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1976-05-19 第77回国会 衆議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十九日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 登坂重次郎君    理事 河野 洋平君 理事 西岡 武夫君    理事 藤波 孝生君 理事 三塚  博君    理事 木島喜兵衛君 理事 嶋崎  譲君    理事 山原健二郎君       上田 茂行君    臼井 莊一君       久野 忠治君    久保田円次君       床次 徳二君    楢橋  進君       西村 英一君    羽生田 進君       深谷 隆司君    山崎平八郎君       馬場  昇君    長谷川正三君       山口 鶴男君    栗田  翠君       有島 重武君    高橋  繁君       受田 新吉君  出席国務大臣         文 部 大 臣 永井 道雄君  出席政府委員         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省学術国際         局長      木田  宏君         文部省社会教育         局長      吉里 邦夫君         文部省管理局長 清水 成之君         文化庁次長   今村 武俊君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部施設対策第二         課長      白根  洋君         外務省アメリカ         局安全保障課長 山下新太郎君         大蔵省主計局主         計官      矢澤富太郎君         文部省体育局学         校保健課長   遠藤  丞君         厚生省社会局庶         務課長     北村 和男君         運輸省航空局飛         行場部環境対策         第一課長    井下登喜男君         建設省河川局防         災課長     井沢 健二君         建設省道路局道         路交通管理課長 渡辺  尚君         建設省道路局高         速国道課長   山根  孟君         自治省財政局交         付税課長    豊住 章三君         (参 考 人)         水資源開発公団         理事      大橋 文雄君         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   安里積千代君     神田 大作君 同月十九日  辞任         補欠選任   平林  剛君     馬場  昇君   山口 鶴男君     山本 幸一君   神田 大作君     受田 新吉君 同日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     平林  剛君   山本 幸一君     山口 鶴男君   受田 新吉君     神田 大作君     ――――――――――――― 五月十八日  国際連合大学本部に関する国際連合日本国と  の間の協定実施に伴う特別措置法案内閣提  出第六八号) 同月十四日  進学希望者高等学校教育保障に関する請願(  中島武敏紹介)(第四三三一号)  同(米原昶紹介)(第四四二五号)  私学助成に関する請願外一件(石田幸四郎君紹  介)(第四三三二号)  同(米原昶紹介)(第四四二六号)  大学学生寮改善等に関する請願栗田翠君紹  介)(第四三三三号)  同(山原健二郎紹介)(第四三三四号)  公立高等学校増設に対する国庫補助制度創設  等に関する請願浦井洋紹介)(第四四一九  号)  国立能楽堂設立に関する請願越智通雄君紹  介)(第四四二〇号)  同(粟山ひで紹介)(第四四二一号)  同(山本幸雄紹介)(第四四二二号)  私学に対する公費助成増額等に関する請願(寺  前巖君紹介)(第四四二三号)  私立大学学費値上げ抑制等に関する請願(梅  田勝紹介)(第四四二四号)  学校図書館法の一部改正に関する請願(土井た  か子君紹介)(第四四二七号) 同月十五日  学校図書館法の一部改正に関する請願嶋崎譲  君紹介)(第四五七三号)  私学助成に関する請願大出俊紹介)(第四  五七四号)  同(米原昶紹介)(第四五七五号)  私立大学学費値上げ抑制等に関する請願(  木島喜兵衞紹介)(第四六九四号)  同(栗田翠紹介)(第四八二三号)  同(山原健二郎紹介)(第四八二四号)  国立能楽堂設立に関する請願外四件(江藤隆  美君紹介)(第四六九五号)  同外四件(折小野良一紹介)(第四六九六  号)  同(越智通雄紹介)(第四六九七号)  同外三件(佐々木良作紹介)(第四六九八  号)  同外一件(千葉三郎紹介)(第四六九九号)  同(渡海元三郎紹介)(第四七〇〇号)  同外九件(福田篤泰紹介)(第四七〇一号)  同外一件(松野頼三君紹介)(第四七〇二号)  同(小宮山重四郎紹介)(第四七四四号)  同(粕谷茂紹介)(第四七七一号)  同外十六件(吉川久衛紹介)(第四七七二  号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第四七七三号)  同外三件(福田篤泰紹介)(第四七七四号)  同外三件(福永健司紹介)(第四七七五号)  同外四件(宮澤喜一紹介)(第四七七六号)  同外十六件(河野洋平紹介)(第四八一八  号)  同外八件(黒金泰美紹介)(第四八一九号)  同外十一件(坂田道太紹介)(第四八二〇  号)  同外十六件(園田直紹介)(第四八二一号)  同(宮澤喜一紹介)(第四八二二号)  教育関係予算増額等に関する請願栗田翠君紹  介)(第四七四〇号)  同(田中美智子紹介)(第四七四一号)  同(寺前巖紹介)(第四七四二号)  同外一件(山原健二郎紹介)(第四七四三  号)  教育予算増額等に関する請願梅田勝紹介)  (第四七四五号)  同(栗田翠紹介)(第四七四六号)  公立高等学校増設に対する国庫補助制度創設  等に関する請願木下元二紹介)(第四七七  七号)  老朽学生寮改築に関する請願平林剛君紹  介)(第四八一七号) 同月十七日  国立能楽堂設立に関する請願奧田敬和君紹  介)(第四八九六号)  同(勝間田清一紹介)(第四八九七号)  同外五件(黒金泰美紹介)(第四八九八号)  同(小泉純一郎紹介)(第四八九九号)  同外四件(宮崎茂一紹介)(第四九〇〇号)  同(嶋崎譲紹介)(第四九六四号)  同外十件(登坂重次郎紹介)(第四九六五  号)  同(西岡武夫紹介)(第四九六六号)  同(西村英一紹介)(第四九六七号)  同外十三件(藤波孝生紹介)(第四九六八  号)  同(保利茂紹介)(第四九六九号)  同外十四件(石井一紹介)(第五〇六二号)  同(大久保武雄紹介)(第五〇六三号)  同(河村勝紹介)(第五〇六四号)  同外一件(鈴木善幸紹介)(第五〇六五号)  同外七件(中尾宏紹介)(第五〇六六号)  北海道教育大学札幌分校女子寮建設に関する  請願多田光雄紹介)(第四九〇一号)  私立学校振興に関する請願湊徹郎紹介)  (第四九六二号)  私学に対する公費助成増額等に関する請願  (林百郎君紹介)(第四九六三号)  大学関係予算増額に関する請願栗田翠君紹  介)(第四九七〇号)  老朽学生寮改築に関する請願栗田翠君紹  介)(第四九七一号)  同(受田新吉紹介)(第五〇六一号)  大学学生寮改善等に関する請願沖本泰幸君  紹介)(第四九七二号)  同(木島喜兵衞紹介)(第四九七三号)  私学助成に関する請願(林百郎君紹介)(第四  九七四号)  同(林百郎君紹介)(第五〇六八号)  大学学生寮改善等に関する請願木島喜兵衞  君紹介)(第五〇六〇号)  進学希望者高等学校教育保障等に関する請  願(粕谷茂紹介)(第五〇六七号) 同月十八日  文教予算増額に関する請願受田新吉君紹  介)(第五一九三号)  国立能楽堂設立に関する請願外四件(小川平  二君紹介)(第五一九四号)  同外二件(奧田敬和紹介)(第五一九五号)  同外十六件(灘尾弘吉紹介)(第五一九六  号)  同外九件(宮澤喜一紹介)(第五一九七号)  同(綿貫民輔紹介)(第五一九八号)  同(金子満広紹介)(第五三三三号)  同(栗田翠紹介)(第五三三四号)  同外一件(千葉三郎紹介)(第五三三五号)  同(中島武敏紹介)(第五三三六号)  同(不破哲三紹介)(第五三三七号)  同外一件(福田一紹介)(第五三三八号)  同外十一件(宮澤喜一紹介)(第五三三九  号)  同(山原健二郎紹介)(第五三四〇号)  同(米原昶紹介)(第五三四一号)  進学希望者高等学校教育保障等に関する請  願(大久保直彦紹介)(第五一九九号)  同(小林政子紹介)(第五三四七号)  私学助成に関する請願(林百郎君紹介)(第五  二〇〇号)  同外二十件(小濱新次紹介)(第五三四四  号)  同(小林政子紹介)(第五三四五号)  同(山原健二郎紹介)(第五三四六号)  私立大学学費値上げ抑制等に関する請願(柴  田睦夫紹介)(第五三四二号)  同(山原健二郎紹介)(第五三四三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十八日  文教予算増額に関する陳情書  (第二二七号)  私学助成強化に関する陳情書  (第二二八号)  公立高校建設に対する国庫補助制度確立に関す  る陳情書  (第二二九号)  義務教育施設充実強化等に関する陳情書  (第二三〇号)  過疎地域義務教育等学校学校教育振興に  関する陳情書(第  二三一号)  学校災害補償法制定に関する陳情書外二件  (第二三二号)  学校図書館司書教諭設置促進に関する陳情書  (第二三三号)  教職員主任制度化反対に関する陳情書外一件  (第二三四  号)  教職員の主任制度化問題に関する陳情書外二件  (第二三五  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  学校教育法の一部を改正する法律案(第七十五  回国会閣法第五一号)(参議院送付)  国際連合大学本部に関する国際連合日本国と  の間の協定実施に伴う特別措置法案内閣提  出第六八号)  文教行政基本施策に関する件 (訂正)     文教委員会議録第四号中訂正  一頁四段、請願付託欄三十行及び四頁四段、二  十行乃至二十一行「安里積千代紹介」を「受  田新吉君外一名紹介」に、それぞれ訂正する。      ――――◇―――――
  2. 登坂重次郎

    登坂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付学校教育法の一部を改正する法律案議題といたし、提案理由説明を聴取いたします。永井文部大臣
  3. 永井道雄

    永井国務大臣 このたび政府から提出いたしました学校教育法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  科学技術の著しい発展と社会の複雑・高度化を背景として、近年高等教育の拡充、学術研究高度化等要請が高まっておりますが、このような状況のもとで、すぐれた教育研究者養成と高度の専門性を備えた職業人養成とを図るため、大学院整備充実が重要な課題となっているところであります。  このような観点から、文部省では、昭和四十九年三月に行われた大学設置審議会答申を受けて、同年六月、大学院設置基準制定等を行ったところでありますが、同答申独立大学院制度創設等法律改正を要する重要な事項が残されておりますので、このたび、これらの事項中心大学院制度の一層の整備を図るため、この法律案を提出いたしたものであります。  次にこの法律案内容を御説明申し上げます。  第一は、大学院研究科設置廃止認可事項とすることであります。  現在は、大学院設置廃止認可事項とされておりますが、研究科学部にのみ依存することなく、独自に組織編成できるようにされたこととも関連し、大学院基本となる組織である研究科設置廃止についても、大学における学部設置廃止及び短期大学における学科の設置廃止の場合と同様、これを認可事項としようとするものであります。  第二は、後期三年のみの博士課程研究科設置を可能とすることであります。  現在、大学院入学資格学部卒業とされており、研究科はいずれも学部卒業段階に接続するものとされているところであります。しかしながら、修士課程修了者を入学させ、もっぱら博士課程後期課程研究指導を行うことが大学間の交流や特定分野研究者養成等に資する場合があると考えられますので、このような研究科設置することが可能となるよう、教育研究上必要がある場合においては、当該研究科に係る入学資格修士の学位を有する者とすることもできることとしようとするものであります。  第三は、独立大学院制度創設であります。  現在、大学には学部またはこれにかわる教育研究上の基本組織が必置とされているところでありますが、今後における教育研究上の多様な要請にこたえて大学院がその役割りを十分に果たしていけるようにするための一つの方策として、教育研究上特別の必要がある場合においては、学部を置くことなく大学院を置くものを大学とすることができるものとし、独立大学院設置を可能にしようとするものであります。  第四は、大学院以外の教育施設は、大学院名称を用いてはならないものとすることであります。従来、大学等学校教育法第一条に掲げる学校については、その名称保護されておりますが、今後大学院重要性がますます増大することにかんがみ、大学院名称についても、同様にその保護を行おうとするものであります。  この法律案は、第七十五回国会提案いたしましたが、衆議院において継続審査となり、第七十六回国会において衆議院専修学校制度創設内容とする学校教育法の一部を改正する法律昭和五十年法律第五十九号)が制定されたこと等との関連大学院名称保護に関する規定等について所要の整備をするための修正が行われた上、可決され参議院に送付されましたが、継続審査となり、今回修正可決されたものであります。  なお、参議院における修正は、私立学校振興助成法昭和五十年法律第六十一号)の施行との関連で行われたものであります。  以上がこの法律案を提出いたしました理由及びその内容概要であります。何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
  4. 登坂重次郎

    登坂委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 登坂重次郎

    登坂委員長 本案について質疑申し出がありませんので、討論に入ります。  別に討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  学校教育法の一部を改正する法律案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 登坂重次郎

    登坂委員長 起立総員。よって、本案原案のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  7. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、国際連合大学本部に関する国際連合日本国との間の協定実施に伴う特別措置法案議題といたし、提案理由説明を聴取いたします。永井文部大臣
  8. 永井道雄

    永井国務大臣 このたび、政府から提出いたしました国際連合大学本部に関する国際連合日本国との間の協定実施に伴う特別措置法案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  政府はかねてから、世界的な緊急課題である人類の存続、開発及び福祉の諸問題を研究し、あわせて開発途上国若手研究者研修を行う機関として国際連合が提唱した国際連合大学設立と、その大学本部わが国への招致を推進してまいりました。国際連合は、わが国の熱意にかんがみ、一九七二年(昭和四十七年)十二月、第二十七回の総会において国際連合大学設立決定し、一九七三年(昭和四十八年)十二月、第二十八回の総会決議により、国際連合大学本部東京首都圏内設置することを決定しました。国際連合大学本部は、昭和四十九年十二月に仮事務所を東京に開設以来、「世界の飢餓」「人間と社会開発」及び「天然資源の利用と管理」の三研究領域について研究研修事業を開始しつつあり、開発途上国を含む世界各国から多大の期待と関心を集めております。  国際連合大学本部わが国設置されることに伴い、この本部の円滑な運営を図るために、国際連合大学本部に関する国際連合日本国との間の協定を締結する必要が生じ、交渉を進めてまいりましたが、このたび合意に達し、署名を行いましたので、別途国会の御承認を求めるため、その協定を提出したところであります。  この特別措置法案は、その協定実施に伴い、必要となる国内法上の措置をとるとともに、これによって、すでに活動を開始した国際連合大学の円滑な運営を図るためのものであります。  その内容の第一は、国は、国際連合大学に対して国有財産無償使用させることができることとすることであります。  国の財産は、財政法第九条第一項の規定により、法律に基づく場合を除くほか、これを交換しその他支払い手段として使用し、または適正な対価なくしてこれを譲渡しもしくは貸し付けてはならないこととされております。そこで、政府は、国際連合に対して、昭和四十八年六月十三日付書簡をもって、国際連合大学本部設置するための資本的経費の全額を負担する等を回答していることにかんがみ、国際連合大学国有財産無償使用させることができるよう、法律でこれを規定しようとするものであります。  第二は、国際連合大学でない者は、国際連合大学という名称またはこれに類似する名称を用いてはならないものとすることであります。  国際連合第一回総会において、国際連合標章、公印及び名称・略称の保護に関する決議が採択されていること及び国際連合大学本部を招致したわが国国際的信用を保持する必要にかんがみ、国際連合大学でない者が、国際連合大学またはこれに類似する名称使用することのないよう、名称使用を制限する措置をとろうとするものであります。  なお、大学名称については、学校教育法第八十三条の二第一項の規定が、同法第一条に掲げる学校以外の教育施設に、大学等名称使用を禁止しておりますが、国際連合との協定に基づく国際連合大学に対しては、同法第八十三条の二第一項の規定の適用がないことといたしております。  以上がこの特別措置法案を提出いたしました理由及びその内容であります。何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
  9. 登坂重次郎

    登坂委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  10. 登坂重次郎

    登坂委員長 本案について質疑申し出がありませんので、討論に入ります。  別に討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  国際連合大学本部に関する国際連合日本国との間の協定実施に伴う特別措置法案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  11. 登坂重次郎

    登坂委員長 起立総員。よって、本案原案のとおり可決いたしました。  なお、ただいま議決いたしました両法案に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 登坂重次郎

    登坂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
  13. 登坂重次郎

    登坂委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  文教行政基本施策に関する件について、水資源開発公団理事大橋文雄君を本日参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 登坂重次郎

    登坂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  15. 登坂重次郎

    登坂委員長 文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。木島喜兵衛君。
  16. 木島喜兵衞

    木島委員 まず第一に、筑波大学創設されるときに、副学長人事東京医科歯科大学医学部長であって現在埼玉医科大学学長である落合さんが内定しておった、その後東京女子医大の榊原さんに変わったことに関しまして、その当時私が質問をしてその疑義をどうしてもただそうと思っておったのであります。このことは単に人事という問題でなしに日本大学の自治に関するきわめて重要な問題と思いましたから、私は実はその後も関心を持ってひそかに調べてきておったのであります。そのことについて私は今回その背後にあるものは一体何かという核心とも言えるようなものを感ずるものでありますので、その点についてまず第一にお伺いいたしたいと思うのであります。  このことにつきましては経過を、当時私が質問をいたしましたことをおよそ申しますと、昭和四十二年の九月に学園都市の三十六機関閣議決定をいたしまして、四十七年に正式に予算がついて文部省内に筑波大学創設準備委員会ができます。そして東京教育大学には医学部はないのでありますから、したがって医学部創設するためのその医学部門ができて、その主査に東京医科歯科大学落合医学部長がなられております。この落合さんは大変に情熱を持って新構想医学研究機関というものをどうするかということをときには海外の調査も含めて新しい構想研究されたようであります。  そして一方、東京教育大学医科歯科大学のその両学長中心として医科歯科大学東京大学、千葉大学、群馬大学信州大学等の五大学医学部長会議がつくられました。この会には当然落合さんも参加しております。そしてこの中でもって医学担当学長基幹人事決定することが迫られました。文部省の意向でもあり、管理運営部会でも提案されて基幹人事決定をすることに承認はされておりました。そしてその結果、四十七年の十二月二十二日に落合教授を副学長にすることが内定し、その世話役校であるところの医科歯科大学清水学長から教育大学文書でもって示されております。この決定に至るまでには東京教育大学宮島学長も副学長選考をお願いすると言っております。そしてこの結果になったわけであります。  ところが、それが四十七年十二月二十二日でありますけれども、四十八年の四月二十日に三カ月ぶりに五大学医学部長会が開かれたところ、その最後の段階でもって東京教育大学宮島学長から二通の文書が渡されました。その一つは「筑波大学における医学部門人事について」というものであって、これは「先般、本五学部長会から副学長候補の推薦があったが、諸般の事情で、副学長については棚上げせざるを得なくなった。」という旨の文書であります。そしていま一つ文書は「「医学部長会」の皆様へ」という文書であって、その中は、広く意見を聞くために今後とも協力を願いたいが、この会に人事選考を全面的に委任することはできないというもので、二つの文書が渡されました。宮島学長出席をし、そして基幹人事依頼をし、副学長選考依頼をしておる。そしてそのことの中で多くの経過はありましたでしょうけれども、落合教授が副学長に決まって、文書をもって報告をされた。そのことはもちろん文部省も知っておる。しかるにその数カ月後にこの二通の文書が来た。このことは当時の五学部長は突如のことで唖然として、その日は何も審議をしなかったということであります。このことについて文部省は、ここに木田さんもいらっしゃいますけれども、当時私が聞きましたところ、この文書の配られたことは奇異に感じ、東京教育大学の関係者に真意をただし、お考え直しいただくように申し上げた、東京教育大学長と東京医科歯科大学長とが協力し、他の医学関係者の協力を得て、いい医科大学をつくるよう再三お願いをいたし、両学長とも意見を交換した、その結果、東京教育大学はその文書を渡したことの非礼を認め反省もしている、その文書は近い将来に撤回されることになろうと期待していると、木田さんは当時答えましたけれども、しかし、四十八年十一月に、落合教授は任命されずに東京女子医大の榊原教授が任命されました。先ほど申しましたとおり、東京教育大学には医学部関係がないわけであります。したがってこういう場合にはいつもこういう経緯がとられます。準備校とか世話役校とかあるいは協力校とか、そういうものでつくられているのがいままでの常道であります。その常道でもって決まったところの落合さんが文書報告されたにかかわらず、最終的には二通の文書が出されて、文部省もそれは非礼であり、反省を求めた、そして、いろいろな話の中でもって撤回されることになろうと期待をしておるという段階であったけれども、十一月には榊原さんに発令をされた。大臣はこの経過を知っておいでになりましょうか。あるいはまた、御存じであるならば、そのことについての御見解をまず承っておきたいと思います。
  17. 永井道雄

    永井国務大臣 この問題につきまして大体の経過は事務当局から報告を受けましたので、理解をいたしております。
  18. 木島喜兵衞

    木島委員 どうお考えになります。
  19. 永井道雄

    永井国務大臣 なお詳細なことを勉強中と申しますところが私の偽らざる状況でありまして、ただいまの経過は大体承知しておりますが、詳細に理解したいと考えております。
  20. 木島喜兵衞

    木島委員 大臣、先ほど申しましたように、この人事に私は直接どうこうとかかわりがあるわけじゃありません。ただ、私がこのことを追い求めるのは何かというと、新構想大学と言われる大学をつくるのに、もし何らかの外部の力が入る、何らかの不当の支配があってはならないと思うから、私は執拗にこのことを追っているのであります。だから、いま私が大体申し上げた筋であるということに——長い時間があるのですから、多少細かいあれはありますけれども、もし私の言ったとおりであるとすれば、そのことについてあなたは勉強中だとおっしゃるけれども、その筋道については奇異にお感じになりませんか。
  21. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの木島委員の御指摘の経過というところで問題になりますのは、四十八年四月二十日における教育大学側からの二つの文書ではないかと思います。そこで問題は、大学の外部から人事を左右するということでありますと非常に重大なことになりますが、東京教育大学学長創設準備に当たってきたわけでありまして、それと五学部長会議との意見が異なることになって、その意見が異なることを四月二十日の時点において明らかにしたというふうに理解しております。
  22. 木島喜兵衞

    木島委員 先ほど申したとおり、東京教育大学には医学部門がないわけでありますから、文部省が協力校組織をつくって、東京教育大学学長が五つの医学部長会に出て、人事はお願いすると言っておる。そして宮島さんもその中に入って選考を進められておるのです。そして最終的に文書でもって落合さんという報告がなされたわけでしょう。それが十二月でしょう。そしてそれが二つの文書になって四月二十日に出てきた。このことは、少なくとも経緯から考えれば、ただ平面的に五つの学部長意見東京教育大学学長意見が違ったという形式的なものじゃなしに、その経過を考えればおかしくございませんかと私は言っているのです。だから、奇異に感じ、関係者に真意をただし、お考え直しいただくように申し上げた、東京教育大学学長東京医科歯科大学学長とが協力して、他の医学関係者の協力を得て、いい医科大学をつくるように再三お願いをし、両学長とも意見を交換した、その結果、東京教育大学学長はその文書を渡したことの非礼を認め反省もしている、その文書は近い将来に撤回されることになろうと期待していると文部省木田さんはその当時答えているわけだ。その点は、その経過からいってあなたも同感でございましょうか、こう聞いているのです。
  23. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの御質疑がございましたが、なおその間の経過につきまして大学局長から経過の大要を報告いたさせたいと思います。
  24. 木島喜兵衞

    木島委員 私、この経過につきましてはこの当時の国会でやっておるのです。それをずっとダイジェストしただけなんです。大きく間違っているわけはないのです。したがって、それが事実とすれば、この事実をあなたはどうお考えになりますかと聞いているのです。
  25. 永井道雄

    永井国務大臣 私の意見を申し上げたいわけでありますが、意見を申し上げる前にもう少し大学局長に詳細……(木島委員「こっちも知っているんだ、いいよそんなこと、時間がむだだ」と呼ぶ)私が多分この部屋の中で知らない方なのかもしれませんけれども……。といいますのは、いま報告を受けましたから。ただ、いままで承ったところであえて意見を申せとおっしゃるならば、二つの異なった見解が衝突することに相なったことはきわめて遺憾であると言うほかはないのです。
  26. 木島喜兵衞

    木島委員 大臣、それはおっしゃるとおり、あなたが細かい経過を御存じないのは、あなたの以前のことでございますから。私がいま大筋をお話し申し上げたのはそういうことであります。当時、奥野さんが大臣でございましたけれども、新設ですからこの法律によって、最初の人事学長意見を聞いて大臣が任命することなんです。そこでそのときに文部省がつくった東京教育大学医科歯科大学中心とした五つの協力校の会議、これに東京教育大学も入って決めた人事と——しかし東京教育大学はこの二枚の文書で全面的に任すことはできない、推薦したのをたな上げしてくれということになったわけです。そうすると、自分でつくったところの推薦候補と東京教育大学学長から推薦のあった候補と、法律的に言うならばどちらをするかということを私は聞いておったのです、奥野さんはお答えになりませんでしたけれども。結果的にはその榊原さんになったわけですよ。で、これについては裏があったわけであります。先ほども申したとおり、四十七年の十一月に、文書でもって落合さんに報告をされたのでありますけれども、その翌年の四月二十日に二枚の文書が出た。その四月二十日の直前、約一カ月前の四十八年の三月十八、九日ころだろうと思うのでありますけれども、内定しておった落合さんのところに、当時の東京教育大学の理学部長、現筑波大学学長の福田さんから電話が入りました。このことについては、私は率直に申しますけれども、落合さんと会いました。  落合さんは、いまも申したとおり筑波大学の推進者であります。理学部中心者であります。私は筑波大学に反対をした者であります。反対をした急先鋒の私が推進をする中心落合さんと会うことは、なかなか容易ではありませんでした。しかし、電話その他でいろいろと申し上げました。それは、私はやはりこの事情に危惧を感じたからです。そしてその裏に何かある。何かあることがもしも外部の支配によってこのようなことがなされたとするならば、明治以来、日本大学人事の問題でこそ自治が守られてきた、この自治がいま、新構想大学が発足しようとするときにこのようなことがもしあったならば大変だと思ったから私は会いました。  最初は、なかなか私の言うことを聞いてくださいませんでしたけれども、最後に私に、自分のことはどうでもいい、日本大学の将来のためにじゃすべてを話そうと言って話をしてくださいました。実はそのときに、この委員会に証人に出てくださいと申し上げたら、やりましょうとおっしゃったのですが、文教の理事会でもって否決されました。そこで、実は私たちだけでもっていろいろお聞きしたのであります。  それは、その文書の出る約一カ月ほど前に、当時の理学部長の福田信之氏から落合さんに電話があって、実は自民党に副学長に女子医大の教授の榊原さんをどうかと言われて困っておる。五つの医学部長会の決めた人事をたな上げにしてもらいたい、この話は奥野文部大臣も了承している話だという話でありました。で、落合さんは、自分は文部省の主査ではあるけれども、これは東京医科歯科大学清水学長に話すのが筋でしょう、しかしあなたは一体どういう立場で私に話すのだ、理学部長でしかないじゃないかと言ったら、福田さんは、落合さんの証言によりますと、学長から一任されているいわばキッシンジャーだと言っております。そこで清水さんに福田さんは、落合さんが清水学長に、医科歯科大学学長に会うべきだと言った。そのときにも、ここまで来ては榊原さんを断ることは困難な情勢である、何百億もの金を出すのは政府・自民党だから、意見を入れないと新大学は無理だというお話であります。  先ほども申したとおり、落合さんがこのような証言をされた。ずいぶんあるのでありますが、こっちにこの証言の記録もございますが、落合さんが証言に踏み切ったものは、さっきも言ったとおり推進者と反対者の話であるけれども、それを踏み切ったものは何かというなら、推進してきた新構想大学の基盤がこのことによって崩れてはならない、自民党大学になってはならない、大学の自治はどうなるのだ、今後の新設大学というのは同じ方向をたどるかもしれない、絶対に守らなければならない大学の自治、学問の自由というものを、自分個人の問題とは考えられないという立場から、繰り返しそのような証言をされました。しかし、それは先ほど申したとおり、この委員会に証人としてお呼びしたのでありますけれども、自民党の反対のためにできませんでした。もし、この落合さんの証言を信ずるとするならば、そしてさっき御質問申し上げました経過あるいは結論と、このこととについて大臣、やはり何かお感じになりませんか。
  27. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、決して木島委員が述べられました経緯を疑うわけでも何でもないのですけれども、いまのような経緯において何人もの人が発言をしているように承りました。たとえばいま副学長になっておられる福田氏、当時理学部長なんでしょうが、この段階では榊原氏云々というようなことがございましたが、そういう経緯がどのようになっているかということを詳細に理解をいたしました上で判断を申し上げたいと考えます。  それに関連いたしまして、大学局長から当時の経過というものについて御答弁させていただきたいと思います。
  28. 木島喜兵衞

    木島委員 決して発言を封じるわけじゃありませんが、経過がそう大きく変わらないのにごちゃごちゃと細かいことを聞いても始まらないのです。私は、大ざっぱな経過で、これからのあれですから、どうしてもしゃべりたいならしゃべってください。私はあなたの発言を封じたなんて言われるといやだから、しゃべりたいならしゃべってください。しかし、本筋以外の細かいことをしゃべったってつまらないのだから、時間を空費するだけだから……。
  29. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 いまの御質問の点は、御指摘のように四十八年のこの委員会において詳細に御議論のあった点でございます。ただ私どもは、もとよりいまお話の中にありました部外からの考え方あるいは圧力によって人事というものが変わってきたというふうに考えているわけではなくて、先ほども大臣が申し上げましたように、やはり教育大学の方の考え方と、医科歯科大学が世話校になっている五学部長会議との考え方の間に食い違いができたというふうに考えているわけでございます。
  30. 木島喜兵衞

    木島委員 急ぎます。  私は率直に言ってそういう意見でありましたけれども、最初に申したとおり、私はこの問題を大変重視したのであります。私個人には何にも関係ございません。ただ、当時の総理大臣田中角榮さんの側近、固有名詞は伏せますけれども、ある東京医科歯科大学の側が田中さんの側近に問い合わせたところが、田中総理でも力の及ばない問題であり、どうしようもないので了解してほしいというお答えが当時返ってまいりました。一体それは何だろう、全く私はわかりませんでした。自民党からの圧力でもって、落合さんに決まったけれども榊原さんでなければならぬと福田さんは言った。そのことを田中さんの側近にただしたところ、田中さんの側近は、田中総理でも力の及ばない問題である、どうしようもない、了解してほしいと言っておる。田中さんでも及ばない力でもって副学長が決まる、変更される。それは福田さんは直接的には自民党と言ったかもしれないけれども、しかし、自民党の総理総裁でも力が及ばないとするなら、その背後にもっと大きな力が働いたということを私はその言葉から感じたのです。これは一体何か、私は深い関心を持ってきたのであります。そして、今回のロッキード問題に多少かかわって、現在、何か私のその暗雲が晴れたような気がするに至ったのであります。  その一つは児玉譽士夫と榊原さんとの関係であります。その一つは児玉譽士夫と東京女子医大との関係であります。それについて大臣何か御存じのことがございますか。
  31. 永井道雄

    永井国務大臣 児玉譽士夫、榊原副学長、両方とも私の知らない人ですけれども、その二人の間にある種の関係があったということは新聞に出ておりましたから、それは存じております。(木島委員「あなた児玉を知ってる、会ったことありますか」と呼ぶ)いや、会ったことありません。
  32. 木島喜兵衞

    木島委員 これはいま新聞で御存じのとおり、榊原さんと児玉の関係は、たとえば昭和四十八年の六月に日本経済新聞に連載された榊原さんの「私の履歴書」の中に、あの東京女子医大日本心蔵血圧研究所の運営団体の設置に絡んでこう書いていらっしゃいます。「児玉氏を介して神田博厚相を紹介していただいたが、厚相は大乗り気で、自ら石坂泰三氏のところへ連れて行き、引き合わせて下さった。石坂氏も「それほどの意気込みなら」と各方面に紹介状を書いて下さった。」「かくして古岡博人先生(東京女子医大学長)を理事長とした日本心臓血圧研究振興会が成立した。」こういう関係にもあります。  そしてまた、児玉譽士夫は「生ぐさ太公望」という本の中でもこう言っております。「昭和三十八年の夏、自分は再び支笏湖を訪れた。この時は今は亡き河野一郎先生も一緒で、東京女子医大の榊原任先生ご夫妻もはるばる一緒にやってこられた。」「それから数日間、榊原先生のご夫人は自分の家内と一緒にアイヌ部落や牧場、樽前山などを見物し、北海道情緒を楽しまれ、榊原先生は静かにパレットと絵筆に親しまれたり、あるいは、自分と一緒に姫鱒釣りを熱心に研究されていた。」こういう「支笏湖に遊ぶ」という一章があります。夫妻でもってわざわざ北海道の支笏湖まで数日間行っていらっしゃるという関係であります。  そして昭和四十八年の六月、榊原さんと吉岡女子医大学長と二人は、児玉と非常に関係の深い東亜相互企業の社長の町井久之さんの経営されていらっしゃる社交クラブTSK・CCCの会員にもなっていらっしゃいます。このことは、児玉と東京女子医大との関係にかかわります。  女子医大は、四十八年二月にその町井さんのやっていらっしゃる東亜相互企業から福島県の西白河郡西郷村大字小田倉字馬場坂の土地を、私の計算に誤りがなければ最初に買った五倍以上の値段で東京女子医大は買っております。この土地は東北本線白河駅から三十分くらいで、那須・白河高原であります。東北新幹線、東北高速道路等の計画進行中でもあります。そしてこの土地全体は、まだ開拓農家の廃屋があり、山林だけのようなところでありますけれども、その土地を広大にこの東亜相互企業が買っておりまして、幅二十メートルの道路もできております。その一部を東京女子医大は買っておるのであります。  この土地購入は、うわさによりますと、不動産銀行が、先ほど申しましたTSK・CCCという社交クラブとこの土地購入のために五十四億の融資をしたとうわさされておるところでありますけれども、これはこの東亜相互企業の町井さんと児玉の関係というものを少し説明しなければならぬかもしれません。  町井さんは、東声会という、あるときに広域暴力団に指定されたところの会長でもありますが、六〇年安保のときに、児玉がアイゼンハワー大統領歓迎の体制を確立するために、当時の自民党の川島幹事長から要請されて関東会を組織しました。その関東会には、北星会、東声会、錦政会、義人党、松葉会、住吉連合等が結集されます。そういう関係にあります。だからそのTSKというのは東声会のことでもあり、あるいは東亜相互企業の頭文字でもあるなんてうわさがされるゆえんでもあるのですけれども、児玉はその東亜相互企業の顧問でもあります。そしてこの広大な土地をいろいろなところに売りつけていらっしゃるようであります。神戸製鋼やあるいは三越等にもいろいろなうわさがあります。その一部の場所を東京女子医大が買っておるのであります。  これはいま私が質問していることと直接かかわりがありませんから、なんでありますけれども、ところがこの購入する農家のある一人が証言しておりますけれども、その購入の最初に児玉譽土夫がみずからその農家に交渉に行き、その後に東亜相互企業にその交渉は引き継がれておるという経過をたどって、そして幾つかの土地の転がしがあって、私の計算では最初に買った金の五倍以上、もっともっと、十倍近くと計算するのでありますけれども、それで女子医大が買っておるのです。  そういうことを私は知るに及んで、この背後の田中さんにも及ばないところの力は一体何かということにおよそ確信を得た感じがするのであります。  この土地のことに関してではないかと言われておりますけれども、つい四、五日前に萩原吉太郎さんが札幌でもって久しぶりに新聞記者会見をされました。あのときの北海道新聞によると、児玉にある土地のあっせんを断ったために一服盛られそうになったと言っていらっしゃる。北海道新聞にはそう書いてある。しかしそのときの記者に聞いてみると、青酸カリという言葉も出たそうであります。そのことはこの土地であろうと言われておるわけであります。農地転用の許可ができないと思ったから断った。その農地転用のために、ここに農地転用のあれもありますけれども、目的は研究施設の一部をつくるということになっておりますけれども、それを利用したのではないかとまた言われてもおります。こういう関係の中でもって、榊原と児玉の間柄、児玉と女子医大との関係、その時期を同じくしておることを見ても、田中総理でも力の及ばないものは一体何であったかということは、私は疑念を持っておっただけに何かわかってきたような感じがするのです。当時、女子医大の理事である、これは申し上げていいと思うのですが、岩本元教授は、この土地の買収や研究建設の話は理事会で全く扱われず児玉、町井の絡んだ政治的取引のために一部の理事の独断で買ったらしいと言っていらっしゃることもそのことを裏づける感じがいたします。あの大学の経理状況から見てそう余裕のある大学ではないはずであります。しかもこれは、農地転用によりますと、実は農地転用をいたしましてから一年以内でもって竣工するとなっておるのでありますが、三年間放置されております。福島県は再三にわたって勧告をしております。ことしの四月に初めて起工式をいたしましたけれども、その四億円の金は同大学にはないと言っております。組合との団体交渉の中では、四億円は父母の寄付を仰ぎたいと言っております。それならなぜこの土地を買ったのだろう、私は大変に疑問に思うのです。そういう一連のことから、この副学長問題の背後にあるものは児玉ではないのか。新構想大学という筑波大学が右翼軍国主義者にその出発から支配されたところの大学なんだろうか。私がこのことを言うのは、きようも可決された法律によって大学は新設されます。それらにも何らかの新しい構想が含まれております。確かに大学はいまそういう一つの転換期かもしれません。その出発に当たって、この副学長を通してそのような支配が及んでおるとするならば、これは放置できないと私は思うのです。大臣の御見解をお聞きしましよう。
  33. 永井道雄

    永井国務大臣 大学建設され、そして発展をいたしていきます上で、大学人事に対しまして外部から圧力が加わって左右されるということは全くあってはならないことであると考えます。これはもうきわめて明確な原則でありますから、すべて人々の知るところでありますが、改めてそのことを確認を申し上げたい、そういう意味において、その点を強調いたしたいと思います。したがいまして、いまいろいろ御説明がありましたような事柄というものと大学人事というものは関係なく行われたはずであると私は考えております。
  34. 木島喜兵衞

    木島委員 はずであるというその根拠は何ですか。田中さんの側近が田中総理の力も及ばないところのものだということが、実はその当時、四十七年当時入ってきたのです。私はそのことを実は非常に心配をしたのです。福田さんは、さっき言いましたように、自民党の力でもって左右されたと言ったけれども、実はその自民党の総理、総裁すらも力の及ばないところの背景とは一体何だ。教育は不当の支配に服することなくと言われたって、政党でも不当の支配です。だのにその政党の総理、総裁でも力の及ばないところのそのことによって左右されたとするならば——そのことがあってはならないということは当然大臣としてわかります。しかし私はそのことを率直に思い詰めて今日まできておるのです。そしてさっき言ったように、この問題がわかるに至って、その背後は児玉だという確信に似たものを持つのでありますが、しかし、大臣、それはいま私聞いたって、いやおれもそうだと思うとかなんとかおっしゃられませんよね。しかしあってはならないということ、私はここに疑問を投げたから、全く無関係である、それはもう過ぎ去ったことだからそれでいいのだということで済まされるのだろうか。これは調べてみる必要がありませんか。大臣みずからの手でもって、あるいは調査委員会をつくって、調べるお気持ちはありませんか。新構想大学の最初に当たって私はこのことを、その法案ができるときから疑義を持っていたのです。そして質問を繰り返してきているのです。
  35. 永井道雄

    永井国務大臣 大学人事は、文部大臣はもとよりでございますが、自民党もそうですし、内閣総理大臣も左右できないはずでありますから、したがいまして、もし田中総理でもどうしようもないというのがそういう意味であるならば、これは当然のことです。しかしながらそういう意味でなく、ここで言われているのは文意から明瞭でありますから、私はそういうことを申そうとしているのではないのです。しかしいまの大学人事についていろいろ御指摘の問題があるという場合にこれをどうするかということは、これもまた大学人事でありますから、まず当該大学において人事の問題というものが大学の精神に基づいて公正に行われているかということを当該大学自身がまず明らかにしていくことが重要であると私は思います。
  36. 木島喜兵衞

    木島委員 さっき経過で話したけれども、当該大学であるところの福田さんは、自民党の圧力でもってたな上げせざるを得ないと落合さんに電話をし、東京医科歯科大学清水学長にそう言っているわけでしょう。そして四月二十日にその文書が出ているわけでしょう。だからそれは当該大学の意思では決められないわけでしょう。意思が曲げられたということでしょう。たな上げせざるを得なくなった、その背後は何かということを私はさっきから言っているのです。とすれば、私はいまあなたに、そうだ、その背後にあるのは児玉だと言えと言っているのではありません。それはあなた、私のいま言っていることを一方的にそうだとおっしゃれるわけがない。だが、少なくとも私の言っていることが全くでたらめであるとお考えならば別でありますが、もしも多少でもその心配があるとお聞きいただけるとするならば、さっきから繰り返しますけれども、新構想大学の出発の人事にそのような勢力の干渉があってはならないことは先ほど大臣がおっしゃったとおり、であるならば、これは調べてみる必要がありませんかと申し上げているのです。
  37. 永井道雄

    永井国務大臣 いまの問題につきまして私はいまこういう新聞記事を読んでいるわけでありますが、これはやはり大学人事関連いたします。したがいまして、大学人事関連した新聞記事、報道、そうしたものがあった場合に、直ちに文部省がそれを調査するということは妥当ではないというふうに思います。そうではなくて、その問題について、これは当該大学の重要な問題であります。きょう木島委員国会において御質疑になるということで、そこに大体いまお話しになっているようなことが多いものですから、それを私がさっきから読んでいるわけです。  それはそれといたしまして、要するにこうした場合にいまの御質疑の点、大学人事に何かがありました場合に直ちに文部省は直接調査をするというのは、行政当局と大学との関係から言って妥当ではない。これは大学においてこの問題の自主的な解明というものにまず取り組んでもらうように文部省依頼するというのが、当然の筋道だと思います。
  38. 木島喜兵衞

    木島委員 おっしゃる意味はわかります。しかし最初に申したとおり、最初の新しい大学でありますから、最初の人事は、これは副学長のことも含めて文部大臣の任命であります。文部大臣が任命したのです。その経過を知りながら私が質問し、その経過を通しながら大臣は任命をしたのです。だから私は、文部省調査をせねばいかぬと言うのですがいかがですかと聞いているんです。
  39. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 先ほども申し上げましたように、副学長人事について通常の場合と異なった遺憾の状態でございましたけれども、五学部長会議の意向と教育大学側の意向が食い違った。教育大学側は榊原氏を副学長として迎えたいという強い意向を持っていたということがあったわけでございます。それに基づいて文部大臣の方へ副学長の発令の上申が最終的には行われて、私どもはそれに従って発令をしたわけでございます。繰り返しになりますけれども、その間に両大学の間の意見の食い違いはあったにしても、部外からの事柄によってそれが左右されたものではないというふうに私どもは確信をいたしております。
  40. 木島喜兵衞

    木島委員 それは信じたいでしょう。私も信じたい。けれども、もう繰り返しませんよ。いろんな経過から見てきわめて不自然であり、奇異であり——当時大学局長木田さんは奇異だと言った。そして考え直せ、反省をしている、やがて撤回するだろうと言っているんだ。そのくらいの経過をたどってきておって、その後に私は田中側近の話も聞き、そして今回ロッキードからずっと児玉さんと榊原さんあるいは女子医大との関係を考えれば、私が疑問に思うのは全く的外れですか、大臣。
  41. 永井道雄

    永井国務大臣 この種の事柄について榊原氏と児玉氏が親しい間柄である、そしてまた土地の売買等が行われていたということは、一つの事柄として私は理解します。それと榊原氏の人事との間に因果関係があるということは、これはやはり相当詳細な証明を必要とする問題であるというふうに考えます。したがいまして、その間に証明を必要とするような因果関係がある疑いがあるのではないかという御質疑は理解いたします。
  42. 木島喜兵衞

    木島委員 ですから私も確かに、ずばり児玉譽士夫は直接働いたという証拠はとれません。これは非常に困難です。それは私には困難です。けれども状況全体から見て私は、田中総理の力も及ばないというものは一体何かと言えば、このロッキード問題が起こってきて、なるほどと思って調べてみればこういう関係にある。とすれば、私の言うことがおよそ全く的外れだろうか、私が確信するに至ったと言ったことは的外れなんだろうか、大臣どうですか。
  43. 永井道雄

    永井国務大臣 私も先ほど申し上げましたように、ある事柄が起こり他のある事柄が起こったときに、時間的な同時性があるということと相互に因果関係があるということは、一応別個の事柄であります。そしてまた、相互に同じような時間に起こったから時間的連関関係があるということと事態の因果関係の証明も、これはまた別であります。したがいまして、お話の点はよくわかりますが、そのお話の点を証明するためには、もう一つ因果関係の問題というものが入らないと私はわからない。しかしながら、この因果関係について疑義をお持ちになっているということは十分に理解いたします。
  44. 木島喜兵衞

    木島委員 私もさっき言いましたように、直接的な因果関係というものは私は証明できない。だがしかし、いま大臣も疑義を持つとおっしゃった。だからこそ新しい大学の出発の人事に当たって、その疑義があるならばそれを調べてみなければならぬじゃないですか。それをお調べになりませんか。
  45. 佐野文一郎

    ○佐野(文)政府委員 先ほど大臣からお答えを申し上げましたように、この種の問題について文部省が直接に調査をするということは適当ではないというふうに思っております(木島委員「なぜ、どうして」と呼ぶ)それは大学人事の問題について、それが創設時の当初の人事であったにしても、それはやはり教育大学あるいは筑波大学の意思として決まってきたことでございます。それを尊重して発令をしたのが文部省の立場でございます。それを越えて文部省がさらに調査に進むというのは、不適切であろうと思っております。
  46. 木島喜兵衞

    木島委員 この副学長人事文部省は全くタッチしなかったのですか、落合さんが決まるまでの間に。文部省はタッチしているでしょう、文部省はなにしているでしょう。そうして四月二十日の二通の文書が出たときは、撤回まで至るような工作もしておるでしょう。そのことの撤回を求めるということは何かというと、その経過の中に奇異があるからです。木田さんは奇異という言葉を使ったんです。その奇異は一体何かということを調査されなかったら、しようがないじゃないですか。
  47. 永井道雄

    永井国務大臣 これは新設大学の発足時におきましては、文部省が当然準備室長等と計画に当たりますから、そうした意味合いにおきまして、初期の人事について文部省が準備室等との関係において関連を持つということは当然であります。そうしてまたそれに関連した御質疑であるということも理解いたします。  しかし、問題はどこにどういうふうに考えるべきかと言いますと、この筑波大学というものも発足をして相当の時日を経たわけでありますから、そこでその筑波大学の発足の事柄につきましていま文部省が直ちにそうした調査ということを行うことは、やはり手続的に私は妥当性を欠くのではないか。しかし問題はあるわけでありますから、大学というものの自主的なこうした問題に対する対応というものを、これだけ年月が経てでき上がった大学でありますから、尊重いたすべきだと思いますので、手続的には、まず大学においてこれを調べていただくようにわれわれの方から指導するということが当然行うべき道筋ではないかと考えます。
  48. 木島喜兵衞

    木島委員 あなたの方が大学にその調査をするようにと言うことは、それはそれなりにわかります。ただ手続上の問題ということじゃなしに、新構想大学というものの発足に当たっての最初の出発ですから私はこのことを大変重視している。手続的というならば、最初の人事だから手続上は文部大臣から発令するわけですからね。  それから同時に、いま大臣からこの大学調査をするように要請するとおっしゃったことを前提にしますけれども、しかし、それでは大学だけに任せ切れるかというとそうではないと思うのです。なぜなら、落合さんの証言がこの場合非常に重要になってきます。大学にまず第一に任すとおっしゃいますけれども、落合さんの証言を大学がとれるのかどうかということ、その辺もあります。大学に任すのも結構であります。しかし、それは文部大臣は全く無関係ではない。文部省文部省なりに、その調査報告があるならば、その報告について、たとえば私が先ほどからいろいろ質問しておるところの疑義、そういうものが解明できるように指示をしながら、大学の自治を守って大学自体の調査ということで大臣がおっしゃることは、私は大臣のそのあたりの物の考え方はわかりますが、しかし、それだけでもって済むとは思いませんので、十分な指導をし、大臣が納得されるところの調査大学要請をすると理解してよろしいわけですか。
  49. 永井道雄

    永井国務大臣 私が申し上げましたのは、大学においてまず調査をしていただくということが大事でございます。そして、その調査の結果を見て、さらにわれわれとして考えるべきことがある場合には考えるべきだ、さように思います。
  50. 木島喜兵衞

    木島委員 さっき大臣おっしゃるように、二つの問題の直接の因果関係を私は確実に握っておるわけではありませんから、そしてまたなかなか困難な問題でありますから、その辺の調査を見ながら——繰り返して言いますけれども、この問題は、人事を通しての学問の自由、研究の自由のためにきわめて重視する問題でありますだけに、今後なおその調査報告を聞きながら私の疑念を晴らしていきたいと思います。  次に、主任問題について伺います。主任問題につきましては余り細かいことも言うことはないと思うのでありますけれども、ただ一つ教育法制上の立場から、発令者は一体どうなのかということについてです。これは皆さんの方も私に対抗上相当研究はなさっていらっしゃるはずなのであります、ですから、またいろいろとおっしゃるのでしょうな。発令の方式はA、B、C、すなわち校長の意見を聞いて教育委員会が発令をする、校長が教育委員会承認を得て発令をする、校長が発令をし教育委員会報告する。この場合発令者は二通りありますね、教育委員会と校長。どうして二通りなんですか。
  51. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 おっしゃるように、教育委員会が発令するというのと校長が発令するのと二通り準則を示しておるわけでございますが、そもそもそれなら学校に主任を置くとか、主任はだれが任命するかというような基本的な法制は文部省としてはどうとらえておるかということになるわけでございますが、現在の学校教育法の第五条では、学校設置者は学校管理し、それに必要な財政的負担をするというような趣旨の規定がございます。  そこで、その学校管理するという意味でございますが、これは要するに学校がその本来の教育目的に従って適切に運営維持されていくということを意味するわけでございますから、まあそういう仕事は第一義的には教育委員会の仕事である。それを具体的に裏づけておりますのが現在の地方教育行政法でありまして、その二十三条の規定によりますれば、教育委員会の仕事として、教育課程の編成あるいは学校組織編制といったような仕事は教育委員会管理するのだ、こうなっておるわけでございます。そこで学校に主任を置き、その主任をだれが発令するかということも法制上はまず教育委員会の仕事ととらえるという考え方に立っておるわけでございます。  ただ、もう一つ学校教育法の体系では、校長の職務権限という規定がございます。「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。」そこで、「校務をつかさどり」という中にいまの主任の発令が入るのじゃないかという議論になりますと、校長と教育委員会の職務権限が抵触するのじゃないかというような議論も出るわけでございます。  私どもの考え方といたしましては、いま申しましたようにおよそ学校管理運営事項については教育委員会が権限を持つ、しかし実際に学校運営について一番よく知っておられるのはやはり校長先生でございますから、事柄によっては教育委員会が校長先生に委任をして、校長先生の判断によって学校運営をしていただく方が妥当適切な場合があるわけでございます。そこで、校長の「校務をつかさどり」というのも無限定に、およそ校務といえば何でも校長がやるのだというのではなくして、教育委員会がここまでは学校の校長さんにお任せしよう、こういう判断のもとに校長に大幅に仕事をお任せするという実態があるわけでございまして、そのような校長にどの範囲までお任せするかというようなことが地方教育法の三十三条に規定がありますように、教育委員会学校管理運営基本事項につき必要な委員会規則を決めるということになっておるわけでございますので、その委員会規則でいま申しましたように主任の設置それからその発令について、だれが発令するかということを具体的に決めるということをしておるわけでございまして、その決め方によって、先ほどおっしゃるように教育委員会がみずから決めるという考え方に立つところと、学校の校長にお任せするというところと二様準則を示しまして、そのいずれをとるかは教育委員会の判断に任せた、こういうことでございます。
  52. 木島喜兵衞

    木島委員 大変よく御準備をなさったと思います。ただ、この省令では「校務分掌」としてと、あえてうたわれましたね。これは大臣の中間管理職でないということを示そうとしてお書きになった。「校務分掌」という「校務」とは法律上どういうところにあるのですか。校務を分掌するのですね。「校務」というのは教育法上どこにあるのですか。
  53. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 先ほども申し上げましたように、学校教育法の二十八条の校長の職務権限のところに「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。」とございます。この項目だろうと思います。
  54. 木島喜兵衞

    木島委員 それを分掌するわけですね。校務を分掌する、したがってそれはいままでも主任がたくさんあった。今回もそれは省令や規則でもって項目を並べる、小学校で教務主任とか何とか並べる、それを私はどうのこうと言っているのじゃないのです。しかし、それ以外もいいわけでしょう。校長が独自にやるものもありますね。そういうようなすべては学校の自主的な運営でしょう。だから、校長は校務をつかさどるのですよ。だから、私が言っているのは、この「校務分掌」としての今回の主任、それはあそこに書いた二つとか三つとか四つとか以外に校長が決めていいわけですね、具体的には五十幾つもあるわけですよ。それらはすべて校務を分掌する、校長の権限である、校長が校務をつかさどる、つかさどる分掌であるのだから、第一義的には校長にその権限があるのじゃないですか、あなたは第一義的に教育委員会だと言ったけれども。「校務分掌」としてと、あれは二十二条の二ですかにうたいましたね、これは大臣の意思を受けてだと思います。その関係ではどうですか。
  55. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 先ほども申しましたように、校長の校務をつかさどるというそのつかさどるは、およそ校長の判断で校務と関連されるものはすべてやれるのだという考え方ではなくて、繰り返しになりますけれども、法制上はまず学校管理者がその管理運営をするわけでございますから、権限的には教育委員会にある。しかし、実際の運営について最もよく知っておられるのは校長でありますから、教育委員会からその権限の一部を校長に委任をするという形で、校長はその委任をされた範囲の校務についてこれをつかさどる、こういう形になろうかと思います。
  56. 木島喜兵衞

    木島委員 そうすると、現にたくさんありますね。文書管理だの保存だの、法的にも校務はいろいろありますよ。法的にだけでもずいぶんある。そういう人間はみんな何とか主任だ何とか係だとか、そういうものはみんな教育委員会に第一義的に管理運営はあるのだから、それを校長に任す範囲の二十八条の校務であるから、あなたの論をもってするならば、すべての主任は、校務分掌はすべて教育委員会にあって、そしてそれは規則によって校長に委任するものは委任すると決めなければいかぬのですか、それはどうなんですか。
  57. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 もちろん先ほども申しましたように、地教行法の三十三条は、学校運営の「基本事項」について必要な委員会規則を決めるとございますので、いまの主任の設置のような事項は「基本事項」と考えられますから、これは委員会規則に書いてございますが、個々の校務についてはごく日常的なことでありかつ当然校長がやった方が適切だというようなことは、いわば規則にはございませんけれども、当然校長にやるという委任が前提になっておるというふうに考えるわけでございます。
  58. 木島喜兵衞

    木島委員 すると、あなたのおっしゃるのは二十八条の三項の「校長は、校務をつかさどり、」というのは、しょせんは教育委員会の委任によるということですか。
  59. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 その範囲は教育委員会の委任によるというふうに考えるわけでございます。
  60. 木島喜兵衞

    木島委員 ではどんなことを委任していますか。校務のどんなものを委任しています。校務というものは非常に広範なものですよ。校務というのは全部委員会規則でもって委任しているんですか。
  61. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 いまも申しましたように、委員会規則で委任しておりますのは、具体的に委員会規則に書いてありますいまの主任の発令、任命というようないわば運営基本事項でありまして、その他は特に規則等に委任のことを明示してございませんけれども、これは当然に学校で校長の校務としてやりなさいという前提で考えておる。ですから、むしろ委員会運営の仕方としては、特にその権限を保留して委員会としてやった方が適当であるというようなものを委員会規則に書いてあるということが現実だろうと思います。
  62. 木島喜兵衞

    木島委員 あなたのおっしゃることだと——ぼくは教育法制上のことを聞いているんですよ。学校教育法というのは基本法に次ぐところの法律ですね。しかもその二十八条、これは非常に重要な意味を持っておりますね。その二十八条の「校長は、校務をつかさどり、」というのは、あなたのおっしゃるのは教育委員会から委任されたものだけという解釈なんですか。
  63. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 教育委員会から委任を受けた範囲あるいは特に教育委員会が自分の権限として残しておく仕事以外の校務というふうに考えられるわけでございます。
  64. 木島喜兵衞

    木島委員 では、第一義的に校務というのはすべて教育委員会。そうすると、学校法の二十八条の三項はどうなるのだ。
  65. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 学校教育法の方は「校務」となっておりますし、この第五条の規定で「設置する学校管理し、」云々となってございますからちょっと表現が違うわけでございますが、さらに地教行法の二十三条の規定教育委員会の職務権限がございますが、この中にありますように、先ほどちょっと申し上げましたが、「学校組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること。」とか、あるいは学校の「設置管理及び廃止に関すること。」とか、そういうようなことはそもそも教育委員会の権限だというふうにはっきり書いてあるわけでございますから、これらを総称しまして見た場合に、学校管理に関することはそもそも第一義的に教育委員会の権限であるということが言えるわけでございます。
  66. 木島喜兵衞

    木島委員 たとえば教頭の場合で法制化以前規則にあったとき、これは私はあえてこの場合の私の主張には通じないと思うのです。なぜかといいますと、これは校務分掌という——実質的には校務分掌でしょう、教諭をもって充てるのですから校務分掌と思いますけれども、しかし監督的地位、管理運営上の問題でありますから、だから教頭が法制化以前に規則であったときに、これは教育委員会であっても管理運営事項であるから教育委員会で見てもらったのです。今度は管理職でないのです。校務分掌なんです。その校務分掌のうちどういうものを置かなければならぬということは私はいいと言うのです、その他もいいのですから。しかし、校務を分掌してだれにさせるかということは、これは私は校長の権限だと言うのです。なぜなら、校務をつかさどる校長の権限、二十八条三項によって、それを分掌させる、たくさんあるわけでしょう。五十もあるのでしょう。だれがどうしてだれにどうしてやっておられるのか、それは第一義的に教育委員会にあるのですか。二十八条から校長に、当然じゃありませんか。逆に、校長に第一義的にあるのだが、しかし一部、たとえば教務主任とか学年主任というものはそれはということならまだもう少し私はわかる気がする。違うのですか、あなた。
  67. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 ただいま教頭の例をお引きになりましたけれども、私どもの従来の考え方は今回の主任の制度化以前にも学校教育法の施行規則に保健主事とか進路指導主事の設置規定いたしておりまして、これらの主事も性格としては今回の主任と同じものでございますが、それらの任命につきましても、従来指導といたしましては教育委員会が任命すべき権限を持つものである、こういうふうに言っておるわけでございまして、その考え方は、従来ともにその職務内容管理的なものであるかあるいは指導的なものかということによって変わるべきことではないのであって、およそ学校運営基本にかかわることは、いま申しましたように、委員会規則等で教育委員会の仕事として残しておくということをやっておるわけでございます。
  68. 木島喜兵衞

    木島委員 大臣、これは指導職とおっしゃいましたね。指導職を教育委員会が任命をする。このことは、たとえば指導主事が指揮命令することはできないと同じように、指導、助言はあっても指揮命令はできません。指揮監督はできません。同じように、指導職をたとえば校長の意見を聞いて教育委員会が任命するにしても、意見を聞くということは必ず履行じゃありませんね。変更があり得るわけでしょう。それは人事の異動なんかの場合に、校長は内申をするけれども、そのとおりになりませんね。  第二のいわゆるB方式は、校長は教委の承認を得てでありますから、校長が発令するけれども、それは承認を得てですから、承認は得られないことがありますね。教育委員会が指導職を任命する、このことは、さっき言った指導主事の指揮監督はできないという理念と同じように、あってはならないことだと私は思っています。ない方が好ましいと思っています。現に二十八条に、校長は校務をつかさどるという権限がある。それは校長の義務でもある。それを具体的にだれが一番いいかというのは校長でなければわかりません。それを教育委員会が任命する。あなたの理念と、大臣、その解釈は違うのじゃありませんか。  第三の、校長が任命し、報告するなら、これはいいです。私は、いまその発令方式だけを言っているのです。どうでしょう、大臣。大臣の方の考え方ですよ。
  69. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、主任というのは指導、助言、連絡調整に当たるというふうに申しましたが、これは当然学校における校長並びに教頭等の御意見を尊重して決められていくべきものであると思いますが、そこにこの三つの方式を置きましたことは、いずれをとります場合にも、事実上は学校の意向というものは当然尊重されるわけでございますから、そうした意味合いにおきましては、教育委員会が任命するということも指導を除外するということにはならないように考えます。
  70. 木島喜兵衞

    木島委員 ちょっとそれは、大臣にそれ以上質問するのは、余り細かい法制上のことは、失礼ですけれども……。尊重されるだろうと私も率直には思います。  ただ、法制上から言いますと、尊重されることが全く前提であるという大臣の意思であれば、意見を聞いて教育委員会が任命することも、違うことがあるわけですから、あるいは校長は任命するけれども、教育委の承認を待てだから、承認されない場合があるわけでしょう。一般人事にはそういうことはたくさんありますね。だから、そういう意味で第三の、校長が任命をし、教委には報告するだけでいいじゃないか。発令をしたところのものが二つあって、この主任に対する責任というのは一体だれが負うのですか。たとえば隣の町村では教育委、隣の町村は校長だということになるわけでしょう、教育委員会が決めれば。つくられてこれほど問題になった主任制の主任に対する責任者は一体だれなんですか。
  71. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 主任と申しますか、およそ学校の先生に対する服務上の監督者といえば、これは教育委員会が第一義的に持っているわけでございます。さらに、現実にはその服務監督権を校長に委任をしているという関係になりますから、その責任論というのは、多少抽象的な議論になりますけれども、そういう意味での責任ということになれば、それは校長あるいは教育委員会ということになろうかと思っております。
  72. 木島喜兵衞

    木島委員 指導通達に、選び方も従前の方式を変えるものでないという。であれば、選び方が従前と同じでもいいなら、発令はいままでみんな校長ですね。校長が決めておったわけでしょう。教育委員会でないわけでしょう。もし、いまの諸沢さんの、これは今回でなくて、それが法律全体、法制上の物の考え方になれば、いままでの主任も全部そうでなければならなかったはずです。そうでしょう。それで今回、二つとか三つとかでないものもみんなそうしなければならぬだろうか。どうもわからぬ。
  73. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 その点は、まず現状を申し上げますと、四十県一堂において管理規則の制定が済んでおるわけでございますが、先ほど先生がおっしゃった教委発令というものがそのうち十四県ございます。それから教委の承認を得て校長発令というのは九県、校長発令で教委報告というのが十八県ということになるわけでございますが、いままで全部校長じゃなかったかというお話なのですけれども、この点は、先ほども申し上げましたように、従来進路指導主事とか保健主事というように、省令にあります主任は教育委員会が任命をしておるという県が相当あるわけでございます。ただ、その場合でも、従来省令になかった、たとえば学年主任というようなものの扱いは校長さんにお任せしておったというところもあるわけでございまして、そういうところを、同じ省令上の主任となった場合に、片方は教育委員会、片方は校長というのではぐあい悪いだろうというので、県によりましては、それを全部教育委員会承認にかからしめあるいは教育委員会が発令するというふうにしたところもあるわけでございまして、全くこの機会に従来とやり方を変えたということではないようでございますので、御了解いただきたいと思います。
  74. 木島喜兵衞

    木島委員 だから、都道府県によって、十四とか九とか十八とか言ったって、市町村は別でしょう。いまあなたは県のことだけ話しておる。県はたとえば三方式であっても、各市町村でどうするかわからないでしょう。その統計ないでしょう。ありますか、各市町村……。
  75. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 市町村の教育委員会の方になりますと、県は規則をつくったけれども、まだ市町村はそこまでいってないという県もございますので、いささか数は違うのでございますが、現在までにわかっているところを申し上げますと、市町村において教育委員会が発令することとしたところが十三、それから教育委員会承認を得て校長発令としたところ九、校長発令で教育委員会報告としたところが十五、こういうふうになっておるわけでございます。
  76. 木島喜兵衞

    木島委員 それは準則を出したわけでしょう、市町村が決めるのは勝手だから。それから、たとえば進路指導主事とかなんとかおっしゃるけれども、これはその当時「校務分掌」と書いてないのですよ。私がこだわっているのは、「校務分掌」としてというその言葉とその思想を問題にしているのです。だから私がさっき言ったように、教頭なら教頭は法制化以前の規則のときには教育委員会。なぜなら管理運営をつかさどる者という意味でね。管理運営的なものはさっきあなたが言ったように教育委員会が第一義的に握っていますから。しかし校務分掌というものである限りは、二十八条第三項の校長の「校務」のその分掌なんですよ。それは五十もあるのですよ。いままでは全部校長がしていたのです。あなたの議論からすれば、いままでのこともすべて教育委員会が規則で決めなければならなかったはずである。そこを言うのです。
  77. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 確かに従来の進路指導主事とか保健主事につきましては、通達その他において校務分掌という表現は使っていなかったかと思いますけれども、しかしこれは現実をごらんいただきますならば、進路指導主事が学校における生徒の進路指導に関する仕事をするんだという意味におきまして、まさに校務分掌であることは間違いないわけでございますから、そういう意味におきまして従来の省令上の主任と今度の主任がともに校務分掌であるということは、私ども、そこに差異を考えていないわけでございます。
  78. 木島喜兵衞

    木島委員 だから私は、あえて「今回校務分掌」として入れた言葉とその理念のことを言っているのです。進路指導主事も保健主事も皆それは広い意味では校務分掌でしょう。ならば、あえてそんなもの入れる必要はないでしょう、今回「校務分掌」としてなんてなぜ入れたか、その理念と二十八条第三項の校長の「校務」、それが第一義的じゃないですか。そこが違っているのですよ。私が言っているのは、規則の二十二条の二に「校務分掌」とあえてうたったものは一体何か、そこなんです。
  79. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 特にこの主任というものは、校務を分掌することによってその分掌の職務を明らかにし、学校運営をより活発にしよう、指導活動を活発にしようという趣旨で校務分掌でありますということを明示したわけでございますが、そのことと、およそ校務というものが本来的には地教行法にいいますところの、組織編制に関する事項教育委員会の仕事だと言っておりますその組織編制というものは、また言いかえるならば校務分掌ということにも考えられるわけでございますので、本来的には教育委員会の仕事であるということとは別のことであろうかと思うわけでありまして、その点は校務分掌であるから本来的に校長の権限だということにはならないのではなかろうかと思います。
  80. 木島喜兵衞

    木島委員 だから、そうであればいままでだって校務分掌で、それが組織編制の教育委員会の仕事だったら、いままでの校務分掌も全部教育委員会がやらなければいかぬでしょう。いままでやってないでしょう。その法制上の関係はどうなのかと言っておるのですよ。
  81. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 それは先ほど申し上げましたように、今回、国の基準として各種の主任を置くことを省令に明記し、それに基づいてこれこれの事項教育委員会の権限として保留しますよということを、いわば教育委員会規則に明示することとしたためにそうなったのでございまして、従来はそれらの点が委員会規則に委員会の権限として留保することは明示してございませんので、それは教育委員会から学校に委任された、こういうかっこうになっておったわけでございます。
  82. 木島喜兵衞

    木島委員 だから私は並べたことを悪いと言っておるのではないのですよ。組織編制上こういうものは必要である、最小限これは必要である。しかし校長はその他をつくってもいいわけでしょう。ちゃんと書いていますね。並べたことを私は言っておるのではないのです。教育委員会規則でもって組織編制上最小限これこれは必要であるということで教務主任や学年主任、しかしその他何でも実情に即してでしょう。だからいままでとちっとも変わらないのです。だから校務分掌とうたったのですよ。いままで校務分掌はないのですよ。もし校務分掌というものが組織編制だと——最小限必要なものということで並べたことは私は問題にしていないのです。しかしあなたが組織編制だ、それは人事の発令まで教育委員会のあれなら、いままでだってやっていなければいかぬですよ。やってないでしょう、ずっと。これは昭和二十二年から「校務をつかさどり、」とある。ずっと校務を分掌しておるのです。戦後教育委員会ができて三十年、全部やってないのです。あなたはいま、私の質問はこれを質問しますよと言ったのでお勉強になっていらっしゃったと思って最初に言ったのですが、そういうことを言っていらっしゃるけれどもちっとも納得できぬじゃないですか。大臣、お聞きになっていてどうですか。あんまり細かいことはあなたもちょっと差し支えがあるかもしれないから、まあ聞かぬでおくか。
  83. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 繰り返して申し上げて恐縮ですけれども、およそ校長としてつかさどる校務の範囲というものは、これはやはり学校設置者が持ちますところの学校管理権あるいは組織編制に関する仕事は教育委員会であるという、それらの法律規定に基づきまして、本来的には教育委員会にあるのだというたてまえのもとに、しかしそのうち現実に校長さんにお任せした方がより適切に運営ができるというものは校長にお任せをする、しかし教育委員会が自分の仕事として残しておく方が妥当だというものは委員会規則においてそれをはっきり留保してある、こういうたてまえで、これは今回に限らず従来も来ておるというふうに私は考えるわけでございます。
  84. 木島喜兵衞

    木島委員 これ以上言っても平行線のようですね。しかし諸沢さん、どうですか、あなたの論理で私が十分納得できると、みずから自信を持って言っていらっしゃるのですか。大臣、これはあなたに聞きたいところだけれども、これは聞きません。けれども、私はその点で大変疑問に思っているのです。これはきょうはこれでやめます。けれども、このことは少なくとも学校教育法という母法、そのうちの第三条は大変重要な条項です。このことがそのときそのときのことによって曲げられて解釈されてはならない。いま実は細かい詰めならば、こっちにいままでの行政実例とかその他をずっとみんな持ってきているのですけれども、余り時間もないことですから、私は細かくやらないで大きいことだけやっているのです。そういう意味で、この点は大臣、私の言っている趣旨がどれだけ御理解いただけたかどうかわかりませんが、もしも私の言い分をなるほどと多少でもお思いのことがあるとすれば、多少のことであってもそれは解明しないわけにはいかないのでありますから、きょうはこれで質問を終わりますが、後日それは私の部屋でも何でも結構です、私は教育行政は法令の趣旨に反することであってはならぬと思いますから。それは文部省も大変だと思うのですよ。もしそうだと言えば、A方式、B方式、これ全部違法ないし不当ということになるのです。そうでしょう。これだけの騒ぎをして、そうして実質的に進んできて、そこでもって木島の理屈でそうだなんて言ってやったら、これはまさに大変ですな。だから言えないと思う。けれども、それと法律の解釈は別だと思うのです。大臣もひとつその点は御研究いただけますか。——いまうなずいていらっしゃるということをもって、それじゃ、私の質問を終わります。
  85. 登坂重次郎

    登坂委員長 本会議散会後再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  86. 登坂重次郎

    登坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について質疑を続行いたします。山原健二郎君。
  87. 山原健二郎

    ○山原委員 最初に就学援助制度につきまして、いま全国で若干の問題も起こっております。そのことにつきまして質問をいたしたいわけですが、理事会の御了承をいただきまして、関連質問として栗田議員の方から先に質問をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
  88. 登坂重次郎

  89. 栗田翠

    栗田委員 就学援助の制度について、私は去年の七十五通常国会でも二回質問しております。そのときに、この制度を実際に適用していく中で現場ではいろいろな問題が起こっているということを申し上げて、またそれに関係する調査もお願いしてまいりました。その中の一つに、文部省がいままでいろいろとこの実施について指導していかれるに当たりまして、担当者の会議などで研修をやっていますけれども、所得均等割りの階層を所得の面から言えば準要保護と見るのが妥当であろうといったような見解がおおむね出されていたと思います。それについて、そうしますと生活保護基準よりも低いところでも所得割りになるような地域が出てきて矛盾があるということで、静岡の例を引いて去年質問をいたしました。あれはその後全国的にどんな実態であったか、調査はされておりますでしょうか。
  90. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 全国的な実態につきましてはつまびらかにしておらないわけでございますが、ただいま先生が御指摘になりました市町村民税の所得割りを課税されているかいないかということを一つのボーダーラインとして去年の指導の、言ってみれば実施の目安として、「保護者の収入又は所得の額を認定の尺度とすることも考えられるが、このような場合には、市町村民税の所得割を課税されていない世帯について、援助の必要性を判断することが適当であろう。」ということで所得割りを課税されている場合は対象にしないというふうな考え方を示したわけでございますが、そこで御指摘のような御質問があったようでございますので、その後いろいろ検討いたしました結果、今年度の実施のやり方といたしましては、それにさらにつけ加えまして、「なお、市町村民税の所得割を課税されている世帯であっても、何等かの事由(病気療養中の者がいるとか、災害を受けたなど)により、学用品費等の経費負担が困難と認められる等の各号列記のものまでの状態に該当すると認められるものについては、教育的見地に立って配慮すべきことは当然である」というふうにいたしましたので、一律一斉に所得割りを課税されているのはだめだというのではなくて、そこにさらに市町村におきまして個々の児童の家庭についての実態を判断して必要とあれば認めるようにしなさいと、こういうことにいたしたわけでございます。
  91. 栗田翠

    栗田委員 いまのお答えなんですけれども、全国的にどんな状態になっているかを特に余り調査なさらずにこういう措置をおとりになったように聞こえました。それでいまの措置ですと、これは、病気その他何らかの事由があった場合には例外として所得割りの家庭でも対象とするという考え方なんですね。これは非常に例外という扱い方になるので、私が去年質問しました趣旨からいってもかなり違っているのじゃないかと思うのです。去年の答弁を伺いますと、準要保護というのは要保護よりは多少所得の多い世帯というお考えだったと思います。そして大体の所得であらわしてみれば一・三から一・五ぐらいというのが、文部省研修実施要項の中にも、おととしの分には入っていたわけですね。それがことしはまた取りはずされてもおります。  ところで、私も全国的にはなかなか調べられませんが、静岡以外の例を調べてみました。たとえば東京都のような一級地ですら、そのある水準のところへ行きますと所得割りの世帯で生活保護水準以下になっております。東京都は人口が非常に多いわけですから、ここで、標準世帯でそういう事態が出ているということになりますと、ほかの一級地やまた静岡ぐらいのところでも現にあったわけですから、相当のところでこれは数として出ているということになるのですね。  私が調査した中で、たとえば昭和五十年ですけれども、東京都の標準四人世帯の場合、生活保護基準での年間所得は百三十一万五千四百十三円になっております。ところが住民税の課税最低限は百三十万九千九十円です。つまり、わずかではありますけれども、ここのところですでに所得割り世帯であって生活保護水準以下のものというのが出ているわけですね。これは標準四人世帯ですが、人数がふえてきますとますます差というのは広くなりますからふえるわけです。東京都ですらそうだということです。一級地でほとんどそうだということです。  そういうことから考えていきますと、文部省が出されました今度の新しく改定された実施要綱ですけれども、この言い方だと例外として所得割りのものも入れるという言い方でして、以前一・三から一・五倍くらいまでが大体適用されていたのをぐっと低めたことになるわけです。どうして調査なさらずにこんなふうな指導をなさったのでしょうか。
  92. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 おっしゃるように、この調査というのは文部省の立場ではかなりむずかしい調査になろうかと思うのですけれども、私どもとして事務を遂行するに当たって各担当者等の意見等も聞きました過程において、ただいま先生御指摘のような金額のとり方ではあろうかと思うのでございますけれども、実際の運用としては要保護者は全部、それから準要保護につきましては、いま申し上げましたような目安で、さらに必要があればそのような裁量の余地を残すというこの書き方で大体適切に該当者を拾い上げることができるのではないか、こういうような考え方に立ちましていま申し上げたような基準の設定をいたしたわけでございます。
  93. 栗田翠

    栗田委員 調査文部省段階だけでできないとすれば、自治省などと協力をされて調査をなさるべきだと思うのです。実際に適切にできるかとおっしゃっていますけれども、実情としては狭められてきているということが実態です。  もう一つ伺いますが、大体所得では生保の一・三から一・五倍くらいというのが四十九年度の指導要領には入っておりました。今度の指導要領には入っておりません。なぜこれははずされたのですか。
  94. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 それは積極的に限定するという意味ではなしに、所得をとってそのような一・三ということではなく、また一・三というのは要保護世帯との比率において必ずしも固定的なものでもございませんので、むしろこの際その比率をとりまして、実態に応じて要保護に準ずるようなものを個々に検討して拾い上げていくという方がより妥当であろうという判断に立ったわけでございます。
  95. 栗田翠

    栗田委員 ただ、いまのようなやり方をいたしますと、実態に応じて入っていくにせよ、東京都のいまの例でいいますと、生保の一・三倍ですと、年間所得百七十一万まで入るわけです。一・五倍だと百九十七万くらいまで入るわけですね。そういう家庭の子供さんたちがいままで対象になっていたものが、とかくこういう指導がされていきますと課税均等割りの世帯にぐっと押し縮められていくということはやはり否めない事実なのです。そうすると、ずいぶん幅があったものが縮められて、下手をすれば生保基準すれすれかそれ以下ぐらいにまでなりかねないというのが実際の実情ではないでしょうかね。  それで、これは実際に数字でもあらわれてきておりますけれども、いま就学援助費を受給している数の推移はどんなふうになっていますでしょうか。できれば昭和四十年ごろから出していただけたらと思いますが、ありますか。
  96. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 昭和四十八年度からの資料でございますが、四十八年度におきましては、小中合わせて学用品についての対象人員は六十八万六千四百八十六人となっておりまして、援助率は四・八%でございます。四十九年が六十八万二千九百四十人で四・七%、五十年が六十九万三百四十三人で四・六五%、五十一年の予算で申しますと、七十万四千三百三十九人で四・六五%、こういうことになっております。
  97. 栗田翠

    栗田委員 いま四十八年からの統計ですらわずかに受給率は下がっております。しかも私は文部統計要覧で調査しましたところが、四十一年ごろには七・五%、四十二年に七・二%ですから、そのころと比べますと、五十一年四・六五%というのはずいぶん下がっているのですね。三%ぐらい受給率が下がっております。これはいま実際には一般家庭の所得というのは、物価に対して所得というのは必ずしも上がっておりませんで、むしろいわゆる生保基準に当てはまる人の人数というものはふえているのですね。それから考えてみて、本当ですと、就学援助費の受給率というのは高くなっていいはずだと思うのです。それからいままでの実際から見ても予算が一〇〇%消化されていないような実態もありまして、まだなかなか知らないという状態で、普及もされていなかったということから考えますと、十年くらいの間には普及されてきていいはずである。それが逆に人数が減ってきております。これはいろいろおっしゃいますけれども、実際には受給対象者が減らされてきているということじゃありませんか、いかがですか。
  98. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 いま申しましたように、比率としてはほぼ横ばいでございますが、子供の総数がふれておりますので、若干ではありますが、実数で申しますと、ふえている、こういうことでございまして、御指摘のように私ども予算的に見ますと、この就学援助の予算は年度末になってみますと、若干むしろ残るという程度でありまして、それは各県、それから県から市町村の段階で配当する定数を一応割り当て、それを実態に応じて修正追加し、あるいは場合によっては縮減することもございますけれども、そういうやり方をした結果そういうふうになっておるわけでございまして、そのことは決して意図的にその数を抑制しようというようなことはしていないわけでございますし、今後もまたその実態がさらに予算を必要なことになりますならば、私としましてはさらに予算増額について努力をしたい、こういうことで考えておるわけでございます。
  99. 栗田翠

    栗田委員 比率として横ばいとおっしゃるのですがね、四十一年度に七・五%、五十一年度に四・六五%、決してこれは横ばいじゃないですね、ずいぶん減っています。それは実数がふえるのは当然なんです、子供の数がふえていますから。それは実数で見てそうおっしゃったのではだめなんですね。しかも家庭の状態を見ていけば、困窮度というものはずっと高くなっていますから、これはふえて当然だと私は思いますよ。そうではありませんか。そこのところはやはり率直にお認めいただきたいですが、いかがですか。決して横ばいじゃありません。
  100. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 四十年代の初めに比べますれば、おっしゃるように確かに率は下がっておるわけでございます。しかし、それはいまも申しましたように、予算の行使に当たって市町村が対象者を意図的にしぼったということでは私どもないと思うわけでございまして、現に各市町村のやり方を見まするならば、むしろこの制度の趣旨の徹底するようにということでいろいろなやり方でPRもやっておるわけでございますので、そういう点は意図的なものではないというふうに私どもは考えております。
  101. 栗田翠

    栗田委員 それでは具体的に出ている実態をお話しいたします。秋田では去年まで所得の一・三倍から一・五倍くらいまでも一つのラインとして引いていたのです。今度ことしは秋田県の「就学援助の取扱い」という秋田市教委が出しておりますこの手引きを見ますと、文部省が去年、五十年の暮れにことしに向けて指導されました中身をそっくりそのまま入れております。つまりどういうやり方かといいますと、その「一部を所得基準によって認定する方法を廃止し、すべて文部省の示す認定基準を準用する。」となっていまして、十一の基準、それを準用するという中身、すべて所得による認定方法廃止となっているのですね、これは文部省のよりちょっと以上かもしれませんけれども。それから「該当者については、学校長および必要に応じて福祉事務所の長、民生委員の助言を求め、援助を必要とする者について認定する。」こうなっているのです。ですからその父母の申請権が主でなくて学校長及び福祉事務所の長、民生委員の助言、これによって認定することになっておりまして、そしてつけ加えられて「保護者から直接学校または教育委員会申し出ることは、継続するが、取り扱いはすべて4、と同一とする。」こうなっているわけですね。だから保護者からの申し出は従になりまして、学校長や民生委員の認定が主という扱い方になっているわけです。  この結果どういうことが起こってきたかということなのですが、たとえば泉小学校という秋田市内の小学校がありますが、この泉小学校区のある民生委員が石塚さんというお宅を二月に訪問しました。そして学校から就学援助の書類が出てきたので訪ねたがということで、つまり家庭の状況をいろいろと民生委員が調べるわけですね。あなたのうちより苦しい家でも就学援助を受けずにがんばっているのに、なぜ受けなければならないのかとか、それから就学援助を受けると子供が恥ずかしい思いをするから受けない方がいいといった民生委員の指導ですね。あなたの子供さんは和服を着ているじゃないか、着物を着るくらいにぜいたくな暮らしをしているのにそんなことが必要なのかということです。母子世帯とか夫と別居あるいは離婚していればいいが、夫が働いているからだめだというようなことですね。それからあなたは受けたくないのだが、生活と健康を守る会から勧められたのではないか、こういうことまで聞いているというのですね。これでは大体気の弱い人は受けたくてもやめたくなりますね。こういう実態が出ております。それから、保戸野新川向地区担当の民生委員がやはり伊藤さんという方の隣人、お隣りを訪ねて、伊藤さんは最近何か大きい月賦買い物していないか、車でどこかへ遊びに行ったことはないかということを聞いたり、伊藤さんの日常的なことについてときどき知らせてほしい、こういう調査までやって、これはちょっとまるでCIAか何かみたいな調査までやっているわけです。  それから、学校側でも先生が、これは牛島小学校の学級PTA会議で担任の先生が言われたそうですか、就学援助を申請した子供さんが姉の大変よいお下がりの服を着ているのに就学援助を申請するのはおかしいとか、それから港北小学校というところで、両親が留守のときに民生委員学校から頼まれたといって訪ねてきて、お母さんは働いているかと聞いているそうです。つまり所得が父親の所得しか出ていないのでしょうね、だけど実際にはお母さん働いているのじゃないか、もっと収入があるのじゃないかという調査なんですが、この担任の先生は教室でもみんなに働いているかどうか、あのうちのお母さん働いているかどうかということを聞いているわけです。  こういうことまでやりまして、秋田市ではことし千八百十件の申請が出ているうち五百八十五件が却下されているのです。ところが、昨年は千五百件申請を出して、ごくまれに不適当な却下されたものはありますが、ほとんどが受けているわけですね。ことしはこういう状態で、これを見ますと大変受給者をしぼっているとしか言いようがない状態なのですね。こういうのをどうお考えになりますか。
  102. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 まず、その準要保護世帯の認定でございますが、これは学校のあるいは教育委員会の方で申請を受けたい、準要保護として認定してもらいたいというような申請を待つということもありましょうし、しかし一方また、そういう自発的な申し出がなくても校長としては自分の学校の児童の家庭についてそういう判断をするということも必要な場合もあるわけでございまして、ただその場合に法律あるいは政令にもございますように、判断の一つのよりどころとして民生委員なりあるいは福祉事務所の長の意見を聞くこともあるわけでございますから、その意見を求められた民生委員等は専門的な立場において日ごろそういう階級の子供さんの家庭の実態を知っておるというたてまえで意見を申し上げるわけでございますが、それが先生御指摘のようにむしろ自己の判断であなたのところはやらない方がいいじゃないかというようなこと、これも場合によっては必要であろうかと思いますが、余り抑制する目的で妙な理屈をつけるというのは私は望ましくないというふうに考えるわけでございます。
  103. 栗田翠

    栗田委員 実際にそういうことが各地であるということが頻々と入ってくるわけです。それで伺いますが、この質問を去年もいたしましたときにも就学援助制度の本来の趣旨に沿って対処していくということを繰り返し文部省はおっしゃっておりました。重ねた質問になりますけれども、本来の趣旨とはどういうことでしょうか。
  104. 永井道雄

    永井国務大臣 去年も静岡の例を引いて御質問になったことを記憶いたしておりますが、就学援助制度の基本的な考え方というのは経済的な理由によって就学困難と認められる学齢児童あるいは生徒の保護者に対して市町村が必要な援助を与えなければならない、そうすることによって教育の機会均等の精神に基づいてすべての児童生徒が義務教育を受けることができるようにそれが基本的な考え方であるというふうに去年も申し上げましたが、そこに根本があると考えております。
  105. 栗田翠

    栗田委員 いま大臣言われたとおりだと私も思います。憲法二十六条の教育を受ける権利、受けさせる義務、これを保障しなければなりませんし、また教育基本法の三条の精神に沿って教育の機会均等という権利ですね、これも保障していかなければいけない、これに沿った学校教育法などの規定を保障するたてまえでこの就学援助制度というものは私はあると思うのです。ですから、国はこういう憲法や教育基本法の趣旨に沿いまして教育を受けさせられるようにしていく義務がありますし、それから親としては子供に教育を受けさせる義務もあるし、だから当然それを保障するためのいろいろな制度を要求する権利というのもあるというわけですね。そういうことでして、いまの憲法のもとでは就学援助制度というのは救貧対策とか慈恵対策とかという何か恩恵的に、貧乏でしようがないから何とかしてあげようというものではなくて、そういういま言ったような憲法や教育基本法の精神に沿ってこれを保障する立場に立ったものだと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  106. 永井道雄

    永井国務大臣 まさにそのとおりだと思います。
  107. 栗田翠

    栗田委員 生活保護法というのがありますけれども、それについて伺いますが、あの生活保護法も戦前はいかにも救貧対策というような考え方で、生活保護法というよりも福祉、社会保障というのが考えられておりましたけれども、戦後の生活保護法というのはやはり憲法二十五条の健康で文化的な生活を営む権利、これを保障するたてまえからつくられておると思うのですけれども、その点いかがですか、厚生省の方。
  108. 北村和男

    ○北村説明員 おっしゃるとおりでございます。
  109. 栗田翠

    栗田委員 そうしますと、いま出ていた秋田のような例は、これは単に人数をしぼっているというだけではありませんで、結局あなたのうちは隣よりいいように見えるけれども、受けない方がいいのではないかとか、こういう形でやっているわけですね。子供が恥をかくからがまんをしなさいというような言葉があるわけですね。これは何か戦前の旧憲法時代のいわゆる社会保障の考え方に沿った指導だと思うのですね。私は制度本来の趣旨に秋田であらわれている実態は沿っていないと思いますけれども、いかがでございますか。
  110. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 おっしゃるように、現在の就学援助法は教育の機会均等という理念のもとにつくられたものでございます。そのために市町村の教育委員会として、真に財政的な援助をこの子は必要とするかどうかということを判断して援助すべきものでありますが、一方、またその援助は、税金を主とする、あるいは内容とする公費をもって賄うものでありますから、あくまでも適正、有効な使い方でなければならないという考え方もあろうかと思うのでありまして、そういう意味でよく実態を見きわめて、本当に援助の必要な者を対象にするという努力はすべきであろうと考えるわけでありまして、それが御指摘のように、あるいは本来の意図をちょっと外れたり、あるいは行き過ぎがあった場合には、これは当然考え直していくべきことであろう、かように考えております。
  111. 栗田翠

    栗田委員 それにもう一つは父母の請求権というのが当然あると思うのです。請求した人が全部適用されるべきだとは思いません。中には、調べてとても所得が多いという場合があると思います。でも、父母が請求するということは、自分たちの子供に教育を受けさせる義務があるわけですから、これの裏づけとして就学援助制度というのを活用するという意味から、申請する権利というのは当然あると思うのです。そうしますと、学校長の判断や民生委員の判断を主として、申請も受けつけないわけではないが、それは自由であるというやり方というのは、この趣旨からいってどうなのでしょうか。たとえば申請はする、しかし申請するのは、この制度を知っているからするわけで、知らないでいる家庭もあります。そういう場合に、この家庭は就学援助制度を適用させた方がいいと民生委員学校側が思って、申請はなかったけれども適用のためのいろいろな援助をする、これはありますね。ただこの逆、父母の申請は自由であり、主に民生委員やなんかの判断でなければ通さないのだという考え方、これはおかしいと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  112. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 学校教育法の二十五条の趣旨も市町村に援助の義務づけをしておるわけでございますから、教育委員会として主体的に判断をするということが必要でございますが、そのことが申請することがいけない、あるいは申請が認められないということにはならないと思うのでございまして、要は、教育委員会が申請というものを実質的に十分に保証をして配慮をしてやるという考え方が必要だろう、こういうふうに思うわけでございます。
  113. 栗田翠

    栗田委員 家庭の経済状態の一番客観的な判断の基準というのは所得だと私は思うのです。子供の着物がきれいだとか汚いとか、こんなのは親の心がけでずいぶん違ってきますし、一見してどうであるかというのはわからなくても、所得というのは客観的な基準になると思うのです。いまいろいろ問題が出ておりますのは、この就学援助制度で所得で判断をするのでない、十一の項目で判断をするところが主な基準になっているわけです。ですから、本来だったら所得で判断をした上に、特に問題があるそれ以外の条件を持っているところはプラスアルファということでつけ加える、これならいいと思うのですが、そうなっておりませんね。  それで厚生省に伺いますが、たとえば生活保護にしても、これはいま所得でもらう、もらわないの水準を決めていますね。それから、保育所の保育料の自己負担分ですか、これも所得だと思います。それからその他のこういういろいろな援助の制度があるもので、所得でなく決まっているものがありますでしょうか、大抵所得で線が引かれていると思うのですが。また、文部省の関係でも、盲聾学校の就学援助も所得で決まっているのです。いかがですか。
  114. 北村和男

    ○北村説明員 全部の制度について網羅するという答えは差し控えたいと思いますけれども、大体先生がおっしゃいますように、経済給付を行います際には一定の基準を設けまして、そのランクに達していない人にはその分を支給するという制度になっております。  ただ、特殊な例でございますが、たとえば生業資金を貸しつけるといったような制度は、そのお金を貸したことによって今後の商売がうまくいくとかいかないとか、その辺になりますと、必ずしも所得だけではないと思いますので、社会保障全体についてはちょっと差し控えさしていただきます。
  115. 栗田翠

    栗田委員 いまのお答えでもはっきりしているように、就学援助制度の性質から考えても、これは生業資金などの場合と違いますから、やはり客観基準はある程度所得で線を引くべきだと思うのです。それがないものですから、熱心過ぎる民生委員さんなどがいろいろと調査に深入りし過ぎたというようなことも出たり、その結果何とか受給者をしぼっていくような方向になってしまったり、こういうことが起こっているのではないかと私は思うのです。民生委員などの仕事の場合なんですけれども、これは民生委員法がありますので、民生委員さんの仕事というのは大体決まっております。実際に家庭の所得まで調べる権限というのは民生委員にはありませんね。家庭の経済状態もある程度の状態というものはわかるにせよ、詳しいことを調べる権限というものはないと思うのです。ところが実際には隣の家まで聞いたり、ずいぶんいろいろなことをしますが、いま実際にこういう所得を調べる仕事というのは、たとえば生活保護法によるものとか、それから税務調査などの場合には所得を調べなければなりませんけれども、こういう場合には人権を侵害しないために法律や規則で調査の方法や調査の程度というのが決められていて、専門の公務員が調べていますね。民生委員というのはそうじゃありませんから、そういう方が余り深入りをするということは人権侵害にも場合によったらなりかねない場合が起きてくると思うのです。この事態が出てきたということは、結局所得という基準がなくて、文部省が定めている十一の基準、比較的あるものには主観的に判断しなければ判断できないような基準があるということですね。私はそういうことがこういう結果を起こしているのではないかと思うのです。「保護者の職業が不安定で生活状態が悪いと認められる者」などというのはかなり主観的ですね。同じ状態でも不安定と見る人もいればそうでないと見る人もいるということになりますし、それから「学校納付金の納付状態の悪い者」 「被服等が悪い者」というのもかなり主観的ですね。「保護者の生活状態がきわめて悪いと認められる者」といったようなことがありますから、なかなか判断がむずかしくて、結局所得で引くというのが一番客観的ではないかと思うのですけれども、いかがですか。
  116. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 きわめて一律機械的といいますか、そういう意味では所得というのも一つの目安になろうかと思うのでございますが、やはり子供を学校へ出す家庭の実態というものは所得だけでは割り切れない。家族の構成であるとか、家族にどういう病人の方がおられるかどうかとか、いろいろ判断の余地があるわけでございますので、確かにこういう所得以外の基準を幾つか並べますと、運用について十分注意をしなければいけないという点はございますけれども、これはこれなりに意味のある基準の取り方であろうかというふうに考えるわけでございます。
  117. 栗田翠

    栗田委員 しかし実際にはなかなかその点で混乱が出て、統計上も受給者の数が減ってきているという実態はやはり客観的に見ていただくべきだと思います。ある程度所得の線を引いて、それ以外にいまおっしゃったような家庭の事情、病人がいるとか、家族構成だとか、こういったようなものが加味されていくのならばよいと思うのですけれども、その逆である場合には非常に主観的な判断になっていくと私は思います。  最後にもう一つ、給付方法なんですけれども、給付方法については文部省もいままで事務処理に関する通知などを出されておられると思います。これは三つに分けているようですが、教育委員会が直接給付する場合、学校長が教育委員会の補助として給付する場合、学校長が父母から委任を受けて給付する場合というような例を挙げて通知を出されているように見受けます。実際には給付方法というのもなかなか配慮が必要で、埼玉県の鳩ケ谷の例なんですけれども、この地域では、就学援助を受けている子供たちが学校から学期末に手紙をもらってきて校長先生のところに行ってお金をもらうというやり方だったのだそうですね。そうしますと、もらっている子供がはっきりわかるわけで、いやだという子供もいる。親が特に抵抗を感じる親がいるということで、ここでは銀行の窓口払いにしてほしいというような運動が起こっているわけです。どのような方法が適切かというのはそこの住民の方たち、父母の方たちの判断に任せられると思いますけれども、少なくとも子供たちがこの制度を受けることによって妙な抵抗を感じたりすることのないような配慮は文部省の指導の中でも必要だと思います。その点についてはどうお考えになりますか。
  118. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 まさにおっしゃるとおり、子供に対する影響、教育的配慮というものを十分考えて、支給の仕方を考えるべきことだと思いますが、それはその実施主体である市町村がどういうふうにしたら最もよいかという判断をすべきことだと思います。  ただ、文部省としましては、従来の場合もそうでございますが、今後も、事務担当者の会議等に際しましては、その点につきましては一層工夫をこらして、このやり方のために悪い影響があるようなことのないようにさらに指導をしてまいりたい、かように思います。
  119. 栗田翠

    栗田委員 これで終わりますが、現場では実際に受給者が非常にしぼられているという実態とか、いまお話ししたような実態が出てきております。よく現場を調査されて、趣旨に沿った実施ができますように努力をお願いしたいと思います。
  120. 登坂重次郎

  121. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣、いまの問題につきまして、せっかくある就学援助制度ですから、いま栗田議員が指摘しましたように、一番気持ちよく受け取れる、そして、一番民主的な制度で受け取れる、これが一番大事だと思います。その点で、いま大臣の御答弁がなかったものですから、いまの質問を聞きまして、大臣の見解を一言伺っておきたいのです。
  122. 永井道雄

    永井国務大臣 これは基本的に日本の子供が家庭の経済的な理由によって教育の機会均等を奪われてはいけないという趣旨に基づいた制度でございますから、ただいま栗田委員が、先年も御指摘があった問題でございますが、十分に実情を把握することが大事であるということを先年も本年も繰り返して申されたことは、われわれとしても十分に尊重しなければならないと思いますし、また給付の仕方によりまして、かえって子供に対して不快ないし不幸な感じを与えるようなことがありましては、これは制度の本旨に反することでございます。先年の御指摘にも基づきまして、われわれとして本年従来と変わった方法をとったわけでございますが、しかし、また改めてこうした御指摘がございますので、重要な課題であると考えまして、制度の本旨を生かすように努力をいたしたいと考えております。
  123. 山原健二郎

    ○山原委員 私の質問は四点ばかりございますが、最初に、本日も法務委員会におきましていわゆる狭山裁判問題についての論議がなされるように聞いております。私は裁判の是非などを申し上げるわけではありませんが、ちょうどしあさっての五月二十二日に部落解放同盟から全国的な同盟休校が行われるという事態が発生をいたしておりまして、この問題をめぐりまして現地ではかなり混乱も起こっておるわけでございます。この点について簡単に伺いたいのですが、同盟休校という問題になりますと、一つの団体の見解に基づきまして行われるわけでありますが、それがところによりましては一つ学校全校を休校にせよという要求も出ておりまして、また同盟休校に入った子供たちに対して特別に授業を行えというような要求も出ているわけでございます。これに対して学校側がどう対応するかあるいは教育委員会がどう対応するかというのはこれは大変な——それぞればらばらでありますけれども、たとえば福岡県におけるある地区の小学校、中学校の例でございますけれども、調べてみますと、教育委員会の指示を待っておるのが五〇%、同盟休校というやり方には反対だというのが二〇%、あと三〇%は何とも困って沈黙を守っておる、そういう学校の実情があるわけですね。私は、これに対して文部省として適切な指示を与えるあるいは文部省の見解を発表することが必要だと思っているわけでございますが、これについて最初に大臣の見解を伺いたいのであります。
  124. 永井道雄

    永井国務大臣 五月二十二日に部落解放同盟が、狭山裁判に関連して各府県におきまして児童生徒の同盟休校を実施する考えも持っているということを聞いております。文部省としましては、同盟休校というような形で児童生徒が社会の実際の行動の場に参加するということは適切でないと考えておりますから、その原則に従って指導をいたすわけでございますが、それに先立ちまして、現在すでに各府県教育委員会を通して事情を照会いたしまして、そして、いまのような同盟休校というようなことが行われないように指導をいたしているところでございます。
  125. 山原健二郎

    ○山原委員 これ以上質問をしないつもりでございますが、たとえば一つの裁判、刑事事件につきまして、これを差別裁判というふうに判定をする立場の人もおるでしょうし、またそうでない立場の人もおるわけですね。それがしかし、たとえば教育委員会が差別裁判だというふうに断定するということも、公的機関が一方的な決定をするというのもおかしいわけですが、いま、しばしば、教育委員会関係の文書の中に、狭山裁判というものを差別裁判であるというふうに断定をしておるところもあるわけですね。そういう点は憲法、教育基本法の立場に基づいた原則を貫く必要があると私は思いますが、その点はいかがでしょうか。
  126. 永井道雄

    永井国務大臣 裁判の当否について教育委員会が見解を示すということは正しくないと考えております。
  127. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、五月十三日の夕刻に起こりました高知県土佐郡大川村川崎の県道十七号線でのバス転落事故について質問をいたしたいと思います。  これは嶺北観光会社と呼ばれるバスでございますが、スクールバスでありまして、この転落事故のために運転手を含む二十四名の中学生が重軽傷を負ったわけでございます。この事件につきまして、各省庁の方においでいただいておりますので質問をするわけでございますが、まず建設省の方へ伺いますけれども、この事故の原因あるいは責任がどこにあるかというような点については現在調査がどの程度進んでいるでしょうか。
  128. 井沢健二

    ○井沢説明員 この事故につきましては、昨日まで警察の現場検証のために現地に入れない状態にあったわけでございますが、こういう原因とかそういう問題につきまして現在私どもは調査中という段階でございます。
  129. 山原健二郎

    ○山原委員 昨年の台風五号によりましてこの地域は重大な災害をこうむりました。以来、八月から今月まで相当の日時が経過しておるわけでございますが、この災害復旧の立ちおくれ、そのためにこの橋は仮橋でやられておるわけであります。ところがこの地域は、状況をちょっと申し上げますと、早明浦ダムという巨大なダムが建設されましてそのために——この大川村というのは人口四千から五千おったわけです。ところがここには白滝鉱山という銅山がありまして多くの労働者がおりましたがここが閉山になりました。それからダムのために三百四十戸の住宅が水没をいたしまして、役場も学校も郵便局も診療所もすべて湖底に沈むという村でございます。そのために現在の人口は何と一千名を割って九百名台になっているわけでございます。まさに典型的な過疎地帯、しかもダム建設のために村がまさに滅びたというような状態に置かれているわけです。この間新聞を見ますと、ダムによって村は滅びるというある学者の意見が新聞に出ておりましたが、まさにその典型的なところであります。そして学校統合が行われました。そのためにいま子供たちは通学バスを利用しているわけでありますが、昨年の台風の災害、またその復旧の立ちおくれのために今日の事故が発生をしたわけでございまして、考えてみますと、一地方の一つの小さな橋が落ちて子供たちがけがをしたという事件ではありますけれども、いわば日本の縮図のような内容を持っておるわけでございます。  そこで伺いますが、まずこの災害復旧ということが非常に立ちおくれているということ。この高知県におきましてこういう仮設の橋がまだ四十九カ所あるというふうに聞いておりますが、その統計的なことをお調べになっているでしょうか。
  130. 井沢健二

    ○井沢説明員 昨年の高知の災害というのは非常に大きな災害でございまして、道路関係で申しますと、県工事及び町村工事を含めまして全部で四千二百七十四件でございます。そのうち応急復旧工事をいたした個所が二百五十一カ所ございまして、現在までに本復旧いたしました個所は百六十五カ所でございます。残りの八十六カ所につきましては今年度中に全部完了する予定でございます。
  131. 山原健二郎

    ○山原委員 この橋の問題ですが、私も現地へ行ってみましたけれども、一つは早明浦ダムが建設をされたときに、湖水の表面のすれすれのところがこの場所なのですね。そこで洪水期に、いわゆるバックウォーター、背水と言われておるものですが、このために地盤がかなり揺さぶられまして大変危険な状態に置かれています。このバックウォーターの一番湖水のすぐそばのところで、昨年の台風で人家が倒壊しまして四名の方が亡くなっているわけですね、そういう場所でございます。水資源公団の方にお伺いをしたいのですけれども、あのダム建設に当たって、ダムのときの原則は、岩盤に擁壁をつくるんだというのが鉄則だと私たちは思っているわけですが、現地を見ますとどうもこの岩盤に擁壁が連なっていない。そのためにあの災害においてここが崩壊をしてしまったということを地元の人も言っておるのでありますが、この点について水資源の方ではどういうお考えを持っていますか。設計上のミスはなかったのでしょうか。
  132. 大橋文雄

    大橋参考人 お答え申し上げます。  この事故の起こりました場所の擁壁につきましては十分な安定計算に基づいて設計いたし、その基礎は岩着を確認し施工されたものでございます。また所定の手続による検査を受けて、昭和四十八年三月に水資源開発公団から高知県に引き継がれたものでございます。このような擁壁が昨年八月の台風五号によりまして決壊しましたのは、いまだかつてなかったほどの異常な豪雨によるもので、天災、不可抗力によるものと考えます。
  133. 山原健二郎

    ○山原委員 この早明浦ダムは八十年に一遍の水を支えることのできるダムであるということが言われてつくられたものです。できて、稼動しましてたしかまだ二年に足らないと思います。そういう段階でこのような問題が発生をして至るところに崩壊が生じておるわけでございますが、それでもなおかつ水資源公団としては、これはもう十分な工事であったというふうにお考えなのでしょうか。全くもう至るところに崩壊が起こっているわけですね。これはこの次の第三次災害が起こる可能性がこの夏あるわけです。だから、その意味で私はもう一回尋ねておきたいのです。これは、念には念を入れという言葉がありますけれども、このままでいけばさらに重大な災害が発生する可能性を持っています。その点でもう一回、せっかくおいでてくださっていますので、伺いたいのです。
  134. 大橋文雄

    大橋参考人 先ほどお答えしたとおりでございます。
  135. 山原健二郎

    ○山原委員 実はここは私のふるさとでございます。私はあそこを流れる吉野川をこよなく愛して育ったのです。だから私は、「ふるさとはふちも瀬もなきダムなりき一つの石も忘れざりしに」という歌をつくっております。私はあのきれいな川の石の一つ一つ覚えているのです。それはもう全部なくなってしまって、荒廃したわがふるさとになってしまっているわけですが、そういう意味で私はきょうの質問はいささか感慨を持って質問をいたしておるわけでござます。  ここの橋は、実は仮橋がつくられまして、これには六トンの制限がなされたのです。そして四月にはまだ危ないというので、四トン以上の車は通ってはならぬという制限が、立て札も出ているわけです。ところが実際は、この上の方に今度は巨大な揚水発電をつくるというので、もう大きな十五トンから二十トンのトラックがこれを音を立てて通っているわけであります。さらにまた上流の災害復旧のためにもトラックが通っていますから、揚水発電のためだけではありませんけれども、しかしもう全く四トンとか六トンとかいうものを大幅に上回ったところの巨大なダンプがこれを通っている。そしてたまたまここを通り合わせた子供たちを乗せた学校から帰りのこのバスが転落をしてしまった。死者がなかったからまあ不幸中の幸いと皆言っていますけれども、もうみんな恐怖のために、ちゃんとした橋をつくってもらわなければ子供たちをこれから学校へやれないという声まで起こっているわけでございますが、まずこの車両制限、これについて適切な指導が行われておったであろうか、この点を建設省の方に伺っておきたいのであります。
  136. 渡辺尚

    ○渡辺説明員 一般的には通常の道路であります道路の橋、構造物等につきまして構造計算とか、あるいはその工事のためそういう必要の場合には道路管理者がたとえば重量制限をする、そういう制度がとられております。工事を実際に施工する場合にも、そういう形で発注者及び施工者に対して適切なそういった標識を立てるなりそういう措置をとるように常々指導しているわけでございますけれども、本件につきましては先ほど建設省の防災課長がお答え申し上げましたように、その原因が那辺にあるか、まだ警察等の現場検証の結果等について発表がございませんので、そういったものを待っていろいろと判断したいというふうに考えております。
  137. 山原健二郎

    ○山原委員 学者も入りまして原因調査をいたしておりますが、だからそれはその結果を見るべきだと思います。私の見ましたところでは、H鋼が二つ並べられましてその下に橋脚がつくられている。橋脚の下を見ますと、あと一メートル四十センチぐらい橋脚を落としたならば岩盤に当たるのです。岩盤との間にまだ土砂がありまして、ここなんかも大変おかしいと思うのです。さらにその当日も前日も足元を擁壁をつくるために掘っているわけですね。そこへたまたまバスが通りかかっている、こういう経過です。これは間違いなく私は周囲の人または見ておった人たち、子供たちの証言として聞いておるわけでございまして、なお一層この原因は究明をしていただきたい。単に今度の仮設の橋に責任があるということよりも先ほど言いましたように、ダム建設の場合の水資源開発公団の行った設計あるいは工事そのものが正しかったかどうかということまで究明をしてもらいたいと思っているわけでございます。  それから何といってもこれはスクールバスの通るところで、親たちにとっては一番子供たちの身を案じながら通させている橋であります。高知県にはこういうスクールバスが三十校、三十七台あるわけでして、これが全部山間僻地の学校の統合によって生まれたものであります。昨年の台風五号、六号というのは全部山間僻地がねらい撃ちされたような災害でございまして、私はあの五号台風の災害を見まして、何か台風というのは生き物のように行政の手の届いていないところへみごとに食い込んできた災害であった、生き物だなというふうに感じたわけでございますけれども、そういうところの修復がまだなされていないそこをいま三十七台のバスが子供たちを積んで走っているわけです。  そこでこの場合、これは登校時に起こった災害でありますが、これについては見舞いあるいは医療についての補償、こういったものはどういうふうに文部省としてはお考えになっておりますか。あるいは学校安全会との関係ではどういうふうな適用がなされるのか、検討されておると思いますが、お答えいただきたいのであります。
  138. 遠藤丞

    ○遠藤説明員 現在、日本学校安全会の災害共済給付の制度がございますが、その共済給付が行われますのは学校管理下における負傷、災害でございますが、登校下校に際しましてのけが、死亡等の事故が発生いたしました場合にも共済の給付の対象といたすということにはなっております。しかしながらその事故の原因が第三者の行為によってなされた場合には求償権を持つ、あるいは第三者の行為によって損害が起こり、それに基づいて補償が行われました際には安全会からは給付をしないという二重給付を避ける制度になってございますので、今回の事故の原因等が明らかになりまして、道路管理者なりあるいは自動車の運転手あるいは自動車会社が損害賠償を行うという場合には安全会からは給付が出ないということになります。
  139. 山原健二郎

    ○山原委員 自動車会社といいましても、ここはもともと大きな高知県のある二つの交通会社、県交通株式会社というバスの走っておったところであります。ところがこれが御承知のように過疎問題が起こりまして、この会社が会社更生法の適用を受けるというようなことで末端のバス路線を廃止してしまって、そのために嶺北といういま申しました小さな会社がつくられて、その区間だけを走っている、その運営がなされている会社です、決して腰の強いものでも何でもありません、住民の足をただひたすら守らなければならぬということで町や村が一緒になってつくっておる小さな会社なんです。とても二十四名のこの医療、あるいは医者などということ、あるいは補償というものができるようなものではないかもしれません。それはよくまだわかりませんけれども。そうした場合、十分なことが行い得ない実情にある場合に、それに対して学校安全会とかあるいは文部省として何らかの行政的な適切な措置をすることができるかどうか、その点伺いたいのです。
  140. 遠藤丞

    ○遠藤説明員 二重給付を避けるために第三者の行為による損害の場合には給付を行わないことがあると申しましたけれども、損害が第三者の行為によって起こった場合でも、その第三者からの補償が行われない、あるいは補償が行われるためには時間が非常に長くかかりそうだという際には安全会の方で給付を、この場合は負傷でございますので負傷の治療に要します医療費の支給ということになるわけですが、それを支給いたしておきまして、その後原因のはっきりいたしました後でその第三者から安全会が求償するというやり方になろうかと思います。
  141. 山原健二郎

    ○山原委員 このスクールバスの問題文部大臣に伺いたいのですが、全国にはずいぶんたくさんあると思います。しかもほとんど恐らく僻地の場合が多いのじゃないかと私は思います、そうでない場合もあると思いますけれども。この安全の保障ということはやはり気をつけなければならぬ問題だと思うのです。事故が起こり死者が出てからということでは遅いわけでありまして、今度の場合もある一人の女生徒はかなりの重傷でございまして、長く面会謝絶が続いておりましたが、私が行きましたときには少し物が言えるような状態になったということで、回復の見通しが出つつあるというのが一昨々日のことであったわけです。したがってこの安全については、文部行政としましても当然かなりの重点を置いた安全対策、あるいは各省に対する要請、あるいは各県に対する要請、これをぜひしていただきたいと私は思うのです。県の方でももちろんいろいろ考えておるようでして、県の措置についても御検討いただきまして、文部省としても子供の生命、安全を守るための措置をとっていただきたいと思いますが、大臣のお考えを伺っておきたいのです。
  142. 永井道雄

    永井国務大臣 学校安全会につきましてはただいま事務当局から申し上げたとおりでございますが、スクールバスで学校に通学する子供の安全に関しましては、これは非常に重要な問題であることは疑いを入れません。したがいまして、この種の問題が起こりました場合、常に文部省としては関係各省庁の御協力を要請いたしまして、事故の真因が明らかになります場合にはその補償を求める、あるいは文部省としてなすべき場合には学校安全会を通してその補償をするというふうに積極的に災害に対する措置というものを図りますように努力をいたしたいと思っております。
  143. 山原健二郎

    ○山原委員 わかりました。災害対策委員会ではありませんからこれ以上ここで建設省その他の方に申し上げることは省略したいと思います。この問題はおきたいと思います。水資源開発公団理事大橋さん初めどうもありがとうございました。  次の問題でございます。これは沖縄における教育の問題について伺いたいわけです。  大臣も御承知のように、沖縄は戦後あらゆる教育施設がなくなりまして、沖縄の教職員組合などの記録によりましても、砂地に字を書いて教育が始まったと書かれておるわけであります。海辺の砂に字を書いて、黒板も教室もない中で始まったのが沖縄の戦後教育の姿であります。大臣は沖縄へ教育の視察においでになったでしょうか。
  144. 永井道雄

    永井国務大臣 沖縄には前にも参りましたが、大臣になりましてから一回参りまして、長い期間ではございませんが、教育関係の施設等視察をいたしてまいりました。
  145. 山原健二郎

    ○山原委員 特にきょう取り上げたいのは、沖縄県の県庁の所在地である那覇市の問題であります。この那覇市は軍用地が市内全体の二七%強を占めております。全国にこのようなところはないわけであります。  そこで、第一でありますが、那覇市の小緑地区、ここは軍用地の中に、かつて、戦前におきまして第一国民学校、第二国民学校、垣花国民学校という三つの学校がございました。それが米軍に接収されたままになっておるわけであります。ところが、教育の立場から見ますと、那覇市における小学校は三千人規模の小学校になっておるところがあります。校地は狭く、そして一つ学校に子供たちが無理に入れさせられておりまして、教育の立場から、軍用地を返還をしてもらいたい、こういう要求があるのは私は当然だと思うのですね。  そういう意味で、戦後三十一年を迎えようとしておる今日、教育の立場から、しかも軍用地の中に三つの国民学校があったわけです。それが追い出されているという現状から見ましても、この軍用地を返還をしてもらいたい、こういう要請は当然だと思いますが、これにつきまして、外務省もお見えになっておると思いますが、この沖縄県民の要求に対して現在どういうふうにこたえているか、伺っておきたいのであります。
  146. 山下新太郎

    ○山下説明員 小禄の地区に昔ございました小学校、これは現在私どもが理解しておりますところでは、米軍に提供しております那覇空軍・海軍補助施設というものがございますけれども、その中にかつて存在した、こういうふうに承知している次第でありまして、那覇空軍・海軍補助施設につきましては、第十四回安全保障協議委員会というのがございまして、そこでこれを嘉手納の飛行場に移設をいたしまして、それが完了いたしましたら那覇空軍・海軍補助施設は返還になる、こういうことを日米間で合意いたしておりまして、現在そのために那覇空軍・海軍補助施設関係の移設工事、これを実施していくということで考えているわけでございます。
  147. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省に伺いたいのですが、那覇空港の嘉手納移転の問題も起こっています。ただ私はここで基地の問題を、いわゆるいままで取り扱ってきた基地の問題として申し上げているのではなくして、那覇市の教育の問題として取り上げているわけですが、これは当然文部省としましてもこの小緑地区の実態を御調査をいただきまして、外務省あるいは政府そのものがこの返還を迫っていくという要請をすることによって、校地の確保ですね、これはぜひやるべきだと思いますが、いかがでしまうか。
  148. 清水成之

    清水政府委員 ただいま御指摘のように、沖縄全体から見ましても、那覇市内の校地の提供借地なりあるいは一般的な借地が多いわけでございます。そのこと自体でいま直ちに教育に支障を来たしているということには相ならぬかもわかりませんが、その狭隘度等を見ました場合等の問題もあるわけでございまして、いま御趣旨の点のお気持ちはわかりますので、関係省庁と十分話し合いはいたしたいと存じます。
  149. 山原健二郎

    ○山原委員 この那覇市の特徴は、軍用地に校地をとられたりいたしておりますために、学校の用地は私有地の借用が大変多いわけですね。これまた驚くべき数に上っておりますが、約七万五千坪が那覇市だけで私有地の借地となっております。そしてその借地料が年間一億二千万に達しています。これはもう市にとりましては大変な負担になっておりまして、当然国が特別な補助をしていただいて、校地の買い上げをしなければ財政的にももたないという問題が起こっておりますが、このことについて御存じでしょうか。
  150. 永井道雄

    永井国務大臣 那覇に限らず、沖縄におきましては学校の用地が借地である場合が非常に多い。これは沖縄全体について見ます場合に一二・八%であるということを承知をいたしております。  そこで、こうした借地である場合に、先ほどから山原委員が御指摘のように、軍用地にありますために学校ができない。そういうために借地をしている場合、いわゆる代替借用校地と称しておりますが、そういう場合には公立小、中学校で地主からの買い取り請求があります場合に、当該用地の購入を必要とするものにつきまして、昭和四十七年度から購入費に対して二分の一の国庫補助を行っている次第でございます。
  151. 山原健二郎

    ○山原委員 これが買い上げが行われる場合には二分の一の補助ですが、実態としてはなかなかそう簡単に進まないという状態ですね。  そして、実はこの借地料がなぜ値上がりになるかと言いますと、毎年毎年三〇%も値上がりしているわけですが、これが復帰後米軍用地の借地料の値上げを、いわば宣撫工作的な意味で値上げをしておる。それから防衛庁の方でも基地の維持のために値上げをせざるを得ない、物価の変動もありますから。それが防衛庁の方でも行われる。それがはね返って、そして那覇の市の教育委員会にとっては耐えがたい借地料に値上がりをしていくというこういう関係があるわけですね。そういう点ではこれは大変な問題だと思いますが、とにかく一億二千万の借地料を毎年毎年払わなければならぬ。それをまたさらに上積みしていくということになると、その金があればどれほど子供たちの教育上の問題に使えるかわからぬわけです。そういう意味でこれは当然解決をしていくめどをつけていかなければならぬと思いますので、この点は要請をいたしましてなお検討をいただきたいと思うわけであります。  次に、航空機の騒音問題ですが、基地周辺整備法によりまして騒音防止が行われていますけれども、実際はこれまた余り進んでおりません。聞くところによりますと、那覇空港は運輸省の管轄であります。それから嘉手納空港の方は防衛庁の管轄となっておりまして、それぞれ、那覇空港は運輸省が規定に基づいてこの範囲の防音装置の施設には援助する、防衛庁はこの範囲ではやる。ところが、ここにどちらにもかからない谷間がありまして、それもまた騒音のために教育が困難だという問題が、これは案外切実な問題として出されておるわけでございまして、沖縄側の要求としましては、運輸省、防衛庁がその線引きを拡大をしてもらいたいとか、あるいはさらに両省が話し合いをしましてそういう空白中間地帯をなくすような方策をとってもらいたい、こういう要求があるわけでございますが、これについて運輸省、防衛庁の方から簡単に、どういうふうにお受けとめになっているか伺っておきたいのです。
  152. 白根洋

    ○白根説明員 お答えします。  先生御指摘の嘉手納飛行場といわゆる那覇空港でございますが、この嘉手納飛行場と那覇空港の中間に普天間飛行場という米軍の飛行場があるわけでございます。この嘉手納飛行場と普天間飛行場につきましては、防衛施設庁の方がいわゆる担当いたしまして周辺の騒音対策を実施しておるわけでございます。那覇空港につきましては、先生御指摘のとおり運輸省の所管として現在まで来ておるわけでございます。嘉手納飛行場並びに普天間飛行場周辺におきます当庁が行いました騒音対策につきましては、昭和五十年度までに大体八市町村の四十五施設につきまして約三十七億八千二百万円という補助金でもって防音工事を実施してまいっております。さらに五十一年度以降におきましてもこういった騒音の障害防止につきましては十分努力をいたしたい、このように考えておるわけでございますが、学校教育施設の騒音防止につきましては、防衛施設庁といたしましては、授業時間中の騒音による阻害をどのように見るかということで、騒音の強度と頻度によります一つの基準を設けまして、この基準に合致する場合には学校の防音工事を行うということにしておりますので、先生御指摘のいわゆる生活環境の整備に対します環境基準の線引きとは多少異なった基準のとり方をしておりますので、御質問のような仮に教育施設があるといたしますれば、十分騒音調査をいたしまして、市町村からの御要望がありましたならばそういった調査をいたしまして、仮に那覇空港と普天間飛行場との間の中間地帯、いまのお言葉でございますが、そういったところにつきましては十分両省間で検討をしていただきたい、そのように考えております。
  153. 井下登喜男

    ○井下説明員 那覇空港は御指摘のとおり運輸大臣管理の空港でございまして、航空機騒音防止法に基づきまして特定飛行場の指定をいたしてございます。学校等の騒音防止工事につきましては、やり方としましてはほぼ防衛施設庁の方と同じでございまして、授業時間中の航空機騒音の強度及び頻度を基準にいたしまして運輸大臣が基準を定めてございます。その基準に合致するものについて防音工事を実施する、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、御指摘の学校がどの地区にあるか承知いたしませんが、これらにつきまして、この基準に合致いたします場合には、十分地元公共団体とも協議の上善処してまいりたいと思っております。
  154. 山原健二郎

    ○山原委員 私の聞きましたところでは、これは運輸省関係になるのでしょうか、五十一年度に小禄の中学校のみこの騒音問題についての改築が行われるようになったというふうに聞いております。これは正確でないかもしれませんが、ともかくいまの御答弁でなお具体的にどの学校がどうだという問題が出ましたら、ぜひそれば調査をしていただきまして適切な措置をお願いしたいと思います。  ところで、いま言われました騒音、いま環境庁の方では七十五ホンという数字が出ておりますが、現在では八十ホン、八十五ホンという基準でやっているように聞くのですが、その点はどうですか。
  155. 井下登喜男

    ○井下説明員 航空機騒音に係ります環境基準の面では、最終的にはその住居の状態によりまして七十五WECPNLまたは七十WECPNL、これが基準になっているわけでございます。  ところで、環境基準は五十三年の中間目標と五十八年の中間目標というのがございまして、とりあえずは五十三年の中間目標に向けまして八十五WECPNL以上の区域について対策を行う、こういうことになっております。  ただ、御参考までに申し上げますと、御承知のとおり学校教育施設等の防音工事につきましては、環境基準そのものが直ちに適用されるということにはなっておりませんで、先ほど申し上げましたように授業時間中の強度、頻度でやっておりますので、若干違ってまいります。これを仮にWECPNL値に換算いたしました場合には、おおむね七十WECPNL程度になるのじゃなかろうか、こういうふうに考えまして、現在策定中の空港整備五カ年計画におきましてはおおむねその辺の線をもって対象学校を決めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  156. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つだけ伺いたいのです。それは、沖繩における危険老朽校舎の問題でございます。これは単なる老朽ではないわけです。というのは、沖縄は最後の戦場になりまして、日本軍隊が武器弾薬等の集積場に校舎を使っておりました。そのためにあの戦禍に遭いまして、学校はほとんど使えないような状態にまで焼失をしておったわけであります。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕 ところが全く教育施設がないものですから、これを修復しまして、ずいぶん無理なことをして改装しましてそこで授業を受けておるというのが実態でございます。いわば戦災でまさに焼失したものと判断をしてよいわけなんです。これが今日では大変危険な状態になっております。文部省に申請をしますと、補助率が四分の三ということになっているわけですが、新設の場合は、沖縄は特別に十分の九でございますので、焼失したものとして十分の九の補助率にすべきではないかという要請があるわけです。たとえばかつて戦後戦災復興の臨時措置法がございまして、戦災でやられた学校の復興のためにこれが適用されたのであります。ところが沖縄は当時本土に復帰しておりません。したがって、この臨時措置法の適用を受けないままで今日まで来たわけであります。そういう点から考えますと、この沖縄における危険老朽校舎というのは、本土における危険老朽校舎とは違った性格を持っておりまして、焼失し、新設をするというこういう構え、また戦後本土で適用されました戦災復興の臨時措置法のたてまえから見ましても、沖縄に対しては当然それが、いまはその法律はなくとも、適用されるべき性格を持っているのではないかというふうに思うわけです。そうして十分の九という補助率にしていくのが当然ではないかというふうに思うわけでございますが、この点について御検討になったことがあるでしょうか。
  157. 清水成之

    清水政府委員 ただいまの点でございますが、御指摘のとおり沖縄振興開発特別措置法がございまして、沖縄関係の施設あるいは学校用地の買収補助につきましては、総理府で予算としてはお世話願っているわけでございますが、この法律の系列並びに施行令で御案内のとおり、危険改築につきましては十分の七・五と、こういうことに定められておるわけでございます。本土の場合でございますと、御案内のとおり三分の一、こういうことに相なっておるわけでございまして、沖縄のそういういまおっしゃいましたような事情を勘案して十分の七・五という措置が講ぜられておるわけでございますので、これを十分の九に引き上げるということはきわめて困難であるというふうに考えております。
  158. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省がそう答弁せられますと、よりむずかしい大蔵省、自治省がおいでいただいておるわけですが、よけいむずかしい答弁になってしまうので、ここで聞かない方がましだと思うのでございますけれども、文部省の方は、教育上の立場からかなりいわば好意的な立場をとっておると私は思っておったのです。要求としては切実なものがあるわけですが、大蔵省、自治省におきまして、いま私は沖縄、特に那覇の実情を述べましたが、これについてどういう見解を持っておるか、せっかくお見えくださっておりますので、お答えをいただきたいのです。
  159. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 お答え申し上げます。  沖縄の学校用地の確保につきましては、先ほど先生からるる御指摘のございましたような沖縄の特殊事情を十分に考慮いたしまして、本土における小中学校の用地費補助にさらに特例的な措置を加えて各段の配慮をしております。本土におきましては、急増市町村の用地費に対して国庫補助を行っておるのみでございますが、沖縄につきましては、先ほど文部当局からも答弁がございましたように、提供施設に係る代替借用校地の購入に対しまして国庫補助をする、あるいは過大規模校の分離に必要な用地取得費に対しまして国庫補助をするというような特別の措置を講じておるわけでございます。  先ほど、那覇市の学校用地の中で民間からの借用地の割合が非常に高いという御指摘が先生からございましたわけですが、沖縄全体として沖縄県の小中学校用地に占める借用地の割合を見ますと、いま申し上げましたような諸措置の結果、復帰前の数字と最近の数字と比べますと、これらの措置の効果が出てまいりまして、この割合は徐々に下がってきております。私どもといたしましては、具体的には那覇市の借地料の問題でございますが、この問題も今後ともいま申し上げましたような措置を進めることによりまして、沖縄の小中学校用地の確保を図りまして解決していくのが筋ではないかと考えております。
  160. 豊住章三

    ○豊住説明員 学校用地の取得並びに学校建設等につきましては、沖縄県の場合も一般的に日本全体の交付税制度並びに地方債制度の中で見ておるわけでございますが、学校用地取得につきましては、一般には九〇%の起債の充当をしております。  それから、学校の改修費等につきましては、これは一学級当たり幾らという算定をいたしておるわけでございますが、小学校で約四百五十万円程度、それから中学校で三百八十万円程度の措置をしておるわけでございます。なお、ちなみに那覇市におきまして、昭和五十年度におきますところの投資的経費につきまして、約三億四千四百万円の交付税措置を講じております。また学校用地につきましては、起債で三億三千一百万円でございます。若干内訳を申し上げますと、そのほか経常的な経費等も見ておるわけでございますので、交付税措置では小学校、中学校合わせまして全体で十五億五千万円程度の費用を見ております。なお、起債の関係でございますが、用地関係につきまして、これは五十年度でございますが、城北小学校で一億九千七百万円、垣花小学校で七千七百万円、これは増設でございます。それから宇栄原小学校五千六百万円、これも増設でございますが、合わせまして約三億三千万円でございますが、今後の学校用地の取得の状況に応じましてなお一層起債等につきましても手当てをしていきたいというふうに考えております。
  161. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、沖縄の教育の問題について大臣に総括的に御答弁いただきたいわけですが、恐らくこの問題についても沖縄の方からも要請が来るのじゃないかと思うのです。そういう意味で十分——この沖縄県における教育の状態も、たとえば高等学校への進学率は復帰前は五一%程度だったそうです。現在は八四%を超しているようですね。そういうふうに改善をされつつあるわけで、その点では努力もされているわけでございまして、さらにこれを大きく伸ばしていく。実際にはこの子供たちの条件というのは、あっさり言えば本土に比べてはずいぶん低劣な条件に置かれておることは、これは当然のこととして、しかもあのように困難な経済状態にある県でございますから、一挙にはこれは無理だと思いますけれども、しかし、最大の努力が払われるべきだと思うのです。特に、たくさんの基地を持っておりまして、そのために用地もないというような状態でございますから、これらについても教育行政の最高の責任者として、学校用地は少なくとも基地は返してもらうというくらいのことまで言うべきだと私は思っているわけです。その点で総括して大臣の御見解を伺ってこの問題は終わりたいと思います。
  162. 永井道雄

    永井国務大臣 私も沖縄に参りました際に、教育長ほか教育委員会関係の方々あるいは琉大の学長ともお話をいたしまして、沖縄の教育が確かにただいま山原委員が御指摘のように、高校進学率も改まってきてはおりますけれども、しかしながら、条件の上におきまして多々問題を含んでいるということは、承れば承るほど重要なまた緊急の課題であると考えます。そういうことでございますから、用地の問題等につきましても、代替用地に対する手当てであるとか、あるいは大規模校に対する手当て、あるいはまた先ほどから話題になりました危険校舎の改築につきましても、本土の場合とは違いまして特別の措置をいたしているわけでございます。そうした意味合いにおきまして、これまでの努力というものをやはり積み重ねていくべきでございますし、なお用地等の問題についてさらに関係省庁とも話し合いながら、私たちは沖縄の教育条件の改善のために努力をして、そして沖縄は新たに復帰して日本の重要な一部でございますから、県民が教育を受けます上において全く劣ることなく十分の力を発揮することができるような、そうしたことのために私たちとして積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  163. 山原健二郎

    ○山原委員 最後の質問に入ります。時間を省略する意味で読み上げて質問をいたします。  五月の十一日に日本教職員組合と国民教育研究所が共同で実施した学力実態調査の結果が報告をされています。この報告書の内容について十二日付の各新聞は、「基礎学力で落ちこぼれ」あるいは「小、中学生落ちこぼれ深刻」などと題して大きく取り上げております。こうした問題は、この文教委員会でもこれまでたびたび取り上げられてまいりましたが、こうしたまとまった実態調査がなされたのはここ十数年来なかったことだと思いますが、その点いかがでしょうか。
  164. 永井道雄

    永井国務大臣 今回の日教組の学力調査、私もその大要について読みましたけれども、ここずっとなかったということではなく、山原委員も御承知のように、全国教育研究所連盟におきまして行  いました結果は、これは四十六年でございますが、細部にわたっては違っていると思いますが、ほぼ同様の結果を示しているものがございます。
  165. 山原健二郎

    ○山原委員 この調査結果の前書きにも言われておりますが、この調査ば、すべての子供たちが国民的教養の基礎をしっかり身につける、言いかえれば、憲法、教育基本法がすべての国民に保障している行き届いた教育の実現を目指し、このことに反している実態、多くの子供たちが授業に取り残され、最も基礎的な学力、子供の将来の発達を促すような学力を身につけていないでいるという、民主主義の教育に反した実態を科学的に明らかにし、教育課程の改善に役立てようという目的で、多くの現場の教師、校長や教頭、それに教育学者の自発的な協力のもとで実施されたものであり、その点で大きな意義を持っておると思います。  まず初めに、この調査に対して、大臣がどのように受けとめておられるかを伺いたいのであります。
  166. 永井道雄

    永井国務大臣 まずこの調査というのは、サンプルというようなものがどの程度全体を代表しているかということもありますし、それから今回の日教組の調査の場合には、国語の読み書き能力と算数の基礎計算能力でございますが、その他の学力がどうかという問題も残っていると思います。そういう点で、従来の全国教育研究所連盟のものもございますが、他方、昨年来国立教育研究所でやはり学力調査をやっておりまして、これは今秋にも出てまいりますので、これらのものを相互に比較いたしまして検討いたしたいと考えております。  なお、これを教育課程にどのように生かしていくかということは非常に重要な問題でありまして、その点は御指摘のとおりでございますので、実は、これも御案内と思いますが、教育課程審議会におきましては、昨年公聴会を行いましたときに、日教組の教育課程を研究しておられる座長と思いますが、梅根悟学長にもおいでいただきまして、教育課程審議会の考えにその意見を述べていただいたわけでございます。  なおまた、日教組の見解発表につきまして、高村会長は教育課程審議会においても考えている重要な問題であるから、参考にすべきものは十分に参考にしたいという見解を公にしておられるわけでございます。私も、高村会長のお考えを尊重したいと考えております。
  167. 山原健二郎

    ○山原委員 私は学力問題を解決するための幾つかの提案をしたいと思うのですが、その前に、今回の調査が明らかにした幾つかの点を分析をしてみたいと思います。  今回の調査が明らかにしたことは、テストの平均点は比較的高いが、子供たちの読み書き計算といった基礎的な学力が低下ないしは停滞をし、また子供たちの間での学力の格差が拡大しているという、教育にとっては深刻な事態が科学的に明らかにされたということだと思います。  調査では、漢字学習について文部省が一九五〇年に行った調査と今回の調査とを比較して、ここに端的にあらわれているように、低学年における漢字学習の成果が定着をせず、高学年、中学校に行くほど正答率が低下し、または停滞し、中学三年生になってみると、一九五〇年当時の方が今回より成績がいいということになっておるのであります。  たとえば母という字で見てみますと、これは小学校二年生で習うことになっていますが、小学校四年生でこの漢字を正しく書ける者は八〇%いるにもかかわらず、中学三年生では六〇%と、二〇%も低下しておるのであります。一九五〇年当時は、中学三年生の九〇%以上が母という字を書けたのであります。また底という漢字、これは小学校四年で習うことになっていますが、小学校六年では五三%が書けるのに対しまして、中学校三年生になっても五二%という停滞を示しています。この字を一九五〇年の文部省調査と比べてみますと、当時は中学三年生で底という漢字を書ける者は八四%おったのであります。  漢字の読みを見ると、中学一年生を対象に百語について調査をしていますが、平均正答率は七七・二%ですから、結果はいいように見えますが、ゼロ点が全体で一・二%、百人に一人以上に上り、七十点以下の者は二六%、四人に一人となっています。これらの生徒は、毎日学校使用する教科書を読むのにきわめて困難を感ずるであろうと診断をされておるのであります。  算数、数学でも、この傾向は変わりがありません。整数の割り算では、中学一年生で全くできない生徒は二八・七%と約三割を示していますが、小学校五年生では三・二%ですから、ここには学習が定着していないことを切実に示しておる数字だと思います。  このように読み書き、計算という国語、算数、数学の基礎的能力において、学力の停滞や低下または格差の拡大が深刻化していることは、これらの能力が思考の発達の基礎であり、また他教科の学習の基礎、子供の生活と発達を豊かに保障していく基本であることを思いますときに、今日の事態に対しては全く慄然たる気持ちがせざるを得ないわけであります。  もちろん、一方では、算数、数学の平均点の向上に見られますように、子供たちを初め、父母、教師の必死の努力の成果もありますが、その裏には授業についていけない、いわゆる落ちこぼれが数多くあり、こうしたことが子供たちの人間形成に大きな影響を及ぼしていると見なければなりません。今回の神戸事件のように暴走族や非行、無気力を生み出す重大な要因の一つとなっていることは間違いないのではないでしょうか。それはまた、民族の将来にとっても、民主主義の発展にとっても、深刻な影を落としておるものではないでしょうか。  そこで大臣にお聞きしますが、大臣が十六日の佐賀市での記者会見で、日教組が発表した学力実態調査は、全国教育研究所連盟が四十六年に実施した調査とほぼ同じ結果だという、先ほどもおっしゃられましたが、趣旨を述べております。また五月十二日付読売新聞では、沢田小学校教育課長の話として、「日教組の調査結果は意外なことではない。どこが調査してもこんな結果になるだろう。」と報ぜられています。私は、最初にも今回の調査に対する大臣の受けとめ方を聞いたのでありますけれども、再度このような発言はどのようなつもりで御発言になったのか。調査報告に言われていることは、さほど目新しいことではなく、また、さほど深刻ではないのだ、世間は騒ぎ過ぎるのではないかというような感想でもお持ちになっているのではないかと思いますが、この点がお伺いをいたしたいのであります。
  168. 永井道雄

    永井国務大臣 私は、まず、深刻でないという意味でそういうふうに申し上げたのではなく、教育上重要な問題である。教育上重要な問題であるということは、全国教育研究所連盟の発表の際にも非常に大きく報ぜられたことでありますから、それとほぼ同じ傾向が出てきたということについて、澤田課長もそうだと思いますが、その点では同様の傾向であるということを申したわけです。また、そうでありますからこそ教育課程審議会というものを設けまして、教育課程審議会におきまして現在のカリキュラムが過密化しているのではないか、そういうことから不消化現象を起こすというおそれもあるのではないかというふうに考えて、この審議会の検討を進めていただいているわけでありまして、どうでもいいというような意味合いで申したのではございません。  さて、教育課程審議会の御審議によって教科書の内容というものが変わってくる、あるいはカリキュラムの基本的な方向に改善が加えられると思いますが、それだけでは私は今日の課題の解決にならないというふうに考えております。これもいま御指摘になりました記者会見において述べたことでございますが、昨年年初以来、東京学芸大学とも話し合いまして、現場の教育経験を持たれた方からの意見を十分反映して教育実習を行っていくというような形で、わが国学校における教育内容、それの指導を強化していくということが必ずしも今日まで研究的に行われてこなかったということも考えまして、本年度予算には東京学芸大学の中に教育実習研究センターというものを設けまして、教育のやり方に一層の工夫をこらしていきたい、さような意味合いにおいて日教組の報告に対してコメントをしたわけでございます。
  169. 山原健二郎

    ○山原委員 先ほどお話のありました教育研究所連盟の調査との関係で申しますと、これは今回の調査と異なって、教師や校長、指導主事などの意識調査であったわけです。この調査に言われている重要なことの一つは、授業についていけない子供たちをなくすためには一クラスの生徒数を引き下げるということであったし、その点はこの委員会でもしばしば問題にされてきたわけであります。大臣が、今回の調査結果が全国教育研究所連盟の調査とほぼ同じ結果だと言うのでございますと、学級定数の改善が本委員会でもしばしば問題にされてまいりましたが、また多くの父母、教員がそのことを強く望んでいることも御承知のとおりであります。またこの五年間その機会がなかったわけではありませんが、一向に手をつけなかった責任が問われるのではないでしょうか。大臣はこの点をどうお考えになりますか。また、学級編制基準の改善など教育条件の整備教育基本法第十条に基づく文部大臣の重要な責務でありますが、学級編制基準の改善を近い将来行うつもりがないかどうか、明確に伺っておきたいのであります。
  170. 永井道雄

    永井国務大臣 学級数のことも問題でございますが、これは五カ年ずつに考えていくということでございまして、現在教員の増を図っておりますからそれは五十三年に相なるかと思いますが、そうした段階までは現在の基準で進んでいくことになるかと考えます。  なおまた、ただいま御指摘になりましたように、二つの調査はほぼ同じような傾向でございますが、全国教育研究所連盟の場合には校長、教頭、先生方のいわば主観的な判断を含んでいるという要素がありますから、こうしたものを一層充実してまいりますために、国立教育研究所のいまだ発表されておりません、しかし、この秋には発表予定の研究も行われている。それをまた日教組の発表とも比較検討すべきものであるというふうに考えております。
  171. 山原健二郎

    ○山原委員 佐賀でも御発言になっておりますし、またただいまも御答弁いただきました東京学芸大に教育実習研究センターをつくり、教育指導法を考えると言われているわけでございますが、教育指導の問題について言えば、教育は人なりとも言われるように重要なことではあるが、一つ学校教育指導センターをつくったところで解決はしないと思うのです。問題は教師一人一人が子供たちの実情に応じて多様な指導ができる力量を絶えず高めることにあるのであって、その点で教師の自主的、自覚的な研修が保障、奨励されなければならないと私は考えます。このことは教育公務員特例法にも明記されていることであります。この点で各学校学校用図書、教材を十分整備するとともに、都道府県や市にある教育研究所を教師の自主的研修、学習のために開放し、必要な図書、教材教具、実験器具などを備え、多くの教師が必要に応じて使用できるようにする必要があると考えるのでありますが、この点についての御見解を伺いたいのであります。
  172. 永井道雄

    永井国務大臣 一つ大学だけで不十分ということは御指摘のとおりでございますが、他方におきまして、大学における教育実習の指導というところに現場経験を生かしていくという方向は新しい方向でございますので、まず一つの核をつくっていくという意味合いにおいて、これはそれなりに一つの方向を示し得るのではないかと思います。なおそれだけでは足りませんから、当然現場研修ということが必要でございますが、現場研修に当たりましては山原委員が御指摘になりましたように、教材というものを教員が自由に利用できるように、これは各地におきましてすでにいろいろな教育研究所並びに教育教材を持っておりますセンターというものもできてきておりますから、こうしたものを活用することが望ましいと思っております。なおそのほかに現場研修もありますし、また校長、教頭、主任というものについて私が特に教育指導ということを申しましたのも、実はそれと関連している側面を持っているわけでございまして、現場における毎日の活動というものが当然教員それぞれの自主的学習というものでなければならないわけでありますが、そこにおのずから先輩、後輩相携えて学校教育内容を充実していくということも生まれてくると考えられますので、教員に就任いたす前からの教育、さらに現場研修、そして自主性の活用、そうしたすべての角度からわが国学校教育が活発になりますように、私どもとしてはその条件を確保していくことが大事であると考えている次第でございます。
  173. 山原健二郎

    ○山原委員 日教組の教育課程改革試案が一昨日発表されておりますが、このことについて二問だけ御質問して終わりたいと思います。  この内容に私はいま詳しく触れるつもりはありませんが、この試案は学者と教師や民間教育団体がこれまで研究し、実践してきた成果を二年間にわたって集約し、つくり上げた民間で出した唯一の包括的な教育課程改善案となっていると思います。こうした意味では、教師の全国的な研究集会としては世界でただ一つの日教組、日高教の教研集会と並んで、わが国教師と教育研究者の誇るべき成果だと思うのです。私は文部大臣がこうしたことをやり遂げた全国の教師、学者、民間教育団体などに対して敬意を表し、この取り組みを励ますことがあってもしかるべきだと考えるのでございますが、この点でひとつ御意見を伺いたいのであります。  次に、教育課程改革試案がこれで万全だというものではないだろうと思います。実際、細部について見ますと、民間の教育研究団体や教師の間で意見の異なる問題も含まれております。しかし、だからと言って、この試案をつくり上げたことの意義がなくなるというものではないことは明白であります。しかも重要なことは、この試案の作成者が国民の中で論議が旺盛に行われることを期待していることであります。この試案には、広く国民の皆さんによってこれが今後徹底して批判、検討され、自主編成の参考にされることを期待する、と書かれていますが、私は、教育課程編成に当たってこうした立場で臨むことが必要だと思うのであります。文部省教育審議会の会長をしておられる先ほどお話のありました高村さんは、私個人としては日教組案のいい面を反映させたいと述べていますが、反映すべきことは試案の個々の内容だけでなく、こうした民主主義的な立場を貫くということであると私は考えるのでありますが、大臣の見解をこの二つについて伺いたいのであります。
  174. 永井道雄

    永井国務大臣 まず、ただいまの御意見について申し上げますと、高村会長もすでに公に述べておられますように、今回の日教組の調査ないしはそれに基づきます考えというものも会長は積極的に取り入れるべきものは取り入れるべきであるというふうに申しておられますが、実は昨年もすでに公聴会において意見も承っておるわけでありますから、そうした会長の御意向を私は尊重いたしたいと思います。  なおまた、日教組に入っておられる先生方に限らず、そうでない先生方の中でも、一般にわが国の先生方が現在の教育の現状というものについて深く配慮されて、そして日々の教育の実践というものを反省して、そしてさらによい教育をつくろうという御努力を重ねておられることに対しては、私はあまねくわが国教育界で御活動になっておられる方々に対して敬意を表するものでございます。  しかし、他方におきまして、教育課程審議会は文部省設置されました審議会であり、そしてまた、その審議会でも各界の専門家、各界と言いますのは、教育界におけるいろいろな部面にわたる専門家の御意見というものを集大成いたしまして、これも年月をかけて当然公の審議会として果たすべき役割りを果たしていくわけでありますから、この審議会の意見というものがわが国教育の将来をつくり上げていく中核的なものになるべきであるということは、言うまでもないところでございます。しかし、それは他のものを排除するということではなく、高村会長が言われるように、いろいろな現場の意見というものを積極的に取り入れ、そしてそれを積極的に生かしていくものでなければならないという点におきましては、教育界全体の力によりましてわが国教育教育課程審議会を中心に一層の前進を進めるべきものであると考えております。
  175. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に包括的な質問をして終わります。  私は、教育行政が憲法、教育基本法の民主主義的な原則にのっとって行われるのであれば、教育行政は学校が子供の人間形成を助けるという本来の仕事に専念できるよう保障することだと思います。たとえば、教育内容や方法などが学問研究の成果に依拠して行われるよう、その枠組みを準備し、必要な教員組織や施設設備などを整備することが教育行政の中心的な任務でありますし、教育課程行政について言えば、従来のように教育課程審議会の答申を受けて文部大臣が学習指導要領を定め、これを学校に法的拘束力があると言って押しつけるような一方的なやり方を改め、教育課程の具体化に当たっては文部省と現場の先生との間でよく話し合い、それぞれの学校や教師の自主性、創造性が最大限発揮できるようなものにしていく必要があると考えるのであります。教育課程は現場の先生がつくり上げていくものであるという原則に立ち返り、これを文部省は大いに助けていくというものにしていくことが重要であると考えます。このことが日本の学力問題を解決し、教育の荒廃を救う道でもあります。今回の教育課程改革試案の発表は、日本の教師の間にみずからの力で教育課程をつくり上げていく気概と力量もあることを証明したと私は思うのであります。こうした点について大臣の見解を再度伺っておきたいのであります。(発言する者多し)いろいろやじが飛んでおりますけれども、実際に民主主義的な原則ということが大事なのです。一方的な見解を押しつけて日本教育を今日まで荒廃させてきたのは一体だれかということを言っておきたい。
  176. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの問題につきましては、旧来の学習指導要領におきましても、第一ページ目になるほどこれを義務づけてはおりますが、学習指導要領に書かれているとおり、いわばまるのみにただそれを学校で実践をすることは望ましくない。それは地域の実情というものも考え、また、子供の中に、たとえば早く進む子供、遅く進む子供がございますから、そうした実情というものを踏まえて学習指導要領を用いていくようにということが第一ページ目にございますから、実は旧来の学習指導要領——現行の学習指導要領でございますが、義務づけている側面はございますが、現場においてこれを自主的に活用するということなしには現行の学習指導要領というものも実は本当は活用できない種類のものでございます。  私の理解いたしますところでは、高村会長を初め、今回の教育課程審議会におきましては、さらにこの学習指導要領というものを検討され、そうして日教組の場合よりは、約その半分程度でございますけれども時間の削減というものも考える、そうして精選した内容にされるということでございますから、当然従来より以上に学習指導要領というものを活用いたします場合には、従来もそうでありますが、それ以上の自主的な活用なくしては実は教育の現場は生きてこないというふうに考えております。  私が昨年十二月、当初主任制度について述べました場合に、校風をつくろうとか、あるいはそれぞれの都道府県において学習の根本的なあり方を考え、さらに各学校においてもそうした計画をつくることが自主的に行われることが望ましいということを申しましたのも、そうした今日の教育課程審議会の将来へ向けての御発展というものに即して私は見解を述べたわけでございます。したがいまして、私は、学習指導要領が出るということが直ちに、これは義務づけられておりますけれども、自主性と相反するというふうに把握をされる方々がございますといたしますと、これは学習指導要領の基本的な性格についての正しい御理解ではないというふうに考えるわけでございます。  しかし、ともすれば、学習指導要領は画一的であって、これは義務一方のように傾いている、そして他方、自主編成というものだけが自由である、そして両者氷炭相入れぬものであるかのごとき議論がたまたま行われることもございますが、かようなことは実は指導要領の理解それ自体につきましても必ずしも正解とは言いがたいわけでございまして、私は、現在こうした検討が各方面において行われておりますのを機に、そうした誤解がなくやはり検討されているし、改善される指導要領というものを中心に、各現場における自主的な活動というものが一層盛んになっていく、さような方向を会長も目指されておるわけでありますから、そうした方向が生まれていくようにわが国文部省の行政に当たっていきたいと考えている次第でございます。
  177. 山原健二郎

    ○山原委員 時間がたっておりますので、これで終わります。
  178. 三塚博

    ○三塚委員長代理 馬場昇君。
  179. 馬場昇

    馬場委員 ただいまも議論になったわけですけれども、くしくも最近相次いで、文部省教育白書が出ましたし、日教組の学力実態調査が出ましたし、それからさらに教育課程改革の試案が出たわけでございます。これはもう日本の非常に重要な教育の問題を提起しておるわけでございますので、私もこの点について文部省の見解を最初にただしておきたいと思います。  五月七日に、文部省の「我が国の教育水準」、いわゆる教育白書が、これは五年ぶりじゃなかったかと思うのですけれども、出ました。これを、そう詳しくは読んでおりませんけれども、一読しまして、わが国教育が量的に非常に高度成長をした、こういうことがはっきりあらわれておるのじゃないかと私は思いました。高校進学率は十年間で二〇%ぐらい上昇して五十年度に九一・九%になった。大学進学率も十五年間で三倍ぐらいになって三八・四%になった。一時教育爆発というような言葉が言われましたけれども、まさにこの白書が量的なそういうものを物語っておると私は読んだわけでございます。  五月七日に文部省教育白書が出ましたが、それから五日ぐらい後の五月十二日に、日教組の教育課程改善のための学力実態調査というのが発表されました。  この調査を見ますと、学力の落ちこぼれといいますか、私はこれは落ちこぼしと言った方がいいのじゃないかと思うのですけれども、いずれにしても、その落ちこぼれが物すごく多い、学力の質というものが停滞しておる、あるいは低下をしておる、さらに、学力の格差が増大しておる、こういうことがこの調査ではっきり出ておるわけでございます。小学校の五年の漢字書き取りで半分以下しか書けなかった児童が四四%おるとか、あるいは中学一年の数学で整数の割り算が全くできなかった生徒が三〇%おるとか、これはちょっと思い出すのですけれども、かつて全国の普通科の高校長会が、これはアンケート調査ですけれども、教育課程についていける生徒は三割ぐらいしかいないのだ、こういうことを報告したことがございますけれども、くしくもこれと大体似ているようなことが出ているわけでございます。巷間教育課程についていける子供のことを、七五三教育だ、こういうことも言われたことがあるわけでございますけれども、この調査は大体そういうことをあらわしているような気がするのです。  文部省教育白書、日教組の学力実態調査、この二つを見てみますと、今日の日本教育の量の問題と質の問題というものを端的にあらわしておるような気が私はいたします。こういう点について、文部大臣の御見解をまず聞いておきたい。
  180. 永井道雄

    永井国務大臣 教育白書の方は、確かに、御指摘のように、五年に一回出すものでございますし、そして、五年間のわが国教育というものを、水準という言葉を使っておりますが、計量的な角度から調べてまいりましたものの集大成という面が強いということは事実でございます。  ただ、それではいわゆる質的側面というものが全く考えられていないかというと、そうではなく、やはりこの白書におきましても、教育課程の審議が進んでおりますとか、あるいは、現在のわが国におきましては、学校教育の拡大に伴いまして、さらに学校外の教育というものが重要になってまいりましたから、質的に見ますと、従来のように学校教育一辺倒というふうな把握ができないというような意味において教育の性格に変化があるということを指摘いたしておりますから、確かに重要な計量的な統計の結果を示しているものでありますが、同時に、わが国教育が抱えております主要な問題というものもまたここに指摘されているものと考えます。  ただ、しばらくおくれて出ましたところの日教組の調査の方は、義務教育期間におきますわが国の児童生徒の学力、理解度の調査でございますから、そうした種類のものは全国教育研究所連盟で行ったものがあり、この白書に入っておりませんが、私は日教組の調査というものはそうしたテーマを取り扱ったものとして、またきわめて重要なわが国教育問題に対する指摘であると考えております。
  181. 馬場昇

    馬場委員 私は、ここで文部省教育白書がいいとか悪いとかという議論をしておるわけではございません。この二つを、たまたま同時期に出ましたから読んでみて、量の問題はある程度成長したけれども、質の問題がやはり問題があるのじゃないかということがおわかりになるでしょうと、こういうことを聞いておるのです。そこで文部大臣もうなずいておられますから同じ意見だろうと思うのですけれども、やはり質の面で見てみますと、言葉はなんですけれども、質の荒廃というような事実がたくさん出ておると私は思います。いま出ましたように、落ちこぼれ、あるいは落ちこぼしの児童生徒の問題、さらにやはり質のところからくるのじゃないかと思いますけれども、非行がふえておるという問題とか、あるいは自殺などが非常に増加しておるような問題、それからさらに大学も、入試を頂点とする受験戦争の問題がやはりあるわけですし、それからこの受験戦争に勝利するために小学校のときから塾通いで、最近異常な塾ブームというものがあるわけでございますし、こういう点をとってみますと、最近の教育の質が非常に荒廃しておるというぐあいに見なければいけないのじゃないかと私は思います。こういう点につきまして、文部大臣、その荒廃の現状、それがどういうところに大きい原因があるというぐあいに考えておられるのか、お聞きしておきたいと思うのです。
  182. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの御質問は、実は非常にむずかしい問題でございまして、簡単なお答えを申すこともできず、また申し上げるべきでもないと考えますが、何と申しましても大事なことは、過去五カ年間、さらにその前の十カ年間、およそ昭和三十五年ごろから今日までの十五カ年ぐらいがわが国学校教育の規模の急膨張時代であったというふうに把握できるかと思います。そこで白書の「むすび」の個所に申しておりますが、そうした急膨張時代からいまどこに向かっていくべきかということになりますと、御指摘のように小、中、高の教育内容整備充実ということも大事でございますが、とりわけその問題がきわめて目立っておりますのは高等教育でございまして、高等教育においてもそれを行うべきであるというふうに白書は指摘をいたしているわけでございます。ただ、拡張だけが原因かといいますと、必ずしもそうではなく、その拡張の過程におきまして必ずしも制度的に満足のいく形ででき上がってきておりませんから、たとえば大学の場合に国、公、私の格差がございましたり、あるいは同じく国立の中でも、一部の学校にぜひ入学したいということから起こりますところの競争の激化というようなことも小、中、高の教育に与える影響はきわめて大であったかと考えます。また、カリキュラムの内容が過密であるというようなことは、教育課程審議会においても指摘をされているところでありますが、そうしたことも重要な問題であり、要約いたしまして一言でただこれだけが問題というふうにもなかなか言いがたいほど複雑な要因をはらみつつ現在のわが国教育はいろいろな問題に直面していると私は認識をしております。
  183. 馬場昇

    馬場委員 いま言われたとおり、いろいろな原因がこういう問題点あるいは荒廃というものを起こしておる理由だと思うのですけれども、その中の一つで、いま大臣からも出たのですが、一流の企業に就職をしたい、一流という言葉を便っていいかどうかわかりませんけれども、りっぱな官公庁、普通言われているところに入りたい、そういうためには一流の大学に行きたい、こういう学歴偏重の社会風潮というのですか、そういうところにやはり教育内容を荒廃させる基盤がある、こういうぐあいに当然考えられるわけでございます。また、さっき十年とか十五年とか言われましたが、この教育政策の中で、やはり私は教育政策というものが、いま言われました十年間の中でやはり経済の高度成長政策というのが行われてきたのですけれども、そういう経済の高度経済成長政策とその教育版といいますか、そういうような教育の行政が行われてきたのじゃないか。さらに、たとえば産業界等の要求を入れ過ぎたような要請が非常に強かった。私どもが見るところでは、たとえば中教審路線ということを言うのですけれども、そういうところにもやはり問題があったのじゃないか。この中教審路線というのも、高度経済成長政策と同じような路線じゃないかと私は思うのです。それから次々に、その中の一環として教育課程の改定が三回ぐらい行われておりますね。これはやはり私は、改正じゃなしに、この改定がいまのような状態を引き起こしている原因の一つになっているのじゃないか、こういうぐあいに思います。一つ一つ内容については、時間がございませんけれども、総括的に私の結論を言いますと、やはり人間の心の安定成長政策といいますか、そういう問題だとか、中でも教育の質的充実をする政策というもの、これが過去の反省の上に立った当面の緊急な文教政策の課題じゃなかろうか、こういうぐあいに思います。そういう意味で、やはりいまの時点というのは原点に戻るといいますか、憲法とか教育基本法の精神にのっとって、こういう荒廃の現状からどう抜け出すかということを目標にして抜本的な教育改革というもの、そういうものをいま検討しなければならない時期に来ているのじゃないか、そういう時期がいまじゃないかというぐあいに私は思うのですけれども、総括的な文部大臣の、いま私の言いましたような考えに対する意見を聞いておきたい。
  184. 永井道雄

    永井国務大臣 原則といたしまして、教育基本法を尊重していくということが大事なことは言うまでもないと思います。ただ、そこで包括的に現在の教育をどうとらえるか、また、中教審がどうかということでございますが、私は実は中教審の答申というのはかなり厚いですから、いろいろなことが書いてございまして、中教審路線というほど一言で表現をいたしますと、やや把握の仕方として問題を生じてくるのではないかというふうに考えているわけでございます。したがいまして、確かに当時は高度経済成長期の終わりでございましたから、そうした意味において今後の教育投資を見直すという場合の試算を見ますというと、当時の経済社会五カ年計画というものが下敷きになっているという点ではなかなかあの試算というのは数で大きくなっておりまして、今日は維持しにくいという点では、当時の高度経済成長政策と関係はございましょうが、しかし実を申しますと、たとえば私学振興というものを非常に重視しなければならないというような、そうした側面を取り上げますと、むしろ高度経済成長の初期におきましてどちらかというと軽視されていましたものを軽視すべきではないということを指摘している点においては、今日も重要な考え方であろうかと思います。私学振興助成の問題、これは一般的に申しまして私は幾つかの原則があると思いますが、これからは初、中等あるいは高等教育を通しまして整備充実段階に入っていく、その意味におきましてはいわゆる拡張政策というような形の改革というものを行う段階でないと思っております。  ところで、そこに幾つかのひずみがございますのは、先ほど申しましたような格差というものがございます。これは高等教育において最も顕著にあらわれておりまして、これに取り組んできておりますが、これを一層進めなければいけない。また、その格差の問題が高等学校教育の場合にもございますから、この問題にも取り組んでいく。それを考えますと、初等、中等の方がまだしも格差がないということに相なろうかと思います。  しかし、第二番目の原則といたしましては、整備充実の方向として現在、整備充実をいたしまして画一化するということではなくて、整備充実をいたしまして多様化す。そして、多様化しましてそれぞれの個人の能力、適性というものに適しておって、しかもそれを十分に伸ばしていく方向を考えるということが重要なのではなかろうかと思われます。  また、中教審答申にはなかったのですが、その後の中教審の答申において非常に指摘されましたわが国教育の国際化の問題というものは、いわゆる四十六年の答申にございませんけれども、後の答申の要点でございますが、これは学術研究だけではなく、わが国教育全体を通して考えていくべき第三の柱であろうかと考えております。  さらに、学術研究の中では、そのほかに文部省が昨年出しました「我が国の学術」というものがございますが、一例をエネルギー問題にとりますと、これについてわが国が非常に苦慮していることは国民周知の問題でございますので、たとえば核融合の研究を充実していくというようなことは国民の今後の存続の基本的条件でございますから、そうしたものは特に力を注いでいかなければならないことの一つである。  以上四つの角度から申し上げましたが、教育改革というものを考えていく場合、今日考えられますのは、そうした形で今日以後のわが国の経済、社会の態様というのは、どちらかと申しますれば安定成長の方向に向かっていくことが予測されますので、当然それに即応した姿でさらに長期を望んで、学歴をめぐる過当競争というような形で教育がゆがめられないように配慮をいたしながら、いま申し上げたような点を特に重視して教育内容の改善に努めていくべきものであると考えております。
  185. 馬場昇

    馬場委員 きょうの質問はせっかく文部省が出した白書とかあるいは日教組が出した調査とか非常に共通部分が多いのですよ。だから私は、共通部分をお互いに話し合ってそして日本教育振興していくべきだ、こういう立場で実は質問をしているのです。  そこで、いま文部大臣からいろいろ四つの点についてお話がございました。私は具体的な点について、こういう荒廃の原因は、さっきも言いましたように、学歴偏重社会というものをどう是正するかという問題、そういう大きい問題がありますし、いま言われましたような大学間の格差をどう是正するかという問題、それから入学試験地獄をどう解消するかという問題、さらにまた、後で言いますけれども、教育課程の改定をどうするかというような問題、それから学級定数や教職員の問題を中心とした行き届いた教育を現場においてどうするかという問題、こういう問題など山積して、まだほかにあると思いますけれども、こういうことに取り組んでいかなければならぬ。だから学歴社会の風潮というのは変わるだろうか変わらないだろうか、こういう問題の把握じゃなしに、やはりそれを教育の力でといいますか文部行政でといいますか、この学歴偏重風潮の社会を変えるのか変えないのか、こういうところが問題だろうと思うのですが、その辺についての決意のほどをまずお答え願いたいのです。  それから一つ一つについて、いま私が四つぐらい言いましたけれども、これをどうするこうするということは、もう時間がございませんから答弁はいただかなくて結構ですけれども、やはり私が言いました学歴偏重社会の是正とか大学間の格差の是正、入試改善とかあるいは教育課程の改善とか学級定数、教職員定数、行き届いた教育の問題、こういう問題について、これらのものを含めた教育改革を憲法、教育基本法にのっとって一生懸命やらなければならぬ、こういう決意のほどをこの問題の最後にお聞きしておきたい。
  186. 永井道雄

    永井国務大臣 まず学歴偏重社会に限って申し上げますと、私は、学歴偏重社会というものを是正いたしますために全力を挙げなければいけないというふうに考えております。  その方途といたしましては、これは学校だけで解決できない問題をはらんでおりますから、文部省も労働省と連絡会議などを開いておりますし、また労働省も今日の社会における学歴と賃金の関係につきましても最近新しい資料を発表したばかりでございますが、この種のものが、事実人々が一般に考えているよりもすでに学歴が偏重されない方向に向かいつつあるということの認識を広めていくことが大事であると思います。しかし、それは文部省より労働省の問題ですが、文部省としてはそうしたものとの連携のもとに学歴偏重社会の打破のためにいろいろと施策を進めてまいっております。  それは、先ほど申しました国公私というものに格差がございますために国立卒が偏重される、あるいは国立の中でも一部の大学が偏重されるという傾向にございますので、これは全力を挙げて国公私の格差是正を図らなければいけない。しかし、他方、高等教育懇談会におきましても、いままでの大学、短大というようなものでないものも高等教育の中に数えてはどうか。それは具体的に申しますと、高等学校を卒業して入ります各種学校でございますが、それはまことにもっともな考えでありますので、この四月一日からそうしたものを専修学校として認めまして、すでに八百の専修学校があり、その専修学校の卒業生というのは、学位は取りませんけれども、身についたいわゆる技能を持っておりまして、就職率も非常に高い。そういたしますと、こういう意味で、いわゆる学位を取らない高等教育というものが始まってきたということが従来の高等教育の観念を変えていく上で非常に大事だ、これは進めたいと思っておりますし、そのほかに通信教育あるいは放送大学教育、こうしたものも、学歴偏重というものを教育社会の方から変えてまいりますために私は非常に重視して進めてきておりますし、実はすでに相当程度新しい方向に踏み出してきている、これをぜひとも進めなければならないというふうに思っております。  なお、そうしたことと入学試験制度、そういうこと、それから御指摘の教員の定数の問題等すべて関連をいたしておりますが、そうしたものを、詳細に一つ一つ申し上げますと時間をとりますから省略をいたしますが、先ほど申し上げたような基本的な精神で学歴偏重の風潮につきましては、文部省といたしまして今日までもその政策で当たってきておりますが、なお一層その方向で、教育界においてできますことは全力を挙げたいというふうに考えております。
  187. 馬場昇

    馬場委員 具体的な問題で、教育課程の改定の問題について御質問したいと思うのですが、これは先ほども議論になっておりましたように、五月十七日に日教組の教育課程検討委員会というものが教育課程改革試案というのを発表しました。新聞等でも出ておりましたけれども、そのねらうところは、ゆとりのある授業、楽しい学校、こういうものを実現する、こういうことで、たとえば授業時間一つ例をとってみましても、大体二割以上ぐらい削減を提起しておるわけでございます。これについては、先ほど議論になりましたのは私も聞いておりましたから、これに対する文部大臣の見解はもうお聞きいたしません。これが一つ出たわけです。  そこで問題は、文部省教育課程審議会のことについて状況をお聞きしたいのですけれども、現在のこの審議状況はどうなっておるのか、それから、日教組の教育課程検討委員会が出しました試案というので楽しい学校、ゆとりのある授業、こういうぐあいに言っておりますが、そういう問題についての内容がどの辺まで進んでおるのか、それから、時期は大体今秋とかにというふうに言っておられますけれども、いつごろこの答申が出るのか。文部省教育課程審議会の審議状況、内容答申の時期、こういうものについて、これまた時間がございませんので、結論だけでも答弁していただきたい。
  188. 永井道雄

    永井国務大臣 文部省の方の教育課程審議会とそれから先ほどの日教組の案というものとの類似性は、時間を削減するという点では一致しているわけでございます。ただ、削減時間の比率につきましては、日教組の方がおよそ二割程度というのですが、高村会長のお示しのところでは約一割程度ということで、内容に違いがございます。  この進め方でございますが、これは従来から学校関係者の意見を聞きながら進めてまいっておりまして、昨年の十月にすでに中間まとめというものを発表いたしました。そして中間まとめについて教育界の御意見というものをさらに求めるという手続を経たわけでございます。そしてそのいろいろな御意見というものを反映いたしまして、この秋ごろに答申をいただく予定でございます。  その内容の詳細にわたれませんが、三点を申しますと、まず第一には、人間性豊かな児童生徒を育てる。二番目には、学校生活にゆとりを持たせて、まあゆとりを持たせてぶらぶらするということではなく、やはりゆとりを持たせて、むしろ充実したものにしていくということ。そして三番目には、基礎的、基本的な内容を重視いたしまして、これは国民に共通に必要とされるものでありますから、それが不消化にならないように学習させると同時に、それだけでは画一的に流れますので、個性や能力に応じた教育が行われるように、この三点が答申基本的な方針、方向でございます。
  189. 馬場昇

    馬場委員 もう少し内容にかかわって二つだけ聞きたいのですが、文部省教育課程審議会の検討で、授業時間を減らすという方向は聞きましたが、週五日制というものを前提にして減らすようにしておるのか、週五日制じゃなくても、それを基盤にして減らすのかどうかという、週五日制の検討の状況、それからもう一つは、高等学校を義務制化するというような方向で検討されておるのか、そういうことは全然頭にないという方向で検討されているのですか。この五日制と高校義務化との問題についてお尋ねします。
  190. 永井道雄

    永井国務大臣 教育課程審議会は、まず高等学校義務制ということは考えておられないわけです。そうではなくて、現在の高等学校、これが九一・九%にふえた。そういたしますと、従来の形の教育課程では不適切であるから、そうした現状というものが今後この形で推移していくという予想のもとに義務教育ではなくいまの形のものにふさわしい教育課程を考えておられるということであります。  なお、学校五日制という制度の問題というものを教育課程審議会は考えておられません。しかしながら、全体的な時間の削減ということを考えておられるわけであります。
  191. 馬場昇

    馬場委員 先ほども申し上げたのですけれども、日教組の教育課程改革試案というのがいま出ましたし、審議会もいま盛んに大詰めに向かっていっているということでございますが、やはりその内容で先ほども言いましたように、ゆとりのある教育とか楽しい学校、授業時間の削減の方向という点は一致しているわけですよね。こういうことですから、文部省、日教組、よくけんかをしますけれども、この問題については日教組の教育検討委員会というものも、御承知のように大学の先生など二十人くらい、現場の先生が六、七十人くらい、そういう人の現場的発想で、あるいは民間教育団体等の協力を得て、ずっとやっておるわけでございます。高村会長も新聞発表でいろいろおっしゃっておられましたけれども、審議会はいま検討中ですから、たまたま一つの資料が出たわけでございますから、これはやはり審議会も重要な資料として検討してもらうべきじゃないかということ、できれば何回か両方の代表でも寄って意見交換をするというような場所でも持った方がいいのじゃないか。そしてやはり共通な土俵というものをそこでつくって、そうして文部省、現場相協力してりっぱなものをつくり上げる、こういうことがいま大切じゃないか。いま話し合いとか土俵とかそういうものがありませんと、またできたものに賛成だとか反対だとかいろいろなってくるのじゃないかと思いますが、そういう意味でやはり共同討議の場をつくるとか、共通の土俵を持つとか、こういうことをぜひ私はやってもらうべきだと思うのですが、先ほどもちょっとお答えになっておったようですけれども、どうですか。
  192. 永井道雄

    永井国務大臣 この教育課程審議の過程におきましては、昨年三月あるいはそれ以降、全国的に小中高の校長、教員等の御意見を承るというプロセスを経ます中で、いまの梅根悟和光大学学長は日教組の方の委員長でありますから、御意見を聴取いたしました。また中間まとめが出た段階におきましては、槇枝委員長と私と意見を交換をいたしまして、それをテレビで撮ったという事実もございます。  ただ、その後主任制をめぐりまして対立の側面がございましたけれども、私が、就任のときに考えました、また公表いたしました教育について対話と協調を行うという考え方、事情の変更は多少ございましても、いささかも変化はございません。したがいまして、今後もそうした方針を持って臨んでいきたいと思いますが、具体的にこの教育課程についてどのような方法が適当であるかということはしばらく考えさしていただきたいと思いますが、原則は就任のときと全く同じであるということをここではっきり明確に申し上げておきたいと思います。
  193. 馬場昇

    馬場委員 文部大臣の対話と協調、三木総理大臣の対話と協調というのが言葉があって実際は違うという批判もありまして、しかしこの際教育課程の問題、たまたまこういう資料があるわけですから、これで本当に対話と協調というのはこういうものだという国民が納得するような、口先だけで中身がないじゃないかということにならないように、ぜひこの問題でやってもらいたいと思うのです。  そこで話を別な問題に変えますが、教科書の検定の問題について一言だけ聞いておきたいと思うのです。  これは私が実際に調べたわけじゃございませんけれども、現在検定作業が行われております小学校の五十二年度の教科書検定で、社会科の教科書の公害にかかわる記述のところに何か規制が加えられておる、こういうことが報道されております。私はその報道でこれを知っておるわけでございますけれども、その報道の中で言われておりますのは、たとえば五年生の下の教科書で、七二年ストックホルムでの人間環境宣言の紹介で、世界じゅうの人々が公害について無関心でいるならば、人々の生活や自然に対して取り返しのつかない害が広がるであろう、こういう意味のことが強く述べられておるそうです。これに対して宣言自体の評価に疑問があると言ってこれに修正の要求がある。こういうことが書いてございます。  また、ほかにたくさん書いてありますけれども、この例の一つですけれども、もう一つは、同じく五年の下のところに、四日市公害訴訟で会社に被害者が抗議している写真が使ってある、そのところの被害者代表が右手を挙げて指さしている点を指摘して、これは表現がよくないということで取りかえろ、こういうような指示が行われた、こういうことを実はこの報道によって私は知りました。ずっとほかにたくさん例があるのですが、その検定の方向を見てみますと、やはり公害について被害の実態を書くことを避ける、こういうような方向で修正の要求が出ておるように思えますし、企業の立場というものを何か擁護するとか、こういうような立場でその記述の修正が求められておる。そして公害反対運動についての記述を何か政治的だというような判断のもとで修正を求められておる、こういうような感じが私はこの報道でするわけであります。これで、結局公害はある程度やむを得ないのじゃないか、こういうようなことがそういう修正に応じますと教育の中で私は行われるのじゃないか、こういう心配をするわけでございます。  これは大臣も御承知と思いますが、もはやこの公害の問題は、これはイギリスなどでも生涯教育の対象にこれを入れるのだ、公害教育を入れるのだということでもございますし、昨年の国際環境保全会議でも、京都で行われた中でも、とにかく小学生のころから環境教育を行うべきだ、こういうぐあいにも言っておりますし、まさに公害教育、環境教育というのを推進し、それから自然と環境を守るというのは、これは世界の趨勢でもあるし、人間を守る上に非常に大切なことだろうと思うのです。  そこで、私はきょうはここで教科書の検定が、これは検閲だから憲法違反だというような議論はしません、私はそう思っているのですけれども。そしてまた非常に秘密主義だ、こういうこともけしからぬと思っているのですけれども、これについても大臣から聞こうとは思いませんが、やはり公害のいまの状況を見てみますと、一ころ公害問題で非常にこういう論も高まりましたけれども、また財界とか、産業界からの巻き返しが起きてきておるような風潮を私はいま社会的に感ずるのです。  そういうことですから、余り時間がございませんので、結論だけお尋ねしたいのですけれども、この公害記述に厳しい規制が実際教科書検定で行われたのかということが第一点です。そうして第二点が文部大臣の公害教育に対する基本的な態度はどうですか。この二点について端的にお答えください。
  194. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの、まず私の考えの、第二点のほうから申しますと、私は公害についての教育というものは非常に大事であると思います。そして人間と自然、そして技術との間に健康な関係を取り戻すために全力を挙げるべきである。ただ、その間におきまして児童生徒の発達段階がございますから、それが不消化な教育になりませんように、そうして、そうしたものを十分に考えさせて、さらによりよい社会をつくっていくような教育に向かうべきであると考えております。  なお、ただいま第一点の方の御指摘になりました公害教育の記述についてチェックをするのかということでございますが、これは、私はいまここに資料を持ってきておりませんけれども、某新聞に五点を列挙しているものからの御引用であるかと思います。そのうち二点御引用になりましたが、これはむしろ事実関係の問題ではなかろうかと思っておりますのは、第一点といたしまして、ストックホルムの宣言、これがどうも内容がよくないということではないのでございます。そうではなくて、ストックホルムの宣言は御承知のとおり、わが国が非常に公害問題に苦しんでいる国であり、そして、当時は環境庁長官も参加してこれは採択した宣言でございますから、わが国政府としても当時以来今日まで尊重すべきものであることは言うまでもないわけでございます。問題となりましたのは、その宣言のどの部分をどういうふうに載せるかということだと理解いたしております。と言いますのは、それが繰り返しになっている個所があったというようなことで、その繰り返しにならないように、配列の仕方が問題点であるということであります。  それから、私はいま資料を持ってきておりませんから記憶をたどって申し上げているのですが、二番目におっしゃいましたのは、公害に反対する大衆とか住民という題になっている。ところが、その写真は団体の交渉をしているところで、指をさしている写真だったので、そうではなくてデモ行進をやっている写真にかえていただいた、題と写真を合わせた、そういう問題であると理解をいたしております。ただ、これは現在白表紙段階のものでございますから、最終的にまだどういう姿になるかわかりませんのですけれども、こうした事柄についてなるべく誤解のないように、公害教育は大事なのでございますから、私は事実に即してお話しを申し上げているわけですが、私の理解いたしますところでは、その段階において、ただいま御指摘になりましたものについては以上のような事柄であったというふうに理解をいたしております。
  195. 馬場昇

    馬場委員 私はここにその報道を持っているんですけれども、いま大臣五点と言われましたけれども、ここには修正提示の例と言って六点書いてあるのですけれども、実際はこの記述を見てみますと、たくさんやられているようでございますね。例が六点出ているだけでございます。実際やはりこの五点でも——大臣記憶があるならば五点でもいいのですけれども、この記述にありますように、理由は見解の相違はありますけれども、いま言われたようなかっこうで修正を求められたということは事実ですか。
  196. 永井道雄

    永井国務大臣 これは別にその教科書に限らず、公害問題に限らず、たとえば絵とタイトルが合っているか、これは全く子供に読ませるときに大事なことでございますから、そういうことは意見を述べ、修正をするということは、他の教科書の場合また公害に関連のない場合にも当然教科書をつくり上げていく過程において行われているわけでございまして、別に激しい対立点というようなことではなくて、そういうことが行われることはあるわけでございます。
  197. 馬場昇

    馬場委員 これはこの報道が事実あったと——ほかにもあるわけですけれども、言われたわけですけれども、私が読む限り、これはやはり公害を隠蔽するとかそういうような感じがしてなりません。だからこれは議論になりますから、文部大臣は公害教育は必要だ、進めなければならないということをはっきりおっしゃっておるのですから、これが逆行しないように、こういう点は十分考えた文部行政をぜひやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから次に、学校の統廃合の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず文部大臣に、学校の統廃合の文部省基本的な今日の指導方針を聞いておきたいと思います。
  198. 永井道雄

    永井国務大臣 学校統廃合の基本的な方針でございますが、これはまず学校統合というのは、小規模学校がございますから、これを適当な、適正な規模にするということでございますけれども、その適正な規模というものの目標はやはり教育効果を向上させるということでございます。  他方、学校というものは地域の文化的な中心でもございますし、また精神的な結合の基盤にもなっておりますから、学校を統合いたしますと、申し上げるまでもありませんが、学校の廃止でありますとかあるいは位置の変更ということから関係住民に影響を与えるということがございます。そこで統合ということを教育効果という角度から考えまして進めるべきではありますけれども、余り単なる統合という形式にとらわれることがあってはならないのではないか。何といいましても児童生徒の親御さんたちのお考え、お気持ちというものを十分に考えませんと、学校教育はその実を上げませんから、土地の実情に即しまして、また将来の児童生徒の数の増減の動向というようなものも考慮いたしまして、形式的な統合ではなく、住民の理解と協力のもとに実施すべきである、これが基本的な方針でございます。
  199. 馬場昇

    馬場委員 当然な方針だろうと思いますし、私もやはり教育効果というのにもこの三十一年以来ずっと統廃合やりまして、熊本県の例を挙げてみますと、昭和四十五年から五十年まで六年間で三十七の統合小中学校が実は発足しておりまして、その間四十二の小中校が廃校になっております。だから廃校になった後のその地域の問題だとか、それから統合した学校教育効果とかいろいろ問題があるわけですけれども、ここではそういう問題点は申し上げませんけれども、いま大臣が言われましたように、そういう例から見ましてもやはり統合というのは教育効果の面にもいろいろ長短があるわけですし、さらに地元のそういういろいろな問題がございますので、慎重に取り扱うべきだといまおっしゃいましたが、そのとおりです。だから地元の反対を押し切って統合は強行すべきじゃない、私はこういうぐあいに思います。その点について具体的に、これは大臣御存じなければ局長にお尋ねしたいと思うのですが、熊本県の球磨郡球磨村というところで中学の統合問題が起こっております。これは四つの中学を統合して一つの中学にしよう。こういうことで統合いたしますと、生徒の数は五百七十人と非常に多くなるようでございます。こういう計画が実はあります。これについてその一つの中学、名前言いますと渡中学という百七十五名ぐらいおる中学です。これは小さい学校ではございません。大きなりっぱな学校ですけれども、そこを存続してくれ。だから結果としては統合反対だという非常に強い住民の反対運動が実は起こっております。しかしその統合するところに、統合すべき位置にある一つの中学校の校舎の改築が現在行われておるのです。これについて、だれか御存じの方で結構ですけれども、この中学がいま改築が行われているのですけれども、これは統合中学として改築しておられるのですか、それとも現校舎の改築として行われておるのですか、これについてちょっと聞いておきたいと思います。
  200. 清水成之

    清水政府委員 結論から申しますと、危険校舎ということで補助金をつけております。当初、統合中学校という申請が初めはあったわけでございますが、地元のいまおっしゃるような状況等もございまして、その後危険校舎ということで変更をされまして、それに応じて五十年度補助金を出して工事を進めておる、こういうことでございます。
  201. 馬場昇

    馬場委員 小さい問題になりますけれども、やはり地元で非常に大きい問題になっておるのです。そして、私が見ますと、その統合に持っていく方法などについて、後でもちょっと質問しますけれども、大変な問題が起こっておりまして、このまま推移いたしますと、結論から申し上げますと、登校拒否とかいう大変な問題が起こり得る可能性があるわけでございますけれども、その中で、念のために聞いておきたいのですが、ここにこの村の「公民館報」というのがあるのですけれども、いま危険校舎で改築しているのを統合中学の建築だということで、「高らかに統合中の槌音」と、こういう写真まで載っているわけですね。これはいま文部省の危険校舎の建築だという、これは間違いですね。
  202. 清水成之

    清水政府委員 文部省として、統合を認めて補助をつけたことはまだございません。
  203. 馬場昇

    馬場委員 次に、村の教育委員会が、中学校は義務教育ですから、義務教育の中学校に対して、入学を確認してお願いいたしますということで、保護者の名、生徒の名、そして印鑑を押して、中学入学をお願いしますというような署名運動をやっているのです。義務教育学校に生徒名、保護者名、それに捺印して、お願いしますということは必要でないと私は思うのですが、念のために、こういうことは必要なのですか。
  204. 清水成之

    清水政府委員 制度的に申しますれば、校区が決まっておるはずでございまして、就学児童の、どこの学校へ就学するかということは、これは教育委員会が指定をする。まあ例外的に他校区へ行く場合にはまたそれぞれの承認手続というものがございますが、制度的にはいま申したとおりでございます。  なお、いま先生の御指摘の点につきまして、実はせんだってそういうお話を伺ったものですからそういう事実があるのかどうかというような点につきましても、県教委として一遍調べていただくようにいま照会をしておる、こういうところでございます。
  205. 馬場昇

    馬場委員 ここに原簿があるのです。これですね。「統合中学へ左記事項を附して子弟の入学を確認し、連署をもってお願いいたします。」ということになっているわけですね。これは後で問題が起こらないようにはっきりしておいていただきたいのですが、中学に入学するのにこういう判を押して、お願いしますなんかということは必要ない。法の精神に違反しておる。こういうことは文部省はやはりはっきり確認をしておいていただきたいと思うのです。これを今度は教育委員会の人たちがずっと持ち歩いておるわけです。こういう違法な署名を、印鑑を押させるのを教育委員会の人が持ち歩く、こういう教育行政というのは間違いであると私は思うのですが、どうでございますか。
  206. 清水成之

    清水政府委員 この球磨村の点につきましては、大分昨年来いろいろ事情があるようでございまして、いまお尋ねの点は、端的に申しますならば、違法性どうこうということのもう一つ前に妥当性の問題があろうと思うわけでございます。そういう点からいたしますと、先ほど大臣からお答えがございましたように、意見のある向きにつきましては、事前に十分その統廃合の趣旨なり目的なりという理解を得て進めていただくということが本旨である、かように考えるわけでございます。
  207. 馬場昇

    馬場委員 非常に形式的になりますけれども、こういうことはやはりはっきりしておかなければこれが後、紛争のもとになると私は思うんですよ。だから、やはり中学校に入学するのに、印鑑を押して、お願いします、そういうことはする必要はないのだ。まして、これに印鑑を押さなければ入学させないなどということはあり得ないのだ。そういうことはやはり文部省ははっきりしておいていただきたい、こういうぐあいに思います。それが一つです。  もう一つ、そういう点、前の問題など言わなくて、こういう事実があるとすればですよ。調べておると言うが、あるとすれば、それは間違っているのだということをはっきり行政指導として聞いておきたいと思うのです、指導方針として。
  208. 清水成之

    清水政府委員 制度的にそういう必要はないということは確かでございます。まあ、その辺につきましていろいろ微妙な問題があろうと思いますので、いま県教委を通じて調べていただくということで、照会中である、こういうことだけ重ねて申し上げておきたいと存じます。
  209. 馬場昇

    馬場委員 ここで署名運動が行われておるのです、その統合中学に。この判こを押して、入学をお願いしますというのが、署名運動になっておるようでございます。それで、そこはいま出ましたけれども、これは間違いですけれども、統合中学をつくるというとき、この署名がいま中学の一年生、小学校の六年生、五年生、その家庭を中心に署名が行われております。ところが中学を統合するという署名運動は、まあ必要があれば、賛成でも反対でも当然行われていいと思いますけれども、たとえば百年の計の統合、それに中学一年生と、六年と五年、この部分だけの署名をして、賛成だ反対だ、こういうことをやるということは非常におかしい。しかも、入学をお願いするというこういう印鑑を押させる、こういうことで、そういうことはやはりおかしくて、本当に、全住民なら全住民——いま四年生だろうが三年生だろうが一年生だろうが、将来入るわけですからね。だから全住民を対象にして、やはり署名運動というのは賛成、反対の意思表示にして行われるべきじゃないかと思うのですけれども、そのことについての文部省の指導の方針を聞いておきたいと思うのです。  それから、こういう事実があるということで、これは、あともう一つ最後の質問をするために実は聞いているわけです。というのは、署名するまで何回も来ると言って、実はこの署名をするために五回も六回も一つの家に行っているわけですよ。そして深夜の一時、二時までも粘って、そしてやっておられるわけです。そこにたとえばほかの人が行きますと、あなたのところは五年生、六年生、中学一年生じゃないから関係ないから帰れとか、こういうような署名の強制が行われておるし、それからさっき言いましたように統合中学校のできるかできないかではなしに、もう助成も文部省から来ているのだ、こういうようなことも言っておられますし、ほかの部落の人はもう全部押したのだから、押さないのはあなたのところだけですよ、こういうような話もありますし、あなたが署名しないとほかの人に迷惑をかけますよ、こういうようなこととか、机やいすを買うのに署名するかしないかが問題ですよとか、いろいろなことで圧力的に署名が行われておる、こういうことでございます。そして、教育委員長が来て、署名せぬとこの部落からはスクールバスを出してやらないぞ、こういうようなことで、だからあなた方乗られぬから統合中学ができた場合には自転車で行かなければならないぞとか、本当に想像できないようなことで、それからこういう中学統合により、村に反対すると、ここのあなたのところの道路の改修はしてやらないぞとか、こういうことが非常に行われておる。こういうことはやはり、事教育の問題について非常に好ましくないと私は思うのですけれども、こういう事実はまた、いま調査をしてみなければわからぬとおっしゃるでしょうけれども、こういう事実があったとすれば、こういうことは好ましくないということはもう当然だろうと思うのですが、これに対して御見解を聞いておきたいと思うのです。
  210. 清水成之

    清水政府委員 本来、先ほど大臣からもお答えがありましたように、事前に十分と教育効果の問題とか、その根っこには学生、児童生徒の動向の問題とか、積み重ねの上になさるべきことでございまして、本来から申しまして、この間お話を伺いますと、賛成署名、反対署名いろいろ入り乱れておる実情でございますし、また御指摘の点につきましては、いま照会中でございますが、もしそういうことでございますれば、好ましい状態でないということは当然のことでございます。
  211. 馬場昇

    馬場委員 私はもう近いうちに、特に本年度の助成金、補助金の問題などで、文部省にヒヤリングなんかに県とか何とかがこういう問題を持ってくると思うのです。そういうことがあると思いますから、私、この間現地に行ってみました。ところがもう、強行されたらば一つ学校の人たちは登校拒否をするのだということで反対派の人はやっておるようです。そうしますと、村も非常に混乱するわけでございますから。実は九百名近い人たちが反対の方に署名をしております。ここは、賛成にも反対にも署名している人がおるのですよ。というのは、余りにも毎晩来られたりなんかするものですから、それだけ両方しているのはおかしいのですけれども、混乱しているという状況はここに出ているのじゃないかと私は思うのです。  そういうことで、先ほどもお話出ましたが、私は特にここで言いたいのですが、球磨川のあれで非常に道も悪いし、交通事故も多いところなんですよ。ここでスクールバスをやるというのですけれども、もし高知のようなことが起こりますと、いまはスクールバスなんか乗らなくても、四つの中学校があるのですからきちんとそこへ行っていますけれども、もしこれが統合して、スクールバスが球磨川へ落っこちてみんな死亡するということになったらこれこそ大変な問題、そういうところを納得がないのに強行してはいけない、納得するまでやはり話し合いをしなければならぬ、私はこういうぐあいに思うのです。だから文部省としてはよく調査されて、お互いに納得するようにしてやりなさい、強行はしてはいけない、こういうことをぜひ指導していただきたい。  さらに、県の教育委員会に対しても、全然登校拒否とかそういう問題は起こらない、もう全部が納得したのだ——全部と言って一人、二人の反対はあると思いますけれども、大多数が納得したのだ、そういうことで登校拒否なんか起こりません、そういう一札でも県の教育委員会が持ってきたときに初めて税金の問題を考えるとか、そういうぐあいに非常に慎重な態度でもってこういう問題に当たっていただきたい。というのは、強行いたしますと大変な混乱が予想されますものですから、私そういうことを心配するのですが、こういうことについて、県並びにそういう村に対して、いま私が言ったような点についてそのような指導をしていただきたいと思いますが、大臣どうですか。
  212. 永井道雄

    永井国務大臣 先ほどから管理局長がすでに申し上げましたが、文部省といたしましては、先ほど私も申し上げましたように、学校統合に当たりましては地域の住民の協力、理解が大事であると思っております。したがって、学校統合というものの計画は、実はこれは地方自治体が自主的に判断して実施する事業でございますから、村の当局が諸般の事情を考慮されまして、そして円満な解決に向かって御努力になるということを私たちは望んでいるわけでございまして、県教委も当然そういうお考えでございましょうが、県教委に十分事情を照会いたしまして私どもの方針に基づく指導を行ってまいりましたし、今後もそうした指導を行っていくべく、県教委と協議をいたしてまいる考えでございます。
  213. 馬場昇

    馬場委員 地元の反対がある限り強行されないようにぜひ指導していただきたいということを申し上げて終わりたいと思います。  あと一点、最後の質問でございますが、文化財の保護の問題でございます。  まず、大臣にお聞きしたいと思うのですけれども、高度経済成長政策や日本列島改造の開発ブームで、国土の陸といわず山といわず、海も空も破壊が進んできたのは御承知のとおりでございます。この中で恐らく十分な調査もなしに大切な文化財、特に埋蔵文化財というようなものが破壊されたり、あるいはやみからやみに葬り去られたというようなものも多くあったのではないか、こういうぐあいに思います。先ほども私、言ったのですけれども、安定成長というのは経済だけではなしに、心の安定と豊かさというのも絶対の条件だと私は思っております。これは言うまでもないことですけれども、開発というのはいつでもできるわけですが、文化財は一度破壊されたらもとに戻らないのはそのとおりでございますし、結局文化財を後世に残すというのは、これは文部行政だけじゃなしに今日生きているわれわれ国民の義務だ、私はこういうぐあいに思います。  そこで私が、高度経済成長政策、日本列島改造の中で心配してきたところですけれども、とにかく文部行政、文化財保護の行政というものが、建設省というわけじゃありませんけれども、政府開発行政に決しておくれてはならない、その後追いになってはならないというような問題がございます。それから文化財保護の行政が、結局開発は物すごい勢いで進んでいきますので、これに機敏に対応できずに手おくれになったり、こういうことがあってはいけないと思いますし、私が見る限り、やはり調査員なんか不足しておりますよ。こういう人手不足ということで、ああ、対応ができなかった、文化財が破壊された、こういうことがあってはならないというぐあいに思います。  ここで、こういう問題に対して、結局文部大臣の文化財保護の行政に対する基本態度、特に開発と文化財保護に対して、その部分だけでも結構ですから、基本態度をお示し願いたいと思いますし、特にこの前、私、この問題で奥野さんが大臣のときに御質問申し上げたのですけれども、そのときに奥野さんは理解を示されて、四十九年度から埋蔵文化財センターというようなものをつくって、調査員の確保、研修に努める一こういうことを実は私に答弁なさいました。この埋蔵文化財センターというようなものは現在どうなっておるのかということについてお答えいただきたいと思います。
  214. 永井道雄

    永井国務大臣 まず、開発という問題と文化財保護、これとの関連というのは非常に重要でございまして、各種開発が行われている中で、やはり文化財保護というものをきわめて重視しなければならないと考えております。  御案内のとおり、昨年文化財保護法が改正されまして、そこで、埋蔵文化財包蔵地の公共的な土木事業というようなものが行われます場合には事前協議制ということ、あるいは工事の停止命令という制度、あるいは地方公共団体の保護体制の整備というものが改正によって行われたわけでございます。  そこで、これは文部省の中では文化庁の担当でございますが、文化庁ではこうした法改正の趣旨というものを尊重いたしまして、適切な制度の運用を図って、文化財保護は御指摘のように非常に大事でございますから、一層万全を期すということでございます。  そこで、具体的にどういうことであるかと申しますと、五点あると思います。第一は、全国の埋蔵文化財包蔵地の所在状況の把握、そしてこれを周知徹底するということ、第二番目に、地方公共団体が行います発掘調査の適正、円滑な実施、第三番目に、重要な遺跡の史跡指定の促進、四番目には、指定地の管理及び整備、五番目に指定地の公有化の促進、こうした方針に基づいているわけでございますが、奥野文部大臣が答弁されました問題につきましては、文化庁次長から御答弁申し上げます。
  215. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 埋蔵文化財センターについては、いま資料の持ち合わせがございませんが、奈良の文化財研究所の中に埋蔵文化財センターという機構を設けまして、ことしも定員を増員したわけでございますが、そこにおいては、埋蔵文化財の発掘調査、整理等についてみずから研究いたしますと同時に、各都道府県、教育委員会に埋蔵文化財担当の職員がわりあいに多いわけでございますけれども、必ずしも専門の知識、技術を持って勤めておるわけではないので、埋蔵文化財センターにおいてそれらの職員の研修の仕事を現に実行いたしております。
  216. 馬場昇

    馬場委員 具体的にお尋ねいたしたいと思うのですけれども、熊本県の下益城郡城南町に塚原古墳というのがございます。この塚原古墳について私は前に質問したのですが、安達長官は次のように答弁をなさいました。この塚原古墳というのは、弥生式時代の墓制の特徴である方型周溝墓から古墳時代の高塚古墳へ発展していく過程を示しており、遺跡としては、考古学的にも歴史学的にも非常に重要な価値を持っておる。同古墳群は遺跡として非常に価値が高い、こういうようなことを安達長官は答弁なさいました。そして、ここではたくさんの学者の人が研究なさっておりますけれども、学者も、この塚原古墳というのは日本最大級の方型周溝墓であり、これは一辺が二十六メートルぐらいあるのもありますけれども、群として、特に群としてということも強調しておられるのですけれども、規模、配置など全国屈指の、日本最高級の遺跡だ、こういうぐあいに言っておられますし、さらにそういうことを踏まえた安達長官は、私の質問に対して、将来同古墳群は国の史跡として指定する方向で積極的に対処する、こういうような答弁をなさっておるわけでございます。  そこで、これは文化庁にお聞きしたいのですけれども、この塚原古墳の史跡の指定というものは現在どうなっておるかということについてお尋ねいたします。
  217. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 塚原古墳の問題につきましては、日本道路公団、熊本県、城南町、文化庁で四十九年十二月に覚書を交わしておりますが、その覚書の履行の問題について、その後努力をしてまいりました。県の教育委員会は、国庫補助を受けて、四百万円の発掘調査費を計上して、現在塚原古墳群の範囲を確認し、調査実施中でございます。住民の方では、しばし一部の方々に反対の御意見もあったようでございますが、現在では、調査の結果、道路予定地二・〇四ヘクタールを含む約十二ヘクタールについて遺構がよく保存されておることが判明いたしましたし、また土地の公有化と申しますか、史跡の買い上げはしないけれども、史跡に指定されることを容認するという住民の御意見もほぼまとまってまいりましたので、文化財保護審議会の議を経まして、ことしの秋には史跡としての指定を行い、官報に告示することができるようになると見込んでおります。
  218. 馬場昇

    馬場委員 過ぎ去ったことを言ってもしようがないのですけれども、五十年の六月に私が質問いたしましたのに対して、五十年度中に、いわゆる五十一年三月までに文化財保護審議会にかけて、そして五十年度中に指定をしたい、こういう御答弁があったのですけれども、非常におくれております。この辺について関連して質問をするわけですけれども、発掘調査がおくれたのじゃないか、私はこういうぐあいに思いますけれども、この発掘調査の部分でいま十二ヘクタールの史跡指定というようなことをおっしゃっていましたけれども、最初の計画は私は二十七ヘクタールぐらいを史跡に指定したいという方向で進んでおったのじゃないかと思いますが、非常にそれが縮小されておる。発掘調査がおくれたということと、その史跡指定の面積が非常に小さくなった、これはどういうところからそうなったのですか。
  219. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 二十七ヘクタールという数字が初めはこの古墳が存在するであろうと思われる全地域の推定の地域であって、必ずしも確定的ではなかった。それは埋蔵文化財であるからやむを得ないところでございます。それからまた二十七ヘクタールの面積が台帳面積で確認をしてみたところ、二十七ではなくて二十四ヘクタールであった、端数はございます。それからまた発掘調査実施してみたところ、桑畑として耕作されており、遺構が破壊されていて、現在では指定する意味を失っている地域があったというようなこと、あるいはブルドーザーが入っていてそれと同じような結果になった地域があるというようなこと。それでそういう面積を控除いたしてみますと、十二ヘクタールくらいになってくる。その中には土地の買い上げを希望するところもあれば、買い上げは希望しないが史跡に指定されることは容認するといったような地域もあるわけでございます。大まかに申しましてそういうことで、当初から二十七ヘクタールという数字が埋蔵文化財の包蔵地の性格上不確かであったということなどに始まりまして、現在では確認されたところが十二ヘクタールというような数字に相なっておる次第でございます。
  220. 馬場昇

    馬場委員 それで十二ヘクタールで、これは文化財保護審議会にかけてみなければわからないと思いますが、これについてお聞きしますけれども、これはもう熊本県の教育委員会が十二ヘクタールで文化財に指定してくれという申請を出しておるのかどうかということでございます。それから、この十二ヘクタールには全部地権者が了解をしておるのかどうかということ、それから文化庁としては、十二ヘクタールでも文化財として指定ができるというようにお考えになっておるかどうかということについてお答えいただきたい。
  221. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 十二ヘクタールと申しますのは、熊本県教育委員会の文化課、熊本県知事、それから文化庁の専門家、そういうあたりがいま実務的に確認をしておる数字でございまして、まだ端数は少し変動する公算もございます。現在のところ専門家の方々が十分調査いたしまして、そして地元の方々も最近では非常に協力的になられまして、知事としてもこの辺はほぼ確かになったというような意見を述べておられる面積でございます。したがいまして、この面積に若干の変動はあると思いますが、私ども文化庁の事務当局としては、これを基礎にして文化財保護審議会にかけられるほぼその見当を得た数字だと思っておるようなわけでございます。また精査いたしますと若干の変動があるということを繰り返し申し上げながら、現在の時点における概況を御説明いたしました。
  222. 馬場昇

    馬場委員 くどいようですけれども、結局十二ヘクタールというのは、もう地権者も了解を大体とれるのだ、そしてそれが県の教育委員会の方から文化財保護審議会に上がってくるのだ、それが上がってきたら文化財に指定する見込みだと、こういうことですね。
  223. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 十二ヘクタールというのはまだやや変動的であると申し上げたのは、交渉中で若干ふえる公算があると思いますので確定的に申し上げないわけでございます。  それから、文化財保護審議会にかけるところまでは事務当局の立場として十二ヘクタール幾らの数字で資料を提出したいと申し上げますが、あとは審議会で私どもより大変な高度の専門家が審議されることでございますので、十二ヘクタールが審議会をそのまま通るであろうということはなかなか言いにくい段階でございます。だけれども、先例に照らしまして、私ども文化庁の専門家が地元と話を詰めてといういきさつを経ていきますれば、審議会においてはさほど大きな違いなく通過できるのではないかという見通しを持っておるわけでございます。
  224. 馬場昇

    馬場委員 今村さんはえらい慎重に答弁なさいますけれども、前の足立長官などは、それは指定できますよと、まあそこのところは二十七でしたけれども、まあそういうことで専門家かどうか知りませんけれども専門家の意見を聞いておっしゃったと思います。今村さんも大体そういうことをおっしゃいましたけれども、非常にくどいようですけれども、たとえば教育委員会はいつごろまでおたくの方に申請するのか、文化財保護審議会はいつ開かれるのか、そして大体指定されるだろうそれはいつかという日時のことについてお聞かせいただきたいと思います。
  225. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 先ほどこの秋と申し上げましたが、文化財保護審議会が十一月ごろ開かれる予定でございます。したがいまして、逆算いたしまして県の教育委員会からは遅くとも八月か九月には書類をいただいて、それを整備して審議会にかける、審議会で無事何の異議なく条件なくパスしますと、その後しばらくして官報告示という手続になるということでございます。
  226. 馬場昇

    馬場委員 建設省からおいでになっておると思うのですけれども、先ほど文化庁の方から四十九年の十二月四日に工法について道路公団と態本県と城南町と文化庁で決定をなさいましたですね。ちゃんとここに塚原台地の工事ということがありまして、最初の、ここにちゃんと古墳群がありますけれども、この赤い部分はカットしてしまうのだと。はなはだ私は残念と思うのですよ、ここにこんなに古墳があるのですから。これを結局削り取ってしまうということは、非常に私は残念だと思いました。ここが非常に方型周溝墓だからここは残すのだと。このカットしてしまうのが大体百五メートル。これが百二十メートル。ここはカットしてあとまた復元するのだと、こんなたくさんあるのをそうすることはひとつ残念ですけれども、そういうこと。ここはまた非常に大切ですから、円墳なんかたくさんあるから、ここはまたトンネルにするんだと。こういうことで、御存じのとおりでございまして、これの確認が四十九年の十二月四日にできているわけですね。ところが伝えられるところによりますと、ごく最近この一番最後の部分を、大切なこの部分を、結局この方型周溝墓から円墳に移る移り方が大切な古墳ですから、この部分をまたオープンカットさしてくれというようなことを、四十九年十二月四日にすったもんだしたあげくに決めておいて、最近これをオープンカットさしてくれということを熊本県が言われて、熊本県から文化庁にオープンカットして史跡に指定できるのだろうかというような問い合わせがあった、こういうようなことを私は聞いたのですけれども、その辺のいきさつについて御説明ください。
  227. 山根孟

    ○山根説明員 お答えをいたします。  塚原台地の工事方法の変更に関する覚書の交換でありますが、これは先生御指摘のとおり四十九年十二月にされたわけであります。自後、熊本県御当局の方は大変地域の方々と十分な打ち合わせをなさいまして、塚原古墳全体の保存を一体どういうぐあいにするかということで、ずいぶん御苦労をなさってまいられました。実は、その過程におきます問題で、ただいま先生から御指摘のような話があったことは事実でございます。と申しますのは、当初本年に入りまして、たしか四月の初め、上旬から中旬にかけてであったと思いますが、高速自動車国道の敷地になります部分を含めて八ヘクタールを一応の全体の保存、保存と申しますか当面それをやってまいるのはいかがかと、こういうような話が実はあったわけであります。若干詳しく図面等調べてみますと、ちょうど御指摘の八十五メートル、これは南側、八代寄りの八十五メートルの区間の東側の部分につきましては、保存範囲の中に実は入ってないということだとか、あるいはその遺跡調査が進められます段階におきまして、方型周溝墓から円型周溝墓に至りますプロセスのわかるような古墳も一方では発見されたといったような事情から、八十五メートル部分について開さくトンネル工法といったような工法ができるとすれば、やはり熊本県の南部の方々からかなり早く促進してほしいといったような御要望も一方ではあったというような事情から、そういうことは可能であろうかどうかということを熊本県の教育委員会の方に打診をしたという事情だと理解をいたしております。
  228. 馬場昇

    馬場委員 その打診をした結果はどうなったのかということをまずお聞きします。
  229. 山根孟

    ○山根説明員 最終的な報告は受けておりません。ただいま文化庁の方のお答えで十二ヘクタールまでに拡大をされ、さらに努力が続けられておると、こういうお話を実は承った次第でございます。
  230. 馬場昇

    馬場委員 道路公団が熊本県に打診されたそうですから、熊本県から文化庁にそういうことの打診がございましたか。  それから、いま聞いたところによりますと大変なことを、県がまた間違いを犯しているように考えますけれども、この約束したとおりの、いま、ここの南の部分と、こことおっしゃいました。この東部分というのはこちらになるわけでございますね、いま言われたので見ますと。こちらの部分が保存の中に入っていないということを言われたのですが、これは本当ですか、文化庁にお聞きします。  問題は、それが一つと、文化庁は道路公団の言ったような打診があったかということ。それから、いま言われましたような、この東の部分が保存の部分に入っているのかいないのかということが一つ。それから、ここをオープンカットしてしまったら、これは史跡指定になれるのかなれないのか。この三つについて文化庁からお聞きします。
  231. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 八代寄りの道路予定地八十五メートルについて、これが史跡予定地の範囲外かどうかという問題でございますが、範囲内でございます。
  232. 馬場昇

    馬場委員 いや、いま文化庁が言ったのは、この八十五メートル部分の東の方がその保存の中に入っていないということで打診をしたのだとおっしゃるから、本当に保存に入っていないのかどうかということです。
  233. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 八十五メートルの地域の東の部分は予定の範囲に入っております。これが第一点でございます。  それから、この八十五メートルのアーマー工法の予定のあった道路の敷地をオープンカットに変えるということについて建設省の方からは文化庁は何らの連絡を受けていない。(馬場委員「熊本県からです」と呼ぶ)したがって、まだその途中の段階での話だと思いますが、熊本県の知事が私の部屋に見えまして、そういう話はあったけれども、四者協定で覚書も交わしてあることであるし、文化財保存という見地で四者協定の線でいきたいという意思表示がございました。  それからもう一点は……。
  234. 馬場昇

    馬場委員 もう一点は、これをオープンカットしてしまったら史跡指定になるのか。
  235. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 その点についてはまだ部内で検討いたしておりませんが、私どもとしては、非常に重要な部分でございますし、そのゆえにこそ大分論議を経て四者協定も結んで、オープンカットではなくてアーマー工法によって古墳をそのままの形で存続したい、非常に重要な部分だという判定をしたことでございますからその線で一貫していきたい、かように考えております。
  236. 馬場昇

    馬場委員 建設省にお聞きしますけれども、あなたの方にはまだ返事はないというお話ですけれども、熊本県知事は文化庁に来て、約束どおりアーマー工法でやってくださいということを言っているそうですね。そうして県はあなたの方の打診を拒否したという形になっておるわけですね。それで県が拒否すれば、あなたの方はオープンカットにやってくれという打診はもう快く撤回なさるわけですね。
  237. 山根孟

    ○山根説明員 これは重要な遺跡であるということから実は覚書を結び、その場合に、あの地域の非常に規模の大きい古墳群でありますから、日本道路公団が遺跡を保存するという観点から見ました場合に、やはりまとまった地域として当初の考えどおりできるということで実は了解しておったわけでございますから、そういったことが満たされるならば、当然四十九年十二月に交わされました覚書どおりに実施をするということに異存はございません。
  238. 馬場昇

    馬場委員 はっきりいたしたわけですが、私ちょっと言わせていただきますならば、ちゃんと四者で覚書もしておるのに、しかもその古墳があるところとわかっておるからそういうアーマー工法でトンネルをやろうといったところに、それをまたいまごろオープンカットしてくれと言うことも非常識。開発優先で文化財保護という観点がやはり建設省にはないのじゃないか、道路公団にはないのじゃないかと思うのです、これはぼくの感想ですけれども。道路公団といえども、日本民族の文化財を保護するという立場からいくと、そんなことは言えないはずですよ。そういうことが一つの教訓になって、今後道路公団も文化財保護に熱意を持って、大切にするような開発行政をやってもらいたいということを申し上げたいと思います。  そこで、道路公団の着工は大体いつなさいますか。
  239. 山根孟

    ○山根説明員 塚原古墳群全体の保存の方向が決定をいたしましたならば、事業を進めるようにいたしたいというような段取りにいたしております。
  240. 馬場昇

    馬場委員 そこで道路公団の方にお聞きしたいのですが、何かトンネルの前に側道をつくってやるとかいう約束をなさっておるし、バスストップをここにつくるのだという約束をなさっておるし、農業用水はこうしてやるのだとか、今後の営農計画なんかについていろいろ話があっておりましたですね。こういう問題は、さっき文化庁から聞きましたが、大体地権者が納得したというような話ですけれども、いま言ったような問題ももう解決したのですか。
  241. 山根孟

    ○山根説明員 側道問題、用水問題並びにバスストップの問題については、すべて地元の方との協議が整っております。
  242. 馬場昇

    馬場委員 予定の時間がそろそろ来たようでございますが、最後に、十二ヘクタールといまおっしゃいましたけれども、あそこの熊本県を火の国と言うのです。火の国の発祥地だということで熊本県民は非常に愛着を持っておるのです。だからそこをなるべく広く指定して史跡公園ぐらいにして、本当に熊本県の発祥の地をみんなで訪ねようということが保存の方法として一番いいのじゃないかと思うのです。だから十二ヘクタールということをおっしゃいましたけれども、私はそれでは史跡公園としては狭いというような感じもしないではありません。だからなるべく史跡公園というような形で保存をするという方向での対処の仕方、それから一番注意しなければならぬのは、この前はブルドーザーでちょっと壊したところがあるのですよ。だから工事をするときには必ず熊本県とか文化庁の方から監視人でも置いて、決してこの遺跡を壊さないという万全な監視体制をとっていただきたい。この二つについて文化庁並びに文化財を守る立場から文部大臣の決意のほどを聞いておきますと、地元も非常に安心するのじゃないかと思うのです。
  243. 今村武俊

    ○今村(武)政府委員 大臣のお答えの前に、事務的にお答えさせていただきたいと思います。  その前にひとつお断りしておきたいのは、何か文化庁が文化財の保存に一生懸命で、道路公団や建設省が一生懸命でないようにおっしゃいましたけれども、私ども折衝の過程で大変理解を示していただいて、古墳群の重要性を認めていただいておるということも申し上げておきたいと思います。  また、去年の速記録で、先生が熊本県の火の国の発祥の地としてこの古墳群を大事にしたいという意向を述べておられますこと、私も非常に感銘を持って読んだわけでございますが、その地元の御希望に沿えるように、遺跡が破壊されないように監視体制を強化いたしますし、またそれが今後史跡公園として地元に非常に愛されるように、確かにおっしゃるように火の国の発祥地だという名にふさわしいようなものになるように十分事務的に検討を詰めていきたいと存じます。事務的にはそういうことを考えておりますが、締めて大臣の方からお願いいたします。
  244. 永井道雄

    永井国務大臣 塚原古墳群、先ほどからお話がございましたのは、これは古墳時代初期のきわめて大規模なものでございまして、国民的な貴重な財産でございますから、先ほど来文化庁次長が申し上げておりますように、これは文化財保護法の基本的な精神に基づいて、私たちはこの問題の解決に当たりたいと考えます。
  245. 馬場昇

    馬場委員 終わります。
  246. 三塚博

    ○三塚委員長代理 次回は、来たる二十一日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十九分散会