運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1976-05-18 第77回国会 衆議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十八日(火曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長代理 理事 木野 晴夫君    理事 阿部 喜元君 理事 藤尾 正行君    理事 松本 十郎君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       大石 千八君   小宮山重四郎君       戸井田三郎君    渡海元三郎君       葉梨 信行君    旗野 進一君       林  大幹君    三塚  博君       吉永 治市君    木原  実君       山本 政弘君    和田 貞夫君       野間 友一君    鬼木 勝利君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 稻葉  修君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      植木 光教君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房同和対策室長 今泉 昭雄君         行政管理庁行政         管理局長    小田村四郎君         法務大臣官房長 藤島  昭君         法務大臣官房訟         務部長     貞家 克己君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 石原 一彦君         法務省人権擁護         局長      村岡 二郎君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君         大蔵大臣官房審         議官      戸田 嘉徳君         運輸省航空局長 中村 大造君         労働大臣官房審         議官      吉本  実君  委員外出席者         海上保安庁警備         救難官     船谷 近夫君         労働省労働基準         局庶務課長   高橋 伸治君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ————————————— 委員の異動 五月十八日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     渡海元三郎君   有田 喜一君     葉梨 信行君   箕輪  登君     戸井田三郎君   瀬長亀次郎君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   戸井田三郎君     箕輪  登君   渡海元三郎君     赤城 宗徳君   葉梨 信行君     有田 喜一君   野間 友一君     瀬長亀次郎君     ————————————— 五月十七日  防衛費漸減等に関する請願金子満広君紹  介)(第四九四四号)  福島県会津若松市の寒冷地手当引上げ等に関す  る請願外七十一件(湊徹郎紹介)(第四九四  五号)  福島県北会津村の寒冷地手当引上げ等に関する  請願外四件(湊徹郎紹介)(第四九四六号)  福島県湯川村の寒冷地手当引上げ等に関する請  願(湊徹郎紹介)(第四九四七号)  福島県本郷町の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外七十二件(湊徹郎紹介)(第四九四八  号)  福島県河東村の寒冷地手当引上げ等に関する請  願外百十件(湊徹郎紹介)(第四九四九号)  金鵄勲章に関する請願登坂重次郎紹介)(  第四九五〇号)  同(湊徹郎紹介)(第四九五一号)  旧治安維持法等による犠牲者の補償に関する請  願(沖本泰幸紹介)(第四九五二号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五号)      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長代理 これより会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 珍しい法律が出てきましてね。あったものをなくして、また出す、こういうわけでございますが、訟務局をつくるというわけですけれども、これは考え方を最初に一つだけ聞いておきたいのです。  かつて訟務局をなくすという法律案をこの委員会に出して、私がかなり質問をしたわけですけれども、そのときに、訟務局の性格上、一課から六課までがございましたが、五十八名ぐらいの人たちがやっておったわけです。最近の事案のふえ方その他から言って、一省一局削減とは言いながら、どうもそのしわをこの局に寄せるというのは解せぬのだけれどもやっていけるか、直接的に国民の利害にかかわるのだし、なかなか進行しないで国にかかわる訴訟その他が困っている分野がたくさんある、弱い者が泣いている分野もある、それを何でこれを削らなければいかぬのかと言って、大分詰めたことがあるんですよ。そうしたら、とは言いながらこの局を削るんだという皆さんのお話でした。ところが、今回出てきた法案をなぜ出すんだという話を聞いたら、かつて私が理由に挙げて反対をしたと同じ理由で、今度は局にすると、こうおっしゃる。これはどうも納得いたしかねるわけでございますが、そこらの事情大臣から一言承っておきたいのですが、いかがでしょうか。
  4. 貞家克己

    貞家政府委員 ただいま御指摘のとおり訟務局昭和四十三年に行われました行政機構簡素化のための一局削減措置によりまして官房訟務部となったものでございます。当初の考え方といたしましては、従来本省訟務局において多数の訴訟事件を担当いたしておりましたけれども、そのうち相当数のものを地方支分部局である法務局あるいは地方法務局に担当させまして、本省の負担を軽減する、そして訟務局官房の部とすることが可能であり、それが相当であるというふうに考えられたわけでございます。  ところが、御承知のとおりその後社会情勢変化するに伴いまして、訟務事件が著しく、量におきましても、また質の点におきましてもきわめて顕著な変化を見せております。したがいまして、官房訟務部事務実態は、昭和四十三年当時とは著しく様相を異にしたといっても過言ではないと思うのでございます。したがいまして、現段階におきましては、これを官房の部としてとどめておきますことは、決して訟務事件の処理の適正、円滑を期するゆえんではありません。その機能を十分発揮させるゆえんではございませんので、その実態に適合させるように組織再編整備が必要となったのでございます。したがいまして、昭和四十三年当初の一局削減措置がとられました後、著しい事情変化が生じましたので、この事情変化に対応して適切な組織に改めたい、かように考えた次第でございます。
  5. 大出俊

    大出委員 どうも有能な皆さんお答えになることで、そのときにはそれらしい説明をなさるのですけれども、ここに四十三年の、いまお話しのときの私の質問議事録がある。四十三年四月二十六日、このときに私の方がそういうことを言っているんですよ。私はあのときに、訟務局仕事がどうふえてきているかを調べたんですから。こういうふえ方をしていたのでは、ここにちょっとありますけれども、充実をすべきものだと私は結論として判断をするんだが、にもかかわらず官房に入れてやっていけるとお考えかということを私の方から聞いているわけですよ。ふえてきているのはいまに始まったんじゃないんだ。ですから、この辺で、皆さんをこれ以上責めてもしようがないので、行政管理庁に承りたいのですがね。  私はあのとき、佐藤総理にこの席に来ていただいて、さしでやりとりを大分長い時間をかけてしたのですが、何か突発的に閣議で一省一局削減だとツルの一声で決まった、だから局をなくすんだと言う。これは筋が通らぬじゃないか。どうしても必要な局ならば、総理が言おうとだれが言おうと、応ずべきではない。たとえば当時、選挙制度問題がやかましくなっておって、審議会をつくったばかり、世論もごうごうたる時期でございました。自治省は選挙局を廃止する。国有財産をめぐるたくさんの問題があって、いまだって三分割案だなんて、大もめにもめているわけでありますが、大蔵省は国有財産局を外した。一々どうも気に食わぬ。しかも一つの省内で見ていると、一番弱いところにしわが寄る。しかし、その弱いところというのは、他に比べて、対国民という意味で非常にこれは大変なことをやっているところ。訟務局だってそうでしょう。そういうところにしわを寄せるとは何事だと言って、私は開き直ったことがある。  行政管理庁は、今回これを認めたという、その理由ですね。当時行政管理庁の諸君も私にお答えになっている。一体これは何事でこういう結果になったのですか、承っておきたいのですがね。
  6. 小田村四郎

    小田政府委員 ただいま法務省から御答弁申し上げたのが具体的な内容でございますけれども、当時の一省庁一局削減当時と比べて非常に訟務関係情勢変化を生じたということが内容でございます。  一省庁一局削減当時の局につきまして、その後、復活というのはおかしいわけでございますが、別途の法律によりましてできました局といたしましては、ただいま国土庁になっておりますけれども、当時経済企画庁にございました水資源局、これが削減されたのが、その後国土庁設置法の際に水資源局として成立いたしております。それから国立公園局、厚生省にございましたけれども、これも環境庁の成立の際にほぼ同じ機能を持つものといたしまして自然保護局といたしまして成立いたしております。
  7. 大出俊

    大出委員 妙なことをあなたはおっしゃいますがね。国土庁設置法というのは、これはあなたの方が出したのじゃないんだ。しかも、出てきたものを各党の皆さんにお集まりをいただいて、私の手元で、法制局の方とも相談をして、ほとんど全部中身を変えた。企画局調整局とあった、それを私のところで企画調整局と一本にした。途端に、いまだから申し上げるが、田中総理から横やりが入ってきたいきさつがある。そういういろいろあって、切り離して水資源をつくったんだ、わけがあって。そんなものは、あなたの方が何も復活させたんじゃない。ここで、国会が決めたんだから。そうでしょう。そういう、何といいますか、いいかげんなことを言っちゃいけませんですよ。だから行政管理庁なんというのはない方がいいと私はいつも言うんだ。と言ってみたところで、これは出てきているわけですから、処理しなければならぬわけですからね。こういうつじつまの合わぬことをなさらぬ方がいい。  私がここで一つ心配をするのは、いまのようなことを考えている行政管理庁だと——どこの省だってなくしていいわけではなかった局をなくしたのだから、それなりの理由はみんなある、なくせない局もなくしているんだから。基本的にはここに問題がある。だがしかし、ここで一つ訟務局ができれば、次の段階で、やれまた選挙局をつくりましょうとか、国有財産局が必要だとか、これは次々出てくるに違いないんだ。  総定員法が当時も問題になったのだけれども、これは国家行政組織法が初めて船田さんが提案してできた、松岡駒吉衆議院議長時代にね。国が出した法案をばらばらにして、衆参両院で大修正を加えて、全然別なものにしてしまった。このときに松岡議長自身が、こんなことをしたら官僚の阿房宮ができる、何事だと言った。当時の経過から振り返ってみると、総定員法を考えたその発想の根本に昔の議論と逆な発想がある。だからその点も私は申し上げておいたのだが、総定員法だってぼつぼつなくそうとかあなた方はろくなことを考えていない。やたらふえるところは総定員法からはずしてしまうとか、そういう御都合主義で行政管理はできませんよ。職の定数というのは法律で決めるとなっている。職とは何だ。ここに仕事がある、仕事があるから人を配置する。そうでしょう。下から積み上げてきて機構ができている。簡素化というなら、下からはずしていかなければ行政簡素合理化はできはしないのです。それをいきなりてっぺんで、そういうことも何もしないで頭だけ局をなくす。そういうことで行政合理化なんて初めからできはしない。時期が過ぎればまた局を設置することになるに違いない。これは局長が一人ふえる、減るじゃない。行政機構というのは、局長が一人ふえるということは、その部分の行政が前へ出るということなんですから、局長の一人ふえた、減ったではない。基本的な問題がある。ところがそこいらについては抜本的に何も考えていない。これでは私は行政管理にならぬと考えている。あなた方いまのようなことを言えば、仕事がふえてきたのだから局にすると言うなら、ほかの方の削減局だって、その後仕事がふえてきたらお認めになるのですか。
  8. 小田村四郎

    小田政府委員 行政機構ないし行政組織と申しますものは、情勢変化に応じて弾力的に編成されていかなければならないと私どもは考えております。ただその場合に、全体としての機構膨張が行われることは好ましくないと考えております。したがいまして、かつて削減されました事務あるいはそれに相応いたします部局の事務内容が非常に増加してくる場合には別途再編成が必要であろうかと思いますけれども、そういう場合におきましても、全体の機構といたしましては膨張を極力防止するという考え方で対処してまいりたいと考えております。今回の法務省訟務局新設につきましても、そういうふうな観点から入管局の次長及び政令職でございますけれども参事官二を削減するという措置をとっておる次第でございます。
  9. 大出俊

    大出委員 形式上のことばかりあなたは言っているのですが、もう一つだけ聞いておきましょう。  総定員法は一体どうするつもりですか。まず国立学校教員だとか国立病院看護婦さんなどを総定員法の枠からはずすというものの考え方がおありなんですか。つまり、病院がどんどんふえる、学校もどんどんふえる、これは人口が増加するからふえるのはしようがない。横浜市内一つをとらえたって、三百六十校くらいあったものがもう四百校近い。十三年前ですけれども、三十八年に私が衆議院に出たときの百六十万の人口がいま二百六十万に百万ふえている。そんなにふえるのは物理的にあたりまえだ、ふえるところは枠からはずすなら、総定員法意味がない。総定員法はふやさないためにつくったのです。あなた方はそのときそう答弁をされた。今度はふえるところはめんどうくさいからはずすと言う。そういう定員管理はないですよ。これが一つ国立病院看護婦さんなど、総定員法の対象からはずす気があるのかないのか。総定員法そのものを廃止するというのは、これはどういうことになるのですか。そういう気があるのかないのか。それから低成長下における公務員のあり方を議論するというのですが、それは一体どういう考え方なんですか。  それから、今日総定員法に基づく定員は五十万六千五百七十一人というのが四十二年度末のとらえ方であったわけですね。ところで五十一年度末五十万四千五百三人、そうすると二千人ばかりしか余裕がないのですね。しかも皆さんの方は本来ならもう総定員法の枠を超えてしまっているにもかかわらず、三年間の定員削減のあなた方の行政管理庁方式、これを少し繰り上げたのですね。繰り上げて比率を変えて、何とかかんとかつじつまだけ合うようにこれはごまかした。ということになると、ここらのところはこれからどうするつもりなんですか。長くなりますから、とりあえずそれだけ聞きましょう。
  10. 小田村四郎

    小田政府委員 前回もお答え申し上げましたとおり、来年度増員要請につきましてはまだ具体的な検討を行うまでに至っておりません。昨年度は非常に財政的にも問題のある年でございましたし、先生指摘のように、削減計画が当初計画におきましては十分の三を予定しておったわけでございますけれども、それを五十二年度分を一部繰り上げて十分の四を実施していただくということで閣議決定をいたしたわけでございます。五十二年度情勢につきましては、今後経済情勢等変化に伴いまして予算編成方針も徐々にこれから検討されてまいると思いますけれども、何分今後の問題でございますので具体的な検討をする段階まで至っておらないわけでございます。  ただ、先生指摘ございましたように、いわゆる定員令一条の定員でございますけれども、五十年度から増勢に転じてまいりました。五十年度、五十一年度と増加いたしておりまして、最高限度との差が約二千人強ということになっております。そこでこれが五十二年度最高限度を超えるような情勢になるかどうかということは今後の問題として検討しなければいけませんし、仮にその最高限度を突破するというようなことになった場合にどうするかということも勉強していかなければいけないわけでございますけれども、何ともただいま申し上げましたような段階でございますので、そこまでの検討には至っておらないというのが現状でございます。
  11. 大出俊

    大出委員 四・三・三の比率であなたの方は削減計画を出していたわけですね。これは私も前から確かめてあるところであります。それを四四・二に変更した、五十二年度分を先取りした。何とかかんとかかっこうの上のつじつまだけ、あなたの方は合わした。四・四・二にすれば五十二年度は二になるのだから、本年度の半分でしょう、四・三・三を四・四・二にして五十二年度分を二に落としたのだから。そうなると、大体どのくらい削減定数が出てくるかといえば、五十一年度は四にしたのだから四の半分の二なんだから、そうすれば二千八百人からせいぜい減らしてみたって三千人どまりでしょう、来年度は。例年の実績から言えば、ここのところ六千人前後ふえているじゃありませんか。これも調べてある。来年度六千人前後ふえるとすれば、二千八百から三千しか削減定数がない。なければ、とてもじゃないが総定員法の枠に納まりはせぬじゃないですか。だから、総定員法をなくそうだとか、国立病院看護婦さんだとか学校教員をはずそうだとか、妙なことをあなた方は考えている。一体比率を高めて、四・四・二を五十二年度をまた四に上げるとか、そんな操作も考えているわけですか。そこのところはどうするのですか。はっきりしてください。総定員法というのはなくすのかどうか。それともどんどんふえるところははずすのかどうか、一体何を考えているのですか。いまから言ってもらわないと、間に合わない。
  12. 小田村四郎

    小田政府委員 ただいまもお答え申し上げましたように、総定員法最高限度を超えるような見通しになるのかどうか、これは削減計画を五十  一年度に決定したままになっておりますけれども、それをそのままにしておくかどうかということも絡めて今後検討していかなければならないと考えております。したがいまして、その最高限度を突破するような事態になった場合に、法律をどういうふうな形にするかというところまではまだ考えておらないわけでございます。
  13. 大出俊

    大出委員 通常六千人から七千人ふえているじゃないですか。二千人ぐらいしか差がないところへ六千人から七千人ふえるのが普通なら、学校先生だって生徒数がふえるものを減らすわけにいかない。看護婦だってそうじゃないですか。病院ができれば要るんだからいやでもふえるじゃないですか。これは自然増です。そうなるとおさまらないことは目に見えているじゃないですか。そうなったらじゃない、いまからおさまらぬことはもうはっきりしている。  もう一つ承っておきたいのだが、今年から米穀などの検査検定業務の再点検に乗り出してこれを減らすんだと言う。これは一体どういう意味なんですか。あなたの方は四月から検査検定業務実態調査というものをおやりになっているのでしょう。やっていますか、やっていませんか。そして不必要と判断した検査検定業務を廃止したり地方へ移管する。それでも相当な人が国の定数の面からいけば外れる。これなんかをやると大問題が起こりますよ。実態としてはやっているんでしょう。当委員会所管委員会なんだから、はっきりしてくださいよ。
  14. 小田村四郎

    小田政府委員 検査検定業務につきましては、二月に行政監理委員会に諮問をいたしまして、行政監理委員会で現在御検討をいただいております。それから、同時に行政管理庁といたしましても、検査検定業務実態につきましての調査をいたしておるわけでございますが、この問題をどういうふうに解決していくかということは今後の課題でございまして、まだそこまでの段階には達しておりません。
  15. 大出俊

    大出委員 あなた方は安易にこういうことを考えるけれども穀物検定だなんというものをあなた方がいじろうとすれば、農林省の組織の中で大問題になるのはわかっているじゃないですか。統計業務について言ったって、倉石さんが農林大臣時代からあれだけもめたじゃないですか。振りかえ定員というようなことでずいぶんこっちは苦労させられた。だから、もしそういうことを考えるんなら、所管委員会なんだから、あなた方は質問が出たら細かく説明をして、もっとフランクにこういうふうに考えているんだということを明らかにして、それで進めていかなければ、そのときになって大問題になってもめるだけじゃないですか。そのたびにうまくいかない。そういうことじゃ行政管理庁の役目は勤まらぬ。なぜこういうことをやっているかといえば、二千名しか総定員法の枠はないんだから、通常六、七千名ふえているんだからオーバーする。だからというので削ろうとするわけでしょう。あなた方はそういう意図でやっているんじゃないですか。どっちを向くのかさっぱりわけのわからぬようなことを言っていないで、基本的に来年、何を考えているのですか。
  16. 小田村四郎

    小田政府委員 検査検定業務調査及び行政監理委員会の御審議でございますが、これは何も来年度予算編成あるいは定員管理ということに関連して、それを目的としてやっているというわけではございません。あるいはもう少し時間はかかるのではないかという観測を私ども持っておりますけれども、それだけになかなかむずかしい問題でございます。  ただ、各種の検査検定業務につきましてももう少し民間能力を活用すると申しますか、活用しておる検査業務もございます。そういうような意味で、各省からも御意見を伺いまして各省実態調査し、かつ検討をしていただくということにした次第でございまして、必ずしも短期的な明年度定員管理あるいは予算編成ということに短絡したものではないわけでございます。
  17. 大出俊

    大出委員 三年、五%ということであなた方が始めたときに、あなた方は余り御存じないのだが古屋君などが一生懸命やっているときに、三年、五%なんていってやたら弱いところにかんなをかけた。だからローカル空港なんというのは管制業務をやる人がみんななくなっちゃって、セスナみたいな飛行機が飛んで一生懸命殺菌だなんだといってまく。ところが、風向その他が急に変わったって連絡のしようがない。そうかと思うと、富士山頂気象観測のためレーダーを入れた。レーダーを入れたけれども、三年、五%で削っていったもんだから弱いところへしわが寄った。だから半日しか動かない。露天なんかもみんな時間を延ばさざるを得ないという結果になった。しかし、余っているところは余っている。そういう場当たり的やり方というのはよくないのだ、危険な状態だって起こるわけですから。  検査業務調査と言うが、あなた方に検査業務簡素化するとか減らすとかいう意図がないのにやるんならこれはむだなことだ。減らす意思があるからやっているんじゃないですか。どうなんですか。
  18. 小田村四郎

    小田政府委員 もちろん国の行政事務でございますので、私どもとしてはできるだけこれを合理化し、簡素化していきたいという気持ちは当然持っておるわけでございます。ただ、具体的にこれをどういうような形でやるかということにつきましては、十分な調査と、それから現実にその事務を執行しておられる皆様の御意見というものも伺っていかなければなりませんので、その結論は今後の調査なり検討なりを待たなければ出てこないと考えております。
  19. 大出俊

    大出委員 いいかげんなことを言ってもしようがないじゃないですか、あなた。いまになってそういう答弁が出るなら、ここまでこんなに時間をかけることはないのだ。合理化しようとか減らそうとか思ってやっているんだと初めから言えばいいじゃないですか。ここまで時間をかけて詰めなければ言わない。やり方がこそくだって言うんだ。だから、検査、検定を少し減らそうというなら減らそうということではっきり言えばいいんだ。いい、悪いはわれわれ議論しますよ、そんなことは。そうでしょう。そのつもりでやっているんじゃないなんて言っていて、だんだん詰めていけば結果的にそうだ。そうでなければこんなものはむだなんだ。国が金を使ってやることはない。  だから、国立病院なんというのはどんどんふえていく、看護婦さんはふえるのだから、定員法から外すというんならそれも一つの方法かもしらぬ。検討しなきゃなりませんよ。あるいは国立学校教員、これもどんどんふえるのだから総定員法の枠から外すというんなら、それならそれでちゃんと方針を言ってくださいよ。決ってはいないがその方向で検討しているんならしていると。それならそれでぼくらだって所管委員会なんだから、それなりに一生懸命勉強しますよ。どうなんですか。
  20. 小田村四郎

    小田政府委員 御指摘のようなことを今後検討しなければならないということは考えております。しかし、いろいろむずかしい問題もございますし、法制上の問題でもございますので、そういう意思をいま持っているというわけではないのでそういうことを先ほど申し上げた次第でございます。
  21. 大出俊

    大出委員 それは最終的に決定してないのだからいま意思を持ってないでしょう。持ってないでしょうが、問題を議論する限りはその方向を考えるから議論するんであってね。そうでしょう。いまの問題だって、最初に聞けばあなたはチンプンカンプンなことを言う。そしてそれがだんだんはっきりしてくる。  もう一つ総定員法を外してしまうという考え方、これはどうなんですか。総定員法そのものをなくすという考えはあるのですか。
  22. 小田村四郎

    小田政府委員 総定員法を廃止するというのは御質問意味がよくわかりませんが、総定員法のいわゆる最高限度を廃止するという御趣旨かと思いますけれども、そういうことは現在考えておりません。
  23. 大出俊

    大出委員 あなた方は国家行政組織法の改正案をお出しになったことがあるでしょう。あの趣旨は一体どういうことになっているんですか。もう一つ各省設置法というもので定数は決まっていたでしょう。それを全部おっ外して総定員法にしたのでしょう。そうでしょう。あなた方は本来ならば総定員法というものをつくりたくはないのだ。国家行政組織法そのものに手を入れたいわけだ。各省設置法で一々国会審議なんていうのは、がたがた言われるだけだからめんどうくさくてしようがない。しかし、なかなかそういかない。ところがいにしえの議論、さっき私が申し上げた松岡さんが衆議院議長の時代の議論というのは、不思議なことだけれども、戦後のことですけれども、この法案の最初の質問は、いまうちの委員長をやっている若き日の成田氏がやっている。この質問のやりとりの中に出てくる。官僚の機構というものは気がついたらいつの間にかこんなにふえていた。これじゃ困るから、だから各省設置法という形にして、たとえ百人ふえる定員でも国会がチェックする。そうしなければ官僚の阿房宮ができてしまうからというので、各省設置法にしたんです。歴史がある。それを国家行政組織法そのものに手を入れてみんなおっ外したかった。ところが、なかなかそういうわけにいかないから、総定員法をあなた方は考えた、これが限度なんですよと。しかも、これは行政管理庁定員をプールしておいて、減らすんじゃないんですとあなた方は考える、再配置なんだと。そうでしょう、それが総定員法でしょう。総定員法をやめるということは、国家行政組織法そのものから見直すことになる。だからその意思があるかと聞いている。
  24. 小田村四郎

    小田政府委員 ただいま申し上げましたように、最高限度を廃止するということは考えておりません。国家行政組織法の改正案、これは前に数回御提出いたしまして未成立になっておりますが、これも目下のところ提案するという考え方は持っておりません。
  25. 大出俊

    大出委員 わからぬ人だな。一体なぜ法律定数を決めなければならぬのですか。総定員法というのは、御存じのとおり法律でしょう。本来ならば、いままでの日本の議会の戦後の議論からいけば、各省設置法で定数は決めなければならぬ。なぜそうなっているのかといえば、国家行政組織法で、職の定数法律で決めると決まっているからですよ、そうでしょう。職の定数法律で決める、こうなっているから、だから定員法というものを決めなければならぬのでしょう。総定員法廃止という考え方は、国家行政組織法の職の定数法律で決める、これを切るということなんです。それが国家行政組織法改正を考えた出発なんだ。だから、一つ間違うとそこに返ることになる。だから気になるから聞いているんです。あなた方は、総定員法を廃止するといった場合に、各省設置法に戻す気はないのでしょう。各省設置法に戻すんなら、職の定数法律で決めることに国家行政組織法でなっているんだから、設置法で決めればいい、そうでしょう。そこを聞いているんです。問題の基本じゃないですか。その気がないならないでいいですよ。
  26. 小田村四郎

    小田政府委員 たびたびお答え申し上げておりますように、総定員法を廃止するということは考えておりません。
  27. 大出俊

    大出委員 それじゃ、来年も総定員法でやるというわけですな。そうすると、来年いまの定数がこの枠を超えた場合、つまり、五十万六千五百七十一人ですか、違ったら言ってください。この枠を超えれば、総定員法を改正しなければならぬ、こういう結果になりますな。いかがでございますか。
  28. 小田村四郎

    小田政府委員 そのとおりでございます。
  29. 大出俊

    大出委員 この総定員法の改正を出したくないということになるとすれば、検査検定業務の見直しをやって、合理化あるいは減らすということを考えるとか、あるいは増加が著しい国立学校教員を外すとか、あるいは看護婦さんを外すとか、何かを考えなければならぬということになる。つまり、そういう合理化とあなた方は言うが、削減を考えるか、総定員法の枠から外すか、さもなければ総定員法を改正して定数をふやす、最高限度をふやすか、いずれかにならざるを得ない、こうなりますが、いかがですか。
  30. 小田村四郎

    小田政府委員 大体おっしゃるとおりでございますが、ただいまのたとえば学校なり病院を外に出すということにつきましても、総定員法の改正が必要でございます。
  31. 大出俊

    大出委員 同じことですよ。職の定数というのは法律で決めることに国家行政組織法でなっているからでしょう、そうでしょう。初めからそう言ってくれればこんな長い時間は要らない。問題の焦点はそれではっきりした。だから、むだなことをあなた方はやっているんじゃない。そこらのことを考えているからやっている。うまくいけば、検査、検定で幾ら減るか、学校先生をおっ外せば幾ら総定員法が切れるか、どんどん病院がふえるんですから看護婦定数なんかがふえ過ぎる、これを外せば幾ら総定員法が軽くなるか。そして六千人か七千人か来年度ふえる、それを含めて、総定員法にふやすという手をつけないで済むとすれば、外すところの改定を出すということになるだけのこと、そうでしょう。だから、あなた方がここで考えられておることは、何となくやっているわけじゃない。ちゃんとねらいはそこにあっておやりになっている、こういうこと、それだけわかればいいのです。  だから、今回のこの局をふやすということも、そう簡単じゃないのであって、もし訟務局というものをふやすならば、ほかの省庁だって黙っていない。おれのところもかつて削減したのだから局をふやせと言うに違いない。そこらのところはよほどあなたの方がお考えいただかぬというと、片一方で入管の次長をなくしたからというそれだけのことで事は済まない。昔、法務省には官房長はなかったのだから、私が出てきたころは、そうでしょう。はっきりすればそれでいいです。  次に、大臣に少し承っておきたいのでありますが、ロッキードの問題がこういう事件になりまして、私は昨年の十二月十六日に外務省にこの席で質問いたしまして、去年の八月二十五日のアメリカ上院のプロキシマイヤー委員会でホートン会長の証言があって、多額の賄賂を日本に対して使っていることをホートン氏が認めて、そのときに内容を明らかにしてくれという委員長の発言に対して、内容は言えない、なぜ言えないのか、言えば一国や二国外国の政府がつぶれると、こう言った。これが大きな騒動になって、自後キッシンジャー氏の動き等々が出てまいりまして、ようやく最近私は文書も入手いたしましたが、十一月の末に——私は十二月だと思って調べておったのですが、十一月の末でございましたが、キッシンジャー長官がワシントンの連邦地裁あての文書をお出しになったりいたしまして、高官名発表の差しとめ、チャーチ委員長にも会ったりしておりますけれども、そういう動きが出てまいりまして、私は昨年外務省に聞いたときに外務省が、そういうことはないと否定をなさいますから、調査すべきではないかと再三言ったのでありますが、調査もなさらぬようでございました。しかし、昨年八月の三木首相が訪米されたときにも話があったことを確かめておりますから、だから調べるべきだと言ったのですけれども、そういうことはないということでお調べにならなかった。あのころから手をつけていただければ、今日こんな妙な形にならなかった。つまり、これは与野党の関係を抜きにして、私はやはり戦後の議会制民主主義に対する国民間における不信が増幅されることは避けなければならぬと思うからでありまして、そういう意味で幾つか承りたいのであります。決算委員会、法務委員会等でいろいろな質問が出ておりますからくどいような感じがするのでありますけれども、しかし、避けても通れぬ私どもの方の党の方針もございますから、最初に稻葉さんが児玉さんとのおつき合いがあるという点について、二、三確かめておきたいのであります。  対人関係というのは妙なもので、赤の他人というのもあれば、話にはよく承っておりますという仲もあれば、あるいは旧知の仲といって何遍も会っている方々もあるわけでありまして、あるいは親友というのもあるし、あるいは刎頸の友なんというのも出てくるわけでありますが、その辺、どの程度の御関係かわかりませんが、十回以上も顔見知り、あるいはほかのやりとりからいたしますと何回か話し合いしたことがある、こういうわけでありますから、通常ならどうも旧知の仲ぐらいのことになりそうに思うのでありますけれども、その辺に判断をしておいてよろしょうございますか。
  32. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 旧知の仲ということは、相当親しい間柄という意味になるとすれば、そういう関係ではありません。
  33. 大出俊

    大出委員 旧知の仲というのは、書いて字のとおり、古く知っている仲ということなんですがね。これが旧知の仲。あなたは十回もお会いになっていれば、それは顔を見ればいやあということになるのでしょう。やはりそういう仲じゃないんですか。だからあなたに依頼をされる、こういうことになっていったんじゃないでしょうか。
  34. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 知っているかと言うから、知らぬわけじゃない、知っている。それから、会ったことがあるかと言うから、会ったことはある、こういうお答えをしたわけですね。それが直ちに旧知の間柄で、いまも親しくつき合っているというふうに結びつくものではないでしょう。どうですか。
  35. 大出俊

    大出委員 ところで、ジライン問題について少し承っておきたいのでありますが、今度ロッキード問題で警察、検察側の諸君が捜査をなさっているわけでありますが、児玉さんのお宅についての捜査もなさったわけであります。私の手元にあります文章からいたしますと、捜査の途中経過によると、児玉邸から五億円相当の預金、十億円相当の株券が発見され、さらにジライン側が児玉氏に支払った一部約八千万円に関する証拠が出てきた、こうなっておるわけです。この辺は御存じでございますか。
  36. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 刑事局長から報告は受けておりますが、内容につきましては刑事局長からお答えいたさせます。
  37. 安原美穂

    ○安原政府委員 捜索、差し押さえの結果どういう資料を入手したかということは、原則的には、捜査途中の段階でございますから詳細を申し述べることは差し控えさせていただきたいと思いますが、いま御指摘の預金証書かあったということは事実でございます。
  38. 大出俊

    大出委員 結構でございます。私もそう深く、皆さん一生懸命おやりになっているところを突っ込んで物を言う気はありません。私も実は、お耳に入っているかもしれませんが、ロッキード捜査特別本部に警視庁新館七階まで上っていったりして、いささかがしゃり上げてみたりしましたからね、御無礼な点もあったんだけれども。関係者以外出入を禁ずなんて書いてあるものだから、私もこれは関係者ですから。皆さんあわてて、いやいや先生というので部長さんのところへ連れていかれましたがね。それはそれでいいので他意はあったわけじゃないので、だからそれ以来今日まで調べておりますから、そう当てずっぽうで申し上げてはいません。いまのお答えで結構でございます。どうしてもお困りの点はお答えいただかぬでも結構でございますから。  ただ、これがつまり児玉邸捜査に基づいてジラインとの関係のものと目されるものが八千万円でありましても、それがごく一部である、こういう認識をなさるとなると、ジライン事件というのは穏やかならぬ事件だった。ほかの方を調べますと、大変な金が動いたことになっている。私も当事者ではもちろんないからわからぬわけですけれども、「この時期のジ・ライン問題もからめて考えなければならない。」という前置きが一つありますけれども「ジ・ライン株買占め事件では、最終的には五百三十億円もの金が動いた。トライスター導入工作にまさるとも劣らぬ大仕事だったのである。」こうなっておるのですね、明確に。これは有名な月刊誌でございますから、そういいかげんなことは書いていない。週刊誌ではございません。月刊誌でございます。したがいまして、相当な額の金が動いた。ジラインは後ほど朴政権下の例の韓国の麗水につくられました石油コンビナート、ここにも名のりを上げた現代財閥その他いろんなのと組んでいる時期もございました。いろんな微妙な政治的背景が韓国とのかかわり合いにもございます。いずれどこかで私もこれを明らかにしたいと思っておりますが、いろいろそういうねらいがあって動いた事件です。  ですから、これはここから先は推測が入りますけれども、当時の関係者諸君の間に相当な金が流れていたことも事実だ。ジライン側の責任者の方が申しておることによれば、児玉さんに調停の役を引き受けてもらってお世話になったというので億単位の金を持っていった。ところが、金を持ってくるなら仕事はしないと言って断わられた、こういう言い方を記者の方にしているのですね。だから百万円単位のお礼をした、こう言う。これは聞いてみましたが、ジラインのトップの方はそう言っておられますね、後からもう少し詳しく申し上げますが。したがって、その動きから言っても相当な金銭的な流れがあった。  そこで、大臣にこの依頼をされた当初のいきさつですね。中山素平さんなど財界の大物に調停を依頼して大分調停を進めたというのですね。ところが、これは失敗してなかなかうまくいかない。言うならば河本原爆というのは大変な威力がある。財界の大物が幾ら言っても聞いてくれない。それは船舶六グループをまとめるときに当時ちょうど河本さん内閣委員長でございましたが、これに反発して三光汽船中心にフリーでがんばった人ですから、確かにめったなことで折れぬだろうと思うのです。この時期に、これはとてもじゃないが中山素平さんあたりまで動いてもらってどうにも調停ができないのだから、それならば河本原爆にまさる児玉水爆でも使わないことには調停できないということで、児玉さんに依頼をするということになった。ここに当時の事情が細かく書いてあります。  そこで、まず児玉作戦の第一着手としてどうするか。中曽根さんの方の側の大物でおいでになる議員を使う、河本さんとも大変親しい間柄にあるということで、大臣のところに話を持ち込んだ。何とかこれは稻葉さんの手から河本さんに話をしてもらって調停に応じてもらえるようにあっせんをしてくれぬかということでお願いした、こうなっているのですね、この中に。  そうすると、これはまず、いわばジライン調停工作の、児玉さんの方に委嘱をされた第一着手なんですね、大臣のところに行ったといういきさつは。ですから、これはそう簡単なことじゃないと、私は実は思っているのです。大臣と河本さんとの関係、大臣に頼める児玉さんと大臣との関係。そこで、これだけの大きな問題で中山素平さん以下財界の大物が調停に入ってだめだった、その上でお願いをする、こういうわけですから。それで私は先ほど、御無礼な言い分かもしれませんが、これはそんなに一面識あるいは私の証人喚問のときじゃありませんが、廊下ですれ違ったぐらいの人に頼みに行けた中身じゃないですよ、読んでみると。相当な中身であって、だから大臣に頼むについてはこういうことで財界の大物、こういう方々にも頼んでこうやってみたいのだが、河本のだんな、がんとして聞かない。これは河本原爆だ。とてもじゃないが動かぬ。恐らく事情も話して大臣に頼まなければ第一着手のあっせん工作にはならぬのでありますから、だからそう簡単な仲でないと思うから、私は旧知の仲ですかと聞いたのです。ここのところはいかがでございますか。
  39. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 どういうわけで児玉がわしのところへ来たのかいま初めて知りました、あなたのその説明で。何のために来たんだろうなと思うくらいでした。そういう背景があって財界の大物に頼んだ末にわしのところへ来て、何の足しになるだろうと思うくらいです。だから成功しなかった、こういうことなんでしょうな。それを見ても、そんなに、そういうような事件の背景があって、おれでなければならぬような人物じゃないのですよ。
  40. 大出俊

    大出委員 稻葉さん、しかしあなた自分でそんな人物じゃないなんて言っちゃっちゃ困るじゃないですか、天下の稻葉修大先生が。この間だって憲法発言かなんかで世の中じゅう大騒動で、国会はむだ遣いを何日やったなんてぼくら怒られて被害者ですよ。そういうことを言っちゃいけませんよ、あなたほどの人が。それはおかしいですよ、あなた、大人物が。
  41. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 あなた、こういうことなんです。そういう経済的なことについては、河本さんが、君、赤ちゃんじゃないかと言うくらいに無知なんです。そこのところへ頼みに来たって、おれのところにそんなこと言ってきたってだめだよと言ったのです。そうしたら、それじゃ河本君に電話でもかけてくださいとこう言うから、それはいいよと、こういう程度の間柄ですな。そんな内容なんかみんな説明してやっているんじゃないのです、そのときの話は。ですから、そうやってあなたから説明されて初めてわかるくらいなんだ、そういう背景があった問題かと。私はそういう、何といいますか経済的な取引というようなことについては興味のない人間でございます。憲法などには非常に興味はありますけれども
  42. 大出俊

    大出委員 大臣、そんな大物じゃないって言って、あなたは時には大物発言をなさるのじゃないですか。どうも都合が悪いと大物じゃないとか、ちょっと困ったものですな。私は大臣は大変な大物だと思っているのです。憲法には大変お詳しいし。  ところで、人に物を頼むときに、大臣、私がいま物を言って初めてわかったなどと言う、冗談じゃないですよ。しかも、児玉さんともあろう人が子供の使いで話すのじゃないのだから、児玉さんほどの人が事もあろうに河本さんとあなたの関係を知らないで頼むわけはない。そうでしょう。緻密な人ですよ、児玉さんという人は、いま考えてみるとなおのこと。相当な緻密な策を立てて、これは調べてみると、ジラインが頼みに行ったときに児玉さんはすぐ引き受けたんじゃないんですよ。何遍かだめだと言って断っているのです。これは大変な問題だ、とてもじゃないが引き受けかねると言って断っている。しかもそれは、児玉さんがジラインと三光汽船との株の買い占め事件というものを調べた上で、これは大変なことだ、なぜならば財界の大物がみんな調停に立っている、これは大変なこと、だから引き受けかねると言って断っておる。それを再三頼まれて引き受けるに当たっては、それまでにすべての調査をしておられたはずですよ。そうでしょう。だから児玉さんの頭の中にはまずもって、大臣、当時の稻葉さんに頼む、河本君に話をさせる。それでどう出るか、出方によってはと、次の手段を考えておられた。それが世上いわゆるブラックジャーナリストなる方々を使っていろいろな文書を流すとか、国会でもどこかが取り上げてやれるように情報を流すとか、そういうところまで考えながら進めたわけでしょう。それを大臣に中身を何にも言わずに言ってきた、それじゃまるきり子供の使い、子供の話じゃないですか。私に言われて初めて知ったなんということは、あなた、それじゃ少し語るに落ちはせぬですか。
  43. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いや、全くそのとおりなんです。そんな説明されたっておれの方はわからぬし、私が役に立つようなあれじゃないのです。そういうことを知らないんです。あなたに言われて初めて知ったのです。中山素平だのいろいろそういう人が関係してもてあましたやつを児玉が引き受けて、それで乗り込んでくるには、おれのところへ来たってだめだね、話にならないね。だから話にならなかったんだ。明確じゃありませんか。
  44. 大出俊

    大出委員 大臣、なかなか答弁がうまいのか本音か知りませんけれども、やはり大物ですな、大臣は。大物ですよ、大変なものだ。だが問題は、私どもから考えてみると、いま大臣が言うようなことでなくて、児玉さんほどの人が、あなたと河本さんとの仲を調べもせずに、ともかくこれだけの仕事の調停をしてくれなんということをあなたに中身も言わずに頼むとは思えぬですよ、これだけはあなたが何と答えられても。
  45. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 あなた、私も前に答えていたように、わしと河本のことはよく気づいてきたものだな、それだけはよく調べたものだな、こういうふうに思いましたな。しかしながら、それにはおれは役に立たないぜとそのときすぐに言うたし、彼も、なるほどね、それじゃ河本さんに電話でもかけてくれるかい、こう言うから、それは構わぬな、しかし河本君もしたたか者だからうまくいくかねと言ったんだ。そんな程度ですよ。
  46. 大出俊

    大出委員 いや、私のところも、だから大臣やめてくれということになっていればこういう質問の出し方はしないのです。余りどうも大臣にやめてくれなんて言って、三木さんの方が先にひっくり返っちゃったら困っちゃう。法務大臣やめろなんて前のような騒ぎになって、これは皆さんのお家の事情があって大分むずかしくなっていますからね。病み上手の死に下手だなんて言う人がいたから、何だと思って聞いたら、年じゅうふらふらしているくせになかなか死なないのは三木だとかなんとか言っていたけれども、妙なきっかけをつくっても困るから、目下そこまでのことはわが方の方針で申し上げないことになっているものですからね。だから、いま大物ぶりの発言を聞いて、やっぱり大物だ。この辺にこの点はしておきますが……
  47. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 大出さん、本当なんだよ、それは。私の言うているのが本当なんだ。あなた想像しているのはうそ。あなた想像していろいろなことを考えて私から答弁引き出そうとしても、これ以上の答弁は出ない。事実そのままのものなんだからね。私、動物の名前が二つ上につくほどの正直者ですよ。
  48. 大出俊

    大出委員 そんなあなた、私も動物愛護法をつくった男ですからね、そこで動物の名前が二つだなんて。馬とシカというのは保護動物でございまして、そういうところにめったに使ってもらっちゃ困るんですがね。いずれにせよ大臣、私が答弁を求めもしないのに勝手に立ち上がっちゃって、上に動物の名前が二つつくなんて、しかしさすがに大臣、大物ですな。  当面は、申し上げたように深追いをしないつもりでおりまして、いまあなたが指二本出されて、上に何か動物の名前が二つつくとおっしゃったんだけれども、世間一般はそう見ないですよ。時の法務大臣でございましょう。ある意味の指揮権はお持ちになっておられるお立場でしょう。ですから、やはりこれだけ新聞でいろいろ出てまいりますと、これはこれはということになる。これは一つ間違うと、まさに今日の政治に対する信を問われかねない。これはああいうことがあったからだ、こういうことになりかねない、そういう状態だと私は思う。きのうも学校先生方の集まりで話をさせられたりしておりましたが、必ずその質問が出てくる。法務大臣と児玉さんというのは一体どうなっているんだ。それじゃあ、とてもじゃないが真相解明だ、究明だ、できはせぬじゃないかという話がすぐ出てくる。これは町の世上の口の端にもすぐ出てくる問題になっているわけであります。  したがいまして、私は、ジラインをめぐって八千万もの金の動きが児玉邸捜査の結果として出てきていることについて先ほども質問いたしましたし、お答えいただきましたが、ジライン事件というのは五百三十億もの金が動いたということになっている大変な事件でございます。したがいまして、そことの一番最初のかかわり合いをお持ちだということは、大臣がそこで、私は大物ではないと言うほどに簡単なことじゃないということを私ははっきり申し上げておいて、当面は私どもの方もさっき申し上げたような考え方でございますから、大臣に最終的にひとつ、このロッキード問題を所管なさる、指揮権をお持ちの大臣という立場で大臣の御決意のほどを重ねて承っておきたいのです。
  49. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ロッキード問題の真相解明については、当面の責任者として最大の決意を——決意を持つまでもない、解明するということは当然なことなんだ、法務省として。検察庁を持っている法務省として当然なことなんだ。  あなた、児玉との関係について質問されたのは、私が答えたとおりなんですから。何らの同情を与えるような立場にあるとかそういうことないでしょう、ああいう関係なんですから。しかもあなた、いろいろな金が動いたなんて言うけれども、役に立たないのに金に縁があるわけがないんだ。全然心配ない。御安心ください。私の決意は非常にかたいのです。何とか適正に、しかも速やかに事態の解明をして、心ある国民に安心をしてもらいたい。夜も眠られないくらいです。御了解願います。
  50. 大出俊

    大出委員 大臣がそこまでおっしゃいますので大丈夫だと思いますから、この件はここまでにいたします。  次に、幾つか列挙的に承ってまいりたいのですが、大臣に承りたいのです。  灰色高官、灰色高官、こう言うのですが、灰色高官て何ですか。
  51. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それが、私はいつも各委員会でわからないと言っているのです。私どもの方では俗に言うてシロかクロなんです。ところが、法律を知っている人にときどき、しかし起訴猶予ということもある、これは何だと言うから、それはクロだと言う。専門語で言えば俗に言うクロになるのですよ。そういうことを申し上げているので、いまクロを一生懸命つかまえようとして努力しているのです。そのあげく出てくる灰とかシロとか、こういうふうになるのであって、いまの段階で灰色、しかも高官とか、そういう言葉は一体どういう意味であるか、私から問いたいくらいなんです、私どもの立場からすれば。そういうことでございます。ジャーナリストがつくったのか何か知りませんけれども……。
  52. 大出俊

    大出委員 私からとおっしゃるのですが、灰色高官名を明らかにしろと言って国会がとまって、議長サイドの話し合いになりまして、五党首会談まであって、結果的に四十七条が問題になって、一部か全部か、入るのか入らないのかなんということになって、また全部入るんだというようなことになって、例外規定だけが入った方がいいのか、全部が入った方がいいのか私はわかりませんが、結果的に稻葉さんがそれに反対されたというようなのがちらっとあって、その後でまた、いや、これは了解をすることになったとか、当時の新聞はそう書いてあったんだが……。つまり、私の方で灰色と言っているのじゃないんですよ、私は初めてあなたに口をきくんだから。そうでしょう。世上新聞も灰色高官、灰色高官、あなた方はそれについてやりとりをなさっているから、だから灰色というのは一体何なんだということをはっきりしておかなければ、灰色議論はできない。そうでしょう。私の方で聞きたいんだと言ったって、あなたは法務大臣なんだから。そうでしょう。だから、あなたの方は一体灰色とはどう考えているのかということをはっきりしておいていただかぬと、灰色というのはないのならないでいいですけれども、そこのところは一体どうなんですか。たとえば百九十七条で贈収賄という項目がございますけれども、それが時効になっていようと何だろうと、金が流れていて職務権限にかかわり合いがあったのだとすれば、あるいはなくても、そこに影響力を及ぼす立場にあったとすれば、この事件の性格上すべてクロだと私は思っているのです。灰色なんというものはない、こう考えているのです。ところが、灰色がどうのこうのと言うのだが、しからば一体それは何だ、はっきりさしていただきたい。
  53. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 あなたが言われるように刑事責任はないけれども、金銭の授受があったとか時効になったとか、それは全部あなたは政治家的感覚でクロだ、それも意味がありますね、そういう表現も。だからこそ、われわれの方は刑事責任追及の職務しかないのだから、政治的、道義的、いまおっしゃったような責任は国会の場で追及なさるということが議長裁定でも決まって、各党とも皆了承しているわけですね。ですから、それはその場面に来たときにこれに応ずべきか応ぜざるべきか、日本の長い将来の捜査能力の機能に支障のない限り、法律の許す限り最善の協力をするという段階でありますね。いまから具体的なそういう場面に来ないうちから、高官の発表には、ああ、ようございますよ、私も協力しますよという発言はすべきじゃない、こういうことだけなんです。心の内はあなたもおわかりになっているんじゃないですか。  そういう点でも少し正確に、また私がこういうことを言えばいろいろなふうにとるんだから、いろいろなふうにとられないようなきちっとした答弁は刑事局長にしてもらいましょう。
  54. 大出俊

    大出委員 じゃ、いろんなふうにとられぬように刑事局長答えてください。
  55. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま大臣から申しましたように、灰色という言葉は、われわれ検察、法務においては、法律上の用語としても実務上もない言葉でございまして、これはいわばいい意味でも悪い意味でも俗語でございます。しかし、新聞報道その他で灰色高官ということを言っておられることを総合いたしますと、結局、犯罪の嫌疑十分として公訴を提起されなかったが、一応捜査の対象になって不起訴処分になった者ということになるんだろうと思います。
  56. 大出俊

    大出委員 それでは、大臣の採決の時間が十一時半だそうですか、十分ばかりございますから、一、二点だけ聞けると思いますから承りたいと思うのです。  P3Cオライオンという次期対潜哨戒機はいま買っておりませんですね。そこで、細かいことをもし議論になれば申しますが、簡単に承りたいのです。P3Cは今日買ってない。金の流れが仮にあったとしても買ってない。買ってないことは何を意味するかというと、職務権限の行使を行っていない、こういうことになりますね、簡単に申し上げますが。そうすると、これはいろんなケース・バイ・ケースだということは言えますけれども、買ってないことははっきりしている。そうすると、その限りではどうも職務権限の行使が行われていないとすれば、贈収賄容疑というものをめぐってのとらえ方に外れていく気が私はするんですけれども、いろんな議論が必要なものを短絡して言っていますから、そこをお含みの上でお答えいただきたいのですが、これはどういうふうに考えていますか。
  57. 安原美穂

    ○安原政府委員 一般論でございますが、何と申しますか、まだ仮定の話でございますが、たとえばいわゆるP3Cと申しますか、PXLにつきましての購入に関する職務を行っている者に対しまして、その購入に関していわゆる賄賂が贈られた、不法な金銭の授受があったといたしますと、そのことが将来における購入を請託するとか、そういうような面で事前に請託をしておりますれば、現実にその請託に応じて金の授受があったといたしますれば、現実の職務行為の実行がなくても、それは職務に関して賄賂を収受したということになるわけでございますから、現実の職務行為の実行があったかどうかということは、必ずしも必要な要件ではないというふうに思います。
  58. 大出俊

    大出委員 それじゃ例を挙げて申しますが、四十七年の十月九日の白紙還元と言われている問題が一つありますが、あと四十九年の十二月の末に答申をお出しになっていますね。こういう経緯があります。ところが、この中には機種は、防衛サイドの私どもの方の専門的な立場から言えば三つあるわけですよ。P3Cオライオンだけじゃない、輸入機種というのは。ドイツ、フランス共同開発のアトランチックという機種もございますし、英国のニムロッドという機種もございます。そうすると、これは一機種じゃない、輸入ということになった場合に。そうすると、ロッキード社から金が出てくるわけですから、これが仮にニムロッドを買うとか、あるいはアトランチックを買うということだってこれはないとは言えない、明確にいまの第一線に考えられる機種ですから。そうすると、結果的にP3、これを買う買わぬ、これにかかわりなしにロッキード社がP3を売り込もうということで一つの工作を行った。その場合に、その相手方がある職務権限を持っている人であったということになった。そこまでがわかった。一般論としてわかった。そうすると、その人が職務権限を行使をしよう、つまりP3を買わせようと考えたができない。ほかの結果になった。なっても、そこに金の収受があったということになれば立件できるということになりますか。
  59. 安原美穂

    ○安原政府委員 客観的な犯罪の構成としては理論的には成立するわけですが、その場合にいつも問題になりますのは賄賂性の認識、その賄賂が職務に関連するかどうかというような認識の必要な主観的要件にいろいろむずかしい問題がございますが、客観的な犯罪の充足ということになれば、成立すると考えていいと思います。
  60. 大出俊

    大出委員 私は、なぜこの点を一般論的に物を言っているかといいますと、特別委員会というものも、これは院の意思で決めたわけですね。これは院議です。したがって開かれることになる。そこで、ロッキード問題の徹底究明というようなことをめぐって二時間も議論して、それで「徹底」が入って、前尾議長は物を言っておられる。いずれ開かなければならぬ。その場所では属人的にもう少し突っ込んだやりとりをしなければなりませんが、捜査を担当されている方の側にお立ちになっている法務大臣であり、刑事局長でございますから、そこまで突っ込んだ議論をすることは、皆さんにとっては迷惑な話になる。だからそこまで突っ込まない形の限度で皆さん考え方だけ聞いておく必要がある。やがてそのことは具体的に物を言う場所が出てくるからであります。  そこで、いま例に挙げましたように、新聞のいままでの書き方を見てきますと、ときにP3や何かを外してトライスターにしぼるというような記事が載っていたりいろいろする。何回もそういう記事が出ております。どうもP3の側は、私がアメリカへ行っていろいろ調べたDSAというのがございまして、これはアメリカのペンタゴンの調達本部ですが、このDSAの側の動きなどをいろいろ調べてみると、どうしてもP3を日本に買わせようという強烈な動きがある。ミスター・コーチャンも私に直接、あなた、防衛の専門屋なんだから、あなたがうんと言ってくれれば、国会で決ってこれを買ってもらえるんだと言うわけですな。こっちは調べに行ったのに、がらりと態度を変えて、隣の自分の部屋からこんな大きなP2Vを持ってきて、まずでんと置いて、P2Jを持ってきて置いて、P3Cのこんな模型を持ってきて置いて、えらい長口一席ですね。そしてDSAのアドミラル・ファンクスという人がおります。一番てっぺんがゼネラル・フィッシュといいますが、魚と同じスペルを書きます。中将です。この人は空軍。その次の人がファンクス提督でありますが、この人と私は非常に仲がいいとコーチャン氏は言うわけでありまして、P3というのは一番性能がいいんだ、だから買え、こういう意向だということで平気で言うわけでありますが、だから防衛庁側はいずれどこかで意思表示をせざるを得ないはずだという、つまり四月の時点で意思表示をせざるを得ないはずだという話になっているわけであります。ところが、四月に防衛庁の海幕の側がポスト四次防というところでの対潜哨戒機の要求を文書でP3と書いて出したわけです。内局は驚いてこれに反発をするというやりとりがあって、これは新聞に全部出たとおりであります。その後二年間延期と、ふざけた話ですが、石油ショックのときにどうもP2Jというのは訓練をしなかったからまだ二年間は使えるんだということで、二年間先に延ばすというような話が出てくる。意思表示は明確にしたわけですね、P3という。後からそれを取り消したかっこうになっている。そこらにどうもP3と決めたわけではないという言い方を片方でする。そしてさらに突っ込んで、輸入と決めたわけでもないという言い方まで出てくる。しかも買っていないという。新聞にはどうもP3外しであるという。トライスターだという。こういう流れが大筋として見て感ぜられる。  これは例が悪いけれども、私の知っている限りでも、選挙の前に金をまいた人かいる。それが摘発をされた。立候補すると事前運動でぱくっとくるからというので立候補をやめた。やめたらいつの間にか消えていたということになる。そうすると、P3Cは買ってないということですから、そうなると、それで外れていくとすると、さっきの灰色議論じゃありませんけれども、いささかどうも腑に落ちぬことになりかねぬので、一般論として承る、こう思って聞いたわけでありますが、買ってなくても、つまり職務権限の行使が行われていなくても、そういう意図をもって相手が頼んだ場合にそれを受託したということになるとすれば、これはいまのシロ、クロの議論で言えば、クロという意味での対象になるという、それでいいですな。
  61. 安原美穂

    ○安原政府委員 理論的にはお説のとおりでございます。
  62. 大出俊

    大出委員 あわせて承りたいのでありますが、行政指導と職務権限という問題が一、二この議会で議論されたやに見えるわけであります。そこのところをもう少し詰めて承っておきたいのでありますが、行政指導の根拠というのは何に基づくことになりますか。
  63. 安原美穂

    ○安原政府委員 一般論といたしましては、何らかの意味において法令上根拠のある行政指導でなければ、いわゆる贈収賄罪における職務行為ということにはならないというふうに私どもは考えております。
  64. 大出俊

    大出委員 それはいま逆のお答えなんですけれどもね。たとえば運輸省設置法の二十八条の第一項第十七号、ここに、運送事業の発達、改善、調整、秩序確立などに関して行政指導を行うという条文がありますね。もう一遍言います。運輸省設置法二十八条第一項第十七号、ここで運送事業の発達、改善、調整、秩序の確立などということで、一般的な行政指導という意味における指導の権限が運輸省にある、こう解釈できる。ここのところはいかがでございますか。
  65. 安原美穂

    ○安原政府委員 この点はいささか、先ほど御指摘のロッキード社の売り込みの不正行為の存否を究明している検察当局にとりましては、非常に具体的な問題に絡まる御質問でございますので、いまお尋ねの点が運輸省の職務権限である行政指導かどうかということは、直接にはひとつ、お答えをすることは私自体は控えた方がいいと思いまするが、一般論といたしまして、大出委員指摘のように、運輸省設置法に根拠のある行政指導であればそれは職務行為ということになり得るということだけで、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  66. 大出俊

    大出委員 当委員会は、安原さん御存じのとおり、設置法を長年——私にすれば、十三年間この内閣委員会だけでございますから、十三年間設置法をいじってきた一人でございまして、よくあけて見てきておりますのでね。したがって、いまのこの条文、きわめて具体的な中身でございますから、秩序確立のために必要だということになるとすれば、購入延期という行政指導は当然できるはずなんですね。そうだとすると、この条文に照らして、運輸省に職務権限がある、こう理解できるという意味質問したのであって、決して、何か具体的なあるいは属人的な、そういう意味で申し上げているのじゃなくて、設置法の中身でございまして、この中に秩序の確立というのを一つとらえても、日本に民間航空会社は三社ある、そうすると大型エアバスの導入ということをめぐって、早い遅い、どれだあれだという場合に、航空秩序の確立をという前提なら行政指導は可能であるというふうに考えるので、そこでその種のことは職務権限の範囲に入るんだろう、こう聞いているわけなんですが、それ以上のことを聞いているのじゃない。
  67. 安原美穂

    ○安原政府委員 せっかくのお尋ねでございますので、もう一歩進めましてお答え申し上げるほかはないと思いまするが、いま、御専門の大出委員指摘の二十八条の二の第一項の第十七号による「所掌事務に関する事業の発達、改善及び調整に関すること。」ということに基づく行政指導が行われ、あるいは行われようとし、ということに関連いたしまして賄賂の授受があったとすれば、職務に関する賄賂ということになる可能性がございます。
  68. 大出俊

    大出委員 少し突っ込み過ぎで恐縮なんですけれども、たまたまどうもそういうものを扱いつけておりますから、つい質問いたしましたが、しかし、これは決して他意あるわけではなくて、一般的な設置法のたてまえからいって当然この省にその権限はあってしかるべきだという考え方がございますから承ったわけでございまして、お許しをいただきたいのであります。  それから次に、ユニット領収証と金の流れというのがどうやら明らかになってまいりました。私はアメリカに参りましたときに、チャーチ委員長なりレビンソン氏なりという方々にこれは執拗に聞いたところでございます。この議会証言の席上でのやりとりの中に、ユニット領収証というものがはっきり出てきている。しかも、そのサインについても明らかになっている。ところが、なぜこれが出てこないのかわからぬと聞いたのですが、チャーチさんも専門家であるレビンソンさんも確答しなかった。非常に疑いを持ったわけであります。明らかにこの中には金の流れを明示したものがあるはずだという認識を当時したわけであります。議事録等から見れば当然そうなんでありますから。  そこで、これは表に出てまいりまして公式に発表されたから申し上げるわけでありまして、読売新聞の方々だけが先にお書きになった。この時点ならばそこまで物を言う気はないのでありますが、その後でチャーチ委員会が、二カ月おくれたわけでありますが、二月十三日に引き続いてこの問題を明らかにした。  この中に、三十ユニット、九十ユニットはクラッターから受領したということが明示されている。そうすると、当時の国会証言における大久保さんの答弁と申しますものは、クラッターさんに頼まれて領収証にサインをしただけであるというのが一貫した答弁なんですね。そうすると、われわれから言わせれば、金は丸紅に行った、ここまでははっきりチャーチ委員長もレビンソン氏も明らかにしているわけでありまして、領収証がフォールトであると言う。ぼくはそこのところを聞き流すわけにいかないから、なぜフォールトかということを念を押した。つまり領収証は虚偽であると言うから、なぜ虚偽だと聞いた。これは各党代表がおられるところでございましたが。そうしたら、金はID社に行っていないのだ、そして金は丸紅に行っているのだ、これははっきりしている。金が行っていないID社が領収証を書いているからフォールトなんだ、実はこういう答弁なんですね、チャーチさん、またレビンソンさんの。だからこれは、その点はいとも明確なんですね。  そうすると、ここで幾つか問題が起こるのです。一つは、順番に言わねばなりませんから、国会の側のことで恐縮なんだけれども、しかし、国会がこの点を問題にするとすれば、検察側で起訴、不起訴をお決めになる筋合いでしょう。  そこで、承りたいのですが、証言法がございます。この証言法によりますと、第六条で、「この法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。」こうございますね。第八条、「各議院若しくは委員会又は両議院の合同審査会は、」だから衆参両院、どちらでも議院としてできる。それから委員会、予算委員会でも何でもできる。「委員会又は両議院の」衆参両院の合同審査会でもできる。「証人が前二条の罪を犯したものと認めたときは、告発しなければならない。」という規定がございますね。そこで、いままで検察側が手がけられた中に、国会の証人喚問等による、議院証言法第六条に基づいてこの陳述は偽証であるという場合に、いずれかの場所でこれを告発をする、こういう例がございますか。
  69. 安原美穂

    ○安原政府委員 告発を受けて公訴を提起した事例があります。
  70. 大出俊

    大出委員 大臣、おいでいただいた方がいいわけでございますからもう一遍申し上げますが、大臣、実は私がアメリカに行きまして、チャーチ委員会委員長、サブコミッティーの委員長のチャーチさんに会い、この専門家の最高責任者であるレビンソン氏に会い、ユニット領収証というものは一体なぜ出てこないのか、あるいはどういうものなのかということを聞いた。ID社の領収証なんというのも当時ありまして、私はそういう質問をしたのだが、そうしたら、そのユニットなものに直接触れずに、金は丸紅に行っているのですよと、これははっきりしている、したがって領収証はフォールトだと言うのです。フォールトだと言うものだから、ちょっと待ってくれ、フォールトというのはどういう意味だ、虚偽だということになるんだが、なぜフォールトなんだ、なぜ虚偽なんだという詰めをやりましたら、もう一遍言い直しまして、金は丸紅に行っているんだ、これははっきりしている、ID社というのには金は行っていない、行っていないのにID社が領収証を書いているからフォールトなんだ、虚偽なんだ、こう言い切りました。私は、ユニットについて深く語りたがらないチャーチさんなりレビンソンさんの口ぶりでございますから、残念ながらそれ以上詰められなかった。  ところが、最近チャーチ委員会がユニット領収証というのを公に発表されたわけですね。前に読売の方々がお書きになりましたけれども、その段階ならいざ知らず、チャーチ委員会が、二カ月たちましたが正式に発表した。そこで、その中身を見ますと、九十ユニットも三十ユニットもクラッターという人から受領したということが明確になっているのですね。左肩にちゃんと書いてある。そうすると、国会の証言では、ただ単にクラッターさんに頼まれてサインしただけだ、あと一切の授受はない、サインしただけだ、何遍聞いてもこれしかおっしゃっていない。そうすると、これはだれが考えても虚偽であるということになる。そうなると、国会証言法——と言ってはいかぬのですね、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の第六条で、「この法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。」こうなっていますね。そして第八条で、「各議院若しくは委員会又は両議院の合同審査会は、証人が前二条の罪を犯したものと認めたときは、告発しなければならない。」こうある。そうすると、予算委員会なりあるいは衆議院なりが告発をした場合には、そこから先はおたくの所管である検察庁の手に移る。起訴、不起訴はそこでお決めになるわけであります。  そこで、幾つか問題が出てまいりますので、その第一を承りたいのですが、いままでにこの種の告発が行われたことがあるか、ある、こうおっしゃるから、それならばその告発はどういうケースであって、どういう結果になった、どういう手続をおとりになっているかという点を、余り数ある問題じゃありませんから簡単で結構ですけれども、これはまた特別委員会等で議論しなければなりませんので、そういう意味で承っておきたいのです。法制局その他には聞いてありますけれども……。
  71. 安原美穂

    ○安原政府委員 そういう事例があることは承知いたしておりますが、その被告人、被疑者の名前、それからその処理の結果というものについては、いま突然のお尋ねでございますので、早速調べればすぐわかることでございますので、しばらく御猶予を願いたいと思います。
  72. 大出俊

    大出委員 そうしますと、国会側としては、これはいずれの機関かで議論しなければなりませんけれども、事細かに法律的に分析をして検察庁がおやりになるような、つまり、だから告発をするという、そこまでの必要はないように私は承っているのですよ、あなた方の扱いとして。つまり一般的に言って、だれが見てもあれは虚偽であるということで事足りるというのですね。つまり、予算委員会なら予算委員会が、大久保証言というのは虚偽である、ユニットの領収証が出てきてみたら、前に言っていることと全く違うではないかということで、そのことを確認をして、これは虚偽だ、だから告発をする。八条にございますが、「認めたときは、」つまり「前二条の罪を犯したものと認めたときは、告発しなければならない。」とあるわけですから、「各議院若しくは委員会又は両議院の合同審査会は、」と、こうなっているのですから、そこがそういう決め方をすれば、あなた方はそれを取り上げて起訴、不起訴等についての決着をおつけにならなければならぬ立場になるが、そこのところを手続的にも含めまして、どう考えればいいかという点であります。
  73. 安原美穂

    ○安原政府委員 この告発というのは、私ども判例上もいわゆる訴訟条件である、したがって、公訴提起をする段階において告発という行為が両議院ないしは委員会からなされておらなければ、訴訟提起は不適法になるという意味では、訴訟条件ではあるけれども捜査を開始する要件ではない。したがって、検察、警察当局が偽証の疑いがあるということになれば、捜査は何ら障害なしになし得るということでございます。
  74. 大出俊

    大出委員 これは、私が吹原産業事件のときに、ここで当時の大蔵大臣田中角榮さんに質問しましたが、法務省の刑事局長さんに、一体この事件については現在調査をやっているのか、捜査をやっているのかと聞いたら、捜査をやっているとお答えになった。捜査という言葉をお使いになるなら、告発があったのですなと言ったら、そういうことですと、こうなって、それまでは告発がなかったと言っていたものが一遍にひっくり返ったわけですけれども、つまり告発が要件ですから、国会側がいかなる形にせよ告発ということに踏み切れば、あなたの方は先例も一つあるそうでございますから、それに基づいて起訴、不起訴をお決めになる、こういう筋道ですね。  たとえば、もう一点申し上げておきますが、大庭証言と若狭証言がございました。これはオプション、つまり仮契約をしているかいないかという重大な問題でございます。ナンバーを押さえておくんだと言う、そうしなければ間に合わないんだと言う。これは当然なことでございまして、それをめぐって、実はその背景は政治的に大変大きな問題がございます。ところが、証人お二人の陳述は全く正反対であります。ただしかし、真実は一つしかない。どっちが正しいか、それはわからぬかもしらぬ。わからぬかもしらぬが、真実は一つしかない。オプション契約なるものがあったのか、なかったのかというだけ。これなんかもいずれかが虚偽なんですね。だから、そこらのところは、院が告発を行えば、皆さんの方はそれに基づいてそれなりの措置をおとりにならざるを得ない、こういう筋道だと理解してよろしゅうございますね。この点は、大臣いかがでございますか。
  75. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。
  76. 大出俊

    大出委員 そこで、もう一点だけここで承っておきたいのでありますが、刑訴法四十七条が総理の口から述べられまして物議をかもしましたが、この刑訴法四十七条の解釈ですが、書類の公開であるとかいう問題はその保管者が下すというのがたてまえだという議論が行われています。こういう席ですから詳しく申し上げませんが、それでおわかりいただけると思うのでありますが、つまりそうなると、検察であるとか警察であるとか国税局であるとかなどの捜査当局がたてまえとして判断を下すということになる。ということは、ここが判断を下したものを、それは権限がどっちを向いたか、いろいろありましょうけれども、ひっくり返すというのは実際には大変なことなんですね、捜査当局ですから。大臣だって別に捜査にタッチしているわけじゃない。報告を聞いているだけであります。したがいまして、この四十七条との関係で議長サイドでああいういきさつがございましたが、私はこれに非常に疑問を持っておりまして、幾つかの質問をしたいのでありますが、時間がありません。したがって、核心になると思われる一点だけ聞いておきたいのです。  いま検察、警察、国税当局がそれを保管しているわけですから、たてまえとしてそこの判断。その判断がたとえば正しいものであった場合、大臣なら大臣権限でこれをひっくり返せるかという問題が出てくる。そこらとの関係はどうお考えになりますか。
  77. 安原美穂

    ○安原政府委員 理屈といたしましては、四十七条に関する書類を公にすること、そのことは、指揮監督の検察庁法から言えば、具体的な処分に関する事柄としての検察事務だ、したがって、法務大臣は検察庁法十四条ただし書きの具体的な事件の処分について指揮することが、検事総長を通じてのみできるということでございますから、いま大出委員おっしゃるように、そういうことがあることは好ましくない、指揮権発動ということになりますが、理論的には、検事総長に対してそれを公開しろ、四十七条のただし書きを活用しろということを検察庁法十四条の具体的な処分に関する検察事務の指揮としてやることは可能でございますが、そういうことは、自来法務大臣は指揮権を発動しないというのがよき伝統として確立しておりますので、そういうことはなさらないといたしますれば、検察官が判断したことと違うことを法務大臣が指揮するということは、事実上あり得ないし、あってはならないということになると思います。  しかしながら、私ども、そのほかにどういう方法があるかということで、先般参議院の法務委員会お答えいたしたのでございますが、法務大臣、あるいはそれを通じて総理大臣は、四十七条そのものではございませんけれども、具体的な事件の捜査処理につきましてその内容を、法務大臣はそれこそ一般的な指揮監督に基づいて検察当局から報告を徴する権利を持っておられるし、当然にそのことは、検察当局としては、検察権が準司法権とは申せ行政権であるという意味合いからいきましても、責任を持っていただく法務大臣にその捜査の処理、調査の結果を報告する義務がある、また法務大臣がその権限を持たれるという意味において、四十七条の資料そのものの公開ではございませんけれども、法務大臣が検察当局から報告を受けられまして、その報告を公にするかどうかということは、はっきり申せば、法務大臣の責任あるいは内閣総理大臣の責任において判断をなされる事柄ではないかという意味において、四十七条そのものはまさに検察官の判断でございますけれども、報告を受けたことを公開するかどうかは法務大臣ないしは総理大臣の判断においてなし得るんだ。ただし、法務大臣といえども、あるいは総理大臣といえども、四十七条という刑事訴訟法の条文があります以上は、そういう判断をなされるにつきましても、四十七条の公開、非公開を公益の比較において行うというその条文について、検察官にそれを守れということを監督しておられます以上は、四十七条そのものではないにいたしましても、その精神を踏んまえて、法務大臣総理大臣は公開すべきかどうかを御判断なさるものと期待していますし、それが正しいやり方であろうというのが、今日のところの私ども考え方でございます。
  78. 大出俊

    大出委員 そこに私はいささか異議があるから、この問題を取り上げたわけなんですが、議長サイドでをまとめた趣旨というのは、これは四十七条そのものなんですね。つまり、いま安原さんおっしゃっておられる、報告を受ける当然の権限が大臣にあるから報告を求めた、それを明らかにすることはできると、こう言うんだが、報告ということになると、またそれを聞いたものを明らかにするとなると、一つ間違うと裁量の余地がそこへ出てくる。なぜならば、ここで言うところの書類、つまりこれは捜査経過を含むものでしょう。これが保管されている。その責任は検察、警察、国税等である。つまり、保管責任者がその書類を公開しなければならぬ。四十七条の特例というのはそういうものだと私は思うのですね。そうでなくて、報告を聞いた、その報告をまたとなると、その間に、これは大臣、さっき私は夜も寝られないとおっしゃったんだから、そこまで深刻にお考えなら、あるいはそっくりそのまま出てくるかもしらぬけれども、一歩下がって、これは失礼だが、だれが法務大臣、属人的な問題でなく一般論を議論しておりますから、疑えばそこに裁量の余地があって、落ちる者も出てくる、出てくる者もあるなんということになるとこれは穏やかでない。ましてひょっと耳にする話の中に、何らかの政争の具になどというニュアンスが出てくるようなことになると、これは事件でございまして、そういうきわめて不確かなことをやってもらいたくないという気が私はする。そのこと自体が大変な問題になると私は思っている。まして、だれだれはふろ屋の番頭だなんという人もいるのですから、見ない見ないと言ったって見ているんじゃないかなんということになるんだから。そうでしょう。それは困る。だから、やはり議長サイドで明らかになったことならば、そのものずばりで物をお考え願いたいと私は思っている。その意味の権限は大臣にあるはずだというのが私の考え。そこのところをいま安原さんは、報告を受けられるんだから報告を受けてという言い方なんですけれども、ワンクッション置くことになる。そこのところを大臣自身はどうお考えになるか、はっきり承っておきたい。
  79. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 法律解釈論としての四十七条ただし書き論は、安原刑事局長の言うとおりだと私は思います。
  80. 大出俊

    大出委員 そうなると、この点は、議長サイドであれだけのやりとりをして、五党首会談まであって、かつまた口頭で前尾議長が物をおっしゃったりいたしましたが、これは四十七条そのものを取り上げておりますね。いまのお話はそれと違う。つまり、報告を聞いた、大臣の識見じゃない。報告を聞いた、四十七条そのもののところは旧来のごとく発表しないという原則でそのまま、そして何らかの報告を聞いた、聞いたものを、つまり政治的な裁量をするということですから、いささか私は腑に落ちないわけであります。もう一遍お答えいただきたい。
  81. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 安原刑事局長の答弁を大出さんも正確におつかみになっていただいて私、結構だと思います。私はそのとおりだと思いますよ。ただ、議長サイドにおけるあの国会正常化のための両院議長のあっせん項目を見ますと、刑事訴訟法四十七条ただし書き、ばちりと書いてないのです。刑事訴訟法の立法の趣旨をも踏まえて、政府は政治的道義的責任についても明らかにするよう最善の協力をする。最善の協力と言っているのですから、法務大臣も最善の協力をしなければならぬ、こういう考えであり、私の法務大臣としての考えを検察当局もよく知っておりますから、しかも呼吸はぴたり合っておりますから、そういう点についての御懸念は不必要なんじゃなかろうか。もしそれについての御懸念があるとすると、一般的でなく具体的に、いまの法務大臣があのやろうだからということになって、わが輩の不徳のいたすところはなはだ残念ですが、まあしかし、いまのところそういうふうに御信頼願いたいと申すよりほかにないのです。そのときになって、報道の結果によって御判断願えるよりしようがない。
  82. 大出俊

    大出委員 いまから考えますと、議長が最善の努力云々とあのときに言ったことの背景に、安原さんがいま解明をされた物の考え方が当時すでにあった、こういうことになるのですね、いまの話は。したがいまして、そこのところのあったかなかったかは私が議長とのやりとりの当事者じゃありませんから、私の認識と違う。この点だけ申し上げておきまして、いま大臣お答えになったことは、議長サイドでのやりとりの中で前尾さんの認識はそうだったということになるので、そこのところは、わが方の当事者が別にいるわけでありますから、確かめなければこれ以上物が言えません。したがって、私の認識と違うという点を申し上げておきまして、決して大臣を信頼しないと申し上げているんじゃないですよ。筋論としてそういうことだということです。  それからもう二点承って終わりたいんでありますが、司法共助の協定がございますね、この司法共助の協定、堀田検事がおいでになったり、斉藤特使がおいでになったりいたしました。そこで、これまた時間がありませんから中心点だけ承りたいのでありますが、司法共助協定第二項がございますね。ここに絡んで、つまり委託尋問などという問題が出てくるわけであります。そこでコーチャン氏なりあるいはクラッター氏なりエリオット氏なりに直接の尋問ができないとすれば、供述を求められないとすれば、——その前に供述を求められるのかられないのか、これがまず一点ありますが、それと、求められないとすれば、共助協定に基づいて向こうに委託をしなければならないことになる。二番目は、だから委託の場合の手続としてどういう手続をするか、これが問題点であります。つまり、被疑事実を添付することが必要になるはずであります。地検がこしらえて上げていくわけですね。そして向こうに渡っていくわけですね。そういう手続がございますね。そうなると、たとえば児玉氏なら児玉氏、丸紅なら丸紅の、脱税であるとかあるいは外為法違反容疑であるとか、あるいはさらに贈収賄容疑等についても——はっきり申し上げますが、贈収賄容疑等についても特定しなければならぬでしょう、あなた方質問書を出すのですから。そうでしょう。そうすると、贈収賄容疑を特定をして向こうの司法当局に質問をさせるのですから、——立ち会う、立ち会わないは別として、いまの筋道なら立ち会ったって発言権ないでしょう。そうならば、質問書をつくって東京地検が出さなければいかぬわけでしょう。それを高裁まで持っていってどういうふうにするかという問題はありますが、その質問書の中身というのは特定しなければ、児玉あるいは丸紅というところから高官に金が行ったようである、金を高官にやりましたかなんていうことを聞かしたって意味がない。そうすると特定をしなければならぬ、特定し得るに足る明確な材料がなければならぬ、こういうことになる。その点は一体そういうことなんでしょうなというのが二番目。あわせて、果たしていまの捜査段階でできるか。なるべく早くやろうというのだが、特定することができるか。できなければこんなものはやったって意味がない。いかがですか。ポイントだから答えてください。
  83. 安原美穂

    ○安原政府委員 まず手続でございますが、刑事訴訟法二百二十六条の要件は、犯罪捜査に欠くことのできない知識を有する者が供述を拒むあるいは取り調べに応ぜずという条件は満たされないといけませんが、これは全部一般論として申し上げますと、したがいまして、そういう供述を拒むあるいは出頭に応じないというような前提がございました場合におきまして、刑事訴訟法二百二十六条は公判期日前に裁判官に証人尋問請求ができるということでございますので、そういう条件が熟しました場合におきましては、ロッキード事件に関しますれば、わが国の東京地方検察庁から東京地方裁判所に証人尋問の請求をする、そういたしますと裁判所が証人尋問の嘱託を外国に対してするという決定をいたしますれば、従来の手続によりますと、最高裁判所から外務省を通じましてアメリカの連邦司法省、それから関係の地方裁判所というふうな手続で、そのいわゆる嘱託書が参るわけでございます。これが一般的なプロセスでございます。  あとは、御指摘のとおり、そういうことをやるにつきましては、何が被疑事実であるかということを明確にしなければなりませんし、そして何を聞いてもらいたいのかということも明確にしなければなりません。それがいかなる被疑事実であるかということと、そのいかなる被疑事実についていまさらに証人尋問嘱託できる段階に達しておるかというようなことにつきましては、恐縮ながらいま申し上げるわけにいきませんが、やる以上はいま御指摘のような条件を満たさなければならないという意味においてそれまでに捜査が進んでおらなければならないということは当然でございます。
  84. 大出俊

    大出委員 ポイントだから聞いておるのですよ。何もあなた方が困るような質問をするつもりじゃない。そこのところははっきりしておきます。私の心配は、児玉さんと丸紅という二つのルートがある。さてその二つのルート、児玉さんをなぜ国会から行って質問ができないかというようなことも言いたいけれども、あなたが困るから申し上げないんだが、秘密会でやっているようなことだから言いませんが、せめてここまで言ってもらいたい。児玉氏なら児玉氏が、契約に基づく収入しか得ていないと最後まで言い切った、それ以外の金の事実、それはおれは知らぬ、ロッキードに聞いてくれ、こう言っておる。ロッキードは海の向こうですよ。コーチャンからクラッターからエリオットから、みんな向こうです。その人たちの供述がなければ、児玉氏に、おれは仲介者であって契約に基づく正当報酬しかもらってないと言い切られたときに、贈賄側は向こうにいるんだから、そっちの確たる供述がなければ崩せぬでしょう。論理的にそうじゃないですか。丸紅さんだって、国会証言で私があれだけ言ったって答えないんだから。それなら頼まれて書いただけです、サインしただけです、あとはロッキードに聞いてくれ、こうやられたときに、あとはほうり込まれようと何されようと何も言わないということである限りは、先方の口が割れなければどうしようもないでしょう。ここは今度の問題のキーポイントなんですよ。あなた方が直接供述を求められないなら、いまの手続、地検から上げていって最高裁から向こうに行くんだが、そのときに脱税なり外為法違反なりならまだいいです。贈収賄の被疑事実に関して特定できなければ、質問が成り立たないですよ、委託ができないですよ。そんなものをやったって、だれがやったかわからぬけれども、コーチャン、あなたこれだけ金が日本に入ってきているんだけれども、だれか政府高官にやったんでしょうというようなことを言ったって、そんなものは知らないと言われたらそれっきりになってしまうでしょう。だから、その裏づけに足るものがきちっとなければ、片方が切れてしまったらこの問題は成り立たないでしょう。だから、あなた方はそこのところを確たる確信をお持ちかと聞いておるわけです。アメリカ側に委託すると言うんだから、それなら確たる確信をお持ちかと聞いているわけです。細かいことは要らない。
  85. 安原美穂

    ○安原政府委員 新聞によりますと、すでにやることを決定したとかいろいろ報道ございますけれども、要するに、具体的に決定した、そういうことはまだ申し上げるわけにもいきませんが、いずれにいたしましても、御指摘のようなことがなければ証人尋問自体嘱託できないわけでありますから、検察当局では御指摘の点を十分に心得てやる場合にはやるものと思います。
  86. 大出俊

    大出委員 それじゃ角度を変えて一点だけ承りますが、皆さんが嘱託尋問をお決めになったら、それは贈収賄というものの被疑容疑を特定できた、こういうことになりますね。
  87. 安原美穂

    ○安原政府委員 まだ嘱託尋問の内容自体が流動的であるはずでございますから、当然に、贈収賄でなければならぬのかということも、したがって確定的ではございませんので、先ほど申しましたように、いかなる被疑事実としてやるかということ自体、まだ確定して申し上げるわけにいかない段階でございます。いずれにいたしましても、ある被疑事実について嘱託尋問をする以上、ある被疑事実は特定をしなければなりませんし、嘱託尋問の内容も、アメリカ当局に笑われるような内容であってはならないということは当然でございます。
  88. 大出俊

    大出委員 もう一点承りましょう。嘱託尋問をなさるでしょう。しなければこの件は立件できませんね。そうでしょう。だからなさるでしょう。
  89. 安原美穂

    ○安原政府委員 たびたび申しておりますように、これもまた捜査の内容にかかわることでございまして、それがなければ事件が成り立たないのかどうかということ自体が、現在における捜査の状況を申し上げることになりますので明言は差し控えたいと思いますが、一般論といたしましては、当然のこととして有力な関係人が今回の事件についてはアメリカにおることは事実でございますから、この人たちから事情を聴収することが捜査のためにきわめて有効適切な手段であることは、何人も否定できないと思います。
  90. 大出俊

    大出委員 お困りになることをそれ以上詰めるのはかえって失礼ですから、いまの御答弁でそれをいただいておきます。  もう一点。紛失小切手十四枚という件がございまして、スイスに口座をお持ちになっているいわゆる高官の方が何名かおいでになる。ここまではわかっています。そこで、この紛失小切手十四枚の中に、四枚フラン建ての小切手がございます。これもまた事実であります。ここで一点承っておきたいのは、フラン建ての小切手が日本の国内で授受されたということになりますと、法律に照らして問題だと私は思っておる。たとえばそのフラン小切手が結果的にはスイスの銀行に振り込まれていても、その受け渡しが日本の国内で行われた、これだけで私は問題になると思っておるのですが、いかがでございましょう。これは仮定の事実で結構です。
  91. 安原美穂

    ○安原政府委員 非常に詳細にいろいろの資料、データをお持ちの大出委員に対しまして、私は遺憾ながら詳しい報告を受けておりませんので、いま御指摘のフランの小切手があったというようなこと自体、実は不敏にして存じないのでございますが、一般論として、そういうものが国内で授受されたとすれば、外為法等の問題が出てくると思います。
  92. 大出俊

    大出委員 たくさんありますが、時間がございませんので、これでいまの点は打ち切らせていただきますが、大臣、冒頭に申し上げましたように、政治不信につながることは避けたいという趣旨でございまして、皆様方の方のいろいろな時の政治的な問題は別といたしまして、そういう意味でなくて、ともかくどこまで明らかにし得るかという、非常に大きな七十五日たっても消えない国民の気持ちでございます。大臣、先ほど御答弁いただきましたように、夜も寝られぬというお話を承りました。大変でございますが、お取り組みいただきますようにお願いを申し上げておきたいと存じます。  実は、各関係の省庁をお呼び立ていたしましたのに、時間がなくなって本当に申しわけないのでございますが、質問の都合でそうなってしまいまして、お許しいただきたいと思うのです。  二、三承ってまいりたいのでありますが、一つは、私、この間取り上げました労働省にかかわる労福協と申します勤労者福祉協会の詐欺事件容疑です。先般、この法務省のところでと申しましたのは、この件は一つ間違うと労働省相手に訴訟が提起される可能性がある。そうするとこれは訟務局所管でございます。そういう意味でこの場でと申し上げたわけであります。  事件内容というのは前回細かく申し上げましたが、労働省が認可いたしました財団法人である勤労者福祉協会、資本金五百万円、こういうのがございまして、東竜太郎さんが理事長でございまして、そうそうたる方々が理事に名を連ねておいでになる。財界の大御所と言われる花村さんであるとか、あるいは三菱の寺尾一郎さんも最初入っておられましたし、中山克己さんも入っておられましたし、野津さん、あるいは悪意でお入りになったのではないのでありますけれども会議員の方、あるいは満園勝美さんだとかいろいろな方が入っております。全日空の前の社長の大庭哲夫さんも理事でございます。労働省のさきの次官の中西さんも理事でございます。白井十四雄さんも理事、こういうような大変な団体であります。  それで目的は何かというと、週休二日というふうな世の中の世相もあって、労働省調査で完全週休二日制が二八%から二二%になっている、着実に進んでいるというようなことで、ここに趣意書もございますけれども、そういうこともうたって、週休二日制以降が当面の課題である。もう一つその際に、働く皆さんのレジャー組織というもの、レジャー施設というものが全くない、あるいは不満足である、こういうことが中心で仕事をしていく、こういうわけであります。  そこで、この勤労者福祉協会がゴルフ場をつくる云々というようなことでいろいろな計画を立てましたが、火の車で三億の負債を抱えて、しかも長野県におけるゴルフ場の建設と絡みまして、芝生その他をやる町の善良な業者に対して工事の委託契約を正式に結びまして、また加入金などと称して千二百万円の金を取って、そして着手金ということで東竜太郎さんの名前で千二百五十万円の手形を切った。そうしたらこの手形は不渡りで、取られた千二百万円は現金では返ってこない。しかもこのゴルフ場は、そのときにはすでに労働省の勧告があってつくらないことになっていて、現地の村長に対してもつくらぬことの文書が行っている。長野県下伊那郡平谷村村長熊谷靖郎様に対して、この法人の専務理事名義で、労働省よりだめだということになったからやめましたという通知が行っているのです。その後においてこういうことが行われる、明確な詐欺事件だと私は言いたいわけであります。ところが、告発に行った被害者に対して、警察側が当初それを受け付けない。私、この問題を国会でということにいたしました後に、警察の方はその告発を受け付けて捜査に入っております。先般も聞いてみましたが、進めておるということでございますからきょうはお呼びしませんでした。三億に近い、この勤労者という名においてこれだけそうそうたるメンバーを集めて、そして泣き寝入りをさせるについては、これは余りにもひど過ぎる、私はそう思います。  そこで、先般基準局長さんに御答弁をいただいたわけでありますが、結果的に、やりとりをいたしましたが、解散をさせるというのではなしに存続を図って被害者の救済というようなことも改めて考えてみて検討してみたいという実はお答えでございましたから、もう一遍質問をいたしますのでどういう結果になるのかそのときにお知らせいただきたい、こう申し上げておきましたが、当時私の質問を読売新聞だと思いましたが、一部書いておりましたが、ひとつその後の経過を承りたい。
  93. 高橋伸治

    ○高橋説明員 御質問お答え申し上げます。  労働省の監督のもとにございます公益法人がそのような不祥な事件を起こしまして多くの方に迷惑をかけましたことにつきましては、きわめて遺憾に存じているわけでございまして、労働省といたしましては、先生のただいまおっしゃいましたように、被害者、特に零細な被害者の救済に全力を挙げるようにということで、協会の方を指導してきたわけでございます。そして最近の私どもの方の考え方といたしましては、やはりかつて理事として関係された方あるいは現在理事として残っていらっしゃる方々、こういう方々にお集まりいただきまして、そして協会の再建あるいは被害者の救済、そういうような問題につきまして御協議いただきたい、こういうふうに考えている次第でございます。  なお、前回の内閣委員会の後、協会の債務処理のための特別委員会というのがございますが、そこの特別委員長に役所の方においでをいただきまして、そこでも対策をいろいろ協議したわけでございますが、協会の方といたしましても、やはり現役員あるいは前役員に対しまして協会の救済のための財源の捻出方法について呼びかける、協力を求める文書を提示したというふうに聞いておりますので、協会の方につきましては引き続きそういうような努力をお願いすると同時に、私どもは私どもの方といたしまして、先ほど申し上げましたような形での努力をいたしてみたいというふうに考えております。
  94. 大出俊

    大出委員 これは最終的につぶすんだというようなことになると、労働省が認可した法人だから、しかも一これだけそうそうたる前労働次官から始まってずらっといるんだから、だから信用度絶大でございますから、そういう結果になったのですから、しかも三億に近いそういう犠牲者がいるわけでありますから、それが零細な人をいっぱい網羅しているとなるときわめて責任重大で、それならば労働省相手に訴訟になってしまう。そうするとまた法務省の訟務部へ行ってしまうわけですから、何年たつかわからぬ。それでもやらなければならぬときはやらなければなりませんけれども、私は余りそういうことは好まない。労働省の傘下には事業団その他いろいろございます。そこだけではうまくいかない、やり切れない、事業団になって必ずしもうまくいってない。だとすると、この種の財団法人等をこしらえて働く皆さんのためにレジャー施設をつくっていこう、これは一つの明確な間違いない方針なんですね。それをやってみたらつぶれた、前労働次官まで入っていて、なんということになっちゃ困るのです。だから私はめったなことでつぶすべきでない。それは大蔵省は金を出さぬかどうか知らぬけれども、補助金問題だってあるんだから。これだけのことをおやりになるなら責任を負ってくれと私は言いたい。  ところが、そういう質問をしようと思うと、私の友人を通じて何かやめてくれと言わんばかりの話が来たり、あなたがきのう聞きに来るからしようがないから説明をすれば、家へ帰ったら途端に電話がかかってきて、そんなこそくなことをしなさんな。全くけしからぬ。だから本来ならば、きょうはただでおかないつもりでいたんだけれども、まあ物事を荒立てるだけが能じゃない。もう一遍私の方でがまんしますから、やはりもう少し責任ある明確な——働く人たちのレジャー施設という名において、山ほど犠牲者をつくってしまうなんというばかなことを許せないですよ。しかも警察庁でも、なぜ告発を取り上げぬと言って再三話しましたか、そうしたら調査してみます。——捜査ではない、調査してみます。その結果は、大出さんもおっしゃるように詐欺容疑まことに濃厚だ。これはこの間の委員会で明確にお答えになったでしょう。それで改めて弁護士その他に話して、告発の資料を警察側はいただいて、正式に告発を受けて捜査に踏み切りますと言って踏み切ったでしょう、警察が。明確に詐欺容疑あるでしょう。そういうことをやらしておいて、そうそうたるメンバーがずらり並んで、こういうばかな話はありませんよ、東竜太郎さん以下全部いるんだから。そうでしょう。だからこの責任を負わないようでは、将来——私だって石田博英さんか労働大臣のときに、厚生年金資金五十億出してくれと言って総評の副議長時代話して、新宿の厚生年金会館つくったんですよ。やってできないことはないんだ。やはりそのくらいの気持ちにならなければできやしませんよ。握りげんこつで五百万の資金でやれと言ったって、三菱の寺尾さんだって顔を出していて途中でいやになって逃げちゃったというようなかっこうになっている。あとの始末はというので幹事会か何かに預けるから、幹事会が詐欺まがいの金を集める。そういうことを労働省監督課の方にさしちゃいけません。だからひとつまた機会を求めて、もう少し私も調べて物を申し上げますが、せっかく皆さんが夜お帰りになってからまで心配して、いろいろ私の知り合い等に電話をおかけになる。気に食わぬけれども、事を荒立てるのが能じゃないからがまんしますが、いまの御答弁をとりあえず承っておきますが、ひとつぜひ御相談をいただいて明確にしていただきますようお願いをいたしておきます。  それから、総務長官お見えになりますから、もう一件だけでおしまいにいたします。二件並べて申し上げますから、御報告だけいただきます。海上保安庁においでいただきましたのは、実は時間をかけて詰めたかったんですけれども、残念ながらお待たせしながらこういう結果になって申しわけない。  私、あの管区に参りまして壱岐、対馬から朝鮮海峡周辺まで回ってまいりました。実は半島から密入国をされる方々がたくさんございまして、対馬の島民の皆さんを含めましてわずかな海上保安庁の船、人でおやりになっているわけでありますから、何ともどうも人を見れば密入国者に見えるということを本部長さんおっしゃっていましたが、厳原の警察の方々にしても悪戦苦闘しています。したがって、こんなことにしておくわけにはまいらぬ。しかも最近はやり方が非常に手が込んでおりまして、荷物を運ぶがごとく人を乗せて上をふたしてしまって荷物と同じように運ぶ。排せつの処置も何もない。まさに息絶えなんという形で見つかったりしています。こういうことを放任はできない。しかも首つりの足を引っ張るがごとく、五十万とか六十万とかいう密入国に手をかす諸君がそのための金を取っている。こういうことを放任できない。だからこれは入管の次長、なくすそうでございますけれども法務省を含めて一体この点はどういうふうに考えるべきかという点を一つ承りたい。時間がございませんから、長い答弁は要りません。  それからもう一つ、横浜刑務所というのが笹下というところにございますが、これがもう人口密集地の盆地の真ん中みたいなところにありまして、周辺の家庭から作業環境その他が全部見える。撤去運動が起こるという時期に、周辺の道路、排水の処理等を私この席で質問をしまして、かつてそれをおやりいただいて、周辺もとりあえずがまんをして今日に至っているわけでおりますが、その後私が何回か質問を続けておりますけれども、最近における皆さんのこの刑務所についての扱い、どうお考えになっているのか、あわせて二件ひとつ承りたいのであります。
  95. 影井梅夫

    ○影井政府委員 御指摘のとおりわが国への不法入国の大部分、九六、七%、これは韓国からでございまして、またその約八〇%ぐらい、特に最近の一年におきましては九〇%が済州島からの密入国であるという現状でございます。  また、これらの密入国者の目的でございますが、九〇%以上がわが国への出かせぎを目的としたものでございます。特に済州島からこのように多数の密入国者がある原因といたしましては、日韓間の歴史的な関係それから地理的に非常に近接しているということ、それから経済的な格差がはなはだしい、また日本国内に済州島の出身者が多数住んでいるということが主な原因かと思います。  これらの不法入国が望ましくないことは申すまでもないのでございますけれども、他方、これらの密入国者自身が日本に潜入いたしました後におきましては、これらの人たちの労働、保健、福祉、生活環境等いろいろな面におきまして法律の保護の外に置かれているという点でいろいろ問題を生じていること、これは御承知のとおりでございます。私どもといたしましては、密入国者防止、摘発といたしましては、でき得ることならば水際と申しますか、不法入国の瞬間、その前後の機会にこれを防止したいということで、海上保安庁、警察等関係機関との連絡、協調を図り、そのための具体的な会議等も行っております。  また、他方、水際での防止が必ずしも効果を奏しないために、特にこれらの潜在不法入国者が多数居住しているであろうという地点を選びましてその摘発に努力しておりますけれども、予算、調査体制等の面で制約がある。また、そのほかに、日本国民一般の関心がこの問題に対して薄いという理由もあるかと思いますけれども、その面からのわれわれが期待をしておりますような十分な協力等が得られないということがございまして、満足すべき成果をおさめていないというのが現状でございます。当面、関係機関と協力関係、これは従来もやっておりますけれども、今後とも一層これを密接にいたしまして対処してまいりたい、かように考えております。  なお最後に、冒頭に申し上げましたとおりに、最近の密入国者の九〇%が済州島からのものであるということで、昨年の十二月の初頭でございますけれども、韓国政府に対しまして、外交経路を通じましてこの問題を提起いたしまして、先方の善処方を要望しております。
  96. 石原一彦

    ○石原政府委員 横浜刑務所の問題につきましては、多年大出委員が熱心に御検討されており、私も昨年矯正局長になりましたときに前任者から引き継ぎを受けておりますし、先般来四十四年以来の速記録も検討さしていただきました。法務省といたしましても真剣に取り組むところでございます。  しかしながら、何分にも同刑務所は、大出委員御存じのとおり、約千七百人に及ぶ収容者を持ちます大規模な施設でございまして、とにかく移転には相当な経費を要するという点もございますし、移転先の決め方に非常にむずかしい点がございます。しかしながら、これまで横浜市とも十分連絡をとりつつ今後の問題を検討しておりますが、今後とも横浜市との連絡のもとに具体的な計画をさらに策定したい、かように考えております。
  97. 大出俊

    大出委員 法務大臣、いまの密入国問題は、六十五万の韓国籍の方々が国内にいるのですが、そのうちの十万人とも言われるものが密入国というわけです。私も横浜でございますので、年じゅうこの種の問題にぶつかっては入管との縁が切れないという実情なんですよ。個々にケースは違いますが、見ていられない実情なんですね。したがって、これに対しては、少しふやせばいいやでなくて、法務省は入管を抱えておられるのですから、抜本的にどう考えるかということを、大臣、お考えいただきたいのです。  二番目の刑務所問題は、私がここで細かく物を言いますと差しさわりがたくさん出てきますから申しませんけれども、これも長い懸案でございますから、何とか前に進める御努力をいただきたいと思っているのです、周辺はだんだん過熱してまいりますので。そのことを一言つけ加えて、大臣から……。  前者の密入国の問題は人道上の問題です。なわがけをして息もできないようなことにして、イカなんていって人を運んでくるのです。あそこはイカがとれるところですからね。イカ船がいっぱい出るところです。排せつする場所もないままでほうり込んで、塩魚をほうり込んで、それをかじらせておくままで連れてくる。しかも一人六十万も金を取ってやっている。放任できませんからね。しかも人身売買などにもつながるということですから、一遍ぜひ抜本的に御検討願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  98. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そういうひどい仕打ちみたいなことをしていることを私、いままで聞いておりませんでしたからびっくりいたしました。そういうことは人権擁護を最大の使命とする日本国憲法下においてはあってはならないことであって、法務当局として責任を感ずる次第です。御指摘を受けました以上は、入管当局にしっかりやるようによく申します。
  99. 大出俊

    大出委員 女性の方が見つかりやすいから料金が高いなんというばかなことをやっているわけですからね。百六十五人くらいしかこの年度はつかまっておりませんけれども、ひどいものです。だから一遍ぜひこれはお調べをいただきたいと思います。海上保安庁の方々にもぜひ御協力いただいて、実情を明らかにして対処願いたい、こう思いますのでつけ加えておきます。  ありがとうございました。
  100. 木野晴夫

    木野委員長代理 和田貞夫君。
  101. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 総務長官の時間の都合がございますので、法務大臣に対しましては午後からゆっくりと質問させていただくことにいたしまして、総務長官に最初に御質問さしていただきたいと思うのです。  昨年の当委員会におきまして、かつてない差別を売り物にするという事件が起こりまして、総務長官も怒りの談話ということで、非常にけしからぬ話だという談話を発表された。また、当委員会におきましても非常に強い決意のほどを述べられたわけです。総務長官は談話の中でも、かかる事件が再び起こらないように要請した、関係各省庁あるいはそれぞれ企業団体等にも呼びかけた、そして、この事件を契機に万全の施策を講じていきたいという発言をされているわけです。  ところが、それから二カ月たつかたたない間に、今度は大阪の方で「全国特殊部落リスト」という再び差別を売り物にする商売をやっていることが発覚した。昨年の委員会で「特殊部落地名総鑑」について論議をしたわけでありますが、その場合は、企業防衛懇話会という名称を使って、代表者は理事長として京極公大という偽名を使っておったということが明らかになったわけですが、これとほぼ同一の人物であろうというように思われるわけですが、別名企業人材リサーチ協会、こういう名前で代表者が会長として楠征一。この文書をながめてみますと、大体同じような文書を書いているわけです。時期的にはむしろこの間論議いたしました「特殊部落地名総鑑」よりも先に発行されておったように思います。こういうのが後を絶たないわけです。  しかも、今度の大阪で起こりました「全国特殊部落リスト」、「全国左翼高校教諭リスト」、あわせて発刊しているわけですが、この内容を見てみますと、さきの「特殊部落地名総鑑」なり一部落地名総鑑」と異なっておる点があるわけなんです。前者の場合は、印刷所に依頼をいたしまして、赤い表紙のこういう物を発行しているわけですね。今度の場合、そうじゃないのです。原本を持っておりまして、その原本をリコピーして、そしてこういうようなファイルで、表紙をつけてこれを届けている。だから、この前のこの「人事極秘地名総鑑」の場合は、回収すればそれでよかったわけですが、回収できないわけなんです。本人が原本を持ってどこかへ行っておる。いまだに本人を捜し求めることができない、こういう状態でございます。内容は「地名総鑑」と何ら変わっておりませんが、発行先が労政問題研究所ということで、大阪市東区南久宝寺町五の三、大東ビル八〇三号という住所になっておる。代表者が北沢隆、三十二歳でありますが、これが住所は大阪市阿倍野区阪南町というところまでわかるわけです。  そこで、この労政問題研究所なるところへ参りますと、最近のきわめて巧妙な商売なんですが、この大東ビル八〇三号というのは電話の取り次ぎをやっている商売です。二十本ほど電話を入れまして、この電話は何々商店、この電話は何々会社ということで、女性の事務員がおりまして、その電話にかかってきたときには、はいA社でございます。次の電話にかかったときには、はいB社でございます。こういうことで注文を受けるということだけなんです。したがって、三カ月なら三カ月、六カ月なら六カ月契約しておれば、本人が全然顔を出さない。だから、ここへ行けば本人の事務所に——事務所というように称しておりますけれども、その事務所にある一つの電話を借りる契約をしているだけのこと。その契約の際の本人の、阿倍野区阪南町の住所へ行きましたら、これはうその住所でありまして、本人がおらぬ。取引銀行が住友銀行の大阪心斎橋支店でありますから、そこへ行きましたら、振り込んだ金はちゃんと引き出して六円しか残っておらぬ。こういうようなことで、つかみどころがないわけです。  しかも、先ほど申し上げましたように、原本は自分で持って、何ぼでも印刷できる。本人をつかまえない限りは永久にこの差別文書が発行される。こういうきわめて悪質な事件が、せっかく昨年の本委員会で総務長官が決意のほどを述べられたわけでありますが、起こっておるということでございます。  なお、その後の経過について法務省にいろいろと質問したいわけですが、それはまた後ほどにさしていただきまして、一体、こういうような事件が後を絶たないということにつきまして、総務長官どういうような考え方を持っておられるかということをお述べ願いたい。
  102. 植木光教

    ○植木国務大臣 「人事極秘特殊部落地名総鑑」及び「全国特殊部落リスト」、この二つが企業の人事関係において利用されることを目的として発行せられましたことは、まことに憤激にたえないところでございまして、この点につきましては、法務当局の調査と並行いたしまして、私どもといたしましても、こういう同和地区住民の就職の機会均等に対する大きな影響を及ぼす悪質文書の処理及びその文書を購入いたしました企業に対しまして強力な指導と啓発を行ってきたところでございます。さらにまた、ただいま和田委員から、それよりもさらに悪質な発行の仕方でリストを発行しているということにつきましては、ただいま法務省において調査をしていただいているところでございますが、まことに嘆かわしい次第でございます。  私どもといたしましては、すでに御承知のようにいろいろな措置をしてまいりましたが、同時に、何と申しましても、各地方自治団体の協力を得、また国民全体の理解を得なければなりませんので、各種の資料を配付いたしましたり、ラジオ、テレビ等による啓発、啓蒙の強化を図っているところでございまして、今後ともその努力を続けてまいりたいと存じます。  また、これに対する行政措置でありますとか、あるいは立法化というようなこともできないものであるかということにつきましては、関係各省と協議をいたしまして、ただいま検討を精力的に行っているところでございます。  いずれにいたしましても、このような事象が次々に起こってくるというようなことは、私どもまことに大きな心の痛みであり、また責任を痛感しているところでございまして、この機会に、さらに一層絶滅のための努力をいたしますことを申し上げ、私どものこれに対する取り組みについて御協力をいただきたいと存ずるところでございます。
  103. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 後で法務省にも詰めたいと思うのですが、法務省は単に人権侵犯事件としてとらえているわけですね。そしてこの法務省の内部規程として、人権侵犯事件調査処理規程というのがある。これによって差別書の発行者あるいはその購入者に、何かわからぬわけでありますが、この規程によりますと、告発、勧告、通告、説示、援助、排除措置、処置猶予、こういうような処置をすることになっているのですが、差別書を購入した先に対しまして、その差別書を回収するときに説示をするあるいは勧告をするというようなことで一件落着です。あるいは総務長官いまお述べになりましたように、差別を売り物にするというようなこのことについては、全くけしからぬ話でありまして、法規制をやらなければいかぬということを言われましたけれども、いまだにその具体的な問題が俎上に上っておらない。先ほど申し上げましたように、原本があって本人が逃げ隠れ回っている間は何回も繰り返してやられるわけです。しかもこういうような法務省の内部規程の人権侵犯事件調査処理規程というのでは本人をひっとらまえるということはできない、強制捜査することができない、こういうような事態にあるわけでありますから、これはひとつ検討を重ねてということでなくて早急に、できれば次の国会にでも出すんだというつもりになってこの規制、立法化の手続というものを検討してもらわなければ私は後を絶たないというように思いますので、そのような決意のほどは、これは法務省の方で担当されることになるのかどうかわかりませんが、やはり部落解放行政に対する政府の窓口としておられる総務長官、その点についてはどうですか。
  104. 植木光教

    ○植木国務大臣 ただいまの絶滅のための方法について、私どももいろいろ各省庁とともに探求をしているところでございまして、私も、何か行政上の措置をとることはできないか、さらにまた立法措置をとることができないかということでいろいろ指示をし協議をしてもらっているところでございます。  また、同対協におきましても、もちろんこの問題が発生いたしました当座から御報告を申し上げますとともに、同対協自身でもこれの処置の仕方についていろいろお考えをいただいているというようなところでございまして、いろいろな多岐にわたります問題があることはもう和田委員も御承知いただけると存じます。それを乗り越えて何とかできないかということで懸命に努力をさせていただきたいと存じます。
  105. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これは後で法務大臣に詰めましょう。総務長官もそれなりの努力をぜひともひとつやってもらいたいと思いますが、時間がありませんのでなんですが、総務長官はあれから後十二月二十七日にフジテレビに出演されておる。全国的に影響力のあるテレビなどの媒体を活用して啓発活動をしたい、こういうこの前の委員会における論議の中での総務長官の答弁であったわけです。それが十二月二十七日に出演されておるわけですが、これに使った経費が約二百万円だというように聞いておる。五十一年度の広報室の予算、善処して努力するということを言われましたけれども、見てまいりますとさほどの経費が組まれてないわけですね。この前も言いましたように、国鉄が運賃の値上げに一遍に一億使う。一億の金を国鉄の運賃値上げをするときには国鉄当局が使うけれども、総務長官が部落問題について全国のテレビの視聴者を通じてたとえわずかでも何とか努力しようということでなさるのに一回やって二百万円、せめて運賃値上げの宣伝のようなことができないかというように同対審の方に尋ねますと、そんな予算ないよと言うのです。  一方、自治体の場合はかなり努力をされておるわけです。これは大阪市の広報です。四面でこれだけの努力をされている。これは一回じゃないですよ。これは私の地元の堺市です。八ページ立ての広報で、これだけ紙面を活用してやはり努力されておる。大阪府の場合もこれで両面、こういう努力をされておる。あるいは大阪市、大阪府はことしの場合でもテレビの制作費、大阪府では一千六百万円の予算を組んで三十分のドラマを四本計画しておる。いままで合わせて十八本計画しておる。大阪市の場合もテレビ番組の制作、放映、これにかなりの努力をされているわけです。五十一年度もかなりの予算を組んで努力されておる。  自治体はかなりそれだけの努力をされているわけですが、国自体として、確かに補助をして自治体を通じてやってもらうというようなことも一つの方策であろうと思いますが、国民の受け取る感じとしては、国自体が一体何をやってくれているんだということしか映ってこないわけです。やはり総理府なら総理府という名称を使って新聞に掲載するというような努力、あるいは前の十二月二十七日に放映されたような形で何回となくこのようなことをし、しかもこういう差別を売り物にするというような商売はまかりならぬということを全国民に周知するというような啓発活動、これをやってもらわなくちゃならぬのですが、五十一年度の広報予算をながめましたら私は涙が出てくるわけです。これで先ほどからるる繰り返しておられるように、こんりんざいこういうような差別事件が出てこないというだけの啓発活動ができるというようにお考えになりますか。
  106. 植木光教

    ○植木国務大臣 ただいま御指摘がありましたように、十二月二十七日にはフジテレビにおきましてこの悪質文書に関しまして全国民に対して啓発のための放送をしたわけでございますが、その前に八月二十四日には同和対策協議会会長とテレビ対談をいたしまして啓発運動をしましたことは御承知だと存じます。この同和問題に関しまして政府がテレビを通じまして本格的にやりましたのは八月がいわば最初というふうに私は伺っているのでございまして、こういう状況ではだめであるという認識のもとに、引き続き十二月にはいま申し上げましたような放送を重ねてやったということでございます。  ただいま広報、啓蒙のための同和対策室予算についてお話がございましたが、五十年度予算が七百七十五万三千円でございましたのを四千三百四十四万二千円というふうに増額をいたしました。約五・六倍にしたわけでございます。これは同和問題講演会の委託費、従来ありましたもののほかに同和問題啓発運動資料作成の委託費、さらに同和問題啓発運動放送委託費というものを新規に組んだのでございます。非常に少ないではないかというお話でございますが、同和対策室に盛られました新しい啓発予算とともに、政府の総理府広報室が持っております広報活動費をさらにこれに上乗せをいたしまして、新聞、ラジオ、テレビ等各種の媒体を通じまして効果的な啓発運動をやりたいということで、ただいま計画をいたしているわけでございます。  したがいまして、この同和対策室につけられましたもの、これも五倍以上ということにはいたしましたけれども、これをもって足れりとしているのではございませんで、政府の広報予算全体の中でさらに上積みをした活動をいたしてまいりたいと決意いたしております。
  107. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 本会議の予鈴のベルも鳴ったわけでありますのでなんですが、もともと予算が少ないのですから、もとの予算の五倍になった六倍になったと言ったところで、繰り返しますけれども、一億の金を使って国鉄の運賃値上げ、こういう宣伝活動ができることと比べたらまことに微々たるものであります。これは時間がありませんのでなんですが、やはり既定の予算にこだわらない予備費の支出を含めてもっと大々的に啓発活動をやっていただきたいということをお願いしておきたいと思うのです。  さらに、こういう差別事件を繰り返すということ、法務省も、長官もこの間お聞きになっておったと思いますが、やはり社会的制裁のためにそういう差別書を購入した企業の名前を発表するのだと言うておったけれども、いまだに発表をしないのです。法務省はやる気がないのです。だから、これは本当に政府がそういうようなまじめな気持ちでやっておられるかどうかということを私は疑いの目で見るを得ないわけです。  昨日、当委員会で外務大臣に、いまの日本の憲法よりも上回る個人の人権尊重というもののたてまえに立つ国際人権規約の批准を早急にやれということで、次の通常国会まで努力はするという御答弁もあったわけなんですが、そこにはいろいろと各省庁間のいろいろな意見もあると聞いておりますので、そういうような姿勢があらわれることが、なるほど政府は本腰になってやったな、やるようになったな、やりおるな、こういうようになるわけですが、総務長官の方も国際人権規約の早期批准等についても閣内でひとつ努力していただきたいということをお願いしておきたいと思うわけであります。  ただ、総務長官先ほども言われたわけでありますが、せめて総務長官、総理府としては国の対策、各省庁間の関係もありますけれども、やはり窓口としての総務長官として特に予算の確保というのがあなたに課せられた一番大きな任務であろうと思いますので、既成の五十一年度の予算が五十年度よりもこれだけ上回っているのだというのじゃなくて、既定の予算にこだわらないで、予備費支出ということもあるわけでありますから、積極的に万々遺憾のないようにもっと啓発活動をやっていくのだというお考えがあるかどうかということを最後にお答え願いたいと思います。
  108. 植木光教

    ○植木国務大臣 同和問題解決のためには全力をふるって努力をいたしますし、ただいま御指摘の点につきましては、全力を挙げて精励をいたしますことをお約束申し上げます。
  109. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それじゃ中断いたします。
  110. 木野晴夫

    木野委員長代理 午後二時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩します。     午後零時五十六分休憩      ————◇—————     午後二時三十五分開議
  111. 木野晴夫

    木野委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。和田貞夫君。
  112. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 法務大臣、ちょっと聞いておいていただきたいと思いますが、滋賀県の甲賀郡甲西町というところがある。そこに日本電気化学工業株式会社というメッキ会社がある。本社が大阪市の平野区にあるわけなんですが、ここの滋賀工場に勤めていた田中とよさん、当時三十六歳であります。昭和四十九年の八月十日に、自分のロッカーが会社の中にあって、着がえを入れているわけですが、ふとその日にロッカーをあけてみますと、広告紙の裏に黒のマジックで、「田中のエッタ、うだってい、しみたれ、会社やめよ、おばはん」、こういう差別文書が投げ込まれておった。  当時、日本電気化学工業は不況の中にありまして、人員整理がささやかれておったのであります。五十人ほどの従業員の中でこの田中さんも働いておったわけでありますが、その人員整理の矢面に立たされるのは、部落出身者の田中さんを含めて六人からまず先に首を切られるんじゃないかというようなささやきがされておった。  田中とよさんは、この投げ込まれた差別文書を見まして、二、三日はもうおろおろするばかりです。自分で判断に困っておりましたが、同じ会社に働いておった部落出身の同僚に対してこのことを打ち明けた。その同僚から部落解放同盟の支部に連絡がされまして、甲西町役場と会社側に確認会を持ちました。ところが、この会社側が、自分の従業員の一人である西田稔さん、四十六歳の男でありますが、この西田稔さんに対して、おまえには迷惑をかけないから、ただ謝ってくれればいいと、いわば替え玉を強要したのであります。西田稔さんは、この会社のやり方を断り切れないで、しかも事の重大さに気づきまして、地元の水口警察署に救いを求めて駆け込むというこういう姿であります。  会社側は、この問題を解決しようとするのじゃなくて、むしろ問題の引き延ばしを図る。そしてまた、行政側の甲西町の教育長も、この会社がつくった替え玉の西田稔氏を犯人に仕立てようとしたり、あるいは同促協という行政に協力する団体がありますが、ここの会長も、犯人がもうわかった以上は会社にも役場にも関係がないんだから、本人同士で話したらいいんだ、こういうようなことで一年有余にわたりましてこの確認会がうやむやになってしまった。田中さんの憤りというものはもちろんでありますが、親類の皆さん方もこれらに対しまして強く反発いたしまして、一年有余経過いたしました。  田中とよさんはついにノイローゼになりまして、そして会社を休職して親元の三重県に帰って、その間に農薬自殺をやろうと思いましたけれども、未遂に終わりました。しかし、とうとうことしの三月二十三日の午後十時四十分ごろに田中とよさんと自分の夫の田中倉蔵さんが心中をしてしまっておるんです。後には妹と自分の子供に対しまして、代筆をしてもらって「差別への死をもっての抗議」、こういう書き置きがされておるんです。田中さん御夫婦の後には高校三年生と二年生、中学生の三人の子供がおりますし、それにいまなお入院をいたしております。十歳になるおばあさんが残りまして、これからの先というものが真っ暗、こういう事件があったわけでございます。  私はこの一つの例を挙げてまいったわけでありますが、こういう差別事件というものがほとんど毎日のように起こっておるというのが現実の姿であります。この一つの例に対しまして、人権擁護の立場に立った司法行政をやっておられる責任者としてどういうようにお感じになったかということを法務大臣お答え願いたい。
  113. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いまの実例は、私、和田さんからきょう初めて承りますが、法務省人権擁護局では知っておると思います。把握しておると思います。まことに何というか、言語道断、さたの限り、明瞭に、そういう会社のやり方が事実とすればその会社は憲法十四条の違反者である、けしからぬ。それに対する人権擁護局の対処の仕方、きっとしっかりやっていってくれるとは思いますが、聞いてやらなければいかぬな。法務省の威信に関するというふうに憤激を覚えるくらいです。  以上、私の所見でございます。
  114. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 法務大臣、いま発言されたわけでありますが、現実の問題として、この差別者、本人を殺したこの犯人、これを現行の法律においては強制捜査もできないし、とらまえるということができないのです。これは現実の姿なんです。法務大臣がいま人権擁護局としては対処されることだと思う、また、やってもらっているというように言われますけれども、私は去年の十二月十八日の当委員会におきまして、きょうは警察お見えになっておりませんが、警察行政の執行に当たっておる警察庁の責任者か——私は具体的にこの例を挙げました。改めて法務大臣に聞いてもらいたいと思いますが、部落の出身の人がおった。その前で差別者がこういう事例じゃなくて、もっと極端に面と向かって部落住民に対しまして、「こらエッタ」と、こういう言葉が吐かれたという事件があったとします。そばに警察官が立っておる。司法警察がその場におっても現行犯だということで逮捕することができないのですよ。この差別発言やこういうこの差別者の差別文書というものが人を殺すという結果になってしまう。殺意があるなしにかかわらず、現実的にはこういうことで命を断つ部落住民が数限りないわけです。現行法では取り締まることができない、刑法には抵触することができない、強制捜査ができない、こういう実態を、何とか努力をするとか対処をするとか言われたところで、現実の姿としてこれの解決のためにはどういうようになさろうとしておるのか、どうすべきなのかというお考え方ございましたら、法務大臣お答え願いたい。
  115. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私、いま和田さんの挙げられたようなことが事実だとすれば、名誉棄損とか侮辱罪とかそういうことで現行犯として逮捕できないのかな。逮捕できると思うがな。(和田(貞)委員「できない」と呼ぶ)できないのですか。しないというだけの話で、やるべきものだというふうに思いますがね。
  116. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 わかりました。法務大臣の御見解としては、そういう現行犯が実在した場合に逮捕できる、こういうお考えであるということを承って私は非常に感銘を覚えるわけですが、今後そういうようにわれわれとしては解釈していいですね。
  117. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私、刑法の専門家でありませんから正確ではないかもしらぬけれども、刑法の常識として明確な侮辱罪じゃないですか、明確な名誉棄損罪じゃないでしょうかね、現行犯として。しかもいまの事例のほかに、現に先ほどの事例のように人が死に至るという非常な社会不安、死に至らしめるかもしれないような反社会性を持った言動でありますからね。それをのほほんと見て過ごすという、社会秩序維持の担当公務員としては、見逃すということは怠慢であるように私は思いますな。
  118. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 結構でございます。法務大臣のその御見解、ひとつ検察当局や司法警察に対してそういう大臣の見解ということを十分徹底するようにお願いしたいと思います。  そこで、朝からも総務長官の方にお尋ねしたわけでありますが、十二月の十八日の当委員会におきまして、当時発覚いたしました差別文書「特殊部落地名総鑑」という、部落の所在地を明らかにして、そこの世帯数、その部落の職業、しかもなお詳細に、どの通りから西へどの程度の範囲内、こういうような克明な一覧表を印刷いたしまして、しかも御丁寧に、この当時発行された案内書でありますが、企業防衛懇話会という発行先、これを企業に無数に至るところにばらまいておる。そして、あなたの企業の中で人事や考課に役立たせてください、あなたの企業の中に部落の出身の労働者がおりますよ、考課に役立たせてください、あるいは新規採用の際にこれを役立たして部落の人を採用しないようにしなさいよ、こういう案内書なんです。発行した者も発行した者なら、買う者も買う者なんですよ。当時、法務省の方へ私が質問いたしましたら、大体よく調べたら、この案内書が千枚ぐらい印刷されたと思う、そして「地名総鑑」なる差別書が四百ぐらい発行されたと思う、こういうことなんです。その後おたくの方で調査された結果、四百部以上印刷されておったというような結果が出た。これにつきましても、千部だというように思っておったけれども、それ以上にばらまかれておるというようなことになったわけです。  ところで、この点につきましては、政府の談話、具体的には総務長官談話なり労働大臣の談話なり、あるいは関係省庁の次官の連名で自治体や関係省庁、関係機関あるいは企業に対しましても、その団体を通じてこういうようなものを買ったりしてはいかぬ、こういう行政指導をなさっておられるわけでありますが、それから二月たつかたたぬ間に、これは東京で印刷して東京で商売をやったものです。実はこれと恐らく同じ人物でありますが、発行先が企業人材リサーチ協会、先ほどのものは企業防衛懇話会、名前を変えました。代表者の名前もそれぞれ偽名を使いまして、むしろこれよりも先に発行されておったという事実が明らかになりました。  さらに続いて、大阪で、今度は別の人物でありますが、「全国特殊部落リスト」「全国左翼高校教諭リスト」、まあ同じような内容でありますが、それぞれの企業の人事部長や人事課長に対しまして、採用の際に、考課の際に役立たせてくださいという案内書を配って、それによって買い求めている企業があるということが大阪で明らかになったわけです。先ほど御紹介いたしましたし、去年の国会で取り上げた場合は、これはまだ法務省から、印刷所はどこで印刷したかということを明らかにしてもらっておりません。後で明らかにしてもらいたい。一冊の書籍をつくって、差別書をつくって売っているのですからね。法務省で回収された。それは回収はできましたが、今度の大阪のこの「全国特殊部落リスト」については回収ができない。きわめて悪質な巧妙なやり方で商売をやっておる。労政問題研究所というのです。労政問題研究所という発行所になっておりまして、大阪市東区南久宝寺町五の三、大東ビル八〇三号、代表者が北沢隆、三十二歳となっておるのですが、ここへ行きましたら、もぬけのからなんです。この大東ビルの八〇三号というのは、最近の商売でありますが、一つのビルの一室を借りまして、電話を十か二十ぐらい自分の所有にして、そして一つ一つの電話に契約をして、事務員がおりまして、この電話がかかってきたのはA会社、この電話がかかってきたのはB会社、この電話がかかってきたのはC会社ということで、電話を受け継ぐ商売をやっているビルの一室です。そこがこの労政問題研究所の事務所ということになっておるのです。申し上げましたようなことでありますから、行っても全然わからない。契約をするときにも本人が顔を出しておらない。そして本人が契約の際の住所が大阪市阿倍野区阪南町ということになっておりますので、その契約書に申し込んだ住所を調べてみますと、これまたもぬけのからです。本人がつかめないのです。しかも今度の場合は原本を持っておりまして、その原本をこういうようにコピーするのです。原本をコピーしまして、これは現物の一つです。これをどんどん売っておるのですよ。本人がつかまらぬ限り、この前の「地名総鑑」のようにあなたの方で回収することができないのです。永久に、本人がつかめぬ限りは、この差別書が、いかに努力をされても絶滅することができないのです。しかも、本人がおらぬ。  法務大臣、いま現行犯であれば逮捕されると言われましたけれども、こういう悪質な差別者、一体どうしてもらえますか。
  119. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 この書物のことにつきましては、初めて伺ったわけではありません。よく承知しておりまして、回収も命じたわけでございますが、こういうものが言論だとか出版の自由の範囲を逸脱していることはもちろん、人権じゅうりん奨励書みたいなものですから、断じて許すわけにはまいりません。したがって、そういう人間を早くつかまえてこれを処罰しなければいかぬ、つかまえて処罰しなければおさまらぬ、こういうふうに思います。ですから、どの程度に法務局でこれを調べ、どの程度に把握しているかは、人権擁護局長が来ておりますからそれに詳しいことは答弁させますが、私の感じとしては、これは非常な侮辱罪を構成する犯人だな、こう思いますね。だから、早くそういう者を捜査して、つかまえて、それぞれ厳重に処分する、処罰するということでなければ、こういう反社会的な行為はいつまでも続くおそれがあるというふうに心配します。
  120. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 ただいまの問題についてとりあえず御答弁いたします。  部落差別の言動に対する法的規制という問題は、かねてから議論になっているところでございまして、この一部落地名総鑑」事件をきっかけにいたしまして、前回の、昨年十二月十八日にこの委員会の御審議がございましたときにも申し上げましたように、差別一般について法的規制を行うことはともかくとして、こういう営利を目的として差別を行う、あるいは差別を利用して営利をはかる、こういう行為については法的規制を特に真剣に検討しなければならぬということで、その後、先ほど総理府総務長官の御答弁にもありましたように、総理府の同和対策室が中心になりまして、関係各省の係官が集まりましてこの問題について協議を重ねているところでございます。
  121. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 法務大臣は、捜査をして犯人をつかまえなければいかぬ、こうおっしゃっておるのです。犯人をつかまえに行きましたか。
  122. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 私ども所管は人権擁護局でございますので、犯罪の成否とか捜査の問題についてはちょっと御答弁する立場にございませんが、この「地名総鑑」の発行、販売行為自体をとらえて直ちに犯罪が成立するとすることには困難が伴うのではないかというふうに考えております。
  123. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 先ほど言いましたように、発行者の本人がとらまえられぬ限り絶滅できないじゃないですか、これは。犯人をそのまま逃がしておいて、どうして取り締まりするのですか。どうですか、これは。
  124. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 最初に挙げられた例は、人を指して侮辱することが明確ですから、あれは犯罪構成要件に該当するだろう。これは地名を印刷して販売したというので、その点が名誉棄損罪とか、人を指しておりませんので構成要件に該当するかどうか、そういう点で恐らく法律的な議論があるのでしょう。あるのだろうと思いますよ。けれども、これでもって営利を目的として、しかもそういう一部落地名総鑑」というようなことで出すというのは、やはり部落民全体に対する重大な損害を与えますから、これが侮辱罪の構成要件に該当しないとは私は思わないのですね。その辺のところは、きっと刑事局あたりに議論があるのだろうとは思いますけれども、私個人としてはそう思いますな。そして犯人の動機は、犯人と言うか一部落総鑑」をつくってばらまいて売ったりしたその動機は、明確に部落差別なんだ、人権じゅうりんなんだ。人権じゅうりん罪という一般的な罪名がありませんからどうなるかわかりませんが、しかし、先ほどの個人をつかまえて何々と言った、これが侮辱罪になるという以上に、一般に不特定多数に対する侮辱になると私は思いますが、しかしこの辺に議論のあるところなのでしょう。法務省というのは法律家がたくさんそろっておって、むずかしいかもしれませんね。刑法の専門家でないですからその程度の答弁しかできませんが、私はそう思う。
  125. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これは人権擁護局が担当になるのですか、刑事局が担当になるのですか、これはどっちですか。
  126. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 犯罪の問題となれば刑事局の所管でございます。
  127. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これはちょっと早急に刑事局、だれか来てもらってくれませんかな。刑事局長一回来てもらってください。
  128. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そうしましょう。
  129. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そこで、刑事局長来てもらう間に、ほかの問題に触れたいと思います。他の問題と言いましても関係するのですが、昨年取り上げた「地名総鑑」、この発行者と購入企業に対するその後の措置というものをどういうふうになされてきたかお尋ねしたいのです。  あのときはたしかあなたの方から、これを発行した者もけしからぬことだけれども、今日、部落問題は国民的な課題ということで、部落解放行政を特別措置法において積極的に取り進めておる、そういう中でこういう事件が起こったということは、これは非常に申しわけない。そこで、購入企業は、社会的な制裁を加えるためにもこれを公表すべきだ。いまはできないけれども、もう少し進んだらこの購入企業名をやはり公表する、こういうこともしたいということを局長みずからお答えになっておられるわけです。そこで、いまだに購入企業名が明らかにされておりません。あなたの方が把握しておられる購入企業に対して、いままでどういうような手だてを講じてきたのか、まず購入企業に対するところの手だて、事後処理、今日までどういうような形で進められてこられたかということをお答え願いたい。
  130. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 まず「部落地名総鑑」事件について申し上げますと、ただいままでに調査の結果、判明いたしました購入企業は四十九ございます。とりあえずこの種の書物がそういう民間会社の手元にあるということはきわめて好ましくないことでございますので、これを引き揚げることが肝心であるということで、各購入企業あるいは個人もございますが、購入者に当たりまして、その任意提出を求めたのでございます。これは刑事捜査ではございませんので、あくまでもこの種の書物の購入が非常に不当な行為である、人権擁護の観点から言って不当な行為であるということを説得いたしまして、任意に提出をさせるということに鋭意努めました結果、ただいままでに判明いたしました購入者の全部からその書物の任意提出を受けました。そのうち一部は処分しておりますが、一部はなお保管中のものもございます。と同時に、その段階で多くの購入者はすぐその法務省意図するところを了解いたしまして任意提出に応じましたが、中には必ずしもそうでないところもないではなかったのでございますが、まあ積極的に説得、啓発をいたしました結果、ただいま申しましたように全部回収できたわけでございます。そのような段階におきまして、すでに啓発を行いましたわけですが、その後、各企業の個々の企業につきまして、どのような動機で、どのようないきさつで購入したかという前後の事情調査すると同時に、ほほ事実関係を捕捉した段階におきまして、会社その他の企業に対する啓発を行ったわけでございます。  その啓発といたしましては、人権侵犯事件の処理という観点だけではなく、この事件が非常に重要な問題であるということにかんがみまして、また単に法務省だけではなく関係の各省、それから地方公共団体共同して取り組むべき問題であるということから、国の行政機関、それから都府県、市町村、こういう公共団体とも共同いたしまして、各都府県ごとにこれらの官公署が共同して購入企業の啓発に当たったのでございます。それは大体本年の三月の末から四月の上旬にかけて、その共同の啓発を行いました。
  131. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 念を押しますが、京極公大というこの偽名の男がそれじゃ最終的に発行した部数は幾らで、そのうち四十九社の購入先から回収したと。後は残っておらぬのですか、後は出回っておって未回収というのはないのですか。
  132. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 前回のこの委員会の答弁で申しましたのは、四百部印刷したということでございましたが、その審議の際にもちょっと触れましたように、その後不審の点が出てまいりまして調査した結果、実は五百部であったことがわかったのでございます。その五百部のうち、購入者のわかっているものが四十九でございます。これは先ほど申しましたように全部回収いたしました。それから、そのほかに販売されているけれども購入者がわからないものというのが五つございます。これは電話で注文を受けて、たとえば東京駅の待合室であるというようなところで相対取引といいますか、現金で受け渡す。お互いに購入者がだれかわからないような方法で取引したというのが五件ございまして、販売した坪田自身も購入者を知らないわけでございまして、したがってこれは不明になっております。それから発行者の坪田の手元にありましたのが三百九十五部ございまして、これは坪田から任意提出を受けております。  そういたしますと、なお約五十部のギャップが出るわけでございますが、これは坪田本人の述べているところによりますと、彼は初め法務局に対して、四百部印刷してそうして五部売って三百九十五部が残っているとして三百九十五部差し出して、あとの百部は実は隠しておったわけでございます。これは先ほどの御質問の中にも出ておりましたように、企業人材リサーチ協会という名義で、四、五月ごろでしたか、大分前に販売した関係でございますが、そういう関係で百部隠しておりました。それとのつじつまの関係がございまして、彼はそういう供述をするとともに、その数字の合わなくなった分で手元にあるものを自宅の近くで焼却したということを述べております。その供述に従いまして彼の焼却したと称する場所に係官が赴きまして調べましたところ、かなりの書籍がそこで焼却されておる。そこでこの「地名総鑑」が焼却されたということは明らかに認められたのでございます。ただ、その部数が果たして正確に五十部であるかどうか、これは書物のとじ金が残っておりますものなんかまで集めまして調べましたが、確実に確認はできませんでしたが、相当の部数が焼却されたということは現認できたのでございます。  したがって、まとめて申し上げますと、五百部印刷したうちで回収できたのは三百九十五プラス四十九、ですから四百四十四部ということに相なるわけでございます。
  133. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 五十一部、その相当数全部を焼却したということは確認されておらない。これは本人をとらまえて本人の言い分だけを聞いておったらえらいことになりますよ。私らがいま調べておるところでは、大阪である総会屋が住友グループを回って売り歩いておるという姿を把握しておるのですよ。本人が焼却したというようなことを真に受け取ったら大変なことですよ、これで解決したと思っておったら。次第に私たちが私たちなりの調べたやつを明らかにしていきますが、またそごを来しますよ。五百部が六百部になっているか、七百部になっているかまたわからぬということになりますよ。いいかげんな解決の仕方をやると、だんだん事が重大になってくるのです。本人の言い分だけで焼却したと言ったら焼却しただろうなんということで現認もしておらないのに焼却したというように確認しておったら、大変なことになりますよ。そういうことを私はこの際にひとつ忠告をしておきたい。  なお、差別書の発行者に対して、いま若干一部述べられましたけれども、印刷所がどこで印刷したのだということはまだ明らかにしてもらっておらない。五百部印刷したということは、私はいまお聞きしましたけれども、案内書を幾ら印刷してどこにばらまいたかということも明らかにしてもらっておらない。そうしてもっと大事なことは、坪田が一体どこからその資料を入手して印刷したのかということが明らかにされておらない。ここらはどういうようにいままで本人に対して接触する中で明らかにしましたですか。
  134. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 まず出版案内の点でございますが、これは一部落地名総鑑」を企業防衛懇話会名義で出版いたしましたときは、出版案内書を千部印刷して、そのうち約八百部を企業に送付したということでございました。それからその前に企業人材リサーチ協会という名義で販売いたしましたときは、出版案内書を二千部印刷して、そうして千六百部送付したようでございます。それで、これは会社名鑑等の資料を利用して各会社に郵送したということでございます。それと同時に、外交販売員を雇い入れて外交販売の方法で販売した事例も若干ございます。  それから印刷所の点ですが、これはその名鑑自体もそうでありますが、出版案内書も含めまして東京都港区浜松町にございます有限会社若桑タイプ印刷所というところに印刷をさせて納品を受けているようでございます。  それから基礎資料の入手先でございますが、当初坪田は八王子に住む西川何がしから購入した資料をもとにしたということを言っておりましたけれども、これを当方で調査いたしました結果、その当人は大分前に死亡しているという事実がわかりまして、その供述が虚偽であることがわかったのでございます。  その結果、坪田に対していろいろと法務局の方で追及いたしましたが、彼の供述するところは必ずしも明確でないということもございまして、特にそのもとになる基礎資料を持ち合わせていない、これはすでに廃棄したと供述しておりまして、これもその後極力追及しておりました結果、その基礎資料の一部が見つかった、その資料の一部を何か新聞切り抜きを張るための台紙に使っていたことがわかったと言って、その資料の中身、これは全部ではありませんけれども、紙にして四十枚の資料を法務局に提出いたしました。この資料を検討いたしましたところ、その記載内容は県別に同和地区の所在地、それから部落名、戸数、また一部には職業の記入もございますが、これを横書きにした手書きのものをいわゆる電子式の複写装置でもってコピーしたものでございまして、内容を名鑑と照らし合わせましたところ、これが基礎資料になっていることはほぼ間違いないということがわかったのであります。ただ、この入手先は現在鋭意調査中でございますが、まだ突きとめるところまでは行っておりません。  ただ、この点に関連して申しますと、これは先ほど和田委員がお触れになりました大阪で起きました労政問題研究所の事件でございます。この労政問題研究所発行の「全国特殊部落リスト」というのと、先ほど坪田が提出いたしました基礎資料とは内容、形式の面においてきわめて類似しております。ただ、これは先ほど委員もお触れになりましたように、筆で書きましたものを電子式の複写装置でコピーしたものでございますが、その筆跡がどうも同じでない、別人の手によるものと認められるのであります。ただ内容がきわめて酷似しておりますために、恐らくはこの労政問題研究所の発行の資料あるいはその資料のもとになった資料が、この「地名総鑑」の基礎資料になったのではないかと思われるわけでありますが、この点も現在鋭意調査を進めているところでございます。
  135. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 坪田義嗣の住所、経歴等を明らかにしてくれませんか。
  136. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 坪田義嗣は中央区宝町三丁目六番地雨宮ビルに企業防衛懇話会という名称で事務所を設けまして、図書の出阪、販売及び興信所業務等を営んでいたということでございます。そして、その防衛懇話会名義で特殊株主、右翼それから新聞雑誌関係者名鑑というのを発行したり、あるいは右翼ダイジェストというようなそういう図書を出版した経歴がございます。それらの本を会社総鑑や会社要覧等の書物から企業を抽出いたしまして、出版案内書を送付したりあるいは外交販売人を雇い入れて外交販売するというような方法で販売していたものでございます。
  137. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 本人の住所。
  138. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 住所はいまちょっと手持ちの資料でわかりかねますので、御答弁いたしかねます。
  139. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 後で住所を明らかにしてくれますか、局長
  140. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 後で調査の上でお答えいたします。
  141. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 いまその事後処理についてお聞きしましたが、不思議なことがあるんですね。懇話会の名称で案内書を発行したのが千部、そして今日の供述によると使用したのが八百、リサーチ協会の名でこの案内書を印刷したのが二千部、そして本人が使用したのが一千六百。千に対して八百、二千に対して千六百、これはいかにもつくり数字じゃないですか。しかも本人の供述だけじゃなくて、印刷所に対して案内書を幾ら印刷したのか、こういう点を掌握はできているのですか。しかもなお今日まで案内書はまだ回収はできていないでしょう。本人がたまたま外交販売ルートで若干差別書を販売したということはあったとしても、せめて本人の供述によるところの合わせて二千四百部、名簿によって発行したわけでありますから、そこへ着いておるはずです。その二千四百カ所の企業に対しましてこの案内書を突きとめる、回収をするというようなことをする中で、先ほどから言われておりましたところの五十一部がまだ未回収だというようなこともまた出てくるかもわからないじゃないですか。なぜそこまでやらないのですか。そこまでやる気がないのですか。
  142. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 出版案内書の回収の点につきましては、坪田にその回収をさせるという方針をとりまして、昨年の十二月十七日から今年の二月二十一日までの間、約二千三百社に対して返送代金は坪田払いで出版案内書を返送されたい旨の文書を坪田から各チラシの送付先に送付いたしました。現在までに坪田あてに回答があったのは二百八十一通、このうち三十八通はそのような出版案内書の郵送を受けていないというものでありまして、二百四十三通は郵送されたがすでに廃棄または焼却したというものでありまして、回収はできておらないわけでございます。
  143. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 大臣、相当な決意を述べられましたけれども現実的にそういう問題が起こって、人権擁護局の二カ月間にわたる、三カ月間にわたる、四カ月間にわたる後の事後措置というのは、いま御報告を受けたそういう内容程度のことしかできていないわけです。しかも一番大事な資料の入手先がいまだにわからない。本人を問い詰めてどこだということを言わすこと、なぜできないのですか。この事件の処理について、人権という一番大事なこの問題についての対処の仕方というのは、これは納得できません。大臣、これでいいですか、どうですか。
  144. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 どうも聞いておって、もっとしっかりやってもらいたいものだと私は思いますね。ですから、あなたの御指摘になる点はごもっともですから、大臣の責任において、人権擁護局長以下局を鞭撻して、もっとしっかりやれ、もっとしっかりやるように命じます。
  145. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 しっかりやれしっかりやれと号令をかけるんだけれども動かぬのよ。何ぼ号令をかけても動かぬ。  そこで大臣、後で刑事局長が見えたら、大臣の考えておられることとかなり隔たりがあるというように私は予測いたします。しかし、大臣のそういう考え方というのは私は敬意を表したいと思うのです。大臣考え方によって私は今後対処してもらいたいと思います。ただ、人権擁護局が先ほどからるる御説明のありましたような事後処理に当たりましては、これは法律によらないで、差別書を印刷し発行した者に対しても、あるいはこの差別書を購入した先に対しましても、法務省の内部規程であります。政令でもないわけです。省令でもないわけです。人権侵犯事件調査処理規程、訓令のようなものですね、これは。省令でもなければ政令でもなければ単なる処理規程、訓令です。これによってやっているのですよ。だから差別書を発行した張本人に対して、こらということをよう言わぬ。いかぬやないか、言うならば、まあええやないか、こんな調子ですよ。先ほどから言われているように啓発という言葉を使っておりますけれども、購入した企業に対してその処理を、強制で取り上げることができない。任意で提出を求めて、これから買うたらいかぬぞ、その程度で事を済ませておるのです。それが勧告というのか説示というのかわかりませんけれども、ここに書いてあるように説示だとか、勧告だとか、通告だとか、告発だとか、援助だとか、処置猶予だとか、排除措置だとか、何かわからぬようなことを、それがやったからということでこの規程によって処理した、こういうことになっておるのですよ。購入した側も差別書を発行した側にとってみても、おれは悪いことをした、これからそういうようなことを二度とやったら大変なことになる、そういうことは一切ないですよ。こんなことで二度とこういうことを繰り返さないようにと言ったところで、これは大臣口先だけになってしまいます。  ここらはやはり、人権擁護局長が先ほど言われましたように、いまなおこのような差別書を発行して営利を目的で商売をやる、商う、こういう場合の法律を何とか考えなければいかぬけれども、一般的な差別に対するところの一つ法律を考えるということは、いまなおどうやこうやということで、やろうという気持ちがないのですよ。そこらあたりで、人権擁護局が一体何を考えているのかわからぬけれども、人権擁護というのはこれは口先ばかり、名ばかり、真剣に人権擁護というようなたてまえをとった局だというように私は思えない。また、そういう法務省とは私は思えないのだ。もっとまじめに真剣にこの点を考えられないものですか。また、商いをするということはせめて法規制をしなければならぬということを言うてから、もうすでに三カ月も四カ月にもなっておるにもかかわらず、そういうような具体的な準備というのがいまだにないじゃないですか。やろうとする気があるのかないのか。どっちですか、これは。
  146. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 よくわかりましたが、どうも人権擁護局の権限が、人権擁護に乗り出すだけの広いものが与えられていないように私は感じますね。ですから、そういう点についての法制の整備ということも急がなければならぬと思います。訟務局新設のときにスクラップを出せというようなことを言うて、いろいろ考えて、人によっては人権擁護局をやめようかなどという途方もないことを聞きましたから、私は、ばかなことを言っては困るな、どうもそんなことは聞くだけに汚らわしい、だめだと言ったことを、いま思い出しました。それというのも、さっきのような出版が人権じゅうりんの犯罪構成要件に該当する刑法上の新立法措置も必要なのかなと思ったり、もちろん先ほどの、しっかりやれと言ったって人権擁護局の権限が、聞いてみますと非常に狭くて強制回収もできないというような調子では、いつまでたってもこれはだめだという和田さんの御意見は、私ももっともだと思います。早急にあなたの言われているようなことができるような権限の付与も考えたり、いろいろひとつ早速検討したいというふうに思います。
  147. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 大臣、立法措置も含めて考えぬと、権限だけ与えたところで、役所のことですから、たてまえになる法律がなければどうにもならぬのですから、立法措置も含めて権限を付与する、こういう角度からひとつ御努力願いたいと思うのです。
  148. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 新憲法施行後三十年になってなおかつ人権擁護に関する諸立法がかくのごとくルーズであるといういい実例であると私は思います。したがって、法秩序の維持、人権擁護を担当する法務大臣として、まことにこれは職務を果たしておらぬなという気がいたします。したがいまして、御趣旨に沿うて人権擁護立法の整備をも含めて早急に検討したい、こう思います。
  149. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それができるまでひとつ法務大臣をやめぬように、内閣がかわっても法務大臣を続けてもらって、これができてからおやめになっていただきたい。  それで人権擁護局長、先ほどから私が言ったことに一つお答え願ってないのですが、社会的な制裁を加えるために購入企業を明らかにする、これはいつになったら明らかにするのですか。
  150. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 人権擁護局の職務は、現行の法務省設置法のもとにおきましてはあくまでも人権思想の普及、高揚ということにあるわけでございまして、人権侵犯事件の調査、処理を行いますが、これはあくまでもその調査、処理を通じて個別的啓発を行うという点に終局の目標があるわけでございます。その点が、刑事事件における手続が刑事的な制裁を科するということを目的としておりますのと全く異なっているわけでございます。私も前回のこの委員会審議で公表の問題について触れまして、特別の支障がない限りは公表したいと考えているということを申し上げましたが、その趣旨は、その公表によってその企業、購入者に社会的制裁を科するというのではございませんで、そのことによって一般的な啓発を図る、こういう企業がこれだけの数この種の書物を購入しておるということで啓発を図るというところに趣旨があったわけでございます。その意味で啓発のために必要であるということが一方に考えられ、一方にこれは調査を円満に続けていきますためには、人権擁護機関といたしましてはあくまでも関係者の任意の協力を得て行うという関係で、調査の過程において得た秘密は守るべきものであるというふうにされているのでございます。この点は国家公務員法第百条の守秘義務の問題、それから先ほどお触れになりました人権侵犯事件調査処理規程第十一条にも、関係者の秘密を守らなければいかぬという規定があるわけでございます。しかしながら、関係者はこの秘密を守るべきものであるといたしましても、その守るべき必要性ということと、その公表することによって得られる公益性、必要性というものは絶えず総合的に勘案して、その事案に応じて決すべきものであると考えております。  現在、この事件は、先ほども触れましたように一部落地名総鑑」の事件に続きまして、大阪の「全国特殊部落リスト」の事件が起き、また、この「特殊部落リスト」関係の事件はいま調査中でございまして、十一部だけ購入先がわかっておりまひけれども、それ以上のものはいまだに捕捉できない。鋭意調査しているところでございます。  それから、先ほどもお触れになりました、坪田がこの名鑑を発行しますもとになった基礎資料の入手先、これもまだわかっておらない。これも調査中でございます。したがって、この調査中の段階で公にすることは差し控えたいと思っております。ただ、調査が終了いたしました段階におきましては、先ほど触れました国家公務員法の規定、それから人権侵犯事件調査処理規程の趣旨、この公表によって得られる利益、つまり一般啓発のためにそれが必要不可欠であるかどうかということも勘案した上で十分その点を検討して善処したいと考えております。
  151. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 これはその捜査が、その事件が完了してからというたら、いまのようなペースでいったら一年先になるか、二年先になるか、三年先になるかわからない。すでにその購入した企業からいかに差別書を回収したとしても、ことしの企業の採用期、これは去年の六月から十月にかけて採用しているんですよ。あるいはすでにこの差別書を手に入れたら、あなたの方で回収しているかわからぬけれども、企業の方ではそれを複写しているかもわからぬですよ。そして人事考課に、将来にわたっての採用の際に、部落民が差別を受けるということになるんですよ。仕事の保障がされないというような結果が出てくるんですよ。そういうようなことが現実にあるにもかかわらず、総務長官のこの間の答弁では、やはり社会的制裁が加えられてもしかるべき悪質な事件であるということを言っておるんじゃないですか。法務大臣もそのとおりでしょう。(稻葉国務大臣「そのとおり」と呼ぶ)しかもあなたが、特段の支障がない限り——一体公表ができないというのは、特段の支障というのは先ほど言われてわかりましたが、事件が解決というようなこととはほど遠い話です。そんなことではそれぞれの差別企業に社会的な制裁を加えるということにならないじゃないですか。反省を求めるということにならないじゃないですか。しかもこの中にはきわめて大きな企業を含んでいるんですよ。私の方では全部は把握しておりませんが、一、二挙げましょうか、大阪管内で。  東区の大礎産業株式会社、大阪南区の協栄信用組合、大阪西区の住吉阜頭、大阪生野区の森田ポンプ株式会社、大阪東区のイトキン株式会社、大阪天王寺区の新協和産業株式会社、大阪北区の日綿実業株式会社、大阪泉大津市の大津工業株式会社、大阪岸和田市の日本鋼管継手株式会社、大阪東区の住友商事第一部長付岸田安弘、大阪西淀川区のお酒の経営者でありますが田中登美子、大阪東淀川区の、ダイヤニット工業に勤務している野田英二という男、長野市の長野県信用組合、群馬県前橋市の大生相互銀行、京都市中京区の丸増株式会社、京都市下京区の山菱株式会社、京都市下京区の沢村株式会社、この十七社を私の方では把握いたしております。  そしてさらに「全国特殊部落リスト」を購入した企業、これよりももっと大きな企業を含んでおる。大阪東区のユニチカ、神戸市の菊正宗酒造、岡山市の山陽相互銀行、東京千代田区のモービル石油、東京中央区の蛇の目ミシン工業、東京千代田区の三菱鉱業セメント、東京港区の三菱自動車販売、愛知県豊田市のトヨタ自動車工業、群馬県前橋市の群馬銀行、静岡県浜松市の鈴木自動車工業、愛媛県川之江市のマルスミ製紙。そのほかになお、ここで正確にまだ私たちに把握できておりませんが、きょうは言うことを差し控えますが、日本の大手の都市銀行、大手の電気製品メーカー、大手の商事会社、大手の百貨店、これはまだ名前は明らかにするまでの段階には至っておりませんが。  いま述べたような企業をなぜ明らかにできないのですか。四十九のうちに、いま十一と十七を言いましたが、この機会に明らかにすることによって、むしろこの事件が早期解決するということになりはしないか。なぜちゅうちょされるのですか。四十九社、全部公表する意思はありませんか。
  152. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 先ほど申し上げましたように、人権侵犯事件の調査はあくまでも関係者の任意の協力を得て行うということでございまして、その協力を得るためには関係者の秘密が守られるということがやっぱり非常に大切なのでございまして、これは強制的に犯罪の捜査を行うということと性格が異なっている点でございます。  それから私どもは、先ほど申し上げましたように、公表ということも、あくまでもこれは啓発という観点から考えてまいりたい、制裁をこれによって科するというふうには考えていないのでございまして、そういう点から、この点は先ほど申し上げましたように調査が終了した段階で慎重に検討さしていただきたいと考えておるわけでございます。
  153. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 手ぬるいです。つけ加えて言いますならば、一応参考にしてください。群馬県の高崎市の麒麟麦酒、日本化薬、第一パン、先ほどから言っておりますところの回収ができておらない。案内書が舞い込んでおります。購入しているかどうかということを調べなさい。  そこで、いまのような態度であるがために、私は法務省にあえて言うわけですが、先ほども申し上げましたように、差別書の購入企業に対して任意でその差別書を提出さす、そういう中で啓発する。しかし、その企業は罪悪感を何も感じておらないのです。これで一件落着だ。こういう事件が何回も起こってまいります。むしろ内緒でどこかに売っているところがないだろうかということで探し求めるような結果になってしまうのです。したがって、あなたの方で指導されて、京都、滋賀、長野の法務局ではすでに、いま申し上げましたように説示なり勧告なりやって差別書を任意提出してもらったということでおしまいにしておる。大阪はそういうことをやっておりません。大阪の法務局がそういうような形であなたの方の指導によってやろうとしましたが、大阪府、大阪市の自治体側の方からクレームがつきました。そういうことじゃ私がいま言っておるように幾らたっても解決にならぬ、こういうことよりも、むしろこれらの差別書の購入企業に対しまして研修をやるということ、そこからまず出発をして、大阪府下の企業に再びそういうような企業が一社でも出てこないようにやるのがたてまえじゃないかということで、府市があなたの方の行政指導にはクレームをつけまして、別な角度で先ほど申し述べました大阪府下の企業あるいは大阪法務局管内の企業を四月三十日に一堂に集めまして研修を行った。その研修が第一歩だということで、今月の十三日からさらにそれぞれの個別の企業に対しまして研修を行うというように進んでいっておるわけです。また、あさって二十日の日でありますが、行政側も皆加わりまして、そしてこれらの購入企業も参加し、あなたの出先の大阪法務局も参加いたしまして、確認会をやろうということになっておるわけです。  ところが、私はあなたの方にひとつ苦言を呈したいわけでありますが、大阪の法務局が今後差別を根絶するという立場に立ってあなたの方の行政指導よりももっとりっぱな姿勢をとってやろうとしておるにもかかわらず、それはいかぬと言うておる、参加をするなというようなことを言っておる。それは事実ですか、どうですか。
  154. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 大阪法務局といたしましては、先ほど申し述べましたように三月の末から四月上旬にわたりまして購入各企業に対し、大阪府、大阪市、それから関係の国の出先機関等と協力いたしまして、共同啓発を行ってきたわけでございます。この共同啓発はただいま仰せの研修というのと実質において共通するところが多いのでございまして、同和差別の許すべからざるゆえん、特にこの種の書物を購入することがいかに不当な行為であるかということを説き、そして二度とこういうことのないように、なかんずく雇用における部落差別というようなことは絶対ないように説得を試み、その成果を上げたものだと私どもは考えておるのでございます。  ただいま仰せの二十日の件でございますが、これは私どもの報告を受けたところでは糾弾会があるというふうに聞いております。そうなりますと、行政庁の立場として民間団体の行う糾弾会に出席することは、行政の中立性の立場からいかがなものかということで、消極的な態度をとっているわけでございます。
  155. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 大阪法務局があなたの指導以上のことをやっておるのですよ。私は大阪法務局はりっぱな態度で臨んでおられると思う。しかも、法務局が参加して、他の大阪府下あるいは近畿のそれぞれの行政機関の代表も参加して、大阪ではこういう企業は今後、こんりんざい根絶しようじゃないか、その確認会、糾弾集会をやろうということで法務局も積極的になっておるのに、法務省の方が、いま言われましたように、それはいかぬと言う。大阪法務局は、いやだと言っておるのと違うのですよ。やりましょうと言っておる。そういう積極姿勢を示し、積極的な態度を示しておる大阪法務局に対して水をかけるようなやり方では、これは現実の問題として差別をなくすという考え方があるのかどうか、人権を擁護するという考え方があるのかどうか疑わしい。  従来から大阪法務局は、地域における確認会あるいは糾弾集会には参加していますよ。法の番人として法務局が参加している。民間の団体が集まってやったところで確認会にならぬ。第三者としての行政機関が参加して初めてそれが確認になるわけです。大阪法務局はいままで参加していますよ。にもかかわらず、なぜそういうばかげたことをするのですか。態度を改めてもらいたい。こういう人権擁護局の態度はけしからぬ話だと私は思いますが、法務大臣、ひとつ具体的な指示をしてください。
  156. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 大阪の法務局は人権擁護に積極的である、それに水をかけるのはよろしくないと言うあなたの方がどうも筋が通っているように思いますが、何か言い分があるようですから、一応聞いてやってみてください。相手の言い分もちょっと聞いてやってください。
  157. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 先ほど申し上げたとおりでございまして、行政機関としてはあくまでも法律、命令の定めるところにより、また法務省の訓令である人権侵犯事件調査処理規程に基づいて職務を執行するわけでございまして、そういう法律に基づく事件の処理といたしましては、先ほど申し上げました共同啓発をすでに行っているわけでございます。  それから、先ほど申しましたように、民間団体の行う糾弾会、確認会に行政庁が参加することは行政の中立性ということから考えていかがであろうか。参加する立場が糾弾をする立場になるのか、糾弾を受ける立場になるのか、あるいは第三者として参加するのかという問題もございますが、いずれにしても行政の主体性を堅持するためには、その種の糾弾会、確認会に出席することは望ましくないというのが私ども考え方でございます。だからといって、この事件の処理に不熱心なわけでは決してございませんで、私どもといたしましては、このたびの一部落地名総鑑」並びに「全国特殊部落リスト」事件の解明のためには、法務局として法令上許される権限のぎりぎりのところで最善を尽くしたつもりでおります。これは私も和田委員と同じように全くけしからぬ部落差別だと考えておりますけれども、これを非常に一般化、抽象化いたしますと、これは書物の出版行為でございまして、一方は出版された書物の購入行為でございます。これは申すまでもないことでございますが、書物を出版、公刊するということは憲法で保障された出版ないし表現の自由の一つでございます。それから購入に至っては、これが反社会性を持ちあるいは刑罰の対象になる、取り締まりの対象になるということは、一般的にはないことでございまして、またあってはならないことでございます。この出版の自由、購入の自由ということはやはり民主制社会の根源をなす非常に重要な原則だと思います。その立場からすれば、非常に抽象的に、要するに書物の出版を差しとめ、購入をチェックするというふうに一般的に問題を持ち出しますと、これは非常な人権侵犯であるということになるわけでございます。だからといって、私はその考え方に左和するものでは毛頭ございません。出版の自由といえどもこれは限界がある、この種の書物の出版ということは断じて許すべからざるものだと思っております。ただ、一般に与える印象といたしまして、抽象的に書物の出版に介入するとかあるいは購入にタッチする、だれがどこでどういう書物を買ったということを役所が調べたりそれを公表したりということは、一般的な形として持ち出しますと非常に悪い印象を与えるし、また、これが先例となってその種の干渉が出版なり購入に行われるということは厳に警戒しなければならないことであると思います。私どもといたしましては、その点を踏まえつつ、この事件の非常な悪質性に着目いたしまして、人権擁護機関として許される権限範囲内ぎりぎりのところでこの事件の処理に当たったと考えております。  先ほどの書物の回収の点につきましても、全く書物を回収する権限などというものは私どもにはないわけでございまして、あくまでも説得によって任意提出を求めたということでございます。その点から考えますと、販売先の確認した部数は先ほど申し上げたとおりでありますけれども、それが一〇〇%回収されたということは一応の成果であると私どもは考えております。ただ、これでこの「地名総鑑」事件、坪田のやったことが全部明らかになったとは私ども思っておりません。なお鋭意調査はいたしたいと思いますけれども、それには人権擁護機関としてやれる範囲にはおのずから限界があるということも御理解いただきたいと考えるわけでございます。
  158. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 それはまた後でさしてもらうとして、刑事局長せっかく来られましたので……。  いま人権擁護局の方の局長が述べられておりますのを若干お聞き願ったと思いますが、人権擁護局としては、大臣も先ほど認められましたように、権限が付与されておらない。また、そのもとになる、一般的な差別事件あるいは今回のような差別を売り物にする、商売にするというようなこういう行為、これに対して法律がないわけです。立法化を含めて権限を付与するようにしなければいかぬということを先ほど大臣は言われたわけです。また、こういうような事件が起こって、時間が長くかかるから繰り返して言いませんけれども、とにかく差別書を発行して差別書を売った。買うた者はわかっておるが、売った者はどこかに行っておらぬのです。そしてしかもその売った者が原本を持っておる。何冊か印刷をしてそして販売をしておるのであれば、それを回収すればこれは根絶できるのですが、原本を持っておる。原本を持っておりまして、そしてこういうように複写をしてどんどん売っておる。原本をとらまえぬ限りは何ぼでも発行できる。何ぼでも商売をやっていける。それでそういうような逃げ隠れをしておる犯人がいま人権擁護局として与えられた権限ではどうにもならぬというのです。大臣はやっぱりそれは何とかしなければいかぬだろうという強い決意を述べておられるのです。  また、もっと具体的な例として現行犯の問題です。繰り返しますが、あなたがそこにおられた。部落の出身の住民がおられた。差別者が「おい、こらエッタ」、こういう差別言辞を吐いたという現行犯、直接差別言辞をまき散らした現行犯を逮捕するということ、逮捕すべきだというように法務大臣は言われておる。そういうたてまえに立って、今後、一般的な差別事件あるいはこれに類する差別によるところの商行為、これを取り締まるということはやってもらえますかどうですか。法務大臣はやられると言うのです。
  159. 安原美穂

    ○安原政府委員 大臣も一人権擁護局長も申されておりますように、差別という陋習というのは何らか適切な方法があり次第それを活用して根絶すべきだという点につきましては、検察当局を預かりますわれわれ刑事局としても全く同感でございますので、それが現行犯逮捕できる事案でございましたら、名誉棄損ないしはいまの場合は侮辱というようなことによりまして現行犯逮捕を含めて強力な取り締まり手段を講ずべきものと一般的には思います。  ただ、ついででございますが、先ほど来問題になっております「部落地名総鑑」という本の内容をただまだ聞いただけでございまして、現物を知りませんので、的確な判断は申し上げかねますけれども、一般に、先ほど来問題になっておりますように、おまえは部落民だというようなことを言うことそのことは、遺憾ながら社会の実態としてはそういう差別があるということは認めざるを得ませんので、侮辱ないしは名誉棄損ということに遺憾ながら今日の社会の実態ではなると思います。  ただ問題は、「部落地名総鑑」は、聞きますと、ある地域を書きまして、ここに部落民がおるというようなことを記載してあるもののように思われます。そういたしますと、名誉棄損の罪につきましても侮辱につきましても、「人ノ名誉ヲ毀損シ」と「公然事実ヲ摘示シ」、だから本を出版していますから公然事実は摘示していると思います。それから名誉も棄損しているでしょう。ただ問題は、事実を摘示し人の名誉を棄損する、この「人」というものは、名誉棄損罪につきましては人は特定しなければならぬ、特定の人でなければならぬということになっておりますので、この本は、単に地域を指示しておりますけれども、だれの名誉という意味で人の特定が必ずしも十分ではないのじゃないか。そこに書いてある部落の人全部を名指して、そこに書いてあるところの人間が全部部落民だということがすぐわかるようでありますれば、その部落民全体という複数の特定人の名誉を棄損したということになるかもしれませんけれども、その辺は事実問題でございますが、一般論としては、ただその部落がある土地を書いたというだけでは特定の人の名誉をということの点で刑法的にはちょっと適用がむずかしいことがあるのじゃないかというふうに解釈としては思っております。
  160. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 刑事局長はさっきから言うておることをお耳にしておられないからそういうことを言われるのですが、端的に申し上げたら、最初に申し上げたように、エタのおばさんと言われたために自殺をしているのです。結婚差別も人権擁護局に聞かれたらわかるように、恋愛をして、相手が部落の出身の女性であった、部落の出身の男性であったということがわかって破談になって自殺をしておる、そういう事件が毎日のようにあるのですよ。しかも今度の場合は、単にこの書籍を売ったとか買うたとかいう問題ではなくて、この書籍を買いなさい、この書籍を買いなさいという案内を三千部もばらまいておるのです。そしてどういうように使うかというと、採用のときに参考にしなさい、人事の考課のときに利用しなさい、ああそうですかということで買っておるのですよ。だから、憲法で保障された仕事の保障、労働権を、これによって部落民が剥奪されているじゃないですか、剥奪されるおそれがあるじゃないですか、それを言うのですよ。だから単に書籍がどうとかこうとかいうことではなくて、これを通じて波及する影響力、これが人を死に陥れる、人が働く場というものが保障できないようになってしまう、こういう波及する問題をとらまえて、この問題は非常に重要な問題だということで先ほどから議論している。だから、そういうけしからぬことは、これは社会的に制裁を加えなければいかぬようなきわめて悪質な差別事件だということを、総務長官も法務大臣も御確認願って、これを何とか取り締まるためには、立法措置も含めて、人権擁護局に権限を付与していただかなければいかぬ。いまのところは人権擁護局はそういうような権限がないので、刊事局長に来てもらって、そういうたぐいのものだということで、やはりこの差別事件というものを慎重にもっと重要に考えてもらいたいということを私はあえて申し上げておきたいと思うのです。そういう見地に立って、もう一度お答え願いたい。
  161. 安原美穂

    ○安原政府委員 私も法律家の一人といたしまして、基本的人権を侵すような行為が社会的にあってはならないということは全く同感でございますが、ただ刑罰法規の運用をつかさどる検察といたしましては、刑罰法規に該当するものについて、この人種差別撤廃の観点から厳正、公平な態度で臨むべきであるというふうに考えておる次第でございます。
  162. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 ちょっと刑事局長、いまけしからぬ話が出ましたよ。人種差別とは何ですか。人種差別とは何ですか。部落住民は日本人じゃないんですか。法務大臣、刑事局長が公の国会の場で部落差別を人種差別というような認識を持っておるところに問題があるのですよ。何ですか、これは。
  163. 安原美穂

    ○安原政府委員 人種差別というのは言い間違いでございまして、部落……(和田(貞)委員「これは言い間違いで済まぬ」と呼ぶ)いや、最近人権条約等が人種差別の条約というものがいま問題になっておりますのでそのことを混同いたしましたが、決して意識といたしまして部落民が日本人でないなどと毛頭考えたこともございません。その点は誤解のないようにお願いいたします。
  164. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 ゴカイもロッカイもないですよ。いまの発言は私は重要視しますよ。国会の場において——議事録はその取り消しを私は許しません。議事録の取り消しは私は承知しませんよ、私に対する答弁ですから。部落差別を人種差別、法務省の刑事局長なる者がそういう発言をするところに、法務省のこの部落問題についての取り組み方というものが非常に軽率である、こういうふうに言わざるを得ない。こういうことじゃ部落問題はこんりんざい解決しませんよ。言い違えましたということで事済ませる問題じゃない。何だ、これは。人種差別とは何だ。  こういう観念ですよ、法務大臣。どうですか、あなたの部下の一人が、部落問題がいまだに人種差別というような、腹にないやつが口に出るはずがない。法務大臣、どういうように思われますか。
  165. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そうおっしゃれば一言の弁解もないわけですけれども、わが法務省において人権擁護に当たる者か——私ともには考えられないような本が出たり、その本を買って採用に区別をしたり、言語道断である、そういうふうに思うておって、私は立法措置をも含めて人権擁護局の権限を増大し、部落のそういう差別を徹底的に駆逐するというつもりでおりますので、その点は刑事局長も人権擁護局長もふだん話しているときには、そのとおりである、私も大臣意見に同感ですと、こう言っているわけであって、いまの言葉それ自体をあなたが重大視してお取り上げになることはもっともです。もっともなことだ。一言の文句もありません。まことに不用意なことで、私からもおわびを申しますが、これは優秀な刑事局長なんです。ですからひとつ御勘弁を願いたい。私からもお願いします。
  166. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 もちろん、その仕事の面では優秀な者かわかりませんが、少なくとも刑事局長が国会の場において言い間違いというような、その言い間違いにもよりけりです。同対審答申が出て何年になるのですか、十年じゃないですか。特別措置法が施行されて八年になるじゃないですか。国の責任で、国民的な課題としてこの部落問題を解決しなければならぬということになっておる。それが、法の番人の役目を果たさなければいかぬ法務省の中の最高幹部の一人から、部落問題をいまだに人種差別というような発言が出てくるというところに私は問題があると思う。  私はこの点で了解はいたしませんが、質問時間の関係もありますから、また別の立場で私はやりたいと思いますが、検察陣にいたしましてもあるいは裁判所にいたしましても、法務省内部といたしましても、ここでもう一度改めて同対審答申に基づくところの——省内一人欠かさず、いま刑事局長が発言されたこの一言を契機にして、徹底的に部落問題について研修を行って、二度とそういうことがないというようなことにしたいというかたい決意のほどが法務大臣にあるかどうか、お答え願いたい。
  167. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 憲法十四条は、申し上げるまでもなく、人種、信条、性別、社会的身分及び門地によってという、その門地により差別してはいかぬということに当たるので、ああいう法律が八年前に成立した。そういう点について、まあ十四条の認識がないわけではない、そんなことを知らぬわけはないのです。ですから悪意はないのでして、しょっちゅう私どもと話しているときには、もうわれわれの思い寄らざる幾多の差別が関西方面にある。私どもの東北なんかにはほとんどないことですものね。そうしてそんな差別をしているなんて会社は全然ありませんものね。それから一般国民もそうです。結婚でも何でも往復自由自在、そういう点からすると、こんなことがあってなるものかという話を法務省内でしているときは、まことにそのとおりです、こう言うているのですから、本心から——人種などという大それたことがどうして口から出たか、私も不思議です。ですから、厳重に注意しておきますし、今後それこそ罪滅ぼしに一生懸命にこの問題と取り組んで、刑事局、人権擁護局、立法の問題もありますから真剣に取り組みたい。  大体、会社がたくさんああいうばかげた本を買っているというその精神がまことに言語道断だ。そういう会社の社会的責任ということを一体放置しておいていいのかどうかと私は思うくらいです。そういう差別なく採用するというところに、おまえのところはいい会社だと世の中からほめられこそすれ、差別などをして何の利益なのだろうとさえ思われます。そういう点で人権擁護のわが国の立法においては、人権、その点に関する不備、欠陥がある、直さなければいかぬ、私はこういうかたい決意であります。
  168. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 私は、先ほど申し上げましたように、刑事局長の発言を了解しませんが、法務大臣、もう一つ私はお願いかたがたお尋ねしたいのです。  これを機会にそういうような発言があっては困るわけですから、まして各省よりもあなたの方が一番大事なお役所なんですから、検察庁含めてもう一度十年前に政府に答申された同対審答申、この同対審答申には明らかに、学者の皆さんが集まって現実に差別が現存する、そういうことを認めて、これは一日も早く部落の完全解放というのは国民的な課題で国、自治体がなすことがその責務であるということがうたわれて、そして歴史的な過程の中でなぜ部落が今日まだ現存しておるのかということを、これを明らかにしているわけです。そういうような学習といいますか、研修といいますか、もう一度いまの刑事局長の発言を契機に法務省内全員がそういうように研修を含めて取り組んでもらう、こういう考え方にこの機会に法務大臣なっていただきたいということを私はお願いしておるわけでありますから、そういう点についてのお答えを願いたい。
  169. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 和田さんの御意見には全く同感であります。一生懸命やります。しかも、こういうふらちな発言をするに至ってはまことに恐縮千万でして、これを契機に災いを転じて福となすという意気込みで、あなたの御要望になること私同感なんですから、一生懸命やりたいという決意を明らかに表明しておきたいと思うわけです。
  170. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 せっかく労働省見えております。時間もありませんので簡単にお答え願いたいと思います。  いま社労の方では身体障害者の雇用促進あるいは中高年齢層の雇用促進、いま法案審議がされているわけですからね。こういうような問題が起こったことによって、これは目的は目的として発行しておるし、購入の目的はまた購入の目的として買っておるわけです。いま法務省が明らかにしたところだけでも四十九社あるわけです。それらの企業がいままで、昨年の六月から十月までにかけてそれぞれ採用試験をやっておる、そういう採用試験で部落民であるからということで採用を拒否しておるかもわからない、あるいは企業の中で働く労働者が部落民であるからということでその考課に役立たせていただきたいということを書いているのですから、その目的で買っておる企業はその人事考課に役立たせておるかもわからないのです。憲法で保障された仕事の権利というのは、このことによって部落民がなくしておる、そういう疑いがあり、また現実にそういうふうになっておる。そういう過程でこういうような文書が、差別書が発行されて四カ月になるわけですが、その間におけるところの労働省として、抽象的な言い方じゃなくて、これを契機に具体的な雇用促進対策、部落住民の、部落出身の青年労働者の具体的な雇用促進対策というのはどういうような施策をもってこれから臨もうとされておるのか。あるいはこの問題について、法務省法務省なりに企業に対して具体的にそういう啓発活動を不備ながらやっておりますが、労働省として企業に対するところの啓蒙あるいは今後抜本的な具体的な施策というものをどういうように考えておられるのか、この機会に明らかにしてもらいたいと思います。
  171. 吉本実

    ○吉本政府委員 この遺憾な事件の後、私ども労働省といたしましては、昨年の十二月十五日付で共同の通達を出すと同時に、労働大臣談話なりあるいは業種別企業団体に対します要請文等も出したところでありますが、本年に入りまして、三月十五日にさらに具体的な指示をするということで、購入企業に対します個別指導の通達をそれぞれの関係の道府県に出しました。また、そうでない都府県に対しましては、類似事件の発生を防止するための通達を出して、具体的にそれぞれの支署でその企業に対して、各省共同でやっておると同時に、職安機関等を中心としながらさらに啓蒙指導に努めておるというところでございます。それで、また「全国特殊部落リスト」の購入企業に対しましても同じことをやると同時に、さらに具体的にはアフターケアも含めまして、本年度の求人に対します受理開始日までに指導を完了するとか、あるいはなかなか理解しがたいそういった企業については、場合によりましては求人受理の停止なり紹介の保留、そういった具体的な措置もやっていかなければならぬ、このように考えておる次第でございます。  それから、何と申しましても事業主側の啓蒙指導が大事だと思いますので、具体的には雇用指導のあり方につきまして三分類をいたしまして、第一といたしましては、一般的な啓蒙指導、それから具体的な求人の受理に際しての指導、それからさらに問題の発生したところへの個別指導、こういうような三方面からこれらの問題についてさらに徹底を期してまいりたい、かように存じておる次第でございます。  それから、なお具体的に行政事務といたしましても、何と申しましても企業に対します指導の要領というものが徹底しないといけませんので、そういった具体的な内容につきましても、全国の状況報告なり意見を闘わしながら具体的なそういった問題についての要領も作成すべく現在検討している次第でございます。
  172. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 そういう抽象的な——具体性は若干あるとしても、まだまだ抽象的でありまして、やはり長い差別の歴史の過程で教育の機会均等が保障されておらない。貧乏であるために部落の歴史の中で教育の機会均等が保障されていない。それがために能力があっても学歴がない、こういうことで主だった企業あるいは官公署、そういうところに就職もできない。きわめて劣悪な中小零細な企業に働くというのが部落民の今日の実情であります。そういうような過程で、法律をつくるつくらぬは別といたしましても、やはり現実を直視して、それこそ特別措置法に基づいてもっともっと雇用の促進について抜本策、踏み切った施策というものは私は必要であると思います。  きょうは時間がありませんので、そういうことはあえて言いませんが、またの機会に十分論議したいと思いますが、そういう具体的な施策というものをぜひとも立てるべきである、こういうように私は考えますが、これを機会に労働省どうですか、そういう考え方にお立ちになりますか。
  173. 吉本実

    ○吉本政府委員 まさに先生のおっしゃるとおりだと思います。私どもも具体的な事件に際しまして具体的な処理を行っておりますが、ただいま先生のおっしゃられた意味もよく含めまして、さらに検討してまいりたいと思います。
  174. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 法務大臣、先ほど人権擁護局長との間でちょっと残っておる点がありますので、もうしばらくごしんぼういただきたいと思います。  刑事局長から先ほども御答弁ありましたように、法務大臣のお気持ち、決意はよくわかるわけですが、一般的な差別事件がたとえ現行犯であっても、それが刑法によって直ちに強制捜査するというようなところまでまだ検察なり捜査の段階でいけない、こういう状況に現実の姿としてはあるわけです。それは、法務大臣考え方がそうであるべきだということであれば、検察や警察の方はやりますよ。しかし、もう末端の警察官に至るまでそういう段階なんです。先ほど確認会あるいは糾弾会という問題が出てきましたけれども、差別を受けた側は、警察が何もやってくれない、検察が何もやってくれない、これじゃ一体どこに自分の救いを求めていくわけですか。民間団体、民間団体と言いますけれども、差別を受けた側に立ってみたらこれはけしからぬ話であります。それはその個人を、糾弾という名前は使いますけれども、まず確認をやるんです。あなたはこの事実は間違いないか、間違いない、それじゃこれからそういうようなことをなくすためにはどうしようかというようなことを、差別を受けた側が納得をするような対処の方策を相手方に求める、これが確認会、糾弾会なんです。だから行政に中立だということですが、行政というのは中立であってほしいがために、差別を受けた側と差別した側とが双方が寄って確認というのはできないわけだから、従来から中立の第三者の法務省の出先の法務局にその確認会に参加をしてもらって、第三者が入った中でお互いが確認をする、そして糾弾するという場を私たちはとっているわけなんですよ。したがって、そういうところに行政に中立であるべきはずの法務省にむしろ積極的に参加してもらうことによって、その差別の実情がもっと綿密に把握できるということになるわけでありますから、よけいな考え方を持ってもらわないで、大阪の法務局は非常に積極的な姿勢に立っておるわけですから、それに水をかけるようなことなく、むしろいい面でひとつ激励をして、現場しっかりがんばれというような態度になっていただきたいということを私はお願いをしておきたいと思うわけです。  さらに、差別一般の法規制というのは、法務大臣が決意を述べられたように、やはり刑事局があるいは警察が一般差別について取り締まるというような、こういう法制化の方向を検討してもらいたいと思いますし、まずこのような差別を売り物にするようなものに対する法規制の準備を急いでいただいて、一日も早く法制化するということが緊急の課題であります。そういう点を含めてひとつ法務大臣お答えを願いたいと思います。
  175. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いま日本にある部落差別の存在、これを否定し得ないということは、私は国際的な恥辱だとさえ感じますな。こういうことでは経済的繁栄などと幾ら主張してみても、文化的にははなはだ恥辱である。一日も早くそういう社会的な現実を直していかなければならない。そして新憲法施行以来三十年、しかもそういうことがあって、さっきお述べになりましたような現行犯として法の運用がどうもおくれておる、なまぬるい。積極的に現行犯として逮捕できそうなものだと私は思いますね。  それから、さっきの不届きな名鑑というような書物は、明確に言論、出版、表現の自由などというものには断じて当たらない。はみ出しもはみ出しも大はみ出し。それだから公共の福祉による制限ということがある。「四畳半襖の下張り」でさえ有罪の判決を受けている。あんなもの以上です、これは。はるかに社会的な害悪はひどいよ、こっちの方が。それが強制回収もできないというようないまの現状は、私は法制に不備があると思わざるを得ません。そういう点で法秩序及び人権擁護を役目とする法務大臣としては、容赦できぬ、放置できぬ。あなたの御質問をいただいて強い焦燥に駆られるくらいです。そのことを申し上げて、私の意をひとつ御了承願いたいとお願いする次第であります。
  176. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 終わりますが、いま決算のほどを述べてもらいまして、ひとつ十分対処してもらいたいと思いますが、法務大臣が考えておられるようなことには現実にはならない。一般的な差別を含めて、部落差別というのは法の上での犯罪にならないのです。人権侵犯だということで啓発することだとしか言えないですね。やはり法務大臣の言うように法の上での犯罪者扱いにしていくというためには、どうしても法制化が必要でありますので、その点についてひとつ御努力いただきたいと思います。  なお、同和対策室長が来ておられますが、あなたの方も総理府でじっとしておるのではなくて、あなたの仕事というものは非常に大事な仕事なんですから、全国の部落の所在する行政庁なりあるいはそういう部落を歩いて、現実を見守っていく、そして生きた対策を立てていく、単なる事務処理というのではなくて現場を歩く、こういうことをぜひともこの機会を契機にひとつやってもらいたいと思います。  また、総務長官にも外務大臣にも私はきのうお願いをしたわけですが、はしなくも刑事局長は先ほどちょっと言われたですね。いまから十年前に、国連総会で国際人権規約が日本も賛成をして採択されておる。十年たっておるにもかかわらずいまだにこの批准をしない。そういうようなことは人権問題を政府が非常に軽視しているあらわれであるということも私は言いたいわけなんです。したがって、この国際人権規約の批准もやるという努力を法務大臣また積極的にやってもらいたいと思いますし、法務大臣が先ほどから述べられた決意に燃えて、こういう差別事件が今後一切起こらないように、法規制を含めてひとつ対処していただきたい、こういうように私は思いますので、簡単にあと締めくくりのために一言申し述べてもらいたいと思います。
  177. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 本日の和田委員の御指摘、御意見は、私の人生観に非常にぴったりして、感銘を受けました。重大な御意見として肝に銘じて前進をいたします。
  178. 和田貞夫

    ○和田(貞)委員 終わります。
  179. 木野晴夫

  180. 野間友一

    野間委員 まず、日米の捜査協力の関係についてお聞きしたいと思いますが、鹽野次官とソーンバーク刑事局長との間の協力取り決め、これがあり、さらに斉藤特使が派遣されました。そして、堀田検事も派遣されてまた帰ってこられました。  そこで、まず資料の点についてお伺いしたいわけでありますけれども、三次にわたってSECとかあるいはチャーチ委員会の資料を入手されて国内に持って帰られたということのようですけれども、現時点におきまして国内の捜査に必要なほとんどの資料がアメリカから入手されたというふうに理解をしていいのかどうか、その点まずお伺いしたいと思います。
  181. 安原美穂

    ○安原政府委員 野間委員指摘の実務取り決めに従いまして、数回にわたりましてアメリカ合衆国司法省からロッキード事件に関します資料を入手したことは事実でございます。しかしながら、取り決めの性質あるいはまた本件犯罪の捜査の性質から言いまして、どういう資料があったかということを含めて、それで十分であるかどうかという入手した資料の評価については、この際申し上げるのを御猶予願いたいと思いますが、いろいろと参考になる資料を入手したということであり、かつ、これで終わりではなくて、将来ともに入手し得る可能性を残しておるということを御理解いただきたいと思います。
  182. 野間友一

    野間委員 現時点で一応考えられる可能な限りの資料は入手されたかどうか、こういう点。
  183. 安原美穂

    ○安原政府委員 連邦司法省としては、可能な限りの資料をこちらに提供してくれているものと考えております。
  184. 野間友一

    野間委員 次に、捜査に関連して日米間、特にアメリカ、これについてお伺いするわけですけれども、捜査の協力ですね。アメリカにいまいる関係者、たとえばクラッター氏とかあるいはコーチャン氏ですね、そういう人たちに対する捜査において任意の捜査、あるいは後で触れますけれども司法共助、この問題があると思うのです。そこで、報道などによりますと、任意の捜査、これについてはアメリカ政府は了解したけれども、それぞれ関係者がこの任意の捜査に対してはどうも拒否的だというような報道がありますが、これらについての見通し、これをひとつお答え願いたいと思います。
  185. 安原美穂

    ○安原政府委員 これまた野間委員指摘のとおり、アメリカ合衆国政府としましては、わが国の検察官がアメリカ合衆国に出向きまして、本件関係者についていわゆる任意の取り調べ、外国語でインタビューと言っておりますが、をすることについては、合衆国政府は好意的でございまして、基本的には了解をいたしておりますので、問題は、こちらがいわゆる取り調べ、事情聴取したい関係者が任意にこの取り調べに応ずるかどうかということにかかっておるわけでございます。その点につきまして詳しくその成否等について申し上げるわけにはまいりませんけれども、先ほど御指摘の堀田検事も、そのようなことの下準備を含めて先般来アメリカに参ったわけでございますが、その結果がどうであったか、見通しはどうであるかということを細かくは申し上げる段階ではございませんけれども、一般論といたしまして、そう容易に応ずることはない、非常に容易に取り調べに応じさせることは困難な状況にあるということでひとつ御理解をいただきたいと思います。
  186. 野間友一

    野間委員 それは、接触された結果の感触から言われておるわけですね。
  187. 安原美穂

    ○安原政府委員 直接に接触するというよりも、これまたアメリカ連邦司法省の御協力を得て、先方の関係者の弁護士等に連絡した感触によりますと、そう容易なことではないという感触のようでございます。
  188. 野間友一

    野間委員 その対象者ですけれども、これはコーチャン氏あるいはクラッター氏、フィンドレー氏と言われておりますけれども、そのほかには何人くらいおられますか。
  189. 安原美穂

    ○安原政府委員 この点はロッキード事件の捜査の核心に触れる問題でございますので、御推察にお任せしたいと思います。要するに、ロッキードの関係者全般というものが有力な参考人であることは事実でございます。
  190. 野間友一

    野間委員 それじゃ、この点については深追いをやめまして、司法共助の点について次にお伺いしたいと思います。  司法長官のレビ氏と斉藤特使が会われて、その後記者会見をされております。この記者会見の中で斉藤特使が、アメリカは例外的なまでに協力をしてくれており、今後もそのような協力をしてくれるものと思う、こういう発言をされておるわけですね。ここで、その例外的なまでに協力というのは一体何を指すのか、これをひとつ教えていただきたいと思います。
  191. 安原美穂

    ○安原政府委員 私どもは、アメリカ連邦合衆国政府が、本件について資料の提供等を含めていろいろと協力をしてくれていることは知っておりまするが、恐らく、斉藤特使の例外的なということは、野間委員御案内のとおり、本件に関係する国はたしか十数カ国ございますので、それとの比較において、少なくとも今日までの連邦合衆国のわが国の捜査当局に対する資料の提供等の捜査協力がほかの国に比べてより緊密に、あるいは手厚く協力がなされておる印象を述べられたものと思います。
  192. 野間友一

    野間委員 私どもはそのようには、外国の例に比べて評価はしておりませんけれども、それはおいておきます。  ところで、その司法共助の時期ですが、大体いつごろをめどにされておるかどうか。
  193. 安原美穂

    ○安原政府委員 けさほども申し上げましたが、犯罪の捜査というものは適正かつ迅速に行わなければなりませんので、その意味におきましてアメリカ合衆国に存在する関係人から事情を聞くということが捜査のために非常に有力な手段であることは何人も否定できないわけでありまするから、できる限り早い機会においてそれらの人々から事情を聴取する、何らかの方法で事情を聴取したいということは捜査当局の願望でございます。しかしながら、これをいつごろというまで具体的に申し上げることは、やはり捜査の秘密に属することで、現段階においてはひとつこの程度で、できるだけ早い機会にそういう機会を得たいというふうに願望しておるということでもって御理解いただければ幸いに存じます。
  194. 野間友一

    野間委員 そうすると、それはいわゆる任意捜査のさらに努力と並行して司法共助に基づく捜査もやられるということになるわけですか。
  195. 安原美穂

    ○安原政府委員 野間委員はいわゆる法律家でいらっしゃいますから御承知と思いますけれども、現段階における司法共助と申しますと、わが国の刑事訴訟法の二百二十六条に、犯罪の捜査に欠くべからざる知識を有する者が、その取り調べに応ぜず、または取り調べに応じても供述を拒んだときには、となっておりますので、並行と申しましても、同じ人間につきましてはそのような、いわゆるこちら側の取り調べに応ぜず、あるいは取り調べに応じても供述を拒んだという条件があって二百二十六条が動くわけでございますから、同一の人間について同時点において並行ということはあり得ない。しかしながら、一般論といたしまして、全部を二百二十六条によるのか、あるいはインタビューという直接の取り調べによるのかはこれからの進展あるいは相手方の状況によることでございますので、理論的には捜査の方法としては並行し得る、また、そういうことを考えておるというふうに理解しております。
  196. 野間友一

    野間委員 それじゃ、いまさきにあなたがお触れになりましたけれども、司法共助の具体的な問題についてのお尋ねですが、法律上の根拠はいま申されたわが国の刑事訴訟法の二百二十六条、これに基づくいわゆる第一回公判前の証人尋問ということになるわけですね。
  197. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のとおりでございます。
  198. 野間友一

    野間委員 その場合には、これも先ほど答弁がありましたけれども訴訟法の二百二十三条によるこの要件が必要だと思うのですけれども、この要件はいまの時点で具備しておるのかどうか、その点いかがですか。
  199. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のとおり、犯罪の捜査ということに関係して証人の取り調べを請求するわけでありまするから、被疑事実というものがある程度特定しなければいけないと思います。
  200. 野間友一

    野間委員 私お聞きしたいのは、二百二十六条は「出頭又は供述を拒んだ場合」というのが要件になっていますね。ですからその前提として、これは二百二十三条によると思いますけれども、要するに、出頭を求めあるいは取り調べる、そういう要請をしてこれを拒否するということになると思うのですね。  そこで、先ほど冒頭にもお伺いしたように、どうもアメリカの関係者が任意の捜査には拒否的と申しますか、消極的だというふうに聞知しておるわけですけれども、その点を踏まえて、すでにもう現時点で二百二十六条の要件は、証人尋問の要件を具備しておるかどうか、そこをお聞きしておるわけです。
  201. 安原美穂

    ○安原政府委員 その点はまたお言葉を返すようですが、現在の捜査の内容にかかわることでございますので、いまからそういう条件を具備しているかいないかということを申し上げるのはひとつお許しを願いたい、こういうお願いをしておるわけでございます。
  202. 野間友一

    野間委員 特定の人物ですね、それについては確かにいまの時点で私聞くわけじゃないのです。ただ司法共助に基づいて、堀田氏も帰ってこられて、これから、しかも迅速にということになりますと、しかも根拠法条が二百二十六条、そのもう一つ前のワンクッションが要るわけで、それを具備しているかどうか。そうでなければ二百二十六条というのはいつごろになるのかということが問題になってくると思うのですね、時間についてもお尋ねしたわけですけれども。ですから、いまの時点で具備しておるかどうか、この程度ならお答えできるのと違いますか。
  203. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のように迅速に関係者から取り調べをするという捜査上の要請がございますので、いまの条件を具備しているかどうかについては判断を迫られている状況にあるということを御理解いただきたいと思います。
  204. 野間友一

    野間委員 じゃ、具体的に手続のルートについてお聞きしますけれども、これはあなたの方でお答えいただけますか、手続のルートですね。たとえば東京地検がどういうふうにして最終のアメリカにおける証人尋問まで手続を踏んでいかれるかということ……。
  205. 安原美穂

    ○安原政府委員 結局、二百二十六条に問題を限りますと、現実の問題にできるだけ即して申し上げますと、東京地検が二百二十六条による証人尋問の請求をいたします。それは対応裁判所である東京地方裁判所裁判官に対していたします。そういたしますと東京地方裁判所裁判官は、これにつきまして関係人がアメリカにおるということになれば、司法共助による証人尋問の嘱託をすべきかどうかの判断をいたしまして、嘱託すべきだという決定をいたしますと、そこからが文書の外交ルートに乗るわけでございますが、従来の慣例では、まずその嘱託書が最高裁判所に参りまして、最高裁判所から外務省、外務省から在米日本大使館、それから連邦司法省、それから関係の地方裁判所というふうなルートで嘱託書が送達されるというふうに理解をいたしております。
  206. 野間友一

    野間委員 それじゃ、地検から東京地裁に証人尋問の請求をされる場合、これは刑事訴訟規則百六十条によって裁判所に手続をしなければならぬと思うのですね。これには被疑者とかあるいは被疑事実、犯罪事実等々の記載が要件としてされておりますけれども、これについてお聞きしたいのは、この被疑者あるいは被疑事実、これを記載しなければなりませんね。第一回公判前の証人尋問ということになりますと、私は、外為法とかあるいは脱税でなくて、やはり本体である贈収賄、これが被疑事実にならざるを得ないというふうに理解しておりますけれども、間違いありませんね。
  207. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のとおり二百二十六条の請求をいたします場合には、証人の氏名、年齢、職業、それから被疑者、被告人の氏名、本件の場合被疑者、それから罪名及び犯罪事実の要旨、こうございますからそういうことを書かなければなりません。  しかしながら、その犯罪事実が何になるかということは、これから東京地検が裁判所に請求をして明らかにしてもらいたい証人に対する尋問事項との結びつきで何になるかということは、いろいろあり得ると思いますが、それはきわめて具体的な犯罪捜査の内容になりますので、御推察に任せまして、私の口から何の罪名でということは申し上げかねますけれども、いずれにいたしましても、被疑事実の要旨とございますので、何らかの犯罪の容疑について特定した事実を摘示する必要があることは間違いございません。
  208. 野間友一

    野間委員 児玉がいま外為法違反あるいは脱税でやられておりますけれども、贈収賄がもちろん、被疑者あるいは被疑事実をもって請求される場合の犯罪の一つになるということは、これはお認めになるんですね。
  209. 安原美穂

    ○安原政府委員 それを含めていまの段階で申し述べることはひとつ御勘弁をいただきたいと思います。
  210. 野間友一

    野間委員 含めて当然なり得るというふうに私は理解し、またそのような方向で捜査するべきであり、しておるというふうに思うわけですけれども、その場合に、たとえば証人尋問の手続がありますね。これは国内法、刑事訴訟法の中でもいろいろあります。たとえば出頭を命じて、それから宣誓をさせる。出頭を拒否した場合には、勾引とかさまざまなそういう強制的な措置ができるわけですけれども、その準拠法は一体どうなりますか。
  211. 安原美穂

    ○安原政府委員 これは野間委員も御承知のように、結局、司法共助の嘱託というのは、外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法ということで、司法共助がこの外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法の規定から相互主義の保証を前提に、外国裁判所に証人取り調べの嘱託ができるんだという直接の法律の根拠を国内法に求めると、この共助法の規定によるんだということに理解されておるわけでありまするが、それの規定の第三条を見ますと、これは外国の裁判所から嘱託があった場合の条文でございますが、「受託事項ハ日本ノ法律ニ依り之ヲ施行スヘシ」だから外国の裁判所が日本の裁判所に証人の取り調べを嘱託してきて、それを受託したわが国の裁判所が、わが国の法律によって証人尋問をやるということで、それの相互主義の保証のもとにやるわけでありますから、したがって、一般に、本件のようにわが国の方から先方に、アメリカに嘱託をするという場合には、その証人尋問の手続その他法令上の根拠は全部アメリカ法であるというふうに理解しております。
  212. 野間友一

    野間委員 これはロッキードの関係からいたしますと、カリフォルニアの裁判所じゃないかと思うのですけれども、ここでの訴訟手続、特に公判前の証人尋問、そういう場合に日本の法律制度と違ったところがありますかどうですか。
  213. 安原美穂

    ○安原政府委員 嘱託をする以上、そういう制度をよく踏まえてやらなければならぬわけでございますが、これにつきましても先般来の実務取り決めに参りましたときあるいは堀田検事の渡米の際にアメリカ連邦司法省との連絡によりまして、そういう日本人の証人尋問の嘱託があればこれに応ずるという基本的な体制というものについては一応の事実上の了解があるわけでございまして、十分嘱託に応じてくれるものと思いまするが、いずれにいたしましても、最終的な裁判所のやることでございますから司法省がとやかく介入はできませんが、一般的には見込みを持っております。  ただ、いまどういう点が違うかということにつきましては、これまたどこの裁判所に行くであろうか、いま野間委員はカリフォルニアとおっしゃいましたけれども、そのこと自体もまた関係者との関係がございますので、どこの裁判所に行くかを私から申し上げるわけにはいきません。と同時に、私も詳しくはどこの、御案内のとおり連邦は各州でまたいろいろ制度が違いますので詳しいことはとても私承知しておりませんので申し上げできないのを遺憾に思いますけれども、私の承知しているところではたとえば刑訴法二百二十六条というような捜査途中における証人尋問というような制度はどうもアメリカにはないようでございますが、しかしながら、それにかわるものとして大陪審というものを捜査機関に当たるものと考えれば、大陪審の求めに応じて外国の裁判所が証人尋問したというような事例もあるようでございまして、見込みとしては十分米国裁判所はこの嘱託に応じてくれるという見込みは持っております。
  214. 野間友一

    野間委員 宣誓はそうすると向こうの法律に基づいてやるということになるわけですか。
  215. 安原美穂

    ○安原政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  216. 野間友一

    野間委員 日本の検察官の立ち合いはどうなりますか、話し合いも含めて。
  217. 安原美穂

    ○安原政府委員 この点は新聞の報道にも出ておりますように、嘱託尋問の目的をより十二分に達成するためにはわが国の検察官が立ち会っておることが望ましいと私ども思っております。しかしながら、少なくともどこの国の法制でも当然に外国の検察官を当該自国の証人尋問に立ち会わせるというような規定を持っている国はないと思いますので、これは事実問題として立ち会いすることができるかどうかという話し合いの問題でございまして、この成否は今後の話し合いによるものと考えております。
  218. 野間友一

    野間委員 その点につきましてはまだ詰めてないのですか、どうですか。
  219. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほど来たびたび申し上げておりますように、証人尋問の嘱託をすること自体がまだ決定をしておるわけではございませんので、決定すると同時にそういうことについても話し合いを進めなければならないものと理解しております。
  220. 野間友一

    野間委員 そうしますと、日本の検察官が立ち会うという要請、主張をされ、またこれから日本としてはされていく、そういうことですね。
  221. 安原美穂

    ○安原政府委員 証人尋問の仕方がどうなっていくかということ、特に日本の捜査当局がどういう事実上の希望を持っているかということが何らかの方法で先方に伝わることが、ある意味において証人が尋問に応ずることについて何かこれを拒否する事由になるというようなことのおそれもございますので、いまこの段階で捜査当局がどういう方針でこの証人尋問に臨むかということを申し上げることは、ひとつそういう願望があるということを言った程度でもって御猶予願いたい、かように思います。
  222. 野間友一

    野間委員 願望ですか——そういう主張をして、そして日本の検察官は立ち会わせるという方針だということをいま言われたと思いますが、それで得た調書ですね、供述調書、これは三百二十一条の三号書面になるわけでしょうか。
  223. 安原美穂

    ○安原政府委員 おっしゃるとおりその三百二十一条三号の「前二号に掲げる書面以外の書面」ということで、いろいろな条件を付して証拠能力が認められることになろうと思います。
  224. 野間友一

    野間委員 特信情況とかいろいろ入ってくると思いますが、もう一つその問題で、もし偽証になった場合には、そうすると宣誓が向こうであるとすれば、向こうの法律でこれを処分するわけで、日本の法律ではどうにもならないということになるわけですか。
  225. 安原美穂

    ○安原政府委員 アメリカの法令による偽証の罪であって、日本の国の法令による偽証の罪にはならないと思います。
  226. 野間友一

    野間委員 それじゃその程度司法共助についてお聞きしまして、若干ちょっと具体的にお伺いしたいと思いますが、十四日の参議院の本会議で三木総理が、ロッキード事件解明は政治不信解消のため絶対必要であり、これは私に課せられた責任、使命と受けとめているので、この目標達成に全力を挙げる、こう言っておられます。これは法務大臣も同じ御見解だというふうに伺っていいわけですか。
  227. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 同じ見解でございます。
  228. 野間友一

    野間委員 御案内だろうと思いますけれども、念のためですが、ロッキード事件というのは単にロッキード社と全日空、ここだけの問題ではないというように私は思うわけですね。アメリカの航空機メーカー、これはダグラス、ボーイングあるいはロッキード、この三社の大型ジェット機の売り込み、この競争ですね、そして日本の航空会社である日航、全日空それから東亜国内、このシェア争い、さらに運輸省の行政指導が絡んでいる。これはもう御承知のとおりでありまして、しかもこれが、私たちは戦犯政治あるいは金権、売国政治という三悪政治の本質がここに如実にあらわれたというふうに見ておりますけれども、きわめて大きな広がりと深さを持った事件であるというふうに思うわけです。参議院の予算委員会ではわが党の上田耕一郎議員もその点を指摘しておるわけですが、贈収賄という刑事的な側面からこの事件を見た場合でも、当然いま申し上げたような観点から商社あるいはアメリカの航空三社、日本の航空三社、運輸省等々、政府高官、こういう絡みで全体を位置づけていかなければならない、単にロッキードと全日空という関係だけの問題じゃないというふうに私は思うわけでございます。  先ほど法務大臣も、この三木総理の表明と同じ見解に立って、これから徹底かつ迅速に究明していくというようなことのようですけれども、私はいま申し上げたような性格を持った事件である、そういう点でいま捜査をしておるのだというふうに理解してよろしいですか。
  229. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 結構でございます。
  230. 野間友一

    野間委員 そこで、捜査の進捗状況について少しくお伺いしますけれども、現在まで捜査された人間の数ですね、これは大体どのくらいでしょうか。
  231. 安原美穂

    ○安原政府委員 先日も参議院の法務委員会お答えしたのですが、少なくとも百人を超える関係者について事情を聴取しておるということは事実でございます。
  232. 野間友一

    野間委員 法務大臣、事件の解明のめどをいつごろに置いておられますか。
  233. 安原美穂

    ○安原政府委員 この点も私どもがタイムリミットを置いておるわけではございません。要するに、真相の究明が問題でございますから、タイムリミットでやる事柄ではございませんので、タイムリミットは置いておりません。しかし、未来永劫に捜査を続けることでもございません。あくまでも刑事訴訟法の精神に基づきまして適正、迅速にやりたいという願望は持っております。  ただ、先ほど来野間委員のお尋ねにもございましたように、本件は単に国内の捜査で捜査の終わる性質ではなくて、いわばインターナショナル、国際的な規模を持つ事件でございまして、そういう関係人あるいは証拠物の収集ということがアメリカ合衆国にもまたがるという意味において、通常の事件よりもそういう意味においては困難な事件であるということが言えると思いますので、従来の経験に徴していつごろまでということを申し上げること自体がきわめて困難な状況にあると思います。
  234. 野間友一

    野間委員 法務大臣、きのう自民党内のロッキード問題調査特別委員会ですか、ここにお出になって、事件解明のめどは大体セミの鳴くころだというふうに大臣が言われた、これは報道がございますけれども、大体そのころをめどにしておられるのかどうか。
  235. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 解明のめどにつきましては刑事局長の申したのが正確であって、その報道は少し私の意に満たないところがあります。先ほどあなたもおっしゃったような非常に広がりがある難事件、大事件でありますからね。幾ら早くやれ早くやれという希望を言われましても、ざる碁の早碁ということがあるからね、せいては事をし損ずるということもあるから、あなた、そんな簡単なわけにはいかないよ、と。しかし、いまのあれでも、幾ら名人碁でも制限時間というのもあるんだからね、こういうことを言うたら、セミの鳴くころかなあと言うから、さあねと、こう言った。
  236. 野間友一

    野間委員 きょう閣議が終わった後で、法務大臣、記者会見されましたね。この中で、きのうの特別委員会の中での発言に関連しても言われております。先ほど刑事局長は、いままで調査をした人間の数は百名を上回るというお話ですけれども、法務大臣は百三十名ぐらいと、こういうふうに言われていますね、これはきょうの夕刊にも出ておりますけれども。そしてこの百三十名以上調べた中に、———あるいは———ばかりではない、こういうようなことを言われたやに報道には出ておりますけれども、これはどうでしょう。
  237. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 その報道も私の意に——まだ見ておりませんがね。あなた、ごらんになって、そう書いてあれば、その報道も私の意に満たないところがありますね。というのは、刑事局長は、百人を超しているというのは大分前の話だから、それより相当超えるでしょう、こういう意味です。それは三割超えているのか、五割超えているのかはそっちのとり方だね、新聞記者の。相当超えているんだろうと思うがね、捜査はあれから大分たっているからねと、こう言った。そうしたら、大物も入ってますかと言うから、それはまあ御想像に任せるけれども、———や———ばかりじゃあるまいだろうがなあ、こういう程度ですわ。
  238. 野間友一

    野間委員 そうしますと、———や———だけでなくて、大物も百名以上のその中に入っておるということですね。
  239. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私、その調べた人間を全部報告を受けて把握しているんじゃないのです。まあ常識的に考えて、百何十人も調べた中に、あなた、あの検察庁の有能そして賢明な捜査能力をもってして、———や———ばかりを調べているわけじゃないと思うんだと、こういう意味です。
  240. 野間友一

    野間委員 法務省、いま捜査の状況についてですが、その大庭社長の退陣、これと全日空へのトライスター売り込み、これは大きな関係があるというふうに私たちは理解しておりますけれども、そういう観点から捜査も進められているというふうに理解していいわけですね。
  241. 安原美穂

    ○安原政府委員 たびたび申し上げておりますように、検察当局といたしましては、ロッキード社の日本国内における営業活動の全般にわたりまして不正行為の存否を明確にするということを当面の目標として捜査、調査を進めているわけでございまして、そういう意味におきまして、トライスターの売り込みということに関連する一つの背景事情として当然重大な関心を持っているものと信じております。
  242. 野間友一

    野間委員 運輸省お越しですか。——大庭社長の退陣、この理由を運輸省としては一体どのように理解されているのか。
  243. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 大庭前社長の退陣は全くいわゆる社内事情によることであるということでございまして、いわゆる運輸行政に関連して社長の交代があったというふうには私どもは承知いたしておりません。したがいまして、詳細については存じません。
  244. 野間友一

    野間委員 いまの社内事情の問題ですけれども、これは国会の証言の中でもありましたけれども、人的関係それから融資の関係、この融資問題が退陣された理由だということを、これは若狭氏もあるいは大庭氏もそういう趣旨の証言をしておったわけですけれども、運輸省としても、これは監督下にある直接の、半官半民のような日航ではありませんけれども、いずれにしても、そういう退陣については深い関心を持ち、これらについても調査されておるわけで、その中で、人的関係と同時に、融資の問題が退陣の理由であるというふうに認識、理解されておるわけですよ。
  245. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 当時融資問題があったということは、運輸省としても承知いたしておるわけでございますけれども、社長の交代というものは、これは全くこの会社の内部の問題でございまして、直接、間接にどういう事情があったかということについては、これは運輸省としてはこれに関与すべきことではないというふうに私は存じております。
  246. 野間友一

    野間委員 融資事件を運輸省として知られたのはいつごろになるわけですか。
  247. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 当時、融資事件について運輸省に対して何らかの報告があったかどうか、いつ行われたかということは、これは記録がございません。で、当時の関係者にも照会いたしましたけれども、それは定かでないわけでございます。  ただ、今回このような問題が起こりましたにつきまして、運輸省としては全日空からその融資問題についての概要を報告を受けた、こういうことはございます。当時、そのようなことをどの程度承知しておったかということについては、これははっきりとした記録もなく、また報告も受けておりません。
  248. 野間友一

    野間委員 そうしますと、この事件というのは、二月四日あるいは六日、アメリカから報道が入ってきたわけですけれども、その後ということでしょうか。
  249. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 運輸省として全日空から報告を求めたのは、御指摘の時期以後でございます。
  250. 野間友一

    野間委員 そうすると、それまでは全然知らなかった、こういうことですか。
  251. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 先ほど申し上げましたように、融資問題が起こった当時、何らかのかっこうで報告があったかどうかという点でございますけれども、これについてははっきりとした記録がございません。
  252. 野間友一

    野間委員 いや、はっきりした記録がないというのはわかりませんけれども、あなたの方で調査されましたね。調査の結果、融資の事件があった当時にすでに運輸省は知っておったというようなことについては、調査の結果出てきませんでしたか。知らない、この事件が明るみに出て初めて知ったのだ、そういうことでしたか、調査の結果は。
  253. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 当時、融資事件についていつ、どういう報告が全日空からあったか、あるいはどういうところからそういう情報が入ったかということについては、当時の関係者に聞きましたけれども、はっきりとした記憶がないのでございます。資料はもちろんございません。したがいまして、運輸省としては、ことしに入りましてこの問題が起こりましてから全日空から当時の事情について聞いた、こういうことでございます。
  254. 野間友一

    野間委員 それはどうも解せないわけです。いまのお話では、事件が明るみになった後だ、それ以前はいろいろと省内で調査したけれども、運輸省としての調査の中では皆記憶がないのだ、知ったという事実はだれもないのだ、こういうことでしょう。そうではないのですか。だれか、調査の結果知っておったということが明らかになっておるのですか。ちょっと、もう一遍はっきりしてください。
  255. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 当時そのような事実があったことについて報告を受けて、内容について承知したという、そういうふうな報告が、どなたからもいただけないわけでございます。したがいまして、明確な資料がない以上、われわれとしてはそれを確認できない、こういうことでございます。
  256. 野間友一

    野間委員 四月十一日にわが党の三浦議員が大庭氏に会いましていろいろ事情を聞きました。その中では、大庭氏の話によりますと、四十五年の三月ごろ、まだ大庭氏が社長のころですが、運輸省に呼ばれて事務次官の堀さんからこの融資の問題でどやしつけられた、そういうことをはっきり言っておるわけです。したがって、あなたの方でもし調査したとすれば、堀さんにも当たって調査されたと思うのですけれども、堀さんがこの融資の問題についてどやしつけた、こう言っておるわけですよ。当時運輸省は当然知っておったのと違いますか。
  257. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 いろいろな方に事情を聞いたわけでございますけれども、そのような事実関係についてはっきりとした記憶に基づく報告をどうしても得られないわけでございます。したがって、新聞報道でいろいろ報道されておるようでございますけれども、私どもとしては、当時の事情についてはっきりとしたことを報告を受けて、ここで御報告を申し上げるというところには至らないわけでございます。
  258. 野間友一

    野間委員 事務次官の堀さんが呼びつけて、何ということをするんだというようなことで融資の問題について事実を挙げてえらくこっぴどくしかったそうですね。これはほかにも証拠がありますけれども、これについてはいまは名前を伏せます。  だから、当時融資の問題が非常に疑惑がありまして、これが直接退陣に追い込んだということが私たちの大体理解しておる事実なんですけれども、大庭氏の話にもありましたけれども、運輸省は当時十分知っておって、このことで暗に大庭氏に退陣を求める、これは四十五年三月の時点ですが、そういうことでずっと運輸省も大庭氏の退陣については一役買ったのと違いますか。これは松尾氏——松尾氏というのは松尾天皇といわれたくらいに大きな力を持っておられた方ですけれども、この方が常に大庭氏を保護というかカバーされておった。いろいろ経緯については国会の証言で御承知のとおりだと思いますけれども、最後には、この松尾氏みずからがもうだめだ、もうおまえやめろ、それに至る経緯はいろいろあります、慰め、あるいはいろいろ奔走されましたが、結果的にこういう退陣をされた。この松尾天皇といわれる人がさじを投げるくらいですから、これは相当大きな圧力というか、力が動いていなければならぬ。先ほど局長は、調べたけれども、当時運輸省としては融資の話についてだれも記憶がないのだ、調査の結果が上がっていないのだというふうに言われましたけれども、これは事実と反するわけですね。だから、隠しておられるのか、運輸省もそういう一役買ったのと違うのかという疑惑が当然出てくると思うのです。実際に知っておったのかどうか、もう一遍確認しておきます。
  259. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 事実関係について知っておったかどうか、それから大庭前社長の退陣について運輸省が何らかの役割りを果たしたかどうかということについては、確かにいろいろ新聞でも報道されている点もあるわけでございますけれども、私ども調査いたしました限りにおいては、先生の御指摘のようなことを確認できない、こういうことを申し上げる以外ございません。
  260. 野間友一

    野間委員 それでは、私が特定の名前も挙げましたから、直接堀氏に一遍当たって、そういう事実があったのかなかったのか、知っておったのかどうか、これはぜひ調査してほしいと思います。
  261. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 私どもとしてはできる限りの調査をしてきたつもりでございますので、今後とも可能な限り、われわれとしてできる範囲の調査はいたしたいと思います。
  262. 野間友一

    野間委員 いや、特定の名前を挙げましたから、堀氏に当たって調査をして事実を明らかにしてほしい、こういうことです。
  263. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 当時の関係者についてはできる限り広範囲に調査をするわけでございますから、先生指摘の方についても当然その中に含まれる、こういうことでございます。
  264. 野間友一

    野間委員 非常に隠されるわけですが、そうするとよけい疑惑が深まるのです。たとえば五月十二日の運輸委員会でわが党の梅田委員が、機種選定に関する質問の中で、運輸省が機種選定にタッチしておったのと違うのかというような趣旨の発言をしたわけです。たとえば金井氏、これは当時の技術部長、あるいは中曾氏、これは技術部の検査課長、それから村林という航務課長、この三氏が技術委員会に出ておったという事実は認めましたね。しかし、機種選定にはノータッチなんだという答弁をしたと思うのですけれども、そうですね。
  265. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 そのとおりでございます。
  266. 野間友一

    野間委員 この点についても、この全日空の技術委員会委員長をやっておられた松浦先生、これは法政大学の教授ですね。この人に問い合わせました。そうしますと、機種選定準備委員会から技術委員会に対してDC10とL一〇一一、この資料を提供して、選定に関して意見を求められたと委員長の松浦先生がはっきり言っておるのです。運輸省からこれに技術委員が三名出ておる。意見を求めておるのです。これは松浦先生がはっきり言っておられるわけです。あなたの方で事実については調査していないのですか。この前の答弁では、選定にはノータッチだと言われましたけれども、こういう事実を聞いてもなおかつ選定にはタッチしていないというふうにおっしゃるわけですか。
  267. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 私ども調査した限りにおいては、技術委員会というものは技術的な問題についての全日空の社長の諮問機関でございます。そういう目的で設立されたものであって、具体的にあらゆる点から判断して、どの機種を選定するかという問題に技術委員会がタッチするということは絶対になかったというふうにわれわれは承知しております。
  268. 野間友一

    野間委員 調査が不十分かあるいは答えた人がうそを言ったのか。この金井あるいは中曾それから村林の各氏、こういう人に直接当たり、あるいはいま申し上げた松浦先生にちょっと聞いただけでも事実がすぐ出てくるわけです。運輸省としてもこの程度の事実の調査はそんなに時間がかからないと思う。あなたのいまの答えを聞いておりますと、この点についても逃げる。関係がないんだと言う。先ほど申し上げた堀氏が融資事件を知っておったという事実についてもこれを否定される、同じような問題がやはり出てくるわけです。  重ねて言いますが、松浦先生その人が、選定委員会から技術委員会そのものとして意見を求められた、こう言っておられるわけです。そういう経過を踏まえられてもなおかつ機種選定には運輸省はタッチしていない、こうおっしゃるのでしょうか。
  269. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 技術委員会が全日空の機種選定に参画したということはないというふうに私は報告を受けております。これは直接松浦先生に確かめておりません。したがって、ただいまの先生のおっしゃったような点については、松浦先生がどのような趣旨でこれを言われたかという点については、私どもの方としても確認をしてみたいと思います。
  270. 野間友一

    野間委員 だから、本当にやる気があればすぐわかる。運輸省はそんなに能力がないとは私は思わない。むしろ逆だと思うのです。だから、そういうふうに事実を隠し隠ししているとかえって疑惑が深まる、これは当然のことじゃありませんか。先ほど、その融資の問題もこの堀氏が知っておったかどうか、あるいはこの技術委員会の問題についても調査するというふうにあなたは言いましたけれども調査の結果をぜひ当委員会に報告してほしい。  法務省にお伺いしたいと思いますが、刑事局長、融資の問題で大庭氏が退陣に追い込まれた、その後全日空のDC10のオプションが破棄されて、そしてトライスターの導入という一連の経緯があるわけですが、つまり融資の問題というのは、大庭氏の退陣、トライスターの導入ということの中で非常に大きなウエートを占める、こういう問題であると思うのです。この退陣あるいは融資の問題融資を理由とする退陣ですね、非常に大きなウエートを占めると思うのですけれども法務省はこの点は、当然そういう点についての関連をしながら捜査を進めておられるというふうに思うわけですけれども、いかがですか。
  271. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほど来申し上げましたように、ロッキード社の製造機の売り込みの経緯につきましては、その背景事情を含めて不正行為の存否を確かめる上においての有力な状況であろうと思いますので、検察当局としては重大な関心を払っているものと私はかたく信じておりますし、当国会におきます証人尋問あるいは各議員の御質問等の状況も、検察庁は十分にその点について関心を持っているのは事実でございます。
  272. 野間友一

    野間委員 この融資事件というのは、捜査当局はどういうふうに位置づけ、あるいはどういう実態として把握されておるのか、これなんですけれども、私たちと言うか、私の把握した退陣に向けての事実は三つあるのです。  一つは、いわゆるM資金、マーケット資金というものですね、後で触れますけれども。二つ目が、鈴木明良が持ち込んだ例の三千億円。それから三つ目が、これはまたこれとは別に五百億円、これは全日空のいまの副社長渡辺氏らの融資。この三つ目の問題は表ざたにはなっておりません。しかし、大庭氏が退陣をせざるを得ないというようなことの背景に、この三つの融資の事件がある。  これは関係者は、それぞれ捜査機関に対して供述をしておると思うのです。私もそのように聞いておりますけれども、この三つが——ほかにもありますけれども、相相乗して複雑に絡み合いながら結局大庭氏が退陣に追い込められた、こういうことのようです。これは御存じでしょう。
  273. 安原美穂

    ○安原政府委員 詳しいことは私、報告を受けておりませんけれども、このM資金問題というものが問題にされておるということは検察当局も知っているものと確信をいたしております。  なお、先ほど申しましたように、委員会におきます野間委員を初めとしての御意見なり御判断なり御推察というようなことも、捜査の関係ではいろいろな貴重な資料となると思いますので、早速検察当局に伝えたいと思っております。
  274. 野間友一

    野間委員 一般的な答弁しかないので非常に不満足なんですけれども、大蔵省は、このいわゆるM資金について、どのような認識をされておりますか。
  275. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 巷間M資金と称するものがあるというようなうわさは存じております。しかしながら、私どもとしては、さような資金が実在するというふうには存じておりません。
  276. 野間友一

    野間委員 その巷間のうわさでは、どのようにあなたの方には入っておりますか。
  277. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 その辺は全くうわさでございますので詳しくは存じません。ただ、相当大きなロットの資金がどこかにございまして、まあそういうものがいろいろなルートで貸し出されるのだというようなうわさを聞いたことはございます。しかし、それが具体的にいかようなものであるかということは、全然存じません。
  278. 野間友一

    野間委員 その場合のM資金のMというのは、マーカットというふうに聞かれておるわけですね。
  279. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 そういうことであるというようなうわさを聞いております。
  280. 野間友一

    野間委員 そのM資金が実在しない、存在しないという、うわさでは知っておるということのようですけれども、存在しないということは、調査された結果そういうふうに認識、把握しておられるわけですか。
  281. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 別に特段それを目的に調査したことはございません。ただ、それだけ大きな資金でございますと、通常はどこかの大きな会社に貸し出されるというようなのが通常だろうと思いますが、たとえば金融機関が自己の資金を貸し付けるというような場合には、当該会社の他からの借入金というようなことも当然十分調査すると思います。そういうようなことから、もしそういうことがありますと、金融機関を通じまして何らかの形で、さようなものがもう少しはっきりした形で伝わってくるという可能性があるのじゃないか、これは私の考えでございますが、さようなことを全然聞いたことはございません。したがって、私どもはさようなものがあるというふうには考えていないわけでございます。
  282. 野間友一

    野間委員 大庭氏の退陣の一つ理由として、このM資金融資問題が絡んでおるというようなことは御存じですね。
  283. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 そういうふうに伺っております。
  284. 野間友一

    野間委員 大庭氏というのは全日空の社長ですね。本当に荒唐無稽で、まさに幻で夢みたいな話であれば、これは引っかけようとしてもなかなか引っかけられるわけはない。特にいま申し上げた全日空の社長、さらにうわさとして恐らく東洋曹達とか富士製鉄とか、過去にM資金が絡んだ話を大蔵省としては聞かれておると思うのですけれども、これはいかがですか。
  285. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 詳しくは存じておりません。
  286. 野間友一

    野間委員 それじゃ、簡単なことは御存じですか。
  287. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 そういうようなうわさを聞いたことはございます。
  288. 野間友一

    野間委員 東洋曹達にしても富士製鉄にしても、これは大会社なんですよね。これが田舎の末端で口のうまい詐欺師の口車に乗せられてだまされるというのとは、これは本当の話、ちょっと違うのですよね。だからM資金の存在は荒唐無稽だ、あるいは幻だというようなことで大蔵省が放置をするということは許されないと思うのです。  では聞きますが、日本銀行の中にM資金というものがあるのと違いましょうか。
  289. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 さようなことは絶対ないものと確信いたしております。
  290. 野間友一

    野間委員 それはどういうような根拠でないと確信をされておりますか。
  291. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 日本銀行は金融機関の中でも中央銀行でございまして、最も厳密正確な経理をいたしております。そして、その経理は会計検査院の監査も受けているわけでございますし、また、りっぱな監事が中におりまして自己監査もいたしております。また、私どもも決算というものは書類等で十分説明を受け、見ておるわけでございまして、いささかもさような疑いというものはございません。
  292. 野間友一

    野間委員 これは裏の資金ですから、実際帳簿——いや、私もあるという前提で物を言っているわけじゃないのです。しかし、いま申し上げたように、法務大臣、大庭氏とか東洋曹達とか富士製鉄とか、大きな会社がころころ、実害があったかなかったかはともかくとして、その話に乗っかっておるということなんです。つまり、かなり信憑性の高いものがあるということがやはり当然前提になってくると思うのですね。荒唐無稽なものであればだれも引っかかりはしないと思うのですね。  そこで、大庭氏の退陣に絡んで先ほど三つの融資の問題があると申し上げました。直接の退陣に追い込んだ融資というのは、あの国会の中で言いました鈴木明良という詐欺師が、これは大石さんとか原さんの名前が出ましたけれども紹介状を持ってきて云々というあれですね。あれの念書が回収できずに総会屋の手にわたって、それで詰め腹を切らされたことのようですけれども、これがどうもM資金ではないようなんです。これは三千億円ですけれどもね。実はこの点についても、四月十一日にわが党の三浦久議員が直接大庭氏に会って、退陣の背景等についても実態事情を聞いたわけです。これは刑事局長も聞いておいていただきたいと思いますけれども、この鈴木が持ってきた三千億円もあの証言の中では、信用していなかったが借りられるのであれば会社のためによいと考えた、そして、念書も書いた、そう証言していますね。これはこの前提がこの以前にあるわけです。これは四十四年の八月ごろで、大庭氏が社長になったのは四十四年の三月でしたか、この以前に、四十四年の七月ごろ——これは大庭氏の三浦久議員に対する話ですけれども、M資金の融資の申し入れがあったと言うのです。だれが持ってきたか、長谷村資という人であります。この長谷村資さんの大学を出てからの経歴を運輸省ひとつ教えてほしいと思います。
  293. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 これは日本航空から聴取いたしました経歴でございますけれども昭和二十三年の三月に東北大学の法文学部を卒業いたしまして、四月に日本銀行に入行いたしまして、三十年の八月日本輸出入銀行に出向し、三十五年四月アラビア石油に入社いたしております。それから、三十九年五月富士石油に入社いたしております。三十九年の九月佐藤榮作氏の秘書になりまして、三十九年十一月内閣総理大臣秘書官となっております。四十三年六月全日本空輸の常勤顧問になり、四十五年五月全日本空輸を退社いたしております。四十五年の十一月日本航空に入社いたしまして、営業本部長付審議役という職名で現在に至っておる、このような報告を受けております。
  294. 野間友一

    野間委員 そうですね。つまり、日本銀行におった人で、それから輸出入銀行にもおって審査部の調査役をやっておった。アラ石にもおった。さらに佐藤元総理大臣の秘書官までやった。こういう人がM資金なるものを持ってきたのです。そのM資金の話ですよ、大臣。これはこういうことのようです。  長谷村氏が紹介されたのは小林中という人であります。これは心当たりがあると思うのですけれども、いまアラ石と日本航空の会長をされております。開銀の初代総裁ですね。この小林中氏から長谷村資氏を介しての大庭氏に対する資金の中身は、実は日本銀行の中にあるんだ。そして九人から十人の理事がこれを管理しておる。その中には、大庭氏が記憶しておるのは島津何がしという人と福田何がしという人、これはどこのどなたかわかりませんけれども、こういう方を含めて九人から十人の理事が管理しておる。そしてその貸し付けについては、その理事の全員一致の同意がなければ貸し付けができない。それで、長谷村氏が持ってきた話は小林氏から紹介された。そして長谷村氏が大庭氏のところへ持ってきた。それによりますと、これは大庭氏も言っておるのですけれども、融資の金額はやはり三千億円です。それで金利が四・五%、期間が十五年、こういう非常に有利な話を持ってきた。そこで大庭氏は資金計画と念書を書いて、そして指定銀行を三菱銀行に指定して、これらの資料を長谷村氏を介して手渡したということのようです。もう少し具体的に申し上げますと、このM資金が成功すれば大庭氏個人に貸し付けることになり、その運用は大庭氏個人に任される。それで申込書にも社印だけで社長印は押していない。そして大庭氏の印は三文判を使った、こう本人が言っておられるわけですね。  このような資金計画や念書を長谷村氏から言われるとおりにつくって出したわけですね。ところがその後、最終的には理事の全員一致が得られないということで御破算になりましたという連絡が入った。これがその融資の一番最初の問題なんです。あるのかないのかという点ですけれども、その長谷村氏という人は、経歴が示すようにだれが考えても非常に信頼に足りる人だと思うのです。日銀から始まって佐藤総理の秘書官までやっておられた。しかも、この人の持ってきた話が財界の重鎮、大物である小林中氏である。アラ石や日本航空の会長さんですからね。まあ、日本航空の方は会長さんになられたのは四十八年ですが、これであればだれでも信用すると思うのです。だから事実あるような気も私はするのです。あるいはないかもわからぬ。しかし、これは少なくとも大蔵省としても、具体的な小林氏や長谷村氏の名前が挙がり、こうして大庭氏まで話を持ってこられた、こういうことですから、これについては調査をする必要があると思う。  そこで、最初に法務省に聞きますけれども、刑事局長、これに関する資金計画あるいは念書は全部押収あるいは保管されておりますか。
  295. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま御指摘のようなものを押収しているかどうかは実際報告を受けておりませんので、この場で申し上げるわけにはまいりません。
  296. 野間友一

    野間委員 あるとしたらこれは大問題なんですね。しかも挙げた名前がしかるべき人なんです。ないとすれば、ないものが一体どうしてこのようなルートで大庭氏のところに来たのかということで、大庭氏の退陣の背景にはいままで出ておる以上のさらに深いものがある、こう言わざるを得ないと私は思うのです。局長もこの融資の問題は——まあ大庭氏退陣かトライスターの導入にこう連動するわけですけれども、これは非常に重要視しておるという話がありましたけれども、捜査当局としてもこの存在の有無について厳重に調査をやらなきゃならぬし、さらに大蔵省としても、いままで調べたけれどもそういうものはないと思うということじゃなく、先ほどから申し上げておるようにうわさはずいぶんあるわけですから、しかも、具体的な特定の名前を私は挙げました。そういう点で、これがもしあるとしたら大変なことになるし、ないとしても、開銀の初代総裁とかあるいは日本銀行におられたそういうような信用できる人からの話ということになりますと、これは大蔵省としてもこの事態は放置はできない。これは当然であろうと思うのです。どっちにしても、あるのかないのか、あるとしたら実態はどうなのか、ないとすればどういうような背景があり、理由があってこういうものが持ち込まれたのかということを十分捜査しなければならぬと思うのです。その点で刑事局長、さらに続いて大蔵省の審議官から答弁を承りたいと思います。
  297. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほども申しましたように、大庭氏退陣の経緯というものはロッキード事件の一つの背景事情として関連するものと思われますので、検察当局では重大な関心を持っておるものと信じております。
  298. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 私どもはさようなことは全然ないというふうに確信しておるわけでございまして、たとえばいまおっしゃっいました小林氏、そういうお名前が出ておりますが、果してそういう方が本当にそういうことをおっしゃっておられるのかどうかも、全然証拠も何にもないわけでございます。私どもとしては、むしろ非常に大きなロットのお話で、しかもそういう日本銀行という一般に余り近寄りがたいところの話を持ち出すということこそむしろ非常におかしな話だというふうに考えるわけでございまして、何らか本当にそういう具体的なお金が片りんでもあるというようなことがございましたら、私どもとしてはそれは責任を持って調査いたしたいと思いますが、全くのうわさでさような天下の中央銀行を疑い、調査するということは、どうも私どもとしては率直に申しましてちゅうちょせざるを得ないというふうに考えます。
  299. 野間友一

    野間委員 恐らく捜査当局はこれらに関する供述は全部とっておられると思うのです。これは私もそういうように承知しておりますから。  大蔵省、私は何も日本銀行の金庫を全部あけて洗いざらい裸にして調べろ——調べてもわからぬと思うのですね。申し上げておるのは、繰り返しはしませんけれども、あってもなくても大問題ですね。しかも具体的にその人物の名前が大庭氏から出ておるわけですから、だからせめてそれの真偽のほどを、実態調査するせぬは後の段階としても、そういう話の真偽のほどを大庭氏やあるいは長谷村氏や小林氏、そういう方からやはり事情を聞くということは当然やらなければならぬと思うのですね。犯罪の手段として、詐欺の手段としてということになりますと、それは確かに刑事上の問題で捜査当局がもちろん調べなければならぬ、調べておりますけれども、しかし、少なくとも日銀を管理する大蔵省としても、そういう話がしかるべき人から出た以上、これはやはり調べる必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  300. 戸田嘉徳

    ○戸田政府委員 お話ではございますが、重ねて恐縮でございますけれども、とにかく天下の日銀を本当にそういうようなうわさで私どもどうも調査いたすという勇気を持ち合わせていないわけであります。まあ検察当局等の御調査で、具体的にいまおっしゃったような方々その他から、そういうものが本当にそういう方々の口から出てきておるというような事実でもございましたら、そこにおいて私どもはまた検討いたしたいと思いますが、いまの段階ではそういう調査は御容赦願いたいと思います。
  301. 野間友一

    野間委員 それじゃもうこれで終わりますけれども、時間の関係できょうは融資の問題を中心にいろいろ私たちが調査した結果に基づいて質疑をやったわけです。どっちにしても、三千億にしても、あるいはM資金、同額三千億円ですけれども、奇々怪々な事件が退陣につながっていたということで、冒頭に法務大臣も所信を表明されましたけれども、この点についてはあらゆる角度から徹底して調査をして必ず真相を迅速に明らかにするということを私は強く要求したいと思います。その点について最後に大臣から所見を伺って質問を終わりたいと思います。
  302. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そういうあなたの御調査になっておるようなことについて、検察がどの程度やっているかわかりません。あらゆる材料を全力を挙げて、抜かりはないと思いますが、そういう感じを持ちます。
  303. 木野晴夫

    木野委員長代理 鈴切康雄君。
  304. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法務大臣、御苦労さまです。あと私一人で質疑者は終わる予定になっておりますからいましばらくごしんぼう願いたいと思います。  私は、例の法務省設置法法案内容につきましては過日鬼木先生が御質問されましたので、きょうはロッキードの問題だけにしぼってちょっとお話をお聞きしたいと思います。  ロッキードの汚職問題が起こってから実は三カ月、もう百日近くになるわけでありますけれども、ロッキードの真相究明を徹底的にやってもらいたいという世論はいささかも衰える形勢を見せていません。国民的な関心というのを大別いたしますと、私は三つぐらいになろうかと思います。一つは、黒いピーナツを食べた政府高官名はだれかという問題、それから丸紅がロッキード社に出したいわゆるピーナツあるいはユニット、ピーシズという領収証、これはまことに幻のような領収証でありまして、それが解明されていないし、また、そのピーナツの行方というものがどういうふうになっているかわからないという問題、それからもう一つは、児玉譽士夫がロッキード問題にどのように関係して、政治の裏舞台で多額の工作資金を出して政治をどのように操っていたか、こういうふうな三つの関心が端的に申し上げましてあるわけでありますけれども、いずれも解明されていないわけであります。  そこで、この真相究明がなされないままにうやむやになってしまうのじゃないだろうかという大変に国民的な不安というものがあるわけでありますけれども、法務大臣はこのロッキード事件に対してどのような決意で臨まれているか、私、恐らく不退転の気持ちで臨まれていると思うわけでありますけれども、まず決意を伺ってから、それから御質問に入りたいと思います。
  305. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いまおっしゃった三つの点はきわめて重大な点である、捜査の手が当然に及ぶべき諸点であるという点は、あなたの御意見に私、同意見です。  それから、うやむやになってしまうのじゃなかろうかという国民の不安は、それはあるでしょう。それはあるでしょうと思います。その不安を解消して、法務省及び検察庁はそんなんじゃないですよ、そんなだらしないものじゃないですということをやっぱり結果をもって示さなければどうなるんだ、こういうので、もう満幅の信頼を置くから、そうして成功すれば法務省の健在を天下に示せるのだ、失敗すればおれは責任を負わねばならぬ、責任は私が負うけれども、しっかりやってくれ、しっかりやってうまくやってくれればいいなという熱願で夜も眠られないぐらいのところもあるということで不退転の決意を感得していただきたい、鈴切さんが感じ取っていただきたい、こう思います。
  306. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公判開始前における資料の公開については、刑事訴訟法第四十七条の本文とただし書きとのどちらをとるかという論議、これはあろうかと思いますけれども、いま法務大臣が真相を徹底的に究明をするんだ、どうかひとつ捜査当局を信頼してもらいたい、こういう大変に力強い決意を述べられたわけでありますけれども、実はこの前の内閣委員会で鬼木先生にそういう決意をあらわしながら法務大臣が言われた内容の中にこういうことがあるのです。実は鬼木先生が、ロッキード事件の捜査の状況を中間報告というような形で継続的に公表する考えはないか、こういうふうに質問されたときに、稻葉法務大臣は、捜査当局の妨げにならないようにすべきだと断りながらも、事態の推移を見て、その段階で中間報告をすることを検討する、こういう明確な御答弁があったわけであります。  そこで、実はその中間転告をされるという稻葉法務大臣が言われたことに対して、さらにその先を実は国民は聞きたがっているわけでございますから、そういう点についてちょっとお伺いをしてまいりたいと思う次第でありますが、事態の推移を見てというふうにおっしゃいましたけれども、いかなる事態になった場合に中間報告をされるおつもりなんでしょうか。
  307. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 事態の推移によっては検事総長を通じて私に報告があると思います。そういうような報告を受けて、そうして、それはその時点で中間報告をしてもその先の捜査に妨げないですから発表してもいいか、よろしゅうございますというような報告ならば、その時点において中間報告をすべきことは当然ですよ、国民が待ちに待っているんだもの。その国民の知りたいという気持ちにはやはり法務省は応ずるという姿勢でなければ話にならないんじゃないでしょうか。
  308. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま言われたように、待ちに待った、国民が早く知りたい、こういう偽らざる気持ちを法務大臣は的確につかまれていると思うわけでありますけれども、そうなれば、私は中間報告はできるだけ早くした方がいいんじゃないかというような感じが実はするわけなんですが、その点についてどういうふうに思われているかという点、それから、いやいや、そうじゃない、ある捜査がもう大詰めに来て、ある程度確証が得られた時点に中間報告をするんだというのでは、ちょっとその点は時期的に言って、国民が期待しているというようなわけにはいかないので、早いめどにおやりになるというふうにお考えになっているかどうか、その点については……。
  309. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 検事総長の報告を指図したり催促したりする気持ちはありません。そういうことでは、本当に君を信頼するからということがうそになってしまうんだから、万事その時期等についても自発的に、必ずある段階に来れば報告を申し上げますと、こう言っているんですから、それを信頼して報告を待っている。報告を待って、その次の段階の捜査に妨げないという種類のものは中間報告をして国民の要望にこたえる。ことに鈴切さんのような方にこたえる、こういうのが私の姿勢です。
  310. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中間報告をする内容は、いかなる方法によって収拾されるかという問題が実はあるわけです。たとえば、いままで法務大臣は検察庁の方から報告を全然聞いておられないということはないと思うのですが、その点、どのくらいお話を聞いておられるか、毎日お聞きになっているかあるいは会うたびごとにというか、上司であられる法務大臣にはやはりそれなりの内容の報告があると思いますけれども、その点はどうなんでしょうか。
  311. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 直接検事総長から法務大臣が報告を受けたことはまだ一度もございません。刑事局長を通じて、捜査本部というのか何か知りませんけれども、脱税、外為法違反で児玉を起訴する前日、それから、よく委員会等で質問を受けまして、たとえば丸紅の二人の国会証人に呼ばれた人が起訴されないのはどういうことかとか、そういうことは、こういうことを質問されたら刑事局長、ちょっとどういうのだろうねと、それに対して刑事局長は、それは聞いてみましょうと言って、それはまだ証拠が固まらないからです、不十分だからですというようなことについては両三回報告を受けている。間接に刑事局長を通じて報告を受けておりますが、まだ煮詰まっていかないものですから、検事総長がやってきて、いよいよ報告に来ました、早く来てくれればいいがなとは思いますが、そんなことを言えば、もう向こうが急いで、ざる碁のへた碁みたいなことをやってもこれを逃がしちゃうから、だから自発的に向こうの報告を待っている。これが正しいんじゃないかと私は思います。
  312. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 検事総長のその報告に対して、法務大臣は、中間報告をするということについて、待ちに待っているのだというような感じのいま御答弁なんですけれども、それでよろしゅうございましょうか。
  313. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 事態の究明は早いに越したことはないのですから、待ちに待っていますね。ただ、こういう二国にまたがる、世界じゅうにまたがると言ってもよいくらいな大事件で、難事件であることはいままでしばしば申し上げたところでございます。幾ら早く来てくれればいいがなと思っておったって、そう早くはないだろう、一週間や二週間先には中間報告に来るだろうなんという期待を持つことは、私、幾ら何でも法律家としてそんな期待は持てません。ただしかし、刑事訴訟法の立法の精神を踏まえて言うのですから、第一条に適正、迅速にとあるのですから、これが職務なのですから、迅速にやって迅速に持ってくるという運びをいま一生懸命にやっている、そういう段階だというふうに御承知願いたいと思います。
  314. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、検事総長のいわゆる報告を待って言うならば中間報告をしたいのだということであって、いままで安原刑事局長を通じていろいろお話を承った、それを総合して中間報告をするという形ではないのだ、こう判断してよろしゅうございましょうか。
  315. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それでよろしゅうございます。
  316. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま法務大臣が御答弁されたことは、これは議事録にも当然載ることでございますから、検事総長も、あなたが直接電話をかけなくても、これがどういうふうに国会において論議されているかということを全部見て、分析をされていることでありますから、あなたの意は当然伝わるもの、このように判断しておるわけでございます。  それで、その内容なんですけれども、これは捜査当局の妨げになってはならないけれども、いままでの捜査の経緯とかあるいはロッキードの解明に対するほのかなる自信とか、そういうふうな内容になるのか、どういうふうな内容になるか。これは検事総長が報告しなくちゃわからないけれども、法務大臣は、あなたも専門家でありますけれども、そういう内容については大体どんなことが想像されましょうか。
  317. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 この事件についての国民的な関心、国を挙げての関心ですね。その事件の捜査を担当する検察庁が、それは非常な決意を持っていると思いますよ、持たなければおかしい、必ず持っていますね。それから、あの私の法務省大臣室においてのいろいろな空気から考えて、非常に熱心にやっている。必ずこの事態の究明をせずにおくものかという意気込み及び自信満々ではないかというふうに私は感じます。
  318. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それで、国民はいま、法務大臣が中間報告をされるということで、これはいつごろになるだろうかということですね、これをちょっと期待しているわけです。いまあなたがおっしゃるのは、一週間や十日なんていうのは常識ではないんだとおっしゃっておりますけれども、私は素人で率直にお聞きするわけですけれども、専門家のあなたとすれば、空気の張り詰めぐあいと進展の動向、こう考えていきますと、中間報告というのは大体一カ月以内ぐらいに起こるというふうに考えてよろしゅうございますかな。
  319. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 あなたは素人だとおっしゃる、そして私のことを専門家だとおっしゃいますが、私は、法務大臣ではありますけれども、犯罪捜査の専門家ではないんで、それから検事をやった経験もありませんし、ですから、そういう点についての専門家といえば刑事局長だな。刑事局長が答弁者として適任でしょう。
  320. 安原美穂

    ○安原政府委員 中間報告というものがどういう段階でなされるかということが必ずしも明確でないことでございますので、またしたがって、いつごろかということを申し上げることもなかなかむずかしいわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほど大臣の申されますように、本件は、予算委員会でも申し上げましたように、チャーチ委員会といういわば公開の席上において、日本のいわば政界というものにあるいは官界というものに疑惑が投げかけられた。これは日本の検察としては、その存否を含めて究明せずばおくまいという立場に立たされて、そしてスタートした事件であります。  大体汚職事件につきましては、綿密な資料を秘密のうちに収集いたしまして、内偵を遂げて、そして逮捕、勾留ができるというような状態で初めて顕在化するというのが常套の手段でございまして、このように公開捜査のような形でスタートすること自体が異例に属します。それはある意味においては、隠密を旨とする検察あるいは捜査の慣例からいくと、非常なハンディキャップを負っている事件でございます。これは御理解いただけると思います。それからもう一つは、先ほど来御質問ございましたが、有力な関係人なり証人がアメリカにあるというのは、これまたいままでの日本のいわゆる疑獄事件における捜査の内容と比べまして、きわめて異例でございます。  そういう二つのハンディキャップを背負っている事件でございますので、いませっかく鈴切先生からお尋ねでございますが、いつの段階において報告ができるようになるかということは、これは従来、私は専門家でございませんが寸大臣は若干経験がございますが、大体見込みというものは経験から割り出すわけですから、弁解ではございません、経験のない事件であるがゆえにいつということは申し上げることが非常にむずかしい事件であるということは、どうかひとつ御理解いただきたいと思います。  なお、少なくとも法務大臣には、これは何らかの意味での被疑者の逮捕というような事態に進みました場合には、必ず事前に報告を申し上げることになるものと私、信じておりますので、その段階一つの中間報告の段階であろうと思いますが、まだいつその段階に来るかということは明確に申し上げかねるというのが、本当に包み隠しのない実情でございます。
  321. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大臣、いまの答弁を聞いておりますと、中間報告というのは、被疑者の逮捕に踏み切るときの時点が大体中間報告の時点である、それが一番適切な時点じゃないかといま安原刑事局長が言われましたわけですが、そういうふうにとってよろしゅうございますか。それは決して遠い時期ではないということでしょうかね。
  322. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私、この間の鬼木さんの質問に答えて、中間報告すべきものがあればいたしますと、こう申し上げたのは、こういう経緯があるのです。私は、あの実務取り決めに次官が行って調印がなされたということで、それを検事総長が知って私のところへ、どうもいろいろありがとうございました、取り決めがなされて資料が渡ってきますと、捜査は一層進みますということを言いましたから、その資料はある場合にはいわゆるガバメントオフィシャルなんかの名前が載っている場合もあるだろうから、それをおれが見ると、不偏不党ということについて国民に疑惑を生ずるようなおそれもあるから、法務省の建物の中には入れないでそっちへすぐ持っていくからしっかりやってください、こう申したのです。そうして、ただし責任は私がとりますよ、責任を回避するんじゃありませんよ、こういうことを申し上げましたら、わかりました、こう言うから、ただしかし、捜査の推移によってある段階、重大な段階に来たら報告はしてもらわにゃいかぬよ、それはもちろんでございますというわけであったから、あの鬼木さんの質問に——そうしてある重大な段階というのは、一遍にごそっと来るわけじゃないのですな。たとえば逮捕者が出るとかそういうようなことに段階を追うてきますから、その都度それはこういうことで逮捕に踏み切りましたとかという報告があれば、それはもう事実になっているのですから、私から、そのことは新聞に書いてあるだけでなく、そのとおりでございますという報告をいたすべきものだな、こういう底意であの答弁になっている、こういう御理解をいただきたいと思います。
  323. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまのお話を聞いておりますと、いまにも逮捕者が出るような感じを実はちょっと受けるので、だからもうその逮捕者ができる確信といいますか、そういうものはもうおありなんでしょうか。
  324. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 さあそれは、やはり人間だれでも自分に都合よく人の言葉は解釈しますわな。ああ言ったんだから結婚する意思はあるなという場合には、特に欲望が強ければ強いほど、都合よく考えるものですね。あなたは、早く早くというこういう気持ちがおありになるものだから、私が一週間や十日でできるものですかと言うと、一月くらいかななんてすぐそういうふうにやられますけれども、それは迷惑なんだな。それは専門家である刑事局長の申したのが正確であって、私もそう思いますとこう言わざるを得ません。
  325. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま刑事局長は、私はそういう経験が余りないけれども大臣は経験がおありだから、そういう経験の中において判断される問題であるというようにおっしゃったんじゃないでしょうか。その点は……。
  326. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そういうことを刑事局長が言ったとすれば、事実に反する。私は経験がないですものね。やはり刑事局長も、現場にいたことが少ないという意味で余り経験がないと、こう言われたのかもしれませんな。
  327. 安原美穂

    ○安原政府委員 私、大臣よりは経験はあると言うべきでありましょうが、経験に徴しても、今回の事件は、経験にないような異例のケースであるから、経験から見通しをつけるのが通例であるとすれば、その従来の経験は余り参考にならないという意味を含めて、その見通しのつけにくい事件でございますということを申し上げたつもりでございます。
  328. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中間報告はなされると言いますから、当然最終報告というのもなされるわけでしょうね。
  329. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 これはまたしなければ、それをやって初めてクロというのが出てくるんだから、世の中にいわゆるどういうものが灰色なのか知らぬけれども、それについての政治責任を追及する国会の場面が、国会の調査権ということがそこに出てくるのですから、終末の報告は当然でございます。
  330. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中間報告するのにどのような形でなされるかという問題があろうかと思いますけれども、当該検察庁の検事正が記者会見をしてやられるという方法もまたあると思いますね。それからいま大臣が言われたように、検事正から報告を受けて、そして国会で答弁の形で出される場合もあるでしょうし、また言うならば記者会見される場合もありますね。それからまた、場合によっては法務大臣の上司である総理大臣にそれを報告をして内閣においてこれを発表する、そういう形もあると思いますよね。どういうふうな形になりましょうかね、中間報告というのは。
  331. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そのときの事案の軽重によると思います。
  332. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのときの事案の軽重によるということでありますけれども、法務大臣は、きょうの閣議後の記者会見で、十七日の自民党ロッキード問題調査特別委員会で法務大臣が言われた中に、まず第一に、ロッキード関係で参考人並びに被疑者を含めて百三十人ぐらいお呼びになっている、聴取されている、こういう話です。百三十人ということなんですが、実際には安原刑事局長、百三十人で一人が二回とかあるいは三回調べられるときもあるわけですね、参考人が呼ばれる場合がある。延べ人数はどれくらいになりましょうか。
  333. 安原美穂

    ○安原政府委員 自民党の委員会の席に私、参っておりませんので、大臣がどう申されたかは承知いたしませんが、先ほど大臣が記者会見で述べられたのは、私がかつて——かつてというとそんな前でございませんが、予算委員会段階で取り調べた人の数は百人を超えますということを申し上げたので、その後の時間の経過を勘定すれば三割ぐらいふえたんではなかろうかな、こんなことをおっしゃったのが新聞記事になったということでございます。しかし、私、正確には実は報告は受けておりませんが、私の百人を超えるというのは実人員でございまして、延べ人員ではございません。中には同じ方を何回も取り調べていることも事実でございますので、延べになりますと数百人ということになるんではないかと思います。
  334. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大臣の百三十人というのは、あの当時安原刑事局長が百人だと言って、それから進展ぐあいで大体百三十人ぐらいだと、こういうあいまいな数字でしょうか。
  335. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 あいまいな数字です。
  336. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのとき大臣は、百三十人以上も調べたから「中には———や———ばかりでもあるまい」と、———と———ということは小物ということですね。小物ばかりじゃないだろうと言うから、大臣えらいそういうふうなことをおっしゃるということは——とか———みたいな大物か含まれているということでよろしゅうございましょうか。
  337. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それはいま新聞を見ましたら、高官をも含めて——、———というふうに、大物というふうに書いてありますが、そんなことを言ったんじゃないのです。私は、———や———ばかりじゃあるまいというのは、現に児玉は———や———じゃあるまいがな、これはちゃんと呼んで起訴しているんだから、それに匹敵するものも含まれるというのは常識じゃないでしょうかね。そういう意味で———、———のたぐいばかりじゃあるまいが、こういうことです。
  338. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府高官ということは、児玉さんはいわゆる政府高官じゃないわけですけれども、政府高官の中にいわゆる——とか———みたいなのがいるかどうかという問題もありますね。
  339. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私、政府関係者とか政府高官とか、そういうことは一言も言ってないのだ。ただ、百何十人も調べて、全部———、———みたいなものではないことは、それは常識上当然じゃないかと言うただけです。高官をも含めてということはないね。そこに記者諸君……(「あなた、いま———、———と言われました」と呼ぶ者あり)———、———です。しかし、これは正式な委員会でございますから、人間をつかまえて———、———と言うことはやめましょう。それは新聞記者会見で雑談の中では仮に用いていい言葉であっても、こういう席でそういうことは……。私、失敗したと思う。
  340. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま失敗をお気づきになれば、それは取り消してもいいと思います。やはり小物とか大物というのをたとえていわれたと思いますよ。私も、大変に法務大臣はユーモアにお話しになったかもわかりませんけれども、国会で取り上げられるとなればやはり問題はあろうかと思います。  そこで、法務大臣はそのときに、囲碁においても近代的な囲碁というのは時間制限があるのだ、昔は囲碁をやっても何日も何日もかかる状態だったけれども、時間制限がある、こうおっしゃっている以上は、今度の問題も時間制限がある、このようにお考えになっておられると思いますけれども、その時間制限のめどは、法務大臣としては大体いつごろまでにはつくだろうというようにお考えになっていましょうかね。
  341. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 さあそこが——私は、刑事局長が言うているように、時間に制限なくやるというわけのものではない。一年も二年も三年もかかってやるというようなそんな悠長なものではない。国民のこの問題に対する期待、それから国会の関心、国を挙げてのあれですからね。あれだけの陣容であれだけの熱心さを持って有能な人間がそろってやっているのですから、そんなあなた、大体常識として、三カ月たったのだ、長くたってあと三カ月もたてばどうにかなるのじゃなかろうかなというふうな感じで私はいるわけだけれども、そういうことを言いますと、捜査当局が、大臣あんなこと言っているが困ったものだ、急げ急げとか、拙速でやるとか、そんなふうになっては非常に困りますからね。やはりある段階へ来てきちっと発表する場合には、はあ、なるほどよくやった、正確なものだな、そうしてそのことについての公判の維持についてもきちんとしたものにならなければいかぬ、こうは思います。
  342. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 安原刑事局長に聞きますが、いわゆる不起訴というケースにはいろいろあると思いますけれども、ロッキード問題に対してこれを具体的に当てはめた場合に、不起訴というのはどういうケースが考えられましょうか。
  343. 安原美穂

    ○安原政府委員 具体的な事件で鋭意捜査中でございますので、ロッキード事件について不起訴があるということを前提にしてどういう場合であろうかということを申し上げることは、検察当局の士気にも影響いたしますので、この際はひとつ御勘弁を願いたいと思いますが、一般に不起訴という場合にはいろいろの例がございまするけれども、犯罪公訴提起のための訴訟条件を欠く場合というものとして、時効が完成したというようなことも一つの例でございますし、それから犯罪の捜査をいたしましたが犯罪の成立がしない、犯罪が成立しないという場合は法律上成立しない場合と事実の問題として成立しない、それをいわゆる嫌疑なしと言っております。そういう場合もあります。それからまた犯罪として訴追するだけの証拠がないというのも嫌疑なし、こう言います証拠がないという場合の不起訴がございますし、嫌疑もあるけれども公訴提起をするだけの悪性がないという意味で起訴猶予という不起訴もございます。それが一般でございます。
  344. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ロッキード事件で時効とかいろいろの関係があって不起訴になってしまうケースが大分できるんじゃないかということで、大変にうやむやになってしまうんじゃないかというふうに言われているわけでありますけれども、不起訴になった場合でも公表をした例というものはございましょうね。
  345. 安原美穂

    ○安原政府委員 不起訴処分の場合におきましてもその内容を公にしたことはございます。
  346. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはどういう例でしょうか。
  347. 安原美穂

    ○安原政府委員 不起訴処分の内容を検察当局から公にするという例は、わざわざ一々例を挙げませんでも相当数あると思いますが、問題は国政調査権の発動がございました場合におきまして、国会法百四条の関係で調査がございましてお答えをした不起訴処分の内容の発表といたしまして、代表的なものといたしましては、名前を挙げることをお許し願いたいと思いますが、前新潟県知事塚田十一郎氏に係ります公職選挙法違反事件のときには、検事正の談話におきましても、また国会における国政調査に対するお答えといたしましてもその不起訴の理由を公にしたことがございます。
  348. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 札幌医大の心臓移植のときの事件が不起訴になったけれども、それはいわば大変に社会的な関心が深いということからたしか公表をされたというふうに私思っておるのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  349. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のとおり、札幌の心臓移植の事件につきましてはその内容を公にしております。その理由として、公の関心も非常に強い事件であるということもあり、告発もあったというようなこともございまして公にいたしておりますが、それは先ほど私の前提として限定して申し上げましたように、国政調査の場ではなくて、記者会見の場で検察庁当局から発表した事例でございます。
  350. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは非常に社会的な大きな問題であったがゆえにやはり国民に知ってもらいたい不起訴になった理由というものに対してのお話があったと思いますけれども、今度のロッキード問題は、大変に社会的な問題としても大きな問題であると同時に、道義的にも人道的にもまた政治的にも非常に大きな問題でありますね。そうなった場合に、不起訴処分というような状態であっても公表をされるおつもりなんでしょうか。
  351. 安原美穂

    ○安原政府委員 それはまさにしばしば問題になっております刑事訴訟法四十七条のただし書きを適用する場合かどうかという問題として大きく問題になる問題でございまして、この場合におきましては、しばしば申し上げておりますように、本来刑事訴訟法は人権の擁護あるいは捜査、裁判の妨げとならないようにという意味で、不起訴処分の内容についてはこれを公にしないというのが原則であるけれども、そういう捜査、裁判、広い意味での司法運営の利益あるいは人権の擁護という公益と比較して、なお国政調査上の要求その他一般の国民に知らせるという公益というものとの比較考量をいたしまして、後者の公益が前者の司法あるいは人権の擁護という利益を上回るという判断の場合におきましては、その内容を公表しても差し支えないというのが訴訟法の考え方でございますので、理論的には今回の場合におきまして、仮に不起訴処分ということがあるといたしますればそういうこともあり得るが、あくまでも具体的な公益比較考量の問題であるからということでございます。そうして大臣がたびたび申し上げますように、いまから不起訴の場合を予想して、こういう場合には発表するということを言うことは捜査の妨げになるので、具体的なケースを挙げて発表の有無をいまお約束することだけは御勘弁願いたいというのが検察、法務を通じての希望でございます。
  352. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四十七条の条文ですけれども、これは確かに公判開始前における資料の公開の禁止ということは言ってありますし、ただし書きがありますね。公益優先の事由によった場合においては公開をすることもある。資料の公開の禁止の中にはいわゆるプライバシーの問題と、それからもう一つは公判維持能力の問題、この二つがあるわけですね。ありますけれども、今度の場合はこれだけ国民的な関心が大きいという問題と、それから国民が公表することを望んでいるという力強い世論の動き、それからもう一つは国権の最高機関であるところの国会においての決議、それを受けて総理大臣がそれについて努力をしましょうというふうな、私はもうこれほど公益の事由の最高のものはないと思うのですけれども、その問題に対して、比較をしてさらにそれを上回るものがあるとするならば、具体的にはどういう問題でしょうか。
  353. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほど来申しましたように、そういう一方のただし書きの公益上の必要があって相当と認める場合に、上回るような片一方の原則としての公開禁止の利益、それが人権の擁護であり、それから適正な裁判の運営、そういうことを公表することが適正な裁判に支障を生ずることがあるかどうかということ、それからそういうことを公にすることが将来における司法に準じて独立なり適正が保障されるべき検察の運営に支障があるかということ、そういうこととの比較の問題でございまして、抽象的でございますけれども、結局その場に臨みませんと、そういう判断は具体的な比較考量の問題でございますので、抽象的に言えば、そのいま申し上げた三つの利益をプラスの合計が、知らせるという利益よりも上回るということにとどまるわけでありますが、具体的な問題でございますからこれ以上のことは、いまの段階では、ちょっと私いかに苦心いたしましても申し上げるわけにはいかないということを御理解いただきたいと思います。
  354. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほどお話がありましたように、参考人並びに被疑者を含めて百三十人、この方々が事情聴取をされて、延べ約数百だというようなお話がありましたけれども、参考人でも呼ばれるということは、あいつ何かあったんじゃないだろうか、実はこういう大変に負い目を負わされるのですね。法務大臣だってこの間、児玉から河本通産大臣紹介を頼まれた、こういうことで国会で再三にわたって釈明これお努めになったと同じように、やはり私はそういう方々のプライバシーの問題もあろうかと思うのですが、中には私はとにかく何でもないのにこういうふうなことで呼ばれるということで、そしてあいつは呼ばれたぞなんということになっておると、私の問題はどうしてくれるんだ、こういうことで、いっそのこと公表してもらいたい、それによって黒白をつけてもらった方がいい、こういう声もずいぶんあるのですが、これは法務大臣どうなんでしょうか。シロの方のプライバシーの問題についてはどうなんでしょうか。
  355. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 任意の取り調べを受けたということがわかってない場合でシロの場合は、いっそ言わぬ方がいいと思うのですね。世間にわかり切っていてシロの場合は、本人の名誉回復のためにも、本人がお望みになればそれはそういうふうにしてあげるのがいいというふうに素人考えとして思いますね。専門家はどうでしょうか、ちょっと正確に……。
  356. 安原美穂

    ○安原政府委員 公にするということのためには、人権の擁護ということの観点から、これは公にした方がいいという場合も一般論としてはあり得ると思います。
  357. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私もそうだと思いますよ。公にした方がかえってはっきりした場合がある。少なくとも捜査当局から参考人であるということで呼ばれたとしても、社会というものはお互いのつながりからできているわけですから、あいつは引っ張られたから何かあったんじゃないかというあれがございますので、その点も十分に配慮されて、やはりクロはクロで徹底的に明らかにしなくちゃならないですけれども、参考人として善意でいろいろ皆様方の聴取に応じている人間に対して、そういうふうなことでみずからのプライバシーが侵されるという状態があってはならない。その点十分に注意していただきたい。  堀田検事が派米されて帰られたわけなんですが、クラッターとコーチャンの重要証人から直接証言は得られなかったというふうに言われているわけであります。そうなると司法共助については具体的にもう手続をせられましたか。
  358. 安原美穂

    ○安原政府委員 いたしておりません。
  359. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大体いつごろおやりになるのですか。
  360. 安原美穂

    ○安原政府委員 これもいつごろということはまだ申し上げるわけにはいかないのでございますが、至急にそういうことをするかどうかの判断をしなければならない時期に来ておるということは事実でございます。
  361. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 至急に判断というわけでありますけれども、結局コーチャンあるいはクラッターの重要証人の証言を得なければ、いま一歩確証がつかめないという状態だから堀田検事がアメリカへ行って、そういう証言を得たいということで一回行かれたわけですから、当然司法共助をやらなければどうにもならない問題でしょう。
  362. 安原美穂

    ○安原政府委員 アメリカにおける関係者から直接事情を聞かなければどうにもならないことかどうかということは、けさほども申し上げたように、それは捜査の進行状況を申し上げることにもなりますので私の口から申し上げるわけにはいきませんが、先ほど来一般論として申し上げておりますように、本件は有力な関係者がアメリカにおることは事実でございますから、それらの者から何らかの方法で事情を聴取することが有力な捜査方法であることは否定すべくもないことでありますので、そういう方法をぜひ講ずるべき事案であるということは事実でございます。
  363. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 手続が何か非常にむずかしいということを言われているのですけれども、司法共助にはどういうふうな手続を経て、相手方のアメリカから証人を得るまでのその経過というものはどんなふうな経過になりましょうか。
  364. 安原美穂

    ○安原政府委員 司法共助をお願いするといたしますと、東京地検から東京地方裁判所の裁判官に対しまして、刑事訴訟法二百二十六条で公判前に重要な参考人を証人として取り調べてもらいたいという証拠調べの請求をするわけです。そういたしますと東京地方裁判所としては、これは外国におる関係者でございますから、外国の裁判所にその証人尋問を嘱託するかどうかを考慮いたしまして、嘱託をするという決定をいたしますと、裁判所の名において嘱託書を最高裁判所を通じて、外務省を通じまして、従来の例によりますとアメリカにあります日本の大使館に送りまして、大使館からアメリカの連邦司法省、司法省から関係のアメリカの裁判所の裁判官の方へというような手続を経て、アメリカの裁判所がアメリカ法によって証人尋問をする、こういうことになるわけでございます。
  365. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、手続上尋問をするのは一番最終的なあれなんですけれども、いまそういうふうな経過を経て手続をやっておりますと、自動的にそういう手続をずっとやっていきますと、大体何日ぐらいかかるというふうに判断されていましょうか。それをやはりちゃんと頭に入れておきませんと、これからやるにしても何にしても、何日間ぐらいはかかるんだということがあろうかと思います。何日ぐらいでしょうか。
  366. 安原美穂

    ○安原政府委員 これは結論から申しまして、どれくらいかかるかわかりません。長いものは数カ月もかかるような例もあるようでございます。これはアメリカとの司法共助の精神にかんがみまして、できるだけ早く証人尋問を終えてもらいたいという希望を表明し、かつ、先方もそれに協力してくれるものと信じておりますが、これはケース・バイ・ケースでございますし、ちょっと私の口から何日かかるということを明言することは、実際問題としてできないのでございます。
  367. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ロッキード問題は、これからロッキードに関する調査特別委員会等でいろいろまた法務大臣とも相まみえながら、国会においての役割りを果たしていきたいと思っております。  もう私の質問であと終わりで、皆さん方かなりお待ちかねのようでございますから、ちょっと早めに質問を終了して、以上をもって終わります。
  368. 木野晴夫

    木野委員長代理 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  369. 木野晴夫

    木野委員長代理 ただいま委員長の手元に松本十郎君から本案に対する修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。松本十郎君。
  370. 松本十郎

    ○松本(十)委員 ただいま議題となりました法務省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付しておりますので朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、原案では施行期日を「昭和五十一年四月一日」としておりますが、すでにその日が経過しておりますので、これを「公布の日」に改めようとするものであります。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  371. 木野晴夫

    木野委員長代理 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  372. 木野晴夫

    木野委員長代理 これより討論に入ります。  原案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。中路雅弘君。
  373. 中路雅弘

    ○中路委員 簡潔に本法案に反対の討論を行います。  行政機構の改革は、国民への行政サービスの改善、公正で民主的なむだのない行政を目指すものでなければなりません。本法案提出の背景は、国側が被告になっている訴訟、たとえば教科書検定訴訟や長沼ナイキ基地訴訟、大阪国際空港訴訟などに見られる訴訟事務の処理を効率的に進めようとするもので、国民行政サービスの改善ではなく、反動的な裁判体制の強化にあります。  また、局に格上げしても定員及び事務内容と量が変わらないにもかかわらず、入国管理局次長と参事官二名の削減と引きかえにしてまで局に格上げしようとすることで、国側裁判体制の強化確立をもくろむ本法案には反対をいたします。  この際、終わりに一言付言させていただきますが、稻葉法務大臣がロッキード疑獄の中心人物の一人である児玉と旧知の間柄であり、ジャパンライン株買い占め事件で児玉を河本通産相に紹介した事実や、児玉の秘書太刀川の大学入学のあっせんをしたことなどが判明したことは、稻葉氏自身がロッキード疑獄の捜査を指揮する立場、法の番人である法務大臣であるだけに、その資格にもかかわるきわめて重大な問題であります。稻葉法務大臣は遺憾の意を表明されましたが、この問題は遺憾の意で済む性質の問題ではありません。ロッキード問題の真相究明を速やかに徹底的に行うために、事件の中心人物と親交の関係にある稻葉法務大臣は刑事責任追究の最高責任者として適格でなく、法務大臣みずから辞任をも考えるべきであるという意見を述べ、討論を終わります。
  374. 木野晴夫

    木野委員長代理 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  375. 木野晴夫

    木野委員長代理 これより採決に入ります。  法務省設置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、松本十郎君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  376. 木野晴夫

    木野委員長代理 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  377. 木野晴夫

    木野委員長代理 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。  なお、ただいま修正議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  378. 木野晴夫

    木野委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  379. 木野晴夫

    木野委員長代理 本日の質疑応答中、穏当を欠くと思われる言辞がございましたので、後刻速記録を調べまして適当に措置いたします。  次回は、明後二十日木曜日、午前十一時理事会、十一時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十一分散会