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1976-03-03 第77回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年三月三日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 湊  徹郎君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 島田 安夫君 理事 菅波  茂君    理事 山崎平八郎君 理事 井上  泉君    理事 角屋堅次郎君 理事 中川利三郎君       足立 篤郎君    上田 茂行君       加藤 紘一君    吉川 久衛君       佐々木秀世君    染谷  誠君       中尾 栄一君    森下 元晴君       渡辺美智雄君    柴田 健治君       島田 琢郎君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    芳賀  貢君       馬場  昇君    美濃 政市君      米内山義一郎君    津川 武一君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         農林政務次官  浜田 幸一君         農林大臣官房長 森  整治君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      今村 宣夫君         農林水産技術会         議事務局長   平松甲子雄君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   松形 祐堯君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      安仁屋政彦君         行政管理庁行政         監察局監察官  近藤 輝彦君         外務省欧亜局外         務参事官    木内 昭胤君         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      齋藤 尚夫君         文部省体育局学         校給食課長   加戸 守行君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三号)  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 湊徹郎

    湊委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  畜産問題に関する調査のため、小委員十三名より成る畜産問題に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 湊徹郎

    湊委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員会及び小委員長選任につきましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 湊徹郎

    湊委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、追って公報をもってお知らせすることといたします。  次に、小委員及び小委員長の辞任の許可、補欠選任並びに小委員会におきまして参考人出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合は、参考人出席を求めることとし、その人選及び出席日時その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 湊徹郎

    湊委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 湊徹郎

    湊委員長 農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許可いたします。馬場昇君。
  7. 馬場昇

    馬場委員 昨日も問題になりましたが、大臣承知総理大臣官房広報室食糧に関する世論調査、これは国政モニターに対するアンケート調査で、五十年十月に行われ五十一年二月に報告されたものでございます。これによりますと、食糧に不安があるかという問いに対しまして、八二%の人々が強い不安、または漠然とした不安を感じておると答えておるわけでございます。私はこれは日本国民世論を代表しておる事実ではないかと思うのですが、この事実について、食糧政策責任者である農林大臣はどう思われますか、まずお尋ねしておきます。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このたび公表されました食糧問題に関するアンケート調査報告書は、総理府が去る五十年の十月に国政モニターを対象に実施をしたものでありますが、調査の結果を見ますと、食糧問題に関する関心はきわめて高く、低い自給率、今後の人口増加等から食糧に不安を持つ者が八割に達しておる。いま御指摘のとおりでございます。このため、食糧安定供給政策を推進すべきであり、負担増もやむを得ないとする者が八割を超えております。また、具体的な食糧政策として、土地水資源確保整備高度利用農業生産の中核となる担い手の育成確保など、国内自給力向上のための体制整備を図るべきとの声が高いわけであります。このほか、米食の見直し及び学校給食に米飯を導入せよとの声も高いわけであります。  この調査から見ましても、国民食糧問題につきまして強い関心を持っており、農林省といたしましては国民食糧安定確保をするために、農政国政基本的課題であるとの認識に立って、国民の期待にこたえるべく国内生産体制を整備し、わが国農業自給力向上を図ることを基本とするとともに、国土資源制約から海外に依存せざるを得ないものにつきましては、輸入の安定を図ることとし、水産物を含めた各般にわたる総合的な食糧政策を今後積極的に推進をする考えでございます。
  9. 馬場昇

    馬場委員 その不安の第一の原因として、日本人口増加食糧の関係について不安がある、世界人口増加食糧事情について不安がある、これを第一の不安の原因に挙げておるようでございます。  そこで、昭和六十年度の日本人口をどのように推定して、それに対してどのような食糧対策を立てておられるのか。六十年度に世界人口をどのように推定して世界食糧事情というものを考えられるか。日本並び世界人口の六十年推定と、それに対する食糧政策、特に日本において六十年度に国民食糧の不安はありませんと農林大臣言えますか、どうですか。
  10. 森整治

    ○森(整)政府委員 農林省といたしましては、一応六十年の長期見通しを立てるに当たりまして、需要につきましては従来のわが国人口増加年平均一・一%の増加率でございます、それが今後も同様な率で続くという推定のもとに、現在のといいますか四十七年に対して六十年には約一四%増の一億二千二百万人程度に達するものと推定をいたして見通しを立てておるわけでございます。  これを分けますと、人口伸び、全体の農産物需要伸びは今後次第に鈍化する。そこで四十七年に対して六十年には二三%増加するだろう。そのうち人口増、たとえばいま申しました一・一%伸びる、それに伴う需要としまして一四%、そして一人当たりの消費水準も若干上がる、それが九%、大体その程度増加が見込まれるという推定を立てたわけでございます。  これに対しまして供給の方はどうかということになりますと、可能な限り自給力を上げるということで、上げ足りないといういろいろ御説はございますが、いろいろ考えた結果、生産を全体として二七%程度増加させる。要するに二三%需要増に対し二七%増加させるという見込みを立てておるわけでございます。世界の全体の需要につきましては、世紀末で約六十五億になるというのが大体の見通しのようでございます。
  11. 馬場昇

    馬場委員 具体的な質問は後でしますから、質問をした点にだけ答えてください。  大臣にもう一つ、いまの点で。昭和六十年度の日本食糧事情は、日本国民よ心配ありません、こう言えますか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、いま官房長から説明をいたしましたように、日本人口増加がございますし、それから需要増大ということもございまして、日本だけで、総合食糧自給率を現在、七二、三%から七五%まで持っていこうという計画でございます。しかし、また、世界全体の食糧需給状態を見てみますと、世界全体の人口増加あるいは生活水準向上も考えますと、やはり現在の食糧逼迫基調というものは今後とも続いていくのではないかというふうに私は判断せざるを得ないわけでございます。したがって、そうした世界逼迫基調食糧事情背景にいたしまして、日本自給率を可能な限り高めていくということを政策基本にいたしておるわけでございます。同時にまた、そうした世界需給逼迫基調というものを背景にいたしまして、わが国において生産されないところの農産物については安定輸入という方向を今後とも定着させていきたいというのがわれわれの考え方でございますが、世界全体がそういうふうな逼迫事情というものにあるわけでございますから、われわれとしてはあらゆる政策を集中いたしまして食糧確保を図っていかなければならぬ、これが国政基本的な課題ではございますけれども、やはり、私としてそうした将来を見るときに、食糧事情というものは必ずしも安易な楽観は許されない、私はそういうふうに考えておるわけであります。
  13. 馬場昇

    馬場委員 私も、世界食糧事情というのは、やはり逼迫事情は続くと思いますし、日本だってそう安心はできない、こう思うわけでございます。特に世界事情を見てみますと、世界保健機構、WHOが、一九七一年ですけれども、世界で五歳以下の子供一億人が栄養失調状態だ、そのうちの一千万人が重症だ、こう発表しております。そしてまた、発展途上国国民は大体五〇%くらいが栄養失調だというふうな発表も行われているわけでございまして、この事情というのは余りよくなっていない。特にインド等発展途上国における飢餓のために食糧の救援を必要とする人口等もこれまた現在非常に多いわけでございます。東南アジアだとかアフリカだとかラテンアメリカ、こういうところにそういう事情が多いわけですけれども、飢餓に見舞われておりますこういう地帯というのは基本的に食糧増産にむしろ適しておる地帯ではなかろうかと私は思うのです。ところが、なぜこんなに飢餓状態になっているかというと、私は、やはり十九世紀以来の植民地政策と、その中で食糧対策が行われずに、支配者がゴムだとかあるいはすずだとか砂糖だとか、こういう輸出農産物を勝手につくってそういうところの食糧状況を悪くした、こういう政策の失敗があったのじゃないかと思うのです。こういうことを思うにつけまして、私は、やはりこの際、日本食糧政策というのは本当に国の基幹産業、全国民の問題として、農林大臣もそう考えているときのうおっしゃいましたけれども、ぜひ考えてもらわなければならない、こういうぐあいに思うわけでございます。力を入れてやっていただきたいと思うのです。  第二に、このアンケート調査によりますと、わが国食糧日給率の低さが実は指摘されております。私はここで、食糧自給率の中心に座らなければならない穀物自給率について少し具体的に質問いたしたいと思うのです。  昭和三十五年の穀物自給率は八三%でございました。それが四十八年には四一%に落ちております。この落ちた原因は何でございますか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 穀物自給率が低下しておることは事実でございますが、この原因につきましては、わが国高度経済成長背景とした食生活の拡大と質的な変化によりまして、畜産物等需要が非常に高いテンポで増加した一方、わが国土地資源等制約もありまして、畜産物生産に必要な飼料穀物輸入が著増したことが主因であるというふうに考えておるわけでございます。私は、粗飼料はともかくとしても、中小家畜向け飼料穀物等につきましては、今後とも輸入に依存せざるを得ないというふうに判断をいたしておるわけでございます。
  15. 馬場昇

    馬場委員 いまの答弁を聞いておりますと、穀物自給率が八三から四一に落ちた、これの原因については、畜産物食事情変化だ、そのくらいに簡単に考えておられますけれども、実は日本穀物自給率を見てみますと、明治時代というのは、これはもう話は古いのですが、一〇〇%くらいあったのじゃないか、第二次大戦の敗戦後でも八〇%を割らなかったと私は記憶しております。いま日本だけが落ちているわけございまして、昭和四十年以来、諸外国自国農業保護政策をとりまして自給率を上げている事実は、大臣も御承知だろうと思うのです。イギリスは六五%になっていますし、西ドイツだって七六%になっている。私は、こういういまの日本状況異常事態だろうと思うのです。極端な話ですけれども、穀物輸入がもしとまったとしますならば、数字的に言いますと六千万人は餓死しなければならぬというような数字になっているわけでございますし、現在二千五百二十カロリーぐらいとっております日本国民が、平等に食ったといたしますと千五百カロリー分しかない。そういたしますと、これは重病人摂取のカロリーでございます。まさに今日の国家の自立という上からも、国民経済の上からも、こんなに穀物自給率が減ったということは大問題で、異常事態だと認識しなければならないと思うわけでございます。  そこで、穀物自給率の減りました一つ原因としては、日本食糧政策というものがアメリカ食糧かさの中に組み込まれたからではないか、私はこう分析せざるを得ない面もございます。戦後MSA小麦によりまして日本国民飢餓を脱したという事実は私も知っております。しかし、そのMSA小麦によって飢餓を脱したということと、その後の日本アメリカ余剰農産物最大さばき口役割りを果たしてきた、一貫して対米従属の形となったということとは違うわけでございます。小麦輸入を見てみましても、昭和二十三年には百四万トン、二十四年には二百万トン、昭和三十年代にはずっと二百万トンが続いておるわけでございまして、日本の米が過剰時代と言われました四十年以降さらに増加して、四十七年は五百万トンを超しておるわけでございます。米の自給率が一〇〇%あるというのに、小麦は五%、こういう極端な現象は、食糧供給の国家的な自立というのはなかったのじゃないか、私はこう考えざるを得ないわけございまして、アメリカ穀物かさ余剰農産物のはけ口として日本が対米従属を強いられた、この結果穀物自給率が落ちたのではないかと私は思うのですが、これに対してどうですか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにアメリカからの穀物輸入増大をいたしておりますし、わが国における穀物輸入最大輸出国アメリカであることは事実でございますが、ただこれをもってアメリカの核のかさであるとかあるいはアメリカに従属しておるというふうな御判断にはまだ納得できかねるわけでございますが、私は穀物自給率を高めていかなければならないということについては全く同感でございます。しかし、畜産物消費がこの十年来いま二倍、三倍になったというふうなことで、畜産物、特に中小家畜飼料は御案内のようにトウモロコシコウリャンでございまして、これは国内においては生産しようにもできない農産物でございます。したがって、この飼料穀物はどうしても外国に依存せざるを得ない。そうするとやはり畜産伸びとともにその量がふえざるを得ないわけでございます。異常な勢いでこの十年畜産物需要伸び、そして生産伸びたということを背景といたしまして、飼料穀物が現在ではもう一千万トン以上外国から輸入をされておるわけでございます。この事実からして、やはり今後の日本国内生産情勢を見ますと、やはり依然としてこれは畜産消費伸びるにつれてどうしても伸びていかざるを得ないわけであります。昭和六十年に穀物自給率が四二%が三七%に低落をするということは非常に残念でございますけれども、そうした外国に依存せざるを得ないところの畜産物が千万トンから一千五百万トンまで伸びざるを得ないというところに基本的な原因があるわけでございます。  そうした輸入につきまして、われわれとしては、アメリカにひとり頼るわけではなくて、その他の諸外国から安定して輸入をするという方向が見出されるならばその方向に進んでいかなければならぬわけでございますが、現在の段階においては安定輸出のできる国はアメリカ、カナダ、オーストラリアといった非常に限られた国でございます。したがって、そういうことを考えると、やはりアメリカとの間の安定輸入の道を確立をせざるを得ないということが、今日の最も現実的なわが国国民食糧確保するという意味からは、現実的の方策とならざるを得ないわけでございます。したがって、そういう意味において、ただアメリカから大量に輸入するというだけでもってアメリカ食糧かさに入るというふうなことではないというふうに私は考えるわけであります。
  17. 馬場昇

    馬場委員 いま大臣答弁を聞いておりますと、自給率向上させようとか国民の不安に真剣になってこたえようとかいうような感じは全然いたしませんで、異常事態との認識も欠けておりまして、いままでの惰性によって食糧政策をやりたいというようなぐあいにしか聞こえないのでございます。金さえ出せば石油も米も食糧外国から買えるのだ、こういうような国際分業政策というものをきちんと踏襲していって、ここで国内自給体制をきちんと抜本的に立てるのだという意欲が私には全然感じられません。高度経済成長政策農業農民から全く土地を奪い、労働力を奪い、水を奪って本当に農村、農民を疲弊させておるというこういう面についての反省も、大臣答弁からは全然聞き取れないわけでございますが私は非常に残念に思うのです。  次に、ちょっと時間が三十分くらい早く大臣出られますので非常にはしょって申し上げているので議論ができないのは残念ですけれども、食糧自給率視点というものをどこに置くかということを、さっきのような答弁を聞いておりますと、やっぱり原点に返って論議しておかなければいけないと私は思います。  そこで、多くの点について私は大臣議論したかったのですが、私は、たとえばその原点としては日本人の食糧日本国土日本農民の手でつくるという農民が誇りと責任を持つような視点というのをまず置かなければいけない、こういうぐあいに思います。そういう立場から言いまして、いまの答弁を聞いておりましても、日本国土では自給できないのだという考え方政府にあるようでございます。この政府の態度というのは根本的に改めなければならないと思います。もちろん資本主義とかあるいは人間の欲望というものを前提にした思想でいけば国内自給はできないかもしれませんけれども、その農政を百八十度転換して日本農業が持っておる可能性というものを十分引き出していけば、私は食糧自給率の飛躍的な増加というのは可能であるというぐあいに考えます。  さらに、食糧自給率向上というのは、これは大臣施政方針の中で言っておられますけれども、わが国最大安全保障の問題でございます。輸入がゼロになるという日をもし想定いたしたとしますならば、先ほども言いましたように六千万人というものは餓死しなければならないという状態でございます。また、現在日本穀物を二千五百万トンくらい輸入しておりまして、世界農産物輸入量の一二・五%。世界の国々からも日本は余り買い過ぎるじゃないかという非難を受けておるのも事実でございます。  先ほども申し上げましたように、金さえ出せば、安いものを買えばそれでいいのだというような国際分業政策というのは基本的に改めなければならぬと思いますし、そして先ほどから言っておりますような土地労働力と水を奪うような高度経済成長政策という工業優先政策も改むべきだ。さらに農民の所得、賃金、これが他産業労働者の六〇%程度に落ち込んでおる、そして農民農業から失業させてきた、こういう農業基本法農政というものも改めなければならないと思いますし、基本的に考えますと、やっぱり土というものと農業というものは人間人間性を失わないためには非常に必要なんだ。本当に食糧自給率向上させるというのは人間性復活だ。こんな世の中になって人間性が失われておる、人間性復活だ、私はこういうぐあいに思います。食糧自給率のそのような点を視点に置いて考えなければならないと思うのですが、大臣、どうです。簡単に答えてください。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私の視点といいますかこの食糧問題に対する基本的な考え方は、いま馬場さんがおっしゃいました考え方と根本的には違ってないと私は思います。私は、今日において、また将来を見るときに、どうしてもやはり国内における自給力を可能な限り高めていくことが当然のことであると思います。これがまた食糧安全保障の問題であるという私の考え方からくる結論でございまして、そういう意味からいきまして総合食糧政策というのもこれは可能な限りの自給力向上するための対策を今後ともとっていくということが結論でございます。  ただ、外国から輸入してばかりおるのはおかしいじゃないかという御議論がございますけれども、しかし、現在のわが国国民の多様な食生活に対する要望にこたえるためには、どうしてもやはり畜産物等消費伸びていくわけですからそれにこたえていかなければならぬ。そうなってくると、畜産物飼料は、国内において幾ら生産しようとしても、たとえば具体的に申しますと、トウモロコシコウリャンといったような農産物国内においてはもう生産できないという、これは客観的な現実の姿でございますので、これらの農産物については残念ながら外国から輸入をせざるを得ない。輸入をせざるを得ないということになれば、これはやはり安定輸入方向でこれを確保していくということももう現実面からやむを得ざる措置であるというふうに言わざるを得ないわけでございます。
  19. 馬場昇

    馬場委員 時間があれば議論をしたいのですけれども、次に具体的に質問をしたいのです。  政府の「農産物需要生産長期見通し」によりますと、穀物自給率昭和四十八年四一%、六十年に三七%に低下させる計画になっております。これは自給率向上でなくして低下じゃございませんか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに穀物につきましては、先ほどから申し上げましたような人口増加畜産物需要増大というものに対応していくためには、外国からの飼料穀物輸入がふえざるを得ないということから、国内においてももちろん穀物等の、たとえば麦等についても増産に努力をいたしますし、あるいはこの飼料穀物に代替できるところの飼料作物等につきましても積極的な増産を図っていくわけでございますが、全体的にそうした国民需要にこたえていくためにはやはり飼料穀物輸入増大を図らなければならない。そう考えますと、昭和六十年の見通しとしては、残念ながら飼料穀物自給率というものは伸びていくのではなくて、これが逆に減っていくということをわれわれは厳粛に認めざるを得ないということは、「長期見通し」の中においてわれわれが明らかにしておるところでございます。
  21. 馬場昇

    馬場委員 いかに畜産畜産と言われましても、さっき言った総理大臣官房調査によりましても、やはり畜産物摂取というのはふえるかどうか、このままでいくんだというような国民の気持ちも出ているのです。そしてまた後で麦の話もいたしますけれども、結局いかなる弁解をされても、四一%が三七%というのは食糧自給率が下がっている。これは自給率向上政策じゃないということははっきりしておるわけです。自民党の政策ではあるいは上がらないのかもしれませんけれども、われわれの、たとえば社会党の案でありますと上がりますよ。こういうことで、とにかく日本農業の持っている底力といいますか生産力といいますか、実力というものを、金を出して引き出せば自給率は上がるのです。そういう点について、たとえば社会党は農民の苦労に報いる価格対策をまず十分にとる。そして農業基幹産業に位置づけをする。そして土地対策、水対策をやる。十分な国家の行財政をバックアップすれば、六十年度に、あなた方は三七%と言われますけれども、私たちは六〇%の自給率は達成できるという資料を持っておるわけでございます。  時間がありませんから、具体的に耕地の問題について質問いたしますけれども、政府は、長期見通し計画で六十年は現在より十六万ヘクタールはふやすと言っておりまして、五百八十五万ヘクタールの耕地面積だと言っております。しかしこれは中身を見ますと、七十万ヘクタールは壊廃する、そして一方、八十六万ヘクタールを造成するんだ、こうおっしゃっておるのです。壊廃するのは優良農地ですよ。造成というのは低度な農地です。これは農用地の拡大になっていない。実質、農業基盤の縮小だと私は思うのです。こういうぐあいにして農用地を実質縮小させておいて食糧自給率増加もないでしょう。これについてはいかがですか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 われわれの調査によりますと、いま日本全体で、これから農用地として造成できる面積は百五十万ヘクタールぐらいあるだろうというふうに判断をいたしておりますが、その中で、十カ年の計画で八十六万ヘクタールを何としても造成をしていかなければならぬ。これは、食糧自給力向上するためにも絶対に必要であるという見地から、土地改良十カ年計画等も策定いたしまして、その線に従って農地の造成に努力いたしておるわけでございますが、反面、いまおっしゃいましたように、農地の壊廃というのが起こってくるわけでございます。これは、高度成長の時代は非常な勢いで農地の造成よりはむしろ壊廃の方が進んでおったわけでございますが、その高度成長から安定成長に移っていくということで、いろいろ経済構造の変化等もあるわけでございます。しかし、いままでの趨勢から見ますと、七十万ヘクタールぐらいは壊廃をするのではないかというふうにわれわれは予想をいたしておるわけでございます。しかし、その壊廃に当たりましては、これはもういまの優良農用地が壊廃するのではないかというふうな御指摘でございますが、われわれはもう優良農用地はどんなことがあっても確保しなければならない、これを壊廃させてはならないということで、昨年の国会においても御審議、成立させていただきました農振法改正法の厳格な適用とか、あるいはまた農地法の厳正な運用によりまして、壊廃するとしても優良農用地は、これはもう絶対に避けるという方向で、厳としてわれわれは進んでいくということでございます。  七十万ヘクタールというのは、いままでの趨勢から見てそういうふうな壊廃が起こる可能性はあるということでございますが、われわれは、この壊廃につまきしてはできるだけ壊廃を最小限に食いとめていくということにつきましては、われわれとしても強い姿勢で臨んでいるということでございます。
  23. 馬場昇

    馬場委員 ぼくらの計画では、国土の二五%、九百万ヘクタールぐらいは農用地として使えるとわれわれは思っているわけです。そういたしますと、現在より三百万ヘクタールぐらい多く実は食糧生産の場として使える。そこで、草地が二百万ヘクタール、畑地が百万ヘクタールぐらいの造成はできるとわれわれは見ているわけでございます。政府は百五十万ヘクタールというから半分でございますね。  具体的に五十一年度に何ヘクタール造成するのかということも実は聞きたいわけでございますが、あと時間もございませんので、今日、造成中のものを含めてゴルフ場の面積がどのくらい全国にあるかということをお示し願いたい。それから、特に企業、法人等が取得して現在遊んでおる土地、遊休地の面積はどのぐらいあるのか。特に十大商社というものが買い占めて遊んでおる土地がどのくらいあるか、いま問題になっております丸紅はどのくらいそういうところを持っておるか、こういうのをぜひ、いま資料がなければ後で出していただきたいと思います。
  24. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず御質問の第一番目のゴルフ場の面積でございますが、これは四十九年の二月末現在の面積でございます。その当時オープンしておりますゴルフ場は七百六十二カ所というふうに押さえておりますが、その面積は約六万ヘクタールでございます。それから当時造成中のゴルフ場が五百十八カ所、この面積が、これも約六万ヘクタール、それから、当時計画中のゴルフ場の数が八百九十九カ所でございまして、この面積が約十一万四千ヘクタールでございまして、合計しますと、個所としまして二千百七十九カ所、面積にしまして二十三万五千ヘクタールというふうに考えております。  それから、企業等に買い占められて遊休中の土地等の面積はどうかということでございますが、私ども四十七年以来いろいろ情報として末端から収集はいたしておりますが、なかなか集計に頼るように数字になっておりませんので、現在集計としては持っておりません。したがって、その中で大企業がどうかとか、丸紅がどうかというものにつきましても、正確な数字は現在まだ集計はいたしておりません。
  25. 馬場昇

    馬場委員 大企業、法人等が取得したのは、この日本列島改造計画という中で数十万ヘクタールあると言われまして、現在、実は三十万ヘクタールくらいの遊休地があると言われております。きのうは国土庁でしたか、二十三万ヘクタールぐらい遊んでいるというようなことを言われましたが、これは具体的な資料を国土庁なんかとよく検討されまして出してください。それから丸紅のやつを特に、こういう問題を起こしておりますから、私は知りたいわけであります。だから、これもひとつ調べて出していただきたいと思います。委員長、この資料要求をお願いしておきます。
  26. 岡安誠

    ○岡安政府委員 実は、昨日も丸紅の買い占めた土地の集計を出せという資料要求がございましたけれども、私どもは、先ほど申しましたように情報としてはいろいろ集めております。多少具体的な問題としても把握しておりますけれども、丸紅全体でどれだけ買い占めているかというような集計した数字を持っておりませんので、そういう数字の御提出はちょっと不可能だと思っておりますので、できれば御了承願いたいと思っておりますが……。
  27. 馬場昇

    馬場委員 だから、いろいろ資料を持っているというのは、それが完全に正しくなくても、あなた方の調査できる能力の範囲内において調査したやつでもけっこうですから、出してください。
  28. 岡安誠

    ○岡安政府委員 努力してみたいと思います。
  29. 馬場昇

    馬場委員 農用地の問題を質問いたしましたが、この前のこの委員会で、熊本県上益城郡益城町の高遊原ゴルフ場のことについて質問いたしました。農民からゴルフ場に使うんだと言って百二十ヘクタールぐらいの農用地を買収しておって、農地転用が四十ヘクタールしかできなかったわけでございます。この契約書によりますと、転用できなくてゴルフ場に使わなければ、それは農民に返すとなっているのですけれども、それを返さなくて、そのゴルフ会社が農業法人をつくって、芝生だとかあるいは緑化木なんか植えておる。こういう質問をいたしまして、農林省としては、やはりそれは農民に返すべきだという指導をするという答弁をなさっておるのですが、その後それはどうなりましたか。
  30. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御指摘の熊本県上益城郡益城町のゴルフ場用地関連の点でございますが、昨年七月に御質問ございましてお答えをいたしたわけでございます。確かに、この土地のうち、ゴルフ場関係といたしまして農用地の転用は四十・六ヘクタールだけを許可いたしまして、その残りは許可がなされていないわけでございます。それらの土地につきましては、前回構造改善局長からお答えいたしましたとおり、四十・六ヘクタールを除く残余の農地約七十ヘクタールにつきましては、当事者において売買契約の解約を行いまして、農地所有者の方は受け取った対価を返済をする、それから金を払いました熊本企業開発は仮登記を抹消するというような指導をいたしておるわけでございます。ただ、しかし、これはまだ完全には完了はいたしておりませんが、この七十ヘクタールのうち約半分、三十五ヘクタール余りにつきましては、有限会社である高遊原農園、これが農民の方から買収といいますか売り渡しを受けまして、農地としての売り渡しを受けまして、花木等の植栽をいたしておるわけでございまして、これらにつきましては、三十五ヘクタールにつきましてはすでに熊本県知事から許可が出ております。したがって、残りはやはり約三十五ヘクタール前後ということになるわけでございますが、これにつきましてはなるべく早く先ほどお答え申し上げましたような方針に基づきまして、処理されるように、今後とも強力な指導をしてまいりたい、かように思っております。
  31. 馬場昇

    馬場委員 いま農地の面積について言ったんですけれども、私がやはり感ずるところでは、資本というか企業というか、そういうものに必要な土地は優先させておって、残った土地農業をやれというような、こういう考え方が残っているというような感じがしてしようがありません。  次に、耕地の利用率の拡大について質問をしたいのですが、四十九年度の耕地の利用率は一〇二・三%程度でございます。関西以西の裏作の可能な水田でも約二百万ヘクタールぐらいあるのですが、その半分の七十三万ヘクタールぐらいなんかは使わないような計画になっておるわけでございます。なぜ、この裏作の二百万ヘクタールぐらいを、使えるのにこれを完全利用しないのかという疑問を持ちます。昭和二十五年なんかは麦だけで裏作を八十万ヘクタールぐらい利用しておったわけでございます。この裏作の利用、いわゆる土地の利用率の拡大というのが図られておりません。それから、計画によりますと、単位面積当たりの収穫量の増大を余り見ていない、こういう問題でございます。こういう点で、やはり農業基盤整備といいますか、そういうものに対する考え方というものも非常に問題であると私は思いますが、これは時間がございませんので、私の意見だけを申し上げまして、利用率を拡大すべきだ、面積当たりの収穫量をもう少し計画で上げるべきだ、実際それは農業基盤整備の投資を、これをやはり国土資源を豊かにするのは公共投資だというぐあいに考えて投資をやっていけば、それは可能なんだということを申し上げておきたいと思います。  時間がございませんので、次に米行政について申し上げたいと思います。  先ほど調査によりますと、八二%の国民食糧に不安を感じておるわけでございますが、そういうときに米の生産調整を押しつけ、余り米というような言葉まではやらせて、青田刈りまで強行させるというような、全く農民が豊作を喜べないような米政策をやってきておるわけでございます。こんな農政があってはいけない、こういうぐあいに私は思います。そこで、米を憎むような姿勢をとっておりますけれども、それがいわゆる過剰だということでございますけれども、その過剰の原因というのは、私は本当は過剰じゃないのじゃないかと思います。たとえば五百万トンぐらい外麦を輸入しておるわけでございますが、この外麦輸入を減らして、米の需要を拡大していったならば、生産調整とか余り米とか青田刈りなんかやらなくてもいいのじゃないか。いわゆるアメリカから押しつけられて小麦を買っておって、それが米の領分に入り込んできて、米が余っている米が余っていると、こういう状態が今日の状態ではないかと私は思います。そういう状態の中で、さらに五十一年度は米の予約限度量を十五万トンぐらい減らしておる、これはもう実にけしからぬ、こういうぐあいに私は思うわけでございます。このことをさらに勘ぐりますと、買い入れ制限を強化して、食管法の直接統制制度を事実上間接統制にして、買い入れ制限以上の米に対しては二段米価をつくって、二重米価制度をつくる、このことはもう食管制度のなし崩しじゃないか、こういうぐあいに私は思うわけでございます。この米行政について大臣の見解を承りたい。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、米につきましては、やはり依然として過剰な基調が続いておるというふうに判断をいたしておるわけでございまして、この原因としては、先ほどから申し上げましたように、畜産物だとかあるいは野菜、果物等の消費が年々増加をいたしまして、食生活が近年非常に多様化が進んできた。それに伴って食生活に占める穀類のウエートが低下をしたために、国民一人当たりの米の消費量は昭和三十七年をピークに減少を続け、総需要量もピーク時の千三百四十万トンから最近では千二百万トン程度と減少をしておる一方、生産面で米の生産力が品種改良、肥培管理技術の向上土地改良の進展等によりまして年々増大してきたことによるものだというふうに考えております。外麦の輸入は、いまお話ございましたように五百数十万トンあるわけでございますが、これはやはり国民需要に見合ってもらっておるものでございまして、穀類の消費が減少している中で食糧用の麦の消費も横ばいないしは減少傾向を示しておるわけでございまして、飼料用の麦は確かに増大をしておりますが、食糧用の麦は横ばい、そういうことでございますから、外麦の輸入が直接的な米の過剰の最大原因であるというふうには考えないわけでございます。しかし、麦につきましては、米との間のいわゆる対米比価の問題等もあるわけでございますし、あるいは麦の食管赤字逆ざやの問題もあるわけでございますから、そういう面については改善をしていかなければならぬ面はあると思います。そうしてそれがまた米の消費増大をさせる一つの要因になり得るというふうにも判断をいたしておるわけでございます。  そういうふうに米が過剰基調にあるわけでございますし、特に昨年は豊作という状況で、われわれとしての在庫が、在庫積み増しでことしの十一月に大体百五十万トンぐらいにする予定であったわけでございますが、これが昨年の豊作によりまして在庫量が二百万トン近くいく。大体三年ぐらいかけてそれをやろうということでしたが、三年足らずして一年で在庫を二百万トン近くまで積み増しができるという方向になったものでございますから、そういうことを背景にいたしまして、来年度の限度数量というものにつきましても修正を加えざるを得なかったわけでございます。
  33. 馬場昇

    馬場委員 次に、この前もこの委員会質問したのですけれども、例の悪代官がやったような農政、青田刈りの問題についてでございます。これについては、全国八十五カ所ぐらいの干拓地で現在開田抑制策をとられているわけでございますが、青田刈りがそこで全部行われたということではございませんけれども、残念ながら、私の県の横島干拓というところで収穫の十日ぐらい前に青田刈りがやられました。そのとき、私はこの委員会質問をいたしまして、自家飯米だけは認めたらどうかというような質問をいたしたのですが、大臣はそれは検討してみますとこの前お答えになりました。それは現在どう検討されて結論がどうなっていますか。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米の過剰基調が続いておるという状況でございますし、備蓄もふえておるということでございますから、基本的に開田抑制という方向はこれは続けていかなければならないというふうに考えておりますし、ああした青田刈りというようなことは決していいことじゃないわけでございまして、今後は青田刈りというふうな事態を招かないように事前に十分現地とも連絡をとりながらわれわれとしても適切な対策を講じていきたい、こういうふうに考えております。  いままたお話のございました横島干拓、これは干拓地としては他の干拓地に比較をするといろいろと問題のある干拓地であると私は思っておりますが、この横島干拓につきまして、せめて農家の主食だけでも、飯米だけでも生産さしたらどうかという強い御要望が現地からも出ておりますし、この委員会でも御指摘があったとおりであります。われわれもこの点については真剣に検討をいたしまして、そして現地の実態、農民の非常な強い御要請等も客観的に判断をして、これはやはり飯米程度は相談をしながら認めるというふうな方向で処理すべきじゃないかということで、いまその具体的なやり方については検討いたしておりますが、方向としては、弾力性を持って飯米程度は何とかつくれるような方向で今後検討を進める、こういうことでございます。
  35. 馬場昇

    馬場委員 これはいま大臣は検討中だ、前向きだということはいいことですけれども、松野政調会長が熊本に来て、自家消費の飯米は認めるという方針で近く決めるという発言を二月八日になさいまして、それから二月二十日ごろには県に通知が来ているというぐあいに報道されております。これはほかに水田を持たない農家に限って、一戸当たり二十アールを標準にして認めるということが決まったというぐあいに私は報道を聞いておるのですが、いま大臣の話ではまだ検討中のようですけれども、事務当局ではそういうことを決めて、具体的に県に出したんじゃないですか。
  36. 岡安誠

    ○岡安政府委員 自家飯米の問題につきましては、実は同情すべき点もありますが、いろいろ問題があるわけでございまして、たとえば飯米の場合にどの程度の面積を認めるかとか、認めた場合に隣接の畑地等に影響はないのかどうかとか、それから用水の手当て等は十分であるかどうかとかいうような点がございます。現に二十アールというような私ども腹づもりもございますけれども、現地からはまた別の、たとえば一人当たり何キログラムというようなことではどうかというようなことがございまして、現在県と調整中でございます。いろいろ話し合いがまとまりますれば、これは特別に農林大臣が承認をするというかっこうで決定をいたしたいと思って現在検討中ということでございます。
  37. 馬場昇

    馬場委員 これは最後にいつ決まるのかということも答えてください。  大臣の時間がないようでございますが、漁業問題について基本的なことを聞きたかったのですけれども、まず一つだけ聞いておきます。領海十二海里の宣言というのはいつなさいますか。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はかねがね国会において発言をいたしておりますように、わが国の漁業、特に沿岸漁業を守るという立場から、いけば、領海十二海里は一日も早く実現をすべきであるというふうに考えておるわけでございますが、領海十二海里の問題は、ひとり漁業問題だけにとどまらず、国際海峡自由化の問題、その他各省にまたがるいろいろと調整を要する課題でございまして、この点につきましては、政府部内において意見を調整しました結果、領海十二海里は実施をする。そしてこれは宣言ということではなくて、法律という形でこれを実施していく。ただ現在、海洋法会議がこの三月からニューヨークにおいて開かれるわけでございますし、この海洋法会議の中で領海十二海里も論ぜられるわけでございますので、やはり国際的な合意を取りつけることがこれからの漁業政策を推進する上においても必要でございますので、このニューヨーク会議の経過を待ち、さらに、ニューヨーク会議結論が出ない場合は、また新しく引き続いて何らかの会議を持たれるという情報も受け取っておりますので、この二、三カ月間の国際的な協議の推移を見ながら、その結果を待って、十二海里については、結論は出ておるわけでありますから実施をするという基本的な考え方でございます。
  39. 馬場昇

    馬場委員 大臣の時間が来たようですけれども、さらに大臣に、ニューヨークの海洋法会議が、たとえばそこで結論が出なかったという場合に、また次にあるとおっしゃいますけれども、次にそう急にはないのじゃないかと思うのですけれども、これは法律でやるということでありましたけれども、たとえばニューヨークで結論が出なかった場合、それではこの国会に対して法律はいつごろ出されるのか、そこのところをもう少し見通しを詳しく、というのは、漁業者は一日も早くやってくれという要望があるわけですから、もう少しはっきりした見通しを述べていただきたいと思います。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国際会議のことでございますからなかなか予断は許さないわけでございますが、すでにアメリカなんかも経済水域二百海里については上下両院で法律が成立しておるというふうな情勢にもあるわけでございますし、領海十二海里についてはほとんど世界的な合意ができておるということでございますが、しかしニューヨークの会議がいろいろと各国の利害が錯綜しておりますので簡単に結論が出るかどうか、なかなか予断を許さないところでございますが、これは国際的にも早く結論を出したいという動きが非常に急でございますので、私はニューヨークの会議そのもので結論が出なくても、引き続いて何らかの結論を得るように、国際的な動きというものは出ておるというように判断をいたしておるわけでございますが、われわれとしてはこれはいつまでも待たれる問題でなくて、そうしたニューヨーク会議、その次の会議といった面で結論が出ないというときは、これはもう政府においてやはり決断をすべきことではないかというふうに考えておりますし、私はそういう考え方のもとに早くこの実現をする方向で今後とも積極的に努力をしていきたいと思っております。
  41. 馬場昇

    馬場委員 それでは、政務次官がおられますから、質問を続けてまいりますが、ちょっと後に戻りますけれども、学校給食について御質問をいたしたいと思うのですが、学校給食に米飯導入の促進のために、米穀の売り渡し価格を一般の三五%引きでということで、これはことしの政策に入っております。私はこれは非常に結構だと思うのですが、これについて一万一千トン、三五%引きということで七億八千六百万ぐらいの予算を組んでありますけれども、実は私の熊本県で調査が行われているのですよ。それを見ますと、アルファ化米も含めて二百六十四トン希望しておるということで、非常に多いのです。これはもう農林省だって喜ばしいことだと思うのですけれども、だから一万一千トン、三五%引きということが出ておりますけれども、これはたとえば三万トンでも四万トンでもこういう三五%引きでできるのかどうか、その辺について第一点質問いたします。
  42. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 お答えをいたします。  実はこの問題は諸先生方にも大変御協力をいただかなければならないことでありますが、基本的に農林省が考えます米の消費の問題につきましては、実は第一回目の試みでございまして、いろいろな処理をしてまいります上におきまして不合理な点等多々あると存じます。ただ私は、先ほどから農林大臣馬場先生の御質疑の中で出てまいりました食糧資源という問題についてこの際多少言及さしていただきたいのでございますが……(馬場委員「もう時間がないから簡単でいいですよ」と呼ぶ)はい、簡単に申します。  私は、学校給食の問題で国民の米の消費全体がそう上回るとは思っていません。計画どおりやりましても十万トン計画であります。先ほどの御議論の中でもありましたとおり、米の消費というものは現在国民一人が茶わん一杯ずつよけい食べてくだされば解決のつく問題だと実は政務次官としては考えておるところでございますが、いま申し上げましたそういう問題についてはなかなか国会でも御議論のないところであり、農政上の問題点だけの議論が実は形式的に行われているだけで前進を見ることができないことが非常に残念だと思っております。ただし、今回農林省計画をいたしました三五%引きの問題につきましては、私は量が多く使用されればされるだけ予算をつけなければならないし、そういう形でぜひ進めさせていただきたいと考えております。
  43. 馬場昇

    馬場委員 政務次官の初めての答弁で非常に前向きで、量がふえれば当然ふえた分は三五%引きで措置しなければならないということで非常に結構でございます。私もそういうことであれば、ぜひ大いに学校給食をやって食べなさい、そして量がふえたら三五%引きがあるぞということで、大いに推進したいと思います。これは政務次官、後もう一遍答弁されるときに五万トンになろうが十万トンになろうが三五%引きで確実にできるのかということについてお答えいただきたいと思います。  次に、それは文部省関係かもしれませんけれども、米飯をやれやれといっても施設設備が問題になってまいるわけでございますが、政務次官も聞いておっていただきたいのですが、現在文部省の話では全国で九百二十校、一県当たり二十校ぐらいで、四百人の規模の小中学校に炊飯器だとか米洗い器の補助を、三十三万一千円の二分の一するということになっているのです。ところが熊本の場合、この計画は二十校ですけれども、熊本県の教育委員会調査では三百五十校ぐらいの希望があるのです。これについて、先ほどと同じですけれども、たとえばそんなに希望があった場合に、この施設設備の補助もするのかということが一つです。  それからもう一つは人件費です。人件費が、週二回パート代で一日に二千二百五十円の補助金しか組んでないのです。米飯をするとしますと、施設設備が要るし、人手が要るわけです。これでも、一人週二日、パート代が一日二千二百五十円では、これは額も低いし、数も少ない。この補助金が少ない。そういう施設、設備の補助の問題と人件費の補助の問題が非常に少ない、こういう状況は文部省はどう考えておるのかということと、こういう状況では米飯が余り伸びないのじゃないかと思いますが、これについても政務次官のお考えを聞きたいと思うのであります。まず文部省から……。
  44. 加戸守行

    ○加戸説明員 お答えいたします。  米飯給食の実施に当たりまして各種の問題がございます。たとえば施設、設備の問題あるいは調理従業員の問題、そういった諸般の問題がございまして、米飯給食の導入の線に踏み切りましても、各地域の実情に応じましてまず無理なく進めるということを基本線といたしまして、第一年度といたしまして当面それに必要ないろんな措置を考えたわけでございます。たとえば施設、設備につきましては五億八千万円を計上いたしまして、一応市町村が体制を組むのに最低限と考えられます必要な資金の援助をするあるいは調理従事員等の措置につきましてもただいま地方交付税におきましていろいろな財源措置をお願いしておる、こういう段階でございまして、確かに必ずしも十分とは言えないといたしましても今後またそういった点についての努力を図るということで、当面の市町村の体制に現実的にできるだけ対応するという観点、それから学校給食におきます米飯給食の普及充実を図るということで、まず個所の増ということで重点的に考えたというのが現在の実情でございます。
  45. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 お答えをいたします。  農林省といたしましては、基本的に米の消費の拡大をすべきために必要な予算額については計上をしていくように努力をいたしたいと考えております。
  46. 馬場昇

    馬場委員 ぜひ施設、設備の補助をよけい出し人件費の補助をよけい出して、しかもまた三五%、さらにもう少し値引きをするというような努力もされて、その量もふやしていただいて、学校の米飯給食が前進するようにこれはお願いしておきたいと思うのです。  ちょっと聞いておきますが、パン食と米飯給食とのいわゆる父兄の給食費の負担というのは、どっちが多くなるのか少なくなるのか、文部省はどう考えていますか。これをひとつ答えてください。
  47. 加戸守行

    ○加戸説明員 米飯とパン食を比較いたしますと、米と麦自体にはそれほどの栄養格差はございませんが、小麦粉の場合につきましては脱脂粉乳とかあるいはビタミンの強化、そういったような措置がとられておりまして、その関係で、副資材の関係でございますが、パンと米食の場合を比較いたしますと若干の栄養差が出てまいります。そういった点で、米食を実施いたします場合におかずの点で十分配慮する必要がある。そういった点の経費につきましての若干の試算でございますが、そういったコスト差を埋めるために農林省の方にお願いいたしまして、今回三五%引きの措置をとっていただきましたので、その結果として、三五%引きのお米を使用いたしますれば米食とパン食の価格の格差は出ないという前提で現在指導を行っておる状況でございます。
  48. 馬場昇

    馬場委員 次に、漁業問題について政務次官非常に詳しいようですから質問いたしますが、水産物は米の生産量と同じ大体千二百万トンくらいの輸入計画しておりますが、この水産物の自給率向上というのは一これはもう言葉の説明は要りません、時間がありませんから。水産物の自給率向上は、この十年間にいまこうあるのをこうするんだというのを、数字だけで結構ですからぜひお願いいたしたい、こういうぐあいに思います。
  49. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 お答えをいたします。  四十八年の推計でございますと、自給率は九七%でございますが、私どもといたしましては最善の努力を払いましてそれを一〇〇%自給に持っていきたいと考えております。先ほど大臣からお答えいたしましたように、先生からも御発言のありましたように、海洋法会議の結果等を見なければわかりませんが、経済海域二百海里説等が出てまいりますとなかなか至難な状態でございますので、先ほど申し上げましたパーセンテージの確立のために最善の努力をしてまいりたいと思います。
  50. 馬場昇

    馬場委員 沿岸漁業についてお尋ねいたしたいと思うのですけれども、わが国の漁業生産形態で、漁業生産の約二割を約二十万経営体の沿岸漁業で取っておる情勢でございます。しかし、先ほど言いましたように領海の問題、経済水域の問題というものが問題になってきますと、沿岸漁業の重要性は非常に増大してくると思うのです。ところが今日の沿岸漁業の状態は、高度経済成長政策で極端に言うと日本の海は死んでしまったんだ、こうも言われているくらいの状況でございます。臨海工業地帯の埋め立てだとかによって直接海がなくなったという面もございますし、さらには藻場だとか干潟などが喪失をしたというところも多いし、産卵、育成の場が荒廃もしておりますし、工場排水とか都市排水で汚染物質が増大いたしまして、海の浄化能力を超えて自然の生態系が破壊されたというような状況もございますし、沿岸の特に漁場を取り巻く状況は非常に悪化しておるわけでございます。  こういう状況の中で、私は今後は漁場は必ず守るんだ、そして汚染は絶対にさせないんだ、過去において喪失された漁場というのは回復可能なものは回復するんだ、そういうような態度をぜひこの際確立すべきだと思うのですが、これに対してのお答えをお願いします。
  51. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 馬場先生御指摘のとおりでございまして、われわれの沿岸漁業を取り巻く諸情勢はなお厳しいものがあります。でございますので水産庁といたしましても、この汚染問題については各般の研究とその改善のための努力を積み重ねてまいりたいと考えております。汚染の防止を図ることが基本でありますけれども、その厳正な運用といいますか、その場合に、これは私見が入って大変恐縮でございますが、公害基本法を基準とした法の整備あるいはその運用についてはなお一層の努力をいたしていかなければならないと考えております。  以上であります。
  52. 馬場昇

    馬場委員 非常に漁場が破壊されておるわけですから、それを今後破壊させないという問題、それから汚染させないという問題、破壊された漁場というのは原状に回復できるものは回復させるんだ、こういう基本線で行くというようなことをおっしゃいましたが、実はやっぱ大幅な予算措置をしてそういう漁場を整備するという長期計画をおつくりになって、さっき言ったようなことをやられた方がいいんじゃないかと思うのですが、この辺についていかがですか。
  53. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 具体的な内容につきましては水産庁長官からお答えさせます。
  54. 内村良英

    ○内村政府委員 沿岸漁場の整備開発につきましては、先生御案内のように昭和五十一年度から七年計画で事業総額約二千億円の長期計画をつくりまして、これに基づいて公共事業として魚礁の設置、増殖漁場の造成等、漁場の整備を積極的に行うことになっております。
  55. 馬場昇

    馬場委員 少し具体的な質問をいたしたいのですが、熊本県の天草の河浦町というところに羊角湾というところがあるわけです。これは沿岸漁業をそこでやっているわけでございます。これはちょっと説明しておきますと、羊角湾というのは羊の角の湾と書くのです。これはなぜそうなっているかというと、実は多数の入り江が羊の角みたいに入り込んできている。だから羊角湾というのです。そこはもう魚介類の産卵、稚魚の育成に最適な海域でございます。そうして海草の宝庫とも言われておりましてプランクトンの発生も絶好の地帯でございます。そこには魚類も非常に多いのです。そこは東シナ海に面しておりまして遊泳魚類の回遊も非常に盛んになっておるのです。これはもうこの前もここの問題で質問いたしましたから水産庁も御承知と思いますが、政務次官、日本の海の中で死んでいないのはもう五島列島のところと天草のこの付近だと言われているくらいのところですよ。非常にいい漁場ですけれども、こういう漁場というのはもう先ほどの観点からいきますとどんなことをしても私は守るべきだと思うのですが、これはどうでしょう。
  56. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 先生のお説のとおり、これは絶対に守らなければならないものだと考えます。
  57. 馬場昇

    馬場委員 ところが政務次官、そこに大変な問題が実はあるのです。というのは、いま羊角湾を締め切って淡水湖にするというのです。淡水湖にして、そしてその上にミカン山をつくるというのです。開拓してミカン山をつくって、そこに水を揚げる。締め切ったところに干拓地をつくって、そこにイグサとレンコンをつくる。こういうような羊角湾国営開発パイロット干拓事業というのが実は四十四年から行われておるのです。ところが奇妙なことには、それが四十四年から行われておりますが、その当時そこの町では町長が原子力発電所の誘致期成会の会長になって、原子力発電所をつくって、今度その水を使うために締め切って淡水湖をつくるんだ。隣に牛深市という市がありますが、そこは飲料に困っている。そこに飲料水をやるんだというような宣伝をして実はやっている。ところが農林省計画は、さっき言ったように淡水湖をつくり、灌漑用水をつくり、干拓と開拓をする、こういうことになっております。  現在そこには非常に問題がありまして、その漁業権放棄のときから混乱いたしまして裁判が起きております。そして工事中に汚泥の問題がありまして、その漁業補償が実は現在起きておる、こういう状態ですし、その町にはここで社会的な対立状態が起こって、社会的な問題が現在起きている、こういう状態が実はあるわけでございます。  そこで、私はこの事業についてまず最初事務当局にお尋ねいたしますが、この農用地の開発事業の進捗状況はどうか、干拓事業の進捗状況はどうか、締め切り堤の進捗状況はどうか、簡単に数字だけ御説明ください。
  58. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いま御指摘の国営の羊角湾干拓開発でございますけれども、これは御指摘のとおり総合事業でございまして、三つの事業からなっております。それぞれ進捗率で申し上げます。  一つは、国営の総合農地開発事業でございます。これは総事業費九十三億五千六百万円でございますが、四十九年度までの進捗率は、三十八億八千万円使いましたので約四〇%の進捗率となっております。  それから、二番目の事業は干拓事業でございますが、この事業の総事業費は三十四億八千万円でございます。四十九年度までの進捗率は、十億三千二百万円で約三〇%ということになっております。  それから、三番目は両事業の共同工事としての淡水化事業でございます。この総事業費は二十八億四千四百万円でございまして、四十九年度までの進捗率は、十七億四千三百万円完了しまして約六0%の進捗率ということになっております。
  59. 馬場昇

    馬場委員 農用地の開発した面積は何ヘクタールですか。
  60. 岡安誠

    ○岡安政府委員 当初計画は九百七十七ヘクタールでございましたけれども、現在までの進捗率は、三百七十ヘクタールの農地造成が完了いたしております。
  61. 馬場昇

    馬場委員 政務次官に説明しながら質問いたしますけれども、最初ミカン園を九百七十七ヘクタール計画しておったのですが、現在は三百七十ヘクタールで約四〇%造成をしておりますが、その中でミカンを植える可能性のある面積は百七十一ヘクタールなんです。というのは、がけとか岩ばかり多いものですから、三百七十ヘクタール開発したのに植栽可能な面積は百七十一ヘクタール、それに植栽した面積は九十四ヘクタールで、あとの七十七ヘクタールはミカンを植えていない。植えたところも借金に困っている。それを国営で補助して開墾してミカンを植えておいて、それでもう持ちこたえられないから名古屋の人に売ってしまって、レジャーセンターでもつくるんだとかなんとか言って大問題を起こしたところでございます。  今日、次官も御存じのとおり、ミカンの植栽面積は農林省は抑えているわけです、温州ミカンがあんなに暴落いたしますものですから。そして九百七十七ヘクタール予定しておりますけれども、そんな開墾はできないのです。ところが、五百ヘクタール以上なければ国営の補助対象にならぬというから、それを少なくしようかというような検討さえ行われている。ミカン園を開拓したって、もうだれもつくらない、入植する者はいないのです。入植した者でも、その土地を民間の会社の社長に売ってしまう、こういう状態で、もう開墾する目的は失ったと私は思っております。そういたしますと、海を締め切ってそこに水を揚げる必要はなくなるのです。締め切る必要はないのです。いま干拓をして、米はつくらせないわけですから、それにイグサとかレンコンとか、私の郷里の八代なんかでもいっぱいそれをやっておりますけれども、ここでいまから干拓してイグサ、レンコンをつくる必要も全然ない。この事業というのは、国営事業として目的を失ってしまったし、いまから事業を進めますと、まさに国費のむだ遣いだと私は思うのです。片一方は、そうすることによって、さっき言った汚してはならない、壊してはならない沿岸漁場というのが壊れていくわけです。私はいまからでも遅くないから、そういうむだ遣いとか、意味のない国営パイロット事業をやめてしまって、そして海をきちんと守るというようなことをすべきじゃないか、これこそ国家百年の計の上から言って必要じゃないかと思うのです。それについて、次官どうですか。
  62. 岡安誠

    ○岡安政府委員 経緯がございますので私から先にちょっとお答えさせていただきますが、おっしゃるとおり、九百七十七ヘクタールの農用地造成というのはなかなか困難になっておることは事実でございます。私どもも、ミカンにつきましては、この新規植栽は非常に抑制をするということにいたしておりますので、三百七十ヘクタール造成されました面積のうち、現在ミカンが植わっておりますのは百八十四・八ヘクタールでございまして、それ以外は花木とか桑とかクリとかが植わっておりますし、まだ未植栽のところもございます。  ただ、私どもとしましては、地元の要望がやはり水を揚げたいという要望が非常に強いわけでございますので、私どもは、やはりこの三百七十ヘクタールの農用地の経営を円滑に行うためには一部締め切りを行いまして、干拓地をつくると同時に淡水化いたしまして、この用水を利用するということはぜひとも必要であろうというふうに考えているわけでございまして、御指摘のとおり、現在漁業補償でいろいろ問題はございますが、できるだけ早く解決いたしたい、それが地元の要望にこたえるゆえんのものであろうというふうに考えているわけでございます。
  63. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 お答えをいたします。  ただいま局長からその具体的な内容については御説明を申し上げたところでございますが、先ほど先生から御指摘のありましたとおり、ミカンの問題につきましては現在実際に過剰ぎみでございます。ただし、この問題は地元の計画の中で計画をされてきた問題でございますので、農林省としては地元の要請にこたえたということでございますが、時間が経過いたしますと、先生の御指摘のような結果にも相なります。その点につきましては十二分に調査をいたしたい考えております。  もう一点の問題でございますが、水の問題でございます。これはいまも局長から御答弁申し上げましたように、地元の要請が非常に強いということでございまして、現在の段階で計画そのものを変えるという考え方は持っておりません。
  64. 馬場昇

    馬場委員 いままで非常に突っ込んできたものだから、一遍うそを言ったらずっとうそを言わなければいかぬとか、この間の証人みたいに、一遍やったからそれをやらなければ——誤りを改めるにはばかることなかれと言った方がいいのでしょうけれども、やはり悪乗りしてやっているというような感じですよ。  実は、これは四十四年に始まったのですけれども、そのころはもう新規の干拓はやらないという減反政策をとっておった時代です。そういう時代にここだけ異例に認められたところなんですよ。そして私が質問しましたところが、五百ヘクタールの造成をしなければ国庫補助にならないでしょう、ずっと前に質問しましたら、五百ヘクタールは絶対に間違いない、いままで日本じゅうでやってきた、しかし五百ヘクタールがこういうことで下がったところはないのだ、絶対に五百ヘクタールは間違いない、確信しておる、こういうぐあいにこの議場で農林省答弁している。しかし、私はそんなことはできる地形じゃありませんよということを言いました。ところがいま何ですか。三百七十ヘクタールしかできていない。これ以上、五百ヘクタール以上になる可能性は絶対にない。そういううそを言って、それ以上超しますから国営事業でやっておりますと言っておきながら、もう造成できない、私はそう思います。  それから、問題は地元の要望とおっしゃいますけれども、では最初に聞きますが、締め切って水を山に揚げるよりも、海を守って漁業を盛んにしたい、だからこれをやめてくださいと地元が言ったらやめますか。
  65. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 まず第一点の問題からお答えいたします。  第一点の問題は、先生の御指摘のとおり五百ヘクタールは無理でございます。ですから現状の三百七十という形で、現状固定で打ち切らしていただきたいと実は考えております。  第二番目の問題でございますが、やめるかという問題につきましては、現在まで進めてまいりました関係上、先ほどお答え申し上げましたように、十二分に調査をいたしたいと考えております。
  66. 馬場昇

    馬場委員 いま次官の答弁によりますと、実は九百七十七ヘクタール開墾する予定でございました、そして海を締め切って淡水湖にして水を揚げるという計画でございました、ところがもう三百七十で打ち切ります、こういうことでございます。水はそんなに要らぬ。特にさっきミカンをやるということでしたが、ミカンはもうやってないのです。クリを植えたとか何を植えたとかほかのやつを植えているのです。こういうことで、開拓面積が非常に減ったということと、今度植栽しておりますものがミカンじゃないということ。そんな淡水湖の水は要らないのです。そういうぐあいに今日なっておるわけでございます。  それから、私は地元に何回でも行っておりますけれども、地元の全部の漁民は、やめてもらってこの海をもとどおりにしてもらった方が一番いい、全部と言っていいほどの熱望でございます。そして逆に利益を受ける農民の方も、ミカンをつくりたくない、こういうことを現在言っておる状況でございます。だから問題は、九百七十七ヘクタールのときの淡水湖の計画でございます。そしてミカンをつくるときの計画でございます。それを三百七十で打ち切る。打ち切った場合、五百ヘクタール以上ないと国庫補助の対象にならないのですが、三百七十七で国庫補助の対象になるのですか。そういう問題もございます。  それから、さっき言ったように、水は少なくなるのじゃないか。植栽してありますものが違うものでミカンじゃないから、これまた水も要らないのじゃないか。地元の漁民は全員、やめてもとのとおり海をきれいにしてくれということです。農民もミカンをつくりたくないからもう入りたくないという、そういう地元の状況を御存じかどうか。
  67. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 その問題につきましては、局長からお答えをさせます。
  68. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず九百七十七ヘクタール農用地造成をするという予定で国営事業で発足したわけでございますが、先ほど政務次官からお答えいたしましたとおり私どもは大体三百七十ヘクタール程度で農用地造成は打ち切りたいと思っております。その場合に国営事業として存続できるかという御質問でございますが、やはりこの地区につきましてはミカンの新規植栽抑制という事態もございますので、そういう場合には最低大体三百ヘクタール以上の農用地開発という面積が確保できるならば国営事業として存続をいたすということに私ども決めておりまして、すでに通達もいたしておるわけでございますので、この地区につきましては三百七十ヘクタールの農用地が確保できるならば、国営事業として存続をいたすつもりでございます。  それから漁民云々の話がございましたけれども、私どもも地元からいろいろ話を聞いております。ただ、この漁業協同組合、補償でいろいろもめておりますけれども、いろいろ何派にも分かれておりまして、私どもの補償の内容等につきまして同意を得ている方々もおります。それから一部には反対もございます。いろいろ御主張があるわけでございまして、せっかく現在交渉を続けておりますので、一日も早くひとつ交渉をまとめて当初予定どおり淡水化の方は進めたいというふうに思っております。と申しますのは、この地帯は先生御承知のとおり非常に水が少ないので、現在の淡水化をやめまして用水確保をいたしましても、非常に少量の水しか確保できない。たとえば農薬その他を散布するに必要な程度の用水も確保できるかどうかという程度でございます。したがって、今後ミカン園も存続いたしますし、花木、桑、クリ等も植えるわけでございますが、それらの用水はやはり不足をするというふうに考えておりますので、淡水化事業はぜひ進めたいというのが私どもの考え方でございます。
  69. 馬場昇

    馬場委員 全くでたらめな答弁をなさっているのですよ。この前の私の質問に、ここに速記録を持ってきていますけれども、五百ヘクタール以上ないと国庫補助をやらない、五百ヘクタールを切るようだったらその事業主体を県か何かに移さざるを得ないときちんとあなた方答弁しているのです。ところが、もう今日では、三百でも国営事業になるのだ、こういうこの前と全然違う答弁をあなたはなさっていますよ。うそですよ。この前の答弁ときょうの答弁は違うのです。それから、政務次官、裁判問題が二つあっているのです。いま非常に社会的問題をここで起こしているのですよ。この地域は台風常襲地帯ですからあんな開拓をしますと大災害を起こす可能性があるのです。だからここで最後にだけ政務次官政治的な話を聞きますけれども、やっぱりこういう問題は、一遍やったからもうだめだというので、国費のむだ使いが深みに深みに入るだけの話です。そして日本の海を壊してしまう。本当にいま食糧自給体制の中の逆行するようなことなんですよ。だから、私はここで結論は出にくいと思いますから、ぜひ漁業関係、農業関係含めて地元と話をして、そして地元の納得のするところで施策を進めたい、地元と相談をしていろいろ検討したい、この姿勢を示してもらわなければ、悪乗り、まさにいまの国全体の動きと逆行することになりますから、十分地元と話し合ってこの問題の行方について検討していただく気があるかどうかということを政治的に次官にお尋ねしておきます。
  70. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先ほど私にでたらめな答弁というお話がございましたので、ちょっと釈明させていただきます。  先般御質問があったときはおっしゃるとおり担当局長はお答えしたわけでございますが、そういうような御意見等もございますしということで私どもはさらに検討をいたしまして、昨年の九月二日付に先ほど私が申しました方針を決めて通達をいたしたわけでございます。  と申しますのは、やはり御指摘のとおりミカンにつきましては特殊事情がございます。そこで、そういうところで五百ヘクタールをどうしても確保しなければならない、もし切れば国営をやめるということでは、やはり御指摘のとおり実情に合わないのではないかということで、申請当時の面積の六割以上、したがって、国営の場合には三百ヘクタール以上、県営については三十六ヘクタール以上、団体営は六ヘクタール以上あれば、そういうミカンの新植抑制のような事態にかんがみまして、今後それぞれの事業主体の事業の継続を認めようということに私どもは決めて通達をいたしたわけでございますので、ひとつその点は御了解を得たいと思っています。
  71. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 ただいま馬場先生の御指摘のとおり、過般先生から御質問のありましたとき以降にただいまの変更があったという形で、御理解をいただけなかった点もあると思いますが、今後そのようなことのないように注意をいたさせます。  それからもう一点。こういう問題の事情調査を行う意思があるかということでありますが、早速農林省政務次官室に各関係者代表にお出かけをいただきまして一回事情聴取を行い、もし視察の必要があれば私自身が出てまいりますし、調査をいたしまして、その現状の確認の上に立って今後の対応を示してまいりたいと考えておりますので、御理解をいただきたいと存じます。
  72. 馬場昇

    馬場委員 時間が来ましたが、私が質問いたしましたのは、ちょっと極端に言いますと、悪乗りしておるものだから、汽車を動かさずに停車場を動かすような話ですよ。途中で規則なんかを変えるということは、やっぱり自分たちがやったことを正当づけるために規則を変える、こういうことだろうと思うのです。だから、次官にいまお尋ねしたのは、やっぱり地元でいろいろ問題がありますから、地元の人々と相談をして、地元の意見に従って、たとえば続ける、あるいはこれを中止するとか、そういう地元の要望を聞いてこの問題に対処してくださいということですから、ひとつ答えてください。  最後に、これは農林大臣にもきのう言いましたけれども、話はちょっと違いますけれども、オレンジの自由化はいたしませんですね、次官。それで質問を終わります。
  73. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 お答えをいたします。  現在の段階ではいたしません。
  74. 馬場昇

    馬場委員 前の方の、地元と話し合いをして対処するという点は。
  75. 浜田幸一

    ○浜田政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、先生からの特に強い御指摘でございまするので、その期待に沿うために現状調査をいたしまして十二分な対応をいたしたいと考えております。  第二点目の問題は、先ほどお答えしたとおりでございます。
  76. 湊徹郎

    湊委員長 この際、午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時八分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  77. 湊徹郎

    湊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上泉君。
  78. 井上泉

    ○井上(泉)委員 まず最初に農林大臣にお尋ねをしておきたいと思いますが、歴代の自民党内閣による経済政策の失敗ということが今日不況とインフレというダブルパンチで国民生活を非常に圧迫しておる。そういう中で一番被害を受けておるのは労働者であることは御承知のとおりであります。昨日も陳情者が見えられたときに、今日、政府の人たちは、ピーナツ一個が百万円というような、そういう金銭感覚で物を見ているから、平均十二、三万円の給料生活者のことは頭の中にないのじゃないか、こういうふうなことを言われておるわけですが、大臣は、今日の平均的な国民生活の実態というものに対して、それだけの収入で上等である、そういう理解をしておるのかどうか、その点をまず第一に伺いたい。
  79. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今日までの経済政策に対する御批判はいろいろあると思います。しかし、日本経済の戦後から今日までの推移を見ますと、あの戦後の、敗戦による壊滅的な状態から再建が行われて、その後経済の復興、そして経済成長、特に高度成長というのがこの十数年来続いたわけでありますが、私は、経済のこうした発展過程の中にあって、いろいろな面の問題はあることはあるとしとも、一般的に言えば、やはり国民生活は向上をし、また生活水準もそれに伴って上昇してきたということは言えるのではないかと思うわけでございます。反面、公害の問題とか、あるいはまたいろいろなひずみの問題というものも出ておるわけでございまして、こういう面に対しては今後の課題としてわれわれが取り組んでいかなければならない政治の問題であるというふうに理解をいたしております。
  80. 井上泉

    ○井上(泉)委員 農林省の所管にも幾多の企業があるわけですけれども、その中でも木材の関連産業というものが今日どういう状態になっておるのかということにつきまして、今日木材産業が盛んである、そこで働いておる労働者が恵まれた労働条件の中にある、不安のない職が保障されておる、まさかそういうふうには理解されていないと思うのですが、大臣どうですか。農林省所管の木材関連産業の労働者が今日どういうふうな状態の中に置かれておるのか。その産業の状態。そこで働いておる労働者の状態
  81. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 木林関係につきましても、今日までの経済の推移の中にあって、非常に景気のいいとき、それから安定した時代、そうしてまた非常な不況の時代、その時代時代によりまして浮き沈みというのはあったわけでございますし、今日は全体的な経済不況の中にあって木材業界も非常な不振の状態にあるわけでございまして、合板事業なんかは不況カルテルを実施しなければならないというふうなところまで来ておるわけでございますから、そういう情勢の中にあって労働条件等もいろいろ変化はしてきておるわけでありますが、われわれとしても、木材業界全体が立ち直っていけば、それに応じていろいろと労働問題は順次改善をされていくというふうに理解もしておりますし、そういう方向で取り組んでいかなければならないというふうに考えております。
  82. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いま合板企業の問題が提起されたわけですが、合板企業の状態等につきましては、いま大臣も言われましたとおり、不況カルテルを実施してその企業に対するてこ入れをやっておるこういうわけでありますけれども、この不況カルテルが果たして功を奏しておるかどうかということについては非常に問題があろうと思うわけであります。この点については農林省も、不況カルテルを実施したその合板企業の状態については調査をされるというようなことを言われておるわけでありますが、そういう木材産業全体を通じてこの問題を討議する、たとえば木材産業基本問題調査会とかいうような会はみごとにつくっておるけれども、その会の構成にいたしましても、木材産業に従事しておる労働者をその代表の中に入れてない。そして不況産業としての合板産業をどうするのかというものについての積極的な姿勢が非常に乏しいように思いますので、この点については林野庁長官の方から御説明を願いたいと思うわけであります。
  83. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御質問がございましたように、木材業界全体といたしましても、また合板業界は特に非常な不況の中にあるわけでございます。したがいまして、ただいま御指摘がございましたように、木材産業基本問題調査会の中でいろいろ基本的な問題として現在検討いたしておるわけでわけでございまして、特にこれを直ちに行政へというつもりで検討いたしておるわけではございませんけれども、合板業界等にあるいは木材業界等に従事している労働者の方々の意見も当然聞くべきであるということで、今月の中旬にはそのような方々もお集りいただきまして、この部会の中で私ども十分御意見等も承る、こういうことを計画いたしているわけでございます。
  84. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういう呼び出しをかけて集まってもらうとかいうようなことではなしに、せっかくそういう木材産業に対する基本問題の調査会をつくられ、あるいは木材産業の調査会では専門部会を設けられておるのですから、その専門部会の中で、たとえば流通部会とか需給加工部会とかいう中で、流通部会の中には建設労働組合の代表者を入れるとか、あるいは需給加工の部門については生産に直接タッチしておる労働者の代表をその中に位置づけるようにして、会の構成というものにもつと重きを置いたらどうですか。
  85. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  先ほど私がお答え申し上げましたように、現在基本的な問題の検討をいたしております段階でございまして、これが行政とかあるいは指導とかいう段階になりました場合は、当然、そういう方々の御意見を承る場というもの、適切な機関等を検討いたしまして十分対応するということを考えておるわけでございます。
  86. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いつも政府調査会とか研究会とかいろいろなものを設けるに当たって心得なくてはならないのは、どんな産業でも働く者がいなければ動くわけがないわけですから、だから働く者ほど一番その問題に対しては熱心であるし、自分の身に降りかかることですから真剣だから、こういう調査をつくるとかあるいは専門部会をつくるとかいうときには、それによって生活をしておる働く者をその場へ引き入れるということが行政を進める上においても大事ではないか。自民党政府のもとだから労働者の代表は入れないというような、そんな時代感覚のないような考えであってはならないと思うわけですが、大臣、どうですか。
  87. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるとおりであろうと思います。政府の各種審議会等におきましても、やはり労働者といいますか働く側の代表者にも委員になっていただきまして、そして積極的な御発言をお願いしておるのが一般的な審議のあり方でもございます。
  88. 井上泉

    ○井上(泉)委員 木材関連産業の問題についてはまだいろいろお尋ねしたい事項があるわけですけれども、林野庁の方でも計画をされております合板企業に対する行政指導の強化の方法や、あるいは不況カルテルを実施してもそれが効果を上げないというのは、一つはアウトサイダーというものが存在をする、それが規制の枠から外れておるということになっておるからだと思うわけでありますし、そういう点についての規制も考えておる、つまり操短の実態を調査をして合板企業というものをどうやって健全化していくかということについていま林野庁の方もそれに対する指導を強化するということが言われておりますので、そのことを期待をして、いずれその調査をした実態に基づいてまた後日質問をすることにいたしたいと思います。  そこで、林業関係につきましてはまた後の項で質問をいたしたいと思いますが、きのう当委員会におきまして丸紅の問題が提起をされたわけですが、まさに丸紅は日本の民主主義、いわゆる議会政治というものを揺るがすような、日本の民主政治を揺るがすような悪徳商法を展開し、柴田議員の言ではないけれども、まさに人殺しの物を取り扱うことによって日本の政治を動かしておる、こういう極端な言も出るほどまさに今日国民の敵として批判、指弾さるべき存在だと思うわけですが、その点について、今日そういうふうに丸紅をのさばらしてきたのは、やはり今日の政府の行政のあり方が丸紅をしてのさばらしめてきたのではないかというふうに思うわけです。たとえば農地の問題でも、茨城県では五十二ヘクタールも田畑を買収をしておるわけですが、こういう法人が取得するに当たってはどういう条件でこれを取得したのでしょうか、これは事務当局から説明を受けたいと思います。
  89. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いま先生御指摘の丸紅が茨城県で土地を取得したケースは、茨城県の取手市におきまして、私どもの調べたところによりますと、田二十二ヘクタール、畑二十五ヘクタール、山林その他五ヘクタール、計五十二ヘクタールということになっております。  私どもこの茨城県の取手市におきましてどういう目的で取得したのかということを県の方にも聞いておりますが、一応私どもの承知いたしておりますのは、宅地分譲と建て売り住宅の建設というように聞いているわけでございます。
  90. 井上泉

    ○井上(泉)委員 この取得の年月日というものはおよそいつごろであって、それをまた私どもが聞いておる範囲ではということではなしに、これだけ問題になってきた商社でありますし、やはり農林省の中で、たとえばモチ米の不正な扱い方があった、あるいは輸入豚に対する関税の脱税があったとか、そういうふうなことがあった場合には、やはりこういう農地の問題でも、土地の購入にも農林省としては当然目をつけなければいかぬ問題だと思うわけです。それにつけてもどういう目的——それではいま宅地造成あるいは分譲住宅ということになれば、このところではどれだけの住宅が建てられておるのか、そして宅地造成が現在終わっておるのかどうか、その点について……。
  91. 岡安誠

    ○岡安政府委員 実は私どもちょっと明確を欠くような御答弁をいたしましたのは、この土地につきまして丸紅が入手といいますか、そういう情報として理解をしているだけでございます。と申しますのは、現在事前審査の申し出もございますけれども、それに対しまして茨城県の方からの意見書がまだ出てきておりません。と申しますのは、茨城県におきましても丸紅がこの土地を取得しましたのは何の目的であるのか、それが合目的的であるかどうかというようなことを現在調べているわけでございまして、県の段階での検討におきましても現在いろいろ問題があるというような話も聞いております。したがって、私どもの方は正式にこれらに対しまして調査はまだいたしておらないというような段階でございます
  92. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、この調査をしていないということは、それについていまその調査をしようと思っていますか、思っていないですか。
  93. 岡安誠

    ○岡安政府委員 これは事前審査の申し出があった段階で、県の意見を聞いておりますが、県でいろいろ問題があるということでまだ意見書が出てきておりませんので、私の方から積極的に動くということも、何か農林省はこの申し出に対して内示を与える意図があるのかとかどうとか、いろいろ勘ぐられても問題がございますので、県の方の意見を聞いてから私どもはまた調査をいたしたいというふうに思っております。
  94. 井上泉

    ○井上(泉)委員 県の方の意見を聞くとかいうことではない。これは平生な状態の中ではそういうことが当然考えられると思うわけですけれども、これほど悪徳商法を繰り返しておる丸紅に対して、その丸紅がしかも農地をどういう使用目的で買ったのか、あるいはこれは茨城県の取手だけではなしに、岡山県でも、北海道でも、青森県でも膨大な土地を取得しておるのだから、そうすればそういう土地を取得しておる実態について、農林省としてはやはり調査をすべきである、こういう考え方が一あなたは事務官だからそういう手順を踏んでいろいろと考えられると思うわけですけれども、やはり国民感情として、私はこれを所管する農林省としてはその実態調査というものをなすべきだと思うわけですが、農林大臣、どうですか。
  95. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 行政というのはやはり手順を踏むということが私は大事なことじゃないかと思うわけで、いまのところ農林省としてもそういう情報程度であって、やはり事前審査についての要請もないわけでございますから、そういう要請があった段階においてこうした問題は農地法に照らしてきちっとやらなければならぬわけでございますし、また現在社会的に起こっておる問題等についても十分これを踏まえて厳格に審査をするのが当然のことじゃないか、私はそういうふうに思っております。
  96. 井上泉

    ○井上(泉)委員 しかし、この土地を取得したのは大体四十七年前後ですから、もう三年たっておるのですよ。三年たっておる今日、この土地がちまたのうわさになっておる。つまり土地の価格が非常に急上昇したのは、丸紅やその他の大手のものがどんどん、どんどん土地の買い占めをして土地の値上がりをさせた、こういう大手商社の土地買い占めに対する国民的な非難というものが強まっておる。強まっておるということは、大臣承知をしておるのですか。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういういろいろの大手企業によって土地の取得、特に農地等の取得等が行われておるというようなことにつきまして、農林省としてもやはり調査はしておるわけでございますが、これを転用するという段階においては、農林省の方針としてはきちっとしているわけで、優良農地は確保しなければなりませんし、農地の転用に当たっては、これまで以上に厳正な態度で臨むという基本方向でございますから、われわれとしては、農林省判断をする場合においては法に基づいて、いやしくもそうした土地が、特に農地が法律の趣旨に反するような形で転用されることは絶対に防いでいくという考えでございます。
  98. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、現在丸紅が取得しておる幾つかの、たとえば青森県、茨城県、兵庫県、あるいは岡山県、これはまあ五県か六県ですかのことを指定するわけですが、この指定したこういう地域で取得をした農地が果たしてどういう目的で買われたのか。私は全国とか言わないです。丸紅が取得したところ全部あるいは大手企業が至るところで買っておるところ全部とは言わないわけですが、この五県の、丸紅が大規模に取得した土地がどういう目的で取得をされ、それが現在どうなっておるのか、これが大臣の言われるような、法に基づいて適正に処理をされておるのかどうか、その辺を調査してもらいたいと思うのですが、大臣調査してくれますか。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもうわれわれの責任でもございますので、可能な限り調査をいたします。  なお、そうした資料等につきましても、御要請があればできるだけ委員会に明らかにしたいと思います。
  100. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、ぜひその調査をお願いするということと、同時に、きのうも問題になったわけですけれども、運転だけを職業の糧としている運転手でも、交通違反を起こした場合には、三カ月なり、五カ月なり、六カ月なり運転免許の停止がある。つまり、生活がどのような状態になろうとも、それに対する処罰は受けるわけです。建設省の関係でも、あれだけ業界とべったりだと言われるような建設省でも、建設省の関係で不正な工事が行われたり、あるいは不正な関係によって工事が取引をされたりした場合には、その業者に対しては指名停止ということが行われているわけですけれども、しかしながら、この丸紅のやってきた不正な商行為に対する処分というものが余りにも軽いではないか。これはやはり一つのそういう悪徳商法の芽を最初に摘まぬから、だんだん増長して大変な悪いことをしでかして、日本国民を驚かしておる。こういう状態をつくり出しておるのですが、この処分というものが適当だと考えておるのかどうか、この点について、これは大臣の見解を聞きます。
  101. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まあ、私が聞きました範囲におきましては、たとえば豚肉の輸入にまつわるところの関税違反の問題、それからモチ米の食管法違反の問題等につきましても、法の裁きは法の裁きとして進んでおるわけでございますが、行政処分としては、これまでの慣例に照らしてきちっと農林省としてはやってきておるわけでございます。
  102. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そのやった結果について、これが不十分だったという答えは返ってこぬでしょう。しかし、たとえば丸紅が木材の売り惜しみをした、そうしていつの間にやらあっという間に四十億、五十億もうけたというようなことが、この国会の参考人で呼んだときにもそんな話が出されたわけですが、全国の建築労働者たちが丸紅へ押しかけて、丸紅の木材の買い占め、売り惜しみに対する抗議闘争をやったこと、このことは大臣承知をしておりますか。
  103. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 丸紅を初めとして、その当時商社等によるところの木材を初めとするその他の商品につきまして売り惜しみ、買い占めといったような事態が起こって、国会でも問題になり、そしていろいろと社会的にも問題になったということは、承知しておりますが、いまの抗議闘争につきましては、私承知いたしておりません。
  104. 井上泉

    ○井上(泉)委員 まあ大臣は、そういうふうな大衆の運動については承知をされようとしていないから承知をしていないと私は思うわけです。あれだけ社会的に騒がした問題ですから、普通の常識をもってするなら私はそのことは知っておったはずだと思うわけですが、しかし、そのことを知っていないからといって別にあなたを批判するわけでもないのですが、こうした大手の業者が売り惜しみ、買い占めをし、土地を買い占めし、そしてまた土地を転がすというようなことが、今日のこの石油危機以来のもういつ爆発するかもわからないようなインフレの状態の中で、こうしたことが引き金になって爆発的な物価の値上がりを招来してきたことは承知しておると思うのです。そういうもとをつくっておる丸紅という商社に対して、今後農林省所管の、関係のものについてはもっと厳重に対処すべきだと私は思うわけですが、これを従来のままのような一般的な商社の扱いの形で見るのか、特にこういう悪徳商法を繰り返してきておる、ことにロッキードのような国際的な疑獄事件まで引き起こすような商社に対して、農林省としては注目をせねばならぬとして見るのか、どちらかひとつ大臣の見解を承りたいと思います。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農林省関係の問題につきましては、先ほどお答えを申し上げましたように、その問題について不正があったというふうな場合には、直ちにこれまでの慣例、基準等に照らして厳正な行政処分をいたしておるわけでございますし、今後ともそうした基本的な立場で厳しく対処していきたいというふうに考えておるわけであります。
  106. 井上泉

    ○井上(泉)委員 大臣のいまの答弁に期待をいたします。  そこで、くどいようでありますけれども、私がさっき提示をした五県にまたがる府県での丸紅の不当と思われるような土地取得の状態については、実態調査をされる、その現状を調査をされるということを言われたですが、たまたま予定としては、土地改良法がきょうは大臣の法案の説明がなされるということでありますし、それで、次の土地改良法を審議する委員会まで五日あるのか、一週間あるのか知りませんけれども、これはもう農林省の機構をフルに活用すれば十分調査ができると思うのでありますが、四、五日の間に、その委員会が開かれるまでにこれの調査をしていただくことができるかどうか、その点ひとつ構造改善局長の方から御答弁願いたいと思います。
  107. 岡安誠

    ○岡安政府委員 できるだけ努力したいと思っております。
  108. 井上泉

    ○井上(泉)委員 できるだけじゃないですよ、それまでに……。できるだけとか言って、できなかったらしようがない。
  109. 岡安誠

    ○岡安政府委員 そういうようにいたしたいと思っております。
  110. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それじゃ、まあ思うということじゃなしに、それをやってもらいたいと思います。  次に、漁業問題について大臣にお伺いしたいのですが、経済水域二百海里という問題とそれから領海十二海里の問題とこれは別個に考えられるような問題ではないし、これはともにセットして考えなければいかぬ問題ですが、馬場議員の質問の中でも、領海十二海里の問題についてはこれに立法措置を、独自立法を内閣官房においてこれをつくられておる。それについてはいつかということでも期限的な話、いつまでできるかというお話を聞くことができなかったわけですが、内閣の審議官が来られておりますが、この法案はいつまでに法案として仕上げて、そしてこの国会へ出される予定になっておるのか御答弁願いたい。
  111. 安仁屋政彦

    ○安仁屋説明員 領海問題につきましては、昨年の暮れから内閣官房副長官のもとで関係省庁集まりまして検討したわけでございます。その結果、具体的な時期、態様の問題は別といたしまして、政府の方針としましては、領海幅員を十二海里とすることが適当である。ただし現段階で領海を十二海里とするためには法律の制定を必要とするということにつきまして、一応の結論が出たわけでございます。しかし三月の半ばからニューヨークで開かれます海洋法会議との関連で種々の動きもございますので、わが国といたしましては、領海十二海里を実施するという基本方針は定めておりますが、その基本的な方針のもとに海洋法会議の成り行きを勘案しながら、具体的な実施時期あるいはその態様について検討する、こういうことになっておりまして、現在のところ具体的に法案をいつ出すかという点についてはっきりした見通しは立っておりません。
  112. 井上泉

    ○井上(泉)委員 もう内閣の審議官いいです、まだ法案を出す時期になってないということなら。  その二百海里の問題ですが、二百海里を決める海洋法会議に臨む政府基本方針というものが示されておるわけですけれども、その基本方針の中で、日本の漁業利益といいますか、漁業の関係については、わが国の漁業に甚大な影響を与えるものと考えられ、適切な対応策を講じなければわが国にとり最も望ましくない形での排他的な沿岸国の権限が認められるおそれがある。そこで、遠洋漁業国の利益ができるだけ損なわれないよう最大限の努力をする、こういうことが基本方針なんですが、経済水域の設定ということによって、わが国の漁業が甚大な影響を受けるということに対して、これをどうやってなにをするつもりか、政府の方の基本方針の中でどういう面で被害を受けるのか、その点の説明をお伺いしたいと思います。
  113. 内村良英

    ○内村政府委員 先生も御案内のとおり、現在わが国の漁業が外国の距岸二百海里でとっている漁獲高は、四百五十万トン近い数量になっているわけでございます。わが国の全体の漁獲高が一千万トンでございますから、半分弱が外国の距岸二百海里でとられている。そうすると、完全に排他的な二百海里の経済水域というものができますと、その分が排除される、こういうことになるわけでございます。そこで、海洋法会議結論がどうなるかはここで予測ができませんけれども、ジュネーブ会議の末期につくりました単一草案でも、経済水域二百海里を設けながら、その中で沿岸国の優先権と同時に、利用し得るものは最大に利用しなければならない。自分たちがとってないものは非沿岸国にとらせなければならない。その場合に実績尊重等の規定もあるわけでございます。これはどうなるかわかりませんが、われわれといたしましては、わが国の実績を確保するために、海洋法会議で非沿岸国の漁獲についても十分考慮されるような経済水域が設定されること、さらに経済水域が設定された場合におきましては、関係国と外交交渉をやりまして、わが国の従来の漁場を確保していく。さらに開発途上国の場合には、入漁料を要求されたりあるいはいろいろな協力を求められる、そういうものにも極力こたえながら、わが国の漁場を確保していこう、こう考えているわけでございます。  そこで、具体的にはどういう影響が出てくるかということでございますがそのような努力をいたしました場合におきましても、遠洋漁業の漁場が狭められるということはこれは避けられないと思います。そこでそうなりますと、現在その海域に出漁しているわが国の漁船というものが、多少漁獲努力が余ってくると申しますから、船が余ってくるわけでございます。それをどういうふうにしむけていくかという問題、これが一番大きな問題ではないかと思っております。  なお、経済水域に関連いたしまして、国民生活にも影響があるのではないか、水産物の供給が減るのではないかというような御心配がございますけれども、私どもといたしましては、今後沿岸漁業の振興その他によりまして、経済水域ができた場合において国民が魚を食べるのに困るということはないのではないか、またないように努力しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  114. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は、海洋法会議に臨む政府基本方針でも、遠洋漁業国の利益が損なわれない、つまり日本の遠洋における漁業の権益、利益が損なわれないように最大の努力をするということを言う一方、沿岸の海底については、二百海里の範囲内での海底鉱物資源を探査、開発する排他的な権利を有するの立場をとるということで、日本は自分の都合のいいことは、これは日本としては、当然考えることだと思うわけですけれども、遠洋漁業の権利にできるだけ損なわないようにする、そのかわり、距岸二百海里のいわゆる海底資源等については日本の権利が確保されるようにする。そういうような主張というものは、相矛盾するように思うわけですが、そこらは矛盾しないのでしょうかどうでしょう、見解を承りたい。
  115. 内村良英

    ○内村政府委員 具体的には、通産省としては海底資源を極力確保するようにしたいと考えておるのは、これは国益上当然だと思います。そこで私どもも、これは水産の立場から当然国益を守るということで臨むわけでございまして、生物資源と海底資源というものは、性格も違いますし、必ずしも矛盾するということではないのではないか、国益第一で考えたい、こういうふうに考えております。
  116. 井上泉

    ○井上(泉)委員 まあナショナリズムの立場から考えているということ、これは必要かもしれませんけれども、やはり経済水域二百海里というのがもう国際的な世論になってきておる。それから、領海十二海里というのも、これも大臣も何回となしの、領海十二海里はもうとうの昔、昨年あたりでこれは決定されておらねばならぬようなものが、まだ延び延びになっておる。いまの内閣官房の話を聞くと、この領海十二海里も、この国会の中でその法案が出てきて、そしてその法案が通るようななにがあるんだろうか。恐らくこの領海十二海里の宣言というものは秋以降になりはしないか。一方においては、三月からの国際海洋法会議でこの経済水域二百海里というものが決まる。こういうことになると、日本の漁業者としては非常に追い詰められてくる状態の中に置かれるということになりはしないかと思うのですが、大臣、その辺の心配はないですか。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、しばしば申し上げましたように、わが国の水産、特に沿岸漁業の立場を守るという意味からいけば、これは一日も早く十二海里というものを宣言をしたい、こういうふうに考えておるわけでありますが、また、そういうふうに努力もしてきておるわけでございますが、これは農林省だけの問題でなくて、各省にまたがる問題でございますので、その辺の調整をいたしました結果、十二海里はやる、同時に、これは法律でもって施行するということが決まったわけでございます。ただ、その時期、態様等につきましては、この三月十五日から開かれるニューヨークの海洋法会議で国際的な合意として十二海里が決まって、それに基づいてやることがいいというふうに考えるわけでありますが、しかし海洋法会議は領海十二海里だけの問題でなくて、経済水域二百海里その他各種の問題を控えておりますので、そう簡単に結論が出るかどうか非常に微妙な段階になっておるし、予断を許さないということになっております。  しかし、海洋法会議世界の動きが非常に急ピッチでございますので、このニューヨークの会議ですぐ結論は出ないとしても、引き続いて会議も行われるのではないか、そしてそこで一つ方向が決まっていくのではないかというように私は期待をしておりますし、これは十二海里の問題にいたしましても、わが国だけでやろうと思えばやれるわけでありますけれども、しかし、経済水域二百海里等の問題もありまして、これはやはりやるとしても、できれば国際的合意に基づいてやる方が、これはわが国の漁業の立場から見ましてもいいのではないかというふうに考えておるので、私はそういう意味でニューヨークの会議には期待をしております。しかし、これは会議結論が出ないからといっていつまでも待てる問題ではないわけでありますから、その辺にはおのずから会議の推移を見きわめながら政府としては決断をしなければならないときも来るというふうにも思うわけであります。
  118. 井上泉

    ○井上(泉)委員 今度は政府は国際的にはもう経済水域二百海里ということは世界の大勢だ、だからこれには心から賛成ではないけれども、やむを得ず賛成、こういうふうに政府の見解を見ると考えられるわけですが、私は漁業の権益を守るということと、それからその漁業の権益を守るからこうしてもらいたいということと、それから通産省の関係でこういう権益を守る、通産省の利益の立場から日本の国益を守るためにはこうしてもらわなければいかぬとか、そういうふうなひとつの日本の国が経済水域二百海里という問題を提起する中で、この二つ、そういう相矛盾したようなものが国際的に通るだろうかどうだろうか、こういう心配をするものでありますけれども、しかし、それは私ども直接の衝に当たるものではないし、直接の政治の責任者としての政府がそういう方針で臨むというから、それはそれに期待する以外に道はないわけですけれども、そこで、その領海十二海里ということと、私は経済水域二百海里にするということもあながち日本がマイナスになるとは考えられないわけです。  つまり、三海里の領海を十二海里にふやすことによって日本の領土の区域内というものはこれはずいぶん広くなるでしょう。それから、日本は四面海に囲まれているところですから、片や日本という立場から考えれば、遠洋漁業におけるマイナスはこれをのけて、日本というものの立場だけを考えてみた場合には、これは経済水域二百海里ということによって日本のいわゆる権益の及ぶ範囲というものは非常に拡大をされてくる。そういうことになると、このいわゆる国土の狭い日本が、この海に囲まれた日本の海洋資源というものが、この日本経済管轄、いわゆる日本の統治の中へ入るということになるから、そういう面から見れば、むしろ日本もこの二百海里と十二海里というのは日本の国益という意味から考えてマイナスにならぬのじゃないか、その中で漁業という問題を考えていったらいいのではないか、そしてその中で遠洋漁業における被害に対する対策というものを考えたらどうだろうか、こういうように私は考えるわけですが、大臣の見解はどうですか。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 領海十二海里につきましては、私たちはこの実現が一日も早いことを漁業の立場においてこいねがっておるわけでございますし、それは国益という点から見ても決して相反する問題ではないと思うわけです。経済水域二百海里につきましては、世界の大勢もそうですし、日本としてもそれを認めなければならないという基本的な考え方は持っておりますが、日本にとってプラスになるのかマイナスになるのかというのは、経済水域二百海里という形がどういう形でこれが決まるかということに問題がある。経済水域が完全に排他的な権利ということで決まるということになれば、日本はあらゆる面で大変なマイナスということになるわけでございますし、たとえば漁業問題については伝統的漁業国の利益を認めるという立場で経済水域が認められるということになれば、漁業の受ける損失というものはそれほど大きなものでなくて済むかもしれない、こういうふうに考えるわけでありますし、あるいは群島問題とかあるいは大陸だなの問題とか、そういうものが経済水域の中に含まれておるわけですから、それがどういう形で決まるかということが日本にとってプラスかマイナスかということになっていくのじゃないかというふうに考えております。
  120. 井上泉

    ○井上(泉)委員 経済水域二百海里の中の問題によって、日本の遠洋漁業というものが大変な——これがそのままやられた場合には、それは非常な打撃を受けるということは、これはもう当然ですが、しかし、これは従来の国際的な慣行といいますか、漁業の権利というようなものの中から、これはやはり日本の遠洋漁業の今日までの既得権利というか、既得権益というものは、国際的にも当然若干の何はあっても認められるのじゃないか。  そこで、水産庁長官の言われたような、これに従事した漁船の問題については、これは一〇〇%権益が認められるということにはならないと思いますから、そういうものに対する救済措置というようなものを今日考えておかないと、これは大変なことだ、こういうように思うわけです。そこで、そういう海洋法会議調査によってどうこうということじゃなしに、これに対する対策というようなものについても、今日水産庁においては、こうなったらこうする、こうなったらこういう方法をとるというようなことで、何十年もの間遠洋漁業で命を的にして働いたこの漁業者の人たちに、今日の段階でも安心して漁業のできるような、ひとつ政府としてのきちっとした方針を示してやるのが水産行政として温情のある行政の措置だと私は思うわけですが、その点について水産庁どういうふうに処置をされておるのか承りたい。
  121. 内村良英

    ○内村政府委員 大臣から御答弁ございましたように、二百海里の中の沿岸国の権限がどうなるかによってかなり影響が違ってくるわけでございますが、いずれにいたしましても、水産業が国民に対して動物性たん白質の過半を供給するきわめて重要な産業であるということにかんがみまして、そこで水産庁といたしましては、沿岸漁場の整備開発と栽培漁場の推進ということで、今後需要増加すると思われる中高級漁の漁獲高をふやしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、遠洋漁場の確保につきましては、先ほど申しましたけれども、国際的な交渉あるいは協力によりまして、この漁場を確保していきたい。同時に、と申しましても、公海分は残るわけでございます。かなり深いところになりますけれども、残るわけでございますので、新資源、新漁場の開発に大いに力をいたしたい。  そうしても人が余ってくるということは考えられるわけでございます。これらの人々の雇用の安定につきましては、一時的には雇用の安定のための補助金を給付するとか、その他の措置をとりながら職業の転換を図っていく。できれば海で暮らしている人は海に帰りたいということであれば、遠洋漁業に従事している人が沿岸漁業に帰っていくというような道も開けるようなことも検討したいというふうに考えておるわけでございます。
  122. 井上泉

    ○井上(泉)委員 日本がいわゆる海に囲まれた国であって、しかもその領海が三海里が十二海里になり、あるいは国際的にも二百海里になってくるということになると、日本の水産業というもの、漁業というものの構造を非常に根本的に見直してやらなくてはならないじゃないか。もちろんそしてまた外国の資源で日本の工業が動かされていくということでなしに、この無数にある海の資源というものを生かして、そして日本の国のいわゆる富というものをつくり出すというようなそういう点から考えて、水産行政というものが、日本の水産政策というものが今年、来年あたりから大きな転換の時期にある、こういうふうに思うわけですけれども、そういう点についての大臣の見解を承りたいと思います。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、いまお話がございましたように、わが国の水産の前途というものは必ずしも楽観はできない、やはり相当転換をしなければならないような事態に立ち至りつつあるというふうに判断をいたしておるわけでございます。そういうふうな判断のもとに、沿岸漁業についてはこれを整備、さらに振興をいたしていくとともに、遠洋についても残された資源の確保ということに対しては積極的に進めていかなければなりませんし、あるいは深海漁業あるいは南氷洋のオキアミ漁業というような未開発のそうした資源の開発等についても、これはもう積極的に取り組んでいって、そしてわが国の水産物の確保というものに努めていかなければならない、こういうふうに根本的に考えております。
  124. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういう大臣の構想というのを実らしていくためには、予算というか、水産に対する投資というものがもっとなされなければならぬわけですが、どうもこれだけの大切な海に対する、水産に対する投資としては非常に予算が少ない。  たとえば行政管理庁の沿岸漁業の構造改善事業に対する行政監察結果に基づく勧告でもわかるように、これは水産のベテランの水産庁に対してベテランでない官庁から勧告をして、いろいろやり方等についても指摘をされておるわけですけれども、私は結局のところ構造改善に対する予算なんかも非常にみみっちいから効果が上がらないんだと思うのですが、そういう点についてもっと予算的にも、これはまあ五十一年度の予算は決まっておるからどうこうにはならぬわけですけれども、やはり予算的にも水産行政というものをもっと見直さなければならぬじゃないかということを常々考えるものですが、これについて大臣の見解を承っておきたいと思います。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もいま御指摘のございましたような考え方で、五十一年度予算の獲得に当たりましても力を注いだわけでございますが、全体的な予算のバランスというものもございまして、われわれが期待をしておる予算という面から見ますと、まだ十分でないことは、これはもう明らかでございますが、しかし今回の予算の中にあって、これからの新しい水産政策のあり方というものについてはできる限りの努力はいたしておりまして、そういう点についての芽も二、三出すことができたというふうに考えておりますが、これからはいまおっしゃるように、水産は日本国民食糧確保という面から非常に大きなウエートを持つわけでございますから、さらにこれは力を注いでいかなければならない部門であるというふうに考えております。
  126. 井上泉

    ○井上(泉)委員 北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国との間において、漁業協定が民間もない、政府間ももちろんない。日中間における政府間協定もできたわけですが、その日中間の政府間協定のできる以前には民間漁業協定というものによって積み上げられてきて、今日日中の国交が回復されて、そこで漁業協定が結ばれたわけですが、やはり今日北朝鮮との国交回復がなされていない段階で政府間の協定ということは期待できないけれども、民間協定というものはやはり期待せねばならぬじゃないか。このことは本年度の予算審議の予算委員会でわが党の赤松副委員長が質疑をしたときに、外務大臣も民間協定については協力をする、こういうことを言われたのですが、外務大臣がそういうことを言われるくらいなら、これは農林大臣としては単なる協力でなしに積極的な協力をするという考え方があるのだと思うわけですが、どうですか。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 北朝鮮との間の漁業についての政府間協定、これはいまお話がございましたように、国交が回復されてないですから、これはできないわけでございますが、日中関係では政府間協定の結ばれる以前には民間協定というものがあって、そうして漁業の資源保護、秩序ある操業というものが実現をされてきたわけでございます。したがって、一般的に言えば、北朝鮮との間においても民間協定というものが結ばれるというふうなことはわれわれとしても理解できるわけでございますが、問題は今日の漁業者、わが国の北朝鮮水域において漁業を営んでおるところの漁業者の間にそうした機運があるのかないのかという点も一つの問題ではないかと思うわけでございます。漁業界の間においてそういう点についてはいろいろと論議もされておるというふうに聞いておりますが、漁業界で積極的に民間協定を求めるというふうな機運が熟して、そうして北朝鮮との間に民間協定を結ぶというふうなことになってくれば、これは日中間においても民間漁業協定が結ばれる段階におきまして農林省としてもいろいろと協力をしておるわけでございますから、そうした形での協力をするということは、これはやぶさかではないわけでございます。
  128. 井上泉

    ○井上(泉)委員 日中間の漁業協定民間協定が結ばれる以前からもいろいろと政府はこれに対して助言等の措置も講じてこられ、あるいは政府間協定が結ばれる以前の四十九年度においても約一億という日中間の漁業問題についての予算というものも計上されておるわけですから、もうここらあたりで朝鮮民主主義人民共和国との間における漁業協定についても、これは漁業者にそういう意思があるとかないとかいうことも一つの要素には違いないけれども、かの松生丸のような不幸な事件が起こるということもやはり協定のないところから生じた不幸だと思うわけですから、この不幸を防除するためにもそういう協定というものを私は積極的に進めるように努力を願いたいということを要望しておきたいと思います。  林業問題についてたくさん質問したいわけですけれども、もう与えられた時間がないので、一つだけ。  山というものがどれだけ——日本が海と山とをのけたら、日本の国というものは非常に弱いものですが、その山の場合でも、国有林の場合にも山を管理するところの人が、現在では担当区の主任というようなものが約三千ヘクタールのものを管理をして、それが一人です。一人でパトロールするとかいうようなことは、これは常識で考えられないわけです。一人でおってどういう事故が起こるかもわからないわけでしょう。だから、やはりこういう三千ヘクタールものものを一人で担当区に置くとかいうようなことではなしに、やはり複数の者を配置をすべきではないか。これは労働の安全という点からいっても、そうしてまた山の管理の面からいっても、この三千ヘクタールを一つの基準にして一人ずつ置くとかいうような、そんなやり方というものは、これはもう当然私は改めるべきことだと思うわけです。そういう点について林野庁長官の意見と、さらにまた山林の労働者が非常に老齢化しておる。山を守っていくということについては、やはり山で働けるような条件をつくらなければいかぬ。条件を与えなければいかぬ。ところが、国有林の場合でも、もう植林をしてそしてその植林が二年、三年とたって生育をしておるのに、雑木が覆いかぶさってあるいはツタカズラがいっぱいまといついて、それでもう成長がとまってしまっておる。こういうような状態というものは、林野庁の方が予算がないからそれに措置ができないというようなとこで放置をすべき問題ではないと思うわけですが、そういう点について、大臣としても林野庁の言うとおりがごもっともということではなしに、山の管理というものについてはもっと目を向けてもらいたいと思うわけです。その点を林野庁長官並びに大臣から見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  129. 松形祐堯

    松形政府委員 ただいま担当区の複数制というようなお話でございます。私ども三千幾つの担当区によりまして全国約七百八十万ヘクタールの国有林の管理経営等に従事いたしておるのであります。したがって、各局それぞればらばらではございますけれども、その仕事の多忙さとかあるいは管理する森林の状態とかそういうことに従いまして複数制をとっておるところもございますし、あるいは補助職員として二名もおるとかいうようなところもございますし、またそういう補助員を置いてないところもあるわけでございます。その場合にこの管理等につきまして、特に入り込み者等の多いところにつきましては複数制というようなことをとっておるわけでございますが、現場を走り回る担当区主任といたしましては大変労働力、若さを必要とするわけでございますけれども、実は国有林の職員自体も老齢化いたしておりまして、そういう老齢化している方々の更新という意味を含めまして現在それらの数についてもいろいろ検討いたしておるわけでございます。特に六十歳以上というような方々も数百名というような状態でございますので、新陳代謝ということは今後真剣に考えてまいりたいと思っております。  なお、老齢化でございますが、一般労働力の老齢化、国有林につきましては平均四十六歳というようなことになっておりまして、現在伐採量等の縮減に伴いましてこの事業量の減というものが出てまいっております。したがって、それに見合う労務の状態とかあるいは将来とも確保していくべき必要な労務とかそういうもの等を含め、事業量との見合いにおきまして現在各事業地ごとにその必要な数等につきまして検討いたしておりまして、その中で私どもは、いろいろとその老齢化に対する対策等も含めまして十分検討をいたしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  130. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 林業労働者の最近の動向は、いま林野庁長官から申し述べましたように量的には横ばいの傾向にありますが、高齢化の進行等によりましてやはり質的には低下しておるという状況ではないかと思うわけでありますが、そういう中にあって森林の維持、管理及び林業の発展のためにはやはり優秀な労働力を将来にわたって確保していくということが必要でありますので、従来より林業構造改善事業等経営基盤整備のための施策及び就労条件の向上を図るための施策は講じておるわけですが、さらにその点は力を注がなければならない問題だと思うわけであります。  なお五十一年度予算につきましては、新しい施策として林業労働改善促進事業を開始をいたしまして、林業労働者の雇用関係の明確化、社会保険制度の適用促進その他労務管理の近代化を推進する等施策の充実を一層図っていきたいと考えております。
  131. 湊徹郎

    湊委員長 次に、中川利三郎君。
  132. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林大臣にお伺いするわけですが、農業基本法農政の柱として自立経営農家の育成ということが挙げられていますね。その意味で、政府が、第一次構造改善事業に引き続きましていま行われている第二次構造改善事業、この成否いかんは農政の全面目をかけられてやられているものだと考えるのです。二次構として昭和四十五年度にスタートして以来五十年度にかけまして事業を着手した地区の数は全国で千二百六十八地区です。そのために投下した総国費が千五百二十六億七千七百万円。膨大なものです。その中でいま四年を一期とした事業完了地区、つまり卒業生が次々と巣立って、その動向はまさに農基法農政の試金石として国民から注目を受けているわけであります。  そこで、まずお伺いしたいことは、第二次構造改善の推進に当たりまして何が最大施策の焦点になっているのか、大臣はこの点をやるのについて何が一番心がかりになっているのか、この点についてまずお伺いしたいと思うのであります。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり自立農家を育成をするために条件の整備あるいは規模の拡大といったようなものを進めていくということが構造改善事業の主たる目的であるというふうに理解をしております。
  134. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、自立農家をどう育成していくか、劣等生をどう出さないで進めていくかということですね。それについてそれではお伺いするのでありますが、全体としてそれがうまく行っていると考えるのか、いろいろ問題があると考えるのか、この点についてお聞きしたいと思います。
  135. 岡安誠

    ○岡安政府委員 二次構は、始めまして指定の方は相当進んでおりますけれども、先生いまお話ございますとおり、事業の実施を見まするとまだ半ばに達していないというような状態でございます。したがって、成果を云々するには多少早いとは思いますけれども、やはりそれぞれ事業効果を発揮しているというふうに私ども考えております。ただやはりしさいに点検をいたしますと、問題がある地区もあるように私どもは承知いたしております。
  136. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 うまくいっているようだけれども問題があるような地区もある、何か答弁としてはすっきりしないわけでありますが、そういう点はどうなっているか、ここはうまくいき、ここはうまくいかないということは何によって確認しているのですか。
  137. 岡安誠

    ○岡安政府委員 一次構の場合と違いまして、二次構の方はやりっぱなしではなくてアフターケアをするということを私ども考えております。したがって、四十九年度から事業実施後の管理運営の指導をするというような目的でもって補助金も出しておりますし、そのための要員も配置をいたしております。それらの要員からそれぞれ報告が上がっておりまして、その報告の内容によりましてやはり問題のある地区があることも私ども承知をいたしているわけでございます。
  138. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは具体的にお伺いしますが、あなたはやりっぱなしではなくて二次構の場合はアフターケアを十分やって、そのための担当者もいる、こういうことでございましたが、全国で数ある中でも私の地元の合川町というところの事例でお聞きするのでありますが、念のためこの町について申しますと、産業と言えば農業と林業だけ、それ以外に生きるすべのないところでございまして、その農業にいたしましても、平均一戸当たり反別が〇・八ヘクタール、どちらかと言えば山合いの非常に貧しい町なわけでありますが、だからこそ農業で何とか自立したい。農業で飯が食えるようになりたいというそういう切ない願いが第一次構に引き続いて二次構でも発足の四十五年から四十六年と引き続いて事業実施に踏み切った。秋田県の中でも先端を切った町なわけでありますが、ここでどういう問題が起きているかといいますと、二次構で導入した施設というものは、たとえばカントリーエレベーター、苗供給施設、格納庫、あるいは農機具、こういうものがあるわけでありますが、これの四十九年度末までの累積赤字が六百五十三万七千五百三十五円ある。しかもこの六百五十三万何がしの累積赤字というものは、ただ単にそこだけ出たのじゃなくて、町当局が何とかそういうふうにならせないで立派にさせたいということで、昭和四十七年以来、毎年毎年町から農協に対する町単独の補助金を継ぎ足してきたわけですね。その額は五十年まで含めますと二千二百万円以上になるわけです。小さな町でこれだけ継ぎ足してきて、なおかっこのような赤字が生まれているという実態なわけです。また、同じ二次構で導入いたしました稚蚕飼育所、これで見ますと、私の手元に五十年十二月三十一日の収支決算書があるわけでありますが、収入の部は利用料ゼロ。支出の部は四百七十四万円。そうするとこの収支を何でトータルするかといいますと、町の赤字埋め合わせのための補てんでこの分を予定しておる、こういう状況なわけであります。したがって、四百何十万円というものは全部町の補助を受けまして収支を合わせる、こういう状況になっているわけでありまして、これについてたとえば町の人はどう言っているかというと、町長さんの言葉でありますが、私はせんだって行ってまいりましたら、この稚蚕の共同飼育所にいたしましてもどうも国のやり方の農業金融はせっかち過ぎるんではないか、米プラス養蚕の方は、実際に繭生産が軌道に乗るにはやはり四年から五年はかかるのじゃないか、それなのに償還は次の年からやれ、こういう状態になっている、実態に見合わないじゃないか、こういうことなんですね。あるいは、カントリーエレベーターにいたしましても、最初の二、三年手厚くめんどうを見るかどうかで全部決まってしまうんだ。最初のうちはカントリーに米を入れるということに対して農民は非常におっかなびっくりなわけでありますが、それを、やはり同じようにすぐ償還が始まるわけでありまして、そういう赤字分はそっくり町が負担しなければならない。こういう状況が生まれているでありまして、まさに町の町長やその他の関係者の発言というのは、農民農業団体の声を反映したものだと思うのですね。そういう点につきまして、こういう事態をどう考えるかということをお伺いしたいのであります。
  139. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いま御質問の秋田県の合川町、この町では二地区構造改善事業を実施しているようでございますが、御指摘のように、カントリーエレベーター、稚蚕共同飼育所等の運営の結果、現在まで相当赤字が出ているということも承知いたしております。それらの原因、いろいろあろうかと思いますけれども、要約をいたしますと、そもそも構造改善事業によって設置、導入をいたします経営近代化施設等は、共同利用がたてまえになっております。     〔委員長退席、片岡委員長代理着席〕 そこで、やはり共同利用のためには、それを利用する組織体制が整備いたしませんと完全にその機能を発揮しないわけでございますけれども、この町の場合には、ぞれそれの施設につきましての共同利用組織体制の整備が非常におくれたということが一つの大きな原因であろうというふうに思っております。また、計画の内容をちょっと見ますと、たとえば稚蚕共同飼育所につきましては、それを運営するに必要な共同桑園というものの設置も計画されておりますけれども、その共同桑園の設置等がやはりおくれまして、両者にタイムラグがあって、完全にその施設が利用できないというような原因があったというふうに私どもは反省いたしておるわけでございます。
  140. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私がお聞きしているのは、たとえばお蚕さんの共同飼育所でも、軌道に乗るまでは四年も五年もかかると一般的に言われているわけです。それを次の年から償還が始まっていくということで、つまり皆さんの計画が、上から押しつけ、農民の実態に合わないものだ、そういうものを押しつけているところにこういう無理が起こるのだということをみんな言っているわけですね。そこで、あなたは、共同利用だから共同の計画の中でうまくやればできるはずだ、こうおっしゃるわけです。ところが、たとえば稚蚕の赤字がなぜできたかということを見ましても、やはりいまの計画の機械的なやり方の中でこういう問題が起こっているということですね。どういうことかというと、稚蚕の方は四十六年で当初計画を立てました。百ヘクタールの予算事業です。ところが四十八年に桑の植栽が始まったわけでありますが、ドルショックのために三十ヘクタールに計画変更になっているのですね。すると四十九年に——四十九年というはその建物を建てたわけですが、四十九年はこの事業の最終年度で、まだ桑の植栽を前年にやっても、次の年に建てなければあと建てる機会がないわけですね。したがって、共同利用と言いながらも利用者がいないのです。これは農民責任じゃないでしょう。だから、そのしりぬぐいを全部町がかぶらなければならなかったりどなたか負担しなければならなかったりするということは、こういう農業構造改善事業としての農業基本法農政の柱そのものの育成からいたしましてもおかしいじゃないかということですね。したがって、何もむずかしいことを言うのじゃなくて、実態に見合ったかっこうで償還期限を延期してもらえないだろうか、こういうあたりまえなことを言っているわけです。これはどうですか。それもだめだというのですか。
  141. 岡安誠

    ○岡安政府委員 確かにおくれた理由は多少あると思います。仰せのとおり、桑園の造成がおくれたということ、それも事実でございますけれども、稚蚕共同飼育所は、計画から言いますと、その造成された桑園だけを使ってこの稚蚕共同飼育所を運営するようにはなっておらなくて、既成の桑園を使いましてこの稚蚕共同飼育所を利用するというような計画になっておりますが、それらの利用がうまくいかなかったのは、やはり利用すべき組織体制がうまくいかなかったというふうに私ども理解しておるわけであります。  それにいたしましても、確かに利用が五十年度はほとんどない。五十一年度以降これをふやす計画になっております。にもかかわらず、償還の方はそれよりも以前に発生をする。まだ現在は据え置き期間中のようでございますけれども、それ以前に発生をするというようなことになります。ただ、この資金が、近代化資金を借りているというケースでございます。近代化資金につきましては、私ども、償還猶予、条件変更というようなことよりも、できるだけひとつそれは借り入れ主体がやりくりいたしまして返していただきまして、万一なかなか返済ができないという事態には、これは保証また保険という制度もございますので、それを利用していただいて償還をするものであるというふうに理解をしておりますので、この償還が現に始まる事態に立ち至りましたならば、県を通じまして借り入れ主体とも、どういう処置をとるか、これはよく相談をしてみたいと思っております。
  142. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、いまは農林省の構造改善局の局長答弁を求めているのであって、農業近代化の方の係の話を聞いているのじゃないのですよ。つまりそういう局部的な問題を限って、そこで解決すればいいじゃないかということではなしに、やはり農業構造改善事業の本質から来る問題としていまの問題を私は提起しているわけであります。    〔片岡委員長代理退席、菅波委員長代理着席〕 そういう意味からするならば、あなたは、総括指導員を置いて末端のアフターケアやら意見の出し方を十分に検討しながら十分やっているということを先ほど言ったわけですが、こういう問題が起こって、現に大概の農民は泣き寝入りをしたり、だれかが負担したりして、あるいはそれから皆離れていくとか、皆さんの目的自体がうまくいかないということになるわけですね。つまり、皆さんが基本農政として出された、自立経営農家の育成だといいながら、自立を含めていまずっとだめになってきている、そういうことが実際にあらわれているからわれわれは問題にしているし、やはり農民の要求を聞いて、実情に見合ったかっこうで援助の手を差し伸べるというか一だから、償還期限をもうちょっと実態に見合って、いまゼロなんだから、これをそこの団体へ行って肩がわりしてもらったらどうだなんという、そういう他人事として聞いているのじゃないのですよ。その点を政府責任において手だてをする、そういうおつもりがあるのかどうかということで聞いているのです。御返事をお顧いします。
  143. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまお答えいたしましたとおり、その当該の地区につきましては、理由があっていろいろうまくいかないわけでございますので、そういうような地区につきましては、個別、具体的にひとつ御相談はいたしたいということを申し上げているわけです。総括指導員の指導も、これはやはり個別、具体的に指導をするということでございますので、償還の問題が出た場合にはその償還をどうするかということは、ひとつ個別、具体的に御相談をして指導してまいりたいということを申し上げたわけであります。
  144. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いまの問題でも個別的、具体的に前向きに相談に乗る、こういうことですか。
  145. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先ほどちょっと申し上げたと思いますけれども、近代化資金につきましては、通例償還延期とか条件の変更ということはいたしておらないわけでございます。したがって、償還が本当に不可能かどうか、どういうようにして償還ができるのかということは、借り入れ主体の状態その他につきましてよく御相談をしたい、万一償還不可能の場合には保証その他の制度があるから、そういう活用ということも考えられるということを申し上げたわけでございます。
  146. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私はこれに余り長い時間をとりたくないのですよ。先ほど言ったとおり、利用者がまだ一人も出ていないのですよ。ゼロですよ。だから、条件は完全に皆さんが相談できる条件に合致しているものです。しかも、農民の方々の責任じゃないわけでしょう。その責めに帰せらるべきものではないわけです。したがって、当然こういう事態に対して手を差し伸べるのが国の責任であり、県の責任であり、あるいは総括指導員の意見としてこういうものこそやらなければならないのに放置されているから、私はいま問題を出したわけでありますので……。
  147. 岡安誠

    ○岡安政府委員 具体的に申し上げますと、実は稚蚕共同飼育所の設置をいたしましたのは、農協が資金を借りて設置をしたわけでございます。したがって、問題は、返済が可能かどうかというのは、形式的に申しますと、稚蚕共同飼育所の収支も関係がありますけれども、第一義的には農協が返済が可能であるかどうかという問題になりますので、それはひとつ具体的に御相談をいただいて措置をしたいということを申し上げたわけであります。
  148. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、農協が設置したことはわかっていますよ。農協が返済することが可能かどうかということは、可能でない証拠に、いま町から何千万という金が出ているということも申し上げたのです。しかも、私が言いたいことは、農協が云々と言うけれども、これは国の構造改善事業として行われる事業だということですね。その点を全く目をつぶって、農協でございますだとか、こっちの何とか資金でございますなんということで問題は解決しないだろうということで再々申し上げているわけでありますが、時間の関係がありますから、この点は後でもう一回詰めます。  ところで、農機具の問題でありますが、これも昭和四十五年、六年事業ですから、そろそろ買いかえの時期が来ているわけであります。しかしそれを更新するための金がないわけですね。町長さんの言うには、機械がもっと長もちするとか、少なくとももう一度買いかえのときに三割ぐらいの補助金を国が出してくれるとかしないと、せっかくここまで育ってきた協業が崩れることは目に見えておるとおっしゃっておるわけであります。また私、農協の業務部長さんにもお会いしましたけれども、同じようなことをおっしゃっているわけであります。こういう点について、農民の要求にこたえて前向きに再検討するのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  149. 岡安誠

    ○岡安政府委員 構造改善事業で導入しました農業機械について買いかえの時期が来ている、それについてめんどうを見るのかという御質問だと思いますけれども、私どもは第一回の導入、最初の導入につきましては、補助対象の場合には、これは補助金等を交付いたしますけれども、更新の場合には自力でもって更新をするということをたてまえにいたしております。したがって、買いかえということを理由にいたしましてもう一度補助金を出すというようなことは考えておらないわけでございます。
  150. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、自分でやりなさいということになりますね。自分でやるとすると、どうなるかということですね。どういうことになるかというと、あなたのおっしゃることを実行するとすれば、こうなる。大体二億数千万の金が一つのこの町全体でかかるということです。李岱というそこの一つの協業の単位がありますけれども、ここは九十戸が参加しているわけでありますが、そこだけでいま導入機械が、トラクターが三百五十万円のやつを二台持っておるのです。コンバインは二百万円のやつを二台持ってます。田植え機が三十万円のやつを三台持っております。更新のためには千二百万円必要だということですね。ところがこの町、二十協業あるわけでありますが、全体から言いますと、合川町全町で機械を更新するとなれば、二億五千万の金がかかるということが出ているのです。ところがこの町全町の米代金は六億円です。協業に参加している農家はちょうど半数ですから、千五百戸の中で七百六十八戸ですから、ほとんど機械を更新するためには、この六億円の半分の金、全町の米代金の半分の金、その米代金を全部農機具代金に使わなければならないという状況が生まれるわけですね。そうせいと言うのですか、あなたは。
  151. 岡安誠

    ○岡安政府委員 買いかえの場合等につきましては、一般的に農機具の購入につきまして要件が適格であるならば、制度金融の措置がございます。したがって、そういうような金融を御利用いただくという道もあるのではなかろうかというふうに考えております。
  152. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 平均〇・八ヘクタール。先ほど言いましたように、零細な農家ですが、少しでもと思って大型機械に頼って協業に入っているわけですね。それをあなたは制度金融があるからと言いますけれども、制度金融があることは確かに私も承知しております。しかしその制度資金として、たとえば農業機械がどういうかっこうで導入されたかということを、あなた御存じでしょう。申し上げるならば、その農機具自体が、大変性能がいいかげんなものをあなた方が政府責任で金をつけて農民に導入さしたでしょう。だからこの町ではどういうことが起こっておるかというと、もう四十五年に入れた農機具、四十六年に入れた農機具は性能ががたがたと落ちてものすごい状態になって、懸命に修理しても話にもならない状態だ。  そこで田植え機の事例でございますけれども、昭和四十五年に導入したものが余り性能が悪いので、四十九年になってそのメーカーへ申し込んで、抗議して十五台を無償で取りかえさせたという、こういう事例もあるのです。いかにひどいかおわかりでしょう。当然、私は、そのことについて申し上げるということになれば、ここに資料もございますけれども、政府農業構造改善事業における農業機械の導入実績というものを発表していますね。二次構の中で、コンバインは昭和四十八年から本当の検査が始まったわけでありますが、四十七年まで九百八十八台、田植え機の場合は四十九年から検査が始まったものですが、それ以前に二千八百九十二台、二次構としてこれは導入——導入というより農民に預けさせていますね、制度資金、補助金をつけて。ところが、これはいずれも検査前ですから未検査品をあなた方預けたわけでしょう。この中に不合格品だとかいろいろなものが入っておったということは、その後の検査で明らかになったわけです。  そういう農民が何ら責任を負う筋合いのないものを皆さんは押しつけておいて、これは自分で買いかえなさい、どうして買いかえることができるのですか。あなた方は、たとえば価格を補償するとかあるいは利用率を上げると言ったって、これはできませんね。価格補償もしませんね。農民のいまの実態からいえば利用率を上げることができない。そうすると、政府が何かその部分をめんどう見てくれるということ以外に手はなくなると思う。でなければ協業が破壊して、せっかくの皆さんの所期の目的が逆に離散していくという状況をつくり出すことになるし、実態はそういうかっこうでずっと農業は破壊されてきているのじゃないですか。安倍農林大臣、どうですかこの点。いつも局長から聞いたってしようがない。
  153. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いや、ちょっと事実問題を申し上げますけれども、いま先生から未検査品を押しつけているというお話がございましたけれども、まず押しつげという点につきましては、これは補助事業でございますので、私どもはこういうメーカーのこういう機種の機械を買えというようなことを強制した覚えはないわけでございまして、導入地区の農家とよく相談をいたしまして、希望するものにつきまして導入を認めているというかっこうになっているはずでございます。  それから、未検査というお話でございますけれども、確かにトラクターにつきましては四十四年度から検査、これも申請による検査でございますけれども実施を始めておりますが、田植え機とか自脱型コンバイン等につきましては、四十七年から検査を始めたわけでございますので、それ以前に導入されたものは、当然これは検査を受け付ける機関がないわけですから、検査のない機種ということになるわけでございます。    〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕  で、私ども、不良なものがそう大量に入っているとは思いませんけれども、それぞれの機械につきましては、トラクターにつきましても、大体耐用年数はおおむね八年といわれておりますし、田植え機なり自脱型コンバイン等も、大体耐用年数は五年程度といわれておりますので、その程度の年数が経過すればこれはやはり買いかえをせざるを得ないというものもあろうかと思います。そこで、買いかえにつきましてなるべく低利の資金を融通をするということで、制度資金の御使用を勧めるということで対処しているわけでございます。
  154. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたはどうして未検査品が——コンバインについては四十八年以降はいいんですよ。いま言っているのは、私たち問題にしているのはそれ以前の問題でしょう。合川のいまの一次構造改善、二次構造改善も。田植え機も四十九年から検査して、それ以前にそういう農業機械が、選択とはいいながら構造改善、近代化の柱としてそういうものが目玉として入れられているわけでしょう。あなた方、不良品がその中に入っているということを、結果的に明らかでありながらそういうものがあるとは思いませんと言うのは、それはどういう根拠ですか。
  155. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いや申し上げましたのは、四十九年から田植え機なり自脱型コンバインにつきましては検査という制度ができましたので、それ以前のものは当然検査を受ける機会がなかったわけですから、未検査という状態で機械が導入されたものはいたし方がないということを申し上げたわけでございます。ただ、そういうときに導入されました機種が、すべて非常におかしいものというふうには理解していないということを申し上げたわけであります。
  156. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、お聞きいたしますが、つまり未検査品の中に不良機種も入っているわけでありますね。事実それぞれの検査年度の検査によりますと、そういうものがたくさん明らかにされたわけであります。つまり、そういうものもあるかもわからない、あることは十分予想されるという状況の中で、あなた耐用年数だけを問題にしていますが、耐用年数はたしか、たとえばトラクターは八年とかということになっていますね。これは税金を取る関係上あるいは償却の関係上の耐用年数であって、実態に沿わないものであるということは、たとえばいま秋田県の農業構造改善経営管理指導協議会が発行しているものの中にこの合川町の農機具のことについても書いてあるのですよ。この指導実施要領の中に、注釈のところに、たとえば田植え機については利用率が悪いということについては、圃場が軟弱でどうだとかいうことも書いてあります。あるいは町の人の意見を聞きましても、ここは積雪寒冷地帯だ、単なる机の上のあれじゃいかないんだ、こういうことも言っておるわけであります。まして農民やその他の方々が何ら関係のない不良品を十五台ただで取りかえさせたという事例にもありますように、そういうものを預けていながら、つまりその中にたくさんの不良品、欠陥車を預けているということは十分予想されながら、耐用年数であなたはどうのこうの言ってくるということは、これは政府責任を逃れたものというか、全く無責任な言い方ではないかと私は思うのですが、これについてはどうです、農林大臣。——大臣だ、責任の所在を問うているんだから。
  157. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 具体的な実例の問題でございますが、いまお話を聞いておりまして、それが直接政府責任であるというふうには私は考えません。
  158. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いや、政府責任である、全くそうだということでなくて、間接的にも責任があるでしょう。あなた方のいま最も大事な農業構造改善の中心的な第二次構をやっている地域におけるそういう農業機械の問題なわけでありますから、だから全部の責任をとれというのじゃなくて、せめて買いかえの時期には三割ぐらいの何かの補助を出してくれないか、こう言っているわけですから、この点にも聞く耳は持たないのかどうかということを聞いているのです。いかがですか。
  159. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ですから、これは構造改善局長が申し上げましたように制度資金という道も開かれておるわけですから、制度資金によって買いかえ等が行われることが筋ではないかというふうに考えるわけです。
  160. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は筋が——筋も大事ですけれども、実態からしてそれは可能なのかどうか、買いかえするとなれば協業に入っている農家の米代金がそっくりそれに飛んでしまうのですよ。後は、ままを食わないで天井向いて死ねばいいかということになるな、はっきり言えば。おたくの指導はそういうことなのかどうかということを聞いているわけですね。しかし、ここでがたがた言ってもしようがないわけでありますが、あれもだめだ、これもだめだで、何のためにアフターケアだとか補完事業だとか皆さんおっしゃっているのか全くわかりにくいわけでありますが、そうすると、私から言わせますと、あなた方は総括指導員をいろいろ置いているんだ、アフターケアをやっているんだと言いますけれども、実際は下からの問題が出てこないようになっているでしょう。ちょっとお伺いしますが、いまのような問題が出てきていますか。
  161. 岡安誠

    ○岡安政府委員 総括指導員が秋田県にはおりまして、それが個別に地区を巡回いたしまして相談にあずかっているわけでございまして、いまのような運営がうまくいっていないというようなことも当然相談にあずかりまして、いろいろ関係のところと協議をし、改善をするということもいたしておりますし、また、当該地区ではございませんけれども、ほかの地区におきましては施設が不足している、さらにこれを補完的に仕事をする必要があるという場合には、新たに補助金をつけまして補完的な事業を実施するというようなことをしているわけであります。
  162. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 たてまえは私はよくわかっておるのですが、中身のことで何ら実態に見合わない。農民が山ほど不満があっても、要求があっても、実際制度的にそういうものが上の方へ出されないような仕組みに実態はなっているのでしょう。たとえば私の手元に第二次構造改善事業の補完事業の実施についてという四十四年の農政局長通達がありますが、この中に書いていますね。これを見ましても補完事業をやる場合は限られているのですね。どういうことが書いてあるかと言いますと、農業構造改善計画達成のため不可欠な事業であって次に掲げる要件のすべてを満たすものとすると書いてある。そして要件は六つあるのだ。もうこの要件の全部を達成しないと補完事業をやらないぞということなんです。つまりその中にはいま言ったような問題は全然上がってこない仕組みになっておるのですね。たとえばその(5)には「維持管理的なものでないこと」、とあって、維持管理はだめですよと最初からあなた方壁をつくっているわけであります。その他六つあるわけですから、これにすべてが該当する問題というのはおのずからもうわずかしか出てこない。あとは全部ふたしているということでしょう。だからどんなに下に問題がありましても皆さんのところにはくみ上げられないように仕掛けしてある。あなたはたてまえ上総括指導員から全部意見が上がってきてやっていると言うけれども、そうなっていないじゃないかということが一つですね。  もう一つは、あなたは総括指導員とおっしゃいますけれども、秋田県の場合は何人いるかというと一人ですね。しかもやる地域はどこどこかといいますと、八つの地区があります。八つの地区の中身はどのくらいかというと、八十三集団あるのです。一つの地区に何集団かありますからね。この経営指導をするということは、一人ではとうてい無理なんですよ。できっこないんですよ。もし置くならば、地元の意見ですが、畜産だとか果樹だとか桑だとかこういった作目ごとに置いてやらないと実態に対応しないということは皆さんに言われていることであるわけですね。  また、この八つの地区の八十三集団をどういうふうにやっているかというと、実態は農業会議が十人のスタッフを置いてそのスタッフで分担して一人で八集団を持つ、一人八集団を持つということですね。ところが、この一人の方が八集団を持つことになればどういうことになるかというと、年に三回巡回指導することしかできないと言っている。なぜそうかというと、第一回目は状況把握、第二回目は具体的調査、第三回目が濃密指導、補完事業をやったらいいかどうかということですね。そういう全体を総括指導員が最終的に吸い上げするのが実態なんだということを言っていらっしゃるのですね。農民がふだんどこへ相談に行くかといったら、総括指導員はつかまらないわけですから、やはり役場へ行くとか農協へ相談に行く、これが実態なんですね。そういう状況だからこそ、この総括指導員一人ではとうてい対応できない。農業団体、専門家を含めた経営協議会でみんなで協力しながらやっているわけであります。このための五十年度予算を見ますと、三百三十二万二千円です。その半分が国から出るわけでありますから、百六十六万円ですね。これではやっていかれるわけがないと言っているのですね。ですから、総括指導員一人二人をふやすということよりも、本来的に言えばこれに要する事業費そのものを大幅にふやしてほしい、こういうことを言っているわけですね。  私はいま二つの問題を提起いたしましたが、一つはそういう仕掛けだし、一つは総括指導員の中身ですね。こういう実態を直ちにやはり改めなければいけない。この基準というか前段の通達なんか、こういうものは、やはり皆さん方自立経営農家育成だと言いながら、実際は自立経営農家でさえもやれない状態にしてきていることと私は密接な関係があると思うのですね。そうでないと言うのならば、この際農民の意見を聞いて、要求を聞いてその立場から手を差し伸べるということが私は本当の生きた農政だと思いますけれども、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  163. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず補完事業の要件がきつ過ぎるというお話でございますけれども、補完事業は、その名前が示すとおり、当初計画されたものだけでは完全に当初計画を達成することが困難であるという欠落の部分を改めて補完をするという事業でございますので、御指摘のような運営費というようなものにつきましては、これは補助金を出して補完をするというたてまえには初めからいたしておりません。したがって、要件の中には書いてないわけでございます。そもそも農林省はいろいろ助成事業をやっておりますけれども、運営費等に対します助成というものはきわめてまれな例でございまして、普通は、施設等につきましては助成の対象にいたしますけれども、その後の管理運営はみずからがやっていただくというのを大体たてまえにいたしているわけでございます。構造改善事業につきましてもそういうたてまえで進めておりますので、補完事業の中からはそういう管理運営的なものは対象除外をせざるを得ないということでございます。  それから二番目につきまして、総括指導員一人では非常におかしいではないか、もう少し考え方を変えたらどうかという御指摘でございますけれども、本来そういうような指導は一人では完全にできないことは当然の話でございまして、私どもは総括指導員というものはあくまでも苦情その他の受け付けの窓口というふうに考えておりまして、それぞれ必要な指導は専門の普及員なりその他の方にお願いをしてそれらにやっていただくということにならざるを得ないわけでございます。したがって、私どもは、総括指導員の数、現在平均一人でございますが、これを大幅にふやすということはなかなか困難でもございますし、それ以上にやはり総括指導員を助ける体制を整備する必要があるというふうに考えているわけでございます。  それから末端の協議体等の運営費が非常に少ないのでこの助成を強化しろというお話でもございますが、協議体は関係農民全体の協議体のほかに関係団体が集まって行う協議会等もございますけれども、それは必要最小限度の経費を助成することになっておりますので、現状より大幅に増加することもなかなか困難であろうというふうに思っております。
  164. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、私が申し上げていることは、維持管理的なことはだめだ、その他たとえばだめなことがずっと書かれていて、全部の条件に見合わない場合には補完事業をやらないということになっている。そのこと自体が矛盾じゃないか。実態からいたしますならば、そのこと自体が大変農民の要求そのものを全然上の方には来ないというふうに抑えているおもしにもなっていると同時に、構造改善事業そのものが、あなた方言うこととうらはらに、何か逆に農民をそこから出かせぎなりいろんなかっこうで流動させて協業化そのものから脱落しなければならないような状況をつくり上げている。ですから、本当に皆さんが農民の立場に立ち、たとえば農林大臣が所信表明で言ったように、「国内農業自給力を高めるためには、意欲的に農業に取り組み、農業生産の担い手となろうとする者を育成確保することが不可欠であることは申すまでも」ないなんというようなかっこうのいいことを打ち上げているわけですが、それを実施するためにもこの際やっぱり実態に見合ってこれを育てていくことがどうしても必要じゃないか。そういう意味ではこの基準なりあるいは通達そのものを考え直す必要がないかということを聞いているのです。  いま一つの問題は、総括指導員の問題でありますが、あなたはいろんな補助的な人々を含めてやらせているのだと言う。その人方がどうなっているかということも、私の方の実態調査の中では、秋田県では、先ほど言ったように県農業会議が十人の農業会議のスタッフで経営協議会をつくってかなり充実した体制なんですね。ところが、実態はこのスタッフのうち六人分の補助しか来ていないのですよ。あとの四人分はどこから出しているかというと、町村や農業団体から出してもらっている。だから何とか改善してほしいというのが皆さんの願いだし、また、活動費については削らないでくれ、そうでないと農家ばかりにしわ寄せがいくのだということを切々と訴えているわけであります。それで、先ほどの事業費そのものを大幅にふやして何とかしてくれ、このことに対してもう一回あなたの御見解を承りたいと思います。
  165. 岡安誠

    ○岡安政府委員 事業費の拡大につきましては今後とも努力したいと思っておりますが、事業費の中に運転資金を含めて拡大をしろというお話であるならば、これはなかなか困難であろうというふうにお答えせざるを得ないと思っております。その理由は先ほど申し上げましたとおりでございます。
  166. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 大臣、いま言ったように、あれもこれも皆さんが打ち上げたものが、中身へくれば、下へいけばみんな壊れているのですね。やっぱり大臣としても、これは大変なことだな、こういうふうに思って、何か考え直してもらわなければならないところにいま来ているんじゃないかというふうに私思いますけれども、いま岡安さんはああいうことで型どおりのことを話しているわけでありますが、それでは済まないというところが今日の問題なんですね。大臣として、いま言ったようなことに根本的に考え直すというようなお考えはありませんか。
  167. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 自給力を高めるために努力をしなければならない、農民の意欲を向上させるための努力をしなければならぬ、これも私が常々申しておることでございまして、そういう見地から、この第二次構造改善事業も行われておるわけでありまして、これは農民の期待にこたえておる事業だというふうに私は考えております。そうした事業実施の中にあって、今後とも改善しなければならぬ面はこれはもう積極的に改善をしなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、いま実情としてお取り上げになりましたような問題で、たとえば運転資金に補助金を出すというようなことになりますと、これは非常に困難な問題であると思うわけでございまして、改善すべき点は改善するに私はやぶさかでないわけですが、具体的にいま御指摘のような点については、これは非常に困難である、そしてこれが、農民の期待に、いままでわれわれやってきたことが決してこたえていないものではないというふうにも考えておるわけであります。
  168. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それならお聞きするわけでありますが、第二次構造改善の促進対策要綱というものがやはりこれに書いてありますが、これを見ますと、その事業実施がうまくいったかどうか、そういう点を勘案するため、この事業が完了した年度から三年間にわたって毎年度当該農業構造改善計画の達成状態調査して、その結果を報告するということが書かれていますね。つまり皆さんの言葉で言えば実勢調査とか言っておりますが、これはそうするとどのように生かされているのですか。たとえば四十六年事業、四十七年事業はもういま終わっていますね。これがその後本当に順調に育ったかどうか、だめだったかよかったかというようなことを、三年間にわたって毎年度皆さんがこの通達に基づいてこれを実勢調査しているわけであります。この生かし方がどうなっているかということをお聞きしたいと思います。
  169. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いま御指摘のとおり、現在の二次構につきましては、完了した年度から原則として三カ年間経営管理実績報告を毎年度市町村長が都道府県知事に報告するということになっておりまして、都道府県知事はこれを地方農政局長に報告するというようなことになって、順次出てきているわけでございます。その報告書に基づきまして、先ほど申し上げました総括指導員が、問題がある地区につきましては現地に赴きましていろいろその改善に努めるということもいたしておりますし、またその報告に基づきまして、必要がある場合には補充事業を実施するということになっているわけでございます。  なお、これらの実勢報告は、いずれ私どもも県の方から問題事業等は吸い上げまして、今後予想されます三次構の実施に当たりましては、これらの成果を十分吸収をいたしまして、改善すべきものは改善をし、また成功したものはそれを伸ばすという方向に役立ててまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  170. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたは、毎年度事業完了後その報告をもらって、それぞれ所要の対策を講じている、こういうような言い方でありますけれども、その講じた実態です。そうすると二次構の中で、どの地域にはどういう問題があるか、どの地域にはどういう問題があるかということは皆さんでつかんでいるのですね。そのこととあわせて私お伺いしたいのは、それを十分二次構の中で評価し、傾向分析して、ちゃんと実態を把握しているということですね。それならば、後でそういう資料をいただきたいと思いますが、よろしいですね。  そのことと、時間ありませんからもう一つお伺いしますが、そのほかに、あなたの方では農業構造改善地区の動態調査というのをやっていますね。これは実施地区について、実施前あるいは事業実施過程及び事業実施後における農業就業構造だとか経営構造、生産構造、その他農用地の保有構造、そういうものを調べて、明らかにして、今後における適正な運営に資する。これは個別あるいは地区調査になっておって、三年ごとに実施することになっていますね。この問題も含めて、たとえば秋田県では、合川町ですが、米プラス野菜の問題については、この総括指導員の意見が出ているんだな。たとえばどういうふうに出ているかというと、水稲だけの専業経営農家は増加しているけれども、野菜との協業組織では栽培上の問題点あるいは価格の問題点で現在困難になっている、こういうことも書いている。あるいは養蚕の関係については、水稲養蚕複合経営、養蚕専業経営については、当初計画の場所と大幅に異り、桑園造成の面積も、時代の流れに伴う農業情勢及び農家の指向の変化により七十ヘクタールから三十ヘクタールへの減少となっているなんというようなことを書いていますね。指摘しているわけですね。こういう問題を全部つかんで、それに対して対応しておらなければならないわけですけれども、何もやっていないということはどういうことですか。
  171. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず経営管理実績報告についてまとめたものがあるかというお話でございますが、まだこれは、先ほど申し上げましたように、二次構につきましては全体的にはまだ半ばに達していないような事業実績でございますので、全体としてまとめたというものはございません。ただ、私どもいままでの二次構の反省として考えておりますのは、先ほど大臣からもお答えいたしましたけれども、二次構の目的が自立経営農家を育成するために経営規模の拡大とその上に立った経営近代化施設の導入ということを考えたわけでございますが、経営規模の拡大というものがなかなか当初の計画のようにはいかなかったというようなこと、これはいろいろ原因があろうかと思いますけれども、やはり二次構の中では反省をすべき最大のことであろうと私どもは考えているわけでございます。  それから後の動態調査でございますけれども、これはおっしゃるとおり、事前、それから途中、事後につきましていろいろ動態的に調査をするわけでございますが、これは大体一県一地区につきまして現在やっております。これにつきましてもまだ全体的には集計の段階に至っておりませんので、集計をいたしておらない状態でございます。
  172. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、私言うのは、いま二次構の最中だ、しかし、もう早いものは卒業していらっしゃるのですね。だから、その卒業したものが間違いなしにうまくあなた方の願いどおりに育っているかどうかということは毎年調べているんですから、毎年毎年その傾向を分析しながらその二次構を本当にいいものに育てていくということがあなた方にとって大事なのだ。ところが、いまあなたがおっしゃっているのは、まだ事業が最後の到達点になっていないということをおっしゃっているのだな。恐らく七年後ぐらいにおたくの目標どおりいくのだという想定を立てているだけの話であって、それなら何も途中経過としての構造改善をやった地区が二次構、毎年やっている分析調査自体が何も生かされていないということです。七年後に何があらわれるかというと、結果があらわれるだけであって、何もやっていないということじゃないか。結局、調査はするけれども、預かりっぱなしだということがはしなくも明らかにされたものだとぼくは思うわけでありますが、あなた自身は、全体としてまとめたものはない、こう言って、その点をはっきりさせたわけでありますが、自立経営農家が思うように進まないことが反省すべき最大のものだ、こうもおっしゃっているわけですね。それだけであるならば、なぜそれを傾向分析して毎年毎年その二次構、いま進んでいるそのものを生かすようにしないのかということと、あなた、二次構というのは一次構の延長だけですね。一次構の七年後がどうであったかということを当然あなたは総括として持っていなければならない。持っていますか。
  173. 岡安誠

    ○岡安政府委員 一次構の反省の上に立ちまして二次構を始めたわけでございますが、御指摘の一次構についての総括、検討、反省書みたいなものができているかと申しますと、役所がみずから調査をし、これをまとめたというものはございません。ただ、一次構の実施した結果によりましては、いろいろなところで論文その他批判等も出ておりますので、そういうようなものを集めたものはございますが、役所が調査をし、分析したというものはございません。
  174. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 時間がちょうど来たようでありますからやめますが、大臣、私いろいろ聞いたわけですが、たとえば総括指導員にいろんな意見をくみ出させる、アフターケアをやるようになっておるけれども、実際はなかなか末端の意見は出ないような仕掛けになっているというような問題、あるいは動態調査、実態調査、いろんな調査をやっておるけれども、その実態はやりっぱなしだという問題がありますね。それから第一次構造改善計画の反省というものをまとめていないということも明らかになっています。つまりいろんな蓄積いろんな調査をしながらそれを一つも蓄積として生かされていない。そして膨大な予算をかけてわれわれは第何次構造改善だと言っているにすぎないんだね。その中では当然たくさんの農民が泣き寝入りしながら、しかもせっかくそれに夢をかけて協業に入ったものの脱落していく方々がずっと出ている。これが今日起こっている事態でしょう。この前、私三木総理と総括質問でやりましたけれども、農業基本法農政の実態はそこでしょう。だからこそ、そのことをわれわれいま指摘することよりも、その中に入っている農民の方々の要求を何としても生かしてやるということはわれわれとしては当然のことで、そういう点でいまいろいろ質問したわけでありますが、なかなか皆さんのお答えは、そういう実態と見合わないものを頭から押しつけている。その点について根本的反省はないわけでありますね。だから宇都宮大学の教授の方でなくても、あるいはせんだって私全国農業構造改善協会の田中さんという偉い方とお会いしたときも、われわれは農構改善の指導、コンサルタントをやっている、だけれども結果的に見れば、われわれの意思に反してたくさんのそういう離農する農民をつくり上げているようなもので全く心苦しいです、この方こう言っていましたよ。結局同じことを、あなた方のいまの考えとして見ればそういうことにならざるを得ないということですね。だからこそ、一日も早くいま指摘したようなことを謙虚に、真剣におくみ取りいただきまして施政の中に生かしていただきたい。  時間がないので、まだまだ質問したいことがありましたが、きょうは以上だけ申し上げまして、質問を終わらしていただきます。
  175. 湊徹郎

    湊委員長 次に、林孝矩君。
  176. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大臣の所信表明に対する質問を行います。  大臣の所信表明の中で、特に私は水産に限定して質問するわけでありますが、この日本が置かれている水産の現状というものを所信表明の中で大臣食糧問題と関係づけて、その点に非常に重大な関心を示されておるわけであります。非常に賢明であると思うわけでありますが、その所信表明の中にもありますように、国民食糧の安定供給というものを大臣は非常に重要視されておりまして、わが国、わが民族の存在にかかわる問題である、こういう重大な認識に立って表明をされておるわけです。そういうことを前提にして私は質問いたします。  大臣も御存じのように、三月二十九日より国連海洋法会議がニューヨークで開かれるわけでありますが、これに先立って、アメリカにおいて昨年十月に下院、続いて本年の一月に上院でそれぞれ漁業専管水域二百海里が可決されたわけであります。このアメリカの二百海里という専管水域の可決は非常にわが国の漁業にとっても、また大臣が所信表明の中で述べられておりますところの食糧安定供給という点にとっても重大な影響を及ぼすものである、そのように私は考えます。わが国食糧確保という見地から、このアメリカの上院、下院の二百海里可決という問題、これをどのように大臣は受けとめられておるか、まず最初にお伺いしたいと思います。
  177. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 わが国食糧確保するという立場におきまして水産の占める役割りというものは非常に重要であると私は認識しておるわけでございますが、その水産の前途に対しましていろいろな問題が起こっておる。特に海洋法会議経済水域二百海里をめぐるところの問題はわが国の水産の将来にも甚大な影響を持つものとして注目をいたしております。そうした世界的な動きの中にあって、米国は専管水域二百海里を設定するということについての議決を上下両院でいたしておるわけでございますが、この米国の距岸二百海里以内におけるところのわが国の漁獲量は年間約百六十数万トンと推定をされておりまして、これがわが国総漁獲量に占めるウエートはかなり大きいと言えるわけであります。他方米国の二百海里漁業専管水域法案によりますと、外国漁業に対してはその伝統的な漁業実績を考慮してその操業を認めることができるとしているので、政府としては、本年五月に予定をされておるところの日米漁業交渉等においてできる限りわが国の操業実績が確保できるように、これはもう最善の努力を払いたいと考えております。
  178. 林孝矩

    ○林(孝)委員 過去における実績を考慮するという、これも一つの重大なファクターだと私思います。  それに関係するわけでありますけれども、領海十二海里、それはきょうは外務省も来ていただいておるわけでありますけれども、この領海十二海里という問題についてもこの機会に明確にしておいていただきたいわけです。この問題はすでにもう予算委員会等で議論をされてきたわけでありますけれども、いわゆる緊急の問題として、ソ連の大型漁船が東日本の近海にいま出没しておる。それが日本沿岸漁民に大きな被害を与えておる、こういう事実ですね。それが日ソ漁業協定、五十年の十月二十二日の漁業操業協定以降においても依然としてなくなっていないという、これも事実である。そういうことから考えて、ことしの一月三十日の閣議で十二海里というものの方針の決定を見たいということでありますけれども、この実施時期については、すでに三木総理の答弁でも明らかなように、海洋法会議を待ってということになっているわけです。私は思うのでありますが、この実績を考慮するというそういう流れから考えると、逆に私は早く宣言する方が非常に有利に展開されるのではないか、このようにも思うわけです。  そこで、海洋法会議結論を待つと言うならば、海洋法会議でどのような結論が出た場合に十二海里を宣言するのか、その点がいままでの議論の中では非常に不明確だ。一歩突っ込んで、その点について明確にしていただきたい。それが一点です。  それからそれを前提にして、今度はその海洋法会議にこの領海問題に対して臨む方針がすでに決まっておるかどうか、決まっておるとしたならば、どのような方針の内容になっておるのか、この二点、明確にしていただきたいと思います。
  179. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  第一番目の御質問でございます海洋法会議でどのような結論が出たときに領海十二海里を実施していくのであるかということでございますが、領海十二海里問題に関しましては、まず現状を申し上げますと、世界のうちで約六十カ国近くが十二海里の領海をしいております。ただ、伝統的に国際法上いかなる幅員が、領海幅が国際法上の正統な解釈であるかということになりますと、やはり三海里であって、その点につきましては、世界有数の海洋国家と申しますか、先進国はやはり三海里説をとっておりまして、その数は二十三カ国、しかもこれは国の数で申しますとそのような勘定になりますが、船舶の保有量とか海洋の利用ということから考えていきますと、非常に多くの船舶を保有している国ないしは海洋を利用している国が依然として領海三海里という伝統的な国際法をもって踏まえておる。したがいまして、領海十二海里というのはいまだ国際法として確立したものではないというのがただいまの純粋に法律的な解釈になっております。  ただ、現在海洋法会議で問題となっておりますのは、実効上、国際法と申しますのはいつの時点から——一夜にして簡単に慣行から法律に変わっていくものじゃございませんで、だんだんと諸国の実施状況というものが積み重ねられまして、そして国際法ないし慣習法ないしはそれが法典化されて条約になり明文の規定になっていくという関係にございますので、十二海里をとっている国も間々ふえてきているわけでございますので、十二海里でやったらどうかという話がいま海洋法で論議されておる。その点につきましては、それだけの問題といたしますれば、もはや十二海里とすることに反対の国は世界の国でどこもいないというのが現状だと思います。もっとも二百海里説を主張している国は十二海里にすることについてまだいろいろな条件をつけてはおりますけれども、しかし十二海里全体とすることについて十二海里より狭い国からは何らの反対はない。したがって、仮に日本が十二海里とする場合におきましても、それが直ちに諸国から非難を浴びるようなことはないのであろう、そのように思いますけれども、海洋法会議ではその十二海里にするということ自体には先ほど申しましたように反対を唱える国はございませんが、海洋法会議では御承知のように二百海里の経済水域でございますとか、それから国際海峡の問題でございますとか、その他種々の従来の海に関する国際法を相当革命的に変える話が出て、それが論議されているわけでございまして、そうしますと、海洋法の会議で領海十二海里だけを決めるということではなく、それらのものを一括、特に二百海里の経済水域それから国際航行に使用される海峡の通航問題というようなものをも一括して、それが海洋法会議に参加いたします万国の賛同を得て成立するのであれば、領海十二海里とすることに異存はないというような空気になっております。したがって、領海の十二海里ということが単独で問題となっているわけではございませんで、一括の取引と申しますか、交渉の中の一つのエレメントとして存在しているということになっているわけでございます。したがいまして、どういう結論が出ればということでお答えいたしますれば、そのようなぐあいに領海十二海里の幅も含めまして、他の問題も各国の賛同を得て、海洋法会議において会議としての意思決定がまとまるということが必要なわけでございまして、私どもはそれを今回のニューヨークの会議ででき上がるように努力をしてみたい、またでき上がってほしいものだと考えているわけでございます。  そこで第二番目の点に移るわけでございますが、第一番目の点で御説明申し上げましたことと若干関係がございまして、日本は十二海里とすることにつきましては原則的に反対ではない。ただし、それはやはり先ほども申しましたように他の海洋法の諸問題とともに解決されることが必要である、そのような考え方会議に臨みたい、そういうふうに考えているわけでございます。
  180. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、非常に詳しい説明をしていただいたわけですけれども、結論的に言うと海洋法会議においてすべての国が合意する、こういう結論が出ればということで、合意の内容が、中身がこういうことになればということではないんですね。
  181. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 御質問意味が、領海十二海里ということにつきましては中身がどうのこうのという問題ではございません。ただ、関連する問題につきましては、先ほども御説明申し上げましたように若干問題があるわけでございます。たとえば経済水域二百海里ということでございますが、ただいま論議されている点でございまして、一体二百海里というものが漁業、つまり資源の管轄権だけでとどまるものなのか、それとも汚染の防止でございますとかいうようなところまで、つまりいわゆる領海的な性質までかなり濃いものができ上がっていくものであるかどうか、その点は非常に論議をされている点でございます。したがいまして、そういう二百海里の経済水域の内容によりましては合意そのもの、つまり一括の合意といいますか、一括の交渉の合意が成立しない場合も考えられるのではないか、そのように考えております。
  182. 林孝矩

    ○林(孝)委員 農林大臣、この十二海里問題に対しては、たとえばいま私が指摘しているのは一つは時期の問題です。それから、なぜその時期を問題にするかということについては、日本の漁業の実情というものを先ほどお話ししたとおりです。  それで、その海洋法会議結論を待ってということに対する大臣考え方でありますけれども、私はもっと時期を早くどうして宣言できないのか、こういう一つの疑問を持っているわけです。閣議において方針が決定した、海洋法会議においても反対する国はないであろう、そこまでいっておって宣言できない、こういう点に対してはどのようにお考えですか。
  183. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 領海十二海里につきましては、政府としては領海十二海里を設定するという基本的な方向は決定したわけでございますし、そのやり方としては法律をもって行うということも決定したわけでございますが、ただその時期につきましては、これはいま外務省からも答弁がありましたように、ニューヨークの海洋法会議を待って決めたいということでございます。  私は沿岸漁業を守るという立場からいけば、領海十二海里というのは一日も早くこれを決定すべきであるというふうに考えるわけでありますが、同時に沿岸、この領海十二海里についてもやはりその国際的な合意が得られることの方が漁業の立場からいっても賢明であるというふうに考えております。ですから、私といたしましても、このニューヨーク会議におきまして領海十二海里の合意が得られるということを心から期待をいたしております。しかし、このニューヨークの海洋法会議は領海十二海里だけの問題じゃなくて、経済水域二百海里その他いろいろと多くの問題を抱えておりますし、果たしてその会議結論を得るかどうかということについては非常に流動的であると思うわけでございますし、その結果についてわれわれ予測しがたいわけでございますが、しかし三月十五日から行われるわけですからこれは待たなければならない。しかしこれは、結論が出なければいつまでも待ってもいいという問題ではないわけですね。やはりある時期が来れば、これは政府としては決断をしなければならないとも思うわけであります。
  184. 林孝矩

    ○林(孝)委員 これは一つの見方でありますが、そういう裏づけをつくるために、たとえばソ連が日本の近海まで進出してきて大量な漁獲高を上げておる、あるいはベーリング海に至るまで、そうした実績を考えた上でのああいう行動であるという話は一部にありますね。そういうことに対しては、大臣はどのような受けとめ方をされていますか。
  185. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ソ連がわが国の太平洋沿岸に大量に南下をして漁獲をしておるという意図は那辺にあるかというふうなことについては、私もここではっきり申し上げる自信もないわけでございますが、まあ経済水域二百海里というふうなことが世界的な大勢で、そしてニューヨークの会議でも認められそうだというふうな実情にあるわけでございますから、あるいはそうした実績をつくるというふうなことは考えておるかもしれないとも思うわけでございます。
  186. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そういうことから考えても、私は早急に決断されることが、その方が賢明であるという指摘をしておきます。  それから、ことしの五月に日本アメリカの漁業取り決め交渉が行われるわけでありますけれども、ここにおいてもアメリカ日本に対する一つ方向が、非常に厳しい捕獲制限という形で提出されるのではないか、こういうニュースもあるわけでありますが、これに対してはどのような態度で臨む考えですか。
  187. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 わが国としては米国の漁業専管水域の一方的拡張に対しましては基本的には受け入れられない。これはまだ国際的な合意ができてないわけですから、受け入れられないという立場から、日米双方の立場をたな上げする方式によりまして、実質的に問題を解決できるよう今後の交渉を進めることとしたいと考えております。  米国二百海里漁業専管水域法案によりますと、同水域内における漁業に関しては、米国が排他的な管轄権を有することとはしておりますが、外国漁業に対してもその伝統的な漁業実績を考慮して、関係漁種の最適維持生産を超えない範囲で、かっ米国が漁獲しない分についてはその操業を認めることができるというふうにしております。わが国は、従来から日米加漁業条約、日米漁業協定に基づく資源管理のもとで右の水域内において伝統的な漁業実績を有しておりますし、かつサケ・マスは別として、スケトウ等主として米国側が漁獲していない漁種を対象とした漁業を行っておりますので、本年五月に予定されております日米漁業交渉等において、できる限りわが国の漁業実績が確保できるように最善の努力を払ってまいりたいと考えております。
  188. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、これは外務省に関係ありますけれども、政府間交渉の行われている国とまだ行われてない国、こうした事情を前提にして、さらに一層積極的な政府間交渉というものを、いままで行われていない国に対しても行っていかなければならない、そのように考えるわけでありますけれども、そういう用意はされておりますかどうか。
  189. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  当然のことながら、まず第一にアメリカ、ソ連というようなところがわが国の漁業との密接な関連度から言いまして第一番の国として交渉が行われるわけでございますけれども、世界各国にわたりまして、遠洋漁業というものが操業いたしておるところで将来とも必要があるということでございますれば、外務省といたしましてそれらの国と交渉、話し合いを始めていくことは十分考えられるわけでございます。
  190. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、それに対する対応策として、所信表明の中に、浴岸漁業の振興、こういう重点政策が示されているわけです。この浴岸漁業ということでありますけれども、いまたとえば水深二百メートルの状況の中で活用されておる漁業、未開発の漁場、この比率はどれくらいになっておりますか。
  191. 内村良英

    ○内村政府委員 正確な数字は申し上げかねますけれども、大体常識的に一対九、利用しているところが一割とお考えいただけばいいと思います。
  192. 林孝矩

    ○林(孝)委員 あとの九割の利用されていない部分、これに対してどのような形で今後浴岸漁業の振興に当たられるか、具体的に示していただきたいと思います。
  193. 内村良英

    ○内村政府委員 現在利用されてないところが果たして漁場として適当かどうか、あるいはそこに魚がいないところは漁場として利用できないというような問題もございますし、われわれといたしましては、経済水域二百海里ができた場合において、わが国経済水域の活用というものにつきましては、多少の予備調査みたいなものは過去においてしておりますけれども、そこを十分調べまして、漁場として活用できるところは十分活用していくような措置をとらなければならぬというふうに考えております。
  194. 林孝矩

    ○林(孝)委員 たとえばもっと具体的に、政府の沿岸漁業構造改善事業、そうした事業目的があります。また海洋水産資源開発基本方針というものも発表されているわけですね。こういう政府の目標というもの、この中においてたとえば魚介類三十一万トン、海草類十万トンの増大を図る目標であるとか、そうした目標が掲げられているわけでありますけれども、その目標達成の根拠というのはどういうことになっておりますか。
  195. 内村良英

    ○内村政府委員 先生御案内のように、浴岸漁業の整備につきましては、五十一年度から七年計画で約二千億の事業費を使って漁場整備をやるわけでございます。これにつきましては漁礁をつくる、単に大型漁礁ではなくて、今後は人工礁みたいなものをつくっていく、あるいは漁場造成、人工藻場、干潟の整備、その他沿岸のいわゆる漁場の整備に大いに力を入れてやるということと、それから最近御案内のように、人工ふ化が非常に盛んになりまして、いわゆる栽培漁業が非常に盛んになっているわけでございます。そこで栽培漁業で大いに種苗をつくりまして、それがうまく育つように、沿岸につくりました人工の藻場とか干潟に入れて、大きくなってから海に出ていくというようなかっこうにして資源量の増大を図っていくというようなことをやりながら沿岸漁業の振興を図る。同時に現在御案内のように構造改善事業をやっておりますので、構造改善事業でもそれに関連するいろいろな陸上の施設の整備等もやって沿岸漁業の振興を図りたい、こう考えておるわけでございます。
  196. 林孝矩

    ○林(孝)委員 時間がありませんので、結論を急ぎますが、いまのたとえば目標であるとか計画であるとかいうことと、実際行われている現場の状況等に非常に食い違いがあったりすることも聞くわけです。本当にそうした食糧自給という観点からこの沿岸漁業の振興というものを考えるならば、やはり全国の都道府県との話し合いだとか、あるいはその計画が、目標達成ということが実際成り得るものであるかどうなのかという分析であるとか、あるいはそれを達成するためにはさらにこういうことが必要であるとかいう、そういう面の積極的な取り組みというものがなければならない。ところが、たとえばことしの一月に行政管理庁の沿岸漁業構造改善事業等の運営に関する行政監察結果に基づく勧告、こういうものを見ますと、農林省に対して指摘されている部分が出てきている。これはいま私が言いました、実際きめ細かくということを安倍農林大臣も昨日でしたか言われておりましたけれども、この件に関してはなされていない。その点についてこの委員会で指摘をしておきたいわけでありますけれども、行管庁に伺いますが、この漁業近代化施設整備事業の中で、漁業振興の目的を逸脱して使用していたものもある、こういうところが出てきます。これは具体的にどういうことですか。
  197. 近藤輝彦

    ○近藤説明員 たとえて申し上げますと、施肥防除施設、これは四十年度に設置されたものでございますが、漁業協同組合がこの施設を設置したわけでして、具体的にはこれは木造船でございますが、これが四十二年度から四十八年度にかけまして遊覧船等として使用されていたというものとか、水産物の荷さばき施設、これは四十八年度に設置されたものでございますが、漁業協同組合がこの施設を設置したわけですが、その三分の一程度が仲買人の仮設物置小屋として利用されていたといったような、まあ細かい例ではございますが、こういった事例が散見されておるということでございます。
  198. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大臣、お聞きになったような事実もあるわけです。  それで、もう時間が来ましたから終わりますけれども、実際国の予算をこうした沿岸漁業の振興、そうしたところに使うわけです。ところが、それが非常にうまくいっておるかどうかということに対しても——これは大臣御存じであったかどうか、伺っておきたいと思います。
  199. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 細部につきましては聞いておりませんが、大体の報告は受けております。この実情がよく判明したものにつきましては、これはやはり施設の撤去等により改善も図らしておるわけでありますが、さらに事情調査の上、必要があれば補助金の返還等の処置をしなければならないというふうに思います。
  200. 林孝矩

    ○林(孝)委員 所信表明の中にも大臣が明確にお述べになっているように、これは散見された事実が、いま行政管理庁の方から指摘されただけでありまして、やはりその振興に積極的に取り組んでいくという反面、そうしたことが現場で行われておる、こういう点についてはきちっと大臣のもとで把握されて、適切な処置をとっていかなければならないことだと思うのです。  最後に大臣にお伺いしておきますけれども、こうした沿岸漁場の整備であるとか、あるいは開発計画であるとか、先ほど水産庁長官から話のあった具体的な施策、こういうものを振興していく上に当たって、経済水域二百海里の決定ということを前提にして、まず安倍農林大臣がその先頭を切って、閣議の中において日本食糧自給という面と、それから漁業資源の確保、それからさらに、いまの動物性たん白質の確保という面から大臣がとらなければならない措置あるいは表明しなければならない事柄あるいは決断しなければならないことというのはたくさんあると思うのです。ところがいまの状況を見ておりますと、やはり非常に私自身、実感としておくれておる。もっと早急にやっておかなければ、決定してから取り組むということであれば非常に後手後手になります。どうかそういう意味で、これらの環境の世界一つの動きでありますから、的確につかんで大臣として適切なる行政を行っていただきたい、そのように要望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  201. 湊徹郎

    湊委員長 次に、稲富稜人君
  202. 稲富稜人

    ○稲富委員 まず農林大臣にお尋ねいたしたいと思いますことは、今回の総理大臣施政方針演説の中にも、「日本経済は適正な安定成長路線への転換とともに、その体質と構造を変えていかなくてはなりませんが、そのためには中小企業と農林漁業、」とこういうように、農林漁業というものが四つの重要な課題のうちの一つであるということをはっきり総理も述べております。そうしてこの「農林漁業対策としては、自給力向上のための基盤整備、生産対策等を重視いたしました。しかし、そのいずれも構造改革による生産向上という長期構想の一環としてとらえてまいります。」ということを総理もはっきり申されております。それでようやく農業の重要性ということははっきり意識されてまいっているのでございますが、これに対しまして、あなたのこの所信表明の中にも、「わが国農業の現状を見ますと、高度経済成長の過程で農村の過剰労働力は解消し、」云々と書いて、「農地の壊廃の進行等農業の健全な発展にとって好ましからざる数々の問題を抱えるに至り、その体質が脆弱化していることは否めないところであります。」ということをはっきりあなたもお認めになっております。問題は、私たちがこういうような両面から日本農業を将来どうするかということに対しましては、いまここにあなたがお述べになっておるような、日本農業がこういう脆弱化した原因はどこにあったかということをまずわれわれは検討すると同時に、さらに今後の日本農業をいかに位置づけるかということに向かってわれわれはひとつ今後の農業対策をやらなくちゃいけない。ここに重点があると私たちは思うのでございます。この点に対する農林大臣としての基本的な考え方を率直にまず承りたいと思うのであります。
  203. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全く私はお説のとおりだと考えております。やはり食糧問題、国民食糧確保するということは、これはわが民族にとりまして最も重要な課題である。これは農政の問題というよりは国政の最も重要な政治課題一つであるというふうに考えておるわけでございます。  なお、農林漁業というものが最近その体質が脆弱化したということもわれわれははっきりこれを認識しなければならない。そして農林漁業がやはりこれからのわが民族の源泉であるというふうな基本的な立場に立って、これが振興発展を図っていかなければならないというふうに私はかたく信じておるわけであります。
  204. 稲富稜人

    ○稲富委員 いま大臣も率直に脆弱化したということは認められたので、その脆弱化した原因というものは、長い間自民党のおとりになってきた農政の欠陥といいますか、失敗といいますか、あえて悪口を言うわけではございませんが、そのやり方のまずさにあったということは、これは否定することはできないだろうと私は思うのです。この点は率直にお認めになって、われわれは失敗したからといって失敗を責めるわけではございません。その失敗の中からどうこれを成功に導くか、こういうことのために大胆率直に私たちは農政を打ち立てる。いままで失敗があったならなおさらこれをカバーする意味において、もっと積極的にやるのだ、この心構えが必要であると私は思うのであります。  ただ、いままで脆弱化してきたから農政というものが非常に必要であるというだけを認識しておったのでは、私は今後の日本農業というものが本当に健全なものにはなっていかないと思いますので、その点から私はお尋ねをしておるわけなので、その脆弱化した原因というものに対しても、本当にこれは率直にひとつ反省をしていかなくてはいけない、こう考えております。いままでの失敗に対してここであなたからあえて答弁を求めまして、あなたをいじめようと思うわけではございませんが、ただ、総理も言っておりますように、ここで将来の基盤整備等をやって農業生産対策等を重視していく、こう言われておるのでありますが、そうなりますと、おのずから起こってくるものは、土地改良事業であるとか構造改善事業であると圃場整備事業とかこういうものに当然取り組まなければできない問題であるし、これは取り組んでおられることも事実知っております。  ところが、遺憾なことには、この取り組み方が非常に遅々としてその事業が進まないというのが事実なんです。農民はこれに非常に期待して取り組んでいる。何年間でこれをやるんだということを政府は言われておる。ところが予算の関係でなかなかこれは進まないというのが現状である、私はこう見ておりますが、これは政府はどう思っていらっしゃるか。やむを得ないことだとしてこれを見逃していらっしゃるのであるか、この点に対する考え方を承りたいと思うのであります。
  205. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 われわれは御存じのように土地改良につきましても十カ年計画をつくりまして、これを推進しておるわけでございますが、その過程において、今日まで経済の非常な変化といいますか、総需要抑制というふうな一時期があったわけでございまして、そういうこともありまして、その事業の進捗がわれわれの期待に反して非常におくれておるということは事実でございます。したがってこのおくれを取り戻していかなければならないというのが今後のわれわれに課せられた大きな責任であるというふうに考えまして、五十一年度予算におきましても、基盤整備関係の予算につきましても二二%の増額をいたしたとともに、今度国会にお願いをしておりますような財政資金の活用等によりましてこのおくれを取り戻すような方向へ積極的に取り組んでいきたいというのが私の考え方でございます。
  206. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは政府が非常に期待はずれであるばかりでなく、農民はもっと大きな期待はずれなんですよ。これが農民がひいては農業に対する魅力を持たない原因になってくる。政府といたしましてはこれは早くやろうと思ったけれども総需要抑制等によって早くできなかった、期待はずれだったということで済むかもしらぬけれどもこれを受けて立っておる農民というのは政府の考えていらっしゃるより以上に非常に期待はずれになって、もう全く農業に対してはやけくそになっているというような状態なんです。こういうようなことに対する罪滅ぼしをやるということも、これは政府一つの大きな責任でございますので、そういう意味からは、もちろん今後計画があると思いますけれども、これに対してはもっと積極的に取り組んでいく必要がある。そうして農業に対する希望を失墜している農民に対し希望を与えるということが最も急務である。これはひとつ特段の推進対策をやるべきであるということを、私は重ねて強くここに要望し、これに対する政府としての取り組みを特に私は希望するわけであります。  次に申し上げたいと思いますことは、今度はこういう現象が起こってまいります。土地基盤の整備ということでだんだん土地を造成してまいりますと、農耕地というものがふえてまいります。今度は水田というものが土地改良等によってふえてまいりますが、今日は米が非常に余るんだと一般にいわれている。米が余るんだといわれるときにだんだん土地が造成されて、これはますます米が余るのじゃないかというような不安というものがまた農民の中に生じておる事実も、これは見逃すことができない。こういう問題に対してはどういうように調整し、どういうように対処していこうとされるのか。この二つの矛盾というか、二つの悩み、これに対してどういうような考え方を持っていらっしゃるか。これもひとつ率直に教えていただきたいと思うのです。
  207. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私たちは自給力を可能な限り高めていくということで、農地の造成等もこれから積極的に取り組んでいかなければならないわけでございますが、一面また、米につきましては、御案内のように依然として過剰基調にあるわけでございますので、やはり私は米のあり方としては需給のバランスのとれた生産消費というものが確保されることが必要であるというふうな考え方から、米につきましては水田総合利用対策等も推進いたしまして、需給のバランスをとると同時に、その他の農地につきましては、もうこれから増産をしていかなければならない農産物を積極的に生産をしていく、そういうことがわれわれの考え方でございます。
  208. 稲富稜人

    ○稲富委員 いろいろ質問したいのですけれども、時間がありません。質問の件数が非常に多いので、繰り返しての質問はまたの機会に譲りまして、次に移りたいと思います。  ただいまのように構造改善事業が行われ、基盤整備が行われてまいりますと農業の近代化ということがおのずから進んでまいります。そうすると農業近代化が進みますと当然起こってくるものは機械に対する農民の過大投資というものであります。現在の日本農業というものは全く機械貧乏というような状態で、機械屋に御奉公するために農業をやっているというのが現在の状態であります。これは農林省調査でもわかると思うのでございますが、最近農民が機械に対してどのくらいの投資をしておるかといいますと、四十七年におきましては機械に対する投資が三八・一%、四十八年は三八・六%、四十九年は三三・一%なんです。農業経営に当たりまして三〇%以上というものが機械のために投資をされておる。全く農民というものは機械屋に御奉公するような農業が現在の農業なんです。農業近代化は結構であるけれども、一面にはこういう問題が起こっている。これに対して何らか対策をやらなければ、農民は機械のためにせっかくの農業が成り立たないということになるのでございます。これに対して、あるいは農民に機械を持たせないで機械化センターをつくるとか、何か機械に対する対策をやる、こういうような方法を講ずる必要があるということをわれわれは考えるのだが、こういうことに対して農林省として何か構想を持っていらっしゃるかどうか、この点承りたいと思うのでございます。
  209. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまお話しのいわゆる機械化貧乏という点につきましては、農林省として従来から過大な能力の機械等の導入や一連の機械を無計画にセット導入することのないように、普及組織等を通じまして指導はいたしておるわけでございます。  また、導入されました機械の効率的利用を図るための集団的な生産組織の育成、農業機械銀行方式の定着化等によりまして、集団的な機械利用組織の育成強化にも努めておるわけであります。また、農業機械化促進法に基づく型式検査におきましても、機械の耐久性についても検査をし、その耐用年数の確保に努めておるところでございます。なお、部品の規格の統一とその供給の円滑化、不要不急のモデルチェンジの抑制等につきましては、通産省とも十分な連絡をとりつつ、農機具の効率的な利用が図られるよう、今後とも一層努力をしてまいりたいと考えております。
  210. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは大臣農民の心理というものをよく考えて指導していきませんと、農民心理というものは、自分の家よりも隣の機械が少しいいのが来れば、自分のやつは使えても、また隣のやつに負けないものを持ちたいのが農民の心理なんですよ。これは非常に困ったことでございますけれども、昔から何が一番農民にはしゃくにさわったかというと、隣の家に蔵が建ったことが一番しゃくにさわった、こういうのですね。ほかには負けても隣には負けたくない。それだから、機械というものが五カ年間の寿命があるとしても、自分の家は二カ年使った、隣がもっといい機械を使ってきた、そうするともうそのいい機械を買いたいのです。これがために農民というのは常に、みずからこういうことで機械のために御奉公しなくちゃいけないようになっているのだから、この農民心理というものをつかまえた上における機械対策というものを考えなくちゃいけない。そのためにはもう農民には機械は持たせないで、別個に機械対策としていわゆる機械センターをつくって貸し付けるとか、何かそういうような方向をとってやらなければ、農民個人個人に機械を持たしておいていろいろな指導をしてやっても、これはなかなか効果は上がらないと思うのです。この点はひとつ基本的に考えて、どうすれば機械のために農民がむだな経費を使わないでいいか、こういうことに対してはもっと真剣に取り組んでいただきたい、かように考えるわけでございますが、この点いかがでございますか。
  211. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も農村の出身でございますので、いまの稻富さんのお話はよくわかるわけでございますが、こうした農民心理の実態に応じた機械の利用というものをやはり積極的に進めていくということは必要であろうと思います。いままでいろいろと、先ほど来申し上げましたような種々の対策をやってはおりますが、さらにそういった面も十分考えて、その上に立った、機械に振り回されることのないような農業といいますか、そういう農村をつくり上げていくためには、今後ともいろいろな工夫をこらす必要があるというふうに私も考えるわけであります。
  212. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから、先刻大臣の御答弁のありました、今回の米の生産調整に対する水田の総合利用対策による作物転換の問題でございますが、これに対しましては、やはり従来やられたような方法はとられないことはわかっておりますけれども、何と申しましても適地適作ということを旨としたこれに対する対策をやる必要があるということをまず考えなくちゃいけないのじゃないかと思います。これに対する考え方を承りたい。  さらに、この機会にいま一つつけ加えて申し上げたいと思いますのは、いままでは、米の生産に当たりますと、戦時中からなるたけ米の増産をすればいいのだというわけで、おいしくなくても反収の多い米をつくるというような慣習がまだ農村にも残っておりました。こういう問題に対しましては、その土地に適したような米、うまい米、いわゆる米の品種改良というものに対してもっと政府が積極的に乗り出して、そうしてその地方に適した品種、うまい品種の米をつくらせるという、こういう指導力が私は非常に足らないと思う。依然として昔からの収穫を主体とした米をつくっているという点もあるので、こういうことに対してもこの際思い切っ政府施策をやるべきである、かように考えるわけでございますが、これに対する考え方もあわせて承りたいと思うのでございます。
  213. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 水田総合利用対策によるところの転作の推進に当たりましては、農産物需要の動向に対応し、かつ地域の特性に応じた農業生産の確立を図ることをねらいといたしておりますので、いま御指摘ありました適地適作を旨として実施をすることといたしております。このために、対象作物につきましても、全国的に広く生産振興を図る必要がある野菜、飼料作物、大豆等の一般的な奨励作物以外に、地域農業上特に重要な農産物につきましては、知事と農林省との協議によりまして、特認作物として認めることにいたしておるわけでございます。  なお、米の品種改良につきましては、農林省としては米の研究というものは非常に進んでおるというふうに考えております。そういう点で、品種改良等も相当進んできておるわけでございますが、いま御指摘の点については十分留意をしなければならないとも思っておるわけでございますが。この点につきましては、技術会議の事務局長からお答えをいたさせたいと思います。
  214. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 お米の生産につきましては、私どもといたしましては、生産の安定した良質でおいしいお米を、能率の高い方式で実現をすることが肝要であるというように考えております。いまお話しのように良質米の生産の件でございますが、良質米の生産につきましては品種改良が非常に重要であることは、先生お話しのとおりでございます。おいしいお米の品種改良という点については、最近の消費者の米に対する好みが高度化してきておるということもございまして、さっき申し上げました生産が安定しておる、あるいは能率の高い生産ができるということのほかに、良質のものを生産することが必要であろうということでございまして、そういう点にも力を入れまして、農事試験場、地域の農試あるいは府県に頼んであります指定試験を通じまして、そういうような形のお米の創出に努力をいたしておるところでございまして、過去にはコシヒカリあるいはササニシキ、最近ではミズホとかアキニシキとかいう品種の創出をやっておるという現状でございます。今後の米の品種改良につきましては、やはり能率の高い、つまり機械の使用に耐え得るような形の品種であって、しかも病気に強く、あるいは気象災害に強いというものであって、しかもおいしい物というようなもの、そういうふうな品種の創出に力を注いでまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  215. 稲富稜人

    ○稲富委員 これに対してはやはりあなたの方で、どの地方はどういう物がいいのだと、もっと積極的に乗り出してやらなければ、ただあなたの方で研究だけしておってもだめなんですよ。やはり農民というものは惰性がありまして、収穫の多い物をつくろう、こういうような慣習があるのだから、その慣習をぶち壊すために、よほど強力に、この地方はこういうような米が非常にいいのだ、適するのだ、これもうまいのだ、こういうようなことでもっと積極的に取り組んでいかぬと、ただ単なる弱い指導力では、従来の惰性はなかなか破れないと思うのです。これに対してはもっと積極的にひとつ取り組んでいただきたいということを、私は特にあなたにお願いを申し上げておきたいと思うのです。ひとつこれは大胆に指導していただきたいと思います。  それから次に、農業近代化がだんだん進んでまいりますと、化学肥料のみによる傾向が多くなってきまして、地力というものがだんだん減退する。これは前にも私は地力の問題でここで質問いたしたことがあるのでございますが、この地力をどうして増進するか、こういうことに対してどういう対策農林省としては考えていらっしゃるか、この点ひとつ承りたいと思います。
  216. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 最近、地力の低下ということが非常に心配をされております。特に畑地帯、水田についてもそういう心配があるわけでございますが、これに対しましては、私どもといたしましては、従来からやっております適切な土壌管理をやるということを前提としての地力の診断事業というものを従来からやっておりますが、これを引き続きやっておりますほか、四十九年から土づくり運動というような、農家の土づくりについての重要性の認識と、土づくりの意欲の向上を図るための現地におきます、第一線におきます農業団体と行政機関が一致した運動としての土づくり運動というのを展開しておるわけでございます。さらにまた堆廐肥の増投ということが当然必要になりますので、これらを行いますために機械なり施設を導入するというようなことをこれまでやっておるわけでございますが、現在御審議をいただいております五十一年度の予算におきましては、新たに土地利用型集団営農推進対策という予算を計上しておるわけでございますが、この中におきまして、集団的な生産組織とか機械の導入とあわせまして地力対策というものを重点に考えておりまして、一応予定といたしましては、総合的な地力対策、これは作付の合理化、それからいま言いました堆廐肥の増投というようなものがかなめになると思います。あるいは特殊土壌については、土壌の改良というようなことを含めまして、全国で百七十地区くらいについて重点的に総合対策をやりたいというように考えて、御審議を煩わしておるところでございます。
  217. 稲富稜人

    ○稲富委員 もちろんこの地力増進の一端といたしまして考えたいと思いますことは、これは変な話でございますけれども、どこでも、田舎に至りましても、いまでは屎尿処理対策に非常に困っているのです。各市町村とも屎尿処理については莫大な金を使って海の中に捨てに行くとか、こういうような方法を使っておるのでございますが、これほど科学が進んでおるのだから、これを何とか肥料化するというような、政府は特段の研究でもして、そしてこれを土地に還元する。こういうような方法からの屎尿処理に対するこれの肥料化、こういう問題に対する研究をどの程度まで進めておられるか、この点をひとつ承りたいと思うのでございます。
  218. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 屎尿処理の関係は厚生省の所管でございまして、処理に非常に多額の経費を要しておるということは、先生御指摘のとおりでございます。私ども農業の方におきましても、多頭羽飼育が非常に進んでまいって、都市化してきておるということから、家畜の排せつ物の処理というのが大変な問題になっておりまして、それが、あるいは悪臭の問題であるとか、そのもの自身の処理であるとか、あるいはそれを有効に利用するとか、あるいは先生御指摘の農地に還元するとかいう問題も抱えておるものでございますから、その点につきましで、畜産試験場を初めとして、国の試験研究機関、公立の試験研究機関一体となって研究を進めておるところでございます。で、いま先生御指摘の、屎尿の処理を農業に還元するという問題につきましては、いま申し上げました家畜の廃棄物の処理についての研究の成果を踏まえた上で、その適用について検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  219. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうすると、この問題は、いま家畜の問題をやっていらっしゃるが、将来は人のいわゆる屎尿の問題もあわせてやっていこうということのようですが、これを早くやらなくては、片一方やってから片一方というのでは、それは追いつきませんよ。これは早く政府はこういう問題に対して金を出してやったらどうですか。こんなことこそ金を惜しみなくつぎ込んでやったらどうですか、大臣
  220. 平松甲子雄

    ○平松政府委員 ただいま先生御指摘のような考え方もあると思いますけれども、屎尿の処理につきましては、これを集中的に集めて処理をすることになるわけでございますから、その問題につきましては、先ほどお話し申し上げましたように、悪臭の問題とかあるいは衛生上の問題とかいうものがあるわけでございますから、当面私どもが処理を強いられておりますところの家畜の廃棄物についての研究を進めますと、そのことは大半の原理が屎尿にも適用できるというふうに私ども考えておりますので、そういう家畜の廃棄物の処理についての成果を踏まえた上で、屎尿処理についても検討してまいりたいというふうに考えております。
  221. 稲富稜人

    ○稲富委員 次に、農業後継者対策についてお尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、菅波委員長代理着席〕  農業後継者対策につきましては、今年度の予算、きのうの予算説明の中にも、農業生産の担い手の育成等に関する予算についてもいろいろ説明されております。農業後継者に対していろいろな予算をつけて、「青年農業士育成事業を実施するとともに、農業後継者育成資金の貸付枠の拡大を図る」、こういうことを予算化していらっしゃるということを書いてありますが、元来これは、やはり農業に魅力を持たせるようなことをやらなければ、こういうこそくな手段をやっただけでは、私は農業後継者というのは生まれてこないと思う。  特に私はここで申し上げたいと思いますのは、今日、農業学校というものがあります。これは文部省もきょうおいでになっておると思いますから、文部省の方にお聞きしたいと思うのでございますが、高等学校の学習指導要領によりますと、農学校の農業科に従事する者は、「作物の栽培、家畜の飼育および農業経営に関する知識と技術を習得させ、農業の経営者・技術者を養成する。」ということが農業科には書いてあります。園芸科の方も、結論はやはり「農業の経営者・技術者を養成する。」畜産科におきましても、「畜産を中心とする農業の経営者・技術者を養成する。」養蚕業においても、全部これは農業の経営者及び技術者を養成するということが、農学校の学習指導要領の中にうたってある。それにもかかわらず、農学校を卒業した人たちが、それではどのぐらい農業にとまっているかというと、ほとんどこれは農業にはとまっていないのです。一体農学校はどういう教育をやっているか。私の知っておる事実では、子供を農学校にやるときには、うちの農業を経営させようと思って農学校にやるのです。卒業をするときは月給取りになってしまうのです。学校から、月給取りを勧めて、月給取りになる。農業を経営させようと思って農学校にやったのが、この学習指導要領に反しまして、農業経営をせない農学校卒業生をつくってしまうというような、こういう教育をやっている。   〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕 どこにこの原因があるか、まずこれは文部省の方にお聞きをしたい。
  222. 齋藤尚夫

    ○齊藤説明員 高等学校の農業に関する学科、ただいま先生から御指摘がございましたように、四つの学科につきましては、主として農業自営者の養成のための学科でございます。それ以外に農業に関連します種々の職業分野に対する教育を行っているわけでございまして、全体の農業学科に占めるシェアといいますのは五割をちょっと超えているという実態にございます。  主として自営者を養成する目標を持った学科の卒業生の中で、どの程度実際に卒後直ちに後継者となっておるかという割合を申し上げますと、現在、四十九年度の資料でございますが、就農率二五%という数字になっておるわけでございます。文部省は、それらの学科のほかに、大型の農業高校を特に自営者養成のために整備をするという方針を昭和三十九年からとっておりまして、寄宿舎生活を伴った学習形態を持つ学校でございますが、この就農率は五割を超えておるという状況にございます。  そのようにいたしまして、農業の後継者のための育成に必要な、できる限りの努力は傾注してきたわけでございます。まだまだ足りない点多々あると存じますけれども、いろいろ御指摘を受けながら、さらにこれを前進させていきたいというふうに考えております。
  223. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは私の統計を見るとずいぶん違いますが、昭和四十年から五十年までで、五十年は九十一万——何しろ九十一万八千人、これは就職したのが三十一万二千人、農業にとどまったのが一万人なんです。農業経営に当たっておる者は三・二%なんですよ。こういうような状態になっている。これは私の調べたところによるとこうなっている。私のこの調べが違うならば、これは私も調べ直さなくちゃいけませんが、こういうような実態になっている。私が聞きたいのは、これをあえて農学校の教育が悪いということを言うわけではございません。農学校の教育もやはり農業にとどまるような、この要領に示してあるような教育をすることと同時に、一方は農村の青年が農業経営に当たるような、魅力を持てるような農政を確立する、農業を確立するということであります。これは責任はあえて農学校ばかりじゃなくして、農林省にもその責任はあると私は思う。両々相まってやらなくちゃならない問題だと思うのであって、これは農林省と農学校を担当している文部省とが緊密なる連絡のもとに、いかに農業経営に当たるような後継者をつくるかということに対して進まなくちゃいけないと思うのであります。  いまの農林省の発表を見ますと、二五%が残っておるとおっしゃるが、私の統計から見ると、三・二%なんですよ。こういうような点も、非常に違いがあるのですが、何はともあれ私の知っているのでは、農学校卒業生というものが、入るときには後継者になろうと思って農業学校に入る、卒業するときには月給取りになることを学校が勧めるのです。この事実を私はたくさん知っているのです。指導要領に反した教育をやっていると言わなくちゃいけない。そういうような魅力を持たないようになることは、やはり一つ農政責任があると言わなくちゃいけないと私は思う。そういうような問題を放任しておきながら、ただ後継者育成だ、後継者育成だと言って、後継者育成をするためにはこんな金をつけるんだというような、そんな小手先ばかりでは農業後継者はできないということを考えなくちゃいけない。喜んで青年が農業にとどまり、喜んで農業経営になれるような、こういうような農政を確立することこそ農林省の大きな任務であると私は思う。これがやれないということは、農林省にも大きな責任があるし、またこういうことに指導されないということは文部省にも責任があると私は思う。これは双方の問題であると私は思う。その点から私は後継者問題に対しましてはもっと真剣に、ただこういう施設をやるんだ、こういうことに補助をやるんだというような小手先の問題ではなくして、もっと農民が、青年が魅力の持てるような農政を確立するということが私は一番大きな問題であると思うのでございますが、これに対する農林省考え方農林省がそういう考え方を持っておるならばひとつ文部省もそれに協力しようという考え方があるかどうか、この点両方から承りたいと思います。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにいまおっしゃるように、農業の後継者づくりの基本的な要件というのは、魅力のある農業あるいは住みよい農村をつくるということがまずその基本でなければならぬわけでございます。そのための基盤整備の充実であるとか、あるいは農業の近代化の推進であるとか、あるいは農村の環境整備というようなことは、それはやっぱり後継者が農村に定着するために絶対必要な要件でございまして、これらのためにわれわれとしては積極的な農政を推進していかなければならぬのは当然でございまして、これが何としても後継者づくりの基本的な要件であるというふうに考えておるわけでございます。そうした大前提の上に立って、研修、教育の充実であるとか、あるいはまた青年農業士の育成等農村青少年対策の強化、あるいはまた金融面からすると、農業後継者育成資金等の充実、あるいはまた農業者年金制度の改善といったような措置をあわせて行うべきであるというふうに考えるわけでございます。  いま農業学校から後継者に移る者が非常に少ないというお話でございました。確かにそのとおりでございまして、農業学校というのは農業の後継者を養うための学校でございますが、そういう意図に反して非常に少ない。これについては、やはりこれを受け入れる方の農村、農業といったものを本当に魅力のあるものに持っていかなければならぬというふうに考えておりますし、そういうふうにわれわれとしても積極的な努力をしたいと思いますし、また同時に、農業教育のあり方につきましては、これは文部省ともさらにひとつ緊密な連絡をとりながら、農業教育に志を立てる青少年が喜んで後継者になれるように、われわれとしても努力を重ねてまいりたいと考えております。
  225. 齋藤尚夫

    ○齊藤説明員 新規学卒者全体の中に占めます——就農者の中での農業高校卒業者の割合といいますのは、年々実はふえてまいっておる実態にあるわけでございます。文部省といたしまして、今後も農林省と十分連絡をとりまして、後継者の問題につきまして遺憾のないようにしたいと考えております。
  226. 稲富稜人

    ○稲富委員 文部省はふえているとおっしゃいますが、私の統計によりますと、四十年は就農率というものが一一・四%、四十二年は就農率が一〇・八%、四十五年の三月が七・四%、四十六年の三月は六・九%、四十七年は五・五%、四十八年の三月は四・九%、四十九年は四・一%、五十年は三・二%ということになっておるのです。これは私の統計が間違っておるならもう一度私は調べ直しますけれども、私の調べたところによるとこうなっております。これはいいかげんなものじゃないのでございますが、要するにこれほど農学校を卒業して就農する率というものは低いということに、私の方の調査ではなっておるわけでございます。それをあなたが間違っておるとおっしゃるならば、私もいま一つこれは検討してみます。そういうことになっておりますから、要するにこういう問題に対しては今後よほど考えて、文部省が示しますような、すなわち高等学校学習指導要領に従って教育をするということだけは、これはどうしたって基本的な問題でございますから、どこまでもいま申したように、すなわち農業の経営者、技術者を養成するということが目的になっているのだから、この点だけは基本的な問題としてお忘れなくひとつ農学校の指導監督には当たってもらいたいということを特に私は文部省に要望しておきたい、かように考えます。  次に、今回政府総合食糧政策というものを打ち出しておられます。これは私たちが多年主張いたしておりました、食糧基本法を制定しなくちゃいけない、こう言っておった趣旨と同じでございまして、水産業まで入れた政策をやっていくというようなことでございますので、非常に私たちもこれは喜ばしいと思いますが、これは今日の日本食糧農政の重大なときでございますので、これは十分ひとつ積極的にやっていただきたいということを思いますが、さらにこの機会に私は申し上げておきたいと思いますのは、最近非常に米が余る、余るとおっしゃいます。今日の未開発地帯に対する食糧の問題は、これは世界食糧会議においてもいろいろ問題になるのじゃないかと思うが、日本が未開発地帯食糧供給するような、こういうことを食糧会議において持ち出して、余っている米があるならそれを持ち出す、こういうようなことはひとつ考えられないものであるか。ただ向こうの方で決まらなければこちらの方は応じられない、そういうような消極的なものであるか、この点についてもこの際ひとつ承っておきたいと思うのであります。
  227. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 開発途上国、特に食糧の不足しておる国々に対して食糧の援助をすべきであるという御議論でございますが、わが国としてもそうした国々に対する経済協力、その中における食糧援助等もいたしておるわけでございますが、今日はその食糧援助という形を資金でもって行っておるわけでございまして、これは、御案内のようにわが国の米の価格とそれから外国の米の価格と比較しますると、まだまだわが国の米の価格の方が相当高い、こういうふうな面がありまして、やはり食糧援助を効率的に行うためには、援助資金でもって外国からの米を買って、そして食糧不足の開発途上国へ援助するということが効率的であるというふうなことから、資金をもってやっておるわけでございます。  なおまた、わが国としても食糧が全体的に不足をしておる、そうして食糧自給力を高めなければならない、そういうふうなわが国の実態でございます。そういった面もやはりあわせて、われわれは資金援助という形で食糧の援助を行っておるというのが実情でございます。
  228. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから、次にお尋ねしたいことは、そろそろ五十一年度の米価を決定する時期に参ったのでございます。これは、私は昨年の米価決定のときにも大臣にも御希望申し上げたのでございますが、この米価決定方式というものを、従来やっておりましたような米価方式をひとつこの際再検討する必要はないかということを私は大臣に申し上げたのでございますが、これに対しては何か検討されておるのであるか。従来十数年間やってきました米価決定方式によりますと、これがために中央におきましては農民は何万人も動員され、何億というむだな経費を使って、そしてもう右往左往して米価を決定するわけなんで、実にむだといえばむだなんです。もっと合理的な納得のいくような米価決定方式をひとつ考えられたらどうであるか。もちろんこれは政府が決定するのでございますから、政府以外で決定するというのではございませんが、政府が決定する前に何とかもっと特段の方法をもって本年度の米価決定をなさるという、こういうような御意思はないのであるか。従来十数年間やってきた、こう言ってははなはだ失礼ではありますけれども、自民党のサル芝居のような、こういう米価決定方式というものはおやめにならないと、これは自民党のためにもならないと私は思うのです。いままではみんな知らなかった。ところが、もう自民党のサル芝居で米価というものがあんなふうに決まっているのだということになってしまったのだから、これは自民党のためにもそろそろお考え直しになった方がいいのじゃないか、こう考えますので、この際ひとつ十分御検討なさったらどうかと思うのでございますが、何か腹案があるのかどうか、どう考えていらっしゃるか、この機会に承りたいと思うのでございます。
  229. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米価の決定方式につきましては、これは法律的な形としては、いまお話がございましたように、食管法に基づいて米価審議会の議を経て政府がこれを決めるということになるわけでございますが、その間の過程においていろいろと批判を招いておる実情にあるということでございます。ただそのやり方が、これはやはり長い歴史の積み重ねの中で行われておる形でありますから、批判はいろいろとございますが、これを一挙に変えていくということはなかなか私は困難な面もあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。しかし、ああした状態で決まるということが決していいあり方ではないというふうにも考えております。まだ今年度米価決定のやり方につきましては具体的に何も考えておりませんし、決めてもおらない段階でございますので、御意見等も十分承りながら、改革をすべき面はひとつ努力を重ね、検討をしてみたい、こういうふうに思うわけであります。
  230. 稲富稜人

    ○稲富委員 この点、私特に口の酸っぱくなるような問題で何度も繰り返したくないのですけれども、いままでの米価決定に非常にむだがあったということだけは大臣認めていただきたい。そして、農村はこれがために非常にたくさんの経費とたくさんの動員をしながらむだをやっているということなんです。それで、当然これは政府が決定するんだから、米価審議会に諮問される前に何とかひとつ検討して、そして答申案が出たらばそれによって直ちに政府が決定するというような——何か余りにそういう長い期間、わいわい騒ぐ期間だけをたくさんつくるような、こういうようなことでは非常にむだが多いじゃないかと私は思う。今日たださえも経済不況な農村にまたむだな金を使わせるということも非常に考えものでございますので、この点はひとつ真剣に考えて、大臣もいままでの米価決定のやり方ということが決してこれは妥当なものではないということは、この前も言っていらっしゃったし、今日もそれは意識されておるようでございますので、そういう点を十分考えて、本年度は米価決定に対する検討をいまひとつ私はお願いをしておきたいと思うのであります。  次にお尋ねしたい問題は、沖繩の農業並びに水産業の開発の問題についてお尋ねしたいと思うのでございます。  それは、沖繩は農林省ばかりじゃなくして開発庁もあると思いますが、沖繩の農業というものは御承知のとおり非常におくれております。おくれておりますが、このおくれた原因というものは、多年の間他国の支配下にあったがためにほとんど農業対策というものがやられていない、これが日本の本土の農業と比べて非常に立ちおくれておる一つ原因であるということ。さらに、沖繩はあの亜熱帯地方の特殊の土地である。それで、亜熱帯地方には亜熱帯地方としての農業というものが私は成り立つと思う。こういう問題に対して、沖繩農業というものを将来どう開発していこうと思われておるのか、沖繩の水産業をどう開発していこうと思われておるのか、まずこれに対する所見を承りたいと思うのであります。
  231. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も最近沖繩に行ったわけでございますが、沖繩の農業、漁業というものが本土と比較をいたしまして非常におくれておる。特に基盤整備といった問題につきましては、これは本土と比べると雲泥の差があるというふうな感じを持って帰ったわけでございます。このおくれた沖繩の農業あるいは漁業を今後積極的に振興していくというのは、これはやはりわれわれ本土の農業と比較いたしましても、わが政府の非常な責任であろうというふうに考えております。予算の面につきましても、五十一年度予算は、本土と比較いたしますと、たとえば補助率あるいは採択基準あるいは前年度対比の伸び率等から見ますと思い切ってやっておるわけでございますが、これだけで十分であるわけではもちろんないわけでございまして、われわれは今後とも沖繩の農業、漁業の振興に当たっては特段の配慮をしなければならぬ。特に沖繩には産業がないわけでありまして、やはり農業、漁業というのが私は沖繩の最大の産業であるというふうに考えておりますだけに、特に力を尽くしてまいりたいと考えております。
  232. 稲富稜人

    ○稲富委員 御承知のとおり、沖繩の農業というものは十年計画とかなんとかというのをなさっているということを沖繩開発庁で聞くのでございますけれども、いままでに何十年おくれているんですから、これをいまから十年間で取りかかろうなんというのはとんだことなんです。まず土壌改良をやらなければいけない。排水灌漑問題をやらなくちゃいけない。そうすると、この土壌改良をやり排水灌漑をやるとなれば、北部の方からこれを引いてこなくちゃいけないという問題が起こってまいります。それから、沖繩には亜熱帯地方としての特別な農業というのがやはり存在するわけなんです。あるいはパインにいたしましても、種子の改良をやればもっといいものができると私は思うのです。あるいはパパイヤに対しても、種子の改良をすればもっといいのができると私は思うのです。こういうような亜熱帯地方の特殊の農業というものをあそこにやるのだ、こういうような意欲を持たせた一つ農業対策が必要ではないか。漁業においてもしかりなんです。クルマエビの養殖をやりまして、日本ではクルマエビは一年間に一遍しかできません。沖繩では二回これができるんですよ。成長するんです。こういうような特殊の事情を生かす。あるいはウナギの養殖なんかでも、沖繩では非常に成長する。沖繩が持つそういう特殊事情というのがある。もちろん、国内におきましても、農業というものは土壌、風土その他によるその地方特殊の農業をやらせるということが最も必要でございますが、特に沖繩は特別な土壌、特別な風土のところでございますから、それに適する農業というものを本当に国が積極的に編み出してやれば、沖繩の農業も立ち行く道がある。沖繩の水産業も立ち行く道がたくさんあると私は思う。これに対してはもっと積極的な取り組み方をやらなければいけない、かように私は考えます。これは、日本が沖繩を多年の間異国の統治下に置いておいたその責任上からも、われわれはもっと積極的にこれは日本政府として取り扱うべき問題ではないか、かように私は考えるわけでございます。  特に申し上げたいと思いますのは、同じ国内でありながら、土壌等の関係等でいろいろな病気等もあると思いますが、沖繩のバナナのごときは、日本に持ってくれば持ってこられる。ところが、これは植物検疫制度があってなかなか持ってこれない。同じ国内であって、そういう検疫制度によって沖繩のものを本土に持ってこれない。こういうようなことがいいのであるか。何かこれに対しては方策をとる必要があるのではないか。この点も十分やはり検討すべきものではないか。こういうことも私は政府としても考えて方策をとるべきものではないか、かように考えます。  さらに、私は、沖繩の問題を申し上げましたから、ついでにこの機会に北方領土の問題を申し上げたいと思うのでございますが、北方領土を主にいたします日本の漁業というものが、ソ連のために非常な損害をこうむっておることは事実でございます。特にこれが北海道、三陸沖、千葉沖までその漁船団がやってきまして、今日では非常に漁場を荒らしているという問題があります。これはもう多年問題になっておりまして、われわれしばしば要求するけれども依然としてこれは傍若無人な態度をとって、日本の近海をソビエト漁船団が荒らしているという事実、これに対して一体日本の外務省はどういう処置を今日までソ連政府に対してやってきておるか、この点をひとつ承りたいと思う。
  233. 木内昭胤

    ○木内説明員 ソ連の船団が日本近海をかなり荒らしているというのは先生の御指摘のとおりでございます。これに伴う損害につきましてはソ連側当局に累次善処方要求いたしております。かたがた、昨年の十月国会におきまして御承認をいただきました日ソ間の近海操業協定に基づきまして、いろいろな漁民の方々の損害を処理する委員会が発足いたしたわけでございます。これはソ連側委員の任命手続がおくれてなかなか実現を見ませんでしたけれども、この三月五日に第一回の会合を持ちまして、今後鋭意この分野での改善ができるものと期待いたしております。
  234. 稲富稜人

    ○稲富委員 この改善ができないときは、その損害をこうむった漁民に対しては政府はいかなる処置をとられますか。
  235. 木内昭胤

    ○木内説明員 この種の委員会は米ソ間にもございまして、国際的な経験から見ましても、もちろん完全に満足のいく解決ではございませんけれども、いろいろ解決された分野がございます。したがいまして、私どもとしてはソ連の善意に期待いたしておるわけでございます。かたがた、一年前の被害状況と最近の、国会に御承認をいただきました協定ができましてからの被害状況でございますけれども、仮にことしの一月と昨年の一月と比較いたしますと、昨年の場合は三百一件について報告を得ておりますところ、ことしはこれが二件に減っております。したがって、かなりの改善というものがすでに御理解いただけるものと思います。
  236. 稲富稜人

    ○稲富委員 損害が十分なる補償をされない場合は政府としてもこれは何とか考える、こういうことが必要じゃないかと思いますので、その点をひとつ農林大臣も頭に入れておいてもらいたいと思うのでございます。  時間がありませんので、さらに一つお尋ねしたいと思います。  御承知のとおり今回六月一日から国鉄運賃の値上げが行われる予定になっている、そういうことになるそうでございますが、そうなりますと、東京方面に市場を持っております九州あたりの地方は非常に大きな問題を生じて、運賃高になるわけでございます。これに対しては、農林省として特別な計らいで、こういうことをやらないように、これはひとつ農業を守る立場からも十分考えてもらわなくちゃいけないと思うのでございます。これに対しては農林大臣はどうお考えになっているか、承りたいのであります。
  237. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国鉄運賃が大幅に値上がりをするということになりますと、遠隔地から生鮮食料品を送るという場合において非常に多くの負担が生産者にはね返ってくる可能性があるということは想像されるわけでございまして、運賃問題につきましては、国鉄の財政状態という中から運賃法の改正というものが行われるわけでありますが、われわれ農林省としても、この運賃改定によりまして及ぼすところのそうした影響というものに対しては非常に重大な関心を持っておりまして、これに対しては、今後ともこの運賃改定が行われるというふうな事態に当たっては、こうした急激なショックが生産者に加わらないように、われわれとしても最善の努力をするための対策をひとつ講じなければならぬ、こういうふうに考えております。
  238. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間がありませんから、最後に一点だけ承ります。  実は、私は本会議でいつか田中総理に農業白書の問題のとき質問したのでございますが、わが国外国からたくさんの農産物輸入いたしております。そうしますと、やはりこれだけの農産物輸入しておるならば、農林省としても、各国の農産物生産状態調査するような、そういう機関を設置をする必要はないということを私は要望したことがあるのでございます。ところが事実は、農林省としてはただ大使館にだれか役人を送っているぐらいで、新聞の切り抜きを送るぐらいなんだ。ほとんど商社任せなんだ。これが日本の政治の悪いところで、今度のロッキードの問題から考えましても、余りに商社に任しておることが商社に操られて、こういう問題が起こったと私は思う。これは単なる飛行機の問題であったけれども、農業の問題でもこういうことが多かれ少なかれ今日まであったと私は思う。かつて大豆が急騰した。これはやはり商社が各国の作付状態を知っておったために、先走りして大豆の値上げをしたという問題もある。あるいは数年前にカナダに小麦の買い付けに行ったところが、すでにソビエトが先に手を回して買い付けて、困ったという問題。こういう点を見るときに、やはり商社任せではなくして、国がこれほどの農産物外国から買い入れて苦労するならば、農林省としての特別なる調査機関ぐらいは設ける必要があるのではないかと私は思う。  今日砂糖においてもしかりなんです。今日の砂糖というものは原糖を買ってくるのは、ほとんど商社が買い込んでくる。砂糖業者は商社から製造を委託されたような形で砂糖製造に当たっている状態なんだ。果たしてこういうような状態でいいのか。余りに商社任せにする結果が変なところに商社と政治の癒着があるんじゃないかということを疑われる。そして商社に引き回された政治が行われるということは、日本の政治のために最も遺憾なことだ。それだから農林省といたしましても、これに対しては商社任せではなくして、任せてはいないとおっしゃるかもしらぬけれども、商社の情報をとるだけではなくして、農林省自体として各国の農業調査するような機関の設置をする必要がないかということを特に私は要望したいと思いますが、いかなる考えであるか承りたいと思います。
  239. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今日のように世界的に食糧が逼迫をしておるという状況の中にあっては、最大農産物輸入国としての日本としてそうした世界食糧の情報を収集するということは的確な食糧政策を進めていく上において一番大事なことの一つであろうと考えるわけでございます。農林省としてもいままで情報の収集を怠っておるわけではないわけでございまして、主要な国々に対しては農林アタッシェを置きまして、そして情報の収集にも努めておりますし、また食管物資であるところの麦の輸入等につきましても、カナダあるいはアメリカ等にも食糧庁から職員を送りまして常時麦の世界の情勢等についても情報を集め、そして農林省へこれを送らしておるわけでございますが、いまお話しのようにそういう情報をやはり総合的に本省で集めて、そして綿密にこれを分析調査をして的確な行政を行うというふうなことも必要であるとも思うわけでございまして、怠っておるわけではございませんけれども、そういう点についてはさらに今後とも努力は続けてまいりたい、こういうふうに思います。
  240. 稲富稜人

    ○稲富委員 いや怠っていらっしゃるというわけではないけれども、弱いのですよ。それは大臣知っていらっしゃる。大体、大使館にだれか農林省から行って、その人たちがどうしておるかというと、その地方の新聞とかその種の情報を切り集めて、それを送っておる。そういうようなことではなくして、もっと積極的に活動し得るような一つの情報機関というものが必要ではないか、こういうことを私は特に考えるから申し上げるのです。商社に操られないような一つ輸入対策をやらなければならないということを特に私は考えるわけであります。  いろいろ申し上げたいことはありますけれども時間が参りましたので、そういう私の希望を述べまして、質問をこれで終わることにいたします。
  241. 湊徹郎

    湊委員長 これにて農林大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  242. 湊徹郎

    湊委員長 次に、土地改良法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。安倍農林大臣
  243. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 土地改良法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  近年におけるわが国農業を取り巻く環境や食糧をめぐる内外の諸情勢の変化に対処して国民食糧の安定的供給確保農業の健全な発展を図るためには、国内農業生産体制を強化し、自給力向上に努めることが基本であります。  農業基盤整備事業は、そのための基本的前提をなすものであり、その積極的推進を図ることは、現下の農政の緊要な課題であります。  中でも国営土地改良事業は、農業基盤整備の基幹をなすものとしてその強力な推進が求められているのであります。  しかるに、国営土地改良事業は一般にその事業規模が大きいため巨額の費用を要し、その事業着工から完了までの期間も相当長期にわたらざるを得ない実情にあります。これに対処して、その工事の完了を促進するため、特定の国営土地改良事業について事業費の一部につき借入金をもって財源とすることができる道が開かれておりますが、現在その対象は灌漑排水事業、干拓事業等に限られております。  一方、農用地開発事業は、農業経営の規模拡大に資するとともに食糧自給力向上と地域農業振興に大きな役割りを果たしているのでありますが、近年における事業費単価の増高、公共事業の抑制等の影響からその進捗は必ずしも順調ではなく、いまやその促進を図ることが緊急の課題となるに至っております。  このような情勢に対処して、農用地開発事業及びこれと灌漑排水事業をあわせて施行する事業等についても、灌漑排水事業、干拓事業等と同様に、その工事の促進を図るため、借入金をもって事業費の一部に充てる道を開くこととし、この法律案を提出した次第であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  244. 湊徹郎

    湊委員長 引き続き本案についての補足説明を聴取いたします。岡安構造改善局長
  245. 岡安誠

    ○岡安政府委員 土地改良法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において申し述べましたので、以下その内容について御説明申し上げます。  この法律案は、土地改良法第八十八条の二の一部を改正するものであります。  同条は、特定の国営土地改良事業について、その工事の完了を促進するため特に必要がある場合にその事業の一部につき借入金をもって財源とすることができる旨を定め、その対象となる事業を列記しておりますが、現在は、農業用用排水施設の新設・変更すなわち灌漑排水事業、これにあわせて行う農用地の保全のため必要な防災ダム事業、干拓事業及び灌漑排水事業や防災ダム事業によって生じた施設の災害復旧事業に限られておりますので、これに、農用地造成事業及びこれにあわせて行う区画整理事業を追加するものであります。  この改正によりまして、いわゆる農用地開発事業のほか、灌漑排水事業を主体として農地開発事業等をあわせて施行する総合灌漑排水事業及び農地開発事業を主体として灌漑排水事業または区画整理事業をあわせて施行する総合農地開発事業につきまして、全体として借入金を導入し得ることとなります。  なお、この追加に付随して、災害復旧事業の対象等につきまして所要の規定の整備をいたしております。  また、これら借入金をもって財源の一部とする事業の工事に関する経理は一般会計と区分して特定土地改良工事特別会計で行うこととなっておりますので、以上の改正に伴い、附則において特定土地改良工事特別会計法の規定の整備を行っております。  最後に、この法律案の御可決をいただいた暁において新たに借入金を導入して特定土地改良工事特別会計で実施することを予定しております国営事業地区の昭和五十一年度の事業費は、全額特定土地改良工事特別会計の歳出として計上しております関係上、この法律案の施行期日は昭和五十一一年四月一日としております。  以上をもちまして、土地改良法の一部を改正する法律案についての補足説明といたします。
  246. 湊徹郎

    湊委員長 以上で、趣旨の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、明四日木曜日午前十時委員会委員会散会後理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十分散会      ————◇—————