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藤崎参考人 私、
日本鉱業協会の
会長を務めております
藤崎でございます。
初めに、
金属鉱業につきまして日ごろから深い御
理解、御指導をいただきましたことを、ここで心から感謝申し上げる次第でございます。
本日は、特にわれわれの
業界の
実情につきましてお聞き取りいただく
機会を与えられまして、まことに光栄に存ずる次第でございます。
本
法案につきまして
意見を申し述べさせていただきます前に、この問題の御
理解の一助となると存じますので、当
業界の
現況につきまして、きわめて簡単に
一言申し述べさせていただきたいと思います。
非鉄金属製錬
業界は、銅、鉛、
亜鉛の
ベースメタル、そのほか
ニッケルその他のレアメタル、これを大体根幹といたしまして、
国内の
鉱山、製錬所を保有いたしまして、
わが国の
経済成長に不可欠とも申します
基礎原材料の
安定供給を使命といたしております。特に、
昭和四十年代の前半、
日本の
経済の
高度成長下のもと、
非鉄金属の
需要というものは非常に大きく伸びましたが、国際的には時あたかも銅を中心といたします大きな激動期でございまして、銅その他の
非鉄金属一切、
世界的に見て非常に
需要関係がタイトな
状況を現出いたしました。これに対しまして、ありとあらゆる苦労をいたしましてその
供給責任というものを果たしてまいりました
業界でございます。
その後、
日本経済がさらに
発展の道をたどることをわれわれといたしましても予想いたしまして、必要な
基礎原材料の
安定供給を引き受けるという意図のもとに、
国内的には製錬所の
新鋭大型化に
努力を積みましたほか、
鉱石原料につきましては、
国内資源の
開発にも大いに力を注ぎましたが、
海外におきまして
資源の
開発、
確保に鋭意取り組んでまいった次第でございます。
石油資源、それから鉄鉱
資源同様、
非鉄金属原料の場合に、銅は
年間八十万トンないし九十万トンの
生産というのが
現状でございますが、その
生産のうち
国内原料が八万トンから九万トン、
亜鉛は七、八十万トンの
年間生産に対しまして三十万トン
程度が
国内鉱山で
供給し得るわけでございまして、残りは
輸入に仰いでまいっておるわけでございます。
ニッケルその他に至りましてはすべて
海外資源に依存しているものもございます。
このため、
資源の
確保と
資源保有国に対する
経済協力を基調といたします
政府の
資源政策に基づきまして、また、国民全体の合意のもとに、商社の
協力も得まして、東南アジア、中央アジア、大洋州、北米、中南米、
アフリカ等、全
世界にわたりまして
資源確保の
努力を展開してまいりました。
しかしながら、
海外におきます
資源開発は、莫大な
資本と大きな
リスクを伴うものでございます。これは
発展途上国が多い次第でございますので、ようやく
相手側との
探鉱交渉が成立いたしましても、多額の
オプションマネーを使い、
探査費用をかけて、
鉱山開発にそれが結びつくということも、これはきわめてまれな
ケースでございまして、非常にすそ野の
リスクが多い仕事でございます。
幸い
開発するにいたしましても、最近は単に
鉱山の
開発工事ばかりでなく、多くの
ケースにおきましてはいわゆる
住宅街をつくり、町をつくり、学校をつくり、道路をつくる、港湾を建設するということで、大変な
規模のものに相なっております。しかも、これらの
海外資源確保のための
投融資は、われわれの方に実力がございませんので、多くが
借入金によって賄われておりまして、
非鉄金属業界全体といたしましては、最近、
投融資残高は五億
ドル以上に及んでおります。しかしながら、これらの多くの困難を乗り越えまして、近年、
海外資源の
確保の
体制がようやく軌道に乗りかかってまいった次第でございます。
しかるに、一昨年の秋のいわゆる
石油危機に対処いたしまして総
需要抑制策がとられまして、
国内の
景気は大幅に後退し、
非鉄金属の
需要は非常に大幅に停滞をいたしまして、ここに
過剰在庫という大きな問題が生じてまいりました。
このような場合、
一般の
産業でございますと、
需要面では
輸出促進あるいは
原材料の購入の
削減という方法があるわけでございます。われわれといたしましても、四十九年二月から銅を
海外に
輸出するということも試みた次第でございますが、これは
産銅発展途上国に及ぼす
影響が大きく、同四十九年の十一月に
政府の御
措置によってこれが中止になっております。このためにわれわれの
業界は
自己の
犠牲のもとに大幅な
操短をせざるを得なくなりまして、現在でも、保有いたします
適正能力に対しまして、大体三五%
程度の
減産を強行いたしておるわけであります。したがいまして、製品はいずれも
適正在庫を超え、
過剰在庫は四カ月あるいは六カ月というような
状況に立ち至っておりまして、
不況の
深刻化に伴いましてきわめて
自己資本比率が低くなっておりますだけに、こういう
在庫手当て資金をすべて
借入金で賄わなければなりませんので、非常な
苦境に立ち至っております。
このようにいたしまして、各製錬所では膨大な地金がストックされておりますが、前に述べましたようにいろいろ
努力して
確保してまいりました
海外原料鉱石も、これも余り大量になりますと収容すること自体が困難でございますので、やむを得ずこれの
削減交渉をいろいろ試みざるを得なくなりました。
一般に一五%の
カットを
海外に
お願いいたしております。
しかしながら、このような
カット交渉というものは、
契約上、元来
契約は
契約でございますから問題があるのみならず、特に
原料輸出国は
後進国が多うございまして、その
財政、
国際収支、これは挙げて銅の
輸出に頼っておるところが多いわけでございまするので、そういうところにも問題が起き、こういう状態で推移せんか、長年にわたって築き上げてまいりましたいわゆる
産出国の
発展途上国との
友好関係の上でも、きわめて好ましからざる
影響が生ずるのではないかということが強く懸念されるに至ったわけでございます。
一方、
世界の
経済の動向を見ました場合、御高承のとおり、
発展途上国は一次
産品の
需給、
価格の安定を強く望んでおりまして、
国際緩衝在庫を含みます一次
産品の
総合計画の実現を、種々の
会議で
先進国に対して強くこれの
理解と行動を求めておるところでございます。
最近開催されました
国際経済協力会議、
産銅並びに
消費国会議、それからやがてナイロビで開催されますUNCTADの総会におきましても、これらの一次
産品問題が焦点でありまして、
先進国、特に
世界最大の
資源輸入国でございます
わが国にとりましても、何らかの対応を迫られる問題ではないかと思う次第でございます。
たとえば銅を例にとってみますと、
世界産銅は六百二十万トン
程度でございますが、これはザンビア、ザイール、チリ、ペルーの
CIPEC諸国に、さらに準
加盟国でございますインドネシアとパプア・ニューギニアを加えますと、これが大体
世界生産の五〇%を占めるわけでございます。
他方、
自由諸国の
銅需要は、
世界経済の
不況をまともに受けまして、大体七三年度に対しまして七五年度は二五%の減少になっております。また、
国際価格は、これも皆様御高承のとおり、七四年の四月に千四百ポンド、
国内換算で九十四万六千円までまいりました。これをピークにいたしまして、七五年十二月には五百五十八ポンド三十四万七千円と、
邦貨換算で大体半値以下に下落をいたしたわけでございます。銅に
国家財政の大部分を依存しておりますこれらの国の
打撃がいかに大きなものであるか、御
理解をいただけると存ずる次第でございます。
わが国の
銅資源の
輸入は、これらの
CIPECと準
加盟国を加えまして、
日本が
輸入しております五〇%をこれらの
国々から調達をいたしておりますが、さらに隣国のフィリピンを加えますと、
日本の
銅輸入の七〇%は一次
産品産出国であるこういう
国々から
輸入をしておるわけでございます。
さて、われわれが扱っております
非鉄金属は、いわゆる
供給と
価格の
関係、
価格弾力性という言葉を使っておりますが、物が非常に足りなくなって
値段が上がると、これに
供給がふえれば
値段は適正にいくわけでございますが、何と言いましても山で
開発をし、それが出てくるまでの時間がかかりますので、直ちにこれが
供給をふやすということにはまいりません。したがいまして、ちょっと足りないということが心理的に非常な大きな
影響を及ぼしまして、とかく
ロンドンの
金物市場を乱高下させる、こういう問題があるわけでございます。
このような
特殊性から、
値段が下がったから直ちに
減産をして
閉山を行うということは、理屈の上では申し上げられるわけでございますが、一度
閉山をいたしますと
鉱山を再開することがいかに困難であるかということは、るる再々申し上げたこともございますけれども、
新規鉱山の
開発以上にこれは大変な問題でございます。こういうふうにいたしますと、数年後、また取り返しのつかないショーテージが起こる、かような問題もあろうかと存じます。
以上述べましたような
状況のもとに、
わが国の銅、鉛、
亜鉛、アルミの
資源につきましては、その
輸入の安定を図りまして、もって
資源輸出発展途上国の
経済発展にも
協力し、
わが国の
経済発展に必要な
資源の
安定供給を
確保するために、今回本
備蓄制度の発足をお取り上げいただきまして、
事業団法の
改正が行われるということは、現在の
国際事情並びに
わが国の
資源問題の将来の観点からきわめて大きな意義があり、まことに時宜を得た施策と感ずる次第でございまして、本案に心から賛意を表させていただきたいと思います。
さらに
お願いといたしましては、これがいわゆる
需給の安定、それから
価格の総体的安定にもつながりますので、さらにこれの
整備拡充につきましても格段の御配慮を賜りたいと思います。
時間がございませんが、この
機会に、
国内の
鉱山並びに製錬につきまして、ごく簡単に
一言だけ追加させていただきます。
ここ数年の間、
日本の
国内の
生産というのはほぼ
一定の
水準をたどっておりますが、その実態は次第に
地盤沈下をしておるということが
実情でございます。
硫酸、硫化の
収入減、それから
公害防止等の設備の非常な大きさ、それからさらに、近く予想されます
電力料金の
アップ、
鉄道運賃の
アップ、こういうことを考えますと、
現状ですら非常に苦しい山というものは壊滅的な
打撃を受けざるを得ない、こういうことになってまいるわけでございます。
しかしながら、
国内資源というものは、わずか十万トン足らずでも
国内にとってはセキュリティーという意味でのきわめて重要な給源でございます。あわせまして、これは
日本の各地に散在いたしまして
地域社会との深いつながりもあり、なかなか軽々にやめられない上に、かつ、今後
日本が
海外に
資源を求めます場合に、
技術、
経験の集積の場、その基地としての機能がきわめて重大
でございます。ただいまの
段階では、いろいろな
補助金その他をいただきました上に、それから
事業団に基づきます
探鉱、これに加えまして
関税をいただいておりますので、その
関税の一万五千円分というものを山に還元をいたしまして、ただいまの
段階、ちょっとこのところ
関税がなくなりかけておりますが、五十七万円までということにして、何とかこれを維持するということに懸命の
努力をいたしております。この席をおかりいたしまして、なおこの上とも諸般の諸
政策につきまして心からなるお力添えを賜りたいと存ずる次第でございます。
それから、製錬につきましては、これは明らかに
世界一流の
水準のりっぱな
技術を持っておりますが、ニクソンの
ドル声明で
ドルがいわゆる
円貨表示で上がりました
関係上、いままでもらっておりました
ドル建てのいわゆるTC、RCと申しますが、もらっておりますチャージが引き下げられたということ、それからいろいろ対
公害関係投資にかなりなものをいたしまして、非常に完全なものにいたしたばかりにこの
コストが高い、それから最近の肥料の不振で、硫安で、
硫酸で大変苦しんでおりますこと、こういうことがございますが、基本的には、これは
高度成長時代にわれわれが外国から買いましたものの
条件が劣悪でございます。したがって、この劣悪なことは
業界挙げてこれの改善に
努力をいたしておりますが、
日本のような大きな
経済で、
国内にある
程度のこういう製錬所が存在いたしましてかなりなものを安定的に
供給し得るということは、
日本経済の
発展にもきわめて不可欠であり、重要なことであろうと思うわけでございます。そういうわけで、われわれは必ずやれますので……