○
谷川参考人 日本生協連の
谷川でございます。
いま主婦連の
清水さんがお考えを述べられたわけでありますけれ
ども、私も
清水さんの御
意見に基本として賛成でございまして、今回の
電力料金の
値上げ申請につきましては実に重大な疑問を持っている者でございます。
第一に、
国民生活への重大な圧迫が起きるという問題でございます。今回の
値上げ申請は、やはり現在の情勢の中で考えてみますと、上げ幅が非常に超大幅であるというふうに言わざるを得ませんし、したがいまして、全体的な物価
上昇の大変な引き金になるということは火を見るよりも明らかではないかというふうに思いますし、同時に今回の
申請が一昨年六月の六〇%近い
値上げからわずか二年しかたっていない中のことでございます。したがいまして、その結果、
電力料金は、仮に今回の
申請が通ることになりますと、二年前に比べまして全体で二・一倍にも達することになるというふうなことでございまして、これが
国民生活に大変な重荷になることはだれが見ても明らかではないかというふうにまず第一思うわけでございます。
それから第二には、先ほどからるる御
説明があったわけでありますけれ
ども、各社の
申請理由がやはり
消費者といたしまして全く納得できないものであるという点が第二の問題でございます。たとえば、
申請書を拝見いたしますと、北陸
電力さんの場合に、
当社の
収支は破綻に瀕するに至りましたというふうにおっしゃっておられますし、
北海道電力さんの場合は、
現行料金のままでは正常な
事業運営を行うことはきわめて困難であるというふうな言葉を使っていらっしゃいます。あるいは
九州電力さんの場合も、
収支の破綻は避けられないというふうにおっしゃっておられるわけですが、そのように各社ともまさに破産
状態だと言わんばかりの表現を使っていらっしゃるわけでありますけれ
ども、同時に、ついせんだって四月二十六日付の日経新聞を見ますと、きょうも御
出席でございますけれ
ども、
電気事業連合会の副会長さんが記者の質問に答えまして、四社は
内部留保が全体として底をついてしまったというふうに言っていらっしゃるわけでございます。
ところが、事実はどうかと申しますと、たとえば
北海道電力さんの場合には、昨年九月期の
決算で税引き利益は前期比で一三三・六%という数字が出ておりますし、
九州電力さんの場合も一二一・五%という数字にあらわれておりますように、軒並み増益
状態ということがはっきりあらわれているのでございます。同時に、やや具体的に
九州電力さんの場合の税引き利益の額を見てみますと、四十九年の上期に三十三億円、下半期が四十一億円、そして五十年の上期になりますとこれが五十億円というふうなことで、着実にもうけはふえているのではないかというふうに考えざるを得ないわけでございます。
それから、同時に、
内部留保の面でいいましても、すでに御承知のように、九社合計で八千五百億円という巨大な金額に上っているわけでございまして、特に
前回の
値上げ前の
昭和四十九年の三月期に比べましても一千億円以上の積み増しが行われているという
状態でございます。
こういった
実態をながめますと、
電力会社の
経営というのは悪化どころか明らかに好転しているのではないかというふうに、
消費者の
立場では率直に考えざるを得ないわけでございまして、そういうふうになりますと、これはまさに高収益下での不当な
値上げ計画というのが私
どもの大変率直な感じであるわけでございます。
したがいまして、かなり率直に申し上げれば、各社の
値上げ申請書につきましては、私
どもの
立場では非常に疑問が多い、むしろ
事態を正しく表現していないのではないかというふうな感じすら私
どもとしては持たざるを得ないというのが率直な感じでございます。
同時に、
清水さんの方からも御指摘があったわけでございますけれ
ども、
燃料費の
高騰その他
経費の
増加ということを各社とも
理由にしていらっしゃるわけでありますけれ
ども、それらについてもやはり私
ども十分納得のいく
資料が出されているというふうには思えません。たとえば
燃料購入の契約の中身でありますとか、あるいは通常の
経営でありますればある
程度の
燃料の備蓄あるいは先買いというふうなものも当然あるのが常識ではないかと思うのでありますけれ
ども、そういうふうな点についての詳しい納得のいくデータが何ら示されていない
状況の中では、
申請についてとても素直に受け取るわけにはいかないというのが、
全国民の率直な感じではないかというふうに思うのでございます。
そうなってまいりますと、
経営状況は全体として好転をしているのになぜ
料金の
値上げを急がなければいけないのかという点につきまして、同時に私
ども非常に大きな疑問を持たざるを得ません。その点で一つ気になりますのは、これは
清水さんの方から御指摘のあった原発の問題等にも触れるわけでありますけれ
ども、特に五十一年度に予定をされております
設備投資が非常に巨額であるという問題でございます。私
どもが聞いた
資料によりますと、九社の
設備投資の計画は、仮に五十二年度分からの繰り上げも含めますと、二兆九千億円、約三兆円という大変大きな金額に上っているようでありますし、それから
電源開発
会社の問題等も含めて考えますと、三兆二千億円というまさに巨額なものになっているわけでありまして、特に五十年度に比べて八二%増という私は非常に異常なふくれ上がり方ではないかというふうに思うわけであります。したがって、こういった巨大な
設備投資を賄う
資金を得るための
値上げではないのかという疑問が当然出てくるわけでありますし、しかも、そうした
設備投資の中で原子力発電所の建設を非常に重視していらっしゃるところに
消費者としましては非常に重大な問題を感じないわけにはいきません。御承知のように、すでに完成をしております原発、十二基でございますか、そのうちでこれまでにすでに五基が原子炉に故障を起こしているというふうにも聞いておりますし、そういう
状態では、この問題につきましては全く
国民的な合意になっていない問題ではないだろうかというふうにも思うわけでありますが、そういう中身を含んだ急速なあるいは巨額な
設備投資につきましては、私
ども非常に重大な疑念を持たざるを得ないということがあわせてございます。
それから、これも先ほど御指摘がありましたけれ
ども、特に濃縮ウランの買い取りの問題に絡んで、アメリカとの関係で、非常に早い段階で契約を結び、かつ大変巨額な前渡金を支払う契約になっているというふうに聞いておりますけれ
ども、こういうことは全く一方的な契約ではないかというふうにも思いますし、同時に、
消費者の素朴な感じといたしまして、八年、十年先に購入をするウランの前渡金まで
電気料金の中に組み込まれているというふうなことにつきましては、本当にこれは納得のいかない問題であるというふうに言わざるを得ないわけでございます。
それから同時に、もう一つ私
どもとしまして非常に大きな問題を感じるわけでありますが、いまも申し上げましたような非常に大規模な、そして問題を含んだ
設備投資計画なり、あるいはそのための
資金の調達計画というものが、一体どこで、だれによって決められているのかという点につきまして、非常に根本的な疑問を覚えます。聞くところによりますと、こういった計画につきましては、いわゆる
産業構造審議会のメンバーの
方々によって決定をされるというふうに伺っているわけでありますが、そのメンバーを拝見いたしますと、たとえば生命保険でありますとかあるいは銀行でありますとか、そういったいわゆる金融機関、それから鉄鋼、
石油、自動車などのいわゆる巨大
企業の代表の
方々ということでありまして、いわゆる
消費者、勤労者の代表は一人も含まれておりません。
同時に、私はこういう点からも問題があるのじゃないかというふうに思いますのは、やはり国権の最高機関である国会の審議がそこに絡むという形になっていないという点につきましても、これは
国民全体の意思を反映させるという点から見ましても、非常に重大な問題を含んでいるのではないかというふうに思うわけでございます。
そういう点を見ますと、
電力業界の
実態というのは、率直に申しまして、いかに
国民の前に明らかにされていないかということについて改めて驚かないわけにはいかないというふうに思いますし、そういう点では
国民の前に開かれた
電気事業でなければならない。特に
電気というものが
国民生活を左右する基本的なエネルギーであるというふうな点から言いましても、やはりその点がいま一番強調されなければいけないことではないか。
したがって、
国民各層の代表が参画した形での
電力の将来計画あるいは投資計画、あるいは国会審議の中でのそういう問題についての決定というふうなことをまず検討することが先決問題ではないかというふうに私は思うわけでございます。したがって、現在の諸計画につきましては、一だんそうした場での再度の検討を経た上で確定されていくというのが最も望ましい道ではないかというふうに思うものでございます。
時間がなくなってきておりますけれ
ども、先ほ
どもちょっと御指摘がありましたように、いま私
ども日本生協連、
全国的な組織の場でいろいろな情報が来るわけでございますけれ
ども、この
電力の
値上げにつきましては、まさに
全国的に非常に幅広い層から疑問とそれから批判の声が上がってきております。
北海道では、たとえば三月の末に民間公聴会が開かれておりますけれ
ども、
北海道の
消費者団体連絡会というところを中心にしまして非常に多くの人々が反対に動き始めておりますし、それから関西でも、関西の
消費者団体懇談会というふうなところを中心にしまして、予想される
値上げ申請に対しましてすでに幅広い人々の行動が始まってきているという
状態であります。九州では、四月二十七日に九州地方の
生活協同組合が一カ所に集まりまして九州全体としての意思表示を行い、
九州電力さんとの話し合いを行ってきているという
状態であります。しかし、これらは氷山の一角であります。多くの
国民の中に非常に大きな不安と批判がいま急速に広がりつつあるということではないかというふうに思うのであります。特に、たとえば五月八日付の朝日新聞を見ましても、今回の
申請が
認可をされれば日本の
電力料金は先進国で最も高い
水準になるというふうに言われているわけでありますけれ
ども、そういうことでありますれば、本当に
不況とインフレの二重苦にあえいでいる勤労者の
生活にとって非常に重大な問題になる。したがって、多くの
国民が反対するのは当然であろうというふうに思うわけであります。
私は
電力各社の皆さん方に特にここで御要請を申し上げたいのでありますけれ
ども、たとえば
北海道におきましては、
前回の
値上げの際に
北海道電力さんは道労評との間で、次に
値上げをするときには必ず事前協議をするというふうに約束をされたと伺っております。しかし、その約束は守られていないというふうに
北海道の人は語っております。あるいは九州では、去る四月二十七日の生協代表の申し入れに対しまして、九州の各地区できちんとした
説明をするという確約をされたというふうにも伺っているわけであります。私は、九電さんのそういう態度は非常に結構だというふうに思うわけでありまして、これほど重大な問題である以上、今後徹底的な住民、
消費者との対話をぜひ積み上げていただきたい。そしてその中で、いままで私の方からも申し上げたようないろいろな点について十分な
資料の提供を行っていただきたい。万一にもいろいろな意味での合意ができる前に強行されるというふうな
状態はぜひ避けていただきたいというふうに思うものでございます。
さっきも申し上げましたように、
申請内容自体について多くの
消費者が非常に疑問を持っているわけでありますし、それから同時に、これは四月二十八日の読売新聞でございましたが、九電さんの場合に、たとえば三月の電灯、
電力の
需要実績は二月に引き続いて非常に順調だというふうなことも報告をされているようでありますけれ
ども、そんなことを見るにつけましても、各社の
値上げ申請に対する疑念は強まる一方であるというのが率直な感じでございます。したがって、そうした中で急いだ形での問題の処理は、私は端極に言いますと、政治不信すら招きかねないような問題を含んでいるのではないかというふうに思いますし、したがって、
値上げ計画そのものを一たん撤回をされまして、そして
電力事業の
あり方についての
国民的な合意をもう一遍つくり直すというふうなことが、現在の時点では一番先決問題ではないだろうかというふうに思っていることを申し上げまして、私の
意見陳述を終わりたいと思います。