○福田(赳)国務大臣
物価問題は、
基本的には経済の運営を節度を持ってやっていくということで十分対処できる。ですから、
物価が再び非常に混乱し、インフレが起ってくるかというようなことを言う人がありますが、そういう心配は私は絶対にない。そのためには節度のある経済運営をやっていく、こういうふうに思います。ただ、インフレというような混乱状態ではないけれ
ども、
物価が上がりぎみでいくのか下がりぎみでいくのかあるいは横ばいでいくのか、こういう目標に対しての話ですが、目標を上回る状態になるのか目標を下回る状態になるのか、あるいは目標の線でいくのか、こういうことになりますと、これは多少——多少というかかなり
努力は必要である、これは前々からそう
考えているのです。手放しで、あれだけの大きな打撃を受けた後の日本の
物価をそう簡単に安定させるわけにはなかなかいかぬだろう、
努力を要するというふうに
考えておるのですが、まさに今後のわが国の
物価情勢を展望してみても、インフレになるということはもう絶対にこれは心配ありませんけれ
ども、そういう中において
努力する必要がある、そういうふうに
考えております。
これから先の
物価は
一体どうだといいますと、一つは、やはり
消費者物価になりますと
賃金問題があるのです。この
賃金は、率直に申し上げまして、私
ども消費者物価目標を五十一年度の問題として八%だという目標を立てた、そのとき
考えたよりはこころもち低目に
決定されておる。つまりベース
賃金が八・八、これは当時
考えておったよりは低目でございます。ところが、所定外
賃金の方はかなり伸びておる。そういうことがありまして、
賃金全体といたしますと、これは当時想定をいたしたものよりはこころもち低いようなところで決められたんじゃないか。この
賃金が
消費者物価にはかなり響くわけです。大企業の方は、
賃金が上昇をいたしましても生産が増加する。それに伴って生産性の向上が見られる。したがって、これを製品の
価格に転嫁するという度合いが低いあるいはない場合もあるというような状態でありますが、
消費者物価というのは中小企業
物価であり、また
各種の
料金、手数料、そういうようなものでありますので、これはどうしても
賃金の
影響、これが
消費者物価にはかなり大きく覆いかぶさる性向を持つわけでございますが、その
賃金が、とにかくこころもちとはいえ低目に決まったということ、私はこれは
消費者物価の今後に対して非常に明るい材料である、こういうふうに見ております。
それから、もう一つ問題がありますのは
公共料金です。
先ほど局長から
お答え申し上げたように、
公共料金がまた
消費者物価をかなり押し上げる要素になるわけで、昨年度八・八%上昇という中で大体二・七%ぐらいが
公共料金要素であったろう、こういうふうに見ております。大体昨年度の
消費者物価が八・八だ、それを一割ぐらい下げる、こういうことで八%を五十一年度は目標にしておりますが、それに見合ってという
考え方で
公共料金の方も、昨年は二・七%の上昇だった、それを二%強、つまり二・五%以内ということを
考えておったわけでありますが、何とかしてその辺で
公共料金も抑え込む、こういう
考えでございます。
それから、あとは卸売
物価がまた時間を置いて
消費者物価にはね返ってくるわけでございます。これにつきましては、需給がいま非常に緩んでおる状態でありますので、多少の
影響はあるいはあるかもしれませんが、さほどのことはなかろうか、こういうふうに
考えておるわけでありまして、総体といたしましてまあまあ八%目標を根本的に脅かすというような状態はいま見られない。
ただ、これから景気がどういうふうになっていくか、恐らく回復過程をずうっとたどっていくだろう、こういうふうに思いますが、その間景気回復の摩擦現象といたしまして
物価上昇の要素になるわけです。それがならないように経済全体としてのバランス、また個々の物資の需給、また個々の物資の
価格、そういうものにつきまして細心の注意を払いまして、とにかく目標とする八%上昇、この線を守り抜いていきたいし、また守っていける、こういう見通しを持っております。