○向坂参考人 それでは、御意見を申し上げます。
石油危機以降、特に先進工業諸国では各国とも、インフレを抑制するために
エネルギー価格など公共
料金を抑制するというようなことがございまして、これに対して
エネルギー開発のための投資
コストは、石油危機以降二倍、三倍に増加しております。たとえば油田の開発の
コストにしましても、大体二倍以上に増加しているようでございます。
原子力その他についてもほぼ同様なことが言われるわけでございます。したがって、
エネルギー産業は
料金、価格が抑制されるために収益状況が悪くなり、そのことによって
資金調達が思うようにいかないというような状況になってまいりました。
先般、私は、今世紀中の世界の
エネルギー供給をいかにして
確保するかというような国際
会議に出てまいりました。アメリカ、ヨーロッパ、
日本の専門家がそれぞれ集まりまして、今後十年、二十年、三十年にわたってどのようにして国際的な
エネルギーを
確保したらいいかというような検討をいたしましたが、石油がやがて増産の限界に達するので、
原子力その他代替
エネルギーの開発を進めなければならない、また、OPEC地域以外の石油開発を大いに進めなければならない、そのための必要な
資金が現在のような情勢では果たして十分
調達し得るかどうかというようなこと、したがって、長期的な
エネルギーの
供給を
確保するために、
エネルギー価格政策というものを
政府は再検討する必要があるのではないかというような意見がその
会議でも出てまいりました。
長期的な
エネルギーの安定
供給のためには、
エネルギー価格政策及び
資金調達をいかにして可能にするか、
制度的な問題を含めましてそういうことを検討する必要があるということが、この国際
会議の
一つの重要な結論でございました。わが国でも、石油危機以降の価格抑制と、不況で石油の価格が悪いために、そういった
エネルギー産業の収益悪化、したがって
資金調達力の将来について不安が生じているというような状況は、御承知のとおりでございます。
私は、
エネルギー調査会及び
電気事業審議会で
資金問題懇談会の一人のメンバーとして参加いたしまして座長を務めたわけですが、その
審議の
内容を踏まえまして、
資金問題、きょうの
議題である
社債発行限度の拡大についての私の
考え方を申し上げたいと思います。
まず第一は、
エネルギー産業、特にここで問題になる
電力や都市
ガスの将来の
資金調達額がなぜ巨大なものになったかという
理由が第一の問題であろうと思います。
これは先ほど申し上げたように、たとえば
電力にいたしましても、新規の発
電力一単位を開発するための投資額が二倍ないし三倍に増大するという物価の影響があること、これは非常に重要な事実でございますが、そのほかに、
発電設備においても、
原子力あるいは
LNG火力というふうに、発
電力一単位当たりの投資額が非常に大きい、いわゆる資本係数の非常に大きなものの能力増強をしていかなければならないという事実。それからまた、発電所がだんだん遠隔地になりますから、そのために送電幹線を新しくつくったり、あるいは東と西の周波数の
転換の
設備をつくるというような必要も出てまいりますし、もちろんそのほかに公害防除とか
原子力の安全対策などのための投資額もふえていっているわけでございます。そういった
意味で、今後の増加する発
電力一単位当たりの投資額というものが非常に大きくなっているということでございます。したがって、今後とも
電力需要は相当に伸びますし、それ以上に
発電設備をふやさなければならない状況でございますから、将来の
電力業が
調達すべき
資金量は巨大なものになるということでございます。
この点は都市
ガスについてもほぼ同様な
事情であって、
社債発行限度枠の拡大の
対象になる四社については特にそうですか、燃料のLNG化を進めるために、その関連投資、受け入れ基地なり、製造
設備なり、あるいは大きな幹線輸送パイプをつくっていくというような
意味で、非常に
所要量が大きくなるわけでございます。
そういった
意味で、
資金問題懇談会で試算したときには、
電力が今後十年にわたっておよそ四十七兆円以上の
資金を必要とするし、都市
ガスについても、四社だけとりましても三兆六千億円余を必要とするという
計算が出てまいっているわけでございます。
このような
資金をどういうふうにやって
調達したらいいのかという点で、懇談会ではいろいろな試算をやってみました。その結果、たとえば
増資についても、今後の
増資市場を見込んで年一割
程度の
増資、つまり二年に二割
増資とか三年に三割
増資とかというようなテンポでやっていくのが
限度であろうし、それから内部留保は、過去に比べて全体の
資金調達に占める償却積立金その他の内部留保額の占めるウエートはこのままの
制度では恐らく下がりますが、ある
程度償却や積立金などの増強によって、内部留保を少なくとも全体の
所要資金の三分の一以上は
確保していかないと、全体の
資金調達がむずかしくなる、資本構成の悪化がもたらされるというようなことが結論でございます。
そのほか、長期信用銀行など長期性の融資をする金融機関からの
借入金をするとか、あるいは開銀からの政策融資もございましょうし、そういったことをいろいろ勘案いたしましても、どうしても
社債発行に依存する度合いをかなり大きくせざるを得ない。現在の
社債の
発行枠、
電力で言いますと二倍、正味資産といいますか、そういうものの二倍ですけれども、その枠内では、ほかのいろいろな
資金調達源議案を勘定いたしますと、とても全体の
所要資金が賄い切れないのではないか。
電力の場合には特に非常に大きな
不足資金が出てしまう。都市
ガスにおいても、特にこれから五、六年の間、相当に大きな
資金の
不足が生ずる。もちろん五十年代の後半においてもある
程度の
資金不足は生ぜざるを得ない、そういった様子がわかりましたので、
資金問題懇談会としては、
社債発行限度を拡大する必要があるという答申を出したわけでございます。
そこで、さて、
社債の枠をそんなに拡大しても、果たして
社債市場で消化できるのかどうかという問題になります。この点についても、懇談会では金融市場あるいは
証券市場、
社債市場などいろいろなそういった専門家で研究をしていただきまして、今後個人の金融資産がふえてまいりますし、特にこれからの成長率が下がりますし、安定した利息が得られる確定利付債券のような
社債を選ぶ、投資をそういうところに個人や機関投資家が向けるという可能性が大きい。したがって、
社債市場全体としても相当に拡大いたしますし、
電力や
ガスが相当な
程度の
社債発行をいたしましても、それの消化は十分可能であろうということでございます。
それから、もう
一つの点は
社債権者の保護の問題でございますが、
社債発行枠を拡大したときに、債権担保に
不足するのかどうかということも検討してもらいましたけれども、やはり専門家の意見ではその点も
不足をしないだろうということでございまして、しかし、いずれにしましても、
資金調達のためにはこういった金融機関や
電力会社そのものが
社債の販売についての
努力を従来以上にする必要があると同時に、いろいろな金融機関や証券
会社が
電力、
ガスなど国民の必要とする
エネルギーを
確保するための
所要資金を
調達することに協力してほしい、協力しなければ十分な
調達が可能でないかもしれないというようなことがあったわけでございます。
そういったことで、どうしても将来の
資金需要を
考えると、
電力業や都市
ガス業においては
社債発行限度を拡大しないと必要な
工事資金が賄えないのではないかということが結論でございました。
ただ、そういったことを進めていくためには、特に
電力会社はそうですけれども、いずれの
産業においても、巨大な投資を行うだけに、その投資効率をできるだけ高めるという
努力をする必要があるのではないか。懇談会の答申においても、
電力業について新しい広域運営、広域運営の強化ということをする必要があるのではないか、それは従来のような
電力融通だけではなくて、発電所の共同開発とか、輪番投資とか、あるいはそれ以外にいろいろ、たとえば軽水炉などを改良し、標準化するという
努力も必要でありましょうし、安全研究を進めるということもありましょうし、いろいろな
意味で
電力業界の協力する体制というものを強めていく必要があるのではないか、それによって投資効率を少しでも高めることによって、
料金を長期的にできるだけ安定するという上に貢献することにもなるということで、その
前提のもとに
社債発行枠の拡大をすべきであろうというのが結論でございました。
ちょっと時間を超過いたしましたけれども、私の御意見を申し上げた次第でございます。