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1976-06-11 第77回国会 衆議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年六月十一日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 稻村左近四郎君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 渡部 恒三君 理事 上坂  昇君    理事 佐野  進君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    浦野 幸男君       越智 通雄君    粕谷  茂君       栗原 祐幸君    塩川正十郎君       田中 榮一君    羽田野忠文君       板川 正吾君    加藤 清政君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       竹村 幸雄君    中村 重光君       渡辺 三郎君    野間 友一君       米原  昶君    近江巳記夫君       松尾 信人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  委員外出席者         総理府統計局長 川村 皓章君         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         経済企画庁長官         官房参事官   朴木  正君         経済企画庁長官         官房参事官   佐々木孝男君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         科学技術庁原子         力安全局原子炉         規制課長    松田  泰君         環境庁企画調整         局環境審査室長 大塩 敏樹君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         外務省国際連合         局外務参事官  村上 和夫君         農林省農蚕園芸         局繭糸課長   池田  澄君         農林省食品流通         局食品油脂課長 吉田鉄太郎君         通商産業政務次         官       綿貫 民輔君         通商産業大臣官         房審議官    藤原 一郎君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省通商         政策局次長   吉川 佐吉君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  高橋  宏君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         中小企業庁指導         部長      児玉 清隆君         労働省労働基準         局安全衛生部安         全課長     野原 石松君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 五月二十四日  一、日本国と大韓民国との間の両国に隣接する   大陸棚の南部の共同開発に関する協定の実施   に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に   関する特別措置法案内閣提出、第七十五回   国会閣法第五〇号)  二、中小企業事業転換対策臨時措置法案内閣   提出第四六号)  三、揮発油販売業法案内閣提出第六五号)  四 私的独占禁止及び公正取引確保に関す   る法律の一部を改正する法律案内閣提出第   六九号)  五、中小企業者事業分野確保に関する法律   案(中村重光君外九名提出、第七十二回国会   衆法第三七号)  六、官公需についての中小企業者の受注の確保   に関する法律の一部を改正する法律案神崎   敏雄君外一名提出、第七十五回国会衆法第二   五号)  七、伝統的工芸品産業振興に関する法律の一   部を改正する法律案近江巳記夫君外一名提   出、第七十五回国会衆法第四〇号)  八、伝統的工芸品産業振興に関する法律の一   部を改正する法律案中村重光君外九名提出、   第七十六回国会衆法第一号)  九、私的独占禁止及び公正取引確保に関す   る法律の一部を改正する法律案多賀谷真稔   君外九名提出、第七十六回国会衆法第二号)  一〇、中小企業者事業分野確保するための   大企業者事業活動規制に関する法律案(   米原昶君外一名提出衆法第二号)  一一、小規模企業共済法の一部を改正する法律   案(板川正吾君外九名提出衆法第八号)  一二、通商産業基本施策に関する件  一三、中小企業に関する件  一四、資源エネルギーに関する件  一五、特許及び工業技術に関する件  一六、経済計画及び総合調整に関する件  一七、私的独占禁止及び公正取引に関する件  一八、鉱業と一般公益との調整等に関する件  の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  3. 佐野進

    佐野(進)委員 きょうは久しぶりの委員会ですから、盛りだくさんに質問事項があるわけですが、大臣が十一時半まで来られないということでありますので、大臣がそれぞれお見えになったとき全般的な質問をするといたしまして、一応具体的な問題について質問をしてみたいと思います。  公正取引委員長おいでになっておられますので、最初に公正取引委員会関係する事項等につき二、三通産当局と関連して質問をいたしてみたいと思います。  御承知のとおり、今日の経済情勢は、景気の回復が着実であるという政府側発表、しかし、マクロ的にそのような方向に進んでおるとは言われながら、ミクロの面においては、倒産件数の相変わらずの増加、あるいはまた、それぞれ個々産業界におけるところの実情等、きわめて厳しいものがあるわけであります。そういう中において、公正取引委員会あるいは通産当局それぞれの立場において御苦労なさっておるわけでありまするが、その中で二つの点について質問をしてみたいと思います。     〔委員長退席武藤(嘉)委員長代理着席〕  一つは、これは通産関係だと思いますが、まだ通産関係の方がお見えになっておりませんので、公正取引委員会委員長質問をしてみたいと思うわけでありまするが、いま通産当局が行っておりまするいわゆる減産指導という問題についてであります。  それぞれ過剰生産状態の中で、結果的にその品物が滞貨される。そのような形の中で、不況が深まる中で企業の採算が維持でき得ない。これらについて政府通産省が一定の条件の中で減産指導を行ってきておるわけでありまするが、それが、一部を除き大部分については七月から廃止する、こういうように方針を決められておるようであります。  それで、公取委員長、こういうような通産当局減産指導というものを公正取引委員会立場から見た場合、どのように判断され、どのように対応してきておられるか、この際、ひとつその見解をお聞きしておきたいと思います。
  4. 澤田悌

    澤田説明員 いろいろな産業官庁がそれぞれ独自の立場から物資需給予測をいたします。そういうこと自体は原則として問題がないのでありますが、法律上特別の定めがあります場合を除きまして、政府が個別に企業減産指導を行うということになりますと、これはカルテルを誘発しやすい、その危険があるという点で、法律に基づかないそういう指導というのは、独禁法上のたてまえから申しますと好ましくないと申さざるを得ないのでございます。  仮にいろいろ緊急な必要上減産指導が行われておるということがありますと、それによってもしカルテルが誘発されておりますれば厳重に対処してまいりたい、それから、そういう緊急事態が改善されたら速やかに減産指導を撤廃していただきたい、かように考えておる次第でございます。
  5. 佐野進

    佐野(進)委員 どうも通産省質問してからあなたの答弁を求めようと思ったので調子がとれないので、これは通産省関係者が来てから改めて質問するといたしまして、特殊鋼合併についてひとつ聞いてみたいと思います。  昨日の新聞紙上において公正取引委員長談話見解がそれぞれ発表されておりまするが、その際、公正取引委員長は、大同製鋼日本特殊鋼特殊製鋼の三社合併について、これが耐熱鋼三二%、合金工具鋼二六%については問題が残るが、それ以外のものについてはこの合併を認めてもいいのではないかと、こういうような見解を表明されておるようでございまするけれども、この新聞記事におけるところの発表が、そのように、公正取引委員長としてわれわれが受けた印象のとおり受け取っていい発言をなされたのかどうか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  6. 澤田悌

    澤田説明員 特殊鋼三社の合併に関しましては、従来ずっといわゆる事前調査を続けてまいったのでございます。それでだんだんと問題点が明瞭になってまいりました。なお具体的にいろいろ申し上げる段階には至っておりませんが、どういう品目にどういう問題があるかという点はほぼ煮詰まってまいる。つきましては、当事者から合併に関する報告提出される前に問題点当事者指摘して、独禁法上どういうそれに対する対応策をとれば問題が解消するかという点を、実は現在当事者指摘をいたしておる段階でございます。  それで、特に問題になりましたのは、新聞にも出ておりまするように、いわゆる耐熱鋼でございます。それからなお、合金工具鋼等につきましても若干の問題がございましたが、そういう具体的な品目につきまして、従来、市場支配とか競争制限とかにつながるようないわゆるシェアの高い場合には、それに応じてそれをどういうふうに工夫をすればよろしいかということを検討して、ひとつ申し出てもらいたい、こういうことを現在申している段階でございまして、新聞記事はややそれを先走って、感じを出したような傾向がございますが、私ども段階としては、その対応策を求めているという段階でございます。
  7. 佐野進

    佐野(進)委員 近ごろ公正取引委員長発言新聞紙上によく載るようになりました。積極的に対応しておられるということについては評価をするのでありまするけれども、しかし、前高橋公正取引委員長当時の発言と比較してよく報道されておるわけでありますが、私どももそういうような認識で報道を読むわけではないのでございまするけれども、何となくやわらいだと言うと表現が適切でないかわかりませんが、高橋委員長時代に比べると後退したのではないか、こういう印象をとかく受けやすいような報道があらわれているわけです。  たとえば、後で問題にいたしますけれども中小企業分野法の問題に関しましても、そのように、ここの場所における高橋委員長発言に比べますると大変後退した発言をなさっておられる。あるいは特殊鋼合併につきましても、公正取引委員長はもうすでに三社の合併を認めておるがごとき報道がなされている。ただ、この耐熱鋼三二%、合金工具鋼二六%というのが二五%ラインを若干超えている、しかし、この二六%というのは、一%でありまするから、これを訂正するというか、操作することはそうむずかしくない、耐熱鋼にいたしましても、かつて八幡、富士の合併の当時、一〇〇%近いシェアを持つ分野につきましても、棒鋼でしたか何でございましたか、私も当時審議した経験を持っておるわけでございまするけれども、それほどの問題でないこのような場合においては、とにかくもう認めてもいいのではないか、こういうようにおっしゃっておられるわけでございまするけれども、その内容特殊鋼業界全体の情勢の中で分析いたしますると、まだまだその内容について十分検討を要すべき事項があるのではないか。  そういうような情勢を私どもが判断するとき、公正取引委員長談話発表されるということになりますると、何か公正取引委員長としては、こういう条件に合致した努力企業側がするならば合併は認めますよというようないわゆる示唆をする、そういう発言に受け取られやすいのでありまするけれども、そういうような点がどうなのか、あなたの真意をその事実関係の中においていま一度ひとつ明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  8. 澤田悌

    澤田説明員 私の独禁政策姿勢に関しまして、高橋委員長と比較して御懸念のようでございましたが、決してそういうつもりはございません。厳正に法規に従って政策を実行してまいりたいと努力をいたしておる次第でございます。  それから、ただいまの特殊鋼三社の合併につきましても、対応策が出ればというような姿勢を打ち出しているわけでは全然ございません。問題点を事務的に指摘いたしまして、いずれはそれに対して当事者から報告が出るわけでございますから、出てからむずかしい問題にならないように、事前対応策がとれるならばそれをとって出してもらいたいという趣旨から、問題点指摘して、それに対する姿勢を見ておるわけでございまして、その結果によってこちらは厳正に対処したい、かように考えておる次第でございます。
  9. 佐野進

    佐野(進)委員 御承知のとおり、いま独禁法の改正問題がわが国経済にとって最も大きい課題一つになっているわけであります。したがって、これが政治的にも、また経済の面におきましても、非常に大きな関心を呼んでおるわけであります。その中で一番重要な問題は、いわゆる構造規制と言われている問題であろうと思うのであります。与野党五党の修正案として今度の政府案を修正して出したのも、そこにポイントがあるわけであります。いま行われようとしておるこの三社の合併問題につきましては、結果的に、いま申し上げておるような点について、それぞれ三二%ないし二六%の指導ラインといいますか、公取がいまお話しになっておられるような二五%を超える問題として当然対象になっていくわけであります。そういう状況の中でいまのようなお話があったということで、私ども大変危惧をいたしておるわけでございまするけれども、この問題については、結果的に三社の合併を認めるといたしますならば、現行独禁法の中におきましても、営業の一部譲渡その他設備の一部譲渡等を含む措置が行い得るということがはっきりしておると思うわけであります。  したがいまして、もし公取がこの問題について早急に決断をし、新聞報道に示されているような方向の中で対応するといたしますならば、当然この設備営業の一部譲渡等措置を伴ってくるのではないか、こういうぐあいに判断されるわけでありまするけれども委員長としてはこの問題についてどうお考えになっているか、この際、明らかにしていただきたいと思います。
  10. 澤田悌

    澤田説明員 先ほど申しましたように、問題点の所在を指摘いたしまして、当事者としてはこれにどういう対応措置考えるかということを聞いておる段階でございまして、それが私ども考え方に対して満足すべきものでなければ、何回でもその工夫を再考してもらうという姿勢で現在臨んでおるわけでございまして、どういう結果に相なりまするか、業界のその対応策を待っておるような次第でございます。
  11. 佐野進

    佐野(進)委員 冒頭に私が質問申し上げましたような委員長姿勢問題からこの問題の論議が発展しているわけでございまするけれども、いまの委員長お答えが、いまの状態の中で一番適切なお答えだと思うのであります。昨日の新聞記事に載っておるような状態は、私はちょっと条件としては進んでおるのではないか、こう考えるわけでございますが、そういう形の中でこの問題をいま少しく掘り下げて見ますると、結局この三社の株式構成その他から、いたしましても、一応新日鉄系統であると思われるわけであります。これはどうであるか、ひとつ御説明を願いたいと思うのでございまするが、この三社がそれぞれ新日鉄系統であるという形の中で合併をするということになりますと、必然的に新日鉄影響が非常に強くなるわけであります。  結果的に、この新日鉄と、合併された特殊鋼三社というものが、その縦の系列といいますか、横の系列といいますか、いろいろな情勢の分析はできるといたしましても、鉄鋼業界におけるところの市場支配力が拡大されていくということ、こういうことだけは間違いないと思うのでございます。それは一つの力が一つの力と合併する形で、二の力でなく、あるいは三の力ないし四の力になる可能性も持っておるわけであります。そういう状況の中でこの問題をとらえますとき、単に二六%あるいは三二%という問題だけでなくして、全体的に特殊鋼業界に占めるこの三社の合併した後における力はきわめて大きいものがあるのではないかと判断されるわけでありますが、この問題をそういう角度からとらえずして、単に現在における現象的な面のみをとらえることについては若干疑問があると思うのでございますけれども、この点、公正取引委員長はどうお考えになるか、お答えをいただたきい。
  12. 澤田悌

    澤田説明員 御指摘のように問題点一つであろうと存じます。しかし、こういう合併問題等に関しまする従来の考え方からいたしますると、そういう株式所有等背景について従来は実質的な競争関係がどうなっておるかということを中心に考えておりまして、それについて特にそれだけを重要であるというふうには取り扱っておらないのでございまして、それぞれが新日鉄株式所有による背景があるにしても、それぞれは競争をしておる、また有力なユーザーとの間において競争関係が複雑に維持されておる、そういう点を特に強く考えて対処してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  13. 佐野進

    佐野(進)委員 この問題についてまだまだ議論したいことはたくさんあるわけですが、時間が大分経過をいたしましたので終わりたいと思いますが、いずれにせよ、大同製鋼百二十五億、日本特殊鋼二十一億、特殊製鋼九億七千万、それぞれに対して二十二億七千万弱の株式所有をしておる新日鉄のこの面におけるところの発言力が非常に強くなるという形の中で、あるいは先ほど来申し上げておる二六%、三二%という状況の中においてそれぞれ大きな内容を含んでおりますので、一昨日の記者発表に示されるような形の中において安易な取り組みだけは厳にお慎みになって、厳正適切なる処置をされんことを要望しておきたいと思います。  それでは、通産省の皆さんがお見えのようでありますので、減産指導の問題について伺いたいと思います。  先ほど質問いたしましたが、通産省が行っておる減産指導については、単に物価対策のみならず産業政策としても大変な問題があると思うのでございまするが、この点について、現在の情勢についてひとつ御報告を願いたいと思います。
  14. 和田敏信

    和田説明員 現在いわゆる減産指導で残っておりますものは、アルミ関係及び段ボールの二品目でございます。その他、最近まで石油関係樹脂等に関してこれを実施いたしておりましたが、最近の機会においてこれを廃止をいたしました。  なぜこのような減産指導実施しておったかという問題でございますが、いわゆる俗称減産指導ということになっておりますが、厳密な意味合いにおきましては、政府主要物資に関しまして需給関係を明らかにいたしまして、個々企業体にこれを示し、個々企業体がそれを一つの目安、参考といたしまして生産実施しているということでございまして、必ずしも減産ということにはならぬのではないかと存じます。  なぜこのような指導を行いますかと申せば、異常事態におきましての措置でございまして、需給関係に関しまして著しい混乱が生じておる、あるいは生じるおそれがあるという場合におきましては、的確な需給見通し政府が出しますことによって当該業界混乱を避けたいというところが、その行いました趣旨でございます。しかし、本来ならば、このようなものは独占禁止法もしくは中小企業関係法律構成要件に従いましてこれを実施するのがたてまえでございますので、あくまでも緊急の措置としてこれを実施してまいったものでございます。  現状におきましては、冒頭申し上げましたように、二品目を除きましてすべての減産指導廃止いたしておりまして、今後ともこのような措置実施に関しましては、細心の注意のもとにこれを実施したいというふうに考えております。
  15. 佐野進

    佐野(進)委員 産業政策局長はさっきおいでにならなかったので、公取委員長の方に質問して、趣旨がちょっとのみ込められないような感じも私はするのですが、一応それはそれとして、いまの答弁答弁として聞いておきたいと思うわけであります。  公正取引委員長、結果的にこの六月一ぱいで二品目を除いてすべて減産指導廃止される、こういうような形になりました後、あなたの方では、結局これは行政によるところのカルテル、それが適切な表現であるかどうかわかりませんけれども、一種の生産制限であることだけは間違いない。お互いに業界における相談をする、それが行政権の介入によって通産省指導となってあらわれてきておるわけですが、これが廃止されたからといって、廃止された後における状態がいわゆるやみカルテル的な状況の中で存続するのではないかという心配があるわけですけれども、これらの点については、あなたとしては単に杞憂だとお考えになりますか。あるいはそのような状態が今後とも続き得るものである、減産指導という形の中における行政措置廃止されたとしても、その後における状態はどう把握されていくことが必要であると判断されますか、この点、ひとつ公正取引委員会としてお答えをいただきたい。
  16. 澤田悌

    澤田説明員 やみカルテル問題一般につきましては、常に私ども十分注意して監視をいたしておるところでございます。特にやむを得ざる行政指導があったというような業界におきまして、そういう減産指導が撤廃された後におきましてどういう形でその影響が残るかというような点については、一般の問題よりも一層注意をしてまいりたい、そうして、それに違反的な事実があれば厳重に対処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  17. 佐野進

    佐野(進)委員 この問題は非常にむずかしい問題でありまするから、短い時間でこれをすべて討議し尽くすというわけにはまいりませんが、ただ、今日の産業政策の中において、この減産指導というものが結果的にはやむを得なかった措置であったとしても、決して好ましいものではなかったと思うわけであります。そして、このような状況の中で今日廃止ということが進められておると思うのでありまするが、なおこの影響がどのような形において残っていくかということについては、通産あるいは公取両面においてそれぞれ重要な課題となっていくと思うのでありますが、通産当局としてはこの状況に対して、廃止後における物価の上昇あるいは価格その他いろいろな面におけるところの問題についてどう対応していかれるかという、基本的な考え方を明らかにしていただきたいと思うのであります。  さらに、公正取引委員会においては今後監視体制について具体的にどのような措置を講じておられるか。たとえば通産当局と連絡をとりながらやるという形か、あるいは独自の形の中にこの問題について厳密に対応していくというお考えなのか、具体的な問題としてひとつお答えをいただきたいと思います。
  18. 和田敏信

    和田説明員 あくまでも緊急措置としてこれを実施いたしたものでございます。したがいまして、すでに廃止をいたしました業種、品目に関しましては緊急性が解除されたということでございます。しかしながら、このような業種あるいは品目に関しまして、減産指導の解除の後におきまして、それらの業界の間におきましていわゆる減産指導が行われたことを契機といたしまして、横の連絡等をいたしまして体質が競争的でなくなるというような事態になることは、最も警戒をすべきところではなかろうかと思います。したがいまして、緊急的な措置であって、解除後はいわゆる競争的な形で業態の運営が行われることをわれわれは心から期待をいたしておるものでございます。  また、二品目に関しましても、緊急性の解除に関しましては最も速やかにこれを行うべく慎重に業界の今後の動きを見詰めてまいり、いやしくもその必要性がなくなった後におきましても、そのような事態が継続することがないよう細心の注意を払ってまいりたい、かように考えるものでございます。
  19. 澤田悌

    澤田説明員 公正取引委員会といたしましても、そういった行政指導のありました業界のその後のあり方につきましては独自の立場で厳重に見てまいりたい。と同時に、必要がありますれば、通商産業省当局と連絡いたしまして意思疎通の上、対応してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  20. 佐野進

    佐野(進)委員 次に、エネルギー問題について若干の質問をしてみたいと思います。  御承知のとおり、先月末にはバリ島においてOPECの総会が開かれまして、当面の価格凍結に関する取り決めがなされておりますし、さらにまた、その後、世界的にエネルギー問題につきましては大きな問題としてそれぞれの地域における課題となっておるのであります。こういうような情勢の中で、エネルギー問題に対するわが国の取り組みというものも、非常に重要な課題としてあらゆる面で取り上げられておるわけでありますけれども、たとえば石油なら石油という一つの問題を取り上げましても、国際的情勢の中におけるわが国のエネルギー問題をどのような位置づけをしていくという見通しであるか、いわゆるいい方向に変わっていくのか、あるいは悪い方向に変わっていくのか、そういうような今日世界的にあらわれつつあるエネルギー問題の中で、エネルギー庁長官としてはわが国のエネルギー問題をどう把握されておるか、原則的な面において答弁をいただいておきたいと思います。
  21. 増田実

    ○増田説明員 最近のエネルギーの国際情勢につきまして、簡単にお答え申し上げます。  ただいま先生からお話がございましたように、先月の二十七、二十八日、インドネシアのバリ島におきましてOPEC総会が開かれたわけでございます。ここでことしの六月以降の石油価格につきまして討議が行われたわけでございますが、御高承のように値上げは行わないという決定が行われたわけでございます。これにつきましては、私どもも、現在世界の景気が回復途上にありますときにさらに石油の値上げが行われますと、世界経済にとっては悪影響を及ぼすというふうに考えておりますし、また現在一番問題となっておりますいわゆる非産油開発途上国につきましての悪影響ということ、世界経済全般にとって石油価格が上がりましたときは悪影響があるのではないかということで憂慮しておったわけでございますが、幸いにして今回は値上げはなかったわけでございます。  ただ、今後の動向ということにつきましては、このOPEC会議が終わりましてから後、OPEC会議に参加いたしました石油大臣が数名日本にも来られまして、OPEC会議の様子その他につきましても私ども直接聞いておりますが、OPECの中の考え方といたしましては、今回は値上げを決定いたさなかったけれども、しかしながら去年の十月から据え置きになっている価格については、他の物資、つまりこれらの産油国が輸入しておる物資が相当値上がりをしておる、そういうことで、これらの値上がりにちょうどつり合うと申しますか、値上がりに伴う値上げをしなければいけないというのが自分たちの基本的な考え方だ、こういうことを申しております。バリ島の会議におきましては、次回は十二月にカタールでOPEC総会が開かれるわけでございますが、しかしながら世界のインフレ状況その他によってはその前に特別総会を開いて、場合によっては石油の値上げをすることもあり得る、これがOPECの方の考え方でございます。  一般的に言いまして、最近の石油事情につきましては、石油危機以後、世界的にむしろ石油が若干供給過剰になっておりまして、OPEC諸国が平均的に言いますと一割ないし二割ぐらいの減産をいたしておるわけでございます。しかしながら、最近の世界の景気回復、特にアメリカにおきます景気の回復、石油の需要量の増大によりまして、相当輸入がふえてきておる。世界的に石油の需要が相当上向きになっております。そういうことから、価格につきましては需給の関係から言いますと値上げへ押し上げるという状況がいろいろ出てきております。  他方、世界のエネルギー事情について言いますと、石油にかわります代替エネルギー、あるいは現在産出しております石油以外の新しい石油開発というものにつきましては、当初私ども考えたよりは非常にテンポがおくれておるということが現実に出てきております。そういうことから申しますと、今後のエネルギー事情につきましては決して楽観できない。また、価格につきましても、先ほど申しましたような事情によりまして値上げの方向に動く可能性があるというのが現在の動向でございます。  これに伴いまして、わが国といたしましてもできるだけ石油依存率を減らすという長期的な方向努力いたす必要がありますが、さしあたりはできるだけ産油国との間の対話、協調を進めるということで、昨年の十二月から、国際経済協力会議におきまして産油国と消費国との間の対話も行われております。そういうことで、できるだけ産油国との間に対話を進めていくということで行い、また長期的には日本のエネルギー構造を変えていくということで対処せざるを得ない、こういうふうに考えております。
  22. 佐野進

    佐野(進)委員 国際的な情勢については大体御説明のとおりだろうと思うのでありますけれども、それではそういう情勢の中で国内情勢はどうなのか。いわゆる供給過剰的な情勢の中で、消費が停滞するとまでは言わないにしても、一応当初恐れられていた供給不足というような状態はなく、むしろ備蓄が進んでおると言われるような情勢の中で、しかし石油産業そのものは経営状況が必ずしも好ましい状況ではない。近時やや好転したとは言いながら、まだまだであると業界そのものの立場からは言われておるわけでありまするけれども、世界的に価格が凍結されておるにもかかわらず、国内価格は上昇する傾向にある。特に末端消費価格は、これらの情勢にもかかわらず、国際的あるいは国内における全体的な備蓄量その他にもかかわらず値上げされる状況にあるということは、消費者、国民にとっては大変何か割り切れない思いを持って見ざるを得ないと思うのであります。  これらについては、先ほどの減産指導の問題等との関連もございましょうけれども、いわゆる価格指導という形の中における一つ行政介入ということも行われておったわけでございまするが、そういう面において、家庭あるいは一般消費者等々最末端の消費者に対するところの値上げ傾向に対してどのような対応をされようとするのか。全体的にはだぶつき、供給が需要を上回る傾向にある形の中で、末端価格においては値上がりの傾向にあるということは割り切れない国民感情があるわけでありますが、そういう点についてどのような対応をしておられるか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  23. 増田実

    ○増田説明員 わが国のエネルギー産業の現状について、エネルギー産業のうちの大宗であります石油についてまず申し上げますと、ただいま先生からお話がございましたように、従来非常な赤字であったものが昨年の標準価格の設定その他によりまして相当改善されておるわけでございますが、しかしながら、現状においていまだ大幅な累積赤字を抱えておるわけでございます。そういうことから言いますと、エネルギー産業、ことに石油産業につきましては非常に経営的に苦しい状況が続いておるわけでございます。また需要の方につきましても、現在の需要、つまり昭和五十一年度の需要は大体昭和四十七年度と四十八年度の中間ぐらいの需要でございまして、四十八年度における需要数字にはまだ達しておらないということで、きわめて需要が低調である。それから申しますと、現在の石油産業の設備はむしろ過剰ぎみであるという状況でございます。  経営状況につきましては先ほど申し上げたような内容でございますが、もう一つお尋ねがございました、OPECが値上げをしていないにもかかわらず最近石油の価格の値上がりが行われているのではないかということでございますが、先ほど申し上げましたように、石油産業は非常に大幅な赤字を抱えておりまして、いまだに品種によっては逆ざやというものが残っておるわけでございます。そういうことで、新しい価格を立てるための値上げ調整というものが行われておるわけでございます。  それから、お尋ねがございました、ことに民生用のものにつきましては、これは灯油が最大の品種でございますが、これの値上がりが不当に行われることのないように私どもの方は十分監視及び指導をいたしておる、こういうことでございます。
  24. 佐野進

    佐野(進)委員 もう一つ問題点は、石油業界の再編成問題であります。最近これまた新聞紙上等で伝えられておるように、大協、富士興産を含めた、あるいは丸善石油、東亜石油等々いろいろな話が出ては消え、出ては消えという形の中で進められておるようでございまするけれども、公団法が通ったという形の中で石油業界の再編成問題が現在どのような形になっておるのか、それでどう将来展望されるのか、簡単で結構ですから、その二点について、この際、見解を明らかにしておいていただきたい。
  25. 増田実

    ○増田説明員 石油の再編問題につきましては、先国会におきまして、石油開発公団法の改正によりまして構造改善に必要な資金を石油開発公団から出し得るようにということで、この法律が成立いたしたわけでございますが、そのときに御説明申し上げましたように、石油再編成につきましては、政府石油業界の自主的ないろいろな動きというものに対しまして、必要なときにはこれを支援するという体制を整えるということで御答弁申し上げたわけでございますが、これにつきましては現在そのような姿勢でおるわけでございます。石油開発公団法の改正も通りましたし、また、石油業界におきましても、再編が必要である、構造改善が必要であるということで各種の動きがございます。  現在あります動きの中で二、三申し上げますと、ただいま御指摘がありましたように、大協石油と富士興産が相当広い部門にわたる業務提携、販売部門のみならず原料借り入れその他につきましても業務提携を行うということで、大体これは最終段階に煮詰まっておるわけでございます。それ以外に各種の業務委託というものが進んでおりまして、一つは東亜石油のシェルグループの昭和石油との間にガソリンの委託精製契約というものが進んでおりますし、また同様な委託精製契約につきましては、アジア石油と丸善石油の中に進んでおるわけでございます。  そういうことで各種の動きが現在出ておりますが、ただいまお尋ねのありました再編成について最終目標をどういうふうに持っていくかということにつきましては、私どもは民族系の企業を将来二ないし三のグループに持っていくということによりまして、石油の安定供給というものを民族系の体質強化によって図っていくということで持っていきたいと思っておりますが、先ほども申し上げましたように、これらの動きに対しましてはむしろその必要性を業界が十分自覚いたしまして、自主的に再編成の構想を描き、それを実行に移していく、これに対しまして政府が支援をしていく、こういう体制で行いたいというふうに考えております。
  26. 佐野進

    佐野(進)委員 まだ石油問題についてはいろいろあるわけでございますが、時間の関係で、電力料金の値上げ問題に移りたいと思います。  電力料金の値上げ問題については、すでに申請が出されてから大変時間がかかっておるわけであります。そしてまた、残された電力会社もそれぞれ申請を出すという形の中において、九電力一斉に、現在の状況の中においては値上げをしなければやっていけない、こういう形の中でそれぞれ政府に対して値上げ申請を出そうとしております。また消費者の立場からいたしますれば、この値上げについては生活を破壊することにつながるという形の中で、強い反対意見があることは御承知のとおりであります。しかし、いずれにせよ、このような状況の中で、政府側政府側としてまた幾つかの見解がそれぞれの場所において出されておるわけでございますが、一体政府は何を考え、どうしようとしておるのかということが民国全体にとってはわからないということの一言に尽きる情勢ではないかと思うのであります。  そういう状況下において、われわれとしてはできる限り電力料金というものは上げないで措置すべきであるという形の中で要請なりあるいは質問なりを続けてきておるわけでございまするが、現在の情勢の中において、電力料金の値上げは、現在申請されておるものについていつごろ政府は結論を出し、対応しようとしておるのか、この際、明確な答弁をお願いをしたいと思います。
  27. 増田実

    ○増田説明員 現在、電力料金につきましては北海道、東北、北陸、九州の四社の申請が四月の初めに出ておりまして、これにつきまして査定作業をいたしておるわけでございますが、現段階では最終段階に近づきつつあります。ただ、まだ経済企画庁との間の調整も終わっておりませんし、私どもといたしましてはこれらの調整を済まして、済み次第結論を出したい、こういうふうに考えております。本日、物価安定政策会議も開かれておりまして、ここでもいろいろな御意見が出るのではないかと思っておりますが、これらの御意見も踏まえまして最終的な結論を出したいというふうに考えております。
  28. 佐野進

    佐野(進)委員 一つ一つやれば一時間かかっても質問がし切れないほど内容があるわけでございますけれども、私はそれらの点についてはきょうは省略するにいたしましても、いずれにせよ、九電力会社のうち四社がもはや申請を出している。しかも、残りの五社についてもそれぞれ出すのだというような準備を進めておるということが報道されておるわけでございます。  そういうような情勢からいたしますと、結局九電力全部が値上げをしなければやっていけない状態だということであるといたしますと、さみだれ式と言っていいのか悪いのかわかりませんが、早く出したのは数カ月前、遅く出すのはこれから何カ月か後、九電力一括して出せば世論の反撃が大きいからぽろぽろ出すのだ、そういう考え方かどうかわかりませんけれども、私は、九電力が存在する条件の中で、それぞれの地域の特殊的な情勢、事情等々を考慮しながらそれぞれの条件に合う経営をなしておる、しかし、今日の情勢の中においては、それぞれがすでにそれぞれの地域の中における情勢対応しながら個々企業努力をもってしてはそれぞれの状況において存立し得ない状態になりつつある、だから、九電力に分割するけれども、結局は一つなんだよと言われるような状況下にいまあると思うのですが、そういう状態にあるとするならば、残りの五社は一体いつごろ出すのか。  また、政府はこの五社に対してはいま出されておる四社とどのような差をもって対応されるのか。また、差をもって対応することは恐らく不可能だという気もするのです。しかし、それらについては結局料金値上げの幅においてその差をあらわすのか、あるいはそれぞれの地域の特殊性において申請を認めない場合もあるのかないのか、それらについてこの際聞いておきたいと思います。
  29. 増田実

    ○増田説明員 九電力のうち残りの五社につきましては、私どもの方に来ております話では、関西電力が非常に収支が悪いということでできるだけ早く出したいという話が出ております。また、ほかの残ります四電力につきましても、これは先ほど申し上げました先発四社と比べましては若干差がございます。しかしながら、やはり燃料費、資本費、修繕費のそれぞれの大幅な値上がりがございまして、現在の料金ではコストを賄い切れないという状況になってきております。そういう意味で、ただいま先生から御質問のありました現在まだ申請を出しておりません五社につきましては、この値上げの申請が早晩出てくるもの、こういうふうに考えております。     〔武藤(嘉)委員長代理退席、渡部(恒)委員長代理着席〕  これがもし出てきましたときに当たりましての査定の方針でございますが、これにつきましては、すでに出ております四社につきましてたびたび当商工委員会で御答弁申し上げておりますように、私どもといたしましては二つの立場からこれを審査するということでございます。  二つと申しますのは、一つは、電力の供給の安定を図るためにどれくらいのコストがかかるか、そのコストを原価主義に基づいて料金を査定するということでございます。  もう一つ立場は、電力料金が先ほど先生がおっしゃられましたように非常に物価にも響く問題でございます。また、これは各家庭における消費として非常に重要な役割りを果たしておりますから、この家庭に対する影響、また各電力を使用いたします産業につきましての影響、これらの影響を十分頭に入れながら厳しい態度で査定をする、こういうことで考えております。  さらに、御質問のありました先発四社と後発五社がもし今後出てきた場合の査定ということでございますが、これは同一の態度で先ほど言いましたような二つの立場から厳しく査定していきたい、こういうふうに考えております。
  30. 佐野進

    佐野(進)委員 いずれにせよ、電力料金値上げ問題は今次経済問題の中においても最重要な問題でありますので、われわれの意のあるところも、この前実は通産大臣にも社会党の全国の代表が陳情をいたしましたし、詳しくその内容を申し述べておりますので、その趣旨を体して一層の努力をひとつお願いしたいと思います。  次に、中小企業問題について長官にお尋ねをしたいと思います。  景気が回復軌道に乗り、福田副総理がお見えでありますが、あちらこちらで大変景気のいいお話をしておりますけれども、依然として中小企業の倒産は高水準を続けておるわけであります。     〔渡部(恒)委員長代理退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 しかも、減速経済がこれから定着をしようとする、そういう状況の中において、中小企業の置かれている立場はきわめて厳しいと言わざるを得ません。こういう形の中で中小企業は必死の努力を続けながらその経営を維持し、従業員の生活を守るために努力をしておるわけでありますが、中小企業庁としては当面の経済情勢の中における中小企業界の状況をどのように把握されておるか、重点だけで結構ですから、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  31. 齋藤太一

    ○齋藤説明員 中小企業の景気動向でございますけれども、今年に入りましてから生産、出荷も漸次上向いてまいりまして、この四月の生産状況は、速報でございますけれども、四十五年を一〇〇といたしまして約一〇九という生産指数でございます。それで、前年同月比で約二%高という水準でございまして、ピークから、昨年の二月は底でございましたが、底までの落ち込みの約半分ぐらいを取り返した、こういうふうな現状になっております。まあこの不況からの脱出というのがようやく軌道に乗ってきたという印象を持っておるわけでございます。  ただ、これはあくまでマクロの話でございまして、業種によりまして、その中にはまだ不況に非常に呻吟しておる業種もあるわけであります。消費財に関連いたしました自動車部品でございますとか、家電製品関係でございますとか、音響機器ですとか、そういった分野の伸び方が早いようでございますけれども、投資財の関係あるいは建築に関連した部門というのがまだ回復がおくれております。  こういうふうに業種によって格差があることと、同じ業種の中でも、企業によりまして、資本蓄積のこれまでの度合いの違い等々によりまして、今回の長い間の不況に非常に息切れを来しておる企業と、早く体質改善を終わりまして不況を克服した企業と、企業ごとにも格差があるように見られるわけでございます。こういつたまだ業種としておくれております業種、あるいは企業として非常に困難をしておる企業につきまして、さらに早くこの不況から脱出できるように政府としても支援をしてまいりたい、かように考えております。
  32. 佐野進

    佐野(進)委員 両大臣おそろいでありますから、両大臣質問に入るわけでありますが、まだ関連しておりますので若干中小企業庁長官質問を続けてみたいと思います。  五月二十四日、当商工委員会事業分野の問題に関して決議をいたしました。その後、この種問題に対する社会的関心はきわめて高まっておるわけであります。そういう状況の中において、伝えられるところによれば山崎製。ハンの和洋生菓子への進出が図られている。こういうような形の中で、通産当局が今日の情勢の中で新予算に基づき調整官を置く、その他それぞれの努力をするということをあざ笑うがごとく、大企業中小企業分野に対する進出はいまだそれぞれ急を告げていると言って差し支えないと思うのであります。そういう情勢の中で、当商工委員会における決議の内容について、中小企業庁はどのように受けとめ、どのように検討されてきているか、これに対して法律案提出時期について今後どのような判断をしておられるかということが第一点。  第二点は、山崎製パンの和洋生菓子方面への進出についてどのように対応していられるか。これは、農林省の関係課長さんもおいでになっておるようでございまするから、それぞれの立場において御説明をお願いしたいと思うわけであります。
  33. 齋藤太一

    ○齋藤説明員 大企業中小企業分野調整の問題でございますが、この問題につきましては、きわめて重要な問題でございますので、従来から私どもは、行政指導体制を強化いたしまして機動的に強力な調整を行ってまいりたい、かように考えまして、今年度の予算におきましても、各通産局に調整官を配置するとか、あるいは商工会議所等に指導員を委嘱をいたしまして、こういった紛争につきましての早期の情報の入手につきまして体制の整備を図る、こういった行政指導体制の強化を図っておるところでございます。  先般、前回の国会の五月二十四日にこの商工委員会で、可及的速やかに分野調整に関しての法的措置についてその確立を図ること、こういう決議が行われましたので、この決議の趣旨を体しまして、立法措置につきまして、現在、部内で検討に着手いたしましたところでございます。  なお、山崎製パンの問題は、五月十八日に中小企業庁にもこの指導方の御要望がございましたが、この件につきましては、現在、農林省で当事者の話し合いのあっせんをしておられるところでございますので、その結果を見守りまして、事態の円満な解決を図ってまいりたいというふうに考えております。
  34. 吉田鉄太郎

    ○吉田説明員 第二の点につきましてお答えいたします。  山崎製パンにつきましては、従来から和洋生菓子につきまして生産をいたしておるわけでございますが、今回、伊勢崎、総社、富士宮、この三工場の建設計画が明らかになったわけでございます。この点につきまして、全国菓子工業組合連合会の方より、この新設の中止の陳情が来ております。これにつきましては、農林省といたしまして、両者間に摩擦が出るおそれもあるという判断のもとにおきまして、両者で話し合いを直ちに行うようにという指導をいたしておりまして、近く第一回の話し合いが行われる予定でございます。農林省といたしましては、その話し合いを当分の間見守っていきたい、こう考えております。
  35. 佐野進

    佐野(進)委員 いわゆる行政指導なるものが効果を上げ、そのことによって問題の処理が図られるならば、この種問題についてはそう大きな社会問題にはなり得ないし、中小企業問題の重要な課題にはなっていないわけであります。巷間伝えられるように、選挙の票がほしいから五つの党がみんな一生懸命になっているのだというがごとき認識であってはならないし、中小企業問題における根幹に触れる重要問題として、いまだその認識の足らざる一般的な報道等に対しては、私どもむしろ切歯扼腕というか、われわれの努力の足らざることを反省せざるを得ない。  中小企業庁初め関係省庁においては、この法律ができ得ない段階の中でこの際どんどん進出してしまえという悪い風潮下における大企業の横暴なる行為に対しては、厳に姿勢を正しくするというか、厳しくする形の中で対応してもらいたいし、これは公正取引委員長に対しては要望になりまするけれども、あなたがこの種の発言をなさる場合はよく御注意の上 先ほどの特殊鋼三社の合併ではございませんが、よく御認識の上、発言していただくように、これは要望をしておきたいと思います。  中小企業問題についてはなおたくさんあるわけでございまするが、大臣がそれぞれ見えられましたので、一応打ち切りまして、大臣に対する質問をしてみたいと思います。  両大臣質問したいと思うのでありまするが、いま政治的課題は、政局の動向という形の中で三木内閣がやめるのかやめないのか、ロッキード隠しをどうやって行うのか行わないのか、だれの手によってロッキードの真相を究明するのか、それは三木がやるのだ、いや、それは三木以外の者がやるのだという形の中で世の中大変やかましい。お二方はそれぞれその中心的な立場にあるわけでございますから、それぞれ大変お忙しいことと思うのでありまするが、きょうお二人そろってこの商工委員会に出席なされておりますので、今日の政局の動向について、まずお二人から基本的なお考えをひとつお聞かせをいただきたい。まず福田副総理。
  36. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 政局の運営につきまして自民党の中で意見の対立がある、これは率直に言ってそのとおりでございます。しかし、自由民主党は大人の政党です。国家のこと、国民のことを考えますると、政権を支える政党の中に意見の対立があるということは、これは許されないことである。早急に意見の調整ができ、国政を担当するという方向に邁進をすることができる、かように見ております。
  37. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 政局のことにつきまして私から申し述べる立場にはないのでございますが、私ども承知しておる限りでは、三木総理もたびたびこの問題について発言をしておられますが、一番最近の発言は去る六日の沖繩での発言だと思います。これは私は新聞でしか承知しておりませんけれども、とにかく当面ロッキード問題の究明に全力を上げたい、こういうお話をしておられるということを承知しております。
  38. 佐野進

    佐野(進)委員 なぜ私がこのようなことを質問したかというと、今日、経済問題であれ何であれ、一つの問題が出ますると、それがすぐ政局の動向と絡み合って判断される、これはわれわれとしては大変好ましいことではないと思うのであります。なかんずく経済問題は、国民の生活を安定させ向上させるために絶対不可欠な要件であります。われわれはその立場に立って、経済問題についてはきわめて協力的な立場に立っている場合が多いと思うのであります。そういう面から言いまして、今日の政治情勢は、そのわれわれの期待からおよそ離れた動きがなされておるように感じますがゆえに、いまのような質問を申し上げたわけであります。  特に今月の末、二十七日、二十八日、プエルトリコのサンファンにおいて開かれる七カ国首脳会議は、まさにその象徴的な会議であるという印象を受けるわけであります。アメリカの大統領フォードさん、大統領の指名もなかなかうまくいかない、三木さん、政局不安定、イタリアしかり等々、こういうような先進国の不安定な政治情勢の中に立たされておるそれぞれの首脳が、カリブ海の一角のサンファンに乗り込んで話をして、一体何を決めようとしておるのか、政治的目的以外ないのではないか、こういう批判が大変多いわけであります。  昨年十一月のランブイエ会議は、それなりに成果をおさめたと言われております。しかし、今年度のこのサンファン会議はそれとは全く異なった視点に立ってながめられておるし、成果はおよそ希望され得ないのではないかと言われております。このようなとき、このような場所へ三木総理が出席することは、三木内閣にとっては何ら意味がないのではないかとすら極論をされております。この会議の持つ背景、そしてこの会議の持つ成果に対して、福田副総理、河本通産大臣経済関係閣僚としてどのように評価され、どのように期待をしておられるのか、いや、こんなのは期待していないよと言うならそれで結構ですが、ひとつお考えを明らかにしていただきたい。
  39. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 御承知のように、昨年は世界経済が非常にむずかしいときでありまして、わが国を除きますと先進諸国はことごとくマイナス成長だ、しかもインフレが進行しておる、こういう状態です。そういう状態からいかにして力を合わせて脱出するか、こういう問題を抱えてランブイエの会談が開かれた。その後、世界経済は相貌一変というような状態でございまして、いま先進諸国はほとんどの国がプラス成長に転じようといたしておるわけであります。そこで、そういう段階でアメリカ大統領が主唱いたしまして、このサンファン会議ということになるわけでございますが、アメリカの考え方は、そういう大事な数カ月である、その数カ月各国がとった政策のレビューをしてみたい、それからなお、今後世界全体として向上、長続きのするインフレのない成長、これを実現するためには各国がどういうふうに協力し合うかということについて相談をいたしたい、こういうことでございます。  私ども考えましても、いまとにかく世界経済石油ショック後のあの深刻な打撃から立ち上がろう、脱出に成功しようとしておる。そして目指すところはインフレのない成長である、世界的にそれを実現をしたい。そういう際であればあるだけに、私はアメリカ大統領の言う、ここ数カ月間各国がとった政策についてお互いに語り合う、そして将来を誓い合うということは、きわめて適切なことじゃあるまいか、そういうふうに思うのです。でありますので、アメリカ大統領からそういう提唱があった、そういう機会にわが国といたしまして積極的にこれに参加する、これは当然そうなければならぬことである、そういう考えでございます。
  40. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今回のサンファン会議の議題は、六つあると言われておるわけです。一つは世界経済の現状に対する認識、それから第二は、回復しつつある世界経済、今後どうすればこの景気を長もちさせることができるかという問題、第三は金融通貨の問題、第四はエネルギー、第五は貿易問題、それから第六は南北問題、こういうふうに言われておるわけでありますが、特に昨年の十一月にランブイエ会議が開かれましてから八カ月足らずの間に、再び同じ性格の会議が開かれるということは、二つ緊急を要する意味があるのではないかと私は思います。  その第一は、ことしになりましてから急速に景気が回復しておるわけであります。でありますから、この完全な回復基調になりました景気を今後どうすれば継続させることができるかという問題に関連をいたしまして、自由貿易の原則をあくまで堅持しなければならぬ、保護貿易的な動きをできるだけ起こさないようにしなければならぬ、こういう緊急の課題が出てきておる、こう思います。  それから第二は、先般ナイロビで開かれましたUNCTADの会議で、最終段階で合意には達しておりませんけれども、しかし今後話し合いを続けて来年の三月までには一次産品問題を含む南北問題にある程度の目鼻をつけよう、こういうスケジュールについての合意ができたわけでございます。しかりとするならば、主要先進国におきまして来年三月までのとるべき態度についてやはり至急相談をする必要があろうかと思うわけでございます。  私は、この二つの点で今度の会議が予定よりも若干早く開かれたということでなかろうかと思います。それだけこの会議の意義というものは非常に大きい、こう思います。
  41. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、それぞれお二方のこの会議に対する見解を聞いたわけでありますが、この会議が持つ意味、経過がどうなのかということはこれからの問題でありますが、この後といまとの二つの時点の中で問題になりつつある動きが二つあるわけですね。  一つは、今日の情勢の中で、きのうときょう、ECとわが国との定期協議が開かれておる。     〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕 要するに、世界景気が上昇過程の中に入る状態の中で、ヨーロッパもアメリカもそれぞれ上昇過程に入っていると言われ、ヨーロッパも英国やあるいはイタリア等々問題のある国はあるとしても、全体的に上昇過程の中に入っている。それと、今日開かれているこの会議がサンファン会議とどのような結びつきになるのかどうか。  それから、この会議が開かれた直後、アメリカと日本との個別会議が開かれようとしている。ヨーロッパとアメリカと二つの国の中にある日本が、現時点の中で、いまとそれから会議が終わった後においてそれぞれ個別に会議を開こうとすることの意味は、わが国が両方に対してどのような対応をしておるのか、これは政治的に経済的に非常に大きな意味があるのではないかと、こう思うわけでありますが、わが国の外交上あるいは経済上の対策として、ヨーロッパとアメリカに対して、どうこの会議は位置づけて対応されようとするのか、お二人に簡単で結構ですがお考えを聞いておきたい。
  42. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いろいろな会議が定期的に開かれておるわけです。これは事務レベルのものが多いわけですが、それと、私の見るところではこのサンファン会議は別に関係があるわけではない。ただ、OECDの閣僚会議というのがこの二十日前後に開かれるわけであります。これは出席する閣僚が外務大臣であり、また大蔵または経済大臣である、そういうような関係で、実質上今度開かれるサンファン会議とつながっていく性格になっていくだろう、こういうふうに見ております。  このOECDの閣僚会議は二十四カ国の会議でありますが、そこへ七カ国のただいま申し上げたような顔ぶれが出て、それが大体においてそのままサンファン会議の方へ流れていく、こういう形になりますので、実質的につながりは出てくる、こういうふうに思いますが、OECD閣僚会議の最大の課題は、やはりこれから長期にわたってインフレのない成長をどういうふうに実現するかということについて、各国の動き並びにこれからとらんとする施策について話し合う、こういうことでございまするが、サンファンの会議におきましても、顔ぶれ等から見ましても当然そのことが中心の課題になってくるというふうに私は考えております。
  43. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど私は、このサンファン会議が予定よりも早く開かれるようになった一つの大きな理由として、自由貿易の原則を確認しなければならぬ、これが一つ課題であるということを申し上げましたが、日本を中心の貿易の最近の状態を見ておりますと、昨年の貿易の一つの特徴は、先進国向けの輸出が非常に減ったということであります。一昨年に比べまして約一〇%減っております。ことしの貿易の一つの大きな特徴は、昨年とは逆に、先進工業国向けの輸出が激増しておるということでございます。そういうことで、ヨーロッパ諸国に対しても非常に大幅な出超になっておりますし、それからアメリカに対しても非常に大幅な出超になっております。現状をほっておきますとやはりトラブルを起こしますので、ヨーロッパ諸国とも絶えずこの問題について十分意見を交換して話し合う、日本の立場について相手方の了解を得る、これがヨーロッパに対してもアメリカに対しても必要でなかろうかと思うわけでございます。  でありますから、私は、やはりサンファン会議とは別個に、ヨーロッパ、アメリカに対する話し合いというものは常に積極的に行わなければならぬ、そういう意味におきまして、いま御指摘の一連の会議というものは大きな意義がある、こう思います。
  44. 佐野進

    佐野(進)委員 七カ国首脳会議の問題についてはその程度にいたしまして、残された時間、若干現在の経済情勢について質問をしてみたいと思います。  いわゆる減速経済下と言われておる今日の状態の中で経済運営をするということについては、大変苦心を要することは私もよく知っておるわけであります。そういう中で、政府は実質経済成長率を五・六%というような形の中でそれぞれ努力をされておるわけでございまするが、現在の情勢はさらにそれを上回るのではないかと言われるほど景気回復が進んでおるという見方もあるわけであります。こういう情勢の中で、今年度の経済運営は、物価の問題あるいはその他いろいろな要素を加えまして、きわめてむずかしい局面にまた立たされる可能性もあるわけでございまするが、新経済計画を中心としたこれらの情勢について、今日の情勢、これからの見通し等、副総理にその見解をひとつお聞きいたしたいと思います。
  45. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 あれだけの大ショックを受けた二年半目の日本の経済の動きといたしまして、私は、概観いたしまして順調な動きを示しておる、こういうふうに見ております。  第一に物価でございますが、御承知のように、消費者物価は前年比で五月の時点が東京で申し上げまして八・五%の上昇、こういうことになってきておる。それから卸売物価につきましても、景気回復期でありますので若干高目の動きになってきておりまするけれども、基調的には安定した動きをしておる。  他方、経済活動につきましては、個人消費が非常に着実に伸びているのです。これは経済に対する寄与率とすると非常に大きい。その個人消費が着実の伸びである。それから設備投資もようやく底固めとなりまして、微弱ではありまするけれども上昇の傾向になってきておる。それから政府関係の需要ですが、これも御承知のように予算がああいうふうな性格のものである。そこへ輸出がかなりの伸びを示しておるわけなんです。そういう最終需要が着実に伸びるものですから、したがって、それを総合して表現するものは何かというと生産になる。生産が活発な伸びを示しておるのです。一月は二%だが、二月は二・三%、三月に三・六%、また四月も二%を超える伸びになるのじゃないかというふうな見方になっておりますが、そういう状態です。したがって、それを受けて雇用情勢もだんだんと改善をされてまいりまして、特に時間外労働なんか、昨今は昨年の同期に比べまして四〇%もふえる、こういうような情勢になってきておるわけであります。  それらを受けまして、問題の企業収益はどういう変化を示してきたか、こういうことでございますが、これは非常に改善をされつつあります。その改善の根拠はどこにあるかというと、企業の操業度が上昇しておる。昨年の三月製造業稼働率数が七七だった。それがこの三月の時点になりますと八八になっておる。昨年、一年前には、いまのは製造業稼働率指数でございますが、稼働率全体として見るときに七〇%を割るというような惨たんたる状態であったものが、今日八〇%の操業度を超えるというような状態になってきており、これから先を展望しますと、輸出の伸びがいままでのような急激な伸びという状態が続くというふうには見ておりませんが、しかし、他方におきまして、昭和五十一年度予算がいよいよ実施されるという段階に入りますので、輸出と財政が二つの大きな牽引力となりまして、引き続いてわが国の経済は上昇過程をたどっていくであろう。そして、五十一年度におきましては経済見通しで五%ないし六%というふうに申し上げておりますが、これは実現できるであろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  46. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは最後に、通産大臣質問をしてみたいと思うわけでございまするが、先ほど来私が質問をし続け、さらに福田副総理、経済企画庁長官の方から経済見通し等があったわけでありまするが、中小企業問題についても同様でございまするが、産業政策そのものがこのようないわゆる減速経済に移行する情勢の中で、いま輸出が先進国に向けて非常に伸びている、あるいは設備投資も若干回復してきている、あるいは時間外労働等も多くなってきているような情勢の中で、なおかつ深刻な情勢等も相見ることができる、同時に共存する状態の中で経済政策が運営されておるわけでありまするが、こういう情勢の中で果たしてこれからの経済政策の中心は何に置くのか。  政府の方は、石油にしろあるいは鉄鋼にしろ、その他それぞれの経営状態の苦しくなることについては再編成ということで対応しておりまするし、あるいはまたその他の面につきましてもそれぞれ各企業に対するところの要請行動を続ける中で産業政策の運営をいたしておるわけでございまするけれども、これからの情勢の見通しといたしまして、こういうような状況下における産業政策の基本は一体何に置いていくか。  いままで努力をして総需要抑制から景気回復、いま景気の回復過程にある状況の中において、何回か大きく繰り返してきた波動の中におけるいまの時点をとらえて、産業政策の重点は一体何に置いたらいいのか、これは国民ひとしく聞きたいものであるし、この処置を誤れば、また再び産業政策に対する批判が厳しくわき出てくるということも考えられるわけであります。特に独禁政策の問題等につきましては時間がありませんので質問をすることができ得ませんでしたけれども独禁法を提案したということだけでこれを終わったという三木内閣姿勢からいたしますと、産業政策におけるその持つ意味が非常に重要な問題になってくるのではないかと考えますので、通産大臣にその点の見解をただして、私の質問を終わりたいと思います。
  47. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 産業政策の今後の中心の課題というものは、一つは日本経済が生きていくための必要な成長率をいかにして達成するかということだと私は思います。先般政府から発表いたしました五カ年計画を見ましても、労働人口はことし五千二百万、五年後には五千五百万、こういうことで毎年数十万ずつ増加していきますし、こういう増加する労働人口に対する雇用の機会というものをつくり出していかなければなりませんし、それからあわせて、わが国は貿易立国でありますから、常に国際競争力というものを強化、保持しておらなければならぬのは当然でございます。国際競争力を保持するためには、やはり経済が活力を持っておりませんと、日進月歩の技術革新の中にあって必要な施設というものを確保することができませんので、やはりある程度の活力を持つための成長ということが必要である。こういう観点に立ちまして先般の五カ年計画というものが発表になったのだと思いますが、あの五カ年計画をいかにして達成するかということが私は一つの根本の課題であると思います。  それから第二は、やはり産業の根幹はエネルギーでございますから、あの経済成長を達成するのに必要なエネルギーをいかにして長期にわったて安定的に確保していくかということが第二の課題になろうと思います。  それからまた、高度成長から安定成長に移りますし、それから資源エネルギーの問題、環境問題等を抱えておりますので、産業構造は今後いかにあるべきかという産業構造のあり方が一つの大きな課題になろうと思います。  それから次に、私どもがエネルギー問題、産業構造の問題と同じように重視をしております問題は、日本産業の一つの特徴といたしまして、中小企業の数が非常に多いということであります。従業員の数も多いですし、それから国全体の生産において占めるシェアも非常に多いということから、中小企業対策というものを今後どう考えていくかということが一つの大きな課題であろう、こういうふうに考えております。  そのほかにも幾つかの問題はあろうと思いますが、いま申し述べましたような点を中心といたしまして今後産業政策を進めていくつもりでございます。
  48. 佐野進

    佐野(進)委員 終わります。
  49. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 加藤清政君。
  50. 加藤清政

    加藤(清政)委員 私の持ち時間は約一時間でありますが、福田副総理が大変日程が詰まっておりますので、大体十五分程度ということでありますから、冒頭、景気と物価の問題と、短期見通し、長期的な展望、そういう意味合いを含めまして福田副総理に質問し、そして大変世論の注目を浴びております分野法の問題について河本通産大臣の所信をお伺いし、電力料金の問題やエネルギーの問題についてはそれぞれ御答弁願うといたしまして、公取問題については、独禁法違反の疑いのある問題について公取委の御答弁をひとつお願いしたい、そのように思いまして、最初に福田副総理にお尋ねしたいと思います。したがいまして、河本通産大臣は私が分野法の問題について御質問いたしましてから御用を足していただいても結構だと思います。  最初に、福田副総理にGNPと景気回復並びに物価の問題についてお尋ねしたいと思います。  六月三日に経済企画庁が発表いたしました国民所得統計速報によりますると、昭和五十年度のGNPの実質成長率は対前年度比三・一%増加と、政府経済見通しの同年度の実質成長見込みの二・六%成長を〇・五%超過達成されたという発表があったわけでありますが、この政府の見通しを上回った原因はどこにあるかという点が第一点。  さらに、政府は、当面は急速な景気の回復はこの状態ではあり得ないけれども、秋以降には上向くのではないかという見通しを発表されておるわけでありますけれども政府の景気の回復についての見解を伺いたいと思います。  また、このようなGNPの予想外の伸びが物価に及ぼす影響をどうお考えになっておられるか。たとえば、国民の中には、景気回復に転じて間もないのに物価を重視する余り回復の芽を摘んでしまうのではないかという懸念も一部にあるわけであります。だが、万一連鎖的な価格の引き上げ、公共料金の引き上げだとか新価格体制への移行だとか、こういうものによりまして、景気がさして回復しないうちに物価だけ根強く上昇して、またしてもスタグフレーションに陥る危険なしとせずと学者層が警鐘を乱打しておるわけでありますが、このことについて副総理の短期見通しと長期経済の見通しについてお尋ねしたいと思います。
  51. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 まず、五十年度が改定見通し二・六%、それを実績が三・一%というふうになった、その上回りとなった事情はどうかというお尋ねでありますが、これは経済需要諸項目全体として最近の伸びがいいわけです。ことに一−三の期が非常によろしい。その中でも特に輸出が一−三には激増しておる。ですから、一−三が非常に高かったということで全体として三・一というような高さにおさまった、こういうことでございます。  そこで、これからの景気は一体どうだ、こういうことになりますが、昨年は何といってもこれは不況に明けて不況に暮れるというような状態だったと思う。それは国全体の経済とすると、ただいま申し上げましたように五十年度は三・一%の上昇である、そういう上がりカーブをずっと続けたわけです。にもかかわらず、一つ一つ企業から見ますと不況感、不況感、不況をかこっておる、こういう状態です。なぜかと申しますと、石油ショックによる衝撃がいかにも大きかった、そして昨年の春ごろの水準では企業操業度が七〇%を割り込む、こういうような状態だったわけです。そういう異常の状態であれば、何といってもこれは過剰労働力が出てくる、過剰設備が出てくる、そのための賃金負担、また設備投資に対する金利費の負担、そういうことで企業経理が悪くなるのはあたりまえ。そこで、全体の経済としては上昇過程であるにかかわらず、ミクロ、つまり一つ一つ企業とすると、不況だ不況だという状態で明け暮れしたわけなのであります。  ところが、この一−三になりますと、ただいま申し上げたように、経済需要諸項目が非常な活発な動きを始める。それから引き続いてその勢いは五十一年度に及んでおる。そこへ五十一年度の予算が施行される。これは景気を刺激するという性格を持った予算です。それが施行になる。そういうようなことで五十一年度を展望いたしますと、景気活動はマクロとして見るときにはこれは非常にいい状態になってくる。ミクロとして見ると、各企業状態はどうかと言いますと、五十年の一−三がよかった。そういうようなことで、三月期の決算が昨年の九月期に比べますと収益状態において非常な改善です。収益が二・七倍になる、こういうような状態。この状態でいきますと、日本銀行の見解では、九月期の決算は、大体平均的企業においては黒字を出し得る状態になってくるのではないか、こういうふうに言っております。  いずれにいたしましても、企業操業度が今年度中にはかなり改善されまして、いま八〇%をちょっと超えるという水準まで来ておるその操業度は、八五%の辺まではいくのじゃないか、そうなりますと、ミクロで見た企業の経理状態も非常に改善をされまして、マクロとミクロとの乖離という問題が解消する、こういう段階までいくのではあるまいか、そういうふうに見ております。  他方、物価はどうかと言いますと、消費者物価は依然として落ちつきの傾向を進めております。ことにことしの春闘、これが昨年に比べまするとまたかなり低位に決まっておる。そういうような影響も受けまして、私は、消費者物価安定の基調というものはさらに進んでいくであろう、こういうふうに思いまするし、またそういうふうにしなければならないと考えております。  それから、卸売物価の方は、これは景気がそういう急速な回復期を迎えたのにつれまして、この一月ごろからちょっと高目の動きを示しておりますが、私は、これは景気回復期の一時的現象である、こういうふうに見ておりまして、これは警戒はいたしておるのです。海外のいろいろな商品の動きなんかもありまするから、それと総合いたしまして卸売物価はどうなるか、卸売価格というものが急騰するというようなことになりますと、これは対外経済競争に大きな影響がありまするし、同時に、やがては消費者物価にもはね返ってきますから、この動きに対しましては警戒をしておる。しかし、景気回復期の現象というとらえ方でございまして、心配はいたしておらぬ、こういうたてまえをとっておるわけでございます。  ですから、私は、五十一年度中にはインフレ、それから不況はもう大方決着がつくということになるだろう、こういうふうに見ておりますが、問題は、加藤さんがおっしゃるように長期的な問題なんです。これから先、インフレのない成長だ、一体こういうことをどういうふうに実現していくかということでございますが、これは相当大きな問題です。ということは、石油ショック以前の十三カ年はいわゆる高度成長期、それで平均成長率は実質で一一%、先進諸国の二倍半の高さであったわけです。それはわが国としてはこれから先は実現することは不可能であるし、適当でない。資源は有限という意識が世界に満ち満ちてきておる。そのことを考えなければならぬ。それから公害問題、国内においてはそういう問題も起きてくる。また土地だとか水だとか、そういう国内資源の制約ということを考えなければならぬ。そうすると、そういう経済の安全保障というような角度、わが国の社会、経済を本当に平和に維持していくという角度の配慮が必要だ。そうすると、成長の速度というものはかなり落としていく必要があるだろうと思うのです。  しかし、他方において、わが国の社会においては雇用問題というものをまた考えなければならぬ。いわゆる完全雇用を実現をするには、やはり高い成長率を必要とする。その国内の視点と、それからわが国の経済を安全に広い国際社会の中において運営していくという経済安全保障的な視点、その接点は一体どこかということを見きわめなければならぬだろうと思うのです。  その接点はどこかというと、過去の一一%成長よりかなり低く、六%成長程度のものであるべきだという判断でございまして、それを見詰めまして、経済がそれから大きく離れるということのないようにあらゆる努力をいたしまして、安定的な成長を実現してまいりたい、かように考えております。
  52. 加藤清政

    加藤(清政)委員 福田副総理に対する質問は以上で終わります。  次に、通産大臣にお尋ねしたいと思いますが、中小企業事業分野法についてお伺いしたいと思うのです。  この問題については、中小企業の中でも、大企業事業分野を侵犯するということで、三十何団体、特に十何団体が中心になって、一日も早く中小企業分野法を制定してもらいたいという陳情が国会にも出されておりましたし、また、さきの国会の最終日の五月二十四日には、当商工委員会におきまして、「政府は、可及的速やかに中小企業者事業分野確保に関する法的措置を確立すべきである。」という五党一致の特別決議をしたわけでありますが、お聞きいたしますと、通産省分野法の立法化の作業を始められたと伺っておりますけれども大臣分野法国会に提案する考えがあるかどうか、まずその所信をお尋ねしたいと思います。
  53. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 去る五月二十四日、通常国会の最終日に五党の共同提案で分野法についての立法化に関する決議がございました。それを受けまして、通産省ではその趣旨を実現すべくいま取り組んでおるところでございます。大きな法律でございますので、まとめますまでの間には相当な時間がかかると思います。数カ月はかかると思いますが、各方面の意見を十分聞きまして、できるだけ早くまとめるようにいま努力並びに準備をしておるところでございます。
  54. 加藤清政

    加藤(清政)委員 五党の決議もあるし、世論も十分伺って、通産大臣としてはいまその提案については各方面の意見を聞いて数カ月の間にこの問題を提案したいという御意見があったのですが、数カ月というと五カ月も六カ月もかかるわけであります。当委員会においての特別決議は「可及的速やかに」ということでありますので、議会の意思としては、少なくも一カ月以内ぐらいには分野法の提案をしてもらいたい、もし政府でできなかった場合には議員提案でもあえて辞せずという決意のほどが当委員会で示されたわけでありますので、大臣としては、数カ月かかって提案するということだけではなくして、可及的速やかにという意向を入れて、少なくとも一カ月か二カ月うちにはひとつ提案したいというくらいの決意が欲しいと思うわけでありますけれども、その点、数カ月ということだけでは何かじくじたるものがありますので、もう一度、大臣はいつごろ提案されるかという時期、また、できれば大体どういうものを盛り込んで考えておるかというその内容について、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  55. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これは関係するところが非常に大きいですし、産業政策の根幹にもかかわる問題でございますので、やはり各方面の意見を聞くために審議会等を設置したい、こう思っておるわけであります。そこで若干の時間がかかるということを申し上げたわけでございますが、しかし、決議案の趣旨等もございますので、その間はこれまでの行政指導をさらに強化をいたしまして、幸いに先般お認めいただきました予算の中にも行政指導を強化するための若干の予算もございますので、それを活用いたしまして、その間、行政指導を十分強化いたしまして、支障のないような対策は当然とらなければならぬと思います。しかし、手続には、いま申し上げましたようなこともございますので、若干の時間をいただきたいと考えております。
  56. 加藤清政

    加藤(清政)委員 通産大臣から、若干の時間をかけて、そして一日も早く審議会を設置して分野法制定に踏み切るという御答弁があったわけでありますが、ひとつ可及的速やかに議会の意向を入れて提案されるよう要望いたします。  いま河本通産大臣から、この分野法の問題についてきわめて積極的なる御発言がありまして、ひとつぜひお願いしたいと思うのですが、公取委員長は五月十二日の定例記者会見の席上で、分野法問題について「競争制限的な風潮が強まるとしたら、公取委としても考えなければならない」という、分野法についての一歩後退したような感の発表があったわけでありますけれども、大企業中小企業事業分野に進出して中小企業を追い出し、零細な業種の中で大企業が寡占状態をつくっていって、独占によって価格操作をしておるということが大変大きな問題になっております。これは非常に大きい問題だろうと思いますが、ひとつ公取委員長見解をお聞かせ願いたいと思います。
  57. 澤田悌

    澤田説明員 御指摘新聞報道が必ずしも私の意図を正確に伝えておりません。ただいまの御質問、ごもっともだと存じますが、公正取引委員会独禁法のたてまえ上どう考えておるかということと、いま非常に問題になっております分野調整法の問題と、若干問題の中心が、私個人の見解といたしましては異なっておるというふうに考えるわけでございます。大企業がその資本力や優越した地位を利用して中小企業事業分野に進出する、不当なあるいは不公正な手段で進出をする。その手段につきましては、ダンピングでございますとか、過大な景品をつけるとか、拘束条件をつけて取引をするとか、いろいろございましようが、そういった不公正なあるいは不当な手段で進出するというようなことになりますれば、現在の独禁法によりまして当然これは排除され、対処される問題でございます。  ところが、一般論といたしまして、大企業が正当な手段で各方面の事業分野に進出した場合にどうなるかという問題を考えてまいりますと、正当か不正当かということが非常に微妙な問題ではありますけれども、不当な手段でないという場合には、現在の独禁法上はそれを排除するというようなことにはならないわけでございまして、そこで一般論といたしましては、そういう大きい企業、小さい企業が、それぞれ新規参入を阻止しないで、消費者の利益を害することのないように、技術革新等に意を用いながら競争的に事業を営むということについては、独禁法上格別の問題はないのでございます。  しかし、これは私個人の考えでございますが、それならば、不当と認められない方法において進出するならば大企業中小企業分野にどれだけ進出してもいいのかという問題は、先ほど申しましたように少し視点を変えて考える必要がある、こういう意味のことを実は申したのでありまして、いわば独禁法を超えた大きい国の政策の問題、大きいものが小さいものの中にどの程度進出するのがいいのか、手段の不公正、不当というような問題を離れてその問題をどう考えたらいいのかということは、独占禁止法の問題を離れて考えられる大きい政策問題にすでになっおる、こういう趣旨のことを申した次第でございまして、私どもがあの法案について態度が変わったとか、そういう問題ではございませんので、御了承を願いたいと存ずる次第でございます。
  58. 加藤清政

    加藤(清政)委員 次に、独禁法の違反に抵触するのではなかろうかという問題について、ひとつ公取から御答弁をお願いしたいと思うのですが、自動車用のエンジンオイルについて伺いたいと思います。  自動車メーカーは、純正と称して部品や付属品をみずからの流通機構を経て販売しておりますが、特にエンジンオイルについては、純正オイルとしてそれぞれ専用のエンジンオイルを石油元売メーカーに対して下請製造をさせて、独自の商品名をつけて系列の販売店で全国的に販売しております。そしてカーメーカーは、純正オイルの販売をより多くするために、純正オイル以外のオイルを使用した場合には保証をしないなどのケースも出てきております。そして、純正オイルの普及拡大につれて、自動車販売店あるいは部品商店、修理工場、ガソリンスタンド、カー用品店、スーパーマーケット等において店頭で販売されるようになってきました。  ところが、純正オイルがどこでも売っているようになってきたのにつれまして、以前のように店頭に並べておくだけでは売り上げがふえないために、定価より安く多量に販売する店が出てきました。そこで、メーカー販売店では安売りを防止するためにいろいろな手段をとってまいりました。  特に悪質なのはトヨタ自動車販売でありまして、あとで例を示しますが、出荷制限をとるばかりでなく、ケースに対して販売店の大きなスタンプ印を押しております。これは安売りをしていた場合にその流通経路をさかのぼって調べるためであります。そして、スタンプだけでは消したりはがしたりして流通することを恐れて、ケースにこのように穴をあけて識別をする方法をとるなどの大変悪質な方法で値崩れを防止しております。  鈴木自動車工業は、販売店に対して他府県に販売することを禁止して、万一販売した場合にはその販売店に対して出荷を停止するばかりでなく、価格の引き上げをさせていると聞いております。また、値崩れ防止のために、スーパーなどの安売りしやすい四リットルかんを全国的に出荷規制をして品不足をかもしております。  鈴木自動車工業では、五十年の十一月十四日に次のような文書を出しております。   業務連絡           発行五十年十一月十四日    部品責任者殿           発行者            部品部長 竹内 靖印   標題 CCISオイル        販売目標量設定について  (A) ご連絡事項   最近、CCISオイルの販売区域外への流出が頻発しており、これが流入地域での正常な流通を妨げております。   調査の結果、その殆んどが四l缶で取り扱われておりますので、当分の間、四l缶の生産を限定し、代理店別に毎月の販売目標量を設定させていただくことといたしました。   事情ご賢察のうえご了承下さると共にCCISオイル販売の正常化にご協力下さいますようお願い申し上げます。   尚、CCISオイルドラム缶を再使用して社外品を販売している例も見受けられますので、在庫済次第ドラムでの扱いを廃止させていただきたいと存じます。併せてご了承下さいますようお願い申し上げます。     (記)  一 貴社の月間販売目標量(毎月十六日−翌月十五日間)        銘柄別の目標重  荷 姿 シェル石  三菱石油 合計      油(株)  (株)  4l缶    l     l   l  その他    l     l   l  合 計    l     l   l  二 実施時期    昭和五十年十一月十六日出荷分より適用いたします。  三 対象期間    昭和五十年十一月十六日より昭和五十一年二月十五日の三ケ月間とし、それ以降については別途ご連絡いたします。                 以  上こういう文書を出しておるわけです。  それで、そういう文書を出しておりますし、それから純正オイルと称して各メーカーはそれぞれ専用のエンジンオイルを石油元売メーカーに下請製造させ、独自の商品名で系列の販売店を通じて全国的に販売しておる。そして、トヨタ自動車株式会社キャッスル・スーパーDX、キャッスル・ゴールデン・スペシャル、キャッスル・スペシャル、キャッスル・クリーン・スーパー、鈴木自動車工業スズキCCIS、日産自動車、東洋自動車工業、本田技研工業、ダイハツ自動車販売、富士重工、ヤマハ発動機、いすゞ自動車、日産ディーゼル工業ということになっておりまして、このようにスタンプを押して、このスタンプが消えてはいけないのでさらに針の穴をあけて、そして流通機構に流しておるというようなことをしておるわけですね。     〔委員長退席佐野(進)委員長代理着席〕  こういうような市場価格操作を実行していることは、適正価格を妨げておるということも一面言えるわけでありますが、このような悪質な行為に対して、公取としてはどのような見解を持たれ、またこれに対してどのような措置をするか、そういうような点についてお聞かせ願いたいと思います。
  59. 澤田悌

    澤田説明員 ただいま詳細御指摘のようなことが事実といたしますと、これはいわば一種のやみ再販というような疑いもございますし、特に自動車メーカーがディーラーに対しまして自己の決めております店売価格を遵守しないといろいろな圧力を加えるというようなことになりますれば、独禁法で申します不公正な取引に該当する疑いもございます。純正オイルとかいろいろ言われているものについての品質とか流通過程とか、実はまだ私の方は正確に把握しておりませんので、御指摘のような点は今後急遽調査をいたしまして、法規に照らして対処したいと考えております。
  60. 加藤清政

    加藤(清政)委員 澤田公取委員長から、適正価格を妨げてこういう市場価格を操作するということは大変好ましくないことだし、いけないことだ、厳重調査して処置するという御答弁がありましたが、何といっても独禁法をもっと充実強化しなければならないということは、これはもう世論の当然の帰趨であるわけであります。こういう市場独占あるいは流通機構を妨げるような商取引というものは断じて許しがたいものであろうと思いますので、ひとつ厳重調査して、この点は適正に御指導願いたいと思います。  それでは、電力料金の問題についてお尋ねしたいと思います。  まず、電力料金の値上げについては、東北電力が三五・二二%、北海道電力が三九・一五%を四月五日に申請しております。そして、その三日後の四月八日には北陸電力が三四・四%、九州電力が三一・九五%と、電力四社が相次いで大幅な料金値上げを申請しておりますが、申請からすでに二カ月以上たっております。  電力料金の値上げは、通産省の査定作業を経て経済企画庁と協議をして、その後、物価安定政策会議あるいは物価対策閣僚会議の了承を受けるという手続を踏むと聞いておりますが、その作業は一体どこまで進んでおるのか、その状況についてお聞かせ願いたいと思います。     〔佐野(進)委員長代理退席、委員長着席〕 そして、査定の出る時期はいつごろになるのか、お尋ねしたいと思います。
  61. 増田実

    ○増田説明員 お答え申し上げます。  先ほど先生の挙げられました四社が四月の初めに申請をいたしまして、その後、各社の特別監査あるいは各地における公聴会が済みまして内容を査定をいたしておりまして 現在最終段階に近づきつつある現状でございます。本日午後から物価安定政策会議が開かれることになっておりまして、そこでもいろいろ御意見が出ると思います。これらを踏まえまして、私どもと企画庁と相談をいたしまして最終結論を出していきたい、こういうことでございます。
  62. 加藤清政

    加藤(清政)委員 次に、値上げ幅についてお尋ねしますが、電力四社の申請は四社とも三〇%を上回る非常に大幅なものでありますが、このような大幅な値上げが実施されますと、国民生活や産業活動に大きな影響を与えることは火を見るよりも明らかなんです。そして、今回の値上げが実施されますと、わが国の電力料金は世界で最も高いものになるわけでありますが、現在の作業状況では、値上げの幅はどのくらいになると見込んでおられるか、それについてお聞かせ願いたいと思います。  さらに、電力料金の値上げについて、物価の抑制のために二段階に分けて値上げをする方法が言われておりますが、最近の新聞報道によりますと、暫定料金という形での二段階値上げを決めたということでありますが、通産省が二段階値上げに踏み切ったその理由をまずお尋ねします。  そして、暫定料金を採用するならば、その暫定期間は長ければ長いほど消費者にとってはうれしいわけでありますけれども、その期間はどれくらいとするつもりですか、また、暫定期間中の料金はどのくらいになるか、お尋ねしたいと思います。  なお、時間が一時までで、一時間しかありませんので、電力料金の問題を続けて質問いたしますので、ひとつ分けて御答弁をお願いしたいと思います。  家庭用の電灯料金は大口電力に比較して約二倍近い料金を払わされておりますが、今回の申請でも、家庭用電灯料金の値上げ幅は電力料金に比べて高い比率になっております。このような値上げは、生活保護世帯などに与える影響は大変大きいわけであります。前回の値上げのときにも、生活保護世帯やあるいは社会福祉施設に対しては十カ月間旧料金に据え置いているわけであります。今回の値上げに当たって、生活保護世帯や社会福祉施設に対しては旧料金のままとすることが福祉政策として大変重要であろうと思いますが、生活保護世帯や社会福祉施設に対して旧料金のまま据え置く考えはあるかどうか、この点もあわせてお尋ねしたいと思います。
  63. 増田実

    ○増田説明員 先ほど申し上げましたように、電気料金につきましては申請を受け付けまして現在査定中でございます。また、この査定につきましては、本日開かれます物価安定政策会議の御意見あるいは経済企画庁との間の調整というのがございますので、これについてまだ値上げ幅が決まっておりません。本委員会でもたびたび申し上げましたように、私どもといたしましては、物価に対する影響、需要産業に対する影響というものも十分考慮いたし、厳正な査定方針をもって臨んでおるわけでございます。  それから、お尋ねがございました二段階方式あるいは暫定方式につきましては、現在これもまだ結論が出ておりませんが、私どもといたしましては、暫定方式というものを考えたらどうかということで打ち合わせをいたしております。暫定方式につきましては、これは原価主義というものが原則になっておりますが、原価主義の原則の中で、査定料金につきましてある暫定期間、暫定料金という若干低い価格を適用する、こういうことで現在これの詰めを行っておる段階でございます。  それから、第三番目にございました電灯と電力との関係でございますが、昭和四十九年の電力料金、現在の料金でございますが、これでは電灯が電力の一・五倍ないし一・六倍になっておりますが、それ以前におきましては、電灯は電力の大体二倍以上、三倍近いということで、電灯と電力の差が非常についておったわけでございます。これは原価主義で計算いたしておりますが、結果的にはその差が相当縮まっておるという状況にございます。今回も原価主義に基づきまして査定いたすわけでございますが、電灯と電力との差がさらに若干縮まる方向に出るのではないか、こういうふうに思っております。  それから、最後にお尋ねがございました社会福祉施設及び生活保護世帯につきましての取り扱いでございますが、これらにつきましては、電灯料金でこういう社会福祉政策を行うということではないと思います。本来は財政政策によって社会福祉政策というものを実施すべきだと思っておりますが、ただいま先生から御指摘がありましたように、前回行いましたときにも、しばらくの間旧料金で社会福祉施設及び生活保護世帯には適用いたしたということがございます。これにつきましては、先ほど申し上げましたように本来社会福祉政策で行うべきものでございますが、これは予算でもう決定いたしております。そういうことを考慮いたしまして、前回は年度内において旧料金を適用するということをやっておりまして、今回につきましてもその方向で私ども検討中でございます。
  64. 加藤清政

    加藤(清政)委員 続いて、ガス料金の値上げの問題と原油の問題並びに原油価格の据え置きと電力料金の査定との兼ね合い、石油製品の値下げ、こういう問題について一括して増田長官に御質問したいと思います。  電力四社の値上げの結論が出ていないままに、五月二十八日には都市ガス大手四社のうちの一社である西部瓦斯が平均三四・九一%のガス料金の値上げ申請を福岡通産局にしました。大阪瓦斯、東京瓦斯などもこれに追随する見通しでありますが、電気料金に続いてガス料金の値上げが家計を襲うということになります。ガス料金の値上げに対しては非常な関心が持たれ、非常に影響が大きいわけでありますが、このことに対してはどのように対応されるつもりか、それを第一点としてお伺いしたいと思います。  第二点として、七月以降の原油輸出価格を決めるOPECの第四十七回定例総会が、五月二十七日からインドネシアのバリ島で開かれましたが、最初は、原油の輸出価格は五%程度の小幅の値上げが予想されるということが言われておったわけであります。三年前の原油の大幅な値上げによって世界経済は大きな混乱を招きまして、長期不況の原因となったわけでありますが、その不況もようやく立ち直りの徴候を見せ始めたばかりのいま、またこの値上げがされれば、再び世界経済は大きな混乱を引き起こしかねないと考えておりました。幸いにも原油価格が現行のまま凍結されたことは大変喜ばしいことであると思うのですが、このOPECの原油値上げ見送りに対する通産省見解、そして今後の価格の見通しと、需給についてどう対応しておられるか、その点をお聞かせ願いたいと思います。  さらに、原油価格が据え置かれたとすれば電力コストの計算も変わってくるわけでありますが、今回の電気料金値上げの査定では、原価の中に原油価格の値上げを見込んでいると考えられますが、たとえば原油価格が五%値上げされれば電力コストは一・五%押し上げられると資源エネルギー庁では見ておられると聞いておりますが、電力コスト計算ではどのくらいの原油価格の値上げを考えられますか、この点をお尋ねしたいと思います。  また、OPECの原油価格が据え置かれることによりまして、その分だけ値上げ幅は圧縮されるはずでありますが、現在の査定作業ではそれを考慮しておられるかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。  さらに、OPECで原油価格が据え置かれたにもかかわりませず、石油業界は、日本石油が家庭用灯油の値上げを六月十一日から実施するということを発表しました。その値上げ幅も六・五%というものであります。それに続いて、丸善石油も家庭用灯油の値上げを六月十六日から実施すると発表しております。これには他の元売各社も追随するものと見られますが、OPECで原油価格が据え置かれているのに、国内では値上げが行われるという逆現象でありますけれども、このことについてひとつ通産省見解をお尋ねしたいと思います。
  65. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 OPECの問題につきまして私から答弁いたしまして、残余の問題は長官から答弁をいたします。  五月のインドネシア、バリ島におけるOPECの総会では、いまお述べになりましたように原油価格は据え置きになったわけでございますが、十二月にカタールで次の総会が開かれる予定になっておりますので、この総会でどういう決定がなされるか、私どもはそれを注意深く見守っておるところでございます。世界における大消費国としての日本の立場から申し上げますと、いまは世界的に油が非常に余っておるときでもありますし、さらにまた、いまやはりお述べになりましたように、三年近く続いておりました石油価格急上昇による大混乱がようやくおさまりまして、新しい秩序というものができ上がって、そこから世界経済が回復に向かっておるというその矢先でございますから、そういうときに油の値段は上げないで据え置くべきである、私どもはこういう意見でございます。  さらにまた、先般ナイロビでUNCTADの会議がございましたが、そこでの大きな課題は、すでに御案内のように、一次産品の問題と、それから油の出ない発展途上国の債務をどうするかということが最大の課題であったわけでございますが、油の出ない発展途上国の債務の実情を見ますと、いま約二千億ドルと想定をしております。ことしの年末で約二千二百億ドルぐらいになるのではないかと想定しておりますが、その半分の千百億ドルはおととし、去年、ことしと三年の間に発生したことになるわけでございます。要するに、OPECの大幅な値上げというものが回り回って油の出ない発展途上国の負担になっておる、こういうことだと思うのです。  でありますから、世界の一カ所に数百億ドルという巨大な黒字が貿易上たまるということは世界経済上好ましくございませんし、しかもそれがたまりたまって発展途上国にしわ寄せされるということがいまの南北問題の最大の紛争の種になっておるということ等も考慮いたしますと、私はこれ以上の値上げをOPECは要求すべきではない、こういうふうに思いますが、いずれにいたしましても、そういう観点に立ちましてこの年末のカタールにおける総会の動向を注意深く見守っていきたい、同時に、あわせて日本の立場も機会あるたびに主張していきたい、こういうように考えております。
  66. 増田実

    ○増田説明員 お尋ねがございましたガスの料金の問題でございますが、先ほどお挙げになりました九州の西部瓦斯が現在福岡通産局に値上げの申請中でございますが、本省扱いになっております東京瓦斯、大阪瓦斯、これらにつきましては、値上げの申請が出るということについては私どもまだ何ら聞いておりません。ただ、ガスの原料であります石油、特にナフサあるいはLNGが相当値上がりしておりますので、経理的には相当苦しくなっておるという実情でございます。  それから、先ほどございました、原油価格というものが今回OPECの総会で値上げにならなかった、ところが、電気料金の方の申請は将来の値上げを見込んだ申請になっておるのではないか、その関係はどうなっているかというお尋ねでございましたが、これにつきましては、電力会社の申請、つまり四月に私どもの方が受け付けました四社の申請は、来年石油価格が五%値上がりする、こういう内容になっておりましたが、本年は横ばいで計算いたしております。この来年に値上がりが行われるかどうかにつきましては、これは非常に予測不能の問題でございますので、私どもの方は値上げがないということでこれを査定いたしたいということで、現在そういう査定方針で臨んでおりますが、先ほど申し上げましたようにまだ各種の項目については協議段階でございますので、一応そういう方針であるということでございます。これをもし石油価格を全部横ばい、現在の価格であるということであれば、当然申請からその分だけを査定して落とす、こういうことになるわけでございます。  それから、もう一つございました灯油の問題でございますが、灯油につきましては、昨年の需要期に当たりまして私どもの方で標準価格を決めましたときに、灯油につきましても一応参考価格と申しますか、計算価格が出ておったわけでございますが、需要期にちょうど入っておりますために、これに対してそれをさらに下回る価格で行政指導を行ったわけでございます。石油製品の中で特に灯油というものが国民生活に直結するという立場でやったわけでございますが、この価格はほかのいわゆる中間産品というものに比べましても非常にアンバランスになっておるということで、現在石油各社がその調整を需要家にお願いをしているという段階でございます。ただ、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、民生用灯油というものは国民生活に直結いたす品目でございますので、不当な値上がりのないように十分監視、指導していくことで対処していくつもりでございます。
  67. 加藤清政

    加藤(清政)委員 あと八分しかありませんので、一括して質問したいと思いますが、一つは菓子業界に対する大型パン店の進出ということであります。  菓子業界中小企業が全体の九九・六%を占めておりまして、菓子業界というのは中小企業性の高い業界であります。そこへ大手菓子メーカーである山崎パンが和洋菓子分野へ進出いたしまして、大量生産、安売りなどによって、和洋菓子業者が圧迫を受けて倒産したりあるいは廃業したりしているのが続出しております。これに対して、全国菓子工業組合連合会が中小企業庁に対しまして工場増設の中止などの要望書を出しまして、善処方、行政指導を強力に要請しているわけであります。これは中小企業分野に大企業が進出している分野法の問題ともとれる典型的な例だけに、きわめて刮目すべき問題でありますが、これに対して中小企業庁としてはどう対応されておるか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。  なお、中小企業の倒産と防止策、中小企業の金融の現状、中小企業の金融対策、この点について一括して質問いたしますが、まずこの菓子業界に対する大型菓子店の進出についてどう行政指導されておるか、どう対応されておるか、その点についてひとつ御答弁願いたいと思います。
  68. 齋藤太一

    ○齋藤説明員 山崎製パンの生菓子業界への進出につきましては、この五月十八日に全国菓子工業組合連合会から、行政指導によりまして解決をしてほしい、こういう御要望がございましたが、本件につきましては、現在農林省が両当事者につきまして話し合いをあっせん中でございますので、中小企業庁といたしましてはそのあっせんの推移を見守りまして、農林省と協力をいたしまして事態の円満な解決に努力してまいりたい、かように考えております。
  69. 加藤清政

    加藤(清政)委員 中小企業の倒産と防止策についてお尋ねしますが、負債総額一千万円以上の倒産は、昨年の八月までは九百二十件台、九月からは急増いたしまして千件を超えるようになりました。特に十二月には、年末ということもありまして、戦後最高の約千五百件という異常な事態になりました。ことしに入ってから、一月は千七十五件、二月が千八十九件、三月は千二百二十五件とふえ続けております。五月には千二百十八件で、五月としては戦後最高ということになっておりますが、その原因を見てみますると、相変わらず販売不振、売り掛け代金回収難などの不況型倒産が全体の四七・八%と、半数近くを占めております。そして不況型倒産の中でも、設備、雇用面での過剰による倒産や、担保積み増しができず金融機関からはつなぎ資金を断られたり、商社金融の打ち切りによる倒産も目立っており、また連鎖倒産も多くなっております。  この倒産の規模別では、資本金一千万円未満が千六十一件と、全体の八七・一%を占めております。つまり、中小企業は不況の波をまともに受けて相変わらず低迷しておるわけであります。このような高水準で推移している倒産件数をどうやって減らすか。一方ではいわゆる景気上昇の機運が高まっていると政府は言っておりますけれども、片や倒産が中小企業の中に非常に深刻に浸透しておるということについて、倒産問題は大変深刻な問題であろうと思います。通産省としてはこのような倒産の多発する現状をどう考えておられるか、またその原因はどこにあると考えておられるか、倒産防止のために具体的な対策をどうするか、今後どのような対策を立てられるか、その点についてお伺いしたいと思います。  さらに、中小企業の金融でありますが、倒産の最大の原因はやはり金融対策が十分でなかったということを一面物語っておるわけでありますが、経済情勢が大きく変化する中で中小企業は不況に悩み、原材料高の中で製品の値上げをすることもできず、金融的に非常に苦しい立場に立たされております。今年度の政府系三金融機関の融資枠も三兆五百億円と、前年度の二兆五千億円と比較して一五%程度の増加がありますが、これでは物価の上昇を考えまするとかえってふえてないというような実情であるわけであります。そこで、現在の政府系三金融機関の申し込み状況と、これに対する貸し出しの状況についてお尋ねします。  聞くところによると、幾らか制度融資においてはだぶついているというようなことも言われるわけでありますが、そこにやはりへんぱなものが感じられるわけでありまして、不況による返済猶予も増大しなければなりませんが、その点もあわせてお聞かせ願いたいと思います。  さらに、政府系三金融機関の融資状況は、いま言われましたように、まだ余っておるというようなことが言われておりますが、これは貸し出し条件が厳し過ぎるのかどうか。そして、民間金融機関でも選別融資を強化して、中小企業に対しては意図的に融資の制限をしているということにも通じるわけであります。現在のような景気の回復期にはますます選別融資が強化されて、優良な企業は融資が容易に受けられるが、本当に資金を必要とするそういう中小企業においては融資を受けることができないで、そのまま倒産に通ずるような結果になることも予想されるわけであります。そういう企業こそ何らかの方法でもって救済し、それを伸ばしていかなければならない必然的なものも感じられるわけでありますが、中小企業庁としては選別融資の実態をどう見ておるか、また中小企業の金融に対してどのような取り組みをしようとしておられるか、その展望について御答弁をお願いしたいと思います。
  70. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 最近まだ倒産が多いわけでございますが、これは景気の回復期にはこれまでもややもすると多かったわけでありますが、その原因は、不況の間に体力が消耗いたしまして、ようやく景気の回復に向かっても、消耗し尽くした体力のためになかなか立ち上がれないということ等が倒産の一つの大きな原因になっておると思います。今回は不況が非常に長期化しておりましたし、しかも深刻であったために、現在は回復期に向かっておりますが倒産が多いのだと私ども考えております。そこで、特に景気の回復期において倒産が出ないように、今後特に数カ月間というものは気をつけていかなければならぬ、必要な対策というものを立てなければならぬ、こう思っております。  残余の問題につきましては、長官から答弁をいたします。
  71. 齋藤太一

    ○齋藤説明員 倒産防止対策でございますが、金融面でいろいろと手を打っておるわけでございます。  第一は、政府関係中小企業金融三機関の資金量の確保の点でございまして、いま先生からもお話がございましたように、ことしは三兆五百億円弱の三機関の融資枠を計画として用意いたしております。昨年は二兆五千億でございましたので、ほぼ二割増しの計画になっております。  それから実際の運用におきましても、非常に困っておられるところには、既往債務の返済猶予でございますとか、あるいは担保につきましての評価を弾力的に考えるといったようなことを指導をいたして、現実に各機関で励行いたしております。  それから信用保証の面におきましては、無担保無保証人で信用保証いたします特別小口というものにつきまして、一人当たりの限度を、昨年の臨時国会で信用保険法を改正をしていただきまして百五十万円から二百五十万円まで引き上げましたし、無担保の保証につきましても一人当たりの限度を五百万円から八百万円に引き上げた次第でございます。  そのほか、いわゆる不況業種というもの、これはこの指定を受けますと通常の場合の倍額まで信用保証が受けられるわけでございますが、この不況業種をさらにことしの三月で切れるところを六月まで延長いたしまして、現在約二百三十八の業種を指定をいたしております。これは全体の製造業のほぼ四割に当たる事業所がこの対象として適用になっております。  また、民間の金融機関に特にお願いをいたしまして、中小企業救済特別融資制度というものを実施をいたしておりますが、ことしの春までにほぼ二千六百億円の融資を行いましたが、現在またこれに追加をいたしまして約四百億円の救済特別融資を実施中でございまして、これは信用保険の不況業種に指定されております全業種を対象といたして実施をいたしておるところでございます。  もう一つの御質問政府系の三機関に対します融資の申し込み状況と貸し付けの状況でございますが、五十年度の第三・四半期の申し込み状況は前年同期比で一一三%でございます。それから第四・四半期も一一三%でございます。今年度に入りまして四月の申し込みは一一〇・八%でございまして、比較的落ちついた水準で申し込みは出てまいっております。これに対しまして融資枠の方は、ただいま申し上げましたように、前年度の当初枠に対しまして約二〇%増しの融資枠を用意をいたしておりますので、大体申し込みに対しては支障なく充当できておるというふうに考えております。  申し込みがわりあい落ちついておりますのは貸し出し条件等が厳し過ぎるのではないかという御指摘がございましたけれども、御承知のようにいま景気が立ち直りかかっておるところでございますが、まだ前向きの設備資金あるいは増加運転資金の需要がそう活発でございません。一方、後ろ向きのいわゆる在庫金融的な資金につきましては、在庫調整等も進みましてやや一服という感じがございまして、そういう情勢を反映いたしまして総体として資金需要が平静になっておる、こういう状況から、三機関の窓口は繁忙ではなくて、大体申し込みに対しまして十分対応できる、こういう状況になっておるわけでございます。  なお、特に担保等が少なくて借りにくいという方につきましては、貸し増しのたびに現在とっております担保の見直しをするといったようなことを十分配慮するように指導をいたしております。
  72. 加藤清政

    加藤(清政)委員 時間が参りましたので、要望だけしたいと思いますが、中小企業者は俗に目じりのしわと言って、日本の経済がインフレになってもデフレになっても、大企業には大きな影響を持つけれども中小企業に絶えずしわ寄せだけが来る。人間が笑っても泣いても目じりにしわが寄るように、しわ寄せが中小企業あるいは零細企業の上に来る。しかもその中小企業、零細企業は日本の産業構造の大体七九%を担っておるということで、中小企業振興ということは大変重要である。しかし、中小企業に対しては、倒産状況や経営状態を見てもきわめて微弱であるということで、それに力を入れていくためには、何といっても金融の面でこれに力を入れていかなければならないと思いますが、えてして歩積みだとか両建てだとかということで、実際には貸し出しに制約がありますし、それから中小企業に対する金融の問題も実際にはなかなか容易でないという点について、ひとつ金融問題については適切なる指導と、そして実際に中小企業が立ち直っていくその素地を金融面において特に中小企業庁は力を入れてもらいたい、そのように要望いたします。そのことについてもう一度御答弁願いたいと思います。
  73. 齋藤太一

    ○齋藤説明員 歩積み両建ての解消につきましては、従来から中小企業業界から非常に希望の強いところでございまして、大蔵省等を通じましてこの改善方につきまして御指導を願っておるところでございます。漸次歩積み両建ての比率も縮小を見て改善の実は上がっておると存じますが、まだ完全に解消するに至らない点は大変遺憾に存ずる次第でございます。さらに大蔵省等とも連絡をとりまして、歩積み両建ての一層の減少に向かいまして、金融機関等の指導等に遺憾なきを期してまいりたいと考えております。  特に民間の金融機関の中小企業向け貸し出しにつきましては、その比率が極力上がりますように大蔵省等を通じまして要望いたしておるところでございますけれども、このところ中小企業向けの貸し出し残高に占めます融資比率は五二%から五三%台を前後しておりまして、特にこの数カ月は漸次中小企業向けの融資比率が上昇を見つつございます。特に、大企業と違いまして、資金調達力が中小企業の場合には弱いわけでございますので、信用保証制度等の充実にさらに努力しまして、中小企業向けの資金の確保に遺憾なきを期してまいりたいと考えます。
  74. 加藤清政

    加藤(清政)委員 質問を終わります。
  75. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 上坂昇君。
  76. 上坂昇

    ○上坂委員 原子力発電所の問題について質問をいたしますが、実は五月二十日に科学技術特別委員会質問をいたしましたが、そのとき東京電力大熊発電所の火災の問題を聞いたわけであります。聞いても完全な答弁がなくて、あまりよくわからなかったものですから、この前現地を見てまいりました。やっぱり私たちの見方では、あの火災というのはなかなか納得がいかないわけです。というのは、高さ約三メートルで、溶接した部分というのは十センチ長さのもので幅が五センチのものを二カ所、アングルのところだけ、角をとめた溶接をしただけなんです。その火花が、約四メートルぐらい横の方に離れておるぼろきれに散って、散った火花がビニールに入っていたいわゆるウエスに保存というのかされていて、それがしばらくたったら燃え始めた、こういう報告なんですね。  現地を見てみますと、床がかなり焦げた跡がある。そして電線を取りかえたというふうに言われておるわけでありますが、確かに取りかえました。十五メートルばかり取りかえたわけでありますが、その取りかえたものも、煙か何かで熱がこもったから取りかえた、こういうような話でありますが、どうもその辺もちょっと私たちにはなかなか解せない。そうなりますと、やはりかなり燃えているのじゃないかという気がしますが、ああいう現象が一体起こるのかどうか。これは現地に科学技術庁の方から出張されている人がいて報告があったということでありますが、その報告で東電からの報告と違うところがあるのかどうか、その辺ちょっと答弁をしてもらいたいと思います。
  77. 松田泰

    ○松田説明員 お答えいたします。  私どもの方に現地の福島の連絡調整官事務所から参っております報告によりますと、何分実際に起こりましたのが四月二日でございまして、これもいろいろな経緯がありましたことは先生御存じだと思いますが、調査に入りました時点は五月になっておりますので、特に火災の状況についてつまびらかに調査することはできない状態でありましたが、その報告によりますと、おおむね東電が言っていることはそのように思われるというものでございます。  ただ、特に証拠となるものがあるわけじゃございませんけれども、先ほど先生が言われましたような距離の問題、あるいは床の焦げの問題、それから取りかえられたケーブルの外側の覆いそのものが残っておりますので、それを見た所見等が書いてございまして、それによりますと、個人的には火災に関する専門知識を持ち合わせないわけでございますけれども、くすぶった程度であるかどうかについては、やや個人的には疑問の点もなしとしない、もう少し火はあるいは大きかったかもしれないということを述べておりますが、いずれにしても、その程度の火災で安全上あそこが大きな問題になるとは思われないという報告でございます。
  78. 上坂昇

    ○上坂委員 これは東電でも技術庁でもみんな同じなんですが、故障があるのはやむを得ないという考え方があると思うのです。それが事故につながらなければ、それはやむを得なかったのだ、こういう考え方があると思うのですね。そういう考え方のところで安全管理が非常におろそかにされるおそれが出てくると思うのです。私も指摘してまいりましたけれども、そうした溶接をするということは、これは至るところでやっているわけです。どんなところでもやっている。したがって、故障が事故につながって、それが環境に影響があるような状態にならないようにしていくということが原子炉の安全性でありますから、そういうことについては十分注意をしてやるように、ひとつ監督を十分にされるように希望をしておきたいと思います。  もう一つお願いしておきますが、いまの田中事務官の報告書について、これは一応写しを私のところに提出をしてもらいたいと思うのです。  時間がありませんから、次に進みますが、六月一日と六月二日に一号機並びに二号機がまた故障を起こしておりますが、この故障の模様について、簡潔にひとつ御説明をいただきたいと思うのです。
  79. 高橋宏

    高橋説明員 お答えいたします。  六月一日の件でございますが、一号機におきまして制御棒駆動水圧ポンプの圧力が低下いたしまして、そのために予備ポンプに切りかえました。このポンプは通常運転中一台でよいわけでございますが、電力の安定供給を確保するため、故障した場合でも発電所を停止することなく運転するという趣旨で一〇〇%の予備機を持っておりますが、先ほど申しましたように、圧力低下が認められましたので、このポンプを停止して予備機に切りかえ、発電所の運転には支障はございませんでした。なお、この異常の認められたポンプは新品に取りかえるとともに、分解点検をいま行っておるところでございます。  それから、三日の件でございますが、これは二号機でございまして、再循環ポンプが置いてある部屋にエアコンディショニング用、空調用の機械がございますが、この空調のための冷却水が通っておりますが、このコックに一部漏れがございまして、これはもちろん普通の水でございますけれども、これが循環ポンプの配電盤の上にたれまして配線がショートいたしまして、ポンプが一台停止いたしました。これは通常ポンプは二台で定格出力が出るような構造になっておりますが、そのために出力を半分に落として運転をいたしました。このショートしました配電盤につきましては、点検修理をいたしまして、六月九月でございますが、すでに正常運転に復帰いたしております。  以上でございます。
  80. 上坂昇

    ○上坂委員 二号機の場合には、これは二台で一定の出力を出している、そのうち一台とめれば出力は低下する、こういうことがわかったわけであります。  それから、問題は一号機でありますが、この制御棒の駆動用の水圧ポンプがもし故障が起きるということになれば、制御棒がみんな上がらなくなったりなんかして、そして自然と核分裂がとまってしまうというかっこうになるのじゃないかと私は思うわけでありますが、そうなりますとこれはもう出力は出ないというふうに考えるわけですが、そう考えていいわけですか。
  81. 高橋宏

    高橋説明員 このポンプは、通常運転時におきまして、出力を調整する等のために制御棒を引き抜いたり挿入したりする、そういう操作用のポンプでございます。いま先生の御指摘のございました、たとえば緊急時に制御棒を全部入れる必要がある、ポンプが故障すれば全部引き入れるのじゃなかろうかという御質問でございますが、その系統はこのポンプとは別にございまして、いわゆるスクラムアキュムレーターという名前でございますけれども、そういう系統で別に確保してございますので、御心配のことはないかと存じます。
  82. 上坂昇

    ○上坂委員 次に、東電の一号、二号炉の年間の稼働率ですが、これは年度別に報告をもらいたいと思います。
  83. 高橋宏

    高橋説明員 お答えいたします。  まず一号機でございますが、四十六年の三月に運転開始をいたしておりますが、年を追って稼働率を申し上げます。  この稼働率は、当該期間の歴時間数に対する稼働中の時間の比率という数字でございます。四十六年度七二・四%、四十七年度六八・一%、四十八年度五八・七%、四十九年度三六・二%、五十年度二一・八%となっております。ただ、最近の稼働率を見ますと、五十一年一月から三月まで八七・四%、四月は中間点検がございまして四一・三%、五月は一〇〇%となっております。  二号機につきましては、四十九年七月に営業運転に入っておりますが、初年度は各種点検のためにほとんど停止しておりましたが、五十一年一月から運転を再開いたしまして、一月から三月までの稼働率が八四・六%、四月が一〇〇%、五月が九三・一%でございます。  三号機は本年の三月に営業運転に入りましたが、四月一〇〇%、五月九七・七%でございます。
  84. 上坂昇

    ○上坂委員 次に、四十九年九月に起こりました再循環パイプ系のバイパス管のひび割れの問題でありますが、これは東電の報告書によりますと、「この再循環系バイパス管の役割りは、再循環ポンプ起動時に再循環配管の暖機等を行なうために使用されるもので、通常運転中はバイパス弁次閉じて運転していた。」こうなっております。このバイパス管というのはどういう役割りを果たすものであるか、それから、通常運転中はバイパス弁をまとめて運転をしていたというふうに言われておりますが、これはどういうふうな運転になっているのか、とまってしまうものかどうか、この点についてお答えをいただきたい。
  85. 高橋宏

    高橋説明員 いま先生御指摘されましたように、この再循環バルブのバイパス管と申しますのは、原子炉を起動するときに、一度に冷い水が原子炉に入りますといろいろ炉反応上好ましくないわけでございまして、そのために少しずつ水を入れる必要がございます。ところが、主弁の方、主なバルブの方は開度がそう細かく調整できませんので、そのために細いバイパス配管をつけまして、そこでまずバランスをとりまして、それから主弁を開く、バイパス管は閉じる、そういう運転が従来の方法であったわけでございます。
  86. 上坂昇

    ○上坂委員 そうしますと、これは少しずつ入れて、主弁の方が動き出せばここはとめてしまうという意味ですか。
  87. 高橋宏

    高橋説明員 従来そのような運転をいたしておりました。
  88. 上坂昇

    ○上坂委員 始動期に、要するに起動を行うために少しずつ水を入れて、それをだんだんだんだんやっていって、やがて主弁を通じて本管が動き出すというかっこうになる。そうすると、普通はとまっている。そのとまっているところのバイパス管がどこの原子炉でもひび割れが出てくるということに私は非常に疑問を持つわけなんです。そういう点はどういうふうにお考えになりますか。
  89. 高橋宏

    高橋説明員 この原因としましては、いまおっしゃいましたように、運転中そこをバルブを締めるわけでございまして、そこで水が停滞するということがかなり原因の一つじゃなかろうかという判断になっておりますが、若干補足いたしますと、この現象はいわゆる応力腐食割れという現象とわれわれ解しております。この応力腐食割れという現象は三つの原因が重なって起きるというのが、世界的な解明の結果、日本におきますいろいろな試験でもそうなっておりますが、一つはいわゆる応力、これは熱応力、残留応力、機械応力、いろいろございますけれども、これが一つ原因です。それからもう一つは雰囲気、それからさらに溶接する場合に若干熱によりまして周辺の金属組織が変わります。こういうことをセンシタイゼーション、鋭敏化と言っておりますが、この材料の鋭敏化と、雰囲気、ここでは、たとえば水が停滞しておった、酸素濃度が若干高かったかもしれないということでございますけれども、その原因と、それから熱応力、機械応力が残っておる、この三つだということで、そのために、それ以来このバイパス配管は運転中といえども閉じずにオープンのまま運転させるという方法に改善いたしております。
  90. 上坂昇

    ○上坂委員 いまの、水が配管内に停滞をしているということですが、普通の水で停滞をしていて、十ミリ程度のいわゆる鉄管、そこにラックができるということが問題になるわけでありますが、なかなか考えられない。ところが、この中に停滞している水は放射性の物質を含んでいる水である、そういうところが影響してこうなるのではないかというふうにも考えられますか。そういう点はどうなんですか。
  91. 高橋宏

    高橋説明員 このいわゆる応力腐食割れという現象は、必ずしも原子力発電所におきます配管、ステンレスでございますけれども、ばかりじゃございませんで、石油配管あるいは石油タンク等におきましても従来そういう報告がなされておるわけでございまして、私どもは、中に放射能を帯びた水があるからこういうことが起きただろうというふうには考えておりません。     〔委員長退席、橋口委員長代理着席
  92. 上坂昇

    ○上坂委員 次に、一号機の五十年度に起きました炉心スプレー系の配管のひび割れの問題でありますが、これはいわゆる緊急冷却装置と関連をするというふうに思いますが、そう考えていいのですか。
  93. 高橋宏

    高橋説明員 炉心スプレー系と申しますのは、緊急時に炉心をスプレーする配管でございます。
  94. 上坂昇

    ○上坂委員 これがとまりますと、原子炉の水位が異常に低下するような事態が生じた場合にこれを注入する、こういう系統だということになっておりますが、この非常用炉心冷却設備というものに関連があるということになりますと、これが故障するということは非常に大きな影響を持つのじゃないか、こういうように考えますが、その点いかがですか。
  95. 高橋宏

    高橋説明員 先ほど御説明いたしました応力腐食割れという現象は、顕微鏡大のひびでございまして、それからその生成原因等から見て、これが直ちに破断に結びつくような、急速に発展するものではないという見解は、各界においてすでに述べられておるところでございます。  おっしゃいましたように、この炉心スプレー系等について、これは単に炉心スプレー系だけではなくて、いろいろな部分についての応力腐食割れ対策については今後とも十分気をつけるということで、私どももすでに溶接施工に伴う諸基準の強化、それから先ほど申し上げました水の停滞部といったような残留応力の除去等の手段をとっておりまして、そのようなことはないというぐあいに考えております。
  96. 上坂昇

    ○上坂委員 時間がないので、こうした問題についてはなお質問する機会を持ちたいというように思います。  次に、先ほどお聞きしました一号炉、二号炉の稼働率を見ますと、五十年度では実に二一・八%までに下がっておるわけですね。第一年度の四十六年が七二・四%で、年々ずっと下がっていって、五年目になりますとこれはもうほとんど稼働していないと言ってもいいくらいの稼働率になってしまう。ここにやはり問題があると思うのです。  日本の原発の状態を見ますと、年平均で稼働率が実に三六・一%の平均であるというふうに言われております。英国では五六・八%、アメリカで五二・六%、西独が一番よくて七一・六%、こうなっておるわけでございますが、特にアメリカの原子炉を使っている日本において非常に稼働率が低い。そして、稼働率が低いばかりではなくて、最近の原発建設の建設費というのはもうウナギ登りに高くなっている。東電が一番最初に、四十六年度に発足した当時のいわゆる建設費というのは三百億か五百億程度だったというふうに聞いておりますが、それがいまでは二千億から三千億になるのじゃないか。特に百万キロワット程度の発電所になりますと実に二千億を突破するだろう、こういうふうに言われております。  こういう稼働率とそれから建設費の増大ということが、私は電気料金にかぶってきているのじゃないかということを心配するわけであります。最近、電力会社の方から続々と値上げが出てきておりますが、この値上げというのも、みんなこうした採算に合わない電力を賄うために、この設備費から、それから低下をしている稼働率というものを賄うために電力料金の値上げをしてきているのではないか、こういうふうに考えないわけにはいかなくなってきます。  こういう点で、昭和六十年度においては実に四千九百万キロワットの、全出力で二五・六%を占める原子力を計画されているということでありますが、私は、そうなりますとますます電気料金というものはウナギ登りに登らざるを得ない、どんどん電気料金の値上げの申請が出てくるのじゃないか、こういう心配をせざるを得ないわけであります。そういう点で、これらの点についての大臣のお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  97. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 原子力発電の稼働率の目標は、大体七〇%ぐらいということを期待をしておるわけでございますが、残念ながらこれまでは、悪い場合は三割前後、いい場合で七割、平均五割前後という、予定に達しない状況でございました。しかし、だんだん改善されると私どもは期待をしておるわけでございます。  それから、今後の原子力発電の目標でありますが、いまお述べになりましたように、十年後に四千九百万キロを想定しておりますが、これは当時における電力全体から見ますと約四分の一でありますが、日本のエネルギー全体から見ますと一〇%弱である。その当時におけるアメリカ、ヨーロッパの主だった国々の原子力発電の目標を見ますと、ほぼ全エネルギーの一四、五%ぐらいを原子力発電によって調達をしよう、こういう計画でありますから、日本の目標が過大なものであるというふうには私ども考えておりません。  しかし、安全性の問題であるとか、環境の問題だとか、そういう問題がありますから、これを進める上にはよほど十分なる万全の対策が必要だと思いますし、特にいま強く御指摘がございました、建設費が急上昇しつつあるではないか、それが電力料金に大きく反映をされるおそれがあるという御指摘は、これはまさにそういう傾向があることは否めません。でありますから、そういう点については十分注意をしながら今後の原子力発電政策というものを進めていきたいと考えております。
  98. 上坂昇

    ○上坂委員 もう一つだけ質問いたしておきますが、去る六月八日の朝日新聞に、横須賀の立教大学原子力研究所の放射性廃棄物の問題が出ております。これは非常に財政的に学校の経営上容易でない折から、原子力を研究なさっている大学には大変御苦労なことでありますけれども、やはり放射性廃棄物についての管理というものは十分されなければならないというふうに思うのです。そういう意味で、これを監督される官庁として、この立大の原子力研究所の廃棄物の問題についてどういうふうに対処されるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  99. 松田泰

    ○松田説明員 朝日新聞報道されました立教大学の廃棄物貯蔵施設といいますのは、たまたま研究所の構内にございます。もと戦時中に掘られました横穴、その横穴を利用いたしまして、そこにこの研究炉から発生する廃棄物及び使用しております放射性同位元素等の試料の残りなどを貯蔵していたものでございます。  この研究炉は三十六年ぐらいから運転しているものでございまして、非常に古いわけでございますが、当時、この横穴を廃棄物貯蔵施設として利用することにつきましては、これを監督しております私どもとしても、これは一つの十分管理し得る、貯蔵するに足るものであるというふうに判断をいたしまして、それを許可しております。と申しますのは、こういう横穴は非常に人の接近を防止する上に容易でございますし、入り口に厳重なとびらをつくっておきますと、そういう点においては非常に有利であるという点がございます。ただ、何分にも壁面等につきましてはコンクリートなどと違いまして崩れるとかあるいは土にしみ込むとかいう可能性もございますので、中に入れます放射性同位元素あるいは廃棄物等につきましては、これを十分な容器等に入れて保存するということで対処できるというふうに考えていたものでございます。  しかし、十五年ぐらいたちました現在におきまして、かなり廃棄物の量もたまってきておりますし、その中におきます廃棄物の積み方と申しますか、配列等という点につきましては、私どもの方で、それぞれ原子炉関係につきましては原子炉等の規制法、同位元素につきましては放射線障害防止法に基づきまして毎年一回検査を行っているわけでございますが、そういう状況でながめておりますと、もう少しきちんと管理する方が将来さらにこういうものの量がふえてきた場合にいいのではないかというふうに思われてまいりました。  その関係で、たとえば原子炉につきましては四十九年及び五十年の検査の際に、もう少しきちんとする管理が可能なような別の施設を考えてはどうかということを、これは法律違反ということではございませんで、より改善策としまして立教の方に申し入れてございます。立教大学の方でもその点につきましては全く同意見でございまして、漸次そういった新しい建物あるいは新しい管理設備をつくってこれを移しかえていく、あるいはすでにたまっておりますものにつきましても、これをたとえば放射性同位元素協会等に渡しまして容積を減らす等々の改善策を検討している状態でございます。  たまたま新聞はその中間の状態報道されたものでございますが、立教におきましても、私どもにおきましても、これの改善策はすでに立てておりまして、その方向で進んでいる途中の段階でございます。
  100. 上坂昇

    ○上坂委員 時間が来ましたから、終わります。
  101. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 米原昶君。
  102. 米原昶

    ○米原委員 本日は多国籍企業規制の問題について質問します。  すでに四月二十三日のわが党の野間議員の質問に対して河本通産大臣も、国連やOECDなどで打ち出されている多国籍企業規制方向に日本も協力していきたい、こう答弁されております。  本年になっても、リマで国連多国籍企業委員会が討議をしておりますが、すでに昨年の十二月十五日に、多国籍企業及びその他の企業、その仲介者及びその他の関係者による腐敗行為に反対する措置という決議が、国連第三十回総会で満場一致で採択されております。  国連などで多国籍企業規制が議題になってからいろいろな経過があると思いますが、今回のロッキード事件にもかんがみ、日本政府、ことに通産省としてこの国連の決議に対応して多国籍企業規制という問題をどう具体化してきておられるか、日本としての対応、国際的な規制との協力という内容を、ひとつ具体的に詳しく聞かせていただきたいのであります。
  103. 和田敏信

    和田説明員 ただいま先生、十二月十五日の国連決議に関してお尋ねでございます。当該国連決議は、母国及び受け入れ国が多国籍企業その他の企業の不正行為について立法措置を含め必要な措置をとることを要請すること等を内容といたしたものでございますが、わが国に関しましては、不正行為につきましては現在刑法等による規制及び日米司法協力等必要な国際司法協力を行っておるところでございます。したがいまして、わが国の場合は既存の法制の運用及び必要な補完措置で国連決議に関しましては十分対応できるのではないかというふうに考えております。  また、わが国が多国籍企業に関してどのような措置を講じておるか、あるいは講じようとしておるかというお尋ねでございますが、一応国連決議プロパーと離れまして御回答申し上げますと、基本的姿勢といたしましては、わが国は多国籍企業に関しましては国際協調のラインでこれを実施いたしてまいりたいというふうに考えております。国際協調のラインといたしましては、国際連合及びOECD等における現在の本件に関します審議状況に照らしまして、これらの決議あるいは何らかの合意等が積極的に行われますよう、わが方も協力してまいり、また定まりました場合には定まりましたところに従いまして、必要に応じ国内的な措置を講じてまいる、こういうのが基本的態度でございます。  なお、先生御承知のとおり、多国籍企業に関しまして、定義等に関して必ずしも国際的な意見の一致を見てまいっておりませんが、日本政府といたしまして、通産省といたしましては、現在商社の活動に関しましては特別の留意をいたしております。すなわち、四十八年四月から十二月にかけまして、総合商社はそれぞれ自分の企業が行うべきビヘービア、コード・オブ・ビヘービアというのを作成をいたしております。各社それぞれ作成をいたしておりますが、これらのコード・オブ・ビヘービアが非常に適切に実施されますよう、当方として十分オブザーブもいたしておりますし、また必要に応じ商社の代表等からその遵守ぶりに関しての報告を受ける等いたしております。このような措置が、われわれといたしましては国際的な協調のラインで行われます方向に沿ったものであるというふうに理解をいたしております。
  104. 米原昶

    ○米原委員 いまお話を伺っておりまして、これでは不十分ではないか、国連やOECDで討議されている規制対応するという一般論だけでは不十分ではないか、それだけのことならいままでもおっしゃっているわけであります。特に去年の十二月十五日の国連総会の決議では、立法的措置を含む適当な措置、これがはっきり入っております。そうして、そういう措置を各国がとるように要請をしておるわけであります。  この前の天谷審議官の答弁では、OECDの資本自由化や、コード・オブ・ビヘービアや、日米通商航海条約の内国民待遇などがあるので、余り強い外資の規制はできないという話でしたが、チリのITT、また今度のロッキード事件などを見てもわかるように、いまや多国籍企業は一国の主権の侵害、干渉を露骨に行っております。これを強力な規制のもとに置かないで、日本の国民経済の安定した発展はあり得ない。日本の姿勢は、すでに述べた国連での討議や規制の決議に対する措置が実はちっとも具体化されていないのではないか、国際的に見てもこれでは立ちおくれではないか、こう思うわけです。アメリカですら、すでに多国籍企業規制が具体化されようとしております。もっとこの国連の決議に沿った積極的な措置や国際的な提案をすべき時期に来ているのではないかと、こう思うわけです。  実は私自身、先日メキシコシティーで行われた列国議会同盟の総会に日本の議会の代表の一人として出席した。そのときに、武器の国際的な取引の問題についてこれを規制すべきだと、規制の決議が行われたわけですが、その討論の際に、ことに多国籍企業の中でも兵器に関係するような、ロッキードのようなこういう多国籍企業に対しては当然厳しい規制をやる必要があるということを私自身提案しました。いや、私だけではなくて、自民党の福永さんも同様の意見を述べられたのです。そのために、ここに決議がありますけれども、原案には入っていなかった多国籍企業規制という問題を、実は日本の提案によって決議に入れさせたという経過もあるわけであります。そういう意味では日本としても当然法的措置考えるべきときに来ているじゃないか、こう思いますが、ひとつ通産大臣見解を聞きたいと思うのです。
  105. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 多国籍企業の問題は、いまお述べになりましたように国連及びOECDでなお討議が続いております。OECDの討議は大分進んでおりまして、近く全体としての結論も出るやに聞いておるわけでございます。日本といたしましては、そういう国際的な動きをもう少し見きわめました上で、どう対処すべきかということについて態度を決めたいと、かように考えております。
  106. 米原昶

    ○米原委員 いま申しましたけれども、この国連の決議では、腐敗行為に対して各国がそれぞれの国内法に照応させて規制調査、適正な法的手段をとる、そういう権利を再確認すると言っているわけであります。このように国際的にも認められた権利をもっと積極的に行使するのが、日本としていまとるべき態度ではないか。新聞報道を見ますと、河本通産相自身は、もし営業、経理内容などについて問題の多国籍企業があれば、新増設備の許認可の便宜を図ることを差し控えるような規制措置考えているという発言が出ておりましたが、このような規制措置がもっと具体化されていいのじゃないか。河本通産大臣も一部その点は考えておられるのじゃないかと考えて、私、そういう積極的な意見はないのかどうか聞いているわけです。
  107. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 実は国連とかOECDで多国籍企業の問題が継続しておるということを先ほど申し上げましたが、それじゃ多国籍企業の定義は国連では何と考えておるのか、あるいはまたOECDの委員会では何と考えておるのかということになりますと、まだはっきりした定義も決まっておらぬようであります。でありますから、全体としての討議がずっと進んでおりまして、近くおおよその結論も出ようとしておるやさきでございますから、これは日本だけ独自の行動をとりましてもなかなか規制はしにくいし、効果も上げにくいということでございますから、もう少し国際的な動きを見まして、どう対処すべきかということを最終的に決めたい。アメリカあたりも何か立法措置等をいま考えておるようでございますが、世界全体としてのいろいろな動きを総合的に判断をいたしまして、日本としてのとるべき態度というものを最終的に決めたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。決して消極的に考えておるわけじゃございませんで、積極的に考えておるわけでございますが、世界全体の動きを見ながら決めていきたいと、こういう考え方でございます。
  108. 米原昶

    ○米原委員 それでは、ひとつ外務省の方にお伺いしたいのです。  今度リマで行われた会議でありますが、外務省国連局の経済課が三月十六日にまとめた「第二回国連多国籍企業委員会討議結果」というのが出されておりますが、ここで多国籍企業のコード・オブ・コンダクトについて発展途上国七十七カ国グループと西側先進国との間に、このコードに法的拘束力を持たせることについて意見の食い違いがあった。つまり、いわゆる先進国グループの方は法的拘束力の点で異論を唱えた。発展途上国の方は皆、多国籍企業規制を法的なものとしてやるべきだ、単なるコード・オブ・コンダクトじゃだめだ、これが国際的にも問題になっておるようであります。しかし、昨年十二月十五日の国連総会の決議に沿って考えるなら、当然このコードには法的拘束力を持たせるべきだという七十七カ国グループの意見の方が国連総会の決議に沿っているじゃないか、これは簡単に決議を比べて読んでみればわかることであります。こういう問題が起こったときに、果たしてこの会議で日本政府はどういう態度をとられたのか、この点、その意味を説明していただきたい。
  109. 村上和夫

    ○村上説明員 ただいま先生御設問のコード・オブ・コンダクトに法的規制力を持たせるかどうかという点は、国連の会議におきましても大変に議論された点でございまして、わが国は他の西欧諸国と同様に、この法的拘束力を持たせることについて必ずしも納得しなかったわけでございます。その意味はいろいろございますが、たとえば法的拘束力と申しましても、国際法が現在の多国籍企業にどういうふうに適用されるか、先ほど河本大臣からも御説明がありましたように、多国籍企業そのものが法的に見てどういう存在であるかということについて、必ずしも国際間でまだコンセンサスがない現状でございます。また、多国籍企業はもともとその企業の本社がございます国以外のよその国で活動するわけでございますから、その母国とそれから活動する国の法制との間のいろいろなそご、関係等が公的な法律、それからいろいろな私的な法律で制度の違いがございますために、それをどういうふうに取り扱うかという点が非常に国際的に問題でございまして、そういう点を十分に詰めた上で、実際に法的拘束力を持たしてもそれが実行可能であるということが十分に確認された上でなければ、法的拘束力について国際的な合意をすることは適当でないというのが、わが国その他の西欧諸国の考え方でございます。
  110. 米原昶

    ○米原委員 いまの問題がまさに重大問題だと思います。この問題についてはさらに私は機会を見てもっと詳しく論じたいと思いますが、とにかく全体としては国際的に多国籍企業の進出の規制が強化されようとしている、そういう時期であります。ところが、わが国では昭和四十二年から実施されてきた資本の自由化が、その最終段階である第五次自由化を本年五月に完了する、こういうことになっておるわけであります。最近でもIBMなどの電算機の自由化、それからダウケミカルの日本進出など、多国籍企業の進出が目立ってふえております。  アメリカの最近の対外直接投資累計額、一九七四年末の統計を見ますと、総額千百八十六億ドルの中で対日投資が三十三億ドル、二・八%を占めております。これが十六年前の一九六〇年にはわずか二・五億ドルと、一%にも満たなかったのでありますから、アメリカの対日投資は急速に伸びていることになります。伸びの大きかった対ヨーロッパ投資でも一九六〇年に比して六・七倍であるのに、対日投資は十三・四倍の伸びであり、最近のわが国経済にとって外資の比重は非常にふえております。そして、それに伴っていろんな問題が起こっているわけであります。そういう点では、日本の国民経済を発展させる上でも、多国籍企業の取り扱いが今後非常に重要になる、ことにロッキード問題にあらわれたような腐敗行為あるいは横暴な行為は絶対に許してはならぬという意味での規制が必要だ、こう思うわけであります。  たとえば、西武オール・ステート社やオクシデンタル社などのアメリカ系の生命保険会社が、新しい販売方法と新商品を持って乗り込んできております。このように、国際的にも外資の規制が強まる中で、日本だけは資本の自由化の過程を終わって外資に門戸を完全に開いているわけであります。すでにロッキードの日本における腐敗行為の歴史は古いのでありますが、これからますますこのような多国籍企業の問題が起こってくるし、それが下手をすれば日本の主権侵害になるような行為さえ行われるわけであります。それだけに、特に日本においてはこの規制が重要であります。  このような情勢対応する日本政府としては、私は、リマにおける態度では不十分じゃないか、発展途上国がこの点を気遣っているのも当然でありまして、いまのような態度ではむしろ時代逆行である、通産行政上も、あるいは独禁法の点から見ても規制する方法はいろいろ考えられるのではないか、こういう点を感じているわけなんですが、この点について、公正取引委員会では多国籍企業規制の問題で独禁法上どのように考えておられるかということを一言聞いておきたいと思います。
  111. 澤田悌

    澤田説明員 過般第二回の国連の多国籍企業委員会が開催されまして、先ほど御指摘のように、今後の作業計画等が採択されたのであります。その中で、多国籍企業の行動基準案を作成することを優先的に取り上げておるのであります。公正取引委員会といたしましては、今後ともこうした同委員会の活動に深い関心を払っていきたいと思っておるのでありますが、そういう動きに積極的に協力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  112. 米原昶

    ○米原委員 それから、私は資本の自由化に伴って入ってきた外資の横暴の一例として、一つ問題を聞きたい点があります。それはアメリカの電算機メーカーのバロースというのが高千穂交易の御殿場工場を買収した件であります。電算機の自由化以前になされた昨年の十月の高千穂交易とバロースとの基本契約では、工場の売却など営業譲渡に伴って従業員の雇用の継続が確認されておりまして、通産当局もそのことは御存じであったはずであります。  ところが、五月二十日の自由化後の段階では、工場のみで、従業員は全員解雇する、こういうことを言い出した。二月の定款変更の際でも、製造は続けるということは通産省承知していたはずであります。このように、高千穂交易の経営難につけ込んで営業譲渡で工場を買収しておきながら、そこで働いていた従業員を全員解雇するなどというのは、まさに外資の横暴きわまりない行為であります。バロース側は組合の団体交渉にすらなかなか応じようとしなかった。今後自由化に伴って外資の横暴の増大が予想されるのでありますが、通産当局としては、このような一方的な外資の行為をどう規制するつもりでおられるか、この点を聞きたいのであります。
  113. 熊谷善二

    ○熊谷説明員 お答え申し上げます。  本件につきまして、高千穂交易の持っておりました高千穂パロースの株をバロースに売却をするという問題につきましては、御承知のとおり高千穂交易の子会社でございます高千穂不動産等々の経営上の不振等から高千穂交易自身の企業経営が破綻に瀕しようというような状況になって、高千穂交易の方から株の譲渡につきまして、むしろ救済措置の一環として依頼をした経緯がございます。その際、株の売却だけではやはりまだ資金的には不足するという問題がございまして、工場の譲渡という件もバロース側と話をしたと承知いたしております。その際、いまお話がございましたのですが、従業員の取り扱いにつきまして高千穂交易とバロースとの間ではっきりとした取り決めがなされていたかどうかにつきましては、私ども確認はいたしておりません。  御指摘の定款変更につきまして、今年の二月に定款変更の申請が出まして許可をしたわけでございますが、この定款変更によって製造権を得たわけでございますが、実際に物を製造するかどうかにつきましては、法律上は会社側の営業上の判断によるものかと思います。しかしながら、今回の御殿場工場の、生産工場としての従来の方針を変えて他の用途、たとえば倉庫その他に使うという措置に伴いまして、従業員の人たちの間にいろいろな雇用上の問題が起きておるということにつきましては、私どもとしましても遺憾に考えておるわけでございまして、こういった従業員の方の立場にも十分な配慮をして措置をするように、通産省といたしましてバロースと高千穂交易両方に対しましてすでに従業員の方の意向をよく伝えまして、円満解決を図るように指導をいたしたわけでございます。
  114. 米原昶

    ○米原委員 私もその経過を十分にいままでに知っているわけでありませんけれども、とにかく自由化に踏み切った以上、その結果として日本の勤労者の雇用がむしろ損なわれるというような事態は絶対許されないと思うのです。日本の国民経済の発展を損なうようなやり方というものは許してはならない。そういう点でも通産省としてさらに積極的な措置を講じていただきたい、このことを要望しまして、私、時間がありませんから、これで質問を打ち切ります。
  115. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 野間友一君、     〔橋口委員長代理退席、渡部(恒)委員長代理着席
  116. 野間友一

    ○野間委員 最初に、中小企業庁長官に一点だけお尋ねをして退席を願いたいと思いますが、去年の十二月に当委員会において私が、中小企業信用保険法の対象業種の拡大の問題について要求をいたしました。その中で、五月二十一日付の施行令で、学校教育事業、それから観光業、園芸サービス、これらを追加して施行令の中に入れた、これは結構なことでありますけれども、ただ私が要求した中に、小うたとか端うたとか、あるいは生け花、そういういわゆるレッスンビジネスの中でも個人経営のものを対象業種に指定しろという要求をしたわけですが、今回の施行令の改正ではこれは入ってないわけですね。これは十二月のときには早急に検討するという約束をされたわけですけれども、いまだにこれが入ってない。これについてどう対処するのか、まずお答え願いたいと思います。
  117. 齋藤太一

    ○齋藤説明員 先生の御指摘のように、前にこういったものにつきまして信用保険法の対象にするようにという御要望が当委員会でございまして、そのときに、実態をよく検討いたしまして実情の判明したものから文部省と御相談をして指定をするようにいたしたい、かようにお答えをしたわけでございますが、その後、実情調査の結果に基づきまして、五月二十日付の施行令の改正によりまして、学校教育事業というものを追加をすることにしたわけでございます。これは学校教育法によります学校でございますとか、あるいは各種学校、専修学校を考えておりまして、各種学校、専修学校で約六千百のものが対象に追加になってきた次第でございます。  いま先生のお話のございました生け花、お茶の教授所、あるいは小うたの教授所とかダンスの個人教授といったようなものは、ただいまの指定しました学校教育事業の中には入っておりません。これを入れませんでした理由は、実はこういった個人教授所の実情がまだ私どもに把握できておりませんで、全国にどれぐらいの数があるものか、どういった規模で行われておるか、それによりまして、これを適用します場合に、信用保険法上のどれくらいの経理面への影響が来るかといったような点がわからないという状況にございましたので、今回は対象から外した次第でございます。しかし、これにつきましてはさらに今後実情調査を進めてまいりまして、今後もその調査結果によりまして研究を進めてまいりたい、かように考えております。
  118. 野間友一

    ○野間委員 関連して一つついでにお聞きしたいと思いますが、学校教育法上の各種学校あるいは専修学校、これは当然入るわけですけれども、幼稚園の場合ですね。学校法人としての幼稚園は対象外であるわけですが、個人経営、あるいは株式会社経営、それから宗教法人、こういう形態の幼稚園もあるわけですけれども、これらは入るのかどうか、この点ひとつ確約しておきたいと思います。
  119. 齋藤太一

    ○齋藤説明員 信用保険法の対象となります事業者は、会社または個人というふうに法律で規定をいたしておりますので、学校法人でございますとかあるいは宗教法人というのは対象になりませんが、個人立または社会経営の幼稚園は今度の学校教育事業の中に入るものと考えております。
  120. 野間友一

    ○野間委員 それでは、退席願って結構です。  次に、鉄鋼の関係について質問をするわけですけれども、まず初めに、粗鋼生産について通産省は今後の需要見通し、特に長期の見通しをどう立てておるのか、これをお伺いしたいと思います。
  121. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 粗鋼の生産ベースで、私どもは現在、昭和五十一年度大体一億一千万トンという見通しを立てているわけでございます。御承知のように、今年度非常に不況の影響で、当初一億一千万トンを昭和五十年度で見ておったわけですが、現実には一億二百万トン足らずということになりまして、来年は一億一千万、さらにいわば私どもの長期需要見通しといたしまして昭和六十年までを見通しておりますが、現在のところ、生産としては一億七千三百万から一億七千八百万、昭和六十年にこういったことになるのではないかという見通しを立ててございます。
  122. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、かなり粗鋼生産の能力は伸ばすわけですけれども、その関係で、現在の生産規模のままではこれらの要求にこたえることができない、これは当然出てくると思うのですね。つまり、高炉増設というものが当然の前提となっておるというふうに考えざるを得ないと思うのですけれども、どうでしょうか。
  123. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 現在具体的にどこの地区にどうというところまでは全然把握してございませんけれども、お説のとおり、国内の中である程度の増設を必要とする、こういう見方になると思います。
  124. 野間友一

    ○野間委員 ある程度というよりも、いまの六十年の見通しから考えてみますと、五〇%ぐらいふえるのじゃないかというふうに思うのですね。したがって、これは操業率とかいろいろありますけれども、少なくともいま言われたようにある程度でなくて、かなり高炉を増設しなければならぬということは当然出てくるわけですね。  そこで、住友金属の問題についてお聞きをしたいわけですけれども、住金の和歌山製鉄所、ここでは粗鋼生産の能力は九百二十二万トンということになっておるようですけれども、どうでしょうか。
  125. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 御指摘のとおり、昭和四十四年に第五高炉が完成して、九百万トン体制ということでございます。
  126. 野間友一

    ○野間委員 ところで、この同じ住金和歌山製鉄所、ここでは和歌山下津港、これは重要港湾ですが、ここの港湾埋め立て計画によって新たに工場敷地百七十七万平方メートルが拡張される予定になっておりますけれども、これは御存じですね。
  127. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 現在、お説の地点、西防沖と言っておりますが、ここの埋め立て計画は先生の御指摘のとおりの規模で計画がございます。
  128. 野間友一

    ○野間委員 ところで、そうなりますとお聞きしたいわけですが、この拡張計画内容について、先ほど申し上げました六十年を展望した見通しの上に立って、需要供給の予測からして、当然この百七十七万平方メートルの拡張された敷地の中には新たに高炉を建設するという計画も含まれておるというふうに考えるのが常識なんですけれども、その点いかがですか。
  129. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 現在の計画におきましては、現にばい煙発生施設が非常に集中しているということで、コークス工場、燃焼工場、それから鉱石石炭ヤード、鉱滓処理場といった部分につきましてここに移転をする。したがいまして、高炉計画というのはここには上がっていないわけでございます。
  130. 野間友一

    ○野間委員 上がっていない、つまり公害防除が中心であるというような考え方ではなかろうかと思いますけれども、しかし、需給関係の見通しからして、高炉を建設しないという保証はどこにもない、とりわけ法的にこれを通産省規制するという手だてをとることはできませんから、そういうふうに考えてよろしいわけですね。
  131. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 私どもがいままで住友金属について聞いているところによりますと、高炉計画につきましては、将来非常に先の話と思いますけれども、鹿島地区というところを考えているように聞いておりまして、和歌山工場におきます高炉増設と申しますか、新設というのは考えられていない。  それから、もう一つどもが技術的に考えましても、埋め立て面積が百七十七万平米でございまして、最近の新鋭高炉を建てますと大体四千立米ないし五千立米の規模でございます。こういたしますと、大体二百万を超えて三百万平米近い土地面積がございませんと、いわゆる新鋭高炉というものはできないというふうに考えておりまして、その意味におきましても、私は、この西防沖の計画におきまして 高炉の計画というのは技術的な面から見ても物理的な面から見ても非常にむずかしい、こう判断しております。
  132. 野間友一

    ○野間委員 この和歌山製鉄所の場合、従前からずっとその経過を調べてみましても、ここは大体民家に接続した敷地なんですね。あの狭いところを次から次と拡張しては高炉をつけて、そしていまに至るわけです。ここの敷地面積当たりの粗鋼生産の能力というのは、はるかにほかの製鉄所に比べて高い。こういうふうに無理に無理を重ねてきたという経過からしましても、この拡張された中で、なるほどいまの計画では、新たに増設したその敷地の中に高炉を移転するとかあるいは新たに増設するというような計画は、おっしゃるようにないかもしれません。しかし、いままでの住金のやった経過、並びに増設したその敷地の中で建てる余地はあるわけですから、技術的にあれこれ言われますけれども、しかし、あなた、じゃ逆に聞きますけれども、将来にわたって絶対建てないという保証はありますか、どうですか。しかもさらに、これはいろいろ図面もありますけれども、その周辺も埋め立てようと思えば埋め立てられる可能性と申しますか、これはあるわけです。つまり、次から次と埋め立てては高炉をつくる、狭くなる、さらに拡張、そういうことはいままでの経過からすれば予測されると思うのですね。  そこでお聞きするわけですけれども、要するに将来にわたって絶対に高炉を増設しないという保証があるのかないのかということと、同時に、これについて法的に規制するという手だてがあるのかないのか。ないと思いますけれども、いかがですか。
  133. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 現状におきましては私ははっきりないと申し上げますが、おっしゃるとおり、埋立地を拡大するとかいろいろなことがあった場合に、それは全くないということは言い切れないわけでございます。  それから設備投資につきましては、私どもは現在、産構審の鉄鋼部会で、長期にわたる見通しの上で設備投資に対して投資調整ということが行われているわけでございますが、その場合でも、あくまでも地元の環境問題、公害問題、こういったものが十分保障されない限り、これについての着工ということは認めないというルールをつくっておりますので、公害環境対策が完全にできなければ高炉の新設ということは現在は非常にむずかしい、こういう運営をしております。
  134. 野間友一

    ○野間委員 確かに公害面からのチェックは当然あり得るし、そうでなければならない、これは当然の話ですね。ただ、問題は、私がお聞きしているのは、確かに産構審の鉄鋼部会の中で生産計画を立てるということもあって、その面からの一定の行政指導というか、チェックは可能かもわかりません。しかし、お聞きしたいのは、それが法的な拘束力を持つという根拠、根拠法規というものがあるかないか。ないと思うのです。  と同時に、住金について言いますと、例の四十一年ごろでしたか、造反と申しますか、要するに過去に前歴があるわけですね。そういう点から、増設をしないという保証はないということと、くどいようですがお聞きしますけれども、法的にこれをとめるという拘束力はないというように思うのですけれども、再度答弁を求めます。
  135. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 法的に規制をする道はございません。
  136. 野間友一

    ○野間委員 しかも、私は疑問に思うのですけれども、きょうは運輸省は呼んでおりませんが、和歌山下津港港湾計画、これは運輸省のオーケーをとったものです。恐らく御存じだろうと思いますけれども、この中身で、「取扱貨物量の目標」というのがあるわけですね。ここで「公共施設」「専用施設」あるいは「フェリー施設」と三つに分けて、これがどうなるのかという数字が推定されておるのです。これで「昭和六十年推定」「公共施設」云々と項目はありますけれども、特に問題は専用施設の問題なんですね。ここで言う「専用施設」というのは、ほとんどが住友金属の専用になるわけです。この統計の四十七年実績、これは調べてみましてもまさに住友オンリー、専用なんですね。これはもう御承知のとおりだと思うのです。  この四十七年の実績に比べて、六十年の推定はずいぶんふえているわけですね。たとえば二千五百十二万トンから三千百九十九万トンに、実に二七・三四%貨物の扱いがふえる。しかも、私が申し上げたいまの数字は、外貿、内貿両方合わせた数字です。外貿だけを見ましても同じような比率で伸びておるわけですね。したがって、この貨物の取扱量の推移から考えますと、当然昭和六十年をめどに、これは多少の変更はあるとしても、要するに粗鋼生産がふえなければ、これだけ専用港としての住友が、特に外貿関係でこれらが出たり入れたりすることが伸びるということはないわけですから、この点からしてもやはり粗鋼生産能力をふやすということがこれから当然出てくると思うのですが、いかがでしょう。
  137. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 お示しの港湾計画でございますが、実態的にその数字の根拠については私どもは十分把握しておりませんので、よく調査をしたいと思います。
  138. 野間友一

    ○野間委員 その点については運輸省と一遍協議されまして、調査した上で、その伸びの数量、なぜ伸びるのかという理由について当委員会提出していただきたいと思います。  では、質問を続けます。  現在その周辺の住民に対する住金の態度ですけれども、工場拡張については、あなたが先ほど言われた公害を防除するための措置だ、高炉を建設する計画はないのだということは、これは一貫して言っておるわけです。各住民に対してもそういうPRをしておるわけですね。ところが、いまも再三申し上げておるように、法的にはこれをとめる、規制する、拘束力のあるような手だてはできない、法的には保証はないわけですね。しかも問題は、会社は調査をしたかしないか、つまり環境アセスメントについてしたかどうかについても、事実を明らかにしない。その上に住民を説得させる何の根拠も示すことのないままに、ただ一方的に、これは公害を防除するための拡張でございます。御安心ください、公害発生源は遠くに移しますからと、こういう説明に終始しておるのが現在の実態なんです。  住民の側から言いますと、幾ら住金が口頭で一方的にPRをしても、具体的な根拠なしにやられても信用するわけにまいらない、これは当然の考え方なんですよね。そこで、住民の中から、環境アセスメントをやっておったとしたらそれを公表して、こういう理由で公害を防除しますというふうに説明してくれ、もしなければ調査をして、その結果これを公表した上で住民との間の話し合いをしなさい、こういうことを言っておるわけです。これはやはり企業の社会性、企業姿勢、あるいは過去の住友金属周辺の住民に対する公害による被害の多発、こういう点から考えましても、企業姿勢としてはこれはどうにも納得できない、こう思うわけです。そこで企業姿勢についてどう思うかということを、これは通産大臣と同時に環境庁にもひとつお伺いしておきたいと思います。
  139. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今後の鉄鋼の長期の見通しにつきましては、先ほど局長答弁をいたしておりましたが、この長期見通しを十年間で実現していくわけでありますが、やはりこの際、最大の問題は、環境の保全ということだと思います。その点について住民の理解を得ながら進めていかなければならぬと考えております。
  140. 野間友一

    ○野間委員 環境庁の前に、大臣、私もう少し具体的にお伺いしたいのは、住民との間では、公害防除、公害を激減させますという一方的なPRをしても、具体的に環境アセスメントの調査をやったのかどうか、この事実も明らかにしない、また根拠も示さずに、一方的に住民に言っても、これではなかなか納得できないのはあたりまえな話だと思うのです。そこで、住民側の要求は、もし事前にやっておったとしたらそれを示して、そして説明をしてほしい、もしなければ、これはないということはないと思いますけれども、もしなければ、速やかに調査をした上で、こういうことでございますから、ひとつ御納得願いたいと言うのが、企業の社会性の点から当然ではなかろうか、つまり企業姿勢をお伺いしているわけですけれども、いかがですか。
  141. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 鉄鋼業は各地でそれぞれ環境問題につきまして地域住民といろいろ話し合いをしておりますが、私は、この点非常に熱心に話し合っておると思います。いま和歌山の問題が出ましたが、具体的な個々の実情については私は承知いたしませんけれども、しかし、住民側と十分納得のいくような話し合いが進むことを期待をいたします。
  142. 大塩敏樹

    ○大塩説明員 環境アセスメントに際しましての企業の資料の提供の方法でございますが、この点につきましては、一般的には環境情報を公開してそれに対する意見を意思決定に反映させるというアセスメントの基本的な考え方がございます。この点につきましては、現在中公審の環境影響部会で御審議いただいておりますので、その点、今後そういった方法がわが国の制度として定着化する、このように私どもは判断いたしております。  御指摘の住金の問題につきましては、実は公害防止協定が締結されてございます。公害防止協定は自治体と企業との間の協定でございますので、本来当事者間の問題ではございますが、この協定の中には、十六条に、公開を原則とする、公開する資料は、発生源施設についての発生原因、防止施設の内容及びそのバックデータを言う、こういう規定がございますので、私どもはこの方針に従って適切な資料が出されるもの、このように判断いたしております。
  143. 野間友一

    ○野間委員 大臣、その企業のモラルの点でいかがですか。いまもう繰り返しはいたしませんけれども、こういう場合には住民に本当に資料を示して真摯な態度で応対して、そして、このとおり公害防除に役に立ちます、決して公害がふえるということではなくて逆でありますというふうに言うのが、これは住民に対する企業のモラルの問題としても当然必要ではなかろうか、こう考えるのですね。大臣も同感であろうと思うのですけれども、いかがですか、その点です。
  144. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 企業は、私はやはりできるだけ親切に住民と十分話し合って、そして理解を得るようにしなければならぬと思います。
  145. 野間友一

    ○野間委員 どうも、もう一つそこが何かひっかかりますね。具体的に端的に私が申し上げたことをやるべきじゃないでしょうか。つまり、口だけで一方的でなくて、こういうことでございますと根拠を示して話し合いをするということが、企業姿勢として望ましいのとは違いますか、再度お願いします。
  146. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 御承知のように、公害防止問題は、環境問題を含めまして地元住民の利益を守るということで県あるいは市の当局があるわけであります。私どもとしては、そういうところと十分連絡をとりつつ、それからそういう地元の納得を得ていくということについて企業指導を十分にしたい、こういうふうに考えております。
  147. 野間友一

    ○野間委員 いま、私が要求したことを含めて答弁があった。これは大臣局長もそういう姿勢答弁されたというふうに思うわけです。  そこで、少しさかのぼって考えたいと思いますが、これは特に環境庁に対してお伺いするわけですけれども、この住友周辺の住民の中では、気管支関係の疾患が非常に多いわけですね。  これは和歌山市も和歌山市の医師会に委嘱をして「大気汚染による特定疾患の疾病調査報告」というのをまとめておるわけです。これを見てみましても、この報告書は、各ブロック別にお医者様がモニターとなって、自分で診察した患者をいろいろ調査し、分類してここに表を出しておるのです。これは四十一ページにあるわけですけれども、このブロック別に見ますと、湊、河西、それから加太、この湊、河西、加太というのは住友周辺なんですね。これは、局長がいまうなずいておるけれども、ここでの慢性気管支炎、ぜんそく性気管支炎、それから気管支ぜんそく、この患者の数、それから人口から見た割合、こういうのが全部表に出ておるわけです。  いま申し上げた三つのブロックだけで、これは実際には潜在患者はずいぶんおるわけですけれども、二千八百七十二名、これは四十八年度です。こういう有症の患者の実態が統計上出ておるのですね。しかも、このパーセントを見ますと、たとえば慢性気管支炎、これは加太なら加太というところをとってみますと二・三四%、それからぜんそく性気管支炎が一二・七二%、気管支ぜんそくは一一五五%、こういうようになっています。これは和歌山市全体の平均は、慢性気管支炎が一・〇二、ぜんそく性気管支炎が九・四五、気管支ぜんそくが四・二三、これが平均です、郊外の場合にはこれははるかに低いわけですけれども。この平均よりもはるかにこの周辺の住民の有症率が高い。こういう和歌山市の委嘱に基づく医師会の調査報告書として上がっておる。  これは五十年八月に上がっておるわけですけれども、同じ報告の中でもコメントもあり、こういうのも書かれております。「モニターは年間五四〇、七四四件の患者を診療し、この中特定疾患々者が五、七五六名含まれ、これは全患者の一・〇六%に相当する。各ブロックの特定疾患々者の総診療件数に対する割合をみてみると、河西地区が特異的に特定疾患々者を扱う率が高いことを示している。」いろいろ書かれておりますけれども、ここで本当にいまでも気管支疾患の方が医者通いをされておる。これは大変深刻な状態なのです。これはこの立地条件からしましても、疫学的に考えましても、公害発生企業、これは住金ないしはその周辺の企業、特に住金しかありませんけれども、ここであることは明確であろうと思うのです。  ところで、現在のSOxの測定値が政府の基準を満たしていない、こういう理由で、現在では公害健康被害補償法によって補償を受けられる体制にはないわけです。しかし、いま申し上げたような報告による実際の患者の実態等々から考えまして、これは当然地域指定を受けるべき筋合いのものではないか、こう思うのです。  そこで、環境庁にお伺いしたいのは、過去におけるデータが基準に合うという場合には当然地域指定を受けられるというふうに私は思うわけですけれども、その点はいかがですか。
  148. 野津聖

    ○野津説明員 公害健康被害補償法の件でございますけれども、この地域につきましては、いわゆる相当範囲にわたる著しい大気の汚染が生じているということ、それからその影響によりまして疾病が多発しているということが地域指定の要件ということになっているわけでございまして、ただいまお話がございましたように、実は私どもの方、その医師会でおやりになられた調査についての中身を御連絡いただいておりません。ただ、いまのお話をお伺いしますと、全市の平均等から相当高いのではないかというふうに想像はされるわけでございますが、その中身について実は存じ上げておらないものですから、そのまま物を申し上げるわけにいかないかと思いますけれども、ただ、現在私どものいただいております過去の資料、これは実は余りさかのぼれないような資料しか大気汚染の状況についてはないわけでございますが、この現在の資料に基づきますと、いわゆる地域指定の調査の発動要件というものにも及ばないような二酸化硫黄の経年変化というのが出ております。  私どもの方の資料として入っておりますのは、四十二年度に一カ所、それから四十三年度に三カ所というふうな形で、それ以前の資料は手元に入っていないという実態があるわけでございます。いま御指摘がございましたように、過去における汚染の実態というものにつきましては、市あるいは県の方でどの程度の資料を把握しているかということが問題になってくるのではないかと思っておりますが、その過去の資料につきましては、県、市等にも連絡しまして、できるだけ資料を集めるような方法をとっていきたいと考えております。
  149. 野間友一

    ○野間委員 そこで、その過去におけるデータ、いま環境庁が把握されているその数値では地域指定がむずかしいというようないまの御答弁だと思いますけれども、基準値に合っておるというような過去のデータが出れば、これは当然地域指定の対象となり得るというふうに思うわけですが、この点はどうですか。
  150. 野津聖

    ○野津説明員 過去におきますデータというものがそろいまして、現在いわゆる地域指定の調査の発動要件というのがまず第一の前提としてあるわけでございますが、その発動要件に合致します場合には、そこで調査実施いたしまして、その調査の結果についての判断をする、こういう段階になってくると思います。  ただ、いま申し上げましたように、過去におきます資料がないという現状では、いまのところは申し上げるあれはございませんけれども、過去におきます状況が把握され、それが一定の地域指定の調査の発動要件の基準値に合うということでございますと、調査を発動するという流れになってまいります。
  151. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、市ないし県がいま言われたような要件を満たすように措置をすれば調査を発動する、こういうことになるわけですね。
  152. 野津聖

    ○野津説明員 過去におきますデータがそのような条件でございますと、おっしゃるとおりになります。
  153. 野間友一

    ○野間委員 関連して少しお伺いしたいのは、もし過去のデータ、それぞれの時点において調査したデータがないという場合、現在からの推測と申しますか、過去にさかのぼって、当時たとえばS分のどういう油を幾らたいておったか、その煙突はどうであったか、風向きはどうであったかとか、そういうようなことを資料に基づいて調べ、その結果、過去の時点における値が出ると思うのです。これが出た場合、しかもこの値が地域指定に当たる値であるということになれば、これで地域指定の対象となり得る条件一つであるというように思いますが、どうですか。
  154. 野津聖

    ○野津説明員 一番大事なことは、実際の実測値があることが一番大事なことではないかと思っておりますので、私ども、できるだけ実測値を把握するようにしていきたいというふうに考えておるわけでございますが、ただ、推測値としては、現状からそれをさかのぼりまして推測してどのようになるかということにつきましては、いろいろな、条件、特にシミュレーション等を加えていかなければいけないというような問題もございますし、その場合の条件のいかんによりましては、相当幅のあるような形もあり得るであろうというふうに考えられますので、その実測値が幾つかでもあれば、それに基づいての推測も可能になってくるかと思います。  ただ、現在から過去を予測するだけの形では、なかなか幅のある数値しか出てこないのではないかというような感じもしますので、できるだけ実測値を把握するようにすべきであろうと思いますし、また県、市にもそのような連絡をいたしたいと思っております。
  155. 野間友一

    ○野間委員 時間の関係で、もう最後にしますけれども、確かに実際にはかった値があればいいわけですけれども、それがない。しかし、現実には患者がおる。現在から推測値は出すことができる。この場合に地域指定をされたケースがあると思うのです。これはあるのかないのか、あるとすればどこか、この点をお答え願いたいと思います。
  156. 野津聖

    ○野津説明員 できるだけの資料をもとにしながらのシミュレーションをやらなければいけないことでございますが、若干、過去にあり得るだけの資料をもとにしまして実施したケースはあるわけでございまして、実例としましては、岡山県の備前市がそのような方法で現在指定を受けておるわけでございます。
  157. 野間友一

    ○野間委員 これは本当に過去には大変深刻な事態で、多少私も資料を持っております。先ほどから工場増設と高炉の建設との絡みでいろいろ質問をしたわけですけれども、いままでの経験から、過去のそういう非常に苦しめられた者に対する償いと申しますか、これは法的に受け得る制度であれば当然それをしなければなりませんし、今後も公害をそれこそ撃滅するためにやらなければならぬ、これは当然な話なんで、その点についてさらに私も県や市を追及して、しかるべく受けられるようにしたいと思うのです。     〔渡部(恒)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、最後に一点、労働省が来られておりますので、この埋め立て計画に関連してお伺いするわけですけれども、この埋め立て計画は、和歌山市の廃棄物をかなりの量埋立地に使うわけです。いろいろ計画書を見てみますと、和歌山市から排出される廃棄物が年間大体二百万立米、これは四百万トンのようですけれども、これが埋め立ての用途に使われる。  ところで、問題は、これは安全上の問題ですけれども、住金の工場構内では一日当たり、下請関係の自動車が三千四百台、住金の自動車が百五十台、それから単車が三百台、この上に、いまの廃棄物を埋立地に使うとした場合に、一日当たりトラックが何台構内へ入ってくるかということを試算してみますと二千八百台、実に大変な数なんです。  現在でも工場の敷地が非常に狭い。そうして現に、その構内に軌道がありますから、去年一人、ことし一人、交通事故が起こっておるわけですね。下請関係の人は現在、その交通事故があった関係もありまして、その構内に下請関係の会社の車を入れることが登録制度をしくことによってチェックされておる。大体下請関係の人は車で入らなければ仕事にならない。非常に苦痛なんですね。これが一つの問題なんです。  と同時に、いまでさえそういう状態である上に、外から二千八百台の車がどんどん構内へ入ってくる。これは図面がありますけれども、軌道がありまして、その踏切を越えながら行かなければならぬ。これは海上輸送ももちろん考えられますけれども、そうなりますと安全上は大変なことになると思うのです。これは住友の中で働く労働者は、下請関係の労働者を含めて、もちろん業者もそうですか、大変深刻に受けとめておるわけですね。これらについては、やはり抜本的な対策を立てなければならぬ。  これは労働省の所管になると思いますけれども 現に会社からそのような相談があったのかなかったのか、あるいはこういうようなことについて安全上どういう対策を考えられるのか、また、これらについてはやはり強力に指導する必要があるのではなかろうか。これは単に労働省だけではなくて、通産省も同じことが言えると思うのですね。いかがでしょうか。
  158. 野原石松

    ○野原説明員 住友金属の和歌山製鉄所の構内には、ディーゼルカー等が走る軌道装置があり、さらにいま先生が御指摘されましたように、埋め立て計画の進行に伴ってたくさんのダンプ、トラック等が入り込んでくるということも承知をいたしております。そこで現に、いまお話がありましたように、昨年とことしにかけまして二件の交通災害が発生をしておるわけでございます。  そこで、労働省といたしましては、通路と交わる軌道装置の上で車両を走らせる場合には、監視人を置かせるか、あるいは警鈴を鳴らすというようなことがすでに労働安全衛生法上規定はされておるわけですが、これらの完全実施を図る、同時に、構内を走るダンプとかトラック等につきましては、事前に運行経路の設定等を含む作業計画の作成を求める、あるいは作業指揮者を専任させる、さらには制限速度を設けるといったようなことにつきまして、新たな規制を行うべく検討を現在進めておる段階でございます。  そこで、御指摘の住友金属和歌山製鉄所の構内の交通災害防止問題につきましては、現在のところ埋め立て計画自体がまだ詳細に把握されておりませんので、これが判明次第、いま申し上げましたような観点から計画内容を検討いたしまして、構内の交通災害防止上必要な措置を指示をし、その完全実施を図るように努力をいたしたいというふうに考えております。
  159. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  160. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 近江巳記夫君。
  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうの時点で経済の月例報告がされたようでございますが、現在におきます景気の見通しを長官としてはどういうようにお立てになっておりますか。
  162. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 最近の景気の動きはきわめて活発でございます。景気に非常に関係の深い個人消費の伸びが着実でございますほか、設備投資ももう底をつきまして、上昇過程に転じております。また、政府財政、これの影響も出てきております。そこへ輸出がかなり急激な伸びを示しておりまして、それらの最終需要項目の動きを総合いたしまして、生産がかなりふえる。一月は二%、二月は二・三%、三月は三・六%、そういうふうに前月比で伸びる。これは年率にすると相当な高さのものです。そういう動きを受けまして、雇用状態も改善されますし、企業の操業度がかなり改善されてまいりまして、恐らく操業度は、今日この時点では八〇%を超えておるという状態と見ております。  したがいまして、これからを展望いたしますと、この動きに、さらに昭和五十一年度予算、これは性格的に景気刺激的な内容になっております。これが動き出すということになりますと、大きな目玉といたしましては輸出と、それから予算が牽引力となりまして、上昇傾向というものが続いていく。そして、五%ないし六%成長と見ておりましたその見当は着実に実現されていくであろう。それを受けまして、企業の操業度もさらに改善されまして、年度末ぐらいの時点になりますと八五%ということをにらんでおるわけでございまするけれども、その程度のことは実現されるだろう。したがって、マクロの景気指標、これは非常にいい数字を示しますが、同時にミクロ、つまり各企業の経理内容等もかなり改善をされる、そういう見通しでございます。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 着実に回復をたどっておる、こういうことでございますが、中小企業の倒産を見ておりますと月間一千台、これは依然として倒産がふえておるわけです。この点、非常にミクロという点におきましていろいろと問題があるのじゃないか、このように思うわけですが、中小企業庁長官としては、こうした経企庁長官の見通しにもかかわらず倒産がふえておるという状況に対して、どういう見方をしておりますか。
  164. 齋藤太一

    ○齋藤説明員 中小企業の場合も、ことしに入りましてから生産、出荷は逐月上昇を見せておりまして、この四月の指数等は、一番ピークからどん底に落ちました昨年の二月までの落ち込みに比べまして、その半分を回復するといったようなところまで回復を見せております。  ただ、問題は、業種によりまして、まだ相当不況と申しますか、生産の回復がはかばかしくない業種が相当残っておるということと、それから企業によりまして、やはり長い間の不況の間に体力を消粍しまして、息切れした企業が相当出ておるということが問題点かと存じます。また収支面で見ますと、生産、出荷は伸びておりますけれども、収支面はまだはかばかしい改善が見られておりません。そういうことで、数多い中小企業の中にやはり倒産が相当出ておるという状況でございまして、特に景気の回復期には金融機関で融資に選別を強めるというような事情もございまして、マクロとしての景気の回復の進捗にかかわらず倒産が依然として高水準である、こういう状況かと存ずるわけでございます。  これに対します基本的な対策は、なるべく早くこの景気の回復を促進するということにあろうかと存ずるわけでございますが、同時に、特に放漫経営等ではなくて、まじめにやっておりながら資金面の金繰りがつかないために倒産等に追い込まれる、こういった企業につきましては、そういった不幸な事態を招かないように金融面でいろいろ対策を講じたいと考えまして、各種の施策を実施いたしておるわけでございます。  たとえば政府系の三機関につきましては、先生御案内のように、昨年の約二〇%増の資金枠を用意いたしましたし、それから信用保証の面でも無担保保険あるいは特別小口保険の限度額の引き上げをいたしましたし、また、不況業種の指定の問題につきましても、一応三月で切れますものを六月まで延長いたしまして、製造業の約四割に相当する業種を現在不況業種として指定をいたしております。また、民間金融機関にお願いをいたしまして、中小企業救済特別融資制度につきまして、現在さらに約四百億円の見込みで不況指定業種を対象に融資の実行中でございます。  こういうことで、金融、信用保証の面で対策を講じながら、公共事業の進捗あるいは輸出の伸び、設備投資の回復によりまして、早く景気の回復を図ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 中小企業庁といたしましてもそれなりの御努力をされておりますことは、よく承知しておるわけでございます。しかし、この数値が示しますように、月間一千台の大台がずっと続いておるということにつきましては、やはり回復基調にあるわけでございますから、明かりが見えておるわけですから、この段階においては、政府としては全力を挙げて金融対策を初めとしたこうした中小企業対策というものについて力を入れなければいけないのじゃないか、このように思うわけです。  私たちも地元でいろいろ聞きますのは、最近、民間におきましても非常に選別を強めてきておるのですね。ここで何とか力を入れてもらえば生き残れるのに、その道を閉ざす。中小企業庁としても民間にもお願いをしておるということを言っておりましても、現場ではそうじゃないのですよ。ですから、その点については、中小企業庁長官は少なくとも中小企業、零細企業が一番頼りにしておる人でありますし、実際にそれが実効が上がるようにやっていただく必要があるのじゃないかと思うのです。ただお願いしますよというような通達だけではなかなか言うことを聞かないわけです。ですから、大蔵省とも連携をとって踏み込み調査させるとか、歩積み両建て等を徹底して取り締まるとか、やはりその辺の対策を十分にやっていただく必要があろうかと思うわけです。その点、どうですか。
  166. 齋藤太一

    ○齋藤説明員 特に借り入れに困難をしておられます向きにつきましては、政府系三機関につきましては、担保の評価等につきまして特にお困りの向きには極力弾力的に計らうように、昨年の暮れにも通達をいたしまして指導いたしておるところでございます。それからまた、返済が困難な方々につきましては、いわゆる返済猶予というものを弾力的に配慮するように政府系の三機関につきましては指導をいたしておりまして、これは相当、たとえば五十年度でも約四万件の返済猶予を行いまして、金額でも二千六百億円程度の返済猶予を行っております。  民間の金融につきましては、極力中小企業金融に配慮していただくように大蔵省を通じまして指導を願っておるところでございますが、中小企業向けの民間金融機関の貸し出しは、幸いにこのところ貸し出し比率が漸次高まりつつございます。たとえば昨年の春の中小企業向け貸し出しの全貸し出し残高に対します比率は五一・九%でございましたが、昨年の暮れには五二・三%まで上がっております。さらにこの比率が上がりますように、十分大蔵省等を通じまして金融機関にお願いをしてまいりたいと考えております。  また、担保不足等で借りにくい方々につきましては、いわゆる信用保証制度を極力活用していただきまして、そういう面から補完をしてまいりたい、かように考えております。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 中小企業問題については、世界各国に比べましても施策というものは確かに多いように思うわけですが、中身が非常に薄っぺらなんですね。大体政府の予算自体、今年度たしか千百七十億ぐらいだと思いますが、二十四兆円の予算にいたしまして、これは〇・五%にもなっていないわけです。ですから、中小企業に対する今年度予算はもう仕方がないとしまして、八月には概算要求等もなさるわけでございますし、これはひとつ政府全体として中小企業予算というものをしっかりつけないと、幾らこういう施策をしたって何をしたって、金利だって安くなるわけじゃないし、いろんな点でやはり全体のそうしたカバーをしていくためには、予算をもっとつけなくてはだめですよ。  政府中小企業、零細企業対策に全力を尽くしておるということを言いながら、予算等を見ておりますと、税金では相当しぼり取っておるわけですが、実際に還元する予算という裏づけが非常に低いわけですね。これはもうまさしく口だけなんですね。実行が伴わない。これではもうどうしようもないと思います。こういう点、今後中小企業予算につきまして格段の厚みを増す必要があろうかと私は思うわけです。これは通産大臣、経企庁長官大臣からお答えいただきたいと思うわけです。
  168. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中小企業関係の予算は、一般会計、それから財政資金全体を合わせますと相当な額に達しております。しかし、いまお話しのようにまだ十分ではございませんので、明年度以降引き続いて増額するように努力を続けるつもりでございます。
  169. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 中小企業対策といいますと、これはもうどうしても事業対策でございますから、金融が中心になるのです。この金融については格別の配慮をしておるわけでございますが、これからの推移に応じまして、中小企業問題の重要性を認識した上に立って格段の努力をしてまいりたい、かように考えます。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 柱は金融であることはわかりますが、そのほかいろいろな施策をやっておるわけです。ところが、これは予算がないものですから、形だけあるけれども、なかなか実際に、実態としてはためになっていないわけですね。ですから、そういう点におきましてこれはひとつ長官も十分認識されておると思いますし、今後は通産大臣と長官が責任を持ってこの中小企業予算については厚みをつけるように、特段の配慮をしていただくように強く要望いたしておきます。  それから、景気がこういうように上向いておるというような認識をされておるわけですが、そこで通産大臣は、この五・六の経済見通しにつきましてこれを拡大修正しなければいかぬ、これは通産省全体でもおっしゃっておると思うのですが、あなたはこの拡大修正ということにつきましてどういうお考えを持っておられるわけですか。
  171. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ことしの経済見通しでありますが、アメリカ、ヨーロッパの先進工業国の主だった国々は、いずれも年度当初の見込みを相当上回るように拡大修正をしておるようであります。日本におきましては、そういう点につきましてまだ政府部内の合意はありませんけれども、しかし、最近の経済動向を見ておりますと、少なくとも当初の政府見通しは相当大幅に上回るであろう、こういうふうに私はいま理解をしております。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま通産大臣は、まあ政府見通しを相当大幅に上回るであろう、したがってこれを拡大修正すべきであるというような御意見を述べられたように思うわけでありますが、長官は、今後の推移を見きわめてやはりこの修正をされる、こういうお考えですか。
  173. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 最近の経済の動きを見ておりますと、いま通産大臣がおっしゃったように、あるいは五%ないし六%と言っておるこの中でも六%に近い方に落ちついていくのではないかというような気もしますが、これは世界経済が一体どういうふうに動くか、そういうようなことなどともにらみ合わせて見ていかなければならぬ、さように思います。したがって、今日ではどうもその五%ないし六%の真ん中よりは上へ行きそうだなあというような感じはいたしますけれども、その見通しを修正するのだというところまでは踏ん切れない、なお状況の推移を見なければならぬだろう、かように考えております。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、経済企画庁として、「昭和五十年代前期経済計画 安定した社会を目指して」というのを最近お出しになったわけでございますが、これの七十九ページの中に、「「税及び税外負担」の国民所得に対する比率は、昭和四十八−五十年度の平均の二二・七%に対し、計画期間中おおむね三%程度の上昇を見込む。」こうなっているのですね。これは結局、「三%程度の上昇を見込む。」ということは、付加価値税の導入ということを考えておられるわけですか。
  175. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 この三%という租税負担率の引き上げ、これは一つは自然増収の要素があるのです。景気が回復する、それに伴いまして自然増収ということになりますれば、それだけ租税負担率としては上がるわけです。その自然増収分が三%の中でどのくらいにいきますかということにつきまして、まだ経済の実勢の動きを見ぬと見当つきません。しかし、自然増収で三%全部がカバーされるような気持ちはしないのですが、もしそういうことになりますれば、何がしか新しい税の徴収の方法を考えなきゃならぬ、こういうことになるのです。そういう際に、いかなる税を考えるか、既存の税の増率でいくのか、あるいは新税を設定するのか、いろいろ考え方が出てくるわけでございますけれども、その具体的な増税手段を一体どういうふうにするかというところまでは見きわめておらない、自然増収、それから新しい徴税手段、それを合わせて大体三%方租税負担は上がらざるを得ないのじゃないか、そういうことでございます。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官の頭の中では、既存の税の増収を図っていく方向が強いのか、新税をお考えになっておるのが強いのか、これはどちらですか。
  177. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 これは、三%の中に幾ばくの自然増収による吸収というか、そういうものがあるか、これがわからないとちょっと見当もつきがたいのでございます。いま付加価値税というお話でございますが、具体的にどういう新税をやるのか、あるいは新税はなしに既存の税の増率でいくのか、その辺までは率直に申し上げましてまだ煮詰めておらぬ、こういう段階でございます。
  178. 近江巳記夫

    ○近江委員 新税の場合、付加価値税につきましては、これはもう国民の間でも非常に批判が出ておるわけです、結局は国民に負担がくるわけでございますから。これは私たちの態度として、もしそういうお考えがあるとするならば強く反対をいたします。そのことを重ねて強く申し上げておきたいと思うのです。  それから、物価の中で、物価指数の改定の年になっておるわけでございますが、一般に言われることは、国民がはだで感じております実感と非常にずれがある、これをこの際、思い切って実態に合うようにしてもらいたいという非常に強い要望があるわけでございます。これは経企庁だけでやっておられる問題じゃない。総理府統計局とも関連しておる問題でございますし、連携をとってやっておられると思いますが、この点につきまして、きょうは総理府統計局も来られておると思いますし、基本的な考え方、また具体的にはどうするかという点についてお伺いしたいと思います。
  179. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 消費者物価指数が生活の実感とずれがある、こういう見解をしばしば聞くのです。しかし、物価指数というのは平均的な指数でございますので、具体的にこれを当てはめてみますと実感とのずれという問題が出てくる、これはやむを得ざることだろう、こういうふうに思います。わが国の消費者物価指数というのは、国際的にもかなり評価をされておる体系のもとにつくられるわけでございますが、しかし、経済、社会が変化する、その中で国民の生活態様も変わってくる、そこで五年ごとに指数のつくり方の見直しをする、こういうことで、ことしがまさにその年になっておるわけでございますが、過去五年間の国民生活態様の動き、こういうものをよく見まして、そしてつけ加えた方がいいものはつけ加える、また削除した方がいいような品目は削除するというようにいたしまして、なるべく適正な指数が出てくるように、それを心がけつついま統計局で作業を進めておる、こういう段階でございます。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 統計局では、この経企庁長官の意向を受けていろいろ作業を進めておられると思いますが、具体的にはどういうふうになさるのですか。
  181. 川村皓章

    ○川村説明員 お答えをいたします。  基本的には、ただいま経済企画庁長官お答えしたとおりでございまして、具体的には、去る五月二十一日に統計審議会から答申が出ました。この答申の問題は、いろいろな経済指標をおおむね五年に一遍基準時を改正するという問題でございまして、これは消費者物価指数だけでなくて、他の経済指標も同様に五年ごとに指数の基準時を変えるという問題でございます。これは先般の答申でも、「指数の基準時及びウエイト時期の更新について」という答申が出ました。それに従いまして、具体的に消費者物価指数も、この目的はあくまで消費構造の変化に対応いたしまして、国民生活の実態を指数に十分に反映するという趣旨で作業をするわけでございます。  具体的にいま考えております点は、消費者物価指数のいわば性格は従来どおり、すなわち現行の方式を踏襲するつもりでございますが、なお実際の生活の実態に合わせるために、おのずから品目については四百二十八品目から四百八十五品目に改正することを考えておりますし、さらに指数の分類項目も、できるだけ使う方の御便宜も考えましてその改正をいたすつもりでもございますし、さらに実感との乖離の問題をできるだけ避けたいということから、参考系列を充実するという方針で目下作業を進めております。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理府としては、国民の声を聞くということでいろいろそういうアンケート等をよく実施なさっておりますし、一番その辺はつかんでおられると思うのですね。ですから、国民の間からそういう非常に強い要望もございますし、いままで批判も強かったわけでございますから、五年に一回のチャンスでございますし、できるだけ実感に合うように十分その点を努力していただいて、また批判を受けないようにやっていただきたい、これを強く要望いたしておきます。  それから、今年の春闘は平均で八・八ということがこの間も言われておったわけでございますが、そういう中で物価が非常に上がってきておる。こういう中で、鋼材、あるいは電気料金、あるいは基礎資材等々上がっておりますし、特に、次の臨時国会ではまた国鉄であるとか、電信電話公社であるとか、いわゆる公共料金引き上げがメジロ押しでございます。また消費者米価、麦価につきましても大幅に引き上げようとしております。  これは特に農林の問題でもあるわけでございますが、政府考えとしては、今年度中に食管赤字の三分の一を解消するという方針に沿ってやるということで、大幅に消費者米価あるいは麦等も上げる、これはいまの時期にふさわしくないわけですよ。大体食管会計というものは、そういう二重米価制になっておるわけですからね。政府が負担していくということは国民が皆よく知っているわけです。それを差を縮小していくのだという行き方は、いま経済情勢も回復途上にあるし、インフレも非常に懸念される、そういう中で、ただ会計だけを見ておって、これを詰めるのだ、そういう論理から消費者の米や麦を大幅に上げていくというような行き方は、私は非常に問題だと思うのですね。これはひとつ長官、国民の立場に立って考えていただかないと、大蔵省が言うことをこのまま認めていくようなことでは、経企庁長官に国民として本当に大きな失望を感じると思うのです。この点、どのようにお考えですか。
  183. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 しばしば申し上げているのですが、公共料金問題というのがいまわが国の物価問題に非常に重くのしかかっておるのです。公共料金が、物価狂乱と言われたあの当時、大方厳しく引き上げを抑制されてきた。これをそのままにしておきますと、関係企業の運営にも支障を生ずる。国鉄なんかいま非常に苦しい状態になってきております。それからまた、国家財政にしわ寄せがいく。こういうことで、いま公共料金問題の処理というのがなかなかむずかしい、やっかいな問題です。  ちょうど昨年のいまごろも皆さんから、公共料金メジロ押し、こういうふうに言われてきておったのです。しかし、その結果は一体どうかというと、卸売物価は大方横ばい——横ばいでもありませんが、非常に徴弱な騰貴にとどまった。消費者物価につきましては、御承知のように八・八%の上昇にとどまり、メジロ押し、メジロ押しと言いまするけれども、とにかく公共料金全体合わせて、その八・八%の消費者物価の中における割合は二・七%です。五十一年度におきましては、その二・七%をさらに低めようということを考えておるのです。いわば二%強という程度にしたい。そういう枠の中で一つ一つの公共料金を処置するということになるわけでございますが、お話しのとおり、むやみに公共料金を上げるわけにもいかぬというので、なるべくなだらかになだらかに、こういうふうに考えておるのです。  そういう中で、さあ米の販売価格をどうするか、麦の販売価格をどうするか、そういう問題が差し迫って解決されなければならぬ問題である。財政上の立場から言いますと、これはかなり大幅な引き上げをしたいところでございます。御承知のような赤字公債を出さなければならぬ状態でありますから、当然そうなるのです。しかし一方、私が申し上げたいわゆる公共料金、これを全体として五十一年度におきましては二%強程度の引き上げにとどめるという考え方、それから言いますと、そう大幅な引き上げをすることもできない。  財政のことも考える、企業の運営のことも考える、同時に物価対策のことも考える、諸般の要素を総合勘案いたしまして、まずまずこれで物価政策上も財政対策上も企業運営上も支障ないという辺に落ちつけていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 公共料金二%ということをおっしゃっているわけですが、国鉄だって五〇%ですね、電信電話、それから電気料金、あるいはガス、いろいろ入れていきますと、二%でおさまりますか。そういう点からいきますと、いま長官がおっしゃっておりましたそういう公共料金全部が二%の中におさまりますか、いま私、そのデータを持っておりませんが。
  185. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 二%以内とは申し上げていないのです。二%強、こういうふうに申し上げておるので、大体その辺におさめたいと考えております。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、たとえば消費者米価あるいは麦価につきましては、大蔵省が言っておるようなそういう大幅な値上げではないということですね。
  187. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いろいろな角度から考えまして妥当なところに決める、こういうことで、まだ大蔵省からも見解は示されておりませんです。
  188. 近江巳記夫

    ○近江委員 特に米、麦というような問題は本当に一番こたえる問題でございますし、これは長官としても最大の配慮をして対処していただきたいと思うのです。いまの時点では値上げをすべきでないということを強く申し上げておきたいと思います。  それから電気料金の問題でございますが、この値上げ幅につきましては三〇%から四〇%近くに及ぶ大幅なものとなっておるわけでございますが、そういうことで国民各層の間におきましても非常に強い批判を呼んだわけでございます。私も当委員会におきましては、そのたびごとにこの問題について長官にもまた通産大臣にも、非常にショッキングな値上げ幅である、したがってこれは何としても値上げを認めず、あるいはまた値上げ幅を大幅に縮小してもらいたいということを申し上げてきたわけでございます。  その後、通産省の査定作業がかなり進捗して、大詰めの段階に来ておると思うのでありますが、現在どのような作業段階に達して、いつごろ認可をなさろうとしておるのか、その見通しですね。新聞報道等を見ておりますと、大体この十五日ぐらいがめどではないかということですが、この点についてはいかがですか。
  189. 増田実

    ○増田説明員 電気料金につきましては、四月の初めに北海道、東北、北陸、九州四社の申請が出ておりまして、現在査定をいたしておりますが、最終段階に近づきつつあります。この改定につきましては、きょうだだいま物価安定政策会議が開かれておりまして、そこの御意見もいろいろ拝聴してこの査定の中に取り入れるということになっております。本日の会議が済みましたら、企画庁と従来から協議を進めておりますが、物価安定政策会議内容を踏まえまして、さらに最終協議に入る、こういうことでございます。これが終わりまして、企画庁との協議が調いましたら認可の手続に移るということでございますが、まだ協議が終わっておりませんので、いつ認可をするかということは決まっておりません。
  190. 近江巳記夫

    ○近江委員 現在も物価安定政策会議等で協議をしておるということをおっしゃっておるわけですが、いろいろな報道等を見ておりますと、相当厳格に値上げ幅というものを圧縮するということで、二〇%台、一部三〇%そこそこというような推定等も言われておるわけでございます。また、この年度内は暫定料金でいく、通産省としては暫定料金の期間というものをできるだけ短くしてもらいたい、経企庁は長くせよというような話もあるとか、いろいろ言われておるわけでございますが、この暫定料金制等についてそのようにお考えになっておるのか、この辺、エネルギー庁としてはどう考えておるのですか。
  191. 増田実

    ○増田説明員 今回の電力料金の査定に当たりまして、暫定料金制度というものを一つ考え方として検討しております。これは電気料金の上げ幅によりまして物価に与える影響があること、その影響の緩和措置といたしまして、原価主義を崩さない範囲内で暫定措置というものが一つの解決策ではないかということで、現在このやり方について慎重に検討しておる段階でございます。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 その考えを持っておるということをおっしゃったわけですが、そうすると、この暫定料金でどの程度圧縮できるかという問題が一つ、それから、期間はいつごろと考えているのですか。
  193. 増田実

    ○増田説明員 電気料金制度につきましては、これは原価主義で査定することになっておりますので、先ほどのような考え方に基づく暫定料金というものを取り入れる際におきましても、この原価主義を崩さない範囲内でどれくらい引き下げができるかということで現在鋭意検討いたしております。そういう意味で、まだ何%という数字は出ておりませんが、現在それを検討いたしておる、こういうことでございます。  それからもう一つ、暫定の期間でございますが、私どもといたしましては原価主義を崩さない範囲でどれくらいできるかということで検討いたしておりますたてまえからいいまして、期間が余り長いとこれは原価主義にも響くということで、本年度末にするか、あるいは十二月末でやるかということにつきまして、現在関係者と協議をいたしておる、こういう段階でございます。
  194. 近江巳記夫

    ○近江委員 最終的には経企庁と話し合いに入られるわけでございますが、長官としては、この暫定料金に対する考え方、どういう御見解をお持ちであるか、あるいはまた期間はどのぐらいにすべきであるか、この点についてはいかがですか。
  195. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 この電気料金の算定については原価主義によらなければならぬという法律の規定があるのです。その制約のもとで料金決定が行われるわけでございますが、それでいきますと、これを従来のように一挙にやるということになると、消費者、つまり業界でありますとか、あるいは家庭でありますとか、そういうところにかなり衝撃的な影響がある。そこで暫定料金、それから本料金、こういう二段階に分けることが考えられないかということで、いま暫定料金ということが論議されておるのです。暫定料金は、物価政策上、また衝撃を使用者に余り与えない、こういうたてまえからいいますれば、これは長い方がいいのです。しかし一方、原価計算という枠がはまっているものですから、これをそう長く引っ張るわけにもいかない。その辺の調和点をどこに求めるかということが当面の問題であります。そこで、きょうは物価安定政策会議が開かれておりますが、その皆さんの感触等も承りまして、そして通産省、企画庁の間でまずまずこの辺が妥当であろうという結論を導き出したい、こういうふうに考えております。
  196. 近江巳記夫

    ○近江委員 電気料金というのは一般家庭あるいは産業活動全般に影響するところがきわめて大きいわけでございまして、こうした電力会社から出てきておりますのをそのまま認めないということは当然のことでありまして、何とかできる限り圧縮をさせなければいけない、このように思うわけでございます。  そこで、前回も行われたわけでございますが、低所得者層、いわゆる生活保護を受けておられる方々とか、そういうところにつきましては何とか配慮しなければならぬわけでございますが、この点につきましては、エネルギー庁長官、また通産大臣はどのようにお考えでございますか。
  197. 増田実

    ○増田説明員 電気料金につきましては、先ほど申し上げましたように原価主義で査定をいたすわけでございますが、一つ問題になりますのは、いわゆる社会福祉施設あるいは生活保護世帯その他の非常に困窮な方々に対する対策をどうするかということでございます。基本的には、これらの対策は財政政策あるいは一般的な社会福祉政策によって手段を講ずるということでございますが、ただ、電気料金が上がりましても、これらの社会福祉政策につきましては予算が決まっております。そういたしますと年度内にはなかなか変更がむずかしいということで、四十九年の電気料金の改定のときには、これら社会福祉施設及び生活保護世帯に対しまして、四十九年度末までは旧来の料金を適用するということを行ったわけでございます。今回も大体同様の趣旨でやったらどうかということで、現在その方向で前向きに検討いたしております。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 このような配慮をなさることはもう当然のことでありまして、大体こんな大幅な引き上げをやってくる——時間があれば私はもっと申し上げようと思っておるのですが、原発の推進等も、カリフォルニアの投票も、確かに賛成派が勝ったとはいえども、被爆の洗礼も受けておらない、そういう経験もないアメリカですら三〇%の反対があるわけです。ましてや日本においてはもっと強い批判があるわけです。そういう膨大な設備費をかけ、あるいはその再処理施設、廃棄物対策に非常に資金が要る、こういうことを全部電気料金の中に組み込んできているわけです。そしてこういう大幅な引き上げを図ってくる。大体原発自体、こんな急ピッチで推進していいかどうかわからない。非常に問題があると思うのです。そういうものが電気料金の算定に入ってきて、こんな大幅な値上げが出てきておる。これはもう根本的に政府のいまの方針自体を本当に検討しなければならない問題なんです。電気料金だけで検討すべき問題ではないわけですよ。  そういう点では、今回の非常に大幅な引き上げについては、私たちは強い不満を持っております。ですから、経企庁とさらに詰めをやるわけですが、こんな大幅なものをそのまま認めるわけにいきません。その点、長官も、自分の管轄の業界は何となく気にかかるものだと思いますけれども、国民の立場に立ってひとつ厳しい査定をして大幅な圧縮をしていただきたい、これを申し上げてきおます。  また、同じようにけしからぬのは鉄鋼の問題なんですね。今回の鋼材値上げの通告は三年連続で四回目ということになるわけですが、こういう急テンポの値上げのあり方を見ておられる経企庁また通産省、あなた方はどのように受けとめておられるのですか、これは長官と大臣にお伺いしたいと思うのです。
  199. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま鉄鋼の値上げは交渉中でありますが、これに対する通産省としての基本的な考え方を申し上げますと、鉄鋼は基礎物資中の基礎物資でございますから、値上げについては慎重な配慮が欲しいということでございます。そこで、物価政策上非常に大きな影響があるという場合には、もちろん政府も介入して行政指導をしなければならぬと考えておりますが、それほど大きな影響はないということであれば、これは自由主義経済のことでございますから、できるだけ業界同士の自主的な交渉に任せたいという考え方でございます。今回は自主的な交渉の経過を見守っておるというのが実情でございます。  御参考までに申し上げておきますが、現在の日本の鉄鋼価格は、ある程度上がっておりますが、欧米価格に比べますと約二割ぐらい安いという水準でございますので、やはりこういう国際的な水準等も一つの参考価格になるのではないかというふうに考えております。
  200. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ただいま通産大臣からお話しのようなことでございますが、物価は経済運営よろしきを得て、需給で安定的に動いていくということが自由経済体制の基本でなければならない、こういうふうに私は考えておるのです。ですから、なるべく政府の価格介入ということは避ける、こういうことでございます。ただ、その自由価格形成の結果、非常に経済界に混乱が起きるというような際におきましては、通産省その他所管の官庁が指導に当たるという場合も許さるべきであろうと思いますが、なるべく自由価格形成という方式は尊重していかなければならぬだろう、こういうふうに考えておりますが、いま現実の鉄鋼値上げの問題につきましては、そういう考え方でその推移を見ていこう、こういう考えでございます。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 経企庁長官はまだ御予定があるようでございますから、最後にお聞きしたいと思いますが、重大な影響があればとおっしゃっていますが、産業の米と言いまして鉄なんというものは全部に波及するわけです。大変重大な影響があるわけです、一%でも上がっても。そういうものをこんなに大幅に、一万円から引き上げる。実際いままで見ておりますが、コストプラス適正利潤という考え方に基づく鉄鋼業界の案を出しておるわけでございますが、もちろんユーザーとの話し合いだとかいろいろなことを言っておりますが、大体鉄鋼関係というのは非常に寡占体制ができておるわけですね。結局は鉄鋼業界の一方的な値上げ通告方式によるこういう値上げ実施をやってきているというのが、大体のいままでの傾向じゃないかと私は思うのです。この鉄鋼メーカーの適正利潤論というのは、鉄鋼業界のような強者のみがまかり通る力の論理じゃないかと私は思うのですが、これはまさしく時代に逆行しておると思うのです。  石油ショック以降のコストアップで採算割れになっても値上げができないでいる業種は、アルミ、セメントあるいは機械等いろいろあろうと思うのですが、こうした企業は、石油危機以降の収支悪化を改善するために現在も必死になって合理化に取り組んでおるということを聞いておるわけですが、こういう中で影響力の大きい鉄鋼業界が、原燃料費増を初め、固定費増あるいは人件費増のコストアップ要因を需要家に転嫁する、非常に安易な値上げの姿勢なんですね。こういうことは産業界全体に非常に悪影響を及ぼしますし、いまこういうような姿勢が各業界に出てきたら、一体国民生活はどうなるかという問題でございます。  いま鉄鋼メーカーと需要業界の間で交渉が行われておるわけでございますが、結局は力でまた押し切られるのじゃないか、このように思うわけですが、そういう点からいきますと、国民あるいは需要業界を納得させるためにも、価格引き上げの積算根拠を鉄鋼メーカーが明確にすることが私は必要ではないかと思うわけです。これはいつも申し上げておるわけでございますが、鉄鋼業界は値上げの理由につきまして、前回の積み残し分、原材料の高騰、人件費等のコストアップ要因を挙げておられるわけですが、こうした中には企業の合理化努力で吸収できるものも相当あると私は考えるわけでございます。そういう点からいきまして、この鉄鋼業界はもっと謙虚になって、値上げ前にコストアップ要因を細かく公開して国民の納得を得る努力をすべきだと思うのです。これをやらない限り、減産影響あるいは原料値上がり分をすべて公開すれば鋼材の値上げ理由がなくなるために鉄鋼メーカーはいつも不透明にしておくのだというような疑問を、国民全部が持っておるわけでございます。  四十八年を一〇〇とした卸売物価指数の上昇率は、五十一年四月で約四〇%ですね。ところが、鋼材の値上がり率は今回の分を入れまして八〇%になるわけです。卸売物価の二倍になっておるわけですね。石油ショック当時、原油の輸入価格の上昇が製造コストをどれだけ引き上げるか、産業の連関表を使用した通産省の試算があるわけですが、それによりますと、原油価格が約三倍になった場合の粗鋼コスト上昇率は七・六%なんですね。現在この原油価格は約四倍になっておりますので、粗鋼コスト上昇率は約一〇%程度と見込まれておるわけです。そうなってきますと、このコスト上昇率一〇%と今回の分を入れまして、値上げ率八〇%のこの差につきまして一体長官も大臣もどのようにお考えになっておるか。一部の試算によりますと、この鉄鉱石、原料炭、電力等のコストアップはせいぜい二、三千円にしかならない、このように言われているわけです。今回のたとえば冷延薄板トン当たり一万円という大幅値上げ等につきましては、これは納得できぬわけですよ。鉄鋼だけは力に任せてこういうような引き上げをやってくる。これはもう全部に響いてくるわけですよ。こんなことを、ただ国際価格から二割ほど安いからと、それなら国民生活は一体どうなるのですか。もっと納得できるような説明をしなさいよ。これは両大臣からひとつお伺いしたいと思います。
  202. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお述べになりましたように、鉄鋼の価格というものは非常に大きな影響がございます。それだけ私どももこれは重大に考えておるわけでございますが、この場合に、二つ私どもは見ておるわけです。  その一つは、鉄鋼会社の決算は一体どういう決算なのかということでありますが、この三月期の決算は、表面の形式上の決算は別といたしまして、実質上は非常に大幅な赤字になっております。それは資産処分をいたしまして、その資産処分によって赤字を埋めまして、形式上は黒字にいたしまして配当をする、こういう形をとっておるわけであります。  それから第二点は、先ほどちょっと触れましたように、国際価格の動向ということが当然大きな参考になります。この欧米の方もことしは値上げをいたしておりますので、その欧米の値上げを考慮いたしますと大体なお二割前後の差があるということでございまして、そういう二つの点から、ある程度の値上げは万やむを得ないのではないか。  ただしかし、操業率がことしの初めは七〇%ぐらいでございましたが、年末にはおよそ八五%ぐらいの操業率になると想定しておりますので、操業率の上昇によりましてある程度のコストが吸収できますので、私どもはそういう点も十分配慮するようにということを期待しておるわけでございます。
  203. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 鉄は非常に基本的な重要資材でございますので、その値動きにつきましては、これは監督官庁、所管官庁が十分注目いたしておりますが、とにかく基本的には業界の価格形成に政府が介入するというのはいろいろ問題があるところだろう、こういうふうに思います。大変大事な鉄鋼価格につきましては、そういう基本原則ではありまするけれども通産省において十分その動きについて注目していただきたい、さように考えております。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官もお時間ですから結構でございますが、通産省として十分動きについて監視してもらいたいと、人ごとのようにおっしゃっていますが、長官、人ごとのようにおっしゃらないで、長官は国民生活全般を見守っておる経済閣僚の一番の大物ですから、そんな通産省に預けるようなことではなくして、長官自身がひとつ見守ってくださいよ、これだけを特に申し上げておきます。結構です。  時間がありませんから、あと一問いきたいと思いますが、通産省は鋼材の需要見通しを発表しているわけですが、これは鉄鋼業界実施しております減産のガイドポストとなって、過去の勧告操短と同じ効果を上げまして、他産業の犠牲におきまして鋼材価格を引き上げる結果を生んでおるわけであります。しかも、鋼材の一方的値上げにつきましてもことごとく鉄鋼業界の肩を持って、むしろ値上げの正当化を助けようとしておられるわけです。今回も通産省は、値上げ率が一二、三%程度なら物価への影響も少ないし、一トン当たり平均で八、九千円程度の値上げはやむを得ないというような意向を表明したとかというようなことが言われておるわけです。  通産省は今回は介入しないということをおっしゃっておられるわけですが、確かに自由経済の原則からいきましてそう好ましいとは思いませんけれども、鉄鋼業の経営に対してもっとメスを入れて、値上げできない業界とのバランスを考え企業努力を強く指導する必要があろうかと思うのです。そういう点から、依然として続けております減産体制を早急に撤廃するように指導すべきだと思いますが、いかがでございますか。
  205. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 鉄鋼は、先ほども申し上げましたように基礎物資中の基礎物資でございますので、過去十年間、昭和四十一年から需給関係の見通しをずっと発表しております。ほかの物資につきましては、いわゆるガイドラインというものは条件が整い次第できるだけ早く、ことしの上半期じゅうぐらいを目標にいたしまして全部廃止する方向に持っていくつもりでございますけれども、鉄鋼につきましては、やはりわが国産業の基幹をなしておるという意味から、需給見通しを引き続いて発表する所存でございます。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 この寡占体制の鉄鋼業界の値上げの場合、いつも新日鉄のプライスリーダーが問題になるわけでございますが、今回は鉄鋼業界もこの点を意識して、新日鉄よりも前に川鉄、鋼管が値上げ通告を発表したり、各社で値上げ額にばらつきを持たせたり、苦心の演出をしておるように思うのですが、しかし、こうした小手先の表面上の演出だけで姿なきカルテルの疑いが晴らせるものじゃないと私は思うのです。公正取引委員会におきましては、前回のときと同様に、今回も毅然たる態度で調査実施すべきであると考えるわけでございますが、この点についてはいかがですか、公取委員長
  207. 澤田悌

    澤田説明員 お話のように、前回の昨年の鋼材値上げについては、調査をいたしまして若干の問題点指摘し、公表をしたのでございます。大体物価は自由な需要供給の関係において決定されるべきものであることは申すまでもないのでありますが、その際に独禁法違反の行為が介在するものでありますれば、これはもう当然排除することになるのでありますが、お話のような寡占的な業界におきます値上げにつきましては、明白な違反行為が介在しないか、あるいは介在するかもしれないが、なかなか認定がむずかしい、こういう状態でございまして、現在の独禁法では、これに有効に対処しがたい面がある問題であることは御承知のとおりでございます。最近の鋼材の値上げにつきまして、現在進行中でございますが、私どもは値上げの幅というような問題よりも、値上げの仕方について注目をしておる段階でございまして、その結果どう対処するかは今後検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはひとつ公正取引委員会としてはびしびしやってもらいたい。よろしいですか、公取委員長、これを特に申し上げておきます。これは要望いたしておきます。  最後に、資源エネルギー庁長官、この前の委員会であなたは、標準価格を撤廃した途端にプロパン等の値上がりの傾向が出てきたので、私が大丈夫かと聞いたら、家庭用灯油等は影響はありませんと言った。影響がないどころか、出てきているのですよ。これは前回の答弁と違いますよ。あなたはどう責任を持つのですか、抑えるためにどうしますか、これだけを一つお聞きして、答弁が納得できれば、これで終わります。
  209. 増田実

    ○増田説明員 家庭用プロパンの問題でございますが、従来からしいておりました標準価格を本年五月一日に撤廃いたしました。その後、この家庭用プロパンの価格につきましては若干の動きが見られますが、一般的に言えばほとんど平穏でございます。千五百円前後を維持しておるということでございます。ただ、輸入価格につきまして若干の値上がりその他がございまして、元売と卸との間で現在若干の価格交渉が行われておりますが、末端価格、いわゆる消費者に対する価格につきましては、私ども調査した限りにおきましては、まだほとんど動きがないという報告を受けております。
  210. 近江巳記夫

    ○近江委員 家庭用灯油は十八リットル入り一かんについて三十六円、五%高くなるのです。だから、こういう動きはもう出てきているわけですから、よく調査なさって、ひとつ家庭を守ってもらいたいと思うのです。もう時間がありませんから、これだけ特に申し上げておきます。  では、以上で終わります。
  211. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 玉置一徳君。
  212. 玉置一徳

    ○玉置委員 先に委員長に申し上げておきます。  本日の理事会では、出席の大臣は、通産大臣はずっとおいでになる、経企庁長官は一時半から一時間か何か御用事がある、こういうことでありましたので、わざわざ出席の御要求をせないでも当然おられるものだ、こう私は思っておったのです。公取委員長も最後までおる、こういう話でありましたからそのつもりでおったのですが、どういうことになったのか、御返答をお願いいたします。
  213. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 玉置委員に申し上げます。  直接、長官の出席要求がなかった、こういうような関係から事務的に進めた、こういうことでありまして、大変申しわけがない。おわびを申し上げます。
  214. 玉置一徳

    ○玉置委員 所管大臣で都合の悪い時間がこれだけだという通告がありましたら、当然おいでになるものだとわれわれ理解していいのじゃないだろうか。通産のエネルギー庁長官とか、あるいは農林省のだれはぜひ来ておいていただきたいというときには、それだけの要求はいたしますけれども、きょうのように、理事会では、経企庁長官は一時半から一時間だけは都合が悪うございます。それから公取委員長は、あなたがおっしゃったのは、何か非常にハッスルして最後までおります。こういうのが理事会の席上のあなたの皆さんへのお話でありました。それが一人ずつおらぬようになってしまうということは、一体どうなんだ。
  215. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 委員長の不手際から、大変申しわけありません。それでは……。
  216. 玉置一徳

    ○玉置委員 だから、今後、よろしいか、四時に帰りますぞというようなことをあらかじめ理事会で言うていただかぬと、何時から何時までは欠席をさせてもらいますという話では、残りはおっていただけるものだと思っておるし、きょうは五時までで終わります、こういう話でしたから、公取委員長なんか、あなたが特別発言されて、猛烈にハッスルして最後までおりますというようなことを言うておいてこのさまでは、こちらの質問計画がありますから非常にやりにくいことになる。本当はきょうは委員会一つの権威に基づいて、副総理も何も用事がなければ来てもらいたいのだけれども、そんなことをしてみたって大したことはないのだからやめはしますけれども、今後ははっきりしていただかぬといかぬのじゃないか、こう思いますので、厳重に御注意を申し上げておきたいと思います。  そこで、やむを得ませんので、経企庁長官の分の質問を、お気の毒ですが通産大臣にまず冒頭やりたいと思うのです。  通産大臣、妙なことで申しわけありません。一つは、皆さんで一生懸命やっていただきまして、景気もようやく底を脱出した。この間、景気回復宣言を公式にされたやに新聞で見たように思うのですが、あれはされるということを書いておったのかどっちか忘れましたが、そういうようなことにようやくなってまいりましたときに、OECDもしくは国連等におきましては、景気回復とともに世界じゅうがインフレについて相当な関心を払わなければならない、こういうことが最近しばしば新聞に報ぜられております。  こういうところを考えますと、わが国ではまだ不況産業の非常に厳しいところと、ようやく日の目を見つつある産業と二つございますが、その厳しいものには特別な手当てが特に必要であり、しかも全般としてインフレにならないように気をつけなければいかない時期に達しておる。こういうところで経企庁長官並びに公取委員長にも御注文を申し上げ、御質疑をしたい、こう思っておったわけであります。通産大臣にだけこういうことを申し上げるのははなはだ不本意でございますけれども、事の成り行きでお許しをいただきまして、通産行政を所管しながらそういうことに配慮していくためには、通産行政としてはどのような心構えでおやりにならなければならないか、お伺いをしておきたいと思うのです。
  217. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず、物価の動向でございますが、景気は幸い順調に回復に向かっております。しかし、こういう景気の回復期には物価の動向にはよほど気をつけなければならぬわけでございますが、本日も月例報告がございまして、その際、卸売物価についての若干の報告がございました。年初来〇・六、七%ぐらいな水準で卸売物価が毎月ずっと上昇しておりましたが、最近は大体〇・四ぐらいな数字になっておるようであります。五月も〇・四という数字が日本銀行からきょう発表になりましたが、多分六月も〇・四ないし〇・五であろう。七月は電気料金の値上がりがあるから若干それを上回るかもわかりませんが、大体落ちついておる、こういう報告でございます。しかし、やはり物価の動向には留意をする必要があろうと思います。  世界全体は非常に順調に回復しておりまして大変結構だと思っておりますが、やはりこの物価の動向はサンファン会議あたりでも問題になるのではないかと思いますけれども、世界全体として十分な配慮を払う必要があろう、こういうふうに思うわけでございます。  それから、一面、いま御指摘がございましたように、全体としての景気の回復は進んでおりますが、非常にいい業種と非常に悪い業種それから中間程度の業種と、三つの分類ができると思うのです。現在操業率は大体八一、二%程度まで回復しておると思います。毎月相当なスピードで回復しておりますので、九〇%近い操業率になるのもそう遠い将来ではないと私どもは期待しておるわけでありますが、九〇%程度の平均の操業率になりますまでは、やはり悪い業種といい業種との差は相当あるのではないか、こう思います。幾つかの悪い業種につきましては、景気回復期には格段の配慮を引き続いて払っていく必要があると痛感をいたします。全体としての景気回復に油断をすることなく、いま御指摘のようなきめの細かい配慮を引き続いて払っていくつもりでございます。
  218. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで、不景気の問題で経企庁長官質問したかったのですが、たとえば新聞で見ますと、造船の問題につきまして開銀融資の返還に手心を加えるということが出てまいりました。こういうような形で、前に私も、不況産業の赤字というものは金利負担だけの赤字である、銀行だけが所得の最高第八位までを占めておるような形で果たしていいのかどうかということを予算委員会でずいぶんやったものであります。  あるいは予算の分科会で、四十八年前後二、三年の間に三十兆円というものを不動産に銀行が出しておるじゃないか、そして、不動産の動きがとまったために不動産会社が三十兆円のその金利でアップアップしておるのにかかわらず、その当時金融機関としてももうかると思ったから出したのであって、平等な損失をこうむったらどうだ、同じ金利をずらっと取っておるじゃないかという形で、私は国土庁長官をも責めたことがあるわけであります。  こういう意味では、通産大臣の所管として見れば、銀行の金融をこのまま置いておくよりは、思い切って公定相場の引き下げに応じて、競争のでき得るような銀行金融の自由化というものを促進しなければならないとお思いになるかどうか、それが第一点。  第二点は、銀行が大企業であろうとも、予算委員会で日銀総裁が言いましたとおり、あるいは大臣がお話しになりましたとおり、個々企業と銀行の間でそういうめんどうを見られるだけ見させるようにいたします、こういうお話でありましたが、そのような傾向にあるか、それの努力の成果と、今後のあなたのおやりになりますこういう問題についての考え方、これを御答弁いただきたいと思います。
  219. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま産業界全体としての問題は、一つは、先ほど申し上げました操業率がなお依然として八〇%を若干超えた程度であるということですね。これを早く九〇%程度に持っていくということが一つ課題だと思います。  それからもう一つは、日本の企業産業界全体としての外部借入金が非常に多い。したがって、好況のときは比較的いいのですけれども、一たび不況になりますと金利の重圧が非常に経営を圧迫するという問題、それから、操業率が低い場合にはどうしても余剰の労働力をどうするかという問題が生じてくるわけでございますが、その中でも金利負担の問題というのは非常に大きな課題だと思います。  ただしかし、いまの金利の問題につきまして申し上げますと、過去四回、今回の不況に際しまして公定歩合の引き下げがございましたけれども、いまなお果たしてそれだけの効果があったかどうか疑問でございまして、公定歩合引き下げについての実質金利の引き下げの追随率というものはまだ十分ではない、こういう感じでございます。でありますから、現時点において公定歩合を仮に引き下げましても、なかなか実効金利の引き下げというものはできないのではないか。現時点においての最大の課題は、やはり実効金利をどうすれば引き下げられるのかということが一番の大きな課題であろう、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。
  220. 玉置一徳

    ○玉置委員 まあはぐらかされたような答弁ですが、それはそのような答弁しかしにくいかもわかりません。  そこで、先ほど同僚の諸君から鉄鋼問題についてずいぶんいろいろの御質疑がございましたので、重複を避けますが、たとえば鉄鉱石の輸入は、ブラジルでしたか、南米のどこかだったと思いますが、ことしは横ばいで前年度と同様にいたしましょう、ただし来年度は八〇%値上げをしてもらいたいという二年契約を——契約か、あるいはそういう話し合いということかもわかりませんが、なされたように新聞で私は承知いたしております。  このようなことが、景気が世界的に回復してくると同時に、一時猛烈に頭を持ち上げました資源のナショナリズムというものが、その他の重要な非鉄金属等々にも出てまいると思います。そこで、それに対してどのような手をいまのうちに打っていくかということを、前々御質問なり御要請を申し上げておったわけです。この不況のさなかこそ、一次産品輸出国が弱っておるときでないとこの問題はできないぞ、したがって、工業先進国がかなりの援助をしながら世界的な協定を結んでいく、しかも工業先進国が買いたくない場合でもそれを貯鉱するような制度をつくることによって、将来むちゃくちゃな値上がりというものをセーブしていくということが必要じゃないだろうかということを申し上げておったのです。  まあ物によってそういう手も打たれつつあるように思いますが、少資源国、ほとんど無資源国に等しい日本が工業先進国の一員に入りながら一億一千万人を養い、生活安定を高めていくということには、やはり資源の安定的確保ということ、しかもそれが、でき得れば値段が世界的にある程度むちゃくちゃな値段にならないようにということが前提だと思うのですが、どのようにお考えになって、どのような手をお打ちになろうと思っておいでになりますか、鉄鋼に関連をいたしましてお伺いしておきたいと思います。
  221. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま世界経済に共通しておる最大の問題が幾つかありますが、その中でも特に重要だと考えております課題が二つございます。その一つは、自由貿易の原則をいかに堅持するかということだと思います。それからもう一つは、いま御指摘がございました一次産品の問題の解決をどうするか、これが非常に大きな課題だと考えております。特に一次産品の問題につきましては、日本はそのほとんど全部を輸入しておるわけでございます。日本の必要とするものはほとんど全部を輸入しておるわけでございますし、また世界における最大の輸入国である。こういうことを考えますと、先般ナイロビで行われましたUNCTADの会議は、最終的には来年の三月にある程度の方向を打ち出そうじゃないかということで散会いたしましたが、その来年三月までに出そうと言われております一次産品問題についての結論に対して、日本並びに先進国がどう対処すべきかということが当面する緊急の課題になってきたわけでございます。  サンファン会議もこの月末に開かれるわけでございますが、そのサンファン会議におきましても、一次産品問題等自由貿易の問題は六つの課題の中でも最大の課題である、こういうふうに言われておるわけでございまして、私どももこの問題を来春までの間にどういう方向に持っていくかということにつきまして、アメリカ初め先進諸国と十分相談をいたしまして、世界経済全体の立場から間違いない方向に解決しなければならない、こういうふうに考えております。  鉄鉱石の問題につきまして御質問がございましたが、これは局長の方から答弁をいたします。
  222. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 手元に資料を用意しておりませんけれども、確かにことしの最初の交渉におきまして、鉄鉱石についてブラジルは一応据え置きにするけれども、下期からの価格は、たしか三六%だと思いましたが、これを上げざるを得ないということで、鉄鋼業としては原材料がまた上がるということを心配しておりますが、長期的に安定をするためにはこれはやむを得ないということでのんだというのが実情だと思います。
  223. 玉置一徳

    ○玉置委員 先ほど同僚議員から電力問題についていろいろ御質問がございました。それに関連いたしまして、電力の大幅な料金の引き上げによりまして、電力を非常にたくさん消費いたしますアルミあるいは亜鉛等の精錬業界は成り立たなくなる、あるいは今度はいろいろな意味である程度都合よく解決をしてもらったところもございますけれども、次はそういうようにまいらぬのじゃないだろうか。次からは同じような形に上がらざるを得ないようになります。したがって、将来伸びてまいります需要に対応いたしましては、ある程度国外への進出ということも考えられるけれども、いま国内にある、あるいは将来とも国内にある部分は増設せざるを得ないものに対してどのような技術的な工夫を加えていくのか。もちろんそれは体質の思い切った強化も必要だと思いますし、合併等の問題も起こるでしょう。その体質強化とともに、ただいま申し上げましたような技術の工夫というものについてどのように当局としてはお考えになっておるか。もちろん民間の皆さんの御意見が一番大事でありましょうけれども、どのような方向でそういうものを刺激していこうとお思いになっておるか、大臣並びに局長からお答えをいただきたい、こう思います。
  224. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今度の電力の値上げに際しまして私どもが一番心配いたしましたのは、アルミ等の電力をたくさん使う産業が非常に大きな影響を受けるのではないかということでございます。日本のアルミ業界の実情を見ますと、大体自家発電とか共同発電等で八割ほどは賄っておりまして、電力会社から買っておりますのが二割ほどでございます。その二割の分につきましていろいろ配慮を加えるようにいたしまして、たとえば深夜料金を若干調整するとか、あるいはまた日曜、休日等の余った電力を使った場合に若干の調整をするとか、いろいろ配慮をいたしまして、アルミ業界等に対する影響は最小限度にとどめるように話し合いをさせました。大体アルミ業界の業者も了承をしていただいたと思っております。  今回のことはこれで終わりましたけれども、やはり何と申しましても日本の電力は世界に比べまして高い水準になりましたし、立地条件もよろしくない、こういうことでございますから、今後のあり方といたしましては、企業の合理化、さらにまた間連分野との合併、それから海外における立地の開拓、海外における新しい企業の開拓、こういうことのほか、いま最後に強くお述べになりました技術革新にどう対応するかという大きな課題があろうと思います。私は、そういう幾つかの問題を総合的に考えながら、今後は新しい道を切り開いていくべきである、そういうふうに理解をしておるわけでございますが、この技術革新の問題につきましては局長から答弁をいたします。
  225. 矢野俊比古

    ○矢野説明員 昨年の八月に、こういった電力のかたまりであるアルミ、これをいかにしてそういった電力を使わないようにするか、省資源、省エネルギーというようなことを考えようということで、関係精錬界を中心といたしまして電気化学協会とか語らいました技術話談会を現在業界の中につくっておりまして、今年度中に基礎資料の収集、それから基礎部門の研究の完了ということで進めております。  内容といたしましては、現在、弗素というものが一つの大宗になっておるような方式でございますが、これを塩化物電解法あるいはさらには硫化物電解法、特に今後は硫黄は公害対策で非常に出てまいりますので、これの活用ということを頭に置いて、こういった二つの方式をどう取り入れたらいいか、こういうことをいまスタートさしておるわけでございます。  私どもといたしましては、今年度中の基礎部門の結果が出次第、来年度におきましては、重要技術研究開発補助金というようなルートとか、あるいは国立の試験所の活用というようなことでできるだけ助成金も考えながら、これの実現化、企業化への実現ということに努力いたしたいと思いますし、さらに研究がそれ以上に進めば、これはまた非常に期待でございますが、大型プロの体制というふうなことで、技術革新を大体五十三年度の終わりぐらいには何とか目鼻をつけて実行に入り、そういうことでアルミが電力にばかり頼らざるを得ないというところを改善したい、こういうふうに考えております。
  226. 玉置一徳

    ○玉置委員 基礎産業局長、帰っていただいて結構です。  大臣にひとつお伺いするのですが、日本の石油の問題はあらゆるところに影響が起こるわけであります。海外にいろいろな意味で進出してこれの掘削等々に当たったけれども、うまくいくのはなかなかむずかしい問題であり、しかも政変等々の関係で、国有化その他で思うようにならないような結果も、成功した例の中でもあり得るわけであります。  そこで、今度の日韓大陸だな、韓国との問題でございます。しかも国民感情としては、九州の目と鼻の先じゃないか、日本の横っ腹じゃないかというので、どうも理解のしにくい問題でございますが、海洋法の結果が大陸だなの延長論が非常に強くなっておるし、ほぼその決定に近くなるのじゃないか、ただし、そこにいろいろな条件問題点はまだまだ残ってはおるのじゃないか、こう思います。しかし、ある動向を考えて、少なくとも国民のコンセンサスを求める前に国会の中の諸君の理解をある程度求めなければ、この問題の解決が一日も速やかにやらないと損だなんというようなことになるのだったら、私は、いまの国会状況ではまずいのじゃないだろうか、したがって、こういう閉会中に、ひとつ商工委員会だけででも十分に御勉強いただくような機会を、委員長側と相談していただいてやっていただく必要があるのじゃないだろうか。  聞くところによると、外務委員会は船で玄界灘からそこへ下っていくというようなことも聞いたりしております。そういうような意味で、これが日本の資源の確保のためにいま一番残された緊急の宝庫であるというのならば、しかも海洋法の方向としては大体そちらに向いて固まりつつある、ただし、二分の一の境界じゃないものでほぼ固まっておる、ああいう問題についてはどのように最後の細目が決まるのかはわからぬにしろ、かなりもう本気で勉強しなければならないのじゃないだろうかという感じがするのですが、大臣のこれについての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  227. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 石油開発について、通産省としての基本的な考え方を申し上げてみたいと思うのでございますが、現在石油開発企業が八十一社ございます。そのうち成功いたしましたのが八社でございます。この成功いたしました八社のうちにも、相手国の国情によりまして取り上げられてしまうというケースが相当ございます。でありますから、ここ二、三年非常にナショナリズムが盛んになっておりますし、それに基づいてパーティシペーションという問題が非常に強く起こっておりますので、開発して取り上げられてしまうということでは困りますから、その開発する場合に、相手国の国情を十分見た上で開発地点を選択していく、これが必要であろうと思います。たとえば、最近アラスカ湾等におきまして鉱区をある程度入手いたしましたが、こういうところの採掘は、私は大変結構だと思うのです。これは、もう幾ら開発しても取り上げられることはない。でありますから、相手国の国情を見て、そしてその上で開発地点を判断をしていくということが第一。  それから第二は、日本近海に、いま御指摘がございましたように、なお非常に有望な油田埋蔵地帯があるというふうに言われておるわけでありますので、これをできるだけ早く開発するということ。日本近海における開発が成功いたしますと、これは備蓄にもつながる、こういう意味で私は非常に結構だと考えております。  でありますから、情勢が変わりましたけれども石油開発事業には積極的に取り組んでいくという基本的な姿勢には少しも変わってはおらぬわけです。ただ、いま申し上げましたように、開発地点をめちゃくちゃにどこでも掘りまくるということではなくして十分考慮して選択をする。選択をしながら積極的に取り組んでいくという方針でございます。  特に日本近海におきましては、二年前に韓国との間に共同開発という条約を結んでおりまして、韓国の方からは矢のような催促が来ております。そういうことでございますので、一刻も早くこの国会で御審議をいただきまして、そして批准のできるような手続をひとつしていただく、こういうことを強く期待をしておるわけでございます。そこで、いま玉置さんのお話がございましたように、委員長の方でそういうお取り計らいをいただきますならば、私どもは大変願ってもない幸いでございまして、ぜひともそういう方向にお取り運びいただきたいということを強く期待しておるわけでございます。
  228. 玉置一徳

    ○玉置委員 委員長の方でしかるべくひとつ御配慮をいただければ、と申しますのは、本当によく勉強しないと、あんなもの、何で韓国のものだ、日本のどてっ腹じゃないかという素朴な考え方、ましていわんや国民感情としてはそういうのが多いのじゃないか、だから、せめて国会で徹底的に勉強はした方がいいのじゃないかという感じを持つものでございますので、一言申し上げておきたいと思います。  そこで、最後は、先ほどのお話とすっかり変わりまして、絹糸の、したがって生糸の一元化輸入、絹織物のこれに対する対策、この問題について御質問をしてまいりたいと思います。  先般、日切れ法案のときに駆け込みで農林省から出しました一元化輸入の法案が、「当分の間」ということで通ってしまいました。通ってしまいましたと言ったら申しわけありませんが、成立をいたしたのであります。繭糸価格安定法の一部改正でございます。  そこで、それに伴いまして、当然通産省側としましては特定絹業安定臨時措置法というものをつくらないと片手落ちである、こういうことでおやりいただいて、恐らくこれは政府案を自民党案という名前ですりかえて、議員立法の形で出すような形になってきたわけであります。  ところが、当時ちょうど二国間協定の最中でありましたから、これを出すことが二国間協定を妨げるし、相手国感情を非常に刺激する、こういうような配慮から日の目を見ずにそのまま終わったわけでありますが、そのときに自民党政調におきまして何がしかの、業界の諸君は三百億というように期待をいたしておりますが、それにかわるべき措置として、政府の方で予算措置をするというような了解でそのことが措置されるような約束がされた、こういうように承っておりますが、大臣、大体いつごろ、どのような方向でそのことが実現されるか、約束が実行されるか、この際、承っておきたいと思います。
  229. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 経過は、大体いまお述べになったとおりであります。かつまた、委員会における決議等もございましたので、私どもといたしましては、国内の絹織物業者等に対する対策が十分、一刻も早くできることを期待しておるわけでございますが、いま、自由民主党の政調の方で責任を持っていただくことになっておりまして、作業をしていただいております。一刻も早く結論が出ることを期待しておるわけでございます。
  230. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで、大臣、二国間協定ができました。これは、私はかなり評価すべきことだと思います。そこで、基準糸価が日本のは一万二千百円でありますが、二国間協定ができて数量が限定された。数量が限定されて、蚕糸事業団でないと一元化輸入をいたしません、こういうことになりましたので、ことしの日本の輸入価格が一万五百円につり上げられた。そうして、国際相場である中国等々からイタリー等に輸出される絹は、やはり七千円がらみである。そうすると、二国間協定をしたために、これは値が上がるのがあたりまえでしょうけれども一挙に一万五百円に上がった。こういうことでは、日本の消費者は上がった相場のものを使わざるを得ないということになります。  そこで、問題は、私は前から言うておったのですが、日本が三十万俵生産する、中国、韓国から十万俵、それから織物等生糸換算しまして五万俵、約十五万俵が入ってきておる。二と一ですね。それが蚕糸事業団の中の基準価格を設定されるものでありますから、基準価格のある枠内にならなければそれを放出せない。つまり日本の相場が高くならなければ放出せないということですから、いままでは自然に入ってきておるので、自然に混合されたメカニズムが、価格の形成がされておったのが、一元化輸入して蚕糸事業団が一手に取り扱いますということになりましたから、しかもそれが高値相場のあるところが来なければ放出しませんぞと、こうやったものですから、全然価格の形成が、日本の事業団の価格のあれでないと動かぬようになってしまったわけです。しかもそれが、やはり流通も非常にぎくしゃくした流通で、欲しいところへ全部いついかなるときでもさっと流れるということがうまくできないような仕組みになってしまっておる。  こういう点を考えますと、二国間協定をしてしまったら、わざわざ蚕糸事業団を通さなければならないという理屈はどこにあるのだろう。もっと普通の相場で、つまりイタリーやその他世界相場として輸出されておる相場で日本だけがなぜ買えないか。それは、価格を決定して一元化輸入を決め、数量を決めてしまったために、足元を見透かされるという形になったのだろうと思うのですが、このぐらいなことをするのだったら、なぜ価格差補給金の形をとらないのか、一元的に物を買い入れるというようなばかげたことをせなければならないのは一体どういう理屈か、こういうことなんです。  そこで、質問としては、まず大臣お答えいただきたいのは、一元化輸入、二国間協定をそれぞれ規制いたしますと、値が上がるのが当然であるけれども、これを何とかして安く、もう少し世界相場に近い値段で買う工夫をなさるように、農林省の機構でありましょうけれども通産側として、一般国民の需要者並びに織物業者等のためにそういうことをなさるお気持ちはあるかどうか。  それから二番目は、価格差補給金で、これを農家に渡すことによって自由なメカニズムの中で自由にやらした方がいいことはないかどうか。まず、この二点について御質問したいと思います。
  231. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 外国から生糸を買います場合に、日本だけがいまお述べになりましたように国際価格よりも非常に高いものを買わなければならぬというのは、これは常識的に見ましてどうしても納得できない点だと思います。しかし、私は、その理由というものは、二国間協定ができたからではないと思いますね。二国間協定ができたから、そこで結局国際価格よりも非常に高いものを買っているのだということではなくして、どうも買い方に問題があるのじゃないかという感じがいたしますが、そこらあたりの仕組みにつきましては、これは専門家である農林省の方から納得いくような御説明があろうかと思います。
  232. 池田澄

    ○池田説明員 お答えいたします。  現在行っております一元輸入におきましては、一般競争入札により輸入を行っております。それから、二国間で輸入量を合意してまいっておりますけれども、この場合におきましても、二国間で合意いたしました数量をわが国に入れるという履行の問題につきましては、適正な価格、適正な取引条件が前提であるということになっております。そういう意味では、一元輸入の実施、すなわち輸入生糸の輸入に際しましては、適正なる価格での輸入に努めてまいりたい、こう思っておりますが、現実問題といたしまして、輸出国にとりましてはやはりできるだけ高く輸出したい、それから、わが国に近いある国におきましては、賃金あるいは価格の上昇によりましてそのコストもかなり上がっておるというような事情がございますので、かなり高く売りたいという意向もまた強うございます。  そこで、私どもといたしましては、今後とも適正な価格での輸入を確保するため、事業団が輸入いたします場合に設定いたします予定価格というのがございますけれども、入札をする場合に上限を決めます。この予定価格の設定と、それから実際に買う場合に、国別間で、あるいは輸入商社間で競争ができるように、適正な競争確保するように、こういったことで今後とも配慮し、国際的な適正な価格で輸入するように努めてまいりたい、こう思っております。
  233. 玉置一徳

    ○玉置委員 私が先ほど申しました二国間協定で値が上がったのじゃございません、間違いました。二国間協定で数量が制限されて、それに対する買い上げの仕方がどうとか、いまお述べになりましたのは修身の教科書みたいなもので、そんなものではどうともならぬので、そうじゃなしに、なぜ日本だけがこれだけ高く売りつけられるのか、普通の値段で買い上げられるのじゃないか、イタリアにいっておるものは日本に輸入しておるものよりは質がうんと悪いものかどうか、そういうこともないのだろうと思うのです、こっちが特別質がいいものを要求しているのだったら、これはこういう相場なんですということはあり得ますけれども。  だから、農林省の買い付けの生糸の方なんですが、生糸の問題のあれを、そういう修身の教科書みたいなことを言うておらぬで、私は一遍農林委員会に出て農林大臣質問はいたしますけれども、本当に反省して工夫をしなければ、一元化輸入みたいなものはやめなさいということに国会じゅうなりますぞ。次にこういう失敗を二度とすれば、必ずその反省が国会に起こってくる、こう思っていただきたい。安倍農林大臣にこのことをよくお伝えいただきたいと思うのです。こういうことをするのだったら、わざわざそういう数量の協定をしないで、価格差補給金を渡すことによって、自由経済のメカニズムに直していった方がよっぽどみんな得心のいく形になることは事実であります。  そういうような意味でも、買い上げる時期は、四半期ごとにおやりになるのだと思いますが、次に二度とこの失敗をなさったら大問題です。いまおっしゃったような問題は修身の教科書にも載っておるし、売る方はなるべく高く買わしたいし、あたりまえなことであって。しかも人件費が高騰しておるということになれば、イタリアへいっておるものも同じ値段でなければいかぬはずなんです。イタリアにダンピングしておるのだったら別ですよ。そういう意味では、そんなことは答えにならぬ。そうした意味で、本当にこの問題を考え直さなければ、私、いま若干間違って質問をいたしましたが、まるきり通産省まで巻き添えを食らって、役所の仕事はこんなんだという一つの標本になるおそれすらあるのじゃないか。少々えげつないことを言って申しわけないのだけれども、ひとつ猛烈な反省を要求しておきたいと思うのです。  余り毒づいてもしようがないことでありますので、いま申しますように、次の買い入れの機会までに十分な御検討をなすって、商社等々もよく皆さんで相談をされておやりにならないと、役所仕事という言葉で逃げられるおそれがありますから、ひとつ猛省を促しておきたいと思います。  この程度で終わっておきます。
  234. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十五分散会