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1976-05-19 第77回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十九日(水曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 田中 六助君    理事 塩川正十郎君 理事 森  美秀君    理事 山下 元利君 理事 山本 幸雄君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       大石 千八君    金子 一平君       鴨田 宗一君    瓦   力君       木野 晴夫君    小泉純一郎君       齋藤 邦吉君    野田  毅君       林  大幹君    原田  憲君       坊  秀男君    宮崎 茂一君       毛利 松平君    保岡 興治君       山中 貞則君    松浦 利尚君       武藤 山治君    村山 喜一君       山中 吾郎君    横路 孝弘君       横山 利秋君    荒木  宏君       小林 政子君    広沢 直樹君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         外務省経済局次         長       賀陽 治憲君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         大蔵政務次官  唐沢俊二郎君         大蔵大臣官房審         議官      佐上 武弘君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君  委員外出席者         外務省経済局国         際機関第二課長 福田  博君         外務省国際連合         局経済課長   太田 正利君         大蔵大臣官房審         議官      副島 有年君         通商産業省通商         政策局通商調査         課長      佐藤 剛男君         通商産業省通商         政策局国際経済         部国際経済課長 和田  裕君         通商産業省産業         政策局国際企業         課長      見学 信敬君         日本輸出入銀行         総裁      澄田  智君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   瓦   力君     栗原 祐幸君   保岡 興治君     小川 平二君   横山 利秋君     山崎 始男君 同日  辞任         補欠選任   小川 平二君     保岡 興治君   栗原 祐幸君     瓦   力君   山崎 始男君     横山 利秋君 同月十七日  辞任         補欠選任   坂口  力君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     坂口  力君 同月十八日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   金子 満広君     荒木  宏君     ――――――――――――― 五月十四日  企業組合に対する課税適正化に関する請願外  二件(前田正男紹介)(第四三二八号)  税制改正に関する請願中島武敏紹介)(第  四三二九号)  同外一件(瀬野栄次郎紹介)(第四四一七  号)  同(米原昶紹介)(第四四一八号)  付加価値税新設反対に関する請願中島武敏君  紹介)(第四三三〇号)  金融機関業務改善等に関する請願広瀬秀吉  君紹介)(第四四一四号)  相模原市キャンプ渕野辺跡地利用に関する請  願(増本一彦紹介)(第四四一五号)  付加価値税新設反対等に関する請願中島武  敏君紹介)(第四四一六号) 同月十五日  企業組合に対する課税適正化に関する請願外  十件(塚本三郎紹介)(第四五五九号)  同(石井一紹介)(第四六八三号)  同(地崎宇三郎紹介)(第四八一四号)  所得税減税等に関する請願佐藤観樹君紹  介)(第四五六〇号)  同(佐藤観樹紹介)(第四五七二号)  同(佐藤観樹紹介)(第四六八四号)  同(佐藤観樹紹介)(第四七三九号)  税制改正等に関する請願神崎敏雄紹介)(  第四六八二号)  税制改正に関する請願小林政子紹介)(第  四六八五号)  同(田中美智子紹介)(第四六八六号)  同(田代文久紹介)(第四六八七号)  同(多田光雄紹介)(第四六八八号)  同(庄司幸助紹介)(第四六八九号)  同(中川利三郎紹介)(第四六九〇号)  同(野間友一紹介)(第四六九一号)  同(増本一彦紹介)(第四六九二号)  同(山原健二郎紹介)(第四六九三号)  同(増本一彦紹介)(第四八一五号)  付加価値税新設反対に関する請願瀬崎博義君  紹介)(第四八一六号) 同月十七日  企業組合に対する課税適正化に関する請願(  島田安夫紹介)(第四九六一号)  同外八件(小山省二紹介)(第五〇五七号)  同外八件(竹本孫一紹介)(第五〇五八号)  同(増本一彦紹介)(第五〇五九号)  付加価値税新設反対に関する請願増本一彦  君紹介)(第四九七五号)  税制改正に関する請願浅井美幸紹介)(第  五〇五六号) 同月十八日  付加価値税創設反対に関する請願広沢直樹  君紹介)(第五一八一号)  企業組合に対する課税適正化に関する請願(  青柳盛雄紹介)(第五一八二号)  同(荒木宏紹介)(第五一八三号)  同(金子満広紹介)(第五一八四号)  同(小林政子紹介)(第五一八五号)  同(津金佑近君紹介)(第五一八六号)  同(土橋一吉紹介)(第五一八七号)  同(中島武敏紹介)(第五一八八号)  同(広沢直樹紹介)(第五一八九号)  同(不破哲三紹介)(第五一九〇号)  同(増本一彦紹介)(第五一九一号)  同(松本善明紹介)(第五一九二号)  税制改正に関する請願小林政子紹介)(第  五三三二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十八日  所得税減税に関する陳情書  (第二二二号)  企業組合に対する課税適正化に関する陳情書  (第二二三号)  付加価値税創設反対に関する陳情書外九件  (第二二四  号)  筑豊地域国民金融公庫の支店設置に関する陳  情書(第二二五号)  米軍基地跡地処分方針に関する陳情書  (第二二六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  経済協力開発機構金融支援基金への加盟に伴う  措置に関する法律案内閣提出第三五号)  アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する  法律の一部を改正する法律案内閣提出第三六  号)  米州開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律  案(内閣提出第三七号)  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第六六号)  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四一号)      ――――◇―――――
  2. 田中六助

    田中委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  金融機関週休二日制に関する小委員会において、明二十日午前十時、金融機関週休二日制に関する件について、金融制度調査会会長佐々木直君、全国銀行協会連合会会長中村俊男君、全国銀行協会連合会事務局長中林哲太郎君に参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中六助

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 田中六助

    田中委員長 次に、経済協力開発機構金融支援基金への加盟に伴う措置に関する法律案アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案米州開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案及び国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  これより各案について、政府より提案理由説明を求めます。大平大蔵大臣。     —————————————  経済協力開発機構金融支援基金への加盟に伴う措置に関する法律案  アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  米州開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  5. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました経済協力開発機構金融支援基金への加盟に伴う措置に関する法律案外三法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  まず、経済協力開発機構金融支援基金への加盟に伴う措置に関する法律案につきまして、その提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  経済協力開発機構金融支援基金は、経済協力開発機構すなわちOECD加盟国石油価格の大幅な上昇によって国際収支困難に直面した場合に、貿易制限等の一方的な政策をとることを回避し、適切な内外経済政策をとることを確保するため、OECD加盟国が相互に金融支援を行うことを目的とするものであります。  具体的には、深刻な国際収支困難に陥った基金加盟国は、他の金融手段を尽くした上で、なお必要な場合には、同基金から資金借り入れることができ、他の加盟国は、基金貸付資金の調達に協力することとなっております。この協力方法としては、基金に対し、自国の割り当て額範囲内において、資金貸し付け、または、基金市場借り入れに際し、その返済を担保するため、必要が生じた場合には基金資金貸し付ける旨の予約を与えることとなっております。この割り当て額総額OECD加盟二十四カ国で二百億SDRであります。  このうち、わが国割り当て額は二十三億四千万SDRで、割り当て額総額の一一・七%であります。これは、全加盟国中第三位となっており、同基金の十全の機能を確保するためには、わが国加盟が不可欠であります。  わが国がこの経済協力開発機構金融支援基金加盟するためには、経済協力開発機構金融支援基金を設立する協定を批准する必要があり、このため、別途、本国会において同協定について御審議をいただいているところでありますが、これと同時に、同基金への加盟に伴う所要国内措置を講ずる必要があります。このため、経済協力開発機構金融支援基金への加盟に伴う措置に関する法律案を提出する次第であります。  以下、この法律案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、政府は、経済協力開発機構金融支援基金等との間で、外国為替資金特別会計負担において、二十三億四千万SDRに相当する金額範囲内で基金への貸し付けもしくは貸し付け予約等を行うこと、及び基金からの借り入れ等を行うことができることといたしております。  第二に、政府は、基金への貸し付け等のため必要がある場合には、外国為替資金特別会計負担において、日本銀行または外国為替公認銀行等から借り入れを行うこと等ができることといたしております。  このほか、大蔵省設置法の一部を改正して同基金に関する事務大蔵省国際金融局において行うこととする等、所要規定整備を図ることといたしております。  次に、アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  アフリカ開発基金は、アフリカ開発銀行活動を支援するため、きわめて緩和された条件による融資を行う機関として、一九七三年に設立され、アフリカ諸国経済的、社会的開発に着実な実績を上げてきております。わが国は、その原参加国として設立当初からこれに参加し、アフリカ諸国開発に積極的に協力してまいりました。  同基金は、参加各国からの出資金を財源として融資活動を行っておりますが、現在その資金は、ほとんど枯渇状態にあり、同基金アフリカ諸国の期待にこたえ今後とも円滑にその活動を継続していくためには、新たな増資が必要となってきました。このような背景のもとに、関係国の間で累次にわたり検討が行われた結果、本年以降三カ年間の融資約束に充てる資金を賄うため、総額約二億二千百万計算単位、すなわち現在の合衆国ドルで申しますと、約二億四千五百万ドルの第一次一般増資が合意されたものであります。  わが国の新たな出資予定額は、三千万計算単位、すなわち約三千三百万ドルであり、政府といたしましては、この法律案により、この出資について国会の御承認を得た上、速やかに正式の引き受け通告を行いたいと考えております。  次に、米州開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案につきまして、その提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  この法律案は、別途本国会において御承認をお願いしております米州開発銀行を設立する協定に基づきまして、わが国米州開発銀行加盟することに伴い必要となる各般の措置規定することを目的とするものであります。  米州開発銀行は、中南米地域開発途上国経済的及び社会的開発目的として、一九五九年に設立された地域開発金融機関であり、現在、米国、カナダ及び中南米二十二カ国の合計二十四カ国が加盟しております。同銀行は、農林漁業、電力、運輸通信等の分野において活発な融資活動を行っており、多大の成果を上げてきておりますが、中南米諸国の同銀行に対する資金需要が増大してきたことに伴い、その資金基盤の強化が要請されてまいりました。  このため、同銀行は、域外先進国等に対し同銀行への加盟を呼びかけておりましたが、昨年二月、域外加盟予定十二カ国の政府と同銀行との間で域外国加盟に関する原則的な合意が得られるに至りました。  御承知のとおり、開発途上国経済開発の促進は、今日の世界経済におけるきわめて重要な課題の一つとなっておりますが、わが国先進国の一員としてこれら諸国に対し援助の手を差し伸べ、その開発に積極的な協力を行っていくことが要請されております。政府といたしましては、わが国米州開発銀行加盟することは、このような開発途上国からの要請にこたえるものであるとともに、わが国中南米諸国との友好関係をさらに増進させ、ひいては同地域との経済関係を緊密にすることにもつながるものであると考え、欧州先進諸国等十一カ国とともにこれに加盟することを決意した次第であります。  以下、この法律案概要について申し上げます。  まず、政府は、同銀行に対し、協定規定されている合衆国ドルで五千六百九十七万ドル、すなわち、現在の合衆国ドルで申しますと、約六千八百七十万ドルに相当する金額範囲内において、本邦通貨により出資し、また、同銀行特別業務基金に充てるため、予算で定める金額範囲内において、本邦通貨により拠出することができることといたしております。  次に、同銀行への出資及び拠出は、国債の交付によって行う方法が認められておりますので、この国債発行権限政府に付与するとともに、その発行条件償還等に関して必要な事項を定めております。  さらに、同銀行が保有する本邦通貨その他の資産の寄託所として、日本銀行を指定することといたしております。  最後に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  国際通貨基金は、五年ごとに出資額一般的検討を行い、全体の規模を現在の世界経済要請にこたえ得るものとすると同時に、各国出資額割合を最近のそれぞれの国の経済力等を考慮して調整することといたしております。  今回提案されております増資は、この一般的検討によるものであり、出資額の全体の規模現行の約二百九十二億SDRから約三百九十億SDRへと三三・六%増加させるものであります。その内訳を御説明いたしますと、産油国出資割合現行の約五%から約一〇%へと倍増し、これに対応して先進国出資割合を約五%削減し、開発途上国については現行出資割合を維持することといたしております。こうした中で、わが国出資額は、最近のわが国経済力の伸びを反映して、十二億SDRから十六億五千九百万SDRへと増加しており、その増加率は三八・三%と先進国中最大のものとなっております。また、この結果、出資総額に占めるわが国出資割合も四・一一%から四・二五%へと拡大することとなっております。  この増資提案を受け入れるため、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を提出する次第であります。  以下、この法律案につきましてその概要を御説明申し上げます。  第一に、政府国際通貨基金に対し出資することができる限度額現行の十二億SDRから十六億五千九百万SDRへと引き上げることといたしております。  第二に、国際通貨基金に対する出資は、従来、金及び本邦通貨で行うことといたしておりましたがへこれをSDRまたは本邦通貨等で行うことと改める等、別途本国会において御審議を願っております国際通貨基金協定の第二次改正に伴う所要規定整備を図ることといたしております。  以上、四法律案提案理由及びその概要を御説明いたしました。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  6. 田中六助

    田中委員長 これにて各案の提案理由説明は終わりました。     —————————————
  7. 田中六助

    田中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。
  8. 横路孝弘

    横路委員 いま議題になりました法案のうち、米州開発銀行アフリカ開発基金参加に伴う措置に関する法律改正案、この二本について私はお尋ねをしていきたいと思います。  お尋ねをする前に大蔵大臣に、最近の政治情勢についてちょっとお尋ねをしたいのでありますが、会期末を迎えてわれわれきょうもこの委員会で四本の法律を議了までするということで、審議にそれぞれ協力をしてきているわけです。一方、またロッキード問題の方も検察庁の捜査も進んで、いよいよ強制捜査段階に来ているわけです。この段階で、自民党内で三木さんに対する倒閣運動ともいうべきものが進められているわけでありまして、一般国民投書等、最近ずいぶん新聞に掲載されますが、こういう動きの中からロッキード問題の真相というのはうやむやにされてしまうのではないか。非常に私的な利害関係でこういう倒閣運動をこの時期にやるということの意味は一体何か、さっぱりわからぬというのがみんなの声じゃないかと思います。そういう動き一つの軸になっているのはやはり大平大蔵大臣でありまして、そんな意味で、こういう国民の声に、あるいは今日の国会状況の中で一体どういうことなのか、この際説明を求めたいと思います。
  9. 大平正芳

    大平国務大臣 私は三木内閣大蔵大臣といたしまして、財政の運営について微力を傾けております一方、国会に対しまして諸法案を提出いたしまして全力を挙げて審議を促進いたさねばならない厳粛な責任を持っておるわけでございまして、私はその責任に対しまして全力を挙げて対応いたしておるつもりでございます。どこかその熱心さが足らないということがございますならば御指摘をいただいて、私に落ち度がございますならば、私は改めるにやぶさかではございません。私自身は、日夜そのことのために心を砕いて努力いたしておるつもりでございます。  一方、自由民主党内におきましては、自由民主党の当面する問題につきまして若干の論議がありますことは事実でございます。そのことについて、私は自由民主党を代表する立場にございませんので、国会に対して責任を持ってお答えするという立場にないことは、横路さんに御理解を賜りたいと思います。
  10. 横路孝弘

    横路委員 この動きがロッキード問題の真相を覆い隠すことになるのじゃないか。三木さんが指揮権を発動して灰色高官名公開という方向での発言があると、自民党内からすぐつぶしが従来かかってきているわけでありますが、そういう国民の声については、この動きの当事者の一人である大蔵大臣大平さんとしてはどういうようにお考えでございますか。
  11. 大平正芳

    大平国務大臣 ロッキード問題の真相究明、それの措置、これは究明をするとかしないとか、どこまでやるとかやらぬとかいうような選択の余地のある問題ではないわけでございます。政府にとりましては厳粛な義務なんでございます。したがって、政府関係当局は日夜鋭意このために努力をいたしておりますことは御案内のとおりでございます。総理以下、各閣僚初め全部の政府の者は一人としてこれを渋滞させようというような気持ちは毛頭ないばかりか、究明全力を投入いたしておりますことは国民によく理解していただきたいものと思いますし、自由民主党内にこの究明義務遂行を阻むなどというふらちな動きは厘毫もございません。
  12. 横路孝弘

    横路委員 しつこいようですが、そうすると最近の自民党内の動きというのは、三木さんのどの点を批判されての動きなんですか。
  13. 大平正芳

    大平国務大臣 自由民主党といたしまして、国会が長く空白を続けたり内外にいろいろな問題が起きたりいたしておるにつきまして、党といたしましてどのように考えたらいいかということにつきまして、党員たる者がいろいろ考えてまいるのはあり得ることだろうと思うのでございます。そのことにつきまして、横路さんのお指図によってやめるわけにいかぬと思うのであります。問題は、そういうことは今日の政府責任遂行ということを、より忠実に、よりりっぱなものにしようという念願から出ておることであることもあわせて御理解をいただいておきたいと思います。
  14. 横路孝弘

    横路委員 しかし、そうならば、国会会期は二十四日までなんでありまして、この会期あとわずかという段階で何もそんなことをやらなくてもいいんじゃないですか。その辺のところに国民は非常に大きな疑問を持っているわけであります。  法案の内容についてお尋ねをいたします。  米州開銀の方、これはアメリカが中心ということもあるのでしょうが、出資特別業務基金合わせて百三億ドルですね。それからアフリカ開銀アフリカ開発基金合わせて六億ドル、資金量が非常に違いますね。六億ドルと百三億ドルなわけであります。これはアフリカ開銀の場合はアフリカ諸国だけでの運営ということと、米州開銀の場合はアメリカが軸になっているということはあるのでしょうけれども、あるいは経済発展状況は違うということもあるのでしょうが、いずれにしてもこれは非常に違うわけで、今回のような程度の増資一体アフリカ諸国要求にこたえたということになるのかどうか。その辺のところはいかがですか。
  15. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 御指摘のように、米州開銀の現在の資金規模アフリカ開銀及び開発基金を合わせた規模とは非常に違うわけでございますが、一番大きな理由は、米州開銀の方は一九五九年にできまして、一九六〇年から業務を開始しておりまして、すでに十数年の歴史を経ておるわけでございまして、その間に資金の拡充ができたということだと思います。アフリカ開銀、ことにアフリカ開発基金の方はようやく一九七三年にできたわけでございまして、非常に小さな規模からスタートいたしました。今回もそういう意味におきまして第一次の一般増資をお願いしておるということでございます。
  16. 横路孝弘

    横路委員 今回の増資理由は、貸し付けの財源がもう枯渇してしまって全くなくなった、融資の申請に応じられないような事態になってしまったので今回の増資になったということですね。この増資に至る経過をちょっとお尋ねしたいのでありますけれども、そういう事態になるまで今回のこの措置がとられなかったというのはどういう事情なのでしょうか。
  17. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 実は、七三年にアフリカ開発基金ができまして、七四年にすでに資金規模が十分であるかどうかという検討をしたわけでございまして、そのときにおきまして特別増資を一回したわけでございます。今回のは、その特別増資を除きまして、一般的な第一回目の増資ということになっております。
  18. 横路孝弘

    横路委員 先ほどの説明ですと、今回のこの措置というのは、これから三カ年間の貸し付けを承諾した資金について、その分を賄うための増資なのですね。違うのですか。
  19. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 アフリカ開銀は、ほかの国際開発銀行も同様でございますが、資金のめどがございませんと融資の承諾ができないわけでございます。実際に貸し付けをして金がなくなったから資金を拡充するというのではございませんで、今後三年間にわたってこれだけの資金が拡充できるというめどがつきますと、それを引き当てに融資の承諾をしていく。融資の承諾をしてから現実に資金がディスパースされていくというのは、また少し時期がずれるわけでございます。
  20. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、この分でこれから先何年ぐらいもつのですか。
  21. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 これから三年間をめどとしております。
  22. 横路孝弘

    横路委員 これの目的別の貸し付けの状況を見てみると、農業が圧倒的で四二%ですね。米州開発銀行の場合は二〇%程度じゃなかったかと思いますが、農業が圧倒的で、そのあと、運輸関係、公共事業、保健ということになっているのです。この従来までの、たとえば農業なら農業というのは、もうちょっと内容的に言うと、多分基盤の整備そのほかじゃないかと思いますが、農業投資の重点というのはどんなところにあるのか、御説明いただきたいと思います。
  23. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 アフリカでことに農業が多いのは、やはり経済発展の段階に応じまして、そこに重点的に投資する必要があるということでございますが、農業に対します融資は、主として灌漑排水という基礎的な部分に融資が行われております。
  24. 横路孝弘

    横路委員 これは、それぞれ運輸、公共事業、保健というのは、どんな内容ですか。
  25. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 運輸はアフリカ開銀の場合には道路が主でございます。それから保健衛生は病院建設というものが主に含まれております。
  26. 横路孝弘

    横路委員 そこで、日本とアフリカ諸国との貿易のことをちょっとお尋ねしたいのですが、年間貿易量は大体五十億ドルということのようであります。それから投資が累積で大体十億ドル程度というように聞いておりますが、まず初めに貿易量の方ですね、輸出、輸入、大体どんなものが中心でどの程度なのか。通産省、来ておられますか。大蔵であれでしたら結構でございますが……。
  27. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 日本との貿易量でございますが、まずアフリカの方に日本から輸出しております金額は、一番新しい一九七五年で四十六億八千五百万ドル、これはFOBベースですが、日本からの輸出がございます。日本の輸出全体に占めますパーセンテージは八・四%。ただし、この四十六億ドルのうちにはリベリア向けが二十五億ドルぐらいございまして、これは船舶の便宜置籍船の関係で多いという事情はございます。日本からの主な輸出品目は、鉄鋼、機械といったような機械類そのほか雑貨等でございます。
  28. 横路孝弘

    横路委員 輸入の方はどうですか。
  29. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 輸入は同じ一九七五年で、これはCIFベースでございますが、日本は十四億五千百万ドル輸入しております。日本全体の輸入金額のうち二・五%を占めておりまして、品目といたしましては、鉄鉱石その他鉱物資源それから綿花等でございます。
  30. 横路孝弘

    横路委員 投資のその十億ドル累積の内容というのはどういうものが重点なんでしょうか。それは通産省、来ていれば……。
  31. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 日本からアフリカに対します投資の中身といたしましては、製造業が全体の半分以上を占めておりますが、その中で鉄、非鉄に関するもの、それから繊維に関するもの等が目立ってございます。そのほかに鉱業、それがかなりございます。
  32. 横路孝弘

    横路委員 政府開発援助というのは、アフリカは大体全体の何%ぐらいですか。
  33. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 政府開発援助は、一九七四年の数字しかまだ発表されておりませんが、それによりますと、全体の五・二%を占めております。
  34. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、大蔵大臣お尋ねしたいのですが、この開発基金の方の目的融資を見ると、農業や運輸関係が圧倒的に多いわけですね。つまり国づくりの基本のところから出発を始めているわけで、当然のことだろうと思うのです。  ところが、いまお話がありましたように、日本のたとえば投資十億ドル、政府開発援助で五・二%といいますから、これは構成を見ても、日本の場合アジアが圧倒的に中心で、アフリカに対する政府の方の開発援助というのはきわめておくれているということが言えるんじゃないかと思うのです。私、この目的融資を見て、農業がこんなに、四二%も占めているという状況とあわせて考えてみると、日本政府としてのいわばこれからの援助の方向というのは、農業を重視しながら、それに民間も協力させていくという方向をアフリカについては考えるべきじゃないのだろうか。これは中南米についても同じような状況がありますし、後でちょっとアジア開銀のこともできればお答えいただきたいと思うのでありますが、農業を重視すべきじゃないかということについてはどのように大蔵大臣お考えですか。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 全く私も同感でございまして、事実、数年前からそういう方針で、エカフェにおきましても、私が外務大臣当時演説をいたしました演説の基調も、農業政策、農業開発援助に力点を置くことを基調にいたしたわけでございます。と申しますのは、これまでの経験から申しまして、開発途上国の場合の工業化を助けるということもございましたけれども、本当の意味の工業化というものを実りあるものにいたしますためには、開発途上国というのはまず農業国でございまして、農業経済がしっかりとした定着状況にないと工業化も定着しない、経済のバランスがとれないということでございます。あるいは、輸出産業を振興させようといたしましても接ぎ木をしたような状態になりまして、根っこからやはり国内の需要というか、ホームマーケットがある程度ないと輸出産業は育たないわけでございますので、いろんな観点から見まして、どういたしましても農業経済をしっかり打ち立ててまいりますことが、開発途上国の利益から考えて、援助する以上はやはり本格的なアプローチが望ましいのではないかという考え方で臨んでおるわけでございます。それは地域の別を問わず、アジアはもちろんでございますけれども、アフリカにつきましても、中南米につきましても、仰せのようにそういう方向で今後もやはり考えていくべきではないかと私は考えております。
  36. 横路孝弘

    横路委員 だんだん議論していきますけれども、要するに、日本の場合、資源を確保するということと市場を確保するというこの二つの面がやはりかなり前面にずっと出ているわけです。そういうような対外政策そのものが、一つは、UNCTAD等を中心として批判になって出てきているわけです。そういう意味では、アフリカならアフリカというのは、やはりアジア諸国とまた違った面がありますし、それぞれの状況に応じた日本の援助の基本的な方向とか方針みたいなものをこの際しっかり決めるべきじゃないかと思うのです。アメリカですと、結局、アメリカを軸とした体制をいかに守るかということを軸にしながら援助していますし、中国は中国できちんとした原則を持ってやっていますね。日本の場合、援助するに当たって、その方向性みたいなものというのは、どうももう一つ明らかじゃないんじゃないかという議論は従来からあったと思うのでありますけれども、その辺のところは、大臣としてどのようにお考えでしょうか。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 戦後のわが国は、賠償を払うあるいは賠償にかわる経済協力を進めなければならぬというような立場がございまして、選択の余地が大変狭かったわけでございます。それから、わが国自身が自立経済をみずから確保してまいる必要もございましたので、したがって他国の立場を考えるゆとりがそう十分でなかったという事情も確かにあったと思うのでございまして、仰せのように、各国の批判が相当ありましたこと御指摘のとおりだと思うのでございます。  そこで、もはや、わが国立場から申しますと、横路さんおっしゃるように、やはりわが国特有の原則を持たなければならぬと思いまして、それはやはり受益国、援助を受ける国の立場に立ったものでなければなりませんし、しかも国内でも十分理解が得られるだけの説得力を持ったものでなければならぬわけでございまするし、同時に、わが国経済力、財政力というようなもので支えられるというものでなければなりませんので、そういった点につきましては仰せのようなりっぱな援助政策を、中外に施してもとらないりっぱなものをつくり上げていかなければならぬと思いまするし、そういう願望を持って、過去の経験を踏まえて一いま政府各省におきましても努力をいたしておる最中でございます。
  38. 横路孝弘

    横路委員 UNCTADの今回の第四回のこの会合で、木村さんお帰りになったようでありますが、木村演説の中で農業開発国際基金に五千万ドルを上限とする拠出を行う方針であるという演説をされていますね。一体何でこの上限をわざわざ明らかにしたのか。しかも去年のたしか首脳会議のときに、あれは六千万ドルか七千万ドルぐらいで普通日本政府として決まっておったのではないのですか。これはちょっと外務省から先に答弁を。
  39. 菊地清明

    ○菊地政府委員 お尋ねの上限とするという言葉は、通常こういった対外的な約束をする場合の常用される言葉でございまして、特に深い意味はないわけでございます。  それから、前の段階でいろんな数字が新聞その他で報道されたことは事実でございますけれども、最終的には木村代表が演説で申し上げたとおりでございます。
  40. 横路孝弘

    横路委員 結局、大蔵省の方から削られたのでしょう、これは。外務省としてこれを満足だというようにお考えになっているのですか。ドイツよりも低いですね、この金額
  41. 菊地清明

    ○菊地政府委員 先ほど申し上げましたように、最初から数字があったわけではございませんで、そういうような五千万ドルに決まったわけでございますし、それからドイツの場合は、これも五千二百万ドルないし五千万ドルという数字がございましたけれども、ドイツ政府から国連に正式に通報した数字が五千万ドルでございますので、それによったわけでございます。
  42. 横路孝弘

    横路委員 大臣、今回のこの法案、米州の開発銀行アフリカ開発基金に金を出すということでそれぞれの地域経済開発、社会開発協力をしていこうというのはそれはそれでいいわけなんですけれども、ただ問題は、それだけで果たしていいのかということですね。今日のアジア、アフリカの経済状況で言って一体どこに問題があるのかということを、やはりどう考えるかということだろうと思うのです。さっきアフリカとの貿易のお話がありましたけれども、輸出が四十六億ドル、輸入は十四億ドルということですね。最近の発展途上国の傾向というのは何かというと、貿易収支が赤字だということは、これはずっと傾向として出てきていますね。それから同時に、対外債務が非常に増大をしているということだと思うのです。アジアで言いますと、六〇年の二十二億ドルという貿易収支の赤字が、七〇年には五十一億ドルへと倍以上にふえていますし、対外債務も、たとえば六一年の五十八億ドルから七〇年には二百億ドルに上っているわけです。工業化をずっと進めていくわけですけれども、資金がないから公的、私的ないろんな外国資本に依存していかなくちゃいけない。一方で一次産品の価格そのものはずっと低迷してきているわけですね。逆に言うと、日本なんかは六〇年代一次産品の価格はほとんど動かなかったというところにやはり経済成長の一つの大きな要素というのはあるわけです。言い方をもう一つ変えれば、いわばアジアの人たちの犠牲の上で日本が経済成長を続けたといっても言い過ぎでないかもしれません。  一方で、アメリカを中心として先進国はインフレですから、アジアやアフリカ諸国にとってみると、輸入してくる工業製品価格というのは上がってきているわけですね。一次産品価格は低迷しておるし、一方輸入してくる工業製品価格の方は上がってくるというところにこういう現状が出てきておるのではないかというように思うのです。  だから問題は、UNCTADのいろいろな要求なり何なりを見ても、まさにそこに焦点を据えた南の諸国要求になってきておるわけです。そこにどうやってわれわれがこたえていくのかということも、これは非常にむずかしい幾つかの問題があります。  後でひとつ具体的な例として、ちょっと鉄鉱石の日本の輸入カルテルの問題を議論したいと思うのであります。  そこで、そういう状況を踏まえて一体今度のUNCTADの会議に当たって外務省から何か教宣の資料出ておりますけれども、方針は出ていないい。一体日本政府としてこれに臨む方針、個別のものは後でお尋ねしますからいいのですけれども、大まかな方向としては、現在の国際的経済情勢というものを南と北との関係においてどのように見て、一体日本政府としてどんな政策を持って臨んだのか。どうも木村さんの話は各論の方にわあっとこう行っちゃっていて、基本的な認識の点はこの演説の中にも全く見られないというように私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  43. 菊地清明

    ○菊地政府委員 いま委員の御指摘になりました発展途上国の二つの問題、貿易の赤字の問題とそれから累積債務の問題でございまして、これがまさに今回のUNCTADの最大の焦点でございます。  貿易赤字の問題は、別の表現でありますと、これは発展途上国の持つ輸出産品、一次産品、エネルギーその他、製品、半製品ございますが、これに対するマーケットをどうするか、その価格安定をどうするか、たとえば緩衝在庫の問題をどうするかという問題になりますし、それから債務の累積問題につきましては、この累積する債務に対して債権国がどういう態度をとるかということになるかと存じます。  これをUNCTADの言葉で申しますと、第一の問題は、いわゆる発展途上国の方で非常に要求しております一次産品に対する共通基金の問題でございますが、これに対しましては、日本のみならず他の先進国も——ただいま途上国の方で、総合アプローチと申しておりますが、一次産品を全部一括して、しかも商品協定を結んで、それから緩衝在庫をつくって、それの融資、ファイナンシングというものを一括した基金から手当てをすべしという共通基金の観念を出しておりますけれども、先進国といたしましては、一次産品といってもいろいろな種類がありますし、商品協定になじむもの、なじまないもの、いろいろなものがございますので、この点はもっときめ細かく産品ごとにアプローチすべきではないかというのが、非常に簡単に申しまして先進国側の態度でございまして、これも同時に日本の態度でございます。  それから、債務の問題に関しましては、発展途上国の要求は、御案内のとおり債務の累積している国に対する債務救済を一つの原則を設けて一括解決すると申しますか、そういった債務救済の原則を打ち立てるべしというのが途上国側の要求でございますが、これまた先進国といたしましては、この途上国の債務累積の窮状に関しましては十全の関心を持っておるわけでございますけれども、またこの場合でも債務国の事情は決して一様ではない。つまり、債務管理をうまくやっている国と必ずしも責任のある債務管理をやってないという国もこれはあるわけでございまして、そういった債務国を一括して一般原則というものを打ち立てるということはどうであろうかというようなことを先進国側は申しておるわけでございます。UNCTADはただいまちょうど真ん中に差しかかっておりますけれども、現状ではこの二つの重大問題に関してまだはっきりした見通しはつけ得ないということでございます。
  44. 横路孝弘

    横路委員 ちょっと認識の問題をお尋ねしたいのですが、大蔵大臣、ことしの二月にマニラで、途上国七十七カ国グループと俗に言われておりますけれども、百十カ国が参加をしてこのUNCTADに臨む南の諸国の方針を決めたわけです。このマニラの宣言と言われている中で、要するに先進諸国開発途上諸国の情勢を改善するために計画した政策というものを全般的に実行していない、また約束を履行していない。したがって、この間開発途上諸国経済情勢というものは非常に厳しいものになったというのがこの宣言を流れている趣旨になっているわけです。その旨の言葉もずいぶん入っています。今回のUNCTADの中でもマルコス大統領は、七〇年代において期待と実績のギャップが非常に拡大をしたということを強調しているわけです。このいわばマニラ宣言、要するに先進国開発途上国のための政策を全般的に実行もしていないし、約束も履行をしていない、そして世界経済における相対的な立場はますます悪くなったということを言っているわけです。これは今後の経済成長をずっと考えていっても、一人当たりの国民所得なんかの推移を見ると、これからますます相対的には格差が拡大する方向なんですね。相当な拡大というのが数字を見ますと示されているわけです。こういう南の諸国の認識を大蔵大臣はどうですか、大体対外的な経済協力になるといつも、外務省は外国との関係をいろいろと調整するといいますか、それが主に中心になるわけですからどうしても積極的になる、大蔵省は財政を預かっているから消極的になるというのは一般論としてはそうなのかもしれませんけれども、いまそんな意味では、日本も苦しいけれども南の諸国も非常に厳しいという状況であるだけに、この際やはりもうちょっと認識を大蔵省としては改めていくべきじゃないかというふうに考えるわけですけれども、その辺のところの基本的な方向ですね、こういうマニラ宣言等についてどういうようにお考えになりますか。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 認識論といたしましてはそのとおりです。格差は拡大いたしまするし、年々歳々拡大していると思いまするし、また累積債務はだんだんと増してきておりますし、経済的な困難というのはますます加重してきておりますので、私もそのように認識はいたしております。  ただ問題はそれに対する対応でございますが、だから対決で問題が片づくかというとそうではない。やはり建設的なアプローチを選択せにゃならぬというのが日本の立場でございまするし、幸いにいたしまして開発途上国の体制もそういう賢明な傾向を選択されるようにだんだんなってきておるように思うのでありまして、いま外務省から御説明がありましたように、ことしの問題になりました問題の処理の仕方につきましても、金額でございますとか年限でございますとか条件でございますとか、いろいろ方法の細かいところで各国とも違いまするし、また外務省と大蔵省との間でもそれは仰せのようにいろいろ違うわけでございますけれども、方向としては建設的にアプローチしていこうじゃないか、じみちなことでやっていこうじゃないかということはだんだんと定着をしつつあるし、またそういう方向でいかなければならないと私は思っております。
  46. 横路孝弘

    横路委員 先ほど外務省からお答えになりました一次産品のところでの木村演説ですね。いわゆるコレア提案と言われている総合商品計画、ワンパッケージ方式に対して、そうじゃない、個別だ、こう言っていますね。じゃあ本当に外務省は個別に対応策というのはちゃんと持っているのですか。つまり、個別個別と強調されているけれども、きちんと個別に対応する対策というものをお持ちになってこういう発言をされているのですか。
  47. 菊地清明

    ○菊地政府委員 ただいまの論議の段階は、個別でアプローチすべきか総合でアプローチすべきかというアプローチの問題といいますか原則の問題であります。したがって、まずそういった共通基金というものをつくって、そこから各種の商品協定に基づく緩衝在庫に対してファイナンスをしていくというのに対しまして、先進国の言っているのは、商品協定ができ、かつ緩衝在庫ができたような場合のファイナンシングは考えようということでございますので、現在まず商品協定ができるかできないか、商品協定になじむかなじまないかということから議論をする段階でございますので、残念ながらちょっと明確に答弁はできないわけでございます。
  48. 横路孝弘

    横路委員 たとえばすず協定基金拠出の問題、これはどうして一言もこの演説の中で出てこないのですか。
  49. 菊地清明

    ○菊地政府委員 そのすずの場合は確かに問題になりましたわけでございますが、 これは、こういった個別の問題ができてまいりました場合には当然日本政府の態度決定を迫られるわけです。ただ委員御案内のとおり、日本はすず協定のメンバーでございます。しかもその協定に任意拠出の規定がございますので、したがって、いつの段階でどのぐらいの金額で拠出するかということはまだ政府決定ございませんけれども、協定のメンバーであるということには変わりないわけでございます。
  50. 横路孝弘

    横路委員 これは外務省の方でははっきりさせたかったのでしょう。結局大蔵と話がつかなかったのじゃないですか。大蔵省じゃないですか、つぶしたのは。違いますか。担当はどこですか。
  51. 副島有年

    ○副島説明員 ただいま御指摘のありましたすず協定に対する拠出につきましては、実はこの種の緩衝在庫に対する拠出のテストケースになるということがございますので、この拠出に伴う経済効果は一体どういうふうになるかというふうな問題につきまして慎重に検討しているところでございます。それからまた、もし拠出をするといたしましても、一体その拠出を財政負担でやるべきかあるいは輸入課徴金のような方式でやるべきかあるいは業界負担でやるべきかというような技術的な問題をまだいろいろ詰めなければなりません。しかも、これが非常な今後のテストケースになるということで目下慎重に検討している段階でございます。
  52. 横路孝弘

    横路委員 つまり、ワンパッケージはだめだ、品目別、問題ごとにきめ細かい対策を立てなければならぬ、こう言っておいて、いろいろとその焦点の一つとしてこの基金拠出の問題があったわけですが、それに一言も触れられていないという意味で、新聞なんかの報道の伝えるところによると、南の諸国の方から日本政府の態度というのはこんなものかというような声が上がってきているというわけですね。そういう問題はこれからの個別の委員会の中で、一次産品の委員会がたしかありましたね、あの中でこういう問題の議論というのが行われて、日本政府もその中では態度を明確にされるわけですか。
  53. 菊地清明

    ○菊地政府委員 今後UNCTADの後でどういう話になるかということでございますけれども、UNCTADの後でどういうふうな場所で一次産品問題を取り上げていくかということはまだ場所が決まっておりません。もちろん国連の場もありますし、OECDの場もございますし、最近の国際経済協力会議という場もございますので、この場で検討が続けられることは確かでございますけれども、いまの段階でどこで検討されるということはまだ決まっておりません。
  54. 横路孝弘

    横路委員 EC九カ国とアフリカ、カリブ海、太平洋の四十六カ国とのロメ協定というのが発効しましたね。いわゆる輸出の所得の損失の場合の補償制度でありますけれども、この問題をアジア諸国との間にこのロメ協定の方向で考えたらどうかということが、たしか去年の首脳会談のときに総理大臣か外務大臣あたりから何か発言があったような記憶があるのですが、日本政府としてはこの問題についてはどういうぐあいにお考えになっておられるのですか。
  55. 菊地清明

    ○菊地政府委員 ロメ協定と申しますのは、仰せのとおりECと太平洋、カリブ海との輸出所得補償の協定でございます。これに関しましてはもちろん大変結構なスキームでございますけれども、同時にこれはいわゆる地域主義につながるのではないかという批判もないことはないわけでございます。したがいまして、このロメ協定ができたから直ちに日本もアジアでロメ協定のアジア版というものをすぐ交渉するということに関しては、若干のちゅうちょがあったわけでございます。いろいろ討議しました結果、そういった輸出所得補償という大きなスキームをつくる場合には、日本としてはアジアの一国でございますので、アジア諸国、ことにアジアの発展途上国の関心品目である一次産品、それの輸出所得補償というものに多大の関心を持っているわけでございまして、言うならばアジア品目といいますか、そういったものを地域主義的ではございませんでグローバルなスキームの中に反映させていくべきではないかというのが現在の考え方ではないかと思います。ただ、まだグローバルな輸出所得補償スキームという新しいものができておりませんので、まだこの点は検討中の段階で、ただいま申し上げたような思想があるということだけ申し上げておきます。
  56. 横路孝弘

    横路委員 地域的といってもこれは非常に議論のあるところでありますが、私個人的には、やはり日本というのはアジアの一員でありますから、日本の方から押しつけるということじゃなくて、日本を中心とした経済圏みたいなものは考えていかなくちゃいけないときに来ているんじゃないかと思うのでありますけれども、いずれにしてもそれは政府の方針として、ではそういう方向を持っているというように確認をしておいてよろしいですか。
  57. 菊地清明

    ○菊地政府委員 ただいま申し上げましたように、政府として確定した方向とまではまだまいっておりません。
  58. 横路孝弘

    横路委員 大蔵大臣、このロメ協定の精神はどうですか。これはいずれ南諸国、アジアの中からもこういう声が出てくると思いますね。これはことしの四月一日から発効して動き出しているわけです。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 一応理解できる内容を持っておると思いますけれども、これを日本が取り上げるか、アジアに適用するかというようなことになりますと、なお十分検討を要する点があるのではないかと思っております。
  60. 横路孝弘

    横路委員 一次産品以外にも、製品委員会ですね、この辺のところはこれから、特に日本の経済にとっては非常に大きな問題になってくるんじゃないかというように思います。関税の問題だとか産業調整の問題だとか、いわば先進国が製品の輸出対象となってそういう要求がこれからどんどん出てくるわけですね。この製品委員会の中で輸出カルテル等についての議論も制限的商慣行という形で行われていると思うのですが、この議論の状況はどんなことになっておるのでしょうか。
  61. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 UNCTADにおきましては昭和四十三年の第二回総会ごろからただいまの問題が取り上げられておりますし、ごく最近では昨年の十月及び二月に政府専門家によります第二回の制限的商慣行専門家会合というものが開かれております。その中で競争制限となるような行為をリストアップいたしまして、また関係国間でそういう問題の情報交換をどうするか、あるいは発展途上国における独禁法の整備について何かモデル法を作成したらどうか、あるいはそういった制限的商慣行についてその是正のための原則というものを果たしてつくれるかどうか、こういう問題を取り上げております。で、会議といたしましては、制限的商慣行になる行為のリストアップ、これについては一応の合意を見られたようでございますが、その他、情報交換を今後どうして行っていったらいいか、この辺については今後どういう手順でどういう内容の検討を進めていこうか、これは現在検討中でございまして、恐らく今回開かれました第四回のUNCTADの総会でもこの問題が取り上げられたのではないかというふうに考えております。
  62. 横路孝弘

    横路委員 その問題ちょっとまた後でやりますから、その間一つ二つだけこの法案についてお尋ねしておきたいと思います。  アフリカ開発基金融資決定というのは、この機構から見るとほぼアフリカ開銀でやる、つまりアフリカ諸国がかなり自主的に判断をしてこれを決めるというように見てよろしいのでしょうか。
  63. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 アフリカ開発基金融資決定は理事会で主にやるわけでございますが、理事会はアフリカ開銀の方から六名の理事、それから開発基金の方に参加しております諸国から選ばれた六名、計十二名で構成しておりますので、当然アフリカ諸国の意見も十分に反映されるわけでございます。
  64. 横路孝弘

    横路委員 それから米州開銀ですけれども、これは以前から輸銀などを通して貸し付けをやっておったようですね。現在はどんな状況になっていますか。どういうところからどのぐらい行っているか。
  65. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 米州開銀に対しましては、従来日本の輸銀ローンを合計八回やっております。輸銀のローンのほかに日本の銀行がローンを出しているという例も数件ございます。さらにそのほかに円建ての私募債を日本で発行したこともございまして、合計いたしましていままでに五百八十七億円米州開銀資金供給をいたしております。
  66. 横路孝弘

    横路委員 この米州開銀への域外加盟の問題は、何か一九七〇年ぐらい、第十一回総会ぐらいからずっとずいぶんいろいろな経緯があったようですね。米州機構を軸としてその加盟を認めないという議論もあったようですが、これは今日のような状況になった経過とその間どんな問題点があったのか。
  67. 菊地清明

    ○菊地政府委員 仰せのとおり、一九七一年以来域外国を加盟させたらどうかという話が出まして、実際の交渉を開始したのは一九七二年の三月でございます。一番交渉の過程で決定的な場面は、七三年五月にキングストンで関係国が集まって会議をしまして、そこでキングストン原則と称するものができ上がりまして、これはキングストン原則と俗称しておりますが、域外国の米州銀行加盟承認するための原則でございます。  これによりますと、一番大きな問題は、何と言っても域外国が加盟した後の域内国と、域内の発展途上国と米国とカナダと、それから加盟するであろう域外国との投票権の比率をどうするか、つまりどれだけのボイスを持つかということが最大の問題でございました。これがこのキングストンにおきまして、当然のことでございますけれども、域内の途上国の投票権は五三・五%以上、米国が三四・五%以上、カナダが四%以上、それから域外国が八%以内ということに決まりまして、つまり域内国、特に域内の発展途上国の発言権を確保することに合意ができたということでございます。  それからあとは、細かいことでございますが、たとえば払い込みの総応募額の二八・四八%にするとか、そういったことが決まったわけであります。
  68. 横路孝弘

    横路委員 この米州開発銀行の場合、特別基金と通常資金というのがありますね。これはアジア開銀なんかの場合は、たしか特別基金というのは、特にたとえば貧困な国であるとかその基盤、さっき話がありました保健の関係だとか農業の関係だとかいうことですが、この米州開銀の場合、大口の借りている方の国を見ると、ほとんど変わりないですね。みんな、ブラジル、メキシコあたりが両方の基金とも同じ大口の借り入れ国になっているわけですけれども、これはどんな違いがあるのですか、この二つの基金
  69. 菊地清明

    ○菊地政府委員 仰せのとおり、通常業務基金の方と特別業務基金と二つございまして、特別業務基金は、いわゆるアジア開発銀行の場合のアジア開発基金といういわゆるソフトローン、条件の緩やかなものを出すところでございまして、米州開発銀行の場合は、通常業務基金の方が大体八%で償還期間が十五年ないし二十五年、それから特別業務基金の方が一ないし四%、償還期間が二十五年ないし四十年ということになっております。  それで、仰せのとおりブラジル、メキシコ、アルゼンチンというのが両方の基金の大口になっておると思いますが、これは恐らくプロジェクトの性質によりましてインフラ関係のものは通常業務基金から出ている、そのために一応両方とも大口になっているということではないかと思います。
  70. 横路孝弘

    横路委員 あと、米州開発銀行の中に社会進歩信託基金というのがありますね。これは何かアメリカ出資した基金らしいですが、これはどういうことになりますか。これは日本は別に関係がない……。
  71. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 おっしゃいますようにアメリカだけの信託基金でございまして、日本は関係ございません。
  72. 横路孝弘

    横路委員 そこでさっきの問題に入っていきたいと思います。  UNCTADの中でもカルテル問題について、先進国の方のカルテルの問題についていろいろ議論があるということのようでありますけれども、昨年、商工委員会でちょっと質問したのですが、日本の鉄鋼の輸入カルテルの問題について、ちょっとお尋ねをしていきたいと思います。  去年、鉄鋼の値上げがあったときに、業界の方では一物一価であるということで、そうなる理由として、いわば鉄鉱石や原料炭の共同開発、共同購入という問題を、共同開発しているから一物一価で一斉に値上げをするのは当然だ、こういうことを主張したわけですね。ところが、これはいろいろ調べてみますと、鉄鉱石にしても原料炭にしても数社でやはり価格から数量等について協定をしている、つまり談合しているじゃないか、独禁法上の問題があるじゃないかということで指摘をいたしまして、当時の高橋公取委員長が独禁法違反であるという御答弁をなさったわけでありますが、その後この問題について公取としてどういう措置をとられたのか、お答えをいただきたいと思います。
  73. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 その後公取といたしましては、高炉各メーカーから独占禁止法第六条に基づく国際契約の届け出を出させまして調査をいたしました。その結果、現在わが国で消費されております鉄鉱石の九九%は外国からの輸入に依存しております。また、外国から輸入いたしました全量のうち、オーストラリアから輸入する分が四八%を占めております。そして、このオーストラリアから輸入します鉄鉱石全体の九五%が共同購入になっております。  それで、高炉メーカーがなぜ共同購入をしておるかと申し上げますと、現地の山元から、開発した鉄鉱石を一応引き取りを保証してほしいということで、国内の高炉メーカーが数社共同して引き取り保証をいたしまして、その保証に基づいて現地山元が鉱山を開発し、開発した鉄鉱石を数社が共同で輸入をしておるという現状でございます。  現在、オーストラリアとの間で十七件の長期鉄鉱石共同購入契約を結びまして鉄鉱石を輸入しておるわけでございますが、一つ一つの契約に基づく引き取り量、これは全体の量のわずかな部分しか占めておりません。  それで、さきの国会で高橋前委員長が、ただいま仰せのとおりの御答弁をいたしましたが、その際高橋前委員長は、国内の高炉メーカー各社がオーストラリアから購入する鉄鉱石の全量について、何か全体としてのカルテル、共同行為というものがあるのではないかというふうな疑いを持って、これはもしそうだとすれば独禁法上当然不当な取引制限となり、第三条違反の問題が出ておりますので、早急に調査をお約束したわけでございますが、その後調査をいたしました結果、ただいまお答えいたしましたように、一つ一つの契約に基づく取引量は全体のごくわずかな部分である、そして、問題のその一つ一つの取引の背後に共通したと申しますか、その全体を包括したような共同行為があるかどうか、この辺について調査の重点をしぼって聞いたわけでございますが、現在のところ、その全体、個々の契約を共通した包括的な共同行為の存在はないように思われます。  したがいまして、現在、個々の契約は確かに共同購入契約ですが、それを直ちに独禁法上違反だとして取り上げるにはいささか問題がある。しかし、全く問題がないかと申し上げますと、やはりその間競争制限的な効果なり、あるいは実際にそういう影響が出てこないとも限らないというところから、公取といたしましては、今後六条に基づく国際契約の届け出、これは改定の都度届け出をさせることにしておりますので、その届け出を通じて、独禁法上問題になるような事態が起こらないように十分監視を続けてまいりたいと考えております。
  74. 横路孝弘

    横路委員 取り寄せた契約書の内容についてちょっとお尋ねしますけれども、契約書そのものが、共同で契約書を締結しておるというケースもありますか。
  75. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 中には連名で契約書を締結しているケースもございますし、それからまた、個々に契約しておりますけれども、その契約書の内容を見ますと明らかに背後に共同行為があると認定できるケースもございます。     〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕
  76. 横路孝弘

    横路委員 その両方とも共同購入ということに含めて見るべきだと思いますが、いかがですか。
  77. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 両方を含めて共同購入と考えております。
  78. 横路孝弘

    横路委員 その基本契約の内容についてお尋ねしますけれども、その契約の中には、期間中の輸入の総量、それから各社の購入の数量、購入の価格、こういうものが入っているでしょうか。
  79. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 当初、最初に結びます契約につきましては、そういう点が含まれております。
  80. 横路孝弘

    横路委員 たとえば、ことしの業界紙を見ても、オーストラリアあたりから代表が来ますね。ホテルに泊まってやるときには、こちらは話をしながら、そういう交渉を各社でやっているでしょう。そういう事実は認めますか。
  81. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 そういう事実は承知しています。
  82. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、これはどうして違反にならないのですか。
  83. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 その交渉は、先ほど申し上げましたように、オーストラリア全体としては現在十七件ございますが、その交渉は十七件全体を通ずる交渉ではございませんで、個別の一件一件についての交渉でございます。
  84. 横路孝弘

    横路委員 競争の制限という場合、それは全体でなくても一つ一つについて実質的な競争制限になれば、積み重ねた場合にやはり競争の制限になるじゃないかということは、いままで国内でのカルテル摘発のときに幾らでもやっているわけでしょう。これは同じ考えがとれるじゃありませんか。
  85. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 一般的なカルテル事件につきましては、やはり一つの談合と申しますか、あるいは一つの価格協定につきまして、地域的にあるいは全国的にその競争の実質的制限の及ぶ範囲が決まっております。ところが本件の鉄鉱石の場合は、一つ一つの契約は、その全体に占めるウエートが先ほど申し上げましたようにきわめて小さい。したがって、一つ一つの契約を取り上げますと、競争の実質的な制限という認定は非常にむずかしい。その一つ一つの契約を通ずる背後の何らかの包括的な協定なり話し合いというものを立証しない限り、公取としては独禁法上問題があるとして取り上げることは困難ではないかと考えております。
  86. 横路孝弘

    横路委員 その十七件、どんな各社の参加になっているのですか。六社全部参加しているのでしょう。
  87. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 六社が全部参加しておるケースもございますし、あるいは二社、三社というケースも中にはございます。
  88. 横路孝弘

    横路委員 鉄鉱石の場合オーストラリアがほぼ半分ですね。そして十七件の共同購入の長期的な契約がある。そうすると確かに一件ずつは、単純計算したって五〇%の十七件ですか、シェアにしてみると二、三%ぐらいなものでしょう。だからそれはそれで確かに制限にならないと言えばそうなのかもしれませんけれども、しかし同じ当事者同士でやっておって、交渉して、こちら側は変わりがないわけですから、そうするとこれは集積して考えて競争の制限になる、実質的になってしまっているということは間違いないと思うのですね。そこで競争が行われる余地はないでしょう。  ただ、この問題は非常にむずかしい問題があるのですが、輸取法の関係は公取としてはどんなぐあいに解釈しておられるのですか。
  89. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 公取といたしましては、本件は輸取法のベースに乗るのではないかと考えております。
  90. 横路孝弘

    横路委員 通産省の方から届け出か何かありましたか。
  91. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 現在のところ協議は受けておりません。
  92. 横路孝弘

    横路委員 そういうルールがあるのだから、そのルールに乗せればいいのですよ。つまり、輸取法でちゃんと輸入カルテルということでもって出せばそれでいいわけでしょう。ただ、そこで皆さん方、これは公取というよりは通産の方でしょうが、心配しているのは、輸取法に乗せてしまうと外務省が困るわけですね。報告して、こういう輸入カルテルをやっているということになると、今度ば資源保有国の方からUNCTADの会議なんかで提起されている問題とぶつかってくるわけでしょう。その辺のことがあるのじゃないですか。われわれも非常に議論しづらいのでありまして、資源を確保するという面から見ると、開発輸入というのは確かに従来から政府の方で推進している方式でしょう。長期的にきちんと確保するという面では確かに非常にメリットがあるわけです。ところが、国内法的な措置を見ると、これは完全に独禁法違反なんですね。私は輸取法に乗ると思うのですけれども通産がこれは反対して、ともかくやるなら勝手にしろということで、公取の方に任されているみたいな形になっているわけでしょう、との鉄鉱石、原料炭の問題は。  これは調べてみますと、鉄鉱石や原料炭ばかりではないのです。モリブデンにしても、タングステンにしても、日本の場合の開発輸入というのは、法律的に言うと全部独禁法上の問題が起きてくるのですよ。これをこのままにして、ともかく表に出ないように伏せてしまうということでごまかすわけにいかないのじゃないかと思うのです。つまり、日本政府もそういう意味では、南の国との関係についての基本的な方針みたいなものが出てこない限り、この問題は法律的にだけ整理してしまうと、公正取引委員会で事件として問題にするかどうかは別にして、一応法律違反という意味での要件の該当性だけは十分あると思うのですよ。うなずいておられますけれども、その辺のところをこれはどういうぐあいに処理をするのか。私は輸取法に乗せるのが一番いいと思うのですが、政府として方針をきちんとされた方がいいのじゃないですか、どうですか。
  93. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 公取といたしましては、一応独禁法の規定に照らしまして、今後そういった共同購入契約という形のもとで競争の実質的な制限が行われることのないよう十分監視してまいりたいと思いますが、将来もし独禁法違反という事態が生ずるようなケースにつきましては、これは当然輸出入取引法というものがございまして、その取引法に基づきまして輸入カルテルの認可を受け、公取の協議にさらされた場合には、当然独禁法が適用除外になりますので、そういう事態になりました場合には、そういった措置を当然とらなければならないものと考えております。
  94. 横路孝弘

    横路委員 外務省、これは輸取法に乗せた場合は、やっぱりまずいですか。
  95. 菊地清明

    ○菊地政府委員 ただいま公正取引委員会の方からの御説明のようなお話は、まだ私の方で直接やっておりますUNCTADの段階では出ておりませんので、ちょっと御答弁いたしかねます。
  96. 横路孝弘

    横路委員 ちょっと公取にお願いしておきますが、これは開発輸入をやっているものは全部そうです。いわゆる独禁法の六条に基づく届け出も、いままで皆さん方やっていないでしょう。届け出を受け取っていないでしょう。違いますか。
  97. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 御指摘のとおり、一部届け出は出ておりますが、徹底はしておりません。
  98. 横路孝弘

    横路委員 それで、これは将来余り大きい問題になると困りますから、開発輸入をやっているやつについては、一応法律でもって届け出しなければならぬことになって、しかも届け出を怠ればたしか罰則もついている規定なんですね。これは公取の方が怠慢だと思いますので、この契約書を全部取り寄せて分析してみてください。開発輸入のやつは、ほかのモリブデンにしてもタングステンにしても何にしても全部、鉄鉱石や原料炭よりまだ明確な形でカルテル行為になってますから。その上で通産省に対してはおたくの方としてはどういう指導をしているのですか。
  99. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 ただいまの御質問は、通産省に対して公取から……(横路委員「輸取法の関係の」と呼ぶ)当初この鉄鉱石の共同購入につきまして、できるだけ輸取法に基づいて措置をとってほしいという要求をいたしました。それに対して通産省としてははっきりとした正式な回答は得ておりませんが、態度としては消極的なように見受けられます。
  100. 横路孝弘

    横路委員 その、態度として消極的なと言うだけじゃ、これは困るのでして、やはり少し公取の方が通産省になめられているのじゃないかな。どうせこういう問題だし、これは独禁法違反として事件にすれば国際的にいろいろな影響が出ますからね。しかも聞いてみると通産省の方は、このカルテルによって安く買えているから国益に合致しているなんということを言っているのですね。ただ法律的に推していくと独禁法違反事件になる。その辺のところを通産省は、そういう国際的なこともバックにあるからそう簡単に公取は手をつけないだろうという読みがあるから、皆さんの方から輸取法の関係を言っても多分無視されている。通産省の態度は公正取引委員会について完全に消極的じゃなくて無視ですよ。だから、その辺のところをひとつ、公取というのは独立した機関なのでありますから、そこのところを間違いないようにして、大いにこの問題についての扱いを検討していただきたいと思います。いかがですか。
  101. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 先ほどの鉄鉱石以外の非鉄金属につきまして、早急に届け出等も取り寄せた上、実態を調査いたしたいと存じます。また通産省との間にも、この問題についてどう措置をとったら適当であるか早急に意見を詰めてまいりたいと思います。
  102. 横路孝弘

    横路委員 UNCTADの会議の中でもこういうカルテルについては将来報告せいということになるのじゃないですか。そういう話出ているでしょう。
  103. 太田正利

    ○太田説明員 そのような話はまだこれからの段階でございますが、いろいろRBP、制限的商取引の専門家委員会というようなところで研究しておりますので、今後の問題かと存じます。現在のところまだ出ておりません。
  104. 横路孝弘

    横路委員 そういうことで、では御報告願いたいと思います。  そこでひとつ、ちょっとついでと言っては悪いですが、鋼材の二次値上げについて、それからきょうの新聞を見ますとまた第三次になるのですかな、値上げが発表されていますが、この二次値上げについては一体調査されたのですか。
  105. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 調査いたしました。
  106. 横路孝弘

    横路委員 それで、その結果どうなったのですか。
  107. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 鋼材の第二次値上げにつきましては、その内容は、昨年の九月に第一次の値上げがございまして、その第一次値上げの一環と申しますか、第一次値上げの積み残し分三千円についての値上げ、これが第二次値上げの内容でございます。したがいまして、その第二次値上げの金額等につきましては、すでに第一次値上げの際にユーザー側にも連絡をしておったところから、第一次値上げのような大きな抵抗は交渉の過程ではなかったようでございますが、ただ、その第二次値上げをいつするかということにつきまして、メーカー側は昨年の十二月積みからということ、ところがユーザー側はことしの四月からということで、その時期についてかなり折衝が繰り返されまして、結局ことしの二月積みから三千円の値上げをユーザー側は承諾をし、そのとおり値上げが行われたようでございます。そしてその第二次値上げの折衝過程で、折衝の経緯を調査いたしましたところ、第一次値上げのようないわゆるチャンピオン方式のような値上げのやり方、こういったやり方は第二次値上げにはなかったようでございます。  それから、第一次値上げの結果を公取が問題点として発表した中に、メーカー側から、値上げをのまなければ出荷をしないといった趣旨の、要するに仮価格では受注しないというふうなことで交渉したようでございますが、第二次値上げにおきましては、そういった高圧的な交渉は一切やっていないという状況でございまして、少なくとも第二次値上げの調査の結果では、第一次値上げの結果われわれ問題点として四点ばかり指摘をいたしましたが、それ以上の新しい問題点はなかったようでございます。
  108. 横路孝弘

    横路委員 第三次の値上げについてはどう考えておるのですか。
  109. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 第三次値上げにつきましては、公取としては現在のところ新聞紙等の情報でその動きを知っておる程度でございまして、まだ具体的な折衝は、折衝と申しますか業界側からの説明は聞いておりません。
  110. 横路孝弘

    横路委員 説明じゃなくて、どうなんですか、一次、二次と同じように調査をされるのですか。
  111. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 第三次値上げの推移を見て、必要があれば調査をしなければならないと考えております。
  112. 横路孝弘

    横路委員 高橋さんからかわって今度の公取の体制はどうなのかということをみんなが注目をしておるわけですが、先週何か業界の代表が公取の委員長のところに行ったんじゃないですか、この値上げの問題で。先週の金曜日だったかな。あなたもそれに出ていませんか。
  113. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 新日鉄の代表者が委員長に面会に来ておられます。
  114. 横路孝弘

    横路委員 従来、値上げを前にして業界の代表が公取の委員長のところにごあいさつに行くなんということはなかったのでありますが、どんな話なんですか。まさか皆さんが指導したわけでもないでしょう。その会合はどういう話の内容だったのですか。
  115. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 昨年の第一次値上げの結果について、公取として独禁法上の問題点を指摘いたしました。その指摘事項にかんがみまして今回と申しますか、これからの第三次値上げについては十分その辺の問題を配慮して、独禁法上問題のないような形で進めていきたいという、それから同時に鉄鋼業界としてある程度の値上げは避けられない状況だという説明も同時にございました。そういったことで、具体的な、いつからどういう形でというところまではまだ詰まっていないと申しますか、具体的な話はございませんでした。
  116. 横路孝弘

    横路委員 そうじゃなくて、要するに独禁法に触れないように値上げするにはどうしたらいいのか。何かきょう見ると、今度は新日鉄じゃないですな、つまりペースメーカーがちょっと交代をしたわけですよ。これはまさか公取が知恵をつけたわけじゃないのでしょうね。
  117. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 絶対にそういうことはございません。
  118. 横路孝弘

    横路委員 値上げを前にして業界の代表がそんなことで説明に公取に行くなどというのは多分いままで余りなかったのじゃないですか。高橋さんからかわって今度の公取の委員長を業界がどういうぐあいに見ているかというのはよくわかるのでありますが、そういういろいろな批判を受けないためにもこの三次の値上げについても十分監視をして、必要とあればやはり四十条そのほか発動してひとつ資料をきちっととらなければ、これは呼んで話を聞くだけじゃ、最近は独禁法の問題というのは企業側が非常に上手になって、横の連携をぴしっととって、法律の専門家も養成をして、その指導を受けて、皆さん方のところに呼ばれていくときにはちゃんともう話はでき上がっているわけでありますから、やはり強制権限を発動しなければだめだと思うのです。そんなことで公取までが業界となれ合ったり癒着したのではこれはもうどうしようもありませんから、ひとつその辺のところの姿勢だけきちっと持ってやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  119. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 御指摘のとおり厳正に法の運用に努めてまいりたいと思います。
  120. 横路孝弘

    横路委員 終わります。
  121. 森美秀

    ○森(美)委員長代理 本会議散会後再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議
  122. 田中六助

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。増本一彦君。
  123. 増本一彦

    増本委員 国際金融の関係の四法が提案をされていますので、それとの関連で若干の時間をいただきまして、今後の国際経済協力のあり方の問題と、いま問題になっております多国籍企業に対する対策の問題について、政府のお考えを聞きたいと思います。  公取の経済部長さんがどちらかにいらっしゃるそうですから、先に多国籍企業に対する対策の問題から若干お伺いしておきたいと思います。  もう御承知のように、国連を舞台にして多国籍企業に対する規制の問題が議論をされ、決議が何回にもわたって行われていますし、それからまた一九七三年の八月には多国籍企業と国際開発という国連事務局のレポートも出ているわけであります。ちなみに一九七一年の六月のILOにおける多国籍企業が提起する社会問題に関する決議に始まって、一九七二年の五月のUNCTADにおける制限的商慣行に関する決議とか、あるいは同じ一九七二年の七月の国連経済社会理事会での多国籍企業が発展過程と国際関係に及ぼす影響に関する決議、あるいは国連総会での国際取引委員会に対する多国籍企業が提起する法律問題に関する検討要請する決議というような一連の国際会議における決議が行われているわけであります。  まず私がお伺いしたい点は、こういう国連とかあるいはUNCTAD、その他国際関係の会議における多国籍企業問題に関する一連の決議やあるいは問題の検討、討議というようなものについて、わが国がどういうような態度をおとりになり、またその中でどのように意見表明されてこられたのか、この点について明確にひとつお答えをいただければと思います。
  124. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 現在、多国籍企業の問題につきまして、OECDあるいは国連の経済社会理事会等におきましてその規制についてのガイドラインづくりを進めております。これらの会合に対しまして、わが国から公取の代表を含めまして積極的に協力の態度で会議に臨んでおるところでございます。  独禁法は、御承知のとおり、いろいろ管轄権等の問題がございまして、多国籍企業につきまして適切なる排除措置あるいは調査等の面につきまして法律上いろいろ問題がございますので、これらの問題をカバーする意味におきまして、国際間でそういったガイドライン等によっていろいろな協力体制をとりながらその辺の不備を補完していくということにつきましては、当然積極的に参加をし、協力していかなければならないものと考えております。
  125. 福田博

    ○福田説明員 国際的な場におけるガイドラインづくりにつきましては、現在OECDで取り進められておりますガイドライン作成が最も先行しているものと思われますが、この問題につきましては従来OECDで各委員会ごとにばらばらに検討しておりましたのを、昨年の一月に国際投資多国籍企業委員会を設立いたしまして、そこにおきましてその後何回も協議を行い、ガイドラインの策定をするよう各国で協議を行ってまいりました。目下の見通しではまだ確定的なことは申しませんが、六月下旬に閣僚レベルの理事会が開かれる予定でございますので、そこで採択できればと思っております。  まだ確定はしておりませんが、内容をごくかいつまんで申しますと、一般的な方針、それから情報公開、それから財務の問題、それからいま御発言がありましたが競争の関係の問題、課税の問題、雇用の問題等をカバーいたしますガイドラインが策定されることとなる見込みでございます。
  126. 太田正利

    ○太田説明員 OECDにおきます討議ぶりにつきましては、ただいまお話があったとおりでございますが、国連の場におきましても多国籍企業委員会というものができまして、ことし初めに第二回目の会合がございまして、今後とも経済社会理事会の場において検討を進めたいという結論になっております。
  127. 増本一彦

    増本委員 進行状況はお話しのとおりだと思いますが、一体それぞれのそういう国際的な場において日本がどういう態度で臨んでいるのか、どういう方針を持っておられるのか。たとえばOECDのガイドラインに対して五つ、六つの項目でガイドラインができるわけですが、それぞれについて一体日本はどういう方針、態度、考えを持っているのか、その辺をひとつ明確にしてください。
  128. 福田博

    ○福田説明員 多国籍企業問題と申しましても内容が非常に複雑多岐にわたるわけでございますが、多国籍企業は、一般的にはその規模が大きいこと、あるいは経営資源が豊富であること、それから情報量が豊かである、それから意思の決定と行動に機敏さがあるということで、経済の発展に国内的にも国際的にも非常に大きな役割りを果たしているということを認識しつつ、他方におきましてその特質のために国際的に影響があって、各般にわたる問題等がある場合が受け入れ国あるいは親元国両方についてございますので、それらの問題に対しては各国の国内的な措置を基本としつつも、国際的に大体どういうガイドラインをつくれば最もそのような特質により引き起こされた問題とか懸念を払拭できるかという方向で議論が進められておりまして、わが国はそのような方向で積極的にこれに参加して対処しております。
  129. 増本一彦

    増本委員 一つは、石油危機を契機にして、メジャーを中心にするこういう多国籍企業の経済撹乱行為ということが国際的にも大きな問題になったと思います。ロッキードが多国籍企業であるのかどうかというのは、経済学上のカテゴリーの問題としていろいろ議論があります。それはともかくとして、こういう多国籍企業の経済撹乱行為に対して、それを規制するという側面、このことがいま非常に重要だと思うのです。たとえば現行の独禁法では、国際契約がある海外との取引については、すべてその契約の内容を公正取引委員会に届け出をするというような仕組みがありますけれども、しかしその中身は実際に公にされない。そして突如として国民経済経済的な撹乱行為の否定的な影響があらわれてくる。その端的なあらわれが冒頭申し上げた石油危機のときのあのメジャーの横暴な態度であったと思うのですが、国内的な経済政策あるいは独禁政策として、あるいはまた価格政策もその中に入るかもしれません、そういう経済撹乱行為に対する手だてをどういうようにするかということが非常に大きな問題だと思いますが、その点では、政府はどういうようにお考えなんでしょう。
  130. 吉野秀雄

    ○吉野(秀)政府委員 多国籍企業がわが国に進出して、わが国の企業に対しいろいろ不当な拘束条件の取引を強制したり、あるいは排他的な条件要求したり、いろいろ不公正な取引方法によって経済の撹乱をするという場合には、これは当然国内の公正な競争秩序に影響のある問題でもございますので、現行独禁法第十九条の規定を発動いたしまして取り締まることになろうかと思われます。また、多国籍企業がわが国に進出するに当たりまして、いろいろな合弁会社の形態をとったり、あるいは不当な手段で株式を取得しあるいは企業を買収するというふうなケースにつきましては、現行独禁法の第十条で株式保有の報告を求めることになっておりますし、また現行第十五条、十六条で合併、営業譲り受け等の規制をしておりますので、そういった条項を適用いたしまして、少なくとも多国籍企業がわが国経済秩序を撹乱するような行為につきましては、これは国内企業であろうと多国籍企業であろうとその区別を問わず厳重に対処していくべきものと考えております。
  131. 増本一彦

    増本委員 現行の独禁法のもとでは、たとえば石油危機以降のいろいろな多国籍企業の否定的な活動等について、いわばその有効な手だてがとれなかったということが、一つは問題だと思うのです。それからもう一つは、たとえば石油の価格がどんどん上がっていく、それに対応して石油の取引の国際契約の内容も具体的な履行の過程で変更が行われてきたんではないか。そういうことの一つ一つが日本の経済国民経済にいろいろな形で大きな影響を与える。だからこそ、まず第一に、こういう多国籍企業を中心にした外国企業との取引については、特に石油などのエネルギーとか、あるいはアルミもメジャーが中心になりますが、そういうような重要な資源などについて、その契約の内容をまず公開をするとか、あるいは少なくとも国会などでこの問題が議論される際には国会要求に応じて必要な資料は提供して、国会を含むそういう問題についての審議が可能になるような手だてが具体的にとれるような道をあけることが必要ではないか。政府としてそういう方向での検討というものは一つはないのか。まさに国民が知らないうちに、秘密のうちにこういう撹乱活動が突如として起こるというようなことを事前にチェックをし、規制をするということが、一つは非常に重要な問題ではないかというように考えるわけです。  それからもう一つ経済撹乱行為の面では、金融の問題です。日本はかなり為替の管理を厳しくしていますから現状では大きな問題は起き得ないという政府の答弁もありますけれども、しかし、メジャーを中心にして膨大な資金がどんどんいろいろなところへ投資を求めて流れていく、そういうものに対する事前の規制というものも重要だと思いますし、そういう手だてが具体的にとられるべきではないのか。その面での法改正を含めた検討は進めなければならないというように思いますが、そういう態度が政府におありなのかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  132. 見学信敬

    ○見学説明員 企業の公開の問題についての御質問でございますが、当省におきましては、四十二年以来、在日外資系の子会社等につきまして外資系企業動向調査というものを実施しております。毎年、経理問題その他マクロ的な観点から、若干統計的な手法を駆使しまして、日系企業とどう違っておるか、そういった企業のパーフォーマンスというものについて調べてきたところでございますが、最近のいろいろな問題にかんがみまして、ややその調査の充実を図りたいということで考えている次第でございます。  なお、その観点としましては、若干企業をグループとしてとらえまして、日本での取引の実態をわれわれとしては把握したいというふうに考えております。ただ、企業グループ内の個別の内容についてまで公表するかどうかは、いまのところ別問題と考えております。
  133. 増本一彦

    増本委員 その点の調査の充実と、そしてそれに基づいて、マクロ的な観点だけれども、調査したものをお出しになるようですが、それは大体いつごろまでにできるものなんですか。
  134. 見学信敬

    ○見学説明員 例年八月に調査票を出すことにしてございますが、これは各会計年度が締まりませんとなかなか出ないことになります。それと対応しつつやろうと思っておりますので、若干タイミングを早めようとは思っておりますが、現在、調査項目について検討中でございます。
  135. 増本一彦

    増本委員 時間が半分過ぎたようなんで、それでは後でまた十分時間をとって、この問題は個別の問題も含めて少し政府の見解を伺うことにして、ともかく国際経済全体としましても、この多国籍企業に対する規制の問題が国際的な問題として出てきておりますので、OECDにおけるガイドラインづくりというものも、一つのいわばこれからの具体的な規制の出発点になるようなものなので、日本の態度をやはり明確にして、特に日本は資源その他の面でも、現状は石油、アルミにしましてもその他の問題でもメジャーだとか多国籍企業に依存しているような経済の事態ですから、それの脱却を図っていくということとあわせて、だからこそ。自主的に日本の経済や国益を守っていくという点でも、規制の方向というものをやはり具体的に検討をしなければならない段階だと思いますので、そのことをひとつ鋭意努力してもらいたいということを要望しておきたいと思います。  それでは、二番目の今後の国際経済協力のあり方について若干お伺いをしたいと思います。  今回のこの法案の中でも、石油危機以降の国際金融情勢から、それに対応する一つ措置として金融支援基金制度のようなものができるとか、それから、これからの長期的にあるいは中期的に国際経済協力を見ていく上でも、いま日本のとるべき態度というものがいろいろ問われているというように思うわけです。  まず基本的な考えを伺いたいのですが、大臣は、国際経済協力の面でも、いわばお金をそれぞれの国際経済関係機関出資をするという立場から、あるいは国際金融そのものの上からも非常に責任をお持ちの立場にあるわけで、今後の国際経済協力のあり方についてのいわば基本的な態度とかあるいは基本的なお考え方というものをまずひとつ明らかにしていただきたいというように思います。
  136. 菊地清明

    ○菊地政府委員 まず私の方からお答えさせていただきますが、今後の国際経済協力のあり方についての御質問でございますが、その前に、国際経済協力というものは非常に広範な概念でございまして、大きく分けまして、政府レベルの、政府同士の援助関係、それから民間の投資その他合弁事業、それから融資その他民間レベルの経済協力と、それからもう一つ、中間といいますか、その両方が一緒になりました、政府と民間と一緒になりました分野がございます。この三つの分野がございますが、まず第一の政府間の経済協力関係につきましては、大蔵大臣から午前中お答えのありましたように、日本は資源的にも他国、ことに発展途上国に依存するところが、ほかの国に比べまして大変大きいわけでございまして、それが日本の特有の事情でございますが、そのほかにも、北の先進国と南の発展途上国との経済格差というものが非常に広がっておりますので、このまま放置するということは、世界経済全体としても許されないことでございますので、この間の格差をなくしていく。そこに政府開発援助というものの意義があるわけでございまして、ただその場合、援助する方といたしましては、これは援助というものは永久に援助するわけでございませんので、むしろ援助が必要でなくなるというような事態まで現在の発展途上国を引き上げていく。それをお手伝いするということでございまして、その前提としては、当然その発展途上国の自助努力というものが前提でございますが、自助努力だけでできない部分を先進国が援助していく。したがって、その基本的な考え方としては、発展途上国のニーズといいますか、経済的、社会的開発のニーズに従ってそれを満たしていくというふうなのが私たちのやっております政府レベルの経済協力の基本的な概念であろうかと存じます。その他官民一体の協力とか民間レベルの経済協力というものがございますけれども、これも一般的に申しまして発展途上国の経済社会開発に資するという観点は、いかに商業的な利潤追求行動でありましても、相手が発展途上国という場合には当然その視点が入ってこなければいけないというふうに考えております。
  137. 大平正芳

    大平国務大臣 国際社会に生存いたす上におきまして、やはりこれはおつき合いでございますから、まず日本の立場におきまして世間並みのおつき合いというものは経済協力の面でもいたさなければならないし、また、ある意味において、いたす責任が世界、国際社会のためにあるのではないかと考えております。  それから第二は、そのことは日本の利益のためというのでなくて、まず、レシピエントといいますか、受け取る側の国の利益本位に考えて差し上げなければならぬことでございます。世上、日本は資源がないから外国とよくつき合っておかぬといかぬのだというような意味のことをよく言われますけれども、私は必ずしもそれに賛成できかねるのであります。日本は資源がなくても、ちゃんと正当な値段で資源を購入いたしておるわけでございます。また正当な値段で購入してくれという要求がいまなお各国から来ておりまして、なかなかその要求に応じられない状況であることも増本さん御承知のとおりなんでございまして、資源がないからといって卑屈になる必要はないと思うのです。正当な対価を払っていけば、国際社会で孤立するものではないと思うのでございまして、問題は日本が国際社会の一員として相手側の立場を尊重して、なすべきことをちゃんとやる、なしてならぬことはしないということでなければならぬと思うのでございます。  先ほどもあなたは、多国籍企業のマナーの問題について触れられたわけでございますが、私は、その場合、日本の大企業のマナーが他の国においてよくないじゃないか、そのために日本の信用を損ねておるのじゃないかということを日本の倫理基準、日本の物差しでよく議論するのを聞くことがございます。それも一つの考え方でございますけれども、国際協力というのは、その国が、その企業が進出をいたしました進出先の国の事情、法令、慣習、そういうものをわれわれの企業がちゃんと遵守して、その国の国民から尊敬されるような企業であればいいわけなんでございまして、その向こうの慣習と日本の慣習とが違う、法令と日本の法令が違う場合、日本の慣習や日本の法令でいい悪いの判断をすることは必ずしも適切でない場合があるのではないかと思うのでございます。  いずれにいたしましても、日本の国際社会における立場を踏まえて、なすべきこと、なしてはならないことをけじめをつけてやりまして、国際的信用、国際的評価というものをちゃんとかち取ることが大切だと考えております。
  138. 増本一彦

    増本委員 じゃ、いままでの日本側の企業のマナーから見ますと、たとえば東南アジアでもタイを初めとして、あれだけの現地のそれぞれの国の人たちのいろいろな反日運動はやはり起きなかった。そういう意味では、日本の進出している企業のマナーというものはもっと厳格に考えなければならないという問題は、大臣のお言葉ですから、やはり私はあると思います。その点について、きょうは議論するつもりはございませんから。  そこで、こういう石油危機以降の国際経済の状態のもとで、これをどうしていくかといったときに、一番先に、アメリカ側の態度が産油国、OPEC諸国に対して非常にシビアな態度で出てまいりましたですね。まず消費国が団結をして、そして資源の節約と代替エネルギーを開発して、その中で産油国に対するデモンストレーションをやることによって、消費国中心にひとつこの事態を解決していこう、端的に言えばこんな動きではなかったかというように思うのです。それに対する資源保有国の側からの大きな反発もやはりありました。そこで、特に資源保有国は、資源の民族主権をちゃんと守れ、こういう要求をいわば国際的に掲げて主張しているわけです。それがそれぞれの国で、たとえば国有化だとかあるいはその他いろいろな措置がとられるということにもなりますし、あるいは石油価格の決定についても、自分たちの発言権を経済の実勢に応じて認めろという形でいろいろ出てくる。そういう状態が続いてきているわけですが、そういう面では、資源の民族主権というのは、これまで長い間抑圧されてきたそれぞれの諸国の現状ばかりでなくて、国際法の現在の状況から見ても、それぞれの国の民族主権は守られなければならない、その上に立って資源の購入についての取引や経済協力がなされていかなければならない、こういうように思いますけれども、この資源の民族主権等を主張する資源保有国のこういう主張に対して、わが国としてはどういう対応をなさってきて、またこれからどういうように対応なさろうとしていらっしゃるのか、その点についてひとつお伺いをしておきたいと思います。
  139. 菊地清明

    ○菊地政府委員 いまお尋ねの、いわゆる資源の民族主権と仰せられましたが、私たちはこれを恒久主権の問題と解釈いたしますが、この問題は先生御承知のとおり、諸国家間の経済権利義務憲章にもございますし、いろいろな面で発展途上国、つまり七十七カ国側が従来から主張しているところでございます。これに対しましては、資源の恒久主権というものに対しては何人も争っていないわけであります。その領域内にある資源に関してその国家が主権を持っておるということは、別に何人も争っていないわけですが、これが国際会議で問題になりますのは、資源の恒久主権即資産の無償没収といいますか、収用その他に結びつけて主張されるところに、先進国側がこの概念を受諾することが困難な理由があるわけでございます。  それで、日本も含めまして先進国側としては、こういった資源に対してすでに外国から投資が行われている場合には、その企業をその国が主権に基づいて接収その他を行う場合には、正当かつ即時、即時と申しますか、余り時間をおくらさないで補償するということであるならば、この点は何人も争っていないというのが現状でございますので、そのラインで主張をしているわけでございます。
  140. 増本一彦

    増本委員 何人も争わないとおっしゃいますけれども、では、ついでにお伺いしますが、たとえばことしの五月六日のUNCTAD総会におけるキッシンジャーの演説ですね。これは当然お読みになっていらっしゃると思いますが、その中で資源銀行という構想を出されて、これはいわばお金を出す国と資源を持っている国との間の関係をがっちり固めてそして開発を進めていこう、そういうところに一つのねらいがあると思いますが、ここでの考え方の基調というのは、やはり資源の恒久主権そのものを認めた上での主張というぐあいには私は読めないわけですが、その是非の問題と、それからもう一つはこういう構想についての提案アメリカから国際会議の中で出たわけですが、これについての政府の考え方、この点はいかがですか。
  141. 菊地清明

    ○菊地政府委員 アメリカのキッシンジャー国務長官が提案しました国際資源銀行というものは、投資国、それから被投資国といいますか資源の所在国、つまり発展途上国、そこに世界資源銀行という三者が相寄りまして、資源国における開発を促進していこうということでございまして、そこでは当然その資源所在国の資源そのものに対する主権は認めております。ただ、米提案のねらいは、従来投資する側が、先ほど申しました接収その他を恐れてどうも投資が鈍りがちであったということもございますので、ここに第三者的ないし国際的な機関を介在させることによって、投資保障協定もやろう、それからもちろんいろいろな機能を付与するように考えているようでございますが、そういったことでございまして、基本的には資源の開発を促進して資源の需給を安定させるためにはどうしたらいいかというための一つの方策であると考えております。  日本はどうかということですが、実はこれが正式に提案されましたのは今回のUNCTADの会議でございますので、日本政府としては、ナイロビに行っております代表団を含めまして鋭意検討中の段階でございます。初めから問題にならないという態度ではなくて、検討していきたいということでございます。
  142. 増本一彦

    増本委員 彼の演説の中では、「プロジェクト協定に沿った資源保有国と外国投資家双方の事業の多角的保障による非商業的リスクの軽減。」ということで、ここで一つ問題になっているわけですね。この考え方の基調は、その前のたとえば金融支援基金の構想を、当初キッシンジャーが一九七四年の十一月ですか、シカゴ大学での演説の中で出したものも含めて、要するに消費国である先進諸国が結束をし、そこでこれまで台頭してきた資源保有国の恒久主権を要求する動きに対抗しなければいかぬというところから出発しているのではないか。だから、そういうものに安易に乗っかるような態度をとると、大臣が冒頭におっしゃった、平たく言えば、与えよさらば与えられんというのですか、ともかく相手の立場に立ってやっていく中で国際的な信用をかち取っていくという立場そのものと、アメリカのいま考えている立場との間には相当な開きがあるというように思いますけれども、その点は政府の認識としてはどうなんでしょう。
  143. 菊地清明

    ○菊地政府委員 先ほどちょっとお答えするのが漏れましたけれども、アメリカの態度につきましていまお話があったわけですが、実は去年の九月ごろまでは、確かに御説のとおり、アメリカとしては若干対決的な態度でございましたけれども、去年の第七回国連特別総会以降、そのときキッシンジャー演説があったわけですが、それ以降アメリカ側としては話し合いのムードに変わってきておりまして、そういう話し合いの一貫として世界資源銀行という構想も生まれてきたというふうに私たちは側面から見ておるわけでございます。したがいまして、もしアメリカの態度の変更というものが真実であるならば、私たちとしてはそういった対決ではない、話し合いの一つの構想として受け取っているわけでございます。
  144. 増本一彦

    増本委員 そこで、今度の金融支援基金の問題ですけれども、これは当初七四年十一月のキッシンジャーのシカゴ大学での演説の中でこの構想が提起をされて、それと彼の要求していた出資額総枠から見ると、二百億SDRということですから、相当大幅に減っているということにはなりますけれども、そういうアメリカの態度あるいはアメリカの考え方、方針というものが、この構想がつくり上げられる中でやはり貫かれてきているのではないかということを思うわけですが、その点はどうなんでしょう。
  145. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 一昨年の十一月十四日にキッシンジャー長官がシカゴ大学で演説されまして、その中で、七五年に二百五十億ドルの規模各国の拠出、または保障による支援のスキームをつくろうという呼びかけをしたのは事実でございます。しかし、その前の十月にすでにOECDのバン・レネップ事務総長が、やはりOECD諸国がお互いに石油危機後の国際収支の困難を解決するために助け合おうという構想を出しまして、各国に呼びかけたわけでございます。私どもの作業は十一月に十カ国蔵相代理会議のもとで始まったわけでございまして、こういったいろいろな構想がございましたが、どちらかと言えば、OECDから出されました構想をより多く参考にして検討を開始したわけでございまして、作業部会独自の検討で作業をまとめました結果、日本の大平大臣が議長をされました一月の十カ国蔵相会議でこの基金の設立が基本的に合意されたものでございます。その後はOECD加盟国に広く呼びかけまして、昨年の四月九日に調印の運びになったわけでございまして、いきさつから申しますと、アメリカの考え、あるいはキッシンジャー長官の考えを具体化したということではございません。  ことに大事なことは、実態におきまして、先ほど先生も御指摘になりましたが、アメリカはそのころ消費国が団結しようという考えを持っておりましたので、この基金もソリダリティーファンド、日本語で団結基金というふうな名前をつけておりましたが、これは私どもの強い反対で、ここにございますような金融支援基金という名前に改めましたし、規模の点も変わってまいりましたが、そのファイナンスの方法も変わってまいりました。それから、アメリカ側は当初石油政策とリンクしようという意図があったわけでございますが、でき上がりました姿におきましては、そういう一律的な義務的なリンクというものは全くなくなっているというのが実態でございます。
  146. 増本一彦

    増本委員 そうしますと、たとえばこの基金目的の中で、エネルギーの生産増加及び節約を促進するための協力政策をとることを奨励し援助するという規定がありますね。これは彼の七四年十一月十四日の演説の中の文字どおりの構想でしょう。節約と新エネルギーの供給をやっていかなくてはいかぬ、そのために消費国はまず団結だ。しかも今度は、その支援基金を使う側については、運営委員会借り入れ国の経済政策及び基金目的を達成するために所要の行為をするというような形で、貸し付け条件の実施状況を常時チェックをし、そして経済政策にまで容喙ができるような手だてがとられているというような点も、いわばエネルギーの節約あるいは経済運営そのものがどうなっているかというようなことについてまで逐一介入ができるシステムがとられていて、その目的がどうも発想として七四年十一月のキッシンジャーの構想として打ち出されたものと文字どおり重なり合った形で出てきている、そういう母斑は依然としてぬぐえてないというように思うのですが、その点はどうなんですか。
  147. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 当時石油価格の大幅な引き上げによりまして、産油国の経常収支の黒字は六百億ドル以上になり、OECD諸国の赤字は三百億ドルを超すという状況でございました。したがいまして、国際収支の困難に対して非常に大きく貢献していたのはこの石油の輸入金額でございまして、当然国際収支対策を講じますときに、石油の輸入金額は余りふえないものという意識は、米国に言われるまでもなく、OECD諸国にあったわけでございます。米国が指導いたしましてできましたIEAに参加してないフランスも、OECDの場でそういう方針を言っていたわけでございまして、今回国際収支対策としての金融支援基金協定ができますときに、やはり国際収支をよくしようという観点からの資金でございますので、適切な内外経済政策をとります場合に、エネルギーの乱費をしないようにしようということが注入されているわけでございます。
  148. 増本一彦

    増本委員 時間がありませんので、今後のエネルギー問題を中心にした国際的な経済の見通しについて若干伺っておきたいと思います。  実は「ナショナル・ジャーナル」というアメリカの雑誌に、一九七三年七月七日付で元アメリカ商務次官補のF・V・フォークルズという人が論文を書いているわけです。彼は当時のピーターソン商務長官の次官補で、ピーターソンが、この論文について自分の見解を全面的に表現したものである、そういう保証までしている、こういうように伝えられています。その中を見ましても、たとえば「一九七〇年にヨーロッパはそのエネルギー需要の半分以上を石油に依存していて、消費分の二パーセントしか生産してはいなかった。同年、日本の依存率は七〇パーセントで、しかもこの国は実際にはまったく生産していなかった。これらの状況はアメリカの状況と対照的であり、アメリカはその石油消費量の二一パーセントしか輸入していないのである。しかし一九八〇年には、アメリカは需要量の四五パーセントから六〇パーセントを輸入することになろう。」こうしたこれからの国際的な石油の需給の見通しについてはいろいろ議論がなされております。そういうこれからの状況の中で日本のエネルギー政策というものは一体どうあるべきなのかということは、これは古くて新しい、しかも非常に大きな問題であります。こうして国際的な石油危機以後の協定がいろいろな形で出てきて、国際通貨の安定を目的とするいろいろな試みがなされたり、その他いろいろありますけれども、そういう今日の状況に対応して、政府としてはこれからどういうように行かれるおつもりなのか。エネルギー政策そのものとして、それに関連する国際的な通貨問題あるいは通貨等のこれからの見通しについて政府のお考えを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  149. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、日本が石油資源において他国に対する依存度がきわめて高いということは周知のとおりでございます。現在のこれを踏まえましての国際協力対策と申しますか、そういう点は具体的には、現在唯一に行われておりますところの政府間のエネルギー問題、特に石油問題の対話のフォーラムは、御承知のパリにおける国際経済協力会議のエネルギー委員会でございまして、それが唯一の政府間のコンサルテーションの場であるわけでございます。これはすでに回を重ねること三回でございまして、来月四回目に入るわけでございますけれども、漸次両者間の対話は軌道に乗ってまいっておると思います。  これを基盤といたしまして、同時にパリにおきましては、これまた御高承のように開発、金融、一次産品の三委員会を並行しておりまして、南北問題の広い枠内でエネルギー問題をとらえてまいりたい、こういうような形で努力をしておるわけでございます。恐らくこれは非常に即時的に直ちに結実するものではないというのが率直な感想と存じますけれども、やはり忍耐強くこれには対処してまいりたいということでございまして、わが国が当初より主張しております産油国との調和ある関係、これの追求にはふさわしい場であるという認識のもとにわれわれは努力してまいっておるわけでございます。  それから、米国のエネルギー政策についての御指摘があったわけでございますけれども、米国は御承知のようにプロジェクト・インデペンデンスという計画によりましてエネルギーの自立を図るということを趣旨としておるわけでございますが、そのためには国内の石油の高価格政策をある程度とらざるを得ない、これは開発促進のためにそうなるわけでございますけれども、これがインフレ要因もございまして若干国内的な抵抗があるということで、今後の問題としてはアメリカのプロジェクト・インデペンデンスは若干手直しの必要が出てくるのではないかということが最近言われ出しておりますので、この点もわが方として注意深くその状況を見守っておる状況でございます。
  150. 増本一彦

    増本委員 時間ですので、終わります。
  151. 田中六助

  152. 広沢直樹

    広沢委員 米州開発銀行加盟問題その他それぞれの基金に対する増資、そういった具体的な法案の質問に入る前に、一、二点基本的な考え方をお伺いしておきたいと思います。  それは、これまでのわが国の援助政策が従来から他国の援助政策の方向を見てそれからわが国の態度を決定する、いわゆる受動的な傾向が強いように私は思うわけです。しかもこれまで援助に名をかりたいわゆる経済権益、これの確保をねらったものではないかという批判もありましたし、特に民間経済援助等に見られるように、恣意的な営業活動に対しては特にアジア諸国からの批判がありました。そこで、これから国際協調そしてまたわが国経済協力というものを進めていくに当たっての基本的な方針、考え方、これをまずお伺いしておきたいと思うわけであります。
  153. 菊地清明

    ○菊地政府委員 先生御指摘の、主として民間レベルの経済協力でございますが、民間でございます限り、市場を広げていこうという動機もあるわけでございますけれども、この場合、たとえばタイとか、それからインドネシアにおきまして若干日本の進出企業に対する批判があったわけでございますが、その後日本側におきましてもいろいろ対策を講じまして、主として民間企業のいわゆるビヘービアというものに関し自粛の動きが出てまいりまして、むしろ最近の情勢を申し上げますと、タイあたりでは、これはもちろんインドシナの情勢の変化もございますけれども、日本の投資活動が激減いたしましたので、かえって日本の投資はどうしてなくなったのだろうかということでいろいろ政府レベルでも照会があるくらいでございます。私たちといたしましては、この際、そういった日本からの経済協力、投資というものに対する要請は依然としてあるものと存じますので、今後とも適正な投資、つまりどういう業種に投資するかということが非常に重大な問題でございますが、そういった適正、優良投資を正しいビヘービアでもって協力を行っていくということが方針であろうと思います。
  154. 広沢直樹

    広沢委員 おっしゃる意味はよくわかりますが、私どもは、このわが国経済協力のあるべき姿勢、基本原則といいますが、これは次のように考えているわけです。  これはまず第一番には、やはり主権の相互尊重、そうして政治的、経済的内政の不干渉という立場に立たなければなりませんし、第二番目には平等互恵の貿易とか金融、三番目には被援助国のみずからの発意に基づくその国の国内産業の発展を願うという、これをわが国の基本原則とすべきではないかと思います。  援助について言うならば、第一には二国間の援助から、いまきょう問題にしようとしております多国間援助方式へ重点を移していく。それから第二には、ひもつき援助の、とかく話がありましたけれども、そういったものは排除していく。さらには被援助国の経済秩序を破壊しない、そういう点を基本的な原則としてこれから経済援助というものを進めていかなければならない、こういうふうに私どもは考えているわけであります。  いままでいろいろ二国間の援助、特に民間の経済援助等の中にあっては、そういう営業活動的な問題が非常に多かったということはひとつ大いに反省していかなければならない問題であり、いまもお答えがありましたので、いま申し上げた基本原則を土台にしてこれから取り組んでいっていただきたいと思うわけであります。  そこで、これからの援助に当たっても、大きく分けていきますと、アフリカ、法案が出ておりますが、それから今度は法案は出ておりませんけれども、アジア方面、それから中南米、特にアジア諸国に対する援助、東南アジア方面についてはわが国は基本的に相当大きな、民間にせよあるいは政府ベースにせよ援助というものに重点を置いてきたわけでありますが、いま、一九七三年からはアフリカのこうした開発基金にも入っておりますし、またこのたび中南米における問題であります米州開発銀行にも加盟しようということであります。したがって、大きな地域の後発の開発途上国が大きく分けてこの三つの方面にあるわけでありますが、今後の重点というものをどういうふうに考えていかれるのか、簡単にひとつお答えいただきたいと思うわけであります。  これは基金に対する一つ増資あるいは加盟に対するそういう姿勢にもかかわってくる問題であろうかと思いますので、最初にお伺いしておきたいと思います。
  155. 菊地清明

    ○菊地政府委員 日本の政府レベルの援助の地理的な配分と私たち申しておりますが、どういうふうに配分されているかということは、ちょっと簡単に数字を申し上げますと、二国間の援助実績を一九七四年で見ますと、アジアに関して、八六・七%という非常な大きなシェアがアジアにいっております。それから中近東は、七四年は非常に小さかったので、〇・七%、それからアフリカが五・二%というふうになっております。  この数字でも御承知いただけますように、従来日本の政府援助の重点はアジアでございまして、アジアのうち最初のうちは南アジア、つまりインド、パキスタン、スリランカというのがおよそ重点でございましたけれども、最近は東南アジアといいますか、いわゆるASEAN諸国を含めた東南アジアの国に大きなシェアがいっているわけでございます。で、日本はアジアの一国でありますし、近隣諸国をまず援助するということが当然の常識だと思いますので、今後とも重点は依然としてアジアに置かれる。それから、アジアのうちでもいろいろ色分けがございますが、石油危機以来特に影響を受けた国とか、それからいわゆる発展途上国のうちでも後発の途上国というものにさらに重点的に援助を指向していかなければいけないというふうに考えております。  それから、アフリカにつきましては、実は正直申しまして日本とのなじみはわりあい少なかったわけでございます。しかも、数は非常に多い。現在四十八カ国ぐらいあると思いますが、こういう国に対してまんべんなく政府レベルの協力をやるということは困難でございますので、こういった比較的なじみの薄い地域に関しましては、アフリカ開発銀行とかアフリカ開発基金とか、そういったものを通じての援助ないしそれとの協調融資というか、そういったのがより効果的ではないだろうかというふうに考えております。  それから、中南米の国に関しましては、御承知のように、この三つの大陸のうちでは一番中進国的な国が多いわけでございますので、これらの国に対しても、従来二国間の援助もやっておりましたけれども、ラテンアメリカのうちの比較的おくれた国、といいますとボリビアとかパラグアイでございますけれども、主としてそういった国には今後とも二国間援助を続けるといたしまして、今回御審議願っていますこの地域開発銀行というものを通ずる援助、経済協力を拡大していきたいというふうに思っております。
  156. 広沢直樹

    広沢委員 それでは、法案の問題について若干お伺いしておきたいと思います。  まずアフリカ開発基金でありますが、この基金に対しては出資額においてはわが国は第二番目。したがって、今度の増資におきましても、当然でありましょうけれども……。そこで、相当おくればせながら、このアフリカに対する援助の方も力を入れつつあるという姿勢だけはわかるわけであります。特に、国際協調を旨としておりますから、こういう南北問題に対しては真剣に取り組んでいかなきゃなりませんが、いまもお話がありましたように、アフリカ地域に対するウエートは、経済援助の割合からいうと、非常に小さいわけであります。しかしながら、このアフリカ地域、特に開発途上国の多いアフリカ地域に対しては、やはり今後も積極的に経済協力を進めていく必要がありましょうし、その中において特に要望されることは、緩和された条件で、そういう援助でなければ、こういう後発の開発途上国としては、援助を受けることによっての恩恵といいますか、そういうものも受けられないのじゃないかと思います。したがいまして、この緩和された条件の援助を充実させていく必要があると思うわけでありますが、この点に関しては当局はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、御意見をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  157. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 まさに先生御指摘のとおりでございまして、アフリカ開銀には、緩和された条件融資をする目的で、アフリカ開発基金というものが七三年にできたわけでございます。日本は当初からこの開発基金の方に参加しておるわけでございまして、この基金は、第二世銀と同じように、非常に緩和された条件融資をしております。すなわち、金利は無利子でございまして、手数料として〇・七五%だけいただく。しかも、期限は五十年でございまして、最初の十年は据え置きで、それから一%ずつ三十年間返していく、それから最後の十年間に三%ずつということで、非常に緩和された条件融資を行っております。そこへ日本が今度増資をするということでございます。
  158. 広沢直樹

    広沢委員 そこで、けさもちょっと議論があっておったようでありますが、このアフリカ開発基金、一九七三年に設立されておるわけでありますけれども、今回第一次増資が行われる。この理由は、現在の資金がほとんど底をついてきたということが一つ理由になっているわけであります。したがって、それに対する第一次増資がそれぞれの協議の上決められたようでありますけれども、やはりこの基金の活用というのは、後発の開発途上国には地域的プロジェクト的な問題に対する融資だとか、そういうものがあろうかと思います。そこで、それが今後どういう資金計画になっていくのか、十分その計画を立てた上での増資計画といいますか、そういうものも明らかにしていかなければいけないのじゃないか。その開発途上国においては、当然、これから将来の開発問題についての何カ年計画かという計画があろうかと思うのですね。資金が底をついたから基金増資をしなければならないということで、後追い後追い的な感覚で増資がそのたびごとに行われるということはいかがなものであろうか。そういうプロジェクトというか、その開発計画に対する基金の方からの援助を行うということであれば、それぞれの具体的なことはわからぬにしても、あるべき姿というものを描いた上での資金の手当て、それに対する基金の役割り、そういうものをにらみ合わせて考えていかなければならないんじゃないかと思うわけでありますけれども、そういう点についてはどういうふうにお考えになっておられるのですか。
  159. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 このたびアフリカ開発基金増資をお願いしておるわけでございますが、資金が枯渇したからお願いしておると申したのでございますが、それは本当にお金がなくなってしまったからというのではございませんで、けさも申し上げましたように、国際機関融資をコミットいたします場合に、そのコミットをするに足りるだけの資金が今後入ってくるというめどをつけてコミットをするわけでございますので、その意味で、これからの融資計画に必要な資金手当てをいまのうちにしておこうということでございます。  これからどういうふうにそれを計画的に融資するかということでございますが、今度の増資に関連いたしまして、アフリカ開発基金事務当局の方から一応のめどとして出されておりますのによりますと、一九七六年に九千八百万計算単位、七七年に一億二千万計算単位、七八年に一億三千万計算単位、合わせまして約三億五千万計算単位ということで貸付計画をつくっておるようでございます。財源の充実に即してこれは今後見直す必要があるいはあるかもしれませんけれども、こういうふうにいまのところめどを立てております。
  160. 広沢直樹

    広沢委員 次に、国際通貨基金の問題についてまた二、三お伺いします。  本年一月、ジャマイカの首都でありますキングストンにおいて、国際通貨基金の暫定委員会が開催されたわけでありますが、一九七二年以降三年余にわたって検討が続けられてきた、いわゆる国際通貨制度上の諸問題について最終的な合意に達した、こういうことであります。これを受けて今回の協定改正が行われ、これに対する基金増資、そういうことも考えていかなければならないようになっているわけでありますが、今回の改正の特徴、それについてひとつお考えを承りたいと思います。
  161. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 ジャマイカのキングストンで合意されました国際通貨基金協定改正の非常に大きな点を申し上げますと二つございますが、一つは、為替相場制度でございます。為替相場制度につきましては、従来のブレトンウッズ体制のもとにおきます固定相場制ではなくて、各国が選択する為替相場制度がとれる。しかし、将来世界経済が安定した場合においては特別多数決によりまして固定相場制に移行し得る余地は残っておるわけでございます。  第二の点は金の取り扱いについてでございまして、国際通貨体制におきます金の役割りを徐々に縮小していこうということでございます。それに関連いたしまして、IMFの持っております金の一部を加盟国に返還し、あるいはその一部を市場に売りまして、その差益でトラストファンドをつくって開発途上国のために使うというふうな案も決まったわけでございます。  総じて申し上げますと、先般のいわゆるニクソン・ショックで壊れました国際通貨体制をその後の世界情勢の実態に合わせまして弾力的に、かつ現実的なものにして、しかもそこに世界通貨の秩序を与えていこうというところに特色があろうかと思います。
  162. 広沢直樹

    広沢委員 そこで、IMFの割り当て額についてでありますが、その規模世界経済の発展に合わせて調整する、IMFの融資能力の増大の要請にこたえるとともに、資金の利用、投票権等の基準となる各国の割り当てを、最近のそれぞれの国力の変化に対応して調整する、そういうことで今回の増資は第六次の検討に基づいて行われるものである。この改正はそういう世界経済の発展に合わせてということでありますが、それに対してどのような貢献度を持っているのか、どういうふうに考えておられるのか、その点をひとつ御説明いただきたいと思います。
  163. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 IMFの増資は、今回第六次に当たりまして、五年に一度一般的に見直しをやりまして、世界の流動性が世界貿易あるいは世界経済の発展に比べて足りているかどうかというふうな配慮から増資の全体の規模を決めておるわけでございます。このたび決まりました三百九十億SDRは三三・六%の増加に当たりますが、最近五年あるいは六年という期間を通じて見ますと、この程度のIMFの増資は国際流動性の必要を満たすのにちょうど十分であろうかと思われておるわけでございます。国際流動性が十分ございますと、先進国開発途上国を含めまして世界貿易の円滑なる発展、世界経済の円滑なる発展が得られるわけでございます。  それからもう一つは、全体の中におきますグループ別のシェアでございますが、今回の特色は、最近資金力を増してまいりました産油国の実態に合わせまして、産油国のシェアを従来の五%から約一〇%に増加する。他面、非産油開発途上国につきましては、厳密な計算をいたしますと、あるいは減った方がいいのかもしれませんが、それは減らさないで現状維持にする。したがいまして、産油国のふえましたシェアの約五%分は先進国のグループで負担するということになったわけでござます。さらにその先進国のグループの中で各国別に調整いたしますにつきましては、各国経済力の発展に応じまして、日本が一番大きな増加率、三八%を得たということになっております。
  164. 広沢直樹

    広沢委員 それに関連しまして、その割り当ての調整について、いま言うようにアメリカ初め主要国はその額が減っているわけでありますが、わが国はふえている。増加率では非常な増加を示している。もちろん産油国の比重が高まってくるについての調整であったと思うのですが、わが国だけがこういうふうに伸びているという、そのことについての——別にそれが問題ではありません。当然これを大きく伸ばしていくことは私は結構だと思いますけれども、その点の関係はどういうふうになっているのか、もう少し詳しく説明していただきたいと思います。
  165. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 国ごとの増資額あるいは資本額を決めますときに、従来からその国のGNP、輸出額、輸入額、輸出の変動額、それから外貨準備高、いろいろな要素をいろいろなパーセンテージでまぜ合わせて、組み合わせて計算してまいったわけでございます。最終的にはかなり政治的な折衝の結果ということになるわけでございますが、こういうふうなデータを用いますと、どうしても日本は、最近の経済成長が大きいわけでございまして、大きくなってしまうわけでございます。それから他方、ほかの先進国の中にはかなり減らさなくちゃいけないところもあるわけでございますけれども、現状を減らすというときには、余り減らすのは抵抗がございますので、その辺のところを最終的には政治的に話し合いをして、今回決まりましたような率になったわけでございます。
  166. 広沢直樹

    広沢委員 最近、通貨不安が欧州、ECの方で起こっておりますが、ポンドあるいはリラ、このような不安問題に対することが、どういうふうに今度の協定の改定というものが影響していくかという問題については、どういうふうにお考えでしょうか。
  167. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 何といいましても、現在はブレトンウッズ体制が壊れたままの状態になっておりますので、これは今回、現状に立脚した現実的なものとはいえ、新しい通貨体制の枠組みが決まりましたことは、世界経済に非常に安定的な要因を与えるのではないかと考えるわけでございます。具体的にイタリアとかイギリスの通貨は非常に下落しておりますが、今度まとまりました協定のもとにおきましては、IMFの監視に従ってフロートをとりたい国はフロートをとってもいいわけでございますけれども、お互いに近隣窮乏化的な、あるいは、つまり為替切り下げ競争的なことをしないで協調していこうという体制がさらに強まるということでございます。
  168. 広沢直樹

    広沢委員 このいままでの二つの法案については、これは増資の関係の問題であります。  次には、残された二つ、いわゆる米州開銀の問題とOECD基金の問題につきましては、これは新しく今度加盟するわけでありますが、また、設置された問題であります。  そこで、まずOECDの問題について一、二点、これも伺っておきたいわけでありますが、この法案に盛られた基金協定は、OPEC諸国の石油制限戦略に対して、いわゆる主要石油消費国グループの結束を図ろうとするねらいがあるのではないかというふうに言われているわけであります。このようなOECD加盟国の行動がかえってOPEC諸国の態度を刺激するのじゃないか、外交関係の悪化とか、ひいてはわが国経済に対する大きなマイナス要因になるのではないか、こういうような問題が一つあるわけでありますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておられるのか、ひとつお答えをいただきたい。
  169. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 石油問題一般、それから石油の価格の大幅引き上げに基づいて発生いたしました国際収支の大きなアンバランスの問題を処理する際には、一部には確かに、産油国に対し消費国が団結して当たろうという考え方がなかったわけではございませんが、今回のOECD金融支援基金協定をまとめます際におきましては、そういうことでは問題の円満な解決にならないということで、OECD加盟国はそれぞれ経済力もございまして、お互いの信用で市場から資金が調達できるということでございますので、相互支援の、主として市場から調達する資金をつくったわけでございまして、決して産油国と対決するということではない。このことは協定作成の作業を通じて、日本、私どもから非常に強く申しまして、でき上がった姿は対決色のないものになっておるわけでございます。
  170. 広沢直樹

    広沢委員 それは当然あるべき姿であるわけでありますが、特にこういう石油危機に端を発したいわゆる国際収支の改善あるいは貿易制限等のいろいろな問題に対応するために一応OECD諸国がこういう基金をこしらえて守り合おうという形でありますから、運営の仕方によってはそういうふうな受け取り方をされないとも限らないし、あるいはそういう事態が起こらないとも限らない、こういう問題があります。特にアメリカが中心になっているわけでありますから、先ほどからもいろいろお話がありましたけれども、アメリカの石油の自給率というのは圧倒的にいいわけですから、OPEC諸国に依存している割合もわずか九%かそこらということです。それに引きかえてわが国は大半がOPECに依存しているという形でありますから、この運用いかんによっては大変な問題になるのではないかということが心配されるわけでありまして、この基金に入るに当たってはそういう色彩がないように十分な配慮をしていかなければいかぬ、こういうふうに考えているわけです。その点についてはそういうおそれはないんだということでありますけれども、決してそういう事態にはならないという考え方をもう一度明確にしていただきたいと思うのです。
  171. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 先生おっしゃいますように、確かに協定自身は対決色のないものになったわけでございますが、今後の運営につきまして注意をしなければいけないということでございます。今後、この基金運営は、ここにもございますように運営委員会というものができまして、そこで運営責任を持つわけでございまして、日本からも運営委員を出すことになります。その場合に、重要事項はこの協定によりまして全会一致あるいは九〇%の多数決ということになっておりますし、ものによっては三分の二の多数決というのがあるわけでございますが、わが国は一一・七%のシェアを持っておりまして、それだけの投票権がございますので、重要なことを決めます際には日本の発言を無視してはできないという仕組みなっておりますので、今後の運営に当たりましても十分注意をしていきたいと思います。
  172. 広沢直樹

    広沢委員 この基金OECD加盟国の緊急避難的な意味から貸し付け権限を二年間とした。これは二年が悪いという意味ではありませんけれども、いまの世界の経済の状態から見まして、先進主要国が立ち直り始めているとはいいますけれども、まだまだこれから非常に不安が残っておりますね。こういう情勢の中で貸し付け権限を二年とした理由はどうなのか。また二年間でさきに述べました諸問題が解決できるという確認、いまの主要国の国際収支の動向とにらみ合わせてその点をどういうふうに考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  173. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 確かにこの基金は二年間ということで、いわば臨時措置としてできたわけでございます。と申しますのは、先般、石油価格の大幅引き上げということで非常に大きな影響を世界の国際収支に与えたわけでございまして、七四年に産油国の経常収支の黒字は六百四十億になったわけでございますが、こういう事態がいつまでも、五年も十年も続くということはとても考えられないことでございまして、現に各方面の試算によりましても、この産油国の黒字は次第に減っていって、一九八〇年ごろにはほぼ均衡に達するのではないか。その前に、産油国によりましては赤字に転化する国もあるようでございます。したがいまして、一番大事なのはこれからの二年間を無事に乗り切るということでございます。万一、二年たちましても思うようにいかないで、この基金の延長をしなければいけないという事態、これはないことを祈っておるわけでございますが、そういう際には、再び国会に来てその御審議をお願いすることになろうかと思われます。
  174. 広沢直樹

    広沢委員 それでは最後に、米州開銀加盟について若干伺っておきたいと思います。  この開銀が設立されてから十六年を経過しているわけでありますけれども、今日、日本がこの銀行加盟して、この法案によりまして出資をしようとしているわけでありますが、その理由というのは那辺にあるのか。加盟によるメリットと言ったらおかしいかもしれませんが、そのメリットは何なのか。その点をひとつ御説明いただきたいと思います。
  175. 菊地清明

    ○菊地政府委員 従来日本は、中南米諸国に対しましては二国間の経済協力関係をずっと維持してきたわけでございまして、先ほど申し上げましたように政府レベルの援助、それから輸出入銀行の借款とか東銀の参加証券とか、それからいろいろな私募債だとか、そういったことで民間レベルで協力してまいりました。また、これはブラジルが主でございますけれども、民間投資としてたとえば製鉄とか造船とか、そういうことに協力してまいったわけでございます。  そこで、今回、そういったバイラテラルの関係からこういうマルチの機関、つまり地域関係の機関を通じても中南米諸国に対して協力をしよう。それで、先ほどちょっと間違えましたが、従来も米州開発銀行に対する資金協力というものはやってきたわけでございますが、今回、域外加盟国として正式に参加することによりまして、中南米諸国に対する経済協力を従来以上に積極化してまいりたい。それから、これは御承知のことでございますけれども、中南米には在留同胞が八十万ぐらいおると思いますが、こういった日本と特に緊密な関係にあります中南米諸国との関係をより一層緊密にし、これらの諸国との友好関係の増進を期したいという念願からでございます。
  176. 広沢直樹

    広沢委員 この銀行目的は、中南米諸国経済社会的開発の促進に寄与する、これは協定目的と任務の中に載っておりますけれども、この銀行が今日まで十数年間に、中南米諸国経済的、また社会的開発のためにどのような貢献をしてきたのか。いままで加盟してなかったわが国初め域外国がこれから加盟することになるわけでありますから、いままでこの開発銀行が果たしてきた役割りといいますか、それについてどういう評価をしているのか。具体的に例を挙げると、たとえばGNPの伸びだとか、あるいは具体的にプロジェクトでこういう成果を上げているとかですね。単なるおつき合いで入っていくわけではありませんから、そういう意味において——いまもお話がありましたように、わが国中南米に対して、二国間の援助方式を通じてこれまでにも力を入れてきているところであります。したがって、ここに加盟するに当たっての一つの評価といいますか、それはいま言うようなことを一応検討しておく必要があるのではないか、こういうふうに思うわけでございまして、その点についてひとつ具体的に例示をしていただきたいと思うのです。
  177. 菊地清明

    ○菊地政府委員 OECDの中に開発援助委員会というのがございますが、そのDACの統計によりますと——DAC諸国はこれからの域外加盟国になる国が多いわけでございますが、こういった域外国は従来中南米地域に対しまして、一九七四年じゅうに十四億五千万ドルの開発援助をやっておりますが、そのうちの一八%が米州開発委員会を通じて供与されているということでございます。したがって、この米州開発銀行が米州の域内諸国経済、社会発展にいかに貢献したかということはこの数字でわかると思います。ちなみに米州諸国に対する援助をやった単一の国としては米国が最大でございまして、これは一九七四年の統計でございますが、二億八千万ドルを援助しておりまして、その数字でわかりますように、米国の方がむしろ七四年だけとれば米州開発銀行よりも援助をしているということになります。  それから次の御質問の、米州諸国がどの程度所得水準とか外貨準備がふえたかということに関しましては、数字はございますが、概括して外貨準備その他ふえております。ただ、例外だけ申し上げますと、アルゼンチンとチリとウルグアイ、これがたとえば六〇年末と七五年末を比較しますと減少しているということになっております。
  178. 広沢直樹

    広沢委員 それからもう一つ伺っておきたいのは貿易関係です。  わが国との政治的、経済的関係においていわゆる貿易関係はどうなっているのか。それから円借款を含めて二国間の経済協力の関係がどうなっているのか、これもひとつ概略御説明いただきたいと思います。
  179. 菊地清明

    ○菊地政府委員 わが国中南米諸国との貿易の現状でございますけれども、中南米と日本との貿易は、戦争直後はわが国の入超でございましたけれども、七一年以来出超でございまして、自来わが国の黒字が続いております。七四年の統計でございますが、輸出で五十一億ドル、輸入が二十七億ドルで、日本が二十四億ドルの出超となっております。去年の一−十一月の段階でも二十億ドルの出超になっております。  これでおわかりのように、若干の国につきまして片貿易の問題だとか日本の貿易が特定の国に偏重しているというような問題はないことはございませんけれども、おおむね順調に推移しているというふうに申し上げられるのではないかと思います。  それから借款その他の数字でございますが、中南米諸国に対しましてはいろいろな形の経済協力をやっております。技術協力を主とした無償資金協力もありますし、それから政府借款というものもございますが、この円借款の数字を御参考までに申し上げますと、一九七五年で中南米に対しましては五十七億円、これが先ほど申し上げました総額三千百二十六億円の一・八%になっております。  それから対象国は、一番主たるものはボリビア、パラグアイ、ペルー、チリ、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル等々となっております。そのほか輸出入銀行のバンクローン等ございますが、省略させていただきます。
  180. 広沢直樹

    広沢委員 そこで、米州開発銀行がこの時点に及んで十二カ国に及ぶ域外国の加盟を求める、十数年たってから求めるわけでありますが、その理由ですね。確かに冒頭に大蔵大臣の趣旨説明の中にはございましたけれども、じゃ、いままでどういうわけで加盟ができなかったのか、あるいは今後十二カ国以外にも域外から加盟を予定されている国があるのかどうか、いままではなかったわけでありますから、それを今度は十数年たって十二カ国だけは域外国として加盟することになる。それ以外にはもう認めてないのか、その間の事情をひとつ御説明いただきたい。
  181. 菊地清明

    ○菊地政府委員 米州開発銀行業務を開始いたしましたのは、御承知のように一九六〇年でございますが、実は、この米州開発銀行というのは非常に地域性の強い銀行でございまして、たとえば、同じアメリカ大陸にあるカナダでも、その加盟は若干おくれているということでございます。しかしながら、そういった地域性が強いということは一つの特徴でございますが、他方、融資資金源としましては、ほかの地域銀行に比べて資金規模は確かに多いわけでございますけれども、それでも十分ではない、融資の需要に応じ切れないというようなことで、ここで域外先進国に対して門戸を開く。それで、その域外加盟国からの今回設けられます地域間資本というものに出資してもらう、そのほか、従来よりありました特別業務基金に対しても拠出してもらうということによって、いわゆる事業規模を拡大することによりまして増大する中南米の発展途上国の資金需要にこたえたいという願望がありまして、他方、今度は域外国としても、こういった中南米の国に対する資金協力米州開発銀行を通じて行っていきたいという願望がありまして、これが合致した結果、七二年、基本的な妥結を見たということでございます。
  182. 広沢直樹

    広沢委員 そこで、中南米地域でこの銀行加盟してない国が四つあるわけですね。特にキューバ、このキューバは加盟したいが銀行側から加盟を認めないのか、あるいは、そういうことはないのだけれどもキューバ側でそれを拒否しているのか、あるいは将来においてそういう加盟を申請した場合においては、これはどういうふうな考えでいくのか、わが国の考え方、これはまだ加盟してないわけですから、してからの話になるのですけれども、一応加盟することを前提にして考えている以上、それに対する考え方を承っておきたいと思うのです。  というのは、これは、この任務や目的にありますように、経済的、社会的の促進に対してやっていこうということでありまして、政治的やいろんな関係というものはこの開発銀行は考えないということであります。しかしながら、この設立後今日まで、ほとんどがアメリカを中心とした、むしろアメリカに頼ったと言った方がいいんじゃないかと思うのですが、そういう形での運営がなされてきているように思うわけでありまして、そういうような目的はこの協定の中にはっきりはいたしておりますけれども、その運用に当たって、冒頭にも申し上げましたような色彩があってはならないと思いますし、その点どういうようにお考えになっているのか、御意見を承りたいと思います。
  183. 菊地清明

    ○菊地政府委員 御指摘の最後の方からお答えをいたしますと、今後の運営につきましては、域内の発展途上国の投票権比率が高くなっておりまして、米国の投票権比率も高いわけでございますけれども、それよりも過半数を域内の発展途上国が占めているということもありますので、今後域内の発展途上国中心の運営というものを確保していくということは今後とも努力していきたいというふうに考えております。  それからキューバとの関係でございますが、キューバは米州開発銀行のそもそもの生みの親であります米州機構、OASというものがございますが、最初それのメンバーでございましたが、その後事実上の除名というかっこうになっておりました。しかしながら、この米州開発銀行そのものの設立が協議された場合には、実はその交渉段階ではキューバの代表も顔を出しておったわけでございますが、結局、米州開発銀行設立協定というものの加盟国にはならなかったという事情がございます。その後御承知の米国とキューバとの関係がございましたし、それから去年ですか、米州機構でキューバとの外交関係は、米州機構の加盟国がどういう行動をとろうと、つまりキューバとの関係をどういうふうにしようと自由であるという行動の自由決議というものが実は採択されたわけでございますが、その後も実はキューバとの関係を従来より改善したという国はないわけでございます。ちなみに米州機構の中でキューバとの外交関係を持っておる国は十一カ国ございます。そういった次第でございますので、この米州開発銀行との関連ではキューバとの関係が今後大きな展開を見るというふうには見ておらない次第でございます。
  184. 広沢直樹

    広沢委員 約束の時間を過ぎておりますので、最後に大蔵大臣一つだけ基本的な問題をもう一度お伺いしておきたいと思いますが、中南米諸国、いま米州開発銀行の問題が問題になっておりますので、このことに関して聞いておきたいと思います。  中南米諸国とは円借款を含めて二国間の経済協力をずっと行ってきておるわけでありますね。特に中南米諸国を対象として今後は二国間の協力を主体にしていくのか、それとも米州開発銀行出資する、今回こういうふうに加盟して出資するわけですが、国際機関なりあるいは多数国による協力を推進していこうとなさるのか。政府経済協力に対する姿勢、大蔵大臣の考え方、これをひとつ明確にしていただきたいと思うのです。
  185. 大平正芳

    大平国務大臣 沿革的にわが国は、ブラジルでございますとか、メキシコでございますとか、ペルーでございますとか、アルゼンチンでございますとか、そういった国々との間にバイラテラルな、つまり二国間の経済関係、濃密でございます。移民もたくさんおりまする関係もありまして、二国間の今後の経済協力というものをやめてマルチの国際機構に全部シフトしてしまうというようなことは、私はできないと思います。やはり従来のルートでお話し合いがつくものも現にありまするし、今後もそういう道も手がたく尊重して固めてまいる必要があると思いますけれども、同時に、きょう御審議をいただいておりますような形における仕組みにおきましての日本の参加というものにつきましても、冒頭に申しましたように、応分の日本の貢献というものはやはり考えてまいらなければならぬというのが日本の立場であろうかと考えております。
  186. 広沢直樹

    広沢委員 最後に一言申し上げておきますが、別に二国間の経済協力がなくなるという意味じゃありません。当然、国と国との間の経済協力というものは続いていかなければならない問題でしょう。しかしながら、他面、いま言うように多数国間のこういう経済援助の方式というものはだんだん地域ごとに高まりを見せてきておりますし、またわが国も積極的にこれに参加しようという姿勢でありますから、今後の経済協力のウエートというものをそういう多数国間の経済援助方式に移していくのか、あるいはやはり従来どおり二国間の経済援助の方式にウエートは置きながらこういうふうな多国間の経済援助というものはその必要に応じて考えていくのか、その点の考え方をお伺いしたわけですが、もう一度お答えいただきたい。
  187. 大平正芳

    大平国務大臣 中南米に関しまして、やはり二国間の経済協力が主になりまして、多国間の協力はまあ伴奏的なものではないかと思います。
  188. 広沢直樹

    広沢委員 終わります。
  189. 田中六助

    田中委員長 武藤山治君。
  190. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣、いよいよ会期をわずかにして、きょうから審議に入った四法案が批准完了するかどうか、大臣の見通しいかがでございますか。
  191. 大平正芳

    大平国務大臣 精いっぱい、残された時間、説明に努めまして、国会の御理解を得て成立を目指していただきたいと念願しております。
  192. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは幾ら理解を示しても、恐らくもう参議院で審議の時間がなくて時間切れになる公算大だと思うのです。その際に大蔵省の説明によると、OECD関係法案は五月末までに批准しないと、また米州開発銀行の場合は六月末までには批准しないと大変なことになるんだ。大変なことになるんだという中身は、何か国益を相当損なうのかどうか、この辺、大臣いかがですか。大臣、知りませんか。知らなかったら、知らないからだれに答えなさいと言ってください。
  193. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 まずOECD金融支援基金協定でございますが、これが自動的に発効いたしますのは九〇%の批准が集まったときでございまして、わが国のシェアは一一・七%でございますので、日本が御承認いただきませんと全体が自動的にはまとまらない。しかも期限が五月ということになっておりますので、そういう関係でもし日本がおくれたためにこの基金ができなくなるということになりますと、その意味におきまして非常に日本の国際的な信用にもかかわると言えるのではないかと思います。  それから米州開銀でございますが、米州開銀は一般規則にございますように、八つの加盟国、その中には四つの大口の国を含めまして御賛同が得られた場合に全員そろって加盟するということになっておるわけでございまして、いまドイツとイギリスとスペインという大きな三つの国が国内手続を終わっておりますので、あと日本さえ終われば全部その要件が調いまして一斉に加盟ができるということになっておるわけでございます。今週の初めから月火水とメキシコで米州開銀の総会が開かれておりまして、できましたらそのときに集まっております域外加盟国予定の各代表がメンバーとして参加したいという希望がございまして、外国の方からも日本に非常に強い陳情があったわけでございます。そういう意味で、ほかの国におきましてはすでに予算も組んで米州開銀に出せる準備をしておりますのに、日本がおくれたためにそれが出せないということになりますと、経済協力の見地からも非常に好ましくないことではなかろうかと思っております。  最後にアフリカ開発基金の方は、払い込みの期限が六月ということになっておりますので、そういうようなタイムリミットがあるわけでございます。
  194. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いま国金局長が答えたように、五月までに批准ができないとOECDの原加盟国になれない、しかもこの金融支援基金が発動しないという重大な歴史的段階にいま立っている。大変重要だと思いますが、大臣、これを切り抜けるためにこれからわずかに残された二日や三日ですが、可能性あると見ておりますか。
  195. 大平正芳

    大平国務大臣 希望を失っておりません。
  196. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 この政治責任は大変大きいと思うのでありますが、いずれにしても国際的な信用を失墜する大きな問題であることは間違いありません。  第二にお尋ねをいたしたいのは、世界のそれぞれの国の金融援助をするシステムはいろいろある。IMFもあれば世銀もあればあるいは市中銀行から借りる、いろいろな手だてがありますが、OECDはどっちかといえば各国国内経済を大所高所からながめてサゼスチョンし、世界全体の経済をうまく運営しようという本来の任務がある。そのOECDの機構の中に今回金融支援基金というのをつくらなければならない積極的な理由ですね。もっとIMFならIMFのところでそういう資金援助というものをやるシステムをきちっとつくったらいいのではないかという感じもする。なぜIMFから離れて別にOECDでこういう資金援助をせざるを得なくなるのか、その積極的な理由をまず明らかにしてください。
  197. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 このたびの石油価格の大幅な引き上げによって起こりました国際収支の不均衡の規模は非常に大きなものでございます。七四年に産油国の経常収支の黒字は六百四十億ドルになりまして、それに見合いましてOECDの赤字は三百億ドルに上っております。それから非産油発展途上国その他は三百億ドル以上になったわけでございます。もとよりIMFは世界的な機構でございますので、できる限りIMFを利用するということは必要でございまして、そのために今般の増資もお願いしておるわけでございますし、それから石油危機発生後オイルファシリティーというものをつくりまして、IMFが産油国からお金を借りて赤字で困っている国に回すということもしたわけでございます。その他今回のジャマイカの会議におきましても、通常の引き出し枠を四五%拡大するとかあるいは金を売りましてその差益でトラストファンドをつくって開発途上国のために融資をするというふうな取り決めもできたわけでございますが、これは主として開発途上国向けのスキームでございまして、先進国の方まで十分にお金を回すだけの余力はございません。また他方先進国の方は自国の信用力で市場から資金を調達する力もあるわけでございまして、そういうところに着目をいたしまして、OECD加盟国がお互いに助け合って、困った場合にいわばその担保をして市場から資金を集めようということで今回の大きな相互支援の基金ができたわけでございます。
  198. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうするとOECDは二十四カ国で数も少ない。そして先進国家だ。それをIMFで資金援助をするというプール資金でやると、開発途上国の方からみんな先進国に使われちゃったというあるいは非難が出る場合もあるだろう、そういう配慮、これも一つある。それから今度の場合には基金は具体的に現実に融資をするのではなくて、どっちかというと保証の手だてをきちっとするのだ、したがって先進国家は市中銀行からも借りられるし、あるいはIMFからも借りられるだろうし、あるいはECの援助協定からも借りられる国もあるだろう。だから保証だけで融資をしやすくしてやるといういわゆる開発途上国との摩擦、不信感、そういうものをできるだけ受けない別個な独立したシステムにした方が得策だ、大体そんな考え方ですか。
  199. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 大体いまおっしゃいましたとおりでございます。  なお、ちょっと補足いたしますと、そういうことでございますので、この基金OECD加盟国が現実に利用するというのはIMFとかその他の金融機関を尽くした後という意味でラストリゾートである、しかもここにこういった最後の安全弁があるという安心感を与えることによって、できればそれを使わないで済むようにしたいという意味でいわばセーフティーベルトの意味を持っておるわけでございます。
  200. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 八千億円のそういう保証枠を——日本でいえば国内の各県の保証協会みたいなものですね。そういう保証を真っ先に受けるだろうと予想されている国は大体どこらですか。つくるからには恐らくそういう予想があると思うのですよ。しかも五月末までにという大変急いでいる批准の話でもあるし、それはどういう状況ですか。
  201. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 この二十四カ国のうちいわゆる大国と言われますのは七カ国でございますが、その中でいま大きな黒字を出しておりますのはアメリカとドイツだけで、あとは赤字国でございます。それから、この七カ国を除きました残りの十七カ国のうちベルギー、オランダ等一部の国を除きますと、経済規模に比して相当大きな赤字を補っておるわけでございます。しかし、具体的にどの国が真っ先に借りにいくかということは、まだそういう意向をその国が表明しておるわけでございませんので、こちらの方からあの国は危なくて借りにいくのじゃなかろうかということを申しますのはちょっと差し控えたいと存じます。
  202. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いずれにしても四時までというわずか四十分ですから、はしょって質問をしないと、とても言い尽くせませんので、次の問題に入りますが、IMFの今回の増資が平均で三三・六%、日本は三八・三%だ。特に日本が先進国家群の中では一番伸び率が多い、負担割合がふえた。なぜか。日本の国際会議における主張が弱腰であるからか、それとも本当に日本の経済がそんなに高く評価されるほど充実しているのか。このパーセントを引き受けた根拠は何ですか。
  203. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 IMFの増資は、五年ごとに見直して必要に応じて増資を決定するということになっておりますが、この増資の全体の規模を決めますのは世界貿易その他国際流動性の必要額が中心となりますが、各国別の割り当ては各国経済力に応じて見直しをするということになっております。具体的な基準といたしましては、いわゆるブレトンウッズ・フォーミュラというのがございまして、各国のGNP、輸出額それから輸入額、輸出変動額、外貨準備額というような指標が使われておるわけでございますが、そういった幾つかの指標をどういう割合で組み合わせるかということによって結果が非常に動いてくるわけでございますので、結局は、こういった経済指標をいろいろ検討いたしますが、最後的には政治的に端数を整理するというふうなことになるわけでございます。  今回の増資一つの特色は、最近の産油国資金力の向上を反映いたしまして、最初から産油国のシェアを、従来五%でございましたのを約一〇%にふやそうということが決まったわけでございます。そこで、この五%のふえた分をどこかのグループが負担しなくちゃいけないわけでございますが、非産油開発途上国にしわ寄せをするのは好ましくないということでそれは現状据え置きということになりましたので、結局先進国グループが全体として五%を減らす、その減らした中におきまして各国経済力を見て比率を調整するということでやったわけでございまして、これが日本の場合には一番先進国の中ではふえたわけでございますが、それに応じまして投票権もふえるということで発言権がふえるという結果になるわけでございます。
  204. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 具体的に日本の経済力が世界と比較してどこがどう伸びたということは積極的に数字をもって示されないと納得できませんけれども、ただ従来の出資の順位が五位であるということは変わってないわけですね。ですから従来の負担割合が日本は少な過ぎたんだ、だから今回は国力に見合ったように見直されたんだ、ちょっと数字を調べてみるとそうも受け取れる。だけれども、いまのあなたの説明ではいろいろ生産やそういう関係で日本は確かに先進国の中でも成長したからだ、こうおっしゃるのですが、ちょっと納得いかぬですね、いまの話。いずれにしても今回三三六%SDRをふやす、二百九十二億一千百万ドルだったIMFクォータを今度三百九十億SDRにするという、この三三・六%という割り出した率は世界経済の成長率の五年間分を見込んで、そうして準備資産というものをこの割合でふやすことが、世界の流動性の背後に準備資産としてIMFがふやさなければならぬ目安なんだ。何を目安にこの三三・六%という数字は出てきたのか。
  205. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 IMFのクォータ、すなわち出資金は国際流動性の大事な部分に当たりますので、これの増額につきましては五年ごとにやっておるわけでございますが、過去五年間の世界貿易の伸びを参考にして決めておるわけでございます。  なおさっきの説明、ちょっとつけ加えさせていただきますと、日本のIMFにおきます割り当て額は見直しをするたびにほかの国よりもふえておるわけでございまして、今回さらにふえましたのは、やはりここ数年間の経済力の伸張が著しかったということによるわけでございます。
  206. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 このSDRが三三・六%ふえるというのは、やはり世界の経済成長率というものを勘案する、あるいは貿易の伸び率を五年サイドで計算をし直す、そういう形でこの率は出てくるのか、あるいはドルが過剰になり過ぎて、過剰ドルというものを少々減らしてやらなければならぬから、そのために一挙に減らすということはできないからこの程度のパーセントで徐々にドルの、基軸通貨ではあるけれども、準備資産としてのドルを減らさせていくという一つのねらいなのか、この三三・六と決めた根拠をもう一回わかりやすく教えてください。     〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕
  207. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 三三・六%をふやしましたのは、世界貿易の伸びそれから世界経済の成長率等を勘案したわけでございまして、世界貿易五年間の伸びはもっと高いわけでございますが、貿易が一〇%ふえた場合に資金が一〇%余分に要るという、必ずしもその比例関係にはならないわけでございますので、この国際流動性はまた過剰になり過ぎますとインフレを招くというような問題もございますので、貿易の伸びよりはやや低い、三分の一ということで全体の伸び率を決めたわけでございます。  なお、ドルが過剰であるからどうかということにつきましては、今回IMF協定の第二次改正で御審議になっておりますように、従来の金ドル本位制度から金の役割りを減らす、それから通貨の役割りも今後はそうふやさないで、全体的に流動性の管理についてもこれから配慮していかなければいけないという認識が背後にあるわけでございます。
  208. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大体私の考えていたことのようでありますが、世界経済がここ四、五年、否十年、インフレをずっと引き起こして、ドルのたれ流しの結果だ、こういう批判があるわけでありますが、国際流動性の推移を考えるときに、総準備というのが異常にふえた、まさに異常にふえた、そういう年がありますね。何年と何年ですか。
  209. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 一九七一年に国際流動性は二九・九%、それから七二年に二一・三%、非常に大きくふえました。
  210. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国際金融局長の数字とこの大蔵省の国際経済特集二百八十八号、これとは数字が大変違いますね。この大蔵省の統計資料を見ると、国際流動性の推移、一九七一年は四一・一%対前年比伸びていますね。それから七二年は二〇・九、七四年は二〇・一%という、まさに世界の経済成長伸び率をはるかに超える総準備の増加です。これは何に原因があると思いますか。
  211. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 ちょっとただいま欄を読み違えまして失礼いたしました。七一年の増加率は、おっしゃいましたように四一%でございます。こういうふうに七一年、七二年、ことに七一年に非常にふえましたのは、その国際流動性の中身を分析してみますと、ドルが非常にふえておるわけでございまして、七一年はいわゆるニクソン・ショックのあった年でございますが、米国側から見まして対外公的債務が五百億ドル程度ふえております。また七二年も引き続き六百億ドル程度ふえておりまして、これは国際流動性の総量の増加に大きく寄与したものではないかと思います。——失礼いたしました。いま申し上げましたのは、米国の対外公的債務の七一年におきます残高でございます。同じく六百億と申しましたのは七二年の残高でございます。
  212. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 このようにアメリカが一国通貨を節度なく一年間に四一%も札の量をふやしたのでは、世界のインフレというのはとまるはずがないですね。またいつそういうことをアメリカがやらないとも限らない。絶対やらぬという保証はありますか。今後はもうそういうことは絶対ないという保証は国際的にあるのですか。
  213. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 国際通貨制度改革に当たりまして一つの大きな問題点は、流動性の管理をどうするかということであったわけでございます。これは非常にむずかしい問題でございまして、ナイロビでまとまりました通貨制度改革概要におきましてはかなりの程度それが触れられておったわけでございますが、やはりいろいろ通貨交渉を通じまして現実問題としてなかなかドルの流出を数量的にコントロールするのはむずかしいということでございますけれども、これからのIMFにおきまして国際流動性の管理を大きな問題として取り上げていこうというふうな意見も大分有力になってきておりまして、IMFが各国経済を見ます場合に、これは一つの大きな着眼点になろうかと思います。
  214. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 一九六五年の流動性の増加はわずか二・九%、六六年が二・三%、六七年が二・三%、六八年が四・二、それから六九年が一・一です。しかるに七〇年になると、途端にはね上がって一九七〇年は一九・一%、七一年が先ほどの四一・一、七二年が二〇・九、七三年が一五・五、七四年が二〇・一の増加であります。大蔵大臣アメリカが一九七〇年からこのように年間四〇%もドルをたれ流すという、こういうことでは世界経済が本当に安定的に発展するはずがないと私は思うのであります。      〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕 あなたはランブイエ会議にも出かけ、またジャマイカ会議にも出かけて、アメリカの首脳とも、世界各国の蔵相、銀行総裁ともお会いをして、こういうアメリカの無責任なドルのたれ流しに対して、何か日本の大蔵大臣として見解をお述べになりましたか。アメリカに忠告をするような態度をおとりになりましたか。ひとつ大蔵大臣としての御意見を伺いたいと思うのであります。
  215. 大平正芳

    大平国務大臣 私が大蔵省へ参りまして以来のアメリカでございますが、だんだんと黒字に変わってまいりましてマナーが改まってまいったようでございますので、私の演説で特にアメリカの自制を促したという経緯はございません。しかし、仰せのようにそれより以前の段階におきましては、ドルのマナーは決してよくなかった。それが世界のインフレの大きな原因を形成しておりましたことは御指摘のとおりだと思います。
  216. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国際金融局長、金の供給源あるいは生産量、この資料によると、一九七四年が九百八十五メートルトンと、トンで出ていますね。これはいま、日本の為替相場で計算をすると、年間どのくらい金は生産されるのですか。
  217. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 正確にはいま計算をしておりますけれども、大体従来公定価格で言いまして十二億あるいは十三億ドルというふうな新規供給がございました。
  218. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、いま世界の流動性は、七五年の統計で二千二百七十七億三千七百万ドルですね。この二千二百七十七億ドルの世界の準備資産を経済の成長率四・五%、OECD全体で平均しちゃうと四・〇から四・五、貿易は平均六・六程度、そういたしますと、一〇%にして二百ですから百分の一ですか、金の生産量は百分の一ないんだな。百五十分の一ぐらいですね。大体そこらですか。——国金局長、金のこれからの地位ですけれども、IMFでは現在持っておる、六十何億ドルあったかな、ちょっと忘れたが、六十五億ドルか六十七億ドルか、IMFの金を四分の一を四年間で売却してそれを開発途上国の援助に充てよう、あるいはまた四分の一をそれぞれの出資国に金を返す、こういうことですね。  金というのは、一体通貨の面で準備資産としてまだこれからも各国は金をずっと後生大事に維持するのか、それとも、もうSDRというものの準備資産に移っていって、ドルは依然として基軸通貨であることは間違いない、流通手段としてはドルが使われるが、金とドルとの関係というのはどういうことになっていくんでしょう。
  219. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 金の国際通貨制度におきます役割りについては、このたびジャマイカでまとまりました合意、それに基づいてIMFの協定改正を御審議願っておるわけでございますが、IMF協定あるいはその国際通貨制度におきましては、役割りはだんだん減っていくということになっております。  ただし、そういうふうな変化がございましても、金の値打ちと言いますか、対外的な、いざという場合に役に立つという値打ちがなくなったというわけではございません。したがいまして、国によって金選好の強い国、弱い国等いろいろあろうかと思いますが、ここしばらくの間は、各通貨当局は相当量の金を保有し続けるということかと存じます。
  220. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 結局SDRというのはお互いの信頼に基づいてつくった準備資産ですね。このSDRが結局やはり二十年、三十年の歳月を経ると、いまのドルのように信認を得られないような運命をたどるのか、それとも全くドルとは違う、ドルは金というものを基礎に置いたために三十年でブレトンウッズ体制というのは崩壊をしたけれども、SDRの場合は将来そういう心配は全くないのか。また過剰になって、これがインフレの原因になり、結局は世界の信認を得られなくなる、そういう性質はSDRには全くないと見ていいのかどうか、それはどうでしょうか。
  221. 藤岡眞佐夫

    藤岡政府委員 SDRは、先生御指摘のように国際的な信頼によって生まれ、かつ育っていくものでございます。これを当初つくりましたのは一九七〇年でございますが、そのときの考え方におきましては、むしろ当時ドルの流出も少のうございまして、世界貿易等を賄うための流動性の増加が年四十ないし五十億ドル要るのではなかろうか。ところが、金の方はせいぜい五億ドルぐらいしか出てこない。それからアメリカの方から出てまいりますドルもせいぜい五億か十億ドルぐらいではなかろうかということで、年間三十ないし三十五億ドル程度のSDRを発行しようということで七〇年に発行したわけでございます。これは三年間続きまして、全部で九十二億SDR発行したわけでございますが、その後、さっき御指摘になりましたようにドル準備が非常にふえまして流動性過剰になりましたので、SDRの新規発行は見合わせておるわけでございます。  そこで、将来SDRは国際流動性の中心を占めるかどうかということになりますと、これは相当な時間のかかる仕事ではなかろうかと思います。現在、ドルが世界におきまして実際の取引通貨として使われておりますし、また、通貨当局によって支払い準備として持たれておりますので、一挙にこれをSDRにすりかえることはむずかしいかと思います。もちろん通貨制度改革の議論におきましては、できるだけ早目にSDRに振りかえて、国際流動性の管理もよりよくできるようにしていこうではないかという意見もあったわけでございますが、なかなかそういう理想的な姿に持っていくには時間がかかろうかと存じます。
  222. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大変集まったようでありますから、この辺で結論にいたしますが、政府は再三開発途上国への援助には国民総生産の一%程度海外援助に向けると言って、その開発途上国からの要請にこたえよう。——政府直接援助、民間援助、二つの道筋がありますが、政府援助で先進国がそれぞれ目指しているのは〇・三三%ぐらい。ところが日本の一九七四年はまだ〇・二五ぐらいだ。まだそういう世界の先進国が目指しているところまで行っていない。このことについて財布を預かる大蔵大臣として今後どう対処すべきか、所見のほどを伺っておきたいと思います。
  223. 大平正芳

    大平国務大臣 数年前のUNCTADの会議で愛知代表が、年限は確約いたしませんでしたけれども、GNPの一%を目標にいたしまして政府援助をふやしていく政府の意図を表明いたしましたことは御指摘のとおりでございます。その後の経過を見ておりますと、先進各国は、武藤さんおっしゃるように〇・三五前後のところでございまして、わが国の場合は〇・二三とか〇・二五とかいうようなところに低迷いたしておりましたことは、御指摘のとおりでございます。しかし、その後、ドイツもアメリカも若干景気の後退を反映いたしましてか、わが国と同様なレベルのところに落ちてまいっておったようでございます。しかし、いずれにいたしましても、政府援助の額をふやしてまいること、そういう方向に努力してまいらなければならぬことは、政府の不動の方針でございまして、財政事情の許す限り極力その道標に向かって鋭意努力してまいることは当然の責任であると考えております。
  224. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 約束の時間ですから、終わります。(拍手)
  225. 田中六助

    田中委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  226. 田中六助

    田中委員長 これより討論に入るのでありますが、各案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  これより順次採決に入ります。  まず、経済協力開発機構金融支援基金への加盟に伴う措置に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  227. 田中六助

    田中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  228. 田中六助

    田中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、米州開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  229. 田中六助

    田中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  230. 田中六助

    田中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 田中六助

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  232. 田中六助

    田中委員長 次に、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を求めます。平大蔵大臣。     —————————————  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  233. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  日本輸出入銀行は、昭和二十五年に設立されて以来、船舶及びプラントの延べ払い輸出を中心として、輸出入及び海外投資に関する金融を行い、貿易を主とするわが国と外国との経済交流の促進に格段の寄与をいたしてまいりましたことは、御承知のとおりであります。  日本輸出入銀行業務活動は、設立以来輸出の振興に重点が置かれてまいりましたが、昭和四十年代に入って、エネルギー資源を初めとする重要資源の長期安定的な確保が、わが国経済の今後の発展のため緊要な課題になるに及び、同行は輸出金融に加え、輸入及び投資金融等各種の金融形態を通じて、海外資源の開発案件に対しても積極的な融資を行ってきております。また、融資対象地域につきましても、顕著な拡大傾向を示しております。  すなわち近年、中近東を初めとする産油国並びに中国、ソ連といった共産圏諸国における経済開発の進捗に伴い、わが国からこれら諸国に対する大型プラントの輸出案件がとみに増大しておりますが、これに対して、日本輸出入銀行の金融が大いに活用されておるのであります。  このような日本輸出入銀行融資における基本的な趨勢に加えまして、昭和五十一年度におきましては、経済運営の第一の目標として、景気の着実な回復と雇用の安定が挙げられており、そのためにも貿易の拡大に特に配意する必要がありますが、この面から見ましても、日本輸出入銀行活動に期待されるところは大きいものがあります。  日本輸出入銀行がこうした今後に予想される資金需要に弾力的に対処し、その業務の円滑な運営に遺憾なきを期していくため、ここに、この法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案につきまして、その概要を申し上げます。  第一に、借り入れ限度額を引き上げることであります。  日本輸出入銀行の借入金の限度額は、現在自己資本の四倍と法定されておりますが、今後も引き続き増大が見込まれる資金需要に対処していくため、この限度額を、後に述べます外貨債券の発行額の限度と合わせ、自己資本の十倍に引き上げることといたしております。  第二に、日本輸出入銀行と協調融資を行う金融機関範囲を拡大することであります。  現在、輸出入金融及び技術提供金融については、日本輸出入銀行と協調融資を行う金融機関は、銀行、長期信用銀行及び外国為替銀行に限定されておりますが、このたび、中堅及び中小企業が日本輸出入銀行資金を一層容易に活用し得るよう、この金融機関範囲を政令により拡大できることといたしております。  第三に、日本輸出入銀行大蔵大臣の認可を受けて外貨債券を発行することができるようにすることであります。  現在、同行の資金調達の方法は、政府からの借り入れ及び外国の銀行その他の金融機関からの外貨資金借り入れに限られておりますが、今後予想される資金需要の増大に備え、資金調達手段の多様化を図るため、日本開発銀行の例にならい、外貨債券の発行について新たに規定を設けることといたしております。  なお、同行の発行する外貨債券に係る債務につき、政府が予算の定める限度において保証することができるようにする等、所要規定整備を行うことといたしております。  以上が、この法律案を提出いたしました理由及びその概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  234. 田中六助

    田中委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、来る二十一日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時八分散会      ————◇—————