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堀委員 総理がさっきおっしゃった、経理上独立採算は当然だ——私が言っておることは、要するに、いま
運輸大臣答えられましたように、公共的なサービスが求められておる。公共的なサービスを本来は
国鉄が負担すべきでないにもかかわらず、
国鉄に負担させるとするならば、それは独立採算を侵害するわけですから、その分については、公共的サービスを提供するのは当然ですが、そのサービスの対価を国が当然公共サービスのかわりに払ってやるというのでなければ、私は独立採算などという制度は成り立たないのじゃないかと思うのです。実はNHKがことし
予算上値上げを提起しておりますが、数年前から、NHKは大体このころには聴視料値上げをしなければならぬ客観情勢にあったことはわかるわけですから、そこでNHKが本来負担すべきでないものをNHKが負担しておるのは全部排除すべきだ、そうしてからでなければ、要するに国の払う分までを聴視料で取るなどということは納得できないと言って、NHKを督励しながら、大蔵省が本来負担するものは大蔵省に負担をさせるということで、完全にはなっていないにしても、ほぼ実はNHKはいま本来NHKが負担しないでも済むものは負担しないということになっているわけです。たとえば、基地周辺の聴視料の減免だとかあるいは国際放送についての費用だとかいろいろな問題があったのですが、そうしてきた。だから、私は四十二年にも実は大蔵
委員会でこの問題に触れたわけでありますけれども、
国鉄を再建するためにどうしても必要なのは、何としてもこの公共負担の部分を国が見るかどうかというところが決断がつかない限り、私は
国鉄の再建は不可能だ、こう考えております。公共負担の中には地方線の赤字の問題もあります。さらには公共割引の問題もあります。よくジャーナリズムで取り上げられる私ども国
会議員の無料の運賃の問題についても、それは
国会の
予算で払ってやればいいのじゃないか。要するに、
政策目的に応じてその部分が負担をするということで処理がされるべきで、それを全部
国鉄におっかぶせておること自身は、
総理が最初におっしゃった経理の独立採算を乱すことになっておるわけですね。ことしの
予算ではこの地方線に対する助成が百七十二億されておるようでありますが、しかし、
国鉄側は九百九十三億実は要求しておる。それに百七十二億しか国はめんどうを見なかった、こうなっておるわけですね。いま公共割引の負担というのは大体約五百億ぐらいあると言われています。時間が十分ありませんから簡単に私の方で述べていきますけれども、そうして、現在は五百億でありますけれども、過去におけるこの公共割引のための負担は、二十四年度から四十九年度まで合わせると一兆二千八百二十三億円にもなる。これだけを、実は本来
国鉄は負担しないでもいいものをずっと負担させられてきておるという問題があるわけですね。地方線の問題においてもしかりであります。
だから、
国鉄再建の一番のポイントは、一つは労使の正常化ですよ。これは最大の
問題点。その次は、いまの公共的な部分における、本来
国鉄が負担しないでいいもの、それを負担させられておる部分を
政府がきちっと処理する、この二点が確立をしない限り、私は
国鉄の再建は考えられない、こう考えておるわけです。一体百七十二億などというものをいろいろ理屈をつけて財政当局は考えたのでしょうけれども、問題は金額とかそういうものではなくて、真剣に
国鉄再建をやろうというのなら、経常収支がバランスするようにすることが最重要なんでありますから、そのためには過去における債務をたな上げをして処理するということも確かに重要でありますけれども、それにも増して、実は経常収支を圧迫しておるのは五百億の公共負担の問題であり、あるいは地方線の負担が
国鉄側のあれでは九百九十億円余りある、それの半分だけをひとつ
予算としてちょうだいしたいと言ったら、半分どころか、百七十二億だけしかいただけなかった、こういうことになっておるわけですね。こういう条件で再建をやらそうなどということは無理がある、こう考えておるわけであります。
さらに、時間がありませんから、その再建問題をやる場合に実は運賃の値上げというのは不可分ですね。この運賃の値上げの問題だけをちょっとここで触れておきますけれども、
国鉄は現在、今度の
予算で五〇%の運賃の値上げをすることになっていますね。しかし、
国鉄の資料で見ると、五〇%を上げて三七%増収になればいいんだということですね。これは非常に重要な問題です。値上げをする結果利用減が起こる、利用減を当初から考えて値上げをする。公共サービスというのは、一体
人間が乗るのを制限することによってもなおかつ収入を上げなければいけないのかどうか。これは私は重要な
問題点だと思うのですね。公共サービスとしては、値上げはします、しかしその値上げが利用減にならないような値上げの方法を選択することが公共企業の重要な
基本的な
考え方ではないだろうか。ところが、
国鉄は当初一遍に倍になれば一番いい、そうもいかないから五割、五割で二年続き。選挙を前に五割、五割の二年続きなんということは困るから一年だけ出そうということになったのだろうと思いますけれども、それにしても五割上がって三七%の歩どまりなんというのは、私は甘いと思っているのですよ。この不況の情勢の中で、高度成長のときのものと同じようなふうにはいかないと思うのですね。だから、こういう点については、いまの再建の
考え方に非常に問題がある。
ちょっとデータを申し上げておきますと、
国鉄側が試算をしたものの中で非常に心配な点は、四十三年には、旅客運賃の値上げをしたけれども貨物は実は値上げをしていない。ところが
国鉄の試算では、平年度で貨物収入が何もしなくて九五%になっている。値上げしなくて九五%。四十四年にも旅客だけ上げて貨物は上げなかった。しかし、このときも
国鉄の計算では九一・六%と、料金を上げなくても、運賃を上げなくても減ってきた。それはそうでしょう。かつての貨物の収入から見れば、ずっと今日低下の一途をたどっているというのが
国鉄の状態ですから。そういう下降線にある。競争上は、トラックその他内航海運との間で厳しい競争が強いられている中で、しかし
国鉄側は貨物についても名目五三・九、純増収三七・二%。これはもうナンセンスですね。私は
国会に出て約十八年、経済問題だけを取り扱って今日来ておりますが、こんな再建計画を出してくるという、これは経済の問題を考えておる者から見ればもうナンセンスですね。これは値上げ問題が、高い安いとか、その当否を論ずる前に、もう一遍再建計画を含めて出し直してもらいたい。それでなければ、こんな再建計画で
国鉄再建は絶対できませんよ。
だから、私は
総理に、これは大変重要な問題で、私どもは運賃値上げ賛成、反対の問題の前に、ともかくさっき
運輸大臣は
国民の理解と協力を得なければ再建できないと言われた。こんなやり方をして
国民の理解と協力を得られますか。私は得られないと思いますね。どうしても得られない。だから仮に値上げをするとしても、もっと小刻みな値上げを何回かするということで、その程度の値上げなら仕方がないということに
国民が理解をするならば利用減は減るでしょう。利用減をともかく一三%もぼーんと出すような値上げ案。実際には、過去の状態で計算してみると六〇%ぐらいになっていますからね。三七%の純増収というのは見込みはないですよ。大体三〇%増収にしかなりませんね。そして貨物はゼロですね。マイナスが立ちますね。もしここで五〇%やったらマイナスがどーんと立ちますね。これは私は間違いないと思う。
そういう非常識な、経済的に常識的に考えられないようなやり方をとることについては私は納得できないので、これはひとつ
総理大臣、この再建要綱というのは閣議了解事項になっていますが、恐らく十二月三十一日の
予算閣議の忙しいさなかでぱっと出されて、閣議の皆さん、十分御検討になる時間もなかったのじゃないかと思いますけれども、これはひとつ再検討をして、あわせて
国鉄の運賃の値上げももう一遍、いまの情勢で本当に
国鉄が再建できる再建要綱をつくった上で考えたらどうか、こういうふうに思うのですけれども、
総理の御
答弁をいただきたいと思います。