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1976-06-22 第77回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年六月二十二日(火曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 湊  徹郎君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  茂君 理事 山崎平八郎君    理事 井上  泉君 理事 角屋堅次郎君    理事 中川利三郎君       江藤 隆美君    金子 岩三君       吉川 久衛君    佐々木秀世君       白浜 仁吉君    染谷  誠君       中尾 栄一君    森下 元晴君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       芳賀  貢君    馬場  昇君       美濃 政市君   米内山義一郎君       諫山  博君    津川 武一君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 安倍晋太郎君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      宮下 創平君         国税庁直税部所         得税課長    田口 和巳君         農林大臣官房長 森  整治君         農林大臣官房審         議官      杉山 克己君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省農林経済         局統計情報部長 有松  晃君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      今村 宣夫君         農林水産技術会         議事務局長   平松甲子雄君         食糧庁長官  大河原太一郎君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     —————————————  委員の異動 五月二十一日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     田村 良平君   江藤 隆美君     佐藤 文生君   渡辺美智雄君     田村  元君   瀬野栄次郎君     松尾 信人君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 文生君     江藤 隆美君   田村  元君     渡辺美智雄君   田村 良平君     上田 茂行君   松尾 信人君     瀬野栄次郎君 六月三日  辞任         補欠選任   諫山  博君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   正森 成二君     諫山  博君     ————————————— 五月二十四日  一、国が行なう民有林野の分収造林に関する特   別措置法案芳賀貢君外十名提出、第七十一   回国会衆法第一七号)  二、飼料の需給及び価格の安定に関する法律案   (角屋堅次郎君外三名提出、第七十六回国会   衆法第六号)  三、飼料作物生産振興特別措置法案角屋堅次   郎君外三名提出、第七十六回国会衆法第七   号)  四、農林水産業振興に関する件  五、農林水産物に関する件  六、農林水産業団体に関する件  七、農林水産金融に関する件  八、農林漁業災害補償制度に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(米価及び麦価問  題等)      ————◇—————
  2. 湊徹郎

    ○湊委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中尾栄一君。
  3. 中尾栄一

    中尾(栄)委員 このたび大変な被害の問題が突然変異的に起こったものですから、同僚委員皆さん方に御報告かたがた被害状況を説明いたしまして、さらに、でき得べくんば農林省挙げて御高配を賜るべく御陳情も申し上げたい、こういう意味で、この委員会トップバッターに立たせていただきましたことを厚く御礼申し上げたいと思います。  実は、実情を概略説明いたしますると、去る六月十五日の午後、甲府市を初めといたしまして、山梨市、塩山市、中巨摩郡龍王町、敷島町というようなぐあいに、大体約十三カ町村ひょう害の大災害に遭ったわけでございます。これは何も山梨県に限りませんで、実は青森県、島根県、千葉県、鳥取県におきましてもこの問題が出たわけでございます。山梨県にとりましては、ひょう害というのはほかの県に比べますと希有の現象でございまして、いままでにもそれほど数多くこういつた災害は起こっていなかったのでございます。識者の話ですと有史以来だというのでありますけれども、戦前、戦後と申しましょうか、昨今の状況の中では最たるひょう害被害激甚に受けた、こう申し上げても差し支えはなかろうと思うのでございます。  このたびのひょう害といいますのは、調べてみますと、私の今回調査した範囲でも、大豆大と申しましょうか、直径が大きいところで大体三センチあるいは四センチ、それから小さいのでも直径が一センチはあるというような、言うなれば大きな豆粒大でございまして、これが大体午後の六時四十五分から七時四十分まで降り続いたわけでございます。とても人間が立ってかさを差してこれを防ぐなんという手合いのものではございませんで、大きいひょう害に遭いますと、かさそのものが破れてしまうと言われておるわけであります。それが四回にわたってひょうにたたかれましたので被害は加速度的に甚大になりまして、山梨県の特産物でありますブドウ、桃、野菜レタスにしてもトマトにしましても見るに耐えない状況でございました。桑、これは養蚕をやっておりますので、桑園がございますが、蚕が上簇しておるところも、あるいは稚蚕のための桑園も、壮蚕のための桑園も、この被害の大激甚は目を覆うべきものがあったわけでございます。  被害総額その他は、一番最初に県から発表したものよりもふえてまいりました。と申しますのは、ブドウの場合には、諸先生方にもぜひ御見聞を願った方がということで、ここにも一応ブドウの一部を持ってきたのでございますが、このように多くは枯れたような形になってしまう。ちょうどかつていまから九年前に私も農水委で発言をいたしましたジベレリンというのがございまして、武田製薬ジベレリン、言うなれば肥大をさせるための溶液を使うわけでございますが、それが真っ赤なジベレリンの液を使いますと、わりあいとよく肥大してりっぱに生成するのであります。それがちょっと薬の混合の間違いからミイラのようなブドウができたということで大問題になったことがございました。私もその折衝の任に当たった経験がございますが、それよりもひどい状況と言っても決して過言ではないという感じがするのであります。  これがノーマルな普通のブドウ状況でございますが、御案内のように茶色の点が打たれておりますのはほとんど裂果されておる。果実そのものがすっかり割れておるわけでございまして、これを一つ一つ摘出して、現在は農家でやらしておるわけでございますが、ほとんど商品価値はゼロという形になってまいりました。恐らくことしの甲州ブドウは勝沼のごく一部で出荷される以外は、出され得ないだろうといわれるほど、山間僻地でつくられているブドウはほとんど軒並みに被害をこうむったというのが現状でございます。  さらに、私ここに桃を持ってまいりましたが、桃の現実は、大体幹はこのようにやられておるわけでございます。これは私は折って持ってきたわけではございませんで、そのまま持ってきたわけでございますが、ほとんどこういう形で折れてしまっておる。しかも枝の先端どもろい。しかも枝がみんなひょうでほとんど傷ついてしまうというような現実の姿でございます。そうしてさらに桃にいたしましても、こういう傷の跡を見てもおわかりになるように徹底的にひょうでたたかれますから、あるものは裂果をする、あるものはそこからもうすでに半分は切り落とされる。ひょうの力というのは、加速度的に落ちてきますから、人間の頭に当たりますと、子供ですと場合によってはその場で倒れてしまうくらいな威力があるそうで、したがって桃あたりでも一たん傷ついたところに、幸い二、三日雨が降っておりませんから助かっておりますけれども、雨が降り続いた場合は、必ずそれから灰星病に入っていく、あるいはカビが生えていくことは間違いがないと言われておるわけでございます。それだけに、私の県だけを言うわけじゃございませんが、山梨県の特産物のほとんど三分の二は大激甚被害を受けたということで皆様方にも御理解のほどを願い上げたいと思うのでございます。  たばこにしてもレタスにしてもそうでございますが、参考までにごらんいただきたいと思いますけれども、こんな状況が全部でございます。  実は昨日、幸いにも農林省調査団がわざわざお見えになっていただきまして、果樹花き課長初めその他の各位方々もずっと歩かれて、これは大変なことだという印象を等しく持ったと思うのでございます。これは何も特別の物を持ってきたわけではございません。ここに並んでおるレタスであるとかあるいはまた野菜、蔬菜あるいはたばこの葉も、ちょっとひねって持ってきたわけですが、たばこ被害甚大は、先ほどもちょっと御指摘をいただいた先生がおられましたが、これは大変なものでございます。すなわちたばこの葉は大きゅうございますから、そこにひょうがぶつかりますとほとんど穴があく、その穴があいたたばこの葉の穴がさらに広がっていく様相を呈しますので、大体みんなこういうかっこうになってしまうというのが実情でございます。  そこで、ここに専売の方お見えになっておりましょうか。——来ていませんか。  それでは農林省各位要望申しておきたいのですが、まず恒久対策応急対策の問題があろうと思います。そこで、私ども要望といたしましては、まず応急対策として農林省はこれに対してどういう応急措置をとっていくのか。たとえばつなぎ資金等の問題あるいはそれと同時に私どもが考えております技術対策の問題、この問題についてはどういう見解に立ち、どういう措置をしようというのか、まずその一点お聞きしたいと思います。
  4. 杉山克己

    杉山説明員 初めに被害実態について、私の方から少し申し上げさせていただきたいと思います。  ことしのひょう害といたしましては、五月の上旬から中旬にかけて東北地方の南部、関東、東海、それから中国地方の一部地域降ひょうに見舞われたということがございます。さらに今回、六月中旬に東北地方の北部それから関東地方の一部が再び降ひょうに見舞われたということがございます。前者につきましては、主に果樹工芸農作物被害が生じております。それから後者につきましては、果樹野菜中心として被害が生じております。この被害実態につきましては、ただいま中尾先生も御指摘になりましたが、目下調査団を派遣する等私どもにおいて統計情報部中心として調査を進めているところでございます。今日まで県からの報告等も参っておりますが、いずれそれの集計を待ちまして最終的な必要な措置を講ずるということにいたしております。  さしあたっての措置といたしまして、いま先生指摘のような応急措置つなぎ融資はどうかということでございますが、この点につきましては県とも打ち合わせまして、まずとりあえずは県の段階で必要な措置をとるということが行われておるところでございます。  それから技術問題につきましても、必要な摘果を行う等、後の収穫に悪影響を及ぼさないようできるだけの措置を行う、こういうようなことを指導してまいっておるところでございます。昨日調査団も帰ってまいりましたところでございますので、それらとまた相談いたしまして詳細の措置をこれから講じてまいりたい、発表してまいりたいというふうに考えております。
  5. 中尾栄一

    中尾(栄)委員 大体ブドウの総額的な被害は十二億、桃は五億三千万、野菜等は五億九千万、桑園だけでも大体八百万以上になり得ようというのが山梨県だけの実情でございますが、私は、なぜつなぎ資金対策を早く県とも打ち合わせしてやってもらいたいかといいますと、それは恒久的な対策として技術指導の問題を含めて、まあ安い利子補給における融資制度というものも考えなければなりませんが、実は昨日もずうっと十二ヵ所回ってみますると、居並びます農民の方々がそこに座ってしまって茫然自失、もう私は農業は終わりだと思います。もう農業はいやだ、天を、自然を相手にする作業というものは、私どもは何でこんなに悩まなければならぬか、ひょうの降らなかった地域がお隣にある、そこは生々発展してむしろ高く売れるんだ、われわれひょうの通過したところだけは悲嘆のどん底で、どうやって生きていったらいいかわからぬと言う、また、ある青年層は、だから私どもは、もうどんな後継者対策農林省が考えていただいても、担い手対策を考えてもらっても、農村に希望が持てないのです、だから離農をするなと言ったって無理じゃないんでしょうかと言う、私も党における農林関係の一翼を担う者といたしましても、痛切にその言葉は身にしみて感じたわけであります。それだけに、つなぎ資金等の問題も県との話し合いというものを早急に、すなわち可及的速やかにこれをやってもらって安堵感を与えるということをお考え願いたい。このことを要望しておきたいと思います。  さらに、後ほど大臣には天災融資法自作農維持資金の問題だけをちょっと聞いたいと思っておりますが、被害の回復のための農薬肥料及びその出荷資材等に対する特別助成というようなことをも、これは強い要望として出ておりますが、この点に対してちょっと審議官のお答えをいただきたいと思います。
  6. 杉山克己

    杉山説明員 被害農業者生産出荷資材等経営に必要な資金につきましては、これは天災融資法発動になりますると、天災資金、それからまた、発動にならない場合でも自作農維持資金の融通というような措置もございます。そういった資金措置によって原則的に対応するということにいたしておるわけでございます。それ以外に、個別農家肥料農薬等資材費について災害対策として助成することにつきましては、これは率直に申し上げまして個々の農家希望がきわめてまちまちである。ある農家農薬、ある農家肥料、また、実際にそういうふうに申請したものがどういうふうに使われるかということになりますると、いろいろ問題も出てくる。また、金額としても零細であるというようなことから、従来からこれらについては補助の対象としては取り上げておらないという実情にございます。
  7. 中尾栄一

    中尾(栄)委員 その点も天災融資法やその他の適用と相まって、しかし今度の場合はいろいろと特例的に考えていく方向を少しく農林省でも考えていただきたいと思うのでありますが、果樹養蚕被害に対する共済金早期支払い問題点、これは残念なことでありますか、山梨の場合は——この間も私は私の所属する政党の中において共済制度というものに対する考え方を私見として出したことがございますが、共済制度そのものの中でも特にスモモであるとかあるいは桃、ブドウ、その他においてもなかなか入りにくい状況にある。特にスモモなどは全然入っておらない。果樹品目の中に入っておらない。これはまことに残念なことでありまして、私が三年半前、農林政務次官をやっておるころからこれは主張し続けてきた問題でございますが、この点についてどういう考え方に立っておるのか。一刻も早く入れる意思があるのかどうか。さらになおかつ、共済金支払い制度、この点についてもどういう考え方に立っておるのか、おらないのか。  さらにあと一つ山梨県の場合は、共済制度に入っておると言いましても、ブドウ一六%、あるいはまた桃一五%というように大変低率です。私がいま視察なども頼まれております鳥取県等におきましては九三%というような比率のようでございます。ということは、それだけ掛金が安くなる、加入率が高まれば掛金が安くなるというメリットもあるわけですが、同時に、入りやすい方向で考えていくこともまた共済制度作業一環ではなかろうかと思いますので、その点に対しましては、どういう見解と、またどういう方法でこの問題点を取り上げていこうというのか、その考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  8. 杉山克己

    杉山説明員 初めに果樹共済共済金早期支払いの問題でございます。果樹共済共済金は、普通は収穫期損害を評価してから支払うということにしておるわけでございますが、ひょう害等によってはなはだしい損害を受けた場合には、農業経営の安定を図るために早期損害評価を行う、同時に共済金の仮渡しを行うということができることになっております。それから農林省におきましても必要に応じて再保険金概算払いを行うことができるということになっております。今回の被害につきましてはそういう措置がとれるよう、被害状況の判明次第すぐにその支払いが行われるよう、目下手続をとっているところでございます。  それから一般的に、共済加入する農家いろいろ物によって差はございますが、低いのじゃないか、これをもう少し加入を高めていくことについてどう考えているかということでございますが、今回の被害等を通じましても、農家方々もいろいろお考えだと思います。こういうことをまた一つの契機に、私ども十分制度趣旨なり内容を徹底させるようにして加入を促進してまいりたいと考えております。  それからスモモの問題につきましては、確かに果振法の対象にも、それから共済制度対象にも現在なっておりません。これらにつきましては、この前の霜害のときに、中でもいろいろ議論が行われたところでございます。いま直ちにこれを入れるとかなんとかということになりますと若干問題もありますが、私どもとしては、そういったものも対象となり得るのではないかというような観点から今後十分検討を進めてまいりたいというふうに考えております。  なお、果振法につきましては農蚕園芸局長からさらに追加がございます。
  9. 澤邊守

    澤邊説明員 スモモ被害、今回はスモモはそれほどの被害ではなかったかと思いますが、前回の三、四月の低温による被害、それに関連いたしまして共済対象に加える、その前提といたしまして果振法による果樹対象に加えろという御趣旨の御質問でございますが、この点につきましては、現在果振法に基づきます果樹振興基本方針というものを五年目ごとに立てるものについて現在検討いたしておりますので、私どもといたしましては、審議会に諮った上で決めるべきことではございますけれども、前向きで、入れるように努力をしたいというふうに考えております。
  10. 中尾栄一

    中尾(栄)委員 その点に対しましては、農蚕園芸局長にひとつ強く私からも要望しておきたいと思います。まあ可及的速やかにというよりも、適宜な、時宜を得てどうか入れていただいて、この問題でまた再びこういう悲劇が起こらないように、また、起こっても助成法があるような形をとっていただきたい、お願いしておきたいと思います。  では、さらに被害樹園先ほど言うたような大変悲劇的な樹園にいまなっておるわけでありますが、これに対する技術指導の強化の面についてはどういう考え方に立っておるのか。たとえば、私がいま一番心配しておりますのはことしのブドウでも桃でもありません。ことしの桃、ブドウは、この緊急対策によって何とかなるでしょう。そういう意味においては私どもも自信を持って県、国の一体化によって助成方法を講じてあげる、これに尽きると思います。ただし、先ほど示しましたように根っこからやられておる、あるいは幹からやられておる、幹の先端が折れておる、あるいは幹そのもの被害をこうむっておるという、こういうようなものが、来年、再来年のブドウ、桃あるいはその他に影響を与えないかということを考えますと、私は大変に憂慮するものであります。それだけに、被害樹園に対する技術指導というものはどういう方向で考えておるのか、農林省担当当局考え方をお聞きしたいと思います。
  11. 澤邊守

    澤邊説明員 ブドウ桃等の、今回の降ひょうによりまして被害を受けました果実粒でございますが、これを早目に切り取るとか、あるいはまた、枝が傷を受けておるというものにつきましては、そこから病害虫、特に病菌が侵入するというおそれがございますので、特に病害の防除につきましては、技術指導として特段の努力をする必要があると思っております。また、来年度の新しい枝になるべき芽が出ておりますが、これが伸びますと来年実がならないというようなこともございますので、勇定なりあるいは肥培管理を適切にやりまして、そのようなことのないような対策も必要でございますし、また一般的に、樹勢を回復するために肥培管理を特に念入りにやる必要があるというような点がございますので、それらの技術指導につきましては、県を督励いたしまして万全を期し、また農林省で応援すべき点がありますれば応援をしてまいりたいというふうに思います。
  12. 中尾栄一

    中尾(栄)委員 安倍農林大臣、わざわざお越しくださいまして本当にありがとうございました。  実は、昨日、被害激甚地を、農林省方々も御協力を賜って、ずっと一日精力的に朝九時から夜七時ごろまで見て回りました。これは山梨のみならず、鳥取島根あるいは青森その他の激甚地と相まちまして、大変な悲劇的な問題だと思います。  先ほども示したのですが、ちょっとごらんになってください。こういうぐあいに、もうたばこであろうがレタスであろうが、全部ひょう害でこういうように——これか全部の状況です。ブトウにおきましても、裂果してほとんど体をなしません。これが桃ですけれども、桃にしましても、みんなこうやって裂果したところが灰星病になっている。こういう状況で物にもなりません。商品価値もない。山梨県のブドウは、恐らくこれによって三分の二以上被害を受けるでしょう。それによって、山梨生産意欲と同時に、山梨県自体の生きていく上にも大変な——恐らく、山梨県だけでなく、ひょう害を受けたところは、大災害と同時に悲劇をこうむっておるということを私もここで強調しなければなりません。  そこで、安倍大臣、お願いと同時に質問を申し上げたいのでありますが、これも応急手当て恒久手当てと考えまして、一つは、この間のスモモ激甚のときに、四億二千万という自作農維持資金も大いに適用させていただいたわけでございますが、自作農資金枠拡大に持っていくのか、あるいは、鳥取県、島根県、さらに青森県、千葉県、これをグロスを合わせますと、大体六十億以上であることは必至であります。したがって、天災融資法適用というのが、私はこの際は最もアダプタブル考え方ではないかという感じがいたしますが、その点御意見を承りたい。  さらにあと一つは、既存借入金が各自ございます。この借入金返済猶予措置、これを何とか、農林省当局におきましても、早急に応急手当て一環として県にはつなぎ資金を、同時にまた既存借入金返済猶予措置をお願い申し上げたい。  この二点に対して、実態の把握と同時に強く要望申し上げたいと思っておるわけでございますが、お答え願えれば幸いです。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回のひょう害につきましては、いま山梨県の実情をお聞かせいただいたわけでございますが、相当著しい被害が発生をいたしておることは承知しております。  昨日も、山梨県下に当省から果樹花き課長を団長とする調査団を派遣しまして、種々現地の状況調査したところでございまして、被害農家にはまことにお気の毒でございますので、できるだけの措置を講ずるように努力をしていきたいと思います。  天災融資法発動につきましては、これは御承知のように、当該の天災による被害が著しく、かつその国民経済に及ぼす影響が大であると認められる場合に、当該天災に対する適用政令を制定することにより発動することになっておりまして、最近の発動事例では、原則として農林水産物被害額が一定の基準、いわゆるおおむね六十億以上に達した場合に対象とするわけでありますが、いまのお話を聞きますと、山梨県を初めとする地域を含めれば六十億以上になるというお話でございまして、この辺のところはこれから調査をして、そういう実態であれば、発動しなければならないことは当然でございますし、いまから調査をいたしまして、その調査の判明を待って、被害状況資金需要の実態を踏まえて積極的に検討してまいりたいと思います。  なお、借入金返済猶予につきましては、これはこれまでも前例があるわけでございますし、前向きに取り組んで農家皆さん方の御期待にこたえたいと考えております。
  14. 中尾栄一

    中尾(栄)委員 これ以上質問申し上げませんが、本当にありがとうございました。心温かい安倍農林大臣のことでありますから、この問題につきましては、鋭意努力をいただくと同時に、私自身も鳥取県、千葉県等も視察を予定しておりますが、六十億以上の被害、この上に立ってのひとつ農林省の基本方針である天災融資法適用、融資枠の拡大、あるいはまた先ほど申し上げましたような、農民の意欲をかきたてるようなあらゆる技術指導をぜひともお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  15. 湊徹郎

    ○湊委員長 次に、野坂浩賢君。
  16. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまのひょう被害の問題について簡単に触れておきます。  安倍農林大臣ないしは他の政府の方から御答弁いただきたいのですが、いまも同僚議員からお話がありました。この前の農林水産委員会で私が、五月三十一日にわが鳥取県にもひょう被害がありました、こういう質問天災融資法発動についての見解をただしました際に、この天災融資法適用は、天候が同じような状況で、そして同じ時期であれば、全国的に国民経済に重大な影響、具体的な数字は約六十億円を水準として考えたい、六月いっぱいにもひょう被害はある、こういうふうに判断されるので、そのトータルを待って六十億になれば、全国的にそのものを一括して天災融資法の指定をする、こういうお話を承りました。いまの御答弁を聞いておりますと、一応調査をして発動かどうかは検討したいということでありますが、従来、この前の委員会では、六十億のひょう被害があるということになれば発動するというふうに政府答弁を承っております。したがって、農林大臣は、ひょう被害がそれだけあれば、全国的に天災融資法発動する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  17. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そのとおりでございます。
  18. 野坂浩賢

    ○野坂委員 結構でございます。  それでは次に、いよいよあしたから麦価の審議会が始まるわけでありますが、生産者価格は七・三%、消費者価格は一六・四%を政府は諮問案として提示する、こういうことになったわけであります。この問題については、北海道の同僚議員からいろいろとお話をいただくことになろうと思うのでありまして、私は、時間がありませんから、米問題についての見解を農林大臣及び食糧庁長官にただしていきたいと思うのであります。  その前に、米価審議会委員の構成についてただしておきますが、昭和二十四年なり二十五年、二十六年、こういう時代には生産者の代表者が非常に多かった。そして従来三、三、三方式といいますか、三分の一ずつ生産者、消費者、そして学識経験者、中立委員、こういうかっこうで構成をされておったのでありますが、最近は四、四、十七というような比率で米価審議会委員というものが構成されておる、これが実態であります。これについて生産者団体あるいは消費者団体、そういうところから三分の一方式でやったらどうか、こういう意見があることは農林大臣も聞いておられると思うのでありますが、この間全中の代表でありますか、お会いになりましたときにも、やはり生産農民、この代表者をもっと入れることが必要であろう、こういう見解も述べられております。あるいは自民党の松野さんも入れていいではないか、こういう見解を述べられておりますが、今回も昨年と同じような決定になっておる。将来これはやはり変えていかなければならぬじゃないか。もっと生産者の意向を聞く、あるいは消費者の意向も聞く、こういう意味で三分の一方式というものがみんなから望まれておるならば、民主政治の原則を踏まえておられる安倍農林大臣としてはその方向を再検討することが必要ではないか、こういうふうに思うのでありますが、いかがですか。
  19. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米価審議会委員の構成につきましては、本委員会においてもしばしば御論議があったわけでございますし、各関係団体からもそれぞれの御要請が出ておることはよく承知をいたしておるわけでございます。ただ、米審の委員につきましては、農林省設置法によりまして、学識経験者をもってこれに充てるというふうなことで、米麦の生産、流通、消費、これが与える国民経済的な影響等も踏まえて、国民経済的に重要な主食の問題ですから、これを審議するもいうことで、学識経験者ということで三分の一、三分の一、三分の一といったような構成になっておる委員会もありますが、米価審議会に関してはそういうたてまえはとっていないわけでございます。  私は今日まで米価審議会の論議等も承りまして、この米価審議会の論議はそれぞれ非常に公正かつ適正に行われているというふうに判断もいたしておるわけでございます。各方面の御意見等はそれぞれの立場において理由もあるわけでありますけれども、私といたしましては、今回二十三日に新しく米審の委員を任命するわけでありますが、今日実は内定をいたした次第で、米審の委員は全員据え置きということに内定をいたしたような次第でございます。しかし、生産者の声をもっと聞くべきである、あるいは生産者の委員をふやすべきである、そういういろいろな御意見が出ておることに関しては今後の問題として、米審がさらにもっと権威のある、そしてもっと充実したものにするためには、そういう点も踏まえて、今後の問題としては研究しなければならない点であろうかとは思うわけでございますが、今回は一応全員留任ということで内定をいたしたような次第でございます。
  20. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あす麦価の審議会が開かれるわけですから、その委員の内定はすでに通知をしておられるようでありますし、この審議会委員のメンバーの中には農林省出身の方が五、六人いらっしゃいますね。だから諮問案が通りやすいように、言うなれば、都合のいいように、民主政治ではなしに、農林省考え方がそのまま受け入れられる体制の受け皿をつくっているというように見、えるわけです。安倍農林大臣は民主主義、民主主義と言われますし、攻めの農政ということを常々言っておられるわけですが、三分の一にせよということをみんなが言っているわけですから、それを四、四、十七というようなことでは安倍農林大臣の言っておられることとちょっと矛盾があるように思うのです。話しに行くと、わりに物わかりがいいけれども、決まる段階になると非常に話と違ってくるということで、非常に不満があるわけです。したがって、来年度は、この委員会でもそういう議論があります、あっちからだってあるわけですから、生産農民、消費者、そういう方々の意向を体して、最も民主的にやるためには、われわれば生産農民を二十名にせよというようなことは言っていないわけですから、三分の一ずつに公平妥当、民主米価審議会の権威のためにもそのようにした方がいいではないかと言っているわけですから、来年については十分御検討いただけますか。
  21. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まあ研究はしてみますが、三分の一、三分の一、三分の一というのはいま野坂さんの御議論ではございますが、それぞれの団体の御意見では、そういうような意見もありますけれども、また中には本当に米を生産する農家を一人でも入れたらいいではないか、こういう御意見もありましたので、生産者代表ということで団体から代表が出ておられるわけですが、そうした本当に米づくりをやられる実際の声を聞くために一人入れるというようなことについてはこれは考える必要があるのじゃないかというような意見も私は述べたわけでございます。しかし、今回はとにかく全員留任ということにさしていただくということで決定したわけです。  三分の一、三分の一、三分の一というようなことは考えておりませんけれども、しかしそうした米作農民の声を反映するということについては、これは今後やはり研究の対象にしなければならぬと思っておりますけれども、来年についてこれをやるかどうかということをはっきり言えとここで言われましても、それに対して、それじゃやりますということをここで私の責任においていま申し上げることはできないわけです。しかし、これからの米審のあり方等につきましても、今日の段階において私は公正に審議はされておると思っておるわけでございますが、よりよくするためには研究はしていかなければならぬ問題である、こういうふうに思うわけです。
  22. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間がありませんからこれ以上追及をすることはできないわけですが、来年の米価審議会には安倍農林大臣は恐らくその席ではないだろうと思うのです、もっと偉い人になられるかもしれませんので、米作農民、米を耕作をする代表者を入れたいと思うというお話があったわけですから、それは引き継ぎのときにはきちんと引き継いでもらいたいということをお願いをしておきます。  特にそういうあなたの意向があれば、内示でありますから、ことしでも二人なり三人なり追加されたらどうですか。あなたのいいと思うことをやられたらどうですか。
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは委員の数が決まっておりますので、ことし追加するというわけにもまいらぬわけでございます。
  24. 野坂浩賢

    ○野坂委員 じゃ来年は必ずやっていただきますように、立ったりすわったりすると時間ばかり経過しますから、そういうことでお願いします。いいですな。  六月二日に全日農の要求米価、それから農協の要求米価が二万四千八百円、二万百二十円、それぞれ決定をされております。私も、あなたのところにこの要求米価の実現に向けてお話に参りました際に、安倍農林大臣としては、食管制度の堅持、それから備蓄米の充実、米の消費拡大、この三点を柱にして進めたい、こういうお話をいただいたわけであります。  いまよく問題になりますのは、この麦価でもあらわれておりますが、逆ざや解消ということが一つの課題になっておるということであります。そこで、米の消費者価格なり生産者価格というものは従来二重米価ということになっておるわけですが、あなたはまた二重米価は前提でないというような答弁をされるのではなかろうかと憂慮をしておりますけれども、結果的には二重米価になるのではなかろうか、食管制度の堅持からすればそうなるではないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  25. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米の対策につきましては、いまお話がございましたように食管制度の維持、それから備蓄の増進、さらに消費の拡大ということとあわせて、食管におけるところの米麦の逆ざやを段階的に解消していくという四つが私の基本的な考えであるわけでございます。そうした基本的な考えの中で米価を決定していくわけでございますが、この米価決定に当たりましては、私が申し上げるまでもないわけでありまして、食管法の趣旨に基づいて、生産者米価は再生産を旨として、物価その他の経済事情を参酌してこれを決めなければなりませんし、また消費者米価につきましては、家計の安定を旨として、物価、経済事情を参酌してこれを決めるわけでございます。もちろん、その間に米価審議会の意見を聞いて決めるということでございます。この食管法の趣旨、精神に基づいてこれに対処してまいりたいというのが私の考えでございます。
  26. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまお話があったように、食管法の第三条には、生産者米価は再生産を旨とする、消費者米価は家計の安定を旨とするということで米価を決めるわけですから、前提でなくても結果的には二重米価になります、こういうことでしょう。どうですか。
  27. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは二重米価には決してならないわけでございます。両米価の間に関連があることは事実でございます。これは物価、経済事情を参酌していかなければなりませんし、経済事情、物価ということが両米価において関連した事項でございますから、そういう意味の関連はあるわけでございますが、決して連動するとかあるいは二重米価とか、そういうことではないわけでございます。
  28. 野坂浩賢

    ○野坂委員 前提でなくても、私が言うのは結果論なんです。生産費所得補償方式というのが、再生産を旨とし、経済その他のことを考えて決めるということでしょう。これが生産費所得補償方式といういわゆる計算方式が出ておるわけですね。消費者米価は家計の安定を旨としてやるということで決まる。そうすれば、家計を十分考え、経済情勢を考えなければならぬ。もう一つは、生産費所得補償方式という計算方式が策定されておりますから、前提でなくても答えというものはそうなるのじゃないですかということを聞いているわけですよ。そうでしょう、答えは。いままでそうじゃないですか。生産者米価一万五千五百七十円と消費者米価一万三千二百五十円というものはちゃんと出ているじゃないですか。前提でなくても結果として出る、実際問題はそうなりますね、こう言っているわけです。
  29. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは決していまおっしゃるようなことではないと私は思っておるわけでございまして、生産者米価につきましては、あくまでも再生産を旨とするということがその基本でありますし、また消費者米価につきましては家計の安定、家計の許容し得る範囲内において消費者米価を決めていくわけでございますから、そういう前提の中で決めるわけでありますし、その間に二重米価というふうなことはあり得ない、これは法律のたてまえからもあり得ない、私はそういうふうに理解をいたしております。
  30. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大臣、私が言っておりますのは、あなたは前提でないとおっしゃると思っておったのです。だけれども再生産を旨とするということになれば、いわゆる生産費所得補償方式という計算方式が生産者の場合は出ているわけでしょう。消費者の場合は、家計の許容する範囲というかっこうで計算が出るわけでしょう。それだからいままではちゃんと違って——だからあなたは逆ざや逆ざやということをおっしゃるわけでしょう。前提としてではなくて、結果的には法律を守っていくとそういうことになります、こう言っておるのです。そうでしょう。結果論ですよ。
  31. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 その関連はしばしば御議論をいただいておるところでございます。大臣先ほど申し上げましたように、結論的に申し上げれば二重米価というものは食管法では規定しておるわけではございません。生産者米価、消費者米価、それぞれ再生産の確保と家計の安定ということで書いてございますが、法律的に申し上げれば経済事情を参酌する。すなわち物の値段でございますから、その買い入れ価格あるいは流通、管理等のコストというようなものは、当然消費者米価の決定の際にも考えられるわけでございまして、両者はそれらを見ながら決められるという点で、われわれとしては、先生のおっしゃいますように二重米価というふうに食管法が規定しておるというふうには考えておりません。  ただ、いままでもそうだったじゃないかというようなお話につきましては、生産者米価はそれぞれ再生産確保、具体的にはただいまは生産費及び所得補償方式、これも何も法律に書いてあるわけではございませんけれども一つの確立されてきた制度でございますが、それで算定されました生産者米価というものとの関連における消費者米価におきましては、物価その他のいろいろなそのときそのときの経済事情から家計というものへの配慮で、その点で消費者米価がわれわれに言わしめれば抑制的に決められた、その姿を二重米価とおっしゃるのだと思いますけれども、私どもとしてはたてまえとしてはあくまでも両米価は関連があり、その正常化は必要であろうというふうに考えております。
  32. 野坂浩賢

    ○野坂委員 たてまえ、中身、現実、そういうものについては、後で同僚委員からさらに追及をしていただきます。  米の買い入れ制限、全量買い上げの問題について大臣にお尋ねします。  備蓄米の充実ということを言われたのですけれども、いま備蓄されておる米は、ことしを含めてどの程度ありますか。
  33. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 備蓄米と特別に銘打っておるわけではございませんで、食管が操作している直接管理の米でございますから、その在庫造成という形で御案内のとおり備蓄を行っておるわけでございますが、昨年の十月には百十三万トン、本年の十月末、すなわち五十一米穀年度末におきましては、当初百五十万トンを予定しておりましたが、御案内のとおり五十年の大豊作によりまして多量の超過米が発生し、これを自主流通ルートに乗せまして配給と置きかえました結果、両三年のうちに二百万トンの在庫造成をするという政策方針が、すでにこの十月末におきましてそれ以上、現在のところでは二百三、四十万トンというものを在庫として持つというのがありのままの姿でございます。
  34. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ことしも買い入れ制限をするというお考えのようでありますが、この調整に当たって、作付の制限とかあるいは買い入れの制限というのは、結局農家というのは米をつくって、政府及び政府が指定をする機関に売却をする、それを限度で抑えられるということになると、やみ商人といいますか、そういうところに米が結果的に行くようなことになりはしませんか。それについてはどういうふうな考え方ですか。
  35. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  典型的な例は昨年でございます。計画生産量千二百三十五万トンに対しまして、最終の作況が千三百十七万トンというようなことで、本来の、需給上必要な数量の米を約八十万トン以上超えたというようなことでございます。  これに対してとった施策を申し上げれば、ただいまの先生の御質問のお答えになるかと思いますが、これらはお話のとおり、放置いたしますと、流通秩序、配給秩序を乱す、食管制度そのものにひびが入るということでございまして、全量指定法人、すなわち全農、農協等の集荷ルートを通じまして、自主流通ルートと同一のルートで集荷をして、これを配給に回したわけでございまして、これでいわゆる超過米を五十二万トンぐらい措置したわけでございます。これは豊作に基づく措置でございまして、そのための、よけいなことでございますが、これらの超過米にも相当な助成をして、正規のルートに乗るような措置をさせていただいたということでございまして、米の今日の厳しい需給事情という点から見まして、やはり何と申しますか、水田総合利用等における米の調整には協力していただかなければなりませんが、仮にいわゆる超過米というようなものが発生する場合には従来どおりの方針で、先生御懸念の流通秩序を乱さないような措置をとっていきたいというふうに考えております。
  36. 野坂浩賢

    ○野坂委員 まあ去年どおりのことをやっていくということだと思うのです。  私はあと四、五分しかありませんので大臣に伺いますが、大臣は口を開くと、逆ざや解消とまでは言いませんが、縮小という言葉はよくお使いになります。そこで、この赤字の中に人件費その他の政府経費というものが入っておりますね。それはどの程度あるわけですか。
  37. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  ラウンドで恐縮でございますが、必要であれば後刻資料を差し上げますが、国内米の管理勘定におきまして約七千五百億という損失が出ております。そのうちの売買逆ざやが五千三十億、残りが管理に伴う経費ということに相なっておりまして、最も大きな重みを占めているのは、ただいま申し上げました数字でもおわかりのとおり、売買の逆ざやということに相なっております。
  38. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは食管会計から事務費とか人件費というものは、あなたからおっしゃれば大体二千五百億程度あるということになるわけですから、それは一般経費の中で賄う。そうしなければ、それも何も込みで、赤字で逆ざやだというようなことでは国民は納得できないじゃないですか。
  39. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 ただいまは、いわゆる食管の損失の大ざっぱな性格を御理解いただくために大きく分けて申し上げましたが、その先生指摘の経費の中で事務人件費が国内米管理農では七百九十三億、残りはやはり食管の業務、米を買い入れて保管して輸送するというような諸掛かりのコストが千六百億ということでございまして、必ずしもこれらについて当然一般会計で負担するということには相ならぬかと思うわけでございますが、何せ、ただいま申し上げましたように、食管のいわゆる問題になります損失の大きな部分、五千億を超える部分が売買逆ざやというようなことでございまして、まずその問題の改善によって両米価の正常化を図るということが課題であるということは大臣がしばしば申し上げているとおりでございます。
  40. 野坂浩賢

    ○野坂委員 人件費その他事務費が八百億あるということははっきりしたわけですから、それはやはり一般会計で賄うべきだ。そうしてできるだけ食管会計の赤字からはこれは除去する、こういうかっこうで進めていただきたいと思うのです。  さらに、時間がありませんが、大臣とお話をしますときには、もう百万トン消費拡大をやりたい、こうおっしゃるわけです。そうして腹いっぱい米をつくってもらいたい。消費拡大運動というものの具体的な方法は、たとえば給食の問題もありましょう。あるいは。ハンに二割ないし三割混入する問題もありましょう。これから本格的に消費拡大運動をやりますよ、こうおっしゃるわけですが、いつごろ作付制限というものは消費拡大運動によってなくする、あるいは買い入れ制限というものは撤廃して全量買い上げするという見通しが農林省には——三大政策の一つですから、そしてこういうスタグフレーション下にあっては農民は米が柱ですから、大体その見通しと、あるいは逆ざや問題についても、麦はほとんど、四百七、八十万トン輸入しておるわけです。それが百万トン少なくなれば、それを腹いっぱいつくれるということになる。しかもそれが、いまあなた方が盛んに言われる逆ざやということになっておるわけですから、言うなれば外国の農家に対して補助金を出しておるということに結果的にはなっておる。そういうことになれば、逆ざやの解消あるいは縮小というものは、米からではなしに麦からやはりやっていかなければならぬじゃないか。そうしなければ日本の自給体制が確立できぬじゃないか、こういうふうにさえ思うわけです。まあ製粉業者やパン業者はいろいろ問題がありましょうが、だから混入をするというような納得のできる方法で進めていく、こういうことが必要だと思います。だから、消費拡大の運動の功を奏する時期、そして全量買い上げといいますか、買い入れ制限を撤廃する時期、その年度は、農林大臣としては大体いつごろであるというふうにお考えですか。百万トンことしでもやりたい、そうすればなくなるんだと何遍もおっしゃっておるわけですから、それの方針を、攻めの農政の立て役者である安倍農林大臣に聞いて、私の質問を終わらなければならなくなりました。
  41. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米対策を考える場合に、やはり米の消費拡大ということを積極的に進めることが、今日の米に関するいろいろの矛盾を解決していく最も有効適切な方法であると私は信じております。したがって、そういう意味におきまして、ことしから学校給食も積極的に、文部省の協力を得て進めることに相なったわけでございますし、また、生産者団体あるいはまた消費者団体も含めて、米の消費拡大について積極的な国民に対する理解を求める運動を展開をいたしておるわけでございます。  私は、最近の食糧をめぐる国際的あるいは国内的な情勢の中にあって、国民が、やはりわが国において生産できる、そしていまむしろ過剰の基調にあるこの米を見直していこう、積極的にこれを消費していこうという気風といいますか空気が出ておることは御承知のとおりでございますし、この機をとらえて、積極的な国民の理解の中でこの米消費が進んでいくことを心から期待をすると同時に、これに対するあらゆる施策を今後とも継続をして推進してまいりたいと思うわけでございます。  ただ、食生活に関することでございますし、こうした米の消費拡大につきましても強制をするというわけにもまいらないわけでございますし、あくまでも国民の理解と協力といういうのがその前提に立たなきゃならぬわけでございますから、この消費拡大につきまして私はやはり相当息の長いものであるというふうに思っております。相当な時間をかける必要がある。そうして私がかねて言っておりますような百万トンの消費拡大という方向へ一歩一歩近づいてまいらなければならぬわけでございます。そういう意味で、それではいっ消費拡大百万トンが実現できるかということにつきましては、確固とした方針というか見通しがあるわけではないわけでございますが、この運動を積極的に根強く続けることによって、そういうことも可能になるというふうに私は思うわけでございます。  なお、米の逆ざやを縮小していくということと同時に、それ以前に麦の政府の売り渡し価格の逆ざやを解消する必要があるのじゃないか。これは対米価比の問題からとらえてみてもそういうことは必要ではないか。あるいはいまの麦の逆ざやの大きな現象として、外国の農民にいわゆる補助金を渡しておるというようなかっこうになっておる。そういう矛盾を解決する意味からも、麦の逆ざや解消が必要ではないかという御意見はごもっともでございます。そういう見地から、あすの米審においても麦の政府売り渡し価格につきましては思い切った逆ざや解消の方向へ一歩大きく踏み出すわけでございます。これはここ両三年の間には麦については完全に逆ざや解消ができるというふうに考えておるわけでございます。  そうした麦の逆ざや解消、さらにまた米の逆ざやを縮小していきながら、米の消費を積極的にふやしていくということによりまして健全な食管の維持、運営というものを確立することができるわけでございまして、私は、米についての食管制度というものを堅持しなければならない、これが農政の基本でなければならぬと思っておるわけでございます。この食管制度を堅持していくためには米の需給のバランスがとれ、同時に在庫においても適当な在庫積み増しが行われるという中にあってこの食管制度というものは健全な形で維持されるもの、こういうふうに考えておるわけであります。
  42. 野坂浩賢

    ○野坂委員 終わります。
  43. 湊徹郎

    ○湊委員長 次に、美濃政市君。
  44. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、主として麦の問題につきまして質問をいたしたいと思います。  まず最初に、きょう各新聞を見ると、生産者麦価は七%程度と表示をしておるのもありますし、七・三%もある。それから、消費者麦価は大体一六・四というのはどの新聞も書いておるようですが、これはそのように決定したのですか。
  45. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  御案内のとおり、麦については食管法の四条の規定によります農業パリティ方式でございまして、その五月値を最終算出して決めるということでございまして、最終的にはきょう一ぱいで政府部内の調整を終えまして、明日の米審にお諮りするということでございます。  それから売り渡し価格につきましては段階的に、この一月二〇%上げたわけでございますが、さらに、現在の外国麦の逆ざやが三〇%以上になっておる、それを踏んまえまして早急にこの売買逆ざやを是正するということでその数字の調整も大詰めに来ておるわけでございまして、明日の米審にお諮りしたいというふうに思っております。
  46. 美濃政市

    ○美濃委員 いや、決定かどうかということです。新聞に出しておるのは決定かと聞いておるのです。どうですか。
  47. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 これはほぼ政府部内の意見が煮詰まりまして、明日の米審に間に合うような段階に来ておるということでございます。
  48. 美濃政市

    ○美濃委員 答弁がちょっと違うのですがね。新聞に出ておるのは、これはもう決定されたのか、こう聞いておるわけです。単純に答えてください。
  49. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としては最終的に決定はしてないのです。新聞等はそれぞれの自由な報道の立場において報道されておると思うわけですが、政府としては、まだ調整の段階があるわけでございますから、最終的には決定をいたしておりません。
  50. 美濃政市

    ○美濃委員 そこで、この問題でもう一つ聞いておきたいと思うが、いつもそう言うのですね。これからことしの米価にも入りますが、農産物価格の決定前に開かれた委員会での答弁はいつもそう言うわけです。ところが新聞には出ておるわけですね。これはやはり私ども国会の権能にも関すると思うのです。これは大臣から御答弁をいただきたいと思います。  結局、朝審議会が開かれて、審議会提出した後は、資料は関係議員特に農林水産委員にはお渡しをいたしますけれども、それ以前は渡しませんと言うのです。そうでしょう。そう言いながら、われわれが見ておると、すでに早朝あるいは審議会の前の晩ぐらいにある程度の部数が出ておるということです。国会議員でもない人で、知っておる人は知っておるし、持っておる人は持っておるのですね。これはどういうことなんでしょうか。これからもそういうことが続くのですか。新聞は自由な報道ですと言うけれども、新聞は前日になると確報を出しますね。確定したと出すのです。諮問案はそのとおり出てくるわけですから、私どもはこれは自由な報道、新聞が推定した範囲の報道とは解釈できないわけです。審議会のある朝の新聞はもう全部確定報道を出します。この確定報道はだれが出すのか。自信を持った確定報道を出し、諮問案はそのとおりだということでありますから、これはどこからか出ておる。食糧庁が出すのか、あるいは畜産物であれば畜産局から出すのか、出しておると思うのですが、国会議員には出さない。こういうふうに決まったということで報道陣には確報を出す。これはどういうことなのか。  決める権限は大臣にあるということです。しかし、いやしくもわれわれは国民を代表しておる議員ですから、出すのならわれわれにも出すべきだ。ところがわれわれにはそういう態度をとって、まだ決まっておりませんと言う。恐らくきょうの質疑の中でも、晩方の五時になっても六時になっても、まだ決まっておりませんと言うのですよ。いまそれを言われるからそう想像しておるのだが、そう言いながら出すところには出していく。これは大臣どういうことなんです。国会軽視じゃないですか。国会はどうでもいい、大臣の権限事項だから、そういうことを大臣として君たちに言う義務はない、そのとおりだと思うのですが、こういう正式の委員会ですから、委員会に対してそれを発表する義務がないのだったら、他に対しては、国会でないのですから、それ以上に大臣としてやはり秘密は守るべきだと思うのです。われわれにはまだ決まっていないと言っておきながら、外へは全部出してしまうというのはどういうことですか。
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としては発表いたしたわけでもありませんし、私の口からいま報道されておるような数字が出ておるわけではないわけであります。したがって、政府として公式に発表したわけではないわけでございます。しかし、麦価につきましても米価につきましても、農林省中心にして各省庁間において作業を進める段階において、これは私も新聞記者をやった経験があるから申し上げるわけでありますが、新聞社がその作業実態をキャッチして報道するということは日本の新聞からすれば当然のことであろうと思うわけでございます。その数字が正確であるかどうかということについては、最終的に政府が発表してこれがはっきりするわけでございますが、政府としてはいろいろの段階を経て最終的に決めなければなりませんし、その順序、手続を踏んで最終的に決めた段階において、国会あるいはまた米審等には資料も添付をいたしまして正式に御配付をいたしておるわけでございます。したがって、新聞に出たからといってこれが国会軽視であるとかないとかいうことでは決してないというふうに私は存じております。
  52. 美濃政市

    ○美濃委員 きょうは時間がないので、との項はこの程度にしておきますけれども、私はこの問題はやはり重要視しておりますから、次の委員会は米価のために十日ごろ予定しておるようですか、機会あることにこの問題はもう少し——政府においてもいまの答弁もさることながら、大臣の所管する事項を公表するに当たってはもうちょっと、やはり国会における答弁と、取り扱われる対外的な発表とがこう食い違っていくということは、私は好ましくないと思います。ですから、私に言わせれば、どちらでもいいです。公表するのなら、審議会の前にもうほとんど全部公表されてしまうわけですから、公表されるのであれば、きょうの時期ですから、決まっておる内容については大体こうですということが国会に公表されてしかるべきだと思うのです。それを国会においては、まだ決まっておりません、これからですと言う。外へは、国会以外のところへは、相当確証のある、御丁寧に資料までついて内容が出ておるということですね。公表したのかせぬのかということになると別ですけれども、そういうものが流れておるということについては問題がある。これだけ申し上げておきます。これでは私としては了解できない。もっとこれはきちっとする必要がある。対政府と国会の中において余りにもこれはずさんに行われておるのではないか、こういうふうに思います。  それから次に、先ほど聞いておりますと、家計の安定ということを言われておりますが、私ども通例から言うならば、家計の安定というのは、たとえば勤労者であれば、ことしのベースアップ大体八%のガイドラインをかぶせておるわけでありますが、八%を超える公共料金の値上げや物が上がることは、上がって家計の安定ということはあり得ない、こう思います。ベースアップ以上に物が上がるということは、いかなる物といえどもその条件の中で家計が安定するなどということはあり得ない、第一点としてこう思います。  それから農業について言うならば、さきに畜産物の価格決定も大体八%のガイドラインが、われわれはガイドラインと解釈するわけですが、かぶせられておる。大臣、あなたも三木内閣の閣僚ですから、これは閣議なんかで検討するときにどういうふうになるのか。片や電灯料金は、この間の決定は、九電力全部ではないけれども、二七%ですか、三〇%近い電力料金の値上げがスムーズに決定されていく。ほとんど電力会社の要求どおり、要求どおりではないですけれども、要求に近い決定が行われておる。これについて私どもは非常に不快な念を持つわけです。一体三木内閣というものは何をしておるのだという気持ちになります。農民や労働者には八%のガイドラインで農産物価格もベースアップも抑制をして、そうして公共料金やあるいは大企業の、政府の許可に伴う料金等についても要求に近い値上げを無造作に認めていく。これじゃ国民生活を破壊してしまうのじゃないですか。家計の安定なんということを言えぬでしょうが、国会の場で大臣として。家計の安定なんということを本当にやる気持ちがあるのかどうか疑わざるを得ないという気持ちになるのは当然でしょう。そこはどうなっておるのですか。三木内閣としてこの問題をどう扱おうとしておるのか。たとえばインフレを抑制し、この段階で国の経済を安定しようとするのであれば、春先から出発した農産物の第一回の畜産物価格なりベースアップなりを八%で抑えるのであれば、政府はあらゆる困難を冒して全部八%で抑え切っていくのであれば、われわれもその問題に対してかなり厳しい政策が行われてもある程度の理解はできると思うのです。しかし、片や弱い者は八%で抑えつけるが、強い者には三〇%でも値上げを認めていく。これは悪政の最たるものだと思うのです。その点はどうですか。
  53. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 物価を安定し家計の安定を図っていくということは、政治の面においても非常に大事なことでございまして、したがって三木内閣としてもいわゆる物価の安定ということについては全力を投入してまいったわけでございます。ことしの三月末における消費者物価を前年度対比一割以内にとどめたということも、政府として懸命な努力をした結果であるというふうに私は考えておるわけでございます。そうした方向で今後とも進んでいかなければならぬわけでありますが、そういう中にあって米価をどういうふうに取り扱っていくかということは、米そのものが国民の主食でありますだけに、慎重に検討し論議をして結論を出さなければならぬわけでございますが、そのために生産者米価とともに消費者米価につきましても食管法に基づいて適正にこれを決めなければならぬ。そうして米価審議会の議を経て政府として正式に決定しなければならぬわけでありまして、消費者米価につきましては食管法に基づいて家計の安定を旨としてこれを決めていくわけでございます。  それでは家計の安定ということをどういうふうに考えるかというふうないまの御質問でもありますが、先般も米価審議会において家計米価という問題をいろいろと御論議いただいたわけでございます。この家計米価の御論議によって消費者米価の許容し得る範囲と限界というものを、家計米価という形で御論議いただいたわけでございますし、私たちはその許容し得る限界の中にあって消費者米価というものを適正に決めていくということを、われわれの考え方として持っておるわけであります。そういう方向でこれからも作業していく考えであります。
  54. 美濃政市

    ○美濃委員 大臣のお話を聞いておって、やはり農民なり農業者なり、あるいは勤労者のいわゆる家計安定、これは米価であろうと電気料金であろうとみな同じです。総括してお尋ねしますが、電気料金であろうと公共料金であろうと米価であろうと、あなたの言う許容できる範囲というのは、やはりベースアップですよ。賃金の上昇した範囲内、あるいは農産物価格を引き上げた範囲内が許容範囲であって、そういうものを超えて何ぼでも上げて許容の範囲内というその解釈が私どもにはわからぬわけですね。理解もできないわけです。三木内閣は、何ぼ上げていってもそれは許容の範囲だという解釈はどこから出てくるのか。たとえば国鉄料金を二五%上げる、電気料金を三〇%上げる、それは許容の範囲内だ。ベースアップは八%で抑えるのですよ。恐らく国家公務員の人事院勧告だって、予想される範囲というのはその範囲でしょう。そうして抑えておいて、片や国鉄運賃は二五%も上げる、電気料金は三〇%値上げ申請、オーケーでしょう。消費者麦価は一六・四%上げる、それは許容の範囲内という解釈は私どもにはできないわけですね。許容の範囲を超しておるのではないですか。そういうことを三木内閣はやって、それがどうして——許容の範囲外だというなら話はわかりますよ。農民や勤労者はどんなに苦しい生活でも、やはり電力会社の方が大切なんだから、そっちは八%で抑えるけれども電気料金はこれこれの理由があって三〇%上げたのだ、それは許容の範囲を超しておるけれどもそうしなければならないという事由というものが明確であればまだしも、許容の範囲内、許容の範囲内と言ってそういうふうに上げていく、その許容の範囲ということが私どもには理解できないわけですね。なぜそういう許容の範囲というものが三木内閣の閣議の中では許容の範囲内として決まっていくのか、そんなことわれわれにはわからぬ。そんなものはばかばかしくて理解ができない。何をやっておるのか、閣議というのは。こんな政府ならない方がいいのではないかという極論すら考えるようになるわけですね。邪魔になるのじゃないか、国民生活に。許容の範囲内ということが私どもには理解ができないのですね。そういうものを無視して、ベースアップや農産物の価格のアップを無視して他のものは全部引き上げて、肥料も上がる、農機具も上がる、許容の範囲内だ  私ともにはわからぬ。わかるようにしてくれませんか。許容の範囲内でないと私は言い切りたい、言い切っておきますから。大臣は許容の範囲と考えるのか、それとも許容の範囲ではないのだけれどもこれこれの理由があってやむを得ない、国民生活を圧迫しても強行せざるを得ないなら得ないのだと言ってくれませんか。許容範囲内なら、これこれの理由で許容の範囲内だということをここで答弁してください。
  55. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 物価安定というのは、これは三木内閣だけではない、どういう内閣ができても内閣としての一つの大きな基本の政策、姿勢でなければならぬわけでございますが、そうした物価安定の中にあって物それぞれの価格決定については事情というものがあるわけであります。したがって、電気料金等につきましては原価計算を中心として、その結果原価計算によってこれだけのアップをしなければ生産ができない、コストを確保できないというふうなことからはじき出されて、しかし物価安定という大きな線の中で経済企画庁を中心にしてこれをできるだけ圧縮するということで、電力料金等にいたしましても当初電力会社等から出された案から相当圧縮したものに抑えて決定をされたわけでございます。また、米は米についての事情というものから国民の所得の伸びの中において米価というものがどういうふうに変移してきたか、そういう消費者米価というものが家計の中においてどういう位置を続けてきたか、そして、それでは米については所得の伸びの中においてこれがどの程度まで許容できるかということを、これは家計米価という形でわれわれははじき出しまして、その中にあって消費者米価を決定すれば家計の安定を妨げることはないということで、いま検討をいたしておるわけでございまして、したがって、われわれとしてはあくまでも家計の安定を旨とするという法律の目的はこれを十分守りながら、その中にあって消費者米価というものは決定できる、またされなければならない、こういうのがわれわれの考えでございます。
  56. 美濃政市

    ○美濃委員 いまいわゆる電力料金は今回の値上げを認めなければ経営の維持ができないと言われる。私は前段に申し上げておるように、主として麦の質問をしておるのです。  それでは麦の価格問題に入りますけれども統計情報部が公表したこの五十年の生産費、これを見てどうでしょうか。まずこの一表目に出ておるのは、一日当たり家族労働報酬、小麦で千四百六十八円、六条大麦で千六百八十四円、裸麦は驚くなかれ五百二十九円ですね。ビール大麦が二千七百五十四円。大臣どうでしょうか。こんな安い賃金が日本の現実のいまのこのインフレの中でどういうところに実現しておるのか。もう一つは、こういう賃金で麦を生産できるのか、生活できるかどうか。こういうことが公表されておるわけですね。いやしくも食糧の自給、麦を生産するということになれば、三木内閣の政策として、もう麦の生産を放棄するというなら別です。これはどうですか。放棄ではなくてやはり生産を維持するというのであれば、こんなものじゃだめですね。これにガイドライン、いわゆるパリティですか、五月パリティは、これは言えるでしょう、もう決定直前ですから。これは長官にお尋ねします。パリティはどうなるのか、わかりますか。あなたから言えば、いまの価格にパリティをかけた価格というのは、口で言わぬでもすぐ出るわけですから、そういうのと、こういういわゆる低所得で、どうしてこの生産維持が可能なのか。これはできないのですね。いわゆるこの家計の安定ということは全国民にやらなければならぬことですから、こういう低賃金では家計は安定しない。そこで、大臣先ほどからのお話ではまだ決定していないというのでありますから、作業中というのでありますから、私は幸いだと思うのです。新聞に出たのがもうおおよそ決定かと思って心配したのです。ところが、幸い大臣はまだ決定してない、作業中である、決定はこれからだというのだから。少なくともこの現況においてはやはり思い切った措置をとらなければ、これは麦をつくった農家の家計の安定なんかというのはあり得ないですよ。情報部が公表したのですから、いかがでしょうか。
  57. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  パリティにつきましては、先ほどもるる大臣が申し上げましたように、明日の米審に間に合う時点で公式に決めるということでございますので、数字についてはお許しを願いたいと思います。  ただいま先生、明日の五十年生産費につきましての一日当たり家族労働報酬が平均、これは一俵以上の販売農家ということでございまして、小麦でございますと千四百六十八円、これについての御指摘があったわけでございます。五十年産麦は四十九年に比べまして反収が相当減少したというようなことから、家族労働報酬についての減退が見られるわけでございますが、確かに一日当たりの家族労働報酬については他の製造業労賃等に比較いたしますと、いろいろ御議論はあるかと思いますけれども、二つの問題があると思います。一つは、これは地域により、それから規模により、この家族労働報酬については相当差があるということが一つでございます。それからもう一つは、これは生産の面からの奨励金でございますが、農家の手取りとしての生産奨励金あるいは契約奨励金、これも全量契約になっておりますので、これも農家の手取りになっております。本年は六百円でございますが、これらを合わせました家族労働報酬というものは四千六百九十円ぐらいにわれわれの計算では相なるというふうに考えております。したがいまして、そういう問題があるということが第二点でございます。  なお、この点は北海道のごとく二町以上の麦作らしい麦作経営というものがある地域、あるいは都府県におきましても主産地の麦作依存度の非常に高い、麦作が経営に副次的ではない経営というものとの関連を考慮すべきだと思うわけでございまして、やはり端的に申し上げますと、全国平均では麦作の平均耕作面積が三十一アールでございまして、しかもその年間の労働時間が八十数時間、米は反当八十何時間というようなことで、麦はそういう副次的なものでございますので、やはり反当労働報酬を他の、たとえば製造業労賃で恒常的な関係にあるところの労賃というようなものと直接的に比較するという点については問題があるのではないかというように考えております。
  58. 美濃政市

    ○美濃委員 私の決められた時間はなくなりまして、きょうは質問者が多いので御迷惑をかけますからこれで終わりますけれども、これでやめるといまの答弁にそのまま同意をしたことになりますから、それはやはりこの経費の中には確かに労働時間関係についてはカントリーエレベーターを設置したような、乾燥場をつくってコンバインでやる、そういうところは、これは平均労働時間で、経費の中にその経費は全部集約されていない平均経費です。そういう工程になって家族労働時間がかなり圧縮されるところが、また膨大な乾燥費だとかコンバインの作業賃金だとか、ここに出ていない経費が大幅に増大しますから、必ずしもいま長官が言うようにそれが即どうなんだこうなんだというふうに比較検討をするということは間違いです。ですから、ここに出ておる表で、標準として統計情報部が出した以上はこれでいろいろ検討することが私はいいと思います。  それからもう一つ。奨励金を含めて四千何ぼになると言いますけれども、いまはしかし、われわれは少なくとも、四千六百円でもこんな安い賃金ないですよ、あたりまえの労働をして。生計を維持する労働として一日当たりの労働、まあ太鼓たたいて探せば四千円ということで一日労働賃金としてないこともないかもしらぬ。しかし、少なくとも子供を教育して世帯を形成していける労働賃金の単価ではない、こういうふうに考えます。  それから次に、一、二だけ申し上げておきますが、これは後から、きょうここで提示をしておきますから、また後から委員会外でも検討して御回答願いたい、またいろいろ御相談も申し上げたいと思っておりますが、この麦について、等外上がやはり規格になっておるのですね、検査の方を調べてみると。規格にするのであれば、これはやはりいま三等で打ち切るということは酷です。それからいまの三等規格、いまの等外の上で十分食糧に供用できるのでありますから、これは四等規格をつくるなり、ほとんど全国的に見て一等規格の出回りがないのでありますから、いまの二等規格を一等規格に引き上げて、以下いまの等外上を三等規格にするか、もしくは四等規格をつけて、等外上などという、やはり等外という表現を使わぬで、四等という規格を使って当然買い入れの対象にする、これをひとつ検討願いたいと思います。  それから契約奨励金を、物価も上がっておりますから適正な引き上げ、それから非契約麦が生じないように運賃助成を考える、以上の点を速やかに検討してもらいたいと要望申し上げまして質問を終わります。
  59. 湊徹郎

    ○湊委員長 次に、竹内猛君。
  60. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 まず最初に、資料要求をしておきますが、米の階層別供出の資料、たとえば五俵から十俵あるいは十俵から何俵という、こういう資料をつくってほしい。全国の米の階層別供出の資料です。これが第一。それから第二は、今度は米の配給側において、低所得者等々に対して特殊な、特別な取り扱いをしているはずであります。これについての最近の状況、それに対する資料を早急に欲しいと思いますので、要求しておきます。  きょうは直接これは質問ができませんからしません。
  61. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 時間なり精度という点についてはあるいは先生の御要求そのものにいくかどうかはなお検討させていただきますが、二点の資料については用意するように努力したいと思います。
  62. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この二つの資料はともに重要な資料ですから、ひとつ克明によくつくっておいてもらいたいと思います。それで質問に入りますが、五十一年度の米の価格の決定をするスケジュール、どういう順序で、いつ最終的には決めるかというこの問題についての見通しをひとつ聞かしてもらいたい。
  63. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げますが、本件は大臣からお答えするのが筋かと思いますけれども、われわれ事務当局としてはただ例年のとおりでございますが、米価決定に必要な資料の整備、生産費なりあるいは評価がえ労賃、毎勤統計から来る最近の資料というようなものの整備に努めて方針を固める途中でございますが、日程につきましてはこれは例年のことでございますが、麦の米価審議会、まず麦を決定いたしまして、それ以後早急に決めるというのが従来の例でございますが、本年も具体的な日取りの決定等についてはそういうふうに相なるのではないかというふうに現時点では思っております。
  64. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 かなり話が抽象的ですが、農業団体なりそれぞれの団体は具体的に日にちをほぼ設定をしてそのスケジュールを決めているわけでして、たとえば去年の場合であれば七月の何日かには米価審議会を開く、そしてその答申を得て自民党と相談をしながら最終的には生産者米価の決定はいつごろ行う、こういうぐあいに説明はできないものかどうか。ぜひそういうふうな具体的な説明をしてもらいたい。
  65. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 麦につきましては御存じのようにあした、あさってでやるわけでありますが、米につきましてはまだ具体的にいつから米価審議会を開くかということを現在の段階におきましては具体的には決めてないわけでございますが、しかし米価審議会委員の皆さんの御都合もあるわけでございますし、これは早急に時日につきましても決めなければならぬと思いますが、私の基本的な考え方としては、いずれにいたしましても七月いっぱいに米価審議会を開きまして、そして生産者米価、消費者米価、それぞれ七月末までにはこれを最終的に決定したいというのが私の基本的な考えでございます。
  66. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 おおむねわかったけれども、それでは生産者米価と消費者米価の決め方についてはどうされるか。別々にやるのか、それとも一体にやるのか、どうするのか、その点はどうですか。
  67. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これも現在の段階において具体的にははっきり決めておるわけではございませんで、各方面の御意見も聞かなければなりませんし、そうした御意見を踏まえて最終的に決めたいということでございまして、現在はっきりここで申し上げるほど煮詰まっていないのが実情でございます。
  68. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 前から私どもは米価なり麦価の決定というものは六月なり七月にやることがいいか悪いか、米などは作付は終わっているわけですね。物を植えてからまだ価格が決まらない、こういうのは非常にぐあいが悪い話だと思う。本来であればその年の価格があらかじめ決まって、こういう価格だから作付をしてこういうふうにいくんだということでなければつじつまが合わない。ところが、もう田植えはしてしまったのです。それでまだ価格が決まらない。こういうばかな話はない。価格の決定の時期というものはこれでいいと思いますか。
  69. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 価格の決定の時期についてはいままでもいろいろと議論のあったところでございまして、いまお話しのように作付前に決めるべきではないかという有力な議論もあったわけでございますが、しかし常識的に見ますと、やはり最近時までの生産費の調査の資料とか、物価、経済事情というものをなるべく米価に反映しなければならぬというふうなことも考えますれば、七月あるいは八月、そういうころに決めるのが妥当ではないだろうか、こういうふうに私は考えておるわけであります。
  70. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは生産者米価と消費者米価の問題について私は要望します。これはやはり別々に審議をしてもらいたい。連動などをしてひっかけてやるようなことは絶対やめてもらいたいということを要望します。  続いて質問をしますが、これは大臣質問しますが、本年の米価なり麦価を決める前提となる客観的条件並びに農家側の主体的な条件、これについてはいままでの段階と私は大きな変化があると思うのだけれども大臣はどのようにそれをかいつまんで考えられておるのか、その点について御意見を聞きたい。
  71. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 本年度の米価決定につきましては、これは何としても食管法の法律の趣旨に基づいて毎年これを決めるわけですから、今回ももちろんこれは基本となるわけでございますが、しかし米を取り巻くところの情勢というものはいろいろと推移を重ねておることも事実でございますので、たとえば米の需給の問題等にいたしましても、昨年は非常に豊作であった、あるいは反収が史上最高であったというふうなこともあるわけでございますし、在庫は相当積み増すことになるわけでございますが、しかし依然としてこの状態が続くということは米が過剰な情勢にあるということをわれわれは理解し、考えなければならぬことは当然であるわけでございますし、また同時に米の主食としての今後の立場というものをさらに進めていかなければならないという時代的な要請もあるわけでございますし、同時にまたやはり過剰な基調であるとはいえ米作農民の方々の再生産意欲というものを阻害することのないような形で決めていかなければならぬことは当然であるわけでございます。そうしたような状況、またさらに去年からことしにかけての物価の動きというようなこともそれぞれ十分背景に考えまして、そして適正に決めていかなければならない。そうして、生産者米価についてはやはり再生産を旨とするということがその大前提となることは、これは当然のことでございます。
  72. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大筋の説明は理解ができるわけですが、私は最近米価問題なり農林予算について財政主義というものが非常に台頭してきているような感じがする。あるいはまた、逆ざやの解消という問題が至上命令のような形でおろされて、何かこの逆ざやというものが悪であるかのごとき、これを解消するものが善である、こういうような印象が強くてならない。だから、したがって生産者米価を抑えて消費者米価を値上げしてこの間における逆ざやを解消する、それは善である、こういうような考え方、あるいはまた、いままで土地改良や品種改良や多くの努力をして米をつくるような方向をとってきながら、最近はかなり権力的にこの生産を抑えている傾向、八郎潟、福島潟、数えればこれはたくさんあります。それで、農民の方は理解ができないということで訴訟をする、こういうかつてないことが行われている。これは米が若干の過剰ぎみにあるということが前提になっていると思う。米をつくることがまたこれは悪だ、何か米からほかへ変える方が善だというように、常に善玉、悪玉があって、そしてやりとりをしているような感じがしてならない。  そこで、いま、麦の問題に関連をするけれども、麦を五百五十万トンの買い入れをした、八百五十億ぐらいのあれを出していますね、こういうようなことは余り取り上げる人はいない。最近新聞の論調で取り上げられてきた、いいことだと思うのです。そこで、大臣もこのごろしばしば米を百万トンほど多く消費して、麦はひとつ百万トンぐらい輸入を抑えたらどうだ、先ほど野坂委員もそういうふうに言ったけれども、これは非常に具体的な方向だと思うのです。このことは本気になって農林省がやる気になれば現在の生産調整などというものは実際にはかなりきれいに始末ができる。こういうようなことに対して、米をまず中心とし、麦をそこに加えて、米麦総合政策というものをこれからつくっていく気力があるのかどうか、この点はどうですか。
  73. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま逆ざや問題を最初に御指摘になりましたけれども、これは財政上から見ましても逆ざやを解消していくということは、今日の国の財政の状況から見ましてそういう方向を打ち出すことは当然のことであると私は思っておりますが、私が逆ざやの縮小を強く叫んでおるのはただそうした財政上の立場からだけではないわけでありまして、農政の立場に立って見ましても、やはり健全な食管制度というものをこれからも維持していくという上においては、これ以上逆ざやがふえてくるということは決して食管制度を健全な形で維持する上にプラスにはならないということでございますし、同時に逆ざや解消によって得られたメリットというものを積極的にこれから進めなければならない農政の推進にこれを充てていく、こういうふうな必要からも、これは農政上の見地からも逆ざやの縮小ということは絶対に必要なことであるというふうにかたく信じておるわけでございます。そうした中で、今回も麦につきましては、逆ざや解消のために大きく踏み出すわけでありますし、米につきましてもそういう方向で今後努力を進めていくわけでございます。さらにいまお話のありました米麦を中心とした国民食糧の確保という意味の総合的な政策を今後考えていかなければならぬということは当然な御指摘でございます。われわれが「総合食糧政策の展開」と称する基本政策を打ち出しましたのもそうしたいまお話しのような視点に基づきまして長期的な形で打ち出したわけでありまして、米の需給のバランスをとりながら麦については積極的な生産の増強を図っていく、こういうために奨励策等をとっておるわけでございますが、さらにこうした措置は今後とも積極的な形で進めてまいらなければならぬというふうに思っております。
  74. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 基本的に米麦の総合一環性を追求するということについてはよく理解もできるし、いいことだと思うのですが、そこで現在の麦の生産状況というものを見ると、まことに心細いものがあります。戦後、私の記憶に間違いがなければ、これは間違えたら後で訂正をしていただきたいのですが、昭和二十五年が作付面積が一番多かった年ではないかと思う。恐らく百二十五万ヘクタールぐらいあったんじゃないか。生産は二十九年に約四百万トンを超していたと思います。それが現在では、本年は十七万ヘクタールぐらいになっている。その生産は五十万トンに達していない、こういう状態。これはなぜ一体麦がこのように安楽死のような形になってしまったのか、どこに原因があるのか、そのことについてまず説明してもらいたい。
  75. 澤邊守

    澤邊説明員 ただいま御指摘のように、麦は四麦とも非常に減っておるわけでございますが、その減少しました要因、いろいろございますけれども、主要なものといたしましては、第一にはまず麦作の経営が一戸当たり非常に零細である、先ほど食糧庁長官もお答えしましたように、小麦の場合で言いますと全国平均で三十アールを若干上回ったところというように非常に雰細な作付規模であるということのために、麦をつくりましても労働日数は非常に短時間で済んでしまう、三十アールぐらいですと、現在の技術で見ますと、特に進んだものでなくても十日ぐらいでできてしまうわけでございます。そういう意味から他産業に出てしまうというような面があるわけでございます。もちろん規模が小さいということは生産性も非常に低いということにもなるわけでございます。  それからもう一つは、大きな問題といたしまして、第二に、水田の水稲の作付が非常に早まりまして、田植え機の普及等もございまして、非常に早期化しております。そのために、麦を収穫してから田植えをすると非常に遅くなってしまうということのために、麦がつくられなくなっておるという作期の調整の問題が特に東日本、関東等においては深刻になっておるということのために麦作が減っておるという面がございます。  それから次に、麦は御承知のように成熟期から収穫期にかけまして雨の害、梅雨期に入りますので西日本を中心にいたしまして長雨による病害の発生とか倒伏とか品質の低下等がございます。そのために生産意欲がもう一つ上がらないというような面が指摘できると思います。
  76. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 麦の問題についての理由はそういうことだと思います。思うけれども、この六十年展望の中でやはり麦をかなりふやそうということがある。現在のような状態でやったら、六十年の展望に追いつかないのじゃないですか。もうちょっと勢いよく、いまの隘路の克服をして、たとえば品種の改良であるとか作期の問題であるとか、あるいはあした麦価の審議会がありますが、その審議委員の足鹿先生はわざわざ現地に調査に来られていろいろなことを聞いていかれましたが、それもたとえば地力の問題であるとかあるいは水利の関係であるとかいろいろな問題がありますが、そういうようなことをさらに調査し調整をして、六十年展望というああいうものじゃなくて、もう一遍あれを再検討する。それは国際海洋法会議の問題もあって、先般の委員会ではどうしてもあれは再検討しなくてもいいというようなことを言っておるけれども、私はやはりあれは再検討しなければだめだと思う。どうしてもあれを再検討して麦も含めて検討するように私は要請したいのですが、これは大臣どうですか。
  77. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 われわれが出しました長期見通し、それに基づく長期政策につきましては、いろいろといままでの慎重な検討の結果作成したわけでございますし、まだ始まったばかりのことでございますので、何としてもこの長期見通しをまず達成する、その努力を最大限にやるということがまず大前提じゃないだろうか。そういう方向にまず私たちは懸命な努力をいたすことを私たちの基本的な考え、姿勢というふうにいたしておるわけであります。
  78. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 すぐ再検討に持ち込めないということでありますが、私はやはりこれは持ち込んでもらわなければもはやどうにもならないことだと思うから、これは要望します。  そこでもう一つ。次の問題は、米と麦の対米価比というものが問題になるところだと思います。二十年前には八〇%、十年前には七〇%、五年前には五〇%、現在は四〇%という比率だ。同じように、今度は生産者の方の米に対する麦の対米価比というものもこれはやはり検討しなくてはならない。だから麦の価格については、生産者価格並びに売り渡し価格等について現状のままでは私はやはり問題があるような感じがする。だからこれは、調整することについては政治問題だから検討してもらうことにして、ぜひこれは再検討してもらわなければいけないことじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  79. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  生産者米麦価及び消費者米麦価のそれぞれの比価という問題について、過去の年次からの関係についての推移ということからいろいろお話がございましたが、消費者米麦価につきましては、確かにかつて八〇%という高い時代がございましたが、現在では五〇%を割っておるということは確かでございます。この点については最近の消費の動向を見ますと、価格が必ずしも消費の増減につながらない。それだけ米なり麦の消費構造という一つの型ができておるというなかなかむずかしい問題もございますけれども、やはり間接的には麦の消費の対米価比が低いということは、即米の消費の増大にも影響するということもございますので、逆ざやの解消という、本年早々二〇%、今回も相当大幅な逆ざやの解消というようなことによりまして、対米価比の是正という点について進めてまいりたいと思うわけでございます。  それから生産者米価なり、米麦価の問題につきましては、この点については確かにパリティ価格で算出した価格と生所方式で算出した価格との間における麦価の低下という点が見られるわけでございます。したがって、麦価の価格のパリティ方式等の問題についていろいろ御議論も出るところでございますが、これは、多くを申し上げませんが、麦作の固有の生産状況、むしろ生産条件に大きな問題があるという視点から、生産奨励金その他の生産振興措置を講じまして、それがまた奨励金でございますので農家の手取りに通じておるということでございまして、その奨励金を加味いたしますと、たしか五六、七%と相当改善されており、これは四十九年あたりの生産費調査をもとにした計算でございますと、一日当たりの家族労働報酬、これは奨励金を含めますと米にほぼ近いというような関係にも相なっていることを申し上げさせていただきます。
  80. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 だんだん時間がなくなってきたので、大蔵省も含めてひとつ答弁をいただきたいのですが、先ほど野坂委員の方から食管の赤字の問題についてのことが出されました。食管会計の中には事務、人件費あるいは倉庫費等々、これは当然の諸経費があります。あるいはまた自主流通米に対する政策的に支出をされているものもある。そして逆ざやと言われる売買逆ざやがあります。そういうふうに考えてきてみると、ここに赤字だとか損失だとか一口にいろいろ言うけれども、実際売買逆ざやというものはそれほど取り上げて大騒ぎをするほどのものではない。とにかく一億何千万かの食糧を供給する中で、それくらいのものについてはやはり大目に見なくちゃならないと思うので、目のかたきのようにたたきつけるようなことであってはならないと思うのです。だから、当然の事務費、人件費あるいは倉庫代それから政策的な費用というものは、食管の赤字だ、赤字だと言って全部それは食管が悪いのだというようなことじゃなくて、もう少し説明のしやすいように、大衆にわかりやすいようにしなければ、これは農家が本当にかわいそうですよ。その点はどうですか。
  81. 宮下創平

    ○宮下説明員 お答え申し上げます。  ただいま食管の赤字とコスト逆ざや、売買逆ざや等のお話がございましたが、御承知のように現在コスト逆ざやが約四七%ございます。これは政府の買い入れ価格に政府の管理経費を加えたコストの価格が政府の売り渡し価格に対してどの程度の率になるのかという率でございますが、四七%ございます。これが食管の赤字の原因でございますが、私どもはこの四七%全部を解消しょうということを言っているわけではございませんで、当面売買逆ざや、すなわち政府が農家から買い入れる価格と売り渡し価格が逆ざやになっておりまして、その率が売り渡し価格に対しまして二七・六%くらいございます。これは価格関係としては私どもは異常であろうというように考えております。  なお、末端逆ざやにつきましては、当然のことながらないのがあたりまえでございますが、なお一四・五%残っておるということで、食管の赤字という問題は、ただいま農林大臣からお答えがございましたように、財政上の見地ということからもわれわれは非常に大きな関心を持っておりますと同時に、農政上の見地からの改善の余地が十分あるわけでございまして、その点は今後十分改善を図っていかなければならないと思うわけでございます。ただ、政府管理経費は、国内の管理勘定で申しますと赤字が七千四百億ぐらいのところで売買逆ざやに伴う損失分は約四千八百億円等でございますので、その売買逆ざやを解消いたしましてもなお運送費、保管料あるいは食糧庁の人件費等の分は約二千六百億円くらいは概算でございますが残る計算になります。こういった問題は当然政府が負担すベきではないかという議論もございます。われわれも当面これはやむを得ないというように考えております。  なお、議論としてそういうものを切り離して議論した方がいいじゃないかという御意見はまことにごもっともな点でございますが、われわれは当面売買逆ざやの解消を目標とするという言い方をいたしておりまして、政府管理経費についてまで解消を図るということを当面申していない点で御了解がいただけるのじゃないかと思います。  なお、先ほどから議論がございますが、食管特別会計は当然一般会計と区分経理をいたしまして米麦の売買勘定を経理するわけでございますが、当然事務、人件費等をその経理の一環として処理するということが一般原則でございますので、これを一般会計で処理するとかいうような議論は私どもは賛成いたしかねる、そういうように考えております。
  82. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大臣も都合があるようですから、私の時間がなくなったから、あと二点だけ大臣の答弁をもらってこれで終わります。  その一つは、先ほど大臣から答弁があってよく理解ができたのですが、仮にいま努力をして売買逆ざやがなくなって、農林予算に占める食管のウェートというものが、現在三七・六%という形になっておるわけですけれども、これは去年から四%下がっているのですが、なおその努力をしたときに、農林予算全体としてたとえば別なものの価格保証とか土地改良のあれとかあるいは営農に対するそれぞれの援助とか助成とかという方向において農林省内部にこれは保留されることが約束されなければ、これはどうにもこうにもならない。去年の場合には一〇・二%だった農林予算が九・九七になった。これは結局逆ざやは減ったけれども農林予算もまた減ってしまった。こういうことになれば、さっき大臣が答弁したことと違った結果になってくる。これはまずいと思うのです。  それからもう一つの問題は、よく防衛費についてはGNPの何%だけは許容できるのだ、あるいは国の予算の何%は防衛費としてはどうだのこうだのという話はよく聞くけれども、食糧を確保するために、これだけの重要なものについて、政府から農業の安定保障のためには一体どれだけの予算というようなものが許容されるのか。さっき許容ということが出たけれども、許容されるのか。このことについてはぜひ十分な検討と答弁をもらって、それで本当に農家が毎年毎年ねじりはち巻きをして年末に年始に各省庁に要請しなければ予算が決まらないということじゃなくて、もう少し安心をして落ちついてやれるためには、やっぱり一つの許容範囲というものがあるじゃないか。特に災害や冷害なんかがあったときは別だけれども、通常のときにはやはり他の省庁と同じように余り右往左往しなくたっていいようなそういう予算の組み方ができないのかと思うが、この辺をお伺いして終わりたいと思いますが、お答えをいただきたい。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 去年の米価決定におきまして御案内のように逆さやの不拡大ということを貫いたわけでございます。その結果といたしまして食管の農林予算に占める割合はいまお話のように低下をいたしたわけでございますが、その食管でいわば節約した分につきましては五十一年度予算の農政費には相当反映をしたということははっきり言えるのじゃないか。たとえば五十一年度の予算につきましては食管を除きましては一八・六%の伸び率でございます。これは国の一般会計の伸び率の一四・一%に比較をいたしますと非常に高い比率で農政費が伸びたわけでございまして、その一事をもっていたしましても、食管で逆ざや不拡大を貫いた結果が新しい農政を推進する上において大きなメリットとして還元をされたということが言えると私は思うわけでございます。われわれは今後ともこうした逆ざやを縮少する努力を続ける中において、五十一年度予算と同じような形でさらにその節約分がこれからの農政推進のために積極的に使われるようにわれわれとしては今後とも努力は続けていかなければならない、そういう考え方で対処をしてまいりたいと思うわけであります。  枠をつくるということについては、政府全体の問題でもございますが、私たちは、別に枠ということではなくて、とにかくわれわれが抱いておる総合的な食糧政策、昭和六十年を目標として進める食糧政策が確実に、着実に実行される、そういう予算を今後とも確保していくということがわれわれの責任であると考えております。
  84. 湊徹郎

    ○湊委員長 この際、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  85. 湊徹郎

    ○湊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。米内山義一郎君。
  86. 米内山義一郎

    ○米内山委員 構造改善局長にお聞きしたいのですが、八郎潟干拓地とかあるいは新潟県のどこかで、国営でできた干拓地に米をつくることが悪いことなんだ。あれ自体は局部的に見れば非常に深刻な問題だ。しかも全国の農民に対して与えている影響は非常に重要な問題だ。米をつくるのは悪事かという印象で受けとめられています。  そこで、米をつくることは百姓にとって権利なのか義務なのか、これは大臣から聞きますが、あなた方がああいうことをやるための法律的な根拠は何ですか。
  87. 岡安誠

    ○岡安説明員 八郎潟も、それからいま問題になっております福島潟も、干拓事業として土地改良法に基づいて事業を行い、八郎潟はすでに入植者がおりますし、福島潟はこれから増反で配分をされる予定というようなことになっておるところでございます。これらにつきましては、もちろんケース・バイ・ケースでございますが、いずれも当初は当該干拓地におきまして稲作経営をするというような予定で干拓工事は発足をいたしたわけでございますけれども、御承知のように昭和四十四年から米の過剰傾向に対処いたしまして開田抑制施策というものが実施されたわけでございます。そこで、干拓地一般について申し上げればそのとき以降は干拓地におきましては水田は造成しない、これは畑地にいたしまして稲作をしないという方針になったわけでございます。  八郎潟につきましては、当初一戸当たり十ヘクタールというような面積を配分いたしまして、すべて水稲を作付をするというような営農計画であったわけでございますが、その後さらに、入植をさせる場合に新規の入植者はそれでは開田抑制施策の精神から水稲をつくらないでオール畑にするのかどうかというところを全部検討いたしたわけでございますが、結論といたしましては、八郎潟全体におきまして水稲が作付される面積をふやさないということで新規入植者を受け入れる、そのためにはすべての営農の面積を十五ヘクタールということにいたしまして、そこで水稲と、水稲以外の農作物、それらをおおむね半々作付をする、いわゆる複合経営として実施するということにいたしまして、既入植者に五ヘクタールの追加配分をすると同時に、新規入植者には十五ヘクタールの土地を配分をしたということになっております。  それから福島潟におきましては、これは四十一年に着工いたしたわけでございますが、これも当初水稲作経営ということで事業を発足いたしましたけれども、四十四年以降の開田抑制施策、それに対応いたしまして、これはすべて水稲はつくらない、畑作経営をするということに途中で計画を変更いたしたわけでございます。そこで、福島潟は、これはオール増反でございますけれども、増反者といいますか、土地の配分者を決定するに当たりましては、福島潟の干拓地から配分を受ける土地については水稲はつくらない、畑作経営をするという約束で増反者を決定をいたしたということになっております。  したがって、法的根拠を問われればということになりますが、私どもがそれぞれの干拓地につきまして配分通知を両方いたしておりますが、その配分通知で土地の用途並びに配分の条件というものを示しておりまして、八郎潟につきましては、水稲と畑作物の半々の複合経営をずるというような条件にいたしておりますし、福島潟干拓におきましては、これは増反地部分についてはすべて畑作経営をするという条件で配分通知をいたしております。  そこで、そういうような条件、いわば約束でございますけれども、それをたがえるような行為をした場合には私どもはそれぞれの強制措置をせざるを得ない、そのことが他の干拓地等の配分を受けた方々に対する公平の原則からいきましても、ぜひ守らなければならない事柄でもございますし、また、その以外のすべての農家方々に、現在、水田総合利用対策といたしまして、米の過剰化傾向に対処する施策をお願いをしているという政府の姿勢の上からいきましても、やはり私どもは約束は守っていただきたい、違反の場合には是正措置をいたしますということにいたしておるわけでございます。
  88. 米内山義一郎

    ○米内山委員 八郎干拓のことは、私も十四、五遍も行っていますから、その入植方式とか営農方式はわかっています。ただ、小さい方の場合は問題があると思うのです。八郎干拓にももちろん問題はありますが。  私も、国営開墾の地区内で四十ヘクタールぐらいの干拓をやった経験があるのです。私はそのとき、その土地改良区の理事長もやっています。それから、そこに公有水面の漁業権を持っている漁業組合長もやっているのですよ。干拓を始めるときには、まず漁業権などを話し合いで譲ってもらわなければならない。そういうときに、八郎と違って話し合いがあるわけですよ。村内の零細農家を増反に入れるとか入植に入れるというのは、開発の発想のときから決まっている。そうしますと、その土地は、やはりその原点に立つと、そのとき選考になった、推薦された人に再有権が移転する形式になる。受ける人も、これは自分のものになるつもりでやるわけですよ。そうしますと、実に、約束があるとかなんとか言ってみたところで、おかしいことがあるんだよ。  それは民法上の約束と言えばそうだかもしれないが、権力を持つお上、政府と農民の約束なんです。それに対していまやっているやり方は、一口に言えば大人げがなさ過ぎる。公平の原則とかなんとかと言うけれども、ぼくは聞き方が悪いんで、法律的根拠なんと言うからあなたもそう言わざるを得ないが、日本の国内で、その干拓の完成を願ってきた農民が、米をつくるのが悪事だというふうに、悪事千里を走る  青森県まて、日本じゆうに、いまの農林省は米つくることを悪と考えているじゃないかという悪印象を与えている。これはひとつ考えてもらいたい。  それから実際問題として、あなた方としては、そのでき上がった干拓地に、しかも公共事業で国民の税金ででき上がった干拓地に何ができる、何をつくってその農民が手間に回る農業をやればいいかわかっていますか。  答弁前に申し上げますが、干拓地というものは、かなり排水状態をよくしましても、まず五年は土壌の物理的なあれが進むものじゃないですよ。水分の含有  表面か乾いても中はようかんみたいなものだから期間がかかる。それと同時に、理化学的な成分といいますか、毎年ネコの目のように変わるのですよ。ヨーロッパでは干拓地の土壊をキャットクレーと言っている。農林省の農政はキャット農政あるいはキャットノー農政、こう言われているかもしれないが、特徴は非常に強酸性なんです。排水は不良なんですよ。ここで米以外に何をつくらせるつもりです。
  89. 岡安誠

    ○岡安説明員 まず申し上げておきたいと思いますのは、私ども、干拓によって造成された農地、これはほかの農用地造成、いわゆる開墾等によって造成された農地に比べれば数段農耕に適した農地ができるというふうに考えております。しかし、そういう干拓によって造成された農地におきましても、一般の開墾によって造成された農地ももちろんですけれども、やはり当初はいろいろ土壌の状態等が既耕地に比べれば当然悪いわけですから、当初から予定されたような十分な農耕の成果が上がり得ないということも、これは私どもは承知いたしております。  したがって、私どもは一定の期間、土壌条件の改良のための工事をしなければならない。で、私どもは干拓地におきましても、工事の中にそういうような工事を組み込みまして工事をいたしておるわけでございますが、そういうようなことをいたしますれば、水稲以外でも、十分ほかの作物がっくり得るというふうに考えております。たとえば、それぞれの土地によりまして違いますけれども、八郎潟におきましては複合経営でございますけれども、計画では水稲のほかに小麦、大豆、野菜等がっくり得ると思いますし、現に、五十年におきましては水稲、小麦、大豆、牧草、カボチャその他をつくっておる。ほかのところにおきましても、私どもはそれぞれの土地に適した作目を選定し、それが可能になるような工事を実施して、それで配分をするということをいたしております。
  90. 米内山義一郎

    ○米内山委員 知らない人がだれかの原稿を読むような答弁をここで聞いている暇はない。大臣もいらっしゃるから……  これは、ぼくは行ってみますよ。細い一メーター足らずの棒と簡単な土壌の酸度計を持って行けば何をつくれるかわかる。ましてや現地の農民は、野菜ができるか豆ができるかできないかわかりますよ、百姓だから。知らないのは構造改善局長、東大出身の法学士だから知らない。技術の問題を無視してそれをやるということは、押しつけなんです。私はこういう点だけをきょうは言って、そのうちに現地を見に行けば、あなた方が何を根拠にしてできるできないで論争をやっているか、行ってみれば素人でもわかるのです。  そこで大臣青森県は大豊作の徴候なんですよ。いつもなら二番草という時期だが、稲の生育状態はもう三番草の状態だから、一週間ぐらい進んでいる。したがって有効茎数も多いし、草丈もあるわけですよ。このままで経過すると、去年以上の豊作になるような状態。農民はこれを心配している。農林省はこれに面をしかめているじゃないか。われわれは腹立っているのですよ。こんな三角関係みたいなのは一体正しいのかどうか。豊作を喜べない、豊作を苦々しい顔をする農林省、こんなばかなことがあるかといって腹立つ者、三つどもえ戦、三角関係みたいな農政は、いまだかつて日本にない。  そこで大臣から聞きたいことは、農業をやるということは、国民にとって権利なのか義務なのか。ここから始めましょう。
  91. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず、青森県、大変豊作の徴候がある、それは非常に結構なことであると私は思います。決して農林省が豊作であることをいやがっているわけではないわけで、足らないことよりは余っている方が、食糧に関しては、国民の立場から見ましても大変結構なわけですから。ただ、これが日本全体でそういうことになればいいのですが、全体のことは、今後の気象条件を見なければわからぬと思うわけでございます。  そういう中にあって、農家方々が米づくりをされる、これが権利であるか義務であるか、これは義務というよりはもちろん権利という方向に属することは当然のことじゃないかと思います。
  92. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうしますと、農業をやることが権利である。これは憲法にちゃんと書いてある。公共の福祉に反せざる限り、こういうことになっている。医者というのは、もうかるといったって免許を持たなければ人殺しになるから、医師法で縛っている。農業をやるのは権利だし、自由基本権だ。そうすると、農業の中で米をつくることは権利か義務か、これは権利でしょう。それに制限を加えるということは、これは一体何を根拠にできることかということです。アヘンにすることならばだめでしょう。そうすると、米をつくることも同等なんですよ。何ら制約を受けるべき性質の法律的根拠がない。しかも、食管法はそれを保障している。  そこで、豊作を苦々しく思うということは一体何だかというと余り米の問題、また財政負担がふえるとか、こういうだけのことなんですよ。そこで農林省は苦々しいと思う。われわれは、こんなばかなことがあるかと腹が立つのだが、一体米というものは農林省の注文どおりとれると思いますか。ことしは非常にとれそうだが、どこかに大災害があれば、青森県が大豊作でも平年作になることは明らかだ。昭和四十六年の経験を見ても、前年度と比較して二百万トンも減るときもある。あなた方の注文どおりちょうどよくとれないのが農業なんだ。それを自分たちの注文より超えると困ったとかなんとか言うのは一体どういうことか。そうして食管法からいくと、やみで他人に売れないという規則でしょう。それなのにここまでは買うとか、この間は第二自主流通米だなんということは、それそのものよりも生産意欲を阻害するということが第一の問題。豊作を率直に喜べない。米は農業の柱なんですよ。米が柱で、畜産も果樹もひさしみたいに構造的にできているのが日本の農業なんですが、米をつくる農民にがっくりこさせるということは、ぼくは農業そのものを滅ぼす思想ではないかと思う。滅ぼす目的でやっていないことは認めてもいいが、こういうことをやると農業自体が沈んでいきます。心理的にもう沈んでいるわけだが、この問題をことしの超過米というかなんというか、おてんとうさまもお手伝いをしてやるものに農林省は反逆するつもりですか。そうして農民を心配させるつもりですか。
  93. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米をつくることは農家のもちろん権利でございますし、これは一般的に言えるわけでございますが、ただ特定の地区、たとえば国が開田した地区であるとか開拓した地区であるとか、そういう地区においては政策を背景にいたしました国と農民との約束事、こういうことによって米づくりはやらないで畑作をしてほしいということで、これは約束事で、どういう世界でもそれは当然あるべきものであろうと私は思うわけであります。  それから、豊作に伴う超過米、これはことしも出たわけでございますが、この超過米の処置につきましては、御案内のように、自主流通米制度の上に乗せてこれを処理するということでやってまいりまして、大方の処置は終わったわけでございます。政府は買い入れ制限をいたしておりますし、これも食管法違反だという声もあるわけですが、食管制度のもとにわれわれは法律的にも買い入れ制限を行うことはできる、こういうふうに解釈いたして買い入れ制限をやっているわけでございます。米がよけいできればそれだけ農家の手取りもふえてくるわけでございますから、、そういう面について、超過米も自主流通制度の上に乗せて処理するということでございますから、それなりに農家の手取りもふえるわけですから、結構なことじゃないだろうかと私は考えております。
  94. 米内山義一郎

    ○米内山委員 時間も少ないから、次になたねの問題ですが、なたねは油糧作物ですね。しかも青森県の実情から見ると、金では少ないが、でん粉質では少ないが、面積当たりにしてカロリーの最高のものはなたねなんですよ。このなたねを農林省としては今後どう取り扱うつもりなんですか。そうして現況はどうか。それからなぜこのように生産量が落ちたかということ、これをひとりお尋ねをして、今後の対策をお聞きしたいと思います。
  95. 澤邊守

    澤邊説明員 なたねの作付面積は、三十年ごろにば二十五万ヘクタールでございましたが、最近に至るまで急減をいたしまして、今年度の見通しでは、推定でございますが、三千六百ヘクタールぐらいというふうに急減をいたしておるわけでございます。産地といたしましては、先生青森県、それから南九州が大体産地になっている、こういうことでございます。  私どもといたしましては、国産資源の確保という観点あるいは冬期間の土地利用という観点からいたしまして、できれば生産をふやしていきたいということで、生産奨励金等も一俵当たり今年度から二千円という額に増額をいたしまして交付することにいたしておるのでございますが、現況はそのような事情にあるわけでございます。  なぜふえないかという点につきまして、いろいろ原因があるかと思いますが、一つは水田裏作のなたねというのは三十年ごろは非常に多かったわけでございます。麦と同様でございますが、麦よりもさらに稲作と作期が競合するという面がございます。そういう面から減ってきたということ、あるいはまた反当の所得というのが麦に比べても低い、特にかなり労働時間がかかる、麦はかなり省力栽培になってきておりますけれども、なたねの場合は現在十アール当たり四十時間くらいの平均でございますが、特に収穫機がまだ開発されておらないという点で、労力が非常にかかるという面がございます。この点につきましては、現在機械化研究所におきまして収穫機の開発の研究を進めておるところでございますが、それがかなり大きな一つのネックになっておる。また雨の害は、麦と同様に成熟、収穫期にあるわけでございますが、特にこれは南九州の場合でございますけれども、雨害によります菌核病その他の病気が発生するというような点から、生産が不安定であるというような事情があるわけでございます。しかしながら、これは全国的に大幅にふやすというのはなかなかむずかしいと思いますけれども地域の特産的なものとしてふやしていくということが必要であると思いますので、先ほど申しました機械の開発を急ぐと同時に、とりあえず生産奨励金の倍増を今年度からいたしたりあるいは栽培の展示圃を設置する等いたしまして、生産がこれ以上減らないように、少しでも上向くように努力をいたしておるところでございます。
  96. 米内山義一郎

    ○米内山委員 答弁が詳細、親切をきわめるために、質問の時間も切れるから申し上げます。  いまさら二千円出してなたねを奨励するなんということはおかしい。まま子いじめしたまま母が、子供が死んでしまってからそら涙を流している、極道者が、死んだ仏の前でこれからの親孝行を誓うようなものなんです。こっけいなんですよ。  それから手数がかかるというけれども、それは移植栽培の場合で、青森県や北海道の直まきの場合は、なたねには除草がないのですよ。施肥と種まきと収穫があるだけなんです。東北、北海道では機械がはやらないときでも一番省力的な作物なんです。しかも青森県のなたねというものは、いまは作付も減ったし、収量も落ちていますが、最盛期の青森県のなたねの反収、いわゆる質的な点は、青森県を除いた他の全国の府県の倍あるのです。そうして世界でなたねの反収の一番高いのは西ドイツだが、それよりも高いといったら、青森県のなたねのいわゆる適地性というのは世界最高なんです。こういう条件のいい作物がゼロになったのは、これはあなた方の、死んでからそら涙を流すような農業政策の結果なんですよ。  きょうは答弁をいただく時間がありません。芳賀先生の時間になっていますから、いずれ場所を改めてこの問題を詳しく議論したいと思いますから、きょうは予告編のつもりでいてください終わります。
  97. 湊徹郎

    ○湊委員長 次に、芳賀貞君。
  98. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、明日の六月二十三日並びに二十四日の両日にわたりまして昭和五十一年に生産される国内産の麦価の決定を中心にして米審を開かれるわけでございますが、その前日に当委員会が開かれたわけでございますか、この際政府から何ら——明日の米審における政府が用意した、まず麦価算定上の資料の問題であるとか、それに伴う、あらかじめ米審に提出するために用意した資料というものはあると思うのですが、まさか農林水産委員会が終わってからどろなわ式で一晩で資料をつくるわけではないと思うのですよ。これは毎年米審の前日等に農林委員会が開かれた場合に委員会として強く指摘しておる点ですが、その点ばどうなっておるのですか。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは毎年問題になりますし、毎年国会から御叱責をいただいておるわけでございますが、行政価格の決定についての行政手続等の関係もありまして、米審の開かれるとき資料は全部御配付をいたす、そういうことになっておりますので、本日は前日でもございますし、資料等につきましてもある程度整っておるわけでございますが、これまでの慣例等もございまして、明日国会、米審その他に御配付をさせていただきたい、そういうふうに思っております。
  100. 芳賀貢

    芳賀委員 これは大臣、当委員会において湊委員長から正式に政府に対して必要な関係資料の提出を要求した場合には、これは拒むわけにはいかぬと思うのですよ。きょうは主として米価並びに麦価を中心とした論議をするということになっておるわけですから、何も米価審議会が開かれる前に、絶対に国会において重要な食糧問題とか米価並びに麦価の問題を政府側から説明してはならぬとか、資料出してならぬというような法律上の根拠は何もないのでしょう。どうですか、長官。何か法律上の根拠があって、これだから絶対に資料を出せぬとか説明ができないというものではないと思うのです。元来、国会の機能と米価審議会の機能というのは全く次元が違うでしょう。米価審議会というのは、農林省設置法の中で食糧庁の付属機関として米価審議会を設置することができる。それを受けて米価審議会令というものがあって、農林大臣が食糧あるいは米麦価等の主要食糧に対して必要な諮問を行う。それに対して米価審議会調査審議を行い、あわせて建議をすることができるということになっておるのですね。たとえば答申とか建議が出ても、農林大臣は米価審議会の答申を尊重して米価あるいは麦価を決定しなければならぬということにはなっていないでしょう。  国会はいまさら言うまでもなく、これは国権の最高機関ですからね。米麦価問題については当然食糧管理法に基づいて食糧管理特別会計法というのがあって、毎年の予算の国会審議の場合においては、特別会計もすべて国会に政府から予算案を提案して、その中で審議をし、議決されて、それを政府が忠実に実行しなければならぬということになっておるわけだから、そうなれば、もうすでに成立をした五十一年度の食管特別会計の中には、米価の問題でもあるいは麦の関係にしても、輸入麦の問題にしても、すべてこれは予算上前年度主義であるけれども計上して、それを国会において審議をして成立をさせておるわけですからね。そういう点から見ても、あした米審が開かれるので一切資料も出せません、説明もできませんというのは、これは変じゃないですか。われわれが穏やかに構えておるからいいが、これを正式に資料要求とか調査対象にしてということになれば、最近はロッキード事件で調査特別委員会が連日のように証人の喚問とか尋問をやっているわけだが、それとは性質が違うが、説明しないのがあたりまえだとか資料を出さないのが当然だというような行政府の態度は、これは当を得ないと思いますが、どうですか、これは原則論のようなことになるけれども。そんなことがないというなら反論してもらいたいと思うのですが、きょうは議論だけやるわけじゃないですが、それぞれ三十分の所定時間において重要な点だけを質問するのですから、できればこれは時間外として扱わなければうまくないと思うのだが、どうですか。
  101. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 国政調査等の一環といたしまして、米価審議会に諮問いたします諮問なりあるいは内容、資料という点について御審議をいただくのは当然かと思います。ただ、私どもといたしましては、先生、そのものを御指摘になりましたが、農林大臣の諮問機関で審議する、諮問いたしましてその意見を公正に聞くというのがわれわれの態度でございます。したがいまして、それらの資料等はやはり審議会開催の日にこれを審議会そのものに対してもお示しして御議論を願う、いかに諮問をしたか、あるいはその関連資料というものについては、国会の御要求がございますれば同時にこれを提出いたしまして、政府の米価麦価に対する諮問の態度とかあるいはその考え方という点について御審議を願うということが私どもとしてはしかるべきではないかというふうに考えておるわけでございます。
  102. 芳賀貢

    芳賀委員 いまさら子供に教えるようなことを言いたくないですが、その前段が抜けておるですね。たとえば明日農林大臣の諮問機関である審議会を開きます。開くに当たっては食糧管理法の趣旨に基づいて、政府としてはこのような基本方針に基づいて、そうして具体的な問題については、特に価格上の問題等について案を提示して諮問するつもりでございます。これこれのものを諮問するつもりですというものは、当然委員会が必要とする場合は拒むわけにはいかぬじゃないですか。国会が決めた、立法府が決めた食糧管理法でしょう。それを忠実に行うのが政府の役目でしょう。五十一年度の食管特別会計予算というものは、われわれが審議して賛成多数ということで国会が議決して、これによって効果的な運営をしなさいと言っているわけだから、予算のときは早く通してくれとか細切れでは困るというようなことを言っておきながら、通ってしまえば大いばりをして、これから先はもう委員会国会は関係なしでございます。そういう態度がますます日本の農政を後退させ、農民を苦しめるということになるのじゃないですか。何も証拠物件として提出しろというのじゃないのですよ。これこれの方針でことしは米価とか麦価を決めようと思うという基本方針は、それを御用米審にかけたってしょうがないじゃないですか。根本の問題はやはりお互い合意しておかなければならぬですからね。国会の判断と行政府の判断がこういう問題においても根本的に食い違うということになれば、これは大変なことですから、細々したことを聞く意思はないが、この基本的な問題は理解の上に立たぬと、立法府と行政府の間のパイプが詰まるということはやはり好ましいことじゃないと思うのでずが、農林大臣どうですか。
  103. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 お話のように、国会は国権の最高の機関でございますし、行政府としてこれに対して可能な限りの協力をいたすことは、これは当然のことであります。したがって、資料等につきましても、国会の要求があればできるだけこれを準備をして提出をするというのは、これはもう国会と行政府との間の基本的な関係であろうと私は思うわけでございます。そういう意味におきまして、農林省としてもこれまでの国会審議におきましてはそういう方針は貫いてきたわけでありますが、ただ米麦価を決める場合における米審の開催という問題がありますので、この資料の提出につきましても、いま食糧庁長官が申し上げましたように、基本的な考え方につきましてはもちろん国会等で御質疑があり、それに対して政府としての考え方を述べているわけでございますが、諮問案あるいはその他のそれに付随しておるところの資料は、米審に提出すると同時に国会にも提出するということで今日まで来ておるわけでございますし、これが食糧庁長官の言うように、非常に大事な価格決定でございますし、これが行政府としての適当な方法ではないであろうか、こういうことで今日まで来ておるというふうに考えております。
  104. 芳賀貢

    芳賀委員 きょうはこの程度でとどめておきまして、あとはまた適当な機会に大臣と議論したいと思います。  そこで具体的な問題ですが、六月二十一日に農林省から五十年産の麦類の生産費調査が公表されたわけでございますが、そこで問題は、昨年の委員会においても指摘したわけでありますが、この五十年度の生産費調査の公表の時期と、五十年に生産された麦価の決定の時期というのがちょうど一年ずれておるのですね。これは生産費調査だからやむを得ぬですけれども、問題は、農林省としても必要あって生産費調査を行い、それを天下に公表するわけでしょう。そうなれば、生産費調査の公表一年前に政府の買い入れ麦価あるいは米価というものが決定されるわけですからね。これも政府が、農林大臣が決定して告示をする。生産費調査の公表も農林大臣の権限において公表するわけです。だから、同じ政府が行政上行ったこの決定された価格と、一年後に農林省がまとめた生産費の価格というものを比較したことがありますか。
  105. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  これは当該年度の五十年なら五十年産の生産費と、当該パリティ価格によって決まりました五十年の価格との比較ということはいたしておるわけでございますが、価格算定方式自体、これは御議論の大変あるところですが、価格算定方式自体はパリティ方式でやらせていただいておりますので、一応直近に出ます生産費ですね、これはながめるということでございます。
  106. 芳賀貢

    芳賀委員 比較しておれば、時間の関係で十年間というわけにもいかぬでしょうから、ここ五十年、四十九年、四十八年の三カ年でもいいですよ、政府の買い入れ決定価格とそれから同じ年度の農林省調査した生産費ですね、これが毎年買い入れ価格が安くて、生産費調査の結果が上回っておるわけでしょう。しかも、農林省の生産費調査というのは、自家労働については農業臨時日雇い労賃によって計算をされておるわけですからして、食管法に基づくいわゆる生産費所得補償方式、特に米価の場合にはこれは他産業製造労賃の平均賃金をとっておるわけですが、結局この生産費調査というものは、麦を一反歩生産するためにどれだけの生産費用と自家労働がかかりましたというその結果の集積ということになるわけですよ。それから買い入れ価格の決定の場合には、大体腰だめというよりもできるだけ安く決めるという方針の上に立って決めるわけですけれども、しかし、生産費調査の価格よりも買い入れ価格の方が毎年下回るということになれば、これは食管法の示した昭和二十五年、二十六年の両年度の買い入れ価格に毎年の農業パリティ指数を乗じた額を下回らない額を基準としてというところまではそれで計算しても順序ですからね。しかしその後があるわけでしょう。下回らない額を基準として、その生産年の生産費とか経済事情というものを参酌して、麦の再生産が確保されるように政府は価格を決定して告示しなければならぬというこの後段の一番大事な算定上の要素が毎年脱落しておるからして、結果的には生産費調査の価格よりもその前に決めた買い入れ価格の方がはるかに下回っておる。これは一年や二年じゃないですからね。ここ両三年は毎年毎年買い入れ価格の方が安いわけですからね。それでは再生産はできないじゃないか、農家の自家労賃が日雇い労賃だけの所得も確保されていないじゃないかということになると思うのですよ。これはわかっておれば長官でなくとも担当部長でもいいですが、三年間の生産費の価格と買い入れ価格が一体どうなっておるか、毎年どれだけ買い入れ価格が安くなっておるか説明してもらいたい。
  107. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  小麦を例にとって申し上げますと、四十七年の政府買い入れ価格は三千八百十円でございます。これに対して平均生産費が五千八十一円、カバー率が七五%。それから四十八年は、小麦の政府買い入れ価格が四千三百四十五円でございまして、これに対しまして統計の平均生産費は四千六百五十一円、したがって九三・四%。ただし四十九年は、政府買い入れ価格は五千五百六十四円でございましたが、生産費が五千四百九十九円ということで、生産費を若干でございますが買い入れ価格は上回ったという傾向に相なっております。
  108. 芳賀貢

    芳賀委員 大事な五十年……。
  109. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 失礼いたしました。五十年は、小麦は六千百二十九円の買い入れ価格、これに対しまして、きのう出ました生産費は七千百六十一円ということでございまして、八五・六%ということに相なっております。
  110. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣、こういうことになっているのです。だから、この両価格を並べた場合、毎年毎年再生産を確保できない価格を農林大臣の権限で決めているわけですね。こういうばかな価格に決めなさいという御用米審もおかしいと思うのです。明日諮問をするわけですから、来年またこの時期に生産費が公表される。特に来年は、五十一年度の麦あるいはあらゆる農畜産物の生産費は、今度は農業日雇い労賃ではなくなるでしょう。これは昨年の予算委員会の分科会において農林大臣がようやく日雇い労賃方式を、いわゆる他産業労賃との関連を持たせた新方式において生産費の調査をしますということを、これは国会で言明されて、私も十五年ぐらい同じことを繰り返して実現を求めたんですが、ようやく安倍大臣のもとにおいてそうなったわけです。本来、これは去年の七月から始めているんだから、もう一年調査を行っているんですよ。われわれは当然今回の麦の生産費調査においては新方式が採用されるというふうに考えておったわけですが、結局実行が一年ずれるということになっておるわけです。だから、そうなれば、いまのような低い米価とか麦価を決めておったのでは、大臣食糧庁長官も来年はびっくりすることになる、余りにその開きが大き過ぎるじゃないかというので。だから、そういう点を十分念頭に置いて明日の御用米審に対する諮問というものは、また来年生産費調査の方が上回ったというふうにならぬようにすべきだと思いますが、その点はどうですか。
  111. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま御指摘の点につきましては、私もよくわかるわけでございまして、これは十分念頭に置いて麦価を決めていかなければならないわけでありますが、ことしはパリティ方式でやらしていただきたい。来年は生産費の調査等につきましても、これまで申し上げましたように、来年の産麦からはこれを変えていくわけでございますし、その点につきましては一つの前進であるわけでありますが、しかし、麦の価格決定をいままでのようなやり方で今後とも続けていくのがいいのか、あるいはこれは改善をしなければならないのかということは、まさにいまその検討を開始しなければならない時期に来ておる、私はこういうふうに考えておりまして、そういう意味で、米審でも御論議もいただきたいと思っておりますし、政府部内においても十分検討を進めていかなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。  再生産の確保、その他のいろいろの解釈の問題は、いろいろの立場からあるわけでございますが、農家の手取りとしては、奨励金であるとかあるいは契約奨励金であるとかそういうことによって、米に匹敵する手取りというものがある程度確保されておるというふうに私は考えておるわけでございますが、肝心のいまの価格問題につきましては、これはだんだんの御議論があるわけでございますし、検討しなければならない時期には来ておると私は考えております。
  112. 芳賀貢

    芳賀委員 昨年五十年の買い入れ麦価は前年度に対して一〇・一%でしょう、それから今回の生産費調査は四十九年の生産費に対して三〇%を上回っておるわけですから、そうなると、毎年の生産者団体の要求価格等の方がむしろ正しいということが言えると思うのです。すでにことし、政府が決める生産者米価あるいは麦価についても、けさも委員会開会前に生産者代表の皆さんから米価並びに麦価に対する適切な要請をわれわれは聞いたわけですが、毎年同じことをやっておるわけです。長官にしたって、そのために食糧庁長官の仕事をやっておるわけでしょう、ほかの仕事をやらなくてもいいんですから、これだけに専念してもらえればいいわけですから、ちゃんとやってもらいたいと思うのですよ、中身が出ればすぐわかることですから。  次に、麦価問題が終われば来月早々に米価審議会を開いて、そこで生産者米価、あるいは時期を置いて消費者米価の検討をすると思いますけれども、やはり問題は、昨年も詳しく農林大臣に決定前に指摘をしたわけですが、生産費の構成上特に大事な問題は、値上げ要素と値下げ要素と二様にあるわけですね。だから、マイナス要素を強く働かせれば米価は上がらぬということになるので、たとえば十アール当たりの収量にしても、昭和四十五年までは限界生産農家というものを設定して、そうして調査農家の平均収量に対してワンシグマ、これは大体キロ数にすると七十キロないし八十キロですね、このワンシグマを働かすことによって収量が減額されるということになるわけだから、単位収量が下がれば結局これは反当あるいは一俵当たりの生産費というものは上がるということになるわけです。ところが、最近はそれをやっておらぬでしょう。生産者団体はぜひ八〇%バルクラインの限界農家を基準にして米価の算定をやってくれということを言っておるが、農林省は、いままでやっておったことさえも取っ払っておるわけですからね。  それから、十アール当たりの労働時間にしても、もうすでに大体百時間程度になってしまったわけですね。以前百五十時間がいま百時間となれば、同じ十アールに投下される労働というものは大きく短縮をしておるわけです。そうして収量が変わらぬということになれば、当然労働の生産性が、他産業の労働者よりも農民の労働の方がはるかに生産性が向上しておると私は思うのです。これは五年ないし十年間、十アール当たりの投下労働時間を見ればわかるわけだから、時間が縮まっているということは、収穫が減れば別ですが、単位収量を維持しているということになれば、それは労働生産性を努力して高めておる。これが全然計算上生産性向上というものに対する評価が行われていないでしょう。  それからまた、去年は地代問題が相当議論されておったわけですが、ことしの四月農林省は、いわゆる統制小作料ですが、十年間の残存期間というものがまだ統制小作料の効力期間で残っている部分があるので、これを二〇%引き上げをしたが、実際はいまの農地法には標準小作料とかあるいは実納小作料というものが実態的に行われておるわけですね。ただ、その点についても地代というものをどうするかということについては、生産者が納得できるような方向でやらなければいかぬと思うのです。  そのほか毎年の委員会指摘する点があるわけですから、そういう点はあす十分に米審に提出し、また委員会にも提出するということになるが、毎年同じことを繰り返してけしからぬとか、攻めの農政じゃないじゃないか、安倍農林大臣は三木総理と同じように約束や言うことはりっぱだが、実行力については、派閥は違うけれども、どうも三木総理と似たようなところがあるのじゃないか、これはもう本当に心配した人がそう言っておるわけですよ。本当に攻めの農政をやるのであれば、米価、麦価の算定についても抜本的というか、革命的な方針によって決定するということがなかったらだめじゃないですか。まあ鞭撻のような質問になってしまったが、あすからの米審、それから来月からの米価決定の米審等についての具体的な方針、大臣としての、いわゆる安倍農政というか攻めの農政というのはこういうものだという基本的な路線というものを示してもらって、きょうはこれで質問を終わりたいと思います。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 あしたから麦価についての米審が行われるわけでございまして、麦価につきましては、先ほどから申し上げましたように、政府の売り渡し価格につきましては逆ざやの解消を主眼としてこれを諮問したいというふうに考えておるわけであります。政府の買い入れ価格につきましては、ことしはパリティ方式によって諮問をいたす所存でございますが、農家の手取りという——奨励金等は価格そのものではございませんが、契約奨励金等も含めた農家の手取りということにつきましては、これからの麦作振興というものを十分考えて最終的に決めなければならぬ、こういうふうに基本的に考えておるわけであります。  なお、米につきましては、何としても国民の主食でございますし、国民経済的にも米価という問題は非常に大きな影響があるわけでございますので、これに対しては慎重に対処していかなければならぬわけでございますが、基本的には何としても食管法というものがあるわけでございますし、今後とも食管法を守っていかなければならぬわけでございますので、食管法の趣旨に基づきまして、生産者米価につきましては再生産を確保することを旨として、物価その他の経済事情等もあるわけでございますし、また今日の米の需給事情等もあるわけでございますので、そういうものも十分参酌をいたしまして、これを適正に決めていかなければならぬ、こういうふうに考えておりますし、消費者米価は消費者米価なりに食管法の趣旨に基づきまして、家計の安定を旨として経済事情等も十分参酌をして家計の許容する範囲内においてこれを決定するということを忠実に米審には諮問をいたして最終的に決めたい、こういうふうに思うわけであります。
  114. 湊徹郎

    ○湊委員長 次に、中川利三郎君。
  115. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 米価シーズンになりまして、私も地元の米価要求大会なんかに大分出たわけでありますが、そこでは農民の方々のいろいろな怒りの声が上がっているわけであります。とりわけ特徴的なことは、米価決定に当たりましては、政府は勝手に、まず自分の都合のいい米価を決めて、肝心の算定方式なんというものは後からそれに見合うようにつじつまを合わせ、こじつけをする、こういうやり方をしておるじゃないか、だからこんなでたらめは許されない、われわれは長い間これでだまされてきた、こういうことがどこの大会でも聞かれるわけですね。これは農民の、いまの米価を決定する政府のやり方に対する共通の実感としての怒りの叫びだと思いますが、まずこの声について農林大臣はどう答えるか、お聞きしたいと思います。
  116. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米価は、先ほど申し上げましたように、国民の主食でありますし、農家にとりましても最大の農作物でございますので、非常な関心があるわけでございます。そして、米価決定のあり方等につきましてもいろいろと御批判があることは十分承知をいたしておるわけでありますが、政府は、これまでもそうでありますし、今後もそうでありますように、食管法の趣旨に基づいて適正に決めていかなければならぬわけであります。私は、現在までの生産者米価につきましてはいろいろと批判はありますけれども、しかし再生産は確保されてきておる、さらにまた農家の米作に対するところの意欲というものは減退してない、こういうふうに判断をいたしておりますし、これまでの米価決定は必ずしも間違っていないというふうに私は思っておる次第であります。
  117. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 食管法の趣旨を守って適正に決めているとおっしゃるけれども、これまでの米価決定は、まず第一に政治ありきだ。その次にいろいろな数字の計算が従属して出てくる、ここに問題があるということですね。ことしの場合を見ましても、「食管赤字三年間で三分の一に 大蔵省方針米の「逆ザヤ」解消」という新聞の大きい記事が出ていますね。これは三年間で逆ざやを解消する、こういうことになりますと、生産者米価を大幅にこれからも抑制していかなければならぬ、消費者米価も大幅にアップしなければなりませんね。それ以外に解決する方法はない。つまり、こういう政治優先の中でのいろいろな取り決め、それが先行して、それにつじつまを合わされる形で米価算定があれやこれやもっともらしく操作されているということなんですね。そうなりますと、肝心の生産費所得補償方式だとか、いま大臣は適正にやっていると言いますけれども、こういうものが全く形骸化されるだけでなくて、そのもとになる生産費調査、こういう結果などが単なる小道具にすぎなくなる。こういうやり方がいままで一貫して続けられてきたという事実についてどうお考えになるかということをもう一回御答弁いただきたいと思うのです。
  118. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはそのときどきの物価あるいは経済事情等も反映をして、多少の調整といいますか修正等が行われたということは事実でございますが、しかしあくまでも政府としては食管法の趣旨に基づいて生産費所得補償方式を貫いて今日まで来た、そして今後もこれを貫き通さなければならぬというのが私の信念であります。
  119. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 大臣と私の質問はかみ合いません。まず私が聞いているのは、いつの場合も政治優先じゃないかという、そしてその後につじつまを合わされる米価算定が行われているところに今日の農民の怒りがあるということです。  それでは、あなたがそうおっしゃるなら具体的にお聞きしますが、米価算定の基礎になる生産費調査結果というものは、例年これは何月ごろ出るのですか。これは大河原さんに聞きます。
  120. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 これは統計情報部長から……。
  121. 有松晃

    ○有松説明員 ここ二、三年の状況を申し上げますと、大体七月十日ないし二十日ごろに公表しております。
  122. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 この数年来の傾向としては生産費調査の結果が七月ごろに出るということですね。ところが、米価算定というのは御承知のとおり前三年度の生産費調査結果の平均をとるわけですね。そういうことでありながら、たとえば昭和四十四年、四十五年、四十六年、米価が三年間続けて据え置かれましたね。その際、たとえば四十四年の場合を見ましても、四十四年の一月段階、  一月二十七日、衆議院の本会議佐藤榮作当時の内閣総理大臣が、「生産者米価及び消費者米価を据え置く方針をとる」と、ばあんと打ち上げたのですね。四十五年も四十六年も同じですね。そうすると、それに見合ってそういう結果が生まれてきたということば事実じゃないですか。どうですか大臣
  123. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  七百万トンの過剰を抱えました——四十四年はいよいよたまり出しまして、相当在庫を保有いたしました時期におきまして、米の需給調整と、いうことから、生産刺激的な米価というものについての取り扱いは慎重でなければならないというような基本方針であったかと思います。その場合におきましても、生産費及び所得補償方式の基本は維持したわけでございます。先生の御指摘は、むしろその算定要素の取り方その他の点について、需給事情を反映したそれぞれの年の取り方の議論があり、当時におきましては過剰ということは事実でございまして、それを前提とした、その需給事情を反映した算定要素の取り方が行われたというふうに私どもは理解しております。
  124. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたはばかなことを言わないでください。私が聞いているのは、総理大臣が一月段階で、まだ作付も終わっていない、作付をやっているはずがない、一月ですからね。あるいは米審でも審議もない、一月ですからね。おまけに生産費調査の結果が何も出ていないでしょう。そうでしょう。その全然ずっと前の、半年も前の一月段階で、ことしは据え置きますよと言うのです。それでどうしてあなたは合理的なそういう計算ができるということですか。
  125. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 まず御指摘の生産者米価の取り扱いは基本的な方針を示したものだと思います。  それから生産費調査とおっしゃいますが、御案内のように生産費及び所得補償方式は、三年間の原生産費についてそれぞれの、物財については物価修正なり、あるいは労賃につきましては都市均衡労賃、製造業労賃に評価がえをいたすというようなことでございますので、この生産費及び所得補償方式というものによってはじく場合におきましても、その算定要素の取り方については需給事情等勘案するというふうに、いまさかのぼってみますとそういう意味であるというふうに考えるわけでございます。
  126. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 大臣おかしくないですか。総理大臣が一月段階で、ことしの生産者米価を据え置きますと言う、そうするとその年はそうなるのです。四十四年、四十五年も四十六年も同じことです。これはまず基本方針を示したものだとあなたはおっしゃった。そうして、その結果は基本方針と違ったことが出たんですか。ちゃんと据え置かれたでしょう。あなたは適正な、ちゃんと原生産費その他によってそれはそれなりに計算されたとおっしゃる。そんなばかなことないでしょう。なぜかというと、米価というものは前三年度の生産費の調査結果を踏まえて算出されますね。つまり前三年度のうち、その前の二年間の分は出ているけれども、一番直近の一年間の分はまだ答えは出てないのですよ。どうしてそれは計算できますか。しかし結果としてはそういうことにちゃんとなっている。まず政治ありきだな。農民が怒るというのはもっともで、根拠あることじゃないですか。その後に平均生産費方式というものがつじつまを合わされるようなかっこうでとりつくろわれているというのが実態でしょう。したがって、農民が、先ほど冒頭言いましたように、まず政治方針があって、それに米価算定が小道具として使われているということに対して、りっぱな根拠があるじゃないですか。こういうやり方ですね。こういうやり方が妥当かどうかということ。これについては、たとえば当時の三善食糧庁長官でさえも、これはほかの問題についての発言ですけれども、昭和五十年六月二十四日の答弁ですが、「米価は、先ほど申し上げましたように、毎年毎年そのときの経済事情、生産事情、需給事情等を総合的に勘案して決めていくのであって、しかもその食管行政の一環の中で決めていくというものでございますから、何か別個の観点から決めていくというのも、これはおかしいことではなかろうかと私は感じます。」全く別個の観点が優先して食管行政がそれの道具になっているということが実態だということは、ここでそのことで、そうじゃない、そうだとやりとりしてもしょうがないけれども、これは厳しく指摘しておきたいと私は思うのです。  したがって聞きたいことば、こうした農民無視、政治優先、こういうかっこうの中で、たとえば四十四、四十五、四十六年の生産者米価は三年連続据え置きになりましたね。この怒りは農民は決して忘れておりませんが、特に私が問題にしたいことは、あのどさくさに紛れて、そこで決められた米価の算定方法です。つまり四十何%以外の人は再生産を賄えないという平均生産費方式ですね、こういう計算方法が、あのでたらめな政治優先の中でつくられた計算方法が、事もあろうにいまもって引き継がれてそのまま使われているということです。ことしの米価についてもです。  そこで、肝心の質問でありますが、昨年の生産者米価決定のあの場合を一つの例に出しまして、たとえば、あのでたらめな政治優先のやり方がなかった昭和四十二年の当時のあのマイナス・ワン・シグマですね、あの方式で計算した場合、昨年の米価は一体何ぼになっておったですか。これをちょっとあなたからお答えいただきたいと思います。正当に計算していれば何ぼになっておったか。
  127. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  お言葉を返すようでございますが、正当と申しますか、その先生お示しの当時の算式でやりますと、昨年の米価審議会では、ウルチ一−四等平均の包装込みで二万大飛びの八十八円ということに相なっております。(中川(利)委員「二万何ぼ」と呼ぶ)二万八十八円です。
  128. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いまおっしゃいましたように、もしも真っ当な米価算定をやっていたならば、去年の決定米価でさえも二万八十八円になる、こうおっしゃったわけですね。そういうことから考えてみますと、この昭和四十二年算定方式でいけば、ことしの農民団体の要求米価、これは幾らですか、二万百二十円ですね。ほとんど変わらないということですね。ほとんど同じぐらいだということですね。このことは農林省当局が、大臣、政治的に農民をペテンにかけないで素直に農民の立場に立つ、そういう姿勢さえあるならば、決してことしの要求米価が不当なものではなくて全く控え目なものだということが私はわかると思うのです。この点について農林大臣の御見解を伺いたいと思います。
  129. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまでたらめだとかペテンだとか言われましたが、政府がこれまで米価を政府の責任において決定していたわけでございますが、これはやはり食管法という法律がありますから、この法律の趣旨に従って生産費所得補償方式によって決めてきたわけであります。その算定方式等がその時代時代によって多少の変化はあるわけでございますが、しかしこれはやはり食管法の法律の趣旨の中において多少の修正が行われたということは認めるわけでございますが、大枠としては食管法の精神に基づいて生産費所得補償方式によって今日までこれを決めてきておるということははっきり言えるわけでございますから、そして今日までの米価は再生産を確保するという方向で適正に決定をされてきた、そして事実再生産は確保されてきておるというふうに私は考えておるわけでございます。なお、農業団体等の御要望があるわけでございます。農業団体それぞれ生産者の立場に立ってまじめに米価の検討をされまして、特にことしの米価につきましては相当苦心をされた跡が見受けられるわけでございます。そうした中で三〇%アップという決定をされたわけでございますが、これは政府の試算の算定方式とはずいぶん内容が違っておりますのでそういう結果になったわけであります。たとえばバルクライン方式であるとか、あるいはまた統制小作料を実納小作料にするとか、そういうふうに政府の算定方式とは内容が違っておりますからそういうふうになったわけでございますし、私は、この農業団体の御要望は御要望として、われわれとしてもこれは十分検討しながらわれわれの最終的な諮問値は決めていかなければならない、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。
  130. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 政府の算定方式と農民団体の算定方式は違う、こうおっしゃるわけですね。しかし、先ほど言いましたように、政府が本当に農民をペテンにはめない、つまり本当の意味の食管、再生産を正しく守る、補償する、こういう立場に立つならば、昭和四十二年度のあの方式でやっただけでも去年の米価で二万円以上だということなんですね。いわんやこの二万百二十円というのは全く控え目なものであるだけでなくて、いま日本農民組合が要求しているそれより高い米価でさえも私はこれは否定することができない、当然実現しなければならないはずのものだというふうに考えているのです。そういう点で、それはそれこれはこれだというお考えでありますけれども、三年も据え置いて、食管を守っているんだ、正しい算定方式をやったんだなんて、過去の事例一つ見ただけでもいかに矛盾であり、いかにごまかしであるかということがはっきり暴露したと思うのです。  時間がございませんので、私はこの際に、ことしの米価要求に対して皆さん方が農民の立場に立ってこれを実現するためにひとつ取り組んでいただきますことを強く希望し、私の質問を終わります。
  131. 湊徹郎

    ○湊委員長 次に、諫山博君。
  132. 諫山博

    諫山委員 質問します。  昨年私は、政府の麦の増産計画が予定どおり進んでいないではないかということを質問しました。昭和六十年度の生産目標は四十七年度に比べて一八四%になる、昨年度は二〇%増産したい、これが政府の計画だったわけですが、昨年度は実際は四%の増産にとどまった。これでは、政府が長期の増産計画を立て国民にいろいろ宣伝しているけれども、とうてい目標は達成できないのではなかろうかと質問しました。それに対して安倍農林大臣は、六十年の目標は十分達成できる、ロングランの目標だから長期に検討してもらいたいという趣旨の答弁があったのですが、ことしの増産の計画と実績は、安倍農林大臣が言われたように六十年度には必ず目標が達成できるという状況になっているかどうか、御説明ください。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 麦の増産はわが国の農政における至上課題の一つであると私は思っております。したがって、われわれとしては六十年度の目標はぜひとも達成をしなければならない、もちろん相当努力は必要とするわけでございますが、ぜひとも達成しなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし昨年度、ことしにおきまして、われわれが期待をしていたほどの増産という運びにはなっていないわけでございますが、いままでずっと三割ずつ減産をした麦が下げどまって、そしてこれが多少でも増産の方向に向いてきたということでございますし、特にことしなんかにつきましては、裏作麦は伸びておるわけですが、畑作麦が落ちておるというふうな関係もあるわけでございますが、私はこれからさらに麦生産対策につきまして、これは価格対策もそうでございますし、同時に麦作集団推進対策であるとか、あるいは作期の調整であるとか、あるいは機械化の推進であるとか、そういうことを総合的に進めていけば、われわれの期待するほどは伸びてはおりませんが、伸びる方向に来ておるわけですから、これをさらに推進をしていけば、六十年の達成は決して不可能ではないというふうに私はいまもかたく信じておるわけでございますし、政府としてはその方向へ向かって今後とも全力を注いでいかなければならないと考えておるわけであります。
  134. 諫山博

    諫山委員 前年度の農林大臣の答弁は、六十年目標は達成できるという表現でした。きょうの答弁は達成は不可能ではないと、大分弱気になられたようです。いよいよ六十年度が近づいているわけで、やはりみずから立てた増産目標というのは達成する責任がある、達成できなければこれは農業政策上の失敗であるということを私前回指摘したのですが、これはどうも非常に疑わしいというふうに言わざるを得ないと思います。なぜ農家が麦の増産をしないのか、いろいろ原因があると思いますが、この問題で大分県農政部が「麦作農家意向調査」というのを行っています。どうすれば麦の増産ができるのかということを麦をつくっている農民に質問したわけです。一番多いのは生産者麦価を引き上げてもらいたいという意見です。これが全体の六六・六%。引き合えば農家の人は麦をつくる、いまの生産者麦価ではなかなか引き合わない、しかし遊ばすわけにもいかぬからとにかく麦をつくるというような状況ではないかと思うのですが、いろいろ麦の増産ができない原因が挙げられているけれども、引き合えばつくるのだ、生産者麦価の引き上げが増産の最大の要因になっている、こういうふうに政府は考えていないのかどうか、いかがでしょう。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  135. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  確かに生産の増大、規模の拡大等にとっては価格というものが大きな要素を持つということは否定いたしません。その意味で、特に増産を要請される麦等についての価格というものについての配慮は必要であるかと思うわけでございますが、私どもといたしましては、今日の麦作は、北海道等の二ヘクタール以上のような相当麦作としての規模を持った農家であれば別でございますが、一般的にば平均耕作面積が全国平均たしか三十一アール程度、しかも作付圃場が分散しておるというような点等、しかも経営にとって副次的であるというような点から考えますと、単に価格だけではなくて、この生産条件の整備というような点が急がれておるというふうに考えるわけでございます。したがいまして、四十九年からいよいよ増産対策に本腰を入れました場合におきましても、生産奨励金というような形で農家の手取りもふえるし、しかも生産に対して刺激を与えるという生産対策の面を加味した施策を取り上げたというのはそのような考え方でございます。
  136. 諫山博

    諫山委員 麦価引き上げが麦増産の唯一の方法だとは私たちも言っておりません。ただ、これが決定的な要因だということを強調しているわけです。  ところで、昨年の農林水産委員会で私は、生産者麦価を決める場合に、麦価の算定方式自体を検討しなければならない、パリティ方式というのは麦価計算の場合に実情に合わないということを強調いたしました。また、共産党の本年六月五日の政府に対する申し入れの中でも、麦作農民に都市勤労者並みの労働報酬が保障されなければならないという申し入れをしました。昨年の委員会における政府の答弁は、パリティ方式を変更する考えは持っておりませんということでした。ことしは大分変わったようです。私は変わることには大賛成です。しかし、ことしの生産者麦価の中にパリティ方式ではどうも問題だというような考え方がどのように反映されるのかということを私ぜひお聞きしたいと思います。こういうパリティ方式では農家の要求が十分満たされない、余り現実的と言えないということになれば、直ちにことしの麦価の中に、こういう考え方は何らかの形で反映されなければならないと思いますが、この点はどうでしょう。
  137. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ことしの麦価につきましては、私どもはパリティ方式によりまして麦価を決めたい、こういう方針であした諮問いたすわけでございます。しかし、麦作振興ということは非常に今後の重大な農政問題でございますし、これからの麦作振興を進めていく上においても、やはり麦価も含めた農家の手取りというものを確保していくということは、これは御指摘されるまでもなく大事な点でございますので、奨励金あるいは契約奨励金というものを今日まで生産奨励のために出して、そして農家の手取りをふやしてきたわけでございますが、そういう点等も十分今後の麦価の検討とあわして検討いたしまして、農家皆さん方が価格問題についても自信を持って麦作に取り組んでいただけるように努力をしてまいりたいと思うわけでございまして、麦価そのものにつきましては、これは昨年の米価審議会におきましても、麦類の価格算定方式については種々の意見があるので、政府において麦作の現状に即し、具体的に検討されたい旨の建議が行われましたので、これを受けまして昨年来麦作の現状及び麦対策のあり方等の関連に留意しながら麦の政府買い入れ価格の算定方式について検討を行ってきたわけでございますが、なお検討を要する問題もあるところでございますから、とりあえず現在までの検討の内容を中間報告として取りまとめ、あすから開催される米価審議会に報告することといたしておりまして、米価審議会での論議も踏まえて今後さらに研究をしてまいらなければならぬ問題であると考えております。
  138. 諫山博

    諫山委員 麦価算定の場合のパリティ方式にはいろいろ問題があるという点ではもうお互いに余り異論がなくなったと思います。そうすると、本年度の場合は、パリティ方式そのものは採用したいけれども、パリティ方式に伴うさまざまな矛盾、問題点は、奨励金その他のやり方で考慮するようにしたいということになるのでしょうか。
  139. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今後米審等であす、あさって十分御議論をいただいて、その結果、政府としてこれからの麦作振興というものを考えながら最終的に決めていかなければならない問題である、こういうふうに思っております。
  140. 諫山博

    諫山委員 パリティ方式に問題があるとすれば、これは直ちに改めることが望ましいと思います。しかし、それができないとしても、実質上問題点、矛盾を生産者麦価を決める作業の中で改めていくということは必要だし、可能だと思いますから、この点は強く要望いたします。  次に、消費者麦価の問題です。私たちは消費者麦価の引き上げには反対です。この点先日の共産党の政府に対する申し入れの中でも強調されております。ことし一月の麦価引き上げのときに政府は、消費者麦価引き上げが他の物価にどういう影響を及ぼすのかという問題について、次のように説明しております。パン類の場合には四・四%ぐらい上がるのではなかろうか、これが政府の説明です。しかし実際は、消費者麦価が値上げされて一カ月後には一〇%から三三%ぐらい高くなりました。めん類の場合、政府は三・一%ぐらい上がるのではなかろうかと予測していたようですが、実際は一カ月後には一〇%以上めん類の価格が上がっています。これは他のいろいろな要素も絡んで厳格な算定はなかなかむずかしいと思うのですが、消費者米価にしても消費者麦価にしても、その引き上げの他の物価に及ぼす影響というのは農林省が説明するほど簡単で低額なものではないということを示していると思います。農林省としては、こういう波及効果については、前回の引き上げについてはどう思っておるのか、今回の引き上げについてはどう予想しておるのか、御説明ください。
  141. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答え申し上げます。  先生がただいまお話しになりました数字そのものについては、われわれとしてもその基礎その他をお伺いしないと直ちにお答えしにくいわけでございまして、私どもといたしましては、前回の、本年一月の麦価改定に伴う麦製品の動向について見ますと、最近五月下旬までの動向を見ますと、食パンなりあるいは即席めんあるいは小麦粉、あるいは乾めんその他の麦製品については、それぞれほぼ想定した動きを示しているというふうに考えております。ただ、消費者物価への影響等につきましては、われわれといたしまして本年一月総合では〇・〇八六二というふうに見たわけでございますが、実際の影響、これもどこの時点とどこの時点を平均としてとらえるかということについてはなかなか議論があるところでございますが、五十年の十二月、五十一年の一月と三月、四月の関係を見ますと、〇・一一というような数字に相なっております。  いずれにいたしましても、波及効果の問題は、その当時の物価全体の問題とかその他の関係から判断をしなければならないわけでございまして、今回の改定はなお非常な細心の注意を要しますけれども、経済が鎮静いたしまして、物価情勢も安定化した際において、しかも麦製品が不需要期に向かうというような時期等も考慮いたしまして、改定を行うというふうに考えておるわけでございます。
  142. 諫山博

    諫山委員 重ねて申し上げますが、私たちは消費者麦価の引き上げには反対です。  最後に、福岡県を初めとして九州で麦の赤カビが異常発生ということでいろいろ問題になりました。福岡県の場合は全く麦が実らずに火をつけて焼いているというようなところさえ出ております。この問題について、被害実情はどうなのか。農業共済適用の見通しはどうなのか。さらに、食糧として使えないようなものでもぜひこれを政府で買い入れてもらいたい、奨励金支払い対象にしてもらいたいという要求が地元の農業団体から提起されております。この問題について御説明ください。
  143. 有松晃

    ○有松説明員 私の方から、御質問の中の被害状況の点だけ御説明申し上げます。  五月中旬以降六月上旬ごろまで、長期間降雨が続いておりましたため、九州全域の麦類に赤カビ病それから雨の害、湿害等が発生しております。この被害状況の詳細につきましては、現在、調査を取り進めております。  なお、中間的な情報によりますと、各県の麦に被害か発生しておりまして、被害率は二十数%が見込まれておる、こういう状況でございます。
  144. 諫山博

    諫山委員 共済適用の見通し、さらに飼料にならないようなものでもぜひ買い上げてもらいたい、奨励金を払ってもらいたいという要求が出ているのですが、この点どうですか。
  145. 杉山克己

    杉山説明員 被害状況については、ただいま統計情報部長から申し上げたとおりでございまして、調査中でございます。  共済の問題につきましては、現在共済に入っているものにつきましては、本来ならば収穫時に共済金を支払うというのがたてまえでございますが、降ひょう等による被害に対しましては、あるいは長雨等による被害に対しましては、概算払いで事前の支払いをすることもできるようになっております。今回の被害がどのような実態であるか、十分それらを確かめまして必要な措置をとるということを考えております。
  146. 諫山博

    諫山委員 この問題について、福岡県農業協同組合中央会から次のような要望が出ております。  等外麦の全量政府買い上げと生産振興奨励金の交付、被害共済保険金早期支払い被害麦除去経費の助成その他、いずれもきわめて当然の要求ですから、ぜひこの要求がかなえられるように処理していただくということを要望して、質問を終わります。
  147. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、津川武一君。
  148. 津川武一

    ○津川委員 生産者米価についてかなり突っ込んだ質問をしようと思って準備しましたが、時間が非常に少なくなったので非常に残念でございます。そこで、きょうはなたねの価格、米の買い入れ制限、これに対して質問し、そのほか緊急な問題を若干質問してみます。全部並べますから、よく聞いておいてくだすって的確に答えていただきたいと思います。  なたねです。昭和三十五年には二十六万トンも生産して自給率九七%だったのが、五十年にはたったの七千トン、自給率〇・八%まで落ちてしまいました。政府はこのなたねのための交付額を毎年予算に盛っております。しかし使っておりません。四十九年に六億四千万円交付金の予算を計上して、支出した額が何と二千七百八十九万円、五十年に四億九千万円の予算を計上して、交付した金額は二億四千四百五十三万円、これでは伸びるはずがありません。自給率が〇・八五%になってしまったのも当然のことであります。なたねに対して全中が要求しておるように、生産費所得補償方式に変えるつもりはないか。ことしの要求一万二千九百九十円、これでも足りないと思いますが、これを支持されるのが当然かと思います。この点が一点。第一点は、なたねの振興に対する政府の施策いかん。これがなたねであります。  第二の問題は、米の買い入れ制限の問題であります。政府はほかのものに稲転をやらしております。私もこれは必要だと思います。だが、いま話したように、なたねに転換するとすればどうなります。五十年産のお米十アール当たりの収入十二万三千百七十七円。なたねは二万三千五百六十一円、大豆は二万三千五十一円、水稲だと十二万三千百七十七円、これで稲転でなたねをつくりなさい、大豆をつくりなさいと言ってどうなります。これに奨励金、生産調整金をつけます。これでも八万、稲作だと十二万三千円、これで米をつくるなつくるなと言っても、皆さん無理じゃありませんか。したがって、ことしは山形県で日本一のお米づくりが、稲転をやめて米に返りました。農民がほかにつくりようがないので、たくさん自力開田しております。これに加えて政府は買い入れ限度数量を去年より減らしてきました。ことし余り米が出るのは当然でございます。農民は余り米と言っておりません。政府によって余された米だ、こういうふうに言っております。  そこで質問でございます。五十一年産米で政府はどのくらいの余され米を予定していますか。第二は、買い入れ制限は明らかに食管違反であり不当であるのでやめるべきだと思います。第三は、ほかの作物に転作してもやっていけるように日本の農業政策の転換を図らなければなりませんが、この点、一体大豆やなたねで稲転ができるようになるのはいつの日か、どのようなことにするのか。これが買い入れ制限の問題での私の三つの質問です。  その次は、これは青森県の小さな事項でございますが、買い入れ価格の不当な差別、あの六年前に生産調整をやったときに、青森県の米は本当に軟質の湿気を含んだお米で等級が悪かった。それで減額1を加えて二百円引いた。しかし青森県の農民が歯を食いしばってこのごろでは良質米をつくりにかかって、この皆さんの出しておる農林省広報によっても、五十年には青森県の米が上位等級比率の「良、六六以上」になっている。もうこれは良質米として減額1は当然もっと早く撤去すべきだったと思いますが、いかがでございますか。これがお米に対しての質問。  その次は、最近のひょう害でございます。五月六日、七日、八日の三日間の降ひょうで茨城、千葉山梨鳥取などを中心に二十八億五千七百万、これだけ被害、一六月十四日、十五日の降ひょう青森山梨中心に三十九億五千七百万、合わせて六十八億一千四百万、残念ながら天災融資法の限度に達した。これほどの被害はないにこしたことはないが、限度に達しましたので、天災融資法発動を速やかにすべきだと思います。これはいかがです。  もう一つには、ことしの六月十四日のひょう害で、五月のときの千葉ひょう害でもそうですか、特別被害地域が出ております。青森県の今度のひょう害で言うと旧裾野村、旧清水村などというものは特別被害地域指定が当然でありますが、この御準備がありますかどうか、これがひょうについての問題であります。  その次は腐乱病でございます。  皆さんよく存じ上げているから、ここで資料について議論いたしませんが、かなり蔓延してしまったのがことしになってから急速に広がっております。私はこの間余市にも行ってみましたし、青森県下を歩いてみましたが、昨年より倍にはなっていると思っております。関係者は激発したと言っております。農民の力には限度がございます。  そこで二つの質問。  一つには、結核の場合のストレプトマイシンみたいな腐乱病に対する特効薬の開発、試験研究、これがどうなっておるか、これからどうするのか。これが一つ。  第二番目には、植物防疫法の第四章十七条、国内の一部に存在している病虫害が慶延してある特定な有用植物に重大な損害のおそれがある場合には緊急防除を発動する、もうこの時期じゃないかと思います。いま発動しても私は遅過ぎたのじゃないかと思いますが、この点で政府の見解を伺わしていただきます。  各項目に具体的に答えていただいて、四時五分までに私が少し再質問できるようにひとつ答弁してください。
  149. 澤邊守

    澤邊説明員 盛りだくさんの御質問でございますので、私の関係、漏れがないようにお答えしたいと思います。  まず、なたねについて生産費所得補償方式で決定すべきではないかという御意見でございますが、この点に関しましては、現行法上、パリティ価格、生産事情その他経済事情を参酌して再生産確保を旨としてという規定になっておりますので、それらを総合勘案して今年も決めたいというように考えておりますが、いま直ちに生産費所得補償方式をとることにつきましては非常に問題が多いというように考えております。  なたねが減りました原因につきましては、表作である稲作との作期の調整が麦以上に激しいというようなこと、あるいは麦と違いまして機械化がなかなか進まない、特に収穫の機械化が進まないということで労働時間が麦以上に相当かかるという点できらわれておるというようなこと、あるいは収穫期における雨の害によります生産の不安定ということが、麦もそうでございますけれどもそれ以上であるというような種々の要因があります。また畑作地帯におきましては、野菜等に比べて不利だというような面もございまして減っているというのが主要な要因ではないかと思っております。われわれといたしましては当面生産奨励金を交付しておりますが、今年度一俵一千円を二千円に増額しておりますので、それらの対策とあわせまして、先ほど申しました収穫機の開発をする等の対策によりましてこれ以上減反しないように、少しでもふやすように努力をしたいというように考えております。  それから次に、腐乱病の御質問が最後にございましたが、技術開発のことは技術会議から答えることにいたしまして、私の方の関係で、植物防疫法によります緊急防除を適用すべきではないかと  いう点でございますが、緊急防除につきましては、法に基づいて発動いたしますと、栽培の禁止、制限あるいは移動なり譲渡の禁止、伐採の強制というようなことを農家に強いるという面がございます。これも外国から新しく入ったとか非常に局地的で当面集中的にたたく必要があるというような場合は別でございますけれども、腐乱病のようにかなり広がっておるものにつきましては、そこまで農家の協力を受けるということは実際問題としてなかなかむずかしい面もございます。また放置園、放任園といいますか、これらも多いわけでございますが、これらについてどこまで地方公共団体の協力を得られるかという問題もございますので、なかなか撲滅は期し得ないと思いますけれども、発生密度をできるだけ低下させるという対策を目途といたしまして、ことしからやっておりますような被害激甚の園地の改植あるいは削り取りによりまして防除するというようなことを今年度から重点としてやることによりまして、先ほど申しましたような密度の低下を図るということにいたしたいというふうに考えております。  それから稲作転換に関連いたしまして、なたね、大豆等これら収益性が低いものを定着するのにどのようにして可能かというような御趣旨の御質問だったと思いますが、私は大豆、なたねもこれは単独の作物としてはなかなか定着するのはむずかしいのではないかというように思います。やはり畑作全体あるいは水田の場合ならば表作を含めて輪作全体の中で地力対策等も考えて入れていく。それだけ一年一作で適正な所得を上げ、収益性を確保するということを実現しながら増産を図るというのはなかなか無理の面があるというように考えますので、全体の作付の中にうまく組み合わせる。大豆等は地力対策にも非常に役立っわけでございますので、そういう観点から導入を進めていくべきではないかというふうに思います。
  150. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 三点についてお答え申し上げます。  第一点は、本年の余り米はどのくらいかということでございますが、これは作況の進んでいる現段階並びに一方では水田総合利用対策について協力をお願いしている現段階におきましては、この数量について申すことはできません。  それから第二点の買い入れ制限についての食管法違反の問題でございますが、当委員会においてもしばしば御議論を賜っておったところでございますが、私どもといたしましては国民食糧の確保なり国民経済の安定という食管法の目的達成に必要な点から見て、買い入れ、管理する必要がある米は需給上必要な米であるべきだというふうに考えておるわけでございまして、この点についても食管法違反というふうに考えておりません。  第三点につきましては、きわめて具体的なお話でございますが、先生、買い入れ価格というようなお言葉もあったようでございますが、私ども青森の減額米については、これは政府売り渡し価格の差でございます。この点については四十七年の物統令の適用廃止以来品質に応じた価格形成をするということに相なりまして、政府の売り渡し価格についても差を設ける。それについては等級の差による価格差以外にも消費者の選好に応じた、何と申しますか、いかなる産地で生産されたか、あるいはどんな産地銘柄だというような観点から価格差を設けておりますが、御指摘青森米、たしか黒石とか弘前以外の米につきましては、当時の北海道その他市場における評価というものからわれわれとしては二百円の減額を講じたわけでございますが、これにつきましてはその実態が変わらない限りはわれわれとしてはにわかにこれを廃止することはできないというふうに考えております。
  151. 平松甲子雄

    ○平松説明員 腐乱病の特効薬がないかというような御質問でございますので、簡潔にお答えをいたしたいと思います。  現在のところ休眠期散布には石灰硫黄合剤が有効であるということでございますし、また、生育期の散布にはチオファネートメチル剤が有効である。それから、切り口の保護には硫酸オキシキノリン剤が用いられておりまして、かなり効果が高いということがわかっております。そういう状況でございますけれども、これだけではなおまだ不十分でございますので、さらに研究を進めておりますが、最近、盛岡の果樹試験場の支場での研究成果によりますと、休眠期散布剤としてもチオファネートメチル剤の効果が高いということがわかってまいっておりますので、その使用時期等について検討を進めておるという状況でございます。さらに今後有効な薬剤が出てこないかどうかということについて、出てきた場合には、そのスクリーンに努めていくという形で努力をいたしたいというふうに考えております。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  152. 津川武一

    ○津川委員 そこで、腐乱病の緊急防除ですが、農蚕園芸局長、農民をおどかさないでくださいよ。緊急防除の場合、第十八条で制限または禁止、除去は、やることができるのであって、やらなければならないということじゃない。それで、これを発動すると、そんなふうに木が切られて大変なことになるなどと言っておどかすのはやめていただきたい。  そこで、十八条の二号、三号で消毒なんかをやって、そのときに国が費用援助をする、こういう項目を発動すべきであって、いまの答弁には強い抗議をして、この点で再答弁を求めるものであります。  その次に、売り渡すときの減額1、いま青森県のレイメイの三等はどうなっておると思います。標準価格米の中に入っている。非常に喜ばれておる。これが一つ。第二番目には、超過米としてのレイメイは自主流通米として中米に入っております。だから、食糧庁長官がこういうことを知らないで、在来のとおりだからと言う。御自分で調べていって、卸と相談してみて、もう一回この委員会で答弁していただかなければならなくなりました。  腐乱病の根治療法、新しいものが出てきたらじゃなく、つくる、この体制が必要だ。いまのは切って何かやっているだけだ。私の言っているのは根治療法を出せと言っている。このために試験研究をやれと言っている。政府は何か出たならば広めると言うだけ。具体的に言うと、水銀剤、非常によく効きます。この水銀剤でぴったりとまります。だが、これはリンゴにつくと有害物なので使えない。これを使ったなどということになってくるとリンゴの消費ががた落ちになる。使っちゃいかぬ。しかしこれでできるのであるから、水銀の作用を研究する。なぜ腐乱病に効くかということを特定の園地、農事試験場でやると、そこから撲滅の機序がわかります。こういう点も私はあえて提言しながら、この点の答弁は農蚕園芸局長食糧庁長官から求めます。
  153. 澤邊守

    澤邊説明員 リンゴの腐乱病の緊急防除についてでございますが、御承知のように、十八条で防除の内容ということで、いわゆる禁止なり制限、措置命令ができるということが書いてございますが、(津川委員「できるであって、やらなければならぬということじゃない。切らなければならぬということじゃないのです。」と呼ぶ)いや、これが緊急防除というものの制度の基本であると思います。こういうことをやる必要がなければ、ここまでやる必要がなければ、それは通常の防除で、防除方法の指導なり援助でやるべきことであって、ここまでの強権が発動できるということに緊急防除の規定の本質があるというふうにわれわれ思っておりますので、ここまでやる必要がない場合には、この規定を適用せずして通常の防除、指導による防除あるいは予算補助による防除等はそれはあり得ると思いますけれども、やはり緊急防除の第四章の基本にわたる部分は、この十八条の強制ができる。もちろんそれを強制した場合には補償をするという規定はございますけれども、そういうのがこの緊急防除の基本だと思います。私どもは現状からしてそこまで発動するのは適切ではないではないか、こういうような考え方に立っておるわけであります。(津川委員「時間がないから言わぬけれども、十八条の三号、四号を適用しなさいよ」と呼ぶ)
  154. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 減額制度につきましては、その米の産地、米の品種の評価によって決まる問題でございますので、基本的には実態を十分調べて措置すべきものと考えておりますが、その米の食味その他という問題以外に、自主流通に乗りました場合においては、その価格の問題もあったわけでございまして、その価格の関係かどうか、その他実態をとにかく調べましてその検討をしたいと思っております。
  155. 杉山克己

    杉山説明員 まだ答弁の残っております先ほど災害の御質問についてお答えを申し上げます。  本年のひょう害につきましては、先生も御指摘のように、五月上中旬のひょう害とそれから六月中旬のひょう害、二度ございました。地域は、一部重複する地域もございますが、全く別な新たな地域被害を受けたということもございます。これらの被害につきましては、私ども統計情報部において調査をしているところでございます。ただ、いままでの県からの情報によりますと、前の方の被害につきましては二十八億五千万円、それから後の方の六月中旬のものにつきましては三十九億五千万円という報告が参っております。こういう数字をもとにして天災融資法発動できるのではないか、合計すれば六十億円を超えるからというお話でございますが、天災融資法発動は私どもの直接調査した数字によって判断するということになって、いま申し上げましたように調査を進めているところでございます。  それから、なおまた気象条件が同一かどうかということについても検討しなければならない。これらの問題をいろいろ含めまして、天災融資法適用対象になるかどうかを検討しているところでございます。  なおまたもう一つ、特定の町村について、それが特別被害地域になり得るかどうかというお尋ねがございましたが、これは都道府県知事が詳細な現地の実情調査を行った上で指定するものでございます。まだただいま申し上げましたような段階でございますので、そこら辺につきましてはちょっとお答えするような状況にございません。
  156. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  157. 湊徹郎

    ○湊委員長 次に、瀬野栄次郎君。
  158. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和五十一年産米価、麦価、小豆の暴騰対策その他について、農林大臣並びに国税庁に質問いたします。  昭和五十一年産米麦価については、昨二十一日に農林大臣に七項目の申し入れを行ったところでありますが、麦価米審は明六月二十三日、二十四日に決定をされております。生産者米価に対しての米審の日程については、米価の算定基礎資料が七月四日ないし五日ごろにまとまるということから、それ以後ということになるわけでありましょうが、生産者米価については少なくとも七月十五日の盆前にはぜひ決定していただきたい、かように申し入れたところであります。従来から、田植え前にぜひ米価審議会を開いて米価の決定をするようにということは当然でありますけれども、事ここに至っては少なくとも新の盆前には決定をお願いしたい、かように申し上げました。昨日も申し入れの際、大臣からその含みのある回答を受けたわけでありますけれども、その方向努力されるのかどうか。いまからいろいろ日程等詰められると思いますけれども、その点大臣に党を代表して冒頭お伺いをいたしたい、かように思います。
  159. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米価につきましては、まだ具体的に米審をいつ開くかということについては決定をしておりませんが、七月中に生産者米価、消費者米価を決定いたしたいと思っております。  いつ開くかということにつきましては、いまも御要請がありましたが、各方面の御要請等も踏まえて、そして適宜な時期にこれを開き決定をしたい、かように考えております。
  160. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本日は時間の制約もあり、次回の農林水産委員会についてけさほど理事会でいろいろ検討した結果、おおむね七月九日ごろ、米審の初日に当委員会を開き、諸問題を詰めるということで、いずれにしても米審の初日にさらに諮問案を待って具体的な詰めを行うということに決定したわけでございます。本日は、米審の本番を前に、問題の諸点を明らかにして政府の米価諮問に対する検討を指摘するという意味で、以下若干の問題についてお伺いをしてまいりたいと思います。  まず最初に、農協の要求米価が出されたが、これについてでございますけれども、全中等、農協から本年度産米の米価六十キロ当たり二万百二十円、すなわち昨年の決定米価に比べ三〇・九%のアップの要求がされております。これは当然の最低要求であるわけでございまして、われわれもこの三〇・九%アップを支持して、今後政府に要求する考えでございますが、これに対して大臣はどう検討されたか、まず大臣見解を伺いたい。
  161. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ことしの農協の要求米価につきましては、決定がなされました直後、直ちに私に対しても申し入れがあったわけでございます。農業団体としては、農業団体の判断に基づきまして、また農業団体の基準とするところの算定方式等に基づきまして決定されたわけでございますが、これはこれなりに私も承ったわけでございまして、これに対する論評は、私としては差し控えたいと存じます。
  162. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以下いろいろ大臣にお伺いしますけれども、この農協の要求する六十キロ当たり二万百二十円というものは、当然の最低の米価要求である、かようにわれわれは認識しておりますし、大臣も本年度米審に当たっては、十分これらを含めて、まだ諮問案を検討しておられるところでありますから、十分参酌して諮問されるようにお願いしたい、かように思うわけでございます。  そこで、米価算定は、農協も政府も形式上は同じ生産費及び所得補償方式であるわけでありますが、昨年でも決定との間に二八・八%の開きが出ました。いままで農協要求の要求どおり通ったためしがないわけでありますけれども、昨年の二八・八%の開き、これは算定要素のとり方に大きな政府と農協の食い違いがあるからであります。以下それぞれ相違する点一の重要な点について大臣の御見解を承ってみたい、かように思います。  大きな相違の第一点として、算定の基礎となる生産費のとり方が問題であります。農協は、生産費調査農家を低いものから高いものへ順に並べ、低いものから戸数累積八〇%目の農家群の生産費をとっていることは御承知のとおりでございます。農家は米を全量政府に売り渡すことが義務づけられているのでありますから、米価は販売農家全部に再生産が確保されなければならないのであります。しかし、戸数累積一〇〇%目の農家の生産費では異常に高くなり、統計的にも連続性がなくなるので、適正限界農家を八〇%にとっておる。すなわち、八〇%バルクライン方式でございます。  ところで、政府は毎年平均生産費をとっておりますけれども、これでは米販売農家の四一%の生産費しか補償されず、食管法のたてまえからしても、稲作農民を無視していることになる、かようにわれわれは理解をして、毎年政府の見解をただしておるわけですけれども、ちなみに申しますと、昭和三十年の米価審議会では八〇%バルクライン方式による米価算定を答申し、その後の米価審議会では毎年この方式により米価の算定を速やかに行うことが要望されてきておることも、過去の議事録から見ても明らかでありますが、その点を含めて、この生産費のとり方の食い違い、この辺について農林大臣はどういうように農民に見解を述べられるのか、その点を明らかにしていただきたい。
  163. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 累年農業団体の算定方式は八〇%バルクライン方式でございますが、これにつきましては、私どもの方といたしましては、平均生産費方式におきましても決定米価の原生産費カバー率が一三〇%、戸数としては九割を超えておりますし、また、より高い限界生産費、あるいは低い反収の農家をとることとこれは同じことになるわけでございますが、これは今日の需給事情から申しまして、さらに生産刺激的になるという問題等もございますし、また、評価がえする労賃である製造業労賃も平均でございますので、平均と平均というようなこともございますし、さらに理屈を申し上げますと、八〇%をとる根拠なりあるいは八〇%をカバーするその生産費の安定性とか、いろいろ厳密なと申しますか、客観的な生産費算定については問題があるわけでございますので、従来採用しておらないわけでございます。
  164. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 算定の基礎になる生産費のとり方の問題は、これは例年の問題でありますけれども、政府はいつも言を左右にして、いまのような答弁をされますけれども、こういったところが十分検討されなければいつまでたっても米価の算定内容というものは改革されない、農家要求の米価にならないことを指摘するわけです。この点、大臣も十分お聞きいただいて、本年の諮問に当たっては十分配慮してもらいたいと思います。  第二は、家旅労働賃金、いわゆる家族労働費の評価の問題でございます。これも米価における家族労働費のウエートというものは減少してはおりますけれども、依然としてその比重は大きいし、それだけに毎年大きな論点になっていることも御承知のとおりです。農協も政府も労働省調査の「毎月勤労統計調査報告」を採用しておりますけれども、農協は製造業五人以上全国平均賃金で、上限を設けず青天井にしておりますのに対して、政府は五人以上千人未満規模として、千人以上を切り捨てております。昨年の決定と要求では一時間当たり七十円の差があり、それだけ安く評価されたわけであります。  生産費及び所得補償方式は労働評価で都市勤労者賃金と均衡を図ることがねらいであるにもかかわらず、千人未満で打ち切るというのは、米価抑制以外の何物でもない。これもまたいわゆる政府と農協の食い違いの問題でありますが、この点はどう検討されたのか、また今回の諮問に当たってどういうふうに検討していかれる考えであるか、明らかにしてもらいたい。
  165. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 生産費所得補償方式によります場合におきましては、米作の投下労働を製造業労賃で評価いたしまして、都市と均衡した労賃を補償するというたてまえになっておりますが、その場合における製造業労賃をいかなるところにとるかという点については、そのときの米の需給事情とかあるいは経済事情とか、全体の問題とも相関連する問題でございますが、私どもといたしましては、今日の情勢におきましては、五人以上千人未満というものが最も適切であると考えるわけでございまして、青天井として大企業の労賃までを含むということは、需給事情なりあるいは他作物との収益性の問題とか、その他全体の農業食糧政策という観点から見ても慎重な検討を要する問題であるように考えておるわけでございます。
  166. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに第三の政府と農協との食い違いは、企画管理労働をどう見るかということでございます。これも例年指摘をしておるところでありますけれども、今回の諮問に当たっては十分このような内容を検討していただいて諮問案に織り込んでもらいたいという意味大臣にお尋ねするわけですが、昨年まで付帯労働と言っていたものを実態に合わせて名称を変えたわけであります。すなわち企画管理労働、こういうふうに言われておりますが、稲作に必要な共同作業打ち合わせ、簿記記帳、研修会出席、資金調達などの時間は米生産に欠かせない労働時間であるし、稲作が近代化すればするほど当然その必要性は増してくることはもう言うまでもありません。こういったことは農林大臣もよく理解できておると思うのですが、現在この企画管理労働が家族労働時間に含まれていないわけでありまして、生産費の構成要素に加えて評価すべきではないか、かようにわれわれは主張しておるのでありますけれども、今回の諮問案に当然入れるべきである、かように思うのですが、当局の検証はどういうふうにしておられますか、お答えいただきたい。
  167. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 いわゆる付帯労働といたしまして資金調達なり技術習得あるいは簿記記帳とか共同作業打ち合わせとかいうようなものにつきましては、これを付帯労働ということでかつての米の生産の強化を図ると申しますか、昭和四十二年当時においてこれを一時採用したことがございますが、その後の米の需給の変化等を踏まえましてこれを取り上げておらないわけでございますが、これにつきましてはそもそもこのような付帯労働についての生産費としての原価性があるかどうかというような問題についても、生産費に見るべきかどうかという議論がいろいろあるところでございます。また、このような付帯労働と申しますか企画管理労働と申しますか、こういうような労働を通じて収量が上がりコストが下がるという結果に相なるわけでございますので、あらかじめこれを生産費に何がしか見るという点についてはなかなかむずかしい問題があるのではないかというふうに考えておりまして、これも慎重な検討を要する点ではないかというふうに考えております。
  168. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 第四の食い違いは地代の評価でございます。申すまでもなく農協は自作地、小作地とも実際の支払い小作料調査の下田で評価しております。しかし農林省は自作地と小作地を区分し、小作地については実納小作料を用いるが、自作地については現行小作料の最高統制額五級地をとっているためその分だけ安くなるのであります。地代をどう評価するかについて多くの意見があるわけですけれども、限界地、最劣等地の地代は本来差額地代は存在せず絶対地代のみであるという意見が有力でありますけれども、このため農協の要求は限界農家の生産費という観点から下田を採用しておるわけでございます。そういうことで自作地については農林省は米価で現実離れした統制小作料をとっているが、同じ農林省の米生産費調査では自作地も実納小作料でございます。四十九年の米生産費で見ると、十アール当たり一万五千三百九十円の地代でありますけれども、決定米価では丘千九百十八円と三分の一強にすぎないことになっておりますが、この点も大きく相違があるわけでございます。この点どういうふうに是正することで検討しておられますか、この点も次回の農林委員会における米審の審議に当たってはいろいろ再度農林省の姿勢をただすわけですが、お答えをいただきたいと思います。
  169. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 お答えいたします。  この問題は地代についてのいろいろな理屈も関連して議論もあるところかと思うわけでございますが、われわれの基本的な考えを申し上げますと、地代は本来米価から生産に要した物財費等の諸費用を差し引きまして、家族労働費、資本利子を控除した残渣というものであると承知しておるわけでございまして、これは家族労働をいかに評価するかということによって非常に違うわけでございます。それで生産費及び所得補償方式におきましては家族労働費に均衡労賃として所得を付与している。したがって残渣としては統制小作料が、水田でございますと水田の収入から物財費を控除し、さらに労賃は都市労賃を見まして、残渣を地代で見ているということと符節を合していると思うわけでございまして、そういう点から申しましても、現在の生産費及び所得補償方式の考え方と統制小作料とが自作地代の評価についてはマッチするのではないかというふうに思うわけでございます。
  170. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 第五番目の政府と農協の食い違いの点をただしますけれども、資本利子についてでございますが、農協は自己資金、借り入れ資金の別なく同じ利子が支払われるように計算をし、家族労働に対する利子は製造業労賃で評価しておりますけれども、政府は家族労働費の利子は農業臨時雇い賃金で評価しております。農業臨時雇い賃金は農林統計上現実的ではなくなっていると、これは農林省みずから先に国会で認めているにもかかわらず、米価ではこれを採用するということはまことに矛盾した姿勢ではないか、かように私は当局に訴えるわけですけれども、この点は当然是正すべきであると思うのですが、その点どうですか。
  171. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 家族労働費について自己資本利子を付すということにつきましては、もともとこれについて利子を付するというふうなことは、本来の生産費とかあるいは企業会計という点からはいろいろ議論があるところでございますが、所得付与というところからこの点もとられておるとわれわれは考えるわけでございまして、この点でさらに評価がえ後の労賃を前提として家族労働費に利子を付するということは、擬制の上に擬制を重ねるというような問題もあるのではないかというふうに思うわけでございます。  なお、お言葉にございました原生産費の調査も、家族労働費の評価については農業臨時雇い賃金ではなくて、世帯員の働き場所の地方労賃等を適切に取り入れるということは、これはあくまでも原生産費の評価の問題でございまして、家族労働費を評価がえ後の製造業労賃について自己資本利子を見るかどうかということとは別個の問題ではないかというふうに思うわけです。
  172. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いま五点について算定要素の取り方に大きな食い違いが政府と農協側との間にあるということを指摘したわけです。これはもう言うまでもないことでありますけれども、次回の委員会会議録によってさらにまたいろいろと詰めたいということで相違点を本年度生産者米価の時期に当たって改めて明らかにしていただいたわけであります。  以上のように、農協の要求というのは理論的には正しく農民の最低の要求の米価であることがはっきりしているわけです。そういった五つの大変重要な食い違いについて申し上げたわけですけれども、稲作農家が再生産をするぎりぎりのいわば要求米価である、かようにわれわれは認識して支持をしておるわけであります。大臣は農民の父としてぜひともこの農協要求の米価に対して十分な検討をされて諮問案をつくられるようにお願いしたいのでありますが、大臣からの御意見を承っておきたい。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農協の要求の米価につきましては確かに承ったわけでございますし、われわれとしてもこの要求の内容等につきましては十分検討をいたすわけでありますが、結論的に言えば私は食管法の趣旨に基づきましてわれわれの正しいと考えておる適正な算定方式によってこれを決めたいというふうに思っておるわけであります。
  174. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣においても十分検討をお願いしたいと思うのです。  次に、米価審議会のことで昨日も農林大臣に直接申し入れをいたしておきましたが、審議の公平を期すために、生産者、消費者、学識経験者、各三分の一で構成するよう農業団体からも強い要請が出ております。われわれもまた当然そうである、かように思っております。現在米審の内容は二十五名中生産者代表が四名、消費者代表も四名だからと、昨日も大臣はこういうふうにおっしゃいましたけれども、これではもう全然米作農家の意思は反映できない、かように私は思うわけです。米審の発足当時の昭和二十四、二十五年は三分の一が生産者委員であったし、四十二年までには国会議員が全員の四分の一を占めておったわけであります。四十三年の変則米審後、四十四年に現在の学識経験者十七名、消費者四名、生産者四名のパターンが形成されて、この構成で今日に至っておりますけれども、この構成ではいわゆる学識経験者が圧倒的になっております。これでは公正な審議はできない。それだから米審の形骸化、不要論というようなことがもう数年前から叫ばれております。もう国鉄並みに国会で決めろとかまたは農民と政府と直接交渉で決めろ、あるいは出庫拒否で全国農民団結してやろうというようないろいろなことを言われて、社会不安を醸し出しておるのも事実であるます。何といっても米は農民の基幹作物であります。そういった意味で米審のあり方ということは十分検討をしておかなければいかぬ。朝からもいろいろ検討の話が出ておりましたが、農業代表を一名か二名は次の米審には必ずふやすということを大臣もお考えのようでありますが、ぜひともこの構成を検討すると同時に、とりあえずは生産者代表を数名入れるということで検討を進めてもらいたい、かように思うわけです。  農家が買う物はもうすべてあらゆる物は値段の決まった物を買いますけれども農家が売る物は、米にしても麦にしても野菜類にしても畜産物にしても、すべて農家以外で価格が決定される。農民みずからが決定するのは一つもないわけです。せめてこの米価だけは農民の手によって決定できるような、農民の意思が十分反映できるようにすることが当然であり、国民の主要作物として当然のことである、かように思うわけです。米は昔から生命を保ついわば命の異名である、こういうように言われております。そういった意味で、大臣もこの点はひとつ真剣に、あなたが大臣就任のときにこういったことを改革して、安倍農相はこういったことをやったという一つの農政史上の金字塔を打ち立ててもらいたい、かように私は思っておるわけですが、どうか真剣にこの検討をしてもらいたいと思う。その点はどうでございましょうか。
  175. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米は国民の主食でございますし、この米の価格についての審議をするための米価審議会は、主食である米の生産、流通、消費に至るまで、そうした広範な国民経済的な立場からこれを十分に審議していただかなければならぬ、こういうことで、米価審議会委員は学識経験者をもって構成をされておるわけでございます。私は今日の米価審議会の構成はきわめて公正であって、そして十分議論を尽くしていただいておる。そしてその意見はまた反映されておるというふうに考えておるわけでございます。この米審の構成に対して各方面からいろいろの御意見、御批判があることは十分承知をいたしておるわけでございます。私といたしましても真剣にいろいろな面から検討を加えたわけでございますが、実はあした新しく任命をいたしまする審議会委員につきましては今日内定をいたしておりまして、これまでどおりのメンバーでお願いをするということに相なっておるわけでございます。今後米審につきまして、いろいろの御意見等あるわけでございますから、そういう点は今後の研究の課題としていろいろの角度から研究しなければならないことは当然であろうとも思うわけであります。
  176. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 食糧庁長官にもう一点お尋ねしておきますが、産地品種銘柄については熊本県等からも陳情が政府にも行われているわけでありますし、さきに私も農林省に申し入れたところでございますが、指定銘柄と単年適用の特例銘柄については五十年産の要件を踏襲するのかどうか、慎重に扱っていただきたいと思うが、その点について政府の見解を聞いておきたいのであります。
  177. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 銘柄指定の問題につきましては、現在最終的な検討を急いでおるわけでございますが、四十四年の自主流通制度発足以来産地品種銘柄という制度を取り上げたわけでございますが、その後の状況を見ますと、この銘柄数が非常にふえまして、全流通量の過半を超えるというような事態になりまして、この銘柄本来の制度にかなったように再検討いたすべきであるという意見が各方面からも出ておりまして、昨年もそうでございましたが、本年もこの銘柄指定の要件に合致しているかどうかということにつきまして、五十年産米の出回り状況を見て判断じておるわけでございます。特に主食としての評価というものに重点を置こうとしておるわけでございますが、この点については、銘柄制度が相当定着した現在におきましては、この取り扱いにつきましての改善の程度その他という点については実情を見て進めていかなければならないというように考えております。
  178. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、五十一年度麦価について農林大臣にお伺いしたいのであります。午前中からいろいろ審議が続けられておりますので、若干はしょって質問を申し上げます。  五十一年産麦の農協の要求価格が出されておりますが、これも米価と同じく農民の最低の要求でありますので、大臣はひとつ十分検討していただきたい。午前中からの答弁によると、まだいま検討しておるし、今夜検討して明日諮問するということでありますが、そうであるならば、ぜひともひとつ麦増産のためにも十分な配慮をしてほしい、明朝はこれがわかるわけですが、最大の努力をお願いしたいと思っています。  農協要求は、小麦一俵六十キロ当たり一万六百七十円、大麦八千四百七十円、裸麦一万一千円、平均して現行価格の三一・二%アップとなっておりますが、麦はとかく米の陰に隠れて関心がそれがちであります。しかし、米麦を通ずる一貫した体制づくりは食糧自給確立の基本であり、農業見直しを裏づける具体的な処方せんであったはずであります。要求麦価の実現はその意味からも今後の農業を左右する重要な課題になるわけですから、この農協要求価格をぜひとも十分しんしゃくされて諮問案の作成をされるように最大の努力をお願いするわけですが、大臣、その点十分御配慮いただけますか。
  179. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 あしたの米審に諮問をいたすわけでございますが、麦価につきましては政府といたしましてはパリティ方式に基づきまして諮問をいたしたいというふうな方針を固めております。ただいまの農協の要求麦価は生所方式になっておるわけでございます。その点は違うわけでございますが、いずれにしても、先ほどお話がございましたように、米と麦というものは、今後の国民食糧確保の上においても非常に重要な農産物でございますから、米麦一環というふうな形において総合的に政策を進めていかなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、価格問題につきましても、検討を要すべき点は今後の課題として検討しなければならぬし、さらに生産対策等については一層積極的に取り組んでまいらなければならないと考えております。
  180. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣、それできのうも申し入れいたしたわけですが、パリティ方式は従来どおり踏襲するということで大臣おっしゃっていますけれども、やはりこれは生所方式に変えない限りは麦価はなかなか値上げできないと思うのですけれども、パリティ方式を生所方式に変えるということを再度十分検討してもらいたいということと、生産奨励金を基本麦価に入れていただきたい。これはきょうも北海道中央会長からも要請があったのですが、そのことについてはどういうふうにお考えですか。
  181. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 生産費及び所得補償方式を麦についてとるという問題については、パリティ方式自体、諸般の御意見も出ており、その検討を要することは確かでございますが、麦につきまして生所方式をとることについては、先ほども申し上げましたように、麦につきましてはその規模が零細で、作付が分散しておるとかあるいは地域とか田畑の態様によって著しく生産費が違うとか、そのほか年度による振れが非常に大きいとかもろもろございまして、安定した生所方式をとることについては非常な問題があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  なお、奨励金を価格に取り込むという問題につきましては、価格算定の方式は客観的な一般の納得のいく方式の確立が必要でございまして、生産の面を重視いたしました奨励金を機械的に価格の算定の方式に取り込むということについては、これまた慎重な検討を要すると思うわけでございますが、いずれにいたしましても麦の価格の検討ということについては、米価審議会等の建議もございまして、また農林省としても部内で検討を進めるわけでございますので、それぞれの一環として問題点について検討を進めていきたいというふうに考えております。
  182. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、この等外上麦の買い上げ及び制度化のことでお尋ねしておきますけれども、今回の長雨等によって、熊本県の例を見ますと、栽培面積一万八百ヘクタールの八割、すなわち七千九百ヘクタールが被害を受け、減収量が七千二百トン、被害金額が七億五千万円、平年作の六割にとどまっているということになっております。さらに被害はふえておりますが、福岡、長崎県でもこういう例がございます。いずれにしても、全国的に今度の長雨等によって等外上麦の買い上げまたは等外上麦の買い上げについての制度化ということが農協側からも要請されておりますけれども、これについてどういうように考えておられるか、お答えいただきたい。
  183. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 等外上麦の問題につきましてお答え申し上げますと、この等外麦につきましては災害等によって発生いたしますため、年によりまして数量とかあるいは品質が区々でございます。したがいまして、これらを見きわめて一般に食糧として可能なものについて等外上麦として食管で買い入れているというわけでございまして、この実態に応じて適切な処置も従来もしてきたつもりでございます。  なお、本年につきましても、お話のように、九州各地域においてこの災害に伴う等外麦の発生の問題が起きておるようでございますので、われわれといたしましても実情調査して適切に対処してまいりたいというふうに思っております。
  184. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間がございませんので米麦価の問題については以上で一応終わり、残余の質問は次回に譲ることとしまして、次に小豆の暴騰対策について政府の見解を伺いたいと思います。  小豆相場については昨年末から価格の高騰が顕著になってきておりまして、昨年十、十一月ごろは一俵当たり当限で一万五千円程度、先物については一万七千円程度で取引されていたのでありますが、その後半年間で一万円以上の急騰を示し、一俵三万円近い相場になりつつあります。この小豆価格の史上空前の異常高騰は、そのまま庶民生活に多大な影響を及ぼし、全国各地の菓子業界や製あん業界では倒産に追い込まれたところもたくさん出ております。この原因としては、第一に五十年産小豆の不作、第二にタイ焼きブームによる需要増が挙げられておりますが、小豆については元来、赤いダイヤと呼ばれるほどばくち的色彩が強く相場の変動が激しいものとして、従来から抜本的対策が望まれていたにもかかわらず、政府はこれを放置し、何ら根本的解決策を講じなかったことが基本的な原因である、こういうふうにわれわれは見ておりますけれども、政府はこの異常高値の原因をどう見ておられますか、お答えをいただきたい。
  185. 澤邊守

    澤邊説明員 取引所の問題につきましては食品流通局の方からお答えいただくとして、異常高騰の原因の一つといたしまして、やはり五十年国内産の小豆の生産が前年に比べましてかなり大幅に減ったということでございます。前年に比べますと約一万七千二百ヘクタール下回ったわけであります。それに加えまして、北海道におきまして播種期に長雨によりまして初期生育が非常に悪かったということもございまして、作況指数が八九%という低い水準であったということのために、生産量全体といたしまして八万八千四百トン、これは前年に比べて六八%ぐらいの低水準にとどまったということでございます。われわれといたしましてはそのような国内産小豆の不足にかんがみまして緊急輸入を行うことにいたしまして、輸入割り当ての時期を例年より早めまして一月に行い、さらに引き続きまして三月、四月とそれからごく近くさらに引き続き緊急輸入を追加することにいたしておりますが、これまで輸入をいたしましたもの、約二万二千トンぐらい入っておりますが、これらは中国から主として輸入するわけでございますが、配船がややおくれまして到着がややおくれておった。最近どんどん入っておるようになっておりますが、そういうこともございまして、輸入による価格の鎮静効果が十分発揮できなかったという面も一つの原因と考えております。的確なる輸入を追加をいたしまして、できるだけ鎮静するように努力をしたいというふうに思います。
  186. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま答弁ありましたけれども、五月二十二日に農林大臣に対して小豆暴騰対策について私から五項目の申し入れをしておりますけれども、いま一部答弁ございましたが、この五項目に対してどのような対策をとられたか、またその申し入れから今日ちょうど一カ月が経過しておりますけれども、その結果どのような効果が上がったか。時間も制約がありますので、簡潔に要点をお答えいただきたいと思います。
  187. 澤邊守

    澤邊説明員 申し出の五項目のうち、私どもに関係がございます点を中心にお答えをいたしたいと思いますが、まず在庫調査について、委託調査でなくて政府みずからが徹底的に行えという御趣旨の申し入れでございますが、この点につきましては、現在、産地の在庫調査につきましては、主として国内産で出回る物は大部分が北海道産でございますので、ホクレン傘下の農協を通じまして詳細に調査をしておりますし、消費地在庫につきましては、穀物取引所が倉庫業協会を通じて調査をした上で適宜公表しているところでございまして、これらの調査をもって的確に行えば十分であるというふうに考えておりますので、政府が直接行うという考えは持っておりません。  それから次に、出荷奨励をするために豆類基金協会の資金による出荷奨励金を出す措置を講じたらどうか、こういう申し入れでございますが、この点につきましては、先ほど申しましたように現在の高値の要因は、取引所の問題は別にいたしまして、需給関係、緊急輸入したにかかわらず十分円滑に入らなかったというような事情もございます。したがいまして、国内産が非常に大量に売り惜しみがあって出荷がおくれておる、出し渋っておるというような要因は、全くないとは申しませんけれども、それほど大きな量には達していないというふうに思っておりますので、ホクレンを通じて生産者の出荷はこれまで督励しておりますけれども、それらの措置で今後ともやっていけるのではないかというふうに考えております。  それから次に、小豆相場の鎮静化を図るために輸入小豆関税の軽減や先物契約分の船積みの促進と緊急輸入措置を講ずることについて、これは先ほどお答えしましたように、第四回目といたしまして近く一万五千トンばかりの緊急輸入を追加したいということで現在事務手続を進めておりまして、ごく近く実施できることになっております。  それから、関税の軽減につきましては、これは内外価格差が非常に大きいわけでございますので、国内産小豆の生産者の保護という観点からやっておるわけでございますので、現在の事態だけで短期的な視点から軽減するということは、必ずしも長い目で見て得策ではないというふうに考えておるわけでございます。  それから、船積みの促進につきましては、これは今後とも輸入商社等を指導いたしまして、おくれることのないように努力をさせたいと思っております。  それからもう一点、総合的な観点から抜本的対策を講ずるべきである、生産価格あるいは備蓄にわたる総合的観点から抜本的対策を講じろ、こういう御趣旨でございますが、私どもといたしましては、先ほど申しましたように国内産出回りの小豆のうちでは北海道産が七、八割のシェアを占めておりますので、年によって若干の差はございますが、北海道の生産が全国の需給にかなり大きく影響するということばございますけれども、北海道の畑作の総合的な振興を図ります点からいたしますと、小豆が余りふえるということは必ずしも健全な畑作経営のためには望ましいことではないように思います。地力対策あるいは生産の安定という面からいたしまして、あるいはまた小麦とか大豆とかビートとか、より食糧政策上重要で生産をふやすべきもの、飼料作物もそうでございますが、それらの観点からいたしますと、私どもといたしましては、今後不足分は緊急輸入その他の措置で円滑に輸入をしていくということが大事だというように思います。これまで振り返ってみて、十分円滑ではなかったというような面も指摘を受けておりますので、今後は北海道の畑作振興一環といたしましても、無用に価格面で刺激するのは好ましくないということも考えまして円滑な輸入の実施を考えていきたいというふうに考えております。
  188. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 国税庁にお伺いいたしますが、小豆相場の異常高値をもたらした原因等をいまお聞きいただいたと思いますけれども、国税局では、ことしに入りこのように小豆の暴騰が問題化されておりますが、この小豆相場についてどういう認識をされておるか、御承知であるか、お答えをいただきたい。
  189. 田口和巳

    ○田口説明員 国税庁の方から御説明申し上げます。  先ほど先生から御指摘のございました小豆相場、大変な高騰ぶりでありますことは、私ども報道等で知っておりますし、それから課税を預かる税務当局といたしましても、このような価格変動が非常に激しい、大きいというような場合には、課税上大きな影響を持つものであるということでございますので、このような動きについては十分承知しておりますし、大きな関心を持っておるところでございます。
  190. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに国税庁にお伺いしますが、今回の小豆相場の異常高騰は、商品相場界の仕手の買い占めであり、これに産地が組んで価格操作をやっているという疑いが濃厚であると言われております。仕手というのは、結局莫大なるお金を動かして買い占めをしているわけだから、その金がどこから出てどこへ流れておるのか、現在何人かのうわさをされている仕手の人が幾ら個人名の架空名義で買い注文を出しても、必ず金の裏づけ、すなわち証拠金がなければ買えないのであるから、その元凶である資金の流れをつかまえなければならぬ、こういうように思うのですが、国税庁はそのように認識しておられますか。
  191. 田口和巳

    ○田口説明員 商品取引などの場合、相場が異常に高騰いたしますときには、過去におきます私どもの税務調査におきましても、仮名取引などによって功妙に多額の脱漏をしている事例があった、こういう経験をしばしばしております。そういうことで、今回の小豆相場の急騰に関しましても、第一線の国税局あるいは税務署におきましては、十分各種の資料情報の収集に努めるなどいたしまして、その資金の源泉あるいは資金の流れというようなところに配意いたしまして、所得の脱漏を見逃さないように十分努力しているところでございます。御指摘をいただいたことでもございますので、局署に対しまして、さらに資料情報の収集、調査等に努めるよう強く指導してまいりたいと思っております。
  192. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 資料情報の収集、調査等を直ちに始めるということでございますが、ぜひそうしていただきたい。  と同時に、さらに国税庁としては、現在仕手は莫大な利益を上げているわけでありますが、これらの課税のためにも特別調査発動に乗り出すべきじゃないか、その考えがあるかどうかということをお伺いするわけであります。今回の小豆暴騰は国税庁の特別調査いかんにかかっている、こう言われております。その点どういうふうにお考えであるか、その意思があるか、お答えをいただきたい。
  193. 田口和巳

    ○田口説明員 先ほど御説明申しましたように、私どもの過去の経験でも、このような商品取引を通じての脱税というようなものを見出した経験が数々ございます。たとえば強制的な査察調査を通じて課税した事例もございますが、このような事例から見ましても、商品取引というのは税務当局としては注目すべき問題のある業種あるいは取引であろうという考え方を持っておりまして、仮に査察によらないまでも、このような問題のある業種、取引につきまして、税務署におきましても十分厳しい調査をいたすようにしてきておる状況でございますが、さらに今度の問題につきましても、必要に応じて、先生のお言葉にもございました一般の税務調査よりも日数をかけて厳密に、精密にやる調査、これは特別調査と言っておりますが、こういう調査を行い、課税を厳正に行っていくように一段と配意してまいりたいと存じます。
  194. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに国税庁にお伺いしますが、穀物取引でもうけた所得は税務署に申告しなくても決してわからない仕組みになっていると多くの仲買人が言っているが、この点どうでございますか。商品取引に対して正当な課税をすれば博徒的仕手はなくなるはずではないか、こういうふうに言われております。すなわち累進課税で投機の妙味がなくなる、こういうことでございますが、この点ひとつ、時間も参りますので、簡潔に見解を承りたいのであります。
  195. 田口和巳

    ○田口説明員 商品取引にかかる所得につきましても、御承知のとおり税法上当然に課税されるものでございます。過去におきましても、商品取引による大きな利益があったにもかかわらず、仮名取引等の手段によって所得を功妙に隠蔽し正しい申告をしていないという悪質な事例を見出し、それに対して厳しく追及した経験を私ども少なからず持っております。これらの経験を踏まえて、第一線では強い問題意識を持って脱漏の所得の把握に努めているところでございます。しかし、先生の御指摘のようなお話があるといたしますと、私どもの現場の努力が百点満点ではない、不十分な点があったということも考えられますので、今後このような過去の経験を十分に生かしながら一段と課税漏れが生じないよう最大限の努力をしてまいりたいと存じます。
  196. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 国税庁の立ち入り検査を十数年一度も受けたことがないと仲買人たちは言っておりますが、これでは博徒的仕手が活躍して相場を過熱させ、自由自在に相場を操作することになるわけですが、立ち入り検査の用意があるか、簡潔にお答えいただきたい。
  197. 田口和巳

    ○田口説明員 先生のお話にございました十数年も調査を受けていないというようなお話がございましたが、私どもも事務量の制限の中でにらむべきもの、徹底的に調査すべきものを対象に仕事を進めておるところでございますが、先ほど来申し上げましたような商品取引関係については、私どもとしても問題ありという意識を持っておりますので、重点的に調査を今後ともしてまいりたいと思いますし、悪質な脱漏が見込まれるものを万が一にも見逃すことのないよう、厳正な徹底した調査を行い、課税の充実を十分図ってまいりたいと思っております。
  198. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 国税庁にはいま答弁あったように、十分ひとつ対処していただきたいということを強くお願いしておきます。  最後に、農林大臣にお伺いして終わりにいたしたいと思いますが、製あん業者、菓子製造業者が農林省へ陳情した際、商業課長の堤氏より、二万八千円以上になれば立ち会い停止もあり得るという厳しい規制強化の指針があったと言われておりますが、この立ち会い停止を本気でやる気があるのか、この点と、商品取引所のあり方について、これは農林大臣からお答えいただきたいのですが、これまで始終論議をしてまいりましたように、この小豆についてはもともと赤いダイヤと言われ、ばくち的な色彩が強く、相場の変動は激しいものであるが、それにしてもこの過熱ぶりは尋常ではございません。明らかに常識外であります。わが国の自由経済法則のたてまえから言えば、もちろん取引所における売り操作、買い操作、思惑買いも許されるものではありましょうが、それにしても一部の業者によって異常な高騰を招き、その業者はそれによって莫大な利得を得ている一方、相場の異常暴騰はそのままもろに庶民生活へ多大な影響を及ぼし、全国各地の菓子業界や製あん業界では、小豆の暴騰で採算が合わなくなり、倒産に追い込まれたところも出ているほどであります。タイ焼きブームによって年間二万俵以上が消費され、したがって買い占めをして値のつり上げを待つというふうなことであろうかと思っておりますが、またこれまでにも、この小豆相場に手を出し、倒産をした人がたくさんあることも当局は十分承知のことだと思います。  穀物取引業界には仕手と称するいわゆる博徒の集団があり、それが社会通念を度外視した価格の操作をしている、こういうふうにも業界ではいろいろ批判されて投書等が舞い込んでおりますが、法的違反は問わないにしても、道義的にはかなりの問題を含んでおります。この商品取引所のあり方について農林大臣はどうお考えになっておりますか。この状態、このままを続けてもいいものかどうか、前向きに取引所のあり方是正をお考えになってはどうか、この点の見解を最後に承って私の質問を終わりたいと思います。
  199. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まず私から、商品取引所のあり方につきましての基本的な考え方につきましてお答えを申し上げます。  商品取引所は先物取引を行うため、商品市場として本来公正な価格形成、大量取引の迅速公正な処理、価格変動の保険つなぎ、いわゆるヘッジング等の機能を有するものでございます。商品取引所における先物価格の形成は、上場商品の関連業者にとって、その経済活動のガイドポストとして有用性が高いものと考えておるわけであります。  また、農産物等に見られるごとく、価格支持政策がとられている場合には、その価格決定に際して参考指標の役割りを果たしており、さらに公開の場において価格形成が行われる等、わが国経済の中でその機能を正当に評価すべきものと考えております。  商品取引所がこのような役割り、機能を十分に発揮し得るためにも、商品取引所の運営が公正になされることが必要でありますので、今後ともその運営等につきまして、指導、監督してまいりたいと存じます。
  200. 今村宣夫

    ○今村説明員 穀物取引所におきます小豆の先物価格の暴騰が生ずることのございませんように、本年三月以降小豆の取引について取引所において適正な市場管理がなされますように、私たちとしましては、一つは委託者の受託枚数の制限ということをやってまいりました。これは、従来七百枚の受託枚数でございましたのを、百枚に引き下げておるわけでございます。  第二は、委託者の証拠金の増徴ということで、たとえば当限について申し上げますならば、六万五千円の証拠金を二十一万七千円、先物について言いますならば六万五千円を十七万円というふうに、証拠金を引き上げてきておるところでございます。  また、四月の六、七日それから五月の二十四、五日に商品取引二十六社につきまして、大口の委託者の建て玉状況調査を実施しまして、小豆価格が過当な騰貴に陥らないように十分監督をいたしますと同時に、各取引所に適時適切に市場管理を行うための市場管理基本要綱を作成せしめるように指導をしておるところでございます。  今後とも御指摘のように、小豆の先物価格が異常に高騰することのないように、十分適切な措置を講じてまいりたいと考えておる次第でございます。
  201. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 残余の問題は次回に回し、以上で終わります。  御協力ありがとうございました。
  202. 湊徹郎

    ○湊委員長 次に、稲富稜人君
  203. 稲富稜人

    ○稲富委員 ずいぶん私の時間が食い込まれておりますし、大臣も後の時間がないようでございますので、私も要点だけを簡潔に質問をいたしたいと思いますので、ひとつ簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。  本年度の米価並びに麦価の問題に対しましては、先刻来すでに同僚各位よりいろいろ質問が重ねられておりますので、私は今日はその具体的な問題に対しましてはお尋ねしないことにいたしまして、生産者米価及び麦価を決定するに当たりましての取り組み方について、基本的な問題についてひとつお尋ねをいたしたい、かように考えます。  そういう意味からまず大臣にお尋ねいたしたいと思いますことは、一体政府は日本の農業に対する基本的な位置づけをいかように評価しておられるのか、こういうことに対して、これがやはり米価、麦価の価格を決定する基礎になると思いますので、これに対する大臣の大局的な考え方をまず承りたいと思うのでございます。
  204. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、わが国の農業振興することは、これはただ単に農業振興という面にとどまらず、国民経済振興、発展にとりましても欠くことのできない問題である、こういうふうに考えておりますし、農業振興なくしてはわが国の経済の安定もないというのが基本的な私の考え方でございます。  最近の国際的な食糧をめぐる情勢等非常に厳しくなっておりますし、今後ともそういう方向に進むものと考えられるわけでございますので、一億国民の食糧を確保するという意味におきましても、わが国の農業振興は今後の政治の最重要課題の一つであるというふうに認識をいたしておるわけであります。
  205. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、ただいま大臣から大体の基本的な考え方を承りましたので、さらに第二の問題として大臣にお尋ねいたしたいと思いますことは、農業のいわゆる食糧の生産者が国民に食糧を供給すべき義務を持たされておるのでございます。すなわち農業者の務めというものは、国民のための食糧源であるわけでございます。  そういうようにこの農民の知恵というものが、非常に国家的に必要性を持つものであるという、こういう点に対する認識をどのくらい考えていらっしゃるか、これがやはり米価決定に対する基礎にもなると思いますので、この点に対しても承りたいと思います。
  206. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農業者が国民に対する食糧の供給者であるということについては説明を申すまでもないわけでございまして、われわれはわれわれの生命を維持する意味におきましても、食糧の確保は絶対に必要であります。そういう点に立っても農業者、農業の位置というものは、非常にわが国の民族の生存それから発展のためにも欠くことのできない重大な問題であると思います。
  207. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、さらに次にお尋ねいたしたいと思いますことは、私はここ二回ばかり大臣に対しまして米価の決定方式というものを何とか検討する必要があるんじゃないか、十数年来同じような米価決定方式をやられているんだが、これに対する検討をなさったらどうかということを質問いたしまして、大臣も現在やられている方式が最善とは思わない、検討を加えたいと思っているというような御答弁もいただいておるのでございますが、これに対してどういうような検討をし、またことしはどういうような考え方で米価決定をなされようとしておるのか、この点をまず承りたいと思うのでございます。
  208. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米価決定方式といたしましては、これまでの前例もあるわけでございますし、われわれとしては政府で諮問案を決めまして米審に諮問をいたし、米審の審議を終えた後に各方面とも一折衝して最終的に農林大臣の責任において決定する、これが米価決定の方式であると考えております。
  209. 稲富稜人

    ○稲富委員 私はその点を大臣にしばしばお尋ねしたわけなんです。いろいろ慣習もあっていままで同じことを十数年やってきている、このやり方というものは、もちろん食管法に基づいて米審に諮問をしてからやられていることはわかっております。しかしながら、事実は、これは大臣も御存じのとおり、もちろん政党政治でございますからやむを得ないと言いながらも与党の意見というものがまず先立って、そして米審に諮問案というものが出てきて、最後は自民党の枠内において米価というものが決定されたような形になって、これが政府案として決定される、これが従来やられた米価の決定方式なんです。こういうような米価決定方式というものは果たしていいのであるかどうか。政府はこれらに対しては決定権を持っておりますので、もっと政府が積極的に、もちろんそれは政党政治でございますから与党の意見を無視せいと言いません、しかしながら、やはり何とか政府としての考えでやらなければ、同じことを繰り返しておったのでは、莫大なこの農民の負担というもの、全国からたくさんの農民を動員する、毎年毎年こういうことを繰り返すということは、もういよいよ政治に対する農民の不信感というものがますます大きくなってくる、こういう事態でありますがゆえに、私は従来やってきた慣習というものをこの際再検討して、そして政府が決定するということに対しては、これはわれわれは異議はございません。政府が決定する以前においてもっといろいろ方法というものがとられやせぬか、この点を御検討なさったらどうかというのが私がしばしば大臣要望したことなんでございます。ただ従来の慣行があるからやむを得ないからその慣行どおりやりますでは、これは一つも新機軸はないわけなんで、その点を私はしばしば大臣にも要望いたしておるのでございますから、これに対してはもうやむを得ない、従来どおりやっていくのだ、こういうことであるならもう何をか言わんやであります。これに対してひとつ何とかやれる方法というようなものを検討されたかどうか、この点を承りたいと思うわけでございます。
  210. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろの方面に相談をし、意見を聞き、そして政府が最終的に政府の責任において決定するということは、これは食管法の精神から見ても当然のことであるわけでございます。その際に、政党政治の時代でございますから与党の意見も聞く、そして与党の意見においても取り入れるべきものがあったならばこれを取り入れて、米価に反映をするということも政党政治というたてまえからいけば決して不都合ではないと私は思うわけでございますが、そうした中にあって、いままでそのやり方にいろいろと批判が出ておった、そしてこれがまたいろいろと農政不信というふうな声にもつながり、政治米価ということを盛んに喧伝されるというふうな事態にもなってきたわけでありまして、そういう点については徐々に改善がなされつつあるわけでありまして、昨年の米価決定の際におきましても与党との間の調整はいたしたわけでございますが、きわめて微調整といいますか、政府の最終決定に至るまでの間の修正は非常にわずかなものにとどまったわけでございまして、今後ともそういう方向で、米価決定における国民の信頼感というものを高めていく上においても、これはやはり今後とも徐々に改善をすべき点は改善をしていかなければならない、そういうふうに私は考えるわけでございますが、しかし米価決定に至るまでのいろいろなやり方等につきましては、これは先ほどから申し上げましたような順序は踏まざるを得ないのではないか、私はそういうふうに考えておるわけであります。
  211. 稲富稜人

    ○稲富委員 どうもこれまで大臣が再検討しようとおっしゃった意味ときょうの答弁はずいぶん違うようでございまして、私は実に期待外れの感がいたすわけでございます。私は、諮問案をつくる場合でもやっぱり生産者の代表である農業団体との間に十分協議を重ねたらどうかということを言いました。本年度もこれに対しては協議を重ねられたようでございます。生産者代表と協議、検討されたということはわれわれ承っておるのでございますが、これも協議、検討をなされただけであって、一向内容は進行をしていないように思うのでございますが、時間がありませんので簡潔にこの点の経過等も承りたいと思うのでございます。
  212. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米価決定は何としても国民の主食の価格を決定するわけでありますから、これは非常に慎重に対処しなければならぬわけでありまして、したがって生産者の意見も十分聞き、消費者の意見も十分聞きながら政府としては最終的に政府の責任において決定するわけでございます。私、農林大臣になりまして以来、そうしたやはり生産者米価決定に当たっては生産者の意見等も十分聞き、納得できるものはこれを米価に反映していかなければならないという見地から生産者団体との接触は深めておるわけでありまして、今回の米価決定に当たりましても、これまですでに生産者団体との間においては二度にわたりまして意見の交換をいたしておるわけでございます。こうした意見等も参酌をいたしまして米価決定に臨みたいと考えておるわけであります。
  213. 稲富稜人

    ○稲富委員 生産者団体との意見の交換をするということはこれはやはりいいことであって、この点は両方が胸襟を開いて、農林省農林省としての立場から——問題は生産費をとう計算するかという基礎的な問題にもなってくると思うのであります。おのおのこの計算の算定方法に非常に間違った問題があることが両方の価格決定の一致点を見出すことを困難にしているという問題がありますので、こういう点はやはりもっと胸襟を開いて話し合うということが必要ではないか。お互いにからの中に入っておりながらただ形式的に話し合ったというだけではその結論を得る、また似たような点を見出すことはなかなか困難じゃないか、こう思うわけなんで、この点は生産者団体と政府が本当に胸襟を開いて生産費をどうして補償するかというような立場から論議をしなければ効果がない、こういうことを私はしばしば言っているのでございます。本年度も二回ほど開かれたそうであるけれども、その結論というものは余りいい結果を得たようにはわれわれは承っておりませんので、この点こういう問題に対してはもっと、米審に諮問する前にやっぱり本当はやるべきではなかったかということを深く私は考えながらこの問題を特に大臣に申し上げたいと思うのでございます。  さらに、時間がありませんのでもうはしょって申し上げますが、米価の決定は食糧管理法に基づいて決定されるということはこれはもう当然でございます。それで政府はいつでも口を開けば、自分たちは食管法の根幹は守る、こういうことをおっしゃいます。私は、この米価決定は食糧管理法によって決定されるのでございますが、それでは一体、食管法の根幹を守るということは具体的にはどういうようなことをおっしゃっておるのか、この点を承りたいと思うのでございます。
  214. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 食管制度につきましては、これはもう国民食糧の確保と国民経済の安定を図るという重要な役割りを担っておるわけでございます。事態の推移に応じまして必要な改善を図ることはもとよりでございますが、食管制度の役割りがますます重要なものとなってきておることにかんがみまして、やはりその制度の根幹は維持してまいりたいというのが私の考えでありまして、このためにも食管制度の健全な運営を確保してまいることが必要でありまして、今日問題となっておる米麦の逆ざやといったような問題の是正などによって適正な運営を図ってまいりたいというふうに基本的に考えておるわけであります。
  215. 稲富稜人

    ○稲富委員 私、ただいまの大臣の言葉じりをとるわけではございませんが、食管制度の根幹を守るとおっしゃっています。食管制度の根幹を守るということは、食管法の精神の根幹を守る、つまり食管法を守るということでございますか。この食管制度の根幹を守るということと食管法を守っていくという意味はどうなんでございますか。この点が私はどうもはっきりわからないので、大臣から教えていただきたいと思うのでございます。
  216. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、食管法といい、食管制度といい、基本的には同じことである、私はこういうふうに考えておるわけでありまして、食管制度の根幹というのは、その一般的な定義としては、「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定」という目的に沿うために必要な政府の食糧管理のあり方というものとして考えておるわけでございます。
  217. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、食管制度の根幹を守るということは食管法を守ることだ、こういうふうに解釈して差し支えないのでございますね。
  218. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はもちろんそういうふうに考えております。
  219. 稲富稜人

    ○稲富委員 それではさらにお尋ねしたいと思いますが、食管法の根幹を守ると称しながら、果たして今日政府はその食管法というものの根幹を十分守っていらっしゃるかどうか。私は揚げ足をとるわけではございませんが、これは米価決定に対して非常に影響があるから申し上げたいと思うのでございます。  まず第一に申し上げたいことは、食管法の第三条に「米穀ノ生産者ハ命令ノ定ムル所二依リ其ノ生産シタル米穀ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府二売渡スベシ」とある。私は、この「米穀ノ生産者ハ其ノ生産シタル米穀ヲ政府に売渡スベシ」ということが食管法の精神の規定である、かように考える。それを政府は、命令の定めるところによるという問題だけを中心にして全量買い上げをやらない、なぜ全量買い上げをおやりにならないか、生産者は政府に全部売り渡すべしということをはっきり書いてある以上は政府は当然これを買わなければいけないということを義務づけられているということなのです。なぜ義務を果たさないか。こういうことを「命令ノ定ムル所二依リ」という言葉で逃げられるということは、私は、その食管法の根幹というものを政府みずから壊していらっしゃるのではないか、こういうことを考える。  さらに、「前項ノ場合二於ケル政府ノ買入ノ価格ハ」これも「政令ノ定ムル所二依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨」とすると書いてある。その政府が買い上げる価格というものは、政令はつくったもので別個なのですから、その根幹というものは政令じゃなくして「生産費及物価其ノ他経済事情」というものは、物価が高くなって生産費が高くなっているならば、買い上げるところの米穀も高く買い上げて、そうして再生産を確保することを旨とするということ、これが根幹を守ることである、かように私は考える。私の考えが違っておるのであるか。この点をひとつ教えていただきたいと思うのでございます。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、食管制度の根幹を維持していく、食管法を守るということにつきましての根幹というのは、国民の基本的な食糧である米の必要量を確保し——これは需給上必要量というふうに解釈するわけですが、米の必要量を確保し、国民経済の安定を図るため、政府が米の需給及び価格を調整し、米の配給について必要な規制を行うことであるというふうに考えておりますので、限度数量を設けるということは決して食管法違反ではないし、食管制度の根幹に触れるものでは絶対にない、こういうふうに考えておるわけであります。
  221. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、大臣のその解釈というものはどうも納得いきません。いわゆる食管法を守るということが——いま言ったように食管法にはっきり書いてあるのですよ。あなたは、食管法を基本的に守っていくとおっしゃるでしょう。いまの大臣の御答弁を聞いておりますと、まず食糧管理法で決めている以外のことを御説明なさっている。それでは食管法というものを政府が守っておると言えない。その点、大臣のいまの答弁は、食管法の根幹を守るという趣旨からいってどうも納得ができないのでございます。大臣の解釈というものは、どうも私は腑に落ちない。食管制度の根幹を守るということは食管法を守ることだとおっしゃったんだから、食管法にこう定めてあるのだから、この食管法を守ることが私は政府の当然やるべき義務である、かように考えます。これをやらないということは、政府みずからが食管法に違反した行為をやっておる、こう申し上げましても過言じゃないと私は思うから、この点をお尋ねをするわけでございます。
  222. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、食糧管理法の目的からして、私が申し上げましたことは当然である、こういうふうに考えるわけであります。食糧管理法の目的、第一条によりましても、「国民食糧ノ確保」これはやはり国民の基本的な食糧である米の必要量を確保する、そうして国民経済の安定を図るということがこの法律の目的であり趣旨である、こういうふうに私は解釈しております。
  223. 稲富稜人

    ○稲富委員 その国民の必要量を守るということは再生産を確保するということなんです。再生産を確保するためには、食管法に定めてありますように「生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀再生産ヲ確保スル」という、この生産費を十分価格に認めるということなんです。ここに私は問題があると思うのですよ。この点をわざわざ、生産者米価というものを安くするために政府は曲解していらっしゃる。食管法を守るんだと口には言いながらも、事実は、なるたけ価格を安くするような決め方をなすっている。それでわざわざいまおっしゃったような無理な解釈をこれに与えておる、こうしか思われないのです。ここに私は食糧管理法に基づいて米価決定するに当たっての大きな間違いがあるということを指摘しておるわけなんです。私はあなたの性格を好いておるのですけれども、この点わざわざ曲げてそういうような答弁をなさらなければいけない事態がどこにあるかということさえ疑わざるを得ないと私は思う。本当にあなたはそう思っていらっしゃるのですか。この点をいま一度念を押して聞きたいと思います。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、先ほど申し上げたように、本当にそういうふうに考えておりまして、米のいわゆる生産者価格の決定に当たりましても、再生産を確保することを旨として物価その他の経済事情を参酌してこれを決めるということになっておるわけでございますし、この食糧管理法の趣旨、精神に忠実に従って生産者米価というものは決定をされなければならないし、またこれは決定をされてきた、こういうふうに理解をしておるわけであります。
  225. 稲富稜人

    ○稲富委員 残念ながら大臣の理解と私の考え方には非常に違いがあります。これは私の勉強が足らないからか、私も勉強いたします。大臣もこの問題はひとつ十分検討していただきたい、こういうことを私は思います。  しかも、御承知のとおり食管法において、消費者米価というものは第四条によって別個にこれは決めることになっている。すなわち、消費者米価というものは「家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者ノ家計ヲ安定センムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」と書いてある。ところが政府は、生産者米価が上がれば消費者米価が上がるんだという、いかにもこういうような関連のあるような解釈をわざわざされているのです、最近は。これは変な言葉で言うと一つの政府の謀略だと私は思うのです。生産者と消費者とを対立させるためにわざわざそういうふうに解釈されている。生産者米価はいま言ったような生産費を補償するんだ、そうして米穀の次期生産を確保するんだ、こういうことによって国民に食糧を供給するという義務を十分果たさせる任務を農民に与えるんだというこの意味から生産者米価の価格というのは決定すべきなんです。消費者の価格というのは全然これとは別個に、消費者の家計を苦しめないようなそういう方法で決めろというので、分けて二重価格制度になっているのです。これをごっちゃにして考えられることにも間違いがあると私は思うのです。それで私は生産者価格と消費者の価格というものを同時にこれを諮問する——ことしはどうなさるか知らぬけれども、同時に諮問するなんということ自体が間違っているんだ、別個に決めるべきだ、私はこう考えております。いかがでございますか、大臣
  226. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに食管法によりまして、生産者米価につきましては再生産を確保することを旨として決めるわけでございますし、消費者米価につきましては消費者の家計安定を旨としてこれを決めるわけでございますが、ただ、これらの価格を決定するに当たりましては、ともにやはり物価、さらに経済事情を参酌をして決めるということに相なっておるわけでございます。したがって、その経済事情といったようなものあるいは物価といったものは、両米価にわたっては共通の事態であるわけでございますから、そういう経済事情等はやはり両米価を決定する上においては関連を持ってくることは当然なことではないだろうかというふうに私は考えておるわけでございます。したがって、両米価の間には経済事情等を通じまして関連が生じてくるのはこれはもう当然のことである。ただ、生産者米価と消費者米価が、生産者米価が決まった、それが直ちに消費者米価にストレートに反映するというふうな連動ではない。しかし関連があることは、経済事情といったものから関連が出てくるのは、これは両米価においては、同じ米の価格でございますから、当然であると私は思うわけであります。
  227. 稲富稜人

    ○稲富委員 経済事情を参酌してとすぐ大臣はおっしゃいます。経済事情を参酌してということは、生産費を決める場合は、経済事情というものを、農民が再生産を確保するようなこういう意味からの経済事情を参酌するということなんです。消費者価格を決める場合の経済事情というものは、家計を安定せしめるための経済事情を参酌するという、こういう解釈でなければいけないと私は思う。ところが、政府が経済事情を参酌するというのは、なるたけ生産費を安くするための経済事情を参酌する、消費者価格はなるたけ上げるための経済事情を参酌するという、都合のいい方面だけをその経済事情を参酌してとおっしゃることは、これは私たちどうも腑に落ちないのです。こ  の問題も、余りこれをやっておる時間がありませんので、私はこれはもういずれ次の機会にすることにいたします。  次に、私は大臣にお尋ねしたいことは、大臣はどうも食糧管理特別会計の赤字がだんだん増大するということを非常に気にされております。どうも食管特別会計の赤字が余り大きくなってくると農政にまで影響する、こういうように心配をいたされておるのでございます。それで、私、この際申し上げたいと思いますのは、それほど食管特別会計の赤字が大きくなるということを大臣が心配されていらっしゃるならば、今日特別会計内に包含されております人件費こういうものは当然一般会計の方に回すように改善されたらどうか、この点をひとつ承りたいと思うのでございます。
  228. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 食糧管理特別会計、主として国内米管理勘定につきましては、いわゆる損失、俗に赤字という損失につきましては、おおよそ七千五百億、そのうち約五千億は売買逆ざやで、二千三百億になりますか、それが管理費でございます。この管理費の中の一部が事務、人件費でございます。したがって、これについての経費を一般会計負担ということでいろいろお話しでございますが、調整資金と申します制度でその損益を全部見て、残った赤字については一般会計から繰り入れておるという関係でございまして、これを一般会計に計上いたしましても、食糧管理に伴う経費であるという点については変わらないわけでございまして、これは計上の方法をどうするかというような問題ではないかというふうに考えております。
  229. 稲富稜人

    ○稲富委員 もう時間がありませんからはしょって申し上げたいと思いますが、農林大臣は、食管特別会計の赤字の増大することがさつき言ったように農政に非常に影響するんだ、こういうことを非常に心配されております。私は、食管特別会計の赤字が生ずることは、ただいま申しましたように食糧管理法が二重価格制度をとっている以上はやむを得ないんだと思う。この問題を、食管特別会計の問題を農政のサイドで片づけようというところに私は無理があると思う。それで、私は、この食管特別会計の赤字というものは農政サイドで片づけるのでなくして、もっと高度の政治的解決をすることが最も必要ではないか、こういうことを考える。そうしても矛盾じゃないと私は思う。なぜかというと、食管特別会計の赤字ができたということは、国民の不調和の中から、調和がとれないから調和をとるために生産者米価と消費者米価というものを——消費者米価を安くして生産者米価を高くした。そうなると食管特別会計の赤字が出てくる。それだから、これを調和をとるという意味から、私はこれは広範な政治サイドにおいて何とか食管特別会計の赤字の解決をする、こういうようなことをとらなければ、これに対して余り大臣が責任を考えていらっしゃって、農政までやれないというようなことにお考えになるということは非常に無理であると私は思う。こういう点をひとつ考え直すわけにいかないのであるか、この点も承りたいと思うのであります。
  230. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、この逆ざやを縮少していく、そうして食管の赤字をやはり減少さしていくということは、現実に農政を推進をしていく上においては必要なことである。そうしてまた五十一年度予算において逆ざやを不拡大にしたことによるメリットが農政推進という形で大きくあらわれておる、具体的な事実としてあらわれておるというふうに考えておるわけでありまして、食管をそのまま農政の外に追い出してしまうというふうなことは、これは一つの理論としてはあり得るかもしれませんが、現実に私が農政に責任を持ち、そうして農林予算を編成するという責任者としてとらえるならば、現在食管特別会計として農林予算の中へ入っておるわけでありますから、そういう一つの限界の中にあって農政を推進していこうということになれば、どうしてもこれは逆ざやをできるだけ縮小して、それだけのメリットを農政費に還元をしていくということ以外にはないわけでございますから、そういう方向で私は努力をしているわけで、これは今後の農政を進める上において大きく前進させる要素になるというふうに考えておるわけであります。
  231. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいまの食管法の問題につきましては、いろいろまだ解釈が違いますけれども、もうそれをやっております時間がありませんから、最後に麦の問題でお尋ねいたします。  麦の問題でお尋ねしたいと思いますことは、本年度の麦価を決定するに当たりましても、当然、ただいま申しましたような基本的な考え方によって麦価決定はやるべきであるということを考えていただきたい、こういうことが一つでございます。さらにまた、政府は麦の生産奨励を非常におやりになっております。これは当然必要なことであると私思います。それで、これに対しましては、やはり裏作地帯に対してどういうような麦の生産をやるかということが必要でございますので、麦の裏作としての品種改良等をどうするかということも当然検討しなくちゃいけないと思うのでございますが、こういうことに対する政府の考え方も承りたいということが一つ。さらに、本年度の麦の問題でございますが、長雨等によりまして非常に品質が低下いたしております。これに対しましては、等外麦の買い上げというようなことも考えてやることがやはり麦の生産奨励をやることであり、麦の生産に対する意欲を持たせる必要な条件である、こういうことを考えております。さらに、非常に悪いところは五十二年度の麦の種子の確保等の問題も起こってまいりますので、こういうことに対してはやはり配慮をしてやる必要があると思います。はしょりましたが、あともう一問ありますので、簡単に御答弁願いたいと思います。
  232. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 麦作の振興ということば農政の至上課題の一つであるというふうに認識をいたしておるわけでございます。そのためには価格問題について検討し、改善すべき点は改善をしなきゃなりませんし、さらにまた、これの奨励措置等も充実していかなきゃならぬわけであります。同時に、裏作につきましては助成措置等もとって、ことしもその効果は出ておるわけでありますが、まだ十分ではないわけであります。この助成策を進めるとともに、米麦一環体系あるいはまた集団麦作体系というものを進めていく、あるいはまた品種改良ということも作期の調整という問題とも絡んで必要な課題でございまして、これらについては積極的に取り組んでまいる考えであります。
  233. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間が来ましたので、これは本年度の麦価に関係するわけではございませんが、米の生産に影響する問題について最後に一点だけ承りたいと思うのでございます。  御承知のとおり米穀の生産に対して必要なのは水でございます。ところが、水に対しましては、最近各河川等の井ぜきの改修、改築等が行われます。こうなりますと、農林省は水は農業を営むための利水だと考える、建設省は利水よりも治水だと考える、これによって設計上違うことが行われてくるわけでございます。この点について、治水を主体にすべきか利水を主とすべきかという問題が起こってまいります。農民としてはやはり利水を非常な必要条件として考えるわけなのでございます。     〔委員長退席、菅波委員長代理着席〕 治水にはそれほどの影響がないならば、利水は農民の持っておる水に対する一つの取得権でございますので、この取得権を保護してやるということが農耕の上においてはやはり必要なことであると思いますから、こういう問題に対処した場合、農林省としては利水優先で、もちろんこれは治水に大きな影響を及ぼすことがあってはいけないけれども、利水優先の形をもって農林省としては臨むべきものである。これは往々にして建設省と農林省との間に意見の相違を来すことがありますので、これに対して農林省考え方を承っておきたいと思うのでございます。
  234. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 水は農業にとりましては土地と並ぶ重要な生産の資源でありますので、農林省といたしましては国民食糧の確保と農業近代化を図っていくためにも積極的に農業用水の確保に努めることといたしております。このために、農業用水の相当部分を占める慣行水利権について保護するとともに、新規の水利権取得につきましても農業生産に必要な用水量の確保を旨といたしまして、農民の側に立って治水や他の利水とも調整を進めてまいりたいというのが農林省の基本的な考え方でございます。
  235. 平松甲子雄

    ○平松説明員 先ほど麦の品種改良についてお尋ねがございましたので、その点についてお答えを申し上げたいと思います。  先生お尋ねのとおり、麦の生産を増大させるということにつきましては、ことに裏作の麦の生産の増大ということが必要であろうということでございます。最近のように水稲の作付が早期化してまいっておる状態におきましては、麦のわせ化ということが必要でございます。そういうような観点から品種改良に努めておりまして、小麦につきましてはサキガケコムギとかゴガツコムギとかいう従来の農林六十一号に比べまして一週間ほど早い品種を創出いたしております。しかしながら、小麦の作期を早めますと、そのために収量が減る、あるいは干害に遭うというようなこともございますので、出穂期と開花期の間をできるだけ短縮するという形の、いままでに例のないような形の育種を必要とするということでございますので、そういうようなことを頭に置きながら今後とも鋭意努力をしてまいりたいと考えております。
  236. 稲富稜人

    ○稲富委員 終わります。     〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕
  237. 湊徹郎

    ○湊委員長 本日は、これにて散会いたします。  次回は、公報をもってお知らせいたします。     午後五時四十七分散会