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1976-05-18 第77回国会 参議院 運輸委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十八日(火曜日)    午前十時三十五分開会     —————————————    委員異動  五月十三日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     内藤  功君  五月十四日     辞任         補欠選任      川村 清一君     青木 薪次君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         上林繁次郎君     理 事                 石破 二朗君                 徳永 正利君                 杉山善太郎君                 三木 忠雄君     委 員                 江藤  智君                 佐藤 信二君                 橘  直治君                 永野 嚴雄君                 福井  勇君                 宮崎 正雄君                 加瀬  完君                 瀬谷 英行君                 内藤  功君                 和田 春生君                 松岡 克由君    国務大臣        運 輸 大 臣  木村 睦男君    政府委員        運輸大臣官房審        議官       中村 四郎君        運輸省船舶局長  内田  守君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        海上保安庁長官  薗村 泰彦君        気象庁長官    有住 直介君    事務局側        常任委員会専門        員        池部 幸雄君    説明員        科学技術庁原子        力安全局原子力        安全課長     佐藤 眞住君        外務省欧亜局東        欧第一課長    都甲 岳洋君        外務省条約局外        務参事官     井口 武夫君        水産庁漁政部沿        岸漁業課長    平井 義徳君        資源エネルギー        庁公益事業部火        力課長      伊藤 栄一君        海上保安庁総務        部長       鈴木  登君        海上保安庁警備        救難部長     山本 了三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○海洋汚染防止法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  五月十三日、近藤忠孝君が委員辞任され、その補欠として内藤功君が委員に選任され、また、五月十四日、川村清一君が委員辞任され、その補欠として青木薪次君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。木村運輸大臣
  4. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) ただいま議題となりました港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  港湾は、交通、産業、住民生活等の諸活動を支える重要な基盤であり、その整備推進国民経済の健全な発展にとって必要不可欠であることは申すまでもないところであります。このような見地から、政府は数次にわたり港湾整備五カ年計画を策定し、港湾整備計画的な実施を鋭意推進してまいりましたが、昭和五十年代におきましても、港湾取扱貨物量の着実な増加が見込まれるばかりでなく、さらに、海上コンテナ輸送等推進による貨物輸送の合理的、地域振興のための基盤施設整備船舶航行の安全の確保、港湾及び海洋環境改善等必要性が増大しており、港湾整備に対する要請はますます多様化し、かつ、差し迫ったものとなっております。  このような情勢にかんがみ、港湾整備を引き続き強力かつ計画的に実施するため、このたび港湾整備緊急措置法の一部を改正し、昭和五十一年度を初年度とする新しい港湾整備五カ年計画を策定することとした次第であります。  以上がこの法律案を提案する理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  5. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 本案質疑は後日に譲ります。     —————————————
  6. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 次に、海洋汚染防止法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対する質疑を行います。
  7. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 柱は多く立てておりますけれども、簡潔に質問いたしますので、お答えいただく方で十分ひとつ御配慮いただきたいと思います。  最初に、この海洋汚染防止海洋環境保全対策現状について所管の省庁からひとつお答えをいただきたい、こう思います。
  8. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 海洋汚染防止海洋環境保全対策現状について簡単に御説明を申し上げたいと思います。  海洋汚染防止法制定当時の附帯決議にございます具体的な措置についてまず第一点は、監視取り締まり体制充実強化という点がございます。この点につきましては、海上保安庁といたしましては巡視船艇航空機は、四十五年当時は三百隻の船艇、二十一機の航空機でございましたが、現在は三百八隻、航空機は三十四機ということになっております。  さらに、組織といたしましては中央、地方海上公害課を設けましたり、さらに要員の増員を行いましたり、また海上公害試験研究センターを設けましたり、その他各種分析機器整備充実を図って監視取り締まり体制充実を図ってきております。  附帯決議の第二の点に、海洋汚染防止のための防除措置推進ということが出ておりましたが、この点につきましては現在、常時先ほど申し上げました巡視船艇航空機出動体制を整えまして、海空を立体的に連携をとって海洋汚染防止活動をしているということでございます。またオイルフェンス油処理剤等の諸器材東京湾その他の主要港湾を管轄いたします海上保安部署に配備をしておりますほか、オイルフェンス展張船を十五隻全国に配備し、また油回収船は三隻、横浜、水島、堺に配備してございます。実際の防除作業につきましては、海上保安庁を初めとして、地方公共団体関係企業等から成ります対策協議会というものをつくりまして、連絡を密にして事故対策に対する計画平素からつくっておく、また防除資器材整備を図っておくとともに訓練を実施して事故発生時に備えるということにしてございます。  以上、海上保安庁関係について御説明を申し上げました。
  9. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 追及はいたしませんが、海洋汚染防止法律が、「及び海上災害防止」ということに、これは過般のこの審議過程で、前の国会だと思いますけれども附帯決議がついてそういう関連で、かてて加えて海洋汚染も重大なことであるが、それが因となり果となって海上災害が起きるようなことがあってはならないというような関連で、この本法が一部改正という形で付加されておると思いますので、十分ひとつ海上保安庁も機能を最大限に発揮していただきたいということを要望いたしまして先へ進みます。  二番目でありますが、海上汚染あるいは災害等については、ことに汚染の問題については、油であるとか、その他いろいろの問題があると思いますけれども、まず船舶の構造上発生するビルジであるとか、バラストなどの廃油、あるいは船舶内で発生する廃棄物貯蔵もしくは処理のための装置の設置が船舶所有者に義務づけられておると思うのでありますが、この方の整備現状について伺いたい、こう思うのです。
  10. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 油の排出規制と、それからその他の廃棄物排出規制に分けまして、私どもの方から規制現状説明をさせていただきたいと思います。  油の排出規制につきましては、海洋汚染防止法の第四条によりまして、一定適用除外事由に該当する場合を除いて原則的に禁止をされている、すなわちタンカー及び三百トン以上のタンカー以外の船からのビルジ排出に当たっては、まず海岸からできるだけ離れて排出をすること、それから航行中に排出をすること、それから油分が一〇〇PPm未満であること、それから油分の瞬間排出率が六十リットルを超えないこと、以下の条件をすべて満たさない限りその排出禁止するということになっております。またタンカーからのバラスト水排出にありましては、先ほど申し上げました一、二、四番目の条件のほかに、排出の総油量が総貨物総量の一万五千分の一でなければならないということで排出条件が決められておるわけでございます。  それから二番目に、その他の廃棄物排出規制でございますが、これは海洋汚染防止法の第十条によりまして、船舶からの廃棄物排出は、やはりこれも一定適用除外事由に該当する場合を除いて原則的には禁止であるということになっておりますが、一つ船員等日常生活に伴い生ずる廃棄物及び船舶通常活動に伴い生ずる廃棄物など、海洋投入処分することがやむを得ないとされている廃棄物。それから二番目に、廃棄物処理及び清掃に関する法律上、海洋投入処分することができると定めた廃棄物で、それぞれ所要排出方法及び排出海域を遵守する限りにおいてはその排出が認められるという排出規制現状になっております。
  11. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 いまのお答え中ので、これは法五条の問題についても大体詰めを行われているわけですか。具体的には、船舶内で発生する廃棄物貯蔵もしくは処理のためには、やはり船舶所有者に義務づけられていなきゃならぬと思うのですが、後で質問いたしますけれども、たとえば領海区域十二海里、それから経済水域二百海里ということになりますというと、相当にその半径が大きうなりますから、そういうような関係で、法改正の中で、災害等も含めて一部改正というポイントがそこにあるかと思いますので、その辺のところは御配慮ですか。
  12. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 油以外の廃棄物の中で、船員等日常生活に伴い生ずる廃棄物、これは主として屎尿でございますが、これは規制海域瀬戸内海、伊勢湾、「港則法に基づく港の境界外一万メートル以内の海域」、距岸一万メートル以内において所要規制が行われて排出が認められるということになっております。  それから船舶通常活動に伴い生ずる廃棄物、これは輸送活動漁労活動等に伴い生ずる汚水でございますとか、動植物性廃棄物等でございますが、これはたとえば輸送活動漁労活動等船舶通常活動に伴い生ずる廃棄物のうち植物性のものはC海域——五十海里以遠ですが、そういった海域で拡散型の排出方法が許されるということになっております。
  13. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 次へ進みます。  やはり保安庁の方からお答えをいただきますが、廃油処理施設整備状況とその利用及び今後の整備計画について伺いたいと思います。  私の知る範囲、調べた範囲では、昭和五十一年の一月現在で合計五十七の港に九十一カ所がマークされておると思いますが、日本海方面には何カ所あるかというそういう問題。  それから、ことしの三月三日付毎日新聞に、いまそちらへお届けしましたが、関心事であろうからお目通しになっておると思いますけれども、具体的な問題でありますから、言うならば、下関廃油業者が投書しておるわけであります。その中に、造船所不法処理を続けていると言っているが、事実はどうなっているのか。関連して、造船所から海洋排出した油、廃油措置はどの法律適用を受けるのか伺っておきたいと思います。  処理料金算定基準行政指導といったようなものと、今後のこの種の問題に対する整備計画の重点はどこにあるかといったようなものを、これはひとつ簡潔でようございますけれどもお答えいただきたい。
  14. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) 廃油処理施設に関しましては港湾局の方で所管しておりますので、私の方から最初お答えいたしまして、規則に関しましては海上保定庁の方から答えていただきたいと思います。  まず、廃油処理施設は、五月一日現在で七十四港におきまして百二十一カ所の施設整備されてございます。このうち港湾管理者漁港管理者等整備しておるものは四十三港四十五カ所。そのほか民間専門業者整備しているものは十六港十七カ所。また、石油精製業者等整備したものは三十九港五十九カ所でございます。  現在までに大体におきましてバラスト、あるいはタンククリーニング水等の大量の廃油の発生する港湾におきましては、処理施設整備は一応完了していると考えておりますが、今後はビルジであるとか、そういう少量の廃油の発生する港湾におきまして、小規模な処理設備を完備していかなければならない、このような形で整備の方向を決めているわけでございます。日本海の方と言われましたが、いま調べてみますと日本海沿岸には八港、八カ所ございます。  それから、造船所とのお話でございましたけれども、たとえば造船所等に入る大量なバラスト水、あるいはタンククリーニングですか、そういうものの処理については現在のところ十分であるというように私ども考えております。なお、この造船所の方から不法処理云々ということにつきましては海上保安庁の方から答えていただきたいというように考えます。  あと料金の問題でございますが、料金に関しましては適正な原価を償うというつもりでの方針で料金を定めるように指導しているわけでございますけれども、大体におきまして民間業者におきましては赤字のところもあれば黒字のところもあるというような形で、なお一層の経営上の努力もしていただかなければいけないというような形で指導していきたいと思うのでございますけれども港湾管理者、これは先ほども申し上げましたように大量の油でなく、どちらかといいますと民間業者で仕事をしたこぼれたものといいますか、中小船舶が寄ってくるといいますか、そういうような形で処理施設をつくっているわけでございますが、この原価をはじきますと大変高くなる、そこで管理者の方といたしましてはいろいろ考えた末、高い原価では現在のところなかなか中小船舶等に対しまして大変であるというようなことも含めまして、どちらかといいますと料金が安く届け出ているのが実態でございます。なお、管理者料金が大変安くなっているという——安いのはそういうわけでございますけれども赤字が非常に多くなっているということの中には、やはり当初考えていました処理量が実際よりも大分大きくて、実際には大分小さな量になってきている、こういう実態もございます。そういうところを今後勘案いたしまして、料金等につきまして適正な指導をできるだけやっていきたいというように考えている次第でございます。
  15. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) ただいまお話のございました造船所からの排出油防除については水質汚濁防止法、それから具体的な防止措置については海洋汚染防止法などで取り締まることにしております。
  16. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 港湾局長ですか、あなた、関門と一口に言っても、下関方面は、あそこにはドックもあるし、漁船もあるし、非常に海が汚れる、流れが早くても汚れる可能性もあるのですが、この問題については全然いままで調べたり、またその新聞以外にはお知りになりませんでしたか、大分こぼしておりますけれども、結局下関で終始一貫そこが民間業者としてやっておられるわけですが、ここにいろいろ書いておりますがね、大体要点はそこに赤筋を引いておきましたが、その点についてはごらんになっておりますか。
  17. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) 実はいまここで初めて見ましたので、もう少し調べさせていただきたいと思います。
  18. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 じゃ、後で調べてください。  これは昭和四十九年十二月十八日、水島コンビナート三菱石油株式会社重油流出事故世間周知の事実でありますけれども、やはりその事故において四万二千八百キロリットルの重油瀬戸内海の東半分から紀伊水道に及んで空前の汚染をもたらしたことは御了承のとおりであります。自然と水産物に与えた影響ははかり知れないものがあったと思います。この教訓をもとにコンビナート防災法が昨年成立しておりますが、しかし油の流出というものは、岩壁までがコンビナート防災法適用であって、岩壁から海に流れた場合は、防除責任運輸省所管になると思うのでありますが、この海洋汚染防止法では処罰の対象にならないというふうにいま判断をせざるを得ないような矛盾をうかがい知るわけでありまするけれども汚染された海の方の責任企業は、国の法律上はとらなくてもいいということになっているのですかどうですか。今回の改正法ではこの点はどういうふうに意識し、どういうふうに配慮されておるか、その点を。  それから防災の一元化という立場から、たとえば通報であるとか、応急処置であるとか、石油などを対象とするなどが規制対象になっているのかどうか、この辺について現状のありのままを。そこへ海洋汚染防止法そして「及び海上災害防止」というかっこうでいま法案審議という過程にあるわけですから、その辺のところを簡明直截にひとつお答えをいただきたい、こう思うのです。
  19. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 先生ただいま御指摘ございましたように、四十九年の末に水島における流出油事故と、それから第十雄洋丸衝突炎上事故というのが東京湾で起こりました。そこで、そういった大事故にかんがみまして、われわれ反省すべき点をいろいろと検討してみたわけであります。その検討の結果、一番主な点が二つ出てまいりました。  まず一番目には、ただいままで海洋汚染防止法で「環境保全」ということで排出油規制であるとか、油の排出された場合の防除措置であるとかということを決めておりましたが、単に環境保全ということにとどまらずして、人の身体、財産に大きな災害をもたらすものであるということが油の排出の面で懸念されるに至ったのでございます。そこで、単なる「環境保全」ということで考えておりました海洋汚染防止法をさらに整備強化をして、排出油防除に対する措置整備しなければならないということが一つでございます。そこで、今度の法律では、油回収船の義務づけを行いますとか、平素から排出油防除計画をつくっておきますとか、あるいは原因者現場におらない場合に、海上災害防止センター海上保安庁の方から指示をして初動の防災体制をとらせるとか、そういった点をこの新しい法律案に盛り込むことにいたしました。  それから第二点は、特に第十雄洋丸衝突炎上事故に見られますように、従来の海洋汚染防止法は、いわゆる黒物と称しますところの、重油を主とするどろどろとした油の排出をいかに防除するかということでございましたが、第十雄洋丸は御承知のようにLPGタンカーでございまして、黒物に限らず、いわゆる白物と言われる揮発性の強い、引火性の強い揮発油LPG、LNGというような危険物を積んでおります船が衝突いたしますと一遍に炎上するというような事故になりますので、そういった白物防除を取り入れて、火災炎上のための災害対策を考えるということで、今回新しい法律の中に盛り込んだというのが第二点でございます。  そこで、ただいまお話ございましたように、火災が起こりそうな場合に通報する。それから火災が起こったならば、現場海域の船に進入中止を命じたり、退去を命じたりする。また周辺の海域におきましても、船舶航行の定全のための措置をいろいろとる。それから第十雄洋丸事件にもございましたように、被害船舶をほかの災害をもたらさないような安全な地帯まで曳航をしていくことを命令をするというような点をいろいろ書き込んだのが今度の法律でございます。  そこで、次に水島流出油事件について申しますと、事後の措置といたしましては、私どもは本年の三月十九日に関係者岡山海面漁業調整規則違反水質汚濁防止法違反過失往来危険罪ということで岡山地検に送検をいたしました。  それから、今後水島のような事件が起こりますと、石油コンビナート等災害防止法がせんだっての国会で御審議をいただいて成立を見たわけでありますが、その法律によりまして、まず陸上の部門でいろいろと災害防止する自衛の措置をとることを定めてございますが、われわれ海上保安庁といたしましても、その災害海上に及んでくるというときには、そのコンビナート等災害防止法によりまして、海上保安官陸上コンビナートに向かって適当な災害防止措置をとるように、こちらの方から申し出るということができるようになっております。さらにまた、その油が現実に海上に流れ出しました場合には、海洋汚染防止法の第六章の防除措置によって、いろいろと原因者防除措置をとるということについて海洋汚染防止法適用がございます。  以上のとおりでございます。
  20. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 やはり海でできた一つの好ましからざる、再び繰り返してはならない問題でありますけれども被害の大半というものは漁民なり沿岸環境、それから自然というものが相当に破壊されておるという、客観的にも主観的にもそういう事実が言われますけれども汚染源はやはり三菱なら三菱というコンビナート企業でありますけれども、そういう問題についてまあ罰は罰、それから法は法としても、損害とかそういったような問題についての関係はどうなっておりますか。これはもう経過した措置でありますけれども、一度あったから二度ないという保証はどこにもないですから、そういうことを配慮してどういうふうに考えておられますか。
  21. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 港内に流出した油が、先ほどお話ございましたように四万二千八百キロリッターでございまして、このうち七千五百ないし九千五百キロリッター海上流出したのではないかと推定されております。これに対する漁業補償その他の額については、いま正確に実は持っておりませんのでお答えできませんのですが、お話のとおり陸上の場所で災害を食いとめられなかった場合には、海上に流れたら大変大きな災害をもたらすものということで、私どもの所轄の保安部署といたしましては、高松保安部からさらに小松島の海上保安部までその排出油防除に従事をしたということでございますので、二度とこういう事故が起こらないように、法制の面でもまたわれわれの防除体制の面でも今後とも努力をしていかなければならぬと思っております。
  22. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 基本的な問題として、岡山県では自治体の条例だと思いますが、海面漁業調整規則というものがございますね。これに関連して、それ相当罰則というものがありますが、この改正法罰則という問題については、実は具体的にはどうなっておりますか。その辺について実は私がさっと改正法案を見た場合にこれは軽過ぎる、もっと公害というものは——岡山県の海面漁業調整規則に照らしては六カ月の懲役または一万円ということになっておるのでありますが、今度の法改正の場合は具体的にはどういうふうに配慮してこういう結果になっておりますか、その辺のポイントをひとつ。
  23. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 先生指摘のような点が私どももこの法案の立案をいたします過程で問題になったわけでございます。  それで、いままでございました罰金刑については、その上限を引き上げる改正を行おうということでございまして、たとえて申しますと、五十五条に船舶または海洋施設からの油または廃棄物排出禁止違反というものの罰則が掲げられておりますが、これは従来二十万円でございましたのを三十万円に上げる。それから五十六条で、内容といたしましては廃棄物排出船登録義務違反というのがございますが、これは十万円から二十万円に罰金を上げると、それから五十七条で、たとえて申しますとビルジ排出防止装置の据えつけ義務違反に対する罰則がございますが、これは十万円から二十万円に上げる。それから第五十八条で、具体的には油の記録簿の備えつけ、記載、保持義務違反の罰則がございますが、これは五万円から十万円に上げるということで、なるべく罰金の上限を上げるようにいたしました。  また、今度の法律によりまして、新しい法律で設けられる規定といたしましてはいろいろ、油回収船の配備の義務、それから通報の義務、それから曳航命令、それから進入中止、退去の命令、その他ございますが、そういったことに対する違反についても罰則を設けるということで、たとえて申しますと、三十九条の二の大量の排出油に際しまして、現場船舶等に対して退去命令を出したときに違反したならば、これは五十七条の罰則によりまして二十万円以下の罰金ということにしてございます。それから一番強い罰則といたしましては四十二条の七に、火災船舶船舶所有者に対する曳航命令がございますが、この命令違反については五十五条で六カ月以下の懲役、三十万円以下の罰金ということに新しく規定を設けてございます。
  24. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 関連してでありますけれども、これはお答えいただかなくても結構でありますけれども、この汚染源ですね、それから原因者に対しては、これは汚染行為を罰するという趣旨からいくなら、当然これはその延長線上に自然や環境を破壊するということもあり得るので、これは率直に言って、法に書いてあるだけでは、三十万円の金だとか、六カ月の懲役だと言ったって、これはやはり執行猶予という問題で、三十万円の金というものは汚染原因者負担の原則から言って——しかし、その延長線上にこういうことがたび重なれば環境が破壊され、自然が破壊されるという点で、これは一度あればまたその時点で変えたらいいじゃないかということではなくて、やはりそういう点についても監督の行政省庁では十分、まあまあ、やれやれこれでいいんだというふうにはとらえちゃいかぬのだというふうに私なりに考えておりますので、これは少なくとも海上汚染及び災害の一部防止というような、そういう法改正の趣旨からいっても十分配慮していただきたい。大臣その点も十分ひとつ考えておいてください。大臣何か、この点は重要なポイントだと思いますが。
  25. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 確かにいま杉山委員の御指摘になりました点は、非常に重大なところでございます。われわれも今後、いまのお話を十分体しまして今後の対策に万全を期したいと思っております。
  26. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 いま、御承知のとおり昭和五十一年三月十日に中央公害対策審議会費用負担部会というものの中で、——ここにパンフレットがありますが、「公害に関する費用負担の今後のあり方について(答申)」というものがありますね。これも先へいきますから急がなくてもいいんですが、十分これは勉強しておられますね、こういう点については。  次に、先を急ぎますのでいきますが、原子力発電所から出る温排水の規制等について若干お伺いしておく必要があると思うんです。  温排水は、昭和四十五年十二月に改正をされておるわけでありますが、水質汚濁防止法でも規制対象となっておるが、現実は発電所、石油精製所、製鉄所など五百三十二カ所あると思うんであります。代表的な発電所四カ所だけでも一日当たり九千四百七十万トン、それから放熱量が七千百三十億キロカロリーと言われておるわけであります。これは正確な記録であるかどうか、過去の経過でありますので。  それから、私が特にこれに関連して聞いておきたいことは、日本海方面の若狭湾、能登半島、柏崎、巻などの原発が完成すれば、日本海の気象、海象が変わるというふうに言われております。私どもは科学者ではありませんけれども、専門家ではありませんけれども、気象、海象が非常に変わってくると思うんです。これによって重大な影響が産業上、生活上生じてくることが予想されるのでありますが、とりあえず温排水の問題についてどう考えておるか。  私がこの発想と質問の意思は、日本海は海でありまするけれども、言うならば、対馬海峡とそれから津軽海峡とで、ある側面からいけば池であります。油だけではなくて温排水、それから海底にはソ連、アメリカの原子力潜水艦が相当に予行演習をやっておるというようなかっこうであって汚れがひどいのでありまするから、全体として日本海の自然と環境がいつの日にか破壊されるおそれがありまするので、結局海上保安庁からいきましても、油だけであるとか、あるいは都市廃水であるとか、既成在来の温排水ということでなくて、放射能というものも含めて、これは実はきょうお越しいただいておる海上保安庁もさることながら、通産省、水産庁も関連してこの中でお答えいただきたいと思います。  過般の新聞で扱われた点でも、これは五十年六月二十七日の新聞でありますけれども、「温排水調査の中立機関 電力業界・漁業団体が設立構想」の中で、水産庁は早急にこのものをつくるべく人選を始めると、こういうことが出ております。それから、原発などの温排水の影響防止で暫定的な指針を示す必要があるんだというようなことがそれなりに出ておりますので、これは私どもは勉強の過程にあって心配をしておるわけでありまするので、所管の省庁の係官は、ひとつそれぞれお答えいただきたい、こう思うんです。
  27. 伊藤栄一

    説明員(伊藤栄一君) お答え申し上げます。  火力発電所及び原子力発電所の温排水問題は、蒸気タービンを回しました蒸気を冷却するために、海水を使用いたしまして、その結果温められた海水を放水することから生じるものでございますが、通産省といたしましては、この問題の重要性にかんがみまして、発電所の立地に際しましては、学識経験者を環境審査顧問として委嘱いたしまして、その意見を十分にしんしゃくしながら審査を行っております。温排水対策としましては、その影響範囲をできるだけ少なくするため、地域の実情に応じまして深層取水、復水器バイパス施設の設置、拡散希釈効果の大きい放水口の採用、そういったような方策を積極的に採用するように電気事業者指導、監督しております。
  28. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 水産庁の方の方どなたもお見えになっておりませんか。
  29. 平井義徳

    説明員(平井義徳君) 水産庁、私担当が違うんでございますが、原子力とか火力発電の排水問題につきましては、温排水の養魚協会というのがありまして、そこでいろんな害が起こらないかどうか、あるいはまた、どのように活用したら有効な漁業ができるかという点につきまして調査、検討をいたしております。
  30. 佐藤眞住

    説明員佐藤眞住君) 温排水の規制でございますが、原子炉との関係におきましては、私どもの原子炉等規制法の中では実は温排水は対象になってございません。これは一つには、温排水は先ほど先生の御指摘のように、産業全般の問題でございまして、その意味で水質汚濁防止法の一環として規制されているわけでございます。したがいまして、原子力発電所におきます温排水の審査は、通産省の電気事業法の体系の中におきます電気工作物の認可のその段階におきまして十分に調査されるわけでございまして、この件に関しましては、先ほど通産省からお答えがあったとおりでございます。しかしながら、科学技術庁は原子力全般の問題を見ている立場から、この問題にも十分に関心を持っておりまして、現在温排水の利用の問題、あるいは温排水の一般的な影響調査の問題につきまして、ある程度の予算をもちまして現在調査を進めているわけでございます。
  31. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 大体平面的なお答えとして——これはまた別途科技特の場でいろいろあれしますけれども、結局いま日本海方面で一千万キロワットという、いわゆる集中原発が機能しておるところはそうでありますけれども、これは電力の行政の広域性からいって、能登半島の先端にも大体それなりにマークされておると。柏崎においては、やはり柏崎・刈羽、それから新潟県の巻にも五百万キロワットとか、柏崎はいま問題になっておるのは百十万キロワット一基ということになりますけれども、延長線上には八基ですね、しかし情勢が許せば一千万キロワットということになると思いまするから、先ほど申し上げたとおりやはり相当になるわけでありますが、この問題について、大体いま具体的な問題として、これはわかっておればお答えいただけばいいんでありますけれども、まあ次元が若干違うと思いますけれども、原子力産業会議では六十五年をマークして九千五百万キロワットですか、それから総合エネルギーの中では六十年四千九百万キロワットというものが太平洋水域か、むろん九州、北海道も含めて、日本海水域にみんな発電所がマークされておるわけで、言うならば相当に日本列島を取り巻いて、やはり海象、気象にも影響をもってくる。ことに日本海方面ではシベリアの寒い風が吹雪込んでくる、そうすると、海上の温度が上がり、そうして列島の山脈内で非常に、ただでさえ豪雪の被害が生じておるところへ、非常に海象、気象が変わるというふうにわれわれは心配しているわけでありますが、この点について、今日ただいまは、いま言ったように機能しているのは若狭湾一帯の約一千万キロワット以内の段階でありますけれども、海象、気象という面について気象庁の方では、そこまではいま考えていないが現実はどうだといったような点について、気象庁お見えになっておるとすればお答えいただきたい、こう思うんです。
  32. 有住直介

    政府委員(有住直介君) ただいま先生からお話ございましたように、シベリアの冷たい空気が来ると雪が降るということでございまして、これは気象調査の方でもそういうことは言えると思います。ただ冬の期間シベリアからの非常に冷たい空気、マイナス四十度近いような空気が流れてきまして、普通日本海の温度というのは十度ぐらいの平均でございますので、かなりの温度差があって、そういう雪その他の現象というのが起こるわけでございます。ただ今度のこの現状におきまして、ではどういう影響があるかということでございますけれども、黒潮暖流が対馬海峡に分流しまして入ってきまして、これが本州の沿岸沿いに流れまして、津軽海峡から出ていく、あるいは宗谷海峡から流れていくわけでございまして、その流量というのは非常に大きく、毎秒二百万トンぐらいというふうに考えられております。しかし海の持ちます希釈拡散、そういうものの能力から申しまして、非常に大きな影響を及ぼすということはないと現在考えられております。
  33. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 次に進みます。  ほかの廃棄物の投棄についてでありますが、昨年、国際的な海洋投棄規制条約が効力を生じたというふうに判断いたしております。この条約に比較した場合には、わが国の海洋汚染防止法規制措置は非常に弱いと思うのであります。もっと厳しくしていいと思うのであります。なぜならば自然や環境が破壊されて、これがとうとい生命にも因になり果になって及ぼすということになれば相当厳しい規制があっていいと思うのであります。現行法上の投棄物質と投棄場所はどうなっているか。  これは、いまここで廃棄物の投棄と言っているのはずばり言って、いま申し上げた予測される海洋投棄にはいろいろありまするけれども、原子力から当然に、言うならばトイレのないマンションであるならば機能いたしませんから、当然機能を発すれば、たとえば深い海に放射性廃棄物の固型物が沈むとか、いろいろなものを投棄するというふうに判断いたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、この海洋投棄規制条約というものに基づいてわが国はやはり、好むと好まざるとによらず核分裂型の原子力開発によって長期エネルギーをもうすでに既成事実をつくりつつ、展望もはっきりしているわけでありますから、したがってこの間、廃棄物海洋投棄とかそういったような問題について行政ではしかるべく受け皿として配慮しておられるのであろうと思うのでありますが、そういうような問題について、これに関連した放射性廃棄物海洋投棄の現状はどうなっておるか。そういう点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  34. 佐藤眞住

    説明員佐藤眞住君) 御質問の放射性廃棄物海洋投棄の問題でございますが、事実問題といたしまして私ども放射性廃棄物海洋投棄は現在認可しておりません。しかしながら、先生指摘のように、昨年発効いたしました国際的な海洋汚染防止条約、通称ロンドン条約でありますが、この条約では放射性廃棄物の投棄は認められているわけでございます。で、それにつきましては、ロンドン条約のその中で二種類の規制がございまして、一つは非常に高レベルの危険性の高いものは捨ててはいけない、こういう規定と、もう一つはそれ以下のものにつきましては、各国が厳重に監視した上で投棄を認めるということでございます。私どもこの線に沿いまして、将来海洋投棄が行われる場合の基準について現在いろいろ検討してございまして、関係省庁の御協力を得まして、広域の海洋調査等も実施し、かつ投棄体の安全基準について目下原子力委員会傘下の専門部会におきまして検討中でございます。将来実施するにいたしましても、私どもこのロンドン条約の趣旨、基準はもとより、それよりさらに厳しい日本独自の考え方でやっていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  35. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 直接的には、原子力関係廃棄物の投棄については原子炉規制法などに大体基本的にはよるものでありますが、この点はどうですか。
  36. 佐藤眞住

    説明員佐藤眞住君) 放射性廃棄物の投棄につきましては原子炉規制法の体系の中で、一つは原子炉の設置許可に際しまして廃棄物処理、処分について当該設置者の施設あるいは投棄方法等が規定されてございます。同時に、その運転管理を規定いたしております設置者が作成すべき保安規定の中で、さらに放射性廃棄物処理、処分について、その管理の仕方について規制がございます。そして、その両方につきまして、私ども審査段階で十分安全面をチェックしているわけでございますが、現状におきましては、先ほど申し上げましたように海洋投棄に関します基準がまだ十分整備されてない。したがって、まず海洋投棄の実験をしばららく重ねて、実際の投棄はその時点で許可するという方針でやっているわけでございます。御指摘のように原子炉等規制法の一環として放射性廃棄物の投棄につきましては規制がなされているわけでございます。
  37. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 皆さんはモチはモチ屋で、それなり勉強もしておられますでしょうけれども、五十一年の四月六日ですね。これは読売にも、それから毎日にも、日経にもみんな出ているわけでありますけれども、「放射性廃棄物深海投棄に異論 関係学者シンポジウム」というかっこうで学者間においてもいろいろ意見がありますが、これについては作業は相当に進んでおるのですか。まだその点についての——ありのままでいいです、深く追及しませんから。
  38. 佐藤眞住

    説明員佐藤眞住君) 本年の四月に海洋学会におきまして、この放射性廃棄物の投棄問題について専門家によりますシンポジウムが行われたわけでございます。私どもその中間の結論を勉強さしていただいておりますが、海洋投棄そのものについては基本的にこれを原則禁止というような考え方ではございませんで、あくまでも投棄された場合の影響の調査、あるいはモニターの方法、あるいは投棄のやり方等について御意見があるように聞いております。現状におきましては、海洋の中におきます拡散の問題等の学問的な検討が重要であるという指摘がなされております。これに対応いたしまして、私どもすでに昨年の秋から放射性廃棄物の投棄によります海洋影響の問題につきまして、やはり専門家によります検討をお願いしてございまして、現在その検討が進みつつある現状でございます。
  39. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 核燃料サイクルの面を、全体は別として、今日ただいま、東海村にしても、東京電力の福島にしても、あるいは関西電力の若狭一帯にしても相当廃棄物というものが出ておるはずですが、それは倉庫に貯蔵中ですか。何か太平洋沿岸のどこかの深海に現実の問題として処理、もうすでに海に沈めておる、こういう事実はあるんでしょうか、その点にお答えください。
  40. 佐藤眞住

    説明員佐藤眞住君) 現状でございますが、現在原子力発電所等から固体廃棄物が出ておりまして、これは現在の規制法の規制によりまして原子力発電所のサイト内に貯蔵ということになっております。このサイト内に貯蔵するに当たりましても所定の貯蔵倉庫を設けさせまして、これを事前に審査し、その中で安全に貯蔵されるよう指導しているわけでございます。現状におきましては、海洋投棄はなされてございません。
  41. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 そうですがね、それはその——いやまあ先へ行きます、時間の枠内で終わりますから。  一般的に言われている核燃料サイクルの一環であるこの使用済み核燃料の廃棄物ですね、その中には当然ウランだとか、プルトニウムなどの再処理に伴う船舶航行安公の対策の現状等、まあこれは、その途中でその輸送船が、運搬船がハイジャックされるといったような対策についても、これをハイジャックされてしまってから右往左往するのではなくて、具体的にはあれでしょう、いま東海村にしても、福島にしても、それから若狭湾にしても、これらの核燃料サイクルの一環である使用済み燃料の廃棄物については、すべていまイギリスに依存されておると思いますけれども、前段申し上げたようにエネルギーの代替は、石油にかわる核分裂型の原子力発電を何年にはこれというかっこうで、既成事実として閣議でも、それから原子力委員会でもできておるわけでありまするから、したがって、すべてわが国のことについてこれをアメリカ、フランスだけに依拠、依存するというようなことについては筋が通りませんよ。やはりこの原子力発電が既成事実として、賛否はいずれにあっても、国民のコンセンサスを得てそういう方向へ進んでいく、そういう方向づけの中では、必ずこの使用済み燃料というものの再処理というものがいまの東海村でなくて、ナンバーワンがあればそれから第二がある。そういう場合について、原子力発電所からその再処理工場まで運んでいくルールについてもいろいろと、たとえばどのような船でどういう構造でやるというような問題については、これは運輸省所管でも十分、たとえばそれが船舶局であるとか、あるいは科学技術庁であるとか、保安庁も安全という面から関連をして相互に御研究をなさっておると思うのでありますが、この点について関係省庁の方からお答えいただきたいと、こう思うんです。
  42. 中村四郎

    政府委員(中村四郎君) 一般的に放射性物質の輸送につきまして、その安全性を確保するため、陸上交通機関につきましては、いわゆる原子炉等規制法に基づきます放射性物質車両運搬規則によりまして、また船舶につきましては船舶安全法に基づきます危険物船舶運送及び貯蔵規則によりまして、運搬の際の容器、包装、積載方法、その他運搬時の安全について規制がなされているところでございます。ただいま先生指摘の、特に使用済み核燃料につきましては、陸上交通機関を利用して行う場合におきましては運輸大臣の許可を、また船舶を利用して行います場合には運輸大臣の指示を受けなければならない、こういうことに相なっておりまして、その許可あるいは指示に際しましては、国際原子力機関の放射性物質安全輸送規制に準拠いたしまして、安全に遺憾のないように運用しているところでございます。今後は法令上にもこれを基準として明定することが望ましいというふうに考えておりますので、関係省庁と打ち合わせを行ってこの作業を進めているところでございます。  次にお尋ねの、核ジャック防止対策でございますが、核物質の防護措置につきましては、先ほど申し上げました放射性物質車両運搬規則等によりまして、安全規制の一環としてたとえば見張人の配置とか厳重な包装、積みつけなどの措置を講じてまいったところでございます。しかしながら、先ほど先生が御指摘のように、今後のエネルギー源としての原子力発電とか、あるいは国際機関による国際的ガイドラインの策定といったような核物質の防護措置に関する情勢変化というものをよく認識いたしまして、今後関係省庁とも十分協議いたしまして、わが国の国情に合った制度を核物質防護措置として整備するように努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  43. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 午前中で終わりたいと思いますので、先へ進みますけれども、これは重大なことですので、私は核ハイジャックという問題については、実はこの間の本会議で、公明党の塩出先生がいろいろとそれを心配して言っておりましたのですが、しかし、この核のハイジャックは発電所に原点を、原子力発電所ですけれども、それよりもサイクルの中で原料を輸入する、それから核燃料廃棄物処理を、輸送をする。日本はいずれにしても九州を押さえても、どこを押さえても、日本列島は海に四面囲まれておるわけでありますから、発電所の所在地から、いまはその動燃の東海再処理工場がまだ機能しているかいないかの前夜でありますけれども、いずれできていくとするならば、海上がむしろこれは、なかなか昔の海賊が異常な大きな勢力を持ったと同じようなかっこうで、どこをねらうかということになれば、保安庁からいってもこのハイジャックという問題についてはそういう大局の点からひとつ配慮をしなければいかぬじゃないか。  具体的な問題一つ聞いておきますが、これは船舶局だろうと思うんですけれども、今後動燃事業団の東海処理工場への輸送のため、海上輸送として総トン数千トン程度の内航船の改造が進められ、五十五年には三千トンの船舶を数隻、六十年度には倍増の計画が進められておる。これは私、科技特におるものですからいろいろ勉強してみたんですが、「原子力工業」というのに「放射性物質輸送上の問題点」という形で描かれておるわけですが、船舶局においてもいまは他国に依存しておっても、当然いま原発がマークされて非常にまだ、国民的なコンセンサスを得ておられましても、既成事実としてもう大勢でお決めになっておるのですから、そうだとすれば、それに対する船舶の構造はどうするというようなぐあいになっておってしかるべきだと思いますが、この「原子力工業」のこの雑誌ですが、三十八ページから四十二ページに詳しく書いてあるわけですが、この辺は具体的にはどうなっておりますか。
  44. 内田守

    政府委員(内田守君) 使用済み核燃料の輸送専用船の安全につきましては、先ほどちょっと審議官が御説明いたしましたように、現在船舶安全法に基づきまして規制をしておるわけであります。その具体的な中身は国際原子力機関の制定した、あるいは政府間海事協議機関で制定しました基準に準拠して行っているわけでございますが、いま御指摘のように、今後国内に再処理工場ができますと、日本の沿岸区域を使用済み核燃料を運搬する船が相当頻繁に航行することも予想されますので、私どもといたしましては、すでにこれらの船舶に対します構造設備等の安全基準を検討するために学識経験者、あるいは専門家から成る委員会を設けまして、すでにその安全基準を作成したという段階でございます。  その内容は、使用済み核燃料を運搬するそういう専用船に耐衝突構造であるとか、あるいは耐浸水構造であるとか、あるいは船倉を二重構造にするとか等々、その他の設備につきましていろいろの内容を入れておるわけでございますが、これは先ほど申しました国際的な規制基準よりも一層高い基準となっております。したがいまして、今後具体的に国内輸送の専用船が計画されて出てまいりました場合には、この基準に従いまして、これらの船舶の安全確保を図っていきたいというふうに考えております。
  45. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 行政が後追いにならないようにしっかりひとつやっていただきたいと思います。  それで、私どもは明治生まれですけれども、昔は海上の治安は水上警察署であったんですけれども、いまは非常に半径も広がって、今度は海上保安庁のやはり責任はハイジャック等も含めて相当——むろん、だからといって、海上自衛隊があるからと、そういうものに依存せず、平和路線の中で海上保安庁がこういう点についても十分発想として、保安庁長官来ておられますが考えておられますか、どうですか。
  46. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) お説のとおり、海上における人命、財産の保護、安全というのは当庁の任務でございます。原子力関係の輸送につきましても、当然われわれは法令の励行、その他一般の安全確保の問題として、十分今後とも処理していくつもりでございます。
  47. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 先へ進みますが、外務省からどなたかお越しいただいておりますか。  実はずばりで聞きますが、国連海洋法会議第四期会期は五月七日に終了しておりますね。それで領海十二海里、経済水域二百海里がほぼ定着したと言われておるようであります。この問題について、ひとつ平面的にお聞かせいただきたい、こう思うのですが。
  48. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) お答え申し上げます。  ニューヨークの海洋法会議は五月七日に終わりまして、一応三つの委員会で海洋法の非公式単一草案を逐条審議いたしまして、大体領海十二海里、経済水域二百海里、国際海峡の通航等の主要問題については大体骨格は固りましたが、まだ包括的な条約をさらに詰めるために夏八月二日から九月十七日まで七週間、第五会期を開く予定でございます。それで、まあ会議の細かい内容については、これは実は改訂単一草案を国会の方に私ども提出いたしましたが、やはり基本的には経済水域二百海里を中心にする領海十二海里、国際海峡の航行については一般領海におけるよりも自由な通航というものを骨格にいたしまして深海海底開発、あるいは海洋汚染防止の問題、科学調査というようなものについて相当審議が進みまして、恐らく夏会期には包括的に海洋法条約が実質的にまとまるという方向で固まっていくのではないかと思われます。わが国といたしましては、海運国等の先進諸国を中心にして、さらに協議を進めていく所存でございますが、海洋汚染に関しまして、実は先ほどからいろいろ御質問があるようでございますが、これは大体経済水域二百海里全般にわたって沿岸国が国際基準に従いまして取り締まり管轄権を行使する、ただし裁判権について旗国の優先という立場も残りますが、沿岸国の管轄権が拡大するという方向に向かっております。
  49. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 関連して二点質問いたしますけれども、これは関係の省庁でいいと思います。外務省の方からいま大体の概念として基礎知識をいただきましたので、それに関連して質問の第一点は、経済水域二百海里以内では、廃油など捨てられないことになると思います。そのために船舶の構造というものについて何か手を加える必要があるかないか、そういったような点、ぼくは加えるべきだというふうに思う、水域が広がっているわけでありますから。第二点としては、海上保安庁汚染防止守備範囲が従来と比載にならないほど広がるわけでありますから、これに即応する体制整備というものについて、概念としてはいま長官から聞きましたけれども、この問題について。第一点の方と、第二点の方を、関係の方からお答えをいただきたいと、こう思うのです。
  50. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 船舶の構造の点については、ちょっといま国際的にどういうふうに取り上げられていくか、国際的な基準というものがどういうふうに設定されるかというのは、ちょっと私いま……
  51. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 これ、むしろ船舶局長の方からお答えいただいていいです。
  52. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私どもといたしましては、先生指摘のように、率直に申しまして汚染防止ゾーンが二百海里まで広がるということではなくて、もうちょっとわれわれはいま五十海里程度ということも考えないではなかったのですが、仮に二百海里ということで経済水域もそうなる、汚染防止ゾーンもそうなるということになりますと拡大の地域はかなり広いということに、私どもは非常に今後のやり方を慎重に考えなければいかぬと思っております。御承知のとおり、やはり遠距離の汚染監視取り締まり体制については航空機ということがまず考えられますが、そういった点を重点にどの程度の監視体制をしくかということをよく考えて、現実にふやすべき装備を計画していかなければならないと、これは今後の大きい問題だということでいま計画にかかりつつある段階でございます。
  53. 内田守

    政府委員(内田守君) 海洋汚染防止に絡みます船舶の構造につきましては、国内的には海洋汚染防止法、それから国際的には海洋汚染防止条約の線に沿って規制されていくわけでございますけれども、今後投棄すべき、あるいはそういう区域が広がっていくことについて、具体的に船舶の構造がどういうふうに変わっていくかというのは、いずれにいたしましても、いま申しましたIMCOで行われております海洋汚染防止条約と、それに準拠したもろもろのいろんな委員会がございます。検討しておりますその線から、おのずから船体構造に対しての規制も変わっていくだろうと思います。いま具体的にどういうふうに変わっていくかということにつきましては、具体的に思い当たるところはございませんけれども、方向としては今後そういう方向で進めていくんではないかと思っております。
  54. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 これは、今度は大臣にひとつお答えいただきたいと思いますが、これはどの新聞も書いておりまするから、どの新聞という特定の名前は挙げませんけれども、五大中央紙は、あるいは社説、論説等で書いておるわけでありますが、いまの問題に関連して領海十二海里は「頭の痛い警備・救難体制」と書いております。で、「船も飛行機も足らぬ」と、貧乏海上保安庁は悲鳴を上げておると。中を見るというと、いろいろ書いてありまして、地図も書いてあるわけでありますけれども、この問題について大臣は、これに対していままでずっと聞いておられましたけれども、まあ空も必要ですし、陸も必要でありますけれども、海も港湾も必要でありますから、うんちくのあるところを、政治的な発言をひとつ大臣の御見解として大体答えていただきたいと、こう思うんですよ。
  55. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 領海が十二海里に広がるということは、日本の領土がそれだけ広がるわけでございますから、しかもそこは領海としての海上警備の区域が広がるということになるわけでございます。したがって、現在の海上保安庁の持っております海上警備の能力と申しますものは、最近の保安庁の機能が非常に多様化いたしておりますのに対応するのに精いっぱいで、しかも、その多様化した機能に十分まだ対応し得ないというのが私は現状だと思っておるわけでございます。その上に領海がそのように拡大されるわけでございますので、よほど思い切った海上保安能力の整備をやらなければいけない。具体的には、保安庁の持っております航空機、あるいは巡視艇、あるいは汚染防止のいろんな資器材整備、そういうものを思い切って増備しなければ、拡大された領海内の海上保安庁の任務を遂行することは本当に不可能であろうと、かように考えておりますので、いまの外務省の話によりましても、いずれ領海は広がることはまずまずそうなると、かように考えまして、五十二年度の予算編成のときにはそれを前提に予算要求をいたしたいと、かように考えておるところでございます。
  56. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 海上災害防止センターにスポットライトを当てて簡潔に質問いたしますから簡潔にお答えいただきたいと思います。  運輸省、海上保安庁計画では、既存の財団法人海上防災センターというのがありますね。これは国と民間の折半による資金を出して、それを基金として五十三年度では基金総額十六億円とし、その基金で海上保安庁の指示、指揮のもとに防災活動を行わせ、費用は直ちに支払い、事故原因者からは取り立てるという仕組みのものと理解しておるわけでありますが、その点については、よその国はさることながら、わが国もいま、この法案一つの目玉だと思うんですが、この海上防災センターという既存のものと、今後マークされておるところの海上災害防止センターという問題についての関連と、具体的には初年度にはどうすると、五十二年度にはどうすると、五十三年度にはどうするという事業計画であるとか、基金及び出資する負担者の氏名とか、そういうものの枠組みというものを、もうこの海洋汚染防止法がきょう上がるとすれば法律としてこれが機能するわけでありますから、これは非常に大事な問題だと思いますので、この点ひとつありのままを伺っておきたい。まだほかに二、三質問ありますけれども、まず第一にその点を。
  57. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 御指摘のように、現在公益法人で海上防災センターという亀のがございます。これは四十九年の十二月に設立をいたしまして、その後事業を行っておるわけでありますが、主たる事業は、海洋汚染防止法にございます義務づけられました資材の共同備蓄の仕事を全国で二十九基地において行っております。それから東京湾に消防船二隻を置いて進路警戒その他の仕事をやらしております。それから、現に計画中の訓練事業としては、横須賀に訓練の宿泊施設を、それから第二海堡に訓練所を置いて消防訓練の仕事をやる、以上三つを主としてやってございます。そこで足りないのは、防災活動にもっと積極的に手を下すべきであるという点が足りません。  そこで、振り返って海洋事故災害のその後の状況を考えてみますと、事故が起こったときには第一義的には原因者負担の思想によりまして原因者防除措置を講ずるという義務がございますが、海上事故の場合、船というものは移動をいたします。それから船からの防除措置というものについては立地的な制約がございましてなかなか十分にはやれません。それから海上災害は初動のときに手を打ちませんと大変広がりが大きいものでございます。そういった点で、一たん事故が起こりましたときに現場にその原因者がおらない、あるいは原因者関係する人がおりましてもいきなり防除活動に手を下すような権限を持っていない人であるというような場合がしばしば見受けられるのですが、その場合に、海上保安庁は新しい海上災害防止センターというものに指示をしまして、とりあえず海上災害防止センターの手で防除作業をやらせるということで、基金などを用意して必要な基金の支出をして後で原因者から求償をして取り立てるというようなことも考えて防災活動充実強化ということを、従来の財団法人でやってきました三つの仕事に加えて強化整備を図りたいというのが新しい海上災害防止センターのねらいでございます。そこで、さしあたり本年度、五十一年といたしましては国の出資を二億、予算案に計上をしてございます。これは国の出資でございます。それから出資といたしましてはさらに一億、船主協会からこれは出資をいたします。合計三億の出資でございます。それ以外に、出損というかっこうで船舶振興会から合計四億円の拠出をする予定でございます。合わせて七億円になりますが、五十一年度は、さしあたって船舶振興会の出損は三億円でございますから六億円で出発しようということでございます。そういう出資及び出指金を合わせまして基金として事業の所要の資金に充てまして、防除活動充実強化を図っていきたいというのが新しい海上災害防止センターのねらいでございます。
  58. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 これは後で資料としていただきたいと思いますけれども、国の予算は、本年度の予算にそれなりの数字が組まれておるわけですが、この他の船主協会だとか、それからその他の名簿を後でリストとして出していただきたい、こう思うのです。いまわかりますか。
  59. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 認可法人ということで、設立の認可を民間の発意に基づいてしてくるという手続をとります。そのときに、基金などの準備はどういうふうにするんだということを申請の手続の中に入れてまいります。その計画が、二団体からの先ほど私申し上げましたとおりの金額でございます。したがって、現在のところ書面と申しましてもその程度でございまして、認可の手続の中にそういう基金の計画が出てくるということでございます。今後の問題でございます。  なお申しおくれましたが、実は今年の十月、おくれましても十二月からは設立を申請を受けて認可をしたいというふうに考えておるのが現状でございます。
  60. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 大体わかりましたが、それで、これはあなたの方から出してもらったものを読んだのですけれども、足元の新潟でジュリアナ号の大被害があった。当時にはそれに対応する、即戦即応の対応がなかったので大変な一つの問題であったわけでありますが、今度この災害防止センターが機能すれば、事業内容というものは、たとえば機能であるとか、人員であるとか、組織というようなものの概要はどのようになりますか。  大体これを見て、あなたの方で腐心の集約をしておられるから蛇足でありますし、時間の消費になりますから、大体そういうことを頭の中に入れながら、あの当時はそういうものがなかったから、延べ数にはぼくも驚いたのですよ。たとえば人員は二万六千九百四十九人、船舶の数は一千四十二隻であるとか、航空機が百三十一機であるとか、消防車二百五十八台であるとかというようなわけで、これは延べでありますけれども、非常にこれは、あの災害が起きたわけでありますけれども、しかし災害としては世界最大の災害であったのです、あのときには。今度できるものは、いまこの法律に基づいてセンターができて、これは重要な海域にそれを具体的に設置すると、重要な海域といえば、たとえば東京湾だとか、伊勢湾だとか、瀬戸内海一帯だというふうに思いますけれども日本海方面については、これは重要な区域外であるかどうか、その点についてはどう判断しておられるかということと、具体的にはこのセンターはどの程度の組織と機能というものを、一朝事あった事態にはその機動性を発揮するものであるかという点について、概念的でもいいからお答えいただきたい、こう思います。
  61. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 現在、財団法人海上防災センターは、有給職員としては十八人ということでございます。それから新しい海上災害防止センターも、人員としては二十数人ということを予定しておりまして、それ自体の組織としては大きいものではございません。ただ現在、先ほど申し上げましたように、義務づけられました資材の共同備蓄の場所として全国に二十九基地を設けてございます。先生お話しの日本海でございますと新潟と富山にございます。全国に二十九基地がございまして、そういったところでは民間防災業者その他に資材の保管、それから事あるときにそれを搬出して現場に機能するように持ち出すというようなことの一切の手配をすることを、二十九基地を中心として防災業者と契約関係を結んで整えておるというのが現状でございます。  新しい災害防止センターにおきましても、基金の仕事を新しくつけ加えるとともに、二十九基地をさしあたり中心として基地方式、民間委託方式で仕事をしていく、できましたら、その基地はだんだんとふやしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  62. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 これで終わりますが、これは水産庁、外務省、それからできれば大臣からもお答えいただきたいと思いますが、ずばり言ってソ連漁船団の投棄する廃棄物のために、たとえば三陸沖であるとか、あるいは九十九里浜一帯の漁民は大変困っておる。被害額でも、新聞の報道するだけでもそれについても一億円以上の金が使われている。これじゃもうたまったものじゃない、こういうふうに言っておるわけでありますが、私どもも実感として、これはそう思っているわけでありますが、そこで外務省にお伺いしますが、このような諸問題について外務省は手をこまねいておられるのでありますか。外交折衝によってやはり領海これこれ、それから経済水域これこれという展望の延長線上について、外務省はこれらの問題について何か手を打っておられるかどうかと、そういう問題についてありのままをお答えいただきたいと思います。
  63. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) ただいま、先生指摘のありましたソビエト漁船による海洋投棄物のため、関係漁民が困っておられるという点につきまして、私どもがとった措置について御説明申し上げたいと思います。  本件につきましては、本年の一月中旬ごろからソ連の漁船が九十九里浜沖等に来て、海上においてごみを捨てており、それが非常に関係漁民の網等に損傷を与えているという申し出がございまして、私どもも非常にその影響が深刻であるというふうに受けとめまして、二月の六日に、在日ソ連大使を通じましてソ連政府に対して本件について注意を喚起し、それからこのようなことが繰り返されないようにということを申し入れました。で、ソ連政府といたしましても、本件を深刻に受けとめておるようでございまして、一週間後に回答が参りました。で、関係当局より、日本の近海で操業する全ソ連漁船に対して、海上汚染関係の規定を遵守するようにという指示が出されたようでございます。そして、さらにソ連政府といたしましては、この規定が遵守されるために常設の監視機関を設けたと、監視体制を設けたということを通報してまいりました。私どもの理解している限りにおきましては、その後、具体的には事故がこれに関連してあったということは伺っておりませんで、むしろそのような具体的な措置がとられたことによって事態は改善したという報告を受けている次第でございます。  一月以来の政府がとりました措置について簡単に御報告を申し上げました。
  64. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 水産庁の方から、この漁業被害の状況とか、これに対する対策とか、あるいは陳情とか、そういうものを水産庁の方については、これは反応はありますか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  65. 平井義徳

    説明員(平井義徳君) 水産庁としてお答えいたします。  先生の御指摘の点につきましては、千葉県の漁民等からの陳情がありまして、われわれといたしましては、ただいま外務省からお答えがありましたように、ソ連に抗議をするとともに、海底にたまりました空カンとか、古網とかというのを除去するという事業を行いました。これ千五百万円の事業費で、水産庁は半額助成いたしました。三月の三日から五日間にわたって実施した次第でございます。
  66. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 運輸大臣や保安庁の方ではこれについて、いま外務省、水産庁それぞれの関連がありますのでお答えをいただきましたけれども、総括として、なかなか大きな船団が相当な船を伴ってすれすれでやっておるという問題について、これは生命安全、海域というようなそういうような問題についてしかるべき手を打っておられるだろうと思うけれども現状のありのままをひとつお答えをいただきたいと思います。
  67. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 実は、毎年のように三陸沖から房総にかけまして、領海すれすれに非常な勢力のソ連の漁船団が南下いたしまして漁業をやっておりまして、これはわが政府といたしましても非常な大きな問題になっておることは御承知のとおりでございます。海上保安庁といたしましても、領海外のことでございますので、ただこれを監視をするという域を出ることは困難でございますので、そういう意味で監視をずっと続けておるわけでございますが、一番影響を受けます日本の漁船、漁業者等の被害につきましては、いまの廃棄物の問題もありますし、また漁業そのものの影響もございますので、これらにつきましては監視をしておりまして、監視の実態を外務省なり水産庁に連絡をとりながらそれぞれ適切な措置をとってもらうように、こういうふうな行動を続けておるわけでございます。  外務省並びに水産庁等におきましては、先ほど御答弁いたしましたようなことでそれぞれ対策を講じ、先方に向かっても善処を要望し、先方もそれを受けて善処をしてくれておるという状況でございますが、これもやはり領海が、従来の領海ではなかなかむずかしいことでございまして、何といたしましても領海内には入らぬのですから、公海上の漁業でございますから、公海上と言いながら迷惑をわが方に及ぼさないように、良心的にやってもらうという向こう側の実質的な努力にまたなければいけない。で、直接にいろんな被害、影響のあるものは、それぞれ外交ルートを通じてそれの除去なり、対策を要請するということを続け、そういう状況を保安庁としては監視するということを続ける、こういうことになるわけでございます。
  68. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 以上で終わります。
  69. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 午前中の質疑はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      —————・—————    午後一時二十二分開会
  70. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 運輸委員会を再開いたします。  海洋汚染防止法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。
  71. 加瀬完

    ○加瀬完君 海上災害防止センターは国の責任を代弁する機関ということになりますか。
  72. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 油による事故が起こりますと、原因者防除措置をする義務がございます。それで、その措置が十分に行われていないときには海上保安庁がみずから防除措置を行いまして、その措置に要した費用を原因者に求償することができるということになっております。したがいまして、原因者措置義務が第一義的にはあるということになっておりますが、ところがその措置原因者がするいとまがないとか、あるいはそのする措置が不十分であるときに海上保安庁はみずからもやりますけれども、今度の防災センターを使ってそれに指示をして防災の作業をさせるということの両方で考えておるわけであります。したがって、いわば海上保安庁原因者にかわってやる、その代執行をやりますその事務の一部をセンターにも指示してやらせることができるということでございまして、国の責任はそれで免れるわけでないということでございます。
  73. 加瀬完

    ○加瀬完君 海上災害防止責任が国にあるというならもっと、たとえば海上災害防止センターをつくるにしてもその内容というのは明確でなきゃならないと思うんですよ。で、海上災害防止センターから原因者なり対象者に命令やあるいは措置を要求したとしても、これを必ず守らなきゃならないという保証はどこにもないでしょう。これはありますか。もう一度申し上げますと、センターから命令や措置原因者に要求しても、原因者は必ずこれを守らなきゃならないという一体保証がありますか。
  74. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 海上保安庁がセンターに取り急いで初動の防除措置をすることを指示をするというのでありまして、原因者に命令をするわけではないということでございます。
  75. 加瀬完

    ○加瀬完君 センターは。
  76. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) それでセンターは海上保安庁長官の指示に従わなければならぬということになっております。
  77. 加瀬完

    ○加瀬完君 だから、海上保安庁長官の指示に従ってセンターは原因者にいろいろなことを要求することがあり得るでしょう。しかし、その原因者が必ずセンターの要求にこたえるという保証はどこにもないじゃないかと……。
  78. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 保安庁がセンターに指示して作業をさせる、で、その作業に要した費用を後ほどセンターから原因者に対して求債する、それに対して強制徴収権があると、こういう仕組みになっております。
  79. 加瀬完

    ○加瀬完君 もう少し詰めます。  この法律の題名を「海洋汚染及び海上災害防止に関する法律」というふうに改めたわけでありますが、現実この海洋汚染あるいは災害防除が完全に行われているという御認定ですか。汚染だけでも結構です、汚染防止が完全に行われているという御認定ですか。
  80. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 原因者がその第一義的な防除責任に基づいて防除措置を完全にやっているかというお話につきましては、やはり防除義務者が完全にやっている場合とやっていない場合とある、やれない場合もあるということでございまして、それで私ども現場原因者がいないとか、現場への到着がおくれるとかということで、初動のときにどうしても取り急いで油の広がりを防除しなければならないというようなときには、われわれの船艇を使って防除もやりますが、センターも使って初動のときに防災業者などを手足として使って防除活動をやらせるということでございます。なお、その原因者措置義務に違反するというようなときには、それに対してまたその必要な措置をとるべきことを命令をする、あるいは保安庁がかわってやって、かわった費用を原因者に求償するというようなことになると思います。
  81. 加瀬完

    ○加瀬完君 その前段の御説明にありましたように、現状において原因者がこの汚染防止の義務をやっていない、あるいはやられておらない、そういう状況はお認めになるわけですね。ですから、新しい法律というのは、そういうことが完全に解決されなければやれない場合がありますとか、やっておらないときもありますということは、それだけ逆を言えば、関係者被害を受けているわけですよ。その被害を防ぐことがこの法律の目的でしょう。この目的はそういうことでよろしゅうございますね。
  82. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) できるだけ防除作業を十分にやらせるということです。また初めからやっていないということを認めるのは私の説明としては不十分である、したがって、やっていないときには海洋汚染防止法のそれぞれの条項に照らして違反行為である、したがって、事件としてわれわれは取り締まるということになると思います。
  83. 加瀬完

    ○加瀬完君 いま、できるだけという言葉がありましたがね、できるだけでは防除にならないんですね。それで、この条文の説明の中にも、船舶所有者その他の関係者責任について指定してあるわけでしょう。この責任規定というものが明確になって目的を遂行するような形にならなければこの法律を提案する条件というのは解決されないわけですね。それならば、いままで海洋汚染実態、それに伴う解決、それがどう行われておったか、どういう状態であったか、これはそれらのもろもろの反省の上にこの法律ができたと思いますから、保安庁でこういうひどい問題がありますと、こういうような被害がありますと、これを今度はこう解決ができますということにならなけりゃ、私どもは、この法律をつくったってどれくらい一体いままでの問題点が解決するかというめどがつかない。この点は御研究があろうと思いますから、御説明を賜ります。
  84. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 法律で書いてあることは当然守らせるという前提でございます。したがって、私どもは、防除の作業を十分にやらして、関係者被害を与えないようにということで、平素から事件の発生を監視をし、また、事件が起こりましたら法令の遵守状況を見て取り締まりをするということになっております。で、かなり過去にもいろんな事件がございました。それは刑事事件として私どもは取り締まりの対象にいたしますものは取り締まりの対象として、事件として検察庁に送致をして、検察庁で刑事事件として取り上げて裁判にかけるということでございます。また、民事関係被害が起こりましたならば、それは刑事の問題ではございませんが、関係者の間で民事の裁判が行われているという例が過去においてあるということでございます。
  85. 加瀬完

    ○加瀬完君 最初に申しましたように、海洋汚染及び海上災害防止、この「海上災害防止」にウエートがかかって、海洋汚染の払拭という点は薄められているように感じられてならない。あなたの御説明のように、刑事事件のものは刑事事件にしましたと、民事事件のものは民事事件になっておりますというけれども、民事事件はあなたの方で出したものはほとんどなくて、これはそれぞれの関係者が出したと思うんですよ。刑事事件にすべきものを刑事事件にしていないと、こういう扱い方がいままでなかったわけではありませんね。  この前私はこの委員会で、明原丸という問題を取り上げたわけでありますが、そのときに、四十六年でした。四十六年も押さえて過去五年間で東京湾だけで油汚染が十二件ありますね。その中で原因がはっきりしたものは四件、倍の数は原因不明のままに被害をこうむりっ放し、こういう形になっていますね。そのとき私は、もっと海上保安庁というものは原因者に対する刑事罰の摘発というものを積極的にやらなけりゃおかしいじゃないかと、みんな逃げられちゃっててどうにもならない。それで住民が泣き寝入りをしている、漁民が泣き寝入りをしている。海上保安庁のこの件に関する海洋汚染に関する私は監視体制なり保安行政なりというものがもっともっと内容が充実したものでなければならないという感じを持ったわけです。そこで、保安庁はいままでの汚染に関する原因者責任が明確にすべて解決されたと、こういう御認定ですか。
  86. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 数字で申し上げますと、当庁が確認をいたしました油による海洋汚染の件数は、過去五年間の数字で申しますと四十六年に千三百件、四十七年に千九百八十三件、四十八年に二千六十件、四十九年に千九百八十五件、五十年に千五百八十四件と減ってきております。その油による汚染の件数のうちで、原因者不明のものは四十六年に三百二十四件、したがいまして、油の汚染件数のうちで不明件数は二五%でございました。四十七年は不明の件数が七百九十五件で、総件数に占めるウエートが四〇%、四十八年は不明件数が七百五十二件で、総件数に占める割合が三六・五%、四十九年は七百八件の不明件数で、総件数のうちに占める割合が三五・六%、五十年は不明件数が五百十三件で、総件数の上に占める割合が三二・四%でございます。  まあ数字だけで申しますと、できるだけ私どももこの不明件数というものを少なくしたいということで船艇航空機を使ってやっておりますし、夜間の撮影装置なども逐次整備をして、夜間の取り締まりもできるだけやっておるんですが、そういった不明の率というものは若干毎年好転してきておるということでございますが皆無ではない、不明件数はかなりやっぱり残っておるという実態でございます。
  87. 加瀬完

    ○加瀬完君 これはパーセントだけで成績というわけにいかぬですよ。被害を受けた側からすれば、パーセントの割りに被害が少なくなったということにならないわけです。たとえ一%であっても莫大な被害というようなこともあり得るわけですから。そこでセンターの効率を上げるためには原因者の積極的な義務履行というのがこれは先行しなければどうにもならないと思うんです。これが今度の法律では全くの未保証じゃありませんか。原因者が積極的にこの業務に参加し、義務を負うという体制がなければこれはできないでしょう。しかし、そういう保証はどこにもないでしょう。この点どうですか。
  88. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) その点は従来の海洋汚染防止法と私どもは考え方を変えておりません。したがって、何人といえどもその油を流してはいかぬという原則的な禁止の条文と、それから第六章で原因者がそれぞれそれに対する防止措置をとらなければいかぬ。たとえば、まず船長が応急措置をする、続いて所有者が本格的な防除措置をするというような点は、従来と何にも変えておりません。それからもちろん基本的に精神として、PPPの原則に基づいて原因者がそういった防除責任を負っておるのでありますから、そういった精神に基づいて守らせるように指導していくのは従来と変わらないつもりでやっております。  なお、私ども今度の法律でお願いしたいと思いますのは、油の面について言いますと、やはり環境保全ということだけで、油は、黒い油が流れてその環境保全を妨げると、海洋汚染させるという意味で取り上げておりましたことだけでは足りないので、災害という面にまで及ぶと、人体、生命の損害にまで及ぶということで、私どもは新たに船舶所有者油回収船の配備の義務を設けましたり、それから平素から協議会をつくって、一たん事故あるときの防除計画を作成をさせましたり、それからセンターに指示をして、原因者が手を下せないような初動のときにもすぐ防除の作業にとりかからせるようにするという意味で、従来の油の取り締まりの考え方、それからその法令を守らせる精神、そういうものは変えないで、さらにその上で防除措置整備強化というものを考えて、それを環境公害立法である従来の海洋汚染防止法にさらにつけ加えたということでありまして、環境立法としても決して退歩していないということ、さらに災害法としてはそれにプラスをして整備強化をしたというつもりでございます。
  89. 加瀬完

    ○加瀬完君 おかしいじゃないですか。従来と変わっていないということは、三〇%ないし四〇%の把捉といいますか、逃げられてしまう原因者を残すということになるわけですね。したがって、新しい立法というものは、いままで汚染原因をつくって逃げた者も今度は逃げられませんよと、そしてこの防止センターというのは、仮に逃げたところで結局その被害の救済はいたしますよというのがこの法律でしょう。従来と変わっておらないということであれば何も新立法する必要は一つもないですよ。  そこで、先に伺いますが、一九六九年、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約というものができましたね。それにつれてわが国の油濁損害賠償保障法というものができましたね。これを見ましても、所有者の無過失賠償責任ということが明確になっていますか。この点をお伺いします。
  90. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 実は、私の直接の所管ではないんですけれども、海運局系統の法律ですが、私、当時前国会にこの法律を御審議願いましたこともありますので、先生いまお尋ねのお話がございました点につきましては、間違いなくタンカーの損害賠償責任につきましては、従来の制度よりもさらに責任を加重して無過失の損害賠償責任ということになって、それに基づいて国内法が制定をされたと。ただ、これが発効するのがたしかこの秋ごろからでなかったかと思っておりますので、ちょっとその発効の条件などはいますぐ思い浮かばないんですが、たてまえは無過失賠償責任になっております。
  91. 加瀬完

    ○加瀬完君 外側から見た法律というのは非常によくできてますよね。しかし、こういう場合がはっきりしないじゃないですか。故意または過失の立証がある場合と、それがない場合と賠償方法が違ってくるはずですね。これらについて具体的な方針がきちんと出ていますか。
  92. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 一定の不可抗力の事由に該当しない以上は故意、過失の区別なく、無過失でも責任を負いますので、一定のトン当たりの金額に基づいて損害を賠債するということに新しい法律ではなっているということでございます。
  93. 加瀬完

    ○加瀬完君 汚染原因の不明のため賠償が不成立の場合がいままでは非常に多うございましたね。あるいは不成立でなくても、その解決がつかないために問題の結論が出ないというケースが非常に多かった。で、この賠償法ではこれらが簡単に解決できるように、結論が出るようになっておりますか。
  94. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) その新しい賠償保障法では、実は原因者不明のことには触れておりません。原因者がはっきりしている場合に、その原因者が無過失でも責任を負うということでございまして、その基本にはたしか二千トン以上の船舶に強制保険を掛けさせて保険金を積ませておくということが基本になっておったと思います。原因者不明の救済制度につきましては、たしか水産庁の方で漁業の補償に対する漁場油濁被害救済基金というものを設立をいたしまして、原因者不明の漁業に対する被害について、清掃費なり補償費なりをその基金で支払っておるという制度を水産庁でやっておるということでございます。
  95. 加瀬完

    ○加瀬完君 問題は、どう払うかということでなく、立証責任はだれがとるのかという問題ですよ。原因が故意または過失、こういう立証がなければその判定は判然としないでしまう。その立証はだれがするんですか。立証責任はどこにあるのか。
  96. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) この油濁損害賠償保障法ではもう無過失の損害賠償責任になっておりますので、その加害者がだれかということがはっきりしておれば過失の有無は問わないということで、そういう判定は要らないというのが新たにできた油濁損害賠償保障法の精神であろうと思います。
  97. 加瀬完

    ○加瀬完君 この賠償保障法は、いまのような御説明のとおりになりましょうけれども、問題は、多いときは四六%把握できない原因者がいるわけですね。四六%逃がしたままで置いて、もしもこれを全部無過失の賠償に適合するなら、これは逃れて恥なしということで、わからないように逃げちゃえば幾ら何やってもいいということになりますね。汚濁防止の一番のねらいは、原因者にはっきりとした責任を持たせるということでしょう。原因者負担の原則というものを確立するということでしょう。それに立証責任というものが不明確ではどうにもならないと思うんですよ。この立証責任をもっと保安庁がしなけりゃどうにもならないのに、保安庁はそういう業務には非常に私は完全ではないと思うんです。  改めて伺いますが、原因者が油で汚濁をした場合は、原因者によってこれを防除することが一番のいい方法でしょう。これはお認めになりますね。
  98. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) そのとおりでございます。
  99. 加瀬完

    ○加瀬完君 そうすると、汚染監視の義務者というのは一体だれですか。海上保安庁じゃないですか。
  100. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私どもは、原因者不明の件数をできるだけ少なくしたいということで、その油の分析、検出の装置でございますとか、あるいは先ほどもちょっと申し述べましたけれども、夜間の撮影装置とか、そういったものを使って原因をはっきりさせるということに、取り締まりとして責任を負っているということでございます。それから……
  101. 加瀬完

    ○加瀬完君 私の聞いているのはそういうことじゃない。汚染監視の責任海上保安庁が持つのではないのかと聞いている。そうだか、そうでないか、おっしゃればいい。
  102. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) そこで、まあ数字をいま申し上げようと思ったんですけれども、年々の……
  103. 加瀬完

    ○加瀬完君 数字じゃないですよ。そうか、そうでないか、答えてくださいよ。
  104. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 海上保安庁が監視の責任は持っておるということでございます。
  105. 加瀬完

    ○加瀬完君 では、昭和四十六年十二月の明原丸事件について、その後の経過をどう把握していらっしゃいますか。
  106. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 明原丸の事件の刑事と民事の訴訟の現状を申し上げますと、まず刑事訴訟につきましては、横浜地検川崎支部が昭和四十七年八月三十一日……
  107. 加瀬完

    ○加瀬完君 簡潔でいいです、簡潔で。
  108. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 起訴いたしまして以来、昭和五十一年二月二十日までに十八回の公判が開かれたと聞いております。これは海洋汚染防止法違反で私ども昭和四十七年三月二十四日に事件を送致をいたしましたところによるものでございます。  次に、民事訴訟ですが……
  109. 加瀬完

    ○加瀬完君 民事訴訟はいいです。  そうすると、海上保安庁としては刑事責任があると認めて送検したと、こういうことですね。
  110. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 明原丸が油を流したという事件について、私ども海洋汚染防止法のそれぞれの条項に照らして事件を送致をした。で、被疑者は船長と機関士と、それから両罰規定で明治海運という会社であるということでございます。
  111. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは、いま御説明をしかけられました民事訴訟の方で、先般海上保安庁が民事裁判の証言に出られて証言をしておりますね。この概要をお述べをいただきます。
  112. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 警備救難部長にその件は調べさせてありますので、ここにおりますからいまお答えをさせます。
  113. 山本了三

    説明員(山本了三君) 民事訴訟におきまして、海上保安庁関係では証人としまして四十九年の八月二十八日には阿部元海上公害課長、四十九年十二月十一日には手塚元海上保安庁長官、それから青木川崎海上保安署員、この三名が出ております。  で、この……
  114. 加瀬完

    ○加瀬完君 証言の概略だけ、要点、こういうことを証言しましたということをおっしゃっていただきたい。
  115. 山本了三

    説明員(山本了三君) 阿部元海上公害課長の証言の要旨は、一つは油の量でございますが、油の量につきましては二・三五ロングトンを超える相当大量な油である、そのように証言いたしております。  それから防除の概要についても証言をいたしましたが、この油の類似性につきましては、類似性ありと判断されると、そのように証言いたしております。  それから、明原丸から流れた油が木更津の方に流れ着く可能性はあるかという質問に対しましては、海上保安庁水路部の分析結果によりますと、海流、風などを総合しますと可能性がある、ただし、断言はできないと、このように証言いたしております。  以上です。
  116. 加瀬完

    ○加瀬完君 保安庁長官の証言の概要は、いま御説明もありましたとおり、流出した油の量は明原丸側が主張しているのと違って量は多い。第二点は、川崎から木更津に流着する可能性は希少ではあるが、ある。第三には、川崎の流出油と木更津の油の質は近似している。四、当時他に汚濁原因はない。この四点が証言されたと聞いておりますが、間違いありませんか。
  117. 山本了三

    説明員(山本了三君) 油の類似性につきましては、分析の結果は類似性は非常に高いというふうに手塚元長官は証言をされております。  それから、その当時ほかに油を流した者はいるかということに対しましては、約七百隻の船舶あるいは六十数カ所の工場、こういった東京湾——もちろん東京湾関係でございますけれども——の油の採取、分析を行ったが、その容疑がありそうに思えるものはなかったと、そのように証言しておられます。
  118. 加瀬完

    ○加瀬完君 大体私が申し述べたのと大要は同じですね。近似しているようさらに証言の方がはっきりしているわけですし、それから油をほかに流した者も見当たらないということも事実としてお認めいただいた。こういうふうに原因者が明瞭であるにもかかわらず、明原丸事件は四十六年に起こりまして、四十七年に恐らく争いが起こりまして、いまもって全く未解決なままで、これについて関係住民は割り切れない気持ちでおります。この漁民の気持ちについて保安庁長官はどうお感じになりますか。
  119. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 一番意見の分かれているところは、油の同一性ということについての問題が残されて意見が分かれて、それでやむを得ず裁判になっていると思うのです。裁判の手続がどれだけかかるかということは、これはちょっと私どもから申し上げられないので、これはそういう司法の手続によるほかはないと思いますが、やはり裁判が解決してその責任の問題が明らかになった上で、その内容に従ってその処理が行われるということを私どもは期待するということでございます。
  120. 加瀬完

    ○加瀬完君 それはおかしいですよ。民事裁判はあなた方がどうすることもできないけどれも、あなた方は同一内容で刑事訴訟しているでしょう。そして、その刑事訴訟においても流出した油が大量であるということ、それから当時他から油を流した者はいないということ、この二つは海を汚染をしたのは明原丸の油であるということは確実になっているじゃないですか。それならば、側面からもっと私は協力の仕方もあると思う。監視責任海上保安庁にあると言う。監視責任のある海上保安庁が明原丸は海を汚染した、間違いないと、こういう判定をして刑事起訴に踏み切っているのにかかわらず、同じ内容で争っている民事には私は存じませんと、時がたたなければわかりませんでは、それじゃ一体、あわせて海上保安庁責任を持たなければならない漁民の安全なり漁場の安全なり、こういうものは一体どうなるんですか。  だから、私はさっき最初に、監視責任保安庁ですねと伺ったわけです。監視責任があるなら、監視責任の不備のためにこういうことになったということになるんじゃないですか。これは今度の法律にも関係があるんです。どんなに災害防止センターができたところで、災害防止センターに海上保安庁から通知をして、こうしろああしろと言ったって油が皆流れちゃうんです。で、原因者がどこへ行ったかわからなくなっちゃう。海洋汚染を完全に解決するためには徹底的に保安庁原因者を調べてつかまえて離さないと、責任をとらせると、この姿勢がなけりゃどうにもならないですよ。三〇%ないし四十何%みんな逃がしている。こういう状態の中では根本的な問題の解決はできませんよ。金がないの、人が少ないのということは言わせませんよ。それは堂々と長官なり当局なりが要請すればいいことなんだ。大臣もそこにおりますけれども、三六%から四十何%というふうに、大ざっぱに言えば見つかったものの半分は逃げられちゃっている。逃げられなきゃならないような海上保安庁は体制だ、東京湾だけ見たって。一番監視が完備している東京湾だって全く大きな網の目みたいなんです。こういう状態を不問に付しておいて、センターをつくろうが何をつくろうが問題の解決には私はならないと思う。  当時国務大臣の大石武一さんは、八億から九億の損害であろうと、これは政治の責任でありますと、こう答えている。政治の責任というならば、政府が当然、何年もたっているんですから、再び明原丸みたいなことはありませんよということを、政治責任を明らかにしなきゃならない。四十六、四十七、四十八、四十九、五十といま並べた。大分よくなっていますと言ったって、まだ二五%から三〇%原因者を逃がしている。無責任とは申しませんが、保安庁行政は余りにずさんではありませんか。八億なり九億なり損害を受けた者は、どろぼうに追い銭じゃ悪いけれども、さらに訴訟費用も加わって、訴訟時間も仕事を休んで、生活困窮の度をますます激しくしている。それに対して一応送検しましたと、起訴になるでしょうと、そのうち解決が出るでしょうと、それまでは保安庁は知りませんでは、汚濁原因者を徹底的に追及している姿勢と言えますか、これ。関係者は、海上保安庁は何にもしてくれないと、全く漁民には役に立たない存在だと言っていますよ。そうではありませんというお答えをここではっきりいただきたい。
  121. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) ちょっと数字になって恐縮なんですけれども事件原因者が、先生指摘のような、私、先ほど申し上げたように……
  122. 加瀬完

    ○加瀬完君 言いわけはいいから、質問に答えてくれればいいよ。
  123. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 送致件数というものは、私ども取り締まりをやっていまして、これ別の数字になりますけれども、四十六年から五十年までかなりふえて、私どもとしては一生懸命に事件を追いかけて立件をして送致をしているという数字は別にございます。それで、油の汚染件数に対してわれわれが承知している率としては約半分。五十年で言いますと五二%ぐらいのものを送致しているという現状になっております。  本件につきましてやはり私どもは、川崎の油の事件について海洋汚染防止法違反で送致をして、起訴されて、それが刑事事件になっているということですが、遺憾ながら木更津の被害との因果関係について関係者の間で意見が分かれておって、裁判ざたになっているということが今日まで解決を延引させている事態になっていると思います。御指摘のように私どもできるだけ船艇航空機、あるいは分折機器を使って今後まずはその原因者不明というようなものが出ないように監視をやります。それから事件が起こったら厳重にその法令に照らして違反行為については取り締まりをして立件をするということを今後努力をしていきたいと思います。
  124. 加瀬完

    ○加瀬完君 センターをつくりましても、午前中の御答弁で伺っておりましたけれども、これは法人として政府も金を出して、これから作業を始めるわけですけれども海上汚染で一番の問題は、原因者責任を徹底的に追及するという姿勢がなければ、結局海上汚染というのはなくなりませんよ。海上汚染をすれば財産をなくするほどの経済的打撃を受けると、そういう拘束と義務を負わされているということになって初めて油を出さないような警戒心が出てくる。いまのように大体半分ぐらい逃げられるのだから、わからないように捨てちゃえばそれきりだと。ほとんど夜間でしょう、問題の油が出るのが。昼間の問題は少ない、夜間です。災害みたいなときはとにかく、故意で油を流して逃げる船はほとんど夜間だ。夜間の監視体制というのはほとんどないでしょう。センターができたってセンターで取り締まるわけにはいかぬでしょう。  そこで、私は明原丸みたいな事件があったらこれについての原因者究明、賠償責任の追及というものには政府も本腰を入れていただかなければならないと思うのですよ。海上保安庁長官の民事裁判における証言は非常に地元も感謝をしております。はっきり言っていただきました。油も類似しているということをはっきり言っているんですよ。ほかからどこからも油が流れた原因はないというのでしょう。時間がありませんから詳しくは申し上げませんが、私もいろいろ調べましたけれども、あの当時の気象条件では、川崎の扇島のシーバースの油は木更津に流れ着くという因果関係は気象庁が立証しているわけです。そして、油も向こうの言い分の二・何リットルというようなことでなくて、少なく見たって六十トンから八十トンは出ているということがはっきりしている。立証は明確じゃないですか。  汚染が直接の刑事責任ですけれども汚染をすればいろいろの被害を生じますから、汚染そのものが刑事責任になっているわけですからね。汚染を追及するというなら、汚染によって出た被害、賠償責任、こういうものも保安庁ははっきりと態度を打ち出して追及しなければおかしいんじゃないですか。この点、まるで人ごとのように、木更津に浮着した油と扇島シーバースから流出した油の質が争いのもとですなんて言って人ごとにこれ済まされる問題ではないでしょう。その態度というものが明確になって、海上保安庁の監視を逃れるわけにはまいりませんという、こういう受け取り方を関係者がしなければ海洋汚染はなくなりませんよ、そうでないでしょうか。
  125. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私ども取り締まりの側に立ちますと、直接的にはやっぱり刑事責任ということになりますけれども、できるだけ先生お話ございますように、その原因と結果というものが判然といたしますように、監視、取り締まりを十分続けてこれからいきます。そういうことで、やはり原因者負担の思想が、後で油を流すといい結果は出ないというふうなことをみんなの気持ちの中に植えつけていくためにも、それが私どもは必要だということを考えております。
  126. 加瀬完

    ○加瀬完君 五年も六年も前のことを掘り返して申し上げるわけじゃないけれども、私はこの明原丸の問題に関しては、海上保安庁の出先の態度というものは、はなはだ腑に落ちない問題があるわけです。皆さんもお聞きでしょうけれどもオイルフェンスが問題だと、オイルフェンスをやってなかったところもありますね。これは後で確認をされた。夜間給油というのはやらないことが原則でしょう。監視をはっきり立てなきゃならない、当然ですわね。ところが、この監視も船長いないでしょう。監視が非常に怠られておった、これも明瞭になっている。  それから大平丸というのが問題になって、この船を追っかけていった、千葉の保安庁の出先が。ところが、川崎側はこの捜査を拒否しているんですね。同じ保安庁の中でありながら、千葉側は追跡していって、大平丸から油が出たこと間違いない。大平丸の立入調査をしようと思ったら、それを川崎側はやらせない、こういうことをやっているんでしょう。  それから、中和剤にしたって、大体百五十リットルから二百リットルで一トンの油を処理するということになっておるでしょう。この場合、七百かん使っていますね。七百かんということは十八リットルの七倍百でありますから十二・六トン使っているわけです。中和剤を十二・六トン使ったということは、少なくとも百五十分の千としても八十四トン、二百分の千としても六十ミトン、六十トンから八十トンの油が出なければこんな十二トンも十ミトンもの中和剤を使うはずがないでしょう。それにもかかわらず、油は二・何トンくらいしか出ないというふうに向こうは主張しているんでしょう。こういう調査も、一方やろうとした海上保安庁の職員と、一方これをやらせまいとした海上保安庁の職員と、こういう二色になってこれはやってないでしょう。やることができなかった。  それから、いま言ったような流出した油の量の把握についても、これはむしろ保安庁関係が拒否していますね、正確な調べを。それから間野潤一という方から供述をとっていますね。会社の報告と間野氏の供述が食い違っていますね。二百三十二トンの食い違いがある、積み上げた油の。こういうことも一つ保安庁としての調査がないでしょう。ひどいのは、明原丸の三等機関士の平川降而という人がいましたね。この人から海上保安官佐藤治夫さんというのが調書をとっている。この調書の一部はインク消しで訂正されている。「流れ出した油は」その下がインク消しで消されちゃって、「越えて海中に流れ出しました」と、こうなっている。いやしくも調書をインク消しで消したままこれを受け取っているわけです、消されたものを。明らかに捜査の完全性を期したということは言われませんよ。  そういう幾つもの、私ども海上保安庁が十二分な問題の解決をしたと受け取れない節がありますから、もっと監視体制をはっきりさしてくれなけりゃ困りますと申し上げているんですよ。当時の海上保安庁の長官も、これは私どもの方として非常に反省し、責任を追及しなきゃならない問題ですと、こうおっしゃいました。したがって、私どもはそれ以上追及はしませんでした。これが事実でないとしても、被害を受けた者からこういう疑義を持たれるような捜査で海上保安庁がいいはずないと思う。大臣、これはどうでしょう、海上保安庁の捜査というのは、少なくも国民からとにかく捜査は万全によくやってくれた、こういう信頼を持たれるような内容でなけりゃならないと思いますが、違いましょうか。
  127. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 海上保安庁は、海洋汚染防止法を励行する任務を持っておるわけでございますから、そういう立場から、海洋汚染防止法に違反するような行為があった場合には徹底的にこれを究明をしなければならないわけでございます。まずその点で、いま保安庁の長官が申し上げましたように、過去におきまして四〇%内外どうしても現場をその瞬間で押さえられなかったという事実があるわけでございますが、この点は今後さらに一層監視を厳重にすべきであると、私もそういう指導強化を図ってまいりたいと思います。  それから明原丸事件関連いたしましては、明原丸が海洋汚染防止法に違反して油をたれ流したという事実は、保安庁がこれを把握しておりますがゆえに、海洋汚染防止法違反で刑事事件にいたしておるわけでございます。その限りでは、海洋汚染防止法の違反者であるということは保安庁が認定をいたしておるわけでございます。民事の方で、その油が千葉県側の海岸の方に流れて、そして、そこのノリ業者被害を与えたというのが民事事件でございますので、今度は油を流したという事柄と、その流れた油が風向きその他で千葉県側の海岸の方に行って、そして、その油でノリに被害を生じたかどうかという因果関係一つ問題になっておるわけでございます。この因果関係については、海上保安庁といたしましては、先ほども加瀬委員が言われましたように、裁判の証言の中で、保安庁では調べ得る限りのことは証言をいたしておるわけでございます。しかし、民事事件でございますから、この海上保安庁の証言を裁判所がどうとるかということが最終判断になるわけでございましょう。判断の材料としては証言をいたしておるということでございます。  したがって、問題は二つに分かれるわけでございますが、海上保安庁といたしましては結局、海洋汚染防止法の趣旨はこういうノリ業者であるとか、漁業者等に海洋汚染による被害を与えないということが終局の目的でございますので、そのために海洋汚染防止法という法律があり、この法律の徹底励行を期することが海上保安庁の任務でございますので、監視の面におきましては、今後ともさらに一層徹底して監視の網から逃れる者が少ないように、絶無を期するように努力をさすつもりでございますが、やはり天網恢恢疎にして漏らすこともございますが、できるだけそういうことのないように努力をさすつもりでございます。  なお、一たび保安庁が、油を流した原因者がこれであるということがはっきりいたす自信が持てたときには、そのためのあらゆる証言その他にも十分調査をいたしまして、保安庁としてはその責任を果たし得るだけの証言をするように努力をするつもりでございます。
  128. 加瀬完

    ○加瀬完君 これで終わります。三点伺います。  原因者の究明を捨てて防除対策はないと、これが基本であるという点は認めてよろしいかどうか。  第二点は、たとえば明原丸のように民事訴訟の係争中のものであろうとも、それはそれとして、原因者究明ということについては一層海上保安庁努力を続けるものだと。  第三は、これは大臣にお答えをいただきますが、衆議院で明原丸の問題について質問がありましたとき、法務省と連絡をいたしまして速やかに解決するように協力をしてやるというお答えがあったそうでございますが、それはそのとおりここでも承ってよろしいか。この三点。
  129. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 原因者の究明がすべての基本だと、これはその通りでございます。  それから原因者の究明について努力を続ける、これは事実、材料、手段があります限り、それは努力すべきものだと考えております。
  130. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 先ほども申し上げましたように、保安庁長官の証言から考えましても、十中八、九、原因者としては間違いないであろうというふうに保安庁は考えておると思います。そういう意味からして、もう事件になっておりますからこちらが引き取ってどうこう言うわけにはまいりませんけれども、裁判所等と十分連絡をとりまして、円満に解決できるようには努力いたしたいと思っております。
  131. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それではまず最初に、この法律案趣旨説明等については運輸大臣から当初ございましたけれども、この提案の経緯、私はこれを、法律案ずっと読んでおりますと、どうしても防止センターをつくるのが主力のような法律案に考えられるわけです。したがって、この法律案を提案するまでのいろいろな経緯、あるいはいろいろな理由があったと思うのですが、この点についてもう少し詳細に説明願いたいと思うんです。
  132. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 一昨年の暮れに二つの大きい事件がございまして、一つ水島流出油事件と、それから東京湾における第十雄洋丸衝突炎上事故、これがここしばらくの間で一番大きい事件でございました。そこで、私どもは従来の海洋汚染の対策がこれでいいんだろうかという反省がまず第一にありましたわけでございます。たまたま、陸上コンビナートを中心としまして、そのコンビナートの自衛消防でありますとか、タンクの保安の基準でありますとか、そういうものについて石油コンビナート等災害防止法が成立を見たのでございますが、そのときに、陸上コンビナート防災対策としてはこの法律でいいけれども、一たんすでに水島でもその油が海上に流れているんだ、海上についてどうするかということをよく考えて、しかもその海陸の接点で漏れがないように一貫した防災措置をつくるべきであると、そういった法律を考えろというのを両院の附帯決議として、石油コンビナート等災害防止法のときにいただいたわけでございます。  そこで、まず油について従来の海洋汚染の対策で十分であったかという反省をいたしましたところ、実は、従来は、重油その他の粘着性のあるどろどろした油が海洋汚染するということで、それが環境を阻害するではないかということで、環境保全ということを主眼とした海洋汚染防止法がつくられておったということでございますが、翻って水島事故を見てみましても、単なる海が汚れたということでは済みませんで、さらに水産等に対する非常な財産上の災害が出てきて、会社も莫大なそういう補償に応ずるというようなことが現実の問題として出てまいりまして、もっとどろどろした油についても防除措置整備強化しなければならないということに気がつきました。  そこで私どもは、一定の重要な海域については、原因者負担の原則から船舶所有者油回収船の配備を義務づけようじゃないかということをまず考えたわけでございます。これは陸上の側で石油コンビナートが特定の事業者にやはり自分のところのタンクその他につきまして海に流さないように防油堤などをつくれという義務を課しますと同時に、一たんやはり不幸にして海に流れたら油回収船まで持てということを石油コンビナートの特定事業者に義務づけているということとうらはらの問題でございます。  それから、やはり平素事あるときに備えて、関係業者が中心となって防災のための協議会をつくっておかなければならぬ。それから、その協議会によって防除計画を作成しておかなければならない。  それから四番目には、実は初動のときの体制について、いままで十分でなかった点をセンターに海上保安庁から指示をして、とにかく油が広がる前に原因者現場におらなくても、一部その所要の費用は基金を利用していいから、その防除にとにかく現地の防災業者を利用するとか、あるいはセンターが持っている器材をいきなり運び出すとか、そういったことで防除の作業に移れということをまずやらせるべきである。もちろん海上保安庁はやりますということですが、そういったことを考えたのが四番目でございます。それが油に関することでございます。  それで火災につきましては、実は第十雄洋丸が火事になったから気がついたということは本当にうかつでございますけれども、実は白い、白物と言う揮発油LPG、LNGが噴出をしまして火災になるということに対して、陸にはちゃんとした消防法がございますけれども海上の消防に対するその法的な措置というものは実は海洋汚染防止法のところにはなかった。これは当然つけ加えなきゃならぬということで、これに危険物として引火性の強い油類を入れまして、それが事故を起こして流れ出た場合にまず通報してこいと、それから所要の応急措置をとれと、引き続く油の流出がないように、危険物流出がないように応急措置をとれ、不幸にして火がついたらまたさらにそれ以上にその現場海域の船に退去を命じたり、入ってくるなと命じたり、また不幸にして火がついた船を、第十雄洋丸のように遠方の海域に出して引いていけというような命令を出すというようなことを考えて火事の場合の災害防護を考えた。  それから海陸の接点ということにつきましては、主として係留中の船舶につきましては、これはやっぱり陸上から消防機関が手を出して火を消すということをまず優先的に考えて、消防機関が陸上から手を出すために現場にいないようなとき、あるいはまた消防機関から要請があったときには海上保安庁はそれに対して補って協力をして活動するということにする。一方、岸を離れて航行中の船舶につきましては、これは当然海上保安庁責任を持って消火活動に当たりまして、現場にたまたま海上保安がいないとき、あるいは消防機関に要請をしたときには、その消防機関も働くということにいたすということで、海陸の接点においてもその落ち度のないようにしたということでございます。  それで、一時、実は海洋汚染防止法改正ではございませんで、独立の災害法として、私先ほど申し上げました石油コンビナート等災害防止法に匹敵するような海上災害防止法案というものを用意したらどうかと思って実は去年の秋ごろにはそういう方向で考えてみたんですが、いかんせん油の流出に際しまして、どこまでが環境の阻害であってどこからが災害になるんだということがもう重なってしまってどうもはっきりしないということでございまして、たとえば海洋汚染防止法の現在のところから、第六章の防除措置などのところを抜いて、災害に入れるということを切り離してしまうわけにいかぬと。どうも両方に同じような規定を用いなきゃならぬのじゃないかというようなことがございました。  それから現実の問題として、原油というのは油が流れ出してどろどろとして海を汚しますし、それから火もつくんですが、そういったときに、まず流れたときには海洋汚染防止法公害立法としてやると。それから火がついたら災害立法として今度は単独の災害立法でやると。また火が消えたらもとに戻るというようなことでは、国民の皆さんに義務を課したりするのは非常にかえって迷惑であるということで、いろいろそういう検討を行いました末、海洋汚染防止法の一部改正ということであるが、決して公害立法として海洋汚染の立法措置に退歩するものでもない、新たに災害の対策を強化するんであるということで、今日の法律案の御審議をお願いするに至りました。
  133. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 いま答弁のあった中で、私何点か、法律案の問題で一、二聞いておきたいんですけれども油回収船の配備の問題ですね。この第三十九条の四項目にある「総トン数が運輸省令で定める総トン数以上」と、こういうのありますけれども、これは法律が施行されてからいろいろ運輸省令つくられるんでしょうけれども、大まかに言って、もう大体煮詰められているんじゃないかと思うんですがね。したがって、これ、どのぐらいの総トン数が予想されているのか、まずこの点について。
  134. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 総トン数で五千トン以上のタンカー油回収船の配備を義務づける。で、「油回収船等」と書いてございますのは、油回収船はまだ実は技術開発の途上でございまして、その他手軽な装置というものもいろいろ開発をされておる。そういうことを考えて回収船ないしは装置を含んで配備を考えたらどうかということを考えておりますが、義務づける対象船舶としては五千トン以上の船舶ということでございます。
  135. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、後で決まって運輸省令で定める海域と合わせて、大体五千トン以上ぐらいとなりますと、日本で大体どのぐらいになりますか。義務づけられる隻数は。
  136. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 五千トン以上の船舶は大体邦船で二百五十隻、約でございますが二百五十隻。それで外船を入れますと、約百五十隻ふえて四百隻ぐらいになるんじゃないかと思っております。五千トンの船が事故を起こしますと、大体百キロリットルぐらいの流出油事故が出てくるというのが過去の経験値で大体予想されますので、それだけの大事故ということを考えて五千トンということで決めたわけでございます。それから、海域は、東京湾、伊勢湾、大阪湾、それから瀬戸内海、これを三海域に分けまして東部、中部、西部ということで分けて、細かく分けますと六海域というつもりでございます。
  137. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それで、外船含めて約四百ですか、いまのデータでいきますと。この油回収船ですね、これは実際に船主が恐らく持たないと思うんですね。下請業者を使うような形になるのではないかと思うんですけれども、こういう場合に果たして事故が起こった場合、あるいはその処理の問題について、船舶所有者じゃなしに、下請業者の方に責任が転嫁をされるというおそれが私は想像されると思うんですね。その点についてはいかがですか。
  138. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 配備義務の相手方は、あくまでもわれわれ油濁の責任が最終的におっかぶさっていく所有者ということで考えております。現実の問題としまして、いま回収船まではいっておりませんけれどもオイルフェンス、それから処理剤等の備蓄義務をタンカーの百五十総トン以上のものに持たしております。これは現在のもう法律の中にございますが、これは現在あります海上防災センターでまとめまして、全国の二十九基地に共同の備蓄基地をつくって置かしてあるということでございます。油の回収船あるいは油の回収装置は、そういう所有権が集まって今後相談をするわけですが、もしセンターで共同に備えておこうということになりますと、そのセンターに保管を頼んで、それで共同に備蓄場所に備えておくということになると思いますし、また防災業者の契約関係ではっきりしていればそれでいいというふうに認めるかどうか、これは省令を考えるときに、われわれ今後考えていこうと思っています。しかし、いずれにしても使われる防災業者責任を負うんではございませんで、所有者があくまでも配備の責任を負うということにいたしたいと思っております。またそういうかっこうになっております。
  139. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは法律上はそういうふうに考えられていても、最終的には裏契約とか、表に出ない問題として、下請業者あるいは防災企業の装置会社ですか、後でこれ伺いたいと思っていますけれども、センターの下請を受ける装置業者とか、おのおの業者責任を負担させられるという、こういうぐあいになってくるのではないかと思うんですね。この点を私はこの法律の施行のときに明確にしておかなければ、恐らくこの船主は四百そうの船主、船主協会から一億円の基金が出る問題でも恐らく限られた問題であって、そこで責任を逃れようという一つのあらわれになってくるのではないかということを私は心配するわけですねっこの点はやはりこの法令を施行するに当たって明確にしておいてもらいたいということ、この点をもう一度。
  140. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 法律上の備蓄義務の相手方は船舶所有者ということにはっきりなっておりますし、省令をつくるときにも、先生いまお話ございましたような点は十分気をつけていきます。  それから一億の出資と申しますのは、防災センターにまず初動のときに仕事をやらせるそういう金、回転基金みたいなものとして一億の出資を仰いでやっているんですが、実はこの回収船、回収装置を配備させるのはそれと負担は別で、さらにそういう負担が船主側にかかっていくということでございます。ただ、石油コンビナート法でも三年間の猶予期間を置いて、どういうかっこうで幾らの回収船をどこへ置くかということを決める猶予期間がございましたが、私どももそういう期間を置いて、しかし委員会などは早速つくって、どういうかっこうでやっていったらいいかということを研究して、三年後にはちゃんとした配備をさせるということにしていきたいと思っております。
  141. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、この三十九条の四項の配備場所ですね、これは三年後、法律のあれでなっていますけれども、二十九基地を一応予定をしているわけですか。
  142. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) さしあたっては二十九基地で、それで六海域がいかにカバーできるかということを考えていきたい。ただ、それで不十分なときには二十九基地をさらにふやしていくということも考えなきゃいかぬ。オイルフェンス油処理剤等については一時間ないし二時間で現場に、そういう器材を運んでいけるところということで選んだのが二十九基地ですお、大体六海域で二十九基地で間に合うと思いますけれども、できるだけそれはよく調べてその基地の数も決めていきたいと思っております。
  143. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それじゃ次に、海洋汚染防止法が制定されてから現在までの汚染の摘発状況は大体どのぐらいになっていますか。
  144. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) いま手元に——過去数年間のはいま続いて御説明しますけれども、五十年の一番新しい数字をまず申し上げます。  五十年で海上保安庁が確認いたしました海洋汚染件数は二千二十八件でございます。これは四十九年に比べて三百三十八件減少しておりますので四十九年は二千三百六十六件でございます。それで、その状況を海域別に見ますと東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海という重点海域で千二百三十一件で全体の六一%を占めております。  それから排出種類別に見ますと、油による汚染が千五百八十四件で全体の七八%、油以外のものが四百四十四件で二二%、合計で二千二十八件でございます。それから排出の源別に見ますと、船舶からのものが千十八件、五〇%ですか、約半分でございます。それから外国船による汚染件数は五十年で三百三十二件でございまして、全汚染件数、船舶からの件数千十八件のうちの三三%が外国船でございます。  それから送致件数は、五十年に当庁が送致いたしました海上公害関係事犯は千七百二十三件でございます。このうち悪質な海上公害事犯が千百三十九件ということになっております。
  145. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 海洋汚染防止法の第三十六条に「廃油処理施設の能力が十分に存しないと認められる場合」には「廃油処理施設整備すべきことを勧告することができる。」ということになっているわけですね。具体的に廃油処理施設施設が不備であるとかなんとかいって勧告をした地域はあるんですか。
  146. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) 現在廃油処理施設につきましては、民間並びに足りないところは港湾管理者がつくって実施しております。現在までのところ、バラスト水等の大量のものにつきましてはほとんど全国的に整備されていると見て結構であるというふうに私ども思っております。ただ少量のものにつきまして、今後なおきめ細かい整備をしていかなければいけない。従来整備の仕方といたしまして、常々港湾管理者等と話し合っているわけでございまして、民間実態等を見ながら、こういうところにはやはりつくったらどうかというようなことを話し合っております。たとえば港湾の五カ年計画をつくる、このような際にも長期的な見通しを持ちまして管理者整備してもらう、このような形で整備を進めてまいりましたので、いままでのところ特に勧告をするというような実態が必要でなかったわけでございます。
  147. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 勧告する必要はなかったんですけれども、具体的にまだ港がそんなにきれいになっていないところも大分あるわけでしょう。  それから、時間が限られていますから余り細かくは詰めませんけれども廃油処理施設をつくってから現在までのこの実態を見ますと、地方公共団体が運営しているところはほとんど赤字民間業者は大体が黒。これは料金関係もいろいろあると思いますけれども、これはどこに大きな原因があるのか。運輸省としてはどう分析されておるのか。
  148. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) 料金につきましては、原価を適正に反映するという形で民間につきましては認可をする、管理者は届け出をするという形で進めております。民間につきましては、先ほど申し上げましたように、大量のバラスト水相当、量があるところで営業的な感覚も含めましてつくってまいりますので、大体において特に赤字であるというふうなことが少のうございます。もちろんそういうところもございますが、それはひとつ営業的に、経営的にがんばってもらわなくちゃいけないと思っております。ただ港湾管理者の場合には、どちらかといいますと民間業者では引き受けることができない残りの部分といいましょうか、そういう意味を、ある意味で公共的な意味でつくっているわけでございます。それに対しまして、施設をつくるときには国といたしましては五割の国庫補助をいたしまして、何とかその料金等を安くするように心がけているわけでございますけれども、これを原価計算いたしまして、国費の分を除いたところで適正原価計算をいたしますと結構高くなっております。それに高いものをそのままその料金にするということは、これは本当はよろしいんですけれども港湾管理者といたしましては、相手がやはり小さな船舶であるということも含めまして、大体適正原価の五分の一とか十分の一ぐらいで料金を届け出てくるところが多うございます。こういうことは、本当は港湾管理者としては財政的には大変苦しいわけでございますけれども、これを上げてしまいますと、今度船の方が来なくなるというふうな経緯もあるんではないかと思います。で、議会等、いろいろそちらの方の観点から現在の段階におきましては港湾管理者料金は大変低く抑えられております。私どもといたしましては、そういうこともあるけれども、もう少し上げてもいいんじゃないかというふうなことも指導しているわけでございますけれども、順次そこら辺のところは、今後もう少しこの需要面といいますか、PRをして、もっと営業を活発にするというふうな努力も要請しながら、もう少し管理者の様子を見ていきたいという、ふうに考えている次第でございます。
  149. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 同じ港で、やはり民間の方にはいい仕事の内容といいますかね、いい部分だけは民間の方で引き受けて高い料金で採算ベースでやっている。地方公共団体には、公共的な色彩があるからということで悪い部分だけを押しつけて、それで地方公共団体はほとんど赤字。川崎なんかは、これは三千八百万ですか、一事業年度を見ても。当初これを設置するときに考えたときは、大体経営はうまくいくという、こういう想定のもとに運輸省はこの廃油処理施設をつくることを進推してきたわけでしょう。この点についてはどう考えていらっしゃいますか。
  150. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) 当初、本当の最初に施設をつくるときは、やはり需要がもう少し多いというように考えていたようでございます。現実にはそれほどやはり多くなかったという経緯がございます。ただ、何といいましても相手の海運船舶が大型のものよりも中小的のものが多い。大きいところはどっちかといえば民間の方でペイするようなところの方に大量に行くわけでございますが、そういう相手でございますので、原価で計算したものよりも公共的な立場からこの料金を押さえている。で、港湾管理者といたしましては、これは届け出でございますので、もっと原価に近い形でやってもいいわけでございますけれども、そういう社会的な情勢、そういうことも考慮しながらやっているというのが実情でございまして、私どもといたしましても大変実は心苦しいというふうには思っているわけでございます。
  151. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 料金上げるのは私賛成じゃないんだ。だけど、余りにも民間業者の方が相当有利になっておって、地方公共団体が全部持ち出しで赤字を続けなきゃならない。こういうところにちょっと行政面のゆがめられたところがあるのではないかと思うんですね。そういう当初予想しておった需要見込み、あるいは当初計画しておったとおりにいかなかったところにやはり行政上の問題が私はあるのではないかと思うんですね。この点についてどう考えますか。
  152. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) 全体のメカニズムから考えますと、民間廃油処理いたしまして、残っている部分を足りないところに、公共的な港湾管理者に頼んでいるというスタイルになっているわけでございますね。ですから、まことに港湾管理者気の毒だという感じがいたします。ですから、料金もやはりある程度適正にさせてもよろしいんではないかと、それからまた国といたしましては、その助成の一環といたしまして、施設に対して補助金五割を出していると、これは海洋汚染防止法の制定時の形でそういうふうな形になったわけでございます。いろいろ考えますと、もっと本当は助成したいなあという、私どもはそういう気持ちでございますけれども、現在の段階といたしましては施設に助成をしていくと、それから維持管理というふうな形のところに助成をするというのも一つの考えかと思いますけれども、現在港湾というものに対しましては、維持管理に対しては助成しないと、それは収支その中で償うという姿勢でやっておりますので、いまのような形にならざるを得ないのが現状でございます。
  153. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これね、つくるときに、地方の公共団体がつくっているところへ民間を持ってくれば、民間が有利な方向になるように行政指導をしているとしかとれないわけですよね、極端に言えば。何も地方公共団体一つでいいじゃないかと、こういう赤字になっているんだからほかに民間をつくる必要はないじゃないかという、こういうような考え方も成り立つわけですね。この点についてはいかがですか。
  154. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) 考え方自体が、地方公共団体赤字だから民間つくらなくてもいいじゃないかというのと反対に、民間の足りない部分を地方公共団体にやってもらっているというのがたてまえでございます。
  155. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは、ちょっと納得できないんですけれどもね。いい部分だけ民間にやらして、あと悪い部分は——じゃ、もう民間が全部一カ所で、極端に言えば、その港を民間一カ所で責任を負えば、悪い部分もあればいい部分も取るんですからね、やれるのではないかと、こういうふうにわれわれは考えるわけです。ところが、いいところは民間をつくっておいて、どうしても補えぬ分を地方公共団体にやらして、これは公共上から言えば安い料金になるのは当然だと思うんですよ、中小船舶を扱うんですから。こういう形になればますます差が出てきて、営業バランス、地方財政の赤字の中にまたさらにつぎ込まなきゃならないという問題になってくると思うんですね。ここらがちょっとやっぱり私たちは納得できないような問題なんですね。ここらも、もう少し今後どうするか、いままでの分をこれつぶせとかなんか言ってもこれは始まらない問題ですから、今後どういう需要を多くするPRをするとか、あるいはここをどう行政指導して、この問題を、地方財政赤字の中でさらにこれを持ち出しをしなければならないという、こういう問題をどう解決していくかということについての意見を伺いたいと思います。
  156. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) これは、とにかくこれからは管理者に対してPR、いろいろの経営の仕方について一段の努力をしていただくと同時に、根本的には、こういう形ができてくるというのは、やはり利用者が大きな利用者もいれば小さな利用者もいるし、従来は何にもないときには海に捨てていたと、それが海に捨ててはいけないんだよと、これはきれいにしなくちゃいけない、で、義務づけていくと、そういう中で、相手もあることでございますので、全部を救うための一つの手段として民間管理者にやってもらっているという一つの姿があるわけでございます。これをもし管理者をなくすとすれば、恐らく海にまた戻っていくというものもあるかもわかりません。そこら辺のことになりますと、一方ではそれを監視するということも非常に強くやらなくてはいけない。根本的には、やはり民間企業におきましても、また船のそれぞれのビヘービアも海洋汚染防止法の精神をぴしっと守っていただきまして、という考え方が一つどうしても要るんであろうと思うんです。  要するに、こういうようなシステムをつくったというのは、経済的な面から海洋の不法の投棄を極力少なくして全部処理しようというようなスタイルを目標としてこのような形ができているわけでございますので、管理者努力すると同時に、また料金等の適正なものが取れるように努力すると同時に、不法な投棄、あるいは一般の事業所における不法な実施のないような監視、取り締まりというものを強化していくということが今後のわれわれの努力ではないかというように考えるわけです。
  157. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そこらの問題は私わかり切っている問題なんですね。実際に、ここで時間が——そればかり詰めているわけにいきませんけれども、やはりちょっと腑に落ちない、実態的に伴わない問題があるわけです、極端に言いまして。だから、これは行政上のちょっとゆがんだ問題が私はあると思うんですよ。ここはやはり今後の運営面についてカバーできるような姿をつくり上げていかなきゃならない。  私、もっと実態をよく調べた上で一つ一つこの問題どうなっているかということも検討してみたいと思いますけれども、余りにも川崎市なんかは負担が多過ぎる。それから静岡にしても、民間業者の方は利益上げていると。料金が上がるにしても、やはりそこに設置した根本的な趣旨から考えた場合に、ちょっとゆがめられているのではないかということを私は感じますので、きょうは指摘だけにとどめておきますけれども、よくしようということは設置の理由から考えてもわかり切った問題ですけれども、やはりもう一方、需要が少なかったとか、あるいは当初の計画狂ったといういろんな理由はあるにしましても、余りにも地方公共団体赤字財政の中でさらに赤字をふやすような、こういう廃油処理施設の行政のあり方がいいかどうかというような問題が——いいところは民間に食われている、悪いところは公共団体が持たなきゃならないという、こういうふうな行政上の問題はよく検討していただきたい、こう思うんです。
  158. 竹内良夫

    政府委員竹内良夫君) 先生のおっしゃるとおり、確かにこの全体のメカニズムの中で港湾管理者相当しわ寄せがいっているということは反省しなくちゃいけない思っております。今後十分そこら辺の勉強をして、適切な方向に向かってやっていきたいというように考えます。
  159. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 次に、海上災害防止センターですね、これは資本金二億円政府の出資ですね、ことしは。今後はどういう形に出資金を賄っていくつもりですか。
  160. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 出資は、国からの出資が二億円、これは五十一年度の予算に盛られております。それから船主協会からの出資金として一億円を拠出……
  161. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それは朝聞きましたからね。今後政府として……。
  162. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私どもは、この七億円で基金として運用をして防災事業の出費に充てていくつもりですが、必要があれば、増資の規定というものもこの規定の中にも入っておりますけれども、ひとまず私どもはこの金額でやっていけるんじゃないかということを考えております。
  163. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 防災センターから引き継いで新たな認可法人になるんでしょうけれども、七億でこの二十九の基地とかいろんな体制は賄い切れるのか、それとも、相当下請を使ってこのセンターの仕事を補うという、こういう体制になるのか、この点について。
  164. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 全体の基金の資金計画としては十億程度というものを考えておりまして、その中で従来やっておりました共同備蓄の事業は二億数千万円、それを含めまして、新たなそのセンターとしては十億程度のことでやっていきたい。この基金は七億円ですが、これは回転基金でございまして、取り立てる間のその休眠期間はございますけれども、その取り立てる期間が短ければ、たとえば二回転すれば二倍に使えるというような点がございますので、そういった面で基金の利用度はもうちょっと大きな金額になると思います。
  165. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 この基金ですね、船舶振興会から三億、これはもう運輸省のいろいろな公益法人つくる場合に、船舶振興会からの基金というのはあちらこちらへ出るわけですね。今後こういう問題にも拡大されてくるのではないかということを私は非常にいろいろ思うんですけれども、この船舶振興会のこの基金を使った意図は何ですか。
  166. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 実は別に私ども他意はございませんので、船舶振興会が特殊法人として交付金をいろんな公益事業に回しておりますが、そのうちですでに海難防止事業につきましては二十億ないし三十億の年間の拠出金を仰いでいろんな海難防止の事業をやっております。たとえば海難防止協会、海上保安協会、そういう団体が海難防止事業をやっておりますので、それと同じような意味で今年度三億円の拠出を仰ぎ、さらに来年度一億円、合計四億円の拠出を仰ぎたいということを考えたわけでございます。
  167. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 船舶振興会のこの基金の問題については、私は今後いろいろ論議したいと思っていますけれども、いずれにしても運輸省の公益法人をふやすために、何か船舶振興会が一つの基金になっているような私は感じを受けるんです。この点はやっぱりちょっと運輸省の行政として、これは競艇の問題ですね、こういう問題、ちょっと私も、もう少し調査もしてみたいと思いますけれども、いわゆる災害という名目のもとにこういう公益法人をつくる一つの手だてとしてこの船舶振興会の基金がいろいろ活用されているような感じを私は受けるわけです。こういう点については、もう少し考え直さなければならない運輸省自体の行政問題ではないかと、こう思うんですが、この点についてどう考えますか。
  168. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私どもは、実は今度の認可法人の海上災害防止センターというのは、従来ありました財団法人の海上防災センターをそのまま、三つのすでに活躍している事業についてはそのまま受け継ぎます。その一つは備蓄事業であり、二つは消防船の事業であり、三つは訓練の事業である。さらに基金事業を加えてやりたい。そこで、従来ありました公益法人で純粋な民間の体制として出ておりましたものを、やはりこういった新しいセンターの基金事業というものの公共性にかんがみまして、ある程度海上保安庁と協力してやるといいますか、その手先になってやるといいますか、そういう一体的に運用していきたい大事な防災活動でございますので、公共性から国が二億の金をつぎ込むと。そこで、従来のような単なる民間法人ではなくて認可法人にしていきたい。ただし、国が強制的に設立を命ずるような特殊法人というのはこれは行き過ぎだ。あくまでも民間防災という自衛手段として、民間の発意に基づいて国の認可ということでやっていきたいということでございます。  なお、船舶振興会の金につきましては、先ほども申し述べましたようにモーターボート競走法で、特殊法人の船舶振興会が公益に交付金を出している。その金の一部をわれわれとして、たとえば造船事業の振興に必要な資金と並んで海難防止に関する事業の振興にそういう基金の拠出を求めてやっていきたいということでございます。
  169. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 もう一点、これは排出油防除資材等の業務代行会社をつくるわけですか、防止センターの下に。いろいろな資材を保管したり運搬したりするそういう代行会社を系列会社としてつくるわけですか。
  170. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 現在二十九カ所にそういう備蓄の基地を置いてございます。これは義務づけをされている船舶所有者が所有しておるというかっこうになっておりまして、備蓄基地にそれを持っておるわけですが、それの保管を頼んでおるのに手足として全国で百六、七十防災業者がございますが、そのうちの重立ったところと契約を結んで保管を求めておる。一たん事あるときには、その防災資材を運送するという契約も場合によってはしてありまして、それを海上に搬送する、あるいは陸上で、陸地から隣の港に持っていくというような契約をそれぞれ結んでおるという意味でそういう保管契約、作業契約を結んでおるものが手足となって現在すでに組織化されているということでございます。
  171. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、こういう問題も含めまして具体的に一点私は聞いておきたいのですが、東京湾で油の流出があったと想定して、今度できる防災センター、あるいは消防庁、海上保安庁長官港湾管理者、船主はどういう形態、どういう防災計画防除計画等をもってこの防除に当たっていくかということを具体的に、東京湾で係留している船から火災が起こった場合の連絡、指揮系統、対策はどういうぐあいになりますか。
  172. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 一応東京湾タンカーからの事故というものを想定しまして、漸次申し述べていきたいと思います。  東京湾タンカーから油の排出がございましたときには、まず当該タンカーの船長は防除責任を負っておりまして、それは海洋汚染防止法の規定によって応急措置をとるということでございます。それから続いて応急措置でとどまらない場合には、タンカーの所有者が防除のための本格的な措置を講ずるということになっております。それは本船がそういう措置をとるということでございます。そこで当庁は、船舶所有者がその法律に基づく講ずべき措置を講じていないときは、この法律に基づきまして所有者に対して措置命令を出します。それから、みずからは海上における人命及び財産の保護を図るという警察的な見地から、すでに用意してあります排出油防除計画に基づきまして排出油防除のための措置を講ずるということになります。  それから、また今度の改正案によりまして、船舶所有者東京湾から遠隔の地に離れているということで、たとえば外国なども含まれますが、船舶所有者にその措置命令を出すことができない、またそういういとまがないというようなときには、緊急に東京湾での防除措置を講ずる必要がありますので、それを海上保安庁長官から海上災害防止センターにその油を取り去る防除措置の実施を指示をします。そこで、海上防災センターはこの指示によって、先ほど申しましたように東京湾ですと、みずからの手足でやれるとともあると思います。これは火事の場合はちょっと指示ということにはならぬので、民間との話し合いで委託ということになりますけれども、そういう手足を使って自分でオイルフェンスを張って油の防除に当たるということができる場合もありますし、それから、東京湾にあります防災業者にその備蓄しているオイルフェンス現場に運べ、それから、その防災業者の手足によってそれを展張して防災活動をせいというようなことをさらに第三の防災業者に委託する場合もございます。それからその場合、港湾管理者海上保安庁の要請に基づいてその能力の範囲内において防除措置を実施してくれることになっております。それから防除協議会の構成員は、その防除に関する平素定めておいた自主基準の定めるところによりまして、タンカーの所有者が講ずる防災措置に協力をするということになると思います。  以上が油の場合ですが、火事の場合には、排出した油に火災が生じたときにタンカーの船主は、今度の改正案の規定に基づきまして、海上保安庁の事務所に通報をいたします。それから次に消火、延焼防止等の応急措置を講ずることになっております。油の場合と違って消火措置はこれは応急措置にとどまりまして、やはり消火の最終責任は、特に危険な公共的な仕事でございますので、これは国が負うということになっております。それからその場合に、海上保安庁と消防機関が協力をしてやることになりますが、東京湾の桟橋に着岸中のタンカーの場合には、まず消防機関がやる。それから一たん桟橋を離れて海上におります船舶については、海上保安庁が消火活動をやります。補助的にそれぞれ、接岸中の場合には海上保安庁が、航行中の場合には消防機関が協力をするということになります。それから、その火事の現場海域においては、ほかの船はもう入って来るな、あるいは火災発生の船舶を移動、使用、その他の処分権を行使するということが可能でございます。それから、さらにはもっと遠方に、第十雄洋丸のように沖合いに出さなければほかの船舶東京湾の中で災害が及ぶというようなときには曳航命令を出して外海に引き出すことを命ずる、こういうことになります。  以上がざっと現実の姿だと思います。
  173. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 ここで新しくできる排出油防除協議会ですね、これはどういうふうに構成をされるのか。それからどういう方面でつくる予定なのか。
  174. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 特定海域——先ほどちょっと申し上げました六海域にそれぞれ一つづつ協議会を置いていきたい。それで、あくまでも原因者であって排除活動防除活動を最終的にやる責任を負っている船舶所有者が中心となって組織をつくらせます。現在すでに流出油防除協議会というようなものがかなり置かれておりますけれども、これを発展的に解消して、この新しい協議会にかえていきたい。関係者はできるだけ多くこの協議会に入ってもらうようにしたいと思っております。
  175. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 構成はまだ具体的には決まっていないのですね、大体案は、構成員は。
  176. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) まだ決まっておりません。
  177. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 あと海洋法の問題で一点、海上保安庁に聞いておきたいのです。  朝ほどの質問で重複するところは省略しますけれども、この海域が広がりますとね、相当海上保安庁の現在の予算ではどうにもならぬと思うのですね。私たち運輸委員会でいろいろ視察に行っても、一番こぼされるのは海上保安庁の現地の人たちでありまして、やはり海上保安庁の現在の体制だけでも十分でない。いわんや領域が拡大されてくると相当な問題点になってくると思うのです。予想されるやはり海域、あるいは問題点というのは、どういうふうに海上保安庁長官は考えていらっしゃいますか。
  178. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 現実の問題といたしまして、三海里が十二海里になって、隣の国と領海が接するところというのが私一番問題であろうと思います。北で申しますと、道北におけるソ連との領海接触の問題、それから対馬海峡における韓国との領海の接触の問題それから尖閣列島における中国、台湾との問題、そういうのが一番問題となってまいります。それは領海をめぐって、特に漁業調整の問題としてこちらの船舶が相手方に拿捕される、それから相手方が領海を侵して漁業活動に乗り出してくるというような点が心配でございます。それから、日本海は漁業の問題よりも不審船の不法出入国の問題があろうと思います。  それから、それは単に、私ども実は三海里から十二海里までになるということだけでも、それだけの問題を非常に今後の問題として意識しておったんですが、さらに経済水域、さらに汚染防止ゾーンが二百海里まで広がるということになりますと、実は率直に申し上げまして、日本の国益を海洋開発の面、それから漁業の面で二百海里でどう守るか、それから海洋汚染防止ゾーンの中でどう取り締まっていくかということの国益上の問題をまだ十分、海洋法の結末、まあ八月まで続くそうですが、その結末と見合わせて、不消化の部分が率直に申し上げてまだあるわけです。漁業などの面は、恐らく全面的締め出しということではなくて、適当にその漁業協定というような折衝が、外交上の問題が入るのかもしれないということがございますし、それから海洋汚染の場合は旗国主義と、それから領海の中での取り締まり、沿岸国の取り締まりがどう認められるか、これわからぬ点がございますので、その辺の帰趨も見なければいけませんが、先生指摘のように現在の三百八隻の船艇——ちょっと泣き言になりますけれども、かなり老朽なものもありますので非常に心配であると、それから飛行機はおかげで三十四機にふえましたけれども、これも足の長いのはわずかにYS二機であるという点で非常に心配である。今後いろいろ計画を立てていかなければいかぬと思っている最中でございます。
  179. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そのほかに水路図とか、そういういろんな問題点が予算上相当必要なわけでしょう。この点はどのようになっていますか。
  180. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 領海その他二百海里の水域を決めるのに、国際的な取り決めでは大縮尺の海図によって決めるということになっております。これは正直に申し上げまして、世界中で大縮尺の海図が沿岸全部にそろっているという国はいまないんですが、そういった点で多少国際的な取り決めというのは先走っている点もございますが、現実に日本の場合に当てはめてみますと、できたら一万分の一の地図で低潮線を決めて、そこを基点としてその二十海里なり二百海里をはかっていくということを実はやらなければいけないんですが、いまのところ宗谷海峡については大体一万分の一が備わっておりますけれども、津軽海峡は五万分の一程度、対馬海峡はまだあんまり手がついてなくて二十万分の一程度の地図で間に合わしているということでございますので、世界中の進捗度にもよりますけれども、できるだけ大縮尺の地図を、そういった隣国との領海が接し合うようなところにだけでも早急につくっていきたいということを目下計画しているところでございます。
  181. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 最後に運輸大臣に、この海洋関係の特別予算というんですか、こういう問題で閣僚協議会か何かで話題にはなっているのですか。いずれにしてもこれは相当、運輸省だけの問題で解決しない、海上保安庁だけの毎年の予算だけではどうにもならないような問題だと思うのです。もう一つ海上保安庁——この間、私は第六管区を視察したときにも、管区長と話したときにもUS1ですか、新明和でつくっているああいう飛行艇一機ぐらいは海上保安庁にあってしかるべきだと思うのですが、ところが防衛庁には何十機もあるわけでしょう。こういう点から考えても、人命救助が先か、軍事が優先かというような問題になりますと、せめて海上保安庁に一機ぐらいあって、まあ一機とは言いませんよ、多い方がいいと思いますけれども、これはあってしかるべきだと思うのですね。こういう点に、やはり人命救助の立場から考えたらこういう飛行艇みたいなものな海上保安庁に備えるべきではないか。領海の拡大とあわせて、この新年度の予算にはやっぱりこういう問題を強く私は運輸大臣として主張してもらいたい、こう思うんですけれども、この点についての大臣の見解を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  182. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 今度、三海里が一挙に四倍になるわけですし、それから経済水域二百海里というふうな領土、あるいは主権行使の範囲がずっと広がる海洋上において海洋警備に当たる保安庁の仕事は、いま長官が申し上げましたように量質ともに非常に拡大しなければならないわけでございます。午前中も申し上げましたように、現在の機材あるいは人員では、まあ先ほども明原丸ですか、あれでも御指摘がありましたように、なかなか天網恢なれども漏らす場合が非常に多いわけですから、十分とは言えないと思っておるんです。その上に、これだけ海域が広がるわけですから、私は五十二年度の予算におきましては、いま三木委員が御指摘のように思い切った強化を図っていかなければいかぬ。それには従来のように、たとえば各省別に予算編成で前年度の二〇%とか二五%とかいうあの枠の中ではとうていできない問題であると思います。  こういう点では、お話しのように私は政府全体の問題として、やはり今後の海上保安関係の予算は政府の問題として考えてもらえるように努力いたしたいと思っておりますし、それからもう一点は、やはりこれだけ広がるわけですから、一年間でとてもできっこありませんので、五年ではちょっと余りにも遠くなり過ぎますので、三年ぐらいである程度の整備ができぬものか、こういう年次計画を立てた上での五十二年度予算ということでやっていきたいと、こういうことをいま私いろいろと考えておるわけでございますが、保安庁の方に言いまして、そういう構想を練らせまして、この新体制に対応していきたいと思います。それから船艇その他、いま御指摘の防衛庁が使っておりますようなもの、こういうもので海上保安庁の今後の活動に非常に有効であるものも、やはりそういう機会にはあわせて考えるべきではないか、かように思っておりますので、これは非常に貴重な御意見として大いに参考にさしていただきたいと思っております。
  183. 内藤功

    内藤功君 まず、この法案の提案説明によりますと、海上災害防止海洋汚染防止という二つの目的をもって新たな改正を行う。まあ名称も「及び」という言葉でこの二つをつなげておるようであります。私の疑問とするのは、今日この海上災害防止というのが非常に重視をされている。この時期において海洋汚染というものの防止海上災害防止という二つの目的、これは関連があると言えばあるんだけれども、その二つの目的を形式上一本の法律にまとめた理由についてお伺いしたいと思うんです。  先ほど同僚議員の御質問に対するお答えの中にも多少は出ておりましたが、もっと端的に言いますと、この海上災害防止という問題についてはやはり、海上防災法というような単行法、独立立法をつくって、これに豊富な内容を織り込んでいくべきではないのか、こういう意見が私の知るところ、たとえば海員組合の中からも叫ばれたようなことを伺っておりますし、この点はどういうような経過であったのか。多少重複すると思いますけれども、やはり単行法という方向に行くべきであったんじゃないのか。一時そういう方向も打ち出されていたように承るんですが、それがもとへ戻っちゃった。さっきの話だと、どこからどこまでが汚染防止か、どこから先が災害防止かわからないというような話があったけれども、これは二つ以上の法律の相互関係はあらゆる場合そうだと言えるんではないか。法律技術上は切ることだってできるはずじゃないかと思うんです。この点どうですか。
  184. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) この法律の主眼は、従来の黒物と言っておりました油によるところの海洋汚染防止にとどまらないで引火性危険物、いわゆる白物と言われているものの排出による海上火災に伴う被害防止のための所要措置を講じようということでございます。  お説のとおり、私どもも実は一時単独の立法でということも、陸上コンビナート防災法との関連で考えた時点がございました。ただ、理由が三つほどございますが、まず第一に、排出油による海洋汚染というのは、単なる海洋汚染ということにとどまらないで重大な財産被害、いわゆる災害というものをもたらす場合が多いので、実際には海洋汚染災害の区分というのが重なり合って不分明であるということで、同一の法律で規定することが適当であると考えたわけでございます。仮に、海洋汚染防止災害防止と、二つの目的について別個の法律を制定するということにするならば、その両方の法律でほぼ同一の内容の規定を重ねて規定しなければならないということで、立法技術的にも、政府の部内でいろいろ関係方面と相談もしたのでありますが、そういうのは適当でないということでございます。  第二番目に、引火性危険物のうちの原油について申し上げますと、現に、現行の海洋汚染防止法上、いわゆる油として汚染防止の観点から規制対象となっておるのでございますが、実はこれは、引火性があって火災の発生にもつながるということでございます。これをやはり一体的に規定する方が適当であって、仮に別の法律といたしますならば、火災発生の有無によって、時間の経過を追うて海洋汚染防止法、あるいは海上災害防止法というものの適用を、それぞれの時点で別個に考えていかなければならないというような点は、国民に対する義務づけの上でかえって不便、混淆を来すものでないかということを判断いたしたわけでございます。  それから第三番目には、油と危険物排出、または海上火災が発生した場合における現場海域及びその周辺海域での船舶進入の禁止でございますとか、航行制限等の措置防除措置として考えるわけですが、これは油の防除及び消火活動に共通のもので一体的に規定する方が適当であるということを考えたわけでございます。そういった点から、一時は単独立法ということも考えましたけれども、こういう、現在お願いしております海洋汚染防止法改正というかっこうでお願いするのが国民に対する権利義務の点からも、一方、技術的にも、また公害法と災害法との関連の面からも適当であるということを判断して、今回の改正案をお願いするに至った次第でございます。
  185. 内藤功

    内藤功君 私は、いまの立法技術的に非常にむずかしいと、不適切だという点についてはいろいろ考えてみたんですが、どうも納得ができない。例は一々挙げませんけれども関連する二つの法律の中で、その接点なり、あるいは境界線が不分明な法律というのは多々あります。そういう場合の、またいろんな処理の仕方も昔からいろんな立法技術のやり方があると思う。問題は、それはまあお互い理屈はあるとして、海上災害防止に対する保安庁なり運輸省の姿勢というものですね、これがはっきり打ち出されることが必要じゃないかと思うんです。やはり単行の海上災害防止法、海上防災法というような法律をしっかりとつくって、そこに力点を置くという姿勢を示すことが、今後の運輸行政の中で私は非常に必要だと思うんです。しかも、一遍そういう単行立法を考える方向に部内では来ておるわけでございます。私は将来の問題として、この立法技術上の問題は二の次として、海上災害防止に重点を置くという姿勢を示されるためにも単独の立法、独立の海上防災法というようなものをひとつこれで捨てないで、その検討、実施というものをやっていかれる必要があるんじゃないかと思うんですが、この点、いかがですか。
  186. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) まあいろんな、先ほど先生からも御指摘がありましたけれども、各方面から意見がございます。で、私どもこういう災害関係法律をこういうかっこうでやっておりますが、災害防止ということは手おくれであって、事故の発生防止というのが先じゃないかというような御指摘もありました。われわれには、そのためには実は海上衝突予防法でありますとか、海上交通安全法でありますとか、港則法でありますとか、いろいろまた別個の法律がございます。それらを総合してみましたらいろんな関連がそれぞれございますんで、われわれ実は港則法だとか、海上交通安全法だとかとダブっている点を振り分けるというような点はいろいろこの中で工夫してございますが、まあそういういろんな御意見ございますけれども、われわれ事故発生の未然防止についてはそれぞれまたその別個の法律でも整備強化を図っていくということで、今回はこの災害防止法ということでございますが、海上汚染防止法の一部改正というかっこうで一体的に取り上げてやっていくのが適当と考えております。
  187. 内藤功

    内藤功君 いまの点については、立法技術の問題ということを理由にされるが、私の方はこの問題はほかの方法でカバーできると、やはりしっかりした海上災害防止の姿勢を今後の行政の上で示されるためにも単行法の検討を一つの課題としてここで提示をして次の質問に移りたいと思います。  これは昭和四十九年の十一月の第十雄洋丸の衝突火災事故と、それから同年十二月の水島事故、次々とこの大型の火災事故が発生しておる。このような事故東京湾に起きた場合に、あの場合はあの程度で済んだけれども、慄然たらざるを得ない点があるんです。まあ有名なアメリカのテキサスシティーの事故というのは、昔からの歴史をひもとく場合よく言われる。これは一九四七年に七千トンの船が爆発をして、近くの製油塔二基と原油タンクが誘爆をして、岩壁から二千五百メートル以内の町が完全に壊滅したという惨事であります。東京湾ではまだ起きてないけれども、東京港と銀座の距離は三千メートルもないという状況でありますからこれは人ごとじゃない。私たちはこういう状況のもとで真剣にこの事故発生の場合の被害というものを考えてみなきゃいかぬと思う。事故を起こした船舶はもとより、港湾施設コンビナートへの災害の拡大、災害資源あるいは沿岸の住民に及ぼす被害は、まことにはかり知れないものがあるだろうと思うんです。そこで、第十雄洋丸事故が起きてからいろんな点検があらゆる機関でされました。   〔委員長退席、理事杉山善太郎君着席〕  そこでいま私が指摘をしたいのは、この事故が発生した場所は、いわゆる中ノ瀬航路の北端出口と、木更津から出ていく木更津航路の出口が交差しておる、俗にいわゆる魔の交差点と言われている海域である。問題は、なぜこの魔の交差点と言われるこういう海域がつくられてしまったかということであります力で、まず伺いたいのは、この木更津航路の水路のしゅんせつは、たしか港湾審議会で昭和四十二年の九月に決定されておるというふうに私は聞いておりますが、これはそのとおりですか。
  188. 山本了三

    説明員(山本了三君) 木更津航路のしゅんせつにつきましては、昭和四十二年の九月の港湾審議会第三十計画部会で、一応幅員三百五十、水深マイナスの十七メートル、そういう計画が決定されました。それから昭和四十七年の十二月に幅員の拡大と水深十九メートルに計画改正されております。
  189. 内藤功

    内藤功君 木更津航路はいま言ったような、お答えのようなことである。一方この中ノ瀬航路の方は、海上保安庁としてはおおむねときを同じくしまして四十二年当時から、海上交通安全法の制定の検討とともに、この中ノ瀬航路の設定を考えておられたと、このように伺っておりますが、この詳細を伺いたい。
  190. 山本了三

    説明員(山本了三君) 中ノ瀬航路の設定につきましては、海上交通安全法の制定につきまして、先生指摘のとおり四十二年ごろから検討に入っております。が、数次の検討にもかかわらず、法案提出するというところまでには至りませんで、昭和四十五年になって海上交通安全法は成立するということになったわけであります。この中ノ瀬航路の設定につきましては、昭和四十七年十二月十九日の海上安全船員教育審議会の答申を受けまして、四十八年の一月二十六日の施行法の公布の際に設定をされたものであります。
  191. 内藤功

    内藤功君 いまの答弁でわかるように、一方では木更津航路が四十二年の九月からしゅんせつ許可されておる。一方では中ノ瀬航路もこれと並行して海上保安庁の方で検討をされておるというこの動きですね。これは中ノ瀬航路と木更津航路とこの両方の関係を顧みるまでもなく、この両者の間の十分な連絡、調整を行っていたならば、いま問題になったこういう魔の交差点というのは生まれなくて、第十雄洋丸事件というものも起こらないで済んだということになるんじゃないかと思うんですね。私は、このような点から見ても、いまの審議会あるいは保安庁、こういったものの関係が実に有機的に、総合的に交通安全、海上災害防止ということを至上命題として頭に置いてやっていくという意味で、はなはだばらばらであるという印象を率直に言って受けるわけなんですが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  192. 山本了三

    説明員(山本了三君) 中ノ瀬航路の設定につきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおり昭和四十八年の一月、海上交通安全法の施行令によって設定いたしました。一方、木更津航路につきましても、先刻の御報告のとおりでございますけれども、この航路の設定につきましては、最終的には昭和四十九年の四月、港則法の施行規則の一部改正ということで省令でもって設定いたしております。いずれも海上保安庁で設定いたしたものであります。  で、木更津航路の設定に際しましては、もちろん地方公共団体あるいは海運関係者、こういったものの意見を十分に徴しておりまして、これらの同意を得ておるということはもちろんでありますが、中ノ瀬航路と木更津航路との交差という点を考慮いたしまして、中ノ瀬航路の出口と木更津航路の出口との間を約三千メートルほど離して設定をいたしてあります。したがいまして、私ども、あるいは関係者といたしましても、この間に衝突防止措置はとれるというふうに考えておったのでございますけれども、なおさらにその衝突を回避するというための措置といたしまして、木更津航路を出航いたしまして西の方に向かう船につきましては中ノ瀬航路の出口、北口を約千メートルほど離して通るようにという指導を三管本部において行っていたのであります。しかし、不幸にして第十雄洋丸事故が発生したわけでございますけれども海上保安庁は、この従来の指導をさらに徹底するという意味におきまして、現在中ノ瀬航路の出口の北方千五百メートルにブイを置きまして、そのブイを回って木更津航路を出る船は西の方へ向かうようにという指導を行っております。  なお、現在、大型船等の安全を考えまして海上交通安全法の見直しを行っておりますけれども、この審議過程におきまして、東京湾船舶の流れを整理するというようなこともいま議論になっております。こういった新しい考え方を導入して、一貫した東京湾の安全対策が講ぜられるよう今後とも努力したいと考えるところであります。
  193. 内藤功

    内藤功君 事故からいろんな貴重な教訓をくみ出して努力をするというのは、これは当然なことです。ただ、再びこういうようなことがないようにいろんな教訓を中からくみ出すけれども、特に海上保安庁、あるいはいろんな審議会、内部部局というものが一層総合的な立場から立法を行っていく、各部局がばらばらであっちゃいかぬ、そして総合的な安全対策を組んでいく、この必要は一層大きくなってきていると思います。特に東京湾のようなこういうところでは、船舶ラッシュがますますひどくなっていくという状況ではこの必要が大きいと思うんですが、総括の立場に立たれる木村運輸大臣にその辺の御所感と決意を承っておきたいと思います。
  194. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 日本は海に全部囲まれまして、しかも原料、資材は輸入する、製品を輸出するということで、今日の日本の国民生活の安定と繁栄が図られておるわけでございますが、それだけに、陸と海との接点、つまり港、そこにはいろんな工場地帯も密集するということで、やはり利便性からいいまして、たとえば東京湾であるとか、あるいは伊勢湾であるとか、あるいは阪神地帯とか、そういうところへどうしても船舶が集結するということはやむを得ない点が多々あるわけでございますが、そういう中での高度の発展をしてまいりましたので、いろんな施策を講じましても、余りにも船舶がふくそうし過ぎておるということも一つの大きな原因であったでありましょうし、また、ふくそうする船舶に対応するだけの航行安全施設というものが必ずしも十全であったと私は言い切れないと思います。両々相まって私は反省をすべきだと思うわけでございますが、そういう観点に立ちまして、今日の時点におきまして、過去において起こりましたもろもろの事故に対してこれを反省し、これを教訓といたしまして今後対策を十分に講じていかなければならない、そういう観点に立っての今後の海上保安対策でなければならないと考えておるわけでございまして、やはり対応の仕方がタイミングを失わないようにやっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  195. 内藤功

    内藤功君 次の問題に移りたいと思うんですが、いま大臣も言われた船舶の非常なふくそうという問題に関連をして、私は、事故を未然に防止をするという点で、今日ほど港湾における船舶の出入港の総量規制、隻数の規制というものが切実になってきている時代はないんじゃないかと思うんです。  で、これに関連をして伺いたいのは、現在東京湾の一日のタンカーの入港隻数は、これは昨年の例で結構ですが、一日平均どのくらいになっておりますか。   〔理事杉山善太郎君退席、委員長着席〕
  196. 山本了三

    説明員(山本了三君) 昭和五十年におきます東京湾の特定港に入港しましたタンカーは三万五千三十五隻でありまして、一日平均にしますと入港隻数は約九十六隻ということであります。
  197. 内藤功

    内藤功君 これは端数で言うと九五・五隻というような計算になると思うんですね。  そこでもう一つは、タンカー以外の船舶をも加えますと、これはどうですか。一日に東京湾に出入りする船舶の隻数、これは去年の実績でどのくらいになっていますか。
  198. 山本了三

    説明員(山本了三君) 五十年の実績によりますと年間十二万六千十四隻、一日平均にしますと入港隻数は約三百四十五隻ということになっております。
  199. 内藤功

    内藤功君 もう一つ聞いておきたいのは、そういうまあ大変な数のように思います。この東京湾で、昭和四十五年以降と一応限りまして、四十五年以降現在までのいわゆる衝突の事故件数というのはどのぐらいあるものかというのをつかんでおられる数字を述べていただきたい。特に、数字としては昨年のをまず述べていただいて、昨年のこの衝突事故が四十五年からずっと比べてみて大体減少の道をたどっているのか——私はふえているんじゃないか、少なくとも減っているという状況じゃないと思うんです。特に衝突事故、それから火災事故、この二つについては数字を挙げてもらいたい。それから全部の湾内における事故件数というものをまず去年の例で出してもらって、それが四十五年以来どういう変遷にあるかということをちょっと御説明願いたい。
  200. 山本了三

    説明員(山本了三君) 昨年の東京湾におきます要救助海難は全体で百三十九隻ということになっております。このうちで衝突は四十三隻、火災は十三隻、こういう実績であります。  なお、いま先生から四十五年以降の推移について御質問がございましたけれども、この衝突と火災だけに限って実は統計をとっておりませんので、四十五年以降の要救助海難の発生状況ということで一応御返答をさしていただきたいと思います。四十五年の要救助海難の発生件数は百五十七隻、四十六年は百三十五隻、四十七年は百二十四隻、だんだん減っております。ところが、四十八年に至りまして百六十三隻とふえておりまして、それから四十九年百四十隻とまた減りまして、五十年は百三十九隻とまた減った、大体こういう経過をたどっております。この数字につきまして大型船についてどうだろうかということを考えてみましたところ、統計をとってみましたところ、大型船につきましては四十八年以降若干減少の傾向にある、そのように出ております。
  201. 内藤功

    内藤功君 この統計の見方はいろいろあると思うんですが、いまお述べになった数字から明らかなように、去年のが百三十九隻というのは確かに四十八年に比べますと減っているんですね。ところが、四十五、六、七と比べるとふえておるんですね。四十九年と比べると一隻減っていて——これは減ったと言えるかどうか、非常にぼくは問題のあるところだと思います。私は、こういうような事故が一向に減少していないという状況のもとで、少し抜本的なことを考えてみる必要がある。  そこで、話を戻しますが、これは長官、できたら御答弁を願いたいんですが、いつ何時、大事故が発生し得ないとも限らない状況になってきている。そこで、この入港船舶の総量規制についてどういうふうに考えているいらっしゃるか。たしか昨年の昭和五十年十一月に運輸大臣から、海上交通安全法と関係政省令の見直しということを、あれは海上安全船員教育審議会ですか、ここに諮問されましたね。そして、それに対しては中間答申が出たやに私聞いているんですが、その中身は一体何であって、そこにいまのぼくの言っている総量規制ということが私は当然うたわれていると思うんですが、一体どうなのか、もしうたわれてないとすると、これは一体真剣に総量規制というのを考えているんだろうかということを疑いたくなるんですね、これが一つ。  ついでにもう一つ指摘をしておきます。もう一つは、少なくとも港湾の規模に応じてLPG、LNG、あるいは原油などを積載する危険物積載船については、その隻数総量について一定の基準を設ける、少なくとも危険物積載船については、そういう総量についての基準を設けて規制をするという必要が絶対にあるんじゃないか、ぼくはそう考えるわけなんですが、この点について御見解を賜りたいと思います、経過も含めて。
  202. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私ども東京湾タンカーだけだったら九十五・五隻、それからそれ以外の船で三百四十五隻の入港隻数があるということでございますが、端的に申し上げまして、実はどこまでが本当に満員なのかということについて計算上はっきり出てくるということが非常にむずかしいところでございます。ただ一般に、先生お話のような巨大な原油タンカーについて、海上交通の安全を図っていかなきゃいかぬということは、私ども当然そのとおり考えております。  ただ、いまそれじゃすぐ東京湾、あるいは伊勢湾、あるいは瀬戸内海に総量規制ができるかということでございますが、遺憾ながら現実的にはすぐにはちょっと非常にむずかしいということでございます。産業立地ということで、その港湾自体の利用というものはかなり活発に行われてきましたので、現在一挙に入湾規制というようなことはなかなかできない。私どもとしては、だからやはり解決の道としては、基本的には臨海工業地帯の再配置というふうなことを考えなきゃいかぬかもしれませんし、また。パイプラインの整備で、港の中にあんまり船が入らなくてもいいような施設が皆さんの合意の上にでき上がれば幸いであるということを考えておるわけですが、遺憾ながらそういった施策がまだ皆さんの合意の上に成り立つというところまでいっていないということが非常に遺憾でございます。  しかし、現在私ども海上交通の安全、それから災害防止ということを日常の私どもの仕事としておりますので、すでに東京湾につきましても一定の船につきまして進路警戒船を配置して進路の警戒に当たらせる。それから外国船については、水先人の乗船をできるだけ指導する。それから中ノ瀬の航路の速力制限を実施する。中ノ瀬の航路の航行義務適用除外船舶を、いままでは喫水十六メートル以上ということにしておりましたが、喫水十七メートル以上の船に改正をして、できるだけ一方交通で北上してくる中ノ瀬の航路に通航義務を課する船舶範囲を大きくする。それから航路内における追い越し制限を指導する、こういうことで東京湾についても交通安全を図り、災害防止を図るということを引き続いてやっているわけでございます。先生指摘のございました昨年の十一月に、航行安全対策についてさらに進めたいということを考えまして「海上交通安全法及び同法に基づく政省令の見直しについて」ということで海上安全船員教育審議会にその検討をお願いした次第でございます。それで、その審議会でまず直ちに実施できる事項として、昨年の十二月に中間答申を受けまして、中ノ瀬の航路の航行速力を十二ノットに制限するなどの省令事項について中間答申が行われましたので、本年の一月、省令の改正を行った次第でございます。引き続いて、法律でやるべき事項について、航行管制の充実強化等について御審議を仰いでいる最中でございます。私どもとしましては交通安全の立場からはそういった方向で、できるだけその施策を進めていきたいんですが、またこれ東京湾ということになりましたら、船舶交通の場と、漁業生産の場との調整の問題も実は出てきておりまして、その間の調整がかなり大きい問題となってきておりますが、現在そういった面について検討を進めているのが進行状況でございます。
  203. 内藤功

    内藤功君 いま直ちに総量規制はむずかしい、一挙にはできないというんですが、これは研究、工夫のもう余地もないということじゃないと思うんですね、あなたの言われるのは。どこにいまの隘路があるかということを研究して、私が第二次案として提案をした危険物積載船についての規制はできないのか、この点がいまの御答弁ではまだなかったように思うんですが、この点はどうか。これは現行はどうなっておって、これをどういうふうに変えていくかという問題。それからもう一つ、この総量規制ということはできないにしても、それに近い、何かかわる方法ですね。総量規制にすぐはいかないけれども、たとえばこういう方法を努力しているとか、こういうのを研究しているとかいうことはないんですか。
  204. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 現在LPG船については二万五千トン、それから原油タンカーについては二十二万五千トン以上の船舶が初めて東京湾にやってまいります場合には、安全確約書というものをとりまして、十分な保全措置をとらなければ東京湾に入れないということに指導しています。これはまあちょっと語弊がありますけれども、もうそれ以上の船は余り入ってきてほしくないということの私ども指導のつもりでそういうことをやっておるということを補足申し上げたい。  それから入湾規制につきましては、現状では一挙にできない、なかなか日本経済全体の問題としても私むずかしいと思います。たとえば、今後東京湾に入らないように東京湾の入り口にパイプラインの整備という問題が実はかなり前から検討されておるんですが、やはりいろんな関係者の利害調整の問題がありまして、その総意として解決を見るに至らないということでございます。また、かわるべき方法ということで私どもちょっと先ほど申し上げたんですが、その東京湾内における航行管制の強化ということも考えていることでございますけれども、これもまた関係の利害調整の問題というのがかなり大きいということでございます。
  205. 内藤功

    内藤功君 いまの東京湾航行管制の強化に関しまして、私の聞くところによると、観音崎に管制の何か施設を設けていきたいという計画もあるやに聞いていますが、これは事実かどうか。これはいわゆる総量規制というものじゃもちろんないけれどもそれに近い、あるいはそれに役立つものか、あるいは全くこれは関係のないものか、この点ちょっと。
  206. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 観音崎に東京湾海上交通センターというものの計画を数年前から進めまして、五十一年度中には海上交通をセンターとして発足させるつもりでございます。それで、東京湾に入港してくる船舶に情報提供業務を行いまして、その海上安全、航行安全のためにその一歩を進めたいということは、これはやれるめどがついておるわけでございます。ただ、厳格に東京湾航行管制によって、たとえば一方交通にしてしまうというようなことにつきましては、またそれなりの問題があるということでございまして、われわれはできるだけの知恵をしぼって、できるだけのそういう組織あるいは装備を利用しまして、東京湾の中の航行安全の問題についてできるだけのことはやっていきたいということでございます。
  207. 内藤功

    内藤功君 重ねてこの総量規制の問題を、私は海上交通事故防止のための抜本策の一つとして、いろんな困難があることは答弁の中にも出ておるし理解もできるが、努力をするように要望しまして最後の質問に入りたいと思う。  私の三番目に聞きたいのは、海上災害とこれも深くかかわり合いのあります石油基地に隣接しておる大型タンカー一バースの安全性の問題についてであります。あなたの方もお調べになっていると思うが、海員組合の皆さんの方で去年の七月に、石油基地隣接港湾総点検というものをやられまして、一昨年やられたのを去年発表している。ここに、私手元に持っておりますが、非常に詳細な調査を実際海上労働に従事しておられる方々が調べられておる。私は、この中で特に、非常にこれ見逃すわけにいかぬと思う点を二つ取り上げてみたいと思います。  一つは、東京湾の千葉、川崎、横浜という各港の実態について、一つは、バースまでの航路水深、これは航路水深が非常に浅くて、大型タンカーの喫水との関係できわめて不安全なものだということが指摘をされております。たとえばさっきから話のある千葉港について言うと、千葉港には六つの大型のタンカーバースがある。そのうち、そのバースまでの航路水深と、それからその港のその海域の入港最大喫水というものを比べてみたんですが、六つバースがある中で、一つはその差がわずかに三十センチしかない。これは出光興産の関係なんですが、そのバースまでの航路水深が十四・八メーター、ところが入港最大喫水(制限喫水)は十四・五メーターという数字になっている。〇・三メートルしかない。これは三十センチしか喫水とこの水深の差がない。それからもう一つは一メーターしかないのもあります。これは富士石油のですが、バースまでの航路水深が十六メーターで、その入港最大喫水(制限喫水)が十五メーター、こういう数字がある。ついでですから言いますと、川崎港について見てみましたら、川崎港ではバースが八つある。そのうち二つのバースは制限喫水と航路水深がイコールなんですね。こういう数字が数字の上では出ておる。横浜港では二つのバースがやはり同一なんですね。  私これを見て、実態というものについてあまり勉強しておりませんでしたが、非常に驚いたわけなんですが、一体これは四十九年の調査であって、その後改善されたんならば結構なんですが、こういう指摘が海員組合の諸君によってなされて発表されております。恐らく御存じだと思うんですが、この点についてはどういう認識をされ、またどんな対応をなさっているかということをまず伺っておきたい。
  208. 山本了三

    説明員(山本了三君) 海員組合で調査をされた資料については、私たちの方も存じております。千葉港の出光興産の場合でございますけれども、バースに至ります水深はおおむね十六メートルほどに維持されております。ところが、航路外でありますけれども、棧橋の付近に十四・八メートルという御指摘の水深が浅いところがあるというのも事実でございます。で、こういう浅いところがありますので、海上保安庁といたしましては、大型船が着棧いたします場合には常に水先人を乗船させるということ、それから十分な馬力を有しますタグを配備させると、なおかつ入港するときには満潮時に行わせると、そういった配慮をいたしておるわけであります。通常の状態で入りますれば、いわゆる通常の航路を通って入りますれば問題はないわけでございますが、それた場合のことを考慮してそういう指導をしているのが実情であります。  その他の港におきましても、海員組合で若干指摘された港湾があるのでございますけれども、一応海上保安庁といたしましては、この港におきます余裕水深につきましては喫水の約一割、一〇%ですが、一〇%の喫水を常時保持させるということを目標に指導をいたしております。なお、この適正な余裕水深につきましては、現在余裕水深の調査研究委員会というものをつくりまして学者先生関係者を招いて検討を改めてやっておるところであります。
  209. 内藤功

    内藤功君 いまの答弁でみずからお認めのように、海上保安庁御自身の御指導でも制限喫水プラス一割ですか、ですから、制限喫水がさっきの出光の場合ですと十二メーターとすると、一割、十三・二メートルでなくちゃならぬと、こういう指導をやられているわけですから、これに明らかに反する事態ができているんですから、この点はやっぱりきっちりとそういう満潮時にやるとか、タグを用意する、水先人を乗り込ませるという配慮だけじゃなくて、もう少し基本的な対策を考えられる必要がある。  もう一つは、いまのタグのお話ですが、緊急事態の発生に伴ってタンカーが離棧が必要になった場合の体制なんですけれども、たとえばタグボートの出動にどのぐらいの時間がかかるか、タグボートが船側に着くまでの時間ですが、やはりこの同じ調査結果では、千葉港の六つのバースについて見ますと、六十分かかるというのが一つあるんですね。それから四十分というのが二バース、三十分というのが三バース、この調査結果によるとあるんです。余りにも時間がかかり過ぎる感じがする、六十分なんてというのは、四十分なんというのは。きわめて憂慮すべき実態が出ているように思うんですが、この数字は争えないと思うんですけれども、この点も恐らくごらんになったと思うんですが、どういうふうな御所見をお持ちですか。
  210. 山本了三

    説明員(山本了三君) 先生先ほどの御質問に関連して補足御説明さしていただきたいのでございますが、海上保安庁の現在の余裕水深の指導におきましては、港内においては喫水の一割と、こういうことを申し上げましたが、現在のところ通航いたします場合の潮高を一応加味しながら考えていくということにいたしております。この点につきましても、先ほど申し上げましたとおり、いま関係者審議を仰いでいると、協議をしているということであります。  次の問題といたしまして、千葉港のタグの問題でございますが、私ども現在大型タンカーが着棧中におきましては、バース前面から荷役が終わりますまで消防能力を有しておる警戒船を配備させると、そうして他船の接近とか、事故発生時の即応体制をとらせると、そういう指導をしております。しかし、この警戒船がタグの役目を十分に果たし得るかどうかというのは必ずしも保証できないところから、緊急時の離棧につきまして有効なように船首・尾に緊急引き出し用の曳索、これをとっておかせる、それから着棧中も常時出港できるような機関の態勢その他の準備をさせておくと、運航に支障のあるような修理は行わせないと、そういった注意を払っておるわけでございます。千葉港のタグボートの船だまりというのが、御指摘のとおり相当千葉の内港に寄ったところにございます。したがいまして、調査結果にありますとおり、相当の時間を要するバースが南の方にあるというのが実情でございます。私ども現在のところ南の方、いわゆる袖ヶ浦地区でございますが、そこにタグボートのたまりをつくるということで現在港湾管理者に申し入れをして、港湾管理者もその線に沿って検討を進めておると、そのように伺っております。
  211. 内藤功

    内藤功君 こういう、実際に海上の仕事についている人の調査ですから、真剣にひとつ対策を今後も検討してもらうことを要望します。  最後に、いまあなたが制限喫水プラス一〇%の問題なども含めて関係者で協議しておると言われましたが、これは見通しとしては、一応の結論というか、報告というか、それが出るのはいつごろなんです。
  212. 山本了三

    説明員(山本了三君) 私どもの希望といたしましては七月末ぐらいを一応考えております。
  213. 内藤功

    内藤功君 終わります。
  214. 和田春生

    ○和田春生君 大分時間もたちましたし、同僚委員の各位からもいろいろ質問されたこともございますので、できるだけしぼってお伺いをいたしたいと思います。  まず第一点で、これまでの質疑を通じても大分明らかになったように思うんですけれども、従来の海洋汚染防止法災害防止を抱き合わせにして改正をしたという形になっているのですけれども、こういう一本の法律にした改正のねらいというのはどこにあるのだろうかと、この点が必ずしもはっきりしていないように思うのです。実はその点がはっきりしていないと、法律はできてもこれからの防災体制や実際の実務上の運営にいろいろ問題が出てくるのではないかという懸念もあります。  ということは、海の汚染防止するというのが従来の法律の目的だったわけですが、その中で一番厄介なのが油が流れ出るということだと思いますね。そうすると、これは引火をすれば火災になると、船の上であろうと海面上であろうと。そういう点で、特に油による汚染というものそのものも災害であるのだと、しかも、その中に火災が発生をし得る条件を抱えているから、これを一体のものとして災害防止という観念でとらえていこうと、こういうことで改正に着手されたのか、あるいは改正作業の経緯が一部物語っているように、実は別々の法律にしようと思ったんだけれども油の流出汚染というものと、その油を原因とする火災というもので一部オーバーラップするところがある、境界をきちっと決められない問題があると、そこで別々に法律にするよりも一つ法律にして縛った方がめんどうでない、と言うと語弊がありますけれども、まあ立法技術上比較的にやりやすいと、そういうふうなところから、本質的に言えば異質の要素を含んでいるものがこういうふうに一つになってきたのか、一体どちらにあるのかということを改めて確認をしたいと思うのです。
  215. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 端的に申し上げまして、先生最初におっしゃっていただいた方であると、単に公害法ということで、その汚染防止環境保全ということだけを書いてきたんですが、水島事故一つを見ても、もうそれだけではおさまらないと、被害そのものではないかと、災害そのものであると、汚染の度を超えた災害であるということで、もうそれは一体的にとらえて、初めは排出油防除ということに始まりますけれども災害防止ということまでいくべきじゃないかということを端的に考えたものと御理解願って結構だと思います。
  216. 和田春生

    ○和田春生君 そうしますと、その中における海上保安庁の果たしていく役割りというものがあると思うんですが、保安庁はずいぶん幅の広い任務を持っておりまして、一口で言えば、海の上における警察の役割りもやっておる、あるいは水路の関係、あるいは交通安全等もやっているわけですけれども、この災害防止というものが立法上こういう形ではっきり入ってきたというときに、そういう油の流出と、火災に至らないまでもいずれ災害が起きる、そこに火災が発生すれば大災害になるという場合、その災害防止をするということについて第一義的な任務ですね、包括的な。それはどこが持つわけですか。
  217. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 海上保安庁は、庁法によって、海上における人命、財産の保護ということございますので、油の場合も火災の場合もひっくるめて保安庁の仕事である、責任であるということは間違いございません。ただ油の場合は、従来の海洋汚染防止法にすでに書かれております。今度改正してもその点はちっとも変わっておりませんが、被害を起こした原因者に第一義的な防除責任があるということがはっきりしております。火災の場合はそうではございません。これは陸上火災の場合もそうですが、国の責任として、非常に危険度の高い消防活動そのものは国が責任を負うということで、これはもう海上保安庁が直接そのものの責任を負うということだと思います。
  218. 和田春生

    ○和田春生君 そこで、油の流出だけにとどまったという場合には、この法律にも書かれておりますように、原因者が第一義的に責任を負って防除しなくちゃいかぬ。手が回わらぬときには、今度新しく改正法で設けられることになった海上防災センターですか、ここにやらせると。やった費用は、必要な費用はその原因者に負担をせしめるというふうに一応形ができておりますね。ところで今後は、一たん火が出たと、船の場合でも、あるいは海上の場合でも。これを消火をすると、消防活動をすると、こういう面について海上保安庁がその責任を持たなくてはいけないというのは、法律的にはどこに根拠が置かれているんですか。
  219. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) やはり庁法の一条に人命、財産の保護ということがあり、それから二条に海難救助、汚染防除、その他云々とございますが、海上の安全確保に関する条項、この二条と合わせて読んでわが方の仕事だと考えております。
  220. 和田春生

    ○和田春生君 従来はそういうかっこうで、起きたときには、この間の雄洋丸のとき等も海上保安庁大変活動されたわけなんです。しかし、これは海上保安庁法を読みますと、第一条も、ここに書いてありますように、海上において人命及び財産を保護をするんだと、こう書いてあります。それは広義に解釈をすれば人命及び財産の保護ですからみんな入ってくるということは言い得ると思います。あるいは第二条を読んでみましても海難救助と、火災が起きればそれも海難のうちに入るんだからというふうに読めば、それはそういう形になってくると思うんですが、実際上消火、消防という用語は全然使われておらないですね。  一方、御承知のように、消防法及び消防組織法という法律があるわけです。こちらの方では、そこに主たる任務を置いてきちんときめられている。その場合に、なぜこういうことを伺っていくかと言いますと、海上汚染火災の発生という点の間で入り組んでくる問題があるばかりではなく、陸上の消防との関係が出てくるわけです。御承知のように消防法、あるいは消防組織法では海は除くということは全然書いてないんですね。法律のどこにも書いてない。全般的に包括するようになっている。ただ、消防法のいわゆる消防対象物という点で、第二条第三項の消防対象物に「船きょ若しくはふ頭に繋留された船舶」というふうに書いてあります。第六項では、船舶安全法の第二条第一項を適用しない船舶、つまり櫓かいのみをもって運航するとか、エンジンがついてないようなはしけ、被曳船等対象になっていますね。したがって、航行中の船舶というのは除かれているわけです、消防法で。一応消防対象物の中には法律じゃ入ってない。しかし、「ふ頭に繋留された船舶」というのは消防法による消防対象物に入っているわけですね。海上保安庁と消防庁の役割りですね、あるいは消防署、あるいは消防団、いろいろありますけれども、どうなるんですか。埠頭に係留されている船に油が流出して海にいったと、火が出たと、こういう場合に、主たる責任を持つ官庁はどちらですか。
  221. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 御指摘のように、確かに庁法の一条、二条では消火、消防という文字が端的には出ていませんが、一方、消防組織法の第六条に、「市町村は、当該市町村の区域における消防を十分に果すべき責任を有する。」ということが書いておりまして、市町村は、少なくとも海面におきましても、地先水面までは大体その市町村への帰属というのがはっきりしておりますので、そこまでは原始的にはやはり市町村が消防の責任を持っているんだというのが消防組織法上の解釈でございます。したがって、その辺では実はオーバーラップしているということが考えられます。  そこで、私ども今度の法律つくりますときに、陸上コンビナート等災害防止法と、今度のいまお願いしております法律改正との接点を、海陸の接点で落ち度のないようにするということで、そのオーバーラップしているということを基本的に認めながら、先生指摘のございました、一方、消防法のところの防火対象物のところに書いてございます係留中の船舶は消防機関がやるということを、従来も実は、法律ではございませんで業務協定の中には、主としてどちらかがやるということで協定も結んでおりました実績もございましたので、今回法律にはっきり決めまして、係留中の船舶については消防機関がまずやりますと、消防機関がいないとき、あるいは消防機関の要請があったときには海上保安庁がやりなさいというのが係留中の船舶。それ以外の船舶については海上保安庁がその消火の責任に任ずるべきであると。ただ、たまたま保安官がいないとき、あるいは海上保安から要請があったときには消防機関がやるんだと、こういうことで相互協力ということをそういう面ではっきり法律にうたってやると。それで、一方が処置したときには相手方に通報するとか、密接な連絡をとって協力するとかという協力規定も入れて法律に書いたということでございます。
  222. 和田春生

    ○和田春生君 ドックに入っている場合には、これは陸上構造物と同じようにみなしても差し支えないと思うんですが、埠頭に係留しているという形になりますと、なかなかその辺に厄介な問題も出てくると思うんですね。たとえばそこに油が流出した、火災が発生したと、ところが、そのまま置いておいたんでは陸上や他の船舶に累を及ぼすという形になると困るから、先ほどの質問にも出ておりましたけれども、切り離して沖へ引っ張り出せというような問題が出てきますでしょう。そうすると、消防法の方の消防対象物では「埠頭に繋留された船舶」というのは、はっきりこの消防法の対象になっているんですね。ところが、海上における安全と災害防止という形になるとその辺がどうなってくるのか。もちろんお互いみんながセクショナリズムを発揮せずに、総力を挙げて協力してやるんだということはたてまえですけれども、やはりきちんとした責任と体制というものができていないと、後の問題にもいろいろ関係してくるわけですね。その辺どうなりますか。
  223. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 基本的に今度の法律で決めましたことは、係留中の船舶につきましては、その命令は主として消防機関がやるんだという前提に立ちまして、その火事の現場にほかの船が入ってこないようにとか、それからその船の使用、処分をするとかといった、一般の消火活動を十分にするための必要な措置については、係留中の船舶については消防機関がやりますと、その他の船舶については海上保安がやりますということで分けました。ただ、その分けたのは、あくまでも消防活動を円滑に行うためのとるべき必要な手段に限っておりますので、ほかの船に船舶交通上の危険が及ばないようにするというのは海上保安本来の仕事でございますので、たとえば第十雄洋丸の例のような曳航命令は海上保安が単独でやりますということで分けてあります。したがって、第十雄洋丸が仮に接岸中といえども、それを非常に沖合いに曳航して安全を図るという船舶交通の安全を図るという曳航命令は、仮に接岸中の船舶であっても海上保安がやるということにはっきりしてございます。
  224. 和田春生

    ○和田春生君 多少問題も残るようですけれども、これは仮定を置いていろいろ議論しておっても、実際の場面ではいろんなものが起きてくると思うんですが、そこで、いま海上保安庁が何もかもやるといってもなかなか実際できない。そういうところで、今度の法改正の中の非常に大きな部分といいますか、法文の上でいけば主要部分といってもいいんですけれども、これが災害防止センターを設けることになっているわけですね。この災害防止センターは、一つには流出した油を防除するという場合には、本来船主なり船舶なりがやることで、手が回らない場合にこれにやらせると、こういうことがあるわけですが、それだけではなしに、やはり消火等につきましても一応任務が定められているわけですけれども海上保安庁が本来やるべきことをこのセンターにやらせると、こういうたてまえなのか、あるいはセンターはセンターとしての役割りを持っているのを海上保安庁としては監督をしていくと、こういうことなのか、その辺もう一遍確かめておきたいと思います。先ほど来質問が多少出ておったようですけれども
  225. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 油の場合と火事の場合とちょっと違うと思います。それで、油の場合は第一義的な責任原因者にございます。そこで、原因者にやらせるべきなんですが、原因者がその措置において欠くるところがあると、猶予ができないというときに、初動の態勢をとらせるように海上保安庁がそのセンターに指示をして、その初動のときの防除措置をセンターの名においてやれと、こういうことを言いますので、いわばその原因者にかわって海上保安庁長官がやって、後で金を取ることもございます。これは原因者の行為を行政的に代執行するようなかっこうになりますが、その代執行の仕事の一部をまた事務的にセンターに渡して、早期のときにおまえが出かけてすぐ防除措置をとれということを指示という行為で与えるというふうに私どもは理解しております。  一方、火災の場合には、これは原因者に本格的な消防の責任はございません。単に応急措置をとってその延焼の防止に努めろということを、新しい法律の二条の二項に書き込んでございますが、これはいわば努力ということでございまして、本格的な消火の責任まで負わせておりませんので、これはそういった保安庁責任を持っている本来の仕事に原因者といえども協力するという立場のときに、たまたま消防船が東京湾のごとくありますと、委託をして頼めと、こういうことになると思います。
  226. 和田春生

    ○和田春生君 その御説明の限りではわかるんですけれども、そういたしますと、これは私がどうも法律の読み方が悪いのかどうかわかりませんが、法律の決め方、ちょっと逆になっているような感じがするんですね。第四十二条の三十六というところを見ますと、排出した油の防除のための措置を実施するのは海上保安庁長官の指示によりやると書いてあるんです。センターの任務というのは、「目的を達成するため、次の業務を行う。」と。この第一号で、「海上保安庁長官の指示により排出油防除のための措置を実施し、当該措置に要した費用を第四十二条の三十八の規定により徴収すること。」となっております。それから第二号にいきますと、「船舶所有者その他の者の委託により、消防船による消火及び延焼の防止その他海上防災のための措置を実施すること。」と、こうなっていますから、そうすると、センターの場合は、消防船による消火とか、延焼の防止その他海上防災措置をやると。この場合には、船舶所有者その他の者の委託によるわけであって、海上保安庁がこれ全然関与するように書いてありませんね、法律に。それの関係はどうなるんでしょう。
  227. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) ちょっと的確に、いまちょっと聞き漏らした点がございますのですが……。
  228. 和田春生

    ○和田春生君 もう一遍言いましょうか、簡単に。
  229. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) まず一号の業務というのは、海上保安庁からセンターに指示をして、それで仕事をやらせると。委託の場合は、これは海上保安庁は介在しないで、自分の船を守るために、その延焼の防止その他の措置もあわせて考えるときに、その所有者が委託をしてセンターに頼みに来るということを考えているのが二号です。
  230. 和田春生

    ○和田春生君 あのね、最初の説明では、油が流出をすると防除をするとか、そういうような汚染防止とか、そういう点については第一義的に原因者責任を持てと、できないところは海上保安庁が指示してセンターにやらせると、銭がかかったやつは船舶所有者から取れと、それははっきりしているというんです。ところが、消防とか消火ということに対しては、これはもう第一義的に海上保安庁責任だと、海の上について。あなたおっしゃったわけです。消防とはそういうことなんだと。ところが、その面に関してセンターは消火やその消防の業務もやることになっているんだが、ところがその第二号を見てくださいよ。「船舶所有者その他の者の委託により、消防船による消火及び延焼の防止その他海上防災のための措置を実施すること。」と、海上保安庁が第一義的に責任を持ってやるという消防関係については、これはお手伝いをすることにしても、これは船舶所有者からの委託によってやれという形で、海上保安庁は全然センターと消火に関する限りは法律の上で切れているじゃないですかと、簡単に言えば。だから、法律の規定はあなた方が言っていること、意識をしていることとひっくり返っているんじゃないかということを言っているんです、これで見ると。
  231. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) ちょっとお答えが余りはっきりできないかと思うんですが、消火活動については、あくまでもその火を出した船舶所有者といえども、まあせいぜい自分の船をそれ以上延焼を防止するとか、あるいは他へ火が移ることを防止するとかということで、あくまでも自分の船を守るために、本来海上保安庁責任を持っている消火活動に対しまして協力というかっこうでやる。そのときにセンターが、たまたま東京湾でありますと、消防船の二隻をセンターが持っておりますので、そのセンターの持っている消防船を利用して委託をして、自分が協力することにその船を使って役立てるということを二号に書いたつもりでございます。
  232. 和田春生

    ○和田春生君 ですから、そうすると、同じことを何度も繰り返すようになるけれども、いざ火災が発生したと、それを消火をすると、あるいは延焼防止をするということは、船主がセンターに委託をしろと、こうなっているわけでしょう。しかし、その消火をしたり延焼を防止したりするという、これはだれがやるにしても、その仕事はどこが第一義的責任を持つかということについて、あなたはこれは船舶所有者じゃないと、油の防除等については原因者が第一義的責任を持ってやるんだし、やらなければやらせるのだと、しかし、消火ということについては海上保安庁責任を持つんだというわけでしょう。一体そういう法律の立て方はその説明とは少し食い違っちゃいませんかと、こう言っているんです、協力であろうと何であろうと。
  233. 鈴木登

    説明員(鈴木登君) お答えいたします。  この第一号と第二号との関係でございますけれども、第二号の方はあくまでも、先ほどから私どもが御説明しております消火の義務はあくまでも海上保安庁があると申しましても、それは抜本的な消火とか、あるいは基本的な消火ということでありまして、火災原因者が、あるいは自家消防的な形での消火をする義務は、これは火災原因者として当然道義的に負わされておるわけでございます。そういう意味で、それを自分でやるのは当然でありますけれども、その際に第一次の、まず基礎的な、まず火を消すとか、あるいは海上保安庁がやってきて抜本的に消火するまでの暫定措置船舶所有者が自分でやらなきゃいけないわけでございますし、それをこの新しいセンターとの常時契約を結んでおりまして、まず海上保安庁の機関が出てくるまでの間そのセンターにやらせるというような意味でこの二号を置いたわけでございます。そういう点で海上保安庁が独自に、あるいは一つ海上保安庁法の義務として、あるいは国家機関の義務として消防行為を実施しなきゃいかぬということと、それからこのセンターが契約に基づいてこの船舶所有者にかわってやるということと、そういう点での私どもの区別です。
  234. 和田春生

    ○和田春生君 その点、たとえば消防法によれば自衛消防組織という規定もありまして、工場その他はやはりみずからそういうことについて措置を講ずると、当然のことだと思うのですね。しかし、船舶の場合には移動しているわけですし、船そのものに船内で生ずるような火災等についての一応の消防装置というものは船舶の設備としてそれはあるわけですね。しかし、船そのものでタンカーが爆発を起こしたとか、あるいは、タンカーから油が流出をしてこれに火がついたとかという形になってくると、船内そのものの自衛消防組織でやるということとは違ってくるわけでしょう。これはもう外からどうしてもやらなくちゃいかぬと。そうすると、それは船舶所有者の委託を受けてやるというような、自衛消防でともかく応急でやるということの範囲外の問題であって、その範囲内のことなら従来の船舶自体の自衛でもやれるわけでしょう。  そうすれば海上保安庁が行くけれども保安庁だけでは間に合わなければ、海上保安庁の長官が指示をして、そういうものに対して協力をせいということをセンターに言わせると。もちろん非常に危険なことですから、これは後から質問しますけれども、そう簡単に真っ先に飛び込んでいってやれというようなことを命令はできないということはあるかもしらぬけれども、やっぱり船舶所有者からの委託によってやるのじゃなくて、せっかくセンターをつくって、しかも最初にそのことがあるからぼくは質問したのですよ。油を流出するということと、火災が起きるということを全部一体の災害として認識して、そういうたてまえで今度の法改正になったのかと、そう解釈してもらっていいというから、そうなれば当然そこにあってもいいんで、一号と二号と分かれているというのはちょっとおかしいんであって、第二号でも当然海上保安庁長官の指示により、あるいは要請により、もしくは船舶所有者その他の者の委託によるということがあってもいいけれども、「船舶所有者その他の者」というのは、駆け込んでいってひとつ頼むということだろうと思うのですが、そこに海上保安庁の役割りというものがここのところではっきりしていない。  どうもそういう意味で海上保安庁責任、任務、権限、役割り、それからこの防災センターというものの役割りと、そういう関係というものにいささか混乱があるのではないか。陸上の消防法並びに消防組織法ではそういう点はきちんとやられておりますね。何かこう混乱があるような感じが私はするわけですよ。どうしてこれは海上保安庁の長官がセンターに対して消火及び延焼防止についての指示ないしは協力要請をするということを入れておかなかったんですか。単に船舶所有者の委託によってのみこれをやるというふうに軽く扱ったか 軽く扱ったと言うとちょっと語弊があるかもわからぬけれども、ぼくはどうもそこが理解できないんだけれども
  235. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私ども先生おっしゃるように、危険性の多い消火活動なので、センターが現在持っております東京湾の二隻の消防船もよく働いてくれてはおりますし、また現に第十雄洋丸のときはかなりやってもらったんですが、それにまた防災業者などが持っている消防船もございますけれども、私どもがやっぱり本当に、ちょっとオーバーな表現でけれども、身を挺してということとはちょっと性質が違うと思うので、実は私どもこれ二号に書きましたときは、やっぱり本当の自衛として初期の役に立つ、その協力の範囲でとどめるというつもりで書いたのでございます。
  236. 和田春生

    ○和田春生君 そこで、やっぱり私は民間の能力というものを十分活用していく、こういうようなことも、特に消火というような場合、消防の場合には必要だと思うんですね。  で、今度の改正で、油の流出とか海洋汚染とか、そういうことによる大災害防止という面に対する立法体制というものはかなり整ったと私ども考えるわけです。しかし、火災というものは、起きてもらったら困るんですけれども、一たん起きた場合には、この間の雄洋丸の場合には非常にラッキーだったと思うのですが、風向きが悪かったり、そういう形で曳航もうまくいかない、京浜の港湾地帯に流れついてくると、なかなか大変な問題が起きてくる。そうなった場合に、海上保安庁だけが想定する災害に備えるだけの設備を持とうとすれば大変なことになると思うのです。消防艇一隻建造するにしても少なからざる費用がかかります。そういう問題もいろいろお聞きしようと思っておったんですが、きょうは時間もないようですから機会を改めて、この場で無理に質問しなくてもよろしいわけですから、省略をいたしますが、消防のみを任務とするものはほかのものに使えない。火事が起こらない間は訓練しておるだけですね。本当はりっぱな設備があるけれども、その設備が一度も使わなくていいというのが理想的な状況ですけれども、そうそう言ってもおれません。  そうすると、たとえば民間のタグボート、非常に大馬力の性能の高いタグボートもあるわけですね。それはふだんタグボートとして活用しておるけれども建造のときに政府が助成をする、そういう形で相当強力な消火装置をそれにも建造のときからつけさせる。あるいは改造可能なものであるならばそれにつけさせる。そうすれば、船体とかエンジンとか、基本的なものについてはタグボートが持っているわけですから、あと消火の関係の設備をつけ加えるということですから、大変コストの面でも安くできますし、りっぱな消防船を一隻つくるだけの金があれば、十隻なり二十隻なりそういう民間のタグボートを活用できる面が出てくるのじゃないか。そうすると、設備だけじゃなくて、当然それを使用する訓練とか、そういういざという場合に役に立ってもらわなくてはならぬ、こういう面があると思います。  現に陸上における火災については、幾ら消防庁並びに消防署がベストを尽くしたといってみても、すべてをカバーするということは困難でありますから、御承知のように国のこれはやる仕事、市町村の、地方自治体のやる仕事、その中に消防団というものを置いてある。消防団員というのは非常勤の消防団員もある。御承知のとおり平素は自分の仕事をしておりながら、いざというときには出動する。それには災害が起きたその他の場合の補償の措置とか、かなり、不十分であってもきめ細かく決められているわけですね。海の場合においてもここまで突っ込んでいって法改正をしてやろうと。いわば海上保安庁が海の消防庁としての役割りも引き受けていこうと、はっきりしていくという場合に、第一義的に海上保安庁の任務だという形だけではなしに、やはりそういう民間の能力というものも活用するということまで一歩踏み込んで考える必要があるんではないでしょうか。  言うなれば海の民間消防団、そういうことまで踏み込んでいくと。そして、災害ないことがいいんだけれども、一たん大きな事故が起きたときには、たとえば京浜港なら京浜港のほとんど民間のタグボートなんかも総動員の体制で消火に当たれると。そして災害が大きくなることを未然に防止をするということまで考えておく方が費用の効率の面でも、災害防止ないしは災害の、火事が起きた場合の消火とかいう面においても私はいいんじゃないか。そうでないと、いまの海上保安庁の持っている消防船、消防艇、あるいはセンターがすでに持っているということだけではいざという場合これは間に合わぬと思いますよ。先ほどタグボートが着く時間がどうという質問がございましたね。もっとひどいことになる。災害起きたけれども、何時間もたたなければ現場に到達しないというようなことになりかねないと私は思う。そうすると、今度の法改正法改正でありますけれども、当然それに対する助成の面も考えなくてはいけない。訓練の面も考えなくてはいけない。またそういうことをやるとすれば法律の面で、法制の面で考慮しなくちゃいけない、こういう面が私は出てくると思うんですね。  ですから、この改正はこの改正として、一応前向きの改正ですから、いけないということを言っているわけじゃない。これは一歩前進として評価をするにやぶさかではないんですけれども、どうも火災が起きたという場合、しかもそれがタンカー火災というものは、非常にやはり大惨害を及ぼす可能性があり得るわけです、一たんこの過密な港湾の中等で起きますと。その体制という面に対して及び腰じゃないかと。海上保安庁が第一義的に任務を持つと言いながら、じゃ、海上保安庁のいまの装備はどんな装備を持っていますかと聞かれますと、きょうは質問するように用意してきたんですが、それはまことに心細い範囲なんですね。そして、センターというものをつくって、せっかく民間資金も導入してくると、船舶振興会からギャンブル資金か何か知りませんが、その分もこれはまあ引っ張ってくると。いいことに役立てようということですから私はいいと思うんですけれども、そういうようなものをやっぱりフルに活用していくというものをつくっていかないと、このまま行くと非常に及び腰、実務的にはほっといておれは知らぬということにならぬと思いますよ。協力をすると思いますが、むしろ積極的にそういう体制をつくるという面のイニシアチブというものがこの立法者として、行政府として欠けているんじゃないか、こういう気がするわけです。  したがって、このことについて保安庁の長官並びに運輸大臣もひとつ行政の責任者として所見をお伺いしたい。政治的な判断、政治的な体制の単なる技術的な問題じゃありませんから、そこまでやっていこうと、こういう決意をお持ちかどうかということもお伺いしたいと思います。
  237. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 今回御審議をいただいております法律の前に、私はやはり海上火災につきましては海上保安庁が当然防災の任務を持っておる、こういうふうに考えておるわけでございます。そこで、いまいろいろ和田委員から非常に有効な、有益な御意見を伺ったんですが、私は今回この法案を出して新たに海上防災強化を図ろうということで御審議をいただいておりますので、いろいろ条文の中ではいま御指摘のような点もあろうかと思いますが、要するに海上における防災責任海上保安庁が第一義的に全面的に負うんでありますが、しかし、場所的に、時間的に手の回らないようなところもありますので、それを補完する意味で海上災害防止センターというものをつくりまして、そして海上保安庁のやるべき仕事を補完して、これに大いに資するのであるというのがこのセンターの任務であろうと思うわけでございます。  ところで、海上災害といいますと、やはりこの法律にも書いてありますように、大きく分けて油の流出による海洋汚染と、それから火災による災害、大体この二つを予定しておるわけでございます。油の流出によります海洋汚染は、これは流出をした船そのものは、流出から後のことを考えますと余り被害は受けない、自分の船から出した油で海水が汚染され、他にのみ被害を与える、こういう性質のものでありますし、それから海上火災というのは、やはり原因者である船自身も被害者でもあるわけで、その辺がやっぱり実態が違うんではないか。そこで、今度つくりました海上災害防止センターのこの四十二条の十三というところの目的を見ますと、海洋汚染防止火災防止と両面にわたって「国民の生命、身体及び財産の保護に資する」というのがセンターの目的でございますので、いまお挙げになりました次の四十二条の三十六にいろいろと書いておりますのは、センターのなすべき業務として列挙してありますので、これを見ますというと、なるほど御指摘のような不自然に感じられても、私も感ずるわけでございますが、その点は多少条文の拙劣な点もあろうかと思いますが、要するに流出油の場合には、本来、船自身が油の流出がないように一生懸命努力すべきところを努力を怠って出たと。しかも、他に災害を及ぼす。したがってこれは海上保安庁が出かけて防除しなきゃいかぬが、その義務を怠ったところの船自身に責任があるんだ。したがって、海上保安庁がやってもその費用は船から取りますと。だから、その補完機関であるセンターがやるにしても費用を取れますよと。しかし、センターは民間機関ですから、法律で何かの費用を取り得る根拠を与えてやらなきゃいけませんから、いまの三十六に書いてある。  それから災害につきましては、もう文句なしに保安庁が命令しようとすまいと、とにかく一般災害であるので、船から要請がなかったからといって行かないでおるんではなくて、やっぱり私は行くべきじゃないかと思うんですがね。ただ、これを読んでみますというと、船舶方からの委託によっていろんなものを出せと、こう書いてありますのは、出したものに対して費用を取ってよろしいということはこれに書いてないので、無償でやってやりなさいよという趣旨でここに書いてあるんではないかというふうに私は実は解釈をしておるんでございますが、あるいは間違っておるかもしれませんが、基本的には二つながらの海上災害海上保安庁が最終的に責任を持って防除する、その補完の役割りをセンターにやらすんですということが基本的な考えであるという点で御理解をいただきたいと思うわけであります。
  238. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 先生指摘のように、防災業者を私どもはやっぱりセンターを使うということでありましても、地方組織として手足として使っていくということは大事なことだと思っております。火災について消防船を使うときには実はお金はいただきますということに、いまの事業でなっておりますんで、委託というのは、むしろやはり金銭的な給付が裏づけになっているということに御理解を願いたいと思います。  それからタグにつきましては現在でもかなり、きょうは数字はあれでございますが、先生おっしゃらない、私も別にそう具体的に用意してきたわけじゃございませんけれども、半分以上ぐらいのものは消防船を現在持ってくれておるようでございます。それで私ども港湾局の方へ、これからつくるときには消防船の能力をあわせ持ってもらいたいというお願いを、もうすでに四十六年のころにしてあります。それから開銀などの融資も、タグをつくりますときには消防能力のあるようにということがむしろ条件になって低利の資金の融資をしていると、そういう点を引き続いて港湾局を通じて私どもはお願いしていきたいと思っておりますので、そういう意味で防災業者を育ててタグに消防能力を持たせていくというようなことで育成強化を図っていきたいというふうに考えております。
  239. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) ちょっと委員長、私の考えが少し違っておりましたから訂正いたします。  無償と言いましたけれども、「委託により」というのは、やっぱり委託費という意味でここで取れるんだということいまわかりましたので、訂正いたします。
  240. 和田春生

    ○和田春生君 いま民間タグボートにもそういう行政指導が行われていることは私も承知しているわけです。しかし、この間の雄洋丸でもわかりますように、あの場合には片方が鋼材を積んでいる船でございましたけれども、これ、タンカータンカーというようなこと、あってはならぬことですけれども、万一あるとかいう形になりますと、この消火にとってはなかなか大変な作業になりますし、ちゃちな装備では手も足も出ない。場合によれば、船からじゃだめで、空からでもやらなくちゃいかぬということになると思うのですね。私は、言いたいことは、もうあらゆる場合を想定して一〇〇%完全なものなんというのは人間の力でできないけれども、従来は海上における火災というものは、一応海難救助というような概念で包んで保安庁が、ほかにどこもやるとこがありませんから任務としてやってきたけれども、今度はっきりとこういうふうに、汚染防止だけではなしに災害防止という立法で、そうすると消防についても、岸壁に、埠頭に係留している船まではこれは陸上の消防管理の対象物ということになっているけれども、置いておいたらタンクに飛び火をしたりしたら大変だ、すぐ切り離して引っ張り出せというような形になれば、これはもう保安庁が海の消防庁。言うなれば今度の法改正で、あれでいくともう岸壁から外に関しては保安庁が海の消防庁としての全責任を負うと、こういうことにもなってきたと思うんですね。  そうすれば、当然センターの場合にも、そういう船主から頼まれておれの方で設備をやったり、ちょいと出て行って手助けしてやろうかという形ではなくて、むしろ海の消防団的な位置づけが必要ではないか。市町村の行政区では間に合わぬわけで、海上保安庁が管区に分けてずっとそれぞれ海域を受け持っているわけですね。そういうところで海の消防団的な存在として考えて、そのセンターが各タグの業者と特約をして、そして相当程度のりっぱな近代的な施設をつくらして、ときどき設備の点検、訓練等もやっていくと、そういう場合には総動員体制で災害を未然に防止する、あるいは大きくならないように初期のうちに処置できると、こういう体制まで私は考えるべきではないか。それだけの体制をきちっと構えておいて、事故がなければこれはもう最善なんですから、万が一のときにその体制まで考えた方がいいんじゃないか。  その点で見ると、今度の法改正は、排出油防除という面については大体でき上がっているけれども火災事故発生の場合のそういう消防、あるいは延焼の防止という面について中途半端で少し及び腰であると、こういう感じがします。速やかにそれはひとつ海上保安庁も、特に運輸省で検討していただいて、やはりここまできたんならばもう一歩突っ込んできっちりした体制をとるということが必要なんではないか、こういう意味で申し上げているわけであります。ひとつその検討に取り組んでいただきたい。それをやらなきゃ今度の法案に対して反対するとか賛成するとか言っているわけじゃないですよ。これはこれで従来より一歩前進だけれども、どうも中途半端であって及び腰のところがあるんじゃないか、いかがですか運輸大臣、その点。ひとつ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
  241. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 私も和田委員と全く同じような考えでおります。この法律海上全般の災害すべてにわたって保安庁の任務というのがことに強調される結果になるわけでございますから、全面的にその責任をとって努力をいたしたいと、かように考えております。
  242. 和田春生

    ○和田春生君 終わります。
  243. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  244. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 御異議ないと認め、質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにして御発言願います。——別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  245. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 御異議ないものと認め、討論は終局いたしました。  これより採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を求めます。   〔賛成者挙手〕
  246. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  248. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) ただいまは海洋汚染防止法の一部を改正する法律案について、慎重御審議の結果、御可決をいただきましてまことにありがとうございます。私といたしましても、本委員会における審議の内容を十分尊重いたしまして、今後とも海洋汚染防止及び海上災害防止に遺憾なきを期する考えでございます。まことにありがとうございました。
  249. 上林繁次郎

    委員長上林繁次郎君) 本日は、これにて散会いたします。   午後五時七分散会      —————・—————