○福田(赳)国務
大臣 まず、五十年度が改定見通し二・六%、それを実績が三・一%というふうになった、その上回りとなった事情はどうかというお尋ねでありますが、これは
経済需要諸項目全体として最近の伸びがいいわけです。ことに一−三の期が非常によろしい。その中でも特に輸出が一−三には激増しておる。ですから、一−三が非常に高かったということで全体として三・一というような高さにおさまった、こういうことでございます。
そこで、これからの景気は一体どうだ、こういうことになりますが、昨年は何といってもこれは不況に明けて不況に暮れるというような
状態だったと思う。それは国全体の
経済とすると、ただいま申し上げましたように五十年度は三・一%の上昇である、そういう上がりカーブをずっと続けたわけです。にもかかわらず、
一つ一つの
企業から見ますと不況感、不況感、不況をかこっておる、こういう
状態です。なぜかと申しますと、
石油ショックによる衝撃がいかにも大きかった、そして昨年の春ごろの水準では
企業操業度が七〇%を割り込む、こういうような
状態だったわけです。そういう異常の
状態であれば、何といってもこれは過剰労働力が出てくる、過剰
設備が出てくる、そのための賃金負担、また
設備投資に対する金利費の負担、そういうことで
企業経理が悪くなるのはあたりまえ。そこで、全体の
経済としては上昇過程であるにかかわらず、ミクロ、つまり
一つ一つの
企業とすると、不況だ不況だという
状態で明け暮れしたわけなのであります。
ところが、この一−三になりますと、ただいま申し上げたように、
経済需要諸項目が非常な活発な動きを始める。それから引き続いてその勢いは五十一年度に及んでおる。そこへ五十一年度の予算が施行される。これは景気を刺激するという性格を持った予算です。それが施行になる。そういうようなことで五十一年度を展望いたしますと、景気活動はマクロとして見るときにはこれは非常にいい
状態になってくる。ミクロとして見ると、各
企業の
状態はどうかと言いますと、五十年の一−三がよかった。そういうようなことで、三月期の決算が昨年の九月期に比べますと収益
状態において非常な改善です。収益が二・七倍になる、こういうような
状態。この
状態でいきますと、日本銀行の
見解では、九月期の決算は、大体平均的
企業においては黒字を出し得る
状態になってくるのではないか、こういうふうに言っております。
いずれにいたしましても、
企業操業度が今年度中にはかなり改善されまして、いま八〇%をちょっと超えるという水準まで来ておるその操業度は、八五%の辺まではいくのじゃないか、そうなりますと、ミクロで見た
企業の経理
状態も非常に改善をされまして、マクロとミクロとの乖離という問題が解消する、こういう
段階までいくのではあるまいか、そういうふうに見ております。
他方、物価はどうかと言いますと、消費者物価は依然として落ちつきの傾向を進めております。ことにことしの春闘、これが昨年に比べまするとまたかなり低位に決まっておる。そういうような
影響も受けまして、私は、消費者物価安定の基調というものはさらに進んでいくであろう、こういうふうに思いまするし、またそういうふうにしなければならないと
考えております。
それから、卸売物価の方は、これは景気がそういう急速な回復期を迎えたのにつれまして、この一月ごろからちょっと高目の動きを示しておりますが、私は、これは景気回復期の一時的現象である、こういうふうに見ておりまして、これは警戒はいたしておるのです。海外のいろいろな商品の動きなんかもありまするから、それと総合いたしまして卸売物価はどうなるか、卸売価格というものが急騰するというようなことになりますと、これは対外
経済競争に大きな
影響がありまするし、同時に、やがては消費者物価にもはね返ってきますから、この動きに対しましては警戒をしておる。しかし、景気回復期の現象というとらえ方でございまして、心配はいたしておらぬ、こういうたてまえをとっておるわけでございます。
ですから、私は、五十一年度中にはインフレ、それから不況はもう大方決着がつくということになるだろう、こういうふうに見ておりますが、問題は、
加藤さんがおっしゃるように長期的な問題なんです。これから先、インフレのない成長だ、一体こういうことをどういうふうに実現していくかということでございますが、これは相当大きな問題です。ということは、
石油ショック以前の十三カ年はいわゆる高度成長期、それで平均成長率は実質で一一%、先進諸国の二倍半の高さであったわけです。それはわが国としてはこれから先は実現することは不可能であるし、適当でない。資源は有限という意識が世界に満ち満ちてきておる。そのことを
考えなければならぬ。それから公害問題、国内においてはそういう問題も起きてくる。また土地だとか水だとか、そういう国内資源の制約ということを
考えなければならぬ。そうすると、そういう
経済の安全保障というような角度、わが国の社会、
経済を本当に平和に維持していくという角度の配慮が必要だ。そうすると、成長の速度というものはかなり落としていく必要があるだろうと思うのです。
しかし、他方において、わが国の社会においては雇用問題というものをまた
考えなければならぬ。いわゆる完全雇用を実現をするには、やはり高い成長率を必要とする。その国内の視点と、それからわが国の
経済を安全に広い国際社会の中において運営していくという
経済安全保障的な視点、その接点は一体どこかということを見きわめなければならぬだろうと思うのです。
その接点はどこかというと、過去の一一%成長よりかなり低く、六%成長程度のものであるべきだという判断でございまして、それを見詰めまして、
経済がそれから大きく離れるということのないようにあらゆる
努力をいたしまして、安定的な成長を実現してまいりたい、かように
考えております。