 中江要介

    説明員(中江要介君) 外務省に関する限り、いま田委員のおっしゃったような事実をつかんではおりません。
  86. 田英夫

    ○田英夫君 私どもの調べではロサンゼルス市に現在住んでおります。  そこで伺いたいのですが、この人物は韓国人でありますけれども、まあアメリカに住んでいるということになると、明治十九年の日米犯罪人引渡条約というのがありますが、これを適用して犯罪人、容疑者として、この条約の中にはまさに第二条の最初に、「引渡の要件となる犯罪」というところに「謀殺未遂犯」というのがあります。先ほどの告発の罪状にもまさに符合するわけですから、この条約を発動すれば、アメリカに住んでいる金在権こと金基完は少なくとも日本に出頭させるということが可能だと思いますが、この点はいかがでしょう。
  87. 中江要介

    説明員(中江要介君) 田委員御指摘の条約は逃亡犯罪人引渡条約のことだと思いますが、その前提として、まず先ほど申し上げましたように、金在権元公使がアメリカに存在するのかどうかということが私どものところでは確認されておらないということが一つと、もう一つは、仮にそういう状態でありましても、逃亡犯罪人引渡条約で言う逃亡犯罪人のカテゴリーに入るか、犯罪のカテゴリーはいろいろありましょうが、この条約で言う逃亡犯罪人のカテゴリーに入るかどうかということは、これは捜査当局の方の捜査の結果を見ませんと何とも申し上げることができない、まあこういうふうに思います。
  88. 田英夫

    ○田英夫君 これは正式の名前、大変古い条約ですから文章等も大変古風でありますけれども、「亜米利加合衆国トノ間ニ締結シタル両国犯罪人引渡条約」、こういうことになっておりまして、「日本皇帝陛下」というような言葉が使われている条約でありますけれども、これはいまアジア局長言われたようなことではなくて、内容読んで見ると、犯罪人の引き渡しということになっておると私は思うのですが、これはいかがでしょう。
  89. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私、どうも略称というか、俗称を申し上げたきらいがありますが、その犯罪人の引き渡しでありましても、日本から見ますと日本の国外に逃亡している犯罪人の引き渡しということで、私どもは通常そう言っていると、その程度のことでございます。
  90. 田英夫

    ○田英夫君 まあ、きょうはそういうことで政府のお考えを基本的なところをお伺いしたにとどまるわけですけれども、捜査当局といいますか、検察当局から捜査に乗り出すというお答えをいただきましたので、今後われわれの側も調査できる限りのことは調べまして、また、この委員会で質問の形で明らかにしたいと思います。  終わります。
  91. 塩出啓典

    塩出啓典君 まず最初に、北方領土の問題について二、三お尋ねをしたいと思います。  先般、私も外務委員会の視察団の一員として現地を訪問をしたわけでありますが、すでに戦後三十年を経過したわけでありますが、北方領土は依然として返還は実現をしていないわけであります。時がたてばたつほど、その当時この北方領土に住んでいた日本人の人たちもだんだん老齢化してきておるわけですし、また向こうにも、すでに戦後三十年もたてばその四島に産まれて育った人もだんだん出てくるのじゃないか、そういうようなことを考えますと、時がたてばたつほどこの領土返還は非常に困難になってくるんじゃないか、こういうような感じが私したわけでありますけれども、外務大臣としてどう考えますか。
  92. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 聞くところによりますと、これらの島にはソ連人がかなり在住をしておるようでございますから、したがって、この土地で生まれた人々というのがきっとその中から出ておるであろうと思われます。われわれはその主張は認めませんけれども、その人々はこれは自分の生まれた土地であるというふうに考えることはあるかもしれない。そういうことになりますと、問題の処理はなかなかむずかしいことになる、時がたつほど困難になるという心配は私ども持っておりまして、しかし、そうでありましょうとも、この土地がかつてわが国以外の領土であったことはないという事実がまたはっきりいたしておりますから、われわれとしてはやはり根気強く主張をすべきものである、われわれの主張に間違いはないというふうに考えておるわけでございます。
  93. 塩出啓典

    塩出啓典君 そこで三十年間を振り返ってみて、いろいろな経緯はあったんでしょうけれども、政府として、いまだ返っていないという現実がここにあるわけですけれども、そういうことに対してどういう反省をしているのか。まあ過ぎ去ったことの反省を聞いても何にもなりませんけれども、それがまた次への新たな出発の糧にもなっていくんじゃないかと思うのですけれども、そういう意味で率直に言ってどう反省しているのか。もちろんまあ宮澤外務大臣、期間はもうそういう限られた期間でありましてね、しかし政府としてどう反省しているのでしょうか。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まあ、国民的なこのような主張、期待が三十年間たっても実現をしないということは、政府としてもまことに残念なことであると申し上げなければならないと思います。私の短い時間の経験でございますけれども、わが国の主張が誤りであるということはかつて反論を受けたことはない。ソ連はそれに同意しない、あるいは現実的な解決が好ましいというような程度の話は聞いておりますけれども、わが国の主張の根拠が間違っておるという反論はかつて受けたことはないのでございますから、そうであるとすれば、何かこれを返還することがソ連にとって、まあ損得という場合の得であると、そういうそろばんが生まれましたときにはソ連は返還するにやぶさかでないであろう、理屈は幾らでもそれに対してソ連は考えるでございましょうから、そういうやはり客観的な情勢をつくっていくということが最も有効な方法ではないか。簡単につくれるとは思いませんけれども、しかし日ソ間という、わが国経済的には非常に力のある国になってまいりましたから、その間にこのようなわだかまりの種があるということが大きな目で見てソ連にとっても利益ではないというふうに判断されるような局面になりましたら、ああいう国でございますから、またそれなりの、現実的というだけでもよろしいわけでございます、返すのが現実的な処理であるというのならそれで構いませんので、そういうことになる可能性が決してないわけではない、われわれとしてはそういうものをつくっていきたいというふうに考えております。
  95. 塩出啓典

    塩出啓典君 そこで、私たちも非常にいままでの歴史を踏まえ、また現実の時点を考えてみても、やはり返した方がソ連のためにもなるんじゃないか。私がもしソ連の大統領であり首相であるならば、もうあっさり返しちゃおうと思うのですけれども、なかなか返さない、そういう理由がどこにあるのか。先ほど申しましたように、返さない方が得だという、いまそういう判断じゃないかと思うんですね。まあ少々何だかんだ言われても返さない方が得だと、そういういま判断でおるわけでありますが、いま返さない本当の理由は何か。  私は、一つソ連の中央が余りこの現地の問題、あるいは日本の国民感情を本当に知らないのじゃないか、そういうことも一つ意見ではあると思いますし、また一つには米軍基地を、あそこを日本に返還して日米安保条約に基づいてまた基地でもつくられたら非常に困る、そういうのもおそれているのじゃないかという意見もありますし、またソ連日本——この北方領土だけではない、私いろいろもらいました資料によりますと、かなり各地においてそういう領土問題があるわけでありまして、こういうところにまで波及するのではないか。まあ日本に返還したためにほかの領土問題にまで波及をする、そういうことをおそれて返還しないのではないか、こういうようなことも言われておるわけであります。まあほかにもあるかもしれませんけれどもね。われわれそういう点で非常にソ連の真意をつかみかねておるわけで、決してソ連人はそう悪い人間じゃない、話せばわかる人間だと私も思っておったんでありますが、こういう状態が続くと、これは認識をまた改めざるを得ないわけであります。外務省としては、なぜソ連が返還をしないのか、その理由は那辺にあるか、どう掌握しておりますか。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いま塩出委員がお挙げになりましたようなことは、おのおのきっと一つ一つやはり理由になっておるのであろうと存じますけれども、もう一つ、最近でございますが、ことしでございますか、日本の国民感情を読み誤っているんではないか、一部の人たちだけの主張であるというようなことを思っているのではないか、そうではないという話をしましたときに、ソ連にはやっぱりソ連の国民感情があるというようなことを言うわけでございます。世論があるというようなことを申します。そうしますと、少し立ち入って言えば、返還という決断をするということになると、ソ連国民にそれを説明し切らなきゃならぬという問題が、ああいう国でも恐らくそれはそれなりにあるんだろうと思うんです。でございますから、まあ全体としてこれはソ連にとって返した方が得なんだという説明ができるようになれば返すということが決して考えられないわけではない。何かそういう、まあ簡単に申せば三十年前に明らかに力の強い者がとった。現在でも力づくでやれば、これは自分の方が強いということは間違いございませんでしょうから、それを何の理由をもって返すんだというようなことについての、国民感情と言いましたけれども、あるいはそれは指導層の中にもいろいろな意見があり得るんでございましょうし、国民にもまたあるんでございましょう。そういう問題も一つあるのかもしれないと思っております。
  97. 塩出啓典

    塩出啓典君 まあ昔から医者が病気を治すには、やっぱり病の原因を知らなきゃ病気は治らぬ。いま私は三つの理由を挙げたわけです。外務大臣はそれはいずれも理由であろう。そのほかにこういう国民感情もあると。やっぱりそれぞれ問題によってわれわれがソ連に説得していくあり方というのは違ってくるわけですね。私たちはソ連というのは民主主義というか、国民の世論よりも中央の意向が支配する、言うならば上意下達の国である。そういうことであるならば、これはもうコスイギンなりブレジネフなり、そういうところにやはり現地の事情がわからないのかもしれない。それで、日本の大使館におる連中は、心の中ではやっぱり北方領土は日本に返したことがいいとはわかっていても、そういうことをもし言い出すならばすぐ本国へ送還ということで、日本の外務省においても本省の意向というものは出先は受けなくちゃいかぬわけですから、そういうこと考えると、われわれは中央にもっと現地のことを伝え、日本人のことを伝えていかなくちゃならぬ。こういうように、その原因によって打つべき手は違ってくると思うんですね。  そういうことで、もう少し外務省として、なぜソ連北方領土を返還しないのか、また、返還するにはどのような状態に持っていかなければいけないか、こういうスケジュールというか、そういうものをつくって着々とやっていかなかったら、結局、日本の主張は間違ってない間違ってないということを言い続けて百年たってもこれは何にもならぬわけでありまして、返ってこぬものであるならば、もう潔くあきらめて、ほかに道を求めるべきじゃないかと思うのですよ、もしどうしてもだめなものであるならば。そこまで私は、ソ連の国といえども、これは話せばわかる民族である。そういう意味で、返還をしない本当の理由はどこにあるのか、ぼくはやっぱり外務省としてそういうプロジェクトチームをひそかにつくって、もう少しやはり根本的に取り組んでいく、こういう姿勢が非常に足りない。これが今日まで返還されなかった一つの大きな原因である。現地の人から見ればやっぱり中央は真剣でない。  私自身も初めてあそこへ参りまして、東京で見る感じと、あの国境の線において本当に国境の厳しさと申しますか、また北方領土に対する現地の人の執念というものは、やっぱりこれは行ってみないとわからないわけです。そういう点、私も政治家の一人として非常に無責任だったなと、そういうことを深く反省をして帰ってきたわけです。そういう外務省としての北方領土についての執念を燃やして、まず、なぜ返還しないかということをもう少しぼくは研究してもらいたい。それは外務省の責任だと思うのですけれども、その点どうですか。
  98. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは私もごもっともなお話だと思います。それでソ連だって話せばわかるんだと言われますときに、その話すということが、私もわずかな経験でございますけれども、どうもわれわれの考えている道義であるとかリーズンであるとかいうようなことは、こういう場合には、ソ連をわからせる道具としては余り有力ではないようでありまして、一つは力である、あるいはもう一つは利害であるというようなことになるのではないだろうか。力をもってソ連に納得させるということは、これはわが国ではできないことでありますし、やってはならないことであるといたしますと、結局この問題がわだかまって日ソ関係がうまくいかないということはソ連全体の国益にとって損である、何かそういう状況においてならば、これはもうすぐに返した方が得だというような、そういう論理が出てくるんではないだろうか。そこまでの何といいますか、環境ができてくれば問題が展開するんではないかなと思いまして、それも簡単なことではありませんけれども、やはり日本とこれだけわだかまりがあってはどうもソ連としてはまずい、こういうような環境に持っていくということではないだろうかとかねて思っておりますんですが、しかし、それがすぐにそういう環境ができるかというと、簡単にできるわけではない。しかし、私ども確かに塩出委員の言われますように、向こうの立場といいますか、向こうの側に立ってみてそういう条件をつくり出していくということはしょっちゅう考えなきゃならないことだと思います。
  99. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま大臣が、ソ連は道理とかそういう正義ということよりも力とか利害の民族であると。私はそういうことも含めて、ソ連民族はいかなる民族かという研究からしていかなければこの北方領土は返ってこないんじゃないかと思うんです。そういうことで、本当に力と利害でなければ返さないというんであるならば、それなりの日本の国の、通産省もあるいはまた外務省もやはりその方向に国が力を合わしてやっていかなければいかぬわけでありまして、そういう意味で、ただ外務大臣がここで意見を述べるだけでは効果ないわけでありまして、それを何とかやはり強力に進めていく道を考えていかなければいけないんじゃないか。これは外務省、また総理府も関係する問題でしょうけれども、ぜひひとつ考えていただきたいと思うんです。  それで、先ほども亀井委員報告にもありましたように、外務大臣にぜひ北方領土に来てもらいたい、そういう要望があるわけであります。現地の話では、明治時代に井上馨が二回も来た。あの交通不便なときに二回も来たのに、いまの外務大臣は戦後だれも来ないじゃないかという話があったわけであります。まあ私は、何も形式的に行ってもこれは意味のないことであって、現地へ行くということは、やっぱりそこに東京で見るのと、あの国境の町で本当に日夜命を張って苦労しているそういう漁民の苦労、また、そういう人たちの北方領土に対する一つのもう執念と申しますか、やっぱりそういうものがいろんなことを行っていく人になければ物事は成功しないんじゃないか。  先ほどもコンブの話が出ましたけれども、私も現地へ行って、もらった本を帰りに読んでおったわけでありますが、高碕達之助がこのコンブの問題を結論出したわけですけれども、あの納沙布岬に立って、本当に漁民の人は結局はある程度向こうへ行かなければ生活はできない、向こうへ行けばどんどん拿捕される。そういう漁民の苦労の姿を本当に高碕達之助がその気持ちを思って、夕暮れの納沙布岬で一人涙を流した。そうして、これを何とかしなきゃならないという、この一人の高碕さんの決意が、結局いろんな障害を乗り越えて一歩前進であるコンブ協定まで持っていったわけですね。そういう話を私読みまして非常に感動したわけですけれども、やっぱり一人の高碕達之助という民間人がそれだけの決意を持ってもあれだけの前進ができたわけですから、そういう意味でで本当に決意に立てば、日本の政府が、またわれわれ政治家がそれなりの決意に全部が立っていくならば、北方領土の返還も十分可能な問題である。そういう意味でやはり外務大臣にはぜひ来てもらいたいという現地要望じゃないかと私なりに判断したわけですけれども、そういう意味外務大臣行けばソ連に対していろいろ刺激を与えるという、いろいろ問題もあるでしょうけれども、私はこれはやはり日本の大きな立場から考えても速やかに現地へ行くべきである、行くことが返還への第一歩である、こういう感じがするんですけれども、その点はどうでしょうか。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点につきましては、先般委員長からわざわざ御伝達もございましたし、先ほど亀井委員の御報告も拝聴いたしておりまして、そういう機会をいままで持っておりませんで済まないことだと実は考えておるわけでございます。できるだけ早い機会を見つけなければならないと思っております。
  101. 塩出啓典

    塩出啓典君 その点はひとつ先般参りました各委員の全体の要望でもありますので、本当に速やかに実行されるように強く要望しておきます。  それから、今回ソ連の大使も私の知識ではかなり大物が来ているんじゃないか、このように考えておるわけでありますが、やはり代々のソ連大使あるいは日本ソ連大使館におる外交官、そういうような人たちが、まあこれは一番日本人よく知っているわけですけれども、その人たちが本国へ帰るときに、やっぱり北方領土は日本に返した方が日本のためなんだと、本心は。そういうことは本国へ行ってうかうか言えないけれども、おれの本当の気持ちはそうなんだというような気持ちにして本国へ帰したのかどうか、そこまでやはり外務省はソ連大使館に対して接触してますか。自信ありますか。きのう来た外務省の担当の課長さんは自信があるとは言っていたけれども、これは自信ないとは課長さん言えないんじゃないかと思うんだけれども、外務大臣どうですか。
  102. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはかなり接触をしておると思いますし、私自身も、いまの大使はまだ日が浅うございますのでほとんど存じませんけれども、前の大使とはかなりいろんな話を二人だけでいたしておるわけでございますが、ただこれは塩出委員もよく御承知のとおり、ああいう国はわれわれのような国と違いまして、こういうむずかしい案件のときに政府のたてまえを述べる、しかし、何かのときに実は自分はこう思っているんだというようなことを自由主義、民主主義の国家ではわりに楽に申しますですが、決してそういうことを実は申しませんので、つまりもう毎日毎日が公に決められた立場の発表であり代表であるという、そういうようなたてまえのようでございまして、その本心というものを——まあ本心がございますのですか、ございませんかも実はしたがってよくわからぬわけでございますけれども、ついぞ聞かされたことはない。その辺はなかなか先方もいろいろございますんでしょうと思います。接触はよくいたしておりますけれども。
  103. 塩出啓典

    塩出啓典君 まあそういうことで向こうも本心を言わないから、どこまでPRが徹底したのか確かめようがないわけでしょうけれども、外務委員会の今回の調査団も、委員長中心にわれわれもやっぱりソ連の大使に会って、あるいはソ連の大使館の人にもわれわれもできるだけ接触をして、それも一回、二回でなしに、そうしてやはりまず日本におるそういう人たちが口に出す出さぬはともかくとしても、そういう人たちも本国へ帰ればやがてはポストにつくわけですから、そういう人たちがやっぱりソ連北方領土返した方がソ連のためだと、そういう骨の髄まで、口には出さねどそういう気持ちで帰るように努力をしていかなければいけないんじゃないか、こういうことを実は話し合って帰ってきたわけなんですけれども、そういう意味で今回ソ連の大使も元大臣であり、恐らくソ連政府に対してもかなりの発言権ある人ですから、願わくはやはり現大使が日本にいるときに、そして外務大臣宮澤さんのときに、そうしてしかもちょうど参議院の委員長北海道出身の高橋委員長ですから、このときにでも一つの何らかのやはりめどと申しますか、これならいけるというものを持つところまでやっぱり何とか持っていかなくちゃいけないんじゃないかと、そういうことを実は話して、皆帰ってきたわけなんですけれども、そういう意味外務委員会としてもいままでの何倍もの熱意でこの問題に取り組んでいく決意でございますので、ひとつ外務大臣としてもいまの大使のいる間に、ともかく何らかのめどと申しますか、これならいけるというものをつかめるところまで持っていかなければ、いまのようにずるずるして結局三十年、五十年たつということはむしろよくないことじゃないか、私はそのことを強く要望したいんですけれども、その点はどうでしょうか。
  104. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに、これは時間がたてば問題がよくなるという性格のものでございませんので、むしろ先ほど塩出委員の言われましたように、よくないファクターが幾つかあるわけでございますから、絶えずチャンスを見つけて少しでも問題を前進さしていくように考えなければならないと思っております。
  105. 塩出啓典

    塩出啓典君 あといろいろ細かい問題もあったわけでありますが、これはもう時間もございませんので、また後日個々にお願いしていきたいと思います。  最後に、先ほどからサンフアン会議報告がありました。すでにランブイエに続いて今回二回目でありますが、それなりに首脳同士の近親感と信頼感が深まった。私はその中でどういう、討議がなされた内容も大事ですけれども、一国を支配する首脳お互いに信頼し、近親感を持つことは非常に大事じゃないかと思うのでありますが、ただ私が心配するのは、そういう先進国の会合ソ連に対する、あるいは東側陣営に対する対決のそういうものになってはいけないんじゃないか、先ほど宮澤外務大臣は必ずしもそうではなかったとか、いろいろ今度の会議が必ずしも東側に対決するものではないということをここで強調されたように思うのですけれども、その裏には私はそういう危険性もあるんじゃないか、その点を十分心していかなければいけないんじゃないか、そういう点は率直に言ってどうでしょう。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、私は塩出委員の言われるとおりだと考えるのでございます。つまり、わが国のような立場の国はもとよりそうでございますけれども、一番ソ連とある意味で対抗し得る、それだけの力を持っている国としてアメリカの場合を考えてみましても、やはりデタントというようなものが考えの基本になっていて、繰り返すようでございますけれども、ああやって小麦なり穀物なりも六百万トンも八百万トンも出す、あるいは政府としては少なくとも最恵国待遇までいきたい、資本の交流もあるといったような状況の方が、東側を締め出してしまうという状況よりはむしろ世界の平和のためにいいのではないかという思考方式をとっておりますから、いま選挙でリーガンというような候補者の言うことはちょっと別といたしまして、これは民主党のカーター候補も似たような考えをしておるわけでございますから、したがって、アメリカですらと申しますか、それだけの力のあるアメリカですらそういう東側を締め出して追いやってしまうということの危険をむしろ感じておるのが今日の世界であろうと思いますので、したがいまして、このサンフアン会議がそのようなトーンでなかったということは、私は別段不思議とするには当たらない。むしろ経済面でも何かの接触を持ち続けることの方がいいという考え方も相当あるというふうに、これはごく客観的に私は会議をそういうふうに感じてまいったわけでございます。
  107. 塩出啓典

    塩出啓典君 先般の新聞報道ですけれども、オーストラリアの首脳が中国へ参りまして、そのときの秘密議事録、コピーですか、漏れちゃって、米中日豪の四国同盟をつくる、そしてソ連の侵出に対抗していく。先ほどお話がありましたように、ソ連は軍事的にもだんだん南下してきているし、経済的にもいわゆる東南アジアの国々への接触を強めておるわけでありますが、そういう中で、それに対決するために四国同盟をつくるというような話ですけれども、こういう問題についてわれわれは賛成すべきではない。アジアの中に米ソの対決や中ソの対決を余り持ち込むべきではない、私はそう思うんですけれども、外務大臣ソ連問題についての見解はどうですか。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的に塩出委員の言われるように考えておりまして、恐らくオーストラリアの首相が言っておられますことの発想は、ソ連という国は、こちらが強ければ向こうは向こうなりの対処を考える。しかし、相手が徹底的に弱く自分の方が徹底的に強ければ、これは力の論理というものを遠慮なく発揮する国である、そういう面を見て言っておられるんであろうと思います。そういう面はございますんでしょうから、アメリカ自身にもそういう一面の考え方はございまして、つまり、強い立場からでなければ平和が維持できないと申しますか、そういうところは私はあるんであろうと思います。しかし、それだけでは平和がまた維持できないというところで、デタントであるとか穀物協定であるとかいうものができていくわけでございますから、やはりこの両面がなければいけないんであろうと思います。わが国なんかの場合には、これはわが国の憲法その他から考えまして、つまり軍事的にソ連に対抗をしていくということは、私は決してわが国の国益に沿うものではないと思います。
  109. 塩出啓典

    塩出啓典君 もう時間もありませんが、最後に、先ほども日米安全保障協議委員会の問題がいろいろ出てまいりまして、いままでの質問の中でも、太平洋地域における米海軍の力は非常にむしろ後退しているんじゃないか、ソ連の方は非常に増強されてきている。そういう中で、前々からこの委員会でも問題になりましたように、アメリカの考え方は平和というものは力の対決で、その力のバランスで保たれていくんだ、そういう考えでありまして、恐らくわが国の考え方もそれに従わざるを得ないという考えですね。そうなってくると、結局ソ連の力はだんだん強くなってきておる、アメリカの方は相対的に余り強くするわけにはいかぬ。そうなってくると、結局日本に対して防衛力をもっと増強してくれ、あるいはそういうところから、われわれも今回のこの防衛協力委員会もできてきたんじゃないかと、こういう感じもするわけですね。結局そういう力の対決という行き方では、いままでは、アメリカが非常に強かったときにはそのかさの下でよかったわけですよ。これから将来考えると、われわれはそういう力の対決という考え方、力のバランスで平和が保たれる、こういうことではやっぱりどうしても平和に限界があると言わざるを得ない。そういう意味で私はこの首脳会談、三木さんは今度行って、この次は日本でやってくれと、こういう提案をされたことは、われわれは非常にそういう勇気ある発言はいいと思うんでありますが、それはそれでいいんですけれども、むしろさらに一歩進んで東西の首脳会談、私は核防の委員会のときに外務大臣、三木さんに申し上げたように、たとえばこの日本の地において核保有国の首脳会談をひとつ開く。それはそう大した議題がなくてもいいと思うんですよ。今度のランブイエだってサンフアンだって大した議題ないわけで、ただ集まるだけで、オリンピックみたいに参加することに意義あるというように、やっぱり首脳が集まるというところにまず一歩があるわけですから、そこでお互い信頼感が生まれて、やっぱりソ連人も人間だったと、また向こうもやっぱり日本人は人間だったということがわかれば、それがまたあらゆる問題の出発になっていくわけでありまして、私は日本政府としてはただサンフアンランブイエの続きの首脳会談をやるだけじゃなしに、もう一歩やはり日本という立場認識をして、ぜひひとつもう一歩前進をした首脳会談、これを三回もやっちゃいかぬと言うんじゃないですけれども、やはり日本の総理、日本政府としては、これはいまやれと言うんじゃありませんけれども、ぜひひとつそういう東西の間の首脳会談あるいは核保有国の首脳会談、そういうものをぜひやる方向で努力してもら  いたい。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに、力の均衡によって保たれておる平和は真実の平和ではないと言われますことは、そのとおりであろうと思います。でございますから、そういうことをやりながら、同時に、戦争がなるべくできないような状態をつくり出すという意味で、経済的な接触、関係を深めるということが役に立っているのではないんだろうか。ただ、とことんの信頼関係があるわけじゃございませんから、万一戦争のときには負けるような態勢をとっているわけにはいかない。またしたがって、そういう準備をすることによって戦争というもののいわゆる抑止力になるという、こういう両面が私は米ソの関係にあるのであろうと思います。もちろん、わが国の場合にはこれは全く事情が違うわけでありまして、先ほど防衛小委員会のことにちょっと御言及になりましたが、これはもう米ソの大きな力のバランスの上で、わが国は飛び上がったところでそのバランスを変えるような要因になり得るとはとうてい思えませんので、これはもっぱらわが国のいわゆる緊急時の自衛を考えましてどう考えておくかというだけの性格のものでございます。  それから、核問題につきましては前国会でもいろいろ御議論がございました。私どもとしては、何とかして核保有国というものを、いずれは核兵器の縮小廃絶へという努力はもう絶えず、今度はもうおかげで加盟国となりましたので続けてまいりたいと思っています。
  111. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま言った首脳会談をそういう先進国だけじゃなしに、もっと東西を含めての首脳会談を日本政府、三木さんが提案するように外務大臣が進言する考えはないかということ、その件はどうですか。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、首脳会談といまおっしゃいましたのは、核兵器というようなことで必ずしもなく……
  113. 塩出啓典

    塩出啓典君 なくてもですね、それも含めて。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 核兵器については先ほど申し上げたわけでございますけれども、ランブイエとかサンフアンとかいうようなものの会議、それはなかなかむずかしいところだと思いますのは、何もここに集まりました七カ国だけが大きな顔をするという資格があるわけでもありませんし、また、よそからもそういう批判をぼつぼつ寄せられているようなことでございますから、おっしゃることもよくわかるわけでございますけれども、ただ数が多くなりますと、結局これはガットの会合のようなものになったりOECDになったり、まあもっといけば国連のようになってしまうというようなところがございまして、その辺のところは、どこが適正な規模であるのかというのはいろいろにやはり考えてみなけりゃならないことだと思います。
  115. 立木洋

    立木洋君 昨日開かれました日米安保協議委員会日米防衛協力小委員会というのが設置されたということですが、この点については午前中から大臣も若干お話しになっておりますけれども、最初に、この日米防衛協力の小委員会安保条約上どういう性格を持つのかということが一点と、それからこの小委員会協議される範囲、内容等々についてはどのようになっているかということをまず最初にお尋ねしたいと思います。
  116. 中島敏次郎

    説明員中島敏次郎君) 第一点の安保条約上の性格の点でございますが、この点につきまして私から御答弁申し上げます。  この小委員会安全保障協議委員会の小委員会でございまして、安全保障協議委員会自体の安保条約上の根拠は、第四条の随時協議委員会として組織化したものというふうに考えます。
  117. 浅尾新一郎

    説明員浅尾新一郎君) 第二点のお尋ねの件でございますけれども、この点については安保協議委員会を行いましたあとの新聞発表にも述べてございますように、当委員会においては、まず目的としては、安保条約及びその関連取り決めの目的を効果的に達成するためという目的を掲げております。そして、その目的を達成するために日米間の防衛協力のあり方について研究協議するということでございまして、具体的に今後どういうことを取り上げていくかどうかということは、今後小委員会自身が決定していくということになっております。
  118. 立木洋

    立木洋君 昨日の夕刊、けさの新聞でもいろいろ書かれておりますけれども、この協議をしていく結果として、何らかの協定あるいは協定に準じる合意書みたいなものが作成される見通しなのかどうなのか、その点はどうでしょう。
  119. 浅尾新一郎

    説明員浅尾新一郎君) この小委員会は、ただいま申し上げましたように、あくまでも研究協議する場でございまして、その成果については安保委員会報告するということになっております。そしてそのあとどういう措置を必要とするかどうかは、その報告を受けて決定することになりますので、協定を結ぶとかどうとかということは、いまのところまだどういうふうな形にするかということまでは詰めておりません。
  120. 立木洋

    立木洋君 有事の際の共同作戦計画について、いわゆる緊急の場合の話し合いをする。お互いに言いっ放しで、はいそれで終わりということにはならなくて、必ず協議委員会の方に報告される、そして何らかのいわゆる取り決めがなされないと実際にはいざという場合には全く役に立たないものになる、言いっ放しでは。だから、必ずそういう何らかの取り決めがなされるということは一応考えておられるのではないでしょうか。
  121. 浅尾新一郎

    説明員浅尾新一郎君) まず私の方から最初に御答弁いたします。  小委員会発足したばかりでございますので、どういう結論になるかということをまず見てからということで、現在のところそういう取り決めをつくるとかつくらないとか、断定的にまだ言えない段階ではないかと思います。
  122. 丸山昂

    説明員丸山昂君) いまのところ私ども了解しておりますのは、この小委員会は文字どおり研究協議する場でございまして、ここで取り決めをやるということはない。ここで研究協議されました結果は、いまお話がございましたように、安保協議委員会報告をされ、そしてそれぞれの政府においてそれに対する措置を考える、こういうことになっておるわけでございまして、具体的に共同の作戦計画と言いますか、こういうものにつきましては、私どもは御案内のように統合幕僚会議の年次の防衛計画というものを年々会計年度で立てております。それで、この統合防衛計画は、防衛庁長官の指示に基づいて行うものでございまして、ただいまの研究協議の結果、実際に具体化すべき中身というのは、防衛庁長官の指示として統合幕僚会議に指示が行われる。それに基づいて年度の防衛計画を立てるということで具体化していくということになるかと思います。  それから、アメリカ側におきましては、それに基づいて太平洋あるいはアメリカの統合参謀本部というようなレベルでのその年度の作戦計画、これも恐らくそれぞれ年度の作戦計画を持っておるわけでございまして、その作戦計画を樹立する場合に、ここでの研究協議の結果というものを具体的に生かしていくというようなことになるのではないかと思いますが、これは私どもがそう考えているだけでございまして、これから現実に小委員会を開きまして、その点について日米間ではっきりした合意があれば、いま私が申し上げましたような線で進むものというふうに理解をいたしております。
  123. 立木洋

    立木洋君 そうすると、いま参事官の方ですかが話されたように、いまのところそういう取り決めを行うかどうかということはまだ決まっていない、今後の話し合いの結果だということですが、事実上それは安保協議会に報告された後、そういう取り決めが行われるという可能性を決して排除したわけではないわけですね。そういうふうに理解していいわけですね。
  124. 浅尾新一郎

    説明員浅尾新一郎君) そのとおりでございます。
  125. 立木洋

    立木洋君 そうすると、この小委員会協議するというのは九月から始まるわけですが、事実上話し合いがどういうふうにやられていくのか、あるいは話し合いがなされた都度報告されるのか、一定期間をめどにして協議された内容を、一応小委員会で何らかの形に報告の文書にまとめてそれを協議委員会報告するという形をとるのかどうなのか。そういう形をとるとした場合には一定のめどというのはどういうふうに、話し合いの区切りをつけるめどというのはどういうふうに考えておられますか。
  126. 丸山昂

    説明員丸山昂君) ただいまの御指摘の点も含めまして、これから最初の段階に開かれますいわゆるオーガナイジングミーティングでそういう問題をセットしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  127. 立木洋

    立木洋君 これもいろいろ報道されているわけですけれども、この小委員会での協議の内容、先ほど範囲と対象ということを質問したわけですが、お答えが明確でなかったわけですから重ねてお聞きしたいんですが、協議の内容というのは安保条約の五条に限らない、六条の問題も含めて協議を行うというふうな趣旨の説明もありますし、日本側としてはその重点を五条に置きたい。しかし、アメリカ側としてはそれと関連して六条の問題も協議したいというふうなことが述べられておりますけれども、その辺についてはどうなるのか。  それから、六条の問題を中心にするしないにかかわりなく、この小委員会で取り上げるとすると、六条の問題で話し合う内容というのはどういうことになるといまの時点お考えになっておられるか。
  128. 浅尾新一郎

    説明員浅尾新一郎君) 先ほど私お答えいたしましたので最初にお答えさせていただきますけれども、まずこの小委員会目的が、安保条約目的を効果的に達成するためという目的を持っておりますので、この委員会で討議するのは五条と六条と両方の討議が当然されると思います。ただし、後で発表文に書いてございますように、共同対処方針をとるのは五条の場合に限られる。これは安保条約上からも当然そういう結論になるかと思います。
  129. 立木洋

    立木洋君 六条の問題が話し合いになるとする場合、どういう問題が話し合いの対象になるといまの時点お考えになっているのか、日本側としては。
  130. 浅尾新一郎

    説明員浅尾新一郎君) これから取り上げていくわけでございまして、当然取り上げ方としては五条の問題を先に取り上げていくというぐあいになっております。六条の場合にどういう問題が取り上げられるか、これはまさにこれからの話し合いで、アメリカ側がどういうふうに考えておるかということは別にいたしまして、私たちが考えておるのは、やはり基地の使用の問題ということになるかと思います。
  131. 立木洋

    立木洋君 これはもう読み上げるまでもなく、第五条と第六条というのは明確に内容が異なっておるということは明らかなわけですが、このように区別されている点、いままで問題にされてきたのは日米の防衛協力、当初は防衛分担というふうなこともありましたけれども、後で防衛協力というふうになってきたわけですが、そうした場合に、有事の際の共同作戦ということが狭い意味では問題になる。その場合に、それを中心的に協議していく小委員会で、いわゆる米軍日本基地の使用、施設とか基地の使用の問題をあわせて協議していくというのは一体どういう意味があるのか、その点についてはどのようにお考えですか。アメリカ側が要求している意図についての局長のお考えでも結構ですし、あるいはこの問題がどういう意味を持っているのかという内容でも結構です。
  132. 丸山昂

    説明員丸山昂君) 繰り返して申し上げておりますように、アメリカから本件について特別の要求なりあるいは要請なりというようなものがあったことはございません。本件の小委員会を設けるについてどのような任務、それからどういうテーマについて協議をしていくかという主要な大筋について事務的な合意を見ているものでございまして、具体的にはこれから両者の間で運営の方法、具体的なテーマについては詰めてまいるということになっておるわけでございます。  それで、いま御質問の御趣旨でございますが、一応私ども、私どもと申しますのは防衛庁立場から考えました場合には、第五条の事態において日本自衛隊アメリカ軍との間に共同行動をやりまして対処する、そのときの作戦行動といいますか、こういったものについての調整を行うということが主たる目的になるかと思います。  それから、いま六条の問題をお話しになったわけでございますが、六条については、御案内のように、日本の安全と極東の平和と安全のために、日本の施設・区域を使用することができるというアメリカ立場、それから日本からすればいわゆる基地提供義務というものが六条によって発生するわけでございますけれども、これによってアメリカが当然——第五条の問題に関連をいたしましても、現在の在日米軍に当然支援、増援という形で部隊の再展開ということは有事の場合には考えられるわけでございまして、その場合、わが自衛隊の持っております基地に再展開というようなことも当然実際問題としては考えなければならない問題だと思います。その場合に、どのような基地にどのような種類の部隊を展開をするかということをあらかじめ詰めておくということは、これは有事のときに対する対応策としては当然平生からやっておかなければならない問題である。そのためにまたどのような措置を講じなければならないか。その措置を講ずるということは、現在講じなくても有事の場合において講じなければならない幾つかの措置が考えられると思うわけですが、そういう措置があるということを双方で認識をしておくということも、これも大事なことであるというふうに思うわけでございます。  この基地を提供するということは、これは私ども防衛庁が単独にできる問題ではございませんで、日本政府として決断をし措置をすることでございまして、いまたまたま自衛隊がある基地を持っておるということ、そしてそこに展開をする可能性が、現在自衛隊が持っている以外のところにアメリカ軍の展開ということが考えられるならまたその問題は別でございますけれども、おそらく現実の問題としては私どもの持っておりますところに再展開ということになるのではないかというふうに考えられるわけでございますので、そういった再展開の場合の、現に基地を保有している立場にある自衛隊がその受け入れのためにどのような措置を考えておかなければならないかというような問題に関連していることである、というふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。
  133. 立木洋

    立木洋君 いまの局長のお話で重要な幾つかの問題があると思うんですが、第五条の場合でいえば、これは「日本国の施政の下にある領域における」云々と、こうなっておるわけです、限定してあります。第六条でいえば「極東における」云々と、こういうふうに明確に地域的にも拡大されておる。これが事実上、有事有事という言葉を使われますけれども、一体有事とはどこの有事を言うのかという問題にもなりますし、つまり五条の協議の問題に関して、この協議自身きわめて重大である、われわれは賛成はいたしませんけれども、しかし、六条との関連で行うことによってより一層明確にこの協議委員会委員会で行われる内容の危険性というのは私はあると思うんですよ。  それで、お伺いしたいわけですけれども、この五条で「日本の施政の下にある領域における」云云というふうに述べていますけれども、また、六〇年代にいろいろ安保問題について論議された場合には、岸内閣の当時でしたけれども、政府の答弁によりますと、この五条の発動の問題に関して、領土外に出ることは絶対にない、あるいはその後に、一部出ていくことはあり得る、こういうふうな表現になっております。だけど、昨年の六月衆議院あるいは参議院での外務委員会等、内閣委員会等々で丸山局長の答弁によりますと、いまや日本の施政下における領域ではなくて、第五条の発動も公海上にも当然出ていくということがはっきりされているわけですけれども、そうすると、もうこの安保条約の第五条の解釈自身が日本の領域内ではなくて、領域外においてもアメリカを防衛する、そういうふうな共同作戦の内容になっておるというふうに理解していいわけですか。
  134. 丸山昂

    説明員丸山昂君) 第五条で、わが国の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃ということは、いわゆる第三国からいたします武力攻撃が日本の施政下にある領域において行われるということでございまして、五条の発動の要件をここに述べておるというふうに私どもは考えておるわけでございます。問題はこの武力攻撃に対して当方が、まずわが国の場合に限って申し上げるわけでございますが、共同行動ということを抜きにして、わが国に対する武力攻撃があり、それに対して日本の自衛権の発動という形で具体的にそれが領域内だけの活動に限られるかということになりますと、これはもうたびたびいままで国会でも御答弁申し上げておりますように、必ずしも領海、領空、領域に限られるものではない。必要な限度において公海公空に及ぶこともあり得るのだという御説明を申し上げておるわけでございます。  それから、アメリカにとりましては、これは何らそういう制約があるわけでないことは御承知のとおりだと思います。  そこで、領海領空に及ぶという趣旨は、わが国に対する武力攻撃に対してわが国の自衛権の発動として当然そこに及ぶことがあるのだ。したがって、五条の場合もその例外ではないということを申し上げているわけでございます。
  135. 立木洋

    立木洋君 発動の条件としてはここに述べられているとおりです。私はそれに関連して述べたのは、六〇年当時に述べたのでは、領土外に出ることは絶対にない、出ても一部だという総理の答弁があるわけですね。これは六〇年の四月の十一日ですか。ところが、先般の局長の答弁、あるいは坂田防衛庁長官の答弁等によると、日本共同作戦の範囲はいわゆる領海領空だけではなくて公海公空にも及ぶと、その距離は、その範囲は、わが国周辺の数百海里を考えているというふうに述べられておる。それから、公海上わが国の防衛に必要な限度内でアメリカ艦艇、航空機を防衛することに結果的にはなるというふうな答弁もあるわけですね。これは局長自身が述べられておるわけですから御記憶にあると思いますけれども。ですから、そうすると、その発動の条件ではなくて、それを実際に運用する場合に、六〇年当時に政府が考えておった考え方よりも、その運用の範囲というのは拡大解釈されておるというふうに理解するのは、私はいま述べた内容から見て妥当な理解の仕方だというふうに考えるのですが、それでいいわけですか。
  136. 丸山昂

    説明員丸山昂君) まず、昨年におきます私どもの答弁で、公海公空に及ぶことがあり得るということを申し上げておるわけでございまして、それが何百海里になるということは申し上げてないと思います。それは本来防衛に必要な限度において公海公空に及ぶわけでございますから、その場合に何百海里という意味を、何百海里ということを申し上げることは無意味であるというふうに私は本来思いますし、そういう意味では申し上げてないと思います。その何百海里という意味は、わが国海上自衛隊の部隊の整備を行います場合の活動の基準として、どこまで能力を持たせるかという基準として周辺の数百海里、それから航路帯を持つ場合には一千海里以内の活動の能力を持ち得るように海上自衛隊勢力を整備してまいるという趣旨で申し上げておるわけでございまして、いまの活動わが国の自衛のための行動が必要な限度内において公海公空に及び得るということで、その場合に何百海里以下はよくて何百海里以上はまずいんだということは、これは賢明な先生でございますから、そこにはそういう意味が、憲法上距離によって差を設けるということは全く無意味であるというふうに私は思うわけでございます。
  137. 立木洋

    立木洋君 局長ごまかしたらいかぬと思うんです。領海外に出る必要はないというふうに考えておればそういう能力を持つ必要はないわけですよ。だけれど数百海里に及ぶ範囲内でそれだけの能力を持ち得ることを考えておるということは、事があればそういうことも考え得るということ、実際行動をとる場合。ですからこの問題については、これは局長自身が、いやそれは安保の拡大解釈をしましたと、以前の状態から言えば、より運用の面でも拡大しておりますというふうな答弁はなさらないかもしれませんけれども、私は明確にそう言うだろうというふうに判断をしております。  さらに進めていきたいわけですが、今度の安保協議会小委員会、防衛協力の小委員会で、韓国の有事の問題も協議対象になるのかならぬのか、いかがでしょう。さっき有事有事と言われたけれども、日本の有事というふうには限定して局長言われなかったでしょう。有事にはいろいろな有事がある。
  138. 丸山昂

    説明員丸山昂君) まあ有事とか緊急時という言葉を使われておりますけれども、ここで私どもが言っておりますのは、五条の場合、自衛隊との立場で申し上げておりますのは五条の場合に限られるわけでございます。したがいまして、いま申されている韓国の有事というような場合におきましては自衛隊共同行動ができない。五条以外の場合において日米の共同行動ができるという場合がないわけでございますから、したがって、いま対象にするかどうか、少なくとも自衛隊に限っておっしゃるのであれば、それはないと申し上げてよろしいと思います。
  139. 立木洋

    立木洋君 三木さんが去年の十月二十三日、これは予算委員会での総理の答弁ですが、それによると、朝鮮半島で、目と鼻の先のようなところでいろいろな武力衝突が起これば、日本の安全に影響がないとだれが考えるでしょうか。もう一カ所では朝鮮の問題に関しても、日本だってあそこに戦争が起こったらどんな影響を受けるのです、恐ろしいことですよということは、これはもう一般的な感覚として述べられたかもしれませんけれども、いわゆる韓国条項というのがあったし、さらには新韓国条項などというふうに言われる、いわゆる韓国の安全が日本の安全にとって緊要である。さらにそれが少し長くなりまして、韓国の安全は朝鮮半島の平和と安全にとって緊要であり、何ですか、もう正確には覚えておりませんけれども。こうなってくると、これは韓国の安全というのは、アメリカ側としては韓国の有事の場合、当然この小委員会に持ち出してくる、そういうことは考えられませんか、当然あり得るんじゃないですか。そしてまた、日本も韓国の安全が当然日本の安全にとって緊要である。それならば、韓国で事が起こった場合にどうするかというふうなことは、当然協議対象になりませんか、ならないというのは私はおかしい。
  140. 丸山昂

    説明員丸山昂君) 先ほども申し上げましたように、わが国に対する武力攻撃、わが国の施政下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃、これがあった場合に、日米が共同して対処するということになっておるわけでございます。したがって、わが国に対する直接の武力攻撃がない以上、ここで先ほどから申し上げておりまます共同対処行動ということはあり得ないわけでございます。  仮に韓国で、あるいは朝鮮半島で問題が起きたという場合に、そのことがわが国安全保障にどういうかかわり合いを持ってくるかということでございますけれども、自衛隊行動を起こし得ますのは、御案内のように自衛隊法の七十六条が防衛出動の根拠でございます。したがいまして、七十六条というものに基づいて自衛隊行動を起こし得るような事態にならない以上、少なくとも自衛隊の問題ではないというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。
  141. 立木洋

    立木洋君 それは、たてまえからいえば第五条の日本の有事における共同作戦ということになるだろうと思うんですよ。しかし、アメリカ側が提起しているのは、それならば六条の協議をする必要はないんですよ。これは私は五条だけやって六条やめろと言っているのを賛成しているんではないんですよ。論理から言うならば、いわゆる極東におけるいろいろなアメリカ軍の行動についての問題というのはちゃんと事前協議で歯どめがある。しかし、これは宮澤外務大臣の話なんかで大分歯どめも空文化してしまっておりますけれども、話が横道に行ったらいけないからそれ以上言いません。  そうすると、六条の問題をアメリカ側が一緒にやろうではないかということになれば、それは当然アメリカは韓国と相互防衛条約を持っている。タイとも台湾ともそうですし、アジア周辺にあってそういう関係にあるんですよ。そういう問題を考えているからこそ、やはり六条の問題をあわせて協議するという考え方になる。第一、アメリカ自身がことしの一月の防衛報告の中で、日米安保条約は西太平洋における米戦略の柱であると言っているわけです。これは私が説明するまでもなく局長よくおわかりだろうと思うんです。柱というのは棒が一本立っておったって柱にならないんです。支えるものがあって初めて柱としての役割りを果たし得るわけです。日米安保条約はその柱だと、そうすると、アメリカにおけるアジア戦略の柱というのは、アメリカの各アジア諸国との相互防衛関係における安保条約は柱になっておる。とするならば、この防衛小委員会協議される問題で、他国との防衛関係の問題を全く無視して、外国が日本に攻めてきたことだけを論議しましょうなんてことにアメリカが賛成するはずがないですよ。また、局長自身もそう考えていないだろうと思う。先ほど局長が述べられたのは私はたてまえ論だと思う。アメリカがそれならば韓国で有事が起こった場合、日米共同協力はどうしましょうといって問題を出してきたら、局長は、いやそれはお断りしますと言って断りますか、やっぱり話し合いするでしょう。アメリカが出してきますよ。そうした場合に断りますかどうしますか。
  142. 丸山昂

    説明員丸山昂君) 先ほどから私が申し上げておりますのは、防衛庁としての立場での意見を申し上げておるわけでございまして、この第六条に基づいて日本国政府としては基地を、施設・区域の提供をすべき義務を負っておるわけでございます。その問題は防衛庁自衛隊行動とは別問題でございます。
  143. 立木洋

    立木洋君 局長はそれ以上お答えになれないだろうと思うので、いまの考えでどうでしょうか、大臣。そういう問題を出されてきた場合に、当然私は話し合いの対象になるだろうと思いますけれども。
  144. 浅尾新一郎

    説明員浅尾新一郎君) ただいま防衛局長からも答弁がありましたように、六条においてわが方はアメリカ側に対して施設及び区域の提供という義務を負っております。そこで現在の施設・区域の適用につきましては合同委員会その他で決定いたしますわけでございますけれども、この小委員会があるとなしとにかかわらず、アメリカ側は施設・区域の提供を六条に基づいて言ってくるということは考えられます。ですから、この小委員会ができたからそういう要請が強くなるということは必ずしも言えないんじゃないかと思います。しかし、冒頭に申し上げましたように、この委員会の任務としましては、やはり安保条約全体の目的を達成するということでございますので、外務省としては五条だけに限らず、六条の問題も当然討議の対象になるというふうに考えております。
  145. 立木洋

    立木洋君 大臣、御答弁をお逃げになりましたけれども、論理的には私はそうなると思うんですよ。そしてそれは、この小委員会がつくられたからその問題が強められてくるということじゃないと言われますけれども、つくられた意図そのものがそうなんです。大体ベトナムでアメリカが完敗をして、あの後アメリカが引き出した結論、教訓というのは三つあります。これはアメリカが公式に述べております。  一つは、ベトナムでは核兵器を使うべきだった、もう一つは地上軍が北上すべきであった、第三点は相手の心臓をたたくべきだった、この教訓を引き出して朝鮮に対しても核の先制使用を辞さないとか、あるいは心臓部をたたくとか、大変恐ろしいことを言って、それは外務委員会で何回も議論してきました。こういう状況の中でこの小委員会というのはつくられてきたんですよ。そして日本が、日米安保条約というのがアメリカのアジア戦略の柱だ。そういうときに、日本だけが攻撃された場合にどうしましょうかということだけを協議して、はいそうですか、それで結構ですなんてアメリカ言いませんよ。これはアメリカは、日米安保条約が防衛の柱になっておるんです。この円滑かつ効果的な運用ということが去年の八月取り決められているものの中に書いてあるわけです、三木さんとフォードさんとの間で。それを考えてこの小委員会というのは設置されてきているわけですから、これは明確にいわゆる韓国の問題が問題にならないということはなくて、必ずなる。そしてその場合に、いわゆるアメリカと韓国の間には米韓相互防衛条約があるし、日本の場合にはアメリカとの間に日米安保条約があって、その安保条約に基づいて協議委員会があって、それを具体的に有事の際の共同作戦をつくるとして今度の防衛協力委員会が設置された。そうすると、これはアメリカが日米安保条約をアジア戦略の柱とする限り、これは韓国との関連で必ず生じてくる。そうすると、一たん有事が起こった場合、韓国で有事が起こってもアメリカは韓国にも駐留しているんだから、アメリカにとってもこれは有事なんですよ、アメリカにすれば。日本に対しては有事だとは言えないかもしれないけれども、大変な関係があるというぐらいにしか言えないかもしれないけれども、そうした場合に、これは作戦を行うアメリカ立場とすれば、韓国の有事の場合にアメリカ軍がどう対応するか。その際に日本がどういうふうな状態におってほしいのか、日本自衛隊がどういう役割りをそのとき担ってほしいのかということを考えるのは当然だ。そうすると、結果的にはいわゆるアメリカを介在して日本と韓国との間で軍事上の一定の合意の必要が生じてくるのではないかというふうに考えられるのですけれども、その点はどうですか。
  146. 丸山昂

    説明員丸山昂君) どうも先生の御質問は必ず自衛隊の方へ巻きつけてこられるような御意見でございますけれども、繰り返して申し上げますように、われわれは、わが自衛隊自衛隊法の七十六条の事態でなければ行動ができない、これは先生も十分御承知だと思われます。したがって、韓国で何か問題が起きまして、アメリカにとってそれは有事かもしれません。有事かもしれませんが、わが国にとっていわゆる自衛隊法の七十六条によって防衛出動をするというような事態でない以上、わが自衛隊は一切動けないというのが実態でございますし、アメリカも十分その辺を承知をしながらわれわれとの話に応じておるということでございます。
  147. 立木洋

    立木洋君 じゃ最後に、時間が経過したので、きょう本当は坂田防衛庁長官に出てきていただく予定でしたが、ガイラーさんとの何か話があるとかということで出席いただけなかったのは大変残念でした。  局長としてはそういうふうにお答えになる以外にないかもしれませんが、しかし、問題としては私が言っておるのは決して無理を言っているのではないのです。そういうふうになるということを考えるならば常識的に判断できることだと思う、軍事的な専門家でなくとも、当然そういうことは起こり得るしあり得る。そういうことを考えないとすればアメリカ首脳層はよっぽどばかだということになる。アメリカ首脳層はそれほど私はばかだとは思いません。有能な人々——どういう意味で有能かは別にしても。そういうふうになるならば、日米安保条約はアジア戦略の柱だという柱という言葉を使った意味もこれは重要な意味があるわけですから、そういう点から考えて、今度のこの小委員会の問題というのは私はきわめて重大である。これは明らかに第五条の発動という問題の中で平時から日本アメリカそして韓国のいわゆるアメリカのアジア戦略に対応できる体制を進めていく、そういうものになる危険性というのが十分にあるというふうに私は考えております。  そういう点を私は最後に指摘をして、そしてこの問題に関するいまの質疑を通じて大臣最初から最後まで口をつぶっておられましたから、この議論についての感想でもいいですから、何か発言をしてください。この問題について私が述べたことについてどういうふうに感じられるか、考えられるか。
  148. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府委員から申し上げておりますように、この委員会は主として五条の問題、自衛隊との関連等々で共同対処行動関係することが、研究協議が主たる部分でございましょうけれども、六条はないのかとおっしゃれば、その六条で施設・区域を提供しておりますから六条の問題もあり得るわけである、そういうことを申し上げておるわけで、そこでその有事ということになればそれは自衛隊との関連でございますから、自衛隊が出動し得るというのは自衛隊法七十六条の場合しかないので、韓国ということであればそれは六条の基地との関連においてあるのであろうと、こういうふうに申し上げておるのでございまして、したがって、韓国と自衛隊とが巻きつくという表現がさっきございましたが、そこのところが、おっしゃることは政府はそう思っておりませんと申し上げておるのだと思います。
  149. 立木洋

    立木洋君 それじゃもうこれで終わります。
  150. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本件の質疑は、本日はこの程度といたします。  これにて散会いたします。    午後四時三十八分散会      —————・—————