○小野
参考人 御承知のとおり
NHKではほとんど
値上げの経験を持っておりません。はるかに遠い
昭和三十四年におきまして、
ラジオ料金六十七円を八十五円に
値上げをしたことは、
値上げの唯一の経過ではないかと思います。しかしこの
料金もそれから三年たちました三十七年におきましては、
テレビと
ラジオの別
料金立てでなく一体化いたしまして、三百円の
テレビ料金に八十五円でなく三十円を加えました三百三十円をもって
テレビ、
ラジオ全体をひっくるめての単一の
料金にいたしました。これはその前に三百円と
ラジオ料金の八十五円を支払わなければならぬたてまえのもとにおきましては一八%の値下げでございます。
ラジオだけを持っておられる向きについては、八十五円の
料金は三十七年には五十円にいたしましたので、四〇%の値下げでございます。そのような値下げをいたしましても運営ができてまいり、難視聴の要望にもこたえ、あるいは教育
テレビの整備、FMの整備も可能にいたしましたそれは、
テレビの急激な普及の上昇であったと思います。下って四十三年には白黒の
テレビ料金は三百三十円を逆に三百十五円に値下げをいたしております。と同時にカラー
料金を新たに新設いたしました。これは将来カラーの
時代を迎えるのに当たりまして、必要なコストを計算して決めたものでございますが、世間では、これが財政の安定に資したことは事実でございますけれ
ども、
値上げと見られておる向きもございます。これは新しいサビスに対する新しい
料金を設定したものでございまして、その料額もBBCのような白黒の倍額がカラー
料金、こうなっておるそれから見ますと五〇%増にとどまっておるわけでございまして、世界では
NHKのカラー
料金は非常に安い、こういう目で見られております。これは世間では
値上げと言われますけれ
ども、新種
サービスに対する新種
料金の設定でございます。それはともかく、あるいは
値上げのように見られて、幾らそういうことを申しましてもこれは通用しない面もございます。仮に
値上げといたしましても、それから以後八年間というものはそれによる
収入の
伸びは四十六年がピークでございまして、わずかに九・四%の
収入増でございました。その当時の諸般の
料金を見ますと、電電にしても国鉄にしてもそんな低いものではございません。電電あたりは一七%の増ぐらいになっております。国鉄にしても九・四%を上回っております。自来四十七年、四十八年とこの
伸び率は低下しておりまして、九・四%は九%に、あるいは七・五%、五・六%、五十年度に至っては実に四・一%であります。その間に
石油ショックその他によるインフレ、急激な物価上昇、人件費の上昇等もございました。それはそういったような
状況で耐えてまいりました。しかも
昭和四十七年には
赤字予算を組んでおります。このときに将来の
契約の
伸び悩み、物価の上昇、人件費の上昇の事実は予見できたことでございますので、実際はその時期に将来の財政の安定を図る
料金のてこ入れをしなければならなかったのでございますけれ
ども、これはいろいろな合理化の措置でがまんをいたしました。越えて四十八年には、これは恒久的や
収入ではございませんが、ごく一時的な
収入として、世間の非常な、また別の意味の批判はございましたけれ
ども、田村町における土地建物が非常に高く売れましたので、そういった
赤字経営の趨勢に対して何がしかの当座をしのぐことにはなりました。そのころに将来三年間は
値上げをしない、こういう公約を前
会長もいたしまして、その公約のとおりに、非常な社会環境の激変にもかかわらず、しかも
収入の一層の鈍化にもかかわらず
赤字を計上し、これは借金で穴埋めして、
料金値上げをしないで今日に至ったわけでございます。たまたまいま
料金値上げには環境の悪いときでございます。こういうときに遭遇いたしましたことは非常に私
ども残念でございますけれ
ども、それかといって財政に対するいわゆるそういう破局的な
状況を続けることは将来に禍根を残し、続いては
公共放送としての
国民の
負託にもこたえ得ないことに遭遇する危険もございますので、一応そういうようなことを
考えまして
料金の調整に手をつけたわけでございます。
〔
委員長退席、三ツ林
委員長代理着席〕
この
料金のいわゆる算出の根拠といたしましては、いろんな合理化措置を積み重ねながら、
公共放送として、
国民の
放送機関としての
負託にこたえるための報道、教育、教養この
番組の充実をも
考えながら計算をいたしたものでございまして、カラー
テレビにおきまして五二・七%、白黒
テレビはいろんな配慮を下しましたけれ
ども、三三・三%の
値上げでございます。両方を突っ込んで約五〇%の
値上げでございます。パーセンテージとしては非常に高いのでございますけれ
ども、
昭和三十四年以来ほとんど
値上げといった経験を持たない事業運営というのは恐らくほかには余り例がないのではないかと思います。カラー
料金を設定しましたこの八年間でも、数回の
値上げをしなければやっていけないような企業もございました。
NHKは非常に安閑としてこの料額が維持できたわけじゃございませんけれ
ども、いろんな
赤字を忍び、またそこには合理化の努力を積み重ねながら八年間は全然
値上げをしないでやってまいって、ここに至って、非常なそういう
料金値上げをしなければならなかったわけでございます。この点については
受信者の方々に与える
一つの心理的なそれ、あるいは物理的なそういった
影響等にかんがみましていろんな配意も下したわけでございますし、基本問題
調査会でもこの辺は真剣に御討議をいただいたのでありますけれ
ども、五〇%というと大きいようでございますけれ
ども、しかしそれかといって、決してこれを軽く
考えておるわけじゃございませんが、
昭和三十四年当時、
テレビ料金と
ラジオ料金を合わせて払わなければならなかった当時の家計費に圧迫を加える度合いは一・三一%でございました。その後、先ほど申し上げましたように三十七年には値下げをいたしておりますので一・三一%の
負担率は〇・八%に落ち、自後漸次下がりまして、前年度では〇・三%の
負担ということになっております。今回の五〇%の
料金値上げをいたしましても〇・四二%、この御
負担を願う、こういうような
状況でございますので、この点については、いま時期が悪いのですが、そういう面も十分に御理解をいただき、片や一層の合理化措置を徹底することにいたし、他面、
国民の
負託にこたえる
放送面については本当に
公共放送らしい
一つの姿勢と現実の事績を踏まえて
お答えを申し上げたい、このように
考えておる次第でございます。