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竹本委員 今日の大蔵当局はいろいろ御苦心があると思いますけれ
ども、税の自然増収がたくさんあって困りはしなかった、非常に幸いしたときと、最近のように自然減収で赤字公債というようなことで、税の収入がきわめて不安定である、
見通しがなかなか困難である、こういう事態につきまして、私は改めて十分論議したいと思うのですが、最近、
大蔵省がやや長期の
見通しとして
財政収支試算というものを示された。これは私、非常に高く評価しているのでありまして、後でまた事務当局にもいろいろと伺いたいと思いますが、そういう
財政の収支の試算をすることも必要である。同時に、
財政の収支の試算が計画的に確実に見通されるためには、
経済のいわゆる文字どおりの安定化が必要である、かように考えますし、私
どもはそういう意味で、
経済安定計画化基本法というものをつくらなければならぬ、こういう立場に立っておるわけであります。
しかしこの二つとも、議論をすれば非常に長い問題になりますので、きょうは時間がありませんから、そういうこととあわせて、要するに、先ほど話が出ておりましたけれ
ども、日本の
経済全体がアブノーマルである、これを本当にノーマルな安定的なものにしなければならぬ、こういうふうに考える意味において、それとの関連において、私はこれからデノミネーションの問題についてひとつお伺いいたしたいと思います。ポイントを
質問しながら、後でまとめて、時間がありませんから、
大臣に
答弁していただきたいと思います。
まず第一に、デノミネーションはやるべきであるかどうかということになれば、これはだれが考えてもやるべきであるということについては異論はないと思います。と申しますのは、御承知のように、世界に国は多いけれ
ども、ドルに対して三けただ、三百八円がいいか三百円がいいかは別として、三けたであるというようなこと、それからその結果、物価はインフレで非常に上がりまして、一円というようなコインは落ちていても拾う人はだれもいないということになっておること、それから、計算の上ではゼロばかりたくさん書かなければならないので、これを簡略化する必要があるということ、さらに、いま発行されている通貨は、一万円札が大体八〇%ぐらいになっておりまして、これだけの高いレベルに達してしまっておるということ、これらをノーマルな
状態に持っていくということのためには、だれが考えてもデノミネーションというものは必要であるし、やるべきであるということは問題ないと思います。問題は、やるべき条件が整いつつあるか整っていないかというところに判断の重要な問題があると思うのです。
そこで、私はまず第一にお伺いしたいことは、やるべきであるかないかということではなくて、これはやるべきだと思いますから、そこで、いまの
政府はこれをやるという取り組みを、具体的に検討に入っておられるのか入っていないのか、実施の準備を進めておるのかいないのかという点が
質問の第一点であります。と申しますのは、
証券界においては、まあ業者の操作の関係もあるでしょうが、大しておもしろい材料のないときにはすぐデノミ株が上がるというようなこともありまして、しょっちゅう
証券界が不安、動揺の種になっておるということが
一つ。それから、去年の暮れにも、十月ごろですか、五年内にデノミはやるんだということがある新聞に出て一騒ぎをしたこともある。これもそのまま消えてしまった。さらにさかのぼれば、四十六年の
佐藤さんのときに、年末に新円を出すんだというようなうわさが出たこともある。要するに、ちまたにはデノミはやるんだとか近づいたとかしょっちゅうデマが飛んでおりますから、そういうデマを一掃する意味においてまず第一に伺いたいことは、いま申しましたように、
政府はこのことに具体的に取り組みをしておるのかいないのかという点が第一点であります。
それから第二点は、私はデノミをやるのには大体、簡単に申しまして四つぐらい条件があると思うのですね。それに対する
大臣のお考えを伺いたいのですが、第一の条件は物価の安定ということである。この物価という場合には、細かく申しますと、一ドル何円ということでございますから、世界
経済全体がやはり安定的な方向に切りかわっていなければならぬ。第二に、その中でドルが安定しなければならぬ。さらにあわせて、円が安定しなければならぬ。その結果として円レートというものが安定しなければならぬ。それらを含めての物価の安定ということが基本的な前提条件になると思うがどうか、これが
一つであります。
それから第二の条件というのは、強力なる政治力というものが必要である。フランスがやって成功したのが例になっておりますけれ
ども、これは当時の
経過をいろいろ調べてみると、ドゴールにして初めてできたんだということでありまして、裏から言えば三木内閣ではなかなかできぬではないかということになるのですが、強い政治力というものが前提になる。その強い政治力がなければ、関係法案を通すとか、あるいは特に大事なのは、便乗値上げを抑える、これが大問題でありますが、場合によっては牢屋に五年もほうり込むというぐらいの気魄なり政治力というものがなければならぬが、そういうことも含め、さらにもう
一つ大事な点は、これは先ほどの租税の収入の安定化の問題と関連しますけれ
ども、やはり新しい
経済新秩序の創造といったようなビジョンを描いてそれに取り組む政治力というものでなければならぬと思うのですね。いま新価格体系ということが言葉としてはありますけれ
ども、調べてみれば実体は値上げということだけであって、何も新体系でも何でもない。そして、少し独占的な力を持っているものが早く値を上げて勝ちだというような程度のものであって、新物価体系というものもさっぱり私には意味がわからないのだけれ
ども、その物価体系を含めての新
経済秩序の創造というビジョンとそれに対する力強いバイタリティーのある取り組みというものがなければならぬが、それらができるのは、やはりドゴール的な強い政治力が要ると思うが、その点は第二の条件として必要なのではないか。どの内閣でも時期が来たらやれるというように簡単に考えてはいけないということであります。
それから第三の条件というのは、これはフランスもそうですが、要するに円の切り下げとあわせてやるのかやらないのか。ただ百分の一もしくは千分の一にすればいいという問題ではなかろうと思うのだが、その切り下げをあわせてやるか。同時にあわせて、資産の再評価というものをやるということを考えるのか考えないのか。これは大変な問題であります。
証券界がデノミだ、デノミ株を買えとかいうことをいろいろ読んでみると、デノミをやるときには必ず資産の再評価がある。だからいまのうちに十年前に資本投下をたくさんやったような会社を選んで買わなければいかぬ、銘柄を選べというようなことで盛んにPRをいたしておりますが、これはデノミはすなわち同時に資産の再評価をやるということが前提になっておる。そういう前提を含めて考えるべきかあるいは円の切り下げを含めて考えるべきか。それらを含めて考えるということになれば、これは大変な問題になりますから、それが第三の条件として、単純にデノミだけやるのかあるいは円の切り下げや資産再評価も含めてやるということにするのか。
それから第四番目の条件は、これは簡単にできない、先ほ
ども申しました強い政治力が要りますが、それでもなお理想的に言えば二年ぐらいの準備期間が要ると思うがどうかということであります。したがって強い政権ができて、そして二年ぐらいの将来も
見通し得る体制の中で初めてやるべきことであるというふうに思うがどうか。その四つの条件についてそれぞれどういうふうに考えておられるか。
最後にもう
一つ伺いたいのは、これはいま申しましたように二年ぐらいの準備が要るということと、それから単純にデノミをやる場合でも非常に
経済界に与える影響が大きいので、その場合に特定の
政府あるいは特定の
大臣が抜き打ちにやってこれをやったというようないわゆる功績表の中に書き込むような問題ではない、
経済全体の方向づけ、私の言う新しい
経済新秩序の創造の問題でありますから、国民とともに、そして与野党ともに取り組むべき重大問題である、抜き打ち的にやるべき問題ではないし、やってみても大した効果がある問題でもない。そういう意味で、これは水田大蔵
大臣のときであったと思うが、当時王子の工場で新円を刷っているとかつくっているとかというようなことで、百円玉のことでしょうが非常にうわさが飛んだときに、こういう問題は一体
大蔵省として準備をしているのかしていないのか、新しい金を刷っているかつくっているかということを
理事会で私が細かく追及したところが、そんな準備は一切いたしません、しておりませんという話がありました。さらに、それだけではなくて当時の文書課長に確かめても、官房長に確かめてもやってはいないということであるし、あわせて将来これをやるときには少なくとも大蔵の
理事会あたりには、細かいことは別としまして、一応相談をかけて、要するに国民的規模において与野党協力してそういう問題には取り組むべきであると思うがどうかと申しましたところが、ぜひそうしたいというような、これは口頭でございましたけれ
どもお話があった。
大平大蔵大臣にはそういうお考えがあるかないか。
以上の点を伺って、それだけで終わります。
答弁だけでよろしい。