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1976-05-11 第77回国会 衆議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十一日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 田中 六助君    理事 塩川正十郎君 理事 村岡 兼造君    理事 森  美秀君 理事 山下 元利君    理事 山本 幸雄君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君       大石 千八君    金子 一平君       鴨田 宗一君    瓦   力君       小泉純一郎君    齋藤 邦吉君       野田  毅君    林  大幹君       原田  憲君    坊  秀男君       宮崎 茂一君    毛利 松平君       山中 貞則君    高沢 寅男君       広瀬 秀吉君    松浦 利尚君       武藤 山治君    村山 喜一君       山中 吾郎君    横路 孝弘君       横山 利秋君    荒木  宏君       小林 政子君    広沢 直樹君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      茂串  俊君         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         経済企画庁長官         官房参事官   佐々木孝男君         大蔵政務次官  唐沢俊二郎君         大蔵省主計局次         長       高橋  元君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省証券局長 岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  柳館  栄君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 五月十日  所得税減税等に関する請願佐藤観樹君紹  介)(第四一六七号)  同(竹村幸雄紹介)(第四一六八号)  同(佐藤観樹紹介)(第四二四三号)  付加価値税新設反対に関する請願松本善明  君紹介)(第四二四一号)  企業組合に対する課税適正化に関する請願外  二件(服部安司紹介)(第四二四二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十一年度公債発行特例に関する法  律案内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 田中六助

    田中委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度公債発行特例に関する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。広沢直樹君。
  3. 広沢直樹

    広沢委員 きのうは、昭和四十一年度以降今日までの財政運営における国債政策あり方財政法から見て次第にゆがめられてきておる、特に、四十七年以降形骸化されておりますことを指摘してまいりました。五十一年度は、同年度財政運営に必要な財源確保、すなわち政策的目的として赤字国債発行することを第一条にうたっているわけであります。これは特例公債という形をとってはおりますけれども財政運営上景気対策としては、今後も恒常的な赤字国債発行への道を開いていくことになるのではないか。このことは赤字国債のこれまでの概念といいますか、こういうことも変わってくるのではないかというふうにとれるわけでありますが、この点大蔵大臣はどのようにお考えでありますか。
  4. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昨日も大臣からお答え申し上げましたように、本年一月の財政制度審議会からの公債発行に関する報告の内容でございますが、いま先生から御指摘のありました国民経済国民生活を維持していくということで、五十一年度における財源事情及び五十一年度における行財政の水準というものに照らし合わせまして、やむを得ざる措置として五十一年度について発行特例をお願いいたしたい、そういう趣旨でございます。したがいまして、これによって恒常的に赤字公債の道を開くということになるとは私ども考えておりませんし、特例公債からできるだけ早く脱却をする、そういう財政運営を行いたいということにつきましては、かねがねこの委員会において大臣からお答えを申し上げておる方針に変わりはないわけでございます。
  5. 広沢直樹

    広沢委員 現実の問題として、いままでの赤字国債につきましては、昨日も申し上げましたとおり、年度途中における租税収入あるいは印紙あるいは専売納付金、こういった見込み違いといいますか、歳入欠陥をやむを得ず補うものということでいままで運営されておったわけでありますけれども、今度の場合は事情事情であるとはいいながら、財政運営に必要な財源としてこれを考えていくということは、政策目的として赤字国債を活用するということが目的条項ではっきりしているわけです。したがって、これはいままでのパターンとは違うのではないか、こういうふうに結果としてとらざるを得ないわけでありますが、そうではないというのであれば、これから赤字国債赤字財政から脱却していくその方針というものを政府責任において国民理解されるように明確に、具体的に示さなければならない。ただこういうつもりである、こういう決意であるということだけでは国民理解できないわけであります。  したがって、その問題についてこれからお伺いしてまいりますが、その前に、この公債特例に関する法律案の中で、いま申し上げました同年度財政運営に必要な財源確保、この第一条の規定は、万が一年度内に補正を組まざるを得ないという状態が起こった場合は、この法律があるわけですから、赤字国債を上積みすることが可能である、こういうふうにも解釈ができるわけでありますが、この点はどういうふうにお考えでしょうか。
  6. 高橋元

    高橋(元)政府委員 特例公債法の二条でございますが、特例公債発行額につきましては、「予算をもろて国会議決を経た金額の範囲内」という規定をいたしております。本年度予算編成に当たりましては、総合予算主義、つまり本年度内追加財政需要というものは全部現行の予算財源の中で処理できる、そういう体制で編成をしたわけであります。したがいまして、ただいま御指摘のようなケースは起こらないように私どもとしては戒心をいたしたいと思いますけれども特例公債発行額を増額いたしますためには、予算議決を得れば法律上は可能でございます。
  7. 広沢直樹

    広沢委員 そこで具体的にお伺いしますが、大蔵省は、昭和五十年代前期経済計画概案、これをもとにして中期財政展望試算しているわけであります。その後、国会でいろいろ質疑がなされておるわけでありますが、この財政展望性格といいますか、これは非常にあいまいな感じがするわけであります。この試算は、閣議決定のいま申し上げました前期経済計画指標もと計算されておるわけでありますが、いままでの答弁を聞きまして、一体、この試算の機能、これは何なのか。経済計画概案の作成は、政府一つ目標を示して、これを達成するための政策手段とその決意を表明することに意義があるわけであります。そのような経済計画概案と関連せしめて作成されたこの財政展望でありますが、単に試算にすぎない、一向にその中に政府のこれからやろうとしている政策が明らかにされないということは、納得できないわけであります。  いまも申し上げましたように、いままでの概念と変わって、このように赤字国債に頼らなければならないという羽目になった、したがって、これから一日も早く脱却しなければならない、こういうことであるならば、財政法の精神にのっとって財政運営を正常化するためには、やはり国民に大きな負担となるこの赤字国債について、政府責任を持って、いま申し上げましたように、国民理解を得るような具体的な解決策というものを示さなければならない。これは単なる試案でございます——経済は生き物でありますから、もちろん経済計画も変わりましょう。決められたとおりにいくとは限りません。毎年毎年出される経済計画もあるいは五年ごとに出される計画も、これもやはり見直しというものは必要になってきておりますから、当然見直しは必要であります。必要であるけれども、一応こうするんだという目標に対しての政策手段内容、こういったものを明らかにすべきであろうと思うのですが、大蔵大臣、その点はもう一度明確にお答えいただきたいと思うのであります。
  8. 高橋元

    高橋(元)政府委員 たびたび大臣からもお答えを申し上げておることでございますが、この試算性格は、繰り返しになりますけれども、本年の一月二十三日に閣議了解された五十年代前期経済計画概案、それに基づいてつくってございます。したがいまして、この概案を下敷きにしてと申しますか、一般会計の姿に移しまして、歳出歳入、それから公債、その項目をお示ししましたのが試算でございます。したがいまして、経済計画が想定しておりますところの今後の成長率の低下に伴うところの諸問題、特に財政面の問題、それから福祉の充実なり社会資本の整備についての望ましい資源配分あり方というものを踏まえて、一般会計の将来の姿をつくっておるということでございます。  そこで、この試算性格ということでございますが、これはいま申し上げましたようなつくり方でございますけれども、ただいま当面いたしておりますような厳しい財政収支の現況というものから、いかにして五十年代の前半公債依存のその財政から脱却をするかということの一つの手がかりとして、私ども真剣に検討をしておるその資料でございます。もちろんこの資源配分計画というものが、これからどのような経済の変動というものに直面するかわかりませんけれども、しかしながら、一つ政府経済全体をとらえましたところの政策集合体と申しますか、体系として、その中の一環として財政を位置づけをしたということでございます。     〔委員長退席、森(美)委員長代理着席
  9. 広沢直樹

    広沢委員 大蔵大臣、これは私ども財政展望を求めた、そしてまた、大蔵省がそれを試算して出されたその背景は、もう御存じのように、まず、この多額の赤字国債に依存しなければならぬ、こういうような状況から一日も早く正常に戻さなければならぬ、こういうことで、では、どういうような形でその赤字国債発行したことに対して返済計画があるのか、償還計画はどうするのか、こういった問題で、その返済計画を迫ったわけですね。それについては、その財源はどうするのかという問題が出てきて、それで、これからの財政見通しはどうなるかということで、大蔵省はこの試算をせざるを得なかったわけでしょう。当然これは一般的に考えても、お金を借りる以上は返す、これはあたりまえの話ですね。しかし、どういうふうにして返すか。収入が明らかにならなければ、返す方法だって、返すというだけではこれは明確にならないわけですから、当然その借りるということについては、どういう収入見通しがあるんだ。だから、その見通しが明らかにならなければ、これは当然借りるという行為は行われないというのが一般概念であります。もちろんそれは、一般的なものと国との関係を同じように結びつけては考えられませんけれども、しかし、当然そういうことは常識的に明らかにされなければならぬ。そういうことがありますから、いわゆるこの赤字国債償還計画を求めたことについて、こういうふうにして将来の収入見通しがある。その見通しに立てば、万々大蔵大臣から説明がありますように、五十四年かあるいは五十五年には脱却するんだ、こういう見通しを立てられたのですね。ですから、いずれその内容というものがどういうふうになっておるかということは明らかにしないと、これはやはり国民に対して、国民が疑問に思っていることに対するお答えにはならぬのじゃないか、こう思うわけなんですよ。いま当局からお答えになりましたが、大蔵大臣はいかがですか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、この収支試算は、赤字公債をむやみに出したらいかぬじゃないか。しかし、出した以上は償還せにゃならない。償還財源がどのようにして調達されるか、そうしてその赤字公債から脱却するのはいつごろになるであろうか、その手順はどのようにして取り運ぶつもりかというような問題提起から、この収支試算計算されたわけでありますことは、広沢委員が御指摘のとおりでございます。  でございまするから、この試算は、単なる無意味数字を並べたものではなくて、現実財政運営指標になるような現実性を持ったものでなければならぬと思うのでありまして、私どももそういう意味で、これは財政運営一つの道標として、これを踏まえてできるだけ忠実にこういう状態をつくり出していくべく努力をしていかなければならぬと考えております。  この場合、公共投資の五十年から五十五年までの計数が出ております。それから振替支出の額が計算されております。これは単なる計算ではなくて、政府も近く閣議でこれを決めようといたしておるわけでございます。五十五年度金額は間もなく閣議で決まるはずでございますから、これは私ども政府を拘束することになると思います。しかし国会におかれましては、これを充足する歳入が十分でない場合にはこの公共投資あるいは振替支出に振り返って御議論がされる場合もあろうかと思いますけれども政府としてはこういう数字を踏まえて、そういうすでに決まったような歳出を充足しながら、しかも五十年代前半赤字公債から脱却するためには歳入面でいくとこういう負担国民にお願いしなければならぬことになるということをお示し申し上げたものでございます。  ところが、これはきのう松浦さんからも御指摘がございましたように、いろいろ問題がこれから発掘されるわけでございます。その問題が出てまいるということは試算が期待いたしていることでございまして、問題がないというようなことは現実にはないわけでございまして、たくさん問題が出てくると思いますが、その問題をどのように解決していくかという手順を手がたく踏み締めてまいることがわれわれの任務であろうと思うのであります。広沢さんにおかれましてもそういった点についての問題を提起していただきまして、私どもそれをできるだけ解明していくということをいたしまして、建設的な発展がこの論議を通じて行われることは政府もとよりお願いをしなければならぬことと考えておりますし、その論議を通じまして国民理解も進むことを私どもは期待いたしておるところでございます。
  11. 広沢直樹

    広沢委員 これは後日閣議決定するものである、そしてまた、しかるがゆえに現実性を持ったものである、単なるペーパープランだけではない、こういうお答えであります。  それならば、具体的にお伺いいたしますけれども財政収支試算では租税負担率、これを昭和四十八年度から五十年度平均一三・二%から一五・二%へと二%上昇することを見込んでおります。また租税弾性値が四十年度から四十九年度までの平均値が一・三九——三九か三五ですね。財政収支計算ケースのIで大体一・六、それからケースIIで一・七、きのうもそういうふうにお答えになっておったようでありますが、このことは税収の顕著な増加というものを明らかに示している。いわゆる増税を予定している、大きな増税を予定している、このように受け取られるわけでありますが、もう一遍、これは確認意味で申し上げますので、お答えいただきたいと思います。
  12. 大倉眞隆

    大倉政府委員 計数的にはただいま広沢委員が御指摘になりましたとおりであります。したがいまして、ちょっとくどくて恐縮でございますが、各年、各年がどうなるかというのは全くよくわかりませんが、五十五年までを通じて考えますと、やはりどこかの時期に差が埋まるような増収措置考えなくては目標が達成できないということをこの試算では示しているということはそのとおりだと思います。
  13. 広沢直樹

    広沢委員 低成長時代自然増収ではこの大きな穴埋めはできない。さらに歳出見直しだけでもどうにもならない。したがって、いまお答えありましたように大幅な増税というものを考えなければならない、こういうことであります。  しかしながら、そうなりますと、内容についてはいろいろ論議がありましたけれども、いまのところは勉強中であり、一切未定である、こういうことでございます。財政収支試算では年平均二〇%強、税の増収を示しておるわけであります。平均で二〇・九ですか、こういうことであれば、やはり内容がわからないということは、増税国民に対して大きな負担になってくるわけでありますから、不安を払拭することができない。やはりこれは明確にする必要があろうと思うのです。いつごろそういう問題について明確になるのか。ただ、勉強勉強中ではわからないわけであります。その点もう一度お答えいただきたい。
  14. 大倉眞隆

    大倉政府委員 どの税目増収考えることが適当かということにつきまして、ただいまの国会の会期が終わりました後、まず今国会での御論議税制調査会に御披露すると申しますか、御報告申しまして、その上で、次にどういうことを中心に御審議を願うかという手順を踏むわけでございますが、その場合に、ただいまおっしゃっておりますような中期財政収支試算、これは基礎問題小委員会の方にはお示しをし、議論をしていただいておりますが、総会の委員先生方にはお届けをしてあるだけでまだ詳しい御議論はいただいてないわけでございます。その御議論をいただきまして、まさしくいま御指摘になっておりますように、五十五年度までに何らかの増収が必要になるのではなかろうかということをもう一遍御確認いただかないといけません。つまり一般会計ベースで二%ポイント地方税を合わせれば三%ポイント程度租税負担率が上がらざるを得ないということについて正式の御確認税制調査会ではまだいただいておりません。したがって、経済計画の方も閣議決定になりますし、それらを合わせまして、税制調査会として、まず前提として五十五年までに三%ポイント程度、国税と地方税でどうしても上がるということで今後の財政運営政府としてはやらしていただきたい。やむを得なかろうという御結論をまずいただかなくてはいかぬわけで、その上で、それではどの税でそれを考えたらよろしいかというふうに議論が進んでまいる。その場合に、私どもは特定の税目しかあり得ないというふうに最初から決めて御相談をするというつもりはございません。またそうすべきでもないと思っております。やはり所得税から始まりまして、現在のあらゆる税目をもう一遍見直し、現在の税目で無理な場合には何か新しい税目があり得るかということを考えてみる。考え方方向としましては、再々申し上げますように、所得課税グループ資産課税グループ消費課税グループとに一応分けて御議論いただいたらどうかなと思っておりますが、この辺もまだ、それは会長がお決めになることでございますので、御相談しながら今後の議事運営をやっていただきたいと思っております。  ただ、先ほど答弁申し上げましたように、五十二年度の姿というものは、この試算は五十二年度を積み上げたものでございませんので、五十二年度歳出なり経済情勢なりがどうなるかというものを横目でにらみながら御議論をいただくよりしようがない。したがって、中期的な御議論をやっていただきながら、もう少し後の時期になって五十二年度の問題が具体化してくる、そういう手順になってまいろうと思います。
  15. 広沢直樹

    広沢委員 現在の税収における直接税と間接税の割合は幾らになっておりますか。
  16. 大倉眞隆

    大倉政府委員 五十一年度予算ベースで直接税が六八・二、間接税が三一・八でございます。
  17. 広沢直樹

    広沢委員 一応、直接税につきましては、いま申されたような比率になっている、直間比率はそういうことになっておりますけれども、いまの試算から見る税収、大幅にふやさなければならないといういまの御答弁なんですが、そうなりますと、直接税を増税して、それを埋めるということには少々無理があるのではないか。これまでにも議論がありましたように、直間比率というものをある程度見直さなければならないんじゃないかというふうにいままで当局からも答弁をいただいておるわけですが、このような税収比率の時点においてなされる増税は、どの分野におけるものが望ましいか、そういうふうに間接税税収比率を高めるべきではないか、こういう議論があるわけですが、その点はどのような分野におけるのが望ましいとお考えになりますか、大蔵大臣
  18. 大倉眞隆

    大倉政府委員 直接税と間接税比率につきましては、私はアプリオリに何割がいいという基準はないんだろうと思います。今後の方向といたしまして、仮に増収考えなくてはならないときに、どちらのサイドが適当かということもこれまた率直に申し上げて国民の、納税者選択の問題だと私は考えております。アメリカタイプの方に進んでいくということはあり得るシステムでございまして、それがいけないということを一義的には言い切れない。しかし、ECタイプの方に進むということもこれも一つ選択でございますから、直接税、間接税それぞれにいいところもあり悪いところもあるわけなんで、国会での御議論をまず御披露すると申しましたのも、まじめにそういう意味を含んでいるわけでございまして、国会では間接税大衆課税であるとか逆進的であるとかいう御批判が非常に強いということをまず御報告した上で、それでは直接税、間接税という分け方をするか、所得税資産税消費税という分け方をするか。いずれにいたしましても納税者選択の問題として掘り下げた御検討をいただきたいというふうに考えているわけでございます。
  19. 広沢直樹

    広沢委員 これにこだわるようでございますが、この点が非常に問題点であるわけなんで、もう一度お伺いしますけれども年平均で二〇%強の税の増収が必要な場合に早急に増収方法を決めないと、五十五年をあるいは五十四年を一つの目途にしている以上は、これは非常に年数が少ないわけでありますから、そういう場合には急激な、大幅な増税ということになりますと、相当大幅な増収あるいは増税手段をとらなければならぬ。たとえば、付加価値税のような、そういうことが懸念されるわけなんです。そういうことから考えてみますと、五十二年は一応いまのところはそういうつもりはないと大蔵大臣も先刻答えておられましたけれども、そうなりますと五十四年か五十五年には、試算によると一応ゼロ、赤字国債に依存しない形にしたいという答弁がきのうなされておりました。そういうことでありますから、少なくとも五十三年には、いま研究されているいろいろな問題というものは明らかになるのかどうか、その点いかがですか。
  20. 大倉眞隆

    大倉政府委員 いろいろなむずかしい条件を抜きにいたしまして、物の考え方なり手順といたしましては、まず五十五年までを目標に問題を洗い直して、所得課税をするとすればここ、資産課税をするとすればこれ、消費課税ならばこれという物の考え方が整理できておって、それを前提にしながら、五十二年度経済情勢がこうなりそうだからその中でこれをやったらどうかというふうにいければ一番論理的だと思います。     〔森(美)委員長代理退席委員長着席〕 ただ問題はそこまでの検討に相当時間がかかりましょうから、しかも五十二年度税制改正で言えば、具体的にはことしの十二月、もうあと何カ月もないという時期に具体案が出てこなくてはなりませんので、果たしてそういうふうに論理的に手順よくできるかどうか、正直申し上げて私も必ずしも自信はございませんが、事柄の取り運びはその方向に向かってやってみたらどうか、そういうことで一度税制調査会の方に御相談をいたしてみたいと思っております。
  21. 広沢直樹

    広沢委員 報道によりますと主税局調査課を設ける、こういうような報道がなされておりましたけれども、その新設の意向はあるのですか。
  22. 大倉眞隆

    大倉政府委員 調査課は、実はもう数年前から私どもとしては新設を希望いたしておりました。行政管理庁などにも要望を続けてきておりましたが、今回の予算でお認めいただきましたので、七月一日から新設されるということになっております。
  23. 広沢直樹

    広沢委員 その調査課は、事務分掌はどうなっているのか。いわゆる機構改革が行われるということは、やはり今日の税のあり方、いま勉強していらっしゃる、そういうものを具体的に事務分掌として扱うことになるのか、その点。
  24. 大倉眞隆

    大倉政府委員 調査課を認められましたことが新増税をもっぱらそこで担当するんではないかというふうに観測されていることは私も承知しておりますが、私どもの要望しておりましたのはそういうことではございません。調査課は外国調査というものを従来国際租税課の中でやっておりまして、内国調査というのを総務課の中でやっておりましたが、内国調査と外国調査をもう少し有機的に結び合わせてやってみたいというのが従来からの要望の趣旨でございまして、具体的な税目につきましての担当は依然として税制一課、二課、三課がそれぞれ担当してまいります。
  25. 広沢直樹

    広沢委員 今年度の税制の改正では、減税は見送られております。そのときに理由として挙げられたことは、減税は小幅に毎年やるよりも二、三年合わせて一度にまとめて相当の規模でやる方がよいからと大蔵大臣おっしゃっておられた。やはりこの中期財政展望、いわゆるこの五カ年に減税は考えているのかどうか、その点はこの中で考えられているのか、いかがですか。
  26. 大倉眞隆

    大倉政府委員 何回か前に当委員会で竹本委員お答えいたしたのでございますが、中期財政収支試算から見ます限り、自然増収では所要の税収確保できないというふうに見る方が素直であるということでございますので、その意味では自然増収を食い込むような減税は予定できない。したがって何らかの意味で減税が必要である、やるべきであるということになりますならば、それをカバーする以上の増収を他の手段で確保いたしませんと、中期財政収支試算から外れてしまう、私としてはそう考えております。
  27. 広沢直樹

    広沢委員 そこで、最初にちょっと戻りますけれどもいわゆるこの計画案の中で、いま言う増税の問題ばかりに触れてきましたけれども歳出の削減、この見通しはどういうふうになっているのか。五十一年度歳出見直しということで一応手をつけられている、そのことは認めます。しかしながら、まだまだその歳出の洗い直しが十分ではない、そういう点が一つ挙げられることと、こういう大幅な増税が実施されるまでには、いわゆる現在の不公平な税制、これをいずれにしましても解消しなければならぬ、増税の以前にはいままでの問題点というものは解決していかなければならないと思いますが、その点について当局は確約できますか。
  28. 大倉眞隆

    大倉政府委員 歳出面につきましては主計局からお答えがあると思いますが、歳入面につきまして、現在のシステムで賄い切れない、何らかの新増税ということで国民に新たな負担をお願いする場合には、いままでのシステムの中で不公平と言われているものは洗い直してこれを直すという努力をまずすべきであるという点は、御指摘のとおりだと思います。私どもも基本的にはそういう考え方を持ちまして、昨年の夏以来私どもなりに努力をいたしてまいったつもりでございます。いわゆる特別措置の整理につきましても程度の差につきまして御批判があること、重々承知しておりますが、私どもとしてはできる限りの努力をいたしたつもりでございますが、今後ともその面での努力は怠らないで続けてまいりたいと考えております。
  29. 高橋元

    高橋(元)政府委員 歳出面でございますが、歳出面の中で私どもこの中期財政収支試算では三つに分類して出しております。振替支出公共投資につきましては、これは経済計画概案数字を下敷にして大体の年の伸び率を出してケースI、ケースIIに出しておるわけでございますが、その他というところにいわゆる行政的なコストを代表するような経費が多々含まれております。もちろんその他と申しましても、中には文教、科学振興費とか食管とか地方交付税交付金とか大きな政策項目を含むわけでございますが、いわゆるその他事項経費と予算で一概に表現されておりますような各省、各庁の事務費を含みますところの経費全体といたしまして五カ年間の平均伸び率を一三・三%に抑えております。これはGNPの伸び率と等しく抑えておるわけでございますが、そのような想定をとりましたのは従前四十五年から五十年までとか、そういった四十年代のこういうその他の歳出の伸びに比べて非常に低く圧縮しておりまして、具体的に各項目を積み上げたわけではございませんけれども、そこに財政のコストを構成するような各種の経費について極力切り詰めていこう、そういう五十一年度予算編成に当たりまして私どもがとりましたと同じような態度を厳しく表現をしておるということでございます。
  30. 広沢直樹

    広沢委員 それではもう少し細かく伺いますけれども、先ほど主税局長はこれから増税、税の見直しの問題として所得税かあるいは資産税課税一般消費課税か、この三つを一応勉強している、検討している、こういうことであります。そこで、私どももこれまでに一応社会的不公平あるいはこの不公平を是正するためにはまず税制改正というものをやらなければならぬということで提案をしてまいりました。今日いわゆる財政欠陥を埋める目的でそれを第一義に置いて何とか増税しなければならぬということになるならば、これは国民は納得できない。いま申し上げておりますように不公平のあり方、税制をまず直すということを前提にしなければ次の増税というものはいかなる方法にせよ考えられないわけであります。  そこで、まずお伺いしますが、私ども所得税課税所得、これについていわゆる富裕税、こういう考えを提案したわけでありますが、この点については当局としていま検討されているようでありますが、どういうふうなお考えを持っておるのか、それから資産所得者の課税につきましても、利子配当所得税の特別措置を廃止するあるいは有価証券譲渡所得あるいは土地の譲渡所得は強化するということも提案してまいりましたし、さらに時間の関係でいろいろ続けて聞きますから一つ一つお答えをいただきたいと思うのですが、いわゆる法人税率についても累進税率を考えてはどうかということも提案してまいりました。さらに支払い配当軽課の問題あるいは法人受け取り配当の益金不算入の問題、それから各種引当金あるいは準備金、こういった問題も一応現実の実態に近づけるように見直していくように、こういうことも提案してきたわけであります。こういった問題を一応具体的に改正していかなければ、当然、いま言ったような幾ら勉強なさって財政上から考えてこうしなければならないということをお考えになったとしても、これはその以前の問題が解決していないとどうにもならないわけであります。  いま具体的に申し上げましたが、こうした私どもが提案している問題について当局はいまどういうふうに考えておられるのか、お答えをいただきたい。
  31. 大倉眞隆

    大倉政府委員 所得課税の中では、まず個人の所得税につきまして資産所得としての利子所得、配当所得、またキャピタルゲイン、これについてもう少し課税を強化する方向考えたらどうかという御指摘を再々受けておりますので、現実的にその効果が上がるような方策を見つけたいということで現在部内で研究を続けております。現実的に効果が上がるというところが一番むずかしい問題であろうかと思います。税法上だけで総合課税ということに直すだけではなかなかおっしゃっているような結果が出てこない面がございます。  それから法人課税につきましては、累進税率を導入するということにつきましては、率直に申し上げて消極的に考えております。税負担水準それから課税の仕組み、いずれもやはり今日のように国際的に資本、技術の交流が自由な世界経済の中での日本でございますので、余りほかの国とかけ離れたとっぴな法人税の仕組み——とっぴなというような言葉は悪いかもしれませんが、余りほかの国とかけ離れた法人税の仕組みというものは必ずしも適当でないという側面があろうかと思いますので、その辺を頭に入れました上で、なお負担水準としてもう少し負担していただく余地があるかどうかということは十分勉強をいたしたい。  それから、所得税と法人税の調整の問題、これはそれが不公平なんだという角度からの御指摘をたびたびいただいておりますけれども税制調査会ではそれは不公平税制の問題ではないのだ、それは法人税と所得税をどうやって調整するのが一番いいかという問題なんだから、そういう角度で今後議論をしようということになっておりますので、いま申し上げた角度からの議論をさらに詰めてやっていただきたいと思っております。  引当金は、システムとしましては、これもまた企業優遇のためにできているものではない、企業の期間損益の合理的な計算のためにあるシステムだと私は考えておりますが、ただその繰入率が現実に即さない面があり、結果的に優遇になっているというところがありとすれば、それは縮減を考えなくてはいけない、たとえば貸倒引当金を漸次縮減してきているのはそういうことであると私は理解いたします。  準備金につきましてもその他の特別措置につきましても、特別措置はすべて悪であるという考え方税制調査会もとっておられません。特別措置はそれなりの経済政策としての効果を果たしているという評価をしておられます。しかし、そうではあるけれども、やはり今後成長の速度が鈍い、分配面への配慮が一層必要になるという場合には、従来に比べてより一層政策効果と公平面との配慮のバランスをとるときに、公平面の配慮にもう少しウエートをかけておかないといけないという判断で、ことしの整理をやらせていただきました。今後ともそういう気持ちでやってまいりたいと思います。したがいまして、お言葉ではございますが、いわゆる特別措置が全部なくならなければ不公平税制は除去できない、したがってほかの何らの手段もとるべきでないというふうには私は考えておりません。
  32. 広沢直樹

    広沢委員 何も特別措置を全部なくせと言っているわけではありません。いま私どもが具体的に提案した問題は、数々問題点として挙げられる中でも代表的なものを申し上げたわけです。あと細かい面はまだたくさんあります。しかし、いずれにしましても、こういった問題を検討している以上はやはり具体的に一応検討されるべきであろうと思うのですが、ただ、こういった問題については明確に一応お答えいただいているのですが、実際にそれでは何を具体的に検討されているかということについては、勉強中であるとか研究中であるとかいうことで、そのことについては具体的なお答えがない。これからの大きないわゆる歳入欠陥を埋めていくための増税という問題についてはまだその片りんもお答えがないわけでございまして、具体的な問題として提案した問題については、それは適当でないとかその方向ではないとかということは明確に決めていらっしゃる。どうも私はその点すっきりしないわけであります。  この問題でもう一つ最後にお伺いしておきたいと思うのですけれども、最近インフレは完全雇用の状態、こういうことに関係なくあらわれてまいっております。現在、企業は価格体系の是正としていわゆる製品の値上げをもくろんでおります。このような時期に巨額な国債を発行するということは、心理的に考えても、実質的にもインフレを招きやすい。ことに財政法上の節度のほかに、外にある赤字国債についてその傾向が強まってくるわけであります。これは後で市中消化の問題と絡んでお伺いしたいと思っておりますが、過去の実態に照らしても、政府はこの膨大な借財を背負った場合にインフレによって解決していこう、いわゆる調整インフレ的な政策をとったこともあるわけでありますが、今後の経済政策がこのようなことで解決されるようなことがあってはならないと思うわけであります。  そこで、政府は絶対にインフレを招来しないとの確約、これをはっきりしなければ、赤字財政ということについてはやはりインフレ的な要因を積んでいくということについても、きのうの参考人の意見の中にも明確に指摘をしているわけであります。その点政府考え方をこの際もう一度はっきりしていただきたい。いかがでございますか。
  33. 松川道哉

    ○松川政府委員 国債を発行いたすことと関連いたしまして、これがインフレに結びつくのではないかという御懸念があることは私どもも重々承知いたしております。私どもも自分たちの考え方が独断にわたらないようにいろいろな方々の御意見を承り、またいろいろな資料も参考にいたしつつ政策を実施しておる次第でございます。  そこで、現在やっておりますような発行方式をとるとインフレとの関係ではどうなるかという点でございますが、いろいろな周りにある条件を捨象いたしまして、そして純粋にマネタリーな部分だけをとって検討いたしますと、発行時にはマネーサプライは変わらない。しかしながら、国債発行を通じて調達された資金が市中に回るときにはマネーサプライがふえて、これがインフレ的な影響を及ぼすのではないかという御意見が非常に強うございます。私どもも非常に捨象された、そこだけを取り上げた議論であればそういう可能性は十分にあるという認識は持っております。しかしながら、現在のような状況でどういうことかということになりますと、このインフレになるかどうかというのは、生きておる経済全体の姿、そしてまたその中における金融の実情、そういったものとの絡み合わせで考えられなければならないし、またその姿で把握されなければいけないと思います。  そういう観点で経済全体を見ますと、これは予算委員会で副総理が御答弁になりましたり、その他いろいろの議論がありましたが、現在の程度の、たとえば設備の稼働率であるとか生産水準であるとか、そういったものを考えますと、この国債発行がこれに関連いたします金融政策を誤らなければインフレを招くという心配は当たらないのではないか。この国債発行によって財政需要が極度に盛り上げられて、これが国の経済の、たとえば生産能力であるとか、そういったものとアンバランスな姿にまで大きくなるということであればそこに問題はあろうかと思いますが、現時点で見ます限りその心配はないものと考えております。ただ、将来、ことしの年度末近くでありましょうか、また来年度になりましょうか、そういう段階になって生産活動が現在よりも高い水準に来るということになってまいりますれば、その段階においてはますますその景気のかじ取り、特に悪性なインフレに行かないように十分配慮しなければいけませんので、その意味でも私ども一方では将来にわたっての金融政策に期待するところは多うございますし、他方では本年度の国債の消化に当たりましても、できるだけそういう影響の少ないように年度の上半期に重点を置きながら国債を消化していきたい、このように考えております。
  34. 広沢直樹

    広沢委員 その問題については後にもう一遍市中消化の問題で触れたいと思います。  そこで大蔵大臣、いろいろ伺ってまいりましたけれども試算の具体的な内容というものはまだ明確にならない。そこで、大蔵大臣が前回のときにも私にお答えになりましたし、きのうもそういう方向でということを確認されたわけでありますが、いわゆる一般会計に占める国債の割合というもの、依存度というものは、その消化の問題から考えてもあるいは公債負担の問題から考えましても五%以内にとどめることが常識的な財政運営目標である、そういうことであります。ところが、この中期展望中でも明らかになっておりますように、仮に五十五年に赤字国債がゼロになるケース考えてみましても、五十五年の建設国債の発行は六兆五千二百億円、これに対して利払いがざっと計算しましても約四兆円、こうなるわけであります。したがいまして、その国債発行に対していわゆる利払いだけが六〇%を超えるという、利払いのための国債発行みたいな異常な状態になるわけであります。この問題についてはきのうも資料の要求があったようであります。それで、それが出てきたときに私もこの問題についてはまた触れたいと思いますけれども、常識的な財政運営目標という五%以内、これに持っていくために一体どういう努力をしていかなければならないか、これはいま具体的な試案で、増税をするなりいろんなことで何とか赤字国債発行をまずゼロにするんだというところから始まるようでありますが、仮にゼロとなったとしても、いまの計算によりましても建設国債は依存度としてもこの試算にありますように一五、六%の依存ということになります。ここまで持っていくためにはどういうお考えであるのか。ひとつその方向といいますか、一応それを正常な、常識的な道しるべとしてお認めになった以上は、それに対するお考えをお伺いしておきたいと思います。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 まず第一に、ことしをピークといたしまして、五十二年度からいわゆる赤字公債を漸減、相当減らしてまいる、そして五十五年にはなくするということをまず第一の目標にしなければならぬと思います。そして、その後はいわゆる四条国債財政ということになるわけでございますが、それでもいま御指摘のように、この試算をもっていたしましても一六%内外の依存率になるではないかという御指摘でございますが、仰せのとおりでございまして、その状態も決してノーマルな状態であるとは思わないわけでございます。したがって、公債以外の税並びに税外収入をどのようにして着実にふやしてまいるか、そのために経済の着実な回復をどのように図ってまいるか、そういう点に力点が置かれた財政政策が貫かれなければならぬことは申すまでもないことでございまして、私どもといたしましては、とりあえずまず漸減、それから脱却ということを当面の目標にすること、そして、その間におきましても、財政の硬直化を生む因子をできるだけ避けながら、財政の体質を改善するということは忘れないでいくということを当面の目標にしていきたいと思います。それから第二の山でありまする公債漸減の仕事に取りかかりたい、そういうことをもくろむべきであると考えております。
  36. 広沢直樹

    広沢委員 いまの大臣のお考えは、そうせざるを得ない状況にあろうと思うのですが、まず赤字国債をなくすこと、それから漸減していかなければならぬということ、そのとおりでありますけれども、いま考えてみましても、実際五%以内に、いつもその状態でなければならぬということは私はないと思う。いろいろな状況ですから、経済の動向によってはある程度ふえる場合もあるけれども、しかし、ここ当分そういう状況にまで持っていくということは実際不可能になってきたんじゃないか、財政構造の中に、もっともっと国債に対するウエートが必然的に高められてきたんじゃないか。ですから、こういう景気の谷間、不況のときには、いわゆる財政法で認められた建設国債ではなくて、赤字国債というものをもう政策目的として活用しなければならない財政になってしまったんじゃないか、こういうことを考えるわけです。漸減していくというのは当然のことでありまして、それは感覚としてはそういうのでしょうが、実際の運営がそうなっていないわけですね。だから、大臣が先刻お答えになりましたような財政運営の道しるべとしては、国債依存度というものは、国債に頼るということは大体五%以内、これが一つの常識的な線だということを、もう実際は考え方を変えたんじゃないかというふうに私は考えられたものですから、なおこの点について念を押したわけであります。  これは、そもそも国債を発行する、国債政策財政の中へ導入するときに、この方針というものを明確に打ち出して財政運営をやるということを明確にしたわけです。これはとりもなおさず、やはり財政法の精神を受けて健全な財政運営というものを念頭に置いたからこそ、この目標を定めたものと思われるわけです。その点について、いまどうもその点が疑問なんですが、大臣、これはいかがですか。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 一番恐ろしいのは、なれるということでございます。人間性は弱いものでございますから、イージーな慣行になれやすい傾向を持っておるわけでございまして、税金の負担にたえるよりは公債発行の方がやさしいということに、ほっておけばそうなりがちなものでございます。したがって、そういう傾向がここ数年来馴致されてまいりました安易な公債依存の傾向であろうと思うのでございまして、それが相当高じてまいっておりまするので、病は相当膏肓に入ったのじゃないかという広沢さんの御心配でございまして、御心配もっともだと思うのであります。これを五%以下にとどめるなんということはもはや絶望的であるまいかという御心配も、これまたごもっともだと思うのでございますけれども、これをその範囲内におさめるという強い意志がなければ、何事ももうできない相談でございますので、まずそういう道標を設定いたしまして、それを達成する強い鉄のような意志を持つんだということを、政府もそして国会も持っていただくということからスタートいたしまして、国会の厳しい監視のもと財政当局を初め政府が鋭意それを目標に向かって努力し、国民もまたそれと並行いたしまして財政に対する理解を深めてもらうということを精力的に進めてまいるということ以外に道はないのではないかと思うのでございまして、そういう目標は私は失ってはならぬし、そういう意志を失ってはならないと考えております。
  38. 広沢直樹

    広沢委員 次に、国債の償還計画についてお伺いします。  これは五十年度の補正のときにも私は意見も交えて大蔵大臣に申し上げました。財政法第四条二項及び特例法の中に明確になっておりますように、償還計画国会提出の義務、こういうものがあります。この国会提出の義務というその目的について、償還計画をはっきりするということは、私は一つは国債が安易に発行されないいわゆる歯どめ、これを明確にするということに通ずると思うのです。もう一つは、国債を発行するということは、その負担は当然いま議論になっておりますように国民にかかってくるわけでありますから、その償還について国民の合意を求める。いまこれだけのことをやるけれども、こういう負担になってくるんだということでその合意を求める意味があると思うのですね。  ところが大蔵大臣は、この償還計画については政府を信用してほしい、とにかくいままでの建設国債、第四条の国債とは違って借りかえをしないで十年後には現金償還をする。特例法が単年度、単年度でありますけれども赤字国債の場合は今後も借りかえをしないでいくんだということをきのうお答えになりました。それだけでは——政府を信用しないというわけではありません、国を信用しない者はおらないわけでありますから。信用はしている。信用の問題と、償還計画の具体的にだれの負担でどういうようになるのかということ、この問題とをごっちゃまぜにして考えられたら困るのであります。国がこれだけの大きな借金をするということは、言いかえれば国民が借金して自分でまた返さなければならぬということでありますから、借金する以上は具体的な、こういうふうにして返していくんだということを明らかにしていかなければならないわけなんですね。その点がどうも明確ではない。この際やはりこの償還計画が、どういう方法で具体的にどう返していくんだということが明確にならなければ、財政インフレを招きかねない赤字国債、安易に流れやすい赤字国債、過去の経験からしましてもそういう問題があるわけでありますが、それを認めるわけにはいかない、こういうわけであります。  したがいまして、そのことについて具体的に私は提案をしました。というのは、やはり第四条国債にもちゃんと減債制度を用いて、そして償還に対する具体的なめどというものを立てている。しかしながら赤字国債、これは当然いまの法律では赤字国債を認めていないのですから、それに対してこういうふうにするとか、ああいうふうにするというのは現実法律があるわけはないのです。認めていないのに法律があるわけはないわけでありますから。しかしながら、それを特例で出さなければならぬということになれば、当然それに責任を持ってこうして返すのだということの具体的な方策というものを明らかにしなければならぬことは事実ですね。その点大蔵大臣は、先ほど言ったように、信用しろとかただ借りかえをしないで返すということが償還である——これは計画とは私は言えないと思うのです。計画じゃなくて、それは返すということを確約しているだけのことでして、もちろん借りたものは返すのはあたりまえであります。そういう意味で私が求めているのは償還計画、どういうふうにして具体的に返すかという方法、これをひとつ明らかにすべきである。これは五十年度特例公債を出すときにも私は具体的に提案をしながら申し上げているわけでありまして、その点について御検討なさったのか、今後どうするおつもりなのか、ひとつ明確にお答えいただきたいと思うのです。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 もう一度私はおさらいをいたしたいと思いますけれども、御信用いただきたいという意味は、国が国債を発行する、会社が社債を発行するということを両方併置してお考えいただく場合、社債を発行する場合に、社債の引き受けをされる方々があなたの言われる償還計画を求められないのですよ。つまり、東京電力が社債を発行されるという場合、それは償還財源をどのようにして、どのように償還されるんでございますかなんて聞かないで、大体東京電力を信用されてお求めになっておられると思うのです。それで日本政府公債発行される場合に、それ以上の強大な信用を持っている日本政府でございますから、私は国民は安心して公債を買ってくれるに違いないと思っているのです。この問題は償還計画とか、償還財源とかいう問題ではなくて、財政運営を、インフレを起こさないように償還することは決まっておる、決まっておるんだけれども償還のしようがあるんで、そのときにインフレを起こすような状態になっちゃ困るじゃないか、その間の財政運営をどうするんだということが国会論議の焦点になっておるんじゃなかろうか、償還計画でございますとかなんとかいう技術論は、私は国の方が会社より信用が少ないというような理屈はどうものみ込めないので、ですから国を信用してください、それで問題の焦点は、財政運営が乱に流れないようにやるということに焦点を置いておきますので、減債制度につきましては、また減債政策につきましてはこういう点を気をつけておるんでございますと、またその場合の財政運営につきましてはこういう心がけでやるんでございますということを中心に論議を申し上げたつもりでございますが、どうもかみ合いませんで、きょうもまた広沢さんからそのあたりのところのなにを御質問を受けておるわけでございますが、趣旨はそういう点にございますことを、根本精神は国を信用していただきたい、それで財政運営は真剣にやらなければいかぬのだ、インフレを通じて公債の消却をなし崩しでやるというようなことがあったらいけないじゃないかという御指摘が根本の思想の中におありだと思いますので、その点は十分気をつけてやりますという気持ちであることをお答え前提として申し上げておきたいと思います。  いまの御質問に対しましては事務当局から説明させます。
  40. 高橋元

    高橋(元)政府委員 大綱は大臣からいまお話がございましたとおりでございますが、かねがね申し上げておりますように、現在の特例公債法の四条でございますかで申し上げております償還計画、または財政法の四条二項でいっております償還計画、これは年度別の償還予定額を示すものであるということで、これは四十年に歳入補てん公債発行いたしましたときからさような解釈をとりまして、財政制度審議会でも御承認を得ておるわけでございます。したがいまして、お示しをいたしておりますところの予算と同時に提出いたしました償還予定額表というのは、五十一年度特例公債は六十一年度に全額償還をいたすという年度別の償還予定額になっております。  しからば、そのための財源をどうするかということでございますが、それにつきましては四十二年度以来確立しておりますところの国債整理基金特別会計法等によります減債制度、これで総合的に減債を進めていくということでございます。もちろん満期に全額現金で償還をいたします。つまり一般会計から国債整理基金への繰り入れによって特例公債償還財源というものをつくり出しますということをお約束しておるわけでございますから、六十年、六十一年という時期に償還額がふえて一般会計からの国債費の繰り入れがふえるということが予想されますけれども、それにつきましては、先ほど申し上げました四十二年度以来の減債制度に基づく定率繰り入れのほかに剰余金の繰り入れ、これを全額にふやすという形で運営をしてまいりますし、五十四年または五十五年、特例公債脱却するという中期財政試算で申し上げております年度以降予算の繰り入れをそのときの財政状況に応じてやっていくということでございまして、五十五年または五十六年以降六十年または六十一年までにいかほどの予算繰り入れを規則的にやるかということは、これは将来の財政の、大臣も申し上げておりますように、運営全般にかかることでございますから、計数的に申し上げることはいまそのよりどころもございませんのでできませんが、いずれにしても、六十年、六十一年に現金償還するために、現行の減債制度で国債整理基金に入ってまいります金以上に必要なものは予算をもって六十年、六十一年の償還時日までに手当てをいたすということは確実に実行をいたす所存でございます。
  41. 広沢直樹

    広沢委員 私が申し上げたのは、大蔵大臣、信用の問題をまた持ち出されましたけれども、信用するせぬの問題とはまず違う。  たとえば、いま申されました電力債の場合だって、これはやっぱり営業報告書なりあるいは損益計算書ですか、こういうものが出されて、もちろんその中の信用の一つには、それにおける金融資産としてそれを持っておこう、いわゆる利害も考えておるわけですね。それの総合的な資料の判断に基づいてこういった社債あるいは公社債、そういったものを求める、これは当然行われているわけですね。だから、それが実際に返ってくるか返ってこないかということの前提には、ちゃんと営業状況だとかそういう資料を確認した上で——ですから、赤字でどうにもならない会社、そういうものの社債を持つかといったら、そんなものは持つわけないですね。前提があるわけです。  ところがこの場合は、ただ国を信用しなさい、こう言うだけです。もちろん国を信用しておる前提に立つわけでありますけれども、この負担は全部国民負担によってかかってくる。それは四条国債の場合はいろいろなものが残っていく。後代負担という関係もありますから、財政法の精神の中でもただし書きで認められておるわけでありますが、赤字国債の場合はもろにかぶってくるわけでしょう。したがって、これが累積をしていかないように、そうして先ほど申されたように財政インフレになっていかないようにということも当然考えていかなければならない一つの問題でございますね。ですから、それに対しては明確にこういう返していく方法をとっていくのだという、国民が安心できる一つ償還計画というものを納得するような説明をしてもらいたい、こういうことなんです。よろしいでしょうか。  そこで四条国債が出される場合においても、当時の減債制度、基金特別会計を改正しまして、そして毎年毎年の積み増し、減債基金というものを百分の一・六、公共事業の対象経費が大体六十年の償却と見込んでそういう概算で立てられて、その上に剰余金だとか予算の繰り入れだとかでこれは完全に返せますというふうなことをするためにそれをつくった。これはちゃんと当時の改正案を出されたときの提案理由の説明あるいは当時の論議の中に明確なんです。その当時の中で赤字国債論議が出るわけがない。それは当然です。赤字国債財政法に認められてない話なんですから。したがって、国が借金をする場合にはこういうふうにして積み増ししてこういうふうに返します——赤字国債であろうと第四条国債であろうと借金には違いないのです。国はとにかく国債を発行する場合においてはちゃんとこういうふうにして返しますよ、一方では借金しているけれども、一方ではこうやって積み立てて返していくから御心配ない、そのように先ほど議論しましたように一つ財政制度、めどというものをちゃんと設けて、その範囲内で健全な財政運営をやりますということをはっきりしているわけですね。  ですから、いま財政法にない特例を出してまでもこれを何とかしなければならないという場合においては、やはりどういうふうにして返すかということは何通りかあると思うのです。先ほどから議論しましたように、一応新税をもって大幅な増収があるからそれによって返すのだ、財源を生み出してくるからそれによって返せるのだということも一つ方法でしょうし、あるいはいまの四条国債の減債制度と同じように特例債の中にも法律的に積み増しをしていく、そういうことを考えてやっていく方法一つ方法でしょうし、その点を明確にしてもらいたいと言っているわけです。ただもう一つは、たとえばいまの減債制度の中でも残高はどんどんふえていくわけでありますから、これは当然十年後には試算的に大体これだけになる、あとは予算の繰り入れだとか——剰余金はいまの赤字のときに出るのはおかしいわけでありますから、剰余金に頼ってそれを何とかするということを考えることはいまの時点では不合理な話なんですね。  ですから、そういうようなところが明確にならないと、ただ減債基金の制度がありますと言ったって、それはいまの四条国債に対しての感覚においてつくられたものである、またそれを背景にして考えたものであるということでありますから、これをこれに当てはめるのだ、制度がありますからその中に積み増しされたものは返すときの基金に充てるのは当然だと思いますけれども、その背景からして違う。ですから、財政法にない赤字国債を出されるのだったらその中で現在処理していくことをこの法律の中に明確に盛り込むべきじゃないだろうか、私はそのことを指摘しているわけなんですよ。その点がどうも大蔵大臣には御理解いただけないのだが、その点どうなんですか。より具体的にこのことは明確にすべきじゃないでしょうか。
  42. 松川道哉

    ○松川政府委員 初めの部分で御質問のございました民間の会社については財務状況がはっきりしておるが、国についてはその点がはっきりしておらぬというポイントにつきましては、国は民間の会社よりもさらにいろいろな手段を通じまして、たとえば予算であるとかあるいは決算書であるとかその他財政法二十八条による資料であるとか、そういったものを通じまして国の財務的な状態国民の前に広く開示いたしておりますので、その点について、会社はわかるけれども国はわからぬというようなことはないものと私ども理解いたしております。  それから問題の焦点でございました点、すなわち現在の国債整理基金は四条国債のためにつくられたものではないかという御発言がございました。この整理基金が改組されましたときに一般会計から出しておりました国債が御指摘のように財政法四条の国債であることは御発言のとおりでございます。ただこれを設けますにつきましてもいろいろな検討が重ねられましたが、そのときにやはり減債基金として積み立てられるものは、国の債務というのが各種各般に及んでいることを考えると、これは一括して一本の基金に統一してやった方がいいのではないか、すなわち減債のために準備されると申しますか積み立てられる金は、その償還期限が来るまでに一体として効率的な運用を図った方がいいのではないかという御意見がもとにございまして、そしてただいまのような制度ができております。  たとえば具体的な例で申し上げますと、この基金が設けられました時点におきましても、あるいは戦前に発行されました国債が残っておるとか、あるいは外国で発行されました国債があるとか、そういったものもございました。そこでこの基金ができましたときに、これは財政法四条により国債を出すようになったから改組するのだということであり、これが四条国債のためだけのものであるとするならば、これらの戦前債あるいは外国債というのはおのずから別な減債基金をつくらなければならなかったわけでございます。ところがこれも一括して国債整理基金でその償還財源の積み立てが行われております。このような考え方は御指摘のございました四十一年十二月に財政制度審議会が報告を出しておりますが、この答申の中にも「国民の国に対する信用を背景とする内国債にあっては、このように個別的な公債管理のための制度は必要ではない。」という文言がございまして、いろいろな各種の債務とあわせて国債整理基金をつくるというふうに改組されております。したがいまして今回の特例債を発行するに当たりましても、この基金を通じましてこのために積み立てられる金を有効に効率的に運用して、そして将来の償還期限が来るのに備えるべきではないか、このように考えております。
  43. 広沢直樹

    広沢委員 減債制度そのものの意義とかその効果というものは、当然いまお話しなさったこともあるわけでありますね。しかし私がいま指摘したのは、これは四十三年ですか、いわゆる国債の元金償還に充てるべき資金の定率による繰り入れの制度、この問題で国債整理基金特別会計の率を変えるための提案をなさった。その中に「この率は、公債発行によってつくり出される資産が国民経済の発展向上に役立つものであるところから、公債の見合い資産が平均的に効用を発揮し得る期間をめどとして一般財源による償還が可能となるようにこれを定めることとし、その期間を約六十年と見て、百分の一・六としたものであります。」、これは当時の委員会における提案理由の説明であります。  ですから、いまの減債制度の繰入率というものはそういうような第四条ただし書きの国債を発行することに基づいてその公共事業の対象経費、それの耐用年というものを考えた上でこの率を直すのだ。六十年というのは非常に長いことでありますけれども、しかしこれは公共事業の対象経費であり、それがはっきりしているものであれば当然その負担の均衡化、平準化を図っていくために考え得ることなんですが、それははっきりとこの法律改正の中にうたってあるわけですね。したがって、その基金制度そのものをいまの赤字国債に活用してはならないとは言いません。あるのですからそれは当然活用してはならないとは言いません。あるんですから、それは活用することはあたりまえでしょう。  しかし、そうではなくて、いま財政法によらない赤字国債発行しなきゃならない。特例債をいっときならずこれから二、三年続けて出していかなきゃならぬ。将来の見通しもいま研究中であってわからない。経済の動向によれば、いろいろな文献によりましても、経済はまだまだ落ち込んでいる。従来のような回復は見えないということになれば、やはり赤字国債発行もこれから多少ずれでいくだろうという見通しさえもあるわけですね。そういう際でありますから、この歯どめということを考えてみましても、当然この減債制度を特例債の中で考えるべきではないのか、こういうことを私は主張しているわけなんですね。  ですから、そういうことも明確にしないで、ただ返すんだということ。返すのはあたりまえである。信用しろ。信用するのもあたりまえである。それは当然の話なんですから、その基本的な問題を私は問題にしているわけではなくて、政府がこれだけの大きな赤字国債発行しなきゃならない羽目になった以上は、建設国債でさえも、当時の議論の中でこれを明確にして、ちゃんと将来の対象経費、そしてそれに基づく積み増し、減債制度というものも考えたんですから、当然これは考えるべきではないのか。そうでないんだったら、先ほど言ったように、税制を変えて、その中でこれだけの収入が上がってくる、これでぽんと返すんだから心配ないですよと言うなら、賛成する賛成せぬは別として、これも一つの理論としては一応成り立つ。だから、どんな方法があるんですかと聞いているわけです。これだけの増収があるからぽんと返せるから心配しないでくださいというように。会社であれば、損益計算書を見たりして、ああ、毎年毎年これだけの業績を上げて、これだけの利益がある、ですからこの社債を買っても配当は十分であるだろうというふうに考えてそれを買うんでしょう。だから、その前提になることぐらいはやはり——償還計画法律上において国会提出を義務づけられているものであるけれども、これだけのいまの非常事態において国民に大きな負担をかけようというものであるならば、こういうふうにして返すという計画方向を示すということは、これは当然のことじゃないか、こう思うわけですよ。どうですかね。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 特例債と減債制度との問題の御指摘でございます。  減債制度というのは、財政が正常な運営の場合におきまして財政法で認められておる公債発行された場合におきまして、こういう制度によりまして減債基金が特別会計にこういう方式で積み立てられるという恒常的な制度を規定したものだと承知するわけでございます。で、その制度は、私はむやみに変えちゃいかぬと思うのでございます。財政法は基本法でございますからそういうことでいくべきでございますが、特例債というのは異例中の異例でございまして、これについてまた特別な減債制度を別につくってということは、むしろ広沢さんが御心配される特例債を引き出す契機の一つになりかねないとも言えるわけでございますので、特例債というのは異例中の異例でございまするので、出した特例債はできるだけ短期に消却してしまうということで片づけてしまわなければならぬ性質のものだろうと思うのでございます。  とりわけ、特例債を発行いたしておるときには非常に財政が緊張しておるときでございまして、減債基金に積んで、いま三千数百億国債整理基金に積まれた金がございますけれども、これは短期債に運用いたしておるわけでございますけれども、八分以上の金利を払ってまで特例債を発行せなければならぬような非常に緊張した財政状況のときに、こちらに積んで余裕金を運用するなんという、いわばそういう悠長な時期でないわけでございますので、資源の配分という上から言いましても、私はそういう配分の仕方というのは賢明ではないと思うのであります。  しかしながら、あなたが御心配のような点は、確かに、特別な減債思想をどこかに入れておかぬといけないじゃないかという思想も、これは無視できないと思うのであります。したがって、剰余金を二分の一を全額にするとかいうことは考えるべきじゃないかと私どもは申し上げておるわけでございまするし、また、実際は予算によって整理基金特別会計に繰り入れるということで資金を調達いたしますという、この予算繰り入れによって必要な償還資金を繰り入れて償還するということ、そこに非常に弾力性を持った制度があるわけでございますから、そこで間に合うわけでございますので、そういう方法で切り抜けさせていただきたい。また、それでいけるんじゃないか、そういう考えでございます。でございますから、減債基金と特例債について考慮を全然払ってないわけではない。あなたの御心配になった点について、われわれ財政当局といたしましてもいろいろ関心を持って考慮をいたしておるわけでございます。けれども、これは非常に異例中の異例の措置である、そのために恒久的な制度をつくるというようなことは差し控え、財政本来の有効な資源配分という厳しい原則を貫いていくということがわれわれの任務じゃないかと考えたわけでございます。
  45. 広沢直樹

    広沢委員 いま、いけるいけると、こういうわけなんですけれども、いままでもそういうふうなことで、冒頭に指摘しましたように、現実には財政法が相当ゆがめられてしまった。また、そういう状況にならざるを得ない羽目になってしまったということでありますから、やはりこれは財政当局者として国民に対しては明確にやっていかなければならぬ。それは財政運営についてやはりみずからを縛るように、みずからを律していけるような形にしていかなければならぬ。それは財政当局者に任せないとは言いませんけれども、そういう形をつくっていかないと、国債政策というものは安易に流れやすいということから財政法の精神も出ているわけでありますから、その取り扱いに当たっては当然そういう制度なり何なりを設けて、危惧される面についてはみずからを律していくような形をとるという姿勢が大事ではないだろうかと思うわけであります。  そこで、私は、いま大臣が申されたように、恒久的な制度にしろ、そんなことを言っているわけじゃないのですよ。それは現実にいまの財政法で認められ、あるいは国債整理基金特別会計の中できちっと認められ、あるわけでありますから。しかし、異例の赤字国債、いわゆる特例法をお出しになっているのですから、その中で処理することを考えるならば、その償還も、国会へ提出するということを特例の中にもちゃんと明確にしてあるわけですから、その中でこういうふうにして返す、赤字国債はこういうふうにして返せるのですよということを明確にする必要が、これは当然あると思うのです。恒久的なことじゃないのです。その特例がなくなればこれはもう終わりなんですから。  それからもう一つは、仮に、いま大蔵大臣お答えのように、いまの減債制度があるからそれで返していくんだというのだったら、十年、いわゆる五十年については六十年、それから五十一年の分については六十一年、こういうふうになるわけでありますから、そのときの国債整理基金特別会計に積み増しされたいわゆる減債基金というもの、これはどれくらいになっているか試算されたことがありますか。これも充当して返すのだということをお答えになっていらっしゃるのですから、私はいま償還のことを問題にしているのですから、十年後に大体これくらいになっている、あとの足らぬ部分を予算で埋め合わせるか、どうなるかということをはっきりしないと、これは納得できませんね。
  46. 松川道哉

    ○松川政府委員 あるいは昭和五十五年あるいは昭和六十年において国債整理基金が幾らになっておるかという点につきましては、この間にどのくらいの国債がさらに発行され、また、その見合いとして、どのくらいの例の定率分が積み立てられるかという点が一つ明らかでございません。一般会計だけをとれば財政中期見通しである程度の絵がかけておりますが、さらにこの国債整理基金には特別会計の借入金であるとかその他のいろいろな借入金の返済財源を入れております。そして、それを運用しておりまして、運用収入が上がっておりますので、国政全体にわたっての、多少粗っぽくてもいいから絵がかけていないと、整理基金の現在高は幾らであるかという計算はできない状況になっております。
  47. 広沢直樹

    広沢委員 いまこの問題で国民に対して、どういう方法で返すのだ——結局赤字国債負担というものは国民負担しなきゃならないという結果でありますから、何かの制度を設けてこうして返すのだということを明確にできない以上は、いまの制度の中でちゃんと返せるのだということであるならば、当然、いわゆる中期展望も試算されているわけでありますから、返す時点においては大体こういう姿になっているであろうという試算があってしかるべきだと思うのです。やはりこれを試算して、一遍当委員会に提出していただきたいと思うのです。いまないならば提出していただきたい。提出された時点で、私はこの減債制度の問題についてまた質疑をしていきたい、こう思うわけであります。
  48. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいま申し上げましたように、国債整理基金の側からこれを計算いたしますことは、いろいろな要素がございますのでできないと思います。ただ、広沢委員の御指摘のように、この部分についてどうなるのだということになりますと、一般会計の債務を償還するために要する財源というのは本来一般会計のサイドで負担すべきが筋でございます。その意味で、一般会計としてこの基金を通じてどれだけの金の出入りがあるか、そういうことになりますと、あるいはこれは主計局の方で御試算があるかもしれませんので、主計局の方から御説明させていただきたいと思います。
  49. 高橋元

    高橋(元)政府委員 これは、五十五年までは毎年公債が、建設公債特例公債合わせてどのくらい出るかという試算をしてございます。五十五年までの定率繰り入れ、それから剰余金繰り入れば原則としてございませんので定率繰り入れが累積して幾らになっておるかという計算はございます。しかしながら、先生いま御質問になりましたような、六十年、六十一年になったらこの残高が幾らになっておるかということになりますと、それはその後の公債発行、四条債でございますが、公債発行がどのように推移するか、つまり、歳入歳出全体の姿がつかめませんとこれは出てまいらないわけであります。ちなみに五十五年の数字で申し上げますと、これは非常にラフな計算なので精査する必要がございますけれども、私どもいま手元に持っております数字は約二兆二千億かと思います。
  50. 広沢直樹

    広沢委員 この基金もやはり残高が大きくなれば次第に大きくなってくる。確かに中期展望は五十五年までですから、それから先のことはわからないかもわかりません。しかしながら、やはり赤字国債発行する以上は、この償還計画については、先ほどからるる申し上げたように、いかなる方法で返すのか、財源はどうしていくのかということの目安といいますか、それはやはり明らかにしないと、返す、返さぬとかいう問題——返さぬということはあり得ません、返すのはあたりまえであって、そして方法は現金で借りかえはしないということ、それはもう明らかになっていることであります。  ただ、後どういう負担で返されるかということを国民は聞きたいわけなんですよ。その負担あり方は、ちゃんと減債基金で積んで返せるのだとか、あるいは別に制度を設けて積み増ししていきますとか——特例公債というのは一年一年の法律でありますから、いま仮に考えた場合には、この特例公債は来年はどうなるかわからないという前提に一応立っておるわけでしょう、試算はこうなるのじゃなかろうかという想像は出ていますけれども。それならば、ことしは赤字国債発行さしてもらいます。しかし来年は何とかしてこれをなくするように努力します。こういう話でありますから、五十四年から五十五年のなくなった時点で、それからはこれを返すための基金を少し積んでいくのかということですね。なくなったってまだそれはできない、それで六十年とか六十一年の五十年あるいは五十一年に発行する赤字国債の期限が来たときに、ぽんとそのときの状況で返せますというのでは、そのときの財政事情がどうなるかということがわからなければならないということになるでしょう。大蔵大臣も答えておられるように、そういう十年先のことを言ってもそれはわからないでしょうよ。それじゃせめて、赤字国債発行をしなくて済む試算を出されている五十四年ないしは五十五年以降はそういうふうな具体的な積み増しをするとか、何かもう少し具体的なお話がなければ、いままでのようにただ信用しろ、返すのはあたりまえのこと、返しますと言っているだけではお答えにならないと思うのですね。大蔵大臣、いかがですか。
  51. 高橋元

    高橋(元)政府委員 大臣からお答えのあります前に、若干技術的なことでございますから、私から申し上げさせていただきたいと思います。  減債基金の制度の趣旨は、先ほど理財局長から御説明申し上げましたように、要は、一言にして言えば国債発行の節度を示すというところにあるわけでございまして、償還資金を事前に積み立ててしまうという意味のものではないわけでございます。ですから、先ほど来お話のありましたような特定財源つきの償還財源と申しますか、個別減債資金のようなものを考えてつくった制度ではございません。  したがいまして、現在の特例公債を六十年、六十一年という満期時にどうやって返すかということでございますと、最終的な担保は、会社の財務状況に比較されますような六十年、六十一年の財政状態というものでございます。それにつきましては、財政収支試算でお示ししましたように、五十四、五年には特例公債依存から脱却をして、自後引き続き財政の改善をしていく、六十年、六十一年の姿は数字をもってお示しできないけれども、もはや特例公債から脱却をし、四条債についても圧縮の努力を払っておる、そういう状態であろうと思います。  したがいまして、いま先生からお話のありますのは、公債償還所要額が一時にふえた場合に、それを事前に平準化しておく必要があるかどうかということに帰着すると思います。その点につきましては、それはまさに五十五年、五十六年から先は数字がないわけでございますから事前にお示しはできませんけれども、これは予算の繰り入れによって様子を見ながら、国債整理基金の繰り入れを平準化する必要があるならば事前に繰り入れていくということでございましょうし、先ほど申し上げましたように、五十五年までラフに推計をいたしまして私どもが中期財政試算でお示しをした公債の額に達しておれば、それまでの定率繰り入れの合計は二兆二千億であろうと申し上げました。その定率繰り入れによって事前に償還してしまうということもあるかもしれません。それは市場の国債の状況によることでございます。したがって、いかほどのものが残っておるかという意味で二兆二千億あると申し上げたのではなくて、定率繰り入れはそのくらいやる力がある、それから先、もし公債がどのように推移していくかがわかれば、それに応じた機械的な計算はできるわけでございますけれども、要は、そういう計算ではなくて、財政状況が六十年、六十一年にどうなっておるか、そこまでどう持っていくかということ、それから六十年、六十一年に特例債の償還の所要額がふえるであろうと予想されますが、それを事前にならす必要があるかないかということを五十六年以降、特例公債から脱却した以降の財政の中でどう考えていくかということかと思います。  非常に抽象的でございますけれども、私ども考え方はさようでございます。
  52. 広沢直樹

    広沢委員 いずれにしましても、もう時間がなくなってまいりましたけれども赤字国債からどういうふうな形で脱却できるかという中期展望の問題についても具体的内容がいまもって明らかではない。ただ大幅な増税しかないだろうという輪郭ぐらいしかわからない。それから、それを今度は返す手段についても、一応返すというだけで、具体的にこういう方法で返すから心配ないんだという方法国民に示されないということはどうも納得できないわけであります。  時間がありませんので最後に続けて二、三問お伺いしてまとめてお答えいただきたいと思うのですが、市中消化の問題です。  これはきのう参考人の皆さん方がおいでになったときにもお伺いした問題であり、財政当局としてどういうふうに考えておられるのか、見解を承っておきたいわけであります。  それは、これまでは国債発行の規模も小さかったという関係で、今日、市中消化とはいうものの、シ団、特に市中銀行が大半を引き受けている。あと運用部と個人、証券会社を通じて個人というのもあるわけでありますが、大半は市中銀行が引き受けている。そして一年後には日銀の買いオペの対象としてそれが日銀に吸い上げられる、こういうパターンを繰り返してきました。したがって、四十九年度まではいままでの残高のほとんどが日銀の買いオペとして吸い上げられております。発行時においては、これは財政法五条で決められておるように、日銀の引き受けは禁止されておりますからゼロでありますけれども、年次がたつに従ってこの残高というものが日銀に累積される。それは状況によっては資金運用部でまた引き受けるという形をとっておりますから、市中金融機関が引き受けたものが全部日銀にあるとは言いませんけれども、こういう時期が来ますと、また資金運用部のを逆に引き受けていかなければならないということで、昨年末あたりは、ことしはぐっとまた日銀の保有高というのがふえてきている、こういう状況にあります。  ところが、このように急激に大幅な国債を発行しなければならない、それがいまの見通しでは数年続いていくだろう、残高も、中期展望に大蔵省が出されておりますように、五十一兆かあるいは四十八兆か二つの試案がありますけれども、そういうふうな大きな残高になっている。これが今後も国債発行は続くという見通しでありますから、この残高はまだまだふえていくということが考えられます。  そういうことになっていきますと、現在のような消化方法でいいのかどうかという問題、ところが、これはきのうも参考人が何とかこの形は変えていかなければならない、公社債市場の育成をしてもらわなければいけない、あるいは個人の消化をもっと図っていってもらわなければならない、あるいは資金運用部でこれを引き受けていくということが、間接的には、国民の預貯金を使う資金運用部でありますから、国民の預貯金を吸い上げたかっこうになるので、そういうふうな形が望ましい、いろいろな意見があるわけでありますが、いずれにしましても言うだけであって、今日それが改まっていないわけであります。  したがいまして、今日のように大量の国債が発行されるという段階がきますと、いままでは日銀がこれだけ引き受けてきても、政府当局者のお答えでは成長通貨の範囲内でやっていることであって、決してインフレ的な心配はありません、また通貨の増発に結びつくようなことはありません、こういうお答えであったわけでありますけれども、これだけ大きくなってきますと、当然これは一時的にせよ銀行のいわゆる資金ポジションに影響してまいる問題であります。それを今度は日銀がいままでのように引き受けられる状態かというと、これは通貨調整の段階でやっていくということになれば当然それはそうではない。そうすると市中銀行に滞留せざるを得ない。そのシェアがどんどん広がっていくと、いわゆるクラウディングアウトといわれるような状況というものは、景気の動向とにらみ合わせて、政策的には早く景気を回復しなければならぬということですから、少なくとも今年後半には回復するということになりましょうから、そういう問題が出てくる。また景気回復の一つの大きな手段というのは輸出の振興でありますから、外貨の流入も当然考えられてこよう、こういうことを考えていきますと、いまは直ちにインフレに結びつく状況ではないと言われても、これから国債発行も続くわけでありますから、そういう状況とかみ合わせてみると、やはりインフレの懸念が出てくるんじゃないか。  そこで問題になるのは、いままでの引き受けの状況をどういうふうに改善しようとしているのか、それから企業の金融の圧迫にならないのか、そしてインフレ的にはどういうふうな作用をされると考えていくのか、この点についての当局考え方を承ると同時に、最初に申し上げましたように、政府は、こういう国債の大量発行によって絶対にインフレを招来しない、責任を持ってそのことを確約できるということを、これは政治責任をかけて言ってもらわなければなりません。その点をひとつ再度明確にしていただいて、ちょうど本会議の時間が迫っておりますので私は終わりにしたいと思います。
  53. 松川道哉

    ○松川政府委員 まず第一点でございますが、広沢先生よく御存じのことなので簡単に計数的に申し上げますと、四十九年に発行されました国債で、市中に引き受けられましたものが一兆七千七百二十四億円でございます。これがお説のようにあるいは巷間誤って考えられておりますように、一年たてば当然日銀に行くかどうかという問題でございますが、この翌年である五十年度は十二月に一度オペレーションをやりましたが、オペレーションの総額は五千九百九十億円でございまして、しかもその中には国債以外のものを含んでおりましたので、五千九百八十二億円が国債でございました。ざっと見まして三分の一程度のものが日銀のオペとして買い取られた、これは成長通貨としてその程度が限度であるからということで買い取られたわけでございます。したがってその意味で後ほどお触れになりました、だんだん市中銀行に滞留していくのではないかという状況が、もう五十年度からすでにスタートしているということは言えようかと思います。  その次に引き受けの方法でございますが、これは昨日も堀委員からの御指摘もございましたが、非常に大ざっぱに分けまして三つ方法があろうかと思います。一つは昨日も堀委員が御指摘のように、入札制度によってやっていくという方法、それから一つは中央銀行の引き受けでございますが、これは中央銀行が引き受けてそのままという、どちらかというと思慮に欠けた方法はどこでもとっておりませんので、たとえばイギリスでやっておりますように、中央銀行が一回全額引き受けて、それを後で中央銀行から市中、市中というのは金融機関、個人を含めてでございますが売り出していくという方法、タップ式の国債と呼んでおりますが、そういう方法がございます。それからもう一つが西独などでやっておりますように、シンジケート団を組んでこれといろいろ条件の話し合いをし、また発行額の調整をしながらやっていくということで、国債を発行いたしますにつきまして、日本にどの制度がいいのかということは四十年当時もいろいろ御議論がございましたし、その後も御指摘のように国債の量がふえてくる、これは経済の規模のふえ方等も相対的に考えなければいけませんけれども、ふえてまいっておる。そこでいろいろ検討はいたしておりますが、私ども現在の段階では、日本の金融市場、公社債市場の現実考えますと、この引き受けの方法が一番いいのではないかというふうに考えておるのでございまして、ただいまのところこれを変更したいという考えは持っておりません。  三番目に、運用部がもっと使ったらどうだという御指摘でございますが、これは私もたびたび申し上げておりますように、日本の場合個人の貯蓄があるいは銀行預金あるいは運用部への貯金という形で出ておりますので、これを通じて買うという意味で運用部が国債を引き受けるというのも個人消化の一つの変形として将来とも考えていかなければいけないことだと思います。ただ、これは運用部に対する資金需要の強さ、すなわちほかの各種の政府関係機関特別会計その他の事業に要する政府資金の額の大きさとの絡みもございますので、一気に国債のみを急増させるというわけにまいりませんけれども、基本的には私どもただいま先生指摘のようなことを頭に置きながら今後とも運営をいたしてまいりたいと思っております。  それから、インフレの関係は先ほど御説明いたしましたところで尽きておりますので、繰り返すのは省略させていただきたいと思います。
  54. 広沢直樹

    広沢委員 それでは時間でありますので、大蔵大臣に最後に聞いておきたい。  それから、いまの松川局長お答えの中で、企業金融の圧迫にならないかという見通しはどうなっているか、その見通しを補足的に後からいただきたいと思うわけです。  大蔵大臣、いろいろ指摘してまいりましたけれども、きのうも銀行協会長もインフレの懸念ということはやはりおっしゃっておられるわけですね。それからマネーサプライもふえていく。あるいは最近のデータを見ますとマーシャルのkもぐんぐんふえているという状況ですから、過去との対比から考えていくと、通貨が相当増発ぎみであるということは言えると思うのです。これはある程度経済が成長しておりますから当然通貨というものは伸びていかなければならない。しかし、その限度の問題については、過般もいろいろ議論がありまして、その点が非常にむずかしい、こういうことでありますけれども、私が申し上げておきたいのは、やはり過去の経済の動きから考え、当然通貨の量というものはGNPに対して考えるということは、マーシャルのk、こういったことから考え一つの目安になるわけでありますから、そうしたことを明確にした運営をしていかなければならぬ。これは金融の運営は日銀の所管に属するようですけれども、それは当局としても当然考えていかなければならないが、その点はどう考えているのか。  それから、最後に申し上げた絶対インフレを招来しないんだ。しかし、その要因はきのうも議論になりましたし、私もあると思います。当然いま言うように景気がぐんぐん回復してきております。確かに全体的に見るとまだ需給ギャップが大きいということは言えるかもわかりませんけれども、しかし、国債の増発は、景気というよりも、いまの歳入欠陥状況から見て大型に発行していかなければならぬということは当分続かなければならぬ。景気は早晩、政府は努力していることでありますし、当然回復させなければならないということでありますから、輸出の問題あるいはいま言う企業金融の問題、そういうことからかみ合わせていくと——その他ほかに要因があります。諸物価の値上げ、公共料金の値上げ、こういう物価値上げの要因というものが重ね合ってくる時期が早晩来るのではないか。それに対して政策のよろしきを得ていかなければならぬが、そこへかつてのようなインフレを招来するというようなことになればこれは重大な政府責任だろう、こう思うわけでありますので、その点について財政当局者としての大蔵大臣のこの問題に対する一つ責任あるこれからの見通しあるいは決意、こういうものをはっきり伺って終わりにしたいわけであります。
  55. 田辺博通

    ○田辺政府委員 まず大量の国債発行が企業金融の圧迫にならないかという点について簡単に御説明いたしたいと思いますが、今年度経済の状況というものを考えますると、結論から先に言いますと、そういうことは起こり得ないのではないかと考えております。民間の資金需要というものは、ごらんのとおりの設備投資の動向を考えますると、かつてのような非常な資金需要の盛り上がりというものはなかなか出てこないのではないか、そういう意味で現在計画されておりますところの特例公債発行というものが特段に民間の資金需要を圧迫しなければ消化ができないというようなものではないのではないかと思います。ただ、これは全般的な話でございますから、あるいは時期的な問題あるいはまた地域的と申しますか金融機関の個別の問題はあり得るわけでございまして、そのところが結局はその金融機関なり時期に対する国債の発行量の調整なり、また日銀からの信用の調節という細かい手段を講ずる必要があるのではないかと思っております。  長期的に考えまして今後五年ないし十年というような相当長い期間のことを考えますると、現在の先ほどから議論になっておりまする国債の発行ペース、そういうようなペースでもって行った場合にはどうなるかということは、なかなかこれはむずかしい問題でございますけれども、別にそれが決まった路線というわけでもございません。一般的に考えますると、今後の経済成長の姿というもののウエートといいますか構造が公共面のウエートがふえて従来の形よりは民間部門のウエートが微減するというようなかっこうになっておりまするので、大ざっぱな話を申し上げまするならば、従来のような民間設備投資主導型というような高投資高成長型の資金需要というものはだんだん冷えてくる。構成要素は少なくなってくる。それを埋めるように公共債、国債であるとか地方債というような面に対する金融機関の側から見ますると資金の供与というウエートが高くなってくる。これは否めないものではないかと思います。それが経済全体として実物経済も含めましてバランスが保っていけるようにということが究極の目的でございまして、これはそのときどきの金融情勢に応じて適切な金融調整をしなければいかぬ。現在のところはそれぐらいに考えております。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 財政はいろんな政策目的に対して財源の充足を図りながらしかもそれによってインフレを招来することのないようにいたすのが任務なんでございますが、このことは言うはやすく行うはむずかしいことでございまして、かつてそういうことができたためしもないし、今後もそれはできないのじゃないかということが憂えられておるのが世界の通説であろうと思うのであります。そこで、政策目的の多彩な展開というようなことを御遠慮もいただかなければならぬし、といって財政の都合ばかり考え政策を不当に抑えていくというようなこともまた慎まなければいかぬわけでございますので、まず第一はサイザブルと申しますか適正な財政規模を設定する。非常に苦しいことでございますけれども、各方面の御理解を得ましてできるだけ内輪な財政規模を考えていくということを、まずインフレ抑制のためにも、また赤字公債発行を規制していくためにも、考えなければいかぬ第一だと考えております。  それから第二といたしまして税金か公債かという問題でございますけれども、これまた選択が大変むずかしくて、議論も多彩に分かれておるところでございますけれども、今日わが国の税負担というもの、社会保険料の負担というものは、各先進国の負担に比べまして必ずしも高くない、若干低目にあるわけでございまして、今度の経済計画概案の思想は、三%程度の範囲内において引き上げることを提案しても無理でなかろうという判断に立っておるわけでございます。それが実際政治的抵抗を伴わずに、また社会的ないろいろな批判を克服できて実現できますかどうか、これからの課題だと思うのでございますけれども、私どもといたしましては、できるだけ熟した理解を得て、税によってできるだけ多くの財源確保できるように国民理解を求めて、公債発行というものを極力抑えていかなければならぬのではないかと考えております。  第三に、しかし当面、ここ二、三年赤字公債に依存せざるを得ない情勢であることは非常に残念でございますし、その後におきましてもまだ相当額の建設公債というようなことが予想されるわけでございまして、公債政策というものは財政政策の一番大事な課題になってきそうでございます。財政と金融の緩衝地帯にありまして、これからの公債政策の成否というものが財政、金融政策の運命を決めることになるのではないかという点、あなたの御指摘になりました今朝来の議論の焦点になっておりますことも仰せのとおりだと思うのでございまして、公債管理政策という点に財政当局といたしましては大半のエネルギーをこれから割いていかなければならぬのではないか。そのためには、在来の財政当局の感覚というものを一遍洗い直して、新たな感覚でもってこの事態に対処しなければならぬのではないかと思うのでございまして、大蔵省といたしましても各局、各部力を合わせてこの問題については体当たりで対処して誤りなきを期さなければならぬのではないかと考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、非常にむずかしい局面でございます。全幅の国会の御指導、監視のもとに、財政当局としても全力を挙げて取り組んでこの危機を大過なく突破したいものと念願いたしておりますので、今後一層の御鞭撻と御支援をお願いいたしたいと思います。
  57. 田中六助

    田中委員長 本会議散会後再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後四時二十九分開議
  58. 田中六助

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。高沢寅男君。
  59. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣に私、やはり最初の導入部分ですから、少し基本的なことをお尋ねしたいのですが、昭和四十年、四十一年ごろ、ちょうど国債の本格的な発行が始まったころに、こういうような議論があったことは御承知だと思うのです。企業もそれぞれ赤字でみんな借金しておる。家計もみんな赤字で借金しておる。ところが、国だけは借金をしていない。そこで、もうここら辺で国も借金すべきだ。そして国が借金をするその分でいわば減税もやって、企業や家計が黒字になるようにさしたらどうだというような議論があったことを、私は記憶するわけなんです。これはお名前を言えば、当時の福田大蔵大臣の御意見であったわけなんですね。つまり、いまや国が国債を出して借金をする時代に来たんだ、その分で今度は企業も家計も借金をする必要のないような状態をつくるんだ、こういう御議論だったわけですが、それからずっと国債の発行が毎年なされて今日まで来た。  その結果いまはどうなっているかといえば、企業、この場合の企業というのは大企業ということになりますが、これは確かに高度成長の時代の中で収益も非常に大きくなりましたし、また資産の蓄積もされた。しかし借金はどうかというと、やはり借金はされています。これはうちの堀政審会長の議論でもありましたが、今日のわが国の企業の借入金というものは諸外国の資本主義の国と比べて非常に問題があるというふうなことに指摘されますが、しかし、その借入金は、いまのようなインフレ経済の時代には、これはまさに債務者利得ということにもつながるというようなことで、確かに企業の場合には借金はあるかもしれないけれども、それはむしろその企業にとっては大きな利益の源泉になっておるというふうな状態であると思うわけです。それに対して家計の方は、もう申すまでもなくインフレと物価の上昇の中で大変に苦しい、赤字の状態にある。しかもそのわずかな家計の中で蓄積をしている預貯金もインフレの結果目減りをするというような状態に置かれておる。一方、国の方はどうかといえば、これは国それから地方自治体も含めて大変な借金財政赤字財政というような状態になっているわけです。  ですから、昭和四十、四十一年ごろに、国が借金をすることによってもう少し企業を楽にさせようと言われた福田さんの御意見は、企業に関しては確かにそうなった。しかし、家計は全くそういうふうになっていないし、それから国や地方自治体の財政はとんでもないことになってきておるというのが今日の姿ではないかと思いますが、こういうふうなここ十年以上のわが国の経済財政の大きな流れというものが来て、これから先どうなるかというのがいま議論されている焦点です。  私は、いま大臣に、こういうふうな過去の経過に対してあるいはその十年以前の当時の福田さんのこういう御意見に対してどういう所感を持たれるか、それをまずお聞きをしたいと思うのです。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 まずその前提として申し上げたいのは借金の意味です。その借金というのは、当時は財政の借金は精いっぱい四条債の借金、それが大部分でございまして、特例債の部分というのはきわめて少額でございまして、しかもこれはやがてその脱却議論する必要もないほどの金額であったと思うのでございますが、今日の場合は大変大きな金額としてわれわれの財政にのしかかってきておるわけでございまして、これから脱却に何年かかかって、しかも非常な努力を必要とするという、量的にも質的にも非常に違った重圧になっておるのではないかという感じが一つするわけでございます。企業とか家計とかの場合におきましての借金も、財政の場合の特例債的赤字というのではなくて、とりあえず、企業の場合のオーバーボローイングはむしろ設備投資的なものに要した金の借り入れが主でございまして、赤字が続き、欠損が続いておる、そういう状態をオーバーボローイングであると言っているわけではなかったと思うのでございます。したがって、今日の事態と比較いたしますと、そこに若干相違があるのではないか、今日はもっと厳しい、よほどの緊張でもって対処しないといけない事態ではないかという思いをいたします。
  61. 高沢寅男

    ○高沢委員 そこで私も、その特例公債赤字国債ということにしぼってこれからお尋ねをしたいわけです。  大蔵省でつくられた中期財政展望ですが、五十五年には赤字国債発行が必要がなくなる、ゼロとなる、こういうふうなことでありますけれども、私は、これはわが国の景気の循環というものとの関係で考えてみたいと思うのです。  ケースI、ケースIIとそれぞれ作業をされておりますけれども、その中に、前半の方が比較的にたとえば成長率などは高いパーセントで見て、後半の方はそういうパーセントはやや落ちていくというふうな内容を含んでおられるようです。しかし、それはいわゆる景気循環、好景気、不景気という、この循環というものを十分織り込んだものとは言えないんじゃないか、こう思うわけです。そうすると、現実の日本の経済の循環というものを見ると、それぞれ多少の違いはありますけれども、四年ないし五年のサイクルで大体景気、不景気が循環するというのがいままでの、戦後の姿じゃないかと思います。  そうすると、ちょうどいまが昭和五十年、五十一年、この時期が不況の底、政府はその底をついたと認定されているわけですが、これから五十一年、五十二年、五十三年と、恐らく景気の上昇局面というものは出てくるだろうと思います。その上昇局面の中で、大蔵省試算では、五十四、五年までに赤字国債発行は必要のない、そういう財政状態ができるというふうに見ておられますが、ちょうどこれから五年たった昭和五十四年、五年ごろ、このころが、そういうふうな景気循環の見方で見れば、また不況に転化するというような時期にちょうど当たるんじゃないのか。そうすると、五十四、五年ごろに赤字国債から脱却できるというふうなそこら辺に行ったときに、その後はまた不況のために大きな税収の落ち込みが出る。そこでもって、ここでまた赤字国債を出さなければならぬというふうな状態が繰り返してくるんじゃないかということも、私は景気循環という立場で見れば考えなければならぬじゃないかという感じがするわけなんです。これはもちろん私も確定的な将来にわたっての断言ができるわけじゃありませんけれども、そういうことも考えられる。とすれば、この昭和五十五年の段階で赤字国債はゼロだ、ここで万歳、こう言ったときに、いや、五十四、五年ころにはまた次のそういう赤字国債発行が必要だというようなことになってくると、政府の立てられた財政展望では、昭和五十五年は赤字国債に関してはゼロだ、しかし建設国債という面で見れば、これは六兆円を上回る国債というものを抱いた財政であるわけです。そして一五%を上回る国債の依存率ということになっているわけですから、今度は五十六、七年ごろにまた赤字国債が乗ってくるというようなことになったら、私は、国債の依存度というものはそれこそ三〇%もいくというふうなそういう事態になるんじゃないかということを憂慮するわけなんです。もちろんこれはそうならなければいいとは思いますけれども、従来のわが国の景気循環のそういう周期を考えてみると、そういうふうなことまで私は心配して一つ見ておく必要があるんじゃないかという感じがするわけです。この辺を大臣、どういうふうに展望をお持ちであるかということをお聞きしたいと思います。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 御質問に関連して二つのことを申し上げておきたいと思います。  この財政収支試算でございますが、これは五十五年度の姿というものを想定いたしまして、五十二、三、四というのは一応アトランダムに、機械的に引いた線でございまして、それ自体に別に数字意味があるわけでないことは御了解いただいておることと思います。五十五年度数字というもの、五十四年度それから五十五年度赤字公債から脱却するということ、そういう前半の終着点における姿というものに意味がある、そこに意味を置いてつくりました数字でございまして、そこに至る道程は線を引いてつくったまでであるということが第一でございます。  それから第二は、仰せのとおり景気の循環、変動というようなことは全然頭に置いてないということでございます。したがって、現実には仰せのように景気の変動というものがどういう振幅においてか必ずあると思うのでございまして、そういった情勢への対応というものは年々歳々われわれは考慮に入れて、財政政策予算案、財政投融資計画案の姿で世に問うていかなければならぬと思うのでございますけれでも、これはそういう肉づけをしたものでないということは御承知願いたいと思います。
  63. 高沢寅男

    ○高沢委員 五十五年に赤字国債がゼロになるというために五十五年というものを一つ想定して、それから出発点の五十一年につなげる作業をしたということは、それは私もそういうふうに承知しているわけです。そのつなげる作業の仕方がケースIとケースIIがあるということなんですが、そのケースI、ケースIIの関係はこの場合は問わないわけです。五十五年に赤字国債はゼロになる、こういう到達目標ですね。その到達目標前提として、したがって五十五年までの税収の伸びがこの五年間平均してみると二〇・九%、非常に大きな税収の伸びを想定されておる。ここに新税を考えるかどうかということは先ほど来議論されていますが、それは一応別としても、これだけの毎年二〇・九%という税収の伸びというのは、これは景気の局面としてはかなり税収が伸びる、つまり好況の局面というものをずっと前提にしなければこうはならぬと思うのですね。しかし景気というものは、好景気があれば後は不景気が来るわけです。したがいまして、この五十五年までの想定を一応前提にしてみても、それから五十六、七年という、ここら辺でまた景気の落ち込み、そこで税収の落ち込み、そこでまた赤字国債発行の必要性ということになるんじゃないか。必ずなると私、断言する確信はありませんけれども、しかしなるんじゃないか。そういう可能性というものはかなり大きく見る必要があるんじゃないか、こう申し上げて、そしてその事態に対して大臣はどうお考えか、こう聞いておるわけです。そういう事態になったときに、赤字国債は五十五年でゼロになりました、だけれども六年、七年にはまた赤字国債です。とこういうふうな事態になったら一体どうするのかということをお尋ねしておるわけです。それについて、ひとつ大臣の見解を教えてください。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申し上げておりますのは、五十年代前半赤字公債財政から脱却したいということを申し上げておるわけでございます。そのためにどういう犠牲を払ってもそうするというわがままは許されませんので、政府が近く決めようといたしておりまする公共投資計画あるいは振替支出計画というようなものは一応政府責任でございますから、財政当局もそれを尊重しなければならぬということで、そういうもの以外の歳出はGNPの伸び以下に抑えるというような想定でやっても、これだけの税収の増をお願いしないとどうもそれは達成できないという厳しい局面に逢着しそうでございます。そこでどういう工夫をこらしたらいいか、それからの問題点をいま取り出して勉強を始めておるところでございますというのがいまの問題の一つでございます。  それから第二の問題は、五十一年度予算はこの間成立させていただいたわけでございますけれども、五十二年度予算編成というのはこの夏からかかるわけでございますが、五十二年度はどうしてもそのラインに沿いまして特例債はうんと減額していかなければならぬということ、これはどうしてもやり遂げなければいかぬということが、いま私どもの課題になってくると思うのでございまして、とりあえずいまそういうことが私の頭にあるわけでございまして、あなたの、景気の変動があり同時に特例債から脱却できたとしてもすぐ赤字公債発行せざるを得ないような時期が、必ずあるとは言えぬけれども、あるかもしれないが、その際どうするのだというところまでなかなかまだ思いが及ばないのでございますが、その前の段階で非常に脂汗をかいておるというのがいまの私の立場でございます。
  65. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、大臣が、五十五年で赤字国債がゼロになるというこの前提でいますべての論議が行われているそのときに、いや五十六年、七年ごろにまた赤字国債というふうなことの想定に触れることが大変な結果になるということを考慮されてそこのところに触れないという大臣のお立場はよくわかります。したがってこのことはこの程度にしますけれども、しかし私は、いま国債ことに赤字国債に依存している財政あり方が、それほど事は重大であるということは一つ申し上げたいと思うのです。もし本当に、五十五年どころじゃなくて五十六年も七年も、そのころまでずっと赤字国債を出さなければならぬというような財政になったら、これは本当に国の財政としては破産に等しい状態になるということをお互いに真剣に考えなければいかぬということは、一つ申し上げておきたいと思うのです。  そこで、そうした国債、特に赤字国債の歯どめということで、ひとつお聞きもしたいし、また私の意見を申し上げたいのですが、五十一年度、ことしについては特例法をこうやって提案されていま審議が行われております。来年五十二年あるいは五十三年、こういうふうに毎年赤字国債を出すに当たっては、そのための特例法案を国会へ出して、そして国会審議を受ける、ここに赤字国債に対する歯どめがあるんだということを大臣も言われているわけで、私も、まあそうだと思います。ですけれども、私はその歯どめではまだ不十分だというふうに思うのです。これはきょう広沢委員の質問にもちょっとありましたけれども、いま五十一年度当初予算の中の三兆七千億の赤字国債について特例法が審議されておりますが、もしことしの年末までいって、そうして当初予算に見込んだより、何らかのことによって税収がもっと落ちるというふうな事態になってくれば、三兆七千億の特例国債では間に合わなくなる。するとまたさらに特例国債の追加の発行をしなければならぬというふうな事態も、これはあり得るわけです。そういう想定に立てば。そういうときに一体どうするんだという広沢委員の質問に対する大臣お答えでは、特例法案がここでもって国会審議を経て承認されればそれで五十一年度はカバーできる、あと赤字国債の追加の発行は補正予算で、それで国会の承認を得れば、つまり国会の承認を得たその額の枠内でという、これに該当するからこれでよろしいというふうな、これは高橋次長でしたか、そういう御答弁がありましたが、私はそれでは不十分だという感じがするのです。  なぜかと言えば、予算について言えば、当初予算もそうだったわけですが、これは衆議院の通り方がああいう異常な通り方をしたわけですね。そして一カ月たてば自然成立という、予算に関してはこういう憲法上の規定があります。参議院でもとにかく五月八日ぎりぎりにこれを議決するという形で今度の予算の成立にはなったわけですが、参議院の場合には、実際上ほとんど審議の十分な時間的なあれもなかったと私は思います。もし五月九日になれば、もう参議院はそれで自然成立ということにもなったわけです。こういうふうに考えてみれば、予算というものは、衆議院で通れば後は自然成立という規定がある。そのときの国会の状況によっては参議院が予算審議をしなくとも成立するというふうな、こういう予算性格があるわけです。そうすると、この赤字国債の追加発行、その補正予算、これがもし何らかのその当時の国会事情によって衆議院は通りました、参議院はろくな審議はない、だけれども自然成立したというようにいく可能性があるわけですね。そうすると、その赤字国債の追加の発行を裏づける特例法案をやはりもう一度その場合にはこの五十一年度年度内でも国会へ出して、そして衆議院、参議院と審議を経るということも、私は赤字国債のまさに歯どめという意味において必要な立法手続じゃないか、こういうふうに考えるわけですが、これは大臣どういうふうにお考えでしょうか。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど高橋次長が申し上げたのは、法律的には予算で御承認を得れば足りるということを申し上げたわけでございますが、ただ問題は、政治的な問題といたしまして、さらに赤字公債を出さなければならぬということはきわめて——財源が足らなくなるという場合に、赤字公債にいくのか、財源を節約するのか、どういう手段を講ずるのか、これは政府にとって非常に重大な問題でございまして、予算がどうも不足しそうだからもう一度補正で特例債の発行を認めてもらうかというようなぐあいに安易に考えちゃいかぬと私は思います。これはそのときにならないと、そのときに政府は重大な判断を求められることと思うのでございまして、そういう仮定の場合どうするかというようなことについていまちょっと私も軽率に答えられませんけれども、いまどうしても答えろと言うんなら、そういうことはいたしたくないということに尽きます。
  67. 高沢寅男

    ○高沢委員 私もそういうふうな事態にならぬことをもちろん希望します。しかし現実は生き物ですから、どういうふうな事態が起こるかもわからぬということで、それぞれの場合にその立法上の措置はどうかということも当然考えなければいけないと思うのです。昨年の予算の場合には大変な税収の落ち込みがあって、それは赤字国債でつなぐという措置をして、そしてそのための特例法の立法もやるということになったわけです。ことしの場合は当初から赤字国債のそういう予算があって、これに対して特別措置法の立法がされているということですが、これは五十一年あるいは五十二年、五十三年、とにかく赤字国債が完全になくなるまでの間、この政府の出された中期財政展望の想定でも、何年か赤字国債の出る年がこれから続くわけです。そういう年の中で何らかの異常な変動、大きな災害が起きるとかいうふうなことがあって、そのために追加の財源を必要とする。そのときに大なたをふるって歳出を大きく削って、それでもって赤字国債の追加の発行はしない、これはこれで一つの大きな政策的判断だと思いますが、しかしそのときに、もうそういうことをぎりぎりいっぱいやってもなお足りない、それで赤字国債の追加発行をしなければならぬというような場合も、これは絶対にあり得ないとは言えないと思うのです。そういうふうになったときの立法措置は、その年度の当初に特例法案をやっておけば一年間カバーできるからいいのだということで通すのか、それともその追加発行赤字国債に対してはもう一度またその年度の中で特例法案を国会へ出して、そして衆議院、参議院の審議を受けるということでやるのか。私はその後者でやるべきで、それが赤字国債に対する歯どめとしてより十全な措置ではないか、こういうことでお尋ねをしているわけです。これも一つの仮定の議論ということで言えばそれまでですけれども、昔の吉田さんのように仮定の問題には答えない、こう言わずに、仮定の問題としても現実にあり得ない仮定ではないので、そういう場合には立法上の扱いとしてどうするかということをお尋ねしているわけです。いま法制局も要求しておりますが、これについてはひとつこの際明確な政府の立場を示していただきたい、こう考えるわけです。重ねて大臣いかがでしょうか。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 法律論はいかようにもできると思いますけれども法律論でないと思いますね。政治論として、私はそういうことは政府は厚かまし過ぎると思いますね。法律まで出してまた補正予算で御承認を得る、あるいはまたあなたの言う法律論で必要だとしても、また法律を出してまで特例債をさらに追加発行するというような措置は、絶対避けなければいかぬと思いますよ。やはり歳出を削減すべきだと思いますね。
  69. 高沢寅男

    ○高沢委員 そうすると大臣、さっき広沢委員がもしそういう補正でさらに赤字の国債を出す場合はどうか、こう聞かれたのに対して高橋さんは、その場合にはいま審議のこの特例法案がこの国会で成立していれば、この中の予算で決めた枠内で赤字国債を出せるというこれに全部該当するから、だから追加の赤字国債発行もこの法案でいけます。こう高橋さんの言われた答弁は、いまの大臣お答えからすればそういうケースは絶対ありません、追加の赤字国債はどういう事態があっても年度のうちにもう一度出すということは絶対ありません、こういうお答え高橋さんのお答えは訂正される必要がある、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 法律論は法律論として、高橋次長が答えられたことで間違いはないと思いますけれども、そういう法律的な問題を問題にする前に、財政的な判断、決意といたしまして、一たん決まりました特例債の発行額年度の途中におきましてさらにふやすというようなことは考えるべきでない。したがって、歳出を切り詰めて、そういう措置に至らないようにまずもってしてしまうというように私はやるべきであると思いますので、法律論までいかないようにいたしたいと私は考えます。
  71. 高沢寅男

    ○高沢委員 それじゃ、いまの大臣の言われた、そういうふうな年度のうちに財政上の大きな変動が生じた場合でも、それは歳出の方の切り詰めによって処置していく、赤字国債の追加発行という事態は絶対にしない、こういう大臣の政治的な立場に立ってのいまの非常に明確なお言葉は私はこれで受けとめたいと思うのです。大臣のそのお言葉はね。それで、もしそういう事態がきたときに法律論でどうか。これは後ほど法制局との関係でまた質問をさせていただきたいと思います。  それで、なお法制局の問題になる前に、これも多少政治論の関係になりますので申し上げますが、ここにある昭和十四年とか十五年とか、つまりこの前の第二次世界大戦のちょうどそのころの国債発行に関する法律のあれがありますけれども、これで見ますと、たとえば「昭和十四年度一般會計歳出財源ニ充ツル爲公債發行ニ關スル法律」こうして一般会計財源の国債発行には、そのための法律のあれが決められているわけですね。その法律の中では国債の発行額が何々億円までの限度でと、こういうふうに法律の中に発行額がちゃんと定められているわけですね。昭和十四年の場合には九億八千四百九十万円を限り、その限度内で公債発行あるいは借入金ができるというふうに法律の中で金額をはっきり決めているわけです。それで、その十四年の今度は公債の追加発行、これも法律が別にあって、追加発行の場合も、その場合には三億六千三百三十万円の限度でというふうにやはりちゃんと金額の限度を追加発行法律の中で決めている、こういう形になっているわけです。  そこで、私はいま大臣と私のやっているこの議論を解決する一番間違いのない方法は、たとえば、ことしは三兆七千五百億、そういう赤字国債の額ですから、だからいま出されている特例法案の中に三兆七千五百億の限度において特例の国債が発行できるというふうに発行額の限度を法律の中ではっきり定めるというふうにされれば、そうすれば、もし万一、全く何かの事態でどうしてももう少し出さなければならぬというときには、当然、その次のまた追加の発行についてはそのための特例法によって、そして幾らの限度でというものが、また次の法律で立法が必要になる、またしなければならぬ、こういうふうになるんじゃないかと思うのです。  ですから、そういう意味においては、昨年来の赤字国債のための特例法案が、そういう法案の中に発行金額を確定するということをしないで、予算で決められる枠内でという、こういう形をとったのは、これはちょっと一種のペテンと言うと言葉が過ぎますけれども、そこは幾らでもできるような一つの枠を意識的に大蔵省はつくられたんじゃないかという感じが私はするわけです。     〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕 もしそうでないとすればこういう赤字国債に対するより確実な、よりしっかりした歯どめをということは、恐らく大臣も御異論がないと思いますから、そういう意味においては、このいまやっておる法案が——これは修正ができればぜひしていただきたいと私は思いますが、もし、それが間に合わぬとすれば、来年度特例法案の中では、これはその中に幾ら幾らの限度内でという赤字国債発行金額の限度を法律の中で確定する、明らかに定める、こういうことをおやりになるのが正しいんじゃないか、こう私は考えますけれどもいかがでしょうか。
  72. 高橋元

    高橋(元)政府委員 戦前の帝国憲法でございますが、たしか六十二条という条文がございまして、その中で国債の発行については「帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ」となっておりまして、したがいまして当時の帝国憲法、これはまたいずれ法制局がおいでになればもう少し詳しく伺えるのかもしれませんけれども、法制では、法律をもって起債を決めるというたてまえになっておったというふうに私どもは承知しております。したがいまして、昭和七年から二十一年まで歳入補てん公債法を各年立法し、また震災前後公債その他シナ事変公債ですか、各種の目的公債法を出しておりますが、いずれもその発行金額法律の中に、法律という形式で、当時の言葉で言えば帝国議会の協賛を経て決めたということでございます。予算をもって公債発行限度額を決めるといういまの財政法のやり方というものは、昭和二十二年に財政法の四条で、いわゆる四条公債については予算の定めた金額の範囲内で発行することができるということが決まって以来のことでございます。したがいまして、昭和二十二年の財政法、四十年の特例公債法、五十年度特例公債法、いずれもその公債発行額の限度を予算で定めるという立法形式によっておるわけでございまして、この点につきましては本年度公債発行特例措置を定めます際に、財政制度審議会でもいろいろ御議論を願ったわけでございますが、戦後の立法例のようなことで発行限度額を予算でお定めいただくという形式でよかろうということでございました。もちろんこれは法律の話でございますから、財政政策として先ほど私が午前中に広沢先生お答え申し上げたときも、財政政策としてどうするかというもっと基本的な問題はございますということを申し上げておったかと思うのでございますけれども、ことしの五十一年度予算編成に当たりましては、もちろん総合予算主義ということでこの予算の枠、予算で定まった歳入の範囲内で予算歳出を賄うという形で臨むことでありますから、そういう事態が起こってくるとは思いませんけれども、要するに発行額そのものは予算で定めるという法形式をとっておるということでございます。
  73. 高沢寅男

    ○高沢委員 この前の戦争が終わって、その後の日本の国民全体の大きな反省は、それは戦争に対する反省であったし、同時に、財政の立場としては、あの戦争財政の中で非常な国債の発行がなされて、それが戦争の財政的裏づけになったというふうなことに対する大きな反省があった。その反省があの憲法の制定にもなっているしあるいは財政法の二十二年の制定にもなっているということだと思うんです。そういたしますと、その財政法の第四条で、いま高橋さんの言われたようなそういう定めがあることは承知しておりますが、したがってこれは当然予算の中において国債の発行額を定める、予算総則でしっかりと定めるということは、これはこれで必要なことですね。しかし同時に予算関連法案としてこういうふうな特例法案が出されるときには、予算の中で定めると同時に、それを受けてこの特例法案の中に明らかに金額を定める。これは予算と、つまり同じ金額発行限度額を決めるというやり方が非常に屋上屋を架するようであるけれども、そのくらいにすることが、これが本当に歯どめという意味において、まさに水も漏らさぬ間違いのない方法じゃないか、こういう意味で先ほどから申し上げているわけです。したがいまして、予算の中で発行限度額を定めるということは、これはもう当然の前提として私も承認をし、その上に立って予算関連のこの特例法案の中で同じ金額をもう一度重ねて法律の中で定める、こういうふうになさるべきではないか、こういうことで私は申し上げているわけです。  これについては、しかし法制局が来たらまたその立場でひとつお尋ねをしたいと思います。  それで次の方へ進みまして、私もやはり国債の将来の償還計画の問題ということが非常に問題だと思いますから、重複するかもしれませんが、触れさしていただきたいと思います。  それで昭和五十一年度の国債費、つまり一般会計から国債整理基金特会へ入れる金額が一兆六千六百四十六億になっております。それとの関係で、今度国債整理基金特会の中の国債に対する利子の支払いですね、利払い、これの金額を見ると、一兆三千百九億というような金額になっております。     〔森(美)委員長代理退席委員長着席〕 そうすると一般会計の国債費、それからその国債整理基金特会の中の国債の利払い、元本の償還は一応別として、利払いの金額だけで約八割になっているわけですよね。ですから、私たちはこの国債の元本の償還ということが非常に重要だということでも論議しておりますが、同時に、そのほかに国債の発行によってしなければならない利子の支払い、これがまた金額的に言えば非常に大きいということが私は問題だと思うのです。  それで昭和五十一年度の国債費が一兆六千六百四十六億で、利子の支払いが一兆三千百九億。約八割、こういうふうな関係。これを引き伸ばして、今度は昭和五十五年度大蔵省中期財政展望の五十五年度数字を見ると、その段階の国債費は四兆四千二百億、こうなっていますね。つまり、この四兆四千二百億というものが一般会計から国債整理基金特会へ入れられる金額ということになるわけですが、この中で利子の支払いに当たるものは一体どのくらいになるでしょうか。それからまた、過去に発行された国債の元本の償還に向くものがどのくらいになるか。そういう数字の内訳をちょっと聞かしていただきたいと思います。
  74. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ケースIで申し上げますと、五十五年度に国債費として書きました金額は四兆四千二百億でございますが、その中の利払い費等、つまり国債の発行及び償還の事務取扱費でございますが、利払い費等が三兆七千億でございます。それから、それ以外に、五十三年度の国債の残高に対応する定率繰り入れ、これが六千億。それから、予算の繰り入れ、これは出資公債、交付国債の償還期到来分でございますが、それが千二百億、こういうふうに大まかに見積もっております。
  75. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまの御説明を受けた数字で、やはり非常に利子の支払いが大きいということが私は明らかになったと思うのです。  それで、その中期財政展望ケースIでは、その年の国債の発行による収入、その年はもう赤字国債はゼロになっていますけれども、建設国債が出る、それによる収入が六兆五千二百億でしょう。その六兆五千二百億に対して国債費が四兆四千二百億。これが約七割です。そして、今度は、その四兆四千二百億の中の約八割ですね、三兆七千億と言えば。約八割ぐらいが利子の支払いというようなことになってくると、その関係をずっと昭和六十年——去年の赤字国債償還期が来る昭和六十年あるいは六十一年、こういう段階の議論も先ほど来されていますが、そういうときになってきたとき、そのころに出さなきゃならぬ国債費の中の利子の部分の大きさというものは非常に大きなものがある。その大きいものがあるのに加えて、今度は赤字国債部分は借りかえをしないで、それだけの分をその年にどんと返します。こういうのが重なってくるわけでしょう。ですから、十年も先の話はということであるけれども、しかしこの関係は大変なことだということは間違いないと思うのです。その辺の関係をちょっとひとつ……。これは松川さんから御説明を受けたいと思います。
  76. 高橋元

    高橋(元)政府委員 この国債費の将来にわたる見積もりをいたします際に、私どもは現行の発行条件、つまり九十八円七十五銭で発行をいたしまして百円で償還をする、それから償還期間は十年である、それから当面金利は八%である、そういう現行の発行条件をもって想定をいたしましたので、したがいまして、前年度末の国債に当年度発行国債の金利分、利盛り分を加えたものの八%というものが利払い費になってくるわけでございます。そのほかに、前年度首でございますから前前年度末の国債の発行残高の一・六%定率繰り入れをやるということでございますから、ちょっと年度利差はございますけれども、八と一・六、それに予算繰り入れを加えますと、大体八割ぐらいが利払い費という構成になるわけでございます。それは推計の方法に現在の発行条件というものを入れて伸ばしましたので、まずその中期財政試算では大体そういう計算の結果になっているということが言えます。  それから、六十、六十一年度をどうするかということは、これは昨日松浦議員から資料を出せというようなお話がございまして、目下鋭意検討中でございます。
  77. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまのようなインフレ含み、それから物価の上がるこういうふうな経済の中では、国債の発行条件は、市中消化を促進するというふうな意味からいっても、これはいまの条件よりもっと金利を安くするとかいうふうな可能性はもうない。むしろその面においては、これから国債を買う立場の者がより買いやすい、そういう条件にしていかなければならぬというふうに考えれば、そうした発行条件の中の金利というふうなものも、将来大きくなることはあっても小さくなるということは考えられないことではないと考えます。  そういたしますと、この金利部分というものは、これは元本の償還も六十年以降は、発行された赤字国債をその年々に満期の来たものは全部まとめて返すということと、それに全体の建設国債も含めての利子の支払いというものが重なってくると大変なことだということを申し上げて、これはやはり警告をしなければならぬ、こう思うわけです。松浦委員の要求された資料が出てのまた論議の中で、この辺はさらに触れられることになる、こう思いますから、私は、きょうこの場ではこの問題はこの程度にとどめたいと思います。  あともう一つ、それに関連してお尋ねしたいのは、この赤字国債が去年出された、それからことしも出る、来年も出る、こういくわけですが、この赤字国債分に対する百分の一・六の定率繰り入れ、それが来年の予算からもうずっと行われるということになっていくわけですね。そうして、毎年その定率繰り入れがずっと蓄積されていって、昭和六十年にその返還の最初の年が来ますね。その年に、そういうふうなものがずっと積み立てられたものと、足りない分を予算で繰り入れしたり、あるいはまた剰余金があればそれも入れたりという財源で返済するということになるとすれば、これからずっと約十年間に百分の一・六の定率繰り入れの積み立てていくものが、恐らく昭和五十年度赤字国債を返すということで大体消えるのじゃないですか。そうすると、今度は、ことしの赤字国債を返済する昭和六十一年度には、そういうふうな定率繰り入れの積立分というのはもう実際上なくなっている。そうなればその年はまるっきり一般会計予算繰り入れで返還をしなければならぬ。昭和六十二年も同じ、六十三年も同じ、こういうことになっていくんじゃないでしょうか。その辺の見通しはどうでしょうか。
  78. 松川道哉

    ○松川政府委員 私ども財政運営の衝に当たっております者は、どちらかといいますと、急激にふえたり減ったりということは余り好みません。ただいま先生指摘のような事態、すなわち、六十年にすべてを使ってしまって、六十一年にはすべて新たなものに依存するということは、これから十年先のことではございますが、その当時財政運営に当たる者も恐らく私どもと同じ感覚で処理をするのではないかと考えます。  これは、端的に申しますと、かつて四十年債を出しましたときも、数年度に分割して少しずつ繰り上げ償還をいたしております。今回の特例法によりますものにつきましても、財源事情が許すとかその他の条件があればそういうことも考えてまいりますし、それからまた、ただいま御指摘になりましたような剰余金の繰り入れその他で受け入れましたものも、これは六十年債だけに使うのだというようなことになりますれば、恐らく国債市場におきましても、六十年債はどうも優遇されそうだからこれは買っておいてもいいけれども、六十一年債は財布が空になりそうだから余り買わない方がいいぞというような投機的な観測を生むことさえもあり得るのではないか。そういうことであれば私どもといたしましては、そういうプラスアルファ、百分の一・六プラスアルファの意味でのプラスアルファの金がありましたならば、これはやはり国債市場にも悪い影響を与えないように、そしてまた財政運営も余りアップダウンが起こらないように、そういうことを配慮しながら運営していくであろうということを私どもの後輩について私は確信いたしております。
  79. 高沢寅男

    ○高沢委員 法制局が見えたようですが、その前にあと一、二点だけお尋ねをしたいと思います。  私は、国債整理基金特別会計のことでこの前のときもお尋ねしたのですが、多少重複するかもしれませんが、やはりもう一度お尋ねしたいと思います。  この運用収入予算に計上された金額と、それから今度は実際に収納される運用収入のいわば決算額のこの違いが非常に大きいということをこの前にもお尋ねしたのですが、そういう関係と、それから予算で見まして、五十一年度の運用収入予算に計上されている金額は二百億になっておりますね。これが去年の五十年度の運用収入予算に計上された額は十三億ですね。すると、この十三億と二百億、一年の間に余りに大きな違いが、予算ではあるけれども、出てきておるし、そういう違いと、それから過去の年度で言えば、予算に計上されたその金額と実際に収納された決算の金額がこれまた非常に大きな違いがあるということで、この運用の関係が一体実態としてどうなっているのかということを私はこの機会にもう一度御説明をいただきたいと思います。
  80. 松川道哉

    ○松川政府委員 五十一年度予算編成に当たりまして、私どもも従来のやり方をすべて見直しいたしまして、この運用収入予算の計上の方法を大きく変更いたしました。その結果といたしまして、ただいま御指摘のように数字に大きな開きが出たのでございます。と申しますのは、従来は運用収入予算案に計上いたします場合には、たとえば年の途中に買い入れ消却があるかもしれないとかその他いろいろな事情を配慮いたしまして、定率外で繰り入れますものにつきまして、これが平均何カ月ぐらい基金の中に滞留するであろうかということを想定いたしまして、この分に係る利子収入だけを運用収入として計上いたしておりました。そして基金の大宗をなす金額につきましては、これは運用されますと、当然収入が上がるわけでございます。これは予算の上では前年度剰余金繰り入れという形でこれを受けておったのでございます。  これだけではちょっとおわかりにくいかと思いますので、もう少し実例で御説明申し上げますと、一昨年の四十九年度でございますが、運用収入として決算上出てまいりましたのは百五十五億二千三百万円でございます。ところが四十九年度予算には、この四十九年度中に定率外に繰り入れるものに係る運用収入ということで七億五千万円しか計上いたしておりませんでした。そこで、これが大分実態がはっきりいたしてまいりました段階で、具体的には五十年度予算を組みますときに、前年度剰余金として百二十三億一千八百万円を計上いたしております。さらに決算を締めてみますれば、この二つの数字の合計をさらに二十四億五千五百万円上回るということが判明いたしましたので、これは五十一年度予算の前年度剰余金という項目に入っております。以上三つ締めまして、四十九年度中の運用収入の実績は百五十五億円でございましたが、予算上は七億円であった。五十年度も同様な思想で予算計上をいたしましたので、五十年度中の運用収入は十三億八千二百万円であった。これが実際運用いたしますと、現在判明いたしております段階では、この予算額をさらに百七十九億九千四百万円超すということが判明いたしましたので、これは五十一年度予算の前年度剰余金受け入れの中に入れてございます。したがいまして、逆に申しますと、先ほど触れました四十九年度の最終的に確定したプラスアルファである二十四億五千五百万、これに五十年度の運用収入で見込まれることがほぼ確実になってまいりました百七十九億九千四百万、さらにそのほか四十九年度に雑収入が三千九百万よけい入りましたので、この三つを合わせました二百四億八千八百万円というものが本年度の国債整理基金特別会計の前年度剰余金受け入れということで、この予算書にもこの数字が載せてございます。  ところで、それでは五十一年度はどうしたかということになりますが、これは基金が相当の金額になってまいりましたので、この平均的な運用収入予算上入れるべきではないかということで、年の途中にある程度の買い入れ消却なり買い入れ保有をするだろうという前提は置きました。したがいまして、基金の残額全額について運用収入は予定しておりませんが、ある程度の買い入れ消却をした後になおかつ残るであろう基金の総額につきまして、これが運用されれば幾ら収入を上げることができるかという計算をいたして、なるべく実態に近づけようという努力をし、その結果が利子収入二百億一千二百万円余と、こういうことと相なった次第でございます。
  81. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま定率外の繰り入れと言われましたね。その定率外の繰り入れというのは、つまり剰余金とかそれから予算繰り入れとかそういうものですか。
  82. 松川道哉

    ○松川政府委員 これは予算繰り入れでございます。
  83. 高沢寅男

    ○高沢委員 それからもう一つお尋ねしたいことは、そういうふうに運用されている、その運用される、つまりストックですね。運用利益がフローとして出てくる。その運用されているストックというのは、これはたとえば資金運用部への預託であるのかあるいはそれが長期、短期いろいろのそういう国債というふうなものであるのか、そのストックの種類あるいはそれの数量は一体どういうふうなことか、それを教えてください。
  84. 松川道哉

    ○松川政府委員 現在まだ見込みの段階でございますが、五十年度末で三千八百六十一億円というのがこの整理基金の残高でございます。その運用は、主としては政府短期証券に運用されております。
  85. 高沢寅男

    ○高沢委員 これはやはり国民の大事な財産であるわけです。そういう意味において、国債整理基金特別会計予算を見ても、このストックの姿というものは、これはなかなかわれわれにはわかりません。国民にはわかりません。そういう意味において、これからの国債整理基金特別会計の予算を出されるときは、そういうふうな資産、ストックの姿を示すそういう資料、これを予算に添付されるということをぜひやっていただきたいというように思いますが、いかがでしょうか。
  86. 松川道哉

    ○松川政府委員 現在政府にはいろいろの形の特別会計がございます。あるものは事業を営むものであり、あるものは単に金銭が通り抜けていく整理会計的なものでございます。そこで、これらの各種各様の特別会計につきまして、それぞれの特別会計法においてたとえば貸借対照表であるとか損益計算書であるとか財産目録であるとか、これのうちどれとどれをつくりなさいということが法定されております。あるものは法律ではなくて、政令でそういうものをつくることが義務づけられております。そういう義務づけられております特別会計は、ざっと見ますと大体半数ぐらいになろうかと思います。義務づけられておらない方の例を一、二申し上げますと、たとえば地方交付税に係る特別会計、これらにつきましては、財産目録とか貸借対照表をつくらなくてもいいようになっております。また、これもたとえが悪いかもしれませんが、賠償の特別会計、こういったものもつくらなくてもいいようになっています。現在、国債整理基金特別会計は、そのつくらなくてもいい方のグループに入っておるわけでございます。そこで、私どもも、予算書にこれを添付しておらないわけでございます。  しかしながら、ただいま御指摘のように、この国債整理基金というのは相当の金額になる、しかもその全貌がわかりにくいということは、民主的な政府のやることとしては必ずしも当を得たものではないという御意見もごもっともであろうと思います。その意味で、私どももかつて、そういう資料の御要望がございました参議院の予算委員会には、こういう一枚紙の資料でございますが、四十六、七、八、九、十、そしてこの繰入額、償還額を一般会計、特別会計に分け、最後の欄に現在高が書いてある、こういう資料を御提出いたしております。  そこで、本委員会におきましても、こういう資料があった方がいい、また、こういう資料は当然みんなに知らせるべきであるという御意見でございますれば、委員長の方の御指図を待ちましてこの席にお配りすることに私どもは異議がなく、また、それが皆様の御理解をお助けすることができるのであれば、そうさせていただきたいと思っております。
  87. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは、これはぜひ委員長の御指示によってそういう資料が提出されるように、もちろんこれは来年度以降もそういうものが、たとえば予算委員会あるいは大蔵委員会というものに必ず提出されるような、そういう手配をひとつお願いをいたします。
  88. 田中六助

    田中委員長 わかりました。実行いたします。
  89. 松川道哉

    ○松川政府委員 それでは、できるだけ早く本委員会にお配りするように手配いたします。来年度以降につきましては、私どもも、できるだけ当初から、こういうものが皆様の御審議のお助けになるということで、配付させていただきたいと思っております。
  90. 高沢寅男

    ○高沢委員 では、法制局がお見えになりましたから、法制局にひとつお尋ねをしたいと思います。  先ほどお尋ねしたことはこういうことなんです。昭和五十一年度赤字国債発行のための特例法案をいま審議しているわけです。それで、もし万一この特例法案が成立をして、そして一方では、予算の中で赤字国債発行額も決められておるという形で予算も成立した、ところが、何らかの変動があって、今年度財源が不足するという事態になって、また追加の赤字国債発行しなければならぬというふうな事態になったときに、いまの大蔵省の御説明では、この特例法案の中に、予算で定めた範囲内で、こういうふうになっているから、将来、その場合には、赤字国債の追加発行というものを補正予算で定めれば、このいまの当初予算、補正予算というふうなものを含めて、予算で決められた枠内でということで、赤字国債発行法律上支障がない、こういうふうなことであるわけです。  それに対して私の主張は、この赤字国債というものは非常に厳密な歯どめをかける必要がある、こういうふうな性格からすれば、むしろ、いまやっておるこの特例法、これはこれで一つの立法でありますけれども、そういう追加の発行が必要なときには、またもう一度特例法というものが国会へ提出されるということが必要になるんじゃないか、またぜひそうすべきじゃないかというのが私の意見なわけです。ただ、全く同じ文章の特例法案を一つ年度の中で二回やるというのもあれですから、したがって、私としては、この当初予算の関係でやっている特例法案の中には、予算の範囲内でということですけれども、三兆七千五百億というこの赤字国債発行限度額は、この特例法案の中で、ここまで発行できるという金額を定める、その後にまた追加の発行が必要になれば、一方では補正予算が組まれる、それに見合ってもう一度特例法案の中で、今度は幾らという発行限度額をまた定めるというような立法の形をとるのが正しいんじゃないかということをさっきからお尋ねしているわけです。  赤字国債の追加の発行をするかどうかというその政治的判断については大臣からお答えがあったわけですが、全く純粋な法律問題として考えた場合に、私のいま言ったような、そういう個々の法律の中で赤字国債発行額をそれぞれ予算に見合って定めていく、したがって、同じ年度の中で追加の発行が必要になれば、またもう一度その金額を織り込んだ特例法の立法を行う、こういう私の主張について、法制局のお考えをお聞きしたいと思います。
  91. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の点、実は、私ども法制局審議の段階でもいろいろと論議をした問題でございます。  まず第一に、法律的に今回の特例法の二条で、いま言われましたように、補正予算公債の追加発行ができるかどうかという点でございますが、この点につきましては、第二条をごらんいただきますと、要件が二つございます。一つが「昭和五十一年度一般会計歳出財源に充てるため、」という要件、もう一つが、「予算をもつて国会議決を経た金額の範囲内で、公債発行することができる。」という要件でございます。しかもその後の要件でございますが、この「予算をもつて」ということで、これは当初予算に限らず、いわゆる補正予算をもって国会議決を経た金額の範囲内でも発行できるということを予想した上で書かれた規定であることは、われわれとしては明らかであると思っております。  それから、いまのいわば制度論としまして、高沢先生おっしゃいましたように、法律発行額の限度を明定するという行き方、確かに御指摘のような立法の仕方もあろうかと思うのでございますけれども、今回の法律案は五十一年度限りの特例でございます。しかもまたこの予算という形で——これは補正予算も含むわけでございますが、予算という形でその金額の限度につきましては国会の御判断を仰ぐ機会もあるということも含め、かたがたまた最近の立法例等におきましても、この公債発行という事項が、いわば歳出歳入予算に密着した不可離一体の問題であるという観点からしますと、やはりその歳出歳入の補正と同時に、この公債の追加発行の限度額につきましても、一体としての予算という形で御審議を仰ぐのが適当ではないかという判断のもとでこのような法案を作成した次第でございます。
  92. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、それでは法制局にお尋ねしたいのですが、こういうケースがあり得ると思うのですよ。つまり予算の場合は衆議院で可決決定されれば、一カ月後の自然成立という規定があって、そのときの国会の何らかの事情によって参議院の方は予算委員会が行われないというような状態の中で、しかし一カ月たてば予算は成立するということがあるわけです。これもなかなかあり得ないことの想定だ、こう言われるかもしれませんけれども、しかし、想定としてはあらゆることを考えなければいけませんから、そうなりますと、赤字国債の追加発行が衆議院の予算委員会では審議されて、そうして衆議院では決定された、参議院の方は何らかの事情予算委員会がなされることなしにこれが自然成立をしたというふうになりますと、追加発行赤字国債については、二院制度のある中で参議院の方の審議は全くなしに、しかし成立するというような事態になるわけです。それがいま言いましたような、その際にもう一度この特例法が出て、その法案の中で金額を定める、こういう立法であれば、これはもう予算の方は自然成立するかもしれないけれども特例法案の方は、衆議院でも審議され、そして参議院でも審議しなければ成立しないというこういう形をはっきり通るわけですから、私は、この方がこういう予算審議財政民主主義というたてまえから言っても、より万全な立法形式じゃないか、こう考えますが、法制局としては、いかが考えられますか。
  93. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまの点、確かに立法政策の問題であろうかと思います。また、いま御指摘の点は、日本の憲法がそういうたてまえになっておるわけでございますが、先ほども触れましたようにこの公債発行について、その限度額を増額するということと、それから、仮に補正を組んだ場合の歳入予算あるいは歳出予算とは、いわば表裏一体をなす問題でございまして、そういう意味国会の御判断なり御意思の決定という面におきましても、これはやはり一緒に予算という形で御審議を仰ぐことが適当ではないかというふうにわれわれは考えましてこのような法案を作成したわけでございます。
  94. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは法制局の見解はわかりました。しかし、われわれとしては、いま言ったようなそういう立法形式をとることが正しいという主張を将来にわたって留保して、これからもそれが実現するような努力を続けていきたい、こう考えます。  以上で私の質問を終わります。
  95. 田中六助

    田中委員長 小林政子君。
  96. 小林政子

    ○小林(政)委員 五十一年度予算の中で今回、財政特例法ということで、ここでまた新たに七兆二千七百五十億円の国債の発行、しかもその中には三兆七千五百億円の赤字国債が含まれている、こういうことがいま審議をされているわけです。  私は、まず大平大蔵大臣に伺いたいのですけれども、現在、国民がこの不況とインフレのもとで、国民生活の安定と、そして今日のこのような危機を迎えております経済の復興という問題について、真剣に政治にその打開を求めている、こういう状況の中で、先日もいろいろ新聞などでも世論調査が行われましたけれども、このような中で圧倒的多数は、景気対策も必要ではあるけれども、いま国民が非常に不安を感じているのは生活苦であり、またインフレにつながるのではないか、こういう点について世論調査の結果も非常に敏感な影響を示しているわけです。  このような中で今日、大量の国債が発行されるというこの財政特例法案をいま審議をしているわけですけれども、かつてのあの狂乱物価のときのようなインフレにつながっていくという危険について、大臣は一体、国民の生活の安定という立場からも、この問題についてどのように認識をされているのか、そして、今日のようなまさに異常な財政の危機を迎えた責任について、まずどのように反省もし、そしてその上に立ってこの問題についてどのように誠意を持って解決をされようとしているのか、この二点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 第一は、インフレの問題でございます。  かねて申し上げておりますように、政府の任務は、国民生活を安定させ、雇用を安定させてまいることと同時に、そのためにインフレを起こしてはならぬということでございます。インフレ防止だけを追求するのでございますならば、財政は規模を小さくいたしまして、政府の仕事をいろいろつましくいたしまして、公債も出さないようにいたしまして、いろいろやり方があるわけでございますけれども、今日やはりあなたがおっしゃるように生活の安定、雇用の安定ということが大事な任務でございますので、そのためにいろいろな施策を講じなければならない。そのためには相当な歳出を要するわけでございますが、それが不況のために思うような歳出が期待できないということでございまするので、しばらくやむなく公債発行いたしましてこれにこたえるということにいたしたわけでございます。したがって、必要不可欠な歳出の要求にこたえつつインフレを抑えるということのために政府は非常に苦心をいたしておるわけでございまして、財政の規模をまずつましいものにいたしますと同時に、歳入歳出両面を通じまして物価に悪影響を及ぼさないように、できるだけ細かい配慮をいたしておるわけでございまして、編成面あるいは運営面を通じましてインフレを起こさないように注意をいたしておるつもりでございますが、成立を見ました予算の執行につきましてはなお一層努力をいたしまして、これがインフレをもたらすことのないように配慮をしなければならぬと考えておるわけでございます。  第二は、しかし今日、こういう巨額の公債発行しなけばならぬというようなこと、そういう財政危機を招きました責任の問題でございます。  これは一昨々年の石油危機を契機といたしまして世界経済が大変大きな変動下に入ったわけでございます。もちろんその過程に国内の経済財政政策に厘毫の誤りがなかったと強弁するわけではございませんけれども、いずれにいたしましてもそういう大きな変動に処しまして、私ども、まずこの経済を維持しながら、何としても雇用の安定を図らなければならぬ、国民生活上、支障を起こさないような歳出の充足を図らなければいかぬということに努めてまいったわけでございまするので、私ども財政危機に処する責任には及ばずながらこたえてまいったつもりでございます。十分でないというおしかりがあるかもしれませんけれども、その点につきましては今後財政の緊張した執行を通じまして、その責任にこたえてまいるつもりでございます。  経済財政危機の突破につきましては、もろもろの先進諸国に先駆けて回復を見ておるわけでございまするから、わが国政府といたしましても非常な努力をした成果が客観的にも見えておりますことはそれなりに御評価をちょうだいいたしたいものと思います。
  98. 小林政子

    ○小林(政)委員 私、いまの大臣答弁は何回もお聞きいたしております。結局今日のこの危機を招いた主要な原因は、いやオイルショックであったとか外国の云々、こういうことですけれども、しかし、そういう形で転嫁するのではなくして、このような事態を招いたその責任を本当にお感じになるのだったら、雇用の問題についても、経済政策財政の中で具体的にこの問題を解決していくために、それじゃどういう手段をどのようにとってという点について、この問題は私も後ほど触れたいと思いますけれども、やはりそういう点ではもっと厳しい姿勢があってしかるべきではないか、このように考えます。そこでインフレを招かないように最善の努力をすると言うんですけれども、最近の卸売物価の動向を見ますと、昨年の十二月から連続して対前月比でも〇・六あるいは〇・八という形で非常に高い上昇をいたしております。しかもマネーサプライの動きも昨年の年末から非常に伸び率が上昇いたしまして、ことしに入って対前年比で一月には一五%、二月には一五・三%、三月には一五・七%とじりじりとこれもずっと上がり続けてきている。これは私は、かつての狂乱物価の引き金になりましたちょうど四十八年当時のマネーサプライ、これがちょうど四十八年の四月段階でもって二六・一%であったと記憶しておりますけれども、それから比べても現在、今日のような低成長のこういう中での一五%台というのは非常に高い伸び率ではないか、このように考えます。非常にインフレに対する危険信号というんですか、こういう問題について私はマネーサプライがこのような形でずっとここのところ上がってきているという、こういう要因についてどう見るか、何が原因でこのような状態が出てきているのか、国債の大量発行との関係についてはどうなのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  99. 松川道哉

    ○松川政府委員 本来であれば銀行局長が御説明するところなんですが、まだ着いておりませんので、私がかわりに御説明させていただきます。  マネーサプライがふえておりますのは事実でございまして、ただいま小林委員指摘のは、M2のマネーサプライの増加だと思います。御案内のとおり、これはたとえば昭和四十七年度平均をとれば、対前年比で二六・八%、年間を通じてもこのような高い数字でございまして、これが漸次下がってまいりまして、四十九年の七月−九月期、これは四半期でございますが、このときには一一・〇%というところまで落ちて、それから多少のアップダウンはございましたが、昨年の年末には一四・五%、それが若干いまふえてきております。これは御案内のとおり、昨年の春から金融政策を緩和ぎみに運営してまいっております。これは不況に対する対策として財政面でもいろいろな措置をとりましたが、金融面におきましても、この不況は何とかして脱却しなければいけない、そういう意味で、金融面におきましても若干緩めた政策をとってきておる、これが銀行の貸し出しの増加につながってまいりまして、その結果としてマネーサプライがこのようにふえておるのでございます。これがただいま国債との関連で御質問がございましたが、このマネーサプライの増加はあくまでもこれは景気対策、どうしても不況から脱却しなければいけないというかたい決意政府がとってまいりました景気対策の結果としてそのようにふえてまいったものでございます。その結果、国債の発行が若干容易になったかどうかという別の付随的な問題が残りますけれども、これはあくまでも結果論でございまして、そのためにどうしたということではございません。
  100. 小林政子

    ○小林(政)委員 昨年来、五十年度の補正予算から大量の赤字国債発行されておりますし、また、昨年十二月には日銀が約五千億の買いオペをやっております。また、昨年十一月、そしてことしの二月、二回にわたって日銀の預金準備率を引き下げる、こういったような中で、具体的に日銀から市中金融に準備率が引き下げられた、あるいはまた買いオペが行われたということで資金の緩和枠といいますか、こういうものが一体どのぐらいだったのか、この数字をひとつはっきりさせてもらいたいと思います。
  101. 松川道哉

    ○松川政府委員 金融がどの程度量的に緩和したかというところにつきましては、後ほど銀行局長が参りまして御説明いたすと思います。私ども、いまの御質問の中で国債のオペレーションと関連したところもございますので、その分を先に御説明させていただきたいと思います。  それはただいま御指摘のように、昨年の十二月に五千九百九十億円の買いオペをいたしたのは事実でございます。これは国債との関連で言えば、四十九年度発行いたしまして市中に消化されました国債が一兆七千七百億円余ございましたから、これがまる一年たって買いオペの適格性を持つに至った。その中でオペの量といたしましては金融全体をどの程度量的に緩めるかという問題がございまして、これはただいま御指摘のとおり、あるいは預金準備率を引き下げることによって何千億円の預金がふえるはずであるとか、そういった点とも勘案いたしまして、どれだけ中央銀行が資金供給をするかという判断でございます。そこで、この一兆七千億のうち——一兆七千億自体はオペの適格性は持ったわけでございますが、このうち国債は五千九百八十二億円をオペレーションとして操作したということでございます。したがいまして、この国債の操作もただいま小林委員が御指摘になりましたように、金融政策全体のフレームの中での一つの部分であると御了解いただきたいと思います。  全体につきましては同僚の銀行局長が参りましたので、そちらから御説明いたしたいと思います。
  102. 小林政子

    ○小林(政)委員 それでは、金融が非常に緩和されているということで、昨年の十二月には買いオペも行われた。そしてまた、昨年十一月、ことしに入りまして二月、日銀の預金準備率も引き下げられるというような中で、結局そういう中で、日銀の預金準備率の引き下げなどによって金融市場にどの程度の量の資金が動いたのか、流れたのかという点を一つお伺いしたわけです。     〔委員長退席、森(美)委員長代理着席
  103. 田辺博通

    ○田辺政府委員 準備預金の解放といいますか、準備率の引き下げ自体はそれだけで資金の放出になるわけでございますが、いまの日銀の買いオペ、国債を主とする買いオペの方は、一方では、別の問題ですけれども、手形の売りオペとかそういうような方法を用いて時によっては吸収をしたりしておりますので、一方の買いオペによる放出額だけを申し上げますと、五十年度は十二月に行いました五千九百億余り、これが買いオペの額になっております。それから準備預金の引き下げによりますところの資金解放額はこの二月に行いましたものが約五千二百億、こう推算をしておりました。その前に行いましたのは、ちょっと私正確な数字を覚えておりませんので、後刻調べまして御答弁いたします。
  104. 小林政子

    ○小林(政)委員 結局資金操作その他ということもありましょうけれども、具体的にはやはりマネーサプライがここのところ非常に上昇をしている、こういう問題につながっていくだろう。それはやはり資金の緩和という点が大きく作用しているんじゃないか。二月の預金準備率の引き下げによって五千二百億ですか、あるいは十二月の買いオペで五千九百億という形で資金の緩みが出てきている。こういうことが、厳密に言えばいろいろと操作上の問題があると私は思うけれども、この分は結局日銀引き受けと同じ効果が市場に働いて、マネーサプライそのものが昨年末から一月、二月、三月とずっと上がってきている、こういう問題につながっているんじゃないか、このように考えますけれども、いかがですか。
  105. 田辺博通

    ○田辺政府委員 ちょっと具体的に申し上げますと、いま御指摘の買いオペレーションあるいは準備預金の引き下げということは、直接的には、端的に申しまして日銀券、現金の需給の問題になります。なぜ買いオペを十二月にやったかといいますと、これは十二月という時期は、毎年の問題でありますけれども現金需要といいますか、日銀券の増発が——これは別にインフレとかなんとかということと関係なしに、市中が非常に要求をするわけでございますが、結局それを賄いますものは、大きなパイプは財政資金の放出でございますが、これがそのまま相補われない形になりますので、その間の現金の需要に対しましては、日銀が市中の国債を買い上げることによって日銀券が外に出る、こういう需給のギャップといいますか、それを埋める操作をしているわけでございます。準備預金の引き下げも、直接的には銀行の強制的な日銀預け金の率を下げることによって、それだけ現金の需給に影響を与える、こういうことになるわけでございますが、いま一般に言われておりますところのマネーサプライというものも、確かに現金もその中の一つでございます。一般に言われておりますところのいわゆるM2といいますものは、定期預金をも含めた一般民間の預金、通貨性預金、定期預金を含めた総量を言っておるわけでございます。それで、いまのようなオペレーションとか準備率の引き下げによって日銀券が前年度に比べて非常にふえたのか、こういうことになりますと、それは現在の時点におきましても前年同月比では大体一〇%強から一一%というような数値で推移をいたしております。それから、もちろんそれはマネーサプライ、M2にも影響がなくはないと思いますけれども、M2の方は、政府の支払いました財政資金が結局民間企業、そういうものの受け取り資金になるわけで、それが結局は言うなれば銀行預金というものになってはね返ってくる、その増加の問題でございますが、御案内のようにM2の数値自体も若干ふえております。ただこの三月末における数値は前年同月比一五・七%、二月が一五・三でございました。このような数値でありまするならば、別に、それがいわゆる過剰流動性と申しますか、そういうようなもので将来のインフレをもたらすようなものではないか、そういう危惧の必要はない、現状におきましてはそういう勢いではない、こういうぐあいに考えて判断をいたしております。
  106. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は、いまの、これは判断の問題でしょうけれども、具体的に、現在低成長のもと——かつての四十八年の当時の狂乱物価のときのあの状況で二六・何%でしょう。いまの低成長のもとで一五%台というのは、やはり非常に危険信号だと思うのです。こういう点を率直に認めて、その歯どめ措置など、どういうふうにこれからとっていこうとしているのかということをやらなければ、そうじゃなくとも、ここでもって大量の国債がこの上に出ていく、長期国債の発行が七兆円を超える、それが出ていくということは、これはもう私は非常に警戒を要する状態だと思うのです。特にこの長期国債の発行を始めた四十年から十年間は、その発行残高は十一兆八千億。ところが、この五十年、五十一年の二年間で過去の十年間をはるかに上回って発行残高は十二兆七千五百五十億円ですね。私はここのところへきてのこの国債の発行というものがいかに大量であるか、こういう点は、いまの景気の動きだとかマネーサプライの動きなどから見ても、国民がともかく生活苦の問題と同時に、物価だけは何とか抑えてもらいたい、かつてのようなインフレにつながる危険性はないのかということで非常に不安を感じているときに、こういう答弁内容も、もっとそういう危険性について銀行当局やあるいは大蔵当局が一体どうこの問題について正しく解決をしようと努力をしているのかどうなのか、こういうことが全然わからないで、心配ないのだ、心配ないのだということだけでは、ちょっと聞こえません。
  107. 田辺博通

    ○田辺政府委員 先生のおっしゃいますとおり、インフレの害悪というものはわれわれ身にしみて覚えたわけでございまして、政策の判断を誤ってインフレに陥れてはならないということは、一番最大のわれわれの心構えでございます。  確かに国債がこの近年大量に発行されました。その影響もあってと思いますけれども、民間の資金量、預金量がふえてまいりました。つまりマネーサプライの数値も徐々に上がってきておる、こういう状態というものが将来どうなるかということは一番注意を要する問題だと思いますが、現在のような経済の実態の動きといいますか、言うなればいまの需給のバランスというものは、供給力の方が強くて、まだまだ企業の操業度が低い、そのためにコストがなかなか賄えないというような状態でございますので、やはりこれを正常な回復基調に乗せる、企業の操業率も上げて、そうしてコストが次第に下がっていくということが一つの目的といいますか、そういうことを配慮するように経済を運営するということが大切なことであろうと思いますが、そういう面から申しますと、あの狂乱物価というものは確かに異常でございました。そういうものを再び起こさせてはならないわけでございますが、現在の経済の実態面から考えまして、特に景気回復の初期におきましては若干の金融の緩み、金融が全体として緩和している、こういう状態がある程度続きませんと、いわゆる仕事がふえない、全体の総需要がふえてまいらない、こういう面がございますので、そういう意味で、基調としては緩和ぎみの基調をいままで続けている、まだ当分続けてよろしい、こういう判断をしております。そのためにインフレがすぐ起こってくるということは考えておりません。もしいろいろな指標を注意深く見守りながら物価の上昇の勢いがどんどんこのまま続けていくということになりますれば、それはそれに対応するところの金融政策を行わなければならないと思います。
  108. 小林政子

    ○小林(政)委員 私はいまこの問題についても、あすからインフレになるとかそういうことを言って聞いているわけじゃないのですよ。これから一斉に公共料金も上がっていく。いまのこういう経済情勢の中で、秋に向けて一体どうなるんだろうかということを国民が非常に心配しているし、インフレの情勢が国債の大量発行という中で一体どういう関係に位置づけられ、どうなっていくんだろうかということを、やはり説得力を持った、国民にわかってもらう、こういう立場に立って、この秋に向けての一連の指標の動きなどを、私はもっと真剣に考えていく必要が強まってるのじゃないかということを指摘したいというふうに思います。  次に伺いたいのは買いオペの問題ですけれども、国債は発行した場合に一年たてば日銀の買いオペの対象になりますけれども、これはどういう根拠規定に基づいてやられているのか、この点を伺いたいと思います。
  109. 田辺博通

    ○田辺政府委員 これはかっきり一年でなければならないとか、あるいははっきりした——正直に申し上げまして、基準が一年、あるいは一年半なのか二年なのか、あるいは半年でいいのかというのはなかなかむずかしい問題だと思います。ただ、経済の全体の動きというものの波及のおさまるところといいますか、一つのめどとして、発行されて一年もたたないのにそれを日本銀行に売る、日本銀行は買い取るというような風習といいますか習慣を当然だということになると、実際上は日銀が引き受けて資金を散布して、そしてそれを後から吸収するというような、戦前にとられたような方式にだんだん似てくるんではないか、そういう考え方から、一応一年というめどを置きまして、一年間は買えない、銀行側から言えば売れない、こういうような一つのけじめをつけておくならば、そこで日銀引き受けとの混同も避けることができるだろう、こういう考え方だと思います。
  110. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうすると、財政法の第五条で国債の発行については市場消化が原則だということをはっきりうたっているわけですね。しかもいまの御答弁ですと、発行してから一年以前でも——根拠がないというのですから、一年前でも半年でもこれは必要があれば日銀の買いオペの対象になる。そうすると、これは財政法との関係で一体どうなりますか。
  111. 田辺博通

    ○田辺政府委員 財政法の解釈の問題でございますので私から一応述べさせていただきますが、法律的に言いますと、条文としては、日銀が引き受けることによって資金を散布する、そうすれば一遍市中に散布された資金を後で日銀が売りオペをやってそれを吸収するということも、経済学的にはある一つ考え方だと思うのです。だけれども、それを法律的には禁じたということでございますので、純粋の法律論だけから言いますと、引き受ける際に日銀が資金を散布しなければ、半年であろうとどこかでそれを賄わなければならないわけでございますから、法律論としては、ぎりぎり言えばそれでも法律違反ではないということになるのかなと。ただ、いま申しましたように一年というけじめをつけてやっておるわけでございますし、今後のことを考えますると、日銀の買いオペというのはやはり成長通貨を賄うための手段でございますから、いまのような大きな発行量がしばらく続いているということでございますると、一年たたないものでも日銀が買わなければならないというような成長通貨の供給が必要になることは絶対に当分はないと思われます。したがって、一年たったものでもなかなか日銀は買えない、銀行側から言えば売れない、こういう様子が続くのではないかと思っております。
  112. 小林政子

    ○小林(政)委員 私はいま、いままでの慣例といいますか、財政法との関係もあって、やはり日銀が買いオペをするということは、長期国債の場合は日銀券が発行されると——長期国債の場合ですよ、短期じゃなくて。こういう点からインフレの歯どめ政策として、これは第五条で財政法は禁止しているのですよ。一年たてば一定の期間があったということで、それがいままで買いオペの対象に、買いオペ対象国債というような形でなること自体も、実は私は問題だと思っているのです。こういう中で、少なくとも特例国債、今度出される赤字国債ですね、これは少なくとも私は一年を経過しても買いオペの対象にはすべきでないと思いますが、いかがですか。
  113. 田辺博通

    ○田辺政府委員 これは純金融的に見ますると、いわゆる建設国債でありましょうとも赤字国債でありましょうとも、国のいわば借金でありまして、国が債務をそれだけ負っているというその債券に変わりはないわけでございます。ですから、金融的に言いますと、そこを別に区別するという必要はないと思われます。ただ、財政的に言うと、いわゆる赤字公債というのは建設資金、公共事業等に使われないものでございますから、単に歳入部分が欠陥するというその穴を埋めるためでございますから、これは例外的に取り扱わなければならない、こういう問題だろうと思いますが……。
  114. 松川道哉

    ○松川政府委員 若干補足して御説明させていただきたいと存じます。  ということは、国債を仮にオペレーションの対象にしないということになりますとどういうことになるかということでございますが、たとえば昭和四十年度の実例でございますが、この当時はまだ国債というものが町の中にないということで、日銀は年度間を通じまして千百七十一億円のオペレーションをやっておりますが、これはすべて政府保証債でやっております。それから、その次の四十一年度になりますと、若干国債でただいま御議論のございましたような適格性を備えておるのが出てまいりました。ただ、この年におきましては、日銀の方はオペレーションによって資金供給をすべき量が前年度よりふえてまいりましたので、合計六千七百二億円のオペレーションをやっております。その主体は政府保証債の五千百十五億円であり、また金融債の九百三十四億円であるということでございます。と申しますことは、仮に国債をオペレーションの対象から全部外したとしましても、何らかの証券でもって日銀は資金供給をしなければいけない。資金供給をするということは、その見返りとして有価証券を取得するわけでございます。そのときに日銀は、資産の内容が確実なものである方がベターでございますから、その場合には、ただいま読み上げましたような政府保証債であるとか金融債であるとかそういうものよりは、国債の方が日銀の資産の裏づけとしてベターである、こういう判断で国債を対象にいたしておるわけでございます。ただ、先ほど来御指摘のございますように、財政法第五条の立法の趣旨にかんがみまして、そこにある程度の制約をみずから課しておるというのが実態でございます。
  115. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうしますと、今後、いま審議をしております赤字国債もこれは半年ないしあるいは一年でもうどんどん日銀の買いオペの対象にもしていく、こういうふうに大蔵省としては考えているということが一つと、それからもう一点は、それだったならば、四十年から今日までずっと国債が発行されてきていますけれども、私ども、大体一年たてば買いオペというようなことはいままでもやられているということが調べた中でも相当出てきておりますので、結局一年経過して買いオペで適格国債が実際発行残高の中で何割ぐらい日銀の保有になっているのか、この点をまず数字をお示し願いたいと思います。
  116. 松川道哉

    ○松川政府委員 先刻も御答弁申し上げましたが、四十九年度発行の国債の例を引きますれば総額一兆七千七百億円が市中に消化されたわけでございます。したがって、これが一年たちましてオペの適格性を有しているわけでございますが、現実に五十年度中にオペレーションを通じまして日銀が買い取ったのは五千九百八十二億円である。したがいましてこの差額一兆一千七百億円程度でございますか、これはまだ民間の手の中に入っておるということでございます。  そこで、第二段のお尋ねでございます。いま日銀が持っておるのはオペ適格債の中で何%になるかという御質問でございますが、これはちょっとお時間をかしていただいて計算をしてみないと直ちには出てまいりません。申し上げられますことは、五十年度末におきまして総額、これは出資国債であるとか交付国債であるとか、そういったものも入れてございますが、十五兆七千七百六十五億円内国債がございますが、このうち日本銀行が持っておりますのは五兆五千九百十七億円である、これはただし短期債は入っておりませんが、こういう数字から見ても一年たったものは全部日銀の手に入るということは正確ではないということが御理解いただけるかと思います。
  117. 小林政子

    ○小林(政)委員 数字の問題ですから、いままでの累積発行残高、これはいま十五兆云々というお話でしたけれども、私ども数字が十四兆六千六百二十五億ということなんですけれども、この累積の発行残高、一年たったものを適格債ということであれば、その適格債の中で実際に日銀が買いオペをしたものの割合がどのくらいになるのかということを後でひとつ資料でもって出してもらいたいというふうに思います。  時間がありませんので先へ進みたいと思いますけれども、私が言おうとしていることは、結局は買いオペあるいは成長通貨なんだからそれは何ら別にインフレにつながるものではないということを大蔵当局何回も言ってはいますけれども、しかし、実際問題としてこういった買いオペというようなものは具体的には通貨が現在の経済成長を上回って伸びていくというような問題にもつながっていく可能性が非常に強いわけですね。こういう点からこの問題についてはやはり歯どめをかけていくということが一つ必要じゃないだろうか。  もう一つだけこの問題でお伺いしておきたいのです。  日本は国債の中央銀行の保有割合というのが非常に高いと言われているのです。これは大蔵省から予算委員会に提出をしてもらったあの資料の中にも数字が全部入っております。国債の日銀の保有割合、これはそれこそ世界的に見ても非常に高い。国債の発行総額に占める——特に世界じゅうの中央銀行の中での比較なども見てみますと、日本の場合には一九七五年現在で四四・六%、七四年では二九・八%、西独では七四年に五・四%、フランスでは、七三年末ですけれども七・一%、アメリカでは七四年に一六・九%と、中央銀行が国債を保有しているその保有率といいますか、これは日本は非常に高いわけですし、こういう数字から見ても、やはり発行した国債が一年後には日銀に買いオペで買い取られて、実際には通貨が増発していくというようなことは、ここでもって大量に国債が出ていく、こういう時点の中で厳しく規制していかなかったら、これはインフレにつながるのじゃないか。インフレの心配はないというふうにさっきから言っていますけれども……。まして秋口に向かってこのような動きが強まっている中で、結局こういった点について十分な規制もない中でこのように大量の赤字国債発行されるということはインフレへつながっていく危険があるという点を、これは時間がないので、強く主張をいたしておきたいと思います。資料はひとつ後ほど出してもらいたいというふうに思います。
  118. 松川道哉

    ○松川政府委員 ただいまの御指摘の資料は日銀が持っておるうちの適格債の割合だろうと思いますが、これはいま御質問のあるうちになるべく計算して、できればこの御質問の最後に私から発言さしていただきたい、間に合わなければ後日資料として提出さしていただきたい、このように考えております。
  119. 小林政子

    ○小林(政)委員 時間も大分私に割り当てられております時間に近づいておりますので……。  ここに大蔵省が提出をされました財政収支試算がございますけれども、この問題については、経企庁が出しました五十年代の前期経済計画概案、これの成長率六%、あるいは物価上昇率六%、これは名目でいきますと成長率の場合は一三%ということですけれども、これに基づいて大蔵省が、四十八年から五十年までの租税負担は一三・二%であったけれども五十五年度までには一五・二%にして、結局租税負担率を二%引き上げるということでこの試算がされているわけです。私はこの点について二、三お伺いをいたしたいと思います。  この数字で見てみますと、税収については五十年度十三兆八千億だったものが五十五年には三十五兆五千八百億円、これで二〇・九%、これは実額で計算してみますと二十一兆円の税収の増ということになるわけです。それからまたもう一つは、公債収入のところを見てみますと、これもこの年次計画を見てまいりますと、五十一年度は七兆二千八百億円の国債発行、そして、そのうち特例公債が三兆七千五百億、あるいは五十二年は、全体で七兆五千三百億、五十三年には七兆三千八百億、五十四年には七兆一千七百億、そして五十五年には、特例公債はなくなるけれども一般公債は六兆五千二百億ということで、公債収入というものも毎年、毎年のように大幅な、七兆円台からの国債がこれから続いていくということがここに書かれているわけです。これは実際に国債残高などを見ましても、この間に三十六兆円の国債残高、これは大変な問題だと思うのです。これでは本当に国民生活はこれから一体どうなっていくのだろうか、日本の経済は、一体これでもって実際にどのような計画をもって進んでいくのだろうか、この数字を見て、私はこれは非常に大変なことだということを痛感をいたしておるわけですけれども、この問題について、この計画をお立てになった大蔵省としては、国民生活に与える影響という問題は一体どのように認識をされているのか、ひとつ率直にお答えをいただきたいと思います。
  120. 大平正芳

    大平国務大臣 まず一番上の欄で、公共投資計画は五十年から五十五年度で一五・五%年間平均伸率でふえていくと想定いたしております。振替支出でございますが、社会保障的な経費は一六%平均伸びていくであろうという想定でございます。  この二つのアイテムは、近く閣議で五十年代前期の経済計画といたしまして承認をいたす予定になっておるわけでございます。すなわち、あなたの言われる国民生活考えまして、公共投資、社会保障というのはこういう程度の施策を五十年代前半には講じなければなるまいということを政府は想定いたしておるわけでございます。それを賄うために税、税外収入、それから公債収入をもって賄わなければならぬわけでございます。いずれも、松浦先生などから御指摘がございましたように、税収も大変であるという御指摘でございます。小林先生は、公債収入特例公債はなくなっても四条公債が依然として七兆円近く残るじゃないか、これも大変だということでございます。大変でございますならば、公共投資でございますとか社会保障でございますとかを削らなければならぬわけでございます。それを維持しようとすればこういう負担にたえなければならぬ、そういうことでございまして、財政というのは両面があっての相談でございまして、国民選択をこの財政試算から求めておるわけでございまして、どうしてもこれで都合が悪いということでございますならば、その国民選択に従って直していかなければいかぬわけでございますけれども政府といたしましては、まず経済政策概案というような形で歳出の面から固めていこう、歳入の面はかたきところ、それを充足するに必要にして十分なだけは財政当局として確保してまいることを期待しておられるものと思っております。
  121. 小林政子

    ○小林(政)委員 私は歳入の問題を見まして、公債も五十五年までで三十六兆円もふえる、しかも税収の方も二十一兆円も負担がふえる、こういうことは、私は歳出の中身はこれから触れたいと思いますけれども、非常にこれは国民負担を重くするということが言えると思うのです。大平大蔵大臣は、財政というのはいつも税収でもってやっていくのか、国債でやるのか、どっちかを選んでやらなければならないのだ、国債を抑えるのならば、もっと税収もふやさなければならない、あるいは税収をも一つと減らすといいますか、ふやさないということであれば、その財源を賄うための国債を出す、こういう立場をとらなければならないのだということをよく言っていますけれども、私はいまの経済の中で、この財政規模についても、大平大蔵大臣はこれが適正な財政なんだと言っていますけれども、実際にこれは一体どこの立場に立った財政の中身なのかということは、これはまた一つ問題なんですね。本当に国民の立場に立って財政の中身が組まれているのか。私どもがいつも言います。部の大企業を中心とした大プロジェクトが優先する景気対策なのか、本当に国民が心から望んでいる生活優先の立場に立った公共投資にして、そうして景気を浮揚していくのか、こういう点は、歳出の中身という問題についてはいろいろと論議があります。しかし、どちらにしてもこのようないまの事態の中で公債もこのように毎年七兆円ずつふえていく、税収もこのようにふえていくというような、こういう点は私は、原則的な立場に立って、公債についてのそういう過剰なものについては歯どめをここでかけていくということが非常に重要じゃないか、このように思いますけれども、いかがですか。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 歳出歳入両面にわたりましてもとより批判にさらされているわけでございまして、国会内外を通じて十分の御論議をいただいて、国民のための予算を立て、計画を立ててまいらなければならぬわけでございます。小林先生におかれましても、歳入ばかりでなく歳出の面につきましてもいろいろ御検討の上、厳しく御指摘を賜りますならば、われわれといたしましてもそれに対しましてわれわれの見解を述べて、その論議を通じてお互いの認識が発展してまいることを私も期待いたしております。
  123. 小林政子

    ○小林(政)委員 それではひとつ償還計画との関連も含めて、先ほど来からもどなたか御質問をいたしておりましたけれども、国債費の問題について一点お伺いをしたいと思います。  国債費の場合には、この計画によりますと、五十一年度が一兆六千七百億円そして五十二年度が二兆三千三百億円、五十三年度が三兆二百億円、五十四年度は三兆七千四百億円、そして最終段階で五十五年度で四兆四千二百億円。五十一年度の場合にはこれはそのうちの一兆二千億円を国債の利子に充てるということです。先ほど最終段階の数字は出ておりましたけれども、五十二、五十三、五十四、五十五のこの計画で、具体的にこのうち利子の支払い分というのはどういう数字になるのか、まずその点をひとつお伺いをいたしたいと思います。
  124. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ケースの一で申し上げますと、五十二年度から利払い費等でございますが、一兆九千四百億、五十三年度二兆五千五百億円、五十四年度三兆一千四百億円、五十五年度三兆七千億円、これはただし国債の事務取扱費を含んでおります。
  125. 小林政子

    ○小林(政)委員 こういう国債の利払いといいますか、非常に大きな数字ですね。これが元利償還という点も当然含むわけですけれども財政硬直化ということが極度に強まるのではないか、このようなことが懸念される、当然のことですけれども、これらの問題について具体的に大蔵省としては、本当に責任を持ってどう解決していこうとされているのか、その点ひとつ率直な御意見聞かしてください。
  126. 高橋元

    高橋(元)政府委員 御指摘になりましたように、国債費が五十五年度で申しますと、ケースIですと一般会計歳出の一〇%程度のウエートになってしまいます。現在がたしか六・九%だと思いますが、それに比べて国債費の一般会計に占める割合がふえていく、これは財政の弾力性を失わせると申しますか、硬直化の一つのあらわれでございますから、私どもとしては、そういうものは極力国債の依存度を下げましてまず特例公債から脱却をして、しかる後四条公債についても、極力財政の合理化を図りまして公債依存度を下げていく、圧縮をしていく、それによって財政の弾力化を達成せねばならぬ、こういうふうに考えております。
  127. 小林政子

    ○小林(政)委員 償還計画については、具体的な赤字国債償還計画というものを、四条国債と同時にこの問題についてどう返済をしていこうとしているのかという点が、この間以来からはっきり当局側もしていないわけです。赤字国債返済計画というのは、こういった中で具体的にどうやって計画を立てていこうとしているのかという点も含めて国会に示してもらわなければ、私今後のことを思うと大変なことになるんではないかという印象を非常に強くいたしました。やはりこれの正しい返済計画というものを示していくことが早急に必要じゃないか、このように思いますけれども、いかがでしょうか。
  128. 高橋元

    高橋(元)政府委員 今回御審議をお願いいたしております法案の条文の中にも書いてございますように、五十一年度特例公債につきましては、満期までに全額現金償還をして借りかえをしないという方針でございます。したがいまして昭和六十一年に、お出ししております償還計画表のとおり全額現金償還の時期が至るわけでございますが、それまでには全額財政的な手当てをもって償還をいたすわけでございます。お手元にごらんになっておられます中期財政計画試算、これは昭和五十五年まで表示をしておりますが、五十五年以降は全体の経済のフレームワークがございませんために、どのような財政の成り行きになるかということを計数的に明らかにいたしておりませんけれども、ただいま申し上げました特例公債の全額現金償還のための制度といたしましては、たびたび申し上げておりますように、国債整理基金特別会計法に基づく定率繰り入れ、それから予算の繰り入れ、また特例公債償還までの間は剰余金の全額を繰り入れる、こういう三本の柱をもって支障のないように償還をしてまいるわけでございます。
  129. 小林政子

    ○小林(政)委員 それは定率繰り入れの問題については、一応四条国債についての計画であって、いま審議をしております赤字国債というのはその中に入っているのですか入ってないんですか、定率繰り入れの中に。
  130. 高橋元

    高橋(元)政府委員 定率繰り入れは、もちろん特例公債であろうと建設公債であろうと、前年度首の国債総額の一・六%というものを繰り入れるわけでございます。
  131. 小林政子

    ○小林(政)委員 そうするとその基金は、結局返済計画の中での資金ということになるのですか。
  132. 高橋元

    高橋(元)政府委員 さようでございます。
  133. 小林政子

    ○小林(政)委員 これによって一・六%、この定率繰り入れでもって十年間に支障なくこれが返済できるということなんですか。
  134. 高橋元

    高橋(元)政府委員 国債の減債制度と申しますのは、そのときまでに発行されておりますところの国債を全体といたしまして、それに対して国民理解と信頼を得ると申しますか、公債政策に対する節度を示すためにつくられている制度でございます。したがいまして特例公債それから建設公債、これを通じまして存在する国債に対しまして定率の繰り入れを行う。それから財政法六条でございますと、剰余金の二分の一を下らない金額を繰り入れてまいる。そのほか、必要に応じて予算で定める金額を繰り入れる。この三本の柱によってやることになります。  昭和六十年、六十一年に、ただいままでにお願いをいたしております法律に基づきまして発行をすることになります特例公債償還期が到来をいたします際に、これをどのよう資金で返すのかといしますと、国債整理基金特別会計で借りかえのための起債をやらないということでございますから、すべて一般会計からの繰り入れで原則として賄うということでございます。ただし、国債整理基金そのものの中でたまっております金と申しますか、減債に充てるべき金額というものが、先ほど理財局長が申し上げましたようにあるわけでございます。ただ、長い目で見ますと、建設公債につきましても六十年で償還をしてまいるわけでございますから、特例債につきまして必要な金額は、剰余金の繰り入れ及び定率繰り入れで足らざる分は予算の繰り入れによって時宜を見て行うということになると思います。
  135. 小林政子

    ○小林(政)委員 いまの国債並びに償還あるいはまた中期計画等の数字を見ますと、いまですら国民生活が非常に危機に直面しているときに、今後このような負担が強まるということは、これは私は非常に重要な問題だというふうに思います。しかも大平大蔵大臣は、先ほど来からインフレの問題等についても、具体的に今日のこの事態をもたらしたその責任についても、どのように感じているかということで、私は大臣の姿勢をただしているわけですけれども、結局いまのようなこの事態の中で財政が厳しく、国民のいま直面している問題を解決していく立場というものを本当にどこまで真剣に感じていらっしゃるのかということが、私は、率直のところいままでの審議を通じてよく伝わってこない。しかもこの中身などいろいろと検討してみますと、財政の中に温存しているいままでの高度成長の仕組みというものが一体どこでどう取り除かれているのだろうか。こういうことはこのように切りかえているんだ、このように取り除いたんだという点が、いままでの討議の中で私は全然感じられませんでした。いま当面この問題を解決していく上で、財政の中での不要不急のものについてもこれをもっと削減もしていく、あるいはいままで言われてきた特権的な減免税だとか、あるいは大企業や財産家優遇の不公正なこれらの税制についても誠意を持って抜本的にここにメスを入れて解決をしていく、そういうことを真剣におやりになった上で、なおかつ、いまこういう状態なんだということであれば、私は多くの国民もそれはそれなりに理解をしていくこともできるんだと思うのです。  実際、こういう立場に立って幾つかの問題点が私はあると思うのですけれども、時間がなくなってまいりましたので、一点だけ例を挙げたいと思います。それで例を挙げながらお伺いもいたしたいと思いますけれども一つは、日本輸出入銀行の貸倒引当金、これの繰入限度額というのが現状どうなっているのか、まずお伺いいたしたいと思います。
  136. 田辺博通

    ○田辺政府委員 日本輸出入銀行も含めまして、政府関係機関の貸倒引当金の繰り入れの方法でございますが、この率は、昭和五十年以前は毎年累積して積んでおったわけですけれども、五十年から一般金融機関の貸倒引当金がいわゆる洗いかえ方式になりましたものですから、それに直しまして、そしてその率は民間の金融機関が適用を受けます率の倍、つまり発足しましたときは千分の二十、普通の金融機関が千分の十でございましたので、二十ということで決めたわけでございますが、その後、昨年これを漸減するという一般民間金融機関に対する引当金率の引き下げがございます。それに従いまして現在は九になっておりますから、輸出入銀行はその倍である十八という数字で積み立てるということにしております。  政府関係機関をどうしてそう高くするかという点でございますけれども、御案内のように、一般政府関係金融機関というものは、ほっておいては民間の金融がつきにくい、なかなか融資ができないというものを補完するためにやるわけでございますから、それだけいわば危険性が高いという意味から、そういう倍というめどをつくっているわけでございます。
  137. 小林政子

    ○小林(政)委員 時間がなくなりましたので、もう一点伺いたいと思います。  危険性が高いと言うけれども、結局、それだったらば一般の金融機関が現在千分の九ですか、そういう中で日本輸出入銀行だけなぜ倍にしているのかということと、それから現在貸し倒れによる実損額というのが、開銀にしろ、輸銀にしろ、事実関係として本当にあるのか、ないのか、この点についてひとつお伺いをして、この問題はまた改めて追及をしていきたいというふうに思います。
  138. 田辺博通

    ○田辺政府委員 なぜ倍にしているかというのは、ただいま御答弁申し上げましたように、やはり一般の民間金融機関が貸しにくいものについて貸すというのが本旨でございますので、それははっきりわかりませんけれども、まあ倍ということに決めておるわけでございます。  開銀につきましては、ここ六年間の、四十五年度からの数字を持っておりますけれども、債権償却額は四十九年度に四億円、五十年度に二億円、五十一年度、これはまだ見込みでございますが、まあ二億ぐらいあるかな、こういうぐあいな感じでございます。  輸銀につきまして、四十五年以降の債権償却額はございません。
  139. 森美秀

    ○森(美)委員長代理 田辺銀行局長、松川理財局長より、先ほどの質疑に関連し発言を求められておりますので、これを許します。田辺銀行局長
  140. 田辺博通

    ○田辺政府委員 先ほど準備率の引き下げについての解放額、ちょっと私、勘違いをしまして間違った点もございますし、それから十一月の分をお答えします。  十一月に行いましたものが五千二百億の解放額になりました。これを私、勘違いしまして、二月の分とお答えいたしました。おわびして訂正させていただきたいと思います。  それから、今年の二月に行いましたのは約三千八百億の解放額になります。これを私、間違えまして五千二百億と答弁いたしました。おわびいたします。
  141. 森美秀

    ○森(美)委員長代理 松川理財局長
  142. 松川道哉

    ○松川政府委員 先ほど、発行後一年以上たったいわゆるオペの適格債のうち、日銀がどれだけ保有しておるかという御質問でございました。そこで、四十九年度までに発行されたものは、五十年度末すなわち五十一年三月で一年以上たっておるわけでございますから、この両方の数字計算いたしますと、先ほど私、日銀が五兆五千九百十七億円持っておって、この中には出資国債や交付国債が入っておりますということを申し上げましたが、このうちいわゆる新規国債だけを抜き出しますと、質問の途中で小林委員が御指摘になりました数字とちょっと違いまして、五兆四千百五十三億円という数字に相なっております。これは日銀が五十年度末に持っておる数字でございます。これに対応いたしまして、四十九年度までに発行されましたもので残高として残っておりますのが九兆一千八百七十六億円ございますので、率といたしましては五八・九%、六割弱が日銀の手に入っておる、四割以上がその他のところにある、こういうことでございます。
  143. 森美秀

    ○森(美)委員長代理 横山利秋君。
  144. 横山利秋

    ○横山委員 大分この公債発行に関しますマクロの立場からの財政、金融等が続きましたから、少し局面を変えて、私はミクロの最も庶民的な金融から質問をしたいと思います。  当委員会は、先年、議員提案をもちまして貸金業者の自主規制の助長に関する法律を通過させ、衆参両院をこれが満場一致通過いたしまして公布をされました。この法律によって全国に庶民金融業協会が生まれ、そしてそれらの自主的な規制はかなり顕著なものがあると思うのであります。しかしながら、それにもかかわらず、最近の経済状態はもう驚くべきサラ金業者の乱出といいますか、そういう状況になりました。  大臣、ちょっとこちらを見てください。これは京都新聞であります。京都新聞のここに、これは全部サラ金業者の広告でございます。勘定いたしましたら六十一社——毎日ですよ。六十一社の広告が出ています。それからこれは「スポーツニッポン」であります。「スポーツニッポン」が四十一社、広告が出ておるわけであります。貸しますのは五万、十万、多くて三十万。そういうサラ金がこれだけの広告を連日するということはどういうことでありましょうか。  ここに二、三の新聞記事がございます。一つは私の地元名古屋でございますが、三月十二日、名古屋のトラック運転手が女房、子供五人を連れまして、サラ金が返せないから心中するといって自殺を試みました。お母ちゃんうちへ帰ろうと子供が言うので、子供に引かれて自殺をせずに帰ってきたのでありますが、このトラック運転手の奥さんは、これまでサラ金業者約四十店から計百六十万円を借りているというのであります。サラ金業者へちょっと行けばすぐ貸してくれるのであります。そこで四十店回って百六十万円奥さんが借りた。それが返せなくて一家心中未遂であります。その次は四月に起きた静岡の事件でありますが、これは、だんながサラ金を一生懸命に借りてどうにも追いつかぬ、雪だるま式にふえて二百万を突破した。奥さんに意見をされて、それならどこかで金を借りてくるがやと言って飛び出していって、それができず、帰ってまいりまして奥さんに無理心中を図って、奥さんは死んで自分は死に切れなかった、こういうのが静岡の事件であります。それから、先月の二十七日の新聞でありますが、川崎で発覚した問題であります。何かといいますと、自動車の運転手が免許証で金が借りれるわけでありますが、警察の調査によりますと、この事件の家宅捜索で、事務所のロッカーから担保に取った運転免許証百二十八通と車検証三通が見つかった、こういうのであります。一体その自動車運転手はどうして車検証なり免許証をサラ金業者に出しておるかといいますと、いま一斉取り締まりの際もタクシーの運転手はほとんど検問がされません。だから、免許証をサラ金業者に預けても差し支えがない、問題にならぬということで行われたと思うのであります。これは自動車の運転手の場合でありますが、もう一つの場合は、健康保険証を落とした女の子がいます。落としたと思っておったら、しばらくたってからサラ金業者から電話がかかって、あなたはもうどれだけ借りましたよ、どれだけになっていますよと通告があったのでびっくりした、そして、私はあれは落としたのですよ、こういうようなことであったというのであります。私は、自主規制の法律が運用されておるけれども、もはやこのような事態というものは現行法をもってしてはとても追いつかぬことになっているのではないかとつくづく痛感をいたします。  警察庁見えていますか。警察庁から、この種の高金利事犯、無届け犯等の検挙その他の実情について御報告をまずいただきましょう。
  145. 柳館栄

    柳館説明員 最近の金融事犯の検挙状況を過去数年にわたって申し上げますと、逐年増加の傾向を示しております。昭和五十年中には九百三十一件、八百二十三人を検挙いたしておりますけれども、これを昭和四十六年を一〇〇とした指数で見てみますと、件数で一九八、人員で一八五ということになっております。また、昭和五十年中に検挙しました金融事犯の約九七%に当たるものは、いわゆる出資法と言われます出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律違反でございます。このうち七八%に当たる六百九十七件、六百九十人でございますけれども、これは高金利事犯でございます。  こういったことは、市民に直接被害を与える事犯でありますので、警察といたしましては、特に高金利等の悪質金融事犯を重点に取り締まっておるという状況でございます。
  146. 横山利秋

    ○横山委員 大臣お聞きのように、わずか三年くらいで倍ですね、指数一九八、一八五。これは一体どういうことであろうか。私はサラ金の存在そのものを否定しているわけではありませんよ。つまり、生産金融が消費金融に変わりつつあるという一つの現象でもあろう、そうは思います。ところが、それはいいにいたしましても、このような悪質事犯、検挙件数が激増するということは、何と言っても現行法のあり方に足らざるものがあると痛感する。たとえば現行法は、届け出すればだれでもできるということなんですね。     〔森(美)委員長代理退席委員長着席〕 これは、以前に貸金業法というものが存在しておったわけでありますが、有名な事件が起こりましたときに出資法が制定されることによって貸金業法をやめてしまった。そして行政は大蔵省も地方自治体もほとんど放任をして、警察の後追いにこれを任せておった、こういう状況でありまして、いまや爆発的なサラ金業者の増加なんであります。大臣が少し気をつけて町をお歩きになれば、電柱にぶら下がっているその宣伝が、一月段階でいきますと五万円即時オーケー、それから二月、三月になりますと十万円から二十万円、いまその新聞でもごらんになったと思うのですが、三十万円台が即座オーケー、こういうような状況になって、学生、奥様、OLさん大歓迎、こういう新しい階層が続々と利用客になっておるわけであります。  したがいまして、この金融はいままでの大蔵省の、主として企業金融の行政ベースでは律し得ないものがある。そこで、私どもも、大蔵省もそうだと思うのでありますが——信用組合や信用金庫がサラリーマンに対する融資を手がけ始めた、それもなかなか好評ではあろう、好評ではあろうが、それにしても業者の激増、新規開業は大変な数に達しています。いま全国のサラ金業者の貸出残はどのくらいで、そしてまた、大きなサラ金業者の貸出残はどのくらいで、あるいはまた実際に営業しているのはどのくらいでと、大蔵省はそれら諸般の統計を御存じですか。
  147. 田辺博通

    ○田辺政府委員 現在各都道府県知事に届け出が行われておりますものを見ますると、現在の業者数は約十三万人でございます。それから、資料がちょっと古うございますけれども、四十八年度の融資量を都道府県の報告によって見ますと七千七百五十九億円、残高はこういうぐあいになっております。(横山委員「大きなサラ金業者の一件当たりは」と呼ぶ)この中で、大きいものは約八十億くらいあるということです。
  148. 横山利秋

    ○横山委員 八十億になんなんとする貸出残を持っている業者、それは決してどえらいビルのどえらいホールにおるわけではありません。全国にきわめて小さいサラ金店として散在をしておる、それらが広範な網の中で商売をやってこれだけの貸出残がある、こういうことなんであります。  私は率直に言いますが、大蔵省はこれは自分の所管ではないと言い続けてまいりました。これは警察の所管だ、こういうふうに去年も、それから前のときも言い続けてまいりました。警察に言わせれば、私どもは後追いなんですから、私どもがこれの取り締まりはおろか、行政指導までやる立場にはありません、こう言って逃げておるわけです。起こったやつだけを警察が後から縛る。そして実際に雨後のタケノコのように出ていくもの、これは先ほど事例を挙げましたものは、水面に浮かんだものでありますけれども、浮かばないたくさんのものがある。そして三十銭。三十銭といえば年利どのくらいになると思いますか。そういう高金利が堂々と新聞に出ておるわけであります。コストは高いだろう、リスクもあるだろう、だから通常の信用組合や信用金庫のようにいかないことはだれだってわかる。だけれども、乱立と過当競争と新規増店が拍車をかけてますますリスクの大きなとこへいく、そしてますます被害者がふえる、こういう傾向は何としてもこの際ためなければいかぬ。大蔵省だ、警察だと、所管はおまえの方だと言っている場合ではないではないか。大体政府は議員提案でつくった法律については冷淡であるという風評がある。私どもが先年与野党でこの法律を長い間かけて通過をさせてそれだけの効果はあったと、私は現状、庶民金融業協会の発展を見て、その人たちが一生懸命いま新規業者加入について審査委員会をやったり、あるいは悪いことをやったやつは直ちに除名したり、そういうことをやっているけれども、実際問題として追いつかぬのですね。追いつかぬところを警察がやるのか大蔵省がやるのか、この点をもう大蔵省も逃げ回らずに——庶民金融というものあるいは零細な町の手形割引業者というものが、今日いまのお話をもってしても十三万業者がおるということですね。いいとか悪いとかいっても、十三万人の人があってそれによって経済社会において一定の役割りをしているという事実を見詰めるならば、これは警察の問題だと言うておるわけにいかないではないですか。私は大蔵大臣がどうも課長や局長に、これはもうこの前答弁したとおりですというふうに教えられているのじゃないかということを想像しますものですから、改めて時間をかけてあなたに篤とこの御説明をしたつもりです。  実は建設的な提案として私どもが貸金業の規制に関する法律案要綱の試案をつくったわけです。それは大臣のお手元にいっていると思いますが、その要綱がいっております趣旨は、少なくとも自主規制、現行法の精神を強める、現行法の精神をそのまま継続をする。しかし現行法は、悪いやつは協会に入れるなよということですからね。悪いやつは協会に入れるな、まともな業者だけが協会でがんばれ、そして協会所属の貸金業者ということを天下に声明しろ、こういう自主規制なんですが、それだけではもう追いつかぬからというわけで、この案の中には政府の監督権限、そういうものを盛ったわけなんです。もちろん財務局でやられるわけじゃありませんから、財務局で間接指導をして、そしてこれをもって都道府県が委任を受けて実際の衝に当たる。その監督行政、指導行政と、業界のいまあります自主規制を強めていく、その二本立てをもってこの問題の前進を図ったらどうか。こういうことなんであります。おわかりになったと思いますが、大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  149. 大平正芳

    大平国務大臣 横山委員よりサラリーマン金融につきまして問題を詳しく御提起いただきましたことを、私からもお礼を申し上げます。こういう本来自由営業として日常生活の底辺に活動を続けてまいりました営業につきましてどのように行政権がタッチすべきか。いままで十分責任を果たされるかどうかについて自信がなかったので、大蔵省といたしましてもこれに介入をいたしますことに消極的であったと聞いております。しかしながら、行政府といたしましてそういう態度で終始いたしますこともいかがかと思います。せっかく提起された問題でございますので、またあなたから試案として御提供を受けました材料もございますので、私ども責任を持って検討をし、何らかの解答を得たいと思いますので、しばらく時日をおかしいただきたいと存じます。
  150. 横山利秋

    ○横山委員 やや前進という雰囲気ですが、念のために警察庁に伺いますが、警察庁が自分で取り調べ、いろいろなことをしておって、そして大蔵省の一部に、どうせ警察がいつもやっているのだから警察でやってもらったらどうだろうという意見があるのでありますが、取り締まりをしておる立場から言って、現行法で適当であろうか、取り締まりは十分であろうか、この種の違反が倍になっているのがだんだん少なくなっていくであろうか、それにはどうしたらいいかという点について意見を述べてもらいたい。
  151. 柳館栄

    柳館説明員 ただいま現行法によりましての取り締まりを通じまして、私ども問題と感じておりますのは、第一点は届け出だけになっておって、届け出に対する法規制がないという点が第一点でございます。  それから第二点は、違反等があった場合における行政処分を含めた行政措置がもう少し規制されるならば、もっと資金需要者の保護ということに寄与していくのじゃないだろうか、こう考えております。
  152. 横山利秋

    ○横山委員 では、時間がありませんので、詰めるわけにはいきませんけれども、これは大臣、ぼくが冒頭言ったように、マクロの金融もさることながら、いま本当に驚くべき勢いで発展をしているこのサラ金の問題、これは毎年国会で、大蔵か物特か法務でだれかが取り上げておる問題。それでもなおかつどんどん、一日一日増加をしていくこの問題を警察の問題ということだけでなくて、やはり金融に違いないのですから、そして長い目で見ていまこれを規制し、いま秩序を立てることの方が、この業界が社会的な地位を向上する道なんだ。昔、町の高利貸しと言われた人たちですね、その町の高利貸しと言われた人たちあるいは無尽と言われた人たちが長い年数をかけて信用組合になり相互銀行になっていった歴史から見ましても、大きければ八十億の貸出残を持っておる金融が、届け出主義で簡単にできるということに奇異なものを感ずるわけです。もう子供が大きくなっちゃっている。自主規制の着物では、子供がもう大きくなっちゃっているということなんですから、大きな子供にふさわしい着物を新しくつくることが必要であろうと思うのです。大臣は、それじゃひとつ検討しようということでございますが、これはもうどんどん発展しているわけでありますから、大臣いつごろまでに検討の結果がいただけますか。
  153. 大平正芳

    大平国務大臣 いま、どこまでのものがどういうテンポでできますか、ちょっと私も自信が持てませんけれども、次の通常国会までには何らかのお答えができるようにいたしてみたいと思います。
  154. 横山利秋

    ○横山委員 それではせっかく調査、検討、立案、次の通常国会までに、きちんとした御返事がいただけるように要望いたします。もちろん、その間であれ、いまお話し申し上げたようなこの事態については、やはり行政指導の適当な方法があれば、ひとつ十分やってもらいたいと希望します。  次は、今度はマクロの問題でありますが、先般来この委員会質疑応答の焦点となっていますこと、結局、この国債の発行の是非は別として、これによってあしたはどうなるか、あさってはどうなるか、それをもう少し明らかにしろということに尽きるようなんであります。ところが、お答えをされるあなた方と、質問をする私どもとは少し次元が違うような気がする。なぜかと言うと、ちょうど相談をして汽車に乗ろう、あなた方は広島まで行く気持ちになっているんだ、私どもは静岡までで一応ことしは終わりだ、つまり単年度ですからね。そして、それから米原は一体どっちへ行くんだと言っても、あなた方ははっきりしない。あなた方自身も、先ほど大蔵大臣が答えたのは、先のことは考えられぬ、いま脂汗を流して一生懸命やっているんだ。そんなことはないでしょうと私あそこで思っておったわけですが、少なくともあなた方はかなり中期的な展望に立っているけれども、まだペンディングな点があるからそれを言うわけにいかぬ。ところが、その中身がわからぬから私どもはこのことしの予算、ことしの国債、そういうことであしたはどうなるんだ、あさってどうなるんだということが少しも十分なかみ合いを見せぬ、かみ合いをしないというところが私は今日的な現状だろうと思うのです。  そこで、大蔵大臣がきのう松浦君と堀君の質問に答えて、それなら、あしたあさってはどうなるか少し検討して出してみましょう、こうおっしゃいましたね。そうですね。そのことは一体考え方としてどういうものが出るか私は知りませんけれども考え方なり、あしたあさっての展望のほかに、もう一つ考えなければならぬことが、法律的な問題だと思うのであります。  時間の関係で、私の考えていることを列挙してみますと、私どもとしても、予算というものがこの一年のことだけだというふうに考える者は一人もない。この予算が来年、再来年どういう影響があるかということが論争の一つの焦点である。  それから二番目に、現行の財政法は単年度主義ということになっていますね。法律は単年度である。しかし、われわれが実際審議をしているものは、もうある程度中期的な物の見方がお互いの共通のベースではないか。そういうことが第二番目に言える。  第三番目に、ことしほど財政が金融を動かすものはなかろう。三分の一が国債である。その三分の一が、財政が金融を操作をして、金融は財政に従属をしておる。一体、金融と財政との関係はどうあるべきかという問題提起をことしはしているのではないか。  それから、指摘はされておるのですけれども、国債の償還計画、返します。また五十五年までにはゼロにいたします。こう言っているけれども、しかし、どうやってそれをゼロにするか、どこから金が入ってくるかということについて、これは言葉はあってもそのシステムというものは皆無である。  それから、いまの予算で私どもがいつも指摘をするのは、長期計画というものが、各省で十か二十か、公認の長期計画やら非公認の長期計画考えますと、もう幾十とない長期計画というものがいまわれわれの周辺にある。その長期計画というものは予算との関係というものがきわめて不明確である。閣議で長期計画が決まった、しからばそれは予算でもう完全に保障されているか。そういう法律的な仕組みというものは存在をしてない。政治的にそうだ、そうなっておるということだけではないか。  それから、経済企画庁は常に中期的な判断で物を考える。大蔵省は常に単年度予算ということを中心にして考える。それは閣議の中でもあるいは経済閣僚懇談会でも、あるいは担当者間で打ち合わせができておるけれども、それは法律的なシステムというものには全然なっていない。  それから、別な角度で考えますと、ことし租特が初年度で百五十億ですか、切りました。補助金は八百億切ったというわけですね。ところが、この補助金とか租税特別措置法というものが何かのときには見直されるけれども、常時見直す、常時それを見直していくというシステムがない。したがって、財政の硬直性というものが何回も何回も言われていながら、硬直性を常に整理をしていく、そういうシステムがいまの財政法なりあるいは財政関係の諸法の中にはない。これが最初できたときには、そういう単年度主義というものが中心になってできているからである。私は、断っておきますが、単年度主義をやめろと言っているわけではありませんよ。単年度主義でいい。いいけれども、いま実態というものは、もはや単年度主義だけではわれわれが審議に当たってあなた方とかみ合わなくなっている。あなた方は常に中期、特に経済企画庁は中期、そういう状況であると考えますときに、この際財政計画法なり経済計画法なり、名前は何でもいいのでありますが、少なくともいまの財政法を見直すとか、あるいは新たに財政計画法をつくって、それによって出される財政計画というものは国会議決を経るまではいかないにしても、少なくとも審議の参考資料としてあなた方の考えの裏づけというものを提起をする必要があるのではないか。かつて四十八年でございましたか、経済安定に資するための財政金融に関する特別措置法のようなものが日の目を浴びそうになってそれはやめましたけれども、あれは狂乱物価のときの問題であります。あるいは西ドイツの経済安定成長促進法のようなものも、これは成長のための法律であって、今日の日本の経済状況に合わないと思います。そしてまたアメリカの予算教書のようなシステムも日本のそれとは違いますから、これまた必ずしもわれわれの見本にはならぬでありましょう。  ただ私が言いたいのは、冒頭言ったように、私どもの目の前には法律によって予算が出てくる。それに対して参考資料が出てくる。それだけの法律的な資料である。そしていやがるあなた方を無理にああやれ、こうやれということに時間を少し浪費し過ぎるような気がするわけであります。ですから、あなた方も中期的な財政計画がなければうそなんでありまして、大平大臣が言うように、とんでもない、先のことは考えない、いまのことに脂汗を流しているということは絶対にないと私は思うのです。あなたが抱懐するもの、予算を立てた骨格になった長期の計画、展望、そういうもの——先般来出ております概案のようなものでなく、あるいはA案、B案のようなたわいのないものでもなく、少なくとも骨格になるものが参考資料として法律的に国会へ出てきて審議が順調に進むようにするということが必要ではないか。しかも、経済はブルドーザーの時代から人間の時代へと変わる。そしてこれから高負担あるいは借金財政の幕あけということになる。だれが考えてもあした、あさっての、明年、再来年の財政はどうなるんだということが論争の焦点で、それをこの間来入れかわり立ちかわりあなたとやっているわけですね。だからそういうことについて考えますと、この際予算のシステム、財政法のシステム、経済計画法のようなもの、そういうものがひとつ考えられるべき時期ではないか、きのう、うっかり聞いておりましたが、あなたがそのようなことについてちょっと言われたようでしたね。財政諸法について検討もしたいということをちょっと言われたように思っております。  まあ、時間の関係上全部言ってしまいましたが、私が大臣に聞きたいのは、大臣は大蔵委員としてもう長い経歴もあって、そして大蔵大臣として未曾有の公債政策をことしやって、たくさんの経験をお持ちになってさぞかしお考えになっておることがあるであろう。これからはどうあるべきか。下僚の局長が言うばかりでなくて、あるいは経済企画庁が先々のことをしゃべるばかりでなくて、大蔵大臣として、単年度主義を踏まえながらも経済政策のこと、予算の提出のあり方等についてお考えになっておるところがなければうそだと私は思うのであります。  整理して質問をいたしますと、財政諸法の見直しが必要ではないか。単年度主義を堅持しながらも中期的な視野の予算提出が必要ではないか。あるいは金融と財政との新しい展開をどういうふうに調節をしていったらいいのか。今日の財政の状況からの脱却でありますが、このことについては先ほどから同僚諸君の質問にお答えになっていらっしゃいますからともあれとして、それらを含んでこれからの予算、これからの財政、これからの財政諸法のあり方についてひとつ率直な意見を承りたい。
  155. 大平正芳

    大平国務大臣 中期的さらには長期的な展望を持って財政考える、計画を立ててまいる、予算制度、法律制度等についてもそういう観点から不備を整備していく必要がありはしないかというような御指摘が第一にございました。仰せのとおりだと思うのでございます。私ども、将来の展望に立たなければ今日の決断ができないわけでございますので、どの場合も曲がりなりに将来の展望を描いておるわけだと思うのでございますが、横山さんおっしゃるようにその展望が、でき得るならば相当地についたものであり、相当説得力を持ち、相当実現性を持ったものでなければならぬと思いまして、そういう意味の努力をいたさなければならぬことは全く同感に存じます。  ただ、私に一つ言わしていただきますならば、長期計画とか長期の展望とかいうことを考える場合に、一つ計画ができたならば、日本人の場合それがミニマムなベースになるということでございます。言いかえればそれから後退ができなくなってしまうわけでございまして、万一状況が悪化した場合にもそれからの後退ができないようなことになりがちでございまして、財政の硬直化と申しますか経済の硬直化と申しますか、そういうことを招きやすいことになりはしないか。財政にせよ経済にせよ、いつも体質は非常に弾力性を持って、硬直性から自由であってほしいと思うのでございますが、ヨーロッパ人とかアメリカ人というのはその点は比較的物わかりがよくて、増税やるときはやる、減税やるときはやる、その点は非常にはっきりしているのでございますけれども、日本の場合は、減税の場合は皆賛成するんだけれども増税となるとなかなか簡単にはまいらない。そういうことがございますので、やはり日本人の性格から申しまして非常に積極性、ポジティブな性格を持っておりますので、長期的な計画、展望というのは非常にたくましい、野心的なものになりがちになって、それが硬直化を招くおそれがありはしないかと思うので、これは場合によっては改定を必要とする、改定の場合には潔く改定するんだ。われわれはいま三DKに住んでいるけれども、不如意になったら潔く二DKに移るんだということを条件に、そういうことを覚悟しておかないといかぬのじゃないか、そんな感じが私はするんです。  それから第二は、大体世界経済がこのように不安定な環境でございまするので、資源の確保、物自体の確保がこのように怪しくなったし、価格経済が全く狂ってしまったというようなことでございまして、最近、長期計画が非常に立てにくくなったことは御案内のとおりでございますが、そういう中であるからこそ、確かにあなたの言われるように、長期計画を困難なときでも真剣に探求していかなければいかぬとは思いますけれども、それだけに非常にむずかしい作業である。したがって、修正を必要とする場合には潔く修正するんだという用意を持っていかなければいかぬのじゃないかという感じがまず第一にいたします。  第二に、財政と金融との関係でございますが、財政財政、金融は金融という別個の領域、ゲビートで議論をできるなんという古典的な時代は終わったと思うのでありまして、現にもう財政と金融は一体となったといいますか、たとえば公債政策にいたしましても、こちらから見たら財政だが、こちらから見たら金融だということになっておると思うのでございまして、一体として、どちらも栄辱ともを分かたなければならぬような、運命をともにしているという感じがするわけでございます。したがって、私ども財政当局とか金融当局とかいうことでなくて、一緒になって今日の危機打開を通じて国民に奉仕せねばいかぬのじゃないかという感じがいたすのでございまして、財政が傲慢になってもいかぬし、金融が消極的になってもいけませんし、両方ちょうど楕円形の二つの中心みたいに、これは両方が緊張してこの役割りをちゃんと果たしておるところに健全な経済があるのではないか。余り両方とも節度を失って、一方が羽目を外してくることは非常に危険なことではないか。財政と金融はなお楕円形の二つの中心のごとしという感じが私にはするわけでございます。二つが緊張したバランスの上においてあるということが非常に健全な姿ではないかという感じがいたします。  それから第三の問題として、財政硬直化の問題でございまするし、これは第一問に関連してお答えいたしましたけれども、安定基金の問題あるいはそれについての法制の問題について諸外国にも先例がないわけではないようでございますが、当面、いま非常に緊張した財政をやっておるときでございますので、安定基金を割愛して置いておくというような余裕はいま全くございません。この危機の間はそういう物理的余裕がありませんけれども、われわれは、この間に、いま横山さんが提起されたような問題を勉強しておきまして、それで財政がノーマルなところに返ることができるということになりますと、やはりあなたの構想する安定基金の問題、長期的な、年度をまたぎまして財政の緩急を調節するようなメカニズムを考えていくという勉強はこれから怠ってはならないのではないかという感じがいたします。  その他いろいろ御質問がございましたけれども、大体の感想を大まかにお答えいたしますと、以上のような感じがいたします。
  156. 横山利秋

    ○横山委員 計画の弾力性という点については同感なんでございます。それは、大臣のおっしゃるように、計画は変えてはならぬというのがいまの日本の常識的なことですから、その発想を変えなければ、私がいま言い、あなたがお答えになったようなことはうまくいかぬ、その点については全く同意見なんです。いかにして弾力性ある計画国会のみんなの常識になっていくか。そして変えてもそう怒りはせぬ。怒りはせぬということは、あなたの方が変えられるという条件を前提要件としてきちんと出す。そういうシステムを提示して、その土俵で議論をしてくださいということになれば、私はできぬことはないと思うのです。いままでの計画というものを、確かにあなたのおっしゃるような発想、計画の認識というものを変えないと、この財政計画法というものは、私の言うところはうまくいかないだろう。しかし同時に、租税特別措置法その他硬直性をもたらしそうな諸問題について、常時見直しをするシステムも同時に加味しなければいかぬと思うのです。  話が発展をいたしますと、たくさん私の意見があるわけでありますが、この程度にいたしまして、次の問題に移ります。  多国籍企業の問題でありますが、六月に閣僚理事会で、多国籍企業の行動指針となる多国籍企業ガイドライン宣言を採択するそうだという話であります。そのガイドラインの事務局案の要旨を見ますと、閣僚としての大蔵大臣、それから大蔵大臣自身としての所管、そういうものがかなりここに含まれておるように思います。  庶民的にわかりやすいものは、多国籍企業は、公務員への贈り物あるいは利益供与、政党その他政治団体への献金、その国の政治活動への参加、そういう問題について制肘をいたしております。これは別途な問題ではございますが、今日のロッキード問題から考えますと、最もこれがそのものずばりということができるでありましょう。  ところで、大蔵大臣の所管に関するものをこの中から列挙してみますと、多国籍企業はその国の経済政策を十分に知っていなければならぬ、国は徹底をさせてやらなければいかぬ。それから受け入れ国の法規に従って、その国のことは十分守らなければいかぬ。経済支配をしてはいかぬ。経済支配の中でいま直面いたします問題としては、生命保険会社、公認会計士、損害保険、銀行等々、大蔵大臣の所管に関する問題が少なからずあると思うのであります。それから課税の問題があります。受け入れ国が公正な課税を行うために必要な情報を提供する等の問題があります。最後に、諸国間協定を多国籍企業に関してするべきだというガイドラインにもなっています。  この多国籍企業は、一面ロッキードのようなわが国に入ってきます外国の問題でもあると同時に、わが国が外国へ行って商売をする問題でもまたあるわけでありますが、大蔵省として、また大蔵大臣として、この多国籍企業のガイドラインに関連をしてどういう準備、研究をしていますか。
  157. 藤岡眞佐夫

    ○藤岡政府委員 いま先生指摘のように、多国籍企業につきましてOECDがいろいろと行動指針の策定をやってまいったわけでございますが、中身は国際金融に限らず広い分野に及んでおるわけでございます。  一般的に申し上げますと、多国籍企業が、いろいろ問題もございますが、また同時に、国際経済あるいはその入った国における経済の発展に貢献してきたわけでございます。私どもといたしましては、このOECDで策定作業をしております行動指針にできるだけ良識を反映させたいと思っているわけでございます。  多国籍企業も、ある国に入ってまいります場合には、その国の習慣なり法制に服さなければならないのは当然でございますし、また日本の企業が海外に出ます場合には、現地とよく調和を保ってやっていくということが肝心ではないかと思います。  国際金融の面にのみ限って申しますと、たとえば先般の通貨危機の際に、外国におきましては多国籍企業が為替投機をやった。したがって、これを取り締まらなければいかぬというような問題もあったわけでございますが、日本の場合には幸いその辺の制度も完備しておりまして、特に手を打たないといけないということはなかったわけでございます。その他のことにつきましても、今回のOECDでやっております作業につきまして、特に国際金融の面でいますぐどうしなくちゃいけないということはないように思っております。
  158. 横山利秋

    ○横山委員 先般大蔵委員会大蔵大臣に、法務省がもらってきた資料を検察庁は警察に渡したけれども、なぜ大蔵省、国税庁はおれの方にもらえぬのか、なぜそれを言わないのかということを言いましたところ、国税庁長官は刑事事件に関するものでなければいただきません、こういうような答弁でございましたね。私はそれはきわめて説得力のない答弁だと思います。少なくとも政府高官なりしかるべき人々が、児玉譽士夫を含んで受け入れたであろう金は脱税であることは間違いないことでありましょう。もちろんそのもらった金を全部政治献金に使ったという言い方があるかもしれませんが、それもまた常識的に判断ができないことであります。常識的に考えて、それは大蔵大臣として、おれの方にも回してもらわなければ困るぞということがどうして一体出ないのか。私はあれからでも、時間の関係であれでとめましたけれども、どうにも納得ができないのであります。  ことしの税務署の申告時ほど納税者がデリケートな気持ちで、ロッキードを頭に浮かべながら申告をした年はないのでありますが、このガイドラインの中にも、受け入れ国が公正な課税を行うために必要な情報をそれぞれの国が提供するということにもなっておるし、「人工的な価格決定、課税基準の不当な修正などの便宜に訴えてはならない。」ということにもなっているし、きょうは国税庁、私は呼んでないのですよ、これは大臣の政治的判断をもらうべきだと思っているのですが、やはりこの間の答弁と同じですか。
  159. 大平正芳

    大平国務大臣 税務当局といたしましては、税の調査決定に当たりまして、あらゆる資料、直接、間接の資料は国の内外を問わず得られるものはどん欲にこれを求めて、税の調定の材料にしなければならぬことは仰せのとおりでございまして、わが国税当局にいたしましても、そのことについては遺憾なくやっておることと存じます。したがいまして、今度のロッキード関係の資料にいたしましても、この徴税上必要な資料をわざわざ遠慮してもらわないというようなことはないと私は確信をいたしておるわけでございまして、この税の調定に必要なものは取りこぼしのないようにちゃんといたさすつもりでございます。
  160. 横山利秋

    ○横山委員 最後の言葉がちょっと濁っているのですが、私の聞いているのは、アメリカからもらってきた資料を検察庁は警察へ渡した。国税庁は何でもらわぬかといって聞いているのですよ。あなた、取りこぼしのないようにもらっておるはずだと言ったって、もらっておらぬことになっておるがね。もらったんですか、とにかく資料を。私はそれをもらえと言っているのですよ。どうせ政府高官がポケットに入れた資料だろう。それに関係のあるところだけは国税庁ももらって、課税の資料にしなさいよと言っているんだけれども、この間から暗やみで牛をつつくようなことで、ちっともわかりやしない。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 わが東京国税局と東京の地検とは緊密に協力いたしまして、一つの部屋でこの事件の解明と共同した捜査をやっておるわけでございまして、横山さん御心配いただくまでもなく、そういった点、間然するところなく打ち合わせをいたしましてやっておりますので、取りこぼしのないようにいたしておりますので御心配をいただかないようにお願いしたいと思います。
  162. 横山利秋

    ○横山委員 御心配をいただかないようにと言ったって、あなた、私の聞いていることをちゃんと知って答えているのですか。私の言うのは、アメリカから持ってきた紙を見せてもらったか、そして紙を見せてもらうように請求しなさいと言っているのです。それを端的に見せてもらった、まだ見せてもらわないと、はっきり答えてください。見せてもらってなければ見せてもらいたいと要求すると言ってください。
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 私は国税当局を全幅的に信頼をしておるわけでございますし、同時に、検察当局と国税当局との協力関係に全幅の信頼を置いておるわけでございまして、彼らがこの事件の真相の解明と徴税の徹底につきましては遺憾なくやっておることに対して全幅の信頼を置いておりますので、この一つ一つの資料につきまして、これはいついつ受けてどのように活用しておるかというようなことまで私は一々報告を求めておりませんけれども、彼らの協力体制につきまして全幅の信頼を置いておりますので、その点は御心配をいただかないようにということをお答え申し上げておるところでございます。
  164. 横山利秋

    ○横山委員 大臣お答えがない、私の言葉に素直にお答えにならないということを、同僚諸君とともに確認して次に移ります。お答えなかったのですよ、いまの私の質問に。  次に、多国籍企業に関連して一番最初にこのロッキード問題が出ましたのがアーサー・ヤングでした。監査法人のアーサー・ヤング、たしかそうでしたね。あのアーサー・ヤングが間違って資料をアメリカの国会に送ったのがこのロッキード事件の端緒である、こういうふうに言われております。その間違ってというところが何だかややこしいのでありますが、とにかくロッキード事件の端緒はそういうところにあったらしい。その外国の公認会計士、監査法人、いまプライスウォーターハウス、ピートマーウィク・ミッチェル、アーサー・アンダーセン、デロイト・ハスキンズ、アーサー・ヤング、クーパーズ・アンド・ライブランド、トーシュ・ロス、アーンス・アンド・アーンスト、マクリン・トック等々の外国の会計事務所が日本におるわけです。そして、先年来監査法人の認可をしてくれ、日本で商売できるようにしてくれ、こういうことを大蔵省に請求をしているわけです。  私は、商法の一部改正に関する法律について附帯決議を法務委員会でつけまして、「監査法人の育成・強化を図る反面、個人たる公認会計士の業務分野についても行政上適正な措置をすることとし、もって活動分野の調整をはかるものとすること。」こういう附帯決議が国会でついたわけでございます。このことはどういうことかといいますと、商法の改正で百三十八社の新しい企業が公認会計士の監査を受けることになったわけでありますが、しかし、全国で約五千人ぐらいおる公認会計士でございますから、なるべく公認会計士の資格を取っているのだからみんなにやらせるようにしろ、簡単に言えばそういう院議になったわけでございます。  ところが、その国会の院議になったにかかわらず、伝え聞くところによると、大蔵省は、大きいことはいいことよ、大きい監査法人の方がいいですよ、銀行さん個人じゃだめですよという指導をしたと伝えられる。それで私があるとき怒ったら、それはやめました、こう言う。やめたはいいけれども、この院議はどうなった、こう言いましたら、私のところへ報告に来たのがこう言うわけであります。個人のみで契約をしたのが二十二、それから法人と個人の共同監査が八、ほぼ共同が六、協会が進めているものが六で合計二十、法人のみが六十一、残が二十二、この残は多分法人と個人と共同とに分けられるでありましょう。したがって個人の公認会計士が六十二、約半分は個人がこれを監査することになりますから、先生の言う院議、私でなくて、院議に合っていると思います。こういう話でございます。念のため調べてみたらとんでもない大うそをつき、何といううそを私につくんだろうと思った。私の調査によれば、大きい十の監査法人で六十三社、資本金で一兆二百九十三億、その他の監査法人で十六社、三百三十六億、それから、十社と地元の個人がやっているのが十二企業、三百六十億、それから、十社以外の法人と個人でやっているものが二で四十七億、個人がわずか二十一、六百六十五億、合計、対象百三十八社で一兆二千六百三十二億。考えてみますと、私のところへ報告に来られたのは全くインチキだ。それで、実際私が調べたところによりますと、法人が関与するのが九十三社、七二・六六%、個人が関与するのが三十五社、二七・三四%、資本金でいくならば、個人の関与率が一〇・八、法人が八九・一九。これじゃ院議が少しも守られていないじゃないか。数字さえ挙げれば国会議員はだませると思っているんだろうか、言語道断です。即刻この院議にふさわしい交通整理をしてもらいたい。
  165. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 先生のお読みになりました数字でございますが、これは私ども、公認会計士協会から直接事情を聞いたのでございます。したがいまして、この数字に間違いがあれば、もう一回先生の方の数字をいただいたところでチェックしてみたいと思いますが、私の方は、公認会計士協会を通じていろいろな資料をいただくことになっておるものですから、その辺の食い違いにつきましてはもう少しきわめてみたいと思います。  全体といたしまして、確かに先生の御心配のように、個人の公認会計士がなかなか仕事をとりにくいという点を考慮して院議もそういうふうになっておると思いますので、私どもも極力これから院議に沿うような方向の指導はやってみたいと考えております。
  166. 横山利秋

    ○横山委員 だれに聞いたか。それは事実が物語るのですから、あなたは公認会計士協会から聞いたと言うが、聞いたら、言った人がだれだか知らぬけれども、言われたらそのままうのみにして、念査もせずに直ちに私のところへ走ってくるんですか、そういう仕事をやっているんですか。少しは念査をして、役所として確認をして仕事をしたらどうですか。しかも、もうこの問題は大詰めです。あなたがいま答弁されたようなことを本当にやるんだったら、今晩からやってください。  ついでにこの際苦情を一つ言っておきましょう。私は、外国の公認会計士を認可してはいかぬと言っているのです。多国籍企業の監査法人を日本に上陸させたら、いまですら五千人の公認会計士のうちで監査を実際している人は半分しかないでしょう。しかもシドニーに、ヨーロッパに、アメリカに、ロンドンに触手を持っておる公認会計士ですから、便利ですから、みんなそちらへ行ってしまいますよ。せっかく商法を改正して、低成長時代に公認会計士の近代的な手腕を発揮させようとあわせて考えたことが、全部外国にとられてしまうから、外国の公認会計士を日本で認可をするということはやめなさい、私はこれを強く言っているのです。ただ、それだけでは横山君、理屈にならぬじゃないかと言う人がある。  それで私は次の提案をします。  それは、国内における監査はやはり国内の監査法人なり公認会計士にやらせるようにしなさい。外国の法人と協定を結ばせなさい。協定を結ぶ、そして業務提携をする。ただそれが、いまも業務提携はやっておるらしいのですけれども、向こうと判こを押したから、署名をしたから何でもいいわ、向こうのやったやつをそのままうのみにする、いまのあなたみたいにね、そんなことではいけません。協定をするなら協定をする条件を行政指導させなさい。日本の公認会計士が向こうのやったことをうのみにしないで、これとこれとは自分で念査しろという協定を結ぶことによって、この外国の公認会計士問題をひとつ処理をしてもらいたい。  それから、まだ二千数百人の税金を担当している公認会計士がおる。これはもったいないことだと思います。その狭い門をくぐって公認会計士になって税務署通いをしているというのは、大変私はもったいないと思う。そういう意味合いで、まだまだ税務署と関係のない、税理士と関係のない、政府が直接やっております監査があるでしょう。民法上の公益法人なんかそうでありましょう。そういうものを、役所で全省を統一的にひとつ公認会計士の監査を受けて、役所が直接前へ出ないように、その監査結果を了承する、そういうやり方をなさったらどうであろうか。  それからまた、共同事務所だとか、共同事務所はいいけれども監査団はいかぬなんてあほなことを言うておられるのだが、そういう点についても、また監査法人の認可のあり方についてももう少し、大きな監査法人ならよりいいというように上を向いて歩かないで、それぞれ公認会計士に所を得せしむるように、監査法人の認可基準も緩めるというようにしたらどうですか。  以上、いろいろ言いましたが、簡潔にそのとおりだとおっしゃればそれで終わります。
  167. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 この問題の大変な権威でいらっしゃいます先生の御提案は、私ども非常に含蓄深く伺っております。大体先生の御趣旨のような線を考慮しながら、これから行政の面でもやっていきたいと思っておりますが、なかなかむずかしい問題もございますので、その辺はまたよく御意見を承りながらやっていきたいと思います。
  168. 横山利秋

    ○横山委員 時間になりましたから、最後に中小企業金融について一言伺いたいと思います。  この間うちからここへ座りまして、同僚諸君の質問を聞いております。そして公債が市中金融を圧迫しないか、いやしません、ああそうかというやりとりを聞いておるのですけれども、いまこの金融が緩んでおるときだからああいう答弁ができると私は思うのですが、きょうの新聞でもわかりますように、もう完全に少し景気が立ち直ってきたという報道がされておるわけであります。しかし、少し景気がよくなってくると金融が引き締まってくるであろう。そうなりますと、この国債発行による影響というものは中小企業金融に必ず出てくるであろう、これが一つの見方であります。  それからもう一つの見方は、これはお互いに共通点があるわけですが、マクロでは景気は回復しているようだけれども、ミクロではまだまだ大変なことが山積しておるという問題であります。そのミクロの世界で中小企業金融で、たとえば担保を出してあるけれども、あの担保価値が下がったからあの担保ではだめだという意見が、金融界から中小企業の中へ出てまいります。それから、売れ行き不振で返済の猶予というものがどうしてもいま問題の焦点になっています。  中小企業金融でさらにあるとするならば、ここでの論争の中でわかるのですけれども、日銀だとか都市銀行だとかあるいは市中銀行は低金利時代に即応ができますけれども、中小企業金融機関としては、日銀の安い金が来るわけではありません、コストは高い、だから、金利を下げろ下げろと言ったってそう下げられないということがあるわけです。都市銀行、市中銀行と中小企業金融というものをコストについて同じ競争条件でやらせなければ、中小企業金利を下げろ下げろと言ったってこちらより下がるはずがない、本質的に下がるはずがない。しかも市中銀行のところの方は日銀の安い金が来るわけですから、こちらの方は来ないのですから、こちらの方はまたコストが高いのですから、だから本質的にこれを平等の条件に置かせて中小企業の金利を下げるようにしなければいかぬではないか。大企業が安く借りて中小企業が高い金利で借りているということはだれだって知っていますよ。そこのところをどうしたらいいかということを大臣、ひとつこの際いい知恵があったら聞かしてくれませんか。これは安い金利が中小企業金融機関の方に流れるようにするか、税金をまけるか、両方やるか、どっちかしかない。この中小企業が、いま言いましたように返済猶予の問題でのたうち回っている、それから担保評価が下落してのたうち回っている、そして先ほど言ったような手形割引業者で悪質な者にひっかかってのたうち回っている場合もある、そういうことを考えますと、低金利時代と言われるんだけれども、中小企業の金利について一工夫この際大蔵大臣なさるべきではないか、どうなんですか。
  169. 田辺博通

    ○田辺政府委員 中小企業に対する金利が一般の企業よりも低くなければならない、こういう意味でございましたら私はちょっとそれはなかなかむずかしい問題なんだとお答えせざるを得ないと思いますが、ただ、金利というものは、御承知のとおりやはり貸し金の返済の能力、つまりはその融資先の信用力、これは融資全体の難易といいますか、難易度もそういう相手企業の収益性なり返済の能力、信用度、こういうものによっておのずから決まってくると思うのでございます。先生の御指摘になりますように、またわれわれが従来から頭を痛めておりますように、とかく金融が逼迫ぎみになってまいりますとどうしてもそこでしわ寄せが中小企業者の方に起こりやすい、これは否めないと思います。したがいまして、それはまず第一にはやはり民間の純粋の金融機能ではできない分野があると思いますので、それを適宜補完する政策金融というような分野でもってこれを補う、これが大きな筋であろうと思います。信用力の少ない者に対しては信用を補完する、あるいはまた他の一般の民間金融機関では賄えないような低利といいますか、比較的低利の資金を政府関係金融機関から流す、こういう方策をとっておるわけでございます。  それからイコールフッティングの競争をやらないと中小金融機関自体について問題が起こる。これも一つの大きな問題でございまして、現在、金融制度調査会におきまして審議がなされておりますけれども、その置かれました民間金融機関の中での業務分野の問題というものを競争原理の中で考慮しなければならないということも、この前中間的な取りまとめの中に言われておりますけれども、この点はちょっと、ミクロの点で考えますると大都市銀行は資金コストが安い、こういうようなお話でございますけれども、安い日銀の借り入れが部分的にございますけれども、むしろそれに数倍するような外部負債、つまりコールの取り入れ等による高いコストの金も使っているわけでございます。それから個別の中小企業に対しまするところの貸し出しを行うにつきましては、やはり大銀行でありましても、それだけのコスト、審査なりまたそういう個別の一口当たりの融資金額が少ないという意味では、そのコストはイコールフッティングだ、こういうぐあいに考えます。  それから、とにかくいままでは大銀行の方は中小企業の金融の割合というものが三割くらい、あるいはいまは三割を大分超えておりますけれども、そういう状態でございますから、新しい分野に参入していくといいますか進入していくといいますか、そういうことも考えてもいいと思いますけれども、中小金融機関の方では従来から顧客を十分に把握しておるわけでございますから、そこではやはりある種の強味もある。そういう意味合いで適度な競争が行われることによってまた中小金融機関の融資についても勉強しなければいかぬという励みが出てくるわけでございまして、その辺の、一概には申せませんけれども、一定の業務分野があるということを前提にして適正な競争が行われるように配意してまいるのが、やはり民間金融機関の経営の問題としては、行政の問題としては基本であろうと思います。  担保の価格が実際に下落しているという場合に、これは金融の論理といいますか、金融機関の健全性あるいは安全性ということを考えます場合には当然もう少し担保を取らなければならない、こういうぐあいに考えるのは私は自然であろうと思います。しかし現在のような経済、景気の長期の停滞というものを経過しておりますので、その場合にみすみすそういう措置をとるならば相手企業がまいってしまう。それは結局自分の貸し出し全体がまいってしまう、こういうことでございますので、銀行局といたしましても、現在の不況という状態における相手先企業の苦しさ、これに応じてやはり銀行側も歯を食いしばって、なるべくそれがまた将来収益力を増すように金融の道をつけるようにということを常に申しているわけでございまして、この点は金融機関も十分、自分の将来の長い目で見た資産の健全性、収益性という意味からも、むやみにそういうような措置を強行するということはできるだけ避けたい、こういう気持ちでおると私はとっております。
  170. 横山利秋

    ○横山委員 中小企業金融については言うべきことが非常に多いのでありますけれども、時間が参りましたので、私の質問を終わることにいたします。
  171. 田中六助

    田中委員長 次回は、明十二日水曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時十八分散会