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安恒参考人 私は、
不況、雇用問題、賃金、
物価問題等に対する私
どもの現在における基本的な
考え方について申し述べたいと思います。
まず、これは
委員先生も御
承知のように、高度
経済成長政策というものは、わが国におきまして忍び寄るインフレということで、徐々に高度
経済成長政策の中にインフレが高進をしてきておったのでありますが、それが爆発的になりましたのは、
一つは
昭和四十八年の秋、いわゆるオイル
ショックと言われる世界的な原料高の問題、それに加えて、当時
田中内閣がとられておりました列島改造方針、こういうものが爆発的なインフレを引き起こしたことば御
承知のとおりであります。
そこで、四十八年の秋から、
政府の施策といたしましては、
財政金融の引き締めを行ってインフレを防止をする、こういうことがとられたわけであります。このような中で、実は四十九年の春闘は、消費者
物価が二五%も上がっておりましたし、卸売
物価が三〇%も上がっておりましたから、そこで私たちは平均で約三三%の
賃上げを行いました。
問題は、それから先のことが重要なのでありますが、四十九年の秋からとられましたところの
政府の政策というのは、私も午前中に申し上げましたように、いわゆる七五年、五十年の春闘を意識をいたしまして、賃金を上げないための
不況政策というものが強行されたというふうに思います。すなわち、もうすでに当時、このまま引き締め政策を堅持をしていくならば、労働市場の悪化、雇用問題、さらにわが国の
経済成長がマイナスになるということ、中小
企業の倒産等がたくさん出る、こういうことは非常に問題になっておったのでありまして、いわゆる
財政金融引き締め政策を堅持するのかどうかというのが当時国会の中でも非常な議論になったところであります。ところが、あえて
政府、財界は一体となってこれをやられましたのは、一にかかって、率直に申し上げて、七五年春闘の賃金抑制ということを意識をされた上で引き締め政策が継続、強化されたというふうに私たちは
考えるわけであります。
その結果、
物価は上昇が低下したことは事実であります。もちろん
物価上昇が低下したと言っても、現在でもなお対前年同月比一〇%前後でありますから、私は高いと思います。しかし、その結果何が起こってきたかと言いますと、御
承知のように実質賃金の停滞、それから雇用不安、福祉の停滞、いわば労働者と
国民生活の犠牲の中で
物価安定というふうに向かったのは事実だろうというふうに思います。もちろん、私たちもこのような政策を黙って見ておったわけではありません。七四年の秋ごろから、この引き締め政策を
日本的所得政策というふうに名づけまして、私たちはいわゆる賃金、雇用を犠牲にする引き締め政策について不当性を主張してきたところであります。
そこで、問題になりますのは現在の局面でありますが、いまの局面は、戦後最大の
不況から回復の過程へあるというふうにわれわれは
考えます。ところが、この回復の過程の中で一番大きい問題は何かというと、いわゆる雇用情勢の悪化問題と、個人消費が一向に伸び悩んでいる、これが大きな問題だろうと思います。率直に申し上げて、今回の
景気回復というのは従来の型と違って、きわめて複雑な
様相を含めながら徐々に回復していると思います。しかし、いま申し上げましたように、これをミクロで見ますと、いまもってやはりどろ沼の
状態にあるというふうに私たちは見ているわけであります。
したがって、私は、これを放置しておったならば、
景気の回復ということはさらに問題が出てくると思います。特に、
日経連が、きょうも午前中
参考人として述べられましたが、いわゆる本年の
賃上げを一〇%からゼロにする。こういうようなことでもしも推移しますならば、私は、このどろ沼
状態というものはますます悪化することになるだろうというふうに
考えるわけであります。ですから、こういう
状態を救うのが、私は
政府の施策の
責任であろう。そういう
意味から言いますと、
政府の施策の
責任というのは非常に重要だと思います。
それはなぜかといいますと、結局現在の
不況というのは、
政府みずからの施策的に生み出されたのが現在の
不況であります。でありますから、この雇用不安問題、
不況問題を回復するのは、やはり私は
政府の施策の
責任として行われるべきではないだろうかというふうに
考えます。だれが
考えましても、率直に申し上げまして、マイナス
成長とか
不況が好ましいと
考える人は一人もいません。また、操短が続いて失業が多くなるというような問題についても、これは反対でありまして、わが国の
経済が安定した
成長を求めることは当然であります。ただ、そこで問題になりますのは、どんな方法で
景気を回復するのかというところだと思います。また、ただ単にむちゃくちゃに
成長率が上がればいいというふうに私たちは
考えないものであります。
そこで、私は、
不況対策、雇用
対策について、次のように実は
考えるわけであります。
まず第一に、第四次
不況対策、それから、いまこの
予算委員会で
先生方が五十一
年度予算について十分な御
審議をされているのでありますが、私たちから言わせますと、
政府の四次
不況対策、それから五十一
年度予算は、主たるものを見ますと、率直に申し上げて、たとえば本四架橋の設置の問題であるとか新幹線の建設の問題であるとか、いわば
田中内閣の当時に列島改造政策ということで準備されました大型プロジェクトを中心とする
景気対策であるように私たちは
考えるわけです。すなわち、この
路線というのは、投資財部門を中心とする需要の増大を起動力といたしまして大
企業の利潤を増大させる、それによって投資
成長率を高める、こういう
路線だというふうに思います。わかりやすく言うならば、基軸産業中心型あるいは大
企業の利潤中心型であります。すなわち、これらの利潤を増大することによって
景気を回復させようとされているのであります。
私はここで
考えますと、列島改造というものが狂乱インフレを引き起こした、そしてその
対策として引き締め政策が行われた、そしてまたその引き締め政策の行き過ぎを直すために再び列島改造型方法をとられようとしている。このことはどういうことを
意味するかというと、
経済が
成長したときも停滞をしたときも常に労働者と
国民が犠牲になっているということであります。
そこで、じゃぼくたちはどういうことを
考えるのかというと、私たちはいまの
景気回復の局面を次のようにやるべきではないだろうかというふうに思っています。
まず私たちは、福祉型政策というふうに呼ぶのでありますが、狂乱インフレと戦後最大の
不況の過程で非常な犠牲をこうむっております
国民生活と福祉の改善、それから消費支出の増大、これをてことする
景気回復政策をやるべきではないだろうかというふうに思うのであります。
特に重要な視点といたしましては、短期的
成長率の上昇ではなく、
中期的に
国民福祉の充実になることを十分
考えるべきであろうということが第一点であります。それから第二番目には、雇用効果が具体的に出るような政策をとらなければいけないということではないだろうかというふうに思います。
じゃどんなことを具体的に
考えているのかということになりますと、第一点は、私は午前中にも議論になりましたようないわゆる
所得税減税、それから
社会保障給付費の拡大、これは率直に申し上げて低所得者を中心とする消費の拡大ということに連なっていくわけであります。
それから第二番目には、率直に申し上げまして、国家
財政投資、地方自治体の
財政投資、公共投資のあり方という問題では、
一つは、私はやはり公営の賃貸し住宅の建設を中心とする住宅建設が必要であろう。それから第二番目には、義務教育や高校の不足に悩んでいる都市が非常にあるわけでありますから、こういう学校の建設を行うことが必要であろう。いま
一つは、住宅環境整備ということで、上下水道の問題なり、公園の問題なり、このような問題をやはり積極的に取り上げていただくということが必要ではないだろうか。
それから雇用効果の面につきましては、
一つは、やはり積極的な雇用拡大ということについてやるべきではないか。たとえば週休二日、週四十時間制について、公務員は試行を行うということを決めておったのでありますが、今日の局面で
政府がちゅうちょされています。私は、公務員や金融
機関にまずリードさせる、そして週休二日制というものをきちっと絶対的に設定していく、こういうことをぜひお
考えをお願いしたいと思います。
率直に申し上げまして、五十一
年度一般会計は二十四兆二千九百六十億千百万で、これを
政府の皆さん方は、「
景気浮揚に苦労していい
予算」と、こういうふうにごろを合わせられているというふうに聞きますが、私たちはあの
予算の中身を見ますと、低福祉で、大
企業にはいい
予算でありますが、
国民にとりましては、「福祉を袋だたきにするいいかげんな
予算」、同じ数字でも読み方によるとこう読めるわけでございまして、そういう中身について十分なお
考えをひとつお願いをしたいと思います。
それから賃金との関係についてでございますが、私たちは、わが国の
景気を拡大していくためには、ざっくばらんに言って^
一つは、国際的に輸出がどう伸びるか、第二番目には、いわゆる設備投資がどう伸びるか、第三番目には、やはり個人消費の拡大がどうされるか、第四番目は、やはり投資の中でいわゆる国家並びに地方自治体の
財政投資、これがどのように使われるか、このことが
景気浮揚政策につながっていくと思うのでありますが、その中のいわゆる個人消費の伸びの問題につきましては、私たちは、賃金をふやしていく、でなければ、
一つは減税政策をとるか、これが必要ではないだろうかと思います。
その場合に、賃金について私
どもの
考え方を申し上げますならば、率直に言って、昨年の春闘は、賃金を上げました直後において、
物価上昇にも及ばなかったわけでありますから、実質賃金がマイナスになっています。ですから私は、個人消費の枠を拡大するためにことしは適切な
賃上げが必要だと思います。
それがために私たちが
考えますことは、まず
物価上昇に見合うということが
一つでありましょう。第二番目には、わが国の
経済成長に従った、いわゆる
国民生活の
成長に従う労働者の実質生活の向上ということを
考えなければなりません。第三番目には、私は
政府の税調
委員もしているのでありますが、ことしは十六年ぶりに
所得税減税が行われません。率直に申し上げて、いまの高度累進課税でありますから、べースアップをすればそれだけ
所得税はふえるわけでありますから、実質増税になります。この面についての配慮をやはり賃金の中でしなければなりません。また、来
年度予算の中を見ますと、健康保険の掛金や厚生年金の掛金や一部負担等の増大が
考えられています。こういうような問題におけるところの労働者の実質所得が減るわけでありますから、このような問題を
考えなければなりませんし、さらに御
承知のように、インフレに対するところの労働者の預金の目減り、このような問題等についても私たちは
考える、こういう観点からやはりこの
賃上げを決めていきたいものだと思います。
でありますから、私が申し上げたいことは、どうしてもいまの
景気の局面というものを、いわゆる
日経連やそれから
土光さんの御主張を聞いておりますと、どうも縮小再
生産の方向にとろうとされているんじゃないかと思いますが、私たちはやはり
国民や労働者の生活、福祉を豊かにしながら、
景気拡大を
中期的に行っていく、こういうやり方をとることが
国民全体のためになるのではないだろうかと思いますので、ちょっと時間が長くなりましたが、基本的な
考え方について申し述べました。
以上であります。