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隅井参考人 ローカル放送の問題でありますけれ
ども、正直に言っていま
NHKの
番組のほとんどが中央——若干は大阪、名古屋な
どもありますけれ
ども、中央で
制作されて全国各地へ流されるという形態をとっていることから、それぞれの地域、地方に住んでいる方々にとって必ずしも身近な
存在ではないというふうに受けとめざるを得ないような
状況があるのだろうと思います。私が申し述べたいことは、
NHKが
国民の
放送局だというふうなことでみんなが納得するということであれば、やはり身近な
放送局なんだというふうなことにぜひ転換をしていただきたいということを強く
希望しているわけです。
たとえば
先ほども沖繩の例が出ましたけれ
ども、沖繩は沖繩で毎日のようにたくさんの
ニュースがあるわけですし出来事もあるわけですし、それから沖繩の方々は特に沖繩の民謡とかあるいは沖繩の基地の問題とか海洋博の問題とか、いろんなことで関心を持たれているわけですけれ
ども、それが東京から突然来た取材班によって取材されて東京から流されるということでは、どうしても沖繩の人
たちの気持ちにぴったりこないという、そういう指摘は間違いないと思うのです。ですから、たとえば沖繩であれば沖繩で沖繩の県民に向けての
ニュースをたくさん取材し
放送するとか、沖繩の県民が非常に望んでいる沖繩の民族芸能とか民謡とかいう
放送時間をたくさんとるとかいうふうな
努力を全国各地で積み重ねていくということがあれば、
国民もやはり
NHKは身近な
放送局だというふうな、同時に中央での重要な
ニュースも全国ネットでちゃんと送られてくるというふうなことで信頼感がうんと強まるというふうに考えます。
先ほどもちょっと申し上げましたけれ
ども、
経営状態が若干困難だということでいま
NHKの当局が進められている政策は、それに逆行するようなことになって、地方で活躍をしたいということで期待をされて配属をされたローカル局のアナウンサーの方々が事実上かなり
仕事がない、余り
ニュースの時間がなくて原稿も読めないという状態に置かれているということは、そういう
意味では
受信料が正しく使われていないということであるわけです。全国各地に
NHKのスタッフもたくさんおりますし、働いている方もたくさんいるわけですし、それから幸か不幸かということになりますけれ
ども、りっぱな
放送会館もすべての都市にくまなくつくられているわけですから、できるだけそういった
NHKのいま持っている力を十分発揮していただくように、ぜひ
放送計画なり
経営計画を考えていただきたいということを
ローカル放送に関しては申し上げたいと思います。
特に最近では、もちろん東京でいろいろな事件が起きる、
ニュースが出てくるということだけではなしに、地域の住民の生活とか安全とか健康にかかわり合いのあるような大きな問題、たとえば環境問題だとか交通問題だとかが山積をしているわけですから、条件としても地方の
放送番組を強化する、地
方向けの
放送番組をその地方ごとに強化するという社会的な要請は強まっているのではないかと私
たちは考えているわけです。
二番目の
経営委員会の問題であります。
経営委員会については
先ほども若干申し上げましたけれ
ども、私
たちは少なくとも
国民を
基盤とした
NHKであるのならば、
国民のいろいろな階層を代表するような人
たち、視聴者の一人一人が見てなるほどと思えるような方々が
経営委員会の座に座り、そして
NHKを
運営されていくことになれば、私
たちの払っている
受信料はむだではないんだという実感が生まれるだろうと思います。
先ほどは申し上げませんでしたけれ
ども、
経営委員会のメンバーの平均の年齢からいっても非常に高いわけですね。五十代以上という方、六十代、七十代の方々で占められていることからいっても、いま若い人
たちあるいは御婦人層あるいは中年のサラリーマンとかいう人
たちの気持ちをくんで
NHKを
運営していくということになりにくい側面もあるだろうと思います。
ヨーロッパの話ということも若干出ましたけれ
ども、少なくとも私の見聞する限り、アメリカとかヨーロッパの
経営委員会に類するような組織で、株式会社の社長さんなり
会長さんなりが座に座っておられるということはないわけです。アメリカでもロッキードだとかGEだとかフォードだとかいう会社の社長さんが
放送委員会のメンバーになるということではなくて、やはり社会的にも信頼されて
放送の問題にも専門的な
立場をとられるような方々、あるいは市民のいろいろな運動の中から出てこられた方々、専門的なジャーナリストの方々が共和党なり民主党なりの推薦の中で七人の
委員を構成しているということで、企業家とかいわゆる資本家といわれている方が
存在しているということはアメリカですらありません。
ヨーロッパでも、これは例を申し上げれば切りがありませんけれ
ども、たとえばそういう
意味では一番配慮がされている西ドイツの場合を取り上げますと、西ドイツの
放送局を
運営している
放送委員会、西ドイツの場合には州単位の
放送局ですから、たとえばケルンの
放送局ということで例にとりますと、
日本の
経営委員会に当たる四十一人の
放送委員の方がおられます。州の
政府の代表の方も一名入っておられますけれ
ども、州の議会を代表して九人の方々、これは
政党の比例で入られているように思います。それから教会を代表する、プロテスタントとかカトリックとかの教会を代表される方が三名、
労働組合の代表が二名、農民の代表が二名、それから経済団体ですね、
日本でいうと商工
会議所とかいうところですけれ
ども、その方々が二名、自治体を代表される方が二名、あとは青年、婦人それから諸団体、諸団体と申しますのは、
日本でいうと体育協会、体協とか、それから自家営業者連盟といいますと中小企業団体だと思いますが、そういうところの方々、スポーツ連盟の方々、PTAの方、大学から出てこられた方、その地域に住まわれている作家の協議会の代表の方、作曲家の代表の方、オペラ劇場の代表の方、ジャーナリスト協会の代表の方、そういう四十一人の方々が集団的に討議をしながら
運営をしているという方法をとっているわけです。
民主主義が発達しているといわれているスウェーデンの場合には、二十二人で
理事会が構成されていますけれ
ども、議会の代表が十名です。これも
先ほど申し上げたように
政党の比例配分でありますけれ
ども、あとは産業界から二名、新聞界から二名、それから各種団体、
先ほど申し上げましたようなスポーツ団体とかPTAだとか教師の団体だとか社会的な団体から六名、そしてスウェーデン
放送協会に働く従業員で組織している
労働組合の代表が二名、こういった二十二名の方々で
放送局が
運営されているわけです。したがって、私が申し上げたいのは、
日本のように八人もの方々、名目はたとえば地域代表というふうなことになっておりますけれ
ども、何々株式会社の取締役社長とか
会長だとか元社長で顧問だとかいう方々が過半数以上を占めて
放送局が
運営されているのは
日本だけにしかない異常な事態です。むしろ企業の責任を持たれた方は企業
活動に専念されていて、産業界、財界から出られる方は経済団体の代表ということになっていますから、そういう
意味でも
運営の面で
NHKの
経営委員の場合にはぼくらはいろいろ問題があると言わざるを得ないと思います。
選出の方法は、できるだけ
民主主義的な、
国民の多数の意向を反映する方法をというふうに申し上げるしか方法はないと思います。たとえばそれぞれみんな立候補者がありまして、受信者が投票して選んでもいいということがありますが、そうすれば手数が非常に大変ではないかということもあるでしょう。あるいは議会で選んだらどうかということになりますけれ
ども、議会の比例配分がどうなっているかということで問題点があると思います。どんな方法をとっても若干の問題点が残りますので、この場では断言することを避けたいと思いますけれ
ども、要するに
国民が納得し、これはやはり民主的に選ばれたものだし、私
たちの代表だというふうに言われる方々が
経営委員会の席に座られるようなことをぜひ検討していただきたい。若干の改善でも結構ですからしでいただきたいと思います。
それから最後に反論権の問題ですけれ
ども、たとえばアメリカの場合の例をぜひ申し上げたいと思います。
御存じのように、前のエクソン大統領というのは、テレビを活用して政策の宣伝を行われたりキャンペーンを行われたりすることに非常に力を傾けられた方でありますけれ
ども、しばしば全国ネットワークのテレビに登場して、大統領の演説を長時間にわたって重要問題について行うという方式をとってきました。しかしこのことが、アメリカの社会の中で
放送の公正という原則からいって問題はないのだろうかということになりまして問題になった結果、一九七〇年の八月にアメリカの連邦通信
委員会ではこういう決定をしております。
「ニクソン大統領のインドシナ戦争に関するテレビ演説が、アメリカの総司令官の
立場でなく、一党の
立場に立った、政治的な色彩の強いものであることをみとめる。反対党が、」これは民主党という
意味です。「これに反論する機会を無料で与えるようテレビ会社に要求することは正当であり、連邦通信委「公正原則」にもとづき、テレビ会社はその要求にこたえなければならない。」このことをきっかけにしまして、最近ではアメリカのテレビ局では共和党と民主党との間での
放送の利用の平等ということが行われておりますし、選挙のときにもそうですけれ
ども、何か重要な問題での一方的な演説があった場合には反論が保障されるということで、片方がやめろということではなく反論を保障するということで
運営されているというふうに私
たちは伺っているわけです。
それからイギリスの場合ですけれ
ども、イギリスのBBCの場合でも、たとえば
国会で
予算委員会が開かれます。
国会の
予算委員会で与党あるいは
政府の方が
予算の提案なり趣旨説明なりをしますと、その後でイギリスのBBCの
放送局は、これは一定の義務になっているわけですけれ
ども、反対党のシャドーキャビネットの大蔵大臣が
自分たちの
予算の考え方あるいは
政府の案に対する
批判的な
意見をテレビを通じて長時間、ほぼ一時間ぐらいになると思いますが、
放送することが義務づけられています。与党の方は
国会でやります。野党の方は施政方針演説ができないわけですから、テレビを使って一定の時間やるということが義務づけられているとか、あるいは選挙の近辺になりますと各
政党が、民主党も、保守党も労働党も平等にこの
政党の時間というのを夜遅く十一時台ですけれ
ども、一時間ぐらい回り持ちで持ちながら
自分たちの政策を訴えていくというふうなことでの反論権といいますか平等といいますか、そういうことが保証されているというふうなことがあります。
政党だけではありませんで、イタリアで最近
放送法が改まりまして新しい方式がとられましたけれ
ども、たとえば労働者なり
労働組合の発言する機会がテレビでいままで非常に少なかった。
政府のいろいろ
労働組合の賃金の引き上げは不当だとかストライキはけしからぬとかいう
放送はたくさんあったけれ
ども、
労働組合はどういうつもりかということを言う機会が非常に少なかったという反省が議会の中で生まれまして、
労働組合に一定の時間、幾つかの
労働組合がありますから持ち回りということになりますけれ
ども、その主張なり
意見なり方針なりを述べるという機会を与えるというふうな
番組が特別に設置をされたというイタリアの経験な
どもあります。
そういうことも含めて、私
たちは、総理大臣が
NHKを通じて
国民に話しかけるということをやめろということを主張していません。しかし、総理大臣がやる以上、やはりアメリカとかイギリスとかイタリアで行われているように、それ以外の
政党なり社会的なグループなり、そういう人
たちがやはり平等に
意見を述べる機会を、三木総理大臣が発言をしたら成田
委員長も宮本
委員長も、それから竹入
委員長もやはり同じ時間ちゃんと
国民に向かって
意見が伝達できるのだという、そういうことにしていきたいし、
NHKが積極的にそういう
方向をとられるようにぜひ
希望したいと思うのです。もちろん、野党の
委員長な
ども最近テレビにしばしばお出になるという機会もふえているようですけれ
ども、主としてやはり正月に改まったところで新春対談ということでお出になるというふうなことにほほ限られているということがありますから、重要な問題が起こったその都度ということになれば、やはり非常に少ないだろうというふうに思わざるを得ないわけであります。
それやこれやいろいろ勘案しまして、私は、
日本の
NHKでも、やはり
国民がいろいろな問題についてのいろいろな
意見を多面的に摂取して聞きながら物事を
判断していくということが可能な方策をとることができるのではないかというふうに考えますので、ぜひ皆様方のそういうことに対する積極的な御検討をお願いしたいというふうに思っているわけであります。
〔三ツ林
委員長代理退席、
委員長着席〕