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1976-05-12 第77回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十二日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 田中 六助君    理事 塩川正十郎君 理事 村岡 兼造君    理事 森  美秀君 理事 山下 元利君    理事 山本 幸雄君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       大石 千八君    加藤 紘一君       金子 一平君    鴨田 宗一君       瓦   力君    木野 晴夫君       小泉純一郎君    齋藤 邦吉君       塩谷 一夫君    竹中 修一君       野田  毅君    林  大幹君       原田  憲君    坊  秀男君       宮崎 茂一君    毛利 松平君       山中 貞則君    高沢 寅男君       広瀬 秀吉君    松浦 利尚君       武藤 山治君    村山 喜一君       山中 吾郎君    横路 孝弘君       横山 利秋君    荒木  宏君       小林 政子君    広沢 直樹君       竹本 孫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         行政管理庁行政         管理局長    小田村四郎君         経済企画庁長官         官房参事官   朴木  正君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  勇君         大蔵政務次官  唐沢俊二郎君         大蔵大臣官房長 長岡  實君         大蔵大臣官房審         議官      佐上 武弘君         大蔵省主計局次         長       田中  敬君         大蔵省主計局次         長       高橋  元君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省証券局長 岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         国税庁次長   横井 正美君  委員外出席者         議     員 佐藤 観樹君         議     員 武藤 山治君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      前川 春雄君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     加藤 紘一君   保岡 興治君     竹中 修一君 同日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     塩谷 一夫君   竹中 修一君     保岡 興治君     ————————————— 五月十一日  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第六六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十一年度公債発行特例に関する法  律案内閣提出第一号)  昭和五十一年分の所得税臨時特例に関する法  律案武藤山治君外四名提出衆法第九号)  所得税法の一部を改正する法律案武藤山治君  外四名提出衆法第一〇号)  有価証券取引税法の一部を改正する法律案(武  藤山治君外四名提出衆法第一一号)  法人税法の一部を改正する法律案武藤山治君  外四名提出衆法第一二号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案武藤  山治君外四名提出衆法第一三号)  土地増価税法案武藤山治君外三名提出衆法  第一四号)      ————◇—————
  2. 田中六助

    田中委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、本案について、本日、日本銀行総裁前川春雄君に参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中六助

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 田中六助

    田中委員長 この際、大蔵大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大平大蔵大臣
  5. 大平正芳

    大平国務大臣 昨日、広沢高沢委員より御提起がございました公債発行額についての御質問について申し上げます。  公債発行額予算のきわめて重要な内容であり、そのため財政法四条公債についても、予算総則議決を受けることとなっております。特例公債についてもその点は同様であり、予算総則から限度額議決を外すことは適当でないと考えます。しかし公債発行の歯どめとしての問題提起でもございますので、二重議決の問題等法律的な問題も含め、今後十分検討することにいたしたいと存じます。     —————————————
  6. 田中六助

    田中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦利尚君。
  7. 松浦利尚

    松浦(利)委員 先般の質問資料要求しておりました二つ提出されましたから、この資料について御質問をさらにさしていただきたいと存じます。     〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕  第一点は、国債元利償還費についての仮定計算結果をきょういただいたわけでありますが、これについて御説明事務当局の方からお願いしたいと思います。
  8. 高橋元

    高橋(元)政府委員 松浦議員から月曜日の委員会の際に御要求がございました、今後の長期間にわたる経済動向あるいは財政収支状況を予測いたしますことは、よりどころとする経済計画等もなくて困難でございます。まして国債費についての見通しを計算することは不可能に近いと思います。そこで、歳出面につきまして、一般会計予算規模財政収支試算平均伸び率程度伸び率で推移するという簡単な仮定だけ置きまして、六十、六十一年度国債元利償還費計算いたしました。  計算のための仮定といたしましては、元利償還費以外の一般歳出伸び率は五十六年度以降一四%という想定を置きます。第二に、国債発行条件現行と同条件といたしました。なお、付言いたしますと、五十六−五十九年度については、特例債償還のための予算繰り入れは考慮いたしませんで、六十、六十一年度において現金償還に必要な額を計上するという計算方式をとりました。それから仮定の第三でございますが、五十六年度以降各年度において、公債発行額が、さきに御提出をいたしました財政収支試算ケースIの五十五年度発行額すなわち六兆五千二百億で推移する場合を一つと、それから公債依存度が五十五年度水準すなわち一五%のまま推移する場合を一つと、二つの場合をとりまして計算をいたしました。  計算結果を申し上げます。  公債発行額横ばいの場合、すなわち五十六年度以降各年度につきまして六兆五千二百億円ということになりました場合に、六十年度におきましては予算規模は八十三兆九千四百億円でございまして、これに対する国債元利償還費は九兆三千七百億円、その割合は一一・二%となります。それから六十一年度につきましては予算規模が九十五兆九千億円、これに対しまして国債元利償還費は十兆八千九百億円、国債元利償還費割合は一一四%と相なります。それが国債発行額を五十六年度以降横ばいとした場合でございます。  今度は国債依存度が五十五年度以降一五%で推移するということにいたしますと、六十年度における予算規模は八十五兆四百億円、これに対しまして国債元利償還費は十兆四千七百億円、一二・三%、それから六十一年度予算規模が九十七兆六千三百億円、国債元利償還費が十二兆六千二百億円、その割合は一二・九%と相なります。  以上でございます。
  9. 松浦利尚

    松浦(利)委員 さらにまた、公債政策あり方についての資料要求したのですが、これも関連をして質疑をしたいと思いますから、この内容についても御説明をいただきたいと存じます。
  10. 高橋元

    高橋(元)政府委員 公債政策あり方について、第一番目に公債政策基本についてでございますが、まず第一に公債政策運営に当たっては、基本的には財政法趣旨を踏まえ、財政規模及び内容国民経済と調和のとれた適切なものとすること、及び建設公債原則及び市中消化原則を堅持することが必要である。  第二に、五十一年度経済は、五十年度多額租税収入の落ち込みの回復を期待できる情勢にはないものと見込まれ、また、大幅な歳出の削減や一般的増税を行うことも適切な時期ではないと考えられる。したがって、五十一年度において、適正な行財政水準を維持することにより国民生活並びに国民経済の安定を図っていくためには、特例公債発行依存せざるを得ない状況にあると考える。  第三、しかしながら、安易に多額公債依存することは、将来における国債費負担の累増を来し、財政硬直化を招くもとともなる。今後は、先般国会提出した財政収支試算一つの手がかりとして、安易な財政依存を排し、歳出合理化重点化を図るとともに、所要税収確保方策について検討を進めることにより、昭和五十年代前半において、できるだけ早く特例公債依存しない財政に復帰する方針のもとに、健全な財政運営を図ってまいる所存であります。  二つ目の柱でございますが、特例公債償還についてでございます。  まず、今回の特例公債については、満期までに全額現金償還することとし、借りかえは行わないこととしている。このための財源としては、百分の丁六の定率繰り入れを行うほか、特例公債償還までの間は、財政法六条に基づき剰余金を全額繰り入れることとし、また、必要に応じ予算繰り入れを行う考えであり、これにより特例公債償還支障のないようにしてまいる考えである。  第二に、特例公債償還支障なく行うためには、まず、特例公債発行を最小限にとどめ、できるだけ早く特例公債依存しない財政に復帰することが先決である。政府としては、全力を挙げてこの問題に取り組む決意であります。  第三の柱でございますが、公債消化の問題。  まず最初に、現行引き受け方式でございますが、現在、国債の大部分は、各種金融機関及び証券会社によって組織される国債引き受け団によって引き受けられ、そのメンバーである証券会社個人等に対する国債販売を担当している。このような消化方式が採用されているのは、現在のようなわが国の金融構造のもとで国債の円滑な市中消化を図るためには、この方式が最適なものと判断されたためである。  第二に、発行条件弾力化でございます。本来、国債金利は、長期金利の一種であるから、金融市場全体の構造の中で、広く金利体系全体のバランスを崩さない範囲で決定さるべきものである。国債発行条件決定に当たっては、従来から、そのときどきの金融情勢に応じて一般的な金利水準、他の公社債とのバランス財政負担に及ぼす影響等を勘案しつつ、弾力的に決定するよう配慮してきたところであり、最近では昨年末における金利引き下げの過程で、国債金利引き下げ幅を他の公社債に比べて微調整にとどめている。今後とも、国債金利については、各種長期金利とのバランス等を考慮しつつ、極力弾力的に決定してまいりたい。  第三に、個人消化促進でございますが、国債発行条件についての配慮、PR活動強化等により投資対象としての国債についての理解が深まったため、最近、個人消化は著しく拡大している。その額は、五十年度当初においては月平均百五十ないし百八十億円、昨年末においても二、三百億円にすぎなかったが、最近では月五百億円を超える水準に達している。個人消化促進策については、現在、シ団内部においていわゆる中期国債構想を含め検討を進めているところであるが、大蔵省としてもシ団検討状況に留意しつつ、これについて真剣に検討しているところであり、必要に応じ新たな個人消化促進策を講じてまいりたいと思います。  以上でございます。
  11. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは簡潔に質問をさせていただきたいと存じます。  まず最初に、仮定計算の結果であります。これはあくまでも仮定の上の結果でありますから、これにこだわるつもりはありませんが、しかしこれからの財政の中に占める国債元利償還費が非常に多額に上ってくるということだけはこの試算でも類推できると思うのであります。しかも予算歳出規模、五十六年度以降も大体一四%とするというこの一四%というのは、御案内のとおりに中期経済計画昭和五十六年度以降、経済企画庁考えておる実質経済成長は大体五から六の間というふうに作業されておったやに聞いておるわけでありますから、一般歳出伸び率を一四%とするというのはぎりぎりのところじゃないかというふうに判断をいたします。それに対比して予算規模の問題でありますが、予算規模が九十五兆九千億あるいは九十七兆六千億、約百兆近くの予算になるということはとうてい考え得ない内容でありまして、収入の方はむしろこれよりも下回ってくるんではないかというふうに考えざるを得ません。ということになりますと、この試算の中の国債元利償還費予算規模に対する構成比はもっとふえてくるというふうに、私たちはこの試算の結果として類推できるわけです。したがって、安易に公債なりあるいは特例債を出していくことが後世代にどれだけ負担をかけていくかということは、この一事で知ることができると私は思います。しかも、負担をさせた上に財政硬直を呼ぶということもはっきりしておるわけであります。特に六十年度以降——先般のケースIによりますと、大体四年間、五十四年度まで特例債依存をいたしております。ケースIIで見ましても五十三年度まで依存をするということでありますから、この傾向は依然として六十年、六十一、六十二あるいは六十三と続くということを考えなければならぬわけであります。ですからこそ私たちは安易に特例債でつじつまを合わせるという政府考え方に反対をして、もっと慎重にしたらどうかという意見をし、その御回答を求めてきたところでございます。そういう意味で、この問題を契機といたしまして、もう一遍私の質問なり堀委員質問に補足をさせていただきまして、公債政策あり方について詳細に詰めさせていただきたいと思います。  この公債政策基本的な内容の第一項でありますが、「公債政策運営に当っては、基本的には財政法趣旨をふまえ、」というふうに言っておられます。いろいろ表現の違いはあるのですが、われわれは、財政法の本旨というのはあくまでも均衡財政というものが原則なんだ、財政法第四条のただし書きというのは、まさしく刑訴法四十七条のただし書きと同じように——政府がそのただし書きを非常にシビアに表現しておられるわけでありますが、刑訴法第四十七条ただし書きにそれほど厳しく臨んでおられる政府自身が、財政法の第四条のただし書きについては非常に安易に考えておられる。まさしくわれわれが指摘する例外規定ではないのだというふうな考え方をしているところにも、法律的な立場から見ても一貫されておらない。法律立法趣旨は違うけれども立法の技術的なものは刑訴法であろうと財政法であろうと同じだと私は思う。その解釈刑訴法の方ではただし書きを非常に厳しく国会に対して表現をしておられる三木内閣が、第四条についてはただし書きをわれわれは例外規定だと言うにかかわらず、これを例外規定としては認めておらない。立法趣旨というよりも、法律技術論からして、私は三木内閣一貫性がないんじゃないかというふうな気がします。  ですから、いや、これは法律技術的にも全然矛盾しないんだということがもし立証されるなら、刑訴法の四十七条ただし書きと第四条のただし書きは矛盾しないんだということが技術論的に立証できるなら、この際大蔵大臣からここでお答えをいただきたいと思いますし、お答えできなければ、三木総理が御出席だそうでありますから、三木総理が来られたときに、総理の方からお答えいただくように準備をしていただきたいと思います。  いずれにしても、この第四条ただし書き例外規定であります。しかも第二項はその歯どめであります。ですから、「基本的には財政法趣旨をふまえ、」というその基本は、一体われわれの言っておる基本と一致をするのかどうか、その点を大蔵大臣からお答えいただきたいと思います。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 財政法基本的な趣旨健全財政でございまして、公債政策は本来意図するところではないわけでございます。とりわけ特例公債財政法規定しているところでないことは申すまでもないことでございます。したがって「財政法趣旨をふまえ、」ということは、漫然と公債政策依存するというようなことではいけない、きわめて厳しい態度で例外中の例外の問題に対しまして対処しなければならないという基本的精神をもって当たらなければならないという趣旨を申し上げたつもりでございます。
  13. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大臣、もっと具体的にお尋ねしますが、私の方は均衡財政と申し上げましたが、大平大蔵大臣健全財政というふうに表現なさったのですが、その表現の違いは別にして、第四条ただし書きというのはあくまでも例外規定だ、もちろん特例債というものは異例中の異例でありますが、第四条ただし書きについても、これは例外規定なんだというふうに御理解いただけますか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 言うところの意味は、公債発行をする場合は建設公債に限りという限定的な意味規定したものでございまして、本来均衡財政が貫かれ、公債発行する場合はこの建設公債に限定さるべきであるぞという趣旨を限定的に規定したものと思うわけでございますので、大原則から申しますと、あなたの言われる例外であるという精神は正しいと思います。
  15. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それから第二項の償還計画国会提出の義務、これはそういうただし書き例外に対してさらに歯どめをかけていく、仮に例外規定建設公債発行した場合といえども、第二項についてはこうですぞというその歯どめだ、要するに形式的なものじゃないんだ、立法趣旨としては、あくまでもこれはそういう特例、いま言った例外的なものに対する歯どめ事項として入っておるんだというふうに御理解、御認識いただけますか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 この規定法律技術的には国会の御審議の参考にいたす意味で書かれたものと了解いたしますけれども、しかし全体の構造は、公債政策を正しい軌道の上で厳しく運営してまいることを保障しようという精神で貫かれたものでございますから、あなたの言われるように、歯どめの精神の一環を担うものであるという御解釈がこの二項にも適用されるという解釈につきましては、私も意見を同じゅうするものであります。
  17. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それから(ロ)の「建設公債原則及び市中消化原則を堅持する」この「市中消化原則」というのはどういうことを意味するのか、この点をひとつ明確にお答えをいただきたいというふうに思います。
  18. 高橋元

    高橋(元)政府委員 第五条で市中消化と言っておりますのは、日本銀行引き受けを禁止する、つまり、公債日銀引き受けによって発行されますならば、その発行が乱に流れ、ひいては経済の根幹を乱すことになるということにかんがみまして、特別の場合に、国会の御議決をいただいた場合を除くほかは、公債発行については日本銀行引き受けを排除するということでございます。
  19. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵大臣にもう少し具体的に——いま事務当局お答えで結構なんですが、さらに一歩進めて、そのこと自体は四条ただし書き公債発行によってインフレを防止するという意味で「市中消化原則」というものがうたわれておるんだというふうにわれわれは理解をするのですが、そういう理解は一致できますか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございます。
  21. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それから、第(3)項の問題について若干確認をしておきたいのであります。「歳出合理化重点化を図るとともに、所要税収確保方策について検討をすすめる」というふうに表現されておるわけでありますが、その「所要税収確保」の内容ですね、この内容というのは、どういう内容のものを事務当局としては想定されておるのか。もちろん、先般のわれわれの質疑、その他の皆さん方の御質問について的確な御答弁がなかったわけでありますけれども、その「所要税収」の内容というものについてはどういうものなのか、どういうものを大体想定されておるのか、そのことをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  22. 大倉眞隆

    大倉政府委員 その部分にございます「所要税収」というのは、中期財政収支試算によります限り、現在の租税制度のもとでの自然増収では五十年代前半特例債依存から脱却することはむずかしいかもしれない、何らかの新増税が必要かもしれない、恐らく必要であろうというふうに申し上げておるわけでございます。  さて、しからばどの時期にどの税目でそういう税収確保をいたすかということにつきましては、今国会終了後、税制調査会所得課税資産課税消費課税、すべてにつきまして根元から御検討をお願いしたいというふうに考えております。今後の検討の問題でございます。
  23. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今後の検討課題ということはわかるのですが、それでは、本国会終了後税調に諮るということでありますが、その「所要税収確保」のための方針ですね、最終的な決定というのはいつごろをめどに結論を出されるという御判断でありますか。
  24. 大倉眞隆

    大倉政府委員 私どもとしましては、できるだけ早く一応の方向を出していただきたいということをお願いするつもりでございます。ただ、国民租税負担にかかわる非常に大きな問題でございますから、かなりの時間がかかるということも予想されますので、ただいま具体的に何年何月にということまではちょっと申し上げる用意がございません。
  25. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、抽象的に私も質問いたしますが、五十二年度予算編成までには結論を出そうとお考えになっておるのか、それとも、五十二年度予算編成後に結論を出そうと考えておられるのか、当然財政当局としては一つ方針があってしかるべきだと思うのです。ですから、これは大蔵大臣の方から御答弁をいただきたいというふうに思います。
  26. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもとしては、具体的にどの税で何億というところまでをことしの暮れにお決めいただけるかどうか、そこはまだお答え申す用意がないわけでございます。ただ、少なくとも方向についての何らかの示唆をいただけないと、五十二年度税制改正をどっちの方向に向けたらいいかということがなお不透明なまま残るという点はございますから、少なくとも方向についての示唆はいただけないかなということでお願いをしたいと思っております。(松浦(利)委員「いつまでですか」と呼ぶ)ことしの暮れまでには。方向でございます。具体的にどの税で何億というのは、これは釈迦に説法でございますけれども、やはりそのときの経済情勢予算の大きさとも密接に関連しておりますから、税だけが切り離れて先に数字で出てくるということはちょっと予想できないわけです。
  27. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は数字的なことを言っておるのじゃないのですよ。五十二年度予算編成前に方針としては一つ方向というものを決めたいと考えておられるのか、それとも、五十二年度予算編成後でもいいというふうにお考えになっておるのか、そのいずれなんですかということをお聞きしておるのです。ですから、これはやはり大蔵大臣にお聞きした方がいいと私は思うのですよね。大蔵大臣、これはやはり一つの大きな政策判断じゃないでしょうか。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 まあいまの段階でまだ定かに見当はつきかねますけれども、五十二年度予算編成までには、いま主税局長が申し上げましたように、大体の方向を何とかお決めいただくというところまで持っていけないものかと考えております。
  29. 松浦利尚

    松浦(利)委員 さらに、この(3)の後段に「健全な財政運営を図って参る所存である。」というように書いてありますが、これは(1)との関係で、要するに「健全な財政」とは何か、何を考えておられるのかという点については、(1)項の考え方と一致するというふうに理解してよろしゅうございますか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 まず、来年度以降特例債を漸減してまいりまして、それから五十年代前半にこれから脱却し、その後は建設公債といえども過大な状態は困りますので、先般お答え申し上げましたように、五%内外というようなところを目指しまして、漸次努力を加えてノーマルな状態に持っていくような方向に真剣な財政運営をいたすという趣旨でございます。
  31. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、ここで言う「健全な財政運営」というのは、四条公債は前から大平大蔵大臣が指摘されているように、五%以下という方向へ持っていくということでありますから、五%以下にしていく、五%以下だということをもって「健全な財政」というふうに理解してよろしいですね。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 経済情勢国民負担状況考えながら、そういう目標を追求しながら鋭意努力してまいるということでございまして、必ずいついつまでに五%の達成をどんな犠牲を払ってもやるというわけにはなかなかまいらぬかもしれませんけれども、そういう方向に鋭意努力してまいるという精神を申し述べたものでございます。
  33. 松浦利尚

    松浦(利)委員 さらに二枚目の(ハ)の項についてお尋ねをしたいのですが、この特例債については「必要に応じ予算繰入れを行う考えであり、」というのが、その(ハ)項に書いてあるわけでありますが、この予算繰り入れの財源というのは税収をもって行おうとしておられるのか、あるいは国債発行して繰り入れようというふうにお考えになっておるのか。恐らく私は税収をもってという表現だろうと思うのですが、これは「必要に応じ」でありますから、必要に応じ税収を繰り入れていくということで読みかえておられるものと私は理解をするのですが、そういう解釈でこの点よろしゅうございますか。
  34. 高橋元

    高橋(元)政府委員 当面特例債からできるだけ早い機会に脱却していくと、それに全力を挙げていくわけでございます。特例債脱却の後に、必要に応じまた財政に応じて予算繰り入れに精力を払っていく、そういうことを考えていく所存でございます。したがいまして、予算繰り入れの財源が特例公債ということはいやしくもない、またあるべきでもないと思いますし、恐らくは四条公債発行しながらの財政であろうかと思いますが、その場合でも、四条公債の使途というものは建設的な使途に限定されておるわけでございますから、したがいまして、財政としては一般財源で普通歳入をもって公債償還の財源に充てるということでございます。
  35. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、予算繰り入れ特例債では行わない、税収であくまでも行うのだということの確認として理解をさせていただきたいと思います。  それから、(2)項の「特例公債依存しない財政に復帰することが先決である。」これは、いままで再三にわたって本委員会でも各委員皆さん方政府質疑をし、意見を述べられたところでありますが、私たちがいま考えておかなければならないのは、特例公債発行しなければならなくなった原因は一体どこにあったのか、なぜこういう特例債発行しなければならなかったのかという基本認識の一致が政府との間にまだないと私は思うのです。  ですから、この際、大平大臣に明確にしておいていただきたいのは、この特例公債発行しなければならなかった原因は一体どこに起因をしておったのか、その点を政府の見解として、もちろん法律の、この特例法の第一条にも簡単には特例債発行する理由が付してありますけれども、それはあくまでも発行の理由であって、なぜそういうものを発行しなければならなかったかという原因、基本認識、そういうものについてお答えいただきたいと思うのです。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 公債政策あり方につきまして、もう申し上げておりますように「公債政策基本について」の(2)に「五十一年度経済は、五十年度多額租税収入の落込みの回復を期待できる情勢にはないものと見込まれ、また、大幅な歳出の削減や一般的増税を行うことも適切な時期ではないと考えられる。」と、こういう認識を申し述べてございます。五十年度経済、五十一年度経済はこういう認識を持って対処いたしたわけでございます。一方において大変多額税収の落ち込みが見られたわけでございますから、これに対しまして大幅な歳出の削減をもって対処できるかというと、そういうことができる状況ではない。中央、地方を通じまして行財政水準は一定の水準を維持しないと経済自体がもたないという状況にございましたので、やむなく特例公債発行をお願いするという選択に踏み切ったわけでございますので、基本的な事情はここに書いてあるとおりの情勢判断から来たものと御承知を願いたいと思います。
  37. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ここに書いてあるのはなるほどそのとおりなんですが、それじゃもっと表現を変えて、なぜそれでは税収が落ち込んだのか、その中で特に法人税の減収というものが非常に大きかった、その原因は何なのか、そういう点がやはり解明をされておかないと、またこういう事態が出てきたときに同じ結果を生むと思うのです。そういう意味基本認識。ですから税収が低下した理由、特に法人税が減収した理由はどこにあったのか、何なのかということについて、基本認識をどういうふうに大臣は持っておられますか。
  38. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいま大臣お答えいたしましたように、五十一年度は五十年度の異常な税収の落ち込みがまだ戻ってこない時期であるということが前段にございます。したがって、五十年度の異常な落ち込みの原因が何であったかということがただいまの御質問であると思います。  五十年度の法人税が当初予算に比べまして補正予算で二兆一千億ばかり減収という見込みを立てたわけでございますが、その原因は、要因別に申し上げますと当初予算では、いずれも前年比でございます。前課税ベース比でございますが、生産を九九%、物価を一一二%、所得率を九五%ということで当初予算は見ておりましたものを、補正の段階でこれを下方修正いたしまして、生産は八八%、物価は一〇七%、所得率は七五%というように下方修正をいたしたわけでございます。生産の落ち込みは当初期待したほど戻らないということでございます。物価は当初考えたよりもむしろ上がらなかったということでございます。所得率につきましてはやはり生産、物価が落ち込むために固定費の圧迫によりまして所得率が下がる。それらが互いにまざり合いまして、法人税収の減収をもたらした、そのように私は考えます。
  39. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま言われたことがそのままストレートだと思うのですが、ただ問題は、基本的に認識をしておかなければならないのは、経済見通しを誤ったということだと思うのですよ。五十年度経済見通しそのものを見誤った、そこに基本的な問題点があった。ですから、逆に言うと昭和五十一年度予算についてもいろいろな経済の見通しを立てておられますが、これが何か政府の方では数字の遊びになってしまう。何か都合が悪くなれば補正予算を組む、あるいは目標修正をしてしまう、見通しを修正する、安易にこの経済見通しを自由自在に時に応じて変更できる。     〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕 なるほど経済は生き物ですから、見通しを誤る場合もある。そのことを私は責めようとは思わないのですが、何か財政運営する側も安易にそのことを受け取ってしまう。そこに私は基本的に政府の姿勢の厳しさの足らなさがあると思うのですよ。  私は、だからここで大平大蔵大臣にぜひ財政担当責任者として明確にしていただきたいのは、政府の見通しというものに対しては、確かにこう情勢で変わる場合もある、しかし少なくとも今度のこれからの経済運営財政運営に当たって国民にツケを回さないようにできるだけ正確に把握をしていく。こんなことを言ったら気象庁に怒られますけれども、当たらないと言われた気象庁の天気予報も最近はだんだん当たるようになった、それはやはり努力の成果だと私は思うのですよ。やはりその努力を政府もやるべきだ。余りにも安易に寄り過ぎる。そこを私たちは指摘をしておるわけですから、この際、大臣から明確にその基本認識をお答えいただきたいというふうに思います。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 政府経済見通し、またそれに基づく予算というものは、過去高度成長を記録できました段階におきましては、毎年下半期になりますと、下方修正ではなくて上方修正と申しますか、そういうことをやるのが普通、通例になっておったと思うのでありまして、そのことがいわば経済見通しというものの策定に当たりまして、あなたの言われる真剣さ、真剣な取り組み方をいささか減殺しておったうらみがありはしないかと、いまになって反省を覚えるのでございます。  ところが、そういう状況でありましたものが、一昨々年の秋の石油危機以来の内外の経済の激変をもろに受けまして、非常な下方修正を余儀なくされたわけでございまして、この程度で終わるだろうと思っておったものがなお底は深かったということに相なったわけでございまして、五十年度経済の見通しの修正、したがって予算の補正というものはかつてない幅において行われて、国会の御承認を得なければならぬという不始末に相なりましたわけでございます。このことは、確かに松浦さんおっしゃるように、経済の見通しというものに対して真剣に当たらなければならぬことを切実に教えたと思うのでございます。  五十一年度でございますが、五十一年度経済の見通しと五十一年度予算は、そういう意味におきまして私ども非常に真剣に臨んだつもりでございまして、ことしはぶざまな修正があってはならないという覚悟で当たっておるつもりでございます。もとより人間のやることでございますし、内外いろいろな不確定要因がございますし、将来の変動を予測するというようなことは容易ならぬことでございまして、絶対に変更があり得ないなんというようなことを公言する自信はございませんけれども、私どもそういう変動をできるだけ吸収しながら柔軟な弾力的な経済運営を通じましてできるだけ所定の目標が達成できるように努力をして、政府の目標をできるだけ変えないでいく、言いかえれば、それを目標にして、家計にいたしましても企業にいたしましても、いろいろなもくろみを立てられておる国民に対して御迷惑をかけないようにやるという決意でおるわけでございまして、申すまでもなく経済目標の作案ということに対しましては、非常な真剣さをもって臨むべきであるというあなたの御提議は、そのとおり私も存じております。
  41. 松浦利尚

    松浦(利)委員 じゃ最後に、一番最後の「個人消化促進」の問題について若干御説明をいただいておきたいと思います。  その一つは、「最近、個人消化は著しく拡大している。」こういうふうに御報告いただいておるわけでありますが、なぜ個人消化が必要なのか、個人消化が必要になってきたのか。しかも、個人消化が著しく拡大しているというのは、もちろん大蔵省、シンジケート団のいろいろの宣伝もあるでしょうけれども個人消化が著しく拡大してきた原因はどこにあるのか、個人消化というのはいつまで続くというふうに御判断になっておられるのか、今後の見通しについてお聞かせいただきたいというふうに思います。
  42. 松川道哉

    ○松川政府委員 個人消化の必要性と申しますか、個人消化が望ましいという点につきましては、しばしば当委員会でも議論がございましたように、たとえばマネーサプライの関係であるとかその他種々の面から見ましても、これが経済を安定的に推移させるために非常に望ましい姿であるということで、私ども個人消化のために力を尽くしておるところでございます。ただ、御案内のとおり、日本の金融構造からして、個人消化が直接の個人に向かうものと、間接的に貯蓄を集めた機関がそれを投資する形できているということは、累次御説明してまいったところでございます。  そこで、ここに書いてございます個人消化、これは直接に個人消化されるものでございます。これがなぜこのようにふえたのかという御質問でございますが、もちろん一般的な背景といたしましては金融情勢が緩んでおるということがございます。ただ、これは個人の消化の場合と金融機関の消化の場合と考えますと、個人にももちろん影響はございますが、金融機関ほど大きく影響は受けない。それであれば何かと申しますと、私ども結論として言えることは、国債が魅力ある投資物件として認識されるようになってきた。  この文章では「国債についての理解が深まった」と書いてございますが、魅力あるものになってきたということではないかと思います。なぜ魅力あるものになったかと申しますと、ここにもございますように、たとえば昨年の十一月に国債発行条件を改定いたしましたが、このときに電力債であるとか新日鉄債であるとか、そういうAAクラスの社債の発行条件も〇・五%近く改定いたしましたし、また、利付の金融債のレートも〇・五%改定いたしましたが、そのときに国債については〇・〇九三%の微調整にとどめた、これが一つでございます。また、国債についてのPRを一生懸命いたしましたので、あるいは国債の三百万円の別枠非課税制度がよく理解されるに至ったというようなこともございます。また、そのPRのプロセスを通じて、閣僚であるとか政務次官であるとか、また大蔵省の局長であるとか、そういう人も買うような確実な債券であるということが意外と大きな効果を果たしておるということを、直接担当しておる者どもから私ども聞いております。  そういったようないろいろのことを通じまして、この個人消化というのが、私どもが当初予想しておりましたよりもはるかに大幅に増加いたしてきております。  そこで、最後の点の、いつまで続くかということでございますが、これは先ほど申し上げましたように、国債に対する認識が深まり、魅力ある投資物件であるということが理解されてまいりました。ということは、投資層の幅が拡大いたしてきております。その意味でこの国債個人消化というのは将来とも続くのではないか。また、少額の貯蓄をもって国債に投資したいという方に累積投資制度というのがございます。これは国債の券面がわりあい大口で五万円以上になっておるものですから、毎月一万円ずつ積み立てて五万円たまったところで国債を買うという制度がございます。この制度が非常に普及してまいりました。これはこの制度がございます限り国債はずっと続けて買われるわけでございますから、その意味でも国債個人消化といいますか、個人による購入というのはふえこそすれ、近い将来に減るということはないのではなかろうか。また他方、私ども精力的に機関投資家、たとえば公務員の共済組合であるとか。そういうところへもできるだけ国債を持っていただきたいということをPRしてまいっております。こういうところもこれから運用資産がふえてまいります。そういうことを考えあわせますと、個人消化、これは卑近な例で申しわけないのですが、たとえばボーナスの月なんというのはよけい売れます。そういう意味で、アップダウンの多少のことはあろうと思いますが、傾向としては着実に増加の方向をたどるものと私どもは予想いたしております。
  43. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、着実に伸びていくとすれば、大体個人消化は全体の発行の何%ぐらいが望ましいというふうにお考えになっておられるのか。私たちは、やはり個人消化は多ければ多いほどインフレ要因の危険というのは回避することができるというふうに理解をしておるわけなんですが、それじゃ一体個人消化というのは何%ぐらいを見通しておられるのか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  44. 松川道哉

    ○松川政府委員 御案内のとおり、昨年国債の大量増発が始まりましたときには、たとえば十一月の数字をとりますと、八千億のうち個人消化は二百六十億円にしかすぎなかった。三%強というところまで一度落ち込みました。私どもは、従来とも言われておりました日本の金融構造のもとにおいては個人消化の目標を一〇%に置くべきであるという考え方を踏襲いたしまして、一〇%の線をいち早く回復いたしたいということで努力を続けております。  そこで、その後これが普及してまいればさらにそこからどのくらい伸びていくかというのにつきましてはただいまはっきりした計数的な目標は持っておりませんが、基本的な考え方として、松浦先生と同様、個人消化をふやしていきたいという考えを持っております。
  45. 松浦利尚

    松浦(利)委員 どれくらいまでふやしたいと思っておられるのですか。
  46. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいまのところ計数的な目標は持っておりません。
  47. 松浦利尚

    松浦(利)委員 その計数的なあれは持っておらないと、こういうことですが、当面一〇%。しかし、やはりインフレを回避するという意味では、個人消化というのはもっと積極的にしなければならぬ、そのためには魅力ある国債の市場づくりということで、われわれは長年中期国債構想というものを指摘をしておったのですが、そのこともこの回答の中には検討を進めておられると、こういうふうに書いておられるのですが、そのほかにも新たな個人消化促進策というようなことについてもお考えになっておられる、講じていきたいと、こういうふうに考えておられるのですが、この個人消化促進策の具体的な構想というのはお持ちなのかどうか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  48. 松川道哉

    ○松川政府委員 ことしの一月来、シ団のメンバーである銀行、証券会社、それが個人消化を拡大するためにどうしたらいいかという検討会を持っておりまして会合を開いております。私どもの方も随時これに出席いたしまして私どもの希望を述べ、また意見を述べております。私ども自体としても三月には担当官を欧米に派遣いたしまして、どうあるべきかということを研究いたしてきております。そこで、いろいろなことが現在も議論されておりますが、現在の段階でこれが具体策であるということはまだ申し上げられるような状況になっておりません。  と申しますのは、この資料にもございますように、昨年の暮れあれだけ努力いたしまして、やっと三百億円台に乗ったものが、そこから三カ月、四カ月の間に五百億円とか七百億円とか、こういう数字になってきております。そこで私ども、一体この個人消化がどうしてこうふえたのか、ただいまの御質問にもありまして、私一応の答弁をいたしましたが、さらにこれをどういう投資層が、そしてまたその地理的配分であるとかその他いろいろな要素ですね、こういったものも分析、検討いたしまして、さらにこれを伸ばすために打つべき手というのは、それらの分析も踏まえながら将来の手を考えていきたい、このように考えております。したがいまして、現在の段階でこれがその具体案であるというものをまだ持ち合わせるには至っておりません。
  49. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは私の保留質問を終わります。
  50. 田中六助

    田中委員長 竹本孫一君。
  51. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、財政特例法についていろいろお伺いいたしたい点がありますが、その大部分は同僚の委員によって質問され、あるいは答弁をされております。われわれ民社党といたしましては、赤字国債のこの特例法に関しましては、まず第一に、ポイントだけ申し上げるわけですけれども、こういう三割赤字国債依存しなければならないような羽目に陥った、あるいは陥れたという政治責任の問題。それから第二には、そういう情勢に直面をいたしまして歳入をどういうふうにしてふやしていくべきであるか。大蔵大臣は余り積極的でありませんが、歳出を根本的に見直すべきではないかというその歳入歳出両面にわたる再検討の問題。そして第三番目に、やむを得ず公債、特に赤字公債を出さなければならぬという段階においては、先ほど来御議論のありますように、魅力ある国債を出し、個人消化も大いに拡大をしていかなければならぬという問題、しかしながらこの国債をどんどん出していくということは、先般来議論になりました一方においてはクラウディングアウト、民間の資金需要を圧迫するという問題もありますし、したがってまたこれに対する歯どめをどうするかということで、本日もいろいろの御議論が行われておる。こうして公債発行に伴う公債の多様化の問題、商品の多様化の問題、クラウディングアウトの問題、M2の問題、インフレの問題、こういうような問題があろうと思います。第四番目には、大臣も五十五年度ぐらいになれば公債依存しないような健全な姿に持っていかなければならぬということをたびたび御発言がありますし、そのとおりだと思いますが、果たして五十兆円ぐらいのところで公債発行を打ちどめすることができる条件があるのかないのかという問題。大臣は漸減をしたいということを力説をしておられますけれども、その漸減がどの程度できるかという問題であります。さらにもう一つこれと関連しましては、償還計画が余り具体的でないではないかという問題。  ポイントだけ申しまして、こういう四つか五つの重大なポイントがあろうと思います。しかしそれらの問題については、先ほど来申し上げますようにほとんど議論が尽くされておるように思いますので、私は重複を避ける意味で一切もう触れないことにしようと思っております。  そこで、私はきょうは少し観点を変えまして、一つ政府の景気の見通し、経済の見通し、いまも議論が出ましたけれども、甘過ぎはしないかというポイントについて、これは政府とわれわれ大分意見が違うようでございますから、特に私は重要だと思う点を指摘しておきたいということが一つ。それから次には、この特例法が通らない場合にはどうなるかという問題についての問題。それから三番目には、要するに償還計画にしても財政の収支見通しあるいは計算あるいは計画というようなものは基本的には経済の計画体制というものがなければ、そんな財政計画も出てこないし、したがって償還計画も出てこないのではないかと思っておりますので、その辺について時間があればお伺いをしてみたいと思うわけでございます。  そこで、第一の景気の見通しの問題でございますが、日本の経済がこれからどういう形で回復をしていくかということについて、V字形にいくのかU字形になるのか、いろいろ期待がありますし、考え方があります。これに対しまして経済企画庁長官の福田さんは、この間どこかで二歩前進、一歩後退というような話をしておられるようでございますが、希望としてはそういうところであってほしいと思いますが、私はV字形、U字形の景気回復は無理である。大体Wの崩れたような形、まあW形と言っておるのですけれども、そういう点でひとつ若干意見を申してみたいと思います。  果たして一歩後退でとどまるかどうかという問題に関連するわけでございますが、いま、景気は少しよくなった、一月以降は特に景気がよくなったということで、経済企画庁も日銀も大分喜んでおるといいますか、自信をつけたようでございます。確かに輸出はよくなった、生産もふえた、出荷はふえておる、設備投資さえも下げとまった、こういうことがいわれておりまして、数字の上で見れば確かにそのとおりであります。そこで私は、それらの数字にもかかわらず、いま申しましたように果たして一歩後退で済むか、済まないかということについて、私の心配している点をひとつ申してみたいと思うのです。  その第一は、今度の景気回復は一月から三月までの輸出が非常に伸びている。年率にすればこのまま五〇%ぐらい伸びるかもしれない。一二%だ何だというようなことから、一−三月は季節調整後一二・二%増だというようなことで、そういうことになれば五〇%ぐらい輸出が伸びるではないか、こういうことが期待されているようでございますけれども、果たしてそうかという問題であります。  私は、輸出がいま伸びておる、数字の上ではそのとおりだと思いますが、これは第一には落ち込みが非常にひど過ぎた。去年は予定以上、百億ドルぐらい減ったでしょう。ですから、百億ドル減ったものが、ちょっと情勢が変わってくる、世界全体の経済も、マイナス二・二五ぐらいの成長が四・二五か七五か、あるいはアメリカの場合のごときは六%ぐらいの成長になるということになればぐっと伸びてくるので、非常に落ち込みが大きかったから非常に輸出が伸びているように見える、あるいは期待できるというふうに考えられるのだけれども、実際は百億ドル初めから予定が狂ているのだから、それがいまもとに戻りつつあるというにとどまるということではないか。次には、いま輸出が伸びておる。それは大部分は、機械その他にしても外国が、いまが日本の底値である、ここで買っておいた方が得なんだ、そういう思惑で日本の機械その他を買うという場合もある。それからもう一つは在庫補充。どこも不況でございましたから在庫をいまのうちに、特に安いときに補充しておこう、こういう意味で輸出が伸びるという問題もある。  それらを考えてみますと、私が言いたいことは、第一に、輸出が大きく伸びていることも事実のようだけれども、それは落ち込みがひどいとか一時の思惑だとか在庫の補充だというきわめて正常でない、アブノーマルとまでは申しませんが、一時的な原因ではないかということが第一点。  それから第二点は、各国とも経済のナショナリズムが非常に台頭してまいりまして、特に日本の輸出には、大臣御承知のように余りオーダリーでない、集中豪雨みたいに出ていくものですから、確かにある場合には、カラーテレビが輸出が七〇%伸びる、自動車は一年間に三百万台出る、こういうことで、大変な景気のように見えますけれども、そのことはかえって各国のエコノミックナショナリズムを刺激するのだから反撃の方が多いではないか、後のリアクションが恐ろしいではないかという点が次の心配であります。  ついでに申しますと、ことしの経済、ことに輸出の伸びは、プラント輸出ということを盛んに期待をされて倍になるだろう、あるいは三倍になるだろうと、通産大臣も大変強気に見ておるようでございますが、プラント輸出というものは長期あるいは中期の展望から言うならば、将来の日本の経済に対する力強い競争相手ができることであって、必ずしも楽観ばかりできないではないか、そういうことも含めて各国のナショナリズムによる制約が出てきやしないか。  第三点としては、すでにアメリカもそうでございますけれども、バーンズさんがこの間は、このままいくとインフレになる心配があるということで、御承知のようにM1については七%、M2については一〇%に抑えていくというので、それぞれ〇・五%ずつ抑えて、緊縮政策ということにはならぬかもしれぬが、要するに抑制的な方向にカーブを切ったということが伝えられておる。そういう意味で、いつまでも世界の景気はとんとん拍子に回復していくし、日本の輸出もとんとん拍子に伸びていくということは、いま言ったエコノミックナショナリズムの面から、あるいは各国の財政金融政策の軌道的な変化ということの面から大きな制約を受けるのではないか。そういう意味で今日の景気というものは輸出を牽引車として、輸出に引っ張られてどんどん伸びているんだが、その一番大事な柱である輸出にもいま指摘した三つ、四つの重大な制約なり困難なりがあるのではないか。そういう点を全然考えないで、経済はもう回復基調に入ったからよろしいということでいって、そういうことも含めて五十五年までには経済が大いに伸びて公債発行はしないでいいようになるだろう、あるいは税収も大いにふえるであろうということを考えると、重大な危険がありはしないか。その点についての大臣のお考えを承りたい、こういうことであります。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように最近日本の経済の回復が予想以上に活発である。一つは、いま御指摘の輸出の伸長が予想を超えたものがある。もう一つは、卸売物価の動向から見て警戒を要するのではないかというような点から、むしろ過熱を心配する向きが確かに各方面にあるわけでございます。そうでない意見もありますけれども、御指摘のような点がございます。政府も、年初来輸出が伸びたことに対しましては相当大きな期待も持ち、評価もいたしておりますことは御指摘のとおりでございます。  ところが、四月に入りまして輸出信用状がやや鈍化してまいりまして、前月末、若干でございますけれども、むしろ減退の数字が出てまいったことで、輸出も一本調子に伸びるものでないのじゃないかという警告が数字によって見られるわけでございます。したがって、いまあなたが、いままで落ち込み過ぎておったものが、今度はもとに戻りつつあるということ、在庫補充を急いでおるというようなこと、ナショナリズムの台頭等から世界経済が不安定であるということ、それからアメリカ初め各国、引き締め政策に転じている向きもあるというようなことは、輸出の先行きに対してむしろ赤信号が出てしかるべきじゃないかという御意見でございますが、政府といたしましてもそういった点は十分考えておかなければならない、手放しで輸出が一直線に伸び切るというように必ずしも見られないのではないかと思うわけでございまして、これが持続性をどういう度合いにおいて持ち得るかということがいま私どもも非常に関心を持って見ておるところでございまして、一月、二月、三月のようなカーブで伸びていくであろうというような楽観的な見通しは必ずしも政府としても持っていないわけでございまして、今後の成り行きには十分注意しておかなければいかぬというように見ておるわけでございます。
  53. 竹本孫一

    ○竹本委員 輸出についてもそういう重大な警戒をしなければならぬということと、第二には設備投資の問題です。  御承知のように、日本の経済は、高度成長経済というものは、あのころ学者なんかは設備投資主導型高度成長、こういうふうに申しておった。確かにそのとおりで、下村理論なんというものも設備投資をやりさえすれば投資が投資を呼ぶんだ、経済はどこまでも行けるんだ、私は非常に反対でございましたけれども、こういうような理論で大いにやってきた。いま下村さんもその点の間違いを認めたようでございますが、それで設備投資をどんどんやって成長したんだけれども、行き過ぎたためにもう当分設備投資はなくなるんだ、高度の設備投資はできないんだ、それから減速経済、ゼロ成長というようなところへ——少しまた下村さんは行き過ぎる点があるが、いっておるようでございます。しかし、私は設備投資については、一つはいま申しましたように設備投資主導型の高度成長であった。そして、それがまた少し行き過ぎた。二つの点を認める。けれども、この行き過ぎということのこれも反動になりますけれども、今度は当分もう設備は要らないんだということになり、事実不景気でもありましたので、設備投資は非常に沈滞をした。それが今度、最近になりまして、一−三月で設備投資と関連の深い機械の受注の面では前期比四二・七%ふえたということで、これでいよいよ本番だ、こういう見方をしているわけですね。本番だという見方も半分は当たっておると思うのですけれども、前期比で四二・七%設備投資がふえたということは、先ほどの貿易と同じで、今度は落ち込み過ぎた反動で機械受注が一遍に出てきたように見えるということであるけれども、これも余り大きく見てはいけない。余り過大期待してはいけない。  というのは、日本の経済の歴史を調べてみるとだれでもわかることですけれども、設備投資には一つの周期があるのですね。大体四、五年間は設備投資というものは二四、五%の勢いで伸びる。そうすると、今度はある時期が来ると、また二、三年間は設備投資は四%前後しか伸びない。また二〇%ぐらいふえる。また四、五%に落ちる。設備投資には大きな周期がある。このことを忘れてはいけないと思うのですね。だから、高度成長で設備投資主導型でいったときには、ちょうど内外その周期がうまく合ったものだからめちゃくちゃ設備投資がいき、そのおかげで経済を引っ張ってもらって経済が成長したけれども、いまは全体の景気が悪い上に、設備投資そのものの周期から言って沈滞期に入っておる。四、五%の段階に入っておる。そういうことを考えてみなければならぬので、ただ一−三月だけが機械受注だけは四二%以上ふえたからこれで設備投資も下げどまった、逆に言うならば、これから大いに設備投資がまたもう一遍過去の華々しい役割りを演じてくれるのではないかという期待がありはしないか。それはまた輸出貿易に対するあれと同じように過大期待になりはしないかということを警告したい、こういうことでありますが、大蔵大臣、設備投資についてはどういうお考えを一般的にお持ちでございますか。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 五十年度の民間の設備投資でございますが、二十兆八千億が実績の見込み、政府はそう見ておったわけでございますが、五十一年度は二十二兆二千五百億、約七%ふえるであろうという政府の見通しをいたしておるわけでございます。確かにいま御指摘のように、機械受注が一部の機械なんかは相当ふえておるものもございますけれども、私は政府の見通しの二十二兆二千億という数字を達成するというのは容易じゃないと考えております。したがってそんなに私は楽観をしておりません。政府自体もこの問題につきましては、若干一部の受注がふえたというような点はありますけれども、全体として民間設備投資が政府の見通しを上回るというような見通しを持っておる政府の方はまだ私は聞いたことがないわけでございまして、その点はもっと自重的な意見を持っておるように思いますし、私自身もまだそんなに浮いた感じは持っておりません。
  55. 竹本孫一

    ○竹本委員 要するに私が言うのは、日本の経済あるいは景気を支える柱あるいは日本の経済を引っ張る牽引車として一番期待できるものは、輸出とそれから設備投資である。財政支出ということを言う人がよくおりますけれども、御承知のようにいま問題になっているように、財政支出をやればそれだけ赤字がふえるだけの話なんですから、これは財政支出で景気を持っていこうということには限界がある。われわれは三万円減税ぐらいやってもらいたいと言うけれども、その一兆円減税でさえも大蔵省が渋っておられるというのは、それだけ一応は赤字がふえるということじゃないかと思うのです。そういう意味から言いまして、一番財政には期待したいのだけれども、これには非常に大きな限界があるから、私は景気を回復するという面から見ればそう大きな期待はできないので、きょうは問題にしない。  一般に期待できる輸出と設備投資ということを考えてみると、いま指摘しましたように、過大期待は無理であるということを私は言うわけです。その過大期待は無理だということは、先ほど申しました本論の特例法の償還計画というものにも関連してきまして、経済の伸びというものが過大期待を許さないようなものであるとするならば、自然増収その他の増収の面においてもあるいはその他の関係において償還計画を論ずる場合に、非常にこれはまた慎重でなければならないのではないか。そういう点で、そういう経済の実態論をほとんど抜きにして議論ばかりやってみても、果たしてどれだけの効果があるかという心配をいたしましたので、輸出についてもあるいは設備投資についても、日本の経済を従来あるいは現在も一部は牽引車的な役割りがあるのだけれども、過大期待はいけないということを私は指摘したのであります。  もう一つ経済問題で大臣に警告というか、何というかわかりませんが、考えておいてもらいたい問題がある。それは日本の経済構造的変化というものに対する一般の理解が余りにも浅薄であるということであります。たとえば発想の転換という言葉はきわめて簡単に使われるし、安定成長という言葉もきわめて簡単に使われておる。ところが、私は前から言うのですけれども、安定成長なんというものはナンセンスの言葉で、安定というのと成長というのとはまるっきり、汽車で言えば上りと下りくらい違うのだ。それを二つ一緒にして安定成長だ。何をとぼけた表現をするか、私にはよくわからない。安定的成長と言うならまだわかる。ドイツの一九六七年の経済安定法というのは、ぼくは大蔵省資料をもらって訳を見たけれども大蔵省、よく見てください。経済安定成長法か何かというふうに訳してある。ところがあれを原文で読んでみると、「経済の安定、そして成長を促進する法律」と、こう書いてある。安定成長なんてとぼけた言葉をドイツ人は使ってないですよ。それをそのまま受け取って、日本では大喜びで安定成長、何か安定したような気持ちがしますけれども、それは全然ナンセンス、理論から言えばナンセンスです。高度のめちゃくちゃな成長をするかあるいは安定に力を置くか、二つしかないです。中途半端なものはないです。ただ強いて言うならば、安定的成長です。そういう意味から言うと、いままでの高度成長を減速経済とか低成長と言うと言葉が非常に不景気に聞こえるものだから、安定成長というソフトな言葉に表現を変えているんだろうと思うのですけれども、実際は日本の経済はこれからはある意味において低成長、ある意味において減速経済と思うのです。  という意味は、いままで十年間の経済成長は大体一一%でしょう。これが今後は大体まあ六%くらいじゃないですか。七%になってほしいと思うのですけれども、六%くらいになる可能性が非常に多い。特に十年を平均すればその程度であろうと思うのです。そうするとスピードは半分になるのですよ。経済伸び率は一一、二%いったものが六%になるということは、スピードが半分になるということです。ということは日本の工場の設備も労働力の問題も、全部伸びが倍になる、物価も大体どんどん上がるというインフレと高度成長を前提にした仕組みにできている、それが速力が半分に落ちるということになると、これは単なる安定成長なんという言葉で解決し得る問題ではない。根本的に条件が変わっているんですから。その構造変化に対する理解が全然ない。私はその点を非常に残念に思うのです。  一一%成長したものが六%前後に落ちるということは、半分になるんだけれども、それは半分になるということはスピードが半分になる、伸び率が半分になる。汽車の新幹線でいうならばスローダウンというような言い方が大体考え方の根本にあると思うのだが、ずっと走っていたものがちょっとスローダウンすればいいんだというような受け取り方であるが、私はそれではだめなんで、半分になるということは、いま抱えておる設備も労働力もすべての条件がまるきり変わるので、いわゆる構造的な改革をやらなければならぬのだ、そこまで問題を掘り下げて受けとめなければ文字どおりの安定はない。それを、たとえば自動車が一台走っている、一台で走っているときは百キロのスピードを出したものを、スローダウンして七十キロにすれば、それはそのときちょっと時間がよけいかかるくらいで、問題は簡単なんです。ところが日本経済全体がスローダウンするというか、スピードが半分になるということは、自動車の例でいうならば、四キロ渋滞あるいは五キロ渋滞というような渋滞を起こして、それがためにすべての予定までも皆狂ってしまう、こういうことになると思うのです。  でありますから、私は特に言いたいことは、スローダウンだとか低成長だとか安定成長だとかいうことじゃなくて、日本の経済の置かれている条件が根本的に変わったんだ、したがって、経済の、私どもからいうならば新秩序、新しい仕組みを考えないと、全体としていわゆるソフトランディングはできないんだ、新しい軌道には乗れないんだ、その軌道に乗りかえるためには産業構造から行政機構から、あるいは財政金融政策でいうならば低金利と間接金融で行った従来の行き方から、あるいは税制から全部を、世の中が変わるんだという意味の改革を考えなければならぬ、そういう基本的な展望が全然なされないままに足らないところは赤字でいく、赤字はそのうち埋まるでしょう、漸減します。償還もします。償還はしないというばかはいないのですから償還というのはあたりまえのことだし。しかしたとえばわれわれがいま問題にしているのはそういう構造的な根本的な変化に対応する姿勢の中での赤字国債ということでなければならぬ。その大きなバックグランドや、大臣お好みの言葉で言うならば哲学的な反省やら掘り下げが全然ない、私はこう思うが、どうですか。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 私は竹本さんおっしゃるとおりの考えを持っているのです。ただ私が口下手なんで、私が申し上げていることがあなたにまだ御理解いただけずにおると思うのでございますが、私はたびたび申し上げておりますように、今度の不況は非常に周波が長いわけでございまして、いつもの不況は一年ぐらいの間にどうやら復元いたして、回復いたしておるわけでございますが、今度の場合は二年半たっておるわけでございます。非常に長いということ、それから非常に落差が大きいということでございまして、従来でございますならばピークとボトムとの差が大したことではなかったわけでございますけれども、今度の場合は、生産水準で申しましても、たとえば四十年不況のときにはピークとボトムの差が生産水準で三・一%、四十六年不況のときは一・七%であったが・今度の場合は二一%でございます。稼働率で申しますと、四十年不況のときには七・七%、四十六年不況のときは一〇・七%でございましたが、今度は二四・八%になっております。それから四十年不況のときも四十六年不況のときも、不況は進行しているのに輸出が一三%とか一五%とか前年に比べて伸びておるというようなときでございましたが、今度の不況は輸出がぐっと激減するという、えらい変化でございまして、これはあなたが言われる構造変化を伴わないで循環不況で終わったりしたら大変な奇跡でないかと私は思っておるのです。  ところが人間は非常に現状に対して肯定的な性格を持っておりまして、もうこれ過熱になるんじゃなかろうか、もう政府も諸外国がやっておるように引き締め政策に今度は転じなければならぬほどの回復ぶりじゃないかなんというて気の早いのが言っておりますけれども、これはやはり一過性の一つの循環不況、長かったけれども、きつかったけれどもまあ結局はやはり循環不況であったのじゃないかというのが支配的な考えになりつつあるようでございますが、実際は、本当は相当の後遺症を持っておるんじゃないか、それが非常にこわいのでございます。したがって、財政運営の場合も、歳入の見積もりにいたしましても薄氷を踏む思いでございまして、ことしの歳入が一体どれだけ確保できるか、五十年度の決算の場合、個人の申告の場合駆け込みで土地の譲渡所得が三千億ばかり多かったから、それだけはプラスになりましたけれども、一般の税収はどうやら見積もりどおり取れたぐらいが精いっぱいのところでございますから、五十一年度どうかなということを主税局長も心配し、私も心配いたしておるわけで、決して図に乗って、ことしはやや景気が回復したから自然増収が若干期待できるかなんという、そんな甘い感じを全然持ってないわけでございます。仰せのように相当の後遺症を日本の経済社会に残しておるに違いない、それが経済にどういうつめ跡を残し、財政にどういうつめ跡を残しているか、それをいやしながら再建を図っていかなければいかぬわけでございますから、これは容易ならぬ大事業だと思っておるわけでございまして、尋常一様の努力でいけないわけでございます。したがって私どもといたしましては、非常な決意で財政再建に当たらなければならないと、一同決意を新たにいたしておるところでございますので、国会におかれましてもまた特段のお力添えをひとつお願いしたいと思います。
  57. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣が御指摘のように後遺症が非常に大きい。いま生産の例を挙げて二一・二%落ちた、こんな例はないんだという御指摘のとおりで、私も同感です。  それからもう一つ言うならば、会社の経常利益なんかも今度は三月期で倍になったとしても、まだ一時の六割か七割くらいしか回復してない。     〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕 こういうような状況で、本当に問題は、ただ夢よもう一度というようなことを簡単に考えるようななまやさしい情勢ではない。実業界の人は、ある意味において自分の会社の収支決算を見ればわかるのですから、ある程度深刻に受けとめざるを得ないと思うのですね。ぼくはむしろ政治の方がのんき過ぎるんじゃないかと思う。国会あり方もあわせて批判してもいいが、とにかく政治の方がのんき過ぎる。そういう点で私はもう少し深刻に受けとめなければならぬではないかということをきょうは輸出の面それから設備投資の面、あわせて経済の成長率の半減化した問題を中心に申し上げたわけです。  ついでに集約の意味でもう一つ申し上げますならば、日本は輸出によって景気が回復したというのだけれども、先ほどもナショナリズムの問題その他を言いましたが、それは外側の問題です。内がのんき過ぎるということと関連して出てくる大きな問題は貿易の交易条件の物すごい悪化ということですね。これは日本が買うところのものは、油にしてもその他にしても大体向こうさんが四倍と言えば四倍、無条件降伏ですよ。そういう意味で買い入れる原料、材料はどんどん上がってくるが、日本の方はコストも上がる、いろいろの条件がありますから、売り値をどんどん上げていきたいはずなんだけれども、それはできない。ちょっとやればいま言ったナショナリズムの反撃も受けるし、また競争国のあるいはライバルのあるいは東南アジアの追い上げというような問題もありましてどうにもならぬから、輸出の方の条件はあるいは価格は一向上げることができない。買わなければならないものはどんどん上げてこられて、これは無条件降伏である。そういうことになれば輸出と輸入との比率を考えた場合の交易条件が悪化するのはあたりまえで、その悪化するということは情勢の激変である。そしてその激変に応ずる国内体制が矛盾が多いから、日本の輸出がますますコストが上がってどうにもならないのだ。それが集約されて出てきたものが交易条件なんですね。この交易条件が一九七〇年を一〇〇とした場合に、これは伊原君なんかも大いに研究していますが、ドイツなんかは大体そのままで、少しよくなっておる、アメリカでもまだ八二・九%というときに、日本は六四・五%にがた落ちだ。そうすると日本は三分の一はまる損だということなんですね。だからこれが損しないようにしようと思えば輸出がとまる、値を上げれば輸出がとまる、しかしこのままでは国内の矛盾がいつまでも持ちこたえができないということになりますので、交易条件一つ考えてみても日本の経済、政治の体制を根本的にここで考え直さなければならない羽目に来ておる、このことを私はきょうは強く指摘して、償還計画を立てられる場合あるいは経済の見通しを考えられる場合にもう少し深刻に物を受けとめる。それも受けとめるだけじゃいかぬ。その深刻な情勢に対応するための積極的な対策がなければいかぬ。三木内閣にはそれがほとんどない、これを私は非常に残念に思いまして、何を考えているのか全然わからないのですが、そういう意味で第一点は情勢の厳しさを私は指摘いたしたわけであります。  次に第二番の問題で、この特例法が通らなかった場合にはどうなるかという問題についてちょっと考えてみたい。  この特例法、衆議院も大体大蔵委員会、精力的審議をいたしまして、夜の十時までもやって一つの見通しがついたように思いますが、参議院に行って十日しかないのですから、一体この法案が通るだろうか、大蔵省も非常に心配されておるし、大臣もそれこそ精力的に動いておられると思いますが、しかしそれにもかかわらず通らない場合がある、一体どうなるのだろうということであります。そうすれば、その場合には一つは臨時国会を開くということだけれども、臨時国会がいつ開けるか、開いた場合に財特法は必ず通るという約束はない。これが大蔵省の非常に心配しておられる点で、また一応ごもっともだと思うのですけれども、しかし事実そういうことも考えなければならぬ。あるいは国会が解散になった場合の特別国会でこれを審議するということになるのか。それも一つの方法でしょうが、とにかく通らなかった場合に三木内閣あるいは大蔵大臣の政治責任の問題も当然出てくると思いますが、これは一応政治論として別途論ずるとしても、純財政論として考えた場合に、通らなかった場合にはどうなるのかということについて——通るということを前提にしてすべて議論をしているわけですけれども、しかし現実問題としてあと十日間で参議院を必ず通るという約束はない、見通しもないということについて、政治論は別にして財政論として一体どうなるのだろうという点について大蔵大臣はいかなる見通しを持っておられるか、決意を持っておられるか、その辺をひとつ伺いたい。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 いろいろな御批判があろうかと思いますけれども、三兆七千五百億円の特例債収入というものは全体の予算の一五%の歳入でございます。これが確保されないということになりますと、予算はすでに四月から歳出が始まっておるわけでございます。支出が始まっておるわけでございます。計画どおりの支出がすでに始まっておるわけでございますので、計画どおりの歳入を期待した上での支出が始まっておるわけでございますので、これが通らぬということになりますと財政運営が行き詰まってしまうわけでございます。当初から通らぬことに決まりますと一五%歳出を削減しなければならぬことでございますが、途中で通らぬことが決まりますと、半分のところで、半分の旅程で決まらぬとなりますと三割予算を削減しないといけないことになるわけでございまして、これはとうてい考えられない事態でございます。  そこで私といたしましては、与党、野党を通じまして、また大蔵委員会ばかりでなく各方面に十分の御理解を求めるべくお話を申し上げまして、いろいろ厳しい御批判はございますけれども、まず今日の財政運営の現状から申しましてこれが必要であるという御理解は得ておるように思うわけでございます。今日わが国の国会がこの法案をともかくお見捨てになるというようなことはあるまいということを一〇〇%信じておるわけでございまして、残された期間は仰せのようにわずかの期間でございますが、全力投球いたしまして、最後の鐘が鳴るまでに何とか物にしていただきたいということでベストを尽くすという以外に分別はございません。
  59. 竹本孫一

    ○竹本委員 確かにこの三兆七千五百億、重大な問題でございまして、大蔵省もよく力説しておられるように大体法人税ととんとんの収入ですから、ここまで財政経済が落ち込んできた先ほど申しました問題、責任についてはまた議論があるとしても、現実にこれはどうにもならぬということですから、何とかカバーしなければならぬ。私どももそういう意味においては問題の重要性、法案の緊急性というものを認めるのだけれども、しかし政界というのは視界ゼロだということでありますから、これはなかなか見当がつかない。おまけに三木内閣では、そういうことを言うとおしかりをいただくかもしらぬが、あのリーダーシップではどうも通りそうにないですね、これは。昔というか戦争中にアメリカが——日本を最初に空爆にやってきたやつ、あれは海軍だったか空軍だったか忘れたが、中将がおった。何という名前か忘れたが、(「ドゥーリットルだ」と呼ぶ者あり)ドゥーリットルだ。そのドゥーリットルを、余り役に立たぬというので、あれはドゥーナッシングだ、こう言って、アメリカで新聞のゴシップが出たことがある。三木内閣もそれに近いのじゃないかとぼくは思っているのですね、ドゥーリットルかドゥーナッシングかしらぬけれども。そういうことから考えてみると、これは通らない可能性もあると見なきゃいかぬ。三木さんがあしたから大いに指導性を発揮するということになるのかもしらぬけれども、いまごろから急に変わるはずもないので、あのだらしのない体制でそのままいくということじゃないか。ここへ山中先生がいらっしゃいますけれども、独禁法だってどこへ行くのかわけがわからぬ。そういう意味からいって、三木内閣の指導力というかリーダーシップには深刻なる疑問を私は持っておるので、通らないという言葉は全く架空の議論ではない、大いにあり得ることだ。あり得ることだから、通るように望んでいます。通ることを期待しますと言っただけじゃどうにもならぬ。結局法人税に近い三兆七千億の大穴があいちゃう。先ほど申しましたように、それは臨時国会を開くといったって、いつ開けるのか、開いたら必ず通るという約束があるのか。どう考えても——五千億出して、今度は建設国債を一兆二千億出すというのですか、それからまた六千億円ずつ三カ月で一兆八千億円出していく。こういうふうにして出していくと建設国債三兆五千億はすぐなくなっちゃう。まあ、数字的に言えば九月でもいいと大臣も言われたとか言われないとかいうのだけれども、私も九月ぐらいで間に合うと思うが、九月から公債発行ができていくことにするためには、八月にはちゃんと法案ができていなきゃいかぬ。八月に通るということになれば、仮にここで通らなかった場合には、臨時国会をすぐ開いてもなかなかむずかしい。現実にそういう厳しい情勢の中に立たされてしまっておる。それをどう打開していくかということは大きな政治の問題ですけれども、どうもその辺についても三木さんの指導力というものにははなはだ疑問で、どうにもならぬ。  そこで、政治論は政治論として一応別にしますが、先ほど申しますように、財政論として考えた場合に、ここでもう一遍掘り下げなければならぬ問題があると思うのです。  まず第一に、一体、赤字特例法、今回の国債特例法は憲法の第何条に基づいて赤字国債を出そうとしておるか。それをちょっと伺いたい。
  60. 高橋元

    高橋(元)政府委員 日本国憲法の八十五条に「國費を支出し、又は國が債務を負擔するには、國會の議決に基くことを必要とする。」この条項に基づきましてお願いを申し上げておるわけでございます。
  61. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで大蔵大臣、ぼくは一つ提案があるのです。     〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕  先ほど来特例法についてもいろいろ理事会でも議論が出ましたが、たてまえとして、毎年これを出す、それもおかしい。特例法というのは全くの臨時特例でなければならぬが、先ほど経済情勢の分析でも申し上げましたように、この赤字公債を一年、二年でやめるわけにいかない、大臣自身が五十五年まではとおっしゃる。私はそれにも疑問を持つのだけれども、五十五年までは公債がふえていくのだ、こういう考えでありますから、それは国会議決をそのたびに尊重するという意味から言えば、それも一つ考え方だということを私は否定いたしませんが、しかし、毎年特例法を出すということそれ自体は法的対応としてははなはだおかしい。ことしやって来年はやらぬという決意と、実際がそうなればそれは特例法、一年やるのも結構です。しかし来年はまたふえるかもしらぬ、再来年もそうだ、五十五年までそうだ、それも怪しいんだ、こういうふうな情勢の中で毎年けいこするのか運動するのか時間をつぶすのか知りませんけれども特例法審議で何十日もわいわい言うてなければいかぬ、そういう法的な対応自体当を得たものかどうか。赤字国債例外例外だから別にこれは考えなければならない、毎年考えるくらいに厳しくいきたいのだというお気持ちもよくわかるし、われわれ野党から言えば当然そうあってほしいと思うけれども、しかし赤字時代が来ているのですよ。先ほど申しましたように、高度成長時代から経済構造変化で、財政も赤字財政時代に変わってきた。赤字時代に変わってきておるのに、法的対応は毎年例外規定をつくって、その例外措置でつないでいくということに一つの矛盾を感じませんか。
  62. 高橋元

    高橋(元)政府委員 先ほど申し上げました憲法八十五条に基づきまして国会の御議決をいただくという形式はいろいろあるわけでございます。いま竹本委員からお話になりましたように、ちょっと話が前後いたしまして申しわけございませんが、財政法の第四条で、国が公債発行する場合は、出資金及び貸付金、公共事業費、その財源の範囲に定められております。その特例立法をお願いいたすということになるわけでございますが、立法の形式としてはいろいろ考えられるわけでございます。竹本委員のおっしゃいますように、単年度でなくて複数年度にわたる立法ということも法的には可能でございます。しかし、私どもは、財政の処理に当たりましてこういう異例立法をお願いいたすというやむを得ざる事態になっておるわけでございますが、それに対応した法形式としては、たびたび大臣から申し上げておりますように、単年度立法という形で本年度はお願いをいたしておるということでございます。
  63. 竹本孫一

    ○竹本委員 事務当局の法的な説明はそれでもいいかもしれぬが、八十五条も四条も僕はよく知っているのだ。問題は、政治判断をいま問題にしている。異例措置なんです。ところが異例ではなくなった。赤字財政時代になったじゃないか。むしろ、極端に言いますと、これから何年間は赤字の方がノーマルな状態になるのだ。それをアブノーマルとして対応する、そこに矛盾がありませんかと聞いているのです。その辺はひとつ大臣の方から——私が言っているのは、憲法の八十五条に基づいて国会議決があれば何でもやれますよ。それはわかるのだ。そして第四条ではないのだから、異例特例法をつくらなければならぬ、それもわかりますよ。しかし、第四条の特例として、異例措置が十年も異例措置で続くのはおかしいではないか。法的措置としては、赤字財政時代に入った、経済構造的変化の段階に入った、それに対応するもっと正常な対応の仕方が考えられてしかるべきではないか。全然考えないで、毎年一つ覚えでやっていく、そういうこと自体がおかしいではないかという点を、政治判断お答えを承りたいのです。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 異例中の異例措置でございますので、ここ当分の間特例債発行をお願いするというような形で国会の御承認を得るということは、どう考えてみても政府の姿勢としては許しがたいと存じまして、これが五年かかり七年かかる、仮にそうでありましても、当分の間お願いをするというようなことではどうも気が済まないわけでございます。いわんや私ども、五十年代の前半にはどうしても脱却を図りたいということで、五十一年度をピークといたしまして五十二年度以降漸減をしてまいりまして、前半には特例債からの脱却財政に持っていくというかたい決意でやっておることも、国会に毎年、毎年御審議を通じて決意を申し上げて、御了解を得ながらまいっていくことが行政府の正しい姿勢ではないかと存じておるわけでございます。御批判はあろうと思いますが、それ以外に政府の姿勢を示す方法は現在の体制の中ではどうも考えられないと私は思うのであります。
  65. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、政府の決意と御努力にもかかわらず赤字はまだ続く。私の言ういわゆる赤字財政時代になるのだ。そうするならば、異例措置異例措置と言うけれども大臣御承知のように仏の顔も三度という言葉がありますよ。三度だ。われわれは何遍仏の顔の赤字法を拝むかということですよ。大体仏の顔と同じ程度に三度ぐらいならがまんしますよ。それ以上は——一方では赤字を出さないように財政努力をしていただきたいのだけれども、ぼくがいま言っているのは法的な措置、法的対応を言っている。  というのは、もう少し積極的に申しますよ。時間がありませんから簡単になってどうも残念ですけれども、私は稻葉法相の言葉で言えば欠陥憲法だ。欠陥憲法の問題がある。赤字財政について、八十五条に基づいて特例法をつくる、これはわかりますよ。しかしながら、いま言ったように異例措置異例措置を仏の顔の三度以上に毎年出さなければならぬというときに、それをただ黙って無反省に繰り返していくということにも、私は何か法的対応が欠けておるということを感ずる。  それから第二に申し上げたいのは、たとえば予算が通らなかったときどうするか。これも私が一遍予算委員会で問題にしたことがありますが、予算が通らなかったときに、いまの憲法では措置ないでしょう。旧憲法でいえば前年度予算でやるとかなんとかいって、旧憲法七十一条はそういうことを規定しておる。それからもう一つは七十条に緊急処分というのがありまして、公共の安全を保持するために緊急の処分ができる。もちろん後で国会の了解も得なければならぬでしょうが緊急処分ができる。いま、政府は八十五条に基づいて国会の決議があればやれます。こう言うのだ。それはそのとおりですよ。  ところが、たとえば極端な場合を言いますと、国会が決議しない場合、あるいは国会の決議が不可能な場合——これは天変地異がありますからね。おまけに今度は原子力発電所が爆発するということもあり得るのだから。そういう意味で、自然的な災害で国会が開けない場合、あるいは国会を開いても決議しない——これは政治的な条件の場合、あるいは決議をしようと思ったら国会がぶっつぶれちゃって決議ができなくなったという場合、そういう政治的な問題は一応別にして、物理的にも国会の八十五条を生かした対応ができないという場合があり得るでしょう。あり得ないと言えますか。あり得る場合に対して何の対応もないじゃないですか、いまの憲法は。  だから、これは憲法制定のときにだって、一部の事務当局はアメリカに対して、マッカーサーに対して、これでは大変なことが起こりますということをずいぶん言ったらしいですね。しかし、アメリカは財政民主主義の立場で、国会の決議を得てないものを政府、官僚が勝手に出す、そんなことは許さないという純理論一本やりで来た。それも一応理屈はあります。  そして、法制局は泣き寝入りで済んだのですけれども、しかし、ぼくは日本の国家のこれからの政治、財政考える場合に、泣き寝入りだとかそこは何ともならないのですと言っただけではどうにもならぬと思うのです。やはり建設的に国家本位に考えるならば、八十五条があるのだから八十五条でやれる、しかし、八十五条でやる場合には、政府が金を出さねばならぬという緊急処分をやるような場合には国会の決議を要する。ところが国会の決議は、政治的に不可能な場合と天変地異で不可能な場合と二つあるのですよ。その二つの場合に対しては何の対応もできません、あとは法務大臣が欠陥憲法です。あるいは野党が学力不十分ですと言ってそれで終わりとなったのでは対応できないでしょう。政府の方も学力不十分で、この憲法の穴を埋めるという問題点に一体気がついておるのか気がついていないのかという学力の問題が一つ。それから、気がついたならば、これに対応しなければならぬ。その対応に対する政治努力、政治力、一体何なんだ。  私はどう考えてみても、あのときは進駐軍のマッカーサー司令部が、財政民主主義のたてまえから国会が承認しないものはびた一文使ってはならぬ、これは理論としてはそのとおりで、われわれも賛成ですよ。しかし、それができない場合がある。政治的条件でできない場合、天変地異でできない場合、国会が開けない場合、開いても決議に至らざる場合、そういう場合に八十五条がありますということが高橋次長の答弁だけれども、八十五条が生かされない場合があるのですよ。その場合についてどういう対応をするのかということについて、私は、赤字財政の問題も含めて、この八十五条に基づいて新しい財政——しかも昔の緊急処分を生かせなんという古い考えは持ちません、新しい民主的な時代に対応する民主的な法的対応が考えられてしかるべきである、その努力をしなければならぬじゃないかと言うのですよ。これは与野党通じてですよ。そんな大穴があいていることを知らなければ学力不十分ですよ。知って努力をしなければ政治力不十分だ。それではどうにもなりませんから、ここで私は問題を指摘して、この法案が通らない場合あるいはいま言ったように全然ほかの条件で八十五条でやれない場合にも、なおかつ行政の最小限度の需要には対応できる、そういう法的整備が必要である。ぼくはきわめてもっともらしいことを言っているんだが、大臣、どうですか。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 憲法の問題を下手に議論しますと問題になりますから、これは勘弁していただきたいと思いますが、私ども現行憲法を前提といたしまして最善を尽くさなければならぬと思うのでございます。したがって、国会議決を経て財政的な措置を講じるということ、その方針特例公債法も御審議をいただいておるわけでございます。これは毎年毎年出すという愚直な方法をとっておるわけでございまして、これはある意味におきまして行政府といたしまして毎年非常につらいことでございますけれども、しかし、こういう過程を経ることによりましてこの特例債発行下の緊張した財政運営の試練に耐えておるわけでございまして、明年度さらに若干の特例債をお願いするにいたしましても、ことしより相当進んだ姿、減額した姿において御提案できるということで、われわれの努力の跡を国会の御提案に明らかに記録として出したい、そして国会もそれを評価していただくというような意味におきまして毎年毎年こういう御審議をいただくことに私は意味があるのではないかと思うのでございまして、一括して便法を講じておくことは、ある意味において行政府に非常に理解のある御提言だと思いますけれども、また、そういうことを検討することにやぶさかではございませんけれども、いまの場合、私どもといたしまして毎年毎年こういう特例公債論議というものは真剣な国会の論議を経て、そして緊張した財政運営に資するということが行政府あり方として正しいのではないかと考えております。  通らぬ場合はどうするかということでございますが、いまの憲法は国会の良識を前提にして編まれてあるように思うわけでございまして、私は、このわれわれの法案は成立しないなどということは考えていないわけでございまして、国会の御理解は必ず得られるに違いないと、一〇〇%確信を持って各方面に鋭意お願いを続けてまいりたいと存じております。
  67. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣の政治的な決意、これは高く評価します。そして緊張した財政運営のためにということもよくわかりますが、私が言っているのとちょっと問題がすれ違っているように思うのです。その問題もあります。これはいま言ったように仏の顔も三度なんだから、十回も、それはもちろん来年は御努力でことしの公債の半分になるかもしれません。しかし、もっとふえるかもしれぬが、いずれにしても額の多少は政治論として別だけれども、私の言うのは、毎年法的に特例法を考えなければならぬということがおかしいということを言っているのです。毎年毎年ばかの一つ覚えみたいなことをやるのは。そのことを含めてということで、私がいま言った本論は、私の本来の考え方は、八十五条が生かされない場合が物理的に天変地異であり得るんだ、それに対する対応は、全然いまの措置考えられていないから、憲法を変えろとぼくは言っているのじゃないのですよ、いまの憲法で、ありがたいことに八十五条があるんだ。その八十五条が死んでいる。死んでいると言うと悪いが、空文になっている。あれを生かしながら、八十五条に基づいて赤字特例法を出すと言うならば、今度は八十五条に基づいて赤字特例の、もっと気のきいた姿の特例法も考えるし、同時に天変地異でどうにもならない場合には何にもできませんということを答えるだけではなくて、天変地異はあり得るのですから、それに対する対応を、八十五条を生かしながら考える努力をなさったらどうですかという、憲法八十五条をもう少し生かして使いなさい、生かして対応しなさい、それでなければ大きな穴があきますよという、ぼくは法律を建設的な立場で議論しているつもりですが、ぼくの言う意味が通じませんか。
  68. 高橋元

    高橋(元)政府委員 竹本先生の御指摘の中で、国債発行の授権の法形式でございますが、戦前の大日本帝国憲法時代には、国債を起こす場合には帝国議会の協賛を経べしということで法律をもってお願いをいたしておりました。法律のやり方には大体二通りあったと思うのでございますが、一つは目的または事業を決めまして、その事業に充てる資金、あるいは総額の限度をかぶせることもあり、またはない場合もあるわけでございますけれども、それを毎年何年かにわたって起債してよろしいという法律をお願いする場合、それから昭和七年以降昭和二十一年まで続いたわけでございますが、歳入補てん公債のために起債をお願いする法律というのを出しておりました。これは昭和七年から二十一年まで各年度それぞれ単行の法律をもってお願いをしておったわけでございます。そういうこと等も考えまして、私ども今回の特例公債法案につきまして単年度立法ということを考えたわけでございます。
  69. 竹本孫一

    ○竹本委員 事務当局の御答弁は御答弁としてわかりますが、時間がなくなりましたから、最後にぼくは要望を申し上げて終わりにしますが、結局私が言っていることは、先ほど一番最初に、まだ本格的に議論をしないからあるいは不徹底なのかもしれませんが、経済構造的な変化というものが大変厳しいのだ。これに対応する政治、財政、金融、税制、すべて、私に言わせますと、従来の法律にのっとってそれをスローダウンするくらいのつもりでやっているのです。それではだめなんだということをぼくは言っているのです。その経済変化あるいは構造的な変化あるいは激変に対応する姿勢がないということがまず前提で、そういうことを今度第二に、財政において考えるならば、ことしだけの例外的な赤字財政ではないのだ。そういう赤字財政時代に陥れたか陥れないかということについては議論があります。それはオイルショックのおかげか、三木内閣のおかげか、田中内閣のおかげか、そういう議論もいろいろあります。それはいま一応別にして、そういう赤字にそれこそ好むと好まざるとにかかわらず入ったのだから、入ったような対応を考えなさい、それが全然どこにもないではないかということを言っている。そして三番目に、あわせて日本の昔の責任支出や緊急処分というものは全然ないのだから、この問題はなくて済めば一番いいですよ、しかし、済まない場合になったら、もう全然対応ができないのだから、八十五条を生かしながら、国会が正常に開けているときに、国会がそういうときにはこういうふうにやりますということの対応を考えるべきではないかということを提案しているのです。ひとつ私の意のあるところを十分検討していただいて、また次の機会にこの問題は本格的に論議をしますので、十分検討していただきたいと思います。  要望を申し上げて質問を終わります。
  70. 田中六助

    田中委員長 午後一時四十五分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  71. 田中六助

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。村山喜一君。
  72. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 大臣にお尋ねをいたします。  七兆二千七百五十億円という大変な発行を予定いたしておるわけですが、この中で四月には五千六十億の建設国債発行したということでございます。例年四月、五月というのは資金の需要が緩和をする、この時期においては当初はもっと多くの国債発行していきたいという計画があったやに伝えられておるわけでございます。その発行計画を月平均に直していけば六千億円ということでございますけれども、どういうような年間の消化、発行計画をつくっておるのか、この点について説明をいただきたいと思います。  そこで、秋口になるといわゆるクラウディングアウトの懸念があるやの話もありますが、私はこの前参考人が見えましたときにも申し上げてみたのでございますが、五十一年度の設備計画の見込みを調べてまいりますと、どうも秋口にそういうようなクラウディングアウトのような状態が出てくる懸念はきわめて少ないのではないだろうかという気がするわけでございます。ましてや預金準備率の操作であるとかあるいはオペレーション政策で資金の需給関係を見ながら国債を消化できるような金融環境をつくっていくならば、これは別に発行の上において支障を起こさないような政策がとられるのではないだろうか、そういうふうに考えるわけでございますが、その発行の予定計画がおありであるならば示していただきたい。
  73. 松川道哉

    ○松川政府委員 五十一年度国債発行総額は七兆二千七百五十億でございます。そのうち運用部で引き受けますもの一兆円を差し引きますと、六兆二千億余りになるわけでございます。これを十二で単純平均いたしますと五千億余りになるわけでございます。  しかし先ほど御指摘のように、市中の金融の繁閑ということを考えますと、市中が比較的緩んでおる月、すなわち経験的に見ますれば四月、五月、それに九月、十月、十一月、この辺に発行量をふやし、市場が比較的タイトである他の月においては平均より少な目に発行する、こういう考え方を一般的に私ども持っております。  そこで、それでは年間の発行計画、月別にどうなるかということでございます。この点につきましては、毎月、たてまえといたしましてはシンジケート団と相談しながら決めてまいります。そこで年の初めに当たりまして私ども非公式にどの程度四月、五月に平均より上げられるであろうかということをサウンドいたしながら、またわれわれの考えもできるだけ前広に発行いたしたいということで検討いたしまして、一応七、八千億程度出せるかなという感触を持っておりました。これは計画というほど固まったものではございません。しかしながら不幸にして、御案内のとおり四月は暫定予算を組まざるを得なくなった。そうなりますと、この暫定予算でお許しいただいておる権限の中で四月分は発行せざるを得ないということでございます。したがいまして、四月はただいま御指摘のように約五千億というものになりましたが、これは私どもが年間を通して見てそれが望ましいという判断よりは低い数字でございます。その意味で五月には一兆二千億円ということをいま計画いたしております。その後の月につきましては、はっきりした計画、月何千億というのをまだ持ち合わせておりません。冒頭に申し上げましたように、比較的資金の緩んだ月によけい発行いたしたいという原則的な考え方だけ持っております。
  74. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 五月に一兆二千億予定をされておる。それだけの発行が可能であるという、その資金の需給状況の根拠というものがありますか。
  75. 松川道哉

    ○松川政府委員 五月の資金需給を見ますと、大幅な財政の払い超をもとにいたしまして約一兆七千億程度の資金のゆとりがある。補足いたしますと、国債が仮に発行されなければ一兆七千億程度のゆとりがあるということでございますので、一兆二千億は消化可能であると思います。そしてまた、先日本予算ができました後でシンジケート団と正式に話し合いをいたしまして、五月につきましては一兆二千億ということでシンジケート団の方の御了承も得ております。
  76. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで問題になりますのは、公共債の中にあります地方債、この発行が最近地方銀行を中心にして、資金繰りの上から見ましても相当な問題があるわけでございます。特にことしの財政計画の中では、この前地方銀行協会が試算しておるのを見てみますと、縁故債を中心にしてことしは一兆五千八百億円を引き受けなければならないのではないだろうか、五十年度が七千八百億の引き受け枠でございますから、それの倍近いものを地銀としては引き受けなければならない。そういうふうになってまいりますと、地方銀行の引き受け国債の枠が大体一七・八%ぐらいの引き受け枠になっているようでございますが、片一方においては国債引き受けなければならない、それに地方債も引き受けなければならない、こういうふうになってまいりますと、国債としては一兆二千億というものを五月に起債をする場合には、そういう資金的なゆとりが非常にあるようでございますが、果たして地方債まで含めてどういうような状況になるかということについては検討をされた数字でありますか。
  77. 田辺博通

    ○田辺政府委員 先ほど理財局長から御答弁申し上げましたのは、先生御案内のとおり、いわゆる日銀券を中心としました資金需給のバランスを述べたものでございますが、地方債及びその地方債の手取り金によって活動いたします地方公共団体の支出、これは地方債を発行して支出をするということは、いわゆる全体の資金需給とは関係のないことになるわけでございます。日銀を中心といたしまして国庫の揚げ超あるいは散超というものは、現金の需給に関係を与えますけれども、地方のたとえば債券を銀行が持った、そのときに当然そのかわり金は、地方銀行、金庫銀行がいわば一種の日銀みたいな役目をなすわけでございますから、そこに預金が設定される、そしてそれが支出される。これは地域的にはいろいろ問題がございますけれども、全国的に見ますると、そこに設定された地方債というものはかわり金である預金がその金融機関には設定されて、それがその地方を中心に流出していく、流出していった先ではそれがまた預金になる、こういうことでございますので、理財局長が述べました資金需給とは関係がない。したがいまして、そういったいままでの御説明というのは、地方債のことを計算に入れてといいますか、入れなくても同じことになるわけでございます。
  78. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 まあ資金的な直接の流れはそうでしょうが、しかし、起債という市場から考えれば、片一方において国債の増発が計画的に行われている。その分については地方銀行といえども引き受けなければならない。そして財政資金の流れが国債を通じて地方に流れていく。その中から地方債の引き受け資金というものも生まれてくることも事実でありましょうが、片一方においては、民間の設備投資等に対する需要が出てくる、こういうようなものから考えますと、一定のタイムラグを置きながらも、ある程度の地方債の起債環境の状況というものを見ながら国債発行の数量というものを抑えていくという考え方はとらなくても、それは自然な姿の中でやっていけるというふうに判断をするべきなんでしょうかね。私は、この段階の中で、五月にはそういうような国債の大幅発行ということも予定をされるでしょうが、それと同時に、その地方債の発行条件というものも考えていかなければ、全体の公共債の消化というものはうまくいかないのではないだろうかというふうに考えるのですが、その点は関係ありませんか。
  79. 松川道哉

    ○松川政府委員 たとえば具体的に本年の五月をとっていろいろ検討いたしてみるといたしますと、これが実際問題としては、地方の五十年度予算の執行の最後の締めくくりになる、あるいは借入金で泳いできましたものを最終的に長期の借りかえをするということが多いように聞いております。そしてまた、他方国の行政との関係で申し上げますと、これは起債の許可ということがあるわけでございますが、これは五十年度であれば大体五十年度末、すなわち三月末までに起債の許可を出しておる。それが五月に実際金目として銀行からお借りすることになる、または起債市場から借りる、そういうことになります。そこで、私どもの方としては、五十一年度地方債がこれだけございますということを累次御説明いたしておりますが、これは、現実の公社債市場に対するインパクトは初めから全くないとは申しませんが、初めは比較的薄うございまして、どちらかといえば、かえって翌年度にしっぽが残ったところがデリケートな問題になり得る、このように理解いたしております。  そこで御質問の点でございますが、そのようなことを背景に置きまして私どもも見ておるわけでございますが、情報が数多い地方団体から個別に上げて積み上げるということはなかなかむずかしい。そういたしますと、これを全国的ベースで幾らである、したがって、それをもとにして国債はどうであるという考え方一つあろうかと思いますが、実際問題としては時間的に間に合わなかったり、その他無理がございます。私どもがやっておりますことは、絶えず出先である財務局、財務部、そういったところを通じまして、府県単位程度になりましょうが、これの地元における地方銀行の資金需給関係にどのようなインパクトを与えておるかとか、あるいは大きい地方団体でございますれば、かつては金庫銀行一行で賄っておったものを県単位のシンジケート団をつくるとか、そういうものを側面からお手伝いをする、そういったことをやりましてお手伝いする一方、シンジケート団には、御案内のとおり地方銀行の代表である銀行が世話人の中に入っておられますから、そこがそれぞれの地方銀行の声をまた反映されまして、そして国債についてもそれが地方銀行として引き受けかねるとか、引き受けられるとか、そういう御意見をお述べになる、そういうシステムになっております。私どもその手続を踏んでやっておりますので、現時点で、先ほど仮にと申し上げましたが、仮に五月の例をとりますれば、これが地方銀行に非常な重荷になっておるとか相当きしみを生ずるもとになっておる、そういうような情報は聞いておりませんし、そのように理解はいたしておりません。
  80. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 地方の公共団体が自治省から起債枠をもらいまして、それを完全な形で消化をするのには、やはり年度末の決算として五月の出納閉鎖期のときに借りかえるような形で、その前には、資金が要る場合には金利の安い、プライムレートに近いような金で借りておりまして、そしてわりあいに金利の高い起債と、操作をするのに、五月末にそういうような操作をやっているようですね。そこで五月にはそういうような地方公共団体の起債に対する資金的なものが集中的にあらわれてくる、こういうような現象が現実の地方財政運営の中では生まれているんじゃないだろうか、そのことを考えましたので、五月に一兆二千億も国債発行というようなことをやられると、地方公共団体を受け持っておる地方銀行の場合には、資金的にその五月の段階では特にショートするのじゃなかろうか、そういうようなことを私考えたものですから、その点をあえて質問したわけですが、いまのところ別に支障ございませんね。
  81. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいま御指摘のような事例は相当広い範囲で行われております。ある人はこれを起債前貸し、将来債券に振りかえるのだけれども、それを前に貸しておくという意味で起債前貸しという言葉を使って呼んでおりますけれども、そういう起債前貸しのものを改めて債券にするという月が五月にわりあい多いというのは事実でございます。と申しますことは、資金的に見ますと、そこまでの時点は貸付金ですでにもう地方団体へ行っているわけでございます。それが形を変えて債券になる。したがって、地方債という面だけからとってみますと、五月ないし四月に急増するわけでございますが、これが現実の地方銀行の資金繰りに対するインパクトとしては、見かけよりははるかに小さいものであるということを御理解いただきたいと思います。
  82. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、続いてお尋ねをいたしますが、五十年の十二月末の政府なり日銀なり市中金融機関の証券発行国債等の保有状態はわかっておりますが、五十年度末の数字はまだ発表されたものがないと思います。これはどういう数値に変化しておりますか。その数字を説明願います。
  83. 松川道哉

    ○松川政府委員 五十一年三月末、すなわち五十年度末におきましては、内国債の総額が十五兆七千七百六十五億円でございます。このうち政府が持っておりますものが三兆三百十億円、政府関係機関等が持っておりますものが六十億円、日本銀行が持っておりますものが五兆五千九百十九億円、市中の金融機関が持っておりますものが五兆四千三百六十八億円、その他千三百十六億円、以上締めて十四兆一千九百七十四億円、これが登録国債でございまして、登録国債なるがゆえにただいま申し上げましたような保有者別の状況はわかっております。その差額の一兆五千七百九十一億円、これが証券会社を通じてあるいは個人その他に売られておるものでございます。
  84. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 本券として証券会社等が扱いまして、個人等が保有しているものは一兆五千七百四十九億ですか。一兆一千じゃないですか。
  85. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいま申し上げましたのは内国債の総額でございまして、あるいはミスリーディングだったかもしれませんが、ただいま先生の御指摘の数字と突合いたしますには、この中であるいは出資国債であるとか交付国債であるとか、戦後出ました新規国債以外の内国債であるとか、こういうものを捨てて考えなければいけないと思います。ただいまの数字の見合いでもう一度今度は新規国債ということで御説明申し上げますと、合計額十四兆九千七百三十一億円が出ております。そのうち政府が二兆九千四百七十三億円、政府機関等が六十億円、日本銀行が五兆四千百五十三億円、市中金融機関が五兆四千三百六十八億円、その他と証券と両方合わせまして一兆一千六百七十六億円、このように相なっております。
  86. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこでお尋ねいたしますが、日銀が五十年の十二月末には六兆一千九百九十二億円持っていた。それが五十年度末には五兆五千九百十七億円。減っておりますね。そうすると、オペレーション政策で使ったものがこの中で幾らあるのか。これは売りオペになるわけですが、一部新聞等の伝えるところでは、日銀保有の国債をサウジアラビアやあるいはナイジェリアなどの産油国の政府、中央銀行に対して売却をした、こういうような記事が出ておりますが、その事実があるのか。事実があるとするならば、どういうような条件で売却をしたのか、その売却の目的はどういうようなものになるのか、説明願いたいと思います。
  87. 松川道哉

    ○松川政府委員 前段の部分が私のところの所掌でございますので御説明させていただきますと、日本銀行が保有しておりました国債の額が、十二月末から三月末までの間に減っております。これは主といたしまして、資金運用部に対して運用部資金の運用のための玉として買い戻し約款つきで売ったものでございます。オペレーションとは関係ございません。
  88. 田辺博通

    ○田辺政府委員 先生御指摘のように、日本銀行に対して外国の中央銀行からいわばその国の外貨準備といいますか、その運用の一形態としてわが国の長期国債を買いたい、こういう要望がございまして、それに応じたという事実はございます。ただ、いつ、どこそこの国に幾らの条件でというのは、関係国中央銀行間の取引の問題でございますので、対外的には発表いたさないということにしておりますので、御勘弁願いたいと思います。
  89. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 国別に発表するのが都合が悪ければ、国別のそれは聞きませんが、売却をしたということは、円の国際化をねらった一つの意図的なものがこちらの方にあったのではないだろうか。というのは、貿易の決済に当たりましてドル資金を使うあるいはそのウエートが高過ぎる、この際円というものを一つの取引、貿易の決済資金として使う、そういうものを果たすためには、この際外国にそういうような国債を売却することが国際化への道を切り開くことになる、こういう政策的な意図があってなされたものであるとするならば、これは大平大蔵大臣の方から説明を願わなければならない点だと思うのですが、いかがでしょう。
  90. 田辺博通

    ○田辺政府委員 ただいま御説明いたしました点は、特にわが国の方から円の国際化というものをねらって誘いをかけたというぐあいではないわけでございまして、全体として各国ともに外貨準備のバラエティーといいますかバランスをとるような、これは推測でございますが、傾向が最近見られておりまして、その一環として円が認められるといいますか、円に対する要望もかなり出てきた、こういうぐあいに受けとめているわけでございます。
  91. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 全部で幾ら売ったということは言えないのですか。たとえばサウジアラビアとかナイジェリアという産油国がありますね。その産油国が多様なそういう金融資産を持ちたいということにこたえただけのものでありますか。そういうような国債を外国政府に売る場合の条件というのは、これは別に歯どめも何もないわけですか。この取引の条件等は明らかにできないということは、なぜ明らかにできないのですか。
  92. 田辺博通

    ○田辺政府委員 取引の条件は、大体そのときにおきますところの流通値段、これがもとになっているようでございますが、これは各国ごとにいろいろネゴシエーションをされてやっておるものでございますので、そういう意味ではどこそこに幾ら、どこそこに幾らというようなことは、これは対外的には言えない、こういうたてまえにしております。  それから、全体ひっくるめて一体どれくらいになっているかということでございますれば、いままでの累積といいますか、売って外国がそういう取引によって持っておる国債、大体いままで約三億ドルでございます。
  93. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そういたしますと、これから外国の政府なりあるいは中央銀行が、外貨準備に十分そういうような資金的余裕のあるところが日本の国債を買いたいということであるならば、そういうようなものを外国に売るという積極的な方針をお持ちになっていらっしゃるのか。三億ドルですから、累積にして九百億円程度の、発行数量から見れば大した額じゃありませんが、いわゆる国際的な一つの取引というのですか、資産のそういう交換的な措置をとることによって、国債発行がもたらすマネーサプライの増加等の関係の中から政策的な一つの手段としてそういうようなものをとる考え方があるのかないのか。ただ請われるから、その外貨資産を多様な形で持ちたいという相手の——日本の国債金利がわりあいに投資価値があるという判断で選好をしたものであるから、われわれとしてはそれは受動的に考えていけばいいんで、これから積極的に売るとかなんとかというようなことは考えていないという方向のものなのか。この点はどの程度の商いがなされたのか、数字を累積だけでしかわかりませんので意見の申しようがないわけですが、どの程度の取引がなされたのか、そういうような意図的なものがあるのかないのか。これはやはり大蔵大臣が全般的な立場で御答弁をいただかなければならない問題だと思いますから、この点を明確にしておいていただきたい。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 結論から申し上げますと、別に意図的なものはございません。と申しますのは、村山さんも御承知のようにわが国の市場で円建ての国債発行したいというような向きもだんだん出てまいりまして、東京市場もここまで参りますと若干国際化を進めなければならぬという事情がございます。また一方、こちらの国債を買いたいあるいは電電債等を買いたいというような向きも出てまいることも自然の傾向だと思うのでありまして、特に宣伝をいたしましてそういうことをいたそうとも思いませんけれども、そういう健全な取引が出てまいりました場合にそれを規制しようというような気持ちは持っていないわけでございまして、過度にわたらない限り、今後もノーマルな姿で行われる範囲におきましては別段大蔵省として規制しようとは考えておりません。
  95. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 規制をしようというような考え方はない、それは自由な取引に任しておけばいい、こういう考え方でございますか、それとも貿易の決済資金をドル建てだけでなくて円建てのそういうような資金として使っていくという意味からもこのことは好ましい方向であるから、円の国際化をねらうという立場からは今後はやはりそういうものに対してはわれわれとしては歓迎をするというような方向で問題を処理をしようとお考えになっているのか、その点を明らかにしてください。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 貿易通貨としての円でございますが、とてもまだそういうことは言えないわけで、ヨーロッパの諸通貨みたいに半分あるいは半分近くみずからの通貨で決済ができるというような状態に至るにはとてもまだ道はるけきものがございます。したがって、もっと円建ての決済が進んでも差し支えない、あるいはそれはあなたの言葉をもっていたしますならば歓迎するということなのかといえば、私はむしろそういうことを歓迎したい気持ちなんでございますけれども、これは私が何ぼ歓迎いたしましても、そういう円を選好するだけの状況が出てこないとまいりませんので、急にそういう状況を招致するというわけにはまいりませんで、東京のマネーマーケットが漸次国際化してまいる、円の国際化というようなものが徐々に進んでまいる道程の中で漸次馴致できる傾向じゃないかと思いますので、急いでやるつもりはございませんけれども、傾向はやはり歓迎すべきことだと私は思っております。
  97. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 では、次の点に質問を移します。  次は、今度の特例公債発行について法律案が出されているわけですが、この中で第四条によりますと、「同条の公債償還の計画を国会提出しなければならない。」国会提出をされました償還計画というものはきわめて簡単なものでございまして、三兆七千五百億のいわゆる年度区分と発行額償還額が掲げられているだけのものでございます。いわゆるこの償還計画というものを見てみますと十年ということであるようでございますが、この法律によりますと、その十年ということは直接に規定はされていないわけですね。したがいまして、そういう長期国債でなくて、今度はまた別な法律等で中期の国債発行する場合は別に法律に違反をするものではないと私は考えるわけですが、その償還計画というものが十年間の計画でなければならないという解釈は、その計画表の内容のいかんによって法律の適用は、内容的に中期債を発行しても別に法律違反になるものではない。ただ、十年間の長期国債一本やりでやっていくのだという考え方を立てられたのは、これは一体どういうような理由に基づくものなのか。この点について途中で中期的な——異例中の異例特例であるから、もうこれを速やかに脱却をしなければならないとするならば、今度の財政計画を見てまいりますと、中期の財政計画の中で二つ方式がつくられて、ケースI、第一の形の中では、五十五年度には特例公債をやめにするのだというような内容財政の中期見通しが出されているわけでございますが、とするならば、全体の普通国債のいわゆる償還年次表というものが予算委員会に出されておりますが、そういうようなものとのつり合いの関係から、なぜ十年ものにしなければならなかったのか。たとえば昭和六十年になりますと、これは二千億減少をされておりますが、二兆円余りの、償還年次表によりますと、特例債の方も含めまして五十九年度には二兆八千六百九十八億のものが、六十年には一挙にして六兆六十五億というふうにはね返ってくるわけでございますが、そういう急激な変化をつくらないような形の中で計画を立てる、そういうようなものは初めから放棄されていたものであるのかどうか。この点については全体の財政収入の中での公債収入国債費割合とか、そういうような関係でございましょうから、担当の局長の方から説明願いたいと思います。
  98. 松川道哉

    ○松川政府委員 特例債発行いたしますに当たりましてこの条件をどうするか、これは国債に関する法律大蔵大臣が定めるということになっておりますので、法形式的には大蔵大臣が定めることとなっております。  そこでどうするかということでございますが、わが国の公社債市場は、御案内のとおり四十七年の一月でございましたか、それまで国債も社債も大体七年ものが最長の期限であるということでやってまいりましたものを十年ものに延ばしたわけでございます。これは資金を要するもの、すなわち国であるとか企業であるとか、そういった資金の需要者ができるだけ安定的な資金を公社債市場を通じて調達するという観点から、七年を十年にいたし、そしてこれがその後ようやく定着をしてきておるということでございますので、なるべくならば、まずこの定着しておる十年ものでやりたいという考え一つございました。  それからまた別な観点でございますが、五年ものとか、その他十年より短い期間で出すということになりますと、この償還を急いでやらなければいけない。そのための発行者にかかる負担が大きいものになる。これは別の方から見れば、財政の節度のためにその方がいいではないかという御議論があることは承知いたしておりましたが、現在の日本の経済、そしてそれを足場にして立っておる財政の姿から見れば、この五年とかその他の短い期間の償還期限というのはなかなか乗りにくい、できれば従来どおりのものがいいのではないかという考えがございました。  そこでもう一つ気がかりでございましたのは、午前中も議論がございましたが、個人消化の比率が非常に少ない。昨年の十一月には三%強しか個人消化ができないというようなことでございましたので、個人消化がこれだけ減った姿でいいのだろうかという考え一つございまして、個人消化を伸ばすためには個人が買いやすいものにしたらどうかという第三の観点がございました。そこで私どもも、御案内のとおり中期債という考え方を年末から年始にかけて一度発表したことがございました。しかし、それは検討する時間が少なくて、結局俗な言葉で言えば物にならなかったわけでございます。  このような経過を経まして五年ものを一部入れようではないかということがございましたが、大宗につきましてはやはり十年ものを基準にしていくべきであろうというのが当初からの私ども考え方でございました。
  99. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 普通国債発行年次別の償還年次表の中で、五十三年度までに七千四百六十七億償還をしなければならないのに、五十四年度の場合には千百十二万円、五十五年度はゼロ、五十六年度は四千九百八十億円、五十七年になりますとそれが一兆九千五百八十六億というふうにそのころから累増をしてくるわけでございますが、これはやはり七年ものと十年ものとの違いが、五十四年、五十五年、五十六年というその間に、償還に当たりましてはきわめて金額の少ない段階を迎えるわけですね。ただし国債費のなには累積をしてまいりますので、漸次これがはね上がってくることになっておりまするが、そういうようないわゆる償還との関係を考えながら、中期債の問題について、特例債の一部についてそういうようななだらかな返還という状態や財政事情との勘案等もありますので、そういうような構想を織りまぜながら国債の種類を定めるという考え方はなかったのだろうかということを私は聞きたかったわけですが、そういうような算式はやってみられなかったわけですか。
  100. 松川道哉

    ○松川政府委員 御指摘のように、国債償還期限を延ばしましたために、昭和五十四年度と五十五年度には、いわゆる財政法四条による国債償還期限の来るものがない。したがって国債償還費の負担が非常に軽いという事実がございます。私どももこの特例債発行するに当たりましてこの条件をどうするか、そしてこれが償還年次にどのように負担となってあらわれてくるかということを検討いたします際に、この一種の穴に当たる期間にうまく償還期限が来るような国債が出せないかということも検討のプロセスにおいては検討いたしました。しかしながら先ほど申し上げましたような大局的な判断から、結局十年ものでいこうということに結論を出した次第でございます。
  101. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、私もけさ松浦君に渡されました仮定計算表というものを自分でもゆうべ計算をしてみたわけですが、大体国債費昭和六十年度になりますと九兆三千億くらいになる。その中で、償還年次表によりますると六兆というものを償還しなければならない。そのときの公債の残高はこの表によりますと幾らになりますか。
  102. 高橋元

    高橋(元)政府委員 けさほど松浦委員に御説明申し上げたときの推計によりますと、六十年度公債残高は八十兆二千億、これは六兆五千二百億円という形で四条債が五十六年以降据え置きであると見た場合でございます。それから五十五年度と同じ公債依存度で四条公債が推移いたします場合には、公債残高は九十七兆円というふうに計算されます。
  103. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私もざっと計算をしてみたのですが、もっと八十一兆円くらいになるんじゃなかろうかと思ったのです。  そこでこういうような膨大な公債残高が昭和六十年まで、またそれ以降においても、昭和五十六年度から、五十五年度と同じ六兆五千二百億を動かさないものとして計算をした場合でも八十兆円程度の公債残高が出てくる。八十兆といえば八%の利子で六兆四千億、そうすると利子分だけでも大変な額になって、いわゆる償還額を上回るような利子の支払いになる、こういうような数字が出ておるわけでございますが、これからやってまいりますると、五十五年度までにこういうような姿になるためにも、国税において二%税金をふやさなければならない、地方税において一%ふやさなければならない。そういう税金を増加するという形の中であってもこういうような状態が依然として続いていくんだ、こういうことになってくるわけです。そうなってきますと、いままでの国債発行というものが、金融機関を中心にシンジケート団を形成して、金融機関の、全国銀行の場合の四割は個人預金だ、だからそういう金融資産の形成の上から見て、銀行がこれぐらいのものは持ってもらいたいというような形でなされてきたわけですが、金融機関は個人の貯蓄が集められてそういうような預金が形成をされるわけですから、やはり金融機関に同じような割り当てをしながらやっていくという発想だろうと思うのです。しかしながら片一方においては税金を上げていかなければならないということになってまいりますと、一体いままでのようなそういう国債の割り当て消化方式がこれからも続いていくことが果たして予想ができるだろうか。そこには変化が生まれてくるのではなかろうかという気がするのです。  というのは、この際大臣にお尋ねをいたしておきたいと思うのですが、日本の場合には、いわゆる税金なりあるいは社会保障のための保険費なりというものが総収入の大体一二%程度、それに対して個人の預金率というものが二〇%から二四%、合わせて三二%程度のものが、そういうような公的な資金なりあるいは不時の災難等に備えて蓄積をされるという形になっておるわけです。しかしヨーロッパの場合には、税金と社会保障関係の経費が二五%程度、そして個人の金融機関等に対する預金というものが七%程度、トータル的には三二%程度で合っているわけですが、余りに個人の貯蓄率が高くなるということになりますと、それだけ消費の需要というものが減退をする、消費購買力の減少につながっていく。こういうような形を考えてみますと、大体収入の三二%前後というものが公的なものと私的なものとの貯蓄勘定に回っていくということを想定をしながら、果たしてこれからも金融機関——シェア的には、個人が貯蓄をすることによって社会保障的なものを自己責任でカバーをしているものを、税金をふやしていくことによって、公のものが、国なり地方公共団体がそれをカバーをしてやる、こういうシステムにこれから変わらざるを得ない。となれば、個人の貯蓄率というものは下げざるを得ないというように私は思っているのですが、そういう形になった場合に、いまのような国債の消化の形態がこれからもずっと続いていくことが望ましいというふうにお考えになるのか、その面についてはお互いに矛盾する点があるわけでございますので、これからの国債の消化政策、国債をどういうふうにして国民のいわゆる資産として位置づけていくのかということはきわめて重要な問題だと思います。したがいまして、税金を上げなければならない、社会保障の負担率は上げなければならないということになってくると、そういうような現象が出てくるのではないだろうか。その場合には、これからの長期的な国債の消化政策というものは一体どういうふうに立てていくんだというふうにお考えになっているのか、この点について大臣の御所見をお伺いしておきたいと思うのです。
  104. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいまの御指摘は非常に基本的なことでございまして、私どもも常々そこの注意を払っていかなければならない点であろうかと存じております。すなわち、過去におきましては、全体の中で公共部門はどちらかというとニュートラルに近い形であり、ときどき余剰をもたらす、その反面、いわゆる家計部門が恒常的に資金余剰を出しまして、これが企業部門の資金不足に対応してそちらへ流れていっておった、この姿が、これから先の将来を見通して、日本でどのように続いていくのであろうか、またその程度がどのように変わっていくのであろうか、この辺は十分注目を要するところであろうと思います。  またさらに、この資金余剰部門と資金不足部門をつなぐパイプでございますが、これが金融機関であり、あるいは税金なり社会保険料、それからまた政府の振りかえ支出というようないろいろな形をとっておりますが、このパイプの役を果たしておるところも長い年月の間にはいろいろと変わってまいるのであろうと思います。そしてそのパイプをさらに利用する立場にある個人の方も、間接的な金融資産、すなわち預貯金の形をとるものと、それから直接的な証券投資の形をとるものと、いろいろその辺の趣向も変わってまいろうかと存じます。私ども、現在のようなシ団引き受け方式、しかもその中において、午前中も御議論がございましたが、個人消化が約一〇%というのは、あくまでも現在の日本の現状を直視いたしまして、この条件のもとではこういったことが望ましいという判断に基づいてやっておるものでございます。  これが一、二年の間に急に変わるとは考えられませんが、相当長期間の間に変わってくることがあれば、またそれに応じて種々見直しをしながら、国債の消化、それが経済に対して最もよく働き、悪い影響が最も少なくて済むように、そういうような形を絶えず検討していかなければいけないと思っております。
  105. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は大臣からこの際お聞きをしておきたいと思いますのは、「昭和五十年代前期経済計画概案」これは閣議で了承をされて、近いうちにそういう経済計画が確定をするやに聞いているわけです。  その中で出されておりますように、対国民所得比で、税金並びに税外負担というものを三%程度上げなければならない。今日の財政規模の上から見ましても、私は、それは赤字国債発行しなければならないような状態の中で考えられるのは、税の増徴というものあるいは社会保険料の引き上げというものによって賄わなければならないであろうということは、これは特例債発行させないという方針で臨むならば、当然そのことは出てくると思うのです。ところが、それだけに今度はそのはね返りというのか見合いとの関係で、個人の貯蓄率というものが、国際的な中ではいま異常な高さにある。二四%もと言われるような貯蓄の形成率、このことが下げられない限りは、個人の消費購買力というものはこれをさらに落とさざるを得ない。そうなってくると経済がうまく回転をしないことになるわけですから、異常な貯蓄率の向上というものは、これとのつり合いの関係において下げていかざるを得ない、こういうふうに見るのが当然だろうと思うのですが、そういうような問題のとらえ方の中から、税制の問題なり金融政策の問題なり財政の問題をもう一回原点に立って、将来の展望を描きながら考えていくということがなければ、この財政計画といいますか、返済計画なりあるいは八十兆にもなんなんとする国債の累積の中で日本の経済を立て直していく、日本の財政を立て直していくことは不可能だと思うのですが、それについては大臣はどういう考え方をお持ちであるのか明らかにしてもらいたいと思うのです。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 税の負担、社会保険料の負担、そういったものが他の先進諸国に比べまして日本が依然まだ低位にあるということは先ほど村山さん御指摘になりましたが、私の手元にある資料では、アメリカが三六%、一番高いのでフランスが四七%ぐらいまでになっております。日本はまだ二四%、これはちょっと資料が古く四十六年の数字ですけれども。私はこれはまだ日本が若い国といいますかフロンティアを持った国だと思うのでございます。今度、御指摘のように、経済計画既案では税の負担を三%程度上げること、それから社会保険料の方は一・五%ほど上げるということでございますので、確かに公経済に対する負担がふえてまいるということ、それだけフロンティアが狭まってまいるということでございまするので、これは一体どう受けとめたらいいか。まだ低目にあるんだから大丈夫だと言って、安心してこういう傾向を何の反省なく受けとめていいとは私思いません。こういうことに対しては憶病でなければならぬと思うのでございますけれども、他のいろいろな要請がございまして、これに財政が対応してまいりますためには、この程度はやむを得ないのではないかと考えております。この程度でございますならば、まず私経済が大きな損傷を受けないで、まだ活力のある状態を残し得るのではないかというように考えておるわけでございまして、これがもっともっと進んでまいりますと、仰せのように非常に心配な状況が出てくるのじゃないかと思うのであります。問題は程度でございまして、いま政府がもくろんでおる程度でございますならば、これとても決して安心はできないと思いますけれども、まずまず心配のない限界にとどまり得るのではないかという感じを、いませっかくのお尋ねでございますが、私は持っております。
  107. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 いままで経済の高度成長が続いてきた、その中で国民の貯蓄はふえてきた、税収自然増収によって賄ってきた。それでうまくやれたわけですが、もう四十七年ごろからそういう高度成長の経済体質が失われてきた。その中で構造的な問題として今日の赤字が出てきた。財政の赤字に対応するために、建設国債のみならず特例債まで発行しなければならないという異常な財政運営をやらなければならないようになってきた。しかもそれはことしだけにとどまらない、来年もその次も、昭和五十四年度まではどんなに見積もってみても特例債発行しなければならない。その後においても建設国債は依然として出していかなければならない。まさに昭和六十年度になると、八十兆にも及ぶ累積国債を抱えなければならないというような異常な状態ですよね。  そこで、私は先ほど図書館に参りまして、「日露戦役以後の国債償還史」というのをちょっと開いてみたのです。日露戦争で戦費調達をやった。そのための国債償還として国債整理基金制度というものが生まれてきた。ところが初めのうちは毎年一億一千万円を下らないものとして、元利支払いのための繰入額が設定をされてきたわけです。そして三十年でその戦費については償還を完了する、こういう予定で出発をしておるわけですね。ところが途中で繰り入れを中止してみたり、あるいはまたさらにそれ以外の国債の必要性がありますから、それを出しながらやっていく中から、御承知のように戦争に巻き込まれて日本の経済が沈没をする、こういう状態がその「日露戦役以後の国債償還史」の中に掲げられている。そのことを見ながら、いま大平さんは、まだこの程度であるならばそんなに心配しなくてもいいじゃないかと、まさに一国の大蔵大臣が、こういう特例中の特例だと言いながらも、これからも赤字国債に頼らなければならない財政運営の責任を感じないで、そして将来の長期的な展望も描き出さないで、いまのような政策形態というものを推進している。さあ国債市中消化しなさい、国債はやむを得ません、そのためには国民は貯金もしなさいというような形の中で、個人の消費購買力を盛り上げなければならない経済不況に対しては何ら手を打つこともない。こういうような形の中では、財政運営の責任の衝に当たる大蔵大臣、しかもやがては内閣総理大臣を目指そうという大平さんが、そういう将来の展望なき姿勢の中で財政運営に当たられるということはきわめて遺憾だと思うのです。  そこには資産形成の上において、どうしたらフローの貯蓄形成からストックの貯蓄形成に移る中で国債を個人がどの程度持てばいいのか、資産としてそれを保有させるためにはどうすればいいだろうか、そしてこれから税金を上げなければならない、社会保障の負担国民に求めなければならないときには、今度は個人が自己責任において不時の場合に備える貯蓄というものはどの程度にしていかなければならないのか。ところがいまは、税金は上げますよ、貯金はどんどんしなさい。一体これで整合性のある財政政策なりあるいは経済政策だと言えるでしょうか。私はそこには一つ方針というものを示さなければならない段階をいま迎えてきているのだと思うのですが、これについては大臣は、この程度であれば安心だということでよろしいのでしょうかね。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 これはもう村山さんには釈迦に説法で、きのうからも申し上げておるとおり、公共投資は経済計画概案では、この五十一年から五十五年にかけて百兆はぜひ必要だというわけでございまするし、振りかえ支出につきましては一七%平均必要だということ、つまりそういうことが一方の歳出需要といたしまして、それを充足することがまず当面必要だということでございますので、     〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕 私ども財政の立場におる者として、だとすれば財政上の工夫をいたしましてそれだけのことをまず充足して差し上げるということを考えてみよう、どうしてもできない場合はもう一度歳出に振り返ってみて御遠慮いただかなければいかぬと思っておりますけれども、この間国会で御審議をいただくべく御提出申し上げております試算なるものは、そういうものを一方に掲げて、それを充足さすためにはこれだけの財源が必要でございます。そのためにはこれだけの負担増にたえていただかなければなりませんという図式で御判断をいただいているわけでございます。  この負担は、いま私が申し上げておりますように、確かにこれは国民負担にかかわることでございまして、軽率には言えないことでございますけれども、欧米の先進諸国に比べましてはまだ幸いに若い国でございまして、社会保険料におきましても税におきましても、中央、地方を通じましての負担をずっと見てみますとまだ一〇%以上割り安の状態に推移できておることは非常に幸せなことでございます。そこで若干の負担増をこの財政危機突破のためにひとつ考えていただくというわけにいかぬだろうかというのがいまの焦点になっておる問題点なんでございます。仰せのようにもしこれが負担にたえられない、経済の活力が損なわれる、民族の将来の活力をついばむというようなことになるゆゆしい問題でございますならば、やはりこれはもう一度歳出に返りまして、われわれはもっと簡素な支出を考えなければならぬことになると思うのでございますが、財政家としてまず考えなければいかぬことは、各方面の多彩な要求を、それが合理的なものでございますならば、できることなれば充足して差し上げたいということでいませっかく考えておる最中なんでございます。そういうことを充足しながら、しかも特例債からは早く脱却をしてノーマルな財政に返したいということで御審議をいただいておるわけでございまして、私どもが問題をイージーに考えておるわけでは決してございません。しかし全体の問題のとらえ方、感度がそれでまだ足らぬじゃないかというおしかりでございますならば、甘んじて受けまして、なお一層緊張の度合いを深めてまいらなければならぬことは私は当然覚悟をいたしておるわけでございます。
  109. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 大臣、私はこの前国土総合開発審議会の委員会でもいろいろ意見を聴取しながらまた私の考え方も申し上げたのですが、百兆円の公共投資というものを計画する、そしていま全体の経済成長の見通し、前期五カ年間の経済の見通しやあるいは国土利用計画やその他総合開発の第三全総の問題等についてこれを審議しておるわけでございますが、何といったっていまの政治体質というものは、これは与党も野党も含めてでございますが、借金という、二九・九%という起債はとりあえずはだれも腹は痛まぬわけですね、そういうようなのに三割も借金に頼っていくという政治体質がのど元過ぎたらそのまま忘れられた姿の中で推移していく。しかも、あれをやれこれをやれという要求の声はますます強くなり、負担はしたくない、こういう姿の中で自分たちうまいことだけは言うて後のしりぬぐいはしないというような政治体質が議会制民主主義の形態の中であるわけでしょう。そしてそれを増幅するような形の中で問題を処理をしようとするから、借金行政、借金政治をずっと続けていこうという政治的な体質があるわけです。  それに対して政府としては、ここまではできるけれどもこれはできないんだという明確な見通しを示しながら、こういうことはこの段階までは国民負担をしてもらいたいということを明示しないと、ことしの税制の改正の中においても増税はする環境にありません、さればといって減税をすることもいかがかと思います。将来は増税方向考えなければなりませんというようなことで、将来の方向というものが全然性格がはっきりしない。そういう税制体系が今日にありながら、しかも二九・九%という借金に頼らなければならない。これを来年もその次も続けていったら、麻痺してしまうのじゃないだろうか。そういうようなことではなしに、この段階においてはこういうふうな特例措置としてとった以上は、いわゆる特例措置として財政の許す限り早く特例債償還は終わらなければならぬ。十年後から始めるというのじゃなくて、いまから準備にかかって、その支払いは完全に終わるように持っていくんだという計画を具体的に示してもらわなければ、これはそういうような心配をするのは私だけではないと思うのです。そういうことから税金なりあるいは社会保障の負担率を引き上げなければならぬということは私はわかる。わかるが、しかしそのかわり、いまのような個人が貯金をしなさい貯金をしなさいというようなことはその面からいえば削らなければならない、そういう全体の構図というものを描いた上で公債発行政策なり消化政策というものを考えるべきではないかということを言ったわけです。それについてなおお考えがあれば承りたいと思うのですが、先ほどのでもう十分だとお考えであるならば、あえて発言を求めません。  そこで、私は時間が余りございませんのであと一言だけ聞いておきますが、一体公社債市場というのは現実に存在をするのだろうかどうだろうか、このことを私は考えるわけです。  というのは、五十年度公社債市場においての売買は五十六兆だった、しかし売買の六割以上が現先取引で、それは短期資金の需給関係の必要性から売り戻し買い戻し条件つきの形の中で取引がなされておる。だからそれは金融機関と事業法人が当事者であって、国民はそこに自分が持っている債券などを売ったりあるいは買ったりすることが事実問題としてできない。だから現実には国民の前にはその公社債の流通市場というものは市場が成立をしていないのではないだろうか。市場が成立をしているとするならば、自分たちが買い求めた国債等やあるいは社債やその他を売買するそのなにに参加ができる、自由に処分ができるということになるならば、庶民は心配しないで国債を買うことができる、こういうふうに考えられるわけですが、公社債の流通市場の拡大というものをどういうふうに目指していくのか。この前説明を聞いておりますと減債基金制度の資金を使って、それで国債の買い入れ消却やあるいは国債の買い入れ留保という形で資産運用をやりながら、しかも市場の育成に当たりたいという考え方が示されましたが、それでは、その考え方は了といたしましても、三千億円程度の資金で果たしてそういうのをどの程度育成強化しようとお考えになっているのか、具体的な計画があるのならばお示しをいただきたいと思うのです。
  110. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 お尋ねの公社債市場でございますが、これは基本的には時間をかけて育成していくということでありまして、いまの日本の公社債市場が特に流通市場におきまして完璧なものだというふうには私ども考えておりません。今度の国債の大量発行を経験いたしまして公社債の市場というものがかなり活発になってまいりまして、取引も非常に大きくなってまいりました。これは国債の大量発行というものを契機として公共債というものが公社債市場の中で大きなウエートを占めてきたということから、資金の流れもまたそれに合ってふえてきております。したがいまして、公社債市場の育成というものはある意味においては市場の整備、発行段階から流通段階に至りますところの条件やいろいろな問題も含めて、金利ももちろんそうでございますけれども、そこに集まってくる資金の流れとか、そういうものもやはり影響してくるわけでございますから、基本的には、市場の整備というのはかなり時間の経過が必要かと思います。  そこで、いまお尋ねの具体的な問題でございますが、特に国債公社債市場の中でなじませるということのために、やはり国債条件がなるべく実勢に合うようにということの配慮はやってきたつもりでございます。また、取引所におきますところの取引のやり方といいますか、先生もよく御存じのような市場の集中義務を拡大いたしましたとか、そういうような問題ももちろんでございますけれども、今後私ども考えてまいりますのは、一番基本的には公社債市場に対して安心して資金が流れてくるようにするためには、やはり発行条件とか流通条件とかいうものが実勢に合ったようなものにするということを徐々にしていくということではなかろうかと考えます。
  111. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 最後に、大臣考え方だけをお聞きしておきたいと思います。  これは財政収支試算ケースIの内訳を見てみながら、ことし三兆七千五百億円、これもわれわれが特例債だけは増税というような措置でカバーをして出さないようにすべきだということで、大臣御承知のように土地増価税等を中心に社会党は六税法の改正案を出しまして、税法の改正を通じて、現在資産的に所得の多い人の中から増徴を図ってこれを出さない政策をとろうということで準備をし、提案をしてきたところでございますが、五十二年度を見てみますと、いまのような体系でいくならば依然として三兆四千百億という特例債発行しなければやっていけないような計画になっているようでございます。しかし、この事態は緊急な特例的なものだという大臣考え方もありますが、来年度以降の税制改正の中で、あるいは財政全体の中で、早急にこの問題についてはこれに依存をしなくてもいい形に持っていきたいということは大臣も言われるわけですが、大臣としては、ここに試算をされましたケースIなりケースII考え方で五十三年あるいは五十四年までは処置をせざるを得ないだろう、それはもう何と言われてもそういうように段階的に減少をするような方向の中でやるよりほかにしようがない、もう来年あたりやることは無理だ、漸次そういうようなものを減らしていくんだという方針であるのか、あるいはもうここら辺で自分としてはいわゆる抜本的な改革をやりながらひとつやってみようと思っているんだということで、五十二年度が無理なら五十三年度から脱却をしていくんだという考え方でおられるのか、そのあたりはどうなんですか。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、もう帰ることのできない川にさお差したものと思っております。したがって、五十年代前半にはどうしても特例債から脱却しなければならぬと考えております。そして、それを五十二年から始めまして、五十年代前半には何としてもやり遂げなければならぬと考えておりますので、もはや後退を許されないという悲壮な気持ちで大蔵省全体対処いたしております。
  113. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 大臣、要望だけ申し上げておきますが、五十年代前半の中でという不退転の決意であるというようなおっしゃり方ですが、これは早いに越したことはないわけですから、五十四年までとか五十三年までとかということじゃなしに、もういまからやらなければ間に合わないと思うのです。だから、できるだけ早く脱却できるように大臣がどれだけの政治力をお持ちなのかひとつわれわれの前にはっきりと見せていただくことを期待いたしまして、終わります。
  114. 森美秀

    ○森(美)委員長代理 広瀬秀吉君。
  115. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 きょうは五十一年度中に発行する特例公債の法案の審議に当たりましてずいぶんこの大蔵委員会で議論をされてまいりましたが、その中でやはりいろんな心配が——この特例公債発行、しかも大量発行年度当初から発行する、こういうもう完全に国債に抱かれた財政になってきた。こういう状況を踏まえて、その心配の一つは、これからの赤字公債の歯どめが一体どこにあるか、これはどこまでも放漫財政を結果することに成り行きとしてなってくるのじゃないかということと同時に、それに対する歯どめはどうかという問題、これが一体本当に返せるのかどうかという償還の問題、そしてまた最も大きな問題の一つとして、これが必ずインフレーションを刺激していく大きな問題点を含んでいるのではないか、こういう点で問題にされてきたと思うのであります。そういう中で、通貨の安定、またインフレを抑制していく、そしてまた通貨価値の安定を確保するという最も大きい金融政策における実力者である日銀当局が、こういう事態をどういうように判断をし、どういうようにこれを評価しておるのか、また危惧を持っておるのか、そういうような点について、やはり通貨当局の意見もひとつどうしても聞いておきたい、こういうような気持ちでありまして、せっかくお忙しい中を、森永総裁が訪中だということでございますので、副総裁においでを願ったわけであります。  そういう観点で、まずひとつ日銀として、国の中央銀行として、今次のような国債大量発行、そしてこれがあと三年続くか四年続くか、政府に何遍聞きましてもこの辺も定かにはなってない。こういうものがかなり長期に続くであろう、少なくとも中期的に三、四年は続くであろうということが議論されてきているわけでありますが、そういう問題を踏まえて、金融政策のかなめであり、通貨価値をしっかり守っていく、インフレを抑えていく、こういう立場にある日銀当局としての今日の事態に対する御見解はどうか、そして見通しはどうか、こういう点について、まず初めに副総裁の御所見を承りたいと思うのであります。
  116. 前川春雄

    前川参考人 日本銀行の副総裁の前川でございます。本日は森永総裁よんどころない事情で出席できませんので、私がかわりに参りました。御了承願いたいと思います。  ただいま御質問のございました、大量の国債を抱えた財政下で、これからどうして通貨価値の安定を図るかということは、日本銀行の最大の職能である通貨価値の安定という点から、私どももこの事態を非常に重大に考えております。ただ、これから財政全体の規模あるいはその運営が、そのときどきの経済情勢に応じた適切なものである限り、国債の増発ということが即インフレにつながる、招くというふうには私ども考えておりません。ただ、国債の大量増発が金融面に非常に大きな影響のあることは御指摘のとおりであります。  この国債の消化につきまして、あるいは個人、あるいは事業法人、あるいは機関投資家の消化を極力促進していくということがこれからも必要になってくると思いますが、何分大量の国債でございますので、それにも限度がございます。相当部分につきましては、いまやっておりますシンジケート団の金融機関による引き受けというものに頼らざるを得ないというふうに考えます。金融機関引き受けということで考えますと、国債発行いたしました財政資金の支払いされたものは、その分だけ民間のマネーサプライの増加になります。銀行券あるいは預金の形でマネーサプライの増加になると思われます。そういう環境のもとで、これからインフレにならないようにしてまいりますには、どうしてもこのマネーサプライの増加が行き過ぎにならないようにするということが一番肝要であろうというふうに考えております。そういう意味で、日本銀行もマネーサプライの動向につきましては、常に十分なるウォッチ、注視しているわけでございます。  現在、御承知のように一般民間の資金需要というものはそれほど強くございません。そういう場合にもし金融機関の貸し過ぎということがない限り、マネーサプライは全体といたしましてまだ伸びる、ふえていくとは思いますが、これが急増するということは考えられないというふうに思います。私どもも、そういうふうなマネーサプライの残高が急増するというような事態にならないよう、金融機関の貸し出しの行き過ぎにつきましては十分これを抑制していくように努めるつもりでおります。先行き景気がいまよりはだんだん回復してまいると思います。そういう事態には民間の資金需要もふえてくるわけでございます。そういう事態に対処いたしまして、物価面では悪い影響が出ないように、これは金融機関を通ずるマネーサプライの増加ということが行き過ぎにならないように十分に考えてまいりたいと思いますが、もしそういう景況全体が回復いたしましたようなときに、同時に財政面からもその資金供給全体につきましてある程度の調節をしていただく必要があるいはあるかというふうにも考えます。いずれにいたしましても、民間金融面につきましてはマネサプライの増加が行き過ぎにならないように十分配慮してまいりたいというふうに考えております。
  117. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 昨日でございますか、経企庁が五月の月例経済報告を出しました。そこで指摘していることは、国内の景気回復傾向は一段と強まっている、こういうことですね。それで物価はやや上昇テンポを速めつつある、こういうことで、この点についてかなり注意をしなければならないという指摘をしておるわけですね。  それで、ことしは四月が暫定予算というようなことでかなりこのことが景気回復に対するブレーキになっているんではないかということを、高度成長への速いカムバックを願う論者は指摘をしておったわけです。しかし、この五月月例報告でも、この景気の問題については、輸出の面でも、あるいは消費支出の面は非常に停滞しておったけれどももうその限界も来て、それも百貨店売り上げ高が一〇%を超すというような状況にもなってきている、こういうこともありますし、鉱工業の生産出荷もことしに入ってから上向きにずっと連続して、対前月比あるいは対前年比、同月比というような形で見ましても伸びてきておる、こういうことが言われておりますし、景気回復にとって外国の諸事情というようなものもいろいろありますが、特に関係の深いアメリカの景気はまさに上昇しつつあるし、西ドイツもそういう方向にあるし、いわゆるイギリス病と言われるようなイギリスにおいてもやや回復の方向に向かっているというように、そういう面でも外的環境もややよくなっているという面があります。そして卸売物価が三月、四月上中旬というようなところを見ますと、年率七、八%になるような上昇の経過を見せてきた、そういう状態になっているわけですね。  そうしますと、正式に五十一年度予算も通りました。その一体をなす財特法がまだ通ってはおりませんが、予算が通ったという段階におきまして、民間の資金需要というようなものが、ふえる可能性がある。それが設備投資に直結するかどうかは別として、各方面の経済指標を見てみますと、経企庁が指摘するように、かなり速いテンポで景気が回復しつつあるという状況も見られるわけであります。そういうことになりますと、民間の資金需要、主として企業設備投資というようなことが盛り上がってくるという段階でなければ、そう激しい貸し出しが行われる気遣いはないようにも思うけれども、意外に早くそういう時代を迎えるのではないかというようなことも、こういう諸指標を今日見ますと考えられるわけであります。  そういうような場合に、いま副総裁もM2、M1については厳しくチェックをしていかなければならぬ、こういうことでありますが、そういう中で国債が、建設公債原則だとかあるいは市中消化原則だとか、いずれもこれは一種の放漫財政への歯どめなんだという説明はしておりますが、市中消化をしましても一年たてば日銀の買いオペの対象になる、こういうようなことにもなっていくわけですね。そういうものが景気を刺激し、資金の過度の供給を促す原因にもなってくるのではないかというようなことも同時におそれる。そういう場合に、きのう経企庁が月例報告を出されたというようなことを踏まえて、M2の増加を日銀としてしっかりチェックをし抑えていくんだ、こういう表明があったわけでありますが、そういう点についてどういう対応をしていくのか。月例報告というものを踏まえて先行きの見通しも一部語られましたけれども、私が申し上げたような見方に対して、金融政策のかなめとして、あるいは金融政策のかじ取りを握っておられる日銀として当面どういう対応をしていくおつもりなのか、この点を再度伺いたいと思います。
  118. 前川春雄

    前川参考人 ただいまお話がございましたように、卸売物価指数は昨年の十二月以来大体毎月平均いたしますと〇・六ぐらいずつふえております。こういう事態が続きますと、ただいまお話のございましたように、年率七、八%ということになるわけでございまして、私どももこの卸売物価の動向につきましては非常に強い関心を持っております。  ただ、最近の物価の上昇につきましては、必ずしも通貨面と申しまするか需要面ばかりではございませんで、あるいは国際的な原材料の価格の上昇であるとか、あるいは国内の供給面で生産調整が行われているとかいうことも影響しております。経済全体の指標は、経済活動は次第にふえて活発になっておりまするけれども、企業収益の状況は御承知のようにまだ非常に悪うございます。そういう点から、長い不況の末に、企業といたしましてはこの企業収益を回復しようという動きがどうしても出てまいります。そういう点で価格の引き上げが安易に行われるということは、全体の物価動向から申しますると非常に懸念すべき事態でございまするので、私どもは企業収益の回復は、むしろ数量的な稼働率の増加ということで回復していくべきものだというふうに考えております。  金融面でこういう事態に対して日本銀行はどういうふうに考えておるのかという点の御質問がございました。これにつきましては、私ども現在四月から六月の窓日規制ということで、市中金融機関の貸し出し全体が行き過ぎにならないようにということを先ほど申しましたけれども、現在私どものとっておりまする大きな姿勢は、金融をこれ以上緩和しない。ただ景気回復の過程にございまするので、これが本当に実効のある回復につながるように、いまの段階では引き締めに転ずるという必要はないと判断しておりまするが、金融面全体でこれ以上緩和する必要もないのじゃないか。そういう点から一−三月の金融緩和の基調をそのまま続けておるというのが現状でございます。そういうことは、将来どういう事態に対処いたしましても、弾力的に私どもといたしまして対処できるように、十分それに対応できる姿勢をとっていくということが基本になっております。そういう現状でございます。
  119. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 副総裁、今日管理通貨制度のもとでマネーサプライはどうしても適正経済成長率、ことしの経済見通しで政府が設定している見通しは名目で一三%だ。そういう経済成長率を仮に適正だとしまして、それを中心にしていろいろな指標をはじき出しているというような場合に、その指標をかなり大きく上回るようなマネーサプライがあるということになれば、当然物価上昇、インフレという方向に行くだろう、こういうことが言われておるわけですね。そういう中で、もうすでにマネーサプライの面で特にM2がことしに入って、四月でございましたか三月末でしたか、一五・三%くらいですか。そして一番新しいものではどうやら一五・七くらいになっている、こういうことですね。一三%が政府経済見通しの基礎をなすGNPの伸び率ということになっているわけですから、それは問題はありますけれども、それを仮に適正成長率と認めても、今日の段階でもうすでにそれ以上に一五・七というようなM2の増加が出てきている、こういうことになりますと、かなりこれは日銀のシビアなチェックというものが必要ではないか、こういうことを考えるわけであります。その点、日銀は、政策転換ということを議論するのはまだ早いが、いかに景気を浮揚するかということで浮揚に苦労した二十四兆二千九百億の予算も組まれているわけだけれども、そういう状況の中で、一体このM2の成長率というものは経済成長率との見合いにおいてどの辺が政策判断の基礎になるのか、それからまた日銀券の増発というような問題について、この成長率との関係をどういうように見られておるのか。少なくともわれわれは、ずっと高度成長という時代において日銀券が経済成長率を上回って発行されてきたという、これがやはり非常に大きなインフレ要因になったし、ちょうどたまたまそういう時期は建設公債の名において赤字公債を出したというような、そういう時期にも相当する、こういうようなことを考えますと、その辺のところの政策のかじ取りというものをどういうようにお考えになっておられるのか、その辺のところをきちっと聞いておきたいと思うのであります。
  120. 前川春雄

    前川参考人 マネーサプライ、最近は私どもM2ということで、これは銀行券と預金通貨と、それから定期性預金の部分も入れました総額の増加状況というものを中心に考えておるわけでございますが、ただいまお話がございましたように、このM2の前年比の増加率というのは昭和四十九年の九月が底でございました。引き締めの一番きいたところであったかというふうに思いますが、そのときが一〇・六でございました。それから次第に上がってまいりまして、ただいまお話がございましたように、この三月の平均残高の前年比伸び率は一五・七でございます。適正なM2の増加率がどのくらいであるかということにつきましては、これはまだ各国でもいろいろ議論のあるところでございます。これがGNPとどういう関係にあるか。GNPがふえてまいりますると、M2もどうしてもふえてまいります。その比率をとってみますと、専門的な言葉を使いましてまことに恐縮でございますが、マーシャルのkというものが過去のトレンド、傾向を見てまいりましてもだんだんふえてきておるわけでございます。どの辺が適正であるかという点につきましてはまだ私どもも、もちろんそのM2の状況というものを重視しておるという立場からいろいろ検討しておりまするが、適正率というものを出して、それを目標にするというふうには、そこまで立ち至っておりません。ただM2の増加が急激にふえるということは、過去においても非常に悪い影響がございました。そういう事態が起こらないようにするということが一番大事な点ではないかというふうに思います。  最近のM2の増加の内容を見ますと、そのうちの銀行券、現金通貨の方はそれほどふえておりません。それから準通貨、つまり定期性預金、これの前年比増加もそれほど目立った変化がございません。一番大きくふえておりまするのは預金通貨でございます。しかも、これは法人の持っておりまする預金通貨がふえておるという状況でございます。これは緩和期には法人企業が手元の流動性を高めていくということは通例起こることでございます。過去においてもそういうことでございました。法人の企業の手元流動性、これは引き締めの最中には手元をどうしても詰めますから減らしますので、それが緩和期になりますとまずそれを補充するという動きが当然出てくるわけでございます。そういう事態が今回も起きておると思います。  企業の手元流動性が果たしていま適正なところまでいっているか、あるいはまだ補充が十分についておらないかという点につきましては、なかなか最近のデータがないのでございますが、ことしの二月に私どもが企業から調査をいたしましたところで、三月末の手元流動性がどのくらいになるかということの見込みをとりましたのでは、売り上げに対しまして一・一でございますか、四十七年当時は一・六までいっておりましたので、まだその当時の手元流動性の水準には達してないというふうに思われます。しかし、かなりの程度手元流動性が補充されてきているというふうには考えております。  そういう面から、金融の緩和につきましても、先ほど申し上げましたようにこれ以上緩和をする必要はないのではないか。ただ、これがもうすでに危険ラインにまで来ているということで引き締めに転ずるというところにはまだちょっと早いのではないかというふうな判断をしておるわけでございます。
  121. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 確かに、まだ浮揚を図ろうということが必要だと言われる段階において、金融政策転換の時期を云々することは早い、おっしゃるとおりだと思いますが、そういう危険なと思われる状況も十分考えた上でこの金融政策を適切にやっていただいて、インフレ刺激の結果にならないようにぜひひとつ注意をしていただきたいというのが、私の言いたかったところであります。  日銀は発行後一年を経たものについて、これが買いオペの適格債ということになりまして、買いオペ、売りオペを通じて金融調節をしておるわけであります。  それで、私どもが得た資料によりますと、これは大蔵省も発表しておるところでありますが、四十八年には二兆四千九百六十三億の買いオペをやっておられる。四十九年には一兆五千八百六十三億円の買いオペをやっておる。五十年、これは十二月までだと思いますが、五千九百八十二億円やっている、こういうことでございますね。  この買いオペをやられる場合に何を一体基準にし——この買いオペについての判断の基準と、それからルールみたいなものがやはり何かなければならないと思うわけでありますが一体その判断の一番大きい基準になるもの、買いオペをどれだけやるかという壁を決定する、時期を決定する、そういう場合の判断の基準というものをこの際お示しいただきたい。
  122. 前川春雄

    前川参考人 国債の買いオペは、日本銀行のいろいろございます金融調節手段の一つでございまして、日本銀行金融市場全体をそのときどきの情勢に応じまして適切に調節してまいるのがその通常の任務でございまするが、その金融調節の手段といたしましては、あるいは貸し出しをするとか、あるいは手形の買いオペレーションをやるとか、あるいは国債の買いオペレーションをやるとか、いろいろその手段がございまして、それはそれぞれのそのときの状況に応じまして一番適切である手段によって調節をするということでございます。     〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕  それでは、一体いま御質問のございましたどういう基準でやるのかということでございまするが、一定の基準という、こういう場合にはこうということがあるわけではございません。ただ、時期といたしましては、金融が季節的に逼迫する時期、たとえば十二月のようなときには金融機関の手元が非常に逼迫いたします。そういう逼迫いたしまする時期に行うのが通常でございまするが、十二月のように季節的に、一時的に非常に逼迫するというときに、国債の買いオペでやりますか、あるいは貸し出しでやるか、手形のオペでやるかというのはその時々の状況に応じまして違いますし、また、そのときどきの政策運営基本的な態度によってもまた違ってくるわけでございます。したがいまして、時期につきましては、一般的にいま申し上げましたようなことは申せますけれども、こういう事態になったら国債買いオペだということを申し上げるようなルールがあるわけではございません。  ただ、それじゃ国債の買いオペをするときには金額はどういうふうにして考えるのかということがございます。ただいま御指摘のように、五十年度中は五千七百億の買いオペをいたしております。この金額をどうするかということにつきましては、少し理屈めいたことを申し上げますが、金融市場全体の資金需給の過不足というのは、財政収支は非常に長い期間をとって見ますれば均衡するわけでございます。国債を出しますけれども国債は市中で消化しますから、やはり均衡するわけでございます。そうしますると、銀行券が毎年ふえてまいります。発行高がふえてまいりますので、その銀行券の発行に見合う資金の供給を日本銀行がいたさなければならない。その範囲を超えますと、銀行券の発行に必要な分以上に資金の供給をいたすことになりますので、大きく申しますれば、その範囲内にとどまるということが原則であろうというふうに思います。  現に過去の数字をとってみましても、その銀行券の発行増加の範囲内に買いオペの金額も限定しておるわけでございます。それ以上は、そのときどきの状況によりまして、全然買いオペをいたさなかった年もございます。昨年度は、御承知のように四兆何千億かの国債が出まして市中が引き受けをいたしましたけれども、そのうち国債の買いオペをいたしましたのは五千七百億ということにしておるわけでございまして、そのときの状況によりまして判断しながらやっておりまするが、大きなルールという点から申しますと、いま申し上げましたように、銀行券の発行増の範囲内にはとどめなければいけない。また現にそういうふうにはなっておるはずであるし、それぞれの年に応じて、必要な金融調節手段のうち国債買いオペによるのが最も適当であるというふうに判断した時期に、その金額の範囲内でしておるつもりでございます。
  123. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 その銀行券の増発率の内輪で考えていく、こういうお話があったわけでありますが、銀行券の発行については、大体ここのところずっと各月とも対前年同月比一〇%、一一%というようなところで五十年は推移しておりますね。今度は赤字公債を含めて大変な増発率で国債が大量に出ているわけですね。昨年のものだけでも五兆四千八百億と言われております。発行を減らした分を含めれば二千億ぐらい減るかもしれませんが、そういうものが出ている。これが対前年比大変な増発率になっておるわけでありますが、そういうことになりますと、一年たったものは適格債として買いオペの対象になる、こういうことで、これがもう日銀に対して——先ほど申し上げたように、まだまだ、景気が完全に上向きに転じてこれが予定したとおりの成長にいくかどうかというようなところに若干不明確な点はあるけれども、少なくとも国債だけは、市中金融機関が四十九年度に倍する国債を保有させられておる。そういうもので金融も徐々にやはり逼迫の方向に向かうであろう。少なくとも大局観としてはそういう方向に向かう。そういう場合に、かなりこの買いオペをやってもらいたいという要求は、民間資金需要が徐々に活発化していくという大きな背景から見れば、当然そういうことになってくるだろうと思うのです。そうしますと、それだけの圧力があった場合に、いまおっしゃったようなところでおさめられ得るのかどうかという点で疑念が一つあります。  それと同時に、ちょっと細かい問題を副総裁に聞いて恐縮なんですけれども、この国債引き受けている機関は、都市銀行、長期信用銀行、地方銀行、信託、相互、信金、農林中央金庫、生命保険会社、損害保険会社、証券会社とあるわけでありますが、これらでシンジケート団、シ団を結成しているわけでありますが、こういうことで、いま若干数字は違っておる、五十年度は五千七百億ぐらい、こう副総裁おっしゃられましたが、これはまあ売ったり買ったりの残で買いの方が多かった分がこういう数字にあらわれていると思うのですけれども、この五千七百億というのは、いま読み上げた金融機関のうち、すべてにわたっているのか、どういうところだったのか、この点明らかにしていただきたいと思います。
  124. 前川春雄

    前川参考人 シンジケート組成金融機関のうち生命保険、損害保険、これは買いオペをしておりません。この資金の性質上、長期の資金がそこへ入ってくるということでございますので、いたしておりません。それから証券会社の分につきましても、若干でございますが買いオペをしております。したがいまして、その比率はいろいろ違いますけれども、シンジケート組成金融機関の分につきましては買いオペの対象にしておるということでございます。
  125. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 たとえば相互銀行だとか全国信用金庫連合会——これは連合会が単位になっていますね。連合会単位ではこういうところも買いオペをどんどんやっている。買いオペ、売りオペ、自由に日銀との取引が行われている、こういうように了解していいわけですか。数字がありましたら、五千七百億の内訳を金融機関別にちょっとお示しいただければと思います。
  126. 前川春雄

    前川参考人 私、先ほど五千七百億と申しましたのは、国債の買いオペをいたしますときは時価で買いますものでございますから、その額面と時価との差額でございます。額面につきましては、十二月にいたしましたのは五千九百八十二億円でございます。このうち都銀が二千五百八十六億円、地銀が千百九十一億円、信託が三百六十四億円、長期信用銀行六百二十三億円、相互銀行二百五十五億円、全信連が二百九十八億円、証券会社四百億、農中が二百六十五億でございます。
  127. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この引き受けのシェアとそれからこういう買いオペの言うならば残高、そういうものとはほぼ見合うような気持ちでやっておられるのか。都市銀行の圧力がどうしても日銀に顔つなぎがいいということで、都市銀行を優先に、やはり大きいところを優先に、十四行あたりのところにどうしても集中するというような数字がちょっと出てるような気がするのですが、そういう引き受けの面におけるシェアと、それからこういう買いオペなんかの対象のシェアはほぼバランスをとるというような気持ちでやっておられるのですか、その辺のところをちょっと聞いておきます。
  128. 前川春雄

    前川参考人 引き受けのシェアに比例しておるわけでございますが、オペレーションというのは相対取引なものでございますから、相手方が売りたくないというところもございまするので、そういう場合には引き受けのシェアと違ってくることになると思いますが、大きな数字は引き受けのシェアでございます。
  129. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 たとえば、こういう金融機関の中で一番力の弱い金融機関としては全国信用金庫、これは小さいのが五百幾つか集まって連合会をつくっているわけですね。こういうところがたとえば資金需要が窮迫してきたというときに、さっと日銀に行って連合会を通じて申し込んだら、大体それは先ほど言った全体的な判断の中ですぐに買いオペ、買い上げをするというようなことになっておりますか。そういう点で格差をつける、えこひいきがあるというようなことは絶対ありませんか。その辺のところをちょっと聞いておきたいと思います。
  130. 前川春雄

    前川参考人 国債のオペをやりまするときは、先ほど申し上げましたように全体の資金需給を見まして、必要だというときにやりますので、五十年度につきましても昨年の十二月にしたわけでございまするが、そのときには、御懸念になりましたような、都市銀行はプレッシャーが強いからたくさんやるというようなことは一切いたしておりません。私ども、先ほど申し上げました引き受けのシェアに応じました申し込みを私どもの方からいたしまして、それに希望があればそのとおり買う、希望のないところは外すということでございます。
  131. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 最後に基本的な問題で、去年に引き続いてことしまた、総額では建設公債あるいは特例債両方合わせて七兆二千七百五十億円という大量の国債が出ました。財政規模に対しても公債依存率がいまや二九・九%という異常な世界一の状況になっている。こういうことが少なくともインフレと結びつく危険性はない、絶対ないと——これはいろいろ説はありまするけれども公債発行というものが中立的なものである、景気に対して中立だ、インフレに対して中立だという意見もありますが、われわれの側から見れば、いままでのいろんな——これはまたお帰りになった後も大蔵省と論争したいと思うのですけれども、たとえば昭和三十年から三十九年の間の物価上昇率は、公債が出てなかった、本当に財政法の大原則のとおりに、いわゆる文字どおり健全財政が行われていた、そのときの十年間における物価上昇率はせいぜい三九%ぐらいであった。ところが、四十年から四十七年の間だけで四五%台になっている。それで、狂乱物価も入りますが、四十一年から四十九年までを見ますと九九・何%、約倍に物価が上昇する。片方の三十年代の十年間は三九%ぐらいでとどまっておった。それが一〇〇%に近い物価上昇率を示す、そういうマクロの数字でありますが、これは粗っぽい議論でありますが、そういうことも背景にあると思うのです。公債が出されると、やはり少なくともインフレに加速する要因になり得る、なると見て差し支えないということがそういう数字からも、これは非常に粗っぽい議論であるが、言われる。通貨当局として、通貨価値の維持を至上命令とする——もちろんそればかりでは今日複雑な経済状況の中で済まないわけだけれども、しかし一番基本において大事なのは、通貨価値の維持ということはやっぱり日銀の最大の使命だろう。いまもこの原理は変わってないだろうと思うのです。そういう立場において、あなたは国債の増発時代を迎えて、このインフレへの危険性について、どの程度そういう危険を感じておられるのか、所見を伺って終わりたいと思います。
  132. 前川春雄

    前川参考人 日本銀行の最大の職能は通貨価値の安定であることは、もう御指摘のとおりでございます。私どもも、その点につきましては肝に銘じて通貨価値の安定、物価の上昇が破綻にならないようにする、極力これを抑制していくということを念願としております。  国債を抱いた大きな財政規模の拡大ということは、先ほど私が申し上げましたように、それだけマネーサプライをふやす要因でございます。ただ、マネーサプライをふやす要因といたしましては、財政のほかに金融機関の信用創造というのがウエートとしては大きいわけで、それともう一つは、海外からの資金の流入、これは輸出あるいは資本関係の資金の流入、この三つでございまするが、一番大きな要素は、市中金融機関の信用創造によるマネーサプライの増加ということであろうと思います。それに、いま御指摘のように、大量の国債を抱いた財政ということでございまするから、財政資金の面からのマネーサプライの追加がそこへ付加されたわけでございます。私ども、そういう事態を踏まえまして、マネーサプライの急激な増加による物価の上昇ということが起こらないように、非常に強い決心をもちまして慎重に政策の運営を図ってまいりたいという考えでおります。
  133. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 前川参考人、これで結構でございます。ありがとうございました。  そこで、今度は大蔵大臣に伺いますが、いま前川参考人も最後のところで、財政からの景気刺激要因、M2の増加をプッシュする要因があるということを言われたわけであります。何といっても、国民が今日この問題でこれだけ心配をして、この委員会でも本当に慎重審議を尽くさなければならぬという最大の問題は、一つにはやはりインフレの危険性をはらむものだという点があると思いますし、それから、われわれのいまここの決め方によって、後代の国民にいやおうなしの負担を強いていく結果になる。しかもそれが税金によって賄われる、大衆の負担によって賄われる、こういうことに対する危惧であろうと思うのですね。そのほか、もちろんいろんな問題ではあるけれども、まあ端的に言ってしまえば、そういう二つの大きな心配があるということであります。そういう点で、何といっても財政法四条の第一項本文の原則はもっとしっかり守らなければいけないものだと思うのです。  ところが最近、先ほど皆さんの方から公債政策基本的なあり方についての文書もいただきました。この中でも、健全財政はもちろんでありますが、建設公債原則ということをいっているのですね。それから市中消化原則、これを堅持するのだ。だけれども建設公債原則という、なるほど財政法四条一項ただし書きは、公共事業、出資金というようなものについて、あるいは貸付金というようなものについて公債でやることができるのであって、これはあくまで例外ですね。ただしかし、この建設公債の対象経費という、公共事業費の総枠の中でそれを超えないようにするという、一種の歯どめにはなることである。そういう意味考えれば、それはそのとおり、若干の歯どめにはなるということなんですけれども、これを建設公債原則というようなことになると、四条一項というものが逆に、忘れられてしまう。建設公債ならばどれだけ出してもいいのだ、それで対象経費をむしろ逆に合わしていくというような形で、財政膨張、放漫財政にどんどん道を開いて、それに見合うものならば目いっぱい出したって構わぬのだということが原則になってしまう。あくまで建設公債であったってこれは例外なんだという財政法趣旨というものが、いつの間にか、こういう言葉の不用意な使い方によって、原則特例というものが——本来、特例債特例特例なのであって、特例特例債と書くべきだと思うのですよ。それをいつの間にか言葉の魔術で、建設公債原則、これはある程度歯どめの意味はありますよ。だから、そういうものを原則というかどうか別として、建設公債ならば公共事業の対象経費の範囲内ならば幾ら出してもいいのだという思想に結びついてしまう。こういう点で、私はきわめて建設公債原則という言い方に対して不満を感ずるのですが、これは大蔵大臣いかがですか。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 建設公債というのは、公債を出す場合も、建設公債を出し得る範囲内に限るべきである、あなたのおっしゃる意味例外的なものでございます。そういう財政法趣旨を踏まえて、それから外れてはならぬという警戒の気持ちをあらわしたつもりでございますが、建設公債であれば、その範囲であれば幾らでもよろしいのである、建設公債であればいいのだというような考えは、私ども持っておりません。
  135. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私はこの建設公債原則という、いつの間にか例外原則になっちゃった、これは何か言葉じりをとらえて言いがかりをつけているような印象がないわけでもありませんけれども、事はやはり重大だと私は思うのです。いつの間にか特例原則になる、そして今度は特例債がまた、赤字公債発行するのはあたりまえだというようなことに結びつく危険性にこれはつながっているだろう、こういうように思うのですよ。そういう点についてはずいぶんここで議論はされましたけれども、そういう意味で、その辺のところのけじめというのは、建設公債ならいいのだということ、それならば一般財源、公債金を除く財政法が予定している国の歳入というもの、この範囲の中では公共事業というようなものは一文も支出しないのだというようなことになってしまったら、これはきわめて奇妙な話なんですね。少なくとも財政法ができてから二十年も、少なくとも四十年まで十七年間ですか、財政法ができてからでも十七年間というものは、全く財政法のとおりにやってきたのですから、それこそが本当の原則でなければならぬ。その後の四十年の景気の落ち込みという形で、建設公債というものを、そのときには年度途中に収入が落ち込んだからというので、収入補てん債として出してきたわけだけれども、その後今度は公共事業の範囲内ならばいいのだという形がずっと定着をしてしまった。そして、福田大蔵大臣当時にこの問題について質問をしました。私どもは景気がよくなったらやめたらどうかという提案を実はしたのです。ところが、そのときに火種として残しますという。しかし、火種もいろいろありまして、まさに劫火の火種であったら大変なことだと思うのですよ。どうも今日までずっとそれが定着をしてしまっている。  大体対象経費に対して九九%から七〇%ぐらいのところでやっておりますが、これだって、建設公債原則というようなことだったら、公共事業費あるいは出資金、貸付金というようなものとちゃんと対応するというようなことになったら、これはまさに原則だろうと思うのですが、しかし、そういうものでは本来の趣旨もおかしくなるし、そういうものとして必ずしも照応していないということが一つありますし、それから建設公債というのは言うならば投下資本に対する回収ができるようなものとして考えられるということで、その平均耐用命数が六十年程度だろうというようなことで、百分の一・六という繰入率を決めたりといったような歴史的経過もあるわけですね。ところが皆さんが公共事業対象経費として算定しているものが果たしてそういう生産的あるいは自償性というか収益性というか、そういうものを生むんだというようなことを必ずしも立証できない面もあるだろうと思う。道路なんかにしたって、有料道路は別として、一般の道路というような問題なんかについても、これは耐久的な行政施設である、こういうように言えると思うのですね。だから、そういう点ではきわめて、建設公債といい、赤字公債といい、これは経常勘定と資本勘定と区別するようなたてまえができていれば別ですけれども、大体そういう面ではすでに公団だとか事業団だとか公社とかというような形で、そういうものは建設勘定とか資本勘定とかというようなところに押し込んじゃっているのですから、本来行政的な手段、行政的な施設、そういうものだと思うのですよ。そういうものを建設公債ならいいのだというような形で認識をしているということは、基本的に問題があるのじゃないかと思うのです。したがって、本質的には特例債建設公債も、やはり一般会計の資金として、足らず前として調達をするのだということでは本質的に変わらぬ、そういう認識に立つことが一番重要なことではないかというように思うのですが、その点に対する大蔵大臣の所見を伺います。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 特例債ばかりでなく、建設公債といえども公債でございまして、安易に公債依存するという風潮に流れてはいけないと思うのでございます。これはあくまでも厳しい節度のもとで発行し、管理してまいらなければならぬことは申すまでもないと思います。
  137. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 何か四十分ごろまでにやめるようにということで、あと二十分ぐらいしかないのですが、先ほど日銀の前川さんにも申し上げましたように、大蔵大臣にもう一つ伺いたいのは、先ほど数字も申し上げましたけれども、三十年代、これは三十年代の前半はそれほど高度経済成長の時代ではなかった。三十四年あたりから本格的な高成長時代に入った。そういうことを踏まえても、三十年代の十年間はせいぜい三九%くらいの物価上昇しかなかった。ところが、四十年に公債を出して以降、実質的には四十一年でありますが、それ以降の十年というのは先ほど申し上げたような大変な物価の上昇である。これは特定の狂乱物価があったといえども四十一年以降完全な国債を抱いた財政に転換をした、そういうものがやはり基本的な背景の中にはあったろう。それで先ほど申し上げたように四十年代、四十七年、四十八年、四十九年という狂乱時代を除いた七年間で——三十年代は十年間で三九%だ。片方は狂乱物価を除く意味で七年間をとって四五・三%物価が上がっている。これは財政の中に本格的に国債を抱いてきたという状況がそういう物価上昇における大きな差を生み出しているもとではないかと思うのですが、その基本認識はいかがでございますか。
  138. 大平正芳

    大平国務大臣 物価の問題はいろいろな経済要素の集約したところに出てまいるわけでございますので、財政政策、とりわけ公債政策だけから割り切ってまいるわけにはいかないと思いますけれども公債を出さなかった時代と公債財政に移行しておった時代とどちらが物価上昇になりやすい傾きを持っておるかと聞かれるならば、それはやはり仰せのように、公債財政時代は物価高を呼ぶ傾向を持ちやすい体質を持っておるものであるということは言い得ると思います。
  139. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 非常に基礎的な部分において、公債を抱いた財政、また逆に最近では公債に抱かれた財政だと言われる議論すら出ている今日において、いま大蔵大臣も、そういう危険は公債に抱かれた経済の中では絶えずあるんだということを率直に認められました。これはそれで結構だと思うのです。骨身にこたえた強い認識でそれを持ってもらいたいということが私の言いたいところなんですけれども、そういう意味理解をして次に進みます。  そこで、物価上昇の中で国債発行条件、これは今日の長期金利体系の中では特別なものを除いて一番安いところに据え置かれているということでありますが、それにしても八・二二七。それで金融機関の手数料というようなことを考えれば、結構これは八・七二七になるはずですね、単純な計算上は。〇・五%、百円について五十銭ということならばそういう勘定になりませんか。  それは後で答えていただきますが、かなり高利である。高利でなければまた魅力がないから、幾ら大蔵省の絶大な権力をもってしても、そうシンジケート団に対して半強制的な割り当てで従わせるということもなかなかむずかしい。そういう点で金利弾力化、市場実勢金利等の問題の中で考えろというような問題提起もなされておるわけです。しかしこれは個人的の立場で考えてみますと、証券会社を通じて個人に売り出されるシェアはずっと一〇%ぐらいだったけれども、今度は大量になると同時にシェアダウンして六・七、八%ぐらいに落ちた、これを七%ぐらい売ろうという。しかも個人消化が月五百億にも上る状態にあるということであります。大体において国債を保有しよう、国債を買おうという人たちは高額所得者であろうということはまず間違いなかろうと思う。それで、言うならば所得階級別五分位法をとれば四分位あるいは五分位の人であろう、こういうように考えられる。それで、四十九年度国民生活白書では明確に出ているわけですね。年間収入階級別貯蓄現在高構成比を見てみますと、有価証券の保有比率が五分位のところでは二五、六%になっていますか、これはまあ当時のあれで年収三百五十八万円以上というところですが、そういうところの人たちは有価証券の保有が非常に多い。これは国債なんかもその中にずいぶん入っているだろうと思うのです。それが六・三七%の貯蓄利回りになっている。それだけシェアが貯蓄保有の分野で有価証券の比率が高く、六・三七%の貯蓄利回りになっている。それが第一分位を見ますと、第一分位は有価証券保有率は非常に少ない。一〇%もないということでありまして、五・二五%の貯蓄利回り率にしかなっていない、こういうことですね。赤字公債政策がとられてインフレに結びつく。物価は上がる。こういうような中で貯蓄の減価率は低所得の人たちほど高いということも四十九年度の生活白書で言われております。明確にそういう数字が出ている。一方において物価は上昇して、物価上昇による被害を受けながら、しかもその生活防衛のために食費まで切り詰めながら貯蓄をしている低所得の人たちがそういうように貯蓄の減価率は最も高い、こういう現象が出ている。しかも将来にわたって、これが十年先には途中の借りかえもやりません、十年先には全額返しますと政府はごく気楽に言うけれども、それが本当にできるかどうかということは相当問題がある。そう言うけれどもそれじゃそのときに返す金はだれが一体負担するかといえば、全部税金ですよね。大蔵大臣は、そういう面から見て、公債政策というものがいま申し上げたような意味において社会的な富の分配、所得の再配分というようなものを非常にゆがめて不公正を拡大する大きな要素になっているということを認めますか。
  140. 松川道哉

    ○松川政府委員 幾つかの点をお示しになりましたので、順次お答えをさせていただきたいと思います。  一つは、公債が取り入れられてから物価の動きが激しくなったのではないかという点でございます。四十年代以降は確かに公債発行という政策がとられましたが、その後いわゆるオイルショックその他で非常に撹乱的要因がございましたので、仮にオイルショックの前の昭和四十年度から四十七年度までの数字をとりますと、四十五年を一〇〇といたしました数字で、人口五万以上の都市の総合消費者物価が七七・六から一一三・〇まで上がっておる。四五・六%上がっております。ところがそれから七年さかのぼりますと、昭和三十三年度は五四・一でございまして、これが七七・六まで上がってきたわけでございますから四三・四%上がっておるということで、先生のように十年間をとりますと、その後非常に物価が上がった時期がございますので、確かに上がり方は四十年代の方が早うございますが、その前の時点の七年をとりますと、昭和三十年代の後ろの七年と四十年代の前の七年とはそう大きな違いがないものでございますから、私どもは、公債発行いたしましてもその管理がよろしきを得れば、物価に対する影響というのは最小限にとどめることができるのではないかということを考えております。  それから第二点でございますが、御指摘のように、国債金利各種長期金利の中で一番安いところに決められております。これは先刻も御説明申し上げましたが、昨年末の改定のときに国債の利回りの下げ方を最小限にとどめまして、民間の事業債との幅を狭くするように努力いたしました。各西欧諸国の市場を見ましても、やはり国に対する信用というものが一番高いものでございますから、他の各種の有価証券と比べまして国債に対する利回りというのは一番安い。ただ、その乖離の幅は国によって事情が違いますが、わが国においてもこの程度の幅があるということは一般的に受諾し得る程度の差ではなかろうか。そしてこれがまた、国債を大量に出すようになりましても消化が円滑に進む一つの要因になっておったのではなかろうかと思っております。  最後の、公債政策とこれが所得の再配分にもたらす影響でございますが、これは御指摘のように非常にむずかしい問題を含んでおります。先ほど第五分位と第一分位の比較の数字も承りましたが、私どもも、ある時点においての断面で比較的富裕な階層と比較的貧困な階層とを比べれば、前者の方がよりよくいろいろと、金融資産も高利に回すことができるというような状況に置かれておって、より幸せであろうと思います。私どもの目的といたしますところは、それをある時点におきます断面ではなくて、時系列と申しましてタイムシリーズで、だんだん国民全体が上の階層に、階層というとちょっとあれですが、絶対的な富において上に上がっていくように努力することによって、現在所得階層別では上の部分しか享受しておれないことを比較的下層の分野にもそれが享受できるような状態に持っていく、これが私ども財政政策の上で考えるべきことであろうと思います。ただ、御指摘のように公債政策が非常に行き過ぎますと、これが所得再配分の上に好ましからない影響があることは学者も指摘しておるところでございます。私どももその辺は十分心に銘記しながら今後の政策の運営に当たらなければいけないと思います。
  141. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国債発行してこれがどんどん累増をいたしてまいります。そしてこの特例債は借りかえは一切いたさない、こういうことになっております。そうしますと、安定的成長というか低成長というか、そういう時代において——これからは、いままでのような高度成長に逆戻りするというパターンでの成長というものはもはや望み得ない世界的な状況になっていることは、ここにおられる方は認識としてだれしも一致していると思うのです。そういう中で、先ほどこの委員会でもずいぶん議論をされておりましたが、累増する国債残高に対して十年先に果たして全額償還できるのかどうか。その方針あるいは大蔵大臣の決意表明は答弁としてありますけれども、果たしてそれが実際にできるのかどうかということについては一体何が保証になるのか。もう予算書に上げて償還計画も出しました、昭和五十年度発行したものは六十年に払います。これだけのことであって、その財源措置も、なるほどそのときに予算一般会計から大量に繰り入れる以外にありませんということだけれども、果たしてそういうようなことができるのか。仮にできたとしても、建設公債についてはいままで借りかえ、借りかえでやってきたわけですが、その借りかえが、今度は償還をサボって借りかえの方を激増させるということに結びついていかないのかどうか。これは非常に素人的な疑問ですけれども、借りかえが増大することに結びつく危険というものが常識的に当然考えられるのだけれども、そういう構造になりませんかという危惧を聞いておきます。
  142. 松川道哉

    ○松川政府委員 公債の量も非常に多くなりますので、御心配の向きはまことにごもっともであろうと思います。これは大臣が必ず償還いたしますとおっしゃって、政治的な意図をはっきりと表明なさっておりますが、私どもこれをサポートする上で、繰り返し御説明がございましたように剰余金が出た場合にその全額を繰り入れる、あるいは必要に応じ予算繰り入れをするというようなことで、事務的にもこれを可能ならしめるように万全の努力をするつもりでございます。しかしながら、これが何年度に幾らできるか、何年度にどうなるかということがお示しできない。したがって償還計画表の上ではこの年にはきちっとお返しします。そういう意味償還計画ができ上がっております。  そしてまた借りかえの点でございますが、昨日も御説明申し上げましたように、四条国債でまいりますものは、従来の原則にのっとりまして六十分の十は現金で償還いたします。特例債の分は現金で償還いたします。そうすると六十年度、六十一年度、この両年度には、それぞれ現在の償還計画表のうちこれこれの数字が現金償還になりますということを御説明申し上げました。私ども、この現金償還は必ずするつもりでこれからの財政運営をやっていく所存でございます。
  143. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間がありませんから何ですが、建設公債だって、年限が来たら完全に返すというのが本来のたてまえだと私は思うのですね。しかし、それは便宜的に、しかもこれは政府だけでやり得ることだ、国会予算書の参考書類として配る程度のことで、予算に計上しさえすればどのようにでも借りかえができるというきわめて恣意的に運用をされ得ることである。したがって、現金で払うという約束をした分だけ少なくともそういう段階では借りかえ債が多くなる、勝手にそういうものが累増するということを指摘だけしておきたいと思うのです。  それからことしの国債費一兆六千六百四十六億、これは去年から比べて六〇%以上も急速に増大している。これはさらに倍増するというようなことで、ずっと国債費償還費、利払い費を含めて激増していくだろう、このことははっきりしているわけであります。  そこで、この五十一年度予算の中で、社会保障関係費の中から生活保護費、これが五十一年度は六千三百三十一億、社会福祉費が七千八百七十七億です。それから保健衛生費二千九百六十一億、そのほかに社会保障費としては社会保険費二兆何千億というのがあるわけですが、これを総合計しますと一兆七千億、大体国債費ととんとんぐらいということです。こういうようにして国債費財政硬直化のきわめて大きい要因として、やがて予算規模の中で占める割合が一〇%を超すというようなのが六十年にはやってくる、こういうことは先刻来の主計局次長のお話の中にもございました、一〇・二ぐらいにも六十年には必ずなる。こういうことになれば、まさに国債費というものが財政硬直化の非常に大きな要素を占める、こういうことになります。  そうなりますと、どうも福祉に対する、福祉切り捨てというようなものに結びつく可能性というものがある。先ほど申し上げたように、かなり社会的不公正を拡大するような要素というものを持っている、インフレ要素を持っている、そういうような中で、しかも今度は福祉敵視というような形が財政硬直の中から出てくるというようなことになったら、まさに庶民大衆は立つ瀬がない、こういう政策の中ではもはや政府に対して何の期待も何の信頼も置くことはできない、こういうような状況に立ち至るおそれもあるわけであります。したがって、公債発行政策による財政硬直化というものがそういう方向に結びついたら大変なことであります。この点についての大蔵大臣のひとつ明確な、そういう心配はありません——大衆を収奪するというか、言葉は激しいのですが、そういう要素というものを公債政策というものは本質的に持っているんだということは、ある程度断言し得る問題だと私は思うのです。そういうものであればあるほどこの政府支出、財政支出による庶民大衆への福祉というものは増進されなければならない、そういう方向と矛盾させてはならない、このことが非常に重要な問題になると思うのですが、大蔵大臣のこの点についての明確な所見をお伺いをして、時間も来たようですから、私の質問は終わりにしたいと思います。
  144. 大平正芳

    大平国務大臣 公債と庶民との関係でございますが、公債発行は、まず第一に庶民と無関係に行われたわけではないわけでございまして、庶民の福祉のための歳出財源を通例の税収または税外収入公債以外の収入で確保できない状況でございましたので、過渡的に公債によらざるを得ないという選択をいたしたわけでございまして、庶民の立場との関連におきましても公債発行ということは庶民と無関係に行われたものでないということをまず第一に御理解いただきたいと思うのでございます。  第二の点でございますが、しかし公債財政は庶民を収奪することになる傾向を持っておるので、この公債管理の政策につきましてはよほど警戒的でなければならぬという広瀬さんのお話でございます。これはごもっともに存ずるのでございます。私ども公債財政というのは大変例外中の例外でございまして、庶民の本当の幸せは健全な財政、健全な経済、安定した経済の中から生まれるわけでございまして、無理をした財政の中に生まれるわけでは決してないことは重々承知いたしておるわけでございます。さればこそ、なるべく早くこういう異例な事態からは脱却することに努力しなければならぬことは当然でございますので、先日来そういう方途について本委員会に御説明を申し上げ、御審議をいただいておりますこともそういう趣旨からでございまして、健全財政への復帰、これは庶民の幸せにつながる王道であることは仰せのとおり心得ておるつもりでございます。
  145. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 以上で終わります。(拍手)
  146. 田中六助

    田中委員長 山田耻目君。
  147. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大変会期が迫った忙しい日程の中でおいでいただいてありがとうございました。  私たち大蔵委員会は、今回の上程された法律案のうち、最も重要な法律であると言われておる公債特例法の審議を行ってまいりました。特に四月二十一日、両院議長の裁定に基づきまして異例の五党首会談が開かれて、そこで承認をされた第五項に基づきまして残り少ない会期を精力的に審議をしてまいりました。御存じと思いますが、まさに終日、夜にかけて審議を重ねておるわけです。それほど重要な法案でありますし、国民にとりましても、将来莫大な負債を抱えていく赤字公債でありますだけに、真剣にこの帰趨を見守っております。  その意味総理においでいただいたのですが、私は財特の問題に入って御質問をいたします前に、これほどわれわれが全精力を傾けて国民の負託を担って審議をいたしておりますのは、会期が五月二十四日までであるという、こういう前提に立っておるからです。五党首会談の受諾をいたしました裁定書五項目も、その前提に立って出されておるわけです。ところが、あなたが総裁として率いておられる自由民主党も、なかなか新聞などで散見いたしますと党内では不協和音が出ております。私は、こういうことなら別に歯牙にもかけませんけれども、あなた自身が、五月二十四日の会期というものは、もちろん憲法に定められたあるいは国会法十条に定められた通常国会の会期は百五十日であるということはよく御存じであります。そのあなたが非常に不安定で、動揺なさっているという気配がしてならないのです。九日、沖繩にあなたは参られました。自民党の主催の文化レセプションで述べられておる言葉を各社は伝えております。財特法はきわめて重要である、会期内に通さなければならないのがたてまえであるけれども、会期を延長しても通したい、こういう会期延長を示唆された談話を発表なさいました。私はきわめて遺憾です。会期延長を前提にして財特法の審議をさせるのなら、なぜ夜中にかけてわれわれは審議してきたのか。しかもそれは五党首会談が受諾をした裁定の精神にも反する。きょうはひとつそうした立場を受けて、会期延長に対して総理はどういうお考えをお持ちなのか、明確にお示しをいただきたいと思います。
  148. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 山田君の御質問お答えする前に、議長裁定の線に沿うて積極的に審議を進めるというのが五党首の約束でございます。また約束は議長の裁定ばかりでなく、各党首が私に対して約束をしてくれた、一人一人が発言された。その裁定並びに各党首の約束に従って精力的に大蔵委員会が御審議を願っておる真剣な態度に敬意を表しておきたいと思います。  沖繩のこの記者会見は、少し山田君の御理解に誤解があると思いますのは、私が言ったことは、会期は延長したくない、会期内で重要法案の審議を願いたい。記者から質問があったんですよ、会期延長しては悪いという特別の理由はあるのですかと言う。特別な理由はないけれども会期は延長しないで審議をしてもらいたいんだというのが私の真意であったわけです。そういう質問がなければああいう誤解を生ずるようなことは申さなかったのですが、何か会期を延長したら都合の悪い特別の理由があるのかと言いますから、それはないけれども会期内にひとつこの法案は議了してもらいたいんだという意味であったので、質問に答えて、それが非常に誤解を生ずるようなことになったことは、これは連日御審議を願っておる大蔵委員会の方々にも相済まぬことだと思います。真意はそういうことでございます。
  149. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 私はあなたのいまおっしゃっていることはあなたの気持ちとして聞くことはできます。しかし沖繩で発表なさいましたあなたのお気持ちというのは、その表現の上においても、新聞に書かれておる文字はあなたがふだん使われておるニュアンスがよく出ておる。会期内に法律を処理して通していかなければならないのはたてまえであるがと、あなたのたてまえ論がよく出ておるのです。たてまえであるが、しかし財特法などの重要法案は会期を延長してでも上げなければならない、こういうような示唆をなさったのを大きく取り上げているわけです。だから私は、あなたの本心の中には、会期を延長することが伏線として敷かれている、こういう気持ちを受け取ったのは私だけじゃないと思う。しかもあなたは総理大臣であるし、一党の総裁です。同じ日の九日、副総理は秋田の参議院選挙の応援に参りまして、絶対会期延長はしない、その立場に立って一切の法案審議に当たる、こういう決意を述べられておるのが同じ新聞に皆出ているのです。こういう新聞が出てまいりますと、私たちは何かあなたの手のひらに乗せられてくるくる回されているという気がしてならない。  もう一つは、あなたは行政府の長でしょう。この行政府の長が立法府のわれわれに対して会期は延長してやるんだからおまえらせいぜいしっかり審議せいよ、こういう物のおっしゃり方というのは、これと真剣に取り組んでおるわれわれに対しては非礼ですよ。行政府のあなたから国会延長するとか延長せぬとか命令されるゆえんはわれわれにはない。これは衆議院議長、参議院では参議院議長がすることです。その意味でもう一度あなたの強い決意を、会期延長するのかしないのか、しないという立場で法案審議を求めておるのかどうなのか、この立場をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  150. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この沖繩の点は実際に私の真意を伝えてはおらない。私は会期を延長しないで、この会期内にこの財政特例法は議了してもらいたいというのが私の強い願いでございます。
  151. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 それでは、確認するようで悪いのですが、会期内に重要法案を含めて法律は終了する、終了しないものは継続審議で残る、延長はしない、こういう御決意を述べられておるものと理解して間違いございませんか。
  152. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はやはりこの国会は会期内に終わる、そのために、いまできぬものは継続審議というお話でございましたけれども、できぬものというものは重要法案は余り考えておらないですよ。議長裁定にあるように精力的にやっていただければ、これはやはり重要法案と言われるものは全部こなしていただけるのではないか、こういうふうに考えておりますから、重要法案、議了できないものは継続審議、そういうふうには考えておりません。重要法案は皆ひとつ議了してもらいたい、会期は延長したくない、これは私の決意でございます。
  153. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 したくないという主観と、しないという、会期という、法律的な枠という立場からの御表明では大分ニュアンスが違うのです。したくないというのはあなたの主観ですから、私はここで絶対しないという言葉をあなたからお聞きしたかったのですが、これはここで一応おさめておきたいと思います。  ただあなたは、今度は自民党の総裁として——あなたの党の内部のことをお聞きすることは失礼だから私は聞きませんが、きのう十一日、中曽根幹事長と河本通産相が、夜東京都内の料理屋で、財特法は必ず会期を延長してでも通す、こういう御相談をなさったことを新聞は伝えています。あなたの党の幹事長と行政府におられる河本通産大臣とが、もちろん料理屋で何を食べられようと勝手ですけれども国会の会期延長をさかなにして議論をなさるということははなはだ不見識です。しかもそのときに、私たちがいま一番、これほど身の細る思いで議論を続けておるこの特例法を会期を延長してでも通す、こういうことを相談なさったことをきょうの各紙は伝えております。これに対してあなたは一党の総裁として、また行政府の長としてどういうお考えをお持ちですか、あなたの考えを明確に聞きたいと思います。
  154. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はそういう会談があることは知りませんでしたが、昨夜その会談をした後に河本君からそういう報告を受けましたが、非常に不思議に思うのは、そういうふうなことは一切話題にはなってないわけです。きょうになっても、これは絶対そんな話は、会期の話なんかしないんだということを強く否定しておりましたから、これは誤報である。会期を延長してでも通すんだというような、そういうことは話題に一切なってない、両人が強く否定しておりましたから、それは全くの誤報であるというふうにどうか山田君もお受け取りを願いたいのでございます。
  155. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 誤報ということになりますと、それはそれで終わりになります。ただ私は、この種の会合というのは、やはり新聞記者が憶測記事で取材をしておるものとは思いませんよ。私はやはり日本のジャーナリストをもっと信用しております。ちょっと私読んでみましょうね、誤報とおっしゃるには内容が余りにもはっきりし過ぎておりますから。「中曽根幹事長は、十一日夜、都内の料理屋で、河本通産相と約一時間会談、終盤を迎えた国会対策、党内情勢などについて意見を交換した。国会対策については、会期延長、財政法特例法案の取り扱いなどに重点が置かれたが、財特法案については、「会期延長問題も含めて今国会で成立を期す」ことで意見が一致した。」余りにも明白なんです。別に、取材を適当なところでし、新聞記者が適当に書いたのなら誤報であると言えるでしょうが、こういうふうに場所も明らかにし、会見した人たちも明らかにし、しかもこういう内容で相談をした。しかもそのうちで財特についてはこうだ、会期延長を含めて意見が一致をしたと報道しておるのですから、やはり国民が見ますと誤報だとは思わないのですね。あなたの九日のああいう沖繩での談話、秋田における副総理の談話、そうして十一日の幹事長と河本さんの会見内容の一致した報道、みんなそれぞれ——確かに国会の裏側ではいろいろな動きが起こっておることは私も事実の問題として承知をします。しますけれども、こういう慎重に審議を重ね、本当に努力をしてきた国会に対して侮辱ではないかな、こういう気持ちがいたしますけれども、再度その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  156. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本の新聞は真実を報道しておるし、するものだと思いますが、たまに誤報はあるのですね。取り消しもしておることは事実。これはやはり本人が否定をして、そうしてそんなことはないんだと言うのですから、どうか、そういう私の言うことより新聞の方を信じたいという一つの山田さんの人生観として承りますけれども、本人がそういうことはなかったんだと言っておるのですから、御信用を願うよりほかはございません。
  157. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 まあ新聞は時に誤報を伝える。しかも、これはその誤報を伝えた中の一つである。私の人生観までとやかく言われて大変ありがとうございますが、やはり火のないところに煙は出ない。今日の自民党内部のいろいろな事柄について私は何も言う資格がありませんから言いませんが、与党なんです。いろいろな画策をなさっていることも私はわからぬではありません。あなたの胸中もわからぬではありません。しかしながら、私はあなたの人生哲学についてとやかくは言いませんが、やはりこの種の問題が現実に国民の眼に触れるときには追及する責任が私にはあるのですよ。私の人生観じゃないのです。使命感なんです。その使命感と人生観と取り間違えられるような総理では、私は、都合の悪いことは何もかも誤報にされていくんじゃないだろうか、そういうことを恐れますよ。  ただ、私も人間ですから、あなたが総理として冒頭お話しになりました、会期は延長は絶対したくない、会期内に成立を望む、この言葉を私は大事にしますよ。だから、国会の会期延長ということがこの会期内に絶対出ないことを私は信ずるし、出たらまた国会議員の一人として改めてあなたに対して抗議をしたいと思います。万々ないということを前提にしてこの話はこれで終わりたいと思います。  それからもう一点お尋ねをしたいのでありますが、これは一般的な立法論、法律立法論でございます。  あの両議長裁定の第四項、刑訴法四十七条ただし書きの問題について明記してあります。このただし書きについてもいろいろな条件はあったようですけれども、万全を期してその措置を明らかにしていきたい、そういう御返事があったように思いますが、参議院の予算委員会の動向などを見てみますと、逐次三木総理自身が後ずさりをして後に後退なさっている、こういう感じに私は受け取れてなりませんでした。いま七兆二千七百億という膨大な赤字国債を含めた国債発行をする。それを規制いたしております財政法の四条、これは赤字国債は含めておりません。俗に四条国債という建設国債であります。このただし書きの運用について大蔵大臣は額面どおりそれを受けて前に進んでおられるわけです。同じ立法論の上からいきまして、もちろん本文が原則であり主文でありますけれどもただし書き条項についても、この法律ただし書きを最大限活用して適用していく、この法律ただし書きを最も敬遠しながら後ずさりで逃げていく、こういう立法論というのは、立法府のわれわれは承知できないのです。行政府のあなたにとっては、それもまた一つの方法かもしれません。しかし、それは許せないことです。あなたも議会の子として非常に古く、四十年近くこの国会に籍を置いてこられた方です。もちろん立法府の責任というものを御存じのはずです。  だから、立法論上から見れば、刑訴法四十七条ただし書きも、そうして財政法四条のただし書きも同じものである、同じ扱いをすべきである、こういう認識にお立ちになっておるものと私は理解します。これは当然のことで間違いはないものと思いますが、いかがでございましょうか。
  158. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、山田さん、後退というのはないのですよ、言っておることに。後退、後退ということをときどき新聞に書いてあるが、きわめて心外に私は思っている。私には後退はない。  いま御指摘になった議長の裁定も、山田さんよくお読みになればわかるとおりに、議長の裁定は、刑事訴訟法の立法趣旨を踏まえてということでございます。国会の国政調査に対して最善の協力をする、私は誠実に議長の裁定を守りたいと思っておるのでございまして、あの議長裁定には、ただし書きがどうの、これがどうのということは書いてはない。刑事訴訟法の立法精神を体してというのが議長裁定の場合に出た一つの裁定の重要な項目になっておるわけですから、私はこの裁定を誠実に守りたい。だから特使なんかでもすぐ送ったでしょう。そうして、やはり国会のそういう議長裁定の重さというものをよく自覚いたしまして、これを誠実に守りたいというのが私の今日の心境でございます。
  159. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 立法趣旨として、あの議長裁定第四項は、あなたがおっしゃいますように、刑訴法四十七条の精神にのっとり、と。そうして、ただし書きについても十分それは中に包含されたものである、こういう解釈を当時の議長、特に河野議長の介添え、そして五党首がみんな理解をしたはずです。そういうふうに理解をして、刑訴法四十七条の精神にのっとりとは、ただし書きも十分含めて実行していくんだといういまのあなたの答弁として私は受け取らなければ、立法上、いまの財政法四条ただし書きの項を忠実に実行する側と、手前勝手な解釈法律執行をゆがめる、こういうことになってはいけませんから、そこはかっちりとひとつ返事をしていただきたいと思います。
  160. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは議長裁定の場合にも五党首から、社会党、公明党ですかね、質問が出ましてね。それで、四十七条というものは書いてないけれどもこれも含むのかと言うから、議長が答えておりました。刑事訴訟法全体について申しておるのですから、全体の中には四十七条も入ることは当然でございます。こういうことを申しておりました。四十七条全体が入れば、前文も入れば、ただし書きも四十七条の中にあるわけですから、入るのが当然でございます。こういうことが裁定者、裁定を出した議長に対して野党の党首から質問があって、それを答えておりました。そのように私も解釈をいたすものでございます。  ちょっともう一つ特例公債財政法に予定していませんから、特例法を提出して、いま御審議を願っておる次第でございます。法治国家でございますから、法律というものを厳正に解釈して、それにのっとって行動をするということでございます。
  161. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 後のお答えは、私が法律を読んであげますから、少しお考え違いなさっていると思いますから……。前段の議長裁定四項目は、刑訴法四十七条を忠実にやるというのは、法体制の中にはただし書きを含めて忠実に守るということだ、含んでおるということにあなたはいま非常に力を入れておりますが、含めて実行するんだ、こういう決意が述べられたものと私は理解をいたします。  それから、いまの財政法四条のただし書きでございます。財政法四条というのは、国の財政公債とか借入金以外で財政をつくる、中心が税収ですね。公債とか借入金を含めてやってはならない、これが、あの戦前の財政政策の大変な誤りから、国民が苦難のどん底にたたき落とされていった反省の中から生まれてきた財政法なのです。昭和二十二年にできております。本文では公債なり借入金は除外をいたしておりますが、ただし書きの中では、ただし公共事業等については、「国会議決を経た金額の範囲内で、公債発行し又は借入金をなすことができる。」そうして二項では、そ場合には「償還の計画を国会提出しなければならない。」となっている。このただし書きを最大限活用なさって、大蔵当局は建設公債発行し、それでもなお足らぬから、歳入不足分に対しては赤字公債発行する、こういう立場で出されてきたのがいまこの委員会の審議の本筋でございます。だから、私は、四条のただし書きの非常に厳格な適用実施をやられておるので、立法趣旨から考えたら、刑訴法四十七条ただし書きも、この財政法四条のただし書きも、本文とただし書きとの関係においては何ら差異はないはずである。だから、あなたにお願いしたのは刑訴法四十七条ただし書きも、この財政法四条のただし書きと同じようなそういう適用を必ずしていただきたい、こういうことを申したわけで、あなたはやるとおっしゃっていますから、もう一度その決意を述べていただいて、次に移りたいと思います。
  162. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 財政法四条に予定してない事態ですから、ここに立法府に対してこういう法案を出して御審議を願うということでございます。一方の方は、刑事訴訟法の四十七条は、もうすでに内容も非常に詳細に述べておりますから、この場合に新たなる立法というようなものを今度の場合に必要とする事態とはちょっと比較するのに無理があると思いますが、とにかく、厳格に法律解釈をしなければならぬことはお説のとおりでございます。
  163. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 ちょっと性格が違うとおっしゃったが、法律論上は、四十七条ただし書きを忠実に実行するということも、この財政法四条ただし書きを忠実に実行するということとは全く一つの法運用でなくてはならぬ、その理念においては。これをあなたに求めたので、あなたは全く同じ立場で法運用をやっていくという決意が述べられたものと承知をいたしますが、よろしゅうございますか。
  164. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今度の場合は財政法に予定してない事態が起こったので、新たなる法律案提出して御審議を願っておる、こういうことでございます。
  165. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 いま私は公債特例法の話をしているのじゃないのですよ。公債特例法はこの四条公債とは別なんですから、そこで別の法律が出てきておるのですから。いま私が伺っているのは、昭和二十二年に定まった、戦前のあの大変な苦難な時代の原因を究明した上に立っての反省の財政法なんですから、この反省の財政法の四条とただし書き、この関連を申し上げているのは、立法論上のことを申し上げておるので、ほかの方に話を持っていけば何かこの回答になると思われたらいけませんから、その点をしぼって答えてください。
  166. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、ただし書きの条項も厳正に解釈することは当然なことでございます。
  167. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 当然なことだということでございますから、これから先の進展を厳正に見守ってまいります。万々、たてまえと本音の違いが出ることはないと私は思っておりますから、十分ひとつ、法律の運用の実施、確実、厳正にやっていただきたいということを期待して終わります。  次に本論に入りますが、もう時間もなってきましたので……。  私は、三木総理という方はなかなかりっぱな政治家で国会に長く議席を持たれて、あらゆる時期を克服されてきた方だと尊敬をしておりましたが、片一方で、お気の毒だと思っております。それは、あなたが総理になられて初めて、昨年補正予算公債特例法、いわゆる赤字国債発行することになりました。戦後初めてです。そうして、ことしはこの赤字分だけで三兆七千五百億、大量発行であります。しかも、私たちは今日まで審査を続けてきましたが、昭和六十一年には、安定成長の段階を見越して一四%ないし一五%の経済成長の推移をたどるとしても、大量の赤字国債発行に踏み切らざるを得ないという事態が明らかになってまいりました。昭和六十一年には九十七兆円という国債の残高を見るようになることが明らかになってきました。昭和六十一年度一つ試算中期経済計画で示されておりますが、その予算の一二%が国債金利償還の金額、十二兆に相当するという膨大な金額になっていくのです。しかも、それは十年たったら現金で償還をするというのが財政特例法の建設国債と違った内容のものです。建設国債は借りかえで支払うこともできるけれども、この赤字国債は現金で支払っていくのです。その結果あらゆるところに弊害が出てくる。財政硬直はもちろん、インフレの懸念もきわめて強くなってくる。しかも、公債政策が本来緩やかであるべき財政政策を縛り上げていく、こういう重大な危険に直面することが審議の過程で懸念をされる度合いが強まってまいりました。  それはあなたの総理の時代から始まっていくのです。だから私はお気の毒だと言っているのです。後世の歴史家なり国民はあなたのことをどのように批判するであろうか、私は本当に心配しますよ。私たちもこの時代の国会議員であり政治家であったのです。だから、国民の声を忠実に正しくあなたなり財政当局に反映をさせて、そういう危殆に瀕しないように国家財政を守っていかなくちゃいかぬ、そういうことを強く願っておるのです。あなたは総理として、ないものはしようがないよ、どんどん国債発行して後は国民がめんどうを見るよ、かつて戦前の高橋蔵相みたいなことは私は言われぬと思う。大平さんも言われなかった。そこで、あなたはどういう決意を持ってこの事態に対処していくのか、まずひとつあなたの責任を通してその使命を明確にここに示していただきたいと思います。
  168. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういう特例公債発行するような事態は好ましいことでないことは当然でございますが、とにかく戦後最大の景気の停滞、税収入というものが非常な予想外の不足を生じて、しかしやはり一つの行政上の目的というものは、適正な行政を確保していく、また国民生活の安定、経済の回復、福祉の充実という時代の要請にもこたえていこうとすれば、こういう事態というのは、それならばいまこういう特例公債発行しないで増税のような方法で行政需要に応じられるような余地があるかというと、こういう時期に増税のようなことは考えられない。どうしてもこういう場合には特例公債のような公債発行して、一日も早く景気を回復すれば事態は変わってくるわけですから、そういうことでこの事態を乗り切るよりほかにない。これは日本に限らずどこの国でもこういう事態に直面したときの財政の手法で、これは日本だけの問題ではない。世界各国がこういう手法によってこの経済の危機を乗り切っているわけでございます。したがって、こういうふうな特例公債まで発行するわけでございますから、歳出の面においてもこれは非常に重点的な配分をしなければならぬし、歳入の面においても適正な税収は確保しなければならぬ。そればかりでなしに、これはこういう安定経済成長の時代が長期にわたって続くわけですし、高度経済成長の時代は二度と来ないわけですから、そういう時代の変化に適応した一つの衣がえをしなければならぬわけですから、従来の制度とか慣行というものも絶えず厳しく見直していって、そして時代の変化に適合するように持っていって、こういう財政支出の面においてもできるだけこれを有効に、合理的に使用するというこの大きな責任が政府に課されておるということを強く戒めておる次第でございます。
  169. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 総理のお話を伺っていますと、確かに深刻な不況ですから、歳入欠陥を生じてきた、だから国債発行しなくちゃならぬようになってきた。そういう遠因、近因を問わず、その原因を私は伺っているんではないのです。この時代には一体政府としてどう対処するか、それがあなたの責任なんですよ。原因を明らかにすることだけが責任じゃない。それを繰り返して主張なさると、責任逃れをそこに置くと言われても仕方がない。だから、公債政策というものも一つもないじゃないか、たとえば特例法に指摘されておる償還計画というのもないじゃないか、一体これで政府は責任をとっておるのか、こういう議論がずいぶんこの委員会で出てきたわけです。  公債政策の中にもいろいろ出てきております。インフレの歯どめとしてできるだけ発行量を少なくしていかなくちゃいかぬ、あるいは四条が定めておる、また特例法が定めておるその精神個人消化である。そこで、国民が買いやすいようにと中期債の問題まで出る。個人消化が少なくとも七、八〇%の量を占めるようになるとインフレは絶対に起こりませんよ。財政硬直も起こらない。その手だてについて十分深い検討を加えて結論を導き出しながら公債発行に当たる。だから、私たち公債発行を全面的に反対しているのじゃないのです。そういう必要、可能な手だてをしていって、後世に悔いを残さないような手だてを講じながら万全の対策を立てて、この不況下、不足分については公債発行で対処していく。そういうことならば私たちはむげに抵抗はいたしません。それが全然なされていない。  だからその歯どめ政策、あるいはあなたのおっしゃっていました二つ目には歳入をどうふやすか、歳入をふやさなければいかぬのでしょう。昨年の九月、本会議で同僚議員である武藤山治議員があれだけるる説明いたしました。歳入増を図っていくためにはこれとこれとこれ等の問題があると六点に分けて指摘をして、その中に、第一番に挙げましたのが金融機関の貸倒引当金、この貸倒引当金はいま千分の十とって一兆数千億の残高を持っておるけれども、総額を持っておるけれども、それを千分の五にしたならば二千六百億の金が浮くじゃないか。金融機関は不良貸し付けをして貸し倒れ損をするという金額はきわめて少ないのです。統計上見ましても三十億か五十億程度しかない。それに何千億という金を積み立てていくのは銀行の利益隠しじゃないか。それを本当は諸外国のように実績主義にするのが当然だけれども、当面千分の五にして課税の対象にしたい。そうしたならば二千六百億浮くじゃないか。あるいはその他のいろいろな引当金制度あるいは配当金課税を強化していった方が——課税最低限が余りにも高い四百五万円であるとか、これらをずっと操作していく、最後に土地増価税を述べられております。国土庁の発表で見ると、この土地増価税をかけるのに、簿価と時価とその差が含み資産として九十五兆もある。これに五%の税をかけただけで、これはインフレ利得ですから、四兆七千五百億浮くじゃないか。あなたが総理になられたときに不公正を直していきたい、そうして大蔵委員会でかつて話されたように、不公正税制を改めていく、私とお約束をしました。不公正税制を改めるというのはこういうことなんです。そうして国民に全く理解を得て、コンセンサスを得て、それでもこれだけ足らぬから赤字国債発行しようと言えば、私はこういう議論はきょういたしません。だからインフレの歯どめ等につきましては、いまの中期債にして、個人消化を進めていくように公債政策考えていただきたい。そうして歳入増についてはそれを考えていただきたい。  もう一つ歳出については、御存じのように、今度特殊法人を一割、人件費が削減できるように配慮したいということを閣議で決められたようですけれども、この一つしかなかったでしょう。何にもなかった。だから歳出を不急不要なものは節約をして、歳入をふやすためには不公正税制を改めて、そうして、公債発行を縮小して、国民に問うべきである。これがあなたの責任だと私は思う。それらについてあなたの見解を述べていただいて私の質問を終わりたいと思います。
  170. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま御指摘に、武藤君の御指摘になったような点、いろいろな野党の御提案に対しても政府は十分に検討を加えておるわけでございますが、貸倒引当金も漸次引き下げを図っておるわけで、今後とも繰入率というものは検討をすべき問題であるということでございます。検討をいたします。  土地増価税というものは、これは実際に技術的に大きな問題があるわけで、所得がないのにこれに税をかけるということになるのですから、これは技術的に見て非常に問題があるわけでございまして、いろいろ武藤君の御提案についても、政府は実現可能なものは実現をしていきたい、実効の上がるものに対しては実効を上げていきたいと、努力はしておる点は山田さんもお認めを願いたいと思うわけでございます。  また、いま個人の消化促進を図るべきだということについては、政府も今後とも必要に応じて個人の消化を促進してまいりたいということで、個人の消化の促進策については、現在シンジケート団内部においても中期国債構想を含めて検討を進めているところでありますから、政府としてもそのシンジケート団の検討状態に留意して、これについては真剣に検討をしているところであり、必要に応じて新たな個人消化促進策を講じてまいりたい所存でございます。
  171. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 時間が過ぎましたので、これで終わります。(拍手)
  172. 田中六助

  173. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま山田委員質問を聞いていたのですが、三木総理はどうも事態の深刻さというのは、失礼だけれども余りちょっと御存じないんじゃないかという気がするのですよ。大変まじめな質問なんですけれども、これからわれわれが論じなければいかぬのは十年先の話をしなければいかぬわけですね。大変失礼な話ですが、十年先、総理はまだ国会にいらっしゃいますか。
  174. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どこまで長生きするかということは、どうも私自身が言うことは非常にむずかしいことであります。これは神様に任すよりほかにはない。
  175. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は三木総理の運命を聞こうということじゃなくて、いま三木内閣のもとにおいて、山田さんからお話があったように、初めて三木さんが三十八年ぶりに総理についたら、たちまちこれは赤字国債発行する、そして、これから、もうわれわれが見通せる中だけでも五年間はずっと赤字国債発行しなければいかぬわけです。先ほど山田委員の御指摘もございましたように、たとえば昭和六十年、十年先です。恐らく、三木総理国会にいらっしゃるかどうかわかりませんけれども、十年先に三木総理発行していった国債、この償還が来るわけです。そのときに、その前に発行した建設国債その他もありますけれども、十年先にはとにかく利払いもありますから、昭和六十年度には九兆三千七百億、一体そのときの予算規模がどうなっているんだろうかということになりますと、約八十三兆、八十四兆近い予算を組むわけですね。総理予算を組まれたから、八十四兆の予算を組むということがどういう大変なことかおわかりになると思いますが、そのうちの九兆四千億、これはまるまる借金の元金と金利に返さなければいかぬことになるわけです。もちろんこの計算はこのまま予算を一四%ずつ伸ばしていったという前提、それから五十六年以降も約七兆円近い国債発行する、こういう前提におきましても、予算を八十兆も組んでもその約一割一分、一割強はそのまま元利合計で返していかなければいかぬ、こういう事態になるわけです。その辺のことはかなり大変だということはおわかりになりますか。
  176. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 よくわかります。
  177. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そのとき、われわれの計算でいくと、もうわれわれの内閣ができて五、六年たっていることに予定はなっているわけです。ところが、いざ政権についてみたけれども、いや、三木内閣発行した借金ばかりで、何をやろうと思ってもこれは全くやる財源がない。恐らく、そのときに自由民主党がどうなっているかわかりませんが、このことの責任はわれわれにはとれないので、これは挙げて現在の政権、与党にあるわけですね。三木さんも予算を組んだ御経験があって、一割も元利償還に充てなければいかぬ、八十兆も予算を組んだけれども一割強の額は、これはもう元利合計そのまま即返さなければならぬという事態、これを想定して、じゃそのときに一体どういう財源をこの一割強の国債償還に充てるのか、そういうことは考えられて今度の膨大な七兆余に上る赤字国債、建設国債発行ということを考えられたのかどうなのか、その見通しはいかがでございますか。
  178. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 佐藤君のお話によると十年先に社会党の政権がおできになる、それまでには特例公債はちゃんと御迷惑のかからぬように処理をいたしておきます。これはいろいろ大蔵大臣もしばしば申し述べたように、こういうことで政府償還をいたしますということは申し上げたとおりです。ただこれは、特例公債というものは特例でありますから、こういう特例公債依存しない健全な財政に一日も早く返らなければならぬ。しかし、日本のこの財政経済の現状からして、それならば特例公債発行しないで予算規模を歳入に見合って縮小するということはほとんど不可能に近いことですね。いろいろ新しい財源として御提示になりましたことも実際に現実に即して実効が上がるかというといろいろ問題がある。そうなってくると、この場合、特例公債発行して、そうして景気の回復を図り、また一方においては国民の要望に沿うて生活の充実を図っていくということをすることによって、そして公債というものを政府が約束したとおりに償還していくということが、政策の選定としてはほかにないのではないかということで政府はこういう処置に出ることになって御審議を願っておるわけでございまして、これは償還のいろんな方針に従ってこの問題は長く国民に対して財政上問題を残すようなことのないように借りかえは絶対にしない、十年間に処理をいたしたい所存でございます。
  179. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、私は大変失礼だけれども十年先はというふうにお伺いをしたわけですね。確かにそれは時の現総理としてはそういう御発言になると思うのです。ところがそれは借金した以上はちゃんと裏づけがあって十年後には、いまは返せないけれども十年間にはちゃんと積み立てて返せますという目安がなければ、これは三木総理の言というのは全く裏づけがないことになるわけであります。  三木総理にお伺いをいたしますけれども、いまは確かに不況だからこういう特例債発行してでもとにかく景気の回復の軌道に乗せなければいかぬと、これはそうでしょう。しかし、それでは総理が予定をしておるような五十一年度六・五%という経済成長、これが達成をした暁には、税制はこのままで置いてもちゃんと財源は入ってきて赤字国債はだんだんと発行の額は少なくて済む、こういうふうにお考えでございますか。
  180. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最初に私が申しましたように、経済の路線というものにこういう大きな転換があったわけですから、そういうことに見合って税制においても一般的に見直していかなければなりませんし、だからできるだけ特例公債依存する依存度を少なくしていくことは当然政府考えなければならぬことでございます。しかしその前提になるものは、税制もあるいは制度、慣行も皆やはり高度経済成長の路線の上に膨張してきたわけでございますから、そういうものは見直していく責任があることは当然でございます。
  181. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、整理をいたしますと、確かにいまの税制というのは高度成長下における税制であって、これから安定成長に変わっていくのだから、税制も、ある程度の財源が確保されるように税制自体を改革していかなければいかぬ、安定成長下に合った税制に改革をしていかなければいかぬ、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  182. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのとおりです。
  183. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、それはどうして五十一年度の税制で手をつけられなかったのか、そこが問題なんですね。山田委員も御指摘があったように、やはり歳出の方はこういう情勢だから切れるところは切る、それから歳入の方もできるだけ赤字国債には依存をしないというのが大原則ですから、その意味では五十一年度からなるべく赤字国債の額を少なくするように、赤字国債依存度をなるべく少なくするように税制の大改革をこの五十一年度からすべきではなかったのか、その点について総理はしたという認識なのか、それともいやまだ足りぬという認識なのか、その点はいかがでございますか。
  184. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 社会的不公正というものは税制ばかりでもないわけです。たとえばインフレ、インフレぐらい社会的不公正をもたらすものはありませんから、そういうふうなインフレの抑制あるいは物価の鎮静というようなことも、これはやはりある意味において不公正是正の柱をなすものである。また税制においての見直しも、御承知のように土地税制とか医師の課税の強化とか企業の特別措置の見直し等相当に今年度においても行ったわけでございますが、これで十分だと私は言っておるのではない、今後とも税制については大きな経済路線の転換ということを踏まえて見直していかなければならぬことは言うまでもないことでございます。五十一年度にやらなかったわけではない。
  185. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 主税局長、じゃ、ことしの税制の改正によって一体幾ら増収になったのですか。丸い数字で……。
  186. 大倉眞隆

    大倉政府委員 租税特別措置の縮減合理化によりまして平年度約千百五十億円、初年度では約百五十億円の増収と予想いたしております。そのほかに選別的に自動車関係諸税の増税を行いましたので、これが五十一年度に千七百四十億、一般会計ベースで増収と見込んでおります。
  187. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま答弁があったように、どう見積もったって平年度三千億の増収しかやってないわけですね、税制改正は。そうしますと、片方では三兆七千五百億の赤字国債発行していながら、税収に頼るところは、どう大目に見積もったって平年度で三千億の増収だ。これではとてもじゃないけれども五十一年度に、いま申しましたようになるべく依存度を少なくするという政策が実行できたかどうかわからない。  しかも、総理も御存じだと思いますけれども、これも委員会の中で十分審議をしたのでありますけれども、何とか五十五年までに赤字国債をゼロにしたい、そのためには一体どういうふうにしたらいいかという試算大蔵省から出してもらったわけですね。そうしますと、租税弾性値を——ちょうど昭和四十七年から四十八年のあの全く狂乱インフレのような状態のときの租税収入の弾性値、つまり、あのくらいの名目経済成長をしますと、いまの税制でも予定の税収が上がってくる。しかしこんなことは望みようがないわけですね。そうなってきますと、一体どこに増収の道を求めていくのか。これについてこの委員会でいろいろな委員の方からずいぶん御指摘があったわけでありますけれども所得課税なのか、いまやっているような所得税、法人税というものを若干ずつでも負担を大きくしてやっていくのか、それとも消費課税、たとえば付加価値税のような消費課税を新たにつくってやっていくのか、あるいはわれわれが提案をしておるような土地に対する増価税、こういった資産課税ですね、あるいは富裕税のような性格のもの。所得課税消費課税あるいは資産課税、こういったものの中でこれからはとにかく負担を多くしなければいかぬわけです。私たちは何も増税自体原則的に反対をしているわけじゃなくて、それ自体もやらなければ財政がもたぬわけですから、しかし問題はどこに負担を求めていくかということが問題になるわけです。そうしますと、いま申しましたように、所得課税に求めていくのか、消費課税に求めていくのか、資産課税に求めていくのか、一体どういうところを総理の頭の中にはこれからの増税策として考えているのか。この点についてはいかがでございますか。
  188. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これからの経済の推移を見て、自然増収分というものは一体今後どれくらいあるものかということもいまやはり予測はむずかしい。そういう場合に、そうならば自然増収を期待する以外に新しい税制を考えるかという問題は、確かに問題として佐藤君の言われたとおりありますが、一般に言われておる付加価値税というのはいろいろな弊害の面もあるわけで、政府はこれをひとつやろうということに踏み切っているわけではないのです。税制調査会などにおいても今後十分に御審議を願って、そしてこの問題は検討をしなければならぬ問題ですが、これからの新しい税金はいま言われたように、どういう点に重点を置いて増税考えておるのかということは、政府はいろいろ検討はいたしますけれども、まだ結論は出てないわけでございます。これは自然増収分とも関連のある問題でございまして、いま結論が出てないというのが正直なお答えでございます。
  189. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私はそのペースを少し速めてもらわなければいかぬと思うのです。またこれは政府の単純な試算でありますけれども、中期財政展望でも、来年もまた三兆円余の赤字国債、再来年は二兆円余の赤字国債、そして何とか五十五年には赤字国債だけでもせめてゼロにしよう、こういうふうに考えている中で、国民の側にとってみると、結局国債費がふえるといっても、これは国民の税金で最終的には払っていくわけですから、借金をするといってもこれは国民負担になってくるわけですね。しかももう一つは、その返す財源のためにはどこかから税金を取らなければいかぬ。そうなってきますと、一体それがどこに向けられるのかということは、国民としては非常に関心を持たざるを得ないわけです。そうなってきますと、何と言ってもわれわれの任期はことしの十二月九日までしかない。ことしの残された期間の中には必ず解散をするわけでありますから、恐らくその後三年か四年は解散がないんだと思うのです。ただ、自民党が今度のことでがくっと減るかもしれませんから、二年くらいでまた選挙をするかもしれませんけれども、そうなってきますと、とにかくわれわれ財政の専門の委員会である当大蔵委員会で得た結論というのは、この五年間というのは、五十五年まではとにかく財政的には大変だぞ、これは何らかの増税をしなければいかぬということになっているわけですね、数字は申し上げませんが。それを一体どこにその負担をかけていくかということは、やはり国民にとって、しかも将来のある国民にとってみれば大変重大な関心事であるわけです。  したがって、私の提案としては、三木さんが七月に解散なのか九月に解散を考えられているのか、十一月なのかよくわかりませんけれども三木さんには解散権がないとかいう話もありますからよくわかりませんが、解散の時期には、現在の政権を握っておる政党として増税案というものはこういうものであります。そして五年後には赤字国債はせめてゼロにしますという計画、プランを国民に提示して、総選挙の中で国民に審判を求めるということは非常に私は重要なことだと思うのです。その決意はおありでございますか。
  190. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、これからは国民に不人気なことでも、やはり責任を持っておる与党として言わなければならぬ。これからはいいことばかりでやれる時代ではないわけです。しかし解散という時期に、こういう増税案の輪郭を示すような段階にはならぬ。もう少し経済の推移を見て、自然増収どもどの程度になるものかというようなことも考えなければなりませんので、総選挙だから不人気なことを言いたくないという考えはありません。これから大いに政府は不人気なことを言わなければならぬと思うのです。実際問題として、解散というものは今年中にやらなければならぬわけですが、その時期に、いわゆる税収に対しての具体的な自民党政府としての考え方を述べるような段階にはならぬと思いますよ。しかし選挙に増税案というものを持ち出せば選挙に悪いとかいいとか、そんな配慮はありません。不人気なことでもこれからは言おうと思うのです。しかし実際問題としては、それまでに税収に対する具体的な計画を立てるまでには至らぬと思いますから、前もって佐藤君に申し上げておいた方が親切な答弁だと思います。
  191. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 三木総理の言を聞いていると、どうも実態の把握に深刻さが足りないのですよ。大平さん、いま三木総理は私に対する答弁の中で、二度にわたって、自然増収がどういうふうになるかまだ見なければわからぬから、次の来年度からの増税案はどういうふうにするかわからぬということを答えているのですが、いまからそんなに一兆も一兆五千億も自然増収が出てくるような経済情勢というものが、大平さんどうですか、想定できるのですか。
  192. 大平正芳

    大平国務大臣 総理とあなたのやりとりを拝聴しておりまして、佐藤さんの御心配は大変よくわかりますけれども、あなた非常に性急だと思うのです。去年、ことしの経済は、私がたびたび申し上げておりますように、一般的な増税ができるような経済ではない。しかし減税は御遠慮いただきたい。いま大倉君から申し上げたように、選択的に約三千億の増収をやっとこさお願いできる程度の病身なんでございます。あなたの技術論の根拠には、非常に健康体でございますならば、三木総理におかれましても私の場合も一日も早く増収措置をとっていきたいわけなんですけれども、そういうことは長い、彫りの深い不況に呻吟いたしておりまする状況でございますので、できないわけでございますから、ここ五十年代前半の時間帯を危機克服のために与えられたいという意味でわれわれの財政収支試算も差し上げてあるわけでございまして、実態の把握、それからこれに対する危機感が総理や私が弱いというわけでは決してないのです。あなたのように性急でないということなんです。あなたの場合は非常にまじめであられるけれども、非常に性急であられるという点が違うことと、それからあなたの場合が、経済の認識が非常に健康体であれば佐藤さんの言われるとおりわれわれもやるわけでございますけれども、健康体と言われぬから私ども時間をかけてやっておるんだという二点が違うという意味でございまして、自然増収の問題にいたしましても、こういう状況でございますから私ども一兆とか二兆とかいうような大台において自然増収云々というよりも、二千億とか三千億とかいうような自然増収も非常に大事にしておることは御案内のとおりでございまして、総理においてもいま言われましたように、どれだけの自然増収が期待できるかについてもいま定かな展望が持てないけれども、そういったものも見定めながら、新たな負担をどの程度どういう形で国民にお願いするかということについては、もっと慎重な構えが必要でないかという考え方をお述べになったものと私は思います。
  193. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 全般のことでもいろいろと論議したい点はありますけれども、そのことはさておきまして、いずれにしろ五十一年度経済——確かに五十年度は、ざっとまるい数字で二千億くらいの剰余金が出る予定になるわけですね。これは委員会の中で詰めたわけです。何が出たかといえば土地税制なんですね。土地をとにかくことしの一月一日から税金が高くなるから早いところ売っておこうということで出たんです。これは一回税収で取ってしまえばおしまいですから、それが出ただけなんですよ。五十一年度予算で、税制のこれからの展望を変えなければいかぬほど剰余金が出てくるかどうか、自然増収が出てくるかどうか。また、経済成長というのは五、六%をもくろみとしているわけですから、そんなに大幅な自然増収が出てくる経済情勢じゃないわけですよ。ですから三木総理が言われるように、今後の五十二年度以降の税制のあり方について、自然増収も見てみなければわからぬというのは、私は理由にならぬと思うのです。出たってそれは三千億、四千億——いまそれだって、財布が乏しいときにありがたいことであることは間違いないけれども、それによってこれから五年間の展望を考える場合に、その額が税制を変えるというような状況じゃない。  それから三木総理答弁を聞いてみますと、もう一つはやはり経済が好転さえすればいまの税制でも何とか採算は合っていくんだ、均衡財政になるんだ、こういう考えが、認識がまだ端々に見えるんですね。端々に聞かれるんです。いまの御答弁の中でも、どうも経済情勢を見てみないとわからぬと、それはだれでも、経済学者でも当たったためしがないのですから、その辺のアローアンスはわれわれもわかるわけですけれども、どうも三木さんの頭の中には、いまの税制でもこれがある程度景気が乗っていけば何とか均衡財政にできるんだという認識があるんで、どうも口では確かに高度成長から安定成長でこれからは変えなきゃいかぬと言われるけれども、その認識の深刻さというのはまだ足りないように私は思うのです。どうも三木さんの答弁を聞いていますとそういう気が——私はいまわずか二十分ばかりの御答弁の中で聞こえるわけですね。これは私の間違いでしょうか。
  194. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そんなに安易なものだと私は考えてはいない。これは一〇%を超えるような成長が五、六%というのは、成長が半減するわけですからね。これは大変に厳しいものだ。この試練というものは、政治、経済、社会各般にこれから乗り越えなければいかぬわけですから、私はそう甘くは見ていないんだけれども、こういう大きな激動期ですから、経済の動向なども見てみないと新しい税収策というものを考える場合に、いますぐこれに対して富裕税という新税を創設するとかなんとかいう、それは税というものは国民生活に与える影響というものは非常に甚大なものがございますからね、そんなに拙速ではいけない。この問題は経済の動向等をにらみ合わせて、相当税制調査会などにおいても十分な審議を願わなければならぬし、今後も真剣に研究しなければならぬが、いまここでこういうことですということを申し上げることは、時期として適当でないというのが私の考え方でございます。
  195. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私も七年間ここでいろいろな、大平さんで四人目の大蔵大臣でありますけれども——五人目かな、ですけれども、いつも日本の経済というのは、いま三木総理から答弁があったように、一歩一歩おくれてきたんじゃないでしょうかね。四十七年の過剰流動性のときだって、あるいはドルショックのときだってオイルショックのときだって、いつもわが国の経済の体制というのは一歩一歩打つ手がおくれてきた。これが今日までの、少なくとも私が国会に来てからの経済の対応の仕方だったんですね。それでは後手後手に回って、健康体が健康体でない、半病人の日本経済がますます病状が悪くなってくるから、私はこれは早目に手を打たなければいかぬ。しかもこれはあくまで試算でありますけれども、中期財政展望の中では五十五年に何とか税を——非常に無理なんです。私は無理だと思っているんです。しかし、とにかく大平さんの答弁の中でも、ある程度これは政治的な責任をもって五十五年までに赤字国債ゼロにしたいというわけですから、それならばそれの財源措置考えなければいかぬ、税制を改革しなければいかぬ。それはもうすでに五十二年から始めていかなければ間に合わぬわけですね。  そうなってくると、これは非常に大きな問題でありますし、したがってことしいっぱいには、いずれの機会かに解散があるわけですから、それまでにやはり国民に提示をして、あと二年なり三年なりのわが国会に任してもらう、これはやはり政治の常道じゃないですか。国民に片方では借金を押しつけ、片方ではどこかに増税をしなければこれは財源がないわけですから、返せないわけですから、そうなってくるならば今度の解散、総選挙のときに国民の前にやはり——総選挙というのは、三年なり四年なりの負託を受けるわけですから、その期間の問題なんですから、どういうところにどういう増税をするかというのを国民に明らかにするというのは、政治の責任じゃないでしょうか。再度御答弁をお願いしたいと思います。
  196. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 総選挙の場合には、これからの財政の展望というものは当然になければなりませんが、その場合に、政府税収について具体的なこういうことだということに結論が出るように私は実際にならないんではないかと思いますから、そこで私はこうやって申し上げておるわけです。佐藤君のような若い有能な代議士をだまかすようなことがあってはいかぬと思いますので、それで私がこうやって慎重にお答えをしておるわけでございます。
  197. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 実際にならぬのじゃないかでは、国民の側からいったら総理済まされないんじゃないですか。今度の総選挙のときの大きな一大争点で、われわれが負託を受ける向こう五年間の経済に関することですから、やはり総選挙までにそれを間に合わして、国民的な論議、総選挙の中の大きな争点として、これからの財源問題、負担率の問題、そしてどこに課税をし、直間比率はこれでいいのかどうなのか、こういったような、だれかが税を負担しなければいかぬのですから、どこに負担をしてどのくらい、どういうことに負担をしていくのかというのを国民に問う。もうことしの十二月九日以前に総選挙があれば、あと三年なり四年なりは、原則的には、まあ常識的に考えてないわけですから、そうなってくるとそれに間に合わせるというのは、やはり総理としての国民に対する大きな責任じゃないですか。実際はどうも間に合わぬのじゃないかということでは、一国の総理として指導性に欠けるんじゃないですか。
  198. 大平正芳

    大平国務大臣 五十年代前半には赤字財政から脱却をしなければならぬということでございます。そしてそのことをなし遂げるには、佐藤さんおっしゃるように五十二年からスタートしないといけない。仰せのとおりだと思うのです。問題は五十二年度予算、税制改革におきまして、あなたが期待されるような赤字脱却への全貌を示せという御要求でございますが、まだそこまでの全貌をお示しできる段階には立ち至らないのではないかというのが総理お答えでございます。私どもは、だからといって五十五年を先に延ばすというようなことはいたすつもりはないのです。また、五十二年度からスタートすることをやめるわけでもないのです。われわれはこの長い不況の中でさいなまれた経済、これは相当な後遺症を残しておるわけでございますから、そのあたりをよく見きわめること、そしてこれに相当な負担をお願いしなければならぬわけでございますから、これにはよほどの用意と慎重な診断を必要とするわけでございますので、総理のおっしゃるとおり総選挙前にこの税別改革の全貌を具体的にお示しするというまでには至らないと私は考えるのであります。税制調査会その他の審議も経なければなりませんし、容易でない仕事でございます。私ども問題から逃げるわけではございませんで、手順といたしましては、佐藤さんがおっしゃような手順になかなかいかないのじゃないかと思うのでございます。しかし問題は五十二年度から出発すること、終点は五十五年にはちゃんとやるという約束はちゃんと果たしたいものと私ども思っておるわけでございます。その点は佐藤さんとちゃんと一致しておると思うのであります。
  199. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 総選挙を前にして、三木さん恐らく解散をやられるつもりなんでしょうから、そのときにやはり国民に五十二年度から負担はこうなるんだ——これはだれかが負担をしなければいかぬのですから、しかもその後四年間は原則的には選挙はないのですから、やはりこれを示すのが政治責任だと思います。ですから、いま三木総理なり大平大蔵大臣答弁は決して納得できるものではありません。しかし、そのくらいの程度しかいまのところお考えがないということだけは認識をして、最後に一問だけお伺いしておきます。  それは、一つ国債発行というのはなぜ大きな抵抗があるかといえば、これは当然インフレのことなわけですね。したがって、山田委員から御指摘があったように、なるべく個人消化を進めたらどうか。そしてそのためには、たとえば五年の中期債のような国民がなるべく買いやすいものにしたらどうか。そして個人消化をなるべく進めようという話があったわけであります。このことについては、委員会でもかなり質疑をしましたので省きますが、いまもう一つ問題なのは、国債もそうですが、地方債も大変な額になっているわけですね。ことしは合計、すべてを入れまして四兆八千億の地方債計画になっている。恐らくもう累計が二十兆ぐらいに、たしかなっているのじゃないかと思いますけれども、これも地方自治体は大変な債務をしょっておるわけですね。ほとんどこれが縁故債だ。公募なんというのは一割あるかないかぐらいの情勢ですね。そこで自治大臣がこの前地方債白書というものを出して、その中で大きな柱として、地方債を消化する地方金融公庫というのをつくってもらいたい、そこで何とか消化する、それから縁故債は日銀の適格債にして、いまの国債と同じように一年たったら、まあ成長通貨の中だということだと思いますけれども、買いオペの対象にすると言う。こういう地方債白書が出ているわけでありますけれども、もしこのことをやったらもう大変なまたインフレを引き起こすことになるだろう、これはやはり問題は非常に大きいので、これをやったらますます通貨インフレを引き起こす大きな原因になってくるだろうというふうに私は考えるわけであります。  総理として、自治大臣がつくった地方債白書、特に大きな問題を含んでおりますこの地方金融公庫の問題について、現状ではどういうふうに考えていらっしゃるか、答弁をお伺いしたいと思います。
  200. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 資金調達力の弱い市町村などに対しては政府は優先的に政府資金を回そうということです。地方債の消化については地方銀行と地方団体は地縁的なつながりもありますから、やはりその方の消化の方が実際的である。これについては佐藤君御指摘のように容易ならぬものがありますから、大蔵あるいはまた自治両省で協力して完全消化に当たりたいと考えておる次第でございます。
  201. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 終わります。
  202. 田中六助

    田中委員長 増本一彦君。
  203. 増本一彦

    ○増本委員 総理にお伺いいたします。  いまこの不況のもとで需給ギャップが非常に拡大をしているということが言われている。こういう深刻な需給ギャップが起こっている原因というのは、これは一つにはこれまでの成長を促進する税制、特に技術革新のテンポをどんどん促進していくというようなことで、たとえば機械設備等について特別償却、割り増し償却、さらに償却期間も非常に短くするとか、そういうことから過剰生産恐慌が生まれているということも一つの原因ですね。そういう点ではこれまでの財政の仕組みといいますか基本的な構造が、高度成長促進型といいますか、そういう面に非常にパターンとして偏っていたということが言えるのではないかというように考えるわけですが、まずそういう意味総理は、これまでの税制や財政の仕組みが高度成長型の仕組みで、高度成長を保障するような仕組みだというようにお考えになっておられるのかどうか、その点からお伺いをしていきたいと思います。
  204. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いままでの仕組みが高度経済成長型の仕組みであったということは増本君の言われるとおりだと思います。ただ、高度経済成長というものに対する評価については、あなたと違いがあるかもしれない。しかし、そうであったことは事実でございます。これからは、もうその高度経済成長を支えておった条件は失われてきたわけですから、今度は安定成長の路線にいやでもおうでも切りかえざるを得ないということでございますから、いままでと仕組みが違うわけですから、これに対する対応策というものも考えていかなければならぬ。これがいま日本が受けておる大きな試練の内容だと思います。
  205. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、私が総理といろいろ経済問題あるいは財政の問題でお話をする上では、どうしても「昭和五十年代前期経済計画概案」、これをベースにした方がお話がしやすいと思いますので、それに乗りながら少しお尋ねをしていきたいと思うのです。  いま総理が、これまでの税財政の仕組みが高度成長型であったということはお認めになった。この経済計画の概案を見ますと、まず冒頭の前文の部分で、いまや成長中心から生活中心に移っていかなくてはいかぬ、こういうように指摘をしているわけです。そこで、それではこの生活中心の税制とか財政の仕組みあるいは経済の仕組みというものが、具体的な、国民理解できる形でいまや提起をされなければならない、こういうように思うわけです。  そこで、生活中心の税財政の仕組みあるいは経済の仕組みというものを一体いかなるものとして総理はお考えになっておられるのか、ひとつこの際明らかにしていただきたいと思います。
  206. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いままでは量的な拡大を求めてきたわけですけれども、これから質的な充実に向かっていくということは、国民の生活の充実あるいはまた福祉の増進ということにあると思うのですが、生活の充実ということは、ただ個人が生きていくということだけではなくして、生活環境を通じて国民生活の充実を図っていくということでございますから、いままではやはり量的拡大ということに重点を置かれたために、生活関連の公共投資などというものは産業投資に比べて立ちおくれたことは事実でございますから、そういう生活環境の整備充実といいますか、こういう面で、生活というものの環境整備をしていくのに、たくさんの問題があると思いますね。そういう問題はこれから公共投資なんかの中においても重点的に取り上げなければならぬ。  生活という問題でも、これは産業と全然切り離して生活というものをごく狭い範囲で考えるわけにはいかない。今日の産業というものは国民の雇用とか生活を支えておるわけです。そういうことも考えて、これは非常に広い関連を持つわけでございますが、しかし、追求していかなければならぬのは、国民生活の充実という点について政治のアクセントをつけていくということだと思います。
  207. 増本一彦

    ○増本委員 この経済計画概案を見ますと、いわば生活中心ということの中身は、政府が出されているものの三ページを見ますと、「社会保障、住宅、生活関連社会資本、教育、保健医療サービス等の充実を図りつつ、我が国経済を成長中心から生活中心へと転換していく必要がある。」という記述になっているわけですね。だから、これが生活についての理解をする上での一つの手がかりになるというように思います。  そこで、いま概略おおよそのところをお話しになられただけでは、これはいわば総論の総論であって、具体的にいままでの高度成長中心の税財政の仕組みというものは依然として今日もまだ残っているわけですね。昭和五十一年度予算編成、それから、それに基づいて税制改革そのものが基本的にやられていませんから、現在まだそういう構造というものが依然として残っているという面もあるでしょう。この点の総理の認識は同じだろうと思いますけれども、いかがですか。
  208. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、国民の要望に沿うためには、やはりこういう方面の充実が必要でございますから、政府は昨年度予算編成、今年度予算についてもこういう点については配慮をしておる点は、増本君もお認めになるとおりだと思います。     〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕 いま挙げられたような社会保障とか住宅とか教育とか医療制度であるとか、こういうものはやはり生活関連という中の一つの中心問題であることは、私もそのように考えます。
  209. 増本一彦

    ○増本委員 この高度成長型の税財政の仕組みを生活中心に変える。そこで、一応政府の方のこの経済計画の断案——近い将来には、概案ではなくてもっと具体的なものもお出しになるでしょう。それを下敷きにした上で、じゃ一体これに基づく税制がどういうものなのか。特に昭和五十年代前期にはどういう年次プランで進められ、転換をしていくのかとか、あるいは財政運営についてはどういうように生活中心へと転換をしていくのか。  この経済計画の概案を拝見いたしますと、たとえば四ページには、財政構造の改善が必要であるという指摘まである。そうすると、ともかく改善の必要ということは計画の中で言っていらっしゃる。それをいかにして具体化して年次的なプランのベースに乗せるかということ、これが非常に重要な問題だと思いますね。そういうものを策定されて、国民の前に提示される御用意があるのか。  それからもう一つは、それでは、もし御用意があるとしたら、それはいつごろそういうものを具体的に御提示なさるのか。  この二点についてお伺いをしたいと思います。
  210. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま私は、この大蔵委員会に出る前に経済審議会がございまして、その答申を受け取ってここへ来たわけです。  長期経済計画、これは五カ年間の計画です。これはいま受け取ったばかりで、部厚いものを受け取った。これをこれからの政策運営一つの指針にしたいと思っておるわけで、閣議でも決定しますし、この問題を一つの指針として、いろいろな具体策は政府として検討していかなければなりません。  これは非常に広範な問題に触れておるわけですが、これを具体化するのには、問題によっては多少時間のかかる問題もございます。確かにこの中にも税収の問題にも触れて、「当面は現行税制の仕組みの中での増収を図るとともに、経済情勢の推移に応じて将来における新規財源についても検討する」ということになっている。「経済情勢の推移に応じて」というふうに書いてございますから、したがって、こういう一つの答申にも盛られているような線で少し一いままで佐藤君、いろいろ熱心な御質問があったのだけれども経済情勢の推移という点も、これはやはり新規の財源を求めるということになれば、国民生活にも非常な影響を与えますから、この答申が出てすぐにというわけにはいきませんので、この点についても多少時間をかけて検討いたしたいと思っております。
  211. 増本一彦

    ○増本委員 いまの御答弁では、ともかくこの計画に基づいて、これをベースにして、財政の仕組みの転換、税制の仕組みの転換というものを一応お出しになるというように承ってよろしいわけですね。  そこで、いま総理が触れられました今後の税負担あり方の問題です。総理もいまお読みになりましたように、「当面は現行税制の仕組みの中での増収を図る」こういうように書いてあります。これは経済情勢の推移というものにかかわると思いますけれども、大体この答申の概案については閣議でもお認めになっていらっしゃいますから、その上に立って総理がひとつお考えになっていらっしゃるのは、「当面は現行税制の仕組みの中での増収を図る」という、この「当面」というのは昭和五十一年度だけなのか、あるいは五十二年までいくのか、それとも赤字国債が解消できないで、赤字国債をまだ発行せざるを得ないという一応のその年次までは含むのか、ここらの「当面」ということについてのこの面での考え方を伺いたいと思います。
  212. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 五十二年度だけとは考えていないわけです。五十一年とか二年というのではなしに、これは絶えず現行税制の中で、不公正是正という問題もございますし、また、こういう特例公債まで発行するわけでございますから、できるだけ税収の増加を図っていくという努力はしなければなりませんから、一年限りというものとは解釈していないわけでございます。
  213. 増本一彦

    ○増本委員 五十二年というのは「当面」に入るのですか。五十二年というのは来年度ですね、来年度は入るのですか。
  214. 三木武夫

    三木内閣 総理大臣、五十二年においても、現行税制の中で増収を図れる道はないかということを検討することは当然でございます。
  215. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、先ほど総理も高度成長型の税制である、それを生活中心に転換しなければならぬ、この点はお認めになっておる。これまでの高度成長の中で国民の意識の中にも非常に不公正が拡大をしているということで、総理自身は社会的不公正の是正ということを一つ掲げておられたわけですね、今日も恐らく変わらないだろうと思いますが。そうすると、税制の不公正ということが国民の中に非常に怨嗟の声として依然としてある。この点の解決がされていない。そこで不公正税制を是正していくための、少なくとも何年までには国民が言っている不公正の税制についてはともかくやめよう、あるいは改善をしよう、こういうものがはっきりと示されるということが実は非常に必要だと思うのです。  特に、総理も指摘されたこの税制のところの前段を見ますと、税及び税外負担については最終年度までに三%引き上げることを予定するというようになっています。そして新規の財源については経済情勢の推移に応じて検討を進める、こういうくだりです。だから総理も先刻御承知だと思いますが、要するに不公正税制ですね。現在の不公正税制というものが是正されるということが前提にない限り、さらに三ポイントの税負担国民に求めるということがこれではできるはずのものではないと思います。これは政治道義としても当然だと思います。そういう意味国民考えている不公正税制、これを、少なくとも総理自身の公約として社会的不公正の是正ということをおっしゃっているわけですから、これはともかく何年以内には解決してしまいますというようなことがはっきり示されてしかるべきだと思いますが、そういうものをお出しになる御用意はありますでしょうか。
  216. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三木内閣が発足いたしましたときはああいうインフレのさなかでありましたし、物価は非常な高騰を続けておる。まずインフレを抑制して物価を鎮静さすということは不公正是正の最たるものであるという認識であったわけですね。そのために総需要抑制などの政策なんかもとって、こういうインフレを抑制することに、ある程度目的を達成しつつあるわけです。これからの不公正というものは、私は、ただ何年限りというものでないと思います。このような安定成長の時代になってくると、いままでのような高度経済成長じゃないですから、やはり不公正ということが社会的に非常にこれからは問題にされる時代だと思います。政治のある限り、社会的不公正を是正するという努力が伴わなければならぬ時代がこれからの時代だと思いますから、何年間にこれをやるという年度を限った問題でなしに、絶えず——税制ばかりの問題でもないでしょうが、税制その他社会的な不公正を是正していくために、絶えざる努力を必要とするのがこれからの政治ではないかと思っておりますから、三年でやる、五年でやる、そういう年度を限っては考えていない。その社会的不公正という、税制などについても増本君と不公正のとらえ方が違う場合があると思いますよ。しかしわれわれが国民的に考えても、これは不公正だなというようなことは絶えず今後も是正をしてまいる覚悟でございます。
  217. 増本一彦

    ○増本委員 何か私と総理との間に不公正についての違いがあるみたいですが、私はまだ自分の中身を言っていませんね。それでは総理が不公正税制だというようにお考えになっているものは何なのかをひとつお伺いしましょう。
  218. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本の税制というものが諸外国に比べて非常に不公正だとは思わないのですが、いろいろな社会情勢の変化などに応じて、税制の特例措置などは、いまの安定成長期にそぐわないものもありますから、そういうものは今年も見直しを行ってきたわけでそういうふうなだれが見てもこういう点は改革する必要があるというような問題については政府も手をつけてきたわけですし、今後も手がけていこうと思いますが、非常に目につくようなものは今日まで是正してきたつもりでございます。
  219. 増本一彦

    ○増本委員 そうしますといま現に不公正税制というものはないという御認識なんですか。
  220. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ないというわけではございませんが、どうも不公正な税制を是正するというもので、いろいろ御提案になる中身は実際に実行不可能なようなものもございまして、われわれと認識の違うような問題も中にはあると思います。とにかく不公正がないというわけではなしに、そういう問題に対しては絶えず今後取り組んでいかなければならぬと思うのです。この問題は、いままで政府は目につくものはできるだけこれを是正をしてきたわけですが、今後も努力をしていきたいということでございます。
  221. 増本一彦

    ○増本委員 確認をしますけれども、たとえばここにあります新規財源について検討を進める、そうして最終年度三ポイントの税負担等を求める、こういう時期になるときには、総理、中身をおっしゃらないけれども、たとえば利子配当に対する課税も優遇されているとか、あるいは法人関係でも中小企業の実効税率の負担割合を見ると、大きいところと小さいところとの間に逆累進があるとか、いろいろあるでしょう。総理の認識の中に、総理が不公正税制と考えておられるものもあると思いますが、そういうものはともかく手をつけて改善をした上で、こういう方向に進むということはお約束できるのですか。
  222. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 租税特別措置法の中にも、公正という見地から見たら、どうもこれは改革しなければならぬというものもございますから、これはやはり今後とも取り組んでまいります。
  223. 増本一彦

    ○増本委員 それからもう一つ、今度はお金の使い道の方なんですが、生活中心ということでいくと公共事業等についてももっと見直しが必要ではないか、あくまでも生活中心ということでいきますから。これについては私と総理との間で意見が違うと思いますが、ともかくいまやっておられる公共事業というのは、景気という問題もあるから、特に大型プロジェクトを中心にして政府固定資本形成を大きくしていこう、そういう財政支出によって国民経済の最終需要を拡大しようというところにあるわけですね。     〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕そこで、これも生活中心ということになっていくと、政府固定資本形成の中身、特に生活関連、社会資本の充実ということでいけば、地方自治体が事業を進めていかなければならない部分というのが非常にあります。この経済計画を見ましても、さっきあった住宅にしても下水にしても医療にしても、あるいは学校の建設などの教育にしても、そういう意味では地方自治体が関与しなければやっていけない問題が非常に多い。そしてそれを拡大することが実は国内市場の拡大にもつながっていくし、いわば広範な国民経済を下から——国のやる公共事業は限られた企業が中心になりますけれども、全国各地にそういう生活関連基盤で建設のつち音が鳴り響くというような方向にむしろ持っていく、そういう意味での公共事業についての振り向け方というものも検討をしなければならぬ、そういう方向に切りかえていかなければならないというように思うわけです。この点についての総理のお考えはどうでしょうか。
  224. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 言われるとおり、これはアクセントをそういう点につけていくということでございまして、増本君は高速道路とかいろいろなことを例にとって言われておるのですが、五十一年度の一般公共事業をごらんなってもわかりますように、政府が一番力を入れているのは下水道、住宅、環境衛生、公園などですね。こういうものを総計しますと三一・二%もふえている。これはこういう問題に重点を置いた予算の編成に向かいつつあるということが御理解願えると思うのですが、こういう住宅とか生活環境整備とかいう生活関連の公共投資に対しては、財政が非常に窮屈の中においても今後とも一層重点を置いてまいる考えでございます。
  225. 増本一彦

    ○増本委員 もしそれをやるのだとしたら、いまの地方財政の危機を何とか克服してやらなくてはいかぬ。そこで、こういうものを出されるのだったら、政府政府なりの五カ年計画ぐらいきちっと出して、もっと地方財政の再建そのものが国民の議論になるようにする、それからそういう面での展望をはっきりと出させるということがいまや必要なのじゃないですか。ともかく国民に展望を持たせることがいま何よりも必要だということがこの経済計画概案の基調ですね。生活中心でそういうものにも大いに投資を振り向けていこうということであるのだったら、それを行う地方自治体の財政再建についてもはっきりとした年次計画などを出すということがいま求められていると思いますが、この点はいかがですか。
  226. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そうだと思いますね。政府がこういうことで生活を中心とした公共事業の方に力を入れていくという中央のこれからの方針が打ち出されたならば、地方自治体もこれに適応した長期的な経済計画を持つべきだと私も思います。政府の長期経済計画はきょう答申を受けたばかりでございます。これに沿って政府のこれからの施策というものが——こういう問題はやはり長期計画のものでしょう。政府も、下水道にしても住宅にしても長期計画的に考えておるわけでございますから、生活関連の公共事業に対しての中央の一つ方針が打ち出されるならば、地方の公共団体においてもまたこれに適応した地方の一つの計画というものが当然に長期的な展望において出さるべきだと思います。
  227. 増本一彦

    ○増本委員 最後にもう一つ。これを見ますと、税負担が高まるとか、あるいはその上公共料金の決め方についても、「国民に最低限の公共施設、サービスを提供するため、政策的配慮が行われる場合もあるが、能率的経営を前提とした適正なコストは利用者がこれを負担することを原則とする。」というように、利用者負担、受益者負担が前面に出ているわけですね。私たちは、この考え方そのものについてはもちろん政府に再考を求めたいと思いますが、もしこういうお考えに立つのだったら、つまり税外負担もふえるし、あるいは社会保険負担も一・五ポイントふえるというぐあいに、国民への負担を増加させていくというやり方ですね。それならば、公共料金の決め方についてもっと国会の、あるいは国民のチェックなり審議というものが貫かれてよいのではないかというふうに思うのですよ。料金法定主義の場合は法律の改正で国会の審議にかかります。国鉄運賃も電報電話料金についてもそうでしょう。  しかし、たとえばいま問題になっている電力料金にしても、ガス料金、私鉄運賃にしても国民経済にも大きい影響を与え、国民生活負担にも影響を与える、消費者物価にも一定の影響を与える。消費者米価なんかもそうですね。生産者米価、消費者米価の問題もそうです。そういうようなものについては、少なくとも政府国民負担を求めていく。しかもそれが能率的な経営を前提として進めるというぐあいに、この面でも経営サイドの面も配慮したコストというものを利用者に負担させていくということを前提にしていますから、そうだとしたら、そのコストそのものが適正なのか、あるいは能率的な経営、健全な経営というものに本当に当たっているのかどうかということが少なくとも国会で議論をされ、そしてそれによって料金が決められていくというように、料金決定国会の承認事項とか同意事項というような仕組みに、主要な公共料金についてはその決定の制度を根本的に改善をするということも必要ではないか、こういうように考えるのですが、その点総理はいかがでしょうか。
  228. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 公共料金に対して法定主義と申しますか国会の御承認を得るわけですが、先進諸国では法定主義によっている国は少ないのですね。日本はなかなか公共料金の改定ができぬ仕組み、できぬと言ったら語弊があるけれども、簡単にできないですね。去年ランブイエでウィルソンイギリス首相が郵便料金は一年に二回改定をやった、とても日本なんかではそういうことは考えられない。それはそういうふうに小刻みにできるような仕組みになっておりますと公共料金というものも必要に応じて改定ができるのですけれども、日本はなかなか国会の御審議が慎重でもございまして、御承認を得るのには容易でもございませんからどうしても先へ延ばして、公共料金の改定の場合は何か相当まとまった改定になるという弊害の面もございますが、そういう点で、どこの国でもそういうものは審議会などはあるでしょうけれども国会の承認事項にはなってないことが一面においたならば公共料金決定のときに非常に小刻みにやっていけて、そして一般国民生活に与える影響なども少なくて済む場合などもあるのですけれども、日本は国会の承認を得て簡単に公共料金の改定ができぬという大きな歯どめのあることも意義のあることではございましょう。しかし、こういう国はよそにはないということでございます。  また、利用者に対してある程度の御負担を願うということは、社会的公平からいっても、利用しない者と利用した者と同じような負担を負うということは必ずしも公平ではないのではないか。やはり利用者が一番便益を受けるのですから、それはやはり利用者が負担をするという原則がないと、利用した者もしない者も皆一様に一般の国の財政負担ということがいいでしょうかね。私はどうも利用者が負担をするということでなければ公平でない感じがいたしまして、やはり公共料金は利用者が負担するというのが一つ原則だ。政策的意図でこれに対してチェックする必要がある場合はございましょうが、原則的には利用者負担というのが原則だ、こう思います。
  229. 田中六助

    田中委員長 広沢直樹君。
  230. 広沢直樹

    広沢委員 久しぶりに大蔵委員会に御出席なされたわけですからゆっくりいろいろお伺いしたいわけでありますが、時間の制約がありますので簡潔そして明快にひとつお答えをいただきたい、こう思います。  特にこの「経済計画概案」、これはいま配られたのですが、この内容はもちろん私もよく知っております。これに基づいて過般大蔵省が「財政収支試算」を出しておりますね。これはよくお読みになりましたか、よく吟味されましたか。これを見られたら非常に驚くと思います。国民はこれを見て大変な借金だと。第一のケースを見ましても、五十五年には五十一兆四千億に借金がなる、これは赤字国債も含まれておりますがね。そこで、これを一億の国民で割ってみますと、単純だけれども五十万円の借金を抱えることになるわけですね。そういうことから考えてみましてもこれは大変な問題であります。いまいろいろ話を聞いておりますと、この特例公債発行せざるを得なくなった原因、この問題をよく把握されているのだろうか。また、その反省の上に立ってその打開に努める姿というものが感じられないように思うわけであります。私は大蔵大臣財政当局にもこの原因について過般いろいろ申し上げました。総理大臣は政権を担当されていまだかつてないこういう財政危機に直面されておるわけであります。したがって、五十年の赤字のいまだかつてない補正、それから五十一年の赤字国債発行、これによりますと五十三年か四年まで続く、こういう状況になっておるわけであります。しかも一般会計に占める国債割合というのが、これもいまだかつてない二九・九%、この計画によりましても二十数%が相当続く、こういう状況になっております。これは世界的に見てもけた外れに大きい依存率になっている。ですから、わが国の財政がそれだけ非常に異常な状況にあるということもわかると思うのです。  そこで、これまでは赤字国債発行に関する特例法は年度途中で税収の見込み違いがあったからそれを補うためにということでやむを得ない、こういう形で出してきたんですけれども、それがことしは年度当初から政策目的を遂行するためにはどうしても必要な財源なんだ、こういう形で出さなければならなくなった。財政が景気対策上に大きな役割りを持っている、これはそのとおりであります。ですから、好況のときあるいは不況のときにこれが絶えず機動的に運用できるようにしていなければならない、こういうふうに思うわけでありますけれども、四十一年以降財政法ただし書き、いわゆる建設国債、その建設国債財政の中に入れてきたわけでありますから、当然財政の役割りというものの中に、国債が公共事業を対象として出されている以上は、景気対策の上からこの建設国債もやはり弾力的に運営しなければならなかった。しかし、それは実態から見て四十一年発行から四十六年ごろまではその精神で運用されたように私は思うのです。ということは、四十三年に一応財政に占める国債割合というのは大体五%以内にしたいという目標を決めて、財政審もそう答申されました。したがってその当時の大蔵大臣もそのとおりの基準で運営することが財政の健全化の上において一番いい、こういう感覚で答弁されておるわけであります。ところが四十七年以降、これが四十六年には四・五%に言ったとおり下がったのですが、四十七年以降あるいは四十八、四十九というあの景気のよかったときもこれはふくらみっ放しで縮まなかった。そこへこういう不況という大きな波をかぶってしまったから、財政収入の欠陥が出るという問題になった。したがってそれを埋めるためには赤字国債がいま言うような形に使われなければならなくなってきた。当然景気いいときにぐっと下げておれば、私がいま言うように国債は、四条国債というのは財政法で認められておりますし、われわれもこれはある程度仕方がないというふうに考えているわけですね。そういうことから考えていきますと、こういうような運営をしてきたところに財政の上から見た場合、これは総理が先ほど答えられたように、要因は、それはいろいろな要因があるのです。景気の問題ですから、しかしその景気に順応できるような財政の運用をしようということであれば、その中におけるいわゆる建設国債の扱い方も減らしたり、ふやしたりという前にやった基準でやっていかなければならなかったはずですね。そこでこれは過般、この五十年の補正のときにもここにいらっしゃる大蔵大臣に、一応いまの状態ではそのことをすぐやれといってもそれはできないけれども財政健全化の上からあるべき姿というものを一応きちっと決めて、それに向かってひとつそれを中心として努力するということがなければならないじゃありませんかということでお伺いした折にも、やはりこれは四十一年にこういうことで、あるいは四十二年のときに論議されたことは守っていくという御答弁があったわけでありますが、総理としていまのこの異常な財政危機に直面して、財政といまのいわゆる国債依存度のあり方一つの健全化のめどでありますから、その点をどう考えているのか、最初お答えいただきたいと思います。
  231. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私もこの特例公債依存しなければならぬ日本の財政から早く脱却したいと思っております。今年、これから当分、五カ年間、相当財政難の時代が続くわけですが、一日も早くこれから脱却するような財政に戻りたい、これが一つ。  また、建設公債と言っても、建設公債なら幾ら発行してもいいんだとは考えていないわけであります。できるだけ将来五%以内にとどめていくような財政に返りたい、大きな目標としてはそういうふうに考えておる次第でございます。
  232. 広沢直樹

    広沢委員 総理もやはり健全な財政あり方としては、依存度は五%以内にとどめたい、私はそれは率直にお答えいただきましたから、これ以上これに触れませんけれども、そういう健全な姿を描いてみて初めて今日の異常事態がどうであるかということがわかるし、それから異常事態からどういうふうに脱却していくかという方策も生まれてくると思うわけです。それははっきりなさいましたから、次に移りたいと思います。  それからきょうは、総理は大蔵委員会出席された立場から一般論でなく、当委員会所管にかかる問題について、そういう立場からひとつお答えいただきたいと思うわけでありますが、先ほども話がありましたように、社会的公正、これは総理が四十九年十二月の十四日、就任後の初の所信表明演説で内政面について特にこれは強調された。ですから三木内閣の看板は、一応社会的不公正を是正することが内政面における最大の政治課題である、こういうふうに国民は受け取ったわけであります。それは、国民のニーズにこたえるものであった、したがって国民は大きく期待いたしました。今日においても、より一層そういう国民の要望というものは高まっておりますし、またそれにこたえていかなければならない。総理は、まず最初に、これはイエスかノーかでいいのですが、やはり社会的不公正がある、これをいま徹底的に是正していくことは政治の最大の課題であるといまもって認識されておられるかどうか、一言で結構です。
  233. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、いままでは高度経済成長でいろいろな要求というものは皆大体満たされてきたわけですが、今後はそうはいかないのですからね、これからは人のことが目につく時代だと思いますね。いままでは自分の要請、要求というものは大体満たされてきたのですが、今後はそうもいかないわけです。よその、周囲のことが目につく時代がこれからの時代だと思う。だから社会的公正というものは三木内閣一つの政策目標で掲げたばかりでなく、歴代の内閣が掲げなければならぬ、これからの政治は。これだと思いますね。これからの政治というものは社会的公正ということを追求しなければならぬ。そういう点で私はこれをいろいろな面から——いろいろありますよ。単に税制ばかりでないですよ、社会的不公正というものは。こういうものを追求していくことが必要な時代である、この認識は私の変わらない認識でございます。
  234. 広沢直樹

    広沢委員 当然だと思います。  そこで、先般わが党が税制の総点検をやりました。それから、ちょっと古いのですが、四十八年の総理府の税金に関する世論調査があります。その結果を見ておりますと、現行税制について、これは所得税もそうですが、法人税もそうなんですが、公平と思わない、いわゆる不公平と訴える人が約七〇%あるわけですね。これは国民の世論調査でありますから、調査の仕方もいろいろあると思いますけれども、そういう国民感情を踏まえて総理、今日の産業あるいは経済中心の財政経済、税制、こういうあり方にはいまやはり不公平があるんだということを認識してもらわなければいかぬのですが、その点国民がそういうふうな感じを持っているということは、これはやはり問題だ、それを認識して当面不公平の税制、いまの大蔵の所管になる税制だとか財政だとか金融だとかあります。特にいま税制の問題を挙げておるわけですが、それに取り組まなければならぬと思うのですが、その点の決意を一言で結構ですから……。
  235. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 広沢君も御承知のように、日本の租税の負担率というものは諸外国に比べてそんなに高いものではないのですね。しかし、日本の税制というのは直接税が中心になっておりますから、何か重税感というものはやはりよそよりも多いでしょうね。それは西欧諸国では間接税が中心になっているのですからね。だから個人の受ける重税感というものは、間接税であっても同じように税の負担を受けるのですけれども、感じ方が少ない点もある。そんなに日本の税負担率が諸外国に比べて高いわけではないけれども、何か重税感というものは、日本人は確かに広沢君の御指摘の世論調査にもあらわれておる。これからこういう税の仕組みというものは、直接税中心、日本もアメリカもそうですが、西欧は間接税中心という、このことも、やはりこうやって直接税中心でずっと貫いていくのがいいのかどうかということも一つの課題ではある。しかし間接税にはまたそれだけに弊害が伴いますから、これはなかなかむずかしいところでございますけれども、日本の重税感という中には直接税中心の税制というものも大いに関連があるという気はいたします。
  236. 広沢直樹

    広沢委員 これは調査内容を一遍総理、詳しく見ていただきたいと思うのですが、重税という意識はやはり不公平だということがその大半を占めているのですよ、よろしいですか。その不公平が直っていけば、これは税は負担しなければ何もできないわけですから、公平に負担することであれば、必要なことは、施設もつくらなければ、福祉も充実しなければならぬし、いろいろなことをやらなければいかぬわけですから、したがって、公平を期する、これは総理のトレードマークで言っておりますけれども、社会的公正、これは私どもも前から主張してきたとおりなんです。ですから、そこのところをよく認識しておいていただきたいと思うのです。  そこで、先ほど申し上げました財政収支試算でございますが、これをごらんになりましたらおわかりになりますように、五十四年または五十五年には赤字国債はゼロにする、こういうふうになっていますね。そのためには大幅な増税が必要である、こういうことを示しているのです。この内容検討してみますと。過般委員会でずっと論議が続けられてきたものは、その増税になるということではないのかということになりますと、財政当局の方も、それは資産税か所得課税か、あるいはいわゆる消費型の間接税の増税か、どれになるかわからぬけれども、とにかく勉強はしている、こういう言い方をとっておられるわけです。  そこで、総理に率直に聞きたいわけでありますが、社会的不公正、あるいは税制における不公平というものが国民の世論調査の中にも半数以上占めておるということは、まずこういうものをなくしていかなければならぬ、納税に対する国民の意識をもっと信頼のあるものにしていかなければならぬ、私はそう思うのです。したがって、この表から見る限り五十四年、五十五年にはゼロになる。これは大きな増税が含まれているのだ、こう言われるわけでありますから、総理は、この問題を解決するに当たっては現在の税制を見直すことを中心に考えるのか、あるいは新税を考えることにウエートを置くのか、どっちにウエートを置いて考えておられるのか、その点、総理の率直な所見を承りたいと思います。
  237. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まず、現行税制の枠内で不公正是正という見地にも立って増税の余地はないかということは第一番目に取り上げるべき課題だと思うのです。そして、新税というものも当然に、検討しないのだということはうそだと思うので、検討しなければならぬけれども現行税制の枠内で何か増税の余地はあるかということを考えまして、その検討とにらみ合わせて、経済の推移などを見て新税というものは取り組むべきだと思います。
  238. 広沢直樹

    広沢委員 総理のおっしゃる社会的公正を実現するためには、覚えておられると思うのですが、四十九年十二月十四日の所信表明演説にも、総理は、経済の体質改善の努力と並んで私の重視するのは社会的公正だ、そして、三十年も勤め上げてきた人が退職後生活設計ができないということではいかぬ、あるいは社会的に弱い立場にある人たちを守らなければならぬ、あるいは老人が安心して生活ができるようにしなければならぬ——いままで総理大臣佐藤さんとか田中さんとかありましたけれども、所信表明演説でこういう具体的に微に入り細に入りそのところを配慮するようなことを聞いたのは本当に初めてなんです。ならば、この社会的公正というものを確保していくためには、弱者を助けていく公正を保っていくためにはそれだけではだめなんですね。強者の立場にある人たちから取って弱者の方に回して、並行的に強者対策も考えていかなければならぬ、私はそう思います。したがって、いままでの中で不公平であると言われる、公正を欠いていると言われる問題については、その対策を立てていかなければならない。  そこで今日の税制の仕組みというものを見直していただかなければならないというわけなのです。われわれは、いままで、現在の大企業優遇だとか資産所得者が優遇されているとか、いろいろ言いたいことはたくさんあるのですけれども、挙げて説明している時間はありませんけれども、そういう比較的恵まれた立場にある人たちがいまの税制上でも優遇されているというものを直しなさい。これが直らない限りは、先ほどの世論調査ではありませんけれども、税の公平は保たれないし、国民はそれを納得することがないだろう。ところが、財政が窮してきたから大きな国民負担になりそうなあるいはなるであろうと思われるような新税をそこで考えると言われたって、国民は納得しない。三木内閣の社会的公正をまず重視しなければならないという精神から考えてもこれは順序が違う、私はそう思わざるを得ません。  そこで一言申し上げておきたいのは、いろいろな資料があります。また、いろいろな人たちが研究しております。その研究によれば、いまの直接税でも、あのシャウプ勧告のときの総合課税に立ち戻ってもう一遍洗い直してみるならば、二兆円も何兆円もいまの税制から増収ができるという資料もあるのです。もちろん、当局も検討されているだろうと思います。しかし、先ほども指摘がありましたように、五十一年度税制改正というのは平年度に直してわずか一千億少々、初年度では百五十億、それだけしかないという形。これは私は納得ができないわけでして、その点十分配慮していただかなければならないと思うのです。  そこで、時間がありませんので、指摘をしながら次のことを申し上げたいと思うのです。  具体的に伺いますけれども、今国会の衆議院本会議において、わが党の竹入委員長が、財政再建に当たっての問題で総理質問しました。その中で、間接税の増税や付加価値税の導入などを意図されていると伝えられるが、政府の見解を問うという質問に対して、総理は、間接税の一種である付加価値税導入は研究すべき税制の一つなので、税制調査会などで十分審議してもらう——付加価値税は、いまの財政危機の一つの対応策として検討してもらうのだ、一応税制調査会へ諮問するのだ、そういう意図があるのだということを答えられているわけです。私は何も揚げ足を取って言うわけじゃありません。しかしながら、付加価値税ということになりますと、これの是非論というのはいろいろ言われております。しかし、最も問題なのは負担の逆進性の問題なんです。そうなりますと、もしこの問題が導入されるとするならば、いまの税制における不公平、また、あらゆる問題があると言いましたけれども、社会的公正というものがまず確立されるであろうか。税においては、この逆進性の上からいうと低所得者までかかっていくという形だって生まれます。付加価値税にもいろいろな形がありますけれども、また、やり方によってもいろいろあると思いますけれども、一応大幅な増税を見込むとするならば、いろいろななにをしていけばそれは増税にならないわけでありますからそういうことも一つの問題になってくるでありましょう。したがって、私は総理にはっきりお答えをいただきたいのは、いま言う社会的公正、特にこれは税の問題でありますから税制における不公平が是正されない限り、それによって国民の税に対するコンセンサスが得られない限り、こういう社会的不公正、税制における不公平を拡大することのおそれのある付加価値税の導入なんかは考えるべきではない、こう申し上げたいわけでありますが、お考え、いかがですか。
  239. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 新しい税制を考える場合に国民理解、納得を得るためには、現行の税制の中の不公正をできるだけ是正をしなければならぬということは、広沢君の言われるとおりだと思う。しかし、そればかりでも目的を達成できない場合もございましょうから新しい税についても検討を加えなければならぬと思いますが、しかし、政府はこの付加価値税の導入ということをもはや決めて、そして税制調査会なんかに検討してもらおうというのではないのですよ。具体的にこういう税制ということを頭に入れてはいない。一般的に税制調査会などにおいても、新しい税収考える場合に、どういう税金が日本の旧情に適して、適当なということは研究を願わなければならぬし、そういう場合に付加価値税も当然に検討される課題だと思いますが、付加価値税には広沢君のいま御指摘のように負担の逆進性もございますし、物価への影響もあって、これはなかなか慎重に検討しなければ、簡単に税収が、非常に増加が見込まれるから付加価値税という安易な決定は許されない問題だと思います。
  240. 広沢直樹

    広沢委員 安易なそういう新税あるいはそういう付加価値税等に頼ることはない、こうおっしゃっておられるわけでありますけれども、それは当然のことだと思います。しかしながら、やはりいま総理も付加価値税に対する逆進性、端的な言葉で言えばいわゆる弊害といいますか、あるいはメリットもデメリットも一応認めていらっしゃるわけでありますから、やはり三木内閣総理の社会的不公正をまず今日の内政上で一応は正して、まずこれで国民の政治に討する信頼を取り戻し、あるいはいままで苦しんできた低所得層、弱者という人たち、あるいは不公平の中で呻吟してきた人たちが、これによって政治に対する信頼を戻すという立場、これが政治的に重要な立場だと御指摘なさったと私は思うのです。ですから、それをまず確立していくことが、いわゆる国民に大きな負担をかけたり、あるいは新しい制度の根本的改革にもならんとするような制度を用いる場合に、やはりこれまでやってきた政府のやり方というものを一応全部国民に納得のいく形に戻していかなければならぬ、その政治努力をすることが一番大事な問題である、私はこう思うわけでありますから、もう一度、そういう面を踏まえて考えるという決意をはっきりしていただきたい。
  241. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どうしても新しい税の創設というものは国民としては反発をするものですね。反発をする傾向を持っておるわけですから、そのためには、国民理解し納得を得るためには、現行租税制度の枠内における不公正をできるだけ是正をするということがなされないままに新税の創設ということはなかなか国民の納得を得られにくいということは、広沢君の御指摘のとおりだと思うのです。当然にそういうことも踏まえて新しい税制というのは考えなければならぬと思います。
  242. 広沢直樹

    広沢委員 時間がもうあと一、二分しかありません。  そこで最後に一言聞いておきたいと思います。これも大蔵委員会でさんざん議論されたことでありますが、いまの大量の国債発行、これが一番経済面で恐れられている問題は、インフレになるのではないか、あるいはインフレを助長していく原因をつくることになっているのではないか、こういう問題でありました。私は、やはりこれはインフレを招くおそれが多分にある、こういうふうに指摘せざるを得ません。それはいまの市中消化の仕組み、いわゆる国債の消化の仕組みから言ってそういうことが言えるということであります。そしてまた、今日のように大量に国債をどんどん出さなければならない状況、これもそうであります。そしていまわが国経済は不況から脱却しようとしている。これはいろいろな議論があります。その議論をしている暇はありません。したがって輸出もよくなっていく、あるいはまた消費もだんだん上がっていく、設備投資はまだ低いようであります。あるいはまた物価を上げていく構造、独占価格的な問題、これは他の委員会で独占禁止法の改正問題で問題になっておりますが、その他公共料金の値上げの問題、あるいは新価格体系とかなんとかいって諸物価が上がる、こういう問題があるのです。そういうものとが重なり合っていくと、いまいわゆるマネーサプライ、M2もふえつつあるし、それからマーシャルのkも増加しつつある。これは過般委員会で私も言ったわけでありますが、そういう状況から言いますと、インフレの危険性が多分にある。したがってここに政策的に公共料金を一時的に抑えるとかあるいは何らかいままでの仕組みを変えないと、もう一度ああいうインフレの危険というものは必ず出てくるのじゃないか、こう思うわけであります。それがないと言うならば、はっきりないと言い切っていただきたいし、もしもそれでインフレになった場合は政治的責任をとるのかどうか、はっきりしていただきたい。それを聞いて私の質問を終わります。
  243. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 景気の回復を図ると言っても、インフレを抑えながら景気の回復を図るということでございまして、このことがインフレをもたらすということになれば、公債発行というものに対しても、いろいろ考え直さなければならぬかもしれない。インフレを再燃さすということになれば、いままでの経済政策というものは元も子も失うわけでございますから、絶えず公債発行がインフレを伴わないという配慮をしながら公債発行をいたしていく所存でございます。
  244. 広沢直樹

    広沢委員 私は国債発行が短絡的にいきなりインフレになる、そういうことを言っているわけじゃありません。いまさっき言ったようないろいろな要因というものがいま出てきているわけですから、そういうところでいまの仕組みで考えていく、そういうおそれがあるということでありますから、それに対しては毅然たる態度をひとつとってもらわなければいけませんし、もしもそういうような問題があるのだったら、起こった場合はこれは政治責任ですよ、経済の大混乱でありますから。その覚悟がありやなしやということをいま聞いたわけでありますから、一言でいいですからもう一度お答えください。
  245. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 当然に内閣はインフレを抑制するということが経済政策の基本でございますから、そういうことをもたらさないように全力を傾ける、それに政府はやはり責任を感じて大いにやってまいろうということでございます。
  246. 広沢直樹

    広沢委員 終わります。
  247. 田中六助

    田中委員長 竹本孫一君。
  248. 竹本孫一

    ○竹本委員 日本の経済総理、御承知のように約二年間トンネル生活で非常な不況のもとに国民が苦しんでおります。先月も倒産が千二百件というようなことで言われておりますけれども、あれは総理、御承知のように一千万円以上の倒産でございますから、実際の倒産は常識的に言えば大体十倍ということになっておる。そうしますと、月一万ずつの倒産だということで非常に深刻であると思います。失業者も百二十万とか百三十万とかいうことになっておるのですけれども、これも一時の失業者六十万に比べれば二倍以上になっておりますから一応の情勢はわかりますけれども、実際は雇用調整給付金をもらって田舎へ帰っておる人もいますし、ことし大学を出て就職するところがないままにうろうろしておる学生もおりますから、そういう者を全部合計すれば、私の計算では企業内の過剰労働力まで含めて考えてみると、まあ当面五百万に近い余剰労働力。百三十万でしょう。雇用調整給付金で帰っている者は百七十万くらいおるでしょう。企業内の過剰労働力というのは大体二百五十万と言われておる。これは見方がいろいろありますけれども、その半分は田舎へ帰ったとしても、まだ半分おるわけです。それからいまの季節労働者あり、学卒者あり、いろいろ計算すると、そのくらいになるのですよ。いずれにいたしましても、表に出ただけでも六十万に比べて百三十万といえば二倍以上、こういう重大な不況をいま迎えておる。  そこで私は、いわゆる成長経済、高度成長には余り賛成でないのですけれども、成長経済ということについてはいろいろ批判を持っておるわけでございますが、その経済運営が必ずしもよろしきを得なかったということのために、石油ショックだけの原因ではなくて、特に日本の経済は苦しい条件の中に立たされておる。これは必ずしも三木内閣の責任とは申しませんが、あるいは自民党内閣としてそういう責任があるんじゃないか。そこで私は、三木内閣ができたときに新聞で読んだところでは、三木さんは施政方針演説をやられるときに、やはり経済運営については非常に遺憾であったという点をわびるというか遺憾の意を表明するというか、一言言われるというようなお気持ちがあったということを漏れ承りまして、いや、さすがに三木さんは正直だと私は高く評価したのです。ところが、先ほどのお話じゃないが、これも新聞の誤報であったか、あるいはその後心境の変化であったか、少なくとも三木内閣になってから、自民党経済政策十年の歴史は成功であったか失敗であったかということについて反省の発言はほとんどない。  改めて承りたいのですけれども、従来の経済政策について、これはロッキード事件だけじゃないのですよ、政治的、道義的責任というものは経済政策に必ずある。それを総理大臣として感じでおられるのかおられないのか。私はよく言うんだけれども、天皇陛下がアメリカに行ってディプロアを言われたのでアメリカ人の感情ががらり変わったということを言うでしょう。われわれの三木内閣に対する批判や感情も、そのディプロアを総理が言われるか言われないかによって非常に評価が変わる。そういう意味で、改めて従来の経済政策について、あるいは自民党の総裁として、あるいは内閣の首班として、一体どういうふうな心境でおられるかということをまず伺いたい。
  249. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 経済というものに対しての見通しは、エコノミストでも見通しを正確に見通せる者は少ないように、なかなかむずかしい要素があるのです。人間の心理的なものもこれに加わるわけですから、計算ばかりにいかぬ。まあ過去の経済政策、過剰流動性に対する処置というようなものは反省の余地はあると私は思います。そういう点で、これは全部反省の余地はないんだということは、私は、それは経済運営というものをそういうふうに強弁すべきものではない、いろいろ反省すべき点は反省をすることが必要だと思います。どこの国だってみんな、そういうふうな見通しどおりに経済運営をやっておるという国はどこにもないですからね。そういうことで、そういうことは後で考えたら、あのときにはもう少し適切な措置をすべきだったという反省はございます。しかし、主として竹本さん、責められるのは、いまの三木内閣に対しての、経済政策、誤っておったではないか、その責任はどうかということで、私は大筋において、三木内閣になってからの経済政策の大筋には誤りはなかったと思うのです。そういう点で、しかし、過去のことを自民党内閣というものにさかのぼって言われれば、反省の点も多々あることは事実でございます。
  250. 竹本孫一

    ○竹本委員 初めの半分は三木さんの正直な認識として評価をします。後の半分はよけいなことだ。各国とも経済はうまく行ってないとおっしゃるんだけれども、必ずしもそうではない。のみならず、二、三日前、私は新幹線でニューズウイークを読んだら、日本の経済が二年不景気になったということで、あの大平さんの記事が出たニューズウイーク、あれを読んでみると、どこかに書いてある。日本の経済政策はディレードリアクション、見通しを誤っているだけではないんだ、新しい情勢ができたときに、それに対する対応、反応がディレードだ、おくれておるということが書いてある。しかし、きょうはそういう問題を余り議論すると時間がなくなりますから、ときによって外国の新聞、雑誌も読んでいただいて、日本の経済政策を一この前タイムであったと思いますが、日本の経済政策はツーリトル、ツーレートと書いてあった。ぼくはそれは逆にツーレートの方を先に言うべきだと思いますが、これもディレードの関係ですね。そういう議論はきょうは余りいたしません。  そこで第二の問題として、今日の財政の危機ということについて先ほど来同僚議員からいろいろと御指摘がありました。二九・九%、三分の一は借金だということは、これは現時点においても大変な問題であるし、将来の問題、五十五年あるいは六十年、六十一年ということについて、山田議員を初めいろいろと御指摘がございました。私も全く同感であります。そうしますと、とにかく予算の一〇%、一二%、金額にしても十兆円から十二兆円が国債関係の費用で要るのだということになると大変な問題だと思いますが、この国債発行というもの、あるいは国債に対する依存率が、本来ならば五%ぐらいが理想だと国会では言うたものでしょう、その五%の理想が三〇%にもなっちゃった。そして、各国ともとおっしゃったけれども、アメリカだっていまの公債依存率は一〇・九%でしょう。イギリスだって一六・八%でしょう。そういうことから比較してみると、二九・九というのは、ちょっとうちの方はまずかったぐらいの話じゃないのだ。質的にやはり重大な問題です。しかし、責任問題はいま申し上げましたから、私はまあこの上文句を申しません。  問題は、財政危機という認識があるのかないのかということなんです。そういう意味で、五%が理想だというのに、そしてよその国は一〇%かせいぜい一六%ぐらいのところへ、三〇%公債依存であるということが一つ、それからもう一つ大きな問題は、先ほどこれは大蔵委員会として私も指摘をいたしたのですけれども、いままで大体十年間の平均成長率は一一%ですね。それが今後の十年間というのは大体六%でしょう。希望を言えば七%を私も希望しますけれども、大体六%でしょう。そうすると、一一%の成長率が六%に半減するということなんです。これは低成長とか減速経済とかスローダウンとかいう範疇ではない。質的にこれも変わる。そういうことを考えると、今日の財政危機は単に大変なことになりましたということで済むような問題ではない。だから私は、政府に伺いたいことは、財政危機というのは経済危機から来ている、これは当然のことですね。しかも、その経済危機は、いま言ったように、伸び率が半分になるということは単なるスローダウンで、少しテンポを緩めればいいんだということではなくて、いままでの産業構造、いままでの行政機構、いままでの財政金融の構造、全部が、発想の転換ぐらいの簡単なことではなくて、仕組みを転換する、先ほど広沢さんも言われましたけれども、仕組みを変えるぐらいの根本的な対応を考えなければならぬ。イギリスでは労働党が政権をとりましたから、一番はやった言葉はチェンジという言葉なんです。変革をしなければいかぬ。情勢が変わった、その変わり方がいまは質的に重大な変換をしている、グレートチェンジなんです。  そういう意味で、私は総理に伺いたいことは、今日の、いま申し上げた財政危機というものは経済危機から来ておるが、その経済危機というものは産業、経済財政、金融、税制さらには政治の能率化もやらなければいかぬでしょう。こんな能率の悪い政治はどうもならぬ。そういうすべての構造の改革を根本的にやらなければならない危機である、そういう御認識があるかどうかということです。
  251. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、その認識は竹本君と同じ認識です。これは、一一、二%の成長が五、六%という、成長が半減するわけですからね。車で言えば、百十キロか二十キロで走っておった車が五十キロか六十キロで走るということは大変なことですね。ところが、いままでの高度経済成長に見合ったように、もう経済の仕組みも政治の仕組みも——国会がもっと能率を上げなければいかぬということは、これは全く同感ですよ。これもやはり政治、経済国民生活、労使関係、みんなそういう新しい転換されてくる安定成長に適応する衣がえをしなければならぬ、そういうふうに受け取らないと、またもう一遍高度経済成長の夢が返るんだと考えることは、この試練を乗り切っていく道ではないと思います。今度の財政危機なんかも落ち込みがひどいですから、よその国はまあ五%ぐらいの成長があったら高度経済成長でしょう。だから不景気といっても落ち込みが少ないですから。日本がこれだけ落ち込んで、竹本さんは潜在失業率を非常に高くごらんになっておりますが、顕在としては二・一%ぐらい。アメリカは八%ぐらいのものでしょう。日本はほとんど完全雇用に近い状態で、しかも稼働率は八六・四%ぐらいですからね。相当な設備を抱え、それだけの過剰労働力を抱えてやっていくわけですから、これは並み大抵のことではない。これはそういう経済というものが背景になって財政の危機を招いておるという認識をしなければならぬということは、竹本君と同感でございます。
  252. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、大変なことだという認識があれば、それに対応する決意と構想が必要である、それを態度で示してもらいたいということが恐らく先ほどから皆さんが言っておることだと思うのですけれども、どうもその対応がない、はっきり示されていない。  まず、財政に即して申しましても、歳出、歳入の全面的な洗い直しが必要である。その歳入については、この際増税をやらなければならぬと思いますけれども、百五十億円ぐらいの特別措置を改正したことでは間に合いませんので、本当はもっと本格的にやってもらいたいと思いますが、しかし不況で会社の利益も三分の一に落ち込んで、倍になって六割だか七割しか返ってないという状況ですから、いたずらに正義論だけは私は言いにくいと思っているのですよ。しかし、少なくともそうであればあるほど、歳出の面は思い切って切るべきだというふうに思うのですよ。  そこで私はお伺いをするのですが、三木内閣には、いろいろ言われておるんだけれども、行政機構の大改革をやる決意があるかどうかということを一つ伺いたい。  それからもう一つ。きのう本会議において日本国有鉄道法の一部改正というのをやりましたね。そのときに、この説明を見ると、ちゃんとこの鉄道法の改正の中にこういうことがうたってある。経営の健全性を確立するよう努めなければならぬというのが第一なんですよ。それから第二に、日本国有鉄道はその経営の健全性を確立するため運輸大臣の承認を受けて経営の改善に関し必要な事項についての計画、すなわち経営改善計画を定め、これを実施しなければならないものとすると、こう書いてある。これを閣議で決定して法案を出されたわけでしょうが、これは大臣の間で、ああそれは結構だと言って閣議決定をされたのか、ちょっと待てと、これは国有鉄道に言うべきことか日本政府全体に言うべきことかについて反省があったかどうかということなんですよ。  われわれの立場から言えば、日本の財政計画全般の運営について——日本の国家も一つの経営ですから、赤字特例法はそのために来てるわけですから、その経営の健全性を確立するように努めたということにどれだけの決意と自信を持っておられるか。経営改善計画を国鉄には示せと言うのだけれども、日本政府は、先ほど来議論になっておるように、経営改善計画のマスタープランを示していないじゃないか。そういうことについて閣議でこれを決めるとき、ただ並び大名が黙って賛成したのか、あるいは閣議で議論があったのか、この二つを伺いたい。
  253. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国鉄については、これは大問題ですから、ずいぶん議論はございました。議論はございまして、しかし再建計画というものはいまの場合やむを得ないじゃないかと。国庫負担を強化する、また一方においては国鉄の経営の徹底的合理化を図る、一方においては利用者の負担増加を図るということ以外に、柱としてはしようがないではないかということで再建案をのんだものでございます。
  254. 竹本孫一

    ○竹本委員 国鉄の問題はそれでいいのですが、行政機構の改革、これは、いまの国鉄に要求をした経営改善計画も一つなんですから、行政機構の改革をやる決意があられるかということが一つ。  ついでに、時間の倹約でもう一つ伺いたいが、これからの経済のかじ取りは、先ほど来共産党の増本さんからもいろいろ御議論がありましたが、生活を中心にという問題が出た。私は、経済政策をこういうふうにいま考えているのです。要するに上からの、したがって結果から見ればインフレを拡大するような、そういう経済政策になるのか、下から購買力をつけて、下から福祉を充実していくという、下からの福祉拡大の路線になるのか。上からのインフレ拡大の路線でいくのか。大ざっぱに言えば、こういうふうに分かれるじゃないか。生活を大切にするということになれば、生活の問題として、住宅建設の問題も環境の問題もいろいろ出てくる。あるいは生活を若干でも豊かにするという意味においても、やはりわれわれが主張しておるような三万円減税といったような問題も出てくる。  そこで総理に、これからは、先ほど来のお話も含めて、下からの経済拡大ということに力を入れるべきではないか。総理、私は従来、余り減税、減税と言わないのです。これは所得税の課税最低限が百八十三万円で結構だという議論でもないのですけれども、やはり税はそれぞれ負担する方が政治意識をむしろ高めるという立場をぼくは持っていますから、必ずしもどんどん課税最低限を引き上げろとは言わない。けれども、今度の場合は景気刺激政策という意味を含めて、これはアメリカの経済の見方にもいろいろ議論がありますけれども、やはりフォードがやった二百ドルばかりの減税というものが町の購買力を刺激したことは事実なんですから、一歩退却二歩前進という景気刺激政策、それも下からの景気刺激だ、こういう意味において、減税問題というものも、やはり再検討に値する。大蔵省の立場あるいは大蔵大臣の立場から言えば、一兆円減税すれば一兆円の赤字がふえるから、これはなかなか踏み切りにくいということもよくわかります。しかし、国全体の政治判断から言えば、下からの経済の拡大、下からの福祉の拡大という路線、そういう意味でのまた景気回復ということを含めて、やはり大衆の減税ということは、この際は考えるべきではないか、それがむしろ政治の高度の判断ではないかと思いますが、総理のお考えはいかがですか。
  255. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 長い目で見れば、竹本君の言われるように、下の基盤、国民生活といいますか、その基盤を強化していくということが、一つの長期の目標としては理想でございましょう。しかしこの場合、これだけ景気が落ち込んで、急速に景気の回復を図らなければ企業もやっていけない、雇用も維持していけないという状態において、減税か公共事業かということは一つの政策選択の課題ではありましょうが、日本のように貯蓄性向の高い国においては、必ずしも減税がそんなに購買力に回っていくとは限らないし、公共事業の場合はそのまま需要を喚起するわけですよ、減税の場合は貯金に回る面も多くございましょうから。早急に景気を回復したいということがそのときの政府の一番の政策目標ではあったわけですから、そういう場合に、竹本君の御指摘のように、減税という方法もあるでしょう、それは購買力をふやすことは間違いないのですけれども、その限られた予算を一〇〇%需要の喚起に向けていくためには、公共事業の方がよいのではないかということの選択をいたしたわけでございまして、いろいろ御批評もあると思いますが、政府は、そういう見地で公共事業を中心として景気の浮揚を図ろうという政策をとったわけでございます。  行政機構の改革につきましては、竹本君御承知のように、行政監理委員会もあってやっておるのですよ。しかし、今度はいままでの事態と違うのではないか、今度のこの一つの大きな路線の転換というものは。私は、従来行政監理委員会に熱心に取り組んでもらっていって、その活動に対して不満を持っているものではないのですが、何かここらで新しい仕組みで行財政というものに対して、その時代に適応した仕組みを考えなければならぬ時期に来ておるのではないか。だから、従来のことをもっとこれに力を入れてやりますというよりも、何か新しい仕組みが必要であるのではないかということで、いま行政管理庁にも検討をするように指示しておるわけでございます。これは考えたいと思います。
  256. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんから要望しておきますが、一つは、落ち込みがひどいから減税ができないんだという考え方と、私が言っているのは、落ち込みがひどいんだから、購買力を下から刺激する意味で減税を考えるべきではないかという点を申し上げたので、ひとつこれは機会を改めて十分検討していただきたい。  それから、行政機構の改革の問題も、ただこれをこうこう変えるというだけの問題ではなくて、いま言ったように、客観情勢がまるっきり変わりましたから、新しい時代に対応する——もちろんむだを省くということの再検討が必要である。きのうか、いつか新聞に出ておりましたけれども、特殊法人だけ二十九ほど一人か二人理事を減らす、合計三十四人減らして三億円減らす、それも一つの努力だと評価はしますけれども、自民党でやられた行財政の改革委員会でも、大体二年間ぐらいに一兆五千億ですか、節減をしようという案を立てられたという話を聞いておるのだけれども、三億円ぐらいの倹約じゃ問題にならぬ。でありますから、新しい厳しい情勢の中、そうして激動する情勢の中ですから、行政機構改革というものは行政管理庁だけでは、きょうは時間がありませんから吟味しませんけれども、問題にならぬですよ。そういうものでなくて、やはり大審議会をつくって、総理委員長か議長になって、本格的に時代に適応する行政機構はどうあるべきかということをこれはぜひ検討してもらいたい。後で御意見があれば伺いたい。——それでは伺いましょう。
  257. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 新しい仕組みを考えたいというのは、そういうことも含めてのことでございます。
  258. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後に、解散の問題についてひとつ総理意見を聞きたい。  私は、財政というものも政治というものも、民主主義の時代には国民とともに進むということが根本だと思うのですね。そこでまず、ちょうど大蔵大臣もいらっしゃるから一言伺いますが、憲法九十一条によれば「内閣は、国会及び国民に対し、」「国の財政状況について報告しなければならない。」と書いてある。これを受けまして財政法の四十六条には、いろいろ細かいことが書いてある。ところが、ここに同僚議員がたくさんいますけれども、果たして何人が、われわれは国の財政状況について報告を受けておるという自覚なり自信なりがあるかということですね。まずわれわれ自身です。ぼくも考えてみるけれども、ときどき「日本の財政」という本をもらって、これは少し読みますが、それ以外に日本の財政について報告を受けた感じが余りしていない。ところが、憲法九十一条を受けて財政法四十六条第一項には「その他財政に関する一般の事項について、印刷物、講演その他適当な方法で国民に報告しなければならない。」と書いてある。一体われわれさえ報告を受けたと思っていないのですよ。国民が報告を受けたと思っているかどうかということですね。ということは、報告の義務だけではなくて、先ほど来申し上げておるように、財政の大転換のときですよ。そういうものを国民とともに歩まなければいかぬ。それなのに、事情がわからないでどうして国民が感奮興起するかという意味で、こんな四十六条に書いてあるだけじゃないか。それから第二項にも「財政状況について、国会及び国民に報告しなければならない。」と細かいことが書いてあるが、要するに私が言うのは、われわれは報告を受けた感じがしていない。一体大蔵省はどういう報告をどういう程度にやったと思っておられるか、きわめて簡潔に承りたい。
  259. 大平正芳

    大平国務大臣 予算案の提出あるいは決算書の提出を通じまして、それに関連いたしました諸般の資料国会提出申し上げまして、その御審議を煩わしておるつもりでございます。また、予算委員会、それから本常任委員会等を通じまして常時、国会の御討議を通じて財政状況についての解明をいただいておるわけでございますし、また、国会の御要請に応じまして、もろもろの財政に関する資料提出を随時いたしておる所存でございます。足らないところはなお努力するつもりでございますが、政府といたしましても、今後も精いっぱいやってまいるつもりであります。
  260. 竹本孫一

    ○竹本委員 ここに国庫の状況の報告書とか四半期の予算使用状況と、こうありますが、これはもう全く数字が書いてあるだけで、これが状況の報告ということにも一応なるようでもあるが、一体これがどうして理解できるだろうかということ、それからもう一つ総理、私が言っているのは、四十六条二項の国民に対する報告なんというものは、大体官報か何かにちょっと載せるだけらしいが、官報を読む人が何人おるか、読んでわかる人が何人おるか、こういうことを考えると、財政民主主義の立場からいっても、もう少し国民財政なら財政状況、特に今日においては財政危機の状況そういうものを国民に知らしめることが必要であろうと思いますから、大蔵大臣、特にこれからの一層の御努力を要請しておきたいと思います。  そこで、最後に、総理国会の解散の問題ですけれども、これは解散をすべき事情が幾つもある。たとえばいま申しました財政危機ということの問題点を国民にはっきり知らしめるということも大事でありましょうし、何よりも七兆円からの公債発行して、これからはいろいろ——先ほど来議論がありましたけれども、ことし一回特例法を出して来年はやめるというわけにいかないのです。だから、本当は私は赤字財政時代に入った、こう思うのです。一年間の例外だけではない。そうしますと、国民の決意と認識も、赤字財政時代に対応する勤倹貯蓄を初めとして、新しい行き方をしなければいかぬ。財政というものは、先ほど来議論がありましたように、第四条が中心なんですよ。それで、山田さんが言われたように、第四条の前半が特に大事で、ただし書きただし書きなんです。(発言する者あり)
  261. 田中六助

    田中委員長 静粛にお願いします。
  262. 竹本孫一

    ○竹本委員 だから、借金はしないでいくというのがたてまえでしょう。それが公共事業にしろ、借金しましょう、さらに赤字の公債も出しましょう、こういうことなんですから、財政の原理、原則が一変するわけです。しかも、それが一年でなくて、赤字財政時代ということになって続くことになれば、そのことを一体国民はいかに批判し、いかに協力し、いかに受けとめるかということについて、国民の意思を聞く必要がある。これが私の解散をすべきであるという第一の理由。  それから第二は、これは総理もよく言われるお考えのようですけれども、やはり三木内閣ができてから洗礼を受けてないのですから、洗礼は早期に受けるべきであって、内閣がかわるころになって洗礼を受けたってしようがない。だから、これを早期に、間に合うように受けるべきであるということも考えなければならぬ。洗礼を受けなければならぬ。  それから、これにも関連しますけれども、先ほど来公約公約ということが出ましたけれども総理は、公約は後退してない。後退はしてないけれども、前進もしておりませんから、ストップしておるものが大分ある。たとえば独禁法だってそうでしょう。その他いろいろある。そういう意味で、私は、公約は前進したと国民は見るか、公約不実行で、有言不実行で困るというふうに国民は受けとめるか、これも国民に一遍聞いてみなければいかぬ。  それから、もう一つ大きな問題は核防条約。これは私は、この前中国に参りましたときに、中国共産党のトップレベルの人たちと三時間、民社党だけ別室で話す機会を持っている。そのときに、いろいろ意見が食い違いましたけれども、たった一つ一致した点は、これは米ソの覇権主義であるという点については意見が一致しました。私は、これは米ソの覇権主義だと思う。勝手なことですよ。自分たちだけは核軍縮も何もやらずにおいて、日本には持つなと言っている。日本に持つなということは結構だけれども、自分たちは何をやるか。日本の最後の安全をどれだけ保障するのか、あるいは自分たちの核軍縮をどれだけやるのかということについて、全く得手勝手なことばかり言っているのですから、これは独立国家として見れば、なかなか承服しがたいので、これも国民に聞くべきです。自民党の議員総会だけの問題じゃない。国民に聞くべきだ。核防条約は認めるべきか、フリーハンドは失ってもなおこれは世界の平和のために踏み切るべきか、総理としてもお訴えになるべきことがたくさんあるし、国民としても聞きたい問題がある。これを国民規模においてぼくは論議すべきだと思うのです。私は、最終的には、いろいろ遺憾な点がありますけれども、日本が平和国家としての出発をするためには、最小限度やむを得ないということで、これは認めたいと思いますよ。そしてまた、将来の原子力発電の問題もありますから、いろいろな立場で最終的には認めたいと思うけれども国民にはこの問題はやはり一応諮るべき重要問題である。そういうふうに考えてみますと、核防条約の問題も、公約の問題も、洗礼の問題も、赤字財政時代に転入するということについて、国民に認識と決意を促す必要から言っても、国会は解散すべきものである。  赤字財政特例法というのは、きょう衆議院を終わるかもしれませんが、あと十日しか参議院でありませんから、どうなることかちょっとよくわかりません。民社党は御承知のように、予算につきましては三木内閣を助けるという意味ではなくて、率直に申しますけれども、日本の経済をこの上混乱させてはならぬという大局に立ちましてわれわれは予算の審議には協力いたしました。しかし、財政特例法については、これは心配をすれば大蔵当局が言われる心配もわかるのですけれども、しかし技術的に言えば、八月までに間に合えばいいのです。そういうことでございますから、われわれはやはり議長裁断にあるように、特に進めもしないし特に反対もしない。精力的に審議をして、審議が終わったら採決、こういう立場をとっておるのですが、しかし、これも通るか通らぬかなかなかわからない。通らないままで下手に総辞職でもされたらこれは大変なことだなと思っておるのです。それは政界の非常に機微な問題だから、私はこれから申し上げませんが、いま述べましたポイントに即してやはり解散をして、国民とともに歩む三木内閣の姿勢をとるべきであると思うが、どうかということが一つと、もう一つ、時間がありませんから結論だけ聞けばいいです。  もう一つは、椎名副総裁が三木には解散はやらせない、これも新聞の誤報かもしれませんけれども言っている。これはそういうことが誤報でなければなおさら三木総理から、あるいは三木派閥というのか何というのか知りませんが、三木派の総会から、そんなむちゃな話はない。少なくとも法律論としては解散権は総理にあるのですよ。解散権は総理にある。自民党にもない。自民党総裁にもない。いわんや副総裁にありませんよ。こういうような日本の経済財政、政治が混乱をしておるときに一番大事なことは、最高の責任者である総理大臣がしゃんとしてもらうことだ。その総理がふらふらされては、国の中心、円の中心の点がぐらぐらするのですから、国全体が混乱しますよ。総理大臣の解散権というものは厳として総理にあるんだ。なぜそのことを総理は言わぬか。言われたか、私は聞かなかったかしらぬが、私は言われてないように思う。解散をいまやるかやらないかは別として、解散権は当然総理にあるということぐらいはきちっと言わなければ、総理大臣としては権威に関する。憲法論から言っても、ごちゃごちゃになってしまって混乱を招く。  そういう意味で、私は、この前やめましたイギリスのウィルソンという労働党の党首、総理も御存じでしょう。あのウィルソンは労働党ですよ。そして労働組合から支持を受けてやっている総理大臣だけれども、国の経済政策に関して所得政策を行うということについて彼は非常に名語録、うまい言葉を言っておる。労働組合が所得政策でなかなか納得しません。まあ当然ですが、そのときに彼は、労働党であって党首であるけれども、組合員に向かってこう言ったのですよ。ノット ザユニオン、組合ではなくて、ゼア ガバメント ランズ ブリテン。イギリスを動かしている者は組合ではない、政府であるとびしっと言った。これはやはりウィルソンの政治的見識ですよ。三木さんが解散権は総理にあると言わないで、副総理が解散をさせないと言った。そのままになっておる。これはウィルソンと大分距離があるような感じが私はするのですが、そこで最終的に解散はやるべきであると思うが、総理のお考えはどうか。  次に、解散権は総理にあるということは、この席で明確に打ち出すべきであると思うが、いかがですか。これで終わりだ。
  263. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろな問題で国民の総意を聞けという竹本君のお気持ちはわかりますけれども、そうなってくると再々解散をやらなければならぬような場合も出てまいりますから、これは政府は一連の政策を総選挙の機会に審判を仰ぐ、こういうことでやはり議会政治というものは運営をしていかなければならぬ面が私はあると思う。国民投票なんかで補っているところもあります。しかし、日本ではそういう制度がないわけです。だから、一つ一つの大きな国民に影響するイシューというもので総選挙をやるということは理想でしょうけれども、総選挙というのは大変なことでございますから、一連の政府の施策の総審判を受けるということの解散にならざるを得ない面もある。  また、解散権の問題は、それは誤報だと思いますよ、椎名さんがそんな……。憲法を見ても解散権というものは、これは内閣、政府——天皇の国事行為であって、その天皇の国事行為は内閣の助言と承認によって行う、その判断はやはり政府総理大臣判断というものが当然に解散の時期を決定するもので、いまさらこんなことを私が国会で言うことは、これは失礼だと思って言わないのですよ。失礼ですよ、議員に向かって。憲法のABCから言う必要はないわけでございますから言いませんのですが、それはもう必要のないことだと思って、言わない次第でございます。  解散の時期については、これはやはりお親しい竹本さんでございますが、私が明かすわけにはいきません。(笑声)これは、できるだけ諸般の情勢考えて、適当と思う時期に解散をやって、しかし、これはもう解散といってもむやみに引き延ばすことができないことは事実でございますから、その間に一番国民の審判を受けるのに適当だと思う時期にいたさなければならぬ。  また、この財政特例法について、いろいろ進みもせず、またこう何か、余り熱心にやりもせず、また邪魔もせずというお言葉があったが、良識のある民社党でございますから、そういう、余り進みもせずというようなことでなくして、どうぞほかの各党の方々も、どうかこれが——実際予算というものは議了したんですから、反対であっても議了したんですから、このうらはらになるものですからね。予算は議了しているが、おれたちは反対したのだといえばそれまでですけれども、しかし議会政治のたてまえというものはそういうものでしないでしょうし、また景気は、ごらんになっても、もう経済指標というのは一月から皆上向いてきているでしょう。景気は皆回復の兆しというものが確実に見えてきたわけです。特例公債というものは、それはいつかは通していただけるんでしょうが、この国会で通りませんということになりますと、景気の先行きに対して一つの不安を与えますから、予算も議了したわけでございますから、各党がどうかこの問題の持っておる日本の景気の動向に与える影響というものを御勘案賜りまして、ひとつ速やかに審議を促進していただきたい。また、議長裁定もそういうことを言っておるんですよ。積極的ということは、余りこう進みもせず、邪魔もせずというようなのとはちょっと違うように思いますから、よろしくお願いをいたす次第でございます。
  264. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。(拍手)
  265. 田中六助

    田中委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  266. 田中六助

    田中委員長 次に、武藤山治君外四名提出昭和五十一年分の所得税臨時特例に関する法律案所得税法の一部を改正する法律案有価証券取引税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案武藤山治君外三名提出土地増価税法案の各案を一括して議題といたします。  これより各案について、提出者より順次提案理由の説明を求めます。武藤山治君。     —————————————  昭和五十一年分の所得税臨時特例に関する法律案  所得税法の一部を改正する法律案  有価証券取引税法の一部を改正する法律案  法人税法の一部を改正する法律案  租税特別措置法の一部を改正する法律案  土地増価税法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  267. 武藤山治

    武藤(山)議員 私は提出者を代表いたしまして、ただいま提案されております昭和五十一年分の所得税臨時特例に関する法律案所得税法の一部を改正する法律案有価証券取引税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につき、提案理由及びその概要を御説明いたします。  政府が今回実施した税制改正内容は、インフレと不況の下で拡大している社会的不公正の是正という緊急課題に取り組むことなく、従来の高度成長型税制を温存し、かえって巨額の税収不足を理由に所得税減税を見送り、勤労者に対して実質増税をもたらすきわめて反動的性格の強いものであります。しかも、増税対策も選択的増税方針をとり、法人関係の租税特別措置の若干の手直しと自動車関係税の引き上げを行うにとどめ、大企業優遇税制はそのまま存置されています。これは景気回復の名のもとに、勤労所得重課、資産所得、大企業優遇の税制を継承するものであり容認できません。高度成長型税制が引き起した事態を打開するには、その税制自体を改革しなければなりません。  インフレと不況の結果生じた国民生活の被害を救済し、税の公平を実現し、富の再配分を行うため、法人課税の改革、租税特別措置の廃止、資産課税の強化など、高度成長型税制の根本的転換の展望に立って、生活優先の経済、福祉型税制の確立を指向すべきであるにもかかわらず、その姿勢は見られないのであります。  このような政府税制改正では、不公正は拡大しても、その縮小、是正は行われず、勤労国民のための税制改革の布石とは言えないのであり、これが五法案提出の根本理由であります。  まず、昭和五十一年分の所得税臨時特例に関する法律案について申し上げます。  本臨時特例法案は、インフレによる課税最低限の実質低下、名目所得増加による実質増税の実態を考慮し、低所得者層中心の緊急調整減税を実施するものであり、しかも、従来の課税最低限の底上げ方式では、高額所得者優遇の減税となり、税負担の不公平を拡大し、税の再分配機能を弱化させる結果を招き、かつ、インフレ刺激的効果をもたらすことになるので、この点を配慮した減税方法をとるものであります。  このため、生活費非課税の原則に立ち、所得税は四人家族年収二百九十万円まで無税とするよう世帯構成に応じた税額控除を行い低所得者層中心の減税を行うこととしたものであります。また、同時に、高額所得者層の税負担を強化しようとするものであります。  まず第一に、昭和五十一年分の所得税については、現行税法で算出された所得税額から居住者につき三万円、居住者が控除対象配偶者または扶養親族を有する場合には、その控除対象配偶者または扶養親族一人につき一万五千円を加算した金額を控除するものとしております。したがって、四人世帯の場合の税額控除額は七万五千円となり、これにより給与所得者は年収二百九十万円まで無税になります。なお、この税額控除は課税所得五百四十万円、年収約八百五十万円以上に対しては適用しないことにしております。  第二は、給与所得控除の控除限度額の設定であります。現行制度では給与所得控除額はいわゆる青天井で高額所得者優遇の制度となっておりますので、この不合理を正すため控除限度額を百九十万円とし、いわゆる控除頭打ち制度を設けることとしております。この結果、年収八百五十万円以上の給与所得控除額は百九十万円の一定額となります。  第三は、課税所得一千万円以上の部分に対する一〇%付加税の新設であります。インフレのもとで、所得格差は拡大し、しかも低所得に重い現行所得課税の不公平により高額所得者の税負担は相対的に軽減されております。物価対策の上からも、不公平課税の是正の上からも付加税を課すことにいたしたわけであります。  第四は、内職収入について、その実態を考慮して配偶者控除の適用要件である配偶者の所得限度を五十万円に引き上げるとともに、勤労学生控除についても、学費、生活費の高騰を配慮して、その所得要件を七十六万円に引き上げることにしております。さらに、寡婦控除についての所得要件も六百万円に引き上げることにしております。  次に、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、さきの昭和五十一年分の臨時特例法案とあわせて、現行法のもとで税負担が他の所得者に比べて重くなっている給与所得者について、各種の所得控除または非課税措置を設けて税負担の軽減を図るとともに、他方、ある種の資産所得について課税を強化しようとするものであります。  まず第一に、通勤費の非課税であります。現行制度では、実際に支給した通勤手当のうち一定限度までの金額について非課税としておりますが、通勤費は明らかに必要な経費でありますから、その制限を外し、通勤費の実費相当額は全額これを非課税とすることにいたしております。  第二は、夜勤手当の非課税であります。警察官、看護婦等のように夜間勤務をする者の場合は、心身の消耗が激しく、その回復のためにはかなりの経費が必要でありますが、この点を考慮して、一定額の夜勤手当についてこれを非課税とすることにいたしております。  第三は、キャピタルゲイン課税として有価証券の譲渡による所得に対する課税の強化であります。現行制度では年間取引五十回二十万株未満については非課税になっておりますが、これを改めて、年間取引二十回十万株以上に対して課税をするものといたしております。  第四は、退職金の退職所得控除額の大幅引き上げであります。退職所得控除額を現行の勤続年数一年につき現行の二十五万円から五十万円に引き上げ、二十年勤続で一千万円まで非課税とするものであります。なおあわせて退職所得控除額の最低保障額、障害退職の場合の加算額を、それぞれ引き上げることといたしております。  第五は、労働組合費控除の創設でありますが、労働組合が労働者の経済的地位の向上、福利増進を図るものであることは明らかであり、組合費はそのための費用でありますから、今日の社会通念から見て当然給与所得者の必要経費と考えられるのであります。したがって、組合の経常的な費用に充てられる組合費につきましては、所得控除を認めることといたしております。  第六は、寒冷地控除の創設であります。寒冷地域におきましては、暖房費等の生計費が他の地域に比べて多額にかかることは言うまでもありません。これに対し、公務員等の場合は寒冷地手当等が支給されておりますが、これは課税所得の中に含まれており、また、それ以外の所得者の場合は所得の中からその経費を賄わなければならず、いずれにいたしましても、他の地域の居住者とのバランスを欠くものと言えるのであります。そこで、本改正案におきましては、その経費相当分を総所得金額等から控除する制度を新たに設けることといたしております。  第七は、配当控除制度の廃止であります。現行制度は、いわゆる法人擬制説に立って、所得税の前払いである法人税を清算する意味で配当控除が行われておりますが、この制度によれば、配当のみの所得者は夫婦子二人の場合、課税最低限が四百五万円となり、給与所得者と比較して著しく不均衡を生ずる資産所得優遇の制度となっております。したがって、法人擬制説を維持するという考え方をやめて、税負担の公平を図るため、配当控除制度を廃止することといたしております。  次に、有価証券取引税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  有価証券取引税は、昭和二十八年に有価証券の譲渡所得課税が税務執行上の理由等で廃止された際に、この課税廃止に伴う代替課税の趣旨で設けられたものであり、昭和四十八年にそれまでの二倍に改正されたとはいえ、税率はきわめて低く抑えられておるのであります。これは資産家優遇の制度であると申さなければなりません。有価証券を譲渡した場合、何十億もの所得があってもわずか〇・三%のきわめて低い税率の有価証券取引税しか課税されないという不公平な税制では、政府みずから納税道義の低下に一役買っていると言わなければなりません。この認識に立って有価証券取引税につきましてはその税率を大幅に引き上げる必要があると判断したのであります。  その内容は、株式等を譲渡した場合の税率を現行の三倍に引き上げ、一般の譲渡の場合は現行の一万分の三十から一万分の九十に、証券会社が売買により譲渡した場合は現行の一万分の十二から一万分の三十六にそれぞれ引き上げることといたしております。  次に、法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この改正案は、法人税についても負担能力に応じた課税を行うため、現行の比例税率を廃止し、所得区分による超過累進税率を採用するとともに、大企業に有利な受取配当の益金不算入制度を廃止する等の改正を行うものであります。  まず第一に税率の改正でありますが、現行の普通法人に対する四〇%の税率を、年所得一億円以下の金額については三七%、一億円超十億円以下の金額については四二%、十億円超の金額については四七%の税率に改めることとし、解散または合併の場合の清算所得に対する税率についても、これに準ずる改正を行うことといたしております。一方、軽減税率の適用幅を拡大し、資本金額等が一億円以下である法人の所得の金額のうち百分の二十八の軽減税率の適用を受ける所得の金額を、現行の七百万円以下から一千万円以下に改めることといたしております。  第二に、現行の受取配当の益金不算入制度は、法人間の配当について二重課税を防止するという見地から設けられているものでありますが、大法人の株式投資が増大し、その持ち株比率がきわめて高くなっている現在におきましては、いたずらに大企業の税負担を軽くする制度となっておりますので、これを廃止し、配当金はすべて課税所得の中に含めることといたしております。  第三に、法人の寄付金につきましては、資本金基準及び所得基準による一定限度の範囲内で損金算入が認められることとなっておりますが、昨今では資本金または所得の増大によりその限度額が相当巨額となり、法人の寄付金支出を容易にしております。そこで改正案においては、両基準をいずれも大幅に引き下げて、適正な限度といたしております。  第四に、法人の貸倒引当金の繰入限度は政令で定められておりますが、そのうち、金融及び保険業につきましては、貸し金の千分の八・五の繰入率となっております。金融機関等の貸し倒れがきわめて少ないことは周知の事実であり、それに対して現行の繰入限度ははるかに多額となっており、これでは利益留保の色彩が濃厚でありますから、その繰入率を千分の五に引き下げることとし、また、その他の業種の引当率につきましても同様の理由により、現行の引当率の八〇%まで一律に引き下げることとし、これを本法に規定することといたしているのであります。  第五は、資本金額等が一億円を超える法人及び保険業法に規定する相互会社については、欠損金の繰り戻しによる還付を行わないこととするものであります。  企業が赤字を出したときなどに払い戻される法人税は、このところ大幅にふえており、法人税の還付、払い戻しは、五十年度に入ってから、毎月、前年度実績の三−八倍の高水準で推移し、その結果、五十年一月——十二月分の法人税関係の還付は合計三千七百四十八億五千六百万円で、前年の三・三七七倍にも上っております。その中でも、大法人の占める比率は高いものになっております。言うまでもなく、大企業は、さまざまの税法上の優遇措置を受けており、それがわが国の税体系をゆがめ不公平を拡大してきており、それに対する国民の怒りも大きなものとなってきておるのであります。  今日の深刻な財政危機の中で、さらに歳入欠陥に拍車をかけるこのような制度は、一般の国民感情から見て、また、税負担バランスから見て、大法人には適用しないことといたしております。  最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、現在三大不公正税制と称されている利子配当課税の特例、社会保険診療報酬課税の特例及び個人の土地譲渡所得課税特例のすべてについて徹底的な是正を行うとともに、大企業と中小企業の税負担に大きな差をつけている支払い配当軽課制度を廃止する等の改正を行おうとするものであります。  まず第一に、利子配当課税でありますが、現行の源泉分離選択課税制度、確定申告不要制度等は、資産所得優遇の最たるものであり、所得税本来の姿である総合課税の原則に反するものでありますから、これを廃止することといたしております。  第二に、医師の社会保険診療報酬課税の特例につきましては、一昨年十二月に税制調査会から具体策を示して答申があったにもかかわらず、政府は改正を見送っております。答申案は不完全なものでありますので、この際、税の不公正を是正するために、社会保険診療報酬の課税の特例については、これを廃止することといたしておりますが、その立法の経緯にかんがみ、政府昭和五十二年三月三十一日までに抜本的な社会保険診療報酬の適正化を行うことを求めて、施行日を、昭和五十二年四月一日からとしております。  第三に、個人の土地譲渡所得課税につきましては、長期譲渡所得に対して一段と課税の強化を図ることといたしております。すなわち、短期譲渡所得に対する重課制度はこれを存続し、長期譲渡所得に対しては、譲渡益二千万円以下の部分は二〇%の税率で課税し、二千万円超の部分については全額総合課税とすることといたしております。  第四に、法人の支払い配当軽課制度につきましては、この特例が、当初の目的である法人の自己資本の充実に何ら貢献せず、いたずらに大企業の税負担を軽減する役割りしか果たしていないことにかんがみ、この制度を全廃することといたしております。  第五に、長引く不況とインフレの中で、中小零細企業は深刻な状態に追い込まれております。このような状態の中で、中小零細企業の税負担を少しでも緩和するため、中小零細企業に対する不況期における法人税の延納の特例を設けることといたしております。  以上が、租税特別措置法の一部を改正する法律案内容ですが、なお、次の二点を特に、強調しておきたいと思います。  その一つは、交際費課税についてですが、政府も今回、課税強化の措置を行いましたが、まだ十分とは言えません。社用支出の実情にかんがみ、損金算入限度額の定額部分を三百万円に引き下げ、限度超過額の全額を損金不算入とするなど、一層の強化を図ることが必要であります。  いま一点は、各種準備金制度についてであります。現行の準備金制度は、将来に予期される偶発的損失や危険に対応して、多額の留保利潤を非課税のまま社内に蓄積しておく手段で、いわば将来の費用の繰り上げ計上でありますが、実際には、現実に発生する損失額を上回って過大計上される傾向が顕著となっております。したがって、実際の費用的支出を上回る計上分は、利潤の免税もしくは国からの補助金的支出と同じ効果を持つことになっており、利益隠しであるとの批判もあり、制度の既得権化の問題が現実化しており、弊害が目立ち始めているのが実情であります。  このような状態を前に、政府も若干の整理縮小を行いましたが、とりあえず、価格変動準備金、海外市場開拓準備金、公害防止準備金、商品取引責任準備金、海外投資等損失準備金、証券取引責任準備金、原子力発電工事償却準備金、株式売買損失準備金、渇水準備金、保険会社等の異常危険準備金、原子力損害賠償責任保険または地震保険に係る異常危険準備金を廃止することが必要と考えます。これ以外でも、技術等海外取引に係る課税の特例、増加試験研究費の税額特別控除制度さらに特別償却等抜本的改廃を必要としております。  これらの項目については一事不再議の原則から改正案に盛り込むことができませんでしたが、不公正税制の是正の観点から早急に実施すべきものであり、次年度税制改正にあっては欠かせない課題であります。  以上が税制による所得再配分と社会的不公正の是正を目的とした五法律案内容であります。  何とぞ御審議の上、御賛成賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  268. 田中六助

  269. 佐藤観樹

    佐藤(観)議員 私は提出者を代表いたしまして、ただいま提案されております土地増価税法案につき提案理由及びその概要を御説明いたします。  わが国の経済はインフレと不況の共存というかつてない深刻な危機に陥り、国民生活は根底から脅かされています。今日の事態はもはや一時的な対策で処置できる状況にはなく、抜本的改革を必要としているのであります。すなわち、インフレが富と所得の格差を拡大し、低所得者の生活を脅かす一方で、不況が失業の深刻化をもたらすとともに、未曽有の財政危機を招来していることが直視されなければなりません。  そこで、富と所得の適正な再配分を図り、深刻な財政危機を克服するための手段として、この際、税制を積極的に活用し、社会的公正の実現と租税収入の確保を図ることが強く求められていると言わなければならないと考えられるのであります。  今日のインフレを引き起こした原因の一つは土地価格の高騰にありますが、土地を担保にした信用インフレが地価をさらに引き上げるという悪循環は、昭和四十四年の土地税制、昭和四十七年の法人の日本列島買占めといった土地投機によって一層拍車をかけられたことは周知のとおりであります。地価の上昇は住宅事情を悪化させ、農業基盤を破壊し、地方行財政を圧迫していますが、逆に土地を所有している者は労せずしてキャピタルゲインを得ており、それは五十年の高額所得者百人のうち九十四人を土地譲渡所得者が占めることでも明らかであります。  昭和三十年の高度成長とともに始まった地価の騰貴はこの二十年間に全国市街地価格で二十八倍という驚くべき上昇率を示し、このため、土地の含み資産は巨額に上り、法人所有地についてみますと、東証上場会社全体の含み益は六十八兆円との推計も行われており、さらに、資本金一億円以上の法人では、九十五兆円、全法人では二百兆円にも及ぶと言われております。  また、土地の含み益は個人の土地所有者にも膨大な不労所得を与えており、たとえば、四十八年から五十年の三年間に土地譲渡所得が百二十億円を超えるという高額所得者もあらわれているのであります。  これらの利益は土地所有者にゆだねることなく、社会的な再分配の対象にして、公共の利益のために利用すべきものと考えます。  特に、五十一年度予算では歳入のほぼ三〇%を国債収入で賄うという巨額の税収不足の状況にあり、インフレ利得吸収のための大胆な新税を採用して税収の確保を図ることが急務であります。同時に財政改革と相まって、新税による財源を高度成長過程で放置されてきた住宅、生活関連施設、農漁業の再建、地方財政などの分野を中心に新投資と財源配分を行うことが経済財政の改革の一環として進めなければならない課題であり、このような考え方により新税として土地増価税を創設することが、本法案提出の理由にほかならないのであります。  次に、法案の概要を申し上げます。  第一に、本法案は地価の異常な高騰にかんがみ、土地等の増価額に対し土地増価税を課税し、増価益の適正な配分と租税収入の確保を図ることを目的とするものであります。  第二に、課税対象は、昭和五十一年六月一日現在の法人及び個人所有の土地及び地上権、借地権など土地の上に存する権利の増価額としております。ただし、法人及び個人の所有する農地等の増価額は対象としておりません。  第三は、課税標準でありますが、土地増価税の課税標準である土地等の増価額は、標準価格から帳簿価額または取得価額を控除した金額とし、標準価格は、土地課税台帳または土地補充課税台帳に登録された価格、すなわち固定資産税評価額を一・七五倍した金額としております。  なお、土地の取得価額の把握が困難な場合について所要の配慮を行うことといたしております。  第四は、課税最低限についてであります。すなわち、中小零細法人の店舗等及び個人の居住用宅地には課税しないようにするという配慮から、法人については、増価額が五千万円以下であるときは増価税は課さないこととし、増価額が五千万円を超えるときは、増価額から五千万円を控除することとし、また、個人については、増価額が三千万円以下であるとき、または土地の面積が三百三十平方メートル以下であるときは増価税は課さないこととし、増価額が三千万円を超えるとき、または土地の面積が三百三十平方メートルを超えるときは、増価額から三千万円と三百三十平方メートルに対応する増価額とのいずれか多い方の金額を控除することとしております。  第五は、税率と納付についてでありますが、土地増価税の一時的課税という性格をも考慮して、税率を一五%とし、納付は五分の一ずつ五年間の分割納付としており、また、物納もできることにしております。  第六は、土地譲渡益課税との調整についてでありますが、土地の譲渡益に対する所得税及び法人税との重複課税を避けるため、調整措置として、十年以内に譲渡があった場合には土地増価税を還付し、未納分は免除することとしております。  このほか、土地増価税は、法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額には算入しないこととし、個人の不動産所得の金額、事業所得の金額または雑所得の金額の計算上も必要経費に算入しないこととしております。  なお、この法律の施行期日は昭和五十一年五月三十一日としております。  以上が土地増価税法案の提案の理由及び内容の概要であります。  何とぞ御審議の上、御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  270. 田中六助

    田中委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。      ————◇—————
  271. 田中六助

    田中委員長 内閣提出昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  本案につきましては先刻質疑を終了いたしております。  本案に対し、自由民主党を代表して、村岡兼造君より修正案が提出されております。  この際、提出者より趣旨説明を求めます。村岡兼造君。     —————————————  昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  272. 村岡兼造

    ○村岡委員 ただいま議題となりました昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案に対する修正案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、この法律の施行期日は、原案では「昭和五十一年四月一日」と定められておりますが、申し上げるまでもなく、すでにその期日を経過いたしておりますので、本修正案は、施行期日を「公布の日」に改めることとしようとするものであります。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  273. 田中六助

    田中委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  274. 田中六助

    田中委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。森美秀君。
  275. 森美秀

    ○森(美)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案及び同法律案に対する修正案に賛成の意見を述べるものであります。  最近の経済情勢を見ますると、景気はようやくにしてこれまでの足踏み状態を脱し、回復の傾向を強めてまいっていると見受けられます。  五十一年度経済運営に当たっては、この底離れしつつある景気の着実な回復を図り、雇用の安定を実現していくことが最も重要な課題であると考えます。  かような点からいたしますと、五十一年度において財政の果たすべき役割りは、例年にも増して重要なものとなっております。  政府は、五十一年度においては、税収について多くの増加が期待できない、あるいは増税政策はとれないという経済の実情を踏まえ、適正な行財政水準を実現するため、特例公債発行という手段を選択されたわけでありますが、私は、これに基本的に賛成の意を表明するものであります。  しかし、同時に、かかる特例公債発行が恒常化することがあってはならないことも、この際あわせて強く指摘しておきたいと思います。  私は、当面するしばらくの間は、わが国経済が戦後初めて経験するとも言うべきこの経済の危機を乗り越え、今後の安定成長路線につないでいく調整の手段として、財政特例公債依存することは必要にしてやむを得ないものと考えるものであります。  しかしながら、これが恒常化し、国民基本負担である租税負担を逃れて、安易に特例公債依存していくような財政運営が定着するようなことがあってはなりません。今後の財政健全化の努力を、立法府も行政府も一体となって行っていかなければならないことを痛感するものであります。  本法律案におきましては、まず、特例公債発行が、五十一年度租税収入の動向等にかんがみ、適正な行財政水準を維持し、もって国民生活国民経済の安定に資するために行われるものである旨が明らかにされております。また、特例公債発行額は、予算で定める旨が定められております。また、特例公債の現実の発行を、税収等の実績を見ながら必要最小限にとどめるため、出納整理期限である翌年の五月三十一日まで発行できることとする規定及び償還計画国会への提出規定が設けられております。これらは、いずれも事柄の性格に応じた適切な立法であると考えます。  さらに、今回の特例公債は、期限までにこれを全額償還し、その借りかえは行わない旨が法律上明らかにされております。これは、今後できるだけ速やかに特例公債依存財政から脱却するとともに、特例公債の満期時にその全額を現金償還することによって、将来の財政運営の健全性を確保するという政府の意図の表明と理解できるところであり、私はこれを高く評価するものであります。  また、修正案は、施行期日を「公布の日」に改めるものでありまして、当然の措置として賛成するものであります。  以上、申し上げたところをもちまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  276. 田中六助

    田中委員長 横路孝弘君。
  277. 横路孝弘

    ○横路委員 ただいま議題になりました五十一年度公債発行特例に関する法律案及び同法律案に対する修正案について、社会党を代表いたしまして反対の討論を行います。  本法案は、特例法とは言いながら、昨年に引き続き大量の赤字公債発行を意図するものでありまして、一般会計における公債依存率は二九・九%、合計七兆二千七百五十億、うち特例公債は三兆七千五百億円となり、他の先進諸国にも例を見ない数字であると同時に、戦前の高橋財政当時の一般会計における依存率に近い数字となっているわけであります。これでは、高橋財政に始まる公債政策が、結局は一時的とは言いながら恒久化していって、軍事費を中心として安易な財政膨張を招き、政治と経済を破局に導いていったことに対する戦後の反省というものは一体どこへ行ったのかと指摘をせざるを得ないわけであります。  いま国民が求めているのは、高度成長の産業優先政策のもとでもたらされた日本経済の大きなゆがみ、つまり経済的な不均衡と社会的不公正の拡大を是正することであります。企業のための国家財政から生活のための財政に転換させることだと思います。公正な所得の再配分、国民生活を維持発展させるための公的なストックの充実という財政本来の役割りを果たさなければなりません。  しかし、五十一年度予算を見ても、従来同様輸出奨励、産業優先の政策と言わざるを得ませんし、公共投資の中でも、その構成は相変わらず道路整備、港湾、空港などの産業関連の公共事業費が圧倒的に大きく、高度経済成長期と同様の産業関連公共投資中心主義が貫かれているわけであります。  また、今回の税制改正も、企業の資本蓄積、内部留保等、企業に対する優遇措置を大幅に残しているのでありまして、抜本的には先ほどわが党が提案をいたしましたような税制改正法案が必要不可欠だと思うのであります。  高度成長とそれによる税の自然増収依存してきて破綻をした財政であるのに、同じ道を進もうとしているわけであります。まず企業が利潤を蓄積して、その利潤の限られた一部で財政が成り立つというならば、経済政策の基本に破綻が起これば行き詰まるのは当然でありまして、こういう構造の転換なくして財政の再建はないと思うのであります。  しかるに、本法案はこれを拒否するものでありまして、税財政構造経済構造の転換を図ることなく、再び成長サイクルの中で財政考えていこうというものだと言わざるを得ません。  その結果どうなるかというのは、大蔵省試算財政収支試算で明らかでありまして、昭和四十年から今日までの十年間の累計が十一兆円、五十、五十一年度だけでこの累計を超えて、昭和五十五年度には五十兆円に残高がなるだろうというわけでありまして、こういう状況を見てみましても、償還のめどはなく、借りかえか大幅な増税をせざるを得ないところに追い込まれるのは明白だと言わなければならないと思います。  また、公債の利払いや償還の費用負担というのは将来の納税者に分散をさせられるわけでありますし、しかも所得の再配分という観点から見れば、不公正をますます拡大をすることになるわけであります。しかも、一方で財政硬直化の要因となることも明白でありまして、私たちは認めるわけにはいかないのであります。  また、インフレ再燃の危険性についても指摘せざるを得ません。発行自体がインフレ要因であることは間違いがありませんが、それが顕在化して加速的に働くかどうか、それは大量発行に伴う金融政策にかかっています。市中消化市中消化と言われますけれども、現実は一〇%程度で、五十年度新規国債の保有状況を見ても、わずか六・九%にしかすぎないわけであります。  結局、規制金利下での大量発行というものは日銀の信用に依存せざるを得ず、日銀が独自の立場から通貨の供給量をコントロールし得る余地を狭めて、金融政策が公債政策に従うことになる、つまり、インフレ再燃というのは明らかではないかと思います。  以上のような観点から、本法案については私どもは反対をいたしたいと思います。(拍手)
  278. 田中六助

    田中委員長 荒木宏君。
  279. 荒木宏

    ○荒木委員 私は日本共産党・革新共同を代表して、昭和五十一年度公債特例法案及び同法律案に対する修正案に反対の態度を表明し、討論を行います。  第一に、本法案は、国民犠牲、財界本位の戦後最悪ともいうべき昭和五十一年度予算の財源の調達を図るものであります。すでに予算討論でも明らかにしましたように、三木内閣は新年度予算で公共料金や各種保険料、負担金の大幅な引き上げなど、国民に約三兆円に上る高負担と福祉抑制を強要しながら、主として大企業が潤う大型プロジェクトや輸出増強によって、財界本位の景気回復を図ろうとしています。本法案はこのための財源を調達するものであり、まさに国民犠牲、財界本位の歳入法案と言わねばなりません。  第二に、本法案は、勤労者国民に耐えがたい困難をもたらし、その犠牲で大企業に巨大な利益を与えるものであります。  その一つは、国民に対する大増税であります。五年後でも約五十兆円に達する国債償還は、すべて国民負担であります。自民党三木内閣の不公正税制のもとで、勤労者、中小業者が犠牲を強要されることは明らかだと言わねばなりません。  東京都の調査によれば、年所得二百万円から六百万円までの勤労者は一七%から二四%の税負担であるのに、一億円以上の高額所得者はわずか二一%の負担にすぎません。また、資本金一億円以下の中小企業が資本金百億円以上の大企業より税負担率が高いということは、政府も認めるところであります。間接税の逆進性や付加価値税が最悪の大衆課税であることは言うまでもなく、つまり、どのような新税構想をとろうとも、本法案によって将来勤労者、中小業者、そして国民が大きな犠牲を受けることは明らかであります。他方、国債の利払いは、新年度すでに一兆三千億円、五年後には数兆円に達し、国民の犠牲において大金融機関、大企業に大きな利益をもたらすものであります。  その二は、本法案がインフレをさらに激化させることであります。放漫な財政支出は、それ自体インフレの危険を増大するものでありますが、同時に括弧つきの「成長通貨の供給」という名目で、国債の日銀保有高の増加や日銀貸し出しの膨張など、大企業の過剰投資、高蓄積を進めてきた大企業本位の金融政策は、インフレをさらに助長するものであります。しかも、新価格体系の名のもとに、公共料金、大企業製品価格の大幅引き上げが相次いでいるとき、本法案の持つインフレの再燃、加速の大きな危険性を強く指摘せざるを得ないのであります。  第三は、本法案が財政破綻をさらに激しくすることであります。巨額の国債費財政硬直化をもたらすことは言うまでもありません。五年後公債残高が国民総生産の約二割に達する状態で、どうして国民のための施策が進められるでしょうか。しかも、政府償還計画は単なる償還予定であり、全く裏づけを持たない口先だけの決意表明にすぎません。したがって、本法案は、まさに財政亡国への一歩を踏み出すものと言っても過言ではないのであります。  第四に、本法案は、公債政策の大改悪であり、財政法に定める健全財政基本原則をじゅうりんするものであります。本法案は、従来の公債特例法案とも異なり、年度当初から赤字国債発行を認め、しかも景気刺激のための歳出財源の調達を図るものであります。財政法は、公債発行の目的、規模などを厳しく規制し、単年度収支の均衡を堅持することを強く求めていますが、これは長年の財政運営に係る歴史的教訓を踏まえた基本原則であります。本法案はこの基本原則を真っ向からじゅうりんするものであり、公債政策に係る歴史的教訓に挑戦するものと言わねばなりません。  わが党は、さきに昭和五十一年度予算に対する日本共産党の主張を発表し、大企業、大資産家に対する特権的減免税の徹底的見直し、新植民地主義的海外援助や自衛隊の新規装備費を初め、不急不要な歳出の削減など、赤字公債発行せず、国民生活を防衛し、経済危機を打開する国民本位の実現可能な対案を示しました。しかるに、自民党三木内閣はこれに全く耳をかさず、かつ、今日の異常な財政危機に対する何らの反省も見られないのであります。この三木内閣の責任と反国民的態度に強く抗議して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  280. 田中六助

    田中委員長 広沢直樹君。
  281. 広沢直樹

    広沢委員 私は公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案及び同法に関する修正案について、反対の立場から討論を行うものであります。  まず、反対する第一の理由は、わが国財政の憲法ともいうべき財政法を軽視し、形骸化しようとすることであります。  政府は、みずからの経済政策の失敗が招いた巨額な歳入不足を補うため、本来財政法で認めていない赤字国債を安易に発行し、その基本精神を踏みにじっておるのであります。こうした財政に対する政府の姿勢は、四十九年度では、本来五十年度の歳入である四月分の歳入を一方的に繰り入れたり、五十年度は赤字国債発行を強行し、しかも、その発行期間を翌年度の五月末日までとしたことを初め、五十一年度の赤字国債発行についても、五十年度財政特例法では「租税及び印紙収入並びに専売納付金の減少を補うため、」としていた発行限度を、五十一年度は「五十一年度租税収入の動向等にかんがみ、同年度財政運営に必要な財源を確保し、」に変更し、財政特例法が一度成立さえすれば、その年度において幾らでも赤字国債発行が可能であるようにして、国債にのみ込まれた財政運営の節度を放棄しているのであります。  このように、政府は一貫して財政民主主義をじゅうりんし、財政法基本精神を大きくゆがめるものであり、断じて容認することができないのであります。  反対する第二の理由は、政府が将来の財政運営に何ら具体策を明示しないで、いたずらに国民の不安を増大させていることであります。  さきに大蔵省が発表した「中期財政展望」によりますと、五十五年度末の国債残高は五十兆円にも及び、そのうち赤字国債の累積額は十一兆円から十三兆円になると試算されています。政府は、この巨額な赤字国債を十年で借りかえせずに償還するものとしているが、その財源については全く具体性を欠き、現状では不可能に近いと断ぜざる得ないのであります。すなわち、政府の予定する百分の一・六の積み立てとか剰余金では償還財源とならないことは明らかであるし、もし仮に一般会計から国債整理基金に繰り入れるとしても、その額は巨額なものであり、これが、将来のわが国財政硬直化を招くことは必至であります。  こうした政府の具体策なき財政展望は、インフレ再燃、福祉切り捨て、増税など国民生活を窮地に陥れ、将来に大きな禍根を残すものであり、認めがたいのであります。  反対する第三の理由は、政府が不公平税制を温存して、税制の抜本的改革を放置したことであります。  今日の巨額な歳入不足の現状から考えた場合、わが国の税制は、大企業や利子、配当所得者を優遇する租税特別措置の廃止、大企業の課税逃れに利用されている法人税の各種引当金の縮小、受取配当の課税、大企業保有の土地に対する増価税の創設など、抜本的改革の問題は山積しているのであります。  しかしながら、政府の本年度税制改正は抜本的改革を放置したばかりか、大企業には実質的減税、逆に大衆に対しては課税の強化を押しつけ、現在の不公平を一層拡大させております。この政府の政治姿勢はまさに国民に対する背任行為と言わざるを得ません。  反対する第四の理由は、政府が歳入不足を安易な赤字国債発行に頼り、しかも、その発行の大前提である国債管理政策について全く努力をしていないことであります。  政府は、赤字国債発行を避けるための税制の抜本的改革による歳入確保、不要不急の歳出削減などに努力しないばかりか、いわゆる国債管理政策、すなわち、インフレの防止、公社債市場の育成、個人消化による市中消化の推進、償還計画と財源の明示など、国債発行に不可欠な施策を全く行っていないのであります。  このような安易な赤字国債発行は、断じて容認できないのであります。  以上申し述べた理由により、昭和五十一年度特例公債発行に関する法律案並びに同法案に関する修正案について断固反対し、私の討論を終わります。(拍手)
  282. 田中六助

    田中委員長 竹本孫一君。
  283. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま議題となっております両案に反対の討論を行いたいと思います。  第一点は、今日の財政危機、経済危機に対する認識並びにこれに対する対応というものがはなはだ不十分であり、不徹底であるという点であります。社会的公正をねらいとし、また時代の新しいニーズ、要請を先取りして、この辺で能率的な経済あるいは財政の再編成をしなければならぬと思いますけれども歳出面についても歳入面についても、そうした意欲と努力というものがはなはだ不徹底であるということは非常に残念であります。ただいま社会党、公明党さんと三党で出しました税の改正に関する考え方、これは新しいそうした要請に沿うものであると考えておりますが、政府の案にはそうした意欲、構想というものがほとんど見受けられないという点が第一点であります。  第二点は、国債の管理政策を中心とした問題でございます。商品の多様性ということについて若干のお考えはあるようだけれども、まだまだ不十分であるということ、あるいは市中消化の問題にいたしましても一応の原則は打ち立てられておりますけれども、そしていままではそれが可能であったといたしましても、これから若干でも景気が上向いてまいりまして、あるいは三月の決算資金あるいは六月のボーナス資金あるいはこれからの在庫積み増し資金、さらには設備投資資金というようないろいろな需要が出てまいりますから、その場合には果たして市中消化がどの程度できるのであるか、果たして市中の資金の需要とのクラウディングアウトの問題が合理的に解決できるのであるか、そういう点について納得のできる御説明がいただけなかったと思います。さらに、そうした問題に妥協をいたしまして日銀の信用増加ということによってこの問題が解決されるということになれば、それこそインフレの危険を内蔵するものでございまして、私どもは今回の公債発行が余りにもやすきについたものであるという点について、特に国債の管理政策の不徹底ということを批判せざるを得ないということであります。  第三番目の理由は、公債が五十五年には五十兆円になるということが指摘されておりますけれども、これも一つ試算であります。ただそういう計算ケースIなりケースIIなりにおいてやってみたということでございまして、そのとおりになるかということについてはもちろんだれが考えましてもなかなかむずかしい問題ではございますけれども、余りにも単なる試算であって、全然計画性が裏づけられていない、客観的な事実の裏づけがないということでございまして、大蔵大臣から五十兆円に打ちとめるんだという熱意と決意はお示しをいただきましたけれども、果たして公債が五十兆円にとどまり得るのであるかという問題、特に償還計画の問題になりますと、先ほど来御指摘のありましたように、償還をするということの熱意はありますけれども、もちろんこれがなければ大変でございますけれども、しかしどうして償還ができるかということについての客観的なデータ、これもなかなかむずかしい問題ではございますが、余りにもそれが抽象的に過ぎるということであります。  そうした三つの点は特に反対せざるを得ない理由でございます。  最後に、半分要望になりますけれども、要するに公債をこれだけ増発するということになれば、一番大事な問題は市中金融との競合の問題、もう一つ償還計画の問題であろうと思います。しかし、財政計画がないときにどうして償還計画が成り立ち得るかということが問題であります。ケースIケースIIという案がありますけれども、これも財政に対する一つの収支予測であり、単なる計算であります。わが国の制度そのものが、そういう意味で計画性というものが経済あるいは政治の全体にまだ確立をされておりませんので、特にその点が問題になるわけでございまして、私は今日の財政経済の重大な危機と新しい時代の流れというものを考えますと、社会的な正義と経済の効率的、計画的運営ということを考えまして、この辺で日本の財政経済全体に抜本的な革新を行わなければならぬと思います。その中核は社会的公正であり、同時に能率化であり、同時にすべての機構をそういうものに再編成をするということであろうと思いますが、そういう意味で、経済計画のないところに財政計画はあり得ないし、財政計画がないところに償還計画はあり得ない。政府償還計画がはなはだ抽象的なものに終わったのもけだし必然ではないかと思います。そういう意味で、新しい時代の転換に即応する姿勢と構想がいま必要である。これは特に指摘をいたしまして、反対の討論を終わりたいと思います。(拍手)
  284. 田中六助

    田中委員長 これにて討論は終結いたしました。     —————————————
  285. 田中六助

    田中委員長 これより採決に入ります。  まず、村岡兼造君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  286. 田中六助

    田中委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  287. 田中六助

    田中委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 田中六助

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  289. 田中六助

    田中委員長 次回は、来る十八日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時十一分散会      ————◇—————