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河本国務大臣 ことしの一月、中東四カ国を訪問いたしましたが、その
趣旨は、昨年の一月に三木総理が中近東との
経済協力を積極的に進めたい、こういう施政方針演説をされましたが、それを受けまして総理の指示によりまして訪問をしたわけでございます。
まず、
経済協力と申しましても、相互に理解をし合う、
お互いに知り合うということが一番大事でありますので、相互理解を深める、こういう
観点に立ちまして積極的な話し合いをしたわけでございます。
それから第二点は、懸案の
経済協力案件について具体的な話し合いをいたしました。
まず重立った
経済協力案件について申し上げますと、イランではバンダルシャプールの石油化学、それから新しく向こうに必要な石油精製工場をつくりたい、こういうことで、それに対する協力、それから今後双方の
努力によりまして五年間を目途として現在の
貿易を二倍以上に
拡大する、そういうことで双方が
お互いに
努力をしようという
貿易目標の設定、それから原子力発電に対する協力、そのほかイランの
計画しております新幹線に対する建設協力、それから
住宅建設、都市建設、それから流通機構、エレクトロニクス、こういう
分野における協力について話し合いをしたわけでございます。
それからイラクにおきましては、御
案内のように一昨年の八月に
経済協力が正式に調印されまして、イラクの六つのプロジェクトに対しまして
日本が十億ドルの借款をするという協定ができ上がっておりますが、その六つのプロジェクトのうちセメントとアルミのプロジェクトをやめて、そのかわりにダムと火力発電所、これを
追加してもらいたい、あわせてこの六つのプロジェクトの総額が当初の見積もりから三、四倍に大きくなりまして百億ドル近くなったものですから、借款も十億ドル
プラス十億ドル、合計二十億ドルにしてもらいたい、こういう要請がございましたので、その
方向でまとめるように
努力をするという話し合い、それからあわせて、イラクとの間には現在十カ年の間に九千万トンの石油の取引契約がございますが、それをさらに大幅にふやしてもらいたい、こういう要請が出ておりますが、それに対する検討を約束したということ、こういうことが話し合いの内容になっております。
それからエジプトにおきましては、これは比較的順調に
経済協力が進んでおりまして、商品協定なども第一次の分はすでに終わりまして、第二次がいま進んでおります。それから第三次も最終段階に来ておりまして、近くスタートをすることになっております。それからプロジェクトにつきましては、アレキサンドリア港の港湾改修
計画、それからカイロの上水道に対する建設の参加、こういうことももう決定する段階に来ておりますし、投資保証協定の締結の話も非常に進んでおりまして、エジプトとの
関係は大きな課題はありませんが、このほかスエズの借款とか、比較的小さなものでありますけれども、非常に順調に進んでおるわけです。ただ、先方は、
貿易が逆ざやになっておるものですから、これを何とか改善をしたいというので、この四月から三年間に一億ドルのクレジットラインの設定をする話し合いをまとめてまいりました。
それから最後に、サウジアラビアでございますが、ここは昨年の三月に
経済技術協定が調印をされましたが、その後比較的
日本との間が疎遠になっておりました。先方も若干その点不満を持っておりましたので積極的な話し合いをしたわけでございますが、
経済技術協定に基づきます第一回の合同委員会をリヤドで二日間にわたりまして開きまして、そして懸案の石油化学あるいはまた環元鉄その他
経済技術協力、そういうことについていかに具体化していくかということについての話し合いをいたしまして、いずれも前向きに具体化するような
方向で検討しよう、こういう話し合いをしたわけでございます。
石油ショックが起こりました直後に、当時の三木副総理、同じく中曾根
通産大臣及び小坂
政府の特使、この三人が相次いで行かれたわけでありますが、その後二年間、先方とは
政府の正式の交流がなかったわけであります。そういうことで、今回私が向こうに行きまして、やはり頻繁に話し合いをするということが
お互いに知り合うという一番の前提条件である、こういうことを痛感いたしたわけでございます。どうしても頻繁に話し合いをするということが何よりも必要である、ヨーロッパなどはその点は非常に見習う必要がある、こういうふうに思いました。幸いイラク、サウジアラビア、イランからも先方の担当
大臣が近く
日本に来られるということでございますので、それまでの間に幾つかの懸案をまとめたい、かように
考えておる次第でございます。
ただ、イラクなどは、この大きなプロジェクトは先方の注文によりまして
日本が請け負って建設して向こうへ渡すという、そういう契約になりますが、サウジとかイランなどは、ジョイントで大きな石油化学とかあるいはリファイナリーとか還元鉄、こういうものをやっていこうということでございますから、この条件を詰めるということがこれからの非常に大きな課題だ、こういうふうに心得ておりますけれども、しかし
日本の必要とする油の四分の一はイランから買っておりますし、また四分の一以上はサウジから買っておるような
状態でありますので、現在の両国の
貿易状態等からも
考えまして、今後これらの国々との
関係を積極的に進めていくということがどうしても必要である、こういうことを痛感いたしましたので、むずかしい問題ではありますが、懸案のプロジェクトの実現のために今後全力を挙げていきたい、かように
考えておる次第でございます。