○松本忠助君 私は、
公明党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
国有鉄道運賃法及び
日本国有鉄道法の一部を
改正する
法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
破局寸前の
国鉄財政をどのように立て直すかは、現下の重要な政治課題であります。それは
国鉄が、わが国の運輸交通機関の根幹であり、その再建の成否と再建計画の
内容いかんが、
国民生活と経済活動に重大な影響を及ぼすからであります。したがって、
国鉄の再建案は、単に一時的な
財政対策ないしは技術的視点のみで解決を図るべきではなく、今後のわが国の経済の展望と
国民生活への配慮を初め、総合交通政策の確立など、多面的な問題を含めて
国鉄の位置づけを明確にし、策定されなければならないと考えるものであります。
しかるに、今回、政府がここに
提出した五〇%に及ぶ運賃値上げ案は、こうした認識を欠く一時的な収支均衡策にすぎず、
国鉄の
財政を根本的に立て直そうとする努力も意図も見られない、きわめてあいまいなものと言わざるを得ません。
また政府は、五十一年度と五十二年度に
国鉄の収支の均衡を図るとしていますが、これは明らかに五十二年度も今回と同規模の大幅な運賃値上げを予定したものであり、これは恐るべき暴挙であると言わざるを得ません。そうなると、政府は、四十九年の運賃値上げ、五十年の料金値上げに続き、四年連続して
国鉄運賃、料金の値上げを行うということになるのであります。
このように連続する
国鉄運賃値上げの強行は、もはや、三木
内閣が掲げた政治公約の眼目である物価安定を、政府みずから放棄したと言っても過言ではございません。それは、
国鉄運賃が公共料金の主柱であるだけに、連続する
国鉄運賃の大幅値上げが、この秋には諸物価高騰を誘発することは必至であり、インフレ再燃のおそれがきわめて強くなり、不況に苦しむ
国民をますます窮地に追い込むことは明白でございます。それにもかかわらず、あえて
国鉄運賃の値上げを強行しようとする政府の真意は那辺にあるのか、まず、この点について総理の明快な答弁を求めるものであります。
第二に、政府は、五十一年三月の物価上昇率を前年同月比で一けたに抑えるという物価公約が達成できたと誇らしげに言いますが、これは、物価指数の上でのからくりとまやかしによって、鎮静したかのごとくに見せかけたものであって、物価それ自体の鎮静でないことは、
国民が生活実感としてはだで受けとめているのであります。
たとえば東京都が四月六日に発表した都市生活に関する世論調査は、都民がこの一年間に実感として受けとめた物価上昇率は、何と平均三一・六%に達し、暮らし向きは前年より苦しいという人が、五四%と半数以上に及んでいる実態を明らかにしております。私はこれが現実の
国民の生活実感であると思います。しかも
国民生活を取り巻く環境は、賃金の低額抑え込み、減税見送りから来るところの実質増税など、まことに厳しい状態にあります。
こうした
国民生活の実情を知るならば、物価高騰の引き金となる
国鉄運賃の大幅値上げを
国民に強要することはできないと考えますが、この点についても、総理の率直な見解を伺いたいと思います。
第三に、
国鉄運賃の値上げ案に付帯して政府がまとめた
国鉄再建要綱について、総理に伺います。
国鉄財政の実情を理解する者ならばだれもが、今回、政府
提案の
国鉄再建要綱では
国鉄財政を根本的に立て直すことができないと言っております。その理由は、この要綱には、
国鉄の赤字要因である貨物問題、
地方閑散線問題、さらには借入金依存の投資計画など、これらに対する具体的な解決が何一つ示されておらないのであります。これらの諸問題が
国鉄財政再建のかなめであって、この問題解決なくしては
国鉄財政の立て直しは不可能であります。
たとえば、現在の
国鉄の貨物輸送量は、わが国の全貨物輸送量のわずか一四%にまで低下し、貨物収支から生ずる赤字が、
国鉄の赤字額のほとんどを占めております。また
地方ローカル線は、五十年度に約三千億円もの赤字を生み出しております。さらに、借入金依存の投資計画を進めてきたため、
国鉄は現在六兆六千億円の借金を抱え、その利子の支払いに追われ、
財政崩壊の原因をつくっていることは周知のとおりであります。したがって、こうした赤字要因となっている諸問題の具体的な解決策を欠いた政府の
国鉄再建要綱は、
国鉄再建の名に値しないものと断ぜざるを得ません。
このことは、
国民の強い
反対の声を無視して実施し、しかも、
国鉄財政を現在の破局的状況に追い込んだ第一次、第二次の
国鉄財政再建十カ年計画と軌を同じくするものであって、もしこの再建要綱に基づくならば、
国鉄財政は完全に崩壊すると思われるのであります。
総理は、運賃値上げによる多大な負担だけを残し、
国鉄財政を危機に追い込む政府の
国鉄再建要綱が、果たして
国民の納得を得られるものと考えておられるのかどうか、明快な答弁を求めるものであります。
第四に、総合交通政策と
国鉄再建の関連について、総理並びに
運輸大臣に伺います。
国鉄財政の再建は、もはや
国鉄という一つの企業の
範囲内で解決できる問題ではなくなっておるのであります。たとえば都市交通問題、省資源問題環境公害対策、労働力不足問題など、交通経済が現実に抱える諸問題の解決が個別の交通
事業では解決できないと同様に、
国鉄財政の再建は、そうした社会的、経済的諸問題との整合性を図らなければなし得ないと考えるものであります。したがって、わが国の総合交通政策の早期確立を図り、その中で
国鉄の
役割りと位置づけを明確にした上で、
国鉄経営の立て直しを図ることが緊要であると考えますが、総理並びに
運輸大臣の明快な答弁を承りたいと思うのであります。(
拍手)
第五番目の
質疑は、大蔵並びに運輸両大臣に答弁を求めます。
前段で申し述べた立場に立って考えますと、
国鉄の収支をわずか二年間で均衡させようとする政府の再建策は、まさに無謀というほかないのであります。
国鉄の抜本的な再建を図るためには、総合交通政策の確立がなされるまでは、
国鉄の赤字補てん策として国庫補助の強化を図るなど、暫定的な
国鉄予算を組むべきであると思いますが、この点について大蔵並びに運輸両大臣の見解を伺いたい。
第六に、政府は、
国鉄再建に当たって、六十年度までに六万五千人の人員削減を
国鉄に強要しておりますが、これは
国鉄再建と矛盾するものであります。六万五千人と言えば、現在の
国鉄職員の一五%になり、これだけの人員を減らすためには、
地方閑散線の廃止、貨物輸送の縮小、安全・保守
業務の縮減などが当然必要となるはずであります。しかし、そうした
国鉄の
事業規模や安全対策上重要な問題の検討は、合理化案決定に際しては全く行われていないのであります。また、このような大量の人員削減が、
国鉄の労使間にとって重要な問題であるにもかかわらず、
労働者側と何らの話し合いもなされずに一方的に提起されているところに問題があります。それは、労使の協調が
国鉄再建にとって不可欠な条件であることを考えれば、政府が決定した
国鉄の合理化案は、まさにそうした労使間の協調体制を一方的に破壊しようとするものと言わざるを得ません。政府は、かつての第一次
国鉄財政再建十カ年計画が、十一万人削減という実現不可能な合理化案を作成し、その結果、マル生運動という労使間に不毛の対立を生んだことを改めて思い起こすべきであります。
国鉄再建を真剣に考えるならば、労使の対立を生み、ひいては
国鉄を内面から崩壊させるおそれのある合理化案を即座に撤回すべきであると考えますが、
運輸大臣の誠意ある答弁をお願いいたします。
また、労使の正常化の問題に関連して、
国鉄の賃金体制、つまり賃金格差の是正である
昭和五十年度仲裁裁定第四百四十三号の主文二項について、過去三回、何ら具体的な解決がなされていないと聞きますけれども、主務大臣たる
運輸大臣は、
国鉄当局に対しどう指導され
措置しようとするのか、あわせて大臣の誠意ある答弁を求めます。
第七に、
国鉄財政再建策として何点かの
提案を申し上げ、政府の見解をただしたいと思います。
その第一点は、
国鉄の資産が
国民共有の
財産であるという立場に立って、
鉄道施設等の基礎的な施設の
整備は国の責任において行い、そのためにも現在以上に国庫補助を強化すべきであると考えます。これまでのように、投資
財源を借入金によって賄うことを続けるならば、
国鉄は永久に赤字
財政に苦しまざるを得ないでしょう。
国鉄経営の基盤強化のためにも、国の責任において基礎的な施設
整備を行うことは必須の条件であると思いますが、この点について、大蔵、運輸両大臣の見解を伺いたいのであります。
第二点は、政府は五十一年度から赤字線補助として百七十二億円を計上する一方で、三十一線区、千三百五十キロに及ぶ赤字路線を建設しようとしています。こうした矛盾は、政府に赤字線対策が皆無であることを如実に示すものであります。
国鉄財政の健全化を図る意味から、赤字線建設は抜本的に見直す必要があると思うが、どうか。
また、赤字線建設の根拠法となっている
鉄道敷設法及びその別表に
掲載された建設路線は、現在、中期的な経済及び社会情勢から見てもそぐわないものが大半であります。したがって、この際、敷設法の抜本的
改正が必要であると考えますが、
運輸大臣はどのように考えておられるか、御所見を伺いたいと思います。
第三点は、貨物対策として他の交通機関との
輸送分野の
調整を行い、また、収支の改善を図るため、大企業向けの割引料金制度は廃止し、貨物運賃体系を見直す必要があると考えるが、この点について
運輸大臣の見解を明確に示していただきたいと思います。
最後に、本年度は、この
国鉄運賃のほかに、電話電報料金、NHK受信料、電力料金など、主なものだけでも十数種類の公共料金の値上げが予定されております。公共料金の一斉値上げがどのような結果を生むかは、
昭和四十九年に
国鉄、私鉄、電気、ガス等の値上げによって物価が異常に高騰した例を挙げるまでもなく、明白な事実であります。
また、
国鉄の赤字要因を放置し、無謀とも言える合理化計画を画策し、労使対立を一層深刻化させる政府の
国鉄再建要綱は、絶対に認めるわけにはまいりません。
以上の点から、わが党は、不況と物価高が併存する
国民生活に決定的な打撃を与える本法案の撤回を強く要求するものであります。
なお、
国鉄の再建は
国民的課題であり、その再建策は
国民の十分なコンセンサスが得られるよう積極的な努力をすべきであります。
国民のための
国鉄をつくろうというならば、与野党一致で賛同できる
国鉄再建計画をつくる必要があると考えます。わが党も、そのための協力は決して惜しむものではありません。
政府は、
国鉄再建要綱を抜本的に改め、全党一致で
国鉄の立て直しに協力できる
国鉄再建案を策定すべきである、このことを強く申し上げ、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣三木武夫君
登壇〕