○岡本悟君 法務大臣、二つだけ御
質問申し上げたいと思います。
その一つは、
アメリカにおける
嘱託尋問の問題でございます。
先ほど矢田部委員が
お尋ねされたことと重複いたしますが、この
起訴免除の決定をされたということを新聞紙上で見ておるんですが、この根拠法規について、法務大臣は
先ほど刑事訴訟法二百四十八条
起訴便宜主義のあの条項の援用をしたんだと、こういうふうにおっしゃっていますね。私はこれは非常に疑問がある。これは
矢田部委員がおっしゃった根拠と同じなんです。まだ
捜査が終わりもしないのにおまえさんはもう
起訴免除すると、そういう援用の仕方はこれは相当問題です。これは超法規だとかなんとかという批判もありますが、それは論争は別とします。ただ、私が心配しておりますのは、これも
矢田部委員が
指摘されましたが、
アメリカ側は御
承知のように、これははっきりした
起訴免除
制度がございますね。しかしながら、私
どもが先般派米議員団で行きました、そして司法省のソンバーグ刑事
局長と問答を交わしたときに、私の方の田中団長が、特別
委員会が私
どもが帰国すると間もなく発足するのだが、そこへ、
コーチャンだとかクラッター氏だとかそういった人を
証人として喚問したい、これに協力してくれということを希望したんです。そのときにソンバーグ刑事
局長いわく、それは本人がオーケーしさえすれば私の方としても協力すると、十分協力申し上げます。しかし、
起訴免除のことはないでしょうな、ということを念を押しておりました。つまり、恐らく私の推察するところでは、おまえさん
起訴免除するから何でも言いなさいというようなことを言われたんじゃ困りますよ、ということを念を押したんだろうと思うんです。
〔
委員長退席、理事瀬谷英行君着席〕
いわゆる
捜査取り決めの第八項を意識して
アメリカの
起訴免除のことまで言われちゃ困りますよと、
日本のことはもちろんですけれ
ども。そういうことであろうと思うんです。ですから、私はもうすでに新聞紙上で
アメリカ側は
起訴免除しないということに決したというふうに読んだ記憶があるんです。
刑事課長はまだそれは
承知しておりませんということを言いますけれ
ども。それで私
ども行きましたときに、ソンバーグに私はこういうことを念を押しました。私は
日本の新聞紙上で、
アメリカの司法省が、いわゆる
ロッキード事件に関する
還流資金問題について
捜査を開始しておるということを見たんだが、それは事実であるか、あるいは
捜査の経過はどうかということを聞いたんです。そのときソンバーグ刑事
局長いわく、申し立てにより私
どもはこのロッキード問題につきましての
捜査を開始しております。しかし
捜査の経過についてはもちろん秘密でありますからここで言うわけにはいかぬ。ただ私はこの
捜査につきましては完全にやりたい。完全にやりたいということを言っておりました。すでに
捜査は始まっているんです。だから、恐らく
対象となるであろう
コーチャンだとかクラッター氏、こういった人が
起訴免除がない限り、
適用がない限り、幾ら
日本側が
起訴免除を言ったところで言うわけがないじゃないですかと実は私は思うんです。ところが、
矢田部委員の御
質問に対して
刑事課長は、いやそうじゃないと、われわれがやっているのは
米国の
国内法にひっかからぬ、いわゆる贈賄についての限定した
嘱託尋問の仕方だから恐らくそれは協力してくれるであろう、こういうことを言っているんですね。贈賄というのは私の推測です。そういうふうに限定してやるから、それは
アメリカの
国内法にひっかからぬと言っていますけれ
ども、これはデリケートな問題でありますから、私は非常に国民に過大な期待を
法務省あるいは
検察庁が与えておるとは申しませんけれ
ども、マスコミが非常に大きく取り上げておる。つまり
嘱託尋問の成果によって、それが終わればすぐ
日本国内において強制
捜査が始まる、こういうふうな決め手になるような
報道の仕方をしている。しかし私はそう評価していない。というのは、
先ほどの私
どもが参りましたときの
アメリカの
法務省とのやりとり、そういうことから考えますと、
起訴免除しないんです。
捜査がもう進行しておるんですから。そのことだけを申し上げたい。これは
質問というよりか、まあ余り過大な期待を持たせぬ方がいいなという感じはしますね。
それから第二の
質問。これは先般私
ども同僚の秦野
委員が
質問された案件についてですが、つまり秦野
委員は、いわゆる灰色高官名の公表についていろいろ御
質問なすった。それは
刑事訴訟法第四十七条、あるいは
検察庁法十四条に関連してです。きょう刑事
局長、何か出張中でお見えになっていないようですが、そのときの刑事
局長の
答弁は、私の記憶するところでは、四十七条はこれは
検察官が判断して運営する条文である、それから
検察庁法十四条の指揮権
発動、これは検察の伝統から言って、法務大臣と
検察当局が食い違いがあるようなことはないというのが検察の伝統であるから、まずこれが
発動されることはないというふうに勇敢に言っておりました。ところが刑事
局長が言ったのは、法務大臣は、しかしながら、検察陣営に対する一般の指揮監督権をお持ちであるから、
捜査経過について報告を聴取する権利はある。その報告の
内容を法務大臣自体の判断で、あるいは総理に御相談なさる場合もあるかもしれぬが、法務大臣御自体の判断であるいは国会に報告するというようなかっこうで明らかになることもあり得る、刑事
局長はこういうふうにおっしゃった。そこで、また法務大臣がこれを受けて、しかし、これは法務大臣と言え
ども刑事訴訟法四十七条あるいは
刑事訴訟法全体の趣旨、立法の趣旨あるいは
検察庁法十四条、こういった法律を守るべき立場にあるのだから、それはそういうものを無視して、部下には法律を守れと言っておいて、私は法律のことは知らぬ顔してただ報告するのはおれの勝手だというようなことはいたしませんというふうにおっしゃったのですが、これは非常に重要な問題なんです。なぜかと言いますと、こういう
新聞報道があるのですね、これは権威者の意見交換のかっこうでの新聞の
報道なんですがね。こういうことを言っている。その問答を踏まえて、「いわゆる灰色高官の氏名公表について、これからのすじ道がはっきりしたことは重要だ。これまで灰色高官の氏名公表については「逆指揮権」の
発動や刑訴法四七条のただし書きの援用などがいわれて来たが、一番自然な
やり方は、法相が
捜査当局から報告をうけ、首相の判断で公表に踏み切るということであることが、はっきりした。」こうなる。こういうふうにとっている。これは「朝日」ですよ。しかも相当専門家がやっている。編集
委員が。その人たちも四十七条のただし書きの
適用で、灰色高官名の公表には無理がある、こう言っておる。要するにあのときのとり方というものは、この秦野
委員、いまおりませんけれ
ども、これは本人自身また改めて確めたいと言っておられましたがね。このテレビなんかの解説が、あるテレビはこういうふうに解説する、あるいはあるテレビは逆な解説
報道をしている。非常に誤解を招いているのですよ。私は念のために私自身の理解の上に立って御
質問申し上げる。ちょっとその点をはっきりお示しいただきたいと思うのです。