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寺田熊雄君 大体総論としては
大臣のおっしゃることよくわかりますけれども、私はこういう問題は、やはり生きた教材として、少なくも中学三年や高校という高学年の生徒に対してはこれは活用すべきではないかと思うんです。それで教育基本法に「教育の目的」として、
一つ、
国民に、生徒に真理と正義を愛するように求めるというところがありますね。それから学校教育法にも、社会に対する健全な
判断力を持たせるようにという項目がありますね。そういう教育、学校教育の目的にかんがみますと、こういう素材こそそういう教育の生きた教材としては最も適しているように思うんです。ところが、
現実にいま教科書でこういう問題が扱われておるだろうかどうかということを調べてみますと、ほとんど扱われていないようですね。で、現場の先生方に聞いてみますと、高校でも、教科書に従来の
汚職事件が扱われたものは
一つもないということを言います。それから、生徒のこの問題に対する関心はきわめて高いけれども、先生でも半数しかこの問題を実際には取り扱っていないと言います。それから中学の場合では、特定の県ではこういうものをむしろ扱ってはいけないんだと、学習指導要領を逸脱してはいけないというような指導がなされていると言います。そこで学習指導要領を丹念に見てみましても、特別にそういう教育を排斥するような条項は見当たりませんね。そこで
現実に教科書のうちの二、三に当たってみますと、現在、高校の教科書で
汚職事件を扱ったものがわずかに二つあるようです。これは歴史の教科書が十三、いま検定を受けたものがあるようですが、それから
政治・経済の教科書が十四あるようですけれども、この中にわずかに二つだけがきわめてもうほんの一、二行の
記載をしておるようです。これは第一学習社の「
政治・経済」の教科書ですが、「政党と
政治資金」という中に、「
わが国の政党は、一般に党員数が少なく、全国的な組織も整備されているとはいえない。そこで、政党が
政治活動のために必要とする諸経費、とくに選挙の際に要する多額の運動資金は、党費の以外の
政治献金に依存していることも多い。このような政党と外部との結びつきが、
汚職事件を引き起こすことにもなる。」と。そして注のところで
汚職事件として、「
昭和電工疑獄
事件、造船疑獄
事件、「黒い霧」問題などがある。」という
記載があります。それから、同じく学校図書の「
政治・経済」の中に、一九五四年に「造船疑獄で
指揮権発動」と、ただそれだけ書いた
記載があり、それから歴史の教科書の中で自由書店の「新
日本史」というのがありますが、この中に、これは「一九四七年四月」の項で、「深刻な生活難がさけばれるなかで新憲法にもとづく最初の総選挙がおこなわれ、
日本社会党が議席数の三分の一には達しなかったが第一党となった。五月には同党
委員長片山哲が、
日本民主党・
国民協同党との連立で片山
内閣を組織し、中道
政治をすすめようとした。しかし、社会主義的政策をとらないことに不満をもつ労働者の運動と社会党内左派の攻撃とによって、同
内閣は一九四八年二月総辞職した。ついで
日本民主党総裁芦田均が、同じ三党連立
内閣を組織したが、
日本の経済自立を要求するようになったアメリカの圧力にゆきなやんでいるうちに、疑獄
事件をおこして、十月にたおれた。」ただこれだけなんですね。これはやはりもっと生きた教材としてこういうものを取り扱うことの方が社会に対する、ことに
政治に対する生徒の理解、健全な
判断力を養うことになると思うんですよ。
ところが、
現実に学校の先生方に尋ねてみますと、そういうことを書くととてもそれは検定に通らないんだというふうに初めから思い込んでおるようです。それから学習指導要領にも反するのだというような、何か初めから断定しているような向きもあります。ですから、これは
大臣としてそういうことはないんだと、むしろ積極的にこういうものは教材として活用していく方がいいんだというような考えを持って指導された方がいいと思いますが、いかがでしょう。