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竹本委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま
提案されております
租税特別措置法の一部
改正法律案に次の三点から
反対の
討論をいたします。
第一は、租税民主主義の貫徹に関する問題であります。
イギリスにおいては、代表がなければ租税なしということわざがあるそうでございますけれども、言うまでもありませんが、租
税負担を
国民の了解を得てやるということが議会政治の起こりであります。そういう
意味において予算や税法の
審議というものは民主主義の議会のもとにおいては最重要の課題である、かように考えております。しかるに今度の
国会におきましては、予算は暫定予算、そしてまた
法案については日切れ
法案の名のもとにほとんど
審議を行わないで
討論、採決ということになりまして、まことにこれは遺憾のきわみでありまして、強くその点を指摘しておきたいと思います。
民社党は、ロッキード問題につきましても、すでに御承知のようにロッキード問題はロッキード問題として、そしてまた予算は予算として並行的に
審議すべきものであるという立場をとっております。もちろんロッキード問題を予算
審議の名に隠れてごまかすことは許されませんので、特別
委員会にかける前に
政府が具体的に誠意のある対応を示さなければならぬということが条件になっておりました。この点について
政府の対応が非常に不徹底でありましたために、ついに今日までのような大きな矛盾を生んでしまったわけであります。その点は非常に遺憾でございまして、他の同僚の諸君から御指摘のありましたとおりであります。
しかし、いずれにいたしましても、この税法の
審議という議会あるいは議会人に課せられた最重要の課題が全然
審議抜きの採決あるいは処理ということは異例中の異例でございまして、後でまた
十分審議するというお約束も
委員長からいただいておりますけれども、それにいたしましても今回の事態は余りにも異例である。全くこれは
租税特別措置法の
特別措置であって、特別
審議はないと言わなければならない、非常に残念に思う点であります。
第二は、
租税特別措置の
項目を、非常に数は相当大きく整理をされる、百九十六
項目の中で六十九
項目の整理をする、法人税に関しましては九十八のうち五十九
項目を整理して六〇%以上の問題に取り組んだということでございますけれども、確かにこの点は当局の御努力を一応評価しなければならぬと思っております。
しかしながら、同時に考えてみれば、それほど二百に及ぶこうした
特別措置の
項目があるということ自体に問題があろうと思うのであります。一つは
項目が多過ぎる、きめが細か過ぎるという点であります。一つは
特別措置を認めたものは
廃止すべき段階が来ても
既得権化してそれが残されておるということであります。もう一つは、先ほど来御指摘のありますように、この
特別措置が大資本その他富裕階級に非常に有利になっておって、それがために
社会的な不公正というものはむしろ拡大されておるという点でございまして、この点は改めて
特別措置あるいは
税制全体を論議する場合においては十分検討を加えなければならぬと思っております。
第三番目は、産業
政策、
経済政策との関連において一体租税の任務というものはどんなものであるかということについての反省が必要ではないかと思うのであります。
今日、
景気が正月以来、一般に言われているように少し上向きになってまいりまして、底離れがやや認められるに至ったことは御同慶でありますが、しかし、今度の
自動車課税の問題でございますけれども、先ほどの大臣の
説明を聞いておると
自動車に係る
税負担の現状にかんがみと言われるので、軽くするというのかと思ったら重くするということでありまして、これははなはだ遺憾であります。
と申しますのは、第一は先ほど来御指摘のありましたような大衆
課税、大衆
負担ということであります。
自動車の税金が多過ぎて、大体五年たてば新しく税金だけで一台買えるというようなこともよく指摘されておりますし、特に今日は通勤の場合にマイカーは一つの必需品になっておりまして、
課税最低限以下の
所得の人でさえもマイカーを持っておる。それには今度は税金が
引き上げられる。こういうような大衆
課税の矛盾というものが大きくなる点を非常に憂慮するものであります。
この大衆
課税の問題のほかに、もう一つ重要な点は産業
経済政策の立場からであります。と申しますのは、この
景気の回復を何が支えておるかと言えば、いわゆる個人
消費もまだ非常に微力でございまして、一番大きな力は御承知のように輸出であります。輸出は何か。アメリカに対する輸出がいまは
中心になっておるでしょうが、その輸出のまた
中心は何かと言えば、大体御承知のように鉄鋼の百億ドルと
自動車の輸出六十億ドルが
中心の担い手であります。アメリカの
景気、アメリカの
景気といいますけれども、アメリカにおきましても今回は、従来は大体個人の
消費とそれから
住宅投資ということで
景気を盛り上げておるのでございますけれども、今日の状況ではアメリカも
住宅投資は全然進んでおりません。年率二百三十万戸ぐらいのものがいまは百二十二万戸ぐらいで、大体半分になっておる。そういうことで、これは
住宅投資ということでないものだから、主として個人
消費に期待をしなければならぬということになりますが、その個人
消費の面でアメリカの輸入の実態を少し考えてみなければならぬのではないか。
と申しますのは、日本の
経済政策あるいは財政
政策、租税
政策には基本的な重点戦略というものが余りないのではないかということを心配するから指摘するわけでございますが、アメリカは輸入がことしは大体一二%ぐらいふえるであろうと言われておる。ところが日本のアメリカに対する輸出はことしは大体一〇%であろうというのが常識であります。いま
政府は幾らに見ておられるかまた改めて論議をしますけれども、大体一〇%である。アメリカが一二%輸入をふやすのに、日本の輸出が一〇%しか伸びないというのはどういうわけだ。これは御承知のように繊維産業その他の部門において東南アジアの進出が非常に厳しくて、たとえば衣類で見ますと数年の間に五九%まで東南アジアのシェアがふえてまいりまして、ラジオにおきましてもこの間までは三四%のものが最近は四三%になっておる。テレビは、この間まで一七%のシェアしか持つことのできなかった香港、台湾あるいは韓国、そういうところがいま五二%占めておる。すなわち、もう半分あるいは半分以上というものをそういう産業部門において、言葉をかえて言えば従来日本が強みとしておったチープレーバーを
中心とする部面においては、みんなこうした香港や台湾や韓国に追い上げられておる、日本のシェアがぐっと減っているのです。だから日本の輸出が、一般に一二%ふえるはずなのに一〇%しかふえない、こういうことになっておりますので、日本の将来の世界市場に臨む
経済戦略ということから考えれば、日本はこれから何を
中心に置いて、どこに重点を置いて世界市場に乗り出していくかということについての基本戦略がなければならぬ。それは私が先ほど申しました鉄鋼と
自動車が
中心である。その
自動車に今日税金をさらにふやして、一体
自動車産業にいかなる
役割りを持たせようとするのか、その点が非常に疑問でございまして、私は、ただ税は取ればよろしいというのは大蔵当局の狭い考え方であって、税をかける場合にも常に世界市場を見渡しての大きな基本戦略、
経済政策と産業
政策が貫かれていなければならぬと思いますけれども、そういう点においてわが国の
税制には遺憾な点が非常に多い。この点も指摘してまいりたいと思います。
以上、三点の
理由によりまして、遺憾ながら
特別措置法の
改正案には
反対である。
討論を終わります。(拍手)