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香川政府委員 戸籍の
公開の必要性と、除籍の
公開の必要性には相当差があると思うのであります。生きている者の
関係について身分
関係をいろいろ公証しておるそういったことを
調査するという場合と、それから先ほど申しましたように、除籍の方は死んでおる者が
記載されている場合が圧倒的に多いわけでございますから、おのずから
公開の必要性が違ってくるということが
一つと、それからもう
一つは、これは除籍の中には明治三十一年——その前に壬申
戸籍というのがあるわけでございますが、明治三十一年の
戸籍法による
戸籍、それから大正四年の
戸籍法による
戸籍、こういうものは
戸籍法の
改正によりまして、
戸籍簿の様式が変わることによって新しい様式のものに移記いたしまして古い
戸籍を除籍にしておる、そういうものがあるわけでございます。今日と
プライバシーの問題とかいうふうなことについての
国民意識がずいぶん違っておりましたことも手伝って、たとえば古い
戸籍には族称というふうなことで華族、士族、平民というふうな
記載欄もあったりしたわけでございますし、それから昔の
戸籍には、たとえば刑務所で女囚が
子供を産みました場合には、その出生地として刑務所をそのまま書いておるというふうな
記載もあるわけでございます。そういうふうなことで、現に
市町村において保管しております除籍の中には、今日考えれば、さような
記載はやはり
公開してはよくない、むしろ
個人の秘密としてといいますか、むしろ積極的にそういうことを
戸籍に
記載すべきでないというふうな
事項もあるわけでございます。
さような
意味で、今度の
改正案では、除籍につきましては、真に最小限必要がある場合に限って
公開の
制度を維持する、こういうふうなことで、生きている
戸籍は、
原則的には
公開をとりながら例外的に制限するという方法と違った、むしろ
公開を厳しく制限したような形になっておるのはさような
理由でございます。しかし、除籍につきましても、やはり過去の身分
関係等が
法律的に当然必要になるということもございますので、そういう考えられる必要のある場合に限って
公開するということと、それから
公開しても心配される
プライバシーの
侵害等の弊害が全く考えられないというふうな場合には差し支えないわけでございますので、そこで新設
規定の十二条の二では、除かれた
戸籍に
記載されている人あるいはその直系尊属、直系卑属、そういう者が
請求する場合には、これは自分たちの身分内容のことでございますので、先ほど申しました
プライバシーの
侵害というふうな
意味の弊害がないから、これは何も制限する必要はなかろう。
それから、さらに国あるいは
地方公共団体におきましていろいろ
相続関係、過去の身分
関係等を
調査する必要もございますし、それから
弁護士が訴訟等においてそういう除籍を必要とする場合もございますが、これも
守秘義務ともあわせ考えますれば弊害がないということになるわけでございまして、そういうものを例示いたしまして、そしてそのほか
法務省令で定める者も
請求できるという、この
法務省令の内容といたしましては、先ほど十条の方で申し述べました
司法書士とか
調査士とか
行政書士というふうなものと同じような範囲を考えておるわけでございます。
それからもう
一つ、それ以外の者でも、たとえば
一般私人でございますが、
相続関係を明らかにする必要があるというふうな場合に、除籍以外にはないわけでございますので、さような場合には
公開を制限することは
行き過ぎでございますので、そういう者は当然
請求ができるようにして、そのほか
相続関係を証明する必要がある場合以外でいろいろ考えられる必要な場合が出てこようかということで、
法務省令で定める場合にも、同じように
請求ができる道を開いておこうというふうにしておるわけでございます。
この「
法務省令で定める場合」というのは、現在いろいろ検討しておるのでございますけれ
ども、たとえば調停の
申し立てをするとかあるいは
裁判所にいろいろな手続をとるときに、
相続関係以外の身分
関係を明らかにしなければならぬというふうな場合が主として考えられるわけでございます。裁判上必要とする場合というふうなのが一番大きな
法務省令で定める場合の例示になろうかと思いますが、さようなことをいま詰めて検討いたしておるところでございます。