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福田(赳)
国務大臣 常
日ごろ皆さんに大変御
指導にあずかっておりますが、本
国会におきましてもまたよろしく御
指導のほどをお願い申し上げます。
ちょうどよい機会でありますので、この際、最近の
経済情勢並びにそれに対処する私の
考え方につきまして概略申し上げさしていただきたいのであります。
私の基本的な
考え方につきましては、すでに
経済演説におきまして本
会議で
皆さんにも申し上げておるわけでございますが、五十一年度という年は、
わが国の
経済、
社会、
政治を通じまして最大の
課題は、
インフレの再燃を抑えながら
不況からいかに脱出するか、そこにある、こういうふうに考えておる次第でございます。
石油ショック後、ことしは三年目に当たり、また三年度目を迎えようといたしておるわけでありますが、あの
ショック後の第一年度でありました四十九年度、この年度の
課題は、
インフレの燃え上がる
火の手を消しとめることであったわけでありますが、この火消しは大体順調に実現した、こういうふうに考えております。そういう
情勢で第二年度であるところの五十年度を迎えたわけであります。五十年度になりますと、さあ
インフレの
火の手は消えた。消えたものの、まだくすぶりが残る。そのくすぶりを抑えると同時に、
火の手は消えたのでありますから、
経済活動をまた再び活発にしなければならぬ、この二つの
課題を抱えておったというふうに考えておるのであります。
さて、その五十年度は終わろうとしておるわけでございまするけれども、その経過を顧みてみますると、まず
物価。
物価は引き続いて着実に
鎮静化の
方向をたどった、こういうふうに見ておるのであります。卸売
物価につきましても
消費者物価につきましても同様でございます。特に
国民の深い関心を持っておりまする
消費者物価につきましては、これは一けた台三月末実現ということを
政策目標にしてまいりましたが、まあその
政策目標はどうやら達成されそうだというふうに存じまして最後の
努力をいたしておる、こういう段階でございます。
他方、
経済活動につきましては、これは昨年のいまごろ
皆さんに申し上げたところとちょっと違いまして、
回復の基調がかなりおくれてきておるということを率直に
皆さんに御報告申し上げなければならないのでありますが、その最大の理由は、これは
世界経済がはからざる深刻な状態に陥った、アメリカ初め先進
諸国という先進
諸国全部がマイナス成長、五十年という年はそういう年であったわけであります。ただ、その中で
わが国は、二%強でありますけれども、微弱ではありまするけれどもとにかくプラス成長を実現し得たという状態ではありましたが、さて、そういう中で
わが国の
経済界は一体どういう状態だということを見ますると、これはかなり深刻な状態です。
その深刻な状態であるということは、過去の
景気循環におきましては、まあ一年ないし一年半ぐらいの
不況、その後には三年前後の好況が来る。三年前後の好況が来ますと、また国際収支などに問題が起こりまして、そして引き締め
政策がとられ、一年、一年半の
不況になる、こういう循環で、
不況というと一年、一年半ぐらいの状態だったのです。それが今度は三年になろうとしておる、そういう状態でありますが、そういう状態の中で
わが国の
企業は、終身雇用
体制下で遊ぶ労働力に対しまして賃金の支払いというものがある。その賃金支払いの重圧、また借金
体制の
企業体質でありますので、その金利負担の重圧、こういうようなことがありまして、この一つ一つの
企業運営ということをとらえてみますると、なかなかこれは容易ならざる状態で五十年を推移し、五十年度を終わろうとしておる、そういう状態でございます。
さて、五十一年度、四月から始まろうとするこの年度の
経済展望はどうか、こういうことになりますと、私は、
物価の方はこれはまた一段と
鎮静化の
方向を進め得るというふうに確信をいたしております。まあ
物価を動かす、特に
消費者物価を動かす要素は、これは海外の問題やなんかありますけれども、当面大きな要素というのは賃金と公共料金であります。
賃金は、五十年度におきましては、これは昨年の春闘になりまするけれども、あのように労使の間でなだらかな決定が見られた。それが五十年度の
物価情勢に強く反映されておるわけでございまするけれども、五十一年度におきましても恐らく労使は合理的な決定をしてくださるだろう、その合理性に私は大きく期待をいたしておるわけであります。
問題は公共料金ということになりますが、公共料金は、五十年度におきましては一けた
物価と申し上げましたが、その中で、酒、たばこ、郵便料金というようなもの、その他私鉄の運賃でありますとか、地方公共団体の公共料金とか全部ひっくるめますと、大体二・七%ぐらいのウエートを占めるのです。五十一年度におきましては、その公共料金の
消費者物価上昇に占めるウエートを二%強ぐらいに抑えたいと思う。そこで、事業官庁におきましては、この際公共料金を一挙に引き上げ、経理の均衡を得たいというような要望もありましたが、それを遠慮してもらって、公共料金というものは大体三カ年ぐらいの間にならして解決いたしたい、こういう考えでありました。その初年度たる五十年度におきましては、酒、たばこ、郵便料金、こういうものの解決をする。それから五十一年度、五十二年度になりますと、国鉄運賃並びに電信電話料金、これを中心といたしまして、二年にこれをならして大方の解決を図りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
そういう公共料金
政策なんかを
背景とし、また
政府の
政策努力等総合勘案いたしてみますと、まず大体八%程度の
消費者物価上昇にとどめ得るし、とどめたい、これをもって
政府の五十一年度における
消費者物価の
政策目標といたしたい、かように考えておる次第でございます。
他方、
経済活動はどうかと言いますと、これは私はわりあいに明るい展望です。つまり、五十年度の
経済が沈滞傾向であったというその最大の理由は、
世界経済がはからざる不振の状態になった。アメリカ、ドイツを初め、先進
諸国という先進
諸国全部がマイナス成長を記録する、こういう状態であります。そういうさなかにおいて、
わが国だけがひとり行くというような状態は実現できない。まあいろんな
政策努力をいたしたけれども、総合的に二%強の成長というにとどまるという状態でありましたが、五十一年度の展望といたしましては、
世界経済が今度は逆に総
浮揚の状態になってくるというように見ておるのであります。すでにアメリカにおきましては
景気回復の基調を固めた、ドイツにおきましても大体固めようとしておる、その他の
諸国におきましてもこれに追随するという動きでございます。そういうさなかにおきまして、
世界貿易がかなりの活況を呈するであろう。
わが国の輸出には大きな期待が持ち得るという段階になってきておるのであります。
また、しかしそれだけで
わが国の
経済が
浮揚できるかということになりますと、それでは心もとない。そこで、
わが国国内におきましても
景気浮揚政策としての
財政政策を
展開する、そういうことで、ただいま御
審議を願っておる
昭和五十一年度予算におきましては、その予算の規模、特に
公共事業費におきましては四十九年度、五十年度両年度にわたりまして厳しくこれが増額を抑制してまいりましたが、ことしはかなりの拡大をする、そういう
政策を打ち出しておるのであります。
また、
国民経済全体に大きなウエートを占める
国民消費はどうか。これは非常な沈滞状態だという声も聞きますが、沈滞というのはいかがであろうか、こういうふうに考えます。これが
盛り上がりというような状態ではないにいたしましても着実な伸びを示し、五十年度全体を通じますと大体五%、実質五%程度の伸びを示してきたのでありますが、この勢いは五十一年度においても続くものと見て差し支えはない、こういうふうに私は考えております。ただ、設備投資におきましてはそう大きな伸びを期待できないのです。もっとも、五十年度におきましてはマイナスだった。それがプラスには転じよう。しかしこれは大きな期待をすることはできないのです。
そういう中で国全体の
経済がどう動くかというと、結局、輸出と
財政需要が牽引力となって
経済活動を引っ張る、こういうふうに見ておるのでありまして、輸出は、私どもは実質七%を下らざる程度のものが実現できるであろう、また
政府財政需要、これまた七%の程度のものは期待できる、こういうふうに見ておるわけでございますが、輸出と国内の
財政需要というものが牽引力となって、五十一年度におきましては五ないし六%の成長実現は可能である、こういう見解でございます。
物価の安定の基調をさらに固めながら、さように
不況からの脱出を本年度におきましてはぜひ実現をいたしたい、かように考えておるのであります。
ただ、当面そういう問題は処理したいというふうに存じておりまするが、さらに重要な問題は、
世界情勢というものが質的に非常に変わってきておる。その最大の理由は、
資源無限
時代から
資源有限
時代への突入という問題であります。そういうものを踏まえますと、これから先の
長期、中期にわたっての
わが国の
経済社会の
あり方というものには根本的な改定を加えなければならない、さように考えるのでありまして、そういう見地から、いま
政府におきましては、暮れに五十年代前期
経済計画概案というものを発表いたしたわけでございまするけれども、さらにこれを精細に煮詰めまして、この春ごろにはこの前期
経済計画の決定版を作成いたしたい、かように考えております。
ことし、また五十一年度という年は、さような当面のことから考えましても、あるいは
長期的、中期的に問題をとらえてみましても非常に大事な年でありますので、最大の
努力をいたしまして国家
国民の御期待にこたえてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
詳細はお手元にお配りいたしましたごあいさつにもお目通しおき願いたいのでありますが、今後とも一層の御
協力、御鞭撻をお願い申し上げましてごあいさつにいたします。(拍手)